1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月三日(月曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 森山 欽司君
理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君
理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君
理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君
小川 半次君 大橋 武夫君
亀山 孝一君 草野一郎平君
小林 郁君 田子 一民君
中山 マサ君 藤本 捨助君
山下 春江君 早稻田柳右エ門君
岡 良一君 岡本 隆一君
栗原 俊夫君 五島 虎雄君
堂森 芳夫君 中原 健次君
山花 秀雄君
出席国務大臣
労 働 大 臣 石田 博英君
出席政府委員
労働政務次官 二階堂 進君
労働事務官
(大臣官房長) 澁谷 直藏君
労働事務官
(職業安定局
長) 百田 正弘君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
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三月一日
委員久野忠治君及び藤枝泉介君辞任につき、そ
の補欠として亀山孝一君及び古川丈吉君が議長
の指名で委員に選任された。
同月三日
委員加藤鐐五郎君辞任につき、その補欠として
早稻田柳右エ門君が議長の指名で委員に選任さ
れた。
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本日の会議に付した案件
職業訓練法案(内閣提出第九三号)
衛生検査技師法案(福田昌子君外一名提出、第
二十四回国会衆法第六六号)及び病理細菌検査
技師法案(八田貞義君外二十二名提出、第二十
六回国会衆法第四一号)撤回許可に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/0
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001・森山欽司
○森山委員長 これより会議を開きます。
職業訓練法案を議題とし審査を進めます。質疑に入ります。亀山孝一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/1
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002・亀山孝一
○亀山委員 今回制定されますところの職業訓練法につきまして、若干質問を申し上げたいと思うのでありますが、その第一点は、従来の職業補導と技能者養成という両制度を特に一つの法律にまとめられたという、その理由を一つ詳細にお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/2
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003・澁谷直藏
○澁谷政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、これは今回の職業訓練法案を制定するに至りました基本の問題についての御質問でございます。御承知のように現在職業安定法に基きまして、一般の求職者に対する職業補導を実施いたしておるのでございます。施設といたしましては、全国の都道府県に二百五十八カ所の一般職業補導所、それから労働福祉事業団が設置いたしております総合職業訓練所が現在のところ三十三カ所、それに八カ所の身体障害者の補導所、以上の施設をもちまして求職者に対する職業補導を実施いたしておるのでございます。またもう一つの系統といたしましては、労働基準法に基礎を置きまして、事業主が企業内において自分の雇っておる労働者に対して行う技能者養成、これが基準法の系統において行われておるのであります
ただいまも申し上げましたように、求職者に対する職業補導は安定法に基きまして、労働本省におきましても、一方は職業安定局、技能者養成の系統は労働基準局、それから府県の実施におきましても、職業安定の系統は都道府県知事の系統で行われておる。技能者養成は出先の都道府県労働基準局の系統で行われておる。両者の間に行政機構が分れております。それから法律がそれぞれ違っております関係上、両者の連絡、思想の統一というものが十分に行われておらない。この点について従来も民間等からも、これを何とか総合すべきであるという強い意見が出ておったのでございます。そこで昨年閣議決定に基きまして臨時職業訓練審議会を設置いたしまして、当面の雇用、失業あるいは産業情勢に対処いたしまして、どのような職業訓練制度を打ち立てるべきであるかという労働大臣の諮問を発したのでございますが、同審議会におきましては十数回にわたる慎重なる審議検討の結果といたしまして、ただいま申し上げましたように職業安定局の系統、労働基準局の系統に分れておるこの二つの訓練の系統を、法律的にも行政系統的にも一本化して、総合的に職業訓練を実施すべきである、こういう結論に達しまして、十二月の末に労働大臣に対して答申が出されたのでございます。労働省におきましてはこの答申を基礎にいたしまして、ほぼこの答申の考え方を基本として今回の職業訓練法案を立案いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/3
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004・亀山孝一
○亀山委員 私は今御説明の点はわかるのでありますが、ただし非常に懸念にたえぬ、心配にたえぬことは、この職業訓練法というものが、今お話しのように職業補導と技能者養成の両方を答申なり実際上の経験から統一されるということは、これは一つの見方であり、またけっこうだと思います。ただ、今の雇用及び失業の情勢からしまして、職業補導を職業安定法から切り離すという問題については、どうも一、二の危惧がないではない、その点はどうお考えになるか、その点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/4
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005・澁谷直藏
○澁谷政府委員 この点につきましては、先般の本委員会におきまして労働大臣から、この法案の提案理由を御説明申し上げたのでございますが、その際にも、劈頭にこういうふうに申し上げておるのでございます。「最近、産業界におきましては、高度の技能を必要とする生産分野の拡大に伴って、技能労働者の確保が強く要請されて参っているのでありますが、労働市場の現状を見まするに、約五十万に及ぶ完全失業者と多くの不完全就業者をかかえている反面、技能労働者が著しく不足しており、このことが雇用と生産の両面における隘路ともなっている実情であります。」こういうふうに一番最初に、この法案の提案の理由といたしまして一番重点を置いておりますのは、わが国の雇用、失業の現況にかんがみまして、まず第一に労働者、求職者の職業の安定をはかる必要があるということであります。しかるに安定所その他の資料を通じてみますると、相当の求人があるにもかかわらず、これに見合う技能がないために就職ができないということが、現実的にもはっきり出て参っておるわけでございます。従いまして従来の職業補導をさらに強化しまして、総合的にこれを推進することによって労働者の職業の安定をはかっていく必要があるという考え方に立ってこの法案を作っておるのでありまして、この点は法案の目的を書いております第一条におきましても、「工業その他の産業に必要な技能労働者を養成し、もって、職業の安定と労働者の地位の向上を図る」という工合に書いてございまして、あくまでも第一次的には労働者の職業の安定をはかるということに重点を置いておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/5
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006・亀山孝一
○亀山委員 今の御説明によりますれば、十分考慮してあるということですが、失業者その他の求職者に対して、その就職を容易ならしめるための職業訓練法である、こういうことであれば、従来の職業補導は今度立案される職業訓練法には、どういうように取り入れられてありますか、その点を一つ御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/6
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007・澁谷直藏
