1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十二年三月十二日(火曜日)
午後一時四十二分開会
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 亀田 得治君
理事
上原 正吉君
大谷藤之助君
秋山 長造君
竹下 豐次君
委員
荒木正三郎君
伊藤 顕道君
田畑 金光君
永岡 光治君
八木 幸吉君
国務大臣
国 務 大 臣 大久保留次郎君
政府委員
内閣総理大臣官
房審議室長 賀屋 正雄君
行政管理政務次
官 楠美 省吾君
行政管理庁管理
部長 岡部 史郎君
労働政務次官 伊能 芳雄君
労働省職業安定
局長 江下 孝君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
—————————————
本日の会議に付した案件
○行政機関職員定員法の一部を改正す
る法律案(内閣送付、予備審査)
○雇用審議会設置法案(内閣提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/0
-
001・亀田得治
○委員長(亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。
行政機関職員定員法の一部を改正する法律案を議題に供します。
まず、提案の理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/1
-
002・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) ただいま議題となりました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案の提案理由について御説明いたします。
今回提案いたしました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案は、昭和三十二年度における各行政機関の事業予定計画に即応して、必要やむを得ない事務の増加に伴う所要の増員を行いますとともに、業務の縮小に伴う余剰定員の縮減を行いまして、行政機関全般の定員の適正化をはかろうとするものであります。
次に、法律案の内容について申し上げますれば、今回の改正によりまして、第二条第一項の表における各行政機関の職員の定員の合計六十四万千二十八人に対しまして、結局二千九百四十六人を増加いたしまして、合計六十四万三千九百七十四人といたしました。
増員及び減員の内容につきましては、別に詳しく御説明いたしますが、増員の主なものといたしましては、科学技術庁附属研究所の設置拡充に伴うもの百十五人、刑務所等の開設強化に伴うもの三百十二人、国立大学の学年進行及び附置研究所整備等に伴うもの三百六十一人、特許審査審判事務の増加に伴うもの百人、郵便取扱業務量の増加に伴うもの六百九十六人、電気通信施設の拡張に伴うもの千二百三十二人等でありまして、おおむね現業的業務の増加に伴う必要やむを得ないものであります。
なお、この改正法律は、四月一日から施行することといたしております。
以上がこの改正法律案の主な内容であります。
何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/2
-
003・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 本案の審議はこの程度にいたします。ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/3
-
004・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 速記を始めて下さい。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/4
-
005・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 次に、雇用審議会設置法案を議題に供します。政府当局より、本案の逐条説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/5
-
006・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) それでは、ただいま議題となっております雇用審議会設置法案につきまして、御説明申し上げたいと存じます。簡単な法律案でございますので、前回におきまして御説明いたしました提案理由の説明に、さしてつけ加える事項もございませんが、多少敷衍して御説明申し上げたいと存じます。
第一条は、雇用審議会を設置いたします目的と、どこに置くかという設置の場所を規定いたしたものでございまして、政府の施策といたしまして、現内閣は、完全雇用の達成ということを大きな目標の一つにいたしておるのでございますが、この目標達成のために行います政府の施策は、各般の方面にわたっておるのでございまして、また、従いまして、その所管の官庁というものも、労働省を初め、経済企画庁、あるいは通産省といいますように、多数の省庁にまたがっておる次第でございます。それらの各省庁で行いますその完全雇用達成を目標とした諸施策が総合的に運営せられますために、その参考と申しますか、その目標の達成が的確に行われますためには、民間の各方面の有識者の御意見も拝聴いたしまして、この政策に織り込むということがきわめて必要であろうと考えられましたために、このたび総理庁に、付属機関といたしまして、この審議会を設けようというのでございまして、従いまして、この機関は、いわゆる国家行政組織法の第八条に規定いたしております諮問的あるいは調査的な機関でございます。この審議会で扱います所掌事務は、第二条に規定してある通りでございまして、そこに一号から四号まで例示してございますが、これにつきまして調査審議いたすのがこの審議会の仕事でございます。
第一号といたしまして、「雇用構造その他雇用及び失業の状態に関する事項」がございますが、これは、今日の、現実の雇用、失業の状態に関しまして、その基礎的な統計資料を収集し、整理し、調査するということは主もちろん必要なことでございますが、特にこの雇用構造という例示を掲げましたのは、単に今日の現実の実態、個々の雇用、失業の姿のみならず、基本的なわが国の雇用の状態がどういうふうになっておるか、たとえば、産業別あるいは規模別あるいは労働条件別といったふうに、量の面からあるいは質の面から、構造の基本的な姿について調査審議するという必要が、いろいろな雇用政策あるいは失業対策を考えますために、きわめて必要であろうかと考えまして、そういった事項について調査審議するというのを第一番に掲げた次第であります。
次の第二号が、「雇用状態の改善のための施策に関する事項」、これは、読んで字のごとくでございまして、雇用状態をよりよくして参りますために、いろいろな施策が各省で講ぜられるわけでありますが、それについての審議でございます。
それから第三号、「失業対策に関する事項」でございまして、失業対策も、基本的な諸問題についての調査審議をお願いしようというのでございます。
第四号は、「その他雇用及び失業に関する重要な事項」となっておりまして、これは、直接この二号にありますような雇用状態の改善のための施策でありますとか、あるいは直接失業を吸収する施策というようなもの以外に、間接的に、この雇用の状態に積極、消極両面にわたって影響を及ぼしますいろいろな国の施策があるわけでございます。それらの施策について、調査審議をしていただこうという趣旨でございます。
先ほど申しましたように、この審議会は、政府の、内閣総理大臣を初め関係各省大臣の諮問に応じまして答申をいたす、いわゆる諮問的な機関でございますが、諮問がございません場合にも、必要に応じて積極的に審議会の方から内閣総理大臣あるいは関係各大臣に対して意見を述べ、あるいは調査いたしました事項についての報告をすることができる仕組みになっておるような次第でございます。そのことが第二条の第二項に書かれております。
第三条から第七条までは、当審議会の組織に関する規定でございまして、これは通常のこの種の諮問機関であります各種の審議会の例におおむね従っておるのでございまして、特に御説明する必要はないと思います。そこにございますように、第三条は委員が三十人以内となっておりまして、この選出をどういうところからするかという点に、学識経験のある者ということで、広く民間、学界、経済界、労働界等から適任者を選んで、内閣総理大臣が任命することにいたしております。任期は二年でございます。それから会長、副会長がそれぞれ一人ずつ置かれまして、その選任方法は、委員の互選によるということになっております。それから審議会が第二条に掲げますような所掌事務を調査審議いたします場合に、特に専門的な事柄を調査審議するために、その事項の調査にふさわしい専門的な知識を持たれた方々を特に専門委員ということでお願いいたしまして、調査審議をしていただくことが予想せられますので、この一般委員と区別いたしまして、専門委員を三十人以内置くことができることにいたしました。これも、学識経験者の中から、内閣総理大臣が任命するということに相なっておりまして、ただ、この専門委員の方は、一般委員が任期二年であるのに対しまして、特に委嘱せられました専門事項の調査審議が終りましたときには解任されるということになっておるのでございます。それから第七条に、幹事は二十人以内を置くと規定いたしておりますが、これは、全部公務員でございまして、関係各行政機関の職員の中から選ぶことにいたしております。
また、第八条におきましては、この審議会の審議の方法といたしまして、大きな項目により審議事項を大別いたしまして、それぞれについて部会を設けまして、さらに掘り下げてゆくという必要もあろうかと考えまして、必要に応じ、部会を設けることができるようにいたしました。どの部会にどの委員が所属するか、あるいは専門委員、幹事が所属するかということは、会長が指名いたしまして、定めることにいたしておるのでございます。
第九条は、各省が協力体制をとります必要があるので、この規定を置いたわけでございまして、この審議会が所掌事務を遂行いたして参りますために、必要があると認めます場合には、関係各行政機関の長に対し、資料の提出あるいは意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができるということにいたした次第でございます。
それから第十条に、「庶務は、内閣総理大臣官房において処理する。」ということに相なっておりますが、これは、この審議会で所掌いたします事項は、関係省といたしましては数省にまたがっておるのでございまして、もちろん、労働省はその大きな部分を占めておるわけでございまするが、それ以外に、各省の施策にまたがる事項も多数出て参ることが予想せられますので、内閣総理大臣の官房、総理府において処理するのが適当であると認めて、このように規定をいたしたわけでございます。
第十一条で、その他必要な事項は、政令の規定に委任をいたしております。
施行期日は四月一日といたしまして、また、この雇用審議会は、従来総理府にございました失業対策審議会を改組、拡充するものでございますので、総理府設置法の十五条の付属機関を列挙いたしました表の中で、失業対策審議会を削除いたしまして、雇用審議会をそこへ並べて規定するということにいたしておるのでございます。
以上、簡単でございますが、逐条的に御説明いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/6
-
007・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 本案につき、御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/7
-
008・秋山長造
