1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月十九日(火曜日)
午前十時四十九分開会
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出席者は左の通り。
委員長 千葉 信君
理事
榊原 亨君
高野 一夫君
山本 經勝君
早川 愼一君
委員
勝俣 稔君
草葉 隆圓君
紅露 みつ君
近藤 鶴代君
谷口弥三郎君
寺本 広作君
横山 フク君
吉江 勝保君
片岡 文重君
木下 友敬君
藤田藤太郎君
松澤 靖介君
山下 義信君
田村 文吉君
竹中 恒夫君
衆議院議員
野澤 清人君
国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
政府委員
法制局次長 高辻 正巳君
厚生政務次官 中垣 國男君
厚生大臣官房総
務課長 牛丸 義留君
厚生省保険局長 高田 正巳君
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本日の会議に付した案件
○公聴会開会に関する件
○健康保険法等の一部を改正する法律
案(山下義信君外四名発議)(第二
十五回国会継続)
○健康保険法等の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○船員保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○厚生年金保険法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/0
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001・千葉信
○委員長(千葉信君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
この際、公聴会要求に関する件についてお諮りいたします。健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)は一般的関心及び目的を有する重要法案でありますので、利害関係者及び学識経験者等から意見を聞いて、審査の参考に資するため、公聴会を開きたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/1
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002・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。
公聴会の日時は、三月二十五日とし、問題並びに公述人の数、及び選定、その他の手続等は、委員長及び理事に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/2
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003・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認め、健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)について、公聴会開会承認要求書を議長に提出することといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/3
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004・千葉信
○委員長(千葉信君) 健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会参第一号)健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第五号)厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第六号)以上四条を議題といたします。修正部分を含め、御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/4
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005・木下友敬
○木下友敬君 私は健康保険法等の改正案は、今度の国会でも相当重要視すべき問題だと思うし、また、昨今の社会情勢から見ましても、この委員会での審議は、よほど慎重になさらなければならないと思いますが、そのために私は、これは総理大臣に出席してもらって、じっくり御相談を申し上げたいと思いましたが、きょうお見えになっていない。委員長は何か、もう少しこの法案の、失礼ですけれども、少くも社労の委員長さんであるから、こういう場合には、総理大臣をぜひ連れてきて、ここでわれわれにじっくり話をさしてもらいたい、そのくらいの御努力をお願いしたいと思うのでございますが、まことに私残念に思うのですが、御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/5
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006・千葉信
○委員長(千葉信君) お答え申し上げます。御意見ごもっともでございます。私どももそういう御意見を十分承知しておりましたので、理事会におきましても、総理大臣の劈頭御出席願うことについては、ずいぶんいろいろと協議を進めて、同時にまた、その結果に基いて、総理大臣の出席を要求したのでございますが、他の委員会との関係がありまして、先にそちらの方とのお約束があったために、本日は遺憾ながら出席できないことになりましたが、次回には必ず、総理大臣の出席を求めるよう、理事会等を通じて、御意見を十分実現できるように努力するつもりでございます。
以上お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/6
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007・木下友敬
○木下友敬君 お見えにならなければやむを得ません。私の質問したいと思うのは、次回に延ばすわけにいかない質問でございますから、厚生大臣がお見えになっておりますから、厚生大臣からお答えをいただくことにしたいと思います。と申しますのは、社会保障制度に関する問題で、企画、立法などの場合には、これはどうしてもあらかじめ社会保障制度審議会とか、社会保険再議会というようなところで諮問して、その答申を受けなければならないということは、これはたとえば社会保障制度審議会設置法の二条二項にも、はっきりこれは義務づけられておるわけです。これは先般の衆議院の社労委員会でも、相当問題になっておったと思うのでございますが、不幸にして今回、今ここに出されておる法案は、この二つの審議会の議を経ていない、これははっきりした事実なんです。政府側もそれを認めている。それを無理押しにここに御提出になっておるということは、私は総理大臣にとくとお尋ねしたいと思ったのはその点なんですが、岸総理大臣はこれからの国会運営については、その国会運営の正常化を特に念願するということを、強く打ち出しておられる。そのことに対して、私はこれは非常に不都合ないき方だと思う。ただ口先だけ正常化を希望すると言っても、現実にそれを実行しないならば、これはごまかしであると思う。今この社会保障制度に関する健康保険法の一部改正案というのは重大な問題であるにもかかわらず、これを無理押しをして審議会にもかけないままこれを出していくというような考えは、これは間違いと思うのでございますが、これについて、一つ厚生大臣からお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/7
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008・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま木下委員のお尋ねのございます、社会保障制度審議会に、社会保障の大綱を政府がきめて、あるいは法律を立法する、企画するという際に諮問をするということは、法律の建前になっておりまして、政府はよくその点は了承しておりまして、しばしば総理がお答えを委員会等でしておられるのでございますが、具体的にこの健康保険法の一部を改正する法律案を諮問をしておらない、こういう問題でございますが、これは私どもといたしましては、先に審議会に諮問をして、その諮問の答申を得ておりますので、その答申の、諮問の範囲内で多少変えておる。そこで、この改正案については再び諮問をする手続を進めようじゃないか、こういうような法律的解釈について実は御審議をお願いしておるようなわけでございまして、この点については昨日も衆議院の予算総会におきまして、総理から井堀議員によく御答弁をされておったような事情もございます。また、さきには衆議院の社労委員会におきまして、私からも、また総理からも、また法制局長からもるるお答え申し上げておるような次第でございまして、ただ政府側のお答え申し上げておりますことが完全に御了解を得てない、得られなかったということにつきましては、これはまあ残念でございますが、しかし、政府側は一貫してこの審議会の答申は尊重する。それからまた、立法にございますようなことは審議会におかけする。お諮りする。こういう建前を十分堅持して参っておるわけでございまして、たまたまこれが、今木下委員の言われたように、解釈を異にいたしますことはまことにこれは残念でございますが、総理が民主主義を尊重しようと、この審議会の答申を十分尊重する法律を、もちろんこれは尊重するという考えの点につきましては、今申し上げますように、しばしば述べられておりますので御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/8
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009・木下友敬
○木下友敬君 かってこの問題に似たようなことで審議会に諮問されたのは、私の記憶では、健康保険法改正法案改正要綱というのが審議会にかけられたことを記憶しておりまして、この今度のような健康保険法等の一部を改正するという今度出た内容のものが出たことは、私は記憶していない。もしあなた方が、これは一度審議会に出したのだから今度は手数を省いたのだというようなお考えであれば、私の考え方から言いますれば、今度出ている改正法もそのとき審議会にお尋ねになりました改正要綱なるものも、その性格においては同じものだと御解釈になっておると、こう考える。これは非常に大事なことでありますからお尋ねしておくのですが、そのときおかけになった性格と、今日改正案として出されておるこれと、性格が同じであるかどうかということについて、一つお尋ねをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/9
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010・神田博
○国務大臣(神田博君) 木下委員の重ねてのお尋ねでございますが、仰せのごとく、社会保障制度審議会設置法第二条及び健康保険法の第二十四条の二の規定もございますし、これでは立法の大綱について、社会保障制度審議会及び社会保険審議会に諮問する必要があると、こういうことになっておりまして、法案そのものを諮問せいとは書いてないわけでございます。そこで現在提案しておる健康保険法の一部を改正する法律案でございますが、この内容は、さっきもお答え申し上げましたように、審議会に諮問いたしまして、その大綱の範囲内のものであるというふうに私どもは考えておりますのと、同時にまた、これは衆議院において修正をされた事情等もございますので、そういう点も立法機関の御意思を尊重いたしまして、今回の御審議を願っておると、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/10
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011・木下友敬
○木下友敬君 私がお尋ねしましたのは、大綱、大綱と言われますけれども大綱ということの定義がむずかしいでしょうけれども、大綱ではなくして、大綱の中にひそんでいるところの、審議にかけられた法案と、それから今度、今ここに出してある法案との性格を同じものと見なければそういう手続を省いたということが、これは不合理だろうと思う。違法だろうと思うのです。はっきりここに審議会の意見を求めなければならないということを書いてありますから、性格が同じものであるならば、それでいいはずですけれども、私の見解では、これは違うと思う。と申しますのは、この二十六国会になりましてからでも、方々で政府筋がおうたいになっておる大筋というものは、今度の改正の、このいわゆる大綱、性格なるものは、これは赤字補てんのためではないのだということを打ち出しておられる、単にこれは赤字を埋めるために改正するのじゃないということを方々で言っておられる、これはあらゆるところの速記録を持ってこられればはっきりしておる、ところが、審議会にかけられたときのその精神というものは、性格というものは、三十年度、三十一年度引き続いて起ってきた健康保険の赤字を埋めるための、特にその方をおもにした改正の考え方であって、その意味において、私は政府が言っておられる通りに、これは政府が裏書きしておられるように、性格は違っておると、当時の考え方と、今のかけた法案の出し方は性格が違っておると私は解釈しておりますが、そのゆえに、違っておればこそ審議会に出さなかったことが不法であると私は思うのです。もしあなた方が、執拗に、もう一ぺんその大綱を示したのだから、示す必要がないと言われるならば、私どもは正直にその通りに受け取って、これは赤字対策の法律改正だと、その通りに正直に考えてこれから審議を進める、こういうことに私は結論づくと思います。これに対する御見解を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/11
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012・神田博
○国務大臣(神田博君) この健保の改正案が赤字解消の改正案であったと、そこで今度は赤字だけの対策でないからその意味において審議会にかけないということは、手落ちでないかと、こういうような意味のお尋ねのようでございますが、これは前にも赤字だけで改正案をしておるのではないということを、しばしば述べられておるようでございます。そこで、今度におきましても、財政が好転しておることは御承知の通りでございますが、この二つの考えをもちまして御審議を願おうと、まあこういうことに考えておるわけでございます。それから今の審議会にかける、かけないの問題でございますが、今回の案を出しますにつきましては、審議会を実質的には聞いていただきまして、案の内容であるとか、あるいは保険財政の現状等につきまして説明をいたしまして、意見を聞く機会を設けておるようでございまして、その点は特に御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/12
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013・木下友敬
○木下友敬君 今最後の部分、もう一度お尋ねしますが、意見を聞くだけで正式の審議会というわけではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/13
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014・神田博
○国務大臣(神田博君) 正式の審議会でございますが、そこへ再諮問するというような形式ではなくて、大綱は変っておらないと、そこでこの大綱に基いた内容を持ったこういう程度の改正をしたのを出したい、こういう御意見を申し上げましてそして御了承を願った、こういういきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/14
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015・木下友敬
○木下友敬君 審議会にかけられたあの大綱の場合も、もっぱらそれは赤字対策のみではなく、ほかの意味も含めてあれはかけたわけである。そういう意味で、今度の法案も性格上変りはないと思うというような御意見のように伺いますが、それはもちろんそんなことのわからない私でもございません。あれは全く赤字だけのために出されたんではない、そのほかの意味も含まれておるけれども、その主要性格が、その主流をなすものが、おもな考え方が行き詰って、この赤字をどうしようかということにおもな重点を置かれて出された法案であることは間違いないだろうと思う。そのほかのことは、むしろそれに準じてできてきたものであって、どうしてもやらなければならぬというお考えは、これは当時の厚生大臣であなたはなかったけれども、そのときのお考え方は、もっぱらと言っていいぐらい、あの赤字が気になってお出しになった法案です。今日ではそうでないということも、これは大臣御自身もそうおっしゃっておる通りに、これは赤字補てんのためではないということを言っておられるのでございますが、私の見解ではこれは性格が違うと思う。これは水かけ論になるかもしれませんけれども、水かけ論になるというときは、あなたの方にだいぶ無理があるということをお考えいただかなければならぬ。と申しますのは、この法案は三度でございますよ、なぜこの法案が三度も出てこなければならぬか、出ても出ても反撃にあっているということは、これは大きな問題だろうと思うんです。健康保険を構成しておるものは、むろん保険者というものは一段上におりまして、あるいは厚生省というものが監督の位置にありまして、あとは被保険者と医療担当者、療養担当者というものがある。しかし、療養を受ける、病気をなおしてもらうという人は、これは一番切実な考えであるし、病気をなおすということが主でなければならぬ。保険者とかあるいは監督者というものは、これは事務的な範囲に属するもので、ほんとうに命をかけておるものは、これは被保険者なんです。その命をあずかるものは診療担当者なんです。その一番大事な因子であるところの被保険者も、医者もが大きな抵抗を示しまして、この法案が三回もここに論じなければならなくなったというのは、どこかに大きな欠陥がなければ、この今日の民主主義の社会情勢下においてそう大きな抵抗がされるはずはないんです。それを審議会にもかけないで出さなければならぬ、なお言えば、審議会にも出さなかったものを、また、本会議にもかけぬで、数を頼んで、そうしていきなり委員会でこれを議論するといういき方は、どうしても私は、これは国会の運営の正常化とは認めない。で私は認めない上で、これからの議論を進めていくよりほかないと思いますから、以上で私の質問を打ち切ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/15
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016・山下義信
○山下義信君 注目の健康保険改正案が審議を開始せられようとするに当りまして、本案を提出された政府の手続について、今木下委員から問題が提供されたので、私もこの点について、政府の所信並びに見解をただしておきたいと思うわけです。この問題は、単に所定の手続を踏んだか踏まなかったかという、そういう形式的な問題では私はないと思う。かなりこれは重大な問題であると思うんです。ことに衆議院の審議の過程におきまして、最終の段階において、この問題が論議され、昨日われわれに配付せられた衆議院社会労働委員会の速記録を瞥見いたしますというと、われわれが見ましても非常に疑義があります。ことに、最終の結論はうやむやであります。これはうやむやにしてはなりません。明確にしておかなきゃならぬと私は思うんです。そういう点を、つまり言いかえますというと、衆議院におきました問題を不明確のままで当院が受け取るというわけにはいきません。二院制度の本質から申しましても、参議院におきましては、この問題は与野党を超越して明確にいたしておく必要があろうかと思います。若干時間を要するかわかりませんが、共通の問題として明確にしておきたいと思う。審議会にかける、かけぬということについて、規定されてある法律の解釈を明確にしておかなきゃなりません。この種の問題は、ただ単に、健康保険法の関係の審議会のみじゃありません。万般の審議会に共通の問題でもあります。すでに一、二の議員諸君から提起せられてあるでありましょうけれども、当委員会といたしましても、明確にしておかなきゃなりません。一つには、審議会というものに対する政府の態度にも関連があります。また、こういう方法をとった、こういう出方をしたということ自体が、健康保険の改正問題をどう政府は取り扱おうとしておるのかというような点にも関連があると思います。そこで、私はこの審議会に諮問しなかったという問題につきまして、この際、参議院といたしまして明確にいたしておきたいという趣旨で、以下順次御質疑を申し上げたいと思う。
最初に、事態を明確にする必要がございますから、政府は社会保険審議会に対して——私は今しばらく問題を明確にするために、社会保障制度審議会は別として、まず似たり寄ったりでありますが、とりあえず、健康保険法の中に定められてある、先ほど厚生大臣が仰せになりました第二十四条の二に規定されてあるこの手続に対して、いかなる手続をおとりになったかということを明確に一つここでお示しを願いたい。それから順次質疑に入ることにいたしましょう。まず、どういう手続をおとりになったかということ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/16
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017・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいまの山下委員の御質問でございまして、この健康保険法の一部改正につきまして、社会保障制度審議会や、設置法に基く社会保険審議会に諮問したかどうかというお尋ねでございましたが、これは、先ほど木下委員にもお答え申し上げましたように、諮問はいたしまして、大綱の答申を得ておりまして、それに基きまして、なお国会等の表示されました意思を加えまして、そして出しておる。なお、その間につきましては、今回の提案の前に、正式の審議会の席上におきまして、そこに先に諮問をし、答申をしていただいた。大綱の線の範囲内においてこういうようなものを国会に提案すると、こういう御説明をいたしまして、御了承を得ていると、こういうようないきさつを通っております。なお、詳細につきましては、高田政府委員からお答えさせることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/17
