1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年二月二十一日(金曜日)
午前十時二十八分開議
出席委員
委員長 西村 直己君
理事 内海 安吉君 理事 大高 康君
理事 荻野 豊平君 理事 久野 忠治君
理事 前田榮之助君 理事 三鍋 義三君
逢澤 寛君 荒舩清十郎君
池田 清志君 木崎 茂男君
薩摩 雄次君 高木 松吉君
徳安 實藏君 馬場 元治君
堀川 恭平君 廣瀬 正雄君
松澤 雄藏君 井谷 正吉君
小川 豊明君 渡辺 惣蔵君
出席国務大臣
建 設 大 臣 根本龍太郎君
出席政府委員
建設事務官
(大臣官房長) 柴田 達夫君
建 設 技 官
(河川局長) 山本 三郎君
建設事務官
(住宅局長) 植田 俊雄君
委員外の出席者
議 員 井手 以誠君
建設事務官
(河川局次長) 関盛 吉雄君
建設事務官
(河川局水政課
長) 国宗 正義君
建 設 技 官
(河川局砂防課
長) 戸田福三郎君
専 門 員 山口 乾治君
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二月二十日
委員堀川恭平君辞任につき、その補欠として山
本粂吉君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員山本粂吉君辞任につき、その補欠として堀
川恭平君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十一日
委員井原岸高君辞任につき、その補欠として馬
場元治君が議長の指名で委員に選任された。
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二月二十日
地すべり等防止法案(内閣提出第七六号)
同月二十一日
地すべり等による災害の防止等に関する法律案
(井手以誠君外二十五名提出、衆法第一号)
日本道路公団法の一部を改正する法律案(内閣
提出第八九号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
水防法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
一号)
地すべり等防止法案(内閣提出第七六号)
地すべり等による災害の防止等に関する法律案
(井手以誠君外二十五名提出、衆法第一号)
建設省関係重要施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/0
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001・西村直己
○西村委員長 これより会議を開きます。
水防法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。本案に対する質疑は前回の委員会におきまして、すでに終了いたしております。
これより本案を討論に付します。討論の通告がありますから、これをお許しいたします。三鍋義三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/1
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002・三鍋義三
○三鍋委員 私は日本社会党を代表いたしまして、先日来本委員会において審議されて参りましたところの水防法の一部改正案に対しまして、賛成の討論をいたしたいと思います。
本法は、第五国会におきまして制定され、さらに第二十二国会において一部改正が行われ、水防活動の強化がはかられてきたのでありますが、このたび水防事務の公共性にかんがみまして、その一般的責任は市町村にあることを明らかにするとともに、水防事務の特殊性に基き、水害予防組合の区域について水防事務組合が設けられる場合の特別処置並びに水防事務組合の議会の議員の選挙及び経費の分賦についての基準を定める等、所要の改正を行い、水防管理団体を実情に即するよう強化して、その活発なる活動に資することを目的としているのでありまして、これは毎年災害によるところの甚大なる被害を受けている対策といたしましては、適切なる処置であると考えるものであります。
ただこの際、一点だけ希望を述べておきたいと思います。それは第三条の四における組合議員の推薦制についてでありますが、当該市町村長が候補者を推薦する場合、現在の二大政党下において、いずれかの一方にのみ片寄るようなことがあると、数市町村にわたる水防上の特別の利害を円満に調整する上において妥当でないと考えられますので、一党派に片寄ることなく、十分考慮の上、候補者を推薦すべきであるという見解に立ちまして、市町村長に対して適切なる指導がなされるよう希望いたしまして、本改正案に賛成をするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/2
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003・西村直己
○西村委員長 討論はこれにて終局いたしました。これより水防法の一部を改正する法律案を採決いたします。本案に賛成の諸君の起立をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/3
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004・西村直己
○西村委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
なお本案の報告書の作成につきましては委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/4
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005・西村直己
○西村委員長 御異議ないものと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/5
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006・西村直己
○西村委員長 次に、前会に引き続き、建設省関係重要施策とこれが実施に要する予算の概要説明に対する質疑を続けます。三鍋義三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/6
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007・三鍋義三
○三鍋委員 本日は主として住宅施策に対しまして、大臣に質問を申し上げたいと思います。その前に、局長さんに若干の資料をお示し願いたいと思うのでありますが、即答願えるものは即答いたしてもらうといたしましても、それができない場合は後ほどでよろしゅうございますから、資料として御提出を願いたいと考えます。
まず住宅不足の現況について知りたいのでございますが、総数どれだけ不足しているかということを、できたら一つ各県別にお願いしたい。そしてまたその内訳といたしまして、第二種——私たちはこれは大体一万六千円以下の収入階層と見るのでありますが、第二種においてどれだけ不足しているか。それから第一種、これは三万二千円以下の階層と見まして、その階層においてどれくらい不足しているか。公庫、公団、これは三万二千円以上と見ます、こういった階層においてどれだけ不足しておるか。なかなか厳密にいかぬと思いますけれども、できるだけこういった観点に立ってお示し願いたい。次に、災害その他滅失、老朽、こういった年度別の戸数、できたら過去五カ年間くらいのをお示し願いたいと思います。次に、公営と公庫と公団の計画の進捗状況、もう一つ自力建設の年度別の実数、これをお示し願いたいと思うのでありますが、だいぶ広い範囲にわたりましたので、何でしたら全部まとめて、次の委員会でもよろしゅうございますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/7
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008・植田俊雄
○植田政府委員 ただいまのお話の中で、即答できるものは即答申し上げた方がいいかと存じます。詳しい資料のできるものもございますし、また、ただいま申し上げることで御了解をいただくよりほかないようなものもございますので、一つ考え方を御説明申し上げたいと存じます。住宅不足の現況でございますが、住宅不足の調査は毎年いたしておるわけではございませんで、御承知の通り昭和三十年度に建設省で実施いたしましたものが、ただいままで使っておる資料でございます。この資料は全国についてやったものではございません。ある程度の抜き取り調査で、推定も入っておるわけでございますが、これを基礎にいたしまして現在まで住宅計画を進めて参ったわけでございます。従いまして、その数字を一応申し上げますと、御承知の通り昭和三十年度に住宅の十カ年計画を始めましたときは、全国の不足戸数を二百七十万戸と押えたわけでございます。その後三十年、三十一年、三十二年に、政府施策住宅及び民間自立住宅が建っておるわけでございます。これが住宅不足の減になったファクターでございますが、一方滅失もございますし、老朽によってとりこわしたのもございます。また新規の世帯増によりまして需要増がございます。こういうファクターを差引計算いたしまして、私どもは計算上、ただいま三十二年度末において二百五万戸の不足と見ておるわけでございます。従いまして、先ほどの第一問に対するお答えといたしましては、二百五万戸の住宅不足をもって二十三年度の住宅施策のスタートと見ておる、こういうように御了解願ったらいいのではないかと存じております。
次に各県別の二種住宅と一種住宅、あるいは公団、公庫関係の住宅を対象とするような住宅不足の状況ということでございますが、先ほども申し上げましたように、各県別にシラミつぶしに、各種の階層の方々の所得から住宅の不足状況——この不足状況の中には、壕舎その他に住んでおったという例もございますし、また遠距離通勤ということも一つのファクターでございますし、また同居でございますとか過密居住であるとか、そういうファクターをとらなければいけないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、三十年度の調査ではそこまでこまかいところに入っておりません。そういう意味から申しまして、各県別に二種を要望するものがどれだけあるか、一種を要望するものがどれだけあるかということを、こまかくつかんだ統計は現実にもできておらないわけでございます。
次にもう一つ申し上げたいことは、ただいま申し上げました昭和三十三年度の住宅不足戸数というものが、そのままの形では漸次解消する方向に向っておるわけでございますが、その当時に不足として調査の対象になったものが、現実はそれが解決されていったかどうかということになりますと、これも二百七十万戸の個々の世帯のことでございますので、一つ一つ差引計算のできるものではないのでございまして、この統計は大数観察によりましてやって参るほか方法がないわけでございますので、そういう意味から申しますと、昭和三十年度にやりました二百七十万戸という一つの住宅不足数に対しまして、現在は二百五万戸でございます。それを、三十年度のときに私どもが抜き取り調査的にやりましたもので、そのままの状況で現在まで至っておるという推定をすることも、実はまた危険なわけでございます。そういう意味から申しまして、ただいま三鍋先生からお話しになりました資料とは若干違うかと存じますが、私どもといたしましては二種住宅、一種住宅に対しまして入居希望者がどの程度あって、その倍率がどの程度になっておるかというような資料も作っているわけでございますから、そういう資料が一つの参考になるようでございますれば、こういう資料は比較的早くできますので、御提出申し上げたいと存じております。この点は、公庫公団につきましても同じような入居の倍率がございます。またこれの資料をごらん願いますればすぐわかりますが、公営住宅に対する入居の倍率が非常に高くて、公庫、公団の場合は六倍程度というふうに若干倍率が低くなっておることも、すぐ御想像がつく問題かと存じておりますので、そういう程度の資料でお許し願いたいと存じます。公庫、公団の進捗状況の問題でございますが、これも資料がございますから、御提出申し上げたいと存じます。次に自力建設の問題も、着工統計等で把握しておりまして、どの程度に実態を反映しているかにつきましては多少問題もあろうかと存じますが、私どもの可能な範囲におきまして、資料を作りまして御提出申し上げたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/8
