1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月十六日(土曜日)
午前十時三十五分開会
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委員の異動
三月十五日委員鈴木万平君、西岡ハル
君及び平林剛君辞任につき、その補欠
として吉江勝保君、寺本広作君及び松
澤靖介君を議長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 千葉 信君
理事
高野 一夫君
榊原 亨君
山本 經勝君
早川 愼一君
委員
勝俣 稔君
草葉 隆圓君
谷口弥三郎君
寺本 広作君
横山 フク君
吉江 勝保君
片岡 文重君
木下 友敬君
藤田藤太郎君
松澤 靖介君
山下 義信君
田村 文吉君
竹中 恒夫君
衆議院議員
野澤 清人君
国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
政府委員
厚生大臣官房総
務課長 牛丸 義留君
厚生大臣官房会
計課長 堀岡 吉次君
厚生省社会局長 安田 巖君
厚生省児童局長 高田 浩運君
厚生省保険局長 高田 正巳君
厚生省引揚援護
局長 田邊 繁雄君
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本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠互選
○社会保障制度に関する調査の件
(昭和三十二年度厚生省関係予算に
関する件)
○健康保険法等の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○船員保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○厚生年金保険法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/0
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001・千葉信
○委員長(千葉信君) これより社会労働委員会を開会いたします。委員の異動を報告いたします。三月十五日付をもって平林剛君、鈴木万平君及び西岡ハル君が辞任され、その補欠として、松澤靖介君、吉江勝保君及び寺本広作君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/1
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002・千葉信
○委員長(千葉信君) この際、お諮りいたします。谷口弥三郎君から都合により、理事を辞任したい旨の申し出がありましたが、これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/2
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003・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。つきましては、直ちにその補欠互選を行いたいと存じます。この互選の方法は、成規の手続を省略し、便宜その指名を委員長に御一任願いたいど存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/3
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004・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。それでは榊原亨君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/4
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005・千葉信
○委員長(千葉信君) 社会保障制度に関する調査の一環として、昭和三十二年度厚生省関係予算に関する件を議題といたします。前回の委員会において、保留となっておりました生活保護費に関し、大蔵省と厚生省との食い違いの件について、この際、厚生省当局から説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/5
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006・安田巖
○政府委員(安田巖君) 前回「昭和三十二年度予算の説明」という中に書いてございます生活保護費の基準の引き上げと、私どもが当委員会で御説明申し上げました引き上げの表現が違うではないかというお話でございましたが、大蔵当局にもよく聞いてみましたけれども、この資料に書いてありますのは、「医療扶助を除く生活保護基準は、二十八年七月一日から据え置いたが、最近の消費者物価指数の動向、家計支出の推移等をも勘案して、三十二年四月一日から現行に対して六・五%の基準の改訂を行うこととしている。」現行というのは二十八年七月一日から後に米価補正が二十九年の一月にございましたので、それから六・五%ということでございましてこの表現に多少あいまいな点がありましたのが、誤解を招くもとになったと思うのでございまして、その点は大蔵省でも大へん申しわけないというふうに言っておりますので、御了承願いたいと思います。あくまで現行の二十九年一月に米価補正をいたしました、東京都で申しますと、五人世帯の八千二百三十三円から六・五%を上げたものを考えておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/6
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007・山下義信
○山下義信君 大臣は出席いたしますか、いたしませんか。厚生大臣の出席の都合はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/7
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008・千葉信
○委員長(千葉信君) ちょっと速記をこめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/8
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009・千葉信
○委員長(千葉信君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/9
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010・山下義信
