1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月五日(火曜日)
午後二時一分開会
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出席者は左の通り。
委員長 廣瀬 久忠君
理事
西川甚五郎君
平林 剛君
天坊 裕彦君
委員
青木 一男君
木暮武太夫君
左藤 義詮君
土田國太郎君
苫米地英俊君
宮澤 喜一君
天田 勝正君
栗山 良夫君
椿 繁夫君
野溝 勝君
政府委員
大蔵政務次官 足立 篤郎君
大蔵省管財局長 正示啓次郎君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
説明員
大蔵省主税局税
制第一課長 塩崎 潤君
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本日の会議に付した案件
○派遣委員の報告
○公聴会開会に関する件
○国の庁舎等の使用調整等に関する特
別措置法案(内閣送付、予備審査)
○国有財産特殊整理資金特別会計法案
(内閣送付、予備審査)
○所得に対する租税に関する二重課税
の回避及び脱税の防止のための日本
国とスウェーデンとの間の条約の実
施に伴う所得税法の特例等に関する
法律案(内閣送付、予備審査)
○特定土地改良工事特別会計法案(内
閣送付、予備審査)
○特定多目的ダム建設工事特別会計法
案(内閣送付、予備審査)
○国際学会等への加入に伴う分担金の
債務負担に関する法律案(内閣送
付、予備審査)
○揮発油税法案(内閣送付、予備審
査)
○地方道路税法の一部を改正する法律
案(内閣送付、予備審査)
○中小企業の資産再評価の特例に関す
る法律案(内閣送付、予備審査)
○租税特別措置法案(内閣送付、予備
審査)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/0
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001・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) それではこれより委員会を開きます。
最初に、派遣委員の報告に関してお諮りいたします。
先般中京、近畿、九州の各地に委員を派遣し、それぞれ租税行政、金融事情、専売事業の実情について調査をお願いいたしたのでありますが、この調査報告に関し、理事会におきまして、特に問題とすべき事項につきましては、関係法案審議の際、関連して御質疑をお願いすることとし、別途文書による報告を会議録に掲載することに申し合せたのでありますが、本件を理事会申し合せの通り決定することに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/1
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002・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 御異議ないと認めます。よってさように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/2
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003・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 次に、公聴会に関してお諮りをいたします。
ただいま本委員会において審議いたしております所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法案について国会法第五十一条の重要な歳入法案と認め公聴会を開くことを理事会において申し合せたのでありますが、右申し合せ通り決することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/3
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004・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 御異議ないと認めます。つきましては公聴会の月は三月十九日といたし、公聴会の問題は右の三法案についてとし、公述人の数及びその選定等につきましては、これを委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/4
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005・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 御異議ないと認めます。なお公述人に関しまして特に御希望がございます方は、あらかじめ委員長または理事までお申し出をお願いいたします。
それから公聴会開会につきましては、本院規則第六十二条により、議長に対し公聴会開会承認要求書を提出しなければならないことになっておりますが、本件につきましては、その内容、手続等を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/5
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006・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 御異議ないと認めます。よってさように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/6
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007・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 本日は、まず国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法案
国有財産特殊整理資金特別会計法案
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案
特定土地改良工事特別会計法案
特定多目的ダム建設工事特別会計法案
国際学会等への加入に伴う分担金の債務負担に関する法律案
揮発油税法案
地方道路税法の一部を改正する法律案
中小企業の資産再評価の特例に関する法律案
以上いずれも予備審査の九法案を便宜一括議題として、政府より提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/7
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008・足立篤郎
○政府委員(足立篤郎君) ただいま議題となりました国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法案外八法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
まず、国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法案につきまして申し上げます。
行政財産のうち、国の事務もしくは事業または企業の用に供している庁舎その他の建物、その附帯施設及びこれらの敷地のうちには、必ずしも適正かつ効率的に使用されていないものがあり、ことに平面的に散在して市街地の発展を阻害しているものが少くない現状であります。従いまして、これらの庁舎等につき使用調整を行なって、その使用方法を一層合理的なものとする必要があり、さらに、庁舎等のうち特定の建築物を耐火構造の高層建築物に立体化し、またはその位置を移転して、これらによって不用となる庁舎等を住宅敷地その他に活用をはかり、もって公務の能率の向上と公衆の利便の増進に資することは目下の急務であると考えられます。このような事情にかんがみ、ここに本法律案を提出いたした次第であります。
以下、本法律案の概略を御説明申し上げます。
まず第一に、大蔵大臣は、毎会計年度末現在において各省各庁の長が作成する庁舎等使用現況及び見込に関する報告書により国有の庁舎等の使用の現況をつねに把握することとし、またこの報告書により国の庁舎等について使用調整を行うことが必要であると認めるときは、庁舎等の使用調整に関する計画を定めて各省各庁の長に通知することといたしております。すなわち、大蔵大臣は、この計画に基いて各省各庁の長に対し、庁舎等の所管換、所属替その他必要な措置を求めることができることといたしているのであります。
第二に、大蔵大臣は、特定の庁舎等にかかる建築物を立体化して耐火構造の高層建築物とし、又は主として住宅敷地を提供するためその位置を移転し、これらに伴って不用となる庁舎等を処分するとともに、このために必要とされる庁舎等を取得する計画を定めることといたしております。なお、この計画を特定庁舎等特殊整備計画と呼んでおりますが、この計画により建築すべき建物等の位置、規模、構造等に関しては建設大臣が別に計画を定め、さきに申し述べました特殊整備計画とあわせて閣議の決定を求めるものといたしております。
第三に、庁舎等を立体化し又は位置を移転する計画の実施によって不用となる庁舎等の処分収入は、当該計画によって必要となる庁舎等を取得するための経費の財源に充てなければならないことといたしております。なお、この資金の経理のために別途国有財産特殊整理資金特別会計法案を提出いたしてございます。
第四に、使用調整及び官庁建物の立体化の計画案を作成するについて民間有識者の意見を十分尊重し、かつ関係官庁間の協議を円滑に行うことが必要であると思われますので、大蔵大臣が定める前述の諸計画に関する重要事項について、大蔵大臣の諮問に応ずるため、各省各庁の職員及び学識経験者から成る庁舎等調整審議会を大蔵省に設置することとし、所要の規定を設けております。
次に、国有財産特殊整理資金特別会計法案につきまして申し上げます。
政府におきましては、国の庁舎及びその敷地等の適正かつ効率的な使用を図るため、国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法案を本国会に提案して御審議を願っているのでありますが、この法律案が実施になりますと、同法の規定により特定の庁舎等の使用の効率化及び配置の適正化をはかるための特定庁舎等特殊整備計画が立てられることになっております。この計画が実施されまする場合に、この計画に従って処分する特定庁舎等の処分による収入金は、これを同じくこの計画によって取得いたします庁舎等の取得に要する経費に充てることにいたしまして、もってこの計画の円滑かつ的確な実施を促進するため、国有財産特殊整理資金を設けますとともに、この資金に関する経理を一般会計と区分して行うことが適当であると認められますので、特別会計を設置することといたしまして、この法律案を提案いたしました次第であります。
次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
第一に、国有財産特殊整理資金は、特定庁舎等特殊整備計画の実施により処分すべき特定庁舎等の処分による収入金及びこの資金を資金運用部へ預託いたしますことに伴う利子収入金をもってこれに充てることとし、同計画の実施により取得すべき特定庁舎等の取得のために必要な経費のうち、建物の建築、模様がえ等の工事代価、土地または建物等の購入代価及びこれらの物件の買収に伴う移転料その他の補償費に充てるためこの資金を使用するものとし、資金の使用にあっては、予算の定めるところにより、一般会計の歳入に繰り入れ、同会計の歳出として経理することとしております。
