1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十二年四月十九日(金曜日)
午後二時十一分開会
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 亀田 得治君
理事
上原 正吉君
大谷藤之助君
秋山 長造君
竹下 豐次君
委員
植竹 春彦君
木島 虎藏君
迫水 久常君
前田佳都男君
松村 秀逸君
荒木正三郎君
伊藤 顕道君
田畑 金光君
国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
国 務 大 臣 小滝 彬君
政府委員
法制局長官 林 修三君
防衛庁次長 増原 恵吉君
防衛庁長官官房
長 門叶 宗雄君
防衛庁防衛局長 林 一夫君
防衛庁人事局長 加藤 陽三君
防衛庁経理局長 北島 武雄君
防衛庁装備局長 小山 雄二君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
—————————————
本日の会議に付した案件
○防衛庁設置法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○自衛隊法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/0
-
001・亀田得治
○委員長(亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。
防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案、両案を一括して議題に供します。両案について、御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/1
-
002・田畑金光
○田畑金光君 岸総理に、防衛問題についてお尋ねいたしたいと思いますが、その前に、今回国会が終了すると、東南アジアを訪問され、引き続き米国に行かれる。特に今回訪問される諸国は、AAグループの主流をなすコロンボ・ブラン傘下の諸国でありますが、このことは、自主外交を進める上からいって、大いに歓迎すべきことであり、また、われわれも賛意を表したいと考えております。しかし、今回の総理の訪問が、どういう目的で東南アジアを行かれるのか、明確でないわけです。特に本朝、毎日新聞の伝うるところによると、吉田元総理一行が総理の行かれる前に東南アジアを旅行され、あるいはアメリカに行かれるというわけです。吉田元総理というと、例の講和条約を締結され、日米安全保障条約を締結された当の最高責任者であったわけです。当時の東南アジアの諸国は、ほとんどの国が講和条約に参加をしなかった。また、インドのネールを中心とする平和中立主義外交に対して最も批判的な吉田元総理が東南アジアを行かれるということは、およそ茶番劇だと、こう考えるわけで、どういう目的で吉田元総理一行が行かれるのか、これ自体またおかしいわけでありまして、この際、総理はいかなる目的で東南アジアに行かれるのか、同時に、本朝の新聞がもし事実であるとするならば、吉田元総理一行の旅行はどういう目的なのか、これを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/2
-
003・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。私自身、かねて国会を通じて私の考えを申し述べておりますが、日本の外交の基本は、平和外交の推進にあることは申すまでもありませんが、それには、日本の独立の完成及び日本が自主独立の立場からすべての国々と話を進めることが最も必要である。特にアメリカとの関係におきましては、何といっても、長い間、占領をされており、また、占領政策時代に作られたところのものがなお完全に払拭されておらないのでありまして、また、国民の間にも、考えといたしまして、それが私は十分に払拭されておらないというような点があることは、非常に遺憾でありまして、将来の日米の正常なる友好関係及び緊密なる協力関係というものを作り上げるためには、日米の基本問題について、両国の首脳部の間において十分に腹を打ちあけて、卒直に話し合う必要があると、私は考えておるのであります。しこうして、日本は何と申しましてもアジアの一国であり、アジアは、最近政治的な独立を完成し、また、新興の国として、非常にその独立を完成し、あらゆる面において発展をしようとする意欲に燃えております。私は、歴史的に申しましても、文化的に申しましても、あるいは経済的に申しましても、日本がアジアの一国であり、将来国際的の問題につきましても、アジア共通の観点からものことを考え、処理していく必要がますます重大になってきておると思います。