1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十二年二月十三日(水曜日)
午前十時五十九分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第五号
昭和三十二年二月十三日
午前十時開議
第一 特派大使任命につき議決を求める件
第二 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/0
-
001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/1
-
002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
この際、お諮りいたします。井上知治君から、病気のため二十八日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/2
-
003・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/3
-
004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 第一、特派大使任命につき議決を求める件を議題といたします。
内閣から、ガナ国独立式典に参列する特派大使に衆議院議員小島徹三君を任命することについて、外務公務員法第八条第三項の規定により、本院の議決を求めて参りました。
内閣が同君を特派大使に任命することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/4
-
005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって、内閣が同君を特派大使に任命することができると議決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/5
-
006・森元治郎
○森元治郎君 私はこの際、イギリスの水爆実験に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/6
-
007・宮田重文
○宮田重文君 私は、ただいまの森元治郎君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/7
-
008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 森君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/8
-
009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって、これより発言を許します。森元治郎君。
〔森元治郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/9
-
010・森元治郎
○森元治郎君 私は、日本社会党を代表して、来たる三月一日より太平洋クリスマス諸島周辺におけるイギリスの水爆などを含む核爆発実験に関して、政府の所信をただしたいと思います。
原水爆による人類の破滅を防止せんとするわが国民の要望は、昨年春、衆参両院の原水爆実験禁止の決議に基く関係国への働きかとともに、ようやく世界的関心を呼び起してきましたが、この殺人兵器を所有する国々をして反省させるに至っていないことは、はなはだ遺憾であります。しかしながら、当面問題のイギリスにおいては、すでに婦人団体が、良心あるイギリス人は、実験を許すなと叫んでおります。(拍手)また、わが友党である労働党の議員が、次々にって、政府の措置を非難し、牽制しつつあることは、まことに、心強い限りであります。(拍手)米ソ二大陣営対立がとけない現在、通り一ぺんの申し入れや、一回の演説では、原水爆の製造使用や実験などはとうてい阻止はできません。これには粘りと勇気が必要であります。政府はこの際、原水爆実験の悪循環を断ち切るために、世界世論の喚起、国連への訴え、さらには、わが国が過去における経験に基いて、世界の軍備縮小についても一つのフォーミュラを作成して、積極的に大国に働きかけるなど、やるべきことが多々あると思いますが、政府の決心と具体策を、あらためてお伺いいたしたいと思います。本問題は、総理大臣代理にお伺いをいたします。
次に、イギリスとの交渉の経過についてお尋ねをいたします。去る一月三十日のわが方の申し入れに対して拒否的回答があったと、けさの新聞は報道しておりますが、その内容はいかがでありましょうか、外務大臣にお伺いをいたします。およそ外交問題は、ことに重要な問題である場合には、国会においてこれを発表し説明するという慣習を、この際確立したいと思います。(拍手)伝えられるごとき拒否的回答であった場合には、どういう方針で臨まれますか。またマクミラン首相は、二、三日前のイギリス下院において、水爆実験は違法でない、こういう発言をされております。われわれは、水爆実験に関して国際法が確立しているとは信じません。また危険がないというようなことも同時に言明をしておりますが、高空から落すから危なくないのだというその科学的根拠などが、政府に通告があったならば、その理由もあわせて伺いたいと思います。
第三には、政府のイギリスとの交渉ぶりは、納得がいきません。昨年二月の第一回申し入れには、実験中止を要望しました。その後第二回目には、起り得べき日本国民の損害補償の権利の留保を唱えております。ところが、去る一月三十日のわが西駐英大使の申し入れは、初めに返って、ただ中止だけを要望しているようであります。一体、重点はどちらにあるのか、外務大臣にお伺いいたします。またイギリスにおける交渉と、去る十六日の国連の政治委員会におけるわが沢田代表の核実験事前登録制の提唱は、矛盾していないかどうかをお伺いしたい。(拍手)沢田代表の演説は、十六日であったと思います。西大使の実験中止申し入れば三十日であります。その間、わずか十四日であります。この短かい間に、どうしてこんな大きな食い違いができたのでしょうか。(拍手)私は、このような重大提案ならば、当然閣議に諮られなければならないと思います。しかしながら、石橋内閣は昨年の暮に成立をしたばかりであります。新年になってから、このような大きな問題について閣議が開かれた様子はありません。一体政府は、沢田代表に、いつこのような訓令を出されましたか。それとも、国連の日本代表部の独断でやったというのでしょうか。首尾一貫しないこともはなはだしいので、この点、外務大臣の明確な御答弁をいただきたいと思います。
