1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十二年三月二十八日(木曜日)
午後二時六分開会
—————————————
委員の異動
三月二十六日委員大谷瑩潤君辞任につ
き、その補欠として酒井利雄君を議長
において指名した。
三月二十七日委員酒井利雄君辞任につ
き、その補欠として大谷瑩潤君を議長
において指名した。
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 山本 米治君
理事
雨森 常夫君
棚橋 小虎君
委員
大谷 瑩潤君
西郷吉之助君
田中 啓一君
岡田 宗司君
河合 義一君
小酒井義男君
宮城タマヨ君
辻 武寿君
国務大臣
法 務 大 臣 中村 梅吉君
政府委員
法務大臣官房調
査課長 位野木益雄君
説明員
最高裁判所長官
代理者
(事務総局家庭
局長) 菰渕 鋭夫君
—————————————
本日の会議に付した案件
○裁判所法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○判事補の職権の特例等に関する法律
の一部を改正する法律案(内閣送
付、予備審査)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
の件
(法務行政の基本方針に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/0
-
001・山本米治
○委員長(山本米治君) これより本日の会議を開きます。
裁判所法の一部を改正する法律案、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案、以上いずれも予備審査二案を便宜一括して議題といたします。
まず提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/1
-
002・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 裁判所法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明します。
この法律案の要点は、次の二点であります。その第一は、最高裁判所に家庭裁判所調査官研修所を置くこと、第二は、裁判所速記官及び裁判所速記官補の制度を設けることであります。以下、各改正点について順次御説明いたします。
まず第一は、家庭裁判所調査官研修所の設置に関する点であります。御承知の通り、家庭裁判所調査官は、家事審判法で定める家庭に関する事件の審判及び調停並びに少年法で定める少年の保護事件の審判に必要な調査その他の事務をつかさどる者として、各家庭裁判所に置かれているのでありますが、この家庭裁判所調査官は、その専門の学識及び経験を活用して事実の調査に当り、裁判官を補助して、家庭裁判所における事件の適正妥当な処理に寄与するという重大な職責を負うものであります。しかるに、家庭及び少年の問題に関して有用な知識等を修得すべき機会は、学校教育その他におきましては、これを求めることが困難であるのみならず、家庭裁判所調査官は、裁判所書記官その他の裁判所職員とはその性格を著しく異にしておりますため、その養成、研修のためには、専門の機関を設置することがぜひとも必要とされるのであります。そこで、この法律案におきましては、新たに家庭裁判所調査官の研究及び修養並びにその養成に関する事務を取り扱わせるため、最高裁判所に家庭裁判所調査官研修所を置くこととし、また、その職員として家庭裁判所調査官研修所教官を置き、その所長は家庭裁判所調査官研修所教官の中から最高裁判所がこれを補することといたしました。
第二は、裁判所速記官及び裁判所速記官補の新設に関する点であります。戦後、民事訴訟法及び刑事訴訟法の改正によりまして、証人等の尋問につき、交互尋問の制度が採用されることにたり、ことに刑事におきましては、公判中心主義の徹底に伴い、事実審の手続は著しく丁重となるとともに、証拠に関する規定も厳格なものとなりましたため、証人等に対する尋問及びその供述の内容は、おのずから複雑かつ詳細なものとならざるを得ないことになったのであります。従いまして、複雑困難な事件について審理する場合等におきましては、従来の裁判所書記官の作成する調書のみでは不十分なうらみがあり、速記者による速記録を調書に引用添付する等の方法により、詳細かつ正確な記録を整備する必要があるものと考えられるのであります。最高裁判所におきましては、右に申し述べましたような理由から、つとに機械速記を専門とする裁判所職員の養成を開始し、すでに若干の者が重要事件の審理について速記に従事しているのでありますが、現在の裁判所法には、これらの職員の身分に関する定めがないのであります。そこで、この法律案におきましては、裁判所の職員として新たに裁判所速記官を設けることとして、この裁判所速記官は、裁判所の事件に関する速記及びこれに関連する事務をつかさどるものとし、また、裁判所速記官の事務を補助する者として裁判所速記官補を置くことといたしたのであります。
以上が裁判所法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。次に、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明します。
この法律案は、第一審の充実強化を円滑に行うようにするため、当分の間の措置といたしまして、判事補としての職権の制限を受けないいわゆる職権特例判事補に高等裁判所の判事の職務を行わせるととがでまるようにしようとするものであります。裁判の適正と迅速をはかり国民の信頼にこたえますためには、何よりも下級審、ことに第一審を充実強化するととが必要であることは、異論のないところと存ずるのであります。
御承知の通り、判事補の職権の特例等に関する法律によりまして、判事補ですでに判事補、検察官、弁護士等として五年以上在職した者のうち、最高裁判所の指名を受けた者は、判事補としての職権の制限を受けず、地方裁判所又は家庭裁判所において判事と同一の職務を行うことができるものとされており、とれによりまして、現在では、相当数のいわゆる職権特例判事補が、地方裁判所において、単独体で事件を取扱い、または他の判事補とともに合議体に加わって事件の審判に当っているのでありますが、第一審を充実強化するためには、第一審にできうる限り練達な裁判官を配置することが必要と思われますので、可能な範囲内でこれらの職権特例判事補にかえるに経験のより豊かな判事をもってするととが適当と考えられるのであります。ところが、第一審強化のために必要とされる経験豊かな判事は、さしあたりその給源を主として高等裁判所に求めるほかはないのでありますが、高等裁判所の判事が地方裁判所に配置がえされた場合には、そのあとを補充ずる必要がありますので、前に述べました職権特例判事補に高等裁判所の判事の職務を行わせることができるものとし、これを高等裁判所の合議体の一員として加えるととができるようにする措置を講ずることが適当と考えられるのであります。