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018・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 事実の経過でございますので、私から御説明をさせていただきます。日にち等は若干記憶の不明確な点もございますが、大体大筋を申し上げますと、社会保険審議会につきましては、一昨年の秋でございましたか、健康保険法の改正問題について、政府も七人委員会の答申等を得ていろいろ研究をいたしておりましたので、社会保険審議会におかれましても、自分たちでも一つ研究をしたいということで、積極的にいろいろ御研究をいただき、その結果を意見具申として政府の方に御提出に相なっております。厚生省といたしましては、この意見具申を拝見いたし、なお、別の機関でございました七人委員会の報告というふうなものも検討いたしまして要綱を作成をいたしたのでございます。それで、これを正式に諮問をいたしましたのは、昨年の一月の末か二月であったと存じます。すなわち、三十一年度の予算案が政府で内定をいたしましたあとでございます。そこで要綱を諮問をいたしまして、その御答申を昨年の二月の十一日にちょうだいをいたしております。なお、事柄の関連といたしまして、その後直ちに社会保障制度審議会の方に同じものを諮問いたしまして、その御筆申をやはり二月のそれから若干おくれた日においてちょうだいをいたしております。政府といたしましては、その両審議会の御答申をにらみまして、そうして法律案の成文化をいたしまして、なお、その間に自由民主党の政調会等ともいろいろ御相談をいたしまして、その結果を盛り込みましたものを去る二十四国会に提案をいたしたわけでございます。それで二十四国会におきましては御存じのようないきさつで、法律案が審議未了になったわけでございます。二十五国会に提案をいたしまする際にこれをどういうふうに取り扱うかということでございましたが、これがただいま問題になっておるわけでございますが、二十四国会に提案をいたしました法律案と二十五国会に提案をいたしました法律案とは、若干の点を除きましては、もう少し正確に申し上げますると、衆議院で修正を受けましたものはそのまま二十五国会に提案をいたしました政府原案の中に盛り込まれております。それからその他一部負担のやり方について、方法の変更をいたしておるわけでございます。かような次第でございますので、私どもといたしましては、社会保険審議会の権限を規定いたしました健康保険法二十四条の二でございますが、ここに書いてありますることは、法律案を提案する際には、あらかじめその法律案を諮問すべしということにはなっておりませんで、立法の大綱ということに相なっておりまするので、私どもといたしましては、正式な諮問をいたす必要は法律上はない。さらに、行政上の前例等も調査をいたしまして、前例等から考えても、かような際に諮問をいたさなければならないというあれは出てこない。さような観点から二十五国会に提案をいたします際には、ただいま大臣からお答えがありましたように、正式の諮問の形式をとりませんで、法律案の内容につきまして、前国会に提案をいたした政府の原案並びに衆議院の修正案、それらを、新しく提案をいたそうとする法律案との内容の変った点等を説明をいたし、さらに、政府管掌の健康保険財政その後の状況というふうなものも御説明をいたしまして、審議会で正式な諮問という形式はとりませんでしたけれども、御意見がありましたならば十分聞かせていただきたい、そうして法律を提案をいたしまするまでに、まだ与党の政調会との調整等も残っておりまするので、それらの機関において、御意見のほどは十分盛り込みたい、かような手続をとったのでございます。
なお、御参考のために、昨年の一月の末に諮問をいたしました諮問の中身というふうなものについて御説明を申し上げてみますると、これは要綱の形で、要綱を諮問をいたしておるのでございます。それで衆議院でも問題になりました一部負担のやり方の点でございますが、一部負担に関連をいたしましては、当時諮問をいたしました要綱の中では、「政令の定めるところにより、一部負担金を指定医療機関に支払わなければならないものとすること。前項の政令を定めようとするときは、厚生大臣は、社会保険審議会の意見を聴くものとすること。」こういうわけで、政令に一部負担の内容を譲る形で諮問を申し上げたのでございます。ところが、社会保険審議会におかれましては、こういう重大な問題であるから、むしろ法律の中にそれを書いた方が妥当であるという御意見がございました。さらに、今政府が政令できめようとしておる一部負担の中身は一体どういうふうなものを考えておるかということの御質問がございまして、厚生省といたしましては、最終的に確定をいたしておりませんけれども、物事の考え方といたしましては、大体三つの方式のうちのどれかにいたしたい、かようなつもりでおります。しかし、これは事柄が重大でございますので、さらに与党の政調会等とも十分御相談の上で決定をいたしたいと思います。従って、もし審議会として御意見がございまするならば、その御意見を聞かしていただきたいというわけで、A、B、Cと三つの案を実は審議会に御提示を申し上げて御協議を願ったわけでございます。それでこの法律案の中に書くべきであるという御意見に対しましては、これは私どももまさしくその御意見はとるべきであるというふうに考えまして、法律案の中に一部負担を書くということに、中身を書くということにいたしたわけでございます。それからそのやり方の問題につきましては、その後いろいろとわれわれといたしましても検討いたし、さらに、与党とのいろいろ御相談の経緯がございますが、結局その当時の考え方といたしましては、A案に近いようなその考え方にのっとったものを法律案の内容としてきめまして、二十四国会に出したわけでございます。それで今回の提案の一部負担に関しましては、二十四国会に提案をいたしたものと形式が変っております。それは当時審議会に御提示をいたしましていろいろ御論議をいただきましたC案の考え方、形式に変っておるわけでございます。かようなことでございまして、私どもといたしましては、諮問の内容も今まで申し上げましたようなことに相なっておるし、その結果いただきました御答申の中身も、包括的な御答申をいただいておりまするので、今回の原案の中に盛られておりまする一部負担の形式の変更というものは、さきに諮問をいたしたその要綱の範囲のことであり、さらに、それに基いて答申を得ました、その御答申の範囲内の変更である、かように考えておるわけでございます。
なお、ついででございまするので、社会保障制度審議会の方に関しましては、二十五国会に提案をいたしました前におきまして、社会保険審議会と同様に、社会保障制度審議会の方でも一応御相談をいただいたわけでございます。これは性格が非常に広い審議会でございますので、その中に運営委員会でございますか、何という名前でございましたか、まあ言ってみれば、一種の議院運営委員会みたいなものがあるわけでございます。七、八名の委員の方が御出席いただきまして、そこでもこの問題につきまして、社会保険審議会と同様に、法律案の中身の変更はこれこれでございます、さきに御諮問を申し上げたのはこういう形式でございまして、御答申はこういうことになっておりますということで、なお御意見がございまするならば、一つ十分拝聴をいたしておきたいというふうなことを御説明をいたしました。その際にも、委員の中のお一人が、これは再諮問をすべきであるというふうな御意見の開陳がございまして、およそ三時間程度もそのことについていろいろ御主張があったわけでございますが、その方を除きまする全部の委員の方々は、いやこれは再諮問の必要はないとわれわれは考えるということで、結局さようにその席では御決定をいただきましたような次第でございます。大体事実の経緯なりというものは以上御説明申し上げたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/18
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019・山下義信
○山下義信君 非常に詳細な説明がありましたが、説明というよりは言いわけでありまするが、結局この政府のとられました処置につきましては、今の長い御釈明の中に問題点があった。従って、この問題点をここで明らかにしよう、こういうわけでありますから、順次明確にしていきたいと思う。結論的に言えば、実際は国会に提出する時間的余裕がなかったから、それで審議会にかくべき手続をいろいろ理由をつけて省略をして国会の提案を急いだということが、私はこの処置をとったほんとうの政府の気持であったのではないか、こう思うのです。結論から先に聞いてみましょう。政府の腹は、厚生大臣の本意はどうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/19
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020・神田博
○国務大臣(神田博君) これは当時私実は関係しておらなかったものでありますから、その実相というもののお尋ねを受けると、私がお答えする方の側で、当を得ているかどうかということになるわけでありますが、私の担当者から聞きました点につきまして、直接その方からお答えさせるのが筋だと思いますので、政府委員からお答えさせたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/20
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021・山下義信
○山下義信君 それでは、現厚生大臣は前任者から引き継がれたのでありますから、その間の消息については、たとえ前任者時代にとった処置であってもお答えになるべきであろうと思いますが、しかし、しいてはお尋ねいたしません、自然とわかってくることでありますから。それではお尋ねしますが、今回の改正案をお出しになるについて、今は社会保険審議会を問題にしているのでありますが、それに対して諮問をする必要はないのだが、意見の聴取はしたのだ、こういうことです。意見の聴取をしたということはどういうことですか。どういう意味なんですか。諮問にかえるに意見の聴取をしたというのですか、意見の聴取を求めたということは、どういう必要からされたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/21
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022・千葉信
○委員長(千葉信君) いいですか、局長で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/22
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023・山下義信
○山下義信君 これはなるべく大臣に求めたいと思いますが、前任者のことであるから知らぬとおっしゃれば、担当の当局からでよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/23
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024・神田博
○国務大臣(神田博君) 私からお答え申し上げてもよろしいのでございますが、なまのままでお答えさした方がいいんじゃないかと、こう思いまして、私がお答え申し上げたのは、前に聞いたことはこういうことだと言うよりも、その当時の担当している者にそのままお答えさした方がいいんじゃないか、こう私考えまして、先ほど申し上げたので、今もそういうつもりでおりますので、そうさしていただいた方が議事進行上いいのじゃないかと、こう考えて申し上げたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/24
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025・山下義信
○山下義信君 それでは大臣の答弁にかわって答えるという意味で事務当局の答弁を求めますが、この機会に、法制局長官の出席を要求しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/25
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026・千葉信
○委員長(千葉信君) 山下君にお答えいたしますが、法制局長官は今総理大臣とともに予算委員会に出席中であります。高辻次長がお見えになっておりますから、どうされますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/26
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027・山下義信
○山下義信君 次長でお答えを願って、要すれば長官の出席を求めることの権利は保留しておきまして議事を進行しましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/27
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028・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 諮問を法律的にする必要があるかどうかということにつきましては、手続の問題でございますので、私どもといたしましては、十分研究をいたしましたその結果、これは必要ないということにはっきりしたわけでございますが、しかし、社会保険審議会というものは、私どもの保険の運営につきましてはいろいろ御意見を拝聴したり、あるいは意見を積極的に出していただいたり、重要な機関でございますので、しかも、前に要綱を諮問をいたしまして御答申をいただいておりまする経緯もございまするので、それらのことをも考え合せまして、社会保険審議会を開いて、そうしてそこで御報告を申し上げ、御意見を拝聴した、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/28
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029・山下義信
○山下義信君 重要機関でありますればこそ、その機関に諮問するかしないかということが問題になるのでありまして、意見聴取ということは、ただ単に寄り集まって茶飲み話をするという手続のものじゃありますまい。やはり社会保険審議会を招集して、そうしてその場において、その形において意見聴取という形をとったのでありましょう。そこで意見聴取ということはいかなる意味のものかということをお尋ねするのであります。諮問とは何ぞや、意見聴取とは何ぞや、意見聴取ということは茶飲み話をしたのですか。つまり、正規の会議は開かないで、そうしてまあ委員の者に非公式に集まってくれというようなことをして、茶でも飲んでこういうことをしたのですか。それとも、正規の審議会を招集して意見聴取という形をとったのですか。しからば、お尋ねしなければならぬことは、諮問とは何ぞや、意見聴取とは何ぞやということを明確にしていただかなければならぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/29
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030・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 社会保険審議会を、たしかあのときには正式に会長から御招集をいただいておると記憶をいたしております。そうしてそこに、われわれはこういうものを今国会に提案をいたしたいと存じます、そうして保険財政の事情等はその後こういう変化がございました、かようなことにつきまして御報告を申し上げるのがまず第一段のあれでございます。そうしてかりに何らかの御意見がございますれば、それは一つ十分拝聴いたしたい、こういう会であったわけでございます。かような会は、他の機会におきましてもいろいろさようなことはあるのでございまして、その報告並びに意見聴取というのは何ぞやという仰せでございますが、私どもといたしましては、報告を申し上げて、御意見があるならばその御意見を聞かしていただきたい、こういうそのくらいの会でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/30
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031・山下義信
○山下義信君 社会保険審議会というのは、言うまでもなく公的の機関でありまして、法律によって設置せられたる一つの組織、機関なのであります。私的機関じゃない、勝手に自由にあやつっていいかげんにお茶を濁して、いいかげんなことをしてその日の議事を終了するというような性質のものではない。しかも、先ほど当局はこの改正案を出すについては、社会保険審議会の諮問関係をどうしようかと慎重に検討したと言ったじゃありませんか。慎重に検討した結果、これは諮問という手続をとらないで、一応招集してもらって意見聴取ということの形をとろうとして今回のこの処置をとったというじゃありませんか。私はこの答弁はりっぱだと思う。それではっきりしていると思う。それじゃ、意見聴取ということはいかなる意味を有するかということを伺っておかなければならぬ。意味のないことをしたのですか。何もならぬことをしたのですか。さようなことは法律で設置せられたる公的の機関を動かし、その機関に諮った上において、無意味なことを、何らの意味も持たないことをするというような、さようなことを、児戯に類することをなさろうはずはありません。従って、諮問とは何ぞや、意見聴取とは何ぞやということも明確にしておかなければならぬ。この段階は諮問に付すべきである、この段階は意見聴取でいいのであるということを、けじめをつけて、一つの例を開いたと言わなければならぬ。こういうことを申し上げるというと、いかにも、へ理屈を言うようでありまするけれども、しかし、この論議も一つの過程である。これははっきりしておく必要があると思う。諮問とは何ぞや。このたびとった意見聴取とはいかなる意味のものであるかということを明確にしておかなければならぬ。それでお尋ねしたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/31
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032・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 厳密な法律的な意味になりますると、私もあまり確信がございませんけれども、諮問というものも、あくまでも大臣がその会の意見を聞くということでございます。それから私どもが報告をいたし、意見を拝聴いたしたい、こういう会も、これもやはりこの報告なり、意見聴取というものであろうと存じます。でその間に違いまするところは、諮問という一つの文書で、何と申しますか、非常に形式張った手続を踏むかどうかというこの違いになるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/32
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033・山下義信
○山下義信君 これは非常に重大な解釈をなされましたね。諮問というのも意見聴取というのも意見を聞くのである、同じである、ただ諮問というものは文書その他で形式張ったことをするのであって、意見聴取というのはざっくばらんに、そういう形式を経ないで、ただ意見を聴くのであって、形が違うだけであって、同じであるとおっしゃいましたね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/33
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034・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 私の言葉が足りませんかもしれませんが、諮問というのは、何と申しますか、あくまでも法律的な意味を持ちまして、その諮問という手続を踏んで、ものを聞くのでございます。会議を開いて、ものを報告し、それらに関連をして御意見を拝聴するということは、先ほど先生の仰せの、茶飲み話というわけには参りませんけれども、やはり意見は拝聴するのでありまするけれども、事実上その機関の意見を聞く、こういうことでございまして、その間に、法律的な意味の相違といいますか、あるいはニュアンスの違いというものはこれは当然あるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/34
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035・山下義信
○山下義信君 私はね、あげ足はとりません。しかし、事は重大ですから、明確にしておかなければなりません。あなたはこのたびの——政府はこのたびの改正案は前回出したのと大同小異で、大綱においては変らぬのであるから、諮問する必要はないと考えたと、こう言う。言葉をかえて言えば、意見を聞く必要はないと考えたと、こう言う。しかるに、意見を聞いているじゃありませんか。非常に矛盾するじゃありませんか。私はあげ足はとりません。しかし、諮問と意見聴取ということが違わなければ、同じだということならば、あなた方の御見解に矛盾がある。
せっかく法制局の次長が見えているので、諮問とは何ぞや、意見聴取とは何ぞや、この区別を法理論でおっしゃって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/35
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036・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。ただいまの御説明の、高田政府委員の御説明の過程におきまする二つの点についての御質問で、御質問としてごもっともな御質問だと思いますが、この諮問とは何ぞや、意見を聞く、聴取するとは何ぞやということでございますが、まず第一に、諮問の方は、実はこの健康保険法の二十四条の二の問題として出ておりまするので、その関係から申し上げなきゃならぬと思いますが、その二十四条の二を見ればわかりますように、こういう事項については厚生大臣があらかじめ社会保険審議会に諮問するものとするということに相なっておりまして、諮問という言葉をそのままに言いかえますれば、ある特定の事項を公的な機関に諮りまして、その答申を求めるということであろうと思いますが、そのまた法律的な意義というものは、この二十四条の二の一定の場合に、厚生大臣がかけなければならないある種の要件的なものとしてここに掲げられているということに相なると思います。
それから意見を聞くと申しますのは何であるかという仰せでございますが、これはまさにその文字のままで御了承願えるかと思うのでありますが、重大な点は、諮問とどう違うかということであろうと思います。諮問も、内容を実態的に見れば、あるいは同じようなふうに言えるかもしれませんが、重大な点は、その意見を聞くというのは、この二十四条の二の要件とされておる諮問ではないという点が法律的に言って非常に大きな意味のある、相違がある点だろうと思います。
なお、足りないところがありましたら、また補足して御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/36
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037・山下義信
○山下義信君 私は意見を聞くということが、第二十四条の要件になっているかどうかということを聞いているのじゃありません。諮問という、その要件になっているところの諮問というものと、諮問にかえて意見聴取という形式をとったことと、その諮問と意見聴取ということとの同異いかんということを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/37
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038・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 山下先生の御質問の御趣旨を十分そしゃくしないでお答えいたしておりまするので、御了解がいかなかったかと存じますが、私どもは諮問にかえて意見を聴取したのでないのでございます。社会保険審議会を会長から御招集を願いまして、そこでいろいろお話し合いをいたしましたけれども、それはこういうふうにいたしますという報告を主といたしておるのでございます。報告を主といたしておるということは、どういうことかと申しますと、法律案の細部の点につきましては変った点もございまするので、だからこういうふうな経緯でこういうふうになりましたという報告をいたし、私どもとしては、これで提案をいたして参りたいと存じます、なお関連をいたしまして、健康保険の財政状況というふうなものについても、これを御報告を申し上げておるわけでございます。そして御報告を申し上げまして、正式の諮問という形はとっておりませんから、従って、社会保険審議会の方へ答申を求めるという形ではございませんけれども、こういう報告に基いて、もし何らかの御意見がございましたならば、これは社会保険審議会というものは、諮問に対する答申ということでなくして、積極的に意見具申もできるわけでございますので、何らかの御意見がございましたならば、それを一つ、事によりましてはこの与党とも相談をいたしまして、法律案の中身として反映をいたすように努力をいたしたい、こういうふうにつけたりで申し述べておるわけなんです。従って、諮問にかえて意見を聞いたといういきさつでは、事実がないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/38
