1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月十五日(火曜日)
午後三時一分開議
出席委員
委員長 南 好雄君
理事 青木 正君 理事 加藤 高藏君
理事 古川 丈吉君 理事 松澤 雄藏君
理事 井堀 繁雄君 理事 島上善五郎君
植原悦二郎君 大村 清川君
大森 玉木君 亀山 孝一君
吉川 久衛君 笹本 一雄君
高橋 禎一君 橋本登美三郎君
三田村武夫君 山本 利壽君
佐竹 新市君 森 三樹二君
出席国務大臣
国 務 大 臣 郡 祐一君
出席政府委員
総理府事務官
(自治庁選挙局
長) 兼子 秀夫君
委員外の出席者
衆議院法制局参
事
(法制次長) 三浦 義男君
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四月十四日
委員犬養健君、亀山孝一君、久野忠治君、淵上
房太郎君、眞崎勝次君、中村高一君及び渡邊惣
藏君辞任につき、その補欠として大村清一君、
三田村武夫君、高橋禎一君、森清君、菅太郎君、
松本七郎君及び横錢重吉君が議長の指名で委員
に選任された。
同月十五日
委員加藤精三君、菅太郎君、牧野良三君及び森
清君辞任につき、その補欠として大森玉木君、
吉川久衛君、笹本一雄君及び亀山孝一君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員大森玉木君、吉川久衛君、笹本一雄君及び
亀山孝一君辞任につき、その補欠として加藤精
三君、菅太郎君、牧野良三君及び森清君が議長
の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一五〇号)
公職選挙法の一部を改正する法律案(島上善五
郎君外八名提出、衆法第一一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/0
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001・南好雄
○南委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案及び島上善五郎君外八名提出の公職選挙法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。
右両案中、内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案につきましては、質疑も昨日をもって大体尽されているようでありまするから、右案に対する質疑はこれにて終局いたすことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/1
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002・南好雄
○南委員長 御異議なしと認めます。よって、内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案に対する質疑はこれにて終局いたし達した。
この際、内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党の青木正君及び日本社会党の森三樹二君より、それぞれ修正案が委員長の手元まで提出されております。これより両修正案について議事を進めます。まず提出者の趣旨弁明を順次求めることにいたします。
青木正君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/2
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003・青木正
○青木委員 ただいま委員長から御報告のありました通り、私は、自由民主党を代表して、修正案を提出いたしたいと存じます。
修正案の内容につきましては、お手元に配付いたしておりますので、朗読を省略さしていただきます。
修正案を提出いたしまする私たちの考え方、立場をこの機会に申し述べて、皆さんの御賛同を得たいと存ずる次第であります。
申し上げるまでもなく、公職選挙法は憲法付属の基本的な法律でもあり、ことに、衆議院議員選挙関係の問題になりますと、お互い自由民主党、社会党共通の問題でありますので、私どもは、選挙法の改正につきましては、できるだけ日本社会党の方々とも話し合いをいたし、共通の問題として検討し、できるだけ協調して、同じような共通の広場に立って選挙ができるようなあり方にしなければならぬ、こういう基本的な考え方に立っておるわけであります。
そこで、政府案と別に、日本社会党の島上善五郎君外の方々から、日本社会党の公職選挙法改正案が提出されたわけであります。この日本社会党の改正案につきましては、私どもも、単に、政府案を検討するばかりでなく、社会党案につきましても、まじめに真剣にその内容を検討をいたした次第であります。そうして、でき得ることならば、日本社会党側の考え方もできるだけ取り入れまして、私どもの案に同調願うと同時に、私どもも社会党の考え方にできるだけ同調いたしたい、かような考えのもとに検討いたしたわけであります。しこうして、日本社会党の提案の骨子とするところは、第一点は立会演説会の回数を七十回以上にするという問題、もう一つはいわゆる連呼行為を再び復活して認めようとする改正、もう一つは、現在禁止されておりまする候補者の寄付行為の問題につきまして、現行法以外に、後援団体の名前をもってする寄付につきましてもこれを禁止しようこの三点に要約されると思うのであります。
