1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月四日(火曜日)
午前十時五十一分開議
出席委員
委員長 福永 健司君
理事 相川 勝六君 理事 高橋 等君
理事 保科善四郎君 理事 石橋 政嗣君
理事 受田 新吉君
大村 清一君 北 れい吉君
小金 義照君 田村 元君
辻 政信君 中川 俊思君
眞崎 勝次君 粟山 博君
山本 粂吉君 茜ケ久保重光君
淡谷 悠藏君 稻村 隆一君
木原津與志君 中村 高一君
西村 力弥君
出席政府委員
内閣官房副長官 田中 龍夫君
憲法調査会事務
局長 武岡 憲一君
総理府総務長官 今松 治郎君
総理府事務官
(行政管理局
長) 岡部 史郎君
防衛政務次官 小山 長規君
外務政務次官 松本 瀧藏君
外務事務官
(大臣官房長) 田付 景一君
外務事務官
(移住局長) 内田 藤雄君
大蔵政務次官 坊 秀男君
委員外の出席者
専 門 員 安倍 三郎君
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三月一日
一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出第一〇九号)
特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改
正する法律案(内閣提出第一一〇号)
防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内
閣提出第一一一号)
二月二十八日
建国記念日制定に関する請願(足立篤郎君紹
介)(第一一六九号)
同(池田清志君紹介)(第一二〇五号)
同(菅野和太郎君紹介)(第一二〇六号)
同(床次徳二君紹介)(第一二〇七号)
同(淺香忠雄君紹介)(第一二五七号)
同(大村清一君紹介)(第一三〇一号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二五一号)
同(志賀健次郎君紹介)(第一二九七号)
建設省鳴子ダム工事事務所臨時職員の身分保障
に関する請願(保科善四郎君紹介)(第一二〇
一号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二五二号)
建設省湯沢工事事務所臨時職員の身分保障に関
する請願(保科善四郎君紹介)(第一二〇二
号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二五三号)
同(川俣清音君紹介)(第一二五四号)
建設省最上川水系砂防工事事務所臨時職員の身
分保障に関する請願(保科善四郎君紹介)(第
一二〇三号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二五五号)
建設省山形工事事務所臨時職員の身分保障に関
する請願(保科善四郎君紹介)(第一二〇四
号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二五六号)
金鵄勲章年金復活に関する請願(小林郁君紹
介)(第一二〇八号)
建設省定員外職員の身分保障等に関する請願(
井谷正吉君紹介)(第一二二五号)
旧軍人関係恩給の加算制復元に関する請願(池
田清志君紹介)(第一二四二号)
傷病恩給増額等に関する請願(永山忠則君紹
介)(第一二四三号)
復員業務等に従事した旧軍人の恩給不均衡是正
に関する請願(永山忠則君紹介)(第一二四四
号)
文官恩給改善に関する請願(保科善四郎君紹
介)(第一二五八号)
同(保科善四郎君紹介)(第一三〇二号)
建設省鎧畑ダム工事事務所臨時職員の身分保障
に関する請願(志賀健次郎君紹介)(第一二九
二号)
建設省秋田工事事務所臨時職員の身分保障に関
する請願(志賀健次郎君紹介)(第一二九三
号)
岩手県下の寒冷地手当引上げに関する請願(北
山愛郎君紹介)(第一一七〇号)
防府空港設定に関する請願(受田新吉君紹介)
(第一一八五号)
同(佐藤榮作君紹介)(第一二八五号)
建設省磐城国道工事事務所臨時職員の身分保障
に関する請願(高木松吉君紹介)(第一一九一
号)
同(保科善四郎君紹介)(第一一九二号)
建設省郡山国道工事事務所臨時職員の身分保障
に関する請願(高木松吉君紹介)(第一一九三
号)
同(保科善四郎君紹介)(第一一九四号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二四五号)
同(志賀健次郎君紹介)(第一二九八号)
建設省米代川工事事務所臨時職員の身分保障に
関する請願(保科善四郎君紹介)(第一一九五
号)
同(川俣清音君紹介)(第一二四六号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二四七号)
建設省岩手工事事務所臨時職員の身分保障に関
する請願(保科善四郎君紹介)(第一一九六
号)
同(志賀健次郎君紹介)(第一二九九号)
建設省南部国道工事事務所臨時職員の身分保障
に関する請願(保科善四郎君紹介)(第一一九
七号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二四八号)
建設省酒田工事事務所臨時職員の身分保障に関
する請願(保科善四郎君紹介)(第一一九八
号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二四九号)
建設省大倉ダム工事事務所臨時職員の身分保障
に関する請願(保科善四郎君紹介)(第一一九
九号)
同(松澤雄藏君紹介)(第一二五〇号)
建設省津軽工事事務所臨時職員の身分保障に関
する請願(保科善四郎君紹介)(第一二〇〇
号)
建設省皆瀬ダム調査事務所臨時職員の身分保障
に関する請願(志賀健次郎君紹介)(第一二九
四号)
建設省福島工事事務所臨時職員の身分保障に関
する請願(志賀健次郎君紹介)(第一二九五
号)
建設省石渕ダム管理所臨時職員の身分保障に関
する請願(志賀健次郎君紹介)(第一二九六
号)
戦没者遺族の公務扶助料増額等に関する請願外
七件(田中伊三次君紹介)(第一三〇〇号)
の審査を本委員会に付託された。
三月三日
駐留軍及び特需産業関係労務者の離職対策に関
する陳情書(
第五〇八号)
地方自治省設置に関する陳情書
(第五〇九号)
基地における損害補償の特別法制定に関する陳
情書(第五五〇
号)
増加恩給における内科的疾患の項症引上げに関
する陳情書
(第五六四号)
戦没者遺族の公務扶助料増額等に関する陳情書
外一件
(第五六八号)を本委員会に参考送付され
た。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第七四号)
在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部
を改正する法律案(内閣提出第七五号)
憲法調査会法の一部を改正する法律
案(内閣提出第七九号)
恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
九四号)
一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出第一〇九号)
特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改
正する法律案(内閣提出第一一〇号)
防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内
閣提出第一一一号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/0
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001・福永健司
○福永委員長 これより会議を開きます。
まず防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を議題とし、政府に提案理由の説明を求めます。小山防御政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/1
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002・小山長規
○小山(長)政府委員 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由並びに内容の概要を御説明申し上げます。
政府は、今般人事院の勧告の趣旨にかんがみ、一般職の国家公務員に新たに通勤手当を支給するため、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしましたが、防衛庁職員に対しましても一般職の職員と同様に通勤手当を支給することといたしますとともに、この機会に昨年末行われた期末手当の増額に伴いまして、航空手当等の額の俸給日額に対する割合の最高限度を改める等必要な措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。
次に本法律案の内容の概要を申し上げます。
まず通勤手当につきましては、一般職国家公務員の例にならい、その内容は一般職職員の場合と全く同様であります。
次に航空手当等につきましては、昨年末に行われました期末手当の増額に伴いまして若干の増額を必要といたしますので、俸給に対する割合の最高限度を増額分だけ引き上げることといたしました。
なお、通勤手当の新設並びに航空手当等の率の改訂に伴いまして、公務災害補償等関係規定の整備をいたした次第であります。
以上が本法律案の提案の理由並びに内容の概要であります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/2
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003・福永健司
○福永委員長 次に恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、政府に提案理由の説明を求めます。今松総務長官。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/3
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004・今松治郎
○今松政府委員 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。
戦後における退職公務員、すなわち、軍人、文官及びその遺族に対する恩給上の処遇につきましては、いわゆる軍人恩給の廃止ないしは復活あるいは給与ベースの改定に伴う恩給年額の増額等、戦前には見られなかった消長と変遷を経てきたものでありまして、いろいろと検討を要するものが残されている状態にあったのであります。
そこで、昨年六月臨時恩給等調査会を設置し、御検討をお願いした次第でありますが、調査会においては、慎重審議した結果を昨年十一月十五日政府に報告されたのであります。
政府は、今回、この報告をもととしつつ、戦後処理の重要課題でもあり、かつまた、恩給法それ自体における懸案でもあった戦没軍人遺族並びに戦傷病者の処遇の改善と老齢退職公務員の処遇の向上に重点を置いて、問題の総合的解決をはかろうとするものであります。
その第一点は、国家財政その他諸般の状況を考慮して、これがために急激なる財政負担を来たさぬよう、四カ年にまたがる漸進的な計画のもとに所期の目的を達成しようとする点であります。
第二点は、その実施の緩急順序において、戦没軍人遺族、重傷病者、高年令者を先にした点であります。
第三点は、処遇改善の対象を六十才以上の老齢者、寡婦、遺児、傷病者としたことであります。
第四点は、上に薄く下に厚くするという精神に立脚し、重点を下級者に置いたことであります。すなわち、仮定俸給の引き上げにつき強い制限を設けて、上級者の引き上げ率を抑制いたすとともに、傷病恩給におきましては、階級制を撤廃することとしたのであります。
以上が、この法律案の提案の理由及び概要であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/4
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005・福永健司
○福永委員長 次に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、政府に提案理由の説明を求めます。今松総務長官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/5
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006・今松治郎
○今松政府委員 ただいま議題となりました一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びに内容の概略を御説明申し上げます。
この改正案は、昨年七月十六日付の人事院勧告に基き、一般職の国家公務員に対し、新たに通勤手当を支給しようとするものであります。
すなわち、通勤手当は、有料交通機関または自転車等を利用して片道二キロメートル以上の距離を通勤する職員に対して支給することとし、その支給額は、有料交通機関等により通勤する者に対しては、月額六百円を限度として、一カ月の通勤費に相当する額から百円を差し引いた額とし、自転車等で通勤する者に対しては、月額百円といたしました。
この法律案は、以上の趣旨に基きまして、一般職の職員の給与に関する法律及び関係法律の改正を行い、本年四月一日から施行しようとするものであります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/6
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007・福永健司
○福永委員長 次に、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、政府に提案理由の説明を求めます。坊大蔵政務次官。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/7
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008・坊秀男
○坊政府委員 ただいま議題となりました特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
特別職の職員の現行俸給月額は、昭和二十七年十一月に定められたものでありますが、その後今日までに、一般職の職員につきましては、再度にわたり給与の改定が行われたにもかかわらず特別職の職員の給与は、秘書官等の一部の職員以外は据え置かれたままとなっておりますので、両者間の給与の均衡が失われる結果となっております。従って、この際、特別職の職員について、その俸給月額の改定を行うとともに、あわせて給与制度全般についての整備を行うため、特別職の職員の給与に関する法律等につき所要の改正を加えることが必要であると考えまして、この法律案を提出した次第であります。
以下、この法律の概要を御説明申し上げます。
第一に、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正いたしまして、特別職の職員の俸給月額を改定し、この改定に関連して、俸給表の体系に再検討を加え、秘書官に対して、一般職の職員の例により、勤務手当を支給するものとし、委員会、審議会、審査会等の委員長、委員等で、他の職務等に従事し、それから生ずる所得が主たる所得となっている者には、俸給月額を支給せずに手当を支給するものとし、常勤を要する国家公務員から引き続いて特別職の職員となった者のうち、公務員としての在職期間が長期にわたる者に対して支給していた特別手当は、俸給額の改定を機会として、これを廃止することとするとともに、新設の科学技術会議の常勤及び非常勤の議員を、特別職の職員の適用範囲に加えることといたしております。
第二に、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正いたしまして、特別職の職員の俸給月額の改定に伴い、その暫定手当の額を別途政令で定めることといたしております。
第三に、会計検査院法、国家公務員法、文化財保護法及び自治庁設置法等の一部を改正いたしまして、特別職の職員の給与に関する法律の一部改正に関連して、これらの法律につき所要の規定の整備を行うことといたしております。
第四に、防衛庁職員給与法の一部を改正いたしまして、防衛事務次官及び統合幕僚会議議長の俸給月額を改定するとともに、その給与体系を、特別職の職員に準ずるものに改めることといたしております。
以上が、この法律案の提案の理由とその概要であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/8
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009・福永健司
○福永委員長 提案の理由の説明は終了いたしました。
以上、各法案についての質疑は次会以後にこれを譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/9
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010・福永健司
○福永委員長 次に、外務省設置法の一部を改正する法律案及び在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑に入ります。質疑の通告があります。これを許します。受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/10
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011・受田新吉
○受田委員 世界地図を御用意願いたいのです。これは小さな国々がよくわかるような地図をさっきお願いしておいたのですが……。
外務省設置法の一部改正とあわせて在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部改正法案に対しまして、両方合せてお尋ねをしたいと思います。この外務省の仕事が、最近国際情勢の進展とわが国の国際的地位の向上の立場から、非常に大きく範囲を広げてきていることは、私たちもよくこれを認めます。同時に外務省が、一方において外交政策を、特にアメリカの勢力を中心とする方向に傾いてきており、中共、ソ連等に非常に冷淡なあり方をしていることも、われわれよく了承しておるわけです。そういう形から見まして、今回この外務省の設置法の中にうかがうことのできます機構改革が、このアジア外交に何とかして重点を置きたいという御意思を持っておられることはこれは現在政府としてはよほど考えられたことだと思います。またかくあるべきものだと考えます。しかし、そのアジアの国々との外交に重点を置くということが、たとえば共産主義諸国家に対する情報の収集とか、その他調査を行うとかいう形で、警戒的な感覚からこれらの国々に対処するために、機構が強化されるというような形であるならば、これは一つの問題を提供したものだと思いますので、私は、今回のアジア外交に重点を置く、また地理的、人種的においてもきわめて密接な関係のある国々に重点を置くということは、共産主義諸国家群との関係において、友好親善を強化するという前提のもとに立っての機構改革であるかどうかをお尋ねしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/11
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012・松本瀧藏
