1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年四月十六日(火曜日)
午後一時三十六分開会
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委員の異動
四月八日委員大野木秀次郎君、安部清
美君及び常岡一郎君辞任につき、その
補欠として有馬英二君、山本經勝君及
び早川愼一君を議長において指名し
た。
四月九日委員有馬英二君、吉江勝保
君、柴谷要君及び横川正市君辞任につ
き、その補欠として小滝彬君、鈴木万
平君、木下友敬君及び藤原道子君を議
長において指名した。
四月十一日委員山本經勝君辞任につ
き、その補欠として藤田進君を議長に
おいて指名した。
四月十二日委員藤田進君辞任につき、
その補欠として山本經勝君を議長にお
いて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 千葉 信君
理事
榊原 亨君
高野 一夫君
山本 經勝君
早川 愼一君
委員
勝俣 稔君
草葉 隆圓君
寺本 広作君
横山 フク君
藤田藤太郎君
山下 義信君
田村 文吉君
竹中 恒夫君
国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
政府委員
厚生大臣官房総
務課長 牛丸 義留君
厚生省公衆衛生
局長 山口 正義君
厚生省児童局長 高田 浩運君
労働大臣官房総
務課長 村上 茂利君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選
○派遣委員の報告
○自然公園法案(内閣送付、予備審
査)
○児童福祉法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○旅館業法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○参考人の出席要求に関する件
○委員長が委員会を代表して意見を述
べるため他の委員会に出席して発言
する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/0
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001・千葉信
○委員長(千葉信君) それでは、ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
委員の異動を報告いたします。四月八日付をもって大野木秀次郎君、安部清美君及び常岡一郎君が辞任し、その補欠として、有馬英二君、山本經勝君及び早川愼一君が選任されました。次いで四月九日付をもって有馬英二君、吉江勝保君、柴谷要君及び横川正市君が辞任し、その補欠として、小滝彬君、鈴木万平君、木下友敬君及び藤原道子君が選任されました。四月十一日付をもって山本經勝君が辞任し、その補欠として、藤田進君が選任されました。四月十二日付をもって藤田進君が辞任し、その補欠として、山本經勝君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/1
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002・千葉信
○委員長(千葉信君) 理事補欠互選についてお諮りいたします。委員外転出の前理事早川愼一君及び山本經勝君の補欠互選を行いたいと存じます。その方法は、成規の手続を省略して、委員長の指名といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/2
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003・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。それでは、早川愼一君の補欠として早川愼一君を、山本經勝君の補欠として山本經勝君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/3
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004・千葉信
○委員長(千葉信君) 派遣委員の報告を議題といたします。去る二月中、本委員会の決定により、厚生、労働行政の実施状況調査のため、兵庫県ほか八県下に対し委員派遣を行いましたので、その報告をお願いいたします。
まず最初に、第一班の藤田藤太郎君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/4
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005・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 当委員会の決定に基きまして、厚生及び労働行政の地方実情調査のため、谷口委員、草葉委員、藤田の五名が、去る二月十一日から十七日まで七日間、兵庫、岡山、広島の三県下を視察いたしましたが、各県庁、労働基準局及び婦人少年室において詳細な説明及び要望等を聴取いたしました後、各地の施設、工場等を視察いたしたのであります。すなわち、兵庫県においては明石市立保育所、国立光明寮、神戸市塵芥焼却場、岡山県においては私立光輪保育所、岡山市内の失業対策事業現場、岡山保健所、倉敷レーヨン株式会社岡山工場、岡山労災病院、結核患者後保護指導所、早島国立療養所、広島県においては私立ゆりかご保育所、広島原爆病院、社会福祉法人広島更生事業協会経営の精神病院広島静養院、平和記念館(原爆関係資料陳列)を視察し、また、二月十六日には広島市主催の戦争遺家族大会に出席して、各委員があいさつを述べるとともに、援護法改正に関する陳情を聴取いたしたのであります。
なお、今回の視察に当りまして、岡山県において榊原委員、広島県において山下委員から特別な御協力を賜わりましたことをこの機会に感謝いたしておく次第であります。
調査いたしました項目は、厚生、労働行政のほとんど全般にわたるのでありますが、時間の関係もございますので、そのうち主要な項目についてその概要を申し上げて報告にかえたいと存じます。
まず、生活保護の状況については被保護者数は昭和三十年秋ごろを最高として、その後福祉事務所制度の強化、遺家族援護の整備、母子世帯の子女の成長に伴う就労、民生委員による自立更生運動の成果、並びに社会経済情勢の好転による減少を続けておるのであります。ことに従前逐年著しく増加していた医療扶助においても昭和三十年度下半期を境として漸次人員、保護費とも下降の現象を示すようになったことは注目すべきことと存じます。
なお、兵庫、岡山、広島三県とも外国人すなわち朝鮮人の在住者が多数あって、その生活保護も非常な高率を示し、また、いろいろ複雑な問題を起しておったのでありますが、三県とも特別実態調査等により相当件数の保護の廃止措置、減額措置を行い、保護率も非常に減少してきておるのであります。
被保護階層の構成比は、労働力を有する世帯が減少し、労働力を有しない世帯が増加する傾向にあり、労働力を有する世帯では収入の低い自営業者、内職者等が増大し、日雇労働者のような比較的収入の不安定なものが横ばい状態であって、被保護階層の沈滞傾向を現わし、常用被用者のような収入の安定したものは被保護階層から脱皮していく傾向が現われているのであります。労働力のない世帯はこれを傷病者世帯とその他の世帯とに分けると、後者は漸減しておるが、前者は著しく増大しておる実情であります。
次に、母子福祉対策については、各県とも母子福祉資金の貸付等により母子家庭及び孤児の経済的自立の助成と生活意欲の向上をはかるため積極的に努力しておりますが、特に就職あっせんに関しては、たとえば兵庫県においては一口千円の会員組織による兵庫県母子家庭援護会というものを設置して、基金三百万円を持ち、母子家庭子女の就職に伴う身元保証制度を確立するとともに、就職に関する諸問題の相談に応じており、また、広島県においても県条例を作り、知事が母子家庭の児童の身元保証人となり、児童が使用者に被害を与えた場合一回限り二十万円を限度としてその被害を賠償することにして就職あっせんに努めておるのであります。
母子福祉資金の貸付については、昭和二十一年度までは県で半額を負担する関係上、財政の窮乏状態にある各県において国費に相当する予算措置ができず、国費の補助額を消化し切れない状態にあったようでありますが、来年度においては国が三分の二を負担することになったので、かくのごとき事態を解消すべく県において措置するとのことであります。しかしなお、各県では全額ないしは八割の国庫負担を要望しておるのであります。償還成績は非常に良好で、大てい八〇%の償還率であります。貸付者の半数以上がこの資金によって更生自立の目的を達成しておるようであります。母子相談員も非常に活動して母子家庭から信頼されておりますが、何分にも非常に少数であり、受持区域が広範なため手不足を感じ、徹底を欠くうらみがありますので、広島県のごときは補助的意味において町村単位に四百四十名の母子生活相談員を知事が委嘱して母子家庭の個人指導を行なっておるとのことであります。また、同県では昭和三十年度から県下数カ所に未亡人会モデル地区を設定し、他の模範となるよう指導を加えておるのであります。
次に、保育所の実情でありますが、各県とも逐年その数を増しているのでありますが、県によっては保育行政の徹底している町村と全く等閑視されている町村とあり、その配置が偏在している実情であります。
また、最近入所人員が減少の傾向にありますが、これは要措置児童数が近来はなはだしく減少していることと、措置児童の資格を厳格に選考していること、費用徴収基準を厳格に実施しているためであります。
施設の設備、運営、指導については、児童福祉施設最低基準に規定されている指導監査によるほか、随時職員の現任訓練及び講習会等を行い、知識向上に努めているのであります。
保育所の経営の実態を見ますと、児童一人当りの月額経費は平均八百円程度であるが、国の認めない部分の運営経費については、私立にあっては国の負担限度額外において、年間五万円ないし十万円程度を設置者が負担しており、公立にあっては職員の身分を公務員として処遇するため私立以上の負担をしており、また、設備の改善充実に要する経費を設置者において負担することを余儀なくされておるのであります。
保育所運営上問題となる点は、
一、職員給与額が逓増する場合、国の許容する限度額以上の経費を要すること。
二、私立における財務の事務量が管理規模に比し膨大であり、保育管理に芳ばしからぬ影響を及ぼしていること。
三、学校管理等の事務に比し、保育所の事務が量、質とも繁雑であるにもかかわらず、地方公共団体の行政事務組織がはなはだしく貧弱であること等をあげておるのであります。
次に、世帯更生資金の貸付状況については、各県において、従来から民生委員が中心となって世帯更生運動を展開し、要保護世帯の自立更生をはかっていたのでありますが、昭和三十年度以降世帯更生資金について国庫補助制度ができたため、これに関する条例を公布して県の社会福祉協議会に補助金を交付して貸付事業を実施しておるのでありますが、県費を国庫補助額と同額支出せねばならぬ関係上、それを支出することができず、完全に消化し切れない実状であり、全額もしくは高率の国庫補助を要望しておったのでありますが、昭和三十二年度から三分の二になったため、地方団体として負担が軽くなり、今後は完全に消化し得るとのことであります。この更生資金は、生業資金、支度資金、技能修得資金の三種類でありますが、生業資金の申し込みが圧倒的に多数であり、貸付金額の九五%を占めているのであります。貸付世帯の更生状況は、貸付世帯の実態調査の結果、八〇%はすでに更生し、また、確実に更生の見込みがあるとのことであり、また、貸付金の償還状況は、その多くは月賦償還であるが、現在までの償還成績は大体一〇〇%であります。
次に、社会保険に関して特に国民皆保険計画の中心をなす国民健康保険の実情につき申し述べたいのでありますが、各県とも昭和二十八年から重要施策として取り上げ、普及並びに育成強化に補助政策を加え、実施町村の実施促進施策を重点として推進中であります。国の助成施策と相まつて全市町村に実施すべく必要な実態調査を実施中であり、近時とみに再開意欲が高まりつつあり、昭和三十四年度末には全県実施の目的を達成することができると言っております。現在の普及率は、兵庫県は全市町村の六五・八%、岡山県は七六・二%、広島県は六六・一%、でありますが、これら実施中のものに対しては、事業内容の改善強化、特に保険財政の健全化を強力に指導しており、兵庫県においては昭和三十一年度に国民健康保険運営資金貸付基金という制度を創設して、資金五千万円を作り、その貸付による実効をあげておるのでありますが、これは、県が二千五百万円、町村が千七百五十万円、県医師会が七百五十万円を積み立て、国の補助金が来るまでのつなぎ資金に充てておるとのことであります。また、岡山県では、国民健康保険再保険制度及び国民健康保険融資基金制度を、県の連合会をして作らしめ、これに対して補助して、保険財政健全化に努めるとともに、保険税の滞納を一掃すべく、保険税等整理組合を結成せしめ、これに補助金を支出してその活動を促進しておるのであります。
次に、結核対策の状況についてでありますが、結核患者の死亡状況は、近年著しく減少している反面、各県とも結核患者の届出状況は増加の傾向を示しているが、これは結核予防法、その他結核健康診断に関する関係法規の徹底的な指導監督により、実施義務者が義務の履行を確実に行い、患者の早期発見がなされたものと考えられるのであります。昭和三十年度から実施された一般住民の健康診断は、一般的に受診率は低調であります。これは住民の結核に対する認識の不足、従来実費の半額を徴収していたこと、保健所の指導施設の不備、特に医師及びエキス線技師の充実困難に伴う受入能勢の不備等に起因しているのであります。県当局においては、明年度は一般住民の健康診断受診率を五〇%以上を目標とし、広報活動の強化、在宅結核患者家族の検診強化、保健所機能の拡充強化、特に医師、エキス線技師の要員確保の施策を講ぜんとしておるのであります。
次に、医療費の公費関係でありますが、各種社会保険の本人を除くものについて、結核予防法に認める医療を行うに要する費用の二分の一を公費で負担しているのでありますが、逼迫している県財政に制約され、入院すべきものが自宅で治療し、あるいは従事を禁止して強制入院さすべき患者を、予算の都合によって放置のやむなきに至っている現況でありますが、これに対しては、医療費の国庫負担率の引き上げを強く要望いたしておるのであります。
次に、精神衛生対策の状況についてでありますが、近時複雑な社会情勢に伴い、全国的に精神障害者はますます増加の傾向にありますが、今回視察した兵庫、岡山、広島各県は、特に全国平均よりも非常に高率の患者数を持っております。一方その収容施設はきわめて少く、入院できる患者は、施設内容を要するものの約一割程度にすきない状態であります。各県とも県立精神病院の新設、指定病院の増額等によって、その増床をはかり、また、早期治療による在院期間の短縮、病床の回転率の向上に努力し、相当の効果をあげておりますが、なお、収容施設の緊急な増設が強く要望されておるのであります。また、精神衛生相談所の活用、保健所を中心とする精神衛生普及運動に努力し、一般の精神衛生に対する認識も漸次高まりつつありますが、概して精神衛生施策の他部門の衛生施策に比して、立ちおくれておるように感ぜられるのであります。
