1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年二月二十八日(木曜日)
午後二時三十七分開会
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出席者は左の通り。
委員長 山本 米治君
理事
雨森 常夫君
一松 定吉君
委員
青山 正一君
大谷 瑩潤君
吉野 信次君
赤松 常子君
河合 義一君
小酒井義男君
辻 武壽君
国務大臣
法 務 大 臣 中村 梅吉君
政府委員
警察庁刑事部長 中川 董治君
法務政務次官 松平 勇雄君
法務省刑事局長 井本 臺吉君
法務省矯正局長 渡部 善信君
厚生省社会局長 安田 巖君
説明員
最高裁判所長官
代理者
(事務総局総務
局長) 關根 小郷君
最高裁判所長官
代理者
(事務総局人事
局長) 鈴木 忠一君
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本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
の件
(法務行政の基本方針に関する件)
(昭和三十二年度法務省関係予算に
関する件)
(昭和三十二年度裁判所関係予算に
関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/0
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001・山本米治
○委員長(山本米治君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
本日は、先日に続きまして法務行政の基本方針に関しまして、法務大臣及び最高裁当局の見解を聴取したいと存じます。御質疑のある方は御発言をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/1
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002・一松定吉
○一松定吉君 私は、主として最高裁の方面についての質問を実はいたしたかったのですが、法務大臣が三時から御用がおありになるということですから、法務大臣に関係する限りにおいて法務大臣の御意見を承わりたい。
今法務委員会にいわゆる法曹一元化、裁判所の機構改革というような問題が提案され、もしくはされんとしておるということでありますが、この法曹一元化に関します法務大臣の御意見を一つ承わって、われわれをしてなるほど提案の理由は相当だなということを、法務委員の頭に一つ認識を深めるように御説明を願いたい。非常にこれは広範にわたりまするから、御用意がもしできておらなかったら、概略のことでよろしいから、一つ御説明願いたいということが一つ。いま一つは、ストライキの問題、近ごろ官公庁に勤めておる職員が、自分の待遇改善、俸給の値上げというような問題について、その主張を関係上司に認識してもらうために、隊を組んで職務時間中にストライキというような行動によって、市中を練り歩いたり、国会を取り巻いて革命歌を歌って、そうして道行く人の目をみはらせるという行動をしきりにやっておりますが、そういうことに対しまする法務省側としての一つ御意見を承わってみたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/2
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003・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 法曹一元化という問題は、御趣旨は、多分判検事、在野法曹の弁護士、これらの人事の交流をいたしまして、一体的に運営されることが望ましいという御趣旨と思いますが、その趣旨につきましては、私どももかねてより全くそうすることが、司法の万全を期する上においていいことであると、かように考えておるのでありますが、ただ、新憲法下、裁判官に対する待遇と、検察官に対する待避が、相違をきたしておりますので、裁判官と判事と検事との人事の交流ということが、給与関係の上から、非常に困難を来たしておりまする点と、なお在野法曹として相当経験を持っており、見識のある人が、検察官もしくは裁判官として、その職務をとっていただくように、人事の交流を官民の間で遂げて参りますることは、理想としては非常にけっこうなことでありまして、現に荒々可能な範囲については実現しつつあるのでありますが、在野法軒としては、やはり在野法曹を当初から希望をした人たちとしては、検事になり、あるいは裁判官になる、そういうような生活並びに俸給で生活をするということを好まない向きも非常に多いような関係で、意のごとくには参りません。しかしながら希望のある方、あるいは現に全国の弁護士会におきましても、弁護士連合会の組織がありまして、御承知の通りこの連合会に、裁判官、検事等の推薦委員会というものができております。これらのところで、志望者がありまた適任者であると認めた場合には、その弁護士連合会の推薦委員会が御推薦になりまして、裁判所側あるいは法務省側で、それぞれ検討をいたしまして、実現のできるものは実現をしつつあるような次第で、さらにこれが徹底することは望ましいことでありますが、いろいろの事情がございまして、精神としては私どもも衷心賛成でありますが、実行の面になりますと、なかなかいろいろな支障が伴いまして、意のごとくに参らないのが現状でございます。今後ともできるだけ、一人の人がときに裁判官として、ときに検事として、ときに弁護士として職務をとって、事件のあり方なり、真相の究明なりについて、あらゆる角度から知識と経験を持った人が当るということは、理想としてはけっこうなことでありますから、私どもはこの点については今後可能な範囲において、逐次進めて参りたいと、かように考えております。
次に御質疑のございました官公労のストライキ行為に対する意見はどうか、こういうことでございましたが、公務員については公務員のそれぞれ規律をすべき制度がございます。公共企業体の労務者である者に対しては、公労法の定めがございまして、この規定に違反した行為は、本来できない建前になっておりますし、また望ましくないことでございまするが、いろいろ給与関係等のことから、今も春期闘争が行われつつございますが、これらは今日の時勢にかんがみまして、社会的に、また制度の上から、また規律の上から、支障のない限りはやむを得ないといたしましても、ピケを張りまして、まじめに登庁して執務をしようとする者を阻止するような行動に対しては、これは厳に取り締るべきである。かような見解に立っておりまして、先日も官房長官談として、その趣旨の談話を閣議で了承の上、発表いたしましたような次第で、先日の官房長官談話で明らかにいたしました態度は、われわれとして堅持して参りたい、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/3
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004・一松定吉
○一松定吉君 法曹一元化の問題で、法務大臣の御意見のあるところはよくわかりますが、問題は、その法曹一元化というものを実現して、いわゆる効果あらしめるような方法はどういうことかということに帰着するのであります。裁判官、検察官、弁護士というものが、お互いに人事の交流をはかって、そうして法の改革に貢献するというようなことは、これはもう理想論として当然でありまするが、さてこの理想論を実現する上において起る問題が、いわゆる待遇改善の問題、裁判官なり検事なり、よき人物を一つ採用したいというても、それが待遇が今のようなままでは、なかなか優秀な弁護士で判事なりもしくは検事なりを希望するというような人は少い。そうすると、理屈は法曹一元化が正しい理屈であるが、それが実現ということは、今のような現状ではできません。そこで、これを実現せしめるためには、いわゆる待遇の問題をやらなければならぬ、その待遇改善をやるということになってくると、つまり予算がこれに伴うということになる。そこで法務省なり最高裁判所にそういう点について十分な資料を集めて、世界の情勢を検討して、そうして司法官なり検察官は、こういうような待遇を与えなければならぬのだということを、国民にも認識させると同時に、また国会議員に認識させなければならぬ、国会議員が、ただ裁判官に月給をたくさんやれ、待遇をよくするというようなことで、ほかの行政官はどうするかというような考えでは、なかなか百年河清を待つと同じであって、法曹一元化ということは言うべくして行われません。これを私はぜひ法務大臣においても、十分に認識を新たにされて、そういうものを閣議においても主張し、国会においても主張し、そうしてこれが実効あらしめるような一つお考えをもって、実現される努力をしていただかなければならぬと同時に、最高裁判所方面におきましても、内閣方面においても、こういう点をほんとうに認識して、そうして法曹一元化の、実現を期するというような態度に出なければ、百年河清を待つと同じであろうと、私はかように考えておるのであります。そうするについては、どうすればいいかというと、結局のところ裁判官なり検察官の待遇を改善する、今のような、裁判官でも検察官でも弁護士でも、そういう地位につこうと思っても、むしろ弁護士の収入がその数倍に当る収入であれば、その収入を捨てて自分が判事になろうとか、検事になろうとかというような気持は起るまいと思う。だからして、これを一つ明らかにして、そういうようなことを実脱することが可能であるような制度をとらなければならぬと思うのでありまするから、今回も法曹一元化の問題、最高裁判所の機構改革の問題が、案として提出され、もしくはされんとしているようでありますが、そういう点を明らかにしなければ、私は実効はないと思いますから、この点を一つ十分に御考慮に入れていただきたい。
