1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月二十二日(火曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 森山 欽司君
理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君
理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君
小川 半次君 加藤鐐五郎君
亀山 孝一君 草野一郎平君
倉石 忠雄君 小島 徹三君
小林 郁君 椎熊 三郎君
田子 一民君 中山 マサ君
藤本 捨助君 古川 丈吉君
松浦周太郎君 山下 春江君
井堀 繁雄君 岡本 隆一君
五島 虎雄君 多賀谷真稔君
中原 健次君 山花 秀雄君
吉川 兼光君
出席国務大臣
労 働 大 臣 石田 博英君
出席政府委員
労働政務次官 二階堂 進君
労働事務官
(労働基準局
長) 堀 秀夫君
労働事務官
(職業安定局
長) 百田 正弘君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主計官) 鳩山威一郎君
参 考 人
(中央賃金審議
会委員) 稲葉 秀三君
専 門 員 川井 章知君
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四月十六日
委員松浦周太郎君辞任につき、その補欠として
遠藤三郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員遠藤三郎君辞任につき、その補欠として松
浦周太郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十二日
委員大橋武夫君、小坂善太郎君、保利茂君及び
古屋貞雄君辞任につき、その補欠として椎熊三
郎君、加藤常太郎君、福田赳夫君及び山口シヅ
エ君が議長の指名で委員に選任された。
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四月十八日
母子福祉法案(山下義信君外六名提出、参法第
一四号)(予)
調理師法案(草葉隆圓君外四名提出、参法第一
五号)(予)
同月十九日
健康保険法の一部を改正する法律案(野澤清人
君外五名提出、衆法第二三号)
同月二十一日
家族計画の普及促進に関する法律案(福田昌子
君外十四名提出、衆法第二四号)
同月十九日
医業類似行為既存業者の業務存続に関する請願
(井原岸高君紹介)(第三〇九八号)
同(楢橋渡君紹介)(第三〇九九号)
同(淵上房太郎君紹介)(第三一〇〇号)
民間電気治療営業禁止反対に関する請願外一件
(山下春江君紹介)(第三一〇一号)
同外一件(長井源君紹介)(第三一二六号)
同外四件(山下春江君紹介)(第三一三七号)
地方衛生研究所法制定に関する請願(八田貞義
君外一名紹介)(第三一三四号)
同(小林信一君紹介)(第三一五八号)
同(内田常雄君紹介)(第三一七一号)
同(荻野豊平君紹介)(第三一七二号)
同外一件(纐纈彌三君紹介)(第三一七三号)
同(吉川兼光君紹介)(第三一七四号)
同(植村武一君紹介)(第三二二六号)
同(亀山孝一君紹介)(第三二二七号)
同(櫻内義雄君紹介)(第三二二八号)
同(古屋貞雄君紹介)(第三二六〇号)
同外一件(三木武夫君紹介)(第三二六一号)
同(門司亮君紹介)(第三二六二号)
同(八木一男君紹介)(第三二六三号)
結核療養所の作業病床増設等に関する請願(五
島虎雄君紹介)(第三一七五号)
国立療養所等の給食費等増額に関する請願(五
島虎雄君紹介)(第三一七六号)
国立療養所等の看護人員増加に関する請願(五
島虎雄君紹介)(第三一七七号)
国民健康保険法の一部改正に関する請願(五島
虎雄君紹介)(第三一七八号)
未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間
延長等に関する請願(五島虎雄君紹介)(第三
一七九号)
生活保護法の基準額引上げ等に関する請願(五
島虎雄君紹介)(第三一八〇号)
結核予防法に関する請願(五島虎雄君紹介)(
第三一八一号)
健康保険法に関する請願(五島虎雄君紹介)(
第三一八二号)
結核回復者に対する公営住宅優先割当等に関す
る請願(五島虎雄君紹介)(第三一八三号)
重度障害者の障害年金支給に関する請願(河野
密君紹介)(第三一八四号)
保育所措置費国庫負担増額に関する請願(山下
春江君紹介)(第三二二九号)
国民健康保険法の助産給付に関する請願(小金
義照君紹介)(第三二五八号)
生活保護法の一部改正に関する請願(福永健司
君紹介)(第三二五九号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
最低賃金法案(内閣提出第五七号)
最低賃金法案(和田博雄君外十六名提出、第二
十六回国会衆法第三号)
家内労働法案(和田博雄君外十六名提出、第二
十六回国会衆法第四号)
失業保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一五五号)
最低賃金法案(内閣提出)他二件について、派
遣委員より報告聴取
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/0
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001・森山欽司
○森山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の最低賃金法案並びに和田薄雄君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案を一括して議題とし、審査を進めます。
本日御出席を願っております中央賃金審議会委員稲葉秀三君を参考人とし、意見を聴取したいと存じますが御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/1
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002・森山欽司
○森山委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
なお、この意見聴取は質疑応答の形で行います。さらにあわせて、この際労働大臣も御出席のことでありますから、労働大臣につきましても質疑を続行されんことを望みます。中原健次君。——さきに稲葉参考人に対して質疑要求のありました井堀委員はまだ御出席になっておりませんので、中原君から賞疑されんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/2
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003・森山欽司
○森山委員長 速記をとめて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/3
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004・森山欽司
○森山委員長 速記を始めて。亀山孝一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/4
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005・亀山孝一
○亀山委員 本日はせっかく稲葉参考人がおいでになりましたので、一、二お伺いしたいと思います。
業者問協定によります最低賃金は、賃金のくぎつけになるという御意見が相当あるようであります。けれども現在までの業者間協定の実績をわれわれが見ますと、決して言われているようにくぎつけにはなっていない、むしろ労働者の賃金は一割ないし二割ほど上っておるのじゃないか、こういうように思うのですが、そういう問題に対しまして稲葉参考人はどういうようにお考えになっておりますか、できる限り詳しく御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/5
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006・稲葉秀三
○稲葉参考人 実はこの前の公聴会で、私亀山先生のおっしゃったことを御報告申し上、げたのでありますが、労働省からいただきました資料に基きまして、中央賃金審議会で業者間協定の実情というものを参考にして、そして、それをどのように法制化するかということを審議したのでございますが、そのほかにその後いろいろな業者間協定ができまして、約三十ないし四十くらい現実には法制によらない業者間協定ができていると思います。過般私はその中の七つばかりをずっと各地方に行きまして調べてきたことがございます。その結果を御報告申し上げたのでございますが、注目すべき点は、少くとも最近までの実績に関しまする限り、最低賃金ですから、必ずしも全部の企業で一律に行われているとは思いませんけれども、たとえば長浜の例、清水の例、あるいは新宮に起きます架線機の例、桐生におきます織物の例等を見ますと、最低の方におきましては約二割ないし三割くらいの上昇になっている。全体といたしまして一割ないし二割程度の平均給与の上昇になっている、こういう事実が出ております。しかし将来におきましてどのような形になるかということにつきましては、今のところ私としては申し上げかねるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/6
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007・亀山孝一
○亀山委員 ただいまの丁寧な御説明でよくわかりました。一体業者間協定というのは、これがずっとわが国におきまして普及するかどうか、またこれが相当に所期の効果を上げ得るように進むかどうか、先生のお見込みはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/7
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008・稲葉秀三
○稲葉参考人 実はこれもこの前公述のときに申し上げましたが、一つは最近日本の各経済が金融引き締め後だいぶ変化をいたしまして、その結果業者間協定ができました成立の経過を見ますると、やはり神武景気の際に労働者が集まらない、こういったこともその原因となって、業者間協定が行われているというところもあります。そういったものは、たとえば人の募集が割合安易になりますと、自然その業者が協定をするという点が少くなることが考えられる。しかし他方私がずっと見ました限りにおきましては、必ずしも人を雇用することばかりが業者間協定の要素ではなくて、その結果、技術の交流とか販路の問題、さらに中小企業独特の合理化の要素こういったことが、萌芽的ではございますけれども割合出ております。従いまして、たとえば長浜のちりめんにおきます業者間協定の例でありますけれども、実は協定の申し合せができましたのが神武景気のときなんです。しかし不景気になって三割操短をしているけれども、むしろこういったときに自分たちは確固としてやりたい、こういうこともございますので、そういった広い意味におきます中小企業の改善の意欲は、景気、不景気にかかわらず出ていくし、今後におきましては経済が、今までとは違ってやや緩漫な上昇に入る、こういうふうに見ますると、やはり両方の要素が出ているのではないかということで、これは法制化以前の問題でございますけれども、やはり自然の勢いとして相当程度業者間協定は全国的に普及する。
それからもう一つ私が聞きました例では、一つの地域の一つの産業におきます業者間協定が、実は別な地域の同種の産業に対しまする業者間協定を刺激して、たとえば清水のカン詰がやりますと、ほかのカン詰業者も、同じではございませんけれども、そういうやり方をとっていく。それからまた長浜のちりめんがやりますと峯山でもそういった動きが出てくる。また一つの県の一つの地域でやりますと、同じ県のほかの企業もやっていこう、こういった動きが案外今までのところありまして、そういう要素はやはり進むのではないか、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/8
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009・亀山孝一
○亀山委員 今お伺いしまして非常に参考になりましたが、私どもは業者間協定の最低賃金というものは、言葉をかえて言えば、特殊産業と申しますか、長浜のちりめんとかあるいは静岡のカン詰工業とか、特殊の地域にまず最初に普及して、それから今お話がありましたようにこれに刺激されて同種業態に及ぶ、こういうように思っておりましたが、今の御説明でよくわかりましたけれども、やはり業者間協定が起るのはどっちかというと初歩的特殊産業がきっかけをなす、それが他に及ぶのですが、どうも及ぶ影響というものが非常におそいようにわれわれは考えますがいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/9
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010・稲葉秀三
○稲葉参考人 やはり先ほど申し上げましたように、景気がやや下降になりますと自然おそくなるという傾向もあります。従いまして、実は先のことですからあまりはっきりわかりかねますけれども、今までとは違って多少進み方かおそくなるということは十分あり得ると思います。ただ亀山先生に一つ申し上げたい点は、中央賃金審議会で業者間協定を最低賃金として取り入れるときにいろいろ論議をしたのですが、一応業者が独自で行われました最低賃金協定をそのまま法制化するということを考えておるというのではなくて、やはりそれを法制化するにつきましては、その地域における他の産業との振り合いあるいは生活費の問題、そういったものをスクリーンをする。スクリーンはやはり三者協定による諮問委員会で行う。スクリーンをやって初めて強制力を持つ、こういったようなことを答申をしたのでありまして、業者間協定は最低賃金になる素地ではございますけれども、それがそのまま法制化されて強制力を持つというようには考えていなかったということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/10
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011・亀山孝一
○亀山委員 外国の最低賃金法をきめるその経過において日本と同じような経過をたどったものがございましょうか、これを一つ参考までにお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/11
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012・稲葉秀三
○稲葉参考人 私もあまりその方面に対する知識がございませんけれども、日本の業者間協定によるような最低賃金方式は国際的にはやや例外的なものではないかと思います。従いましてほかの国で号最低貨金にこういうところが取り入れられているかということは、実は私は今のところ返答はできませんけれども、国際的にはやや異例なものだと考えてよいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/12
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013・亀山孝一
○亀山委員 国際的には異例だと思いますけれども、事実諸外国の立法を見まして、それに至るまでの経過について一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/13
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014・稲葉秀三
○稲葉参考人 その点につきましては御存じのように、ここ二、三百年、産業革命以後のいろいろな労働問題、賃金問題の過程におきまして、やはりどこの国におきましても家内労働をどうするかといったような問題が深刻に考えられ、そしてそういうような法律もできているわけであります。また諸外国の最低賃金立法と申しましても、決してみな画一的なものではなくて、むしろ画一的になったのはだんだん最後の段階であって、従前におきましてはやはり労働組合との団体交渉あるいは若干格地域の特殊的な賃金の規制といったようなことが行われ、中には家内労働と結びついたものが行われて、それが歴史的にだんだん変化してきた、こういう形跡のものでございます。その点は亀山先生のおっしゃるような経過をとってきておるし、中央賃金審議会で議論をしました場合において、日本の特殊の産業構造、私はこれを三重の産業構造というふうにこの前申し上げたのですが、そういったようなことに対する十分な認識というものが必要ではないというふうに考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/14
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015・亀山孝一
○亀山委員 この前の先生の参考人としての御陳述をわれわれ拝承しておりましたが、そうすると今度の政府案によります最低賃金法というものは、いわば先生のお言葉のように、日本の産業組織ではやむを得ざるもの、こういうことになると思いますが、いかがですか、最低賃金法というものは、いわゆる全国一律法定最低賃金方式でなければならぬということはないのでございましょう。とにかく今出しております政府案のごときも、これも私は最低賃金法の範囲に入る、かように思いますが、先生のその点のはっきりした御見解を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/15
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016・稲葉秀三
○稲葉参考人 これは非常に微妙な問題で、中央賃金審議会、また中央賃金審議会の中の小委員会におきましても、今先生のおっしゃった点が非常に大きく問題になったわけであります。ところで私どもが答申としていたしました線は、業者間協定というものをもとにし、それを拡張適用するとするけれども、それについてはある程度やはり規制力を持つということになっていくということが一つ、それからさらに労使協定による最低賃金という道を、今までは法律上は認められておったのですけれども現実にはそれがあまり実施されなかった。それをややはっきりここでやっていく。従って労使が労使協定による最低賃金というものを、ここでもってはっきり軌道に乗せていく。それから第四には、もしも必要であるという場合においては、やはり政府が最低賃金を作る、しかもそれを賃金審議会の議を経て作るということになっておりますれば、百パーセント自主的であるとはいえませんけれども、やはり相当程度、いわゆる最低賃金としての性格というものを備えていると考えてもよいのではないか。また日本の複雑な産業問題、中小企業問題、また最低賃金が、他面におきましては、だんだんと家内工業や中小企業というものを近代化して、そして輸出産業として伸びていくということをやはり考えていかねばならないものであるとするならば、日本としてはこういう形になるということも、これを最低賃金として十分認めてよいのではないか。ただし一律的な最低賃金のやり方というものを決して排撃するものではない。つまり将来の理想的な形としてこういうところへ漸次近づいていくということについては、私ともの答中にもございましたように、むしろ願わしいことである。しかしこれが実効をもって上げていくということになれば、当面の形は地域別、業種別、職種別でいかなければならないと、こういうことにしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/16
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017・亀山孝一
○亀山委員 非常に御懇篤な御説明でありましてありがとうございました。私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/17
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018・中山マサ
○中山(マ)委員 一点だけ。私がお伺いいたしたいのは、私は大阪の中小企業の非常に多いところから出てきているものでございますが、特にまた家庭に起きまして、いわゆるホワイト、カラー族の奥様方とか、あるいはもっとずっと下の方まで、家庭でいろいろなこと、たとえばピーナツの皮めくりとか、いろいろなことをやっているようでございますが、そういうところの賃金と最低賃金との関係でございます。いろいろ見ておりますと、内職のあっせん所などではそれをずんずん下に出しておりますが、その間にまたそれをあっせんをする人があり、またそのあっせんをする人ありして、搾取という言葉はあるいは悪いかもしれませんけれども、その間にお金というものがはねられておりますが、そういうところには最低賃金制はどういう影響を持つのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/18