○松本政府委員 アジア諸国ともっと友好関係を増大いたしまして、そしてアジア地区に平和と繁栄を確立したいということは何回となく政府の方針として表明された通りであります。ただいまの御質問の中で、共産国ともっと密接な関係を将来増大する前提として機構改革をしておるのかという質問でございましたが、別にそれを考えて今回機構改革をしておるのではございません。もっと広範にわたっていろいろやりたいこともあるのでありまするが、とりあえず予算措置等あたりからいたしまして、われわれ考えました当面必要な範囲内において機構改革を考えました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/12
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013・受田新吉
○受田委員 アジア局のやっている仕事の中には、東南アジアの国々とか、あるいはソ連、中共とかいうような問題の地域がたくさんあるわけですけれども、こうした国々に対して、内閣調査室は東南アジアとその他のアジアに二つに分けて、情報収集をはかるという方針を持っておられます。外務省の情報文化局が担当しているお仕事では満ち足りないのだ。従って高度の情報収集、連絡、調整をはかる機関として、今回内閣調査室に職員の増員を計画したのだという、先般当委員会における御説明があったわけですが、そうした観点から考えますと、内閣調査室の情報収集という方針は、四つの班を分けておるうちで、その二つの班はアジアに置かれておる。しかも東南アジアと他のアジアとの二つに分けておるというようなことを考えますと、どうもアジアに対する情報収集というものに、内閣調査室が重点を置いているとしか思えない。欧米を一班とし、国内を一班とし、アジアを二班に分けて、四班の高度の情報収集政策というものが、内閣の機関として設けられておるわけでございますが、外務省はそういう情報収集においても、アジアに重点を置いているという内閣の方針と相マッチするがごとくに、アジア対策を重視しておられる、かように了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/13
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014・松本瀧藏
○松本政府委員 外務省は情報収集が主なる目的ではないのでございます。従って内閣におきまする調査室とは、相当趣きを異にすると思いますが、アジアにおきまするいろいろな情報、ことに文化の問題であるとか、政治情勢あるいは経済事情等あたりの情報を集めるということは、もちろんこれは必要でありますので、アジアに対する外交政策というものが従来よりも重点的というよりも重きを置かれ始めましたので、もちろんその方面のいろいろな情報の収集ということも考えますが、それが主なる目的ではないということは、繰り返して申しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/14
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015・受田新吉
○受田委員 アジアの国々を所管するアジア局というものに、特に次長を設置されるということは、その局におる職員の数が他の局に比べて著しく多いということにおいても、これは根拠になるのじゃないかと思うのです。現在外務省で一番多くの役人を抱えておるのが経済局であって、百八十人おる。その百八十人おる経済局には、現在次長を置いてあるわけです。それで大きな局に次長を置くという方針からいっても、アジア局は当然今回次長を置くべき立場にある、かように外務省当局はその観点からもお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/15
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016・松本瀧藏
○松本政府委員 人数といたしましては、アジア局は百三十三名で、経済局と比べますと、少し少いのでありますが、最近御承知のごとく、たとえば韓国との交渉の問題、あるいはインドネシアとの平和協定あるいは賠償協定の問題、さらに今まであまり密接な関係でなかったところの国々との関係も増大いたします関係もありまして、次長をぜひ一名置くことが、諸般の事務の処理の上におきましても便利であるという観点から、われわれ次長を一名置くことをお願いしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/16
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017・受田新吉
○受田委員 次長を置くことによって、事務が煩瑣になる場合がある。たとえば局長の決定でよかった事項が、もう一枚次長、局長となることによって複雑化する場合があり得るのでございますが、御承知でありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/17
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018・松本瀧藏
○松本政府委員 時と場合によりましては、そういう事情もあるかもしれませんが、外務省におきましては、次長を置く方がかえって事務の処理等に当りもっと便利であるという観点から、次長を置くことに決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/18
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019・受田新吉
○受田委員 次長決裁で片づく事務の一部を御指摘願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/19
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020・松本瀧藏
○松本政府委員 こまかいことは官房長にあとで説明させまするが、局長のいない場合には、もちろん次長がこれを決裁して上に上げることになっておりますので、場合によりますと、内部の規定によりまして、次長の特に所管いたしまするところの仕事につきましては、決裁をさす場合もあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/20
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021・受田新吉
○受田委員 次長を置いて能率を発揮し得るという仕事、これは外務省で考えられておらなければならないと思うのです。次長を置いたために、事務が複雑化して判こをつくことが一つ多くなる、こういう機構では改革の趣旨に合致しない。従って次長を置いたために、局長までいかなくとも済む仕事というものがどれだけあるということを一応考えて、次長制が考えられておらなければならぬ。これは官房長でもけっこうですが、今おりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/21
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022・松本瀧藏
○松本政府委員 今地図をとりに行っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/22
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023・受田新吉
○受田委員 それを一つあとから御説明を願いたいと思います。
そこで松本さん、あなたは外務政務次官を再度おやりになって、その信任を厚くしておられるお方でありますが、また特に外国関係においても、御自身が密接な関係を持って旅行もせられておる方でありますが、あなたの御説明で私は満足ということはなんですが、まあがまんをしておきまして、きょうは大臣に来ていただいて御説明を願うまでもない、あなたでいいというものを今から申し上げます。
外務省の従来の仕事ぶりを拝見しますと、何だか他の役所と変った風格がありまして、門外漢は関与するな、外務省の仕事は外務省の高級官僚であるかつての高文外交科出身者がやっておるのだからというような印象を、多くの国民に与えておるわけです。そういうところから、外交官の任命などにつきましても、とかく外務省育ちのはえ抜きの役人が争ってそのポストを占めておる。私たちは今日本の外交のあり方に平和外交の筋を通したい、かように考えており、政府もこれには同感であろうと思う。そういう意味から言うならば、外務省が従来の牙城に立てこもって、外務省の役人で外交を鶴断ずるようなそういうやり方を一掃させるために、あなた、及びあなたの上官である、民間外交家である藤山さん、こういう人々によって外務省のこうした従来の封建的な空気を一掃していただかなければならぬと思うのです。この点についてあなたの何か御所見があると思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/23
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024・松本瀧藏
○松本政府委員 とかくそういう風評があったことを私も耳にしておりますが、決して門戸を閉鎖しておるわけではございませんので、民間からでも適当な人があればもちろんこれを起用する方針をとっておりますのと同時に、ただ単に外交は外務官僚のみによってこれを推進するというのでなくて、大蔵省からも農林省からも通産省からも、いろいろと適当な人をお願いいたしまして、外務省に入って、そうして在外公館長の下でいろいろと協力してもらっておる次第でございます。もちろんいろいろな意味におきまして、ただ小さなからの中にこもった外交ではなくて、いろいろと広く意見を聞き、また党におきましても、ことに外交の問題に関しましては、政調会あるいは外交部会あるいは外交調査会等あたりございまして、これらの意見を十分参酌してわれわれ推進しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/24
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025・受田新吉
○受田委員 あなたのお考えは一応ごもっともであると思いますけれども、現実の問題としてお尋ねいたしますが、現在在外公館に勤務しておられる大使及び公使の数と、その大使及び公使を、はえ抜きの外交官出身者といわゆる民間から出た人々、今あなたが御説明になられた通産その他の役人から出られた方々、あるいは一般民間のりっぱな方々というふうなものに分けた比率を、一つお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/25
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026・松本瀧藏
○松本政府委員 政府委員から説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/26
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027・田付景一
○田付政府委員 お答えいたします。大使が四十四人ございます。公使館が三十三ございますが、このうち実際は十一人の兼摂がございますので二十二人が実際の公使でございます。それから民間から出ておられる方は、今インド、それからフランス、今度アルゼンチンがなられました。それからウルグァイの公使、大体そんなものです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/27
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028・受田新吉
○受田委員 たった四つきりのポストが七十七人で占められる大公使の中に存在するをもって、十分考慮されて民間人が抜擢してあるというお話でございましたが、これは二十分一をもって尊重したと言えましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/28
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029・松本瀧藏
○松本政府委員 もちろん外交のテクニックその地等あたりは一朝にして会得できるものではないのであります。外務省におきましてずいぶん長い問いろいろな経験を積み重ねて国家のために最も有利な外交を進めるべく練達の士を起用しておりますので、外部におきまして、外務省プロパーよりももっと仕事のできる方があれば、もちろんこれを起用するにやぶさかでないということを申しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/29
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030・受田新吉
○受田委員 起用するにやぶさかでないということを目標にしておられても、現実には二十分の一しかこれを起用していないということになると、これはやぶさかである証拠です。やぶさかであるか、やぶさかでないかという議論は現実に起用がどの程度であるかという問題だと私は思うのです。従って、大使とか公使とかいうようなのは認証官ですね。認証官の総数というのは御存じでございましょう。特別職の認証官というのは他にどれだけあるか。今そこに法律案が出ておりますが、他の認証官というのは人事官というのが三人です。国務大臣はもちろんこれに入るわけです。そうしたごく少数の人々が認証官として認められている程度のものです。その他ごく少数しかないはずです。その中へ大使とか公使とか認証官の大半を占める七十七人が——これは兼摂がありますから現実には差し引かれても、七十七人ほど任命し得るのですから、そういう認証官のほとんど大半を占める大公使を外務省のわずかな、高等試験外交科出身者をもって占めているということは、公務員の進路においても非常な不公平があると私は考えるのです。勇敢に、他省の有能な人とか民間人の有能な人を用いるという方針をよく立て得ないということでは、これはいかに起用するにやぶさかでないとか、あるとかおっしゃっても実績をあげたとは言えないと私は思うのです。政務次官、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/30
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031・松本瀧藏
○松本政府委員 外国の例を見ましても、たとえば一番民間人を多く起用しておりますアメリカの例を見ましても、必ずしも大半が民間人でないのであります。カリヤ・ディプロマットというものを主として起用しております。従って日本におきましても、先ほど申しましたごとく、鍛練の士であり、そうしてそのポストに外務省プローパーの者よりももっと成果をあげ得る人があれば、もちろんこれを起用するにやぶさかでないということを繰り返して申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/31
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032・受田新吉
○受田委員 アメリカにおける民間人と外務省はえ抜きの人との比率を正確にお示し願いたいと思います。資料としてあとからでけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/32
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033・松本瀧藏
○松本政府委員 後ほど提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/33
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034・受田新吉
○受田委員 私がここでさらに指摘申し上げたいことは、次の在外公館の名称及び位置に関する法律案にもつながるわけでございますが、大使、公使を交換されるということ、これは両国の親善を強化するに非常にけっこうなことです。また公使を大使に昇格せしめようという向うの御希望においてこちらも大使を、派遣するというようなことは、国際儀礼上からいっても基本的には私は反対しません。しかしきょうわれわれがここで拝見しております、三十三年度における新たなる大使館設置の国々を拝見してみましても、これは向う様がこちらへ大使を置いておるのでこちらも大使を置かなければならぬ、こういうようなことでございますが、大使と公使、大使を置くことで国際親善が非常に強化される、公使を置くことではどうも冷淡だというような、そういう考え方で国際親善を今後どんどんやっていかれるということになると、全部公使をやめて大使だけにしてしまえばいいということになるわけです。そういうところに日本の外交、国際的な趨勢が、大使をどんどん置くことが盛んになっておるという考え方は別にして、日本の在外公館の設置の方針に、どこかに総花的な大使館設置という考え方があるのではないかと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/34
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035・松本瀧藏
○松本政府委員 ただいま仰せのごとく、公使館よりも大使館の数が多くなっておることは事実であります。これはただ単に日本だけの傾向ではなくして世界の趨勢がそうなっておりますので、早晩あるいは将来公使館というものが全然なくなりまして、全部大使館というようなことになるかもしれないのでありますが、大体外務省といたしまして、大使館、公使館をきめます基準といたしましては、もちろん従来の例といたしましては、最も経済的に政治的に重要な国、あるいは文化的に非常に密接な関係を持っておる国に相互の申し合せによりまして、依頼によりまして大使館を置いております。しかし最近非常にたくさん新興国家ができました。しかもこの新興国家の中には非常に国家意識も強くまた非常にプライドも高い国がございます。たとえば昨年の二月できましたガーナのごときは、いきなり大使の交換ということを先方から申し出ておるのであります。国は小さい、あるいは後進国であるかもしれませんが、これに出席をいたしました各国の代表は、アメリカあたりではニクソン副大統領その他閣僚級の連中がここに出席をしておるほど、将来西アフリカに占める地位から申しまして、政治的にも非常に重要視しておりますので、日本といたしましても、先方の申し入れ通り大使館を置くことに一応われわれ腹をきめたわけでございますが、大使館と公使館の職務内容におきましては、実質的には何ら変りはないのであります。ただ格の問題であります。従っていろいろな儀式の序列等あたりにおきまして、公使が大使よりももっと下にすわるというようなこともありますので、形式の問題で、そのほか職務内容におきましては実質的には大して変りはない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/35
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036・受田新吉
○受田委員 地図ができたようですが、ガーナの位置、ここに掲げられてありますその他の国々の位置をお尋ねする必要がありますので、ちょっと地図をそこへかけていただきたい。こうした在外公館に大使、公使合せて七十七人もおる。この在外公館の位置とその国々が日本との関係においてどれだけ重要性があるかという問題についてお尋ねをしたいのであります。一つ一つの国についてお尋ねすればこれは五日ないし十日という日数がかかるので、短時間にお尋ねをする秘術を今から考えて、私お尋ねをします。だから一つ政務次官の御説明に補助的役割を果されるべく、官房長に地図の下にお立ちをこいねがいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/36