第二に、この会計は、資金の受け入れをもってその歳入とし、資金の払い出しをもってその歳出として経理し、毎年度末における資金の残額は、決算上の剰余として翌年度の歳入に繰り入れることとするとともに、毎年度の歳出予算の支出残額は、翌年度に繰り越して使用することができることとしております。
第三に、その他この特別会計の設置及び運営等に関して必要な技術的事項を規定いたしております。
次に所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案につきまして申し上げます。
政府は、今回スウェーデンとの間に、所得税及び法人税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約を締結し、その批准について承諾を求めるため、別途条約について御審議を願っているのでありますが、この条約に規定されている事項のうち、特に法律の規定を要すると認められるものについて所要の立法措置を講ずるため、ここに本法律案を提出した次第であります。
以下本法案の大要について申し上げます。
まず第一に、利子所得等に対する所得税法の特例を定めることとしております。すなわち、今回の条約によりますと、わが国及びスウェーデン両国とも、国内に恒久的施設を有しない非居住者に対して支払われる利子所得等につきましては、百分の十五をこえる税率で課税をしてはならないこととなっておりますが、わが国の所得税法では、これら利子所得等に対する税率は百分の二十となっておりますので、条約の適用のある場合には、所得税の税率を百分の十五に軽減することとしているのであります。なお、租税特別措置法等の規定により、これらの利子所得等が減免される場合には、これらの減免規定が優先的に適用されることとしております。
第二に、特許権等の譲渡により生ずる所得に対する所得税法及び法人税法の特例を定めることとしております。今回の条約によりますと、わが国及びスウェーデン両国とも、国内に恒久的施設を有しない非居住者の特許権等の譲渡による所得に対する租税は、収入金額の百分の十五をこえてはならないこととなっておりますが、わが国の所得税法及び法人税法では、この種の所得につきましては一般の所得と同様に、個人については累進税率により、法人については一般の法人税率により課税することとなっております。従って、条約の適用のある場合で、これら所得に対するわが国の税法による税負担が収入金額の百分の十五をこえることとなるときは、その負担を収入金額の百分の十五に軽減することとしているのであります。
最後に、今回の条約の実施に関して必要な手続は、条約の趣旨に従い、大蔵省令でこれを定めることとしているのであります。
次に、特定土地改良工事特別会計法案につきまして御説明申し上げます。
政府は、今国会に、別途土地改良法の一部を改正する法律案を提案して御審議を願っているのでありますが、同法案に規定するところによりまして、国が施行する灌漑排水施設の建設の工事、埋め立てまたは干拓の工事及び灌漑排水施設の建設の工事により建設した施設で国が管理するものの災害復旧の工事並びにこれらの工事の施行上密接な関連のある工事で国が委託に基き施行するものに関する経理につきましては、これを一般会計と区分して行うことが適当でありますので、特定土地改良工事特別会計を新たに設置することといたしまして、この法律案を提案いたしました次第であります。
次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
第一に、この会計におきましては、土地改良工事に要する費用で国庫が負担するものにつき一般会計からする繰入金、土地改良工事に要する費用にかかわる負担金及びその利息、都道府県がその負担金を地方債証券で納付した場合におけるその地方債証券の償還金及び利子、受託工事にかかわる納付金、借入金、埋め立てまたは干拓の工事によって生じた用地の売払代金及び貸付料並びに附属雑収入をもってその歳入とし、土地改良工事に要する費用、受託工事に要する費用、借入金の償還金及び利子、埋め立てまたは干拓の工事によって生じた用地で売り払うものの管理及び処分のために直接要する費用、一般会計への繰入金並びに附属諸費をもってその歳出とすることといたしております。
第二に、この会計におきましては、この会計の設置の趣旨にかんがみまして、その歳入、歳出及び資産、負債の整理並びに予算の配賦等を工事別の区分に従って行うことといたしております。
第三に、この会計においては、土地改良工事に要する費用で国庫が負担するものを除いたもの並びに埋め立てまたは干拓の工事によって生じた用地の管理及び処分のため直接要する費用につきましては、予算をもって国会の議決を経た限度額の範囲内でこの会計の負担において借入金をすることができることといたしております。なお、その限度額のうち借入をしなかった金額がありますときは、翌年度において、その限度内で借入金をすることができることといたしております。また、上現金に不足があるときは、国庫余裕金の繰りかえ使用をすることができることといたしております。
第四に、他会計への繰入金に関する事項であります。すなわち、土地改良工事で一般会計の負担において行なっていたものが、特定の土地改良工事として、この会計において継続して行われることとなった場合におきましては、継続して行うこととなる前の工事にかかわる負担金の額並びに用地の売払代金及び貸付料の一部を、受託工事の場合におきましては、その工事にかかわる納付金の一部を一般会計に繰り入れることといたしております。
以上申し述べましたほか、この会計の予算及び決算の作成及び提出、予備費の使用、剰余金の処理、余裕金の預託等この会計の経理に関しまして必要な事項について規定いたしているのであります。
次に、特定多目的ダム建設工事特別会計法案につきまして御説明申し上げます。
従来、国が直轄で行ういわゆる多目的ダムの建設工事に関する経理につきましては、その事業のうち発電、上水道等の用水確保を目的とする事業分については、受託工事として歳入歳出外で取り扱い、また、治水、農業効果等を目的とする公共事業分については、全額国費をもって支弁し、地方公共団体負担分は、別途国の歳入として収納する等、予算の経理、事業の施行に改善を必要とされる点があったのであります。
政府におきましては、以上の取扱いから生ずる欠陥を是正し、事業の促進をはかることをねらいといたしまして、昭和三十二年度から、多目的ダムの建設その他の管理につきましては、別途提案して御審議をお願いしております特定多目的ダム法案により河川法の特例を設けることといたしますとともに、この建設工事等に関する経理につきましては、これを一般会計と区分して行うことが適当であると考え、特定多目的ダム建設工事特別会計を新たに設置することといたしまして、この法律案を提案いたしました次第であります。
次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
第一に、この会計におきまして処理いたしますのは、特定多目的ダム法に規定する多目的ダムの建設工事及びその工事により建設した施設で多目的ダムに属すべきものの建設工事完成前における災害復旧工事に関する経理でありまして、完成いたしました後の多目的ダムの維持、修繕、災害復旧等の管理に関する経理は、この会計では処理しないことといたしております。なお、北海道の区域で行われる多目的ダムの建設工事等に関する経理についても、この会計の対象から除外しております。
第二に、この会計におきましては、一般会計からの繰入金、都府県の負担金及びその利子、地方公共団体の負担金の納付の特例に関する法律の規定により納付された地方債証券の償還金及び利子、ダム使用権設定予定者の負担金、建設大臣が徴収する受益者負担金、借入金並びに附属雑収入をもってその歳入とし、多目的ダム建設工事に要する費用、事務取扱費、借入金の償還金及び利子、ダムの使用権設定予定者負担金の還付金並びに附属諸費をもってその歳出として経理することといたしております。
第三に、この会計におきましては、この会計の設置の趣旨にかんがみまして、その歳入、歳出及び資産、負債の整理並びに予算の配賦等を工事別等の区分に従って行うことといたしております。
第四に、この会計におきましては、多目的ダムの建設工事に関する費用のうち都府県の負担金に相当するものの財源に充てるため必要があるときは、国会の議決を経た金額を限度として、この会計の負担で工事別等の区分に従って借入金をすることができることといたしておりますとともに、その借入金のうち、その年度内に借入をしなかった金額があるときは、その額を限度として、かつ、歳出予算の繰越額の財源として必要な金額の範囲内で、翌年度において借入をすることができることといたしております。
第五に、その他この会計の設置及び運営等に関して必要な技術的事項を規定いたしております。
なお、この会計の設置に伴う経過措置といたしまして、この法律の施行の際一般会計において建設大臣が直轄で施行しております特定のダムの建設工事に関する経理をこの法律施行の日以後は、この会計で行うことといたしますとともに、これらの工事にかかわる資産及び負債をこの会計に帰属させることといたしております。
次に、国際学会等への加入に伴う分担金の債務負担に関する法律案について申し上げます。
御承知のように、国が債務を負担するには、憲法第八十五条の規定によりまして、国会の議決に基くことを必要とするのでありますが、国の債務負担についての国会の議決の形式といたしましては、法律または歳出予算によるもののほか、財政法第十五条に規定する国庫債務負担行為によるものがあるのであります。しかしながら、この財政法第十五条の規定に基く国庫債務負担行為の形式による場合には、同法第二十六条の規定によりまして、事項ごとにその必要な理由、行為をなす年度及び債務負担の限度額を明らかにしなければならないことになっておりますので、その債務負担の限度額が明らかでないときは、この国庫債務負担行為の形式によることができないのであります。しかしながらある種の国際学会その他これに類する国際団体の規約には、当該団体に加入する場合において、当該団体に加入する年度以降一定の年度間当該団体が定める当該団体の経費をその構成員において分担すべきことを規定しているものがあり、かつ、加入の際その分担金の額が定められていない場合がありますので、このような場合には、債務負担の限度額をきめることができず、従って、財政法第十五条の国庫債務負担行為の形式によっては、これら国際団体に加入することにより、分担金の債務を負担することができないのであります。そこで、政府は、今回、国際学会その他これに類する国際団体に加入する場合において、その規約が前に述べた内容を規定するものであり、かつ、加入の際、その分担すべき金額が定められていないときは、あらかじめ、閣議の決定を経て、その規約に従い、当該団体に加入することにより、当該団体が定めることとなる当該団体の経費の分担金にかかわる債務を負担することができることといたしたいと存じまして、この法律案を提出した次第であります。
次に、揮発油税法案及び道路税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
まず、揮発油税法案について御説明申し上げます。
この法案は、最近における揮発油の製造及び取引の状況並びに道路整備財源確保の必要にかえりみ、揮発油に対する揮発油税の税率を引き上げるとともに、実情に即するよう諸規定の整備を図るため、揮発油税法の全部を改正しようとするものであります。
以下改正の内容につきましてその大要を申し上げます。
まず第一に、税率を一キロリットルにつき現行の一万一千円から四千八百円引き上げて一万五千八百円とすることといたしました。これにより、約百二十八億円の増収となる見込みであります。