○秋山長造君 雇用の問題について、いろいろな点の御質問をしてみたいと思うのですが、その前に、今ここに、われわれに配られた「最近の雇用失業情勢について」という資料、これは、政府からの資料だろうと思うのですが、これは、はなはだ不親切なやり方だと思う。この雇用審議会設置法案というのは、二月十九日に出ているのですね。ところが、今までは、こういう資料は全然何も配らんでおいて、きょうこれから質問しようという直前になって、こんなものを手元に配られて、しかも、内容はきわめて不鮮明な印刷で、たくさんの数字があげてある。内容をよく見ると、これは、やはりこの法案を審議するについては非常に重要な資料のように思える。ところが、これを今配られて、即席でこの不鮮明な数字を一々確かめて質問するということは、これは不可能なことだ。われわれ、きょうから質問を始めることにしまして、ここ数日間、いろいろな方面の資料を一応集めてみたのです。ところが、そういうわれわれの集めた資料の数字なんかと今配られたものとは、多少食い違いがある。だから、これを基にしての質問は、きょうはできません。だから、これは十分検討さしていただいて、改めてこの資料についての御輿閥をしたいと思うのですけれども、いずれにしても、今後はもう少し親切なやり方で、質問をやるというときには、少し早目に前もって配付していただきたい。これをまず質問する前に、当局にお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/8
-
009・亀田得治
○委員長(亀田得治君) ちょっと委員長から念のために申し上げますが、この資料は、法案の説明がありました日に、伊藤委員の方から要求された資料なんです。委員部を通じて労働省、政府側に連絡をした結果出てきた、そういう資料です。だから、要求したのは三月五日です。今調べて見ると、そういうことになっております。それにしても、もう少し早く出してもらいたいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/9
-
010・秋山長造
○秋山長造君 要求しなくても、この程度の資料はもう少し早目に出してもらわなきゃ、われわれは、何もこの条文だけ審査するんじゃないのだから……。雇用問題そのものについてのやはり研究をすることも大事なんです。だから、こういう資料は、できるだけ一つ、今からでもおそくないですから、親切に早目に出していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/10
-
011・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) まことにごもっともな御要望でありまして、今後十分注意いたしまして、こちらで適当だと思われる資料はお出しすることにいたしますが、なお、委員側で御要求がありましたら、御遠慮なく御要求を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/11
-
012・秋山長造
○秋山長造君 この法案によりますと、従来の失業対策審議会を改組して、雇用審議会にかえるんだということのようですが、従来あった失業対策審議会がしばしば答申を出しているのですね。どういう答申を出しているのか、一まとめにして資料をいただきたいと思うのです。
今お尋ねしたいのは、せっかくこういう一応趣旨としてはもっともな審議会が作られておるが、これが非常に苦労をして資料を集め、研究した結果、答申を出しても、答申を出すまでは大いにやっているが、答申を出せば、出した方も出しっぱなしになるし、受け取った政府の方も受け取りっぱなしになっているのだろうと思う。今までの失業対策審議会だって、例外じゃないだろうと思うのですがね。もし今までのようなやり方がそのまま改まらないでいくとすれば、せっかくこういう完全雇用というような大きな打ち出しで、新しい審議会を作られても、これは無意味じゃないかという気持がするのですが、そういう点について、当局の方はどう考えておられるのか、これをまずお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/12
-
013・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 失業対策審議会の答申につきましては、あとで申し上げることにいたしますが、この結果、答申に基きまして、政府が逐次実現して参りましたものも、その中には相当あるのでございます。ただ、諸種の事情、ことに財政上の事情から、実現できないでおるものもございます。こういうものも、ずいぶん当局としては気にはかけておりながら、実現できないというような事情にあるのでありまして、答申がしっぽなし、また受けっぽなしというような無責任なことはないつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/13
-
014・秋山長造
○秋山長造君 では、お尋ねしますが、従来失業対策審議会から出された答申を、政府の方でどういうように、実際の施策の上に盛り込んでこられたのか、この点、もう少し具体的な例をあげて説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/14
-
015・江下孝
○政府委員(江下孝君) 現在までに、失業対策審議会は、六つの答申と五つの意見書を提出しております。この内容につきましては、追ってお手元に差し上げたいと思います。
そこで、この答申の内容でございますが、非常に、基本的な問題と、技術的な問題と、いろいろな答申がなされております。たとえば、第一号におきましては、これは昭和二十四年に答申されましたが、失業対策の基本対策としては、貿易を振興すべきである、見返資金による産業等の復興をすべきである、あるいは公共事業の拡大、失業対策事業の強化をすべきである、こういうようなことが出されております。それで、私ども労働省としましては、この趣旨にのっとりまして、御承知の通り、失業対策事業の充実強化ということを努めて参りました。先般、御承知と思いますが、失業対策事業の就労日数は、当初十七日か八日でございましたが、審議会の答申によりまして、一日ずつ延ばして参っております。さらに最近におきましては、公共事業の中から、特別な失業対策的な事業を起すべきである。つまり建設的な失業対策事業を起すべきである、こういう答申がございまして、これにのっとりまして、特別失業対策事業という、建設効果の高い失業対策事業を昨年度から実施をいたしております。もちろん、これは、実施いたしておることだけを申し上げておりますので、このほかに、実施してないことも正直に申し上げましてありますけれども、しかし、私どもとしましては、この答申がございました以上は、必ず予算的な一応措置を講じて、大蔵財政当局とも、まじめに実は交渉はいつもしておるのです。しかし最後には、財源的な理由から、十分この答申が全部実現を見るというところまでは至っていないということは、これは正直に申し上げなければならぬと思います。しかし、もちろん答申があれば、政府としては、とれを全面的に尊重して、従来から財政当局とも折衝して参っておる、この点は一はっきり申し上げてよいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/15
-
016・秋山長造
○秋山長造君 尊重されるということは、皆さんに限らず、総理大臣以下ことごとくおっしゃるのですけれども、どうも今言われた程度のものは、おそらくこの六回にわたって行われた答申の中のきわめて一部分にすぎぬと思う。まあこれに基いて、労働省の方が大蔵省と予算折衝をされるけれども、なかなか認めてもらえないということのようですけれども、これは大体、この審議会そのものが、労働省のもとに設置された審議会ではなくて、これは内閣全体の審議会なんですね。総理府に置かれた、労働省に置かれるのではなしに、総理府に置かれるということ自体が、これは、大蔵省とか労働省とかというようなことでなしに、もっと高い立場でこの失業対策の問題を考えていかなければならぬという建前からそうなっている。にもかかわらず、その答申が出れば、もうそれは、直接の担当官庁としての労働省に押しつけられてしまって、そうして内閣全体の問題というよりも、一労働省の問題ということに結果的にはされてしまう。だから、いつまでたっても、失業問題というものに対する抜本的な施策というものがなかなか打ち出せなかったのだろう、私はそう思う。今度の雇用審議会にしても、やはり前の失業対策審議会と同じような建前で、労働省ではなくして、総理府に置こうと、こういうことになっていると思う。しかも、今までの失業対策審議会というものは、読んで字のごとく、いわば病気が起ったのに対して、あとからこれをなおそう。今度の雇用審議会というのは、もう一歩踏み出して、病気にかからない前に、一つ予防措置を講じよう。こういう政府としても一つの抱負を持って、看板を書きかえられたものと思う。そうであるならば、なおさら今までのような扱い方では、私はほんとうに——繰り返して申し上げるけれども、ただ調査のしっぱなし、答申のしっぱなし、政府の方も聞きっぱなし、そうしてまた、その答申は労働省の方に押しつける。そうして、労働省は事務的に大蔵省と折衝して、やりたいけれども、予算が出ないからだめだ。こういう結果になることは火を見るよりも明らかだと思う。
そこで、政務次官にお尋ねしたいのは、これは、今までと変った積極的なやり方をされようという気持はわかるけれども、実際にどういう点を今までのやり方とは改めて、施策面にこれを生かしていこうという、具体的な見通しを持っておやりになるかということをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/16
-
017・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 従来の取扱い方から、そういうような御不信の念を抱かれることも、まことにやむを得ないことと思うのでありますが、今回、雇用審議会として取り上げました大きな理由は、提案理由でも申し上げましたように、鳩山内閣が経済五カ年計画の中で、経済自立と並行して、完全雇用ということをうたったのであります。さらに石橋内閣におきまして、完全雇用の目標に力強く政策を進めたいということは、国会はもちろん、朝野に大きく訴えたところであります。これをすぐ受け継ぎました岸内閣が、完全雇用という問題につきましては、今まで考えた以上に、大きな力をここに入れていこうということでありますので、従いまして、完全雇用を中心とする諸種の施策を行なっていくに当りまして、ぜひ学識経験者の御意見をまとめていただいて、これを逐次実現したいという、この内閣の大きな熱意に塞ぐものだと思いますので、従いまして、今までの、失業対策審議会が答申したことが、ややもすれば、一労働省に押しつけられておったというようなことが、今度、雇用審議会になりまして、一そう飛躍的に、大きく内閣の問題として、完全雇用達成の目標のもとに、力強く進めらるべきものであると、私は固く信ずるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/17
-
018・秋山長造
○秋山長造君 完全雇用ということが、鳩山内閣以来、最重要政策の一つとして取り上げられてきたことは、これはもう私どもも、よく承知してきたのですけれども、しかし、今になって、おっしゃるような意味で、審議会を設けて研究にかかるということならば、結局鳩山さんが掲げてこられた、あるいは石橋さんが五つの誓いの一つに掲げられた、また、岸内閣としても大きくうたわれておる——これはただ、うたわれておるのは、完全雇用というスローガンだけであって、スローガンだけが一応きまって、そうしてその内容は、何にもまだきまってない。内容は、これから審議会を作って、そこへ学識経験者を集めて研究してもらうのだ。そうしてその答申が出た後に、初めて完全雇用というスローガンの内容がきまってくる、こういう順序になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/18
-
