1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年二月七日(木曜日)
午前十時二十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 堀 末治君
理事
重政 庸徳君
藤野 繁雄君
東 隆君
清澤 俊英君
委員
青山 正一君
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
佐藤清一郎君
柴田 栄君
田中 啓一君
仲原 善一君
堀本 宜実君
安部キミ子君
小笠原二三男君
北村 暢君
小林 孝平君
鈴木 一君
羽生 三七君
上林 忠次君
河野 謙三君
千田 正君
北條 雋八君
政府委員
農林政務次官 八木 一郎君
農林大臣官房長 永野 正二君
農林大臣官房予
算課長 昌谷 孝君
農林省農林経済
局長 渡部 伍良君
農林省農地局長 安田善一郎君
事務局側
常任委員会専門
員 安楽城敏男君
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本日の会議に付した案件
○派遣委員の報告
○開拓融資保証法の一部を改正する法
律案(内閣送付、予備審査)
○農林漁業金融公庫法の一部を改正す
る法律案(内閣送付、予備審査)
○農林水産政策に関する調査の件
(昭和三十二年度農林水産関係予算
及び農林水産関係財政投融資に関す
る件)
(今期国会農林水産関係提出予定法
律案に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/0
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001・堀末治
○委員長(堀末治君) ただいまから農林水産委員会を開催いたします。
委員派遣報告の件を議題にいたします。
去る一月二十一日から二十六日ないし二十人目まで、三班に分れて委員派遣が行われたのでありますが、派遣委員各位におかれましては、寒さの折から遠路御足労いただきまして、まことにありがとうございました。
ただいまから順次その御報告を願うことにいたします。なお、報告に対する質疑は、各班の報告が終ってからにお願いいたしたいと存じますから、さよう御了承を願います。
第一班青山正一君、第二班藤野繁雄君、第三班安部キミ子君。どうぞ第一班の青山君からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/1
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002・青山正一
○青山正一君 第一班の実情調査の大要を御報告いたします。
第一班は小林委員、島村委員と私の五名で、三重県及び兵庫県の農業委員会、農業会議及び農林漁業組合再建整備の現状、農山漁村の現況とその振興対策及び農林水産一般事情の実情を、去る一月二十一日から二十六日までの六日間調査いたしたのであります。
調査の方法は、県市町村当局及び関係団体代表者から、その現況及び問題点等について説明を聴取し、懇談を行い、現地におもむき実情を調査いたした次第であります。
次にその概略を申し上げます。
第一に、両県の農業委員会及び農業会議の現況及び問題点について申し上げます。
三重県における農業委員会数は、市町村数八十六に対し二百五十四で、委員数四千二百七人、職員数は六百五十二人で、その統合状況は、二十八年三月末委員会数三百二十に対し、現在までに五十五が統合されたのであります。その所掌事務も特に農地調整事務でありまして、特に昭和三十一年度における市町村農業委員会の許可権限に属する賃貸権の移転と設定が三千二百六件、二百六十二町一反となっている状況であります。次に、兵庫県における農業委員会数は百五十、委員数三千百八十一人、職員数六百十六人で、統合は着々と進捗しており、一市町村に二委員会以上を持つ市町村は、神戸市十六、姫路市十二、明石市四の三市であり、他は一市町村一委員会となっております。職員については、技術職員の有資格者は三百十二人で、全職員の五一%を占めており、その事業についてはほとんどが農地関係事務、自作農創設事務に多忙で、農業統合計画事務に携わる余裕のないのが現状で、一部においては本年度より実施せられた新農山漁村建設総合対策事務に参画している次第であります。
次に、三重県農業会議の現況は、会議員は三十人、職員は三人、兵庫県は会議員三十人、職員は五人で、その事業内容は、昭和三十一年度においては両県とも、農民の利益代表機関として、農業生産の向上、農業技術の安定をはかるため、特に新農村建設運動の推進、適地適作に基く地域農業の振興に重点を置き、農民の自覚と組織の強化、活動態勢の整備をはかることを当面の課題とし、使命達成のため努力されている現状でありますが、事務局の構成が弱体のため、真の農業会議の使命の達成は期しがたい現況であります。
次に、農業委員会及び農業会議の問題点について申し上げます。
まず、農業委員会については、第一一には、補助金がきわめて少額で、委員会の万全なる活動が期しがたい点で、三重県の某地区委員会のごときは、運営費に困難を来たし、手数料をかけなければ仕事ができない状態であります。第二に、選挙委員の選出方法については、不当な争いの惹起を予想される公選方法をとらず、推薦方法を希望する意見がほとんどの意見であります。第三に、市町村農業委員会の性格にその使命を十分に果せない制約があるため、真に法の求める農民、農業の代表機関的な性格を果せない。従って、市町村農業委員会は法人格を有する団体たらしめ、その活動分野を広げるべきであるとの要望の点であります。第四に、市町村農業委員会の設置についての再検討の必要を求める意見であります。すなわち、一市町村、一委員会の国の指導方針はもっともであるが、広大な地域を有する市町村にあっては、このため農地処理その他末端の実情まで把握することが困難な実情のため、農業委員補助員のごときものを設置して、委員会の運営の万全を期しているところもある実情で、このため市町村自己財源による負担は過重をきわめている実情であります。また法第三十五条の五大市の特例により、神戸市においては各区間の農業委員会のバランスがとれない実情であって、第三十五条は原則措置にすべきであるという点であります。第五に、農地部会については、農地の移動件数が増加している現在、農地改革の成果をゆがめるおそれも考えられるので、必ず農地部会を設置し、自作農創設の維持をはかるための体制を整備すべきであるとの点であります。その他職員の身分安定と資質の向上をはかられたい旨の要望が、各所でなされたのであります。
次に、農業会議について申し上げます。まず第一に、組織体制が弱体である点でありますが、県農業会議は特別法によって人格を与えられた特殊法人でありますが、これが末端組織であるべき市町村農業委員会は行政機関であるため、農業会議としての下部組織はなく、その事業、財源等は不安定であって、農政の下部浸透も、農民の下意上達も、円滑を欠いていることであります。第二には、その性格の不明瞭の点であります。農業会議は国の委任事務である農地法等に基く諮問事務があるが、これに対しては国よりの補助金が出ており、またこれに伴って県よりも補助金が出ているが、その性格は特殊法人であるため、民法上の行為能力の範囲にはおのずから合理的な制限が加えられ、二律背反的な性格を保有しており、これが明瞭化を要望する点であります。第三には、会議員選出のための代表者会議についての問題であります。すなわち、法第四十一条第一号会議員の選出については知事の定める区域ごとに代表者会議を招集するのでありますが、これが経費、労力は多大であるので、農業会議の構成員を再考するとともに、各市町村農業委員会の代表者等よりなる全体総会で一括決定すべきであるという点であります。その他、農地部会の設置、職員の増加、予算の増額等が問題点の主たるものであります。
次に、農林漁業組合再建整備の現況と問題点について御報告いたします。
三重県においては、再建整備指定農業協同組合五十に対し、目的達成組合は約二十で、その他の組合は今後二、三年は目的達成は不可能な現況であり、森林組合につきましては該当組合なく、県漁業協同組合連合会の再建整備の現況は、昭和三十一年一月三十一日指定を受け、目下事業計画に基き着々とその成果をおさめている状況であります。兵庫県においては、単協の当初指定組合数は五十四、指定後解散したもの一、合併したもの一を差し引き、現在数五十二、うち中途において目標達成不可能となり打ち切り申請したもの四を含め、十二組合が未達成でありますが、法律が二年延長になれば、その大部分は目標を達成し得る見込みであります。森林組合は指定組合数は四十七で、三十年度末現在で三組合が未達成であります。また漁協関係においては、漁連一、単位漁協四の五団体でありますが、再建整備の主要目的であります自己資本の増強並びに固定化資産の流動化は、一応達成するに至っておりますが、なお、これら団体の経営は依然不振を訴えるとともに、今後ますます強力な指導育成を要望されている実情であります。
次に、本件につきましては、三重県久居町農業協同組合におもむき、その実態を見せていただきましたので、その概要を説明いたします。すなわち本組合は、昭和二十六年三月三十一日指定日現在の貸出金百十万二千五百円、欠損金百七十六万二千四百三十八円、自己資本十六万千二百円でありましたが、年々その整備に力を注ぎ、五年後の昭和三十年度末においては貸出金は零、欠損金四十二万百二十七円、自己資本三百十二万六千三百円となり、大部分の計画は達成され、欠損金も本年三月末までには全部償却される現状であります。
以上が両県の再建整備の概略でありますが、次にその問題点について申し上げますと、第一に、奨励金の返済能力については、再建なった組合も非常に困難なことを訴え、本法を二、三年延長すれば大部分の組合が目標を達成することを、関係者は強調している次第であります。また各組合とも営農技術指導、健全な組合経理の達成のよき指導者を得たいという要望が非常に多く、その面の助成を懇望する声が強かった次第であります。
