1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十三年二月十三日(木曜日)
午前十時四十二分開議
出席委員
委員長 森山 欽司君
理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君
理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君
理事 八田 貞義君 理事 八木 一男君
小川 半次君 大橋 武夫君
加藤鐐五郎君 亀山 孝一君
草野一郎平君 小島 徹三君
田子 一民君 中山 マサ君
藤本 捨助君 山下 春江君
亘 四郎君 岡本 隆一君
五島 虎雄君 滝井 義高君
中原 健次君 長谷川 保君
山口シヅエ君 山花 秀雄君
吉川 兼光君
出席政府委員
厚生事務官
(医務局長) 小澤 龍君
委員外の出席者
検 事
(刑事局刑事課
長) 河井信太郎君
厚 生 技 官
(保険局医療課
長) 館林 宣夫君
衆議院法制局参
事
(第二部長) 鮫島 眞男君
専 門 員 川井 章知君
—————————————
二月十二日
母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出第四六号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
予防接種法の一部を改正する法律案について参
考人出頭要求に関する件
角膜移植に関する法律案(中山マサ君外三十九
名提出、第二十六回国会衆法第四三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/0
-
001・森山欽司
○森山委員長 これより会議を開きます。
角膜移植に関する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。長谷川保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/1
-
002・長谷川保
○長谷川(保)委員 この角膜移植に関する法律案は、今日この技術が相当な進歩をして参っておりまして、開眼手術が相当に成功してきておりますときにおきまして、これは非常に時宜に適した法律だと思うのであります。ただ私が非常に心配いたしますのは、これが営利事業の対象として行われるというときに、ちょうど、例の血液を売買することで、いろんな弊害ができて参りましたことがあるのでございますけれども、それとこれとは幾分違いますけれども、やはりこの営利の対象とすることによって、行き過ぎたことが行われるようになりはせぬかということを心配するものであります。提案者の方々は、これが営利事業の対象になるということをお考えになったことがあるかどうか、その点、まず提案者の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/2
-
003・中山マサ
○中山(マ)委員 ただいま御発言になりました中、血液銀行の問題をお出しになりましたが、そのあり方を見ておりますと、なるほど、お仕事にあぶれたニコヨンさん、ああいう方が血を売りにきておるのを、私現場へ行って見たことがございますけれども、これと目の方とは格段の違いがあると思うのでございます。生き馬の目を抜くという言葉がありますけれども、生活が脅かされますから、だれも生きてて、自分の目を売って、失明してもいいというような人はないと思います。裕福な人はそういうこともいたしませんでしょう。これは純然たるヒューマニズムに関したことでございまして、人間のからだの中の一部取りかえということによって、どうせ自分が死んでいくときに、それを譲って、二代使ってもらえるのだったら幸いだということからこのことが起っております。血液銀行は確かに商売になります。血液を取っておきまして、海外に輸出しておる向きもあるということも聞きます。目の方は時間的にも短期間でございますので、商売にならないと私は考える。またちょっとした話を聞きましたが、死んでから目をやるから前金を渡せと言うた人があったそうでございますけれども、そういうことはとても考え及ばないことでございまして、ほんとうの意味のいわゆる愛情から出た行為になると思いまして、これはどうも商売になりそうもないと、こう私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/3
-
004・長谷川保
○長谷川(保)委員 提案者御自身はみずから非常に高い程度のヒューマニストでいらっしゃいますから、そういうことが言えるのでございましょうけれども、私は今後段で提案者が御答弁になりました中にありましたことが、決して行えないことではなかろう、もし営利事業ということになりますと、おそらくやはり利にさとい人々は予約者を作って、僅かの金を渡すということで、貧しい方々を釣るということが行われないとは言えないと思う。そこで非常に心配になりますことは、十分な死の確認の後に死体から眼球を取り出すというようなことがあるいは行えないというようなことがありますと、これは実に容易ならぬ問題でございます。もし今のような営利会社ができて、営利の対象としてこのことが行われるということになり、貧しい方々と予約をいたしまして、あらかじめ何がしかの金を生前に渡して、そうして死後それを切り出すというようなことになって、それが営利事業として成り立っていくというようなことがもしありました場合には、その眼球会社に嘱託医がおって、その嘱託医がたとえば同じ東京なら東京でございますならば、予約いたしました貧しい方の最後の診断をする、あるいは診療をするということもありましょうし、そういう場合に少しも早く死後眼球を取り出すことが効果的な手術をするのに必要だということになって参りますと、十分な死の確認もしないで、営利的な立場に立って眼球を取り出すということがなきにしもあらずである、こういうように私は懸念するのであります。もちろん日本の医師の良心として、そういうことはあり得べからざることでございますけれども、万一にもそういうことがありまして、まだ十分死が確認されないうちにそういうことがなされるということになりますれば、容易ならぬことでございますから、私はその点心配するわけです。どうもこのことが営利事業として成り立たないということを言い切ることはできなかろうと思うのでございますが、これについて提案者及び厚生省当局の御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/4
-
005・中山マサ
