1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年四月十二日(金曜日)
午後一時三十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 廣瀬 久忠君
理事
木内 四郎君
西川甚五郎君
大矢 正君
天坊 裕彦君
委員
稲浦 鹿藏君
木暮武太夫君
塩見 俊二君
高橋進太郎君
土田國太郎君
苫米地英俊君
宮澤 喜一君
天田 勝正君
栗山 良夫君
杉山 昌作君
政府委員
北海道開発政務
次官 中山 榮一君
北海道開発庁次
長 田上 辰雄君
経済企画庁開発
部長 植田 俊雄君
大蔵省主計局法
規課長 中尾 博之君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
説明員
北海道開発庁企
画室副主幹 桑原 幸信君
大蔵省管財局国
有財産第一課長 天野 四郎君
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本日の会議に付した案件
○北海道開発公庫法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○国有財産法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○国有財産特別措置法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
○国の庁舎等の使用調整等に関する特
別措置法案(内閣提出、衆議院送
付)
○国有財産特殊整理資金特別会計法案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/0
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001・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) これより委員会を開きます。
まず、北海道開発公庫法の一部を改正する法律案を議題とし、提出されました資料及び東北興業株式会社法の一部改正案、東北開発促進法案の要旨等について、経済企画庁当局より説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/1
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002・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) 本日当委員会の議題となっております北海道開発公庫法の一部改正は、北海道開発公庫を改組いたしまして東北地方開発に関する業務をも行わせるのでございまして、この機会に東北開発全般について政府が従来行なって参りました施策の概要を御説明申し上げたいと思います。東北地方の開発を述べるのでありますれば、明治以来の施策、あるいは昭和九年の東北地方の大凶作を契機として発足しました昭和十年来の東北振興の諸施策から始めるべきかと存じますけれども、これは省略することといたしまして、最近経済企画庁がこの問題に関係を持つに至りました以後の経過について簡単に御説明申し上げます。
経済企画庁開発部は、国土総合開発法に基きまして、国土の総合開発に関する計画を立てる責任を負つておるのでございます。この計画は全国的な計画あるいは特定地域、府県単位の計画もありますが、また地方計画、すなわち東北地方なら東北地方という一つのブロックの開発計画を立てることをも所管いたしておるのでございます。従って北海道開発のように、北海道開発庁という特別の官庁があれば別でございますが、ただいまのところは、経済企画庁が所管するのが本筋でございますので、今回の東北開発に関する立案も私どもが行いましたし、また今回提案になっております三つの法案が成立いたしますれば、経済企画庁開発部が東北開発の事務を所管することが明確に相なりまして、開発部部内に東北開発室を新設することに予定いたしておる次第でございます。
昭和三十年度と昭和三十一年度は東北開発について調査の段階でございまして、両年度ともそれぞれ東北開発調査費一千万円が企画庁に計上になっておるのでございます。昭和三十年度におきましては、各種の社会経済的調査を各種の調査機関に委託しまして実施いたしました。昭和三十一年度におきましては、東北地方の特異な資源でありますところの砂鉄、天然ガスの企業的な調査と、ビート栽培の可能性に関する調査を行なつたのでございます。こうした調査を行いますと並行いたしまして、経済企画庁を中心に関係各省と協議いたしまして、東北開発の具体策を検討したのでございますが、御承知の通り昨年の五月の二十八日、衆議院で行なわれました東北開発に関する決議の趣旨に則って行なつたものでございます。
それでは東北地方開発の目標をどこにおくかという問題でありますが、東北開発促進法案にありますように、内閣総理大臣が東北開発審議会の議を経て決定いたしますところの東北開発促進計画によってきまる問題でございますが、ただいまのところ私どもといたしましては、東北地方にありますところの未開発の資源の活用によって、わが国の経済発展に寄与するということに重点をおいて運用されるべきものであると考えておる次第でございます。東北地方の資源につきましてはお手元にお配り申し上げております東北開発の推移と現況というパンフレットによってごらんいただくことにいたしまして、省略させていただきますが、資源開発に必要な法的措置を今回三つの法案として提出した次第でございます。
まず第一に、東北開発促進法案でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、東北開発促進計画でございまして、これを審議するための審議会の構成等につきましては、促進法案の第三条より第八条にわたって規定いたしておるのでございます。
第二に、東北開発に必要な各種の公共的事業でございますが、各種の未開発資源を開発するためには、各方面にわたる産業基盤施設を必要とするのでございます。たとえば鉄道、道路、港湾等の輸送施設、電力の増強、農地の改善、国土保全施設等でありますが、これらは先ほど申しました促進計画において計画決定になるのでございます。そこでちょっと御理解置き願いたいことは、この東北開発促進計画は内閣総理大臣が作成いたします。具体的に申しますれば、経済企画庁が内閣総理大臣の補佐機関として作成するわけでございますが、作成に当りましては、関係各行政機関と協議して立案することは申すまでもないことであり、また事業予算は経済企画庁に計上せられるのではなく、それぞれの所管に応じて計上せられ実施せられることになっておるのでございます。この点は促進法案の第九条に明確になっております。なお、政府といたしましては東北開発に対する基本的な態度は同じ法案の第一条に明確にされております。そこで促進計画で決定されました各種の事業に関しまして、経済企画庁は調整的な役割を果すにすぎないのではございますが、この点は同法案の十条において明確にいたしております。
第三といたしまして、東北各県が各種の公共事業を実施をする場合におきます地方財政の特例がございます。これは促進法案の第十二条において地方財政再建特別措置法の特例として規定されておるのでございます。先ほど申し上げました産業基盤を整備するため、公共事業費は、二十三年度においても相当程度増額することになっております。ところが、御承知の通り東北七県は、青森県を除きまして財政再建団体でありまして、青森県も財政的には再建団体とほとんど変りはない状態にありますので、再建整備法の制約のもとにおきましては、十分国の補助金を活用し得ない状況にありますので、財政再建が合理的に行い得る限り、促進計画による事業の実施に支障のないよう特に配慮することにいたしておるのでございます。また財政再建団体に、従来政令の規定によりまして、国の負担割合を通常の場合の二割増しにすることになっておるのでございますが、この法律におきましては、重要な事業についてこの二割増しを、法律の明文をもって確保いたしておるのでございます。なお青森県財政再建団体に準じて財政再建を行う場合は同様の扱いをなし得るように規定いたしております。
第四といたしまして、東北興業株式会社の改組であります。昭和十一年、東北振興の中核体として発足いたしました東北興業株式会社を、今回の東北開発施策の重要な一翼をになわせるため、東北開発株式会社に改組することでございます。改組の最も大きい点は、従来この会社は生産業を中心に運営して参ったのでございますが、今回会社の業務に、産業立地条件整備に必要な施設に関する事業を加えたことでございます。なお、この改正案におきまして相当多数の条文を改正をいたしておるのでございますが、そのおもなるものは、現行法の規定が新らしい商法の規定とそぐわない点がございますので、この点の改正を行いました。ほかにおきましては、従来停止されておりました政府保有株式の後配制度を復活した点でございます。東北開発会社の資金源といたしましては、昭和三十二年度におきまして現在資本金四億円のうち三億円政府が出資しておるのでございますが、この政府出資を今回五億円に増しましてそのほか政府元利保証の債券発行による二十億円とあわせまして二十五億円を所要資金として予定いたしておるのでございます。
第五は、北海道開発公庫の業務を拡大いたしまして、東北開発に関する業務を行わしめることにした点でございまして、資金源といたしましては政府出資五億、資金運用部借り入れ二十億、債券発行二十億計四十五億を予定いたしております。
これをもって簡単でございますが、東北開発施策の概要を御説明申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/2
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003・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 引き続いて質疑を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/3
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004・大矢正
○大矢正君 今東北開発に対する説明が行われたのでありますが、機構であるとか、概念的なものだけが述べられてより具体的な開発計画というものに触れられておらないのでありますが、先日の委員会で北海道開発公庫法を論議いたしました折に、ダイヤモンドに掲載された北海道開発に対する産業計画会議の批判、それからまた文芸春秋その他による中谷宇吉郎教授等の北海道開発促進に対する意見と、こういうものが論議をされたのでありますが、今月のダイヤモンドにまた再びその問題が多少述べられて、特に今度は東北開発計画と結びつけて北海道の開発計画というものは非常にみじめな結果に終つておる、今また政府は再び東北開発計画というものを樹立するようであるけれども、北海道の開発計画の結果と同じような結果にならないように、そのわだちを再び踏まぬように、最善の努力をすべきであるし、また検討を十二分にすべきであると、こういういうことが言われております。そこで私は、こういうように北海道の開発、そしてまた新たに行おうとする東北開発というものに対する国民の批判と申しますか、意見というものが強まってきております折からでございますので、東北開発計画というものに対する審議、そしてまた検討というものは十二分になされなければならぬと、かように私は基本的に考えるのであります。そこでもちろん、この東北の開発が中心となりまして、北海道開発公庫法を改正して、この中に東北開発の分が含まれるということは、とりもなおさず、やはり具体的な東北の開発計画というものとの関連において考慮をしなければならないと思いますが、今企画庁からの説明では、機構はどうでありますとか、あるいは株式会社はこれを改組して名称を変更するという、非常に何といいますか、事務的な内容しか説明がないのであります。ちょっと承わりますと、東北開発の目標というものは経済発展に寄与するのだ、日本の経済の発展に寄与するという、非常にばく然とした構想しか述べられていない、具体的には一つも、それじゃどうすれば日本の経済発展に寄与できるかという点が明らかになっていないのでありまして、この点では私はまことに不満とするものでありますが、どうか一つこの開発計画なるものの概要の御説明を私いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/4
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005・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) ただいまお話になりました点は、特に私ども同様に考えておる面もございますが、特に北海道開発につきまして中谷博士等の発表になりました論文は、私ども他山の石といたしまして心に銘記して、今後の計画を進めて参りたいと思っております。ただ北海道と違います点は、人口問題の扱い方におきまして、北海道の場合は、他地方よりの入植ということが考えられておるようでございますが、東北におきましては、東北地方を開発しまして、他地方から人口の導入をはかるというところまでは考えておりませんので、東北地方の増加する人口をできるだけ東北地方に収容したい、それを収容し得るだけの産業の発展をはかりたいと、こういう趣旨でございますので、その点におきましては、あるいは若干の違いがあろうかと思うわけでございます。
それから東北の資源にはいろいろございますが、第一次産業の資源でありますところの未開拓の土地もございますが、東北の魅力はやはり埋蔵されておりますところの地下資源にあろうかと存ずるのでございまして、東北地方には鉱産額は全国の三〇%を産出いたしております。そのほか埋蔵されておりますところの非鉄金属資源等も、やはり東北地方が約半ばを占めておるというふうなものもあるわけでございます。そのほかに砂鉄、天然ガス等におきましても、東北地方には特異な資源を持っております。こういう点から申しまして、政府といたしまして、しかるべき施策を講じますれば、東北地方の資源開発を通じまして、日本経済の発展に寄与し、合せて東北地方の入口の収容力を増すことができるものと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/5
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006・大矢正
○大矢正君 さっきあなたの説明の中に、三十一年度は砂鉄、及び天然ガスと、それから特に東北において、北海道と同じように、ビートが栽培できるかという研究、こういう面での調査、検討というものが進められた。こういうことの説明がありましたが、当面する東北開発の具体的な目標というものは、今あなたが言われた、さっき私が繰返し述べた砂鉄とか天然ガスとか、テンサイ糖の研究という、こういう範囲においてしか具体的な計画というものを書いておらないのですか。その点をお伺いしたい。構想としていろいろ持っておられることはわかるのですが、それは構想じゃなくて、もっと現実的な基盤がなければならないのであつて、それには相当やはり調査も必要である。ところが今あなたの言われているころからいうと、砂鉄とか、天然ガスとかビートの研究、それ以外はあまりなされていない。そうすると、鉱物資源の採掘その他については、どの程度の資金と、そうしてまたどういう計画に基いて行うという、そういうようなことまで検討がされておらぬように思うのですが、そういう点についてのお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/6
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007・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) 三十一年度の予算におきまして、砂鉄、天然ガス、ビートの調査をいたしました。これだけが東北地方で開発可能な資源という意味でもございません。これらの資源につきましては、従来研究も不十分でございましたので、また特異な資源でございますので、この資源が調査されることによって、東北開発に一の新しい考え方が加え得るのではないか。こういう意味でやるわけでございます。なお、お手元にございます資料によりましても、東北地方の金属資源等も相当あるのでございましてこの金属資源にいたしましても、推定埋蔵量でございますので、的確な資料とも申せないかとも存じますけれども、業界の意見等を聞いてみましても、やはり将来の鉱物資源を望む場所といたしましては、東北地方に最も重点をおいているような状況でございます。最近の仙台の通産局からの話によりますと、東北地方における鉱業権の出願件数が非常にふえているそうでございます。なお、それに関連いたしまして、三十二年度予算におきましては、建設省に鉱山開発道路の予算を約二億円計上になっておりましてこういった鉱山開発道路を通じて、東北地方の鉱物資源の開発に当りたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/7