次に、新農山漁村建設総合対策事業に関して申し上げます。
三重県におきましては、特別助成地域十二、計画地域六、予備計画地域十八で、兵庫県におきましては特別助成地域十三、計画地域十、予備計画地域三十三で、事業の推進状況は、いずれも昭和三十一年度より実施され、五カ年計画を樹立し、目下昭和三十一年度実施計画に基き、事業を実施中であります。本件につきましては、特に兵庫県加西郡泉町の事業概況の実情を拝見いたしましたので、その概況を御説明しながら問題点及び要望等について御報告いたします。
泉町は、従来農家一戸当りの年収は平均二十万円、その生活費は約二十五万円を要し、年々赤字で非常に困窮しておりましたところ、三十年早々、農業委員会が中心となり、その他の団体の協力を得、適地適作主義のもとに農業振興計画を樹立し、特産物すなわち酒米、イグサ及びタバコの栽培等により、不足費を補うべく計画を立てましたところ、新農山漁村建設総合対策事業の一環に加えられ、農地交換整備事業、共同作業所、共同育雛所、共同集荷所及び共同乾燥所の完成に着手し、私たちがおもむきましたときは、そのほとんどが完成し、各農家の赤字解消のため活動を開始しておりました。
次に、問題点及び要望等の主たるものについて申し上げますと、まず第一に、本計画の法制化の問題であります。町村民は本計画に非常な期待を持ち、一日も早く実施されることを熱望いたしておりますが、内閣がかわれば中絶するのではないかという不安におののき、一日も早く法制化されることを希望いたしている点であります。第二には、現在七分五厘の融資利率を、事業の実施を容易ならしめるために、少くとも年利五分以下に改訂方を善処せられたいという要望が強い点であります。第三には、本事業の関係事務手続の簡素化の要望が、私たちの参上いたしました所で、すべて問題点となっております。第四に、農林漁業地域の設定は、市町村の区域を尊重されたいという点で、すなわち、行政区画である市町村を分割して地域を設定することは、市町村行政の円滑なる運営に支障を来たすという要望であります。第五には、地方公共団体の財政事情よりして、特別助成事業のみの助成では所期の目的達成が困難であるので、当該地域については優先的に一般助成、一般融資、農業改良資金の配分を考慮され、本事業の性格並びに事業資金よりして補助率の引き上げと予算額の増ワクを強く要望されたのであります。
次に、農林水産一般事情につきましては、調査期間がきわめて短期間のため、現地におもむき、実情を調査することが困難でありましたので、県市町村当局及び関係者の陳情及び要望等の主たるものを御報告いたしたいと存じます。農林業問題につきましては、ただいままで御報告いたしました点で大体は尽きたものと存じますので、主として水産問題について申し上げます。
第一に、水質汚毒防止の立法化の要望であります。臨海工場地帯をひかえた沿岸漁業にとっては、年々の被害額は増大の一途をたどり、事故発生とともに、関係方面と相寄り、円満解決に努めつつありますが、根本的な対策として、一日も早く水質汚毒防止の立法化を要望している次第であります。第二に、小型機船底びき網漁業許可ワク緩和についての要望であります。小型機船底びき網漁業の減船整備が終了したので、今後十馬力以内において許可隻数を緩和願いたいとの要望がなされました。第三には、漁業関係におきましても、農業改良普及員制度と並行した水産普及員の国家補助制度の確立の要望。第四には、漁業災害補償制度確立の要望等、いずれも本委員会においても問題となり、検討中の要望等でありました。
次に、三重県坂手島漁協において伺いました防衛庁の伊良湖水道における水中機器設置計画に反対する地元民の陳情の要旨を申し上げ、今後委員会における水産問題確立の参考に供したいと存じます。すなわち、愛知県の伊良湖岬と三重県の神島を結ぶ伊勢湾の入口に、対潜音響機器設置の計画が進められ、防衛庁による説明会が愛知県及び三重県で開催され、地元漁民は不安におびえている現状であります。現在のところ、科学的に音波が漁類に悪影響がないと断定できる資料もなく、また操業を禁止される地域の漁民は、沿岸漁場に進出するのは必至であり、不振にあえぐ漁業者としては、これ以上不振に陥れるがごときは絶対に反対であるとの要旨であります。
以上が第一班の調査の大要でありますが、その他種々農林水産問題等についての要望及び陳情等を伺ったのでありますが、それらについては今後の委員会の席上において開陳いたすことにしまして、報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/2
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003・堀末治
○委員長(堀末治君) 第二班、藤野繁雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/3
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004・藤野繁雄
○藤野繁雄君 山口県及び高知県について報告をいたします。
派遣せられました委員は、北村暢委員と上林忠次委員と私の三名でありますが、一月二十一日に東京を出発し、八日間の日程をもって、山口県及び高知県を視察いたしました。
まず、山口県に参り、下関市において漁港の現状及び整備状況を視察しました後、韓国に拿捕抑留されている漁船乗組員の留守家族の方々から窮状を聞き、また関係漁業者の代表と日韓漁業問題について懇談いたしました。次いで、山口市の県庁に参り、知事を初め、県当局並びに農林水産関係の団体の代表者から、農業委員会、農業会議、農林漁業協同組合再建整備、新農山漁村建設、その他県下の農林水産事情について詳細な説明を聞き、協議しました。また宇部市小野区の新農村建設状況の現地視察と地元の関係代表者との懇談を行うなど、山口県下の農林水産事情を視察いたしました。
次いで、高知県に参り、高岡郡佐川町において付近六市町村の代表者、農業団体代表者と、市町村の段階における問題点を協議し、次いで、高知市において知事を初め県当局、県議会議長、議会関係者、農業会議、農林漁業協同組合県連合会、農林省出先機関代表等と、各種の農林水産問題について協議懇談を行いました。さらに、長岡郡香長村の速成栽培の状況、前ノ浜村の漁場の障害物除去作業、安藝市の新農村建設等を視察、安藝郡室戸町において付近七カ町村の代表者及び漁業協同組合、農業協同組合、農業委員会等の代表と懇談いたしました。
これら両県において調査いたしました実情の詳細については、別途資料によってごらんいただきたいと存じますが、各般の問題について要望がありました点につき、主要なるものを申し上げたいと存じます。
一、農業委員会及び農業会議について申し上げますと、両県とも農業委員会設置の状況は旧市町村のときのままであり、現在一市町村一委員会の原則で新市町村の区域に統合しようとする考えで進んでおりますが、いまだ実現いたしておりません。また農業委員会と県農業会議との密接な連係の強化、農業委員会の職員の身分の安定等、組織運営の問題について要望があり、目下国会において審議中の農業委員会等に関する改正法律案について、与野党共同提案による改正案を、ぜひ今国会で成立させてほしいとの要望がありました。また農業委員会に要する経費は国が負担するのが当然であるが、現実には大半が市町村費でまかなっている。両県とも一農業委員会当りの国の補助金は年々減少の一途をたどっており、また県農業会議の経費についても賛助員からの醵出金に強く依存するほかなき現状であり、地方財政逼迫の現状にかんがみ、これらについて国の補助金の増額を強く要望するとのことでありました。
二、農林漁業組合再建整備の状況について申し上げます。農林漁業組合再建整備法が施行されて以来、国、県、系統団体の援助、組合の努力により、両県とも経営不振の組合が着々と法に定められる再建目標を達成しており、また未達成の組合においても、さらに期間を延長すれば必ず完成できるので、同法の適用期間を二カ年延長する改正法律案をぜひ今国会で成立させてほしい。また奨励金の償還は、ようやく健全になりつつある組合の経営を危険に陥れる実情にあるので、ぜひ償還免除の措置を購ぜられたいとの要求でありました。また農業協同組合整備特別措置法により不振農協対策が進められているが、農協の強化安定のため、さらに助成金の増額をはかられたいとの要望でありました。
三、新農山漁村建設について申し上げます。山口県においては、戦後いち早く農山漁村振興対策を立て、農村新生運動を市町村に提唱して、山口県新農村史の第一歩を踏み出しており、自来熱心なる市町村の指導者を中心に、青年層、婦人層の協力により、新しい村作りの具体的な計画が現われ、県が行政的、財政的、技術的な観点から助言を行い、責任を分担して新生運動がきわめて活発になってきたとき、たまたま昭和三十一年度から政府が新農山漁村建設総合対策を実施したので、従来からの新生運動と全く軌を一にするものとして一体化して実施しており、新生運動が旺盛に展開され、計画実績が上っておる地域をまず取り上げて、助成地域を指定して建設を進めております。
特別助成地域である宇部市小野区を現地視察いたしましたが、この地区は昭和二十九年十月宇部市と合併した所でありまして、戦後村の更生を目ざして新生運動を強力に進め、村作りは人作りからの考えのものとに、教養の向上、人の協力、助け合いにより、経済的に社会的に活動を展開しており、また有線放送施設を活用して着々効果を上げております。また部落長を中心に文化部、増産部、畜産部、衛生部等の責任者を置き、さらに集まって全地区一体となって運営されております。部落長は選挙制で二カ年の任期となっているのでありますが、役員指導者等青壮年層が漸次中心になっておるとのことであります。部落長が二カ年の安定した任期を持ち、各部の役員たちが部落長を助けて仕事を分担しているところの状況は、きわめて好ましい状況であると感じました。特別助成事業の費用は四百万四千円で、国からの補助金百八十四万六千円となっており、また融資事業は農道四カ所、二百九十二万円であります。
