1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年二月十九日(水曜日)
午前十一時十三分開議
出席委員
委員長 森山 欽司君
理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君
理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君
理事 八木 一男君
小川 半次君 大橋 武夫君
加藤鐐五郎君 亀山 孝一君
小島 徹三君 田子 一民君
中山 マサ君 藤本 捨助君
古川 丈吉君 山下 春江君
赤松 勇君 栗原 俊夫君
滝井 義高君 堂森 芳夫君
山口シヅエ君 吉川 兼光君
出席政府委員
厚生事務官
(児童局長) 高田 浩運君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
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二月十九日
委員片山哲君辞任につき、その補欠として栗原
俊夫君が議長の指名で委員に選任された。
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二月十八日
最低賃金法案(内閣提出第五七号)の審査を本
委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出第四六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/0
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001・森山欽司
○森山委員長 これより会議を開きます。
母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。山口シヅエ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/1
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002・山口シヅエ
○山口(シ)委員 母子福祉資金の貸付に関する法律の一部を改正する法律案についてお伺いをいたしたいと思います。
この制度のみが母子福祉対策のすべてではないということは言うまでもないところでありまして、母子住宅の問題、農地の問題、税金の問題、就職の問題など多岐にわたっているわけでございますが、母子福祉対策はこの制度を基盤として行政各般にわたっておりますだけに、これが充実はまことに意義の深いものであると考えております。このたび一部改正によりまして貸付過程の簡素化、貸付金の引き上げ、返還金の支払い猶予、修業資金に対する改正及び違約金の金利引き下げが行われようとすることに対しましては、母子家庭の喜びはもちろんのこと、前述の趣旨にのっとってまことに喜ばしいことであると存じます。まず二十六国会におきまして国庫補助率が三分の二に引き上げられましたが、それによるワクの広がり状況がどういうことになっておりますか、これについてまずお伺いしたいと思うのでございますが、二十四国会におきまして私はこの問題に対しまして修正案を出炭しましたところが否決されたのでございます。その際にこの法律が絵に描いたもち同然になってしまうのは、すなわち余剰金を余儀なくされてしまうということはこの国庫補助と地方自治負担の率が五割、五割の状態にあるからである、国庫補助率が三分の二に引き上げられることによりまして借り入れ申し込みの不承認もおそらく減少するものと思われる、こういう答弁をいただきましたものですから修正案を出したわけでございます。先ほど申し上げましたように否決はされましたが、その後二十六国会でこの国庫補助率が三分の二に引き上げられております。でございますので、この三分の二に引き上げられましてからの申し込みに対する承認の数、これを御答弁いただきたいと考えております。すなわちその不承認の数が減少するだろうという答弁は、この国庫補助の割合が五割五割であるから、地方自治体はとても五割という負担が負えないために、この余剰金というものが余儀なくされてしまっている。それが二十六国会で三分の二に引き上げられましたから、私の考えでは不承認の数はおそらく減少しているのだろう、これを御質問申し上げたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/2
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003・高田浩運
○高田(浩)政府委員 今の御質問には二つの点があると思いますが、第一はこの貸付の資金源となる総ワクの問題でございます。これは御承知のように三十一年度まで国が半分と地方が半分持っておりましたのが、三十二年度から国が三分の二、地方が三分の一という割合になったわけでございます。そういたしまして結局地方が計上する金に見合いまして国から出すわけでございまして、従って総ワクとしては三十年よりも三十二年は多少ふえると思います。これは地方の負担割合が少くなりまして消化がそれだけよくなるわけでございますから、従って総ワクとしてはふえる。それからもう一つ資金源となるものについては、過去に貸し付けました金の償還がございますが、この返されたものが同時に貸付財源になるわけでございます。この両者が合わされて全体としての貸付財源になるわけでございます。そういった意味からしまして三十一年よりも三十二年は総ワクとしてはふえる、そういうふうに御理解いただいてけっこうだと思います。もう一つは、各母子家庭から貸付の申し込みを県が受けまして、これに対して貸す貸さぬという決定をする、その決定をされたものの割合が、すなわち要望に対してどれだけ応じ切れるかという問題がございます。これは金額がたっぷりあれば断わる量か少くて、すなわち希望に対して相当応じ切れるということになるわけでございますが、従来御承知のように貸付の財源というものがそう潤沢でございませんので、貸付の申し込みに対して六、七割程度しか応じ切れないという状況であったわけでございます。この点は今申し上げました資金源の総ワクが多少ふくらまりますために、多少は改善もされると思いますけれども、しかしやはりふくらまりましてもたっぷりというわけではございませんので、全部の要望に対して応じ切れるというところまではなかなか行きかねる、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/3
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004・山口シヅエ
○山口(シ)委員 そういたしますと、確実に申し込みに対して承認されている数がふえているというような結論はここで出ませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/4
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005・高田浩運
○高田(浩)政府委員 実は三十二年度は年度の半ばでありまして、その辺のところまだ数字の締めくくりができておりませんので、ちょっと数字をもってお答えすることはできないわけでございますけれども、理屈としては当然これは貸付がふえることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/5
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006・山口シヅエ
○山口(シ)委員 わかりました。それでは次に三十三年度予算を見ますと、五億四千万円になっておりますが、三十二年度の予算は五億九千万円でございました。でございますから、今回の予算は五千万円の減少ということになります。この減額されました理由根拠は、どこにあるかということを、一つ先に御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/6
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007・高田浩運