しこうして、立会演説会の回数の七十回以上の問題につきましては、その考え方につきまして私どもも必ずしも反対するわけではありませんが、全国一律に七十回以上にするという問題になりますと、いろいろ地域的な問題、人口の稠密の問題等もありますので、全国を画一的にきめるということは、実際問題としてなかなか困難と思うのであります。さればといって、別表のように地区ごとに立会演説会の回数を掲げるということもなかなかむずかしい問題でありますので、この問題につきましては、社会党側のお考えも私どもわからないわけではありませんが、さらにもう少し検討を要するのじゃないか。次の機会までに私どもも検討いたしまして、意見の一致する点があれば、その機会に改正すべきものと考えるのであります。
また、連呼行為復活の問題につきましては、もともと連呼を認めておりましたものを、先年、連呼については弊害がありますので、御承知のようにこれを禁止いたしたわけであります。今日これを再び復活するということにつきましては、いろいろ議論もある問題であり、また、連呼行為自体につきましても、昨日の公述人の説明にもありまする通り、いろいろな議論もありますので、この問題ももう少し検討を要することと存ずるのであります。
そこで、私どもは、日本社会党の提案の三点のうち、残された第一点、つまり公職の候補者が自分の名前をもってする寄付、また候補者の事前がわかるような、類推される会社の役員としての寄付、この行為は現行法で禁止されておりますので、さらに社会党側のお考えのように、後援団体をもってする寄付につきましても、やはりこれは禁止すべきことが当然と私ども考えるのであります。おそらく、現行法を作りまする当時は、そういうような後援団体というものはあまりなかったので、この点が脱漏しておったと考えるのでありまして、今日日本社会党側で提案いたしました点はまことにごもっともと存じ、私どもも、社会党側の案をそのまま取り入れまして、政府提案の中にこれを加え、そうしてより以上のっぱな改正案として本案を成立せしめることが最も適当である、かような考えのもとに、今回の修正案を提出いたした次第であります。
何とぞ、できることならば、日本社会党の方々におかれましても、本修正案に御賛同あらんことを、心からお願い申し上げる次第であります。
以上をもって私の修正案の説明といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/3
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004・南好雄
○南委員長 森三樹二君。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/4
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005・森三樹二
○森(三)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提案にかかるところの公職選挙法一部改正案に対しまして、修正案を提出したいと思うのであります。
すなわち、今回の選挙法の改正は、われわれが日ごろ唱えておりますところのいわゆる民主政治確立のための根本的な改正ではなくして、全く自由民主党の党利党略によるところの、自己に有利にせんとするところの改正であって、枝葉末節の改正であるとわれわれは考えております。従いまして、社会党は、この委員会におきまして、しばしば各委員からも主張いたしましたように、今回の選挙運動期間を二十日にするという改正案に対しましては根本的に反対であります。その反対の理由等につきましては、これはあとで討論の際に十分申し述べたいと思います。従いまして、この二十日にする案に対しまして反対すると同時に、われわれ日本社会党といたしましては、従前通り二十五日にするという修正案を出したい。以上が修正の理由でありますが、あとでもって討論の際、その本質的な問題につきまして十分申し上げたいと思います。
以上をもって修正案の説明といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/5
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006・南好雄
○南委員長 以上で両修正案の趣旨弁明は終りました。
修正案に対しては別に質疑の通告もありませんので、ただいまより内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案の政府原案、並びに、青木正君提出の修正案及び森三樹二君提出の修正案を一括して討論に付します。
森三樹二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/6
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007・森三樹二
○森(三)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されておりますところの公職選挙法の一部を改正する法律案並びに修正案等に対しまして、討論をいたさんとするものであります。
まず、この政府案に対しまして私は反対の意見を開陳したいと思うのであります。