それから待遇改善の問題でありまするが、これはつまり裁判官も行政官と同じだからして、あれも大学をおれと一緒に卒業したのだから、おれが行政官であっておれの俸給はこれくらいだから、あの裁判官もおれと試験が同じだからして、あれの待遇もおれと同じでなければならぬというようなことでは、司法の改革はできません。やはり司法官というものは、人権の擁護の上において最も重要な職責を尽すものであるがゆえに、特にこれを優遇して、好んで司法官になる、裁判官になる、検事になるというような制度に改めれば、優秀な人物がその方面に向って参りますから、裁判官あるいは検察官というものが、非常に国民の信頼を高めることができるというような組織にならなければ、法曹一元化のほんとうの目的を達成したと私は言えないと思う。そういうことをするについては、まず一番に——待遇改善というのは月給だけじゃないんじゃないかというが——、やはり生活が豊かになるということによって、衣食足りて礼節を知るで、また衣食足りてわき目も振らずおれの地位よりはあの地位の方がいいからあれに移管しようかな、そういういやらしい心を持たずして職務に専心することができるようにする、他のどこの職よりも裁判官の地位がよろしいのだということに腹をきめて、終生その職に従事するのだという決意を表わされるようにしなければ、いい裁判官、いい検察官は得られないと私は思うのでありますから、特にこの点は一つ……。なるほど官制の違いによりまして、裁判官は今法相の直轄にはありませんけれども、やはり法相という方面から間接的には関係があるのでありますから、そういう方面を一つ十分に閣議においても主張せられ、予算の獲得についても御協力相なることは、私は必要であると思う、ことにあなたはいわゆる司法畑の方でありますから、そういうようなことは私以上によく御認識を深めていらっしゃる方でありますから、そういう方面に一つ十分に御尽力を賜わりたい、つまり俸給でも当りまえの行政官より裁判官の方をよくする、そうして普通の人がみなわれもわれもと裁判官になることを希望し、検事になることを希望するというようなことになると、りっぱな裁判官を作り、りっぱな検察官を作り、それによって人権の擁護ということを十分に確保することができ、裁判官なり検察官が世論に抗議されたり、あるいは金銭に迷わされたりするというようなことはなくなるということによって、国民も安心して司法の威信に心から服するというようなことになろうと思いまするから、これは私は最も急務であると思うのでありますから、特に一つそういう点について御考慮をわずらわしたいことをお願いをいたします。
それから同時に、この恩給の問題でありまするが、これはこの前私はお尋ねいたしたのでありまするが、もうすでに法相は十分に御認識を深めていらっしゃることでありますから、いわゆる弁護士出身の者が十七年最高裁判所の判事をしなければ恩給がつかぬというような、今の現行法では、いわゆる待遇の改善ということになりませんから、この辺についても最高裁判所の方面に御協力を相願って、最高裁の方から政府提出法律案としてお出しになる、あるいは議員が提出したときには進んでこれに御賛成の上、御賛助を与えるとかいうような態度に一つ出ていただくことを特にお願いをしておきます。
ストライキの問題でありますが、官公吏が、いわゆる今のように職務を放擲して、集団的に街頭に立って、赤旗を打ち振って、革命歌を歌って、おれの待遇を改善しろ、おれの賃金をふやせというようなやり方は、これは私は不都合千万だと思う、憲法第二十八条ですか、勤労者の集団権とか交渉権とかいうものが憲法において認められておりまするけれども、官公吏は特別の地位を持っておる人でありまするので、職務を放擲して街頭に出てあんなことをやるということは、官吏としての威信にも影響いたしまするのみならず、従事している職務の怠慢ということにもなりますし、ことに法令違反ということであれば、断固としてこれを取り締らなければいかぬ。ただ、から念仏で、やれば取り締るぞ、やれば取り締るぞというようなことで、口だけ先であって取り締りを行わぬ。多くの者を取り締ればそれがために国務の遂行を阻害することになるから、その司会者の二、三人やればよろしいというような、なまぬるい取締りであれば、いつまでたってもこういうような間違った行動はやまりません。だからして、これをほんとうに一つ将来を犠牲にしてでも断固と取り締って、再びあのようなことをなからしめるようにすることは、私は法相における責任だと考えておりまするから、この点についても十分に一つ御考慮をわずらわしたい。こういう希望だけ申し上げておきます。
これに関する質問はこの程度において終りまして、すみやかに法相の他の方面に御出席になることについては、私は異論を唱えません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/4
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005・赤松常子
○赤松常子君 私はお時間もございませんので一点だけお尋ねしたいのでございます。
それは昨年二十四国会で売春防止法がようやく成立いたしましたので、この四月一日からいよいよ売春婦の人々が足を洗う、こういうことになっております。きょうは二月の終りでございますし、三月一カ月ほか用意をする期間がないのであります。これに対しましていろいろの点から、非常に政府がこの法律を誠意をもって推し進めていこうというお気持を私どもはどうもくみ取ることができないのであります。
まず第一に、更生婦人に対する予算は非常に少い。厚生省が要求されました六億数千万円の中で半分を削られてしまったわけでありまして、更生保護いたすための施設の予算というものが、こういう微々たることではとうてい救いがたいことはわかり切っているところでございます。私ども方々参りまして、この法律ができまして以来、更生したいという婦人が警察に飛び込んだり、あるいは地方の相談員のもとへ飛び込んだりいたしておりますけれども、さてどこにこれを連れて行ったらいいかというような苦情が続々出ておるわけでございます。で、こういうことに対してあと一カ月ほどしかございませんけれども、法相はこれに関してどういう態度でなさろうとするのか、その点が一点。
それからもう一つは、業者の蠢動というものが非常に目立っておりますが、これを法相は御存じでいらっしゃいますか、いかがでいらっしゃいますか。そのお答えでちょっとまたお尋ねしたいことがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/5
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006・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 御指摘の通り、いよいよ四月一日からせっかく前国会におきまして成立をいたしました売春防止法の施行される日が参るのでありますが、昭和三十二年度の予算編成に当りまして、御指摘の通り思うように予算の計上が、私どもから見ますと、できておりませんことは非常に残念に思いますが、前年度売春防止法の予算といたしましては、昭和三十一年度は約一億八千万円ほどでございます。この数字は、私売春関係の予算を大蔵関係の者に抜粋をさせたのでありますが、私の方の書類と合せて見ますと、若干数字に狂いがあるようでございますが、大体三十二年度においては四億数千万円の計上になっておるのであります。このおもなるものは、売春関係の職業に従事しておる婦人の更生あるいは業者の転業、こういうことを中心にいたしまして、厚生省の所管に属する経費と、労働省の所管に属する経費と、これに大部分が盛り込まれておるわけでございます。法務省関係といたしましては、罰則規定が昭和三十三年四月からの実施になっておりますので、そういう関係上、罰則規定実施の前年として、それらに対応する諸般の打ち合せや、会議を開いて検討をいたしまする経費のみを計上することになりまして、他はあげて厚生省と労働省に予算を割愛をいたしましたような次第であります。従いましてこの転業及び当該婦人の更生に関する事柄は、主管としましては現在のところ厚生省及び労働省になっておりますので、御熱心な赤松委員におかれましては、適当な機会に一つそういう関係当局にいろいろおただしをいただくことが最も適切かと思いますが、本年のところ、そういうような慕情になっておりまして、私どもとしましては、せっかく成立をいたしました売春防止法でありまして、非常に画期的なことでございます。明治以来売春の防止ということについては、企画はしばしばされましたけれども、その効を奏したものはほとんど見るべきものがなかったという歴史にかんがみまして、今度こそはこの売春防止法の成立を機会に、十分その効を奏するようにいたしまして、御趣意に沿うように最善を尽したい考えでおります。
三十二年度の予算といたしましては、非常に不十分の感が深いのでありますが、さらに明年は、次の年度におきましては、一そう私どもは努力をいたしまして、これらの立法の趣旨にかなうような方向に進めて参りたいと、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/6
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007・赤松常子
○赤松常子君 業者のその後の動きにつきまして、どういうふうに御存じでございましょうか。もう時間もお急ぎでございましょうから、申し上げたいのでございますが、昨年の九月か十月に、実はこの売春防止法の問題を政府で取り上げられまして、内閣に売春対策審議会というものができ、その答申案が、すでに一次、二次に分けて出されております。その要綱が非常に業者には冷酷だという見方をなされて、これの死文化を中心に、業者がしばしば集まっている。私が非常に不可解に思いますことは、自民党の有志議員が多数これに参画していらっしゃいまして、これは他党のことでございますから、その点は私はかれこれ申しませんけれども、そういう業者の人とそういう会合をお持ちになっているということが、はっきりと新聞にしばしば報道されているわけでありますから、これは詳しくこの内容が、どういう発言がなされているかということを読んでみますと、まことにけしからぬことをおっしゃっているのです。ある議員は、労働省や厚生省は社会党のしり馬に乗っているのだなんということをおっしゃって、同じ政府部内のその機関のことを、こういうふうにあげつらっておいでになる。それで業者が勢いつきまして、融資をしてもらいたい、転廃業そのほかの補償をしてもらいたいというようなことをさまざま申しております。せんだって私ども関西に視察に参りましたときも、名古屋でも、大阪でも、業者の代表をお呼びいたしまして、どういう一体認識を持っておられるか、はっきり御意見を聞いた際にも、なおこういう転廃業に対する融資、あるいは国家の補償をまだまだ言っておられます。こういうことに対して、政府はどういうふうにお考えでございましょうか。融資をなさり、転廃業に協力をなさるおつもりなんでしょうか。私はこの際承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/7