○山下義信君 生活保護の基準が六・五%上ったというのは、どこのペースから上ったかということについての問題は、ただいまの社会局長の答弁でわかりました。それで第二の問題は、前回お尋ねしておりました問題は、昨年の十月に主食の基準の配給方法が変更になりましたので、その点が今回の新基準の中で、主食費にはどういう影響があるかを考えておられるかという問題について本日は御答弁を願うことになっておるのです。それといま一つは、いわゆる生活保護世帯の米食率、これはどういうふうにその率を考えておられるかという点ですね。それに関連いたしまして、一般の国民の米食率との関係につきまして、当局はどういう御方針を持っておられるかということをお尋ね申し上げておいたのです。それで、一般の国民の米食率の資料はその節要求しておきましたが、本日まだいただく都合になっていないそうでありますから、資料はあとでもよろしゅうございますから、先ほど申し上げました生活保護世帯の今回の新基準の中で、この主食費についてはどういう算定をなさるのか、また、生活保護世帯の米食率はどういうふうに考えておられるかという点が前回の持ち越しの問題でございますので、本日御答弁をいただける程度で一応御答弁をいただいておきたいと思います。私の質問は、竹中委員の生活保護費の基準改訂についての関連質問でございますから、私も簡単に伺いますから、大体御答弁いただける程度でよろしゅうありましょうから、本格的にお尋ねすることは、また、他日私が質疑をさせていただきます機会に譲りますから、大体前回に問題になっておりました点を御答弁いただければよろしいわけで発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/10
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011・安田巖
○政府委員(安田巖君) 日本人の米食率でございますが、これは適当な資料がございませんけれども、厚生省で行なっております国民栄養調査によりますと、市部が六八・五、郡部が六八・四という数字が出ております。これはもちろん配給だけではございませんで、配給外の米を購入して食べているものも入っております。
それから現行の基準でございますけれども、これは昭和二十六年の八月にきめたものでございますが、その米食率が五七・三七。パーセントになっておるわけでございます。そこで問題は、……。の五七・三七パーセントというものの内訳でございますけれども、その当時からはずっと内地米を十五日、外米を三日という一応の大まかな基準でやっておりましたのですが、まあ当時の事情を申しますと、決して一般からすれぱ悪いとはいえなかったのではないAというふうに考えているわけでありすす。そこでお尋ねの昨年の十月米穀——米の配給が変つたわけでございまして、従来消費県におきましては十五日の配給でございまして、内地米が八日、準内地米が二日、外米が五日となっておりましたが、生活保護世帯はそれを上回りまして、その他の生産県並みの十八日分と計算いたしております。このたびまたそれが変つて、十日分というのが配給でございます。今度の米の配給制度においては、そのうちの八日分が内地米二日分が準内地米でございまして、そうしてあとの五日分は、これはまあ希望配給ということになっております。それから外米につきましては、これは一人五キロまでは買えるという状況でございます。そこで一人当りが三百六十五グラム平均になりましたから、カロリーはかなりたくさんとらなければならない。四百五十グラムまでの従来の割当の人はそれだけ少くなりますし、また、うんと小さい子供におきましては、それだけ上つたという関係でございまして、その間の計算ははなはだ厄介でございますが、しかし、要は配給というものを何日と見るかということでございますので、これをかりに十日と見ますというと、従来の配給量、米の配給をそのまま据え置いておりますところの現在の生活保護費の米の買い入れの日数等考えますと、まあ下つていないのじゃないか。外米でございますと、六百五十円でございましたのが、上等が六百三十円、下等が五百八十円と下つておりますので、そういうことを勘案いたしまして、別に米食率は従来より下げていたいのじゃないかという解釈をいたしまして、従来通りのままにいたしております。もちろん米食率を幾らにするかということは、国民の食生活上大きな問題でございますし、同時にまた、現在におきましては、希望配給とやみ価格とほとんど変つておりませんので、希望配給を全部とらないところもありますし、足りなくて、たくさんとつている人もあります。外米は実際幾らでも買えるという状況でございますし、売れていないという状況でございますので、今のところ、現在のやり方のままでしばらく様子を見た方がいいというようなつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/11
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012・山下義信
○山下義信君 あなたの御説明でやや了解をいたしましたが、要は生活保護世帯の主食のとり方が、量及び金額につきまして、非常に複雑なんです。それで現行の基準が、今度六・五%上ることと、上る場合にどこをふくらますか、その基準の中身のどこをふくらますかという問題とも関連がありますが、今御説明がありましたように、現在の主食を、どの程度保護世帯にとらしているかという現行の基準の中身、今度配給方法が変りまして、価格も変っているから、現在の金額でも大差がないようにこの率で主食がとれるという大体の御説明と、かれこれ関連いたしまして、かなり複雑でありますので、おそらくまあ今後とも新基準を決定なさるについては御検討になるでしょう。しかし、新基準を御決定になるといいましても、言うまでもなく、生活保護費は前渡しですから、早く、もうすでに御決定になっているかもわかりませんが、ただいまの御答弁の内容、私の質問の要点等勘案いたしまして、本日はこの程度にしておきますから、表に作っていただきまして、数量、金額等を入れていただきまして、現行の基準と新基準と、比較表を一つ資料として御提出を願いたいと思います。それで今お示しになりました二十六年八月における正確な米食率、その他についての資料はあとで下さるのだろうと思いますが、この席でお示しいただきました厚生省の栄養関係の調査資料から、お話になりました一般国民の米食率の六八・五ないし四の率と、その当時の生活保護世帯の五七・三%の率の対比は、これはお話のようにあまり悪くありません。この比率では悪くありませんが、今やはりこの比率のようになっていますかどうかということは、あとでいただきます資料で見なければわかりませんが、大体保護世帯の米食率というものを、どういうふうに考えておられるかということは、まだ承わつてないのです。ことに、一般食糧事情が好転しておるこの段階における生活保護世帯の米食率を、どういうふうに考えておられるかということについては、この次の機会でよろしゅうございますから、一つ明確に一応の根本方針として、これはどうしても一つきめておいていただかなければならぬと思う。
そこで厚生大臣に関連して伺いますが、この生活保護世帯の生活水準、今は生食のとり方につきまして、前回から引き続いて検討しておるわけなんですけれども、この生活保護世帯の生活水準、とり分けて飲食費のとり方、具体的に申し上げますると、エンゲル係数のパーセンテージのあり方というものは、しろうとが考えましてもそれは一律平等であつてはならぬと思うのですね、いわゆる労働能力のない者と、稼働能力のある者と、この保護世帯の対象は、その点におきまして違いますが、それが一律平等に飲食費関係が算定せられておるはずはないと思うのでありますが、そういう点の区別はなされてあるのでありましようか、ないのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/12
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013・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま山下委員のお尋ねがございましたが、要保護者の生活基準となるべき主食の比率等に関しまして、労働能力ある者とない者との差をつけておるかどうかということは、これはつけることが当然じゃないかとのお尋ねでございましたが、その詳しいことは政府委員から答弁させたいと思いますが、そういうふうに差をつけてやっておる。こういうわけであります。詳細のことは政府委員からお聞き願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/13