○中山(マ)委員 そういうことは結局醇風美俗の風習に反っすることでございますから、そういうことが行われないようにすることは私は当然のことであると考えております。それはいかなる法律を作りましてもその法律の盲点をついていく人はどの法律にもあることでございまして、まことに嘆かわしいことに思いますが、特にこういう問題に関しましては、全然そういうことがないように私は厚生当局及び法務省当局がぜひ一つ十分なるお考えをお持ちになりまして、用意周到な立場をとってこれを通していただくようにしていただきたい、そういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/5
-
006・小澤龍
○小澤政府委員 視覚障害の人々が全国でどれくらいおるかと申しますと、昭和三十年の社会局の調査によりますと十七万九千人おるということでございます。この中で角膜移植の適用症の患者はどれくらいいるだろうかというと、遺憾ながら全国的な調査はございません。しかしかって慶応大学医学部の眼科教室で、神奈川県でこれを主題にして、目の見えない人に出てきてもらいまして、そのうち角膜移植の適用症の患者がどれくらいあるだろうかということを調査したことがございます。それによりますと大体視力障害者の七・二%という数字が出たのであります。これをかりに全国的に当てはめてみますと、目の球の数にいたしまして全国でもって角膜移植の適用症は一万以下であろうと想像されるわけでございます。従ってこれは輸血のごとくに客体が多いものではございませんので、厳密に医師が適用症のみを選んでやった場合には、数の上からいきましていわゆる商売として成り立つような数ではございません。それから次から次と角膜移植患者がどんどん出てくるという状態でもございませんので、ある程度行き渡ればおのずから移植の頻度数も減ってくるのではなかろうか、従って医師が良心的にこれを行う限りにおきましては、ただいま御指摘のような弊害は非常になくなるのではなかろうか、いかに良心的に、あるいは医学的、科学的にこれを実施するかというその医師の心がまえにかかっておるのではなかろうか、こう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/6
-
007・長谷川保
○長谷川(保)委員 どうも今の御答弁では私はきわめて不十分だと思うというのは、今の政府委員の御答弁によりますと、角膜移植適用症の人は全国で一万以下と考えられるから商売としての対象にはならないだろうというお話でございますけれども、独立の会社を作ってやるということになればそうなるかもしれませんが、そうではなくて、たとえばブラッド・バンク等と兼業でやる、あるいはその他の医薬品等を扱っておりまする事業主が兼業でやるということになりますれば、これはわずかの数でも成り立つのであります。またもしそういう人たちの手が十分に行き渡りまして、角膜を死後差し出してよろしいという人々がこの業者にとられてしまいますると、いわば独占事業のようなことになって非常に高価なものにするかもしれない。高価なものにすればそこで扱いまする例が少くてもそこには営業が成り立つのでありまして、こう考えて参りますと、どうもそこに一まつの不安が残らざるを得ないということになるわけであります。また提案者の御答弁によりますと、これはあくまでもヒューマニティに立つものというお考えでおやりのようでございますけれども、しかしブラッド・バンクの考え方にしましても、初めはだれもこれを商売にしようと考えた人はなかっただろうと思います。あくまでほんとうのヒューマニティに立ちまして血液をささげるという気持だったろうと思います。それが今日のような盛んなる営利事業の対象となってきたということは、この危険をやはり今日感ずるのであります。ここに何とか営利事業の対象にはしないというような条文を入れる御意思はないかどうか、重ねてこの点を提案者の方にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/7
-
008・中山マサ
○中山(マ)委員 この問題はいろいろと御心配のようでございまするが、私どもはそこまでのことは考えておりません。むろんこれは善意の人が、たとえば日赤の本社さんが責任を持ち、このことを始めたいとおっしゃるのでございますから、日赤というものの性格上、私どもは日赤がそこまで手を伸ばせるかどうかということを考えたこともないくらいに日赤の事業というものを尊重して、この問題をお願いしておる次第でございまして、今のところそこまでのことは考えてはおりません。それはこれが一たん通りまして、そういう危険があるような場合がございましたらまた考えなければならぬかと思っておりますが、今のところではそこまで突き詰めた心配をしていないというわけなの、でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/8
-
009・長谷川保
○長谷川(保)委員 提案者の御意図は、日赤からお話があったので日赤にだけやらせるということでございましょうか。日赤以外にも公的な医療機関あるいはその他公益法人等に対しても制限をせずにやらせるという御意図でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/9
-
010・中山マサ
○中山(マ)委員 それはこれが問題になりましたときに、法制局がぜひ一つ受け入れ態勢を作ってこいということでございましたので、日赤本社が中心になって委員会を作っていただき、そうしてまた第二といたしましては、それを日赤さんの筋を通して、二百ベッド以上をお持ちの病院の眼科の先生に、これがいよいよ通ってそういうことが可能な状態になったときには引き受けてやって下さるかどうかということを、日赤が目の衛生協会を事務的に使いましてやりましたところが、八十数カ所だと思いますが、そういう場合にはやろう——これはどこでもだれでもというわけにはいかないことであろうと思いまするから、その点はそういう線を通って相当な病院でやるというのが建前になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/10
-
011・長谷川保
○長谷川(保)委員 重ねてお伺いいたしますが提案者の方では角膜移植の必要な眼球を売るのにどれくらいの費用と申しますか、単価と申しますか、金がかかるか、また今日角膜の移植の診療報酬が幾らであるか私は存じておりませんが、それと合せてどれくらいになるものであるかお考えになっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/11
-
012・中山マサ