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008・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 業者の動きがいろいろこの法律の施行をめぐっておりますることは仄聞をいたしておりますが、まだ私ども年末に就任いたしまして以来、一度も業者から直接の陳情とか、そういうようなたぐいのものに接したことはございません。もしそういうことが将来ございましたならば、私どもとしては、あくまで、できた法律の施行を厳正に行うべきであると思います。業者の人達が建設的に、円滑に、自分らの生計を他に求めて、どう建設的な工夫をしていくかということならば、それはわれわれとしても御相談に乗りまして、できるだけ転業資金の政府としてのあっせんなり、あるいは廃業してからの後の方策なり、こういうことについては、政府としては所要の予算計上に私どもとしては努力をいたしまして、できるだけ——同じやはり日本人でありますから、今までの職業はとにかくといたしまして、これが建設的に他に方向を転換しようということについては、できるだけ工夫と努力を、われわれも一緒に努力をし、また予算の計上にも努めまして、そして円滑な法律の施行と、できるだけ成立した法律の効を奏することに努力をして参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/8
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009・赤松常子
○赤松常子君 私はまことに重大な発言だと思うのでありますが、この転廃業をいたします場合に、健全であるとか、あるいはそうでないとかというけじめはどこでつけるかということも、これは非常に研究を要する問題だと思うのであります。そういう健康であるからという場合には、今法相は転廃業の際、融資、あるいはいろいろ経済的な予算を組むと、そうおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/9
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010・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 健全とか、不健全とかという意味で申し上げたのではありませんで、正しく法の施行に協力しようという建設的な考えを立ててくるならば、それの相談には乗り、われわれとしては建設的にそれらの人たちが法律の施行に順応した方向にいき得るように、協力をしてやる気持は、やることはやぶさかでない、できるだけこれには協力をしてやる考えである、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/10
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011・赤松常子
○赤松常子君 ちょっとそこをはっきりしていただかないと、私は大へん重大だと思うのであります。もちろん転廃業に対するいろいろ御指導、御協力、明るく伸びていくように指導していただく、これは法務省の私は責任だと思うのでありますけれども、その際、今の法相のお言葉は非常に誤解を受けたのでありますが、融資をするとか、あるいはさらに予算の措置というお言葉をおっしゃったのですか。転廃業をする業者にそういう国家の予算を貸してあげる、補償する、そういう意味なんですか。ちょっとその点、とても大事な点ですから、はっきりおっしゃって下さいませ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/11
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012・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 問題は、売春に従来従事しておりました婦女子の転業の問題もございましょうし、それから今までその売春を媒介しておったと認められる今度の法律で一番きつく厳罰にしようという業態にあった者もあると思うのです。これらもできるだけ他の職業に転換をしていくことが望ましいのでありまして、これはできるだけ政府としても社会としても、やはり協力をしてやらなければ、いく道がなければ、結局法を犯しても、なお法の精神を破るような者も出てくる危険性が一そう多いわけでありますから、そういうことのないように、婦女子の転業にいたしましても、あるいはそういう今度の厳罰の対象になっております媒介の業種にあった者の転業にいたしましても、もちろん国民の血税である大事な金を、ただ無意味にやるという予算の取り方なり、あるいは行政措置なりはとうていできませんが、それを国民金融公庫を通してなりあるいはその他の施策を講じてなり転業の資金が入り用の場合には、できるだけそれらが円滑に調達される努力はしてやるべきではないだろうか、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/12
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013・赤松常子
○赤松常子君 私が申しますのは、更生婦人の場合は、まあ少しの予算が今度とられて、三億円何がし、四億円近いものがございまして、一応収容することになっております。これでは非常に不十分ではありますけれども、そういう筋道で更生する場合にはあたたかく保護をされることになっております。私が特に一点申し上げたいのは、業者の場合です。業者の転廃業に対して、今法相のお言葉では、融資をしてやる、あるいは国家の方で何かこの予算措置をとって、そういう転廃業に資するというようなお言葉があったから、私は重ねて申しますが、業者の転廃業にそういう措置をなさるおつもりですかいかがですか、その一点をはっきりお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/13
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014・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 私の今申し上げました趣旨は、業者といたしましても、業者が他の生業に転向をしていこうという場合には、できるだけその転向がたやすいように、道の開けるものは道を開き、力を貸せるものは貸してあげると、もっとも自力で転向のできるもの、あるいは自力で当然やるべきもの、これまで公共の力で見てやるべき筋のものではありませんが、自力で転向のできないものに対しては、他の生業を得るための生業資金といいますか、そういうことについては、できるだけの措置はやはり考慮をすべきではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/14
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015・赤松常子
○赤松常子君 もちろんそういう業者の人々も、肥え太って資産を残している人も全部が全部でないということもよく知っておりますけれども、もうそれは割合からいえば少い方で、こういう反社会的な仕事を長く続け、そしてほんとうに不当な資産を作っておられる人の方が割合に多いのであります。長い間しぼり取り、反社会的な仕事、業をしておられた、そういう方に対しては、道義的にもわれわれは反省を求めるいいチャンスだと思うのでございます。それは国民全体としてわずかでもこぼれていく人、あるいはまた他に悪を求めて走る人、これはないようにするということが政治であることは言うまでもございません。けれども、すでにこういう業者に対する社会の常識というものは、一応ある基準ができていると思うのであります。それをしもなお健全、不健全という、そういう名においてどこに線を引いていいかわからない、そういう不明瞭なケースがしばしばできてくるのでございますが、今法相のお言葉では、そういう人々に対して、今おっしゃるように資金を貸す、いろいろな協力をするというお言葉をおっしゃいますと、これがまたどういうふうに悪用され、どういうふうに便乗者ができるか、今でも、私が今申しますように、名古屋、大阪での業者の代表者の会合では、もうこぞってそれを言っておられるのです。それをねらっておられるのです。もうけ太った人々も。そういう情勢であるにかかわらず、はっきり今ここでそういうことをおっしゃるということは、どれほど業者に勢いをつけるか、あるいはこれを大きな声にして政府に迫って、融資をしてもらいたい、補償をしてもらいたいという動きに拍車をかける結論になると思うのであります。そういうことを私今伺って、実はがく然としたのでございますが、今の法務大臣のお言葉は、ほんとうにそうなのか、実はこの前、法務大臣でいらっしゃいました牧野法務大臣は、絶対そういう場合は融資もしない、国家の予算も組まない、こういうことをはっきり言っておられるのであります。それを業者はおそれ、驚いて、そうして今のこの要綱を骨抜きにしようとかかっているのでございます。こういう四囲の情勢の中で、法相はどう判断をなされ、今のおっしゃったようなことが法相の真意でございましょうか、どうでしょうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/15