次に、環境衛生対策の状況についてでありますが、環境衛生に関しましては、各県とも、蚊とはえのいない生活実践運動、水道、簡易水道の設置奨励、清掃事業の改善等により乳児死亡率の減少、伝染病患者の死亡数の減少等に相当の効果をあげておるのでありますが、瀬戸内海等、近海のし尿処理が問題になっております。特に神戸市のごとき大都市においては、その処理方法に苦慮しておる現状であります。海上投棄は衛生上、産業上、また、観光面から好ましくないとして、陸上処理に切りかえる方針で、各都市が計画しておるのでありますが、完全下水道が財政的に困難であるため、消化槽の設置をはかり、神戸市はすでに実行中であり、尼崎市も近く運転する予定であります。塵芥処理に関して、特に神戸市では従来の焼却炉より一歩進み、昨年九月、WHOの援助を得て、日量二十トン処理の塵芥急加速堆肥施設を設置し、稼働中であり、現場も視察してきましたが、その成果が注目されておるのであります。
家族計画(受胎調節)施設の状況、受胎調節事業は一般対象、特に知識層については相当効果をあげておりますが、生活困窮者階層にある人たちは無関心な場合が多く、また、希望者も、生活環境その他の悪条件があり、器具、薬品に対する経済的負担とも相待って普及しがたい状況でありますので、各優生保護相談所で相談に応じ実地指導を行うとともに、地区の婦人会、助産婦会、指導員協会等の各種団体指導者の階層とタイアップして、職域、地域組織、農漁村のグループ指導に重点を置き、新生活運動の一環として、家庭経済の確立、福祉について啓蒙に努め、厚生大臣の特別承認を受けた被保護世帯に対しては全額公費負担、低所得者階層については二分の一の公費負担で、それぞれ地区指導員が指導しておる実情であります。なお、近く中国、四国を一丸として、優生保護研究会を結成し、行政担当者関係諸団体指導者等の研究討議を行なって、事業の発展をはかるべく、各県において準備中であります。
なお、視察いたした施設、工場等のうち、特に一言いたしておきたいのは、社会福祉法人広島厚生事業協会の経営する精神病院の運営については、昭和二十八年六月刑事事件の発生を見、当時の理事長外一名が起訴されて、いまだ係続中であり、また、厚生大臣から、昭和三十年七月に厚生省から昭和三十年二月実施した監査の結果に基き、法人財産と私有財産の明確化、経理の改善化、役職員の改選、その他施設の運営に関し、強力な改善命令が出されておるのであります。県当局や、その後選任された役員の努力によって、人事の刷新、経理その他の面の改善は相当実現されたのでありますが、なお、若干未解決の問題が残っておるのであります。私たちも県当局並びに理事長を初めとする幹事役員、職員組合代表等と面談し、今後さらに改善に努力し、社会福祉法人としての使命を達成するよう、強く要望いたしたのであります。
次に、労働行政の概況について申し上げます。まず、労働基準行政の概況から申し上げます。
労働基準行政に関しましては、兵庫、岡山、広島各労働基準局について詳細な説明を聴取いたしましたが、各地とも大企業においては、おおむね労働基準法の水準に到達しつつありますので、中小企業に重点を置き、また、業種においては労働安全、労働衛生上問題のある業種、女子、年少者を多数使用する業種等に重点を置いて、違反の是正に努めているということであります。特に中小企業においては、違反の原因を分析検討し、労務管理上の欠陥によるものも相当ありますので、指導を加え、また、同一業種ごとの労務管理研究会を開催して、業種に共通する労務管理上の問題の解決方法を協議する等の措置を講じ、一方違反是正の誠意のないものについては、司法処分にして送検しておるとのことであります。なお、三局ともに管内有数な立地条件、豊富な労働力を背景として、諸工業が発達しておるため、その監督の対象事業場数が非常に多数あるにもかかわらず、監督官が少数であり、全卒業場を一巡監督するのに四、五年も必要とする状態であり、その能力を効率的に発揮さすべく苦心しておるとのことでありまして、その増員とともに、局署にジープ等の小型自動車、スクーター等の配置を要望しておるのであります。労働基準法施行と、特に多く問題を包蔵していると認められる業種としては兵庫では神戸市の港湾荷役業、ゴム工業、県内の機業、靴下製造業、金物製造業、製材、木製品工業、運送業、岡山では機械器具工業、化学工業、紡織工業、耐火煉瓦等の窯業、土石工業、食料品工業、広島では建設業、木材及び木製品工業、林業、機械器具工業、金属工業等があげられるが、違反の最も多いのは安全関係であって、次いで休日労働時間、割増賃金、健康診断、労働衛生、年次有給休暇等となっております。
賃金不払状況は、近来、件数並びに金額とも漸減しておりますが、不払い事業場は、労働者百人未満の事業場であり、そのうち八割程度は十名未満の事業場であります。不払いの多い業種としては、建設業、木材及び木製品工業、ガラス、土石工業、林業、機械器具工業、金属工業等をあげております。
次に、安全衛生関係では、労働者死傷災害発生状況は昭和二十九年より昭和三十年にかけて漸次減少の傾向を示しつつあるのでありますが、昭和三十一年、特に下半期に至り、産業界の活況に伴い、人員増加による未熟練労働者の高度の作業への就労、過度の時間外労働などによって災害発生件数が増加の傾向を示しておるのであります。特に屋外労働の林業、建設業、港湾関係業、貨物取扱い業等において死亡災害発生率が高いことは憂うべきことであります。その原因を見ますと、各産業を通じて貨車、自動車等による交通災害がきわめて多く、次に高所からの墜落事故が多いのであります。また、感電、起重機関係の死亡事故も相当多いとのことであります。かかる災害発生状況に対処し、各局においても、あるいは特別安全管理指導事業場を指定し、強力な指導を加え、また、無災害記録達成運動を推進し、また、業種別安全研究会、ハッパ作業者に対する短期講習会を開催し、災害防止に努めているのでありますが、今後一そう関係者が安全に対する認識を深め、企業の方針、計画、実行がすべて安全第一の線に沿わなければならないことを痛感するものであります。
次に、衛生管理の面では、その基本対策として、衛生管理者の選任と健康診断がありますが、やはり中小企業においては衛生管理者の選任状況も、健康診断実施状況も成績が悪いのでありまして、この種事業場に対する早急な施策が必要とされております。それから事業場における健康診断の内容を見ますと、大部分の事業場は従来結核検診に終始し、他の職業性疾患をそのまま放置している欠陥があるようであります。各基準局においても最近この欠陥を是正すべく一定事業場に対し衛生管理の特別指導を行なった結果、けい肺、歯牙酸蝕症、ガス中毒等の職業症を発見し、また、除塵装置の考案、換気装置の新設、改造等を行なった事例も多いとのことであります。申すまでもなく、けい肺についてはけい肺等特別保護法の施行以来各基準局ともにこれを重視し、けい肺健康診断を実施して効果をあげております。
職業安定行政法並びに失業対策事業。
まず、最近における雇用の概況は、経済界の好転に伴い求人、就職が増加し、求職、企業整備、完全失業者が減少しているのでありますが、求人において特に化学工業、機械工業、造船業等において非常な伸びがあり、その他の輸送用機械器具、建設業、運輸、通信の公益事業その他においても昨年を上回る数字を示しているのであります。なお、現在ちょうど新規学校卒業者の採用期であり、企業の好況がこの学校卒業者の求人関係によく反映し、求人が昨年の一・六倍、求職が一・一倍、就職が一・二七倍とそれぞれ高率を示しているのであります。最近の傾向としては、この学校卒業者を中小企業方面にあっせんし、相当の成績をあげておるとのことであります。
他面、失業者の状況を見ますと、完全失業者、すなわち、失業保険を受けておる者は非常に減少してきておりますが、いわゆる潜在失業者(職業安定所の窓口の求職者から完全失業者を除いた者)は逆に若干増加の傾向にありますが、これは雇用面の拡大による不完全就業者の動き、すなわち、潜在失業者の顕在化を示すものと考えられるのであります。
日雇い労働者の求職の絶対数は毎年増加しておりますが、増加率は逐年減少の傾向にあり、好景気が日雇い労働者にも影響していると考えられるのであります。
失業対策事業の実施状況については、各県ともこれを重点施策として取り上げておりますが、一般失対事業の経済的効果を高度化する要請に応じて特別失業対策事業(労働省所管)と、臨時就労対策事業(建設省所管)を道路、河川、港湾、下水道、都市計画、砂防施設等の整備事業について行なっているのでありますが、これには体力検定により強健な特別適格者を選定して就労せしめておりますが、旧来の慈恵的な失対事業の観念から脱皮し、雇用政策とあわせて事務効果の確保に飛躍的な成果が期待されているのであります。この特別失対事業及び臨時就労対策事業で吸収されるのは約四〇%程度で、その余りは一般失業対策事業で吸収しておるのでありますが、失業対策事業の経費について各県は一そうの高率補助を要望しておるのであります。現行の補助率では人件費、器具、器材費の増加に比し、事務費単価が低く、資材費補助対象範囲が狭く、県において超過負担をせざるを得ない実情であり、地方公共団体の財政を非常に圧迫しているとのことであります。
次は、中小企業の労働問題についてでございます。各県とも産業構造の中で中小企業の占める比重が圧倒的に大きく、労働力人口の就業問題の面でも重要な意味を持っておりますが、労働市場も昭和三十年度下期以降拡大されてきております。しかし、また、失業化率も比較的高く、雇用の面において解決されるべき多くの問題が残されておるのであります。逐年労働組合の結成数も多く、中小企業労働者の組織化の傾向が顕著でありますが、その反面、中小企業労働組合の基盤が弱く、解散するものも相当数に及んでおるのであります。争議行為も紛争議の発生も次第に多くなりつつあり、要求事項についてみても従来の首切り反対、賃金遅払いの解消等の消極的なものから、賃金引き上げ、臨時手当支給等積極的なものが多くなってきているのに対し、経営者の中には近代的な企業経営としての経験不足から不当解雇、ロックアウト、偽装会社解散等でこれに対抗するものが少くなく、また、労働者側も労使慣行の未熟さから結成要求、実力行使が一時に行われ、交渉の場というものが全然なく、ついに組合分裂という結果に終っている向きも相当あるのであります。かくのごとく、紛争議が労働問題並びに労働慣行に対する労使双方の未熟の点、特に労務管理の拙劣なことに起因することが多い実情にかんがみ、各県におきましても使用者教育の重要な一環として労務管理の改善指導に重点を置くとともに、労働者に対しても組合の健全化のため労働教育を積極的に行なっておるとのことであります。具体的問題に対して助言または指導を与えて紛争を未然に防止するサービス・センターとして設立された中小企業労働相談所も一応軌道に乗り、積極的な活動を展開しております。また、中小企業労使懇談会、あるいは労使別懇談会等を開催して労使間の意見の疎通をはかり労働問題の研究の場としておる実情であります。
最後に、広島における原爆被爆者対策の概要について申し上げますと、昭和二十五年十月十日現在の調査によると、広島における原爆の被爆者の生存数は広島県下で十二万五千余名、その他の府県にいる者も合せると十五万八千余名の多数に達している。さらに昭和三十一年九月十五日広島市において全世帯の戸別調査を行なったところ、被爆者のある世帯数は四万百二十世帯、被爆生存者は八万五千七百六十二名で、うち治療を希望する者一万四千二百四十四名に達しております。
次に、原爆障害者の治療対策についてみると、昭和二十八年一月、県及び市の理事者、議会、広島大学医学部、医師会、官公立病院長、関係団体代表者等によって広島市原爆障害者治療対策協議会を設立し、原爆障害の研究、治療対策の推進をはかることになった。次いで、協議会は、原爆障害者救済の助け合い運動を展開し、募金三百六十万円及び市の委託費二十七年、二十八年度分合計七十万円、県補助金五十万円、一般寄付金約三十万円を得て治療活動を開始し、二十八年は四百九十一名の人員の検査及び百十一名の治療を行なった。昭和二十九年度は国より原爆障害者の調査研究委託費として広島、長崎分合せて三百五十二万円の支出があり、また、県、市よりそれぞれ五十万円、一般野付金二十四万円を得、治療活動においても五千四十名の検査及び四百五十八名の治療を行なった。昭和三十年度は国より広島、長崎分として総計千二百四十四万円の委託喪が支出され、その他約二百万円の補助金、寄付金を得、治療活動においても五千八百六十七名の検査及び三百三十六名に治療を行なった。さらに昭和三十一年度においては、国より三十年度の倍額をこえる二千五百六十八万円の委託費が計上された機会に被爆者の検査、障害者の治療を一そう促進するために原爆障害者対策協議会を改組して、財団法人広島原爆障害者対策協議会を設立し、委託費の受入態勢を整えた。次いで、広島赤十字病院構内に、お年玉つき年賀葉書寄付金による広島原爆病院が竣工し、九月二十日より診療を開始した。なお、三十一年度における治療活動においても、四月より十二月まで六千百十五名の検査及び千六十七名の治療を行なった。
次に、広島県下には現在障害者が三万八千名と推定され、うち、実態調査の終った者が二万五千七百四十七名で、なお、未調査の者も一万二千名残されており、要治療者数も八千名と推定されている。これらの要治療者は健康保険その他の社会保険、あるいは生活保護法による医療給付を受けているかあるいは全く治療を受けずに放置されている。しかしながら、今なお、突然に原子病で倒れる者があとを断たないのが現状であります。被爆者の健康等理及び要治療者の治療には多額の経費を必要とするので、先般成立した原爆被爆者の医療等に関する法律は、被爆者の救済に万全を期するためにきわめて意義深いものであると考えます。
大体以上をもちまして私の御報告を終りたいと存じますが、なお、三県から種々要望事項がございましたので、これは取りまとめまして、印刷の上、お手元に差し上げてありますから、ごらん願いたいと存じます。非常に長くなりましたが、これによって報告を終らせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/5
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006・千葉信
○委員長(千葉信君) 次に竹中君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/6
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007・竹中恒夫
○竹中恒夫君 厚生、労働行政視察報告、第二班の詳細なる報告を申し上げたいと思いまするが、時間の関係もございまするし、かつ、第一班と内容的に大同小異の点もございまするので、状況報告の項目だけを申し上げまして、詳細につきましては、当委員会議事録によって御了承願いたい、かように思います。
第二班は、千葉委員長、勝俣委員及び不肖私が、二月の十五日から二十一日まで七日間、新潟、富山、石川県下の厚生、労働行政施行状況について視察をいたましたのでありますが、各地とも詳細なる資料を準備しておりまして、関係者から熱心な説明と要望等があり、これを聴取した後、各地の関係施設を視察いたしました。その概要並びに要望事項等を簡単に御報告申し上げます。なお、視察個所は新潟、富山、石川の各県庁の労働基準局、婦人少年室のほか、新潟県下においては、新潟保健婦専門学院、身体障害者更生指導所、身体障害者更生相談所、義肢製作所、礎保育園、日本ガス化学株式会社工場、富山県下におきましては、株式会社広貫堂、石川県下におきましては、小野陽風園、北日本紡織株式会社工場、国立石川療養所等でございまして、御報告の内容を項目的に申し上げまするならば、生活保護法の問題、あるいは世帯更生資金の貸付の状況、公益質屋の利用状況等が第一でございます。
第二としては母子福祉対策、保育所の状況、引揚者の援護状況等でございます。
第三番目には、健康保険並びに国民健康保険及び船員保険等の実施状況等についてつぶさに視察して参りました。
第四番目は、結核及び精神衛生対策についてでございます。
第五番目には、環境衛生祉施策並びに家族計画の施策等につきまして、関係者から聴取して参りました。
第六番目には、国立公園の状況でございます。三地方とも御承知のような国立公園のあるところでございまして、相当地元におきまする負担等によってある程度の施設を設けておりまするが、特に国庫からのより以上の補助額の熱心な要望があったのでございます。