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009・三鍋義三
○三鍋委員 ただいまの局長さんの御答弁によりますと、これは無理もないと思うのでありますが、実際の住宅不足の階層の実数というものがつかみにくい、これは了解できるのでありますが、しかしながら住宅計画を立てる上におきまして、これをしっかり把握せぬと、ほんとうの適切なる住宅施策ができないのではないかと思います。今後はこういう点につきまして相当力を入れられまして、根拠をしっかり把握した上において住宅施策を打ち立てていただきたいと思います。
そこで大臣にお尋ねしたいのでありますが、政府の住宅施策、三十年の四十二万戸建設といったあの大きな打ち出し方からの推移を見てみますと、一つの性格が出てくるように私は考えるのであります。まず公営住宅についてでありますが、これは総数だけ申し上げます。三十年度の、あの大きく打ち出されたときには五万戸であります。三十一年度は四万六千八百十九戸、これはもうすでにマイナス三千百八十一戸という形になって出てきております。三十二年度について申し上げますと、四万六千四百六十六戸でありまして、またわずかではありますが、ふえたのではなくて三百五十三戸というものが減っている。三十三年度におきましては四万七千百九十三戸で千戸増といわれますけれども、実質におきましては七百三十七戸の増になるのであります。これは公営の推移でありますが、公庫の状態を見ますと、三十年度におきましては七万五千戸、三十一年度におきましては七万七千戸となって二千戸の増、三十三年度には八万八千戸で、一万一千戸の飛躍的増であります。そして三十三年度におきましては九万二千戸といって、また四千戸ふえておるのであります。明らかに毎年予算戸数の上において、大きな伸びを示しておるのであります。一方公団の方を見ますと、三十年度二万四千戸、三十一年度におきましては二万三千戸となって一千戸減っている。そして三十二年度におきましては三万五千戸といって、一万二千戸が一ぺんにふえてくる。今年はどういう風の吹き回しか三万戸、去年より五千戸また減っているわけであります。こうやってみますと、一つの線が出てくるわけでありますが、表面から見ますと、数字的にもてあそばれておって、ほんとうの目標に対して、どのような考えで施策を推し進めているかということに対して疑問を持たざるを得ない、そういう結果が現われてきておるように思うのであります。結果といたしまして、今申し上げました具体的な数字からいきますと、住宅に困窮している対象の七〇%を占める、いわゆる三万二千円以下の階層に対しては、依然として冷やかに取り扱われておる。そして三万二千円以上の、持てるというところにまでいくかどうか知りませんが、何とかいけそうな階層に対して、ずっと数字的に厚くなっている。もちろん住宅不足はあらゆる階層にあるのでありまして、どこを重点にとるかということは、なかなかむずかしいのでありますが、私たびたび当委員会においても申し上げましたように、一つの病院へ同時に二人の患者が入ってきた、診察してみると、一人は慢性の胃腸病であり、一人は一刻を争う盲腸の手術をしなけりゃならぬ患者であるといった場合に、どちらを先に重点的に、その生命を守る上から手を加えるかということは、これはおのずから明らかなのであります。こういう観点からいたしまして、ほんとうに困窮しておる勤労者階級を対象とするということを考えたときに、数字の上から見ましても、いわゆる公営住宅、最も住宅に困窮している階層の分はだんだん減ってきておる。今年においてようやくちょびっとふえておるけれども、しかしあの大きく打ち出されたところの三十年度の住宅施策と比較いたしますと、決して進展しておるということはいえない。これに大きな政治的配慮がなされておるということは、どうしてもいえないのであります。もちろんこれは予算関係でありまして、政府の苦心しておられることはわかります。なかんずく根本さんの御苦心のほども、あらゆる面から御理解申し上げることはできるのでありますが、結果からいたしまして、どうしても私たちはほんとうの住宅に困っておる階層に対する思いやりを、この施策の中からくみ取ることができないのであります。現に都道府県知事から要請がきておることは、大臣もよく御承知の通りであると思います。低額所得者の階層において、はなはだしく欠乏しておるので、公営住宅の供給の増大を切望しておるのであります。しかも不燃公営住宅、特に中層耐火住宅を増加してくれ、また標準建築費の引き上げをしてくれ、用地対策の強化拡充、すなわち次年度以降の用地の取得造成に対する補助または全額融資の制度を強化拡充していただきたい、こういった切実なる希望を述べてきておられますことは大臣もよく御承知の通りであります。ちょうどこれにこたえるがごとく、住宅対策審議会におきましては第三次三カ年計画を答申したことは、これまた大臣のよく御承知の通りであります。これによりますと、第三次三カ年計画の目標は十五万七千戸ということになっております。そして低額所得者に重点を置いて、高層建築もしっかりと一つ考えてやってくれ、こういう答申がなされておるのであります。こういう点からいたしましても、公営住宅に住宅施策の重点を置くべきであるということがおのずから明らかになってくるのに、来年度の予算を見ますと、これに対してはそう力が入っていない。力を入れたいと努力されたのであろうけれども、実際の結果において、それが戸数の上に、予算の上に現われていないということに対するところの大臣のお考え、これを一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/9
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010・根本龍太郎
○根本国務大臣 ただいま三鍋さんから御指摘なされましたことはその通りでありまして、何しろ住宅問題は戦後の日本における一番大きな社会問題であり政治問題である。同時にそれが現在、犯罪とかあるいは家庭悲劇とかの一つの温床になっておる。しかしながら、何しろ戦時中に膨大な住宅が戦禍を受けて壊滅してしまって、日本の経済の立ち直りもなかなか急激にそこまでいかなかったために、こういうことになったわけで、これはまことに深刻な問題であるわけであります。そこで鳩山内閣の当時、ようやくこの住宅問題に対して、国の施策として大きな手を打ったのでありまして、これについてはいろいろの御批判もございましたけれども、従来にない積極的政策を推進して参ったつもりでございます。なお石橋内閣の当時になりまして、御承知のように三十二年度予算編成に当りましては、三十一年までの日本経済の発展の速度から見て、住宅政策についても相当計画をスピード・アップいたしまして、御承知のような五カ年計画を立てたわけでございます。しかしながら、経済の実態が国際経済と相待って非常な変調を来たしたために、ついにこれを繰り延べ、もしくは縮小せざるを得ない状況になったわけであります。現在の経済情勢の見通しにつきましても、これはなかなか容易ではなく、急激に好転するような状況ではありませんので、計画そのものは石橋内閣において修正したものをそのまま踏襲いたしますけれども、三十三年度においては、残念ながら一時足踏みしなければならない状況になったのでございます。そこで、足踏みするという状況になったときに、その限られたる予算並びに資金の内部において、どういうふうに施策をすべきかということに考慮をめぐらしまして、委員会の皆さん方の、昨年のいろいろの御審議の過程において要請せられたる御意見、それからまた、ただいま三鍋さんが述べられました住宅の現実の客観的情勢に基きまして勘案したつもりでございます。昨年の委員会におきましては皆さんの御要請にこたえて、私は特に公団住宅の資金コストを下げ、そして低家賃制度に持っていきたいという方針を申し上げておったのでありまするが、三十三年度の財政資金計画において、どうしても一般会計から利子のつかない金を入れることが不可能になりましたので、やむなく公団住宅は従来よりちょっと減らしました。しかしながら、御指摘の低額所得者に対する住宅問題解決のために、第二種公営に相当力を入れまして二千戸ふやしました。本来ならば一種と二種、ともにふやすべきでありましたけれども、財政上どうしても許されないので、やむなく一種を従来の基準よりちょっと減らしまして、二種に重点を置いて調整をとった、こういう状況でございます。これは私も実に残念でございまするが、全体の国の経済の客観情勢に基いて、やむなくそうしたのでございまして、今後におきましてはさらに一段と御趣旨に沿うような努力をいたして参りたいと思っております。先般住宅対策審議会から答申がありました。あの答申の際にも私、方針を申し上げたのでありまするが、今後におきましてはさらに示そう公営住宅に重点を置いて努力いたしたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/10
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011・三鍋義三
○三鍋委員 今までの大臣の御答弁を承わっておるときに、何か非常に自信満々とした力強いものを感じておったのでありますが、今の私の質問に対してはさすがの大臣も、ちょっと声が小さくなって、あまり自信がないようでありますが、財政面におけるところの引き締め政策をとらなければならないようになって、その御苦衷はわれわれよく了解できました。しかし、それにいたしましても、政府に全然責任がないということは言えないのでありまして、この問題にあまり深く入るのは差し控えますけれども、なお先に進んで御質問申し上げたいと思います。
こういったように、戸数自体の上からいっても、どうも納得ができないのでありますが、同時に住宅施策というものは、数だけにとらわれないで、質の向上というものが十分考えられなければならぬと思うのであります。三十年度のあの四十二万戸建設の住宅政策が喧伝された時分は、あまり数がふえたものだから、つじつまを合せるのに、六坪といったような住宅まで登場してきたこと、そしてまたこれに大きな批判が加えられたことは大臣も御承知の通りであります。現在八・二坪というようなところに落ちついておると思うのでありますが、これにいたしましても、今一種の方を減らして二種を二千戸ふやしたとおっしゃいますけれども、これは一方を減らしてふやしたのだから、実際は千戸であります。ところが、その二種の建坪が八・二坪となりますと、ここでこういうことを言ってはどうかしらぬが、大体において貧乏人の子だくさんというのが、日本の生活状態におけるところの住居に関連した一つのたとえになっておるのでありますが、この小さい八・二坪のところに、かりに一千戸ふやしていただいたにしたところが、一番家族の多い人々が一体どうしてそこに住まうのかということを考えますと、やはり何か矛盾が感じられるのであります。何かこういった問題を合理的に解消する方法はないか、もっとバラエティに富んだ広さというものを考えて、そうして収入によって区別することなくして、家族数によって合理的に何とか住まい得る住宅政策、こういうことを考えてもいい時期がそろそろきておるのではないかと思うのであります。この点どうでありましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/11