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014・安田巖
○政府委員(安田巖君) 生活保護費の食糧費の内訳は、その人の最低生活を維持できるという内容になっておりますので、たとえば必要なカロリー計算等におきましては、性別、年令別、それから労働の量というようなことを考慮してきどるようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/14
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015・山下義信
○山下義信君 米食率の問題、主食費の問題は、先ほど詳細な資料をお願いしましたから、この程度で打ち切るといたしまして、この生活保護世帯には、先ほど局長の答弁の中にちらっとありましたが、量において若干の特配がありますか、また、価格において何か特別の割引きでもありますか、その点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/15
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016・安田巖
○政府委員(安田巖君) 量におきましてということは、どういうことでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/16
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017・山下義信
○山下義信君 生活保護世帯には、特別の余分の、何か特配というようなものがありますか、それから価格において、特別に割引きでもするというようなことが、行われておりますかということです、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/17
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018・安田巖
○政府委員(安田巖君) 配給量におきましても、価格におきましても、特別の考慮はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/18
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019・山下義信
○山下義信君 次に、前回質疑をいたしましたのでありますが、これは竹中委員からも御質疑になりまして、六・五%の引き上げについては、プラス〇・三の御質疑がありまして、私は基準の改訂は、いつをもとにして改訂したのかということのときに、局長が、六・五%の引き上げの中身について、大体の要素についてお話があったのでありますが、この質疑も完全に済んでおりませんので、私はこの際、六・五%の引き上げのこの率は、どういうところから、六・五%という率が出てきたのかということを、伺えたらお示しを願いたいと思う。実はこの点は、私も深くお尋ねしたいとは思いません。今回対象人員が、百五十万人に減じたということには、問題がかりにあるにしても、六・五%に基準が引き上げられたということは、私は当局の努力を多とするのでありますから、はなはだ不都合じゃないかという意味で、お尋ねするのじゃないのであります。従ってあまりかれこれせんさくをいたすという意思はございませんのでありますが、しかし、何としても六・五%引き上げたということは、御功績であると同時に、重大でありますから、一応あまり抽象的でなくて、お答えの願える範囲内で、合理的に、六・五%の答弁をいただいておかなければ、われわれ所管の社会労働委員は、六・五%引き上げたのは、何で六・五%になつたんやいうて人から聞かれて、ようわからぬが、とにかく六・五%上つたのは、六・二%がベース・アップで、それにプラス・アルファが〇・三じやったのよというばく然たることは、われわれ所管の委員としても困るので、一応一つ何です、お示しの願える範囲内で、一応合理化さしておきたいと思います。その趣旨で、一つ御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/19
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020・神田博
○国務大臣(神田博君) ペース・アップの六・五の理論的説明をという山下委員の御要望でございますが、これはおっしゃることごもっともでございまして、あとで政府委員から詳しい説明を申し上げさせたいと思いますが、こうきまりましたいきさつを一つ、まあざっくばらんに申し上げまして、御了解を得たいと思うのでございますが、実は事務的には、官公吏のベース・アップがございまして、まあそれに比例して上げるという話がついて、予算が進んでおったようであります。これは、いつでも米価が上る、あるいは給料をベース・アップした場合にはその通りに大体上ってきておる。そういうようなことで、これはまあ普通であれば、両省がいつもそういう了解のもとで淡淡として作業をされてそれがまあ予算に計上されるという仕組みになっておるんでございます。ところが、今年はこれはもう、当時石橋内閣でございましたが、福祉国家へ進むために、三十二年度から政府は社会保障に一つ大きく乗り出そうじゃないか、こういう旗じるしがございまして、そこで事務折衝の済んだあとで、実は私と大蔵大臣とのこれはまあ相談になったわけでございまして、どうも今までの両者の申し合せでそういう仕組みでやってこられたことについてどうこうというわけじゃないんだが、内閣が今私が申し上げたような方針でもう公約されておるのに、機械的に両省の事務当局でそしてそこでいいんだというようなことになると、どうもあたたかい政治というものがないことになりやしないか。最低生活におられるのですからベース・アップということはやはりこれはしなければならない情勢があつてする、だとするならば、要保護者の場合においてはなお一そうそれを上回る率を上げなかったならば、これは世間が納得せぬじゃないか、政治としてもあたたかみのない政治じゃないか。これはまあ非常に大蔵大臣と実は議論したのでございます。事務当局も入っております。まあそういう議論をしていると、ものさしがなくなってしまうので、一体どこで押えるかということがこれは問題になってくるわけなんですが、山下委員から理論的にとおっしゃると、これは折衝の過程で御了解願いたい。一方的で申し上げるのはまことに恐縮なんでございますが、非常に長時開議論したのです。