なお、聞きますれば、フランスも米英ソのあとを追って、いずれ核爆発実験をるのじゃないかといううわさもありますが、その真相はいかがでありますか、この点も伺います。またクリスマス諸島の実験が悪循環を起して、また米ソがやろうとするときには、どういう方針で臨まれるつもりでありまりすか、お伺いいたします。
第五に、危険区域への対策についてであります。イギリスの通告によれば、実験は三月一日から八月一日までの五カ月間であるようであります。しかしそれは、実験の期間であって、死め灰の降った海面を航行することは不可能でありまするから、その後漁船や船舶あるいは航空機が安全に操業し、あるいは航行できるようになる時期は、どういう見通しを持っておられますか。またこの辺は、有望なわが国のマグロの漁場であります。イギリスのエコノミストによりますれば、日本の漁獲不能による損害は二百七十万ポンドと推定しておるようでありまするが、政府の見積りはどのようでありましょうか。またこのような不安定な状況にあるとき、政府は付近に所在するとおぼしき漁船あるいは漁場に向う船、または付近航行予定の船舶があるとするならば、どのような危険予防措置をとっておられるのか。あるいはまた、とろうとしておられるのかをお伺いいたしたいと思います。
最後に、海洋自由の原則をどうするかの問題であります。かつて海洋自由を叫んだ国々が、情勢の変化によって今日では不自由を建前としております。大体、海の上に勝手に線を引っ張って、ここに入るべからずという力の思想及び行いは、世界平和のために断じて容認できません。(拍手)政府は、この問題を取り上げて、国連その他適当なる機関に諮って、再検討する決心と用意がありますかどうか。また原水爆実験禁止や海洋自由の問題にしても、いたずらに既存の国際法解釈を云々しないで、大胆に所信を開陳してやってもらいたいと思います。われわれが政府に要求するところは、ただ勇断であります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/10
-
011・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
原水爆の問題は、われわれは、すでに昨年の衆参両院において、国民の意思をはっきりと決定をいたしておりまして、この使用禁止に向ってあらゆる機会に国際的世論を喚起して、そうしてわれわれの希望を達するように努力したいと思います。と申しますのは、これを所有しておる国が、いずれも大国であって、そうしてその力によってこれを、実験等をあくまでも強行しておる現在の国際情勢から申しますというと、われわれのこの正しい主張であり、心からの念願も、結局、国際的世論のバックなくしては、これは実現できない。従って国連において、あるいはその実験を行うところの国に対し
て、具体的にわれわれの意思を述べ、同時にそれを国際的に発表して、国際的の世論を起すことによって、われわれの希望を達していきたい、かように考えております。
次に外務大臣としてお答えを申し上げます。
英国に対して、去る一月三十日に実験中止の申し入れをしましたが、まだ正
式の回答に接しておりません。本日の一部の新聞には、回答を出したというよ
うなことが報ぜられておりますが、公式の回答にはいまだ接しておりません。
なお、われわれが一月三十日に中止だけを申し入れて、損害補償に対するわれわれの権利を留保するということをつけておらないということでありますが、まさにその通りであります。私どもは、あくまでも中止してもらいたいという強い意思を表明するために、一月三十日におきましては、そのことだけを通告したのでありますが、さらに、もしもきょう新聞に報ずるがごとく、あくまでもイギリスがやるという回答に接するならば、われわれはさらにこれに対して、なおもう一度中止を述べ、どうしてもできない場合において、われわれの補償の問題を持ち出して、十分これを確保する考えであります。
次に、沢田大使が国連において、いわゆる原水爆実験の登録制を主張したということでございますが、これは沢田大使の演説にもありまする通り、われわれは、あくまでもこの原水爆の使用禁止を目ざして、実験を禁止するという考えであるが、今の国際情勢から
みまするというと、これを実現するまず第一歩として、少くとも実験をやる場合における登録制を実行したい。御承知の通り、ソ連はいまだ実験する場合に、われわれに対して何らの通告もしていないし、あらゆる場合におい
七、そのいかなる時期に、どこでどういう規模でやるかということもわからないのであります。英米はこれを関係国に通告はいたしておりますけれど
も、われわれは、さらにこれを明確にして、その場合に起るところの損害を最小限度にとどめ、人類の不幸を最小限度にとどめる方法として、第一歩としてやりたいという意味でありまして、決してイギリスに対して申し入れたことと私は矛盾はしておらないと思うのであります。
さらにこの原水爆の実験禁止の問題は、ただイギリスに対してだけではなくて、米ソに対しましても、われわれは同様な態度を持しているわけであります。すでに衆参両院の議決は、これを通告してあります。具体的な実験の場合におきましては、今申し上げたと同じ態度をもってこれに当っております。損害の見積りその他につきましては、われわれは十分各方面と連絡をして、そういう場合における現実に即してこれは見積りをしていかなければならぬと思います。また漁船その他航行する船舶等に対して、注意を喚起し、これがいよいよ行われるという場合において十分に徹底するようには、種々の手段を十分に講じております。
海洋自由の確保の問題に関しまして
は、これは御説もありましたが、私どもも全然同感でありまして、国際連合その他の機関におきまして、十分この正しい主張を主張し、また実現するように努力をしたいと思います。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/11
-