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012・根本龍太郎
○根本国務大臣 現在低額所得者が割合に家族数が多いという客観的事実はその通り認めざるを得ないと思うのですが、同時に、現在日本の経済情勢からいたしますれば、皆さんも御賛成のようでありますが、やはり家族計画を立てまして、家族の非常にふえるのをある程度まで、いわゆるバス・コントロールその他によってやらなければ、日本の貧困の問題が解決できないという問題はあると思います。しかしながら、それはそれといたしまして、現実に八・二坪で満足であるとは私は思っていません。しかしながら、現在低額所得者の住居に対するところの需要があまりにも多く、しかもこれを急速に解決しなければならないということになりますれば、まず大きな家を建ててやるよりも、最小限度であっても、数を充足するということが目下の急務ではなかろうかと考えておるわけであります。しかし小さいものとしても、これはおのずから限度がございます。御指摘のように六坪というようなものになりますれば、独身者なら別ですけれども、家族持ちにはとても使いものにならない。また幾ら家賃を安くするためでも、家屋としての客観的な一つの基準というものがあるから、それ以上減らされないと思いまして八・二坪にしておるのでありますが、実はこの前の委員会等においてもいろいろ議論になりましたボーダー・ラインの低額所得者、あるいは生活保護を受けておる人々のために、第三種公営というか、そういうものを作れとか、あるいは厚生省、労働省の方面から、同じような御意見が出ておるのでありますが、この点を研究してみますと、低家賃のためにそういうふうな規格を下げてしまいますと、これは非常にスラム化してしまって、すぐに使えなくなってしまう。要するに、一時数でごまかしたということになってしまって、実質の役に立たないということで、その方針はとらないことにいたしまして、そのかわり、実は三十三年度において実現いたしたいと思いましたのは、規格は下げないが、しかも低家賃ということになりますと、結局これは政府の家賃に対する補助措置をとるべきだということで、実はその案を考えたのであります。で、予算折衝をいたしましたが、この点についてはどうも最後まで大蔵省との意見の一致を見ません。私も、最後まで断じて下るまいと思ったのでありますけれども、実質上大蔵省を説得することができないので、やむなく折れざるを得なかったのでありまして、しかし今後ともこれは十分研究しなければならぬ問題だと思います。大蔵省の意見としては、それは住宅政策でやるべきじゃなくて、社会保障の制度としてやるべきであって、そういう方面から検討すべきだというのでありますが、しからば社会保障制度でこれを取り上げているかというと、そうでもないということで、私も残念に思うのでありますが、今後ぜひそういう方面も考えて、まず一応八・二坪で、満足ではございませんけれども、最小限度これの規模で、しかも設計その他を十分改良いたしまして、利用方法に、もっと完璧な設計等も研究すべきだと考えておる次第であります。これができましたならば、今度は質的向上のために一般の努力をいたしたいと思いますが、現段階では数の少いことでありますから、まずそちらの方に重点を入れることが適当ではないかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/12
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013・三鍋義三
○三鍋委員 いろいろと大臣の御苦心なすっているお話をお聞きしたのでございますが、私、考え方の一つといたしまして、一種、二種というこのワクをはずして、家族数の現実に合うような行き方が何かないものかということも一つの研究課題ではないか、こう思いますので、こういう点は今後とも住宅局において、一つ十分御研究願いたいと思います。
次に、標準の建設単価が現在でも非常に低いのであります。だから請負業者が、もうからぬからしり込みをして、なかなかこれを引き受けようとしない。しかし引き受けないと次の仕事が与えられないから、あとの仕事の関係から、やむなくこれを引き受けている。しかし損するわけにはいかないから、そこを何とか体裁をつくろうて住宅らしいものを作るこういった方向に実際問題として行っておるのであります。これは私たちがたびたび公庫、公営、公団住宅等を回ってみまして、これでは困ったものだなという印象を、各委員それぞれ視察した者はみな受けたのでありますが、こういう無理な単価で施策を遂行していこうとするところに、やはり一つの問題が現実にあるのであります。その標準単価を、今度また〇・〇三ですか、引き下げる、こういうことに予算措置をされたようでありますが、この〇・〇三引き下げられたところの根拠というか、これを一つ納得のいくように御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/13
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014・根本龍太郎
○根本国務大臣 単価の問題は住宅問題のみならず、全体として常にいろいろ議論のあったところでありまして、あるいは学校営繕について、あるいは官庁営繕について、その他いろいろございますが、現在のところ、単価はできるだけ高い方が、作る方としてはいいのでありますけれども、一面にはやはりある程度客観的条件に合うならば、できるだけ単価を節約してやるということも、これまた国家経済上考えなければならぬ。ただし、おのずからそこに限度があるのでありまして、この点、常に大蔵省と執行官庁との間に議論のあるところでございますが、今回の単価を減らしたというのはただ単に財政上から減らしたということではございませんで、経済企画庁を中心とする三十三年度の経済の動向判断からして、物価がおおむね相当下る、しかしそれにもかかわらず、住宅地等についてはそれよりはむしろ高目に見るというような折衝をいたしておるのでありますが、一般的に五%なり、それ以上下るというにもかかわらず、その点は十分に現在の住宅建設の資材それから工費、そういうものから見て勘案したつもりでございますが、詳しいことは事務当局から説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/14
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015・植田俊雄
○植田政府委員 単価三%下げました点につきまして、ただいま大臣から御説明がございましたが、公営住宅の建設につきましては、従来とも比較的単価は低い方でありまして、これは公営住宅の場合には団地として建てます関係と、それから監督要員にいたしましても、建築業務の担当をいたしております者が設計にも監理にも当る、こういう意味からいたしまして、公営住宅については比較的高いところでやり得たわけでございます。公庫、公団につきましても、市中の発注されております不燃建築物に比べますれば単価は低いわけでありまして、公団にいたしましても、主体工事は坪五万円で実行いたしておるわけでございます。それで現在までのところ単価が安いという業界からの批判はございますけれども、しかし私どもそういう人たちに対しまして返事をいたしますことは単価を上げるということはそれだけ住宅のコストが高くなる、従って家賃が高くなるというようなことから、これはどうしてもしんぼうしてもらわなければ困るではないか、こういうことを申しておりますが、最近の情勢から申しまして、先ほど三鍋先生からちょっとお話があったようでございますが、業者がこの政府の住宅の入札にしり込みするような傾向もなきにしもあらず、特に大業者が公団の住宅等に参加しないという傾向が一時あったようでございますが、最近一般市中の建築ブームも若干低迷ぎみに相なっておる関係かと存じますが、大業者の方もやはり政府に協力して、公団住宅の入札にも参加すべきであるというふうな方向に向っておりまして、現に相当一流の建築会社も公団の住宅を請け負っている例もあるような状況でございます。私どもといたしましては、予算といたしまして十分なものをいただいて、それによってりっぱな建物を建てたいのでございますが、建てる方からいえばそういうことになりますが、しかし家賃へのはね返りを考えますと、できるだけ安い方がいいわけでございます。三十三年度におきまして三%の減には相なっておりますけれども、鉄、セメントの値下り傾向から見ますと、これは何とか工夫して切り抜け得るものであると考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/15
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016・三鍋義三
○三鍋委員 うんと金をかけて、そうしてりっぱなものを作りたいというのは、作る方の立場から考えて当然望ましいことであるけれども、それをやると、かりに予算処置ができたとしても、また入居者に大きな負担をかける。こういういろいろな問題があるようでございますが、私のお願いしたいのは、そういった予算処置の上におきまして、苦しければ苦しいほどしっかりと、歯をくいしばって、一つの根本的な考え方をくずさないようにしていかないと、しっかりやっておけば三十年、四十年と持ちこたえることができるものを、ちょっと惜しんだがためにそれが早く老朽したり、使いものにならない、あるいは雨漏りするということになって、またそれの修繕とかなんとかということになるので、結局よけいなお金を使わなければならない、そういう結果になるのではないか。またそういう具体的な例がたくさんあるのでございまして、こういう点は、できることなら、せめてこの単価の切り下げをやらないで、建築費に十分これを充てる、こういう方向に何とかいかないものか、こういうことを考えるわけでございます。
さて資金面についてでありますけれども、公営住宅は一千戸増になったのでありますが、実際から見ますと、補助金は八百万円の増なんでしょう。一千戸増で、補助金が八百万円増で、できるのですか。これはやはり単価を引き下げたからですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/16
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017・植田俊雄
○植田政府委員 この原因は単価引き下げの面と、それから災害復旧住宅の戸数減と、両方に現われておるわけでございます。災害復旧の公営住宅につきましては、三十二年度災害が少なかったものでございますから、従いまして翌年度に繰り越す戸数が少なかった。その原因が若干ございます。主たる理由は、建設費の三%減でございます。明細を詳しく申し上げますと、かりに戸数を四万六千戸であったといたしました場合の単価減その他による減は、二億二千万ということになるわけであります。そういたしますと、四万六千戸でかりにやったとすれば、金額においては、二億六千万円減でもよかったわけでございます。第二種公営住宅におきまして一千戸増をいたしました。この一千戸増はこれも大蔵省との最後の折衝の内幕を申し上げるわけでございますが、二億九千万円の増になりました。その分が金額としてはふえて参った、こういうことでございます。従いまして、ただいまの御質問にまっすぐにお答えいたしますと、現状よりも若干金額が上回っていることになった主たる原因は単価減である、こういうふうに申し上げていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/17