○高田(浩)政府委員 この点実はきのうも申したわけでございますか、先ほども申し上げましたように、結局資金源となるものは新しい予算の計上と、それから過去の貸付からのいわゆる償還、その両者が元本になって資金源となるわけでございます。今まですでに四十数億の金が貸し出されておりまして、これらが漸次返って参りますために、償還の額は年々増額をして参るわけでございます。そういった関係上、予算の計上との関連を考えれば、予算の計上がかりに多少減りましても、総ワクとしてはふえるというようなことになるわけでございます。その意味からして、この五千万円の減というのは結局償還の増でカバーできるというのが第一点。それから実際問題としては、これはもう端的に申し上げますが、御承知のように従来五億九千万円、その前は四億五千万円の計上でございましたが、地方がこれを消化いたしませんために、毎年相当額を国の予算としては使い残しのような状態になっておったのでございます。そういう意味において、この五千万円の減というのは、実際問題としてはその使い残しの額はそれだけ減るという——結果としてはそういうことになるわけでございまして、これは大へん残念であり、ふがいない話でございますけれども、まあそういう点から実害としては生じないという点も考慮いたしまして減ったような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/7
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008・山口シヅエ
○山口(シ)委員 そういたしますと、今回予算に組まれました金額が、そういう一応数字的に出ないで、感じによってこの五千万円を減額したという数字が出てきたように私はただいまの御答弁で受け取れるのですが、もっと確実な何か根拠があるべきではないか、こう私自身は考えさせられますが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/8
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009・高田浩運
○高田(浩)政府委員 三十二年度と二十三年度とを比べてみますと、償還も合せました数字としては、三十三年度が予算が減りましてもふえる格好になるわけであります。それからもう一つ、これは現実に三十二年度の予算の消化状況を見ますというと、五億九千万円の予算のうちまだ、昨年の末の計算でいきますと、四億に欠けるという状況でございまして、そういう意味からいたしますと二億近くの金が未消化に終る。そういうようなことでございますので、実際問題として五千万円の減というのはその中にいわゆる埋没してしまうということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/9
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010・山口シヅエ
○山口(シ)委員 次にお伺いしたいことは、先日資料としていただきました印刷物の中には、申込数に対する貸付の率というものが出ていなかったように思うのでございますけれども、二十八年度から三十一年度まで——今のお話では三十一年度もはっきり出ていらっしゃらないのじゃないかと思いますが、大ざっぱな数字でけっこうですから、三十一年度まで、これは承認した数でなく、申し込みに対して受け付けた数、この割合を数字でお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/10
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011・高田浩運
○高田(浩)政府委員 母子世帯からの貸付の申し込みに対します貸付の決定の割合でございますが、昭和二十八年が五〇・五、二十九年が六八・六、三十年が六九・四、三十一年が七二・一そういうふうな数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/11
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012・山口シヅエ
○山口(シ)委員 そうするとずっと上昇していますね、貸付が。それではもう一つ数字の問題で、全国母子世帯数と被保護世帯数でございますが、この数字とパーセンテージを一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/12
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013・高田浩運
○高田(浩)政府委員 三十一年に調査した結果によりますと、母子世帯、これは母子福祉資金の貸付に関します法律と同じ対象にいたしますと、母子世帯の数が百十五万になるわけでございます。二十七年の調査によりますと、御承知のように約六十九万と申しておりましたが、これは調査の対象が多少食い違っておりますので、その数字からあえてふえたという意味ではございません。その点御了承いただきたいと思います。そのうち生活保護を受けております世帯が約十一万でございまして、パーセンテージとしまして一割ちょっとということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/13
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014・山口シヅエ
○山口(シ)委員 このボーダーライン以下の世帯というのがだいぶ多くあるんじゃないかと思いますけれども、当局の方で御調査なすったことございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/14
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015・高田浩運
○高田(浩)政府委員 お手元に三十一年の調査の報告書を差し上げてありますか、その十五ページをごらんいただきたいと思います。十五ページの一番下の欄に世帯収入から見た母子世帯というのがございます。これによりますと、そこに書いてありますように現金実収入について見ると、月額一万円以下のものが四八%、そういうような状況になっております。その内訳はこまかに表に書いてございますが、これによって御推測をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/15
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016・山口シヅエ
○山口(シ)委員 今の数字を伺いまして私はこういうことを考えさせられるのでございます。ただいまの生活保護を受けなければならないような事情にあるもの、それにボーダーライン以下の母子家庭、これらの数字を合せますと、約母子家族の半分以上が、いわゆるこれらの法律の恩恵に浴さなければならないような事情の家庭ではないかと私は考えます。そこでこの数字から見ますと、現在貸し付けております対象というものは、これらの母子家族を救済するにはとうてい及ばない数であると私は考えます。そしてこれを貸し付けるまでには、その母子家族に対していろいろと返済の義務などもあるのですから、これらの問題が条件になりまして、非常にワクが狭められていくということは当然のこととは思いますが、これらの調査並びに指導というものはやはり行き届いていなければ、必要であるべき母子家族にこれらの資金が貸し付けられてないという結果か出てくるんじゃないかと思います。それはもうすでに御承知だろうと思いますが、母子家族の問題でよく新聞の記事などに載るのでございますけれども、この資金を当然借りなければならない事情にある家庭は、半年、一年と区切って返金しなければならないという前提のもとに借りるということに、いろいろな意味で非常に拘束され、不便を感じ、そういうことでぜひとも必要であるという家庭にこの資金が浸透しておらずに、むしろ貸すときに条件がかなうものに貸し付けられるというような例が、多く見受けられるというような意見を、たびたび私は読んでおりますが、それらについてどういう御意見をお持ちか、一つお漏らし願いたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/16
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017・高田浩運
