1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年二月二十二日(金曜日)
午前十一時十二分開会
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出席者は左の通り。
委員長 岡 三郎君
理事
有馬 英二君
野本 品吉君
矢嶋 三義君
委員
田中 茂穂君
林田 正治君
吉田 萬次君
安部 清美君
高田なほ子君
松澤 靖介君
松永 忠二君
湯山 勇君
国務大臣
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
政府委員
文部大臣官房会
計参事官 天城 勳君
文部省初等中等
教育局長 内藤誉三郎君
文部省大学学術
局長 緒方 信一君
文部省社会教育
局長 福田 繁君
文部省調査局長 北岡 健二君
文部省管理局長 小林 行雄君
事務局側
常任委員会専門
員 工樂 英司君
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本日の会議に付した案件
○教育、文化及び学術に関する調査の
件
(当面の文教政策に関する件)
(昭和三十二年度文教予算に関する
件)
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001・岡三郎
○委員長(岡三郎君) それではこれより文教委員会を開会いたします。
議題は当面の文教政策及び昭和三十二年度文教予算であります。昨日に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
ちょっとなお念のため申し添えますが、現在出席しておる政府側は、文部大臣灘尾弘吉君、文部大臣官房会計参事官天城君、初、中局長内藤君、大学局長緒方君、社会教育局長福田君、調査局長北岡君、管理局長小林君、そのほか説明員として初、中局の財務課長安嶋君、以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/1
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002・松永忠二
○松永忠二君 文部大臣に三点にわたって御質問申し上げます。
まずその第一点でありますが、教育の全国的な水準を一体どう保持していくかという点であります。これは御承知のように日本の全国の教職員の昇給昇格というような問題は、地方の県の情勢によって非常に差異があるわけであって、ある地方では非常な延伸をしておるのに、正確に行われているところもあるという状態である。あるいは教員の定数についてももう御承知のように学級編成の基準が小学校で六十四人にもなっているところもあれば、五十四人のところもあるという状態である。あるいは教員の給与の単価のごときは、これは直ちに教員の構成に関係するわけでありますが、一番高いところは小学校あたりで二万七千三十四円であるけれども、低いところは一万五千そこそこである。そうすればこれは直ちに教職員の構成にも影響を及ぼしてくるわけであります。建築施設のバランスのひどいということについてはもう申すまでないことであると思うのであります。一体教育の機会均等という意味から考えてきたときに、特に義務教育である小学校、中学校、あるいは高等学校のごときはどこの地方の生徒でも同じような水準の教育を受けていくということでなければできないというふうに考えられるわけでありますけれども、現状は非常なアンバランスが出てきているわけであります。これではほんとうの教育の機会均等もできないというようなことから、一体どうしてこういう水準を維持していくことができるか、この維持についてどういう決意を持たれ、また今後どういう方法でこの水準維持に当られるのか、文部大臣としての御決意を伺いたい。
なおこれと関連して、御承知のように再建団体における教育の予算の状態というものは非常に憂うべき現象があるというふうに私どもは考えておるわけであります。たとえば徳島県のごときは十五年間にわたる再建計画を立てて、特に全日制の高等学校のごときは一名の教員の増加をも認めていかないというような再建計画も実施されておる。佐賀のごときは十年にわたる再建計画を立てて、しかも小、中学校において最も多いときには一年間に三百七十八名の定員を減少するというようなそういう再建の計画も実施をされておる。その徳島のごときは、教育費の一般予算に対する割合は三十六位である。また佐賀のごときは四十一位の低い水準をもっているようなそういう県においてこういう再建の計画を進められておるということについては、先ほどの教育水準の維持という面から考えてみても非常に重要な問題であるというように私ども考えるわけである。地方財政が漸次改良されている現状から考えてみて、これらの再建団体における教育計画について変更を求めていくというようなことを文部大臣として考えておられるのかどうか、そういうふうな点がまあ同時にお聞きをしたい点であります。
なお引き続いてこの問題について答弁によってはお伺いをしたいと思うわけでありますけれども、そういう点について、特に現在の全国教育水準のアンバランスをどう是正していくかという点についてどういう具体的な方途、あるいは御決意を持たれているか、それに関連して再建団体における教育計画についてどういう処置をお考えになっておられるのかお聞きしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/2
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003・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えいたします。教育の全国的水準のバランスのとれた教育行政をやっていくということが望ましいことは申すまでもございません。もっとも地域々々の事情もございましょうし、必ずしもすべて画一的に同じことをやるというわけにもいかないと思いますけれども、実質的な意味におきまして各地方ともにバランスのとれた教育行政をやっていく、これは私もきわめて望ましいことと考えておる次第であります。お話の通りに現在の状況は必ずしもその通りには参っておらない、現実の問題としてなかなかこれが維持することも容易でないという事情もあると思うのであります。一つには地方の財政と申しますか、財政の関係からきたアンバランスというものも確かにあろうかと思うのであります。できるだけさような意味におけるアンバランスというものは、これは解消に努めて参らなければなるまいと私どもは考える次第であります。理想に比較いたしまして現実はよほど離れておる点は非常に残念であります。お話にもありました教員の給与の問題でありますとか、あるいは定数の問題でありますとか、こういうふうな問題につきましては、何とか地方的なアンバランスのないようにいたしたいと考えまして、私どもとしましては、何と申しますか標準の定員と申しますか、あるいはまた標準というようなものを何とか勘案いたしまして、これを地方財政計画のいわゆる基準財政需要の中にちゃんと盛り込んでもらうようにいたしたいと思っておりまして、いろいろ自治庁とも連絡いたしておりますし、また検討を重ねておるような次第でございます。できるだけ御趣旨に沿うように努力して参りたいと思いますけれども、現実問題といたしましては、これはなかなか容易な問題ではない、その方向に向ってお互いに努力していくということを申し上げざるを得ないのであります。再建団体における教育予算の問題は、問題となっておるということは私どもよく承知いたしております。われわれといたしましては、再建団体におきましても、教育の少くとも最小必要限度な水準というものはぜひ維持いたしたいと考えておる次第でありまして、現実の地方の再建計画に対しましても、私どもの方といたしましても、自治庁等とも連絡をいたしまして、あまり無理なことのないように一つやってもらいたいということは始終話しておるようなことであります。このことにつきましては、今後とも留意して参りたいと思っております。ただこの問題も、財政再建ということは、何と申しましても、今日の地方といたしましては重要な問題になっておるわけであります。しばらくのごしんぼうは、ある程度のごしんぼうはお願いしなくちゃならぬのではないか。そのことによりまして地方の財政が確立するということは、関係者もみんな都合よくなることと考えますので、あまり無理はもちろん避けなければなりません、と同時に多少のごしんぼうはお願いしなければならぬのじゃないか、さように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/3
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004・松永忠二
○松永忠二君 今のお話で、地方財政が非常に実情が窮屈である関係でなかなか教育水準の維持というものが困難であるというお話もよくわかるわけであります。しかし考えてみると、地方で一番困っておるのは実は今お話にも出てきております自治庁の交付金に対する計算の基準であるわけであります。で、これはたとえば静岡県のごときは昭和三十一年度に五億二千七百万円程度の持ち出しをやっておるわけであります。で、財政の窮迫しておる地方の状況の中においては、こういう点がますます困窮の原因になっておるわけでありますので、この交付金における計算基準、積算の基礎を引き上げるとか、あるいは積算の方法を全然改めて、もう少し地方において交付金の中でどのくらいの一体教育費が保証されているのかということが明確になり、はっきりしてくれば、地方におけるところの教育予算の確保ができるわけであります。従って地方の財政が健全にならなければ水準が維持できないというよりむしろ現状においては中央の財政というものが今相当な増収を来たしている以上、交付金の計算基準とかそういうものを改めることによって、実は地方の財政の窮迫の中でも教育水準が維持できると私たちは考えておるわけであります。そういう点についてただ地方財政の健全化を待ってというようなことではまことに心もとないわけであって、具体的にこういう問題について自治庁、大蔵省との間に折衝を進めていっていただきたいと思うわけであります。そういう点についてお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/4
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005・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 地方財政の健全化と申しますることの中には、遺憾ながらこの地方交付税の計算方法について私どもといたしましても検討を要するものがあると思うのであります。現在の地方交付税の積算の基礎と申しますか、というふうなものにつきましては必ずしも合理的でないというものもあるように承知いたしておるわけでありまして、教育費の単位費用等につきましても今のままでは不十分ではないかというふうにわれわれも考えております。従いまして教育費の単位費用の引き上げというようなことにつきましては従来から自治庁と連絡いたしましていろいろと努力いたしておるわけでありますが、来年度の地方財政計画におきましてはある程度従来よりも引き上げの可能なものもあるように考えております。この問題につきましてはひとり教育費だけの問題でない、交付金全体の問題につきましては、基準財政需要の問題につきましてはかなりむずかしい計算であろうと思うのでありますけれども、実情に合わないようなものもあるように思っておりますので、年来私どもこの点につきましては心配いたしておりましたが、特に教育費の問題につきましてはできるだけ実情に合いますように今後とも一つ自治庁ともよく交渉して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/5
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006・松永忠二
○松永忠二君 第二の点でありますが、特に勤労青年の教育という面についてお伺いをしたいわけであります。青年学級の振興に関係する予算もほとんど昨年と同様な予算しか獲得されておらないわけであります。で、特に中学校を卒業してから成人までの教育というものについてはほとんど現状においては十分な施策がなされていないというのが現在の状態であるというふうに私たちは考えるわけであります。こういう点については特にこうした面の施策の充実というような点について具体的にどういうふうな施策をお考えになっておるのかということをお聞きをしたいわけであります。なお、それとともに特にこの勤労青少年の技能教育の水準を向上するというような面でありますが、御承知のように労働基準法では技能者養成制度というものが設けられておるわけでありますけれども、事実上この技能者養成というものも実際に微々たる状態である。特に戦前等においては大きな工場の経営者というようなものはその年令層を自分の工場で働かせている間にその子供たちに対する教育の責任も同時に分担をしておったわけでありますけれども、現状においてはほとんどその年令層の子供を工場で働かせておりながら現実には教育の責任を何にも分担をしていないというような状態も出てきておるわけであります。特に科学技術の教育の振興をはかるというような面から考えてみても技能者の不足というようなものが目立ってきている現在の状況の中で、こういう勤労青少年の技能教育というものについて一体今後どういうふうな方向でこれを推し進めていくかということについてあわせてお伺いをしたいわけでありまして、特に一体中学卒業以後から成人になるまでの教育というような面について本年度の予算においてもそれが特に取り上げられて充実をされているという面がわれわれとしては承知できないのでありまして、そういう面についてどういう一体お考えを持たれているのか、その点をお伺いしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/6