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016・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 一つ誤解のないようにお聞き取りを願いたいと思いますが、私どもといたしましては、今までの悪徳業種の事業を行いまして、そうしてしぼり太っているようなものを対象に、これを援助しようなどということは毛頭考えておりません。ただ、こういう業態にもいろいろあると思うんです。赤線区域とか青線区域とか、いろいろいいますが、非常に零細なものもあるのじゃないかと思います。そういうもので、特に転業至難なものについて、われわれは転業可能の方向へやはり導いていく努力はすべきではないだろうかと考えておるだけでありまして、今何か、業者の人たちが補償をもらうとか、自分らの自由営業が法律の力で断たれるんだから補償をもらうとか、そういうようなものの考え方に対しては、われわれは断固としてこれは排撃をしていかなければならない。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/16
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017・赤松常子
○赤松常子君 これはまたいろいろな角度からお尋ねしておきたいと思うんでございますが、どうぞ今おっしゃったことを堅持していただきたいとお願い申し上げます。もちろんそのこぼれていくような業者、これはまた別個の問題といたしまして考えるべきであって、これは中小企業の問題として考えてもよろしいですし、別個のケースとして考えてよろしいのでございますが、大綱としてはこういう転廃業に政府は経済的な援助を堂々と与えるという印象を与えないように、断固、今のお言葉を堅持していただきたいと要望申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/17
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018・山本米治
○委員長(山本米治君) その他大臣に対して御質疑のある方がありましたらどうぞ。
一松委員に申し上げますが、最高裁からは關根総務局長、江里口刑事局長、海部総務局総務課長が来ておられますから、どうぞ御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/18
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019・一松定吉
○一松定吉君 実は私は最高裁の法曹一元化に対するお考えの概要を一つ御報告していただきたい。それによって私少し質問を試みてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/19
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020・鈴木忠一
○説明員(鈴木忠一君) 法曹一元化について最高裁判所がどういうように考え、どういうように実行しようとしておられるかというお尋ねのように存じますが、その点について知っている限りをお答えいたします。
御承知のように法曹一元ということは、戦争前からももちろん申されておりましたけれども、戦争前の法曹一元化というのは、いわゆる在野の法曹とは御承知の通りスタートを異にしまして、最初から弁護士になる方は最初から弁護士または弁護士試補になられ、裁判官あるいは検察官になられる方は最初から法務省の、当時の司法省の傘下にあります司法官試補というものになって、それぞれスタートいたしたわけであります。ですから当時の在野の弁護士と在朝の判検事というものは、スタートを異にしておりましたものですから、そして弁護士から判検事になるという例は、むしろまれでございました。ところが終戦後の法曹の教育というものは、御承知のように司法研修所で一手に引き受けまして、司法研修所を卒業いたしたものは、判事にも、検事にも、弁護士にもなれる。しかしそのなる前に、とにかくも一緒に司法研修所に入所して、そこで将来の法曹としての教育を受けなければならないという建前になったわけでございます。従って、終戦後の法曹一元というのは、かけ声だけでなくして、本来ならば新しい共通の地盤の上に立っておるわけでございます。しかし、それならば終戦後の法曹一元の声が、在朝の方にも在野の方にも共通の呼びかけとして叫ばれておりながら、終戦前の法曹一元化に比べて実質上が数歩なり数十歩なり進んで実行されておるかと申しますと、これは現在においては遺憾ながら必ずしも戦前に比して実質上法曹一元化が行われているとは考えられないのでございます。もちろん御承知の通り、終戦後最高裁判所が新しい裁判所法のもとに出発いたしました当時、二十三、四、五年あたり当時には、割合に大量に在野の弁護士から判事あるいは検事になっております。しかしその数が次第に減ってきております。それから最高裁判所とか高等裁判所の長官とかいうように、割合に指導的な地位の裁判官として在野から入られる方はぽつぽつございます。これも御承知の通りでございます。しかし、二十五年を境といたしまして、それ以後それならば一般に下級裁判所の裁判官として十分な能力を持ち、十分な元気を持った方々が、在野から裁判官として入っておるかと申しますと、これはほとんど数えるほどしか入っておりません。そしてその多くは簡易裁判所判事として在野から入っておられるわけでございます。そういう人たちはたいていはもう六十才を過ぎた方、そしていわゆる弁護士としての第一線から退いた方、さらには、もう子供も十分成長して後顧の憂いもないというような方々、こういう方々が簡易裁判所判事として裁判所に入ってきておるにすぎない状態でありまして、四十代五十未満、あるいは五十前後というような最も法曹として力量が円熟し、経験に富み、働き盛りであるというような弁護士は、ほとんどと申してもいいほど入っておらないわけでございます。実情はそういうわけでございます。これは最高裁判所の方として、あるいは在野に対する呼びかけが足りないとか、熱意がないとかというような非難もあるかとも存じますけれども この前も若干それに触れて申し上げたかと存じますが、最高裁判所としては、在勤のそういう働き盛りな、経験を十分に持って、はつらつとして裁判官の実務にたえ得るような弁護士に呼びかけるための、何といいますか、代償といいますか、保障といいますか、そういうものがない。そこに最高裁判所としても、一般に裁判所としても在野に強烈に呼びかけて、ぜひ来い、来てくれと言えない弱点があろうかと思います。また、在野の方の弁護士といたしましても、法曹一元の新しい基盤の上に立って、われわれの裁判所に、われわれの裁判所だという意識のもとに、裁判所に入ってこようといたしましても、これ、やはり人間でございますから、裁判官として、ないしは人間としての経済的な基盤というものが確かでなければ、いかに元気だけ持っておりましても、生活というものは、やはり人間として考えなければならないと存じますので、今の裁判官の給与をもってしては、在野で少くとも水準程度の弁護士としての生活を保っておられる方は、おそらく来ても生活し得ないのではないか。その実態を在野の弁護士がやはり十分に知っておりますので、熱意はあり、かけ声はありましても、裁判所に入ってくることは、現実の問題としてはちゅうちょせざるを得ない。そういう意味で最高裁判所としても、法曹一元の理想は掲げており、在野から人材を迎えたいという熱意は十分持っておりますけれども、現実の問題として、個別的にすぐれた在野の人に対して手を差し伸べて引っぱるということができかねる。在野の方も行ってやろうという熱意があっても、さて自分の生活というものを考えると、二の足を踏まざるを得ない。これがために在野の方でも裁判所側の方でも、法曹一元ということを実現することにおいてはちっとも異議はなく、実現をしようという熱意は双方に持ちながら、実際の問題としてはそれを実現し得ないというのが、私は実際の実情ではないかと存じます。つまり法曹一元の声を評して、から念仏だということを在野の人たち、われわれの先輩で在野におる人たちが、よく申しております。そして、から念仏にならざるを得ない実情なんだということを、やはり在野のわれわれの先輩は申しております。実際の考え方は以上の通りでありますが、実際に、実情としてもやはり今申し上げたようなのが少しも隠しのない実情ではないかと私は存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/20
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021・一松定吉
○一松定吉君 そうすると何ですか、最高裁判所が、あるいは法曹一元化ということの実現は必要であるが、今の情勢ではそれまで効果を発揮するようなことに立ち至っていない、から念仏に終っておるのだ、こういうことでありますが、それでは法曹一元化ということが必要であるかないか、必要であるならばどういうようにこれを実現すればいいかというその方策がなければならぬ。それがなくて、ただ法曹一元化の理想だけ述べて、そして今のところじゃ思うようにいかぬから、から念仏に終るのだということでは、法曹一元化という問題が、非常に理想的の考えと遠ざかっておるように私は思うんだが、その点を聞きたいんですよ。どうすればいいのか、どうしてこの法曹一元化ということの実現を期するか。ただこれを、から念仏に終らせるなら、何もそんなことを言う必要はない。実現してみよう、実現することが必要だ、それはこういう点において必要だと、その必要なゆえんから説いていただいて、しからばそれを実現するのにはどういう方策をとればできるんだと、そこを言ってもらわなければいけないんだ。それを一つ説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/21