その結果、それは厚生大臣の主張はよくわかる、そこでじゃどこでやろうかということになりまして、まあ結局〇・三%でございますが、六・五%にしようじゃないか、労働者の方もこれは日雇い労働者も六・二で折れております、君の方だけだ、これはやはり日雇い労働者の方にも同じ条件で持っていくのが当然じゃないかという話になりまして、そこでおそらく相当議論した結果、きまつたようなわけでございまして、別にそのときにベース・アップの率がこうであるからこれはそれよりも何割プラスするのが妥当だというようなことではないのでありまして、それをできるだけ上回るようにしなければ説明がつかないじゃないか、あたたかみがないじゃないかというようなこれは政策論になってしまいまして、まあ予算折衝の最後の過程になりますと、御承知のように、いろいろな達観的な数字で、あるいは率で押えるようなことになりがちなものでございますが、あるいはまあ六・五にして、要保護者の方を六・五にすると同じようなことを日雇い労働者の方にもしようじゃないか、あちらから〇・三ほど上ることになるわけでありまして、まあ労働大臣もあとで、おかげでおれの方もよかったというような話になったわけでございますが、それをしからばどういうふうに、理論的、実際的にこれを一つ今山下委員がお述べになられたような配分をするか、そこでまあ一つ合理的な説明のできるような理由を見出したいと、こういう私気持でそこはまあ話をつけたわけなんでございますが、そのあとのことは社会局長にそういういきさつなんだから、一つこれを説明できるような理論的な根拠を作ってくれぬか、理屈があとになって事柄が先になったということ、これはまあざっくばらんのことでございまして、社会局長いろいろ考えておられるようでございますから、一つその報告もお聞きいただいて、そしてまた、いい方法が、こういう説明がいいじゃないかということがございましたら一つお聞かせ願いたいと思います。こういうことで一つお許しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/20
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021・安田巖
○政府委員(安田巖君) 私も別につけ加えることもございませんけれども、やはりこの基準の改訂をいたします場合に、国民の最低生活費ということが実は問題になるわけでありまして、この考え方は一応の最低生活費をきめまして、物価が上った場合にそれを上げていくというような場合の基準の改訂と、それから一般の国民生活というものが上っていった場合に最低生活費というものを上げていってもいいのじゃないかという考え方と二つあると思うのです。前者につきましては、これはもう政府といたしましても、ぜひそうあるべきものだという考え方で、これを理論的に最低生活費であるのでありますから、もし物価が上ってその内容がまかなえないということになりますれば、これは最低生活を守ろうということにならないで、その方が離れていく。しかし、後者の方は、国民の一般の生活内容がどの程度上ったから、生活保護費の基準をどれだけ上げるかということはなかなか微妙な問題がございまして、まあ従来いろいろと予算その他のことを考慮いたしながら折衝してきておったわけでございます。今回は六・五%でございますけれども、しかし、これは住宅の基準の問題、それでしかもこの基準と申しますのは東京都における最高の住宅基準でございますし、それにさらに、小学校三年の教育費の百八十九円を加えたものを全部入れた九千五百二十三円に対する六・五%で、そういうことをのけますと、裸でいきますと七・四%上っておりますので、まあまあ今回の改訂としてはこの程度でいいじゃないか。もちろん、その内容につきましては、飲食物費を上げる、それから従来若干手薄だと思われておりました雑費の方に考慮をいたしたい。こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/21
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022・山下義信
○山下義信君 厚生大臣から大蔵省との交渉過程におきまして忌憚のないお話を伺いましたので、私は追求はいたしません。どうも六・五%の出所をいろいろ見ましても、この数字にぴったるするようなものが出てきませんので、どこからはじかれたのかと実は不審に思ったのです。物価の値上りから出したというのでは非常に数字が違うので、それでこれは神田厚生大臣のお家芸を出されたな。これは一足して二で割つたな、こう実は思ったのです。その大蔵省の主張する引き上げ率と、あなたの方で主張された引き上げ率と両方足して二で割つたのでも数字が合いませんので不審に思ったのでありますが、ざっくばらんな御答弁をいただきましたので、この点はこの程度にいたしておきます。
要するところ、公務員の給与ベースの引き上げに〇・三%の色をつけたんだと、あたたかいものを盛ったのだと、まあ公務員の給与ベースの六・二%からいきますとその通り色がついておるし、そこにあたたかみが加わったといえる。しかしながら、こういうこの引き上げ率のパーセンテージはです。厳密に合理的にこれを打ち出してくるということになれば、これは物価指数から出し、今お話のあった従来問題となっておった生存的な最低のその生活保護世帯の生活水準をどの程度上げるかということは、やはり数字的に打ち出してくるのが本格的でありますので、これは今後ともこの基準の改訂、引き上げにつきましては、一つ合理的に御答弁を願いたいと思う。
そこで私はついでに伺っておきたいと思うのは、今回の基準の引き上げで、生活保護世帯のその最低生活の線が上るのですか、上らぬのですか。その生活状態は同じなのですか、幾らか保護世帯の生活水準は上るのですか。そういうことです。今六・五%の引き上げは、これは数字です。これは物価です。生活費です。しかし、それが上つたからといって、一般物価が上ったのでは、実物は、ものは同じです。価格では上ったようでありましても、その中身の生活状態は同じです。それじゃ保護世帯の生活水準は上ったとは言えない。国民の生活水準は上ってきている。エンゲル係数も上っている。国民全体の生活水準は上っているのに、価格で、金額は上っているようであっても、食べる量も同じであって、使うものも同じであって、つまり生活諸物資は同じであるというならば、保護世帯の生活は依然として最低のところにとどまっているということなんです。その保護世帯の最低の生活水準を幾らかでも上げると言うのですか。依然として現在の生活水準の程度に置くと言うのですか、この六・五%引き上げた結果はどうなるのですか。どういう考えを持っておられるのであるかということをお示しおきを願わなければならぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/22
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023・神田博
○国務大臣(神田博君) 大へんごもっともなお尋ねでございまして、その点は十分私どもは考えたわけでございまして、先ほども申したようなことでございますが、国民所得が上って参りまして、国民一人当りの所得が上っておりますから、国民全体としてやはり消費水準が伸びているわけでございまして、最低生活の方々にも一つその気持を表わしたい、こういうことがまあ議論の焦点になったわけでございますが、これは官公吏の給与改訂もやはりその一つの表われでございますが、そこで今政府委員からお答えがございましたように、この生活だけで参りますと、七・四くらいの増加になっているわけでございますが、まあ詳細な資料を持っておりませんが、生活小売物価の指数は、御承知のように、そうあまり上っておりませんので、その意味から私どもとりますれば、最低生活がやはりそれだけ向上した、その差だけ向上した、こういうことは言い得るものでございます。しかし、議論としても、やはりこういう生活水準が高くなったのだから、その分だけ最低のものもできるだけ上げたいというようなことが議論の焦点となっているわけでございまして、小売物価が上っていない、生活費が膨張しておらないから、七分四厘というものは、その差額だけ……、それは上ったものは物によってはございます。時期的にこれは多少の変動もございますが、年間全体としては小売物価はわずかしか上っていない。七分四厘よりも幅が少いようでありますが、それだけ生活が楽になったということが言えるのではないかと思います。しかし、じゃこの程度で満足してずっと行くかということになれば、これは別問題でございましてわれわれといたしましては、今後とも一般国民の生活水準の向上と同時に、最低生活の要保護者の生活向上を合理化していきたい、こういう心がまえでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/23