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007・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 勤労青少年の教育の重要であるということにつきましてはお話の通りと考えております。従来御承知のごとくただいまお話にもございました青年学級をやっていく、あるいはまた定時制高等学校、通信教育というようなことをやって参っておる次第でありまして、私といたしましては今後この勤労青少年の教育が御本人のためにもまた社会の需要の上から申しましてもよほど進めて参らなければならぬ仕事であると考えております。今回の予算につきましては特にこれと申すほどのこともございませんことはまことに遺憾と存じておりますが、ただ定時制高等学校におきまして新たに五千万円の設備費を計上しておるというようなことでございますが、今後ともに御趣旨に沿うように努力して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/7
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008・松永忠二
○松永忠二君 今お答えのあった第二の点についてなおお答えをいただきたいわけでありますが、これは特に工業高等学校とか、あるいは理工科系の大学における技術者の養成の問題というような点は非常に重要な問題ではあるけれども、それと並んで、特に技能者の養成というものについては、日本の今後の産業教育というような面から言って十分にこの新しい考え方をもっていかなければできないものだと考えるわけであって、今の労働基準法における技能者養成のやり方というものは、その趣旨においても相当違いがきておるというような現状である以上、こういう面についてどういった新しい施策を考えていかなければできないか、これを労働基準法にまかせていっていいものなのか、あるいは勤労青年の技能教育を向上するということによって、窮迫している技能者の獲得をはかっていく面について新しい考え方をもって拡充し、あるいは文部省の責任においておやりになっていく考えがあるのかどうかということをお伺いしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/8
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009・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 技能者教育の重要であるということはお話の通りでありまして、その意味におきましてこの勤労青少年教育の振興を大いにはかって参りたいという考えをいたしておるわけであります。文部省といたしましてはさような方向に向って今後努力をいたすつもりでありますが、同時にやはり産業界におきましても、いわゆる技能者教育というようなことについてはますます一つやってもらいたい、両々相待って進んでいくのが適当じゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/9
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010・松永忠二
○松永忠二君 少し再度お尋ねしたいわけでありますが、私が最初に申しましたのは、私は技能者教育というよりもむしろ広い意味における勤労青年の教育という面であろうと思うわけであります。技能者という単なる養成の機関というようなことではなくて、一般的な意味における定時制教育とは別の教育というような面をどう考えていかなければできないという点についての質問であったわけでありますが、まあそれとあわせてというか、産業界と相待ってやっていくというお話であったわけでありますが、私のお尋ねしたのは、最初にお尋ねしたのは、主として教養的な面を含めて一体どういうふうな成人までの教育をやっていくかということをお尋ねしたわけであります。なお、定時制の問題等についてお話があったわけでありますが、定時制の教育について充実をしていきたいという点について考慮を払われている点はまあ十分わかるわけでありますが、今年度の予算の中で一番みじめな結果をみているのは私は定時制の教育ではなかろうか、予算要求の大体三十分の一しか予算が通過していないのが現状における定時制の教育の予算である。現状ではむしろこの定時制教育については画期的な対策を講じない限りほとんど定時制教育の振興はないではないか。特に各地を回って見ても、私立高等学校における定時制というものはほとんど経営難に陥ってしまっている。名古屋市のごときは十六の定時制の学校がほとんどその機能を停止せざるを得ないというような状態に入っているということを考えてみたときに、法的にもいわゆるその法の改正を考えていく必要も出てきているではないかというふうに考えるわけであります。その点について再度一つお答えをいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/10
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011・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 定時制教育の予算がきわめてみじめであるというお話でありました。なるほど予算要求の金額から申しますればさようなことにもなろうかと思うのでありますが、しかしこれは必ずしもそうではない。いわゆる四割国庫負担という関係の予算を今度実現いたしませんために、まあさような結果になっておるわけでございまして、国庫負担としては出ておりませんけれども、それに対応するものが地方として負担されるわけでありますから、実質的に三十分の一になったということでないことは一つ御了承いただきたいと思うのであります。なお、この定時制の高校につきましては、基準財政需要における単位費用を引き上げるつもりでおりますので、その点も一つ御了承を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/11
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012・吉田萬次
○吉田萬次君 ただいまの定時制の高校の問題が出ましたことについて、関連して一つ文相にちょっと質問したいと思います。
それは定時制高校というもののあり方について、ことにこのごろ経団連の諸君と会合いたしましても、定時制高校の卒業生、ことに機械あるいはその他の問題に対する工科的の卒業生が非常に要求せられている。ことに東南アジアの方面においてもアフター・サービスなんかに対する点から考えて、また国内においても非常に要求せられて、何とか急速にこの卒業生を獲得をする方法はないかというようなことが言われておる。ところで私は先年宮城県のある模範的の、モデル・スクールと言われる定時制の高校を視察して参りましたが、その土地においては農山漁村であるにかかわらず、農業あるいは漁業に関する教育を施さずして一般の普通教育を施しておる。それは結論的に次男、三男というものの就職というものは、どこへいくかもわからない、何をやるかわからない、モデル・スクールになったということは、ただいい先生が集まったというにすぎないというような状態でありますが、かような点から考えまして、都市におけるところのかような格好というものは、定時制の高校というものを卒業する者ではとうてい足らない。しかもどうかというと、農村においては非常に優秀なる青年が将来というものに対する希望も持たずに定時制高校に通っているというような点から考えたら、これは私は非常に重大な問題であると考えるのであります。従って、せっかくのモデル・スクールというものが何にもならぬことになってしまうというような点を考えると、現在必要とせられておるところの教育を施すということに対する観念という点から、地方においても相当考慮して、かような、ことに将来に対する立場から子弟の養成ということを考えていき、またそれを指導するところの政府としてもかような点に考慮されなければならぬと思いますが、文相はどう考えておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/12
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013・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 定時制高校の教育につきまして、今日の社会の需要にこたえていくということはきわめて重要な要素であろうと考えるのであります。従いまして、私どもといたしましても、この定時制高校の教育につきましては、職業教育と申しますか、あるいは技能教育と申しますか、さようなものを大いに加味してやっていくべきではないか、こういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/13
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014・矢嶋三義
○矢嶋三義君 ただいま松永委員が勤労青年教育の振興という立場から質疑をされているわけですが、これには教育の内容面に面する教育方針と、さらに教育財政の二面とがあると思うのです。私は関連して承わりたいのは、松永委員の第一問とも関連するわけでありますが、この定時制教育等の教育財政面からの振興をはかる場合には、国家財政からの補助金政策というものも一部ありますし、さらにそれ以上に大事なものは、松永さんの第一問と関連した地方財政の問題が一番大きくなってくると思うんです。で、私は文部大臣に昨日ちょっと伺ったんですが、文部大臣が地方行政、地方財政のエキスパートであるだけにどういう方針を打ち出すかというものを刮目してみておるわけです。それで私は大臣に特に強く要望したい点は今の地方財政が苦しいのであるから勤労青年教育にしろ、あるいは義務教育にしろ、この程度でがまんせにゃならぬというような考え方で水準を割るような態度をとるのでなくて、国務大臣であり、文部大臣であるわけですけれども、勤労青年教育の最小限を維持し、また義務教育の最小限を維持するためには地方財政が苦しくともこれだけのものは何としても守らなければという強い立場に立っていただかなければならぬ、これが大臣に最も私は強く要望される点だと思う。
そこで私の質問点に入るわけですが、現実の問題は再建団体に一番強く出ておる、その典型的なものが佐賀に出ておるわけですが、自治庁の方で、あなた自治庁の方と協議されるというが、それだけ聞いて下るわけにいかないのです。自治庁の方で自治体の首長に対して、君のところの定時制はこの程度に統廃をしたらどうか、それから義務制の教員はこの程度に減らせ、どこの県と比べればこうだからどのくらい減らせという相当強い指導と暗示を与えておるんですね。そうすると首長は再建計画の承認を、あるいは変更を求めるために、それをもって帰る、もって帰ると今度は教育委員は自分らが任命した教育委員ですし、しかも教育委員会法の改正に当って御承知のように原案送付権がなくなってきておるわけです。だから教育行政の責任にある教育委員会は何ら抵抗はできない、こうきておるわけです。そこでこの教育委員会法あるいは地方財政再建整備法、いずれもこれは内閣提出で国会に出され通過した問題の法律でございますけれども、この法律の私は立案過程においては政府部内においては、文部省としてはやっぱり私は手ぬかりがあったんじゃないかという点を私は今の運営状況から結論づけざるを得ない。そこで私は文部大臣に伺いたい点は、この地方財政再建整備法、再建団体に対する適用、これとそれから地方教育委員会法の地方自治体における運用について格段の私は考慮を払うべきじゃないか、特にその突っかい棒はやはり文部大臣が私は一はだ脱ぐべきではないか、これが第一段階と、さらに私は今の運営状況等からみてこの二法というものは教育をやはり守るという立場から法そのものを再検討する必要があるのではないか、かように私は考えております。この義務教育の振興にしても、あるいは今質疑されている勤労青年教育の振興にいたしましても、教育の内容を含むところの教育方針に財政面があるわけですが、定時制なんかにはもちろん先般四割負担というような国庫補助制度が打ち出されたけれども、一応大蔵の予算で削られたわけですけれども、一番私は大事な点は地方財政と教育予算との関係にしぼられてくるわけで、その点を私はあなたが在任中にぜひとも今から方針を打ち出して解決してもらいたい、それに対するあなたの方針、抱負というものを一つしっかり承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/14
