1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月七日(木曜日)
午前十時四十六分開会
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委員の異動
三月六日委員小滝彬君辞任につき、そ
の補欠として佐野廣君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 笹森 順造君
理事
佐野 廣君
鶴見 祐輔君
曾祢 益君
梶原 茂嘉君
委員
鹿島守之助君
野村吉三郎君
海野 三朗君
加藤シヅエ君
佐多 忠隆君
竹中 勝男君
森 元治郎君
石黒 忠篤君
政府委員
外務政務次官 井上 清一君
外務大臣官房長 木村四郎七君
外務省条約局長 高橋 通敏君
外務省情報文化
局長 田中 三男君
文部省調査局長 北岡 健二君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 信雄君
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本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠互選
○在外公館の名称及び位置を定める法
律等の一部を改正する法律案(内閣
送付、予備審査)
○日本国とチェッコスロヴァキア共和
国との間の国交回復に関する議定書
の批准について承認を求めるの件
(内閣送付、予備審査)
○日本国とポーランド人民共和国との
間の国交回復に関する協定の批准に
ついて承認を求めるの件(内閣送
付、予備審査)
○日本国とインドとの間の文化協定の
批准について承認を求めるの件(内
閣提出)
○日本国とドイツ連邦共和国との間の
文化協定の批准について承認を求め
るの件(内閣提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/0
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001・笹森順造
○委員長(笹森順造君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
まず委員の異動について報告いたします。昨六日、小滝彬君が委員を辞任せられ、佐野廣君が委員になられました。
この際委員の皆様にお諮りいたしたいのでありますが、本委員会の理事杉原君から理事の辞任願が委員長の手元に参っております。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/1
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002・笹森順造
○委員長(笹森順造君) 御異議ないと認めてさよう決定いたします。
つきましては、直ちにその補欠互選をいたしたいと存じますが、互選の方法は慣例によりまして指名を委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/2
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003・笹森順造
○委員長(笹森順造君) 御異議ないと認めます。それでは私より佐野廣君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/3
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004・笹森順造
○委員長(笹森順造君) 次に、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、日本国とチェッコスロヴァキア共和国との間の国交回復に関する議定書の批准について承認を求めるの件、日本国とポーランド人民共和国との間の国交回復に関する協定の批准について承認を求めるの件、以上三件いずれも予備審査。
以上三件を一括して議題といたします。まず政府から提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/4
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005・井上清一
○政府委員(井上清一君) 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容を御説明いたします。
外務省といたしましては、この改正法律案において、在外公館の新設及び種類の変更につきまして次のように措置する方針であります。
第一に、新設するものといたしましては、ネパール、ポーランド、チェコスロバキアの三つの国に大使館、イエメン、アイスランド、アイルランド、チュニジア、リビア、モロッコの六つの国に公使館、あわせて九つの大公使館を考えておりますが、これはいずれもさしあたり法律上の設置にとどめ、近くの国にすでに駐在する大公使に兼任大使あるいは兼任公使として勤務せしめることとし、現地における事実上の在外公館の開設については、追っておのおのの現地の事情、相手国の意向等を慎重に研究した上、予算措置の裏づけを待って実施する方針でございます。
これらの在外公館を新設いたしまする理由を申し上げますと、まずおのおのの国について政治上、経済上、その他さまざまの理由があることはもちろんでありますが、全般的に申しまして、世界の国々と広く外交関係を結び、友好の実をあげ、わが国の国際的地位を高め、ひいては世界平和に寄与せんとすることは、政府の根本方針の一つでありまして、この方針にのっとり、平和条約発効以来五年を経過した今日、いまだ外交関係の回復していなかった国、あるいは新しく独立した国との間一には、すみやかに外交関係を開くこととした次第であります。特にこれらの国々は、いずれも国連加盟国でありまして、今後わが国が国際連合において、積極的に活動する基盤を拡充するためにも、まず外交関係の開設を必要といたします。以上が在外公館の新設を必要とする理由であります。
なお、在ネパール大使館につきましては、昨年夏国会閉会中におきまして緊急にこれを設置する必要が生じましたため、九月一日政令第二百八十号をもって設置され、現在すでに在インド大使が兼轄するところとなっておりますが、このたびこれを法律化しようするものであります。
以上が新設公館についてでありますが、第二に、現在すでに設置されている在外公館の種類を変更するものといたしましては、まず在ドミニカ、在ペルー、在チリ、在キューバ、在ヴェネズエラ及び在コロンビアのいずれも中南米にあります六つの公使館を大使館に昇格せしめたい所存であります。
これは御存知の通り、中南米諸国はいずれも戦後急速に国際的地位を高め、国際政治上も無視し得ない勢力となってきておりますので、欧米諸国は競って大使を派遣している実情であり、他方中南米諸国はいずれも儀礼と格式とを尊重する傾向が強く、わが国に対しても大使交換を強く、要望してきておる実情であります。よって、経済上も、移住の面においても、中南米に深い利害関係を有するわが国といたしましては、相手国の意向を尊重し、現在の公使館を大使館とすることが友好関係増進の実をあげ、対中南米外交に万全を期するため必要と考えられますので、さしあたり第一段階といたしまして、特にわが国と関係の深い以上六カ国につきましては、公使館を大使館に昇格せしめようとするものであります。
そのほか、種類を変更する在外公館といたしましては、在ヘルシンキ総領事館の在フィンランド公使館への切りかえがあります。これは、わが国といたしましては早くからフィンランドと正式の外交関係を結ぶことを希望していたのでありますが、フィンランドはソ連との間の微妙な関係に対する考慮から、とりあえずは相互に総領事館を設けることとして今日に至ったのでありますが、日ソ国交も回復した今日、フィンランドとの間に正式に外交関係を結ぶこととし、現在の総領事館を外交機関たる公使館にしようとするものであります。
以上が各館別の説明でありますが、これらの措置をとりますためには、昭和二十七年法律第八十五号在外公館の名称及び位置を定める法律及び昭和二十七年法律第九十三号在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する必要がありますので、今般右二法律の一部改正をうたった本法律案を今次の第二十六国会に提出する次第であります。以上が提案理由の説明であります。
次に本法律案の内容について説明いたします。
本法律案の第一条におきまして、「在外公館の名称及び位置を定める法律」の一部改正を行い、すでに御説明申し上げました各在外公館の名称及び位置を定めることといたしました。
また、第二条におきまして、「在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律」の一部改正を行い、以上申し述べましたうちポーランド及びチェコスロバキア両大使館以外の在外公館、並びに別に外務省設置法の一部改正により新設される在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部、さらに第二十五国会において名称及び位置を定められましたが、在勤俸はいまだ法律上定められていませんでした在ソ連大使館、以上の在外公館に勤務する外務公務員の在勤俸を定めることといたしました。
ポーランド及びチェコスロバキアの二つの大使館に関する在勤俸が含まれておりませんのは、在勤俸を定めるためには、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の第五条の規定に従いまして、まず在外公館の所在地における物価、為替相場、生活水準等の諸要素を勘案する必要がありますが、この二つの国につきましては、このような諸要素の的確な把握が困難であり、目下調査方鋭意努力中でありますが、時期的に本法律案の提出期日に間に合いませんので、このたびはまず名称及び位置だけ定めることとし、在勤俸については後日できるだけ早い機会に所要の法制上の措置をとりたい所存であります。