019・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) この完全雇用の目標のもとに出発しましたことは、雇用審議会の答申を待たなければ、これに向って施策を進め得ないというわけではもちろんないのでございまして、今回の、三十二年度提案になりました予算をごらんになりましても、完全雇用に向って、雇用の拡大ということを非常にねらっておるということは、たとえば、公共事業を飛躍的に増したこと、あるいは財政投融費をこれまた非常にふやしておること、あるいはまた、経済拡大のために、経済上の隘路になっておる輸送力あるいは電力、そういうものに非常に力を入れていること、こういうようなことを御理解願いますれば、雇用拡大に向って一歩を進めてきたということを御理解いただけるものと考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/19
-
020・秋山長造
○秋山長造君 そういたしますと、政府としては、今度の予算案を通して、一応の完全雇用ということについての具体的な目安をもって出発はされる。しかし、まあ念には念を入れる意味で、この雇用審議会を別にお作りになって、そうして本格的な完全雇用政策の内容は、一つそっちの方でやってもらう。とりあえず三十二年度予算案というもので、完全雇用というものを間接的に実現していきたい、こういうことを理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/20
-
021・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) お言葉の通りのつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/21
-
022・秋山長造
○秋山長造君 それにしましても、雇用審議会の結論が出てくるのは、これはもう、どんなに早くても、おそらく秋以後になるだろうと思う。下半期になると思うのですが、そうすると、やはり雇用審議会がかりに非常に具体的で立派な結論を出されたとしても、それを実際施政面に生かしていくということは、もう来年度になる。だから、いずれにしても、三十二年度中の雇用政策というものは、やはり今、雇用審議会の設置を待つまでもなく、すでに政府自身の手元においてきまってなければならぬはずだ、こう思うのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/22
-
023・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) ここで、雇用審議会のこの法案が通りまして、すぐ出発いたしましても、この答申はこの秋ぐらいになるだろうというお見通しは、私ども同様に考えます。そこで、三十二年度はどうかということでありますが、ただいまの予算執行ということにおいて、雇用の拡大が相当期待されるのでありますが、経済五カ年計画、これは、あるいは今までの計画というものは、相当改訂を要することになりましたことは御承知の通りであります。初めにできました経済五カ年計画というものは、今日も、そのままでは利用できないような、飛躍的な経済の拡大をしてしまいましたので、今まできた傾向、そうして今後にいく見通しというものについての改訂された経済五カ年計画あるいは何カ年計画が、ただいま着々作成中に属するのでありまして、これが夏くらいになりはしないかと思うのでございます。そういうわけで、今出発します三十二年度の予算執行に伴うものはここで出発しますが、審議会において答申されましたことを実際に施策として織り込むのは、結局三十三年度予算ということに相なることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/23
-
024・秋山長造
○秋山長造君 そこで、私はもう少しお尋ねしたいと思いますことは、政府が三十三年度のことは、それまで一体今の内閣がそのままあるのかどうかということが前提になるわけですから、それは別問題として、この雇用審議会の設置というようなことを考えつかれるに関連して、今、政府がこの三十二年度中にどういう雇用政策について具体策をとられるのかということ、これも、施政演説あるいは大蔵大臣の演説あるいは企画庁長官の演説等によりますと、とにかく完全雇用をやるのだということは、大いにうたっておられるのですけれども、どうもそれは、どういうことをやって完全雇用へもっていくかということになると、あんまりはっきり具体的な説明がついてない。衆議院の予算委員会等を通じて、われわれが承知したところによると、結局国家投資を拡大していく。それからまた、予算規模を拡大していく。こういうことによって経済規模を拡大していけば、昨年来の景気というものがますます上昇していくだろうから、結局雇用というものも増大していくだろう。こういうように、きわめて間接的な手段によって、その雇用の拡大という結果が来るであろうことを期待するわけです。漠然と期待されているにすぎぬのじゃないかというように思えるのですが、その点はどうなんですか。今まで通りの計画、あるいはそれ以上に景気がよくなれば、当然雇用が拡大していくというようにお考えになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/24
-
025・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 経済が拡大すれば雇用が拡大するということは、一応私ども常識的に考えておるのでございますが、過去の実績から見ますというと、経済拡大の比率がそのままに雇用の拡大にはなっておりませんことは、いろいろの統計をごらんの通りであります。従いまして、今後とも、経済が何%拡大するか、その同じパーセンテージで雇用拡大になるとは思えませんけれども、常識的には、少くとも経済規模が拡大すれば雇用が拡大するというふうに考えておる次第でございまして、事実、実績の上に見ましても、失業者の、完全失業者だけの数を見ますと、やはり完全にグラフが並行するわけではありませんが、経済拡大に伴いまして、ある程度の雇用拡大をするということは事実であります。
ただここに、生産性向上運動がありますが、この運動で非常に生産が拡大されるので、合理化が行われる。合理化が行われた場合には、そこに一時的な失業者が出るということは、一部的には当然あり得ると思うのですが、全体の問題とすれば、経済拡大、同じ比率でなくても、雇用が拡大するという常識論、そうして従来の完全失業者の数の傾向、また、失業保険の取扱いの傾向等を見て、実際面におきましても、雇用が拡大されたというように考えられるのでございます。
なお、安定所に現われる求人、求職の比率などを見ましても、就職率がだんだん向上しておるというような事実もございますので、そうしたいろいろな事実から、拡大されてきたし、また拡大されるものである、かように考えるべき理由があると、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/25
-
026・秋山長造
○秋山長造君 まあ政府の方がおっしゃるように、経済規模を拡大していけば当然雇用も増大して、失業問題の解決に近づくということならば、景気は何もこれから始まることじゃないので、すでに過去一年あるいは一年半ぐらいの間の景気というのは、御承知の通り、神武景気などといわれて、非常に景気がよかったということがいわれておる。だから、当然この間に、雇用問題、失業問題が相当大幅に解決策がついていなければならないはずではないかというふうに思うのです。ところが、今配られた労働省の資料は、あらためてよく検討させてもらいますが、少くとも私どもが今までいろいろな資料に当ってきたところによると、それほどこの好景気というものがこの失業問題、雇用問題というものに響いておらないのじゃないかと思うのです。その一つの理由は、この神武景気といわれるような異常な好景気というものが、バランスのとれた景気でないというところにある。主として大企業方面だけの景気であって、一番日本の失業人口の吸収場所になっておる中小企業というようなところにはあまり響いていない。従って、この雇用問題というものが案外改善されていない。大企業というのは、先ほども次官がおっしやるように、景気が幾らよくても、だから、人を大ぜい雇うということはしていないのですね。これは統計数字にはっきり現われておるから、御承知だろうと思う。いわんやそれに生産性向上とか、オートメーションとかというようなことが加わってくれば、人はますます減りこそすれ、ふえなくなるのじゃないかというように思うのです。ところが、ほんとうに雇用問題の実質的な解決ということを考えます場合には、やはり大企業での雇用の増大ということをはからない限り、実質的な雇用問題の解決ということはできないのじゃないか。大企業と中小企業との断層というものは非常に隔たりがひどいですから、中小企業なんかで少々人を雇ってもらっても、なるほど表面的には雇用はふえるかもしれぬけれども、しかし、雇われて働いておる状態というものを見た場合に、これは全く半失業状態なのですね。きわめて長時間労働、しかも賃金はきわめて安い。大企業のように、一週間四十八時間労働で、そしてある程度の賃金水準というものを保障されるというものじゃないですからね。だから、そこらにやはり政府として、ただ漠然と、景気もよくなるのだから、経済規模が拡大するのだから、雇用問題も解決するだろう、完全雇用に近づくだろうというように考えられることは、私は非常に、日本の産業構造、経済構造というものにあえて目を閉ざした、安易な考え方じゃないかというように思うのです。その点、政府の方でどうお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/26
-
027・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) お言葉のように、いわゆる神武景気というものが非常に大企業に偏しておるという事実は、私どももある程度まで認めるところでありますが、かといって、それでは大企業にせっかく景気が来ても、雇用が増大していないかと申しますというと、どの統計か、私もはっきり記憶しておりませんが、やはりある程度雇用も増大しておるのであります。ただ、遺憾なことは、この景気が一時的なものではないだろうかという気持からかもしれませんが、大企業で雇用を増大する場合に、臨時工で入れておる。従って、臨時工の比率が高くなってきた。このことを私ども大いに注目して、そういうことでなく、木工にできるだけ繰り入れるように指導して参りたいと、かように考えている次第でございます。
先ほども申し上げましたように、失業保険の数の問題、あるいは就職率の上ってきた問題、あるいは完全失業者が、わずかずつではありましたけれども、減ってきた傾向、こういうことを見まして、やはり経済拡大に伴って雇用が増大してきておるという事実は、はっきり現われておると思うのであります。
また、先ほども申し上げました公共事業費の増、これは、非常に道路、港湾に相当力を入れておりますが、こういうものは、相当労働者を新しく吸収する面がある、こういうふうに見られますし、あるいは鉄道の方の輸送力増強のために、鉄道の方での投融資をふやしておりますが、これらの事業の拡大、あるいは電力関係の事業費の拡大、こういうものは、相当雇用量を増大し得るものである。この試算的な数字も、公共事業費については幾ら、投融資の増に対して雇用が拡大するものはどのくらいというような試算的な数字も出しておりますから、何かの表でお出しできることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/27
-
028・秋山長造
○秋山長造君 大企業の雇用が相当ふえているはずだとおっしゃるけれども、これは私は、大企業の雇用がふえているというような数字を不幸にして見ていないのです。確かに臨時工みたいなものはふえておるのです。これはふえておる。局長どうですか、その点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/28
-
029・江下孝