○中山(マ)委員 私はしろうとのことでございまして、そういうことはわかりませんのでございますが、今のところではこれが日本の問題となりましたのは、御承知かもしれませんが、カリフォルニア大学出のスタインガルゲルというアメリカの若き軍曹が徴兵で日本に参りまして、日本にはあまりにもめくらが多過ぎる——これは非常に裕福な家庭の子弟であるそうでございまして、その話を聞きますと、両親が非常に社会性のある人で、こういう問題でもって相当のバックをカリフォルニアに持っておる、そういう両親を持っておる。自分が日本に来てあまりにも大ぜいのめくらを見て、自分はもうすぐ徴兵が終りになってアメリカに帰るのだが、一つ何とか自分の日本に来た記念の置きみやげとしてこういう法律を作って、そうして失明者が救済できるならば自分は非常に喜ばしいのだという話をしたことからこの問題が出て参りましたのでございまして、この人の話によりますと、アメリカでもそういうふうな商取引というふうなことでなしに、目の悪い人が手術をしてもらいたいということをお願いいたしておきますると、その目を冷蔵しておりまするところから、飛行機会社も、無料でそれをその地へ輸送しておるということで、私が聞きました範囲内においては、お金という問題は全然顔を出しておりません。万事万端が社会奉仕という線で行われておりまするので、私もむろんそういう金銭の問題にはちょっとも考えないでやっておりまするが、これは今思いついたことでございまするが、もしそういう目がほしいという人がございまするならば、あるいはそのおあずけになる方はむろん無料で摘出する。手術の費用その他の問題は、それをほしい人が実費で出してもらったら、その与える人の心が、それで十分に届くのではないか。お金のことは全然私の頭の中にはないのでございます。お医者様も厚生省の方もおいでになっておりますから、その方でどれくらい経費がかかるかということは、お尋ね願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/12
-
013・長谷川保
○長谷川(保)委員 ただいまお話のような、非常に美しい人道的な立場でこれが扱われれば異議はないのでありますけれども、もし人道的な立場で行われるといたしましても、しかし、日本におきましては、ただいま申しましたような、たとえば飛行機会社でも無料で運搬するとか、その他の方々も関係者がみんな費用をみずからささげてやるというような行き方は、おそらくできなかろうと思うのであります。そこで厚生省の方にもう一つお伺いいたしたいのでありますが、ただいまの眼球を取り出すことについての登録とか、あるいはそれを保存いたしまする費用とか、あるいは運搬する者用とか、あるいはまた今度角膜を移植します手術に必要な金とか、あるいは入院料とか、いろいろ金が要るわけでございますが、入院料とかあるいは手術料とかいうようなものは、身体障害者、あるいは要保護者といたしまして生活保護費等々で出るかもしれませんけれども、その他の必要な費用というものは、どういう方法で、もしこれが行われればそれをまかなうつもりであるか、厚生省当局の方に何か御意図がありますれば、それを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/13
-
014・小澤龍
○小澤政府委員 健康保険の方で実は角膜移植という経費が算定されてございまするが、ただいま手元に資料がありませんので、何点できめられているか直ちにはお答えできないわけであります。その他の経費といたしまして、保存並びに摘出はほとんど大した経費を要することはないだろう完全な冷蔵庫があれば、そこに貯蔵すればいいのでございまして、目の玉を取り出すという手術はさほど費用のかかるものだとは考えておりません。運搬もどこまで、運搬するかによって経費が変ってくるのでございまして、これも大した経費とは考えておりません。ただ私どもといたしまして、もしもこの法律が成立した場合におきましては、日本の現状から方々に眼球を輸送することは、実はできるだろうかどうだろうかということを非常に疑問に思っております。特定の専門病院に登録しておくか、事務的なことは今後考えなければなりませんが、提供してもいいという死体を話し合いの上で一つの病院に寄せて、眼球の摘出をし、移植をするということになることが、日本の現状では一番適当ではないだろうか、こんなふうにただいまのところは考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/14
-
015・長谷川保
○長谷川(保)委員 その点、この法律ができますれば、厚生省当局も至急手を打たれると思いますけれども、今日の健康保険あるいは生活保護法等々の関係では、ただいま申しましたような、いわゆるその他の費用に入りまする運搬とかその他の関係の費用の出どころつがちょっとないように思われます。もしこの法律とともに、そういうことに対する十分な方針をすぐお立てになりませんと、結局この法律はできたが、経済的に有力な人はこれが利用できますけれども、ごく貧しい方々は利用できないというような事情になるかと思います。で、この点につきまして至急その方針を立てられる必要があるというように思われますので、あわせてこのことをお考え下さるようにお願いをして質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/15
-
016・中山マサ
○中山(マ)委員 御承知の通り、低所得者の医療につきまして貸し出される金が、三十二年度の予算で一億ございます。三十三年度の予算が成立いたしますと、これが五億になっておると私は承知しておりまするので、岸総理のいう通りの貧乏追放ということが、私はこの線を通しても可能になると思うのでございます。低所得者であればあるほど、目が不自由だということは、まことに働きに対しても大きな障害になると思いますし、私は始終盲人会から抗議を申し込まれております。それは、昔はあんま、はり治療というようなものは、結局めくらの独占事業のようになっておった。ところが、当節では、目あきがこの領域を侵してきておるので、われわれ盲人は非常に困るというお話をしょっちゅう聞かされるのでございますが、これが可能になりまして、この法律によって目あきが増大して参りますれば、そういう、何と申しましょうか、嘆きも少くなって、あるいはほかの仕事にも従事できる人もできてくるかと思いまするので、これは非常に光を与える法案であると思いますので、五億の予算の通過にも、ぜひ社会党におかれましても御協力下さいまして、盲人にこの光をお与え下さらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/16
-
017・岡本隆一