第二に、現行揮発油税法では、製造場から引き取りの際課税を受け、そのつど納税する制度となっておりますが、これを他の間接税と同様に、製造場から移出した月の翌月末日に一括納税する制度に改めて手続の簡素化をはかることといたしました。
第三に、この移出課税制度への切りかえに伴いまして、製造場から移出したときの徴収猶予は納期後二カ月以内とし、また未納税移出課税済揮発油の製造場への戻し入れ等の取扱いにつきまして、他の間接税に準じて所要の規定を設けることとしております。
第四に、税率引き上げに伴いまして、改正法の施行日である昭和三十二年四月一日現在に、製造場及び保税地域以外の場所で、合計五キロリットル以上の揮発油を所持する製造者または販売業者に対して、一キロリットルにつき四千八百円の税率で手持品課税を行うこととしております。
第五に、揮発油税が道路整備財源に充当されている現状にかんがみ、新たに工業用の揮発油のうち石油化学工業の原料に用いられる揮発油及びゴムの溶剤等に用いられる揮発油についても、航空機用の揮発油と同様に一定の手続のもとに免税措置を講ずることとし、このため揮発油税法の付則で租税特別措置法の一部を改正することといたしております。
次に、地方道路税法の一部を改正する法律案について御説明いたします。
この法律案は揮発油税法の改正に対応して、揮発油に対する地方道路税の税率を引き上げるとともに、揮発油税法の全文改正に伴う諸規定の整備をはかるため、地方道路税法の一部を改正しようとするものであります。
以下改正の内容につきまして、その大要を申し上げます。
まず第一に、税率を一キロリットルにつき現行の二千円から一千七百円引き上げ三千七百円とすることといたしました。これにより、約四十五億円の増収が見込まれております。
第二に、揮発油税法における移出課税制度の採用等の改正に伴い、所要の改正を行うとともに、手持品課税については、揮発油税にあわせて、一キロリットルにつき一千七百円の税率で地方道路税を徴収することとし、また、石油化学工業用等の工業用揮発油につきましても、揮発油税の免税措置にあわせて、地方道路税を免税することとしております。
最後に、中小企業の資産再評価の特例に関する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
企業の減価償却を適正化しその資本の充実をはかるために、昭和二十五年に資産再評価法が制定されて以来、三回にわたって企業の資産再評価の実施が認められ、一定規模以上の会社については、昭和二十九年に企業資本充実のための資産再評価等の特別措置法が制定されて減価償却資産の再評価が強制されたのでありますが、中小企業につきましては、その収益状況等の関係から今まで資産再評価を十分行うことができなかった実情にかんがみ、今回もう一度再評価を行う機会を与えて、その減価償却を適正化し経理の健全化を図り、もって中小企業の健全な発達に資することを目的として、ここに、この法律案を提出することといたした次第であります。
次に、この法律案の概要を申し上げます。まず、この法律に基いて再評価を行うことができるものの範囲は、企業資本充実のための資産再評価等の特別措置法によって再評価を強制された会社以外の法人及び個人で、第三次再評価において減価償却資産の再評価限度額の八〇%以上の再評価を行わなかったものといたしております。また、今回の再評価の対象となる資産は、基準日から再評価日まで引き続き有していた減価償却資産とし、基準日は、第三次再評価と同じ昭和二十八年一月一日といたしました。
再評価日につきましては、法人の場合には昭和三十二年中に開始する事業年度開始の日現在において、個人の場合には昭和三十二年一月一日現在において再評価を行うことができることといたしました。また再評価の限度額は、第三次再評価の限度額より昭和二十八年一月一日から昭和三十一年十二月三十一日までの償却額を控除した額とすることにいたしております。
再評価税につきましては、本来その税率は再評価差額の六%が原則なのでありますが、さきに再評価を強制いたしました際に一定の要件のもとに再評価税の減免の措置を講じた経緯及び中小企業の負担の軽減等を配慮いたしまして今回は特に二%といたしました。またその納付方法につきましては、二年間に均分納付することとし、延納、繰上げ徴収等の制度を採用しない等、納付方法の簡素化をはかることといたしております。
さらに再評価の申告は、法人の場合には再評価日を含む事業年度分の法人税の確定申告期限と同日までとして、その最終期限は昭和三十三年五月三十一日とし、個人の場合には昭和三十三年一月十六日から同年三月十五日までといたしております。なお、その他再評価に関する経理につきましてはおおむね第三次再評価の例によることといたしております。
以上国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法案外八法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げました。
何とぞ御審議の上すみやかに御賛成たまわらんことをお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/8
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009・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) ただいま説明を聴取いたしました法案の補足説明及び質疑は後日に譲りたいと存じますが、資料の要求のあります方は、この際お述べを願いたいのであります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/9
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010・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 次に、租税特別措置法案及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案
以上二案を議題といたしまして事務当局より内容の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/10
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011・塩崎潤
○説明員(塩崎潤君) 御指名によりまして、租税特別措置法案の全部につきまして若干の解説をいたしたいと存じます。
お手許に配付さしていただいておりますところの租税特別措置法案新旧対照表、これによりまして、主要な箇所につきまして説明を申し上げたいと存じます。
租税特別措置法の改正につきましては、昭和三十年度の税制改正で大綱につきましては、大体の大すじができておるわけでございます。その条項を離れまして、法文についてこれから御説明申し上げるわけでございます。まず、形式と内容の改正につきまして二つに分けて御説明申し上げたいと存じます。
第一は、今回御提案申し上げておりますところの租税特別措置法案は、今までありましたところの租税特別措置法につきまして全文を改正いたしました。御承知の通りに租税特別措置法は、そのとき、そのときの経済情勢あるいは政策目的によりまして種々の租税上の特別措置が盛られておるわけでございます。そのために、条文の配列が非常に混乱いたしております。たとえば旧法と申しますか、現行法を見ていただきますと、五条などは枝番が十四まであるというようなことでございまして、非常に読みにくい。その配列につきましても、なかなか私どもから見ても疑問があるところが多いようでございます。そこで今度は税制の簡易明確化の見地から、全文を改めまして、しかも章、節、款というふうに分類いたしまして、見やすいようにいたしたつもりでございます。現行法におきましては、目次もございませんので、目次もつけまして、さらにまた見出しをやさしくつけましたし、内容におきましては、各条文、各号列記等によりまして、その内容をできるかぎり明らかにするように努めたつもりでございます。
以上形式の改正でございますが、その次は内容について御説明申し上げます。一枚目に註がございますが、一、二とありまして、新旧対照表の見方について若干の註釈が加えてあるのでございます。普通ならば、新旧対照表ならば、若干の字句は加えましても、その字句のところに傍線をほどこすわけでございますが、内容の改正部分だけに傍線を付しまして、字句の、あるいは句読点の改正があったときにつきましては傍線を付しておりません。この点は内容が全く同一だというふうに御理解になっていただければ仕合せでございます。それから先ほど申し上げました簡易平明化の見地から、なるべく条文を短くしたいとかように考えましたので、現在一条に盛られておりますところを数条に分けまして規定したところがございます。これらはその該当する項を新しい条文の下に掲載してございます。そういう見地からごらんになっていただけば仕合せでございます。
まず、第一章の総則でございます。二ページでございます。総則の第一条の変ったところは、物品税が新しく追加されまして、これは十一税目につきまして租税の特別措置を設けるということが第一条の趣旨でございます。物品税は、今回新しく外航船舶等に積みますところの飲料につきまして物品税を免除する。現在までは、現行法におきましては、そういう規定ではございませんが、物品税につきまして、酒税と並びまして外航船舶に積みますところの飲料につきまして物品税を免除する、こういう新しい特例を設けましたので、物品税を追加した次第でございます。
次に、第二条でございますが、第二条は用語の意義でございます。これは各法律慣例といたしまして、ある定義がございますが、租税特別措置法はその性格から大体用語は、所得税法、法人税法、酒税法、これは実体法の用語をそのまま踏襲しておる、そういうことを今回明らかにいたしたわけでございます。
そこでいよいよ本論に入りまして、第二章は所得税法の特例でございます。先ほど申し上げましたように、今までは所得税法の特例あるいは法人税法の特例といったような配列になっておりません。個人、法人というような条文で区別はしておりまするけれども、今までの各種の特別措置を整理合理化する意味で所得税法の特例、法人税法の特例と、税目別に規定を設けました次第でございます。ことに所得税法と法人税法では、ご存じの通り、所得計算が個人と法人では相当違っておりますので、表現も変ってくるところがあるわけでございます。こういうふうにいたしたわけでございます。そのうちの第一節の利子及び配当所得の特例でございます。第三条について御説明申し上げたいわけでございますが、御承知のように、今回の税制改正案の大きな方向の一つは、特別措置の整理が強く出されたわけでございます。千五十一億円というふうに税制調査会でも言われておりましたが、平年度千五十一億円の減収額を生じておるところの特別措置を、最近の経済情勢に応じまして恒久的に負担の公平をはかりながら整理、合理化をはかるということが大きな線であったわけでございます。そのうちの第一番目に出て参りますのが常に利子所得の課税の問題でございます。提案の法律によりますと、本来ならば、御承知のように利子所得は源泉の二〇%を取りまして、利子所得をそのまま普通所得と同様に総合いたしまして累進税率の適用を受けるのが原則でございます。そこで現行法によりますと、三十年七月から貯蓄奨励の見地で三十二年の三月三十一日まで支払いますところの利子につきましては全く課税をしないということになっております。この期限が三月三十一日で切れるわけでございます。その後の措置が三条、四条に表われておるわけでございます。