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019・稲葉秀三
○稲葉参考人 今の中山先生の御質問はきわめて重要な点で、この点につきましては中央賃金審議会並びに小委員会におきましても問題が出たわけでございます。実はこの前の私の公述でも申し上げましたように、大きく分けますと、日本の産業は三重構造になっている。一つは大企業である、一つは中小企業である、もう一つは内職を含めた広範な家内労働がある。しかもこの最低賃金の対象になるのは、第二の部類の中小企業であるとすれば、これによってかえって家内労働におきますいわゆるマイナスというものが強化されるのではないかということを、非常に憂慮したわけであります。ですからほんとうのあり方といたしましては、むしろ内職についてははっきりこれを届け出るようにする。またやみくも的に、税金も納めないでただ問屋さんの従属機関になって、そうしてホワイト・カラーの奥さんや勤労者の奥さんで家におられる方々にネクタイを編みなさい、造花をしなさい、こういう形が相当日本にあるのですが、それをある程度やはりきちんとしなければならない。それには一番大事なことは、家内労働法を作るというにとと、家内工業法を作るということがあるわけであります。答申にもございますように、私どもは最低賃金をほんとうに効果的にやるためには、一つ家内労働をはっきり規制する意味の労働立法を作っていただきたいということを申し上げたわけであります。ですけれども、これをやるには機構の整備も必要でありますし、また適当な人を求めるということも必要でありますし、また立法上いろいろな問題もある。現に労働基準法ですら、これだけの膨大な監督機構を持ちながら十分行われていないという点もある。ですからこれは将来の問題として、でき得る限り早い機会に総合的な家内工業法、家内労働法を作っていただきたい。それに対して政府は早急な調査準備をしていただきたい。さらにそれができるまでの間は、何ら家内労働に対する適用をしないということになりますと、やはり最低賃金をのがれるために店じまいをして、むしろ内職に行ってしまうというケースがあるのです。従ってそれを防止する最小要件といたしまして、最低賃金の協定ができましたときは、それに関連のある家内労働の工賃の規制をするということを法律で入れていただきたいということを申し上げている。それが今度の立法の中には出ていると思うのであります。十分なものではありませんけれども、その私どもの中央賃金審議会あるいは小委員会で取り扱いました答申の相当部門がこの中に生きていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/19
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020・中山マサ
○中山(マ)委員 今の稻葉先生の御発言によりまして、私は労働省にお尋ねしておきたいと思います。大臣は今の稻葉先生のお答えに関連いたしまして、いわゆる家内労働の賃金制を今後労働省においてするべきだとお考えになっているかどうか。また解散になりますと、あるいはまた内閣がかわるかわかりませんので、大臣だけに御返答を願ってもどうかということもおそれますので、それで労働省の方でこういう問題をどうお考えになっているか、今後そういうものを作ろうという御意思があるかどうかということを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/20
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021・石田博英
○石田国務大臣 家内労働法の制定につきましてはただいま稻葉先生のお話にもございました通り、労働省といたしましては、できるだけすみやかにこれを制定すべく準備中であります。ただ対象が非常に広範かつ複雑でありますので、その基礎調査に相当の時間を要する。基礎調査を行いました上は立法化いたします。これは最低賃金法案を提出いたしました当然の帰結でありまして、私のかわりにだれがなろうと当然なさなければならないことであります。私が責任を持って労働省を代表してお答えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/21
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022・森山欽司
○森山委員長 井堀繁雄君に申し上げます。本日井堀君の要求によって中央賃金審議会委員稲葉秀三君を参考人として本委員会に招致したのでありますが、稲葉参考人は本日十二時より他に所用があってお帰りにならなければなりませんので、十二時十五分前まで本委員会においで願うというようにお取りきめしてございます。従って質疑時間は十五分間しかございませんから、その間に質疑はごく簡潔に、御答弁もごく簡潔に最大の能率をあげるようお望みます。井堀繁雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/22
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023・井堀繁雄
○井堀委員 ごく簡単に二点ばかりに尋ねをいたしておきたいと思います。
前会の公聴会の節に公述いただき、またお尋ねにお答えをいただきましたことと、ぜひ政府との間に明確にいたしておきたい点がございますので、この点に限ってお尋ねをいたしてみたいと思うのであります。私の要求いたしましたのは、中央賃金審議会の責任者としておいでをいただいたわけであります。中央賃金審議会に政府が諮問を求め、答申案については詳細に私どもも調査をし、またお尋ねをいたしまして明らかになったのでありますが、当然今回の諮問の中に最低賃金の金額を問題にされなければならないと考えまして、前会最低賃金の額について、中央賃金審議会並びに小委員会などにおいてこの問題を御検討いただいたことがあるかいなかについてお尋ねをいたしましたが、この点については明確な御回答を得るまでに時間がございませんでした。最低賃金の性格を決定づけます一番基本的なものは今日最低賃金の額を、たとえそれが地域別であろうと、業種別であろうと、職種別であろうと、とにかく最低賃金の額が問題にならないはずはないのです。きょうはまずこの点について、審議会がこの問題とどのようにお取り組みになり、また御検討なさったか、経過並びに結果についてお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/23
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024・稲葉秀三
○稲葉参考人 この前も公述で私お答えいたしましたように、公式の中央賃金審議会、また私が小委員長になって取りまとめをいたしました小委員会におきましては、むしろ最低賃金決定方式ということが中心になりまして、どの程度の金額で最低賃金を表示するかということは出なかったわけであります。けれども小委員長がこれをまとめる経過におきまして、たとえば労働組会側から出ました最低賃金の線、さらにそれに加えていわゆる業種別、職種別に積み重ねていくという方式について具体的に一体、どのようなものになるか、またそれに対しまして委員の個々人の方、あるいは小委員の個々人の方々がどういうふうにお考えになっているかということをいろいろ折衝して聞いたという経過はございます。けれども少くとも公式の小委員会、委員会におきましては出なかった。じゃどうして出なかったかということになりますと、やはりにの決定方式が一律方式というのは将来の形としては望ましいけれども、当面は職種別業種別、地域別に積み重ねていくことになれば、やはりそのところの特殊事情か非常に大きな要素になってくれるのではないか、これを最低的に幾らにするかということは極端な言い方をいたしますと、そのこと自体としてはあまり論議にならなかった、こういうふうにお考えを願いたい。
それからもう一つ付加的に申し上げたい点は、最低賃金にすれば、かりに四千円なら四千円、四千五百円なら四千五百円という形にすれば、九十数パーセントカバーできるということになりますけれども、むしろ最低賃金の最低賃金たるゆえんは、それによりまして中小企業の近代化を達成したり何かするという要件でありまして、現実の線がこれだけだ、この線を一つ最低賃金として区切るということはむしろあまり効果的ではないじゃないか、こういうたような考慮も私個人として計らいました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/24
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025・井堀繁雄
○井堀委員 一律一体方式でありますならもちろん金額を明示しなければならぬということは言うまでもありませんが、それにいたしましても答申案は、地域なり業種、職種によってその賃金の額を定めることを答申されておるわけでありまして、ただ地域や業種や職種で定めなさいというだけでなく、定めるからにはこの場合にはいつでも金額が問題になると思うのです。全然金額に言及されななかったということはちょっと理解ができないのであります。一律一体方式の金額については考えなかったということはわかります。それは業種、職種もしくは地域について検討がもちろんなされたと思うのであります。その点はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/25
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026・稲葉秀三
○稲葉参考人 もちろん地域別、業種別あるいは職種別にそれぞれの地域におきまして地方賃金審議会で裁定が下るときには、当然やはりその地域におきまする生計費の問題とかいろいろなことが考慮に上ると思います。ですけれども特に小委員会では賃金決定方式をどのようにするかということと、時間的な制約ということもございまして、個々のいわゆる特殊性におきまする賃金あるいは生計費という問題については触れることができなかった、こういうふうに申し上げた方、がよいと思います。一年も二年も時間をかけてやるとするならば、それはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、できたと思うのでありますけれども、ともかく近々二、三週間の間に小委員会で線を出すということを御考慮願えれば、井堀先生のおっしゃるように、そこまで小委員会では入れなかった、こういうふうに申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/26
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027・森山欽司
○森山委員長 あと七分間ですから簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/27
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028・井堀繁雄
○井堀委員 次にもう一つこれに関係しておりますが、御存じのように基準法の第三十条によりますと、行政官庁すなわち労働大臣から最低賃金の額について諮問を求めた場合には、この中央賃金審議会はその賃金の最低の賃金の額を協議決定して答申しなければならないことを明示しておるわけであります。この点から考えますと、労働大臣からは金額については何らの諮問がなかったというふうに解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/28
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029・稲葉秀三
○稲葉参考人 つまり第四の方式として国が最低賃金の決定をせられるというのは、御存じのように一つの地域でこの部類とこの部類にかりに行われている、ところがそれがなかなか他のところはいろいろな条件でできないと、こういったようなことがある場合、あるいは二つ三つの府県を包含いたしまして、端的に申せば業者の反対でできない、こういったような場合についてはむしろ国が積極的にそういう制度を作っていくことが望ましいのではないか、こういう意味でやったのであって積極的にどんどん国が指導してやっていくという形のものではない、こういうふうに私どもの答申はなっているというふうに御了解願いたい。従いまして、積極的に国が全国をにらんでやっていくという場合におきましては、金額というのが大きな役割を演ずるだろうと思うのですけれども、その場の限りにおきましては、時間的なこともございまして、井堀先生のおっしゃるようなことまでは入らなかったということです発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/29
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030・井堀繁雄
○井堀委員 もう一つこれは重要なことで、この前もちょっとお尋ねをいたしましたが、政府原案の第三条で最低賃金に対する原則を規定しておる点であります。これは事業の支払い能力を考慮してということを原則の中に明確に打ち出してきておるのであります。このことは言うまでもなく、ILO条約、あるいは勧告の精神とははなはだしく矛盾するものであることは前会お尋ねしたはずであります。答申案によりますと賃金決定方式に対してはそれぞれ具体的にお述べになっておりますが、参考事項として当然支払い能力を考えなければならぬということを御指摘になるのはよくわかる。しかしあとで政府にお尋ねして明らかになるわけでありますが、政府は答申案の精神を組み入れて法案を作成したと説明しておるわけであります。私はこの答申案とこの原則三条とはどうも幾ら読んでみてもはっきりいたしませんので、この関係を御迷惑でも明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/30
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031・稲葉秀三
○稲葉参考人 これは先日も申し上げましたように、中央賃金審議会並びに起草小委員会ではILO条約との関係を特に審議をして最低賃金制度を答申をしたのではないのであります。これは時間の関係もございましたろうし、またそのときにはこの問題との関係をつける、こういったようなことを私たちが考えていなかったということもございましょうから、私どもの答申にはそれが一応積極的な考慮の対象にはなっていないと思います。ですけれども、私は支払い能力というのは、最低賃金を考慮する場合においては、当然行われねばならないということで、政府が差額補償をするというならば別でありますけれども、当判然企業の支払い能力というのは最低賃金制の中に入っているのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/31
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032・井堀繁雄
○井堀委員 政府の御答弁を伺いながら、いろいろもう少しと思いましたが、時間の関係もございますので、まことに残念でございますけれども、これをもって一応終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/32
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033・森山欽司
○森山委員長 稲葉さん、どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/33
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034・井堀繁雄
○井堀委員 次に政府にお尋ねをいたしたいと思います。このたびの公聴会におきまして、それぞれの公述人から貴重な御意見を伺い、また私は国会から派遣されまして、名古屋のこの種の会合に参りましたが、その節各方面の権威者からいろいろな御意見をお述べになられまして、また私どもの質問にもよく答えていただいたのであります。このわずかの関係だけを通じましても、最低賃金制度をすみやかに実施せよという声は全く立場、持ち場を越えて一致した声のようであります。ただ最低賃金の法制化については内容に問題があることが、今日の世論と考えていいのじゃないか、こう思いますので、内容について率直に重要と思われる点をお尋ねをしてみたいと思います。
第一の問題は、私どもは中央賃金審議会の答申については重大な関心を持っているので、一応審議会が答申をされました以上は、民主的な手続と機構によって運営され、結論を出されてきていると信じて、答申案の精神をあくまで忠実に政府も実行に移され、またわれわれもこの精神の上に立ってよりよい法案にいたしたいと考えているわけでありますが、実はそれできょう特にその方の代表者においでをいただいたわけであります。そこで今明らかになりましたように、二点について労働大臣もお聞きになっておりましたから、多く述べなくてもお答えがいただけるかと思いますが、それは政府原案の第三条であります。第三条はこの法案のいわば背骨のような大きな役割を持つ条文であると思う。すなわち最低賃金の原則をうたっているのであります。答申案でも最低賃金の額を定めるための制度についてはかなり詳細な意見が述べられており、検討されているようであります。しかし残念なことは、この金額の問題について十分な検討ができなかったという御答弁が今あったのですが、まずその金額を決定する方式の中で一番大切なのは、一体どういう原則の上に立って金額を定めるかということで、それが法律の中に明確にされなければならぬことは言うまでもないことであります。ところがこの原案を見ますると、「労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び」まではいいのでありますが、その下に「通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」ということをわざわざこの原則の条文にうたったということは、一体どういうことであろうか、ところが、この法案の提案趣旨の説明をされました本会議において、この法案か成立したならば、政府はILO条約の中の最低賃金決定制度に関する条約並びに勧告について批准及びそれを実施の段階に導く趣旨の御発言が同時に行われております。この点の関係について矛盾を感ずるのでありますが、労働大臣はどのようにお考えでありましょうか、率直にお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/34
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035・石田博英
○石田国務大臣 中央賃金審議会の答申に、この企業の支払い能力についての明文がないこと、それからILOの条約の中にも、勧告の中にもその明文がないことも承知いたしております。しかしこれは先ほど稲葉参考人のお話にもありました通り、私どもは当然のことと考えているわけであります。現に最低賃金についての条約を批准している国におきましても、アメリカ、フィリピン、グァテマラ、コロンビア等におきましては、これを明記いたしております。それから大へん妙な話でございますが、社会党提案の最低賃金法案の第二条にも、「一般の事業の賃金の支払能力その他の事情を考慮して、定めるべきもの」と書いてございまして、企業の支払い能力を当然考慮しなければならぬということは当り前のことだという観点からそのようにいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/35
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036・井堀繁雄
○井堀委員 ILOの条約、それから勧告の精神は労働大臣もよくおのみ込みのようであります。この支払い能力の問題については、最低賃金制度のこの条約並びに勧告案を決定いたしましたILOの一九二八年の総会の議事録には、特に明確に出ております。さらにまた一九一九年のILOの総会の議事録を見ましても、この問題に対して論議が進められておるのであります。これによりますと、一部経営者の方の側から、支払い能力の問題を当然最低賃金決定方式の重要な要素としてという強い意見も出ておるようでありますが、しかしそれは結論といたしましては、一応全会一致の形でILOの総会は支払い能力に言及することを主張した使用者側の修正案というものは完全に葬られまして、逆にこれを理由にして最低賃金制度の採用をし得るおそれを生ずるということで、むしろこのことは取り上ぐべきでないという総意が表明されておるわけであります。この点に対する労働大臣の見解を伺っておきたい。
なおあなたは、社会党の案について、そのことが書いてあったからという御主張でありますけれども、これをまねしたとおっしゃるなら別でございます。しかし社会党の案についてはまた一つ審議の過程において私どもの主張をいたしたいと思っておりますが、社会党案の発足は、最低賃金支払い保障のための法案を、かりに最低賃金支払保障金融公庫法という名前をつけておるのでありますが、こういう支払い能力の欠けている現段階を正確につかんで、それの保障の道を同時に行うという法案を姉妹法としてわれわれは計画しておるわけであります。しかし今日賃金制度の中でそういう扱い方をすることはいかがかという立法形式の中では議論のあるところであります。しかしこれはよけいなことでありますが、お尋ねいたしたいのは、社会党の案について右へならえしたということでありますならば、これは私、あまり多く突っ込んで質問する必要を生じなくなる。ちゃんといい道ができて、筋が通っておる、あの通りくるというなら、あまり質問せぬ方がいいかと思います。そうでなく、ILOの今言う二回にわたる総会の議事録をお読みいただいたと思うのでありますが、この点に対する政府の見解をまず伺っておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/36
