1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十三年三月一日(土曜日)
午後零時三十九分開議
出席委員
委員長 森山 欽司君
理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君
理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君
理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君
小川 半次君 大橋 武夫君
久野 忠治君 草野一郎平君
倉石 忠雄君 小林 郁君
田子 一民君 中山 マサ君
福田 赳夫君 藤枝 泉介君
山下 春江君 亘 四郎君
中原 健次君 山花 秀雄君
吉川 兼光君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 堀木 鎌三君
出席政府委員
厚生政務次官 米田 吉盛君
厚生事務官
(大臣官房長) 太宰 博邦君
厚 生 技 官
(公衆衛生局
長) 山口 正義君
厚生事務官
(医務局長) 小澤 龍君
厚生事務官
(社会局長) 安田 巖君
厚生事務官
(保険局長) 高田 正巳君
厚生事務官
(引揚援護局
長) 河野 鎮雄君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
—————————————
三月一日
委員亀山孝一君及び古川丈吉君辞任につき、そ
の補欠として久野忠治君及び藤枝泉介君が議長
の指名で委員に選任された。
—————————————
二月二十八日
職業訓練制度確立に関する請願(田中武夫君紹
介)(第一一七六号)
同(櫻内義雄君紹介)(第一二一六号)
同(徳安實藏君紹介)(第一二七五号)
同(渡海元三郎君紹介)(第一三一七号)
引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願
(田中武夫君紹介)(第一一七七号)
同(山下榮二君紹介)(第一一七八号)
同(菅野和太郎君紹介)(第一二一四号)
同(灘尾弘吉君紹介)(第一二一五号)
同(五島虎雄君紹介)(第一二三三号)
同(山口丈太郎君紹介)(第一二三四号)
同(重政誠之君紹介)(第一二六三号)
同(久保田鶴松君紹介)(第一二六四号)
同(淵上房太郎君紹介)(第一二六五号)
失業対策事業等に関する請願(西村力弥君紹
介)(第一一七九号)
同(河野正君紹介)(第一二七七号)
衛生検査技術者の身分法制定に関する請願(荻
野豊平君紹介)(第一二一一号)
同(柳田秀一君紹介)(第一二六六号)
同(田中伊三次君紹介)(第一三一四号)
同(小川半次君紹介)(第一三一五号)
同(八田貞義君紹介)(第一三一六号)
医業類似行為既存業者の業務存続に関する請願
(簡牛凡夫君紹介)(第一二一二号)
同(木村文男君紹介)(第一二一三号)
同(中居英太郎君紹介)(第一二二九号)
同(西尾末廣君紹介)(第一二三〇号)
同(杉山元治郎君紹介)(第一二三一号)
同(森島守人君紹介)(第一二三二号)
同(植木庚子郎君紹介)(第一二六七号)
同(小澤佐重喜君紹介)(第一二六八号)
同(志賀健次郎君紹介)(第一二六九号)
同(田中利勝君紹介)(第一二七〇号)
同外二件(田中正巳君紹介)(第一二七一号)
同(藤本捨助君紹介)(第一二七二号)
同(水谷長三郎君紹介)(第一二七三号)
同(山本猛夫君紹介)(第一二七四号)
同(大平正芳君紹介)(第一三〇八号)
同(周東英雄君紹介)(第一三〇九号)
同(田村元君紹介)(第一三一〇号)
同(野田卯一君紹介)(第一三一一号)
同(堀内一雄君紹介)(第一三一二号)
労働者災害補償保険法の一部改正に関する請願
(渡邊良夫君紹介)(第一二一七号)
理学的治療業者の身分確立に関する請願外一件
(河野金昇君紹介)(第一二七六号)
旧満州国日系軍官及び生徒の遺族援護に関する
請願(堀内一雄君紹介)(第一三一三号)
高齢者に杖贈与の請願(八田貞義君紹介)(第
一三一八号)
高齢者の医療に関する請願(八田貞義君紹介)
(第一三一九号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第九五号)
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一〇三号)
厚生行政に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/0
-
001・森山欽司
○森山委員長 これより会議を開きます。
去る二十二日付託されました内閣提出の戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び二十六日付託されました内閣提出の日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案を一括議題とし、審査に入ります。まず、政府より趣旨の説明を聴取することといたします。堀木厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/1
-
002・堀木鎌三
○堀木国務大臣 ただいま議題になりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
戦傷病者及び戦没者遺族の援護に関しましては、昭和二十七年に戦傷病者戦没者遺族等援護法が制定されて、障害年金、遺族年金等の支給の道が開かれ、次いでその翌年からは、恩給法の改正により、軍人にかかる傷病恩給、公務扶助料も支給されることとなり、また未帰還者留守家族等援護法により、留守家族等に対する援護が強化されましたことは、すでに御承知のところであります。
しかしながら自後これらの年金、恩給等の受給者相互間の公平ないしは待遇の改善、法の対象に含まれていない者に対する措置等に関し、総合的に問題の全般を見きわめて適切な対策を立てることが強く要請されておりましたので、これにこたえ、昨年五月、これらの諸問題を調査審議するため臨時恩給等調査会が設置され、自来委員各位のきわめて熱心な検討が重ねられ、その結果が同年十一月十五日に内閣総理大臣に報告されたのであります。
政府におきましては、右の報告の趣旨にのっとり、戦傷病者、戦没者遺族、未帰還者留守家族等の処遇に関する諸条件につき措置するという基本方針を定め、その内容等に関し種々検討を重ねて参ったのでありますが、ここに諸般の調整を終り、別途本国会に提案されました恩給法等の一部を改正する法律案とあわせて戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を提案する運びになった次第であります。
以下、この法律案の概要について御説明いたしたいと存じます。
まず第一は恩給法において傷病恩給及び公務扶助料が増額されることに関連いたしまして、障害年金、障害一時金及び遺族年金並びに留守家族手当の額を増額いたしたことであります。すなわち障害年金につきましては、現在不具廃疾の程度に応じ、最高十八万一千円から最低二万二千円でありますのを、いわゆる介護手当及び家族加給を加えて最高二十八万七千五百円から最低一万九千円に、障害一時金につきましては、現行八万五千円から最低五万九千五百円でありますのを、最高十六万円から最低十一万二千円にそれぞれ増額いたし、また遺族年金につきましては、現行三万五千二百四十五円を五万一千円に増額し、留守家族手当につきましては、月額二千九百三十七円を四千二百五十円に増額いたしたのであります。なお、これらの増額は本年十月から実施することといたしましたが、第二款症及び第三款症の障害年金並びに障害一時金の増額は昭和三十四年七月からとし、また遺族年金及び留守家族手当につきましては、増額分全額の増額は昭和三十五年七月からとし、それまではその半額を増額することといたしたのであります。
第二は、被徴用者、動員学徒、戦闘参加者等いわゆる準軍属が置かれていた特殊の状態にかんがみ、その身体障害者及び遺族に対する処遇の改善をはかったことであります。これら準軍属が、当時国家権力により特定の労務に従い、あるいは陸海軍の要請により戦闘に参加する等により傷痍疾病を受け、ために身体に障害を残しまたは死亡した場合には、新たに障害年金または遺族給与金を支給する方途を講ずるとともに、更生医療の給付、補装具の支給及び国立保養所への収容の措置をもとることといたしたのであります。右の場合におきまして、障害年金の額は軍人軍属に支給する障害年金の半額とし、遺族給与金は一時金分割払いの趣旨に基いて年二万五千五百円を五年間にわたり支給することとし、支給の始期は昭和三十四年一月といたしました。
その第三は、戦傷病者戦没者遺族等援護法及び未帰還者留守家族等援護法の施行の結果等にかんがみ、戦傷病者戦没者の遺族等に対する援護の強化を期するため必要と認められる二、三の点につき、両法において所要の改正をいたしました。すなわち軍人の遺族で、事実婚にあった配偶者、同一戸籍外の父母等遺族年金の支給を受けている者に対し、同一の事由による公務扶助料の受給者がいなくなつた場合は、先順位者の遺族年金を支給する道を開き、未帰還者留守家族等援護法による療養の期間が近く満了する者について、その期間を二年間延長したこと等がその内容であります。