また、アメリカ自身も、このアジア諸国に対して、各種の援助を行い、その政治的、社会的安定を望んで、いろいろな施策をしておりますが、私は、やはりアジアの一国として、このアジアに共通するところのものの考え方、それから、利害の関係等におきまして、十分アジアの関係を緊密にして、そうして将来アメリカとの協力関係を進めていくという上においても、役立たしめる必要があると思います。こういう観点に立って、私は、まずアジアが何を考えておるか、アジアの首脳者がいかにこの国際情勢を見、将来国際情勢に対して対処しなければならぬというふうな考え方をしているか、また、われわれがこれらの国々といかにして提携を緊密にし、そしてその発展を期するかというような点について、アジアの各国の首脳者と率直に話し合うことは最も必要であり、また、かねて私が念願をいたしておったところであります。私は、石橋内閣の成立の最初に、当時の石橋首相と話をいたしまして、国会が済めば、私自身は外相として東南アジア諸国をまず歴訪して、私のこの考えについて十分に話し合いをしてみたいということを当時話し合い、石橋首相は首相として、訪米の意図のあることを明らかにされておりました。私は、石橋内閣を継承して、この国会に臨んだわけでありますが、国会が済みますと、今、石橋前首相と話したことは、私は、日本の今後の対外政策をきめる方針として間違っておらないと、こう考えますので、このアジアを歴訪するという私の外相としての希望並びに首相として訪米しようとする意図を持っておられた石橋前首相の考え方というものを結び合して、この両者を実現しようとするのでありますが、私としては、まず東南アジア諸国、これは、全部は時日の関係でとうてい回れませんけれども、主要国をたずねて、これらの国々の指導者の人々と、今申したように、アジアを中心として、アジアの繁栄のための考え、それがさらに、ひいて世界平和に貢献するゆえんであるという見地から、十分に腹を打ちあけて話し合いをしてみたいと、かように考えております。
吉田首相が訪米されるとか、あるいは東南アジアをたずねられるとかいうことを、けさ私は新聞を見て、初めてその事実を知ったようなことでありまして、全然私の関知しないことであります。私は、おそらくそういう事実はなかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/3
-
004・田畑金光
○田畑金光君 そういう事実がないということで安心いたしましたが、アメリカにせっかく渡られて、総理は、日米安保条約、行政協定等につきまして、全般的な話し合いをなされる、そういう際に、その安保条約、行政協定を作られた当の吉田さんが行かれるということは、およそ総理の考えておられる仕事を推進する方向とは逆な結果をもたらしゃせぬかと、こういう不安を持ちましたので、お尋ねいたしたわけであります。
それから、ただいまのお話の中で、御答弁の中で、今後アメリカに行かれまして、日米間の基本的な問題についての考え方について話し合いを行い、あるいは意見の一致を見出す、あるいは先般の記者会見でも、日米間の基本的なものの考え方を忌憚なく話し合って、両方の意見を一致させる目的を持たれる、安保条約や沖縄問題、ガリオアの問題等について、根本的な話し合いをして参りたい、こういうようなことも言われておりますが、日米間の基本的な問題といたしましては、何と申しましても、平和条約、安保条約、行政協定、こういう基本的な問題であろうと考えます。これらの問題については、追ってお尋ねいたしますが、その前に、私は、今回の訪問の内容が、あるいは大きな話し合いの内容が、今申し上げたように、サンフランシスコ体制に関する安保条約、行政協定の問題が主であろうと考えられるわけであります。ところが政府は、今回の総理の渡米に備えまして、国防の基本方針とか、長期防衛計画を立てておられると聞いておるわけであります。近く国防会議も開かれる、こういうお話でありますが、いつごろ国防会議をお開きになる予定であるか、国防会議は、昨年の七月設置されて以来、実質的な動きをやっておりません。防衛庁設置法四十二条に基き、総理が国防会議の議長であります。国防の基本方針は当然国防会議に諮ることになっておりますが、総理は、渡米を前にされて、国防の基本方針について、いろいろ案を練っておられるようでありますが、この際私は、国防会議がいつ開かれ、また、岸内閣の国防の基本方針についてはどういう考えをお持ちであるのか、明確に一つ、国会を通じ、国民に知らしめていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/4
-