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037・田付景一
○田付政府委員 ガーナはここでございます。昔の黄金海岸、ゴールド・コーストでございます。今度公使館を大使館にしようというノルウエーのオスロはここでございます。ここがデンマーク。ここが今度公使館が大使館に昇格しますヴァチカン、これはローマの中にあります。次はエティオピアでございます。エティオピアも公使館を大使館にしたいということであります。これがサウディ・アラビア、これも公使館を大使館に——今はここは全然何もございませんで、エジプトが兼摂をしております。これを大使館に上げたい。もう一つニュー・ジーランドでございまして、今ここには公使がおりますが、これを大使館にしたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/37
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038・受田新吉
○受田委員 ガーナと日本との関係における経済上の利点、その他国際親善上において大使館を置くほどの高い地位を有するか、御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/38
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039・松本瀧藏
○松本政府委員 ガーナに関しましては、先ほど申し上げましたごとく、西アフリカにおけるいろんな国々が、将来このガーナの行き方によりましてずいぶん今後の政策が変ってくるだろうと思います。これは英連邦におきまする連邦独立政府を与えられた唯一の黒人国家であります。そういう意味と、先ほどもちょっと御説明申し上げましたごとく世界各国が非常にこれを重視いたしまして、大物をこの祭典に派遣しておりますほどであり、将来われわれのアフリカ方面における政策あたりを勘案いたしますときに、また経済的にも将来ガーナとの提携も考えられますので、先方の強い希望によりましてわれわれの方も大使を交換したいと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/39
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040・受田新吉
○受田委員 ガーナが大使を交換している国々の数はどれだけありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/40
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041・松本瀧藏
○松本政府委員 政府委員に説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/41
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042・田付景一
○田付政府委員 お答えいたします。ただいまのガーナの公館設置状況は大使館が五つ、米国とフランスと西独、リベリア、イスラエル。高等弁務官府、これが大体大使館と同じことでありまして、英連邦相互が交換しているものを高等弁務官府と申します。これが四つでございまして、イギリス、カナダ、インド、オーストラリア、これだけでございます。公使館はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/42
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043・受田新吉
○受田委員 そうすると大使を交換している国は五つですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/43
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044・田付景一
○田付政府委員 大使館が五つと、英連邦同士が交換をしている高等弁務官府、これが大使館と同じでございますが、イギリス、カナダ、インド、オーストラリアでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/44
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045・受田新吉
○受田委員 五つしか置いてないガーナが今度日本にぜひ大使館を置いてくれということ、向うはすでにこっちへ大使館を置いておるというようなことを考えると、その六番目に日本を考えていると了承してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/45
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046・松本瀧藏
○松本政府委員 順位はどうかわかりませんが、日本と同じような立場に置かれている数多い国がございます。もちろんこれは先方のことでありますので、どことどこに的確に申し入れているかということは今ここに資料がございませんが、その国によって、たとえば日本と同じように在外公館の法律を修正しなければ置けないような国もありますので、必ずしも日本が六番目に申し入れされたとは限らないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/46
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047・受田新吉
○受田委員 今までに公使館を置いたところでない、初めから大使館を置く、そういう戦後できた国々の先例を一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/47
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048・松本瀧藏
○松本政府委員 マラヤもその例であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/48
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049・受田新吉
○受田委員 アジアにおけるガーナのごとき、あるいはヨーロッパにおけるヴァチカンのごとき、その他これに類似する小さな国々、私たちが見て人口がおよそ一千万ないし二千万以下という国々を他に一つ御指摘願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/49
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050・松本瀧藏
○松本政府委員 すでに先方の申し入れによりまして大使館を設置しておりまする国、たとえばラオス、カンボジアのような国もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/50
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051・受田新吉
○受田委員 私は、人類的偏見を避けて、黒人の国といえども新興国家としての立ち上る意欲を持った国々、将来の期待される国々に対する大使交換とか、そうした外交上の礼を尽すことは方針としてはけっこうだと思います。しかし、いたずらに大使を交換することを争うて、その国との実質上の外交を進めることができない、形式的にだけやってあとはついていけないというのでは、これはまたわが国外交の威信を落す原因にもなります。従ってまず公使を交換して地歩を固め、しかる後大使を交換するということもあり得ると考えますが、大使をこちらに置いても、こちらは公使として向うに置くということも考えられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/51
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052・松本瀧藏
○松本政府委員 先方が大使を日本に派遣しまして、日本から公使を向うに派遣するというような前例はございません。外国にもそういう例は非常にまれだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/52
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053・受田新吉
○受田委員 大使を交換するという場合は、公使よりも格式が高いということは、先ほどあなたが申された通りです。従ってそこにおる職員などもある程度大使館らしき陣容を整えていなければならない。ただ大使だけ置いて、頭でっかちであと従う者はまれだということも、これまた困ったものですから、大使館らしい人的構成もできておらなければいかぬと思います。ここにいろいろな国々がありますが、今度の改正案の中に示されております一つの例から申し上げますと、現在、サウディアラビア、あるいはネパール、こういう国々は一体どのくらいの大使館職員を置いているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/53
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054・松本瀧藏
○松本政府委員 ただいま受田委員の申されたごとく、もちろん頭でっかちになるきらいもございますが、これはひとり日本のみならず世界各国が悩んでおるかと思うのであります。と申しますのは、先刻申しましたごとく、最近急速に新興国家がたくさんできました関係上、しかもこれらの国々が諸般の事情から大使館を設置するということを申し出ておりまする関係上、これに足並みをそろえていっておるのであります。ネパールとかそういう国におきましては、もちろんまだ十分なる予算措置もできませんのと、人員の増加も十分ではありませんので、他の、たとえばネパールの場合インドの大使がこれを兼務しておる、あるいはラオスのごときはタイ国にいっております澁澤大使が兼務しておるというような場合も起るのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/54
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055・受田新吉
○受田委員 そうした小さな国における大使館の職員の数は、そこに数字が出ておると思うのですが、一番少いところを一、二あげていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/55
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056・松本瀧藏
○松本政府委員 政府委員から説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/56
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057・田付景一
○田付政府委員 ただいまお話のありました大使館で、大体大使を含めまして四人というのが一等少いところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/57
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058・受田新吉
○受田委員 大使を含めて四人といいますと、大使を除いて雇員というのがあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/58
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059・田付景一
○田付政府委員 ただいま申しました大使そのほか三人というのは、すべて書記官ないしは理事官というような正規の人間のことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/59
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060・受田新吉
○受田委員 そうしますと、大使を含めて四人程度のものがどのくらいありますか。そのようなものがたくさんありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/60
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061・田付景一
○田付政府委員 相当たくさんあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/61
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062・受田新吉
○受田委員 相当数に達しているという御答弁でございます。そうするとこれはまことに頭でっかちの機関になるわけなんです。ただそれだけ置いて、形だけ整えておるというそしりを免れないと思う。実質的にその国との経済交流をやる、貿易をどんどん振興させる。そうして日本人も向うへ行く、向うからもこちらに派遣するというような人的交流もやらなければならない。外交上日本人の移民をどんどん受け付けてくれる、また日本のいろいろな物資も買い受けてくれるというような商業上の取引、あるいは移民の協力とかいうようなことさへも心を配ってくれるような、国としての実績を持たなければいかぬと思う。そういう問題は、こうした小国の間にはどのように進められておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/62
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063・松本瀧藏
○松本政府委員 ラオスとかカンボジアというような国におきましては、徐々に関係が密接になっておりますので、将来たとえばラオスの場合におきましては、今度大使館、兼務でなくして専任大使を置き、スタッフを一つ強化したいというような考えを持っております。りっぱな大使館を置いてあります国々におきましても、ことに中南米あたりにおきましては、すでにいろいろと移民の問題とか、その他経済協力の問題等、まだまだ十分伸びていないところもございますので、世界全般に広く浅くやるわけにいきませんので、重点的にいろいろと国を選びまして、そこに力を注いでいる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/63
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064・受田新吉
○受田委員 大使、公使という認証官、これは少くとも三人や四人の小さな職員機構であっても、その人の地位は国に与えられたわずかの認証官の一人になっておるわけなんです。その一人の大使、一人の公使を作るということは、特に国の重要な公務員のポストを占めるということになるのであって、外務省が簡単に大使を製造したり公使を製造したりするというわけにはならぬと思うのです。従ってこのきわめて重要なポストにある職員を任命するに当っては、また話をもとに戻すのでありますが、少くとも外務省一省の役人でこれを独占するような格好を改めなければならぬと思う。諸外国の例を今、松本さんが言われたが、アメリカがどのくらいの比率で民間出身者を採用しているかということを知りたいのでございますが、それは純粋な民間人という場合もあろうし、すでに外交官の経歴を有して民間に出て、その後にまた復帰したという人もあるだろう。あるいは他の種の公務員であった人もあるだろう。いろいろあると思いますが、日本の場合はアメリカのような戦略外交を考える外交じゃない。日本の国は平和外交を推進する、戦争のおそろしい打撃を受けた国であって、世界の国々とほんとうに民間外交、国民外交を推進する外交官が要るのです。外務省のこちこちの頭の固い役人が向うへ行って、むしろ国際親善を汚すおそれもあるのです。もう少し幅を持って国々との間における親善をはかり得る外交官は幾らでも民間におるし、自民党の代議士の中でも、ここにおられる方々はりっぱな大公使になる人です。代議士の経歴を有するのだからということで、けちな偏見を持ってこの人々を粗末にしては困る。そういう意味からもあなた方外務省のお役人は、外務省の一つの牙城を守り過ぎるというそしりを今日なお免れていない。せっかく民間人である藤山さんを迎えた機会に、これを補佐する松本政務次官は、畢生の勇を鼓して、外務省の古い伝統をこわして、平和外交、国民外交を推進する理想的な外交形態に、外交官の布陣をする勇気はないか、御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/64
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065・松本瀧藏
○松本政府委員 先ほど外務省がやたらに大公使館を作るということはおもしろくないじゃないかという意味のことを申されましたが、これは外務省が一方的にどこそこに大使館を置くんだということではなくて、先ほども申し上げましたごとく、ガーナ国あたりが一つ大使の交換をしたいということを申し出まして、しかしあんたの方は勝手に日本に大使館を置け、われわれは置かぬということは申されませんので、客観情勢によってこれは相当支配されると思うのであります。
さらに民間から有能の士を起用することにつきましては、先ほど二回繰り返して申し上げましたごとく、決して外務省は、少くともわれわれ首脳部におきましては、門戸を閉鎖するというような気持は持っておりません。ただ民間から有能の士を抜擢いたします前に、やはり相当な地位を持っておられる方で、たとえばネパールに行けといっても、民間あたりで有能な人は、ネパールの大使なんかはいやだ、こういうことになりますので、そこには自然民間の有能な士、あるいは議員の中から選ぶにいたしましても、相当のポストでないともちろん失礼に当りますし、また受ける御意思はないと思います。そういう意味におきまして、自然民間から選ばれるところの大使というものは、自然そこにしぼられていくわけでございます。従ってその国のいろいろな情勢等によりまして、そこに最も適した人が民間にあれば、外務省プロパーの官吏よりももっと有能な人があれば、もちろんこれを選ぶにやぶさかでないということを三たび繰り返して申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/65
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066・中川俊思
○中川委員 関連して。これは事務当局にお尋ねいたしますが、フランスの大使館に公使が現在おりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/66
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067・田付景一
○田付政府委員 ただいまはおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/67
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068・中川俊思
○中川委員 どういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/68
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069・田付景一
