1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月三日(木曜日)
午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 森山 欽司君
理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君
理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君
理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君
小川 半次君 大橋 武夫君
加藤鐐五郎君 亀山 孝一君
草野一郎平君 小島 徹三君
小林 郁君 田子 一民君
中山 マサ君 藤本 捨助君
山下 春江君 亘 四郎君
赤松 勇君 井堀 繁雄君
岡本 隆一君 五島 虎雄君
中原 健次君 長谷川 保君
山花 秀雄君 吉川 兼光君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 堀木 鎌三君
出席政府委員
厚生事務官
(保険局長) 高田 正巳君
委員外の出席者
厚生事務官
(保険局健康保
険課長) 小沢 辰男君
専 門 員 川井 章知君
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四月三日
委員多賀谷真稔君辞任につき、その補欠として
中村高一君が議長の指名で委員に選任された。
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四月二日
国民健康保険法施行法案(内閣提出第一五四
号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本労働協会法案について、参考人出頭要求に
関する件
国民健康保険法施行法案(内閣提出第一五四
号)
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一〇三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/0
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001・野澤清人
○野澤委員長代理 これより会議を開きます。
日本労働協会法案について来たる八日の本委員会において参考人より意見を聴取することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/1
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002・野澤清人
○野澤委員長代理 御異議なしと認め、そのように決定いたします。
なお参考人の人選及び手続に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/2
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003・野澤清人
○野澤委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/3
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004・野澤清人
○野澤委員長代理 昨二日付託になりました内閣提出の国民健康保険法施行法案を議題とし、審査を進めます。
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政府側より趣旨の説明を聴取することといたします。堀木厚生大臣。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/4
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005・堀木鎌三
○堀木国務大臣 ただいま議題となりました国民健康保険法施行法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
本法案は、国民健康保険法案の施行のため必要な経過措置を定めるとともに、関係法律の整理を行おうとするものであります。
次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、国民健康保険事業の開始の勧告言及び助言の制度を設けたことであります。国民健康保険の未加入者を一日もすみやかに解消せしめる趣旨から、昭和三十六年三月三十一日以前においても、厚生大臣及び都道府県知事が未実施市町村に対して事業の開始につき勧告または助言を行うことができることといたしたのであります。
第二に、国民健康保険法案におきましては、国民健康保険を行う主体を市町村及び従前の同一の事業または業務ごとに設けられる特別国民健康保険組合に限定いたしましたので、全市町村が事業を実施するに至る昭和三十六年三月三十一日までの間は、現に事業を行なっている普通国民健康保険組合及び農業協同組合等の社団法人についても、引き続き国民健康保険を行うことができることとし、これらに対する国庫負担等については市町村とみなすごとといたしたのであります。
第三に、国民健康保険法案におきましては、療養の給付の範囲を健康保険と同一といたしましたが、これによる急激な影響を避けるため、当分の間、政令で定める範囲のものは、給付を行わないことができる道を開いたことであります。
第四に、以上のほか、経過措置といたしまして、現行法に基く療養担当者が、国民健康保険法案の指定医療機関となることに伴う必要な規定、現行法と国民健康保険法案との被保険者の範囲の相違による必要な調整規定等を設けることといたしたのであります。
第五に、国民健康保険税の賦課方法を整備する等、国民健康保険法案の施行に伴う必要な関係法律の整理を行うことといたしたのであります。
以上が、この法律案を提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/5
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006・野澤清人
○野澤委員長代理 以上で説明は終りました。本案に関する質疑は後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/6
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007・野澤清人
○野澤委員長代理 内閣提出の日雇労働者健康保険法の一部を改正する法 案を議題とし、審査を進めます。質疑を許します。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/7
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008・滝井義高
○滝井委員 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に関連をして、この前日雇労働者健康保険の診療に従事する医療機関が一体いかなる状態にあるか、特にその代表的な医療機関に準ずる、厚生省の直轄とも言うべき健康保険病院についていろいろ質問をいたした中で不明な点がありましたので、それに対する調査を次回までにやってきていただきたいという要望をいたしておいたわけであります。従って、この前御質問申し上げてなお不明と思われる点を本日は突込んで参りたいと思います。
健康保険協会の経営している健康保険病院は、健康保険法二十三条の保険増進のための施設であるということがわかってきた。それから医療法三十一条の公的医療機関ではないということもはっきりしてきたのでございます。医務局では、健康保険の病院は公的医療機関としては指定していないということで、公的医療機関でもなければ私的医療機関でもない、第三の範畴に属するものである、こういうことがわかってきたのです。その際、「厚生大臣の定める者」という項が医療法の三十一条にあるのですが、一体それに関係するのかどうかということについて保険局側の答弁が明白でなかったのです。まず、医療法三十一条の「厚生大臣の定める者」に当るのか当らぬのか、保険局側の見解を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/8
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009・高田正巳
○高田(正)政府委員 厚生大臣がこの規定は基いて指定をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/9
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010・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、医務局と同じように、やはりこれは公的医療機関でも私的医療機関でもない、国有民営の形ではあるけれども、何かその性格が明白になっていないものであるということが、おぼろげながらわかる感じがするわけです。そこで、今後日本が皆保険政策をとっていき、模範的な診療を行う機関として健康保険の病院を規定しようとするならば、やはりこの性格というものを、ある程度明確にする必要があると思うのです。そうしないと、今後の医療行政というものは、複雑多岐にわたるものをますます複雑多岐にする傾向が出てくると思うのです。そういう点、病院の性格を今後もっと明確にしてもらいたいと思うのです。その場合に、その病院の従業員の給料というものは、受託同体が決定をするということを御答弁いただいたわけです。そうすると、受託団体の一体だれが決定をするのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/10
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011・高田正巳
○高田(正)政府委員 受託団体は、民法上の公益法人でございましたり、あるいは公共団体である市当局、その二つであります。それぞれの団体の規約なりあるいは市という公共団体の運営を規制する条例というものがございます。そういうものに従ってそれを決定する権限を持つものがきめる、抽象的に申し上げればそういうことでございます。具体的に申しますと、健康保険病院運営規程準則というものを私どもの方で作って、これを地方に示しておるわけでございます。各受託団体におきましては、この健康保険病院運営規程というものを作りまして、それに従って運営をいたして起るわけでございます。その中に給与という章がございまして、いろいろ準則と申しますか、大体どういうふうなものに従ってこれをきめるべきであるというふうなことにも言及をいたして詳細な規定があるわけでございます。大体これに従いまして決定されておると存じます。だれがきめるのかということでございますが、院長と相談をいたしまして、その受託団体が、先ほど申し上げましたように、その規約によってたとえば役員会というものがその決定権を持っておれば役員会がきめる。市等でありますれば市の人事当局——究極的には市長でございますが、そういうものがきめるということに相なろうかと思います。あるいは一部下級の職員につきましては、院長にその権限を委任しておるというふうな内部関係はあり得ると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/11
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012・滝井義高
○滝井委員 経営の受託者が市のようなものであれは、これは国家公務員のベースに地方自治体は右へならえをすることになっておりますから、従って受託者の市によって経営をせられておる健康保険の病院というものは、私は割合やさしく右へならえすることができると思うのです。ところが受託者の団体というものが社会保険協会という形になっておりますと、この前も申し上げた通り、病院の運営というものは特別会計になっておるわけです。そして社会保険協会というものは、財政的に見ても、あとで触れますが、金がないわけです。これは会員の会費というものが主たるものなんです。そうすると金はない。現在健康保険病院、診療所は全国に七十八、九ぐらいあるわけなんですが、これに対して経営受託者は、社会保険協会で受託者となってやっておるものは三十四なんですね。市は九なんです。財団法人の社会保険協会連合会が一つ、福祉法人が一つ、国民健康保険団体連合会が一つ、病院組合が一つ、こういうように大ざっぱになっておる。従って問題は、市は九つぐらいしかないので、一番多いものは何といっても社会保険協会の三十四、この経営受託者の主流をなす社会保険協会というものに金がないとするならば、厚生省の保険局が運営規則の準則を受託者に示して——受託者といっても、関係ばまず保険局が都道府県に対して経営委託者になる。その委託者が受託者である保険協会との間にいろいろのこまかい指示をしていくことで準則がはっきりしてくるわけです。そうしますと、実際にその準則を取引したのは病院ではないわけです。あくまでも委託者と受託者である県と協会なんです。そうしますと、最終的な俸給の決定権というものが準則を受け入れた受託者にあるとするならば、一切の責任はやっぱり受託者が負わなければならぬということになるわけです。ところが、受託者がそういうものを受け入れて、一体だれが実行を強制したかというと、厚生大臣が強制しておるわけです。準則というものを示して、これでやりなさいということを命令して起るのはだれかというと、厚生大臣、保険局長なんです。それが実際に病院が一生懸命に経営してもできないということになったときに、そこに従事しておる従業員の給料の締めたり、あるいは期未手当を締めたりすることは問題が出てくるわけなんです。しかもそれは国有財産を無償で借りているという形になれば、どうしてもやはり厚生大臣が病院の経営について準則まで示したからには、財政的な責任まである程度持たなければならぬ。それを持たないところにこの病院の性格というものが結局公的医療機関でもないし、私的医療機関でもないし、あいまいなものになってしまう。だからそういう形のものでは医療行政というものがうまくいかない、か弱い日雇い労務者諸君が日雇いの健康保険証を持っていってやるにしても、病院がうまくいっておらなければ悪い治療しか受けられないことは確実なんです。そこらの関係を、準則をあなた方示しておるから、あとは院長なり協会の役員がきめるでしょうというそういう他人行儀は許されぬと思う。準則を示してこれでやりなさいといったならば、それが実行できないような病院はつふす以外にない、つふすか民間団体に払い下げするか、もっとよくするためにお金を出してあげるか何かする以外にないと思う。全国のこの七十有余の病院というものをアンバランスのままに放置しておる手はないと思う。もしそれを放置しておるというなら、保険局の病院経営はやめてもらわなければならぬということになる。準則を余しておりますから、それは院長なり協会の役員が決定するということだけで答弁が済むのかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/12
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013・高田正巳
○高田(正)政府委員 純粋に法律関係と申しますか、その関係のことを御答弁を申し上げたわけでありまして、実体的には先生仰せのように、それで秋田どもはもう責任は全部免れたのだというような意味で申し上げたわけではございません。従いましてこの社会保険病院の運営状態あるいは特に勤務職員の待遇の問題等につきましては、私どもも十分な関心を払っておるのは事実でございます。御参考までに先般の公務員のベース・アップ六%でございましたか、それの改訂を逐次やっおりますということを先般御答弁を申し上げたのですが、その状況をもう少し申し上げてみますと、病院、診療所含めて施設数が七十六カ所ございますが、ただいままですでに改訂を行いましたものが六十二カ所でございます。未改訂のものが十四カ所残っておるわけでございます。これら残りましたものにはいろついろ事情があるのでございますが、これらにつきましても、できるだけ早い機会にその改訂を実施いたすように私どもといたしましては、指導を加えて参りたいと思うわけでございます。