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008・大矢正
○大矢正君 資料をいただいて、まだ読んでおりませんし、概括的にこの目次を拾って見てる程度でありまするからして、こまかいこと、詳しいことを申し上げることはできないので、後刻あらためてこの内容をよく読ましていただいてから、なお、こまかい点の質問をいたしたいと思うのでありますが、部分的に、地域開発と申しますか、部分開発というものは、この計画の中には出されております。たとえば只見川の地域はどうするとか、新潟県はどこにするとか、というようにして、各県ごとに行う企業といいますか、事業というものはどの程度の内容を持つものであるかということは書かれておりますけれども、東北全体を通じて、総体的にどういう開発を立てるのかという点が、私もらってる資料の中では書いておられないように思うのですが、少くとも、開発計画というものは、東北六県、新潟を含めて七県ですか、一緒に後進地域として行うのでありますからして、部分的に、一県ごとに、開発を行うというものでは、私はないと思うのでありますが、ところがこの内容を見ると、ある程度は、福島県でいくと、石炭があって、その石炭はどの程度に品位があるとか、それとセメントの結びつきとかいうものは出ておりますけれども、東北総体を通じての方針というものが、貫かれていないような感じがするのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/8
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009・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) ただいま御指摘になりました資料につきまして一応お断わりを申し上げておきます。この資料は、昭和三十年度の一千万円の調査費の中から委託調査いたしました分の一部分でございまして、I・C・Cという産業の調査機関がございますので、その調査機関が私どもの方に報告して参りました資料そのままでございます。その後の各県の調査もまた別途進めておるわけでございまして、現在公庫の四十五億の資金に対しまして、どの程度の貸出しの希望があるかということにつきましては、別途融資期待推計表によりまして、百三十一億円の資料を御提出いたしておりますので、その方をごらんいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/9
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010・大矢正
○大矢正君 これは東北だけじゃなくて、北海道でも問題になったと思いますし、おそらく相当論議の中心にしなければならない問題だと思うのでありますが、産業計画会議の中における開発構想の基本的な面だと、私は思うのでありますが、産業計画会議の中では、経済の、いわゆる構想と申しますか、それから利益と申しますか、そういう面を中心に考えて開発を行うべきである。こういうことが強く言われております。もっと具体的にいえば、利益の上らないところに、利益の存しないところに金をつぎ込むということは、およそナンセンスだという、そういう構想が貫かれているように私は感ずるのでありますが、もっと具体的にいうと、その企業なら企業を誘致することによって、その地域の開発が促進されることはもちろんであるけれども、同時に、あわせて、その企業は十三分に採算のとれる企業であるし、利潤の確保できる産業である、企業である、こういう立場がなければならぬということが、産業計画会議あたりでは非常に強く言われております。もしこの構想を、こういう考え方を基盤として開発を行おうとすれば、私はその開発が、必ずしも結果としてはその地域住民の幸福と、それから生活の向上、そして文化の発展という問題とは結びつかない結果が出てくる危険性があるのじゃないか。もちろん金をつぎ込むのでありますからして、直ちに効率が生まれるような、そういう必要性はわかりますけれども、それに重点をおきますれば、地域開発、産業開発というものは、必ずしも妥当な結果に終らないような気もするのですが、片方では産業計画会議はそういう主張を盛んにしておる。こういう点について、あなたは東北開発を促進するに当つての、当面の立案者としてどのように考えておられるか、お伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/10
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011・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) 私は中谷博士の論文も読みましたし、その基礎になっておりますダイヤモンドに出ました産業計画会議の資料も読みまして開発計画に当るものとして、大いに啓発され、また参考とすべきものを十分知ることができたわけであります。しかしながら産業計画会議が北海道開発計画について批判されましたものを全部そのまま正しいのかどうかということになりますと、私も正しいと言い切るだけの自信もないわけでございます。その点は国の資金あるいは地方の資金の投下によって実施されます各種の公共事業の効果の判定と、私企業における効果の判定との間の若干の考え方の相違に基くものではないかと考えておるわけでございます。私企業的な採算から申しますれば、単に利益さえ上ればいいわけであります。あるいは産業は大都市中心に集中していいかもしれないのでございますが、国家全体の立場から申しますれば、やはり産業は各地に分散され、また各種の開発が地域的に均衡のとれた——これも理想的に必ず平均というわけでもございませんが、各地の実情に応じて均衡のとれた発展をすることが望ましい形ではないかと考えておるわけでございます。そういう意味から申しまして、現在の東北の現状を見まするならば、東北における第二次生産の額は全国の五%でございまして産業構成から申しますれば、明治の末期から大正の初期程度の比率になっております。産業構成そのものをもって現在の東北地方の住民の生活水準をはかるということは不適当かもしれませんけれども、東北地方の産業構成は、全国を見た場合、大正の初期程度になっておるという状況でございます。この状況が望ましいか望ましくないかの問題も、こういう状況を変えて産業構成を日本全国平均並みにするというまでにはいかなくても、第二次産業の所得を伸ばすことが可能であれば、それは均衡ある発展という立場から望ましいのではないかと考えるわけでございますが、東北には幸いにいたしまして未開発の資源も相当ございますので、これを開発することによって、産業構成をもっと第二次産業第三次産業の比率を高めることができる、すなわち開発度を高めることができるのではないかと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/11
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012・大矢正
○大矢正君 公庫の問題にちょっと触れて東北の開発をする場合の考え方をお尋ねいたしたいと思うのでありますが、単に開発をするあるいは部分的に一つの企業を作って、その企業に金を注ぎ込むとかというようなことでありますれば、何も北海道開発公庫の中に割り込んで入らなくても、開発銀行もあることですから、できないことはないと思うのでありますが、政府が北海道の開発公庫に無理に——こういう表現が妥当性があるかどうかということは別でありますが、無理にねじ込んだような格好で北海道の開発公庫の中に東北地方の開発計画が入り込むということは、実際問題として私は東北開発をする基本な考え方とは一致をしないのではないかというような気もするのですが、この点はいかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/12
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013・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) 未開発地の開発に当りまして、特殊な金融機関があった方がいいということは、昨年北海道開発公庫が設置されましたときと同様でございまして、現在の産業の傾向からいたしまして、とかくすでに工場の立地しておる付近には他の工場も誘致されがちでございますが、いかに産業基盤の整備に力を入れましても、なれないところにはどうも工場の誘致がむずかしい、そういう意味から申しまして未開発地が相当程度開発されまして、企業が自然に誘致される段階になりますまでは、やはり特殊な金融でめんどうを見て、それを吸引力といたしまして、新しい産業あるいは新しい工場を誘致すべきではないかと心得るわけでございまして、その意味からいいまして、未開発地域の特殊な金融を必要とするわけでございます。その意味から申しますと、開発銀行は全国を一体として見ておる関係上やはり若干危険度——という言葉で表わしましてはあるいは誤解があるかと思いますが、そういった意味での投資の傾向がまだできていない地方については、開発銀行としても現在の状況におきましては十分理解していただくことができなくて、資金は所要の東北なら東北地方の方に回ることがむずかしいのではないか、そういうふうなことにいたしますれば、ここに独立いたしまして北海道開発公庫と並んで独立して東北開発公庫を作るということに相なるわけでございまして、経済企画庁といたしましても、予算要求の際におきましては、そういう要求をいたしたわけでございます。何分にも金額が四十五億でございますので、四十五億の資金では独立して公庫として店をかまえるには適当でないということで、北海道にこの仕事を吸収していただきまして、北海道開発公庫の中で一つの部門を分けて運用していただく、こういうことに相なった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/13
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014・大矢正
○大矢正君 昭和三十二年度は四十五億のワク内で公庫は事業をするということになるわけですが、あなたの方では開発計画をすでに立てられたか、立てつつあるか、その点はよくわかりませんが、いずれにしても四十五億の金は開発計画の線に当然乗るべき金でありまするからして、その開発計画というものに基く金のある程度の見通しといいますか、本年度の使用の内容というものは明らかにならなければならぬのじゃないかと思うんですが、その点何か今まで私の見ている範囲では、資料でも本年度の四十五億の計画というものは見た記憶がないんですが、その点はどうでしょうか、出してないんじゃないかと思いますが、もし出してなければ御説明していただきたいし、もし出していただいておるとすれば、私はそれを探して読んであとで質問をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/14
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015・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) 四十五億の資金の具体的な貸出先につきましては資料を提出いたしておりませんし、私どももただいまのところ資料を提出いたすだけの準備もないわけでございます。で、その問題に触れますと、一応開発計画というものをどういうふうに立てるかという問題から申し上げてみなければならぬわけですが、開発計画は先ほども申しましたように、産業の構成を、できるだけ第二次、第三次産業の発展をはかりまして、いわゆる開発度を高めるわけでございますが、その中における開発計画の内容になります事柄は、国、地方団体、そういった国の、公共の手によって整備されるものを中心にいたしましたものが開発計画でございます。いわゆる基礎部門の整備そのものが開発計画でございまして、どういう産業がその基礎部門の整備を利用いたしまして立地するかという問題は、これは私企業の分野でございまして私企業がどういう資金計画を持ち、またどういう部門に三十二年度において進出して参るかということは、あらかじめ予定するわけにも参らないわけでございます。そういう意味から申しまして、開発計画そのものは、その基盤の上に立てられますところの産業構造は、一応の予定はいたしますけれども、具体的にどういう産業をどこに持ってくるかという計画は出て参らぬわけでございます。私どもといたしましては、四十五億の資金があれば、三十二年度間に合うであろうという見通しのもとに計画いたしておりますが、これを具体的にどういう事業に幾ら貸すかという計画は現在のところ全然持っていないわけでございます。そこでただいまの御質問に関連いたしましてただいま御注意がございましたので申し上げますと、現在各県でありますとか、あるいは東北地方の商工会議所等でありますとか、そういう方面から東北地方にはこういう事業があり得るのじゃないかというので、いろいろ申し入れがございましたうちで、公庫法の条文に当るものを一応拾って推計いたしましたものが、お手もとに総額百三十一億円の資料が参っているかと存ずるのであります。これを一応御説明さしていただきたいと存じます。
第一の、法律の順序によりますと、第一項といたしまして、石炭または可燃性天然ガスその他未開発鉱物資源の利用度の高い工業というのがございます。これは砂鉄利用工業でございますとか、天然ガス利用工業、あるいは亜炭利用工業等を考えておるわけでございますが、これについて大体四十五億円程度の申し込みがあるのではなかろうかと推計いたしております。
二番目といたしまして、農林畜水産物の加工度の高い工業といたしまして、約二十六億程度を推計いたしております。これは繊維板工業でありますとか、水産物の貯蔵加工事業でありますとか、食肉乳製品事業、特産品の加工業、たとえば青森県のリンゴからリンゴ酒を製造する、こういうようなものを考えておるわけでございます。
三番目は、鉱業及び製練業でございまして、先ほども申しましたように地下資源の開発が相当東北地方においては行われるのではないか。従いまして各種の選鉱設備、あるいは採鉱機械の合理化、こういう面におきまして相当公庫に対する申請が出てくるのじゃないかと予想されますので、このために二十億円を予定いたしております。
次に、産業の振興開発による交通運輸業といたしまして約十億円を予定いたしております。
次に第五項で、産業の振興開発のため特に必要な事業で主務大臣の指定ありたるもの、現在のところは指定いたしておりませんが、東北開発上、非常に有望である事業が出て参りますれば、大蔵省とも協議いたしまして指定いたしたいと考えておるわけでございます。このために約二十億予定いたしております。その内容といたしましては、土木鉱山用機械といたしまして機械工業、あるいはセメント第二次製品工業、あるいは海水利用工業、こういうものを予定いたしまして、現在推計いたしておりますものは百三十一億でございます。
これは推計でございますが、これ以外にもあるいは出てくるかもしれないと存じますが、こういった業種について公庫に対する申請がございますれば、公庫はその産業の内容を十分審査いたしまして、企業が合理的なものかどうかということの審査をいたしますと同時に、これが東北開発上重要であるかどうかということの審査をもいたしまして、公庫の方で貸付の決定をすることに相なるかと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/15
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016・大矢正
○大矢正君 さっきあなたは四十五億あれば今年は十分間に合うということを説明されたが、この百二十一億というのは、三十二年度の融資期待推計額になるのですか、あなたの言っておることと、表とはおよそ食い違うのですが、これはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/16
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017・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) 四十五億で間に合うと申しましたが、こういうふうな事業について百三十一億ぐらい要望があるのじゃなかろうか。こういうだけの意味でございまして、この事業がすべて貸出対象に三十二年度なるという意味ではございません。従いまして百三十一億要望のあったものの中で、先ほど申しましたように、公庫が審査しました結果は四十五億になる。従って四十五億で大体間に合うのじゃないか、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/17