第四といたしましては、右の諸改正に伴いまして、関係法律の改正をいたしたのであります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
次に日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
日雇労働者健康保険は昭和二十九年に発足し、その後逐次給付内容の改善を行なって参りましたが、その内容はいまだ十分とは申しがたく、特に疾病保険として重要な要素である傷病手当金及び出産手当金の制度を欠いており、また療養給付の受給手続についても、煩に過ぎるきらいがあるのであります。一方、最近財政が非常に不健全な姿をとっているにもかかわらず、国庫負担の道もいまだ十分に確立されず、かつ保険料額の面においても最近の実情に合わない点もありまして、制度の内容及び運営について検討すべき点が少くないのであります。
このような実情にかんがみ、今回の改正は、本制度の健全な進展を期するため、制度の改善及び内容の充実をはかろうといたしたのであります。すなわち、この法律案に規定いたしてあります改正点は、第一に、傷病手当金及び出産手当金の制度を創設すること。第二に、療養の給付の受給手続の簡素化をはかること。第三に賃金日額の区分を変更し、保険料の額を若干引き上げること。第四に、医療給付費に対する国庫負担割合並びに傷病手当金及び出産手当金に対する国庫補助割合を明文化すること等であります。
以上がこの法律案を提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/2
-
003・森山欽司
○森山委員長 次に厚生行政一般について厚生大臣に対する質疑を続行いたします。八本一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/3
-
004・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣に厚生行政一般について御質問を申し上げたいと思います。厚生大臣の御病気で、厚生大臣に御質問申し上げるのがだいぶおそくなり、ほかの案件の関係で与党側から法案をあげるためにいろいろ審議を促進してほしいというような態度もございますので、十分にできないことは非常に残念なわけでございますが、その点で厚生大臣も作戦ではなしに、厚生大臣は前から率直に申されますけれども、お考えをすぱすぱと言っていただいて、時間内において私の質問の要を得るようにしていただきたいと思います。
最初に国民年金についてお伺いをいたしたいと思いますが、国民年金を政府の方でお考え始められたようでございます。これは前から与党の方では去年からやるというようなことを言っておられたが、これが延びた、ことしも延びて調査費しか出ていないというふうに非常におくらされている問題でございますが、非常に大事な問題でございます。その国民年金を与党の方でずるずる延ばしておられるわけでございますが、どういうわけで国民年金をやろうと考えておられるか、簡単に、ずばりとした御返事をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/4
-
005・堀木鎌三
○堀木国務大臣 私の承知いたしておりますところでは、私が参りまして三十二年度、三十三年度二カ年の準備期間を置くという方針であったので、その点については私変りないと思います。ただ要するに、生活保障としての国民年金制度というものが日本の近代国家として一つの福祉国家を作ろうというふうな考え方、生活を保障しようという憲法に基く考え方等からすれば、国民年金制度を創設するのは当然ではなかろうか。私の思想につきましてはその他の場合にも八木委員からしばしばお尋ねがありますから、簡単に申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/5
-
006・八木一男
○八木(一男)委員 憲法の条文に定まった、健康で文化的な最低生活を保障する、あの条文をほんとうに具体化しよう、そういうおつもりで、その一番最後の本命である国民年金をこれから考えよう、そういうお考えかと思いますが、それについていかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/6
-
007・堀木鎌三
○堀木国務大臣 もう、あえて私のお答えを申し上げる必要はないと思います。八木委員の意見と大体同じであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/7
-
008・八木一男
○八木(一男)委員 そうなりますと、政府の今度お考えになるべき国民年金制度は当然健康で文化的な最低生活を維持できる、そのようなものをお考えになられる御意思がなければいけないわけでございますが、それについてどういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/8
-
009・堀木鎌三
○堀木国務大臣 これは八木委員がよく御承知だと思うのですが、目標はそこにありましても、実際の問題に当っては、それは日本の経済的、社会的諸条件と遊離したものではありません。従って国の繁栄とともにそれらのものが内容的には充実して参るということでありますが、私どもの意図はなるべくそういうことを意図しつつ、しかも実施可能な案をさしあたり考えたい、こういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/9
-
010・八木一男
○八木(一男)委員 そこで最初の御決心がちょっとぐらついたように見えます。経済上、財政上のことでできる範囲——政府はいつもそう言われるわけでありますが、国民年金制度というものはほんとうに健康で文化的な最低生活を保障するものにしなければ、意味が半減じゃなくて、もうほとんどなくなるわけです。ちょっとしたお小づかい程度のものでは、国民年金制度の基本的な年金というものが完成するまでに、どういう案を作りましても相当の長年月を要するものであります。ですから今の与党のやり方、今の内閣のやり方に固着して考えて、スタートで非常に程度の低いものを考えられるということになりますと、結局その完成はおくれるわけであります。ですからスタートから与党としても内閣としても元気を出してやらなければならないと思うのですが、今の厚生大臣のお答えによるとそれだけの元気は見えない、勇気は見えないように思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/10
-
011・堀木鎌三
○堀木国務大臣 私も社会党の案も了承しておるわけであります。しかし現実にどこの国だって、私が言ったように国民生活の実態、経済を無視した年金制度はあり得ない。これはそうやればかえって破綻を来たすだけだ。しかしそれだからといってこういう制度をやります以上、レベル・ダウンしてこれでちょっぴりやって国民年金制度でございますというようなものができないことは明らかなのであります。だからおのずから最低限度についても年金制度をやる以上は考えなければならぬ、最高限度も考えなければならぬ、これは当然でなかろうか。私は理想としては高く持ちます。しかし政治は現実でありますから、現実を無視するわけには参らないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/11
-
012・八木一男
○八木(一男)委員 現実でございますという堀木さんの立場は一応認めるとしても、あの年金制度は基本的のものは将来において完成する。初めは支出はそうたくさん要りません。ですから現実は自民党の立場に立ってもこの二十年とか三十年、全部の見通しに立った現実でなければいけないので、ただことしの財政、ことしの内閣の財政の方針、来年の方針というような、今すぐ前のそれだけにとらわれてはこの年金制度はいけないわけであります。そういうことで考えていただかなければならないわけでございますが、年金制度については、普通の今の年金をちょっとかじっておる人は、年金制度は積立金方式でなければいけない。そうでなければ一般財政で、無醵出の分はそこでしぼり出した小さなものでなければできないというような考えに固着されておるように思います。ところが世の中の年金の趨勢は積立金方式から変ってきておる。賦課方式に世界中の年金の方式が変ってきておる。ところが日本の年金学者の頭はおくれております。はっきり言いますと非常に年金の権威者、社会保障の権威者と言われておる人たちもそういう点においておくれておると私は思う。学者ですからおくれておるから、お役所の方の考え方も、一般のちょっと関心を持っておられる方の考え方も非常におくれておる。ところが世界中は今のところ今までの積立金方式ではいけない、賦課方式を取り入れなければほんとうの年金がうまくいかないという情勢に移りつつある。今こまで作ったところはこれから変えるわけでありますからいいわけでありますが、これから作るときはそういう動静を見定めて積立金方式だけではなくして賦課方式を頭にたたき込んで、日本の現状としてどれが最もいかということを考うべきだと思うのでありますが、堀木厚生大臣の賦課方式に関する考え方を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/12
