1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十二年三月四日(月曜日)
午前十時五十一分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第九号
昭和三十二年三月四日
午前十時開議
第一 北海道における国有の魚田開発施設等の譲与等に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第二 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、税関支署の設置に関し承認を求めるの件
(委員長報告)
第三 昭和二十八年度から昭和三十一年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/0
-
001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/1
-
002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/2
-
003・久保等
○久保等君 私は、この際、春季賃金闘争に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/3
-
004・宮田重文
○宮田重文君 私は、ただいまの久保等君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/4
-
005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 久保君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/5
-
006・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。久保等君。
〔久保等君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/6
-
007・久保等
○久保等君 私は、日本社会党を代表いたしまして、春季賃金闘争に関し、岸総理大臣並びに関係各大臣に質問をいたしたいと存じます。
個々の質問に入るに当って、この際、岸総理大臣に対し、一言まずお伺いをいたしておきたいことがあるのであります。
それは、岸内閣成立直後の二月二十七日、当本会議場においてなされた岸総理の所信表明についてであります。岸内閣は、石橋前総理の病気引退によるものであって、石橋内閣の継続にすぎないがゆえに、昭和三十二年度の予算案その他の諸政策も、これを踏襲するとの簡単な態度の表明のみにとどまって、岸総理独自の所信が表明せられなかったことに、国民の大多数は大きな失望と、そして、さらには非常な不安を覚えていると思うのであります。(拍手)戦時中は、軍閥内閣の有力な経済閣僚として中心的な戦争指導の任にあった岸総理が、敗戦後、民主的平和国家として再出発した日本の今日、総理大臣となられた以上、真に国民の理解と納得のいく所信を堂々と述べられるべきと思うのであります。(拍手)
石橋前総理は、本年早々、国民に対する五つの誓いなるものを披瀝せられました。私は、国民のすべてが今、岸総理を迎えて、あなたにこそ、借りものでない、誠意と真実に満ちた誓いともいうべき決意の表明を強く期待していると思うのであります。戦時中の責任は厳粛に反省色、今日では民主主義に徹した政治家として、日本の再建に努力したいとの先日の答弁のみによっては、所信表明の中で、強く感ぜられる戦前戦時中的なにおいをすら、打ち消すことができないのみか、むしろあの叱咤激励口調とともに、岸総理がかねてから平和憲法の改正論者であり、改正に必要な三分の二議席確保のために、例の小選挙区制法案の制定にも力こぶを入れてきた事実を思い合わせるとき、多大の危惧の念をさえ抱かざるを得ないのであります。
総理臨時代理としての施政方針演説にも、また、岸内閣となって、総理としての所信表明の中にも、日本についての平和国家という言葉が見当らないのであります。世界平和に寄与するということが、わずかに言われてはいますが、こうした言葉は、東洋平和のためとか、世界平和に寄与するとか言われて、戦時中でもよく使われたものであります。それよりもまず、全く戦災で焼土と化し、原爆の洗礼まで受けたこの日本の国をどう建設して行かれようとするのか、はっきりお答えを願いたいと思うのであります。大きな戦争責任を持つ岸総理でありますだけに、平和国家建設の所信が、総理自身の口からいかに強調せられても、決して強調され過ぎることはないはずであります。それこそ、国民大衆の理解と納得の上に立つ政治こそ、民主政治の正しい姿であると言われる総理自体が、国民大衆の理解と納得を得なければならないまず第一の最大の課題は、この日本の平和国家建設への所信を明らかにせらるべきであると思いまするが、岸総理はいかにお考えになりまするか、お聞きいたしたいのであります。
さて、次にお伺いいたしたいことは、今次春季闘争に対する政府の態度についてであります。
そこで、まず第一点は、去る二月十九日、政府が労働大臣を議長とし、各省次官からなる労働問題連絡会議の設置を行なったり、二月二十二日の閣議決定に基き、官房長官の談話が発表せられる等、一連の、主として官公労の春季闘争に対する政府の弾圧的、挑戦的態度についてであります。すなわち政府は、官公労の給与問題について、従来から積極的な努力を尽さず、昨年七月、ようやくにして出された人事院勧告の場合についても、今日までこれを放置し、待ち切れなくなった官公労の諸君が、憲法に保障せられた団体行動権をもって強く訴えんとすれば、政府は、みずからの怠慢と責任はこれを棚上げにして、他を責むるに断固処分という重圧的態度で臨まんとしていることは、まことに遺憾であります。