なお御参考までに健康保険病院の給与額を調べてみましたのでございます。全体について詳しく申し上げる程度の資料もここにございますが、全般的に申しまして、院長は平均が八万六千五百二十二円、副院長は六万六千七百六十一円、事務長が四万九千五百二円、院長、副院長を除きます医師が三万八千二百九十八円、大体そういうふうな状況でございまして、全体の職員の平均ベースといいますか、それを国立と比較をいたしまして、社会保険病院の方がちょっと高いというふうなところでございます。ただいま申し上げました院長、副院長、医師等の平均給与額を国立と比較をいたしてみますと、だいぶ社会保険病院の方がよろしくなっております。大体そういうふうな状況でございますけれども、今先生が御指摘になりましたようなこれらの病院の経営のやり方、特に非常に苦しいところといいところとあるというふうな状態等につきましては、私どももこのままでいくんだということの結論を実は持っておるわけではございませんので、この社会保険病院の経営というものを全国的にどういうふうなやり方をいたしたならば、いろいろむらのありますものが平均的に、しかも全体的にうまく参るかということにつきまして、実はいろいろ検討を加えておるのでございます。将来も一つの結論が出ましたならば、何らかのやり方の改正といいますか、改善といいますか、そういうふうなものをも行いたい、かようなつもりでおるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/13
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014・滝井義高
○滝井委員 まず今の御答弁の中で、七十六カ所の施設の中で改訂を行なったものは六十二カ所ということでございますが、この六十二カ所の改訂をしたところは六・三一%だけ公務員と同じように引き上げをしたものなんですか。たとえば赤十字なんかは三%、半分しか改訂できてないのです。健康保険病院は公務員と同じようにやったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/14
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015・高田正巳
○高田(正)政府委員 公務員と同じようにやったわけでございます。それらのことにつきましては、先ほど申し上げました運営規程の中にいろいろ詳細な規定がございますので、この規定に従ってやったわけでございまして、公務員と同じような改訂をいたしたということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/15
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016・滝井義高
○滝井委員 公務員と同じだそうでございますが、なお十四カ所というものはできていないわけなんです。これらの十四カ所は独立採算制をとっておる現段階で、一体どうして公務員と同じようにやるのかということなんです。従ってこういうところからもめ事が起ってくる、混乱が起ってくるわけなんです。これらの公的医療機関でもないし、私的医療機関でもない、中間のものの従業員の身分を考えてみると、国家公務員に準ずると書いておる。給料は国家公務員に準じてやるんだと書いておるが、まずこれらの職員というものは恩給がないのです。共済制度というようなものも確立されておらない。厚生省の準則で運営をせられる病院で、退職金も恩給も確立せられていないという、きわめて不安定なものなんです。しからばそれらの従業員が公務員と同じ給料をもらうというならば、人事院のようにいろいろ不平があったら代弁してくれる機関かなんかあるかというと、これもないのです。それなら公労法にいう公企体の労働組合の従業員のように、何かそこに仲裁制度でもあって、もめ事が起ったら仲裁機関が、きちっと給料でも決定してくれるところがあるかというと、これもない。ただあなたのところの準則で、国家公務員と同じようにやれといったって、協会というものは何だ、これは資本家の集まりです。そうするとそういう資本家の集まりが受託者として厳然として控えておって、そしてあなた方は準則を出しても、十四というものは動きがとれない。病院の採算がとれないのだから不平の持っていきどころがないのです。厚生省からは押えられる、知事からは押えられる、協会からは押えられる、院長からは押えられるというと、押えられるばかりで、どこも息を抜くところがない。息を抜くところがないからどこで抜くんだというと、これはきまっておるのですよ。患者に息を扱くのです。患者に当り散らかさざるを得ない格好になってくる。これはわれわれの家でも同じだ。会社で社長が腹を立てて部長を怒る、部長が今度は課長を怒る、課長は課員を怒る、課員は怒るところがないから帰って奥さんを怒る、奥さんは怒るところがないから女中を怒る、女中は怒るところがないからネコを怒る、ネコは怒るところがないからどこに怒るかというと障子を破る、こういう形になっちゃう。それと同じことが、この病院の一連の系統を見ると言えるのです。結局ネコが障子を破ると同じように、医療従業員というものは不平の持っていきどころがないから患者にでも当らないとしょうがない。患者が迷惑をする。だからこういう労務管理は前時代的なものであり、そして院長さんの給料はなるほど八方六千五百二十二円とおっしゃった。これは病院の給料を見てごらんなさい。管理職はみな給料がいい。しかし一将功なって万卒枯れておる。下の方はみな低いのです。そして身分の保障もない。だからこういう病院のものを今のままの姿で置いて趣くということは、厚生行政の恥だと思うのです。今まで局長さんあたりも、あまりこの病院について研究していなかった。私がこれを指摘して初めて、まあ竜井のやろうが指摘し始めたから少しは見ておかなければいかぬというふうに思って見ておかれたと思うのですが、私は何もあなたを責めようとは思いません。悪いという点があったらさっそく改めてもらわなければならぬと思うのです。だからこういう七十有余の模範病院といわなければならないものが、模範病院の形になっていないということなんです。こういう点一体大臣あなたはどうお考えになりますか。おそらくあなたも知らなかったろうと思う。しかしこれはあなたの傘下の病院なんですよ。国立病院と同じようにあなたに身近な、あなたの重要な皆保険政策のにない手としてある病院が、これなんです。だから税金のかからない病院がこの体たらくなんだから、いわんや私的医療機関は厚生省がかれこれ——この前も言ったように、高田理論で何回もいうように二十七年三月を基礎にやったもので今度は計算すると、ことしの六月には二倍の所得になるのだといったところで、全国の十万の療養担当者は信頼しない。信頼がないところに、厚生行政というものはうまくいかぬと思う。政治はやはり信頼だと思うのです。だからこの点あまり自分たちの言うことばかりが正しくて、金科玉条のものであって、われわれの言うことは大して役に立たぬのだということをお考えにならずに、理論を立てたならば自分の足元から実行させてみる——今でさえも給料を上げ得ないのが十四あるのですよ。すでに去年あなたの所管の国立病院はみんな上げちゃった。ところがあなたの足元になお十四の病院というものが、ベース・アップできぬものがあるということなんです。ベース・アップができずして、どうして医療内容の向上なんかできますか。だからそういう点で大臣、一体この実態をどう考え、どういうように直していく所存なのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/16
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017・堀木鎌三
○堀木国務大臣 今滝井さんのおっしゃることはごもっともなんで、設備だけできても、それは規範的な病院にはなり得ない。やはり内容を構成しておる医師を初め、その他の従事員自身の給与、待遇なり生活を保障するというふうな面が伴いませんと、確かに、ネコが障子を破るかどうかは別にいたしましても、私は医療機関としての完備したものではないと思います。そういう点については今後われわれ自身がせっかく努力をいたして参るべき点である、先ほどからのお話のように、その性格を明らかにし、そして従事員諸君の身分保障をいたしますることは必要不可欠の要件である、こう考えますので、今後それらについて十分注意して参りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/17
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018・滝井義高
○滝井委員 今の大臣の言葉を一つ私は十分胸に刻み込んでおきますから、どうか一つ健康保険の病院の従業員の身分を確立してもらいたいと思うのです。この病院の実態を見ますと、大体院長とか事務長等特定の人の給料は、ほとんど公務員の平均と同じです。しかしそれより下の従業員の諸君の待遇を見ると、公務員以下か公務員と同等程度です。ところが公務員と同等では恩給もなければ、今言った退職金の制度も大して確立されていない、不平の言いどころもないという劣悪な労働条件のもとに働いているのです。労働協約もないのですから上げてやるべきです。上げてやっても普通なんです。ところが現在健康保険病院に、単に国家公務員の賃金給与の体系でやりなさいと言っておるわけでも、病院自体として一定の給与体系がないのです。ここに欠陥がある。だから今度は給与準則できちっと給与体系を示して、大学を卒業して経験何年の者はどのくらいの格づけをやるのだということをきちんと示さなければいかぬ。
ところがその場合に隘路になるのは独立採算制です。この一貫した給与体系と独立採算制というものは矛盾する二つの思想なんです。独立採算制でやるということは、裏を返して極端な言葉で言えば営利性でやっていくということなんです。ところが営利性でやっていくような自由競争の中では、もうかるところともうからないところが出てくるのは当然です。だから、集まった収益を全部持ってきてプールして給料をやるという形ならば、賃金体系ができる。ところが独立採算制の原則はそうはいかぬ。プールにはなかなかとりにくいところがある。やはりそこまで考えるならば——私は次の質問に移りますが、全国の社会保険協会連合会というものがあるわけなんです。ここでたとえばプールならプールするとか、厚生省が全国の連合会と契約を結ん、で、そして今度はその契約を下の各府県の協会に移していくなら移していくという工合に、何か一貫したものにしないと、とても今のままでは不平が起る。今の姿でいっておれば、これは健康保険病院からストライキが起りますよ。蒲田病院とか千葉県の松籟荘なんかごたごたが起ったというのは、いろいろほかの原因もあります。人事の異動の問題なんかあるけれども、結局人事の異動の問題なんかがそういう工合に起ってくるのは、そのポストにおらなければ給料が下るとかいろいろな問題が出てくるから、やはり給料問題、経済問題に関連している。そういう点でぜひ一つこの際注意をしておいてもらわなければならぬと思うのです。
次に全国の社会保険協会連合会の問題なんですが、その前に各都道府県にある社会保険協会というものには、一体健康保険の実施されておる事業主のどの程度のものが入っておりますか。大体東京でいってみれば、多分東京には五万余の事業主がおるでしょう。一体五万くいの事業主の中でどのくらい入っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/18
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019・小沢辰男
○小沢説明員 全国の社会保険協会は、政府管掌の加入適用の事業主をメンバ—にしてやつておるわけでございます。役員はもちろん御承知の通り東京でもある一定の限定された数でございますけれども、一応社会保険協会のメンバーとしては全事業主をメンバーにしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/19
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020・滝井義高
○滝井委員 そうしますと政府管掌の健康保険に入っておる事業主は全部入っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/20
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021・小沢辰男
○小沢説明員 組織としては一応そういうことになっておるわけでございます。ただ問題は分担金等のこともございますので、それを特に協会として強制するような建前をとっていない、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/21
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022・滝井義高
○滝井委員 問題はここにあるのです。いいですか。国の財産を無償で貸すのですよ。そして借り受けたものは一体だれかというと事業主の団体なんです。ところが、私は全部の事業主が入っておればまだ社会保険協会というものは意義があると思っておった、全部入っておるものたと思っておったが——保険局長は全部入って起るように縦に頭を振られておったが全部は入っていないのです。五万余の事業主の中で、東京都で見ると、ここに事業案内があるが、これは協会から十周年で出たものです。その三十二ページに、本会組織の現状というのがあって、「組織強化のために、都下五万余の全適用事業主を会員とすべくあらゆる方法で、入会勧誘を行っている実情であるが、幸い逐次本会の理解が深まり入会率も向上し、現在(昭和三十一年十二月末現在)では、適用事業主の五割五分に当る二七、七五七事業主が会員となっている。」こういうことなんです。半分しかなっていない。そこで私はこの前言ったのですが、一部の事業主に国の財産を無料で貸して、そして公けのことをやってもらうのじゃ、こういうことでやってもらっておるわけですから、この病院の運営をうまくやろうとすればまずこの協会をこの際改組する必要がある。少くとも公益的な仕事をやろうとするならば、当然そこに労働者の代表も学識経験者も入って運営する形を作る必要があるというのはここなんです。これは全事業主がやっておるなら私はそう大して文句を言いません。そうしてその人方だけの金でやっておるなら私は文句を言いません。しかし税金の結晶である国有財産を無料で貸しておるのですから、この運営はわれわれ国民の代表者としての識学経験者あるいは労働者の代表も入ってやるのがほんとうなんです。ところがそれがそうなっていないところに問題がある。私は全員が入っていると思っておった。あなた方も今の御答弁で全員が入っているということですが、実情はこうです。勧誘これ努めておるけれどもなかなか入らない。この実態についてはあなた方も御存じなかったので、やむを得ぬのでこれ以上言いませんが、これは一つあなた方も十分御研究いただかなければならぬと思います。そうしますと次には、協会は一体病院から負担金をとっておるのかとっていないのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/22
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023・小沢辰男