-
013・堀木鎌三
○堀木国務大臣 社会党の案も積立金方式を基本にして賦課方式を考えるということが書いてあるのですが、これらの問題を具体的に決定するのは——逃げ口上ではございません。私は社会党の案も調べておりますし、内閣の審議会の経過も調べておるのでありますが、しかしこれらについて具体的に今政府がこういう方式でこうだということを出す段階だとお思いにならないだろうと、私は八木さんもお考えになるだろうと思うのです。と申しますのはすでに内閣にある社会保障制度審議会も非常に精力的に急いで予定よりは早く出るような予定であります。私の方の五人委員会ももう実は早く出得るような状況になっておる。それには今申し上げたような、今御質問のような問題も討議され、検討されて出て参るという予想がつきますので、ここで私が政府としてはこうなんだと言ったら、何のために審議会を作って審議会の答申を早くお願いしている、最近の情勢にかんがみて早く出していただきたいということを私がお願いしているときに、私自身が政府の方針はこうですということはおかしい状況ではないか。ただいろいろな場合に応じての私どもの方の準備は審議の模様に照応いたしまして急いでおります。しかし各種の案について考えておる最中でございまして、まだそれについてはっきり打ち出すのは時期的にも適当でないし、またもう少し待てばそれらの点については明らかにする事態が来ると思いますので御猶予願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/13
-
014・八木一男
○八木(一男)委員 それではお伺いいたしますが、社会保障制度審議会の答申が出ましたときには、その通りおやりになる御決心がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/14
-
015・堀木鎌三
○堀木国務大臣 実は相当連絡を緊密にいたしております。私の方も経過をよく見定めて準備をいたしておりますが、これは国家財政を扱う内閣としてその通り無条件にやりますというふうに申し上げることはできないが、私の従来の行動をごらん願えば、できるだけ答申を最大限に尊重してそれに努力いたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/15
-
016・八木一男
○八木(一男)委員 社会保障制度審議会の今までの勧告が完全に尊重された例は非常に少い。それは非常にいけないことです。この前の国会で神田厚生大臣のいる前に岸さんに来ていただきまして、岸さんから十分に尊重するという御確約を得ているわけです。尊重という言葉は社会保障制度審議会が社会保障を進めようという意図の通りに尊重するということであって、あそこの勧告なり答申なりよりも上回ったことを政府が考えたりやったら社会保障制度審議会は一つも文句は言わないのです。皆さん方はそれをいつも値切ったりおくらしたり、一部分だけ取り上げて、勝手なところだけを取り上げたりするから非常に困る、ほんとうに尊重していないというわけです。社会保障制度審議会の言う通り今までやっていられないですから、それよりもよくする分にはやられてもちっとも差しつかえないわけです。そういう意味で今賦課方式のことを聞いている。社会保障制度審議会を値切ろうという下心がある。堀木さんはそういうことがなくても、大蔵省の方がなかなか壁が強いからそうさせざるを得ないので、今から警戒しておかなければならないというような考え方で答弁をしておられるけれども、そういうことじゃなしに答申を待つという考え方、答申の通りに必ずやるということになってもらわなければならないと思う。答申以上にやってもちっとも差しつかえないわけです。そういう意味で国民年金という大事な問題を厚生大臣みずからが——どっちみち国民年金の提案をなさるのは厚生省からなさるでしょうから、社会保障制度審議会以上に勉強されてもいいし、もっと進歩した考え方を持たれてもいいし、ちっとも差しつかえないわけです。その意味で今の賦課方式のことについて厚生大臣の御所信を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/16
-
017・堀木鎌三
○堀木国務大臣 私としては、今から財政上の都合でいろいろ考慮して、何と申しますか、お聞きになるあなたから見ると意欲のないように、非常に熱意を欠いているような答弁にお受け取りになるようでありますが、実は私みずからが先ほど申し上げましたように最近は藤林小委員長にもお目にかかって、すでにわれわれ自身の準備態勢というものを照応いたしたいということで行っておりますし、私の方の五人委員の長沼委員長にも数回お会いしてお打ち合せをしているというふうなことでございますので、国民年金制度を創設いたします以上は、その制度を創設した趣旨はどうしても貫きたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/17
-
018・八木一男
○八木(一男)委員 どうしてもおっしゃっていただけないから、それじゃ賦課方式というものはどういう効能があるとお考えですか。いいとか悪いとかいうことじゃなしに、それだけでけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/18
-
019・堀木鎌三
○堀木国務大臣 賦課方式については、もう少し検討しなくちゃ私はわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/19
-
020・八木一男
○八木(一男)委員 それでは非常に弱輩で恐縮でございますが、賦課方式の効能をちょっと申し上げて、御意見をただしたいと思います。学問的なことを言ったってしょうがないから、ほんとうに具体的なことを申します。結局賦課方式は年金支払いが出たそのときに負担する。これを一般財政で負担するか、特別財政で負担するかは別といたしまして、そういうことです。ですから後代に支出の責任を譲るわけです。それが非常に大事な問題でございまして、結局今の老人とか、今の母子家庭とか、今の身体障害者、その人たちをほっておくことはできない。今まで社会保障とか、所得保障とか、生活保障が欠けておったわけですから、それは当然やらなければなりません。今無醵出の年金をやりましたならば、今の時代が負担をしなければなりません。今まで歴代の内閣がなまけてやっていなかったのですから、今の時代が負担しなければなりません。そうすると、今の時代は、積立金方式でやりますると、自分の用意もしなければなりません。そうして自分たちの親たちや、自分たちの時代の不幸な方のためにも出さなければならないということになる。ですからその意味では二重負担になる。ですから二重負担はしよう、するけれども、負担にたえないから、少しにしようということになって、国民年金も将来の基本的な年金も減ってしまうおそれがある。そういう積立金の考え方に固着しておる限りそういうことになるのです。社会保障制度審議会の学者連の言っておることも、そういう積立金方式の考えに固着した——まだ進歩的でない学者もたくさんいます。それでああいうような、新聞にときどき漏れておるようなくだらない、進歩的でない案が出ておりますけれども、あれはほんとうに確定した案じゃありません。そして結局そのためにほんとうに割り切れば、老人にも母子家庭にも身体障害者にも今要るものをだんと作る。それは今の時代の人が今の税金でこれを背負う。しかし今は貧富の差があるから、今の時代は今の金持ちからたくさんとって、貧乏人には負担をかけないようにして、今の時代でこれを持つという考え方に割り切れば、今度今の時代の人たちが老人になったときに、今の身体の丈夫な人が身体障害者になったときに、未亡人でない人が未亡人になったときに、そのときはその時代の者が持つという考え方に割り切れば、両方とも大きくできる。それを今までのつまらない社会保険概念——社会保険なんていうものは、保険料を出せる人が自分たちの用意をするだけで、保険料を出すだけの収入をあげていない、非常に政治の貧困からしわ寄せを食っておる人にとっては、社会保険方式では完全にいかないのですよ、保険料の負担能力がないから。それで、そういう今までの社会保険の概念、積立金概念、そういうものにとらわれておっては、日本のほんとうの社会保障制度を完成するとか、福祉国家を作るとかいうようなことはできないのです。ですから、割り切らなければいけないのです。学者々々と言われますけれども、学者の中にもそう進歩的でない人もいますし、また現実々々といって、今の政府の財政方式が金科玉条であって、そのワクの中からほかのものをへずってひねり出さなければならないというような固着した考えを持っておる学者もあります。しかし学者の中にもりっぱな人もいますから、それは十分尊重していただかなければなりませんけれども、その中でもっとほんとうは公約をして、社会保障に熱心であり、福祉国家に熱心であり、貧乏追放に熱心である内閣は、学者より以上に進歩的な考え方を持って、この既成概念のワクを破って、そういう問題を完成しようという意欲を持っておられなければならないと思いまするし、そのおもな担当者である厚生大臣は、当然そういう意欲を持っておられなければならないと思う。ところが厚生大臣は賦課方式については、先ほど礼儀を正していろいろ伺ったののですけれども、お答えがない。私は弱輩でなまいきのようでありますが、推察申し上げたならば、賦課方式についての御検討はあまりしておられないと思う。厚生大臣しかりで、ほかの方方もそうだと思う。しかしこれは日本全体の趨勢だから、厚生大臣がどうとか、とやかく申しません。しかしそういうような情勢なんです。ですからこれからでも、賦課方式というものはどういう効能があるかということを考えていだたいて、そして社会保障制度審議会の勧告がよければよい。その通りやる。それを下げるということは断じて許されないけれども、それよりもよくするという意欲で厚生省も取っ組まれなければならぬと思うのです。五人委員会がいかに考えても、厚生大臣がこういう方式があるではないか、それをなぜ考えないか。それを考えたらもっと問題が展開するじゃないかということを五人委員会に言ってごらんなさい。厚生大臣がそれだけの熱心さを示せば、五人委員会でもほんとうの観点に立って考え直すでしょう。そういうことを一つ考えていただきたいと思う。それを一つお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/20