その次は、職業の安定並びに失業対策及び失業保険の状況等について詳細に調査して参りました。
次は、中小企業の労働問題、特に最近の労働情勢及び労働金庫の利用状況等につきまして、これまた詳細な調査をして参ったのでございます。
最後に、労働基準によりまするところの行政の面につきましても視察して参ったのでございまするが、お断わり申し上げましたように、その詳細なる内容につきましては、この書類によって当委員会に御報告することを御了承願いたいと思います。以上報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/7
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008・千葉信
○委員長(千葉信君) 次、横山君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/8
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009・横山フク
○横山フク君 私たち西岡委員及び片岡委員とともに、西岡委員は長崎県は除きますが、長崎県、佐賀県、福岡県に参りました。
まず、県庁に参りまして諸種の説明を聞いた後に、労働基準局に参りまして局長以下いろいろと説明を聴取いたしました後、県内の療養所、養老院、あるいは母子寮それから職業安定所等の諸施設を視察いたし、また、国立公園等の状況等を視察し、工場、事業所等を視察して参りました。
大体視察した項目は、先ほど竹中委員から御報告にあった通りでございます。この厚生及び労働行政を非常に多岐にわたって調査いたしましたので、ここでその一々を御報告する煩を避けまして、書類によって御報告申し上げますから、それをごらんいただきたいと思います。
なお、三県から提出されました要望等につきましては、私たちもいろいろ質疑いたしまして、あとそれを取りまとめて、これまた書類で提出いたしますから、それによって御調査あるいは御検討をお願いいたしたいと思います。
以上簡単でございますが、報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/9
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010・千葉信
○委員長(千葉信君) この際、お諮りいたします。竹中委員並びに横山委員から報告されました派遣委員の報告については、文書を提出されるということになっており、速記録に登載することを希望されておりますので、そのように取り計らうことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/10
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011・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。以上で派遣委員の報告は全部終りました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/11
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012・千葉信
○委員長(千葉信君) 次に、自然公園法案を議題とし、提案理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/12
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013・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま議題となりました自然公園法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
この法律案は、国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園の三種の自然公園について、それぞれの段階に応ずる適正な保護と利用の増進とをはかることをそのおもな内容とするものであります。
この法律案の対象としております自然公園とは、いわゆる人工公園に対応して、自然の風景地について設けられる公園をいうものでありますが、従来、この種の公園に関する法制としては、国立公園を対象とする国立公園法が存するに過ぎなかったのであります。しかしながら、近時における国民生活の安定、都市の異常な膨張、都会生活の複雑化に伴って、自然公園に対する国民の利用度もますます高まって参りました結果、その適正な保護と利用とをはかることがきわめて急を要する問題となってきたのであります。
ところで、これら各種の自然公園は、その風景の規模と価値に差があり、また、その管理の主体を異にいたしてはおりますが、いずれも同一の性格と目的とを有する公園でありまして、同一の制度のもとで一体的に運営することが最も適当なものであります。このような事情にかんがみ、今回、現行の国立公園法を廃止し、これにかわるに、国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園の三種の公園に関する総合的な制度を確立いたしまして、国民の保健、休養及び教化に資し、あわせて観光事業の健全な発達をはかるため、この自然公園法案を提案することといたしたのであります。
以下この法案の要旨を簡単に御説明申し上げます。
まず、第一点は、現在の国立公園に関する制度を整備したことであります。
昭和六年に現行の国立公園法が制定されて以来、すでに十九の国立公園が指定されておりますが、何分、古い法律でありますため、その運用が事実上、困難な規定もありまして、最近における利用者の急激な増加に伴う公園の荒廃を十分に防止できない事情にあります。このような事態に対処するため、他の産業との調整をはかりつつ、国立公園の適正な運営ができるよう、自然公園法案に必要な規定を設けることにいたしました。
次に、第二点は、国定公園に関する規定を新たに設けたことであります。
国定公園は、国立公園に準ずるすぐれた自然の風景地について設けられるものでありまして、すでに、この種の公園として、全国で十四の公園が指定されておりますが、遺憾ながら、現在は、これに関する明確な規定がなく、わずかに国立公園法の一、二の規定が準用されているにすぎないのであります。しかしながら、国定公園は国立公園に準ずるものとして、必要な保護を行い、かつ、その利用の増進をはかるべきものでありまして、各方面においても早くから強く要望されて参ったところでありますので、今回新たに国定公園に関する必要な規定を設けた次第であります。
次に、第三点は、都道府県立自然公園の保護と利用の規制について必要な定めを設けたことであります。
都道府県がその住民の保健と休養に資するため、自然の風景地について指定した公園は、現在、全国で二百に近い数に達しておりまして、これらの自然公園の管理は、従来、法律の根拠を欠き、すべて都道府県の条例にゆだねられていたのであります。しかし、これのみでは都道府県の自然公園の維持管理に必要な事項を必ずしも確保し得ない事情にありますので、今回、法的に所要の措置を講ずることによって、その保護と利用の適正を期することができるよう必要な権能を都道府県に付与することといたしたのであります。
以上が自然公園法案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/13
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014・千葉信
○委員長(千葉信君) 本案に対する質疑は次回以降にしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/14
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015・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/15
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016・千葉信
○委員長(千葉信君) 次に、児童福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。提案理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/16
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017・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま議題となりました児童福祉法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
改正のおもな点について申し上げますと、第一は、児童福祉施設の一種として新たに精神薄弱児通園施設を設け、これに必要な事項につき規定したことであります。
精神薄弱の児童は、従来厚生省といたしましては、もっぱら、児童福祉施設の一つであります精神薄弱児施設に入所させ、これをいわゆる二十四時間収容いたしましてその保護指導に努めて参ったのでありますが、今回、さらに精神薄弱児対策の完備をはかるために、精神薄弱児中、通園が可能な児童を日々保護者のもとから通わせて、これを保護指導するため新たに精神薄弱児通園施設の制度を設け、その入所の措置は都道府県知事、指定都市の市長にとらせることといたした次第であります。
第二は、国の設置する精神薄弱児施設における在所期限の延長を規定したことであります。国の設置する精神薄弱児施設におきましては、別に厚生省設置法に定めるところによりまして、もっぱら精神薄弱の程度が著しい児童または盲もしくはろうあである精神薄弱児を入所させることとなっているのでありますが、これらの者はその性状等からみて一般の精神薄弱児より以上に長期にわたり保護指導を加える必要がありますので、この国立の施設に入所した児童につきましては、その者が社会生活に順応することができるようになるまで在所させることができるようにいたした次第であります。
以上が、この法律案を提案するおもな理由でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/17
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018・千葉信
○委員長(千葉信君) 本案に対する質疑も次回以降にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/18
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019・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/19
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020・千葉信
○委員長(千葉信君) 次に、旅館業法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/20
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021・山本經勝
○山本經勝君 旅館業法の一部改正に関する条項を見ますというと、第一の目的は風紀に関する営業の問題が基本的に大きく取り上げられておるように印象づけられております。そこで基本的には私は、この法案の改正に必要な基本的な資料が非常に不足しておると思うのです。と申しますのは、全国に五万何がしという莫大な無数の旅館がございます。その中には提案理由の説明の中にもありますように、ホテルを初めといたしまして、いわゆる一般旅館、そうして下宿屋、こういったものまで含んでおりますが、多数のこうした営業があることは申すまでもないと思います。そこで、その中で従来特殊な地位をもって、言葉をかえて言いますというと、いわゆる日本観光旅館連盟といったような、いわゆるかつては国鉄の公共企業体の交通機関につながって、特殊な組織といいますが、機構の上に立って営業をしておるもの、そうしてまた、それ以外に、個々の中小、つまり零細な個人経営の旅館、その中にはまたいろいろな内容がありまして、ことで風紀上の問題として、今旅館営業を取り締らなければならない段階にあるということは、これは申すまでもなく、現在売春に関する法律がすでに施行になっておる。こういう実情のもとから問題になってきたと考えるのですが、一体厚生省当局としては、この旅館業務の実態をどのように御把握になっておるのか。今申し上げました第一番に明らかにしていただきたいのは、日本観光旅館連盟といったような機構の中で、旅館営業をやっておるものの数がどれくらいあって、そうして一般の個人営業の旅館、普通にいわゆる旅館といわれるもの、その他下宿屋あるいはその他の旅館、そういったようなこの種の営業はどういうふうになっておるかを、大ざっぱでもけっこうですが、まず御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/21
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022・神田博
○国務大臣(神田博君) 山本委員のただいまの御質問につきましては、政府委員から詳細答えさせたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/22
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023・山口正義
○政府委員(山口正義君) ただいま山本先生からお尋ねの点、資料が不足ではないかという御指摘でございましたが、まあ私どもの方で昨年の十二月三十一日現在で持っております資料によりますと、ホテルと、それから旅館、下宿、その三通りに分けてあるわけでございますが、またさらに、その旅館を、現在一応地方できめております基準に従いまして、普通旅館、簡易旅館、あるいは簡易宿泊所等に細分して資料を用意しているわけでございますが、ホテルの数が全国で百十一、それから旅館が五万六千三百九十七、それから下宿が三千四百八十三という資料を私どもの方で持っているわけでございますが、ただいま御指摘の日本観光旅館連盟加盟のホテルがどれくらいかというお尋ねにつきましては、所管が運輸省になっておりますので、私ども現在手元に持っておりません。直ちに調べまして御報告申し上げるようにいたしたいと存ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/23
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024・山本經勝