○政府委員(江下孝君) 労働省で三十人以上の工場、事業場の雇用の数字の動きを指数にとっておる。これによりますと、昭和三十一年平均が昭和二十六年を基準といたしまして、一二二・三ということになっております。そこで、前年の三十年平均は一一〇・〇でございます。三・三%ばかり上昇をいたしております。三十人以上でございますので、これは、そのうちのまた大に入ったか、中に入ったかという点は、今手元に持ちませんが、ある程度増加しておることは、これは間違いない。ただお話の通り、私どもこまかい資料を持っておりませんが、大企業方面の新規雇用は、臨時雇用という形態が非常に多い。そこで、この点について、前回の失業対策審議会で、こういう不完全な雇用形態は思わしくないので、できるだけそうでない雇用形態にするように措置すべきことということが書かれております。今、政務次官が申し上げましたように、この大企業の立場から言いますと、この景気がどこまで続くか、あるいはオートメーションというものを将来予想しておるということからいたしまして、政府としましても、この点を勧奨いたしますにつきましても、相当苦しい事情はございますが、しかし、方向としては、仰せのごとく、大企業への常用化ということを今後私ども進めていくための何らかの対策を考えていかなくてはならぬというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/29
-
030・秋山長造
○秋山長造君 この点は、おっしゃるように、大企業の臨時工の常用化ということを進めていこうとおっしゃるが、しかし、これは、なかなか言うべくしてむずかしいのではないかと思う。第一、そうおっしゃる政府自身が臨時職員ばかりたくさん雇って、これをあなた、定員として繰り入れてもらいたいということは、何年来のこれは一番大きな問題だけれども、これは、政府自身がやらぬでおいて、ますます定員を減らして、臨時雇ばかりをふやしていきながら、企業に対しては、臨時工をやめて定員化しろと言っても、これは初めから問題にならぬですよ。だから、そういう点は、次官や局長に言ってもこれはしようがない問題であるけれども、やはりほんとうに雇用問題を解決し、特に臨時工と常雇という問題を解決していこうとするならば、これは、政府自身がやはり政府自身の使用人をもまずそういうふうに扱って、範を示して、そうしてしかる後に、一般民間企業に対して右へならえしろということでいかなければ、これは、初めから問題にならぬと思う。それから政府の方で、相当雇用が増大して、そうして失業者が少くなるであろうという目安を立てておられるとおっしゃりながら、やはり今年見込んでおられる完全失業者というものは、去年見込んでおられた完全失業者と同じなんですね。六十万人。これはどういうわけなんですか。去年に比べて、一千億も予算規模が拡大して、そうして投融資等も相当ふえておる。そうして一そう景気に輪をかけてやっていかれるということなら、当然これは、失業者、完全失業者が減ってしかるべきだと思うのですけれども、前年通りだというのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/30
-
031・江下孝
○政府委員(江下孝君) これは、先生も御承知の通り、来年度におきましても、新規に追加されます労働力が百万以上あるわけでございます。特に生産年令人口は百三十万を増加する。従いまして、かりに来年度、相当な経済規模の拡大を見るにいたしましても、これを全部消化して、さらに失業者も減らしていくということまでには、これはなかなか困難でございます。従いまして、一応の目標といたしまして、できるだけ失業者をふやしたくないというめどで、六十万という数字を出しておるわけでございますが、去年、実はことしの計画を立てましたときに、御承知の通り、本年度の完全失業者は六十五万であろうという予定でございましたが、今の見込みでは、本年度は六十万ということに大体おさまりそうな見込みでございます。そういう点がございましたことを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/31
-
032・秋山長造
○秋山長造君 そうすると、生産年令人口が相当ふえるということを見込んで、六十万という数字を割り出されたということですが、一方では、やはり失業対策事業の対象人員は、一割近く減らされていますね。それから、さっきも次官が繰り返しおっしゃっておったが、失業保険の対象人員もだいぶん減っておる。そこらに、私どうも納得のできかねるものがあるのですがね。それがどうしてこういうことになったのか、その事情を一つ、よくわかるように説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/32
-
033・江下孝
○政府委員(江下孝君) わかるように説明できないかもしれませんが、できるだけ、私の承知しておる範囲で申し上げたいと思います。実は、この完全失業者の数字といいますのは、御承知のように、内閣の労働力調査という抽出調査によるものでございます。一人一人失業者をつかまえまして、それが合計して完全失業者の数になっておるわけではございません。一万有余の世帯を抽出いたしまして、毎月、その人たちのうちで何%が完全な失業者であるかという数字から、これを全国民数に引き伸ばして計算をしておるのが、これが完全失業者であります。しかも、この完全失業者の定義と申しますのは、その調査月の一定の週間におきまして、一時間も働かなかった。しかも就職したいという活動をしておる。こういうのが完全失業者の定義でございます。従って、非常にこの完全失業者の定義は、厳格な意味のものになっているわけでございます。それから、お話の失業対策事業関係の対象でございますが、これも御承知と思いますが、公共職業安定所の窓口に出て参りまして、どうしても仕事がないし、食えないということのために、政府の行う失業対策事業に吸収してもらいたいという人の数が、この失業対策事業の対象になるわけでございます。従って、完全失業者でありましても、資産等のあります者は、安定所の窓口には出てこない場合もございますし、その点は、おのずから実際の内容は、ダブる面が相当ございますけれども、違っておる面も相当あるわけでございます。そこで、失業対策事業の予算を来年度少し減らしたという点でございますが、実は、今年の予算は、昨年の予算に比べまして、相当増加をいたして、これに対処いたしておりましたところが、予想以上に民間の、就労が伸びまして、そのために、実は来年度予算におきましては、本年度の大体実際実行程度の予算を組む、こういうことで考えております。すなわち登録した安定所の日雇いの失業者というものは横ばいであるという前提からいたしまして、本年度実際に予算を使いました分と大体見合うものを来年に計上する。そのために、若干減っておりますけれども、この点は、私どもの見通しから、かように措置した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/33
-
034・秋山長造
○秋山長造君 今の局長の御説明、私どうも十分納得ができないのですが、今までの失業者の実情ということを頭において考えた場合に、どうも、本年度幾ら景気がいいからといっても、明年度において、今までよりも一割もこの対象人員を減らして、それでやっていけるということは、どうしても私は思えないのですよ。日雇い労働者なんかにしても、景気がいいということならば、当然こういうところがまず減ってこなければならぬと思うのですが、これは減らぬどころではない。ますますふえる傾向じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/34
-
035・江下孝
○政府委員(江下孝君) これは、お手元に差し上げております資料の中で、一番おしまいの表でございますが、先ほどお叱りを受けましたこの資料の一番おしまいの、また一番裏のページでございますが、そこに、日雇月間有効求職者数というのが出ております。これによってごらん願いますと、三十年の一月には四十二万七千というのが、三十年は逐次これが増加いたしまして、そうしまして、三十一年の一月には五十万に達しておるわけでございます。ところが、一月、二月を頭にいたしまして、その後日雇い労働者の状況は、横ばいの状況を示しておるわけでございます。この十二月に、ちょっと五十万になっておりますが、これは、御承知と思いますが、年末の特別措置をやりますために、日雇い労働者がそのときに限りましてどっと安定所へ出て参りますので、ここでふくれております。それは、この一月からはまたぐんと減って参る、こういうことでございます。
それから、先ほどちょっと申し落しましたが、民間の事業が伸びていくということのほかに、政務次官からも申し上げましたように、公共事業におきまして二百二十五億、財政投融資関係で六百七十億の増加、こういうことにいたしております。御承知の通り、失業対策事業の労務者は、公共事業の就労が相当な割合を占めておる。従って、この辺のワクの拡大によりまして、さらに吸収増が期待もできますし、かたがた私どもといたしましては、あの予算で何とか来年度はやっていけるというふうな見通しを立てておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/35
-
036・秋山長造
○秋山長造君 何とかなるとおっしゃるのは、まあ私、この資料を十分検討さしていただきますけれども、表面的に何とかごまかしていけるということだと思うのです。局長は首を振っておられるけれども、これは、必ずしも生活保護法にはかからぬけれども、大体実質的にはかかるような層だけでも、これは、ボーダーラインの人口は一千万近いでしょう。それから、月収八千円程度に足りないという人日だって、労働大臣の説明によれば、七百七十万というようなことでしょう。だから、こういうものは、もうこれは、今おっしゃるような意味では、表面的には一応就業しているのですから、失業者とはいえないけれども、しかし、実質的には、もうこれは失業者ですね。あるいは正確にいえば半失業者、こういう層は、もういつでも完全失業者に転落し得る属だから、こういう政府のおっしゃる完全雇用の意味が、何でもいい、一日百円の収入しきやないようなことでもいいし、何でもいい、とにかく何かの仕事をやってるという意味でやってる限りのものを、すべてを全部、完全雇用だというワクに入れてしまわれるなら、それは、おっしゃるような見解も成り立つけれども、私は、完全雇用と政府がおっしゃっている意味は、これはそういうものじゃない、実質的な完全雇用……ただ仕事につけた、就業したというところだけでつかまえるのじゃなしに、その就業した上に、その就業状態というものも、ある程度のレベルというものが保障されておる、確保されておるという状態において、初めて完全雇用ということを言っておられるのだと思うのです。ところが、その面から、就業状態というところまで立ち入って調べてみますと、これはきわめて、不完全就業者が圧倒的に多いのじゃないか。こういうものを、完全雇用政策というスローガンのもとに、どういうふうに扱っていかれるのかということを私は知りたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/36
-
037・江下孝
○政府委員(江下孝君) お話の通りでございます。そこで問題は、政府がこの経済六カ年計画を当初策定いたしましたときは、何でもいい、経済規模を拡大すれば事足りるのじゃないかという考え方が強かったのじゃないかと思います。ところが、現実に経済規模を拡大いたしましたところが、所得の格差は相当ひどい、こういうようなことからいたしまして、単に経済規模の拡大だけでは、完全雇用の問題は措置できないということになったわけでございます。それがまた、今日この雇用審議会法案を提案いたしました理由の一つにも相なっておるわけでございます。御承知の通り、日本の場合は、雇用者、すなわち賃金労働者が、全体の就業者の中の四割でございます。イギリスやアメリカは、八割から九割を占めておる。さらに農業関係労働者の割合が非常に高いわけでございますが、こういうような、非常に後進的な、複雑な雇用構造を持っております日本の国の雇用を一挙に完全雇用にもっていくということは、これは至難のことでございますが、そこに目標を置いて、私どもとしては、この雇用審議会におきまして、雇用構造というものを掘り下げて検討する。さらに、日本における完全雇用のあるべき姿というようなものも、この審議会においてさらに深く検討していく必要がある。そのためには、単に経済規模の拡大ということだけでなくして、あるいは文教政策、あるいは社会保障政策その他いろんな国の政策とあわせて、この問題を処理する。こういう大体考え方で行きたいと思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/37