005・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 国防会議は設置せられましてから二回開かれておりますが、現在、その幹事会等におきまして、国防会議に付議すべき重要案件について検討をずっといたしております。おそらく私が訪米する前にも、数回開くようなことになるのではないかと予想しておりますが、最初には、少くとも本月のうちには国防会議を開きたいという意図のもとに研究を進めきせております。国防の基本方針その他国防上の重要な案件は、この国防会議に付議して、国防会議において決定するという建前になっております。従いまして、その具体的なことにつきましては、国防会議の審議に待たなければ、私がここで申し上げることは適当でないと思います。ただ、国防の基本につきましては、いうまでもなく、従来われわれがあらゆる機会に宣明いたしておりますように、日本の国力と国情に応じて、われわれの力でもって、祖国を不当なる侵略から防衛するということを目標として、この防衛力を漸増して参っておりますし、また、その方針のもとに、これを漸増して参りまして、そうして外国軍隊の駐留というものをなくして、そうして日本のわれわれの力でわれわれの祖国を防衛するに必要な防衛力を持つ、そうして他から不当な侵略を受けない。われわれが安全感を持って平和な生活ができるようにしてゆくというところをねらうことが、何といっても根本の考え方でなければならぬと思います。ただ、それをどういうふうに具体化するかという具体的の計画や、その内容等につきましては、国防会議に付議いたしまして、十分検討して決定をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/5
-
006・田畑金光
○田畑金光君 国防の基本方針とか、あるいは長期防衛計画でありますが、内閣委員会におきまして、これはこの国会のみではありません。前内閣から引き続き、政府の方針を明らかにせよと求めておりますが、常に不明のままに終っておるわけであります。新聞では、防衛六カ年計画の内容等について、折々発表せられておりますが、また、一昨年の八月に当時の重光外相がアメリカに渡りましたときも、防衛六カ年計画なるものの案を持って行かれておるわけです。私は、こういう国防問題等については、新しい憲法のもとにおいて、われわれ大きな疑問を持っておりますが、いずれにいたしましても、国会を通じ、国民に明らかにすべきだと思うんです。岸総理は、近く国防会議を開かれて、国防の基本方針あるいは長期防衛計画を付議された場合に、国民にその真相あるいは方向等を明らかにされるか、あるいはこの国会が終るまでに、この国会を通じ、防衛六カ年計画あるいは国防の基本方針等について明確にする気持がおありかどうか、これを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/6
-
007・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 国防の基本方針や、あるいは長期防衛計画の具体的内容というようなものを、実は国として、一つの確固たる方針を定めるということが私は何よりも必要であると思う。従来あるいは防衛庁内において、防衛六カ年計画というような一つの試案を持つとか、あるいは年々その年の予算をきめる場合において、とにかく目前の必要を充足するに足るだけのものを年々国力と見合して、これを予算に計上するというふうなやり方を続けていくということは、これはいうまでもなく、適当でないのでありまして、その意味において、私は、この国防会議の関係者を督促して、基本方針やあるいは長期防衛計画の樹立を促しておるわけであります。しこうして、そのものがきまりますれば、もちろん国民に明らかにし、あるいはその内容いかんによっては、十分国会におきましても、これに対する批判や意見、国民の意見が述べられるというような機会を持たなければならぬということは言うを待ちません。ただ、世間で一部伝えられているように、私が渡米する前に、何か一つの案を作って、そうしてアメリカ側へそれを携行するんじゃないかというふうなことが言われておりますが、私は決してそう考えておりません。もちろん、日米共同防衛の立場をとっておりますので、日本がまだ、今日あるところの防衛力は、独自の力で日本を守るだけの力を持っておりませんから、アメリカの日本に対する防衛の力と見合してゆく必要はござい求すけれども、あくまでも、日本の防衛ということは、日本の自主的な立場からわれわれは考えて参りたい。従って、決してアメリカに行きます前に何か案を作り、そうして国会や国民に示さずして、アメリカの方の承認を得るというふうなつもりで実は国防会議を急いでいるわけではないのでありまして、国防会議そのものは設置されて、先ほどからお話がありますように、基本方針や、あるいは長期の計画というようなものに対して、しっかりした国の方針というものを定めて、そうして国民に十分に理解を求め、協力を求めなければ真の国防は成り立たないと、こう思って、国防会議ができたにもかかわらず、いつまでもその計画なり基本方針がきまらずにいるという状態をなくしたい意味において、今督促をいたしている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/7