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015・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 地方の財政と教育の関係は最も大きな問題であります。地方財政のうちでも教育に関する予算というようなものは非常に大きな部分を占めておるわけであります。どちらの側から申しましてもこれは大事な問題になってくるわけであります。私は先ほども申しましたのでありますが、教育の水準を低下させてよろしいというような考えは毛頭持っておりません。あくまでも教育の水準は維持したいと考えておるわけであります。その意味におきまして私は努力しなければならぬというので今考えておるような次第であります。その点は一つ御安心を願いたいと思うのであります。なかなか、財政が苦しいためにいろいろな問題をあちらこちらで発生しておりますことは残念に存じておりますけれども、あくまでもこれは地方、まあ県庁と申しますか、地方の方の当局と、それから教育委員会の当局と、これがお互いに良識をもって協調して進んでいくべきではないかと考えております。県といたしましてもただ財政さえできればそれでいいというだけのものじゃない。知事としては当然その地方の教育の振興ということは、これは考えなくっちゃならぬはずのものなのです。そういう意味におきましてあくまでも両者の協調によって問題を円満に解決していきたいと考えるわけであります。基本といたしましては今申しましたように、教育水準の低下は、できるだけこれは防止していくと、なるべくこれの向上をはかっていくというふうに努力いたしたいとかたく考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/15
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016・矢嶋三義
○矢嶋三義君 自治庁の圧力をどうしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/16
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017・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 自治庁につきましても、これは見る人によっていろいろ見方もあろうかと思うのでありますが、決してその教育水準を低下してまでやろうというふうな考えでやっておると私は考えません。しかし個々の問題につきましては、いろいろ問題があります際には、むろん文部省といたしましても自治庁に十分連絡をいたしまして、是正すべき点は一つ是正してもらいたいと考えております。
それから法の問題についてのお話もございましたが、私はこれは今日でき上っております法律につきましては改正するというふうな考えはございません。これが運用をとにかく間違いないようにうまく一つ運用してもらいたいと念願しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/17
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018・松永忠二
○松永忠二君 それじゃもう一点聞かしていただいて……。
大学入試、高校入試に関連し、なお大学の問題について二、三お伺いをしたいのでありますが、御承知のように大学入試の志願者に対して大学の学生収容量が非常に低いというようなこともあって、非常にこの大学入試の問題が高等学校の教育というものの実情をゆがめておるというところが多いわけであります。これはまあ説明をするまでのこともないわけであります。なお加えるに、大学における学力検査の方法というものがほとんどその大学独自に実施をされて、その問題等もいたずらに高度な、困難なものが出されてきておる。そういう点についても高等学校の教育を行なっておる者から非常な非難も出てきておる現状であるというふうに思うわけであります。で、まあこの問題は非常にむずかしい問題であるけれども、現状には、たとえば学力検査の一つの方法として新たに考えられた適性検査というものもほとんど廃止をされておるというような現状であるわけでありまして、こういう問題について何らか是正をしていかない限り高等学校の教育を予備校化するということを防ぐことは非常に困難であるというふうに考えるわけであります。高等学校の入試の問題についてもまあ各地において準備教育が非常に実施をされて、果してその義務教育の最後の段階としての中学校の教育として正しいものであるかどうかという点についても非常な疑念を抱かざるを得ないわけであります。大学、高校入試をはさんで高等学校教育と中学校の教育という問題について憂うべき点が非常に出てきている。決してこういう問題について即効的な効果のある方法というものはお互い持ち合せていないけれども、何らかそこに対策を立っていかなければできないということを感ずるわけであります。そういう点については、考えようによってはまた一、二の方法もあるわけで、たとえば大学の入試を国家が統一して国立にして実施をしていくというような点についても、外国等においては事実上実施がされてるという面もあるわけであります。あるいは大学間における学区制というものを、一体どういうふうに考えていくべき問題であるかという点も出てくるわけであります。また高等学校については学区制の堅持ということをして学校差を是正していくというような点についても考えられていくべきであるのに、現状はむしろだんだん学区制が崩壊をされてるという現状をあわせて考えてみたときに、決してこれはこういう妙薬がありますということではないけれども、この大学、高校の入試について、一体これが現在の教育をどういうふうにゆがめているかという点について、文部大臣はどういう見方をお持ちになっておるのか、そしてまたこれを是正することについて何か具体的にやはり対策を立っていくべきだというふうにお考えになっているのかどうかという点についてまずお伺いをしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/18
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019・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 大学なり高等学校がそれの入学の試験をめぐりましていろいろ問題のあるということを私も聞いておりますし、なかなか困った問題だと実は考えておる次第であります。この問題はいろいろ原因するところがあるのではないか、さようにも考えるわけでございます。ただいま示唆に富んだ御意見がございましたが、やり方によって是正せられる点もございましょう。同時にまた大学を卒業した者と、これを受け入れる社会の状況と、その関係において、大学は、少くとも卒業生はこの程度の力を持ってほしいというような要求から来た問題もあるいはあるのではないかというふうにも考えますので、試験のやり方、あるいはまた大学なり高等学校なりにおける学力をつけるその度合いの問題、いろいろと検討すべき問題があるように考えられるのであります。大学入試のやり方につきましては文部省内で大学側と高校側と、その他関係者におきまして研究協議会を設けまして、いろいろ研究をいたしております。その結論に基いて大学側に要望もいたしておるような次第であります。大学側の要求と高等学校側の意見との間には若干の食い違いもございまして、目下検討を続けておるような次第でございますが、この問題はかなりむずかしい問題と考えるのでありますが、文部省といたしましても今後十分検討を続けさしていただきたいと思うのでございます。なお詳細につきましては政府委員からお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/19
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020・松永忠二
○松永忠二君 いずれまたこまかいことはお聞きするといたしまして、もう一つ大学に関係したもので、大学の卒業生の理工科系のものが、就職については非常に不安がない。ほとんど充足されてるのに、法文科系の学生についてはむしろ過剰である。それであるのに私立大学のあるところでは定員をはなはだしくオーバーして入学を現実にはしているという実情もあるわけであります。そういうようなことから考えてみまして、やはり何か計画的な養成というものが必要ではないか。そういう点について何らかやはり対策を立てていかないで、このままで進んでいくときにはやはり国家が考えてるその養成というものと、非常にこう違った形が出てくるのではないかという点が考えられるわけでありまして、そういう点についてやはり何らかの対策を立てていくべきではないか。そしてまた無責任に定員をふやしていって、その一体養成に対する施設とか、そういう面の充実が果してなされているのかどうかということについて、一体現状のままでその定員をふやすことをそのまま認めていくという、こういうやり方が責任ある、一体大学生の養成ということに当るのかどうかという点に相当疑念を持つわけであります。こういう面におけるいわゆる養成の計画とか、あるいは養成に当っての、強い言葉でいえば監督とかいう面についての、一体考え方をどういうふうにお考えになっておられるのか、その点をもう一点お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/20
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021・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 大学において学生を入れまして、これを養成していくということにつきましては御承知のように、国立大学ではだいぶ今日では趣きが変ってきて、理工科系がかなり比重において多くなっておるということは御承知の通りでありますが、私立大学におきましてはお話の通りに法文系が多い。従って就職戦線においてこの法文系が過剰の状態を示しているということはお話の通りだと思います。計画的に学生を養成するということの価値、これには私はいろいろと検討を要するものがあると思う。一つにはやはりそれぞれの学生がいかなる道を選ぶか、いかなる方向に進みたいかというようなことも考えて参らなければなりませぬし、また学校教育が必ずしも全部が全部までいわゆる何といいますか、就職、あるいはまた産業の実態というものと常にぴったりと合わなければならぬものかどうかという点につきましてもいろいろ御議論のあるところだと私は思うのでありますが、しかし今日の社会の需要から申しまして、必要とする人材が思うように得られないというふうな点もあると思うのでありますが、政府といたしましては特にこの養成の計画というふうなものを現実に持っておるわけじゃございませんけれども、雇用審議会というふうなものも設けられましていろいろ雇用問題につきましての検討も行われるというふうになっておりますので、その際には文部省もこれに参加いたしまして、学生の養成等につきましてはできるだけ社会の需要にこたえるように進んで参りたいと、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/21
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022・矢嶋三義
○矢嶋三義君 関連して簡単に一つ伺いますが、大学を初め、各教育間における入学試験の問題というものは、日本の教育の問題においては非常に重要な、きわめて悩ましい問題だと思うのです。で、簡単に私は一言だけ伺いたいのですが、これをいろいろな角度から考えた場合に、いろいろの考え方があるのですが、私承わりたいのは浪人の合格者が現役より多いというのは、何と言っても異常じゃないかと思うのですが、私立大学においては私はとやかく申しません、国立大学だけでも何らか申し合せとか何とかで、浪人入学者が現役よりこえてはならぬというような、ずいぶん思い悩んだ一つの私の考え方なんですが、そうすることのほかにいろいろ考え方もあるのですが、私は一つの考え方があり得るのではないかと思うのです。この入学試験の問題というのは重大で悩ましい問題で、これを放置しておくというのは、日本の教育には重大な問題となってくると思うのです。そういう考え方は大臣考えたことはございませんか。これは異常ですよ。浪人が現役より多く入学するということは……。学制そのものはこわれてしまう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/22