次いで、第二点としてただしたいことは、本年一月、労働次官名をもって全国都道府県知事あてに出された、いわゆる次官通牒なるものについてであります。政府は、これを下部機関を指導するための教育指針だと説明しているのでありますが、この次官通牒の中には、労働条件に関する具体的、統一的な、地に足のついた行動をすることがきわめて困難であるため、得てして労働条件とはおそろしく縁の遠い政治的な目標を掲げてみたり、あるいは実情を無視するものであることを自身で百も承知の画一闘争を呼号して、強気一点張りの争議をあおりやすい。傘下の単組がこの指導にどの程度ついて行くかは別として、かような指導は、労働組合にいたずらに政治的色彩を加え、あるいはなくもがなの世間の反感を起させるにすぎないとか、遺憾ながら現状においては、上部組織には、むちと拍車だけでは、手綱を忘れた騎手とのそしりを免れぬものが少くない等と言うに至っては、まことにあきれた次官通牒と言わなければならない。これこそ、今年の春季闘争を前にして、日経連等財界という騎手の手綱で政府が動いたのではないかと疑われてもいたし方ないと思うのであります。法律解釈集なら解釈集らしく、あらゆる判例、事例を公平に集めて、客観的に権威あるものを作るべきだし、教育指針なら指針らしく、公正妥当な見地から、誤解を招くことのない指針とすべきで、次官通牒などという命令的な形式をもって、しかもきわめて主観的、一方的な見解を全国都道府県知事に押しつけ指導するがごときは、まことに黙過しがたい所為と思うのであります。
第三点としてただしたいことは、最近、民間労組の紛争に、警察権の不当な介入が行われつつあることについてであります。すなわち二、三の例をあげますならば、神戸市の中本麻袋商店、東京の東京亜鉛、栗林写真工業等の争議がそれであります。これらはいずれもかの近江絹糸、あるいはそれ以上に劣悪な労働環境の中で、労組法も基準法も眼中にない経営者のもとで、牛馬のごとく酷使せられる労働者が、きわめて妥当な賃金の引き上げを要求したに過ぎないのにもかかわらず、会社側は、さらに組合幹部の首切りを行う等のことによって、事態が紛糾を重ねているものであります。この争議の過程には、いずれも警察官がきわめて不当に介入し、正当なる組合活動を弾圧しているものでありまして、神戸の中本争議にあってば、本年一月二十一日午前三時ごろ、会社の重役、労務課長を先頭に、六十名の白だすきをかけた暴力団が、わずか二十名の組合員に
一方的に襲いかかり、組合側に負傷者を申したのでありまするが、その際、現場に灘警察署の私服刑事二名と、近くの交番に一分隊の警官隊がいたのでありまするが、ただ拱手傍観していたのであります。ところが次いで一月二十七日午前三時頃、会社前のテント張りで露店生活を続けていた組合員が、折柄のひょうを交えた大雨にいたたまれず、女子十四名を含めた約三十名、やむなく工場内の組合事務所に雨宿りのために入るや、午前五時過ぎごろ、トラック二台に分乗し、やってきた約七十名の警官は、組合員の即刻外部への退去を迫り、ついには不法侵入というかどで全員を検束するという暴挙に出たのであります。またその後、連日組合員を灘署に呼び出し、ある組合員たる老婆を取り調べるに当っては、ほおを殴打するという事実すらあったのであります。また、東京の栗林写真工業の場合においては、二月上旬、三個中隊の警官を動員して、会社側の要請により、直ちに、建物不法占拠なりとの理由をもって、組合員を追い出すために実力行使に及んだのであります。その他、団体交渉の席上に警官が立ち会ったり、あるいはまた、西新井警察署の一係官のごときは、一月十九日、組合大会の中に割って入り、大声で、不法占拠なるがゆえに明日午前十時五分を期して退去を命ずると威嚇的な態度で、裁判所への仮処分申請も何もなされていない状態のもとで通告を行なっているのでありまするが、組合員がみずからの職場におることが何が不法であり、何が占拠でありましょうか。以上のような一連の目に余る警察権力の介入は、まことに労働運動に対する露骨な政府の弾圧を意味するものであって、断じて看過し得ないところであります。(拍手)
以上三点の質問のうち、第一、第三の点につき岸総理の所信を伺いたいのであります。また次官通牒を出し、組合に対する訓示的、指導的面を強調せられる労働大臣には、三点のそれぞれにつき、その所信を率直にお伺いいたしたいのであります。また、大久保国務大臣には、警察権の介入について、関係者に対し厳重なる処分を当然行うべきであると思いまするが、これに対する国警担当国務大臣としての決意のほどを伺いたいのであります。
次に質問をいたしたいのは、政府の賃金問題に関する根本政策についてであります。政府は昭和三十二年度予算において、約二千億円の自然増収を見込んで、一千億減税、一千億積極政策を打ち出し、世は未曾有の好景気だと言われているのでありまするが、その実態は果していかなるものでありましょうか。政府の言う一千億減税も、わずかに全人口の二七%を潤おすにすぎず、七三%に上る大半の人たちには全く無縁の減税なのであります。それどころか、逆に国鉄運賃、電気料金の大幅値上げ、そしてこの値上げに伴う諸物価のはね上り等によって、ますます大きな重圧をこの人たちは受ける結果となるのであります。要するに神武以来の好景気も、多数の労働者の低賃金という犠牲の上に築かれた一部の者のための景気なのであります。従って政府は、この機会をとらえ、多数の労働者のために、最低賃金の保障を行うに必要な法案その他の措置をとることが、きわめて緊要なことだと考えますが、岸総理並びに松浦労組はいかなる所信を持っておられるか、お尋ねをいたしたいのであります。