最後に附則でありますが、附則におきまして本法律案の施行期日は四月一日と定めましたが、ポーランド及びチェコスロバキアの両大使館は、国交回復の文書が三月三十一日までに効力を発生しなかった場合は、その効力が発生して国交回復が実現した日に大使館の設置も法律上効力を発することとし、また、イエメン及びリビアの両公使館の新設につきましては、目下進行中の両国と国交を開くことに関する公式の話し合いが万一、三月三十一日までに完了しないような事態も予想されますので、かかる事態に備えるため施行期日は別に政令をもって定めることとしました。また中南米の六つの公使館の大使館への昇格につきましても、先方の国はいずれも大使館への昇格を相互同時に発効せしめることを強く希望しておりますが、先方の国がわが国にあるその公使館を大使館に昇格できる時期は、それぞれの国の国内手続の関係上異なることとなりますので、かかる事情を考慮してこの部分の施行期日もまた政令にゆだねることとした次第であります。
以上をもちまして、本法律案の提案理由及び内容説明を終ります。
何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
次に、日本国とポーランド人民共和国との間の国交回復に関する協定の批准について承認を求めるの件及び日本国とチェコスロバキア共和国との間の国交回復に関するの議定書の批准について承認を求めるの件につきまして、提案理由を一括御説明いたします。
ポーランド及びチェコスロバキアは、昭和二十六年九月サン・フランシスコで開かれた平和会議に他の連合国とともに参加いたしましたが、同会議において成立した日本国との平和条約に対しては、その署名を行わなかったため、わが国とこれらの国との間の国交は回復されないまま五カ年余を経過いたしました。
その間、昭和二十九年末以降両国より復交交渉開始のための接触も両三度ありましたが、政府は、これら東欧諸国との復交はソビエト連邦との国交正常化後に考慮する旨の方針を持しておりました。しかるに、昨年十二月十二日、日ソ共同宣言の発効により日ソ間に平和関係が回復されるに及び、政府は、ポーランド及びチェコスロバキア両国との平和処理を行うことに決定し、本年初頭よりそれぞれニューヨーク及びロンドンで個別的に交渉を行いました結果、二月八日にポーランドとの協定が、また、同月十三日にチェコスロバキアとの議定書が署名されるに至りました。
これらの協定及び議定書は、ともに、戦争状態の終了、外交関係の回復、国際連合憲章の諸原則の遵守、内政不干渉、戦争請求権の相互放棄及び通商関係の条約または協定の締結の諸事項につき、先般締結されました日ソ共同宣言の該当条項と全く同趣旨の規定を盛った条約でありますが、ソビエト連邦との国交正常化の場合と異なり、戦争から生じた懸案の解決を将来に残すことのない最終的平和処理を行なったものであります。幸いにしてこれら両文書の批准につき御承認を得られますれば、わが国が正常関係を有する国に新たに二国を加えることとなるわけであります。
よって、ここにこれらの協定及び議定書の批准につき御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/5
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006・笹森順造
○委員長(笹森順造君) 三件についての質疑は後日に持ち越したいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/6
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007・笹森順造
○委員長(笹森順造君) 次に日本国とインドとの間の文化協定の批准について承認を求めるの件、日本国とドイツ連邦共和国との間の文化協定の批准について承認を求めるの件、以上二件を一括して議題といたします。前回に引き続き、両件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
ちょっと御報告申し上げておきますが、本件に関して答弁をする用意のありまする出席政府側の方面では、外務省から政務次官井上清一君、条約局長高橋通敏君、情報文化局長田中三男君、文部省調査局国際文化課長柴田小三郎君であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/7
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008・竹中勝男
○竹中勝男君 まず文化協定そのものについて、私は条約局長あるいは外務大臣にお尋ねいたしたいのですが、政務次官がおられますので外務省、並びに文部省の当局にお伺いいたしたいのですが、国際関係が、現在のようにまだ日本を中心として考えるならば、正常化の段階に至っていない国々が多いわけです。また国際間の緊張が十分緩和されているとも思われません国際関係の調整、あるいは親善関係の増進ということにつきましては、経済的な交流、貿易の促進、そういうものの重要なものであることは当然でありますが、それに先立って重要性を持つものは、やはり両国間のほんとうの理解、両国の民族の歴史だとか、従って積み上げてきたところの文化というものを現実に理解することが、ほんとうの国交の親善関係、国交が強固に相互になる基だと私どもは考えております。従って文化協定というものの意味も、きわめて重要性を増大しておると私は考える者であります。こういう点につきましては、日本の外交というものが今まで大きな欠陥を持っておったのではないか。外交官が各地におりますけれども、果して、その文化の交流というような、文化的な相互の国家間の調整というような努力は、まだ低かったのではないかと思います。お互いに酒を飲んだりハウ・ドゥ・ユー・ドゥを言うたりするくらいのことでは何にもならない。また外交官がその国の文化に対して、日本の文化を向うに理解せしめるという努力に対して、まだ資格の点においても十分でなかったのではないかと思われます。そういう点について、今後の外交というものの一つの基調は、文化的な外交というかお互いの国家に対する深い理解を相互に持つということが、外交の基調の重要なものにならなければならないと私どもは考えております。そういう点について日本の外務省の決意ものちにお尋ねいたしたいと思いますが、それに先立ちまして文化協定というものはどういう性質のものかということを私お伺いしたい。一体条約だとか協定だとかいうものは、国際法の通念からしますと、当事国の責任といいますか権利や義務を規定する条項があるはずなんです。ところがこの日本とインド、日本とドイツとの文化協定というものを見ましても、必ずしも国家間の権利義務の規定というようなものはない、国家間を拘束するというような条約の性質もないように思われます。むしろ文化交流というものに便宜を与えるというふうな内容のもののように思われますが、文化協定というものの性格を一つ、外務省の当局からお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/8
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009・笹森順造
○委員長(笹森順造君) 竹中君に申し上げますが、文部省からさらに北岡調査局長も見えておりますから、報告しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/9
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010・高橋通敏
○政府委員(高橋通敏君) 事務的な方面、内容的な方面につきまして、私からお答えいたしたいと思います。
まさしくただいまお話がありました通り、文化協定は、そういうふうな国家の権利義務というものがないというお話でありましたのですが、まさしくそれがほんとうの、それこそ、その点に実は私どもも文化協定の、いわば条約的に見まして、また事務的に見まして、相当本質的な部分があるのではないかと、かように考えております。たとえばほかの経済的な問題に関する協定へまたは政治的な問題に関する協定、こういうものもお互いの国家相互間の権利義務を明瞭に規定するということがございますがへまさしく文化協定におきましては、相互の国なり国民なりが、自発的に盛り上がる意欲でお互いに相手を認識しよう、認識させようという気持の盛り上りによってこれが行われる。そうなりますと、権利であるからこれだけやるとか、義務であるからこうしなければならないというより、むしろそのような盛り上りの気持がお互いに流通するというところに、やはり文化協定の一つの大きな特色があるのじゃないか。従いまして、この条文にもございますように、できるだけの方法を研究するとか、できるだけの努力をするというふうに、非常にはっきりと権利義務というふうなことはないのでございますが、やはりこういうふうな考え方で一般原則を定め、あとは自発的にまた非常に協力して、また今後委員会なんかを通じて、話し合いでやっていくというような点に、一つの大きな特色があるのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/10
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011・竹中勝男
○竹中勝男君 今の条約局長の御答弁、大へん文化協定というものの性格が、そういう自由な立場で、また相互の了解の上にというので、権利義務規定で国家間を拘束するという他の条約あるいは協定と異なるという点については、私も専門家でありませんから、そういうものかなあと、あるいはそれが特色であるかなあと思うわけなのですが、ところがほんとうに文化外交といいますか、文化の交流をひんぱんにしなければならない。そういう必要は、むしろ国交が非常にひんぱんに行われている国よりも、そうでない国の間に必要なものであるように私は思うのであります。たとえば日本でするならば、東南アジア諸国のような、国交がありながら、まだほんとうの文化的な意味において結びついたことのないような国、あるいは中国のような国、歴史的には相当深い関係がありながら、国交が断絶しておるような国というものには、実質的な文化的な交流というものが必要であろう。