○澁谷政府委員 お尋ねの点でございますが、この法案のねらいといたしますところは、先ほども申し上げましたように、求職者に対して行なっておりました職業訓練は、この法案では「公共職業訓練」と呼んでおります。法律の第二条の定義第三項に書いてございますように、「「公共職業訓練」とは、一般職業訓練所、総合職業訓練所、中央職業訓練所及び身体障害者職業訓練所」というふうに呼んでおるのでございます。それともう一つ、従来技能者養成と呼んでおりました系統は、第二条の四項で「「事業内職業訓練上」とは、事業主がその雇用労働者に対して行う職業訓練をいう。」、この二つの大きな系統があるわけでございますが、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、この両者の連携を密にして、一貫的に職業訓練が行われるようにするということがこの法律の大きなねらいとなっておるわけでございます。この法案全部をごらんいただけばおわかりになりますように、公共職業訓練につきましては、わが国の雇用、失業の重大性にかんがみまして、国、都道府県、それから労働福祉事業団の三者がそれぞれの特色を生かしまして、でき得るだけの予算の範囲内で多くの求職者に対して職業訓練をやっていく、こういう考え方をあくまでも貫いておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/7
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008・亀山孝一
○亀山委員 次に関連してお伺いしたいのですが、従来の労働基準法に基く技能者養成制度というものは、私から申すまでもなく、長期の教習を必要とする技能者を労働の過程において養成する場合に必要な限度でやる、こういうことであるのですが、その技能者養成の制度と今度の職業訓練法との関係はどういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/8
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009・澁谷直藏
○澁谷政府委員 従来労働基準法に基礎を置いてやっておりました技能者養成につきましては、御承知のように労働基準法は労働者の最低の労働条件を保護する、これに違反する者は監督するという、労働条件の保護監督をあくまでも基本的なねらいとする法律であるわけであります。この精神は労働基準法全条文を貫いておる精神でございますが、ただ一点、技能者養成につきましてはその点が若干色彩を異にしておりまして、徒弟制度の弊害排除のためにするところの監督という面だけではなしに、さらに積極的に技能者養成を促進するというニュアンスが、この法律、特に労働省令で定めておりますところの技能者養成規程には、そういった助長面と申しまするか積極面と申しまするか、そういう点が相当はっきり出ておったのでございます。ところが御承知のように、実際にやっております都道府県の労働基準局、さらには第一線の労働基準監督署にいたしましても、あくまでも労働条件の確保のための監督官庁でございますので、技能者養成を積極的に助長する、あるいはこれを援助していく、こういう面には必ずしも向いておらないという面がありまして、この点につきましても、従来とも民間からも相当労働省に対する陳情が行われておったのであります。そこで労働省におきましては、臨時職業訓練審議会の答申を受けまして、その答申に、ただいま申し上げましたような点を十分検討した結果、企業内の職業訓練はあくまでも積極的にこれを助長していくべき行政と監督行政とはその性格を異にするのであるから、この際その助長面は労働基準法から切り離して、この職業訓練法案の体系の中に吸収すべきである、こういう結論が出されておるのでございます。労働省におきましては、その答申を受けまして、その答申の線に沿って企業内職業訓練の助長面を職業訓練法案の中に吸収してきた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/9
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010・亀山孝一
○亀山委員 大体この職業訓練法の理由というか、職業補導と技能者養成をまとめられた大づかみの点は了解されましたが、ここで一つお伺いしたいのは、この職業訓練法は労働政策の一環であると思いますが、その際考えなければならぬことは、産業の振興、産業合理化という問題を考える場合には、いわゆる産業政策及び学校教育、社会教育の関係からいって、文教政策との間に非常に密接な関係がある。その点をどういうふうにお考えになりますか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/10
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011・澁谷直藏
○澁谷政府委員 その点につきましては、この法案の立案に際しまして、関係各省とも十分な打ち合せをとげまして配慮をいたした点でございます。第一の産業政策との関連の問題でございますが、これはもう言うまでもなく、労働者の働くところは企業であり、企業の運営というのは産業政策の分野でありますので、表から見れば産業政策、裏から見れば労働政策、特にこの職業訓練の分野につきましては、そういうことになろうかと思うのでございまして、この法律でいろいろなこまかい点を政令なりあるいは省令なりに委任してございますが、たとえば企業内の職業訓練の基準を定めていくというような点につきましても、これを実際に定める際には、通産省その他の産業省と十分打ち合せの上作って定めて参りたい。それから第四条の規定に職業訓練計画の条項がございます。この職業訓練計画の策定に当りましては、当然現在の産業の状態、それから近い将来の産業の状態から、どのような分野においてどれだけの技能労働者が必要であるかという点をまず頭に入れて訓練計画を作らなければならないのでございまして、そういう点につきましても十分産業各省間とは連携を保って参りたい。それから、そういったような基本的な重要事項を審議するために、中央、都道府県にそれぞれ職業訓練審議会を設置することになっておりますが、この職業訓練審議会には、関係行政庁から委員として出てもらうという面を通じても、十分に連携をはかって参りたいというふうに考えておるわけでございます。
なお文部省との教育行政との関係は、従来とも非常に関係が深いわけでございますが、率直に申しますると、この関係におきましては、非常に関係が深いにもかかわらず、お互いに重複は避けようという面は現在の職業安定法においても規定されておりますが、重複を避けるという消極面ばかりでなしに、さらに積極的に両者が提携して、より高度な、総合的な効果をねらうという協力面において欠ける点があったのではないかというふうに考えておるのでございます。従いまして、今回の訓練法案の立案に際しましては、この点につきまして文部省とも忌憚なく話し合いをいたしまして、従来の重複を避けるということのみならず、さらに両者が一そう緊密に提携して、より大きな効果をねらっていきたい、こういうことにつきまして話し合いができまして、この法案の第三条職業訓練の原則の第二項に、その旨の規定をうたったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/11
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012・亀山孝一
○亀山委員 その点につきましては、私から申し上げるまでもなく、澁谷官房長よく御存じと思いますが、従来、ともすればこの技能者養成令による技能者養成所と工業学校との関係、あるいは青年学校との関係、また他の方面については農学校との関係は、どうも円満にいかなかった。これは御案内の通り、その点は今のお話で、文部あるいは通産との一応の了解がついたといわれますけれども、こういうように職業訓練法でいよいよ制度化がはっきりすればするだけ、その間の摩擦といいますか、その点も懸念されるので、十分御留意を願いたいと思います。
次に御質問申し上げたいことは昭和三十一年における労働市場が、労働力過剰の中における労働力不足の傾向を示しておりまして、一部産業や職種においては、必要とする労働力が得られないという事態が発生しておる。すなわち昭和三十一年度、公共職業安定所において受け付けた特定の技能職種、すなわち三十五職種について見ますと、求人数と求職数との差は、いわゆる未結合数は約十三万、こういうことを聞いておる。そうしますと、現下の職業技能労働力の不足の状況はどういうことであるか、これを一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/12
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013・澁谷直藏
○澁谷政府委員 三十一年度におきまして、公共職業安定所の窓口を通じて見ました求人数と求職数の未結合の状態は、ただいま亀山先生の御指摘の通りでございます。昭和三十二年度後半期からは、御承知のように経済の引締め政策が浸透して参りました関係上、一部におきましては操業短縮、人員の整理等が行われたのでございますけれども、近代産業における技能水準の高度化に伴いまして、技能労働者に対する需要は依然として相当高いものがあるのでございます。それで、私の方で調査しました資料に基きまして、その一端を御説明申し上げますると、一つは、昭和三十一年末におきまして、労働省労働基準局が機械、金属等の重要産業七産業について、労働者数十人以上の事業所三千四百二十六、これの所属労働者の数が九十三万九千七十五人について調査いたしました結果によりますると、技能労働者が不足している職種並びに不足数のおもなるものは、機械工におきまして八千八百十七名、仕上工三千九百九十三名、鋳物工二千八百七十名、機械組立工二千三百六十六名、溶接工二千六百十三名、製カン工千三百七十二名、プレス工千二百二十七名、板金工千百六名となっておりまして、これの合計不足総数は三万九千七百十二名となっておるのでございます。これはただいま申し上げましたように抽出調査でございますので、これを総理府統計局の事業所統計による当該産業、当該規模、すなわち十人以上の規模の労働者数に広げてみますると、この七産業についての十人以上の規模の事業所における技能労働者の不足数は、約七万七千人という推計が出て参るのでございます。