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023・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 入学試験の問題につきましてはお互いに昔から悩み深い問題でございまして、今日の状況は矢嶋さんが御指摘になりましたように、きわめて異常な状態でございますというふうに私も考えるのでございます。お話にもございましたが、まことに悩みの多きこれは問題でございまして、容易にその合理的な解決を見出すということは困難ではないかと思うのでございます。いろいろ各方面から検討いたしまして、何とか今の状態を緩和する、そういうふうなことに検討を私は進めて参りたいと思うのでありますが、事はきわめて大切なことであり、しかも非常にむずかしい問題でございますので、この点につきましては委員の各位の方々からも一つ御教示を願いたいと考えている次第でございます。浪人の合格者の率と新卒業生の合格者の率をどうというようなことまでは実は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/23
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024・矢嶋三義
○矢嶋三義君 よく研究してみて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/24
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025・松永忠二
○松永忠二君 今の点で少し、お答えのなかった点でありますが、一体、特に私立大学、国立でもことしは理工科系について一科で十人ふやすというようなことが現実に行われているという話を聞いているんです。これが歴年続いていった場合には、施設とか、そういう定員とかというものはどういう関係になってくるかという点が出てくるわけであります。特に私立においてはそういう傾向が非常に多い。そうなると大学の設置の場合においては、これを法によって規制していくということをやっているけれども、定員が増加をしてきて、その設置基準との間にアンバランスが出てきても、それをただ単に私立の大学におけることであるからということで放置をしておくということになれば、これは設置当時とはだいぶその内容が違ってくるということになって、責任ある大学の学生の養成というものはできないという結果が出てくるではないか。国立でも現実に余裕のある理工科系の学科の収容人員はどのくらいだという、設備だとか、そういう面の御調査をなさってやったにもかかわらず、これをオーバーするいわゆる生徒募集を現実にやられているということが、国立大学においても行われている、私立においては一そうそういうことが行われているので、こういう点についてやはり、決して私立の大学をどうこうじゃなくて、私立の大学は私立の大学における声価を高めるという意味からいっても、何らかのこれに措置をする必要があるのではないかということを私はお尋ねしたわけです。こういう点についてどういうふうにお考えになっておるのか、再度お答えをわずらわしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/25
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026・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) その問題につきましては、よく一つ実情を調べまして、御指摘になりましたような、あまりおかしなことになっているといたしますれば、これは注意を喚起する必要もあろうかと考えるのでございますが、十分一つ実情を検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/26
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027・湯山勇
○湯山勇君 ちょっと関連して……、ただいま大学の入試あるいは大学の制度、運営、そういうことが問題になっているわけでございますが、先国会におきましては、そういう大学の制度を検討するために臨時教育制度審議会を設置するという構想が政府から発表されまして、その当時の情勢としては、大学の問題は非常に重要な問題だし、むずかしい問題だから、各界の人を集めて一年以内に結論を出すという構想でございました。ところがその法律の内容はきわめて憂慮すべきものがありまして、私どもも反対をいたしますし、また国会の諸情勢によって廃案になったわけでございますが、しかしあの法律が廃案になったからといって、大学の制度あるいはその他をこのままほうっておくということではなかったはずでございます。今お話のようにずいぶんいろんな問題が重なっておりますので、これはやはり新しい文部大臣としてもきわめて重要な、しかも早急に何らかの方策を立てなければならない問題ではないかというように考えますが、その点について大臣はどういう構想をお持ちになっておられるか、特別な機関をお持ちになるか、あるいは中教審等現在ある機関の運用、あるいはそれのさらに拡充したもの、そういうようなものによって検討されるというような御構想でもお持ちになっておられるかどうか、あるいはそういうものに対して諮問をなさるかどうか、さらにそれによっていつごろまでに結論を出したいと、そういう御希望を持っておられるかどうか、そういう差し迫った一、二の問題についての御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/27
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028・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 昨年の二十四国会に政府が提案いたしました臨時教育制度審議会法案、これに関連しての御質の問ように伺ったのですが、臨時教育制度審議会におきまして審議したいと政府で考えておりました事項は、いずれもきわめて重要な、しかも大きな問題であったように承知いたすのであります。もちろんそういうふうな点におきまして問題があればこそ、当時の政府といたしましては臨教審というものを考えたと思うのであります。私といたしましてはその問題がないのだとか、検討する必要がないのだとかというような考えはいたしておりません。もちろん重要な問題でありまするだけに、今後鋭意検討をしなければならぬ問題だと考えておりますが、たださような問題につきまして、私自身の心組みといたしましては、まずもって一つ文部省で問題を検討いたしまして、どこがどうであった、どこからやっていかなくちゃならぬというようにもっと具体的に検討してみたい。そのためには文部大臣のところで活用し得べき機関はこれを活用いたしまして、文部大臣としてはこう考える、あるいはここが問題だというようなものをある程度のものをもちまして、その上で必要があれば、大審議会の設置を一つお願いするというような考え方のもとに、今回は臨時教育制度審議会法案の提出を見送ることにいたしたような次第であります。問題はきわめて重要であろうと考えますので、十分一つ具体的に頭を固めて参りたい、さような考えをいたしておる次第でございます。いつごろまでにと仰せられますが、もちろんなるべく早く結論を得る必要のあることは当然でありますが、もちろん問題が重要でありますだけに、あわてて妙な結論を出さないようにしたい、こういう心組みで進んで参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/28
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029・岡三郎
○委員長(岡三郎君) 今の点につきましては、なお昨年末及び最近において、当委員会としては委員派遣をいたしましたが、その中の報告書にも重要報告として出ておると考えますので、前回の委員会その他で決定した通り、これは十分一つ当委員会で検討して、さらに文部当局に質疑をしていきたいと思いますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/29
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030・高田なほ子
○高田なほ子君 当面の文教政策に関する大臣のお考え方に私は共感を持っているのです。知育、徳育、体育の調和をとっていく、こういう点から考えますと、この徳育の問題というのは、大臣の仰せのように全く私は重要な問題と思います。歴代の文相はやはり徳育の問題については、るる御心配があったようでありますが、私をして言わしむるならば、道徳に関する問題、この問題について文部当局のとられた方策はかなり消極的な面が多かったのではないか、つまり道徳を向上させるためには消極的な面、また積極的な面、この二つの面があるように私は考えていますが、文部当局はこの消極的な面に主力を注がれ、つまり補導の面に主力を注がれ、あるいは修身科の復活というようなきわめて消極的な面に目を向けられていたように考えられます。で、私が積極的な面としてぜひ灘尾文部大臣に御協力を願いたい、またお考えを願いたいと思う点は、どうしても文部当局として考えてもらうことは、今日の頽廃した社会の中で、子供たちがその社会環境の中で、どういうふうに守られなければならないか、これが非常に重要な問題だと思う。つまり安定した健康な社会環境を作るためにどうあるべきかということが、今日の積極的な文部当局の方策として考えられなければならない、このような観点を持っておるわけであります。こういう前提で、抽象的な論議を繰り返しておりましても、これは問題になりませんので、私は若干の具体的な問題をあげて文部大臣が当面のこうした問題に対していかなる御所信をお持ちになり、いかなるこれに対する対策をお持ちになるか、こういう点について一問だけ御質問を申し上げてみたいと思います。
過般来、読売新聞が取り上げておりますが、千駄谷ケの鳩森小学校の教育環境浄化の運動であります。これは新聞によりますと、先日も、衆議院文教委員会が取り上げ、文部当局はこれに対して早急に調査をされたように承わっておりますが、クラゲに囲まれた小学校という見出し、温泉マークと、鳩森小学校のPTAが非常に献身的に父兄が立ち上って戦っている、学区内に三十一軒も怪しげな旅館があるということ、そしてその旅館が年次を追ってふえていくということ、このために童心が傷つけられていくということ、学力が低下していくということ、社会環境の中で子供たちがいろいろな姿で冒されていくというこのことに対しては、地元の親御さんあるいは教師の問題だけではなく、御承知のように売春防止法は四月一日からこれは実施の段階に至りますが、これは内閣としてもお考えの通り擬装転業が各地に行われ、いかがわしい旅館がこれに見合うような転業の方策がとられているとすると、学校の周辺にもそういう問題がどんどん起ってくるということは単にこの鳩森小学校一つの問題ではなくて、全国の児童の教育問題として真剣に取り組まなければならぬ問題のように私は考えておるわけであります。詳細の御報告は多分昨日御視察に行かれた当局から、大臣のお耳にすでに入っておるかと存じますので、時間の関係上、私はこの実情を省きたいと思いますので、この問題に対する大臣の御所信並びに昨日視察をされた実態について御報告をわずらわしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/30
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031・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 鳩森の問題につきましては、実はまだ私、報告を聞いておりませんので、一応その報告を先にさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/31
