1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十二年三月二十七日(水曜日)
午前十時五十四分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十八号
昭和三十二年三月二十七日
午前十時開議
第一 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第二 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第三 外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第五 日本住宅公団法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第六 私立大学の研究設備に対する国の補助に関する法律案(内閣提出)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/0
-
001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/1
-
002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)
日程第二、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
以上、両件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/2
-
003・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。外務委員長笹森順造君。
〔笹森順造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/3
-
004・笹森順造
○笹森順造君 ただいま議題となりました二件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の批准について承認を求めるの件について申し上げます。
この条約は、さきに締結されました日米間の二重課税防止条約に次ぐ同種の条約として、昨年十二月十二日に署名されたものでありまして、今後ますます緊密化すると考えられる日本・スウェーデン両国間の経済関係に対して、現在の両国の国内税法をそのまま適用した場合に生ずる二重課税の事態を回避し、もって両国の経済的協力関係に生ずべき支障を取り除くため、両国がとるべき二重課税回避の方法を定めたものであります。
この条約の実施により、両国間の二重課税及び脱税の問題を有効適切に処理し、もって両国の国民が安心して経済上、文化上の活動に従事できるようにしたい所存であるとの政府の説明でありました。
委員会においては、本条約のわが国にもたらす実際上の効果、留学生に対する課税免除措置、外国人、ことに米国人及び米国法人に対する課税状況、米国の軍人軍属がその身分喪失後、引き続き日本に滞在し営業するものの脱税の懸念等の諸点について質疑応答が行われました。
次に、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案は、新たに国交回復の国、あるいは新たに独立した国との間に外交関係を開き、また中南米諸国との友好関係を増進する等の見地から、ネパール、ポーランド、チェコスロバキアの三カ国に大使館を、またイエーメン、アイスランド、アイルランド、チュニジア、リビア、モロッコの六カ国に公使館を新設し、なお、中南米のドミニカ、ペルー、チリ、キューバ、ベネズエラ及びコロンビアにある六つの公使館を大使館に昇格せしめ、さらに在ヘルシンキ総領事館を在フインランド公使館に切りかえるものであります。
これらの措置と同時に、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正して、以上のうち、ポーランド、チェコスロバキア両大使館を除く在外公館、また外務省設置法の一部改正によって新設される在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部、及びすでに設置されました在ソ連大使館、以上の在外公館に勤務する者の在勤俸を定めるものであります。
本法律案の審議におきましては、中近東及びアフリカ方面に専任大公使派遣の必要、低開発国に設置する公館には、医学、文化等の専門館員を配置すべきこと、特殊語学に精通する館員の配置、養成の必要、館長たるべきものの心がまえ等の諸点につき質疑と要望が述べられました。
委員会は、三月二十六日、以上二件につきまして採決を行いましたところ、全会一致をもって条約を承認すべきものと議決し、また、法律案も全会一致をもって原案通り可決いたした次第であります。
右、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/4
-
005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両件の採決をいたします。
まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の批准について承認を求めるの件を問題に供します。
委員長報告の通り本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/5
-
006・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/6
-
007・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 次に、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/7
-
008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/8
-