-
038・秋山長造
○秋山長造君 雇用者の率が欧米と日本とで非常に違うということは、おっしゃられておる通りです。また、そのために、ますますこれはむずかしくなってるのだろうと思うのですがね。それから、もう一つは、大企業と中小企業あるいは零細企業、こういうものの間の賃金の格差がひどい。しかも、雇用というものが、その賃金水準のきわめて低い中小企業にしわ寄せをされておる。こういうふうなものは、これは、欧米の雇用問題と日本の雇用問題を扱う場合に非常に違うだろう。また、それだけ日本の雇用問題がむずかしい。当局の苦心のほどもそこにあると思うのですがね。どうもそういう点は、局長は当事者ですから、よくわかっておられるのですけれども、しかし、わかっておりながら、実際に政策を打ち出されていく場合に、なかなかそういう点の考慮が払われていないのじゃないか。ただ、景気をよくすれば完全雇用になるのだ、失業者は減るのだということは、欧米の、イギリスやアメリカで言うのなら、それはそれでいいと思う。アメリカやイギリスのように、大企業と零細企業との格差が非常に少くて、しかも、雇用率というものが非常に高いというようなところなら、それは、ちょっと経済規模を拡大すれば、景気をあおれば、それだけこの雇用問題の解決に大きく寄与できる。日本の場合は、そういうことでは手の届かない層が非常に厚いのです。広いのです。そういう層を政府の完全雇用政策によって具体的にどう救いあげていくのか、どう改善されていくのか、こういうことがまあわれわれの一番聞きたいポイントなんです。ところが、この点は、遺憾ながら、衆議院の予算委員会等で、いろいろな人がお尋ねしたけれども、なかなか具体的な政府の答弁というものが得られないままで終ってしまっておる、ただ、とにかく経済積極財政をやって、経済規模を拡大すれば、これは完全雇用になるのだというような、きわめて抽象的な御答弁しかいただけておらない。そこで、せめてこの雇用審議会というようなものを審議するこの機会にでも、政府のこの点についてのもう少しはっきりしたお考えというものを聞いておきたい、こういう気持なんです。次官に改めてお尋ねしますが、政府の完全雇用という政策の内容、特に今、私がお尋ねしておるような点について、少し具体的な御答弁がいただきたい。できれば、これは、数字的なものをもってお答えいただければ、なおさらけっこうなんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/38
-
039・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) ごもっともな御要求だと思いますが、とにかく初めに完全雇用ということを言い出したのは、完全雇用そのものについて、欧米先進国の完全雇用という言葉をそのまま持って来たものですから、一応とにかく、先ほどお言葉の中にありましたような、完全失業者をできるだけ少くすればいいのだというような考え方ではなかったかと思うのですが、その後、完全雇用というものは、もっと掘り下げて考えるようになりますと、日本の事情が、安定局長からも申し上げましたように、日本の雇用状態というものが、欧米先進国のような雇用条件、雇用状態ではないのだ、四千二百万以上、三百万にもなろうという労働力人口のうちで、一千六百何十万というものが雇用者で、その他のものはみんな自家営業というようなものである。その自家営業というものは中小企業であり、あるいは農業であって、個々が完全失業者とも言うべき、いわゆる潜在失業者を多分に包容しておる。同時に、年々生産年令人口は百万以上もふえる。このうちで、働きたい、雇用されたいという人は吸収しなければならない。そうなって来ますと、われわれの完全雇用の対象というものは、完全失業者というのが第一、また、潜在失業者というのが、いろいろな調査がございますが、とにかく相当多数おる。これが第二の対象になり、第三の対象は年々増加する労働力人口、この三つの種類のものを、この非常に複雑な構成の失業者を、失業者と言いましょうか、職を与えなければならない人をどういうふうにして雇用の拡大によって、同時にまたお言葉の中にありましたような、ただ幾らでもいいから、時間も少くてもいいし、賃金も少くてもいいから、何か仕事さえあればいいのだというような生活保護に類するような考えでなくて、雇用の内容も向上させ、安定もさせたいというのでありますから、非常に望み多くして研究はその点についてはまだ十分でないと、正直なところ申し上げられるのでありまして、その点から申しまして、今までの完全雇用という目的が、完全失業者を少くするというような考え方から、そうした複雑な内容を持つ雇用問題に入っていきましたので、そこで雇用審議会というような、日本特有な雇用状態を十分御検討願って新らしい施策を持ちたい。これが今回雇用審議会法案を提案した理由なんでありまして、その意味におきましては政府は非常に無策ではないかというお叱りを受けるかもしれませんが、事実だんだんここまで考え方が進んできたので、その点で一つ今後の問題として雇用審議会に期待をかけ、私どももさらに新しい研究を進めていかなければならない。その研究は欧米先進国の有名な学者の書いた本を読んだってこれはだめなんで、どうしてもこれは日本特有な雇用状態を前提とする雇用問題ということを掘り下げなければならない。こういう段階にあると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/39
-
040・秋山長造
○秋山長造君 今、政務次官がおっしゃるのが事実だろうと思うのです。やっぱりだから完全雇用という大きなスローガンだけはさまったけれども、その内容を裏付けていくのは、やっぱりこれから雇用審議会において、十分日本の特殊性ということに即して研究をされてのちに出てくるものだ、というように言ってもこれは間違いじゃないと思う。まあそういうことならば、完全雇用というスローガンはきまったけれども、内容は実はまだできていない。これから衆知を集めて十分研究してもらうのだということをはっきりやっぱり言われたらいいと思うのですよ。これは何も政府だけの責任じゃないのですからね。いやしくも与党といわず、野党といわず、これはおよそ政治をやる限りの者の共同責任ですからね。だからわれわれも政府ばかりの責任だと言って、政府ばかり責めるつもりもないし、とにかくこれだけむずかしい問題で、実はわれわれも内容については自信がない。まあこれから衆知を集めて研究するのだから、野党も協力してもらいたいと、これはもうはっきり言ってもらった方がよっぽどいいと思うのです。それをとにかく完全雇用、完全雇用といってやいのかいの言うものですからね、どういう内容を持った完全雇用かということをわれわれとしてもこれは追及せざるを得ないのですね。ただまあそういう意味でりっぱな審議会を作られることをわれわれはほんとうに期待したい。
もう少し雇用問題について政府のお考えをお尋ねしたいと思う点もあるし、それからまた今配られておるこの資料についても、もう少しお尋ねしたいことがあるのですが、一応私はきょうの質問はこれで打ち切って、それで次回に一つまた大臣に出ていただいて、お尋ねを続行したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/40
-
041・亀田得治
○委員長(亀田得治君) ちょっと速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/41
-
042・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/42
-
043・田畑金光
○田畑金光君 じゃ簡単に二、三質問申し上げたいと思いますが、政務次官に一つ。今までの質疑応答で大体出てきましたが、今回できる雇用審議会というものは、内閣がかわったので、従来の失業対策審議会というものが名前を変えて、衣がえをして提案されてきたと私は見るわけなんです。それは内閣官房に置くとか、あるいは委員の数をとくに専門委員の数をふやすとか等々ありますけれども、従来見ておりますと、内閣がかわれば必ず前内閣のもとに置かれたこの種の委員会、審議会というものが衣がえをして新しく登場してくるわけなんです。その実は内容において別段大きく変ったものもないわけなんですが、にもかかわらず内閣がかわると新しい審議会が名前を変えて出てくる。私は今回の場合も、雇用審議会というのは大体そういうふうなものじゃないだろうかと、こういう工合に見ているわけです。特にこの内閣が一千億減税施策、完全雇用と国民生活の安定、この完全雇用というスローガンを形の上でマッチさせていこうという意図のもとに、雇用審議会というものが設置されたものだと、こう見るほかないのですね。
先ほど来の御説明を承わっておりましても、別段新しくこういう具体的な背景のもとに、あるいは計画のもとにあるいは経済六カ年計画の上に立って、今後の雇用の推移をこのように見通している、あるいは国民所得の推移がこうである、経済の伸びがこうである等々との関連において、この問題がまあ科学的に、合理的な見地の上に立って取り上げられたのではないようにお見受けするのですが、その実態どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/43
-
044・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 先ほどもお答え申し上げましたことでありますが、必ずしもこの失業対策審議会を内閣がかわったから看板をかえて、何かいかにも新しいような感じを与えるために、看板を塗りかえたんだということは少し酷ではないかと考えるのであります。失業対策審議会は昭和二十四年に多分発足をした審議会でありまして、局長から御答弁申し上げましたようにその後六回にわたっての答申、あるいはその他の参考の資料を政府に出しておられるのでありまして、相当功績をあげて参ったのでありますが、鳩山内閣が完全雇用というのを表にはあまり出さなかったのでありますが、経済自立六カ年計画という中に、経済の自立と完全雇用とを並行して合せて実行したい、ということをうたったのでありますが、その時分に考えてきた完全雇用は、先ほど申しましたように完全失業者を、当時六十万であるとか七十万であるとかという数字がありましたが、六カ年の間に労働力人口を吸収しながら、それを四十五万くらいに最後の年度にはする、多分三十五年に四十五万くらいにするというような目標で、例の経済六カ年計画を作ったのであります。その後完全雇用というものを、ますます国の実情に合うようなものを考えてみますときに、完全雇用というものが、これはなかなか日本の国ではほかの国に見ないような人口増加をする国であり、先ほど秋山委員にお答えしましたような失業者というものが、不完全失業者あるいは潜在失業者を入れますと、非常に複雑な要素をなしておりますが、これは完全雇用ということをうたう以上は、よほど研究してかからなければならないが、ともかくも完全雇用ということは、福祉国家を作る以上は絶対に必要な要件であるから、この目標に力強く進まなければならないということで、こういう大きな政策を打ち出したのでありますから、それに応ずるためには、具体的にどうしたらよいのかということになってきますが、これも先ほど申し上げましたように、アメリカやイギリスのこうした雇用関係の学者の書いている本を直訳して見ても、日本の国情に合わないので、なかなか研究も容易でないから、雇用審議会を作って、じっくり御研究を願い、また関係当局の方でも一緒に勉強して、そうして完全雇用という、福祉国家にふさわしい大政策を実行に移したいというのが、今回雇用審議会法案を提案した理由でありまして、ただ目先を変えるために看板を塗りかえたということではなく、相当内容においては拘負を持っておる、また期待を持っておる審議会である、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/44