そこで、この法律案におきましては、判事補の職権の特例等に関する法律中に新たに一条を加え、当分の間の措置といたしまして、高等裁判所の裁判事務の取扱い上特に必要がある場合においては、最高裁判所は、その高等裁判所の管轄区域内の地方裁判所または家庭裁判所の職権特例判事補にその高等裁判所の判事の職務を行わせることができるものといたしました。しかし、この場合には、これらの判事補は、高等裁判所におきましては、同時に二人以上合議体に加わり、または裁判長となることができないものとするのが相当と思われますので、その旨の規定を設けることといたしました。
以上が判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
何とぞ慎重御審議のほどをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/2
-
003・山本米治
○委員長(山本米治君) 御質疑のおありの方の御発言を一願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/3
-
004・岡田宗司
○岡田宗司君 先ほど予算委員会でお伺いした問題でございますが、あれに関連する問題でございますが、行政協定の運用というものは、なかなかむずかしいものだと思うのですが、ずいぶんアメリカ軍、アメリカの兵士がやりましたことで、日本人側にとって不利なことがたくさんある。たとえば私の知人の息子がアメリカ軍の自動車にはねられて殺されました。これは明らかに酔っぱらい運転であったと思うのですけれども、これが証拠がないということで、結局公務中のことだということで、うやむやになってしまったというようなことで、いろいろ問題がある。けさの新聞を見ますというと、サイクリングに出たある若い者が、やはり自動車事故で死んだ、これはまた警察の方がどうもアメリカ軍に気がねをして、うやむやにしてしまったということで、ある弁護士が投書をしておる、とういら事態が幾らもある。従いまして、ずいぶんめんどうな問題が多いのです、ことに相馬ヶ原の事件を見ましても、裁判管轄権がどっちにあるかということも、これからいろいろ論議を重ねて決定するわけで、相当時間もかかるだろうと思います。そういうようなことで、行政協定について私どもはもちろんああいもものを廃止すべきことを主張しておるのですけれども、しかし直すべき点も相当あるのじゃないか。これはもちろん安全保障条約に基くので、なかなか改訂ということも外交上の問題でむずかしいと思うのですけれども、これらについて、もう少し法務省の方としてもこの運用を円満に、なお日本人に非常に不利にならないように行うために、だいぶあれができたときと今日とでは時間もたっておるし、状況も違ってきておりますので、運用について、まず何か向うと話し合って、もっと妥当な運用をして、日本人に不利にならぬようにするということろから糸口を開いて、行政協定についての改訂へ進まれることをお考えになっておらぬかを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/4
-
005・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 実は、私就任をいたしまして以来、いろいろこの行政協定に関係した事件等も、ことに相馬ケ原の事件等も起りましたので、いろいろ過去の取扱い例等確かめて調べてみたのでありますが、従来この管轄等につきましては、当初は全く新しいケースの事柄でありますので、かなり論議が戦わされたようでありますが、その後、次第に安定をして参りまして、自動車事故の場合におきましても、どういう場合には公務と認める、どういう場合には公務ではないと大体するというような、基本的な話し合いも進み、そういう先例がたくさんできて参りまして、また管轄等につきましても、意見の対立の事例はあるそうでありますが、こちらが正しい主張をひっさげて主張をした場合には、結局アメリカ側としては譲歩をいたしまして、日本側の裁判権を認めるというようなことで、今までさしたる支障を来たし、あるいは争いになったものは、両当局間にはないと思います。ただ、当事者が自分は日本の裁判を受ける立場でないと、管轄が違うというような抗弁をいたしまして、だいぶ長期にわたって争いになったものはあるようでありますが、両当事国の間に紛争が解決しないでおるということもないように聞いておるのであります。しかしながら、御指摘のように実際の事件というものは常に同一のケースで起ってくるとはきまっておりませんので、いろいろな場合が起ってくると思いますから、あらゆる場合を想定いたしまして、できるだけ一々争いになったり意見の相違を来たしたりしないように、基本的ルールをきめられれば、だんだんそれを築いていくことがよろしいと思いますので、そういう基本的なルールを作って、両当事国で争いにならないような工合に進めていくことについては最善を尽し、今後も努力していきたいと思います。しかしながら、さしあたり刑事関係の事件関係を通しましては、他の問題は別問題としても、行政協定の上で定められておることでさばきがつかなかったという例はないように聞いておりますので、私どもとしてはさしあたり行政協定をこれがために改訂をするという具体的な考えは、目下のところ持っておりません次第でございます。まあしかし、行政協定あるいは米軍駐留ということは確かにない方がよろしいのでございますから、最終目的としては、そういうふうなことがなくなること、あるいは改善されるように、われわれ日本人としては、ことに政府当局としては、努力をしていくべきことであるとは思いますが、ことにさしあたり今のところ、そのような具体的な考えを持っておりませんことをお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/5
-
006・岡田宗司
○岡田宗司君 僕は、アメリカ人の日本人に対する犯罪ですか、これらに対する逮捕ですね、こちら側の警察権の行使、これらが妨げられる、たとえば捜査が妨げられるというような事例もあるように聞いておるのです。特に隊内に対してはどうにも手をつけられない。ある場合には協力しておる場合もありましょう。ある場合には協力どころか全然受け付けてくれない、リフユーズされるという場合もいろいろあるようです。これらに対して、もう少し何かこう強力に手を打って捜査ができる、あるいは逮捕ができるというようなことにするような方法はないものか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/6