高知県では地域指定その他の状況を聞き、高岡郡の佐川地域、安藝市の安藝第二地域の計画実施状況を視察しましたが、特別助成、一般助成、農業改良資金等、三つの助成を新しい村作りの目的に合せて一元化し、新農村建設に適用されるよう措置されたい。また特別助成として、一地域平均四百万円の補助と四百五十万円程度の融資による助成では、短期間に新農村を建設することは困難であるので、少くとも補助金一千万円、融資額一千万円程度に増大されたい。また現在の特別助成事業の基準及び経費等が一定のワクにはまり、画一的なので地方の実情に合わないから、地方の特色ある計画が認められるよう、幅のあるものとされたい。補助率も事業に応じて変え、全体として予算の増額をはかり、一そう強力に施策されたいとの要望がありました。また指定されている新農山漁村地域はいずれも優良な協同組合であり、経済力のある市町村が優先される結果になっておることは、注目すべきことであります。
四、水産関係について申し上げます。
山口県では、下関市において県当局及び漁業代表から、李ラインの海域における漁船の韓国による不法拿捕抑留事件は跡を断たず、むしろ悪質な事態が頻発しており、このままでは関係漁業は壊滅のほかない。政府はあらゆる努力を払って、抑留乗組員の早期送還、安全操業等、日韓漁業問題をすみやかに解決する施策を強力に実施されたいと、強く要望されました。また抑留船員の留守家族の方々から、生活困難の状況をつぶさに訴えられ、まことに同情にたえないものがありましたが、特に生活の安定等援護措置が急務であることを痛感いたしました。
次に、下関漁港の拡張工事について、三十一年度から県営事業として着手されているが、総工費六十七億円の計画であり、県営事業として限られた予算ではこの実施はおぼつかないので、早急に国営により実施されたい。また拡張計画中の漁港用地造成に要する十三億円のうち、特に急を要する造船所移転用地造成費五億五千万円は、第三次余剰農産物の見返り円資金から融資を受けることになって、計画が進められていたのであるが、今回見返り円資金からの融資が中止されたので、重大な影響を受けている。今後見返り円資金からの融資が不可能な場合は、これと同条件の特別の措置を講ぜられたいとの要望が知事から行われました。
また、県漁連会長から、日韓問題の解決、漁業共済制度の早急実施、韓国ノリの輸入阻止、全漁連への原油外貨割当等について要望がありました。
高知県では、県当局及び県漁連、室戸漁業協同組合長、ほか関係組合代表から、次のような要望がありました。
地びき網漁業は水揚高四億円に達し、沿岸漁業中最も重要な漁業であるが、流れ木材、岩石、コンクリート・ブロック、石材等が漁場に流出し、南海地震による地盤の隆起による岩床露出等障害物があり、その除去作業に対し県費補助を行なっているが、天災による被害であるから国費助成を行われたい。
高知県は室戸町を初め、遠洋カツオ、マグロ漁業の盛んな所であるが、中型カツオ、マグロ漁船の代船建造に当っては、百トン以上の遠洋カツオ、マグロ漁業船に大型化できるよう法律を改正されたい。超大型漁船のトン数制限を行うこと、五十トン以下のカツオ、マグロ漁業は知事の許可漁業とすること等の要望がありました。
さきにビキニ水爆実験により被害を受けたが、今回また英国がクリスマス島において水爆実験を行わんとしておることは、われわれ漁業者を死地に追い込むものであるから、ぜひ原水爆実験は禁止されたい。
近時カツオ、マグロ漁業は漁場が拡大し、操業日数の延長等により、病人の発生、燃油の不足、機関の故障、その他安全操業と経営合理化のため、南方諸島に漁業基地が必要である。関係諸国との間に解決をはかられたい。
漁船の海難救助のため、海上保安部の大型監視船の配置を希望する。
また、さきにインドネシアに不法抑留された第三繁栄丸の損害に対する賠償がなされていない。早急に解決されたい。
その他漁業用燃油、漁港の修築、金融等、政府はこれら沿岸漁業振興対策を強力に施策されたいとの要望がありました。
五、その他の問題について要望がありました点を申し上げます。
両県の農業共済組合連合会を初め、農業共済団体から、農業災害補償制度は農林省の試案を基礎に改正法を立案し、今国会において成立させられたいとの趣旨でありました。次に、高知県当局、市町村並びにミツマタ栽培関係者から、百円硬貨及び高額紙幣の発行計画を取りやめられたいと強く要望がありました。また県知事及び県園藝農協連合会会長から、スイカの国鉄運賃等級は従来から果実類として取扱いを適用されているが、これを果菜類等級に改訂されるよう要望がありました。高知市長及び高知市の土地改良区の代表者から、高知市は南海大震災による地盤沈下に伴う特殊事情があるので、排水施設の強化について国の高額助成並びに特別団体営土地改良制度確立等の要求がありました。高知県知事から、馬路村の魚梁瀬に奈半利川の電源開発ダムが建設されるので、部落約二百戸が高地に移転するが、営林署に生活を依存しているので、営林署も部落民と一緒に同じ場所に移転するよう、林野庁当局の善処を要望するとのことでありましたので、申し添えます。
以上両県について御報告申し上げましたが、要望のありました点はいずれも妥当なることと考えられますので、その実現について何分の御協力をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/4
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005・堀末治
○委員長(堀末治君) 第三班、安部キミ子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/5
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006・安部キミ子
○安部キミ子君 第三班委員派遣報告。
九州班の報告を申し上げます。九州班は、堀委員長と北條委員と安部の三人で、福岡、熊本の両県に出張して参りました。
一月二十一日朝風号で東京を立ち、二十二日まず福岡県庁で県下の農業委員会、農協再建整備の実情を伺いました。県下の農業委員会は現在二百委員会あり、選挙委員二千五百五十五人、選任委員七百三人、事務職員五百九十九人で事業を行なっております。しかるに昭和三十年現在県下の農業委員会の取り扱った事務処理件数は、耕地の交換分合、農業改良事業をも加え、合計十一万六千件をこえ、年々増加の傾向にあります。また県農業会議は地方選出議員十五人、推薦会議員十五人、事務局員七人で構成し、その取扱件数は六千八百件をこえております。これは北九州地方は耕地が少く、農地事務が年々重要性を増してくるためであります。
県当局並びに県農業会議の農業委員会法改正に対する意見を要約してみますと、同法第七条の「選挙による委員」の数が十人から四十人に改められ、選任委員も選挙委員より多くなることが予想される。選任委員の増加は「選挙委員」選挙の意味がなくなるし、委員数の増加は運営が困難となるので、農地、農家人口等の条件を考慮して、極力少数で構成するよう、政令で定める基準をしぼっていただきたい。同様、第四十一条の会議員の数も相当数に達するので、運営の面について特に御考慮願いたい。また会議員数が増加すると経費も増加するので、大幅に補助増額を行い、農地法その他の法令に属する所掌事項の経費は全額国庫負担としてもらいたい。また現在県には小作主事があるが、これは事業遂行上、国費支弁による農地官とし、これが身分については農林大臣の承認なくして職務を転免されないよう身分保障について考慮してほしいという要望がありました。
次に、農業協同組合の再建整備でありますが、県下の農協で再建整備法の適用を受けた組合は七十一組合でありまして、このうち二十組合が農協整備特別措置法に基いて再び整備をはかっている実情にあります。また整備目標達成状況を見ますと、自己資本の不足が解消している組合五十八、解消していない組合十三となっております。このように再建組合が、大半なお十分な立ち直りを見ておらず、組合の経済の底も浅いので、法の適用期間を少くとも二カ年延長し特に十四条の奨励金の返還規定は削減してもらいたいという要望が強く申し述べられました。この法律の制定当時から農協再建の実務に当っている県中央会の鬼木専務なども、この規定にこだわることは輸血した血を返せというにひとしいと、強く反対し、どうしても削除できぬならば、改正案にあるただし書き規定によって、何とか実質的に返還しなくてもよいようにしてほしいと要望されました。
なお、農山漁村再建総合対策事業につきましては、福岡県では、昭和二十六年から第一次県農業総合振興四カ年計画を実施し、引き続き昭和三十年から第二次農振四カ年計画を推進中であり、国の新農山漁村再建総合対策に先んじて、着々とその成果を上げつつあり、国の施策と相待って、ますますその推進に非常の熱意を示しておりました。昭和三十一年度特別助成地域十三、計画地域十、計二十三地域で実施、引き続き三十二年度においては特別助成地域十三、計画地域十を指定し、さらに予備計画地域として二十五地域を選定し、計画樹立中とのことであります。
県庁でこれら県下一般の問題について説明を聞き、種々懇談いたしました後、八女郡黒木町を視察いたしました。この村は二十九年四月、五カ町村を合併して、新たに発足した町でありまして、西部が特別助成地域、東部が計画地域に指定されている村であります。町の公民館で町長から町勢の概要を聞き、それぞれ関係者から、農業委員会、農協、森林組合等の現況について説明を聞き、ため池を視察し、懇談いたしました。この村の農業委員会は、合併後一町村一委員会の原則により一委員会に統合され、選挙委員十五人、選任委員五人、職員数八人で事務を行なっておりますが、合併により範囲が拡大し、事務処理件数も年五千六百件をこえる状況にありますが、一委員会二人当りという職員配置基準は適当でない。委員会に要する経費の負担区分が明らかでないので、負担または補助額は法または政令に規定し、交付時期は四半期ごとに概算交付、第四四半期に精算交付されたいとの要望がありました。昭和三十年の委員会の決算を見ますと、二百九十九万円中、補助金交付額は六十八万円、町の負担は二百三十万円に達しております。さきに申し述べましたように、委員会の経費は増加の傾向にあり、法改正に伴って一考を要する問題と思われます。また森林組合、開拓組合の実情も承わり、種々懇談いたしました。