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039・山下義信
○山下義信君 諮問と意見聴取とが同じでないということを弁明されるために、諮問にかえる意見聴取という形をとったのでない、こういう釈明をされたのでありますか、意見聴取でなくて、今度は報告の程度である、こういうことにまあなってきた。どちらでも都合のよい方をおっしゃればいいのでありまして、それならそれでいきますけれども、私がお尋ねしたいと思うのは、この種の場合は、この程度の場合は、こういう意見聴取とか、あるいは報告とかという程度でいいかどうかということも、なるべく明確な基準というか、線を引いておきたい、後日のために、と思って実はせんさくをしておるのでありますが、法律が諮問ということを、この字句を使って審議会のこれを任務とした趣旨というものはこれは言うまでもないこと。ここにある諮問とは何ぞやということがあると私は思う。単なる意見聴取とは違うのです。それは文字の上の、その諮問という字はどういう意味か、字引で引いてこれははかるという、尋ねるという、問うという、聞くという、こういう意味を言うならば、それは意見を聞くということと大同小異でしょう。しかしながら、諮問ということには、諮問をされた相手方が意見をまとめて答えるということが諮問ということ。これを審議会の諮問ということは要求しておる。諮問の内容というのはそれなんです。意見聴取というのは、五人の者がばらばらの意見を言うたらそれでいい、それが意見聴取なんです。五人が各個それぞれ別々の不同なことを言うてよろしい。諮問というものは、ある程度は、その諮問を受けた者ができるだけ相談をして答申を出す、答えを出す、アンサーを出すというように努力するということがここに加わる。私はそう思う。法制局高辻次長、あなたは私の意見をどう御批評下さいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/39
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040・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 先ほど諮問と意見の聴取ということで私ちょっと触れたところがよけいであったように思われた次第でございますが、あのときに申し上げました趣旨をたどって参りますと、諮問と申しますのは、ある一定の機関に対してある事項を諮ってその答申を求めるということを申し上げましたが、その答申をするというのは、ある合議体が複数の構成員でありますならば、その合議体としての意思をまとめてそれを答申することでありますので、その点に関する限りは全く先生の仰せの通り、ある公的機関の意見をまとめた結果が答申されるということになるだろうと思います。
それから意見を聞くという場合につきましても、これはまあいろいろな場合が考えられましょうが、ある合議体に対して意見を聞くということになりますと、やはりその合議体がある意見をまとめまして、その合議体としての意見としてそれを聞かせるということに相なるだろうと思います。もっとも、その場合に少数意見とかいろいろそういうものがつくことはありましょうけれども、そういう場合もあるのじゃないか。従って、先生の仰せになりましたような場合も、この法律の当該各場合につきましてはあり得るかと思いますけれども、ただ一がいにばらばらな意見というふうにきまっておるというふうには、私どもはいかないのじゃないか、その点だけが多少違いますけれども、大体のところは先生の仰せの通りと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/40
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041・山下義信
○山下義信君 私の見解が高辻次長によって及第点をいただきましたからこれでいいのですが、そこで結局諮問ということは、すなわち、諮問の内容というものは、諮問の本質というものは要するところ、それに審議会を設置した目的と合致するのであって、そこで甲論乙駁、お互いに意見を戦わして、必ずしも一致しなくてもいい、そこで意見を戦わす、それを通してその問題に関する関係深き諸君が、あるいは第三者の公平なる学識経験者が、その問題に関する限りできるだけ意思疎通をするというか、検討するというか、いろいろそこで話し合う場を与えるということが非常に価値がある。ありますから、法律は、ことに健康保険は、かかる場合には審議会に諮問せよということは、ただ単に答案を書けというような意味じゃないのでありまして、その諮問に対して論議をする過程を通じて関係者がその問題に対する認識を深めるというか、意見を吐露するというが、その過程が民主的であればこそ、非常にその効果が期待されればこそ、審議会が設置され、諮問ということが行われる。ただ単にこれがうるさい、一つのじゃまになる、形式的な機関であって非常にうるさいというような考えを持てば、先ほど同僚木下委員が指摘するように、そういう考えこそ実に非民主義的なんだ。
私はさらに問題点をかえまして、しからば、今回なぜ諮問しなかったか、また、諮問すべき範疇のものであるかないかということを、これを確定しておかなきゃならぬ。そこで先ほどるる当局の経過説明がありました中に、この二十四条の二のこの審議会に付議すべき問題について御見解も出た、その通りなんです。これは社会保障制度審議会であろうと、社会保険審議会であろうと、法律の案文を付議せよというのではない。だれも法律の案文を付議せよというようなことを言う人は一人もない。そんな非常識なことを言っている者は衆議院にもわれわれにもないのです。法律の案文を付議せよというのならば国会と同じである。さようなばからしいことを規定するはずはありません。そんなことを予想する者も要求する者もありません。大綱を付議せよということは、言うまでもなく、法律の案文を付議する必要はないのであるということを反言しておる。一字一句法律の原案のその条文、字句の末までも協議しなくちゃならぬのであるぞよということは書いてない。そんなことは要求してない。要求するはずはない。そんなことを要求するのだったらば国会の審議権を侵害するものである。それこそ屋上屋である。そんな必要ないことは言うまでもないことである。大綱ということは、立法の場合にはその案文の、法案の一字一句、条文までも諮問することは要らないのであるぞよということなのである、大綱とは。それはわかっております。わかっておりまするから、その大綱とは何ぞやということをきめなきゃならぬのです。これが問題の焦点なんです。あなた方はとうの昔に相談したことの範囲内のことであるから、今回もその中の一部であるから、再び諮問せぬでもいいということを言うのである。言葉をかえて言うならば、中身は変っとっても、その包み紙はおんなしじゃから、何にも相談せぬでもいいということになる。大綱ということをそんなふうに解釈するのですか。大綱とは何ぞやということを明確にしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/41
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042・神田博
○国務大臣(神田博君) 大綱の意義の説明については政府委員からお答えあったわけでありますが、今のこれは言葉のあやと申しましょうか、包み紙が同じでありゃ中身は変ってもいいかというようなお尋ねはどうも少し極端じゃないかと思いますが、そういう意味でこれは強くお述べになったのじゃないと思いますが、政府といたしましては、二十二国会で参議院の方で審議が未了になった。そこで、二十四回においても審議が未了になった。これはいろいろ事情がおありと存じております。そこで、二十二国会におきまして、この法案を提案するに当りまして、政府の考えとしては、今まで政府委員が述べましたように、大綱については異なっておらない、審議会に御諮問いたしましたその答申の線にのっとるが、しかし、厚生省といたしまして、社会保険審議会等とは十分密接な御連絡を申し上げることは、これはもう当然の筋でございますので、わざわざその会を開いていただいて、そしてそこに参りまして詳細にわたって御説明申し上げ、その御説明の御了承を得た。これは健保審議会の諮問をしなければならないのをかねるというような考え方でやったのではないのでございまして、ただいまも申し上げましたように、社会保険審議会とはこれは非常な御関係が深いことでございますから、自分たちが考えておりますることをよく一つ申し上げまして、その気持がやはり一緒であったということで、非常に意を強うして御審議願うことをさらに強めた、こういうことであろうかと考えております。決してその外観が整っておれば内容はどうでもいいというような、そういう大それた考えは持っていないのでございまして、社会保険審議会なり社会保障制度審議会は、正真正銘、厚生省といたしましては、これはもう練達堪能、学識経験者のメンバーがそろえてあるのでございまして、十分に尊重して参りたいと、こういう気持の現われと御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/42
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043・山下義信
○山下義信君 政府は、社会保険審議会を開いて、いわゆる意見聴取という形をとり、報告という形をとった場合に、その社会保険審議会においては、国会提出する時期的の制約があるために、かような手続をさしていただいたということを釈明したということであるが、したかどうか知らぬが、とにかく、先ほど私が自分の推測を申し述べたように、時間的な関係があって、おそらく諮問ということを省略し、まあ大体前に似たようなことを尋ねたのだから、問題になれば何とか言いくるめることができるであろうというようなことで諮問をしなかったのであろうと思うが、しかし、すでに衆議院でも問題になり、この種の事柄はいい加減なことではいかぬのであって、私はこの際明確にしたいと思うので、なおくどいようでありますが、いま一、二お尋ねをしておかなければならぬことは、問題の大綱とは何ぞやということです。これは一番先にいろいろは皆さん方の、厚生大臣並びに当局の御弁明は先ほどから承わりましたから、一つ法理的に大綱とは何ぞやということを聞いておこうじゃありませんか。そうせぬと、話のけりがつかぬ。それで、衆議院の方でも林長官が答弁しておられるようでありますが、速記を見ましても要領を得ません。そこでここで要領を得さしておかなければならぬ。大綱とは何ぞやということです。そうしてまず一つ大綱ということを、法律に使っておる文字ですから、法律的に解釈しておかなければならぬ。そうして大綱とは何ぞやということをきめておいていただいて、そうして健康保険法第二十四条の二のこの場合における大綱とは何ぞや。こう一つ定義をきめておいていただきたい。そうすればすぐにわかる、法律の解釈には与野党がありますまいからね。一つ公平な解釈をして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/43
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044・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。
非常に正直なところ、大綱というのは法律的には何ぞやという御質問は非常にむずかしい御質問でございまして、御満足のいく御答弁ができるかどうか、はなはだ心配でございますが、まあ法律用語といたしまして大綱というのがあるのだから、法律的に解釈ができるのじゃないかと仰せられればそれまででありますが、法律の中には、これを申し上げるまでもなく、普通の社会に使われている用語を社会通念上わかるものとして引用しておる場合がしばしばございまして、この大綱もその一つであろうと私は考えるわけでございます。ところで、その大綱というのが法律にでも定義がありますれば、それをそのまま申し上げればいいわけでありますが、そういうことがありませんので、あるいは社会通念上は、大綱というのはこういうことではあるまいかというふうな角度から申し上げざるを得ませんことをお許し願いたいと思います。まあ大綱というのでございますから、これは何といいますか、大体のところでといいますか、大きな綱、ごく大きな概要とでも申し上げればいいのかと思いますが、それはいろいろ言い方があると思いますけれども、こまかいところは別として、大筋においてのところをつかまえてというような意味になるのではないかと思います。その御質問の中に、特に二十四条の二をお取り上げになりまして、特にここにいう大綱とは何かということでございますが、私その御質問の根本の御趣意がよくつかみかねまして、まことに申しわけない次第でございますが、大綱ということだけお答えさしていただいて、なお御質問があればさらに追加さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/44
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045・山下義信
○山下義信君 大綱というのはあなたのおっしゃる通り、社会通念によるその概念と変りはない。変りはないんですけれども、一たび法律の中にその言葉を使ったらば、その使われた位置によってその定義というものがおのずと定まってくるのです。大綱という字がどこに使われてあっても、大綱というのは社会通念上こう解釈するんだからという解釈が、その法律の用語が置かれてある位置によってどこでも同じというわけにはいかないだろうと思う。これも点をつけて下さい。間違っておれば直して下さい。おおづなです。言うまでもなくおおづなです、これは。社会通念の大綱とは何ぞや、おおづなです。大きな綱です。網の目の中の、大きなところの綱のずっと縦横の大筋を綱という。大綱です。おおづなです。そのおおづなとはどこを押えておるか、どの程度おおづなというか。網の目の小さい綱でも、どこが小さいのか、おおづなとはどこかという、ここが問題でしょう。審議会にかけたかかけないかの問題でしょう。私は健康保険法第二十四条の二というところの大綱とは何ぞや、その限界いかん、これが問題です。これを衆議院で明確にしておいて下さらぬから、参議院の方でちゃんと明確にしておかなきゃ、これはチェック・アンド・バランスしておかなければなりません。私は社会保障制度の大綱ということ、これは言うまでもないことですよ。釈迦に説法です。社会保障制度の大綱ということと、社会保険の大綱ということと、健康保険の大綱ということと、健康保険法の一部改正案の大綱ということとは違う。同じものを社会保障制度審議会に同じように出されることがおかしい。もし同じように出されたとしたら、社会保険審議会に出されるものと、社会保障制度審議会に出されるものと、あなた方の諮問案が同じであったらこっけいきわまる。社会保障制度審議会というものは、社会保険審議会と同じものを審議する審議会じゃない。片一方は社会保障の大綱です。こちらは何の大綱を諮問するのかということがちゃんと規定されてある。従って、おおづな、おおづなと言いさえすれば逃げられるかと思っても、そのおおづなから逃げられやしません。ですから、おおづなというものにも意味があります。第二十四条の二項に至っては、おおづなといっても、それは具体的に大綱といっても、非常に具体性があるべきはずであるということは言うまでもありません。社会保障制度審議会になぜかけなかったかとおっしゃれば、今日ただいままでの御答弁で私は通ると思う。あんなところに、社会保険審議会にかけるようなものを一々おかけになる必要は、あるいは社会保障制度の大綱でいいから、大まかなところは、一部負担をとろうかどうしようかということは相談した、これでよろしゅうございましょう。社会保障制度の大綱であり、健康保険の一部負担とるかとらないかか、A案、B案、C案、要らぬことです。社会保障制度審議会の一部負担とろうか、どうしようか、これが大綱です。しかし、一段下って、検討の範囲内が小さくなって、社会保険においては一部負担がどうあるべきであるかということになれば、その一部負担のかけ方を具体的にお示しにならねば大綱になりません。さらに進んで、さらに限局いたしまして、健康保険においては、ことに政府管掌の健康保険においては、一部負担は何円かけようか、初診の際にしようか、再診の際にしようか、どういうかけ方をしようかということが、それが大綱です。それが要綱です。ぱあっとした、どんな一部負担でも一部負担という包み紙、ぱあっと相談したら中身は初診であろうと再診であろうと、五十円であろうと千円であろうと、もう相談は済んだ、それが健康保険の改正案の大綱ですか。これは詭弁と言わねばならぬ。私はそういう詭弁を立法府が、やすやすとそういう詭弁を通したのでは私は国会としては相済まぬと思う。でありまするから、この二十四条の二項にあります厚生大臣は政府の管掌する健康保険事業の運営についてその大綱を諮問しなくちゃならぬという、その大綱とはそんなぱあっとしたものでなくして、具体的な、すなわち、言いかえれば、法律の案文の、その条文の字句の末端ではなくして、その要点は諮問しなくちゃならぬということであることは、これはもう明らかに法文の示すところであると私はかように考える。この点に関する法制局の見解を明確にしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/45
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046・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) お答えいたします。先ほどの大綱をおおづなとたまたま申し上げた点は合格さしていただいたようでございますが、非常に精細なる御立論をなさいましたことによりまして、先生の意図される点がよくわかりました。仰せの通りに大綱と申しましても、それぞれの法律の何の大綱であるかという、何の、ということによっておのずから大綱も変ってくるだろう、大綱ということがおおづなであることに変りはないにしても、元が何であるかによってその大綱が何であるかもまたおのずから精疎まちまちであろうということは仰せの通りだろうと思います。この立法の場合につきましても、そのほか平常に使う社会通念上の大綱という場合につきましてもそれは同じでありまして、この二十四条の二に使われておる大綱とそのほかの規定に使われている大綱とは、おおづなであることについては変りはなくても、それぞれの場合についてあるときは大きく、あるときは小さくという余地があることは確かだと思います。しかし、この場合の、しからば振り返って二十四条の二の大綱という問題が議せられる場合に、先ほど来お話があったような点がこのおおづなに入るのか、そうでなくて小さな網に入るのか、これはそこにはそれ相応のやはり認定の余地があることもこれは疑うべからざるところであろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/46
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047・山下義信
○山下義信君 私はね、この場合だけ言いのがれができたらそれでよいという態度は私はお互いにとりたくない。ここで議論せられたことはあとあとのこれは審議会に諮問すべき態度その他の私は国会の意思となると思う。それで言いわけのために詭弁を弄したりしておきますと後世の物笑いになる。私はそういう意味で、お互いにどこに行き詰まりがあっても、後日のために一つはっきりしておきたい。このたびの措置がかりに十分でなかったとすれば、十分でなかったということにもしておこうじゃありませんか。どちらが勝ち負けということじゃなしに今後はこうすべきものであるという一つの何か教訓になればそれも残しておきたいと思う。お互いにできるだけ有益な議論を残しておきたいと私はそう思う。そこで、第二十四条の二には大綱とあるが、できるだけ詳しく、この大綱というのはできるだけ具体的に、できるだけ落ちのないように、その条文、字句の末端までとは言わぬけれども、できるだけ肝心なところはこの社会保険審議会にかけるのであるぞよということはです、法制局次長、私は社会保険審議会の法律の上に明確に見えると思う。私はそういう見解を下すのです。健康保険法の第二十四条ではおおづな、大綱、丸々で逃げられても、社会保険審議会の第二条には大綱という字がないのです。審議すべき審議会の任務の中には大綱とはない。もし大ざっぱな、大だたいなことでよろしいというのであれば、受ける方の審議会の設置法の中のその審議会の任務にも大綱と言えば言える。そうでない、審議会の任務の中にはさらにこまかにその諮問をしておくべき範疇が明らかにしてある。あるのでありまするから、両方を照らし合せてみるというと、おのずといわゆる社会通念でこの両者の条文の解釈はそこに生じてくる。私はそう思う。法制局の見解はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/47
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048・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。この健康保険法の二十四条の二は、これはまさに御指摘の通りに、こういう事項について、立法の大綱に関するものはということに相なっておりますので、この立法の大綱というのが具体的な問題に照らしてどうであるかというのが、まさに今の問題でございますが、抽象的な法律論として申し上げますならば、やはりここには立法の大綱とありますので、その具体的な事項がこの大綱に入るやいなやという認定の余地があることは先ほども申し上げた通りでございます。しこうして、社会保険審議会及び社会保険医療協議会法の第一章、社会保険審議会にはなるほど大綱という文字はございませんが、それは社会保険審議会のいわゆる所掌事務を書いたのでございまして、すべての自分がやる仕事のワクを書いてあるわけでありまして、その方に働きかける規定がむしろ健康保険法の二十四条の二でございます。その働きかけの法律の規定である二十四条の二には立法の大綱に関するものはとございますので、やはり問題は大綱がいかなるものであるかと申しますよりも、ただいまの問題が大綱に入るか入らないかという問題だけではないかというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/48
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049・山下義信