次に私は、中国とほかの国々との文化協定をちょっと調べてみたことがあるのですが、中国は今自由主義国家群とは、十六カ国ほどの国と国交を回復しておりますが、その中の、記憶が今正確でないのですが、九つくらいの国と文化協定を結んでいます。それは中国の文教機関、日本でいえば文部省と、相手国の文部省との間に文化協定というものが結ばれております。それには相当の権利義務規定がある。お互いの政治的な宣伝をしないとか、あるいは内政に干渉しないとかという、相当厳密な協定の条約規定があるのであります。だから必ずしも文化協定が、ただ権利義務規定で拘束しないものだというふうな考え方については、今後日本がほんとうに文化協定を他の国々と結び、未開発の、まだ国交の十分回復しない、あるいは国家関係のまだ接触の薄い国と文化協定を結ぶというときには、そういう考えでやられることが、そういう考えが文化協定というものの性格だと必ずしも断定できないんじゃないかと思うのですが、局長どういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/11
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012・高橋通敏
○政府委員(高橋通敏君) 確かにすべて権利義務のはっきりした規定がないのが文化協定であると、私も一概にはいえないと思いますが、ただ大きな特色の一つとして、やはりこのような努力規定というのが非常に大きく規定されているということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/12
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013・竹中勝男
○竹中勝男君 今申しました通りに、文化協定の一つの特色は、やはり文化交流があまりひんぱんでない国々とやるということが大事じゃないかと思うのです。ことにわが国といたしましては、もうアメリカやドイツとは相当今まで深い文化的な交流が、必ずしも少なかったとはいえない。インドだとかこれから将来にフィリピンとか東南アジア、タイだとか、ビルマとか、インドネシアとか、パキスタンとか、そういうような国との交流、あるいは中国との文化協定というものを、むしろそういう国々とこそ、お互いに了解が十分でない国々とこそ文化協定を結ばれる必要があるんではないかと思いますが、外務省の当局のお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/13
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014・田中三男
○政府委員(田中三男君) 今の御質問にお答えいたします。まず最初に御質問のありました、文化というのは政治や経済の基礎になるものではないかという御意見でございましたが、私ども全く同じような考えをもちまして、文化というのはそういう政治関係や経済関係の基礎になるべきものだ、そういう意味でよほど積極的に国としても努力をすべきである、こういうふうに考えて、そういう心がけで仕事をいたしております。
それから第二の御質問の、むしろ国交関係が密接でない、また文化の交流も十分に行われておらぬような国との間にこそ文化協定等を結んで、文化交流を促進すべきでないか、こういうお考え、これも私ども全く同感でございます。従来のいろいろな伝統的な関係で、十分行われておる国との間には、それほど協定を結んでやる必要もない。また民間のいろいろの団体等の力にまかせておいても、かなり行われ得るというような国もあるわけでございますので、むしろ私どもは今お話のように、十分日本の事情が相手国にも理解されておらない、また相手国の事情も日本の一般の国民に十分理解されておらない、しかし国交は大いに密接にしなければならぬ、今お話のような東南アジア諸国との間にこそ文化協定を作るべきである、こういう考え方で私どもは仕事をいたして参っておるのであります。そこで現在も文化協定を、東南アジアの国ではタイとすでに結んでおります。今御承知のごとく取り結んでおりますインドとの協定、これが二番目でございます。さらに今交渉中のも一のがエジプトとイランとセイロンがあるのでございます。そのほかにパキスタン、ビルマ、いろいろ考えられるわけでございまするが、こういう協定は、あまりこちらから強制すべきものではないのでありまして、私どもが相手の大使あるいはその参事官等と話して、どうだろう、協定を作ってもう少し文化交流を盛んにしようじゃないかというような気持を話し合って、機運が向きますればお互いに話し合って進めていくということで、あまり文化のことは経済のこととか政治関係のこととは違うので、無理に進めるべきじゃないが、相手もそういう気持になった場合にこちらもそういう気持でやっていくというので、私どもはあまり積極的に強制はいたしておらないのでありまするが、しかし気持は今お話のように、東南アジア並びに中近東方面と、少し積極的にこういう協定を作って文化交流を推進してみたい、こういう考えで仕事をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/14
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015・竹中勝男
○竹中勝男君 相手国があまり熱心に必ずしも文化協定を望まないという気持もあるだろうと思います。しかし日本の貿易だとか経済活動は、そういう国にもこちらから積極的に働きかけて、機械を売るとかいろいろ物を売るというようなふうにやっておられるわけなんですが、やはり文化というものがそれに先立って、もっと熱心に日本から働きかけてもいいんじゃないかと思うんです。たとえば私もそういう国の詳しい事情は知りませんけれども、一、二知っている国からは、要するに日本でいえば、大学だったら講師級の者が講義しているというんです。そうして学者がいない。技術者も養成できない。何とか日本からそういう学者を一年とか半年とか迎えたいといっても、さて個々の大学で迎える力がない。やはり日本から、何とか経済的にも裏づけのある学者を、また向うの国でも、国として迎えられるような体制を作らなければならないということを、最近私は中国から帰って来た人に聞きますと、ほんとうに中国でも、大学は相当りっぱなものができ、設備も相当でき、学生も優秀な学生を集めていながら、やはり講師がいない、教授がいない。インドネシアに私の教え子がおりまして、インドネシアから私に講義に来てくれないかということを、おととし頼まれましたけれども、行くにはおれの旅費から滞在費から月給から用意するかといいましたら、できるだけ努力しますけれどもと言う。私も自腹を切ってインドネシアまで講義に行く力はありませんし、そのままになっておるわけです。そういうようにやはり結局留学生をもっと迎えるというようなことを一つ考えても、まだ日本の外務省にしても文部省にしても、そういう後進国の留学生に対して十分のことはできていないのです。今度も東京の工業大学が十八カ国のアジアの留学生の学生の会議をしようとして今やる用意をどんどん進めております。学生のことについては井上次官にもいろいろお世話になっておりますが、そういう場合にもこの工業大学が自分の力でやるよりほかにない。その学生はまた日本に来ても非常に不便なんです。東京にも大阪にも最近一つ学生の寮ができたようですけれども、もっとほんとうの本格的な、国が力を入れて外務省及び文部省が力を入れてしっかり外国の学生がほんとうに日本で安心して勉強できるような設備をしてやらなくちゃならん。ことに最初の半年や一年は外国語学校に行って日本語を習わなくちゃならない。受け入れ態勢がないのですね、日本の大学には。日本の国に一体留学生の受け入れの態勢ができていない。それで神田あたりの、と言うとまた語弊がありますけれども、いわゆる下宿屋で中国やいろいろな所から来た学生が日本に必ずしもいい印象を持っていない。そうして日本で交際する階級というと、日本のアンちゃんだとか女給だとか、そういう階級としか交際ができない。ほんとうの日本のいい家庭と交際ができない。それからほんとうの真剣に相談相手になってくれる相談相手がない。不愉快な印象を受けている、あまり日本の印象がよくなくて留学生が帰っていくということはきわめて残念です、私はついでにこういうところで申し上げておいた方がいいと思いますが、インドネシアの学生を二人世話しました。それは戦争中に海軍が留学生として連れてきた学生なんですが、終戦後ほっぽらかされた。それで私のところの大学に相談に来ましたので、私は二人を入れまして卒業さしました。一人はクスナエニ君というのですが、今インドネシアの経済省の貿易次官をやっております。日本に年一度か二度来ますが、それなどももうほんとうに食うものもなかった、着るものもなかったのです。どこもそれを助ける所がないので、私の大学で奨学金を作り、いろいろな人から金を集めて卒業をさしたのですが、非常にそれは親日といいますか、日本の機械や紡績を買いに毎年来ております。結局外国の留学生をほんとうにしっかり養成しておくということは、日本の経済交流、貿易の基礎をつちかうことになるのですからして、そういう点について外務省並びに文部省の御意見を伺いたいのですが、ことに留学生及び学者の交流について、というのは、この協定ができても予算の裏付がないのです。どこでその協定の実をあげるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/15
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016・田中三男
○政府委員(田中三男君) 今のお話の留学生なりあるいは学者の交流、これが文化の交流のために非常に大事なことだということは私どもも同感でございます。またその留学生の受け入れについて万全を期さなければならない、期すべきである、こういうことも私どもも非常に同感でございまして、外務省といたしましては、国際学友会の組織を東京と関西に持ちまして、これで留学生のお世話をいたしておるのでありまするが、まだ計画、内容その他について予算等の関係もありまして、さらに改善を要する点があることを認めまして、いろいろ関係方面とも相談をし、努力中でございます。かなり終戦後から比べまするとよくはなっておるのでございますが、もう一段の努力を要する、こういうふうに考えておるわけでございます。
なお留学生の点なり、教授の交換等につきましては、私ども文部省の御当局と密接に連絡をとり、御協力を願って仕事を進めておるのでございますが、その内容につきましては、文部省の方から御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/16