○岡本委員 ただいまの長谷川委員の質問に関連して一言お伺いしたいと思います。この第二条の第二項によりますと、眼球の提供者は遺族ということになっております。そこで、遺族が眼球の提供をやるということになりますと、経済的な事情その他の事情によって、自分の家族が死に瀕してきたというふうな事情があった場合、ひそかに眼球の提供を申し出てくるということが私はあると思います。そうして、同時にそれに対して代償を求めるというふうな行為も、これはやはり現下の経済事情から申しましたなれば出てくるのもやむを得ないと思います。そこで、そういうふうなことが起った場合に、そこに眼球提供ということについて権利義務の関係が生じて参ります。契約をしておいたりあるいはまた前金を、とっておくというふうなことになって参りますと、これは権利義務の関係が生じて参ります。そういう権利義務の関係が生じて参りましたときに、第四条の規定の中に、医師は眼球を摘出するに当っては、礼意を失わないように注意しなければならない、こういうふうなことが書いてございます。もちろん、これはただいま中山委員の仰せの通り、医師としてヒューマニズムの立場に立っていくときには、これは非常に礼は尽されると思います。これは常識です。しかしながらそこに権利義務の関係が生じ、また特にそういうような提供をするための仲介をする機関というものができて参りますときには、その提供というものが一つの事務処理の形に変って参ります。事務処理の形に変って参りましたときに、そこに権利義務の関係が生じて参りますと、やはり眼球の摘出に行くところの人たちの間に、ある冷たいものが出てくるのを私はおそれるのであります。しかもその死亡者の意思というものを全然無視して眼球の提供が約束される、しかもそこに権利義務の形で、きわめて冷たい形で根球の摘出が行われるということになると、これは私は人道上の大きな問題になってくると思うのです。従って、何としてもそういうような事態がきわめて起りやすいという現下の社会情勢の中にあっては、ある程度それを規制するような条文というものがこの中に加わってある方が私はいいと思うのです。また礼意を失わないように注意しなければならない、こんなことは当然のことなんです。こんなことを医師に要求するというようなことは、医師のヒューマニズムというものを、全く無視し、むしろ医師の良識というものを全く無視したところの条文と言わなければなりません。だから私はこんな条文は削っていいと思うのです。むしろ眼球の提供の仲介を業として行なってはならないというふうなことが規定されるのが当りまえであって、礼意を失わないように注意しなければならないというふうな条文は全く医師の良識を疑うものであると私は思うのでありますが、中山委員並びに政府委員の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/17
-
018・中山マサ
○中山(マ)委員 御承知の通り礼意を失わないようにということは、ほんとうに今の岡本委員の御発言のようにお考えになりますれば、当然なくてもいい、そのように考えるのでございますが、そこはやはり大ぜいの方でありますからそこまで思って下さらない方もなきにしもあらずと思い、失礼をも顧みず、これをはっきりさせておきますれば——そういう善意のお方様はこれがなくてもよろしいのでございますが、人間にもいろいろな方がございますから、万が一にも——行き届き過ぎたと申しましょうか、これを入れておいていただいた方がけっこうなんじゃないかと、私は、老婆心の現われなんですがそう思うのであります。それでとにかく遺族がこれを与える側になる、しかしこれは前提といたしまして、本人のやろうという生前の発表がございません限りにおいてはこれはないのでございます。やはり本人が、自分が死んだらこの目をやるのだ。ということで登録しておきましたときに——結局死んでしまいますれば、法律的に申しますと、遺言によりましてほかの財産は法的に処分ができるようでございますけれども、遺骸というものは家族のものになるということから、たとい本人がそれを遺言してもそれだけではいけないから、それで遺族がその死者の意思を継承してこの善意の追悼に当るということでございまして、それでいいのではないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/18
-
019・岡本隆一
○岡本委員 今、中山委員のお言葉の中には重大な問題があると思います。本人のあらかじめ提供するということの意思表示があった場合以外には眼球の摘出ができないということは、この法案のどこにも書いてございません。また、本人がそういうふうな意思表示をしておいた死体について眼球の摘出をやる場合に遺族の同意を得るというのならまだわかりますが、しかしながらっそういうことはどこにも書いてないのです。この法律の通りでいきましたら、本人がそういう意思表示をしていようといなかろうと、眼球の摘出ができるようにこの法律はなっておるのであります。従って、中山委員仰せのような場合のみに限定をいしたましたならば、眼球の数は非常に少うございます。ことに交通その他の不便なところは、一昼夜以内に移植しなければならないというようなことでありますと、そういうふうな提供があってしかも家族が同意しているということでありますと、得られる眼球の数に非常に制限がございます。むしろ、いろいろな事情によって病院なんかで死んだ方の家族の同意を求めて、片一方で、提供してやろうという遺族の同意があれば取れるというふうな制度にしておいた方がいいと私は思うのです。必ずしも本人の同意がなくても、家族の同意だけでもいいと私は思うのです。それでいいと思いますが、しかしながら、それであるだけに、家族の同意の場合に、それを仲介する者が営利を目的とするというようなことがあってはならないと思うのです。結局売春問題と同じような関係が——全然違いますが、しかしながら眼球を提供するということもあるいは性行為を提供するということも、これはこういうような場合に引き合いに出すのは問題として適切でないかもしれませんが、そういうふうなとうといものを出すという意味では同じです。とうといものを出して、しかも代償を求めるという形においては同じですから、そのとうといものを出して代償を求めるというような場合が出てこないとも限らない。今日の経済情勢ではそういうことはあり得ることだと思う。あり得ることだが、その中に中間搾取があってはならない。こういうふうなことは厳然として規制しておかなければとんでもないことが起きて新聞種になり、世論の批判を浴びるようなことが出てくるというおそれもあると思うのです。だから、医師が礼を失しないようにしなければならない、これは当然なことで、もちろん合掌して手術に取りかかるであろうと思うのです。しかしながら、そういうようなことを規制してそれを医師に要求するよりも、その前に当然起り得べき最悪の場合を予想して、そういうふうなことが起らないようにする、これが法律の目的だと私は思う。ですから、そういう点については一応注意を払っておかなければならないのではないかと思うのです。
これ以上議論しても何ですから、一応私の意見を述べておくにとどめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/19
-
020・森山欽司
○森山委員長 滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/20
-
021・滝井義高
○滝井委員 非常にいい角膜移植に関する法律でございますので、ぜひ私たちは御協力申し上げて、この法律が、角膜の故障によって盲目になった人の福音となるように念願をするわけです。従って、それだけに慎重に検討していく必要があろうと思います。