○山本經勝君 ここに資料としてお出しいただいております一番しまいのページに、今の普通旅館、それからホテル、簡易旅館、簡易宿泊所、こうした種類のものが一応載っておるわけであります。そこで問題になりますのは、いわゆる風紀的な見地から旅館業法の一部を改正する、非常に重要な問題が取り上げられておるという、法改正の主たる目的ですね、そこから出発をして参りますというと、どういう点が具体的には問題になってくるのか、こういうことだと思うのです。そうすると、いわゆる風紀的見地から見て、この種のいわゆる営業、営業と申しますのは、つまり旅館を企業として経営をしていくことをさしますが、その場合に、実際上これを考えて参りますというと、一般のお客をどうして旅館が自分の営業の中に吸収をするかということになってくる。その方法等が実は問題になってくると思うのです。ですから、むしろみずから自分が営業としてやっておる旅館を維持するために客をとらなければならない。ところが、このルートが、先ほど申しましたように、たとえば交通公社等が発行しておりますクーポン券等によって、おのずからそこに吸収できるというものと、そうでないものとの業態の内容が変ってくると思うのです。ですから私御質問を申し上げておるのであって、そういう意味から申しますというと、まず大よそ皆さんの、今の政府当局の手元に資料がないかもしれないが、しかし、日本観光旅館連盟、これに加盟しておる旅館の数がどれくらいあるか、これがはっきりしてきますと、その他のものが一般の普通旅館ということになってくると思う。それらのものは、それぞれ旅館を企業として経営するために、また維持するために、何らかの客を吸収する手段を講じなければならぬだろう、こういうことになってくるだろうと思います。そこら辺から一つ具体的な内容を検討して参らなければ、この法改正の根本趣旨が意味をなさない、こういうふうに考えるわけであります。ですから一応私は筋を申し上げたわけでありますが、そういう意味でのこういう分け方でなくて、もう一歩突き進んで、内容を検討するためにそういう資料がほしいと思うんですが、これは御説明願えればここで承わりますし、もしできないとするなれば、すみやかに資料を御提出願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/24
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025・山口正義
○政府委員(山口正義君) ただいま申し上げましたように、日本観光旅館連盟に加盟しております旅館の数は、手元にただいま持っておりませんので、至急に取りそろえて本委員会に御報告するようにいたしたいと存じます。また現在、先ほどから御指摘のように、いろいろな旅館の経営の状態が、いろいろな状態になってきております。そのために一部の旅館についていろいろな批判があるということは事実でございますが、果してそういう問題になる旅館がどれくらいふるか、現在厚生省ではっきりつかんでいるかどうかという問題になりますと、現在私どもの方で、全体旅館業法を適用しておるうちで、これこれだけが特に問題になるというような資料は、申しわけない次第でございますけれども、現在つかんでいないわけでございます。日本観光旅館連盟に加盟しておる数は、運輸省から取り寄せまして御提出申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/25
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026・山本經勝
○山本經勝君 ここにおつけになっております資料は、これは直接厚生省で御調査になった数なんですか。資料の出所をお話し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/26
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027・榊原亨
○榊原亨君 ただいまの山本さんの資料要求に関連いたしましてでございまするが、一体わが国において、旅館、ホテル、その他下宿等の地方的な過不足というものの御調査があるのでございましょうか。それがございませんと、この法案を審議いたす上におきましても、いろいろ支障があるんじゃないか。法案の中に、百メートル以内に云々というようなこともございまするし、その判定につきましても、たとえば東京の中央におきましては、旅館が一体不足しておるのか不足しておらないのかというような問題も関連してくると思うのでありますが、それに関連した資料がございましたら、この次までに御提出をお願いたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/27
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028・山口正義
○政府委員(山口正義君) 山本先生からお尋ねの、お手元に差し上げてございます「旅館業施設数調」という資料は、厚生省の統計調査部におきまして、毎年厚生省報告例として集めております資料を集計いたしましてお手元に差し出したわけでございます。それからただいま榊原先生の御指摘の、地方別の旅館の過不足と申しますか、需要と供給との関係という問題になりますと、これはまあ非常にむずかしい問題になると思うのでございますが、現在はっきりこの地区が不足し、この地区が余っておるというような資料を、残念ながら私どもの方に持っておりません。何らかの形でそういう部分的なものでも、至急に調べる必要がございますればそういうことをいたしたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/28
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029・高野一夫
○高野一夫君 関連して……。このホテル、それから旅館についての構造設備の基準を政令で設けるということになっているわけですが、このホテルと普通の和式と混同して半々にあるとか、あるいは七分三分とかいうような構造である場合は、どちらの方に入れるのですか。私はこの各県別のホテルの数を見て、これは適正なる数ではないように私は思うので、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/29
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030・山口正義
○政府委員(山口正義君) 現在お手元の資料のホテルあるいは旅館という分類につきましては、これは現在の、現行の旅館業法に基きまして、施設基準は都道府県知事がホテルとして、あるいは旅館として定めるというふうになっておりますので、必ずしも一律ではございませんので、いろいろ御不審の点が出るかと存ずるのでございますが、ただいま御審議を願っております改正案につきましては、都道府県知事にまかせずに、ホテルと、あるいは旅館というものの水準を高めるというような意味合いからいたしましても、全国的に大体同じような基準にしたらいいのではないかというような考えから、政令で定めるというふうにいたしたいと存ずるわけでございますが、その政令の内容につきましては、現在私どもの方で一応の素案等は作っておりまするけれども、これはいろいろ関係の方々の御意見もございますので、今後はっきりしたものをきめて参りたいと存ずるのでございまするが、ただいま御指摘のように、必ずしも洋式客室ばかりというものばかりでもございませんし、あるいは考え方によっては、洋式と和式とを折衷、混合したものも相当あるとも考えられますので、そういう際に、洋式の客室が全体のうちにどの程度占めるものをホテルと言うか、あるいは逆に和式の客室がどの程度占めるのを旅館と言うかというようなことを今後政令の段階できめて参りたいと、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/30
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031・高野一夫
○高野一夫君 この許可の基準が洋式と和式で違うということは当然でありますが、そこで、先ほどの榊原委員のこの配置の問題についての御質問にも関連してくると思うのでありますが、たとえば京都、大阪はホテルは三つずつになっておりますが、こういうことは絶対にありませんので、和室を持たない純大ビルの洋式ばかりのホテルが、京都でも三で、ききません。大阪はいわんや三で、ききません。私が承知しているところだけでも、もっとある。こういうようなことを考えまして、ほかの県を見ても、どうも適正でないように思うところがあるのでありまして、従って、こういうような調査がやはり今後の旅館の許可ということには非常な影響があると思うので、現在の実態についての把握をもう少し厳密におやりになることを私は希望したいのですが、これについて、これは現在の許可の基準と申しますか、そういうものから言って、これは正確な統計だとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/31
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032・山口正義
○政府委員(山口正義君) ただいま高野先生から御指摘の点、実情とにらみ合わせてまことにごもっともな点と考えるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現在のホテル、あるいは旅館、下宿というものの分類と申しますか、区別は、その許可基準を県で定めてやっておりまして、その県から参りましたものを一応集計いたしておりますので、御不審の点はごもっともと存じますが、私ども一応これを信頼して集計しているわけでございますが、その点なお注意して確かめたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/32
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033・横山フク
○横山フク君 この広告に対しては何ら制限は今度は加えてないのですかしら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/33
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034・山口正義
○政府委員(山口正義君) 広告につきましては、御審議願っております第四条の第三項に……、第三条は施設基準でございますが、第四条は衛生上のいろいろな措置に関する基準でございます。その第四条の衛生上の措置に関します基準につきましては、従来通り都道府県知事が条例できめるというふうにさせたいと思うのでございますが、その第三項にございますように、「第一項に規定する事項を除くほか、営業者は、営業の施設を利用させるについては、政令で定める基準によらなければならない。」とございますが、その政令の中に、ただいま横山先生から御指摘のような広告とか、宣伝というようなことも、ある程度の規制を加えるようにしたらいかがか、そういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/34
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035・横山フク
○横山フク君 その政令でおきめになるということで、私も安心したのでございますが、まあ売春防止法のあとの問題として、おそらくこういった旅館が広義に拡張されて、さかさクラゲが即売春宿というような形になる危険性が多分にあると思うのです。そういう点に関して、政令でおきめになるときに、慎重なおきめ方を願いたいと思います。以上で終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/35
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036・田村文吉
○田村文吉君 あれですか。この政令の大体をあらかじめ御発表になる御意思はありませんか。と申しますことは、単なる風紀衛生の取締りだけにこの法律が限られておる限りにおいては問題はないのです。ところが、今の全国各都道府県でやっているものを、今度国の政令によって定めるということになりますと、これは影響するところは非常に大きい。現在のホテル、旅館及び簡易宿泊所、下宿等の大体定義から初め、ずいぶん問題になってくる。そういうものに適応した部屋割等を作るというようなことになりますると、非常に大きな問題になりますので、これは私はもしそういうふうになさるのならば、大体どういう意図をもって政令を作るつもりだということを、あらかじめお示しいただくことが穏当じゃないか、こう思うのでありまするが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/36
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037・山下義信
○山下義信君 関連して……。今の田村委員が質問されました政令の内容は、ここでお述べになってもかまいませんが、お述べになってもようございますが、これは資料として一つ各委員に配付を願いたいと思います。また、その他当然質疑に出てくるであろうと思われるものを、本法案の中の必要な政令等の内容はできるだけ、こういうものは秘密事項でないですから、審議上に当然必要なんですから、政府の方で御準備のできておる分は、全部一つ文書によって各委員に配付していただきたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/37
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038・山口正義
○政府委員(山口正義君) ただいま御質問の政令につきましては、第三条の第二項に一つございます。それから横山先生の御質問にお答え申し上げましたように、第四条の第三項、二つございます。それで先に第四条の第三項につきまして、一応私どもの今考えております政令の案と申しますものは、第一……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/38
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039・田村文吉
○田村文吉君 御発言中でありますが、私の要求しておりますことは、さっき山下委員が敷衍されましたように、あとで政令で、文書によりまして御発表をいただければけっこうなんですが、その御意思があるかないかを伺ったのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/39
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040・山口正義
○政府委員(山口正義君) 田村先生から御注意いただきまして、先ほど山下先生からも御指摘ございましたように一応の案を私どもの方で考えておりますが、これは資料として当委員会に提出するようにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/40
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041・田村文吉
○田村文吉君 了承いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/41
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042・山本經勝
○山本經勝君 先ほども申したのですが、この説明資料を見ますと、今「公衆衛生的見地以外に、旅館業によって善良の風俗が害されることがないように、これに必要な規制をあわせて行や得るよう法目的を改めた」という点なんです、私御質問申し上げておる趣旨は。そこから今度は今のこの善良な風俗を害することがないようにというその配慮は当然であり、必要なことでありますが、具体的には、対象としてこの法改正の基本的な考え方、具体的に申し上げますというと、旅館でどういう点がいわゆる善良な風俗を害するものであり、そういうことを何とかしてどういうふうな方法で防ごうとするのか、基本的な問題を一度伺わしていただきたいわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/42
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043・山口正義
