1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月二十七日(水曜日)
午後一時四十二分開会
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出席者は左の通り。
委員長 千葉 信君
理事
高野 一夫君
榊原 亨君
山本 經勝君
早川 愼一君
委員
勝俣 稔君
草葉 隆圓君
紅露 みつ君
田中 茂穂君
斎藤 昇君
寺本 広作君
横山 フク君
吉江 勝保君
松澤 靖介君
木下 友敬君
藤田藤太郎君
坂本 昭君
山下 義信君
田村 文吉君
竹中 恒夫君
国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
政府委員
厚生大臣官房総
務課長 牛丸 義留君
厚生省保険局長 高田 正巳君
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本日の会議に付した案件
○健康保険法等の一部を改正する法律
案(山下義信君外四名発議)(第二
十五回国会継続)
○健康保険法等の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○船員険保法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○厚生年金保険法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・千葉信
○委員長(千葉信君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会参第一号)、健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)、船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第五号)、厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第六号)、以上の四案を議題といたします。
岸総理大臣の出席を要求いたしておきましたところ、本日は予算委員会へ出席するため社会労働委員会には出席いたしかねるとの回答がありました。重ねて委員長から委員会等の日程もあり、ぜひ本日出席されるよう再度要求いたしましたところ、ただいまいかんとも出席いたしかねるという再度の回答がございました。御報告申し上げておきます。
ただいま申し上げました四案を議題として御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/1
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002・松澤靖介
○松澤靖介君 昨日大臣に御質問申し上げたのでありますが、それにつけ加えまして、なお御質問申し上げたいと思います。昨日お尋ね申しました今回の提出されましたところの健康保険法等一部改正法案なるものが、保険医療組織に対しましての合理化を行なって、そうして健康保険制度が高い医療水準を維持するために提案されたという説明がありましたので、私は昨日もこの点につきまして、この医療組織の制度の合理化という問題、すなわち保険制度の合理的運営といいますか、それらのことについての一体いかなるものが合理的運営であるかということをお尋ねし、かつまた、現行法によっては合理的運営ができないのかどうかということもお尋ねいたしたのでありますが、これらの点につきまして、私はまだ明確に大臣の御所見を拝聴されないような段階に相なっておるのでありますから、これらについてなお一度明確に御所見をお伺いしたい、この点についてお願いいたします発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/2
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003・神田博
○国務大臣(神田博君) お答えいたします。改正案に盛られておる保険財政の健全化並びに健康保険の合理化、具体的にいうと、どういうことかというお尋ねのように承わったのでありますが、私御審議の最初に御説明申し上げましたように、第一は、国が予算の範囲内において政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部を負担する、それから標準報酬等級区分を最低四千円から最高五万二千円の二十四等級にする、第三には、療養の給付を受ける者の負担すべき一部負担金の範囲を拡張した、さらに保険医療制度において個人指定方式の長所を取り入れた機関指定方式を採用した、さらに継続給付を受けるための資格期間を一年に延長した、第六に、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずるようなことをした、さらにまた被扶養者の範囲の明確化をはかっておる、それから厚生大臣または都道府県知事の検査に関する規定の整備を行なっておる、さらに社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書の審査機関を整備する、こういうような、これは提案理由の際にも御説明申し上げたのでございますが、そういう各般にわたって健全化、合理化をいたしたい、こういう趣旨でこの法案の御解義をお願いしている、こういうふうに了解いたしております。
なお詳細は保険局長から一つ答えさせたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/3
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004・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) ただいま大臣の仰せになりましたように、改正の諸点はいずれも健全化、合理化をねらったものでございます。例をあげて御説明いたしますれば、標準報酬の引き上げというふうなことにつきましては、今日すでに賃金ベースが非常に上っておりますので、それらに合せて標準報酬を決定いたしていくということが合理化というふうなことに相なる。全部そうでございますが、あるいはまた医療機関の問題にいたしましても、私どもの考え方では今般のような機関指定、個人の登録というふうな制度の方が合理化されたものである、あるいはまた被扶養者の範囲というふうなものにつきましても明確にして、適用のまちまち、ばらつきというふうなものをはっきりいたすというふうな点がやはりこれは合理化の一つである。かように一々のことを申し上げるのは避けますけれども、それぞれかように改正いたしたいということで立案をいたし、御審議をいただいておりますのは、それぞれの理由をもって健全化、合理化ということをねらって御提案を申し上げておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/4
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005・松澤靖介
○松澤靖介君 それならば、原案と今回衆議院で修正されました付帯決議のものと、どちらが合理化に対しまして有効適切であるかどうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/5
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006・神田博
○国務大臣(神田博君) 衆議院の付帯決議と、この改正の御審議を願っている案との関係はどうであるかというような意味に伺ったのでございますが、私どもこのような趣旨に基きまして改正をいたしたいということで御審議をお願い申しておるのでございますが、衆議院の審査の際におきまして、よく速記録を引用されましたが、そのような審査の経過をたどりまして、衆議院といたしまして、このような付帯決議をおつけになったことと私考えております
そこでこの付帯決議の問題でございますが、これはたびたびお答え申し上げておりますように、いずれも健康保険運営に関しまして重要な点だと私は考えております。この付帯決議の趣旨は、われわれとしては十分尊重いたしまして、すみやかに付帯決議の趣旨に沿うような方途を講じていきたい、たびたびお答え申し上げたようなことでございますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/6
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007・松澤靖介
○松澤靖介君 私の御質問申し上げますことは、いわゆる原案と修正になった付帯決議つきのものとが、どちらが合理化をよりよくやられるものかどうかと、その点についての大臣の御意見を承わっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/7
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008・神田博
○国務大臣(神田博君) どちらかと、こう比べをすることが実はいかがかと思っておるのでございますが、これはこれとして健全な合理化をして参ると同時に、付帯決議の意のあるところを取り入れまして、両々相待ってさらにりっぱなものにいたしたい、十分納得のいく運用のできるような方途を講じたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/8
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009・松澤靖介
○松澤靖介君 りっぱなものにしていきたいという大臣のお話であるならば、原案そのものにも相当なやはり問題点といいますか、相当欠点のあるものとお考えなさっておるように承わっておるのであります。昨日も岸総理大臣は問題のあるということをおっしゃった。問題のあるものであるがゆえに慎重審議をして下さるように、そうしてりっぱな案にして下さるようにというお話のように承わったのであります。また野澤代議士も批判のある原案であるというようなこともおっしゃられた。すなわち批判のあるということは、皆さん方が必ずしも納得のいかない案であるということをおっしゃっておるということに私はとったのであります。また高野委員あるいは榊原委員の御質問におきましても、やはり納得のいかない点があるように思われるものであります。そうなりますれば、あの原案というものも相当の私は欠点といいますか、それは語弊があるかもしれませんが、相当のやはり慎重審議、修正するなり、あるいはまたいろいろとわれわれといたしましても考えなければならぬものでないかと、かく考えられるのでありますが、それらの点につきまして、大臣はやはりあの衆議院の修正程度の案であるならば、原案をゆがめないというようなそういう意味で、あくまでもあの線を守りたいというような御意思であるのかどうか、承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/9
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010・神田博
○国務大臣(神田博君) これは非常に親切というか、デリケートなお尋ねでございますが、私どもといたしましては、これは前任者が十分御検討されてお作りになってお出しになったのを、私どもその後非常に期間も短かくて、継続御審議を願おう、こういうことで御審議を願っておるのでありまして、衆議院の御審議の過程におきまして、いろいろ御意見のあったことは御想像の通りでございまして、そこで修正も一部にみて、さらに突っ込んだ付帯決議もあった。そこでこれにつきましては政府といたしまして、われわれの御審議をお願いしたものについて、院議をもって適当な御修正をちょうだいいたした、また切実な付帯決議をつけて御意見をはっきりしていただいた。この点につきましては、政府としては法案の修正についてはもうもとよりでございまするし、付帯決議の尊重につきましても、忠実に一つ実施すべきものはして参りたい、こういう所存でございまして、ただいま当社労委員会におきまして御審議の途中でございまして、何かこの原案にまさる名案がございまして、そうしてこれはどうだというような具体的なことでございますれば、これはもう十分にお答えができると思いますが、原則的にこれを固執しないかとか、いい案があったらかえるかという御趣旨でございますれば、これはたびたび申し上げているように、私どもは今のところ研究した結果こういう案をお願いしているわけでありますが、具体的にこれよりいいものがあるという御意味をもってお示しになりますれば、おのずからそこで私どもの意見もはっきりしたことを申し上げることができると思います。ただ自信があるか、これは批判があるがというようなことでありますれば、これはもう批判のあることは仰せの通り、いろいろな批判のあることも承知いたしてやっているのでございまして、なお一そう一つ御審議をお進め願って、具体的なことでお答え申し上げる方が適当だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/10
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011・松澤靖介
○松澤靖介君 私は今回提案されました保険法の法案なるものは、すなわち保険制度の合理化ということに対しまして、私自身に考えられることは納得のいかない点が相当あるように思われます。かかる法案を提案することによって、かえって医療界の混乱を来たすようなことに相なるのじゃないかと、かような点を私はおそれるものであります。
すなわち今回の案そのものにつきましても、御承知と思いますが、医療担当者側にとりましても、あるいは保険者側にとりましても、あるいは事業主そのものにとりましても、相当な批判のあったところの健康保険よりもかえって改悪された点がより大きいということを痛感させられるものであります。それらの点につきまして、おっしゃったその原案はやはり合理化になり得るというような御確信のもとにお述べになっているようですが、私といたしましては、先ほど申しました点におきまして、この点につきまして相当に考慮しなかったならば、重大な医療の混乱を来たすのじゃないか、かく考えられるものであります。
まず医療担当者側にとりましてのことを申し上げますならば、医療担当者に対するところの検査権の強化、いわゆる監査の法文化そのものにつきましても、あまりに酷であるような、あるいはまた患者実調と受診メモの法文化につきましても、患者個人の人権さえも圧迫するような、さようなことに相なるのじゃないか。
第二番目におきましては、医療機関の分類、ああいう工合の差別待遇ということを何がゆえにしなければならないのか、あるいはまた保険医の登録に関するところのあの二重指定の問題、それらのことは何ゆえに二重指定を必要とするのかどうか、あるいは保険医療機関は三年ごとに指定の切りかえをしなければならぬというようなこと、それから保険医の登録の問題、保険医の事務といいますか、さような問題、あるいはまた請求の仕方と機関によるところの差別待遇、監査方法の法文化並びに非常に厳重にされたそれらの点、保険医療機関の指定取り消しの場合の非常な厳重なことになった点、保険医の登録の取り消しの場合が非常に酷になったこと、医者に対する罰則を設けたというような点、被保険者に対しましても、被扶養者範囲の制限強化、標準報酬などの引き上げとか、一部負担の増加、資格喪失の継続療養、資格期日の延長、被保険者に対するところの検査の強化、患者実調の法文化、被保険者に関するところの罰則強化、事業主に関しましては、事業主に対するところの検査権の確立とか、罰則の強化とか、これらの点を考えてみましても、私は現行よりもより改善された点があるとは考えられぬのでありまして、いわゆる今回のこの健康保険法というものは、刑法を織り込んだような、刑法のにおいが多分にあるような保険法案のように思われます。私は、民主主義の世の中、民主政治の世の中におきまして、かくのごとき案を提出するということは、すなわち時代逆行もはなはだしいものじゃないか。神田厚生大臣は、先ほども述べられました、この法案は前の大臣において、前の内閣において提出されたということをおっしゃいました。あるいはその提出そのものに対しまして、関知しなかったかもしれません。しかしながら、ただいまは石橋内閣後の岸内閣におきまして、いわゆる石橋内閣の施策を踏襲するものという意味におきまして、改むべきは政治であり、改むべきは政府であるというようなことであるならば、いわゆる各方面の医療担当者側も、被保険者側も、あるいはその他のあらゆるものといってもいいような反対の中において、何ゆえにかくのごとき時代逆行的な法案を提出なさるのか、疑わざるを得ないのであります。
もちろん、これは見解の相違といえばそれまででありますが、私は、社会保障制度確立というような大旆をかざして、そうして今後進まんとする場合において、かくのごとき健康保険法を提出することは、はなはだ愚にもつかない、何ゆえにかくのごときものを無理に急いでやらなければならぬかということに対して、非常にかえって危惧の念を抱かざるを得ないのであります。もっと慎重に、そうしてヒューマニズムのこもったところの案にしてこそ、私はほんとうの社会保障制度ということもできるのじゃないか、あるいは伸びるんじゃないかということも考えられるのでありますが、大臣にいたしまして、この健康保険法案はヒューマニズムの点について、あるいはまた大臣のほんとうのお心と違っておる点がないのかどうか、はなはだ失礼ですけれども、それらの点をまず承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/11
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012・神田博
○国務大臣(神田博君) この法案がいろいろの角度から御批判をちょうだいいたしておりますことは御指摘の通りでございます。私どももかるがゆえに十分な御審議をお願いすると、決して何といいますか、最善、最上であるという思い上ったような気持のないことは、これはもう再々申し述べておる通りでございまして、なおこの法案の提出なり、あるいはまたこの立法の際におきまして、医療機関を押えると申しますか、何か規制をしようというような、そういう考えをもって立法したというようなことは、私いろいろこれは聞きもし、調べもいたしたのでございまするが、ないようでございます。まじめな考え方として、そうしていろいろ議論もし、またそれぞれの機関に諮って、そうして本案の成案を得たというように考えておりますので、もしそういうことがほんとうに真意が伝えられておらないということであれば、まことに遺憾といわなければならない次第でございます。どうかそういう点につきまして、私が率直にただいま申し述べておりますように、そういう医僚機関を弾圧するとか、あるいは不当に押えるとか、あるいはただ単なる検査を厳重にしようというような、そういう意図は持っておらない。健康保険の財政の健全化、それから健康保険自体の合理化というものを旗じるしとして、そうしてまじめな成案をされた、こういうふうに御了解をされたいのであります。ただしかし個々の点についていろいろ疑点がある、あるいはまたこれよりこういう案があるということでありますれば、これはおのずから別問題でございまするが、政府がずっと鳩山内閣以来、石橋内閣におきましても、また現岸内閣におきましても、政治の衝に当る者として謙虚な気持で考えておることを了としていただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/12
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013・松澤靖介
○松澤靖介君 その中の一、二を拾って申し上げましても、たとえば保険医療機関と保険医とを区別しておる、すなわち二重指定の問題につきましても、たとえば病院において数人の医者が診療をやっておる場合において、難関が取り消しになった場合に、連座制というような意味合いにおいて、正しいところの保険医も保険診療ができかくなるというような、これらのことに対しまして、果して正当、妥当と考えておるのかどうか。私はこれこそ非常に刑法的な、あまりにも刑法的な、すなわち岸内閣というものはヒューマニズムのない政治をおやりになるかということまでも疑わざるを得ないようなものではないかと、私はかく考えられるのであります。これらの点について、大臣がどういう工合に考えておるか。いわゆる連座制というような、隣にいる方が何かちょっとしたときに、私は何もしないのに私までも引っぱられるというような、あるいはまた正当なわれわれの許されたところの医療ができなくなるというような、さようなことは私は納得されないのみならず、あくまでもそのようなものに対しましては、私らとして反対すべきものではないかと思っておるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/13
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014・神田博
○国務大臣(神田博君) この機関指定の問題につきましては、いろいろ御議論が多いようでございます。いろいろ健康保険制度を実施して参りまして、そうしてなおかっこの改正に関連いたしまして、そうした二重指定をしなければならないということは、いろいろ事情があるようでございますので、高田保険局長から一つ詳細に答えさせたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/14
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015・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 今先生が御指摘になりましたことのないように、私どもとしては、むしろものを考えておるわけでございます。たくさんお医者さんがおいでになるところで、ある方に悪いことがあった、そのために全部、正しい方までも保険診療に従事ができなくなるというふうなことになってはなりませんので、そこで、個人の登録というものを残したわけであります。
それから現行の制度におきますと、たとえば事務長の責めに帰すべきことでありながら、何の関連もない医師が保険医の指定を取り消されるということになり得るわけであります。そこで機関としての責任、個人としての責任というものを明確に分けまして、そうして合理的に物事が、今申しましたような不合理がないように物事を処理できるような法律構成にいたしたいというのが、私どもの念願でございまして、決して何も悪くない他の先生方まで、これを連座制でどうのこうのというふうな考え方でこの法律構成をいたし、立案をいたした次第ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/15
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016・松澤靖介