○高田(浩)政府委員 先ほど来御承知のように母子家庭は一般的に見れば経済的に非常に恵まれない家庭が多いわけでございまして、従ってこれに対する対策としては経済的援助ということが一つのポイントになるわけでございます。その場合に母子福祉資金の貸付制度は、この法律に書いてありますように、「その経済的自立の助成と生活意欲の助長を図り」云々というようなことでありまして、結局この貸付によって経済的の自立態勢を確立するお手伝いをする、そういうことが一つの目的でございます。それから本質的に申しましてこれはやはり給与する金ではなしに貸付でございます。同時にこれが返れば他の母子家庭に貸し付けられるというような仕組になっておる関係上、やはり貸す場合に、たとえば生業資金等についてみますと、事業が果してうまくいくだろうかいかぬだろうか、従って事業からいって返せるだろうか返せないだろうか、その辺のところはやはり貸付に当って吟味するのが当然の仕組みになっておるわけであります。一方またそういった例にそぐわない、とにかくあとうまくいくかいかぬかわからないけれども金がほしいのだという人たちも、確かに数多くの母子世帯のうちにはあると思いますけれども、そういうものにつきましては必ずしも貸付の対象とならない。計画がうまくなければやはり貸付を差し控えるということは、これはあり得ることだと思うのでございます。しかしこの貸付の制度はこれで母子家庭の問題を全部解決できるわけのものではなくて、やはり一つの目的を持ち、その目的に沿うたものに対する対策でございますので、今お話のように、端的に申し上げれば貸すよりも金を与えるという方に重点を置いて考えなければならないものに対しては、これは十分の役割を果し得ないということは、これは現実あると思うのであります。それらについては生活保護の制度があるわけでございますけれども、これは一つの基準というものがございますので、母子世帯の方の目から見れば、いろいろ御不満の点もあろうかと思います。これらの点については今後全般的に母子福祉対策を進めていく上において考えなければならない問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/17
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018・山口シヅエ
○山口(シ)委員 それではこの点につきましては、審査の点が必要以上に慎重に過ぎて、貸付金を必要とする母子家族に貸し付けられないような事情の起らないように、またこのワクを広げるために、ぜひより以上積極的な対策を講ずるように、その点特にこの際お願いを申し上げておく次第でございます。
次にお伺いいたしたいのは、やはりこの貸付の問題は、ただいまもお願いいたしましたように、どうしても実態をつかむことが最も必要な問題だと思います。そのために一つの方法といたしまして、やはり母子相談員の充実、これをどうしても緊急にはかる必要があるのではないか。この法律が施行当時に福祉事務所の数と同数の母子相談員の数が必要である、そういう性質のものであるということが強調されたのでございます。そして今日に至りましたが、現在では福祉事務所の拡充にこれらのことが伴っておりません。そこで私は今必要に迫られて福祉事務所から増員の要求が出ているということをしばしば聞いておりますが、これらのことがただいまどういう状態にあり、また当局といたしましてはどういう考え方を持っておるか、それから現在全国で福祉事務所が何カ所あってそれに何人の母子相談員が置かれておるか、これについても一つ御答弁願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/18
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019・高田浩運
○高田(浩)政府委員 母子相談員の問題については今お話の量の問題と、それから質の問題と両方あると思いますが、第一に福祉事務所の数が現在九百六十七カ所でございます。それに対しまして母子相談員の置かれております数は八百三十名ということでございます。従って一都道府県当り十六名という数になるわけでございます。そういう意味で、今お話しのように福祉事務所一カ所当りにはまだ至っていない、ちょっと欠けるということでございます。
それからもう一つの問題点は母子相談員の仕事の問題でございますが、実は母子福祉資金の貸付等のいわゆる事務、そういったものは福祉事務所の方でやるというふうな建前になって、母子相談員はむしろ一般的な生活上の相談に応じたり、あるいは指導をしたりということに当るのが母子相談員でありまして、貸付等の事務は福祉事務所の方でやる、そういうふうな立て方に考えておるのでございますが、福祉事務所の方の陣容がこれまた不足をしております関係上、往々にしてそういった事務が母子相談員の肩にかかっているところがずいぶんあるわけでございます。一人の人間でございますから、結果としては母子相談員本来の仕事がそれだけ食われることになる。ですから母子相談員の問題につきましては、相談員自体の増員なり何かの問題と、それから福祉事務所の整備の問題と両面から考えていかなければならない、そういう問題になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/19
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020・山口シヅエ
○山口(シ)委員 それで福祉事務所で受け付けました母子福祉資金に対する相談でございます。これに対してどのくいらのパーセントでこれが解決されているものでございましょうか。福祉事務所の仕事として、申し込みに対してどのくらいこれが処理されているものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/20
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021・高田浩運
○高田(浩)政府委員 結局福祉事務所の方で受け付けました貸付の申し込みというものは県に参りまして県で最終的な審査をし、従来でありますれば児童福祉審議会の意見を聞いて貸し付ける、あるいは貸し付けないという決定をいたしておったわけでございます。従って結局窓口であります福祉事務所への申し込みは全部県に参りまして、そこで可否を決定するようなことになるわけでございますから、全体としては申し込み総数に対して貸付決定額がどれだけであるかということによって、これは御判定いただくことになるわけであります。その数字が先ほど申し上げました、たとえば三十一年度でありますれば七二・一%ということになるわけでございます。もっともこれは具体的な書類を通じての申し込みの決定の割合でございますから、とても申し込みが多いので、自分は希望があるのだけれども、借りられないだろうということで、口先だけで話して、形式的な申し込みをしなかったものもずいぶんあると思いますから、そういう意味の潜在的な申し込みまで加えますと、この割合というのはぐっと下ってくると思いますけれども、これはちょっと数字のとりょうがございませんので、一応この数字で御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/21
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022・山口シヅエ
○山口(シ)委員 今のお話によりますと、福祉事務所で母子相談員の仕事は相当多忙であると考えさせられます。と同時に先ほど来の、貸してもらいたいと思う者に貸し付けられていない、いわゆる必要である母子家族に貸し付けられていない。この問題は私は、あなたの御答弁以外にもう一つ問題があるのではないかと思います。それはこういうような法律は非常に啓蒙宣伝が必要だと思います。すなわちPRがもっと徹底することが大きな問題じゃないかと思います。そこで私はこの際に、これら相談員の増員を要求するとともに、PRに対する徹底的対策を一つ講じていただきたい、これをお願いいたしておきます。ただいまのPRについて御意見がありましたら、ちょっと漏らしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/22
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023・高田浩運