○田付政府委員 ただいまフランスには参事官が二人おります。従って今の大使は、公使がこの前一人おりましたのですが、その方よりも若い方の方がむしろよろしいというお話がございましたので、ただいまは置いてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/69
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070・中川俊思
○中川委員 だれからそういうお話があったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/70
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071・田付景一
○田付政府委員 古垣大使からそういうお話がありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/71
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072・中川俊思
○中川委員 ちょっと話が違うのですが、古垣大使からそういう話がいつありましたか。公使はいらない、参事官でよろしいというお話は、古垣大使からいつあったのですか。もしそういう文書でも来ておるというのならば、その資料を御提出願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/72
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073・田付景一
○田付政府委員 むろん、まだ私が外務本省に帰って参りません前でございますが、今の松井セイロン大使が公使をしております当時に、自分としてはもう少し若い方がよろしいというお話がございましたので、今の参事官をかえた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/73
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074・中川俊思
○中川委員 若い方がいいというのは、公使はいらないから参事官でいいということなんですか。年令が若い方がいいというのですか、あるいは公使はいらなくて参事官でいい、どっちなんですか発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/74
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075・田付景一
○田付政府委員 つまり、苦い方がいいと言ってこられましたのですが、今の松井公使以下になりますと、若くいたしますれば、どうしても参事官にしか任用できませんので、そういうことにいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/75
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076・中川俊思
○中川委員 松本政務次官がお話のように、民間でも有能な士を抜擢して、そして外交関係の万全を期さなければならないというのが外務省の本旨であるであろうと思う。ところが私のひがみかもしれませんよ。もしそうであったらお許し願いたいと思うのだが、そういう意図のもとにせっかく民間の有能の士を抜擢されても、外務省のいわゆる事務官僚の諸君がこれに協力しないという事例があるのじゃないかと思う。たとえばフランスのパリのごときは、当然公使を置かなければならぬところだと私は思うのです。ただ若い方がいいからというのなら、学校を出たての者でもやればいい。若いのがいいということは、いろいろな意味に解釈できますけれども、要するにうまく自分の意思を体して立ち働いてくれる者を古垣大使は求めたのではないかと思うのです。それならば、公使といえども、私は、必ずしも年令によって、年令が多いから働かないとかなんとかいうことはないと思うのです。若い者でもなまけるやつはなまける、年をとっておってもよく働く者は働くのでありまするが、そういう意味から、古垣大使がもしそういうことを要求されたとするならばそうじゃないかと思うのですが、どうです。何でもかまわぬ、年さえ若ければいいという意味ですか。そうじゃないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/76
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077・田付景一
○田付政府委員 大使の実際のお気持は私もよくわかりませんが、今申し上げたような御要望がありましたので、私どもとしては交換した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/77
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078・中川俊思
○中川委員 とにかく、民間からせっかく有能な士を抜擢いたしましても、事務当局がこれに協力しないという事例は、ひとり外務省だけではありません。日本の官僚機構にはえてしてそういうことが多い。私はことに外務省は一番それがひどいのじゃないかと思う。そうして自分の与えられた仕事以外は、積極的に仕事をやろうとしていないのじゃないかと思うのです。たとえばニューヨークには田中総領事のもとにわずか十人足らずの者しかいないと私は思うのです。ワシントンには七十何人以上の者がおるというふうに聞いておるのですが、今、皆さん方御承知の通り、ニューヨークの方が非常に忙しい。それならばニューヨークの忙しい場合にワシントンからこれを補佐するかというと、しない。ワシントンの方では遊んでおっても、これを補佐しない事例を私はこの目で見てきておる。そういうようなことについてもっと有機的に、せっかく手のあいている者はニューヨークへ行って手伝うくらいの気持があってほしいと思う。そういうような点において、先ほど来受田君からいろいろ御質問があったようでございまするが、あなた方はここへ来てまことに体裁のいい御答弁をなさっておりますけれども、実際現地に出かけてみますと、そういう事例を私どもたくさん見せつけられるのです。そういう点を十分に考慮していただいて——話はもとに戻りますが、パリの大使館あたりには当然公使の一人や二人置くべきだと思うのです。機構を整えていただいて、大使を助けて効果的に動かしていただかないと、せっかく今政務次官がお答えになったような御意思で首脳部の人がやっておられましても、下はこれについて回らないという結果を生ずるのではないかと思うのです。これに対して政務次官の御所見を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/78
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079・松本瀧藏
○松本政府委員 中川委員の申されたことも、実際にごらんになってあるいはそういうことがあるかもしれないと思いますが、徐々にそういう弊風をなくいたしまして、もう少し一般の人の常識にかなうような工合に持っていくよう努力さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/79
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080・受田新吉
○受田委員 松本さん、あなたは外務省の政務次官の地位におられるのでありますが、外務省の事務系統を通って大臣の決裁を得る書類が、あなたのところを通っていくかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/80
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081・松本瀧藏
○松本政府委員 ことごとく通っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/81
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082・受田新吉
○受田委員 これに対して、あなたは事務系統に対する適当な指導を加えておられますか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/82
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083・松本瀧藏
○松本政府委員 文責を修正して下げたこともございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/83
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084・受田新吉
○受田委員 あなたのようなしっかりした立場でやられておる方が政務次官をやられ、大臣また民間人として抜擢されておられるならば、私はあなた方二人のコンビによって外務省の多年の牙城をくつがえして、人材抜擢、民間人採用の道を広く広げてくれることを深く確信しておるのですが、奮励努力を誓いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/84
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085・松本瀧藏
○松本政府委員 最善を尽さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/85
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086・受田新吉
○受田委員 最後に一つお尋ねしたいのですけれども、在外職員の俸給です。つまり今回の次の法律の、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律、ここに書かれてある在勤俸の性格はどういうものでございますか。政府委員でもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/86
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087・田付景一
○田付政府委員 本俸は当然日本できまっておりますものをもらうわけでございますが、在勤俸というのは、つまり外国におきまして勤務するために特別に必要なる手当というふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/87
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088・受田新吉
○受田委員 手当と俸給とは性格が違うことは御承知の通りです。それが外国におる者に出されるものに俸給という文字が使ってあるわけです。手当であるならば在外勤務手当という性質のものでありますが、この俸と手当とが分離してある理由はどこにあるのですか。今あなたは手当だとおっしゃったのですが、手当であるにもかかわらず、法律の文句は俸給となっておる。御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/88
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089・田付景一
○田付政府委員 実質的には手当と私は考えております。しかし、外国におりますと、当然日本における生活よりも高い生活をしなければならぬ。またそのほかに外国におるために特別な仕事をしなければならぬというような意味から、単なる手当とは若干違いまして、つまりある意味では俸給と似たような性質がございますので、国内における手当とは若干違ってきておるために、在勤俸給という名前がついたのだと思います。これは昔から在勤俸という名前になっておりますので、一等初めにそれがきまりました点は、実は私どもまだよくは知っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/89
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090・受田新吉
○受田委員 その上いにしえより伝わった俸給という言葉が使ってあるということでございますが、時世は天皇の官吏であった外交官より、今日国民全体の奉仕者としての外務公務員であると私は思う。今の外務公務員と昔の外務公務員が同じ性格のものであるかどうかを御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/90
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091・田付景一
○田付政府委員 その前に一応、在勤俸の意味がここに書いてございますが、第五条に「在勤俸は、在外職員が在外公館において勤務するに必要な衣食住等の経費に充当するために支給されるものとし、その額は、在外職員がその体面を維持し、且つ、その職務と責任に応じて能率を充分発揮することができるように在外公館の所在地における物価、為替相場及び生活水準を勘案して定めなければならない。」こういうふうになっております。
昔の公務員とただいまの公務員とは性格が違うじゃないかというお話であります。ただいまの公務員は、むろん国民に奉仕するということが国家公務員法に規定されておりますので、その意味では昔の天皇の官吏というものとは性格を異にすると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/91
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092・受田新吉
○受田委員 そうすれば、昔からあるからといって今それを温存しなければならないという理由は私はないと思う。給与関係のすべての名称は変っておるのです。だから新しい体制に切りかえられてはどうですか。今あなたが仰せられた衣食住の補給をするというようなことを考えれば、完全な手当ですよ。俸給の性格はみじんもない。あなたは今俸給の性格を一部持っておるとおっしゃるけれども、その国々において情勢の変化する分は、純粋の手当、超過勤務手当みたいなものを出せばいい。そういうものを俸給の一部と見まがうような名称を用い、しかも俸給の一部である性格を温存するかのようにされることは問題だと思う。行政管理庁の岡部局長もおられますが、あなたの方でも、こういう問題は名称を統一される必要がある。純粋な手当の性格を持つものを俸給の名称を用いておることは不当であると御判断されるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/92
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093・岡部史郎
○岡部政府委員 まことに受田委員の仰せの通りであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/93
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094・受田新吉
○受田委員 私はこれは法律改正の際に名称の変更も同時に修正案で提出していただくことを条件に付しまして、質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/94
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095・福永健司
○福永委員長 稻村隆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/95
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096・稻村隆一
○稻村委員 ちょっと海外移住会社についてお聞きしたいのですが、この前政府が出資をして、アメリカの銀行が融資をした海外移住会社ができましたね。その海外移住会社は現在どういう仕事をやっておるか、つまり農業移民をどれだけどこへやっておるか、あるいは漁業移民をどうしているか、技術者の移民をどうしているかという具体的な内容を、簡単でいいですから、一つできるだけ話していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/96
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097・内田藤雄
○内田政府委員 ただいまの御質問は、その移住会社が移住者をどこへ送っているかというように聞き取れましたが、そういう意味でありましたならば、移住会社は元来そういうことをやっておりません。移住させる業務の方は海外協会連合会、また募集選考などは各県にございます地方海外協会というのが選考いたしまして、移住あっせん所に入りました以後は——移住あっせん所は直接外務省の監督のもとに行なっておりますが、あっせん所から船に乗せまして、現地に着きましてから現地で世話することにつきましては、海外協会連合会の出先の機関並びにわれわれの在外公館も協力いたしまして入植地へ送る、こういうことをやっております。会社はこれに関連しまして、大体農業移民あるいは漁業移民等に所要の場合に融資をいたしますこと、あるいは現地におきまして入植地を物色いたしまして土地を買うというような業務、それからまた企業によりまして、現地においてやっております企業に融資をいたす、そういうようなむしろ融資あるいは土地の購入というようなことが会社の主たる業務になっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/97
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098・稻村隆一
○稻村委員 それでは終戦後南米、アジア等に農業移民を大体どのくらい送っているか、漁業移民、技術者はどのくらい送っているか、具体的な内容を聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/98
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099・内田藤雄
○内田政府委員 移住者の数につきましては、実は移住者の範囲をどこにとるかによってかなり開きも出て参ります。たとえて申しますと、今われわれが正確に把握できますのは、移住いたします場合渡航費の貸付というものをやっておりまして、この渡航費の貸付を受けた者につきましては画一な数字がとれるわけでございます。これで申し上げますと、終戦以後この十二月末ごろまでに約二万ということになっております。ただそのほかに、実は渡航費の貸付を受けませんで自分の費用で勝手にと申しますか、自分で出先へ呼び寄せてもらうような形をとって出ていっておる人が相当にございます。さらにもう一つ、これは移民と称するのはおかしいかもしれませんが、結婚等によりまして出ていっております女の人の数は相当多いものでございます。おそらく終戦後から現在まで三万近くに上っておるのではなかろうかと存じますが、こういうようなものもございます。今その全体の数につきましては、推定資料はございますが、私正確な資料を持っておりませんのでちょっと御答弁いたしかねます。さらに内訳の何移民であるか、農業移民か漁業移民かということは……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/99
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100・稻村隆一
○稻村委員 二万人のうちでの内訳は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/100
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101・内田藤雄
