1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月十一日(月曜日)
午前十時五十三分開議
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議事日程第十一号
昭和三十二年三月十一日
午前十時開議
第一 裁判官訴追委員予備員辞任の件
第二 食品衛生法の一部を改正する法律案(第二十四回国会内閣提出)(委員長報告)
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
この際、お諮りいたします。酒井利雄君から、病気のため三十日間、請暇の申し出がございました。
これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/2
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003・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 議員森下政一君は、去る五日、逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。同君に対しましては、議長は、すでに次の弔詞を贈呈いたしました。
参議院は議員正五位勲三等森下政一君の長逝に対しまして、つつしんで哀悼の意を表し、うやうやしく弔詞をささげます。
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 山本米治君から発言を求められております。この際、発言を許します。山本米治君。
〔山本米治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/5
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006・山本米治
○山本米治君 ただいま議長から御報告のございました通り、議員森下政一君には、昨年の秋、列国議会同盟会議から帰国せられまして以来、とかく御健康がすぐれず、大阪市立大学付属病院に入院御加療中でありましたところ、薬石効なく、去る五日、ついに満六十二才の寿命をもって御長逝せられた次第でございました。まことに痛恨の至りにたえませず、哀悼の情を禁じ得ないものがあるのでございます。
私は同君とは、かねて大蔵委員会におきまして、久しく同僚委員でございましたのみならず、今また、法務委員会に席を同じういたします関係上、皆様の御同意を得まして、ここに同君生前の御功績をしのび、あわせて同君の追悼の辞をささげたいと存じます。
森下政一君は、明治二十八年三月、福知山市に出生せられ、早稲田大学商科卒業後、直ちに米国に留学せられました。滞在四カ年にして帰国後、関西大学に教鞭をとられること約十年、その後、大阪市財務部長、同市助役、大阪市民信用組合長、大阪市教育会長等の要職を歴任せられましたが、昭和二十二年四月、かねての雄図を抱いて、戦後初めての参議院議員に当選せられますや、その卓抜なる学識経験と御手腕とをもって、間もなく大蔵政務次官に任ぜられ、専門の知識をもって大蔵行政のために非常に奮闘せられましたことは、世人の広く知るところでございます。さらに昭和二十八年四月、再選後は、院にありましては地方行政委員、また、地方制度調査会委員等として、地方制度のために尽瘁せられ、また党におきましては、日本社会党大阪府支部連合会会長、あるいはまた参議院議員総会副会長等として活躍せられたのであります。
同君は、人となり沈着冷静にして温厚明敏、仕事にはきわめて熱心、しかも他人に対しましては常に親切でございましたので、何人からも信頼されておったのでございます。このすぐれたお人柄に加うるに、多年の貴重な経験と深い識見とをもって、一念を政治の上に生かしてこられたのであります。
今日、わが国は国際社会の一員として、内外にわたり幾多の重要問題を抱、えております折柄、森下君のごとき前途有為の士に期待するところきわめて大でありましたのに、不幸にして今、同君が病魔に倒れ、幽明境を異にするに至りましたことは、まことに邦家のため惜しみても余りあるところでございます。
ここに各位を代表いたしまして、同君の御逝去をいたみ、つつしんで追悼の辞を申し述べますとともに、衷心より同君の御冥福を祈る次第でございます。(拍手)
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007・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、裁判官訴追委員予備員辞任の件。
井村徳二君から、裁判官訴追委員予備員を辞任いたしたい旨の申し出がございました。これを許可することに御
異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/7
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008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