○高田(浩)政府委員 確かにお話のように、PRが大事であることは申すまでもございませんし、現実まだ不徹底な向きが多分にあることは、私どももこれは事実として認めざるを得ないと思います。これはやはり役所もそうでございますし、社会も一緒になりましてその辺のところを積み上げていかなければならぬと思うのでございます。毎年母子家庭を明るくする運動でありますとか、そういった一連の運動等につきましては、役所の方も積極的に協力いたしまして、その趣旨の徹底に少しでもプラスになるように努力しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/23
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024・山口シヅエ
○山口(シ)委員 それでは次にお伺いいたしますことは、今回の一部改正の中に生業資金が五万円から十万円に引き上げられました。これは非常に喜ばしいことなんでございますが、この増額されました理由を伺うと同時に、この母子福祉の貸付資金の大部分を生業資金が占めている。これは私の方の調べでございましたが、約四五・七%を生業資金で占めてしまっている。こういうことになりますと、もう半額を占めているという状態になります。この上この資金が十万円に引き上げられるということになりますと、この生業資金のワクがずっと広がってしまって、結論としてどういうことになるかと申しますと、貸し付けられる対象のワクが狭められていく、こう私自身は考えるのでございますけれども、当局の方の考えを一つお漏らし願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/24
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025・高田浩運
○高田(浩)政府委員 五万円から十万円に引き上げられました理由は、実はお手元に法律案についての参考資料を差し上げてございますが、それの二十二ページ以下に大体こういう仕事をするのにはこの程度の資金が必要だ。これはこれ自体きわめてラフな調べでございますから基準にはならないと思いますけれども、一応の感じはここに出ておると思うのであります。五万円ではきわめて乏しい仕事しかできないということに従来の実績上なっておりますので、その辺を考慮して十万円に引き上げたわけでございますけれども、しかし申すまでもなくすべて十万円貸し付けるという意味ではございませんので、たとえば従来六万円必要な場合は五万円どまりでありましたのに、そういったものも可能になるということでございまして、一躍貸付額が従来の二倍になるというふうには単純には考えられないわけでございます。これが一つ。
それから資金別の貸付状況は、これはお話のように二十八年からの数字をとってみますと、生業資金が約四五・七%を占めておるわけであります。しかし趨勢としてみると生業資金の方は漸次率は下って参っております。たとえば三十一年について見ますと、全体一の三一%になっているわけであります。これはこの法律の趣旨からいたしまして、生業資金的なものが中心をなす、言いかえれば相当な割合を占めるということはこれは当然の帰結であろうと思います。そういうことで今後もこの法律の運用については生業資金には相当重点を置いて参りたいということについてはこれは当然のことでございます。そこで全体の資金のワクがそう大してふえないのに五万円を十万円にすれば一人頭の金額はふえるかもしれないけれども、貸付の対象の人間は減るじゃないか、これはお話の通りの理屈になると思います。ただ五万円から十万円に、すなわち二倍になったから人間も半分になる、そういうようには実は私ども考えないわけで、十万円に引き上げましたけれども、五万円よりもちょっとオーバーするという程度の者ももちろんございますので、金額か同じだとすれば確かに人数はある程度減るという勘定にはなると思いますけれども、その辺は今申し上げたような点を考慮して今後とも善処をして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/25
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026・山口シヅエ
○山口(シ)委員 この表を拝見して、表に表わしてある商売に対する資金額というものは非常に内輪であるような気がいたします。現在この程度の資金ではとうていこれらの商目元は開業できないのではないか。これは常識でそう考えられるのではないかと思います。そこで多くの母子家族の話を聞いても、五万円は拝借できてもあと数万円の金はどこからか無理をしてこなければならないということで、せっかく安い利子で長期にわたる貸付をしていただいても、結局プラス、マイナス同じようなことになってしまうという声を強く聞きます。そういうことからおそらく当局としても最高十万円という引き上げをなさったのだろう、こう考えております。そういう声が強いことを考え合せますと、もう必ずといっていいほど最高十万円の申し出がふえてくるのではないかと予想いたします。こういう程度の貸付が率として非常に多いのだ、この程度のものは比較的少いのだというようなはっきりしたデータがそこにございますならば、私も今の当局の御答弁に対して納得いたします。しかし先ほどのお話でも、今回の予算は多分に感じによってこれらの額が決定されたような感を強くさせられますものですから、今の最後の御答弁に対しましてはより以上の確答をいただかないと少々打ち切りにくいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/26
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027・高田浩運
○高田(浩)政府委員 この表に書いてあります仕事に対する資金の額は商工会議所等の資料を参考にして御提出を申し上げたような次第でございますけれども、店の規模もありますし、それから家とか土地からということになりますと、これは問題にならないようなわけで、もちろんそういうものを有するという前提で考えなければ、とてもこの資金程度では何ともならないことは言うまでもありません。従来生業資金の限度額は五万円になっておったわけでありますが、実際に生業資金として貸し付けられたものの平均額を見ますと、実績は三万円になっているわけであります。従ってこれから十万円に引き上げるわけでありますから、十万円に引き上げたあとの平均額が何万円に落ちつくかということは、今後の実績を見なければわからないわけでございますけれども、今の数字からも五万円から十万円に単純にはね上るというふうには断定できないと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/27
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028・山口シヅエ
○山口(シ)委員 一応それで納得いたしますが、先ほどの当局側の御答弁によりますと、予算は年々縮小されていっても返還率が非常によいから、この点はカバーされていくというようなことでございましたが、この資金に対する返還率というものは年々大体どういう状態になっておりますか、数字的に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/28
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029・高田浩運
○高田(浩)政府委員 数字で申し上げますと、二十八年が八一・五%、二十九年が八〇・五%、三十年が七三・六、三十一年が不確定でございますけれども六七%という数字になっております。こういうふうに償還率は漸次低下をしておりまして、私ども非常に心配をいたしております。ただ償還額のふえる要素は、今までの毎年の貸付総額というものが累積して参りますので、従ってこれに対する償還額というものは、期限が来ましたならば漸次返ってくるわけでありますから、貸付総額がふえれば、一定の期間がたてばその期間の総額はふえるということでございます。その意味で申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/29
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030・山口シヅエ