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037・石田博英
○石田国務大臣 社会党の案は、それに右へならえをしたという意味で申し上げたのではなくて、社会党の案にもこう書いてあるという一例として申し上げたわけでございます。
それからILOの条約には、私どもは支払い能力というようなことは明記されていないというふうに理解をいたしております。ただ条約それ自体は、決定方式というものは自由に放置されておりますから、勧告の中で望ましいことがいろいろ指摘されておる、その中にも明記されていない、こういうふうに私は解釈しております。しかし議事録から私どもがくみ取らなければならないことは、支払い能力を理由にして最低賃金を不当に低くしたり、押えつけたり、あるいはその実施を怠ったりするということは絶対に避けなければならないというそのILOの精神は、あくまで守っていかなければならないものと思います。しかしながら支払い能力を全く無視するということでは、これは経済の基盤を脅かすものでありますから、やはり一応の限界としては支払い能力というものを設けておかなければなりませんけれども、ILOの精神は、その実施の面において、これを理由として先ほど申しましたように最低賃金制度の実施を怠ったり不当に低くすることは避けなければならぬと思っておる次第であります。
—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/37
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038・森山欽司
○森山委員長 この際、先般これら三案の審査のため、名古屋、大阪、福岡の三市に委員を派遣いたしましたが、簡潔にその報告を願います。最初に第一班、田中正巳君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/38
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039・田中正巳
○田中(正)委員 内閣提出の最低賃金法案並びに和田博雄君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案に関する審査のため、名古屋市に派遣された私ども田中正巳、井堀繁雄、五島虎雄の各委員は、四月十九日、右三案に関する地方意見聴取会を行い、労使、公益各側を代表する愛知県地方労働基準審議会会長、弁護士友田久米治君、中部日本新聞論説委員吉良真君、愛知県地方労働組合評議会副議長水野三四三君、愛知県労働組合協議会副議長伊神光治君、電機労連愛岐地区協議会議長長谷川一夫君、愛知時計電機株式会社総務部長青木賢三者、中央可鍛工業株式会社社長武山勇二君、以上七名の意見陳述者より、その意見を聴取いたしましたが、それぞれの意見の要旨を御報告いたしますと次の通りであります。
まず、公益を代表する意見陳述者として、友田久米治君は、この法律の実施に当り、受け入れ側の立場としては時宜に通したものと確信し政府案に全面的に賛成したいと述べ、なおその実施に当って十分な予算的裏づけをしてもらいたいこと、審議会に仲裁裁判的な権限を加味し、強化してもらいたいこと等の希望が述べられました。次に同じく吉良真君は、社会党案は望ましいものであり、できれば実現させたいものと思うが、日本経済の実情その他を見ると、それが実現できるかどうか疑問であり、今直ちに社会党案には賛成しがたい、そのの点、漸進主義をとる政府案に賛成したいと述べ、さらに業者間協定は使用者側の利益から出発している面も多いので、労働者側の意見が反映できるよう審議会の権限を強化すること、その他社会保障制度の拡充を伴うべきであること等の、よりよき修正を加えることが望ましいと述べられました。
次に、労働者側を代表する意見陳述者として、水野三四三君は、業者間協定方式が求人対策と過当競争防止のためのものであり、ILO条約の精神に反すること等の理由から、政府案に反対、社会党案に賛成の意見が述べられ、同じく伊神光治君は、社会党案は理想案ではあるが、日本の実情から見て困難であり、政府案を修正して一日も早く最低賃金制を立法化してもらいたいと述べ、同じく長谷川一夫君は、業者間協定方式、ILO条約との関係、罰則が軽きに失していること等から、政府案に反対、社会党案に賛成の意見が述べられました。
次に、使用者側を代表する意見陳述者として、青本質三君は、最低賃金制が実施されたら、企業家はどうしたらよいのかがこの法案を見ても見当がつかない、重要法案であるから、いま少しく趣旨が明確にわかるようなものであってほしい、日本には大企業、中小企業、零細企業という量的区分があるが、質的な区分をすれば大企業などは存在しない、企業の実態を熟視し、もっと練る必要があり、急ぐ必要はないと思うが、内外の情勢から見てやむを得ないものであり、政府案に賛成し、社会党案には反対であめる旨を述べられ、同じく武山勇二君は、政府案は九八%まで答申を入れていることから見て賛成である、また内外の情勢から見て、最低賃金法は時期尚早とは思わない、なお実施に当って、異議申し立て期間を延長すること、労働大臣への二審制をとること、労働基準局長の決定にはあらかじめ労働大臣の承認を要すること、施行を公布後百八十日以内とすること等の修正意見を述べられたのであります。
以上のごとき意見陳述に対し、それぞれ各委員より質疑を行い、意見聴取会を終了いたしましたが、その詳細ば後日文書により御承知願いたいと思います。
以上御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/39
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040・森山欽司
○森山委員長 次に第二班、八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/40
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041・八木一男
○八木(一男)委員 最低賃金法案(内閣提出)、最低賃金法案(和田博雄君外十六名提出)、家内労働法案(和田博雄君外十六名提出)、以上三案に関し、大橋、赤松、八木の三委員は大阪に派遣せられ、四月十九日大阪府立労働会館において、大阪市大教授近藤文二君、大阪労働協会会長塩谷男君、全日本労働組合会議大阪地方会議事務局長松本俊博君、日本労働組合総評議会大阪地方評議会事務局長帖佐義行君、株式会社極東製作所社長石橋助司君、関西経営者協会事務局長青沼四郎君、以上六名の意見陳述者より意見を聴取いたしました。その意見は、帖佐義行君を除く五名が政府案に修正の上賛成、社会党案に反対、一名が政府案に反対、社会党案に賛成でありました。
まず、公益を代表する意見陳述者として、大阪市大教授近藤文三君は、政府案を修正の上賛成する、業者間協定方式は最低賃金制とは言えないが、これに最低賃金制としての実効性確保を考慮することによって、現実的妥当性を認め得る、そのために、第一に、第十五条の最低賃金審議会の意見を尊重してとあるを、同意を得なければならないとし、これに伴い、第十六条、第二十条も同意として、最低賃金審議会の権限を強化し、実質上行政委員会的なものとする、第二に、職権方式について、最低賃金審議会みずからの発議を認め、第二十条の権限も、勧告のみでは形式的で実効を期しがたいので、これに伴い改める等が必要である、要するに中央賃金審議会の答申が完全に規定されれば、政府案に賛成である、社会会党案については、理論的には正しいが実現困難であり、賛成しがたいと述べられました。
同じく大阪労働協会会長塩谷男君は、理想念としては社会党案に賛成であるが、今日の日本の現実においては実施不可能である、特に金額の点、理論生計費を基礎としているが、これを国家権力をもって一律に強制することは妥当でない、最低賃金制は実態生計費を基準とし、それ以下の賃金を引き上げるべきものであり、そこに実現の可能性がある、結局、政府案を強化したもので出発すべきであると述べられました。
次に、労働者を代表する意見陳述者として、全日本労働組合会議大阪地方会議事務局長松本俊博君は、政府案は原案のままでは不満足であるので、修正の上早急に成立せしむべきである、そのために最低賃金審議会の権限を強化するほか、罰則の強化等及びこれに関連して賃金債権の優先支払いの制度を考慮すべきであるとの意見を述べました。
同じく日本労働組合総評議会大阪地方評議会事務局長帖佐義行君は、政府案は業者間協定方式が中心であるから、賃金低下の機能を営む危険がある、また日本産業の不健全性を恒久化して近代化に役立ち得ない、国際的にも最低賃金立法として通用しないものである、政府案に反対し、社会党案に賛成するとの意見を述べました。
続いて使用者を代表する意見陳述者として、株式会社極東製作所社長石橋助司君は、国際的に問題の多い折柄、時宜に適しているが、中小企業対策が先決問題である、この点税制、金融等の面で、大企業と比較して不利益な取扱いを是正すべきである、法実施により中小企業、特に零細企業では混乱を生ずるおそれもあるので、六ヵ月くらいの猶予期間が必要である、また家内労働についての規制が同時になされなければ、零細企業は法に違反せざるを得ないと述べたのであります。
同じく、関西経営者協会事務局長青沼四郎君は、政府案に賛成であめるが、企業者の救済措置が必要である、そのために、第十八条の最低賃金の効力は、労働協約に関しては労働組合法第十八条と矛盾するので削除する、第十六条についても異議申し立てを認める等の修正をすべきであると述べたのであります。
引き続き、意見陳述者に対して、派遣委員よりそれぞれ質疑が行われました。
以上御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/41
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042・森山欽司
○森山委員長 次に第三班、滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/42
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043・滝井義高
○滝井委員 最低賃金法案地方意見聴取会、第三班、福岡市開催の概要について御報告いたします。派遣委員は大坪、多賀谷、滝井の三名で、予定通り四月十九日午前十時より午後二時まで、福岡労働基準局内において次の意見陳述者を招致して行いました。公益側、西日本新聞社論説委員大石三郎君、九州大学教授清水金二郎君、労働者側、全日本労働組合会議福岡県地区本部事務局長徳田吉松君、福岡県労働組合総評議会事務局次長江崎淳君、使用者側、九州商工株式会社取締役社長錦織克成君、九州製糖株式会社取締役高橋俊景君、以上六名。
次に各意見陳述者の意見の概要を申し上げます。
一、公益側大石三郎君は、政府提出最低賃金法案は不満足ではあるが、現段階では政府案に修正を加えて実施するに賛成する、その理由は、1、最低賃金法は多くの国で実施されており、日本はむしろおそ過ぎるくらいである、法案の成立によって第一歩を踏み出し、漸次改善していくべきである、2、政府案は、これができるまでに一応の順序を踏んでいる、3、漸進的に地域別、職種別に定めて将来産業別に定めるがよい等である、また政府案の修正についてはさしあたって次の四点としたい、1、業者間協定の場合も労働者の意見を述べる機会を与える、2、最低賃金審議会はもっと具体的に建議できるようにする、3、審議会に対して積極的な権限を持たせる、特に勧告権、発議権を持たせることが必要である、4、罰則は罰金刑だけでは不十分である。
二、公益側清水金二郎君は、わが国の現状では賃金格差が大きいので、規模別、業種別にそれぞれ地域的に実施するよりほかに方法がない、政府案を修正して実施すべきである、修正点としては、1、国際労働条約でも労使双方が意見を出すこととなっているので、業者間協定にも労働者の意見が反映されるようにすべきである、2、審議会を諮問機関でなく決定機関とする英国の実施方法にならうことが適当と思う、3、労働協約の地域的拡張の規定は現行労組法でよい、法案は当事者全部の合意の申請となっているが、労組法の規定のように大部分の申請でよい。
三、労働者側徳田吉松君は、最低賃金を一日も早く制度化することが必要、今国会で必ず成立させることを希望する、その意味で政府案を次のように修正して実施したい、その修正点は、1、第一条関係、目的の中に、最低賃金決定額以上の賃金を支払っている企業宋が、それまで引き下げるようなことのないように趣旨を明確にする、2、労働日、労働時間等の定義を明確にする、3、業者間協定の場合、全部の合意を大部分の申請とする、労働協約の拡張についても大部分の申請に改め、その拡張は地域的だけでなく職種、業種にまで及ぼすこと、4、審議会の発議により調査、審議ができるように明確にすること、5、最低賃金審議会の決定は変更できないように自主性を持たせ、必要があれば労働大臣、労働基準局長より再審議の要求を出すことを規定する、審議会に勧告の権限を持たせる、6審議会の審議期間はいたずらに日時を経過することのないように期限を設ける、7、委員の任命は労働委員会の方法に準ずる、
四、労働者側江崎淳君は、政府には反対、社会党案に賛成である、その理由は、1、現在行われている業者間協定は、中小企業の賃金水準を引き上げるような効果はない、2、業者間協定は賃金格差の拡大の防止にはならず、賃金の引き上げでなく業者間の過当競争防止の申し合せにすぎない、3、労働協約による地域的拡張の適用に関する規定は労組法第十八条の改悪である、4、政府案は、その実効性が非常に薄く、有名無実化するおそれがある、5、政府案は国際労働条約に反する、現在行われている各国の最低賃金制は半分は画一方式である、6、日経連の合同労組圧迫の方針に現わしたものが政府案である。
五、使用者側錦織克成君は、最低賃金法は中小企業の問題であるが、制度化されれば大きなショックを受ける。あくまで漸進的な措置をとることが必要で、政府案に相当の猶予期間を置いて実施すべきで、社会党案の全国一律は混乱を招くこととなる、反対である。
六、使用者側高橋俊景君は、経済事情の現状と遊離した最低賃金はいたずらに混乱を来たす、政府案は強制力に乏しい点があるが、業者間協定を受け入れ可能な業種に漸次適用することとしたい。最低賃金の実施に先立って中小企業対策を推進することが必要である。この希望を条件として政府案に賛成、社会党案一律方式に反対である旨の陳述がありました。右要点を申し述べて報告といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/43
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044・森山欽司
○森山委員長 以上で委員派遣に関する報告は終りましたた。
引き続き三法案についての質疑を続行いたします。井堀繁雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/44
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045・井堀繁雄
○井堀委員 先ほどILOの条約についてお尋ねをいたしました。また先ほど事業の支払い能力を問題にいたしましたのは、もし経営者側の方において支払い能力を理由にして最低賃金の額を不当に低額のものに押えた、あるいはその支払い能力をたてにして最低賃金の実施にそむくといったような場合を考慮はしておるという御答弁でございました。これはもちろんのことでありますが、そういうことを考慮されまするならば、むしろ原則の中にこういうことを規定することは全く反対の結果を招くことになるのであって、これはILOの総会などにおいて多く論議されたことでありますから私はここで繰り返す必要はないと思うのであります。この点は私は、先ほどいみじくも社会党の案をという引例をされたのでありますが、もし社会党の考えるように——支払い能力が日本の場合には中小企業、零細企業を多くかかえて問題があるということは各国に類を見ない一つのはなはだしい、著しい現象であります。でありますからこの問題を同時を同時に解決するという最低賃金方式でありますならば日本的なものだと私、どもは信じておるわけであります。われわれが当初計画いたしましたものは、支払い能力を補強するためのいわば最低賃金実施の段階過程を法律によって定めるものをこの中に入れることは法体系を乱すおそれがありまするので、姉妹法として考えたわけであります。しかし政策の面からいきますとこういう賃金政策といわば中小企業育成やあるいは支払い能力のはなはだしく低い企案をやはり認めていかなければならぬ現状においては、中小企業の保護政策は、金融政策でありますとかあるいは税制政策である、あるいは政府の企業近代化への別な政策立法などにおいてこれを解決していくという筋道の上からいえば、分けて考えるということが正しいという議論もわれわれ耳をかさなければならぬと思うのであります。ところが現在におきましてはこの法案と並行して中小企業に関するいろいろな法律が従来も出されてありますし、また現存もしておるわけでありますが、これをもってして直ちに最低賃金法を実施せしめるためには問題があるということは、最低賃金を一日も早く実現させたいというわれわれのような強い要望を持つ者からいたしますと、そういう点が同時に解決されるという可能性が出てこなければならぬ、それが具体的に出てこない現状においてはこういう書き方をすることは非常に危険である、危険であるというよりは、あなたがお答えになりましたように、むしろこの法案は最低賃金法といいながら、実は低賃金を全国に強制するような作用もするのではないかという、労働者側から不安を持つのはここにあると思うのです。ここは非常に大事な点でありますので、むしろ私どもは特に支払い能力というものを原則の中にうたうのでなくして、当然これは別個の政策に譲るべきであるという答申案の精神を採用すべきではないか、こう思うのでありますが、もう一度この点に対する明確な御答弁を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/45
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046・石田博英
○石田国務大臣 中小企業の経営の安全を確保しますための所要の施策はもちろん相伴って実施されなければなりませんし、政府もあとう限りのことはいたしておるわけであります。しかしながらそれが急速に一挙にその効果を現わすものではないのであります。社会党案におきましても、提案されておりまする最低賃金法案以外の中小企業に対する法案の御準備がすでにあるようなお話でございますが、その御準備された法案を実施されたといたしましても直ちに効果が上るものではない。経過的な段階としてはやはり日本の非常に低い支払能力を持つ企業の存在ということが、相当期間改善されつつも残っていくものと考えなければならぬように思われるわけであります。しかし第三条において「通常の事業の賃金支払能力」、「通常の」と書いてありまするところは、つまり個々のあるいは非常に特定の状態にある企業の支払い能力というものを問題にしているのではなくて、一般のわが国の経済の実情の中にある企業の支払い能力ということが前提になっておるのでありまして、この「通常の」という言葉でただいま御心配の点は十分くくれると思っておるわけであります。それから考え方としては、先ほども繰り返して申しました通り、企業はそれこそ逆に通常の労働者の賃金を支払う義務がある、それでなければ経営者たる資格はないという考えん方でこの法の運営に当っていかなければならない、こう私は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/46
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047・井堀繁雄
○井堀委員 そこでこの問題はまだ議論がたくさんあるのでありますが、次に重要な点をもう二、三先ほど審議会の稲葉さんの御答弁と関連のある点を少し進めていきたいと思います。そこで賃金決定方式を答申されておりまする中で、地域また業種、職種から始めていこうという漸進的な方向の一つを示したものと思うのですが、確かに一つの行き方だと思うのです。しかし実態は労備省も御調査になって明らかなように、業種別に賃金の格差がはなはだしい、あるいは地域的に賃金の格差がはなはだしい、というよりは、要するに日本の最低賃金を要請されておりまする客観的な諸条件の大きな背景をなしておる、また提案理由にもそう述べておりますが、実際は規模別の賃金格差というものが経済上に大きな障害を来たしておる、特に国際貿易の上で、一つの障害になってきておるということは言うまでもないわけであります。でありますから改めるならむしろ規模別に、最低賃金の段階的なものを設けるにしてもそういう点を配慮すべきではないか。この点は実態把握が誤まっておるのではないかと思いますが、この点は中央賃金審議会では全然討議されておらぬようであります。もちろんそういうことも諮問されていないようでありますが、この点がどうか。