まず第一に私は医務局長にお尋ねしたいと思うのですが、角膜の故障から盲目になった盲人の総数というものはどのくらいあるものなのか、これを一つお教え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/21
-
022・小澤龍
○小澤政府委員 先ほども申し上げたのでございますが、角膜の障害のために盲人になったという人の数は実は調べてないのでございます。逆に、角膜を移植する適用患者はどれくらいあるかということにつきましては、慶応大学の眼科教室におきまして、神奈川県で調査したものがございますが、この調査によりますと、目の見えない人の約七・二%くらいは角膜移植の適用患者であるということが神奈川県についてはわかったのでございます。しかし全国についてはわかりません。そこで、きわめて乱暴な話でありますけれども、全国にその数字を使ってかりに推計いたしますと、大体一万眼弱であろう。すべてこれは目玉の数で申し上げておりますけれども、一万眼弱であろうということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/22
-
023・滝井義高
○滝井委員 よくわかりました。そうしますと、その角膜移植を行うときに医師は礼を失わないように死体から眼球を摘出することになるのですが、二条の二に、「あらかじめ、その遺族の承諾を受けなければならない。」ということになっているが、「あらかじめ」ということは眼球を提供するその本人の生前、死後いずれでも、とにかく抜く前であればいいという意味なんでありましょうか、これは中山先生に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/23
-
024・中山マサ
○中山(マ)委員 それは本人はもう死亡しておられますが、ある場合には本人が生前遺言をする場合がある。そうするとその遺族は、先ほど岡本委員に申し上げましたように、その遺志を継承して、遺族もこれを承諾をするということでございますが、「あらかじめ」ということは、その本人の遺志がなくてもあるいはこれができるようになっているという今御指摘でございましたが、むろん「あらかじめ」ということは、何の承諾も受けないでさっそく取りにいくということもこれは考えられないことでございますけれども、やはりそういう道筋を通っていかねばならぬということを言うためにこの「あらかじめ」という言葉が使ってあるのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/24
-
025・滝井義高
○滝井委員 この「あらかじめ」の意味が、本人の生前も含んで「あらかじめ」、こういうことになるとすれば、今までの日本の風習を考えてみると、たとえばわれわれのいなかでは、自分が死んだら火葬にしてくれとか土葬にしてくれとか、お供えものや供花の類は一切要らないのだ、こういうことを言うと大体その通りに本人の遺志を重んじてやります。そうしますと、これは本人が死んでしまえば、目なんというものは本人の所有であったかもしれないけれども、そういうことでなくなってしまう。従ってやはり私は遺族の承諾というものはもちろん必要だと思いますが、ここにやはり本人の申し出ですね、遺言といいますか、本人の遺志というものも、日本のいろいろの過去の慣例から考えてみて重ずる、二つの条件をやはりつけておくという方が非常にいいんじゃないかという感じがするのです。さいぜん岡本さんもそういう主張をされておったのですが、その点提案者はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/25
-
026・中山マサ
○中山(マ)委員 本人がこの目を人に上げたいという場合でございますればむろん家族は、今のたとえばお供えをするとかなんとかいう問題と同一に尊重するでございましょう。また本人はそこまでいたしておりませんでも、その本人がそういうふうな社会性のある人であったならば、遺族が事前に、「あらかじめ」というのは事前に、いわゆる摘出が行われる前に承諾をし得るということは、結局本人が死亡いたしますればその遺体は家族のものになるのでございますから、それでもいいのではなかいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/26
-
027・滝井義高
○滝井委員 私たちがその場合に非常に心配するのは、本人の遺志というものは非常に崇高な遺志で出ておったわけです。ところがあとに残った遺族は生きておる人間ですから、まあ人間が死なんとするときはその言うことはなかなかいいという言葉も昔から言われておる。ところがあとに残った者は、やはりいろいろの欲望というものを持っておるわけです。煩悩を持っておるわけですから、従ってそこに死者の意思と遺族の意思とが食い違う場合が出てくる、というのはどうしてかといいますと、現在の健康保険では、角膜移植術というものは四百点です。四百点というと四千六百円。それから東京あたりの甲地区でいえば五千円です。ところが今、これは実は現実の問題にすぐなるのでうしろに医療課長に来てもらっておるわけですが、眼球の摘出術というのは百二十点です。千二、三百円です。従って四千六百円から五千円くらいの間でこれが行われるということになると、むしろ死者からいえば、自分の眼がまた新たに世の中に生きていくということは喜ばしいことなので、銭勘定ではないわけです。ところがこれがもしやみということになると十万円です。これは現実の状態がどうなっておるかということを医療課長に一つ説明してもらって、はっきり今後の迷宮をしていかなければいかぬと意つう。幸い今の点に関連して、医療課長においでいただきましたので、現実にどういう工合に角膜の移植が運営されておるか、特に基準的な日本の医療である社会保険においてやられておるかということをあわせて御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/27
-
028・館林宣夫
○館林説明員 ただいま滝井委員からお話がございましたように、現行点数表で角膜移植の手術料は四百点でございます。しかしながら角膜移植を必要とする際にちょうどこれに使用するような角膜がない場合等もございまして、その材料に使う角膜の入手に困難を来たす場合があるわけでございます。従いまして、もちろん場合によりましては四百点で角膜移植ができ得る場合もございますが、角膜を入手するために相当多額の費用をもって角膜を購入し、それによって手術する必要のある場合があるように聞いておる次第でございます。それが場合によりましては十万円にも達するという話を聞いておる次第でございます。現行健康保険はこのような場合の特別の計算は別にいたしております。従って術者がそれによって損害を受けないようにいたしてはございますが、そのような事例があることは事、実のようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/28