-
007・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) これも最近いろんなことが起りますので、事例等を私確かめてみましたが、アメリカとしては割合にその点はさっぱりしておりまして、事件が日本側で捜査、検挙すべきものであるということになりますれば、日本側の捜査及び裁判に支障を来たさせるようなこと、及び信義に反するようなことは、どうもやっていないようであります。そこで、公訴提起後は日本側がみずからの拘禁をなし得ることに、行政協定の上でなっておりますが、実際上やっていない例が多いということは、先ほども予算委員会で申し上げましたように、外国人を日本の刑務所、拘置所等へ一人なり少数拘禁をいたしまするためには、それに所要の設備改良をしなければならない。日本人の入っておるままの所へ住まわせることができない事情にございますので、アメリカが身柄を引き受けて、必要な際には必要の日時、場所に護送をするという約束をしてくれる限りは、できるだけ日本側の方でもそういうめんどうなものを引き取らないで事件の結末をつけるという方向に、今まであったのでごいしまして、そういう取扱い方で、従来信義を無視されたり不都合を感じたりしたことはないというふうに聞いております。もしそういう具体的に支障がございますならば、これはたとえ経費がかかりましても、日本側としても考え直さなければならないと思うのでありますが、従来のところ、そういうような事例がないというふうに実は承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/7
-
008・岡田宗司
○岡田宗司君 今度の事件について、実は私一つ不安と申しますか、心配しなければならぬ点があると思うのは、先ほどお話し申し上げましたように、犯人がアメリカの上院議員に対して嘆願をしたということがある。そういうようなことから動き出したと見られる点もあるわけなんです。一面におきまして、また先ほど言いましたように、前にこちらで極東軍事裁判に出ました弁護士がUPを通してこれを流しておる。これはアメリカ側とすれば、日本でアメリカの兵士が死刑の宣告を受けるということは、いろいろ問題があるのであります。そういうようなことから、これが一つの外交問題にならぬとも限らない、またアメリカ側でもそれをいろいろ大きく宣伝いたしまして、そうしてこれに対していろいろ日本の裁判に対する圧力をかけてくるというようなこともあろうかと思います。ことに今度の裁判はでたらめだということを盛んに宣伝しておるということは、私はもってのほかだ、まあもちろんこれはとめるわけにもいかぬだろうと思うのでありますが、しかしこれに対しては、やはり日本側としては相当きぜんたる態度でもってやっていかなければならぬというふうに考えております。その点について一つ決意をはっきりさせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/8
-
009・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 御指摘の通り、日本としては、たとえ被告の弁護人があるいは外国の報道機関等がどういう動きをいたそうとも、また、いかなることがあろうとも、きぜんたる態度で適正な裁判権を行使すべきであることは全く申し上げるまでもないことで、同感でございます。ただ、こういうようなことで、今御指摘のありましたように、日本の裁判がでたらめであるというような宣伝を報道機関、一部の報道機関等によってなされて、それが対日感情に悪影響を及ぼし、あるいは日本の裁判の信用にかかわるようなことは、これは努めて避けなければなりませんので、そういうことがないように、何かの方法を考えらるべきだ、もしあるいは、場合によってはこういうような刑事事件でありますから、犯人の名前を明示して、日本の判決が正しいのだ、こういうわけだから正しいのだというようなことをすることは、やはりたとえ被告であろうと、罪人であろうと、その人の個人の名誉は尊重すべきでしょもから、どらかと思いますけれども、しかしながら、日本の裁判が決してでたらめどころではない、厳正にして公平なもの、正しいものであるということを、何かの方法でそういう誤解の起らないように徹底させる道は、適当な段階において考慮すべきことのように、私自身も考えます。それらの点につきましては、今後の推移を見まして、十分にわれわれとしては検討をいたして善処をいたしたいと思います。
なお、第一審の仙台の地方裁判所の判決が初めての死刑でありましたから、当人に対しましても、縁者に対しましても非常なショックを与え、いわば死刑の裁判を受けた人間の最後のあがき的なことが、若干あるかもしれませんが、まあ日本側としては死刑に処すべき者はあくまで死刑に処す、十分に正しい裁判が行われておるのだ、私どもはかように確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/9
-
010・岡田宗司
○岡田宗司君 一応これでよろしゅうございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/10
-
011・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今日提案されました法律の中で、一点だけ法務大臣に伺いたいと思います。
それは、最高裁判所の中に家庭裁判所の調査官の研修所を置くということでございますが、これは、調査官が新しくできました家庭裁判所の事件をさばいていきます上に、家事事件にしましても、少年事件にしましても、最も中心になるケース・ワーカーとして大事な仕事でございますので、そういう人たちの研修所が新たにできるということは、これはもう大へん大事なことで、実はおそきに失する惑があると思っております。ところが、この大事なものにつきまして、すでに最高裁判所にございます書記官の研修所、司法官の研修所というようなものと比べますと、どのくらい政府がこれを重要視しているかという点について、私はちょっと心細く思っていることは、今発足しようという研修所は、入れものから作らなければならないだろうと思っておりますが、予算措置が非常に貧弱でございますが、これで一体政府は大事な調査官の研修所というものについてどのくらい本気でございましょうか。詳しい数字なんかじゃなくて、ただ法務大臣としてどのくらい重きを置いていただいているかということを伺いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/11
-