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018・大矢正
○大矢正君 何県では何をやる、それからどこにはどういう工業を起すとかいう話が先ほどからありますけれども、総体的にそういうことをやった場合に、東北全体としてはどの程度経済が伸びて、どの程度民生が安定しどの程度人間が吸収されるというような、そういう計画の基本ともいうべき問題が全然ないのですが、それはいつになったらできるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/18
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019・植田俊雄
○政府委員(植田俊雄君) その点は東北開発促進計画の問題ではございますが、私ども事務的な目標といたしましてただいま考えておりますのは、東北の人口の増加は現在一・六%でございまして、全国の一・四%に比較いたしますと相当高いわけでございます。その上に毎年相当数の人口が他地方に流出しなければならないような経済状況に置かれております。しかも東北地方の所得水準は全国の平均に比較いたしますと約七割でございます。そういう状態におきまして東北地方に産業が起りませんと、最近の経済の発展に伴いまして、他の地方には相当所得がふえておるのでございますが、一方では人口はふえ、しかも産業が伸びないということになりますと、ますます全国平均に対する所得水準の比率は減って参るというようなことになるわけでございます。私ども、できれば全国平均に持って参りたいのでございますが、もしもそこまでいかないならば、現在の全国平均の七割程度をしのぶといたしまして、少くとも他の地方が伸びても、全国平均の七割程度にとどまる程度までは持って参りたい、しかも人口の流出もできるだけ少く持って参りたい、かように希望いたしておるわけでございます。しかしながらこの際一言御説明申し上げたいと存じますことは、東北開発をやっております立場のみでいろいろ希望を申しましたところで、これも全国経済の自然の法則に従って変るわけでございますので、その点については十分反省して参らなければならぬと思っておるわけでございます。そこで現在経済企画庁におきましては、経済計画の改訂作業を行なっておるわけでございます。ところが一方におきまして国土総合開発法によりまして、全国総合開発計画を作るということになっております。この全国総合開発計画というのは全国一本の計画ではございませんで、全国を東北とかその他の八つの地域に分けまして、八つの地域のおのおのについての開発目標を設定するということに相なっております。この作業は経済計画の改訂作業に並行して作業を進めることになっておりますので、改訂経済計画ができますと、ほぼ同じ時期に発表できるのではないか。この全国総合開発計画が決定されまして東北地方の開発が受け持つべき役割がきまって参りますれば、それに沿った東北開発促進計画を作りたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/19
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020・大矢正
○大矢正君 これは総括的な結論として、私はこういうことが言えるのではないかと思うのですが、今私が申し上げておる通りに、秋田県では石油が出るからこれを採掘したらいいだろう。あるいはまた福島県では石炭が出るから、これは実際にコストがどの程度で、量もどのくらいになるのだというような、そういう個々の面にわたる政府の説明はこの中で出ておりますけれども、先ほど来申し上げている通りに、基本的な構想というものが明らかにされておらない。いずれ、いつされるかわかりませんが、いずれ、されることと思うのですが、何か開発計画の基本構想が何もまとまらないうちに、先ほど東北のいわゆる開発は北海道公庫の中に含むのだということは、金だけ出させる道を作る目的以外に目的がないのではないかというような、邪推でありますか知りませんけれども、そういう気持すら私はするのです。基本計画がまとまって何もないのにかかわらず、四十五億の金を出すところは開発公庫だ。こんなばかげた話はないと思うのですが、私は今ここであなたにこういうことを申し上げてもしようがないし、いずれ大臣に出席をしていただいて、そういう考え方のずれで、国民に非常に疑惑を持たれては困る。計画を一つも作らんでおいて、金を借す方法だけを先にきめるということはおよそナンセンスであって、私としてはこれは了解できませんから、いずれ、申しましたように大臣に出席をいただいて、ただしたいと思います。東北に関連する点については一応このような点で私は質問を終りたいと思います。
田上さんに前の委員会との関連においてお尋ねするのですが、非常に御懇切な、産業計画会議の北海道開発はどうあるべきかについての意見が出されまして、参考として読ましていただきました。なお、またあなたは中谷教授と北海タイムスの紙上討論をやって、開発庁のPR活動がだいぶよろしきを得て、北海道では何と申しますか、開発庁に対する恨みと申しますか、批判というものは薄らぎつつあるのではないかという気もするのでありますが、読んでみまして、なるほどそういうことも言い得るかということで、私どもも感ずる点は多々あったのでありますが、特にこのまとめられた経過と、それからあなたの考え方と申しますか、そういう点について一応御説明をいただければ幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/20
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021・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) お話のありました北大の中谷教授の論文にいたしましても、またその基礎になっております産業計画会議の論文にいたしましても、私ども開発事業に関係しておる者の立場から申しますと、まことに傾聴すべき御意見も多々ありますことは、先ほど企画庁植田部長が申し上げた通りであります。私どもはこれらの論文について一応傾聴すべき御意見もありますけれども、北海道開発の第一次五ヵ年計画についての批判につきましては、いろいろと誤謬がありますことは直ちに感じまして、これに対して開発庁におきましては、いろいろ内部におきまして検討いたしたのであります。その結果、とにかく北海道の第一次五ヵ年計画の実績にしましても、あるいは今後の第二次五ヵ年計画の問題にいたしましても、広く国民の理解と支援を得なければ、これは開発途上においていろいろ支障が起りますので、これに対して間違った点をあくまでも指摘をいたさなければならん。ただ民間の各種の開発についての意見というものを一々取り上げまして、これに対して誤りを指摘するというふうなことは、官庁としてその煩にも耐えませんし、またそういうやり方についてどうであろうかという議論もあったのでございますが、今回の場合は、きわめて世間にその誤解が広く伝わるのみならず、御承知のように、国会でもしばしば問題にされましたので、これを取り上げまして、開発庁といたしましてまとまったこれに対する意見の発表が必要であるということで、内部でまとめたものでございます。これらにつきましては、なお大臣の御了承も得て取り運んだのでございますが、差しあたりお手元に配付したような産業計画会議に対する意見というものを、まとめたものを国会に提示いたしますとともに、私どもとしましては、あるいは新聞紙を通じまた雑誌を通じまして、できるだけその間違った点を指摘すると同時に、今後国民の一そうの御理解を得たいという方面に努力をいたした次第でございます。
なお、内容につきましていろいろ重大な問題を含んでおるのでございますが、傾聴に値すべき点と申しますならば、たとえば北海道の場合におきましても、地下資源の基本調査を初め、各種の基本調査が不十分であるという点でございます。これは最近、ことに私ども非常に尽力いたしておるのでございますが、微力でございまして、まだ十分に参っておりません。この点の御指摘は非常に痛かったのでございまして、しかしながらとにかく基本調査はもっと進んだ状態で、すべての企画の前提となるものでございますからして、もっと徹底的なものを早く完全に調査を進めていきたいと、こういう点については全く同感でございます。そのほか道路の整備を迅速に徹底させるというふうな問題につきましても、また事業をできるだけ効率的に、重点的に実施していくという点につきましても同感でございます。ただ先ほど大矢委員のお話にございましたが、北海道の場合におきましても、あるいは全国的な国の事業にいたしましても、経済効率だけですべてを割り切らなければいかんという強い表現があの中にあるのでございます。事業をいたします際におきまして、それがたとえ国の事業でありましても、経済効率ということを最も重点的に考えていくということには異存がないのでございます。現に大蔵省は予算の査定の際におきましても、経済効果ということを最も重要視して、これをやかましく言っておりますし、各省におきましても同様な考え方で、経済効率というものを事業の計画の際最も重要に考えるのでございます。従って最も経済効率の高いものをまず実施していくということにつきましては、異存がないのでございます。しかしながら、国の事業をすべて経済効果だけで割り切れということにつきましては、これは非常に大きな問題があるのでございまして、未開発地の道路にいたしましても、あるいは開拓地の問題にいたしましても、単にいわゆる経済効果だけでは、これは実施するわけにいかないのでありまして、これは、民生安定の問題も考えなければなりませんし、経済効果と申しましても、これらの未開発地の諸問題というのは、国全体の経済の観点から、しかも長い期間にわたっての将来を見通した効果ということが、これは直接にはさっそく経済効果が出て参りませんでも、そういう国全体の、国民経済の上から長期にわたった一つの見方というものから、ないしは民生安定の問題も考えまして、事業を進めていかなければならないものがたくさんあるわけでございます。そういう意味で、経済効果を最も重要に考えるということには異存はございませんが、個々の問題につきまして、国の事業としては必ずしも経済効果だけで割り切れるものではないというふうに私ども考えて、北海道開発の諸問題につきましても、こういう問題が始終出て参りまして、そういう考えで今日まで進んでおり、今後もそうした態度で進むべきであると、こう考えております。
なお、第一次五ヵ年計画の実績が非常に悪いということが宣伝されておりますが、実際御承知の通り、北海道開発につきましては、過去の五年の実績を顧みまして、電源開発は一〇五%ばかり進んでおりますが、そのほかの事業につきましても、先に資料を差し上げてあると存ずるのでありますがこの目標ごとに一定の率を示しておるのでございまして、耕地につきましては五七%の達成率を示しており、乳牛につきましては七二%余り、主食につきましては五九・七%、水産につきましては八〇%、ただ人口の目標に対する達成率が非常に落ちておりまして、これは三四・三%、こういうふうになっております。これを事業費の点から見ますというと、実は北海道開発庁関係の予算だけを見ますと、その達成率は五四・四%ということになっておりますが、他の省に計上された北海道関係の開発事業の予算をこれに加えますというと、五九・八%、約六〇%という達成率を見ておるのでございまして中谷論文にありますような、開発の第一次五ヵ年計画実績が零だというふうなことが当らないことは、事実において示しておるのでございます。
なお、率の悪かった人口問題につきましても、北海道開発の主眼といたしますところが、御承知の通り、豊富な北海道の資源を総合開発するのだということに主眼がございまして、国民経済の復興を期する。そしてそのねらいは、まず第一次五ヵ年計画においては、産業発展の基盤となる基礎施設をまず五ヵ年でやるのだということで出発をいたしておるのでございまして産業の飛躍的な伸展は第二次五ヵ年計画にこれを譲っておるのでございます。しこうして、産業振興によって人口が大きく吸収されていくのでございまして、実は第二次五ヵ年計画以降で相当の人口の吸収が期待できるということは、第一次五ヵ年計画の立て方から明らかになっておるのでございます。ただ、その目標が多大であったということにつきましては、これは指摘された通りでございまして第二次五ヵ年計画においては、この過去の成績にかんがみまして、十分堅実なる目標を立てて進んで参りたい、こういうふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/21
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022・大矢正
○大矢正君 開発公庫についてお尋ねしますが、あなたのところの出された資料の中で、貸し付け承諾をし、しかもすでに実行に移されているのに、石油精製業がありますがね、二十億、これは開発計画と関連をさして考えてみた場合に、どんな経済効果がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/22
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023・桑原幸信
○説明員(桑原幸信君) お答えいたします。北海道にはただいままで重油が非常に値段が高く売られておったわけでありますが、現地に精製工場ができましたために、トン三千円からするところの運賃の負担率というものが軽減されまして特に最近スエズ運河の問題で重油関係の値段が暴騰いたしましたけれども、北海道におきましては、依然横ばいの状況を続けているということは、石油精製工場が二つ増設された結果のたまものではないかと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/23
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024・大矢正
○大矢正君 あなたは重油を中心として値段が下った、こういうことを言われるのですが、私が聞いている範囲、私が調べている範囲では、今残念ながら実は資料を持ってきておりませんから、具体的に申し上げることはできないのでありますけれども、あなたの言う通りに実際的に重油を中心として油の値段が非常に下ったという結果は何も出ておらんと、私はそういうふうに聞いております。あなたは三千円ですか、そんなに下ったというような御発言ですが、私が調べている範囲では全然そういう結果が出ておりません。何のために北海道に重油の精製業というものを二十億もの膨大な金を借してやられるのか非常に不可解なんですね。ああいうものをかりに誘致してみたって、結果としてそこに働く従業員が増加するわけでもありませんし、それができることによって飛躍的に日本の運輸交通業に役割を果すわけでもないし、今私が申し上げたようにそれによってすばらしく北海道の油の値段が下ったということでもない。何かしら開発公庫の目標というものがずれておるのではないかということを私非常に感ずるのでありますが、この工場が設立された、あるいはされることによって、絶対に北海道の油の値段はもう安くなるということをあなた自信を持って言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/24
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025・桑原幸信
○説明員(桑原幸信君) 北海道の開発を非常に阻害しておるものは物値高でございます。ことに内地から運送費が含まれて北海道に物が流れていくという現況は、北海道開発の上から是正しなければならんという意味合におきまして、セメントなども、セメントの需要に満ちるところの供給の工場ができました結果、北海道のセメント値段は落ちついて参りました。重油についても同様に確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/25
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026・天田勝正