-
045・田畑金光
○田畑金光君 今の次官の御答弁は、要するに日本の産業構造の問題だと思うのです。すなわち四千万円をこす就業者がいますが、その中に占める農林業の就業者というものが、非常な大きな比率を示しているということです。これは特にヨーロッパの国々、あるいはアメリカやイギリス等々の例から見た場合に、これは日本の非常な特色であり、しかもこの全就業者数の中に占める農林漁業者の数というものは、戦前の比率よりも戦後かえってその比率がふえておるという、この産業構造の特殊性を指摘されておることと思うのです。しかし産業構造の特殊性というものは、何も鳩山内閣から岸内閣にかわったから、突然そういう問題が表面化されたのではなくて、それはもう失業の問題と本質的につながっておる問題なんです。今まで失業対策審議会があって、そうしてそこで失業、雇用問題と取り組んできたとするならば、それはもう当然そのときから取り組んでおる問題であって、何も雇用審議会という名前に変ったから、事新しくこの問題が表面化したというわけではないのです。特に私は考えていただきたいことは、そういう構造上の問題というものは、日本の失業、雇用問題を論議するときの大前提であって、今、石橋内閣から岸内閣にかわって、福祉国家の完成だ、あるいは社会保障の充実だなんと言って、突然出てきた問題ではないのです。これは少しく掘り下げて考えればおわかりになると思うのですが、そういうことを見たとき本質はちっとも変っていない。ただ掲げた看板が変ったから、そうして掲げた看板の中には福祉国家という名前を表面に打ち出したものだから、結局従来この問題と取り組んできた失業対策審議会も、この際は雇用審議会、こういう名前に衣がえした方が、福祉国家という名前に積極化したと同じように、形式的に何かしら積極化されたような印象を国民に植えつけるのじゃないか、こういう程度だとこう思うのですが、間違いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/45
-
046・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 審議会の委員になる人の考え方にいたしましても、失業対策というと、いかにも出てきた失業者をどういうことで就業させるか、その間どういうふうに取り扱ったらいいかというような、やはり消極的な局限された感じをいだくのでありますが、雇用審議会ということでここに掲げました四つの項目、四つの項目と申しましても三項目、こういうようにしますと、もう少し広い、積極的な分野に入って御審議を願える。もっとずっと分野が広げられる、こういうふうに考えるのでありまして、委員になる人自体の気持もよほど違うでありましょうし、人選に当りましても多少今までと変った方面に人を求めなければならない。こういうふうにも考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/46
-
047・田畑金光
○田畑金光君 今お答えになった点は大事な点と思いますが、名前が変ったから委員になられる方々も今度は着眼を変えて、もう少し広い視野に立って取り組んでいただけるだろう、これはまあ一応理屈としては成り立つと思うのです。それからもう一つ、委員にしても従来の選出等の基準にとらわれないで、広い視野から人選も進めていきたい、これもまあまっともな筋だと、こう思うのであります。そこで、私は、かりに失業対策審議会から雇用審議会に移行した、それに何らかの変りばえを発見することができるとするならば、一つの点は、委員の人選等というものも確かに要素として出てくると思うのですが、従来の失業対策審議会の委員というものはどういう範囲から選ばれ、学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が三十名以内を任命されてきたわけなんです。今度また同様に雇用審議会の委員でも三十名以内で、学識経験のある者のうちから同じく内閣総理大臣が任命される。その面においては同一なんですが、どういう角度で今度この審議会の委員を任命されようとする御方針であるのか、この点一つ政務次官から構想を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/47
-
048・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 一応失業対策審議会の委員の人選、その他今までの失業対策委員の構成について申し上げて、そのあとで申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/48
-
049・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) 現在の失業対策審議会の委員の構成を申し上げますと、総数三十名でございますが、そのうち産業界から十一名、金融界から四名、労働界から五名、学者、大学の教授等でございますが、十名、こういう構成になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/49
-
050・田畑金光
○田畑金光君 これ一つ次の委員会にどういう人方なのか、ちょっと名前を聞かしていただきたいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/50
-
051・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) 資料としてお配りいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/51
-
052・田畑金光
○田畑金光君 そうすると、今度は視野の広い、もう少し全般を見通しのきくような人方を委員にお選びなさるようでありますが、産業界、金融界、労働界、学者から今の失業対策審議会の委員の構成はなっているわけですが、今度の雇用審議会の委員の構成についてはもっと広い立場からというようなことになってきますと、これはどういうことになるわけでしょうか。政務次官から一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/52
-
053・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 一応抽象的にそう考えるという考えの基礎を申し上げたわけで、まだその人選をどういうふうな内容で拾っていくかというふうに、具体的な考え方はまだ持っておりませんのです。いずれ委員会の御審議等を通じて、御意見もございましょうから、そういう御意見も十分拝聴した上でというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/53
-
054・田畑金光
○田畑金光君 うまく逃げましたが、結局労働次官、なんですね、私が言ったように、別に何もないのですね。まず私は、もしかりにあなたが先ほどの御答弁のような趣旨で、何か今度は新味なものを出されようというならば、この委員等については、せめて私は一つの方法があってしかるべきだとこう思ったのです。だが、おそらく出てくる者は、産業界、金融界、労働界、学者、この層から、人員の数は違うかもしれませんけれども、出てくることが明らかだと思うのです。で、やはり私は、この失業対策審議会においても、これは産業構造等については十分話し合いの上で幾多の答申その他が出されていたと思うのです。私は、今日まで数回にわたって出されておりますが、答申の内容がどういうものであったか、この点について一つ御苦労ですが、産業構造等に関して答申案が出ていると思うのですけれども、この点は局長どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/54
-
055・江下孝
○政府委員(江下孝君) 今調べましてすぐ御返事いたします。暫時お待ち願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/55
-
056・亀田得治
○委員長(亀田得治君) ちょっと速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/56
-
057・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/57
-
058・江下孝
○政府委員(江下孝君) 答申四号の中に、雇用、失業に関する調査報告書というのがついております。この中にいわゆる低所得者についての調査、あるいは規模別も入っておったと思いますが、そういうものについての調査が一度なされたことがございます。それによって政府に答申されたことがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/58
-
059・田畑金光
○田畑金光君 せっかくの機会でありますから、従来のこの失業対策審議会からの答申の内容について資料をいただきたいと思うのです。その点は、次回の本委員会で本件の審査がなされる前日ごろまでに、委員長の方で資料の提出を求められて、各委員に配るように御配慮願いたい、こうお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/59
-
060・亀田得治
○委員長(亀田得治君) ただいまの希望はしかるべく取り計らいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/60
-
061・田畑金光
○田畑金光君 それから本年度の予算の中に出ております失業対策予算でありますが、これは大体予算の説明書を見ますと理解がつくしわけですが、そこでお尋ねしたいことは、先ほど来、秋山委員の質問に対していろいろ御答弁がありましたが、今度のこの失業対策予算というものと、本年度のこの予算編成の基礎になっておる生産あるいは所得、こういうようなものとの関係というものがどのような形で取り上げられておるのか。昭和三十二年度の産業計画あるいは生産計画、国民所得の推移というようなものがどの程度この失業対策計画の中に取り入れられているのか、この点について労働次官から先ほどいろいろお話があったようでありますが、非常に不明確でありますので、基礎的なものがあってこの失業対策予算が組まれておるのかどうか、この点をあらためて伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/61
-
062・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) この失業対策事業の関係は、経済五カ年計画であるとか、あるいは経済規模の拡大であるとかいうはっきりまだ数のつかないもの、これはもちろんそういうことを相当参考にはしますが、一番根本は窓口に現われてくる失業対策事業の最近の傾向、この傾向がこの経済拡大がある速度をもって進むとすればこんなふうに維持されるであろう、つまり過去の一年間を、あるいはもう少し長く過去の一年半、その傾向からこれを主として考えて、基本になっておるのでありまして、それに、それから将来を類推する場合に、経済規模の拡大あるいは経済自立計画の今まで歩んできた跡、そういうようなものを参考にしたのであります。でありますから一番基本は、どこまでも紹介所の窓口に現われてきた失業者の取り扱い状況が基本になっております。こういうふうに御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/62
-
063・田畑金光