○内田政府委員 これも今秋正確な資料を持っておりませんが、大体漁業移民というものもある程度出てはおりますけれども、数にいたしますと、何と申しましても大体が農業移民と御了解いただいて間違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/101
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102・稻村隆一
○稻村委員 技術者とか、学校出の者で大学を出ている者もおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/102
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103・内田藤雄
○内田政府委員 これは、先ほど申し上げましたように、そういう方の場合には、どちらかと申しますと自分で現地の会社など、あるいは友人等をたよってその連絡でおいでになっている方が相当あると思います。しかし全体の数から見て大学出の方などの数はまだ大した数ではないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/103
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104・稻村隆一
○稻村委員 私がそういうことをお聞きしたのは、実は農業移民の問題なんです。これは重大な問題です。日本の移民政策は根本的に検討しなければならぬ問題が戦前からあったわけです。特に南米移民などはそうでありますが、あるいは満州移民もそうであったし、非常に人道上の立場を無視した傾向があったわけです。これはいなむべからざる事実なんです。南米移民でありますが、アマゾンが非常によろしいよろしいといって、アマゾンにやった。そうすると、たとえば十人やれば九人ほどは死んだり何かしてしまうのです。それからルンペンになったり非常にひどい生活をしているわけです。非常に希望を持っていた人々が、むしろ野蛮人になってしまって、事志と違ってしまう。そしてようやくそれを抜け出た十人のうちの一人が成功したくらいで、南米移民の多くの成功者を見ても、奥地を捨てて都市の付近に来た人の中に成功者が多いのです。これはあなたも御存じの通りです。日本の移民政策にはこういう実にでたらめな、検討しなければならぬ多くの問題があり、かつその移民は何ら日本の人口問題の調整になっておらない。そこで私がこういうことをお聞きするのは、農業移民の問題でありますが、いやしくも日本民族を他に移民させるならば、その人々が少くとも内地同様、それ以上の高級な文化的生活ができるものでなければ、実際問題として意味がない。それからまた日本の農民は、その技術的な点からいっても能力からいっても、いかなる国の農民にも負けない高い水準にあるわけです。そういう人々に資本も与えないで、向うの人間と同じような生活水準で生活させるというようなことは、これは実に間違っている。水の関係、その他の関係で向うで生活ができない、そして死んでしまう、どこかへ放浪してしまう、農業をやめてしまうということになるのです。そこでこの点外務省が海外移住者の輸送監督を強化するということでありますから、はなはだけっこうでありますが、特にアマゾン等に持っていかれた人々は、サンパウロへ出るのに東京からシンガポールへ行くくらいな距離があるのですから、十年間働いてもサンパウロに出る旅費がない、そういうような状態で、実に悲惨な結果になる事実が至るところにある。私は実はこの間カンボジアにインドの帰りに行って参ったのです。カンボジアで日本の移民地を提供するという話であったので、ちょっと向うへ寄ってきたのです。あそこなどは私は南米のアマゾンなどよりよろしいと思うが、それでもいろいろな条件がありまして、まだ日本の移民があそこに移住して生活できるごとき段階にはとうてい至っていないのです。そういう重大なる問題があるのですからして、農業移民を海外にやる場合においては、これはよほど考えなければならぬのであります。資本、施設等を考慮の上に行わなければならないのですが、今大部分の農業移民はどういうふうなことで送っておりますか。最近はそういう点を考慮の上にやっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/104
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105・内田藤雄
○内田政府委員 移住に伴いまして、いろいろ——ことに昔の移住者の中に悲劇があったことは必ずしも否定いたしません。また遺憾ながら移住者が今後とも行った人が必ずみんな成功するというようなことは、なかなか期待できないのではなかろうかと存じます。また御指摘のごとく移住者を送ります以上、当然そのアフター・ケアと申しますか、将来の繁栄の基礎を少くとも確保するために、われわれ政府といたしまして、できるだけの努力をしなければならぬということは全く同感でございまして、われわれといたしましても、予算の範囲内におきまして、そういう努力をいたしておるつもりでございます。ただ何と申しましても、一応われわれの主権の及ばない外国に人を送るわけでございまして、その行った人のあとのことにつきまして、これはブラジルなどの場合を考えますと、よほど注意いたしませんと、ブラジル側で非常に内政干渉とでも申しましょうか、われわれの主権下に入った者については、われわれにまかせてくれ、あまり外国の政府からとやかく言われるのは困るというような気持も相手国にあるわけでございまして、その辺のところをよほど注意してやりませんと、そんなに文句があるのなら何も自分の国に来てもらわぬでもいい、こういうことになってしまうおそれもあるわけでございます。そしてただいまおっしゃいましたアマゾンの問題でございますが、なるほど戦前にはいろいろ問題はあったかもしれませんが、また戦後におきましても、その状況がどうしても自分の期待したものとは違うというようなことで、脱落して参るというような例もあるのでございます。しかし全般的に、最近の状況で申しますと、御承知のように今ブラジルでは一人日系の国会議員が出ておりますが、これはサンパウロ地区の方から選出された人でございます。ところが二番目は今度はアマゾン地区から出るだろうというくらいのことを、日本人の人々が言っておるそうでございまして、二世——もう古い人は三世も出ておるようでありますが、青年たちはなかなか意気に燃えておる。つまり過去においてはずいぶんいろいろの苦労もあったかもしれませんが、今日から見ますと、アマゾン地区におきましても相当そこに根を生やして、りっぱにやっておる方が非常にふえて参ってきておるようでございます。繰り返して申し上げますが、一般的に農業移民で参りました方が、相当当初において御苦労があることは、これはもう十分われわれも推察にあまりございますし、またそのために政府としてできるだけの努力をいたさねばならぬということは当然考えておりますが、しかし先生の御指摘のごとく移住者で行った者がみんな日本にいるよりも必ず生活がいいようにせよということは、なかなか困難ではないかと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/105
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106・稻村隆一
○稻村委員 他国に行くのですから、むろんこれは自分の国にいたようなわけにはいかぬことは、これはわかり切っております。そこで私は申し上げたいのですが、農業移民を農業労働者としてやるということは、よほど考えなければならぬ。むろんこれは最初から大地主経営をやるというふうなことは、不可能でしょう。本国から向うへ行くのですから、むろんこれは金のある、農業資金をうんと持った人が行くことはないだろうと思うのです。ですから向うに行く人々は、裸一貫で、しし営々として働いて成功しようとして行くのですから、これは当然と思いますが、しかし私は移民の数は幾らも行かないのですから、問題は日本の農民を農業労働者として向うに送るということは、これはよほど考慮しなければならぬと思うのです。むろん日本人は非常に勤勉ですから、南米のみならず、あらゆるアジアの諸国に行きましても、日本人ほど勤勉に働く国民はないだろうと私は思うのです。だから外国の大地主あたりからいえば、日本人が農業労働者として使うにも一番重宝なのです。しかし農業労働者として非常に水準の低い野蛮人のような生活は日本人には耐えられないわけです。それからまた日本の品位からいっても、問題は農業労働者を送るよりもまず農業技術者を海外に送ることが第一の条件じゃないかと思う。日本の普通の農民だって、向うに行ってりっぱな農業技術者になれるのです。これは幾らでも私は実証できる材料を持っております。だから特に学校を出た人が今非常に余っておって、農学校や農業大学を出ても就職がなくて困っておるのですから、そういう人を、本国において海外移住学校というようなものを作って、そこで訓練して、語学の知識を与えるとか向うの事情を教えるとか、知識を与えて、そういう人を農業技術者として向うに送ることが第一条件じゃないかと思う。どこでもこれは歓迎いたします。だから農業労働者を送るということは差し控えるべきじゃないか、端的に言って、やめるべきじゃないか。農業技術者として向うに送ることが必要じゃないか。漁民にいたしましても、向うの漁業会社の一つの従業員として送るよりも、この技術においては、やはり日本は世界で一番であることは御存じの通りですから、魚をとる技術においては、そういう人を技術者として送るという方針によって私は外務省はやっていただきたいと思う。農業労働者として送るということはよほど考えていただきたい、そういうことを私は申し上げたいのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/106
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107・内田藤雄
○内田政府委員 実はわれわれといたしましても、確かに従来の移住のやり方につきましては、反省すべき点が多多あると思っております。また現に東南ア方面につきましてよく移住ということが言われますけれども、実はわれわれは東南アの場合は、いわゆる農業技術者を送るという、まさに先生の仰せのような方法でいくべきじゃないかと思っております。これは御承知のように、ブラジルなどを一つの例にして申し上げますと、来てもらいたいということを申します場合の条件があるわけでございます。それで現在までのところ小さなワクでは、御指摘のように農業実習生というような形で、毎年全体で百名程度じゃないかと思いますが、こういうものもやっております。しかしいわゆる普通の移民として向うが提供して参りますワクは、大体五人家族で働き手が三人ということが一つの条件になっておるわけでございます。それともう一つ、呼び寄せで、これがまさに御指摘の家族単位で参ります場合には、たとえばアマゾン地区のごときは、これは入りますと、全く自作農になるわけでございます。
それからサンパウロ地区のコロノ、これが御指摘の農業労働者ということだと思いますが、これは確かに雇われて参りまして、そのときの契約の条件にもよりますが、大体数年たちますと、これがだんだん自作農に伸展して参る、これが過去の日本の移民の大体の姿であったわけでございます。現在でも数から申しますと、これが一番多いと思います。しかしその場合でも単身の者——最近コチア産業組合というのが非常に骨を折ってくれまして、千五百名ほどの単身青年のワクをブラジル政府からとってくれまして、これが一応コチアの産業組合、これは日本人が指導権を握っておる大きな組合でございますが、そこで働きましてだんだん独立していく、こういう経路をとっておりますが、そのほかの多くの場合には、先ほど申しましたような、家族単位ということが向う側の要求しておるワクになっておるものでございますから、なかなかわれわれの方だけで単身の技術者をよけい送るというわけに参らぬわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/107
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108・福永健司
○福永委員長 辻政信君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/108
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109・辻政信
○辻委員 私は昨年の一月から約二ヵ月にわたってアジア・アフリカ十四ヵ国を見て参りましたが、出先の公館では大へんお世話になった。その間に感じました二、三の点をただしたいと思います。大臣に質問したいと思いますが、欠席ですから次官から大臣にかわって御答弁をお願いいたします。
その第一点は、アジア・アフリカにおける新興国家と日本を結ぶためにおいて一番着眼をしなければならぬことは、新しい国ほどその出先に勤めておる人に対する信用、その対人信用というものが非常に偉大だということを痛感をして参りました。ところでその対人信用を深めるためには、小さな国の語学というものが非常に重要な価値を持つものであります。外交官におきまして英語の巧みな人は出世も早いが、トルコ語であるとか、あるいはアラビア語を専心やっている人は栄進の道をふさがれておる。また物心両面にわたって非常に苦労しておる点が多いのであります。英国におきましては小国の語学をやっておる人には特別の語学手当を支給をして、安心をしてその研究を長年続けておるといういい例を聞いておる。日本ではそれが見られないのであります。そういう意味におきましてアラビア語であるとか、トルコ語であるとか、そういう小さな普遍性のない語学に一生を突っ込んでいる奇特の人がありますが、こういう人に対して特別の手当を支給してやるというお考えがあるかどうか、それをまずお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/109
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110・松本瀧藏
○松本政府委員 ただいま辻委員の申された通りで、いろいろと私どもも海外を回りまして同じくいろいろと考えさせられることがあるのでありますが、不幸にして外務省の仕事というものは、十年間の戦争中のギャップがございましたのと、占領当時きわめて縮小されました。この失地を回復するために今日非常に苦労しているわけでございますが、幸いにして皆さんたちの御了解、理解、同情によりまして、今年は少しは予算がふえたのでございますが、これが通過しますれば少しまたゆとりがございます。ただいま申されましたごとく、アラビア語あたりを専門にやっております外交官は、活動範囲というものが非常に狭められます関係上、英語を語学としておる外交官よりも非常に待遇が悪いことは事実でございます。従ってこういう特殊なものに対しましては、将来何かの形で一つ手当か優遇する方法を考えたい、こう考えております。これはわれわれ目下検討しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/110
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111・辻政信
○辻委員 その一例を申し上げますが、これは人の名前を言ったらどうかと思いますが、シリアに参りまして田村代理公使とゆっくり話をしましたが、田村代理公使は子供の、若いときからエジプトに渡りまして、そうしてアラビア語についてはおそらく日本で第一の権威者だと思う。自分も本省に帰ろうというような希望を持たずに一生アラビア民族とともに送りたい、こういうようなまことに敬服すべき態度でやっておられまして、あのシリアにおける民族主義者たちは党派を越えて田村代理公使に対して非常な信頼を持っておるのであります。しかしながら正統の書記官として上った方ではありません。理事官として勤務された人であります。その将来の栄進といいますか、それは考えておらぬでしょうが、本人の進む道が人事の上においてふさがれておる。こういう人こそこれは国宝的な存在だと思う。こういう人に対して物心両面にわたって本人の希望を入れて、日本とアラビア民族との結合のために不安なくやれるような待遇を与えることが、私は大事ではなかろうかと思う。口先だけの答弁ではこれは承知しません。ほんとうに真剣になってその人たちの身の上を考えて下さい。これが第一点。
次は、民間の人材を出先の公館が活用しておらない。たとえば各公館の経済関係を担当しておる人を見ますと、新聞の翻訳をやったり刊行物の勉強をしたりする程度であって、生きた経済の動きというものを見ておらない。これに対してジェトロ、貿易振興協会の連中には非常にまじめに、経済の動きについて真剣な研究をしておりますが、それらが公館との間に人的な関係を持っておらない。ジェトロはジェトロなりで一つの資料を持ち、公館は公館なりで一つの資料を持って、そこに統一されたものがないのであります。そういう意味におきまして、手不足の大公使館でありますから、一人がすべてをやることはできぬから、そういう民間の人材を出先の嘱託なり顧問なりに迎えられて、そのすぐれた生きた知識を十分外交の上に吸収なさるような考え方をお持ちにならなければいかぬじゃないか、こういうことを痛感いたしましたが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/111
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112・松本瀧藏
○松本政府委員 ただいま名をさされましたが、田村君は確かに非常に有能な出先公館員であると考えます。いろいろと送って参ります報告書を読みましても非常によく勉強しておる、こういうものは十分厚い待遇をいたしまして、将来のこと等あたりも考える必要があるということをわれわれ痛感いたします。辻先生の今のお言葉、十分さんしゃくいたしまして処置させていただきたいと思います。
次に経済担当官が翻訳等で大して実際の仕事をしていないじゃないかという質問がありましたが、これはもちろん在外公館によりまして非常にりっぱな報告を送っておるところと、ただいま仰せのごとくただ翻訳程度のものしか送ってないところとあります。全部とは申しませんが、確かにそういうところがあることは事実でございます。ただいまジェトロの問題を取り上げて御質問されましたが、ジェトロの機構に関しましても、仰せのごとく在外公館と横の連絡がほとんどなかったのであります。これはやはり同じ日本の国家から派遣しております機関といたしまして、ばらばらでやるということは、能率の上におきましても、あるいはその他実際の仕事の面におきましても、かなりの不便がございます。今回ジェトロの改革が提案されております。これが通りますれば在外公館とジェトロの横の密な連絡をとりまして、相互に協力いたしまして、もっと能率をあげるということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/112
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113・辻政信