次いで、八女市に至り、再建組合として整備中の八幡農協を訪問、中野組合長より再建の経過について詳細説明を聞きました。この農協は昭和二十一年大火災にあい、経営不振となり、昭和二十五年百二十万円の欠損金を生じ、二十六年から再建に着手し、自己資本の充実、事業の刷新に努め、三十年度末において、一部を除き、おおむねその目的を達したと言われております。しかし、このためには職員給与は平均月額八千五百円という低い水準に据え置かれており、退職給与積立金も停止され、建物等の償却もなされていない等、大へんな無理をして帳簿上のつじつまを合せているのであります。このようでは真に再建されたものとは思えず、整備機関の延長はもちろん、奨励金の返還規定についてもとくと考慮をする必要があることを痛感いたしました。
翌二十四日、熊本につき、県庁で県下の実情を聴取いたしました。
熊本県におきましても、市町村合併の結果、市町村農業委員会を統合して、昨年十二月末現在で百十七町村、百十三委員会となっております。県下の選挙委員の数は千七百九十四人、選任委員の数は五百九人、職員数は定員四百五十六人に対し、四百三十六人の実数となっております。しかるに、農業委員会の事務は、この県でも漸増し、総合計画関係の計画、建議、答申等の件数も年々増加しております。このような市町村農業委員会の経費を見ますと、昨年十一月における九市百八町村の合計で一億三千二百万円に達しておりますが、国の補助は二千六百万円でありまして、市町村負担額は一億六百万円に上っております。従いまして、県といたしましては、委員会の統合推進とともに、衆議院の与野党共同提案による改正案をすみやかに成立するように尽力していただきたい。また今後における国の補助金の増加について特に御考慮いただきたいという要望がありました。
また、農業協同組合は、昨年三月末現在で総合農協三百七十二組合、組合員数は十六万に達し、すべての農家が農協に加入しているが、現模が小さく、合併強化の必要があるので、農協の合併促進法を制定していただきたいという要望がありました。
本県における再建整備組合の状況を見ますと、同法による指定日現在の対象組合は百三組合でありますが、このうち自己資本不足額を解消した組合は六十九組合、解消していない組合が二十七組合、吸収合併二、解散五となっております。このようでありますので、法定期間を延長していただけば、約三十組合は目標を達成し得るものと見られ、最低二カ年の延長と、奨励金の返還免除が要望されました。免除が困難な場合も、一、経営不振組合は全免し、二、二カ年継続して事業益を生じた組合は長期分割方法で支払うこととし、三、積立金、準備金の合計額が出資額の四分の一以上になるまで返還を据え置き、利子は免除してほしいという意見が述べられました。
県下の新農山漁村総合対策事業は、第一次、第二次産業振興対策の発展として推進し、三十一年度特定地域は二十一地区、特別助成地区十四を指定し、着々事業を実施中であります。三十一年度の特別助成事業費の総額は一億二千八百万円でありまして、このうち国の補助額は三千八百万円、融資総額は四千三百万円となっております。この施策は、県下で一般に好評を博しているようでありますが、補助金交付がおくれやすいので、早く交付してもらいたいこと、農林省で融資関係を承認しているのに、公庫や出先機関の意見が一致せず貸付がおくれる点を是正し、予算の継続確保のためこの事業を法制化してほしいという要望がありました。
続いて各当事者から県下の農林水産事業について説明を聞き、翌日五名郡岱明村を視察いたしました。この村は、新農山漁村建設計画樹立指定村でありまして、丘陵地帯も、平坦部も、海に面した漁村もあるという村であります。この村の農業委員会の方々や、農業協同組合、漁業組合の関係者と、法律の改正案の問題について意見を交換し、農協や漁業協同組合から陳情を受けました後、特別助成事業で新設された村内のノリ乾燥施設や、高道農協の有線放送を視察し、堀委員長がさっそく放送室から村民にあいさつの放送をするという一幕もありました。
次いで、同じく新農村建設計画の指定村である鹿北村を視察いたしました。この村は昭和二十九年四月三村合併で新設された村で、山林の多い村でありますが、公民館活動を通じて部落座談会や村政座談会を行い、また青年団を中心として青年推進隊を結成するなど、下から振興総合計画を盛り上げている村で、村有林の施業や産業振興に特別の努力を続けている村であります。この村でも、農業委員会や農協の方々と懇談いたしました。村の農業委員会では、特に自作農維持資金の申請が年々増加するので、この資金ワクを広げてもらいたいという要望がありました。
最終日は再び南に下って宇土郡の三角町に至り、この村の農業委員会や農協再建整備の状況を視察しました。この町は宇土半島の突端にあり、天草、島原への海上交通の要衝で、昔から港が発達してきましたが、現在は西港の方はさびれているようであります。農業は零細農家が多く、耕地が細分化され、耕地の移動が多く、農業委員会の事務屋は年々増大し、町の農業委員会の主任書記が過労で倒れたと言われております。耕地は少いが丘陵地は果樹園芸の適地であり、特によいみかんができるので、園芸を加味した集約安定農家を確立したい。一戸当り平均粗収入二十六万円を目標に、農地改革から農業改革への努力を続けているので、農業委員会の事務局を強化し、自作農資金を増額し、水産振興をも含めて新農村建設事業を強化してほしいという建設的な要望がありました。
また、この町の農協は戦中戦後の混乱期に職員が二百万円使い込み、昭和二十六年から再建組合に指定され再建中でありましたが、二十八年風水害にあい、再び経営不振に陥り、現在の県会議員である現組合長が私財百万円を預託して貯払停止を解いたと言われております。三十一年末なお七万円余の赤字があり、本年解消の予定であるが、整備期間の延長や奨励金の返還免除とともに、積極的に再建組合に対する長期低利融資の道を開いてほしい等の要望が述べられました
以上時間の関係上調査の大要を述べましたが、九州地方は気候には恵まれていますが、農家一戸当り平均耕作面積が狭く、七、八反にすぎませんので、九州農地事務局の資料によって見ましても、農地取り上げ、転換、小作料の値上げ、物納化等が年々増加しております。これらの資料を一々申し上げたいのですが、時間がありません。二年続きの豊作のかげに、このような悲惨な農業委員会の事務は年々増加しております。この意味で農業委員会は今や重大な時期に直面しており、正しい委員が正しく選ばれて、公正に農地行政を行い得るよう改正法案をすみやかに成立せしめる必要があると思われます。また農協再建整備法の改正についても同様であります。そして末端の事務量が増加しているので、予算を増加し、運営に遺憾なきを期するとともに、自作農資金はさらに増額し、災害常襲地帯の新営農確立のため、積極的なテコ入れを行う必要があると存じます。
なお、現地での声をお伝えしておきたいと思いますが、九州の働く人々は一様に、米価、運賃の値上げに反対し、零細農、二、三男対策として、積極的な有明海干拓を熱望しています。また九州の漁民の皆さんは、日ソ、日韓漁業問題の解決、韓国抑留船員の即時釈放、農薬被害転業資金の増額、韓国ノリ輸入反対を、機会あるごとに心から叫んでいることを申し添えるとともに、それぞれの地域では適地適作の成果を着々と進められているところもあることを申し添えて、報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/6
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007・堀末治
○委員長(堀末治君) どうもありがとうございました。
以上の御報告に対して御質疑の向きは、順次御発言を願います。御質疑がなければ、本件はこの程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/7
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008・堀末治
○委員長(堀末治君) 次に、開拓融資保証法の一部を改正する法律案(閣法第七号、内閣送付、予備審査)を議題といたします。
本法律案は、去る四日当委員会に予備審査のため付託されたものであります。
まず、政府から提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/8
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009・八木一郎
○政府委員(八木一郎君) 開拓融資保証法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
戦後開拓地に入植した開拓農家は、おおむね良好とは言いがたい立地条件の下で、たび重なる天災に災いされながらも、主として畑作経営を行い、日夜営農に精進し、その成果は期すべきものがありますが、開拓農家の営農を一段と促進し、これを確立するためには十分な営農資金の調達が緊要であります。
昭和二十二年以来現在まで、政府は開拓農家に対し、農機具、家畜等の基本的な生産手段を調達するための長期営農資金については、開拓者資金融通法により政府より直接融通しておりますが、さらに短期の流通資金、たとえば肥料、飼料、種苗等の購入に要する資金につきましては、農業手形制度の利用が困難なために、昭和二十八年開拓融資保証法を施行し、中央、地方に開拓融資保証協会を設立して、開拓農家の債務を保証することによって、円滑な資金の融通をはかってきたのであります。