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022・鈴木忠一
○説明員(鈴木忠一君) 法曹一元化を実現することが、現在の裁判所にとり、日本の裁判所にとって必要であるということは、これはもう申すまでもないことで、それを前提として申し上げておるつもりでございます。それならば、今申し上げましたように、から念仏の実際の実情にある現在の法曹一元化というものを、実のある法曹一元化にするためには、一体最高裁判所はどういう努力をしておるかと申しますと、これはいろいろあると存じます。その中でも最も大事なのは、結局今申し上げましたような実情にありますので、裁判官の給与というものを現在よりももっと充実をして、在野の人も安んじてとまでは言えなくとも、まあまあ行って生活ができるから、国民のために、国民のために、裁判事務に従事しようという考えを抱く程度の給与を、やはり国家が支給をするという建前にならなければならないと存じます。もちろん、ただいまの終戦後の裁判官の俸給は、一般公務員に比べますと、本俸においては確かに高く格づけをされております。たとえば、判事は五号ないし一号までありますが、その一番若い判事の俸給は、最初のスタートのときには、十四給の五号でございましたか、これは各省の次官並みの待遇でございます。その上に、判事はなお四、三、二、一と上の号俸があるのでございます。しかるに、その後一般職の方には、十五給の一ないし四というような号俸ができまして、これは判事の四、三、二、一に当る号俸であります。そういう十五給の一ないし四という号俸が一般職にできました際に、判事の方には一号の上に四段階できたかというと、これはできなかったわけでございます。つまり、スタートのときに比べれば、判事の五号であった者が判事の一号までいけるように、一般職の俸給は実際において上ったわけでございます。同じになったわけでございます。そして、二十八年ごろからでございますか、その上に管理職手当というのが一般職にはできました。判事の五号ないし一号に相当する程度の人たちは、二三%程度の管理職手当を取ります。従って、判事の一号と同じ行政官の十五の四というのは、判事の俸給よりも二三%高くなった、こういうことでございます。こういう実情を見て、私どもはもちろん黙ってはおらなかったわけでございます。裁判官になぜ管理職手当をつけないか、つけろということを、大蔵省の方と、あるいは政府の方と、たびたび折衝をいたしたわけでございますけれども、そもそもスタートの際に裁判官の俸給には超過勤務手当というものを見込んで高くしておるのだ、しかるに管理職手当というのは、超過勤務手当をもらっておった者に、超過勤務手当を支給しないその代りに、管理職手当という名称にしてこれを支給することになったんだ、いわば管理職手当は超過勤務手当の変形物なんだ、だから、もともとつけ得なかった裁判官には、超過勤務手当はつけ得ないんだ、こういうことによって、われわれの努力にもかかわらず、結局その主張が通らないで現在に至っておるわけでございます。そういうようにしまして、初めスタートの際は、裁判官の報酬というものは割合に高く格づけされておったにかかわらず、実質上はだんだん追い越されておる。これをわれわれは努力いたしましたのですけれども、事務的の折衝ではだめ。ときに法案にしようとしても、なかなか法案にはできません。毎年管理職手当ないしは最高裁判所の裁判官に特別な手当を支給をするということを予算上要求いたします。
最後まで折衝いたしましても、いつも要求することができない。結局、私どもから言わせれば、大蔵省ないし政府というものは、裁判官というものは一般職より俸給は高くてしかるべきだというそのプリンシプルはお認めになっているようでありますけれども、どの程度高くてしかるべきかという点については、必ずしも正しい判断をしておらない。そのために、常に大学を出て何年というようなことを標準にして行政官と比べておるわけです。大学を出て十年の者が、行政官のほうは何級何号になっている、裁判官がこれだけの俸給を取っておるのは多過ぎるというように、常に大学を出た後の経験年数ということを大体の目安にして裁判官の俸給が高過ぎるというように論じられておるのであります。しかし、私どもといたしましては、大学を出た後の年数ということも一つの標準ではありましょう。しかし、これは唯一の標準ではない。行政職というものと裁判官というものは、その仕事の内容が違いますし、責任が違います。申すまでもなく、行政職というものはピラミッド式に上命下服の組織をなしておりまして、上の人の指揮命令に従って下の者はやれるわけでございます。裁判官は、上下の関係は、少くとも事裁判に関しては、最も裁判官の本質であるところの裁判に関しては、上下の関係がない。おのおのの責任、おのおのの良心に従い、憲法、法律に従って、それを標準として裁判をしておる。そういう責任から申せば、行政官よりもきわめて重い責任を負担をして、それにたえていかなければならない性質の仕事でありますから、その点を十分に理解していただかないと、単に学校を出てこれこれの年限だからということでは、われわれとしては納得できないわけでございます。そういう点で今の裁判官に対する待遇というものが、どうも私どもといたしましては満足できないのであります。せめて在野の人たちを自由に裁判官として来ていただくためには、いろいろな隘路はありましょうけれども、私は第一の隘路が、裁判官の待遇が在野の弁護士を呼ぶためにはきわめて劣っているという点にあろうかと思います。これはわれわれとして努力をしても、結局国の財政上、予算というようなものに縛られて、政府と交渉をしておったのではらちがあかない。結局裁判所に対して理解のある国会議員、この法務委員なり等からして、立法の方法で政府を納得させていただく以外にはないわけです。しかも最も悲しいことには、御承知のように裁判所は行政府と独立しているために閣僚を送っておりませんし、内閣に出て自分たちの要望なり希望なりを言うようなチャンスも与えられておりませんので、あるいはみずから立法をして国会に提出するというような権限もございませんで、そういう点においても自分たちの主張を通すためには、きわめて不便でありますけれども、それからわれわれの努力の足りないところももちろんわれわれとして反省しなければならないと思いますけれども、われわれからいいますと、やはり政府の裁判官の待遇ということに対する考えが十分でないのではないか、そのために給与が上げられないという点が一番の隘路、ですからこの隘路を打開すれば、私は法曹一元というものは今よりずっとスムースに行われるに相違ないと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/22
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023・一松定吉
○一松定吉君 法曹一元が必要であるということは論義の余地がないということ。これをここに少し明らかにしなければ……。なぜ法曹一元化が必要かということを明らかにすることによって、今の待遇問題にも論及されなければならないように私はなると思うのです。そこを一つ明らかにしてもらわんと……。なぜ法曹一元化が必要か、法曹一元化ということが必要でなかったら、そういう待遇改善もありはしない。必要だと、それはこういうように必要だと、それについては待遇改善が必要だというふうにいかなければ……。何だか法曹一元化ということはもう論議の余地はないのだとかいうそういう抽象的なことでは困るので、こうこう、こういう事実がある。ここに法曹一元化が必要なんだということを説明してもらわなければ……。私はわかっておりますがね。しかし、今法曹一元化が必要である、従って裁判官の待遇改善をしなければならないということで、国会議員に力を入れてもらわなければならないというところを説明しなければならない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/23
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024・鈴木忠一
○説明員(鈴木忠一君) それはもう自明の理と存じましたので申し上げませんでしたが、(一松定吉君「なぜ必要だ、なぜだというそこを」と述ぶ)憲法でも御承知のように、民主主義国家の原則を新しい憲法はとっておることは申し上げるまでもありませんし、最高裁判所の構成を規定している憲法の中にも、最高裁判所は従来の、つまり判事出身者をもって構成しておった大審院とは異なりまして、学識経験者というようなものが当然入ってくることを予定しております。これは裁判官以外の国民の中の代表的な人たちを入れて、国民の人権を規定しております憲法問題等にも直接当らせる仕組みになっております。さいぜん申し上げましたように、われわれの憲法は民主主義国家の憲法であります。御承知のように従来の裁判所は、さいぜんも申し上げましたように、いわば子飼いの裁判官、小さいときから徒弟的に初めから裁判官として育てた裁判官をもって原則として組織されておったのであります。これは、ある意味においては長所もございましょうけれども、やはり世間の実態にうとい、事実認定その他について、社会の実相に暗いという欠点は免れないだろうと思います。これに比しますと、在野にあって社会の表裏に接触をし、いわゆるすいも甘いもかみ分けて、明るい面、暗い面も十分に経験を尽して、しかも裁判所に対して、裁判所の態度に対し、裁判所の裁判に対しても批判的な地位にあり得るところの弁護士、ことに弁護士から裁判官になった場合は、その豊かな経験に加えて豊かな法曹としての経験、これはやはり子飼いの裁判官、子飼いの検察官から裁判官になった者とは別個の持ち味があるわけでございます。そういう意味でこの裁判官が民主的な構成になり、しかも概念的でなく、実についた、地に足を踏んまえた裁判をするためには、どうしても実社会において法曹として経験を積まれた人が裁判所に入ってくるというのが、今の憲法、裁判所法の建前でございまして、そういうことを前提として、いわゆる法曹一元が全く文字通り行われている英米の裁判所を念頭に貫いていろいろな裁判所法その他の規定があるわけでございますから、これは法律の上からいいましても、憲法の上からいいましても、またその下にある諸般の現実の社会からいいましても、いわゆる官僚育ちの裁判官だけで裁判所を組織すべきでなくて、広く社会の構成分子を入れて国民のための裁判所にするということは、これはもうくどくど申し上げるまでもなく自明の理かと私は実は思っておったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/24