009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第三、外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長亀田得治君。
〔亀田得治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/9
-
010・亀田得治
○亀田得治君 ただいま議題となりました外務省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
今回の改正は、外務省機構に関するものでありまして、第一に、外務省本省において、欧米局を廃止し、アメリカ局及び欧亜局を設置し、第二に、在外公館の一つとして、在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部を設置することの二つの点であります。
以上二点の改正の理由として、政府の説明するところによりますると、まず、改正の第一点につきましては、現在、外務省において地域別の政務を担当する局としては、アジア局と欧米局の二局だけあって、欧米局が欧州、米州、アフリカ、中近東、大洋州という、はなはだ広い地域を一局で担当することとなっておるが、わが国の外交は、最近国際連合への加盟及びソ連を初め、東欧諸国との国交回復により、質的にも量的にも、従来に比し面目を一新するに至り、従来のごとく欧州、米州、中近東、アフリカ、大洋州の全地域を一局で担当させるのでは、外交活動の万全を期しがたいので、今回の改正により、欧米局を廃止して、アメリカ局及び欧亜局を新設し、アメリカ局においてはアメリカ諸国に関する事務を、また欧亜局においては欧州、中近東、アフリカ及び大洋州の諸国に関する事務を担当させることにいたしております。
次に、改正の第二点につきましては、ジュネーヴには現在国連欧州事務局を初め、多くの国際機関が置かれ、また常時ひんぱんに各種の重要な国際会議が開かれているが、現在ジュネーヴには、わが方の在外公館としては総領事館が置かれておって、その総領事館の処理する事務は、従来すでに領事館本来の事務の範囲を越え、国際機関ないし国際会議に関する外交事務が大半を占めている実情であり、今回わが国の国際連合加盟に伴い、今後さらにこれら国際機関関係事務が増大し、かつ重要度を加えてくることが予想されるので、世界の主要国がすべてジュネーヴに外交機関として政府代表部を置いていることにもかんがみ、わが国としても、今回在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部を設置することといたしたいというのであります。なお、今回の機構の改正によりまして、昭和三十二年度において予算及び定員には何ら増減はありません。
内閣委員会は、前後三回委員会を開き、本法律案を審議いたしまして、中近東を含むアラブ諸国及び大洋州をアジア局に含ましめる方が実情に即すると思われるが、その点の是非、共産圏諸国の比重が多くなってきた現状にかんがみ、これら共産圏諸国を個々別々に扱わず、一つのブロックとして、一の局においてまとめて扱わしめることの是非、在ジュネーヴ国際機関日本代表部の新設に伴い、定員増加の配慮がなされていないのでは、単に看板のかけかえに終ると思われるが、この点についての政府の所見、現在、外務省の経済関係の事務を所掌する局として経済局が置かれているが、これら経済関係の事務を、アジア局、欧亜局、アメリカ局などの地域的区分の局に分属せしめて扱わしめるのが適当と考えられるが、その点の是非、東南アジア諸国に置かれておる在外公館勤務の館員に対する配慮、その他大使、公使を設置する基準などの諸問題につきまして、政府委員との間に質疑応答が重ねられましたが、その詳細は、委員会会議録に譲ることといたします。
昨日の委員会におきましては、質疑終結後、別に討論もなく、よって直ちに本法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定せられました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/10
-
011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/11
-
012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/12
-
013・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第四、森林法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長堀末治君。
—————————————
〔審査報告書は都合により追録に掲載〕
─────────────
〔堀末治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/13
-
014・堀末治
○堀末治君 ただいま議題となりました森林法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
現行森林法は、森林計画、保安林その他の森林に関する基本的事項及び森林所有者の協同組織の制度を定めて、森林の保続培養と森林生産力の増進とをはかり、国土の保全と国民経済の発展とに資するため、過ぐる昭和二十六年、第十回国会において、旧森林法にかわって制定されたものでありますが、その後における施行の実績と林産物の需給の動向にかんがみ、現行法に対して若干の改正を加えるため提案された法律案でありまして、そのおもなる内容は概要次のようであります。