私どもは、いかにして民主政治を確立するかということにつきましては、いわゆる選挙法の公正を期し、この選挙法の公正によって真に国民代表としての議員が選ばれることを念願しておったのでありますが、われわれは、この選挙の公明を期するために、選挙の公営を徹底化し、候補者がみずからの負担において無理な金を算段して、そうして選挙を腐敗さすようなことのないようにしたいということを、日ごろ念願しておりました。また、政治資金規正法の改正によりまして、政治資金というものは、資金を寄付する者もあるいは受ける者もこれを公明にし、届出を確実に施行いたしまして、いわゆるガラス張りの資金でもって政治資金というものがまかなわれなければならないということもわれわれは日ごろ主張いたしまして、この政治資金規正法等につきましてもわれわれは改正案を提案しておったのでありますが、政府与党が政治資金規正法の改正等につきまして非常に冷淡な態度をとっておったことは、私どもとしてまことに遺憾にたえないのであります。しかも、私がまことに遺憾にたえないのは、いつも、政府与党は、選挙のまぎわになると、いかにして政府与党は多数を獲得しなければならないかという、そうした自己に有利な選挙法改正を目途といたしまして、今回の改正案につきましても、選挙運動期間を二十日間に短縮するというように非常に運動期間を制限し、二面においてこれをカバーするというような形において、ポスターを五千枚から八千枚にする、あるいはまたはがきを一万枚から一万五千枚にいたしまして、こうした方面でもって運動期間を短縮したものをカバーするというような、いわゆるカムフラージュによって二十日間というものを合理化し、しかも、これによって、既存の議員諸君は、自己のいわゆる地盤、カバン、看板というような旧態依然たるところの選挙によって当選を期そうとしておるのであります。従いまして、これから出ようとする新人にとっては非常に不利益であることは、先般岸総理もこれを当委員会における質疑応答中において認めておるのでありまして、このようにだれしも認めるようなこういう新人に対する不利な改正案に対しましては、われわれは断固として反対しなければならぬと思うのであります。しかも、私は常日ごろ主張しておるのでありますが、できるだけ選挙民に対してはその候補者が言論を通じて自己の所信あるいは政策を十分に発表しなければならない。国会はいわゆる言論の府でありまして、沈黙の議員が出ましたところで何ら意味をなさぬのであります。しかるに、言論戦を短縮し、単にポスターやはがきによるところの文書というものは、これは、他人に書いてもらっても、りっぱな文書ができるのであります。しかしながら、言論となりますと、やはり幾ら他人に書いてもらっても、自己の思想というものが統一されておりませんと、必ずしも他人の書いた文書だけでは演説することができない。われわれは、言論というものを尊重する以上は、やはり、選挙運動期間を通じまして、選挙民に対して政治の啓蒙、しかも各政党の有するところの政策を十分に納得せしめ、その納得の上に基きまして、選挙民がこれを判断して投票するという方式に待たなければならぬことは、いうまでもないのであります。しかるに、この最も必要にしてきわめて貴重なるところの言論の運動期間を五日間も短縮する、こういう既存の議員にのみ有利な運動期間を改正するということは、とうてい承認することができないのであります。しかも、短縮されたということによって、すなわち選挙は現在もうすでに中盤戦だといわれております。法定の選挙運動期間が短縮されますというと、必然的に事前運動が活発となり、新聞にも記載されてありますように、政府与党では盛んに候補者になる者に対しましては資金の援助を与える、そうして、この国会の審議中に、選挙区に帰って盛んに選挙運動を展開しておるというのが実情であります。岸総理は重要法案がある程度目鼻がつかなければ解散しないと言っておりますが、重要法案が停頓しておるこの姿こそは、まさしく選挙運動の事前工作に議員諸公が大わらわになっておるということをみずから立証しておる一つの証左であるといっても、私は過言でないと思うのであります。このように、運動期間を縮短すればするほど事前工作が活発となり、その事前工作にはいわゆる目に見えないところの陰の資金が動いておることも明らかであります。ある代議士のごときは、莫大な資金を選挙区に投入し、もうすでに自分の選挙態勢というものはでき上ったと、こういうことを何らおくめんもなく発表しておる者もあります。われわれは選挙区に帰らず、今日各委員会におきまして、むしろわれわれは反対党でありながら、このように審議に集中しておるのでありますが、逆に、国会の中には、ほとんど議員諸君は半数もおらないというような現状であることは、やはり選挙運動期間が二十日になるということの見通しが大きく影響しておることを見のがすことはできないと私は思うのであります。