○松澤靖介君 私はその反対に考えられるのでありまして、連座制というような明らかな意味合いでなくても、機関の取り消しがあった場合において、その何人かおる医者というものがやはり診療ができなくなるというような結果になるんじゃないかということを申し上げるのです。局長のおっしゃったことは、私の逆を言っておるように思われるのですが、機関の指定というものが取り消された場合において、医者が保険診療ができなくなるということを私は申し上げておる。それが不合理じゃないかということを、いわゆる連座制という意味合いにもとれるのじゃないかということを申し上げるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/16
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017・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 機関が指定を取り消されましたならば、そこに働いておられまする個々の保険医も、その場所では保険診療に従事できないという結果になります。しかしながら、機関の取り消しということは、そういうふうな重大な結果が出てもやむを得ないが、機関全体が、たとえば非常に悪い例でございますけれども、機関全体の経営方針というものが、これが悪い例でございますけれども、何というか、水増し請求をやるのだという方針でその機関全体が動いておるといたしますれば、これはやはり雇われております個々の方にはお気の毒であるけれども、その場所で保険診療には従事できなくなるというふうになりましても、その機関を保険の機構から排除するということは、これはやはりいたすべきものと思います。しかしながら、これは他の場所におかわりになりますれば、保険医の登録はあるわけでございますから、幾らでも保険診療に従事できるという仕組みになるわけであります。それでこの機関を相手方といたしまして、今回私どもはこの改正をいたしていこうというふうに考えておりますが、こういう体制は他の法律でもいずれもとっておることでございます。生活保護法その他のもので医療機関というものを対象にものを考えておるのです。現在のいろいろな法制におきましては、医師個人をつかまえて物事を考えていっておる方がむしろ少いというふうに私は考えておるわけでございます。しかも、医療の実態というものが機関によって行われるというふうな現実の事態をすなおにとらえまして、他の法律にありまするように機関指定制度を作りました。ところが、個人というものを全然ネグレクトいたしますと、今、先生御指摘のように連座制みたいなことになりかねないので、そこでやはり個人の登録というものを残して、そこで先生御指摘のようなことにならないように物事を運営いたして参りたい、かような精神でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/17
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018・松澤靖介
○松澤靖介君 ただいま局長がおっしゃったことは、いわゆる法律というものに対しましても、人によって悪用されたり、そういうような点が出てくると思います。立案の当初においては、いろいろとりっぱなようなゆがめられないような意味においておやりになろうとしても、いずれ日がたつに従って、非常にゆがめられたようなことになる危険性がたまたまあると思います。ことに連座制のような危険はないとおっしゃるけれども、機関の指定が取り消しになって、そうしてそこに勤務しておる医者が、他のところでやり得るとしても、その間に対しての迷惑というようなこと、あるいはまた非常な打撃といいますか、そういうようなものが、個々の医者に起ることは、これは申し上げるまでもなくおわかりのことと思います。これらの点に対して、迷惑なり、何なりというようなこと、そういう影響といいますか、そういうものは仕方がないんじゃないかというような意味合いで、こういうことをおやりになってはならぬ、私はただいまの現行のままにおいても、そういう意味合いのもとにおいてやるんだったら、昨日も申し上げましたが、それではあまりにも医療機関といいますか、医者といいますか、それらに対します前提条件が、悪いことをするものという意味合いにおいてお考えになったような法案のように思われます。私は何ごとであろうが、法律にいわゆる罰則とか、そういうものがないということが理想的なものではないかと思う、それを逆行して、刑法的に、だんだん、だんだんゆがめるような、個人の人権をないがしろにするような意味合いにおいてお作りになるというそのことを、私ははなはだ気に入らないといいますか、納得のし得ない点であります。それらの点について、なお明確に、現行法とこういう点において違うというようなことをお聞かせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/18
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019・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) まあ、例を上げて御説明いたしますと、よくおわかりいただけると思うのですが、現在の建前では、たとえばある一つの医療機関がある。そこの開設者が、何と申しますか、非常に悪い例でございますが、水増しなら水増しをやる方針で経営をしている。そうしてその請求には事務長をもってこれをやらせるというふうな医療機関があったといたします。そういたしますと、現在の法制では、何ら罪のない、そこに勤務している保険医の指定を取り消すということにならざるを得ないのです。ところが、改正法におきましては、そういうふうな場合には、その機関を取り消す。現行法では保険医を取り消しますからその開設者、経営者というものは、何ら保険から排除をされないで、次にまた保険医の方をお雇いして、経営を続けていける。こういうことであっては、医師のみずからの責任でもないことについて、みずからが責任を負うというふうな格好になりまして、非常に不合理になるおそれがある。従いまして私どもといたしましては、先ほど来御説明をいたしておりまするように、実態に合うような、合理的な建前にいたしたい。こういうっもりで御審議をお願いしているわけでございます。その意図は、決して今先生が御指摘のように、医療機関を圧迫してどうのこうのというような意図で、ものごとを考えておるわけではさらさらございません。
なお、付言いたしておきまするが、機関を取り消すということは先生御指摘のように、そこに勤務をいたしておられまする医師の方々がその場所では保険診療に従事ができないというふうな結果を招来いたす重大なことでございますので、私どもといたしましては、これは相当重大な問題として慎重に物事を取り運びたい、かように考えております。法律上の措置といたしましては、これは行政官庁だけでできることではなく、医療協議会というものに諮問をしていたすという、この法律上の制約をつけております。現実の問題といたしましては、これは診療関係者の団体の方々と十分事前にお話し合いを御相談をいたしてかような措置をいたしたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/19
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020・松澤靖介
○松澤靖介君 高田局長のおっしゃることは、ちょっと私は了解に苦しむわけでありますが、医療というそのものにつきましての、医者が全責任を持たなくちゃならぬ、また持つべきであるということは、医療法にもちゃんと明記されております。それにもかかわらず、やったその医療に対して、今度は責任をもう持たなくてもいいような今の御説明であるならば、私は何だかかんだか医療法というものは無関係で今度は差しつかえないのではないか、逆にそういうことを私は御質問したいと思うのですが、ことに医療協議会といいますか、私もただいまですから、県の医療協議会の一人であります。医療協議会の構成というものが、この前のどなたかの委員からも申し上げられたようですが、果して公正妥当な構成になっておるかどうか、すなわち医療担当者側というものは、これはただ形式的に入っておるにすぎない。いわゆる数の上においてはこれは多数決によって何ともならないというような今の機構ではないか。私はかように考えておるのでありまして、それをもって医療協議会というものは神的存在であるがごとき御説明であっては、私ははなはだこの点につきましての了解に苦しむものであります。いずれにいたしましても、かくのごとき法文をお用いになっているということに対しまして、医療法も場合によってはどうにでもいいんだというような御説明のようでもあるし、もしも医療法が、われわれが医療行為に対しまして責任をとらない、無責任のままでいいというようなことであったならば、私そのことに対しましても、日本の今後の医療というものが非常に憂うべきことになるのではないかと考えられるのですが、それらの点について、もう少し御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/20
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021・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 個々の医療というものにつきまして、診療というものにつきまして、医師が医師として全責任を負われることはその通りでございます。その通りでございます。私が先ほど申し上げたのは、診療報酬の請求というふうなことにつきまして、それはその医療機関がやるのでございまして、その請求というものが個々の医療行為そのものではないわけでございますから、これは現実の問題を考えていただけばよくわかるわけでございますが、大きい病院等におきましては、事務長がやるわけでございます。これについて医師が当然医療法から責任を負わなければならぬというようなことは、医療法のどこにも出て参らないわけでございます。その点はさように御了承をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/21
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022・松澤靖介
○松澤靖介君 私はあまりこまかい質問をしないと思っておったのですが、結局こまかい質問に入らざるを得ないように相なったことを遺憾に思うのですが、たとえば事務長が水増し請求をやったという場合においては、現行においても別ないわゆる保険法でない、ほかの意味合いにおいて、詐欺罪とか刑法の問題とか、さような問題によって私は処罰され得ると、私はかように考えておるのでありまして、何ゆえに一体繁雑に、ことにお互いに論戦を戦わして、そうしてことによったら大きい声をあげたり、けんか腰になってまでそうしてやらなければならぬのか、そういう点についてちょっと了解に苦しむものでありまして、なくて済むものだったら、事新しく作らなくてもいいじゃないか、いわゆる皆さん方が、こんなことを言ってはなはだ失礼ですけれども、非常にひまで、そうして仕事がないという意味合いにおいてこういうものでも作って、そうしてわれわれは精勤しているというような態度をお見せするというよう意味合いでもないでしょうけれども、あながち平地に波乱を起させるようなことをおやりになって、そうして高いところからおながめになって喜んでいるような意味であったならば、非常に私らとしても心外の至りでありまして、もう少し私は医療担当者側、あるいはまた被保険者側の立場に立って、そうしてほんとうによりよきもの、すなわちベストでなくても、ベターであるようなものでなければならぬ、かく考えるものでありまして、あながち保険局長さんも、はあ内心においては何とかならぬかなあぐらいなお気持で、正々堂々とこれは私は必ずりっぱな案であるから通るというような御自信はないように承わり、あるいは拝見されるのでありまして、はなはだかくのごときものであったならば、もう少し出直して、そうして、ああやはり高田局長は大したものを作った、出したというような、たまにはおほめの言葉も反対党から受けるような、さような法案をお出しになった方が、非常にいいじゃないか。あるいは厚生大臣は非常にこの点につきまして将来の医療、あるいはまた、社会保障なりを非常に熱意をもっておやりにならんとしているのでありますが、何だか質問もいろいろ横道にそれまして、当を得ないかもしれませんが、いずれにいたしましても、この法案は大臣にいたしましても、あまりにも今までの答弁を拝聴いたしましても、自信のないような、私のこれは前からの懸案であったとか何とか、ほんとうに私もこれならば確かにりっぱなものだというような、その心意気がないようにうかがわれるので、はなはだ私といたしましても残念の次第であります。
それで先ほどのいわゆる二重指定といいますか、それらの問題につきまして拝聴いたしましても、今までの説明におきましては、私は多分に納得がいかないのであります。もう少し、私らもこれで三十何年も医者をやっております。あるいはまた医療協議会の委員といたしまして、いろいろと保険の問題におきまして、厚生省のあの中でやった経験もあります。あるいはまた、いろいろの、たとえば監査基準の問題につきましても、いろいろとあの当時問題になりまして、そうして非常な審議を費してやったのでありますが、いずれにいたしましても、あの基準に見ましても、医者というもの、医療機関というものは、不正を働くものなりというような考えでなさっておる。私は実はきょう国の社会党の人でありませんが、自民党の私の知り合いの人がたくさん参りまして、医者はまだ騒いでいるなあというようなことを申されたのです。何だお前方、あの内容を知らないのかと申し上げたら、何も知らない、それで申し上げましたら、あそうなのか、そんなものであったら、どうして自民党の人たちももう少し誠意を披瀝してやらないのかどうかというようなお話があったのですが、いずれにいたしましてもそれはそれといたしまして、高野先生なんかよくおわかりになっておると思いますから、いずれにいたしましても、とにかくこの法案の問題につきましても、非常に刑法的のにおいがある、すなわち医療というものが刑法的のものでは、果して私は所期の目的が達せられるかどうか、いわゆるヒューマニズムのにおいがあってこそ、はじめて医療というものがよりよきものになるのじゃかいか、かく考えるのでありまして、こうすればこう処罰する、おまえらはそんなものをしてはだめだというような、制限々々ということがあまりに多いので、私としましても非常にここに質問申し上げまして、先ほど大臣が申しました、よりベターな何かないかとおっしゃったものですけれども、私らといたしましてはよりよいもの、これは新しく出直して、そうして衆知を集めてまたやるべきじゃないかというようなことも考えられるものであります。
なお御質問申し上げたいのは、この法案につきまして、いわゆる医療機関というもの、きのう榊原先生でしたか、御質問になったようでしたけれども、私といたしましても、この医療機関を三つに分けておるということは、何ゆえに三つに分けておるのか、差別待遇というようなことにとり得るのでありまして、この点につきまして、たとえば御承知のことかもしれませんが、皆さん方の直営といいますか、直轄の保険病院も相当方々にあると思います。その保険病院がもしもおっしゃるような不正がない、正当妥当なる診療をなしておるとお考えになっておるかどうか、私はさような点もお聞きしなければならぬということにも相なるのじゃないかと思いますが、何ゆえにこの三つに分類をして、そしてわれわれ開業者だけをそっちの方に持ってきて、お前方だけは悪いことをするのだという意味合いにおいて、こういうような分類をしたのじゃないかということも言えるのです。で、保険病院なんかに勤めている人たちが、お前方はりっぱな人だ、何もしないのだという意味合いにおいて、お前方はどうでもいいんだ、もうよろしいんだ、さようなことの意味においてこういうことをしたのじゃないかというようにとれるので、その点についても御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/22
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023・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) いろいろ御質問になったのでございますが、二、三の点につきまして明確にいたす意味で、お答え申し上げておきたいと思います。いろいろな詐欺または不正等の手段によりまして、架空請求をいたしたとか何とかということであれば、刑法があるのじゃないかという仰せでございます、ごもっともでございます。それでその場合には事務長がやりましょうとも、それから医師が自身でやりましょうとも、だれがやりましょうとも、その刑法の規定にひっかかりますれば、刑法の処罰というものはあるわけでございます。それは御指摘の通りでございます。刑法があるのに、保険の方でまたやかましいことを言わんでももいいんじゃないかというふうな仰せでございますが、私どもの方では、この保険との関係を断つということだけでございまして、罰を食わすとか、刑法とは全然目的の違ったものでございます。ことに現在の法制におきましては、医療機関に罰則を、保険医に罰則を課するという規定もございましたけれども、今回の改正案におきましては、不正請求その他の場合におきましては、罰則は全然削ってございます。行政処分、すなわち保険との関係から外へ出てもらうだけの改正にいたしておるのでございます。従いまして、その点も特に御了解を得ておきたいと思います。
それから医療機関の種類によって四十三条で一号、二号、三号というふうに分けたのは、医療機関を差別待遇するつもりではないかと、こういう仰せでございますが、決してさようなことにございません。むしろ現行制度では、先般もお答えをいたしましたように、現行制度では保険者の指定するものという、保険医以外の医療機関として契約を結んでおりまするものが非常に多うございまして、これらはみな機関との契約でございます。保険医という個人の相手ではございません。そういう制度が非常に多うございます。官立病院、公立病院もういろいろあるわけでございます。それらのものも、今回はむしろ全部普通の開業医の方々と同じような範疇に入れて参ったわけでございます、改正案に入れておるわけでございます。ただ二号、三号とございますのは、これは法律上の立場といいますか、あるいはその医療機関の存立目的自体が違うものが現存いたしまするので、それは法律上の整理といたしまして二号、三号というものを置いたわけでございます。いつも一般の不特定多数の大衆を相手に診療をいたす機関はすべて一号に入っている、こういう整理のいたし方をいたしておりまするので、むしろ現在の制度よりは、よほど今先生御指摘のような方向に行っておるわけでございます。よりよくなるというような改正案であるということを御了承を得たいと存じます。
なお、最後に医療機関というようなもので、すべて不正をやるものであるというふうなつもりで、どうのこうのというふうな御趣旨の御質疑でございますが、これは昨日もお答えを申し上げましたように、私どもといたしましては決してさようなことを考えておりません。さようなことを考えましては、とうていこの医療保険というものの運営はできないのでございます。私どもといたしましては、十分なる御信頼をもって、この制度の改正なり何なりを考えておりますることを、重ねて申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/23
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024・松澤靖介
○松澤靖介君 罰則はみな今度の改正案では、のけたというようなお話しですが、たとえのけたにいたしましても、登録が二年を経過しなければできないというようなことに相なりますれば、非常な、医者にとりまして、打撃ははなはだしいものと、かく考えるものでありまして、私はここで討論をするために申し上げているのじゃないのですけれども、実は質問をしておって、お尋ねをしておるのですけれども、ある場合において、意見を出せばそういうことになるかもしれませんが、いずれにいたしましても二年を経なければ、経過しなければというような、さようなことに相なりますれば、これは非常なその個人の生計なり、あるいは非常な大問題じゃないかと私はかく考えるわけであります。たとえば罰金とか何とかいうようなものより以上な、酷なる私は処置じゃないか、かく考える意味でありまして、ただ法文的に、あるいは文字的に罰則とか何とかということを申し上げたのじゃなくて、実質的にさような結果になるということまでも含めて私は御質問申し上げておるのでありまして、この点につきまして、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/24
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025・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 御引例になりましたこの二年間登録云々のことにつきまして、二年という条文は、四十三条の五の第二項だと思いますが、これは先生、よくお読みをいただきますと御了解がいただけますように、今先生が仰せになったのとは、逆でございます。だれでも登録をするんだ、二年経過せざる者については、登録は拒むことができるというこの逆な書き方がしてございまして、これは登録を取り消された後に、一カ月後に、二カ月後に、あるいは三カ月後に再登録をいたすことを拒む規定では全然ございません。むしろ、この二項にございまするように、だれでも登録をするんだというこの登録の法の建前というものを、この規定によって表明を明確にいたしているということでございます。ちなみに、現行法との比較をいたしてみますと、現行法は、保険医の指定でございますが、現行法におきましては、保険医の一ぺん取り消しを受けました者が、次に再指定を受ける場合にはですね、かような行政官庁側を縛った規定はございませんので、一ぺん取り消された者は、永久に保険医の再指定をしなくても何ら差しつかえのないような現行法になっております。改正法ではそうじゃなく、かようにむしろ行政官庁の方を縛った規定を置いているわけでございます。規定の精神といたしましては、先生が御指摘のことよりは、むしろ逆の方向に改正をいたしたいというふうな案になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/25
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026・松澤靖介
○松澤靖介君 この義務の問題について、保険医の義務の規定、すなわち、第四十三条の第六にありまするところの点ですが、今度は法文をもって申し上げます、誤解があると困りますから。この問題は、四十三条のときは、機関の担当について義務づけられたことを、この場合は保険医個人について義務づけられているように見受けられるのであって、すなわち守るものは担当規程と、命令と、社会保険者法であるというような意味合になっているのでございますが、その点について御説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/26