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025・一松定吉
○一松定吉君 今あなたのそういう説明をすることによって、つまり裁判官にはいわゆる子飼いの裁判官だけではいけないのだ、人権擁護の上からしても、裁判の威信を保つ上からしても、裁判に対する国民の信頼を高める上からしても、子飼いの裁判官だけではいけないのだ。だからして、それにはいわゆる弁護士あたりの有為の人を招致しなければならぬ。これが法曹一元化のいわゆる根本の理屈だ。そうすると、いわゆる弁護士などが裁判官になることを喜んでくるようにしなければならぬ。そういうことをするについては、いわゆる給与の改善だとか、待遇の是正だとかいうようなことをやらなければならぬのだ、それについては今のような俸給では弁護士なんかの有為の人は来ない。だからして来るようにするにはいわゆる給与を増さなければならぬ。給与を増すについては予算を先に要求しなければならぬ。要求するについては、われわれの力では何回要求しても政府がどうも耳をかさずに今日に至っていることはわれわれの力の及ばないところであるからして、この認識を国会議員、政府当局に新たにしてもらって、この法曹一元の目的を達するようにしなければならぬ、こう説明すればよくわかる。今の人事局長鈴木さんのお話で大へんよくわかりましたが、それならばいわゆる最高裁判所がそれらのことを政府の当局と国会議員に十分認識させるような方法をとらなければならぬ。私がこういうふうにして、あなた方を誘導してそういうことを言わせればあなた方は言うけれども、自分らから進んでこうやらなければならぬ、ああやらなければならぬということを積極的に働きかけなければならぬ。私は司法官であったときに常にそう思っておった。どうも司法省というものは消極的で、予算を取ることでも、いわゆる他の省のようなかけ引きで、こうすればたくさん取れるからというような、そういう予算の取り方はせずして、誠心誠意の要求だけするものだから、いつでもそのうちから削られる。いつでもそれだから予算が少くて仕事ができぬ。これは司法省も少し考えなければいかぬということを常に私は考えておったが、今でもやはりそうだね。そういう態度は改めて、とにかく裁判というものは非常にこれは国を治める上において行政的の方面よりも一そう大切だということを、その国民に、政府に、国会議員に認識させなければいかぬ。アメリカでもイギリスでもそういう立場にあるのだと、だから裁判官というものは官公吏の最上位に位しておって、そうして常に国政の重きに任じておるのだと、わが日本の裁判官はそういうものじゃないのだ、これは悲しむべきことだから、これを是正しなければならぬ、これを是正するには在勤の法曹の優秀な人を招致しなければならぬ、それについては待遇改善が必要だと、こういうことは言わなければならぬ。そういうような点について一つこれから私も働きますが、最高裁判所なども一つ大いに働かなければならぬ。特に今あなたのお言葉の中にあったが、最高裁判所は閣議にも列する機会がない、それから政府に向ってこういうようなこと、ああいうようなことと言って、説明の機会もない。だからいつでも冷飯を食わされておるというような趣旨で、私もどうもそう思うのだな。だから一つこれはほんとうに重きをおかなければならぬ。ちょうど私が片山内閣のときの厚生大臣をしておったときに、この司法官の待遇を改善しなければいかぬということで、ちょうど塚崎君が高等裁判所の次席判事をしておったときに、そのことを片山内閣に訴えてきて、それはもっともだというので、あのときは鈴木君が司法大臣であったように思うけれども、一緒にして、とにかく最高の俸給をやろうじゃないかということで、とりあえず、いわゆる最高といって、総理大臣や国務大臣より上というわけにもいくまいから、最高裁判所長官は総理大臣と同じ、その他の裁判官は国務大臣と同じということにしてだね、そうしてやったのに、その後行政官の方が何とかかんとか手につけ足につけてだんだん待遇改善をし、収入を多くしたがために、今あなたがおっしゃったように、裁判官はどうかというと、今までのような優遇されておるという観念が薄らいでしまった。それだからして弁護士方面からもあまり来ない。これではいけません。それだからして、こういうことを一つ十分——もう少し声を大にして、国会なり政府に呼びかけなければいかぬです。最高裁判所の長官などはお品がいいものだから、つまり権謀術策をもって予算を取るということをしない。これはもちろんけっこうなことであるが、こういう司法官の待遇改善をするということは、国権の運用の上においても、裁判官の威信を保つ上においても、裁判に対する国民の信頼を高める上においても、人材というものを多く集めることが必要だということを念頭において戦わなければならぬ。私はあなたなり五鬼上君にも、都合によれば最高裁判所の長官田中君にもそういうことを言うて、ほんとうにそういうようにして、最高裁判所の地位を高めると同時に、普通の下級裁判所の裁判官の待遇も一つ優遇するような方法をとって、そうして初めて、なるほど裁判官の裁判はありがたいものだと、行政官はときどき右顧左眄してみたり、あるいは時に応じて権勢に屈してみたりするけれども、裁判官はどこまでも権勢に屈しない、自己の信ずるところによって、厳正公正な裁判をするという信頼感を国民に与えるのには、そういうように裁判官を優遇しなければいけません。だからこういう意味において今回法曹一元化に対する法律の改正案だとか、あるいは機構の改革だとかいうことについて手を染めつつあるようなことについて、私は非常に賛成であるが、これは一つもっとほんとうに力を入れてやって下さい。特に私はお願いをする、国会議員としてでない、日本国民の一員として。裁判の威信を高める、また裁判の威信が高まることによって国が治まるのです。だから一つそういうようにしてやってもらいたいことを、特にあなたにお願いをして、最高裁判所の諸君も一つここに力を入れてもらいたい。またわれわれ国会議員でもそういう方面に、ひまがあるごとに私は諸君の、そんなことを言うと失礼だが、門を開いて、そうして一つ待遇改善に努力したいと思います。
それからその次に最高裁判所の判事のことを今申し上げたついでに、憲法の七十九条の二項ですね、最高裁判所の判事は、「任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。」とある。国民審査ということは民主主義の今日からすれば、これは裁判官の地位を高めると同時に、国民の信頼を得るために国民審査に付して、国民の判断に従って任免ちっちょくをするということはいいことだ。しかし今のようなやり方はむしろこっけいだと私は思う。この間池田克君が最高裁判所の判事に任命されて、間もなく衆議院議員の総選挙があった。そこで池田克君がその衆議院議員の総選挙の際による国民審査に付せられた。池田克という人間を国民のだれが知っておりますか、池田克という人間はどういう学歴で、どういう仕事をして、どういう人格、識見があるかというようなことを知っておる者はわずかです。しかるに何千万人といる多くの有権者に向って、池田克はいいか悪いか審査せいなんということをして、そうしてよければ可と書け、まるならまるを書け、悪ければこういう符号を書け、何も符号を書いてないものは審査に欠けるものと認めるなんといって審査させるということは、一体いいのですか、悪いのですか。これは憲法ですから、憲法の改正のときに問題になりますけれども、そういうようなことよりも、むしろ最高裁判所の判事として適任であるかどうか、こういうようなことは国民審査というような、そういうこっけいみたようなことをせず、主義はいいのですよ、主義はいいけれども、それは実際にその人物を知って審査しないのですから、何かやはり審査委員会というようなものを設けて、そうしてやるとかいうようなことに、憲法改正とかいうようなことについて研究の余地がありはせぬかどうか、こういうようなことについても一つ最高裁判所のお考えを聞いてみたい、それが一つ。
それから、その次には、第八十条「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。」とある。と、裁判官は採用されてから今度は任期十年だから、十年たった裁判官は当然やめることになる、憲法の八十条の規定からくると。ただし「再任されることができる。」と、再任されるということは結局だれが再任するということをきめるんだというと、これは最高裁判所裁判官の会議規程からくるのでしょう、この十年たった人間を再任させるかさせぬかということは。この最高裁判所のいわゆる会議規程ですかの第五条によって、九人の裁判官でこれをきめるのでしょう。千何百人の裁判官を、今度はちょうど任期がきたというようなことで、最高裁判所の裁判官が九人以上で寄ってきめるというようなことにして、甲の人間が再任させることに適任だ、乙の人間は不適任だというようなことができますか、こういうようなことについて何か審査会というものを設けて、それを、最高裁判所の九人以上の裁判官に、再任されるかされぬかということの参考資料に提供するというような、何か制度みたいのものを設けて、万遺漏なきを期さなければならぬと私は思う。そういうことをせぬで、ただ最高裁判所の九人以上の者が、千何人かの任期が来たからといってやるということでは、わいろを使ったり、おべっかをしたりするというようなことがありはせぬか、裁判官というものはほんとうに威信を高めて国民の信頼を得なければならぬ人が、そういうことをして上司におもねるというようなことのために再任されるというようなことはよくない。このいわゆる最局裁判所の裁判官会議規程というものの改正ですね、そうしてそういう間違ったことのできないように公正に、再任なら再任にするというようなことを議決するという制度を設ける必要はありませんか。取りあえずその二つをお尋ねしてみます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/25