○天田勝正君 実は先般予算審議に当りまして、私一般質問の際、時間がなくて長官にお伺いすることができず、分科会において北海道開発庁の予算を審議いたしたのであります。その際に、すでに同僚の大矢君から質問されたようなことを数字によって質問をいたしました。私は意に満たなかったわけでありますけれども、野党の時間の厳守という問題がありましたので、意に満たざるままで質問を打ち切った、こういう実は経過がございます。今、大矢委員の質問に対してあなたがお答えになっておるのを聞きますと、かかる問題は、必ずしも経済効果だけでやるべきではないというお話しのようでございました。私は言葉じりをとらえるわけではありませんが、さような考え方があるがゆえに、中谷教授に指摘されるようなことに相なってきたし、また私が予算委員会において指摘したような不満足なことになってきたのだと、こう思う。というのは、ただ目前に経済効果が上るということは私どもも期待しておりませんけれども、最終的には経済効果だ。民生安定云々とおっしゃいますけれども、一体民生安定するのに経済効果のないところで民生安定ができるはずがないのです。だから長年ののちには経済効果にそれが集中してくるのだ、こういうお話しならわかるけれども、必ずしも経済効果がなくてもやらなければならないのだという御意見には、私は賛意は表しかねますが、その点いかがなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/26
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027・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 経済効果の問題につきましては、これはただいま天田委員からお話しがございましたように、長い将来にわたって、広いいろいろな要素を、民生安定もまた経済効果だとしてこれを考えて全部を経済効果だということになりますると、これは経済効果という言葉もまた非常に広くなって参りますので、大部分はそれに含められることであろうかと思います。そういう意味でございますれば、経済効果でもって割り切れという言葉も、これは正論だとはっきり申せるのでございます。しかしながら民生安定まで含めて考えると、たとえば災害の問題にいたしましても、現実にそれが大都市の付近の川であるならば、これは経済効果が筋の上ではっきり出て参りますけれども、人が少い、あるいはその地方がまだ開発されておらないという場合におきましては、さしあたり経済効果が非常に小さいものに出てくるわけでございます。しかしながら、将来この地方が発展をいたしまして、いろんな必要な資源もそこから出てくるだろう。また農地にいたしましても、それが農作物が非常に豊富に将来生産されることになって、これも長い将来の換算まであらゆる角度から考えるということは、きわめて困難な問題でございます。道路にしましても、その経済効果の計算ということが、天田委員のおっしゃったような意味で、新しい経済効果をいろいろ換算するということは、非常に困難でございまして、さしあたり経済効果と一般にいわれておりまする場合におきましては、一定の年限、期間におきまして、具体的にものが出るというふうなことが現在経済効果として論議されておるようでございまして、そういう意味の経済効果では納得できない。ことに未開発地の開発の問題につきましては、始終それが問題になるのでございまして、私どもとしましては、たとい現在の状況におきまして、いわゆる現在の意味における経済効果が少いようであっても、長い将来あるいは北海道をどう持っていくかというような非常に大きな国策であるとか、そういう観点から広い意味を含め、また現にその河川なら河川を放っておくならば、少い住民でありましても、それが死傷者を多数出すというふうな問題があります場合においては、その点も考慮して、現在いわれておる経済効果以上に、そういう特別な事情を考慮して開発に投資していくということは、民間私企業ではそういうことはやれないでありましょうが、国の仕事といたしましてはいわゆる経済効果以上にそうした別のいろいろな要素を加えて決定されていくべきである、こういう意味で申したつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/27
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028・天田勝正
○天田勝正君 言葉じりで議論してもしようがないのですが、しかし未開発地を開発するというのも、経済効果のない開発というのは一体あるのですか。必ず経済効果は、何年か先になるか、何十年か先になるか、即座に今年になるか、その差はあろうけれども、経済効果の目当てのない開発なんていうものは私はあろうはずがない。国土縦貫道路にせよ、それを作ることによって森林の開発やあるいはその他の鉱山の開発も便利になるのであって結論は経済効果、ただし、それが第一次五ヵ年計画とか第二次五ヵ年計画とか、いろいろ段階を経てその段階の中にはかくかくの経済効果があります。それが達成できたかできないか、こういうふうに議論にはなっていくでありましょうが、最終的には経済効果でございましょう。それは間違いないでしょう。私はそう思うのだが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/28
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029・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 天田委員のおっしゃいます通りに、経済効果がないか、未開発地の開発事業にしましても、いやしくも取り上げられて論議される以上は、経済効果は必ず相当な効果があると私も思います。しかしながら、私が申し上げますのは、経済効果で割り切る場合はいろいろな事業がありまして、経済効果がさらに一そう大きなものをとっていかなきゃならぬ、ことに国の財政に制約を受けましてたくさんあるものからどの事業を選ぶか、こういう場合において経済効果の最も高いものを選んでいくということが問題の重点になるのでございまするからして、そういう意味で経済効果で割り切るということは、最も経済効果の高いものだけを選んでいって、経済効果の比較的低いものは取り上げない、こういう意味で私は申し上げておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/29
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030・天田勝正
○天田勝正君 そういう聞かぬことを言ってもらったって困るので、最も高い方からとれとか、低い方からとれとかいう主張を私はしておりません。未開発地域を開発するということを、経済効果を目標とせずして何の一体未開発地域の開発があるか。だから即座にきょうと、その時は別の問題とし、また即座に経済効果があがる方を先にしようとあとにしようと、さようなことには関係なしに、経済効果を目標にしなければ、私は未開発地の開発というものはあり得ないと思っておるのだけれども、あなたは経済効果だけではやれないと、こうおっしゃるから議論に混乱があるのです。結局速度の問題であって、私は経済効果を目標とするのだ。それがなければ民生安定なんていうのはあり得ない。そうでなければ、自立できないのですから。たとえば孫子末代まで国が入植したものでもつぎ込む、こういうことになる。開発してやれば、それで自分の仕事をし、そこでみずからの生活も安定できるというものでなきゃならぬだろう。この観点で聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/30
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031・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 答え、ないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/31
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032・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 天田委員のお話しになりましたことは私もわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/32
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033・天田勝正
○天田勝正君 それではお聞きしますが、今までこの北海道開発のためにつぎ込んだ予算及び今年度の決定いたしました予算、それを見ますと、大部分が農林漁業と私は承知いたしております。そうして都市にも、なるほど都市の街路の整備等の予算がございますけれども、これは生活を快適にする、あるいは輸送に便をする、間接の効果でございますけれども、この面で人口を吸収するという筋のものでは私はないと思う。そこでそういう一部は除きまして、結局この農林漁業につぎ込んだのならば、あなたの方でここに出しております資料の言葉の部分から見ましても、「人口問題の解決に寄与するため」云々と、こういうことがありますし、一番最後の方にも「北海道が人口収容という点からも日本全体にとって大きな役割を果すために大規模な施策を実行すべきである」、それに全く賛成である、こういうことが書いてございます。そうすれば、この農林漁業関係の人口を吸収するということが、まず大きなここに目標にならなければならないと思うわけであります。ところが先般予算審議に当って私が聞いたところによれば、幾春別の開発にいたしましても、わずかに二百七戸しか農家を増すことができぬ。こういうお答えでした。根釧地域においては一戸もふえない、こういうお答えでありました。ちゃんと速記録に載っておりますから明らかなことであります。そうして一方においては、北海道の農家はこの五年間には三千戸も減っておる。かりにこのままで推移していけば、それは五ヵ年計画をやりながら、三百戸か二百戸ふえる一方、片方は三千戸くらい減っておる。五年間になると一万五千戸ですか。そうすると、農林漁業関係における人口の吸収、収容というものは、むしろマイナスになっていくのだ。全体とすれば、そういうことになりますが、さようですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/33
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034・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 農林関係の人口、ことに農家人口が減じておるということは、お話の通り事実でございます。しかしながら北海道の第一次五ヵ年計画における投資——政府資金の出ております状況は、必ずしも農林漁業が大部分とはいえないのでありまして、はるかに多く道路、港湾、河川等の基礎施設の方に多く出資されておりますから、その点は御訂正申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/34
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035・天田勝正
○天田勝正君 それは全体の中で、その全部が農林漁業ということを言っているのではないのであって、しかしこの項目も農林漁業関係、この項目も農林漁業関係と、私は一々列記して、そしてその効果はいかがかという質問に対して、今申し上げたような答えになったのです。そこで第一分科会におきましては、与党であろうと野党であろうと、全くその御指摘の通りだということになったのです。それですから私は、それならば全く、一番冒頭にも書いてあるし、一番うしろにも書いてある人口収容というものが重大な、しかもかなりな部分を農林漁業につぎ込んでおるのに、それが一向にふえるどころか減るのだ。減るのは他の原因で減るのかもしれないけれども、それも定着させつつふやしていくのが開発でなければならぬと思うのです。それが減っていくのならば、その方はさらにまた検討してやり直しするなり、やめるなり、どっちかだろうと思うのですけれども、それはどういう意味なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/35
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036・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 農村人口が減っておりますことは、ただいまお答えいたした通りでございますが、北海道の開発は、人口収容が最も主眼の目標であるとおっしゃる点につきましては、少し御説明申し上げて御訂正をしていただかなければならぬと考えます。
北海道開発につきましては、北海道開発法に明らかでありますように、まず、北海道の豊富な資源を総合的に開発するということが主眼でございまして、そのためにまた国民経済の復興並びに人口問題の解決に寄与するということが掲げてあります。この人口問題の解決に寄与するということは、目的の一つではございますが、しかしながらこれは第一次五ヵ年計画にもはっきりありますように、産業を大いに振興して、これによって人口の収容をはかっていくのだということでございまして、一時的にはどうしても北海道の産業の開発をいたさなければならぬ。それによって人口問題の解決に寄与するのだということでございます。そして第一次五ヵ年計画の目標といたしましては、当時開発の構想といたしまして四つの柱を掲げておるのでございます。それは第一は、産業開発の原動力となる電源の開発ということでございます。第二は、開発の重要な基礎施設中特に先行せらるべき道路、港湾、河川等の整備拡充ということであります。第三は、食糧の増産。第四は、地域別基本調査及び地下資源の開発調査ということであります。そうしてその前文に、第一次五ヵ年実施計画とあわせて人口の基礎となるべき施設の整備拡充に重点をおくことにしたということで、重点をあくまでも基礎施設の整備ということにおいて進んでいくんだ、その結果、人口は三十一年度において六百万になる見込みであるということを目標として掲げておりますけれども、六百万にするのが目的であるということではないのであります。この点も御了解をいただきたいと思います。
いま一つは人口の収容という言葉でございますが、これは内地から人口をそれだけ持ってくるという人口を意味しておるのではありません。北海道が全国第一の人口の自然増の高い所でございまして、その第一次五ヵ年計画を樹立いたします当時から、すでに北海道におきましては二男坊、三男坊の深刻な問題が出ておるのでございます。そうして毎年十万前後のこれらの人口が出産によってふえていきますものをどうするかということ、これを北海道でます吸収するということが一つの大きな問題でありまして、その上に産業振興によって内地からの人口の吸収をはかっていくということでございます。そうしてその結果が、五年間の結果といたしまして社会増、つまり北海道以外から北海道に入ってきます方が、出ていきますよりも多かった、その数字が四万八千人になっておるのでございます。これは数字といたしましては、外部から社会増として北海道が迎えました数字は必ずしも多くはございませんが、しかしながら全国的に見まして、いわゆる六大都市のあります都府県——東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡、それだけが社会増としてはプラスになっておるのでございまして、そのほかといたしましては、北海道がこれらの都府県と並びまして社会増を多少ともみておるのでございまして、他はことごとく社会増はマイナスになっておるのでございまするからして、こういう意味におきましても、人口問題に対して北海道が寄与しておるということはいえると思うのでございます。
言いわけのようにもお聞き取りになるかもしれませんが、一応北海道開発の第一次五ヵ年計画における人口問題の取扱いにつきまして御説明をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/36
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037・天田勝正
○天田勝正君 この基本的な考え方とか何とかというのは、私もすでにお聞きしておるのです。それで必ずしも内地から受け入れろということを私も主張しておるのではない。だからその点は、誤解を解いて云々といっても、誤解も何もしていない。今私は予算書なしで議論しておるから、あなたはどういうお考えで答えておられるかわかりませんが、だから、ここに今予算書を取り寄せますが、いずれにしても、農林漁業の関係に相当部分つぎ込んでおるのです。つぎ込んでおって、その人口の収容というのは、内地から受け入れるとか受け入れないとかというのではなくて、北海道の内部においてもそこへの増加というのはない、こういうことなんです。逆に減っている。減っていることはあなたもお認めになっている。そうだとすれば、結局農林、漁業関係につぎ込んだのはむだではないか、こういうことに議論は落ち着くのです。そこで、それがむだではないのだと反論をするには、今は暫定的に減っておるけれども、やがて五年後なり、十年後なりにはこれはふえるんだという御説明でなければ、これは長い目でやっても、経済効果のある金の使い方ではない、こういうことになると思うのですが、それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/37