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018・三鍋義三
○三鍋委員 次に公庫の資金構成を見ますと、政府の低利資金はなるほど十三億の増になっておりますが、産投資金が二十五億円となりまして、本年度より五億円減っておる。これが問題だと思うのであります。また公団にいたしましても、政府の低利資金は五十五億ふえておる。これはずいぶん大臣は苦心されたと思うのであります。それから高い民間の借入金が五十億円を減らしておる。これも大臣の苦心されたところだと思うのであります。これはいいといたしまして、しかし産投資金が本年の九十五億に対しまして、明年は三十七億でしょう。実に五十八億減なんです。そこでお尋ねするのでありますが、去年以来問題になってるところの家賃の問題とか、そういう住宅施策に、どう政府が答弁せられるのか、大臣自体がお困りになるんじゃないかと思いますが、これはさすがの公団の総裁も頭が痛いんじゃないかと思うのでございます。大臣の御苦心はわかるのでありますが、これでは大臣は、委員会の希望をずいぶん組み入れて住宅施策を立てたのだとおっしゃったのでありますが、実際の上において納得できないのでありますが、これに対しまして大臣の御苦心のほどといいますか、御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/18
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019・植田俊雄
○植田政府委員 ただいまの三鍋先生の御質問はこの金額の、たとえば産投会計からの出資が減っておる、こういうことからごらんになって、資金コストとして低い水準を維持できるかという御疑念をお持ちになったかと存じます。資金コストの問題はこれは公庫で申しますと、回収金その他を含めて、その年間にバランスをとる問題でございます。従いまして、公庫の資金源といたしまして、こういう配分で資金をつけていただきますならば、現在の一般の個人の融資に対しまして五分五厘、産業労務者住宅につきましては六分五厘、その他これに準じて資金の貸し出しの金利はきまってるわけでありますので、この金利は十分維持できると思います。
次には公団でございますが、公団につきましても、通年的に、一年間だけでなくして、過去の蓄積その他を考え合せながら——と申しますことはある年度では資金コストとして結果的に若干不足であったやつを、翌年度で、場合によっては継ぎ足してる場合もございます。そういう関係もございますが、三十三年度に関する限り、この資金の構成によりまして、公団といたしましては、先ほど御質問がございました賃貸住宅について資金コストを下げることはできませんでしたが、賃貸住宅の資金コストを前年通り四分一厘に据え置き、また分譲住宅におきましても、前年通り七分一厘に据え置くことには資金的には何らの支障がないような手当ができておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/19
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020・三鍋義三
○三鍋委員 そこで、質問を進めていく上におきまして、住宅局長にこの際もう一ぺんはっきりとお答え願いたいと思うのでありますが、この公団の賃貸住宅の家賃、これはいろいろあるわけでありますが、平均いたしましてどういうことになっておるか、もう一ぺんお示し願いたいと思います。家賃と公租公課、共益費、修理義務費、それに入居するときの敷金、これがわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/20
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021・植田俊雄
○植田政府委員 公団住宅は建築費といたしましては全国的にほとんど差はないわけでございます。ところによりましては地盤が悪うございますと特殊基礎を使いますので、その分は高くなりますが、それ以外につきましては、用地費におきまして大きな差が出て参るわけでございます。そういう関係で、公団住宅におきましては東京あたりは非常に高くて、他方、地方におきましては相当安いところもあるわけでございます。従いまして、ただいまのところは全国平均で、しかも予算に基いたもので申し上げることをお許し願いたいと存じますが、公団住宅の四階建の耐火アパートで、平均の十四坪といたしますと、家賃といたしまして約五千二百円に相なります。この五千三百円のうちには、昨年来問題となっておりました固定資産税分が四百五円ございます。共益費につきましては、これは団地によって多少違うかと思いますが、百円か百五十円くらいだったと記憶いたしておりますが、間違えましたときには次の機会に訂正させていただきたいと思います。それから敷金につきましては三カ月分お預りいたしております。修理義務費というものはこの家賃の中に入っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/21
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022・三鍋義三
○三鍋委員 そこで二十七国会の当委員会におきまして問題になった、公租公課をめぐるところの、住宅公団と全国の入居者家賃値上げ反対協議会との紛争がいろいろとあったのでありますが、それがたしか十月の三十一日でありましたか、両方から申し合せ事項を確認いたしまして、その中で、特に明年度以降の公租公課相当額を含む家賃等の軽減について、公団において誠意を持って努力されたい、それに対しまして公団側は、せいぜい努力しますというのでありますが、具体的問題といたしましては、そう大したことができないことを渋江理事が言っておられるのであります。つまり「家賃引き下げの方法はいろいろ考えられると思いますけれども、公団自体が、自体の責任でやるべき問題というのはおのずから限定されると思います。そういう意味合いにおきまして、これは端的に申しますれば、経営上の努力ということに結局はなるのではないかと思います。」そして「経営上の努力をはかることによって、家賃軽減についての努力をいたしたいというふうに考えております。」だから公団といたしましては、澁江理事の言っておられるこれ以外のことは、ワクがはめられておりますから、やはり約束できないのです。
そこでこの住宅施策に戻ってくるわけでありますが、今度の予算処置によって公団の住宅施策の資金面の構成の内容から見ましても、こういった両方の申し合せ事項によってあの紛糾が、彼らに言わせれば、涙をのんで一つこれをのもうというところへ行ったのでありますが、実際問題として来年からこれを心配してやると言っておりながら、少しも心配しないでほうっておくということは、やはりだましたことになるのですが、大臣、ここら辺はなかなかむずかしいところだと思いますが、どういう対策を立てられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/22
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023・根本龍太郎
○根本国務大臣 御承知のように昨年の公団住宅入居者との、特に固定資産税を中心とする紛争は、当時も明確にお答え申し上げたように、これは契約上はっきりといたしておりますので、ぜひお納め願いたい、十分その点が御理解されて、しかしながら入居者としては、できるだけ家賃を低くするという意味において、固定資産税等についても十分に軽減する努力をしてほしいという要望をいたしまして、これはおのずから限度があることであるけれども、そういう申し入れば承知をして、解決したということでございます。
ところで、今御指摘になりました資金コストその他から、なかなかこれが思うようにいかないということは事実でございますが、公団といたしましても管理費の面における工夫あるいは今後作られる公団住宅の規格の統一とか、あるいは設備、材料等の工夫によって、できるだけ引き下げをしたいと言っております。
なお、固定資産税の問題につきましては、端的に申しますと、自治庁と交渉しております。固定資産税そのものを引き下げるということはなかなか困難なようでありますが、御承知のように他の公団、公社等において、固定資産税について納付金制度みたいなものをやっておるので、その方法によって解決すべきであるという考えがこちらにもありますので、この面において今折衝中でございます。自治庁にしても相当難色を示しておるけれども、この問題についてはかなり誠意を持って共同研究しておるという段階であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/23
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024・三鍋義三
○三鍋委員 今大臣の御答弁を聞きまして、非常に何か明るいものを見たような希望を持つのでありますが、どうも国民の政治に対する信頼が、ともすると欠けていくのではないかという、われわれ政治に携わる者の立場からいたしましても、一たん約束したことは何とかして努力してあげたんだ、こういった誠意と、また少しでもいいから彼らの要望していられる方向へ現実的に打ち出していく、こういう点につきまして、これは何も大臣だけに申し上げるわけではないのでありますが、われわれはそういう観点に立って審議を進めておるのであります。どうかこの問題につきましては、一つ大臣もしっかりがんばっていただきたい、こう考えます。
次に、ちょっとこまかく、具体的になっていくのでありますが、住宅公団の特定分譲住宅の償還金でありますが、これが非常に高いので、大火その他によって焼け出された地元からの陳情なんでありますが、私の今申し上げておるのは、新潟の柾谷小路の商店街の方の要望なんです。これが割賦償還金の利子を、今まで施設におきまして年八分四厘、住宅に対しまして年七分八厘、これを何とかもう少し引き下げてもらえないか、五分五厘に引き下げてもらえないか、そうせぬと、焼け出されて、せっかく復興の意欲に燃えて立ち上って一生懸命にやっておるけれども、どうしても払い切れない、こういった非常に切実なる願いが出てきておるのは、大臣のお手元にもいっていると思いますが、同じように、住宅金融公庫の足貸し償還年限の十カ年を二十カ年に均等割に償還するように一つ緩和、延長をしてくれ、こういったようなことを言ってきておられるのであります。陳情を一々みんな取り上げて、その御希望をかなえてあげることができれば何も問題がないのでありますが、そこになかなか思うようにいかない、その現実において、どれほどこれらの人に満足を与えるかというのが政治でありまして、この点につきまして、これは局長さんでよろしゅうございますが、何とかこれを考えてあげなければならぬという観点のもとに、研究あるいは対策を考えておられるかどうか、これをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/24
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025・植田俊雄