○山下義信君 それでだんだんとそばの方をぐるぐる回り道をしましたが、問題の焦点は、結局今回の改正案はいわゆる健康保険の大綱であるかどうかということになる。何もそういう文字を合せたり、この法律の字句に合致せしめようということで私は追求しているのじゃない。しかし、このたびの改正案は大体前回と同じであります、同じようなものでありますということは、従って、この健康保険法に示すところの諮問すべき大綱ではございません、一つには前回と同じようであります、一つには諮問すべき大綱ではございません。こういう言い方はこれは私は考え直してもらわなければならぬ。前回と同じようでございます、従来と同じようでございます、ということは、これは言えますまい。どのようなことがあってもこれは同じであるならば一事不再議です。撤回してもらわねばなりません。健康保険法改正案自体を政府与党は御撤回なさらなければなりません。一事不再議です。これは前回審議未了のもの、なぜ同じようなものをお出しになりましたか。同じものじゃありますまい。中身が変ったればこそ第二十五国会には政府の所信をもって堂々とお出しなされたのでしょう。でありまするから、今回提案の改正案は従来とは違うのだ、これはもう言うまでもないのです。どこが違うかといえば、先ほど保険局長が御説明になりましたように、衆議院の修正案、ことに一部負担の点においては非常に大きな変化を来たしたのです。ただ、表面に出てきたその一部負担のあり方が大きに変ったばかりではありません。今回の改正案に盛られている前回とは変った一部負担の案をお出しになるに至りました経緯については、前回の二十四国会を通じて与野党、ことに与党側、政府側におかれましては、今回のごとき初診において百円にするか、再診のつどに十円、二十円のあの政府原案にするかということをめぐって数十日間、前国会を通じて与党間に激しい御論議がおありになった点であります。政治問題にもなり、私もそれが原因とは言いませんけれども、第二十四国会の健康保険法が審議未了になりましたことは、それはわれわれもおじゃまいたしましたでしょう。しかしながら、一部においては、与党間の御意見が対立をいたして、この点に関する参議院側の修正意見が非常に強くて、ついにそれがために相当時日がこれに消費せられたということは天下隠れのない事実でございます。私は今さらこれを回顧いたしません。それほどの大きな政治過程を経てここに改まってきたこの一部負担の立て方、その他衆議院の修正点が、どうして似たり寄ったりで大した前回と変りのない大綱ということが言えますか。私は非常に変ったと思うのです。非常に変ったればこそ、あらためて顔を赤らめて審議する価値があるのです。変っておらぬのならば、健康保険法の改正案については、前国会においてほとんど余すところのない審議を私どもは全力をあげてやったと思うのです。しかし、内容が非常に大きく変ったのだ、変ってきたからこそ、私は今回の改正案は相当論議の価値を持っておると思っておるのでありますが、大して価値がない、前と同じようなことである、似たり寄ったりで大同小異だ、こういうことは私はただ審議会に諮問しなかったということを言いくるめるために、弁明のためにそういうことをおっしゃることはこれは非常に事実に相違しておると私は思うのです。従って、大きに変ったのだから、その変った点については諮問をすべきが当りまえなんです。諮問すべからざるが当りまえなのじゃない。先ほどの政府当局の局長のお話では、諮問をしないで報告や了承やであいさつの程度で済ました事例はたくさんあるとおっしゃった。それは諮問をしなくたってよかったときの前例でしょう。同時に、従来社会保険審議会に諮問をしたあらゆる諮問案を取り出して見ると、これ以下のものがたくさん諮問されてあったらどうする、従来社会保険審議会に諮問したものはこれ以上の大問題、これ以上の大綱ばかりが諮問されてあって、この程度のものは了承や報告や意見聴取で済ましておられたというなら、私はかぶとを脱ぎます。しかしながら、今までに社会保険審議会に諮問せられたすなわち大綱なるものは、今回の改正案のその変化よりはもっともっと小さいものが諮問されてあったならば、大綱とは何ぞやというと、いわゆる法律見解というものは前例に照らして基準をはめてみるということになれば、そこにおのずと判決が下る、私はそう思うのです。大へん質問の方が長くしゃベって恐縮でありますが、そうではなくて、事実は時間がなかった。そこでできるだけ審議会にかけると甲論乙駁引っぱられたらかなわんので、御意見拝聴という程度で済まして今のような弁解を考えられる、慎重に検討せられたというのは、弁解を検討されたのでしょう。他日問題になったときのその弁解の方法を慎重に検討せらたのでありましょうが、これもそうされたのが真相なんです。私はここでやはりこういうような大きな変化をした七つある要綱のうち三つであろうと、一つであろうと、要綱の中の変化した数が五つじゃだから大部分、一つじゃだから一部分というべきものではない。数ではなく質です。質が大綱であるかどうか。改正案の要綱が十二あったとする。要綱とはすなわち大綱じゃ。十二あったとする、そのうちの十まで変ったんじゃから……数じゃありません、質です。その中の重要な部分が変化があったというならば、これは審議会に諮問すべきで、変化すればするほど、これは去年諮問したから、おととし諮問したからもう再々せぬでもいいというものではない。変化すればするほど、諮問すべきが諮問の本質である、私はそう思う。でありまするから、これは私は何も押えつけるのではありませんが、私の言い分が間違っておったら言って下さい。私の考え方に誤まりがあるならば言って下さい。私はやはりこれだけの重大な問題は諮問すべきが当りまえである、そういう見解を下す。それをしいて諮問すべきものではないなどということになれば、これは審議できません。これが解決するまで審議できません。それは従来、社会保険審議会においてどういう問題を諮問したかという前例を全部調査して彼此の軽重をはかっていかなければ、判決例を取調べなければなりません。そうするとあなた方の方は御迷惑でしょう。われわれは、これは当然審議、諮問すべきものであるという、あなた方は当然諮問すべきものではないのじゃ、諮問しなかったのが当りまえなんじゃ、その方が正しいのじゃという言い方をされるならば、これは曲直を明らかにするためには審議を進めてもらうわけにはいきません、提案の手続ですから。しかし、これは時間の関係でやむを得ないのだというならば、また何をか言わんやです。時間があるときには堂々と御諮問になったらいい。私は私の意見が正しいと思う。皆聞いておいでになる。私は私で正しいと思う。ノーと言う方は一人もいない、正しいと思う。もし時間がないならば、なぜこれは一日限りで答申して下さい、二日限りで答申して下さい、国会の提案がさし迫っておりますから、長くお時間をお待ちするわけにはいきませんから、できるならば本日この席で御答申をいただきたいと、なぜ日切りをなさらなかったか、そうすればよろしいじゃありませんか。そうすれば、あなた方の責任は、法律尊重の義務はお果しになった。向うが一日の間に答申すれば、あなたたちは手続に欠けるところはない。しかし、私はそういう点を考慮なさらずして、諮問という形式をお踏みにならなかったのは、何かほかに重大な意味がおありだろうと推測するのです。それはこの次に質問します。
ちょっと聴講一席やりまして済みませんでしたけれども、私の考え方が正しいか正しくないか、後日のために、厚生大臣の御所見を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/49
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050・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいまの山下委員の健康保険法案の審議会諮問に関する大へんうんちくのある学説といいましょうか、御意見拝聴いたしました。実はそういう御解釈をなさいますのは、この参議院だけに限らんで、衆議院におきましてもいろいろな御意見がございまして、十分拝聴いたしたわけでございます。
ただ政府といたしましては、先ほどもお答え申し上げましたように、これはいわゆる審議会に諮問すべき大綱の範囲の変更ではないのだ、前に諮問して答申をちょうだいしておりますその範囲内の問題だ、こういうようなふうに考えておりました。そこで、先ほど政府委員からもお答えございましたように、時期が、諮問の時間的余裕がなかったのじゃないかというお尋ねでございましたが、時間的余裕は十分あったわけでございまして、そういう解釈が違っておった関係上、諮問の形式によらずに、審議会をお開きいただいて御意見をちょうだいいたしたのでございますから、もし山下委員と同じような、これは審議会に諮問すべき事項だ、法律的にそういう回答をするのだという政府の考え方でございますれば、これはもう審議会を招集していただいたのですから、もう何でもなくおかけできただろうと思うのでございます。それからまた、審議会の御意見も、満場一致の御意見、反対の方もお一人あったそうでございますが、最後においては御了承願ったというのでございますから、諮問を申し上げても十分な答申を得られたと考えております。こういう十分時間的の余裕がないというようなことはなかったということと、それから、最初からこれは諮問事項でなかったという政府の解釈からでございまして、その間に何らの他意がなかったということは一つ御了承願いたいと思います。ただ単に、今お話しになりましたような、ここだけに限らず、衆議院におきましても、社労の委員会あるいは予算総会等におきまして、それは解釈を異にするという有力な御意見があったわけでございますから、私どもといたしまして、将来におきましては、そういう御議論のありましたことをできるだけ一つ大綱に限らずかけていけ、社会保障制度審議会なり社会保険審議会に、そういうのにこだわらないで、政府として非常な学識経験者の御意見を徴し、また、尊重するという建前になっておるのだから、今後は一つこの運用について十分なお一そう尊重するようにかけていけという御議論でございますれば、これは私どもといたしまして尊重して参りたいと考えております。結論から申し上げますと、どうも政府の一貫した考え方と山下委員のこの法に対する解釈が違っておる、ここが非常に私明瞭になったと、こう考えるのでございます。そういう意味におきまして、政府は撤回するかということでございましたが、これは撤回は、政府といたしましては法律上できないことになっておりまするから、そういうことは法律的にもできませんし、また、事実上これはぜひ一つ通していただきたい、御審議をお願いいたしたい。すでに二回も流れておるから、無理があるのじゃないかという御意見でございましたが、政府側といたしましては、もう前に、一つ通していただきたい法案であって、それが流れておる。なお、ここで御審議をお願いするということは、それだけやはりこの法案は重大な内容を持っておると、こういうふうに考えておりまして、御意見のあることはよくわかるんでございますが、ぜひ一つ今月中にこれは十分御審議願いまして、そしてすみやかに法案としての体系を整えていただきたい、こういうことが政府の念願でございます。お答えいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/50
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051・山下義信
○山下義信君 だいぶ、雪が少し解けた雪解けのような答弁をしていただいた。わしばっかしが固くなっていてはいけませんから、そちらの方でお解けになればこちらも解けにゃなりませんが、審議会にかけるべき諮問事項であるかないかということで解釈が全く対立すると、私は先ほど申し上げたように、これは了承するわけには参らない。私は対立すべき、実は解釈が真反対になるという程度の問題じゃないと思うのです。言葉をかえていえば、この改正案を審議会に諮問して悪いという法はないのですから、審議会に諮問すれば違法であるというのじゃないのですから、かけて悪かったというのじゃないのですから、かけたらよかったろうというのでありますから、あなた方の方は、いやかけて悪いのだというのならば、意見は対立するのです。言葉をかえていえばそうなんです。砕いていえばそうなんです。多々ますますかけるほどよろしいということは私は一致するだろうと思う。審議会が存置されてありまする以上は、フルに学識経験者のその答申、関係者の協議を求めるということならば、できるだけフルにその機能を発揮するためには大小こもごも実はかければかけるほどよろしい、私はそう思う。いや、かけちゃならぬのであるということになれば意見が対立いたしますが、私は解釈が相違すると言われたのでは了承がなりがたい。でありまするから、できればかけた方がよかったということでありまするならば、なぜかけなかったかという方も少しぐらいは解けにゃならぬかもわからぬ。しかしながら、全く解釈が対立しておるといわれたのでは解決ができません。それが一つ。
いま一つお尋ねをして、私もその返答によりましてこの問題はどう処理するか、参議院はどう解釈するか、どう衆議院の紛争を参議院側はどういう側からこれに戸口を解いていったかということの解決をしていきたいと思うのですが、これは聞かなくてもいいことであるが、念のために聞かなきゃならぬ。というのは、先ほど木下委員も指摘されておりましたが、その他同僚諸君が、厚生大臣のおっしゃるように、同僚諸君があるいはお尋ねしたかもわかりませんが、政府の方ではどっちかといえば、審議会は無用の長物ぞよというお考えが腹の底にひそんでおるのじゃないかと思うのです。私はそう思う。しかし、それならそれで私は賛成なんだ。これは大綱、こういうものはかけるべきでないということになると困る、意見が対立して。しかし、かけるべきじゃが、あんな審議会というものは役に立たぬからもうかける価値がないぞというならば賛成します、一致する。だから、もうああいう審議会は役に立たぬ無用の長物であるというお考えならば私は同意しますが、どうでしょう。私がそう思うのは無理からぬ点がある。あなた方の方では最近七人委員会じゃ、五人委員会じゃというものをお作りになり、審議会のある上にさような非公式、非合法なもぐりの委員会をお作りになって、盛んにこれを寵愛なされる。これらの審議会が無用の長物であるれっきとした証拠なんです。そう思う。審議会は無用な長物であるから、ああいうものに相談する必要は、実は打ち割っていえばないのですが、がやがや、がやがやうるさいことで価値のないものぞよ、こういう御見解ならば、これは実にいい御見解で、私はその点ならば賛成します。そういうお考えじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/51
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052・神田博
○国務大臣(神田博君) 厚生省におきます関係を持っている委員会につきまして、いろいろ御意見がお聞きできたわけでございますが、ただいまの心境といたしまして、現に今委員会、あるいは七人委員会とかいろいろ、全部で十六ですか、十五、六厚生関係の委員会があるそうでございます。はなはだ十五、六といって正確に申し上げないで恐縮でございますが、それぞれ発足の際に必要とせられ、今日もそういうような事情が残っておるというふうに考えておりますので、委員会は十分尊重いたしまして、そしてなお活発に一つ御意見等も伺うことのできるようにいたしたい、そしてこれをまた尊重して参りたい、こう考えております。しかし、だいぶ事情も変っておるから、また、年金制度なんかに対する委員会も作るようだから、この際委員会について再検討を加えろというような御趣旨でございますれば、厚生大臣就任まだ早々でございますので、十分、研究も不十分でございますので、今後一つ検討を加えまして、そして調査を進めたい、かように考える次第でございますが、何分ただいま唐突のことでございますので、そういう根本的のことになりますると、すぐここではっきりしたことをお答えしかねるわけでございますが、しかし、考え方は申し上げましたようにいろいろの事情でできまして、御迷惑のことと思いますが、時間をさいていだだきまして、調査研究していただいておるわけでございまして、感謝いたしておるわけでございますから、なお一そう一つ機能をあげてらもいたいという現在の心境でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/52
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053・山下義信
○山下義信君 私は審議会諮問関係の論議を通じまして非常にいい結果を得てありがたい、はからずも厚生大臣から従来この種の審議会、数多くある審議会を一つ再検討していく、そしてこれは一つ新たな観点から考えてみたいという御趣旨につきましては、私は実に心から賛同いたします。これはすみやかに一つ根本的にあなたの方の御所管、厚生省所管の各種の審議会を御検討下さって、新しい感覚を持った、新しい観点からの再組織といいますか、再検討というものを一つなさる御趣旨ということは非常に私は賛同いたします。この際、私は厚生大臣に御注文申し上げておきます。お願いをしておきます。それはまありっぱな人はいつまでもりっぱでありますが、人間の知恵には限度があります。体力に限度があると同じように、知恵には限度がある。同じ人間から何度いろいろしぼってみても油かすじゃありますまいし、そんなにしぼればお茶と同じように二番せんじ、三番せんじになってしまって、俗にいえばマンネリズムになります。厚生省は何かの審議会を作るとき委員になる人はきまっております。あんな知恵が無限にあるものじゃありません。大がいにしてニュー・フェースと入れかえていただいて、これは考え直していただかなければならぬ、ことに私が声を大にしてお願いなり御注意を一つ願わなければならぬことは、端的にいって、御用学者を一掃してもらわなければなりません。あなたの方の御用学者を集めて、何のこれが第三者の学識経験者ですか。あなた方のしょっちゅう御寵愛をこうむって御用を勤めるというような種類のものはこの際一掃すべきです。具体的に申し上げますというと、厚生省の各種研究調査の補助金四十万円、六十万円ともらっておるような学者を集めて、あなた方が何の御意見拝聴ですか、そんなものは御意見拝聴の必要がありません。私は、厚生省が補助金を与えて、あなた方の御用を勤めさしておるような学者は一つ御選択からおはずしを願いたい。名前はあげませんが、たくさんあります。赤線を引いてこういうふうに持って参りました。年々六十万円、三十五万円、四十五万円と申しましょうか、そういうようなあなた方の研究補助費をもらっている者を、いかにも第三者の公益委員かのごとき顔をして審議会をおつなぎになるということはもうやめましょうや。それでどうか一つ、そういう点についてもぜひ再検討願いたい。私は個人的名前を申し上げ、その金額をここで発表しますことは控えます。けれども、これは苦々しく存じます。こういうことは一つ御留意願いたい。
そこでもとへ戻りますが、あくまでもこれは審議会に付議すべき大綱ではない、解釈の相違であるということになりますと、この問題の解決するまで私は質疑を続けて、双方が社会保険審議会に従来諮問した案件の全体を一つここへ取り寄せていただいて、そしてこの程度のものは諮問しておるか、諮問しておらなかったかどうかということは、これは確定をいたさなければなりません。これがただ単に、社会保障制度審議会のごとく健康保険法の中に規定されていない審議会ならばこれは別です。しかしながら、社会保険審議会は、健康保険法の中に、健康保険の企画、立案、運用に関する審議会として、この諮問事項がきめられてある。天下の耳目をそばだてておるこの種の問題をうやむやのうちに、ある意味においては軽視し、ある意味においてはいいかげんにあしろうた形のままに、国会の当院がこの重要案件を受け取るわけには参りません。どうしてもはっきりしていただかなければなりません。もし当局におかれて、そういう意見や解釈の対立でなくして、それは諮問すべきが妥当であったかもわからぬ、あるいは妥当である、しかしながら、諸般の事情によって今回は諮問しなかったが、今後は一つこの種は諮問する、この際は私は当局の釈明を求めまするが、しかしながら、ここでわれわれが見解を一致するという段階にならなければ、私は健康保険法の審議は進めがたいと思うので、当局の御所見を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/53
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054・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま山下委員から厚生省の各種の委員会のことについては十分検討しろという御要望でございますので、これはよく一つ検討いたしたいと思います。
それからただいま、もう一つお尋ねになりましたこの健康保険法の改正案が、社会保険審議会に諮問をされておらない。そこで従来健康保険法等の改正等について、社会保険審議会に諮問したことがあると思うから一つ全部調べて出せ、こういう御要望でございましたが、これはできるだけ一つ請求いたしてまとめたいと思っておりますが、何しろ健康保険法がしかれましてもう三十年、古い歴史を持っておりますので、だいぶんその間役所も変ったりしておりますから、全部あるということはなかなか私むずかしいだろうと思います。できるだけ資料は整えるようにいたしますが、最初から全部とおっしゃるとなかなか容易でないように考えられますので、その点は御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/54
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055・山下義信
○山下義信君 私は、この問題に対しましてのわれわれ委員側と厚生省当局側との見解の相違のままで本案の審議を進めることは不能である。何といっても提案の手続の問題ですから、私は法律違反と言うのではありません。必ずしも法律違反といって追及しておるのではありません。違法的な行為であると言っているのではありません。私はまだまだ穏当なことを言っているつもりなんです。適切でなかった、少くとも妥当ではなかった、十分ではなかったということを言っているのです。あなたの方はかけなかったのが当りまえであるという、いたけだかな御見解だというならば、これは解決つきません、対立のままです。でありますから、私はそういう提出の手続に関する見解が対立、相違したままで、当委員会の審議を進めるということは、だれが考えても不可能であると思います。そんなことは与党野党の立場ではない、参議院の立場として、私がここで初めて問題を出したならばそれはともかく、衆議院で問題となって、かような場合にはどうあるべきかということの結論なしにここに問題が移ってきた。第二院はその足らざるところを補い、過ぎたるところをチェックするのは当りまえであります。衆議院で大問題になったのが結論が出ず、あの速記録を読んで後に、行政当局にいたしましても、一体審議会にこの種のものはかけるべきか、かけるべきでないかという基準を何ら明確にされていないままで、参議院はこれを通過するということはできません。それなれば、参議院は無用であります。二院制度は不必要であります。従って、衆議院において論議せられた問題に結末をつけようとするのは、決して私はあなた方を困らせようとして毛頭言辞を弄しておるのではございません。この問題にけりをつける。しこりのないものにして、わだかまりのないものにして、いわゆる審議会対健康保険の問題、当局の処置の問題を、ルールを確定しておくか、少くとも衆議院の論議の足らざるところを補うていきたいというのでありますが、対立のままで、見解の相違のままでいくならば解決はつきません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/55
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056・神田博
○国務大臣(神田博君) 山下委員しばしばお述べになられておるわけでございますが、大綱について諮問をしなければならないことは当然でございますが、今後の改正法案がたまたまさきに諮問をしておって、そうして若干それに修正を加えた。そこでこれをやはり幾らかでも変えたのであるから、変えた以上は、審議会に諮問をすることがいいんじゃないか、こういう御意見でございますれば、先ほど私がお答え申し上げましたように、もう時間的には余裕が十分あったわけでございまして、そこで審議会を開いていただいて、政府側が十分な御説明を申し上げ、御意見もお聞きして、そうして御了解も得た、こういうわけでございまするので、もう一つ突っ込んでそれを諮問というような格好でやっておきますれば、これはまあ山下委員の今の御心配していただくことはなかったわけでございますが、政府の考えといたしましては、審議会の諮問というのは、やはり大綱というようなふうに考えて、そこを立てて、そうして御意見を聞くというようなまあむしろ配慮したと申しましょうか、十分考えた上の処置であると私は考えておるのでありまするが、将来できるだけ一つそういうのにこだわらず、社会保障制度審議会なり、社会保険審議会は何といっても練達堪能な方々が、長い学歴の豊富な方方がお集まりになって御研究されておられるから、その意見をできるだけ一つ正式に聞いて書類としても残す、こういう御趣旨でございますれば、これは今後そうした御意見にかなっていくことにつきましては、これは私どもといたしましてもその意見を尊重して参りたい、こう考えておるわけでございますが、これは済んでしまったことでございまして、そういうふうに今から申し上げてもこれは済んだわけでございますが、法律的の、法律は法律であってもできるだけ変えるようにせいという御意見でありますれば尊重して参りたい、こういう気持でございます。さよう御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/56