-
029・滝井義高
○滝井委員 今御説明のように実際これが医療の面で動く場合には移植の方で動いていくわけです。ところが、これは中山先生も御存じの通り、死者から眼球を摘出する行為、今度は摘出されたその眼球から角膜を取って目に植える行為とは、同じ医者で行われる場合もあるが、別な医者で行われる場合が多いわけです。そうしますとまず眼球から取る行為に対して、何かそこに一つの金銭的な提供をしなければならぬもの、それから今度取ったものを保管して現実の患者に植える場合の金銭的な提供とこういう二つの面が出てくるわけです。そうしますとさいぜん申しましたように、非常に清らかな死者の遺志が今度はいろいろな過程を経る間に曲げられるおそれがある。こういう形が出てくる。そこで私たちは、その死者の遺志を重んずるとすれば、生前に、死者が自分のものを提供してよろしい、世の中のためにもう一回自分の眼、角膜を尽さしてもらいたい、こういう遺志をやはり確認することが必要ではないか。そういう確認が得られるとすれば、その確認をした眼球は社会公共のために寄与をするものでなければいけないと思う外国の立法は、私昨日にわか勉強してみたのですが、どうしても売買を禁じておるようであります。一切寄付行為になっておるようであります。この法案はそういうことがいわれていない。お金を取るのか、寄付なのかということがいわれていない。従って、この点は死者から取るという点から見ると、本人の同意と同時に遺族の同意を得て、これは社会公共のために寄付するということになると、健康保険のこの四百点はそのまま四百点プラス保管料くらいで今度はいくということになる。そうでないと、今言ったような十万円とか十五万円という授与が、ある程度あると思う。角膜障害のために盲目になっておる人が、今のざっとの計算で全国盲人の七%か一割くらいあるということですが、そうすると、この法案が通れば一つの流行をある程度呼ぶと思う。そういう点から考えてもやはりそこらあたりの考え方を慎重にやる必要があるんじゃないかという点なんです。これはいろいろ考えた末、そういう私の考えを述べるわけなんですが、中山先生、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/29
-
030・中山マサ
○中山(マ)委員 私も不勉強のためにそこまで考えなかったのでございますが、さすがに専門の先生だけあって、御十分なる御研究をなすっていらっしゃいまして感謝するのでございますけれども、たとえば心臓麻痺で死ぬとか、あるいは何かの事故でなくなってしまったということがあった場合には、その人がふだんはあるいは、こういうことがあるそうな、自分の目も二代使ってもらったらいいなというくらいのことは言っておったかもしれないけれども、登録するまでに至らずして他界してしまったというようなこともあり得るのでありまして、それを一つにくくってしまっていますと、そういう場合には困ってこなければなりません。ここにございます、遺族の承諾を得るということにしておきますれば、そういう家族の者がふだん聞いておりましたことによりましてこれが実行に移されていくのじゃなかろうかと考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/30
-
031・滝井義高
○滝井委員 今私の申し述べましたような一つの点がある。それから今の心臓麻痺あるいは脳溢血というような、全く本人がその意思表示をするような時間がなかったという場合は、これは三条の変死というのに非常に近くなってくるわけです。昨日学者諸先生方の御意見は、むしろ変死をした、あるいは頓死をした者の角膜の方がいいんだ、こういう御意見があったわけです。従って私も今先生のおっしゃったように、心臓麻痺あるいは脳溢血ですっと倒れて即座になくなったというようなときの角膜は非常に貴重な角膜になるだろうと思う。三条はそういう意味において変死や何かというものを一つの例外的な規定として、本人の同意や遺族の同意を一要するが、しかしこういう場合には二人以上の医師の立ち合いの証明でよろしいとかいう例外規定をお作りになったらいいんじゃないかという感じがするのです。
それからいま一つそれと関連する問題は、遺族の同意を得なければならぬというが、実は遺族のないとき、あるいは遺族が容易に判明をしないという場合が非常に多い。たとえば生活保護を受けている御老人たった一人というような場合をわれわれは考えなければならぬ。こういう場合の角膜というものも、本人がヒューマニズムからぜひ提供したいと言っても、遺族がいないという場合があり得るわけです。養老院その他の奇特な御老人方が申し出る場合には遺族なくしてやる場合が多い。こういう場合もやはり当然例外的に考えられる必要があるだろう、こういう点が出てくると思うのですが、そういう点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/31
-
032・中山マサ
○中山(マ)委員 今の後の方の御心配でございますが、これは第二条の2の終りの方に遺族がない場合はこの限りにあらずという条項が入っておりますので、この点は御心配は要らないと思いますが、先生の前段の方は私どももよく承わっておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/32
-
033・滝井義高
○滝井委員 だから、遺族のないときはこの限りでないということは、そういう場合にむしろ逆に本人の同意を得ておけば安心だ、こういうことになるわけなんです。従って二つの場合を考えておけば、遺族がないとか遺族が判明しないときにはいいんじゃないか。というのが、昨日法務省の御説明をいろいろお聞きしてみると、結局死者の生前の承認、それから遺族の承認、それから医師が業務行為として移植のために眼球摘出行為をしたときという、こういう三つが重なると、違法性を阻却ができると断定はできなくても消極的な一つの理由にはなり得るという答弁の感じがしたのです。そういう点からいくと、そういう場合を考えておくことが必要じゃないかという感じがするのです。
それからもう一つ、これは法務省の方にお尋ねしたいのですが、この死体解剖の場合は二十四時間を経過しなくても死体解剖をすることができるわけなんです。そこでおそらく死体解剖にならって、この法律というものはそういう形で二十四時間以内にやってもいいという、こういう形におそらくなるのだろうと思うのです。ところが死体解剖というのは、言葉は悪いのですが、学術研究を主たる目的としておって、これはそこに商行為といってはおかしいが、金銭の介在がないわけなんですね。ところがこれは今すでに健康保険にも堂々と四百点という金銭の介入があるのです。従って死体解剖とこれとは幾分違うところが出てくるのじゃないか、こういう感じがするのです。それで過去の立法の経過からいって、死体の解制の場合に埋葬法その他は二十四時間経過しなければ埋葬できないといったのにかかわらず、死体解剖は二十四時間以内にやってもよろしいということになっている。ところが監獄法であったかと思いますが、一体監獄の死体というものは、われわれは大学のときに監獄の死体をもらった。ところが本人が遺言でおれのからだは死体解剖してもらっちゃ困るといったような場合は、監獄法でも多分あれはしていないと思うのですが、そういう二点について法務省の御見解を承わりたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/33