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017・北岡健二
○政府委員(北岡健二君) お答えいたします。
東南アジアの留学生の問題につきましては、昭和二十九年から大体毎年二十名程度の学生を各国から、国によって二名になったり五名になったりいたしますが、国費で招致いたしまして、大体五年の学部へ入って、一年予備教育をやって五年というふうな教育の仕方をいたしております。来年度からそれを四十名に増加するということで、ただいま予算の要求を願っておるわけであります。
なお、これの受け入れのために、従来、先ほど外務省からお話のありました国際学友会等にお願いして、宿舎の手当をいたしておりますが、継続的に多数参りまして、長年おりますから、これらの宿舎の用意も必要であるというので、昨年三十一年度予算に二千八百二十万の予算をいただき、それから三十二年度のただいま、三千七百万の宿舎建設補助金を要求いたしまして、新しく国費学生関係の宿舎の経営をする団体を設けまして、それに運営を委嘱するといういき方で、現在の計画では両方合せまして百名くらいの用意ができる。大体ただいまの計算で参りますと、国費留学生が東京、あるいは関西に置かれ、それから希望によって各種の大学へも散在いたしますので、大体百名ないし百十名くらいの用意を東京でいたせば一応東京の分は十分であろう。関西の方には関西学友会がありまして、そこの施設に当分お願いができるという見当で計画を進めております。
国費で招致いたしまする留学生以外に、向うの政府の派遣する留学生、あるいは私費で参る留学生があるわけであります。これらの宿舎の手配等は外務省でお話しになりましたように、大体従来は国際学友会の方でお世話をいたし、あるいは日華学会等でお世話をいたしておるわけでございます。
受け入れ大学につきましては、国費留学生については国立の大学に希望によって、学科によりまして配当いたしまして、定員外で受け入れるようにいたしております。それから私費の留学生につきましても、受け入れしました機関と文部省、外務省と協力いたしまして、希望する大学にできるだけ入れていただくようにあっせんをいたしております。率直に申しまして、留学生が希望いたします学習の仕方と、それから現在日本の大学の受け入れの仕方とが必ずしもうまく合致しない点がございます。これは向うの方の教育の程度といいますか、教育の仕方、たとえば高等学校を終ったという程度が、ある者は日本の高等学校よりも低かったり、ある者は高かったり、また教育の内容からいいましても、必ずしもたとえば電気学をやる希望でおられても、その素養が日本の大学の要求するような素養に合わないというような点もあるわけでございまして、それから日本語の修得が、現地であまり十分できていないのが実情でございます。国費学生に次ぎましては、参りましてから外国語大学の別科に一年間入れて日本語の修得をさせる。そのほか国際学友会に日本語学校がございまして、そこで日本語を修得しさらに進学する、あるいはその他の私立大学において特別に別科を設けて、そこで予備教育をやってから希望する大学へ進めるような方法をとるというふうな行き方、いろいろありますが、これらの点についてもさらに充実した方法をとって日本語教育の効果をあげるような行き方をとりたいという考えでございます。受け入れ態勢についてはなお研究し改善すべき点が非常に多いと考えております。教授等の関係では大体政府からこちらへ依頼が参りまして、そして研究者をこちらへよこしますような場合には、外務省を通して参るわけでございますから、それらの希望に従ってそれぞれ入れるような先を考える。このほかにもう一つはユネスコの組織を通じまして入ってくる者がございますし、またユネスコの組織を通じて外国へ招致される、南方へ協力に参る者がおるわけでございます。現在のところ率直に申しまして、言葉の関係などで、非常に適当な人はおっても言葉の工合が悪くて実際向うへ行っていただくわけにはいかないというような場合があるので、その点非常に残念なことだと思います。従って南方との教育上の協力を進めるためには、いろいろな改善すべき点が多々あるのではないかというふうに考えて、できるだけ早くそういう方針をと言いますか、特に具体化していく方針をとりたいというようなことを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/17
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018・竹中勝男
○竹中勝男君 いろいろ努力しておられることはよくわかりまして心強いのですが、しかしながらこれは結局国としてのそれに対する気がまえがまだ低いと思うのです。ことに予算など見ますと二千万円くらいのことで、留学生をこれから何百人呼ばなければならないかわからない。東南アジアの開発にしても、日本の将来アジアにおけるほんとうの位置を確立するにも、日本の文化や日本の技術というものを若い者にしっかり教え込む、しっかり理解さすということが日本の外交の非常に重要な要素になるわけですが、これは将来貿易や経済の交流の上から考えますと大きな投資だと思うのです。だからその投資がわずかに二千万円や三千万円の投資ということは考えられない。私はニューヨークのインターナショナル・ハウスというのに行ったことがありますが、これはすばらしいものです。こんなまねはまだ日本の経済力ではできないと思いますけれども、少くともアメリカが東洋の学生、アジアの学生に対してしているサービスというものは至れり尽せりです。それからまたそこにおる会員といいますか、宿舎の寮長、舎長といいますか、もうりっぱな人です。YMCAを出た人とか、ほんとうにアメリカの文化というものをアジアから来た学生たちにしっかり教え込めるような見識を持った人がそこにおって世話しています。そういう点でまだ日本の予算の上から考えてみても本格的な留学生に対する対策というものはできていないと思うのですが、それについては一つ十分日本の外務省の外交政策として、また日本の文教政策がやはりアジアの教育という、アジアだけに限りませんけれども、そういうアジアにおける指導者としての日本、指導者という言葉はむずかしいかもしれませんけれども、とにかく文化的、技術的な先進国としてのもっと実質を備えたものにならなければ、私は文化協定を幾ら結んでみてもだめだと思うものですから、特にこういう点を強調したい。
そこで最後に、私だけがあまりしゃべり過ぎますので……外務省に対して、外務大臣、外務次官として一つ海外に派遣しておる、駐在しておるところの日本の外交官は、経済観はあるようですが、もっと日本文化を海外にほんとうに理解さす、そういう資質を持ったところの外交官というものを派遣されるお考えがあるかどうか。ただ個人の趣味で自分は骨董が好きだといって外国へ行って骨董を集めてくるというような外交官でなくて、その国の歴史について深い理解を持ち、その国の民族的な特殊性についての理解を持ち、そうしてその国のほんとうの文化的建設に何が必要かという問題をしっかり見きわめ得るような外交官。従って日本から必要な学者をその外交官が呼ぶ。その国にはこういう技術者が必要だ、こういう歴史学者が必要だ、たとえば貴重な発掘がどんどん行われておる国があります。建設するため土を掘るときにすばらしいものが出てくる国がある。ところが考古学者がいない。それでどんどん捨てられる。ほこりになる。そういうような惜しい資料があって日本の考古学者は実際扱いたくて仕方がない。ところがお互いにそういう連絡がないので向うでは金にかえられない貴重な資料がほこりにまみれておる、あるいは分類もできないでほったらかして捨ててしまう資料がたくさんある。日本も人口過剰で学者が過剰であるかどうか知らぬけれども、いろいろな者がおるのですから、各大学に余って安い月給で二万円か三万円で働かされておるのですから、そういう人をどんどん外国に進出さしてもらいたい。そうしてほんとうに文化的な大きな貢献がお互いにできるような、これは外務省のお考え一つでできると思いますが、幸いに文化人である次官がいるのですから、一つ外務省にそういう空気を吹き込んでもらいたい、外務省にそういう決意をしてもらいたいと思うのですが、一つ次官に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/18
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019・井上清一
○政府委員(井上清一君) ただいま竹中先生からいろいろ御高邁な御意見を拝聴いたしたわけであります。一番最初に外交官に文化的な知識なり素養、教養をうんと授ける必要があるのじゃないかという御意見があったようでありますが、外務省といたしましては外交官の養成に文化的な知識、素養、教養を与えまたこれを高めることには努力はいたしておるつもりでございます。外交官が研修所におきましてもこうした科目を非常にふやしまして、海外に出て参ります外交官が日本の文化を他国に紹介し、また日本と諸外国との間のお互いの文化の交流に何か寄与できるように文化活動ができるように心がけておるつもりで、今後も外交官の養成にはそういう方面に力を入れていきたい、かように考えております。
それから文化専門の駐在員を置いたらどうかということでございます。文化アタッシェの問題でありますが、これは各国には例のあることでありまして、たしかインドでしたか文化協定を結んでおります。各国に文化アタッシェというような特別に任務を帯びた駐在員を置いておる国もあるようでございます。で今各国がいろいろやっております政策といたしまして、文化センター的なものをつまり各国に置いておる。そうしてそのセンターを中心にいろいろな活動をさしておるという例がずいぶんあるのであります。アメリカなんか、ずいぶん日本には文化センターを各地に置いておりまして、アメリカ文化の紹介にはずいぶん力を尽しておるようであります。日本といたしましては、まだどうも十分そういったような方面に手が回りかねておるのでありますが、今後できるだけそういう方面に力を入れていかなければいかぬ。せっかく文化協定を作っても中味がないじゃないかという御批判を各方面からずいぶん受けておるのでございまして、今後とも一つ文化方面の内容を満たすために格段の努力をしなければならぬと思っております。日本も文化センターをニューヨークに持っております。今年度はバンコックに設置する考えでございますし、将来はパリにも欧州中心に日本文化を紹介する文化センターを置きたい、こういうように思っております。
