1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年二月二十八日(木曜日)午
前十時三十九分開会
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委員の異動
二月二十七日委員大野木秀次郎君辞任
につき、その補欠として佐野廣君を議
長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 本多 市郎君
理事
大沢 雄一君
小林 武治君
委員
伊能繁次郎君
小柳 牧衞君
佐野 廣君
館 哲二君
安井 謙君
吉江 勝保君
占部 秀男君
鈴木 壽君
中田 吉雄君
成瀬 幡治君
岸 良一君
森 八三一君
白木義一郎君
国務大臣
国務大臣 田中伊三次君
政府委員
自治政務次官 加藤 精三君
自治庁財政部長 小林與三次君
自治庁税務部長 奧野 誠亮君
事務局側
常任委員
会専門員 福永與一郎君
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本日の会議に付した案件
○昭和三十一年度分として交付すべき
地方交付税に関する特例に関する法
律案(内閣送付、予備審査)
○特別とん譲与税法案(内閣送付、予
備審査)
○地方税法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○地方行政の改革に関する調査の件
(昭和三十二年度地方財政計画に関
する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/0
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001・本多市郎
○委員長(本多市郎君) これより委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について報告いたします。
昨二十七日付をもって、大野木秀次郎君が辞任され、佐野廣君が補欠選任されました。
以上でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/1
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002・本多市郎
○委員長(本多市郎君) 次に、本日の議事でございますが、本日は、ただいままでに当委員会に予備審査のため付託になっておりますところの、昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案、特別とん譲与税法案、地方税法の一部を改正する法律案、以上の三法律案並びに昭和三十二年度地方財政計画につきまして、政府の説明を聴取することにいたしたいと存じます。
まず、議事の進め方でございますが、本日は、衆議院の地方行政委員会も、同様な議題で開会されるとのことでございますので、その関係上、当委員会といたしましては、午前中は三法律案の説明を聴取するにとどめ、一たん休憩をいたし、午後は、衆議院における財政計画の説明終了を待って、直ちに委員会を再開し、財政計画の政府説明を聴取いたし、御希望がありますれば、引き続き質疑を行う。大体こういった順序で、議事を進めて参りたいと存じますが、いかがでございましょうか。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/2
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003・本多市郎
○委員長(本多市郎君)それじゃ、御異議ないと認めて、さよう取り計らいます。
昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案、特別とん譲与税法案、地方税法の一部を改正する法律案、以上、いずれも予備審査でございますが、三法案を便宜一括して議題に供します。
これより、政府の提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/3
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004・田中伊三次
○国務大臣(田中伊三次君) まず、昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