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009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、裁判官訴追委員予備員の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/9
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010・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/10
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011・宮田重文
○宮田重文君 ただいまの選挙は、その手続を省略いたしまして、議長において指名することの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/11
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012・坂本昭
○坂本昭君 ただいまの宮田君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/12
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013・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 宮田君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/13
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014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、裁判官訴追委員予備員に林田正治君を指名いたします。寺
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015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第二、食品衛生法の一部を改正する法律案(第二十四回国会内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長千葉信君。
〔千葉信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/15
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016・千葉信
○千葉信君 ただいま議題となりました食品衛生法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審議の経過並びにその結果を御報告申し上げます。
本改正案は、去る第二十四回国会におきまして、政府より提出された法律案でありますが、自来、今国会に至るまで、本院において継続審査に付されていた法案であります。
まず、本法律案によるおもなる改正部分とその理由について申し述べます。
改正の第一点は、添加物の概念を明確にしようとしたことであります。近時、食品工業が飛躍的に発展したことに伴いまして、食品の製造の過程において添加使用されるものが、年とともに増加して参ったのでありますが、かかるものについて、食品衛生法の適用上、添加物として取締りの徹底を期することができないことは危険なことであります。先般の森永ドライミルク事件にもかんがみまして、食品の製造過程において添加、混和、浸潤その他の方法によって使用される物質を添加物として取り扱うよう添加物の概念を明確にいたしまして、添加物による食品の危害を未然に防ごうとするものであります。
改正の第二点は、食品衛生管理者を設けようとしたことであります。乳製品、化学的合成品たる添加物等の食品及び添加物は、その製造または加工について、きわめて高度の技術を必要といたしますとともに、その製造または加工の過程における取扱いを誤まりますれば、製造され、または加工された食品に及ぼす危険性が大きく、かつ、その被害が広範囲に及ぶことが予想されます。従いまして、これらのもののうち、このような危険性の特に大きいものとして、政令で定めるものの製造または加工を行なっている営業者は、その製造または加工を衛生的に管理させるため、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を設置しなければならないこととしたのであります。この食品衛生管理者が、職務を怠ったことにより、右の違反が起きた場合には、罰則が適用せられることとすること等により、右の食品衛生管理者が、その職務を十分に全うすることを期待するものであります。
改正の第三点は、食品、添加物、器具または容器、包装に関する標示について規制したことであります。食品、添加物等は、そのものがいつどこで製造されたか不明でありましたり、また、添加、混和、浸潤等の方法によって、食品に使用することを目的として製造、加工されたかどうかが判明いたしませんでは、使用者にとりまして、きわめて不安であります。かかることを明確にいたしますために、食品、添加物等につき公衆衛生の見地から必要な標示についての基準を定めまして、この基準が定められた食品、添加物等であって、その基準に合う標示がないものは、これを販売したり、販売の用に供するために陳列したり、または業務上使用してはならないことといたしたのであります。