それからいろいろな調査団の派遣というようなことについても先ほど御意見がございましたが、こうした方面についても、外務省といたしましてはでき得る限りの御協力をしていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/19
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020・竹中勝男
○竹中勝男君 一言希望を申し上げるのですが、外務省としてそういうお考えをだんだん強化していかれることについては大へん嬉しいと思います。ただ外交官を教育する、講習会式につけ焼刃のそういう文化外交官を作るというのじゃなくて、何といいますか、もっといわゆる国内でも文化的な人間というものをどんどん抜擢して外交に使うようにしていただきたいと思うのですが、外国の大使や公使などとお話をしておりますと、相当程度の高い人ですね、この間チフヴインスキーという人とも話してみましたが、ずいぶんあれは学者ですね、いろいろなことを知っております。間口も広いし奥行もあるようです。ああいうタイプの外交官というものが日本にも必要じゃないか。ただ役所でずっと上っていくというだけで、この人はどうしても海外に出してやらなくちゃならぬというような考えだけでなくて、どこかの大学のやはり教授などもどんどん文化外交官として本省から派遣する。ことに文化センターを作ってもそこにやはりしっかりした人がいないとだめなんです。ことにパリあたりに作ることもそういう意味でいいわけですけれども、これはやはり東南アジア諸国にはぜひ日本の文化センターを作ってもらいたいと思うのですね。そうして日本のあらゆる技術から、単に歴史だとか、芸能だとかというものだけでなくて、もっと広く日本の文化を常時展示できるような、そういうものをやはり作って、どこまでも文化活動を本格化してブリティッシュ・カウンシルやアメリカン・センターのように、相当力を入れて大きな金を使って日本の文化に関する国際的活動をせねばなりません。日本は文化国家というが、ハエや蚊が出るような文化ではなく、ほんとうのクルツアを日本が外国に持っていくというような、そういう文化というものを、やはり日本はどこまでも、これは平和主義に立っておる国ですね、軍備をしない国ですから、今こそ文化的な外交といいますか、文化的な国力の高揚といいますか、これは二千万円じゃとても足りないと思うのですね。それで一つ井上次官、外務省の中にどこまでも文化外交の新しい時代を一つ開くという決意をもってもらいたい、これは私の希望です。私だけしゃべるようでして、どうぞ関連してやっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/20
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021・井上清一
○政府委員(井上清一君) ただいまいろいろ御意見を拝聴いたしましたが、岸外務大臣就任以来経済外交に非常に重点を置いていこうじゃないかという方針で、いろいろ外交方針につきましても、駐在指針につきましても、そうした方面からも、できるだけ人材を抜擢したいというような考えでやっておられるようでありますが、将来、あるいはまた、お話がありましたように、文化人の起用というようなことも、これはやはり各国ともそういう例もございますし、十分一つ考えていかなければならぬ点だと思っております。なおまた外交にいろいろと文化人の御意見を反映するということにつきましても、岸外務大臣いろいろな構想を持っておるようであります。いずれまたそうした方面について各文化人の方々の御協力を求めることがあろうかとも存じておりますが、まあそうした構想を持っておることについてだけ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/21
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022・加藤シヅエ
○加藤シヅエ君 前回の委員会で同僚海野委員から仏教の問題についてもいろいろ御発言があったのでございますけれども、どうも外務当局の御答弁も何かあまりはっきりしなくて、そのままになっておったようでございますが、幸いにインドとの文化協定の問題につきましても、この文化の交流ということは、自分の国の文化を相手国側にいろいろと宣伝理解させるということと同時に、相手国の文化をこちらがまたよく理解するということが非常に重要なことだと思うのでございます。ことに今後東南アジアとの外交問題について外務大臣は非常に関心を持っていらっしゃいます。近い将来にはこれらの国々を訪問なさる御計画もおありになる、こういうことを伺っておるのでございます。特に東南アジアの国々が仏教を非常に信仰しておる。なかにはほとんど仏教を国教のようにしておりまして、あるいは日本の仏教から見るとプリシティブなところが見えるかもしれませんが、この仏教というものが、その国の国民生活の中で非常に生きているというようなことが伝えられておりますことに対して、日本の東南アジアに対する外交がそういうことに対する認識というものが、どうもあまり十分であるというふうに私考えられないのでございます。それでこの間の海野さんの御質問に対しても、何かばく然としたお答えだけでちっともはっきりしなかったのでございます。ことに今インドとの文化協定ということが問題になっておりますので、この間海野さんがおっしゃいました土地の問題でございますね。インドから五千坪とかおっしゃいましたけれども、あれは三千ないし五千エーカーの土地でございます。インドなんか非常に広い所でございますから、五千坪なんというようなことはほとんど問題にならないと思います。三千ないし五千エーカーだそうでございます。これを御承知と思いますけれども、仏跡仏陀伽耶という所にインドが日本に提供したいということをセン大使を通じて申し込んでおられる。これはインドは、日本だけでなくて、ビルマ、セイロンそのほかの国々にも提供しておりまして、現にそれらの国々はこの土地を利用してお寺を建て、そうしてそこに仏教徒が参りましたときの宿舎の用にも充てている。これこそ本当の文化交流だと思うのでございます。日本に対してもこれを提供するから、これを使わないかという申し出があるのだそうでございますから、この点に対して、これはやはり外務当局がはっきりしたお答えをなさるべきじゃないかと思うのでございますけれども、これはどういうことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/22
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023・田中三男
○政府委員(田中三男君) 実は前のこの委員会で十分の御答弁ができなかったのでございますが、その後取り調べました結果、私の方、外務省でわかっている点は次の通りでございます。仰せのようにインドの仏教聖地で仏陀の二千五百年祭を記念して、この土地に集まってくる各地からの仏教巡礼者のための宿舎を建てたい、こういう計画がありまして、この中心はやはり仏教の最も盛んなセイロンが中心になっておるようでございます。そこでこのセイロン政府からインド政府に話しました結果、約二万坪の土地をインド政府からもらうことを内諾を得た、そこでその土地に今申しましたような仏教の巡礼者のための宿舎を建てたい、その経費は約私どもの聞いておりますのは十五万ルピー、日本の金にいたしまして一千百万円ばかりの金でございまするが、そのうち約十万ルピーはセイロンが出すというのでセイロンの国内で募金運動をやっておる。そこで残りの五万ルピーでございますが、この五万ルピーの金を他の仏教国から募金をしたりしておる。そこで日本からもできるならば一万ルピーないし二万ルピー、日本の金にいたしまして七十万円から百五十万円、約百万円前後の金を何とか寄贈できないものか、こういう申し入れがセイロンのフォンセカ大使を通じて外務省の方にこれはだいぶ前の話でございますが、昭和三十年の十月でございます、そういう書類が参っておるのでございます。そこで私どもはさっそくこれを全日本仏教会に通達いたしまして、何とか日本側でもできるだけ民間で、各地でも民間でこういう金を集めておくようだから日本でもこの程度の金は一つ集めて寄贈したらどうだろう、寄付したらどうだろうということを全日本仏教会に外務省から慫慂いたしておるのでございますが、その後まだ仏教会から外務省には何ら具体的な連絡がないというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/23
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024・加藤シヅエ
○加藤シヅエ君 その問題は非常に文化の交流で大切な問題だと思いますので、外務当局としても十分に力を入れていただきたいことだと思うのでございます。それからこういうような仏教の祭典というようなことは、その仏教国の民族にとって非常に影響力のあることでございますから、民間で十分にできないときには、やはり外務省としてもそういうようなときに公式あるいは非公式でもよろしゅうございますから使節を送って、お祭のときには相当なお供え物をするというような礼儀を尽すべきじゃないかと思うのです。そういうことは金額にしては少いことであっても影響力は非常に深いものがあると思います。聞くところによりますと、仏滅二千五百年の祭典のときには中共からは、中国からはちゃんとお供え物があったのだそうです。それで日本からは何もお供え物がなかったそうです。そういうことは非常にまずいことだと思うのです。金額は中共から来たのなんか非常にわずかだそうですけれども、周恩来首相からのお供え物としてそこにちゃんと供えられたというようなことでございますから、どうかただ協定だけ結べばいいというようなものではなくて、そういうようなところには今後非常に外務当局としても心をつかっていただきたい。希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/24
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025・田中三男