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024・山下義信
○山下義信君 ただいまの大臣の答弁は、私は一部分は了承します。最近の小売物価指数が横ばいであることはお説の通りでありますから、そういう点からいきますというと、中身が上つたということも、一部分につきましては同意いたします。後段の生活保護世帯の生活水準をできるだけこれを引き上げていくという御方針は、これは非常に私は御同意申し上げると同時に、ぜひ御努力を願わなきゃなりません。
ただ一つここで私は念を押しておきたいと思いますことは、この生活保護の基準が上った、今までの九千四百六十五円が一万幾らに、かりに東京都の標準世帯で申しますれば上った、つまり基準が上ったといいましても、その上っただけのものが被保護世帯に渡らねば、何も上らぬのであります。上ったというのは一応プラン、一応数字で、そういうものさしが、基準が上ったというだけでありまして、上ったものが保護世帯の手に渡らねば何にもならぬ。言いかえますると、この基準の改訂、引き上げられたそのものが、ほんとうに被保護世帯の手に渡るか、渡らぬかということは、これは最後にわかる。今はわからぬのです。最後にわかるのです。最後に生活保護費を使つてみて、どれだけ保護世帯に扶助をしたかということを実績を締めていって、計算してみて、そして一人当りなんぼの生活扶助費が渡してある、一人当りなんぼの医療扶助費を渡したということになつたかということは、締め上げてみて、たなおろしをしてみてわかる。ところが、それは結局一面では、新たなる今回の基準のようなこのものさしでいくのだと言いながら、一面には実際の差し引きいたしましたキャッシュの渡し方が少なければ、一つも上っておらぬ。言いかえるというと、そこに運用の面におきまして、ある意味で申しますると抜け穴がある。でありまするから、つまり一人当りの単価というものをどういうふうに見ておるか。三十一年度の単価といいますか、従来の単価は出ております。今度新基準を実施した後に、その初めからおよそ単価の予定を立てていくのか。この引き上げたと同じような、一人当りの単価がそこに実行されていかなければ、何にもならぬことなんです。ですから、実施におきましても一面には好景気で収入があるだろうというので、いつも問題になりまするその面を非常に厳格にやっていくということになれば、基準を上げただけは差し引きの方が多くなって、締めてみるというと一人当りに渡したキャッシュは去年とちつとも違わなかったということになってくると、看板に偽わりあり。その点につきまして、基本的に生活保護行政についての大臣の政策といいますか、御方針をお示しおきを願いたい。単価の点につきましては、事務当局はどういうふうに計算を立てておるかということもお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/24
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025・神田博
○国務大臣(神田博君) 山下委員のおっしゃることは、結局何といいますか、この生活の要保護者の、いわゆる別途収入と申しましょうか、その差額の差し引きの問題でそういう問題を御心配になっておられると、こう思うのでございます。まあこれは社会局当時からの厚生省の、いわゆる無差別平等というようなことで線を引きまして、ずっとまあやって参りましたものが、もう一ぺん一つここで新しい研究課題として検討しなきゃならぬ段階ではないか、こういうことを示唆されておられるように私は思うのでございます。いろいろ各方面からその実際に即したそういうことを絶えず耳にいたしておりますし、同時に、私ども前回の当委員会にもお答え申し上げましたように、まあそのようなことがむしろ要保護者の立ち上りを阻害するという逆効果にもなっているという部分も承知いたしておりますので、これは一つ十分検討いたしまして、どういうことを一体することがいいかというようなことですね、従来のしきたりだけにとらわれないで、私は今年度の大きな、一つ研究課題にしてみたい。あらゆる面から一つ検討いたしまして、どうすることがあり方としていいのか、こういうふうに実は考えておりまして、これは相当時日を一つちょうだいいたしまして、基本的な問題でございまするから、よく一つ検討いたしたい。まあ実際これはこういう景気になって参りますると、基準を上げていっても、山下さんが今言われたようなことも起るだろうと思います。よく一つ従来だけの例にとらわれないで、研究していく。どうすることがやはり要保護者が立ち上ることができるか、これはもう労働力のない家庭はこれは何割かある、これはいたし方ございませんが、立ち上る環境にありながら、今の制度で押さえられているというような事例があるようでございますけれども、相当一つ時日をお借りいたしましてその検討の結果を御報告申し上げたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/25
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026・安田巖
○政府委員(安田巖君) 生活保護の基準が上りますというと、今度はそれを実施いたしました結果におきましても、一人当りの給付額が上るのではなかろうかというふうな御意見も含まれておると思うのでありますけれども、実は景気がだんだんよくなりまして、被保護人員が減るということは、結局自分の収入がふえて生活保護を受けなくてもよくなったということになるわけでございます。と同時に、受けておりますものでも収入がふえて参りますというと、そういう時期におきましては、今度は生活保護費をもらう額が減ってくるというのが、現在の生活保護法の建前からいいますと、そういう傾向が出てくるわけであります。そこで、被保護者世帯を見ますというと、大体五〇%が労働力世帯でございますので、そういう影響を加味いたしますというと、必ずしもその結果というものが、数学のように出てこない点が非常に残念なことにはあります。しかし、来年度予算におきましては、たとえば一生活扶助だけで申しますというと、従湯来の単価が八百五円でございます。それを八百十三円何がしに上げておりますから、その点で上っておりますのと、それからもう一つは、今度の単価の引き上げによりまして、一人当り七十五円というのはその別に見ております。でありますから、大体これで私どもはいけるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/26
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027・山下義信