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027・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 四十三条の六は、この保険医の、個々の保険医の方々がお守りをいただくことが規定をいたしてあるわけでございます。昨日申し上げましたように、保険医の個々の方々がお守りをいただきまするものは、機関とはこれは区別をいたしまして、この担当規程を定める予定でございます。と申しまするのは、先ほど先生が御指摘になりましたように、医療というものは、個々の医療というものは、その医師の全責任でございます。それでこの個々のこの医療の内容についてお守りをいただくべきことを定めたい、こういうことでございます。これは現在の診療担当規程の中で、純粋に個人に関連をいたしますることを抜いて、かような担当規程を作りたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/27
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028・松澤靖介
○松澤靖介君 次に、一部負担の問題ですが、初診のときに百円、入院三カ月まで……、この点は別といたしましても、その次の文句が、いわゆる初診時の費用が百円以内のときに、たとえば七十五円のときは、七十五円徴収するというようなこと、かような点が先ほども……、先ほどと申しますが、昨日も、いわゆる事務の簡素化というような意味合いにおいても非常に述べられたことと存じますが、非常にかえって複雑化するというようなことになりはしないか。私は医者というものは、非常に数学的の知識が乏しいので、それを一々計算をしなくちゃならぬ、あるいはそろばんを持ってきてはじいて、そうして幾らと記入をする。その場合において、もしそろばん玉一つ間違った場合に、ああ不正だ、不当だと言って、今度は監査の場合において処罰の対象になるというようなことにもなるのじゃないかと思いますので、かようなややこしいことをなるべく差し控えて、そして簡素化してほしい。一つのそういうわなといいますか、そういうものを作っておって、計算が間違った場合に……というようなことにもなり得るので、これは厚生省の一番上にすわっておって、あるいは二、三番目にすわっておって、(笑声)はっきりわからないかもしれませんが、下に行くに従って、そういうことは非常な重大なことなんで、これで医療担当者が非常に苦しめられている。そういう場合において、これは一つの例でありますけれども、これだけじゃ私は申し上げられないので、すべての場合において非常にややこしい計算をする。ややこしい計算をされるような診療にひまがあるのならばいいのですけれども、診療もまじめにやられる、早く病気をなおさなくちゃならぬという場合において、こういうややこしいことを無理におつけなさったという、好きこのんでつけたように思われるので、厚生省には数にたんのうな方ばかりそろっているのだなあと思って、私はほめたいのですけれども、かえって私は反対にけしからぬと申し上げなければならぬのですが、この点についてお伺いを申します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/28
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029・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 御質問のお気持は私もよく了解ができます。だれでもかれでも、全部初診のときは画一的に百円取るということにしておいた方が、めんどうくさくないじゃないか、これは確かにそうでございます。しかし、この一部負担ということにつきましては、その人に七十五円しか医療費全体としてかからなかったのに百円払うということにいたしまするのは、これは何としても無理でございます。医療費の総額以上に取るというここは、これは何としても無理でございますので、この点はどうも大へんごめんどうかと存じますけれども、その意味からやむを得ない。まあこういうふうに法律をいたさなければ、理屈としてどうしても通らないということに相なりまするので、私どもといたしましては、かようなことにいたしておるわけでございます。ただ将来、この点数表の改正等が行われました場合におきましては、あるいはこの初診の際に百円を下るというふうな場合はあるいはなくなるかもしれません。さようなことになりますれば、この今御指摘の繁雑さは解消されるわけでございますが、しかし、当分の間は、初診の際に百円に満たない場合があるということは、御指摘の通りでございます。それはさような事情で、こういうふうな規定にいたしておりまするで、御了承を得たいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/29
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030・松澤靖介
○松澤靖介君 なおつけ加えておきたいのは、七十五円を百円取っていいという意味で、私は申し上げておるのじゃありませんで。法文にありのままをまずお尋ねしておるのでありまして、私がこれに賛意を表しておるという意味で申し上げたのではないことを、まず最初に申し上げて、その次に、これはほんのあれになりますけれども、四十三条の九というものが、非常に私はひがみかもしれませんが、請求の仕方に対しまして、医療機関によって差別待遇があるように思われるのでありまして、かような点も非常に私自身といたしまして不可解しごくと思うものであります。これに対する御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/30
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031・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 四十三条の九のどの点を御指摘に相なっておるのでございますか。もう一度御質問の御趣旨を明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/31
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032・松澤靖介
○松澤靖介君 保険者の契約によるという一つのことにつきましても、これは非常にいろいろ医療機関と保険者との、しいて言うならば保険者側の圧迫といいますか、言いなり次第になるのじゃないかというようなことになるのでありまして、その点……。おわかりになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/32
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033・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) この規定は、さような、先生の今の御質問では保険者の方が値切って、そのさらに低いこの定め方を契約をするというふうなことを誘発する規定ではないかというお説でございますが、そうではございません。これは現在この医療機関によりましては、たとえば例をあげますると、国立の結核療養所においてはたしか二割引でございますか、それから社会保険関係の病院等におきましては、政府管掌の被保険者を見るために国で作っておりまする病院でございますので、その病院におきましては政府管掌の被保険者については一割引で請求するというようなことをやっております。さような現在のものがそのまま行われまするならば、法律的な措置をいたしておきませぬと、それがこの改正によりまして全然できなくなるということでありますれば、これはいろいろ支障もございまするので、さようなことを救済をいたすためにこの規定を置いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/33
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034・松澤靖介
○松澤靖介君 なお、医療担当者側に対しましての非常な犠牲をしいるのじゃないかというような意味合いにおいて、いわゆる被扶養者の範囲の制限がなされたということに関しまして、何ゆえにかようなことに狭めなくちゃならぬかということについて御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/34
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035・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) そのお答えをいたしまする前に、ただいまのこの割引に関することにつきましてさらに付言をして申し述べておきたいと思いますが、これは現在やっておりまするもの以外には広げる私どもつもりはございません、割引の制度を。その点は特に申し上げておきます。
それから被扶養者の範囲を今度限定をしたのじゃないかという仰せでございますが、これは三親等内とか何とか一定の基準を置いて明確にいたしたわけでございまして、必ずしも限定ということには相なっておりません。その例証をあげますれば、現在の規定では、被保険者の収入によってもっぱら生計を維持しているものという言葉を使っております。改正法におきましては、主として生計を維持する者というふうに弾力を持って改正をいたしております。さようなわけで、ただこの締めるということが目的ではございませんので、むしろ現在の規定でございますると、各地におきまして、各保険官署におきまして被扶養者の範囲が実際ばらばらになるおそれがあるのでございます。その各保険官署の認定にゆだねられておりまするので、ばらばらになるおそれがございまするので、これを一定の明確なものにいたしまして、取扱いの統一をはかりたい、こういうことが主たるねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/35
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036・松澤靖介
○松澤靖介君 次に標準報酬の引き上げの問題ですが、この問題につきましても、将来皆保険というような現段階におきまして非常な重要な問題になるのじゃないかと考えられますので、お伺いしたいと思いますが、先ほども中小企業の、私の地方の者どもが参りまして、そうして、一体あなた方勤め人の給料というものは平均どのくらいかと聞きましたら、高いので六千円、少いのは千円そこそこだ、平均いたしまして三千円ちょつとくらいじゃないか、あるいはそれ以下になるかもしれぬというようなお話ですが、かように考えてみますると、それを土台にして考えてみましても、この引き上げというものは非常な無理を来たすのじゃないか、あるいはことに地方においては非常な影響があるのじゃないか、かく考えたられのでありまして、今度私のところに、二十日の日に中小企業連盟とか何とかの発会式があるそうですが、これは超党派的にやるものでありまして、いずれにいたしましてもさようなことに相なるのであります。あるいはそれらの人たちの保険制度というものはどういうものになさるおつもりかしれませぬが、しかしそれだけではなく、現在のこの保険の被保険者の方方におきましても、私はさようなことを同じ立場において言い得るのではないかという意味において申し上げたのですが、非常な、要するに犠牲を低額所得者に対しましてしいるのじゃないかというような意味合いにおいてお尋ね申し上げるのですが、結局保険料というものは限度に達したということは、われわれ何回も今まで厚生省の方方からも聞かされております。保険料の増収を別の形において私は取ることに相なるのじゃないかという意味合いにおいて、かようないわゆる負担を引き上げるということが果して妥当なものかどうか。一昨日の公述人の方の話におきましては、最低賃金制にもからんでかえって有利になるのじゃないかというような公述をなされた方もありますが、私ははなはだ白と黒とごっちゃにして申しておるような、私はそうとったのでありますが、いずれにいたしましても、現在のままにおいて、政治というものは現実を土台にしてやらなければならぬ立場において、将来はどうであるかというような場合において、われわれは将来はあるいは月の世界へ交通ができるような将来、法令ができまして、もう働かなくても食えるくらいな時代になるかもしれませぬが、そんな将来のことは将来のことといたしまして、現実の世界は現実の立場においていろいろの施策を講じなければならぬと思うのですが、現在の立場におきまして非常な低賃金といいますか、かような立場において働いている人たちのためにおいて、果してこれが妥当なものであるかどうかということが、非常に私なりに案じられているといいますか、納得のいかない点なので、その点についての御説明をお願いいたします。たびたび聞かれるのは、かような場合においては生活保護法があるのじゃないかとか、生活保護法があるのじゃないかとおっしゃっても、ここにはありますけれども、私の県において金が七、八千万円も余っておるにかかわらず、適用されないで苦しんでおる人が非常にある。新聞にも、切り抜きがあるのですが……ちょっとあれですけれども、実際制度があってもこの事業といいますか、運営というものは円滑にいかないのが今の政治の現状なのであります。大臣もそういうことはおわかりにならぬかもわかりませぬが、みな予算を取ったものは、円満に、円滑に、もう下まで予算がすっかりうまく使われておるというようにお考えになっているかもしれませぬが、なかなかもってそんなものじゃありません。ないないと言っていて、それですら有効適切に使わないで余しておる。さようなものがざらにあるのであって、その点につきまして伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/36
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037・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 今、標準報酬の問題でございますが、標準報酬の改正をいたしまするのは、大体賃金の失態に即応した改正をいたしたいというのが根本のねらいでございますが、それで一番の御指摘の点は、今の最低のところを、三千円を四千円に上げることについての主たる御質問であろうかと存じます。私どもの調べに数字が出ておりますが、三千円から四千円に最低を上げますることによって影響を受けまする人の数は、全体の被保険者の一%強でございます。今先生は、大体おれのところの賃金は三千円ぐらいが平均になるということの話があったということの御引例でございましたが、御存じのように、全体の平均標準報酬は、政府管掌におきましては一万二千円、それから組合の平均はそれの五、六割高く一万七、八千円だったと思いますから、全般としてはそういうことでございます。従って今回影響を受けまするものは、三千円の標準報酬の人が影響を受けるわけでございます。これは全体の一・一一五%という数字が出ております。まあ十万人程度の人の数でございますけれども、従ってこれを過失の標準報酬の改訂のときと比較をいたしてみますると、過去におきましては、この最低を引き上げることによって影響を受けた人が二%なり、顕著なときには八%程度の数のこともあったように私記憶いたしておりますが、昭和二十四年の五月の改正におきましては、全体の八%程度のものが最低の引き上げによって影響を受けております。昭和二十八年十一月の改正におきましては二%程度の被保険者が影響を受けているというようなことになっておりまして、今回の改正の場合におきましては、むしろそのパーセントが、比重が非常に小さい、一%強でございますので非常に小さい、かようなことに相なっておりまする実情をまず御了承いただきたいと思います。
それからいま一つは、こういうような標準報酬の引き上げがありますることによって、保険料の料金が上りまするので、その点につきましては確かに被保険者の不利益でございますが、同時に、また傷病手当金の金額が増額されるわけでございまして、さようなプラスの効果もあるということを一つ御了承をいただきたいと存じます、こういうふうに、保険といたしましては、賃金そのもの、賃金の実態に即したような標準報酬を設けるということは原則でございますが、そこにおのずから下は若干端折り、上はある程度の頭打ちということをいたして、この標準報酬制度というものは健康保険が始まって以来そういうことになって運用をされております。これはまあおそらく給付が医療でフラットであるというふうなことにも関係があると思いまするけれども、さような従来からの建前であり、なお今回は過去の例から申しますると、むしろパーセンテージは、影響を受ける人のパーセンテージは非常に僅少であるということでございまするので、私どもといたしましては、まず四千円程度の引き上げはこの際妥当なものではあるまいか、こういうふうな結論を出したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/37
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038・松澤靖介
○松澤靖介君 議論は省きたいと思うのですけれども、今おっしゃったよらないわゆる傷害手当金が多くなるというその部分について、私は政治というものはどういうものかちょっと頭が混乱してわからなくなりましたが、傷病手当金はいわゆる労働者が万一の場合のときであって、病気したときであります。普通の人は健康で働いておって三千円、そうして保険料をよけいに払うことになっておる。万一病気したときの傷病金が多くなるということによって、これはりっぱな案ということは、私は頭が悪いですからわかりませんが、どうもおっしゃることが私は解せない。万一のその傷病手当金というものは、一律にみんな取っておるのならお話それはわかります。万一病気になったときにおいて傷病手当金というものが支払われる。しかしながら、保険料というものは、この標準報酬によりまして保険料というものは出す分がいつも変らずずっと出さなくちゃならない。傷病手当金というものは病気になったときに、万一の場合に少しよけいになったということで、それでプラス・マイナス、なおプラスなんということはなりっこないのじゃないでしょうかな、ちょっと私は数字がわからないのですが。保険料をずっと毎月払っておって、そしてよけい取られておる。前よりも今度病気になったときに傷病手当金が少しふえたというのでプラスになるのでしょうか。私はその点についてちょっとなおお答えをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/38
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039・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 今の傷病手当金の問題は、私がこういう効果も半面にあるのでございますということをつけ加えたために、非常に先生の誤解を受けたようでございますが、そういう意味で傷病手当金が多くなるから下を上げようという意味ではございません。これはあくまでも標準報酬制度という制度を保険はとっておる。それで、下の方も上の方も若干、下は若干背伸びをしてもらい、上は頭打ちというのが過去の何と申しますか、ずっと歴史がそういうふうなことになっておる。しかも、今回の改正によって影響を受ける人は、前回の改正、前々回の改正にその前の改正から比べると、非常に影響を受けるパーセンテージも少いのだ。従ってこういうふうなことから私どもとしてはまず三千円を四千円に引き上げるということが保険の標準報酬の立て方としてはまず妥当であろう。こういうふうなことで実はかような案の御審議をいただいておるのでございます。
傷病手当金のことは、つけたりで私申し上げたのであります。ただ、社会保険審議会で一部の被保険者代表からは、むしろ最低額をもう少し上げたらどうかという強力な主張がございました。むしろ最低を上げる、もう少し上げた方がいいというふうな主張もございましたことをつけ加えて御報告をいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/39
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040・松澤靖介
○松澤靖介君 ただいま局長のおっしゃったこと私もまさか、局長さんと言いますかな、局長さんがそんな頭といいますかをお持ちになってこの案といいますかをお作りになったとは考えておりませんので安心しましたのでありますが、私といたしまして、なお御質問申し上げたいのは、この資格喪失後の継続療養給付資格期間が延長になったということに対しましても、あまりにこの点につきましても酷なような、やはり何べんも申しました通り、ヒューマニズムといいますか、そういうものの影が非常に遠いように思われるので、この点につきましてもお尋ねをしなければならぬことをお許しになってお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/40
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041・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 資格喪失後の継続給付の問題でございますが、これは、御存じのように、資格喪失後の継続給付でございますので、あくまでも、もう被保険者でなくなった者、言葉をかえて中しますれば、保険料を納めておらない方でございます。この保険料を納めておらない方が、過去において保険料を納めていただいたということによりまして、保険料を納めなくなっても一つ引き続き療養を、たとえば、三年間に認められておりますから、長いのは三年まで一つ療養の給付をしていこうと、こういう性格の規定でございます。従って、現在保険料を納めておる人たちの療養の給付にも事欠くような場合におきましては、これは現在はすでに保険料を納めておらない方でございますから、従って、その資格期間を若干延長いたしまして、まあ過去において今までは六カ月間引き続いて保険料を納めて下すったから、もう保険料を納めなくなっても療養の給付を継続しましょうという制度であったのを、まあ一年間納めていただきましたから、一つ引き続いて、長いのは三年まではやりましょう、こういうことに改正をいたすわけであります。もちろん、その方にとりましては、今回の改正は、これは決して喜ばしいことではないのでございますが、しかし、同時に、保険全般といたしましては、現在保険料を納めておられる方々のことがまず第一でございます。従って、それらの方にも給付に事欠くという場合におきましては、事柄の均衡上、保険料を納めなくなった方につきましては、まあ若干のごしんぼうを願うことがむしろ公平なる措置ではないか、こういうふうな趣旨で改正をお願い申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/41
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042・坂本昭