改正の第四点は、化学的合成品について、その定義を法律上明確に規定しようとすることであります。
改正の第五点は、罰則を整備したことであります。食品衛生法に規定してある罰則には、従来から不均衡な点がありましたので、今回の改正を機としてこれが整備を行い、均衡を失することのないようにしようとするものであります。
以上が本法律案による重要なる改正点でありますが、委員会におきましては、本案に対する熱心なる質疑が重ねられたのであります。
次に、委員会におけるおもなる質疑の要点を申し上げますと、食品、原料、添加物に対する区別の定義及び添加物取締りの対象、範囲等につきましては、それぞれ専門分野より傾聴すべき学問的な検討が行われたほか、最近、食品に抗生物質を使用する傾向について、これに対する厚生当局の見解をただしたことに対して、「ペニシリン、オーレオマイシンを防腐剤として、野菜、肉類に使用されている例があるが、これらの抗生物質を使うことは、今まで研究されていないので、一応その使用を中止しているが、早く結論を出すべく目下検討中である」とのことでありました。
新たに食品衛生管理者を設置する業務の範囲をいかに政令で定めるかとの問題については、「現在、食品衛生管理者を設置させる業種としてさしあたり考えているのは、第一は、乳製品のうち主として乳幼児の哺育料として使用される全糖乳、加糖粉乳及び調整粉乳の製造または加工業であり、第二は、化学的全成品の添加物の製造または加工業である」との答弁がありました。
また、現行法の食品衛生監視に対する国庫補助規定を削除した理由については、「この補助金は、昭和二十五年以来打ち切られて地方交付税交付金に繰り入れられ、毎年大蔵省と折衝して予算に補助金の計上をはかっているか、実現が困難であって、この条文は空文となっている」ということでありました。その他詳細は、速記録によりまして御了承願いたいと存じます。かくて、質疑を終了いたしましたところ、高野委員より本案に対する修正朱が提出されましたが、この修正案のおもなる内容について申し上げますと、第一は、従来基準または規格が定められた添加物について、厚生大臣はその基準及び規格を収載した食品添加例公定書を公布することであります。第二は、販売の用に供し、または業務上使用する食品、添加物、器具、容器、包装類を輸入しようとする者は、これを厚生大臣に届け出て検査を受けるようにすることであります。第三は、食品衛生管理者となることができる適格者に、歯科医師を加えることであります。第四は、厚生大臣の監督に属する食品衛生調査会の機能に、食品中毒の防止に関する事項及び食品添加物公定書の作成に関する事項等を加えることであります。第五は、従来空文化していた国庫補助規定を削除する改正案に対して、再び国庫補助を存置する修正を加えることであります。その他、この修正案による条文の整理でありますが、前述の食品添加物公定書の作成につきましては、付則をもって、昭和三十四年四月一日まで猶予するようになっているのであります。
この修正案に対しては、質疑がありませんでしたので、討論に入りましたところ、高野委員より、自由民主党を代表して、原料と添加物を明確に区別すること、衛生管理者を設置すべき業種を広く指定すること等の希望を付せられて、修正案並びに修正部分を除く原案に賛成せらました。山下委員よりは、日本社会党を代表して、食品衛生の現状を改善向上すべき当局の熱意と努力とを要請されて、修正案並びに修正部分を除く原案に賛成の意を表せられました。田村委員は、緑風会を代表して、高野、山下両委員の討論の趣旨をくみ、修正案並びに修正部分を除く原案に賛成せられました。
続いて採決の結果、修正案並びに修正部分を除いた原案は、全会一致をもって可決せられました。よって本案は、全会一致をもって、修正可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/16
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017・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。片岡文重君。
〔片岡文重君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/17
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018・片岡文重
○片岡文重君 私は、ただいま議題となりました食品衛生法の一部を改正する法律案並びにその修正案につきまして、日本社会党を代表して、賛成の意見を述べたいと存じます。
議題の内容につきましては、すでに委員長から報告の中に詳細述べられておりまするので、これを省略させていただきますが、由来私どもには、空気のありがたさや、その功績や、これが取扱いに関しての重大さを痛感している者が少いのでありますが、同じように、われわれ人間にとって、いな、生きとし生けるものことごとくが、一日もゆるがせにすることのできない飲食物について、その重要さを痛感している者が少いようであります。食品衛生法の取扱いについて、軽々にこれを扱ったのでは相ならぬと考え、あえてここに討論に立った次第であります。