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038・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 農業関係だけの問題を取り上げますると、これは北海道だけの問題でなくて、全国的にこれと人口の関係ということは、これは一つの大問題であろうかと思います。北海道におきましても、実は農林関係におきまして、当初人口の収容につきましては、多くを最初から期待し得なかったのでございます。戸数にいたしまして、二万戸を一応入植によってふやしたいという計画になっております。これを大体人口にしますと、六万ぐらいな人口になりますが、これは全体の人口計画からいきましても、三%あまりの程度の問題でございまして、最初から農業関係の人口の収容ということを大きく見得なかったのでございます。しかも御指摘のように、農業関係の新たな入植ということはきわめていろいろ困難な問題が伴いまして、第一次五ヵ年計画におきましても、この点につきましては遺憾な結果を見ておりまするが、しかしそれにしても、今後農林、漁業方面におきましても、相当力を加えていくべき必要があるのでございまして、その一つの行き方としまして、根釧のパイロット・ファームの計画を実施いたしておるのであります。この成績によりましてさらにこうした計画を伸ばしていこうという考え方を持っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/38
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039・天田勝正
○天田勝正君 私の質問に対して、内地の例を引かれて比較して話されるのですけれども、それはまことに迷惑なんです。たとえば私の埼玉あたりで、別に膨大な総合開発——泥炭地を畑にするとか、そういうようなことをやっておらない。やっておらないところと比較されても、とてもしようがないのであって、ではたとえば私が申し上げますが、さっき言ったように根釧地区、それから篠津地区、これは全然今まで農地でなかったところを新しく農地にするところで、さらにまた、ここにもあなたの方から資料が出ておりますが、幾春別の総合開発、この中には「土地改良区、既墾田一万一千四百工十二町歩の補水を確保し」云々と、こういうようなのもある。総合開発の場合、必ずしも農業だけではないことはよく承知しております。しかしそのある部分は農業であるということはこの資料からして間違いな、そういうことならば、そこに新たにやはり私は農業人口がふえていくということでなければ、どう考えても意味がないと思うのですが、それじゃそこを開発した意義が私はなくなると思う。その点どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/39
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040・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 天田委員は、農業関係のいろいろな事業を、もっぱら人口を中心として御論議になりますが、北海道における農業関係の大開発は、人口問題を中心として考えているとは申し得ないのでありまして、(天田勝正君「おかしい、そんなことを聞いてないよ」と述ぶ)むしろ増産をはかるために、食糧の増産ということを中心として考えているのでございます。従って篠津にいたしましても、そのほかの地区にいたしましても、食糧の増産をまず法律の上に考えまして実施しているのでございまして、これに伴って、人口の入植ということも事業によってこれに伴うと考えている、こういう事情でございますので、大へんおしかりでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/40
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041・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 政府委員に注意します。質問者の趣旨に適合する答弁をしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/41
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042・天田勝正
○天田勝正君 それは私はほかのことで質問しろと言えばしますよ。しかし一つずつしているのです。今は要するに農業の問題で、農業人口だけで天田委員は見ていると、何をさして言うのです。今は農業人口のことであるから、私は質問しているのであって、これだけの狭い範囲で質問しているのじゃありません。ほかの質問をしろと言えばする。しかしこの点は一番大切なことは、人口収容ということでやってるし、農業に新しい金を使っていることなんであって、その点では何かの効果がなければならないのですよ。だから人口は吸収しませんけれども、経済効果はこれで豊かになったとか、こういう点で豊かになったということがあげられれば、一つの答えになる。しかし過日の質問でもそれには答えがない。幾らかよくなりましょうという程度なんです。まことにもって、調査は、ずさんきわまる、こういう結論に達せざるを得ないのですよ。ですから、私は農業だけの問題で、この議論をしているのではございません。しかしやはり一つ一つ申し上げなければならないから質問しているのでありまして、一つ適切な委員長の計らいですから、質問を続けますが、そういう意味であることを理解してもらいたい。
じゃ質問を続けますが、ここにも北海道開発庁の予算がありまして、今、私ずっと……、それじゃ過日指摘したところをさらに指摘いたします。
それでは伺いますが、たとえば国庫債務負担行為のうちに、北海道開発庁の分といたしましては、二通りございますけれども、一応機械を買うとすれば六億七千三百万円、こういうものがつぎ込まれることになっております。これは国庫債務負担行為ですから、ことし約束して来年度以降に支払う分も当然ございます。こういうつぎ込み方をして、しからば私の質問が悪いというならば、あなたもこの考え方に立ってどういう経済効果がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/42
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043・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 債務負担行為の関係になっておりまするのは、篠津地区の開発と、それから根釧関係のパイロット・ファームと、両方ございますが、篠津関係につきまして申し上げますと、その効果といたしましては、食糧増産による効果として米穀換算いたしまして増加生産は十八万九千石食糧増産になるということが一つでございます。そして入植計画といたしましては五百七戸ということになっております。それから根釧方面の資料を今持ち合せておりませんが、根釧につきましては、将来あの地方の特殊土壌地帯を開墾をいたしまする一つの試みの方法といたしまして、約四千町歩の開拓を酪農中心に考えておるのでありますが、酪農の効果等につきましては今資料を持っておりませんが、入植につきましては、一応二百八戸ばかりの人口の入植を考えておったと思います。
そのほかの経済効果につきましては今ここに資料を持っておりませんですが、後刻その資料をお手元に差し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/43
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044・天田勝正
○天田勝正君 そのことはすでに先般の分科会の審議におきまして明細なる報告を受ける、こういうことになって、一向あなた方は出してこない。それでほかの委員諸君には、まことに私だけ時間をとってお気の毒だけれども、繰り返さざるを得ないわけだ。御了承を賜わりたいと思います。
それで質問を続けますが、しからば、この地域を開発してよその地域の農民がここに来て、今あげられたような食糧増産になると、こういうのではあるまいと思うのです。今までそこに人がいなかったところですから、それは農業をやるのに五里も十里も先から通ってきてやるなどということは、日本の今の農業ではとてもそれは言語に絶したことなので、そうすればほんとうにこの隣接のところから増反してこれを耕すか、さもなければ他から入れるかの、こういう二つに一つだ。この場合に他から入れて二百八戸だ、それはあなたの今の答えも、先般私の聞いたところも間違いない。ところが予算は昨年度は四億六千八百万円、今年度は八億五千万円、そのほかですよ、今の国庫債務負担行為は、そのほか。そこで通算ここに幾らかかるのだという質問に対しては、八十億かかる。八十億かかって、その経済効果は二百八戸だと、こう言う。それでは幾ら何でも少な過ぎやしないか。農業人口のことを言えばそうなるのです。いかがなのですか。よそで八億も十億もかけて、私は埼玉みたいに、もうあと耕すところはなくても、秩父の山の高原を開発したって、八十億も費して二百八戸しか戸数がふえないなんていうことはあり得ないことです。だから、過日も答えられないで、これにはすべての人がびっくりした。どうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/44
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045・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) ただいまのお話の中にありました数字につきまして間違いがあると思いますので、ちょっとその点を御猶予をいただきましてお答えをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/45
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046・天田勝正
○天田勝正君 それでは、ついでに申し上げますが、今私が申し上げたことは、先般の分科会でちゃんと記録に載っておることでありますから、そしてその記録をちゃんと見てもらって正確に答えていただきたい。さらにその点は数字が明らかでないそうでありますから、次の質問に移ります。
次は根釧地区の機械開墾建設事業に必要な経費、これがこれまた昨年も二億二百万円、今年も二億二千六百万円、これが続くのです。これで、この経済効果いかがかということになれば、その周辺の農家が若干収入を増しますというお答えなんです。そうしてこれに対する人口は一人もふえない。いいですか、私が聞いたのですよ、そうして答弁を求めて、そういうことなんです。それにこの根釧地域に費す金は幾らかといえば総額十八億円。十八億円で一戸も人はふえず、そうして近所の農家も若干豊かになるということであって、その豊かになり工合もさっぱりわからない。これはすでに答弁を受けたあとなんですから……。これは一体どうしたのですか。それじゃ、効果がないと言われても私は理由はなかろうと思うのですがどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/46
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047・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 根釧の地域におきまする国費の総額は六億でございます。そうして入植戸数が二百八戸ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/47
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048・天田勝正
○天田勝正君 根釧が。おかしいな、篠津がそうであって、これは十八億と、この間速記に載ったばかりですよ。そうすれば、いずれがでたらめを言ったかと、こういうことになる。
それでは一まとめにして言いますが、治山事業に必要な経費、これが二億三百八十七万円、造林事業に必要な経費四億四千二百万円、林道事業に必要な経費一億六百万円、土地改良事業に必要な経費二十億九千六十九万円。いいですか、北海道開発事業……もう数字は言いません。みな十四億とか膨大な数字ですが、それから今言った篠津、根釧、北海道農業機械整備、こういうものは一切私は農林関係だと、こう思うのです、いいですか、治山も、林業も、林道も。砂防といえばこれは洪水も妨げるから、町の方も幾らか助かる、こういうことになるが、今あげた方はそうなる。それから河川等に必要な経費、これも二十五億何がし、こういうものも、これもしかし、助かるところは一番は農業でしよう、やはり。こういうことを並べてくれば、かなり膨大な数字というものが農林、漁業関係……漁業の方は今一つも言ってないですよ、言ってないで、今あげたものは少くとも農林であるということだけは間違いない。いいですか。そこで結局トータルするというと、さっきも篠津の二百八戸、こういうことになるから、農業だけに天田委員は開発というものを見ておると幾らおっしゃっても、これでは何ともこの開発の効果というものは少な過ぎる。これは今年だけのことを言っているのではない。最後の五年が過ぎての話、しかも二度目の。こういうことについてそれはあくまで経済効果があるのだとおっしゃるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/48
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049・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) ただいまおあげになりました各事業のうち、河川はこれを農業にお入れになるのはいかがかと思いますが、それにしましても相当な農業関係の開発の中に国の費用を入れておるということはごもっともだと存ずるのであります。しかしその結果がただ二百八戸の人口増になるというお話でございますが、二百八戸というのは、これらの事業の中の根釧のパイロット・ファームにおける計画の数だけでございまして、これだけのことのために、お話のような農業関係の費用を全部傾倒しているようにおっしゃられるのはいかがと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/49
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050・天田勝正
○天田勝正君 だから、ますますわからぬ。まだこれはふえる数だけ私は申し上げているのですよ。これだけに、それじゃ総体に農業に金をつぎ込んで、じゃその新しい新開拓でなくて、古いところの定着するなりあるいは若干ふえるなりならいいけれども、既存の方は減るのですよ、あなたもお認めになっている通り。すでに五ヵ年間で三千戸は減っておる。これは過日の予算委員会の審議で、やはりお答えになっておるのですから、あなたの方の方が。減るのですよ片方は。だから開発されて、この金をつぎ込んだところだけを、私はまだいい方の条件をここに出しているのだ。ふえている方だけをいっているのだ。減る方を差し引けば逆になるのですよ、それは。だから効果としては二百八戸というのは、ずいぶんあなたの方を大へんバック・アップした私は引例だよ。減る方までもトータルした日にはえらく減っちゃって、農業につぎ込んだのは全部ただなんだということになってしまう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/50
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051・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/51
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052・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/52
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053・栗山良夫