○政府委員(田中三男君) 仏教につきましては御趣旨のようにインドよりもセイロンあたりが非常に熱心でございまして、御趣旨のように昨年の仏陀二千五百年祭のために仏舎利塔を建設するという計画がございまして、この前の委員会で井上政務次官から三千万円ばかりの寄付をしたいというお話でございましたが、実は外務省から一千万円出しておるのでございます。民間から一千万円、二千万円の金が、この仏教の仏舎利塔建設のために出ておるのでありまして、われわれとしてもできるだけのことは今までいたしておりますし、今後も心がけていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/25
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026・海野三朗
○海野三朗君 私が過日セイロンのフォンセカ大使を山形に案内をいたしました際に、大衆の前でセイロンの大使が演説をいたしました。その中に今まで日本のカタログを見てそうして品物を注文して、そのときに金をセイロンから送って、しかるに荷物がさらに入らないから、それはどういうわけであるかと思って調べてみたところが、その会社は二、三カ月前に影も形もないというペテンにかかったのが八件今までにある、ということをフォンセカ大使が演説をいたしました。私も実に心外である。それでそのフォンセカ大使はいろいろその会社を調べてみましたところが、跡形もなくなっている会社であり、また行ってみると二、三の人がおるだけであって、セイロンの方に回したカタログには、会社の社長の写真までりっぱに載っておる広告。それを信じて金を送って品物が取れないケースが八件あると言って演説をされたのでありますが、そういう点については外務省は今までお聞きになったことはありませんか。金だけを取ってしまってペテンにかけておるんです。これは大使の口から明らかに私が聞いて少なからず私は憤慨をしたんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/26
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027・井上清一
○政府委員(井上清一君) 私はまだ聞いておりませんが、たくさんの取引の中にはそういう不徳義な商人もあるいはあったのではないかと、かように思います。十分通産省その他とも一つ打ち合せまして、また私どもの方の出先からも、そういうことがなかったかどうかですね、いろいろ今後取り調べてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/27
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028・海野三朗
○海野三朗君 それにつきましてはセイロンの大使によく外務省の方で聞いてもらいたいと思います。八件ある。それで山形県の方に行っての演説でありますから、私はこれを本県にはそういう人間はないのだ、絶対大丈夫だからと言って説明をした。そうしたところがフォンセカ大使はじゅうたんの工場に行って品物を見てそこでいろいろ注文をしました。ところがうっかりできないのです。今までは皆ひっかかっておる。金を取ってしまって跡形もない。それを大使としてここに駐在しておりますから本国からやかましく言ってくる。言ってくるからわざわざ行ってみると跡形もない。それが八件もある、未解決のままでおるのが、みんな金を取られてしまって。でありますから外務省が協定を結ぶとか、いろいろこれはけっこうな窓口であるのですが、そういうようなところもよく考えていただかなければならないじゃないか、ということを思います。
それからまたこれは通産の方にも関係することでありましょうが、セイロンあたりには鉄鉱山が相当にあるのです。そういう方面の交渉の窓口はやっぱり外務省じゃないかと思うのですが、外務省はどんなふうにお考えになっておりますか。ただ条約とかそういうことだけ御担当になっておるのか。国全体の窓口であるからして、やはりそういう方面にもお考えを願っておかなければならないのじゃないかと、私はこう思うのでございますが、いかがなものでございますか。その辺は。鉄鉱石は今日本に非常にプアーである。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/28
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029・井上清一
○政府委員(井上清一君) これはセイロンとは非常な緊密な親善関係を維持しているわけでございますが、セイロンの方で鉱山の開発について日本に一つ大いに協力してもらいたいというようなことがございますれば、十分一つ私どもとしても協力をする用意もございますし、またそうしたことはもちろん民間が先にいろいろ話し合いを進めて参る例が非常に多いわけでございますから、そうした民間の計画がありますれば、私ども外務省といたしましてもできるだけこれを推進し協力することにやぶさかでないし、また当然そうすべきことと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/29
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030・佐多忠隆
○佐多忠隆君 今の注文を受けて払わなかったという問題、これまでそういう問題が通商上の取引の場合はたくさんあって、それを政府が必ず取り調べますという返事をしておきながら返事がほとんどない。ナシのつぶてで政府自体が返事をしないのが今までの通例になっておりますから、一つこの問題は正確に、確実にお調べ下さって御報告を確実にしていただくことを切に希望をしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/30
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031・井上清一
○政府委員(井上清一君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/31
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032・海野三朗
○海野三朗君 ただいまのことをセイロン大使館に一つ問い合せていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/32
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033・井上清一
○政府委員(井上清一君) 承知しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/33
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034・鹿島守之助
○鹿島守之助君 この文化外交に対して二、三希望を申したいと思うのですが、どうも日本の文化外交というものになりますと、芸能だとかそういう趣味だとかいまだに富士山だとか、広重だとか、浮世絵だとか、能だとか、こういうふうになっていますから、やはりこれからの、将来の文化外交というものは生活に即するような、生活文化を中心にやっていかなければならないのじゃないかと思うのです。それでヨーロッパを見ましても、日露戦争当時、あの時代は日本という国がわからなかった。日本は勝った、それでどういう国だろう、ラフカディオ・ハーンが読まれたり、それから富士山、広重、そういうふうに能だとか日本の何がありましたけれども、第一次戦争の後になって、さらに第二次戦争の後になってからヨーロッパに社会主義の何が非常にふえてきて、そういう広重だとか富士山を観賞するものはほんの一部、古い貴族のわずかであって、とうとうたる大衆はそれほど興味はない。それより日本に関心を持っているのはやはり日本の産業、日本の工業ですね。こういうものはいろいろな意味で持たれておるので、今後の新しい文化はいわゆる生活を中心にしたものに、宣伝だろうが何だろうがこういうふうに私は切りかえるべきじゃなかろうか、こういう感じを持っておる。
今竹中さんがおっしゃっておりましたが、もう一つは外交官に文化人を起用しろということですが、これもけっこうですが、私が間違っていなければ外交官の特別任用の範囲は大公使に限られて、書記官というのは文化人を一線書記官とかいうものにできない。それは変えなければいかないのじゃないかと思いますが、かりに外交官を少くとも起用してみてもこれはどれだけの価値があるか、現在やっておられる人にそういう文化人を持ってきても、それは効果がこれは検討すべき問題だろう。それよりは最近は非常に航空機へ通信、そういうものが発達しましたので、外交官というものには、昔はそういう文化を備えておるような人が必要であったが、最近はそういう人がどしどし、少くともヨーロッパあたりは自由自在にそういうことを聞きたいということになると、大公使に聞かないで、もう数時間の間に本国から飛んできて講演もできるというので、外交官というものは要するにそれほどの人でなくても、文化の交流のできる事務官のような地位にあって、ともかくその人が文化を宣伝をしたり、文化の交流の役目をぜひ推進していくべきじゃないか。その点で大公使なんかにしてもそういう道が、昔はここからヨーロッパへ行くのにも七十日かかったのですが、今は重要な外交問題は本国から出てきて、その道の人が自由にできるように、飛んで来てやれるような事態になってきた。この交通機関のすばらしい発達というものは、全く外交機関、文化外交にもそういう点が非常に変化を及ぼしてきておるのじゃないか。
なおこれは井上政務次官にお願いをしておくのですが、文化の問題は、今外交官に対する希望がございましたが、議員同盟へ派遣されますけれども、日本の方は議員のいろいろの功績があった人の慰労になっているということがいわれておるのですが、たとえば私たち昨年一万国議員同盟に出席したのですが、イタリアなんかには大学教授、プロフェッサーが六名おったのですが、ドイツもそうなのです。文化人が向うに行っておるのであって、まあ何か議会でいろいろな事務をやった慰労のためにとかそういうあれはない。そういう点で国会も文化人を出すようにすれば、文化交流もよくできるのじゃないかと思うのです。ここの何と違うのですけれども、少くともヨーロッパのそういう会議の代表には、それぞれの道の権威者及びそういう文化人を出しておるのですが、そういう点も文化外交は再検討を要する問題があるのではないかというふうに思っております。