さらにもう一つの資料を申し上げますると、昨年の十月末日現在をもちまして、職業安定局において、電気、機械等、これは主要九産業、規模十五人以上の五千百四事業について、技能労働力の需給状況を調査したのでございます。その結果といたしましては、旋盤、仕上、板金工、溶接工、電気工等の職種につきまして、技能労働者の不足数が約四万三千人と見込まれておるのでございます。
大体このような状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/13
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014・亀山孝一
○亀山委員 今御説明で、この特定技能職種三十五種という問題についてはわかりましたが、われわれが今世上聞きますことは、こういうこと以外に、たとえば、大工、佐官、畳職、こういうようないわば個人企業の多い方面において、言葉をかえていえば、従来徒弟制度でやってきた方面の職種について、非常に技能者が少いということを耳にするのですが、こういう方面の求人状況と、こういう方面に対してこの職業訓練法をどういうふうに活用されるか、この点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/14
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015・澁谷直藏
○澁谷政府委員 ただいまの御指摘のように、大工とか佐官であるとか、あるいは石工、あるいは屋根をふく労務者というような、いわゆるなりわい的な職業の分野におきましても、腕のある、いわゆる職人と申しまするか、労働者がだんだんその数が減っていくという点につきましては、亀山先生御指摘の通りでございまして、私どもも、それぞれの地方からそういう職種についての技能訓練、職業訓練というものをやってもらいたいという要望を耳にいたすのでございます。従いまして、特に職業安定という観点から考えますると、そういった、現に社会なり企業が必要としております職業につきましては、それの必要に見合うまでは、とにかく技能訓練を強化していくという必要がある点につきましては、私どももそのように考えておりますが、ただこの職業訓練法案の一つの大きなねらいといたしましては、最近各方面でやかましく言われておりますところの科学技術教育の振興、これは言うまでもなく、御承知のように世界各国あげてオートメーションを中心として科学技術が非常な勢いで進歩しておるわけでございます。従いまして、この科学技術の進歩に伴いまして、生産現場における技能というものもまた日進月歩で進んでいっておるわけでございまして、従いまして、科学技術教育の進歩だけでは、産業の円滑なる発展は期待しがたい。従いまして、この科学技術の進歩と生産現場における技能とが同じような歩調で進歩発展していくことが、きわめて重要なことであろうと考えるのでございます。そういう意味合いにおきまして、私どもはこの訓練法案で、科学技術教育の進歩発展との関連におきまして、特に基幹産業と申しますか、生産分野において必要とする技能労働者の養成に重点を置いて進んで参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/15
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016・亀山孝一
○亀山委員 今御説明を伺いまして、ある部分は納得したのですけれども、どうも科学技術の方面というだけで、今申し上げたような大工、左官、石工、畳屋という——いわゆるなりわいと言われましたが、いい言葉だと思う——そういう独立企業であり、従来わが国の独得の技能、こういうものの職業訓練に十分関心を持っておられないのではないかという懸念が多分にあるのです。今のお言葉でも、どっちかと言えば、こういう方面にどういうような訓練をされるのか、職業訓練法をどういうふうに活用されていかれるか、明確な御答弁がないので、もう一度この点は——徒弟制度で発達したものであり、ことにわが国の現在の住宅あるいはその他の方面から見ればなくてはならぬもの、大企業でやるといっても容易でないもの、こういうものこそ職業訓練法の活用でやるべきであり、こういうものに向く人は、いわゆる職業訓練の適格者なんだ。そういう点をもう一度明確に御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/16
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017・澁谷直藏
○澁谷政府委員 私の説明が不十分であったかと思いますが、考え方におきましては、私どもも亀山先生の考え方と全く同じ考え方に立っておるわけでございます。そういった、なりわいと申すような労働者がどの程度不足しているか、その不足数の実態に応じて養成計画を立てて実施するわけでございます。そういう点に特に私どもは留意するという観点から、職業訓練の計画を立てる際、政府ばかりでなしに、都道府県の段階において、それぞれの地方の特殊性に即応した職業訓練計画を立てる必要があると考えて、第四条の職業訓練計画の第一項におきまして、労働大臣が全国を通じての基本計画を立てる。それと相並びまして、第三項におきまして、都道府県知事は、自分の管内における職業訓練の計画を立てると規定しておるのでございまして、都道府県知事が訓練計画を立てる際に、この都道府県に学識経験者からなるところの職業訓練審議会を付設してございますので、その審議会の委員等にも十分聞いて、都道府県がそれぞれ当該地域の特性に応じた計画を立てていただけば、亀山先生の御指摘されたような点についても十分手が届くのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/17
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018・亀山孝一
○亀山委員 繰り返して要望したいのでありますが、この職業訓練は、従来の例に見ましても、えて大企業中心になりがちである。ことに工業中心になりがちであって、いわゆるなりわいという方面に対する認識が足らぬのじゃないか、かように思うので、どうか労働省においても、これが指導に対しては万全のお考えを願いたい、こういうように希望申し上げておきます。
次に、職業訓練に関するILOとの関係をお伺いしたいのです。これは私から申し上げるまでもなく、一九三九年でしたか、昭和十四年に、職業訓練に関する勧告と技能者養成に関する勧告とがありました。その他たしか身体障害者に対する勧告があったと思う。こういう点について、この際できるだけ詳細にILOとの関係をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/18
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019・澁谷直藏
○澁谷政府委員 ただいま亀山先生から御指摘の通りでございまして、職業訓練に関しては、国際労働条約として採択されたものはございませんが、勧告としては四つの勧告が採択されております。一つは職業訓練に関する勧告、第五七号、一九三九年、第二番目は技能者養成に関する勧告、第六〇号、一九三九年、三番目といたしまして身体障害者を含む成年者の職業訓練に関する勧告、第八八号、一九五〇年、四番目が農業における職業訓練に関する勧告、第一〇一号、一九五六年、以上四つの勧告が採択されておるわけでございます。これは亀山先生御承知のように、職業訓練の体系と申しますか、その実施の方法につきましては、それぞれの国の特性によりまして相当複雑と申しますか、異なった体系が採用されておるのでございます。従いまして、ILOの性格といたしまして、これら各国が相当違った形で実施しております職業訓練につきまして、大体最大公約数的な線で勧告が出されておりますために、勧告の内容も非常に複雑であると申しますか、になっておりまして、広範にわたっております。私ども今回の訓練法案の立案に際しましては、でき得る限りこの勧告の中身を取り入れまして、その点につきましても十分な配慮をいたしたつもりでございますが、わが国の国情の特質から申しまして、この勧告を全部盛り込むというわけには参らなかったのでございます。しかし、考え方なりその骨子におきましては、ほぼ勧告の中身を取り入れておるというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/19
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020・亀山孝一
○亀山委員 ただいま澁谷官房長の御指摘になりましたILOの勧告の中に、身体障害者を含む成年者の職業訓練の勧告と身体障害者の更生に関する勧告と二つあるわけですが、一体今度の職業訓練法案なり従来の訓練、これで身体障害者に対してどういうような措置をとっているか、そして今度の指導訓練ではこれをどういうことに考えるか、その点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/20