-
021・堀木鎌三
○堀木国務大臣 私の仄聞しておりますところによりますと、単純な積立方式だけで、醵出による年金制度だけを今のところ考えてはいないように思われるのです。無醵出年金もあわせて執行しなくちゃならないという考え方で進んでいるのでなかろうか、今おっしゃいましたような、母子でありますとか、あるいは身体廃疾者でありますとか、現在の老齢者といったものについての対策をあわせて講じなければいけない、こういうふうな考え方でお進みになっているように、私は了承いたしております。私ども自身も単純に醵出制の年金制度を創設しようというようなことだけで済ますわけには、全体を眺めてみてできない。問題がある。こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/21
-
022・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣まじめに御答弁になっておられますけれども、問題の焦点がちょっとぼけているのです。無醵出制をとることは、当然今の老人、今の母子家庭、今の身体障害者に、これはだれが考えてもとらなければならない。老人にはそんな保険の負担能力はない。これは厚生大臣がお考えになるのもそうだし、五人委員会でも、社会保障制度審議会でも、だれが考えてもそうだ。それをよくするためには、その負担を現代のゼネレーションが負わなければならない。だから自分の用意をすると、二重の用意をしなければならないから、結局憶病になって、今の無醵出年金も低いところにとどめておこう、年令もおそい方にとどめておこうということになってしまう。
〔委員長退席、植村委員長代理着
席〕
それで自分たちの用意も十分な健康で文化的な生活を用意するのじゃなくて、それの半分とか三分の一くらいなことになってしまう。その厚い壁をぶち破るためには、今の老人なり母子家庭なり身体障害者なりに対して全部十分なものをわれわれが持つ。われわれは次の時代の子供たち総体に持たせるという考え方に割り切れば、その問題は大きく解決がつくのです。ところが社会保障学者や社会保険研究家は、今までの既成概念にとらわれて、それを打破する勇気が非常に乏しい。だから厚生大臣がこの問題を考えて、そういう問題もあるじゃないかと打ち出していただけば、彼らも考えます。彼らだって学者だからほんとうに考えれば、そういう考え方がいいということがわかる。ところが政府はなかなか動かないだろう、そういったら困るだろうというような遠慮が学者にはあるのです。ですから厚生大臣自身がそういう強い厚い壁をぶち破るためには、いろいろな難点はあるけれども、それが厚い壁をぶち破る一つの大きな方法であるということを頭の中に入れて、そういう示唆をされる必要があると思う。無醵出年金は当然作らなければならぬ。その問題とは違うのです。ですからその賦課方式の問題についてお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/22
-
023・堀木鎌三
○堀木国務大臣 違うことは私も実は了承しているのです。私が社会党の案も見ているというのは——社会党にはそういう賦課方式というものを考えるような一項目があります。でありますから、それにつきましては決して関心がないわけではない。ことにきょうの予算委員会におきまして、代表質問の人が、これらの問題について相談する用意があるかといわれるくらいなんです。しかしまだ具体的に、あなたの言われるようにこの方式をとりますとはどうも言えません。それはもう八木さんだっておわかりになると思う。よく研究はいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/23
-
024・八木一男
○八木(一男)委員 われわれも一ぺんに今の時代から理想的な社会に合せられないと思いますから、日本社会党の案は積立金方式と賦課方式の折半方式であります。従って将来の五割国庫負担方式ということに、具体的にいうとなるわけです。ですから五割国庫負担方式ということになりますから、基本年金の額を引き上げられる。将来の五割国庫負担方式でありますから、これは現在の財政には関係がないのです。特に申し上げておきたいことは、厚生大臣がその御認識を高めていただいて、方々で社会党の案は夢のようであるという批判がありますが、これは無理解か無知からきたものであります。将来の五割国庫負担方式であるから、現在の財政には関係がない。それは特に厚生省において認識を高めていただいて、社会党の案は研究不足のまま、夢のような案であるというような間違った考え方が世の中に浸透されて、そうして社会保障の前進がはばまれることがないように、一つ厚生大臣もよくこの問題を考えておいていただきたいと思います。よけいな問題であるかもしれないけれども、与党の方々もそれは頭に入れておいていただきたいと思います。
その次に結核問題についてお伺いをいたします。結核問題については厚生省は今度案を持っておられたけれどもだいぶへずられたそうでございますが、非常に結核の問題の推進がおくれております。何といいますか、今度の予算の上っているのは、ちょっとしかふえていない。しかも、結核治療費に対するものはわずか三億か四億しかふえていない。ふえている部分の大部分は療養所の経営費というような点ですね。結核の予防の方でなく治療の方で拡大するのは三億か四億。ところが社会保障制度審議会の医療保障勧告では、その問題に少くとも三百億以上つぎ込んで結核を撲滅しなければならないという答申を一昨年出しておる。昨年岸総理大臣はそれを尊重すると言った。ことしは間に合わなかったけれども来年は尊重するということを言った。それにもかかわらずことしは全然その頭も出しておらない。そういうことは厚生大臣として重大な責任だと思いますが、どうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/24
-
025・堀木鎌三
○堀木国務大臣 今の国民の現状から見まして、結核対策は私は非常に大切なことだ思います。ぜひこれについて従来の範疇のを脱した根本的な対策を講じたいという考え方をここで申し上げたつもりでございます。ただ、不幸にいたしまして予算編成に当りましては、各種の解決しなければならぬ重要な問題があって、結核問題の解決に至らなかったことは、私は残念だと思っております。しかし、それだから進歩しなかったかとおっしゃれば、予防の面も治療の面も進歩をしている。私八木さんに申し上げたいのは、年金問題でも私の方は社会党とも相談しろとおっしやれば——ああいう、単純におれたちだけの考え方がいいのだという考え方では物事は相談にならないわけであります。相談していく以上は、やはりお互いの主張を謙虚に聞きつつ、そうしてそれを調整して政治の上に表わして一歩でも前進するということでなければ共通の場ができてこないのではないか。その点は、非常に八木さんのおっしゃることは確かだが、最後に教えてやるからとおっしゃらなくても、社会党の意見も尊重します。むろん私は反対党だからといって、その意見を尊重しないということは決してないし、ことに社会保障関係の経費の問題につきましては、特にそういう態度で参りたいと考えておるのですが、結核対策につきまして、現状のやり方のうちの従来懸案になっていた部門を解決して、そして現状のやり方でもって効率的な対策を講ずるという点しか満足にすることができなかったことはこれは率直に申して私も残念に存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/25
-
026・八木一男