で、趣旨は、本来ならば本則に帰るべきところを、やはり貯蓄奨励というものが大事だと、しかも今まで非課税のものから一挙に累進税率の適用を受けるというのは負担の差がはなはだし過ぎるという見地から、三十二年四月一日から三十四年三月三十一日までの支払い利子につきましてはなお一〇%の源泉税率による、しかも、見出しにも書いてあります通り分離課税で、総合はいたしませんというのが三条の趣旨でございます。二年間支払い利子につきまして分離一〇%の課税を行う。二年後におきましてまた再びその課税方法につきまして検討するということになるわけでございます。そこで今のは利子所得につきましての一つの原則が出たわけでございますが、今回の税制改正案におきまして千九十二億の減税が行われる、その際に減税されました資金が消費に回るというのは現在の経済の情勢から見ておもしろくない、なるべくやはり貯蓄奨励という見地は非常に大事だということで、長期預貯金等につきましてはやはり優遇措置を講じていくべきじゃないかというのが第四条の精神でございます。ただいまの第三条は普通の一般の利子でございますが、第四条は長期預貯金、公社債、合同運用信託の利子、これにつきまして優遇措置を講じて大いに貯蓄を奨励しようとこういう趣旨でございます。長期預貯金と申しますのは、一年以上の定期預金等を言うわけでございますが、それ以外の六カ月もの、あるいは三カ月ものの定期預金につきましては、先ほどの三条の一〇%分離課税が適用になる、こういうことでございます。で、長期預貯金等につきましては、ここに書いております通りに、独特の非課税措置を講じております。これは昭和二十九年に、一般の利子につきまして一〇%の分離課税の時代に、特定の公社債、これは登録公社債でございましたが、公社債、それから一年以上の定期預貯金につきましては五%の分離課税をしたことがございます。まあそのときには、この四条に似たような精神で、いわゆる預入べースと申しますか、一定期間内に預入されましたものにつきまして優遇措置を講ずる、こういう制度がとられたわけでございます。今度の制度はそれに似通いながらしかも若干三条的な支払いべースを入れました混合形態的な非課税措置を講じております。内容について申しますと、まず三十四年三月三十一日までに預入あるいは発行あるいは契約されましたところの一年以上の定期預貯金、公社債、合同運用信託につきましては三十二年四月一日から三十四年三月三十一日までの期間に支払われるところの利子は課税いたさない、いわば三十二年四月一日から三十四年三月三十一日までは長期貯蓄奨励期間と考えまして、その期間に支払われますところの長期預貯金等の利子については非課税にしようというのが第一の原則でございます。第二の原則は、その期限を過ぎましても、三十四年三月三十一日までに今申し上げました預入、発行、契約されました一年以上の定期預貯金、公社債、合同運用信託につきましては三十四年三月三十一日後でありましても、預入、発行、契約の日から三年間内に支払われるところの利子につきましては免税しようという趣旨でございます。従いまして、最長のものは三十七年三月三十一日まで支払い利子について非課税措置が継続される。かようになるわけでございます。長期預貯金等の定義につきましては一項の各号に列記してございます。
次に、先ほどの説明で申し上げました通り、内容の変った点だけ申し上げることにいたしますので、単に整理等行なった条文につきましては御説明を省略させていただきます。従いまして、十ページの第九条配当所得に対しますところの源泉徴収税率の軽減について御説明させていただきますと、配当所得課税につきましてはどうするかという問題は、この第九条の源泉徴収税率のほかに、所得税法にございますところの二五%の配当控除、あるいは付則にございまするけれども、三十年分及び三十一年分の所得につきまして設けられましたところの配当控除の五%割増し控除の特例、これは利子とのバランスの関係から設けられました特例でございますけれども、これらとあわせて考えなければならないところであります。そこで、まず問題になりますのは、第九条の源泉徴収税率でございます。本則は御存じの通り所得税法によりまして源泉徴収税率は利子と同様二〇%でございます。しかし、これも利子と同様に三十年七月一日から三十二年三月三十一日までは利子と同様に一〇%の軽減税率が適用されておったわけでございます。利子と配当とはおのずからその性格が異るわけでございますけれども、一〇%の源泉税率というものが、往々にして低額所得者にとりまして負担が重過ぎる、本来ならば源泉徴収でございますから税務署に還付申請すれば返るものでございますけれども、その還付申請がなおざりになる場合もあるというようなこともございます。さらにまた利子とのバランスを考えますれば、やはりなお一〇%くらいの軽減税率を二年間継続した方がいいんではないかというような趣旨で、配当所得の源泉徴収税率につきましても二年間、三十四年三月三十一日までに支払いをうけるところの配当所得につきましては、本則二〇%の源泉徴収税率は一〇%にいたすと、かように御提案申し上げた次第でございます。
その次は、第二節の不動産所得及び事業所得に入るわけでございますが、第一款にありますところの減価償却の特例、これらは減価償却の特例のうちの十条、十一条、十二条、十三条は、むしろ法人の方で御説明申し上げた方が、その利用者の数からみまして、むしろ便宜じゃないかと思いますので、ここでは省略さしていただきまして、十四条の、満期保険に附した漁船の特別償却、これについて御説明申し上げます。これも現行法の七条の三にございますところと内容は同一でございます。ただ新しく期限を設定いたしまして、この特例措置は、昭和三十二年四月一日から昭和三十三年の十二月三十一日までに支払った満期保険について特例を認める、こういうふうに期限を設定したわけでございます。この満期保険というのは、御承知の通り、ここにもございますが、漁船損害補償法によりまして、総トン数百トン未満の漁船につきましての一種の養老保険といったようなものでございます。本来ならば、損害保険ならば掛け捨てになるわけでございますが、この百トン未満の漁船につきましては、養老保険的なものでございまして、満期になると、その積立保険料が返ってくるということになっております。そこで、この満期保険に加入いたし、まして、積立保険料を払いまして、その積立保険料約一%ぐらいしか漁船のこの満期保険の制度の適用を受けているものがいない。昭和二十八年でありましたか、なかなか普及しないと、そこで農林省とも話合いまして、この制度の存廃について御相談申し上げたわけでございますが、普及状況につきましては、なお二年間程度努力してみると、それからもってこの満期保険制度の存廃について検討する。本来ならば減価償却は、その漁船自体の減価償却をすればいいのでございますが、積立保険をする分だけの割り増し償却を認める制度でございます。そのような関係の特例でございますので、なるべく私どもの線といたしましては、この特別措置につきまして、現実的な期限を付する方針を考えまして、期限を設定した次第でございます。
それからその次の、十五条から二十三条までは、やはりほとんど法人につきまして適用のある規定でございますので、法人税のところで御説明申し上げた方が便宜かと存じます。
その次は、二十四条、二十五条も内容は同様でございまして、開墾地等の農業所得の免税、それから二十五条の土地改良事業施行地の裏作所得——後作所得と申しますが、裏作所得の免税、これは現行法をそのまま改正案に織り込んだ次第でございます。
その次は第二十六条。これは御存じの通りに、社会保険診療報酬の所得計算の特例といたしまして、社会保険診療報酬を受けておりますところのお医者さんの所得計算の特例措置でございます。経費は百分の七十二、所得は二十八というふうに所得を法定しました非常に異例な措置でございます。御承知のように、一点単価の問題と結びつきまして、こういう制度がやかましくいわれ、昭和二十九年でございましたか、二十八年でございましたか、この制度が国会修正で盛られたわけでございます。税制調査会の答申の線に、この社会保険診療報酬の課税の線につきまして、廃止の線が出ておったわけでございますが、今回の改正案におきましては、一点単価の問題等もございますので、見送りにいたしまして、現行法をそのまま改正案に織り込もうといたしておるわけでございます。ただまん中ごろにございまするが、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の規定に基く療養の給付、まさしく社会保険診療報酬と同様の性格のものが新しくできましたので、これは社会保険診療報酬を同じようにみるというふうに追加改正いたしたわけでございます。これに基く医療給付についての所得率は二十八であるということになるわけでございます。それから社会保険診療報酬は、現在御承知の通り所得税の本則では一〇%の源泉税率の適用を受けておりますが、所得率が二十八に法定せられました関係上、改正案の二十七条にありまする通りに、経過的に五%の税率になっております。これも現行法をそのまま引き写しているわけでございます。
それから二十八条は重要外国技術の使用料についての税率の軽減、これも現行法同様でございます。
第三節の給与所得の特例でございます。これは第二十九条は、いわゆる住所を有しない居住者のうちで、特定の給与所得者、これはいわゆる外人課税の特例といっておりますところの特別措置でございますが、これは現行法を大体、表現は別としまして、引き写しておりまして、御承知の通りに、住所を有しない居住者につきましては、三十五年までの各年におきましては、国内、日本におきますところの勤務に対する報酬でも、日本におきまして支払われましたところの給与についてだけ課税するという特例になっております。外国でリザーブされましたところのものにつきましては、一応は課税しない、その後その分が送金されますと、その送金分が支払われたものとみなし、あるいは生活費が支払い給与に比べまして高い場合には、その差額は支払われたものとみなすというような種々の規定がございますけれども、現行法の規定をそのまま踏襲いたしております。この特例は三十五年で大体打ち切られることになっております。
第四節は山林所得及び譲渡所得の特例でございます。
それは山林所得の概算経費控除は、第三十条でございますが、これも現行法をそのまま踏襲いたしております。現行法と申しますのは、御承知の通りに、昭和二十一年三月三日から引き続いて持っておりますところの山林につきましては、財産税ほか二十五倍の再評価が行われ、それを上回る部分が山林所得だと、こういうふうになっているわけです。ところが御承知の通り、山林というのは四十年も伐期がございますので、大体伐るころになりますと、木材の、山林の財産税、評価額というのはなかなかわからないというような関係で、財産税、評価額を収入金額から推定する方式を選択的に認めて、おもな再評価税を所得税で合せてとろうという簡便な選択的な経費控除の制度でございます。これは現行法をそのまま踏襲してございます。