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021・澁谷直藏
○澁谷政府委員 身体障害者に対する職業補導につきましては、御承知のように、現在職業安定法において規定がございまして、それに基いて、先ほども申し上げましたように、全国で八カ所の身体障害者だけを対象といたします補導所を設置いたして実施中でございます。その点は、今回の職業訓練法案の立案に際しましても、身体障害者に対する職業訓練の必要性につきましては全然変るところがございませんので、安定法の規定しております中身をそのまま訓練法の中に踏襲いたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/21
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022・亀山孝一
○亀山委員 この点は厚生省にも関係する問題であるのですが、身体障害者の職業訓練及びこれらにいわゆる職域を与えるという問題は非常にむずかしいであろうと思う。これは申すまでもなく、単に職業を与えるということだけでなしに、これらの人々に対していわゆる療育といいますが、医療の方面からも考えてやらなければならぬ、こういう点に対して労働省当局としては、身体障害者の職業紹介所を作って職業あっせんに特に努力しているという以外、こういう方面に対して何かお考えなさっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/22
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023・澁谷直藏
○澁谷政府委員 ただいまの御質問の点は非常にむずかしい問題でございまして、かねて厚生省、労働省、両省間におきまして、これの取扱いについてなかなか線が引きにくいという点で、両省とも苦慮いたしておる点であることは、亀山先生十分御承知の通りでございます。それで私どもといたしましては、厚生省と労働省がそれぞれの分野を生かしながら、両省が十分緊密な連携をとって身体障害者のためになるように、総合的な援助の手を差し伸べなければならないという基本的な考え方に立っておるわけでございます。もう少し具体的に申し上げますると、この医療を同時に伴わなければ職業訓練ができないというような分野につきましては、これはやはり厚生省が中心となって担当してもらうという方が、実際的でもあり便宜ではないか。ただ身体障害者と申しましても、医療の段階が終りまして症状が固定化して、その他の点については一般の人と変らないという人につきましては、これは労働省の方で職業訓練を仕込んで、そうして一人前の労働者として労働市場に送り出していく、こういうことが労働者のためでもあり、両方ともいいのじゃないかというふうに考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/23
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024・亀山孝一
○亀山委員 現在の身体障害者の職業補導及びこれらの職業安定という問題に対しては今御説明を伺いましたが、現在やっている施設で最も力を入れているのは、鉄道弘済会が最も力を入れている。それらの仕事を見ておりまして感ずることは、やはりどうしても厚生、労働、互いに手をつないで、この気の毒な、しかもその八割は生活困難であるこの身体障害者の職業補導、職域拡張という問題に対しては努力しなければならぬと思う。この点について私は二階堂政務次官に、ぜひ一つこういう点に対して厚生省と十分協議せられて、気の毒な身体障害者、普通ならばなかなか職業のない身体障害者、しかも健全者に比べれば条件の劣る身体障害者に対して、国策としてぜひこれらの職業安定をはかっていただきたい、かようにお願いしたいのでございますが、この点につきまして政務次官の御所見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/24
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025・二階堂進
○二階堂政府委員 ただいま亀山委員からの御指摘になりましたような問題は、私どもといたしましても十分考慮を将来はかって、その運営の適正を期さなければならぬことかと考えておりますので、将来とも十分意を体しまして考慮して参りたい、こういう所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/25
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026・亀山孝一
○亀山委員 二階堂政務次官から非常にけっこうな御答弁をいただきまして安心をいたしました。どうかこの問題は特に一つ御高配をお願いいたします。
次にお伺いしたいのは、今度の職業訓練法の制定で、職業訓練に関する行政機構は一体どうなりますか。これを一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/26
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027・澁谷直藏
○澁谷政府委員 行政系統につきまして、その大綱を御説明申し上げます。
中央といたしましては、労働大臣が所管いたすのは当然でございますが、その内局といたしましては職業安定局におきましてこの行政を所管するということにいたしております。なお中央の機関としましては、労働大臣の諮問機関として中央職業訓練審議会が設置される。なお労働大臣の代行機関と申しまするか、昨年発足いたしました労働福祉事業団が失業保険の福祉施設としての職業訓練施設を担当いたしておりますので、これも中央に準ずる機関として労働福祉事業団があるわけでございます。もう一つ、中央におきまして職業安定局の中に、新たに職業訓練部を設置することといたしているのでございます。これは先ほど来申し上げておりますように、安定局の系統でやっておりましたのと基準局の系統でやっておりましたのを一本に総合いたしております関係上、ここに職業訓練を専管するところの職業訓練部を設置することにいたしているのでございます。訓練部は管理課と指導課の二課でございます。以上が中央の行政機構でございまして、府県の段階におきましては、これは都道府県知事の系統におきまして一元化いたしてございます。従いまして従来のように一方は府県、一方は府県の基準局というふうに二つに分れておったという不便はここで解消するわけでございまして、全部労働大臣から都道府県知事という系統におきまして、行政が一元的に運営されるということになるわけでございます。それから施設といたしましては先ほど申し上げた通りでございまして、一般職業訓練所、総合職業訓練所、身体障害者職業訓練所、それからもう一つ企業内の職業訓練。大体以上が全体の職業訓練の概要でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/27
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028・亀山孝一
○亀山委員 今の御説明で大体はわかりましたが、公共職業の訓練を国、都道府県及び労働福祉事業団、この三者によってやるということはいかにも複雑であるような気がする。この際、どっちかといえば労働福祉事業団を改組して、総合職業訓練所はこれを都道府県知事にやらしたらどうか、そうすれば非常に簡単になるのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/28
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029・澁谷直藏
○澁谷政府委員 ただいまの御質問でございますが、労働福祉事業団につきましては、先生詳しく御承知のように、労働省で所管しております二つの特別会計があるわけでございまして、言うまでもなく一つは労災保険の特別会計であり、もう一つは失業保険の特別会計であるわけでございます。しかもこの両特別会計ともそれぞれ保険施設といたしまして、労災保険におきましては全国的に病院の設置、経営を担当しており、それから失業保険の系統におきましては、これも全国的な規模におきまして総合補導所というものを毎年々々設置拡充している、こういう状況でございましたので、この両特別会計の保険施設を一元的に運営いたしまして、その設置なり経営というものを能率的、合一理的にやっていこうというねらいをもちまして昨年労働福祉事業団が発足いたしたのは御承知の通りでございます。それで職業訓練の系統について申し上げますると、労働福祉事業団は現在までに、三十三府県におきまして総合補導所を設置経営をいたしているのでございます。全部が完成はいたしておりませんけれども、とにかく個所数といたしましては三十三府県にそれぞれ施設を設置した、さらに来年度の予算案におきましては新規四カ所が計上されておりますので、以上を合せますると三十七カ所の総合補導所が設置されることになるわけでございます。そこで亀山先生が御質問の趣旨は、国あるいは都道府県あるいは福祉事業団という三者がそれぞれやるということは、どうも複雑と申しまするか、混乱したような印象があるので、この際一つ府県に一本化したらどうかという御趣旨だと拝聴いたしたのでございますが、私どもは、ただいま申しましたような労働福祉事業団の発足の事情、それから訓練そのものの性格から申しましても、これは必ずしも一つの系統においてやらなければならないというものではないと思うのでございます。それぞれの施設なりそれぞれの機関が、その特色を生かしてそれぞれの訓練をやる、ただそれを各個ばらばらにやるというのではなくして、それを中央で労働大臣が一元的に計画を立てて、その立てられた計画のもとに一貫した方針で運営されていく、総合化していくという作用がはっきりしておりまするならば、私は必ずしも府県一本に統合する必要はないと思うのです。むしろこの失業保険施設としてやっておりますところの総合補導所という系統も積極的にこの訓練法の体系の中に吸収して、その全体の中の一環としてその特色を生かしていくということの方が、よりその特色を生かすゆえんではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/29