-
034・河井信太郎
○河井説明員 お尋ねの第一点でございますが、死体解剖を犯罪捜査の関係でいたしますのは、刑事訴訟法の規定に基いて行なっておるのでございますが、これにつきましてはなるほど無料で死体は渡されておりますが、解剖する先生の方へは国家の予算で、鑑定料あるいは解剖される手数料と言いうのが支払われておるのでございます。国家の公務でない医業は、金銭的なつながりがなければ、これはお医者さんとしてもやっていかれないことは当然でございますから、そういう意味で支払われておるのでございます。
それから第二点の刑務所の受刑者が死亡いたしました場合、遺族がない場合にどうするか、これは二十四時間以内は死体は渡されないという規定がございまして、それ以後遺族がない場合にどういう扱いをしておるかということは、今私詳しいことを承知いたしておりませんので、もし必要があればこの次までにその点を調査いたして参りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/34
-
035・滝井義高
○滝井委員 私の御質問申し上げている点は、二十四時間以内に死体解剖はやっておるわけなんですね。その場合に今の御説明が犯罪捜査というようなことをおっしゃったのですが、それは犯罪捜査のために早くやらなければならぬということがあるのですが、大体大学あたりでも割合早目にやっておるのではないでしょうか。そういうことが生まれた法律的な歴史的経過ですね。普通埋葬法では二十四時間たたなければ埋葬しちゃならぬ、こうなっておるわけなんです。ところが二十四時間以内に解剖がやられておるというのは、何かそこに立法上歴史的な有力な根拠があって、そういう経過をたどってきたのかどうかということなんですが、それにならってこの移植法というものが二十四時間以内という、これが一つの理論的な根拠にもなり得るわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/35
-
036・河井信太郎
○河井説明員 その点は今立法の経過の詳細は存じておりませんが、一般的なことを申し上げますと、自然死にあらざるものは変死、こういうふうに法律上は一応考えております。そうしますと、変死に該当します場合は、これは死体解剖保存法の規定によって解剖に付する、こういうことになっております。これを俗に昔から行政解剖と、こう呼んでおります。その中で犯罪の容疑のあるものはさらに刑事訴訟法の規定に基きまして、俗に司法解剖と申しますか、それに移行していく。こういうのが実際の取扱いでございます。昨日もお話がありましたように、早期に解剖しなければ、その死因なり、あるいは証拠の収集が非常に困難だというふうな場合には、その時間的な制約なしに、死が確認されれば行われる場合も時にはございます。ございますが、それは全く別個の目的で、犯罪捜査という面でそういうことが行われるのでございます。しかし東京等の実務の扱いでは、大体は二十四時間以後でなければ実際にできないのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/36
-
037・滝井義高
○滝井委員 実際問題として二十四時間以上でなければ、いろいろ手続き上の問題でできないということでございますが、どうもそこは私はしろうとで、それ以上のことはやめにして、次にお尋ねをしたい点は、この「変死体若しくは変死の疑のある死体又は角膜移植術を受ける者に疾病を伝染させ、その他危害を与えるおそれのある疾病にかかっていた者の死体から、眼球を摘出してはならない。」と、こう書いてあるわけです。さいぜん岡本さんが礼意のところで医者を侮辱するとおっしゃったけれども、これは罰則がないのですね。もし伝染病を感染させるような者について摘出して、それを移植したというようなときには罰則がない。そういう罰則の必要というものはなくてもいいかどうかということなのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/37
-
038・中山マサ
○中山(マ)委員 第七条に「前条の規定に違反した者は、五千円以下の罰金に処する。」罰則をここに置いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/38
-
039・滝井義高
○滝井委員 前条というのは六条のことじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/39
-
040・大橋武夫
○大橋委員 提案者といたしまして補足して申し上上げますが、この眼球を摘出するのは、大体医師としての資格のある方が実際上当られるわけでございまして、従ってこういう法律の規定をはっきりいたしておきますれば、大体実際問題といたしまして、反則行為が行われることはないと、こういうふうに考えまして特に罰則をつけなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/40
-
041・滝井義高
○滝井委員 そういう意味で罰則をつけなかったそうでございますが、次は同じくやはり六条で、角膜移植をやった残りの眼球の取扱いについては、厚生省令で別に定めるということになっておりますが、摘出した眼球の取扱いについては考慮が払われていないのですね。摘出した眼球というものは、角膜をとると、あとはどうするのか、あるいは角膜を移植するためにとっておったものが、角膜の混濁が起って、移植にたえなくなったというような場合に、摘出眼球の取扱いに不都合が起った場合に一体どうするかという規定がないのです。問題は移植をして残りは大事にしなければいかぬぞ、こうなっておりますけれども、とった眼球そのものについて何も考えられていないわけなのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/41
-
042・中山マサ
○中山(マ)委員 今おっしゃいました点は、私は全部ひっくるめて「違反した者」と考えておったのでございますが、これは「前条」とございますから、この六条において、摘出した眼球から角膜をとりまして、そうしてその残りのものが粗末にならないように——ですからこれを粗末にすればこの罰則に該当するものであるということになっておりますが、先生の御心配は角膜が混濁して使えなくなった場合にはどうするんだとおっしゃることも、これで処理できるのではないかと私は考えます。眼球を摘出したのですから、眼球の一部が角膜なんですから、それが役に立たなかったらやはり厚生省の省令によりまして、これが全部一緒に粗末に扱われなないように、尊い人体の一部であり、そうしてまた結局好意によって与えられるものでございますから、二重の尊さというものがある、そういうふうに私は考えるのでございます。