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057・山下義信
○山下義信君 将来の御配慮につきましては了といたします。ただ、過ぎ去ったこととおっしゃいましても、今その手続が妥当であるかどうかということは、今この案を受け取ろうとするまぎわでございますから、今この案を受け取って審議に入ろうとする段階でございますから、その審議会の諮問をしなかったことの妥当性につきましては、御見解の御表明がなければ、われわれは了とすることはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/57
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058・千葉信
○委員長(千葉信君) 山下委員にお諮りいたしますが、先ほど大臣の方から、社会保険審議会に諮問した前例等について至急資料を整えて、できる限り資料を整えて、なるべく早く提出したいという御答弁もございますし、この法律案を審議する前提条件として、一体これが大綱として社会保険審議会に諮問せらるべきものであったかどうかということの判定は、その資料が提出されなければ、なかなかその判断は困難だろうと存じますので、この問題についてこれ以上審議を進めますことを一時保留して、委員会の運営については、他にこの問題に直接の関係のない御質問もあるようでございますから、その御質問を許可することにいたしまして委員会を進め、いずれ、ただいまの問題の審議日程等については、理事会等であらためて御相談したいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/58
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059・山下義信
○山下義信君 私は委員長のお裁きを了とします。ただ付加しておきますことは、繰り返してくどいようでございますが、これは私は公正な、立場から、参議院の立場から検討を加えてきておりますので、政府の御答弁が、衆議院のあの混乱、興奮したときの御答弁と若干の相違があって、当席で御答弁になりましても、その言辞を取り上げて云々するという意思は毛頭ございません。かつまた、さような御心配はおかけいたしません。ただ私の念願するところは、かような重大問題、しかも、その中の重大な事項に変化がありましたときには、私は当然審議会に諮問すべきであって、審議会の内輪の情勢がどうあろうと、その状況がどうあろうと、答申に日切りというようなこともできるので、私はどのようにでもその処置はとれるのでありまして、要するところ、当然われわれの見解といたしましては、諮問の形式を回避ということにつきましては一抹の不安がある。でありまするから、そのわれわれの不満が不当でありまするか、あなたの御措置が完全無欠であったかということでありまするから、単なる法律解釈とかいうことでなくして、このたびのこのケースなどは双方の見解の結論を私どもは何と申しますか、歩み寄りというか、意見を戦わした結論が出ることが好ましいと考えます。この席の答弁が衆議院のときの御答弁と相違があるからといって、その言辞をあげつらう考えは毛頭ないことを付加いたしまして、できるだけこの問題の有益な解決を望むのでありますから、この意思をつけ加えまして、委員長の御裁定を了承いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/59
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060・千葉信
○委員長(千葉信君) なお、竹中委員の方から、日本医師会の問題に関連しまして、厚生大臣に緊急なる質問の要求がございますが、衆議院における予算委員会の審議の状況等にかんがみまして、午後劈頭にこれを行うことにいたしまして、暫時休憩いたします。
午後零時五十八分休憩
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午後二時四十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/60
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061・千葉信
○委員長(千葉信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/61
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062・竹中恒夫
○竹中恒夫君 この機会に、厚生大臣に二、三お伺い申し上げたい。非常に重大な問題であろうと思うのでございますが、それは去る十七日に日本医師会が、新聞等によって御承知のように、臨時代議員会が開会されまして、幹部不信任案が通過いたしまして、全幹部が総退陣をされたわけであります。これは単に、日本医師会の内部の問題として看過するわけにはいかない。特に現在の国会の審議状況から勘案いたしまして、きわめて密接な関係がある問題であると思います。それにつきまして一応御所見を承わりたいと思うわけなんでございますが、今回の日本医師会のあの不信任案上程の経緯というものを考えてみますというと、決して学閥的な争いとかあるいは派閥による闘争ではございません。政党などにありますようないろいろな関係によるかたまりとかたまりの激突というようなことではございませんので、明らかに今回の不信任案の上程された原因なり、経緯というものは、おのずからわれわれも察し得るわけなんでございますが、率直にこれを申し上げますならば、健保改正案に対しまする幹部に対する全国の十万医師の代表である代議員諸君の不満が勃発した、こういうように私は解釈しておるわけでございますが、日本医師会の内情につきましては、もとより友好団体ではありまするが、詳細私承知いたしておりませんが、一応外から考えた場合には、そういうふうに受け取れるわけです。厚生省はもとより、平素から医療団体の指導なり監督をしておられる立場にあられるわけでございまして、決してこれを単なる国会外の問題として取り扱うことは意味がないのだというようなことは言い得ない問題であり、特に、今後皆保険の立場において、日本医師会に協力を求める上から申しまして、厚生省としては密接な関係をお持ちになる必要があると思うのですが、今回のあの不信任案上程による幹部の総退陣というものに対しまして、一体大臣はどういうような御見解なりお考えをお持ちになっておりますか。まず最初、幹部総退陣に対しまするお見方を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/62
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063・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま竹中委員より、日本医師会の幹部が先般代議員会で信任投票に破れて総辞職をなさったということは、私も新聞やラジオでも承知いたしております。また、御退陣されました幹部の方が——私はお目にかかれなかったのでございますが、厚生省の方にもごあいさつにおいでになったようでございまして、その事実は承知いたしております。厚生省、といたしましては、今回特にこれは国民皆保険を打ち出した関係もございまして、医師会、歯科医師会、薬剤師会、これはむろんでございますが、日本医師会の方にわが国医療制度の円満な発達を促進するために、向上を期するために御協力願いたい。そのためには、積極的に政府と相携えてともどもに一つ御協力願いたい、こういう意向で私は実は念願いたしておるのでございまして、ことに、厚生省と医師会の仲がうまくいかないというようなふうに私外部におりまして見ておった関係もござまして、就任以来このことにつきましては、特にそういう気持をもって実は接触いたしておったつもりでございます。たまたま去る十七日でございますか、深夜に及んで今のような事態に相なったということはこれはまことに私どもといたしまして、何と申しましょうか、まあ医師会の内部のことでございまするから、とやかく批評がましいことは申しませんが、この上は一つ一日も早く日本医師会が医師会として、一つ全国の医師会の代表としてふさわしい体制を整えられまして、そしてかねて私どもが念願いたしておりますように、厚生省と医師会との関係がなお一そうよくいくような状態にしたいと、こういうふうに念願いたしております。内部の事情をとやかく申し上げることは、私は事情を知りませんので、これは申し上げるわけには参りませんが、事態が事態でありますだけに、一日も早くりっぱな、皆に支持される役員の方が選任されまして、よく話し合いができるというような事態を待望しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/63
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064・竹中恒夫
○竹中恒夫君 今大臣は非常に御遠慮なさったような、内部の事情だからあまり口出しもしたくないというお気持もあるかとも受け取ったわけですが、直接の医療関係団体の指導、監督の責任をお持ちになるわけで、また、職権もお持ちになるわけなんですが、こういうような事態になりました場合に、やはり民主的に、勝手にしたらいいんだ。いい意味における民主的な行為でもありますが、また、逆に放置しておるというようなそしりを受けるように私は感じるわけなんですが、積極的にこういう事態が、もちろん突然できたことのようにも思われますが、しかし、この事態が発生するのにはおのずから段階がございまして、大よそわれわれもかねがねから心配しておったわけであります。そういたしますると、事前に何らか監督指導の立場から打つ手があったのじゃなかろうかという気持もするわけでありますが、そういう点はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/64
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065・神田博
○国務大臣(神田博君) 実は内部いろいろごたごたがあると申しましょうか、意見の対立があるというようなことは、これはまあだいぶ私も気にしておったことでございますが、事態がああいうふうに飛躍して、私のまあ考えておりましたよりもああいう局面がくるというようなことは実はもう毛頭考えておらなかったわけでございまして、あの晩おそく情報として私うちで知ったわけでございまして、これはまあ非常に困ったことだとこう考えておりました。こうしたこれは問題は、ただいま御審議願っている健保と関係があることのようでございまして、私からこのこと自体の批評はむしろ避けた方がいいと、こう考えております。何かしかし、厚生大臣としていろいろ御相談に応ずる余地がございますれば、私は大臣としても、また、個人としても、これは十分に一つ御相談にあずかろうと考えておる次第でありますが、今のところ、実はまだどちらの方にもお目にかかっておらないような事情でございまして、どういうことでどうなったかということ、それから将来どうするかというようなことを詳細承知しおらぬような関係もございまして、ただいまの立場といたしましては、早く一つ医師会が正常な運営をできるような、りっぱな指導者ができるようにと、こういうふうに念願いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/65
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066・竹中恒夫
○竹中恒夫君 その点、私はいま少し積極的な気持を当局としてお持ち願いたいと思うわけなんですが、その理由といたしましては、医師会、歯科医師会、薬剤師会は、申すまでもなく、厚生行政に対して、あるいは厚生省そのものに対する協力団体でございまして、この協力団体が麻痺した場合においては、少くともこの年度末を控えて最近相当監査その他が行われておるようでございまするが、健康保険の保険医の指導あるいは監査の立ち合い、そうしたことは今度の改正案にはあまり見られないようですが、従来の監査要綱なり何なりからいきますと、当然医師会の協力を得なければ、健康保険そのものが私は麻痺していくと思う。特に、年度末を控えてそういう事案が続出して参ると思うのです。早急にこの医師会は正しい姿を取り戻さなければ、健康保険の実施そのものに私は悪影響がある、こう考えますので、ただ傍観的な立場でなく、何らかのサゼションを与えるとかいうふうな積極的な意向をお持ち願いたいと私どもは思うわけです。
そこでその次に私お尋ね申し上げたいのは、厚生大臣は就任早々から、日本医師会なり、日本歯科医師会の幹部あたりと公式会見を数回重ねられまして、非常に率直にいろいろと御自分の考えなり、あるいは党の考え、政府の考えなどもお話しになられておるわけなんです。日本医師会の幹部としてはおそらく厚生省の御意向は十分にわかっていると思うのですが、その意向が末端にはもとより伝わっておらないわけです。また、日本医師会の幹部がかりにイエスと言いましても、必ずしも今の実態から言いまして、末端の会員がイエスと言うとは限らないわけです。私せっかく大臣が、従来の医師会と厚生省の関係がおもしろくない、やはり傘下団体として、もっと密接であるべきであるというようなことで、非常に事前折衝なども重ねられておることはよく承知いたしておりまするが、その方法の中に、地方の医師会と、たとえて申しますならば全国の会長会議を開いたとか、あるいはブロックごとに会長さんに集まってもらうとか何とかして、かりにこの健保案を医師に協力を求めるというのでありますならば、中央の幹部だけじゃなしに、そこまでの御努力をなさるということが私は欠けておったのではないかと思うのですが、まあ医師会の機構について十二分に御承知ないので、あるいはそういうような御答弁になるかもわかりませんが、今後の問題もありまするので、一応お聞きするわけなんですが、ただ幹部の数人だけを大臣の部屋に呼んでお話しなさって、それでもって医師会の動向をああだこうだということは、私は判断を誤まると思うのです。そうした点、今後十二分に御注意願いたいと思うのです。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/66
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067・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいまの竹中委員の御要望といいましょうか、御注意といいましょうか、私全く同感でございます。就任前からどうも厚生省と医師会の関係が非常に和を欠いておるということにつきまして心配いたしておったのであります、厚生大臣就任以来、このことはぜひ一つ自分の在任中に調整して、両者がほんとうにこの円満な関係において医療行政の実をあげてもらいたいとかように考えまして努力いたして参ったつもりでございます。日本医師会の幹部の方々と数回面談いたしまして、政府の意のあるところをお伝えし、また、自分の考えも、さらにまた、医師会等の要望もお聞きいたしたのでございますが、ただいまの竹中委員のお話のように、中央幹部だけの声を聞くことも大事だが、なお、府県ブロツク等の、府県単位の医師会の声を聞くということが実際の実情把握ができて、その方が効果が上ったんじゃないか、その方に欠けておるじゃないかというような御注意でございまして、私もこれは自分から求めてブロック的に会うというようなことはいたさなかったのでございますが、だいぶ各府県単位の医師会の幹部の方々にはお目にかかりまして政府の気持、厚生省の今後のあり方等について積極的に御説明申し上げまして、また、御要望等も聞いて、事情をだいぶわかっていただいてきた際だと考えておりました。しかし、結果からみて、内部がだいぶまだもめているということが明瞭になったわけでございますが、当日の代議員会等でも政務次官を一つ出席させることによって政府の意のあるところを十分お伝えしたいというような申し入れもいたしたのでございますが、それは向うの方の希望でそのことができなかったというような事情もございまして、政府の考えておることが十分医師会に伝わっておらぬのじゃないかということを実はおそれておる次第でございます。今後一つ十分努力いたしまして、政府の考えておりますことを医師会のずっと会員の末端までわかっていただくようにいたしたい、かように考えております。おいでになられた方々にはよくお話しいたしまして、まあ厚生大臣がそういう考え方であるならばわれわれはわかったというようなことを聞いておりますし、私もまた、努めて出かけまして、この東京都内のそういった会合には出まして、懇談をいたしておったわけでございますが、今後もなお一そう一つそういう機会をとらえまして、政府の意のあるところをお伝えいたしまして、事態を急速にしかも円満に収拾できるような方法をとって参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/67
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068・松澤靖介
○松澤靖介君 ただいま竹中委員の質問に対しまして大臣の答弁を承わったのですが、先ほどの十七日の日本医師会代議員の場合におけるところの不信任案の問題ですが、それにつきまして大臣の御答弁は、内部の対立がひどかったように今申されたのですが、私どもはこの内部の対立というようなこと、そのもののよってきたところは那辺にあるかということをよくよくお考えにならなくちゃならぬのじゃないかと私は考えます。われわれ医療担当者、ことに第一線において社会保険の診療に日夜努力しておるそれらの人々の意に反するような、憤激を買うようなことに至らしめたところのそのことに対しまして、私は厚生省といたしましても、あるいは担当大臣といたしましても、よくよく反省というと語弊があるかもしれませんが、深く考えるべきじゃないかと、私はかく考えておるのでありまして、この点につきましては、大臣は先ほどよく自分の意思が会員の諸君に伝わらなかったのじゃないかということをおっしゃられたんでありますが、この機会において、大臣は日本医師会の人々、医療担当者に対してどういう御意思を徹底させていくべきかということをお考えになっておるか、その点を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/68
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069・神田博
○国務大臣(神田博君) 私が厚生大臣になりまして、医師会等からいろいろ要望がございましたわけでございます。その要望の中で、第一は、健康保険法の改正には反対したいということ。それから第二は、今の一点単価の問題につきまして至急改正して、医師の待遇改善をしてもらわなければ立っていかないと、この二つが私陳情の一番大きな問題じゃないかと考えております。
そこで、私は、この第一の健保の改正問題につきましては、健康保険の合理化、あるいは健康保険財政の健全化等の立場から十分御説明申し上げまして、現下の状態においては、どうしてもこの鳩山内閣の当時から御審議を続けてきてお願いしている健康保険法を一つ通過することによって、所要の目的を達成いたしたい。そこでいろいろまあ御反対、御心配をされる点については、運用上の問題として一つ医師会と十分連絡して、みんな御不満のないような処置をとって参りたい。これは決して私が自分が在任中だからそういうことをやるとか、あるいは法律を通すために言っているのではなくて、心からそういうことを考えているんだ、こういうふうに御説明申し上げておったのでございます。被保険者負担等につきまして陳情もございましたが、まあこれらの点は、被保険者同士の負担の均衡と申しましょうか、合理化の関係からいっても、これはどうしても、してもらわなければならぬのだということをるる御説明申し上げまして、御了解を願うように努力して参ってきております。しかし、これはなかなか前から根強い御反対がございまして、話はわかるが、自分だちが一ぺん反対ということを打ち出しているから、まあ大臣の声を聞いても、それはそうかと賛成するというわけにはいかないが、しかし、そういう決心を聞くことによって、この健康保険の問題というものが容易じゃないということがよくわかったというようなふうに私と少くともお会いできた、お会いしていただいたお医者さんの方々には、そういう印象を与えたと私は考えております。
それから第二の一点単価の改正問題につきましては、これは健康保険法が今御審議中で手があかないから、この法案が解決いたしましたならば、さっそく一つ取っ組んでこの方の解決を一つはかりたい。この問題は、厚生省としても省議決定をして改正しよう、医師の待遇改善という考えをもって善処しようと、昭和二十四年の単価改訂が二十六年に改められ、その後改められておらないようでございます。多少の点は変っておりますが、根本は変っておらない。それでそれが税制の措置で補っているというようなことでございますので、これは政府自体も一点単価の問題が正常なあり方でないということを証明しているんだから、これは責任を持って解決する、そこで厚生省のこの事務当局にさっそく一つ調査をするようにという指令を出しております。すぐ一つ十分の資料を集めて判断の材料ができるようにしてもらいたいということ。それからさらに、これはなかなか大きな問題でありまして、厚生省だけでこれは独走することによって解決する問題じゃないから、内閣全体としてこれは取っ組んでもらわなければならぬ。そういうような建前から閣議においてもしばしば発言いたしまして、この問題がどうしても解決しなければならないことであるということを申し上げて、閣議の了解事項になっているということを申し上げておきます。また、これは政党内閣といたして、やはりこの自由民主党の党の幹部にもこれを諮って了解を得ておかなければならないという考え方から、自由党の党の幹部の方々にも基本的な考え方を申し上げまして、そうして御了解を得て、健保の改正が終ったならばすみやかに一つこの問題に取っ組んで、一日も早く解決をはかりたい。その解決をはかる前提としては、十分の資料を整えると同時に、官僚的な改正だというような非難を受けないように、医師会の方とも十分連絡をとって御判断を一つ得たい。また、これは関係するところが広いから、末端の声も十分聞きたいということも申し上げております。そういうわけで、私お目にかかった日本医師会の幹部、また、各地方の会長さん方、あるいは開業医の方々等に、この話をお目にかかるたびに申し上げまして、御理解御協力を願いたい。公立の病院の院長等がお集まりで陳情においでになった際にも、そういう考えでおるから、一つ諸君も御協力願いたい。何かこういうことまでしてもらえぬかという案があったら、諸君の方でも一つ研究して試案を出してくれぬかというようなことも申し上げているわけでありまして、だいぶ実は御了解を得ておるというふうに私は考えておったのでございます。これはなかなかむずかしい問題でございまして、そう簡単に解決することではないので、どういう手順で考えておるかといって、まあ心配しておったんだが、ところが、そういうふうなすべての方面に目回しをして、そうして取っ組んでおるのを見て、これはもう解決の志向が十分あるということが察せられる、そこで一つこれはぜひ懸案であるからやってもらいたいと、こういうことを私もお聞きいたしまして、健保の改正を一つそのためにも急いでお願いいたしまして、手が余裕が出ましたならば、今申し上げたような方面に一つ全力をあげたい、こういう考え方を持っておった。たまたま衆議院のこの法案の通過に際しまして、医師会が最も修正を希望されておった個所も希望通りに修正に相なったようでございます。これはまだ全部というわけではありませんが、一番反対しておった点が修正をされた。それからまた、念願されておった面につきましては、希望、付帯決議としてこれを付せられまして、私からもこの付帯決議については十分一つ誠意をもって、または、できるだけすみやかに善処いたしたいということも申し上げ、総理、大蔵大臣等も、厚生大臣の考え方については全面的に同意だから、十分厚生省の案を一つ具体案が出たら御期待に沿うようなふうに一つしていきたいと、こういう答弁もあったわけでございまして、長いこともんでおった問題でございまするが、今後は一つ皆さん方の御指導も得て解決いたしたい。こういう考えでございますので、よろしく一つお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/69