○山下義信君 今の大臣並びに社会局長の御答弁につきまして、私は大臣の生活保護行政に対して、生活保護法のあり方について、根本的に検討を加える考えだということについては同感です。これはぜひ一つ、神田厚生大臣のお仕事として本格的にやっていただきたい。私は今の御答弁の御方針でいいと思うのです。これは労働能力の全くない世帯と、またそうではなくて稼働力のある保護世帯と一緒くたにしておるということが、私は非常に今の生活保護行政の盲点だと思うのです。現在の生活保護の扶助の基準では、これは厚生省の調査の資料の中にも、これは医学的に見て心身の機能を十分に出せることのできる生活基準ではない、こういう基準を与えて心身の機能が精神的にも肉体的にも十分な機能を発揮することのできないこれは生活水準だという学者の研究も、厚生省の公けの報告の中にある。どこにあるかとお尋ねになれば、いつでも私は言いますが、かどが立ちますから言いませんが、そういう心身の機能がこの程度では不十分じゃというような保護の中から立ち上れといっても、これはできない。ですから稼働能力のある者に対しましては、これは特段のお考えは当然大きな改善の目標であろうと思います。これはぜひ一つ御期待を申しておきます。
それから社会局長のお話しになりました、一人当りの単価の問題であります。それは計算をしてみますると、果して今回の予算額やいろいろな六・五%の引き上げや、それと合うか合わぬかということの問題が出てきますが、これは他日に譲ることにいたします。
ただ、重ねてこのせっかくの基準の引き上げが実際に保護世帯がそれだけ保護の程度が厚くなるように実施については御努力を願いたいと思うのです。
私は、このいただきました厚生省の予算説明書は、これは数字は概略ですか。私どもに当委員会の資料として配付していただきました厚生省の三十二年度予算の数字ですね、三十二年二月一日現在として出された。これはまだ未確定数字でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/27
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028・堀岡吉次
○政府委員(堀岡吉次君) これは確定数字であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/28
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029・山下義信
○山下義信君 この数字と生活保護費に関する限り、ここに大蔵省の予算案に出ているこの数字とに、総額において差があるように私は見るのですが、私の見そこないでしょうかね。私の質問はこれで終るのでございます。
それから生活保護法につきましては、本格的に検討する。これは中身を調べると食管会計と匹敵するような実は重大な内容でもありまするし、数字が非常に複雑なんでありますから、いっか当委員会でも本格的にこれは生活保護法関係を検討する必要があると思いますから、本日は私はこの程度でとどめます。
私の見ました数字は、大蔵省の予算説明書は、本予算も同じことでありますが、生活保護費は三百六十五億六百八十七万六千円ですね、あなたの方の数字は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/29
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030・千葉信
○委員長(千葉信君) 私語を禁じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/30
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031・山下義信
○山下義信君 私がいただきました厚生省の資料では、これは計数整理の仕方で差があると思うのですが、やはりわれわれに下さる資料は、大蔵省の提出しておる予算書となるべく数字を合わして出しておいていただきたいのです。特にトータルなんかにおいては合わしておいていただきたい。大蔵省の数字と違うところを一つ御明示を願っておきたいと思います。数字のことですけれども、なぜ大蔵省の方にはそういう数字が入っているのか、また、あなたの方にはその数字を入れなかったのかという数字を合わしておいて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/31
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032・堀岡吉次
○政府委員(堀岡吉次君) ただいま山下先生の御指摘の三百六十五億六百八十七万六千円は、私の方から差し上げました資料の十三ページに横書きの数字で書いてあります。十三ページのところに大軸を16としまして生活保護費とそれから二番目が社会福祉施設整備補助金、それを合せたものが三百六十五億でございまして、この三番目の生活保護指導監査委託費……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/32
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033・千葉信
○委員長(千葉信君) 御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/33
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034・堀岡吉次
○政府委員(堀岡吉次君) この一億八千万円を加えましたので、それで三百六十六億八千万円ということになっておるわけでございます。そこでこの(3)は——予算のまあ組み方はばらばらになっておりますが、(3)の方の費用は本省費に組んでおるわけであります。この(1)、(2)は補助金でございます。で、表面上生活保護費として出ておりますのは、大蔵省の予算の説明書にあります三百六十五億という数字でございます。で、私の方で載せましたのは、この(3)の生活保護指導監査委託費は生活指導の施行のために必要な費用でありますから、それを合せてここに計上したわけであります。それから厚生省から委員会に配付いたしました資料につきましては、説明の便宜上事項々々にまとめましたので、そういうふうな数字の手配があったことかと思います。この点はもう少し御説明を申し上げればよかったと思いますが、当初の説明があるいは不十分だったかと思います。御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/34
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035・山下義信
○山下義信君 私の関連する質問はこの程度にとどめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/35
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036・千葉信
○委員長(千葉信君) 本問題に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/36
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037・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/37
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038・千葉信
○委員長(千葉信君) 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)、船員保険法の