それからもう一つ、中央賃金審議会に、漸進的でもけっこうでありますが、業種別、地域別もしくは職種別の場合においても、賃金の額というものに対してなぜ諮問をなされなかったか。これは現行基準法の二十八条、二十九条、三十条の中に、労働大臣のこの場合に行うべき責任というものはきわめて明確になっておると思う。この金額を諮問されなかったということが私は最低賃金法実施に対する誠意を疑う一番大きな点だと思うのです。法律では義務づけている。その義務づけたものを逃げて諮問をされるということは、何かいかにも世間では、政府は最低賃金法を表に出して実は羊頭狗肉ではないか——まことにこれは政府のために惜しむべきことだと思いますので、この機会に明らかにしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/47
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048・石田博英
○石田国務大臣 現在の賃金格差というものは確かに企業の規模別に非常に大きな現象を示しております。これは事実であります。従ってそれはどこからきているかというと、やはりその事業の規模ごとによる生産性の差からきている面が非常に多い。これは順次改められていかなければならず、諸外国のように規模別の生産性の格差がなくなるようにしていかなければならないものだと私は思っております。また最低賃金を賃金の支払い能力という点から考えますと、規模別の問題も取り扱わなければならぬのじゃないかと思うのでありますが、先ほどから御議論がございましたように、労働者の生計費、あるいは類似の労働者の賃金という点から考えて参りますと、生計費の差、またはそれに由来をいたします類似の労働者の賃金というものは、やはり地域別から出てくるのじゃないか。それから類似の労働者という意味、つまり労働の量、質という点から参りますと、職種別に出てくるのじゃないか、こういうふうに私どもは理解をいたしておるわけであります。中央賃金審議会が規模別格差の問題について触れられなかったという点については、これは中央賃金上審議会にお聞きいただきたいと思います。私どもはただいま申しましたように理解をいたしておるわけであります。それから中央審議会に労働大臣といたしまして私が諮問をいたしましたのは、わが国の実情のもとにおける最低賃金制はいかにあるべきかということを質問をいたしました。まず最低賃金の決定方式について諮問以前からすでに議論がございます。一つは全国一律でやれという議論と、それから地域別、業種別、職種別にやれという漸進的な議論と二通りございます。そういう最低賃金決定方式をいかに第一にとるべきであるかということが一つの重点であろうと存じます。もし全国一律でやれという決定方式が採用となりまするならば、これは当然の帰結といたしまして金額が明示されてなければならない。しかし御説のように業種別、職種別、地域別にきめるといたしましても、それぞれの業種別、職種別、地域別に一応の基準というものが検討せられることが望ましいのでございますが、これは非常に時間もございませんし、複雑多岐にわたることで、なかなか限られた時間の間に、あるいは限られた機構の中では結論が出されなかったものだ、こう私は理解しております。しかしながら労働省といたしましては、ただいま賃金の基本調査は始めております。それから法律が施行せられるに伴いまして現実的な取りきめ、あるいは実施が漸次起って参るに従いまして、おおむねの実態というものが出てくるのではないか、それを踏み台にしてさらに一歩前進する方策というものが考えられるのではないか、私どもはそれを期待をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/48
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049・井堀繁雄
○井堀委員 ILOの最低賃金決定制度の条約で第二十六号ですか、これをあなたはこの法案が成立したら批准いたしたいと御発言になりましたが、この法案が今のところ何だか国会解散と心中しそうでありますから、ちょっと見込みがない。この場合に労働省としては今国会が間に合わなければ次期国会に二十六号の条約を批准手続をなさる御意思はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/49
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050・石田博英
○石田国務大臣 まだ日にちはあることでございますから審議に御協力を願いまして、ぜひ今国会において成立を見るように御協力を願いたいと存じます。従って政府といたしましては、現在この法律案は成立させていただけるものとまだ確信をいたしておるような次第でありまして、成立しない場合のことについては考えておりません。当然成立いたすものと確信をいたし、それをお願いしておるわけでありますが、次の国会において二十六号の条約についての批准は要請するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/50
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051・井堀繁雄
○井堀委員 ぜひ一つお約束を守っていただきたい。次期国会にはこの条約の批准を法定手続をして間違いなくいたしていただきたいことを重ねて要望いたしておきます。私はこの法案が成立しなくとも当然この二十六号の条約は批准手続ができるという解釈をしておりますが、それは別といたしまして、この政府の出された最低賃金法案は労働基準法を下回る法案の性格が随所に出てきておることを指摘して質問してみたいと思います。
これは労働基準法の第二十八条に明記しておりますように、行政官庁、すなわちあなたが最低賃金が必要だとお認めになるときには中央賃金審議会に対して、ここに答申案も出ておりますけれども、業種、職種、地域別の賃金を定めることができるわけであります。その場合には、三十条の規定で「行政官庁が最低賃金を定めようとする場合においては、予め賃金審議会の調査及び意見を求めなければならない。」、そして「前項の場合、賃金審議会は、一定の事業又は職業に従事する労働者の最低賃金額についての意見を、行政官庁に提出しなければならない。」続いて「行政官庁は、前項の意見について公聴会を開いた後に、賃金審議会及び公聴会の意見に基いて、最低賃金を定めなければならない。」、こういうようにこの法案よりももっとすっきりした形において最低賃金の制度を実施することが可能になっておるのです。また賃金審議会はその諮問について金額を諮問された場合には、その金額について答申をしなければならないと明記しておるわけであります。でありますから、この法案よりはるかに基準法の方がその大きな機能を発揮する実質を持っておると思いますが、この点に対するお考えをまず伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/51
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052・石田博英
○石田国務大臣 政府提出の十六条の行政機関の決定、これで参りますときには、これはこの規定の通りに参るわけであります。ただいまお読み上げになったような方法でいくわけでありますが、しかしわが国の産業の実情が一挙に十六条を全部そういう形式でいくというところまでなかなかまだ参ってないのでそこへ漸進的に近づけていく必要がありますのと、それから未組織の労働者諸君の立場、そういうところはそのためにより一そう低賃金で苦しんでおるわけでありますから、そういう二つの労働側の事情、経営側の事情、そういう事情から現実的に漸進的な処置をとって参りますための処置といたしまして、他の三つの方式をこの際行う必要がある。そうしてその間のギャップを現実的に埋めていこうという考え方に基くものでございます、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/52
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053・井堀繁雄
○井堀委員 これから順次ずっと逐条的にお尋ねをして参りますと、今お尋ねしたことが結論になって出てくると思います。私はあくまでこの三十条に規定してあります基準法の方が、より政府のものよりは最低賃金を実施する上には有効であると考えておるわけであります。それはあとで結論の上でまたお尋ねすればいいと思います。
そこでその前段は別にいたしまして、ここでいっておりまする第三条の最低償金決定方式と、ILO条約並びに勧告案との関係は先ほど明確に御答弁があったように、これを批准される用意があるということでありますから、この点について明確にする必要があると思うのであります。それは政府も、労働者の生計費と類似の労働者の賃金をあげております。ILO条約の中にも、また勧告案の中にも、最低賃金の額を求めますための要素について、次のようなものをあげておるわけであります。一つは、最低賃率を決定するに当って最低賃金決定機関がいかなる場合においても関係ある労働者に適当な生活水準を維持させる必要性を考慮することが望ましいということを明らかにしておる。そういう意味のことを書いてあめる。その次に、最低賃金の率の決定に当って考慮すべき要素について述べてある。それは第一に、労働者の生計費、次には、なされた労務の合理的な価値、第三には労働協約による類似の賃金に比較してものを定める、第四には地域別のことをいっておる。地域においても十分に組織された労働者と雇い主との間に成立しておる一般賃金の水準をあげておるわけであります。私は少くともこの四つの要素は、第三条の中に十分書き表わすべきではないか、これがILO精神を十分尊重し、かつ条約を批准する政府の立場からすれば、こうあるべきじゃないかと思うのですが、この点、ここにわざわざ事業の賃金支払い能力を書き加えたにかかわらず、そういう重要な四つの要素のうち一項だけは明確に書いて、二項は類似の労働者の賃金、こういっておりますが、この場合は、一律一本の場合には類似の労働者の賃金というのは意義がある。しかしここで政府が考えておりますのは、業種別、職種別、もしくは地域別の段階措置からここへ持ってこよう、もっとひどいのになりますと、あとで質問しますが、業者間協定方式を段階的に採用しよう上いうわけであります。でありますだけに、なおさらここに明確にILO条約の精神というものを原則の中にうたうべきではないか、これをことさらにお省きになったのはどういうわけであるか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/53
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054・石田博英
○石田国務大臣 ただいまお読み上げになったILOの勧告の趣旨は、三条の原案に書いてあることで尽きておると思うわけであります。しかし、わが国の場合におきましては、この最低賃金法の対象になる中小企業においては、十分組織された地域というのはなかなか実際ない。それから私はこの法律の実施に伴って組織が進行すると思うし、それをまた望むのでありますが、組織されたところについての措置は、労使間協定の拡張適用が行われるわけでありますから、これは問題はございませんが、組織か行われていない場合におきまする労働者の発言権の行使ということを実際上庶幾するために非常に苦慮いたしました結果が、本法案の最低賃金審議会の構成及びその結論を得る審議の過程における労働者の発言の確保ということで、実際上の措置としては、これもまた経過的でありますが、どうも持っていくより仕方がないのではないかと私は思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/54
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055・井堀繁雄
○井堀委員 経過的の措置をいろいろおとりになるということに対して私は否定するのではない。こういうものが段階的に成長していくという可能性さえあれば、低くても芽さえ出てくればいいと私は思うのです。しかし原則だけは明確にすべきである。原則をくずしてでしまうとあとは詭弁だ。どんなに言いくるめようとしてもよい芽が出てきそうもないということに結論はなりますから、私は原則の問題の中にこのことを当然うたうべきではないか。もし修正が必要とするなら、こういうところに修正を加える責任が議会はあるのではないかと思うくらいであります。しかし、あなたの御答弁は私の聞ごうとすることを十分にお答えいただいておると思うのであります。それは今あなたがおっしゃいましたように、組織の一番脆弱な、むしろ組織のない中小企業、零細企業のためにこの法案は一番大きな効果を要請しておることも争う余地がないのであります。それだけに、このILO条約の四項にありまする十分に組織された地域の類似の産業の労働者の賃金を比較するということになりますと、私はここに初めて最低賃金法の性格が浮び上ってくると思う。これは時間をかけて質疑を続けていきますと、そう異なった答えは出すわけにいかぬ。出発点が同じでありますつから、政府の提案理由の説明が誠心誠意である、偽わりのないものであるということになりますならば、こういう点から改められていくべきではないかと思う。私はここにILO精神のいいところがあると思う。比較にすべきものは未組織の場合を対象にしてはならぬ。組織労働者の実例を対象とすべきだということをいっておるところに大きな意義があると思う。そのような成長を遂げられるような原則規定を最小限度のものとして私は置くべきではないかと思う。そうでなければ、社会党案のように、同時に中小企業の支払い能力を補強するような具体的の措置を講じた法案が用意されなければならぬと思う。これはあるでしょう。そういうふうにすべきものなのであります。そこに私はこの最低賃金法は画龍点睛を欠く、というよりは、もっと強い言葉でいいますと羊頭狗肉、インチキはここに存すると指摘しなければならぬと思うのであります。しかしこの問題は次にいろいろお尋ねをすれば出てくるのであります。たとえば、ここに労働者の生計費が出てきておりますが、この問題は、政府は一体これを実施するためにどれだけの準備があるかを伺ってみることによってはっきりすると思うのであります。一体あなたが中央賃金審議会に全額を諮問されなかったというところに私は問題があると思う。最低賃金の第一にあげております労働者の生計費がどのくらい必要だということをお考えにならないで、こういう法案をお出しになるはずはないと思いますからお尋ねをいたしますと次のことが出てくる。一体生計費といいますと、最低生活あるいは労働者の最低生活費というものを幾らに押えるかということを、ある程度はっきりしなければ諮問ができないんじゃないか、基準法のさっきあげた例に行き当る。十五才以上の年令に達すれば労働能力があるものとして法律はその対象にしておりますから、まず十五才といいましょう。十五才の労働者の最低生活を幾らにお考えになっておるか。また日本の風習からいきますと、熟練労働の場合においては、技能養成あるいは従来の職業補導、今度政府がお出しになりました職業訓練法の中でも問題になりましたように、技術を修得する過程においても最低生活の費用が出てくるわけであります。それから技能を修得して十八才、二十才という年令を一応取り上げてみますと、そこら辺にくると一体どのくらいの生計費を与えなければならぬか、こういう点の御用意があるはずです。この点を伺うと、私のお尋ねすることが抽象論から具体的なものに入ってくると思います。一体政府は生計費というものを、まず十五才、十八才、二十才くらいのところを具体的な年令をあげてお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/55
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056・石田博英
○石田国務大臣 これは地域的にも相当差がございますので、一律にどうということはなかなかむずかしい問題だと思いますが、政府委員からお答えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/56
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057・堀秀夫
○堀政府委員 金額の問題につきまして中央賃金審議会に諮問しなかったじゃないかという御意見でございますが、これにつきましては、先ほども大臣から御答弁になりましたように、政府としては、わが国の実情に即した最低賃金制はいかにあるべきかという包括的な諮問をいたしまして、その中にいろいろ問題点のあることも一緒に示唆したわけでございます。中途におきまして、中山会長から、最低賃金額はどの程度のものが適当であるかということを討議すべき問題点として審議しようじゃないかというりお話がありまして、われわれもそれはけっこうである、とそのようにお答えした経緯もあるわけでございます。そしていろいろ討議されましたが、結局この段階ではまだ出ない、こういうことであったわけでございます。その点は御了承願いたいと思います。
それから、次に生計費でございますが、これはそれぞれの地域における住活状態によりましておのずから差別が出てくると思うのでございます。中央賃金審議会では、今回はこれに関する結論は出なかったわけでございますが、今後におきまして、この最低賃金法に基く中央最低賃金審議会が開かれました場合に、当然一つの大きな問題点になるであろうと思います。その際において、いろいろな資料がございます。これは井堀先生御承知のごとく、たとえば総理府統計局の家計調査であるとか、厚生省の厚生行政基礎調査であるとか、労働省における日雇い労働者の生活費実態調査であるとか農林省の農家経済調査であるとか、あるいは厚生省の生活保護法による保護基準であるとが、いろいろな資料があるわけでございまして、これらのものを総合してわれわれとしては最低賃金審議会の御意見をお伺いし、それぞれの地域においてどの程度が最低の生計費であるかという御検討をお願いすることにいたしたいと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/57
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058・井堀繁雄
○井堀委員 やや具体的になりました。今大臣はこの法案をぜひこの国会で通したい、また通る見込みがあるということで、私どももそれに協力申し上げるのにやぶさかではありませんが、そうすると、この法案が通るとすぐ実施することになるわけですか。その場合、先ほどの中央賃金審議会の稲葉さんのお話によると、相当長い時間をかけて検討したいというような御意見を漏らされていました。まさか一年も二年も調査するわけではないと思いますが、法案が通りますと一体いつごろ実施の段階に入りましょうか。そのお見通しを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/58
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059・堀秀夫
○堀政府委員 それについては、この法案の附則にありますように準備期間がございますけれども、この法案が成立いたしますれば、われわれとしては、なるべくすみやかに、各条を漸次実施していきたいと、考えているわけでございます。ただ、十六条の問題につきましては、答申にもありますように、この発動については労使の意見を聞いて慎重に行政的に検討すべきである。しからば労使の意見を聞くことはどの段階、いかなる部面においてなすべきがということになるわけでございますが、われわれは、中央最低賃金審議会が最も適切な機関ではないかと思いますので、法案が成立いたしましたならば、とにかく最初に行うべきことは中央最低賃金審議会を設置して、ただいま先生からお話のありましたような問題点をかけて御討議の開始を願う、このように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/59
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060・井堀繁雄
○井堀委員 そこでお尋ねします。最低賃金審議会に諮問する形になっておりますが、政府は四つの方式で結論を出されようとしている。そこで、業者間協定の問題が出てくる。業者間協定で賃金の額を求めようというのは、これは基準法違反です。ここに一つ問題がある。もう一つ、地域別団体交渉による。これも今の法律でできる。ちっとも新しいことはない。労働組合法十八条の方がはっきりしている。それは別として、なぜ原則の中にうたわなかったかという原則の問題を聞いている。生計費の問題をあげておるので、労働大臣が中央最低賃金審議会に諮問をされる場合、今度手続がきまるのですから、額を出してくれという諮問をせざるを得なくなる。地域でもよい、あるいは職種でもよい、業種でもよい、この地域のこの職種について最低賃金の額をきめてくれ、その場合の原則はこれこれという法律があるわけです。審議会がスタッフを持って調査検討するというような実態はこの法律の中から生まれてきません。予算の方もきわめて小規模のものである。結局労働省が生計費については基準を示す以外、審議会が答えを出すことは不可能だと思う。でありますから、生計費が十五才では幾ら、十九才は幾ら、二十才は幾ら、これを答えて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/60