○山口(シ)委員 そうしますと少々おかしいのではないでしょうか。お話では予算か縮小されていく、返還か徐々に減りつつあるということでございますが、それでは貸付のワクがよほどふえていっておりますか、ともに貸付のワクも縮小されていっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/30
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031・高田浩運
○高田(浩)政府委員 結局二十八年から政府の方とそれから地方の方とが予算を計上いたしまして毎年々々貸し付けるわけですが、貸付額として累積をしていくわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/31
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032・山口シヅエ
○山口(シ)委員 そういたしますと累積していけばこういうような数字は出ていてもワクは広がっているということですね。貸付の数字は表に出ておりましたでしょうか。質問がこまかくなってしまってすみませんけれども、よく知りたいと思うので、一つ調べて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/32
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033・高田浩運
○高田(浩)政府委員 資料の十九ページでございますか、そこに二十八年から都道府県繰入額、国庫貸付額、それから合計額がずっと出ているわけであります。それからその次のページに資金別の二十八年から三十一年までの状況が出ているわけであります。従ってたとえば十九ページの表でごらんになりますように、二十八年は十三億五千万円というものが貸付財源であり、これが貸し付けられておったわけであります。ところが三十一年までになりますと結局三十三億という金が財源として使われておる、これが全部貸し付けられておる、そういうことになるわけでありますし、かてて加えてその途中において償還をされましたものが同時にまたダブッて貸付になるわけでございますから、貸付総額というものは約四十億になっておるわけでございます。従ってその総金額はふえますから償還の率が多少下りましても償還の総額というものは漸次ふえて参る、そういうふうに御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/33
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034・山口シヅエ
○山口(シ)委員 ただいまの御説明でよく納得いたしました。しかし最後にお願いいたしておきたいことは、こうして漸次ワクは広がりつつあるようには思いますが、母子世帯の中で生活保護を受けておる世帯の率、並びにボーダ・ーライン以上の母子家庭の率から見ますとまだまだこの程度の対策ではとうてい法律の趣旨は徹底しない、私はこう考えるのでございます。そこで政府は常に福祉国家の建設をよく主張しておるのでございますから、ぜひ逆の方向に向って進まないように、皆様方の御協力によりましてより以上これらの法律の完全なる趣旨の実現に努力していただきたいと考えております。
それからこの種の貸付に対しまして、私は利子の問題に少しく希望を持っているものでざいます。でき得るならば利子は免税であってほしいと考えているものでございますけれども、利子に対する免税につきまして御当局はどういう御意見をお持ちになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/34
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035・高田浩運
○高田(浩)政府委員 利子は御承知のように年三分でございまして、一般の市中金融に比べますとずいぶん低い額になっているわけであります。貸付でございますからある程度の利子はつけた方がいいのではないか、貸付金の性質上その方がいいのではないか、かように考えております。
なお実額という点から申しましても、この資金は普通の債権者と債務者との関係と違いまして、結局債務者が返した金は別の母子家庭に貸し付けられるわけでありますから、この資金総量がふえることは母子家庭全部が潤うわけでございますから、従って適正な資金総量の増額は、この資金のやりくりという点からすれば最も母子家庭の福祉に役立つわけでございます。そういう点も考慮いたしまして、全然ないよりもこの程度の利子は、やはりあった方がいいのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/35
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036・山口シヅエ
○山口(シ)委員 最後に、いろいろの種類の貸付資金があることと思いますけれども、比較的婦人は借りた金の返還に対して誠実さを持っているものではないかと考えているものでございます。そのほかの資金関係から見まして、母子家庭の返還の率は割合としてはいいものでしょうか。それとも婦人であるからといって別に返還の率がいいものとは言い切れないか。その点を最後に一つお伺いいたしまして、質問を終らせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/36
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037・高田浩運
○高田(浩)政府委員 ほかの資金との比較は、それぞれの数字のとり方や何かが違いますために、なかなか単純に比較はできないと思うのでございますけれども、たとえば世帯更生資金についてみますと、昭和三十一年の三月末現在での償還率が七二・四%ということになっております。従ってそれに比べますと、こちらの方がちょっと償還率がいい、償還の成績がいいということになるわけでございます。ほかのこういった庶民金融に比べますと、決してこの償還の率は劣っているどころか、いい方だと考えております。ただもちろん先ほど来申し上げておりますように、この償還された金額は、同時にほかの母子家庭に貸し付けられるわけでございますから、いいのはますます成績をよくして、なるべくたくさんの母子家庭にこの資金を貸し付けられ、潤うように私たちも努力をして参りたいと思いますし、また母子家庭の皆様方もその辺のところをよくお心得いただいて努力していただいているものと理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/37
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038・山口シヅエ
○山口(シ)委員 ありがとうございました。終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/38
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039・森山欽司
○森山委員長 滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/39
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040・滝井義高