○坂本昭君 関連して。先ほど、局長さんのお話の中で、標準報酬を三千円から四千円に引き上げのお話がありまして、これは一番最初に松澤委員から、どこが合理的な点であるかという質問のときに、局長さんは、賃金べースのベース・アップに合せて標準報酬を上げる、そういうベース・アップの点を持ち出されておったのですが、私、今の標準報酬引き上げについて三つほどちょっと疑問があるのです。
第一は、局長さんは今度ベース・アップされるかもしれないけれども、われわれが当面今問題にしている政府管掌のこの人たちは、そう簡単にべース・アップはできないんです。だから、そういう合理的であるということは、ものさしにならないと思うんです、この人たちにとっては。これが一つ。
それから、今局長は、そういう人たちが、一・一一五%ですか、まあわずか一%だからよろしいというような論理を申されました。わずか一%だからよろしいというのは、これは社会保障の原理からいうと、むしろ逆なんです。私たちは、わずか一%だからこそこの人たちを守っていかなきゃならぬ、こういう点で、局長の論理は少し逆である、そう思うんです。
三番目に、ベース・アップのことを一番最初言われましたが、実際統計を見ますと、なるほど五五年の十二月の政府管掌の健康保険の平均標準報酬月額は一万一千八百七円になっております。この計を見ますと、九月は一万一千百九十三円、十二月は一万一千八百七円だけれども、五六年の三月からは一万一千七百八十一円、六月は一万一千五百五十五円と、むしろだんだんと低下しているのであります。だから、なるほどそれはべース・アップされるかもしれないけれども、この人たちの現実は、そのべース・アップの中に入らないし、実際に低下している。こういうような事実を無視されて今のような立論をされるということは、大へんな間違いじゃないか。局長の一つ御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/42
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043・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 現実の賃金が上っておるということは、これは全般的に申したことでございます。それでまあ現行制度では最高は三万六千円に押さえられておるわけでございますが、現在すでにそれより高い方、ことによりますと七万円も取っておる方もあると思います。それが三千円から三万六千円に押えられておる。それを、賃金の幅が広いのでございますから、広くずっとしたいということで標準報酬の改訂をいたすことが合理化の方向であると、こういうことでございます。
それから政府管掌の分にはあまりべース・アップがないじゃないかというような御指摘でございますが、これはやはり政府管掌の事業場におきましても年々平均標準報酬というのは上って行っております。今御指摘の若干下っておるところがあるじゃないかということは、これは御指摘のは、お子らく何月何月という御指摘だったと思いますがこれは、標準報酬の改訂というものを私どもといたしましては年に一回やるわけでございます。そうして原則としてその一年間はその標準報酬でずっとやっていくわけで、また来年のその時期に改訂をいたすわけであります。そうしますと、その改訂をいたしました十月の月は、標準報酬は、昨年の十月と比べますと、ぐっと上るのでございます。増給だけ上っておるわけであります。ところが、その翌月からは、やめる人があり、入って来る人があり、どうしても異動がございますので、やめる人は原則として高給者からやめていく、入る人は若い人が入って参ることによりまして、毎月の平均標準報酬というものは低下いたして参るのが、これが普通なんでございます、毎月。少しずつ低下いたしておる。そうしてまた翌年の定時改訂——と申しますが、定時改訂のときに、ずっと過去一年間の昇給の状態をとらえて標準報酬を改訂いたしておる。こういうやり方を事務的な立場からいたしておりまするので、これは法律で明確になっておりますが、そういうやり方をいたしておりますので、今御指摘のように、月々でとってみますると、定時改訂以外のときには平均の標準報酬は若干ずつ下降してくる、そういうことになっておるわけでございまして、そういう数字が出ておるからと申して政府管掌の全体の標準報酬なり何なりが賃金ベースがだんだん下っておるという資料にはならないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/43
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044・坂本昭
○坂本昭君 それでは、昨年の十月の統計が出ているだろうと思いますから、それをお調べの上、御教示願いたいと思います。それからまたあと日を改めてお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/44
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045・千葉信
○委員長(千葉信君) 木下君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/45
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046・木下友敬
○木下友敬君 大臣おりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/46
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047・千葉信
○委員長(千葉信君) 今すぐ参ります。それじゃお待ち下さい。
このままで、二、三分休憩いたします。
午後三時十九分休憩
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午後三時二十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/47
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048・千葉信
○委員長(千葉信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。木下君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/48
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049・木下友敬
○木下友敬君 じゃ質問をいたします。
質問の前に局長さんにお願いしておきますが、法律ですから非常に固くなって話さなければいかぬのでしょうけれども、もう少し、にこにこして、やわらかく一つお願いしたい。私は申し上げておきますが、この健保の改正案を打ち破ってやろうとか、そういう初めからの考えで言っているのではない。あなた方のお示しに従っていろいろの方面からこれを批判して、そうしてこれでいいということであれば、今日にでも両手をあげて賛成したいという気持ですから、私が申し上げますることは、こいつを打ち破ってやろうとか、三百代言的につるし上げてやろうというのでなくして、一つにこにこして、話し合いの場ということで大臣にも一つお願いしたいと思います。
そこで、岸内閣の旗じるしであります社会保障の問題を初め大まかに質問をいたしますが、これをやるには、一番初めに国民皆保険というものをお取り上げになっております。これは非常にけっこうなことだと思って賛成しておりますが、それを推進するためには、どうしても私の考えでは、地域保険であるところの国民保険とそれから職域保険であるところの健康保険、これを車の両輪のように両方とも育てていくといういき方でないと、国民皆保険というものは成り立たないと思うのです。ところが、地域保険の方はいいとして、職域保険の方はあまり種類が多過ぎて雑多過ぎやしないか、このことは社会保障制度審議会などでも勧告しておりましたが、種類がたくさんありまして、国民皆保険というようなものを実行していくには非常にじゃまになりやしないか。あらかじめたくさんあるところの種類を有機的に整理統合するというようなことでもやる、それがすなわち国民皆保険をやるための地ならしであると私は考える。ところが、政府がやろうとしておられますのは、たとえば社会保障制度審議会の答申の中にもありました五人未満の事業所の従業員をどうするかという問題でも、あれを国民保険に持っていこうというような安易な考えをしたりしておられまして、どうも楽な国民保険の方をどんどん進めていって、そうして三千万人という、どの保険にも関係のないような事業所の人を片づけていこうというような、そういうお考えであるわけです。大事な問題の複雑な職域保険の整理というようなことはあまり気を使っておられない。ずっと今日までのお話を聞いておりますと、いろいろな今度改正したようなことを、これがすなわち今の保険の地ならしであって、これができたらば初めて国民皆保険へのほんとうの軌道に乗っていくつもりだとおっしゃっておりますけれども、私はそれは逆であって、こんな複雑な形の上にそういう改正をされたならば、一そうめんどうくさくなってきて、所期の目的は達せられないのじゃないか、こういうようなことを考えますが、大臣のお考えはどうでございましょうか発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/49
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050・神田博
○国務大臣(神田博君) 今、木下さんのお述べになったような御心配は、これは木下さんからだけでなく、私も耳にいたさないわけではないのでございます。ことに五人未満の事業所に対する健康保険は一体どういうふうにやるのか、第二種健康保険を作ってやるのか、国民保険に入れるのか、あるいは健康保険の内容を変えてそこへ持っていくのか、どうするのかというようなこと、これはいろいろ議論がございますことは御承知の通りでございまして、私どもも先般来、実は政府の中には大蔵大臣のように、自分はもう国民健康保険の方に、入れることがいいと思っているというような、個人の意見を大胆に言っている向きもありますが、政府全体としてはこれはなかなかむずかしい問題でございまして、まだどうしようということには踏み切るだけの材料と申しましょうか、その手だてが整っていないのでございます。それほどまあいわばむずかしいことだろうと思います。むずかしい事情、理由等につきましては、これは皆さんも御承知と思いますから私は申し上げませんが、しかし、これをそのままにしておいて、健康保険を地固めだ、あるいは地ならしだといってやるのはどうかという御心配につきましては、私もよくそのお気持はわかるのであります。しかし、これは決して何と言いますか、こだわって申し上げるのではないのでありますが、健康保険の問題は、二十二国会以来の問題でございまして、しばしばこれは御審議をお願いし、また、御迷惑もかけておると思いますが、とにかく鳩山内閣以来、石橋内閣、それから岸内閣、こういうような段階を経て参りまして、一応歴代内閣が健康保険の健全化、合理化ということに取っ組んでしまっているものでございますから、これをそれじゃあまた一つはずしてしまって、もう一ぺんやり直していこうかといいますと、また、これはなかなか時間的にもそういった余裕もないものでございますから、今木下さんの仰せられたように、これは一つの考えとして、私どもも全く傾聴に値すると申しましょうか、ざっくばらんな言葉で言いますと、これも一つの行き方だと思います。しかし、今の段階になりますと、なかなかこれは申し上げたような事情がございまして、今のままで御審議願っているようなわけでございまして、はなはだその点ぎこちないことのように考えておりますが、御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/50
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051・木下友敬
○木下友敬君 局長にお尋ねいたしますが、五人未満の事業所、小さな零細な事業所の勤労者の保険について、今、あなたのお手元でお調べになっていると思いますが、ほんのあらかたでよろしゅうございますが、一体どのくらいまで調査が進んでおりますか、一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/51
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052・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) これはなかなかむずかしい調査でございますのですが、私ども昨年でございましたか、調査いたしておりまするので、その概略の点を申し上げたいと思います。事業所の総数が六十九万六千、約七十万でございますが、これは抽出調査でございますので、それを全数に直しますと、かようなことに相なります。それから、おもな点だけを申し上げますが、そこに働いておりまする常雇の従業員、これが百三十四万五千という数字が出ております。それからそこにおられまする個人業主、個人の事業主でございますが、これが五十三万二千、それから家族の従業員、家族でそこに従事している人、これが三十二万三千、それからその事業所が法人でありまする場合、法人団体でありまする場合、そこの法人団体の役員の方が十五万九千、それから臨時、日雇いというふうな従業員が六万六千、従いまして、以上申しましたのを全部総計をいたしますと、二百四十二万五千ということに相なっております。それからそういう零細事業所の関係者全部ということでございます。
それからこの賃金の点でございますが、これは三十年十月のあれでございますが、現金給与といたしましては、平均で六千九百円、それから現物給与といたしましては千百十四円、それから十一月は現金給与が六千八百二十九円、それから現物給与は千百二十九円、大体こういうふうな状況に相なっているようでございます。
さらに、男女別とかいろいろな調査がございますのですが、御参考のために、それらの方々が扶養している家族の点を申し上げてみますると、先ほど申し上げました百三十四万五千の常雇の従業員の家族が、七十三万三千ほどでございます。従って、常雇の従業員と、その扶養家族ということになりますと、約二百万程度ということになるわけでございます。
それからその他それぞれ個人業種とか法人の団体の役職員、それらのものの家族、いわゆる被扶養者、それらの数も出ておりまするけれども、一応今の程度のことを申し上げまして、ごくあらましを申し上げました。
さらに、立ちましたついでに、委員長のお許しを得まして、先ほどの坂本先生の御質問の数字を申し上げたいと思います。
二十九年の十月の平均標準報酬は一万一千四百三円でございます。三十年の十月は一万一千八百三十三円でございます。三十一年の十月は一万二千三百九十円でございます。ただ十月という仰せでございますので、十月の数字間の平均標準報酬の方を申し上げた方が、今の賃金の上昇というふうな点につきましては御参考になると思いますので、それを二十六年から申し上げてみますると、二十六年では七千九百三十八円、二十七年では九千一百六十九円、二十八年では一万九十二円、二十九年では一万九百四十円、三十年では一万一千四百五十四円ということになっております。三十一年の見込みは一万一千九百四十五円ぐらいに年間の平均がなるであろうという見込みでございます。これでごらんいただきますと、政府管掌の標準報酬も毎年平均で何%かずつ上昇をいたしておるということが御了承いただけると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/52
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053・木下友敬
○木下友敬君 そこで、今いろいろお調べになった数字をお述べになりました。それで、これでどういうふうなことをしようというような何か荒筋でもお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/53
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054・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 私どもの調査は、一つの一定時期の生態を押えた調査でございまして、この調査につきましても、さらに実は本年度もう一度若干同じような調査をやっておるのでございます。それでこういうふうな数字等につきましての正確を期する必要がさらにあるのでございますが、それ以上に問題になりますのは、この移り変りの問題が非常にめんどうでありまして、なおさらに突っ込んでは、この賃金の、むしろ雇用契約のいろいろな様式がございますので、そういうような点も十分に調査をいたしてみませんと、保険としてどういうふうなやり方をしたらいいかというようなことがなかなか結論が出て参りません。従いまい点があるのでございますが、もう少し突っ込んだ調査をいたしまして、その実態の把握の上に立って大臣お答えになりましたように、社会保障制度審議会の御勧告にございますような第二種健保というような別個な制度を考えていくか、あるいは現在の政府管掌に直ちに包含をしていくか、あるいは国民健康保険というものの中に入れてこれをやった方が手っ取り早いという結論になりますか、その辺の点は三十二年度一ばいくらいで一つ方向をきめたい、かような所存でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/54
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055・木下友敬
○木下友敬君 今の御答弁で、こういう数字をもっと正確にした上でというわけで、その方針はまだきまっていないというふうに受け取ったわけでございます。そこで社会党としましては、これをいろいろ研究しましたあげく、一つさっそくにも五人未満の零細企業における勤労者のための保険を実施してもらおうじゃないかというので、成案を得まして提出しておるわけでございますが、ざっとでよろしゅうございますから、あの社会党案に対するお考えを一つ拝聴したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/55
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056・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 社会党御提案のあれというのは、五人未満の事業所の従業員を今の政府管掌にそのままこっぼり入れていこうという御提案のように私承知をいたしております。これに対する意見を言えという仰せでございますが、私ども役所といたしまして、今これに対する意見をまとめているわけではございません。お許しをいただけますならば、一つこの程度で御勘弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/56
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057・木下友敬
○木下友敬君 五人未満の零細企業における従業員の保険というものは、これは非常に重大な問題です。当局においてもこの点については、非常に御研究になっておることと思う。数字ばかり合せておらないで、どうしたらいいかということをお考えになって下さい。ところで、幸いにも社会党は、これを一つの案として提出しておる。そうすれば、これをつぶさにごらんになって、いいところがあれば、一つこれに乗ろうじゃないかというくらいな考えはまとまらなくても、御研究を進めてあるはずだと思う。ところが、今の顔つきから見ますと、社会党のあの案は一顧だも与えておらないのじゃないかと思う。それが一顧だも与えてお調べになったというならば、これは一つ読んだか、読まないかでもいいから一つ聞かせていただきたい。おそらく読んでいないと思う。そういう不勉強では、私は国民皆保険とか何とか口にしようとしても、それは羊頭狗肉といいますか、岸内閣のアドバルーンもこれはまゆつばものというような気がするのです、ほんとうに、私は最初からにこにこやりましょうと言っていましたので、にこにこやりますが、ここでは私はおしかりを申し上げておかなければならないと思う。一体読んだか、読まないか、それを正直に言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/57
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058・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 私が御勘弁を願いたいと申し上げましたのは、実は読んでおらぬ、勉強していないという意味ではございませんので、むしろ社会党が御提案になりましたものについて、私どもがかような席でいろいろ意見を申し述べるということはむしろ慎しむべきであると、そういう意味で私申し上げたのでございますから、どうぞ悪しからずお許しを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/58
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059・木下友敬
○木下友敬君 よくわかりました。非常に慎しみ深い御答弁でございまして、十分勉強はしておられる、しかも社会党に非常に敬意を払ってつぶさに御研究中であると、こういうように私はとりましょう。ありがとうございます。
そこで、話題を変えますが、三十一年度の赤字が、初め六十七億でしたかね、あれがあとでは三十六億くらいに減ってきたと、また、三十二年度にも非常に減ってきたと、これは日本医師会などでもいろいろ調べて、厚生省の赤字が非常によけい赤字があるように出しておるのはあれはうそだ、計算の仕方が非常に違うというので、日本医師会の数字を出しておりましたが、結局は日本医師会が出したのよりももっと少い数に落ちついた。だんだん赤字の見積りが減ってきた原因というものはどこにあるかということを一つお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/59
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060・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 神武以来とか言われております好況の影響が非常にあると思いますが、私ども被保険者の数につきまして、非常な見込み違いをいたしまして、被保険者が昨年と比ベますと、おそらく年間平均で五十万ぐらい増加するだろうと思います。政府管掌は一この点が非常な見込み違いでございました。この面から被保険者がふえますと、これは保険料を納めて参ります。従って、収入面で非常な大きな影響があったわけでございます。それから支出の面におきましては、一人当りの医療費というものが増加はいたしておりますが、その増加傾向が私どもが見込みました点よりは下回っております。これにはいろいろ事情があると思いますが、最大の原因は、新しく増加いたしました被保険者というものは、御承知のように、大部分は非常に若い新制中学なんかを出た方なんかが非常に多うございます。しかし、政府管掌といえども、最近は身体検査等も大体やって採用をしておるところがほとんどでございます。さような関係で、いわゆる新しい裁保険者の受診率というものが、従来の被保険者の受診率に到達いたしまするには、大体半年以上かかるという調査になっております。その辺が一番影響をいたしたのだと存じますが、増加はいたしておりますけれども、その増加傾向が私どもの見方よりは減って参っておる実績が出ております。この収入面、支出面、この両面からいたしまして、保険財政は年度当初見込みましたときよりは、いわゆる好転を示しておるという事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/60