○辻委員 それでは在外公館の勤務の一例を御紹介いたします。私が参りましたのは、エジプトの戦争が起りましてそれがやんだ直後でございましたが、世界の関心はスエズ運河がいつ開けるかということにかかっておったのであります。スエズ運河が早く開ければ日本の貿易政策の上においても非常に大きな変化が起るので、それがいつ開けるかという見通しを立てることが、エジプト公館におけるあの当時における最大の課題であったと思う。大使館には九人くらいの人がおりますから、さぞかし現場を御視察になったものだと思っておりましたが——私が行ったのは一月の二十六日、戦争が終ったのは年内でしたが、現場を見た大使館員が全然一人もいない。そこで私は民間の車を準備いたしまして、二日間にわたってあのエジプトの南から北の戦場の跡を単身で視察をして、そうして沈船の状況、それから国連の引揚船の作業の進捗状況、国連の技師との会談、現場をしさいと検討いたしまして、大体技術的には三月末に開けるだろう、政治的な制約によって延びるかもしれぬという結論を出して大使館に参りましたが、大使館員ではだれ一人としてその現場を見ておる人がおらない。見ないのは日本の公館だけです。外国の公館員はたまが来る中までかけずり回っておる。日本はだれも見ない。そこで大使館に行って君たちはなぜ現場を見ない、いや忙しい、忙しいのは日本の公館だけではありません。どうして外務省へその判断を送るかといえば、新聞の切り抜きを集めてきて翻訳しておる。そうしていつごろ開けるだろうという判断の電報を打っておるわけです。現場を見たのは一人もおらない。こういう勤務状況では日本のほんとうの国策、経済政策なり貿易政策なりがほんとうに確実な資料の上に、あなた方の判断の資料になると思われるかどうか、こういう状態なんです。でありますから、予算をふやすとかいろいろな点がありましょうが、人をごらんになって——頭数をふやすばかりではない、勤務する者の勤務ぶりということをもう少し御検討なさる。この報告は現場を見た報告か、新聞記事の翻訳かということを問い返すくらいの細心の注意を持ってやられぬと、あの報告は当てにならないということを感じました。いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/113
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114・松本瀧藏
○松本政府委員 確かにその国によりまして、館員の手不足、さらに旅費、調査費等あたりが少いために、ただいま申されましたような事実があることはいなめないと思います。これはまあ内輪の話になるのでありますが、私も今回政務次官になりまして初めて予算折衝をいたしました。与党、野党を通じまして、きわめて外務省の——予算獲得という言葉はよくありませんが、折衝には熱がございませんでした。他の省あたりと比べまして、直接選挙区に関係がないために、プレッシャー・グループというのがないのです。そういう関係からいたしまして、われわれがほしいと思うだけの予算がとれなかったことは事実でございます。しかし今年はいろいろと努力いたしまして、先ほどあげましたようなことを是正するための予算も、少しばかりとれた気はいたします。もっと在外公館の館員その他が活動範囲を広くいたしまして、旅行し、そしていろいろな角度から正確な資料を本省に送りまして、正しい資料に基いて正しい判断のできるような方向に持っていかなければ、決して外交というものは正しく持っていくことができないと思うのであります。こういう意味におきまして今後とも一つ努力いたしまして、メンバーももちろんでございます、人物もそうでございまするが、また調査のできますように機構あるいは予算等あたりの面も努力さしていただきたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/114
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115・辻政信
○辻委員 率直に申しますと、外交官よりも新聞記者の方が危険を冒して見ております。日本の旗を掲げた、外交特権を持った者ですから、新聞記者よりも危険なところ、困難なところへ行けるはずです。要は行こうという気魄が出先の外交官にあるかどうか、この問題にかかっておる。いかに予算をとっても、パーティーには出るけれども危険なところへ行けない。これじゃ本当の外交はできません。その意味で、私は決して悪口ばかり言うのではありません、すぐれた人もおりますが、ああいう重大な時局における日本の第一線の情報機関といたしましては、少くとも新聞記者に負けぬくらいの気魄を持って現場を見てもらいたい、こう思う。
それから次は、書記官と理事官という区別がある。書記官は外交官の試験に及第をした英語のうまい人で、理事官というのは、農林省とか通産省とか、あるいは、民間人、そういったのがなっておるらしいが、どうもこの理事官と書記官の待遇、栄進の問題を見ると、理事官という特殊技能を持った人が、外交官の試験に及第した書記官よりも恵まれておらないような感じを受ける。その一つの例をとってみます。これは名前をあげると工合が悪いかしらぬが、あるところへ行くと農林省から行った理事官がおります。これが農業移民をやって、非常にその国に成果を上げて、大へんな信頼を博しております。しかし人事の上におきましては理事官であり、会議をやっても理事官は書記官ほど発言力がない、こういうふうな状態になっておる。これはどこの省においても、正統の者と傍系から入った者で人事の差があることは私はわかる、人間がやっておるのですから……。しかしこれから見ますと、あなたは先ほど民間人の起用という質問に対しまして、外務省のみならず、通産、農林各方面から外務省に入って協力を受けておるというが、あの人たちは本省を留守にして外務省に入っておるのですから、その身分の取扱い、本人の進級その他につきましては、よほどあたたかい気持でおやりにならぬと、だれも行き手がない、こういう結果になります。二年たったら本省に帰ることを首を長くして待っている。それじゃほんとうの仕事はできません。
次に申し上げたいことは、公館ですが、トルコの公館に一つ例をとってみると、高い家賃を払って大使館を借り上げておるが、十年間の家賃で十分うちが建つ。しかもトルコ政府が敷地も提供してくれているにもかかわらず、外務省は予算が足らぬと言って、依然としてその土地をもらおうとせず、下らない建物を高い家賃で借りておられる。トルコは、これは二、三年でやめるなら別ですが、ほんとうにあそこに根をはやして日本の外交の拠点にするには、けちな予算にとらわれないで公館を思い切って買わす。十年たったら家賃だけで買えるのです。そういうところに努力が足りないという感じを痛切に持っております。本年度の予算で、トルコその他の公館のないところにどれだけの予算をとっておられるか、これは官房長から一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/115
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116・松本瀧藏
○松本政府委員 後段の問題だけちょっと私御答弁させていただきたいと思いますが、辻委員の申された通りのことを外務省全部が感じておるわけでございます。たとえば高い家賃を十年間払っておるうちには、何かそこに融資でもしてもらってりっぱなものを建てれば、もっと権威の高い大使館、公使館の建物ができるのじゃないかというので、目下いろいろ案を作りまして大蔵省と折衝中でございます。
前段の理事官と書記官の区別の問題ですが、感じておられるほど私は差はないと思うのです。いろいろ差別待遇はしてないと思いますが、こまかい技術の問題になりますので、この問題に関しては官房長から答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/116
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117・田付景一
○田付政府委員 お答えいたします。ただいまほかの省から来た方が理事官になっておるというのは事実ございません。たとえば大蔵省の方が今ワシントンで公使をしておられますし、そのほか参事官でおられる方もおりますし、一等書記官、二等書記官がたくさんおられます。今お話の方がどういう資格で農林省から外務省に入ったのかわかりませんが、普通一般の各省の方は、外務省においでになるときは外務省員と同じような待遇をしております。たとえば理事官とおっしゃいましたのは、たしか今の外務書記生試験を受けた人間のことじゃないかと思うのでございますが、これは御承知の通り外交官試験と書記生試験とがございまして、外交管試験はずっと上っていくわけでございますが、理事官の方は、主として特殊の語学をやっていただきまして、その語学によって大体任地がきまっていく。先ほどおっしゃいました田村君のごときはやはりその一つの例なのでございますが、昔はほとんどこの方は上らない状況だったのでございますけれども、最近はこういう書記生から上ってこられた方も公使になっておられるというような例もございますので、われわれの方としては次第にそういう点を改革していきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/117
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118・辻政信
○辻委員 次はアラブに配置された大公使館の機構の問題であります。アラブは民族運動が非常に盛んになりまして、エジプト、シリヤの合同、イラク、ヨルダンの連合、こういうものができておりまして、将来はアラブの大きな民族の連邦に進んでいくような感じを受けるのであります。従いましてこれに即応する日本の外務省の機構としては、そのアラブ民族の中心であるカイロにずば抜けた有能な大使を置いて、その大使の指揮命令のもとに、シリアとかイラクとかヨルダン、サウディアラビア、そういうところに公使クラスの者を置いて、そうしてアラビア民族今正体の動き、これに対する経済、外交、戦略というような動きは、エジプトを中心として民族運動の勢いにタイアップするような機構改正をやらぬと、イランの公使の報告、イラクの大使の報告というものがまちまちに本省に来て、同じような確度でその価値を判断されてはまずい。これはむしろカイロというものを中心にして、そこに大物を置いて、その大物の手先となって働く者をアラブ民族のいろいろな国に置いたならば、民族運動とタイアップする日本の外交機構というものができると思いますが、そういう御着想があるかどうか、それを承わっておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/118
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119・松本瀧藏
○松本政府委員 一応お説のようなことも考えられるのでありますが、これをさっそく実施するということは、政治情勢、国際関係におきましてなかなか困難だと思うのであります。たとえばエジプトとシリアの共和国ができましたときには、さっそく先方から、二十二日までに承認してもらいたい——そうしてアグレマンなしですぐ右から左にこれが大使就任のできるような事前の折衝等がありましてできたのですが、一方イラク、ヨルダンの場合におきましては、向うからまだ正式に何ら言ってきていないという複雑な情勢がございます。さらに辻委員も現地をごらんになって御承知のごとく、非常に複雑多岐でございます。そこでカイロにこれらアラブ諸国を全部統括するところの大きな大使館みたいなものを作るということになりますと、エジプト、シリアは喜ぶかもしれませんが、他の国におきまして多少疑義を生ずるような場合もございます。従って形は別といたしましても、徐々に在外公館長会議等を強化するなり何かいたしまして、今の仰せのごとく重要性から勘案いたしまして、いろいろ将来考えていきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/119
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120・辻政信
○辻委員 そういう懸念から機構の統一ができないという現状でありますならば、せめて人的関係において、たとえばエジプトの人事、それが人的関係においてアラブ諸国の公使に対して、一つの指導的な人格と識見を持った者、こういうのが必要でなかろうかと思います。率直に申しますと、今日本の交外で、人的関係において一番欠点があるのはエジプトとインドであります。イランのごときは、今度栄転してこられる山田君がきわめて有能であり、民間人からもおやじのように思われておる。エジプトとインドに参りますと、民間人がそっぽを向いておる。その空気が官僚的であって、ほんとに自分たちの親身になって働いてくれない、そういう空気が現にある。でありますから、外交の成果いかんは、その重要ポストに据える大使、公使というものを、ほんとうにりっぱな者を選ばぬと、予算を幾らとっても、よくなりません。機構の問題が今手がつけられないならば、それはあと回しにしても、少くともエジプト、インドのような重要な拠点には、一流の中の一流の者を配置して、あの人の言うことならばという気持を持たすように、人事の関係において御指導なさっていただきたいということをつけ加えておきます。
最後に申し上げたいことは、調査がきわめて貧弱であり、ばらばらだ。あの東南アジアからアフリカにかけての調査資料というものは、きわめて貧弱なものであります。本省へもずいぶん行って勉強さしてもらいましたが、何だこういうものかという感じを深くする。予算の使い方においていろいろありましょうが、宴会費によけい使わないで調査機関によけい金を使うように、配慮を最後にお願いいたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/120
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121・松本瀧藏
○松本政府委員 調査の不十分であることは、私どもも感を同じくしております。十分調査の方も便宜のはかれるような工合に、予算の配分をしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/121
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122・福永健司
○福永委員長 西村力弥君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/122
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123・西村力弥
○西村(力)委員 大使、公使は実質的に、権限や何かについて差がないが、格が違うんだ、先ほどそういうように答弁があったように聞いておりましたが、しかし格が違うということから来る外交上の実際的な利益、そういうものはどういう形になって現われるだろうか、これをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/123
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124・松本瀧藏
○松本政府委員 先ほど答弁の中にも申し上げましたごとく、席次の程度でございまして、実質的には差はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/124
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125・西村力弥
○西村(力)委員 それから今回の改正の提案の理由を調査してみますと、先方から大使交換を申し込まれた、あるいは実際向うが大使をこっちによこしておる。こういうようなことを受けて、受動的にこっちが大使館に昇格する、こういうように読まれるのですが、その通りですか。日本の方から積極的に、あそこの国はぜひ大使に昇格させたい、こういう工合に先方の国に要請を出しておるところがあるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/125
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126・松本瀧藏
○松本政府委員 ただ先方から大使館を置きたいということだけで決定しているわけではありませすが、これはもちろん重要な一つのうファクターになります。他の国の例等も見ております。こちらの方から公使館を大使館に昇格してもらいたいという希望を申し入れましたのは、ニュージーランドでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/126
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127・西村力弥
○西村(力)委員 次に、アメリカが公使館しか置いてない所に日本が大使館を置いておる所もありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/127
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128・松本瀧藏
○松本政府委員 別に意識してではありません、偶然ですが、今ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/128
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129・西村力弥
○西村(力)委員 費用の点は少しはかさむでしょうけれども、やはりガーナを重視して大使館を置くとか、そのほか私たちから見れば、普通一般的には小国と思われるところに、相当大使館を置いておるわけです。今の考え方は、小国必ずしも蔑視というか軽視すべきではない。小国の発言というものは、国際政治上においてどういうウエートを持つかということは、私たち十分に知っておるし、日本もそういう小国とはいいながら、国際的な発言力をつける方法としては、そういう立場を取り付けたいという工合に考えておるのですが、そういう感じから言いまして、どっちみち少し費用がかかるとしても、今公使を置いておるところを全部大使にする、こういう方法を打ち出す考えはないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/129
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130・松本瀧藏
○松本政府委員 世界の趨勢も徐々にそういう方向に向いていくだろうと思います。日本も、世界の趨勢も趨勢でございますが、大使館に全部するというような傾向をたどっておることは、事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/130
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131・西村力弥
○西村(力)委員 ガーナに大使館を置く、これは昨年の三月、あすこの民族の歓呼の声で誕生したわけですが、私どもも非常に歓迎すべきことだと思っておつたわけですけれども、その国と大使を交換するということで、親善関係を深め、また経済関係を深めることになりますが、あすことの関係を深めるポイントとしては、二つあると思います。一つは、アジア・アフリカ国民との親善を深めるという立場、これは提案理由にも書いてあります。もう一つは向うの経済発展に協力するという方向がとられなければならないと思うのです。この前者におきましては、この間カイロでアジア・アフリカ会議が開かれましたが、そのときには北村さんその他が代表で行かれましたね。それからガーナからも代表が来ておりました。ところが、あのあとで、帰ってからの某雑誌の座談会の記録を見ますと、実際、あの記録がアジア・アフリカ各国にばらまかれたならば、とんでもないことになるんじゃないか。インドのN氏は国際ゴロだとか、あるいは、一緒に行った平和を愛するという三人はコミュニストだ、われわれはそういうような動きを十分察知して、それを適当に牛耳るために行ったのだ、こういうようなことが載せられておる。これがインドからアジア・アフリカの全部に行き渡ったならば、とんでもない結果を招くんじゃないかと思うのです。これは一緒に行かれた人々の座談会のことですから、政府自体には何ら責任がないものでありましようけれども、アジア・アフリカ各国との親善協力関係の方針ということを言いながら、もし腹の底で日本の政府にああいう考えが存在するということであったとするならば、これは言葉だけであって、逆に向うを刺激し、離反を深める以外の何ものでもないということを心配しておる。次官はあの座談会の記録を見られたかどうか、それが一つと、それから、ガーナに対する経済協力の問題としては、向うからどれだけのものを買い入れるか、この見通しをどう思っておるか。それをはっきりバランスのとれた貿易じりぐらいまで持っていくという、その決意というか方式というか、そういうものを持っておるかどうか、この二点についてお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/131