012・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) これは、私も家庭裁判所のあり方及び調査官の重要性について、十分認識をいたしておりますから、大いに力を入れて参りたいと思います。ただ、現に司法研修所等を見ましてもなかなかきょうな研修所の施設というものはまだ充実の域に達しておりません。ことに、講師等は整備されましても、まだ建物等が十分整備をされていない段階でございますが、家庭裁判所の調査官の研修につきましては、先ほども提案趣旨で申し上げましたように、とにかく学校等あるいは調査官になるまでの間の社会及び学業の上においては、あまり体得をしない重要な少年及び家庭に関することを取り扱うのでありますから、そういうような実態を、できるだけ早く本人の身につけさせるということは、どうしても必要なわけで、さような趣旨にかんがみまして、本年度は千四、五百万の運営費で、そのほかに人件費が計上されておるわけでありますが、建物の建つのを待つよりは、とりあえず、しかるべき場所を借りても早く発足だけはさしたい、こういう熱意をもちまして実はこの法案を提案いたしました。われわれとしては、十分家庭裁判所調査官の重要性というものを考えて力を入れて参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/12
-
013・雨森常夫
○雨森常夫君 今の点に関連する質問でありますが、提案理由の説明によりますと、家庭裁判所の調査官の研究と修養と養成と、こうなっておるのですが、研修所なのか、あるいは養成所的なものなのか、しろうとでお伺いするのですが、そういう点で、研修所の内容をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/13
-
014・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 研修と養成と二つのことを考えております。すでに調査官として枢要の地位にあるような人をもこれは再び研修させる。それから新しく調査官的な職務について間もないような人を教育するというふうな、二つのことを考えております。詳細なことにつきましては、菰渕家庭局長からお答えした方が適当だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/14
-
015・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) ただいま位野木課長から御説明のございましたように、養成と研究とがある。主として養成と申しますのは、これは、採用しまして一年二年経ましたものを、実際に今度ほんとうのケース・ワーカー、すなわち実情に応じて、それぞれの事例に即して解決して行く能力を備える、しかも、あるいは学問を総合して解決していく、あるいはほかの社会福祉事業とに関連してその事件の適切な解決を求めていくというケース・ワーカーを養成するために作る。ただいま大臣の御説明にもございました通り、日本の学校でもどこでも、そういう学問をまだ教えておりませんし、また当研修所といたしましても、なかなかそういう学問が体系づけられておりません。しかしながら、みんな相寄って研究しつつ、また実際に教生の研修の講義におきまして、各現実の事案について研究しながら解決していくというふうにして、これを一つの体系を作っていこうというふうに考えております。それから調査官にしても相当年輩の方がおられますので、その方には新しい学問を注入する、そういう方はそれぞれの法律の専門家であり、あるいは社会学の専門家であり、心理学の専門の方もおられますけれども、そういう人は、社会学の人は法律を知らぬ、心理学の方も法律を知らぬ、また法律の専門の方は社会学を知らぬ、心理学も知らぬ、それぞれに欠陥を持っております。それを総合的にやはりまとめ上げていこうという、そういう二つの目的をもってやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/15
-
016・雨森常夫
○雨森常夫君 もう一つお伺いしたいですが、速記官補というのはどういうことをするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/16
-
017・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 提案理由でも述べられておりますように、裁判所の訴訟、すなわち公判ですね。公判に立会いまして、審理の模様、証言の内容等を速記するものであります。非常に重要な事件につきましては、相当現実にすでに実施いたしておるわけであります。ただ、それを官制上事務官という取扱いを今までいたしておったのでありますが、普通の事務官とは全然異なりますので、はっきりした別の職種にしたいという……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/17
-
018・雨森常夫
○雨森常夫君 速記官補の職務内容をお聞きしている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/18
-
019・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 速記官補の方は、速記官が速記をいたしますについて手伝いをいたすわけであります。たとえば、速記の翻訳でございます。それの手伝い、それから見習いに出まして、一緒に速記いたしまして補助する、こういうふうな……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/19
-
020・雨森常夫
○雨森常夫君 普通の行政事務であれば、何々補というものは出てもわかるのですが、速記というものは、その人の速記であって、これの速記官補というのは、何だからょっと私にはわからないのですが、それでお聞きしたわけです。翻訳を手伝う……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/20
-
021・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 普通の速記は各個人が手でやりまして、相当、何と言いますか、その人自身がやらないとわからないという要素が非常に多いと思いますが、この場合は、御承知のように機械でいたします。ですから相当事務が共通してやられるわけです。そういうふうな意味で、相当余地がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/21
-
022・雨森常夫
○雨森常夫君 もう一つお聞きしたいのですが、この裁判所調査官研修所に勤務するものとして速記事務の職員ですが、研修所に速記事務が必要なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/22