-
008・田畑金光
○田畑金光君 国防の今後の基本的な方針に関連して、問題として取り上げなければならぬことは、最近の戦略態勢において、原子力をあらゆる国が戦略態勢の中に取り入れてきているということです。今回の英国のクリスマス島における原水爆実験に対しまして、わが方が再三禁止要望をやったにかかわらず、英国は、原水爆を保有することが自由主義世界の平和と自由のためである、こういう考え方に立っているわけです。四月四日のイギリスの国防白書をみましても、一九五七—八会計年度においては、国防費を一億一千七一百万ポンド削る一九六〇年限りで徴兵制をやめる。あるいは現在のラインに駐留するイギリスの軍隊を、今後一年以内に七万七千から六万四千に削る、こういうふうに、大きく原子力戦略態勢の中に入ってきております。また、西独のアデナウアー首相も、四月の初めに、西独の原子武装をするということを明確に宣言している。あるいは京た、NATOの最近の動きも原子力態勢の中に入っている、こういうような新しい動きが出ておりますが、先般来、防衛庁長官にお尋ねいたしますと、日本の自衛隊といたしましても、質的強化、こういうことを言われているわけであります。あるいは自衛隊の、近代、機動力化、機械化等、こういうようなことを言われているわけであります。で、私がこういう世界的な傾向を見ましたときに、わが国の、あるいは岸内閣の国防基本方針というものに、この原子力戦略態勢というものをどのように取り入れようという考え方であるか、あるいはあくまでも排除するという考え方であるのか、この際明確に聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/8
-
009・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私は、現状におきまして、戦略態勢が完全に変革を受けているとも実は考えておりません。もちろん、新しい技術の発達、いろいろな武器の発達に対しましては、われわれの自衛隊の装備というものも、科学的なそういう進歩を取り入れていかなければならぬことは、言うを待ちませんけれども、ただ問題は、この原子力の問題でありますが、われわれは、この原子力という新しく発見されたエネルギーが、人類を破滅に導くような原水爆等の兵器としてこれが用いられるということは、人類の不幸であるのみならず、私どもは極力これを防止し、そういうことを排撃して参る考えであり、原子力は、あくまでもわれわれの福祉の増進のために用いられるということによって、われわれ人類の福祉がこれによって増進されるようにいかなければならぬというのが根本の考え方でございます。従って、核兵器の実験等に対して、強くわれわれが反対しているゆえんもそこにあるのであります。私どもが今日の、現段階の考えにおきましては、自衛隊の装備等について、新しい科学的な進歩を取り入れて、これを質的に向上せしめなければならぬことは言うを待ちませんけれども、この核兵器の使用につきましては、私どもは、これは人類の福祉のために、原子力というものが破壊兵器として人類を破滅に導くような方向に用いられるということにつきましては、あくまでも反対の態度を堅持したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/9
-
010・田畑金光
○田畑金光君 総理は、今まで、両院の予算委員会や外務委員会等で、原子兵器の持ち込みとか、原子部隊の駐留については、あくまでもこれを拒否するという態度を明らかにされております。で、この際、ただいまの答弁でも、私たちは一応答弁としては安心いたしますが、総理の今日までの国会を通じてこのような答弁がなされておるにかかわらず、なおかつ安保条約、行政協定のもとにおける日本の立場ということを考えましたときに、非常な不安を持っておるわけです。共同防衛の立場に立たされておる日本といたしましては、アメリカの戦略的な要請によって、あるいは将来、原子兵器の持ち込み、原子部隊の駐留ということ、が当然考ええれる、これは事実であります。今の行政協定、安保条約の精神からいいますと、必ずあり得るということも予測されるわけであります。この際総理は、今回の国会で答弁された原子兵器の持ち込み、原子部隊の駐留は断わるというこの基本的な態度を貫かれるならば、せっかくアメリカに渡られて、大所高所からお話をなされるわけでありまするが、こういう問題について、明確にアメリカ当局と話をなされて、少くとも安保条約等の中にそういう内容を盛ることが必要であると思いますが、そのような気持はありますかどうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/10
-