○田畑金光君 今までの説明によりますと、確かに、またこの予算の説明を見ましても、過去一年間における各種統計資料の推移に基いて、三十二年度はおそらくこういう見通しになるだろう、こういうようなことで立てられておるわけなんです。ただしかし、問題として考えられることは、たとえば昭和三十一年度の国民所得が昭和三十年度に比較しますと二一%以上も伸びておる。ところが本年度はおそらく七ないし八%であるだろう、こう言われているわけですね。また、輸出についても昭和三十一年度は前年度に対して二割以上も伸びておる。本年度のたとえば貿易計画によると輸出が二十八億ドルでありますか、等々のまあ計画が立てられておりますが、前年度の比率ほど伸びるとは政府の計画の中でも見てないわけです。で、そういたしますと、やはり新しい年度の計画というものはいろいろ国内のいろんな経済の動きとか、あるいは貿易の推移とか、各種の生産計画の見通しのもとに予算が立てられたとき、初めてそれは一応われわれも納得がいく計画であり失業対策の事業であると、こう思うわけですが、ただ単にこの一年間の窓口に現われた資料だけで考えていくというようなやり方、そういう考え方はそもそも私は、先ほど労働次官がもっと広い視野に立って、本質的には日本の特殊的な産業構造、このような本質的な問題まで掘り下げて実は今後取り組んでいくんだというような態度からすると、非常に私その点矛盾するようにお聞きするわけなんです。そこでまあ私は、あの経済企画庁で昭和三十二年度の経済計画というものを発表しておるわけですが、こういうようなものと今回のこの失業対策事業計画というものとの関係等は何もないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/63
-
064・江下孝
○政府委員(江下孝君) 大体は政務次官が申し上げました通りでございますけれども、経済企画庁の三十二年度の計画は、先ほどもちょっと出ましたように、来年度国民総生産が七・六%増加する、ことしが一二%程度でございますのでことしほどは伸びませんが、やはり近年にない増加を見せる。これに伴いまして御承知のように国民所得も七・五%ふえる、消費水準につきましても六%増加する。こういうように、来年度におきましても相当大幅な経済規模全体の拡大を私ども予想いたしておるわけでございます。そこでこの全体の雇用の動きといたしましては、先ほども御答弁申し上げましたように、大体完全失業者もことしの横ばい程度で済むんじゃないだろうかと、こういうことでございます。もちろん一面におきまして生産年令人口の大幅な増加もございますけれども、来年度のこれだけの生産規模の増大があれば、本年度程度で大体完全失業者もいくんではなかろうか。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、三十年度の完全失業者の数が七十二万でございました。ところが三十一年度は六十万という見込みでございます。従って十二万減るということでございます。従って来年度におきましては経済規模の拡大を七・六%といたしましても、まあ大体今年度の横ばいという程度で見ることはそうおかしくないんではないだろうかと。そこで問題は安定所の窓口に出て参ります登録労働者の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、最近の傾向といたしましてはこれが頭打ちの傾向になっております。大体景気の上昇あるいは下降に従ってこの登録労働者も動くわけでございますけれども、必ずしも景気が上ればすぐ登録労働者が減る、あるいは景気が悪くなればすぐふえるということでなくて、若干その点にジグザグな食い違いを今も見せております。これは先ほど来話が出ましたように、日本の特殊な雇用構造、潜在失業者というようなものが相当ありますために、やはり景気の変動に伴って必ずしも失業者というものがすなおに現われない、あるいは予期した以上に現われるという場合もあるわけでございます。そこで大体私どもの考えとしましては、そうはいうものの、大きく経済の変動によってこれが増減するということは私どもも認めておるわけでございます。そこで最近の傾向からいたしまして、以上申し上げた点を考えまして、大体登録労働者につきましては、本年度と同じ程度で推移するのではないだろうか。ただ失対事業はなるほど今年度の実績程度になりましたけれども、公共事業あるいは財政投融資という面で相当大幅な雇用の増加は見込まれておりますので、かたがたこれで間に合うのではないか、こう実は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/64
-
065・田畑金光
○田畑金光君 たしかに本年度の財政の規模から見ますと、いろんな面で雇用問題というものが積極的な解決の要素になってきやせぬかということは、抽象的には言えると思うのです。今の局長のお話の中にもありましたように、公共事業のふえ方を見ましても、たとえば道路、港湾関係の予算だけでも二百三十九億ぐらいふえておるわけであります。それからまた財政投融資の規模だけでも約六戸八十億くらいふえておると思いますが、そういう公共事業費関係が相当ふえておるということは、たしかに雇用関係について一つの明るい希望を与えることは事実だと、こう思うのです。ただその際考えられることは、これは今後の実際の経済の推移を見なければ、今言ったような明るい諸条件が、雇用の問題に対してどういう結果をもたらしたかということが、予測の限りではありませんけれども、局長の方では今言ったような経済のいろんな動き、財政の今回の投融資、公共事業の膨張、こういうようなものから、たとえば過去三年なら三年は、二十九年から三十年、三十一年は一兆円予算がとられていたわけです。この過去三年間の公共事業あるいは財政投融資の動きから判断して、ことしの予算上の今言ったような膨張からして、この雇用面においてはどの程度新規の労働力人口等を吸収できる、こういうような点について検討をなされておられるかどうか。もし検討なされておられるならば、そういうような数字の動きというものについて見通しを聞かしていただきたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/65
-
066・江下孝
○政府委員(江下孝君) これは先生御承知の通り、経済企画庁で一応推算をしておるわけでございます。私ども企画庁から大体お話を聞いて、そういうことではないかということで承知しておる数字を申し上げるほかないと思います。それによりますと、生産年令人口に対しまする要就業者の率でございます、労働力率でございますが、これが大体本年度六八・四%の見込みでございますが、来年度も六八・四%程度の労働力率を見込みますと、大体生産年令人口の増加に伴いまして、八十九万人というものが新しく就業する必要のある労働者となって出てくる、この八十九万人は一応全部何らかの仕事に吸収できる、こういう考え方でございます。従って従来の完全失業者の六十万は、来年度もそのまま六十万ということで推移するであろう、こういうことでございます。その根本となりますのは、経済規模の拡大が七・五%国民総生産の増加が七・五%、こういうところにあることは申すまでもないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/66
-
067・田畑金光
○田畑金光君 今の経済企画庁の見通しから申しましても、完全失業者というものは動いていないのですね。停滞しておるわけなんです。完全失業者が停滞をしておるということ、この点について、結局は労働力人口がある程度吸収されたとしても、前年よりはある程度多く吸収されたとしても、完全失業者というものそのものは何ら減っていない、減らないのだ。この問題が私は非常に大事なことだと、こう考えるわけなんです。完全雇用を達成するということになってきますと、それは先ほどの労働次官のお話のように、単に完全失業者だけでなくて不完全失業者も含むのだ、あるいは年々ふえていく新しい労働力人口等も含むのだ。これはまあ当然そうでありましょうけれども、とにかく今最下層にある完全失業者というものがだんだん減っていくというところに、完全雇用のねらいがあるわけだろうと、こう考えるわけですが、この点について、今の経済の伸びというか、あるいは国民所得の伸びからいった場合、たしか経済企画庁長官は十年あるいは十二年もかかるのだ、こういうようなことを予算委員会等で答弁をしておるわけなんです。この十年や十二年で完全雇用が達成されるのだ、こう言っておりますが、それはどういうことを具体的には指しておるのか。完全失業者、不完全失業者、あるいは毎年ふえていく、といってもここ五年前後でありましょうが、それ以降はむしろ減っていくのだ、こういうことになっていきましょうが、これはどういうことを意味しておるのか。一つ労働次官から、政府の見解というものをもう少しわかりやすく御説明願えればありがたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/67
-
068・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 経済自立五カ年計画、これは改訂しなければならないことは、先ほど秋山委員にお答えした通りでありますが、今までの経済自立五カ年計画をさらに進行度を早める方に改訂されるのでありますから、あの五カ年計画よりも早く進行する、経済の拡大及び、従って雇用の拡大が早く進行するということが考えられるのでありますが、ただ、今三十二年、三年ごろは労働力人口、生産年令人口の増加のピークになっておるのです。人口にして百三十万あるいは百二十万というような数字なんですが、これがこの二、三年過ぎますと、ずっと下って参ります。従って、労働力人口の増という面がよほど負担が楽になってきますので、経済五カ年計画によりましても、三十五年には完全失業者が四十五万という目標でありましたが、これが少し早あられるというふうに考えられるのでありますが、つまりだんだん雇用が拡大されてきたけれども、局長からお答えしましたように、三十二年度には八十九万という労働力人口があるのですが、三十三年、四年ごろになりますと、この負担が非常に軽くなって参ります。これは人口増の過去の統計でありますから、はっきり数字に表われているので、これをごらんになればおおかりになると思います。その負担が楽になりますので、完全失業者、あるいは不完全失業者をその方面に相当吸収できる、こういうふうに考えているのであります。同時に、完全雇用という考え方でありますが、完全雇用という考え方は、極端にいえば求人と求職が同じ数になるというのが一番常識的に考えられるのでありますが、そこに当然摩擦的な失業者というものは考えなければならないので、それを何パーセントくらいに見られるかという問題もあるわけであります。完全失業者が皆無になるという状態というものは考えられない。かように考えて、経済の拡大、そうして雇用の増大、労働力人口の増加の度合いが減ってくること、こういうことをいろいろ考え合せましたときに、完全雇用に向って何年たったら、そして完全雇用というものは完全失業者を雇用労働者に対して何パーセントくらい見るのが適当であるか、こういうようなことを考えて、十年かかりはしないか、あるいは十何年かかりはしないかというような一応想定をしているので、そういうような問題も、雇用審議会の御審議に大きな期待をかけている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/68
-
069・田畑金光
○田畑金光君 今お話の、鳩山内閣の立てた経済五カ年計画が、すでに昭和三十四年度あたりの目標を昭和三十一年度あたりで達成できた。これは海外の経済の好況その他国内的な諸条件が整ったためにそうなったのだ、それはよくわかるのですが、とにかく異常な景気の昭和三十一年度、それからまた、そういう上に昭和三十二年度も繁栄を続けるであろう。こういうような見通しの上に、昭和三十二年度予算が立てられたわけです。従って、私たちは、そういう景気の繁栄が続くということを考えた場合に、完全失業者というようなものが、昭和三十一年度も昭和三十二年度も同じ線で停滞をしなくちゃならぬ、ここに問題が残されていはせぬかと、こう思うのです。その問題の解決を、今政府で考えておられる新しい経済計画では、どういうようにしてこれをなくし、これを吸収していこうという見通しであるのか。それはお話のように、完全雇用といっても、いかなる国であっても、摩擦的な意味の失業者というものはあるのであって、これは当然のことだと思うのですが、摩擦的な失業者というのは別にいたしまして、今後の日本の経済の伸びと、あるいは自民党内閣の考えておられる経済計画と、失業者の問題というものは、どういう形で、どういうカーブを描きながらなくしていこうとする計画であるのか。先ほど申し上げたように、昨日も経済企画庁長官は十年、十二年かかるというのでず、完全失業者をなくしていくのには。もちろんなくするといっても、摩擦的な失業者まで考えているわけではないと思いますが、十年や十二年でどういう工合にしてなくなっていくのか、その点をもう少し私は明確に教えていただきたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/69