第二は、収用等の場合の譲渡所得の課税の特例でございます。これもおおむね現行法を踏襲いたしますが、二つ変ったところがございます。まず第一は、資産の範囲を拡張いたし、それから第二は収用とみなされる場合は若干拡げまして、税負担の軽減をはかっているわけでございます。御承知の通り、現行所得税法の建前は、資産が譲渡あるいは譲渡されましてその価値が実現いたしますと、譲渡所得といたしまして課税されておりますことは、御案内の通りでございます。ただ収用の場合、強制的に土地収用法あるいは土地計画法によりまして収用されました際に、これは果して譲渡所得課税そのままの方式でいいかどうか、若干酷な面が出てくることが多いわけでございます。しかも古くから先祖伝来持っている土地等につきまして、収用が行われた場合に、譲渡所得の十五万円を控除いたしまして、二分の一にいたしまして、総合するというような譲渡所得課税の制度をそのまま踏襲していいかどうか、あるいはまた再評価税はもちろん適用になりますが、再評価税を普通の培数でいいかどうか、このあたりが問題になるわけでございまして、現行法におきましては譲渡所得課税の特例といたしまして、収用等のあった場合には補償金をもらった額をそのまま再評価額といたしまして、譲渡所得は出ないように特例を設けておるわけでございます。従いまして取得価額と補償金または清算金、これらの間の差額でございます。その差額に対しまして、十五万円の控除をいたしまして六%の課税措置で済む、こういうふうになっておるわけでございます。そこで現行法によりますと、その補償金の額までを再評価とみなすところの資産は、昭和二十五年に作りましたところの資産再評価法にそのまま載っております関係上、資産額範囲が限定されております。個人でありますと土地、土地の上に存する権利、立木、家屋もしくはその土地の上に存する権利、いわゆる減価償却以外の資産で、私どもがみなす再評価が行われるものと言っておりますが、あるいは譲渡等があった場合には、法人なんかと違いまして、そのまま再評価が行われたものとみなす、そして法定再評価と言っておりますが、一定の倍数を掛けまして、その上を譲渡所得とみるということを自動的にやる制度でございます。非常に範囲が限定されております。今回は改正案といたしまして範囲を一つ広げまして、その広げましたのは、収用の対象となりますのは、この再評価法のみなす再評価の、法定再評価の対象になります資産より若干広いようであります。まず地上権、借地権、山林利用権、これらも収用の対象になりますので、これらもみなす再評価の範囲に入れまして、再評価税だけで済まそうという趣旨でございます。
もう一点は、収用にはならないけれども、収用されたものが、たとえば土地が収用されまして、その土地の上にありますところの借地権、あるいは鉱業権の上にありますところの租鉱権、これらに対しましては、同じく資産でございますが、収用されたものがむしろその土地の上に存する権利者に金を渡すというようなことがあるわけでございます。そういう収用の対象にはならないけれども、収用の結果、その土地の上にありますところの、あるいは権利の上にありますところの資産が消滅するような場合も、やはり法定再評価の適用を受けさせまして、譲渡所得ではなくて、再評価税の方でいきたいというのが第三十一条の四でございます。以上類似の制度が三十二条、三十三条等にございます。清算金ではなくて、土地も一緒にもらった場合に、これをどうみるかというようなこまかい規定がございますが、趣旨は今言ったようなところで譲渡所得計算の軽減措置をはかった、こういうように御理解願っていただければ仕合せでございます。
第三款、居住用財産等の買換の場合の譲渡所得の課税の特例、これは三十五条以下でございますが、これも非常に長々しい規定でございますけれども、要は住宅を売って、その一年以内に住宅を買った、本来ならば住宅を売れば再評価が行われ、譲渡所得が発生するわけでございますが、それを差額の出た部分を圧縮いたしまして譲渡所得を課税し、前の取得価格を圧縮して、また今度の資産の取得を圧縮して、引き継がせまして、次の家を売ったときにまた取り足りない部分を取り返そうと、そういう圧縮記帳的な方式でございます。現行法にもある規定でございまするから、省略させていただきます。三十五条、三十六条、三十七条、三十八条、三十九条も現行法と全く同様でございます。
四十六ページの第四款の、その他の特例、これもやはり譲渡所得による特例でございますが、四十条の二項が改正になっております。御存じの通りに昭和二十五年以来贈与あるいは遺贈が——昭和二十五年には相続が入っておりましたが——相続、贈与、遺贈があった際には譲渡が行われたものとみなされまして、そこで一ぺん全部資産の所有者の譲渡所得を清算する。相続いたしましても現実に金銭には換価されませんけれども、一応被相続人から相続人が引き継ぎますと、その機会に譲渡所得で清算しようという制度が取られたわけでございます。昭和二十七年でございましたか、相続の際にはこの譲渡所得の実現という原則は取らずに、そのまま相続人が、被相続人の取得価格を引き継ぐという制度に改めましたけれども、贈与または遺贈があった場合については改正がなく、現行制度によりますと贈与、遺贈の機会に譲渡所得の計算がなされるということになっております。ただこの四十条の特例で、国または地方公共団体に対しまして財産の贈与あるいは遺贈をいたしました際には、今申し上げましたところの譲渡所得の計算はしないということにいたしております。もう一つ、国、地方公共団体だけではなくて、後段にありますところの民法三十四条の規定により設立せられた法人、その他公益を目的とする事業を営む法人に対しますところの財産及び遺贈で、政令で定めるところによりまして大蔵大臣の承認を受けた団体につきましてはまた同様な譲渡所得の計算がなされております。これは往々にしまして各種の団体から、よく承認の申請が大蔵省に出される。非常に数の多いものでございますけれども、この団体というものは同族会社的なものではなくて、被相続人が財産の所有者が、または依然として個人的な色彩をもって支配管理処分するような団体は入らないのだ、こういう趣旨でございます。しかも公益を目的とする法人だけは譲渡所得計算をしないという例外でございます。ところが現行法のままでは一ぺんまあ大蔵大臣が承認いたしましたあと、たとえば理事の中には個人、その財産の所有者の親戚、知人、親族です、親族がまあ支配するほど入ってはならないというような一つの制限がございまするけれども、一ぺん承認を受けて譲渡所得の計算が免かれると、その後条件違反、理事の選任方法を変えるとかいろいろな方法がございます。あるいはその財産を公益法人の目的に供さないようにするというような事態も起りがちでございます。従いましてそういうようなおそれもございますので、私どもといたしまして、この法の趣旨に基きましてなかなか承認ができないような場合があるわけでございます。あるいは条件つきにしてくれというようなことも言われるわけでございます。そんなような関係で今回新しく一応承認を受けた、承認を与え、のちに条件違反になったような場合には、そのときに贈与、遺贈があったものと見なして譲渡所得の計算を受けるというふうな規定を追加させていただきたい、かように考えておるわけでございます。こういうふうに措置する方が承認の行政的な運用も楽ではないか、かように考えております。
四十一条は物納による譲渡所得等の非課税でございますが、物納財産につきましては譲渡所得は非課税としてこれも現行法と同様でございます。
それからその次は第三章の法人税法の特例でございます。
まず第一に、減価償却の特例について御説明申し上げます。これは先ほど個人につきましては省略させていただきました三年重要機械の特別償却、それから今回新しく提案いたしておりますところの探鉱用機械等の特別償却、これはあるいは鉱業用坑道等の特別償却、造林用資産の特別償却とか新しい制度が相当盛り込まれておりますので、若干の説明をいたします。
まず第四十二条でございますが、現在特別償却制度、非常にこの特別措置法をごらんいただきますとたくさんまだほかに出ております。ここにあります一番大きな線は四十二条、四十三条の三年間五割増しの制度、初年度二分の一の制度でございます。その他あとには貸家につきましては三年二〇〇%償却、あるいは五年五割増し償却とかいろんな制度がございますけれども、一番適用の多いのは四十二条、四十三条でございます。どうもあまり複雑なために、この両方の制度を統合したらどうかというような御意見もございましたけれども、一応対象も違いますし、重要度も違いますので、現行制度をそのまま維持することにいたしております。まず三年五割増しの方は、これは四十三条の初年度二分の一の特別償却に比べまして若干重要性の少い機械その他の設備、船舶でございますが、これを三年間普通の法定償却範囲額の五割増しずつ早目に償却して、資本の回収を早目にし、設備の更新、合理化を早くやらせると、こういう趣旨でございます。この改正点の一は、今までは一ぺん機械が指定されますと、いつも大掃除したいという気持でやっておりますけれども、一ぺん入りますとなかなか落ちない。従いまして、その機械が、新規機械あるいは事業合理化機械であるかどうかというものが相当出て参るというふうなことで、一つも新陳代謝が行われない、こういう非難があったわけでございます。そこで一定期間内に取得するものと指定期間内に取得するものに限りまして、たとえば一定のいい機械につきましては三年とか、あるいは五年とかいうふうに指定いたしまして、その間に取得したものについて三年間の五割増し償却を認める、こういうことにしたらどうか、かように考えておるわけでございます。
それから第四十三条も同様な趣旨で指定期間を設けております。これは御承知の通り、企業合理化促進法第六条に規定いたしますところの重要産業に属しますところの指定事業が、使いますところの機械を非常にセレクトいたしておりまして、償却につきましては一定期間内に取得したものについては、初年度二分の一という特別償却を認めようという制度でございます。なお、期間の指定につきましては、たとえば三年間五割増しの制度は、中小企業の使う汎用機械などにつきまして一律の短い期間がいいかどうか、こういうような御意見もございますので、中小企業等の使いますところの機械につきましては特別な配慮をしよう、こういうような考えを持っております。
その次は、第四十四条でございますが、これは新しく特別措置法として規定に入れたわけでございまするけれども、すでに企業合理化促進法にありましたところの規定をここに入れたわけでございます。税法というものは非常にむずかしい、しかも所得税法、法人税法、措置法を読んだだけではなかなかわからない。他法律に相当な税法の例外規定があって、それを全体読まないとなかなかわからないという要望が非常に強いわけであります。できるだけ統一してくれという要望もございまして、私どももあとう限りの努力をしたわけでございますが、今回の改正では、合理化促進法の試験研究用機械の三年間の償却という規定が一つ入っただけでございます。なお、今後ともそういうふうな方向で検討したいと思いますが、現行法と企業合理化促進法にありますところの試験研究用機械の三年償却の規定をそのまま持ってきたわけであります。ラインは引っぱってありますけれども、現行あるものを法律の表題を変えたというふうに御理解になっていただきたいと思います。
それから四十五条の協同事業用機械等の三年間五割増償却、これも協同組合の融通措置といたしまして、現行ある制度をそのまま持ってきたわけでございます。カッコ書きは新税法の規定の整理に合わせまして入れただけでございます。
その次は、第四十六条も、期限を今までは三十年七月一日から昭和三十三年十二月三十一日となっておりましたのを、もう三十年という期限が切れましたので、三十二年四月一日から三十三年十二月三十一日としただけで、実体は全く変っておりません。
四十七条は満期保険に附した漁船の特別償却、これは個人につきまして御説明申し上げましたところでございます。