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030・亀山孝一
○亀山委員 大体においてお考えはわかりますけれども、なおこの問題に対しては他の委員からもいろいろ質問があると思いますから、この程度でとどめまして、いま一点お伺いしたいのは、この法案でやはり問題となるのは技能検定の問題であります。これは申すまでもなく、欧米諸国は職業訓練をやっておるところはすべて技能検定をやっております。しかしこの技能検定というものはなかなかむずかしい問題で、これについての構想と、それからこの制度と他の通産その他の省庁の技能に対する検定との関係を一つ詳細にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/30
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031・澁谷直藏
○澁谷政府委員 お尋ねの技能検定の件でございますが、これは言うまでもなく、制度として正式に国が取り上げるのは今回が初めてでございます。欧米諸国の例につきましては、ただいま亀山先生からもお話がございましたように、欧米の主要産業国におきましてはほとんどすべての国が、職業訓練と申しまするか、技能者、熟練工養成との関連におきまして技能検定制度を持ちましてそれぞれ実施をいたして、もう相当の長年月の慣行を持っておるわけでございます。その点に比較いたしますると、わが国の場合は、この点についてははなはだしく立ちおくれておると言わざるを得ないのでございます。この点につきましては、臨時職業訓練審議会におきましても、各委員の方々が非常に熱心に検討審議をいたした条項でございますが、結論といたしまして、欧米主要産業国における実施状況、それからわが国の職業訓練制度の今後のあり方というものとの関連においての結論といたしまして、やはり技能検定制度をこの際創設すべきであるという結論が出たのでございます。ただしこの制度は初めての制度でもございまするし、その影響するところが非常に広範になって参りますので、これの実施に当りましてはあくまでも慎重を期すべきであるという考え方に立っておるのでございます。すなわちこれを非常に広範な職種を、準備もなしにいきなり技能検定を実施するというようなやり方はあくまでも避けるべきでございまして、政府、民間といわず、この問題についての専門家にお集まりいただきまして、それぞれの職種、一つの職種ごとに十分に検討審議し、それから技能検定のテストを実際にやってみまして、その結果、この程度ならば技能検定として発足してもよろしいという結論が出たところで逐次実施に移して参りたいというふうに考えておるわけでございます。従いまして、法律の条項につきましても、第二十四条でございますが、その第二項におきまして「技能検定は、政令で定める職種ごとに、一級及び二紋に区分して行う。」つまり、ただいま申し上げましたような準備検討が終った職種ごとに、その都度政令で指定をして実施に移していくというふうに考えておるわけでございまして、さしあたり来年度の検討の対象の職種といたしましては電気工、それから機械工、板金、大工、鋳物工というような、四つか五つの職種に限定をいたしまして取り上げてみたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/31
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032・亀山孝一
○亀山委員 この問題は、伺えば臨時職業訓練審議会でも満場一致できまったということでございますが、私はこれはもう少し研究の余地があるのではないかと思います。この技能検定という問題は、単に職業訓練法によるものでなくて、技能の格づけである以上は、一般の労働者諸君にもやはり同様に技能検定をして、今言われたような資格を認むべきではないか、そうすれば、この法律よりもむしろ一般法できめて、一般労働者諸君のためにする技能向上という点から技能検定をやる、また格づけをするということが望ましいと思う。それに対して労働当局の明確なる御所見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/32
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033・澁谷直藏
○澁谷政府委員 ただいま亀山先生から、職業訓練法の一部としてでなしに、技能検定に関する単行法で実施すべきではないかという御意見があったのでございますが、この点につきましても、訓練審議会や、さらには私どものところで、この法案の立案に際しましていろいろ議論が出まして、検討を重ねた問題でございます。それで、この点につきましての私どもの考え方といたしましては、関係各省とも種々話し合いをいたした結果でございますが、先ほども申し上げましたように、何分にも技能検定制度というものはわが国で初めての制度でございますし、しかもその技能検定の実施の影響するところはきわめて広範であるので、こういう重大な問題について、いきなり全職種を対象として技能検定に関する単行法を出すということはいかがなものであろうか、それについての国内的な慣行もなければ十分なる準備もないという点にかんがみまして、技能検定に関する一般法を出すということは時期尚早ではないか、こういう結論に達したのでございます。それともう一つは、欧米各国の技能検定制度を詳細に検討いたしました結果、共通している点は、技能検定に関する単行法を実施している国はないということでございます。いずれの国におきましても熟練工養成との関連において技能検定を実施いたしておるというふうに、欧米諸外国の実例もそうでございます。それと、ただいま申し上げましたような、わが国の今までの実情がまだそこまで熟しておらないということ、この二つの考え方から、職業訓練法の一部として技能検定制度を逐次実施していくことが実情に合うのではないかというふうに考えて、かようなことになったのでございます。
それからもう一つ、亀山先生の御質問で、通産省なりあるいは運輸省、あるいは厚生省というようなそれぞれの省が、技能検定ではございませんけれども、それぞれの単行法に基きまして、資格の検定と申しまするか、就業制限を伴う種々な検定制度をやっておりますことは御承知の通りでございます。その点について訓練法との関係いかん、こういう御質問だと思いますが、この点につきましても、関係各省とお話し合いをいたしました結果、各省がそれぞれの必要性に基いて、法に基いて実施いたしておりますところの各種の資格の検定というようなものについては、職業訓練法においては触れない、それぞれ別個のものとしてやっていく、こういうことで割り切っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/33
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034・亀山孝一
○亀山委員 ただいまの御説明は、私はやや意見を有するということを申し上げておきます。
これは政務次官に一つお伺いしたいと思いますが、御案内のように、戦時中勤労頭功賞という制度がありまして、一般の勤労者、労働者の方々合せて顕功賞というものを出したことはおわかりと思います。これは職業訓練法に直接関係はありませんけれども、今のように、いわゆる技能検定を職業訓練に限定するということも、あるいは現状からいえばやむを得ぬかもしれません。また欧米諸国の制度からみましても、これも一つの考え方でありましょう。その場合に、一般の労働者諸君に単に技能のみならず、顕功賞というような制度によって、これを国家が褒賞する、またある意味において技能の優秀を認める、こういう制度は当然私は考えるべきではないかと、思います。この点につきまして、労働省はどういうようにお考えになりますか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/34
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035・二階堂進