○滝井委員 少し根本的なことをもう一回聞いておきたいのですが、戦争が終ってから日本に二つの特徴が現われてきましたが、一つは非常に伝染病が減ってきたということ、一つは離婚がふえたということなんです。現在私どもが母子の問題を解決しようとするならば、やはりその根本的な母子の生まれる原因は突きとめておくことが必要じゃないかという感じがするのです。そうすると厚生白書なんかを調べてみましても、あるいは本日いただいたこの母子世帯の調査結果の報告書を見てみましても、未亡人になるという形態が戦災とか戦病死というものがだんだん比重が少くなって、そして離婚によるものが多くなってきておるという、こういう形態が出てきつつあるわけですね。こういう根本的な問題が母子問題を解決する上に一つ横たわっている。そしていま一つは、だんだん人口の上に男女のアンバランスが、特に生産年令人口において出てきているということですね。その形が未亡人とそれから鰥夫、男の方のやもめと言いますか、それとの間を比較してみますと、厚生白書あたりの統計を見ても十五才から六十四才までの年令層で、女子の方の配偶者を失った者は三百二十八万で、男子側は七十四万と、四分の一そこそこしかないという、こういう人口上から生まれてくる基本的な母子の問題というもの、二つの側面があると思うのです。そうしますと、出てきた母子家庭を、困っておれば金を貸してあげましょうとか、あるいは子供が学校に行けなければ行く金を貸しましょうということだけでは、これはやはり根本的な問題の解決には少し政策として足らぬ、何か欠けているところがある、不足しているところがあるという感じがするのですが、こういう根本的な点について一体厚生省としてはどういうお考えを持たれておるのか、それを、その根本的なところを一つ御説明願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/40
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041・高田浩運
○高田(浩)政府委員 今お話がございましたように、差し上げてございます母子世帯の調査の十四ページに、原因別の母子世帯の分析が出ております。そこに三十一年と二十七年の比較がしてございます。その中にごらんになりますように、死別のうちの戦傷病死は二十七年に三三・五%を占めておりましたのが二四・二%に落ち、それから次のまん中辺の離婚という欄についてごらん願いますと、七・六%でございましたのが一四・六%、約二倍にはね上るというような状況でございます。それからお話のように男女の人口のアンバランスないし男女の平均寿命という点からすれば、女性の方が四才ほど多いし、逆に結婚年令という点から見ますと、従来の概念でいっても四、五才は女の方が若いということからしまして、これは必然的にいわゆる母子世帯といいますか未亡人というものがふえる、そういう必然性を持っているということか言えるわけでございます。そういった現象に対して厚生省としてどう対処するかということでございまするが、これは非常に重大な問題でございまするし、もちろん母子福祉資金の貸付等でその辺のところを全部カバーするわけに参らぬことは言うまでもございませんが、そういったような今後の現象に対処しての母子年金でありあるいは国民年金の問題でありまするから、そういった問題が論議せられる一つの原因もあるのではないかと思われますし、厚生省としてもその辺を十分検討を進めていっているような一つの客観的な根拠があるわけじゃないだろうか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/41
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042・滝井義高
○滝井委員 母子世帯の発生の原因がだんだん戦争ということからそうなるのでなくて、何か一つの社会的なあるいは家庭的なものに変ってきているし、人口の問題からいっても相当の根本的な変化が起っている。その解決はやはり国民年金の中における母子年金というようなもので解決しなければならぬということは、私も実はそういう感じがいろいろ——この法案そのものはちょっと見ると、何かこう大して重要な法案でないような感じがするのですが、だんだんこの法案を見つめていってみると、どうもその底流にはやはりもはや母子福祉資金というようなものでは、ちゃちと言っては語弊があるが、一つの小さな流れでは解決できないものが現在現われてきつつある、そういう底流が見えるという感じが非常にしてき始めたんです。しからば国民年金は一体どうするんだというと、これはなかなか局長さん御答弁できないだろうと思うのです。いずれこれは私は、明後日には大臣も出てこられるそうでありまするから、もう少し、こういう厚生行政がもはや当面してある程度の壁にぶち当ったのをそれを破っていくためにはどうすればいいかという問題が、こういう小さな法案だと言われているものの中にもう根本的に現われてき始めたという点は非常にやはり重大な点ではないかと思う。そこでそういう根本的な問題を解決していくためには、もちろん一つ一つの問題が積み上げられていって初めて一つ一つの小さな問題が解決せられ、その解決の上に根本的な問題の解決の糸口を見出すことになるだろうと思いますが、このいただいた資料を私見て、二十三ページを見てみますと、この社会保険——年金と言わんよりは社会保険ですね、これに対する加入の状態を見ても半分程度しか社会保険の恩典に浴していないのですね。四四・九%というものは何ら加入をしていない、こういう形。もちろん困ったところには医療の資金の貸付が行われるとかあるいは生活保護があるわけでしょうが、こういうところにも年金にいく前に片づけなければならない問題が横たわっているという感じなんです。この前もちょっと言ったのですが、年金々々と言うとみんな年金々々と言い始める。そうして、一番取り組んでおった足元の結核対策とか皆保険というものが忘れられて、年金だということになる。非常に経済力の少い現在の日本においては、年金がそう二夜に生まれるというわけにはいかぬだろうと思うのです。そうすると、やはりどうしてもじみちな一つ一つの問題を積み上げていく以外にないのですが、母子世帯で社会保険に加入するという道は現在ほとんど開かれてないとすれば、その人が就職をする以外にない。ところが、母子世帯を恒久的な雇用労働者として雇うところというのは非常に少いのです。そうすると、臨時的な非常勤的なものになってしまう。それで保険がない。国民健康保険は、まだなかなか全国的に普及されていない。二千四、五百万も残っている。特に大都市に残っておるということになると、これらの母子の諸君というものは社会保険の恩典にもなかなか浴せないという問題、これはやはり一つの年金の問題に入っていくためにも片づけておかなければならぬ問題だと思うのです。こういう点は具体的な調査で数字にはっきり現われてきているのですが、こういう点は児童局の方では保険局やその他いろいろお話し合いをされておると思いますが、どういうことでこれを推進されようとしておるのか。百万世帯をこえる母子世帯——これは年令の取り方によっていろいろ違ってくると思いますが、とにかくさいぜんの御説明でも百十五万世帯、その五、六十万のものは何ら保険の恩典もないのだ、こういうことなんです。こういう点は一体どうお考えになっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/42
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043・高田浩運
○高田(浩)政府委員 社会保険の加入状況は、今お話の通りの数字でございます。これを一般の状況と比べると、やはりこちらの方が相当落ちているというふうに考えられます。そういうようなこともございまして、母子世帯等の集まりの機会には必ずといっていいほど保険の普及と申しますか、皆保険の実施ということが強く叫ばれておったわけでございます。私どももそういう意味において、厚生省全体が国民皆保険の推進に、皆様方の御協力を得て努力をしておるような状況でございますので、それを全般的な立場に立って努力をいたしますと同時に、しかしそれもきょう、あすというわけには参らないところもあるわけでございますので、一面においては社会局で行なっておりますところの医療資金の貸付の制度を活用して、その辺のある程度のつなぎをつける。そういうふうに、両々相待ってやって参りたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/43
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044・滝井義高
○滝井委員 社会保険の問題も、一つ保険局まかせということではなくして、そういう側面的な必要性というものを児童局の方からもぜひ推進を、していただかなければならぬと思います。