○八木(一男)委員 結核問題で厚生大臣ががんばられたことも私は知っております。知っておりますけれども、厚生大臣が壁に突き当ってつぶれてしまった。がんばられた内容は非常に不十分なものです。社会保険の方は結核の医療の拡大に入れてない。ちびっとしたもので十分だとはいえない。一生懸命がんばられたことはわかっております。厚生大臣に申し上げたいことは、答申の勧告を尊重するということは岸信介君が言われた。ですから厚生大臣がほんとうに真剣に、熱心に大蔵省に当っておられるのならいいけれども、総理大臣みずから約束したことですから、総理大臣なら大蔵大臣をがんと押えられるはずですので、それだけに首根っこをつかまえて、あの約束はどうしてくれるということを厚生大臣は言われていい。一萬田さんをどんなにぎゅうぎゅうやってもいい。内閣の首班は、実力はどうか知らないけれども、岸信介君です。岸信介君が約束されたことは、大蔵大臣が何と説明しても、やらしてしかるべきだ。そういう点で厚生大臣が一人で苦労しておられる。厚生大臣も内閣の閣員であるが、そういう勇気が足りなかったのじゃないですか、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/26
-
027・堀木鎌三
○堀木国務大臣 何も私予算の折衡は一萬田大蔵大臣だけと交渉しているのではございません。むろん総理自身及びその他の者とも相談し、そうして推進しているわけでございます。ただ推進役は私自身が当るのでありますから、その点の責任は十分感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/27
-
028・八木一男
○八木(一男)委員 結核の十年間——五年間で半減計画ということで、今度出された御熱意はわかります。非常に大事な問題でございます。というのは、結核をなくする方法は、もうすでに外科的にも、科学療法でもその他の方法でも医学的には完成している。ところがそれができないのは経済的な問題で、社会保険が貧乏であるとか、あるいは個人経済が貧乏であるとか、そういう問題でそのままの状態が続いているわけです。これはどうしても結核医療費の全額国庫負担、社会保険関係の指導をやることによって、社会保険の会計も楽になりますし、そういうことをやっていかなければならぬと思う。全額国庫負担まで踏み切れないとおっしゃるかもしれないけれども、そういうことをやらなければ結核は減りません。結局今まで国民病に毎年相当の支出をやっていた。ところがそれを撲滅してしまえば、将来の財政支出がなくなるわけです。そうなれば大蔵大臣としては楽なわけです。冷酷な財政面だけの考え方で見ても、ほんとうに大きな財政計画をすれば、結核撲滅のために今何百億円の金を、ここ五年か十年の間に出して撲滅した方が、長期の財政計画から見たらいいのです。ところが一萬田君はそういうことがわからぬらしい。わからないからああいうふうに厚生省の原案をへずらしてくる。これをわからせることをほんとうに熱心にやられたら、できるんじゃないか。一萬国君がわからなくても、岸君に言われて、岸君がほんとうにそういうことを考えられるなら、そういうことはできるはずだと思う。御努力になったことは認めますけれども、これは来年につぶれてしまったら大へんであります。来年は出さなければいけないし、しかもああいうことは社会保険に関係がないということではいけない、八割というようなことではいけない、全額というようなことでやっていただかなければいけないと考えます。その点についての御決意を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/28
-
029・堀木鎌三
○堀木国務大臣 八木さんと私との間は、結局精神はちっとも変っていないのです。今おっしゃるようなことは、もう十分私は各方面に言って歩いた。結核対策を講ずることは何も結核患者の治療だけでなしに、社会自身の防衛の面から見ても、将来の財政内面から見ましても、決して不得策でない。単純なそろばんからだけでも損じゃないのだ。ただ御承知の通りに、率直に言ってそう申し上げては悪いのですが、今年度の予算の基本的なものは、日本の経済の調整過程というものが基本になっております。各種の物価すら押えて参ります。結核は、これは八木さんもいつも言われるように、一年々々で解決する問題じゃありません。常に努力を重ねなければならない。だから社会保障制度審議会の御答申の旨を受けて、病床も大体予定通りできる。しかしそれは一挙にはできないということもありますし、いろいろな問題が実例としてあげ得るのですが、私としては厚生大臣であります限りは結核問題の対策と取っ組んでいく、これは若いときからの私の素志でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/29
-
030・八木一男
○八木(一男)委員 時間がありませんで、ほかに申し上げたいことがありますから、大体結核の問題をこれで残念ながらお預けにして、後にまた追及しなければならないわけですが、結局結核のために本腰になっていただく。そうして今年大蔵省当局に突っぱねられたからといって、腰を折られないというようなことをぜひ考えていただきたいと思います。
それからもう一つ、社会保険に対する国庫負担、これはずいぶん岡本君や滝井君が言っていますから、ここでこまかいことは申しません。社会保障制度審議会の医療保障勧告は、あそこの国庫負担だけ言っているのではない。結核に対する治療費を全部出せ、その分を社会保険の会計からはずすべしということを言っているわけです。ですからあそこで言うている国民健康保険に対する三割、あるいはまた健康保険に対する二割というような国庫負担は、結核医療費をはずした場合においては、実質上五割とか六割になるべきものなんだ。ところが国民健康保険ではわずかにちびっと、二割の平均にする、調整金をちょっと出すというようなことをしておられる。健康保険の方は三十億円でやるものを十億円に減らしている。あの三十億出すときに政府は何と言ったか、会計が苦しいから政府の方も一生懸命出します、被保険者は、その前に保険料を上げたのに、一部持ってもらいたい、お医者さんも、非常に困っているというけれども、その点もがまんしてもらいたい、大岡裁判のようなことを言っていて、ことし見たら政府の方はちびっと——保険料は下げよう、一部負担は撤回しようということはしない。とんでもない話です。
もう一つ医療費の単価の値上げの問題でありますが、この問題は被保険者の負担との関係もございますけれども、お医者さんの場合、普通に言われている状態とは私は違うと思う。お医者さんというのは相当高級技術者です。夜中に起きたりなんかして、これは重労働です。東芝あたりの高級技術者が夜中に重労働した場合には、相当の高級をはみます。だから隣と比べて、よさそうだからもう少しがまんしていいという理屈は成り立たない。やはりお医者さんがそれだけの経営なり、生活なり、保障を得て、そうして十分に医療に邁進する態勢を作らなければ、医療保険はその面でやっていけない点があるわけです。といってそれを被保険者にかぶしてもらったらとんでもないことです。またその分だけ国庫負担で上げて、その分だけで済むということはとんでもないことです。被保険者の——たとえば健康保険や日雇保険の家族は五割しか給付がない。これは当然七割、八割、将来は十割までしてもらわなければならぬ。それには結核医療費の全額を別の方で持って、そうしてこれ自体の、社会保険に対する国庫負担額を上げて、それから被保険者の給付率を上げる、国民健康保険の給付率を上げる、それから健康保険等の家族の給付率を上げる、一部負担をやめる、保険給付の負担になったものを下げる、そういうこと。それからもう一つ医師の方の待遇を十分なものにして、十分社会保険に対する協力ができるような態勢を作る。今の八・六五というようなちびっとしたものではなしに、そういうことを十分考えることが必要なんです。一つ一つ厚生大臣を困らす問題であることは知っております。しかしこれはどうしても全部の面からやっていただかなければなりません。その点で一つぜひ勇気を出してやっていただくことをお願いいたしたいわけでありますが、総括的にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/30
-
031・堀木鎌三
○堀木国務大臣 八木さんの御趣旨、私も知らないわけじゃないのです。結核の問題を保険から独立さしてやれということは、社会保障制度審議会でも出ておるわけです。またわれわれの方も、最初の案はそういう趣旨に従った案も考えておった。同時に従来厚生省が、結核だけでも、考えておりましたのが十カ年で半減、私は五カ年で半減しなければいけないというふうに期間も縮めて参った。不幸にして結果を見ないんだから幾ら言っても始まりませんが、その点は申しわけありませんが、先ほど申し上げた通りであります。それから各種保険に対する国庫の負担を、社会保障的な一環としての健康保険である以上、国ができるだけ負担して、たとい保険形式といっても、国の負担の割合が多くて国民の負担が軽減される、そうして国民から非常に魅力を感じられるようなものでありたいということを私念願いたしております。今回ちょっぴりだ、ちょっぴりだとおっしゃるけれども、これだって何年か懸案になった問題なんです。一年で未解決になっていただけでないのでありますから、私としては長い間の懸案だけは解決したい、こういう気持で当ったわけです。
〔植村委員長代理退席、田中正委員長代理着席〕