すなわち第一は、普通林の広葉樹について、その伐採に関する制限を緩和しようとするものでありまして、木材資源の蓄積とその需給の状況から見て、普通林の広葉樹については、従来行われてきた適正伐期齢級未満のものの伐採許可制度を廃止して、これを事前届出制に改めることになっております。第二は、針葉樹など、引き続いて伐採許可制を実施する立木の伐採許可の時期及び回数を改めようとするものでありまして、従来は三月及び六月の二回でありましたのを、三月、六月、九月及び十二月の四回とし、申請者の便に資することになっております。第三は、公有林の経営改善に関するものでありまして、現在最も劣悪な状態に残されている公有林、なかんずく市町村有林についてその振興をはかるために、自主的に適切な経営計画を立てるよう指導奨励し、都道府県知事の認定を受けた経営計画に従って施業を行う公有林に対しては、その立木伐採について、それが森林区実施計画において特に定められた許容限度の範囲内において行われる限り、伐採の許可を必要としないことになっております。なお、市町村有林及び財産区有林については、都道府県知事はその申し出に基いて、経営計画の作成に関して必要な援助を行うことになっております。第四は、制限林の立木の伐採許可の取り扱いについてでありまして、制限林の立木について、都道府県知事の伐採許可を受けた者が、その許可にかかる伐採の施業要件に違反したときは、都道府県知事はその許可を取り消すことができることにしたのであります。第五は、林業技術改良関係職員に関する規定の改正でありまして、従来の林業技術普及員及び林業経営指導員を林業専門技術員及び林業改良指導員に改めるとともに、その担当する業務及びこれが任用の資格等を明確にしたのであります。
以上が内容の大要でありますが、委員会におきましては、日本林業の現況とその長期見通し、国内森林の現況と造林対策並びにその実績とこれが当否、国有林の払い下げ又びその利用状況、国有林及び民有林の評価方法とその当否、国有林野事業特別会計の現況とその運営方法並びにその当否、民有林、特に市町村有林の現況とその劣悪性、林種転換の方針とその実現性、市町村の合併と財産区有林の処分方法及びその当否、森林害虫の被害状況とその防除対策、林業技術普及員及び林業経営指導員の切りかえ措置、並びにその翻りかえ措置が現在の関係職員の身分に及ぼす影響、普通林における広葉樹の伐採許可制の廃止と、これが広葉樹の保続に及ぼす影響、薪炭原木の確保並びに薪炭原木価格の調整、外材輸入の現況とその見通し、山村における森林組合と農業協同組合の現況及びその調整、保安林整備の現状とその対策その他が問題になり、農林当局との間に熱心な質疑応答がかわされたのでありまして、これが内容の詳細については、会議録に譲ることを御了承願いたいのでありますが、ここでその一、二を拾ってこれが概要を御紹介いたしますと、この法律によって従来行われてきた普通林における適正伐期齢級未満の広葉樹の伐採許可の制度が事前届出制に改められることによって、広葉樹の過伐を促し、その保続に支障を来たしはしないかとの質問に対し、用材としての広葉樹は奥山のものであって、これは老齢林で従来とも許可制の対象ではなく届出によったものであり、問題になるのは里山のものであるがこれはおもに薪炭林であって、薪炭の需要が頭打ちになっている現況から見て、今回の措置で伐採が促進されるとは考えられない。これはすでに広葉樹の伐採許可の申請が、計画を下回っている状況から見て毛実証されていると思うと答えられ、また、この法律案によって、現在の林業技術普及員と林業経営指導員が林業専門技術員と林業改良指導員とに改められることになり、その資格は政令で定められたものでなければならないことになっていて、この措置は、技術員や指導員の素質を向上するため一応了承せられるところであるが、しかし、この切りかえによって、現在の職員にいたずらな犠牲をしいる結果となってはならないとして、当局の方針がただされたのに対し、現在の普及員及び指導員は、林野庁または都道府県の行なった試験に合格した有資格者であるから、そのまま専門技術員あるいは改良指導員に切りかえられることとなり、特に犠牲者を出すようなことはないと答えられたのであります。
かくして、質疑を終り、討論に入りましたところ、北村委員から、今、問題になっている法律案による伐採規制の緩和に伴い、林種転換を主体とする造林事業を完遂するため、事業の強力なる助長、薪炭林の改良、適地適木調査の実施及び優良種苗の確保の四項目にわたって、政府の善処を求めることを内容とする付帯決議を付して賛成を述べられ、他に発言もなく、採決の結果、全会一致をもって北村委員の提案にかかる付帯決議とともに、この法律案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。なお、右の付帯決議に対して、農林政務次官から、政府においては決議の趣旨を尊重して期待に沿いたい旨答えられたことを申し添えて、報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/14
-
015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/15
-
016・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/16
-
017・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第五、日本住宅公団法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。建設委員長中山福藏君。
〔中山福藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/17
-
018・中山福藏
○中山福藏君 ただいま議題となりました日本住宅公団法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
日本住宅公団は、住宅不足の特に著しい大都市地域において、耐火性の集団住宅及び宅地の供給を行うとともに、必要に応じて土地区画整理事業を施行し、新市街地を造成する等住宅建設の拡充をはかることを目的として一昨年五月発足したものであります。