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032・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 先日の衆議院の文教委員会におきまして、この渋谷区の鳩森小学校の問題について御質疑がございました。そのときに文部省としては教育環境の維持あるいは整備ということにつきましては、重要な関心を持っておりますが、ただ現在の法律制度の建前から申しますと、それは非常にむずかしい、困った問題でありまして、たとえば現在の建築基準法から申しますれば、文教地区の設定というような制度がございまして、この文教地区を設定した場合にはその文教地区内においては、指定された風俗営業に類するような施設あるいは設備等はなし得ないというふうになっておりますが、しかしすでに地区内にできたようなものについてはこれを除去する、あるいは整理するというようなことは、この法律の制度上からは考えられておらないような状況でございます。まして、現在鳩森小学校の地域は東京都の文教地区に指定されておりませんので、そういったことができない実情を衆議院の文教委員会においてお答えを申し上げたのでありますが、しかしこれが非常に重要でございますので、文部省としても東京都と連絡をとりまして調査するというふうにお答えしたような次第であります。昨日文部省の者が二名、それから東京都の教育庁の者が一緒になりまして、ちょうど私は午前、午後文教委員会がございましたので同道できませんでしたが、調査をいたしてもらいました。まず渋谷区の教育委員会の方へ参りまして、最近までのいろいろな実情、経過等を聞きました。それから問題の鳩森小学校に参りまして校長先生からいろいろな実情を聞いたのでございます。大体私の受けました報告によりますと、あの鳩森小学校の近傍におきましてはここ二、三年間に急激にいわゆる旅館がふえてきている。で、学校の方で言われるのは、これは昭和三十二年から売春防止法が実施され、刑事処分については三十三年からでありますが、とにかく近く売春防止法が発効して実施されるということに対して、一部のそういった関係の者が旅館業に転向するというようなことでこういうふうに集まってくるのじゃなかろうか——推測でございますが、そういったことを申しておったようでございます。で、なぜあの地域に集まってくるかと申しますと、御承知のようにあの地域は新宿御苑の裏でございまして、神宮の外苑と新宿御苑の間でございまして従来非常に閑静な場所である、それから新宿と渋谷の間のちょうど中間に当っておりまして、交通の便利から言いましてもきわめて便利な地域であるというようなことで、この場所がそういった方面から選ばれたのじゃなかろうかということでございます。最近の渋谷区内の旅館営業の情勢から申しますと、渋谷の区内には大体二百四十軒程度の旅館があるそうでございますが、そのうち約半数の百二十軒が代々木、千駄ケ谷地区にある、そうしてそのうちの約半数近いものが鳩森小学校の近傍に集中しているというような状況のようでございます。これは旅館営業についてはもちろん都の方の許可が要るわけでございますが、正規の旅館営業の許可を受けてないと申しますか、他の名目で建築許可を受けてその看板をかけかえるというようなものもあって、それの取締りがなかなかできないというのが実情のようでございます。で、学校の当局者から聞きますと、最近こうした旅館の集中の関係から、自動車の往復がまず非常にひんぱんになってきて交通上からも児童に対して危険がある、それから騒音等もかなりひどくなってきている、それからそういった風俗営業的な旅館が多いものでありますから、子供がそういう方面に特別な好奇心を持って困る、それからそれが原因であるかどうか、因果関係であるかどうかわかりませんが、従来に比べて多少子供の犯罪類似の件数が多くなってきている、それから学校の授業中でなくて放課後についても相当悪い影響があるというような話があったようでございます。で、区の教育委員会といたしましてはこれは文教地区の指定という方向にもっていきたい、こういうことで、すでに二月の十五日の渋谷区の文教委員会でそういった議論をいたしているようでございまして、これが区として認められることになれば都を通じて建設大臣に文教地区設定の申請をしたいということのようでございます。
ただ先ほど一番初めに申しましたように、文教地区の指定がありましても、今後新設されるものにつきましてはこれを、建設を認めないということができるわけでございまして、今後の増加防止はできるわけでございますが、既存の旅館については、これはまあこれを除去するということが非常にむずかしい問題で、ほとんど不可能ではないかということでございます。
なお、売春防止法の関係の脱法ということになりますと、これはちょっと文部省としてどれだけの措置をとるということは困難でありまして、関係の警察なりあるいは検察庁なりが実際の実情を十分把握して、それぞれ必要な措置をとらなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
簡単でございますが、視察の状況を申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/32
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033・高田なほ子
○高田なほ子君 ただいま状況の御報告がありましたが、非常に心もとない御報告であったようであります。これについて私は大臣の御見解を承わりたいのでありますが、現在この鳩森小学校は学校周辺の環境がもう非常に売春街に変貌している。温泉旅館街に変貌している。そうして神武景気とともにますますアベックはんらんがひどくなっている。やむを得ずして学校当局は正門を使うことができなくなっている。正門から学校へアベックで乗り込んだ自動車が校内に入ってきて、帰るときもそこを回って帰っていくというようなことで、子供たちは現在裏門から通学をしている。裏門の通学などということは、これはまことに何とも言いようのない子供に精神的な悪い影響を与える。あるいはその学校の庭に衛生具が散乱している。紙くずは遠慮なく吹き飛んでくる。社会の空気、学校を囲むところの社会の空気全体がもう狂ったような空気になっている。そうして子供の遊びは今のぞきごっこという遊戯が非常にはやっている。そしてまたアベックがどこぞの旅館はどこというふうに尋ねれば、子供だからついやっぱりその旅館に案内する役目を勤める。親がこの状態を見て、たまりかねて、ほんとうに財産を投げ出して、孟母三遷の教えではありませんが、やむを得ずして住居を変える。しかも今御報告にありませんでしたけれども、鳩森小学校の子供の転校率が非常にふえてきている。最近ふえてきているというように容易ならざる状態に立ち至っているのでございます。こういうような深刻な、容易ならざる状態であるということについて、私はただいまの御報告は非常に子供の立場、親の立場という点について御報告がなかったということに私はむしろ遺憾の意を表したい。だから、贅言のようでありますが、特に私は補足をして、大臣の耳に入れるために、私はこういうことを申し上げる。しかも曰くです、これは文教地区設定ということも一案ではありましょう。けれども、文教地区を設定した場合でも、既存の旅館に対しては手をつけることができないのだという断定を下しておられる。もちろんこれは文部当局だけで処理できる問題ではありませんが、不当な営業をする者に対しては、行政処分をすることができる法文だってあるわけでございます。だから文部当局がほんとうに教育の環境を守っていこうとする熱意があるならばこうした行政処分までもあえて推進し得る一つの力に、私はなり得るということを確信している。また文部大臣もこういったような問題についてはほんとうに胸を張ってこういう問題を取り上げてなさったなら全国民があなたを支持される。そうしてそれでこそ初めて日本の文部当局の存在意義が私は明らかになるのではないか。しかもこれは明治神宮の近くです。明治神宮の内苑、新宿御苑に囲まれた都心の静かな住宅地として知られているところに起っているところの問題です。この四月から売春禁止法が一部実施されようとしているやさきに、皮肉にも明治神宮の森影で小学校を囲んでの桃色環境が新たに現出しているという問題などはこれは単に一小学校だけの問題ではなく、全日本の問題として大臣がこれに対してどういう一体主張を持って対処されるか、私は特にあなたの御決意、そして今後これに対してどういうふうにしたいという一つの理想です、お聞かせを願いたい、こういうふうな質問をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/33
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034・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 高田さんのまことに御熱心なお話を伺いまして、非常に感銘を受けているのであります。さようなことはお話の通りに子供の教育上よろしくないということははっきり言えることであろうと思うのであります。いろいろ報告もございましたが、なお私といたしましては十分一つ実情につきましても検討を遂げたい、そうして今日の法律で果してこれがうまくいくのか、いかないのかというような点についても検討してみなくちゃならぬと思いますが、何と申しましても法の権力でかれこれするというようなことは必ずしも感心したことじゃございません。やはり業者の自制心ということもございましょうし、また社会、世論の力というようなものも、これは大いに起って参らなければならぬはずのものじゃなかろうかと思うのでございます。現行法につきましても検討もいたしますが、また売春防止法との関係等につきましても、いわゆる売春防止法をもぐってやっているというようなことは、これは断じて許すわけにはいかない問題だろうと思うのであります。そういうふうなことにつきましては関係当局とも連絡いたしまして、法の励行をはかって参りたい、かように考えておる次第であります。いずれにいたしましても事はきわめて大切な問題に触れてのお尋ねと考えますので、私といたしましては微力ではございますけれども、かようなことが各地に起ってくるということのないように、それぞれ関係の人にもよく相談をして参りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/34
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035・高田なほ子
○高田なほ子君 大へん御熱心な御答弁をわずらわしまして非常に私も心強く存ずるわけであります。あえて一言を申し上げさせていただきたいならば現行法のこれを守っていくという方策も一つの方法でありますけれども、さらに一歩進んで、建築基準法の中を見ましても教育環境を守るための一項というものは何もうたわれておらない。現行法ではこれは守り切らんのであります。従ってやはり建築基準法なりその他関係法令の改正にまで文部当局は積極的に乗り出されて、教育環境に阻害のあるものを認めることはできないと、また現にそういう阻害のあるものに対しては、強い行政処分が発動できるような、積極的な態度に乗り出さないことには、なまやさしい問題ではこれを解決することはできない。不肖私もすでにこの問題については、たびたび当委員会でも発言もし、また参議院文教委員会は党派を除いてこの問題には努力をして下すった伝統を持つ委員会であります。従いましておそらく私のあとに続いて、それぞれの議員さんから関連の御質問があろうかと思いますからくどく申し上げませんが、現在旅館業法で許されているものは、法的に許されているものが脱法的に赤線の仕事をしている場合があっても、それが公然と認められる、つまり国家公安委員なり地方の公安委員なりというものがこれは認めているというものが、岩手県、秋田県、山形県、山梨県、静岡県、大阪、兵庫、和歌山、島根、岡山、香川、愛媛、高知、宮崎というように何とも手の下すことのできないというのが現実だろうと思う。一そうこの傾向ははんらんするでありましょう。東京都の旅館進出のこの数字的なデータを参考までに申し上げれば二十五年の十一月の調査によると千三百九十八軒であったものが二十六年の十一月には、すでにその倍の二千四百二十九軒にまでふえている。特に問題のある渋谷区は、昨年は六十九軒であった。ところが、本年度の十一月には一躍二百九軒というべらぼうな増加率を示している。これでは子供が悪くなるのは、これは当然と申さなければならない。どうしてもこれは大臣にふんばっていただかなければならない。どうか一つ全国的な問題として、非常に心配をしている母並びに父の立場、この間にあって反対運動を続けている先生方は、ややもすれば赤とかあるいは急進分子だとかいう、そういうそしりの中に窒息しそうな状態にあるということもくんで下さって、文部大臣が先頭を切って本問題解決のために当っていただきたい。私はこれを御要望を申し上げます。特に管理局長に要望したいことは、どうも昨日来あなたの御答弁は、非常に官僚的な感覚であります。教育は官僚的な感覚ではこれは片づかない。もう少し、あなたも人の子の親であるならば、この問題のために、片づかないというようなことではなく、文部当局としても積極的に研究しておりますぐらいの報告はしてほしかった。もう少し大臣とともにあなたも熱意を持っていただきたい、これを要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/35
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036・矢嶋三義
○矢嶋三義君 ただいま高田委員から、教育環境浄化の問題を取り上げて、風俗営業を中心に所信がただされたわけですが、確かにこれは骨の折れる大きな問題だと思いますが、先ほど高田委員に答えられたように、文部大臣の御健闘を見守りたいと思います。私は風俗営業から離れて、今度は騒音の角度から一つお伺いしたいと思うのです。これはかつて小林局長に伺ったことですが、私の期待したようなお答えができなかったので、一つこの際に大臣に伺いたいと思うのです。いずれも大事で、いずれもむずかしい問題ですけれども、この騒音の角度からの教育環境を守るという問題は、風俗営業、これの方が影響は深刻ですが、これよりか私は取り扱いやすいじゃないかと思っております。