○小沢説明員 ただいま滝井先生から、協会というものが全事業主が加入するような改組をやって、そういう面から立て直しをしなければいけないという御意見があったわけでございますが、先生お持ちの東京社会保険協会の寄付行為をごらんになっていただいてもわかりますように、「本会の会員は東京都下において健康保険法及び厚生年金保険法の適用を受ける事業主とする。」ということがございます。従いまして発起人等が集まりましてこの規定を作ってやったわけでございますが、ただし会費の関係がございますので、現実には今おっしゃるように全事業主というわけでなくて、ようやく半分に至ったという状況でございます。なおこの前も申し上げましたように、健康保険法では保険料の納入義務あるいはその他適用の申告義務の一切を事業主の責任ということにいたしておるわけでございます。一方健康保険病院の財産というものは、なるほど政府管掌でありますので国有資産になっておりますけれども、この財源は、前回申し上げましたように、全く例外的に、四年前の結核対策から国の補助金をもらって、三分の二を自分の方の保険料で出して作りました結核ベッドの例外はございますけれども、全部保険料でまかなっているものでございます。この保険料は政府管掌の適用事業主が納めた保険料でございます。従いましてそれらの施設を——健康保険福祉施設の最も本質的な点は、健康保険の被保険者のためでございますので、健康保険法上全体を代表して責任を持っている事業主の集まりに委託をして、民主的な運営を行なっているわけでございます。ただ先生のおっしゃるように被保険者の代表が入っていないということでございますが、これは直接協会の会員には事業主をもって組織いたしまして、協会の事業は事業主が相集まって相談をし、運営をしていくわけでございますが、ただ病院の運営につきましては、この前のときにも申し上げましたように、私どもとして病院運営委員会というものを設けるように指導をさせまして、また準則にもはっきりそれを置くことになっておるわけでございます。そうした運営委員会の中に被保険者の代表あるいは公益代表あるいは事業主の代表というようなそれぞれの関係者の組織を作らすようにいたして、被保険者の声が病院の運営に反映いたしますような措置は一応考えておったのでございます。しかしおっしゃるように、保険協会の運営が純粋にそうした形になっていることが望ましいものでございますから、できるだけ健康保険、国民厚生年金保険の適用を受けている全事業主の参加を勧奨しているわけでございまして、その点は御了承をいただきたいと思うのでございます。
それからお尋ねの病院から社会保険協会に負担金をとっているかということでございますが、東京の例等を見ましても、病院から負担金をとって協会の財源に充てるという例はほとんどないと私どもは聞いております。しかしながら健康保険病院は病院全体として一つの集まりの組織を別に持っております。これが健康保険病院協会の組織でございます。ここで院長先生あるいはその他のお医者さんの先生方が集まって、年に一回学会を開くとか、その他必要な事業をやっておられますが、その場合の協会の分担金は、それぞれ自分たちのそうした目的のために、ベッド数その他に応じまして、若干の負担をしておられるという実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/23
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024・滝井義高
○滝井委員 そうしますと社会保険協会は病院に負担金を課しているわけではない、こういうことなんですね。これをはっきりしてもらわぬと、私は課しておると思っておったのですが、そうすると、院長その他と医療従業員等の学術その他の向上のために、あるいは病院の発展のために自主的にやっておった、しかし協会は強制的に各病院に負担金は課していない、こう理解して差しつかえありませんえ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/24
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025・小沢辰男
○小沢説明員 その通りにご理解願って差しつかえないと思います。
なお私どもとしましては、余裕のあるところとないところとございますから、余裕のあるところからは、先ほど先生がおっしゃいましたように醵出を願って、余裕のないところへ協会の方でむしろそれを回していくというやり方をとっていくべきじゃないかという考え方があるわけでございます。しかしながら、現在地方々々における協会のやり方では、そこまでわれわれで強制するわけにいきませんので、近く私どもの手元で全国の社会保険病院を、先ほど先生から御意見がありましたような運営の仕方に持っていきたいということから、目下その方法を考究中でございます。できますならば近くそれを具体的なものにして参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/25
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026・滝井義高
○滝井委員 ぜひ一つそうしてもらいたいと思います。
次に、この健康保険の病院の運営管理については、厚生省と都道府県の間にはどのような手続なり話し合いが行われておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/26
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027・小沢辰男
○小沢説明員 私どもは健康保険法の施行令の規定によりまして都道府県知事が二十三条の福祉施設の関係の権限を持っておるというふうに考えておるわけでございます。都道府県はそれぞれ受託者との問に委託契約を結んでおります。それらの契約書の中に厚生省から示した運営準則に基いて経営を受託しますということになっているわけでございます。そこで私どもの方も健康保険病院運営規程準則というものを作りまして、その準則に従った運営規程を作らすようにいたしております。これは各病院、各経営受託者で相談したものができ上っております。その規程を都道府県知事の承認を受け、都道府県知事はさらに厚生省のわれわれのところに持って参りまして承認を受け、それで運営をいたしておるわけでございまいます。従いまして私どもは健康保険病院を健康保険法二十三条の趣旨に沿うような運営をやらすように、そういう面からはっきりと縛っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/27
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028・滝井義高
○滝井委員 今のような御答弁で、言葉の上では一応わかります。しかし実際問題として厚生省と都道府県との間には、今言ったような運営準則その他いろいろのもので県にお示しになっておる。そうすると県知事の代行をする者は保険課長なんですね。保険課長はいわば知事にかわって委託者になるわけです。同時に今度は社会保険協会の常務理事として受託者になる。この関係は一体どういうことになるのかということなんです。運営規程を作る場合でも、保険課長というのは知事の立場でいわば甲なら甲の立場になる。そして協会は常務理事が出ていきますから乙の立場になる。そうして甲と乙とがいろいろ契約を結ぶのです。そうすると、乙が甲に協議する、こうなる。いろいろ給料その他重要なことをきめるときは、社会保険協会の常務理事の乙が、委託者である知事の甲に協議をする、これは同一人ですよ。だからあなたの言うことは県にそのままいく。県の言うことはそのまま保険課長にいく。保険課長の言うことはそのまま常務理事にいっちゃう。だからさいぜんもネコが障子を破ることを言いましたが、そういう結果になってしまっている。だからこれをほんとうにあなた方がやれようとするならば監督者は監督者、受託者は受託者、きちっと切り離さなければいかぬです。悪い言葉を使えば、独占資本家と高級官僚とが結託をして——いやそうですよ、簡単な言葉で言えば。機構がそう思われても仕方がない形になっている。そして日本の零細な大衆をいじめ、搾取をする形ができている、この病院の組織を見てこういうことを言う人がおるわけなんです。どうして高級官僚と独占資本が結託しておるかと言えば、協会の上に集まっているのは資本家ばかりだ。そして一方病院の上の方の給料をもらっているのはだれかといったら、お役人の天下りばかりだ。事務長や何かはみんなそうです。こういうところに、今度は現職の保険課長がどっかりと常務理事としてすわっている。こうなると、まあ品がいいかどうかわからぬけれども、長そでの医者や薬剤師や歯科医師というものはどうにもならぬということです。きゅうきゅうしておるのです。だからこういうものを私は考えなければならないと思う。この機構を見ると、厚生省、知事、保険課上長、協会常務理事、事務長、これで一貫してやられちゃう。みんなあなたの方から事務長に意思が通じちゃうのです。そうすると、医療従業員はみんな浮いて、足がついておらぬ。だから、不平の持っていきどころがない。持っていってもぴしゃんとやられちゃう。上に持っていったって、事務長の意思が通じてきてしまっているから持っていきどころがない。だからモデル病院が非常に陰惨きわまる病院になっている。機構的に見てそういう形が出てきてしまっている。だから昭和二年に日本の健康保険ができて、当時は労務管理としてできてきたそのなごりを今にしてとどめておるということは問題がある。だからこの際私が言いたいことは、病院にも協会にもメスを入れて、二十世紀の後半の皆保険のにない手としての組織に切りかえる必要があるということなんです。独占資本と官僚が結託してもけっこうだから、皆保険をやられるにない手としての姿を、一つとってくれ、これができぬ限りはこれはやはり問題がある。今保険課長いろいろ答弁をしておりますけれども、こういうところに問題があるのです。
そこで、この全国の社会保険協会、これが一番親玉なんですから、これについて少し聞いてみたいのですが、この社会保険協会連合会というのは一番厚生省に身近なところにあるのですが、この連合会はいかなる任務を持っておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/28
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029・高田正巳
○高田(正)政府委員 政府管掌の事業主、これを独占資本というにはどうも少し小さ過ぎると思うのですけれども、今独占資本と役人が結託をして、非常に工合が悪いようなことになっているというふうな印象の御質問がございましたが、悪いことだけを申し上げますとそうでございますが、決してそう御質問から受ける印象ほど私は工合が悪いものでもないというふうに考えているわけでございます。しかし御指摘のように、確がにこのやり方につきましては検討を加える必要があるということは、私も先ほどちょっと申しましたし、小沢君からも御説明を申し上げましたが、検討中なのでございます。特にその重点は、先ほど先生がちょっと示唆されましたように、いい病院と悪い病院とあって、それぞれ独立採算をやっておりますと、非常に不均斉なものにならざるを得ない。その辺のとこるを何かプールをして、全体的に一つの観点から均斉のとれた運営に持っていったらどうであろうか。そうするためには都道府県の社会保険協会に委託しておって、それが果してうまくいくかどうかというふうな点、いろいろ実はそちらの方向で検討を加えているわけでございます。しかしこれは一時にやりますと、非常に工合の悪いことも起りますので、目下その方向で地ならし的な措置をいろいろ講じつつ検討を加えているという段階でございますので、十分研究させていただきたいと思います。
なお、これも御参考まででございますが、先ほどの十四カ所ほど給与改訂をまだやっておらないという受託団体の中で、市に委託しているのが実は相当多いのでございます。全体的に市に委託しているのは数が非常に少いのに、その比率から申しますと、その十四の中に市に委託しているのがずいぶん入っているのでございます。実情はそういうことでございまして、今先生が御指摘のように市みたいなところでやっていれば安心だけれども、協会みたいなところではとても工合が悪いということでもないようでございまして、この辺のところも実情として御検討の御参考に供したいと存じます。
それから社会保険協会連合会の任務は何かという仰せでございますが、これは平たく申し上げますれば、各府県にありまする社会保険協会の連合体でございます。普通世間にありまする連合体と大体同じような性格を持っておりまして、民法上の社団法人でございます。事業といたしましては、各政府管掌の三十人以上従業員を抱えておりまするところには健康保険委員というものをお願いいたして起りまして、そういう方がおいでになるわけでございます。そして従業員が健康保険等の手続をなさるような場合にもいろいろ御相談に乗っていただきます。またこれが同時にいろいろな啓蒙宣伝の一つのルートになっているわけでございますが、そういう健康保険委員の指導というふうなことをやっていくのでございます。もちろんこれは道府県の社会保険協会を通じてでございます。それから社会保険のつどい、疾病予防講座というようなものを開催することによりまして、被保険者、被扶養者の保険奨励事業、これを都道府県の社会保険協会を通じてやっております。それからいろいろ出版等もやっております。また御存じのように年に一回の勤労者陸上並びに水上競技会でございますが、これらの共催とか、都道府県社会保険協会の事務担当の講習会でございますとか、そういうような普通の連合体がやっておりますような仕事をやっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/29
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030・滝井義高
○滝井委員 普通の連合体と同じような任務を持っておる団体だそうでございますが、そうしますとこれは各都道府県の協会を会員としておるわけですね。そうするとその会員から負担金を取るわけです。負担金の取り方は前年度の十二月三十一日現在の厚生年金保険の被保険者数を基準として、各都道府県割、被保険者数割ということで、いろいろむずかしいことで取るようにあります。その場合に都道府県の協会は全国の協会に負担金を出すのですから、当然都道府県の協会というものはやはり会費を加入事業主から取らなければならない。その場合に加入事業主の出すお金はそれぞれの会社が保険料とは別個に自分の会社のお金を出すわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/30
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031・高田正巳
○高田(正)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/31
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032・滝井義高
○滝井委員 そうしますとその集まった金が今度は負担金となって連合会に集まってくるわけですね。そうすると一体その連合会の予算というものはどういう形で組まれておるのですか。全国連合会は病院の経営もやることになっておるわけなんですね。そうすると都道府県の協会も病院を国から施設を借りてやっておる。連合会もやっている。こういうことになると連合会の病院と都道府県の病院との関係というものは一体どういう関係になるのか、まずその連合会の予算の関係とそれから上部に位する連合会の病院と都道府県の病院との関係、その二点をちょっと説明しておいて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/32
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033・小沢辰男
○小沢説明員 連合会の会費でございますが、おそらく先生は定款をお持ちでおっしゃっていられると思いますが、各都道府県の協会がメンバーでございますので、都道府県の協会からそれぞれ規模に応じまして分担金という格好で入っております。しかしながら全収入が三千七百万ございますけれども、そのうち分担金として地方の協会から負担を願っておりますのは二百七十七万見当でございます。主としてこの協会の収入は印刷関係広報関係のものを中心にしてやっておるわけでございます。また分担金で百七、八十万を各協会から出させておりますけれども、支出の方では各それぞれの都道府県の方にほとんど同額に近いくらい、たとえばいろいろな都道府県の協会の保険医等の集まりあるいはその他いろいろな指導費としてこれを配賦いたしておるのでございます。そういうような状況になっております。三十一年の資料によります都道府県に対する補助金といいますか協会から出したものについては大体二百万見当が出ているのでございます。私どもといたしましてはなるべく全国協会は広報事業によって仕事を進めていくように政府が直接社会保険の啓発指導をやるかわりにむしろ社会保険協会の——地方でもやっていただきますけれども、その連合体としての連合会でいろいろやっていただくというようなことを考えておるわけでございます。