一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第五号)、厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第六号)、以上三案を議題といたします。提案理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/38
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039・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び本法律案の概要について御説明申し上げます。
健康保険制度は、わが国の社会保障制度の一大支柱をなす制度として労働者の生活になくてはならぬ重要な意義を有しておりますが、近年その医療費は年を追うて増高し、持に中小企業を対象とした政府管掌健康保険においては、昭和二十八年末以来今日まで収支の不均衡を続け、保険経済はきわめて困難な事態に立ち至ったのでありますが、その後各種の行政上予算上の措置を講じて一応収支均衡を保ち得たのであります。
昭和三十一年度に入ってからの政府管掌健康保険財政は、一般経済界の著しい好況の中にあって、相当好転を示しておりますものの、しかしながら、三十二年度につきましては、依然好景気は持続するとはいえ、現状のまま放置する場合には、本年度に異常に増加した被保険者の影響等もあって、相当額の赤字はやむを得ないと見込まれておるのであります。
健康保険法等の一部を改正する法律案は、このような不安定な健康保険財政を根本的に立て直そうとするものでありますが、同時に、制度そのものの合理化をはからんとするものであります。すなわち、医療保障制度の確立を促進する見地に立って政府管掌健康保険事業の発展をはかるために、新たに国庫よりの補助を明文化するとともに、一方、制度上必要な措置として被保険者一部負担制の改訂をいたし、また、保険医療組織、診療報酬審査機構等について制度の合理化を行い、もって健康保険制度が高い医療水準を維持しつつ発展して行くことをはからんといたしたものでありまして、国民全部の要望であります国民皆保険を実現するに当り、その一大支柱ともいうべき健康保険制度の基礎的な地固めをぜひともやっておかなければならないと考、えた結果立案されたものであります。以上の理由によりまして、第二十五臨時国会で本改正法案を提案いたしましたが、引き続き今二十六国会でさらに継続して、御審議をわずらわす次第であります。
今回の改正案の内容といたしましては、国庫より財政補助を行うことを法律上明文化し、三十一年度及び三十二年度には三十億円を一般会計から受け入れることといたし、標準報酬等級の区分を改訂いたしますとともに、保険機構の整備をはかるため、保険医、保険薬剤師制度を改め、我が国の医療の実態に応じ機関指定方式を採用すること、社会保険診療報酬支払基金の審査機構の整備をはかることといたし、また、療養の給付を受ける者に対する一部負担金につきましては前回の案より若干負担を軽減することといたしましたが、なおそのほか、改正を機会に従来から問題のありました点について制度の不備を是正し、その他制度の合理化をはかるために若干の改正をあわせ行おうといたしております。
次に改正案の内容を要約いたしますと、第一に、国庫は予算の範囲内において政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部を補助するものとすること。
第二に、標準報酬等級区分を最低四千円から最高五万二千円の二十四等級とすること。
第三に、療養の給付を受ける者の負担すべき一部負担金の範囲を拡張すること。
第四に、保険医療制度について個人指定方式の長所を取り入れた機関指定方式を採用すること。
第五に、継続給付を受けるための資格期間を一年に延長すること。
第六に、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること。
第七に、被扶養者の範囲を明確化すること。
第八に、厚生大臣又は都道府県知事の検査に関する規定を整備すること。
第九に、社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書の審査機構を整備すること等であります。
なお、この法律案は、衆議院において修正されました結果、ただいま申し上げました事項中、社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書の審査機構の整備に関する事項は削除されております。
母上がこの法律案を提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
次は、ただいま議題となりました船員保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
船員保険制度は船員の疾病、老齢、死亡、失業等の各部門にわたる総合的社会保険として、海上労働者の福祉の向上のために重大な役割を果してきたものでありまして、この制度は、わが国海運業及び水産業の発展のためにも重要な基盤となっているものであります。
ところで、最近数年来医療費等の支出増加のため、その医療給付部門におきまして収支の不均衡を生じましたので、これに対処するため標準報酬の適正把握、保険料収納率の向上、不正受給の排除等各種の行政措置を講じて参ったのでありますが、給付費の支出は増加の一途をたどり、財政の実情は依然として深刻なものがあるのであります。
今回の改正案は、このような情勢に対処するため、現行制度の不備を是正するとともにその合理化を行うことを目途とするものでありまして、その内容の要点について説明しますと、第一に、国庫は予算の範囲内において、船員法の災害補償に相当する給付に要する費用を除き、船員保険事業の執行に要する費用の一部を補助するものとする旨の規定を設けることでありましてその結果、とりあえず昭和三十一年度及び昭和三十二年度においては一億円を一般会計から補助することといたしております。
第二に、将来にわたって船員保険の健全な発展を確保するため、新たに一部負担の制度を設けることであります。その実施内容につきましては、船員保険の特殊事情を十分考慮して、初診の際に定額を被保険者が保険医療機関に支払うこととし、船員法に規定する災害補償に相当する療養の給付につきましては、船主が補てんの責に任ずることといたしておるのであります。
第三に、保険料率につきましては、失業保険の適用を受けるものについては千分の五、失業保険の適用を受けないものについては千分の七を引き上げようとするものであります。
以上のほか、第四に標準報酬等級の区分を改め、最低を五千円とすること。
第五に、報酬が歩合によって支払われる場合の報酬月額の算定方法を改め、前年度における実績を基準として算定するものとすること。
第六に、職務外傷病に対する資格喪失後における療養の給付等につき原則として一年につき三月の資格期間を設けること。
第七に、独身入院者の職務外の事由による傷病手当金の支給額を百分の五十とすることのほか、健康保険法の改正に準じ被扶養者の範囲の明確化、保険医療制度の整備等各般の改正を行おうとするものであります。
以上が、この法律案を提案する理由並びに法律案の要旨であります。
何とぞ、御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
次にただいま議題となりました厚生平金保険法の一部を改正する法律案にりきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