○栗山良夫君 私も天田委員に続いて、いずれ機会を見て、北海道開発あるいは東北開発の問題についてお尋ねをしたいと思います。そこで、ちょっと今後の私の頭をまとめる都合がありますので、お尋ねをしておきますが、政府は、北海道開発法そのものを、最近あなた方が説明されておる趣旨にのっとって、改正をする御意思があられるかどうかということ、一番最初スタートしたときの構想と相当これは違った構想のもとに北海道の開発はやらなければならぬ、こういうことが私は出ていると思うのですが、そういう考えを持っておいでになるかどうか。もしその必要がないということでどんどんおやりになるとすれば、私ども大いにこれは議論しなければならぬ。この点一つ。
それから第二点は、過日私は文春の四月号に載った中谷博士の論説を中心にして、二、三お尋ねをしたことがありますが、これについて、たしか北海道開発次長のお名前であったと思いますが、その名をもって、五月号に、相当手きびしいまた反論をせられております。従って、この反論は次長個人としてお書きになったものか、あるいは北海道開発庁を代表して、北海道開発庁の意思として、政府の意思としてこれをお載せになったのか、この点を一つ明確にしておいていただきたい。私はそのお答えいかんによって、また質問申し上げることを整理をしなければいかぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/53
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054・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 前段の、北海道開発法に基いて、引き続いて北海道の開発を現在の同じ考え方で進めるかという御質問であったと思いますが、(「違う」と呼ぶ者あり)北海道開発計画は、第一次五ヵ年計画に引き続きまして、第二次五ヵ年計画として、内容につきましては、第二次五ヵ年計画は、過去の第一次五ヵ年計画の実績のことも考え、新しい情勢も加え、内容につきましても新しく産業振興も加え、また文化、厚生、労働の、開発に関係の深い事業も加えまして、出発をいたすことにいたしております。
第二の、中谷論文に対します文春五月号に私の名前で出ておりますのは、私個人といたしまして文春に寄稿をいたしたのでございます。しかしながら、これにつきましては、関係方面の御承認を得てやっていることでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/54
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055・栗山良夫
○栗山良夫君 関係方面とはどちらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/55
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056・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 大臣の御了解を得てやっているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/56
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057・栗山良夫
○栗山良夫君 大臣と申しますとどなたですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/57
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058・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 川村大臣の御了解を得て。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/58
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059・栗山良夫
○栗山良夫君 そうするというと、個人の署名入りではあるが、開発庁の意思であるとみてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/59
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060・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 内容は私自身が私の責任において書いたものでございまして、手続上、大臣の御了解を得て発表いたしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/60
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061・栗山良夫
○栗山良夫君 第一問の方は、私の質問に答えておられないのですがね。私が申し上げたことはこういうことなんです。これはもう、まごうかたなく、北海道開発法の精神というものは、食糧増産と人口吸収、この二つが目的なんです。そうして、財政投融資をして開発をするということは、これはあくまでも手段なんです。これはもう一貫して流れているのです。あなたの方からいただいた資料でも流れているのだが、しかし、そういう工合になかなかいかない部面が出てきた。これは率直に認めておられるわけです。あなたの反論でも出ております。従って、そういうことであるならば、また違った角度で北海道開発法そのものに手を加えて改正をせられる御意思があるかどうか。意思がないということであるならば、あやまちを繰り返していくことになるし、この際はもう一度五ヵ年間の実績に従って、北海道開発法そのものを根本的に再検討してもらいたいということであれば、私もまたわかるわけですが、そのどちらであるかということのお尋ねなんでする発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/61
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062・田上辰雄
○政府委員(田上辰雄君) 北海道開発法を改正いたしまして、別な目標を立てるという意思はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/62
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063・栗山良夫
○栗山良夫君 大体わかりましたから、それに従いまして、私もいずれ機芸をみて質問をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/63
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064・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) それでは、本案の質疑は一応この程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/64
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065・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 次に、国有財産法の一部を改正する法律案、国有財産特別措置法の一部を改正する法律案、以上二案を一括議題として、大蔵当局より内容の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/65
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066・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 最初に、国有財産法関係について御説明申し上げます。
国有財産法の一部を改正する法律案の要点といたしましては、まず第一に、現行の閣議決定に基く国有財産審議会を、法制化いたすことでございます。
第二は、総括の整備と申しますか、普通財産に関する管理処分の計画をきめることにいたしたいことでございます。なおこれに関連しまして、行政財産を国以外のものに使用、収益させるときには大蔵大臣に協議するようにいたしたいこと。
第三は、実態調査の計画的な遂行に伴いまして必要な、他人の調査への立ち入りを、規定を新たに設けましたこと。それに関連いたしまして境界確定に関する規定を設けましたことでございます。
最後に、国有財産の増減、現在額に関する報告書、あるいはまた無償貸付状況報告書がございますが、これらの総計算書を国会に出す場合に、その状況を平易に説明いたしました説明書をつけたいと考えたことでございます。
以上の四点でございますので、これについて逐条的に申し上げます。
まず第一に、国有財産審議会を法制化いたすことでございますが、これは九条の二から九条の六まで規定を設けております。ちょうど昨年の今ごろでしたか、国有財産の管理、処分をめぐりまして、国会におきましても、あるいは各方面からきつい御批判をいただきましてその適正化、効率化を期するために、閣議決定に基きまして国有財産審議会が設けられました。これは中央では本省に、地方には各財務局ごとに地方審議会が設けられまして、その後鋭意この国有財産制度あるいは管理、処分についての改善に努力して参ったわけでございます。これまでの成果にかんがみまして国有財産審議会が非常によろしいということになりましたし、また閣議決定にもありますように、次の通常国会において法制化いたすことになっておりましたので、今回この件をお願いすることになったわけでございます。以上述べますこの国有財産法あるいは国有財産特別措置法の改正案も、いずれもこの審議会の議を経て提案いたした次第でございます。そしてこの国有財産審議会では——中央の審議会でございますが、中央は主として政策的なことを取り扱っていきたいと思っております。それから地方の方は、個々の管理、処分の問題を主として審議することになると思います。そして地方には、特にそのほかに各省各庁の所管いたします国有財産につきまして、境界確定に関する問題をこの地方の審議会に諮問する道を開いたことでございます。これはまたあとで御説明申し上げます。そしてこの委員は、中央も地方もそれぞれ三十人以内でございまして、その委員といたしましては、関係行政機関の職員、これは大体次官クラスの方を予定いたしております。それから地方公共団体の職員、これは関係の深い府県知事あるいは市長等を予定いたしておるわけでございます。それから学識経験のある方でございますが、これは金融界、産業界、中小企業界、不動産業界あるいは学界、言論界、放送界、都市計画関係、あるいは山林業関係の方、こういう各方面から有識者の方に出ていただきたいと思っております。そしてこの会長は、中央におきましても、地方におきましても、いずれも学識経験のある者の中からなっていただくようなことになっております。
それから九条の五の方でございますが、「境界査定部会を置く。」という規定がございますが、これは先ほど申し上げましたように、第三十一条の四の三項でございますが、各省各庁の長が、境界を、自分の所管に属する国有の財産につきまして、隣接地の所有者と協議をして境界を定める規定があるのでございまして、その場合、相手が立ち会わない場合には、その前にありますように、その隣接地の所在する市町村の職員の立ち会いを求めて境界を定めるために調査を行うというような規定でございましてその際に、その調査に基いて境界を定めるのでございますが、そのときには各省各庁の長はこの地方の審議会に諮問して意見を聞かなければならないことになっておるわけでございます。これはその境界の確定ということは非常に重要なことでございまして、それを役所側の一方的な見解だけで決定いたすことは穏当ではございませんので、第三者の裁定機関的なこの地方審議会に特に部会を設けまして諮問するようになったわけでございます。そうしてこの部会は学識経験者の委員だけから構成されまして利害関係のあります官庁側はこれに加わらないことになっております。
その次は十一条の二の普通財産に関しまする、管理処分の計画を毎年度末までに大蔵大臣に通知していただく件でございますが、これは普通財産は大部分が大蔵省にございますけれども、あるいはまた農林省、郵政省等にもございまして、この普通財産というものは国に必要がない限りは早く処分してしまうべき財産でございますので、その財産の管理処分を計画的にいたすことが必要だと思います。そのために、その計画的な方針あるいは実施計画等をきめていただきまして大蔵大臣に御提出願う。で、大蔵大臣はその計画の適否を判断いたし、もし変更すべきものがありましたら変更をお願いいたしますし、それからまたその計画の運営を注視しておりまして、必要によりましては実地監査もいたしたりなんかいたしまして、この管理処分計画が計画的に遂行されるというようなふうに努力いたすつもりでございます。
その次はこの十四条に一号を加えました件でございますが、行政財産を国以外のものに使用させようとするときには大蔵大臣に協議をお願いいたすことでございますが、これはたとえば庁舎、あるいは庁舎の敷地等を外郭団体に使用させたり、あるいはその他の国以外のものに使用させておる実情がございます。たださえ狭い庁舎をそういう外郭団体に広いスペースを割くことはどうかと思いますので、そういうような場合には大蔵大臣に協議願う。あるいはまた海浜地等でこれを管理する法律がない場合につきましては、その管理の適正を期するために大蔵大臣に協議をいたす。そういうようなことを予定いたしておるわけでございますが、しかしこれは煩瑣のものまで全部大蔵大臣に協議いたしますことは各省各庁にとって大へんなことでございますので、平易なものはもちろん除きますし、また短期間使用させるような場合には大蔵大臣の協議を要しないようなふうにいたしたい、かように考えております。
その次は立ち入りと境界確定の問題でございますが、実態調査と申しますのは、私の方の所管いたします普通財産のうち未利用になっているものが相当ございます。この実態をわれわれの方で十分把握しない面がございます。と申しますのは、戦後急に旧軍用財産あるいは物納財産、そういう財産を一時に多量に引き受けました。その後もいろいろまた事情もございまして、なかなかその実態を把握いたしまして台帳に登載いたすこともできないような事情もございました。その後ずっと処分に追われまして今日に至ったわけでございますが、従って管理に十分手が回りかねたような実情でございます。従って今後この実態調査を計画的に実施いたしたいと思いましてすでに前年度におきまして五百件程度全国的に選びまして実態調査をいたしましてその状況によりまして今年度から三ヵ年程度にわたりまして、経済的に価値の高い財産につきまして特にこの実態調査を計画的にいたしたいと思っておるようなわけでございます。そのような計画をいたしますと、場合によりますと隣接地の立ち入りあるいはまた隣接地ではなく少し離れたところでございますけれども、いろいろ調査測量のために立ち入りのような必要があるかと思いますので、そういうような場合を予想いたしましてこのような規定を設けたわけでございます。しかしこれはどこまでも相手方に通知するなり、あるいは公告いたしまして、相手方の権利を侵害いたさないように慎重にやりたいと思っております。
その次は三十一条の三でございますが、以下四、五と境界確定に関する規定がございますが、この境界確定に関する規定は国有林野法に同じような規定が現在あります。その規定と大体同じでございますが、さらにそれより一層、私権の尊重と申しますか、隣接地の所有者の私権を尊重する意味におきまして、先ほど申しましたように、地方審議会の査定部会でありますか、境界査定部会に必ず諮問いたしまして特にその点を慎重にしていきたいというふうに心がけております。これを概略申し上げますと、まず各省各庁は隣接地の所有者に対しまして立会場所とか期日とか、その他必要な事項を通知いたしまして、境界を確定するための協議を求めます。そして相手が立ち会わなければ、相手が協議に応じなければだめでございますが、相手の協議を求めまして、そして境界が確定すればそれでいいわけでございますが、その協議ができないからといって、国の方で一方的に境界査定処分をいたすことをしてはならないことになっております。
それから相手が立ち会わないから協議ができないというような場合は、三十一条の四にございますように、市町村の職員の立会を求めまして境界を定めるための調査を行うわけでございます。そしてその調査を行なって境界をきめるわけでございますが、しかしこの境界をきめるのは、三十一条五にありますように、相手方が六十日以内に境界に同意しない旨を通告してこない限りは、相手方の同意があったものとみなしまして確定するわけでございます。どこまでも相手方の意思を尊重しているのでございまして国の方で一方的にきめるようなことはないわけでございます。