必ずしも十分でないことは御指摘の通りであります。しかし少くとも何年間も解決されなかった問題に解決の道をつけたという気だけはあるのであります。今後とも、決して現状をもって満足して参るつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/31
-
032・八木一男
○八木(一男)委員 今厚生大臣の御熱意を伺って、私は今までの厚生大臣では堀木さんは非常にいい大臣だと思いますので、元気を出してもっともっと元気を出してやってもらなくちゃいかぬと思うんですけれども、しかし厚生大臣、全部をほめるわけじゃなくて、ずいぶん悪いこともあります。
これからその点について申し上げますが、日雇労働者健康保険法の案件が上ったときに細目にわたって申し上げますけれども、実は社会保険審議会で答申が出たことは、もう大臣十分御承知の通りです。社会保障制度審議会から答申が出たことも十分御承知の通りです。社会保障制度審議会の答申は、従来の例によったような文案になっておりますけれども、答申の内容を全部認めて、そのほかに急速に国庫負担を増額しなければならないというものをつけ加えたものです。ところがきょうの提案説明を見ますると、その両方の答申が出てからそういう答申の趣旨に従った内容に書いて出してきておられない。前から社会保険審議会とか社会保障制度審議会の答申を尊重すると口をすっぱくするほど、そのときは何回も伺っておる。今度もそれを尊重しておられない。それではいけないと思うんです。この問題は法規できまって、尊重しなければならないというのは、社会保険審議会の答申は厚生大臣が責任を持たれるわけです。社会保障制度審議会の答申は内閣総理大臣が責任を持たなければならない。そういう問題ですから、この答申に従って、その間に法案を書いて出されるのが至当だと思いますが、ごく一部何かいじくられたようでございますが、ほとんどその内容が通っておらない。ですからこれを撤回して手直しをして出していただきたいと思いますが、それについていかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/32
-
033・堀木鎌三
○堀木国務大臣 今あなたと私と話していることは、終始現実の問題の解決——理想と申しすまか、達成しようとすることについては異議はない。同じことなんです。ただ財政上の都合から、按配するときに結局現実の問題として目的を達成しなかったということなんであります。特にこの問題につきましては、率直にいえば予算がとれるかとれないかすらも危い状態だった。私は従来の経緯に顧みて、どうしても傷病手当金を解決したいという考え方から極力努力いたしました。そういう関係もありまして、実は予算的に一応考えができ上ってから答申をちょうだいするようなことになったものですから、そのワク内でできるだけの努力はいたしたということであって、この点につきましては今後ともなお努力はいたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/33
-
034・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣、お伺いしたいんですが、この問題で内閣総理大臣は動かれましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/34
-
035・堀木鎌三
○堀木国務大臣 八木さん、済みませんが、私も厚生大臣をしているんですから、そう何でもかんでも総理大臣と相談はしません。私の責任においてものをきめて参ることもあり得るということは十分お考え願いたいと思い発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/35
-
036・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣の責任感ということは非常にけっこうなことだと思います。厚生大臣が責任感に忠実であられるということは私も知っておるのです。今までの厚生大臣で一番いい厚生大臣だと思っております。だけれども、厚生大臣が必死になって大蔵省に交渉されても、社会保険審議会や社会保障制度審議会の答申をいれるところまで至らなかった。大蔵省はそれだけ壁が厚いのです。堀木さんにやっていただけば僕らは何も文句はないのです。堀木さんが一生懸命やったけれども、壁に突きはねられて、ごく一部のものが変っただけで、大部分のものが勧告の通りいっていない。堀木さんが総理大臣であったらいいと思うんですが、残念ながら堀木さんは総理大臣ではございません。社会保障制度審議会の勧告は総理大臣を縛るものですから、総理大臣を動かし、大蔵大臣を動かすのも一つの方法だと思う。堀木さんが自分の責任でやられるのは、やっていただいたらけっこうですけれども、それができなかったら、総理大臣を駆使し叱咤してそういう方に持っていかれなければならない。それで予算面でどれだけ変りがあったか。予算面ではほんのちょっとしか変りがない。厚生大臣があれだけ熱心にやられても、大蔵省というものは残念ながらそれだけ壁が厚いのです。誠実な厚生大臣も壁を突き切れないのであります。私どもは、厚生大臣を信頼しないわけではないけれども、総理大臣を動かして大蔵省の壁を突き破っていただきたいということを申し上げているのです。今からでも総理大臣を使って、そうして壁を突き破って——社会保険審議会や社会保障制度審議会の答申を尊重すると言っておられるのですから、そのようになるようにしていただきたいと思いますが、それについてはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/36
-
037・堀木鎌三
○堀木国務大臣 私法案を出しました以上は、私自身の責任において処置するほかはないと思っております。今さら、ただいま御説明いたしました法案を変えて提出するつもりはございません。しかしこれは八木さんもよく御承知であって、ことにこの問題については、もうほんとうに創設のときからの方であって、私自身もそのときにあなたの説得にあったわけです。ですからこの両手当の問題がいかに困難に逢着したかということは、少しはお認め願ってもいいと思う。しかし何もほめていただかなくてもようございます。私自身が厚生大臣である以上は、いろいろ足らざるをお責めになることはけっこうだと思います。また私自身それによって反省もいたしますが、しかしこの問題を出し直すつもりはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/37
-
038・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣は責任上そう言われますけれども、とにかく、厚生行政の面でよりよくしたいという御信念を持っておられるということは、御返事を伺わなくても私はそう信じたいし、信じていいと思う。ですから官制上の責任でそう申されますけれども、内閣自体が今の既定方針であっても、今の方針になってしまっておっても、それがよりよくなるものであれば、それを変えられることは、岸内閣としてこれはいいことです。一度態度がきまっておっても、それをよりよくなさる努力は、厚生省の態度がきまっておってもいいと思う。またそれを支持なさる与党としても、もっと一生懸命になって少しはよくなるという努力をされることはいいことだと思う。ですから私は、厚生大臣がきめられたことを、それが直ったとか変ったとかいうことで追及することは、それは非常に形式論だと思う。厚生大臣が、今までの交渉の段階において、そういう案を出されても、さらに厚生行政を進めるためによくしようということをされることは、りっぱなことであって、面子を捨てて実際を進めるということは、一番りっぱなことだと思う。厚生省自体としても、内閣自体としても、与党の方々としても、そうされることが、ほんとうにりっぱな内閣なり、りっぱな厚生大臣なり、りっぱな大与党としての矜恃を示されることになると思う。そういう点でもう一回考えていただきたいと思います。その点で出し直せということについての御返事は今のところではむずかしいと思いまするが、これを直す努力、これは厚生省が中心でありますが、内閣全体、たとえばこれを直す権限は議会が持っておりますから、与野党とも御相談をしてやって参らなければならないことでございますが、それについてもやはり主任大臣の御協力がある方が非常にいいことになるわけです。その点でおっしゃりにくい点もあると思いますが、これをよくすることについて協力する。よくなることについて表向きは言えないけれども、そういうつもりだ、そういう精神だという意思を表明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/38
-
039・堀木鎌三
○堀木国務大臣 むろん私は日雇い健康保険につきましても現状で満足はいたしておりません。今度の予算のバランスをごらん願ってもわかると思うのです。実際のところ組合の二億ですらあれだけの問題を起しておる。日雇い健康保険について多くの赤字を出しておる。普通の政府の考えなら赤字を埋めるだけであります。そのときに長い間の懸案の傷病手当を創設するというふうなことをこの調整過程の予算から獲得して参りますのに、私はどれだけ苦労したかわからない。これは政治家として私が長い間抱懐していた考えだから特に重点を置いて解決したい、こう思ったので、この所要の経費からごらん願っても、組合員の員数からお考えになっても、この問題は出し直せとおっしゃっても私は出し直しません。それはもう無理です。だから今後のチャンスを待たなくちゃとてもできるものではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/39