-
023・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 裁判所調査官研修所で速記官の養成をいたしております。そこの教官をさしているのでございます’。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/23
-
024・雨森常夫
○雨森常夫君 教官ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/24
-
025・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/25
-
026・小酒井義男
○小酒井義男君 私は全然しろうとなんで、初歩的なことからお尋ねしたいのですが、この家庭裁判所調査官というのができたのはいつごろからですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/26
-
027・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 家庭裁判所は御承知の通り家事部と少年部がございまして、家事は家庭に関する紛争、少年はただいまのは二十才以下の者に関する犯罪事件。少年の方はただいまの少年法ができます前に、別な体系がございまして、少年審判所というような形式でやっておったのです。その次に少年保護司というような制度がございまして、やはり少年の環境とか性格とか行状というものを調べておりました。それが家庭裁判所ができまして、新しい少年法が発足し、二十四年の暮にそれが少年調査官に切りかえられたわけでございます。それで、どういう仕事をしておるかと申しますと、事件を犯して検察庁に送られる。検察庁でその事件について調べる、これを家庭裁判所の方に送って参ります。そこで、少年はどういう性格を持っているか、あるいはどういう経歴を持っているか、あるいは学校はどこであるか、親はどうだとか、性格はどうだとか、交友関係はどうだ、病気はしたかどうかというようなことを、家庭裁判所の調査官がいろいろ調べて、同時に必要な場合には、少年鑑別所という拘束される所に送りまして、その少年の心身の鑑定をするわけであります。これはおもに心理的、医学的鑑定でございます。鑑定といいますか、個別化といいますか、識別なんでございますが、それとあわせまして、そういう結果をなお調査官が見まして、それで裁判官に対して、その少年はどういう刑罰に付すべきか、または検察庁に送るか、それでなければ保護施設、つまり少年院に送るか、あるいは保護者があるならばその人にまかして、その行状を見るとか、あるいは何ともしなくてもよろしいのだというようなけじめをつけて、個別化をしましてから、そういう意見をつけまして、裁判官に送るわけです。裁判官はそれに基きまして審判を行いまして、それぞれの少年に、それぞれのしかるべき措置をとる、そういうことを調査官がする。それから家事の方の調査官は、昭和二十六年にできまして、これは家事事件の調停と審判と両方ございますけれども、必要な事実を調査する。御承知の通りに家事事件は、当事者訴訟でつまり原告と被告が相対してやるというわけではございませんので、国家がそれぞれの身分関係について、必要なことについてある程度干渉して、その身分関係を正していかなければ社会秩序が保てませんから、そういうような観念のもとに、家事事件をやっているわけでございます。それから、たとえば離婚の事件を例にあげますと、大体どっちがいいか、それぞれ言い方が違うものですから……。それからして非常にまじめな人、ふまじめな人、あるいはだんだん話ができまして、慰謝料を払うとか、給料はどのくらいもらっているか、あるいは貯金があるのかないのかということで、そういうことを家事係の調査官は調べる、そういう仕事でございます。だんだん家事係の調査官も進歩してきますと、たとえば調停事件なんかは初めから調べて、どういうところに紛争の原因があるか。なお、離婚の問題につきましては、夫婦はどういう性格であって、どういう……、そういうことをいろいろ心理学とか社会学とか、そういうような専門的な知識を応用しまして、そういう報告文を書く、あるいは調停にはその席上にも出て意見を述べるというようなことでござまして、そういうのが調査官の活動の現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/27
-
028・小酒井義男
○小酒井義男君 調査官をやっておられる方は、どういうような経歴を持った方がやっておられますかということと、それから調査官補というものがありますね、補というのは何年くらいやって調査官になるのか、その制度はどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/28
-
029・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 調査官と申しましても広い意味でございまして、調査官と調森宮補、御指摘の通りでございます。それから調査官の中には調査官と主任調査官、次席調査官、首席調査官、そういうのがございます。それで大体ただいま申し上げましたような仕事をするのは調査官でございまして、その調査官になるまでに学校を卒業しまして、これは大部分の人がただいまは新制もしくは旧制の大学を出た方、法、経、商、社会学とか文学とか、あるいは心理学というような、六一部少年保護司の方がそのまま引き継がれた方で、それまでにあまり学歴がしんしゃくされなかった時代もございますので、そういう方も少年保護司の中に残っておりますけれども、大体大学を出たわけであります。大学を出まして採用せられまずと、六級職の調査官補、その調査官補を半年くらいやっておりますと、代行調査官、それは調査官補としては一人前の調査官として各裁判官の命を受けて、先ほど述べました調査事務はできないのですけれども、代行調査官という辞令をもらいますと、一人前の調査官としての活動が実はできるわけなんでナ。それから一年半くらいから二年くらいになりますと、あるいは早い人は半年くらいになりますと、調査官になります。これはりっぱな一人前になる。大体そうして七級から八級くらいになりまして、それになりますと、もうりっぱにできて、それから五年から七年くらいたちますと十級くらいになります。そうしますと主任調査官の試験というものがございまして、それもそれぞれ法律なり心理学なり社会学なり経済学なり、そういうものがあって、そうして試験に受かりますと主任調査官になり、そこでまた二年か三年くらいやっておりまして、あきがありますと、次席調査官、これは十二級くらいの人です。あるいは十一級くらいの人もなりますが、十二級ぐらい、そういうふうになりますと、首席というのは大体一つの調査官のグループを作りまして、各裁判官に二名の調査官をつけており、そのグループの長として裁判官の命を受けて仕事の分配をしたり、あるいは調査官を補充したり指導する、またみずからもする。そういうグループが各裁判所に、大きい所になりますとずいぶんおられますし、それを統轄して指導する者が首席調査官、これは十三級から十四級これは大阪と東京に限っております。その首席調査官というのは、裁判所全般の家事、少年を含めた調査官を指導監督する、ときには自分もみずから仕事をする。その首席調査官を補助するものに次席調査官というのがおる、そういう制度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/29