それから次は、同じく根本的な問題の解決として、局長が御答弁をされた年金の問題ですが、やはり同じページにも出ているように、現在年金関係の恩給とかというようなものを含めたいわゆる年金を受けておる人々は、母子世帯の中で三割一分くらい占めておるわけです。この一世帯の平均が三万九千五百七十円となっておるわけですが、この状態を見ますと、遺族年金かほとんど大部分なんです。それで次第に戦病死、あるいは戦災死というものがなくなって、離婚を中心とする未亡人が出て参るということになると、この年金で生活をささえていく比率というものがぐっと下ってくるわけです。これはおそらく数年を出でずして下ってくることは確実です。というのは、遺児年金は十八才なり二十才になれば恩給、公務扶助料はもらえなくなる。遺族はだんだんおじいさんやら何かなくなっていくということになると、もらえる機会が少くなるということで、だんだん比率は少くなっていくと思うのです。そうしますと、こういう面からも貸付の率が向上してくる面が出てくると思いますが、しかし何といっても生活を根本的にささえるとするならば、やはりそういう面から大体離婚というものが非常に未亡人を作る状態が出てくるとするならば、年金問題を根本的に考えなければならぬ点が出てくると思う。年金問題というのは、今まで主として厚生省の企画室か保険局にまかしておればということであったのですが、こういう社会保険とか年金という面を、もう少し社会局なり児童局の方からも積極的にやる。推進して一つの力を結集していかなければ、とても今の日本の保守党の政府のもとではできぬということなんです。これはキャッチ・フレーズとしては出るかもしれないけれども、ほんとうの政策は出てこない。何かのお茶にごしで終ってしまうということなんです。これはやはり真実の声を遠慮なくあなた方の方からあけていただきたいということなんです。そういうことを要望して一応これで質問を打ち切っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/44
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045・山口シヅエ
○山口(シ)委員 先ほどの母子福祉の質問の継続のような形になりますが、一つ当局の方の御意見を伺いたいと思うのです。御承知のように、今回売春防止の法律が実施されるに当りまして、売春婦の中には子供を大ぜいかかえてこれを業としているという種の女性も多いのじゃないかと私は考えております。こういう人たちの中には、子供たちのために一日も早く正業について更生したいという意欲に燃えている人も私は必ずあると思います。そこで、こういう人たちが一たび生業につきたいと思いますときに、やはり頭に浮んでくるものは母子福祉資金の法律だろうと思うのですが、こういうことでそういう種の母親の申し出というものが今後ふえていくんじゃないかということが考えられるのですが、当局のお考えを一つお漏らしを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/45
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046・高田浩運
○高田(浩)政府委員 母子福祉資金の貸付の規模は先ほど来お話し申し上げておりますように、実際貸付決定を見たものに比べましていわゆる潜在的な希望者を加えますとこれは相当多いわけであります。全体がとにかく百十五万の母子世帯でございますので、今のお話のような立場の人たちがそのうちのどのくらいの割合を占めておりますか、パーセンテージとしては私はそう多くはないと思いますけれども、結局潜在的あるいは顕在的な貸付の申し込みの量というものは、今後そう急激に減るということはもちろん考えられませんが、大数としては、そう急激にふえまして今までと全然違った考え方をしていかなければやっていけない、そういう状況にはならないと思います。今お話しの点も十分今後実施運営上考えていかなければならない点だと思いますので、そういう点を私ども考えまして実施に万全を期していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/46
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047・山口シヅエ
○山口(シ)委員 それから母子家族の就職の問題でございますが、先ほども滝井委員から御質問かございましたが、日々母子家族の就職が非常に困難になっていっておるようでございます。たまたま運よく就職ができたとしても、母子家族であるということかむしろ一つの理由になりますと同時に、差し迫ったこの人たちの生活状況がむしろこの人たちには悪い条件に相なりまして、賃金は言うまでもなく最低のものでございますし、しかも雇う方は零細な家内工業、いわゆる中小企業でも零細といってもよろしい程度の家内工業、しかも臨時で不必要になればもういやおうなしに断わってしまうというような、まことに気の毒な状態のもとに働いているお母様方が大へん多いようでございます。この人たちが何によって救われておるかと申しますと、やはりこういう低い賃金ではありながら、母子寮に入れてもらっているために何とか生活を営んでいけるということで、非常に母子寮のありがたさが身にしみているようでございます。そこで私は母子家族のために母子寮の問題が非常に大きな問題ではないかと考えさせられておりますが、当局のお考えはいかがでございましょうか、この際一緒に一つ御答弁を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/47
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048・高田浩運
○高田(浩)政府委員 母子家庭の就職の問題は、今お話しのように母の方の就職の問題と子供の方の就職の問題と両方ございます。子供の方の就職の問題につきましては、これば主管官庁であります労働省に非常に力を入れていただきまして、一ころいろいろ世間に意見がございましたが、非常に状態が改善されまして、今日の状態ではほかの者の就職の率に比べて決して劣らない、そういうように私ども承知をいたしておりますし、現に身元保証につきましても、今数県の県においてその条例をこしらえ、あるいは二十数県におきまして母子後援会等私的な団体によって身元保証をするというふうに、社会のあたたかい援護がなされまして向上をいたしておるのでございます。母の方の就職についても、同じように努力が払われておりますけれども、何しろ今お話しのように条件がいろいろむずかしい点がございますし、その結果が、先ほど申し上げましたように、現金収入が一般的に見ますと一万円以下の者が約半数近くというような現状になっております。そういう数字に現われているのだろうと思います。これらの母子の就職の問題については、今後とも主管官庁であります労働省と協力いたしまして努力をいたして参りたいと思います。それから母子寮の問題につきましては全くお話しの通りでございまして、これの拡充それから内容の充実ということについては従来とも努力をして参りました。今後ともその線で進みたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/48
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049・山口シヅエ
○山口(シ)委員 それでは熱意を持ちましてその目的を推進すべく御努力を願いたいと存じます。お願いたしておきます。終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/49
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050・堂森芳夫
○堂森委員 時間もおそくなりましたから、二、三の点について局長にお尋ねしたいと思います。
先日の予算の第二分科会において局長に少しお尋ねをいたしましたが、全国の母子世帯の方々から多数の陳情がきておるのでございます。その内容はいろいろございますが、従来五万円であったものが十万円になる、これは非常にいいことでありますが、しかしあなた方がお作りになった白書を見ましても、昭和二十八年度にはあるいは二十九年度、三十年度を見ましても、申し込み人員に対して実際に貸し付けられた人たちはもちろん十分に貸付が行われていない、こういうことがこうした数字を見ましても明らかでございます。そこで母子家庭で強く希望しておることは、何とかして団体としての貸付をお考え願えないか、こういう希望がございますが、先日の質問に当りまして局長は、貸し付けた人たちか返しにくい、返済が困難だ、こういうときに限って何か団体のようなものを作って返済ができるようにあっせんをしよう、こういうような答弁であった、そして団体としての貸付ということは今のところ考えていない、こういうような答弁であったと思いますが、この法律がほんとうに十分その所期の目的を達するためには、何か貸付の方法について考え直していかないと、私は所期の目的がほんとうに達せられぬのではないか、こう思いますが、局長はいかがお考えでございますか、御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/50