それから第二点の、連合会も病院をやることになっておるというお話でございますが、新宿にございます社会保険中央病院、これが全国の健康保険病院の中央病院という資格になっておりますので、これだけを全国の協会連合会の経営といたしておるわけでございます。その他は全然今のところは経営に関与いたしていないのでございます。この中央病院の事業につきましては、協会内部で特別会計として全然別にいたしてございまして、従って協会の理事にも院長先生に入っていただいております。いわば全国の健康保険病院のセンターという意味で、連合会が名義上この経営主体になっておるという形でございまして、ただわれわれとしては今のところはその機能を発揮させておりませんけれども、将来はやはり中央病院としてのいろいろな機能をそこで発揮していただくようにいたしたいものと、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/33
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034・滝井義高
○滝井委員 健康保険病院の問題についてはこれ以上私は言いませんが、私本日で二回目ですが、二回の質問を通じて明白になったことは、結局健康保険病院の組織は厚生省の外郭団体のような状態になっておるけれども、責任の所在というものがきわめてあいまいもこな状態にあるということは大体はっきりしました。これはやはり確立してもらわなければならぬ。しかもそこに働く従業員の労働条件の決定方法というものがやはりこれもはっきりしていない、非常に多くの疑問に包まれているということ。それからいま一つは、私いろいろ資料を探してみましたが、逐に社会保険協会なりこの病院の決算というか財産目録というものを見つけることはできなかった。これはおそらく天下に公表されていないのじゃないかと思う。そうしますと会計、財産というものがちょっとわれわれにもわかりかねるところがある。こういう大きく分けりて三つの点、これは当然公的な医療機関に準ずるものになるわなのです、第三の範畴に属するといっても、私的医療機関でないことは明白なのだが、だとすれば会計、経理、財産というものを公表する必要があるのですね。財産目録なり決算というものはやはり公表しなければいかぬですよ。これはあるいは私が見つけきらなかったのかもつしれません。それらのものも今後明朗にやっていただいて、この社会保険協会連合会の定款の第二条に「本会は、健康保険及び厚生年金保険事業の円滑な運営を促進し併せて被保険者及び被扶養者の福祉を図ると共に社会保障制度の確立に資することを目的とする。」こういうりっぱな目的を書いているのですから、ぜひ全国的な組織を持っていらっしゃる病院とその協会が、この目的に沿うような機能を発揮し、そしてそこに働く従業員というものが、その崇高な社会保障確立の使命の達成ができる姿を作ってもらわなければいかぬと思うのです。もう私これ以上言いません。ぜひしてもらいたいと思うのです。健康保険のモデル病院がこの体たらくなんですからね。それに今度は日雇いのような弱い者をわれわれはそこで見てもらうわけだ。法律で日雇いの方の制度がよくなっても、受け入れる病院の実態というものがよくなかったら、これは画竜点睛を欠くことになる。そこでぜひ一つこの病院をうまい方向に持っていってもらうことを最後に大臣に確約してもらって、今度はその病院の上に乗って日雇い労働者のことに具体的に入りたいと思うのですが、大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/34
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035・堀木鎌三
○堀木国務大臣 かねて滝井さんの持論であるように、私どももそうでなければならぬと思っているのです。皆保険を進めて参ります上において、医療機関自身の体系的な整備をはかって、その機能をおのおの発揮させることによって初めて皆保険が社会保障の一貫として国民の福祉と結びついて参るということにつきましては、何らの疑いを持っていないのであります。しかも全体を通じて見ますと、この医療機関の体系的整備ということが、どっちかというと一番ウィーク・ポイントになっていることを認めざるを得ないと思いますので、今後政府の施策として皆保険を進めて参ります以上、これに伴って医療機関も対応したものでなければならない。そうしてこれを改善し、充実して参ることは当然なことである、こう考えて、ぜひこの問題の解決に当りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/35
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036・田中正巳
○田中(正)委員長代理 午後一時に理事会を開くこととし、一時三十分まで休憩いたします。
午後零時三分休憩
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午後二時二十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/36
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037・森山欽司
○森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行します。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/37
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038・滝井義高
○滝井委員 午前中に引き続いて、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案について質問をいたします。この制度が昭和二十九年三月に発足して以来、次第に対象の被保険者がふえて参りました。本年度の予算を見てみますと、八十一万八千人になっておるようでございます。この八十一万八千人という被保険者の算定基礎は、一体どういうところから持ってきたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/38
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039・小沢辰男
○小沢説明員 非常に事務的な計算基礎の問題でございますので、私から御説明申し上げます。私ども三十三年度に八十一万人と見込みましたが、その前に、まず本年度の見込みを立ててみたのでございます。三十二年度の見り込みといたしましては、まず被保険者数の伸びの割合を出さなければいけないわけでございますので、三十一年三月から十月までの実績と、三十二年三月から十月までの実績をそれぞれ比較いたしてみたのでございますが、それが約一割一分三厘でございます。この上昇率というか、三十一年の十一月から三十二年三月までの延べ数実績にその増加割合を掛けまして出ましたものに三十二年三月から十月までの実数を加えます。そうすると、これが三十二年の見込数になるわけでございます。これは各月の増加割合を見ておりますので、一応十二で割りまして、それによって三十二年度の平均の被保険者数を出しておるわけでございます。その三十二年度の見込数は七十七万三千百二十一人でございます。この見込数に先ほど申し上げました上昇割合を掛けるか、あるいは過去の上昇割合をその通り伸びていくものと見るか、あるいは来年度の上昇率をそれとは若干下回って見るか、さらに上に見るかというようなことを検討いたしたのでございますが、来年のいろいろな状況から考えまして、この上昇割合を約六%程度に見込んだのでございます。七十七万三千八百三十一人にこの約六%の上昇割合を含めまして、八十一万八千人にということで、若干数字はまるめてございまづけれども、そういうふうなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/39
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040・滝井義高
○滝井委員 昭和二十九年の日本経済の不況のときの状態は、二十八年に対してどの程度の伸びを見たのですか。わかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/40
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041・小沢辰男
○小沢説明員 二十八年度に比べまして二十九年度の被保険者の見込みをどういうふうに見たかというお尋ねでございますが、御承知の通り二十八年度は実際にはあまりこの適用が普及しておりません。また二十九年の施行後間もない期間の被保険者の総計ということも非常に困難であったのでございますが、二十八年度のときには五十六万三千人ばかりの被保険者数であったわけであります。それで約一割程度の伸びということで六十万八千九百、約六十一万人の見当にしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/41
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042・滝井義高
○滝井委員 私がそれを知りたいのっは、今回昨年度に比べて昭和三十三年度の上昇率を六%見て八十一万八千人と、こうまるくしておるわけなんです。戦後日本には三つの経済の大きな変化があっています。一つは第二次大戦の後における消費ブーム、これは一つのリアクションを日本経済に与えた。その次は、朝鮮動乱の後における景気後退です。そして今回一つの大きな経済変動が日本に起ろうとしている。この現実にわれわれが経験しようとする経済変動の本質というものは、これは消費ブームでもなければ、朝鮮動乱のあとの景気後退と本質的に違うのですよ。過剰設備に対する過剰生産というような状態のもとにおいて、今度それを一体どうするかということなんです。従って当然そこに出てくるものは、表面的には外貨危機という形で現われておるけれども、少くとも経済の全般的な均衡、国内的な均衡を確保するためには、相当足手まといのものを切り捨てていかなければならぬという形がはっきり出てきているわけなんです。そうしますと、一応われわれが参考になるという点は、やはり二十八年から二十九年のあの不況のときの推移というものは、やはりこういう基礎的な資料を整理して計画を立てるためには、一応注目しておく必要がある。そうすると、今回六%の上昇で八十一万八千人、こう見られておるのだが、なるほど当時二十八年ごろには、まだ日雇労働者健康保険法というものが確実な姿で樹立されていなかったかもしれないけれども、一応五十六万三千四百六十七人というふうに二十八年度の決算見込みで被保険者数を見ておった。ところがそれが決算で六十万八千二百九十一人となっておる。一体その当時の予算の見方がどういう見方になっておったかということです。予算と決算の関係なんですね。どうしてかというと、今回三十二年度において予算は七十四万六千人と見ておったわけなんです。ところが今度は決算見込みになりますと、七十七万四千人という工合に、ここに約三万人ばかりの増加になっておるわけなんです。私は三十二年という年は、なお日本経済には神武景気の余波があったろうと思う。だから、これはある程度予算と見込みとはそう私は違わないと思うのです。しかし三十二年度に比べて三十三年の経済様相というものは非常に違ってきておる。なるほど国際収支というものが四億七千万ドルくらいの赤字だろうといったものが一億一千八百万ドル程度、四分の一程度に下ったということは、昨日あたりも川島幹事長が得意になって一つの選挙放送をやっておりますが、それだけにこれはやはり日本経済に相当の変動がくる。そうすると、変動が現われてきてから生活保護なんというのではおそいのです。これは昨日も社会事業の質問をやったのですが、おそい。まず第一に現われてくるものは失業保険とそれから失業対策です。失業対策の中で重要な役割を演じておるのは日雇い労務者健康保険法です。ここらあたりの見積りなんです。ここらあたりの見積りがとういう工合になるかによって、傷病手当金を十四日を二十一日に切り上げることもできるし、待期四日を三日にすることができる一つの情勢が見通しのいかんによっては出てくることにもなるわけです。従ってそこらあたりを、今くどくどとお述べいただいたのだが、結論は六%の上昇だ、それでいいのかどうかということなんです。もう少し数字をあげてやってみますと、三十二年度中のいろいろ経済の指標をピークと最低とを分けてみますと、工業生理が三十二年七月が最高で二七八・六、最低が十一月で二六七・九です。ところが最近はどうなっておるかというと、今年の一月は二四五・三です、生産はこれだけ縮小してきておる。その場合における常用雇用というものを見てみると、昨年の七月は一二一・一、十二月は一一九・六です、ぐんぐん下ってきておる。さらに重要なことは日雇労務者健康保険法と非常に関係するものは臨時雇用ですよ。臨時雇用は昨年の四月が最高です、最高が一六七・九です。ところが昨年の十二月になりますと、なんと一二三・九なんですよ。そうして失業保険の離職者票の受付件数が昨年六月は五万二千件だつった。ところが十二月は十三万一千件です。そうして今年の一月は幾らかというと、十五万一千件です。こういうように生産も、物価も、雇用も半年間に急激に縮小の方向に向いておるのです。従ってたった六%程度でいいのかどうかという点が問題になってくるのです。まあかって久下さんが局長のときに結核のワクの拡大をやった、それから結核対策を強化した、それから入院応診等を強化してくれた。ところがそのときには被保険者数について百万の見違いをやった。そうして久下保険行政の大きな失敗を残して、川崎さんにちょんとやられた。だから高田さんもちょんとやられることもなかろうと思うけれども、とにかくこれは経済の変動期なんですね。従ってここらあたりは単に日雇労働者健康保険法だから八十一万八千人の問題だと軽く考えてはいかぬ。これは福祉国家を建設する上において一番どん底をささえるところの法律なんですよ。だから今のような日本の生産なり、——物価は私時間がないのでとやこう言いませんでしたが、物価、雇用、特に臨時雇用の関係、こういうところからだんだ首切りが出て生産が縮小することになれば、こういことでいいのかどうかということを、大臣にも一つお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/42
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043・小沢辰男
○小沢説明員 ちょっと私の申し上げ方が足らなかったものでございますから、もう一度申し上げますが、上昇率約六%と申し上げましたのは昨年の三月から十月までをもととして、その年の前年との上昇割合を見ますと、先ほど言いましたように一割一分三厘であったわけでございます。これが上向きになるか下向きになるかということでございますけれども、私どもとしては被保険者の数というのは、あまり経済がよくないような段階ではむしろ失業保険その他で見ますよりも、日雇い健康保険の被保険者というのは、御承知のように受給要件との関係からいたしましてむしろ伸びが減る傾向になる。失業者はふえますけれども、日雇い労働者の受給要件との関係から見ますと、むしろ被保険者の増加が行われない。就業日数その他の点にも影響が出て参りますので、有効手帳を保持する数が前年のように増加割合一割何分という見方をするわけにいかないというような考え方からり、約六%程度の上昇と見ておるのであります。それからまた一つ事務的には有効手帳の保持すなわち手帳の交付数でございまして、必ずしも日雇い労働者の受給要件を満たした被保険者の数でもないわけでございます。健康保険のような被保険者の数の考え方とは若干性質を異にしておりますので、この点御了承をいただきたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/43