さらに、もっと突き進んで言うならば、この二十日が十五日になり、あるいは十日になったということを考えてみるならば、われわれはりつ然たるところの思いがする。すなわち、実際の選挙運動というものを非常に短縮し、事前運動においていわゆる保守党の物力にものをいわすところの選挙、すなわち、言論でなくて金力、物力によって選挙を戦わんとする傾向がはなはだ助長されることは、私は否定できないと思うのであります。この選挙運動間の短縮によって、今後の選挙運動に非常に多額な資金がばらまかれまして、事前工作を完了したものが当選をする。ぼやぼやしておって事前運動をしない者、まじめにこの二十日間だけで選挙運動をやろうと思っておったような者は、哀れな落選のうき目を見なければならぬということは、私は火を見るよりも明らかであると思うのであります。この二十日間にもしも政府与党の諸君が多数をもって改正したならば、殷鑑遠からず、この短縮されたところの罪の報いというものは、保守党の上に必ずくると思うのでありまして、選挙が済むと必ず選挙違反があちらこちらに起きてくる。莫大な資金が流れたことが出てくる。千葉銀行から金が出たということも、きっとあからさまになると思うのでありまして、おそらく選挙違反が続出するというようなことも考えられるのであります。今日新聞に書いているのでは、岸派では三百万円を公認料として出すと言っております。河野派では四百万円を一人に渡すということがはっきりここに書いてある。法定費用は御承知の通り七十万円、八十万円、百万円ということが大体法定費用でありますが、何のために三百万円、四百万円の公認料を渡すのだ。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/7
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008・南好雄
○南委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/8
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009・森三樹二
○森(三)委員 これはすなわち供応、買収、その他悪質つな選挙に使われることは明らかであります。これでは幾らたっても、岸総理が三悪を追放し汚職を追放せんとしても、言うべくして不可能であめる。言っておるところの岸総理みずからが、汚職を奨励し、法定の選挙運動費用を無視して、公認料を三百万円、四百万円ばらまくのであっては、おそらく選挙が済んだとたんに選挙違反者が続出し、醜悪なる事態が発生するであろうことを考えますと、現在の日本の民主政治というものはいまだ遠しといわざるを得ないと思うのでありまして、私は、このような党利党略によるところの二十日間にするという改正に対しましては、根本的に反対であります。しかも、これは自民党の諸君がみずからのからだをいとい、なるべくからだを楽にするというようなことからも出発しておるのでありまして、最初は、立会演説会の回数も減らそう、なくそう、そういうようなお考えを自民党が一時発表されたことも、自民党の諸君は御承知であろうと思うのであります。すなわち、立会演説会という最も必要なるところの選挙運動を抹殺し、しかも自動車も乗用車でもってからだを楽にしょう、ダットサンというようなああいう便利な選挙運動の自動車があるにもかかわらず、それもなくしてしまって、乗用車だけでしょうというような案も当初組まれたのでありまして、この立会演説会の廃止、それからダットサン、トラックの廃止、それとからみつけて選挙運動期間を二十日にしようというのが、当初の自民党の考えであったのでありますが、さすがに自民党の中にも良識の方があると見えまして、そのような立会演説会を廃止するに至っては、国民からまっ正面から反対を受けるということをおそれまして、これだけは引き下げ、そうしてようやく二十日の運動期間短縮ということを出してきたのでありまして、思いをそこにいたすならば、これこそ実に自民党の陰謀によるところの改正案であるといっても、過言ではないと思うのであります。(拍手)私どもは、国民の負託にこたえまして、選挙法を改正し、真に国民に、この選挙運動期間を通じまして、われわれは所信を発表し、政策を発表しなければならぬ期間であるにかかわらず、二十日間に短縮されて、そうした運動、言論戦というものは五日間短縮された。しかも、立会演説会の回数も、それによって、一日に三回立会演説会をやるといたしますと、五日間で十五回減らされる。個人演説会を十回やるといたしますと、五十回減らされる。街頭演説会を十回やるといたしますと、五十回減らされたことになるのでありまして、実に遺憾千万であります。良識あるところの自民党の諸君であるならば、こういうような改正はなさるべきでなかった。われわれ社会党はこうした改正案に対しましては根本的に反対であるということを、十分一つ御認識を得たいと思うのであります。
それから、この選挙法の改正におきまして、ポスターあるいははがきをそれぞれ増加いたしましたことは、これは、私は、選挙の公営からいたしまして、非常に適当であると思うのでありますが、このはがきを五千枚ふやしたことによって、二万五千円の国費が負担されることになります。そうしてまた、ポスターを三千枚ふやしたことによって、これまたその用紙等においても一万五、六千円の国費負担となるのでありまして、合せますと四、五万円の国費負担が増額されておる。そこで、法定選挙費用というものにつきましては、その五分の一は当然減らさなければならぬ。たとえば、百万円の法定費用を使うところであるならば、その日数が五分の一に減ったのでありますから、当然に二十万円というものは減らさなければならぬ。ところが、この改正案につきましては、何らそうしたところの考慮が払われておらない。これにつきまして私は郡長官並びに兼子選挙部長等にも質問いたしましたが、郡長官は、これに対しては、なるほど数字的にいえばそういうことも言えるけれども、しかし、実際面としては、むしろ選挙が二十日間に短縮されたために、活発化する、たとえば、労務者の数であるとか、あるいはその他の選挙運動の活動が活発になるから、法定費用はそれほどに減らないと思ったから、現存のままにしておいたというような答弁がありましたが、これまた私は郡さんとしては自己の良心を欺いた欺瞞的な答弁であると判断せざるを得ないのでありまして、二十日間に短縮したならば、何がゆえに法定費用をその割合に応じて減縮しなかったか。これは子供にもわかる一つの理屈であります。こういうふうに、金力によるところの選挙運動のこの改正によって認めるというような、民主政治に逆行する改正案に対しましては、私はどうしても反対せざるを得ないのであります。