その次は四十八条、四十九条、五十条というのが今回の税制改正案の中で相当論点になったところでございます。重要物産免税制度を廃止し、そのかわり重要物産免税制度から落ちたところのものにつきましては、特別償却でその事業についての資本の回収、あるいは設備の更新をやろうというふうな制度があるわけでございます。それからもう一つここへ関連いたしますのは、これは三つの新規の特別措置と、こういうふうに私どもは考えておるわけでございますが、いわゆる減耗控除引当金、それから、これが四十八条的なもの、四十八条と申しますか、四十八条に関連ございますものでございますが、減耗控除引当金、追加投資引当金、造林準備金、こういうような制度を新しく新設しろという要求が、鉱業界と紙。パルプ業界から提案されているわけでございます。御承知の通りに、減耗控除というのは、世界各国でも、アメリカことにフランスにございますが、減耗控除制度といたしまして、探鉱奨励と申しますか、金属鉱業あるいは石炭鉱業、地下資源産業についての一つの償却制度にかわるような制度があるわけでございます。こういった制度を日本の税法にも入れてもらいたいというのが鉱業界からの要望であったわけでございます。減耗控除というのは、鉱石の売上金額の一定割合を留保いたしまして、利益のうちから留保いたしまして、それを一定期間内に探鉱費に充てる。探鉱費に充てない場合には清算する、こういう制度でございます。これは業界の要望でございますが、ただこれは減耗控除のみならず、追加投資引当金、造林準備金、こういう将来行うべきところの投資に対しますところの引当金、造林準備金みたいに現在取得した資産について課税を延期するというような制度、これはまあ税法の大きな例外でございます。税法上で特例を認めておりますのは、特別償却の方でございまして、すでに投資したものにつきまして資本の回収を早め、設備の更新を促進する、こういうことは考えられますけれども、将来やるかやらないかはっきりいたさない探鉱費について見まして、今利益から引き当てるということは、税法上大きな抜け穴になるのじゃないかということで、減耗控除というのは長年の懸案でございましたけれども、私どもとしては採用はできない。考えられますところは、探鉱費といたしまして支出いたしましたところの資本支出について、早目に償却さし、しかも早目に償却させた留保金をもちまして新しい資産を買わす、あるいはまた探鉱に投ずるというのが税法上の筋ではないか、こういうわけで、減耗控除のかわりに、探鉱用機械設備等の特別償却を設けたわけでございます。本来ならば、鉱山に応じますところの減価償却が、現行生産高比例法、投資額に対しまして埋蔵量分の採掘量というような形で償却いたしておりますが、必ずしもそれで実態に合うかどうか、合った償却になっているかどうか。ことに探鉱というものは、金属鉱業、石炭鉱業というのは絶えずやっていかなければならぬ。地下資源というものは無限にあるものじゃない。しかし、地下探鉱費というのは将来だんだん高くなる。それをあわせて考えますと、相当早目に償却さしても不合理じゃないということがいえるわけでございます。そこで行いましたところの制度は、四十八条の第一項にございまするところは、現行法におきましても、そういう特別償却の制度はございまして、探鉱用の特別機械を取得いたしますと、初年度二分の一の償却を認めております。今度は今後五年間取得いたしますところの探鉱用の機械を設備につきましては、一割を残しまして、一割というのは残がい価格と申しておりますが、残がい価格を残しまして、初年度にもう償却してしまおうというきわめて大幅な償却でございます。
その次は、新鉱床のために絶えず地下に入りまして穴を掘って参ります。そのために支出した金額は、その坑道というものは資産でございます。本来ならば会計上の資産に計上いたしまして、損金としてでなく、償却しなければならないものでございます。これは大体備忘価格と申しまして、一円を残しまして、全額償却を認めておる、現行法におきましては二分の一の償却でございます。そこまで上げまして探鉱を奨励する、こういう考え方でございます。なお探鉱はしょっちゅう金属鉱業あるいは石炭にも行われておりますが、主として金属鉱業の方がその鉱物の性質上探鉱を継続しなければならぬ、鉱業を継続させるためには、常に探鉱を継続させなければならないのですが、いわゆる失敗分というのは経費となっております。探鉱しまして鉱脈に当らないというのは経費でございます。鉱脈に当ったというのは、そこまで掘りましたところの坑道というものは資産でございます。それを備忘価格にまで、損金の償却額にまで見るという考え方でございます。
第三点は、これは金属鉱業と硫黄鉱業といっておりますが、硫黄鉱業は金属鉱業に似たような、やはり地下に入りまして探鉱をするような性質の鉱業でございます。金属鉱業と硫黄鉱業だけにつきましては非常に探鉱を奨励させなければいかぬという要請が強いようでございます。石炭はそれほど探鉱しなくても、鉱脈のあるところは大体見当がついておりますが、金属鉱業、硫黄鉱業は、どうも私どもしろうとでございまするけれども、非常に探鉱を継続させなければならぬ。現在の探鉱費、あるいは現在の探鉱費に対しまするところの償却ばかりでは不十分であるという要請が強いようでございまするので、金属鉱業につきましては三項にあります通りに基準年度の探鉱費というもの、探鉱費と探鉱するための特別機械について支出いたしました金額の合計額、基準年度の探鉱費額といっておりますが、基準年度の探鉱費額をこえまして支出しました探鉱費があったときには、その超過額だけ今度は既存の探鉱費、それから鉱業権を償却さそう、既存のものにつきましては二分の一の償却でありましたから、残りにつきましては、生産高比例法でゆっくり償却しておるわけでございます。既存の鉱業権を早目に償却さしてやろう、しかもその考え方といたしましては、過去三年間の探鉱費を上回って探鉱をやった場合に、ボーナスといたしまして、生産高比例法で上回りますところの既存の鉱業権についての償却範囲額を追加しようじゃないか、こういうのが三項の趣旨でございます。これは金属鉱業と硫黄鉱業だけの探鉱奨励策の一つの方法でございます。きわめて政策的な措置でございます。減耗控除自体非常に政策的な措置でございまして、アメリカにおきましても、この制度自体がおかしいというようなことが言われております。減耗控除制度は採用いたしませんが、償却のときにおきまして、探鉱を奨励さすというのが、現行税法の建前から見まして合理的ではないか。アメリカ式の償却とは無関係に収入または所得金額の一定割合を所得から引くということは、これはまあ理由がない制度でございます。いわゆる減耗控除論は採用しなかったわけでございます。
もう一つは四十九条の、これは石炭鉱業だけの、石炭鉱業だけ主として適用になるわけでございます。金属鉱業にもありますけれども、御承知の通りその採掘の方法が相当違っておりますので、主としては石炭鉱業になっていると思っていただいてもけっこうです。金属鉱業にも適用になる場合がございます。これは追加投資引当金といわれまして、御承知の通りに、石炭山というのは、私もしろうとでございますけれども、だんだん深部に、処女投資と申しますか、着炭いたしまして、だんだん鉱脈の中まで掘りまして、内部に進まなければならぬ。そういたしますと、坑道の深部に進みますと、だんだん条件が悪くなりまして、やれ排気が要る、排水が要る、しかも運搬のために炭車が非常にふえる。しかも一方、深部移行に伴いまして、何も生産力が上っていくのじゃなくて、生産力をむしろ維持するのが一ぱいであって、こういうもののための資本支出というものは、むしろ資本支出としては資産に計上すべきではなくて、普通工場の修繕費に似たものではなかろうかという思想がなされておるわけであります。こういうものは、経常的な追加投資といたしまして、損金に算入すべきではないかという意見が出ております。
それともう一つ投資金額は大きいのでございますが、だんだん深部に移行いたしますと、排気が悪くなるので、今度は上から縦坑を一本入れます。そういたしますと非常に通気が楽になる、排水も楽になる、あるいはまたそこを運搬坑道として使えるということで非常に能率がよくなる。こういうものも資産へ計上すべきではなくて、一つの生産条件悪化を克服するための方法じゃないか。しかも金額が多い、それも随時必要というのではなくて、ときどき要るわけでございますが、そういうものは臨時的な追加投資といたしまして、これは引当金を認めろと、こういう要求があったわけであります。ここで採用いたしましたのは、いわゆる利益をあらかじめ留保して、将来の投資に備えるというような追加投資引当金という思想が同じような理由から採用することができないということで、坑内条件の悪化によりまして、悪化に伴いまして、それを克服するために、生産を維持するために必要な小型機械あるいは坑内坑道というようなものにつきまして特例を認めよう、そのものにつきましては、五年間程度損金算入にいたそう、こういうのがその四でございます。この五年間と申しますのは、こういう所得計算の特例といたしまして、むしろ恒久措置でもいいのじゃないかという御意見が出るかもしれません。これはやはり鉱業全体の耐用年数あるいは償却制度にからむ問題でございます。現在の償却制度によりますと、一万円以上のものは全部資産に計上しなければならぬというようなこともないので、一つの修繕費的な理屈もございますけれども、やはり現行耐用年数あるいは減価償却論から見ますというと、やはり異例な措置じゃないかということでそういう期限をしております。
それからもう一つ、二項にございますが、縦坑でも、非常に縦坑は一メートル二十万円ぐらいの経費がかかるそうであります。そうなると三百メートル、四百メートルというところで、そうなりますと三百メートルで六千万円ぐらいでございますが、そういうものは、運搬坑道に使われるようなものは損金に入らないのですが、通気坑道あるいは排水坑道につきましては、現在生産高比例法によりまして、そこから掘られる炭によって、全体の採掘量による生産高比例法によるものでなくて、そこから掘り出されるところの石炭によって償却されておりますが、これは生産高比例によるもののほかに、これに少し生産定額法的償却の考え方を加味して、割増償却を認めて、償却を合理化しようじゃないかというのが第二項の趣旨でございます。
その次は五十条でございますが、これはいわゆる造林準備金といたしまして、しばしば使用されておりましたものでございます。御承知の通りに人工天然造林に切りかえるというなかなか大事業でございますが、造林というものは非常に利回りの低い投資で、四十年間待っていなければならぬ、非常に利回りが低いから、業界の要望といたしましては、十年間は課税を延期してもらって、十一年目から課税してくれ、こんなような思想が出たわけでございます。いわゆるこれを造林準備金といっておりますが、私どもの税の理屈から見ますと、投資した資産をそのまま課税して繰り延べするというのは理屈がないというふうに考えましたので、私どもとしても、やはりそのうちで特別償却的なものがありはせんか、よく分析いたしますと、ここに書いてございます「地ごしらえ及び治山の工事」、それから造林事業歩道、これらにつきましては、やはり減価する部面があります、価値の減ずる面がございます。しかも「地ごしらえ」等につきましては、普通間伐いたしました際には、経費に似たような要素がございます。治山の工事にいたしましても、土砂くずれがございます。これを完全に地価の中に入れて回収を認め、あるいは造林事業歩道をみだりに木材価格の中に込めまして、伐採のときに回収せしめるというだけでは足りない面があるわけでございます。従いまして、これにつきましては償却的な考えを入れまして、一定期間内に定額で償却さそう、こういうふうに考えておるのが造林費の特別償却費でございます。
以下、五十一条、五十二条は現行通りでございますので省略させていただきます。
その次は、五十三条でございます。価格変動準備金への繰入金額の損金算入でございます。これはもう特別措置の整理の一環といたしまして、免税制度ほど負担の公平は害しないけれども、現行各種の準備金は非常に数が多いし、しかもその準備金のうちには、往々にして過去の経験から見まして、利益の留保になっている部面が相当ありはせぬか、従いまして、これはある程度整理いたしまして、最近の実態と申しますか、税の面から見た公平の観念に合致せしめる必要があるのじゃなかろうかというわけで、各種の準備金につきまして検討を行なったわけでございますが、その際に一番問題になりましたのは、この価格変動準備金でございます。御承知の通りに各種準備金の性格は、いろいろ会計学者者の説がるわけでございますが、最も利益留保的な代表はこの価格変動準備金でございます。いうならば偶発損失準備金と申しますか、将来値下りする際に備える、そのために利益から留保するというような制度でございますが、これは税制調査会におきましても非常な討論の結果、大体将来は法人税の引き下げと同時にこれは路上の方向に向うべきである。しかし企業の脆弱な現状におきましては、なお存続する必要あり、しかしやはり相当な欠陥も見られますので、それを制限しようじゃないかということで、まず二つばかり改正になっております。