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044・滝井義高
○滝井委員 なるほど日雇い労務者の健康保険というのは、受診資格を得るためには、二ヵ月を通じて二十八日とか、三カ月以上六カ月までの間に七十八日ですか、働いておかなければいかぬといういろいろの要件があります。ありますが、それはやはり一つの失業対策事業というものが、——急激に臨時工が首を切られて失業者になっている。ところがこれがもし失業対策事業の中にどんどん受け入れてくれれば、必然的に二、三ヵ月するうちには有資格者がどんどんふえてくることがほんとうなんですよ。ところがそういう工合に日本経済が急角度に縮小しておるときに、それがふえてないということになれば、結局政府が予算というものにこだわって施策を実行してない、やらないということになる。ほんとうに失業対策事業なりにどんどん受け入れれば問題ない。なるほど今回の石田労政において失業対策事業というのは非常にとっております。それから失業保険の受給者もふえるだろうというので、失業保険のワクもふやしております。しかし今の日本の不況の状態、いわゆる資本主義の本質的な問題に関係する一つの恐慌状態をとってきた段階では、相当手足まといのものを切り捨ててこなければ、独占資本というものは立ちゆかぬと思うのです。そうするとこれはことしの失業対策事業なり失業保険のワクではまかない切れない。必ず補正予算を組まなければならぬと思っておるんです。それは時期はおくれるかもしれません。今年になるか、今年の終りが来年の初めになるかもしれませが、この段階になりますと生活保護に必ず及んでくるでしょう。それはもう日雇い労務者に及んでこざるを得ない客観情勢が生まれてくる。貧しい国民大衆の強い要望が必ずそういうところにくるのですよ。そういう点でもう少しそこらあたりの計数が、三月から十月までの伸びが一一・三%というならば、やはり少くとも六%ではなくて一割程度の伸びは見ておく必要があると思う。昨年の三月から十月以上に、日本経済というものは昨年末から今年当初にかけては縮小傾向が激しいのです。大企業でも雇用の増加している状態を見てごらんなさい。全部臨時工です。その臨時工が切り落されていっておるのですから、それは直接にはまず失業対策事業に入っていく。それから今度はその次の段階として日雇い労働者健康保険だろうと思う。だからまず第一段階としては石田労働大臣に質問して、それから今度あなたの方になるのだろうと思うが、まあこれはころばぬ先のつえですよ。年度末になって失業保険をもらう人がどんどんふえてしまって、その人たちが失業保険が切れてしって、六カ月後には失業対策事業に殺到するというときに、おそらく政府はそこで一つの防波堤を築くのですよ。それによってあなたの方にいくことは少くなるかもしれないけれども、いくことは相当いくと私は思う。それはただ時期が非常にずれてくるだけです。六カ月という失業保険の時期があるのですからね。そこらあたりの見通しを当然こういう重要な政策を立てる場合には、全体の日本経済の推移というものをあなた方も考えて立てられておると思うのです。ただ今の段階では前年度あたりの実績、たとえばあなた方が健康保険の予算を組むときに、健康保険の過去の実績を見ると、上るときがあり、下るときがある。上るとき、下るとき交互にやってきておる。上ったときの平均と下ったときの平均をとって、その平均を足して二で割ったもので予算を組むというようなこと、そういうような方式を高田保険局長が説明してくれたことがあったと記憶しておりますが、そういう機械的なやり方では、今年度の経済の状態から考えて、いかぬのじゃないかという感じがするのですがね。そこらあたりもう少ししろうとの私にもわかるように一つやってみてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/44
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045・高田正巳
○高田(正)政府委員 今の滝井先生の御質問、一口に申せば日本経済の何と申しますか、客観的な情勢というものと、日雇い労働者の被保険者数というものを、もう少し結びつけたような見方をすべきではないか。結論的には六%程度の上昇では少し足りないのではないか、こういうふうな御趣旨だと存じ上げます。それに関連をして二十九年のあの日本経済の状況、これの二十八年との比較がわかるならば非常に参考になるだろうという御意見であります。ごもっともに拝承いたしたのでありますが、先ほども御説明を申しましたように、ひ雇健康保険法は二十九年一月十五日から施行になっておりまして、二十八年と二十九年度との間の比較というものが、実はできない状況になっておりますので、その辺のところ、私どもも考えないではなかったのでありますが、さような資料がないということでございます。
それから六%がいいか悪いかというその点になりますと、これはいろいろの見方があろうかと存じます。不況になるから日雇い労働者はふえるだろう、これも確かに一つの見方でございますが、同時に非常にブームのときにも日雇い労働者は、過去の実績によりますとふえておるのであります。従いましてその辺のところは非常に複雑な製素というものがいろいろかみ合って一つの増加数の形として現われて参るわけでございますので、それを一々分析をいたしましてどうのこうのというふうなことでやりましても、案外正確そうでありましても、実績と比べたらそう正確なことではなかったというふうなことになりかねない要素を多分に持った性格のものでございます。そこへもっていって先ほど小沢君が説明をいたしましたように、日雇い労働者の健康保険におきましては被保険者数、すなわち有効手帳保持者数と受給要件を満たしております被保険者数というものが離れてくるわけであります。そういう関係がございますので、健保の場合のように有効手帳を持っておる人の数に、たとえば支出の面では一人当り医療費をかけて、総支出を、医療費を見る。収入の方では平均標準報酬に料率をかけて収納率をかけて人間の数をかけるというふうな実は見方をしておらない。支出の方におきましても必ず実績を参考としていろいろ医療費の推移というものを見る。収入の面におきましてもさような見方をいたしておるわけであります。従ってこの八十何方という有効手帳保持者というものの数の意味が、健康保険の場合等とは非常に違っておるのであります。そういうことが一つと、それからそういう見方をいたしておりますので、保険料、医療費というものについては、過去の総額の動きを見て予算の推定をいたしておる。ただ今回の傷病手当金、出産手当金というふうなものにつきましては、これは被保険者数というものを基礎に予算の積算をいたしておる。そういたしますと、実は端的に申しまして、見込みの被保険者数がもう少し多くなりますと、むしろ予算の面では赤字がふえるというふうな格好になってくるわけであります。そういうことにもなりまするので、私どもといたしましては先生仰せのように、被保険者数がふえて見積りをすれば、そこに傷病手当金の支給期間の延長でありますとかあるいは待期の短縮でありますとか、そういうものに充てる財源がひょっとしたら出てきやせぬだろうかというお気持であるかのごとく私ども伺ったのでございますが、その点は今申し上げましたようなことで、むしろ逆になるわけでございます。
それからもう一点、被保険者が予算の見積りよりふえました場合にはどうなるかということでございますが、これは片方において保険料がふえて参り、片方において給付がふくれ上って参るわけでございます。そこが見合っていけば幾ら被保険者数が見込み違いであってもとんとんということになるわけであります。しかしそれが見合わないと、そこに若干の黒になったり赤になったりする要素が出てくる。決算としてはそういう要素が出てくる。しかも日雇い労働者の場合におきましてはどちらかといいますと、被保険者数がふえますれば、黒の要素が出るというよりはむしろ赤の要素が現実的には出て参るという傾向があるわけでございます。さような点も申し上げて御参考に供したいと思います。
くどくど御説明をいたしましたけれども、この有効手帳を持っておる者の予測数というものは、日雇い労働者健康保険の財政との関係を見ますると、健保の場合とは非常に違う。従ってこの見積りが、六%の伸びが多いか少いかということについては、もちろん十分御議論のあるところであろうと存じまするし、私どもも六%でぴしりと合うという確信は持っておりませんけれども、しかしそれを日雇い労働者健康保険の財政問題と結びつけて考えてみますれば今のようなことになります。従って私どもは、先生が御指摘なさいますほど、その六%が正しいかどうかということについてのこだわりを持っておらないというような気持でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/45
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046・滝井義高
○滝井委員 私の言いたいのは、最近の日本経済の情勢が、われわれが戦後経験をした経済の変動に比べて、非常に本質的な要素を含んだ状態が出てきている。従ってそういう要素というものを六%という上昇率に見合って考えた場合に、そういう根本的な、一つの不況状態というものの上に立った六%の数字をとるについて考慮が払われたのかどうかという点を私は説明を求めておるわけなんです。その点についてはどうも私は納得がいかないところがあるのですが、なお健康保険と日雇い労働者の健康保険との間にいろいろ違いがあることはよくわかります。しかし非常に似ておる点は、予算で組んだ被保険者の数よりか決算の方がふえておるという点については同じです。これは健康保険においても予算で見た人員よりか決算人員の方がふえてきております。これはここ数年がずっとふえてきております。それから端的に見て違うのは、一人当りの保険料を見てみますと、これは保険料で納めた額よりか給付の額の方が日雇いは多いのです。しかし健康保険の方はここ一、二年医療費の引き締めその他によって、医療給回付の面が非常に縮小され始めた。従って保険料の方が多くて保険給付の面が少い、そういう違いがあります。これは端的に見ますとありますけれども、これは就業の形態も違うし、それからわれわれが社会保障というものの中の特に医療保障というものを重点的に一体どこに持っていくかということを、考えた場合に、まずあなた方が言っている高い国庫負担をいい組合にやる前に、まず保険の組織の中へ入っていないなお二千四、五百万の国民大衆がおるのじゃないか、これに持っていかなければならないじゃないか、これがいわゆる今井さんや末高さんや近藤さんあたりの理論ですね。それをここに持ってきてみれば、日雇い労働者については健康保険よりかわれわれは親身にならなければならぬということなんですよ。これはどちらも親身にならなければならぬが、負うた子より抱いた子という形をとれば、日雇労働者の健康保険の方を抱いた子にしなければならぬということなんですね。そうするとやはり日本経済の影響を、中小企業が受けるよりか臨時的な要素を持っている日雇い労働者諸君の方が深刻に受けるということですね。従ってそれだけこの保険を審議するに当っては、経済全般との考慮を慎重に払った立て方をしていくべきだ、こういう主張なんです。こまかい数字は次に入りますが、そういう点で日本経済との関係をまず考えてもらわなければならぬと私は思う。次にお伺いしたいのは、今まであなた方が予算をお組みになるときには、たとえば保険料を見てみますと、一級、二級、三級、四級ということで予算をお組みになって予算を出される。その後社会保障制度審議会等の意見をお聞きになったところが、それは二百八十円以上と二百八十円以下にやりなさいということで二本にしちゃった。そうしますと、今まで保険料を四本立でしておったものが、二本立で合うことになるのかどうかということなんです。なるほど被保険者の数八十一万八千人にして、その平均の保険料は被保険者一人当り四千百六十九円だから、四千百六十九円に八十一万八千人をかければ、一応保険料の収入が出てきます。それは算術の上ではそうです。しかし四級で予算を組んだものが、今度二級で合うことになったことが私は不思議だと思うんです。役人というものはうまいものだと感心するんです。こういううまい芸当ができるならば、あとでも触れますが、四日の待期を三日にするくらいのことは、そうこだわらぬでもむずかしくないのじゃないか。十四日の傷病手当金を二十一日に引き上げたって、年間を通じて一億五千万円くらいならわけないことなのではないかということなんです。あとでいろいろ具体的に触れていきますが、その第一は、四級にしておったものが二級になった場合、どうして計算が合うのか、それを一つ教えて下さい。それから四級にしておったときの一級の賃金日額というのは 一体どの程度のものを見て、一級、二級、三級、四級と分けていったのか、当時の原案を教えて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/46
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047・高田正巳
○高田(正)政府委員 ごもっともな御質問でございます。最初私どもが考えておりましたのは、一級、二級、三級、四級と四段階に分けました。それで一級は四百円以上、二級は二百八十円から四百円未満、それから三級は百六十円から二百八十円未満、四級は百六十円未満、もう一度繰り返して申しますと、四百円と二百八十円と百六十円とで区切ったということでございます。そういう形で考えておったわけでございます。そうして一級の保険料は、前が事業主で、あとに申し上げる方が被保険者でございますが、十一円、十一円、二級は十一円、十円、それから三級が十一円、八円、四級が十一円、五円、こういうことでございます。ついでに御参考までに申し上げますが、現行法では百六十円で区切っておりまして、一級は百六十円以上ということになっております。それで保険料の負担は八円、八円、こういうことでございます。それから百六十円未満が二級でございますが、これは八円、五円ということになっておるわけでございます。こういうふうなことを考えておりましたが、社会保険審議会の御答申等もございましたので、一級と二級とを一緒にしてこれを一級にし、三級と四級とを一緒にして二級にいたし、そして保険料は御提案申し上げている通りに、一級におきましては十一円、十一円が本則である。ただし被保険者の十一円分は当分の間十円とするということになっております。それから二級の方は十円と八円でございます。それで当初考えました案と今回の案と保険料の見込みがぴたりと合うのはおかしいじゃないかという仰せでございますが、これは合いません。三十三年度で六千七百万円ほどの減収になります。ところが一方、二段階にいたしましたために給付の方も二段階になったわけでございます。傷病手当金、出産手当金の給付の方も二段階になったわけでありまして、その方で支出減が三十三年度で千六百万円ほどございます。そういたしますと国庫の三分の一の負担も減って参りますので、さようなものを全部差し引いて参りますと五千六百万円ほど足らずになる。こういうことでございます。ところがこれらの点は、それだけの収入減ということになるわけでございますが、全体の保険料額が、約四十億近い保険料収入でございますので、これば私どもが行政努力をいたすことによって、五千五、六百万円程度のものなら何とか一つこなしていけはせぬだろうか、まだ予備金が一億八千万円ほど支出面で計上してございますので、何とかやっていけるという事務的な検討のもとに、社会保険審議会の御答申を尊重する意味で、さような原案に調整を加えまして得提案を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/47
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048・滝井義高