最近における経済界の好況によりまして、本年度においては、租税収入に相当の自然増収が見込まれ、また、別途所得税及び法人税の増収を財源として一般会計の予算補正も行われ、地方交付税が百億円増額されることになりまして、関係予算の御審議を願っている次第でございます。しかして、地方交付税の増額に伴いまして、本年度内において緊急に措置を必要とする要措置額といたしましては、交付税の増額に伴い法律上当然に交付すべきこととなる普通交付税の調整減額復活分と、昨年末の期末手当の増額支給に伴いまして必要を生じた財源所要額との両者の合計約二十四億円でありますが、御承知のごとくに、地方財政における公債費の圧迫が累年著しくなって参りまして、明年度は、さらにその重圧が加わり、これを緩和する対策を速急に講ずる必要が痛感せられるところでもありますので、右に述べました額を除いた額の範囲内において、今回の交付税の増額分を今年度交付しないで、明年度の地方債の元利償還費の一部に充てることができるようにすることが、地方財政運営の諸事情を総合的に勘案いたしますと、さしあたっての措置としては、最も適当であると存ずるのであります。
よって、特に法律によりまして、昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例を設けまして、今回増額される地方交付税については、普通交付税の調整減額復活分及び期末手当増額所要分を除いた額を限度とし、その限度内の額を本年度内に交付しないで、これを法定の昭和三十二年度分の交付税の総額に加算をいたしまして、明年度において交付することができるものとしようとするものでございます。
以上が、この法律案の説明の要旨でございます。
それから続いて、特別とん譲与税の提案理由を御説明申し上げます。
特別とん譲与税法案につきましては、すでに、本国会に提案されております特別とん税法の制定に伴い、特別とん税の収入額に相当する額を開港所在市町村に譲与するために、特別とん譲与税の制度を創設いたしまして、その譲与の基準、時期及び譲与時期ごとの譲与額その他譲与について所要の規定を設ける必要がございます。これが、この法律案を提案する理由でございます。
なお、この法律案の具体的内容を簡単に御説明申し上げますと、
第一に、特別とん譲与税の額でございますが、すでに御説明をいたしましたように、これを特別とん税の収入額の全額といたしまして、開港にかかる港湾施設が設置されている市町村で自治庁長官が指定するもの、すなわち開港所在市町村に対して譲与をするものといたしております。その額は、昭和三十二年度におきましては、五億八千六百万円の見込でございます。
第二は、譲与の基準でございますが、さきにも申し述べましたように、開港への入港にかかる特別とん税の収入額に相当する額を譲与するものといたしておりますが、この場合におきまして、一の開港にかかる開港所在市町村が二以上あるときに、次によるものとしております。すなわち、当該二以上の開港所在市町村のそれぞれの区域を個別の税関が個別に管轄しているときは、税関ごとの特別とん税の収入額に相当する額をそれぞれの市町村に譲与するものとし、また、これらの市町村の区域が一の税関の管轄区域に属するときは、港湾施設の利用状況その他の事情を参酌いたしまして、総理府令の定めるところによって、当該税関にかかる特別とん税の収入相当額を按分いたしまして譲与するものといたしているのであります。
第三は、譲与時期でございますが、毎年度九月と三月の二回といたしまして、それぞれ前六月間に収納いたしました特別とん税の収入額に相当する額を譲与することといたしております。
なお、昭和三十二年度におきましては、初年度でありますために、必要なる経過規定を若干設けております。
第四は、特別とん譲与税の使い道についてでありますが、国は、特別とん譲与税の譲与に当りましては、その使い道について条件をつけたり、または制限してはならないことといたしております。
なお、別途地方税法の一部を改正して外航船舶に対する固定資産税を軽減することとしており、これによって港湾所在の市町村の税収入が減少することとなるのでありますが、この特別とん譲与税の譲与によって、おおむねその全額が補てんされるものと信じております。
以上が、特別とん譲与税法案の趣旨でございます。
最後に、地方税法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
地方税においても、明年度は相当の自然増収が期待することができるのでありますが、ようやく再建への第一歩を踏み出した地方財政の現状では、これを財源として積極的に減税を行う余地は乏しいのであります。しかしながら、地方税制には、なお負担の均衡、合理化をはかるべき点もありますし、また、税務行政の適正化を期すべきものもございますので、若干の減収の生ずるところでありますが、昨年末提出されました地方制度調査会及び臨時税制調査会の答申の趣旨をも尊重し、あえてこの際若干の改正を加えることといたしたのであります。
改正案の骨子といたしますものは、まず第一に、住民税について課税方式を異にすることによる市町村間の負担の不均衡を緩和することであります。