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061・木下友敬
○木下友敬君 そこで支出面が減った中には、治療費が実際に安くて済んだという面がかなりあると思う。たとえば、一件当りの点数が少いというような現象も起ってきておるのではないかと思いますが、これは三百人からの調査員を出して、ずいぶんお締めになった。従って、医療担当者の方でもずいぶん萎縮診療に傾いた、やりたいこともやれなかったというようなこと、あるいは抗生物質などを使いたいけれども、使わなかったというために、治療費が上らないで済んだというようなことで、こういうような結果になった部分が相当あると思いますが、局長のお見込みは、一体医療担当者を締めた結果、押えた結果、萎縮診療を強化した結果、どれくらいの支出減になったかというお見込みか、一つお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/61
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062・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 一件当りの点数は、今ここで資料を持っておりませんけれども、大体最近横ばい傾向になっております。先生御指摘のように減っておりません。それから過去におきまして、どんどん一件当りの点数がふえて参りまして、最近におきましては横ばい傾向、これをたとえば被保険者本人の入院、入院外、あるいは扶養家族の入院、入院外、それから歯科診療の方で、また、そういうふうにいろいろ分けて私ども統計をとっておりますが、例外的なものがその中にはありますけれども、大体傾向といたしましては横ばい傾向でございます。そういうわけで、今先生が御指摘のように、一件当りの医療費が少くなったという傾向は、どうも実績の上では認められないようでございます。
それからさらに、調査員のお話がございましたが、これは実は、あれは主として標準報酬を的確に把握すること、それから適用漏れ等を防ぐという、言葉をかえて申せば、どっちかと申しますと、事業所を回るのがおもな任務でございます。医療機関の方にお伺いをして調査をするということは、ほとんど私はないと思います。もっとも傷病手当金の支給等に関連をいたしまして、それの診断書を書いていただいたりなんかいたしましたような場合には、そのお医者様に行ってお伺いをしてくるということは、これはあるだろうと思います。主として医療機関の方ではございません。従いまして、今の医療機関の診療の内容を、締めるとか締めないとかいうようなことには、これらの調査員が関係をいたしておりません。全般的にそれならば、そういう方に関係のあるのは何かと申しますと、御承知のように、基金の審査なり、あるいは都道府県でやりまする監査というふうなことが、関係あるといえばあるわけでございます。それらのやり方につきましては、先生御承知の通りに、特別に従来とかわったやり方をいたしておるわけでございません。従いまして、締めたから医療費がどのくらい減ったかというようなことは、とてもこれは金額では想像もつきませんし、また、そういうふうなことで、締めたから医療費が減ったのだというふうに私ども考えておりません。いろいろな医療費が減ったにつきましては、あるいは好況、豊作というようなことも関係があるだろうと思います。いろいろな複雑な事情があると思いますけれども、主たる原因としては、先ほど申し上げました新しい被保険者が急激にふえた、それらのお医者さんにかかる率というものが、従来からの被保険者から比べるとずっと低い、この辺に一番大きな原因があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/62
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063・木下友敬
○木下友敬君 それはなんでしょう、なかなかたちの悪い質問で、あれで幾らもうかったというようなことをおっしゃるわけにはいかないでしょうけれども、今度の改正案などを見ましても、どうも診療を締めてかかる、制限診療で、一つ金を節約していこうというようなお考えがあることは、これはまあ随所に見られるわけでございますが、それはあとでまた一つ実例について、私ケースをあげてお尋ねしたいと思うのがございますが、実際末端においては、現在あらゆる手を使って、あるいは審査、監査と申しますか、日常医療機関を訪問し、制限診療への道をむちうっているというのが実情なんです。これを御承知ないとすれば、非常にうかつなことでございますが、あるいは本省の方でちょっと言われたことが、末端に非常にひどく響いて、そういうことをやっているかもわかりませんけれども、実際においては、これは今のような抗生物質が出てきて、いろいろな病気が出てきた場合には、当然医療費というものは上ってくる傾向にあるのがほんとうだと思うが、それがいまごろ横ばいになっているのは非常に不幸なことである、りっぱな治療法が出ているにもかかわらず、全体として平均が、今までと変らないということは、これは決して、国民にとっては喜ぶべきことでないわけであります。ただ保険を経営していかれるうちに、まあまあ金が足ってよかったとか、赤字が少くてよかったとかという、そういうことからのなぐさみでありまして、国民にとっては非常に不幸なことであるから、私はこれはどうしても、将来もあまり治療内容を萎縮せしめるような方向にこれを進めていかれるということはこれは絶対に反対であります。その意味においてまあ、これからも出てきますが、今度の改正案の至るところにそれを私はうかがえることを残念に思うわけなんです。それでまあ、次々とその七百何十人というものが監査にかかって、そのうちの大きなパーセンテージが有罪になったというようなことが言われておりましたが、私はこれは大臣にお聞きしたいのですが、医師が違反として取り上げられておる、あの医師の違反の原因は一体どこにあるか。医師がなぜあんなに違反をするか、相当の教育を受けて、悪いことは悪い、いいことはいいくらいな分別はあるはずの医者が、しかも残念ながらそういうのが毎年何人か出てくることは私もこれを認めざるを得ない。非常に残念だ。たとえその数が一般の刑事犯人やいろいろの犯罪人に比べたらパーセンテージはそれはわずかです。金額におきましても、一つのたとえば農林省なんかで若い人が使った金に比べますれば、五十年かかって“あれだけの違反は医師はしていない。それだからといって、私は当りまえじゃないかということを申すわけじゃないが、なぜ相当社会的にも地位を認められているはずの医者が、そのわずかな、たとえば金額にしましても二百円、三百円、あるいは千円、二千円というようなわずかな、料理屋でちょっとチップをやるくらいな、そんな金までもごまかしをしたという事実があるのです。なぜこういうことが起ってくるかということについての大臣の御所見、これを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/63
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064・神田博
○国務大臣(神田博君) 医師の、いろいろ今御指摘されたような好ましくかい原因がどこにあるかというお尋ねでございますが、私はどちらかと申しますと、お医者さんがそういう好ましくないようなことをおやりなっているというふうには実はあまり考えていないのでございます。順法精神は人一倍お持ちになっておられる、良心的に自分の仕事を、また、この使命の重大なことを十分御認識なさっておやりになっていただいておる、こういうふうに私は確信いたしております。そこでそれにもかかわらず、若干出ておるじゃないかということでございまするが、これはまあ私も、これはあとから政府委員にお答えさせたいと思いますが、だいぶ形式犯が多いというふうに聞いておりますので、どうも手続と申しますか、制度と申しますか、そういう方面にも十分これは留意しなければならないのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/64
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065・木下友敬
○木下友敬君 今の御答辞でちょっと私よくわかりませんが、やはり事実においては医者のほんとうの、形式的じゃなくて、おもしろくないことをしたという事実がございますから、私はこれはぜひ同僚としても糾明していきたい。御忠告をいただいて改むべく私どもは協力していきたいとこう思うのでございますが、何かそこには原因があるだろう、私どももそれをいろいろ考えておりますが、私はこう考えるのです。やはりこれは、当局が医者を一人前の扱いをしてない。昔は医者というのは、そう悪いことをした人は出てきませんでした。相当の報酬があったのです。今ごろは、私にしましてももうちょっと診療あるいは経営所を拡張してみたいとか、いろいろなことを考えますけれども、そろばんをはじいてみると、とてもこれは引き合わない。昔だと金を借りて経営しましても、何年かたてば償却もできましたようなわけですが、このごろは金を借りてしても、利子が払えないというような状態です。そうすると、もっと適切な例を申しますと、若いとき生命保険に入っている。ところが、だんだん年をとってきて、その医師がなくなった、なくなってみて、その生命保険がすっと払ってもらえるかと思っていると、よく調べてみると、会社の方は、もうこれは一年前から保険をかけていないから、生命保険料を払っていないから保険金はなくなられても払えませんという実例がたびたびあるのです。それで私どもはそれは困る、医者というものは生命保険会社には非常に協力しているのに、一年くらい納めておらんだったからといって払ってもらえなければ、あとの子供の教育にも困るからというので脅迫しまして、いろいろの名前でお見舞金とかいうようなことで払ってもらう。この原因は何かというと、非常に医療報酬が安くなってきたということなんです。安くなってきたから悪いことをしていいという論理はむろんございません。しかし、ジャンバルジャンの例にしましても、腹が減ったから取ったということは、一面においては同情さるべきところだが、法律的にはよくないということもあるでしょう。また、生理現象にしましても、今ごろは百貨店に飛び込めば十分便所がありますから、銀座で野放図なことをする人はございませんけれども、実際に共同使所とか、あるいは百貨店の便所というようなものがないと、法律を犯してでも、どうにかしなければならぬというようなことも起ってくる。これは制度をよくするということが私は大事だろうと思います。そのためには、いま少し、医療報酬というようなことを本気で考えてもらって、保険の経営をよくしていくのが目的というのでなくて、保険の運営、被保険者のためのりっぱな治療ができる、被保険者のための幸福な保険治療ができるのにはどうしたらいいかということの観点において、この医師に対するところの報酬なども考えてもらわなければ、損をするのはやはり国民だろうと思うのですから、保険医師、保険薬剤師、保険歯科医師のほかに国民の健康を守る実際の手はないわけなんです。いかに厚生省がふんばってみられましても、この三つのものがなかったら、それはできないだろうと思う。それをわずかなことで指定を取り消すとかいうようなことをせねばならぬような状態に置かれるということに私は根本的な誤まりがある。この点を一つ心を入れかえて仕事をしてもらわなければ、私はどんなにあせっても、どんなにおきてを作られましても、どんなにひどいことをもくろまれましても、私はこういう現象はなくなっていかぬ。これは国民のために不幸なことであるから、罰金じゃ、科料じゃ、取り消しじゃというようなことの前に、まず前階段として、あるいは地ならしとしてその方を先にやってもらいたい。これに対する御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/65
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066・神田博
○国務大臣(神田博君) 先ほど私が制度上の欠点もあると考えておりますということを申し上げたのが、実は今木下さんの御指摘になられたようなことを、内容を申し上げないで、制度上の欠点がある、大事なことだというふうにお答えしたわけでございますが、私がその内容として申し上げたいことを実は今木下委員がお述べになられたのでございまして、その原因については、従って同感だということを言われると思います。
そこで、ただいまお述べになられました、そういうような状態に置かれておって、さらにこれを改善することが具体的になっておらない際に、監査といいますか、検査といいますか、取締りを強化して指定の取消しをやるというようなことではなおうまくいかないのじゃないかという、これは御心配でございました。私このお述べになられました気持もよく了承できるのでございます。そこで、まあ前後したといえば前後したことになるかもしれませんが、医師の待遇改善については、政府においてもこれはもう本気に考えていくのだ。石橋内閣のこの保険法の改正の審議を継続して願うということも、閣議の際にもそれが条件として成り立っておる、それからまた、岸内閣になりましても、閣議の際に、このことをさらに再々確認をしていただいた。そうして御審議を願う医師の待遇改善は喫緊のことである。どうしてもこれはやらなければならない。まあ、与党等にも連絡をとりまして、これをやるという前提で御審議を願っているということは、衆議院の審議におきましても、与野党一致のこれは要望でございまして、また、開業医あるいは府県市町村の公立の病院あるいは公益法人の経営する病院等からも、待遇改善と申しましょうか、一点単価等に対する改正を急速にやってもらいたいという御要望でございまして、これらに対しましても、私は合理的な解決を急速に一つやるような準備を命じておるから、皆に御協力願いたい、こういうことを申し述べてあるということを、たびたびお答え申し上げておる通りでございます。それから今のいろいろ監査の結果等、あるいは現われましたことにつきまして、保険医の取り消しをするというようなことは、これはもうよほど重大でなければやらないということになっておりまして、簡単なことでは決してそういうことはやるべきものでもございませんし、やろうという意思は毛頭ございません。どうしてもそうしなければならぬというような、どなたがお考えになっても、その点やむを得ないというような、はっきりしたことでなければやらない、こういう建前になっておりますことも一つ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/66
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067・木下友敬
○木下友敬君 局長さんにお尋ねしますが、今のような違反事項などを少くなすために、一つの方法として考えられるのは、現物給付というようなことも爼上に上げてもいいのじゃないかというようなことも、これは研究の価値があると思う。今のような療養給付でなくても、現物給付というようなことについてのあなたの方の見解なり、御研究の結果を一つお伺いしたいと思います。現物給付をやっていけば、保険の給付というようなのは、どういうような変化をしてくるか、それから犯罪などもなくして、これを進めることができるか、そういうことをお考えになっていなければなっていないでけっこうです。これは局長からお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/67
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068・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 先生の仰せの現物給付というのは、どういう御趣旨でございましょうか。ただいまの保険は医療の現物給付の建前をとっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/68
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069・木下友敬
○木下友敬君 現物給付ではない。あれ、何と申しましょうか、患者に払わしておいて、そうしてあとで現金を給付していくという、現物じゃなくて現金。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/69
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070・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) その点は、ただいまの保険の出発当時から、また、健康保険だけでなく、あらゆる日本の社会保険というものは、現物給付の建前をとってきておるわけでありますが、そこから、まあいろいろな現物給付という建前をとっておりますと、どうしてもその現物のある程度のルールを作らなければならぬという問題が起って参ります。そこで、やれ制限診療だとか何だとかという問題が起ってくるし、療養担当規程の問題でございますとか、まあいろいろ起って参るわけであります。それでかりにそれを現金給付の建前に変えますと、医療機関と保険との直接の関係は、もうなくなってしまうわけであります。直接の保険の機関の指定であるとか、保険医の指定であるとかいうような結びつきはなくなりまして、お医者様は患者との関係だけになります。それで保険としましては、被保険者との関係だけになってしまう。お医者様との関係は切れてしまうという仕組みになるわけであります。従って、そういうまあ保険に伴いまする医療機関とのいろいろな諸問題、これが非常にむずかしい問題でございまして、それを解消いたすという観点からものを考えますれば、これは現金給付になれば、そういう効果は確かにあるわけであります。従って、そういう建前をとっておる国もございます。フランスはたしか現金給付であったと思います。ところが、そういたしますと、結局患者の方が、すなわち被保険者の方が、一度金を払って、そうしてあとで保険から払い戻しを受けるというような格好になりますので、そこで今度は被保険者の側から見ますると、これはまたいろいろ問題がある。従いまして、その面からいたせば、現物給付の現在の建前が非常にけっこうだということになるわけであります。この二つのやり方というものは、非常に保険の建前の根本に触れる問題でございまして、なかなか早急に結論を出すことはむずかしいと存じます。御承知の社会保障制度審議会の、医療保障制度に関する勧告が昨年の秋に出ました。この勧告ができ上りまする過程におきましても、実は現物給付と現金給付の二本建てでいったらどうかというふうな御意見も出まして、御審議の過程で一番大きな問題になったというふうに聞いております。勧告の中にも、そういう現金給付の面を取り入れたらというふうな一つの示唆的な、これは全体の御意見ではなかったようでございますが、示唆的な記述もあるようでございます。それほど大きな問題でございまして、私ども今早計にどちらであるべきだというふうな結論を出すことは非常にむずかしいと思います。将来の大きな研究問題の一つであろうと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/70
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071・木下友敬
○木下友敬君 大臣にお尋ねしますが、現在、医師、歯科医師、薬剤師の教育というのは、これは文部省がやっておる。ところが、その内容に至っては、どうしても厚生省が手を染めなければならぬところがたくさんあると思います。ことに、こういうふうに国民皆保険ともなってきますと、教育は文部省にまかせておいて、厚生省はうしろを向いておるという行き方を持続していくならば、これは大へんなことになると思いますが、この点についての大臣の御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/71
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072・神田博
○国務大臣(神田博君) 今、木下委員のお述べになられましたことは、これは重大なことでございまして、また、大事なことと私は考えております。教育はむろん文部省の主管でございますから、私はそこで基礎的の一般的な教養を文部省が担当されることは当然でございまするが、社会人として、また、インターとの関係等を考えますると、これはやはり厚生省といたしましても、十分これは関心を持っておるわけでございまして、何か適当な方法がありますれば、これらにつきましても、十分政府としてこれは施策を考えなければならないんじゃないかと、こういう考えもあるわけでございまするが、長年今のような制度でやって参っておりますことと、また、将来専門医の問題というようなことともあわせてこれは考えなければならぬ問題でございますので、大へんごもっともな御意見でございますから、十分一つ検討いたしまして、そうしてその結論をまとめてみたい、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/72
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073・木下友敬
○木下友敬君 そこで、少しでも厚生省としてこういう医療方面の教育に意を用いるというような考えがあるとすれば、もう一つお伺いしたいのは、健康保険というのは、非常にこれは医者のもう全部の仕事になってきたのでございますが、法律は非常にうるさい、非常にめんどうくさい、それでこれをのみ込んでおらないと、実際の診療には役立たない。大学から飛び出てきましても、あすの日から保険医を担当することはなかなかできないという、こういう実情のときには、厚生省担当の健康保険でございますから、文部省などと話し合いをして、そうして学校においてこの健康保険というようなことを十分のみ込んでもらわないことには役に立たないということになるわけです。私どもが学生であった時分には、医者の法律としては、わずかにせいぜい往診を言ってきたらば見に行かなければならぬとか、あるいは法定伝染病の十くらい知っておけば、大体そのあとでおしかりを受けるというようなめんどうくさい法律がなかったからよろしゅうございますが、このごろはがんじがらめでございますから、何とかして健康保険法というようなものを十分学生に知らせる必要があるのじゃないか。また、いろいろな面で健康保険の勉強をさせなければならぬのじゃないかと思いますが、厚生省の御所見を一つ大臣から承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/73
