1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月十二日(火曜日)
午前十時五十一分開会
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出席者は左の通り。
委員長 堀 末治君
理事
重政 庸徳君
藤野 繁雄君
東 隆君
清澤 俊英君
島村 軍次君
委員
青山 正一君
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
佐藤清一郎君
下條 康麿君
柴田 栄君
田中 啓一君
仲原 善一君
堀本 宜実君
安部キミ子君
北村 暢君
鈴木 一君
羽生 三七君
上林 忠次君
千田 正君
北條 雋八君
国務大臣
農 林 大 臣 井出一太郎君
政府委員
農林政務次官 八木 一郎君
農林大臣官房長 永野 正二君
農林省畜産局長 谷垣 專一君
農林省蚕糸局長 須賀 賢二君
水産庁次長 奥原日出男君
事務局側
常任委員会専門
員 安楽城敏男君
説明員
農林省農林経済
局参事官 森 茂雄君
農林省農林経済
局経済課長 尾中 悟君
通商産業省通商
局次長 中山 賀博君
通商産業省通商
局検査課長 式田 敬君
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本日の会議に付した案件
○蚕糸業法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○生糸製造設備臨時措置法案(内閣送
付、予備審査)
○農林水産政策に関する調査の件
(輸出検査法案に関する件)
(農林水産基本政策に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/0
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001・堀末治
○委員長(堀末治君) ただいまから農林水産委員会を開きます。
まず、蚕糸業法の一部を改正する法律案(内閣送付、閣法第九十五号、予備審査)を議題にいたします。
この法律は、去る七日、当委員会に予備付託となったのであります。
まず、政府から提案理由の説明を聞くことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/1
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002・八木一郎
○政府委員(八木一郎君) ただいま議題となりました蚕糸業法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、農林省に蚕糸業振興審議会を設置するに必要な規定を加えるための改正であります。
蚕糸業は、わが国農家の経営の安定向上のためにも、また広く輸出増進対策の一環としても、その積極的な振興を要望されているのでありますが、その実現には各界有識者によって基本的な振興対策を樹立することが必要であり、そのための調査審議の機関として、新たに蚕糸業法に基いて蚕糸業振興審議会を設置いたしたいと存ずるのであります。
今後わが国の蚕糸業の積極的な発展をはかりますためには、生糸及で絹製品の輸出の振興、繭の能率的な増産、技術指導体系の整備強化、繭処理の調整等多くの問題について、早急に具体的な方策を検討して実施に移す必要がありますので、この審議会の蚕糸業振興対策に関する調査審議に多大の期待を寄せている次第であります。
なお、別に審議をお願いいたします生糸製造設備臨時措置法案によりまして、審議会に諮問する事項も、この審議会で審議することになっておりますので、申し添えておきます。
以上が蚕糸業法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/2
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003・堀末治
○委員長(堀末治君) この法律案の審議は、後日に譲ることにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/3
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004・堀末治
○委員長(堀末治君) 次いで、生糸製造設備臨時措置法案(内閣送付、閣法第七十八号、予備審査)を議題にいたします。
この法律案は、去る四日、当委員会に予備付託になったものでありまして、まず、政府から提案理由の説明を聞くことといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/4
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005・八木一郎
○政府委員(八木一郎君) 生糸製造設備臨時措置法案について、その趣旨を御説明申し上げたいと存じます。
この法律案は、近年製糸設備と原料供給の関係が不均衡のために製糸業の経営の安定を欠いており、ひいて生糸の輸出増進の障害になっている実情にかんがみまして、過剰設備を処理して製糸業の合理化を促進するために、必要な立法措置を講じようとするものでありまして、その要点は、生糸製造業者が共同行為によってその設備を処理する事業を行うことができるようにするものであります。
以下法案の内容について、その概略を申し上げますと、
第一は、免許または許可を受けている生糸製造業者は、業態別に設備処理組合を組織することができることといたしたことであります。この組合に対する加入及び脱退は自由でありまして、その事業は、過剰設備の処理及びこれに付帯する事業に限定いたしております。
次に、生糸製造設備の処理は、ただいま申し上げました設備処理組合の共同行為によって、自主的に行われることを建前としており、それによって目的を達するように指導して参るつもりであるますが、生糸製造業者の大部分が組合の設備処理規程の適用を受けて過剰設備の処理を行なっているにもかかわらず、一部の非組合員の事業活動がこの法律の目的を達成する上に著しい障害となっているような場合に、整備の目的を達するために真にやむを得ないときは、非組合員をも含めて組合の設備処理規程に従うようにすることができることにいたしたのであります。
なお、製糸設備の処理は、当面の蚕糸業振興対策の一環としてきわめて緊要な問題でありますが、これが実施に当りまして、関連産業並びに国民経済全般に対する影響について十分慎重な配慮のもとに行うべきはもちろんのことでありまして、農林大臣が設備処理規程の認可をし、また非組合員をも含めて設備の処理を行わせる措置をとる等の場合は、蚕糸業振興審議会の意見を聞くとともに、公正取引委員会の同意を得ることとし、この法律の運用に当って特段の意を用いているのであります。
なお、この法律の有効期間は、設備処理の遂行に必要と見込まれる期間に限定いたしております。
以上が生糸製造設備臨時措置法案の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/5
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006・堀末治
○委員長(堀末治君) この法律案の審査は、後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/6
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007・堀末治
○委員長(堀末治君) 次に、引き続いて、輸出検査法案に関する件を議題にいたします。
御質疑の向きは、順次御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/7
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008・藤野繁雄
○藤野繁雄君 ただいま配付になった資料に関する大体の御説明をお願いします〇発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/8
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009・式田敬
○説明員(式田敬君) 通産省から皆様のお手元に先日配付いたしました資料につきまして、一応御説明を申し上げます。
第一は、現行輸出品検査機構一覧表という一枚刷りの表がございますので、ごらん願います。これは現在の輸出品取締法によりまして、どういうふうな仕組みで検査が行われているかということの解説でございますが、欄が二つに分れておりまして、上が第三者検査、下が任意検査となっております。
上の第三者検査では、この四角のワクの中に、政府機関、登録検査機関と、こう並んでおりますが、これは政府の検査機関も、それから登録検査機関、つまり民間の検査機関も、その二つが両方ともいわゆる第三者検査を行うということでございまして、その検査の扱い品目は、政府機関の方が、その右に書いてあります、乾シイタケ、花むしろ及び畳表、野草莚、茶、温州ミカン、豆類、絹織物、人絹織物、このうち絹織物、人絹織物は通産省の繊維製品検査所で検査をしておりまして、その他は農林省の輸出品検査所で第三者検査を行なっております。登録検査機関の方は、その左にありますような品目、カン詰及びびん詰、冷凍水産物、万年筆、綿織物など繊維製品三四品目、セルロイド、喫煙具、陶磁器、ゴム製品、写真機、船舶用内燃機関、双眼鏡、ミシン、軸受、自転車、というふうに並んでおりますが、この登録検査機関は、現在二十六ございます。それから政府機関から登録検査機関の方に矢じるしがございまして、立入検査とございますが、これは政府の検査機関は民間の登録機関に対しましても、必要に応じて立入検査を行い得るということでございます。
それから、下の欄はいわゆる任意検査というのでございまして、これは現在約百八十ぐらいの検査品目がございますが、その七割、品目にいたしまして七割ぐらいは、いわゆる任意検査という方法の検査の対象品目でございまして、その分が下の欄になるわけでございますが、これは検査をしまして表示をする、つまり合格しているという表示をする、人はだれでもよろしいということになっておりまして、別に限定されておりません。従って、製造業者が自分で検査をする場合もございますし、あるいは組合等において検査をする場合もございますし、また民間の検査団体を作りまして、これは上の登録検査機関とは違いまして、任意の検査団体でございますが、そういう団体で検査をする。いろいろございます。大多数のものは、民間検査団体というものがございますので、ここに業者から民間検査団体に表示の依頼をして、それが取締法による表示を行うということを書いたものでございます。その品目はおおむね第三者検査の欄に書きましたような品目以外のもので、先ほど申し上げましたような、全体の約七割に属するものでございます。それで政府機関は、その民間の検査団体に対しましても、業者に対しましても、すべて立入検査の権限を持っておりますので、そのような矢じるしで示してある次第でございます。
この表で、大体の現行のやり方は御了解いただけると思います。
次に、輸出品取締法指定品目数調という表がございます。裏表三枚の表がございますが、それの第一ページは、機械金属、雑貨、繊維、農林水産物、運輸物資、化学品、厚生物資という大分類に従いまして、その右の方に三条、三、四条、四条、それから計、七条の二と、こうあります。この意味は、現在の取締法で等級別の表示、等級の表示だけを規定してあります。これが第三条にありますので、俗に三条品目と申しておりますが、これが合計で四つ、きわめてわずかなものしかございません。それから一つとびまして、四条といいますのは、やはり取締法四条で、最低標準を作りまして、そしてその最低標準に達しておればつまり合格でございますが、に達しておる旨の表示をするという方法で、その四条の最低標準だけで一応縛ってある品目が八十という数字になっております。それからこの三条四条、つまり最低標準も等級別表示も両方ございまして、それでそれによって検査をするというのが九十七品目ありまして、それが合計で百八十一品目になるわけでございます。その一番右の欄に七条の二とございますのは、現行取締法でいわゆる第三者検査もしくは強制検査と称しておりますが、この検査を行いますのに、特別の機械器具とか知識経験を要するものは、特にまた品目を指定しまして、いわゆる第三者検査を行う、先ほど御説明しました政府機関または民間の登録検査機関による検査を行うというのがございますが、それが全部で五十九品目というふうにあります。で、この五十九品目は百八十一品目の内数でございます。つまり現在の取締法の立て方は、まず原則としてこの任意検査を行うということでもって、三条品目、四条品目、あるいは三条四条と両方の品目がございます。そのうちのある品目は特に、こういう指定されたつまり政府機関か登録機関で検査をするという趣旨でございます。これはそのうちに含まれておるものでございます。
次の二ページからあとが、その百八十一品目の中分類と申しますか、これをいわゆる強制検査品目と任意検査品目に分けまして列記してある次男でございます。これは読むのを省略いたしますが、結局この全体の数は、この第一ページの総括表にある数と一致しております。特に農林水産物関係は五ページにございまして、強制検査品目が左側にあります。比較的わずかでございますが、大部分は右側のいわゆる任意検査品目となっております。
それから次に「輸出検査法に基き公布すべき政令、省令、告示について」という資料がございますが、これはこのたびの検査法案が公布され施行されます暁には、それによりまして数々の政令、省令、告示を出さなければならないというので一応どういうふうな点についてそういうふうな政令、省令、告示が出るかということをまあ一覧表にしたものでございますが、これはだいぶ長いあれなので、その骨組みだけを申し上げますと、一番最初の二重丸が、これは政令でございます。それから一重丸が省令、それからかけじるしが告示という区分で書いてございますが、一番まず根幹になりますこの指定貨物の品目等を定める政令というものを作る必要がございます。それから次に、その検査基準等を定める省令が必要でございます。それから三番目に、法第三条第二項の規定により特定の地域等を定める省令、これはまあ地域の需要の特殊性に応じて高い基準を作る場合がございます。その規定が第三条第二項にございますが、それによる省令というものが出される必要がございます。
それから次に、指定貨物等の等級を定める省令、これはちょっと御説明を要すると思いますが今度の検査法案が、すべての品目につきまして、いわゆる現行法の先ほど御説明申し上げたその最低標準に相当する一つの基準というものが設定されます。等級別だけの標準というものは、もう今後はやめるという趣旨でございます。しかし、やはり商品によりましてはこの等級別の表示をするという必要もございますので、そういうものにつきましては、その一般的ないわゆる最低標準に相当する基準のほかに、それに付加しましてこの等級別の基準を定める場合がある、その場合の省令でございます。それからその次が封を施す品目、これは現行法にはございませんが、やはり検査後の中身の確保、検査の効果の確保という意味において封を施すという場合が、これは現在考えられておりますのはきわめてわずかな品目でございますが、そういうふうな特殊な場合のやはり品目を定める省令が必要でございます。
それからその次の特例品目と申しますのは、これはちょっと御説明を要しますが、先ほど現行法説明のときに、原則は——現在の法律の原則は任意検査でございまして、そのうち特に必要なものについて例外的にいわゆる第三者検査と申しますか、強制検査を行うということでございましたが、今度の輸出検査法はそれが逆になりまして、原則的にこの強制検査あるいは第三者検査といわれる方法で、政府機関あるいは指定された検査機関が検査を行うと。で、特にどうしてもその強制検査をやるのがむずかしい、しかし全然もう自由にしてしまうということも問題があるという中間のものにつきまして、ごくわずかなものでございますが、特例として現在もやっておる任意検査というものに相当する方法の検査を行う場合がある、その品目をやはり省令で定めるということになっております。ですから、そういう品目につきましては一たん一番最初の政令でもって品目を定めまして、そのうち特にそういう特例扱いのものは省令ではずして——はずすと申しますか、つまりこの任意検査の扱い方にするという行き方でございます。
それからその次は、指定貨物の表示の有効期間等を定める告示、それからその次は報告の徴収を定める政令、これはよろしいと思います。それから二枚目に行きまして、輸出検査の手数料を定める政令、これは現行法でもやはり手数料は政令で定めております。それから輸出検査法の施行期日を定める政令、これは法案の付則第一条にございますように、九カ月をこえないまあ限度で施行の期日を定めることになっております。それから輸出検査法の経過的措置を定める政令、これは申し上げるまでもなく、現在の取締法でいろいろ強制検査、任意検査が行われて、それぞれ登録機関等もございます。そういうふうなものをスムーズに新しい検査法に切りかえますためには、相当いろいろの経過的措置を規定する必要がございますので、これはこの法案の付則に盛り込みますと非常に膨大な内容になりますので、これは別に政令で定めることになっております。
それから次が輸出検査審議会令を廃止する政令、これは現在は通産省の設置法に基く輸出検査審議会令という単独の政令でこの審議会が規定されておりますが、今度の検査法案ではその法律の中に審議会の規定を詳細に盛り込みましたので、その政令は廃止することになります。それから次が輸出検査審議会の規則、これは申すまでもなく、審議会のいろいろなこまかい問題を規定する省令でございます。それから次が指定検査機関の指定区分、検査器具等を定める省令、これは法案の第十六条にこの指定検査機関、検査機関を指定する場合の基準がいろいろございますが、それに必要な具体的な内容は省令で規定することになっております。
それからその次に、輸出検査法施行規則、これは結局一番まあ何といいますか、重要な各種の内容を盛った相当長い省令になります。つまり第一章で主務大臣の定義を行う、それから第二章で表示を行う、そういうふうに、まあいろいろ表示のこまかい方法を規定する省令でございます。それから第三章で指定検査機関、つまり検査機関を指定する場合のいろいろな問題とか、あるいは指定された後においていろいろ義務、あるいは政府の監督規定がございますが、それに応じましていろいろの報告の書類その他の形式や手続を詳細に規定するということになります。それから第四章が聴聞、これは指定検査機関の役員あるいは輸出検査員の解任命令を出すことだとか、指定検査機関に対しまして業務の停止とか指定の取り消しを行うというふうな措置をする場合には、あらかじめ聴聞会を開きまして、十分その利害関係人のそのまあ資料の提出とか弁明をやらせてやるというふうな規定でございます。それに応じました手続等を定めたのでございます。それから異議の申し立ての手続。それから第五章で立入検査の証明書様式、その他いろいろございます。これが一番重要な内容をもった実施省令といわれておるものに当るわけであります。