第二に、所得税の減税に伴い自動的に生ずる住民税の減収をできるだけ回避するとともに、住民税負担の軽減にも留意いたしまして、その税率を調整したわけであります。
第三に、中小企業者の事業税負担を軽減するため、法人、個人ともに低額所得部分に対する税率を軽減することにいたしました。
第四に、遊興飲食税につきましては、租税負担の合理化をはかるとともに、税金徴収事務の簡素化を徹底したいと考えたのであります。
第五に、固定資産税につきましては、大規模償却資産に対する所在市町村の課税限度額を拡張をいたしました。
第六に、軽油引取税について、揮発油課税の増額に対応いたしまして、道路整備促進に必要な財源を充実するために、税率を引き上げることにいたしました。
以下、その内容の概略をご説明申し上げます。
第一は、住民税に関する事項であります。
その一は、所得税の減税に伴って自動的に生ずる住民税所得割の減収をできるだけ回避したいと考えまして、その税率を昭和三十三年度二六%、これは、道府県民税の場合においては七・五%、市町村民税の場合は一八・五%という割合になるわけでありますが、昭和三十四年度以降二八%、これは、道府県民税八%、市町村民税二〇%の割合でございますが、こういうふうに調整しようとすることであります。
所得税について大幅な減税が行われます結果、減税後の所得税額を課税標準とする昭和三十三年度以降の住民税所得割におきまして、その税率が現行の二一%のまま据え置かれますと、自動的に住民税もまた減税されることとなり、その減収額は、実に初年度百六十五億円、平年度二百二十八億円に上ることとなるのであります。
もとより国税、地方税を通ずる個人所得に対する租税負担は重きに過ぎるのでありますが、住民税の減収がこのように多額に上りますことは、この税が地方税の基本をなすものでありますこと及び地方財政がいまだ再建への途上にありますことにかんがみまして、これが補てん措置を講ずることにせざるを得ない事情におかれております。しかしながら、所得税の改正が過度の累進度の緩和をそのねらいの一つとしていますので、減収の回避にあたりましても、原則として、個々の納税義務者の負担が現行制度による負担をこえることとならないように留意することはもちろん、進んで若干の所得割負担の軽減をも意図して税率を調整することといたしたのであります。その結果、所得年千三百万円以下の納税者は、すべて所得税のみならず、住民税所得割におきましてもまた減税となるのでありまして、現行制度による場合よりも、初年度において七十九億円、平年度において百十六億円の減税となるのであります。
その二は、課税総所得金額を課税標準として所得割を課する第二課税方式、および課税総所得金額から所得税額を控除した金額を課税標準として所得割を課する第三課税方式につきましても、その課税標準額に段階を区分いたしまして、当該区分ごとの金額に応じて順次に適用されるべき率を法定をいたしまして、市町村はこれに準じてその税率を定めるものとしたことであります。
現に、市町村においては、ただし書による第二課税方式を採用しているものが全市町村数の七六%に及び、第一課税方式を採用しているものが一五%でこれに次ぎ、九%の市町村がその他の課税方式を採用しているのであります。第二課税方式及び第三課税方式においては、市町村は、その条例で定める税率によって幅ひろく任意に課税することができるものとされているのでありますが、最近におきましては、所得税の減税等の影響もあって、特にただし書による第二課税方式を採用する市町村においては、第一課税方式を採用する市町村の場合に比べて一般的にその負担がかなり重重くしかも、その傾向は低額所得者に顕著になってきているのであります。その結果、課税方式を異にする市町村の間においては、同じ程度の所得者でありながら、市町村民税所得割の額に二倍、三倍の差のあることも珍らしい例ではなくなっているのでありまして、それぞれの課税方式の特性もさりながら、もはやこれをそのままでは放置することができないような状況にまで立ち至っているのであります。そこで、第二課税方式または第三課税方式の場合においても、その所得割の負担が第一課税方式の場合における負担とおおむねひとしくなることを目途として課税標準額に段階を区分し、かつ、その区分ごとの金額に応じて順次に適用されるべき率を法定し、市町村は、この率に準じて条例で税率を定めることとするとともに、ただし書による第二課税方式または第三課税方式によって所得割を課税する場合においては、市町村の条例で定めるところにより、扶養親族の数に応ずる税額控除を行うものとしたのであります。なお、この場合におきましては、現行通り、当該市町村の税率によって算定した所得割の額が課税標準額の、第二課税方式による場合は百分の七・五、第三課税方式による場合は百分の十五に相当する額をこえることとなるときは、当該額にこれを押えることとしております。