○政府委員(山口正義君) 先ほど横山先生の御質問にお答え申し上げました第四条の第三項というような点が、たとえば広告とか、あるいは部屋の使い方とか、あるいは浴室の使い方というような点を一応風俗と申しますか、風紀上の問題と、からみ合せて考えております。それからまた、今回の改正案の中にございますように、第八条にございますように、いわゆる風紀上の、営業者がその当該施設について風紀上の問題で何か処罰を受けたというような際には許可を取り消すというようなことで、この風紀上の問題と申しますか、旅館がそういう点に走らないように防止したい、そういうふうに考えているわけでございます。根本になります先ほどから山本先生の御指摘のように、全体、日本の旅館の中でそういう問題がどこでどういうふうに起っておるか、また、旅館のうちでそういう問題を起しているのはどれだけ数があるかというような点につきましては、資料が十分でございませんので、まことに申し訳ないのでございますが、現実の問題として、そういう風紀上の問題を云々をされるという旅館が相当数と申しますか、ある程度あるということは事実だと存ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/43
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044・山本經勝
○山本經勝君 今のお話では、さっぱり善良な風俗が害されるという具体的な事実もなく、わからんのです。それで資料もない、そういう形でばく然とこういうことを言われていること自体が私は非常にあいまいだと思うのですが、全くどうも理解に苦しむのですが、しかし、私どうも新聞を通して、これは真相を今厚生大臣からも御説明をいただきたいと思っているのですが、新聞を通して見るというと、この旅館業法に関する法律の改正案が骨抜きになっておると言われておる。この中で特にあげられるのは、売春防止法の施行に伴う勅令九号で、婦女子に売春を行わせた者に対する処置の規定が厚生省で最初立案されたときには入っていたという、それがいつの間にか消えてなくなった、こういうようなことを考え合せると、今言われている改正をなさろうとする意図が、公衆衛生的見地以外に、ことさらにそれがつけ加えられて、旅館業によって善良の風俗が害されることのないように、この配慮というものは一体どこから出発したのか、これと、今の厚生省が当初考えられた改正法の主たる目的、しかも売春禁止法の施行に伴う問題が配慮されたのではないかと思うのですが、これは大臣から一つ懇切な御説明をいただかないと、私どもは理解ができないわけです。
お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/44
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045・神田博
○国務大臣(神田博君) 山本委員のお尋ねにお答えいたします。
この旅館業法を改正するに当りまして、これはいろいろ議論があろうかと思いますが、従来から厚生省といたしましては、旅館業法は大体公衆衛生的な面から考えていこうというような風が強い考え方でございまして、しかもその内容等につきましても県におまかせしておるというようないわば行政面からいうと、消極的なやり方であったのではないかと考えております。
ところが、たまたま今御指摘がございましたように、近来、風紀上の問題がやかましくなってきている。さらにまた、先年売春法等の通過によりまして、これらの面から考えましても旅館業というものをわれわれの生活環境から一つ規制していかなければならないのではないか、こういうような考えが必然的に起って参りまして、ことに売春法の施行を控えて、これを適正に運用していくということになりますると、勢い擬装転業というような問題も出てくるおそれもあります。さらにまた、擬装転業以外に従来の旅館そのもの自体が、そういうようなおそれのあるような使用に利用されるような心配も出て参っておるのが一つ。それから公衆衛生がだんだん進んで参りまして、今までの公衆衛生上だけの指導では生活環境を明るくしようというような考え方には追いつけなくなってきておりますから、この両面から考えまして、旅館そのものの正常化をしていく、そうして利用者に快的な気分を与えていきたいという本来的な考え方、それから今、山本さんから御指摘下された風紀的な面から考えたこの二つの面を一ついかに調和して、そうしてやっていくかということから、私発足したいと考えております。伝えられる、何かこの案が骨抜きになったとか、厚生省の原案がどうだとかいうことを私も耳にするのでございますが、これは出どこを私は実ははっきりしないのですが、旅館業法の改正を考えましたことは、他の方の声ももちろんあったとは思いまするが、この問題につきましては、私ども厚生省におりまして、こういう改正をしてもらいたいとか、こういうことはどうだとか、こういうことをやってもらってはいけないという陳情などは聞いたことがないのでございます。省議等におきましても、自然な今申し上げたような配慮から出発いたしまして、そうして今御審議を願っておる段階の成案を得まして、そうしてこれを御審議を願おう、こういったところに落ちついたわけでございまして、この法案の前に何か法案があって、それが骨抜きされたというようなことも、何かこれは誤報ではないかと思いますので、そういう事情のあることを一つ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/45
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046・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 今のは、第一条の「善良の風俗が害されることがないようにこれに必要な規制を加え」という問題が、公衆衛生と並列して目的の題目に上っているわけですね。今その八条の関係の質問があり、この法案が出るまでのいきさつの問題が少し述べられたのですけれども、そこで二つの並行した目的があって、そこでたとえば千駄ヶ谷の問題なんかが出てきて、ここで三条の百メートル、学校云々という問題が出ている。ところが、一番最後の付則になりますと、三年間そのままだ、このようにその後の規制というものにはちっとも触れていない。それはまた旅館をやっていられるところが今すぐやめろということも重要な問題でございましょうけれども、その法律三条で明確に百メートルという距離まで書いておられるけれども、付則ではその問題については何かちょっとぼけたような感じです。これはどういう工合に、一条の目的と三条と付則との関係はどういう工合にお考えになっているのですか。そこのところをちょっと聞かして下さい。大臣からます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/46
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047・神田博
○国務大臣(神田博君) 今の一条の、風紀上の問題を取り上げまして、しかも三条で今お述べになられたような、ここにも書いておりますが、学校関係について百メートル、こういうことを入れておいて、付則で完全実施期間の猶予期間を置いたと、これはどういう関係かというお尋ねでございましたが、先ほど山本委員にもお答え申し上げましたように、近時旅館業の正常なあり方というものが売春法の問題とあわせて、売春法の施行とあわせて旅館業そのものにも再検討を加える必要がある、こういうことでこの方が浮んできたということは御了承願えると思います。そこで百メートルをどういうふうにきめたかということであろうかと思いますが、いろいろ今お述べになられた千駄ヶ谷の問題等もこの法案の立案中に出て参りまして、大体百メートル以上あればそう教育上有害じゃないかということと、たしか競輪、競馬それからモーターボートでございますか、あの方にも距離の制限が学校との関係でございまして、これはたしか法律でなく、内規だと思いましたが、そういうこともしんしゃくいたしまして、大体百メートルあれば、これはもちろん風俗営業としての考え方でないのであって、旅館として、公衆衛生上の旅館として正常な経営をさせてもいいじゃないか、こういう考え方で百メートルということに一応いたしたわけでございます。それからすでにできたものを取り払う、この施行によってすぐやるということはいろいろの、一応県がこれを許可いたしておる関係もございますので、一定の猶予期間を設けまして、そしてそれに見合わせるようにした方が実情に沿うのではなかろうか、こういう考えからこれは付則で例外を設けたわけでございます。学校の百メートル以内にどの程度の数があるかというようなことは、この法案の起案中に十分調査いたしまして、その資料でもありますると、なおこれは非常に線の引き方が楽だったと思うのでございますが、そういった準備も十分でなかった関係上、今お答え申し上げておるようなことにまあなったわけでございまして、百メートルがいいか、二百メートルがいいか、あるいは付則の例外規定がどの程度がいいかということも議論があったのでございますが、いろいろ議論した結果、大体この法案が規定したような、百メートルぐらい離れておればそう教育上の支障が生じないのじゃないかということ、それからまあせっかくできたものを例外規定を設けないということは、これは賠償の関係もございまするので、こういった猶予期間と申しましょうかを置いたということでございまして、三年ぐらいであれば施設の改善等にも、十分資金の関係等もございまするから何とかできるのじゃないか、こういう考えで設けたわけでございまして、さように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/47
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048・山口正義
○政府委員(山口正義君) 先ほど御指摘の付則の猶予期間ということにつきましては、これは一応私どもの方で考えておりますのは、旅館、ホテルなどの施設について基準と合わないというときには三年間は一応猶予する、たとえばこれは具体的な政令の問題になると存じますけれども、部屋の大きさとか、部屋の数とかということでございまして、そうして三年間たちました上、さらに今度は第七条の二を適用いたしまして、改善命令を出して、しこうしてその間にも一定の猶予期間を置くということで、先ほど田村先生の御指摘のありましたように、あまり無理のいかないようにしたい、そういうふうに考えるわけでございます。ただ学校周辺百メートルという条項につきましては、これは法施行と同時に適用になるわけでございますが、その際に、教育委員会等の意見を聞いて、それが、風紀を害さないように一応考えて運営をやっていかなければならぬ、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/48
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049・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 今のお話を聞いておると、環境衛生その他の設備の問題が三年間で、何ですか、旅館の位置そのものについては、直ちにこの法律施行と同時に、教育委員会その他と相談してやるんですか。この法案を見ると、そういう工合になってないが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/49
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050・山口正義
○政府委員(山口正義君) ただいま私の言葉が足りませんでございましたが、新規に百メートル以内に作りますものはそういうふうにいたします。それをすぐ適用するというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/50
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051・高野一夫
○高野一夫君 関連して。学校の百メートル制限に大学を除くとしてある。第八条に、大学の学長が、それに該当するような仕事の内容を発見した場合は申請をして適当な処置をこいねがう場合があり得るというようなことが出ているのでありますが、これはどういうわけでこういうふうになるのか、その点を一つ承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/51
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052・山口正義
○政府委員(山口正義君) 一応大学を除きました理由は、大学生になる年令になりますれば、いろいろな風紀問題に対する判断能力もできてくるというふうに推定されますので除いたわけでございますが、それにもかかわらず、大学の学長がいろいろ意見を言うというようなことにつきましては、これは大学付属のいろいろな小学校、中学校というような問題が起り得るということで、そういうふうに一応考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/52
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053・高野一夫
○高野一夫君 私の考え方は、むしろその年ごろになった大学の学生なんかの方がこういう点についての物の見方がより敏感になっていやしないかと思うので、むしろ若いほんとうの青少年よりは、むしろ大学の学生、大学に通う者の方がどうもあれは少しあそこはあやしいとかどうとかいうことを感じやすい。そうなりますれば、むしろやはりこの大学というものも、どうせ八条の二があるならば一緒に考えて差しつかえなかったんじゃないかというような感じがするわけでありますが、今の話を伺うと、相当の年輩になっているからまあ大丈夫だという考え方であるようでありますけれども、どうもその点がなお私は納得ができないように思うのでありますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/53
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054・山口正義
○政府委員(山口正義君) 高野先生の御指摘の点は、私どもは一応その年令になればいろいろな社会の関係に対する抵抗力もでき、また、判断力があるというふうに考えまして、一応原案といたましては、そういうふうに大学を除くというふうにしたわけでございます。これはどちらがどうだというふうにいろいろまあ考え方はあるように思われるわけでございますが、一応原案者といたしましては、むしろその判断の力があるというふうに考えて、こういうふうにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/54
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055・高野一夫
○高野一夫君 それじゃあそれでけっこうでありますが、それじゃあそれに関連して伺いたいのでありますが、第四条の三項にですね、「営業者は、営業の施設を利用させるについては、政令で定める基準によらなければならない。」と書いてある。ということは、施設を利用するためには政令で基準を定める、こういうことになる。そうすると、この施設の利用ということがとりもなおさず百メートル云々ということにもやはり私は関係してくるその内容の本体じゃないかと思うのでありますが、この施設利用の基準というのはどういうことになるのか、大よそお考えになっておるところを一つ、抽象的のこれはものであるに違いないと思うのだけれども、どういうようなことがその利用の基準になるのか、それをついでに伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/55
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056・山口正義