一応これで御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/9
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010・堀末治
○委員長(堀末治君) 次いで、農林経済局参事官の森君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/10
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011・森茂雄
○説明員(森茂雄君) 農林省の方で作成いたしました資料について、御説明申し上げます。
二枚ありまして、一枚は「農林省輸出品検査所機構図、定員並に所在地」、こういう一枚になっております。農林省の輸出検査所は東京と静岡と神戸と門司と小樽の五つの本所がありまして、支所が東京について横浜支所、静岡について名古屋支所、神戸について岡山支所、門司について長崎支所。一番左の欄が支所で、次に掲げてありますのが、現在の配置された定員でありますが、総数で三百三十三人。
それから次に、こまかい表でございますが、「現行輸出品取締法対象物資中農林畜水産物関係一覧表」でありますが、これは、上の欄が現在強制検査をやっておる、下の欄がいわゆる任意検査として臨検をやっておる検査対象。品目から申し上げますと、表にあります通り、強制検査をやっておりますのは、お茶、温州ミカン、花莚・畳表、野草莚、豆類、ほしシイタケ、それから水産方面では冷凍水産物、それからカン詰・びん詰であります。その強制検査をやっております検査機関は、農産物は全部政府の機関、農林省輸出品検査所がやっております。それから水産物とカン詰は、農林省の輸出検査機関と二本建になっておりまして、民間機関が並行してやっております。冷凍水産物では、小さく書いてありますが、輸出冷凍水産物検査協会がやっております。それからカン詰につきましては、政府機関のほかに、日本罐詰検査協会がやっております。内容の実態は、冷凍水産物についてはほとんど九〇%、民間機関の輸出冷凍水産物検査協会がやっております。これは輸出者の任意でございまして、残りのものを政府機関がやっております。カン詰についても同様な傾向にあります。
それから下の欄では、任意検査をやっておる品目を掲げてあります。
一番下の最後の計で、輸出総額というのが日本の全部の輸出総額。下から二番目の全農林水産物総額というのが、農林省関係物資の輸出総額で、一千五十三億円であります。それからその上が、生糸など特別なものを除いて、上の強制検査と臨検検査でここに掲げてあります約三十八品目の総計は、下から三段目のように、七百二十億円になるわけであります。それば農林省関係物資の六八%に当るわけであります。この七百二十億のうち、強制検査になっておりまする輸出総金額は、強制検査の欄の一番下の欄の三百五十九億三千六百九十九万四千円、それから臨検検査の総計が、下から四段目の欄で、三百六十億八千七百七十九万一千円であります。この欄に現わてはおりませんが、しからばこの指定品目三十八品目の輸出額七百二十億のうち、現在の実態といたしましては、七百二十億のうち六百二億にわたる約八三%が強制か任意かの形で検査を受けて出たものであります。
大体、私の御説明することは、以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/11
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012・堀末治
○委員長(堀末治君) 御質疑の方は順次……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/12
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013・藤野繁雄
○藤野繁雄君 強制か任意かのところを、もう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/13
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014・森茂雄
○説明員(森茂雄君) ただいまの指定品目の輸出額の七百二十億、ここに掲げてある総額のうちで、検査を受けないで出るものがあるわけです、任意検査ですから。検査を受けて出た額が六百二億である、七百二十分の六百二、約八三%に当るというわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/14
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015・島村軍次
○島村軍次君 そうしますと、農林省の方の関係で伺いますが、強制検査は今までの機構でやっておられるから、問題ない。臨検検査と書いてあるこれは、任意検査でしよう。そこで、ただいまの説明によりますと、七百二十億のうちで六百二億は検査をしてない、八三%は検査をしてないと、こういうことですか。そういう御説明だった。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/15
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016・森茂雄
○説明員(森茂雄君) 逆でございます。検査をしておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/16
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017・東隆
○東隆君 この検査機関ですが、検査機関のうちで強制検査のところで、協会ですね、これは何か法律か何かによってできておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/17
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018・森茂雄
○説明員(森茂雄君) 法人格の性格としては財団法人になっておりまして、法律上の根拠としましては、法律による登録機関になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/18
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019・東隆
○東隆君 強制検査にする、あるいは任意検査にするというような場合に、これはあとには関係がないようですけれども、何か立場というのですか条件というのですか、そういうようなものがあるのですか。冷凍水産物に関する限り、あるいはカン詰、びん詰に関する限り、強制検査、こういうふうになっておりますが、その場合に、今までの立場として条件か何かなければ、これをはっきりさせるわけにいかぬでしょう。そういうような問題はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/19
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020・森茂雄
○説明員(森茂雄君) ちょっと御質問にそれるかもしれませんが、現在しからばこれを強制検査にした場合に、直接政府機関だけでやるものと、それから民間機関を指定いたしまして、その民間機関に政府権力を与えてやるものと、二つになるわけでありますが、この臨検検査のうちでも今後、合板、ベニアチエスト、木箱仕組板、フローリング、粗肝臓油、これらのものは民間機関を指定いたしまして、これをして検査をやらしめる考え方でおります。裏からいいますと、たとえば現在合板にいたしましても、自主的に機関が形成されまして、その機関で、会員が経費を出しまして、充実した自主的な検査機構を持っておるわけでございます。従いまして、そういう実態を尊重してやっていくわけでございます。御質問がありました輸出冷凍水産物、カン詰などでも、戦後公団等の統制的な機関が当時国内の配給等で検査をやっておりましたが、その後民間にも統制撤廃後も機構ができまして、そうしてそういう技術者がそういう協会に従事しておる。こういう検査員の人的、組織的実態を見て、これならば政府直接でなくともこういう権限を付与して悪影響はないだろう、こういう意味で冷凍水産物、カン詰の二つだけにつきましては、現在御指摘の点のように強制権を付与しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/20
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021・東隆
○東隆君 そこのところを、もう少し……。臨検検査のところにまた段階があるようですが、たとえば農林省輸出品検査所というものでやるのは、農産物に限られておるようです。それから林産物、水産物、加工食品は、これは任意の団体に、民間の団体に検査をすることを委託してやらしておるようですが、そういう関係でもってやっておるようですが、ちょうどここでもって強制検査の場合が二つになってきております。それから臨検検査の場合は、やはり農林省の関係と民間の方とに分れていて、非常に段階がずっとあるんですが、非常にここのところで疑問を起すのは、今質問申し上げた協会関係でもってやる部分は、これを民間団体でもってやっているものと、そうして臨検検査という表現を使っている場合のものを、今後強制検査の方におそらく移行していくような形になっていくのじゃないかと思うのですが、私はかえってそれの方がいいと思うのですけれども、問題は、農林省の輸出検査そのものの人員、あるいは予算、そういうようなものがないからこんなような形でやっているだけの話じゃないのですか。そうじゃないのですか。検査機構というものをもう少し強化していきさえすれば、この関係は、強制検査という形式のものがもう少しふえていくのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/21
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022・森茂雄
○説明員(森茂雄君) 先ほどちょっと御説明申しましたのですが、ちょっと足らぬ点があると思いますが、現在では上のこの農産物のお茶以下五品目、それから冷凍水産物、カン詰・びん詰等で強制検査をやっておりますが、あとは任意検査になっておりますが、今度法律が御承諾を得て成立をいたしました場合のことといたしますると、ここに掲げてありまするうちで、たとえばたった一つですが、下の欄の食酢あたりは、これは全部現在指定からはずそうと思っておりますが、あとその他は全部原則として強制検査をやっていくわけであります。御指摘の現在合板等でやっておりまするのを、すっきりした形といいますると、御指摘の通り、現在合板の団体に従事しております技術者を政府委員に登用いたしまして、そうして検査員にするというそういう検査の方法もございまするが、今度、現在の組織の実態からいいまして、ほとんど実情からいってそういう直接公務員にしなくても、裏から非常にその組織体に対する監督を充実すれば、本来の目的を達成し得るという運用をやっておりまする合板、ベニヤ、木箱、フローリングなどは、指定機関として検査事務をやらしていって差しつかえないのじゃないかというふうに、考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/22
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023・島村軍次
○島村軍次君 それに関連してですね、ただいまの説明によりますと、いわゆる臨検検査のうちの八三%は希望に応じてやり、もしくは民間の指定機関でやって、それでまあ事実上は検査ができている、こういうことだと思うのです。そこで前回の時分にも疑問が出たのは、要するに、強制検査は現状通りである、任意検査の方も現在の民間機関を指定してやるのだ、だからして人員の増加、あるいは強化というようなことは考えていないのだ、こういう御説明であったと思うのですが、全く現状そのままのものを、品目について、あるいは数量については、現状そのままを踏襲して、ただそれに民間指定機関に対して一つの強制権を国家が持って、この法律の範囲内においていろいろな届出をさせ、あるいは認可を得、許可を得る、こういうことに了解してよろしゅうございますか。これはどちらからでもいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/23
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024・森茂雄
○説明員(森茂雄君) 大体そういう考え方でおりまするが、ただ第十条——先ほど通産省から御説明されましたように、第十条で臨検検査の余地を残して、強制検査にかけないものの特例を掲げておるわけであります。原則といたしましては、むしろこの第十条は原則に対する例外になるわけで、特に農林省関係におきましては、通産省物資と違う関係がありまするので、通産省の方とも十分協議して、特に農林省の考え方で十条を置いていただいた点が違うわけであります。
ちょっと申し上げますると、塩乾水産物などのように、国の輸出規格と同じ規格による生産検査が、現在都道府県のほとんど全部において強制されておる。その検査が適確に実施されておって、従来比較的クレームが少い、こういう塩乾水産物、それから農産物の種子でありますが、これは過去長年にわたってブランドなどによる信用取引が相当適確で、かつ効果的に実施されておりますし、過去におけるクレームが比較的に少い。こういう農産物の種子ですが、それらのものにつきましては、十条の規定による臨検検査だけをやりまして、特別に検査は必要でございまするが、産物の声価を落さない検査は必要でありまするが、強制検査にかけないということで、特に通産省とも御了解を得て、十条を入れていただいておりまするので、農産物の現在の実態を考えまして、生産者に対する影響、また一方輸出促進等の観点もございまするが、生産者に対する影響は十分われわれとしては考えておるつもりであります。そういう点がちょっと違うことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/24
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025・島村軍次
○島村軍次君 十条の検査の特例ということは、そういう意味のことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/25
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026・森茂雄
○説明員(森茂雄君) その通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/26
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027・島村軍次
○島村軍次君 そこで、この表によって見ますると、臨検検査の中でまず多いのが蔬菜ですね。それから合板についてはお話がありましたが、蔬菜というものは一体どういうもので、そうして実際検査の現在の機構はどうなっておるか、大きいものだけについて。まあ塩乾物については今お話がありましたが、蔬菜の例で一つ、蔬菜と果物がありますね、この二つについての現状を一つお話を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/27
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028・尾中悟
○説明員(尾中悟君) 蔬菜、果実の関係でございますが、現在臨検をやっておりますのはリンゴ、ナシ、クリ、タマネギ、ニンニク、バレイショ等でございます。これらは、一部の県においては任意検査等を行なっているのもございますが、大部分の県におきましては、適確なる生産検査が必ずしも実施されていないというような現状にございますので、現在は臨検検査にはなっておりますが、大体九割程度は、生産者からの依頼による検査を含めまして、検査を実質的には実施している。その実施機関は、農林省の検査所において実施しているというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/28
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029・島村軍次
○島村軍次君 府県では農産物検査所。食糧庁関係の米麦を主体にした検査について、特別な検査機関を持っている県は、大部分あろうと思うのであります。そこで、ただいまの説明によりますると、蔬菜については、やっている県もあるけれども、ない県もある、こういうお話であったのですが、そういうものは今度の輸出検査法が出ると、どういうふうな扱いにされる予定なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/29
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030・尾中悟
○説明員(尾中悟君) こういう蔬菜、果実につきましては、国内消費されます量がほとんど大部分でございまして、産地における生産検査の規格と、海外に出ます場合の輸出規格というものが、おのずから相当相違があるわけでございまして、従いまして、これらのものの輸出検査につきましては、輸出に合った規格を設けて、農林省の検査所で検査をやって参る。また産地において現在一部実施されております生産検査は、国内消費のものも含めまして、全体の立場から生産検査を実施して参るということになろうかと思いますが、物によりましては、その県の大部分のものが輸出に回されるというような場合には、輸出検査を実施しますると同時に、産地と十分連絡をとりまして、産地で十分な選別なり何なりが実施され、不当にこれが検査から落っこちるということのないような、十分な産地県との連絡をいたしまして、生産者に対しては、遡及的に迷惑のかからない方法で考えて参りたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/30
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031・島村軍次