011・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 現在の安保条約や行政協定の建前から申しますというと、一応表面上に現われているところでは、日本にいかなる部隊を持ってくるか、あるいはこれを引き揚げるかということが、アメリカ側の一方的意思によってきまるような表面的の規定になっていることは、御承知の通りであります。ただ、アメリカ側が従来もそう言っておりますし、実際の問題として、全然日本の意向を聞かずして、そういう重大な事態を実際に実行したような事例もございませんし、また、原子部隊の問題がいろいろ新聞等で論議された際に、国務省及び国防省等におきましては、日本の意思を無視してそういうものを持ち込むというようなことは考えておらぬことを明らかにいたしております。しかし問題は、今の安保条約やあるいは行政協定の建前の上から言うと、そういうことは自由に一方的にできるのではないかというふうな懸念も生ずるような規定になっておると私は思います。安保条約ができました当時においては、言うまでもなく、日本に自衛力というものは皆無でありまして、従って、日本の防衛というものは、もっぱら駐留軍によって安全が保障されるという状況でありましたが、今日においては、少くとも日本の防衛について、日本がある程度の責任を分担し得る防衛力ができていると思います。また、国連に加盟したということも、その後に起った大きな変化であります。そういう事情から見まして、この安保条約や行政協定等を全面的に検討すべき時期に来ていると思うのです。従って、これに対する日本の国民の考え方なり、あるいは日本側の立場から、いろいろな懸念というようなものにつきましては、率直に話し合って、将来の共同防衛のあり方、または日本の安全保障のあり方について話をする、ということは、この際ぜひこの訪米の機会にいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/11
-
012・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 田畑君の質問をちょっと集約するようにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/12
-
013・田畑金光
○田畑金光君 それじゃ時間がありませんので……、日米安保条約、行政協定について、全般的に再検討の話し合いをなさる。これは至極けっこうだと思います。しからば、全般的な話し合いをなされて、具体的に問題点を取り上げられて、それをどう処理し、解決されるか、ここに問題点があろうと思います。今のお話の中にある基地の問題でありますが、これは、今の条約から申しますと、行政協定から申しますと、全国にどこでも基地は無限に拡大できるという建前になっておるわけです。あるいはまた、基地のための土地収用にいたしましても、憲法に基く、あるいは日本憲法のもとにある土地収用法によらずして、より強権的な、一方的な特別措置法によって土地の収用もされておる。あるいは労務基本権を見ましても、労務基本権等については、行政協定の中に明確に、日本の法律に基く、こういう工合になっておりますが、アメリカ軍の一方的な判断と認定によって解雇措置等が取られておる。日本の労働関係の法律は全然無視されておる。こういうような問題であります。こういう具体的な問題について話し合いをなされた結果、それをどう解決されようというのでありますか。さらにまた、ことに、安保条約の第一条でありますが、日本の国内に大規模の内乱とか騒擾、こういうようなものがある場合には、こういうもののためにも、アメリカの軍隊というものが動くことになっておるわけです。こういうような場合には、これは明らかに内政干渉にわたると思うわけです。こういうような点等について具体的に話し合いをなされて、どういうふうにしからばこれを解決されようとするのか。私たちは、しばしば抽象的な議論を、御答弁を聞いておりますが、具体的な一つ一つの問題について、総理の、あるいは外務大臣としての見解を聞いていないわけであります。そこに不安が残るわけでありますが、どういう考え方をもってこれらを今後具体的に処理されるのか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/13
-
014・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 安保条約のどの条項をどういうふうに直すかどうか。あるいはこの具体的な問題をどういうふうに解決するかというふうな、具体的な問題につきましては、私自身も十分一つ考えて参って話しをしたいと思いますが、私は、そういう問題が具体的にきまるべきむしろ基礎となる物の考え方というものをこの際は両国の首脳部で、短い期間でありますので、話し合うことが適当である。その物の考え方が一致するならば、具体的にそれを解決するところの方法は、両方のそれぞれの機関を通じて折衝して、十分に解決のできる問題であります。従いまして、個々に、基地の問題をどうするかとか、あるいは安保条約を検討した結果、どの条項をどういうふうに改めるかということを申し述べることは、私は適当でないと、かように考えます。従来、物の考え方の基本についてはお話を申し上げておりますが、具体的の問題については、特にそれを申し上げることを避けておるわけでございます。これは、相手国のあることでもありますし、また、いろいろ扱う時期的の問題もございますから、一つ御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/14