○政府委員(山口正義君) これは先ほど田村先生、山下先生からの御指摘によりまして、資料として現在考えております政令の案を提出することにいたしているわけでございますが、一応……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/56
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057・高野一夫
○高野一夫君 それじやあけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/57
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058・横山フク
○横山フク君 関連ですが、今厚生省当局のことを伺ってますと、まあ百メートル以内とか、あるいは大学生とかって言いますけれども、旅館というところは原則的に言ったならば、学校の隣りにあっても何ら差しつかえないところであるべきはずなのに、ところが、厚生省当局では、もう旅館は売春宿の変形であるということに前提を置いた今度の改正なのでございますか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/58
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059・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま横山委員のお尋ねでございますが、決してさようには考えておりません。ただ何といいましょうか、教育関係のすぐ隣りにあっても、これはまあその旅館の立地条件が適当な場合もあり、そうでない場合もあろうかと思いまして、まあできるだけ一つ避けた方がいいというような考えを持ったのでございまして、学校の周辺にあるものが今おっしゃったような意味で私ども避けたと、こういう意味でないことを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/59
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060・榊原亨
○榊原亨君 先ほどからこの風紀の問題がいろいろあるのでありますが、その旅館が風紀の正常な運営でないということを判定される基準はどういうことでおきめになるのか、また、その方法はどうです。これがもう一番の問題だと思うのでありますが、たとえば、先ほどからお話し承わりますと、浴室の使い方とか、部屋の使い方とか、小さい部屋とか、大きい部屋とかというようなお話がありますが、大きい部屋でも風紀を乱そうと思えば何ぼもできる。また、その使い方にしましても、正常なる人がまじめな商談をするために二時間なら二時間で使うこともある。一体どうしてそれを判定されるのか、また、これにからんで臨検その他をされる意思があるかどうかということも、一体どうして臨検もせずにわかるかどうか、これがまあ非常な重要なあれだと思うのでありますが、その点をどうしてこれが正常なあり方であるが、不正常なあり方であるかということを御判定になるその基準と方法を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/60
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061・山口正義
○政府委員(山口正義君) 旅館を宿泊者がどういうふうに利用しているかというようなことについて、一々調べるというようなことはこれはほとんど不可能じゃないかと思うのでございまして、ただいま御指摘のございましたように、いわゆる臨検というふうなことは——まあこの旅館営業法が正しく行われているかどうかということは保健所職員に担当させるわけでございますが、臨検というようなことは行わせないつもりでおります。従いまして、保健所職員がこの旅鉱業法が法通りに運用されているかどうかということにつきましては、施設の問題、あるいはあとで法にございますが、書類の点検というようなことにつきましても、改善命令を出したという場合に、その改善に必要な建築の発注をしたかどうかというような、そういう書類でございまして、決してその経営そのものについていろいろ検査するというようなことは考えていないわけでございます。
それから私先ほど、あるいはそういう発言をいたしておりましたら訂正させていただきたいと存じますが、部屋の大きさで善良な風俗とか何とかいうようなことは、今回の法改正では一応考えていないのでございまして、先ほどもお答え申し上げましたように、この善良な風俗を害するかどうかというようなことにつきましては、第四条の第三項の政令、これは資料として提出いたします。その政令の中にいろいろな広告の方法とか、あるいは中の備えつけるいろいろな文書とか絵画とかいうようなもの、あるいは浴場の利用方法、あるいは部屋の使い方というようなことについて一応の基準を定めたいと、そういうことによって善良な風俗が害されないように規制していきたいということでございます。それからもう一つは、先ほども申し上げましたように、第八条によりまして善良な風俗を害するようなことで、その旅館の営業に関してそういう風俗関係の罪を犯しました場合には、その許可を取り消すというようなことで規制して参りたいというふうに考えておりまして、部屋の大きさでこれを規制するというようなことは全然考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/61
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062・榊原亨
○榊原亨君 今もお話になっている中に、その浴室の使い方とか構造とかいうお話があるのですが、風紀を乱す浴室、私はあまりこの方は経験がないのだが、一体そういう浴室はあるのですか。私はこれはもう結局は臨検することができないということになり、臨検しないおつもりであるということになれば、その旅館の営業の方法が外部の、旅館外の外部の公衆の人たちに影響を及ぼす範囲においてお取締りということになるのじゃないかと思うのですが、あくまでもその——売春法の場合でもいろいろ私どもお聞きいたしますというと、寝室の中まで入って干渉するつもりはないのだと、こういうお話、ただそういう旅館の営業のあり方が第三者の公衆に対しまして風紀を乱したと思われるようなふうな影響を与えた場合のお取締りではないかと思うのでありますが、あくまでもその旅館の中のことについていろいろお考えになっていらっしゃるのですか、その点をはっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/62
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063・山口正義
○政府委員(山口正義君) その点は、ただいま榊原先生が御指摘のように、外部に対する影響が主となるわけでございます。私先ほど、旅館内の浴室の使い方というようなことについて一応考えておりますというようなことを申し上げたわけでございますが、それはまあ男女混浴というようなことを行わせないようにするというようなことをきめたいというふうに一応考えておるわけであります。しかし、それが混浴しているかどうかというようなことを臨検するというようなことはいたさないつもりでございます。一応そういう規定だけは考えたらどうかというふうに考えておりますが、主眼点は、ただいま榊原先生から御指摘になりました点に重点を置かなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/63
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064・田村文吉
○田村文吉君 先刻もちょっと申し上げたのでありますが、藤田委員が先刻この法律には二つの目的が含まれている、で二つの目的は、一つは公衆衛生に関するもの、一つは今の風紀に関する問題ということでございまして、私もそんなふうにちょっと考えるのですが、あまりこの両方はっきりとおねらいになるために非常にこの法律の性格が明確を欠いてきていると、こういうふうに考えるのですが、これは一つ大臣に伺いますが、一体これは目的はどっちを主目的としてお考えになって法律をお出しになったのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/64
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065・神田博
○国務大臣(神田博君) これはまあ私最初に山本委員のお尋ねにもお答えいたしたのでございますが、旅館業法の正常なあり方、厚生省の指導監督という考えから申しますと、これは公衆衛生というものが主眼としてこの法案が実は生まれてきたわけでございまして、その趣旨に沿うようないろいろ施設の改善、こういうことをねらって参ったのでございますが、その後、売春防止法案の通過等によって、一部正常な旅館業が風紀的な面も一つ考えなければならないことができてきたのじゃないか、そこでそれを取り入れて一つ旅館全体が風紀を乱さないようにしたい、まあ全体といいましょうか、一部の風紀の乱れることを救いたい。全体としての旅館にはその心配が薄いのでございますが、一部そういうような旅館ができそうだ、そこでそれを事前に一つ押えたい。あるいは、もうすでに相当事後になっておるかしれませんが、そういう風潮が生じて参っておりますから、それを押えたい。こういうことなんでございます。あくまでも旅館業法は私どもは公衆衛生の面から考えていきたい。しかし、一部そういった公衆衛生の面からだけでは防ぎ切れないものがあるようだから、風紀面も加えてその一部の旅館業については今申し上げたようなことでやっていきたい。そこで、さっきいろいろと、一体それはどうして調べるのか、どうしてわかるのかというようなことでございましたが、これは政府委員からも、今山口君からもお答え申し上げたように、臨検によってそれを一つ取り締るのだというような考えは毛頭ないのでございまして、おそらく風紀面でそういうようなことがあるかどうかということは、これはその付近からやはり自然と声が私は生まれてくると思います。そういう声が生まれてきてからやるのかと言われるとはなはだ手ぬるいようでございますが、今の私どもの考え方から申し上げますれば、そういう二とのないように一応指導をして参りたいが、そういう声が生まれて参ったならば、そこでマークして一つ調査をしたい、調査してそういうような事実がございますれば、これは取り締ると、こういうような考えでこの法案を立案して参った、こういうことと御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/65
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066・山本經勝
○山本經勝君 今の御説明を聞いても先ほどから伺っております各委員の質問に対する御答弁等を総合して参りますというと、やはり風紀と公衆衛生、こういう点からこの法改正の基本的な目的が発生しておると思います。そこで、たとえばこうした見地から、第四条の改正で部屋割り、あるいは浴室その他設備等の改善、さらには部屋の使い方というようなところまでいってるのですが、これはなるほど先ほど局長のお話にもありましたように、利用者の快適ないわゆる設備等をして有効にするというお考え方、これは当然必要なことだし、けっこうなことだと思うのですが、ところが、この中で私はもっぱら取締りのみが問題になってきている、あるいは公衆衛生的見地から、あるいは風紀の問題から。ところが、これはやはり営業で、もうけなきゃ、やはり企業だから営業はできません。そうすると、企業としての見地は全然この改正案の中には考慮を一顧だにされておらないという印象を受ける。しかも、私どもまだ正確な調査資料を持ちませんけれども、全国に六万八千のこうした旅館業者がいる、そうしてこれには従業員が総数三十万ぐらいある、その中を分けていくというと、男子の従業員が五万人、女子の従業員が二十五万人、こうして考えてみますというと、これは企業ですから、あるいは営業ですから、ただ取締りをやるだけではこの法改正はいけないと思うのですよ。それで基本問題は、私は当初の問題に一ぺん返りますが、公衆衛生的見地以外に、旅館業によって善良な風俗が害されることがないようにという配慮がこれは必要なことであるし、当然でありましょうが、しかし、部屋割りやあるいはその他浴室や、部屋の使い方等について注意を喚起しあるいは指導監督するということがかりに行われて参ったとしても、これはやはり営業ですから、利潤を無視して、あるいは企業の成り立たないというようなことは全然できないと思う。そういう意味で、私当初から申し上げたように、旅館を開いておる、そうして家を作って設備をしておけば、おのずから世の中の機構の中でお客さんがやってくるというようになっておれば、これは大した問題はないでしょう。ところが、そうでない一般の旅館ということになりますというとその間に非常な差が起るというので、当初資料要求の中に御質問を申し上げたわけです。ですが、今ここで考えられることは、企業としての旅館の実態がどうあるかということ、そのことの配慮なしに、この法律が改正されてみても、所期の目的である公衆衛生の確保なり、あるいは風紀の問題等なり、これが目的に沿うような実現ができぬのじゃないかと思うのですが、大臣の方から正確な、明確な御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/66
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067・神田博
○国務大臣(神田博君) 旅館業が健全な企業であるということについては、私どもこれはもう最初からそういう考えでスタートいたしておるのでございまして、旅館業の持つ役割というものは、私は今後ますますこれは世の中が忙しくなり、交通が開けて、そうして文化の交流なり、あるいは商売のことなり、いろいろそういった取引、あるいは教育上の問題、一般の問題をかねて、こういった正常な宿泊施設を持な旅館業というものが、りっぱな企業だという前提に立って、そしてその企業を、あくまでもその使命を十分発揮さしていきたい。これはそういう考えで、設備、内容等を、ある何と言いましょうか、最低以上のものに一つしていきたい。宿泊者の利便、快適な宿泊の条件を備えさしていきたい。そこで、それに対して正当な宿泊料金をとるということは、私はこれはもう今後ますます大事なことである。そこで旅館業の持っている役割というものは、私は今後もますますこれは尊重していかなきゃならない、こう考えております。しかるに、一面において、その正常な旅館業が宿泊を目的としなかったり、あるいはまた、旅行者を対象としないで、よく伝えられる温泉マークというような、風紀を乱しておるというようなものが出てきておる。これは実際嘆かわしいことでございますが、そういうことがいろいろ問題になりまして、売春法の一つ法律が取り上げられて、これを徹底的に取り締っていく、こういう段階に入ったわけでございまして、そこで、それらが正常な旅館業にあるいは擬装、転業と見られても困るし、また、今の旅館業がそういった方面に変っていくというようなことも一つ押えたい、旅行者の便利をはかり、旅館業自体の健全な営業を一つできるようにしたいというのが今度の改正の私は主眼だと思う。そこで、いろいろ法律の各条項に現われているわけでございまして、この法案が通過さしていただけますれば、この法案の実施によっていかがわしいような旅館というものは十分取り締っていける。その取締りの方法は、先ほどもお答え申し上げましたように、保健所の人員にもこれは限りがございますし、また、もし万一正常な宿泊をされている方々にあやまって御迷惑かけてもこれは申しわけないことでございますから、それはやはり付近のうわさと言いましょうか、そういうような風紀を害するような旅館の経営をすることになりますれば、これは私は現われてくると思う。そういうものをマークをしまして、そして目をつけておって、そういうことをこれはもう業としてやっておる、もぐってやっておるというようなものには、一つ厳しい処置をとりたい、これが本法を改正したいという目的と御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/67