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074・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいまお述べになりましたことはごもっとものことでございまして、社会で第一線にお立ちになりますれば、それはもう健康保険法はもちろん、結核予防法にいたしましても、いろいろな厚生関係の現行法律を熟知していただくことは、これは大事なことでございまして、私も最近の大学の教科がどうなっておりますか、実は今局長にも、君はわかるかと聞いたらわからないようでございますが、何か教えているのじゃないかという感じはいたしますが、よくこれは調べてみまして、教えていないとすれば、どういう教育を、方法をとって周知するような手を打つか。なおまた、根本的な問題として、文化国家を一つ作ろう、社会保障をしよう、医療制度も確立をはかろうという際でございますので、そういうことが一つ若いお医者さんの巣立つ方々に一番よくこれは知っていただかなければならないことと考えますので、よく調べまして、文部当局とも連絡とりまして、政府としてもこれは大事な施策の問題でございますので、十分連絡をとり、検討をいたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/74
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075・木下友敬
○木下友敬君 これは大へんなことなんですよ。厚生省は、その医師とか歯科医師とか薬剤師のでき上ったものについてはいろいろの注文もし、育ててもくれるというようなことなんですが、それが学校におる間はどういう教育を受けておるかも一つも知らない。大臣はそれは御存じないでもそう責めなくてもいいけれども、局長がそういうことを知らんで、どういう教科をやっておるというようなことを御存じないということは私は受け取りにくい。そのくらいのことはとうの昔に知って、そうしてたとえばこういうふうな医療法についても不備な点があれば、こういうことを教えてくれ、健康保険のことについてもこのくらいのことを教えてくれというような注文をしなければ……それをほっておいて、出てきたものには何週間の講習あるいはちょっとした講習をして保険医の指定を許可する、こういう考え方は誤まりだと思いますが、これは一つ局長さんどうですか、何とか御検討して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/75
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076・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 不勉強をおしかりを受けましてまことに恐縮いたしております。私の承知しておりますものでは、正科で社会保険の問題を教えておるということにはなっておらぬようでございます。ただこの何と申しますか、基礎になる科目と申しますか、必須以外の、課外と申しますか、そういうふうなことで、最近相当多くの医科の大学で社会保険のことをやっていただいておるというふうに聞いております。ただどの程度それが普及いたしておりまするものか、正確な知識を持ち合しておりません。先生の御指摘のところは、主として厚生省といたしましては医療行政の関係が主でございまするので、私どもといたしましても、今御指摘のように、社会保険の関係でございまするので、この辺は私どももう少し調べて、できるものならば今先生御指摘のような御趣旨に沿いたい、大臣と同じような考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/76
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077・木下友敬
○木下友敬君 きょうは私は非常に残念なのは、二度もあなたをしからなければならぬ。社会党がせっかく五人未満の事業所の保険の問題についてりっぱな案を出しているのに、これを見てもいないというようなことも、これも怠慢です。それから一体医学生なり、薬学生なり、歯科の学生がどういうことを勉強しておるか、これからの医者あるいは薬剤師でも、みなが学校を出一、生まれてくれば、すぐ保険以外には、国民皆保険になれば、ほかにすることはないのです。みなが保険に協力していかなければならぬというときに、そういうところはほったらかしておいて、そうして出てきたものについては、ここが悪い、あそこが悪いというようなとがめ人みたいなことで行政をやっていこうという考え方は、これは悪い。初めからそういうふうに育てていくのがいい。ただ私がここでこう言ったからといって、ここで一つお願いと御注意を申し上げておかなければならぬのは、それだからというて、あの純真な学生たち、そうして学問をまじめにやっている学生たちに、これからは皆保険で、保険財政の関係もあるから、制限診療をしなければならぬぞという、そういうようなことだけを教えてもらいたくない。厚生省が教えるとすれば、おそらくあなたが教えるとすればそういうことだけ教えるだろうと思う(笑声)これは決して笑いごとではございません。必ず厚生省がこれにくちばしを入れられるとすると、こういうぜいたくな治療をしてはいけないとか、そういうことを教えて、ほんとうに真理に向って進もうとするところの医学生たち、あるいは歯科の学生、薬学科の学生たちをゆがめることになる。これは日本の医学界にとっても、また、国民にとっても不幸なことであるから、そういうことだけはしないで、本気に文部省がやっているこういう方面における教育がどうであるかということは、まじめに配慮してもらいたいと思うのです。このことは、単に厚生省の中だけの問題ではなくして、大臣にしましても、閣議のときでも、そういうことは十分御発言になって、教育のことだからもうおれは関係ないということではなく、もっとそういうことについては厚生省の権限を広めていただいて、そうしてりっぱな医療制度というものを樹立してもらいたい、私はこう考える。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/77
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078・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいまの木下委員の御要望といいましょうか、御注意、これは全く私同感でございまして、就任日浅いものですから、ついそこまで手が回らなかったわけでございまして、ここで分けのこととしてお取り上げいただいたことでありますから、厚生省といたしましては、十分文部省と連絡を密にいたしますとともに、御指摘のような非常に大きな、重大なわれわれ国民健康保険の将来に関する問題でございますので、閣議等におきましても、適当の機会にそのつどよく一つ御認識をいただきまして、御趣旨十分徹底できるように一つ進めて参りたいと思います。
それからいまもう一つお述べになられました、厚生省が文部省と相談する際に、学生の教育は、制限診療を主としてやるようなことを申し入ればしないかというような、これは木下さんはそんなことを本気におっしゃられるのではなく、今そういう制度をやっていることはけしからんことなんだ、これは一つ今から直すのだという意味で私は御指摘になられたということと考えまして、そのお気持は私も全く同感でございまして、今の何と申しますか、よく私申し述べるのでございますが、会社、工場等の労務管理を目的にしてできた健康保険法が、現在国民皆保険という、もうお医者さんたちの選択を許さない、しかも文明がだんだん進んで参りまして、医学の高度化してきつつある今日、最良なこれは手段だ、しかも経済的にも考えてやることはこれは当然のことだと思いますので、その点は十分私の考えも共通のことでございまして、これは決して御指摘になられたようなこの表面の字句ではなくて、お考えになっている精神を私よく承知できますので、御期待に沿うような方面に一つさっそく持っていくようなことにいたしたい、こういう気持で行政を進めたいと思いますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/78
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079・高野一夫
○高野一夫君 関連して。私は今の木下委員が、教育の中に、社会保険関係その他の法規制度を教えることの必要というお説に対しては、全く私も同感で、全幅の共鳴を感ずるわけです。ところで、先ほど来、高田保険局長の御説明が多少あいまいな点がありましたが、私が承知しておる限りにおきましては、医科大学においても医師法規を随意科目としてやっておるはずです。それから薬科大学においても薬事法規制度をこれも必須科目でなくしてやっておるわけです。ところが、御承知の通りに、医科とか薬学とかというような、理科系統の学問の好きな学生が、どうもしちめんどうくさい社会保険その他の法律の勉強をしたがらない、興味を持たないので、せっかく随意科目で専門の講師をかかえていながら講読を聞きにいかない、こういう事態にあるのが私は実情だと思う。そこで、そういうような学生に、特に社会保険そのほかの医師法規あるいは薬事法規の必要性というものをよく一つ納得さして、それでその必要がある、これを知らなければ医療ができないということをよくほかの先生方からも教えるようなふうにしむけることも、実は私は大事なのじゃないか、こういうふうに思いますので、この点は厚生大臣の方も、文部大臣とでも御連絡を賜わりまして、そして学生の気持をそういう方面に興味を持たせるようにしむけていただきたい、こういうふうに私もお願いですが、申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/79
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080・坂本昭
○坂本昭君 関連、ただいまの高野委員のお考えに私も全く同感でございまして、この点は意見が一致いたしました。ただ本日遺憾に思う点が一つあるのは、先ほど来、かなり医療法に関することが出てきます。それから国立病院、療養所の問題、それから大学病院の問題が出てきます。どうも大臣が保険局長ばっかりお供に引き連れて、医務局長来ておらぬでしょう。そういう大体考えで国民皆保険をやろうとされることが根本的に間違っている、一つ大臣の御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/80
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081・神田博
○国務大臣(神田博君) 大学教育に対する高野委員、坂本委員の、厚生省として十分連絡をとれという御意見につきましては、私先ほど来、木下委員にお答え申し上げた通り、全く同感でございますので、十分これは連絡いたしまして、成果のあがるような一つ方法を考究して参りたい、こう考えておりますので、なおまた、一つこの点は御支援もあわせてお願いいたしたいと思います。
それからただいまこの健康保険の審議に当りまして、保険関係担当官だけ連れてきているがどうもけしからぬじゃないかという今の坂本委員のおしかりでございますが、決してそういう意味で伺っておるのではないのでございまして、この保険法案は政府にいたしましてもこれは重大法案の一つとして重視いたしておりますし、担当省であります厚生省といたしましては、申すまでもないことでございますので、必要に応じまして、省をあげてこちらへ万障繰り合せて出席させる意向でございますので、どうか一つ御審議の必要のつど一つお呼び出し願いたいと思います。全部朝から連れて参りますと、省の機能がとまってしまいまするので、その点も一つ御勘案願いまして、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/81
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082・木下友敬
○木下友敬君 だんだんこれから質問が佳境に入るわけです。(笑声)私は今の医療制度の中では、いろいろ改めていただかなければならぬことがたくさんあると思うのですが、これは厚生省としてお困りになっていることかと思いますが、町を歩きましても、鉄道病院があり、あるいは郵政省の所管の病院があり、文部省の関係の病院があり、もっとこれをひどく言いますと、厚生省内部でも所管によって、病院の手のつけられんというようなところがあるわけなんです。たとえば、厚生省の中でも、保険関係の病院だと、医務課の方は非常に遠慮しなければならぬというようなこういう状態に置いておかれるというのは非常に遺憾なのであって、こういう医療機関というものは、もう絶対に厚生省が、全部一手におさめるということでなければ、鉄道のは勝手に鉄道が建てていく、これはもう中央だけでなくして、県庁においてもこれは非常に困っておる問題でございますが、これを一つ整理していかれるというようなことについて、熱意があるかどうか、これをお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/82
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083・神田博
○国務大臣(神田博君) この医療行政の担当はこれは厚生省であることは申し上げるまでもございませんが、今日幾多の国立あるいは公立病院が、その歴史的過程のもとにできておることも、これは仰せの通りでございます。そこで、これらを一つ厚生省の手でもっとあたたかく育てろという御所見のように承わったのでございまして、やはり趣旨としては、一つの考え方といたしまして私も同感でございますが、何しろ歴史のあることでございまするし、これをそういうふうに持っていくということになりましても、いろいろこれは準備と申しましょうか、了解と申しましょうか、事前工作が要るだろうと思います。そこで、今ばらばらの系統で成果をあげておるわけでございますが、それをどういうふうにしたら一番病院としての成果があがり、医療機関としてのその使命が十分達せられるかということがまづ先決問題になってくるわけでございます。木下委員の御意見は全く卓見でございますので、私どももよく一つ今後時間をかりまして、十分検討させていただきまして、そして御趣旨に一つ沿えるものであるといたしますれば、そういうような方向に持っていきたい、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/83
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084・木下友敬
○木下友敬君 今の大臣のお答えは、それは非常に何でしょう、熱意が足らんですよ。これはほんとうに国民皆保険ということをやるならば、もっとこの問題は本気で、趣旨としては賛成というんではなくて、実際に取り組んでいかないとやれなくなります。それはあらゆる医療機関というものを厚生省が把握しておかなければ動きません。で、今簡単な例を申し上げてみましょうか。今度和歌山市に簡易保険の診療所ができるわけです。そこにできて、あとまた三十か五十か次々に作っていくということを郵政省はいっておる。莫大な予算で簡易保険の診療所を作ります。ところが、ここでは単価は八円、高くても十円でやるといっておる。そうしますと、和歌山市では近々国民健康保険を作ろうというやさきに、こういう簡易保険が安い単価でやっていくということになると、国民保険の方はせっかくやっても患者はこないということになる。すぐあすにもこういう険路が横たわっておるという状態の場合に、もし厚生省がこの簡易保険の診療所を作ることについてもぐっとかぎを握っておくというようなことがなければ、実際あすの日にも問題は困ってきておるわけなんですが、局長さんこれは一体このままでよろしいんでございますか。御趣旨には賛成だが、非常に歴史もあるからまあ慎重にというようなお考えですか。実際に国民健康保険を作ろうにも、——和歌山市で国民健康保険を作ろうにも、簡易保険診療所ができて、八円ぐらいの単価でやられたならば、国民保険は成り立っていきません。何とかして一日も早く、こういう医療施設というものを完全に厚生省が把握するという態勢だけは、国民保険をやる一番初めの基礎工事としてこれはやってもらわなければならぬ、あすの日のことじゃなく、きょうにもそれに取りかかるという心がまえでなければやれぬと思う、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/84
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085・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) これは実は私の所管と申すより、医務局長の所管でございますが、今の簡易保険の診療所というのは、私のこれは想像でございますが、おそらく一般に公開しない、八円の単価でやるというのは、その簡易保険系統の職員なり、家族なりを見るための診療所ではあるまいいと思う。その場合に、その単価を——まあ点数の方は大体保険に準拠をして、一般の社会保険に準拠をしてやりますが、単価を八円ということにいたしておるのであるかと存じます。
それからこの病院、診療所というものを厚生省が一元的に、この何と申しますか、握るというふうなことが必要ではないかという仰せでございますが、これは先ほど大臣がお答えになりましたように、私も御趣旨は全く同感に存じ上げておるわけでございます。ただ今日の場合におきましても、この医療法による監督、病院、診療所としての監督というふうなものは、これは厚生省の医療行政の系統の監督を受けておるものと私どもは考えております。社会保険の被保険者を対象にいたしました病院等につきましても、やはりまあ手っとり早く申しますれば、医療監視員の監視を受けて、病院としてはその監督に服しておるということになっておりまして、まあその意味では、厚生省の医療行政で監督は一元的にやっておるということはまあ言えるかと思うのでございますが、先生御指摘のことは、建てる場合にですね、建てる場合に、厚生省以外のいろいろなこのまあ逓信病院であるとか、鉄道病院であるとか、そういうふうなものについてのことを今御指摘になっておると思います。それらの点につきましては、私どもも先ほど大臣がお答えになりましたように、一つの病院配置計画と言いますか、そういうふうなものに従って、それぞれその統計のもとに配置されて参るというふうなことが望ましいものと私どもは考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/85
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086・木下友敬
○木下友敬君 機関指定のことで少しく御説明を願いたいのですが、あの機関を三つの種類に分けられた、これはもうお尋ねしますまい。ところが、もし不届きな機関があった場合に、指定の取り消しをできるというのはあの第一種の機関、あれがまあ取り消しのできるものだと考えるんです。ほかの二つはどうも……ほかの二つについては厚生省の力はあまり伸びていかない、ことにそこに勤めているお医者さんなり、あるいは歯科医師なり、保険薬剤師というものは第一種におる者が都道府県知事の指定を受けておるわけでありまして、第二、第三のものには、そういう保険医とか保険歯科医とか保険薬剤師とかいうそういう資格は要らないということになっておる。ですから、第二、第三のところにおる医師が保険の目から見れば悪いことをしておってもこの登録を取り消されるということはむろんないわけで、登録を取り消すというような制肘を受けるのは第一種に属するところの、勤めておるところのいわゆる保険医であり、保険歯科医であり、保険薬剤師であると思いますが、こういう区別をなぜしてあるかということなんですね。この点の御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/86
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087・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 今の御質問は四十三条の第三項のこの各号の問題だと拝承いたしました。この一号とそれから二号、三号とは医療機関の性格が全然異なっておるわけでございます。で、一号は先ほどもお答えをいたしましたように、この不特定多数のいわゆる一般国民というものを対象にいたしました医療機関は全部一号に入れておるわけでございます。それでこれにつきましては、先ほどお答えをいたしましたように、現在ではそういう一本の取扱いになっておらない。官公立病院等につきましても、不特定多数の一般に開放されておる病院というものは全部一号で処理をいたして参る法律の建前になっておりますということをお答えを申し上げたと思います。それで二号、三号と申しますのは、これは全然この法律上の建前を異にしておるものでございまして——いや、法律上の建前というよりは、むしろこの医療機関設置の目的が違うのでございます。二号はこのある特定の被保険者を見るという目的のために建てられたものであると、あるいはまた、そういうものでございますので、具体的に申しますると、何々株式会社が自分のところの健康保険組合の人間を見るために建てた病院ということになるわけでございます。それから三号はこの何々株式会社の従業員を組合員とする何々健康保険組合が自分で直接この現物の給付をいたすために自分で経営をしておる病院でございます。それで二号、三号というようなものは、原則的にはその他の人は見ないという建前でこれはできておるわけでございます。従いまして、法律上の性格も違いまするので、かように分けて規定をいたしたわけでございます。しかしながら、二号、三号といえども、あとの方に出て参りまするように、診療のやり方でございますとか、その他のことにつきましては、この保険医療機関の一号の方のいろいろな準則がございますが、その準則を全部準用してやるようにというふうなこの準用規定があとの方でございます。それから二号、三号等でかりに悪いことが行われた場合に、機関の指定の取り消しとか、あるいは保険医の登録の取り消しというようなことがないではないかというふうな御趣旨の御質問でございますが、悪いことがあれば、たとえば事業主なり、あるいはこの健康保険組合なりがみずから処分をすることができるわけでございます。自分の建てておる病院で自分が雇っておる医師でございますから、その健康保険組合の直営病院の医師が悪いことをいたしてその保険組合に対して損害をかけたというふうな場合におきましては、みずからこれは処分をいたすこともできるわけでございます。で、さような関係でございまするので、医療機関の設置の目的、性格が違い、法律上の地位も異っておりまするので、これらは別の書き方をいたしておるということでございまして、決してこれらのものを特権的に扱って保護をいたしていこうとか、そういうふうな精神からこういうふうに書き分けたわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/87