従来、国民の飲食物に関しましては、飲食物その他の物品取締りに関する法律、飲食物営業取締規則等を初めといたしまして、牛乳、清涼飲料水、氷雪、人工甘味質、メチル・アルコール、有害性着色料、飲食物防腐剤、漂白剤、飲食物用器具等にりきまして、一連の取締規則が制定されてあったのでありますが、これらはいずれも警察行政的な取締りであったわけであります。終戦後、これらの警察行政的取締りが廃止されまして、もっぱら指導行政的立場から規制されることになったのでありますが、果して今日所期のごとく、食中毒の防止、食品衛生の向上等の問題について遺憾な点がないかどうかということについては、なお多くの批判の余地が残されておると考えられるのであります。
特に食中毒等の食品に起因する事故が最近非常に多くなりつつありますことは、各位御承知の通りであり、きわめて遺憾な事実であります。試みに顧みますれば、食中毒の患者数について見ましても、昭和三十年度では実に六万三千二百八十四人であり、前年度の二万二千五百二十八人に比べて、実に三倍近い増加をいたしておるのであります。さらに、その死亡者数を見ますれば、昭和三十年度では五百人をこえ、前年の三百五十八人に比べ、約三割余の増加を見ておるのであります。のみならず、この種の不祥事故は年々大量に発生する傾向にあるばかりでなく、非常に悪質な事故が多くなりつつあるのであります。たとえば三重県津市において醤油集団中毒として、一時に二千十九名の中毒患者の発生を見た事件があり、一昨年三月には東京都内の多くの小学校において、七千七百三十五名に及ぶ児童が、脱脂粉乳による集団中毒を起しておるのであります。また昨年の森永調製粉乳による乳幼児の中毒事件は、今もなお国民の記憶に新たなるところであり、西日本一帯において、いたいけな乳幼児一万二千余名という多数の患者を発生させ、実に百三十余名の死亡者を見るに至ったのであります。
しかるに、これらの多くの犠牲に対して、一体何人がいかなる責任をとうたのでありましょうか。政府は、例によって責任を回避しております。世論の前に公平なるべき言論機関も、何ゆえか、口をぬぐって沈黙を守り、聞くところによれば、これらの事件を惹起した業者は、いよいよもうけ、いよいよ繁昌をきわめておるということであります。国民が、平和な楽しい、明るい日常生活を営むためには、安心して求められる衛生的な食品にたよらなければなりません。日常販売されておる必需食品について、何人がいかなる形式でその安全性を保障するかという問題は、食品衛生行政の根本でなければならんのであります。リンゴ一つ、ミカン一つについても、有毒な駆虫薬が塗布されており、新鮮度を保つための有害薬品が塗布されております。主食の米には、黄変病がある。毎日朝夕飲むお茶も、有害色素で着色されている。晩酌の一ぱいにつまむ干物にも、有害な塗布料が塗ってある。食堂の調理場は不潔であり、赤痢菌の保菌者が調理しておるというこの状態下で、伝染病や食中毒が多数発生しないということは、むしろ不思議でさえあり、これが文化国家であり、衛生国家であるとは、おせじにも言えないと思うのであります。しかるに、今回の政府提出改正案は、食品衛生法違反に対する罰則を軽減しているのであります。その理由とするところは、他の刑法との均衡を保つためということになっておりますが、これだけでは、私どもには納得できません。人一人を殺せば死刑になるのが原則であります。ただただ、もうけるがために、利益を得んがために、多数の人体をそこね、多数の命を奪っておいて、わずか三年以下の懲役もしくは五万円以下の罰金というがごとき程度では、この種悪質な業者の苦痛とはならないからであります。今後、さらに検討の上、時期を見て、この点改訂いたしたいと存ずるのであります。
今回、政府の提出した改正案の動機となりましたものは、御承知の森永粉ミルク事件の発生でありますから、食中毒の防止等食品衛生の向上をはかるため、食品の製造の過程において添加使用される物質を添加物として取扱うこととするとともに、特に衛生管理の必要な食品または添加物の営業者に、食品衛生管理者を設置させる等の措置をとったことについては賛成であります。現行法が、食品だけについて対象としているものを、さらに、その製造過程にまでさかのぼって、それに使用される添加物を監視するという改正は、当然過ぎるほど当然なのであるからであります。原料と添加物との区別については、専門家の議論にまかせるといたしまして、社会労働委員会において修正されましたように、政府は、これが基準となる公定書をすみやかに公布して、必ずこれに準拠するようにして、食品の安全性を確保することに努力していただきたいのであります。