一つは、現行制度を見ますと、非常にこれは本来業界の要望、あるいは経済界の要望、会計学者の説によりますれば、本来利益のあるときに積み立てて、損が出たときにくずす、そういたしますと、利益が平準化いたしまして、国庫収支も安定するんじゃないか、こういうふうな要求があったわけであります。こういうような要望に基いてでき上ったと見てもよいわけであります。ところが実際の運用を見てみますと、利益のあるときは積み立てるが、利益のないようなときにもなお積み立てまして、そして欠損を出す。従ってその税金の繰り越しもしておるというような状態もあったわけでございます。それは非常な欠陥でございましたので、今回はこの一項のカッコ書きにございますが、積み立てた結果赤字が生ずるような場合には、これは積み立てを認めない、利益のある限度で認めるというのが一つの改正点でございます。第二番目は、率を二割程度削減いたしまして、後入先出法による評価方法によるものについては時価べース、その他の評価方法に従いますところのたなおろし資産につきましては、時価には簿価の一割相当額の繰り入れであったのを、八%というふうにいたしまして、それから、たなおろし資産以外の保有有価証券につきましては、五%でありましたのを四%と、二割ぐらい制限いたしましたのがこの規定でございます。ただ経過的には急激に負担が増加しないように、これは大体毎期洗いが之の制度でありますので、前期の分を翌期の益金に入れて清算される制度になっておりますので、今まで積み立てて新限度額をこえる分は、たなおろし資産の増加に応じて自然吸収されるように、付則に必要な経過措置を講じております。
第五十四条は、輸出損失準備金への繰入金額の損金算入、いわゆる輸出損失準備金の一つでございます。これは現行法通りでございます。これはしかし、昭和三十三年七月三十一日までに終る事業年度で大体終る予定でございます。現在のところはあまり利用者もございませんし、利用者がありましても、取りくずしの実績がきわめて少いので、廃止した方がよかろうと私ども考えております。
その次は、第三節の、輸出所得の課税の特例でございます。第五十五条、輸出所得の特別控除、これは御承知の通り、一番輸出奨励といたしましては、相当効果をおさめておる制度でございます。御存じの通り、輸出取引につきましては、収入金額の百分の三の所得控除を原則といたします。ただ商社のように、他から買って他へ売る販売業については、百分の三の利益はあまり大き過ぎますので百分の一とし、プラントにつきましては百分の五と、特別の措置を講じてありますが、その百分の五、百分の三、百分の一というものをおのおの所得から引きます。引くことができる。ただ輸出所得控除の金額の八割と、いずれか少い方にという制限はついておりますが、こういう制度でございます。これは本来、ことしの十二月三十一日で切れる制度でございます。切れる制度でございますが、輸出政策というものはなお重要だということで、二年間延長いたすことにしております。ただもう一つ改正点は、プラントの範囲を拡張いたしまして、特別高圧碍子、これは非常に大きなもので、今までから改正の要望があったわけでございます。特別高圧碍子、それから汽車等の輪軸、これあたりも非常に契約金額が一千万円以上はもちろんこしております。しかし相当大規模に輸出される。それからしかもその後、プラントの特徴といたしまして、また注文のくるようなものがございます。この二つを拡張いたしました。これが改正点でございます。
その次は、五十八条に飛びまして、協同組合関係の課税の特例でございます。協同組合の課税の特例は種々雑多な規定がございます。まず第一は、五十八条でございますが、非出資組合の非課でございます。非出資の農業協同組合等につきましては、これはもう国会で入りました規定でございますが、現在のところ非課税になっております。本来ならば経済事業を行うことはなかったわけでございます。最近、戦後でございますか、経済事業を行うようになりまして、預金業務と共済業務だけは行いませんのでございますが、ほかのものは経済事業が行える。経済事業が行えるのに非課税というのは趣旨がおかしいというようなことで、一応こういう異例の措置は期限をきめるというわけで、昭和三十五年三月事業年度までは課税しない、その後は課税するということにいたしております。
その次が五十九条、六一条、六十一条関係全体に関連する協同組合の留保所得関係の非課税の特例でございます。現行制度では農業協同組合関係、中小企業協同組合関係では再建整備や、あるいは再建整備促進と申しますか、などを行なっておりますところの協同組合につきましては、期首の積立金が出資の四分の一以下である場合には、そういう協同組合の留保していました所得につきましては課税しないという特例がございます。それを今回は改正点を二つばかり加えまして、まず第一に、この積立金の四分の一の計算方式を改正するということにいたしました。御承知のこの積立金の四分の一という思想は、大体積立金の四分の一ぐらいまで一つ早目に留保して協同組合の基礎を確実にしろ、こういう御要請であろうと私ども考えております。そういたしますと、当期利益がありまして、留保いたしました結果、積立金が出資の四分の一をこえます際には、そのこえる分については課税したらいいじゃないか、期首現在の積立金の計算をするというのは合理的じゃないのじゃないかというので、そこを改正したのが一点でございます。
第二点は留保しました際には非課税でございますが、これは配当あるいは役員の賞与といたしまして社外流出いたしますと、これは現行法では課税の建前になっておりますが、ところが当期だけの規定になっております。そうしますと当期に留保します。それからあと、翌年あるいは二年目に社外配当として出し、賞与として出すという一つの逃げ道があるわけであります。そこで三年間内に社外流出しますならば、この留保所得の特典はやめようというのが協同組合課税関係の改正点でございます。これは五十九条、六十条、それから消費生活協同組合の六十一条まで適用のある規定でございます。
ただ六十一条の消費生活協同組合の留保所得の非課税は、現行法では期限がついておりません。これも協同組合関係課税の特例と並びまして、あるいは農協あるいは中小企業の再建整備関係だけの特例でありましたのが、二十九年でございましたか、国会の修正でございましたか、消費生活協同組合が入ったわけでございます。これは期限内の留保所得は非課税である。ほかの協同組合関係は再建整備が終るまでの期限が書いてございます。消費生協だけが期限がついていない。これは特例措置としてはおかしいじゃないか。消費生協につきましては種々の課税の理論がございますが、消費者の課税の後の、税引き後の所得でお互いに取引をしておるものだから課税すべきでないというような思想もあるようでございますけれども、一方その中には事業量分配金といたしまして、分配されるものの中にも資産運用益的な部分があるということはまた一つ言われるわけで、これはやっぱり資産運用益部分については課税すべき点は当然出てくると私どもは考えております。従いまして当然非課税という思想は出てこないという考えで、その制度の趣旨はむしろ未発達な消費生協を税制の面から優遇する政策的措置だというふうに私どもは考えております。そういたしますと、無期限にやるべきじゃなくて、先ほど申し上げました中小企業協同組合課税関係の特例措置と合せまして、中小企業の競争関係から見まして、やはり一定の期限を付して、中小企業の協同組合の再建整備計画の終る三十五年くらいまでの特例措置にしたらどうかというのが、消費生協関係の改正の趣旨でございます。
その次は六十二条でございますが、これは交際費の課税の特例でございます。御承知の通り今年の三月三十一日で交際費課税の特例は切れるわけでございます。この特別措置法がなければ、交際費はこれから自由に使えるわけで税金の関係は起らない。全部経費になるわけでございますので、これをどういうふうにするかということは、種々の考え方があるわけでございますが、まだやはり資本充実の必要はあるのじゃないか。しかもまた所得税がうんと減税されればこういう交際費関係ではなくて、相当所得の、給与、あるいは給与の形で支払う面が相当ありはしないか、従いまして、日本というものはどうも交際費の使い方が激し過ぎはしないかという空気が強いようでございます。そこでなお二年間存続さしていこうというのが一つの改正点でございます。三十四年三月三十一日までに開始する事業年度分までは適用するというのが第一点。それからもう一つ、今申し上げましたような情勢から見ますれば、交際費の繰り入れ率というのは、損金として見るという率というものは、もう少し制限したらどうかというのが第二点の改正点でございますが、大ざっぱに申し上げまして、大体二割程度強化と申しますか、損金に見る率をからくいたしたいというのが第二点の改正点でございます。ここに表われておりますのは、法律の昭和二十八年度の事業年度が大体基準年度となりまして、それの七割、基準年度を昭和二十八年の非常にインフレ的な時代、交際費が多かったような時代でございますが、それの七割あるいは当該期間におきますところの取引金額のたとえば製造ならば千分の八となっておりますが、そのいずれか多い方となっております。これを基準年度につきましては七割を六割に下げて、取引金額ベースにつきましては、これを三割程度下げる。ただ業種の実情に応じまして政令で定めることになっておりますが、政令で業界の最近の実情を見ながら、実際に合った率をきめまして、全体としましては取引べースの方は三割くらい圧縮したい、かように考えております。第三の改正点は、今までに新設法人は大体取引金額で交際費の容認範囲がきまっておるわけでございます。昭和二十八年度には、新設法人は昭和二十八年の基準年度のなかった新設法人でございますが、ところが新設法人のうちでも、まあ商事会社みたいになりますと、すぐ取引金額が発生いたしますので、損金に算入される交際費というものが生まれてくるわけでございますが、御案内の通り非常に長い、長期の投資を要しますところの装置産業と申しますか、そういう大規模な固定資産を持ちますところの産業を、建設に長くかかるものは、これはなかなか取引金額が生じません。これは現行法ではどうにもしようがなくて、全額まあ今までのところでは損金に算入されずに、課税される格好になっておるわけでございます。これは少し不合理じゃないかというわけで、新設法人につきましては、新設法人のうちでも取引金額が直ちに生じないものにつきましては、取引金額かあるいは資本金額を一つのベースといたしまして妥当な交際費を、損金に算入される交際費の範囲をきめたい、かように考えましたのが第三点の改正点でございます。第四は対象の限定と申しますか、範囲をむしろ逆に狭めまして、中小法人の交際費というものは大体社用的な交際費というのが割合少い、むしろそういう中小法人同族会社的なものの交際費というのは、むしろ重役の賞与に該当するべき部分も相当多いのです。それは具体的にまた税の認定でいくべきじゃないか。従いましてこの交際費の基準でいくべきじゃないかということは、資本金が現行法では五百万円以上の会社それから固定資産が二千万円以上の資本のないところの団体に適用しておりますけれども、今回は資本金を千万円に上げまして、千万円以上の会社についてだけ適用することにいたしております。これは中小法人の交際費と大法人の交際費とは相当開きやせんか、創設の際の趣旨が五百万円というのが、私ども内輪話になりまするけれども、国税庁の所管の法人でございましたので、現行では千万円が国税庁所管の法人であったわけで、これは歩調が合うのじゃないか。かように考えております。