わが日本社会党は、このたび全企業の六〇%を占める中小企業に対する賃金対策を主たるねらいとして、満十八歳以上月八千円、ただし法律施行より二年間の過渡的措置として六千円を支給すべきことを骨子とした最低賃金法案並びにこれに関連する家内労働法案を今国会に提出し、その成立を期しておる次第でありまするが、特に政府並びに与党たる自民党並びに緑風会の賛成と協力を、この際、あらかじめ求めておきたいと思うのであります。(拍手)
次いで最後に私が政府にただしたいと思う点は、公務員の賃金改訂についてであります。人事院は、昨年七月、給与改訂の勧告を行なったのでありますが、政府は、今日まで何らの改善も行わないまま見送ってきたことは、まことに遺憾であり、その怠慢は強く非難さるべきであります。今回、政府が三十二年度より実施せんとして国会に提出しようとしておりまする国家公務員の改訂俸給表なるものは、いわゆる職階強化の体系であると同時に、きわめて不合理かつ冷酷なものとなっておるのであります。政府案が、切りかえに当って給与改善を行うとの立場から計上しておりまする総額百五十六億円の財源も、切りかえに当って実際必要とする金額は百三十一億円、すなわち賃金総額に対してわずかに六・二%にすぎず、昨年、人事院勧告当時に公表された報告書において認められておる民間賃金との差一一%の約半分にすぎないものでありますると同時に、政府案によれば明らかに現行よりも改悪せられる結果となるものであります。すなわち第一は、行政職俸給表を二本建てとし、中央行政機関と地方行政機関との俸給表を分離したことであります。等級格づけの上から地方行政機関の実情を考慮して別にしたと称しておるのでありますが、これは明らかに現場の第一線である地方機関を軽視して、中央第一主義、上部優遇主義という、かつての古い思想に基く、全く時代逆行的なやり方と言わざるを得ないのであります。
さらにまた第二として、絶対反対せざるを得ない点は、昇給期間が延長せられたことであります。現在半年、九カ月、一年の昇給期間であるものが、政府案では、一年、一年三カ月、一年半、一年九カ月、二年と大幅に延長せられておるのでありまして、期間延長に伴って昇給金額も多少増額せられてはいるものの、明らかに従来よりも不利であり、一・五号俸程度の切りかえ時の引き上げが行われても、数年後には、従来のものによって昇給する場合よりも不利益となるものであります。特にこのことは、役づきにあらざる多数の一般職員について言えることであり、非常に重大な問題であります。官公労の諸君が、政府案俸給表に対して絶対反対しておる理由も、実にここにあるわけであります。役職員以外の者にとっては、目の先わずかの間だけ給与が引き上げられたかのごとく見えながら、数年後には逆に引き下げとなり、長期をとってみれば、明らかに改悪となっておるがごとき給与改訂案は、実に政府の悪質なる羊頭狗肉に類する低賃金政策と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
そこで労働大臣にお尋ねをするわけですが、政府は真に給与の引き上げを考えておるのか、それとも単に給与体系の改訂だけを考えておるのか、……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/7
-
008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 久保君、時間が参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/8
-
009・久保等
○久保等君(続) 給与そのものの引き上げも考えておるとするならば、一体現行のものより将来悪くなるような改訂は、給与の改善でもなく、また引き上げにもならないと思いますが、いかがでありますか、今後この問題については、再検討を加える誠意と雅量を持たれておるか、率直にお答え願いたいのであります。……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/9
-
010・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 久保君、時間です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/10
-
011・久保等
○久保等君(続) 特に、最近における官公労の春季闘争に関して、政府が平和的かつ円満にこれを解決せんと願うならば、ぜひともこの点について、政府が十分官公労の代表と話し合いをせられることを強く要望いたしたいのであります。
時間がございませんので、以上をもって私の質問を終ることにいたします。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/11
-
012・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 久保君の御質問にお答えを申し上げます。