○二階堂政府委員 ただいま御指摘になりましたような意見は、私は非常にごもっともな意見だと拝聴いたしたわけでございますが、先ほど官房長から説明をいたしました通りに、検定制度を設けたのは今回が初めてでありまして、従って審議会等におきましても、この制度に対しては慎重に善処しろというきわめて慎重な意見があったわけでございまして、私どももこの意見を十分尊重して参ったつもりでございます。なおまた一般の労働者に対しましてもこういう制度をすべきじゃないか、こういうお考えであるようでございますが、将来私どもといたしましても、この問題につきましては、そういう広い範囲にわたって考慮すべき問題ではなかろうかと考えております。ただしかし現在の法律におきましても、政令等で、一般の方々に対しましても、そういうような資格に準ずるものは適用されるというふうに政令でなっておるように伺っております。なお詳しいことは官房長からお答えをさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/35
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036・澁谷直藏
○澁谷政府委員 私の説明が落ちたので、まことに恐縮でございますが、補足をさせていただきます。ただいまの一般の人に対する技能検定はどうするかという問題でございますが、第二十五条の受検資格の条項におきまして書いてございますように、第一次的には、先ほど来申し上げておりますように、この訓練法によるところの訓練を終了したものをまず第一次的な対象として技能検定を行う、しかしながら、たとえば旋盤工として十年働いてきた、しかも旋盤についての技能検定が実施されることになった、自分もこの際一つ技能検定を受けてみたいというものが出てくるのは、これは当然でございます。そういったものを、いや、お前は訓練法による訓練を受けていないから受検資格はないのだということで拒否することは、もとより適当じゃございませんので、そういう人に対しましては第二十五条の第二号におきまして、「前号に掲げる者に準ずる者」として受検資格を与えていきたい、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/36
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037・亀山孝一
○亀山委員 その点はよく了承いたしました。そこで私は、先ほど政務次官にも御質問申し上げたように、技能検定はけっこうです。ことに、今仰せのように、単に職業訓練を受けた者のみならず、一般の方にも、ある制限を設けて技能検定をされるということはまことにけっこうだと思う。ただ、技能検定というだけでなくて、これに引き続いて、先ほど申し上げました国家のこれに対するアプリシェートというか、評価ですね、技能のみならず、その他の問題を評価していく褒賞制度——勤労顕功賞なりあるいは現在の褒章条例による褒賞というような方面との結びつきをぜひ考えていかるべきことが、労働省の使命だと私は思うのです。繰り返してもう一度、一つ政務次官からその点の御所見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/37
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038・二階堂進
○二階堂政府委員 ごもっともな意見と考えますので、将来十分検討いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/38
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039・亀山孝一
○亀山委員 最後に私が御質問を申し上げたいと思いますことは、駐留軍の労務者諸君に対する職業訓練の問題であります。今度の三十三年度の予算によりますと、駐留軍の労務者に対する職業訓練として一般職業訓練所において四千三百八十名、約四千四百名の予算を計上しておられます。現在の情勢から見ますと、いろいろと駐留軍の労務者の方々の職業訓練の必要性が今年度あたりは特に認められるのじゃないか。しかも、私から申すまでもなく、駐留軍の労務者の方々のいろいろな事情から見まして、これは有利でないと思う。けれどもこの際労働省当局としては、この駐留軍労務者の方々のためにする職業訓練は一段の御努力を願わなければならぬ、かように思うのですが、その状況を一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/39
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040・百田正弘
○百田政府委員 駐留軍の離職者の職業補導の問題につきましては、御承知の通り、特に昨年の十月に閣議決定をいたしまして、その一環としまして、職業補導を百万円の予備費の支出によって行なってきたのでございますが、昨年以来の状況にかんがみまして、さらにまた昨年の十二月に、主要なる駐留軍離職者の多い各地に政府から査察班を派遣いたしまして、実情を査察いたしました結果、職業補導というものが非常に実効を上げておる、さらにまたこれを拡充すべきであるといったような一致した意見であったわけであります。しかも中にはすでに相当の年輩の人も適当な職種を選ぶことによりましてそこに吸収する等、すでに就職も約束されておるといったような実態も一部にはございます。そういうふうな状況で、駐留軍労務者の方からも非常に要望せられております。そういう関係からいたしまして、三十三年度におきましてはさらにこれを拡充いたしまして、先生の御指摘のように、来年度予算におきましては四千三百八十名につきまして補導を実施するということにいたしております。この分は、実は特に駐留労務者のために臨時職業補導施設を設置して行うという分でございます。しかしながら、同時に現在一般の職業補導所におきまして約三万名の定員がございます。それから現在勤めておる人たちにつきまして夜間補導というものを実施いたしておりますが、この出発点は駐留軍労務者で近い将来に離職するかもしれぬといったような人たちを主としたる対象にいたしております。その他の人も入られますので、全部が全部というわけには参りませんが、一般の職業補導所についても少くとも一割程度、三千人、夜間職業補導所につきましても五千五、六百人の定員の半数、これを駐留軍労務者に充てるということにいたしまして、来年度におきましては約二万名につきまして職業補導が実施できるように着々準備を進めておるような状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/40
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041・亀山孝一
○亀山委員 私はこの際特に質問は申し上げませんでしたけれども、職業補導所と厚生省所管の授産所の問題これはなかなか微妙な関係のありますことを特に指摘申し上げておきたいと思う。こういう点との関連を、労働当局と厚生当局でよく話し合いをなさるべきであろうと思います。あわせて、先ほど来御質問を申し上げました技能検定の問題及びこれに関連する勤労者諸君のためにする衰賞問題、こういう点と、最後に身体障害者に対する職業補導の問題を特にお願い申し上げまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/41
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042・森山欽司
○森山委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/42
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043・森山欽司
○森山委員長 速記を始めて。
暫時休憩いたします。
午前十一時五十一分休憩
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午後二時五十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/43
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044・森山欽司
○森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
この際お諮りいたします。継続審査となっております衛生検査技師法案、福田昌子君外一名提出、第二十四回国会衆法六六号及び病理細菌検査技師法案、八田貞義君外二十二名提出、第二十六回国会衆法第四一号の両案について、提出者よりそれぞれ撤回の申し出があります。両案の撤回を許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/44
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045・森山欽司
○森山委員長 御異議なしと認め、撤回を許可することに決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/45
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046・森山欽司
○森山委員長 職業訓練法案の質疑を続行いたします。岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/46
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047・岡良一
○岡委員 職業訓練法案に関連いたしまして、労働大臣に若干質疑を申し上げたいと存じます。