○島村軍次君 そこで、たとえば果物のうちで、ナシのヤーリーとかあるいは晩三吉とかいうようなものを出す場合に、これは現在は具体的にいえば、この輸出検査所の岡山の支所でやるとか、あるいは鳥取から出るようなものの——鳥取はあまり出ぬかもしれませんが、そういうものについては、神戸の輸出検査所の支所が岡山にある。そういうので、私の聞かぬとするところは、大体は今の説明では、現状そのままを維持するような、維持しないようなお話ですから、その点をはっきり一つお伺いして、従って、これは予算に関係のある問題として私が伺いたいと思うのは、どうもこの輸出検査法を施行されますと、手続の上でもよほどめんどうになってくる。指定機関でいろいろな書類を出されるとか、あるいは検査員についての人選——人選はまあ民間団体でやるでしょうが、どうもこれだけでは運行がうまくいかないのじゃないかという気がするのですが、その点はどうですか。まず、前段の方から一つ御説明を願います。現状をあまり変えないのだ、こういうことかどうか、ちょっとそれが少しはっきりせぬようですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/31
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032・森茂雄
○説明員(森茂雄君) 指定いたします品目につきましては、原則として任意検査、要するに、法制的にいいますと逆な形になりまして、強制検査が建前だということで、先ほど申し上げました特殊な物資につきましては現状通り、種だとか、塩乾水産物、そういう特別なものにつきましては、現状通りでありますが、その他のものにつきましては強制検査ということになりますので、法制上は全然検査内容が違う。従いまして、先ほどもおっしゃいました七百億のうち六百億は検査を受けている、農水産物につきまして。そうしますと、今度は実際上の問題からいいますと、プラス百億のものがさらに検査を受けなければならない、こういうことになりますし、検査内容はどうかといいますと、検査の充実——いろいろクレームの少いものにつきまして、それから検査の問題のないものにつきましては、大体検査内容としては臨検検査の現在の内容とさして変らないわけでありますが、問題のあるものについて、クレームの多い、問題の起りそうなものにつきましては、その点は少し厳重といいますか、今まで生産者が感じていたよりも強く感ぜられる問題になると思います。
ただ、これは強制に移す問題でございますので、かりに本法案が成立した場合におきましても、九カ月という長い期間をちょうだいいたしまして、それぞれ産物の関係者あるいは団体等と十分懇談いたしまして、むしろ輸出されておる、輸出が伸びつつある団体につきましては、一部不良品が出ることはまた、かれらにとっても、また国の立場からいっても、都合の悪い問題でありますので、先ほど通産省から御説明申し上げました、こういう特に省令等こまかい問題につきましても、天下り的にわれわれがやろうというのではなくて、十分現在の実態を、期間を置いて関係業界あるいは団体等と相談をいたしまして、一に目的はクレームの問題が起らないように、輸出振興という点でございますので、もちろん手続の煩瑣化は避けますが、コツは、大事なところは押えていこう、こういうような考え方でいるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/32
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033・島村軍次
○島村軍次君 後段の問題はどうですか。人員、つまり予算との関係ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/33
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034・森茂雄
○説明員(森茂雄君) 御説の通り、やはり少し、先ほど申し上げましたように七百分の六百ですから、七百分の百だけは忙しくなるわけでありまするが、現在提出いたしております予算では特にこのために増員ということを含んではおりません。われわれといたしましては、先ほど申し上げました民間で検査をする機関がきまる、その方がよかろうというので、政府と民間と一致する場合もありますし、それから強制的にやった場合に、いろいろ事務量なり、手続なり、そういう意味から、現在の政府間で超勤その他いろいろの、また御指摘になりました定員等で、これではとてもやっていけないという問題になりますればともかく、今のところちょっと大体やってゆけるという見通しをもっておりまするが、もしこの予算なり人員等の不足のために、逆に輸出を阻害するという点をわれわれももちろん心配いたしておりまするので、十分とは申しませんが、今後そういう点の充実について、もし不十分な点があれば、その充実について努力してゆきたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/34
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035・島村軍次
○島村軍次君 これは希望ですけれどもね、どうも今までの検査は、今の、現在の機構では、なかなかそうスムーズにはいかない。ことに輸出品なんかは商機を逸してはだめな問題なんですから、商社等の取扱い上、もうすぐにでも出さなければならぬという場合には、なかなか出張検査というようなことも困難であるし、それからかりに出張しても、旅費がどうとかというような問題もあるので、検査が必ずしもスムーズにいっておらぬように私は承わっておりますが、そこで、いわんやただいまのお話のように、八三%あるけれども、大体の建前はまあ一〇〇パーセントやるという建前になるだろうと思う。輸出の振興という立場からも、そういう場合には、もう数量的にいっても、これは能率を上げるとか、あるいはまた同じものをやるんだから手間はとらぬというような考え方もあるでしょうが、ともかくも相当の数量が殺到するということは考えなくちゃならぬので、そこでこの九カ月の実施期間中には、そういう問題についてはなお突っ込んだ一つ御検討を願って、そうしてはっきりした検査機構の整備という問題を、せっかく輸出検査法が施行になるとすれば、そういう問題については十分の注意を一つ望んでおきます。
そこで、それに関連して、省令、政令の案を見ますると、これはただいまの説明では、ここにあるのを、こういうものについてはこういうことをきめるんだというだけで、その内容については、まだこれは御説明がなかったように思われるのですが、それをまあある程度まで、相当広範にわたり、かつ品目ごとに考えますというと、また指定機関を作る場合にはなかなか問題だろうと思うのでありますが、私の特に希望いたしたいのは、まず第一にこの検査の手数料の問題ですね、これはまあ民間との間のことで、打ち合せのことで、先般お聞きしたように、現在の範囲を踏襲するというお考え方のようでありますが、そういう問題については十分の検討をしていただきたいこと。
それからもう一つは、検査員については、輸出検査員としての条件及びその人数というようなことがありますが、これは認可事項ですか、何かあったかと思いますが、どうかということと、それから指定検査機関についてはどうも、これは事務的にあまり羅列してある事項は、これこそ処理の上で、一つの指定を受けるのにこんなたくさんの書類を出さなければならぬということで、せっかくの民間の検査を尊重するということが煩瑣にたえないというような結果になることが、従来の例からいっても、必ず考えられるのじゃないかと思うのです。まあ、きょうは御答弁を求めれば、なるべく御期待に沿うようにということの御答弁だろうと思うが、しかし、それは自主的にあまりにその起案の際にこまかいものを考え過ぎた結果、一つ上局の方でめくら判を押さぬように、その点を今から一つ御注意を願っておきたいと思います。これは通産省の関係もありましょうし、農林省の関係もありましょうし、まあ答弁は御考慮するということであれば、別によろしゅうございますから、希望を申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/35
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036・東隆
○東隆君 この検査を受ける団体ですね、それから私はこれをはっきりしておく必要があると思いますが、貿易業者だろうと思うのですけれども、大きいものは。それから生産者団体ですね、そういうようなものだろうと思うのですが、その場合に、農産物のようなものはできるだけ、輸出検査までやれるものは生産地でもってやってしまった方がいいんじゃないか。たとえば花莚のようなものにしても、その他畳表のようなものにしても、輸出し得るものは私はそこまでの検査をやるべきじゃないか。でないと、はなはだ変な話ですけれども、非常に小規模でもって生産をしておるもの、特に農業関係のものは全部がそういうようなものでないだろうか。だから、そういうようなことをやらなければ結局、中小企業者やそれから農業者のようものが生産をするものが輸出に回る場合には、非常に生産者としての価格をとれないというような場合があるのです。だから、そういう点はどういうふうになりますか。やはり完全に分離してやって参りますか。私は、ちょっとその意味がわからないようでしょうけれども、できるだけ生産者に都合のいいような輸出検査をやりたいという考え方を持っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/36
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037・尾中悟
○説明員(尾中悟君) 今御質問の中で、花莚、畳表、野草莚も例に出ておりますが、これは現在岡山県の倉敷に集合検査所を設けておりまして、そこに付近の生産者から集まりましたものを一括いたしまして、その中心地でございます倉敷でもって検査を実施しておるというのが現状でございます。
それからなお一例を申しますと、カナダ向けの温州ミカンにつきましては、これは毎年クリスマス前の一カ月くらいの間に集中して生産されるわけでございますが、この場合にも、各県の県当局並びに生産者団体等の協力も得まして、産地に集合検査所というようなものを設けまして、そこに国の検査官が出張いたしまして検査を実施しておるというのが現状でございます。ただ、年間相当期間を通じましてだらだら出るというようなもの、また産地にある一定期間集中して集合検査ができないというようなものにつきましては、なかなか産地までそのたびに出かけて参るということも、特に農産物の場合には大へんでございますので、産地検査を実施していない面も相当あるわけでございます。今後の方針といたしましては、出荷時期が相当限定されておる、しかも数量的に相当まとまるというような場合には、やはり産地検査の点も考えて参りたいというふうに思っておりますが、時期も年間ほとんどばらばらに出るというような場合、あるいは数量もそう比較的まとまらないというような場合につきましては、やはり輸出港における埠頭検査ということにならざるを得ないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/37
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038・東隆
○東隆君 たとへばジャガイモ一つとって考えた場合、それから豆類をとった場合ですね、たとえば生産地と実は小樽とはだいぶ地が離れているわけです。そういうような場合にHPだとか、あるいはOKだとか、いろいろな種類があると思うのですけれども、そういうような検査は生産地でもって十分やれるような態勢をとるべきではないか。必ずしも輸出検査所でというような考え方でなくて、当然やっていけるのではないか。それからまたハッカやあるいは除虫菊の乾花、そういうような特殊農産物ですね、こういうようなものはやはり同じような形でもって当然やっていかなければならない問題であろう。そういう点は、どういうふうに考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/38
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039・尾中悟
○説明員(尾中悟君) 個々の品目につきまして、今後強制にいたしました場合に、どういう仕組みでやって参るかという点につきましては、今後各関係者の意見も十分に聞きまして、御指摘、御質問の線に沿いまして十分善処したいと考えておるのでございますが、先ほど来申し上げましたように、時期的に出荷時期が相当集中しておるというようなもの、それから品物が相当まとまっておるというような場合には、できる限り産地検査の線で今後検討して参りたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/39
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040・清澤俊英
○清澤俊英君 今度の改正法は、旧法案は任意検査を中心にしてやっておったが、それを強制検査に大体を移す、こういうことが中心でありますと同時に、その移す理由としては、非常に抽象的に提案説明に書いてありますので、実際問題としてこういう強制検査をしなければならない具体的な例をあげて、はっきりさしてもらいたいと思う。非常にこの提案説明書は「今後ますます企業の合理化を促進し、生産性の向上をはかりますとともに、他面輸出検査を強化し、わが国輸出品の声価の維持並びに向上をはかることが緊要であります。」こうなっていますね。従って、わが国輸出品の声価の維持が自由検査であってはどうしてもできないのか、こういうことですね。この点をもっとはっきりしてもらいたい。
と申しますことは、私の根本的な考え方は、今も問題になっております、島村さん並びに東さんが言われる通り、現地において全量検査で、輸出するものが自分の責任においてやることが訓練せられれば、輸出検査というものは要らないと思うのです、自分のものを売るのですから。そういう方向に指導していきますれば一番いい方法じゃないかと思われるやつを、どういう欠陥があったか知れませんが、その欠陥を中心にして、他面輸出検査を強化して生産性の向上と輸出品の声価を維持する、こういうことを言われる点が、あまり漠然としている。民主主義の原則にのっとりましてもそうでありますし、これから国の経費をだんだんはずしていかなきゃならぬという声のだんだん高いとき反面においてはだんだん検査量をふやし、官僚統制の形へだんだん入っていくような傾向へ逆行していく、どうもおかしいじゃないか、こういう考え方を持ちますので、その点の御見解はどうなっているのか、一つお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/40
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041・中山賀博
○説明員(中山賀博君) お答え申し上げます。お説の通り、趣旨といたしましては、できれば民間が自分で検査していくことはけっこうなことで、しかもそれらの商品が外国に出ましてもクレームの対象にもならず、わが国商品の名声を確立するということが望ましいということは、これはきわめて同感でございます。ただ、いろいろ最近におきましても、日本の輸出は順調にはなっておりますが、商品の品質に対するクレームその他は跡を絶ちませんので、やはりある程度第三者による公正な検査というものが、日本の産業全般におきましての現段階におきましては、必要なことだということが根本的な考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/41
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042・清澤俊英
○清澤俊英君 これはちょっと、あなた方と議論するのは無理かと思いますけれどもね、そういう立場でいきますれば、自分のものが売れなくなるのですから、売りたければだんだんやっていくであろうし、現に今ここで、大産業等の品物が自己検査で、機関を作って検査していく。大産業と見られる強制検査の中から、冷凍水産物であるとか、農林関係にしてもカン詰類というようなものは、約九〇%がそういう組織でできている。これはやはり零細な点までそういうものを推し進める指導が必要であって、せっかく輸出するために生産してみても、それができなければ、だんだんそっちの方へ入っていく、そういう場合のむしろ手当をしつつ、自己がその段階に進むように指導していくことが有益なのではないかと思われるが、どうもちょっと、こういう形になりますと、結局すれば検査を通るためにというようなことで、別な方向へ頭が、努力や考え方が行くわけじゃないか。自分で自分のものをよくして、自分のものを輸出するということを養っていくことが、私は一番できやすい話だし、これは誘導もできやすいと、こう思うのです。そういう方法をとらないで、強制的にやっておられても、どうもこやかましい。どうせこういう検査であれば、お説の通り、品物によりましては全く抜き取り検査より方法のないものも出てくる。従って、出してはみたが、抜き取りはよかったが、あとは悪かったというような結果もでき上るのではないか。できれば、産地における全料検査をおのおのの組合なり団体なりが行なっていきますることは、ことに農産物等におきましては、私は重要な意義を持つと思う。こういう点に対して、あなた方はどういうふうにお考えになっておりますか。いずれ農林大臣とも話をしてみますが、ちょっと行き方が逆じゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/42
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043・森茂雄
○説明員(森茂雄君) 清澤さん、島村さん、東さん等から御意見のありました通り、全くわれわれの考え方も基本的にはそういう気持でおるわけなのです。従いまして、本法案の素案を議論する場合でも、常にそういう点は慎重に論議をいたした結果、特に第十条に掲げるように、クレームが少いとか、性質上無理だとか、あるいは生産検査が充実しているものについては、あえて強制検査の方法もとらない。かつ長い期間、準備期間を置かしていただきまして、そうしておよそ強制に持っていく以上、強制される点で御不便は感ずる点はありましょうけれども、御趣旨のような点を十分くみ入れて実施に移していきたい。もし、その期間に関係者といろいろ話し合いまして、どっちがいいかという確信ができないというような場合につきましては、われわれ農林水産物関係、これは通産省の方はどうですか知りませんが、われわれの物資につきましては、一応第十条の任意検査で……。準備ができない、どうしてもどっちともつかない、強制検査に移した方がいいか、どっちともつかないというものにつきましては、十条で任意検査を続けていくということも、これはやむを得ない。およそ目的は、大多数のものがほんの一部の人の不始末で迷惑をこうむっている現状でありますので、その一部の不良品が網がない現状で抜け出ていくものについての押え方の問題でありまするので、十条で極力奨励的に推進的にやって、どうしてもだめだ、業界の方々全部がむしろそれの強制検査で体制を整えていった方がいいのだという確信のあるものについて、われわれはこれを強制に移していこうと、こういう考え方で、特に農水産物関係、あるいは一部医薬品がありますが、十条の運用をお願いしたいと考えておるわけであります。