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070・松澤靖介
○松澤靖介君 ただいま厚生大臣の御答弁によりますと、医師会の幹部並びに地方の医師会長さん方にお会いするたびに、今申し述べられたようなことをお話しになったそうですが、十七日のああいう工合な結果になったことは、真に第一線に活躍しているところの、医療に従事している人たちの私はほんとうの意見というものの結集がああいう結果になったことと思います。もちろん医師会の幹部そのものにつきましても、第一線から退いている方もあるでしょう。あるいは地方の会長にしても、ほんとうに第一線より、医業から離れておるような方もおありと思いますが、あの意見というものはほんとうに、日本の社会的、いな医療の第一線に携わっておる人たちの血の叫びと私は考えております。血の叫びがああいう結果に相なったと思うのですが、厚生大臣はその幹部たちがある程度納得されたようなことを申されたのですが、第一線におられるその人たちはもっともっと強い別な考えを持っておるということに対しまして、いかがお考えになっているかお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/70
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071・神田博
○国務大臣(神田博君) 何といいましょうか、ただいまお述べになられたような非常に御反対の意思を強くお持ちになっておられる、健康保険の改正の根本的な問題について所見を異にされていっておられる医師の相当におありになるということも私承知いたしております。しかし、政府の考えておりますることを非常に考え過ぎて、そうして非常な不安をお持ちになっておられる、こういった杞憂からこの際反対した方がいいというようなお考えを持っておる方が非常に多いということも聞いております。いずれにいたしましても、この健康保険の問題がここ数年来医師の御協力を得ないということはこれは全く残念でございますが、しかし、それだけこれは何といいましょうか、この健康保険問題をやっぱり解決していく上においてこれは考えなければならない大きな問題だろうと考えております。何といいましても、われわれといたしましては、今度は国民皆保険、全部一つ全国のお医者さんに保険医になっていただこうと熱心に考えておる際でございまして、その際に、医師の多くの方々が、たとえ誤解があるにせよ、あるいはまた、何といいましょうか、改正に何でもかんでも反対だというような事情があるにいたしましても、この了解を得ることが十分でなかったということについては、これは残念でございますが、しかし、この法律の改正案を十分これは見て参りますと、そうむちゃになって反対しなければならないという理由も、私ども一つこれは、私厚生大臣としての意味だけで申し上げるわけじゃないのですが、もう少し話し合いで御納得していただく道があるのじゃないかと、こんなふうにも実は考えておるのでございます。いずれにいたしましても、健保が問題になって医師会が紛糾いたしておるということはこれは好ましくないことでございますので、私の方といたしましては、早く一つ冷静になっていただいて、りっぱな指導者を一つみずから選んでいただいて、そうしてそういう方々と一つ十分話し合いのできる機会を持ちたい。この法案が通りましても、これは実行していく前には十分医師会の御協力を得なければならぬ問題が多いわけでございます。そういう意味から考えましても、早く後任の、代表する医師会の幹部の方々が一つできられることを望んでやまないわけでございます。
なお先ほど竹中委員から、日本医師会がこういうような状態になって、年度末を控えて診療関係において非常に行き詰まりがきやしないかという御心配もございましたが、これは、もちろんこういう事態になりまして、非常にこれは遺憾なことでございまするが、健康保険の関係の仕事は大体府県単位で医師会を相手としていろいろお願いしている面が多うございまして、日本医師会の幹部が、これはまあ数日になりますか、十数日になりますか、首脳者の欠員が続きまして、それがすぐ健康保険の財政の運用にどうなるかということは、すぐに私はそういうことはないのじゃないかと思っておりますので、この機会に一言つけ加えて御説明しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/71
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072・松澤靖介
○松澤靖介君 ただいまの御説明によりますと、一部の医療担当者が納得いかないのは真によくおわかりになっていない、誤解に基いているのじゃないかというようなお話で、自分から考えますと、皆さんがあれくらいな程度なら、だれしもが納得せられることかと考えられるというような大臣のお話ですが、そのことは、その点をとらえて考えてみましても、私自身といたしましても、大臣はほんとうに医療というものを、あるいは社会保険というものを御存じないように私ども考えます。社会保険というものは、あるいは医療というものは、そんなものじゃない。ことに、第一線に立っておるところの医療担当者が絶対反対しておるような場合において、相互信頼の上に立たなくちゃならない、進展をさせなくちゃならないところのさような場合において、最高行政監督官といたしまして。私はあまりに甘い安易なお考えを持っておるのじゃないかと考えますが、もっともっと私は深く掘り下げて考えるべきじゃないか、さように思いますが、大臣はあくまでも、この医療担当者側の強力な反対の中において、その意思を無視してまでもこれをおやりになるというような御決意かどうか。これは少し飛躍した質問かもしれませんが、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/72
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073・神田博
○国務大臣(神田博君) これは大事なことでございますが、ただいまお述べになられましたこと、その前に、全国医師、歯科医師会の総決起大会の決議書をちょうだいいたしておるのでありますが、この決議書を拝見いたしますと、
一、第二十六国会において衆議院を通過した健康保険法等の一部を改正する法律案に絶対反対し、即時その撤廃を要求する。
一、健康保険医療給付費に対する二割以上の国庫負担を要求する。
一、一点単価の即時引き上げを要求する。
この三点のようであります。このうちの第一点の法律改正につきましてのことは、一に患者の一部負担の増額ということをいっておられます。これは五十円の初診料を百円にしたのが増大でございますのと、一日三十円の入院料を取るということがふえたわけでございますが、これは必ずしも健康保険の人が五十円なら負担能力はあるが、百円ならないのだということか、それからまた、三十円の入院料を取っちゃいけないというお考えのもとにおっしゃっておると思いますが、その辺のことはお医者さんの方から言えば、自分たちは専門家だというお立場があると思いますが、これは政治の範疇に属することでありまして、こういうことは政治家の声というものを医師会の方方は反省をして、どうして政治家がそういうことを考えておるかということをお考えになってもいいのじゃないかと思います。病気の方は、頭数からいえば貧しい方が多いかもしれませんが、少くとも今日、政府管掌の健康保険に入っておることを考えますならば、これは職についておる方々、職業についておる方々の家族なのであって、こういう方々が御病気をなさった。そしてその御病気をなさった場合に、若干の負担をするということがそれほど反対しなければならないのか。国家財政からその金を全部投入せいといっても、国家財政もやはり国民の零細な中から取った税金によって成り立っておる。しかも、今日国民の中で、三千万人から医療保障を受けていない国民があるわけです。しかも、この中に入っておる数千万の方々も五割の負担をなさっておられる。それを健康保険だから全部国費でやれという要求、医師がなさることが私は理論的に考えて行き過ぎじゃないかと思います。国民全部が国庫負担にしろというなら話は別ですが、どうして健康保険だけに医師が国費でまかなえということを要求なさるのか。これは医師会のお考えはお考えですから自由におっしゃることはけっこうでございます。言論の自由だからけっこうだが、理論的に判断して、そういうことを一つ旗じるしにしておやりになるということは私は行き過ぎだと思う。これはここでそういうことを申し上げてもどうかと思いまするが、これを第一にお掲げになっておって、患者が負担することはけしからぬ、これは御病人になったのでございますから、自分の体を自分の手でなおす、自分で負担するのが筋であって、その負担をできるだけ少くする。それを健康保険でやって、健康保険の財政が健全でない。また、健康保険の合理化をはかるためからいっても必要だという際に、一日に三十円の入院費が、これはまあ無い者からいえば非常に高いかもしれませんが、うちにおっても食べておるのでありますから、病院におって食べる場合も、国民の税金をやはり皆が出しあっておるわけですから、それを考えれば、被保険者同士の負担の均衡から考えてもこの程度のことを一つやってみよう、そして打開しようということについてまっこうから反対だ。反対のことはけっこうですが、そうしなければこうするぞというような実力行使のような気配をすることは、私どもどう考えても、よくお目にかかって御相談いたしたい、話し合ってみたい。話し合ってみれば、こういうことが割合によく御納得していただけることじゃないか。反対ではあるけれども、政府のその考え方についてはなるほどというようなことだけはわかっていただけるのじゃないか。反対を賛成になってくれという無理なことは申し上げませんが、それも一つの政治であるというようなことぐらいは、私は多くの方々からはお考えを願えるのじゃないかという気持でおるのでございます。これから保険医や医療機関の二重指定のことにつきまして、これはいろいろ御議論があるようでございます。まあ保険医の指定は今やっておりますから、医療機関の指定が一つふえたわけでございますが、これもら付帯決議によってごく簡便に一つやってみたい。いろいろの弊害を一つ除去したい。そのために二重指定をやっていくのであって、これは管理上の問題でありますから、これも御納得をしていただけるのではないかということなのです。
それから人権を無視した検査、監査の強化だとおっしゃっておられますが、そのために人を別に要求したわけではないのでございまして、私どもはお医者さんの多くの方々を信頼いたして、そうして医療をお願いしておるのでございまして、決して人権を無視して、検査や監査をしようという気持は毛頭持っておらぬ。ただしかし、医師会等と連携をとりまして、そうしてどうもあそこがあまりひどいというようなものがございますれば、その方に対して一つ調査をいたしたい。放任しておくということは、これは国庫の金も入っておることであり、被保険者の擁護のために、あるいは保険者の擁護のためにとらなければならないやむを得ない処置だと思うのですが、何でもしてはいかぬということについて、これも私どもはお医者さんのおっしゃる気持はわかるけれども、どうも絶対にしてはいかぬということも行き過ぎではないかと思います。問題は、今までの厚生省の官僚と申しましょうか、御信頼がどうも薄かった。そこでそういう方々にやられると心配だというような杞憂のことが私は多いのではないかと思う。数万に上る開業医の方々をわずかの人でねらい打ちで行くなどという大それた考えは絶対にないのでございまして、地方の医師会と御相談して、そうしてあそこがどうも不当に乱診乱費があるのではないかというような不正事実を一つ調べようということでございますから、よほどのマークされたものであって、あるいは御注意を申し上げて、それがどうもしばしば繰り返されて、これはどうも放置できない、こういうときにどうしてもしなければならないこれは監査であり、検査だろうと思うのでございます。それを一律に全部やっていかぬということよりも、やる場合にはこういう場合しかやらないというような、むしろ協力的な方向を私ども医師会の方にも申し入れておったわけでございまして、そういうこともよく一つ御納得のいくようにお話を申し上げれば、私は御了承を得られるのではないかと思います。今日の医療制度において全然無方針でやっていく、放置したままでやっていくのだということは、これは国費が投入されておるのであります。しかも、健康保険制度で被保険者の利益を擁護しなければならぬというような公けの機関です。その場合、相手方に全然検査、監査規定がないということになったならば、むしろその方こそ、なぜそれだけ一体擁護するのかという私は逆な事情と言いましょうか、そしりを受けるだろうと思う。現に検査して相当の違反もあがっている際なのでございますから、それをやるということについて、これはやはり医師会の御協力を得たい、こういうふうに私は考えているのでございます。さらにまた、今申し上げたのでございますが、二割の国庫負担を要求されるということは、これはもちろんお医者さんの方のお考えにも一つの筋がございましょうが、何といたしましても、一点単価をどうするか。今までお医者さんに御苦労をかけた。どちらかといえば、これはお医者さんのサービスといいましょうか、御努力によって、あるいはもっと極端に言えば、犠牲という言葉も当てはまると思います。そういう御協力によって健康保険財政を維持してきたと私は考えております。だからこの際一つ、一点単価の相当な引き上げをいたそう、こういって申し上げておるのでありますから、一点単価を上げるには、今のままをどうして上げたらいいのか。あるいは別のいい方法があるなら、その方法も取り入れるということがこの問題の解決の早道だ、そういうことについて医師会あたりから、あるいは個々の方々からでもけっこうでございますが、こういうようなあり方にしたいというような、むしろ建設的な御意見を厚生省としてはほしい、そういうことを一つまともに取り上げて、せっかく改正しようということでございますから、まあ十分な一つ、どこまで行くかどうかわかりませんが、お医者さんも御納得をしていただき、被保険者も御納得していただく、政府もまた、今までのように、三十億でなければもう出せないのだというような考えではなく、そこは一つ持ち合いで解決いたしたいというのが私のただいま考えておる方針の一端でございまして、とにかく、今までやるとも言わない、なかなかむずかしいからといって取り上げないことを今度思い切ってやるのだ、今のままでやるよりもっといいものがあればその方を取りたいということを申し上げておるのでございますから、私はお目にかかって一つよく御相談をすれば、私どもの気持をわかっていただけば、これは医師会の方々もおわかり願えるのではないか、御了解願えるのではないか、問題はどうしていくかという建設的なことがむしろ問題なんであって、今までの感情の延長だけで対立していくということは、全くこれは残念なことでございまして、この点につきましては、何らか一つ打開する方途を見つけたい、こういうふうに実は苦慮しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/73
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074・松澤靖介
○松澤靖介君 ただいま、きのうのあの医師会、歯科医師会の総決起大会の中の宣言の中の四項目についてお話しになりましたが、私は僣越でありますが、ここに大臣と討論あるいはまた私の所信を述べるというようなことは、いずれ機会もあることと存じますので、差し控えたいと存じます。しかしながら、大臣のおっしゃったことを私はつぶさに考えてみますと、非常に独善的なお考えのように私は考えられるのでありまして、ただ単に医師会員というものは、医療担当者というものは皆利己的な、非常な自分本位にのみ考えているような御意見のようでありました。私はそれを非常に遺憾に思うものでありますが、私はあの大会のあの気分を大臣がごらんになったならば、さぞかし、ほんとうに医療担当者のやむにやまれぬところの死の決起であるということをお考えになったのじゃないか、私はほんとうに厚生大臣にあの雰囲気をお見せしたがったのです。ただ単に、四項目のことについていろいろ議論をすれば、私はもっともっと反駁する材料を持っております。しかしながら、われわれ医療担当者であっても、あの集まった二万有余の会員であっても、ただ単に利己的な考えであんなお祭り騒ぎというか、ひまつぶしをやっておりません。ほんとうに日本の将来の医療を憂うるゆえに私はかくのごとき大会になったと考えております。もちろん、医療担当者だけの集まりでありません。大臣も御存じかもしれませんが、被保険者である労働組合の方々のこの健康保険法の改正案に対しましての力強い反対の火の手が方々で起っております。この姿をごらんになっても、果して妥当なる、たとえば、よりよいという今お言葉をお使いになったように承わりましたが、私はよりよいものではないと思います。われわれから見るならば、われわれというとはなはだ語弊があるかもしれませんが、非常ないい案とは考えておりません。悪い案としか思われません。もちろん、悪いとかいいとかは人の主観的な問題ですが、いずれにしましても、会員の多数あるいはまた、被保険者の皆さん方は、この法案というものはいい案とはだれしも考えておりません。だれしもが考えていない。いい案と考えているのは、厚生省の方々、あるいはまた、いろいろとお話してみますと、自民党の中にも非常に御無理ごもっとものような、わけのわからないままに理屈をつけている人もたくさんありますが、はなはだ私は遺憾と思います。皆保険というものを打ち立てるならば、この問題を解決しなかったならば、皆保険なんというものはほんとうに絵にかいたぼたもちであります。何らの私はほんとうの効果を上げ得ないと考えております。ただ単に、これは自民党の面子とか政府の面子とか、そんな問題によって私は考えるべきものじゃないと信ずるものであります。その意味において、この日本医師会の代議員会における幹部の総辞職なったあの結果、あるいは昨日のあの大会の結果ということも、私はこの際、あるいは大臣といたしましてもほんとうに認識して下すって、そうして私は民主政治というものは民意というものを聞かなければならぬ、民意に徹底してこそ初めて……。岸総理大臣臨時代理が、改むべきは政府であり、政治でありということを申されましたが、どこに改める意思があるのかどうか。私はさようのことは、岸総理大臣がお見えになった場合に御質問申し上げようという考えでおりましたけれども、いずれにしろ、私は今回のこの提案というものは、過去二回において流案になったというようなことをよくよくお考え下さったならば、少しは反省なさる余地もあるのじゃないか。ことに、午前中は、非常にあの審議会にかけなかったのは不当でないかと、そういうような議論がありましたけれども、いずれにいたしましても、私は政府というものはごまかし的にやろうとするような意思がどこかの頭の奥の隅っこかにあるような気がしてならないのです。ほんとうに正しいところの法案であったならば、正々堂々と出すべきは出して、そうして、こそこそこそというような、火事どろ式なああいう提案になさるということは、私は政治をやるに上において、民主政治をやる上において、はなはだ不可解に存ずるものであります。
今回のこの法案につきましても、医療担当者が死にもの狂いになってなお今後反対するでしょう。あるいは被保険者が反対しましょう。反対するなら反対しろ、勝手にしやがれというような心であったならば、また、御意見であったならば、果して今後私は医療行政というものが、あるいは日本の社会保険というものは、ほんとうにまっすぐに正しい方向に進み得るかどうかということを私は懸念するものであります。この意味におきまして、私が先ほど質問いたしましたのが、肝心の点に触れなかった、私の質問することがあまり飛躍しておったかもしれませんが、ほんとうに大臣といたしまして、あくまでもというお考えがおありかどうかということを少しお漏らし下されば幸いだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/74
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075・千葉信
○委員長(千葉信君) 大臣にこの際御注意申し上げておきます。答弁は質問に対して必要の範囲をあまりはなはだしくこえないようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/75
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076・神田博
○国務大臣(神田博君) お答えいたします。今の松澤委員のお尋ねの中で、どうも私の先ほどお答え申し上げたことが、あるいは言葉が足らないのかもしれませんが、お医者さんの方々を非常に私が信頼しないといいましょうか、誤解をしているといいましょうか、そういった意味のお話のようでございましたが、私はそういう気持は毛頭持っておりません。お医者さんについては、私は人並以上に信頼いたしておるつもりでございます。ただその一部の中に感心しない方があるということを承知いたしておる、そういう方のためにたくさんの方々が御迷惑のような、たとえば検査をするとか調査をするとかいうことになったことはまことに残念だという意味のことを申し上げたのでございまして、この点は一つ御了解願いたいと存じます。
それから今の健康保険法の改正案の問題、それから皆保険に伴いましてお医者さんとの関係を厚生省といたしましては、どうしても密接不可分のものにしていかなければならないことはもうおっしゃる通り同感でございますが、どういうことをしたらよいかということに実は日夜苦労をしておるようなわけでございまして、もちろん先ほど竹中委員の御要望もございましたように、御注意もございましたように、できるだけ一つ、お医者さん方にお目にかかる機会を得まして、なお一そうその認識を新たにいたしたいと考えております。
そこで最後のこの健康保険法案の改正案を、やはり通過させてやるということを一つやるのかという意味のお尋ねでございましたが、これはもう政府といたしましては、お医者さんの御反対というものは前々から承知でございまして、何とかして御了解を得たいという努力を続けながら今日に至っているわけでございまして、一方においては、この法案の趣旨というものを十分御了解願うような方途を講じながら、同時にまた、健康保険財政のこれは健全化、合理化をはからなければならないのでございまして、すみやかに一つ御審議を進めていただいて、この年度末などには、一つ法律として成立さしていただいて、財政の基礎を作りたい、こういう考えは変っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/76
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077・竹中恒夫
○竹中恒夫君 私の緊急質問の点はだいぶそれてきたようなので、ここで引き戻していただきたいと思うのですが、私は今健康保険法そのものの質疑あるいは議論をする意図ではないのであって、十七日における日本医師会の幹部総退陣の件と、なお昨日の保険医総蹶起大会に関連しての質問を申し上げているのであって、いま少しその線でお答え願いたい。健保法案の内容そのものにつきましては、私も相当反論の資料を持っておりますが、きょうは緊急質問をそういう範囲に限定いたしておきます。