質問したいことは、私は外国に旅してみて、日本はなんと狭いところに人間がたくさんおってやかましいということを痛切に感じておるのですね。実に欧米諸国は、車が多くても、クラクションを鳴らすわけではなくて、きわめて静かである。この狭い土地にこれだけの人間がああいう騒音の中におったら、神経衰弱になってだいぶ命を縮めるんじゃないかということを感じて帰った。そういう国全体のことはさておいて、教育環境の静粛ということ、その立場から、土地が狭い関係でもあるわけですが、営業の自由という立場から、各学校の近くに映画館とかパチンコ屋も相当建ちます。それから、工場ができることは国の経済力伸張という点からけっこうなことなんですが、工場あたりがすぐ学校の近くにできて、じゃんじゃん音をたてている。それから一番嘆かわしいのは、基地におけるジェット機の音ですが、これは日本だけで解決できない問題ですが、こういう教育の場における騒音というものはゆるがせにできぬことだと思うのです。これも法的にいろいろ問題があることは承知しているわけですが、学校の教育施設から何メートル範囲内には映画館とか工場とかそういう過度の異常な音をたてるものは建築してはならないという程度の規制は、そう不当なものではないと思うのですがね。その程度のことは私はやれるんじゃないかと思う。これは閣内における文部大臣の努力次第では私はできることではないかと思うのですが、そういう点大臣はどういうふうにお考えになっておられるか御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/36
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037・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 教育環境が静粛であらねばならぬということ、これはお話の通りでございます。そうありたいと実は私もそう考えます。ただ現実問題といたしまして、これがいかなる方法によってどういう程度にやれるかということになりますというと、これは実際問題としてはなかなかむずかしいと思います。その方面のことにはまだ私も暗、ものでありますから、十分一つ研究さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/37
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038・岡三郎
○委員長(岡三郎君) ちょっと文部大臣にお尋ねといいますか、今高田さん、矢嶋さんからあったわけですが、昨日参議院の文教委員会があって、小林管理局長もいけなかったと思いますが、今の文部大臣のお答えからいっても、重大なる関心を持って、子供の悩み、父兄の悩みを解決していかなければならぬと、法的規制の問題も非常に重要だけれども、しかしそれを乗り越えて何とかしなければならぬというお話があったのですけれども、文部当局としてはやはり積極的にこの悩みというものをどう取り上げていくかという点について、やはり国民の要請にこたえる政治的な問題もあると思うのです。文部大臣みずからこの現地調査といいますか、視察といいますか、そういうふうなお考えがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/38
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039・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 今調査をする考えがあるかというお話でございますが、実は今まで考えておりませんでしたが 都合が許せば一つ一ぺん見てもよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/39
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040・岡三郎
○委員長(岡三郎君) 見てもよろしいというのではなくて、一つ積極的に……、大臣健康もちょっと悪くされて、また非常に公務多忙だということはよくわかりますが、学校自体も非常に苦しんでいるし、毎日々々と言っていいほど転校者が出ていると、今年も四十何名も子供が転校しているというようなことは、やはりこれは文教の府にある大臣としては見のがすわけにはいかぬと、すぐこの問題が立ちどころに解決する問題でないという点もわかるのですが、まず一歩乗り出してという点で、積極的に大臣のそういう面における調査、視察といいますか、そういう点が要望されると思うのですが、もう一ぺんその点一つ大臣お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/40
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041・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 別にこだわって返事を渋っておるというようなわけではございませんけれども、一つ御要望としてとくと承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/41
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042・湯山勇
○湯山勇君 私も数点この際大臣にお尋ねいたしたいわけでございますが、その最初として、ただいまの学校環境に関する問題、これはやはりいろいろ御努力はされておるとは思いますけれども、足りないところがたくさんあるのではないかというような感じを持ちます。私は先般ニューヨークの方を見て参ったのでございますけれども、あれだけ自動車の交通の激しいところで、しかも昼間子供たちを遊ばせるために、幾つかの通りが全部自動車交通を遮断しております。そういうことをやっているところもあるわけでございますから、騒音の問題にしても、今高田委員から取り上げられた問題にしても、法の問題は別としても、もっと話し合いとか、あるいは政治的な解決とか、そういう面で解決の余地が多分にあると思いますので、これは大臣の御答弁のように御努力をぜひお願い申し上げたいと思います。
これと若干関係がありますのは、今日のテレビの問題でございますが、テレビはだんだん普及して参りますし、今後もそれの普及の情勢にあります。で、ある面では子供たちがテレビを見て勉強ができないというような声もありますし、あるいはまたテレビの放送の内容そのものについてのいろいろ批判も出ておる面もあるようでございます。ところが最近新聞等で見ますと電波監理審議会でございますか、そこで新しく放送のチャンネルでございますが、それをふやして、東京では五つか幾らかふやしまして、その中に特に教育のための波、教育放送の波をとるかとらないかが議論になっておるようでございます。アメリカ等でも最初は、いい波のところは全部商業放送がとりまして、気がついて教育放送にとろうとしたときには、もう波長の短かい、非常にむずかしいところしかとれないというようなことで非常に困ったという実例もありまして、将来相当長期にわたるこの対策として、今非常に便利な、使われておる波の中から教育放送をとるかとらないかということは非常に重要な問題だと思います。そのとった教育放送の波をどこが使うということについては、今これを論議する段階ではないかと思いますが、しかし私はただいま問題になっておるような点から考えても、この際もうこれ以上ないわけでございますから、ぜひ現在のVHFの波の中から一本の教育放送をとるということについては、これは文教の責任者である文部大臣としても御努力を願えるものではないかというように考えますが、これについて文部大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/42
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043・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 今日、技術的に何と申したらよろしいかよくわかりませんが、チャンネルの中で教育放送のために一つ充てたいという話があることはよく承知いたしております。私どもといたしましても諸外国の例を実はよく存じませんけれども、わが国といたしましてもりっぱな教育放送があってよろしいではないかというような考えをいたしておりますので、この問題については文部省としましても重大な関心を寄せておるような次第でございます。私個人といたしましても、郵政大臣にも一つりっぱなものをやっていただきたいというような話をいたしておるような状況でございます。この成り行きにつきましてはよく一つ連絡を保ちまして、できるだけいいものができるように努力してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/43
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044・湯山勇
○湯山勇君 ただいまの問題は、これはチャンネルがそれだけしかないわけでございまして、それをはずせばあとはウルトラの方しかとれないということになります。そういたしますと受信機の構造も全然違いますし、それから像も不明瞭になるということでございますから、一つただいまの大臣の御答弁の通りに積極的な御努力をお願い申し上げたいと思います。
次に昨日来問題になっております教育水準の維持の問題でございますが、これは地方財政との関連においていろいろ困難性があるという大臣の御答弁は、それはそれとして一応わからないことはございませんけれども、しかしずっと御答弁の底を流れておるのは、大臣としてもぜひ教育水準の低下を防ぎたい。むしろ向上の方向に持っていきたいという御熱意はおありになりますが、しかし何といっても地方財政の現状を無視することはできないというような意味も多分に含まれておると存じます。しかしこれは今日の地方財政の実質的な権限を特に再建団体においては、自治庁が握っておるような実情におきましては、教育水準維持の実権がむしろ自治庁長官の方に移っているのではないかというような私は気持さえするのでございます。しかしながら法的にはいろいろ政治折衝、あるいはその他の面ではいろいろな問題があり、大臣の御発言も了解できますけれども、法的には明らかに学校教育法施行規則の第十八条に「小学校の一学級の児童数は、五十人以下の標準とする」。こう明瞭に規定されております。それから五十五条に、中学校は小学校の規定を準用する、こうなっております。さらにもっとその基本をなすところの学校教育法の二十八条に、「小学校には、校長、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない。」これははっきりいたしております。「但し、特別の事情のあるときは、事務職員を置かないことができる。」従ってどの学校も養護教員は置かなければならない。これははっきり法律で明記されております。そういたしますと、たとえ地方財政がどうあろうとも、この法によって示されたもの、規則によって示されたものは少くとも確保しなければならない。また確保させなければならないのであって、同じく学校教育法の第十四条には、「学校が、設備、授業その他の事項について、法令の規定又は監督庁の定める規程に違反したときは、監督庁は、その変更を命ずることができる。」ことも明瞭になっております。そういたしますと、たとえ地方財政がどうあろうとも、この規定は文部大臣の責任において、監督庁の長官である文部大臣の責任においてぜひ守らさなければならないし、守らない場合には、大臣は守らせるように命令をなさらなければならない、こういうふうに法の運用ではなっております。で、なるほど地方財政の問題はありますけれども、しかし私はもっとこれをかたい立場でなくて申しましても、地方財政の赤字は、これは政府のやり方いかんによっては、あるいは予算の組み方いかんによっては、非常に思い切った措置をとれば、一年ででも私は解消することができると思います。たとえば自然増の見込まれる二千億の半額なら半額の一千億を極端な言い方をすれば地方財政の赤字解消に向ける、かりにそういうことをすれば、それは一挙に地方財政は解決いたしますが、しかし今日のように六十名、あるいは六十名以上を収容して、子供たちの学力が低下する、教育が低下する、そのことはたとえどんなに思い切った措置をとってもその事実を取り返すことはできません。これは常識論のようでございますけれども、そういう事態をなくするために私はこれらの法律の規定があり、あるいは条文がある、こう思います。そこで今日の事態はこれをほうっておけない事態になっている。そのことは文部省の方もお気付になって、昨年の六月、これは六月二十四日の朝日新聞の報ずるところですけれども、これによれば教育制度の改善へ文部省は基礎調査に乗り出す、で、交付税基準を検討して府県の不均衡を是正するという、こういう態度が明確になって、その基礎調査はもうすでになされていると思います。それから同じく六月十日には小、中学校教員の定数を確保する「地方の整理計画に文部省、行き過ぎを警戒」、こういうようなことも発表されております。これらのすべてが、昨年の年度末における教員定数の低下による教育水準の低下を防止しよう、そういう事実に立って文部省が着手された方策だと思います。で、大臣も、定数確保については自治庁等とも相談しておるというような御発言もありましたけれども、すでに御承知の通り、各府県とも予算編成の時期に入っておりまして、佐賀県においてはその問題をめぐって教員と教育委員会、あるいはPTAと教育委員会、こういう対立もきわめて憂慮すべき事態になっておるわけでございまして、私はこの際もう少し明確なこの問題に対する大臣の御所信が伺いたいと思うわけでございます。それを伺うためにいろいろこまかい問題や、あるいは法律の条文等を引例したわけでございますが、そういう私のお尋ね申し上げたことに対する御答弁を、もう少し従来の御答弁以上に明確に一つお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/44