-
040・田中正巳
○田中(正)委員長代理 八木委員に申し上げます。予算委員会より大臣に出席の要求がきておりますので、簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/40
-
041・八木一男
○八木(一男)委員 予算委員会優先のような状態が今出ていますけれども、そういうことじゃいけないのです。この厚生行政については社会労働委員会が優先であって、予算委員会で厚生大臣にちょっとしか質問しないのに、そこにくぎづけするというやり方は間違っておる。出席要求がきても断わって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/41
-
042・田中正巳
○田中(正)委員長代理 では結論を急いで下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/42
-
043・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣にこれ以上申し上げても立場上無理かと思いますが、とにかく私どもはこれを直すために最善の努力をしたいと思いますので、厚生大臣に今御答弁を求めると問題が厄介になりますから、その気持を十分に体得せられまして、一つお願いしたいわけでございますが、特に日雇い健康保険で私のけしからぬと思う点を一点だけ申し上げておきます。
というのは保険料値上げで傷病手当金を創設するというのは前から言っていたことです。そのときの常識としては、保険料値上げをしないで傷病手当金を創設するというのが常識になっておった。ところが今度は国庫負担を出すけれども保険料も値上げをする、そういうことが課題なんです。その次に保険料値上げ分が傷病手当金に見合っているかと思ったら、そうではなしに傷病手当金と保険料値上の金額と違っている。保険料値上げは傷病手当金以外に将来に赤字が出るだろうから、財政をよくしていこうなんということになっている。それはとんでもないおかしなことなんです。これは厚生大臣首をかしげておられるけれども、予算を見るとそうです。保険料値上げで入る分と傷病手当で出す分とは明らかに数字が違っておる。ですから結局差の部分は改悪になる。制度として傷病手当金創設は前進ですよ。しかしながらその中の会計を見ますると、それが見合っていなくて、今までよりも保険料がふえて、給付がふえていない部分がある。ところがそれは財政上でしようがないと厚生省はよく言われる。ところがこの財政上のしようがない理由は何か。これは厚生省によく考えていただいて大蔵省や労働省に交渉していただきたい。自由労働者の就労日数が足りないのです。足りないから一日分の保険料を値上げしても、出てくるのは少いのです。全国二十五日の就労日数にしてごらんなさい、保険料の値上げなんかしなくたって十分財政のバランスが合う。
〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕
厚生大臣は労働省にかんかんになってどなり込んでよいのです。そうすれば保険料値上げをしないでこの財政は余るのです。それで国庫負担分だけは十分に給付をすることができる。厚生大臣は厚生省のワクで考えていられるからいけない。労働省にも大蔵省にも大げんかを申し込まれることが、この日雇い労働者健康保険をよくする一つのゆえんであると思う。そういうことで一つ強気にやっていただきたいと思う。そういう点についての強気はあまりまだ見られない。御熱心なことは認められるけれども、そのことも考えていただいて、この法案について出し直せということの御返事を伺うのは無理ですけれども、この法案をよくすることについて、与党の熱心な方々とともに私ども一生懸命やりますから、よく御配慮を願いたいということで、日雇い健康保険の問題は将来に譲ります。
最後に総括的に予算の問題を二、三伺います。厚生問題はすべて予算に関係がございます。厚生大臣は一生懸命やっておられると言われるけれども、ことしの厚生省の予算は五%しかふえておりません。政府の総予算は十五%ふえておるが厚生省の予算は五%しかふえていない。それで社会保障を前進するというのはとんでもない空手形でインチキだということになる、ほかの予算と同じ率でふえたって、それでは普通にふえただけで社会保障は全然前進になっていませんよ。それが逆に三分の一になっておる、しかもそれが去年の予算と比べて全体の予算がふえただけふえていない。ほかから持ってきた費用をそっくり入れて、それを入れた数字でも全体のふえた比率になっていない。それをはずしたら去年の全体の予算の上り方よりも厚生省の社会保障関係の上り方がずっと少い、その少いのをもとにして考えて、ことし埋め合せをしてもらわなければならぬから、ことしは全体が一五%なら四〇%ぐらいふやしてもらわなければ埋め合せがつかない。全体が十五%ふえているのにたった五%しかふえていない。これでは厚生行政や社会保障の逆行です。大蔵省は去年をもとにしてそれで全部査定する、厚生大臣も僕らの言うようなことは大蔵省に言っておられるでしょうけれども、去年をもとにして査定する。それで何とかかんとか言って、全体で一五%ふえたのに、厚生省は五%しかふえていない。岸内閣では貧乏の追放と言っておるけれども、この点では逆行、逆行、逆行をやっているわけです。厚生大臣は貧乏の追放に熱心なことはわかっているのでありますが、ほんとうにそこまでいっていない。これは厚生大臣が悪いとは言いません。岸内閣全体が悪いと思う。私どもは野党だけれども、今政権をとっているのは岸内閣なんですから、その岸内閣によくなってもらいたい。残念ながらわれわれは小数党で今政権をとって駆使することができない。今岸内閣が言っていることと違ったことをされては、貧乏人や病気の人やその関係の世話をする人はほんとうにたまったものではない、言っていることと全然逆の方向を示しておる。この点で厚生大臣は重大な決心を持って内閣で大げんかをしてもらいたい。ほんとうに辞表をたたきつける決心でやってもらわなければいけないと思う。御熱心なことは十分認めます。前の大臣やその前の大臣よりもずっと熱心なことは認めます。しかし今の情勢は貧乏人や病気の人はそんなことを待っていられない、その間に首をつる人もあれば、その間に死ぬ人もあるのですから、大臣が今までの大臣よりもよい、そんなことでがまんできない。堀木さんだけのことを考えれば、今までによくやっていただいたことをお礼を申し上げたい。しかし国の政治の情勢はそうではない。社会保障はそんなに無視してはいけない。逆行してはいけない。そういう情勢ですから、あえて面を冒して厚生大臣に強いことを言わなければならぬ、そのことで厚生大臣ももっと強くなっていただかなければならぬのですが、ほんとうに命がけでやっていただきたいと思いますが、その御決意を伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/43
-
044・堀木鎌三
○堀木国務大臣 私何も厚生大臣をやめることは朝飯前だと思っているのです。私に大した影響はないのです。しかし私が厚生大臣をしている方が国民のためになると思うから、ほんとうはがまんしてやっている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/44
-
045・八木一男
○八木(一男)委員 それは認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/45
-
046・堀木鎌三
○堀木国務大臣 だから、そういうつもりでやっているだけなのです。それでは私が辞表を出したらよくなるのかといったら、今のような結論からならよくならないはずなのです。だから、私はやめませんと同時に、できるだけ御趣旨に沿うように今後努力をいたします。ただ辞表をたたきつけて、怒りつけたから物事が進む場合もあるでしょうし、また進まぬ場合もありましょう。それはそのときによって、いろいろな方法によって、私自身が最善を尽すよりほかない、こう考えております。御期待に沿うようにはできるだけ努力いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/46
-
047・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣の御決意を伺って、非常にけっこうだと思います。ところで、厚生大臣のバック・アップをわれわれはしなければならない。そのことで総理大臣のことを申し上げたり、労働大臣のことを申し上げた。この点で厚生大臣はこれだけほんとうに決心を持ってやられるのですから、厚生省のセクショナリズムなどということはないと思いますが、そうじゃなしに、厚生省がやろうとするならば、労働省にも交渉しなければならない、大蔵省にも交渉しなければならない、従って意思を通すためには内閣総理大臣にも交渉しなければならないということになりますので、うちできめたから、内閣に対する狭い意味の責任をとるというふうにかたくなにならないで、どんな立場になっても社会保障が前進するという立場でやっていただきたいと思うわけです。厚生大臣のいろいろのこれからの御推進を特に期待して、一応この御質問をやめるようにいたしたいと思いまするが、どうかしっかりやっていただきたいと思います。