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061・堀秀夫
○堀政府委員 これにつきましては、ただいま申し上げましたように、現在におきましても既存のいろいろな資料がございます。たとえば、厚生行政基礎調査あるいは生活保護法による保護基準等を見ましても、年令別にどの程度のものが必要であるか——これはもちろん最低のものでございますが、そのような基準が出ておるわけでございます。しこうして、この最低賃金を実際具体的に実施していきます場合には、当然にその地方においてどの程度の生計費が最低であるかということがまず問題になると思いますので、われわれとしましては、今の各省の基礎資料、それから労働省におきましても、これの裏づけの調査費は本年度の予算にも盛ってございますので、これに応じてそれぞれ調査をし、その資料を最低賃金審議会に提供をいたし、われわれも積極的にこの討議が推進されるよう努力して、具体的にその地方その職種における最低賃金が幾らになるかという前提資料が出るようにいたしたいと考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/61
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062・井堀繁雄
○井堀委員 私のお尋ねしていることに御答弁いただきたい。今日の段階でこれから調査して検討するということを聞いているのではありません。ここで言っている生計費というものは、地域をあげてもけっこうですが、一体幾らかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/62
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063・堀秀夫
○堀政府委員 この点は、中央賃金審議会の御討議を願ったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、中央賃金審議会の答申の中にはその額が出ておらなかったのでございます。と申しますのは、中央賃金審議会にいろいろ御討議願った結果、具体的にこの地方においては幾らという生計費を出すことは今のところまだむずかしい、こういうことであったわけでございます。従いまして、われわれ中央賃金審議会の答申そのままを尊重して今回の法案を作成したわけでございますが、その原則といたしましては、三条に基本的な三つの基準を掲げることといたしました。そして今度どの地方の何産業の何職種の労働者について最低賃金をきめる、この段階になりましたときに具体的にそれぞれの地域におけるただいまの三つの基準を調査いたしまして、これを賃金審議会において御審議を願う、このような形にいたしたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/63
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064・井堀繁雄
○井堀委員 委員長から御注意いただきたい。私お尋ねしているのはそういうことを聞いているのじゃない。ここで生計費といっておられるのですから、生計費は一体幾らと労働省は押えているか、十五才の場合でもいいから言ってくれ、これを聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/64
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065・堀秀夫
○堀政府委員 これにつきましては、労働省といたしましてはまだどの地域においては幾らの金額が生計費である、このような結論を出しておりません。これにつきましては、最低賃金審議会の御意見を聞きまして、漸次作成していきたいと考えておるのでございますが、たとえば先ほど申し上げましたほかの省で実施しておりますその調査の資料に基きますものを一、二申し上げてお答えいたしたいと思うのでございますが、たとえば人事院で作成いたしました東京における成年男子の標準生計費といたしましては、七千二百三十円という数字を出しております。それから厚生省でやっておりまする生活保護法の基準額に利用しておりまする生計費は、最低生活費は、たとえば第一級地におきましては十四才から二十四才くらいまでのところは男が二千三百二十円、女が千九百五十五円、このような数字を出しているわけでございます。それから十八才の一人世帯で、東京におきましては、夏季につきましては三千五百十円、冬季におきましては三千五百五十五円、このような数字が出ておるのでございます。われわれといたしましては、このような各種の数字を比較検討いたしまして、それと賃金審議会の御意見を伺いました上で、どの地方においてはどの程度の生計費であり、どのような最低賃金が必要であるかというための基礎資料にいたしたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/65
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066・井堀繁雄
○井堀委員 人事院の資料を伺っているのじゃないのです。私は人事院の資料を持っている。厚生省の調査資料も持っている。そうじゃなくて、労働省が少くともこういう法案を出すからには、生計費については労働省としては現在においてはこれだというものがあるはずです。もしないとするならば、この法案全体に対して非常な疑いを生ずるから、これは労働大臣なかなか責任があります。大事なことですから、これは一つ労働大臣お答えにならないといけますまいが、私の聞いているのはきっと中央賃金審議会にこういうことは当然諮問されたと思っておりましたら、審議会の方へ伺ったら諮問はされていない、従って答申もしない。しかし局長の言うところによると、会長の試案を求める中に、たまたまそれがあったというにすぎぬわけですから、もうその経過は明らかです。政府はその額をお求めにならなかったという。政府自身は、要するに確固たる一つの方針がおありになり、あるいは要求があればすぐ出すだけの準備があるのでしょう。そういう点は、これは審議会と政府の関係ですから、おせっかいを申し上げません。しかし私どもは今この法案を審議するためにぜひ聞いておかなければ審議ができない。従ってこういう労働省の生計費というのは、労働省は少くともこれだけ——もちろん地域もあげるとか、職種もあげるとか、年令もあげられるというのならばそれでもけっこう。しかし今のように厚生省がこういう調査、人事院がこういう調査の結果だというようなことは、これは参考にする資料なんで、それは私どもも手に入れております。お伺いしたいのは労働省のこの法案にいう生計費というのは幾らか。その金額が出てくればどうしてその金額が出てきたか、どうして出すのかという手続や原則の問題についてお尋ねすることが、この法案に対する忠実な審議の第一ステップだと思うから聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/66
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067・石田博英
○石田国務大臣 最低生計費につきまして今政府委員からいろいろ申し上げた通り、いろいろの調査がございます。そのいろいろの調査と申しますと、いろいろな基準の置き方によっていろいろ出てくるわけでありますが、その中でその地域における最低賃金、最低生活費というものはどういうものであるか、こういう統一された、そういう言葉の上での統一された結論は、現在のところ労働省としては持っていないわけでありますが、最低賃金を決定することになりました場合におきましては、最低賃金審議会はこれらのいろいろの調査に基きまして、その地域における生計費というものを当然一応の構想として持って出発せられるものと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/67
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068・井堀繁雄
○井堀委員 私のお尋ねしているのは簡単なんです。労働省は最低賃金を作ろうというんですが、それは原則の中で一番明確に出ているのは生計費が出ておりまするから、その生計費から割り出すと最低賃金の額は幾らだということをおっしゃらなければ、最低賃金制度を作るのだということだけで実際は実行に移らないのじゃないか、移すつもりもないのだ、そのうちに何とかなるんだというような疑いをみなが持ちますよ。そうじゃないか。最低賃金の額は生計費からいうとこれだけ、これを法律によってこういう格好で移していきたい、こういうことになっていかなければ最低賃金も何もあったものでない。これははっきり言わぬといけません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/68
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069・石田博英
○石田国務大臣 最低生計費という言葉自身も、これは基準の置き方によって非常にまちまちでありますから、いわゆる最低生計費という言葉が、それがまちまちであるばかりでなく、それ自身にやはり基準をどこに置きましても地域による差もございます。従って最低生計費というものが、きまったワクの中にはめられた一定の条件があってそこへ幾らという金額を当てはめるということなら明確に出ると思うのでありますが、しかしただいま申しましたような性質のものでございますから、その地域におきまして最低生計費というものはどういうところに置くべきかということで、いろいろの調査を基礎としてそれぞれ最低賃金審議会において御決定を願うもの、その御決定を願うに必要な各種の調査資料というものの提出は労働省において責任を持ってやるのでありますが、最低生計費という言葉の幅の非常に広い意味のものを労働省においてあらかじめ決定するだけのまだ今日まで準備もございませんし、資料としての準備はありますけれども、特に最低生計費というものの定義づけ、格づけというものについての定説というようなものかまだ——なかなかむずかしい問題でございますから、そういうものはそれぞれいろいろの立場を代表されて出てこられる最低賃金、審議会で御決定いただく。御決定いただく資料をでき得る限り労働省として準備をいたすつもりでもあり、それについては先ほど政府委員から御説明を申し上げましたような材料はございます、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/69
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070・井堀繁雄
○井堀委員 私のお尋ねしているのは、生計費というものがいろいろな要素をはらまねぱならぬというようなことを聞いているのではない。私も多少は心得ているつもりなんです。たとえば理論生計費に対して労働省はどう考えているか、実態生計費についてはどういう調査資料を持っているかということを聞いているのじゃない。それはもうとっくに通り越していなければならぬ。最低賃金制度を法制化しようというのですから。さっき言ったじゃないか、そういうことはもう基準法に書いてあるのです。最低賃金の制度が必要な場合はちゃんと、労働大臣が最低賃金の額が必要だと思ったときには中央審議会に諮問して、この業種については幾ら、この地域については幾らが妥当かということを御諮問なさいますと、審議会は当然これにお答えをしなければならぬことが法律にちゃんと書いてある。まずこれをやればいいものをやりらないで、これよりかもっといいものをという御趣旨であるようでありますから、ですからそれは雇い主がどう思おうと労働組合がどう言おうと学者がどういう説を立てようと、いろいろあろうと思いますが、労働大臣としては中央賃金審議会に対してこれに関する金額を諮問をすることになるわけです。これに対して審議会が答申してくる、こうなってくる。だからあなたはさっき言ったら、あいまいなことを言っているけれども、あっちこっち逃げないで、簡単なことですから、その金額はこれだけでございます。とこういうように言っていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/70
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071・石田博英
○石田国務大臣 だから最低生活費というものは一体どこに置くかということは、いろいろな基準の置き方によっても違いますが、たとえば生活保護対象の最低生計費というものの調査はできております。しかし最低賃金、いわゆる労働者の最低生活費というものは、生活保護対象と比較をすべきものではございませんで、少くともそれより下にいくものであってはならないのでありますから、そういう意味の数字は出て参ります。そういう意味の数字は今事務当局から申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/71
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072・堀秀夫
○堀政府委員 これにつきましては、ただいま大臣からお話し申し上げましたが、たとえば東京におきまする十八才の一人世帯の最低主計費、生活保護の実施に要する費用といたしましては、夏季におきましては三千五百十円、冬季におきましては三千五百五十五円となっておるわけであります。これが一つの基準になると思いますが、ただこれは先ほども言われましたように、あくまでも生活保護者を対象とする生計費でございまして、言葉を返して申せば、いわばきわめて低い生活において物理的に生活を持続する、しかも軽作業、軽労働であって、工場で働くというようなものではない場合でございまして、当然これにプラス・アルファの裏づけがなければならないというふうに考えております。そこでただいま申し上げましたように、これらのものを最低線といたしまして、これに対しまして物理的に、その地方においてたとえば工場労働をいたしました場合にはどの程度のプラス・アルファが必要であるかというようなものを算定いたしまして、これを最低賃金の基礎になる生計費という工合に、賃金審議会の御意見を伺いつつ決定して参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/72
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073・井堀繁雄
○井堀委員 答弁をそらしてはいけません。私が聞いておるのはそんなことを聞いておるのじゃないとさっきから言っておる。これはあなたの方から出した法案に、原則として「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働言の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」こう言っているのですよ。ですから通常の事業場の賃金支払い能力というものは一体どんなものであるかという議論はもうさっき済んだ。これは私は議論の余地がないと思うのですけれども、それはそれとして、もう一つの、類似の労働者の賃金というものについては、さっきも言ったようにILO条約の基準があるのです。しかし生計費というものについては、あなたが言っておるように労働者の生計費を考慮して定めなければならぬという以上は、この法律が通りますと中央賃金審議会に労働大臣が諮問する場合にはこの原則に基いて最低賃金の額を問うわけです。そのときに形式は中央賃金審議会がいろいろ検討して出すのですけれども、今の場合は三者構成の形をとっておるから、それぞれの利害関係者、利害を強く代表しておる人々が出ており、公益の関係が出てきて、そこで調整をとるという機能は当然なことなんです。しかしその前に、一体労働省は生計費というものをどういうようにして出すか。今あなたに聞きますと、厚生省かこう考えているとか生活保護法の中から割り出す、こう言われたけれども、こういうことは厚生省の問題、生活保護法の問題です。これは最低賃金法の中でいう生計費とはおのずから違いますよ。その点を聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/73
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074・石田博英
○石田国務大臣 最低賃金法でいういわゆる労働しております労働者の最低生計費というものは、これは当然物理的にただ生きている、軽作業で生きているという者に加えられるのに、いわゆる労働の再生産ができるようなものでなければなりません。そのプラス・アルファというものはどうあるべきかということは、これはたとえば医学上のカロリーその他からも計算されなければなりませんでしょうし、それからその人の住んでおる住居と働く場所との距離というような関係もございましょうし、その地域の気候風土その他とも関係がございましょう。そういうものは最低賃金決定の場合におきましては当然われわれの方として調査いたしたものを資料として提出いたしまして、最低賃金審議会で御決定を願う、こういうことになろうかと存じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/74
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075・井堀繁雄
○井堀委員 私が伺っているのはそんなことではない。そういう手続は承知していると言っておるじゃありませんか。労働省の言う生計費というものは一体幾らかということを聞いているのです。調査しているとかいないとか、そんなことはほかの人の言うことであって、労働省はここへちゃんと生計費を出してくるべきだ。厚生省の生計費の出し方はこうだと言うが、それは生活保護法からくる関係です。ここで言う最低賃金はそういうことじゃない。あなたの方は労働省なんです。しかも労働を提供した場合に起ってくる問題については基準法にちゃんと書いてある。支払われた労働力に対しては通貨をもって支払え、払わないときは処分をすると罰則規定がございます。まして、最低賃金をきめたらこれは守ってもらわなければならぬ。そうすると、金額をきめることが一番大事なことである。だから、労働省の最低賃金の中の最低生計費というものは幾らかと聞いているのです。それをあなたが幾らだと言えば、それは高いとか安いとか、その根拠はどこにあるかということを聞いて、初めてわれわれの論議が進められていくのです。それを出さないでおいてこういうものをやるなんて、そんな無礼なことはないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/75
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076・堀秀夫
○堀政府委員 厚生省の考え方だけを言っているじゃないかということでございますが、先ほど申し上げましたのは、厚生省の基準はこれである、そこで労働省の考え方としては、これは物理的最低生活費にすぎないものであるから、工場労働をした場合等においては当然それに対してプラス・アルファーがなければならない、こういう労働省としての考え方をお話し申し上げた次第であります。
そこでその次に、具体的にしからば何地方において何千何百円であるかというようなお尋ねでございますが、これは賃金審議会におきましても御検討を願っておりますが、まだ結論は出ないのであります。今回の法案におきましては、法案の中に最低賃金額というものを直接きめないというのが一つの考え方であります。それは各地の賃金審議会、それから中央の中央最低賃金審議会において労使、中立の三者を集めまして民主的な御議論を願う、これがこの法案の山でございまして、われわれとしてはこれに対して十分なる資料を提供して、一つ一つ具体的にきめていく場合にそれに応ずるだけの資料を提出する用意はあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/76
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077・井堀繁雄