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068・山下義信
○山下義信君 私の質問の順番が参りましたら、私も若干お伺いしたいと思いますが、今関連で伺うのですが一先ほどから、取締りの点についての御答弁なんですが、榊原委員御指摘の通り、これは非常に重大で、ほとんどこの問題のポイントでしよう。山口公衆衛生局長の、そういう面について防止するという意味で、設備その他についての基準のお話の答弁があった。今厚生大臣から、全般的の取締りについてのお考えの御答弁が二度ほど重ねてあった。私は非常に重大だと思うのです。今の答弁でよろしいかどうか、私も今晩寝て考えますが、御検討をわずらわしたい。前者の山口局長の御答弁で、たとえば浴場を、旅館業の中におけるつまりふろ場、ふろの構造その他を、基準をいろいろおきめになるのはよろしいが、使用の方法までもおきめになる、一例として男女混浴は許さぬ。今具体的にお示しになった旅館内におけるふろ場は公衆浴場ではないのです。旅館内における浴場の寸法、その他位置であるとか、その他公衆衛生の見地から、あるいはまた、今回のお考えになりました若干の風紀的な建前からいろいろに設備構造についての基準は御考慮になりましょうが、その使用の方法についてまでさような御規定をなさるということになりますとなかなか問題がある、私はそう思う。私も考えますが、そこまで御規定になりますか。同時にまた、規定してみたところで、その禁止の規定を励行することのできないような基準を設けてみて、いたずらに混乱させてみたところで、しょうがない。たちまちこれは全般的に除外例をお考えになるのかもしれませんけれども、温泉地等におきましてはそういうことまで果して規定ができるかどうか。男女混浴とは、たとえばいかなる男女を具体的には規定しようとするのか。夫婦でもいけないのか。公衆浴場とは違うのでありますから、旅館内のふろの中にだれが入るかということ、だれは入ってはならぬということ、だれとだれとはいかぬというようなことまでも果してこれは規定をなし得る価値があるかどうか。私はそれでありますから、いろいろな政令等の内容についても文書としてお出しを願いたいと、こう言った。非常に重大です。これはまあ一例でありますが、私も今晩考えさしていただく。それから風紀の取締りですね、風紀上の配慮がされてあるということは、よくわかる。その御趣旨はよくわかる。お互いにわかっていることなんです。ところが、その取締りというと、いろいろ御質問があるという取締りをするとおっしゃる。本法はそういう取締りをされる法律になっておりますか。取締りのことに言及なさるのは、私は御答弁としては実は少し……、ざっくばらんでおよろしゅうはございますけれども、少し行き過きじゃないかと。本法は取締りを少しも規定していない、取締りは本法ではしないのであるとおっしゃったならば、私はこれが正しい答弁じゃないか。もしそういう風紀を乱さないように取締りをするとおっしゃったならば、その取締りの規定はどこにおる、この法律の中で、この条文が取締り規定になっておるかと伺わなければならぬ。今のような、外部から見て何となしに風紀を害しているようなことはだんだんとうわさも高くなるし、外から見てもわかるし、そういうことが何となしに見えるから、そう見えたというような行き方は、これは非常に非科学的ですよ。そういう行き方は私は法律的でないと思うのです。それは昔の徳川時代のおかっぴきといって、聞き込みでいくような、そういうデカがやるような、刑事がやるような、昔のそういうふうな行き方というもので取締りをするという基本原則をお立てになると、大へんなことが起きます。そうじゃない………、もしそれ本法における風紀的な配慮がされておる以上に、もし違反しておるということは、外部から見たり、聞き込みや風聞や、そういうふうに観察されるということでなくして、事実その犯罪がなくちゃいけない、そういうことの、違法が行われているということの事実が要件になっておる。この法案ででき得ることは、許可の取り消し以外にはない。その許可の取り消しの根拠は明確にそういう違法行為が行われているということの事実以外にはない。その風聞や、外部からそう見えるということを根拠にしてマークしていく。どう取り締るか、どう摘発するか。それはできないことになっている。さっきから臨検をしないとおっしゃった。どのような聞き込みがあらうと、どのように周囲のものが評判しようと、どのように見えておろうと、いかなる者が侵入しようと、どうあろうと、本法で禁止された以外にあるいは広告宣伝けばけばしい云々といういろいろな基準をお設けになりましょう。それ以外のいろいろな評判やいろいろな観察があってみたところで、それは一応評判だけのものであって、そう見えるだけのものであって、それを基礎にしてどういう取締りをしようというのですか。臨検以外にはできない。取締りは本法にはない。取締りはあなた方の所管ではない。保健所において保健所員が行って見るのも、ただ基準に適合するかどうかという、設備が所定のごとき設備をなしているか、その構造いかんということ以外にはない。それがためには、本法には保健所の立ち入り検査とまではないけれども、立ち入って調べることができることになっているが、その立ち入って調べたときに風紀問題までも見ることはできない。そういうことまではその当該吏員の監察事項でもなけらねば、権限でもなけらねば、報告事項でもない。そこで問題になるのです。ですから、そういう警察的、風紀行政的取締りは、あなた方の答弁の限りではないのであって、これは別です。でありまするから、私はそういうふうな外部から見て評判をしたり、様子を見て、どうもこれはあやしい家だぞといってみたところで、そう見えるだけの話で、そういう評判が立っているだけの話で、それを基礎にして取締りをするとおっしゃったり、そういう答弁をすると、その先はどういう手をお取りになり、どういう手段をお取りになる、法律は何をそこでお取りになるようにしてやるかと、こう伺わなければならぬ。本法はあくまでもし違法な行為を、列挙されてあるような刑法その他の違法行為があったときには、それがいわゆる警察関係で検挙ぜられる。そうしてその犯罪事実が確定したときには、事実に基いて営業の許可を取り消すことができるという、非常な厳罰規定がおいてあるから、旅館業者は自粛する効果があるのであって、それからまた、あなた方には風俗を乱しちゃならぬような設備、構造の面で非常に生ぬるいけれども、そういう面で可能な限りその風俗の悖乱的な使用をさせないように設備構造の基準でいこうというので、この二つしかないのじゃないか。で、今のように、どのように、これは俗に言う売春宿をやっておるなと、外から見ておってもそういう風聞が立っても、そういうことは本法においてそれを基礎にして取締りをするとか、そういうことのないようにさせるとかいうことは、この旅館業法の改正案には私は出ていないと、また、それは厚生省の行政でないと思う。それではっきり、やはりきっぱりと、それはほかの方面で幾らでもやることができるのでありまして、私はやはり限界はきちんとしておく方がいいと思う。こういう法案を出したときにこれを基礎にいろいろ取締りをするのだとおっしゃると、いわゆるこれは先ほど田村委員から御指摘がありましたように、この旅醜業法の改正案はいわゆる売春旅館取締法案かと、こう開き直って伺わなければならぬことになる。私は本法の規定はやはり限界があると思う。
そこで私は関連して伺うのですが、厚生省はこの本法の実施について、もとよりこういう規定をなさる以上には、また、やはり御準備があったから、自然大臣その他からもそういうお答えが漏れたのだろうと思いますが、取締りについて、公安委員会その他との交渉、すなわち警察行政方面と厚生省の方面とこの本法の実施取締りは厚生省には持っていない、こういう法律は作った、こういう趣旨に一歩を進めていった、実際効果をおさめるためにはどういうふうにして関係省と御交渉なさったか、それをお話し下さる方がよく筋が立つのじゃないかと思うのです。公安委員会あるいは国家警察と、同じことですが、そういう方面とのお話し合いはどういうふうになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/68
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069・山口正義
○政府委員(山口正義君) 山下先生から御指摘ありましたように、本法の一条の目的のところにもございますように、本法は公衆衛生上はいろいろな取締りをいたします。善良な風俗に関しましては、そういうことが害されぬように必要な規制を加えると、いうことになっているわけでございまして、まあ先ほど御指摘になりましたが、決して風俗関係で取締りをするという意図ではないのでございまして、取締関係あるいはその公安関係の毛のにつきましては、本法の施行について警察権の介入ということはないわけでございまして、警察権はそれぞれの所管の法律に基いて必要がある場合には行使する、本法の施行について警察権の介入ということはないというふうに警察関係と話し合いを十分済ませておるわけでございます。従いましてくどいようでございますが、御指摘になりました通り、本法で風俗関係の取締りをするということでなしに、施設あるいはその利用方法等についての一応の規制を加えて、その規制に違反した場合には営業の許可を取り消すというふうになっているわけでございます。
それから混浴の問題は、先ほど私が一例をあげましたが、政令の一応の案をあげました際に非常に言葉が足りませんでしたので、山下委員から御指摘を受けたわけでございますが、一応考えております点は、家族ぶろとか、あるいはこれは表現が非常にむずかしいと思いますが、視界の見通せない広い浴場というような場合を除き男女混浴はやめさせるようにというような考えは一応持っておるわけでございますが、山下委員御指摘のように、政令を作ることについては十分考えろという御指摘でございますので、私どもの方でも十分その点は検討させていただきたいと思います。いわゆる浴場、これは施設の方面になって参りますが、施設の設備その他について善良な風俗を害するおそれがあるというようなものにつきましては一応の規制を加えるのが筋ではないか。ただ混浴ということまで深く入るべきかどうか、混浴禁止というところまで入るべきかどうかという点については、御指摘もございますので、十分検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/69
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070・山下義信
○山下義信君 本法に警察権の介入がないということはわかるのです。全般について、この改正案を実施して運用するについて、向うの方はこれを受け取って、向うの方との関連性は、いわゆる公安委員会、警察行政との関連性については何らか話し合いができておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/70
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071・山口正義
○政府委員(山口正義君) 関係各省との折衝の途中に、警察関係と当然御指摘のようにいろいろ折衝したわけでございまして、ただいま私から答弁申し上げましたように、警察権の介入はしないということでございまして、警察自体としては、外回り側から刑事訴訟法に基きまして措置を講じていく話し合いがついているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/71
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072・山本經勝
○山本經勝君 大臣にお伺いしたいと思うのですが、先ほど、当初厚生省が考えられた改正案がその後いろいろな事情で変更されたことはないというお話であった。ところが、これはたしか新聞の記事ですから、必ずしも大臣の方で、あるいは当局の方でこういうふうになったかどうかわかりません。しかしながら、これほどでかでかと各新聞が筆をそろえて書き立てているのは、これは単なる根拠のないことではなかろうと私は思う。ところが、いわゆる見出しはそれぞれ違いますが、売春禁止法との関係が一番この旅館業法に関する改正の問題点として集約されている点では共通なんです。そこで改正案が骨抜きになって、重要項目が全部削られるというような見出しもあれば、「旅館業法改正も骨抜き売春防止の穴ウメ策、業界の猛反対くらう」というような見出しもある。とこが、この中で楠本衛生部長が談話を発表されている。これは直接御発表になったのかどうか存じません。とにかく読んでみますと、こういうことなんです。この法案が最初の意図から大きく変ったということについて、事務当局に大きな不満があることは確かだという表現がされている。それからまた、融資あっせん措置は大蔵、通産両省などの反対があった、それから客引き禁止は旅館業本来の目的からはずれるとの意見もあっていずれも削られたのであるから他意はない、こういうような要領になっている。これを見ますと、必ずしもこれは単に、今私が申し上げたように、厚生省が最初もくろまれた旅館業法に対する改正が何らかの形で変形をした事実というものは私はいなめぬと思いますが、この点まず大臣から一つ御説明をいただきたい。続いて局長の方からその談話についてのお話を願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/72
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073・神田博
○国務大臣(神田博君) その新聞は私も読んだ記憶がございますが、私の手元には旅館業者からの陳情も——これはおそらくどなたにもなかったのだろうと思います。それからまた、その他の方からの陳情もこれは受けなかったのでございます。そういった記事が突如と出まして、これは何かというようなことを話し合った記憶がございますが、おそらく、これは私の想像でございますが、若い御熱心な記者諸君が、売春禁止法の施行に伴って旅館業法の改正をして、何かそこに一つ取締りを強化するようなことを入れることを想像しておったことが、そうでなかったというようなことで、そういうことをお書きになったのじゃないかと、これは私のまあ想像でございますから、当っているかどうかわかりませんが、少くとも私どもの方で、私の手元におきまして御論議をされた際には、別にそういう骨抜きになったというような、後退しなければならぬようなこともなかったし、それから最近また、もっとつけ加えようというようなものもなかったのでございます。
ただ一つざっくばらんなお話を申し上げますと、この旅館業法の改正に伴いまして、警察当局との話し合いの際に、警察当局が介入したいという初め御希望があったやに聞いておりましたが、この旅館業法にはそういうことのない方がいいのじゃないかという話し合いができまして入らなかったという経過を私担当部長から直接聞いておりますが、私この話し合いには、大臣同士でそういう話をしたこともございませんので、私から申し上げますと、先ほど申し上げましたように、すなおな形でこの法案がここへ運んできておる、こういうふうに考えておりますので、ただいま申し上げたようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/73
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074・山口正義