以下同様のところを飛ばしまして、しかも内容の大したことのないところは飛ばさしていただきますが、第七十七条でございます。農地の交換分合の場合の登記の登録税の軽減でございます。現在は土地改良法等に基きますところの交換分合によりますところの登録税は現在非課税でございます。この特別措置法の第九条にございまするので、任意でやりますまあ法令に基かない交換で、農業委員会のあっ旋するようなものでございますが、これはほとんど適用の実例がないようでございます。一定の条件を付したもので、一定の条件がございまして、土地価格の三割以上上らないようなもの、また自作農に限る、あるいは農業委員会のあっ旋等によるものに限るという条件がついておりますので、ほとんど適用例もございません。大部分は土地改良法によりまして大規模な改良が行われておりますものについては登録税を免除されております。そちらの方へ行っております。従いまして、こういう任意的な、行政官庁的なあっ旋によるものにつきましては税金を免税するというのは少し行き過ぎではないか。せいぜい本来ならば取得登記をすべきでありましょうが、まあ行政官庁のあっ旋によるようなものについては、保存登記程度の率でとったらどうかということで、本来百分の三……百分の五の取得の登記を千分の六、保存登記並にいたしましたのが七十七条でございます。例といたしましてはほとんど実例は少いわけでございます。
あとにありますところの八十一条にも同様な行政官庁の指導あっ旋によりますところの登記、登録税の軽減と同じような線で歩調を合せたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/11
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012・野溝勝
○野溝勝君 百分の三というのはどこにあります。それが千分の六ですね、前の今お話しの百分の三というのはどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/12
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013・塩崎潤
○説明員(塩崎潤君) 現在九条は非課税でございますが、取得の登記になりますと百分の五というのが原則でございます。登録税法によりますと百分の五でございますが、それを保存登記並の千分の六にしようというのが七十七条の改正の趣旨でございます。これは八十一条と大体歩調を合せまして作った規定でございます。
それからその次に酒税法に移りまして八十七条でございますが、酒税、物品税も同様な規定がありますが、今回新しく外航船舶に積み込むところの酒、ビール、これらにつきましては免税にしろ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/13
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014・野溝勝
○野溝勝君 八十四条を説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/14
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015・塩崎潤
○説明員(塩崎潤君) これは現行法をそのまま採用したわけでございますが、日本航空、日本海外移住振興、及び株式会社科学研究所、これらは政府出資があるわけでございます。しかし現行登録税によりますと、放っておきますと、政府出資分についても登録税がかかる建前になっておりますが、現行法では設立の場合も課税する、こういうことになっておりますが、政府出資分だけは免税いたしております。今度は設立は関係ございません、でき上っておりますところの会社でございます。今度は増資だけが問題になる。増資いたしますと、政府出資分に割当が参りますから、民間出資分については、これは登録税を課税いたします、これは千分の七でございます。政府出資分について課税するというのは、趣旨から見ましても、私どもの税金から出ておりますところの出資に対して登録税を取るというと、さらにまた税金にはね返るということになりますので、これは登録税をまけようというのが改正の趣旨でございます。今回の改正の八十四条もそういう趣旨でございます。
そこで時間の関係上急ぎまして、八十七条でございますが、今申し上げましたように外航船舶に積み込みますところの酒、ビール、それからあとの物品税の特例の八十八条、これも同様でございますが、現在では外国籍船舶に積み込みますところの酒、ビールあるいは物品につきましては輸出とみなされます。輸出でございますから免税でございます。本邦の、わが国の法律の及ぶところではないということで免税となっております。ところが、わが国国籍の外航船舶になりますと、これは領土の延長と考えられますので、わが国内法の適用がございます。従いまして今までは免税いたしておりません。しかし、どうも実情を考えますと、パン・アメリカンで飲むビールは課税されないで、日本航空に積み込まれる分は課税されることになりますと、どうも日本航空ではビールは買えないということになる。日本航空がアメリカで買って参ります場合にはアメリカ・ビールは非課税で、日本で買うと課税だというわけで、私どももよく文句を言われるわけでございます。で、税理論も種々ございますけれども、輸出に準じまして、わが国の国籍の外航船舶、航空機に積み込みますところの酒、ビールについては課税しない。物品税のうちでも特定の飲料につきましては課税しないというのが八十七条、八十八条の趣旨でございます。
それから航空機の乗客の通行税の軽減をやります九十二条がございます。今年の三月三十一日で、航空機の通行税百分の二十が百分の十になっておりました。これが今年の三月三十一日で切れるわけでございますが、なお航空機会社の現状を見ますと、まだ育成の過程にあるというわけで、百分の十の軽減税率は一年間延長しようというのが九十二条の趣旨でございます。
付則関係は詳細説明しますと長くなりますので、ただ廃止いたしましたところの項目で主要な点について申し上げます。
まず、九十七ページの第五条の四でございますが、これは概算経費控除は今回の税制改正案の趣旨から見まして廃止いたしました。三十一年分限りで廃止するということになるわけでございます。御承知のように概算経費控除というのは社会保険料、それから医療費、雑損控除の三つにかえまして、所得の五%、最高一万五千円までを引くという制度でございますが、これはアメリカにならいました制度としてはどうも理屈が少し乏しい、実際の支出金額がないのに控除するというのは税制上理屈が乏しいのではないかというのが一つの理由であります。それから社会保険に加入された中小企業に恩典があったから残せというような御意見もございましたけれども、一方、中小企業者の方の恩典を受けますところの生命保険料を見ますと、これは勤労者よりも生命保険加入が中小企業者の方に多いという関係で、生命保険料控除と社会保険料控除を両方合わせますと、中小企業者の方が一人当りの利用度が高いということが言われ、しかも生命保険料は、この概算経費控除から離れております。ドイツの特別支出控除などを見ますと、理想的な控除もございますが、非常に項目が多くて社会保険料控除、生命保険料控除も入っておりますが、ところが日本では生命保険控除だけが概算経費控除の対象外になっております。趣旨といたしましても了解いたしがたい。これらの趣旨から廃止する。中小企業が最近、これは別途の事業税あるいは中小企業の所得税の軽減、それから中小企業に対しますところの百万円までの法人税の軽減、それから特別償却、それらについて十分措置できるのじゃないか。これらを考えて、なるべく税法上の理屈を一つ通していただきたいというのが私どもの趣旨でございます。
それからその次は、五条の十一でございますが、これは期限がことしの一月三十一日で切れておりますが、いわゆる増資配当免税、これを廃止いたしております。御承知の通り昭和二十八年十二月一日から昭和三十二年一月三十一日までの間に増資したものにつきましては、資本の一〇%、再評価積立金をふやしました分につきましては五%、配当については法人税を課さないという増資奨励の見地であります。
以上が大体廃止した個所で重要な条文でございます。
そこでその次はスウェーデンとの二重課税の防止に関します条約の実施のために必要な法律案でございます。これは非常に簡単でございますので、簡単に御説明申し上げます。
別途外務委員会の方に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約が出ておりますが、この条約の中に二点ほど法律に規定しなければならぬ点がございますので、その二点を規定いたしましたのがこの法律でございます。
第一は、スウェーデンと日本国との間の条約では、使用料、配当利子につきましては、相互に課しますところの税金は百分の十五をこえてはならないというのが相互条約でございます。普通相互に免税するという条約ならば、そのまま法律は要らないわけでございますが、百分の十五をこえてはならない、百分の十五以下ならば幾らでもいいということになりますと、相互に税率を幾ら幾らときめなければならぬわけでございます。これは日米の慣習を見ましても、百分の十五にとどめるということになっておりますので、これを百分の十五にとどめましたのが第二条の第一項の改正でございます。
それから第二条の第二項が第一点の改正理由でございまして、工業所有権それから映画フィルム、これらを日本におきまして住んでいないスウェーデンの非居住者——スウェーデンにおりますところの日本の税法で申します非居住者、それから日本にあって主たる事務所を有しない法人が日本におきまして工業所有権、映画フィルム等を売りますと、この所得に対しましては累進税率がかかってくるわけでありますが、普通の使用料につきましては、収入金額の百分の十五にとどめるというような趣旨から見まして、その経費を引きましたネットの所得に対しまして課しましたところの所得税あるいは法人税がグロスの収入に対しまして、百分の十五をこえるようなときが出て参る、そのこえるようなときには、普通の経常的な使用量が百分の十五でございますから、百分の十五と同様に軽減するというのが第二点の改正でございます。これも百分の十五をこえてはならないとありますので、一番高めの百分の十五にとどめるというのが、日米のときの例であったようでございます。この規定は日米にございませんが、大体留保条項につきましては、最高のところにいくのが慣習であるようであります。これがこの規定の第二条の改正点でございます。
以上だいぶ長くなりましたが、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案の説明でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/15
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016・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) それでは本日はこれにて散会いたします。
午後四時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X00919570305/16
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