この措置によって生ずる所得割の減収額は、四十九億円程度と見込まれるのでありまして、関係市町村の財政に及ぼす影響は少くないものがあると考えられるのでありますが、市町村税全般についてかなりの増収が期待されることでもございますし、かつ、所得税の大幅減税に伴い第一課税方式による所得割の負担が将来一層軽減され、課税方式相互の間における負担の不均衡がさらに拡大されていくことが予想されますので、この際住民負担の不均衡を緩和するため、あえてこのような措置を講ずることといたした次第であります。
第二は、事業税に関する事項であります。
その一は、中小企業の租税負担を軽減しようとすることであります。
すなわち、標準税率を法人につきましては、現在の所得年五十万円以下一〇%を八%に引き下げるほか、さらに軽減税率の適用範囲を広げて、年五十万円をこえ年百万円までの部分を従来の十二%から一〇%に引き下げることとし、個人の第一種事業についても新たに軽減税率を設けて、課税所得年五十万円、基礎控除前で六十二万円となるわけでございますが、この部分を従来の八%から六%に引き下げることとしたのであります。ことに個人の第一種事業の中には、その事業の所得の大部分が事業主の勤労によって得られるものがあり、これらの事業と第三種事業との区分は、具体的に困難でありますので、低額所得部分について税率を同じくすることによって、その間の負担の均衡をはかろうとしているのであります。これらによる減収額は、初年度五十八億円、平年度七十七億円の見込であります。
その二は、法人の行う地方鉄道事業及び軌道事業について、課税標準を従来の収入金額から所得に改めたことであります。
昭和二十九年バス事業に対する事業税の課税標準が収入金額から所得に改められて以来問題となっていたのでありますが、近来バス事業の発展がめざましく、これとの競争関係にある地方鉄道事業及び軌道事業も多いことにかんがみ、その間における負担の均衡をはかるため、あえて外形課税の理論を捨てて、所得課税に改めようとするものであります。この結果は、大多数の地方鉄道事業及び軌道事業にとっては減税となるのでありまして、その減収額は、初年度三億円、平年度五億円の見込みであります。
その三は、公衆浴場業を第一種事業から第三種事業に移そうとすることであります。
公衆浴場が公衆の保健衛生向上のため特殊な公的規制を受けていることなどを考えたからでありまして、これによる減収額は、約一億円でございます。
第三は、娯楽施設利用税に関する事項であります。
その一は、スケート場を法定の課税対象施設から除外することにいたしまして、スケートは、娯楽としてよりもむしろ大衆化されたスポーツとして見ることを適当であると考えたからでございます。
その二は、ゴルフ場の利用に対して外形課税の途を開くことでありまして、道府県の条例の定めるところにより、利用の日ごとに定額により課税することができることとし、その標準税率を一人一日につき二百円といたしております。
第四は、遊興飲食税に関する事項であります。現行の遊興飲食税は、一昨年の公給領収証制度の採用及び税率の合理化によってかなり適正化されたのでありますが、なお課税客体と消費金額の差によって、税率を四段階に区分しておりますために、勢い税金徴収事務も複雑となり、消費者にとっても理解しがたい姿となっているのであります。また、課税客体の差による現行の税率区分も、消費行為の実態に照らし適正とは断じがたく、現に課税客体の相違による税率区分を廃止しまして、もっぱら消費金額の多少によって適用税率を区分すべきだとの意見さえ寄せられている実情であります。このような事情にかんがみまして、今回、芸者などの花代部分に対する税率を他の遊興行為に対するものと区分している従来の制度を改めて、一律に一五%といたしました。また、旅館につきましては、新たに一人一泊について八百円の免税点を新たに設け、この免税点をこえる宿泊及びこれに伴う飲食の料金については、現行通り五百円を基礎控除して、税率はすべて一〇%に、また、普通飲食店における一人一回の飲食についての免税点を従来の二百円から三百円にこれを引き上げ、免税点をこえる飲食に対する税率は、すべて一〇%とすることとし、これに伴い、チケット制の食堂等における「あらかじめ提供品目ごとに料金を支払う飲食」についての一品ごとの免税点を、従来の百円から百五十円に引き上げ、免税点をこえる品目に対する税率も一〇%といたしたのであります。なお、この機会に、従来飲食店において、二百円から五百円までのものについては、公給領収証の使用を要しないものとされていたのを今後は、免税点をこえるものについては、すべて領収証を発行する建前をとることといたしたのであります。