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088・木下友敬
○木下友敬君 その損害を、二号、三号の場合で損害をかけたような場合には、自主的にその保険組合なりあるいは株式会社の方で処理していくから、国としては、これに規制をする必要がないというようなお考えです。ところが、保険ということになれば、国民が同じ恩恵に浴したいというのがもとなんで、ここでは、少くも一号の場合だと濃厚診療というのがこれは非常にお上から怒られる原因になるわけです。ところが、組合が建てたものとか、あるいは会社が建てた所では濃厚診療は怒られない。これも、厚生省の考えでは、濃厚診療は損害をかけたとお考えになるかもわからぬけれども、会社やあるいは健康保険組合が建てた診療所、病院の場合には、濃厚診療をすることは、これは損害をかけたということにならないというわけなんです。そこで、そういう、勤めておる所に、たとえば保険組合をみずから作り得るような大きな場合とか、大きな会社とか、あるいは従業員のために病院を建ててやることができるような大きな施設におるところの労働者というような間に不公平が起ってくるわけで、まあ多少の不公平は何にでもあるからがまんしなければならないけれども、法律の上ではっきりこういう不公平を認めておくということは、私は納得がいかない。ことに先ほども私は指摘しましたように、厚生省なり、あるいはもっと縮めても、保険局の手の届かないものがたくさん医療機関の中に、あるいは制度の中にあるということを申しましたが、ここでは保険局みずからが自分の監督権の、手の届かない治外法権をみずから作ってやっておるような形なんです。健康保険組合が作ったものは自主的におやりなさい、けっこうです。あなた方が自主的におやりなさるならけっこうだと、こういう所では、みずからどうぞあなたの方でおやりなさいと言っておいて、弱い方の政管に向っては非常に大きなおきてを作っていかれるというところに非常な違いがあると思うのです。この点を一つ御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/88
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089・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 強い方、弱い方というようなお言葉もございましたが、別に、一号の方にも国立病院、大学病院と一非常にまあいわば強い医療機関も入っておるわけでございます。二号の方にも小さい診療所なり病院なりというものもあるわけでございますから、強い方、弱い方ということで分けたわけではございません。あくまでも一般に開放されておる病院であるか、診療所であるか、あるいは特定の者を見るために設けられておる、その者以外には見ないという性格の病院であるかどうかということによって分けたつもりなのでございます。
それでなおつけ加えて申し上げておきますが、そういう目的で作られた病院なり、診療所なりが、一般的に、その組合員以外の者も見るというふうなことになりますれば、これは当然一号の方に該当して参るわけでございます。だから一号の方の指定を受けなければ、これは一般の他の人々は見られないということになります。その点も申し加えておきたいと思います。
さらに御理解をいただきまするために、現行法の建前との比較をいたしてみますれば、二号、三号というふうなものはもちろんのこと、その他の今回一号に入れました非常に多くの種類の病院、診療所につきましても、現行法では「保険者ノ指定スル者」ということになっておりまして、これは相当広く、今、先生御指摘の現行法の保険医以外の者と保険医と区別をして、相当広く「保険者ノ指定スル者」ということで運用がされておるわけでございます。一般的な患者を被保険者以外に、特定な被保険者以外に一般的な患者を扱う場合におきましても、そういうふうな取扱いがいたされておる。それらがさっき申し上げましたような改正法の取扱いになりまするので、その点におきましては、現在の法制よりはずっと先生御指摘の方向に改正をいたすことに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/89
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090・木下友敬
○木下友敬君 どう言われても、しかし、一号とそれから二号、三号に勤めておるところの保険医なりあるいは保険歯科医等に対する差別ということは、これはもうおおうことのできないものであって、また、その治療を受けるところの被保険者の幸福の程度にも大きな差があるということは、これは争われぬ事実だと思うのでございます。
そこで一つこれに関連してお聞きしておきたいのは、こういう事実があり得るとさっきも言っておられましたが、医療機関が、機関指定を受け取る医療機関に落度があってこの指定を取り消される、であるけれども、そこに勤めておるところのお医者さん、医者に限定しますと、お医者さんは何も別に罰せられることがない、ただそこで仕事をすることが認められないので、よそに行って仕事をすればいい、こういうことを仰せになりました。それはそうでしょう。その機関の指定が取り消されただけですから、その医者はほかに行ってもいい、こういうこともそれもその通りです。それで私の場合を申し上げますが、私が一人で診療所を、自分一人で診察しておる。月末になりますと請求書を書いて出す。そして悪い心を出しまして、注射しないものをしたように書いて出したために、それがばれて私の診療所は指定を取り消されるということになります。それで、私の診療所ではもう診療することができない。私も医者であるけれども、保険医であるけれども、その場所では診察できないということになる。ところが、私は利口に立ち回りまして、取り消された指定の医療機関というものを閉鎖します。直ちに閉鎖します。そうしてあしたまた、今度木下診療所と言わんで博愛診療所という名前をつけまして、そうして診療機関の一つ指定をして下さいというお願いを出します。診察するのは私が診察いたします。また、もし御指定をいただけたならば、今度月末になりまして、診療報酬の請求を書くときはやはり私が書く。こういう事態が起り得ると思うのです。これは脱法行為ということができるかもわからないけれども、もし私が博愛診療所でやることができないとすれば、あるいは家内の名前でもあるいはいとこの名前でもかりてきまして、そういう人が開設して私はそこで雇われるということで、施設は元のまま、あるいは元よりは少しペンキを塗りかえて、そうしてきれいにして申請した場合にはどうなるか。この問題を一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/90
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091・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 御設例のような場合には、それはその次の診療所の指定というものが医療協議会等におきましてもこれは指定をすべきでないというふうに了承を得られると存じまするので、医療協議会の議決というものも指定を拒否することに相なると存じます。これは議決によるわけでございます。さようなことで、その新しい指定というものは、先生おあげになりました二つの場合いずれもこれは指定を拒否するということに相なると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/91
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092・木下友敬
○木下友敬君 それは私無理だと思う。もう一たん閉鎖して、指定は取り消されたから、閉鎖してしまって、もうそのものはないわけです。それじゃもう一つ譲歩しまして、私はもうそこでは診療しない。それは閉鎖して私はもう、時どこかへ行ってしまう、しかし、一月たってからほかの人の名前で、全くこれはまじめにほかの人がその診療所を買い取って、そうして開設したとする。そうして医者を雇ってきて診療を開始した、これは可能があるだろうと思う。ところが、それはまあそういう便宜をやったわけで、その間は大学から一カ月ぐらいちょっとお医様を借りてきて……、ところが、今度それが許可になったならば、私がのこの者こ帰ってきてそこでまた勤めたというような形でも、これはやっていけるというような穴がある。これはまあ厚生省も非常に、あまりひどい法規ばかり作って医者をいじめてはいけないので、こういうどこかは穴を作っておかぬと困るだろうというようなおぼしめしだ、だからこういうところでそれはいいということは言わぬだろうけれども、そういうことはあり得るだろうと思う。それをしも医療協議会でそれは拒絶するだろうということをこういう席で言っておられると、医療協議会はそれまで拒絶するということになってこれは大きな人権じゅうりんだと思う。これから新しくほかの人を雇って診療を始める、私は一時旅行して帰ってくる、これは私は当りまえのりっぱなやり方だと思う。こういう場合には、私は医療協議会がそれは認めないだろうというようなお言葉をいただかぬように、私はそうでないとせっかくこういう穴を作っておいていただいたことが無になってしまうと思うのですが、一体どういうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/92
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093・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 今の御設例のように、ある医師が個人で開業をしておられまして、そうして悪いことがあった。その場合に、請求の関係等であれば、これは機関の指定取り消しということになるから、これは何々診療所は取り消しを受けた。ところが、別の方がその診療所を現実に買い取って、そうして別の医師をお置きになってそこで診療を開始されたということになる。その場合に、機関の指定を場所が同じだから拒否するかということでございますが、それは御指摘のように、拒否すべきでないと思います。全然別個な方がお買い取りになって、別の医師がそこで診療をされるわけでございますから、拒否すべきでないと思います。ただその際に、これは蛇足でございますが、非医師が開設者でありまする場合には、非医師が買い取って医師を雇っておやりになるというふうな場合につきましては、これは医療関係者の団体の御希望等も従来からございまして、指定に当りましては十分厳重に審査をする、十分よく調べるというようなことにいたしたいと存じておりますので、非医師の場合と、買い取った方が医師の場合とは、これは若干変って参りまするけれども、実際の扱いは……。しかし、いずれにいたしましても拒否すべきではないと思います。そういうことで私どもは運用いたして参りたいと思うのですが、まあさよう御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/93
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094・木下友敬
○木下友敬君 そこで、もう少しくどいようですけれども、例をあげて一つお尋ねをしておく。これは大事なことですからうるさくてもお答えを願いたいが、私が私の子供と二人で診療所で働いておりまして、私の事務員が悪い気を起して、そして不当の診療の報酬請求をしたために機関の指定が取り消された、こういう場合を考えてみます。そういう場合、まあ私は別として子供が今度はその診療所の責任者として機関指定を願い出てきた場合に、これは他人に売った場合じゃない、また、今あなたがお話になりましたように、資格のない、医者でない者——非医者である場合でもない、医者である。ただ一時責任者としておった私の子供ではある、しかし、悪いことをしたのは事務員、こういうような例の場合、これも地方医療協議会というものは拒否するかどうか、これ以上一々それではいとこのときはどうかとか、そういうことまでは聞きませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/94
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095・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 今の事務員がどうとかこうとかしたという場合に、十分その開設者のお父さんの医師がそういうことを命じておられるわけでもなし、どうということではないということでありますれば、まず第一に、機関の指定が取り消されるということが私はなかなかないだろうと思います。機関指定を取り消す……、特に悪いことをしろといって命令をされたわけでもない。まじめにやりなさいよというふうにおっしゃっておるのに、たまたまその事務員が何かのはずみでちょっこりやったというふうな場合には、機関指定取り消しという事態に私は実際問題として至らないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/95
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096・木下友敬
○木下友敬君 そこで、それじゃ事務員じやなくて、私が請求書を書いて悪いことをしておる、その場合はどうなります。私が請求書を悪い書き方をした、こうなれば機関指定取り消しになるんでしょう。そうすれば、しかし、私のせがれが残っておって、今度しろうとでないせがれが、そこをペンキを塗りかえて一つやろうといった場合にも、これは即座には、人格は全然私とせがれは別ですが、それでも許可にならないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/96
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097・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 子供さんが全然別個の御人格でございますので、これは許可をいたすべきものと、機関指定をいたすべきものと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/97
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098・木下友敬
○木下友敬君 これは念を押しておきますが、これは仰せの通り全く別の人格でありますから、地方医療協議会などでも、断じて子供がこれを申請したときこれを許可しないという空気が少しでも起きないようなふうに、局長においても、一つあらかじめそういうことを地方にもはっきりさしていただきたい、そういうことをお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/98
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099・竹中恒夫
○竹中恒夫君 関連してお開きしたいのですが、先ほど坂本委員のこの問題について連座制の制度だという御質問がありました。今は連座としたのですが、先ほど局長は決して連座制でないという引例をあげられるときに、めったにない不正を初めから考えて、だいぶん病院の機関の例をあげて連座制度の御説明があった。私はかねがね心配いたしておりましたことは、今の木下委員の質問のことを心配しておった。親子の場合にどうなるかという心配をしておりましたのですが、その点ははっきりいたしましたので安心いたしましたが、この際、一点お聞きしたいことは、機関指定に対する再申請の明文がないということは、これは今の御質問のようにいろいろと疑惑を持つわけです。局長は、医療協議会で指定の再申請をする場合ですよ、医療協議会でやるのだということですが、取り消された場合には、翌日してはいかぬということはもちろん明文にもございません。その場合に、悪意があっての取り消しの場合と、それからたとえば私が神戸から東京へかわった場合、まあ町申請でないかもしれませんが、新しい申請かもしれませんが、実質は再申請なんですね。そういう場合の再申請に対する明文がないということはちょっと不安というか、不自由を感ずるわけですが、それはどういうわけでないのですか、その点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/99
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100・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 今まで全然保険に関係のなかった方が医療機関の指定を受けたいという場合も、それからこの機関の指定を取り消されてまた再指定を受けたいという場合も、それから期間更新後の、三年の期間がたった後の群指定の場合も、すべて法律としましては四十三条の三によるわけでございます。従いまして、明文があるのでございますが、先生の御質問の御趣旨は、もう一度お開かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/100
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101・竹中恒夫
○竹中恒夫君 条文によりますと、「保険医療機関又ハ保険薬局ノ指定ハ」となっておる。その指定の中には……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/101
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102・千葉信
○委員長(千葉信君) 御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/102
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103・竹中恒夫
○竹中恒夫君 今局長がおっしゃったように、取り消しの場合の申請もあれば、それから場所の変る場合の申請もあるし、それから新しくする場合、すべてを含んだ、こういうことですね。よくわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/103
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104・木下友敬
○木下友敬君 そこで、これから詳しくまた御説明を願わなければならぬ問題がたくさんございますが、それについで、まず最初に一つお伺いしておいて、それを御説明をいただいてからでないと先の質問がやりにくいから、ちょっとあらかじめ大臣にお尋ねしておきますが、大臣は、非常な決意を持って保険医療行政に邁進すると、こういうことをしばしばはっきり言っておられる。私は、これには非常に敬意を表するわけでございます。ところが、どんなに大臣が力み返っておられましても、これを完成していくためには、いろいろの関係の団体、こういうものの協力がなくしてはやっていかれぬじゃないかと私は思う。協力なくして、大臣なり厚生省のお役人が力み返っておれば、国民皆保険とかそういう医療問題がひとりでに軌道に乗っていって、オートメーション的に医者がこうやって診察をしてくれるとか、そういうようなことは出てこないと思う。誠心誠意協力をしていくという態勢がなくてはならないと思うのでございますが、私の目で見ますと、現在のところ、医療担当者等が、今日出されておりますこの保険の一部改正案について、全幅の賛意を表していない、どころではない、全幅的な反対を示しておるという、こういう状況にあることは、大臣御存じの通りだろうと思う。すでに、いろいろのたくさんの県におきまして、これがこのまま通るようなことがあったらば、保険医を辞退するということをはっきりきめておる所も日たくさんのそういうことに関する陳情の書信が参っておる。これは見逃してはいかない事実だと思うのでございまして、おそらく大臣としては、そういうものをよく説明して納得さしてそうして賛成を得ていくんだというような甘い考えでおられるのではないかと思うのでございますが、私ども自身医療担当者という立場から見ましても、ここに盛られておるこの一つ一つをたんねんに見ていけば見ていくほど、私どもは身の毛のよだつ気がする。実際にこのままでは、九千万の国民の皆保険、病気から救ってやるとかいうようなことが気持よくやってのけられるというようなことは考えられない。そういう見地から、この関係団体の者が喜んで大臣を謳歌しながら、いい法案を作ってくれたということを謳歌しながらこの医療行政に賛成をしていくという態勢を作るのが大臣としては一番大事な仕事で、これを作らなければ、その他の仕事は意味が少くなってくると私は思う。で、この点に関して、今の医療担当者たちがやっておりますことについて一つ大臣の御批判をいただいて、そして、あれでいい、あれはあれでほっとけ、あれらはああやるんだというようなお考えでおられるかどうか。もしおられないとすれば、一体どういうふうにこれに善処していかれるかという、ほんとうの覚悟ですね、大臣としてのお覚悟をはっきり言ってもらって、そうしてその御返答次第では、また次の質問を一つ一つお尋ねしていきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/104
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105・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいまの木下委員のお尋ねになりましたことは、現下当面している問題といたしましてこれはきわめて重大なことと私も考えております。私は、この法案をめぐりましていろいろ御批判のあることも、十分承知をいたしております。ことに、今おあげになりました診療機関の方方が声を大にして切実に御反対されておられる気分と申しましょうか、そのお心持も、よく実はわかるのでございます。しかし、これはまことに残念でございますが、そういう反対されているのを承知でこの法案を強行するのは一体何かと、こういうことを言われると恐縮なんでございまするが、決して反対なのを承知で押しまくっているという意味ではないのでございまして、厚生省がまた、政府一体としてこの国民皆保険を踏み切る際に、全体として私どもの診療機関の方々に対する考え方をお聞き願って下されば、これはよく御了解願えるのじゃないか。健康保険だけの問題を取り上げると、それはもう今深刻な御批判をこうむっておることは重々承知できるのでございまするが、全体として一つの方向として、政府の意図しておることを十分御納得いくように一つ私ども努力いたしたい。そこで御理解と御了解を得て御協力を願いたいんだ、こういう考えなんでございます。すなわち、医療行政に対する一貫した考え方を一つ御納得いくようにしていただきたい、こういう気持で御審議を願っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/105
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106・木下友敬