○植田政府委員 この足貸し住宅の場合におきましても、それから公団の特定分譲の場合におきましても、初めは建てることについて非常に関心を持たれ、またそういうふうに融資したことについて喜ばれるわけでございます。しかしながら実際償還という段階になりますと、これだけの資金では足りませんで、銀行との取引関係から、銀行からは公団、公庫よりももっと高い金利の金を借りておられる場合が普通でございます。しかも銀行とは常時商取引があります関係で、これは返すべきものをきちんと払わないと、次の商業の運転資金が借りられない。銀行にはどうしても不義理はできない。そこでそのしわを、政府の金融機関あるいは公庫の償還金の方に寄せてきたいというようなことのお話をよく承わるわけでございます。その点は政府の金融機関であります公庫といたしましても、また公団といたしましても、建てるときは喜ばれたが、実際耐火建築を建てて、それの償還に当っていくということにいたしますと、建築費も木造に比べて高いわけでありますので、経営が、ぐんぐんと予想通りに売り上げが増す場合におきましてはともかくでございますが、そうでない場合には相当苦しい実情にあるということも承知できないわけではございません。しかしながら一方公団の資金にいたしましても、特定分譲に充てますものは民間資金でございまして、これは債券発行でやりました場合には若干表面金利は安いが、証書で生命保険会社等から借りました場合におきましては従来とも七分五厘でございます。それが最近は債券発行にいたしましても七分五厘でなければ借りられない状況になっております。従いまして、民間資金だけのコストから申しますと七分五厘でございます。それを政府出資等によりまして若干薄めまして、安く貸しておるような実情でございます。そういう意味から申しまして、これは一つの地方、一つの事業主体にだけ負けてやるという性格ではございませんので、どうしても負けるならば全部に負けなければならぬ。それぞれの事業主のふところ工合だけを考えてきめるわけにも参らぬ問題でございます。そういった意味合いからいたしまして、公庫、公団の経営上から申しましてなかなかむずかしい問題であろうかと存じます。しかし私ども政府機関で金を貸して、償還ができないでも困るわけでございますが、また市中の金融機関と同様な——市中の金融機関が血も涙もないという意味ではございませんが、そういった商業ベースで利潤を目標にした銀行と、政府の金融機関とでは若干性格の違いもあろうかとは存じますので、研究はいたしますけれども、今直ちに御期待に沿うことができると申し上げることはただいまのところはできないかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/25
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026・三鍋義三
○三鍋委員 なかなかそう簡単にいかない問題であることは私も理解できるのでありますが、住宅政策の一環といたしましてこういった問題も一つ御研究になって、何とか適切な処置をとっていただきたいと思うのです。
それと関連いたしまして、防火建築帯の助成金が、ことし五千万円減っておるのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/26
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027・植田俊雄
○植田政府委員 五千万円減った理由は、きわめて簡単に御説明申し上げることができるわけでございまして、三十二年度に富山県の魚津と秋田県の大館の大火がございまして、これは防火建築帯が大がかりに実施されたので、その分が五千万円ついておったわけであります。私どもとしては三十二年度の実績の一億五千万円を確保したかったところでございますけれども、この五千万円は両市の大火の跡始末であるということが明白に財務当局にわかっておるわけでございまして、どうもそこまでがんばり切れないで、通常ついておった一億円の計上にとどまったような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/27
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028・三鍋義三
○三鍋委員 これは火災を受けた都市だけにおいて防火建築帯を希望しておるのではないのであって、こういう方向へ行こうとしておるところに、せめて一億五千万円くらいはことしあたりも実際確保していただきたかったですね。その点はすでにこういう工合にきまったのですから、やむを得ないと思いますけれども、こういう防火建築帯にもっと力を入れてもらいたい。そうせぬと、建てたあとから燃えていくといったやり方は国の経済からいって何としても承知できない、こういう考え方を持っておるので、この点、今後とも十分御配慮願いたい。
その次に、学生寮はどうなっておるのですか。当委員会においても廣瀬さんあたりも、みな一生懸命になって作ったので、三十年と三十一年、文部省で育英資金か何かから三千万円の予算を出してやったはずですが、本年度は削られておるのではないですか。来年度はどうなのですか。もう学生の住宅不足、困窮は解消されたと見ておられるのか、こういうところをお聞きしてからまた質問したいのですが、実際の経過を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/28
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029・植田俊雄
○植田政府委員 従来も学生寮については、その事業主体に対して公庫の方から融資をいたしてきております。たしか三十一年度までは文部省の方にも補助金がございました。その補助金があったものについては私どもの方も融資するということに相なっております。ワクとしては公庫の賃貸住宅のワクでございます。戸数から申しますと、学生二人分で一戸分くらいの見当になろうかと存じますが、東京等において、地元の後援団体の方が確実な資金をもってお始めになるような場合においては三十二年度においても、文部省の補助金がなくなった後においても相当考慮して融資した例もございますので、三十三年度においても同じような方針で、確実な事業主体であり、また県とか市がそれに相当後援しておる、こういうようなめどがはっきりつくものについては、そう大きな戸数を期待することもどうかと思いますけれども、一般の住宅政策にあまり支障を来たさぬ範囲において、融資することを認めて参りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/29
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030・三鍋義三
○三鍋委員 今年度はどのくらい融資しましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/30
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031・植田俊雄
○植田政府委員 この融資の事務はただいま公庫でやっております関係で、何戸認めたかということは正確には覚えておりませんけれども、たしか二、三百人分だったかと記憶しておりますが、あるいはそれ以外にも公庫で実施したかもしれません。私が話を聞いたのはその程度でございました。これまた正確な数字は別にお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/31
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032・三鍋義三
○三鍋委員 大臣、こういったところに、何か一貫性がないように思うんです。とにかく三億円の資金を作ってやろう、こう打ち出して、二年間やって、あとほってしまう。何かおいしそうなごちそうを食い散らかして、あとは知らないというような姿を見るような気がするのですが、私はこの学生の都会地におけるところの住宅難というものは、依然として解消しておらぬと思うのです。東京の方へ行って勉強するのに、あまり便利なことをしてくれると、地方の大学が困るというような意見もあるのでありますが、とにかく現実においてたくさん来て、そうして小さい三畳間かそこらで何千円という家賃を払って、苦心して、そしてからだをすり減らして、病気になったり何かして、親に心配をかけたり、いろいろな問題があるのです。こういうのを一ぺん打ち出したら、ずっとある程度までこれを持続されて、十分ではないけれども、ここら辺で何とかいけそうだというところまでやはりやっていただかないと、行き当りばったりだと言われても仕方がないのではないか、こういう考え方を私は持つのであります。これは大臣の御答弁は求めません。
それから局長さん、昨年問題になりました留学生の今年度限りの特別処置の問題、それから福岡市の御笠川下流地帯の不良建築物の移転対策、これらについて具体的にどのようになされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/32
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033・植田俊雄
○植田政府委員 留学生の問題につきましてはかねて三鍋先生からも御注意いただいておりましたので、大蔵省とも十分折衝いたしておりまして、公団の現在のワクの中から二百人程度、これも今後のあの団体の建設計画にも関係するわけですが、あるいは二百人からもう少しふえまして、三百人というようなことになろうかと存じます。これも先ほど申しましたように、二人を一戸と計算いたしますと、戸数は百五十戸程度になろうかと思いますが、そういうものは引き続いて公団で建てさせることにいたしたいと存じております。
次に福岡の石堂川の問題でございますが、県の方では三十二年度中に追加予算でも成立せしめて、あの予算を確保したいということでございましたが、その後県の事情で、三十二年度には追加予算は計上になってないかと存じます。しかし、県、市の当局の考え方につきましては全然変りはございませんし、またこれに対しまして第二種公営住宅を持って参って、あの問題を解消するという建設省の方針におきましても全然変りはございませんので、現在占拠しております人たちの移転先の問題、その他各種の地元の問題がございますが、地元問題が現在の状況で何らの変動を来たさないでうまく参りますならば、三十二年度においてはこの問題は解消できるのじゃないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/33
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034・三鍋義三
○三鍋委員 これは地元の問題でもありますから、十分御連絡下さいまして、早くこの問題を解決していただきたいと思います。
時間が長引きますので、もう一点だけ。これは一つ大臣に御答弁願いたいと思うのでありますが、御承知の通り、近来労働金庫というものが非常に堅実な歩みを進めまして、相当な実績をあげておるのでありまして、労働階層の金融機関といたしまして非常に親しまれて、利用度を高めておるのであります。そこで、この住宅金融公庫の業務を労働金庫に委託することができないか。そうすれば、現在七、八件あるということをお聞きしたのでありますが、その金庫自体の経営内容というものを、もちろん十分御研究、御調査願わなければならぬのでありますが、堅実なものに対しましては、やはり委託業務をやらせていただきたい。これが労働金庫をますます発展せしめるゆえんであるし、また勤労階級が身近にこれを利用できるといった、一石二鳥の大きな効果を上げるのではないかと思うのでありますが、これに対して大臣の御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/34
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035・根本龍太郎
○根本国務大臣 現在も若干代理業務をやらせているのでありまして、確実に代理業務をやらせていいという状況がはっきりいたしますれば、これはやらせる方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/35