-
015・田畑金光
○田畑金光君 時間がないようで残念ですが、先ほど来の総理の御答弁を聞いておりますと、安保条約、行政協定については、再検討し、改むべき段階に来ているということはお認めのようであります。しかしまた、先ほど来の御答弁を聞いておりますと、日本の国防の基本的な方針については、日米共同防衛の立場をどこまでも貫く、こういうことも言われておるわけであります。結局、そういう立場においての条約改正というものは、要するに、今の片務的な協定を双務的な協定に、相互的な協定に改訂しようという考え方が基本であると思うわけであります。この考え方は、要するに、形だけの平等な、言辞的な対等の同盟を結局考えている。これが岸構想の日米関係の国防における考え方ではなかろうか。そうなって参りますると、私は、今度の訪米というものは、結局一昨年の八月に重光外相が訪問されて、当時の直接的な話の内容は、防衛分担金の問題であったわけでありますが、結果といたしましては、憲法改正、再軍備の方向に大きく踏み出さざるを得なかった。岸総理も、当時与党の幹事長として、同行されているわけでありますが、あの重光さんが渡米された結果が、昨年の国会における憲法改正調査会を出したり、あるいはその裏づけの小選挙区法案を出したり、こういう結果になったのだろうと思うわけであります。総理は、あなたのアメリカ訪問の結果、帰するところ憲法の改正とか、あるいは海外派兵の約束とか、あるいは原子兵器の問題とか、こういうような問題等について、結局荷物を背負わされてお帰りになるのではないだろうか、こういう不安を持つわけでありまするが、この点に関しまして、明確な総理の態度とあるいは渡米の決意を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/15
-
016・岸信介
○国務大臣(岸信介君) いわゆる安保条約の問題といたしまして、相互主義であるとか、あるいは不平等条約を平等条約にするのだとか、こういうような議論がありますけれども、そういう抽象論でいたしますというと、真の相互契約になるというと、双務契約ということになると、あるいは今御指摘ありました海外派兵の問題等も起ってくるおそれがありまして、ほんとうの平等というようなことにすると、いろいろな問題があると思います。私は、そういう観念にとらわれずして、現在までわれわれが安保条約のもとにあって、われわれが現実に痛感し、また日本の、先ほど来も申しているように、地位が変ってきた、この立場からこれを見直していきたいというのが根本の考え方であります。安保条約を全部やめろという議論や、あるいは日米共同防衛の態勢をやめろという根本的の議論の方に対しては、私の考えは、現実はそうじゃない、すなわち政治は、何と申しましても、国民が一つの、外部から不当に侵略されないと、侵略された場合において、国及び国民、民族が一つのその侵略に対して防衛できるという安全感を持つということがすべての私は現在の政治の根底の一つであると思うのです。従って、われわれが安全感を持つという意味から申しますというと、今、日本が持っている防衛力だけで共同防衛体制をやめて、安保条約等を全部やめて、そして日本だけで大丈夫だと国民が思い得るかというと、それまでの状態になっておらないと私は思います。従って、そういう意味においては、安保条約体制といいますか、共同防衛の体制というものは、日本の安全保障のために、まだ私は存しておかなければならない。ただ、その制度を存すといたしましても、今までのこの安保条約というものをよく検討してみるというと、われわれがとうてい適当だと思うことのできないようなふしふしがたくさん出てきておるというのが現状である。これを実情に合すようにすることが、われわれの当然やるべきことであると同時に、日米のこの正常なる友好関係というものを永続的にするためからいっても必要である、私はかように考えておるわけであります。憲法の改正の問題、あるいは小選挙区制の問題というようなものにつきましては、これは、社会党の諸君と私どもの考えとの間に根本的な違いがあるわけでありますが、しかし、私は決して、自民党といたしまして、憲法改正論というものを自主憲法制定のために改正すべきだという考えを自民党としては持っておりますし、私自身もまた、そういう考えは持っておりますけれども、しかし、それは十分一つ権威あるところにおいて検討され、また、国民の批判、納得の上に初めてできることでありますから、そういうことと、このアメリカに行って何することとは、これは別であって、別にわれわれの憲法改正はアメリカから支持されるとか、アメリカに約束してどうするという問題じゃなしに、われわれみずからがきめるべき問題であると思います。