しかしながら、開拓農家の農業経営を充実安定させるには、その立地条件のもとにおいては、特に家畜を導入しなければならない現状にあります。大家畜の導入につきましては、すでに、開拓者資金融通法等によって、その道が開かれておりますが、今般中小家畜につきまして、この融資保証制度により、所要の資金の融通増加をはかることが適当と考えますので、これがため、中央保証協会に対する政府の出資が従来二億五千万円でありますのを、さらに三千万円増額して二億八千万円とし、従来の肥料、飼料、種苗等の購入資金の確保をはかるほか、中小家畜の導入を積極的にはかるための資金の確保をしようとするものであります。
以上がこの法案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/9
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010・堀末治
○委員長(堀末治君) 本法律案の審査は後日に譲ることにいたします。
なお、本法律案に関する資料等の御要求の向きがございましたら、この際お申し出を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/10
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011・千田正
○千田正君 この開拓問題は、これは従来長い間の問題ですが、戦前のいわゆる開拓者と、それから戦後における開拓者と、さらに機械化開拓公団のもとに入植する者と、われわれは大別してこの三段階に考えているのですが、これら全部に利用するという方向にもっていくのかどうか、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/11
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012・八木一郎
○政府委員(八木一郎君) 三段階に区別して融通のできますことを、基本的な方針としております。
ただ、お言葉にございました戦前のと申しますと、この法律施行前の相当広い範囲に及ぶと思います。これはその場合をお聞かせいただかないと、原則的には認められない場合が多いのではないかと思いますが、この法律施行以来、戦後開拓行政の面に出て参りますものにつきましては、でき得る限り思いやりのあるあたたかい手を、行き届かない方面に融資の面では尽したい、こういうつもりで運用いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/12
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013・千田正
○千田正君 公団の機械化開墾に対する問題はどうなのですか。そういう入植者に対しては……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/13
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014・八木一郎
○政府委員(八木一郎君) その公団の機械化の関係の向きにも、融通の道は開いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/14
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015・千田正
○千田正君 それはこの法律によって開くわけですか、別にですか。この法律によって三千万円程度であるならば、われわれはまことに貧弱な融資法だと思うので、その点をはっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/15
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016・八木一郎
○政府委員(八木一郎君) わずかな金でございますが、融資限度はその六倍まで及びますから、一億八千万。乏しい金でございますが、できるだけ効率的に御期待に沿うようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/16
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017・小笠原二三男
○小笠原二三男君 資料を要求しておきたいのですが、中央保証協会の事業の現況、経理の状況を知るに足る資料がほしい。しかもそれには、需要と申しますか、借り入れの申し込み、それに対しての融資の資格が明らかになるような資料をほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/17
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018・堀末治
○委員長(堀末治君) 承知しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/18
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019・千田正
○千田正君 関連して。今まで融資されました、長期、短期ともに融資したその利用状況と返済の状況ですね、そういうものに対する資料をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/19
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020・堀末治
○委員長(堀末治君) 承知いたしました。
他に御発言がなければ、次に移ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/20
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021・堀末治
○委員長(堀末治君) 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(閣法第八号、内閣送付、予備審査)を議題にいたします。
本法律案は、去る四日当委員会に予備審査のため付託されたものであります。
まず、政府の提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/21
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022・八木一郎
○政府委員(八木一郎君) ただいま提案になりました農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
農林漁業金融公庫は、その設立以来四年、その前身である農林漁業資金融通特別会計時代をも通算いたしますと、すでに六年間にわたり、農林漁業者とその組織する農林水産業団体、土地改良区等に対し、農林漁業の生産力を維持増進するために必要な資金を、長期かつ低利で融通して参りましたことは、各位のよく御承知の通りであります。
この間に同公庫が貸し付けました資金の総額は、千四百五十六億円に上っており、昭和三十一年度末現在の融資残高は、九百九十六億円以上に達する見込みであります。
昭和三十二年度におきましては、前年度に引き続き、食糧増産等重要農林漁業施策に呼応して、土地改良事業、漁船の建造等に要する農林漁業の生産施設資金の融通を行うことといたしており、三十二年度における公庫の融資総額は、全体として三百五十億円でありまして、前年度に比較いたしますと、六十億円の増加になっております。この三百五十億円の貸付を行うための原資は、産業投資特別会計からの出資金七十億円、回収金百億円、資金運用部からの借入金六十三億円と簡易生命保険及び郵便年金特別会計からの借入金百十七億円となっております。
従いまして、政府の産業投資特別会計から七十億円の出資をするため、農林漁業金融公庫法の一部を改正する必要がありますので、この法律案を提出いたした次第であります。すなわち、同法の現行規定の第四条中政府からの出資金が「四百七十六億七百万円」となっておりますのを、七十億円増額して「五百四十六億七百万円」に改めるものであります。
以上がこの法律案の提案の理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/22
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023・堀末治
○委員長(堀末治君) 本法律案の審査は、後日に譲ることといたします。
なお、本法律案に関する資料等の御要求の向きは、この際お申し出を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/23
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024・千田正
○千田正君 これも先ほどの問題と同じように、今までの融資の状況と回収の状況、各府県別に相当あると思います。企業体別にもあると思いますので、その資料をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/24
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025・堀末治
○委員長(堀末治君) 承知しました。他に御発言はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/25
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026・清澤俊英
○清澤俊英君 部分的に言わぬでも、大体入り用な資料はわかるだろうと思うのだ。何が入り用かわかると思うのだ。だから、大体そろえて出していただけばいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/26