この法律案は、厚生年金保険の標準報酬の最低を引き上げるとともに、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子に対する脱退手当金の支給条件を緩和し、あわせて規定の整備を行いますことを内容としているものであります。
すなわち、改正点の第一は、健康保険法の改正と歩調を合せ、標準報酬の最低を現行の月額三千円から月額四千円に引き上げることであります。
第二は、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子の一部に対しても脱退手当金を支給し得るような規定を設けようとするものであります。すなわち、同様の事情にある男子に対しましては、現行の厚生年金保険法により支給できるようになっておりますので、これと均衡をとりまして、女子に対しても脱退手当金を支給し得る根拠規定を設けようとするものであります。
第三は、規定の整備を行うことであります。現行の厚生年金保険法は、その施行より約三年近くなりますが、この間の経過を検討いたしますに、多少規定の明確を欠く面がありますので、これを明らかにし、解釈上の問題が起ることを避けるため、所要の規定の整備を行うものであります。
以上が、この法律案を提案いたしました理由であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/39
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040・千葉信
○委員長(千葉信君) 次に、衆議院における修正点について御説明を願います。衆議院議員野澤清人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/40
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041・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 健康保険法等の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案の一部衆議院修正につきまして、その提案の理由を御説明いたします。
政府提案の健康保険法等の一部を改正する法律案は、国民全部の要望でありまして、国民皆保険を実現するに当り、その一大支柱ともいうべき健康保険制度の基礎的な地固めをぜひとも実施しようという趣旨に出たものであります。しこうしてその内容中、社会保険診療報酬支払基金法の一部改正につきましては、審査の適正を期せんとする政府の意図は了とするものでありすすが、審査の問題が重要であればあろほど、現実の問題も十分勘案し、なお、慎重な態度をとるべきと考え、今直ちに改正することは妥当でないとの結論に達しました結果、社会保険診療報酬支払基金に関する規定を全面的に削除いたすこととしたのであります。なお、施行期日もすでに一月一日を経過いたしておりますので改めることにいたしました。
次に、船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきましても施行期日に関して修正することといたしました。
以上がこの修正案を提案した理由並びに修正の要旨でありますが、詳細はそれぞれ別紙に修正要旨を差し上げてありますので、ごらん願いたいと存じます。
なお、本改正案の審議の過程において相当問題となりました点につきましては、別に付帯決議として四項目を決議いたした次第であります。これが決議の内容を申し上げますと、
付帯決議
(1) 政府は、この法律に定める保険医及び保険薬剤師の登録制度及び保険医療機関並びに保険薬局の指定制度の実施に当っては、医療担当者の地位を不当に害することのないよう関係団体との連絡を密にして制度の効果的運営に細心の注意を払うとともに、特にいわゆる「個人開業」の保険医療機関及び保険薬局については、指定更新の手続を極力簡易にするよう配意すべきである。
(2) 政府は、医療の国民皆保険の完全な実現を期するため、健康保険に対する国庫負担制度の根本理念を明確にし、これに伴い組合管掌の健康保険に対しても、国庫負担の途を考慮すべきである。
(3) 政府は、現行健康保険の診療報酬の点数並びに単価を含む診療報酬支払方式を再検討し、医師、歯科医師及び薬剤師の待遇改善を速かに行うことを要望する。
(4) 現在医師会、歯科医師会、薬剤師協会の三団体については、従前におけるが如き特別の法制がないため、国民医療の普及発達並びに公衆衛生の向上を図るべきこれら団体本来の使命達成上、真に遺憾なる状態にあるものと言わざるを得ない。
よって政府は、速かに医師、歯科医師及び薬剤師関係の団体につき調査研究のうえ、我が国医療の健全なる発達に資すべき制度を樹立すべきことを要望する。
右決議する。
何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/41
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042・千葉信
○委員長(千葉信君) 修正案の説明に当られた野澤君に要求しておきますが、審査上不可欠なものですから、ただいまお述べになりました修正案の提案理由については、即刻プリントを当委員会に対してお出しになっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/42
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043・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 了承いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/43
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044・千葉信
○委員長(千葉信君) 審査の都合上、本案に対する質疑は、次回以後にこれを行うこととし、本日は提案理由並びに衆議院修正点の説明聴取にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」「反対」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/44
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045・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ありますか。
暫時休憩いたします。
午前十一時四十九分休憩
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午前十二時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/45
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046・千葉信
○委員長(千葉信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
本日はこれをもって散会いたします。
午後零時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01019570316/46
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