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036・三鍋義三
○三鍋委員 私はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/36
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037・西村直己
○西村委員長 小川豊明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/37
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038・小川豊明
○小川(豊)委員 大臣は大へん時間を急ぐようですから、ごく簡単に御質問申し上げます。建設省初め各省で直轄工事をやっておりますが、それに臨時職員を雇っているが、この臨時職員は、国家公務員法六十条の規定を受けて雇っているのですか。建設省内にも準職員と補助員が多数雇われているのですが、これは国家公務員法の六十条の規定を受けて雇い入れている、こういうふうになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/38
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039・柴田達夫
○柴田政府委員 ただいまのお尋ねは国家公務員法の適用を受けているかというお尋ねのように拝承いたしました。国家公務員法の適用は受けております。定員法の関係になると、問題は別であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/39
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040・小川豊明
○小川(豊)委員 そうすると、今度国家公務員法あるいは定員法の改正というものが、一応予定されているように聞いておりますが、こういうものが改正されるかどうか。ともかく改正されるとすると、この補助員なり準職員なりというものは、採用され得る機会をかなり失ってしまうのではないか、こういう心配がされてくるわけです。そういう中で六十条の規定を受けていくと、この六十条には、緊急の場合という一項があるのでありますからいいようなものの、これでいくと、六カ月を限って採用し、それを再度更新することはできないという規定があるのです。従って、建設省で必要としている準職員とか補助員とかいう方々は、五年も十年も働いている人があると思う。そうなってくると、これは国家公務員法の六十条に対してもおもしろくないことであるし、それから、それとは別に、定員法の改正が行われていくようになってくると、これらの諸君は、今度職員として正式に採用される機会というものは非常に乏しくなってくるから、不安が起ってくるのではないかということが考えられるが、こういう改正をめぐって、建設省が多数持っているところの準職員なり補助員の身分を安定させるような措置は、どういうふうに講じようとなさっているか、その点をお尋ねするわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/40
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041・柴田達夫
○柴田政府委員 ただいまお話のありましたような職員につきまして、本定員に採用する機会の問題についてのお尋ねであったようでございます。御承知の通り準職員、補助員という者がおりまして、これらの者は国家公務員法の適用を受けておりますけれども、その身分関係はきわめて不安定であります。そこで、かねがねそれらの職員を定員法の定員に編入するという問題がございまして、今回建設省関係といたしまして、約四千五百名ばかりの者を定員化することにいたしまして、提出中の予算の中に人件費を計上いたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/41
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042・小川豊明
○小川(豊)委員 四千五百名の定員化というのは非常にけっこうだと思いますが、あとはそれで充足できるのですか。それともあとまだたくさん残りますか。どうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/42
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043・柴田達夫
○柴田政府委員 一万一千名ばかりの準職員がおりまして、そのうちで約四千五百人が定員化されるわけでございますから、まだ約七千人ばかりの準職員が、ただいま申し上げました数字が定員化されましても、残ることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/43
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044・小川豊明
○小川(豊)委員 これに対する意見を申し述べたいのですが、これは時間がありませんから、またあとにします。
それからもう一点、これは大臣の答弁をいただきたいのですが、建設省と農林省との関係です。たとえば農林省の仕事というのは灌漑等をおもにする、建設省の方では排水というような形が中心になってくる、こういうような点もあって、工事の現場へ行くと、建設省案、農林省案というものがかなり出てくるわけです。こういう普遍的な問題でなくて、一つ私どもが考えなければならぬものは、今印旛沼の干拓を農林省が進めているわけです。これはいいことだと思いますが、一方聞くところによると、京葉工業地帯の建設ということが叫ばれている。この建設が進むと、印旛沼の水が必要である。印旛沼の水でも足りなくて、茨城県の霞ヶ浦の水までも持ってこなければ、京葉工業地帯の建設というのは水のコストが非常に高くなる、また用水等も不足してくる、こういうことから国土総合開発審議会では、むしろ印旛沼を干拓すべきではなくて、あそこを遊水地帯として、さらに霞ヶ浦からも水を取り入れるべきではないかというような線を出しておる、こういうように聞いているわけです。そうすると、今干拓工事をするということは、あそこの漁民に相当の補償を払って農地を作って、そしてまた数年後には、今言った国土総合開発の線が出てくるならば、今度はまたその土地を農民に補償を払って再び水路にする。こういうような、悪く言えば国費のむだ使いみたいなものが出てくるのではないか。そういう点から、もしそういうことが国の総合開発の点から必要ならば、その線はもっと早く、その工事にかかるときに打ち出しておくべきじゃないか。打ち出さずに、今は印旛沼干拓けっこうだと言ってやっておる。今補償を払っているのですよ。それが数年後には、農民に配分した土地をまた農民に補償を払ってそこを水路にして、霞ヶ浦の水を引くのだ、こういうような全くむだな形が出てくるのではないかと思うのです。これは建設省関係だと思うが、基本的な問題として、こういう点について、調整というか、その見通し、こういうものは今の干拓で進んで、京葉工業地帯の建設というものに差しつかえがないのか、将来そういう必要が起ってくることがわかっていながら仕方なしにやっているのか、その点はどういうことになるか、この点は重要な問題ですから、お尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/44
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045・根本龍太郎
○根本国務大臣 御指摘の印旛沼、霞ヶ浦の問題と京葉工業地区との問題については、いろいろと議論されているようであります。この問題については、すでに農林省としては前からの計画に基いて一応実行しておりまするが、これは総合開発の見地から調整をしなければならないと思っています。今その調整の過程にあるのでございまして、これはまた地元においてもなかなか意見がはっきりまとまっていないようなのです。地元千葉県あるいは茨城県等におきまして、やはりその干拓事業をある程度是正しまして、そうして工業用水にこれを転換すべきだという議論もありまするが、それが地元の方においてもなかなか利害が一致しないために、若干低迷しております。しかしこれは御指摘のようにむだな投資になったり、あるいはまた将来において計画それ自身がかえって画餅に帰するということがあってはならないので、十分関係省庁と連絡をとって調整しなければならぬと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/45
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046・小川豊明
○小川(豊)委員 これはもちろん地元で意見が一致しないということはあり得ると思うのです。土地を造成してもらえば、農民から言えばぜひやってくれという問題が出てくる。しかし、それはそれで悪いというのじゃないが、国全体の総合開発という上から見て重大な問題になるわけで、東京湾の内湾にあれだけの埋め立てをして大工業地帯ができれば、五万トン、十万トンの船も入ってくるということになってくると、当然工業生産としても水の量、コストの問題が出てくると思う。そのときに心配だから、そのことを、あそこの内湾のいろいろの工業関係の諸君に聞いてみた。そうしたら、方向がきまっていない。将来は海水を分解してそれに充てた方がいいじゃないかというように言う。一体海水を分解してそれに充てるのが可能ならいいのですが、それがコストとどういう関係になってくるのか。これは地元にもいろいろな関係がある。ほっておけばいつまでたっても解決しない。だから、それは農林省、建設省が総合開発の面からこの線を早く出さないと、むしろ紛糾は増大していく。線さえ出てくるならば、小摩擦はあっても、その線で落ちつかざるを得なくなる。この点は、すでに一方において工事は進もうとしているんです。それをまた再び掘り起すことのないようにしないと、ぬか喜びで、国費のむだ使いです。だから、そういうことのないように、建設大臣として早く出すべく努力してもらわなければならぬ点だろうと私は思います。各省との気がねということも、これは情においてはあるでしょう。あろうけれども、結局必要な、最もやらなければならぬものは、焦点としては一つになってくるのですから、その点は勇気をもってしぼり出すべきじゃないかと思いますが、その点について重ねてもう一ぺん伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/46
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047・根本龍太郎
○根本国務大臣 御指摘の通りでございますので、実は工業地の問題についても、また確定した案はできていないわけです。すなわち御指摘のように、工業用水の確保がどの程度できるかということによって埋め立てて工業用地を作る規模も違ってくるのでございまして、この点はなるべくすみやかに各省庁と連絡をとって、全体の構想ができて後、工業敷地の規模、場所、それからそれに関連して干拓の規模等も考えなければならぬと存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/47
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048・小川豊明