私が質疑を申し上げたい点は、生産性向上運動に対する労働大臣としての御所信でございます。私は科学技術振興特別委員会に所属をいたしておるのでありますが、この委員会で審議されるあらゆる事項は、特に現在の日本の雇用問題と重大な関係を持ってくるのでございます。大臣も御存じのように、あるいは鉄鋼の現場、発電所、造船所、自動車工場、あるいは日本レイヨンや東洋レ—ヨンやまた丸善石油なり、こういうような現場について見ますと、もうすでにパイピングあるいはコンベヤ・システムというものが高度に行き渡っております。そしてコントロールの部署には、ごく少数の諸君が緊張をして服務をいたしておるという状態であります。生産性向上運動の名のもとに、すでに大経営においてはこのようなオ—トメーションがずいぶん高度に進展をいたしておりまするが、このような生産性向上運動の現在の成果というものが、果して生産性向上運動の掲げているところの旗じるし、たとえば雇用量を増加するとか、また労働者の賃金を引き上げる、国民生活の水準を高める、あるいは貿易の振興云々というような生産性向上運動の掲げておる目標というものをどの程度まで果しておるのであるかということを、私どもは現場を見ながら非常に危惧を抱いておるのでありまするが、どの程度これは果しておりるのであるか、この点についての労働大臣の御所信をまず承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/47
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048・石田博英
○石田国務大臣 単に勤労者だけでなく、国民の生活水準を高めて参りますためには、やはりその国の内部自体といたしましても、経済力の充実発展を期して参らなければなりませんし、それには生産性の向上ということが必要であろうと存じますが、あわせて世界経済の大きな方向が、生産性向上のために技術あるいは労務管理の面、経営の面等におきまして日夜たゆまない努力を重ねられておるときに当って、日本のように貿易によって国を立てていかなければならない国におきましては、とりわけそれが必要であろうと存じます。従って大きな線としては、生産性向上によってもたらすその国の経済力の充実ということが、ただ単に勤労者だけでなく、国民各個の生活水準の向上ということになり得るものと信じます。それから特にその産業に従事しておりまする労働者諸君におきましては、この運動の進展によりまして比較的労働力の提供を少くして、生産性向上による利益の享受を多く受けられ得る方向に向い得るものと考えておるわけでございます。しかしその過程におきまして新しい労働需要の減退、あるいはその企業の内部におきまする配置の転換というようなことが起って参るのは、これはやむを得ない実情であろうと存じますが、その場合におきましても、この生産性向上の運動というものは、基本的にはその国の国民一人々々の生活の向上、その企業にありましては従業員の条件の改善ということを基礎に置かなければならないという心がまえをもって処理していかなければならないものだと考えておるわけでありまして、その過程におきまする処理につきましては、現在生産性本部におきまして研究せられておりまする労使協議制の活品等によってそれを埋めて参りたい、こう思っておる次第であります。それから国全体の労働の需給関係の動向につきましては、これまた過渡的にはいろいろの問題がございましょうけれども最終的に労働力の需要を高めて参りまするためには、やっぱりその国の経済力の充実が必要でありまするから、大きな方向としてはやはり労働条件の向上、あるいは就業の機会を多く与えるということにも、結局は私は役立つものと考えておる次第であります。生産性向上運動の進展その他に伴いましての過渡的現象の緩和、特に労働の需給関係の処理等につきましては、あるいは労働時間の短縮というような問題をもあわせ考えることによって、この方向に伴って労働の需要の減退あるいは失業の発生というようなことを避けて参らなければならないと思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/48
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049・岡良一
○岡委員 大臣の御答弁は、非常に抽象的な心組みを承わったようなわけでありますが、問題は、なるほど生産性向上上運動の本部は、雇用量が生産性の向上によって増加する、こういうことを強く打ち出しております。関連産業がふえてくる、オートメの機械産業が新しく発生してくる、従ってまたサービスの業務に属する職場が与えられる、こういうふうに申しておる。技術革新とか科学技術の振興とかいうようなものを、私どもはまっこうから否定するものではありません。これはとめようたってとめることのできない人知の進歩であります。そしてそれが生産性向上運動という形で、なるほどアメリカなりイギリスなりドイツなりフランス、イタリアなどを見ると、国民的な規模で今大臣のおっしゃった労使の協力というふうなものを中核とした運動として推し進められておる。ただしかし、問題はやはりこういう運動が進められる条件にあるかいなかというところに大きな問題点が私はあろうと思うのです。日本のように完全失業者が五十万をこえることが見込まれており、不完全なる就労者が四百万ともいい七百万ともいわれており、年々八十万、九十万という労働者が新規に増加せられておる。一方日本の産業構造は、ほとんど九〇%以上が弱小な経営体である。こういう国の産業構造なり国の雇用の実態なりというものは、生産性向上なり技術の革新なりというものを、いかにだれが導入するかということによって、これが国の雇用状態に大きな影響を与えてくる。私はその条件について、大臣の所信を若干承わりたいと思います。
まず、これは労働省の方でお作りをいただいた資料でありますが、今私どもが現場を見て、最も新しい技術が導入され、新しい設備が導入をされたと説明をされておる鉄鋼、造船、化繊、電力、これについて見ますと、生産指数を一九五〇年を一〇〇といたしますると、一九五七年の十月は二七四・二、これが鉄鋼です。造船では三六一、三倍半に生産が伸びております。化繊では四七一、四・七倍、電力では一八二、約二倍です。ところがこれに対して雇用の指数は一体どれだけ伸びておるか、雇用の指数は一九五一年を一〇〇として、一九五七年十月現在では一二一、これが鉄鋼です。造船は一二五、生産は三倍半に伸びておるが、雇用はわずかに二割五分しか伸びていない。化繊に至っては生産は五倍に伸びておりますが、一一九・七、二割しか伸びておらない。電力もやはり同様の状態です。こういう形で、主要な重要産業においては生産の伸びというものはぐんぐん伸びております。設備の改善、新しい技術の導入によって伸びておる。ところが雇用の指数というものは全然伸びておらない。年々労働力人口はふえてくる。生産性向上運動では、新しいオートメの機械を作る、あるいはまたそれに関連する産業が起る。またそれらの商品をサービスするところのサービス業分野に雇用が伸びる。ところが今申しましたこれらの会社というものは、ほとんど外国と技術提携をしておる。外国と技術提携をしておる数字を申し上げますと、大体外国の特許権に支払った額、あるいはノー・ハウ等に関する支払い、これらを合せまして、昭和二十九年には千三百四十万ドルであったものが、昭和三十二年には三千八百五十三万ドルの三倍に伸びておるわけです。外国から技術を導入し、御存じの通りこれらは中心的な大経営としてこの三年間にそれぞれ莫大な設備投資をやっている。設備も外国から買う、技術も買う。関連産業というものの伸びる余地がありません。この工場に用いる部品についても、日本の下請工場には今手が伸びておりません。しかも親工場においては、雇用というものは先ほど申し上げましたような数字で押えられておる。こういう状態であれば、生産性向上運動というものが雇用量を増加するという状態はとうてい期待できない。大臣は雇用が伸び得るという可能性について楽観的な御口吻をお漏らしのようでありますが、数字について見ると伸びておりません。これではいきようがありません。この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/49
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050・石田博英