-
070・江下孝
○政府委員(江下孝君) これは私も企画庁の計画として聞いているところでございますが、日本には潜在失業者がたくさんいる。従って、完全雇用の問題だけを対象にしての雇用計画は意味をなさない。そこで完全失業もできるだけ減らしていくという方針が一つと、それから潜在失業者をなくす、そのためには年々どの程度の正常雇用が新規に必要であるかという計画を考えたわけであります。その場合の基礎としましては、潜在失業者は数四万あるといわれておりますが、その潜在失業者のうち、正常雇用に動ける人、たとえば農村あたりにおられる家族従業者というのは、潜在失業者のようなにおいも強い人も多いのですけれども、しかし一面においてはやはりその人がいないと農業が成り立たないということから動けない、そういう人たちは動けないということで、転業可能のつまり動ける潜在失業者を一応約二百万と推定して、そこでこの二百万を将来正常雇用に向けていくのが一つと、それからもう一つは毎年ふえます百万以上の新規の学校卒業者、追加労働力これをまたどうして吸収していくかということでございます。その両者の数字をまず計算いたしまして、これに見合う経済規模の拡大なりあるいは消費水準の増加は、どの程度の将来経済規模の拡大をやれば可能かということで出したのが、私は十年程度というふうに聞いております。従ってその十年という場合には年々の経済成長率は非常に高く見込まなければいけない。今ちょっと。パーセンテージを覚えておりませんが、後ほどお答え申し上げますが、相当高い経済成長率を見込んでもこれだけの人を新たに吸収するには十年かかる、こういうのが経済企画庁の計画と私は承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/70
-
071・田畑金光
○田畑金光君 私は今の説明で一応この問題は本日はこの程度で質問をやめておきまして、この経済企画庁の出しておられる資料、それは向うからもらえばいいんですが、向うはあると思いますんでね、たしかどこかで読んだ記憶ありますが、資料を一つ御提出願うことと、この次の機会にはもう少し正確な見通し等を今度労働大臣ですか、労働大臣から承わりたいと考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/71
-
072・秋山長造
○秋山長造君 一点だけお尋ねしますが、今の田畑君に対する次官の御答弁で、わが国の人口増はここ二、三年がピークであると、で、それ以後だんだん減りますから、生産年令人口の負担というものも減ってくるんだというような御答弁があったように思うのです。で、この点は局長にお尋ねしますが、なるほど人口の増加率というものは漸次数年後から減ってくるということはわかるのです。ところが生産年令人口というものは依然としてふえていって、昭和四十年から四十五年ぐらいがピークになるように私は承知しているのですが、その点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/72
-
073・江下孝
○政府委員(江下孝君) 私どものこの資料によりますと、昭和四十年から人口は逐次減って参ると、こうなっております。それから生産年令人口も昭和三十六年から三十九年がピークでございまして、四十年以降若干ではございますが減っていく、こういうことに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/73
-
074・秋山長造
○秋山長造君 もう一度お尋ねしますが、人口増は四十年ごろがピークですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/74
-
075・江下孝
○政府委員(江下孝君) 人口の増加は三十六年から三十九年までが百万以上ずつ増加する、そうほかの年は百万以下でございます。四十年以降は人口も低下して参る。それに伴いまして生産年令人口も三十六年から三十九年までが百六、七十万人ずつ毎年ふえて参る。四十年になりますと百二十六万程度の増になって落ちてくる、かように相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/75
-
076・竹下豐次
○竹下豐次君 先ほどから田畑委員の御意見をまじえての御質問がございましたのですが、現在失業対策委員会というものがある、その名前を変えるにとどまるだけのことじゃないかというような意味の御質問だったと思っております。いろいろ御答弁もありましたが、まあ私も初めは新聞を見ましてそういう気持がしたのであります。しかしまた考えてみますると、たとえば新たい学校を卒業した者の就職というようなことは失業問題に関連がありますけれども、その失業という言葉を厳格に解釈しますれば、そのほかの問題があるというようなことになっていくのだろうと思っております。しかし今日まで失業対策委員会ではおそらくそういう問題も取り扱われておったのだろうと思います。取り扱われておったとすればこの後、審議会に名前を変えないでもそのままでもいいじゃないか、こういう気持も一方から起るわけであります。しかし次官からたびたび御説明のありましたように、失業対策委員会という言葉は、名前は、やっぱり消極的な意味が主になっているような気もして、雇用審議会というのは積極的に大いにこれからやろうという気持であると、観念的にはそういう気持は私もわかります。で、なおおそらく政府の方では今日までの、現在ある失業対策委員会に諮問するには適切でない、ふさわしくない問題があるが、それはどういうことかというと、厳格な意味の失業ということには含まれない雇用問題がある。それをこの後はしっかり諮問をしたい、研究もしたい、こういうお気持があるのじゃないかと私は想像しておるわけであります。その点をどういうお考えでありますか、まずお伺いしたい。それが一つと。
それからそういう積極的な雇用の問題に関して、おそらく失業対策委員会でも今日まで取り扱われたことと思いますが、そのほかの審議会でそういう種類のことをお取り扱いになった例はないのですか。たとえば人口問題というようなことなど重要な問題であります。これは審議会ございませんでしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/76
-
077・江下孝
○政府委員(江下孝君) いやございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/77
-
078・竹下豐次
○竹下豐次君 そういうところでもお取り扱いになっておるのじゃないかと思うのですがね。そうするとそういう広い意味の雇用問題というものがある場合においては、失業対策委員会で取り扱われ、ある場合には人口問題の関係の審議会で取り扱われる、そういうことがあるとちぐはぐになるようなことが今日までありはしなかっただろうか。それを私は事実わかりませんけれども想像です。そうするとそういうことがあったとすれば、今度雇用問題の審議会として、はっきりそこでそういう問題を取りまとめて研究されるということも一つの方法じゃないかと、こういうふうに、私はこれは全く私の想像で、新聞を見ての想像でありますからわからないのでありますけれども、その点は今日までどういうことになっておるか、それが第二点であります。
それから、もし私が今想像しておるような政府のお考えであるとしまするならば、新しくできる雇用審議会に諮問される事項、これはまだ具体的にお考えになってきめておいでにならないことは当然であり、まだ審議会もできておらぬことであるから、どうも失業対策審議会に諮問するのも工合が悪い。また一方人口問題に諮問するのも工合が悪い。だから今度できたものがふさわしいからそれに諮問しようというような問題について、何か具体的な構想でも現在おありになりますならば、この際お話を聞かしていただきますと、田畑さんの御質問にも答える意味にもなるのじゃないか、私はかように考えるのですが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/78
-
079・伊能芳雄
○政府委員(伊能芳雄君) 第一の点について私からお答え申し上げます。お言葉の通りまたお察しの通り、失業対策審議会ということであれば自然遠慮するようなことでも、もっと広い視野に立って雇用問題ということになりますと、堂々と完全雇用というような問題をうたって、完全雇用を達成するについてこうこういう施策はどうであるとか、あるいは完全雇用に向って今日の経済状態ではどういうふうにしていったら何年くらいで達成できるかとか、そういうように広い視野に立って諮問もできることと考えます。従って失業対策審議会よりもはるかに広い立場に立ってくるということは申し上げられるのでありますが、またそれがねらいであるということも今回の雇用審議会の大きな目標であるのでありまして、そういう意味からしまするならば、内容はそれじゃどういうことをやるかというと、まだ、これもそれじゃどんな諮問をするのかと言われましても、そこまでまだ十分練ったわけではございませんが、少くとも抽象的にはそういうような心がまえでこの雇用審議会の法案を御提案申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/79
-
080・江下孝
○政府委員(江下孝君) 他の審議会で、雇用問題を直接主とするものはございませんけれども、関連としましてお話出ました人口問題調査会と申しますか等で、やはり主として人口問題という見地から対策の要望がありましたのを覚えておりますが、しかし失業対策審議会が従来答申いたしました内容と、特に矛盾するとかかけ離れておるということはなかったように思います。大体政府部内の者が両審議会ともダブって出ておるという関係もございますので、その点は今まではあまりそういうことはなかったようにただいまは承知いたしております。今後の運営といたしましては雇用という面におきますれば、もちろんこの審議会が中心として動くべき問題で、必要に応じてあるいは人口問題等にも及ぶと思う、こうなるのではなかろうかと考えております。どういう問題を具体的に取り上げるかというお話でございましたが、まことに失礼でございますが一例をあげますと、最近非常に老齢者が職業戦線に出ておる。これは一体社会保障と関係をどういうふうに調整すべきかという問題、あるいは学校教育制度、技能者不足という問題がございます。学校教育制度をどういうふうにしていくか、あるいは職業訓練という問題を、どの程度日本の産業とマッチして取り上げていくか、あるいは最近のオートメーション問題をどういうふうに処置していくかというような二、三の点だけ申し上げましても、そういうような非常に問題はたくさんあると思っております。将来この点については十分慎重に研究いたしまして諮問をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/80
-
081・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 速記やめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/81
-
082・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 速記起して。
本案についての質疑は、本日のところこの程度にして、委員会はこれにて散会いたします。
午後四時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X00819570312/82
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。