それから最後に、国有財産の増減及び現在額総計算書あるいはまた無償貸付状況総計算書でございますが、これは現在数字の列挙にとどまりまして、これだけごらんになりましても、管理処分の実態がなかなか、つかめないようなふうになっておりますので、やはりこの実態を広く国会の方に御了解願うことが大事なことでございますので、これをわかりやすく説明いたしました説明書を添付いたしたいということでございます。最近国有財産白書というものを出しましてお手元にもお届けいたしましたが、この白書をさらにそれを平易にいたしまして、一般大衆向けの説明書をその白書という形に今後いたしたいと考えておる次第でございます。
それから附則の方にいきまして、今申しましたような境界確定の規定を設けますと、現在国有林野法に設けてございますような規定は不必要になりますので、それは削除いたしまして今後すべてこの改正されます国有財産法に従って境界確定が行われるような措置を講じております。
以上簡単でございますが国有財産関係の概括説明を終ります。
次に国有財産特別措置法でございますが、この改正の要点は、たとえば赤羽火薬庫の跡がございますが、ちょうど赤羽駅をおりまして左の方に十五分程度歩きますと、旧陸軍赤羽火薬庫がございまして現在そこは東京都の知事に無償貸付いたしまして、そこに三百七十二世帯入っております。旧火薬庫でございます。これは土地が二万六千二百二十七坪もございまして、この広大なところにわずかに三百七十二戸しか家がないわけでございますが、あの辺の土地は非常に住宅地として適当なものでございます。それからまたその建物も相当腐朽しておりまして、危険な状態にございますので、これをいつまでも放置するわけにも参りません。従ってこの際第二種公営住宅を東京都に作っていただきます。そしてこの三百七十三世帯の方々をそこに収容していただきます。しかもその第二種公営住宅を立体的に建てますと非常に土地が余ってくるわけであります。その土地を現在問題となっております住宅地に活用いたしたら、一石二鳥と申しますか、建物の方もきれいになりまして、また土地も余ったのも出て参りまして、それが住宅地として活用されるようなこともございますので、そのような措置をいたしたい。それをいたすためにはある程度の助成をいたさないとなかなかそういうことがうまくいくものではございませんので、現在地方団体が住宅地に国有財産を使う場合におきましては、五割以内の減額譲渡あるいは貸付をすることになっておりますけれども、場合によりましてはそれ以上の優遇措置も講ぜられるように、ここに書いてありますような方法によりまして、地方団体にその土地を譲渡することができるような道を開いたわけでございます。従ってその取りこわすべき古い建物等は、これは廃材等となりますから、それはその地方団体に譲渡いたすというようなことをここにねらっているわけであります。これはちょうど御審議中の国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法案にございます立体化の思想と一連のものでございまして、こういうものを高層化いたしまして、なるべく土地を効率的に使おうという考えから、こういうようなものになると同時に、この場合におきましては特に保安上危険な建物を一日も早くきれいなものにいたしたいということから、このような法律案を提案いたしておる次第でございます。何とぞよろしく御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/66
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067・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) それではただいまの二案に、国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法案及び国有財産特殊整理資金特別会計法案を加えまして、四案を一括して質疑を行いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/67
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068・天田勝正
○天田勝正君 まず国有財産法の説明で、「その管理及び処分を適正に行うことに資するため、国有財産審議会を法制化するとともに、」云々と、こうなっております。そうすると、今までの管理や処分が適正でなかったという事実があったので、かようなことになったと思いますが、さようでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/68
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069・天野四郎
○説明員(天野四郎君) われわれといたしましては最大の努力をして参ったわけでございますが、そのような点もなきにしもあらずということで、このような措置をお願いした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/69
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070・天田勝正
○天田勝正君 この各省各庁の長が管理をしておる、その管理の責任をそれぞれ明確にしていこう、こういうのも一つこの法律の改正の目的でありますが、それでは過去においてそういうことは明確になっておらない部分もあった、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/70
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071・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 各省各庁の国有財産の管理の状況でございますが、行政財産はその財産を主管する各省各庁が管理することで、これは法律上明確になっております。それから普通財産は原則といたしまして大蔵大臣が集中的に管理する建前になっておりまして、場合によりましては各省各庁で管理する場合がございますが、原則といたしまして普通財産は大蔵大臣が管理することになっております。そして同時に大蔵大臣は、各省各庁を通じて総括と申しますか、そのすべてのコントロールと申しますか、そういうようなことをやっていく建前になっております。その点は従来も明確でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/71
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072・天田勝正
○天田勝正君 私がなぜそういう質問をするかといえば、ここに一つ例をあげた方がいいと思う。かつて私は、会計法の審議の場合にもこの例を持ち出して、実は明確な答弁を得ておらない。たとえば私どもが今おる参議院会館のすぐ隣に旧陸軍の鉄塔が三つあった。あれは一体それでは旧法律においてはだれが管理しておったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/72
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073・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 御質問の鉄塔は農林省の横にあります鉄塔と存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/73
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074・天田勝正
○天田勝正君 いや、ここにあった旧陸軍省の中に、私どもの会館のすぐ下に……。補足します。なぜ私がその質問をするかといえばですね、いいですか、あの鉄塔を二ヵ月かかってガスでばたばた分断して売っ払っちゃった人間がいる。それはもちろんあとでわかって懲役に行きました。とにかくあれだけの旧陸軍の鉄塔ですからね、夜陰にひそかにこれを盗んでいくなどというまねはできっこない。これはまつ昼間二ヵ月かかった。だから今どこにありますかと言っても今ありゃしない。取られてしまったのだ。ああいうのは一体だれが管理しているのか。そういうところに国有財産法の一体無責任な管理という問題が起るのです。だから具体的に私は例を知っておるがゆえに今聞いたのです。これをかつて持ち出しても、これは往生して参るのだ、あなたの方は。だからそういう不備な点が今までにあったのではないかと冒頭に質問しておいたのです。どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/74
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075・天野四郎
○説明員(天野四郎君) ただいまの鉄塔はおそらく国会図書館の敷地の中だと存じますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/75
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076・天田勝正
○天田勝正君 違うよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/76
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077・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 参謀本部の三宅坂の近くでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/77
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078・天田勝正
○天田勝正君 そうそう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/78
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079・天野四郎
○説明員(天野四郎君) あれは実は国会の所管になっておりまして、国会が管理されるべき立場にあります。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/79
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080・天田勝正
○天田勝正君 そうでないのだよ。それは、つまり議員会館の敷地内でもない。その一つは敷地内。三つあって一つは敷地内。だからそれは国会の管轄かもしらんが、あとの二つはその中間にある。中間といったって少くとも国会側ではない。あれはどういうのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/80
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081・天野四郎
○説明員(天野四郎君) では詳細調べましてお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/81
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082・天田勝正
○天田勝正君 これは詳細調べて答えることに前の会計法のときにもなっておるのだけれども、こない。だから私は、今までも管理や処分というものは必ず、それは、その悪意であるなしは別として、とにかく不十分のものであった、こういうことだろうと思うけれども、そうでなければ、ここに新しくこの法律などの改正を別にしなくてもいいと思うのですがね、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/82
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083・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 天田委員の御質問、思い出しました。昨年物品管理法の審議をしたときに、そういう御質問が出たそうで、私ちょうどあいにくその場におりませんで、そのとき調査した資料がありますので、後ほど一つ御連絡申し上げます。
それからその前半の管理の問題でありますが、まあ、あの手この手で国有財産の管理処分を適正にやっていきたいと思いまして、それで今お願いしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/83
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084・天田勝正
○天田勝正君 今のは一番わかりやすいことで一つの例をあげたのです。そのことによってあなた方を責めようとは思っていないのです。しかし、国有財産は、説明にもありますように何しろ膨大なものであって、その管理処分をしっかりやっていただきませんと、それはやはり国民の税負担で成り立っている財産でありますから、よりしっかりやりたいというのが私どもの希望でもある。ところが、この国会のすぐそばでさえも、さような始末である。ここに私どもの非常な不安があるのですね。そこで、この間、国有財産白書を私どもいただいております。ああいうものを出しただけでも一つの進歩であるとは思いますけれども、ああいうものを見てもそういう不始末、今私があげた例が今起きていれば大へんな不始末として追及するのであるが、時効になったから、これは笑い話のようにしておりますけれども、その表面に出て来る白書などには、いわゆるだれの不始末であるかわからぬような問題は、これは出て来ないのですよ。そこに困る問題が起きて来るのであって私はとにかく、一つには良心の問題であろうと思いますけれども、今のところは、それではただ大蔵省が把握する場合には、各省各庁が管理しておる財産にしてこれを統合的には大蔵大臣、こうなるのでしょうが、大蔵省が把握する場合にはただ帳面づらだけの引き合せで今までのところはやっておられたのですか、どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/84
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085・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 総括の、つまり内容の説明でありますが、それはまず第一に消極的には、各省各庁が、たとえば土地を取得したいとか、建物を取得したい、そういうような場合には大蔵大臣に協議することになっております。また交換いたしたいとか、またよその省からこういう財産を自分の省の方に所管換を受けたいという場合には大蔵大臣に相談が参ります。私どもの方では、そのことの適否を判断いたしまして、いろいろと御回答申し上げているわけでありますが、これが一つの方法でございます。それからまた、たとえば火事で焼いたとかいうような場合には通知をして来ることになっております。これも総括の一つの方法であります。それからまた積極的には、こちらから各省が使っております財産の状況を実地監査いたしましたり、あるいはまた報告資料等をお願いいたしたり何かいたしまして、積極的にこちらから出ております。そのために国有財産監査官というものが中央にも地方にもございまして、そういうような先ほどのような書類を通して不審に思った点をいろいろ調べまして、実際に現場に行っていろいろと確認いたしておりまして、もしいけない点がございましたら、その是正方を求めております。それからまた決算には、一年間におきます国有財産の増減というような報告書を各省からいただきましていろいろとそういう面からもチェックしておりまして、まあわれわれの方としましてはできるだけのことをやっておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/85
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086・天田勝正
○天田勝正君 今責めているのではないのだから、できるだけやっておりますとか、そういう答弁は私は求めていない。問題は、国民の税負担で成り立っているものだから大切にしなければならないというまず前提で、私、質問しているのです。不備があれば人間をふやすということも必要でしょう。そこでお聞きしたいのは、帳簿上の引き合せというのはそれは一つの形式であって、有体財産なんだから、問題は実態をどう把握しているか、ここに私はやはり焦点を合せなければいけない、こう思います。そこで定期的に確認を一体しているのですか、していないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/86