なお、きょうこの機会に一言申し添えておきたいことは、緊急の問題でございますが、昨日の夕刊からきょうの朝刊にかけてヨーロッパ共同市場、フェアレス委員会、こういうものに関係して非常に議論が、いろいろな社説や、そのほかいろいろな記事が出ておりますが、そこに私全部の新聞を検討したわけではありませんが、五、六の新聞で気のついたのは、外務省の見解としていずれも消極的な意見がある。たとえば「産経時事」に外務省の見解として、アジア共同市場創設は困難、こういうふうにはっきり断定的に書いてある。外務省の見解はだれの見解かわからないのですが、こういうようなことは私は少し早計に過ぎはしないか、もう少し慎重に考えるべきではないかと思うのです。なお「毎日」の記事の中には、岸内閣が成立して、ちょっと読み上げてみますと「岸内閣になって、経済外交の推進を大きくかかげた首相は、アメリカの援助と日本の東南アジア経済協力とを有機的に結びつける具体案はないかと、再び事務当局に検討を命じているが、これまでの失敗の経験からみてもまた東南アジア諸国の情勢からみても外務省筋は大掛りな構想が実を結ぶ時はまだきていないと、むしろそのむずかしさを首相に説明している状態である。」こういうふうにいずれも非常に消極的でありますが、私はこの問題はもっと積極的に考えるべきものじゃないかと思うのですが、どうかこの次にいわゆる外務省の見解というものについて説明を伺うことができれば、非常に幸いだと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/34
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035・井上清一
○政府委員(井上清一君) ただいまいろいろ御意見がございまして十分拝聴いたしましたが、ただ国会から派遣します議員の問題、これは国会でおきめになる問題だと思うのでして、私どもからかれこれ申し上げる筋合いではございませんので、その点一つ御了承願いたいと思います。
それからただいまの東アの共同市場の問題でございますが、これは外務省がこれに対して反対の意見を持っているとかというようなことは、全然そんなことはございません。またこれについてはまだはっきりした何も固まったものも聞いておりませんし、またただいま問題になっておりますのは欧州における共同市場の問題でございますが、一昨日ですか、フェアレスの視察団が日本のみならず、いろいろの東アの各国を回りまして帰りまして、大統領にいろいろ報告した中に、東アにおいても共同市場の問題を考慮すべきではないかということを言っているわけでございまして、今後の日本の経済外交としてきわめて大きな問題でございます。容易に簡単に賛成とか賛成でないとかいうことを軽々しく言うべきものではないと思いますので、今後の日本大きな課題として十分検討していきたい、私どもかように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/35
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036・田中三男
○政府委員(田中三男君) 今鹿島委員の御質問の最初にございました、文化交流についてはもっと生活文化を中心にやられるべきではないかという御意見は、私どもも拝聴したわけでございますが、これは国によりましていろいろ事情がございまして、生活の余裕のある国、たとえばヨーロッパやアメリカは案外日本のいわゆる芸術品と申しますか、そういうものを希望しておるわけであります。しかしそうでないたとえば東南アジア地域などは、そういう美術品など高級なものを見せてもそれほど関心がない。むしろ今お話のような産業関係、そういう関係の方に関心が多いと思いますので、私どもは相手の国によってやはりこの文化交流の内容を検討して適当なものを考えるべきじゃないかと、かように考えております。
なお文化人を外交に動員するという問題、これはなかなかいろいろな点で困難があるのでございますが、お説のように私どもはむしろ民間の文化人に時間等の許す限り御協力を願って、先ほどお話のように交通機関も便利でありまするので、必要なときに出かけていって積極的に御協力願う、こういう形でやるべきじゃないか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/36
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037・石黒忠篤
○石黒忠篤君 ちょっと今田中局長の御発言に連関しまして。先ほど鹿島委員の生活文化というものも考えなければいけない。私も同感でございます。田中局長のお話の国柄によって文化外交について考えるべきだ、これも私よく了解ができるのでありますが、米国のような所に日本の固有の古代文化というようなものについての要望が多いから、それを紹介をして文化交流の日本からの働きかけとするということ、これもよくわかるのであります。ただし米国には、日本の現代の生活に即した文化というものを、しからばやらない、知悉せしめるということに努力しなくていいかというと、私はいけないと思うのであります。ことにあそこにいる三十数万の日系の人たちに対しまして、日本の自分たちが出てきたオリジンの文化というものが古代においてどうか、そうしてそれが今現在どうなのかということを知らしてやることが非常に大事だと私は思うのであります。で、ただいままでの国際文化振興会あたりの仕事が、経費の関係もございましょうが、ややもすると固有の古来からの文化というものの紹介に力が片寄り過ぎて、現代の生活に即した文化がどの程度までいっているのか、科学がどの程度までいっているのかといったようなことを通俗に、普遍的に日系の米人に知らせるというようなことについての努力が足りなかったように思うのであります。田中局長はあちらにおかれてよくその辺の事情は御承知だと思うのでありますが、今や二世等の人たちが、個人企業というようなものの小さい独立の事業にのみ成功者といえどもその方面のみであったのが、大きな公共団体とか、あるいは大きな会社の重要な地位を占めるというようなことになって変ってきた場合におきまして一自分の出てきたオリジンの国の文化がどういうものだということを知っていることは、これは非常にその人の社会上に活動する上においてひけ目を感じさせないために非常に大事なことだと思う。ウエスターン・シヴィライゼーションというものとは違うけれども、しかしそれを取り入れた現在の日本の文化がどの程度であるかということを知らせることは、これらの人に米国においてひけ目を感じさせない上において非常に大事だと思う。またその人たちは実はこれを知ることを求めているのでありますから、むやみにこちらから積極的に押しつけちゃいけませんが、知ることを求めておる者に知り得る手段を供給するということは非常に大事だと思うのです。それをやるのには文化の問題で一番問題になります言語と文字の問題がさわりをなしておるのでありますが、米国におきましては米国人に知らせるのと日系の米人に知らせるのというものはきわめて便利の、同じ出版物でできるのでありますから、そこを狙って幅の広い、そうして通俗な、そうして現代まで含んだところの文化宣伝、文化の了解を深めていく、広めていくということに御努力になることが私は非常に願わしいことだということを感じましたので、私の考えだけを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/37
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038・鶴見祐輔
○鶴見祐輔君 私ちょっと資料を外務省の方にお願いしておきます。日本の文化の問題でアメリカに知らすというときに、私どもがアメリカに行っておった三十年、二十年前は、アメリカ人が各大学で東洋についての講座を持っておりますときに、日本語がほんとうにできた人は私の知っている人では二人しかいないのです。その二人が二人とも米国人ではなかった。その一人はノース・ウェスターン大学のマックガヴァーン教授という英国人で、あとの一人はハーヴァード大学のエリセーフというロシア人です。あとの人は日本語の翻訳書を読んで日本の話をする、これじゃよくわからない。終戦後大へんアメリカ人が日本語の勉強を始めましたから、お調べの資料をいただきたいのは、アメリカの大学その他の学界で、日本に関する講座を持っておるのはどこどこでございますか、それを調べて下さい。これは日本、東洋という意味じゃなくて特に日本のです。
第二は、かつていわゆるアメリカ人で原典から日本語を研究して講義をしている人が何人あるか。これはアメリカに限りません、カナダにもありますから、よその国に関して、フランス、イギリスなどにもありましたらお調べを願いたい。
それからいま一つは文化の問題で、日本人が忘れて取り残しておる問題が一つあると思います。それは日本人で海外において文化の問題で日本及び世界に貢献している人がたくさんあるのですが、これはその人々が日本の国、日本の政府からほとんど認められていない。たとえば新渡戸稲造、あれだけお働きになりましたけれども、日本政府は何にも表彰しておりません。もちろん勲章もあげておりません。たとえば私今ちょっと記憶をたどってみましても、たとえば岡倉天心、新渡戸稲造先生、河上清君、河上清さんは三十年、アメリカでも大へんなものです。それから御承知の野口英世、高峰譲吉、そういう方々に対してほとんど日本政府は何の表彰もしていないのです。きのうの新聞を見ますと、約六十年近くハワイであれだけ日本のために働いた何といいましたかね、新聞にありました。相賀さんに贈られた勲章は勲六等とかいうのですね、新聞をみますと。これは驚くべきことです。アメリカ人が日本に来ると金持に勲一等をやっているのです。昔から大ていの人は勲一等をもらっている。日本人が働く場合は、あれだけ長い間アメリカにあって日本文化のために働いた方も勲六等というのは驚くべき事実であります。ことに日本人は愛国心が強いから勲章をいただくということは非常に喜ぶ。アメリカだけでない、ブラジルに行ってみても、非常に日本のために働いても、何も日本から表彰されていない。日本のために働いた外国人だけを表彰している。海外へ行って日本のために働いた人は表彰されていないのです。それを一つ材料を誰がどれだけ表彰されておるか、お調べができたらお調べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/38