012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第二、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
両案について国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。池田大蔵大臣。
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/12
-
013・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の趣旨及び概要を御説明いたしたいと存じます。
政府は、国税及び地方税を通じて、わが国現下の実情に即した合理的な租税制度を確立するため、一昨年八月以来臨時税制調査会を設けて、税制改正の諸方策について鋭意検討を加えて参りましたが、昨年末その答申を得、さらに検討を重ねました結果、来年度を期して、所得税を中心とする直接税の大幅減税を行い、国民の税負担の軽減をはかるとともに、租税上の各種の特別措置を整理合理化し、また道路整備の財源に充てるため、揮発油税の税率を引き上げる等、税制の全般的整備を行うことといたしたのであります。
幸いにして、わが国経済の発展は、昭和三十二年度において約二千億円に上る租税の自然増収を得ることが確実となっております。このときに当り、一千億円を上回る所得税の減税を中心として租税負担の軽減合理化をはかることは、国民の勤労意欲を高め、国民生活と経済活動に明るい希望を与え、また民間資本の蓄積を進めて、わが国経済の発展に大いに寄与することを信ずるものであります。ここにまず、この税制改正の支柱をなす所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の二法案を提出した次第であります。
初めに、所得税法の一部を改正する法律案について、その概要を申し上げます。
所得税につきましては、まず、低額所得者の負担の軽減に留意しながら、税率の累進度の緩和に重点を置いて、大幅な負担の軽減をはかることといたしております。すなわち、基礎控除額を八万円から九万円に、一人目の扶養親族についての扶養控除額を四万円から五万円に引き上げるとともに、給与所得控除については、年収四十万円から八十万円までの給与についても、新たに百分の十の給与所得控除を認め、その最高限度を八万円から十二万円に引き上げることにしているのであります。また、税率につきましては、新たに百分の十の最低税率と百分の七十の最高税率を設けるとともに、各税率の適用される課税所得の最高限度を現
在の五倍ないし七倍に広げまして、税率の累進度を大幅に緩和することとしているのであります。この措置によりまして、租税特別措置法の一部改正において予定されておりまする概算所得控除の廃止を考慮に入れましても、所得税の負担は著しく軽減されることになるのでありまして、夫婦と子供三人の給与所得者に例をとりますと、平年度において、所得税は年収三十万円で六割五分、五十万円で五割程度の軽減となり、また、事業所得者について
も、これとほぼ同程度の軽減となるのであります。
次に、貯蓄の奨励に資するため、生命保険料の控除限度を引き上げることとし、年一万五千円をこえ三万円までの払込保険料についても、その半額に相当する金額を生命保険料控除として控除することとしております。この改正に加えて、別途長期預貯金の利子所得等について特別の配慮をすることによって、減税による所得の増加が貯蓄に向い、健全に経済が発展することを期待しているのであります。
さらに、実情に即した合理的な課税を行うため、配当控除率を調整し、また、資産所得の世帯合算課税の制度を創設するとともに、税制の簡素合理化に資するため、簡易税額表の適用範囲を拡張し、予定納税額が少額の場合には、予定納税の義務がないものとする等の措置をも講ずることとしているのであります。
次に、法人税法の一部を改正する法律案について、その概要を申し上げます。
法人税につきましては、まず、中小法人の負担の軽減に資するため、軽減税率の適用範囲を拡大し、年所得五十万円から百万円までの所得についても百分の三十五の軽減税率を適用することとしております。さらに重要物産免税制度について、新規重要産業育成のための制度であることを明確にし、免税所得額に一定の限度を付する等、制度の合理化をはかるとともに、外国において支払われました税額の控除制度の合理化等、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上申し上げました措置による所得税及び法人税の減収は、所得税の一般的減税により初年度約一千九十二億
円、平年度約一千二百五十四億円、法人税の軽減税率の適用範囲の拡大により、初年度約十五億円、平年度約二十二億円、合計初年度約一千百七億円、平年度約一千二百七十六億円と見込まれるのでありますが、租税特別措置法等による改正分をもこれに含め、増減収を通算いたしますと、昭和三十二年度におきまして約九百五十一億円の所得税の減収、約七十一億円の法人税の増収となるのであります。
以上がこの法律案を提出する理由及び法律案の要旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/13
-
014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じま
す。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/14
-
015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時二十八分散会
—————・—————
○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、日程第一 特派大使任命につき議決を求めるの件
一、イギリスの水爆実験に関する緊急質問
一、日程第二 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X00619570213/15
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。