従って、そういう意味の重荷を、私が参って、背負って帰るというようなことは、われわれの独立完成の意味から申しましても、あるいは自主独立の立場から話をする、という根本の考え方からいっても、断じてそういうことは、私自身としては、そういうことにならないように努力をすることはもちろんのこと、一切そういうことはいたして参らない覚悟でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/16
-
017・荒木正三郎
○荒木正三郎君 先ほど総理大臣は、安保条約並びに行政協定については、根本的に検討すべき段階に来ておる、そういうふうに考えておる、こういうお話でございましたが、これだけでは、岸総理が日本の安全保障の問題について、将来どういうふうな考え方で進もう、どういう考えを持っておられるのかということがはっきりしないわけであります。そこで私は、この問題に関連をして、もう少し具体的に総理の考えを述べていただくために質問をいたしたいと思います。安保条約の第四条には、国際連合によって国際の平和と安全を維持するために取りきめが行われた場合には、この安保条約の効力を失うという規定があります。それからもう一つは、あるいはこれにかわる個別的もしくは集団的の安全保障措置の効力が生じてきた場合、安保条約は効力を失う、こういうふうな規定があります。岸総理が根本的に安保条約等について検討をすべき段階に来ておると言うことは、この第四条と関連を持ってお考えになっているのかどうか、こういう問題についてお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/17
-
018・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 日本の安全保障をいかなる形でやるかという問題については、現下の体制、現下の事情、現実の問題からいえば、日米共同防衛の体制によるほかはない、そして、日米共同防衛の体制というものをいかにして合理化して、日米両国の国民が納得するような形にするかというのが、私は現段階の問題であると思うのです、現実の問題として。ただ、将来どういうふうなことを理想としておるかと言われるならば、私は、やはり国際連合の集団安全保障という仕組みが強化されて、これによって世界の平和が維持されるということが一番望ましいと思います。しかし、現在の国連の機構、安全保障体制というものは、まだ非常に薄弱であることは、御承知の通りであります。しかし、われわれは国連に加盟をいたしまして、将来の理想はそこに置いて、そうして世界の平和を維持するようなことが望ましい。私は、NATOであるとか、あるいはSEATOのような地域的ななにに加盟して、安全保障を集団的にするという傾向が現在の現実の問題として、あっちこっちで行われておりますが、それに加盟して、そうして日本の安全保障をするという考え方は、私としてはとっておりません。そういう意味におきまして、現在の実情からいえば、日米共同防衛の体制を合理化した形が一番現実に即しておる体制である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/18
-
019・荒木正三郎
○荒木正三郎君 それで大体、総理のお考えというものは明らかになったわけですが、今度の渡米に際しては、それでは、そういう個別的な、地域的な安全保障の問題については、アメリカと討議するお考えは全然ない、こういうふうに了解していいと思うのです。そうすると、なんですか、根本的な検討を写る段階に来ておるということは、私はどうもはっきりしないと思うのですが、なにか、今の御答弁を見ておると、日米共同防衛について不合理な点を合理的なものにする、言いかえれば、安保条約の内容を若干修正していこう、こういう考え方ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/19
-
020・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 先ほど申し上げましたように、この安保条約については、これを廃棄すべしという論と、これを改訂すべしという議論とが現在この国内におきましても私はあると思うのです。今のままでいいのだという考え方は、おそらく国民の中にだれも持っておらないと思うのです。これを廃棄して、日米共同防衛体制というものをなくするということは、私は、日本の安全保障の意味から申しまして、これは適当でない。しからば、これにかわる現実のこの地域的のなにに加盟する意思があるかというと、それも適当でない。また、国際連合の集団安全保障というものも、これだけにたよっておれば安全保障ができるというほど、国際連合の安全保障の建前は強化されておらない。こういう事態のもとにおいては、日米共同防衛体制というものは、私は、まだ維持していかなければならない、こういう見地に立って、この安全保障その他の問題を検討したい、こういうのが私の考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/20