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039・田中三男
○政府委員(田中三男君) 終戦後のものですか、終戦前のものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/39
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040・鶴見祐輔
○鶴見祐輔君 前からわかりましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/40
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041・笹森順造
○委員長(笹森順造君) 外務省の方から今の資料の要求についてはっきりとしておきたいと思いますから委員長から要求しますが、そこで今もちょっとお話があったようですが、戦争中にはほとんどの大学が日本語を教えたのであるが、今の問題に関係して、現在やっておる所は全部かというので、これはずいぶん手数がかかると思うが、鶴見委員の要求が現在のことであるか、それとも戦争後のこと全部であるかということを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/41
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042・鶴見祐輔
○鶴見祐輔君 私の第一の点は現在です。日本語を教えているということじゃなく、日本に関する講座ということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/42
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043・田中三男
○政府委員(田中三男君) 今の資料の提出の御要求のことでございますが、できるだけすみやかに取り調べまして結果を御報告させていただきたいと思います。
なお受勲の問題につきましても、私から申し上げるまでもなく、終戦後いろいろ受勲の方法がだいぶ変っておるという、そういう事情がありまして、実は私自身もサンフランシスコに在勤いたしまして、どうしてもやってほしいという人は何名かございまして、いろいろお願いしておるのですが、一部は目的を達しておるのでございますが、十分達しておらないような関係です。いろいろこれも国内の事情がございますので、その点もさらに取り調べまして後刻御報告させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/43
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044・海野三朗
○海野三朗君 今度在外公館もだいぶふえたようですが、二、三年前ビルマ及びインドをずっと回って見、この間はアメリカに行って見ると、在外公館におる人たちの考えが違うんじゃないかと僕は思う。何かというと、昔のような公使館の連中はいばった時代の気分がまだだいぶ残っているように私は思う。インドに行ってカルカッタの総領事にも会いましたが、なかなかよく世話をしてくれる所と、一向世話をしない所と、またつんとそりくり返っておるところと、そういうふうなのが非常に目立つ。これは名前をあげて言ってもいいのです。そういうやからがおるのじゃ日本の経済外交は私はだめだと思います。一例を言いますと、アメリカのワシントンでカクテル・パーテーに呼ばれた。ところが迎えにくるだろうと思っていたところが、なかなか迎えにこない。しかも議員団六人で行った。タクシーを雇って行ったところがワシントンの大使館がわからない。タクシーの運転手は黒人であって、ぐるぐる何度も回ってやっとわかって行ってみれば、カクテル・パーテーはもう済みかかっておる。ストローズ委員長は帰ってしまっている。一萬田さんも行っていた。私たちは行くなり谷大使がいないかと言ったところが、私が大使だ、君は何をしているのだ、われわれを呼んでおって、一体ここの人間は何人おるかというと、何十人ということを言っておりましたときに、ぼんやりしていかぬではないか、よそに来て何もわからないので、招待しておきながら放っておいて、迎いにもこないなどとそういう苦情を呈したようなわけで、これは一例でありますが、この前ビルマのラングーンに行ったときもそういうふうな傾向がある。それで外務省としては大使、公使に割り当てる人間をよく見ていただかなければいけないと思います。役人からとんとん拍子に上っていって、そうして今度公使なり大使になる、そういうふうなやからを割り当てるのでは、日本の国力といいますか、どうも非常に私は情ないという感じを抱いているので、外務省の人たちを割り当てる政務次官あたりに特にこれをお願いしなければいけない、その人を見てやっていただきたいと思うのです。呼んでおいて迎いもよこさない、そういうところなんです。はなはだもって私はけしからぬ。それについて私が文句を言いましたところが、一萬田蔵相が来ているから、それでまぎれたのだというようなことです。私らは政務次官も一緒になって、六人の、つまり衆参両院の代表でもって行っているのに、ああいうふうなことをやるような人間が在外公館にいるということは、私は非常に不経済だと思うのですね、不経済だ。むしろそういう者はみな首をちょん切って入れかえてもらわなければならない。私はこう思うのでありますが、政務次官はどんなふうにお考えになっておるか。昔のようにおれはお山の大将だからといってそりくり返っているようなことではだめなんですので、どうなんですか、政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/44
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045・井上清一
○政府委員(井上清一君) これはたびたび外務大臣、在外公館の長にはいろいろ訓令その他で十分ひとつ、まあこれは内地からの旅行者に対する、まあサービスと申しますか、そうした点はいろいろ人数の点などもございまして、十分行き届かない点もずいぶんあるだろうと思う。ただこれはまあ純然たる外交事務を扱っています大公使館においては、なかなかそうしたいろいろな重要な会合、事業がございますので、サービス、便宜供与等について手が回りかねる点があると思います。領事館等については訓令を出しまして、できるだけ旅行者に対して便宜をはかり、また商取引、また経済的な関係を増進するためにいろいろ国内から参ります人に対しては、できる限りの便宜を供与するということは申しておるのでございますが、なかなか最近交通が非常に便利になりまして、国民から外国に旅行する人が非常に多くなっている。まあ、なかなか予算その他の関係で十分人を置くことができない。また外務省の予算も非常に乏しく、大公使館に割り当てる費用も少い関係で、あるいは車とかいろいろな点でいろいろな不自由をいたしておるようなわけで、そうした点からいろいろな手違いもあったことだと思います。できるだけ今後予算等も御協力いただきまして、充実さしていきたいと思います。同時にいわゆる旅行者のいろいろな苦情と申しますか、というような点については今後とも一つ気をつけるように注意いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/45
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046・海野三朗
○海野三朗君 アメリカでは私どもが行ったときによく世話をしてくれた人は実に徹底している。六人のうち一人足りなくても待っていて、そうしてきちんとして数をそろえてでなければ行動をしない、実に徹底した責任感を持っているのはアメリカ人であると思いました。そういう点にいくと日本は実にやりっぱなしですよ。実に私は心外にたえなかったのは、人を招待しておきながら迎いもよこさずに、こちらがぐるぐる、わけのわからぬ所をかけずり回って、やっとたどりついたというわけで、それからまたラングーンでもそうでありましたが、インドのカルカッタでは、これは行き届いた人でありましたのをだんだん調べてみると、出身学校なんかも関係しているようでしたね、その総領事。そういうなんですよ、法科出身の、大学出の者はどうもいかぬ。それから一ツ橋出た者が本当にマーチャント的に世話をする。やはり性格だから仕方がないかとも思うのですが、そういう点を十分勘案した、外務省では在外公館に人をやっていただきたい、どうぞお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/46
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047・笹森順造
○委員長(笹森順造君) 本件に関する質疑につきましては、本日はこの程度といたしたいと思いますが、いかがでございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/47
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048・笹森順造
○委員長(笹森順造君) それではそういう工合にさせていただきます。
さらにこの際ちょっと御報告を申し上げる点がございます。石黒委員から以前に、本年三月以降クリスマス諸島周辺で行う予定の核兵器実験を中止するよう、日本国政府から英国政府に対して西大使発ロイド外務大臣あてのもの、それに対しまする英国政府からの回答が、ミラー事務次官発西大使あてのもの、さらに日本国政府第二次申し入れ、西大使発ロイド外務大臣あてのものが印刷として資料を委員各位に御配付申し上げることになっておりまするから、これをごらんを願いたいと思います。
次回は三月十二日午前十時から開会いたします。本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102613968X00719570307/48
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