○小川(豊)委員 それから今経済企画庁で、何か水質汚濁防止に関する法律を立案中だと聞いておるわけですが、この水質汚濁に関する法律というのは建設省、農林省、通産省あるいは厚生省等、各省に関係があるというようなことになってくると思う。従って、この法案のできることは望んでおるけれども、そのできる法案は、おそらく各省の利害とか主張とかいうものがありますから、法律はできたけれども、これを適用しようとすると、適用も何もできないような——聞けば何か水質汚濁を防止する基準に関する何とかといったような話も聞いておるのですが、そういうなまぬるい、解釈のしようによっては紛糾の起るようなことのないように、この点についても河川等を管理するのは建設省なんだから、建設省としては十分に水質の汚濁を守り得るような点を主張してもらわなければならぬと思うのですけれども、こういう法案が今研究されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/48
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049・山本三郎
○山本(三)政府委員 御説のように、水質の問題につきましては各省非常に関係が多いわけでございます。また利害関係者も多いわけでございます。ただしかし、現状におきましては非常に困っておる部面もございますので、何とかしなければいかぬということで、経済企画庁が中心になりまして各省の意見を徴しつつ、今案文を作成中でございます、仰せのように各省非常に関係がありますものですから、基準法といたしましては水質汚濁防止法というような形のものを作りまして、御説のように区域を規定いたしまして、その区域のある地点はこれくらいの水質でなければいけないというような基準をきめる。しかし実施は各省の自分で持っておる法律によりまして、河川法によりましてはその基準をいかに実行していくかということはおのおの持っておる法律でもって各省がやっていく、こういうふうな建前に今進んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/49
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050・小川豊明
○小川(豊)委員 最後に一点、これは質問といえるかどうか、私は絶えず考えておったのですが、それを言う機会がなかった。根本建設大臣が大臣になられたこの機会が、最も私がお尋ねするにいい時期じゃないか、こう思って大臣にお尋ねするわけです。これは御承知のように東京都のまん中に、ことに有楽町からこのかいわいは非常に自動車が輻湊して、交通が混雑していることはおわかりだと思います。そこでこの交通を緩和するためには宮城の中を、これに非常な困難もあり障害もあり、いろいろあると思うが、その美観を傷つけずに、あるいは尊厳を傷つけなくても、地下道か何なりによって、十文字なり何なりの道路なり地下道を作ることにすれば、東京都内の交通を緩和することになるし、ガソリンの消費だって大へん助かるのではないか、うかつにそういうことも言えないのですけれども、これは私はいずれかの時代に、もう何年か後には必ずこういう問題は議論として起ってくるのではないか、こういうふうに考えて、いつかはこの点をお聞きしたいと思っていました。また世界各国のどこの首都を見ても、まん中にこれほど大きく——私はそれが必要、不必要という意味でなくて、これほど大きな土地を持っているところもないわけなのです。そういう点から、道路を作れとまではいわないでも、地下道でもいいから、そういうものを作ることくらいは考えるべき事態が必ず出てくるのではないかと考えておったわけで、きょう初めて大臣にお尋ねするわけですが、そういうことは考えてみたこともありませんでしょうか。それともこれから考えてみる考えがございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/50
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051・根本龍太郎
○根本国務大臣 東京都心の交通の錯綜の状況を緩和するために、いろいろと方策を考えなければならぬということは御指摘の通りであります。首都圏におきまして実は昨年中いろいろの交通調査、将来の伸び、現状の梗塞状況というものを専門家が調べた結果、八本の高速自動車道路を作るべきだという一つの意見が出て参りました。それでこれについて今さらに検討を命じさせておるわけでありまするが、これと別個に、今御指摘になりました宮城前の自動車の錯綜状況を緩和するために、実は昨年宮城前の道路に地下道を建設するという構想を持ったことは事実でございます。ところがこれに約三十億かかるのです。三十億をあそこに投入することは非常にむずかしいということで、これは取りやめになりましたが、実は昨年あそこの地下道を作るということについての調査費を若干つけたことがございます。けれどもどうもあまり名案が出ないのみならず、金が非常にかかるということで、この案は今具体的には進行いたしておりません。しかしながらいずれかの時期において、地下道の問題か、あるいはまたあの近くに別途の道路施設を考えるか、これは目下研究しなければならぬと思っておる次第でございまするが、今直ちに宮城内を横断して新たに道路を作るという構想までは、まだ参っていない次第でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/51
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052・西村直己
○西村委員長 次に、昨日付託になりました内閣提出、地すべり等防止法案及びただいま付託になりました井手以誠君外二十五名提出、地すべり等による災害の防止等に関する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。
まず両案の趣旨につきまして説明を聴取いたします。根本建設大臣。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/52
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053・根本龍太郎
○根本国務大臣 地すべり等防止法案の提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。
わが国における地すべりの現況は全国で約五千五百カ所、総面積は約十四万五千町歩に及び、年々多大の被害が発生しておりますが、特に昨年七月とおける西九州地方の豪雨に際しては地すべりによる被害がきわめて顕著であったのであります。わが国は国土がきわめて狭隘であるため、地すべりが発生し、または発生するおそれのある地域も宅地、農地等に利用されているような実情でありますので、このような地域について地すべりの防止をはかることは民生の安定のためにも、また国土の保全上もきわめて緊要なことであります。
地すべりの防止につきましては、従来からも砂防法による砂防指定地の指定もしくは砂防工事、森林法による保安森の指定もしくは保安施設事業または農地保全事業を行うことによりまして相当の成果を上げて参り、また砂防法、森林法等の適用されない区域につきましても、国の予算措置によりまして地すべり防止に努めて来たところであります。しかしながら、地すべり防止工事をより効果的に行うため、ただいま申し上げました各種の地すべり防止事業に関する計画と実施を統一して、事業執行の能率化、適正化を期するとともに、地すべり防止に有害な行為を規制し、さらに地すべり防止工事に関連しまして、住宅の移転、農業用施設の整備等についても有効適切な対策を講ずる等、地すべり防止の抜本的対策を急速に確立する必要があるのであります。
なお、炭鉱のいわゆるボタ山で保安の責めに任ずる鉱業権者が存在しないものについてはその管理が放置される結果、往々にして崩壊して災害を発生している事例があり、ボタ山崩壊防止対策をあわせ樹立する必要がありますので、この際、本法律案の対象といたしまして、必要な範囲内において、地すべりと同様の措置を講ずる必要があるのであります。
以上がこの法律案を提出した理由でありますが、次に地すべり等防止法案の要旨について、御説明申し上げます。
まず第一に、地すべり防止区域の制度を設け、これを指定することにいたしたことであります。主務大臣は地すべり区域及びこれに隣接する地域のうち、地すべり区域の地すべりを助長し誘発し、または助長し誘発するおそれのきわめて大きいもので公共の利害に密接な関連を有するものにつきまして、必要に応じ、現地調査を行なった上、地すべり防止区域を指定することとして、この法律案が適用される範囲を明らかにしたのであります。
第二は、地すべり防止区域の管理は都道府県知事が行うこととしまして、管理の責任を明らかにしたことであります。地すべり防止区域の管理は国の事務として取り上げ、都道府県知事に国の機関として事務を処理させることとし、地すべり防止に関する国の責任を明らかにいたしております。
第三は、地すべり防止行政における主務大臣を明定したことであります。現在地すべり防止については建設、農林両省がそれぞれの立場から所掌しているのでありますが、この際、その所管を明確にすることによって地すべり防止事業の統一的かつ円滑な執行を確保し、その推進に寄与しようとするものであります。
第四に、地すべり防止施設の築造等の基準を定め、地すべり防止施設の築造等の統一をはかるとともに、都道府県知事以外の者の行う地すべり防止工事につき、この基準に準拠して承認の制度をとることといたしたのであります。現在地すべり防止施設の新設または改良その他の地すべり防止工事については、統一的な基準がないため、地すべり防止施設の総合的な効果が十分に発揮されていないおそれなしとしませんが、これにより地すべり防止施設の新設、改良等の地すべり防止工事の統一的整備が確保され、災害防除の効果が一層上げられることと信ずるものであります。
第五に、地すべりの防止を著しく阻害し、または地すべりを著しく助長するおそれのある行為を規制して地すべり防止の工事と並行して地すべり防止の効果を上げることといたしたことであります。現在砂防法、森林法におきましては、砂防上あるいは森林保全上一定の行為制限を行うことができるようになっておりますが、地すべり防止の効果をよりよく発揮させるため、地すべりの特質に即応した行為制限を行うことができるようにしたのであります。地すべりの防止は、地すべり防止施設の整備と相待って地すべり防止上支障のある行為を規制することによって、初めてその目的が達せられるものであり、この点からも今後地すべりによる被害の除却または軽減の効果が上ることを期待するものであります。
第六は、関連事業計画の作成に関し定めたことであります。都道府県知事は、地すべり防止工事を行うとともに、地すべりによる被害を除却し、または軽減するため必要があると認めるときは、その作成した地すべり防止工事基本計画を勘案して、家屋の移転、農業用施設の整備等に関する関連事業計画の概要を作成し、市町村長に提示して関連事業計画を作成するよう勧告するとともに、関連事業計画に基いて事業を実施した事業主体に対して事業費の補助を行い、また地すべりにより被害をこうむる家屋の移転等に対し住宅金融公庫が融資をする等、地すべりの防止と並行して区域内の住民の生活の安定に資することといたしました。
第七は、地すべり防止区域の管理に要する費用の負担について定めたことであります。すなわち、地すべり防止施設の新設、改良その他地すべり防止区域の管理に要する費用につき国の負担責任を明らかにし、地すべり防止施設の整備の促進をはかることといたしました。