今回の改正案の趣旨は、宅地造成等に関する公団の業務範囲を拡張するところにあります。その内容のおもなる点につきまして申し上げますると、まず第一は、公団の造成する宅地が、逐次大規模な団地の形となってきている現状にかんがみまして、新市街地造成に必要な学校、病院、商店、工場等、各種施設の用に供する宅地を住宅用地にあわせて造成することと、これらの宅地を水面埋め立て事業によって造成することができるようにしたことであります。第二は、公団の事業資金は、政府及び地方公共団体からの出資金並びに政府低利資金及び民間からの借入金によって構成されておりますが、昭和三十二年度からは、産業投資特別会計から多額の資金が出資されることになりますので、公団の損益計算上利益を生ずるような場合には、他の類似機関と同様、これを国庫及び出資した地方公共団体に納付するようにしたことであります。第三に、条約その他国際約束に基いて技術研修等の目的で国内に滞在する外国人のための居住施設の供給を、公団本来の業務に支障のない範囲で行うことができるようにしたことであります。
次に、委員会における質疑のおもなる点を申し上げますると公団が大規模に宅地を造成して、工場の用に供する宅地まで供給することは、公団本来の目的からはずれるのではないか、また、譲渡した場合、譲渡の目的に反して土地を転売し、利益を与えるような結果になるおそれはないかという点であります。これにつきまして、住宅公団総裁から、公団の宅地造成は、四、五十万坪が限度であり、大工場を対象とする考えはないこと、また、譲渡する場合には、わが国経済に寄与するような工業を選び、かつ譲渡の目的に反した行為が行われないよう買い戻し付登録を条件とする等、慎重な措置をする考えであるとの答弁がありました。次に、外国人のための居住施設を公団の事業資金をもって供給することは公団法本来の趣旨から離れるものではないかという点でありますが、これについては、今後十分なる検討を加え、方策を講じて行きたいということでありました。その他、水面埋立事業の規模、範囲、宅地の譲渡価格、公団の損益計算の実情と見通し等についての質疑が行われましたが、詳細は会議録で御承知を願いたいと存じます。
かくて、昨二十六日質疑を終了し、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して石井委員から、本案は公団の宅地造成を促進するとともに、団地建設に必要な学校、病院等、各種施設の用地を供給ずる道を開くものとして賛成する、また、緑風会を代表して北委員から、同様賛成の発言があり、社会党を代表して田中委員からは、本案は、業務の運営に待つものが多く、運用のいかんによっては、公団法立法の趣旨に反する面も危惧されるので、次の決議案を付して賛成するとの意見が述べられました。すなわち、
一、宅地造成については、食糧の確保、農家経済の安定等、農地保護の見地から、極力農地の転用を避けるよう配慮すること。
一、本法案によって造成するべき工場用地の譲渡については、わが国の経済発展への寄与を主眼とするとともに、地価の高騰を来たさざるよう慎重に取り扱うこと。
一、技術研修等の目的で国内に滞在する外国人のための居住施設の供給については、その資金措置に関し、今後十分なる検討を加え、適切なる方策を講ずること。
というのが決議案であります。
かくて討論を打ち切り、採決に入りましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。次に、田中委員提出の決議案について採決いたしましたところ、これまた全会一致をもって可決されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/18
-
019・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/19
-
020・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/20
-
021・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第六、私立大学の研究設備に対する国の補助に関する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。文教委員長岡三郎君。
〔岡三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/21
-
022・岡三郎
○岡三郎君 ただいま議題となりました私立大学の研究設備に対する国の補助に関する法律案につきまして、文教委員会における審議の経過と、その結果を御報告申し上げます。
まず、本法律案を提出いたしました政府の提案理由について御説明いたします。私立大学が、わが国の高等教育において重要な地位を占めており、わが国の学術教育の振興に大きな役割を果しておりますことは申すまでもありません。このような私立大学の使命とその研究設備の状況にかんがみまして、政府は、昭和二十八年度以来、私立大学の基礎的な研究設備の整備について助成の措置を講じて参っておるのでありますが、この際、私立大学の研究設備に対する国の補助に関する制度を確立しようというのであります。
次に、本法律案の骨子を簡単に申し上げます。第一は、短期大学を除く私立大学を設置する学校法人に対し、国は予算の範囲内で、その学校法人の設置する大学が行います学術の基礎的研究に、通常必要な設備の購入費の二分の一以内を補助することを規定いたしております。第二は、補助に関する配分の方針または交付の決定を適正に行うために、文部省に私立大学研究設備審議会を設け、その意見を聞くべきことを規定するとともに、関係法律の整備をいたしたことであります。
委員会の審議におきましては、安部、高田、野本、松澤、矢嶋、松永、湯山の各委員から、きわめて熱心な質疑が開陳されました。これらの質疑と政府の答弁のおもな諸点について申し上げます。
第一に、本法律案では、私立大学に対する国の補助の対象を研究設備に限定しているが、その研究は、人文、自然の各学科に及ぶか、また、学生の研究設備、施設に対する補助はどうかとの質問に対しては、本法による補助は、主として教授の研究設備に対するものであって、人文、自然等の区分はなく、広く学術全般に及ぶこと、他方、学生の実験実習用の設置等の助成は、私立大学理科特別助成補助金として別途予算に計上していること、私立大学の施設に対しては、私立学校振興会法による貸付金によって助成しているから、現在、これを補助対象とはしないという答弁がありました。