第一は、岸内閣の施政の方針についてでございますが、これはすでに私がこの席から私の所信を申し述べましたように、この岸内閣は、石橋内閣の施政の方針を継承するものであるという意味におきまして、私が二月四日にこの壇上から、やはり総理大臣臨時代理として申し述べましたことが岸内閣の施政の方針として、これを御了解いただけばいいと思います。また私個人のことに関しましては、これはしばしばあらゆる機会に私の信念を、あるいは本会議におきまして、あるいは予算委員会その他の委員会におきまして申し述べたごとく、私が戦時中の責任ある閣僚であったことに対しては、私としては厳粛な反省をいたしまして、そうして日本を再び戦争に巻き込むことのないような平和国家を作り上げるためには、民主政治を完成することにある。従って、りっぱな民主政治を作り上げるという意味におきまして、私は、自来、私の政治生活を通じて、一貫して民主政治家として努力するということをいたして参っており、またこれが私の一貫した信念でございます。(拍手)
第二点の、今回の賃金闘争に関する春季闘争につきましては、私は、これが経済闘争であり、従って各労使の間における話し合いによって一日も早くこれが解決されるように念願をいたしております。つきましては、民間の事業につきましては、あくまでも労使の自主的な話し合いによってこれが解決を私は望んでおりまして、政府がいかなる意味におきましても関与はしない。ただ、その行為が真の賃金闘争たる範囲を逸脱して、そうして違法の事態が生じ、もしくは社会に対して非常な不安を与えるようなことのないようにこれを持って行くように指導するというようなことは、これは政府として当然に努めなければならんことであると考えます。また公務員に関係ある労働組合の労働争議に関しましては、先般官房長官談をもって発表いたしておりますように、違法行為、これは特に違法行為が生じますことは、私は公務員の性質上許すべからざることであるという考えのもとに、そういう事態を生じないように、もし万一そういうことがあるならば、厳にこれを取り締る措置を講じて参りたい、かように考えております。(拍手)
最低賃金の問題に関しましては、現在の日本の経済、産業の情勢から見まするというと、画一的に、すべての産業に画一的な最低賃金を設けるというのはまだ早いと私は考えております。しかし、特殊の産業別あるいは地域別等について、この問題についての研究をすることは、私は必要であると考えておりまして、また、そういう研究が行われておることは御承知の通りでありまして、今日において画一的なものを作るということはまだ早い、かように考えております。
最後に、公務員の給与の改善につきましては、政府としては、人事院の勧告にある給与体系の改正と、そうして給与の改善という、二つの点に重きを置いて、私どもは今日の予算に出しておる案を提出しておるわけであります。(拍手)
〔国務大臣松浦周太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/12
-
013・松浦周太郎
○国務大臣(松浦周太郎君) 総理大臣のお答えにならなかった部分に対してお答え申し上げます。
まず、労働次官通牒を出した意図を問うという問題でありますが、これは委員会において、しばしば申し上げておることでありますが、今お問いでございますから、もう一度申し上げておきたいと思います。
わが国の労働組合運動及び労使の関係は、逐年健全化の方向をたどっておるのでありますが、いまだ未成熟の点が多いことはしばしば指摘される通りであります。そこで政府といたしましては、労働組合法施行十年を経たこの機会に、労働組合運動の健全化、労使の関係のあり方等に対する基本的な考え方を体系的に取りまとめて、労働教育行政の指針として今回の通牒を出すに至ったのであります。意図は、労使及び国民一般の理解と納得を得て、より健全にして合理的な労働組合運動及び労使の関係の実現に資したいにほかならないものでございます。
さらに、先ほどもお問いがございましたが、労働基本権は、労働者が団結により使用者と対等の立場に立って経済的な地位を深く向上することを目的として、憲法初め諸法律に強く保障されておるのであります。このことはすでに御承知でありまししょうが、政府としても、それに対して十分尊重し、また否定するようなことは全然考えておりません。しかしながら、これらの権利も、ひっきょう自由民主主義のもとにおいて、労働者の権利を擁護するとともに、産業の平和を保ち、またその発展をなす経済が繁栄し、もって国民の一般の利益を増進することを目的とした日本憲法の趣旨に即して交渉しておりますことは、御承知の通りであります。また労働組合運動は、社会の発展に伴い、その領域も多種多様にわたることになるのであります。憲法を初めとする諸法律が、団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障しておることも、この本旨は、労働条件等の労使の関係の集団的決定という点にあるのであって、それ以外の行動は一切してはいけない、あるいは違法であるというのではないが、本通牒は、法の保障の目的の趣旨を明確にしたまでであるのであります。右、お答え申し上げます。
また先ほど、警察官が労働運動に介入することはけしからんということでございましたが、われわれは、先ほど総理のお答えにありましたように、民間の問題に対しましては不介入の態度をとっております。しかしながら、今回起りました中本商店、今御指摘のありました東京亜鉛、栗林写真工業等の問題は、これは警察官が介入せざるを得ない状況になっておるのでございますから、やむを得ず介入いたしまして、その秩序を保ったのであります。中小企業の労使の関係は、まだ十分に経験ができておりませんから、しばしばこういう問題が起りますことは、まことに残念であります。われわれは、これらの教育のために、先ほど申し上げました教育指針を基礎といたしまして、この労使関係の調和をとって行きたい、かように思っておるのであります。
以上、お答え申し上げます。(拍手)