これらの改正によりまして、大衆層の広く利用する旅館や飲食店における宿泊や飲食は、大幅に課税対象から除外されることとなり、他面におきまして、それに比して比較的高級な宿泊や飲食についてのみ一律一〇%の課税が行われることとなって、簡素にして確実な徴税が期待できることと思うのであります。また、花代につきましても、他の類似の遊興との間の負担の均衡が保持されるとともに、課税客体の捕捉は一段と広く、かつ、適実を期し得るものと考えております。遊興飲食税の改正は、道府県における準備の関係もございまして、実施を七月からといたしたいのでありますが、この改正によるさしあたりの減収額は、初年度約九億円、平年度約十五億円と見込んでおります。
第五は、固定資産税に関する事項でございます。
その一は、国際競争を考慮いたし、外航船舶に対する固定資産税の課税標準を価格の三分の一の額から六分の一の額に引き下げることといたしまして、これとの均衡上、その他の船舶についての課税標準も三分の一を減じまして、価格の三分の二の額によることとすることでございます。
これらの措置のうち、外航船舶について五億円程度、その他の船舶について三億円程度の減収を生ずるのでありますが、関係市町村の減収を補てんするため、別途創設されんとしております特別とん税の全額を徴収地開港所在の市町村に譲与する措置を講ずることといたしているのでありまして、その総額は、約六億円の見込みでございます。
その二は、大規模償却資産に対して課する市町村の固定資産税の課税限度額を引き上げることでございます。
大規模償却資産に対して課する市町村の固定資産税について、その課税限度額は、この制度の平年度化に伴い、昭和三十一年度より若干引き下げられたのでありますが、市町村の財政実態から見まして、昭和三十年度の経過措置として緩和されておりました額をそのまま恒久化することが適当と考えられるのであります。すなわち、大規模償却資産に対して所在の市町村が固定資産税を課し得る人口段階ごとの価格の限度は、それぞれこれを引き上げまして、人口三万以上の市町村にあっては、現行の四億円を六億五千万円とするとともに、これらの制度を適用した結果、当該市町村の基準財政収入見込額が基準財政需要額の一定割合に相当する額を下回ることとなるときは、その割合に相当する額となるまで課税限度額を引き上げるものとしているのでありますが、この財源保障の割合を現行の百分の百二十から百分の百三十に引き上げることといたしたのであります。また、新たに建設された工場または発電所の用に供する大規模の償却資産につきましては、これらの施設の建設当初における市町村の財政需要の増高等を考慮いたしまして、右の財源保障率を最初の年度から五年度分の固定資産税に限り特に引き上げるものとし、最初の二年度にあっては百分の百八十、次の二年度にあっては百分の百六十、最終の年度にあっては百分の百四十とすることといたしたのであります。以上の改正によって、市町村の固定資産税収入は、約十億円ふえるものと見込まれるのでありますが、反面、道府県税収入においては同額の減少を来たすこととなるわけであります。
第六は、電気ガス税に関する事項でございます。
その一は、漁民保護の見地から、漁業協同組合などが、その設置する製氷工場において製造する氷をもっぱら漁船などにおける水産物保存の用に供しております場合においては、当該工場で直接氷の製造に使用する電気に対しまして、また、これらの工場に併置する冷蔵倉庫でもっぱら水産物の冷凍の用に供するものにおいて直接水産物の冷凍に使用する電気に対しましては、電気ガス税はいずれも賦課しないこととしたのであります。
その二は、基礎資材の製造などについて原材料課税となるようなことを避ける考えのもとに、マグネシウム地金、それから石綿、可燃性天然ガス、水銀鉱及び焼成燐肥の製造、又は掘採のために直接使用する電気に対しましても、電気ガス税を課さないことといたしたのであります。これらによって生ずる減収額は約一億円と見込まれております。
第七に、木材引取税に関する事項でありますが、木材引取税の税率を現行の百分の五から百分の四に引き下げまして、反面市町村ごとの課税の適正化を一段と推進しようとしているのであります。
第八は、入湯税に関する事項であります。
鉱泉浴場所在の市町村におきましては、環境衛生施設その他観光施設の整備をはかることは特に必要なことでもありますので、従来市町村の法定普通税とされておりました入湯税を、これらに要する費用に充てるための目的税とすることとしたのでございます。
第九は、軽油引取税に関する事項でございます。
道路整備事業を充実させることの緊要なることは申すまでもないところでありまして、その財源を受益者に求める趣旨から、別途揮発油に対する課税額を引き上げることとされておりますので、これに対応いたしまして、軽油引取税におきましても、その税率を来たる四月から一キロリットルにつきまして従来の六千円を九千円に引き上げようとするものであります。この改正による増収額は、初年度十七億円、平年度十九億円の見込でございます。
以上御説明申し上げましたもののほか、各税目を通じて規定の整備をはかっております。