第二に、本法に定める補助の対象には、私立大学が行う学術の基礎的研究に通常必要な機械器具等の設備という限定をしているが、「基礎的」、「通常」という用語は、不明確ではないかという質疑に対しては、私立大学では、基礎的な研究設備も不足しているので、その充実をはかることが必要であるから、当面、「基礎的研究に通常必要な」ものに限定したという説明でありました。なお、補助対象は、審議会において決定するものであるから、あらかじめ「基礎的」、「通常」というワクをはめなくてもよいではないか、助成措置を講じようとする積極的な意図に欠けるものではないかとの質疑がありましたが、それに対し、本法案による助成は、大学で通常行う基礎的研究に限るのであって、生産化、工業化の研究助成は、別途科学試験研究費補助金等による旨の答弁がありました。さらに、学術の研究は、日進月歩であり、これに一定の基準を設けることは困難であるから、この補助金制度は恒久的なものであるということも明らかになりました。また、文部大臣からは、本法律案による補助制度は、ようやく始まった段階であるから、漸を追って行きたいという意向が表明されました。
第三に、私立大学研究設備審議会の委員の構成いかんという質問に対しては、委員は、私立大学の学長、教授、役員並びに広く学術に識見のある者から文部大臣が任命する旨の答弁がありました。なお、これらの委員の任命に当っては、その推薦を学術会議に求めるかどうかとの質問がありましたが、ただいまのところ、学術会議の推薦を求める考えはない旨の答弁でありました。
第四には、私立大学研究基礎設備助成補助金は、すでに昭和二十八年度以降毎年支出されているが、従来はどのような法的根拠によっていたかとの質問には、私立学校法第五十九条によっていたこと、また昭和三十二年度の本法案による補助金予算は、わずかに八千八百万円にすぎないのであるが、この予算の配分にはどのような計画があるかとの質問がありましたが、配分に関する決定は審議会が行うのであって、現在具体的な案は持っていないという答弁でありました。さらに、従来本補助金の配分は、大学院を置く大学、医科歯科系大学に限られていたが、今後は広く一般の四年制大学にも交付する予定であることも明確になりました。なお、本法による補助金と理科特別助成補助金との配分の総合的な適正化については、政府において十分考慮するということであり、私立大学への助成に対する担当部局が、文部省の中で一つにまとまっていないという点についても、十分研究して善処したいということでありました。
最後に、私学への助成はけっこうであるが、これを安易に扱うと、私学本来の自主性、独立性を阻害することとなり、私学の自滅を来たすおそれはないかとの質疑に対しては、文部大臣から、根本的にはこれに同感である旨の答弁がありました。
以上のほか、補助率が二分の一以内でよいかどうか、理科系と文科系に対する補助金配分の問題、私立大学における文、理系学生数の比率のあり方、さらには私立大学に対する寄付金の免税措置等、多岐にわたってきわめて熱心な質疑がありましたが、これらの詳細は会議録に譲ることといたします。
質疑を終り、討論に入りましたところ、まず常岡委員より修正の動議が提出されました。その修正案は、質疑の過程において最も問題となりました原案「第二条中「通常」を削る」というのであります。次いで、安部、野本両委員より、それぞれ右修正案及び修正部分を除く原案に賛成の意見が述べられました。その意見のおもなる点は、私立大学の重要性にかんがみ、本案のような助成の措置はきわめて適切であること、今後さらに積極的な措置をすべきであること、しかも、その助成は私学の自主的な学風をそこなわないようにすること等でありました。
続いて、各派を代表して矢嶋委員より、本法案に対する付帯決議案が提出されました。その付帯決議案を朗読いたします。
私立大学の研究助成について、政府は次の諸点に留意し、私立大学の充実をはかるよう有効適切な措置を講ずべきである。
一、本法においては、基礎的研究に用いる設備を対象としているが、
補助対象の範囲の拡大、補助予算の増額等については、さらに検討の上適切な措置を講ずること。
一、本法に規定する研究設備に対する国の補助金は、私立大学理科特別助成金、私立学校振興会法に基く貸付金の制度等をも含めて総合的に考究し、配分の適正効率化を期すること。
一、私立大学研究設備審議会の委員の選定については、私立大学並びに日本学術会議の意向を反映するよう選定の公正を期すること。
以上であります。
かくて討論を終り、採決の結果、まず修正案を全会一致をもって可決、続いて修正部分を除く原案をも全会一致可決いたしました。結局本法律案は、全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
なお、付帯決議もまた全会一致、これを可決いたしました。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/22
-
023・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/23
-
024・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。
次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十五分散会
—————・—————
○本日の会議に付した案件
一、日程第一 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の批准について承認を求めるの件
一、日程第二 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案
一、日程第三 外務省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第四 森林法の一部を改正する法律案
一、日程第五 日本住宅公団法の一部を改正する法律案
一、日程第六 私立大学の研究設備に対する国の補助に関する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615254X01919570327/24
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。