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132・松本瀧藏
○松本政府委員 先ほど、某雑誌に出ておるA・A会議に出席した人の何か記事を見たかとおっしゃいましたが、私まだ見ておりません。ただし、出ておるということは聞いておりますが、ただ口頭で、いろいろと伝わったことを聞いておるだけでございますので、批判の限りではございませんが、ただあのA・A会議は民間団体であったので、政府は直接関与していないことは、先ほど西村委員仰せの通りでございます。バンドン会議と少し事は違いますが、しかし外務省といたしましては、与党も野党も、いろいろ思想の異なった方もぜひ行けるようにはかってくれという要望もございましたので、最大限の便宜ははかりましたけれども、会議そのものに対して直接責任を負ったわけではございません。ただし、もしそういうことが向うに伝えられ、これがインド等に伝わることによっていろいろ支障を来たすのではないか、それはその通りであります。しかしインドにおきましては、日本政府はそういうような考えを持ってないということは十分承知しておると確信しております。
それからガーナとの将来の貿易関係、経済関係だと思いますが、こまかい数字等は政府委員に説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/132
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133・田付景一
○田付政府委員 ただいま仰せの通りガーナと日本との貿易は、日本の非常な輸出超過になっております。一九五七年の半ばまでで日本の輸出が三十二億円、輸入がわずかに一億円ということで、今西村委員がおっしゃいましたように、日本側の買っているものは非常に少い。これがわれわれの非常に大きな悩みなのでございます。しかも向うから出てくる品物というのが非常に買いにくいものでございまして、あの辺一帯から出てくるすべてのものがオリーブ油であるとかあるいは塩であるとかといったようなものでございまして、こちらの方で買うのが非常にやりにくいという点が御指摘の通り非常な問題になると思います。ただいまも通産省あたりと研究いたしまして、これ以上日本が買いませんと、結局日本から出ていくものが出ていかなくなるというような状況がございますので、どういうものを買ったらいいか、どういうふうにしてガーナから輸入するかというふうなことを通産省とも研究しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/133
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134・西村力弥
○西村(力)委員 次官はアジア・アフリカ会議は政府の責任とは何ら関係がないということでございますが、またインドにおいても、ああいった諸君はそういうことを言っても日本政府は違うのだ、こう善意に解釈してくれるだろうという答弁でありますけれども、それはあまりに形式的な割り切り方ではないか。必ずしもそうはいかないだろうと私は思うのです。表面の言い方はそういう言い方になるでしょうけれども、相当慎重に考えていかなければ、AA諸国との親善なんと言っても、それは腹の底は違うのだということをはっきり見抜かれてしまうと思う。それを十分御考慮願いたいということを申し上げたい。
それから次に、外務省が出先機関からいろいろな政治上の情報あるいは経済上の情報をキャッチし、それを整理し、それを外交政策あるいは折衝の素材となさるだろうと思うのですが、その得られた情報を外務省だけにとどめるか、この情報を慣例として内閣の中の一つのきまりで、どこどこに情報の必要なものを提示するか、連絡をするか、そういう点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/134
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135・松本瀧藏
○松本政府委員 外国から得ました情報の中には、もちろん公表していいものと公表して誤解を招くものとございます。もちろんこれは当然常識的に考えましても区別すべきであると思いますが、一般の客観情勢に関しましては、もちろん印刷その他によりまして外務委員会あたりには配付いたしております。また内閣にももちろん提出してあります。同時に情報文化局を通じて必要な資料はいつでも御提供できるようになっております。これは印刷のものもありますし、あるいはゲラ刷りになっておるものもあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/135
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136・西村力弥
○西村(力)委員 私のお聞きしておるのは、外務省からいろいろいただく資料、ああいう公表するものではなくて、もっと機微に触れたものでも、たとえば経済情勢の問題だと通産省に必ず定期的に行く、あるいはこういう問題については内閣調査室に、あるいは防衛庁にというように、こういう情報提供のルートは常時どういう工合になっておるかということです。それは必ずあるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/136
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137・田付景一
○田付政府委員 お答えいたします。ただいま通産省あたりとの連繋は通商問題については情報がくるたびに通産省の方に情報を回しております。また軍事その他の情報がございましたら防衛庁の力に回しております。そのほか一般的な情報におきましては、あるいは内閣調査室等にも情報を渡しておりますし、同時に内閣調査室の情報を、つまり国内の情報というようなものをわれわれの方にももらっておる、こういう状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/137
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138・福永健司
○福永委員長 午前の会議はこの程度にいたしまして、午後二時まで休憩いたします。
午後零時五十六分休憩
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午後二時四十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/138
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139・福永健司
○福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
憲法調査会法の一部を改正する法律案を議題とし質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。稻村隆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/139
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140・稻村隆一
○稻村委員 私どもは、憲法調査会を内閣に設置することに反対なんです。そこで憲法調査会に対する法案に対しましては、軽々に賛成できないわけです。実は憲法問題は非常に重大なんで、われわれと自民党並びに政府側の解釈が根本的に違っておるわけなんです。ほんとうはきょう総理大臣、法制局長官に出てもらって、いろいろお聞きしなければならぬと思ったのですが、御多忙のようでありますから、田中副長官にお尋ねしたいと思うのでありますが、一体政府は憲法調査会をほんとうに社会党に参加をしてもらいたいという気持があるかどうか。しばしば社会党に入ってもらうことを言ってきたのですが、社会党では考えがあって入らなかったのです。今でもほんとうに社会党に入ってもらって、いろいろ憲法調査会において、憲法問題に対して話し合いをしたいという意向があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/140
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141・田中龍夫
○田中政府委員 お答えいたします。政府といたしましては、ぜひとも社会党の御参加をいただきますように、誠心誠意努力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/141
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142・稻村隆一
○稻村委員 そこで、憲法調査会は、憲法を改正することを必ずしも目的とするものじゃないのだ、憲法を改正するかしないかを調査するのだ、こういう岸首相の答弁でしたが、いずれにしても憲法上の重大な問題は、私ども入って実はいろいろ発言したいのです。実際はそういう考えなんです。ところが政略として、どんなに正しいことでも、われわれが憲法違反であるという解釈に立っておる以上は、入りたくても入れない。その点はしばしば私どもは政府に申し上げたのですが、憲法上の規定を変更する問題は、われわれは九十六条によって国会にのみある、こういうことをあくまでも主張したのですが、政府は、政府にも提案権があり発議権があるということで、内閣に調査会を置いたのですが。内閣に果して提案権があるのかどうか、発議権があるのかどうか、憲法のどういうところに根拠を置いてそういう主張をされるのか、あなたからもう一度この点を聞きたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/142
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143・田中龍夫
○田中政府委員 その点は従来からもしばしば申し上げておる通りでありまして、今の提案権の問題と憲法調査会の問題とは、いささか異なると思うのでございます。今の提案権の問題につきましては、今日まで申し上げておりまするように、国会並びに政府においてもこれを有するものだという立場でございまするが、今の憲法調査会そのものは、現行憲法につきましてこれに検討を加え、また調査審議をいたすという純粋なものでございまして、この憲法調査会それ自体が現行憲法を検討いたし、また調査審議をいたすということは、何ら違憲ではない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/143
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144・稻村隆一
○稻村委員 憲法調査会法案が提案されたとき、憲法担当の大臣、清瀬さんによりまして、政府は、七十二条によって、普通の法律と同じように、やはり政府にも提案権があるのだ、こういう主張をされ、自民党の多くの委員の方もそういう主張をされて、この案を通したのですが、あなたもそういう解釈ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/144
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145・田中龍夫
○田中政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/145
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146・稻村隆一
○稻村委員 これは非常に重大な問題です。この問題は皆さんもうだれでもお聞きになった問題ですが、非常に重大な問題ですから、私は重ねてここで申し上げたいと思うのです。七十二条によって、内閣にも憲法改正の提案権がある。改正と言わなくても、憲法上の規定の変更を云々するその問題、そういうふうな調査会を内閣に置いてもいいというふうなことは、非常な誤解だと思うのです。なぜかなれば、憲法は他の法律に優位する基本法なんです。だからほかの法律と同様にこれを考えることが根本的に間違いなんです。それから日本の憲法は御存じのように成文憲法ですが、やはり性質は成文憲法でも不成文憲法でも同じなんです。ただ法律によって条文に表わすか表わさぬかというだけの相違なんです。そこで日本の成文憲法でも単なる法律解釈ではいけないのです。不成文憲法と同じように、やはり前例とか習慣とか慣例とか判決というふうなものに従わなければならないのです。そうでなければ大へんなことになるのですよ。現におそるべきことが日本において行われておる。というのは、憲法の解釈ですが、たとえばわれわれが憲法第九条によって再軍備できない、自衛隊を持てない、こういっておる。ところが自民党並びに政府は、持てる、こういう反対の解釈をしている。こういう憲法における全く相反した解釈があるということは、まことにおそるべきことなんです。たとえば七十二条であなた方は提案権があると言う。われわれはないと言う。憲法問題は九十六条にのみよらなければならぬとわれわれは解釈し、主張しておる。ところがあなた方の方は七十二条によって政府に提案権がある、こう言っておる。これは終戦後早急にできた憲法であるから、みんなが軽く見て、かくのごとき憲法上の両極端の解釈をやって平気でおるのですよ。しかしもし明治憲法時代の、欽定憲法時代であるなら大へんな問題なんです。内閣の一つや二つ飛ぶどころじゃない、大へんな問題が起る。それこそ多くの政治家がそのために監獄にぶち込まれたりなんかする事前が起ったに違いない。ところが終戦後早々にできた憲法であるから、両極端の解釈をお互いにして、似通った解釈ならまだいいけれども、全然相反する解釈をして平気でおるというふうなことは、これは実におそるべきことであって、こういう事態がだんだん進行すれば憲法を守らぬということは、非常な問題なんです。憲法を勝手な解釈をやるということでは、政治の秩序というものは絶対に保たれない。法律の秩序も保たれないわけなんです。憲法というものはあらゆる法律に優位するところの基本法なんですから……。そこでどうしても憲法上の解釈を一致させる必要がある。一致させなければ大へんな問題になる。今はまだそういうふうなおそるべき事態が進行していないから、平気でいるけれども、もしいろいろな形において進行していくと、おそるべき事態になることは明瞭なんです。こういう点について私は政府がどういう考えを持っておるか。これは実は総理大臣にぜひ出てその気持を答弁してもらわなければならぬのであるが、どうしても憲法上の解釈を一致させる必要がある。それにはどうするか。憲法というものは法律家では正しい裁定を下すことは困難なんです。たとえば七十二条、九十六条は、単なる法律論からいえば、これは水かけ論になるのです。政府は七十二条で提案権があるという。ところがわれわれは七十二条による提案権はない、九十六条によってのみ、国会のみが憲法に対する発議権を持っておるという解釈を持っておるのだから、単なる法律論からいえば、これは水かけ論になる。そこでこういう両極端の解釈、こういうものを何とか解決しなければならぬ。それにはどうしても法律家ではない一流の憲法学者を集めて、憲法裁判所のようなものを設置して、憲法に対する統一せる解釈をしておかないと、これは大へんなことになると私は思うのであるが、政府はそういうふうな考えはありませんか。現にもう全然われわれの解釈とあなた方の解釈は両極端だから、そういうふうなことになるということはおそるべきことであるのですが、われわれいかに不満であっても、憲法上の解釈が統一されれば、その憲法解釈に従わなければならぬことは当然のことなんです。そういう点に対しまして、一体政府の御見解はどうか、お聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/146
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147・田中龍夫
○田中政府委員 ただいまの七十二条と九十六条の問題でございますが、これにつきましては、法制局長官なりあるいはまた担当の大臣からも、従来とも御説明申し上げておると存じます。しかしながらただいまの御質問の、そういうふうな法律解釈についての最高権威を集めた機関を作ったらどうかという御意見に対しましては、ここで私の一存でも申し上げかねますが、稻村先生の御発言に対しましては、なお政府の方にも伝えまして、十分慎重に検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/147
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148・稻村隆一