現行地方税制による昭和三十二年度収入見込み額は、地方譲与税をも含めまして、四千九百三十三億円でありまして、昭和三十一年度当初の見込みに比べますと、七百十九億円の増加となっております。ここに提案いたしました地方税法の一部を改正する法律案、別途提案いたします特別とん譲与税法案を通じまして、普通地方税では、昭和三十二年度七十九億円、平年度二百十八億円の減税となりますが、地方譲与税及び目的税を通計いたしますと、昭和三十二年度三十一億円、平年度百三十億円の減収にとどまる見込みでございます。
以上が地方税法の一部を改正する法律案についての趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/4
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005・本多市郎
○委員長(本多市郎君) ただいま説明を聴取いたしました三法案に対する質疑は、次の機会に譲ることとして、午前はこれで休憩いたしたいと存じます。
午後は、一時から再開いたします。
午前十一時十五分休憩
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午後三時九分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/5
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006・本多市郎
○委員長(本多市郎君)委員会を再開いたします。
昭和三十二年度地方財政計画に関する件を議題に供します。
まず、本計画について、政府の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/6
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007・田中伊三次
○国務大臣(田中伊三次君) この計画の策定が、内閣の更迭その他の事情で予想外におくれまして、まことに恐縮に存じております。
ただいまお手元に差し上げております、三十二年度の財政計画について、その概要を御説明申し上げます。
三十二年度の地方財政計画の策定に当りましては、わが国の経済及び地方財政の現状にかんがみまして、地方制度調査会などの答申の趣旨を尊重いたしました上で、三十一年度に引き続いて、今後赤字の発生を見ないように、地方財政計画の一そうの合理化をはかり、さらに進んで歳入構成を是正してまた、行政水準の確保をはかることによって、地方財政の健全化を一段と推進していくことを基本方針といたしましたわけでございます。この方針に基き、計画策定の具体的指針といたしましたのは、次の五項目であります。
まず、国税の減税に伴う地方財源の減収を極力補てんするとともに、自主財源の増強をはかることに努めました。
それから第二は、地方税負担の合理化についても努力しました。
第三は、一般財源の充実と相待って、一般会計における地方債総額をさらに減少して、地方歳入構成の是正をはかることでございます。
第四に、地方行政の水準を確保するため、できる限りの財源を確保するとともに、新市町村に対する国の援助を強化する等、その建設を一そう促進することにいたしました。
第五に、公営企業金融公庫を設置して、公募債消化の円滑化をはかり、公営事業の拡充を期することにいたしました。
また、本計画策定の前提といたしました地方税財政制度に関する改正事項中のおもなものは、
第一に、地方税負担の不均衡の是正を中心として地方税制度の改正を行うこと。
第二に、地方道路税及び軽油引取税の税率を引き上げ、地方における道路財源の充実をはかること。
第三に、地方交付税法を改正して地方交付税の繰入率を引き上げるとともに、算定方法の合理化をはかること。
第四に、昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案の規定によりまして、昭和三十一年度分の地方交付税の一部を繰越使用できるものとして、地方債の元利償還金の一部について財源措置をすること。
第五に、基地所在市町村に財源を付与するための制度を創設すること。
第六に、公営企業金融公庫を創設いたしましたこと。
第七に、特別とん税の創設に伴い、特別とん譲与税制度を設けたこと等の諸点であります。右のほか、一般財源の増強に伴い一般会計における地方債を縮減して、他面において、公営事業会計の地方債を増額し、公営事業の拡充を期することとし、なお、少額補助金を整理して一般財源に振りかえるようにいたしたのであります。
このような前提の下に、昭和三十二年度の地方財政計画を策定いたしました結果、その歳出規模は、一兆一千四百六十一億一千五百万円となり、昭和三十一年度地方財政計画に比べると形式上は一千四億四千五百万円を増加することとなりました。