最後に、ボタ山の崩壊の防止について定めたことであります。この法律案の対象としておりますボタ山とは、石炭または亜炭にかかわる捨石が集積されてできた山でこの法律の施行の際現に存するものであって、保安の責に任ずる鉱業権者が存在しないものをいうのであります。ボタ山の崩壊の防止につきましては、地すべりの防止と大体同様でありまして、ボタ山を含む区域であって公共の利害に密接な関連を有するものをぼた山崩壊防止区域として主務大臣が指定し、ボタ山崩壊防止区域内における崩壊防止工事その他の管理は都道府県知事が行い、有害行為を規制し、区域の管理に要する費用は都道府県が負担することとし、必要な範囲内において地すべりに関する規定の一部を準用することとして、ボタ山の崩壊防止についても必要な対策を講ずることとしたのでございます。
以上が地すべり等防止法案の提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/53
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054・西村直己
○西村委員長 大臣は予算委員会から要求がございますから、退席いたしますから御了承願います。
次に井手以誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/54
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055・井手以誠
○井手以誠君 ただいま議題となりました地すべり等による災害の防止に関する法律案について、提案の理由と概要を御説明申し上げます。
地震と地すべりの多いのは災害日本の宿命だといわれております。昨年七月、佐賀県伊万里市の人形石山に発生した地すべりは、人命八、家屋二十一をのみ、一億二千万円の損害を与えました。それは視察中の新聞報道記者が、ペンと写真機を捨て、かろうじて助かったという一瞬の惨事であります。次いで八月、静岡県水窪町の地すべりによる国鉄飯田線の被害復旧は国鉄の技術をもってしても一カ月を要するというおそるべき天災でありました。近時九州を初め相次ぐ豪雨の襲来によって地すべりは各地に拡大し、被害は随所に頻発し、建設省、農林省の調査によれば、地すべり被害の危険ある地区は西九州、四国、北陸を中心に三十余道府県にわたり、全国で五千数百カ所、十四万町歩に上り、危険区域内の人家四万七千戸、田畑四万二千町歩に達し、このうち一万三千戸は日夜生命の不安に脅かされているのであります。
しかるに、これほどの危険状態に対しても、残念ながら災害防止の対策はほとんど講ぜられておりません。台風、豪雨の被害は予測することが困難でありますが、地すべりの危険はあらかじめこれを知ることができるのであります。さきに申し述べました伊万里市の地すべりも、もし事前に対策を期していたならば、人命はもとより、被害額はその半ばにも達していなかったであろうといわれているのであります。それにもかかわらず、今日未然に防止する法規に欠けております。また関係住民に家屋を移転する資力がありません。さらに自後の災害復旧に追われる地方公共団体には事前に防止策を講ずる余裕はほとんどないのでありまして、関係者は生命財産を脅かされながら、傍観するのやむなき実情であります。最近地方において、家屋移転に伴う資金融通に関する条例を制定したのを初め、関係各府県はそれぞれ目前の危険に備え若干の応急策を立てておりますが、きわめて不十分でありまして、この緊急事態に対処して、あわせてかねて問題になっていたボタ山の崩壊防止を含め、地すべり等の防止策を講じ、その被害を最小限度にとどめ、もって国土の保全と民生の安定をはかろうとするのが本法案提出の理由であります。
本法案は、第一に地すべり防止区域を指定し、地すべり等の防止の工事を行うとともに、家屋その他工作物の設置、土地の利用、鉱物の採掘等の行為を制限または禁止し、あるいはその移転除却を命ずること。第二に、危険地帯における家屋その他工作物の移転を勧告し、これを円滑に促進するため、移転の費用に対し国費の補助を行い、その残額を住宅金融公庫から融資する道を開いたこと。第三に、地すべり等の地帯が多く農山村でありますので、土地利用計画を立て、防止区域内の土地を有効に活用するとともに、移転者の農山業経営を保護するため、土地資金その他各般の援助を行うことを骨子とするものであります。
この法案は、昨年十一月の臨時国会に提案をいたしました。しかし付託委員会の点で折り合いがつかなかったため廃案となりましたので、今第二十八回国会の開会劈頭、すなわち十二月二十日あらためて提案をいたしましたが、付託委員会は依然として解決せず、たな上げの状態になり今日に至りましたことは、緊急案件だけにはなはだ遺憾に存じますとともに、提案者の努力の足りなかったことをおわび申し上げる次第であります。何とぞ政府案とあわせて慎重御審議、御決定あらんことをお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/55
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056・西村直己
○西村委員長 続いて、簡単に政府案に対する補足説明を山本河川局長から聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/56
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057・山本三郎
○山本(三)政府委員 ただいま建設大臣より提案理由の説明のございました地すべり等防止法案の概要の説明を申し上げます。
この法律案は、第一章総則以下六章五十五カ条と付則十四カ条よりなっております。第一章におきましては、この法律案の目的、定義、地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域の指定、地すべり防止区域の指定のための調査等について規定しております。この法律案の目的とするところは、地すべり及びぼた山の崩壊による被害を除却し、または軽減するため、地すべり及びぼた山の崩壊を防止することによって国土の保全と民生の安定に資することにあります。この目的を達成するため必要があるときは主務大臣は関係都道府県知事の意見を聞いて、地すべり区域及びこれに隣接する地域であって、公共の利害に密接な関連を有するものを地すべり防止区域として指定することができることといたしたのであります。また、ぼた山崩壊防止区域の指定も同様の趣旨により主務大臣が行うのであります。なお、主務大臣は、地すべり防止区域の指定に当って、必要に応じ現地調査を行うことといたしております。
次に第二章は、地すべり防止区域の管理に関する規定であります。地すべり防止区域の管理は、その区域の存する都道府県の知事が行うものであり、管理すべき事務の範囲は、地すべり防止区域における防止工事の施行、標識の設置、地すべり防止上支障のある行為についての規制のほか、防止工事の計画を勘案して家屋の移転、農地及び農業用施設の整備等に関する関連事業計画の作成がおもなものであります。防止工事の施行は、都道府県知事が基本計画を定めて行うこととなっておりますが、主務大臣は、防止工事の規模が著しく大である場合、高度の技術を要する場合、高度の機械力を使用して実施する必要がある場合、都府県の区域の境界にかかる場合であって、国土の保全上特に重要なものであると認められるときは、都道府県知事にかわって、直轄工事を施行することができることといたしております。主務大臣または都道府県知事以外の者が地すべり防止工事を行いますことは、むしろ望ましいところでありますが、ただ、その工事の設計及び実施計画を地すべり防止施設の築造等の基準に適合せしめるため、都道府県知事の承認を要することといたしております。なお、工事の施行につきましては、以上のほか他の土木法規と同じく兼用工作物の工事、原因者工事及び付帯工事に関する規定を設けております。次に、地すべりの防止上支障のある行為の制限につきましては、地下水の排除を阻害する行為、地表水の浸透を助長する行為等については、都道府県知事の許可を得なければならないことといたしております。
第三章は、地すべり防止区域に関する費用の負担に関する規定であります。すなわち、地すべり防止工事の施行、標識の設置その他地すべり防止区域の管理に要する費用は、原則として都道府県の負担でありますが、国もその執行の責任を有するという意味から、第二十八条以下において、その費用の一部を負担することといたしております。また、他の土木法規における費用負担の規定と同様、受益都道府県の分担金等についても規定いたしております。
第四章は、ぼた山崩壊防止区域の管理及びその管理に要する費用に関する規定であります。この法律案における「ぼた山」といいますのは、この法律の施行の際現に存するものであって、鉱山保安法により鉱業権者または鉱業権者とみなされる者が、必要な措置を講ずべきものを除いたものであります。ぼた山崩壊防止区域の管理及びその管理に要する費用負担の原則、行為制限については、この章において特別に規定いたしましたほか、地すべり防止区域の管理及びその管理に要する費用に関する規定を準用いたしております。すなわち、ぼた山崩壊防止区域の管理は、都道府県知事が行うこととし、その区域の管理に要する費用は、都道府県が負担することを原則といたしております。ぼた山崩壊防止区域における行為制限は、地すべり防止区域における行為制限と異なり、立木竹の伐採、石炭その他の鉱物の掘採等ぼた山の崩壊防止に支障のある一定の行為につき、都道府県知事の許可を受けることといたしております。
第五章は、雑則に関する規定であります。さきに述べました関連事業計画に基く事業を実施した者に対する補助、家屋の移転者等に対する住宅金融公庫の資金の貸付、漁港の区域及び港湾隣接地域内において施行される地すべり防止工事についてそれぞれの区域管理者に対する協議、請願及び土地調整委員会の裁定、主務大臣等についての規定であります。すなわち、都道府県知事の承認を得た関連事業計画に基き家屋以外の農地の整備または保全、灌漑排水施設の整備等の事業を実施した市町村、土地改良区等に対しましては、その事業に要する費用を予算の範囲内で補助することといたしましたほか、家屋の移転者等に対しましては、住宅金融公庫法の一部をこの法律案の付則において改正することにより、住宅金融公庫から、家屋の移転または建設に要する資金の貸付を受けることができることといたしました。また、この法律案における地すべり防止区域またはぼた山崩壊防止区域の指定及び管理についての主務大臣につきましては、砂防指定地及びこれに準ずる土地の存する地すべり地域またはぼた山に関しては建設大臣、保安林及びこれに準ずべき森林または保安施設地区及びこれに準ずべき森林または原野その他の土地の存する地すべり地域またはぼた山に関しては農林大臣とし、これら以外の地すべり地域またはぼた山のうち土地改良事業が施行されている土地または土地改良事業計画のある地域及びこれらに準ずべき地域の存する地すべり地域またはぼた山に関しては農林大臣、右以外の地域の地すべり地域またはぼた山に関しては建設大臣となるのでありまして、地すべり防止区域またはぼた山崩壊防止区域の指定につきましては、関係主務大臣は相互に協議して行うことといたしております。
第六章はこの法律の規定に違反した者に対する罰則に関する規定であります。
最後に附則でありますが、この法律案の施行期日に関する規定のほか、経過規定、建設省設置法及び農林省設置、法の一部改正、住宅金融公庫法等住宅一関係法律の一部改正、土地収用法の一部改正等について規定いたしております。
以上がこの法律案の概要でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X00719580221/57
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058・西村直己
○西村委員長 次会は公報をもってお知らせすることにいたしまして、本日一はこれにて散会いたします。
午後零時三十一分散会
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