○井堀委員 私の伺っているのはそういうことではないとたびたび言っているじゃありませんか。あなたの方でお答えにならなければならぬのはそんなことじゃない。地域だとか、業種だとか、そういうことはほかのところへ出てきている。一体生計費というものは、山の中の生計費があるならばあるで、それはそれでいいじゃありませんか。だからあなたの方で、この業種ならばなんぼ、この年令ならば幾ら、この地域ならっばどうだというのがあるならばそう答えなさい。しかしここでは生計費ですから、生計費から見た賃金額というものは幾らだということは持っておらなければならぬ。それを聞くと厚生省がどうだと言うが、厚生省のことならば私は厚生省に聞きます。今聞いているのは、最低賃金の中のしかも原則規定で一番大切な生計費というものを労働省は賃金の中に幾ら見るべきかということを明らかにする必要があるというのです。それをしなければこの法案というものは全く作文である、ごまかしである。最低賃金の体裁ばかり整えておるけれども、ちっとも最低賃金を考えていない。だからまず最低賃金の原則の中における生計費というものは幾らかということを明らかにして、それが高いとか安いとか、そのきめ方は間違っておりはせぬかとか、そういうことをはっきりしなければならぬ、それがこの法案の審議の問題に発展していくのです。この問題が明らかに出てこなければこんなものは何にもならない、これよりも基準法の方がよほどりっぱだ、こういうことになるということを最初から何回も申し上げている。きょうは用意がないようでありますから、最低賃金を審議してもらうには一番大事な一番初歩的な、原則的なものから始めていく——まず生計費というからには、その生計費は、労働省の場合には幾らと金額も出していただいて、その金額について私どもは、どういう方法によってそういう金額が出ましなか、またそれは建前が間違っておりませんか、それはけっこうでございますということを伺いながら進めていくところに、最低賃金のほかの問題が出てくる。まず原則自身がぐらぐらしておったのではなりません。一応きょうはこの程度にいたしまして、これから漸次質問をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/77
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078・森山欽司
○森山委員長 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後の質疑は失業保険法、最低賃金関係の三法案を議題とすることとし、午後二時まで休憩いたします。
午後一時十二分休憩
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午後二時四十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/78
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079・森山欽司
○森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
失業保険法の一部を改正する法律案を議題とし審査を進めます。質疑に入ります。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/79
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080・八木一男
○八木(一男)委員 失業保険法の改正案につきまして労働大臣並びに政府の方々に御質問を申し上げたいと思います。
今までの失業保険法は五人未満の事業所には適用を見ていない、それからもう一つ五人以上でも非常に適用漏れかあるという点は非常に重大な問題でございます。その点につきまして石田労働大臣の御就任後社会労働委員会の休会中の審議において御質問をいたしましたところ、石田労働大臣より、失業保険法の適用の拡大について大いに考えてやってみたいという非常に強い積極的な御決意の御披瀝がありまして、私ども大いに期待をしておったわけでございます。そこでこの法案が出て参ったわけでございますが、一応幾分か拡大する法案になっておりますので、石田労働大臣もこの点においてはいささか公約を果された形になっておりますけれども、しかしその内容が非常に不十分で、ごくいささかとしか言えない状態でございます。なぜここで強制適用という法律に踏み切られなかったか、その点についてお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/80
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081・石田博英
○石田国務大臣 今まで三十人から五人までの事業所に対しても適用漏れがまだ相当残っておる、そういう実情であります。なかなかわが国の中小企業の実態というものはつかみにくく、しかもその経営の基礎は非常に複雑多岐かつ脆弱なものがあるのでありまして、そういう現状の上に立って着実に前進して参りますためには、やはり一挙に強制適用へ持っていくことは、これはもう現在の状態から見ますと無理でございます。そこで摩擦を少くし、しかも効果を上げますために今回のような措置でがまんをしたわけであります。決してこれが理想的な形であるとは思っておりません。やはり強制適用へ持っていくのが理想でございます。しかしながらそれにはわが国の特殊な産業構造、就業構造の近代化というものと伴っていかなければならないのでありまして、相伴ってできる限り早く理想の状態へ近づけるようにいたしたい、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/81
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082・八木一男
○八木(一男)委員 労働大臣の御答弁には二つの面があるのじゃないかと思いますが、その一つの面だけでこれからの質問をさせていただくと、捕捉は困難というふうに言われました。捕捉困難を排除して失業保険を適用するには強制適用が一番いい道だと私ども考えます。勤めている限り失業保険があるものということになれば、捕捉困難ということはそこでははね飛んでしまって、結局ぼやぼやして、それをごまかしてやっていない事業主がどんどん上ってくることになるわけです。そうしたら、どんな労働者でも失業したときには失業保険がある、そういう法律ができ、そういう概念が急速に広まりますから、そこで捕捉ができることになるわけでありまして、捕捉困難という理由をもってこの法案の拡大を考える場合には、一ぺんに強制適用するのが一番いい道であると私ども考えるわけでございますが、労働大臣はどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/82
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083・石田博英
○石田国務大臣 二つの要素、すなわち捕捉が困難という要素と経営の基礎が複雑であり薄弱であるという要素、これは全くそれぞれ別個に、この法案かこの状態で満足をしなければならないという原因をなしているのではなくて、それがやはり相互に関連をして原因をなしているものでございます。ただこれを一ぺんに強制適用をいたしますと、雇用関係というものがむしろ逆により以上不明確なものになって逃げるという状態あるいはいろんな付随的な摩擦現象が起って参りまして、早い話が一ぺんに十メートル飛ぶことはむずかしいのでありますが、ホップ・ステップ・アンド・ジャンプですと十五メートルも飛べるのでありまして、この法案は、やはりホップ・ステップ・アンド・ジャンプでいく方がより早くより長いところへ到着できるという建前で作ったものでございます。まあよくおわかりであろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/83
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084・八木一男
○八木(一男)委員 ホップ・ステップ・アンド・ジャンプでございますが、必ずしもホップを短かくした方がいいことにはならないと思う。やはりホップがたくさんないと最後のメートルもいかないのです。最初に小さかったらそのメートルは伸びないわけでございまして、そういう点で強制適用の方がより完全に失業者に対する措置ができると私どもは思っているわけでございますが、その点で非常に勇敢であるはずの石田労働大臣が、非常に勇敢でない法案をお出しになったのは不満である。その点で、もう一つ捕捉する点においては強制適用の方がいいということは、大体石田労働大臣もお認めであろうと思う。もう一つは零細企業の状態が段階的になられた一つの原因であろうと推察するわけでございますが、そういう面で考えるべきではない、これは零細企業対策の方で考えたらいいことで、労働省としては零細企業に働いている、賃金の少くて失業の多い労働者のために考えるべきである。その場合に零細企業の経営者は大きな企業よりも工合の悪い点がありますけれども、それ以上に零細企業の労働者は、労働条件、賃金が低く貯蓄がなくて失業になる危険性か多いということを考えましたならば、大企業以上に失業保険の必要性があるわけです。その点をこの制度で捕捉してやっていくという一歩前進の法案を作られたわけでございますが、これで捕捉できないような事業主の方はより悪質なわけであります。失業保険制度を自分らの従業員のためにやっていこうという事業主は良質ですけれども、悪質な事業主に雇われている労働者は賃金は少いしまた失業になるおそれが多いわけです。そういう人をほんとうに救うためには強制適用でなければそういう点がうまくいかないと思うのですが、なぜそういうことを考えて強制適用に勇敢に踏み切られなかったか、もう一回御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/84
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085・石田博英
○石田国務大臣 勇気にも暴虎憑河の勇と沈勇とがありまして、私は暴虎憑河の勇はあまり好まないのであります。それはもちろん一ぺんに強制適用ができればそれに越したことはございませんが、まずわが国の零細企業の経営の状態、経営主の知識あるいはそれに働いております労働者諸君の自覚、組織状態、あるいは事務処理能力、これらの諸般の情勢を勘案いたしましたときには、現実に実行不能なものを一挙にやりまして、あまり法と現実の間に大きなみぞを作って参りますよりは、やはりホップ・ステップ・アンド・ジャンプで一歩々々参る方が、着実にしかも結果的には早く実効を上げ得るものと私は確信をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/85
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086・八木一男
○八木(一男)委員 この次の答弁は事務当局でもけっこうです。たとば五人未満の事業所の事業主負担の失業保険料は、大体三人とした場合にどのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/86
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087・百田正弘
○百田政府委員 五人米満の事業所の賃金でありますが、大体一万円程度と仮定いたしますと、一人当り一月八十円、事業主負担は、三人でありますと二百四十円ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/87
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088・八木一男
○八木(一男)委員 労働大臣、お聞き及びだと思いますが、一月二百四十円、いかに零細な企業といっても、自分の仕事をさせている労働者のために、月に二百四十円の支出ができないというはずはないわけであります。これはもう常識的に考えられる。ですから、そういう点を考えても強制適用にすべきであると思うのです。労働大臣のこれを出したという体面と別に、労働大臣もよい制度を進めようとお出しになったことはわかるわけでありますかつら、食い下りはいたしませんけれども、二百四十円くらいの負担は、いかに零細企業者としても大したことはない。これはすべきであるというふうにお考えになろうと思いますが、ほんとうのお気持、お出しになった経緯と関連せずに、労働大臣の労働者の保護をやりたいというほんとうのお気持からの答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/88
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089・石田博英
○石田国務大臣 ほんとうの気持を申し上げますと、たとい一人働いているところでも、全部失業保険に入る状態を一日も早く招来したい、これが真意であります。御存じの通り、三十人から五人までのところでも、まだ実効をあげていないところが相当あるのです。本来なら、それを一応部全やっておいて、それからというのが順序かもしれませんけれども、それでは企業規模が違うということだけで、社会福祉の恩恵に浴さないという状態が出ることは不公平でありますから、やはり五人以下のところにも及ぶように、本法律案の改正を出したわけであります。しかしながら、やはり事務処理能力、それは企業者の方も、労働者側も、あるいは役所側も、そういう事務処理能力その他を勘案いたしまして、現在の段階はここから出発して、あわせてそれ以上の規模のところも、この機会会にいよいよ促進をしていくことが、より現実的で、その方か結果的には早くいく。無理なものをやって、いろいろな混乱を生じますよりは、結果的に早くいくと私は確信いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/89
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090・八木一男
○八木(一男)委員 その問題は一応さておきまして、今度は六人以上の事業所の失業保険漏れになっている、インチキをやって適用さしていないところの数を、これは事務当局からでけっこうです。簡単でけっこうですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/90
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091・百田正弘
○百田政府委員 推定でございますが、大体十七万事業所程度です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/91
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092・八木一男
○八木(一男)委員 そうすると、その労働者数はどのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/92
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093・百田正弘
○百田政府委員 百十五万人程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/93
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094・八木一男
○八木(一男)委員 労働大臣に伺います。今の数を聞いていただいたと思うが、百何十万という人が強制適用の法律がありながら、失業保険から適用漏れになっている非常にけしからぬ事態がございます。その者がなぜそういうふうになったかという原因を考えますときに、こっちで七人の事業所があり、こっちで五人の事業所がある。五人の事業所は強制適用の法律がないから、これは適用してなくても別に何でもないわけでありますが、七人の事業所の方の零細企業の労働者は、組織もされていないし、いろいろな実情がなかなかわからない。隣の工場でも失業保険がないから、うちの工場でも失業保険がなくても仕方がないというので、泣き寝入りになる。またその事業主がそういうことを言ってごまかす。隣を見てもないじゃないか、うちもないのは当りまえだというようなことで、法律を知らない労働者をごまかして、そしてそういう非常に間違ったことを事業主がやらかしているわけです。そういうことから考えましても、全部に法律が適用されるということによってそういうごまかしがきかなくなり、そういう非常に気の毒な、ほうり出されている人が少くなる。もちろん今度の事務組合の制度でも、隣にできたらこちらが推進されるという御答弁をなさりたいでしょうけれども、それはごく微温的なものでありまして、労働者である以上、もし職を失ったら失業保険があるという法律があったら、それは非常に浸透しやすいわけです。その意味で強制適用を五人未満にすれば——五人以上でも適用漏れが百十五万人くらいと推定され、その百十五万の労働者が、失業保険なしにほうり出されているわけです。そういうことを考えると、さっきあなたは、私は勇敢でありたいけれども蛮勇はやりたくないと言われましたけれども、これは抽象的に言われただけで、百十五万も法がありながら、ほうり出されていることをほんとうに考えるならば、真の勇気を持って強制適用に踏み切らるべきであったと思うわけでございますが、それについて労働大臣の御所信を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/94
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095・石田博英
○石田国務大臣 勇気の問題は、先ほどから申しましたように、私は特別に勇気があるとも思っておりませんが、勇気があるといたしますならば、やはり着実に、いわゆる真勇をもって臨みたいと思っているわけであります。今おっしゃいました理由は、強制適用の法律がありながら適用漏れになっている最大の原因とは私は考えない。それも一つの大きな原因でございましょう。しかし、ただいま御指摘のようなことを救済いたしますために、改正案の四十六条に、不利益取り扱いの禁止ということをうたってございます。しかし、現実にこの十七万事業所に対して強制適用を実行させますために、この上とも督励をいたして参りたいと思っているわけであります。それはなるほど強制適用というものは、すっきりしてよろしいかもしれない。よろしいことは異存はないのでありますが、しかし三十人から五人までのところでもこれだけあめるのでありますから、そういう喜ばしくない、いわゆる悲しむべき現実の上に立って、やはり進歩的な政策を実施いたしますためには、一歩々々踏みしめながらいく措置が必要である、私はこう考えております。この改正案を出すこと自体が、相当な勇気が要ったということは、賢明な八木委員はよく御理解がいただけることと存じますので、この辺で御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/95
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096・八木一男
○八木(一男)委員 労働大臣に伺いますが、さっきの五人以上の適用漏れについての措置が、今度は、たとえば労働者が言ったことについて不利益行為ができないというふうにして罰則をつけている。あるいはまた元へ戻りますと、一度に保険料を払い込まなければならないから、そうなりますと実際上金の点で動かなくて、滞納金が一ぺんに払えないからというので、特別な処置をしいて一年しか取らないというような、非常に巧妙な配慮、そういう研究をされたことは認めます。それはいいのですけれども、そういう配慮なしに、一ぺんに踏み切っていただくのが一番よかったと思います。それから、踏み切る方法はあったと思う。というのは、たとえば一年後なり一年半後なりに強制適用をするという条文を入れておいて、それまでの間事務組合でやっていく。事務組合は強制適用になっても処理上役に立つから、それはちっともなくす必要はない。一年なり一年半なり、最大限度譲歩して二年なり後に強制適用をするということにして、それでこの事務組合はやられる。そういうことが沈勇であろうかと思う。それで、その点で勇気があまりなかったと思う。そうなれば、そういう法律が一年後、二年後にやられるのだから、その事務処理のために、労働省は機構を、大きくしなければならない、調査もしなければならないということで、頑迷固陋なる大蔵省に攻撃をかけて、そしてちゃんと準備は完了するわけです。そういう点で勇気が非常に欠けておったと私は思う。そういう点で、これは石田労働大臣がとにかくある程度勇気をお出しになったのを、これからもっと勇気をお出りしになって、これを重ねて次の国会においてもっとよいものにするという御決意があるかどうか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/96
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097・石田博英
○石田国務大臣 十七万事業場、百十五万というものを残したまま、それを解決しないまま、前へ進んでいくということは、私はどう考えても真の勇気とは思えません。やはり百十五万という人たちの問題を解決していくその実際上の措置を行なって、それからもう一つ前へ行くというのが、私は強制適用の前のほんとうの実効ある措置だと思います。つまり前へ行け行けという議論は景気がよくて、勢いがあて雷同しがち、また雷同しやすいものでありますが、それをじっと手綱を引き締めるのもまた相当勇気が要るものでありまして、そういう点の勇気を用いたつもりでございます。それからこれからどうするつもりか、日本の特殊な産業構造、就業構造の中にありまして、これが果して二年やそこらの歳月でそう簡単に条件が整っていくかどうか、これはなかなかむずかしい問題であります。しかしがならおよそ人を雇っている者は、すべて失業保険に加入するという形が理想的なものであり、その理想に一日も早く到達するというのが政治でありますから、私はやはりでき得る限りすみやかに、一ぺんにいかないまでも、法律に改善の措置を現実に応じて逐次加えていくべきものだ、こう考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/97