また、御指摘のように、末端機関に行きますれば、権力を与えられればその権力を、何といいますか、乱用とは言いませんが、サービスというか、いろいろな点で欠ける実情は、一部ときどき耳にするわけでありますので、そういう点は中央の、国会で御指摘なり御配慮の通り、われわれとしては末端までそういう点は十分注意してやっていこうと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/43
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044・清澤俊英
○清澤俊英君 いま一つ、これは簡単でよろしゅうございますが、聴聞会をお作りになって、という趣旨がありましたが、聴聞会の構成とその権能といいますか、何か役職員の身分上の問題をきめるときに聴聞会を開く、こういう御説明であったように思いますが、これをいま少しわかるように御説明願いたいと思います。第四十二条……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/44
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045・中山賀博
○説明員(中山賀博君) これは法案の第四十二条を御参照願いたいと思いますが、第四十二条に「主務大臣は、第二十四条又は第二十八条第一項の規定による処分をしようとするときは、その処分に係る指定検査機関に対し、相当な期間をおいて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。」というようになっております。それで二十四条は、指定検査機関の役員または輸出検査員が、法律や、法令や、あるいは業務規程に違反した場合のことが書いてありまして、これを解任という場合、あるいはまた二十八条の一項は、指定検査機関自身が法令の違反等によりまして指定の取り消しを受ける場合、そういうような場合におきましては聴聞会を開くという規定でございます。そうして第四十二条の三項におきましては「聴聞に際しては、その処分に係る者及び利害関係人に対し、その事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。」というように書いてございまして、その処分にかかる、さっき申しました指定の取り消しあるいはその他の処分、その処分にかかる者及びその利害関係人、これはその事案々々に処してきまるわけでありますが、そういう者に対し、その事案について証拠を示し意見を述べる機会を与える、これが聴聞の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/45
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046・安部キミ子
○安部キミ子君 ただいま審議しております輸出検査法案の提案説明の中で、説明の第二の項に、「輸出検査を適格に行うため、特に必要がある品目につきましては、その材料または製造中の検査を行い得ることとしたことであります。」こういう意味のことを書いてありますね。これはどういう場合にそういう検査をなさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/46
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047・式田敬
○説明員(式田敬君) 法案第四条に、材料検査及び製造検査という規定がありますが、この材料検査はきわめて限られた商品についてこれを行うものでございます。つまり綿織物、スフ織物等の染色その他の加工をいたします場合に限りまして、たとえば綿織物を染色いたしますと、その染色後におきましては品質の検査を適確に行うことができないということになりますので、どうしてもその染色をする前の原反のときに一度検査をいたしまして、そうして合格したものをその材料に使って、染色あるいはその他加工する、そうしてそのでき上ったものをもう一度検査をするということの、二段がまえの検査をするという趣旨でございます。今、綿、スフ織物以外にはこれを適用する考えはございません。しかし、まあ将来あるいはそれ以外のものにも適用する場合が起るかもしれませんけれども、これは事の性質上、材料段階で一たん検査を受けたもの、そうして合格したものが確実に材料として使われてその製品ができたという、材料と製品の関連性を把握できないようなものには、実はこれをやりましても意味がなくなりますので、そういう非常に限られた場合にしかこれは現実には行えないということでございます。
それから次に製造検査でございますが、これは現在考えておりますのは、五百トン未満の小型船舶を輸出する場合にのみこれを適用するつもりでおります。運輸省の方で、そういうふうな小型船舶の輸出については、やはり輸出検査を実施しようというお考えがございまして、この法律に盛り込んだわけでございますが、これは東南アジアの諸国から注文がございますときに、非常に簡単なスペシフィケーションで注文がございますので、日本側で青写真を引き、全部設計をやるわけであります。そういう場合、安全性その他のことについて、運輸省としましてはやはり、まず設計をチェックする必要がある。それからいよいよ製造にかかりましても、たとえばその竜骨を据えるとか、あるいは鉄板を張るとか、あるいは甲板を張るというふうな、各製造工程の段階におきまして検査をいたしませんと、完成いたしましてから初めて検査をして、合格しないという場合には、その船全体が輸出できなくなりますので、これは製造業者にとりましても、大損害でございます。ですから、そういう一般設計を見、それから製造段階と、ずっと検査をいたしまして、そうして最終に製品ができ上ったところで、最後の検査を行うという必要があるわけでございまして、従いまして、そういうふうな手を経る必要があるものは、目下のところ、五百トン未満の小型船舶だけと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/47
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048・安部キミ子
○安部キミ子君 それで農水産物の中では、こういうことは考えておいでにならないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/48
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049・式田敬
○説明員(式田敬君) ただいまのところ、考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/49
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050・安部キミ子
○安部キミ子君 その場合、予告でもして検査なさるのか、不意に行って検査なさるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/50
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051・式田敬
○説明員(式田敬君) これは法案の第四条にございますように、「政令で定める品目に属するものは、政令で定める材料であって」云々ということでもって、これは非常に大事でございますので、そういうふうな品目については、政令であらかじめ定めておりますし、それからそれの検査の基準については、これは省令であらかじめきめる、周知した上で実施いたしますので、別に抜き打ち的にやるというようなものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/51
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052・安部キミ子
○安部キミ子君 そうしますと、検査を受ける者は何にも被害はなくて、むしろ善意で、そういうでき上ってからやり直すということができないので、そういう商品にならないようにするという善意のもとに、検査なさるというふうに了解してよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/52
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053・式田敬
○説明員(式田敬君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/53
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054・安部キミ子
○安部キミ子君 それじゃ、そういうふうにやって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/54
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055・藤野繁雄
○藤野繁雄君 指定貨物を特定の地域に輸出する場合には、一般の検査基準より高い基準を適用するようにしなくちゃいけない、こういうふうなことになっているが、どういうふうな物をどこに輸出する場合か、例をとって一つ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/55
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056・中山賀博
○説明員(中山賀博君) お答え申し上げます。たとえば、温州ミカンでありますとか、ディナー・セットのようなものは、アメリカ合衆国とかカナダに行きますのは、他の国よりも高低が……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/56
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057・藤野繁雄
○藤野繁雄君 今、例が温州ミカンについてお話しだったが、そんならば、カナダとアメリカとに行く温州ミカンの検査基準、これは両方で違っておりますか。あるいは、最初はアメリカ及びカナダにやらないような方針で考えておったのが、その検査を受けておったのが、アメリカ及びカナダに輸出するということになったらば、二度検査を受けなくちゃいけないことになる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/57
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058・尾中悟
○説明員(尾中悟君) 温州ミカンの例で申し上げます、カナダ、アメリカは同じ高い基準でやっております。東南アジア向けが非常に低い基準というものが必要でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/58
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059・千田正
○千田正君 最後に、一点だけちょっとお伺いしますが、この法の目的については、すでに説明されたように、外国輸出品に対して日本の商品の声価を維持する、上げるということが一つの目的である。国際マーケットの方におきまして、最近アメリカ側が日本の綿製品並びに綿製品その他に対する、いわゆる対米輸出に対するところのマークをしておるというふうに、アメリカ国内においては、次々にアメリカの国会に日本製品の輸入を拒否する法律を作って出しておる。そうした問題に対応する一つの施策としてこの問題を考えておるのか、全然そういうものとは関係なくして、従来の一般的な日本の商品の声価を高めるという点に重点を置いて考えておるのか、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/59
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060・中山賀博
○説明員(中山賀博君) お答え申し上げます。対米綿製品輸出制限問題は、われわれといたしましては、これは明白に日米間に存在します通商航海条約の条文並びに精神に違反することでありまして、またわれわれのその理由とするところは、必ずしもわが方の綿製品が安いものであるとか、あるいは安過ぎる、あるいは品質劣悪であるということではなく、むしろ向うの産業の防衛という立場からやっておるものだと了解しております。
それから、こちらの今問題になっております輸出検査の問題は、むしろ、今後とも国際競争が非常に激化して参りまして、どうしても非常にきわどい争いをしていくということになりますれば、低値の下にも低値を出して安く売るということになりますし、また自家検査ということは望ましいことではございますけれども、自分たちだけでやっておりますと、そこには情実も流れ、あるいは安きにつくということで、今まで弊が絶えなかったわけでございます。そういう趣旨から、いろいろな最近の事件も契機といたしまして、この法案の提出となったわけでございまますが、御質問の点に関しますアメリカの問題との関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/60
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061・堀末治
○委員長(堀末治君) 他に御質疑はございませんか。
ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/61
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062・堀末治
○委員長(堀末治君) 速記をつけて。
それでは、本件については次のような案によって、通産委員会に申し入れたいと思います。
「輸出検査法案」に関する件(案)
この法律案に関して、次のように措置する必要がある。
第一、本法の施行に当つては、先ず以て検査機構の整備充実を図り、輸出貨物の生産並びに検査に支障を来さないように措置すること。
(説明)
輸出の声価の維持及び向上を図り輸出貿易の健全な発達に責することは必要なことであつて、之がため輸出検査制度を刷新整備すること亦必要である。現行の輸出品取締法においては、自家検査を原則とし例外として強制検査を行うことになっていて、現在輸出品中、検査を必要とするものは約一八〇品目、その中自家検査を行っているもの約七〇%、強制検査を行っているもの約三〇%であり、農林水産物質については、検査指定品目三八品目、その中強制検査品目は八品目である。
然るに本法律案によるときは、強制検査を原則とし、自家検査を例外としようとするのであつて、制度の仕組みが根本的に改められることになっている。
かくして現行制度を改正して、強制検査を原則とし、且つ事前検査等をも行うことにしようとするのであるが、これ等の検査の前提として必要な国及び民間の検査機関の整備に関しては、来年度予算において、新たに国の機関については旅費が若干増額され、民間の指定機関については、設備整備のための補助金一、〇〇〇万円が形状されているに過ぎないのであつて、殆んど見るべきものがない。
かような事情において、強制検査が強行せられることになれば、一方においては、検査手数料の引き上げ或いは受験手続の繁雑化等その無理は大凡生産者に皺寄されて原価高来たし、生産意欲の減退を招くことになり、又一方においては、検査の渋滞を来して輸出の円滑を阻害することになりはしないかが憂えられる。
就中、農林水産関係物質は、大凡、物質の性質並びにこれが生産事情等から、かような打撃を蒙る危険が特に多いものと思われる。
ここにおいて、政府は、以上の事情を確認して、かような事態が起らないように、あらかじめ検査機構の充実、受験手続の簡素化及び検査手数料の軽減等について遺憾のない措置を講ずる必要がある。
第二、本法の施行に当っては、各輸出貨物毎に、夫々その主管大臣の主体性を充分に尊重することとすること。
(説明)
第一に述べたような事情の下において、法の施行の適性を期するためには、以上の措置が必要である。
それでは、ただいま御相談いたしましたこの案をもって本委員会の意見として、通産の方に申し入れることにいたします。さよう御了承をお願いいたします。
これにて、暫時休憩いたします。
午後零時四十六分休憩
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午後三時十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/62
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063・堀末治
○委員長(堀末治君) これより委員会を再開いたします。
引き続いて、農林水産基本政策に関する件を議題といたします。
かねて農林大臣に対する質疑の御通告がありましたうち、河野、東、北村、秋山及び千田各委員の質疑が残されておりましたが、本日幸いに農林大臣の御出席を得られましたので、この際、順次御質疑を願うことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/63
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064・東隆
○東隆君 農林大臣の施政方針演説その他を伺いまして、私、実は非常に大切な問題を、故意かあるいはどういうわけか知りませんけれども、はずされておるのはないか、こう考えられる点があるわけです。それは、土地政策の問題であります。少くとも土地政策に対する農林大臣の考え方を、一つはっきりと表現をされる必要があったんではないかと、こう思うわけであります。
土地の問題については、土地改良その他を、生産の基本的な基盤を培養するというような意味で、お述べになっておりますが、土地政策、少くとも農地解放後において、相当土地政策について弱体化しておるような点があるんじゃないかと、私はそういうふうに考えるわけです。ことに、農地解放が徹底的にやられなかったために、在村地主の土地が残って、そして耕作する者が土地を持たないと、こういうような形が残っております。ことに、これを中心にして小作料の改訂の問題であるとか、あるいは土地の取り上げの問題、そういうような問題が頻発をしておりますし、それからさらに、当時の農地の解放の場合における価格の賠償問題等が出てきております。そういうような情勢になっておりますんで、私は、少くとも土地政策に関して基本的な考え方をお述べになる必要があろうと、こう思うわけであります。従って、この際農林大臣はその点を明らかにしておいていただきたい、こう思うわけであります。もう一度第三次農地改革を進めていくか、あるいは森林その他に対するところの土地政策をどういうふうに考えておられるか、それから農地委員会の変りました農業委員会をどういうふうな形に持っていくか、こういうような関係が関連をして参りまするから、一つ明らかにしていただきたいと、こう思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/64