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045・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) この問題につきましては、たびたび実はお答えを申し上げておると思うのでありまして、これ以上明確にせよと申されましても明確にしようもないということでございますが、要は法律の規定にありますことは、これに準拠してやっていかなくちゃならぬということ、これは申すまでもないことであります。その方角に向って現実が動いて参りますように努力して参るという以外にはないのでございます。生徒数等の問題につきましては、生徒数が減少するような場合には、できるだけ五十人以下にするように現実には指導もいたしておるようなわけであります。自治庁との間におきましても、財政再建団体等のことにつきましては、いろいろ話し合いもいたしておるようなわけであります。ともかく私としましては、今日のむずかしい地方財政ではございますけれども、できるだけ一つ教育水準は確保し、向上をはかっていくという方角に全力をあげて参りたいということを申し上げる以外に言葉はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/45
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046・湯山勇
○湯山勇君 文部省の方で御把握になっている点を一つお聞きしたいのですが、それは地方財政が今のような状態であって、県の方で定員確保ができないというようなことから、従来市町村で相当数の教員をまかなっておりました。しかしこれも再建整備法によってそういうことは許されなくなったというところから、PTAその他が相当数の教育職員を——教員だけとは申しませんが、教育職員を持っております。先般調査したところにおきましても、ある県では百名以上、ある県では二百名以上というような数をPTA等の負担で持っておりますが、現在文部省としては、それらの教員、つまり正規の県費負担によらない教員が全国でどれぐらいあるかということを御把握願っておるかどうかということを一点と、それと関連して、本年卒業する教育学部あるいは学芸学部の卒業生の就職が困難だということをいわれております。しかし、もしそういうものがはっきり県費負担に切りかえられれば、私はそのほとんどが就職して、しかもなおまだ余りあるというような状態ではないかというように思いますが、それらの点について、これは内藤局長の方から一つ御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/46
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047・内藤誉三郎
○政府委員(内藤誉三郎君) ただいまの県費負担以外の職員の数につきましては、正確な数字は持っておりませんが、これは私どもの調査した範囲では、二千八百五十一名という数字が出ておりますけれども、これは確信を持っていないのです。そこでまだこれ以外にも相当数があると私どもは考えておりますが、自治庁とも話しまして、この分は県費負担職員の方に切りかえるように今いたしておりまして、自治庁の方でも、先ほど大臣からちょっと申し上げました標準定数のようなものを考える場合は、こういうものも当然県費負担の方に切りかえてほしいということを自治庁の方でも原則的に了解しております。市町村なり、あるいはPTAが負担するということは、これは変則でありまして、法の建前上遺憾と存じておりますので、今後とも府県で持つように指導もし、十分財政措置もいたしたい。それからなお、これが埋まったから就職難が緩和するというお話でございますけれども、現実に人がおるのでございますので、これを整理すれば別でございますけれども、おる人間がおりますから、これは就職難の緩和にはならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/47
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048・岡三郎
○委員長(岡三郎君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/48
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049・岡三郎
○委員長(岡三郎君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/49
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050・湯山勇
○湯山勇君 これは今お答えを内藤局長からいただきましたように、とにかくまあ文部省のお調べでも二千八百五十一名、それからそれよりも私は概略ですけれども、これに二倍近い数はあると思います。これは正確じゃありませんけれども、しかも大臣に私はぜひ申し上げたいのですが、文部省でここ二、三年間義務教育国庫負担金でこれくらいの教員増になるという見込みを立てておるだけの教員が充足されておりません。これも実情です。しかも一方では極端にいえばやみの教員があります。これらも実際は安い経費で雇いますから、局長はこれは全部いるのだからというお話ですけれども、その中には資格において問題のあるのもたくさんおります。それから事務職員にいたしましても、能力の低いのもあるんじゃないかということも予想されます。そういう状態で、これで今のように自治庁と話し合い話し合いで行きましても、各府県の予算がもうできてしまえば、またこれを変えるということはきわめて困難なことになりますので、この際私は大臣が大英断をもって、大臣の全く職を賭してというような言い方はぎょうさんでございますけれども、そういう御決意でもって当っていただかなければならないのではないかというように思います。六十名あるいは先ほどの御報告では六十三名、四名という収容をしておる。こういうのは絶対いけないということはこれはもう常識的に明らかです。しかし今日の状態で、それじゃ五十名以上はいけないというようなことで、突っぱるのも私はどうかと思います。そこで文部大臣としてはどうしてもこの線までは確保しなければならないというような御腹案もおありになると思うのですが、これはかえって就任早々の大臣の方がそういう点は大胆率直に御表明できるのではないかと思いますので、大臣としてはぜひこの一学級の人員はどんなことがあってもこれ以上にはしたくないというようなお心がまえがあれば、一つこの際明確にしていただく。そうすることがやはり地元の予算編成等にもいろいろ影響があると思いますので、もしそういう御構想があれば承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/50
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051・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 先ほど来申し上げた通りでございまして、今日この場合にそれ以上のことを申し上げる検討をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/51
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052・湯山勇
○湯山勇君 私がお尋ねいたしたいことは、文部大臣の先ほど来の御答弁、それはそれでわかるのですけれども、しかし報ぜられるところによりますと、大蔵省、自治庁等においてはこれについて難色を示しておるということが出ておるわけです。こういうことがなければ、私は大臣の御答弁をそのまま受け取りまして御善処をお願いしたいというので下りますけれども、しかしそれだけで下れないような、こういう心配な要素がありますから、たとえば大蔵省、自治庁などは現在小、中学校教員の給与費は都道府県財政の三割前後を占め、都道府県の赤字の大きな原因となっている。従ってこれを切り詰めることが地方財政再建のためにどうしても必要であるとして全面的に現在の定数を切り下げる方向である。これはほんとうかうそかは存じませんけれども、こういうことも出ておりますから、私はやはり大へんだめをつめた聞き方をしておるわけでありまして、もしそれではお差しつかえなければ、そういうことに触れての御答弁がいただければ私は了解できると思いますので、重ねてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/52
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053・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 自治庁方面との今日までの連絡なり交渉につきましては政府委員からお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/53
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054・内藤誉三郎
○政府委員(内藤誉三郎君) ただいま湯山委員からいろいろと御心配をいただきまして感謝しております。実は自治庁とも基本線については話し合いをしておりまして、先ほど来大臣からお話のように、義務教育の最低水準を維持する、こういう私どもも固い決意をもって自治庁とも十分打ち合せしておりまして、基本線については両者一致しておるわけなんです。しかしこの単位費用の場合につきまして、義務教育の単位費用を引き上げると、これは都道府県の場合も、市町村の場合も同様でございます。それから高等学校の経費についても、単位費用を引き上げることについてはこれは了解しております。近く単位費用に対する改正法律案が国会に上程されると思いますが、今までのところ自治庁では財政計画も一応できただけで、単位費用の方はあと回しになっておりますが、近く決定を見るはずでございます。この場合に十分私どもの要望が取り入れてあると私は信じております。そこで次に問題の点は、標準定数なり、標準給与体系をどういうふうに持っていくか、いわゆる標準規模の策定の問題にかかってくるのでありますが、これについては標準定数とか、標準給与をそのままなまでこなすかどうか、今のところ御承知の通り単位費用は学校、学級、児童、この三本立でなっております。この定数そのものを警察の費用のように出すか、あるいは単位費用の中に出すかという点は今までのところは従来の通りの単位費用の増額でいこうじゃないか、そこで標準定数の問題についてはお互いが話し合っておりまして、これをある程度基本線としては了解しておりますが、この形を今の単位費用に変えるというところまでは両者とも踏み切っていないわけです。そこでこの考え方というものは十分単位費用に織り込んで、今度改正をみる予定でございます。それから大蔵省につきましては、これは負担金の増加については難色があると思いますけれども、実はこれは実績の半額負担でございますから、かりに難色があってもしりはぬぐわなければならぬ性質の法律でございますので、それほど私は問題はないかと思います。要はまず自治庁との話し合いを固めた上でいきたい。それから今お話のように、予算が済んだじゃないかというお話でございますが、済んでも必要があれば補正の道もあると思いますので、今後の単位費用のきめ方が一番大きな問題であるというのでせっかく努力をしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/54
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055・湯山勇
○湯山勇君 一応これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/55