-
030・小酒井義男
○小酒井義男君 大へんわかりのいい説明をしていただいたのですが、調査官を長くやっておると、ほかの職場へ変っていく制度があるのですか。調査官でとまりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/30
-
031・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 調査官制度は、二十四年の暮と、二十六年になってできたものですが、それで、ただいまのところ、調査官の方で相当御年配の方もおられるのですけれども、ほかへ移られるというような方は、今のところ考えておらないのです。しかしながら、将来の制度として、これはまあ単なる構想でございまして何ともいえないのですけれども、家事調停なんかは相当方々の都市にございまして、本庁、支部というところを、地方ですと行くのにも相当のかかりがかかりますし、時間がかかるということで、今裁判所では、各地の簡易裁判所を出張所としてお借りいたしまして仕事をやっておる。そこへ家事審判官、書記官が出張して仕事をするのですけれども、なかなか時間的に差し繰りがっきませんので、そういうようなときに、調停の事務を独立して調査官をやって、法律もマスターし、そういうほかの学問もマスターした方を、一つの補助裁判官というようなことで調停ができるのだ、みずから調停ができるのだ、ただあとで必要な場合に裁判官の認可を受げるレフェリーというようなことなんですけれども、そういうようなことを将来考えておりますけれども、現実の問題としては、調査官は十四級まで参りますから、各省の局長クラスまで上れることになっておりますし、それから今度の新しい給与体系におきましても相当上の方まで上れるようになっております。ただいま高等裁判所に調査官はございませんので、もしできましたら調査官を一人か二人、少年と家事に置きたい。なぜかと申しますと、家庭裁判所でありますと、裁判に対しまして抗告、不服の申し立てをしますと、高等裁判所が決定するのでございますが、高等裁判所は比較的家庭の事務に遠のいておられますので、そういうような場合に、裁判官の補助ができるのじゃないかと考えております。それは私の単なる構想でございますけれども、今のところは、ほかの方へ行かれるというように考えておられる方はございませんので、皆さん満足してやっておられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/31
-
032・小酒井義男
○小酒井義男君 もう一点だけお尋ねしたいのですが、調査官と調査官補を入れますと、千百五十九人ですか、これだけの該当者を、どのくらいの期間に研修をされる計画でありますかということと、一回の研修の期間というものは大体どのくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/32
-
033・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) この研修はもうできればたくさんしたいのでございますけれども、まず、実はケースワーカー、先ほど述べました意味のケースワーカーの完成した方がない。それにはやはり若い方からそういうようにだんだんしていげば、全部の調査官が本当のケース・ワーカーとして脱皮、進化していかれるのじゃないかというので、若い方を一年間研修所に入っていただきまして、いろいろな学問あるいは実地の演習、ゼミナールをやって、そうしてまずやっていく。そういうのが大体年に五十人くらい、それからまず上の方から申しますと、首席、次席は全国でおのおの四十九名ずつでございます。それがそのうち五十名といいますと、二年に一回でございますけれども、まあ年に一回、十日か一月予算の——そのときの物価とか何か、講師のお礼だとか何か苦心しまして、新しい学問を注入して、また同時にもう一ぺん今までの考え方をお互いに反省し合おうというような形でもって色染めをする、それから主任調査官、その方も一カ月ないし二カ月、三カ月できますればやはりそういう意味で、それぞれの地位において新しい知識を吸収する、ただいままでの調査官の方は、こういうような研修を、このたび独立するようになりまして、皆さんにお願いしているのでございますけれども、書記官研修所の一部の研修としてやって参りまして、何らかの形において皆さんが受けておられます。しかしながら、それは企画が、書記官のそれとしてやってきたものでございますから十分とはいえませんけれども、ここで独立することになったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/33
-
034・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 調査官と、調査官補の中に、婦人調査官、調査官補は何人いらっしゃいますか、そうして今どこに配置されておりますですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/34
-
035・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) あまりはっきりしておりませんけれども、大体としては今年の二月の二十八日現在におきまして、調査官は女子の方が二十二名いらっしゃいます。それから調査官補は六十五名おられます。そうしてそのうち、先ほど申し上げました主任調査官になっておられる方が合計で五名おられまして、東京家裁に三名、横浜に一名、福岡家裁に一名、こういうことになっております。なお東京には試験に合格なすった方もあるように聞いておりますけれども、ちょっとまだ主任調査官の任命はないように聞いております。その方が一名おられるようであります。大体調査官全般といたしまして、官補も含めまして八%になると思います。主として大都会の独立した家庭裁判所におられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/35
-