そこで今、大臣の御答弁の中に、私は協力団体ですね、医師会が麻痺した場合において、年度末を控えた保険行政の上において、大いなる支障を来たしやしないか、こういう心配をしている。従って、格段の御配慮なりアドヴァイスがほしい、こういうことを申し上げたのですが、それに対する御答弁が、メモによってなされていると思いますが、健康保険の実施は、地方医師会がやっているのであって、中央の医師会がこういう状態になったからといって、大して支障を来たさないというような意味の御答弁がありました。私はこれははなはだ遺憾に思うところでございまするし、また、これは重大なる錯覚だろうと思う。平素はすべての問題を中央の医師会、歯科医師会にも責任を負荷しておきながら、今度の段階において、日本医師会がああいう状態になったときに、日本医師会にたよらないでも、地方の医師会でできるのだというような考え方なり、御答弁をなさるということは、私は平素の厚生省の官僚の方の考え方がきわめて不徹底である、便宜主義であるという感じを私は今受ける。そういうことではいけないのであって、あくまでも中央の日本医師会を中心にして、そうして地方の末端の医師会と密接なる連絡をとってやるということでなければ、私は今日のような状態が発生するということの一つの大きな要素であると思う。特にこの段階において、日本医師会がどうであろうともとおっしやいますが、かりに健康保険法の改正が通ったといたしますと、たちまち日本医師会の協力をあなた方求めなければならない。今の医師会なり、歯科医師会の改組となりますと、これは民法上の団体でございまして、そう早急に後任者を求めるわけに参りません。やはり一定の定められた期日なりを待って、臨時代議員会なり、いろいろな手続を経てやるわけでありますから、なかなか早急に事は運びません。その間にかりにこういうような法律が通ったとすれば、大きな私は混乱を来たすと思う。また、通らない場合におきましても、これに対する善後措置というものは、ずいぶん私は用事が日本医師会にあると思う。特に前々社会保険審議会あるいはその他の中央社会保険医療協議会なり、いろいろな会合が最近ひんぴんと行われますが、そのつどつど事前に厚生省は両医師会にいろいろと御相談なさらなければならない。下打ち合せなさらなければならない。そういうこともできないわけだ。あしたの医療協議会はどういう線で、どういうふうに持っていけばいいか、日本医師会の御意見を開きたいということは、過去においてたびたびあった。ところが、今の御答弁では、そういうことはそう大して支障はないのだという意味に、私はとれたのですが、それでは日本医師会、歯科医師会というものに対しまする御当局の信頼感なり、あるいはわれわれから申しますならば、御当局の考え方が非常に私、けしからぬ、便宜主義だ、利用するだけして、混乱したときは知らないのだということではいかぬと思う。その点私はいま少しまじめと申しますか、深刻に考えていただきたいと思うのです。
そこで次の私の質問点は、これは野澤先生もおいでになっておりますが、付帯決議なり、修正案については、次の機会に審議されると思いますから、やはりこれは大臣にお聞きしたいのですが、この従来の医師会、歯科医師会のあり方では、どうもこの付帯決議にありますような「国民医療の普及発達」の上からいって、あるいは「公衆衛生の向上」の上からいって、どうも都合の悪いところがあるということで、衆議院でも新しい法制化を考えられておられるようですが、これは別といたしまして、かねがねから厚生当局も、今の日本医師会のあり方はどうも工合が悪いということの何らかの考え方があられるように、私は過去において仄聞しているわけです。ところが、われわれからいいますならば、民主主義の今日において、官制の医師会、歯科医師会というものをお作りになるのでは、これは困るわけだ。また大きな摩擦ができると思うのです。従来、戦争前には、医師会令、歯科医師会令というものがございまして、比較的民主的なものができておりました。戦時中は医療保護法によってかなり官僚統制の濃い医師会、歯科医師会ができた。厚生省は今日どうしても今の状態ではいけないから、一つ両医師会を改組と申しますか、作り変えようという考えが、議論が出ているということを聞いておりますが、どういう方向に厚生省は考えておられるか。この付帯決議は、衆議院の管轄でございまするからして、これに触れるのでなくして、厚生省としては、医師会のあるべき姿はどういう姿でいいのだということを考えておられるかということを、この日本医師会がもめたこの機会にお尋ねするわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/77
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078・神田博
○国務大臣(神田博君) 最初の第一点でございますが、私の舌足ずといいましょうか、お考え方は、私、竹中委員と全く同感なんでございますが、ただ、年度末を控えて支払いをどうするかというような意味に受け取りまして、府県の方でとりあえずやっていると、そこですぐには目立たないのだという意味のことを申し上げたのでありまして、これは一日も早く一つ中央の中枢部のこれはもう幹部の成立をみないと、これはもう何かにつけまして、私ども行政上不便に思うということは、申し上げるまでもないと思います。われわれとしては、一日も早く健全な一つ姿を現わしていただきたいと、そういう厚生行政についての連絡の機関として、十分な御活躍を期待している、こういう事態でございます。
それから第二のお尋ねでございますが、今日のこのこういった関係からして、日本医師会あるいは歯科医師会等の健全な発達のために、何か厚生省として法制的な考え方を持っているようだが、どういう構想かというお尋ねのように承わったのでありますが、これはだいぶ前から今の民法上の法人として、そうして発足したままでいいか、もっと何といいましょうか、国家的な待遇を与えるような仕組みにしたい。たとえば、保険問題にいたしましても、医師会を対象として、行政の一部もおまかせできるような強力なものにしたらどうかと、こういうような声がございますので、できますればそういうようなことをもお願いできるような団体にいたしたい。しかし、その場合において、天下り式な団体を作るというようなことは毛頭考えておりません。これは十分一つそういう役目をお持ちになると同時に、なお、医師会としての十分なる仕事をお持ちになっておられるわけでございますから、医師会の幹部と十分お話し合いをして、そうして両方納得した上でそれを法制化しようと、これを対象として、行政上おまかせできるようになればおまかせもしよう、日本の医療制度の発達のために一つ御努力できるような団体のできることを念願している、こういうことでございまして、具体的にそれじゃどういうことになっているかと申しますと、これは今調査を命じているような段階でございまして、それ以上詳しいことを思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/78
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079・竹中恒夫
○竹中恒夫君 続いて大会について一、二お聞きしたいと思うのです。昨日の大会におきまして、私時間をおそく参りましたので詳細には承知いたしておりませんが、あの空気から考えまして、昨日集まられました保険医の方々は、今回のこの改正案なるものが通る、あるいはかりにこれが次の機会まで延ばされて、また審議になるということも考えられますが、いかような事態になりましても、昨日の決議なり空気から申しますというと、保険医大会をわれわれは何回でももって、正しい医療保険を守るのだ。これは大臣と考え方は別でございまするが、信念的に何回でも大会を持つのだというような、全く緊迫した感じを受け取ったわけです。これはゆゆしい問題でございまして、全国からあの多数の、二万五千の医師がやってくるということになりますと、保険診療だけでなしに、一般の診療にも事欠くというようなことも考えられますので、医師諸君は決して好んでやっておるわけではない。御承知のように、医師にはスト権、罷業権というものもございませんし、かりに——総辞退のことが三年前にございましたが、いろいろ社会的な一方的な間違った批判によって相当われわれといいまするか、医療担当者はこの問題があってから必要以上に自粛と申しますか、自戒しておるわけであります。ところが、今申し上げましたように、この問題が初志貫徹されるまでは、あくまでも何回でも大会を持つという空気だ。それから今度はいま一つ、申し合せとか何とかそういうことでなしに、きのうあの会場をあっちこっち歩いておって聞いたのですが、もう日はささないのだ。こういう健保法が通るのならば、われらはいさぎよく保険医をやめてもいいのだと、まじめな、真剣なと申しますか、三十年間一生懸命健康保険に努力してこられた人がそういう悲痛なことを僕らに洩らしておる。これはおどかしとか何とか、単に群衆心理でそういう決議をしたというのじゃなしに、実に深刻な場面をきのう見てきました。こういうような場面を考え合わせますと、参議院におきましては、衆議院から送付されたこの案件を審議する取扱い方は、十二分に審議時間と、そうして討議を尽した上でないと、これは私あとで容易ならぬ問題ができる。法律を作ることは多数党によってこれは容易でしょう。法律ができたあとの混乱の責任が厚生大臣に起きて参ります。結局国民が大きな迷惑を受けることになるのですから、そうした点についても十二分な御配慮を私はいただきたいと思うのです。
そこでなお重ねて、これははなはだこういう席上では私慎しむべきことであると思いますが、率直に申し上げますが、きのうの大会に、国会に来られた陳情団の団長さんと申しますか、副団長さんと申しますか、その方の御報告の中に、日医の会長さんがもうやめられたのだ、あの人と同県の方が参議院の最高責任者でおられたから、そのお二人の間には一つの暗黙と申しますか、黙契と申しますか、言葉は私よく存じておりませんが、一つの話し合いがあったのだ、あるいは下賤な言葉で言いますならば闇取引があったのだ、ところが、小畑会長がやめられたのだから、そういうことはもう白紙に戻ったのだ、だから参議院も新たにスタートしてこれから審議するのであって、従来は何か既定の方針があって、はめ込んでいくような考えであったがそうでないのだというような御報告がきのうの大会で、公開の席上でなされた。私はこれは単なるうわさとして聞き流すにはあまり深刻な話であり、うがち過ぎた話だと思うのですが、そうしたような空気も実は流れております。おそらくそういうものはないのだと大臣はおっしゃるだろうと思いますが、そういう報告があったということは事実なんです。そういう点から考え合せまして、私は昨日の大会が三たび、四たびまた開かれるようなことにならないように、一つこの委員会は十二分な審議をして、大臣のおっしゃるように、医療担当者が得心がいくような審議経過をたどってものをきめていただきたいということを最後に申し上げまして、私の緊急の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/79
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080・木下友敬
○木下友敬君 ちょっと大臣に質問を申しますが、先ほど大臣は、松澤委員の質問に対してお答えの際、大演説をなさいました。私どもは大臣が今、日本医師会のあの大会の決議を片端から説破して論難していかれました態度には非常に不満を感ずる。あの内容は、今日以後われわれが審議しようとするこの議題の中に十分盛られていて、わずか五分や十分大臣がそこでおしゃベりになったって解決する問題でない。これから私どもはあの内容を審議していこうと思うから、そのことについては申し上げませんが、大臣のただいまの態度というものは非常に僕はよろしくないと思う。少くも今指摘されましたように、外郭団体であり、協力団体である日本医師会のあの騒ぎでございます。現に一昨日、幹部が不信任されたということは、あれは八十二票対五十一票という大きな差で不信任になりましたが、それも健康保険問題が重大な危機に立っておる。なお、翌日には全国の歯科医師、医師の大会がある、この重大な場所にきて不信任するということはよくないということを、われわれはこれは非常に説破したのであります。何とかしてまとめようとして一生懸命やっても、あの大きな差で不信任をされたという事実を大臣はよく見てとらなければいけない。ただここで四カ条の決議は自分の意思と反するのだというようなことでこれが片づくように思われることは非常に残念に思う。ことに、午前中は、この法律案を社会保険審議会にもあるいは社会保障制度審議会にも出さないで、国会に出したのはどうかということで、非常な論議を起しております。そうしてなおかつ、今までそういうものに諮問したことの材料をみんな集めて、それによってこれからの審議を続けるかどうかということを相談しようじゃないかというような重大な危機に立っておる。もし今まで審議会にかけたものよりも、今度のものが重大であって、そして重大なものがかけられないで、重大でないものがかけられておったというような事実になるなら、これは大へんな問題だというようなことになっておるとき、しかも外郭団体の医師会、歯科医師会ではこういう重要な問題が起っておるとき、大臣があのような態度をとられるということは、これは従来厚生省がとってきた今までの厚生行政に対する態度以上のものであります。今まで厚生省と医師会とが非常に仲がおもしろくなかったのを改革したいというふうに大臣が言われたと思いますが、それとは全然違っておりまして、大臣はきわめて挑戦的でありまして、今までの歴代の大臣よりも最も官僚的であるということを私は考える。そういう考えで今度の健康保険問題を片づけていこうと思われることは、これはとんでもないことなんですよ。ことに、私はその中で聞き捨てならないことは、医者はやっておればいいのだというようなお考えのようであって、医者がそんなことまで言わぬで、政治的な、たとえば一部負担の問題などはこれは政治家にまかしておけばいいじゃないかというようなお説であったように思いますが、間違いであったらば、それは訂正してもいいけれども、もしそういうようなものであったらこれは大へんです。政治こそこれは現実でなければいかぬと思う。診療の担当者あるいは被保険者というものが、一番社会保険の問題の現実に直面しているわけです。それを十分に厚生省、特に大臣はよく御存じでなければならないのでありまして、それを知らなければ政治はできないはずです。私は、厚生省が机の上でお考えになるよりも、政治というものはもっと現実性のあるものでなければならぬと思うから申し上げるのでございまして、身をもって体験している診療担当者あるいは被保険者その人たちに対して、政治のことはわれわれにまかしておけというようなことで、医師会が一部負担のことを主張したことを御非難になるというような態度なら、私はもっと考え直さなければならないと思うのでございます。大臣の御所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/80
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081・神田博
○国務大臣(神田博君) そういう意味で申し上げたのではないのでございまして、もしそういうふうに受け取られましたならば、私の言葉が足らぬと思いますから、これは取り消してけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/81
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082・木下友敬
○木下友敬君 そう簡単に取り消すと言われても私は承知できない。それはあなたの考えのしんにあることが言葉に出てきたのですよ。この重大な、三回目に提案されておるこの健康保険の改正案を今度こそはとあなたも思っておられるでしょう。また、あなたもその責任があるから、どの一つでも大事な案だということを主張なさったのでしょう。しかし、現に衆議院においてはあなた方が最も大事だと思っておられることが修正せられて、のけられたじゃありませんか。どれでも大事なものだと思っても、のけられるということは、あなたの考えておることと、厚生省の考えておることが万全ではない欠点があるということを示しておる。それなのに、自信満々として、この日本の医療制度、ことに、現実のあすからのわれわれの医療のあり方について大きな変化が起ろうとしておる十七、十八日のこの両日の状態について、あまりあなたは軽く見ておられる。官公労のストの場合にはスト権を持っておるからというので、ついには政府は折れている、われわれはスト権を持っておらない。われわれではございません。日本の医療の担当者にはスト権がないからというてあまり軽くなめることは間違いである。しかも、医療担当者だけではない、現実に病気をしておる者について、これはあとで論じなければならないことであるから言わないけれども、さっきの三十円の負担ができないということはおかしいと、ああいう考えおられることは、私はこれは断じて許されないと思う。社会の実情を知らないのです。もし医療担当者が政治に関与することができないならば、くちばしを差しはさむことができないならば、そういう大臣こそ医療関係にくちばしを入れることはいかぬと思う。どれほど実際の医療面において、被保険者なりあるいは、医療担当者が困っておるかということをもう一回私は考えていただかなければ、あまり簡単に取り消すということで、そういうことでこれだけの委員を前にして、また傍聴者もおられる。あなたの言われたことを、おそらく傍聴者の中にはお医者さんもおられるのじゃないかと思う。あるいは被保険者の方もおられると思うけれども、それを簡単に、もし今日の日本医師会の人が受け取ったとすれば、あるいは勤労者の方が受け取ったとするならば、それこそ私は今まで以上の問題が起ってくるということを覚悟してもらいたいと思う。御答弁がなければ御答弁がなくてもよろしゅうございますけれども、私はもっと慎しんでものを言ってもらいたいということを御注意を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/82
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083・神田博
○国務大臣(神田博君) いろいろ私の発言したことに御注意ちょうだいした次第でございますが、これはありがたくちょうだいいたしますが、この健康保険法案の継続審議の問題につきましては、こちらの参議院の方はようやくきのうきょうというようなことでございまして、ほんの過程でございまして、いろいろ私の真意が尽せないことで、あるいは御不満をちょうだいしたかと思っており恐縮しておるのでございますが、もともとこの法案は御承知のように、鳩山内閣の際にお出しになりまして、そうしてこれを石橋内閣で継続しようかどうかということで、実は御相談があったわけであります。閣議に御相談がありましたゆえに、これを衆議院ではよく御説明申し上げております。いろいろ長いいききつがあって、そうして研究の結果、二十五国会に出して継続審議のままなっておる、この内閣としては取り下げてもう一ぺん考え直して出すか、あるいはこのまま一つ、石橋内閣は鳩山内閣の延長だというふうになっておるのだから、そのままお願いしたい。時間も非常になかったものですから、むしろ国会の良識に訴えていろいろ異論のある法案なのだから、政府としても率直に一つお考え方を申し上げ、また、お聞きもして、健康保険財政もああいうような状態なんだから御審議を願おう、こういうような淡々たる実は気持で御審議を願う、こういうことに実はなっておりまして、私衆議院の方におきましても、政府といたしましては、これにかわる代案がなかったものだから、時間的余裕もないし、そこで内閣の継続というような意味で御審議をお願いしたので、国会の権威においてこれをいろいろと御検討願うことは、これはもう当然なことでございますけれども、政府としても今言ったようないきさつでございまするからよろしくと、こういうような実は態度で御審議願って参ったわけでございます。ですから、厚生省でいいと考えたことが衆議院で修正になったじゃないか、こういうことでございますが、これも今私が申し上げた気持からいたしますければ、国会の権威で私ども御審議願ってよくなったのだ、こう考えております。また、その案が参議院に参ったのでございますから、参議院といたしまして十分な御審議を願って、そうして両院制度の妙味を発揮していただくことが、私どもとしてはこれはもうけっこうでございますので、決してこの法案を今木下さんが御非難なすったような気持で、実はお願いしておるのじゃないということを一つ御了解願いたいのでございます。用語等においてお気に召さぬ点がございますれば、十分今後一つ気をつけまして、そういうことのないようにいたしたいと考えております。重ねて申し上げるのでございまするが、何といたしましても、長い間懸案になっておったことであり、それから提案した内閣が変っておりまして、私どもといたしましては、その後また岸内閣になっておりますので、今いったような謙虚な気持で一つお願いいたしたいと、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/83
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084・山本經勝
○山本經勝君 大臣にお伺いを申し上げたいのですが、先ほどから質問の要点をいろいろと伺っておりました。
そこでまず第一点伺いたいのは、この医師会の代議員会ですが、評議員会ですか、これで執行部が総辞職をするに至った。ところが、この問題が直接厚生省の云々というよりも、むしろ医師会が——御承知のように全国にある開業をなさっているそれぞれのお医者さんが、自主的にしかも民主的に同業者の立場から集まって作られた団体だと思う。そこで、その団体がしばしば大臣も聞かれておると思いますが、今度の健保改正という問題に対して反対である。しかも、自分自身の長い経験に基いてこうあるべきだという意向でもって結集された意思が、統一された日本医師会なり、歯科医師会なりという団体によって表明されてきたと思うのです。ところが、これに対して、厚生省の方から、今大臣の話を伺ってみましても、前後数回にわたっていろいろ幹部の方々の間にお話になっている。そうしますと、厚生大臣と、日本医師会の幹部の方々のお話し合いになったことと、一方下部末端にある会員の皆様のお考え方との食い違いが現われたのだ、こういうふうに私は承わっている。そうしますと、厚生大臣の方は前後四回ばかりお話になっているようです。それでむしろ自主的にかつ民主的な大衆団体である医師会の意思を厚生大臣のお考えのように引っぱろうとなさったというような印象を受けるのです。これは私医師会の、直接団体の実情を知りませんが、しかし、今の話を総合してみますと、そういうように受け取れる。そこで、なるほど厚生大臣としては、すでに懸案になって長い法案でありますから、早く通したいという御希望はわかる。しかし、医師自体の実情にそぐわぬ点が非常に多いし、健康保険制度の基本的な考えの上に立ってどうしてもこの改正ではうまくいかないという見解があるというところへもっていって、大臣の方からいろいろな何といいますか、反対運動に対する鎮撫工作をなさった。それを受け入れた一部の幹部に対する医師会の強い反対があのような執行部の総辞職というような形になって現われた、こういう筋のように思われるのですが、大臣、そういう点につきまして、直接大臣の所管のもとにある団体ではないが、医師を業とする人々に対する業務上の監督、指導権は大臣が持っておられる。しかし、団体は自主的な大衆団体である。そうしますと、そこへあまり政府の立場にあられる大臣の方から介入されるというと、こういう不測のうまくない事態が起ると思うのですが、この点に対する大臣のお考え方を明白にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/84
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085・神田博