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098・八木一男
○八木(一男)委員 それでは勇気問答はもうやめとしまして、ちょっと関連してほかのことを申し上げますと、業種で失業保険が制限されているものがあると思います。そういうものについて、できるだけ具体的な方法を早く考えていただいて、業種の方で広げていただくということを考えていただきたいと思いますが、特に山林の労働者などはそういう状態にございますので、その点について考えて、積極的に進める御意思があるかどうか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/98
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099・石田博英
○石田国務大臣 山に働いている人は、御承知のように官業の場合は別な措置がございます。そのほかの場合については、季節的な労務が非常に多いものでありまして、今回一挙に適用せしめることは、仕事の性質上なかなか困難でございます。しかしながらそれだからといって放置すべき問題でもございませんので、やはり何らかの措置を研究しなければならぬものだと存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/99
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100・八木一男
○八木(一男)委員 この法律に関係のあることで、ちょっとこの改正案に関係なくて恐縮でございますが、その点について一問だけ伺いたい。この失業保険法の中に日雇保険制度がございます。そこで今二百円と百四十円のものになっております。ところがそれの適用の要件が賃金二百八十円以上が二百円、それ未満が百四十円となっております。そういうことで、ちょっとのところで二百円の失業保険金がもらえない人が、いなかの方で婦人労働者や何かでずいぶんいます。そういう人こそ失業したときに非常に困るわけでございますから、そういうものが二百円の失業保険金かもらえるように、これは賃金の値上げをすることが一番大事ですが、そのほかに失業保険の方でも考えていただくことが必要であると思いますが、それについて今後できるだけ早く考えていただけるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/100
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101・石田博英
○石田国務大臣 これはボーダーライン・ケースの場合は、なかなかいろいろな問題があることは承知いたしておりますし、改善しなければならぬものだと思っております。なかなかけじめをどこでつけるか、むずかしい問題がありますし、前国会の審議の経過もありますが、できるだけすみやかに改善の措置をとりたいと存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/101
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102・八木一男
○八木(一男)委員 別な点でこの法案について伺います。実は社会保障制度審議会で失業保険法の改正案について答申を出しました。そのときに政府の示された原案と変って起ります点が一つだけございます。原案から制度審議会の答申を加えて変えられた点がございます。この点は時間を節約する関係上、これはいい点でございますから申し上げませんが、悪く変った点が一つございます。それは補助金という原案でありましたのを報奨金とすりかえてあるわけであります。これは大蔵省が無理解であってそういうことになったのだろうと思いますが、大蔵省に質問をしなければなりませんが、社会保障制度審議会の答申というものは内閣にするものであって、しかもそれに出した原案というものは、後に変えるときには、厳密に言うと、もう一回出しかえて論議をすべきものだ、それが実際の金額や何か変らないにしろ、一大蔵省の横やりで原案が変るというようなことでは、これは労働省の権威も保たれないし、また社会保障制度審議会の権威も保たれないわけです。その点についていかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/102
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103・石田博英
○石田国務大臣 補助金も報奨金も実体的には差がないものと考えております。私どもといたしはしては、名前は、ざっくばらんに申しますと、どちらでもよろしいと思いますが、ただこれは補助金のようにある事務を行わしめるものに対して一定の補助をするのではなくて、その成績の上ったものに対して、たとえば地方税等が納付成績がいいとか、そういうようなものに対して出す報奨金、そういう意味で、要するにある一定の成績が上ったものについて出すものでありますから、その性質は補助金というよりは報奨金という方がより金の性質を表わしているものだ、こう考えて報奨金といたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/103
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104・八木一男
○八木(一男)委員 今の問題でございますが、報奨金と補助金の性格を今石田労働大臣がおっしゃいましたが、それが少し心配な点で、やはり成績が上ったところに出すという性格だから、そう言うても同じだと言われましたけれども、もちろん行政官庁としてはそういう意味で出すという立場もございますでしょう、しかしそういう考え方に立ちますと、非常に過酷なことになって、やはり事務組合でそう早く納められない、納めるが一番成績がよくならないというようなものには、また別な面で、入っている事務組合の零細企業か何か、そのときに金詰まりであって、そういうようなことがあったというようなこともあるわけであります。それはいいことだとは申しませんけれども、結局報奨という意味を強めて、ただ厳重にやって参りますと、一番困っているものに報奨金ないし補助金が行かなくて、ますます事務組合が崩壊するような方向に向っていくというおそれがあるわけであります。そこは失業保険制度を守り立てて、そうして大ぜいの失業するかもしれない労働者に失業保険制度を確保していこうという労働者に対する親心からこういうことを扱っていただきたいと思うわけでございますが、それについて労働大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/104
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105・石田博英
○石田国務大臣 法の運営についての心がまえは、今八木委員の御指摘の通りの心がまえでやって参りたいと存じます。実際問題といたしまして報奨金を出します基準というものは、これは政令であらかじめ定めるのでありますから、その政令で定めた基準に達したものについてはこれは当然全部支払われるわけでありまして、それに達しているにかかわらず報奨金が払われない、あるいはそれが時の財政政策か何かによって勝手に増減されるというようなことはございません。そういう建前で政令等を制定いたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/105
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106・八木一男
○八木(一男)委員 この失業保険法につきましては、とにかく石田労政になってから、私どもとしては非常に不満な労政も多分にありますが、この点だけはある程度よくおやりになったと思うわけであります。これをさっき言われましたように急速に強制適用まで持っていかれる——日にちを限っては御無理でございましょうが、できるだけ早く強制適用の法案にして改正案を出す気持を持っているというようなことを御披瀝願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/106
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107・石田博英
○石田国務大臣 それは先ほどから何度も表情を披瀝いたしておるところでありまして、でき得る限り早く強制適用に持っていくようにいたしたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/107
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108・八木一男
○八木(一男)委員 それでは失業保険法に対する質疑は終りますが、この際労働大臣に一点ちょっと伺っておきたいのですが、衆議院で審議が終りました日雇労働者健康保険法の問題ですが、あれは結局国庫負担がふえ、傷病手当金かできたということはいいことなんですが、保険料が値上げになっているんです。傷病手当金のふえるよりも保険料の値上げが多いんです。これは困ったことです。甘辛両法案なんです。保険料の値上げをしなければならないということは、保険会計がうまくいかないから値上げをするということを言っておられるんですが、日雇い労働者の賃金が上るより、就労日数が多ければ、それだけたくさんの保険料が入ってくるわけです。そうするとそんな保険料の値上げなんかしなくてもいいんです。働く日数を少くしておいて、そうしてその一日分がきまっておって日数が足らないから保険料が少い。だから保険料率を上げるというのは非常にいいかげんなんです。両面から締められている。これは非常にけしからぬことで、石田さんがもっと日雇労働者健康保険法案を御研究になって起ったら、労働者のためにそういうことはいかぬと、もっとがんばられたと思うんですが、率直に申しまして、この法案には御勉強がそう十分ではなかったと思うのです。もし間違っておりましたら失言を取り消しますけれども、そういう点で厚生省関係の法律には労働者の利益に大きく関係のあるものが多いのです。ですから労働者の立場から大いに発言していただいて、社会保険関係の法律が労働者の不利にならないように、労働省で強力に主張していただきたい。今後の問題ですけれども、お願いしたいわけでございますが、それについての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/108
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109・石田博英
○石田国務大臣 今御指摘の日雇い労働者の健康保険は、これは御承知のごとく私の直接の所管ではございません。しかしこれは日雇い労働者諸君の生計に非常に大きな影響がありますので、私どもも深甚な注意を払って参りましたが、御指摘のような事実もございます。しかし就労日数を少くしておいて、というお話でありますが、別に前より減らしたわけではなく、あとう限り漸次増加せしめるような方向にいっておるわけであります。また今後失業の発生状況、あるいは国の財政状態等々を勘案いたしまして、あとう限り就労日数の増加に努めて参らなければならぬことは申すまでもないのでございますが、今年は、たびたびこの委員会におきましても、予算委員会におきましても御説明申し上げましたように、就労日数を確保することも必要でありまするが、それ以上に対策事業の対象人員を確保するという方に重点を置かなければならないやむを得ざる諸般の事情もございましたことを御了解いただきたいと存じます。ただいま御指摘の就労日数の増加あるいは日雇い労働者諸君の賃金の増加ということは、諸般の情勢の許す限り努力をいたすことによって解決をして参りたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/109
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110・八木一男
○八木(一男)委員 これで大蔵省を除いて一応質問を終りますが、今の問題で、終局就労日数が多くなり、賃金が増加していくということになりましたら、ひとりでに日雇労働者健康保険特別会計はそれだけ黒字の方向に向うわけです。黒字の方向に向ったときに、上げたものをほっておけということでなしに、今度は上げ過ぎているわけです。議会の勧告も上げ過ぎておってけしからぬと言っておるわけですから、そのときには下げていくというふうに、内閣の国務大臣として御努力を願いたいと思います。それの積極的な御答弁が伺えましたならば、私の労働大臣に対する御質問はこれで終らしていただきたい思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/110
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111・石田博英
○石田国務大臣 これは先ほども申しましたように直接私の所管に属することではございません。しかしながら保険会計が黒字になっておるのに保険料金をそのまま据え置くということは、建前としてはおかしい話でありますから、そういう場合が参りましたならば、それに沿って適宜の処置が行われるのは当然のことで、また行なってもらうように——果してそのときまで国務大臣でおるかおらぬかは別問題といたしまして、おりましたならば努力をいたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/111
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112・八木一男
○八木(一男)委員 大蔵省から来ましたから伺いますが、実はこれは村上主計局次長に伺いたかったのですけれども、鳩山主計官にお伺いいたします。
今度の失業保険法の改正案につきまして社会保障制度審議会に諮問がございました。そのときには事務組合に対して政府から支給する金は補助金という名前になっておったわけです。それがその後——今労働大臣にお伺いしたわけでございますが、報奨金という名前に変りました。これは名前だけ変ったというお話でございますけれども、やはり名前のニュアンスから扱いが相当厳格なものになって、事務組合の発展のために十分役に立たなくなるおそれもあると思います。行政的なやり方としてはそういうことにならないようにすると労働大臣は言われましたが、私はもとのままの補助金にしていただくべきであったと思うわけですが、それについて大蔵省の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/112
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113・鳩山威一郎
○鳩山説明員 補助金と報奨金とどういうふうに違うかということにつきましては、先ほど大臣から御説明があったと思いますが、私も大臣の御答弁の通りと思っております。これは率直に申し上げまして、補助金とはニュアンスの違いが報奨金にあるわけでございますが、補助金と申しますと、この経費の何分の一を補助するとかいうのが通例でございますが、今回の場合におきましては、経費がどれだけかかったからどれだけ出すということよりも、むしろ能率を上げたとにろに経費のある一定のパーセンテージを見てやるというようなな能率主義でいった方がいいのじゃないかという、能率的に金を配るか、あるいは実際に金のかかった額の何割を払うかというようなニュアンスの違いがあると思います。まあどちらがいいかということになりますと、それぞれ見方があると思います。いろいろ御議論のあることと思いますが、これには今回の組合の性格と申しますか、これがいろいう性格の議論に発展して参ると思いますが、その性格がどちらの便宜のための仕事であるかというようなことがいろいろ議論になったわけであります、こういうものに一般的に補助金を出すということになりますと、普通の会社その他におきましても失業保険自体の事務には相当経費がかかっているわけでございまして、経費の何割がを見ろというような思想が出ますと、その他の会社においてそういった事務に要する金も見るべきじゃないかとか、あるいはほかの制度におきましてもいろいろ税金の面で源泉徴収に金がかかるからその金は補助金で見るべきじゃないかとか、いろいろ議論が発展することが考えられますので、率直に申し上げまして私どもとしてこれは能率的な意味でやっていきたい。それからもう一点といたしましては、やはり組合が非常にしっかりしたものであって、各組合員の待遇その他におきまして、組合も徴収について相当責任をもって当って下さるというような性格の組合になりますと、これは国も相当援助していくべきだという思想が出て参ります。今そこまでなかなか踏み切れないという段階でございますので、それでは組合のそういった国の徴収事務の代行というような面を非常に強く出しますと、かえって問題が起るというようなこともありまして、この際はそういった能率的な点から報奨金ということでやって参ろうじゃないかというようなことにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/113
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114・八木一男
○八木(一男)委員 時間をお急ぎのようでございますので、簡単にしますが、大蔵省としてはそういうお考えをおとりになりたいお立場におありになると思います。しかし結局今のような能率主義をとりましたならば、その基準からちょっとはずれたところは出してやらないとか、出しても一生懸命頼んで御了解を得なければ出てこないというようなことが起るわけです。ところがそういうようなところは五人未満の事業所で、事案所の方も労働者の方も非常に貧困である。それで事業主の手並みが悪いために法としては困った問題ですけれども、そういうことが起りがちだ。起りがちの状況だからこそ事務組合を作って失業保険を発達させなければならないことになるわけです。そういうことで非常に厳格にしないと事務組合がどんどんふえていって、失業保険制度が広がることがとまってしまうわけです。そういう点で補助金という考え方か財政的な考え方ではなしに、失業保険制度という社会保障の立場から考えましても、当然補助金にすべきものであろうと私どもは考えます。そういうことで労働省が発案されて、社会保障制度審議会に諮問をなさった、そういう了解のもとにこの答申が行われた。内閣自体がこの社会保障制度審議会の答申を尊重しなければならないということは、社会保障制度審議会設置法第二条で明確に規定されているわけでございます。それほど大きな問題でありませんから、そんなに問題にする気持もありませんけれども、もし答申を受けてからその内容を変えるときには筋合いからいえばもう一回諮問をし直して出さなければ法律を完全に順守したとはいえないわけでございます。そのように審議会は重大なものであるのに、往々にしてこれは大蔵省のみでなく諸官庁、厚生省などははなはだそういう例が多いのですけれども、そういうことを無視してやっている。言いかえれば法をでたらめに運用しているようなところがあるわけです、そういうことではいけないので、大蔵省も各審議会の勧告については各省を縛るものもあれば、内閣自体を縛るものもございますけれども、そういうことを今までそういう審議会が弱体であるからといって軽く考えないで、やはり答申が済んだものは、そういう文言を中で変えるということは重大な問題であるというような観点からやっていただきたいと思う。また失業保険制度を育成するという意味で、そういう報奨金的な考え方でなくて、補助金の考え方であるべきです。法案としてそうなっておりますから、今後労働省としては運用を十分にお考えになると思いますけれども、それについて大蔵省側ではそういう意味において、労働省側のいろいろのやり方について協力をしていただきたいと思うわけです。それについて簡単な御答弁でけっこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/114
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115・森山欽司
○森山委員長 簡潔に御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/115
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116・鳩山威一郎
○鳩山説明員 今後この実行につきましては、いろいろ打ち合せをして参りたいと思いますが、その際御趣旨のような組合にとりまして非常に酷だということにならないように十分注意して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/116
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117・森山欽司
○森山委員長 滝井君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/117
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118・滝井義高