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056・矢嶋三義
○矢嶋三義君 時間がないですから簡単にお答え願いたいと思います。まず聞きたいのは、今度の予算では科学研究関係の予算が他の項目に比べて比較的ふえておるわけです。国立大学においてしかり、ことに私立大学にも一部補助する道が開けたわけですね。ところが、多年の要望である公立大学関係の予算を全部切ったのはどういう理由ですか。それをまず聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/56
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057・緒方信一
○政府委員(緒方信一君) 公立大学におきましてもその設置者であります地方公共団体がいろいろ地方財政の困難からいたしましてその経営に対しまして非常に困難がありますことは、これはもう申し上げるまでもございません。従いまして、文部省としては国立大学と同様にこれを助成していかなければならない考え方がありますけれども、しかし何分、予算の、財政の関係がございますので、これを一ぺんに全部実現することは非常に困難でございます。ただいまお話のように、来年度としては特に私立の科学研究費の助成の予算も昨年度から見まして五千万ふやしまして計上いたしております。もちろん必要性につきましてはお話の通りと存じますけれども、財政の関係がございますので彼此考慮いたしまして順次整備をはかっていき、これに努力を傾けていかなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/57
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058・矢嶋三義
○矢嶋三義君 この問題は私のたださんとする中心点でないから深追いをいたしませんが、いずれ他日伺いますが、納得できません。ただ、今の答弁からわかることは、公立大学に対するところの助成、補助政策というものはとらないということと、地方財政が窮迫している現在、公立大学というものは維持が困難であるということが私は言えると思うのです。そこで私は大臣に伺うのですが、今の地方財政の状況から、さらに国立は当然でありますが、私立大学まで補助金政策をとるのに公立だけをオミットすると、こういう状況下に地方自治体が新たに大学を創設するということは維持上無理があるのではないでしょうか。どういうふうに大臣お考えになりますか。ということは、まあ東京とか大阪は別です。今後各自治体から大学の設置申請があり、大学設置審議会において形式的に教授陣容とか、あるいは施設、設備等の審議をして、そうして新たに答申してきた場合に、あなたは国全体の大学という、行政という立場からいかようにお考えになられるかお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/58
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059・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 将来の問題といたしましては、私はごく原則論と申しますか、一般論と申しますか、そういう意味合いにおきましては、今日地方の公立大学が続出するというようなことはこれは考えられない。またさようなことを奨励するつもりもございません。具体の問題あるいは具体の地方ということになりますというと、これはまた具体問題として考えなければならぬと思います。一般論といたしましては、ただいま申し上げましたような考え方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/59
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060・矢嶋三義
○矢嶋三義君 それではもう具体的に、単刀直入に伺いますが、実は先ほどもちょっとここで質疑をやったわけですけれども、高崎の短期大学の問題ですが、伝えられるところによると、本日あなたの諮問機関である大学設置審議会の総会が開かれて、そうして何らかの答申があなたになされる、そうしてあなたが決裁をされる段階にきていると承わっているわけですが、審議会においては、今高崎市から市の財政は苦しいと、で短期大学を経営しているわけですが、三十一年度も市の財政の関係上予算を減らした。これはどうしても維持できないので、これを四年制の大学にして、行く行くは国立に移管しようということを議会へはかり、議員の中でもそういう発言があり、四カ年制大学の設置申請をなした。こういうように私は聞いている。ところが昨日所管局長に聞きますと、設置者である高崎の市長に承わったところによると、国立に移管する考えはないと、かように申されたというのです。従って私はここで承わりたい点は、もし設置審議会から妥当である、合格であるという答申があなたになされた場合に、昨日の大学に対するあなたの今後の御方針から申しましても、高崎の市長に対して将来国立移管のようなことは話は持ちかけない、市の財政でりっぱな大学として、局長に誓った通りにこれを維持していくつもりだという。私は将来残る一札を取ってもらいたい。ということは、そうでなければ、それができなければ、もう少し——一年慎重に検討する期間を置くべきだということを私は申し上げたい。裏話はあまりこういう席上では申し上げませんけれども、ある政治家が、一応四年制にしておけ、僕らの政治力で数年後には国立にしてやるというような、そういう公約をされた人があるやにも聞いております。また文部省の何々課長さんが、行く行くは事務局長になってその点をやるそうだというような、実にうがった話があり、(笑声)さらに私あともう一点伺うわけなんですが、人事の問題とからんで、非常にこのめでたい大学を作ろうというのに、実に学内は暗雲低迷、疑心暗鬼、混乱している状況です。先般は学生諸君が期末試験を拒否して試験が行われなかった。そういう状況下に今あるわけです。従って私は今あなたにお答え願いたい点は、国立大学移管の件について、あなたが設置申請を許可するに当っては、はっきりした証拠を一つ取っておいてもらいたい。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/60
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061・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 高崎大学の問題につきましては、公正な審議会に審査をお願いいたしておるわけであります。近く結論が出るというふうに実は私も聞いておりましたが、その結論を見た上で考えてみたいと思っておるわけであります。なお国立大学にするとかしないとかということを今ここで約束するとかしないとかというふうなことは私はどうだろうかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/61
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062・矢嶋三義
○矢嶋三義君 将来国立にするというそういう大きな方針をもって議会の承認を得て申請されている市長が、局長にそういう考えはないなんか言うのは私はおかしいと思うのです。それと大体先般も私ちょっと伺ったのですが、政治的にあの大学が次々に乱立してくるということはこれは私はよほど警戒しなくちゃならぬことだと思うのです。ほんとうに日本の人口の分布状況とか、あるいは産業構造等から考えて、全国的に大学の配置状況というものを科学的に合理的に結論したものから大学は生まれてくるのならけっこうなんですが、ただ政治的についでに出てくることは、私は警戒すべきではないかという立場から私は申し上げているわけですが、そのお答えをいただく前にもう一点伺いたい点は——伺うということよりもまあ大臣に私はお考えいただきたいと思うのですが、それは普通大学が昇格する場合ですね。その大学に勤められている先生方のまあ大部分は、少くとも半数くらいは、資格さえあれば昇格する大学に何らかの形で採用されるというのが常識だと思うのです。ところが高崎の場合、どうしても何かがあるだろうという邪推をせざるを得ないのですが、それは十七人の教授をですね。当時申請書には本人の承諾を得てメンバーに加えておきながら、途中で、当該教授の知らない間に、承認も得ることなく、十七人のうちの十三人を落して、そうして他の人と入れかえている。めでたい大学ができるのに、これはまことに普通常識と違った好ましくない私は形だと思うのですね。従って、短期大学側はこんなことを言っているのですね。今度短期大学は二年生が卒業して一年生一個学年残ります。今度四年制大学ができて一年生が入ってくる。そうなりますと、今の施設、設備というものは、設置者である高崎市長から大学の教授会が管理を委託される。管理権はこちらにあるというわけで、そこで今のような対立状況下にあるので、大学ができた場合、その管理している教授会が図書も貸さない。それから建物の使用も了承しないということになれば、学校はさらに紛争を来たし、混乱してくる、そういうゆゆしき将来が予想されるわけです。従って私は審議会がどういう結論を出されてくるかわかりませんが、そういう点の円満解決を私は設置者である市側に促して、そうしてめでたい大学が発足した後にそういう混乱が起らない条件のもとに、私は大臣は最後の決裁をしていただきたい、それは私は常識ではないかと、かように考えるわけです。従って高崎の財政と、新しい大学の維持と、あるいは国立移管の将来の問題と、あるいは現在の人事にからんでの紛争等について、申請者である市側から十分聴取されて、発足後混乱が起らないように、一つ大臣に善処をしていただきたい。その見通しが立たざる限り、この設立についてはいましばらく慎重な態度をとられるのが適当ではないかと考えますが、大臣のお気持を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/62
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063・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 御注意はありがたく拝聴いたします。先ほど申しましたように、設置審議会の方で慎重に審査を遂げられていることと思いますので、その結論を見てよく検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/63
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064・岡三郎
○委員長(岡三郎君) それでは、なお質疑があるものと思いまするけれども、時間もやや経過いたしましたので、ここで一応質疑をやめまして、来週の火曜日にまた委員会を開会いたしまするので、その際、続けてやっていただきたいと思いますが、先ほど高田委員の方から鳩森小学校の子供を守るための教育環境を何とかしなくてはいけないのではないかという御意見がありまして、それに伴って本文教委員会としてこの実情を調査してもらいたい、こういう要請があったわけですが、ちょっと御意見を伺いたいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/64
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065・有馬英二
○有馬英二君 高田委員からの申し出は、私もまことに妥当な御意見であると思いますから、委員会として許す時間があったら一つできるだけ多くの人が御参加になって視察を行なったらどうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/65
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066・岡三郎
○委員長(岡三郎君) それでは、ただいま有馬委員の方から高田委員の要請に対しての賛成の意見があったのですが、できるだけ多く参加してもらうということがありまするので、一応調査するということをこの本委員会で決定して、あと詳細については直ちに委員長理事打合会を開いて、御連絡をしたいと思いますので、その方法でよろしゅうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/66
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067・岡三郎
○委員長(岡三郎君) 御異議ございませんのでその方法をとらしていただきます。
それでは、本日はこれにて散会いたします。
午後一時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615077X00519570222/67
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