○滝井委員 どうも五千六百万円の赤字がはっきりしておって——これは行政努力でできるかもしれぬけれども、行政努力でできる、できると言えば予地算というものは要らぬことになる。やはりこうして国会に予算を出されたからには、当然歳入歳出というものはバランスがとれていなければならぬと思うんです。そうでなかったら、これが衆議院の予算委員の段階だったら、われわれは予算修正を当然要求することになる。幸い予算も参議院を通ってしまって、今ごろこれをやるものだから、あとの祭になっているんだけれども、行政努力でやれる、やれると言うのなら、待期を四日を三日にしても行政努力でやれることになる。そういうことはちょっと私は受け取れぬと思う。それなら当然その分の国庫補助をふやしてもらわなければならぬということになるのです。私はどうもうまい手品ができたなと思っておった。予算書の説明には四級で出されて、そうして説明を受けた。ところが出てきた法案は、いつのまにか二級に切りかえられている。これはうまい計算をやったものだ、大したものだと思っていたが、実際は大したものじゃなかったんだ。正直に五千六百万円の赤字がある。それは今からの行政努力だ、こういうことでございますから、一応五千六百万円の不足は不足として次の質問に入っていきます。
この日雇い労務者の健康保険はいろいろ改正をされて、被扶養者の範囲とか、療養の給付とか、その他の給付あるいは受給要件、いろいろ変遷を経て現在の三十三年度のこの一部改正までやってきているわけなんですが、療養給付の面を見ると、依然として健康保険より二年短かいです、結核なんかは三年だ。今まで傷病手当金や出産手当金はなかったのが今度つけていただいたわけですが、まず、今まで何回も私の言っている保険給付の場合における待期なんですね。健康保険は三日なのに、どうして四日の待期にして五日目からにしなければならぬかということなんです。これは何か理論上の根拠があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/48
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049・高田正巳
○高田(正)政府委員 傷病手当金の制度につきましては、これはわが国でもそうでございますが。世界的に待期という制度があるわけでございます。どういう意味を持っているかと申しますと、労務不能かいなかの判断にある程度の日数が必要であるということが一つ、これは非常に悪いことでありますが、仮病、怠慢というふうなものの防止を制度的に行うというふうな意味を持っておるものだと私どもは承知をいたしておるわけであります。ただその三日がいいか四日がいいかということにつきましては、別に三日でなければならぬ、四日でなければならぬという理論的な根拠はございません。実は今回の私どもの案を社会保険審議会に御諮問申し上げまして、審議会の方で参考人を呼んで、いろいろその方々の御意見を拝聴されたわけなんでございますが、その中には、日雇い労働者の労務の実態といいますか実情から申して、むしろ待期はもう少し長い方がいいのではないか、その方が運営が円滑にいきはせぬだろうかというような意見を吐かれた方もあるくらいでございます。それで私どもこれを四日にきめましたのは、今申し上げましたように、何日でなければならぬという理論的な根拠はございません。ただ失業保険が現在連続四日の待期を設けておるわけでございます。日雇い労働者の失業保険と傷病手当金というものは法律上の性格は別でございますが、あぶれれば失業保険、病気になって労務不能になれば傷病手当金ということで、社会的機能においてはよく似たような作用を営むものでもございますので、その他の賃金区分とか、あるいは支給金額等につきましても、失業保険と今回は合せておるわけでございます。それらの失業保険との関連から私ども四日ということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/49
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050・滝井義高
○滝井委員 少くとも政府が皆保険政策をやろうとするならば、疾病保険との関連を考えなければいかぬのです。全く対象の異なる失業というものと——それは大きな社会保障ということになれば、疾病、それから廃疾、失業、死亡というようなものは一連のものかもしれません。しかしやはりわれわれが医療保障、所得保障というように物事を分けて考える場合には、医療保障は医療保障の範疇の中でものを考えて統一するくせをつけておかぬと、医療保障のものを失業保険やほかの遠いところから持ってきたのでは話にならぬのです。だからわれわれが一番目標としているものは政府管掌の健康保険のはずです。われわれはいままででも、ずいぶん日雇い労働者健康保険の問題を論議するときに、政府管掌健康保険はどうだということで論議してきたわけですから、理論の筋を通していこうとするならば、待期というものは政府管掌が三日なら三日にすべきである。われわれは政府管掌健康保険についても三日の待期があることには異議がある。それは病気を早くなおして、順調に労働力を再生産しようとするならば、やはり待期ができるだけない方がいいのです。すぐにも医者にかかって見てもらわせる。そうしてある程度病気が重くなるというならば、すぐ休んで傷病手当金をあげるということにした方がいいのです。たまたま過去の実績が仮病を使ったり、怠慢の者がいるから、ある程度状態を見てからというようなことも、保険制度の一つの逆選択と申しますか、そういうような弊害の面を非常に強く見ている。これはもっとお互に大らかな気持になって皆保険制度をやっていこうとするならば、やはり国民的理解というものがその制度に対してないといかぬと思う。まず制度を作るときに、国民が悪いことをするだろうという疑いを持っていくところに問題があると思うのです。そこで私は一挙に日雇い労務者を撤廃せよということは申しません。まず健康保険にさや寄せをしていくということが必要ではないか。そうすると、一番身近なものは四日ではなくて、三日をとってもらえばいい。しかも経済的な条件、労働条件等を見てみると、中小企業の労務者諸君が集まっている政府管掌の健康保険よりさらに条件が劣悪なんですから、それらの日雇い労働者諸君を三日にするということは、少くとも皆保険政策を打ち出している政府としては当然のことではないかと思うのですが、単なる予算だけの問題で政府がそれにこだわるのはおかしいと思うのです。何千億の金が要るというなら別ですが、わずかに四、五千万円の金があればできることなんです。これは一年分三千二百万円ですよ。これくらいのものは制度の前進をはかろうとするならば、まず健康保険とここらあたりを一緒にすることが必要でないかと思うのですが、大臣この点どうなんですか。非常に社会保障を主張されたのですが、これは一番弱い層なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/50
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051・堀木鎌三
○堀木国務大臣 個々の点をおとりになりますと、私ども自体でももう少し改善したいという点はあるわけであります。そのうちで待期の三日という問題は確かに私ども自身も考えなければならぬと思います。ことに社会保障制度審議会自身が三日を希望しておる。また諸外国のILOその他の関係におきましても、三日というものが大体標準になっておるということから、そういうことをいたしたいという考え方は捨てていないのであります。しかし滝井さん、一つ一つを爆撃して、これだけはやらなくちゃならないとおっしゃられれば、そういうことはありますが、御承知の通り、日雇い健康保険は何にもしなくても相当な赤字を埋める対策を講じなくてはならぬ。その間に傷病手当金、出産手当金という長い間の懸案をわれわれがここに解決したいという考え方で、意欲を持って、それは確かに滝井さん自身がおっしゃるよつうに最も経済条件の悪い方にわれわれ自身が解決の主力を注がなければならぬ。それならば日雇い健康保険だ。被保険者数から見ましても今度の国庫負担金額から見ましても、従来に増して非常に、ほかの社会保険との均衡からいえば、これだけの国庫負担をするのがいいか悪いかという問題すらずいぶん議論があるだろうが、全く滝井さんのおっしゃるような経済条件の悪いところに、そうして保険条件の悪いところにわれわれ自身の主力を注ぐべきだという考え方から今回改正に当ったのだ。従って国庫負担も一割五分から一挙に二割五分になりました点、それから傷病手当金等に対しまして国庫が三分の一の負担をするというふうな他に見られないところの飛躍的でありあるいは他の保険ではないようなものにまで日雇い健康保険に考えたというところからいえば、おそらくこれから滝井さんが待期の問題のみならずその他の問題をおあげになるでしょうが、私は全体としては今回諸般の情勢を察知して日雇い健康保険は最も力を注いだ一つである。他の比重から見ても私は今回の日雇い健康保険の改正を決しておろそかにしているものではないということは考えます。ただ今おあげになるでしょうし、その他の問題につきましてもわれわれは現状では満足してはいない。確かに滝井さんのおっしゃるような方向に向って進めて参りったいということは考えておりますが、やはり全体ととしてのうちから、バランスをとってしかもその比重は単純な比重でなしに、弱いところに重きを置くという考え方、ことに各種保険のうちの給付内容もだんだんよくしていきたい。そうしてバランスのとれたものにしていきたいという考え方で物事を進めて参ることだけは当然であり、またそういたさなければならぬ、こう考えておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/51
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052・滝井義高
○滝井委員 なるほど大臣の言うように一割五分の国庫負担が二割五分になりました。しかしその国庫負担の増加割合を見てみますと、三十一年には三億九千二百九十二万五千円の国庫負担の一般会計からの受け入れが、三十二年には予算として八億二千六百五十五万九千円、実績が七億一千八百五十九万八千円と約倍以上になった。ところが予算の面で八億二千何がしのものが今年は十三億五千百七十七万二千円と、国庫負担の割合からいくとそう画期的にふえているのではないですよ。ただ率は一割五分から二割五分に上りました。問題は私はこの保険は健康保険とは少し違うと思うのです。もしこの保険が国庫負担をやらずに、傷病手当金も何もやらずにほっておけば全部生活保護にいくのです。病気になれば医療扶助の形で要ってしまう。だから結局われわれの税金から出した場所が生活保護にいくか日雇い労務者の健康保険にいくかという違いだけなんです、本質的に見つると。だとすればわれわれはやはり国民に一つの希望と自信と誇りを持たせようとするならば、われわれは自分の掛金の中から自分の病気をなおす、保険でやっているのだという、これの方が今の日本の現状におけるものの考え方としては——これは何も生活保護を受けることは恥かしくありませんが、現実の国民感情と日本の国民の生活保護に対する認識の状態から考えたら、これは国民に希望と誇りを持たせるためには、日雇い労務者健康保険に金をつぎ込む方がいい、国庫負担をうんと出す方が生活保護の医療扶助に金を出すよりかむしろ私は国民的な誇りの点からいったら有効だと思います。従って、これは健康保険の制度とはそういう点において根本的に違う要素を持っていると思うのです。だとするならば、なるほどこれは大臣の力によって、三十一年度一割であったものが三十二年度には一割五分になり、一割五分が二割五分とさらに一割飛躍したということは私は敬意を表しますが、問題の本質はそういうところにあるということを一つ考えておく必要があるのじゃないか。だから国庫負担がむしろふえることが当然であって、ふやさないということの方が私は政治としては間違っていると思うのです。ふやさなくても生活保護で要ってしまうのですから、国の予算の総ワクの中においては大してプラス・マイナスはなかったということなのです。むしろ日雇い労務者に持っていった方が、無形ではあるけれども国民的の誇りを少くとも何人かの人に植えつけただけ得であるという感じがするのです。その点で少し大臣と私たちの見解が違いますが、その健康保険にしわ寄せをするということで三日にすべきではなかったかと思うのです。しかしあなた方が四日といえば、これはあなた方の万が数が多いのだからやむを得ませんが、どうも理論的にそこらあたりが納得のいかない点があるのです。そうしますとあなたの方の資料の六十三ページを見ると、「病気療養のための休業状況」というのがあります。これは休業期間が五日までは入院がないのですね。私は、あなた方はこういうところから理論的な根拠を持ってきたのかなと実は期待しておったが、そういう説明がなかった。で、たまたま休業日数五日までは入院がない、六日目から初めて入院日数が六日と出てくるのです。これはどういう計算でこういう表ができたのかよくわかりません。延べ日数か何かでやっていったのだろうと思いますが、とにかく休業期間六日になると入院が六日とあるのですね。まあまあ病気を五日ぐらいしたって入院するような病気はないのだ、従って傷病手当金をやる必要はないだろう、だから待期を健康保険より一日ふやして四日にする、そして五日のところがちょうどすれすれのところになるのだからということではなかったかと、私は実はこの表を見て善意に解釈しておったのですが、今そういう説明はなかったのだ。これはあるいは見落しておった、自分で資料を出して忘れていらっしゃったかもしれぬと思うけれども、こういう表を見るとなるほど五日までは入院がない。しかし日雇い労働者諸君というのはなかなか入院ができないのです。この六日のところをごらんになると休業期間が六日で四十六件数があるのです。だから件数一件を一人として、六日休んだ人が四十六人おるとすれば、結局四十六人の中の人が六日だけ入院したということじゃないかと思うのです。これはどういうことでこういう資料を出されたのか、資料の説明を聞かしてもらってもいいのですが、そういう工合に解釈するとすると六日なのですね。ずっと先の方にいって十日から十四日の休業になると、件数は百三件だけれども百三十七日入院しておるのだから、この近所になるとだんだん長期の入院が出てくるということになるのだろうと思うのです。やはり日雇い労働者の実態から考えて入院ができない実態がある。だから普通の健康保険はこれはどうなっておるか、私は今ここに資料の持ち合せがありませんが、健康保険と比較しみて、健康保険が休業日数が大体何日あったら入院日数はどの程度になるのか、おそらく日雇い労働者の諸君の方が入院率はずっと低いと私は思うのです。そうすると医者にかかれずに家で寝ておく、売薬かなんかでやるという形が出てきておるのではないかという感じがするのです。この表との関係はなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/52
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053・高田正巳
○高田(正)政府委員 待期四日と定めましたのは、もちろんこの表も頭の中にはございましたが、これだと待期五日の方が率が悪いわけで、それよりは何と申しましても失業保険との関連を一番考えたわけでございます。滝井先生は、これは医療保険なんだから失業保険等はどうでもいいじゃないか、それは政府管掌健康保険にならうべきだという仰せでございますが、それも確かにごもっともな御主張だと私ども考えております。ただ、都合のいいところだけは失業保険と合せて片っ方の都合のいいところは疾一病保険と合せるということは、これまた実際問題としてなかなかできません。御存じのように、疾病保険についての国の援助というものは、一応傷病手当金については国は援助をしておりません。従って、国の援助をします場合にも、医療費に対してのみいろいろ考えておるわけでございます。そこを失業保険に三分の