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051・高田浩運
○高田(浩)政府委員 団体を組んで貸付を受けて、たとえばある事業を始めるということは考えられることでございます。実際問題としては、結局この法律それ自体か母子家庭個々の自立と生活意欲の助長ということを念としております点から見ますと、一がいに団体貸付をオープンに認めるということについては、いろいろ疑義もあると私どもは考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、従来からずっと個人貸付という立て方をとっておるわけでございます。しかし実際問題としては、今お話しのように、一緒に仕事をやる、一人の資金では足りないという場合があることは、当然考えられることでございますので、その辺のところは実は運用によりましてその実を上げるように私どもは努めておるわけでございます。しからば制度的に団体貸付をオープンに認めるかということにつきましては、やはり慎重な考慮を要するのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/51
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052・堂森芳夫
○堂森委員 団体を対象として貸し付けていくときにいろいろな弊害が起きるのではないか、こういうような答弁のように思いますが、どんな弊害が起きますか。非常にむずかしい答弁になりますが、例をあげて御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/52
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053・高田浩運
○高田(浩)政府委員 これは今お話しのようになかなかむずかしい問題で、一がいには申し得ないと思いますけれども、やはり団体を組んでということになりますと、一部の者が結局経営の中心となっていくということになるわけでございますし、そうするとそこにほかの世帯が勤める勤めない、あるいは直接経営には参加しないで収益で云々というような問題も起ってくると思いますけれども、そういったいろいろな形態を考えてみますと、この法律は一つ一つの母子家庭の福祉の向上ということを念としておるのでありまして、事業それ自体を念としているというよりむしろ前者の方でございますので、その辺のところは一がいに口の先ではなかなか御説明できない面もありますけれども、大体の様子は、私らよりもむしろ先生方の方がよく御存じだと思います。そういうわけで、これはいろいろむずかしい問題がございますので、具体的に事例を検討いたしまして、運用によって善処をして参りたいかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/53
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054・堂森芳夫
○堂森委員 そうしますると、あくまで法律としては個人貸付であるが、事情によっては運用の妙を得てやっていこう、こういうわけでございますね。しからばそのように地方へもよく通達してございますか。今後、やっていかれますか。その点一つ念を押しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/54
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055・高田浩運
○高田(浩)政府委員 大いにやれという通牒は出しませんけれども、そういうことで指導をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/55
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056・堂森芳夫
○堂森委員 時間もありませんから、もう一つ、局長の答弁ではありません、意見を聞いておきたいと思います。
この法律ができましたのは、たしか昭和二十七年の十二月であったかと思います。私もこの法律を作るときに、直接審議に当って知っておるわけですが、この法律はいわば過渡的な、弥縫的な法律として、きわめて不満足であるが、こういう法律を通して糊塗しよう、こういうことであったと思うのです。母子世帯対策としては抜本的な対策が必要であるが、とりあえず、こういうことだったと思います。さっき滝井君の質問の中にも、今日ではこのような法律ではいかぬのじゃないか、きわめて微温的なものである、こういうような質問があったようでございます。私も全く同感でありまして、一つ本腰を入れて母子福祉のためのもっと大きな、総合的な法律、こういうものが早く実現段階にいかなければならぬ時期が来ておるのじゃないか。厚生省の白書を見ても、二十才未満の母子家庭が百五十万ある、こういうことも昭和三十一年の調査ではわかっておる。しかもこの半数は生活困窮者である。非常に重大な問題があるわけでありまして、一段の勇猛心をもって、かつてわれわれが過渡的な弥縫的な法律として考えた貸付法というものを、もっと発展さしていかなければならぬ、こう思いますが、局長はいかにお考えでございますか、御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/56
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057・高田浩運
○高田(浩)政府委員 この法律の誕生は、あるいはお話の通りであったかもしれませんが、誕生して後におきましては、間に合せというよりも、むしろこれか母子福祉の中核体となって、このために母子世帯は非常に喜んでおりますし、それから事実この資金の貸付を受けて更生いたしまして、あるいは生活保護から抜け出て、いわゆる一本立ちになった者の数というものは、非常に多いわけでございます。そういう意味におきまして、これは月足らずで生まれたのかもしれませんけれども、生まれた後はすくすくと育って役に立っている、私どもはかように考えております。従って、今後もこの法律の充実と、それから実際の運営につきましては、私ども万全の努力を払っていかなければならぬ、かように考えております。しかし、もちろんこれで母子世帯の問題を全部カバーできるかというと、それはそういうわけでなく、住宅の問題でありますとか、あるいは農地の問題でありますとか、これは法律になるものもあるしならぬものもありますけれども、まだいろいろ問題がございます。これらについては、総合的に一つ一つ解決をしていくという努力を、私ども怠ってはならないと思います。また現実一つ一つ解決の緒を見出して進んでいるような状況でございます。
そういう意味において、母子福祉全体の問題を解決して参りたいと思っておりますし、特に先般来この委員会においても、山下先生初め滝井先生、あるいは堂森先生、植村先生等から、年金の問題を非常に強く御意見が出されたのでございますが、これらについては、私ども十分今後とも努力をして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/57
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058・森山欽司
○森山委員長 他に御質疑はありませんか。——御質疑もないようでありますから、本案についての質疑はひとまず終了したものと認めます。
本日の質疑はこの程度にとどめ、次会は明二十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後、零時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X00919580219/58
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