036・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 このケース・ワーカーとしての仕事の面から申しますというと、実際いえば、男子の方と女子の方と同数ぐらいあってもいいわけじゃないかというように思っておりますが、ことに少年のうちでも、年少少年の調査に当る調査官は、やっぱり婦人である場合が大へんうまくいくように実は考えているのでございます。そこで、この婦人の調査官あるいは調査官補をもう少したくさん採用するというお考えはございませんですかどうですかという点が一点と、それからこの大都会には婦人の調査官もおられますけれども、地方に参りますというと、ほとんど婦人の調査官は見えないのです。そうして実際地方ではやっぱり婦人の調査官がほしいのだということを、至る所で言われております。その隘路は何だろうかという点でございますね。調査官の試験に通った方々がいなかへいくことがきらいだということが一つと、調査官の試験を受けましても、婦人の方が、地方から受けた婦人の方はことごとく落ちる。つまり成績が悪いからやむを得ませんけれども、試験の方法につきまして、少し地域的に考えるというような考慮をなさる御意図はございませんでしょうかどうでしょうかという点でございます。これは試験の公平ということからいったらおかしい話のようでございますけれども、仕事の成績、仕事の必要性から申しますというと、どうしても女の調査官を入れなければ効果が上らないのでございますから、その点についてお答え願いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/36
-
037・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 婦人の調査官の方は、受験の数も比較的少いのでございます、それで、男女平等の意味から申しますと、別段男であり女であるということには差異をつけないものですから、自然そういう方面の学問を相当した方も少いので、受験者が少いということが一番大きな原因じゃないか。それから地方の大学と申しますと、まあ奈良の女子大とかあるいはたまに同志祉の大学とかそういうところからぼつぼつ一人、二人というふうに受かるのですけれども、やはり東京の大学の方でないと、どうも試験の程度が相当高いものでございますから、やはり地域とか何かの関係で、試験に受からない。それで、地方こそほんとうに必要なことがあるのでございますけれども、ただいま宮城先生もおっしゃいましたように、これも住居の関係や何かございまして、非常にむずかしいのでございまして、御本人もまた実際は行きたいというふうに考えておられるけれども、現実の問題としてはなかなか行きにくい。むしろ裁判所の方でももう少し御婦人の調査官が来ていただければと、私自身がそういうふうに思っておるのです、また中途でおやめになることも割合に多いものですから長続きしない、結婚という関係で。結婚のこととなりますと、相当こちらでも結婚後のことも考えて転任その他のことも大いに考慮いたすのでございますけれども、やはり家庭ということと仕事となかなか両立しにくい点があるとみえまして、おやめになる。たまにいい方が見えますと、大学の方へ入っていく、ひっこ抜かれてしまうというようなこともございます。なかなか御婦人の調査官が充実しないので非常に遺憾に思っておるのですけれども、地域的に試験の差をつけるということは、やはりやがて調査官も内容が充実されれば、そういう方がおられると劣等感や何か起しておもしろくないことも起るんじゃないかと思いますので、一律にぶつかってみて、試験に受かった方は採るというふうにした方がいいんじゃないかと私考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/37
-
038・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この調査官の試験の内容を見ますというと、相当に高いものでございますので、今の段階においては女の人がこの試験にパスするということは、私かなりむずかしいことだと思っております。だけれども、仕事の要求はやっぱり女をたくさん要求しておりますし、ことに今度売春対策の保護立法ができ上りましたときに、これを家庭裁判所で扱いますかあるいは刑事裁判所で扱いますかということは、まだ今研究の過程にあるようでございますけれども、おそらく私は、家庭裁判所で扱5だろうし、私の願いは、家庭裁判所で扱ってもらった方がほんとうに婦人のためになるというように考えておりますが、万一にもそういうことになりました場合に、やっぱり調査官が婦人の方がいいだろう、でございますからこれはどういうところかでさじかげんをしていただいて、そして地方から試験を受けましたような者に対しては、やはり地方に調査官として帰っていただくような一つ考慮はできないものかと、私は特に当局にお願いしたいと思っております。
それはそれでよろしゅうございますが、その次には、先ほど問題になっておりました調査官の進路の点でございますけれども、もしこのレフェリー制度ができれば、調査官はりっぱなレフェリーとして進路が開かれるわけでございますが、私はこの長年ケース・ワーカーとしてむずかしいケースを取り扱っていらっしゃる方々が、少年院の院長になるという道がもし開けるものなら、非常に私は両方とも考えていいことじゃないかというように思っておりますが、その辺のところは一体法務省と裁判所との方で話し合いでもございますものでございましょうかどうでしょうか。これはぜひ進路を開く意味におきまして、そうしていただきたいと思っております。その点につきまして伺いたいのが一点と、それからいま一つ、研修所においての研修でございまするが、これは学問的に非常な高度のものがされておりますことはごもっともなことで、必要なことでございましょうけれども、一方にケース・ワーカーとして一番大事なことは、やはりケース研究だろうと思っておりますが、そのケース研究というものは、一体どのくらい力が入れられておりますでしょうかということでございます。その三点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/38
-
039・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 調査官の進路といたしまして、法務省関係の少年院とかそういう方面のことも、私はまだ着任して間もないもので、具体的にそういうことはいたしておりませんけれども、前にそういうような何か話が一、二回あったそうでございますけれども、やはりなかなかいろいろな障害があって、実現ができなかったというように聞いております。しかしながら、こういうケース・ワーカーとして経験を積んだ方が少年院に参ることもけっこうでありますし、それから少年院の方がケース・ワーカーとして、アフター・ケアーをよく知っておられる方が来ていただくということもいいことでありますから、これは将来ぜひ研究いたしまして、できたならば実現さしたいと私は考えております。