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026・關根小郷
○説明員(關根小郷君) ただいま一松委員からお話の国民審査の方法でございますが、これは憲法の、今お話がございましたように七十九条に直接に規定してございまして、憲法を変えない限りは、国民審査制度を廃止するわけにいかない、憲法に基きまして法律ができております。そして法律で×をつけられた裁判官、しかもその×の数が多いときに罷免となるという方法をとっておりますが、これは先ほどお話が出ました池田裁判官にいたしましても、その他の裁判官にいたしましても、確かに国民の一般の方からはそう知られている方が多いとは言えないと思いますが、しかし国民審査の制度は、結局最高裁判所の裁判官としてそのまま裁判官の地位に置いてはいけないという意味で、この国民審査の結果、罷免させるということになる。でありますから、結局罷免されるほど悪い裁判をしたというようなときに、初めて罷免される結果になります関係から、必ずしも現在の国民審査の方法が悪いとは言えないのではないかという考えが出るわけでございます。しかし何と申しましても、国民審査の制度にかわりって、そのほかに最高裁判所の裁判官に任命いたしますときに、適当な各界の方々のお集まりの委員会の意見を聞いて任命するというような考え方もあるいはできるかと思います。まあともかくわれわれの方の立場といたしましては、現在の国民審査の制度がそう悪いのではないのじゃないかという考えであります。
それから今第二点といたしましてお話が出ました裁判官の再任の問題でございますが、これは憲法八十条にございます通り、十年間の任期が参りますと退官ということになります。そういたしましてさらに退官いたしました上に再任ということになりますると、これはただいまお話が出ましたように、最高裁判所だけで再任することができない、最高裁判所の裁判官会議の作りました名簿に基きまして内閣が任命するということに相なるわけでございます。ただ、最高裁判所の裁判官会議で再任すべきかどうかということを決定いたしますにつきましては、各地方裁判所所長あるいは高等裁判所長官の方々の意見を十分聞きまして、十分な考慮と用意をいたしました上で、その再任の裁判官の名簿を作る、そういった次第でございまして、これに関します改正ということは現在考えていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/26
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027・一松定吉
○一松定吉君 国民審査ということが憲法に規定してあるから云々、そういうことではない。憲法に規定しておるから、憲法を改正しなければどうもできぬということは、これは当然の話です。幸い憲法調査会というものが法律で出ております。こういうようなときには、こういうことを考慮に入れてこれを改正する、もしくは是正するということについてのお考えがあるかどうか、こういうことを聞いておるのです。憲法に規定のあることを、これを憲法に反して国民審査をやめてしまえというのではない。池田克というような人を知らない有権者がただめくらめっぽうにいいとか悪いとかというようなことをやるところの今の憲法の規定は、これは研究の余地がありませぬか、こういうことですよ。
それから今十年たったからさらに云々するということについて、下級裁判所の裁判官にこの人はどうだというようなことを、最高裁判所の九人の判事が審査する場合に、所長などの意見を参考に聞いて、それをもとにして審査をして、それを内閣においてやるというようなことは、下級裁判所の判事について、そういう諮問をするとかという規定はどこにあるのですか。そういうような手続を今やっておるということなら、それは必ずしも反対しませんよ。とにかく慎重にやらなければならぬ。裁判官というものは昔は終身官です。それを十年たつと任期が満了して、再任するかせぬかは、ある特別の人の考えによってきめるというようなことでは、多少幸、不幸がありゃしないだろうか。公正にやるについては、公正にやるような機関を設けるということがいいのではないか。この最高裁判所の裁判官会議なんという規程はいつでも変えられる。そういう点について慎重にやるということは、裁判官を優遇し、裁判官の威信を高め、地位を強固にする上において必要ではありませんか。こういうことをお尋ねしたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/27
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028・關根小郷
○説明員(關根小郷君) ただいま一松委員のお話の通り憲法の改正の問題として国民審査の問題が議論にあがるべきかどうか、私もそういう点に触れまして少しお答えしたつもりだったのですが、確かに国民審査の制度が必ずしも当を得てないじゃないかという批判の声があります。われわれの方といたしましては、罷免に使う制度といたしまして、ある程度是認さるべきものがあるのではないかということを申し上げたわけであります。積極的にこれをぜひ変えてくれというところまではいっていないということを申し上げた次第であります。
それから再任の問題につきましても、確かにお話の通り慎重に慎重を加えて再任させるべき裁判官をきめるべきことは当然でございまして、現在すでにお話がございましたように、高等裁判所なり、地方裁判所の各長官、所長の意見を順次聞きまして慎重に事を運んでいるわけでございます。以上お答えといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/28
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029・一松定吉
○一松定吉君 きょうは私は四時から特別にやむを得ない用事がありますので、私のお尋ねしたいことはまだありますけれども、きょうはこの程度でやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/29
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030・赤松常子
○赤松常子君 ちょっとお尋ねいたします。せんだって私和歌山の女子刑務所に参ったのでございます。そこで実は女囚が連れております赤ん坊の保育所を拝見しまして、いろいろ三田所長にもお話を申し上げたのでございますが、結論的には、お産が近づいたときに、外で産ませるということが特別に配慮できないであろうかどうか、このことは、この前の法務委員会でも報告の、栃木女子刑務所にあった事実を伺っておりますが、再度このことをお聞きしたいのでございます。今宮城委員から、この前の法務委員会で、従来どういうふうな状態でこの女子の出産が行われておったかという、その御報告を伺うことになっておられたようですが、それをまず伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/30
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031・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 女子の刑務所に入っております者たちの出産の件でございまするが、割合刑務所の方に収容されております者の出産の率は、実は一般の社会におけるよりも少いのでございます。これは二十一年——終戦後三十年までの統計でございますが、全部で十年間に出産をいたしました者が二百八十九名でございます。大体年平均いたしまして三十名程度の者が出産をいたしておるのでございます。一番多いのが和歌山の刑務所でございまして百四十名、その次は栃木の刑務所でございまして百名、その次が九州にあります麓の刑務所で三十一名、それから名古屋管内にございます笠松の刑務所で十三名、北海道の札幌で五名、合計二百八十九名ということになっておるのでございます。これは、大体この期間内に女子の刑務所に入っております人員の数で割ってみますと、大体一・九%、二%弱ということに相なっておるのでございます。私は一般社会の分べん率は大体一〇%程度ではなかろうかと思うのでございますが、それと比較いたしますと低率であるということは言えると思うのでございます。大体分べんをする場合におきまして、刑事訴訟法の四百八十二条の規定がございまして、受胎後百五十日以上である者につきましては、検察官の指揮によりまして執行を停止することができる規定が、刑事訴訟法にあるのでございます。この規定を刑務所におきましてもできるだけ適用いたしまして、施設の中で出産等をさせないようにも配慮いたすのでございますけれども、引受人のない者等は、この執行を停止するわけには参りませんので、さような引受人のない者は、やむを得ず施設の内部で出産をさせておるのでございます。さような関係で、ただいま申し上げました二百八十九名のうち、執行停止によりまして外で出産をさせました者が九十七名になっております。それからやむを得ず所内で分べんさせた者が百九十二名ということになっておるのでございます。しかしこれらの所内におきまして分べんをいたしました者につきましても、子供の将来にさような禍根の残らないように、出産届等につきましては、各施設とも配慮いたしておるのでございます。和歌山の刑務所では、刑務所の番地と、それから刑務所長の官舎の番地が一番地違っております。そこでこれは刑務所長の官舎の地番号で届出をいたしております。そうしてもちろんこれは母親の名前で届出をいたしますが、この届出の面から見まして、刑務所でお産をしたということが、すぐにはわからないようにいたしておるのでございます。ほかの刑務所でも同様の配慮をいたしておりまするが、大体これは官舎地帯も施設の地帯も同番地が多いのでございますから、そういうことができない所もございますが、これはいずれも母親の名前で出産届はいたしておりますので、刑務所の番地を知っておる人が見られたら、わかるかもわかりませんが、これも刑務所の職員の方としてはみなそういうことになりますので、まず届出の面からは、さようなことのわからないように配慮いたしてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/31