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087・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 全国に二万以上にもわたりまして口座がございまして、その口座と申しますのは、たとえば税務署とかそういうものが一口座になりますが、そのような多数な口座があります。それから私の方のスタッフといたしましては、普通財産の旧軍用財産とか物納財産を売ったりするもの、そういうものを全部合せて三千人というわけであります。とてもそういう点から申しましたら手が回りませんけれども、しかしいろいろなことを、資料なんかを集めまして、いろいろとあやしいものにつきましては現場に行って見ております。従って全部をチェックするということはとてもできないわけでございまして、それはそれぞれ各省庁の良識ある、何と申しますか、そういうような御協力を期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/87
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088・天田勝正
○天田勝正君 あやしいものについては調べるといったって、あやしくなったときにはなくなってしまう。今のが一番いい例でしょう。あやしいときにはかげも形もなくなっちゃって、調べたって、さっきの説明で直させるというようなことがあったけれども、直りゃしないですよ、とても。そこにやっぱり問題があるので、そこで私の聞くのは、人数が少ければ少いなりで、一年一度の定期検査はできないまでも、三年に一ぺんなり……。だから二万件あれば、たとえば今年度はその五千件をやる、それからその翌年度に五千件見ると、こう順ぐりにすれば、二万件あれば四年かかれば、もう四年目に一ぺんは見れると、こう思うのですが、そういうことをやっても足らないのですか、これを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/88
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089・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 二十六年度から国有財産の実地監査というものを始めたわけでございます。それで三十一年度で大体各省を一巡いたしたわけでございます。しかしその一巡と申しましても、これは全般の大勢を把握するような意味においてでございまして二万口座全部を見るというわけにはとても参りませんので、その各省については、場所によりましては六割程度見た、あるいは三割程度見たところもございまして、一応各省は見て回ったわけでございますが、これからまた何分われわれ自身の管理処分すべき普通財産の方に問題がいろいろと起っているわけでありますから、まずこの方を収めてということで、その方に相当力を使っておりますが、これもだんだんおかげさまで軌道に乗りつつありますので、これからそういうような各省の方の財産についてはまた定期的に計画的にやっていこうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/89
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090・天田勝正
○天田勝正君 それでは、その国有財産といっても、さっきあなた自身も言われるように、税務署などで使っておる大ぜいの人がそこに働いておる、そして土地だって、えらいあまっているのじゃない。というのは、まさかそれをよそへ転売するほどもなかろうし、また隣近所の連中が半分そこを占拠してしまうというようなこともない。それから外形から見ても、これは建物があるということは、はっきりするので、内部の改造くらいはどうか知らぬけれども、しかし国有財産としてはそこに厳然としてある、こういうことは当然わかります。私は、さっきちょっとあなたも特別措置法の改正のときに例を引いたように、地方公共団体に貸してある、しかもかなりにその土地というものは余っておる。こういうようなものが不法占拠されてしまった。実際はそれが既成事実になってしまって、さて旧態に戻そうとしたってやっぱり戻らない、こういうことが一番問題なんですから、そういうものだけでも見て行くのは、私はそう時間はかからぬと思うのですがね。まあ埼玉県なら埼玉県一つ例にとっても、三日も歩けば一応ここは、あるなしということだけは、それは一寸や二寸はみ出されているかは知らぬけれども、とにかくそこに国有財産としてはある、これだけの確認は、一県一人で三日もかかれば見て歩けると思うのですが、それでもできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/90
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091・天野四郎
○説明員(天野四郎君) そういうことを確認いたすために、今年度から三ヵ年にわたりまして、重要なものにつきまして計画的に実態調査をいたしたいと考えておるわけでございまして、これまでもいろいろやっておりましたけれども、何分、処分の方に重点を置きまして、歳入確保という方面から要請もございましたので、それからまた戦後の経済の復興とか、民政の安定とか、そういう方面に寄与するために、財産の活用という方面ばかりに重点を置き過ぎたので、管理になかなか手が回らなかったような状況でありますが、これからはそういう点を計画的に実態調査いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/91
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092・天田勝正
○天田勝正君 下十条と王子の中間だと私は記憶しておりますが、あすこは堤防みたいなものがあって、かつてはレールが敷かれて、隅田川の方からずっと火薬庫の方まで線路が伸びておったと思いますが、現在でもその跡がある。ところがあの上には一ぱいバラックが建っていますね。あすこはだれが管理しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/92
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093・天野四郎
○説明員(天野四郎君) ちょっと思い出せませんから、それもまた調べまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/93
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094・天田勝正
○天田勝正君 だから、それがあやしいのだよ。だから、それは要するに、あすこへ一ぱい家があって、あの人々は気の毒だといえば気の毒だ。しかし国有財産の管理がだらしがないから不法占拠されておる。だから、さっき言う通り、それじゃ元に戻しますと言ったって、ちょっくら戻りやせんですよ、人がいるのですから。それで、それはああいうところへ住まわなければならない人は気の毒と言えば気の毒だけれども、しかしまた他の気の毒な人の税負担でああいうものの国有財産が成り立っておるということも、また考えなければいけない。だから、これは国有財産の議論なんというものは、法律の十文字や五文字議論したってだめなんです、実態で議論しなければ。そこで私は、さらにまた近い例を言いますが、すぐそこに三宅坂のところだね、あれは道におっついてずっとれんが塀があった。参議院の速記者養成所の前に道路にぴたっと隣接して、れんが塀がありました。今でも便所のうしろだけがそれが残っております。いつの間にやら不法占拠してしまったね、十戸ばかりのものが。ああいうものはどうなっているのですか。あの不法占拠は国会で速記者養成所及び会館を建てる以前からある。だから、あれは国会が管理しておりますからという答弁では、答弁になりません。それをちゃんと大蔵省が管理しておったのやら復員局で管理しておったのやらわからないけれども、不法占拠のままを要するに引き継いで、そこで遂に国会の速記者養成所は、そいつを除いて、あすこの後にさくを結っておる。それが既成事実となって、今はそれを当人に譲り渡したかどうか知りませんが、たまたまこの法案の審議になったから聞くのだけれども、まことにだれが管理しているやらさっぱりわからない。既成事実で、もう居すわってしまったのが得だということになる。そして決して生活に困る人ではありません。たとえばあの一軒、飲み屋やら、たばこ屋やらをやっておるけれども、あのくらいはやる店というのは、このかいわいではないのですよ。いいですか。これは実体論でやらなければだめなんだよ、財産管理なんというものは。だから、この改正でそういうことが直るのなら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/94
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095・天野四郎
○説明員(天野四郎君) おっしゃるような例は全国に相当あるかと思います。そして、それもいずれも戦後の特殊な事情によってそのような状況になっておるわけでありまして、決してわれわれの方はなまけておるわけではありません。たとえば今引用されました例でありますが、あの参謀本部のところでございますが、あれも戦後占拠される前からずっと軍関係の人が住みついておりまして、そしていろいろわれわれの方で交渉しておりましたが、そのやさきに国会の方であの土地をお使いになりたいという話がありまして、国会の方でそれを立ちのかせることを条件にして、所管がえをいたしましたようなわけでありまして、あの件については万事国会にお願いしてあるようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/95
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096・天田勝正
○天田勝正君 国会に来ないのをやろう。(笑声)聞くところによれば、大久保利通侯が暗殺された清水谷公園、清水谷公園と参議院の宿舎——旧李王様の屋敷跡、この間に、最近一戸は片づけたが、今でも七、八戸はちゃんと住まっておる。これは国有財産だという話を私は聞いておるのですが、あれはどこが管理しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/96
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097・天野四郎
○説明員(天野四郎君) あの清水谷公園は、国有地を都が管理する公園でございまして、国の方から無償貸付をいたしておるわけでございます。従って、管理の全般責任は都が持つことになっておりまして、この問題につきましては、ちょうど都市公園法というのが昨年国会で御審議願いまして……、その法律によりまして、全国的にその公園に住みついている問題がございますので、それはその公園法によりまして、今後追い立てるような方法で、今極力財務局が中心になりましてやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/97
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098・天田勝正
○天田勝正君 その住まっておる連中は、おまけにあの公園に井戸を掘っている。この井戸は使っては相ならぬと書いてある。実に驚くべき、習慣は権利を生ずるとはまさに私はこのことだと思うのです。われわれがあそこの公園に行って水を飲もうとしても、その井戸には、これは使っては相ならぬと、この住民以外は。そうしてそれが都が管理しているのだということで、一応の答弁には、役人らしい答弁にはなるし、さっきの説明では、さように管理するものがいかようであろうと、その調整するのは大蔵大臣だと、こう言われる。しかし大蔵大臣が一々これこそ回れっこないのは明らかで、そうすれば、大蔵省の管財局が、少くともこの国有財産をお前の方で管理させることになっておるが、異状はないかということは一々念を押すべきである。異状がないと言ったら、それに異状があった場合には、その管理者の方に責任を転嫁もできる。何もその所要なる処置を、念押しもやらないで、それで、いや、あっちだ、こっちだと、この行き方というものが、すべての役所のやり方として、民間から見た場合まことにまずい、こういうことになる。これらが今度のこの法律の改正によって全部払拭できると、こういう御自信がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/98
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099・天野四郎
○説明員(天野四郎君) 不動産の管理はきわめて困難な仕事でございまして、たとえば不動産を売るにいたしましても、千三つという言葉がございます。(笑声)それは千件口がかかって三つしか成功しないというような、そういうようにきわめてむずかしいような仕事でございまして、この管理に至っては、まさにいろいろと委員のおあげになりましたようなことがあって、非常にむずかしい問題でございます。全く国ほど弱いものはないと私どもしみじみ痛感しておる次第でございますが、今後は今おっしゃったようなこのような法案を一つ御審議していただきまして、そういうようなことで少しでも一歩でもいい方に近づけたい、そういう考えからわれわれは考えておりまして、これをもって全部が払拭できるという大それたことは考えておりませんが、これは皆さんの御支援によりまして、一歩でも三歩でも近づけたい、そういう切なる望みからお願いしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/99
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100・天田勝正
○天田勝正君 お願いと言っても、この法律に不賛成だなどという前提で言っているんじゃない、まだ足らなかろうという前提で言っておる。そこで、ただ根本的な考え方が、あなた方は国有財産を管理するということはなかなかむずかしいという前提に立っているけれども、われわれ民間人から言うならば、有体財産の管理、及びそれが不正に使用されておるというのを発見するのは一番やさしい。役所の仕事の中でも最もやさしい仕事だと私は思っておる。ここに国会なら国会という、こういう、だれが見たって見過ごすようなものではない。見過ごすようなものでないそこに土地があって、そこを他のものがひょいと入って来て家を建てたり占拠しちゃった。これは別段大学を出た人でなくても目につく。みんなのように高文か何か通ったまことに学のある人でなくても、われわれ学のない者が見てもここが不法占拠された、されないなんというのはそれは別に法学通論を学ばなくてもすぐわかる。だから一番私は簡単なことだと思う。極端に言えば、大蔵省へ通っておる人たちもたくさんある。そうすると、たとえば虎ノ門あたりを通っていれば、通った瞬間に、あの虎ノ門公園事件なんてないわけだ、一番初めに問題にすれば。清水谷公園の前を通る大蔵省の管財局の役人がもし一人でもいて、職務に熱心であれば、これが勝手に使われているんだということはすぐわかる、地所がどこか煙の中へ消えてしまうんじゃないのだから。さっきの鉄塔の問題だって、もし参議院のあれだとするならば、あれだけ通う参議院の職員がこれを見てあげて、きょうあれが取りはずされつつある、何事だというのですぐわかるはずなんだ。だから私どもはこういう有体財産の管理というものはきわめて簡単なんだ、やりさえすればすぐできるんだという、こういう考え方を持っておるのであって、あなた方もそういうつもりになってもらわなければ、幾ら法律をたくさん作ったって、まま子扱いではだめだと、私はそう思う。これは意見を申し上げておきます。ほかの諸君も大いにあるだろう……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/100
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101・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 四案の質疑は一応この程度にとどめまして、本日はこれにて散会いたします。
午後四時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614629X02819570412/101
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