○滝井委員 一、二点簡単にお尋ねしたいのですが、それは今回職業安定関係の失業保険法が五人未満の事業所に適用せられることになったわけでございますが、当然職業安定関係の失業保険というものは、社会保険関係の健康保険ときわめて密接な関係を持つものでございます。そうしますと政府の五人未満の事業所に対する社会保険は一体どういう方向に向くのだという質問に対して、これは国民健康保険でやるのだ、こういう岸総理の答弁がここであったわけなんです。そうしますと、五人未満の事業所に失業保険を適用する場合にわざわざ事務組合まで事業主に作らしてやるからには、私はこの際雇用労働者に社会保険を一本の姿で適用するという意味で、その事務組合にやはり健康保険の面も扱わせることにした方が報奨金その他の面も関連をして、能率主義を貫くならばきわめて能率的であり財政的にもよいんじゃないかというような感じかするのです。従ってこういう問題については、一体労働省は厚生省と話し合い、内閣全体の政策としてそういう問題はどういう工合にお考えになったのか、ただ労働省だけが独走的に五人未満の失業保険をやるために事務組合を作っていくことにしたのか、この点を大臣から一つお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/118
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119・石田博英
○石田国務大臣 厚生省関係のことについては私どもは直接の問題ではございませんが、私どもは失業保険の適用範囲を拡大したいという立場から考究したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/119
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120・滝井義高
○滝井委員 行政はやはり内閣が行う場合には一貫したものでなくちゃならぬと私は思うのです。厚生行政は厚生行政、労働行政は労働行政、商工行政は商工行政というようなばらばらのもりであってはならぬと思う。と申しますのは、現在一九五六年末で失業保険の対象は九百万ですか、事業所の数は二十六万なんです。ところがこれが五人未満は今度は任意包括ですか、いよいよ最終的に行政段階まで持っていくことになれば、少くとも九十一万程度の事業所かあるということです。そうしますとこれは実態調査をやられる場合に九十一万の事業所に働く常用的な労働者は百七十七万程度だとすると、厚生省は厚生省でその調査をやり、労働省は労働省でやると必ず調査した結果が違ったものが出てくるのです。それならば行政をやる場合にまたいろいろな見解の違いが出てくる、そういう場合に予算を倹約する意味からいって、おそらく労働省も厚生省も鳩山主計官のもとにあるだろうと思うのですが、そうすると五人未満の事業所の実態調査をやられる場合に、厚生省と労働省とが一体になって調査をすれば費用は両方にやらなくてもよいことになるわけです。これは実態調査の出た結果を国民健康保険に用いようと、あるいは失業保険に用いようと、あるいは健康保険に用いようと、とにかく調査をやる事業は鳩山主計官のもとにあるんだから、一本でやったら私は非常に便利ではないかと思う。こういうところに政党内閣でありながらやはり問題があると思うのです。それで厚生省の方は国民健康保険でやりますというし、片方は事務組合まで作って失業保険でやっていく、こういうことなら労働者としては同じなんですから、それが二つに分れずに一つでやれる。この点を保険料の徴収の面から考えても、国民健康保険に持っていく場合と、五人未満は健康保険を失業保険ができた後にやる場合と非常に違ってくるのです。ですから労働者に対する政策というものは一貫性を持たなければならぬと私は思う。こういう点でおそらく鳩山主計官の御担当だったと思うのですが、あなたの方でこういう調査費の予算を考える場合に、そういうことをお考えになったことがあるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/120
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121・鳩山威一郎
○鳩山説明員 当初五人未満の社会保険関係において厚生省当局もそれは必ずしも国民健康保険一本でやるということではなくして、健康保険でもやっていき、たいという考え方も持っていたようでございますが、国民健康保険の国民皆保険ということをまず第一の政策として掲げるような関係から、五人未満の方につきましては国民健康保険の方でやっていこうというふうな段階になっているのでございます。失業保険につきましては国民健康保険にかわるような制度がない、全く何の制度もないというところから、失業保険自体を拡大していかなければならないのではないかということになってしまったわけで、その点から見ますと失業保険の方が一歩進んだような格好になっておる。今後健康保険を拡充するというようなことにつきましては、おそらく今後政府といたしましても十分検討して参らなければならない問題かと思っております。事務費につきましては、大きな統計になりますと、大がい統計局の方で調査いたしまして、その結果を労働省も厚生省も使うというようなことで、その付帯調査その他こまかい調査はおもに単独でやはりいたしますが、今後機構等の問題もからみまして検討しなければならない問題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/121
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122・滝井義高
○滝井委員 労働者側からいえば、現在健康保険に入っている労働者は千分の六十五の保険料を取られるわけです。それから厚生年金が千分の三十取られる、そして失業保険も十分の十六ですか、取られる。合せて千分の百十一取られる。坑内夫はちょっと違います。そのほかに、これに加えて事業主が労災の保険料を払ってくれる。これだけのものが一応広義の社会保障的な経費として労働者と事業主と折半、あるいは事業主が全額出す、こういう形になっている。そうしますと、この千分の六十五を取る健康保険だけが別の方で今度自分の財布の中から出していくということになると、これはなかなかうまくいかない。また労働者自身にしても、今度は失業保険や厚生年金はそちらから取られておるけれども——厚生年金はまだ加入させてないのですが、これは将来加入させなければならっないことになるでしょう。そうしますと、あちらこちらで同じような経費というものを出すということは、労働者自身にとっても煩瑣にたえないことだし、事務的に見ても困難なことなのです。私がこの問題で非常に心配するのは、どうしてそういうことを言うかというと、実は労働者は自分の賃金から一体幾らの金を社会保険に納めたか知らないのです。先般私朝日か何かの投書で見たのですが、年度末になったら、ちょうどわれわれの税金を源泉徴収して、年末調整できちっと幾らの税金をあなたは源泉徴収しましたというのを知らしてくれると同じように、社会保険についても、あるいは失業保険についても、あなたはこれだけの保険料を納めましたぞという通知をくれという意見が相当ある。どうしてかというと、こういう事務組合ができるということになると、労働者は払ったと思っておる。ところが、事務組合の中の徴収入がそれを納めずにいて、職業安定所に行って調べたら、あるいは社会保険出張所に行って調べたところが、あなたは保険料を納めていないのだから、保険はかかりませんぞと言われた例がある。先般ここでも京都の岡本君が言ておったのだが、社会保険にも、何か小さな事業場の保険料を集めて回る周旋屋かできた。ところがその周旋屋がその金を持ってどこかへ姿をくらましてしまった。従って労働者は納めておると思っておった。ところが病気になって保険金をもらいたいと言ったら、あなたのところは納まっていないと言われた。そうすると、責任がはっきりしない、こういうことです。今度の事務組合についても同じです。これを見ますと、事務組合というものは納付を怠ったときは補償しなければならぬ。もし組合が使い込んだり何かしたときに事業主がやってくれることになる。ところが五人未満の労働者を使っている索言納な事業主が、一ぺん納めた保険料を再度納めるだけの力があるかというと、ないのです。そういうような場合は一体これはどういうことになるか。失業保険は労働者は必ずもらえるのかどうかということなのです。こういう点を明白にしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/122
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123・百田正弘
○百田政府委員 ただいまの御質問でございますが、労働者側から賃金を控除いたしましたときには、法の三十三条によりまして、事業主は控除に関する計算書を作成して被保険者に示さなければならないということになっているわけです。
第二点といたしまして、事業主が保険料を控除したにもかかわらずこれを納めなかったという場合におきましては、罰則の五十三条によりまして六カ月以下の懲役、または五万円以下の罰金ということですか、今度の改正案によります失業保険事務組合の場合におきましては、この改正法案によりまして、事務組合においてそうした収受関係を明らかにする帳簿を備えつけさせることにいたしておるのであります。事業主が納めるという点につきまして、かりにそれが納めてなかったという場合には、その責任といたしまして、第一次的には失業保険事務組合に行きまして、失業保険事務組合に差し押えその他の処分をするわけです。先ほど八木委員がお話しになりましたように、一カ月の額としては大した額ではございませんので、おらく担保は完全にできると思いますし、われわれの方も滞納を発見しましたら早く手を打ちたいと思いますので、そうしたことはないと思いますけれども、かりにありましたときには事業主に行く、しかしながら事業主が納めない場合には被保険者は失業しても保険金かもらえないかというと、失業保険の方ではその点はもらえます。その点、被保険者には心配がないようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/123
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124・滝井義高
○滝井委員 その点少し明白にしておいてもらいたいのです。ちょっと頭が散漫になっておってまだ十分条文を見ておりませんが、もし事業主が労働者から保険料を取り立てておるにもかかわらずこれを安定所に納めていなかった、そのために労働者が被害をこうむることはありませんね。——それは条文のどこでそうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/124
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125・百田正弘
○百田政府委員 失業保険の方は、被保険者が離職した場合に、一定の資格要件のあります場合には失業保険金はもらうことができるようになっております。なお、この十三条の二によりますと、資格の取得の確認とということで被保険者の資格が発生するわけで、これはさかのほって請求することもできるわけです。その間におきまして、かりに保険料が納まっていなくても、被保険者の資格取得の確認がございますれば、その資格期間が六カ月以上ございますれば失業保険金は給付いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/125
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126・滝井義高
○滝井委員 問題はその確認ということです。保険料が納まったことによって確認されるんじゃないかというのです。労災でわれわれのところで非常に例が多かったのは、労働者が落盤で死亡した。ところが死亡しますと、事業主が保険料を滞納しておる、従って、これは法律にはありませんが、労働省の施行令か何か、政令で給付の制限が来るわけです。半額だけ国が払いましょう、あとの残りの半額は事業主にもらいなさい。ところが事業主は財政的に行き詰まっているから、払わない。そのときは事業主の破産の宣告をする、破産の宣告をしたときに初めて残りの半額がもらえる。ところが破産の宣告に追い込むとどういうことになるかというと、まだ使われている労働者か失業してしまうので、そこから反対が起ってくる。そうしますと、結局死亡した労働者は給付制限のために半額だけしかもらえないで、泣き寝入りです。それと同じことで、失業保険においても保険証を渡さない。だから、失業保険でこの確認をするということは、保険料を納めてから初めて確認ができるじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/126
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127・百田正弘
○百田政府委員 今の点を正確に申し上げます。最も極端の場合を申し上げますと、五人以上の事業所であって、今まで入っていなかったことがきょう発見されたという者につきましても、すでに一年前なり、半年前からその者がそこで雇用されておったということがわかれば、離職した場合には失業保険金は支払われるわけであります。この点は保険料を納めるということと保険金をもらうということとの関連はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/127
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128・滝井義高
○滝井委員 そこまではっきりしておけばいいです。
そこで問題はやはり労労災のことです。労災の問題は同じ労働者で関連しているから言うわけです。労災は事業主が納めていないと制限給付になるわけです。これはお宅の方の通達で全部そうなっているのです。そうしますと、労災だけが今度は跛行的な取扱いになっているわけだ。その点はどういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/128
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129・百田正弘
○百田政府委員 労災関係は直接の所管ではございませんが、労災については、こういうことになっております。労災としては、基準法によりまして、当然事業主が補償しなければならぬ、こういう義務があるわけです。従いまして、保険の場合に、たとえば一定の事故がありました場合に給付制限の事実はございますけれども、しかしながら最終的には事業主が補償しなければならぬ基準法上の義務があるわけです。そういうことでこういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/129
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130・滝井義高
○滝井委員 労災保険は全額保険料を事業主が納めるわけです。他の保険は労働者が折半主義で半額納めておる。その違いだけで、本質的にはむしろ労災の方が肉体に非常に大きな傷害を受けるわけですから、そういう場合に、むしろ失業保険にならって全額払う政策を講ずべきだと思うのです。そうしないと、そこらあたりが同じ保険でありながらちぐはぐになってくる。死亡した場合にもらう金が半額だなどというこんな悲惨なことはない。そしてそれをもらうためには事業主を破産の宣告に持っていかなければもらえない。この点は失業保険とは関係ありませんが、しかし一個の労働者から見れば同じ立場にあるわけですから……。
それから報奨金の問題ですが、今までの報奨金というものに対する考え方、たとえば市民税などに対する報奨金ですね。これは報奨金をやっちゃいかぬという国の趣旨が地方自治体に来ているわけですね。やるならば施設へおやりなさい。たとえば労働者に市民税を組合を作って集めさせる。そうするとそれに対して還付をやる。五分以内で今までは現金でやっておった。それがいかぬから福祉施設へおやりなさい、こういう形なんです。そうしますと、今度は政令でこれを定めることになっておりますが、一体全額完納した場合には何%やることになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/130
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131・百田正弘
○百田政府委員 この点につきましては今後政令で定めることになっておりますので、具体的には大蔵省と協議してきめることになりますが、大体われわれの考えといたしましては、五%前後のところを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/131
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132・滝井義高
○滝井委員 わかりました。おそらく市民税程度になるだろうと思います。
次に、失業保険財政の見通しなんですが、これを少し聞きたいのです。昨年の五月の失業保険の受給者一ヵ月五万二千台がピークだったと思うのです。そうすると、昨年の十二月になってから十一万一千台になり、今年の一月になると、その三倍の十五万一千くらいになってきていると思います。そうすると、今までわれわれが予算委員会等を通じて失業対策なり、失業保険を論議したときとは、日本経済の不況の要素というものは根本的に変ってき始めている。一体今まで一般失業保険においても、日雇い失業保険においても、剰余金が出てきておったわけですね。そうしますと、今度は日本経済がこういう情勢になり、そうしてアメリカの七月予算編成期には、日本経済というものはぐっとよくなるだろうと言っておったけれども、日銀発表を見ても必ずしもそうではない。だとすると、失業保険財政の見通しはどういうことになるのかということです。これを一つお聞きいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/132
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133・百田正弘
○百田政府委員 権かに今お話のように、最近、ことに一月以降においては失業保険の給付金はふえておりますが、同時に保険料収納の面におきましては九六、七%の収納成績をおさめております。三分の一の国庫負担を考慮いたしますれば、この程度の給付がふえましても、十分余裕があるということになります。なお本年度予算につきましても、現在の給付金の約半額程度は予備費として持てるというような状況でございますので、この点につきましては今後相当深刻になりましても、保険経済としては差しつかえない、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/133
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134・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、八月以降くらいには完全失業者八十万人をこえるだろうと労働省か内閣で発表していましたが、そういう見解が最近非常に強くなってきておるのでありますが、今年度全般の保険財政というものは依然としてやはり黒字を続けていくというお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/134
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135・百田正弘
○百田政府委員 三十三年度におきましても黒字は可能であるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/135
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136・滝井義高
○滝井委員 いろいろ質問したいこともあるのですが、時間の関係もありますので、私の質問はこれでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/136
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137・森山欽司
○森山委員長 他に御質疑はありませんか。——御質疑もないようでありますから、これにて質疑は終了したものと認めます。
これより討論に入るのでありますが、別に通告もないようでありますので、直ちに採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/137
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138・森山欽司
○森山委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
なお本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/138
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139・森山欽司
○森山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十六分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804410X04019580422/139
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