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027・堀末治
○委員長(堀末治君) 承知いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/27
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028・堀末治
○委員長(堀末治君) それでは、次に、昭和三十二年度農林水産関係予算案及び財政投融資案の件を議題にいたします。
本件につきましては、先般一応懇談的に説明を聞いたのでありますが、その際は計数等に未確定のものがありまして、その決定を待ってあらためて説明を聞くことになっておりましたので、本日重ねて議題といたした次第であります。関係資料は前回の委員会においてお配りしてありますが、これから農林省官房長の説明を聞くことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/28
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029・永野正二
○政府委員(永野正二君) 昭和三十二年度の農林関係予算案につきまして、その概要を御説明申し上げたいと思います。
まず、一般会計におきます農林関係予算案の総体について申し上げます。
農林省所管の合計といたしましては八百十二億一千四百万円となっております。これに総理府所管の農林関係公共事業費七十九億四千九百万円及び原子力平和利用に要する経費九千三百万円、労働省所管の農林関係公共事業費一億六千百万円並びに建設省所管の農林関係営繕費六千七百万円を加えました農林関係予算の合計は、八百九十四億八千三百万円となっております。前年度の八百七十七億六千三百万円に比較いたしまして、十七億二千百万円の増となっております。
かように関係予算におきまして増額をみましたおもなものは、災害復旧事業費を除く……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/29
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030・河野謙三
○河野謙三君 ちょっと、発言中ですが、今の御説明は、われわれが大体資料を読むという範囲を出ないのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/30
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031・堀末治
○委員長(堀末治君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/31
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032・堀末治
○委員長(堀末治君) 速記をつけて下さい。
どうぞ説明を続行して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/32
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033・永野正二
○政府委員(永野正二君) ただいまお話に出ましたような趣旨でなるべくやって参りたいと思います。
かように関係予算におきまして増額をみましたそのおもなものを拾いますと、公共事業費におきまして三十二億七千九百万円の増でございます。これは土地改良、林野関係の公共事業及び水産関係の公共事業を通じまして、いずれも増加をみておるわけでございます。次に、新農村建設総合助成事業費におきまして十五億円の増に相なっております。寒冷地農業振興対策事業費におきまして四億一千三百万円の増になっております。農林水産技術会議の経費におきまして一億五千万円の増になっております。反面減少になりました主なものを拾ってみますと、災害復旧事業におきまして二十三億六千五百万円の減少でございます。次に、農業保険費の減少が四億四千万円でございます。農林漁業災害営農資金利子補給補助金の減少によるものが三億二千百万円でございます。中小漁業融資保証保険特別会計の出資金が一億円の減でございます。小麦粉の学校給食に伴う食糧管理特別会計差損の補給が二億四千万円の減でございます。
次に本予算の編成の重点について申し上げますと、第一は、生産基盤の拡充と生産性の向上であります。わが国の農林漁業経営は、その自然的、社会的、経済的諸条件からいたしまして、その生産力の発展を農林漁家の自主的な活動のみに期待することがきわめて困難な現状でございますので、その後進性を打破し、資本の不足と技術の低迷を補うために、強力な国家的支援による生産基盤の拡充整備が必要であると考えます。第二に、新農山漁村建設の推進及びこれに伴う諸般の施策によります農林漁業経営の安定の対策でございます。第三に、農林漁業団体関係及び農業災害補償制度等、従来の制度を継続実施いたすことでございます。
大体以上の三つの重点を置きまして、主要経費につきまして御説明を申し上げたいと思います。
第一は、食糧増産対策の経費でございますが、土地改良、開拓事業等の農地の拡張改良による食糧増産関係予算といたしまして、二百七十億八千三百万円を計上いたしました。次に、災害関係の事業費といたしまして、災害復旧事業費七十二億三百万円、災害関連事業費として七億六千六百万円及び鉱害復旧事業費三億五千七百万円を計上いたしました。なお、公共事業の行われにくい農山村後進地域を対象とする小団地開発整備事業につきまして三億円を計上いたしました。次に、食糧増産のうち、耕種改善による各種農産物の生産の増強対策でございますが、主要農作物の種子対策につきましては、その種目、事業量等につきましてはほぼ前年同様でございます。これがため二億七千六百万円を計上いたしました。次に、耕土生産力増強対策につきまして三千二百万円を計上いたしました。次に、植物防疫事業につきまして、三十一年度をもって都道府県におきます防除器具の計画的整備は一応完了いたしたのでございますが、なお農薬の備蓄制度とあわせまして、病害虫発生予察事業及び防除組織の整備、特に市町村におきます防除器具の計画的整備に努めることにいたしまして、二億九千六百万円を計上いたしました。以上のほか、耕種改善事業といたしまして、特殊農作物及び園芸農作物の生産改善の経費として八百万円を計上されております。
次に、治山治水事業と林業振興に要する経費でございます。まず、山林公共事業費につきましては、治山事業に四十二億九千六百万円、造林事業に二十九億六千八百万円、林道事業に十九億千五百万円及び災害復旧に五億九千万円を計上いたしております。特に林道事業につきましては、未開発林の開発とも関連いたしまして、その整備拡充に努めましたほか、造林事業につきましては、本年より林種転換及び新伐造林に重点を置いて推進することにいたしております。なお、水源林造林につきましては、前年に引き続き六千町歩の事業を行うとともに、国有林野事業におきましても水源林官行造林二万四千町歩を行うことといたしました。また森林開発公団の行う事業につきましては、前年に引き続き本年も九億円を借り入れて事業を行うこととし、前年実施しました林道事業に対する国庫補助一億円を別途計上いたしました。林業振興に要する経費につきましては、その事業の必要に応じまして、保安林の整備計画実施に二千八百万円、森林病害虫防除に一億九千二百万円、有益鳥獣増殖に七百万円を計上いたしました。森林計画につきましては、新たに国有林の経営計画を加えまして、三億三千五百万円を計上いたしました。種苗の関係につきましては、球果採取等の優良種苗の確保のための経費四千三百万円、林木の品種改良事業に千八百万円を計上いたしておりますが、このほかに国有林におきましても林太品種改良事業をいたすことに相なっております。
次に、水産振興に要する経費についてでございます。新漁場の開発及び水産生物資源の調査につきましては、沖合未開発漁場の積極的開発を行うため五百万円、及び国際漁場の開発のためインド洋及び太平洋におきまするカツオ、マグロ漁場の開発調査のため三千四百万円、中南米の漁業調査のため千九百万円を計上いたしておりますほか、対馬暖流の開発調査等海洋調査関係、サケ、マス、カニ等の国際漁業生物調査関係に六千七百万円を計上いたしました。沿岸及び内水面漁場の維持及び増殖につきましては二億一千五百万円を計上いたしました。前年に引き続き浅海増殖、内水面におきます放流及び種苗生産施設を拡充いたしまして、漁場の維持培養と、沿岸漁業の振興に特段の努力をいたしますとともに、漁業調整に一億二千六百万円、漁業取締り指導に八千九百万円を計上いたしました。なお、国際漁業関係におきまして、各方面の取締り指導のため三億三千七百万円を計上いたしております。次に、漁港施設の整備拡充費といたしましては、すでに着工いたしました地区の早期完成をはかることに重点を置きまして、三十一億二千五百万円と大幅に増額をいたしまして、事業の急速なる促進を期しましたほか、災害復旧事業費といたしまして十五億七千万円を計上いたしております。
次に、畜産振興に要する経費でございますが、家畜の導入及び改良増殖につきまして、別途新たに寒冷地帯農家に対しまする家畜の国有貸付事業の二億四千五百万円、中小農家に対する家畜の導入助成事業に二千八百万円を計上いたしましたほか、二億九千二百万円を計上いたしております。次に、自給飼料の対策といたしまして、牧野改良の対策として、草地改良に一億七千二百万円、牧野改良センターに一千七百万円を計上いたしまして、牧野事業の一段の推進をいたしますほかに、飼料自給度の向上対策といたしまして三千六百万円を計上いたしております。