〔国務大臣大久保留次郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/13
-
014・大久保留次郎
○国務大臣(大久保留次郎君) 労働争議の取締り方針につきましては、総理大臣からるる申し述べましたごとくで、私からあらためて申し上げる必要はないと存じます。
そこで、御指摘になりましたこの三カ所の争議の問題であります。すなわち、栗林写真店の争議、東京亜鉛会社の争議、神戸におきます中本商店の争議、これは目下争議中でありまして、いずれも終了になっておりません。しかし、今日までの経過に徴しますると、警察官の取締りにおいて、これを処分せなければならぬというような事態は発生してないと存じます。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/14
-
015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、北海道における国有の魚田開発施設等の譲与等に関する法律案(衆議院提出)
日程第二、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、税関支署の設置に関し承認を求めるの件
日程第三、昭和二十八年度から昭和三十一年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/15
-
016・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長廣瀬久忠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/16
-
017・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 ただいま議題となりました二つの法律案外一件について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、北海道における国有の魚田開発施設等の譲与等に関する法律案について申し上げます。
本案は、第二十四回国会において、衆議院議員佐々木秀世君外一名より提出され、衆議院において継続審査となり、今国会に至ったものであります。
内容を申し上げますと、終戦直後、樺太、千島からの引揚漁民の援護対策のため、北海道における魚田開発事業として、昭和二十二年度、二十三年度の予算をもって、住居、共同加工場、漁船等を新設または購入し、漁民に使用させ、関係市町村に管理せしめてきたのでありますが、その管理の実情などにかんがみて、この施設等を関係市町村に譲与し、未納使用料についても免除できることにしようとするものであります。
委員会の審議におきまして、譲与される施設等の台帳価格及び免除される未納使用料の合計額は約三千三百万円であること、政府においても本措置に異存はないこと等が明らかにされましたが、詳細は会議録によりて御承知願います。
質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、税関支署の設置に関し承認を求めるの件について申し上げます。
本件は、最近における外国貿易の進展に伴う税関業務の増加に即応し、税関業務を現地において簡略かつ迅速に処理するため、現在の税関支署出張所中、松山、宮津、佐伯、宮古の四出張所を税関支署に昇格せしめようとするものであります。
委員会における審議の詳細につきましては、会議録によって御承知を願いたいと存じます。
質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって原案通り承認すべきものと決定いたしました。
最後に、昭和二十八年度から昭和三十一年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
昭和二十八年度から昭和三十一年度までの間においては、国債の元金償還のための資金を一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れる場合、その繰り入れるべき金額は、国債整理基金特別会計法の規定を適用せず、財政法の規定による前々年度の剰余金の二分の一を下らざる額とすること、また、日本国有鉄道及び日本電信電話公社が、その発足当時に政府に対して負うこととなった債務の償還元利金は、直接、国債整理基金特別会計に繰り入れ、一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れがあったものとみなすという二つの特例措置が講ぜられてきたのであります。本案は、国債償還費の状況にかんがみ、かつ、経理の簡素化をはかるため、この特例措置を引き続き昭和三十二年度においても講じようとするものであります。
委員会における審議の詳細につきましては、会議録によって御承知を願いたいと存じます。
質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって、衆議院送付案通力可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告知し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/17
-
018・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。
まず、北海道における国有の魚田開発施設等の譲与等に関する法律案全部を問題に供します。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/18