次に、歳出及び歳入のおもなる内容について簡単に御説明申し上げます。
まず第一に、歳出でございます。
その一は、給与費であります。給与費につきましては、給与改訂、昇給、期末手当、薪炭手当の増額等を見込んだ結果、前年度に比べまして、四百六億六千五百万円を増加し、四千四百三十五億六千六百万円となっております。
その二は、恩給費であります。恩給費につきましては、三十年度決算を基礎とし、所定の増加率を考慮して算定し、これに恩給の不均衡是正の平年度化に要する増加経費を加算いたしました。その結果は、二百十三億八千五百万円でありますが、これは、前年に比べますと、十四億九千三百万円の増加となっております。
その三は、その他の消費的経費であります。このうち、国庫補助負担金を伴う経費につきましては、それぞれの国の予算額を基礎として積算を行い、国庫補助負担金を伴わない経費については、昭和三十一年度の地方財政計画の額を基礎として、これに増減経費をそれぞれ加減をいたしました。その結果、国庫補助負担金を伴う経費は、一千九十一億八千七百万円となり、前年度に比べて、七十億七千六百万円の増となり、国庫補助負担金を伴わない経費の方は、一千五百四十五億四千八百万円となり、前年度に比べると、四十八億四百万円の増となっております。なお、国庫補助負担金を伴わない経費の増額のうちには、人口等の増加に伴う経費の増額がありますが、これは二十五億一千三百万円、旅費法改正及び運賃値上げに伴う旅費の増額十六億四千九百万円等が含まれております。
その四は、公債費であります。公債費は七百六十七億三千百万円でありますが、前年度に比べますと、百四十三億三千九百万円の増加となっております。公債費の累増につきましては、それが地方財政窮乏の重要な原因となっていることにかんがみ、その重圧を緩和する必要があることは申すまでもないところでありまして、とりあえず明年度において、これが対策として地方交付税の配分を通じて重圧の原因となっている特定の地方債の元利償還金の一部について財源措置を行うことといたしましたことは、午前中当委員会における法案説明と同様であります。この旧債にかかる公債費負担の軽減に資することとするほか、一般財源の増強に伴いましてさらに一般会計における地方債の発行額を減少せしめ、あわせて起債条件の合理化を考え、将来における公債費の重圧を緩和する措置をとりたのであります。
その五は、道路、橋梁等の維持補修費であります。この経費は、二百五十七億五千五百万円で、前年度に比べて八億九千五百万円の増となっておりますが、これは、道路、橋梁が極度に荒廃している状況にかんがみまして、その補修費の必要額の一部を見込んで算定いたしたものであります。
その六は、公共事業費であります。公共事業費につきましては、国の予算額に基き積算いたしたのでありますが、前年度に比べまして百五十六億八千四百万円を増し、一千八百九十一億九千三百万円となっております。
その七は、失業対策事業費であります。失業対策事業費につきましても公共事業費と同様の方法によって積算をいたしましたが、前年度に比べまして三億一千四百万円減となっており、三百二億四千万円となっております。
その八は、国庫補助負担金を伴わない建設事業費であります。これは三十一年度地方財政計画の額を基礎として、下水等環境衛生施設などの整備に要する増六十億六千四百万円、日本住宅公団に対する地方団体の出資金の減少が四億万円、災害復旧事業費の減一億二百万円等を見込んで算定いたしました結果、前年度に比べまして五十四億三千四百万円を増して七百八十七億八千九百万円となっております。
第二は歳入であります。
その一は、地方税収入であります。税収入のうち普通税につきましては、前年度行われました税制改正の平年度化、経済界の好況等に伴って六百七十五億五千九百万円の自然増収が予定されるのでありますが、地方税負担の均衡を図るため税制改正を行うことといたしました結果、百二億七千三百万円減収となりますので、差引き五百七十二億八千六百万円の増収となり、総額四千四百九十二億二千一百万円となっております。
目的税につきましては、前年度行われました税制改正の平年度化等によって三十五億二千一百万円の自然増収が見込まれますが、入場税が普通税から目的税に改められましたこと及び軽油引取税の税率引上げによる制度改正の増二十億二千二百万円と合算をいたしますると、総額において、前年度に比べて五十五億四千三百万円増の百十二億九千二百万円となっております。以上の結果地方税総額は、四千六百五億一千三百万円と見込まれているのでありまして、これを前年度に比べますると、六百二十八億二千九百万円の増加となります。