○木下友敬君 気持だけでおってもらっては非常に困るわけでございまして、岸総理大臣に、あなたは戦時中に宣戦の詔勅に署名したのだからというような非難が来ますと、あれは悪かった、自分は現在では全く民主的な政治家として反省してやっているんだと、もうほんとうかと思うように悔い改めたというような姿でおっしゃるから、ついうっかり乗る。ところが、その方がここへ来てどういうことを言われたかというと、どうぞこの健康保険の改正案を十分に一つ論議をして下さい、そうして十分論議の上一つどうにでも料ってくれ、一度出したものは面目にかけても通すというようなことは考えていない、はっきりこう言っている。ところが、あなたの今の言葉じりじゃありませんが、あなたのお言葉の中にも、医療関係者がこれほど反対しておるのを押し切って強行するゆえんのものは、というようなことをおっしゃったのですが、押し切って強行するというような考えは、総理大臣の、これは本気かうそ気か知りませんが、少くも総理大臣が、一度出したものは面目にかけても通すというようなことは強行しないというようなことをはっきり言ったことと、大きな矛盾があると思う。これは一つ強行するというようなことでなくして、せっかく国が定めた社会労働委員会というりっぱなこの機関で審議しておるのだから、どうか平つたい気持で審議して下さい、悪かったらいつでもひっこめます、というくらいなフェアな気持でないと、どうしても強行するというようなことが自然にあなたのくちびるから飛んで出るというようなことだと、私は重大な決意をせにゃならぬ。この点一つ納得のいくように、ただ医療担当者にも十分説明すれば納得して下さるというような気持であるというようなことでは、そうこの問題は私はやすやすと解決されるものでないと思いますが、それでもまだ大臣はその気持で押し通していかれるつもりかりしばしば私はこの席で申しますように、政治というものは現実を見詰めてやってもらわないと、机の上のプラン、テーブル・プランで作って、それでいつかも申しましたように、くつにお前の足を合せろというような行き方ではいかぬので、現実に今の状態をごらんになった上で、一つ本気で考えてもらいたいということを私は重ねて申し上げる次第であります。どうぞ大臣の悔い改められた一つ誠心誠意を披瀝していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/106
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107・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま木下さんは私の答弁をお聞き取り違えたのか、私がしゃべりそこなったのか、強行するという意味ではないというふうに申し上げたつもりだったのですが、強行するというようなことにお聞き取りになったようでございまして、その点私は政府委員にもどうだと聞いたら大臣の言う通りだというようなことで、そうだとすれば、これは木下さんが私の申し上げたことを聞き違えたことになるわけですが、しかしこれは速記録でいずれ現われることでございますから、もし速記録で私が申し上げたつもりのことがそうでなく、木下委員のお聞き取りのようなことでありますれば、これは真意ではございませんから、一つこれは虚心坦懐に、私が今申し上げておることがその通りでございますから、一つ御了解願いたいと思います。ただ私が申し上げておりますことは、しばしば申し上げておりますように、こだわるわけではないが、鳩山内閣以来ずっと懸案になっておって、未解決になっておる一つのこれは大きな重大案件でございまして、それをすなおに私どもが政党内閣としてその持続性において引き継いでおる、そこで慎重に御審議願いたいのだと、政府といたしましてはこれはそう出した以上、私の方から修正だどうだということは、これはもう議会の審議でございますからして、そういうことはできないことは御承知の通りでございますので、権威ある国会におきましてりっぱなものをお作りいただくことであれば、私どもは議会の権威を尊重して参りましょうということを、私がしばしば申し上げておる通りでございまして、この点は一つ私の申し上げていることをその通りお聞き取り願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/107
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108・松澤靖介
○松澤靖介君 私は質問続行中であったのですが、たびたび中断されまして筋の通らぬような質問に相なるかもしれませんが、いずれにいたしましても、私といたしまして十分に納得のいくように質問いたしまして了解を得たいと思うものでありますが、先ほど木下委員の質問の中に、局長に対しまして、大学の医育機関に対して社会保険の講座を持つべきではないかというようなごもっともな御質問でありましたが、その話の中に、局長がもしも大学に行って指導するならば制限診療をなすべきであるというようなことを言うんじゃないかというような、冗談でしょうが、さようなことを申されたのですが、現在の社会保険というものは、ことほどさように制限診療的な部分が多々あるのではないかと考えられます。木下先生がおっしゃるまでもなく、私自身もさように考える一人でありますが、しかしながら、大臣の提案理由の説明の中に、高き医療水準を維持しつつと言っております。その高き医療の水準というものは、現代の社会保険に許されておるところの医療行為が高き水準でありましょうか、あるいは、もっともっと制限診療にない、いわゆる言葉は変かもしれませんが、自由診療的な要素をこれからは多分に加味していくという意味において説明の中に述べておられるのでしょうか、その点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/108
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109・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 現在の保険が、(松澤靖介君「今の大臣ですよ、大臣が述べたのですから」と述ぶ)相当専門的、技術的な点でございますので、私からお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/109
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110・松澤靖介
○松澤靖介君 大臣がお述べになったのに大臣が説明されないということはちょっと変だと思いますが、技術的であろうがなかろうが、技術的であってむずかしい問題であったら、局長に述べさせるというなら話はわかりますが、初めから頭から、お前の質問は局長で差しつかえないのだというふうな事ほどさようであってはどうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/110
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111・神田博
○国務大臣(神田博君) 今よその方と打ち合せしておったものですから、大へん失礼いたしました。恐縮であります。高い医療水準を維持したいということは、日進月歩の段階でございますから、十分新薬もとり入れていきたい、治療の完璧をはかりたい、こういう意味で私申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/111
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112・松澤靖介
○松澤靖介君 あまり言葉じりをつかまえて申し上げるのは恐縮ですが、もっと大事なことを質問したいと思いますが、今大臣のおっしゃったことは、医療水準を維持しつつという、さような説明になっておりますが、これから維持したいというような今のお話ですが、維持しつっと、維持したいというのは、私は違っておるのじゃないかと思いますが、現在の社会保険のやり方がいわゆる高き水準であるというようなことの意味においてお述べになっておるのじゃないかと考えますが、私のその解釈のとり方が誤まっておるなら、これは非常に幸いだと思っておりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/112
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113・神田博
○国務大臣(神田博君) 私がこの提案理由を御説明申し上げた中にもございますように、この制度の合理化を行いまして健康保険制度が高い医療水準を維持しつつ発展していくことをはからんといたした。はからんといたしたということでございまして、現在よりももっとよくいたしたい。そのために今の制度でなお改正する必要があることはたびたび私申し上げておる通りでありまして、そういうことをやりたい、やろう、こういう意味で申し上げておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/113
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114・松澤靖介
○松澤靖介君 そういう意味であるからば、監督官庁の総元締めといたしまして、現在の社会保険の医療のあり方ということを御存じあることが私は今後の社会保険の推進のために非常に有意義なことと思います。現在の社会保険というものはいろいろの言葉で言われております。あるいは適正診療とかあるいは規格診療とかいろいろな点について申されておりますが、いずれにいたしましても、私は一つのルールの中にはさまれたところのワク内診療かと考えておるものであります。たとえば注射にいたしましても、五本も注射した場合に、これは五本では多い、三本にすべきで、二本は少しく濃厚であるというようなおしかりを受け、時には、監査の場合においては非常に不当というような場合にも相なります。あるいはまた、抗生物質におきましてもいろいろの使用基準というものがあります。その基準に従わずに、最もいいと思われるものを使った場合に、その順序を経なかったならば、これはいかぬというので査定されます、あるいはまた、手術の場合におきましても、たとえばこれは化のうするおそれありという場合において、たとえばペニシリンを使ったとしても、これはまかりならぬ、濃厚診療であるというような意味におきまして査定の対象となる。これがいわゆる高き水準を維持しつつ医療を今後推進すべきであるということに相なりましょうかどうか、私は非常に疑問とするのでありまして、これらのあまりこまかい点について、大臣は台知りにならないかもしれませんが、今簡単に申し述べたその範囲内においても、現在の社会保険というものは高き水準の医療でないということはおわかりになったと思いますが、大臣はいかがお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/114
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115・神田博
○国務大臣(神田博君) 私がたびたび申し上げておることでございますが、この健康保険法の最初のスタートが工場の労務管理というような、当時のたとえば、社会情勢から参りますると、治療も非常に程度の低いものを期待したような、そこから発達したのじゃないか、こう私は実は承知しているのでございます。そこで、今の治療が、今お述べになられましたように患者自体が満足しておらない治療を受けておる。また、診療者のお医者さんの立場から考えても、自分が医師として十分手当を尽すべきにもかかわらず、そういう良心的な治療がはばまれておるというようなことを私相当承知しておるつもりでございます。今お述べになられたことを十分了承できるわけでございます。そこで、政府が国民皆保険ということを踏み切ったわけでありまして、この際、そういう今までの非常に制限されたことをここで再検討いたしたい。で、それならば即自由診療であるかと申しますと、そこまで私は考えておりませんが、少くとも今のやり方は患者も満足しておらないし、それからお医者さんが治療なさる立場から考えて良心的なほんとうに責任のある治療をすることができない。そこでそれをできるように一つ持ち込みたい、こういうことが私の考え方でございまして、政府部内あるいは党とも相談いたしまして、そういうことのできるような方向に一つ直したい。そこでここでもその気持をうたったわけでございまして、これはあとで点数、単価等の問題になって参ろうかと思います。これらを一つ法の通過に伴って急いで足並みを合せよう、長年の懸案であったものがもう曲り角にきておるのだから、ここで一つ思い切って是正いたしたい、こういう気持で作業を命じておる、これが今の実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/115
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116・松澤靖介
○松澤靖介君 なおお伺いしたいのは、しからば、高き水準を維持するために適正妥当なる改正案をお考えになっておるのかどうか、くどいようですけれども、なお御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/116
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117・神田博
○国務大臣(神田博君) そういう意味で考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/117
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118・松澤靖介
○松澤靖介君 私はもっと質問申し上げたいのですが、今までの説明の意味を大臣がおる間にお聞かせ願いたいと思いますが、いずれにいたしましても、われわれにとりましていろいろと検討いたし、あるいはまた、研究もいたしましても、今回の健康保険法というものは相当な無理があるんじゃないか、問題点が多いのじゃないか。ことに、われわれ医療担当者といたしましても、一般医師だけでなくて、歯科医師の先生方も、あるいはまた、被保険者の側の立場におきましても、あるいはまた、その他の事業所の人たちにおきましても、ことに、この前の公述人のあの八人の中においてほとんどがこの案に対しまして反対のように受け取ったのであります。十人のうち八人が賛成のように承わった。いや八人が不賛成なんです。十人のうち十人ほとんど……まあいずれにいたしましても、ほとんどが私は反対の考えを持っておるのじゃないかと思います。(「そうじゃない」と呼ぶ者あり)そうじゃないとお聞きの方は、それは御自由ですが、私の伺ったことは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/118
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119・千葉信
○委員長(千葉信君) 私語を禁じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/119
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120・松澤靖介
○松澤靖介君 そういう意味におきまして、大臣が何回もここでおっしゃられたところでは、医療担当者もあるいは保険者側も、あるいはまた、被保険者側もみんながほんとうに心持よく、あるいは満足するようなものであってこそ初めて目的が達せられるということは何回も何回も私は拝聴しているのであります。しかしながら、少くとも少し譲って三者のうちの二者は必ずや絶対反対かと私は考えております。その場合において、大臣は、果してこの案を——先ほども山下委員が御質問になったのでありますけれども、果してこの案が皆様方の妥当なるものとしてお考えになっているか、私は重ねてお聞きせざるを得ないのであります。この点につきましても、先ほども岸総理のことも山下委員が申されました。あるいはまた、大臣自身もいろいろこの点につきましてもお述べになったのでありますが、われわれといたしまして、このことが非常に重大であると考えるがゆえに、くどいようでありますが、大臣はほんとうにこのものが妥当なものと考えられるか。私は少くとも今後の社会保障、いな社会保険の推進のためには画龍点睛——この点睛というものにはならないのじゃないかと私は考えるものでありますので、この点くどいようですが、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/120
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121・神田博
○国務大臣(神田博君) 今お述べになられました御反対、反対であるといういろいろ例をあげられますことも私もよく聞くのでございます。しかし、繰り返すようでありますが、事ここに至ります何と言いましょうか、作業をいたしてこういうことに落ちついて、そうしてこれが健康保険の合理化であり、健康保険財政の健全化だ、この情勢ではこうせざるを得ないということに至りましたいきさつを十分聞きますと、どうもやむを得ないのじゃないかという考えを私持ちまして、御審議をお願いしているわけでございまして、それが今御審議になっている案でございますので、どうも何といいましょうか、まあ非常に御反対の点もよくはっきりしてきているわけでございますが、何といたしましても、二十二国会以来のこれは懸案であり、そうしてその流れをくんで今日に至りました事情もございまして、その事情は別に私が、これはもういかぬということなら、私どもといたしましてももうここでかぶとを脱いで、どうも長いことこれは御迷惑をかけましたということを申し上げるのでございますが、まだそこまで私どもは考えておりませんので、いろいろこの案を御批評していただくことにつきましては、十分その気持を尊重いたしながら傾聴いたしているのでございまするが、ただいまの私の考え方といたしましては、なお一つこの案に御審議を願って、そうしてもしこれはけっこうな、こういうのがあるということでありますれば、これは一つ国会の権威で御考慮願うわけでございまするが、やめるかというようなことでございますれば、その考えをまだ持っておらないということを率直にこれは申し上げて、御審議御了解得たいというのが私どもの今の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/121
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122・松澤靖介
○松澤靖介君 大臣のお話を承わったのですが、何べんも申し上げるようですが、私自身といたしましてもまだ納得のいかない点も多々あるのでございまして、これから今後の審議に待つべきかと存じますが、なお、今後皆保険というようなものを政府としてお考えになっているようであります。私は皆保険のその一つの計画といたしまして、いわゆる未加入の者五百万の国民保険を来年度において作るという、さような計画があるやに伺っておるのですが、国民保険というもののあり方はどんなものでありましょうか、その内容というものをよく御存じになっておるかどうか、私はそれをお聞きしたいのでありまして、この国民保険こそ、すなわち政府管掌の健康保険のような一律のものではなくて、いわゆる保険医療にいたしましても、あるいは保険給付にいたしましても非常に雑多なものでありまして、一つの給付にいたしましても、市町村条例によっておのおの別個にきめておる。さような状態のものをどの点をお取りになって、そうして五百万の国民保険の組合を作るかということに対しまして、私としてもまだ大臣の所信を伺って、そうして今後の皆保険のあり方ということに対しまして、ただ単に、口先で美文的に作文を作るというような意味合いだけじゃなくて、国民健康保険の内容さえわからない人たちが一体皆保険なんということ、それすらも非常に危惧に思って危ぶんでおるのでありますが、その点については、大臣はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/122
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123・神田博
○国務大臣(神田博君) 国民皆保険を政府が打ち出したということは、御承知のように、約三千万近い国民の方が政府の医療費を受けておらない。これは国民が法の前で平等であり、そうして政府の施設というものを共にこれを受けるという建前からいって政治が不公平である。そこで一つ医療保障制度を急速に普及徹底いたしたいということで、これは国民皆保険に踏み切ったわけでありまして、しかし、三千万近い国民のしかもこれは市町村数にいたしますれば相当膨大な数になるのでございまして、ことにまあ今できておらないところは、なかなかこれはそれぞれむずかしい事情があってできないわけなんです。それをあえてやろうというこの政府の熱意は一つおくみ取り願いたいと思います。
しからばそのやり方がどうかということでございますが、困難な事情のあるところであるから、四カ年で政府がやるといってもできないじゃないかというような御懸念をなさることも私はごもっともだと思うのです。そこで政府といたしましては、たとえば事務費の予算にいたしましても、昨年は一人当り六十八円というものを今度は八十五円に上げよう、さらによく医療給付の二割補助もいつもおくれがちであったのでございまするが、今度は補正予算に一つお願いしても、そういうおくれているものを取り返そう、あるいはまた、普及費として金額は些少でございまするが、二千三百万円でございますか、そういうものを計上いたしまして、国民のいわゆる医療給付を一つできるだけ平等なものにしたい、こういうことが念願でございまして、まあこれを一つやりたい。
それから、まあ、いろいろと市町村財政窮乏の際でございますから、これをなし遂げるということが非常に困難の事情にあるということは御指摘の通りでございます。しかし、その困難な事情をあえて乗り切っていこうという政府の熱意をおくみ取り願って、悪いところはおしかりをちょうだいいたしますが、御支援願って、国民がひとしく法の前に平等によく治療を受けるようにしたい。内容の悪いところはいろいろ建設的な御批評でございまするから、私ども肝に銘じて手を打っていきたい、こういう気持なんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/123
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124・千葉信
○委員長(千葉信君) 松澤君に申し上げます。先ほど来、予算委員会の方におきまして、厚生大臣の出席を求めております質問者が、ただいまのところ手をつかねてお待ちだそうでございますから、再三質疑を中断いたしまして恐縮でございますが、御了承願いたいと思います。従いまして、本日はこれをもって散会いたします。
午後五時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X01519570327/124
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