それから実際のケース研究でありますけれども、養成部の例にとりますと、第一学期は基礎学科といたしましていろいろの学問を中心にやり、二学期はそれの少し応用的なものをやり、三学期にはそれのケースに取り組む。各裁判所に行くのみならず、できましたなら少年院とかあるいは鑑別所とか、ほかの機関までもお願いいたしまして、それもグループを作って研究していただくということにいたしまして、グループごとの結論なんか、また意見を交換する、そういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/39
-
040・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 最後に一点。司法官の試験に。パスしました方々が、おおむねこれは婦人でございますけれども、この前も申しましたが、なかなか判検事に採ってもらうことも困難でございますような方が横すべりと申しますか、調査官に採用してもらうというような今までの歴史がございましょうか。それから、もしそういう希望者があったら、調査官に試験なしで採用されるものでございましょうか、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/40
-
041・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) その点は、私まだ新任早々で、その事例に接しておりませんので、またそういう必要がなかったもので、今まで研究いたしておりませんけれども、ただ、裁判所部内のあれとして一、二そういう例があったように聞いております。それはしかし私が中におりました者に聞きましたので、直接責任ある方からお聞きしたわけでないものでありますから、果して事実そうなのかわからないのであります。司法官試験と調査官とちょっと方面が違うのでどうかとも思いますけれども、一つ研究しがいのあることだと思いますけれども、やはり別のものじゃないかと私自身は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/41
-
042・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私今まで存じております方で、一、二司法官試験の通りました方が、八級職ぐらいで横すべりをしていらっしゃる方があると思っておりますが、これは大事な点でございますから、一つお調べ下さいまして、次回にお答え願いたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/42
-
043・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 司法官試験を合格しますと、司法研修所に入りまして、二年間研修するのです。その方ですと試験しないで調査官になられるそうでございます。そういう実例があるそうでございまするですから、司法科の試験だけでは、研修所にお入りにならなければだめじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/43
-
044・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この研修所でございますが、その調査官の養成と、それから研修は、期間が違うのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/44
-
045・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 養成は一年でございます。ほかの研修の方は、クラスによって違っておりまして、三カ月、一カ月、あるいは十日というふうに、そういう人たちの仕事を持っておる責任の地位を考えまして、あまり長く、たとえば首席とか次席とか、その席をあけるということもどうかと思いますので、その点の差異はつけております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/45
-
046・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それは一年間お休みなしに、ぐるぐる裁判所の方としたら続けておるのでございますか。
それからもら一つは、そこに出てくる人の費用というものは、その最低のものが予算に組まれておりますかどうでしょうか。滞在雑費、旅費といったようなものは、どういうことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/46
-
047・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) それは養成部は十二月か一月ごろから始めて、一年。それで養成部は重なることもありますけれども、ほかの方は重なることはございませんけれども、たえず何かやっているのじゃないかと思うのです。ところが、ただいまちょっと建物の関係なんかございまして、非常にその期間に苦慮しておるわけでございます。
それから研修牛の旅費とか日当につきましては、やはり最小限度のことはお渡ししておるように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/47
-
048・雨森常夫
○雨森常夫君 今ちょつと、私さっき伺ったのに関連して疑問に思ったのですが、別なんですか、養成所と研修所と。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/48
-
049・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) いや、同じ所でやるのですけれども、ただ一年かかる研修を、かりに養成と言っているわけなんです。それから十日とか一カ月とか、三カ月というのは研修、そういう言葉で申しあげたのですけれども、場所は一緒でございますから、どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/49
-
050・山本米治
○委員長(山本米治君) 他に御発言がなければ、本日は、この程度にて散会いたします。
午後三時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01119570328/50
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。