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065・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 先般、私の考え方を申し上げました際に、ただいま御指摘の土地政策の問題が抜けておったというような御指摘でありますが、これは決して故意にどうこうというのではございません。あるいは言葉がそこに及ばなかった次第と存じますが、仰せられますように、農地改革後ちょうどことしで十一年でございますので、やはりこのあり方を反省してみる時期が到来しておるかと思うのであります。
私は、農地改革の精神が、わが国農村の民主化を促進し、さらに農業生産力を増進すると、こういう観点に立ちまするときに、その方向を是認をいたし、あくまでその考え方に立つところの農地法を守っていかなければならぬ、こういう基本的な立場に立っておるわけであります。
しからば、第三次農地改革をどうするかという点でございますが、あの農地改革が行われました当時にも、若干の地主保有を認めるということが不徹底であるという御批判があったことも、確かに承知をしております。しかしながら、まああの程度の弾力性というものを持たせる必要も確かにあったのではなかろうか、こういうふうに考える次第でございまして、今直ちに第三次農地改革という課題に対しましては、私としてはそこまで——おっしゃる意図が十分な御説明は承わりませんでしたが、いわゆる第三次改革というところへは、私自体はまだ少しく踏み切りがたい状態でございまして、もう少しこれは検討を要すべき点が残っておるのではないかと思うのであります。
森林などについても言及されましたが、これはいわゆる農用林とか付帯地とかいうようなことで、若干の解放は見ておるのでありますが、森林自体の性質というふうなものを考えまするときに、これを細分して果して生産力の面でどうかというような感じもいたしますので、総括的に申し上げますると、こういった問題はさらに検討をしてみなければ、今この段階で申し上げるわけに参らないのであります。
それから、かつての農地委員会が農業委員会に合併をして、従来の機能というものがいささかにぶったのではないかというお話でございます。これは、ただいま衆議院の方における継続審議になりました農業委員会法の改正ということによりまして、農地関係に対する配慮というものが今までより以上にいけるのではないか、まあこのように考えておる次第でございます。
従いまして、以上を総括的に申し上げますると、私としましては、農地法を守る、こういう立場に立っておるのでございまして、さような意味から、農地の補償というような問題に対しましても、前回これは清澤さんその他の御質問にお答えをいたした通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/65
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066・東隆
○東隆君 大臣のお話は消極的に考えられておるようでありますが、いわゆる耕さない者が耕地を所有しておるということは、私はやはり一種の不労所得を生ずるような、そんなような関係になると思う。耕さざる者は土地を所有すべからず、これは何かバイブルの中にある言葉でしょうが、そういう考え方に立つのがほんとうでないかと思うのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/66
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067・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) ただいまのお言葉は、耕者必ずその田を有すという意味にも受け取れるのでございますが、そういう考え方があるいは一つの理想であろうかもしれませんが、しかし現在においては、所有権というものよりも耕作権というものがより優先する、これが近代的な考え方でございますので、ここで今にわかに現在残っております小作地をことごとく解放するのだというドラスティックな行き方は、私としてはあえてとらなくてもよいのではなかろうか。そう申し上げると、現状維持だという御批判が出るかもしれませんが、先ほど申し上げまするように、戦後十年の経験にかんがみまして、やはり一つの検討をいたしてみる時期に際会しておるのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/67
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068・東隆
○東隆君 農林大臣のお答えを率直に申しますと、私は、現状を維持するというよりも、かえって脱落農家の土地が取り上げられていくというような、そういう危険性を多分に持っておると思うのです。そこで、少くとも耕さない者は土地を持つことが不合理だという考え方で、できるだけそれを減らすような考え方に立つのが正当だと考えられるのですが、これはお答えをちょうだいしなくてもようございますが、私は、今お答えになった言葉のうちで、所有権よりも耕作権が優先しておる、こういうことをお言いになったのですが、私は、だからこそ耕作権は、今の法律制度のもとにおいて耕作権を完全なものにするために、やはり耕す者は土地を所有する、こういうことにしなければならぬ。そして、その形が完全にできたとするならば、耕地の所有権というものは、これは耕す者は完全な耕作権を持っておるのであって、耕地の所有ではなくて、かえって最終の所有者は国家が所有しておる、こういうような形ができてくると思う。従って、そういうような考え方で耕作権というものを強固にするためにも、やはり耕す者が全部土地を所有する、こういう形態を一日も早く進めていかなければならぬのではないか、こういう考え方なんです。
そこで、私はもう一つ、今耕地の細分化が相続その他によって行われていくおそれが多分にある、それをどういうような方法でもってチェックしていくか、この点について、これは二、三男の問題とか何かに関連して、非常に大きな問題になっております。そこで、これについてどういうお考えをお持ちになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/68
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069・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 新民法は分割相続という建前をとっておりますので、東委員御指摘のような現象が出てくるでありましょう。これに対して、かつてドイツで行われましたような家産法的な考え方、少くとも農業用の土地その他に対しての特例を設ける、相続における特例を設けるという考え方も、議員提案その他で出ようといたしたのでありますが、これはやはり憲法との関連もございまして、そうたやすくはない問題ではなかろうか、かように考えておる次第でございまして、当面は合意の上で相続、まあ長男なら長男に譲るというような形、しかもそれを金融の面で裏づけるというような方式を考えまして、それで細分化を防ぐというあたりに落ちつくのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/69
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070・東隆
○東隆君 私は、相続税その他について、これは一部分でありますけれども、相当考えなければならぬ節があるのじゃないかと思っておる。土地そのものについてそういうような点とあわせて、やはりドイツのエルプホーフス・ゲゼッツですか、あれに近いものを考えていって差しつがないのじゃないか、農地に関する限りは。そういうようなことについて研究を進められておると思うのですが、見通しその他はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/70
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071・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) ただいま研究をしておるという程度でございまして、これには各方面との調整も相当に困難な場面も予想をされますので、方向としては私、東さんの今御指摘の方向はわかるのでございますが、一つの研究課題にさせていただきたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/71
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072・東隆
○東隆君 もう一つ、土地の問題なんでありますが、北海道を初め、各地も相当であろうと思いますが、農家の負債が非常にふえております。特に北海道のごときは、前年約四百億くらいございましたが、昨年の凶作等で六百億くらいになっておるのじゃないか。従って、これをたな上げをしてやっていくよりほかに方法がない、こういうようなところまで追い詰められておると思う。これに対して、農家の負債整理に対する基本的な方法として今考えられるのは、自作農維持創設資金融通法ですか、これが考えられるのですが、この場合に、この法律の制定の当時において、実は土地を担保に供さないということに法律できめてあるはずです。ところが、公庫の業務規程か何かに、明らかに土地を担保にとるように規定をしたために、国会でもってきめたところのことと違った方針でもって行われておる。しかも、それは農林大臣が公庫の業務規程を認可するということになっておったのに、農林大臣は、前農林大臣が認可をした、こういう形になっておるわけであります。私は、土地を担保に金を借りるということは、将来において農地が手放されていく大きな原因になっていくと思うのです。それが国の金融の仕事を代行しておる公庫がやっておる場合には、これはそう問題でありませんけれども、そういうことが行われることによって、今度は民間に土地がヤミの行為でもって担保に付せられる、こんなようなことが起きて参りますから、私は、あの場合においてもそれを訂正して、そうして業務規程のうちから土地を担保にする規程を削除すべきでないかと、こういうふうに考えるし、それが国会の意思であるというふうにも考えるのですが、その点はどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/72
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073・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 農家の負債が非常に重圧を加えておると。これは地域的に見たり、あるいは災害等の累積したりいたしました地帯に、そういう現象が顕著だと思うのでございまするが、それを救済する道は、今おっしゃった自作農創設維持資金が一つありまするし、それから開拓農家の場合は、これは今度いずれ御審議をいただきまする開拓営農振興臨時措置法というものを予定いたしておるわけでございます。
そこで、ただいまの土地を担保にするという問題でございまするが、これは業務規程は、保証人及び担保、いずれでもよいという形になっておるわけだと思います。それで土地を担保にする場合には、保証人を得られない人に対しまして資金の安全性という観点から担保に供するという形であるわけでございましょうが、これはやはり金融という一つの制約から申しますると、これもまたやむを得ないということになるのではなかろうか。従いまして、そういう非常に窮境にある人が、その土地を手放さなくても済むように、別途な営農に対する指導とでも申しましょうか、そういうふうな道を別に考えまして、それが何年かの暁には本人の手元へ戻ってくるというふうに処置をいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/73
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074・東隆
○東隆君 今のお答えは、私は、金融機関の方でああいう業務規程をこしらえられて、そうして農林大臣の認可をとったのじゃないかと思いますが、それで国会における、衆議院でもって修正を加え、あるいは参議院において修正を加えたときの意思というものは、やはり農地を担保に供しないということが基本的な考え方だった。また私どもも、担保に供することによってやがて土地の所有権の移動が行われていく、そういうようなことを心配をいたしたわけであります。そんな関係で、あの中身は土地を担保にしているものはきわめて少い、こういうような報告も実は公庫の方からプライベートでありますが、聞いておりますけれども、しかしこの際はっきり土地をなくして、担保にすることをやめて、そうしてかえってその農家を含むところの部落の団体あるいはその他やはり住民にはかられまして、そうしてその上に立っていくように、将来においても共同の力でもって進めていく、そういうところに信用の能力をつけていく方が、これがいいと思いますが、こういう点で、土地を担保にするという条項を一つ、お抜きになる意思はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/74
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075・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) まあ、私その当時の事情をはっきりと存じておりませんので、これにはまあいろいろたしか経緯もあったろうかと思うのでございます。従いまして、これをむしろ担保という形でなくて、まあ連帯保証なり何なり、一つの農村の共同体的な観点から償還をさせた方がいいのだという御意見のようでございます。まあ、このあたりは、業務規程等にわたりましても、もう少し検討をいたして処置をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/75
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076・島村軍次
○島村軍次君 関連して。ちょうど土地担保の問題が出ましたから、私も一つ具体的な例をもって、当時の経緯から考えて、一つ希望なり御意見を聞きたいと思います。それは、金融公庫というものができた時分の経緯からきますと、これは自作農の問題とは直接関係はありませんけれども、これはやはり土地の改良の仕事をやるとか、あるいは共同施設を作るとかいう場合には、普通の金融ベースでいかないものについて、金融公庫が政府の奨励政策の裏づけとしてこうやっているはずです。その場合に、普通の金融と同じような考え方で担保にとる、特に協同組合が共同施設を作る場合に、共同施設の建物なりその設備を担保にするということは、これは第一問題としてやむを得ぬと思うのです。それ以外に、さらにその役員の保証をとって、しかもその保証には役員の個人の、百姓の、農家の自作をしているものまでも担保にとる。なぜそういうことをやるのかといえば、これは設備というものは次第に減損するのだ、そうして最後にいなかで土地を売る場合には、これはどういう値段になるかわからぬというような前提で、これは実際の出先も扱っているし、公庫の業務規程の上にもそういうことがはっきりしている。この点は、いずれ公庫の問題も出るだろうと思いますが、とくと公庫の設立の当時から、あるいは農林政策の見地から、とにかくいわゆる金融公庫の仕事は、政策面から出た国の資金がほとんど大部分なんですから、そういう点から考えて、この点はぜひ再検討をしていただきたいと思う。それは、従って、公庫の業務規程を変えるということに関連を持つと思うのです。まあ、もし希望なり御意見があったら、一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/76
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077・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) この考え方は、農林金融というものは非常に特殊なもので、別個なものであるという観点に立つか、あるいはやはりこれは本質は一つの金融に相違ないのだ、そうすれば、やはり債権確保という考え方が強調されてくるべきだというような、こういう考え方の相違がそこにあるのだろうと思いますが、今、島村さんのおっしゃる何か非常にシビアな感じのする保証の要求というようなものは、少し私もいかがかと思われる節がございまするし、ほんとうに一つ再検討をしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/77
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078・東隆
○東隆君 金融公庫の話が出ましたから金融の問題の方に入りたいと思うのですが、金融の問題で、実は先ほど申しましたような農家の負債が非常にふえて参っておりますし、金融の面が非常に困難になった。それから農地制度その他の——これは次第に政府が金融をとめていくというようなそんなような考え方じゃないかと思うのですが、そこで問題は農家に対する金融を円滑にするための方進ですね、これを講じなければなかなかむずかしい問題がある。ことに新しく農家に動物を入れて、そうして経営を拡大していく、こういうような場合の資金なんかは、これはもう一度考え直していかなければ、今の制度ではなかなか進まないのじゃないか、こう思うわけです。それで、昭和の初めのあの経済恐慌のときの例の農業動産信用法、それと農業保険と、あるいは登録制度を活用することによって、動物であるとか、あるいは船であるとか、その他動産を担保にしてそれを使用しつつ資金の融通をつけて、事業を拡大していくような方途、そうしておそらく現在農業動産信用法は死文みたいになっているのじゃないかと思う。むしろこの際大きく政府がもう一回復活してやるべきときじゃないかと思いますが、これはどういうふうに考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/78
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079・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 昭和の初期の農業恐慌の時代と現在の農家の負債の重圧という問題は、私はまた程度の差はあるかとも考えておりますが、しかし、一方この階層分化といいましょうか、非常に貧富の差が激しくなってきているということは、率直に認めなければならぬと思うのであります。それで金融という面は、どうしても信用力、担保力のある部分へ回るのであって、ある一定のライン以下をどうするかという問題が非常に重要になってくるのではないかと思うのであります。で、今おっしゃる農業動産信用法というものにつきましては、実際の運用というふうな面において、従来もなかなかむずかしかったというふうにも聞くのでございますが、まあ当面はやはり公庫と、それから系統金融、中金、信連、単協、この線を通した金融の配分というものを、もっとこの階層というふうなものへ向ける道を講ずるということを考えなければいけないのではないかというように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/79