○国務大臣(神田博君) 山本委員のお尋ねでございますが、今おやめになられた日本医師会の幹部の方々が私が御了解を願おうと言ったことに御同意をなすったというふうにお考えでございますれば、そういう意味で私さっき申し上げたのではないのございまして、私が就任いたしまして、医師会の方から、お前は就任したが、健康保険の問題は長いことわれわれがこういういきさつで反対しているのだと、そこで反対をしている事情を外部から来たんだからわからぬだろうが、一つよく承知した上で善処してもらいたいという陳情を最近受けたわけであります。これは昨年の暮れでございました。それから今年の春になりましていろいろ私も研究いたしまして、先ほど木下委員にもお答えしたような事情でいろいろ健康保険の問題を調査したのだが、鳩山内閣、石橋内閣の延長内閣として継続審議願っているままのものをそのまま御審議願うということになった。しかし、これは十分国会の権威で一つ諸君の希望のあるところはまた適当な方途も見出せるだろうから、いろいろ厚生省対医師会、また、健康保険等の問題、いろいろ全体について一つ調整といいましょうか、今までのような対立関係でなしに、懸案を一つ全部解決をいたしたいから、そういうつもりで自分は一つ厚生行政を、医療関係の方を考えていきたいから協力してくれぬかという申し入れをしたわけでございます。そこで医師会の方では、それは今までなかったことだと、そういうふうに御熱心にやってくれるというなら、自分たちの方としては非常にうれしい。しかし、健康保険の方は政府の都合でそうなっても、自分たちの方ではなかなかそれは賛成できないと、もし賛成するようなことがあっても、自分たちの下部の方が反対なんだから、それは間違えてもらっては困ると、こういうことをしばしば言われておりまして、決して厚生省の関係において医師会が同意をしたとか、片棒をかついだとか、そういうことで私は問題になったんじゃない、こう思っております。ということは、よろしゅうございます、どうしますということを私は承知しておりませんから。そこで、きつき竹中さんのお答えについても、その事情がまだお目にかかっておらないから詳細わからないということを申し上げたんで、それから今そういったような状態に政府から何か発言するということは好ましくないからそれはやらない。早く一つ団体の幹部ができて、そしていろいろ御相談相手として協力していただきたいことが多いから、幹部が新しく就任されることを、新しくできることを自分たちは待っているのだと、こういう意味のお答えを申し上げたんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/85
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086・山本經勝
○山本經勝君 重ねてお伺いをしたいのですが、医師会からの大臣に対する陳情と言われたのは、先ほど健保の改悪に対する反対、それから一点単価の引き上げについての要望、そういう二点を先ほどお話になったんですが、それに関連をして木下委員からの御質問の中で、参議院の某幹部がこうした医師会、歯科医師会等関係団体の要望なり、あるいは決議に対して何らか裏で取引をしたという言葉がありました。この取引という言葉は表現上適当でないといたしましても、とにかく大臣のお話を伺っても、一応医師会、あるいは歯科医師会等との幹部とのお話し合いをなさっている。そこで、非常に多くの疑惑がそこにやはり集中されていると思うのです。で、むしろ私はそういう疑惑が事実かどうかは別問題として、少くとも健保に関する改正に対する反対、それから一点単価の引き上げ、こういう点について厚生省というよりも、これは自民党の政調会か社会部会だったか、たびたび改正問題をめぐる政策的な意見の発表が新聞を通してあった、こういう問題等やはり思い合わしていくというと、そこに深められていく疑惑が一そう大きくなっていくと思います。そういうような行政担当者であり、しかも、厚生行政の最高責任者である厚生大臣という立場から、むしろ民主的な大衆団体である医師会、歯科医師会等の自主的な運動を規制しようというお考え方の上に立ってそういうお話をなされたというやり方に対して、私は問題があるように感ずるのですよ。今お答えになっていただいた言葉とは多少食い違いがあると思う。ですから、私の知りたいのは、厚生行政を担当する最高責任者である厚生大臣がその業務上の監督指導のもとにある個々の業者に対する問題で、それが自主的に作った団体がやっている運動あるいは陳情、要請等に対して、そうして自分の考え方を押しつけるというようなやり方がどうかと思うということなんでありまして、その点をもう少し明白に解明していただかないと理解に苦しむのでございます。お願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/86
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087・神田博
○国務大臣(神田博君) 今山本さんのお話なんでございますが、別に私の方は医師会の方に押しつけたというようなお話はないのでございます。医師会の方から先ほど申し上げましたように、陳情がございまして、まあそれに対して御回答申し上げた、こういうようなことでございまして、その間そう何回もお会いしたわけではないのでございまして、法案の継続審議をしていただくという、きまったあとでおいでいただいて、お目にかかってお話して、どうも御期待に沿えなかったが、いろいろ期待に沿うつもりで考えたんだが、いろいろの事情があって、やはりこの案をそのまま御審議願う、こういう方針になったんだ、そこで政府の方としては、一つ国会に十分御審議を願う、そういうような気持なんだから、こういうことをお伝えいたしましたので、どうしても賛成してくれというような工作は一つもしておらないのでございます。反対のことはよくわかっているからということで、また、医師会の方もこの案を賛成しろと言われても、自分たちは下の者が反対だということはそれは承知をしているから、それはだめですよということを最初から聞いておりますから、これは別に誤解があったとは思わないのでございますが、それが政府との連絡がいいとか悪いとかいうような新聞記事で、ああいったような不信任とかが通ったというふうに聞いておりまして、新聞記事以外に実は私はお聞きしておらないのでございます。そこで事情がよくわからないということを、ちょうどおいでいただいたとき私は留守にしておりましたものですから、お会いできなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/87
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088・山本經勝
○山本經勝君 さらにお伺いしたいのでございますが、先ほど大臣は竹中委員それから松澤委員等の質問に対してお答えになった中で、その医師会や歯科医師会等の団体が反対運動を強力にやっている、これは木下委員の質問にもありましたが、その行き過ぎが指摘された、行き過ぎと言われるのはどういう点なのか、その点をもう少し懇切に御解明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/88
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089・神田博
○国務大臣(神田博君) 行き過ぎという意味じゃないので、私は会いたかったという意味のことなんです。この前、私お会いしたがったという意味のことでありまして、今でもよくお会いして事情を聞きたい、そして政府の考えていることを一つよくお話ししたい。また私もよくお聞きしたい。こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/89
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090・山本經勝
○山本經勝君 そこで話がちょっと変りますが、先ほど御答弁の中で、いろいろお話になった、で、今のお話で、結局、私は今の医師会、歯科医師会等が大きく大衆運動を起してがたがたやるよりも、むしろそれは政治的な処理にまかせるべきであるというような考え方を持っているということを、先ほど木下委員に対する御答弁ではなさったのですが、今はそうではなく、ただ単に事の前に会いたかったのだというだけなんです。その間の食い違いがかなり大きくあるのですが、そのときの答弁の中に、病人は自分のからだのことだからみずからがやるべきだという言葉も入っていた。私はこうなってきますと、厚生大臣に対して、健保が、健康保険法が一体何のためにあるのかということさえも疑いたくなる。どういうふうに御理解になってるかというようなことも疑いたくなってくるわけです。そこであまり広い質問では仕方がないと思いますが、第一番に、今度の健保で問題になった多くの点がございますが、単に医師会等の医療担当者の希望からいえば、この改悪反対ということ、一点単価の引き上げ等が要求されている。一方、被保険者の側からは、患者の、被保険者の負担の増大は反対だと言っている。そういう状態の中で、健保に対する改正を、時限を切って、どうしても今月一ぱいにはあげねばならぬという無理な工作があるように受け取れるのです。そこでしかも基本的な考え方として、病人は自分のからだのことだから自分でそのことはやるべきだというような主張に至っては、まさに受け取れないのですよ。そこで一体健保がどうあるべきかという姿については、大臣の方からもう一度重ねて御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/90
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091・神田博
○国務大臣(神田博君) 健保のあり方につきましては、これはいろいろ御議論があるかと思うのでございます。ただ私が申し述べましたことは、健保といたしまして十分な財政力も持っていかなくちゃならぬ、それから合理的な運営をしなければならぬ、そういう意味で申し上げたことでございまして、今日非常に財政で困っておる、この標準なんか上げてもなかなか足らぬ。国庫の方から一部入れても足らぬというような際でございますから、被保険者の御病気になった場合も御自分のからだがお大事だという意味で申し上げたので、多少のものを一つお持ちになっていただいて、非常に負担が増加するのですから、これは無理なこともおありと思いますが、しかし、これは程度の問題であって、無理な方と無理でない方とおありだと思います。しかし、何といっても、からだが大事なのでございますから、その意味において少し負担をしていただく、そうして早くなおしていただきたい。こういう意味でお答え申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/91
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092・山本經勝
○山本經勝君 大体、大臣の方でお答えをいただいて参ったのは、第一点は、今の医師会の大会の状態を中心にして、いわゆる厚生行政に直接関係のある、外郭団体ではこれはなくて、自治的な団体なんです。で、重ねて申すようですが、医師会並びに歯科医師会等医療業務に携わる機関は、いわゆる個々の業務について厚生大臣が監督指導する権限がある、しかしながら、医師会、歯科医師会等の団体を自由に動かすことにはなっておらぬ、ところが、先ほどの木下委員の質問に対する御答弁の中では、少くとも医師会、歯科医師会等の団体を、もっと厚生省の、あるいは政府の政策と一致するようにまとめていきたいという希望が述べられた。そうなりますと、やはり悪い言葉でいえば御用団体といいますか、そういう形にもなりかねない、ましてやもう一歩突き進むというと、戦時中にあったような統制団体にもなりかねない、で、根本的にこうした医療機関の全国的な組織を厚生省の政策と結びつけるようなやり方というものは、これは当然なさるはずもないし、またできもしないと思うのですが、要望の中に答えて言われたのを引用するなれば、少くとも現在のような医師会でなくて、いわゆる政府のやっている医療業務をおまかせできるような組織にしたい、こういうような希望が述べられた、この辺の真意をいま一度明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/92
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093・神田博
○国務大臣(神田博君) 今の日本医師会が外郭団体であるかないかということと、将来もっと公的内容といいましょうか、厚生省の仕事も代行できるというような資格を持つ意味においての団体との相違の意味を申し上げたわけでございまして、今の医師会も厚生行政に御協力願っている唯一の団体だということは私考えておるわけでございます。そこでいろいろお願いしているわけでございますが、ただ厚生省の立場として、いろいろ公的の仕事をおまかせするということになりますと、行政上公的な資格といいますか、今の民法上の団体だとそういうことができない、そこでそういうような御要望があるという前提で、もしそうだとすれば、そういうような団体に切りかえて、そうしてお願いするものはお願いする、要望に沿いたいという意味なのでございまして、政府の方からこうしたいという方は私は弱い意味だと思っております。言いかえますれば、医師会の方で、今の厚生行政が官僚行政に堕するから、それを一つセーブしたい、そこで自分たちにまかせろという声がおありだったとすれば、今の民法上の団体としては、これを十分していただくには不便だ、そこでそうだとすれば、新しい制度のそういうことを担当するにふさわしい団体を作っていただく、その作り方については、今の医師会の方々の意見を十分入れたい、また、政府の方でも協調しまして、そうして有無相通じたりっぱなものが御希望であれば、そうしたいのだ、こういう意味でありまして、決してこちらから押しつけるというような考えで申し上げておるのじゃないので、その点誤解のないようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/93
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094・山本經勝
○山本經勝君 もう一点だけ伺っておきたいのですが、今、天下り的な団体を作るという考えではなく、かつ協力団体として従来も密接な関係を持っておるから、要望があるなれば、法制化した公法人みたいな形において作るというお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/94
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095・神田博
○国務大臣(神田博君) その趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/95
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096・千葉信
○委員長(千葉信君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/96
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097・千葉信
○委員長(千葉信君) 速記をつけて。
それでは法案の審査に入りますが、審査の都合上、衆議院における修正点について先に御質疑をお願いいたします。御質疑のある方は順次発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/97
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098・榊原亨
○榊原亨君 議事進行。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/98
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099・千葉信
○委員長(千葉信君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/99
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100・千葉信
○委員長(千葉信君) 速記を始めて。
〔山下義信君「私も議事進行で発言があります」と述ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/100
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101・千葉信
○委員長(千葉信君) 委員長は木下君に発言を許しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/101
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102・木下友敬
○木下友敬君 衆議院で修正されました部分について、まず一番初めに、この二枚つづりのこれが来ていますのをごらんいただきましてお尋ねしたいのですが、「政府提案の健康保険法等の一部を改正する法律案は国民全部の要望でありまして、国民皆保険を実現するに当り」とこう書いてございます。これでちょっとお尋ねしたいのは、国民全部の要望であるというようにきめつけてありますのはどうでございましょうか、国民の全部の要望であるということの証拠を一つあげてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/102
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103・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) てにをはがはっきりいたしませんので、おそらく混同されたと思うのですが、これは「国民全部の要望であります国民皆保険を実現するに当り」と、こういうふうな意味で申し上げたつもりでございますから、御了解願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/103
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104・木下友敬
○木下友敬君 ちょっと待って下さいね……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/104
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105・千葉信
○委員長(千葉信君) 暫時休憩いたします。
午後四時三十三分休憩
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午後四時三十六分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/105
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106・千葉信
○委員長(千葉信君) 会議を再開いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/106
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107・木下友敬
○木下友敬君 今野澤さんからおっしゃったことは、私はっきりわかりませんでしたが、謄写版で私見まして、「国民全部の要望でありまして」と読んだもんですから、政府提案の健康保険法等の一部を改正する法律案は、国民全部の要望であるというように断定しておられると思ったから、それは間違いだというふうにおっしゃったと思いますが、今速記録をもらいましたら、これまたやっぱり「国民全部の要望でありまして」と書いてありますが、この点の一つ御説明を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/107
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108・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 大へん恐縮でありますが、私としましては、「国民全部の要望でありまする国民皆保険を実現するに当り」と、こういうふうに発音したつもりなんでありますが、何せ正確な標準語でないものですから、あるいは速記の方で間違えたと思いますので、もし間違えておったらば、ぜひ訂正をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/108
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109・木下友敬
○木下友敬君 野澤さんがそういうふうに言われると非常に私困るが、これは大義名分上、私も議事にあまりなれませんから、こういうところへ衆議院の委員長が来て、発音が悪かったから、これはよろしくと言われれば、折れなければならないものかもしれませんけれども、衆議院と参議院というこの二つの二院制のある場合、衆議院でりっぱに可決されてきたこのものが、参議院で委員長がここへ、委員会へ来て訂正すればそのまま取り扱ってもいいということは、私は非常に疑義があると思います。もう一ぺん衆議院にお返しして、もう一ぺん衆議院で訂正してここへお出し願わぬと、これはこのまま受け取るということは、どうも議員としての責任を果し切らないと思いますから、この点について一つ御答弁を願うし、また、お教えを願いたい。そういうことで通していいものならば、これからの議事というものはそういう線で、われわれの寄り合いのようなお話で、ああそうか、それじゃこちらの方をやめるということでいけるが、どうも議会というところはそういうものでないという、そういう理解のもとに私はまかり出ているのでございますから、どうか一つ、責任を明らかにしてもらいたい。なおかつ、私の申しておきますのは、私の見解は重ねて申しますが、この速記録を尊重する意味において、それから衆議院の決議というものを尊重する意味において、どうしてもこれは一ぺん衆議院まで返してきてもらわぬと、このまま参議院では議することができないというような結論に達することを重ねて申し上げて、念を入れて申し上げて御返事をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/109
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110・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) ただいまの速記録、私は参議院だけの速記録だと承知いたしておりましたものですから、衆議院の方へ今調べに行ってもらいました。決してそういうふうな意味で発音したのじゃないのですから、こちらだけならば御修正を願いたい、こう申したのであります。もし衆議院も同じようになっているということになると、入れ歯ばかりの私の発音でありますから、これは重大問題だと思いますので、後ほど調査した上で申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/110
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111・木下友敬
○木下友敬君 これは、私これがきまらないと、どうも先の質問に入られぬように思いますが、いや本当に言いにくい……ちょっと速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/111
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112・千葉信
○委員長(千葉信君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/112
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113・千葉信
○委員長(千葉信君) 速記を始めて。
本日は、これにて散会いたします。
午後四時四十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01119570319/113
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