今日この法案がかりに多数をもって押切られたといたしましても、われわれは今後参議院におけるところの戦いを展開しなければならぬ、私はこのように考えておるわけでありますが、しかし、自民党におきましても、社会党の提案いたしましたところの選挙法の改正案の寄付行為の制限につきましては、やはり良識ある諸君によって一部これを認められましたことは、まず今回の選挙法の改悪の中の一番いいところであったと私は考えるのであります。しかし、これも、考えようによっては、二十日間というこの法律案を通さんがために、社会党の言うことを聞きたくなかったけれども聞いたというような、そういう面も多分にあることを私は率直に認めなければならぬと思うのであります。要するに、今回の選挙法の改正は、根本的な良心的な改正ではなくして、一部自民党与党諸君が、自分のからだをいとい、そうして言論を制限し、物力によるところの、金によるところのそうした改悪の改正であると断ぜざるを得ないのでありまして、これに対しましては日本社会党は断固として反対であることを表明する次第であります。
なお、社会党から提案してありまするところの法案につきましては採決しないということになっておりますけれども、これは私は非常に遺憾でありまして、われわれ社会党が提案しておりまするところの改正案は、根本的に立会演説会の回数を増加し、しかも言論を重んじたところの法案であります。寄付行為の制限は、先ほど青木委員からも説明がありましたが、やはり、いかに自民党の諸君といえども、社会党が出したところのこうした良識ある法案につきましては、これを採用せざるを得なかったことにつきましては、いささか私は敬意を表せざるを得ないのでありますが、これを見ましても、社会党が提案したところの改正案というものは、いかに合理的なものであるかということを十分に私は認めていただくことができる、かように考えるのであります。従いまして、社会党の改正案がここで通過しないことは、私は心から遺憾にたえないのでありますが、来たるべき時期におきましては、われわれは、この法案をぜひとも通過させたい、こういう希望を付しまして、政府案に反対の意見を表明するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/9
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010・南好雄
○南委員長 古川丈吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/10
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011・古川丈吉
○古川委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま提案されました社会党の修正案に反対し、青木正君外自民党の提案されました修正案に賛成をし、自民党提出の修正案を除く政府原案に賛成の討論をいたすものであります。
社会党が選挙運動期間を二十日にすることに対する反対の修正でありまするが、御承知のように、最近における交通、宣伝等、選挙運動手段の発達に伴いまして、先般の国会におきまして、参議院議員の選挙運動期間を五日間短縮されたのであります。その際に、やはり衆議院の選挙運動期間も短縮すべきであったものを、それが今回に事務的におくれただけの、事務の整理ともいうべきものであります。また、御承知のように、今日におきましては、二大政党が対立をいたしまして、政党の政治活動というものが非常に激しいわけであります。従って、選挙におきましては、政党と個人を両点から批判されるべきでありまするが、ただいま申し上げましたように、政党というものが非常に発達いたしました結果、この意味から申し上げても、選挙期間を短縮する意味が十分あるわけであります。また、選挙の当選ということは、選挙期間の運動だけでなくして、平生から、世間一般から、やはり国会議員として出てもらいたい、これだけの認識のあるような人でなくちゃならないのであって、選挙運動期間だけぽっくり出てきて、それで当選するようなことは、むしろ好ましくないことであると私は考えるのであります。従って、平生のその人物に対する認識が世間で十分ある、しかも選挙運動と両々相待って当選することが私は好ましいと思うのであります。また、選挙運動期間というものは、政治経済に及ぼす影響が非常に大であります。一時その政治経済活動が渋滞いたします。これが国民経済に及ぼす影響というものも非常に大きいのであります。こういう点から考えましてもできるだけ短かくすることが必要であります。また、ただいま森君から社会党修正案について説明がありましたが、日数が減ったから、費用についてはもっと減るべきであるといいますけれども、この点につきましては、郡長官から先般来説明がありました通り、選挙期間は短縮されまするけれども、それだけにその期間中の選挙運動というものは激しくなるのでありますから、期間を短縮したほどには選挙費用が減らないということも、これは常識でわかることだと思うのであります。こういう理由によりまして、私は社会党の修正案に反対いたすものであります。