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080・東隆
○東隆君 私は、今の農林大臣のお話では、農業の近代化あるいは機械化というようなものは、非常に困難だろうと思う。その程度のものでは……。従って、機械化にしても、あるいは近代化にしても、相当農村に資本を導入をしていかなければならぬ。そういうふうな場合に、農家そのものは、資本が入る場合において、それに対する何といいますか、担保になるようなものがない。土地を担保にする、これは問題外でありますし、そうすると、家屋であるとか、その他のようなもの、あるいは大きな農機具や動物、こういうようなものが当然担保の形になって入ってこなくちゃならない。それを資金化することによって拡大していくと、こういうような方途を講じなければならぬ。従って、私は、農業動産信用法にもう一回活を入れておやりになることには、お話が消極的のようでありますけれども、しかしこれは大きく研究をされて、そうしてすみやかに一つこの制度を復活さして、そうしてやっていくことが一番いいんじゃないか、こう考えますので、お考えを願いたいと思う。
それから開拓の問題でありますが、北海道の開拓、あるいは府県の丘麓地帯、そういうような方面におけるところの開拓、こういう所には、戦後食糧が不足をいたしましたので、相当の力が、計画がずさんなために、あるいはその他の関係でもって金を投じたけれどもしかし投じただけの効果がない。御承知のような形が相当出ているんじゃないかと思う。その中の一番大きな問題は、私は、国家が投じたところの資金が、補助金やその他の形でもって、それが食われてしまっている。農家の生活費になった、開拓農家の生活費になった、こういうふうな方面が非常に多いと思う。従って、開拓の進度につれて、今度は開拓農家の将来を考えてみるときに、実に土地は肥沃度が減退をするし、生産が上らない、先がまつ暗だ、こんなような姿が出ていると思う。そこで、私はどうしてもそいつをなおさなければならぬと思うのですが、新しく開拓農家を入れるというよりも、現在までのものを中心にして、そうしてそれの生きる道を、あるいは発展をする道を考える必要があると思うのです。この点と、
それからもう一つはもう少し長期の金を、少くとも、たとえば欧米各国におけるところの開拓などには相当な資金が長期に流れておる。単に土地そのものに対するだけでなくて、住宅や、あるいはその他農舎とか機械であるとか、そういうような万般のものに対して相当な資金が長期で低利で流れていっておる。従って、それはもう十分に農業経営を続けていき、生産を上げていくという態勢ができ上っておるわけです。計算をいたしますと、日本でもそういうことははっきりできると思います。そこでそういうような方向に切りかえをしなければ、今後の開拓というものは私はだめじゃないか、こういうふうに考えておりますが、もしそういうお考えならば、資金その他についても考えなければならぬと思うのですが、農林大臣の御所感を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/80
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081・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 開拓に関しまして、東委員のただいまの御発言は、私も全く同感でございます。戦後開拓の歴史、沿革を考えてみますると、非常にきびしい自然条件を相手にいたしまして、ともかく大地に向っていどんでいったこのフロンティーアの精神とでもいいますか、今日十五万五千戸といわれるような定着者ができたわけでございます。この中には、従来の既設の農家よりも合理的な経営をしている向きもございましょうけれども、これは数が少くて大かたは非常に困難な条件に置かれておる、こういう認識は持っておるわけであります。そこで御指摘のように、ただいま私どもの考え方としましては、新規入植ということもさることながら、既入植者の安定をどう考えるか、こういうところにむしろ重点を置いたわけでございます。そこで予算措置等もこれで決して十分とは思っておりませんけれども、この重点のかけ方はそういうふうに取り扱いまして、開墾、建設工事なども従来よりもその進度を早める、こういうことにいたしておりますし、また金融の面におきましても、先ほど申し上げました開拓営農振興臨時措置法案というようなことによりまして、配慮をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/81
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082・千田正
○千田正君 関連して。今、東委員の御質問に対してお答えになっておりますが、十五万五千戸のうちの大半は、戦後外地から引き揚げてきた人たち、その当時は増産対策という銘は打っておるけれども、実際においてはそうした引揚者の、あるいは無縁故引揚者の人たちの社会保障的な、生活保護的な意味を加味して、北海道及び東北六県、その他の府県に配分してやらせたというようなことでありますが、当時、私も引揚者の対象問題で、国会におきましてもその問題については、厚生省並びに農林省から相談を受けた立場で、よくわかっておりますが、増産対策という銘は打っておるけれども、実際は引揚者の定住をさせて生活を安定させるというのが、最初の目的であった。しかし今日に至りましては、あなた方の企図しておりますところの、たとえば機械開墾その他において、北海道並びに東北の干拓等に、将来入れるところの新規入植者に、政府が考えておるところの資金、その他の融資を、相当多額に注ぎ込んでやろうとしておる。ところが、すでに、今、東君が言ったように、今までやっておった人たちが辛うじて、今日食うや食わずで、しかも冷害のあるたびに、農林省なりあるいは政府なりに拝み倒さなければ、自分たちの生活も安定できない。これが現状であって、そこのアンバランスが、現在の十五万五千戸の開拓者の諸君が非常な不安と焦慮をもって、今日苦労している。これに対して抜本的な政策をやらないというと、おそらく農林省の開拓行政というものは片ちんばになるものと私は考えるが、こうした人たちに対してもっと積極的な政策を考える必要があると思いますが、新入植者と既入植者との間のバランスをどういうふうにして調整してゆくか、農林大臣の御方針を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/82
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083・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) おっしゃいますように、当初は増産対策ということよりも、一種の人口対策、失業対策という形で発足した面があったろうと思うのであります。そこで、機械開墾その他、一部国が相当金をかけてやる地帯もある。それと既入植者とのアンバランスをどうするかという御質問でございますが、これは先ほど東委員にもお答えを申し上げておりまする通り、今回は既入植者の方にむしろ重点を置きまして、従来おくれておりました開墾、建設の工事等も促進する、あるいは災害その他で累積した負債の打開を開拓営農振興臨時措置法によって行うというようなところへ意を用いた次第でございますが、もちろんまだこれでは不満足である。抜本的とは言えないという御指摘でございましょうけれども、ともかく千田さんのおっしゃるような面に第一歩を踏み出した、こういうふうにお考えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/83
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084・千田正
○千田正君 いずれこの問題は、開拓営農振興臨時措置法案が出て参りますから、その際また御質問したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/84
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085・東隆
○東隆君 この補助金とそれから金融との関係は、金融は低利資金を融資するのでありますから、考え方によっては補助金と同じ考え方になると思いますが、開拓地の農家の確立、また既設の農家の問題、あるいは寒地の農業の場合においても、やはりこの補助金制度によってゆくか、あるいは低利資金を長期に融通することによってやってゆくか。これは今後の農業の方面における大きな分れ道になると思いますが、どういう方向をお進みになるおつもりですか、この点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/85
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086・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) これは、東さんも十分御承知でございましょうが、そういう補助金一本でいく、あるいは金融一本でいくというように、問題を形式的になかなか割り切れない点が多かろうと思うのであります。ともすれば、近ごろ補助金を金融へ切りかえるんだというようなまあ声が出てはおりますけれども、しかし、それは必ずしも従来の補助金が著しく減ってしまったというのではなくして、やはりその底流は、事農林政策に関する限り、補助金も用いなけりゃならぬ、金融もあわせ用いなければならぬ、こういうまあかみ合せを適切に運営して参るということではないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/86
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087・東隆
○東隆君 私は、事業費のうちの何分の一かを補助金でもって出して、他のものを、高利のものを借り入れて、もって事業を進める、こんなような形が進められていく間は、かえって補助金をやめて、そうして金融の面における利子補給であるとか、あるいは償還の年限を長くするとかいう、そういうような方法でもってやっていく方が効果が上るんじゃないか、こういう考え方にならざるを得ないわけです。ことに農業のように回転の非常におそいところですから、なおさらそういうような形でもっていかなければならぬと思う。従って、補助金の方面において非常に農林省はボロがたくさん出ておる。もう少しお考えになって、そうして態度を決定された方がいいであろう、こういう考え方を持ちます。これは私の考えです。そういう考え方を持っているのです。
私はもう一つ、寒地農業の確立の面で、冷害その他に農林省の方は刺激をされて、だいぶお考えになったようであります。しかし、あれが根本的なものであるとは私は考えません。ことに北海道という開拓の余地のある所を考ますときに、過去におけるところの開発の歴史はどういうふうになっているかと申しますと、第一次の拓殖計画時代から、常に冷害、凶作に見舞われたときに、そのあとに実は寒地農業確立の問題が出てこないことはないわけであります。それで、最も大きく出てきたのは、大正二年の凶作を中心にして出てきたところの第一次の拓殖計画、それに関連しての北海道における畑作農業の確立の問題、こういうような問題はこれは、私は非常に規模の大きい、寒地農業確立の方向だったろうと思うのです。しかし、それが朝鮮あるいは台湾、樺太、満州、そういうような問題に関連をして、あるいは、戦争、こんなようなことによって、予算が並行いたしません。従って、北海道の開拓というものが進まなかったのは、そういうような時代の影響でありまして、今回の場合はその当時に比べて、まだまだ計画がきわめて小さいのじゃないかと思う。もう少し雄大な寒地農業確立、あるいは畑作農業の確立、こういうような面でもって計画をされ、そうしてこれを遂行するという私は絶好のチャンスであろう。いろいろな外の問題に災いされるようなことがなくなっておるのですから、この機会に寒地農業の確立というような問題が、これは本式に取り上げられなければならぬ。で私は、農林大臣が二けたの予算を出されたけれども、それが一けたになってしまった。そうしてきわめて実は残念に思っておるのですが、こいつをもう少し拡大をする御意思はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/87
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088・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 計画は気宇広大であるつもりでございますが、予算の面において、御指摘のように、必ずしもこれに伴っておらないことは残念でございます。おっしゃるように、確かに一つの時期が来ておると思うのでありまして、北海道が、明治の初年であるとか、あるいは今言われる大正の初めであるとか、それぞれ時代の脚光を浴びたわけでありましょうが、今回こそこの機逸せず、国策としての基本的なものを打ち立てなければいかぬのではないかと思うのであります。
それで、よく言われますように、あの最果ての地に至るまで水田を作るということが、非常な無理なのではないか、どうしてもこれは畜産を入れ、あるいは根菜類等に切りかえて、新しい北海道の植栽の態度というものを出さなければならぬということなどは、われわれとしても痛感をしておるところでございます。それで、農林省の中に寒冷地対策室を設け、一方この技術的な問題等は農林水産技術会議等を通しましてですね、ほんとうに北海道の地に足のついた技術面の展開等もしなければならぬと考えておるのであります。こういう問題が、冷害凶作のあった翌年だけが線香花火のようにぱっと騒がれるというのでなくしてですね、たとえ予算は少くともですよ、ことしはそれに対する第一歩の着手である。これを少ししんぼう強く拡大をしていくことによって、北海道その他、寒冷地対策を完成、実現をいたしたい、こういう所存でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/88
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089・東隆
○東隆君 北海道のような寒い所に水稲が進められていくというのは、結局、国の政策が水稲の政策しかやらなかった、こういうことを示しておるのであって、北海道に移住した人がみな南方の暖地農業をやっておるのですから、ことに米を食うのですから、やはりほっちゃらかしておけば、水田を作る、こういうことになるんで、それよりももっと強い力で畑作農業の方に力を注がなければ、畑作経営というようなものはりっぱなものにならぬ。これは私は、はっきりしていることじゃないかと思う。で、今まではほっちゃらかしておったから、そこで米の寄生虫であるところの日本人が、あそこで水田農業をやった、こういうことになるのですが、この点は一つよくお考えを願いたいと、こう思うわけです。
それからもう一つ私は、ついでに畑の特産物、大豆ですが、これは開拓農家及び北海道のこれは特産になっております。これが出来秋に非常にその値段が下げられて、ひどい目にあっております。ことに一昨年のごときは、非常な困難な問題にぶつかりました。従って、農林省は、日本に生産をされる大豆、少くとも市場に出回るところの大豆と、それから輸入の量を、これは十分に考えて、そうして価格の安定をはかってもらわなければいかぬ。ところが、聞くところによりますと、自動承認制に大豆をするのでないか、こういうようなこともいわれますが、私はそういうことがあっては一大事であると、こう考えます。そこで、どういうような輸入計画を進められておるか。もし数字その他がおわかりならば、月別、そういうようなものをお聞きいたしたいし、それから自動承認制、そういうようなものについては、どういうふうにお考えになっているか、それをお聞きいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/89
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090・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 大豆につきましては、これが北海道の農家の重要な作物でございますることは、おっしゃる通りであります。私、今ここで明確な資料を持ち合せておりませんが、まあおそらく自家用で消費されますものを除いて、二十万トンぐらいのものが一般市場に出るのではなかろうか、それに対しまして、輸入大豆というものがやはり七十万トンぐらい従来あったのではなかろうかというふうに記憶をいたしております。従いまして、この輸入方式いかんは、国内大豆にもきわめて甚大な影響があるわけでございまして、これらに対しましては、十分慎重な配慮をいたす所存でおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/90
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091・千田正
○千田正君 今の大豆の問題ですが、昨年はこの大豆の問題をめぐりまして、特に北海道、東北の開拓農民の諸君が、非常な苦境に立った。たとえば政府から借りた返済金を準備するのに大豆を売却する以外にないというときに、その大豆がうまく売れない。しかも業者の間では、東京市場でたたかれる。外地からは、農林省の政策で、どんどん優秀な大豆が入ってくる。それで開拓農民や、あるいは北海道の農民の一つの大きな、いわゆる秋の収穫の目安がそれでくずれている。それで、これを価格安定法の中に入れて、将来これをある程度の間は、政府は十分に見てやらなければいかぬと思う、こういうことで、当委員会ではこの問題について相当論議を尽した。それで外地から入れる大豆の数量その他に対しても、一応の内地のそうした生産者の状況を見合いつつ輸入するのが親心があるところの政策じゃないか。御承知の通り、昨年などは、いわゆる品種も十分でない、かつまた、そのつぶの状況も不ぞろいであったために、これはなかなかほかには回せないで、東京都内のとうふ屋を全部集めて、そうして無理に買わせたというような政策までやらなくちゃならなかった。本年からはそういうことのないように、一つ根本的な考え方をしてもらいたい。これに対してはどういうお考えがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/91