一国庫負担しているじゃないか、社会的には同じような機能を営むものなんだということが、私どもがこれに対して医療費の方は二割五分、国庫のてこ入れを主張いたした一つの根拠にもなっておったわけでございます。そこらの点もなかなか私ども苦しい事情がありましたことを御了承いただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/53
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054・滝井義高
○滝井委員 まあ四日と三日、いろいろ見解の相違はありますから、それ以上言いません。
〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕
次は、今度できた傷病手当金の問題です。これもやはり私の理論から言えば、健康保険は平病だったら六カ月ですね。そうすると十四日、これは何か理論的な根拠があったのですか。それから出産手当金の十四日、こういうのはやはり医学的に考えなければならぬと思うのです。たとえばわれわれの家内でも、お産をしてたった二週間しかたたないのに、おい、仕事に行けといって道路工事にやれるかどうかということなんです。実際自分がその地位になったときのことを考えてみるといいのです。労働基準法だって何だって、産前産後四十二日ですかきまっておるのです。出産手当金十四日ということは、言葉をかえて言えば、あとは仕事に行けということなんです。立法というものは、やはり自分がその身になってやってもらう必要があると思う。自分が日雇い労働者になって、お産をした場合に、一体十四日間もらって十五日目から仕事に行けるだろうかということを考えてみる必要があると思う。なるほど国の予算やなんかもあるかもしれません。しかしこういうところは、ほかのものを削ってでも考えるべきではないかと思うのです。傷病手当金は十四日出ているのですが、これだって、十四日もやるということになれば相当病気は重いですよ。日雇い労働者諸君は栄養状態も悪いのです。健康保険で一番治療日数が長くかかるのは生活保護者、それから日雇い労働者の患者ですよ。これはあなた方の統計の実績が示しているだろうと思う。そうしますと、やはりここらあたり、傷病手当というものは、初めて出るときでも、労働基準法の違反をさせぬようにやらなければいかぬと思うのです。それを譲ったにしても、産前産後五十日も六十日も休めるというわけでもないので、われわれさいぜん少くとも三週間くらいはしてやる必要があるのではないかと主張した。国の予算がないといっても、一兆三千百二十一億円という今年の予算のうちから一億五千万円の金が出ぬとは言われぬでしょう。平年度としても一億五千万円です。それならあなたがさいぜん言われたように、予備金が一億八千四百二十五万九千四百円あるのだから、これを全部注ぎ込んでもいいじゃないですか。あと五千二百万円の下足は行政努力でやりましょう、これを注ぎ込みましょう、これくらいの大胆さがあってもよいと思うのです。自由民主党の政治にあってもよいのです。せっかく傷病手当金だとか出産手当金、哺育手当金を作っておっても、けちくさくて、もらう方も、何だ、たった十四日くらいと言われる出し方と、なるほど保守党の政府もやはりよいことをやってくれるわいと思うくらいの出し方と——同じ出すなら、たった一億五千万円ですから、一兆三千億の予算のうちから一億五千万円が出らぬというのはナンセンスです。そう言えば、滝井さん、限りがない、あれもこれもと言うけれども——やはりこういうものは社会保障の基礎的なものだと私は思うのです。大臣の社会保障の基礎的条件を整備すると言う以前のものです。特に私は出産手当の十四日というのはひどいと思うのです。どうして厚生省のヒューマニストの諸氏が十四日にしただろうかと思う。傷病手当十四日というのは、財政がなかったとか理屈がつくでしょう。しかし、お産をして休んだ場合に、あなたの奥さんの場合を考えてごらんなさい。あなたが病気をして、奥さんが日雇い労働者になっていくといった場合に、二週間経って、さあ、仕事に行けと言ったって、ようおやじさん追い出せません。そういう点医学的に見ても、子宮の収縮の状態、悪露の状態から考えても三週間です、妥協するにしても。これは専門家の意見を聞いたのか、と思うのです。こういう出産手当をそこで切るということは、十五日ごろから出ないということなんです、何回も言うけれども。だから、こういうことは単にしゃくし定木に財政の問題ばかりから見て行かずに、人道的な面、医学的な面から見て行く必要があると思う。傷病手当金を妥協するにしても、出産手当金の十四日というのは、どうも大臣ひどいと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/54
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055・堀木鎌三
○堀木国務大臣 実は内幕を言うと、この出産手当を幾日にするかということが最後まで残った問題であることは事実であります。だから私は、その点では、医学的見地はともかくとして、なるべく実は金額のふえ方のそう多くないということも考えた。しかし滝井さん、もう一つ、あなたは国庫負担と給付の何だけをおっしゃるのだが、少しも保険料のことにはお触れにならない。私どもの計算によれば、前の保険料をきめたときから考えてみると、事実日雇い労務者の収入もふえている。だから本来の十一円、十一円であれば、大体あなた方の希望されるものはさしあたり満たされるのじゃなかろうか。しかし私たちは、この際急激に労働者の保険料を上げるということもどうかと思ったので、まず当分の間十円にせざるを得ないという実態を考慮しました。保険というものは全体の考慮に立っているので、一つ一つ言われると実にこちらとしても痛いところがあります。しかし全般をながめて、これがまず現段階で妥当であるかどうかというところできめていかなけわばならぬ。要するに問題は全体の各社会保険を通じて重点を置いたということは確かであります。やはり今度の各社会保険の中で日雇い健康保険は私は重点を置いたと、ひそかに考えておるのでありますが、そういう点でおり考えを願いたい。どうも出産手当については、実は内幕を言うと、最後までこれは残っておったものであります。何しろ赤字は解消する。新しい手当は作ろうというところに、急激に御希望に沿えなかった点があるだろうということは考えられるのであります。これらにつきましては、この保険財政の進展に伴って、私どももさらに一段と努力して参りたい、こう考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/55
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056・滝井義高
○滝井委員 保険料のことを言われましたが、私はまだあとで保険財政があるので保険料は今からやるつもりだったのですが、保険料が出たから、保険料について私の意見を述べますが、御存じの通り、単価は三百六円です。昭和三十二年の予算では単価は三百二円だったと思います。そうしますと、三十二年十月一日以降平均して三百六円に改訂をされておるわけです。御存じの通り、一円保険料にとられるということは、日雇い労務者諸君というのは、二十二日働かしてくれとか、二十五日働かして下さいとか言っておるけれども、なかなかそれだけ働かしてもらえないのですね。昨年度われわれがしたときには、東京のある地区では十三・三日ぐらいだったのです。とにかく十円ずっとられると、二十五日働けば二百五十円とられてしまう。そうしますと、大臣が保険料を言うなら、まず賃金を上げてくれということなんです。賃金を上げれば十一円、十一円出しましょう、こうなる。ところが賃金は三百二円からわずかに四円上げておって、そうして今度は保険料をとってやる、これはなるほど保険だから保険料は出さなければならぬと思っております。しかし一体今の日雇い労務者諸君の賃金の実態で、まともな生活ができるかどうかということなんです。これは考えてみる必要があるのです。だから問題は、もっと本質的なものを言えば、私は日本経済の状態をいろいろ初めに言いましたが、実はやっぱりここらあたりにも問題がある。結局保険料の問題にいけば、賃金の問題になってくるのです。だから労働省の意見を聞いてごらんなさい。労働省もここに呼んでもいいですが、厚生省がこの日雇い労務者の健康保険を賃金を扱わずして保険料だけ上げてやることは困るというのが労働省の意見です。何なら労働省を呼んで賃金を上げろという主張をしてもいいのです。実際に賃金をそのままにしておいてやるということが問題なんです。だからこれを三百五十円ぐらいに単価を上げてくれればおそらく労務者諸君は十五円でも出します。ところがそれを上げずに保険料を上げる——これはまず病気をする前に人間は食わなければならぬですよ。生きなければならぬですよ。生きた人間に初めて病気があり、出産があり、傷病手当金がある。だから、まず病気をする前に生きていくことを問題にするならば、それは賃金問題です。だからその賃金を大臣は——私は保険料のときに言おうと思ったのですが、大臣の方から保険料で私に挑戦してきたから言うのだが、大体保険料を上げるときに賃金を上げることを交渉したことがあるかないかということです。現実に三百円では食っていけませんよ。しかも緊急失業対策事業にしても、失業対策事業にしても、一家から一人しか出られない。そうますと、これはおやじが失業して就労していけば、奥さんはもうつけない。家で子守りでもするか内職する以外にない。これはたった一人しかつけないことにきまっている。そうすると、一人の人にたった四円ばかりの賃金を上げておって、そして今度は一日一円ずっとられていった日には、一体米価が上ったり、運賃が上ったり、ふろ代が上ったりした分はどうなるのだということなんです。結局三ばい食っておった飯を二はいに減らし、十回入っておったふろを三回減らして七回にするということ以外にはないのです。話は小さくなるけれども、そういう小さな問題です。小さな問題を基礎にしてそこを論じていかなければ大きな問題に到達しない問題なんですね。だからそこらあたり大臣の方で、保険料を滝井さんは言わぬというけれども、保険料は私は言わぬのじゃない。あとで賃金問題と一緒に言おうと思っておった。だから、大臣は賃金問題を言ってくれたことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/56
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057・堀木鎌三
○堀木国務大臣 私がそれはその通りにとれば、滝井さんのお話はよくわかります。そうすれば賃金を上げたときは、保険料を上げてもいいかということにもなるのです。そうすると、上げるべかりしものを上げなかった点もある。詳しいことは政府委員から説明させますが、今あなたは三十二年を基準におとりになったのだが、この保険料の問題は結局施行当初からの推移を見なければなりません。お手元に持っておられる先ほど引用された参考資料の中でごらん願っても、事実保険料は私は決して十一円が比率において労働賃金と伴っていないものだとは考えない。場合によればもっと上げ得る余地があります。しかし私は基本はそういう形式の比率をとろうとは思ってなかったのです。それは根本が安いからと いうことは私は滝井さんと同じでございます。だから私どもはやはりそういう実態にかんがみて当分の間労働者の保険料を十円ということに押えたのはそこに私どもの考慮があるのだ、こういうふうに考えておるのであります。根本において決して現在の労働者の賃金がいいとかあるいはその他の労働条件がいいというふうには考えていないので、そういう問題も国民経済の発展とともに改善していくべく努力すべきである、これが当然政治の目標の一つであるということは、私は全く滝井さんと同じように理解しておりますが、単純な平均指数的な立場から言えば今お答えした通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/57
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058・滝井義高
○滝井委員 われわれがもらっておる資料を見ますと、「日雇労働者健康保険事業実績概況」という六十四ページを見ますと、平均賃金が二十九年実数が三百九十円、昭和三十年度が三百七十八円、昭和三十一年度が三百八十二円、昭和三十二年度九月末四百二十円とこうなっております。実績はそうだったかもしれませんが、実際に予算単価というもので見ていけば、これは三百六円でしよう。だから三十二年度十月一日以降は三百六円なんですから、一応それを基礎にしてものを考えていかなければならぬということになる。それは四百二十円にしたって、二十五日まるまる働いていけるならば、これは四百二十円で保険料十一円くらいとってもよろしかろうといいます。しかし実際面着できずにあぶれるのが多いのだから、そういう点はやはり考慮しなければいかぬのです。今自由労務者になることさえもなかなかむずかしいのですよ。もうあれは一つのりっぱな職業になりました。失業保険が切れたならば、職安に行って失業対策事業に入っておる、そのうちに何かいいものが見つかるだろうという足場ではなくして、実にあすこで三年以上働いておるという者はずいぶん多いのです。そういう恒久的な一つの職業化の傾向をたどっておるとするならば、この保険もさいぜん失業保険の状態をいろいろ資格要件のところへとってきた、それから失業保険については国が三分の一出すということを持ってきた、いろいろあります。しかし私の言葉をもってすればそういうものはならわずに、保険給付費の三割なら三割を国が出す、こういう考え方で筋を通すべきだと思うのです。なるほど失業保険でいく必要はないと思う。他の社会保険の一番下にしかれる土台ですから、私はあとでまた触れますが、そういう方向でむしろ厚生省は来年度から予算獲得をやるべきだと思うのです。保険給付費の何割、こういう仕方でいく方がはるかにいいんだと思う。複雑でない。傷病手当金や出産手当金はその三分の一を国が負担する。それから医療給付費は二割五分負担こんな複雑なやり方をするよりも、それをひっくるめて保険給付費の三割、これの方が単純で、簡明率直ですよ。他の保険との関係も理論的な筋が通るでしう。今まではいろいろ立法の過程で紆余曲折があって、そういうことがあったかもしれぬけれども、もし三十四年度でやられるならば一刀両断、そういう方向でやられるべきだと思う。それの方が筋が通ります。出産手当金のところからとんだところに飛び火しましたが、出産手当金や傷病手当金というものは、理論的に見ても、あるいは医学的に見ても、二週間程度ではあまりにも冷たい。私はこういう結論だけを下しておきます。これを二十一日にしてくれという折衝を自民党にしておりますが、それならば保険料を上げろという冷たい御返事でございます。保険料を上げるならば賃金を出せというと予算がない、こういうことらしいのです。予算はあるのでしょうが、こういうことは一つ選挙のときに国民大衆の意見を聞いて審判を仰ぐことにいたしましょう。
そうすると問題はあなたの言われた保険料の問題でございますが、日雇い労働者の健康保険で、保険料の問題をわれわれは根本的に考えなければならぬ段階がきたと思う。というのはこの保険料が定額制であるということなんです。この定額制であるということが、結局保険財政に弾力がなくなってきておるということなんです。そうすると、私はそれがいいかどうかなお疑問ですが、あなた方の見解をお尋ねしておきたいのですが、さいぜん四百円、二百八十円、百六十円、百六十円以下、こういう四段階に分けておる、健康保険にこれをさや寄せていくとするならば、標準報酬制というものですね。健康保険はそれぞれ収入に対する段階を設けて、ある程度弾力ができておりますね。頭打ちはあります。上限と下限はきめられておるが、保険料の収納については相当弾力があるわけなんです。ところが日雇い労働者健康保険というものは、定額制であるということに、やはり一つの問題がありはしないかということなんです。この点についてあなた方何か考えたことがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/58
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059・高田正巳