-
021・荒木正三郎
○荒木正三郎君 関連質問ですから、私はもう一点だけお伺いしておきます。それは、日本の安全保障の問題に関連してお伺いするのですが、日本の安全を増進するという上からいって、中共との国交回復の問題ですね。あるいは中共の国連加盟の問題ですね。どういうふうにお出行えになっておるのか、私は聞きたいと思います。私の考えでは、なかなか国際情勢からいって、中共との国交回復の問題あるいは国連加盟の問題は、困難な問題はあると思います。しかし、日本の方針としては、将来持っていきたいという方針としては、やはり中共との国交の回復をはかっていく、あるいは中共の国連加盟を推進していくということは、日本の安全を保障するという立場に立って考えても、非常に望ましい方向でないかというふうに考えておるわけなんです。もちろん、一足とびに実現するというふうには考えておりませんけれども、少くとも、直接ではないが、海を隔てて一番近くにある、しかも、大国である中共と国交を回復し、国連加盟の推進をはかっていくという方針は、やはり日本としては持つべきじゃないかというふうに考えるのですが、そういう点、一つ総理の御意見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/21
-
022・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 中国大陸との間における現在の状態が私は望ましい形だとは決して思っておりません。と同時に、これは、中共を中心としていろいろ、北鮮の問題であるとか、あるいはベトナムの問題であるとか、また台湾の問題であるとか、この中国大陸を取り巻いておる、いわゆる中共を中心としてのいろいろな関連した国際的な問題、というものが現在の状態におきましては、これが非常に、自由主義諸国からいうと、共産主義国の侵略的意図の現われであるというような結論のもとに、この中共政府の承認や、あるいは国連加盟がはばまれてきておるという、この国際情勢の実情であります。私は、これは、ある点においては完全なる誤解であるか、あるいはそういうような一つの国際的の考え方には相当な根拠があるものであるかどうかにつきましては、いろいろな見方があると思いますが、いずれにしても、そういう状態は非常に不幸な状態であり、また望ましくない状態であり、また極東におけるところの緊迫した情勢をかもし出す一つの原因にもなっておりますから、これらを緩和するという見地に立って、日本が将来とも国連を中心にして活動をしていかなければならないのでありますから、従って、そういう、今申したような各種の問題と関連をして、そうしてこの緊張を緩和する方向にわれわれが努力するということは、平和外交推進のわれわれの大方針からいって、そうならなければならない。しかし、現在の段階において、直ちに今承認するとか、あるいは国連加盟を日本が進んで認めるとかという段階にはまだなっておらないというのが私の考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/22
-
023・荒木正三郎
○荒木正三郎君 そうすると、念を押しておきたいと思うのですが、現在の国際情勢のものにおいては、日本が今進んで国交回復をはかるとか、あるいは国連加盟を推進するとか、そういう段階ではない。しかし、中国との親善関係を招来するような国際情勢を作ることに努力する、そういうことは望ましいことであるというふうなお考えであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/23
-
024・岸信介
○国務大臣(岸信介君) そういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/24
-
025・亀田得治
○委員長(亀田得治君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/25
-
026・亀田得治
○委員長(亀田得治君) 速記をつけて。
委員会は、これにて散会いたします。
午後三時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614889X02319570419/26
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。