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092・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) これは千田さんの言われますように、従来大豆の暴落が東北、北海道の農家に非常に深刻な打撃を与えたことも存じておりますし、ただいま言われましたような方向で対処いたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/92
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093・東隆
○東隆君 今の問題と、それから輸入の方法ですね、それはお考えを願わなければならぬのでありますが、当時問題になったのは、関税の問題と、それから農産物の例の価格安定法ですね、あの中に大豆を入れる、こういう問題だったわけです。それで、少くとも国内における大豆価格の安定をやり、そうして生産を上げていくためには、関税の問題、それから今の価格支持の問題、それと輸入の方式の問題、この三つはお考えにならなければならぬ問題じゃないかと思う。それで、価格支持の問題はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/93
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094・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 価格支持の問題は、農産物価格安定法にこれを入れまして、そうして外国大豆等に十分対抗し得るような措置を講ずる次第と相なっております。それから関税の問題も、一〇%でありましたか、付加する、こういうことでありまして、残るところは輸入方式の問題でございますが、これらも実情を勘案いたしまして対処するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/94
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095・東隆
○東隆君 まだいろいろございますが、どうも独占をしておるようで心苦しいんですが、もう一つ漁業の問題で……。
大臣は就任早々から北洋漁業の方に取りつかれてしまって、だいぶお忙しいようですが、私は沿岸漁業を発達させんければ日本の水産業は発達しないと思いますし、また国民生活の安定もなかなか容易じゃないと思う。そういうような意味で、指導機構の方面について、これは漁業の指導の面でありますが、農業方面では改良普及員というものがあって、そうして農業の方の指導の面をだいぶ進めております。ところが、林業あるいは漁業の方面になりますると、そちらの方面はこれはほとんどないので、ことに漁業の方面は、非常に生活の方面なんかも不合理な生活をやっておるし、生活改善の指導員も必要でありましょうし、それから技術の方面も、これは農村よりもまだ指導をしなければならぬ部面じゃないか、こういうふうに考えております。従って、改良普及員制度のようなものをどうしても早急に確立して、そうしていくべきじゃないか。北海道では、道費でもって七十人ほど置いて、そうしてこれが非常に活躍しております。しかし貧弱な地方費ですから、うまく参りませんが、しかしこれはどうしても国でもって大きく取り上げて、そうしてやらんければ、今の自民党の政府は、北洋漁業にばかり熱をあげて、そうして沿岸漁業は、はなはだもって乱暴なことをやっておると、こういうそしりを受けるんじゃないかと思いますから、この点は一つ、今回の予算の面にはないようでありますけれども、補正というような形なり何らかの、でもって、一つ実現をしていただきたい、こう思うわけであります。この点、一つお考えをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/95
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096・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 水産の面において改良普及事業活動が立ちおくれているということは、私もよく認めている点でございます。まあこれはなかなか、漁撈の指導ということは、役人の仕事としてやるというような場合、非常なむずかしさもあろうかと思うのでありますが、しかし、まあ御指摘の点は、十分伺って、対処をする所存でございます。
そこで、沿岸漁業が非常に衰退をしている、これに対する対策いかんというふうな点にも言及せられましたが、まあ本年はたとえばこの浅海増殖の費用などは、昨年に比べましてたしか五割くらいふえておりましょうし、漁港も、従来からみると相当予算面では増額をしておりますので、決してこれが、これで満足というのじゃありませんけれども、まあ意を用いたつもりでございまして、今補正でどうというお話ですけれども、まだ参議院に予算がかかったばかりのこの際、補正ということは——補正のことを申し上げるわけにも参りませんが、御趣旨はよく体して当りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/96
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097・東隆
○東隆君 いや、それくらいの熱意を持ってほしいというわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/97
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098・安部キミ子
○安部キミ子君 漁業振興の観点から、水産講習所というのが下関にございますが、御承知のように、吉見にあるのですが、これを講習所というふうなものでなくて、単科の大学にでもして、大いに漁業教育を拡大していくという意味から、これを早急に文部省の方へ所管に移されて、大学になさっていただける御意思はないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/98
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099・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) まあ、安部さんの御意図はよくわかりますよ。今直ちにというこれはお約束もできませんが、よく承わりまして、研究をすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/99
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100・安部キミ子
○安部キミ子君 この問題は、私が文教委員会におります当座から、もう二、三年前から、これを早く大学にしてもらいたい。実は前の水産庁長官には、これを山口大学の水産学部という形でなくて、単科の大学に文部省が受け入れて下さるなら、まあ娘の嫁入りをするのに支度が要るように、相応な設備をして、大学にしてもらいたい、こういうふうな御意向でありまして、私は前の大臣——文部大臣にもこのお話をしたのですけれども、まだあれでは十分な設備じゃないし、まあできれば山口大学の水産学部にというふうな意向でございました。と申しますのは、その当時の文部省の方針は、新しく大学は設置しないという方針をとっておられました。ところが、今年度なんかの方針は、どんどん大学が新しくできているのですね。それで、ぜひとも……。ただいまこの予算書を見ましても、新しく俊鶻丸が造船されているような様子でございますので、この際にぜひともこの問題は、漁業振興の基本線に沿うた意味で、大学制度を実施していただきたい、こういうふうに思いますので、ぜひとも農林大臣の決意がお聞かせいただきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/100
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101・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) ちょっと、いきさつを官房長が知っているでしょうから、官房長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/101
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102・永野正二
○政府委員(永野正二君) 下関の水産講習所ができましたいきさつ等につきましても、よくもう安部委員御承知のことと思うのでありますが、これがただいま御指摘のように、単科大学に昇格すべきであるという議論が起っておりまして、この問題は現に本年度の予算編成の際にも、実は問題になったのでございます。農林省といたしましては、この講習所の設備が拡充されまして、名実ともに単科大学になり得るということであれば、それはむしろ水産教育全体から見ましても非常に喜ばしいことでございまして、毛頭これに反対をいたしておるわけではございません。ただ問題は、現状までのある講習所の人的陣容なり、物的設備なりというもので、あの講習所だけが単科大学に昇格をするという点に問題があるようでございます。この点につきましては、なお本年度も引き続きまして、文部省と農林省と協議をして決定をすることになっておるのでございますが、いきさつはそういうことでございまして、むしろ農林省といたしましては、この講習所の設備を充実するということに十分協力、努力いたしておりますが、あれが大学に昇格をするということにつきまして、別に異議を唱えるとか、そういうことは毛頭考えていないので、私の方はやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/102
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103・安部キミ子
○安部キミ子君 実は、設備なども私よく見ております。それから東京の水産大学の様子も見ております。それから、あすこを卒業した卒業生の実力も、講習所という資格ではかわいそうなほど、実力は充実しております。そういう意味から、私はこの間も稻田事務次官にこのお話を相談しましたところが、大体において、まあ嫁にもらうのなら、もうちょっとたくさん支度をしてもらったらいいのだ、異議がないというような御意向の点もありましたので、早急にお話し合い下さいまして、一日でも早く、一年でも早く、大学の資格で学生を卒業させてやりますと、大へん就職や何かにでも都合のいいこともありますし、それからまあ入学の定員も少しは多くできると思いますので、ぜひともこの点は大臣にお願いいたしますから、よろしゅうお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/103
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104・北村暢
○北村暢君 まず第一番に、私は今度の予算におきますところの、農林一般会計の予算が年々削減されまして、今年度も政府の一千億積極予算、こういうものの中における農林予算の実態というものは、この積極予算にもかかわらず、農林予算は、昨年度に比較して、予算の全体の規模からするところのパーセントは、昨年度よりも下っている。いわゆる二十八年、二十九年には一一・二%、三十年度が九・五%、昨年度が八・五%であったものが今年度はさらに七・九%になっておる。こういう実態からして、農林施策そのものがジリ貧的になってきているのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
そこで私は、大臣は就任当初記者会見の際も、基本的な政策なり何なりというものについて触れられなかった。これは非常に慎重にして、触れられなかったのじゃないかというふうに思っておった。大臣は農林行政の通でございまするので、非常に慎重に対処せられたと思ったのでありますけれども、これは慎重ではなくして、非常に後退するので、積極政策がなかった、こういうふうにしか考えられないのでありますが、この実態について大臣はいかように考えられるか。特に大蔵省の第一次査定においては、昨年度の八百億台の予算が七百億台に切られた。しかも農村関係の議員の鞭撻によって七十億が復活して、ようやっと現状程度まで来た、こういう実態であるという点から考えますというと、今後の農林政策に処する大臣の対処としては、非常に重大なやはり時期に来ているというふうに考えるのでありますが、大臣は今後農政、農林行政そのものについていかような考え方を持っているかということを、まず第一点にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/104
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105・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 本年度の農林予算のワクの問題でございますが、これは私いろいろ申し上げますると、あるいは弁解がましくなるかもしれませんので、簡単にいたしまするが、従来、たとえば昭和二十八年あたり、非常に農林予算が大きかった、こういうことがよくいわれるのでございますが、当時千七百億もあった、今半減したのじゃないかという御指摘を受けるのでありますが、これはしさいに数字を検討していただきますると、たとえば災害が非常に多い年であって、災害復旧の費用でありますとか、あるいはそれに伴っての農業保険の費用でありますとか、その他この年などは食糧輸入に対する補給金というふうなものもございまして、そういうものを除いて真に農林施策に使われるネットのものを比較をしていただきますると、これはそれほど減っておるというものではございません。さらに、ことしは一般予算は非常にワクがふえた、千億減税、千億積極策と。そうすると、その千億の中に農林省の分け前も当然とらなければいかぬのではないか、こういうふうにおっしゃるわけでございましょうが、この千億の内容というふうなものをやはり分析をしてみますると、このほんとうに実体的な費用として配付されるものが幾らになるかという当りを考えてみますると、まあここ数年を通覧いたしまして、ことしが非常にみじめに減っておるというものではなかろう、こういうふうに私は考えておるのであります。しかし、それをもってお答えであるというのではございません。もとよりますます御鞭撻をいただいて、これをふやさなければならぬと思っておりますが、まあ、当面はこの予算を最も重点的に、効率的に運営をいたしまして、所期の目的を達したいと、このように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/105
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106・北村暢
○北村暢君 次に、私は戦後のずうっとの農林政策の中で、根幹は食糧増産、これが必ずうたわれてきている。今度の大臣の施政方針ともいうべきものの中に、この食糧増産ということが消えておるわけです。うたわれておらない。このことについて、この食糧の自給度の向上という点から来るところの、食糧増産ということに対する考え方が消極的になったのであるかどうか、この点をまずお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/106
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107・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) これは繰り返すようでございますが、私の先般考え方を申し述べました際、その一節として、こういうふうに申し上げてあるつもりでございます。農林水産行政の基本的目標は、農林水産業の生産力を高めて農山漁村民の福祉を増進することであります、と同時に、食糧の総合的自給力を向上することによって、国民経済の安定と発展に寄与することでございます、すなわち食糧と農畜水産物の生産増強のための諸施策を展開するに当っては云々という表現を用いておるのでございますが、この意味は申し上げるまでもなく、決して食糧増産施策を軽視するものではない。ただ、もう少し総合的な観点に立って、ともすれば従来の水田偏重というようなこともあったと思いますから、それをもう少し総合的に考えてみるべきではないか、こういう意味で、食糧増産の問題もやはり強調をいたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/107
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108・北村暢
○北村暢君 経済五カ年計画によりますと、三十五年度までに米換算で一千百万石増産、こういうことで出ておるようですが、そのための年間の食糧増産に要する予算というものが約三百四十億近く要る、こういう計画に立っておられるようですが、それに対して今度の予算を見ますと、耕地整理その他のものを入れても二百億までいっていないかと思いますが、そういう予算にしか現在なっておらない。五カ年計画の第一年の三十一年度。そういうことでありますから、今大臣のおっしゃられる、食糧増産政策というものは放棄していないのだ、積極的にやっていくのだ、こうおっしゃられますけれども、経済五カ年計画によるところの増産というものが、これが実施できる自信があるのかないのか。この点について、予算の点からいきますというと、私はとても五カ年計画は完遂できないと思うのだが、大臣の御見解をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/108
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109・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 今、私どもの計算によりますと、三十二年度の予算要求に基きまする増産可能なものは百十一万石、こういうことでございます。そのほかに、これは今の土地改良、さらに耕種改善ですね、技術的な面でもっておよそ七十万という目標を持っておるわけであります。そういたしますというと、五カ年計画の増産量は、米に換算しまして千百十二万石という目標と相なっておりますので、三十年、三十一年を合せまして、まあ少しおくれておるということではございましょう。けれども、三十二年度以降を一つ適切な予算措置を講じ、あるいは技術の改良、事業執行の効率化というふうなこともあわせ用いまして、おおむね一つその目標額にまで到達をしたい。もう一歩でございます。もう少しこれはおくれを取り戻せばいける、こういう考え方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/109
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110・北村暢