○高田(正)政府委員 定額制でなく、健保みたいな標準報酬といいますか、従っておそらく率ということになってくると思いますが、そういうことを考えたことがあるかというお尋ねであります。私ども考えたことはあるのでございますが、日雇い労働者というものの実態から申しまして、そういう制度をとることは保険の技術上非常にむずかしい。従って今日の保険料は二等給ではありますが、フラット制をとり、しかも徴収の方法についてはスタンプ・システムといいますか、そういう方法をとっておるわけであります。技術的にそれを健康保険のようにしていくことは非常にむずかしい問題である、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/59
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060・滝井義高
○滝井委員 私は日雇い労働者健康保険が、保険料の定額制のゆえに前進というものはもう限界があると思うのです。これを前進せしめようとするならば、もはや国庫負担を大幅に持っていく以外に方法はないのですよ。そうでなければ賃金を上げるか、この二者択一ですよ。だからもし国庫負担が出したくない——これは国庫負担ということになれば労せずして保険経済を確立してやることになる。だからわれわれは苦闘の歴史の中から保険制度を確立しようとするならば、ある程度賃金を上げて、賃金の中からとる。そのかわり賃金だけは働いてもらう、こういう道を歩む以外にないですよ。ここに結局定額制という点にもはやこの保険の限界があるのですよ。だから来年度からあなた方ががんばったところで、国庫負担というものは、もう三割が限界ですよ。それを五割、六割に飛躍せしめることは今の日本経済と保守党の政治のもとではほとんど不可能な状態だ。ということになると、もはやここらあたりでやはり日雇い労働者健康保険に対して根本的に考え直さなければならぬ時期が、大体きつつあると私は思うのです。しかも昭和三十五年度を目途として皆保険をやろうとするならば、この制度は、今の姿のままでやっておれば皆保険に乗りおくれますよ。他の制度は全部給付内容からその他いろいろなものがどんどんよくなっていく。ところがこれだけは保険料のゆえに、賃金のゆえに、国庫負担が少いがゆえにおくれてくる、こういう事態が起る。こういう点がもうすでに今回の傷病手当金と出産手当金に現われたと私は思うのです。これはもう飛躍的に産前、産後六週間というようなところまで引き上げていくことは、なかなかむずかしいのじゃないかという感じが、今あなた方との一問一答を通じて私は直観をした。これはやはりそこらあたりをもう少し考えてもらわなければならぬ。現在の賃金体系のもとでは、もうフラット制以外にないとすれば、これは限界ですよ。この制度は八木先生実に熱心に努力されて、われわれはたから見て大いに感謝しなければならぬという気持はいつも感じますけれども、よくこの制度を考えてみますと、ここに一つの限界点があるという感じがせざるを得ないのですね。その点はよく考えてみて下さい。
それから少し数字になりますが、五十九ページの三十一年度の決算のところをごらんになると、一つの例ですが、保険給付費が二十八億四十五万三千円になっています。ところが、今度は六十六ページの表を見て下さい。六十六ページの給付を見ますと、三十一年は三十一億五千二百五十六万四千円になっています。そしてその欄を最後の計のところまでずっと見ていかれますと、保険給付の実数は三十二億三千二百二十八万一千円になっています。そうでしょう。この違いは一体どうしたことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/60
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061・高田正巳
○高田(正)政府委員 五十九ページの表をごらんいただきますと、今先生が御指摘になりました二十八億の下に、支払未済額として、一番最後の欄に四億三千百万円何がしとなっていますが、この数字を加えますと、六十六ページの三十一年度の数字になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/61
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062・滝井義高
○滝井委員 六十六ページの数字と五十九ページの数字は全部同じですか。保険給付の実数を見ると、ずっと違いはしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/62
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063・高田正巳
○高田(正)政府委員 今のように未払い額を皆足してありますので、その点が違ってきておると思いますが、数字は合っているはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/63
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064・滝井義高
○滝井委員 未払い額というものは、三十一年度以外はないですね。三十二年にちょっと見込みがありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/64
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065・高田正巳
○高田(正)政府委員 三十年までは、御指摘の通りございませんから、たとえば三十年の保険給付費を見ますと、二十三億三千三百万円でございますが、六十六ページも同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/65
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066・滝井義高
○滝井委員 わかりました。そうしますと未払い額というのは医療給付費の未払額ですか。療養諸費の未払額ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/66
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067・高田正巳
○高田(正)政府委員 医療給付費でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/67
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068・滝井義高
○滝井委員 三十一年度の四億三千百八十二万八千円、三十二年度の二億八千六百十二万七千円というのが、すでに五月末で決算をしても、なお未払い額が残っておるというのは、医療費にそんな未払い額はないのではないかと思うのですが、そういうのが日雇いにはあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/68
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069・小沢辰男
○小沢説明員 実はこれは三十一年度の二月分までの関係で、当然決算の出納期までに払わなければいけない金額でございます。ところが三十一年度の会計からは支出すべき収入がございませんために、従って赤字でございますので、その点だけが翌年度の支払いに回ったということでございます。しかしながら、御存じの通り支払い基金で、各管掌別に全部一括、資金をプールして払います関係上、日雇いの四億程度の金につきましては、保険医療機関にこれが残っているというような形は起らないわけでございます。ただ日雇い健保の財政の面では、四億三千百八十二万八千円というものが未払いで翌年度に繰り越されているわけでありますが、三十二年度の予算を編成する際に、それをさらに給付費につけ加えて、そのまた一割なり一割五分という、その当時きまった国庫負担率を、一般会計よりの受け入れの方にいたして予算を組んでいるのでございます。三十三年度の予算も、一応三十二年度の未払い見込みというものの数字を加え、その国庫負担をそれぞれ収入に計上してあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/69
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070・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、医療機関に対する支払いというものは完了してしまっている。しかし、その財源はどこから持ってきているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/70
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071・小沢辰男
○小沢説明員 支払い基金は、健康保険組合、あるいは共済組合、あるいは政府管掌その他の資金を一応プールして、少し向うがおくれても困らないような仕組みをとっているわけであります。もちろん、その財源はあとで日雇い勘定から払うわけでございますが、その月々の支払いというものは、たとえば健康保険組合、あるいは共済組合その他から、預託金という制度で資金を扱っております。従って組合全体から見ましても、たとえば、非常に運用に困難を来たしている組合の支払いが若手おくれる場合がございましても、それが全体の資金のプールで支障のないようにされている、こういうことでございます。もちろん、これがずっと続いて参りますと、その分だけの財源はどこかで見なければいかぬということになりますが、とにかく毎月々々の総体の資金の中でまかなって運転をいたしておりますので、その点は、医療機関にこの分だけが二月分が渡らなかった、こういうことはないようになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/71
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072・滝井義高
○滝井委員 基金にプールをしているというのは、多分三カ月間の平均の最高の一カ月分か何かを持ってくるわけでしょう。しかし政府管掌は基金に出していないわけです。そうしますと、組合は過去の最高の一カ月分を出しておったにしても、そんな日雇いの赤字まで埋めるだけの基金に余裕はないわけです。だから三十一年は支払いがずっと遅延しておったはずです。それで、だいぶ保険局長のところに陳情が行っているはずです。どうもそこらあたり、少しも遅延せずに組合だけのものでやりくりができるのですか。政府分は基金に預託はしていないはずです。だから、政府がどんどん入れぬ限りは、組合が日雇いの赤字までカバーしていくあれはないはずです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/72
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073・高田正巳
○高田(正)政府委員 お説の通りでございます。政府管掌というのは大口でございますので、政府管掌が金を払い込みませんと、基金の方では、その大口のものが金の払い込みがないということになりますと、全体がおくれるわけでございます。従って、政府管掌が非常に苦しい時代におきましては、今御指摘のように、全体の支払いが遅延しておったわけでございます。しかし基金におきましては金をプールしてやっておりますので、特に日雇いの請求書だけはおくらすとか、あるいは支払いの悪い、ある組合のものはおくらすとかいうふうなことはいたしておらないわけであります。ところが、最近におきましては政府管掌の財政状態がよくなりましたので、きちんきちんと入れておるわけであります。これは御指摘のように預託金はございません。しかし、きちんきちんと入れておる。従ってそこに組合関係の預託金というものがあるわけでございますから、日雇いの四億程度のものは十分資金ぐりをつけてそして大体予定の期日内に全体を払っておるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/73
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074・滝井義高
○滝井委員 資金ぐりをうまくやって、おくれていなければけっこうでございます。
そこで、やはり同じような数字でございますが、五十九ページの参考計数のところの、一人当りの医療給付費の三十二年の見込みを見ますと、五千二百三十円、三十三年度の予定を見ますと五千四百九十三円になっていますね。今度は六十七ページの診療報酬額の一人当りの金額(含む事務費)をごらんになると、三十二年の見込みは一人当りの金額が四千六百七十二円二十七銭七厘、三十三年予定額が五千百四十三円四十銭六厘、こうなっておるわけですね。これは少し数字が違う。片方は医療給付費になっておるし、一方は診療報酬の額になっておるわけです。この相違は一体どういうことなのですか。私は医療給付費だから事務費も含んでおるから、これは診療報酬の額といっても医療給付じゃないかと思ったのですが、数字が違うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/74
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075・小沢辰男
○小沢説明員 六十七ページの診療報酬額の一人当りの金額の数字には、五九ページの保険給付費の内訳としてあげてございます。その他の療養諸費が入れてございませんので、純粋に診療報酬だけでございます。従いまして参考計数の医療給付費の数字とこれが若干違っておるわけでございまして、この五千四百九十三円というのは実は全部を含んだもので、おそらく私どものプリントが医療給付費という文字を使っておりましたので、参考計数のところがお間違いになったのだろうと思います。むしろ私どものプリントを医療給付費並びに療養給付費というものの合計が五千四百九十三円、こういうふうに書けばよかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/75
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076・滝井義高
○滝井委員 医療給付費を療養給付費と直すと、その療養給付費の中には療養費払いの分なんかも入っておる。こういうものを引くと一人当りの診療報酬額は五千百四十三円四十銭六厘、こういうふうに五千四百九十三円がなる、こういうことでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/76
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077・小沢辰男
○小沢説明員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/77
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078・滝井義高
○滝井委員 大体私の疑問に思った数字のところはわかりました。
次に少し根本的な問題に入りたいと思いますが、これは来週にやることになりますから、零細企業従業員の問題と日雇い労働者の健康保険との関係、大都市国保と日雇い労働者健康保険との関係、こういう問題を少し大臣に聞きたいと思うのです。それできょうは四時ちょっと過ぎましたから、ちょうどきりがいいのでここらあたりでやめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/78
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079・森山欽司
○森山委員長 本日はこれにて散会します。
午後四時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X03319580403/79
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