その二は、地方譲与税であります。譲与税収入については、六十億二千五百万円の増を見込んで二百九十六億六千六百万円と算定いたしました。これは、入場譲与税については自然増収が十四億八千六百万円を見込み、一百七十七億七百万円、それから地方道路譲与税については自然増収及び税率引上げによる増三十九億五千三百万円を見込み、百十三億七千三百万円と算定いたし、これに新たに設けられる特別とん譲与税五億八千六百万円を加算いたしたものであります。
その三は、地方交付税であります。地方交付税の総額は千九百四十三億七千二百万円を見込みましたが、これは、法定の繰入率を一%引上げることといたしまして、減税後の国税三税の収入見込額七千二百六億八千七百万円となって、二六%の額から昭和三十年度の精算分六億六百万円を引きました額の外に、昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案の規定によりまして、昭和三十一年度から七十六億百万円を限度として繰越し使用される分がございますので、これをその限度まで繰越すものとして加算いたしたものでありまして、これによりまして、実質的には前年度に比べまして三百十五億七千四百万円の増となっております。
その四は、国庫補助負担金であります。国庫補助負担金は、義務教育費負担金において七十七億五千百万円の増となっております。その他の普通補助負担金において二十二億四千二百万円の増、公共事業費補助負担金において八十一億九千五百万円の増、失業対策事業費負担金において四億一千七百万円の減でありまして、これをかれこれ総計いたしまして、前年度に比べますると、一百七十七億七千百万円の増加となりその総額は二千九百五十六億百万円となっております。
その五は、地方債であります。地方債につきましては、地方団体の歳入構成をできるだけ健全化するため、一般財源の増強に伴いまして、一般会計における地方債を減少せしめることを基本方針といたしまして、地方財政計画に計上する地方債は、前年度に比べまして百九十五億円減じまして、五百二十億円といたしたのであります。
なお、明年度における地方債としましては、このほかに、公営企業債四百七十億円と、明年度より財政計画外の取扱いをいたします収益的建設事業債五十億円及び退職手当債三十億円を準備いたしております。これを合せますと、その総額は一千七十億円に上るのであります。その資金別の内訳は、政府資金八百四十億円、公募二百三十億円であります。
その六は、雑収入であります。雑収入につきましては、昭和三十一年度の地方財政計画額を基礎としまして、これに所要の増減を行なった結果、一千百三十四億六千四百万円となり、前年度に比べて十二億四千七百万円の増となっております。おもな増加内容は、高等学校の生徒増に伴う授業料の増加とそれから給与費の増に伴う恩給納付金の増加であります。
以上が昭和三十二年度地方財政計画の概要でありますが、これを要約いたしますと、経済界の好況によりまして、地方税法の改正により、普通税において百億円余の減収が考えられるにもかかわらず、なお七百億円に近い増収が見込まれるのでありまして、これに加うるに、三百億円をこえる地方交付税の増加を加えまして、一般財源は、かなり充実することとなり、これによって、義務的経費の増その他昭和三十二年度における国の諸施策に伴う必要経費を賄うことができますほか、二百億円に近い地方債を減額して、歳入構成の是正をはかり、さらに、従来果さんとして果し得なかった行政水準確保のために約百数十億円の経費を計上することができたのであります。このようにして、地方財政計画は、従前に比べましてかなり改善され、地方財政は、実質的意味においても、健全性の回復に一歩を進めることができるものと考えるのでありますが、地方行財政の実態にかんがみまするときは、この程度では、もとより、なお十分とはいうことはできませんが、政府といたしましては、さらに、地方財政計画の合理化に一そうの努力を重ねて参りたいと存じております。それとともに、この地方財政計画の実施を通じまして、各地方団体の健全な財政運営に深く期待をするとともに、地方財政の健全性の回復、維持ないしは財政構造の合理化を極力はかって参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/7
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008・本多市郎
○委員長(本多市郎君) 本件並びに午前中自治庁長官から説明を聴取いたしました三法案、これらに対する政府よりの補足説明及び質疑は後日に譲ることとして、本日は、この程度にいたしたいと思います。これにて散会いたします。次回は、追って公報をもって御通知いたします。
午後三時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614720X00619570228/8
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