それで、委員長にお願いしたいのですが、今お聞きのような状態でございまするので、社会保障を進めるためには、厚生大臣のほかに、やはり厚生行政に直接関連のある問題については、内閣総理大臣なり労働大臣なり関係大臣を引っぱり出して、そこで意見を聞き、また申し上げて、そして推進しなければならないことが多いわけです。その意味で、これからいろいろなことがございまして、労働行政の点でも同じですが、厚生行政の点で内閣総理大臣なり大蔵大臣を呼び出すときには必ず呼び出していただくというふうにお願いをいたしておきます。
私の質問を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/47
-
048・森山欽司
○森山委員長 植村武一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/48
-
049・植村武一
○植村委員 厚生大臣はお急ぎのようでありますから、簡単に質問をいたします。
要点はわが国のガンに対する対策いかん、こういうことなのです。御承知の通り、結核の問題は抗生物質なり外科手術によってよほど死亡率は低くなっております。現在一番高いのは高血圧症といわれますが、次はガン腫であると私は承知いたしておるのであります。それほど高い死亡率で、しかもそのガン腫の原因がいまだに判明しない、ガン腫の原因が判明しないから、予防法も従ってわからない。こういうようなガンの対策について、国は一体どのくらいの熱意を持ってガン撲滅に精進されようとしているのか。これをまず厚生大臣に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/49
-
050・堀木鎌三
○堀木国務大臣 私が植村さんに申し上げるまでもなく残された医学界の重大な問題はガンだと私は考えております。私はこの点について、厚生大臣をしている限りにおきましては、ことしはガンとも取っ組みたいという考え方で、心ひそかに思っているわけなのでございます。しかしこの方面の医学も相当進歩してきたようであります。これから先はだんだん私どもが従来考えておったようにガンはもうだめなのだという考え方でなしにいける問題じゃなかろうか。最近の医学の進歩から見れば、努力すれば相当光明を発見し得るのではなかろうかという段階に達しているので、もう少しと申しては申しわけないのですが、死亡率から見ても大へんな死亡率ですから、ぜひこれの解決に向って努力いたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/50
-
051・植村武一
○植村委員 保健対策もだんだん向上して参って、ことしの予算なんかは生まれてくる未熟児の養育指導までやっておる。ところがガンというものは、昔は年寄病だと言っておったのが、最近実は私の娘は二十五でガンでなくなったのです。それで私はこういうことを非常に切実に感ずるわけです。だんだん若い者にもガン腫が発生する。それだのにわが国は国としてこのガンというむずかしい病気に取っ組む熱意が今日までほとんどなかったということは私は残念に思う。国立病院が全国に七十六あると聞いておりますが、しかもこれに一般会計から毎年十四、五億の金をぶち込んでおる。このうちの一つだけでも国立のガン研究所というようなものにして、これに十分な予算をぶち込んで、日本の医学者の手によってこのガンを解明するというところまで精魂を打ち込むべきじゃないかと私は考えているのでありますが、この点に対する厚生大臣の御所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/51
-
052・堀木鎌三
○堀木国務大臣 こまかいことは政府委員からお答えを申し上げたいと思いますが、私も実は最近ごく親しい者がガンで死んだんです。それでガン自身についても昔と考え方が違ってきております。ほんとうにわれわれがこの問題と取っ組めば、非常に医学界のためのみならず、国民として非常に大切な問題であると痛感いたしておりますので、ガンについてはぜひ努力をいたしたい。しかしこれ今の段階でもほんとうはやはり学者と医者と両方が協力してやってもらわなければ、ただ言っただけではとうてい進歩しないと思いますので、ともかくもこの方面の進歩発達のためにはぜひ厚生大臣としてやりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/52
-
053・植村武一
○植村委員 先ほど申し上げましたように、国立病院の一つでもガン研究所に転換する御意向はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/53
-
054・小澤龍
○小澤政府委員 ただいまガン研究につきましては、民間にガン研究所がございまして、非常に活発な活動をしております。国立病院につきましては、御指摘のごとく、ガン対策の重要性にかんがみまして、国立病院の一つの重点をガンに置いております。すでに七十六の国立病院のうちの十カ所にガンに対する特殊の施設をいたしまして——特殊な施設と申しますと、ガンは診断に非常にむずかしい技術が必要であります。なお発見されたガンに対する治療は、すぐれた手術とラジウムとか、あるいは最近のコバルト六〇といった種類のラジオ・アイソトープを使用するという道がだんだん開けて参ったのでありますが、これらはいずれも高い経費を必要とする。最近のすぐれたコバルトは大体一千万円前後するので、どこの病院でも設備することはなかなか困難です。国立病院におきましてはこれを重点的に設備することにいたしまして、すでに七十六カ所のうち十カ所についてはこの設備をいたしてございます。来年度は二カ所置くことにいたしております。目下国立病院のそれぞれについてガンに対する重点的設備をいたしますが、そのうちの一カ所をまるまるガンに変えてしまうという計画はただいまのところは持ってございません。なお、単に国立病院だけでなくて、国立病院以外で、その地方の県の中心病院でありながらその地方にこういった高度の設備がない、そういうガンに対する適当な施設がない地方においては、国立病院に、ある場合におきましては、別途国費で補助をいたしまして、ガン治療施設を作らせるように、来年度に対しては心がけております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/54
-
055・植村武一
○植村委員 今医務局長の御答弁によって、ガン・センターに予算をつけておる、こういうことなんだが、その合計わずか二千万円くらいだと私は承知しておる。一カ所にすると、わずか百七、八十万円くらいの金しかいっていないということになるのじゃないかと思うのでありますが、私はガンの治療ということに対しては、もちろん必要なことには相違ないが、ガンの発生の原因そのものがわからない状態なんだから、この原因を突きとめるために、わが国医学者を総動員するという形のガン研究所というものが必要じゃないか、こう申し上げておるわけであります。もちろんそれがはっきりすれば、治療に対する新しい構想も生まれてくるだろうと思いますから、そういうものに対して厚生大臣はいかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/55
-
056・堀木鎌三
○堀木国務大臣 厚生省としてはそうなんですが、私の考え方は大体植村さんのおっしゃるような考え方に近い。この問題は国をあげて、学究的な面と治療面と両方あわせてやっていかなくちゃならぬという考え方を持っております。大学病院なんかも事実ある程度ガン研究については進んでおります。それから長い歴史を持った癌研が実はむしろ財政的には最近困っておる。こういうふうですから、官民を通じてガンの研究に当れるような態勢というものを持っていきたい、こう考えているような次第であります。厚生省だけとしては予算の少いことは御指摘のようでありますが、何も官費だけと申しますか、厚生省の予算だけでものを考えなくたっていいんじゃないか、そういうような考え方で一つ構想を練ってぜひ対策を講じたい。そのときに今お話のようなことも十分参考にいたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/56
-
057・森山欽司
○森山委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/57
-
058・森山欽司
○森山委員長 速記を始めて。本日はこれにて散会します。
午後二時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01419580301/58
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。