-
019・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/19
-
020・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、税関支署の設置に関し承認を求めるの件全部を問題に供します。
委員長報告の通ね、本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/20
-
021・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました心
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/21
-
022・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 次に、昭和二十一八年度から昭和三十一年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/22
-
023・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/23
-
024・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第四、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。商工委員会理事阿具根登君。
〔阿具根登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/24
-
025・阿具根登
○阿具根登君 ただいま議題となりました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の設置に濁し承認を求めるの件につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
本件は、通商産業省設置法第二十二条の規定によりまして設置されている工業品検査所丸亀出張所を、高松市に移転する必要が生じたので国会の承認を求めようとするものであります。
そもそも工業品検査所は、現在、本所を東京に、支所を大阪、名古屋及び福岡に、出張所を横浜の外六カ所に設置し、輸出品の声価の向上及び品質の改善をはかる目的で、輸出品の検査等を行うところの、地味ではあるが、きわめて重要な仕事をしているのであります。輸出品検査については、すでに対中共貿易において、北京見本市の事態が示すように、これが公明適確でないと、国際信用の上にきわめて重大なる影響を持つのであります。また貿易取引は、その性質上時期を失せざるよう迅速をとうとぶのでありまして、輸出品検査も、従って能率約に行う必要があるのであります。
工業品検査所の丸亀出張所は、四国一円を管轄区域としておりまして、四国通産局が丸亀市にあるときは、連絡の上からも、検査の正確、迅速を期する上からも、丸亀市にあることが好都合であったのであります。ところが第二十四国会で承認を与えましたように、四国通産局が高松市に移転した今日になってみますと、出張所を丸亀市に残しておくことは、幾多の不便があると認められるのでございます。その後、通産局の移転に伴い受け入れ態勢も整いましたので、この際、出張所も高松市に移転させ、四国通産局と同じ場所に置くことにより、輸出品検査の正確、迅速に行われるようにいたしたいというのであります。
前々から輸出品検査に関する諸問題を調査して参りました商工委員会としましては、右の諸事情にかんがみて、一日も早く移転を完了せしめるのが至当であると認め、本件に関しましては、格別の質疑もなく、討論を省略して、採決いたしましたところ、全会一致をもって、これを承認すべきものと決定した次第であります。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/25
-
026・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。
本件を問題に供します。委員長報告の通り本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/26
-
027・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。
次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十三分散会
—————・—————
○本日の会議に付した案件
一、春季賃金闘争に関する緊急質問
一、日程第一 北海道における国有の魚田開発施設等の譲与等に関する法律案
一、日程第二 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、税関支署の設置に関し承認を求めるの件
一、日程第三 昭和二十八年度から昭和三十一年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案
一、日程第四 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所の出張所の設置に関し承認を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01019570304/27
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。