次に、蚕糸業の振興に要する経費でございますが、まず生糸の需要増進につきまして九千万円を計上いたしております。これと相待ちまして、国内におきます繭の合理的増産、養蚕経営の合理化の措置といたしまして、前年に引き続きまして技術改良対策及び桑園能率増進対策を講ずるとともに、新たに凍霜害対策用の稚蚕共同桑園の設置補助といたしまして千九百万円を計上いたしました。また現在の過剰な製糸設備を処理いたしまして、製糸経営の安定をはかるとともに、生糸の輸出振興に資しますために、生糸設備の処理に要する経費として新たに五千百万円を計上いたしております。
次に、農林水産関係の調査研究並びに技術の向上に要する経費でございますが、農林水産業発展の基盤となります試験研究につきまして、三十一年度に発足いたしました農林水産技術会議を中心といたしまして、中央、地方を通ずる試験研究の活動の強化と施設の拡充整備をはかるために、中央におきまして三十一億七千七百万円、都道府県の補助費として二億九千五百万円、民間の試験研究に対する助成といたしまして九千万円を計上いたしております。なお試験研究機関の研究の充実のため、研究費一億五千六百万円、施設の充実のため二億五千六百万円を計上いたしております。なお原子力関係の予算につきまして、総理府所管といたしまして九千三百万円を計上いたしております。これと関連いたしまして、試験研究の成果を急速に浸透することを期待いたしまして、農業、畜産業、養蚕業、林業及び水産業におきまする技術改良普及事業のために、二十七億三千三百万円を計上いたしております。
農林漁業関係の統計、調査に要する経費といたしましては、四十一億五千三百万円を計上いたしております。この中には新たに緊急畜産センサス等を行うことといたしました。
第二に、先ほど御説明いたしました重点のうち、新農山漁村建設の推進と、これに伴う諸般の施設でございますが、諸般の施設による農林漁業経営の安定の対策について御説明を申し上げますが、
第一に新農山漁村建設総合対策に要する経費でございます。これにつきましては、すでに御承知の通り、五カ年計画に基きまして実施することといたしておりまして、前年度に引き続きまして、その事業を大幅に拡充いたすことといたしまして、計画樹立地域数を新規が九百地域、事業実施地域を継続が五百三十四地域、新規が九百六十六地域、合計一千五百地域といたしますために、特別助成費二十七億六千八百万円を計上いたしております。
次に、寒冷地農業振興対策でございますが、北海道、東北その他寒冷地帯の農業の安定とその振興をはかることが急務でございますので、公共事業費によります客土、排水その他の土地条件の整備をいたしまして、冷害に耐える条件を整備いたしますことと並行いたしまして、有畜経営への転換を促進する目的で、展示農家に対しまする乳牛及び役肉牛の国有貸付制度を創設いたしますとともに、これらの農家を中心といたしまして、畑作経営の合理化と土壌の維持培養をはかりますために国有トラクターの貸付を行いまして、寒冷地の道県に農業機械化センターを設置することにいたしました。その他の寒冷地特用作物の生産振興及び寒冷地試験研究の強化等の措置とあわせまして、四億九千万円を計上いたしております。このほか、先ほどふれました冷害恒久対策としての公共事業費といたしまして、三億円を計上いたしております。
次に、農山漁村青年総合対策に要する経費でございますが、これにつきましては、新農山漁村の建設のこれらの地域におきます青年を中核といたしまして、種々対策を進めたいと考えておりますので、青年の各種の実践活動及び研修への参加、内外先進農業地域への留学等の施策を行いますために、八千七百万円を計上いたしております。
次に、農地制度の維持発展と中小農家の経営安定の経費でございます。まず、農地制度につきましては、新たに転用基準を設定いたしまして、農地壊廃防止の徹底を期しますほか、農地改革の成果を維持し発展させるため、必要な措置を講ずることといたしまして、開拓用土地買い入れの減少による経費の節減を見込みまして、自作農創設維持に要する経費として五億二千六百万円を計上いたしました。そのほか、農林漁業金融公庫の自作農維持資金を大幅に増額いたしまして、五十億円の融資計画といたしております。なお、新たに中小農の振興対策といたしまして和牛、豚、綿羊等の家畜の導入を奨励するための経費といたしまして、二千八百万円を計上いたしました。
次に、開拓営農の安定についてでございます。開拓営農の振興につきまして、その不振原因を究明し、その振興のための根本的対策を実施するための経費といたしまして、開拓地営農指導等に七千三百万円、開拓融資保証協会の出資増に三千万円、開拓者資金融通特別会計への繰り入れに九千八百万円等を計上いたしております。このうち特に開拓者営農特別振興対策といたしまして、災害資金の償還等のため、営農不振の開拓農家が大部分を占める地区につきまして、旧債の借りかえを行うための利子補給として一千五百万円を見込んでおるのでございます。なお、従来の開拓地営農指導組織を強化するため、農業改良組織の一環として改組することといたしました。
次に、農林水産物及び生産資材の流通改善と価格安定の関係でございます。まず、化学肥料につきましては、臨時肥料需給安定法に基く需給調整のための硫安八万トンの保管措置による欠損補てんの経費及び肥料市況調査等の経費といたしまして七千五百万円、農薬につきまして農薬需給の現況から中央段階の保管に重点を置きまして、所要経費六千七百万円を計上しておりますほか、購入飼料、テンサイ糖及び農産物価格安定法に定める各種農産物につきまして、食糧管理特別会計におきまして価格安定をはかることといたしております。乳製品につきましては、自主的な需給調整措置の一環といたしまして、国内産脱脂粉乳及びバターの学校給食等特定用途向けの利用を奨励するため、必要な経費一千万円を計上いたしております。農林水産物の輸出振興に要する経費といたしましては、さきに生糸の需要増進で申しました九千万円のほか、前年度通産省に計上されました一億円のうち、本年度に繰り越される見込みのものが七千五百万円ございます。本年度新たに通産省に計上されました四千万円と合せまして、農林省関係といたしましては、マグロ及びミカン等の市場開拓の事業を行うことにいたしております。
次に、農林漁業経営の所要資金の確保の関係でございます。まず、三十一年度に発足いたしました農業改良資金制度につきまして、補助事業の合理化と系統資金の活用をさらに促進いたしますため、技術導入資金十二億八千四百万円、施設資金二十二億七千八百万円の融資を計画いたしております。また新たに施設資金についての利子補給に対する助成を行うことといたしまして、これらに必要な経費五億七千五百万円を計上いたしております。次に、農林漁業金融公庫その他の財政投融資計画でございますが、これにつきましては、先ほど農林漁業金融公庫法の改正についての提案理由の御説明がございましたように、この融資額の拡大をはかっておるのでございます。そのほか財政投融資計画におきましては、愛知用水公団に三十二億円、森林開発公団に九億円、開拓者資金融通特別会計に二十五億三千万円、特定土地改良工事特別会計に八億五千四百万円等を計上いたしております。次に、農林水産業における組合系統資金の積極的活用を円滑にいたしますための信用保証及び利子補給に関する措置といたしましては、中小漁業融資保証保険特別会計において年間百億の保証を予定いたしておりますほか、一般会計における予算措置により直接活用される系統資金量を考えてみますると、農業改良資金制度により二十二億七千八百万円、開拓融資保証協会の出資三千万円によるものが一億八千百万円、有畜農家創設特別措置によるものが十二億八千三百万円、開拓営農振興特別措置によるものが約四億円ということに相成っております。
次に、第三の問題といたしまして、農林漁業団体関係の経費及び農業災害補償制度について御説明申し上げます。
第一に、農業委員会関係でございますが、これにつきましては、現在前国会から継続審議中の改正法律案が成立いたしますことを前提といたしまして、所要経費を計上しておりますが、全国農業会議所、都道府県農業会議に対する助成費は前年と同様でございます。なお、市町村農業委員会費の補助につきましては、新制度の発足が予定されます昭和三十二年八月以降は、新制度に基く農地関係事務処理等の実情を考慮いたしまして、従来は職員三分の二人の分を負担をいたしておりましたのに対し、職員一人に相当する分を負担することといたしまして、さらに町村合併によります委員会数の減少等を考慮いたしまして、九億八千五百万円を計上いたしております。
次に、農業協同組合等農林漁業関係団体の経費でございますが、農業協同組合中央会の事業活動促進補助のための六千万円、農林漁業組合の検査指導のための一億四千百万円を計上いたしております。なお、農林漁業組合連合会整備促進法に基きます連合会の整備促進事業費といたしまして、五億七千七百万円を計上いたしております。また不振農協の整備強化対策といたしまして、引き続き組合債務に対しまする利子補給、長期駐在員の配置合併の促進等指導の強化を行うこととして、これに要する経費一億七千百万円を計上いたしております。
次に、農業保険に関する経費でございますが、農業災害補償制度につきましては、かねてから制度の改正につきましていろいろ検討を続け、また各方面の御意見を承わって参ったのでございますが、本国会にその法律改正の法案を提出いたす予定でございますが、三十二年度の予算案におきましては、現行制度に基きまして、農業災害補償制度に必要な経費といたしまして、百七億二千六百万円を計上いたしております。なお漁業共済制度につきましては、いろいろ問題があるのでございますが、自然的条件に左右されますことの多い漁業の実態にかんがみまして、なお慎重にこれの制度化について検討すべき事項が残されておるのでございます。昭和三十二年度におきましては、一部において試験的に実施をいたすことといたしまして、七百万円を新たに計上いたしております。
以上で一般会計の御説明を終了いたしたわけでございます。