ちょっとここで、先ほど岡本委員にお答えしました答えの中に不十分でございましたものをつけ足させていただきますと、礼意を失わないようにというのは、解剖の方の法律にもこれがあるそうでございまして、それをここでそのつまま受けたものだそうでございますが、決して失礼な気持なんかは持っておりません。御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/42
-
043・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、この六条の「死体から摘出した眼球であって、角膜移植術に使用しなかった部分の眼球」と、これで摘出した眼球を全部含めるのですか。私は、使用しなかった部分ということは、摘出した眼球そのものではないと思う。だから摘出した眼球と、そうして眼球の中から角膜だけを剥離して、そうして残った部分と、やはりこういう二つの部分に分れるのだと思うのですがね。だから摘出したそのものというようには六条では読めないのですが、これは法制局の鮫島先生一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/43
-
044・鮫島眞男
○鮫島法制局参事 今使用しなかった部分の眼球の処置につきましては、ただいま提案者から御説明がございました第六条、第七条の関係でございます。それから摘出して使用するまでの眼球の取扱いにつきましては、第五条に規定がございまして、第五条において厚生大臣が摘出して使用するまでの眼球の取扱いに関しては必要な定めをする、こういう規定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/44
-
045・滝井義高
○滝井委員 どうも五条があることをうっかりしておりましたが、そうしますと、これは普通死体からとったたとえば肺臓とか悩とかいうようなものをそれぞれやはり大事にして、医師がアルコール、ホルマリン等につけて大事にしておりますが、そういう程度の取扱いでいいわけですか。その厚生省令で定める場合の具体的な取扱いというものはどういうことになるものですか。これは普通の血液とはちょっと違うと思うのです。厚生省令に譲られて、厚生大臣が必要な定めをなすことになっているのですが、そういう場合の眼球の取扱い方というものは、どういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/45
-
046・小澤龍
○小澤政府委員 ただいまのところでは、具体的に厚生省令の内容をどうきめるかということは、きめておりません。これが立法化された暁におきましては、直ちにその道の権威者の意見を徴しまして、最も有効に角膜が保存され移植できるような状態に眼球を置く、また礼意を失しないような状態の中で眼球を摘出しなければなりませんので、十分検討いたしまして善処したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/46
-
047・滝井義高
○滝井委員 これで終ります。われわれ人間の死者に対する考え方というものは、だんだん変ってきつつあるのですね。われわれが子供の時代には土葬というものが多かった。最近は電気技術の進歩その他で火葬になっていく、こういう形。それから血液だって、輸血というようなものは、われわれの子供の時代には非常用に大へんなことのように考えておった。ところが最近はどんどん血を売るというような形になってきたわけですね。従って死体の一部を物と見るような感じですね。文化が進むと、人間の死体に対する考え方というのは非常に変ってくると思うのです。そういう時期にこういう法律が出るということになると、やはりむしろそういうものの考え方をある程度促進をしていく形ができてくるのじゃないか。最近の医学の進歩を見てみますと、こういった角膜移植ということばかりでなくして、若返り療法なんかでずいぶんいろいろな移植術が行われてき始めたわけです。これは立案者というよりか、厚生省の局長さんにお願いしたいのですが、そういう点でやはりいろいろ人体の一部を取って他の人体に植えたり何かする植皮術その他がたくさんあるわけです。そういう点、やはり断片的な法律が出ていくよりか、将来一つの、何と申しますか、医学的に非常に有効に貢献し得る人間の肉体の一部というものを体系的に一ぺん考えてみる時期が来つつあるという感じがするわけです。これはむずかしいでしょうが、いつか資料として、人間の肉体の一部が再び人間にまた役立つというようなものは今この医学で一体どういうものがあるのか、系統的にお教えをいただきたいと思います。
これで質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/47
-
048・森山欽司
○森山委員長 本案についての質疑は終了いたしましたが、この際速記を中止して、しばらく懇談することにいたします。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/48
-
049・森山欽司
○森山委員長 速記を始めて下さい。
午後二時まで休憩いたします。
午後雰時九分休憩
————◇—————
午後二時五十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/49
-
050・森山欽司
○森山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
予防接種法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
この際お諮りいたします。予防接種法の一部を改正する法律案の審査に資するため、明十四日の委員会に済生会中央病院長小山武夫君及び国立公衆衛生院衛生微生学部長染谷四郎君の両君を参考人として御出席を願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/50
-
051・森山欽司
○森山委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
暫時休憩いたします。
午後二時五十四分休憩
————◇—————
〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00619580213/51
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。