○政府委員(山口正義君) 先ほど御指摘になりました談話と申しますか、新聞記事につきましては、私もその新聞記事を当時承知いたしておったわけでございますが、楠本部長はただいま病気で休んでおりますので、ここへ参れないわけでございますが、当時非常に厚生省の案が曲げられて不満であるというような考えを持っていたわけではございません。そういうことは私ども事務当局としては考えていないわけでございます。ただ、ただいま大臣も、警察関係とのお話がございました。まあ一般的な問題でございますけれども、やはりこういう法案を、原案をいろいろ作成いたして参ります場合に、関係各省と折衝いたさなければなりません。その際に、最終的には法案を法制局で審議してもらうわけでございますが、その過程におきまして、多少他の省の管轄の法律との関係等もございまして、必ずしも最初考えていたような条文が入らないというようなこともあるのでございまして、たとえば融資あっせんの問題にいたしましても、あるいは客引き禁止の問題にいたしましても、大蔵省関係の意見、あるいは運輸省関係の意見等もございまして、他の法令に基いてそれぞれやってもらうというようなことになっておりまして、そういう原案を作成いたします過程におきましては、各省関係の折衝によってやるということは、これは常でございます。非常に原案が曲げられて不満であるというようなことを事務当局は考えておるというようなことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/74
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075・山本經勝
○山本經勝君 先ほどの局長のお話、それから大臣のお話にありたことですが、旅館営業の健全な経営ということは、これは基本的に大事なことだろうと思います。単に業者というよりも、健全な経営の中でこそ初めて理想的な公衆衛生なり、あるいは風紀上の問題が行われていくというようなことになる。ところが、問題は公衆衛生的見地で、取締りは別問題です。あるいはいろいろな行政指導、改善等の監督指導が行われるでしょう。ところが、たとえば衛生上の問題から、公衆衛生的な見地から見ますと、設備なりあるいは器具なり、あるいは器具の使用方法なり、旅館ですから食べもの等の取扱い、従ってそれらのものについての広範な検討あるいは調査というものがなされるでしょう。こういうふうになってきますというと、やはり一つには重大な関連をもってくるのは、その健全な経営を、いわれるような監督指導のもので行えば、経営の問題に関連をもってくる、そこに関連があるからこそ、たとえば旅館営業に対する融資のあっせん等も、当初は厚生省当局、事務当局といいますか、そこで問題になっただろうと思う。これは当然あり得る筋だと思う。ところが、まあ、そういう点は今不満として取り上げられはしなかったと言われますけれども、考えてみますというと、これはあり得ることだし、また、なければならぬことだ。単なる取締りだけが残っておって、そうでなくて一そういう面の配慮がなされずに取締りを強行するということであれば、営業そのものが成り立たない場合もあるでしょう。また、ある場合には、風紀的見地でいいますというと、そこの従業員、あるいは連れ込み宿と言われるような旅館においては、側から入ってくるでしょ。ところが、そうでなくて、売春取締法が実施になりますというと、今言われておることは、赤線、青線区域等の婦女の従業員、従業婦が、旅館や、あるいは旅館のみではなくして、料理店、割烹、こういったようなところへずんずん流れ込んでくるのじゃないかということさえも言われている。そうなりますと、これはもう私が単にここで申し上げるだけじゃなくて、一般の通念になっておるようです。ですから、風紀上の問題を取り上げられた理由もそこにありはしないか、これは私の想像です。ところが、ここで風紀上の問題が取り上げられておることは、陰に陽にその要素が含まれておると判断しても私は不都合でなかろうと思いますが、そうなってきますというと、ここへ従業婦あるいは従業員としての婦人の待遇の問題が私は当然浮び上ってくると思う。これはどうせ本委員会で労働大臣等も出てもらって検討を要する点だと考えますが、最近、いや現在に至っても労働基準法は守られておらない。この旅館営業に従事をしている婦人、ことに婦人ですが、婦人の場合は、いわゆる基準法の時間の規制もなければ、事実上夜も夜通しということなんです。睡眠時間はわずかに三時間、最大限度三時間しかないということさえも言われておる。賃金に至っては、固定給が出されているものはごく一部分、そうして全くチップや歩合でもって生活をやっている、こういうような実情に置かれておるということを聞いております。ですから、そうなってきますと、今言われる、この法律を改正することによって公衆衛生を確保して、それから風紀の問題を改善するのだというねらいの一方に、監督指導が強化され、あるいは悪く言えば、臨検その他の強力な検査等が行われる、臨検等が行われる、こういうことになる。そういう半面では、その企業に対する擁護の措置が何らない、こういうことになってくると思うのです。ここら辺が私はどうしても納得のいかぬ点なんです。私は今の企業としての営業を成り立たせるということは、その企業の中で働く従業員の生活の保障という問題にも関連を持っているが、厚生省当局としては、そういう点についての御配慮はどのようになさっておるかということをいま一度明確にお答えを願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/75
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076・神田博
○国務大臣(神田博君) 今の山本委員のお尋ねでありまするが、私もよく気持がわかるのでありまして、この法案の立案の際にその点にわたりましても、ずいぶん議論が出たことでございます。設備の改善が従業員の労働強化になったり、あるいは低賃金になるようなおそれがあってはならない、しかし、そういう面を十分考慮しながら、何といいましても、まあ、これはいろいろ考え方もあろうと思いますが、私ども公衆衛生を担当しているという見地から申しますと、最近のわが国の国民所得の上昇、生活環境の改善化、蚊やハエも撲滅しようという運動等から考えまして、こういった旅館業等については特に環境をよくしたい、内容にわたりましては、相当近代化する必要があるのじゃないか。そのことによって、多少これはもちろん資金の面につきましては、特にこれは法律に規制すべきものでは私はないと思うのでありまして、これはまあ融資のワクを広げていくというような面にいくべきものであるというふうに私ども考えておりまして、これはしばしばその点につきましても議論が出たのでございますが、できるだけ一つ融資面において優先的な取扱いをするように努力をして参りたい。そこで日本の生活レベルを上げる上からいってみても、こういった業種については衛生面を一つ向上させたい。まだ非常に非衛生的な旅館が多いじゃないか。都内においてもまだ、これはまあはなはだ例があまりよくないですが、水洗便所になっていないのも相当あるのでございます。相当有力な地方都市においても、そういったことが浄化装置ができてない。台所等についても非常に衛生的じゃない、そういう部面も一つ十分改善させようじゃないか。それから今お述べになられたような寝具であるとか、調度品その他も衛生的なものを一つ使用することによって宿泊者が快適な環境において、そうして能率が翌日から上る、旅の疲れをいやすというような方向に持っていこうじゃないか、そのために多少設備がよくなった結果、三等旅館が二等旅館になる、二等旅館が一等旅館になるというようなことがあっても、むしろ設備の改善によってある程度採算上そういうことになっても、弊害は今申し上げたいい方の面によってカバーされるのじゃないか。さらに労働強化の問題、そういうことのないように一つやって参りたい。すべてが快適に、泊る人も喜んで泊れる、営業をやる人も適当な利潤というものが保持できるというふうな、いわゆる健全企業として、健全経営ができる、こういうふうな趣旨を汲んで、一つ改正案を企図しようじゃないかと、こういう観点に立ってやって参ったのでありまして、今山本委員の御心配される点、これはまた、労働大臣の担当する部面が多いのでありますが、事務的にそういうことも御相談、打ち合せさせまして、こういう改正案にこぎつけたわけでございまして、御指摘の点は十分私ども了承できるのでございまするので、なお、この法案の御審議によりまして、通過いたしますれば、一そう一つ緊密な連絡をとりまして、今御指摘になったような点のないようにいたしていきたい、こういう所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/76
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077・山本經勝
○山本經勝君 今のお話で、融資等についてのお考え方は、いまだ充実されておらない、つまり公衆衛生という見地から言われた。施設の改善あるいは器具、その他を含む改善に必要なあっせん等の問題は別途検討すると言われた。それからまた、いわゆる労働省とはあらかじめこれらの従業員等の問題を、待遇を含む問題としてお話し合いを事前になさったと、こういうふうに伺った。それで先ほど私特に指摘をして資料の提出方をお願いしたのですが、日本観光旅館連盟ですか、これに所属する旅館、それからその他の旅館、いわゆる普通旅館、こういうものの数、その他をお願いしたのですが、それで、そういう見地に立って問題を考えていきますというと、旅館はやはり営業ですから、これはもう旅客誘致の機関も何もないのですから、やはり一定の減価償却をし、利潤を求めていくことは当然で、それで客引きの問題がやはり出てくる。ところが、その客引き等の行為をなさなくても、おのずからお客さんが来るようなふうな機構になっている部分があるから申し上げているのですが、そういう点と、それからいわゆる連れ込み宿と、悪い言葉で言いますと、言われる旅館の実態等が一応明らかにされなければならぬと思うのですが、これについて御説明をお願いできるか、あるいはあわせて、さっきの資料をお出し願えるか、その点をはっきりさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/77
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078・山口正義
○政府委員(山口正義君) 客引きの問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、運輸省に旅行あっ旋業法という運輸省所管の法律がございますので、折衝の過程に運輸省といろいろ折衝いたしまして、そちらでいろいろ規制をしてもらおうという話し合いになっておりますが、細部にわたりましては、先ほど御要求の資料とともに提出することにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/78
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079・山本經勝
○山本經勝君 それであわせてお願いしたいのは、私の方で申し上げた旅館の数五万八千というのは一応この資料の中にも出ておるようですが、この従業員数というのはわからない、推計数字でありまして、この従業員は総数何人おるか。それから男女それぞれどれくらいであるか、こういうようなホテル、旅館等に肝、いておる従業員の実数、こういうものを一つあわせて資料として御提出方を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/79
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080・千葉信
○委員長(千葉信君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/80
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081・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/81
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082・千葉信
○委員長(千葉信君) この際、おはかりしたいことが二件ございます。旅館業法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/82
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083・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。
なお、期日は四月二十三日といたしまして、参考人の人選、手続その他につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/83
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084・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/84
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085・千葉信
○委員長(千葉信君) 次に委員長が委員会を代表して意見を述べるため、他の委員会に出席して発言するの件についてお諮りいたします。
昨十五日の委員長、理事打合会において協議いたしまして、ただいま内閣委員会において審査中の一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案は、本委員会の所管事項たる労働条件及び労働者保護に関する事項、特に公共企業体等の紛争に関する仲裁裁定に関連する事項でありますので、内閣委員会において本法案審査の際、委員長が当委員会を代表して出席し、意見を述べることにいたしました。委員長、理事打合会において決定した通り、取り運ぶことについて御異議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/85
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086・高野一夫
○高野一夫君 私はそれはそういうふうに解釈しておらなかったので、委員長が御自分の立場においてほかの委員会へ出て随時一つ発言をしたい、こういうようなふうに私は理解したので、それは大いにかまわないじゃないか、こう申し上げたわけであって、従って、当委員会を代表してということになれば、その問題について当委員会で十分熟議した結果、とにかく一つの結論といいますか、方向をわれわれ相ともにもつた線でないというと、委員会代表としての御発言は困ると、従って、千葉委員長が別な立場において、議員としてお出になる分にはごうも差とつかえない、そういうふうに私は理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/86
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087・千葉信
○委員長(千葉信君) 速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/87
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088・千葉信
○委員長(千葉信君) 速記を始めて。それじゃ、ただいまお諮りしましたことについては、意見もあるようですから、あらためて理事会で御相談願うことにいたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X02219570416/88
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