○北村暢君 私は、先ほどの一般会計の予算の規模の減少というようなものから考えて、と同時に、先ほど東委員も触れておりました補助金と融資と、こういう問題との関連で、今度の特定土地改良の特別会計におきましても、地元負担分をふやす、そのための融資もしてあるようでございますけれども、そういうような政策に変った。なるほど事業執行の効率化をねらう点においては、着想もいいし、またこういうふうにやっていかなければ、今までの土地改良というものが持ちこたえられなくなってきているということもうなずけるわけでありますけれども、今大臣の言われる、来年度なり再来年度なり、こういうところで予算の措置を講ずれば、この五カ年計画の達成もむずかしくないのじゃないかというような趣旨の発言でございますが、そういうふうに、融資政策に変ってきている。これでは現在の農業、いわゆる今度の政策の中ではっきりいわれている農業経営の近代化、生産性の向上、農業所得の上昇と、こういうことを言われておりますけれども、これは実態には私は沿わないのじゃないか。いわゆる兼業農家によらずして、農業だけでやっている農家というのは、約三割しかない。こういう実態の中で、融資政策で生産性を向上し、所得を増加することのできる農家というものは、この三割を占めるところの、いわば富農層はいいかもしれませんけれども、圧倒的多数を占めるところの兼業農家なり、それ以下の中小農家というものについては、私は生産性も向上もしないし、ましてや、量は、ある程度の土地改良なり何なりによって出るかもしれませんけれども、生産力としての農家経済というものが、再生産に間に合うところの農家経済の進展というものはないのじゃないか。そういうことを考え合せるというと、どうしても大臣の言っている増産というようなものについては、非常に大きなやはり後退であって、大臣の言われるような、予期するようなところへはいかないのじゃないかと思うのです。そういうような点からして、私はやはり農政としては非常に後退をしている、後退した中から増産というものはあり得ないのじゃないか、こういうふうに考えるわけなんですがね。その点、実際に大臣の言っていることと、予算面に現われてくる状態、施策のとり方において、私は大臣の言うような形にはならない、こういうふうに思うのですが、大臣の見解を一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/110
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111・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 予算の面から農政が後退ではないか、これは実は衆議院でもそういう御意見がいろいろ出まして、だいぶ押し問答もいたしたわけでありますが、先ほど来申しますように、本年度の予算の実態というものを考えてみますると、たとえば公共事業費で、災害復旧を別にしましてですね、一般の公共事業費というものをながめてみますると、本年度は四百六億円になっておる。去年は三百七十七、おととしは三百五十五、その前は三百七十七というふうな、しさいに分析してみますると、本年の公共事業費というものは決して少くはないのであります。ただいまも御発言の中にありました土地改良特別会計の設置というふうなものも、これは五カ年計画の中に直ちに増産効果は出てこないにいたしましても、これによって一面融資を併用いたしますから、事業量はふえます。そうしてその進捗度はスピードアップされます。こういうふうなことも一つの、これは新しい施策でございますが、まあそれやこれやを合せますると、必ずしも農政は後退しておるとは思えない、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/111
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112・北村暢
○北村暢君 まあ後退していないかしているか、これは今後を見ればわかるわけなんで、その線で一つ大いにがんばってもらわなければならないと思いますが、先ほど大臣の言われた農業の近代化なり生産性の向上ということで、主穀農業ということを脱皮して、畑作振興なりあるいは畜産導入という形へ行く。このことは私どもも非常に賛成であるし、またそうなければならないというふうに考えておるわけなんです。しかしながら、今度の予算でその芽は私はやはり出てきた、確かに寒冷地農業の振興対策なり、開拓農家の振興対策なりということで、芽は確かに出た、こういうふうに思うんで、非常にけっこうなことだと思う。
しかしながら私は、開拓農家の振興対策にいたしましても、今度新しい法的措置も講じよう、こういうふうに言われておるようですけれども、先ほどの千田委員の質問に対して大臣は、この施策は従来の既存農家というものを対照にして一つ積極政策をとりたいんだということをおっしゃられて、それで年々二万何千町歩からの農地壊廃が行われておる。同時に、三万町歩程度の開拓がある。この開拓というものが、私はやはり従来の開拓行政なり開拓政策の反省の中から、ここで大きく転換をし再出発をしなければならない、こういうふうに考えるので、大臣の見解とは全く異にする。これから作る農家もやはり、貧農を作るところの開拓であっては私はだめだ、そういうふうに考える。これに対して大臣は、開拓農家の振興を既存農家に置くと。これは既存農家はもちろん置いてもらわなければならないが、それではやはりまた何年かするならば、今作る農家に対して開拓農家の振興の対策を立てなければならなくなってくる、こういう結果に陥らざるを得ない、従って、私は今の開拓農家の営農の実態というものから見ますというと、現在定着している者が七〇%、三〇%は離農しておるという実態。辛うじて定着している農家にいたしましても、これはもうほんとうにまあ生きているというだけのことであって、行くに行くところがないからおるだけの話であって、実際には農家でなくなって、離農と同じような状態を呈しているというのが、今日の開拓農家の実態だと思うのです。そういうような点からして、先ほどの大臣の言われている既存農家に重点を置くという、既墾地ですか、既墾地の農家に重点を置くということの趣旨がわからないのであるが、どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/112
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113・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) その点は、私、既存農家と申し上げたのではなくして、既入植者と……。従いまして、まあ開拓政策をないがしろにするという印象にお受け取りいただいたんでは、困るのであります。つまり開拓はもちろん大きな国策の一つでございますが、特に従来定着しておる入植者というものが、まあ非常に困窮な状態におって、本来ならば諸条件が整備されてきて直ちにそれが生産力となって実現をする要素を持っておりながら、これがいろいろの事情から、金融もうまくつかない、あるいは開墾、建設の工事も進まないというようなことから、持っているところの力を十分に発揮し得ない部面が多いんではないかと。これを一つ発揚することが、直ちに増産に結びつくゆえんであろう、こういうことで、まあ重点の置き方というふうな点を申し上げたんでございまして、開拓政策全体を後退させるというようなつもりは毛頭ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/113
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114・北村暢
○北村暢君 開拓政策を後退させるのでなくして、私は、従来の開拓そのものが、その何と言いますか、徹底した、まあ思いやりのある開拓政策でなかった。そのためにまあ引揚者なりあるいは二、三男なり、こういうもののはけ場所を仕方なしに見つけた、こういった形になった。その開拓の施策の貧困さが、今日の開拓農民のあれだけ苦しい貧農を作ってしまったと、こういう結果になっておるのです。というふうに私は考えるのです。従って、開拓政策を後退させるとか何とかというものでなくして、今日までやってきた開拓政策そのものが非常に不徹底なものだということを言っておるのです、私は。従って、一応のこの未墾地取得をしたという成果は、私は否定はいたしませんけれども、その営農という面からいっての徹底した国家的な国の施策というものが足りなかったために、今日の貧農を生んでしまった。そのために、私は、開拓農家振興のための法律まで今日作らなければならない。金融政策も言われておりますけれども、もう今日の開拓農家は借りようとしても借りるどころの騒ぎではなしに、今膨大に背負っておる借金を一体どうするか、先ほど出た通りなんです。そういう実態で、もうにっちもさっちも動かないというのが実態なんです。そういう今までの開拓政策を、消極的になるとか何とかいう問題でなくて、積極的に私はやはり、生産性の持てるそのりっぱな開拓農家というものを、これからの開拓には一つそれを重点に置いて、徹底した開拓政策を推進すべきじゃないかと、こういうことを言っておるのです。その点、そういうことでありまして、大臣の言われることとちょっと違うと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/114
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115・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) ただいま伺いますと、そう違っておらないはずでございます。そこで、さっきも申し上げましたように、開拓十年の歴史を反省いたしまして、まあ当面ことしの予算で手を打とうというのは、おくれておる開墾、建設工事などをずっと進度を早める、こういう配慮もしておりますし、それから今おっしゃった開拓営農振興措置法もその一環としてお考えいただけば、北村さんとちっとも違っておらぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/115
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116・北村暢
○北村暢君 まあ、違っておらなければ非常にけっこうなんですけれども、実際に予算の面ではあまりこの積極政策、積極政策というほどの予算も、私はとられていないというふうに感じておるのです。それで、まあ寒冷地農業振興の対策等について、今度の国有の貸付の乳牛、役牛というようなこともやられる。これはまあ非常に積極政策である。しかしながら、私はやはりこれくらいのものでは全く微々たるものであって、これはまあぱらっと貸し付けるといった程度で、決して集約酪農といったような趣旨に沿うような政策になっておらぬ。今後これらの施策というものについて強力に推進する意思があるのか。まあ第一年度として私は先ほども言ったように芽は出たと、こういうふうに申しましたけれども、この芽はやはり育てていかなければならないと、こういうふうに思うのですが、今後の大臣の施策として、いかようにこの問題を考えておられるか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/116
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117・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) まあ芽が出たという御理解のあるお言葉でしたが、その通りでございまして、少くともここに第一着手といいましょうか、そういう石は布石されたのでありまするから、この線をますます太いものにもり育てていこうと、こういう考え方に立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/117
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118・北村暢
○北村暢君 もう一点、もう時間も来たようですから、もう一つだけお伺いしておきたいと思いますが、ここで私は、農林省の中で、先ほども土地政策のところでちょっと触れておったようでございますけれども、従来の開拓というもの、これは大部分がまあ畑作農家である。それで、今までとってきた開拓政策の中でも、やはり米麦が主体、これを強行してきた。そのために、気候、土地条件、非常に米麦に適しない所も、政策として食糧増産ということでもって、こういう政策を推し進めてきた。これが一点、従来の開拓行政の中で非常にみじめな農家を作った一つの大きな要素になっておるのじゃないかというふうに考えるわけなんですが、これをやはり私は主畜農業までいかなくても、酪農という方向へいかなければ解決しない問題でないか、こういうふうに考えておるのでありますが、従来の農林省の中で、開拓の土地に対する問題が、農地局の考え方と、畜産局の考え方と、それから林野庁の考え方と、いろいろ土地に対する考え方が統一とれていないのじゃないかというような感じを持っておるのです。従って、それをとしても克服いたしまして、土地生産力の高度の利用という観点からするならば、個々の調整というものを十分にやらなければならないのじゃないか。従って、今後の開拓という、農地造成という問題についても、草地という問題と牧野法による牧野の問題、ここら辺の行政の各局の重なり合う点の調整というものをまじめに検討をしなければならない。そうして生産力の高い、土地生産力を高度に利用のできる方向というものを、徹底的に一つ検討をする必要があるのじゃないかというふうに考えるわけなんですが、従来の農地行政ということが、単に畑作というところにとどまって、草地まで及んでいなかったという点について、私はやはり草地という問題についても、農地と同じ力において私は施策として強力にやはりやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけなんですが、これは答弁は別として、私はそういうふうに考えております。そういう中から酪農というものも考えていく。で、現在畜産局でやっておられます集約酪農ということも、確かにやられてはおります。しかし、これが総花的になって参りますと、せっかくの集約酪農という、その趣旨というものが私は失われる。まだまだ集約酪農というのは、いわゆる集約酪農地帯を作るにしても、まだまだ北海道、特に北海道、東北等においては、地域が広過ぎるために、乳製品のコストが非常に高くついているというふうに考えておるのです。で、もしもあれをもう少し地域を狭めた、徹底した集約酪農ということを考えるならば、乳製品のコストというものは今よりも三割も低くすることができる。これはまあ明治なり森永なり、こういう大きな生産者からも言われているのでありまして、まだまだ集約にできる、こういうふうに考えております。そうでない限り、国際的な規模における酪農というものにはとても対抗できないのじゃないか、こういうふうに考えます。従って、もう中途半端な酪農ではとてもコスト高でだめなんで、やはり徹底した、重点施策としての集約酪農というものを徹底的にやらなければならない。そのためには、今までのとっております酪農ではなしに、ほんとうの、何といいますか、大乳業者というもののためのいわゆる酪農というものではだめなんで、農家の経営そのものが、私はやはり再生産を持てる着実な農家に密着したところの酪農でなければならない、こういうふうに考えておるのです。
従って、今後の土地の生産力の最高度の利用という点については、だれしも異議ないところだと思いますし、そういうような点からして、今後における土地利用という問題についての施策として、大臣はいかような考え方を持っておられるか。私は、今までの各部局の連絡なり何なりというものが非常に足りないために、そのためにセクト的な形になって、行政をおくらしているのではないかというふうに考えておるわけです。こういう点について、いかように考えておられるか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/118
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119・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) るるお述べになりました御意見は、私も大体同感でございます。そこで、まあ従来、新たなる土地の造成ということでございますから、農地局がこれは一番タッチする面が多かったのでありましょうけれども、これが農家の経営の中へもう入って参りまする以上は、単に農地局というものでなく、もっと総合的な、有機的なながめ方をしなければならぬと思うのであります。そういう意味から、酪農に適した地帯は、これはやはり酪農を中心として振興をさせることがいいでありましょうし、米麦の適地はそれでけっこうであります。その他やはり土地の立地条件に応じた営農の形態というものをそこへ生み出してしかるべきではなかろうかと思うのであります。それにつきましては、御指摘のような、従来は役所の中にセクショナリズムというものがあるといたしますれば、これを総合調整するということによりまして、御趣旨のような線に持って参りたい、こういうように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/119
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120・清澤俊英
○清澤俊英君 関連。先ほど大臣は、食糧増産五カ年計画の総量を一千百五十万石と言われたようですが、この間農地局長は千三百万石、しかも農地改良によって八百万石、技術改善による五百万石——それで八百万石の年度割の一つ計画書を出して下さい。これは要求しておきましたから、その食い違いがあるとするならば、一つ大臣からしかるべくお取り計らいを願って、農地改善でどれだけ、技術改善でどれだけと、年度割で一つ参考書類をあらためて頂戴したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/120
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121・井出一太郎
○国務大臣(井出一太郎君) 資料として出しますから、きょうはこの程度で一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/121
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122・堀末治
○委員長(堀末治君) 本日は、これにて散会いたします。
午後五時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615007X01519570312/122
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