また、食品衛生管理者を設置することによって、製品及び製造過程における責任の所在を明確にすることは賛成でありますが、これによって、食品衛生監視員の手を抜くというようなことがあってはならないと考えます。食品による事故を防止する役目を帯びて第一線で働く食品衛生監視員の数は、その必要に比して、きわめて少い状況にあります、すなわち昭和三十年九月現在で、各都道府県または保健所を設置するいわゆる政令市に置かれている食品衛生監視員の数は、三千八百余名でありますが、このうち食品衛生の監視業務に専従している者は、わずかに一千九百余名に過ぎません。しかも、この専任の食品衛生監視員の数ですら、昭和二十六年には二千五百余名であったものが、二十八年には二千余名、三十年には一千九百余名と逐年減少の一途をたどっているのであります。これは食品衛生法において、監視員に対する国庫補助の規定があるにもかかわらず、昭和二十五年鳳来、これらの費用をすべて地方交付税交付金をもって財源といたしましたために、地方においては、これに要する経費が、他の経費に食い込まれておるということが、この根本的な原因となっているのであります。厚生省が毎年大蔵当局に対して、この監視員に関する国庫補助金を要求しているにもかかわらず、今日までこれが実現されず、従って国庫補助に関する規定が死文化しておる、こういう理由をもって、この条文を削除するという改正案に対しましては、あくまでも反対をいたしたいのであります。これは社会労働委員会において修正を見ましたように、国庫補助の規定を存置することによって、食品衛生行政に対する国の責任の所在を明確にしておく必要があるからであります。現在においても、食品の製造過程に対する監視指導が十分に行われがたい実情にあり、しかも、さきに述べたようないろいろの不祥事件が数多く発生して、たくさんの犠牲者を出していることを思うときに、今後このままの状態で推移いたしますならば、食品衛生上、まことに憂慮すべきものがあると言わざるを得ないのであります。政府が今回の改正によって、食品衛生監視員に対する国庫補助の規定を削除する意図に出たということは、いかに食品衛生行政を軽視し、国民の日常生活に無関心であるかということを政府みずから告白しておるものと言わなければなりません。食品衛生の安全性を確保して、国民の日常生活にいささかも不安の念を抱かせないことは、国の重要な責務とするところであります。食品衛生の関係する分野が広いということは、国民の日常生活にとって、いかに重要であり、密接な関係を有するものであるかを物語るものでありますが、広範であるから監視や取締りに困難であるということで、この多くの犠牲者の出るのを待ち、あるいは不祥事件の発生した後において初めて対策を講ずるという態度であってはならないと考えますから、政府当局の今後における態度に、十分な熱意を要望するものであります。
一般に、次から次へと新しく合成される添加物は、われわれのからだにとって、いわば異質のものである。性質の違うものである。一応何らかの作用を及ぼすものと考うるべきものであります。最近多くの食品に、合成された添加物が、ますます多く使用される傾向にある現在において、国民の不安が起らないように、一そうの努力を要望してやまないものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/18
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019・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 時間が参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/19
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020・片岡文重
○片岡文重君(続) 時間が参りましたので、結論を申し上げたいと思いますが、この際に、不徳な悪質業者の利益追求の犠牲となって、あたら生をうけて間もない幼い命を失われた森永事件の犠牲者たる乳幼児を初めとして、数多くの食中毒による犠牲者のみたまに、心からなる冥福をお祈り申し上げて、今もなお、涙かわかぬこれらの母親や若き父親たちの悲しみに対して、心からなるお慰めを申し上げたいと存ずるのであります。
以上の趣旨に基きまして、私は、修正案並びに修正部分を除いた政府原案に、賛成の意を表する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/20
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021・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。
これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/21
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022・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。
次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十一分散会
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、故議員森下政一君に対し弔詞贈呈の件
一、故議員森下政一君に対する哀悼の辞
一、日程第一 裁判官訴追委員予備員辞任の件
一、裁判官訴追委員予備員の選挙
一、日程第二 食品衛生法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01219570311/22
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