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032・赤松常子
○赤松常子君 私その戸籍のことも非常に実は心配な点でございます。というのは、私のことを申して失礼でございますけれども、私の母が以前、私は寺でございます。寺生まれなものでございますから、寺を開放いたしまして、そういう広島監獄、山口監獄で生まれました女囚の子供を、私の母がみな連れてきまして、そうして育てたものなんでございます。ところが大きくなりまして、やはり戸籍が監獄の戸籍になっているわけであります。これが非常に娘たちの、そのとき、ずっと結婚させましたのですが、支障を来たしまして、非常に困って、一生こういうことがつきまとって、暗い運命につきまとわれる実情を、私は小さいころみておりまして、この間も和歌山刑務所に参りまして、所長さん三田さんが、こういうことを切々におっしゃっておりまして、私の籍に入れておりますけれども、どうせ大きくなればわからないこともないだろうと思うのでと、こうおっしゃっておりまして、非常に将来の運命、結婚を控えた娘の場合は、男の場合もそうですけれども、考慮してあげなければいけないことなのでございます。そのときに三田さんもおっしゃっておりましたが、どうぞ刑の執行を猶予していただいて、その村なら村、自分の故郷へやってお産をして、その村で戸籍をつけて、そうして受刑に入るというようなことにしてもらえないものだろうかと、所長さんがおっしゃったのでございます。これは、今あなたのおっしゃる引取人がないということが大へんな支障なのでございますか。その程度のことならば、何とか考慮できるのではないのでございましょうか、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/32
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033・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 実は刑事訴訟法の四百八十二条に、その刑の執行の停止の規定があるのでございますが、何しろこの刑の執行ということにつきましては、執行を担当いたします者といたしまして、もしもこの執行に支障を来たすというようなことになりましては、まことに申しわけないわけでございます。やはり執行停止いたしましても、その事由がなくなった暁には、再び刑務所が執行継続することができる態勢にないと、執行停止を認めるわけには、ちょっといきかねるわけでございまして、執行停止したけれども、そのままどこへ行ったかわけがわからなくなってしまった、それで執行ができないということの事態に逢着いたしますると、ちょっとそれは因りますので、そういう執行を停止いたしましても、再び執行のできるという見込みがとれませんと、執行の停止はできかねる状態にあるわけでございます。さような関係から、身元引受等を厳重にわれわれといたしましてはやらざるを得ない関係にございますので、その担保がとれませんと執行の停止もいたしかねるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/33
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034・山本米治
○委員長(山本米治君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/34
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035・山本米治
○委員長(山本米治君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/35
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036・赤松常子
○赤松常子君 それではせめてこの監獄法の第四十四条に「病者ニ準スル」とございますですね。これを適用して、その附近の病院というような所にでも出してお産させてあげるというようなお計らいはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/36
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037・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 監獄法の規定に病院移送の規定が、ただいま御指摘の四十四条に「病者ニ準スル」という規定があるわけでございまして、この四十三条の規定が病院移送の規定でございます。「精神病、伝染病其他ノ疾病ニ罹リ監獄ニ在テ適当ノ治療ヲ施スコト能ハスト認ムル病者ハ情状ニ因リ仮ニ之ヲ病院ニ移送スルコトヲ得2前項ニ依リ病院ニ移送シタル者ハ之ヲ在監者ト看做ス」とういう規定があるわけでございます。この病院移送の規定は、原則といたしましてそういう医療施設でもってまかないきれないような場合にこれを適用するというのが、これが原則の規定なんでございます。従いまして大手術をしなければならないとか、とても刑務所内における医療の設備では心もとないというときに病院移送をするわけでございます。お産はそういう意味から申しますと、まあまかり間違えばとんだことになることもありましょうけれども、まあ原則といたしましてさような心配もないものでございますから、あまりこの規定の準用をいたしていないわけでございます。先般この栃木に法務委員の方々がおいでになりましたときに、ちょうど出産直前の婦人が入って参りました。病院の方に送って、そしてこの規定によって病院移送してそこで産ませようという配慮で実は病院の方にも交渉いたしたのでございます。ところが病院の方から、ちょっと病室の関係もあるし、まだ二日くらいは大丈夫だからその上で病院の方へ送ってほしいということであった。ところがやはりこれは入りましてから精神的な関係からあるいは早くなったのじゃないかと思いますけれども、その晩の夜中の二時に産気つきまして、間に合わずに、所内で分べんをいたしたそうでございます。従いましてこの病院移送の規定をさらに活用する方法もあるかと思いまするが、現在この病院移送の規定は、そういうふうな精神で実はやっておりますので、あまり活用されてないのが現状でございますが、今後これは一つ考慮の余地があると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/37
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038・赤松常子
○赤松常子君 これでおしまいにいたします。今おっしゃいましたように、出産ということは新しい生命が生まれますることでありまするし、まかり間違えば親子ともに尊い生命を不幸に陥れることも相当にある。これは男子の方々に、そういう出産分べんに対してあたたかい御考慮をいただかなければならぬことでございます。これは大手術以上の、生命に関する、大事な命が生きるか死ぬるかという女にとっては瀬戸際の大事な事業でございますので、もう少しこれに対してあたたかい御考慮を持っていただきたいと思います。幸いに監獄法なりまた先ほどおっしゃいました刑事訴訟法なりにもそういう便法がりっぱにあるのでございますから、どうぞこれはりっぱに拡大して御活用下さいまして、女子刑務所長として最もよく御功績をあげておいでになる三田所長の言葉も、こういうことをしてないということの裏づけだと思うのであります。これを一言申し上げまして、どうぞもっとこういう母になる大事なときに、心あたたかい保護の手を伸べ、精神的にもほんとうにあたたかく安心して生まさせられるよう、子供の戸籍の面なども一生の重大な運命を左右する点もあるのでございますので、もっともっと御配慮願うよう、これを御要望いたしまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/38
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039・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) お説の通り重大なことでございますので、現在刑務所におきましてもこの点につきましては手落ちのないように、いろいろと配慮いたしておるのでございます。この女子の刑務所の医務課長にも女医の方も採用いたしておるわけでございまして、なお足らない場合には民間の方から嘱託医を来てもらいまして、出産には決して支障のないようにいろいろと世話はいたしておりまするが、ただいまの御趣旨も十二分に含みまして、今後生まれ出る者の処置に遺憾のないように今後努めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/39
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040・山本米治
○委員長(山本米治君) 本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X00519570228/40
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