○石田国務大臣 日本の雇用及び失業の問題を考えますときに、重点は完全失業者の数が五十万ないし六十万前後いつでもあるというところに重点があるのではなくて、むしろ今御指摘の、的確な数字はつかみ得ませんけれども、数百万をこえるといわれる不完全就労の状態にある。いわゆる低所得の就業層の問題が一番大きな重点であろうと思います。完全失業者の率は西欧諸国の例に比べてみましても、イギリスよりは若干悪いようでありますけれども、西ドイツやアメリカよりは少いのであります。ところで、どうしてこう膨大な不完全就労者があるかということになりますと、やはり不完全就労という状態の基礎は低所得であり、その低所得の最大の理由は、それが働いておる企業の不健全性にある。各企業の規模別の統計の示すところでは、やはり賃金はその企業の生産性に比例をいたしておるのでありますから、従って中小企業の場合におきます生産性の低さは、低い賃金を原則的に招くものだと考えておるわけでありまして、こういう意味におきまして、生産性向上運動がむしろ中小企業の方へだんだんと向っていくことをわれわれは期待をいたしておるわけであります。ただいま重要基幹産業における生産性の伸びと雇用の伸びとのアンバランスを御指摘になりましたが、年々新しく雇用される者の中に入ってくる数は、長期計画において大体八十万と見込んでおるわけでありますが、それが現在雇用されております約千九百万の人口の中に占めます割合は私は大ざっぱに頭の中で計算しておるだけでありますが、四%か、その程度じゃないかと存じます。今の統計ですと、この二、三年の間における基幹産業の生産性の伸びを御指摘でありましたが、これは三年といたしましても、四%といたしますと十二%前後、雇用の伸びは二〇%以上になっておるわけでありますから、新しく雇用を求めくる新規の労働人口の増加率に比べまして、私は適当な雇用の伸びをしているものと思っておる次第であります。従ってそれぞれの企業の中におきましてのその生産性の増加だけがやはり企業の安定性、あるいは労働者の生活の向上、あるいは国民各層に対する分配となって、それはひいて関連産業、大きくは日本国民経済に私は貢献をしておるものと考えておるわけであります。確かに御指摘のように、技術その他は外国から輸入してくるものが多いようでありますが、しかしこの運動の進展に伴いまして、関連産業におきまする雇用の増大も見込まれるものと確信をいたしまするし、結局は国民経済の発展というものが雇用の増加の基本でありますから、世界の進運におくれないように生産性の向上に努めていくということが日本の生きる道でもあり、ひいては雇用を増大させる道でもある、私はこう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/50
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051・岡良一
○岡委員 大臣の御所見には私はいろいろ異論がありますが、イデオロギーの問答をかわしても仕方がありませんから、それでは不完全就労者というのは大体どの程度のお見込みでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/51
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052・石田博英
○石田国務大臣 これは計数の取り方によって違うと思いますが、所得から見る取り方もございましょうけれども、現在働いておる人で転業を希望する者、あるいは追加就労を希望する者、そういう面から計算をいたしたものがございます。これは二百八十万くらいの数に上ります。しかし一方所得から見て参りますると、この所得の取り方もいろいろございましょうが、一定の所得からよりましても、年令によりましていろいろまちまちでございましょうが、所得から取りますと、大体六百九十万人くらい、これがいわゆる標準の所得、あるいは標準の所得を取っておりましても労働時間が長いとか、あるいはその他の労働条件の悪い状態にある就労者、これは昭和二十七年の調査でありますが、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/52
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053・岡良一
○岡委員 それではついでにお尋ねをいたします。係りの局長でけっこうですが、昭和二十九年、三十年、三十一年の間に、就業者の伸びは全体でどれだけでありますか。そうしてそれは五人未満の経営規模のところに、その何%が就職しておりますか、九十九人未満の経営規模に何%が就職しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/53
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054・百田正弘
○百田政府委員 昭和二十九、三十、三十一年、これは暦年でございますが、昭和二十九年におきまして就業者総数は三千九百九十八万、約四千万でございます。それに対しまして三十年におきましては四千百三十一万、三十一年におきましては四千二百十万というような伸びになっております。ただ規模別にこれがどうなっておるかということにつきましては、現在詳細な統計がございませんので、ただいまちょっとはっきりいたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/54
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055・岡良一
○岡委員 これは東大の有澤教授の統計で、やや古いのですが、こういう統計がある。それは昭和二十六年に比べて昭和二十九年は、大体就職者数の伸びが百三十万、ところがその一五%は四人以下の零細経営に就職しておる。五七%は九十九人から五人までの職場に勤めておる、こういう統計になっておる。大臣は先ほど生産性向上運動によっておいおい雇用も伸びることを期待するとおっしゃいますけれども、生産性向上が大経営にどんどん採用されたのは、むしろ昭和二十九年以後が顕著に機械が運転をしておると思う。それ以後の状態が、先ほど申しました鉄鋼や造船に現われたような状態であり、最近では化繊部門においては本工さえも失業をしようという状態が出ておる。しかも日本に新しく導入された設備等は、主として高い外貨を払って外国から購入しておるのだから、関連産業における雇用の伸びというものは見られない。一方においては不完全就業者というものが、今御説のようにある。そこへ年々新しい生産年令人口が加わっておる。ところが、それが一体どこへ働きにいっておるかという、この労働力の量的な移動は、経営規模別に見ると、一五%が四人以下の零細企業、五七%というものが九十九人未満、いわば中小経営の中でも下位にあるところに働きにいっておる。なだれを打って働きにいっておる。ここにも生産性向上というものが、だんだんこれらの工場の中にも行われるであろうという期待が持たれるが、不渡り手形の現実をごらんになればおわかりの通りです。不渡り手形は増し、額面の金額はここ二、三年来小さくなっておる。そういう状態でありますし、これらの工場は、極端にいえば戦争中の旋盤を持っておる工場が多い。こういうところへ日本の労働力が流れよう流れようとしておる。生産性向上運動というものは、新しい労働力を吸収する余地というものは、現在何ら統計的に示しておらない。この矛盾をどうして解決するか、これが日本の雇用政策の大事な一つのポイントではないかと思う。これはただ単なる観念的な期待論ではなしに、具体的にこうあるべきだという御所信があったら承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/55
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056・石田博英
○石田国務大臣 先ほども申しました通り、経営の不安定、ひいては賃金の低さというものが、常に生産性と比例いたしておりますから、生産性向上運動は、やはり日本の経済構造、産業構造というものが中小企業に非常に大きな負担をかけ、大きな割合を持っておるという点から考えましても、これからの生産性向上運動というものが、中小企業の方に大きな重点を向けていくべきであると考えておりまますし、その方向について、生産性本部におきましてもそれぞれの努力を重ねております。私は中小企業に向けての努力は十分だとは考えておりませんが、傾けているし、またそうでなければならぬと思っております。ただいま議題にお願いをいたしております職業訓練法案も、やはりそういう見地から、中小企業の労務者の技能の低さを救い、それによって生産性を高めていくというところに一つの目標を置いているわけであります。いずれにいたしましても、経過的な、過渡的な措置は別問題といたしまして、基本的には、やはり日本の経済力を豊かにしていくということが、国民の生活水準全体を高めるゆえんであり、特に、先ほどから申しておりますように、日本のように貿易依存率の高い経済の国におきましては、日本が生きていくために、世界の水準におくれないようにしていくことが最大の前提であり、生きていくことがまず一切の前提だ、私はこう考えておりますから、生産性向上運動は、私は長い目としては、雇用の増大にもあるいは国民経済の上昇の基礎にもなる、こう考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/56
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057・岡良一
○岡委員 あと実質的に、生産性向上と労働条件等について、統計的にいろいろ労働省の見解を承わりたいと思いますが、本会議も始まりましたので、私の質疑は次回の委員会に保留させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/57
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058・森山欽司
○森山委員長 次回は日本労働協会法案を議題とし、明四日、火曜日、午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたます
午後三時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X01519580303/58
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