また、青木正君提出の自民党の修正案につきましては、われわれ国会の選挙をいたす者におきましては、常々与党内でも、候補者になるべき者の寄付行為はできるだけ制限をしたい、こういう気持でおりましたが、その限界が、個人の儀礼に属するものと選挙運動に関するものとの区別が技術的に非常にむずかしいので、今日までなりましたけれども、今回社会党から出されました改正案の一部の中に、いわゆる後援団体の名前でもってする寄付はやめるという内容の規定がありますが、この範囲ならばまぎらわしくない、当然であるということで、与党側といたしましても双手をあげて賛成し、それをわが党の修正案として出したわけであります。
従って、その修正以外の政府原案につきましては、先般来郡長官から説明がありました通りに、あとの問題はほとんど事務的な処理であります。まず第一は、町村合併の進捗に伴う改正でありまして、現在の郡市の区域を県会議員の選挙区とすることは原則でありますけれども、この原則ばかりを貫くわけには参りませんので、その選挙区の調整が今度の改正の第一点であります。また、町村合併の結果、町村の規模が大きくなりましたので、町村の選挙につきましても、いろいろな方法で選挙運動の方法を変えなくちゃならぬ。これが第二点であります。また、今回は社会党からも賛成のありました、ポスターやあるいははがきをふやす。これは、できるだけ選挙運動を徹底する上において、しかもこれは公営を増加する意味において好ましいことであります。また、その次には、選挙の管理及び執行についての合理化に関するものでありまして、選挙管理委員会の人数が従来三人でありましたが、三人とも出席しなければ会議を開くことができませんので、今回それを四名にいたしました。また、立会演説会におきまして秩序を乱す場合がありますので、この秩序保持の規定を加えました。これが今回の政府原案の改正点の要点であります。このいずれもが事務的なものであり、しかも時宜に適したる改正案だと私は存じます。現に、都道府県の議会は、全国一致いたしまして、この政府原案の一日も早く通過せんことを希望いたしております。
以上をもちまして、私は、社会党の修正案に反対をし、青木正君外自民党の修正案に賛成し、自民党の修正案を除いた政府原案に対する賛成の討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/11
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012・南好雄
○南委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入る順序でありますが、採決は内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案について、まず森三樹二君提出の修正案を採決し、次に青木正君提出の修正案を採決し、最後に原案について採決いたしますので、御了承を願います。
それでは、採決いたします。
まず、内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案に対する森三樹二君提出の修正案につき採決いたします。右修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/12
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013・南好雄
○南委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案に対する青木正君提出の修正案につき採決いたします。右修正案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/13
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014・南好雄
○南委員長 御異議なしと認めます。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま修正に決しました部分を除いた政府原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/14
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015・南好雄
○南委員長 起立多数。よって、内閣提出の公職選挙法の一部を改正する法律案は修正議決いたしました。
なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会の報告書の作成については、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/15
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016・南好雄
○南委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804219X00919580415/16
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