次に、各特別会計の関係でございますが、食糧管理特別会計の関係につきましては、御承知の通り、これが編成に至ります過程におきまして、非常な種々な論議があったのでございます。結局この会計の今後の運営の問題、特にこの運営の合理化につきまして、特別調査会を設けまして十分な審議をいたすことといたしました。政府といたしましては、その結論に基きまして善処することにいたしたいと考えておりますが、一応来年度の予算といたしましては、大体現行のままの、何と申しますか、仕組みを継続するという建前で予算を編成いたしました。集荷につきまして、現行の事前売渡申込制度を実施して参るつもりでございますし、配給につきましても、従来通り、消費者家計の安定をはかるということを本旨として参りたいと、こう考えておるのでございます。ただ三十二年産米の集荷数量は、最近の実績等ともかんがみまして、二千七百万石という予定にいたしました。外国食糧の輸入につきましては、現在の需給関係を考慮いたしまして、なるべく良質なものを廉価に購入する方針で努めて参りたいと思います。国内産麦の買い上げ数量は、ほぼ前年買い入れ数量と同量でございます。
なお、米麦以外の農産物等につきましても、前年に引き続きまして、澱粉、テンサイ糖、カンショなま切りぼし、菜種、飼料等の買入費を計上いたしまして、農産物及び飼料等の価格の安定及び農家所得の確保をはかる措置を講じたいと考えております。
以下、農業共済保険その他の特別会計につきましては、別途配付資料におきまして、各特別会計の収支その他の一覧表を御配付申し上げてありますので、それについて御了解をお願いいたしたい、こう思っております。
最後に、特に新たに創設いたしました特定土地改良工事特別会計について御説明を申し上げたいと存じますが、これにつきましては、新しい問題でもございますし、また本国会に当然この関係の特別会計法、その他関係の法律案を提出いたしたいと考えておりますので、それらの機会におきまして、あらためまして詳細御説明を申し上げたいと思っておるのでございますが、予算案といたしましては、歳入歳出四十二億四千四百万円でございます。土地改良関係の基本でございます国営灌排事業の新規分と、国営、代行の干拓事業をこれによって実施いたして参りたい、こう考えておるのでございます。
以上をもって、大へんかけ足でございまして恐縮でございましたが、三十二年度の予算案の御説明を終ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/33
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034・堀末治
○委員長(堀末治君) 本件に対する御質疑は、午後の委員会にゆずって、この機会に農林水産関係の法律案、提出一を予定されています関係法案の説明を一つ聞きたいと思います。それを議題に供します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/34
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035・永野正二
○政府委員(永野正二君) お手元に、「再開後の国会に提出予定の法律案件・名等について」という一枚刷りの、法律の件名だけを並べましたものがお配りしてあると思いますが、実はこの表は、現在まだ政府部内におきまして協議中のもの、また与党との関係におきまして、なお検討を要するもの等もあるのでございまして、農林省といたしまして、正式に法案を提出をする方針を決定いたしましたわけではございません。問題になるものという意味で、十四の件名だけを並べてございますが、このうち、すでに先ほど予備審査をお願いをいたしたものが二番と八番の、農林漁業金融公庫法の一部改正法律案、開拓融資保証法の一部改正法律案でございます。なお十一番の昭和三十一年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案、これも大蔵省所管でございますが、すでに提出になっていると存じております。これらのうち、前の二つにつきましては、先ほどの提案理由の説明で御了承をいただきたいと存じます。残りましたものにつきまして、大体の御説明をいたします。
一番の、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法、いわゆる天災融資法でございます。それの一部改正案でございます。これは問題点は、利子補給及び損失補償の契約形式、国と県と市町村と組合というこの関係の契約方式を改善する点が一点と、例の年三分五厘を適用する適用地域の定め方をもう少し、農林漁業者の被害の程度に応じまして、実情に応じ得られるように改正したい、また国と都道府県の利子補給の負担割合を合理化したいという点を考えているのでございます。
三番の農業災害補償法の一部改正でございますが、これは相当長い間の懸案の問題でございまして、私どもといたしましては、各方面のいろいろ御意見を承わりながら、成案を作るために努力をいたしている段階でございますが、すでに主要な点につきましては大体方向が出ておりますが、まだ二、三の点につきまして問題が残っているのでございます。これらの点につきましては、取り急ぎ話し合いを固めました上で、これの内容を固めまして、提案をいたしたいと存じているのでございます。内容等につきましては、その時期までしばらく申し上げることを差し控えた方がよろしいのではないか、こう考えているわけでございます。
次に書いてございます輸出品取締法の一部改正案は、通産省提出の法律でございます。輸出品の規格の維持のための取締法でございまして、これらは一部農林水産物資の関係に影響がございますので、なお政府部内といたしまして十分連絡をとって参りたい、こう考えております。
次の国営土地改良事業特別会計法案、これは先ほど予算の説明の際にも触れましたように、国営灌排事業の新規のもの、及び国営、代行干拓の事業を、この特別会計によって実施をいたしまして、事業の促進をはかりたいという意味の特別会計の設置の法案でございます。特別会計法の方は、大蔵省提出に相なるわけでございますが、これらにつきまして今後いろいろな関係で、相当重要な問題だと存じまするので、関係当局からさらに詳細な資料等も整えまして、御説明をいたさせたいと、こう考えております。その際にお聞きとり願いたいと思います。
次の土地改良法の一部を改正する法律案でございますが、これはいろいろ現在の法律の手続の関係等につきまして、所要の改正を加えたいと思っておるのでございまして、これももう少し整備をいたしました上で、あらためまして御説明の機会を得たいと、こう考えておる次第であります。
次の開拓営農振興臨時措置法案でございます。これは先ほど予算の説明のときに若干触れましたように、新開拓地区の営農の振興のために、経営振興計画を樹立する問題あるいは開拓者に対する国及び都道府県の助成措置の問題というような点を盛り込みまして、根本的な振興対策を考えたいと思いまして、目下まだ部内でこれは取り進め中でございます。
九番と十番は蚕糸局の関係でございます。九番の蚕糸業法の全部を改正する法律案は、これは目下関係業界その他のいろいろな御意見等を伺いながら、成案の方向をつけておる段階でございまして、まだその内容等について具体的に申し上げるまでの段階に行っておらないのでございます。
十番の生糸製造設備臨時措置法案は、先ほどの予算の説明でも触れましたように、現在の製糸設備が過剰でございまして、これをある程度処理と申しますか、整理と申しますか、いたす必要がございますので、その関係の事項を法案として取りまとめたのでございます。これは遠からず農林省といたしましての成案ができると思いまするので、その際関係当局から御説明をいたさせたいと、こう考えております。
十一番は、先ほど申し上げましたように、すでに提出になっておるのでございますが、これは前年と同様に、昭和三十一年産米につきまして、事前売渡申込制に基くものにつきまして、所得税の臨時特例を適用いたしまして、免税にするための法律案でございます。
十二番の森林法の一部改正の問題でございますが、これは広葉樹につきまして伐採規制の緩和をいたしたいと考えております点と、都道府県知事によります市町村有林の経営制度の創設というような点を考えて、所要の改正を行いたいと思っておるのでございます。これも関係当局におきまして、なお詳細御説明をする機会があるかと存じております。
次の野生鳥獣の保護及び捕獲の制限に関する法律案でございます。現行狩猟法の改正を考えておるわけでございますが、これにつきましては、なお関係事業界その他の方面といろいろ打ち合せ協議をする点が残っておりまするので、今後法案として提出になるかもしれないということで、ここに件名を掲げておきました程度でございます。
最後の農林省設置法の一部改正でございますが、本年度は設置法の改正はそう大した項目が実はないのでございます。ただ農業土木実験研修所の設置その他、非常にこまかい点につきましてあるいは改正をする必要があるのではないかと思いまして、件名を掲げておいたわけでございます。
以上非常にあらましでございますが、なお主要な問題につきましては関係当局から詳細に御説明をする機会があると存じますので、問題となりますような点につきまして、概略の御説明を申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/35
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036・堀末治
○委員長(堀末治君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/36
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037・堀末治
○委員長(堀末治君) 速記を始めて。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X00519570207/37
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