○稻村委員 私はこれは重ねて機会があれば岸首相に来ていただいて岸さんの意見を聞きたいと思うのです。この解釈を統一できないままにほおっておくならば、日本の政治はおそるべき結果になる。紊乱をしてくる、こういうことに私はなると思うのです。何人も憲法に従わなければならぬのであるからして、憲法の統一せる解釈はどうしても維持しておかなければならぬということ、七十二条並びに九十六条に対する問題です。この問題に対して私の言うのは、法律家でなくて憲法学者を集めて憲法裁判所のようなものを作っておかなきゃならぬのじゃないか、これが私どもの考えなんです。これはどうしても総理大臣に来ていただいて、意見を聞きたいと思うのです。それで私は何度も申し上げたことかもしれませんけれども、一体九十六条の解釈が絶対に正しいというわれわれの主張は、これは絶対に間違っていないと思うのです。林法制局長官は七十二条の解釈は妥当だと言うけれども、これは憲法の歴史をまずわれわれは考えてみる必要があると思う。というのは憲法ができたのは何かというのです。むろん明治の欽定憲法とかそういうものは別です。これは君主主権の憲法なんだから。これは封建主義より少しは進んでいると思うけれども、神権説によるところの君主主権の憲法なんだから、こういうものはほんとうの憲法じゃないのです。まだ半分封建的な政治制度のもとにおける憲法なんです。これはにせの憲法とは言わないけれども、まだこれは真の憲法とは言われない。そういうところには、憲法改正には君主だけが発言権を持っておる。憲法改正の問題に対してこれは別だ。それから革命政府のようなものは、たとえば国会がないけれども、封建制度が倒れた、そこで新しくここで憲法を作ろうというときには、政府が主体になって憲法会議を招集したという歴史的な事例はあります。それからまた憲法のできていないアメリカのある州が、そこで新しく憲法を作ろうというときに、州政府がこの憲法発布の人民会議を招集するというような例はある。これは特殊なる場合、あるいは革命政府というふうなものは別問題なんです。ところが人民主権の憲法のある国において、いやしくも憲法上の問題に対して法律をもって政府が関与するということは、これは憲法の歴史的に発展せる事情を追及すれば、誤まりであることが明瞭にわかる。何のために一体憲法ができたかということ、それはもうだれでも知っているのです。高等学校の生徒でも歴史を読んだ者は知っておるのです。君主や政府の無限の権限、すなわち従来は君主も政府も司法権、立法権、行政権はもちろんのこと、一切を握っておった。そうして自分の憎愛の観念によって、ある者を逮捕して死刑にしたり、勝手なことをやったわけです。それから税金は勝手に取り上げる。そこでその君主及び政府の専制に苦しんだ人民は、政府から法律を作る権利、税金をきめるところの権利を取り上げて、そうしていわゆる立法府を作った。それから勝手に人を逮捕して死刑にしたりする権力を裁判所に分けた。そしていわゆる三権を分立させて、政府及び行政府から立法権と司法権を取り戻し三権を分立させ、人民の自由を守ったということは、これはもう歴史的な事実だ。私はここで申し上げるまでもない。フランス革命のときの人権宣言の十六条にはっきり書いてある。三権の分立のない憲法というものは憲法じゃないということを宣言した。それが世界の成文憲法の基礎になったわけでしょう。それまではイギリスなんかでは成文憲法はない。成文憲法は一番初めに、アメリカの独立戦争の後にでき、それから後に世界に広く行われたのはフランス革命のときにおける人権宣言のときからであることは明瞭です。そういう歴史的事実からいえば、いやしくも権限を制限される政府が憲法の問題を取り上げて云々することは、個人的に言うことは自由であるけれども、憲法改正の問題を取り上げて、そして憲法を改正するかいなかとか、あるいは憲法を改正すべきだろうかどうかということは、憲法の歴史からいって全く誤まっておる。だからイギリスのごときは憲法の規定を変更する機関というものはすべて国会に置くことになっておる。決して政府はこれを扱わない。政府が扱う場合は、さっきも言った通り革命政府などは扱わざるを得ないからやむを得ないのである。いやしくも人民主権の憲法という型ができたその国において、政府が憲法の問題を扱うということは、ちょうどどろぼうが刑法を作るようなものなんです。これは憲法がどういうわけでできたかという歴史的事実——七百年前の大憲章、アメリカの独立戦争からフランス革命に至るまでのその歴史的事情を追及すればこれは明瞭なんです。政府の権限を制限するために憲法というものができて、政府は行政権だけは握ることになったわけでありますから、その憲法上の規定を変えるところの機関を政府が内閣に置くなんということは越権行為もはなはだしい。しばしばわれわれはその点は間違いであるということを忠告したのです。ところが林法制局長官や政府の当局者は三百代言的理論をもって、法律上の解釈が七十二条でいいからといって無理に内閣に持っていった。それだからわれわれは協力できない。世論は何も知らないから、社会党はなぜ入って発言をしないのかというけれども、いやしくも憲法上間違いであるという解釈を下した以上、いかに政策的にこれが正しくとも、世論がどう言おうとも、われわれは憲法調査会に入るわけにいかない。従って憲法調査会の人数を増員するなんということに対しては絶対に賛成できない。われわれの同志によりまして憲法調査会廃止の法案が今出ておりますが、これは私は当然であると思う。その点に対しまして一体あなたは政府当局者としてどういう考えを持っておられるか。私の意見が間違っておるかどうか。政府がいやしくも憲法上疑義なしとして調査会を内閣に置いた以上は、確信を持って、理論的根拠に立っておられるのだと思うが、あなたの考えは一体どうか、どういう理論的根拠に立ってこの憲法調査会を内閣に置いたのか、もう一度私はお伺いしたい。ただ法律の解釈なんというものはどうにでもできるような、三百代言的な解釈によってかくのごとき重大な法案を内閣に持っていって、そして社会党に協力しろ協力しろといったって協力できるものじゃない。その点はあなたはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/148
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149・田中龍夫
○田中政府委員 現行の憲法なりあるいはまた世界各国の憲法なり、またいろいろな憲法の沿革等につきまして、これを研究し、検討し、調査いたすということは、これはだれがいたしても当然私はかまわないものだと思います。憲法調査会がたまたま内閣がその憲法の検討なり審議をいたす調査会を持つということは、私は常識論ではございますが、何らそれに対してかまわない、当然国家の重大な基本法であり、かつまた国民生活の上におきましても重大な法律でございますこの憲法につきまして、当然政府といたしましてもその検討なり、あるいはまた調査研究をいたすその憲法調査会を持つことは、私は異議はないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/149
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150・稻村隆一
○稻村委員 むろん憲法調査会は持ったって差しつかえないのですが、なぜそれを国会に置かないかというのです。国会に置いた方が社会党も何も協力できるじゃないですか。国会に置いたらわれわれも入りますよ。それをなぜ憲法上重大な疑義のある内閣に置くかというのです。国会に置く気はないかというのです。どうも自民党はおかしい。あくまでも内閣に置くのだというが、国会に置いたらいいじゃないですか。国会に置いたら、われわれは喜んで憲法上何らの疑義はないから、反対だろうが、賛成だろうが——またどんな憲法だって完全無欠なものはありゃしないのだ。われわれは人民主権の憲法を改正することには絶対に反対であるけれども、その他小さい点においては、完全無欠じゃないのです。どんな法律だって完全無欠なものはないのですから、部分的には改正の必要があるところはあります。率直にいって、これは私個人の意見です。そういう問題を論ずるときに、国会に置けばわれわれも協力できるじゃないか。なぜ内閣に置くことを突っぱるのです。それに対して聞いても何か法律上の抜け道のようなことを言って、三百代言的理論を展開して、はっきりとそういうことを言わない。国会に置いたらいいじゃないですか。国会に置いたら不便であるという理由は何らない。みなわれわれ参加して憲法を改正するかどうか、部分的に改正すべきか全面的に改正すべきかという議論は幾らでもできるじゃないですか。また幾ら政府が憲法を改正しようとしたって、社会党が三分の一以上の議席を持っている以上は不可能なんです。遊戯にすぎない。改正できないものを、幾ら調査会でやってみたところで費用を使うだけです。社会党を選挙を通して三分の一以下に落せばできるかもしれないけれども、費用を使って何もならぬものを何でやる必要があるのですか。社会党が厳として協力しないで反対に立っておる以上は憲法改正はできない。なぜ内閣に置くのか、なぜ国会に置かないのか、こういう点を私はお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/150
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151・田中龍夫
○田中政府委員 ただいまの御議論は、すでに憲法調査会法が提案されましたときにもいろいろと御審議いただいたことと存じますが、しかしながら今日ただいま申しまするように、憲法調査会を政府に持っておるということ、それ自体につきましては、やはり政府としても非常な重大な関心事であり、また特に学識経験者等の方々をもって構成員といたしますような調査会でございますと、やはり政府に置くというのが妥当であろう、こういうような観点もございます。先ほども申しましたように、国家の基本法であります憲法に対しましては、国民だれしもが非常な関心を持っており、またどこが研究し、調査をしても、これはまた自由でございますが、この憲法調査会法によってせっかくできました憲法調査会に対しまして、ただいま申し上げましたような経緯もあり、関係もありまして、内閣に置くようになったものと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/151
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152・稻村隆一
○稻村委員 この問題はいつまでも田中さんと論じ合っても仕方がない。一度どうしても総理大臣にきてもらって、もう一度岸総理の憲法に対するはっきりした見解をお聞きしたいと思います。きょうの質問は、これでやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/152
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153・福永健司
○福永委員長 西村力弥君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/153
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154・西村力弥
○西村(力)委員 憲法調査会が設置せられまして、しばらく開店休業の状態にあって、昨年ごろから動き出したようでございますが、この調査会の委員としてせっかく社会党にも席をあけていただいたけれども、私たちは、今稻村委員が申されたような理由を基本として参加できない、とこうなった。議員以外の有識者の委員の大ざっぱな分け方をしてみると、改正反対の人、賛成の人と中立主義的な立場に立っている人、こういうような分け方をしてみると、そういう委員の状態はどういう工合になっておるとお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/154
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155・田中龍夫
○田中政府委員 今日五十名の定員の中で、御承知の通り国会議員が三十名、学識経験者が二十名でございますが、われわれの方といたしましては、ぜひとも社会党の御参加をいただいて、そうして全体の上において、純粋にいうと超党派的にあらゆる問題の御審議をいただきたいと存じておるのでございます。しかしながらその過程におきまして、社会党の御参加が得られない現状におきまして、国会議員の三十名は当然自民党の方々でございます。なおまた学識経験者の方々の中におきましても、あくまでも公平に、あくまでも斯界の権威ある方々に御参加をいただきたいと念願いたしまして構成をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/155
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156・西村力弥
○西村(力)委員 議員の方はわかったのですが、学識経験者の二十名の方々は、今田中さんの御答弁ですと、公平に人選せられた、とこう申されておりますから、その公平ということは、結局賛成、反対いずれを問わず、そのバランスを考慮しつつ人選したということになるだろう、こう思うのです。そういう立場で人選せられたならば、私がお尋ねしている学識経験者の評価、この方は改正に強い賛成の方だ、この方はもう絶対に反対の方だ、こういうようなめどをつけて人選をなすっただろう、こう思うのです。ですから、今委員になっておる方々について、その人数、比率はどういう工合になっておるとお考えになるのか。それを全然考慮しないならば、公平に人選したとは申されないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/156
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157・田中龍夫
○田中政府委員 学識経験の方々の中におきましては、従来のいろいろな所論におきまして一応の動向なり何なりは推理できます。しかしながらこの調査会に参加せられまして、そうして純粋の立場から、あらゆる角度からこれを御審議いただく上におきましては、参加せられました各権威ある方々におかれましても、この点は明確に個人的な意見ではなくて、ほんとうに国家の大所高所から純粋な検討をしよう、かような心組みのもとに審議が行われておると存じます。同時にまたその色分けを言えとおっしゃいまするけれども、しかしながらこれは現在のところにおきましては、特に憲法の改正につきまして改正論者だから入れるとか、また反対論者だから入れないとかいったようなことではなく、この点も人選におきまして純粋な気持でもって選択いたしたものと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/157
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158・西村力弥
○西村(力)委員 学者と称する方々は国家的見地、純粋な立場、こういう立場というものは学者の良心と一致しなければならない、そういうことから言うと、自分の所論が改正に賛成だということを学者の良心に立って発表する人が物事を純粋に持っていくということはどういうことか私たち—にはわからないのです。それでは現在二十人のそういう有識者のお名前は事務局でおわかりだろうと思うのですが、私たちは新聞等でその推移は見ておりますけれども、的確な資料をいただいたこともないし、それに参加もしていないためにわからないのですが、その委員のお名前を一つ知らしてもらいたいし、それから今までぜひ参加してもらいたいということを要請したにかかわらず、先方からお断りを食ったという有識者の方々、それを一つ知らしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/158
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159・武岡憲一
○武岡政府委員 お尋ねの学識経験者の委員の名前でございますが、矢部貞治氏、坂千秋氏、高田元三郎氏、坂西志保氏、中川善之助氏、大西邦敏氏、大石義雄氏、植木庚子郎氏、金正米吉氏、蝋山政道氏、田上穣治氏、潮田江次氏、大体以上であったかと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/159
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160・西村力弥
○西村(力)委員 十二人しかいないじゃないですか。——官公庁の職員抄録に出ておるそうですから、御苦労をかけました。
それから第二番目の折衝をしたが、先方からお断りを受けたというような人の目ぼしいところはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/160
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161・田中龍夫
○田中(龍)政府委員 折衝をいたしました方々の中で存じ上げておりますのは宮澤俊義氏、我妻榮先生それから森戸辰男先生等々でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/161
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162・西村力弥
○西村(力)委員 こう見てきますると、やはり有識者の選定においても改正に反対をするような人々はやはりほとんど名ざしをされないし、またされてもお断りをしておるということになって、全く議員においては自民党だけ、こういう有識者においても相当の偏向を来たしておる、こう見ざるを得ないわけなのです。こういう立場で、今いろいろ会合を重ねておられるわけでございますが、今までその会合は何回ほど持たれましたか。そうしてその間における重要な決定事項はどういうことか、それから今後の憲法調査会の大体のスケジュール、こういう点についてお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/162
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163・武岡憲一
○武岡政府委員 憲法調査会が発足いたしましてから、おもな会合をどのくらいやっておるかというお尋ねでありますので、お答え申し上げます。現在までに憲法調査会の総会を十回開催いたしました。そのおもな議題は、憲法制定の経過についてというのでございまして、すなわち日本国憲法の制定の経過に関しまして、その当時いろいろ御関係のあられました方々を参考人としてお招きいたしまして、その間の事情をいろいろ承わっておるのでございます。
それからなお今後のスケジュールのようなものがあるかというお尋ねでございますが、この総会におきましては、いわゆる憲法制定の経過についてという議題のもとにおける審議は一心前会をもって打ち切りまして、次会、すなわち第十一回からは、日本国憲法運用の実際についてという議題にいたしまして、すなわち憲法が施行されましてから今日までの十年の間に、憲法の運用に関して実際にどのような問題が起ったかということにつきまして調査、審議を行う予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/163
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164・西村力弥
○西村(力)委員 私のお聞きしたいのは、この憲法調査会の運営について、最初論議をせらるべきはずであり、またされただろうと思います。これが非常に重大なことであったろうと思いますが、運営についての申し合せ、決定事項はどうなっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/164
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165・武岡憲一
○武岡政府委員 御指摘の通り、憲法調査会の運営に関しましては、八月十三日及び十四日の二日にわたって行われました第一回の総会において論議せられたのでございます。その論議の結果、憲法調査会議事規則というものを制定いたしまして、今後調査会の議事を行なっていきます上での規則、やり方と申しますか、それが決定せられたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/165
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166・西村力弥
○西村(力)委員 その際に、一番問題になった点は、この調査会のいろいろな最終の結論をつける場合あるいは中間における結論をつける場合にどうするかという点が運営上の一番のポイントであろうと思う。そのことについて私たちが聞いておるところでは、相当結論を急ぐ方法をとる議員側の意見と、有識者諸君の結論を急がないで一定の結論を出すことを避けようとする動きが対立しておったようですが、その際結論をつける場合の方式はどういうことで申し合せが成り立ったのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/166
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167・武岡憲一
○武岡政府委員 憲法調査会法の第二条によりますと、「調査会は、日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議し、その結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告する。」というのがその使命に相なっておるわけでございます。そこでその結果を報告するということはいかがにするかということにつきましては、ただいま御指摘のように第一回の会合の際にもいろいろ議論があったところでございますが、憲法調査会としてこの調査審議をいたしました結果について、調査会としてのいわゆる一本の意見を出すか出さないかの問題につきましては、いまだ別に会として決定を見ておらないのでございます。もしも調査会として何らかの意見をきめるという場合に、いかなる方法によるかという点につきましては、この議事規則のいわばほかの問題として別途に協議をするという申し合せになっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/167
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168・西村力弥
○西村(力)委員 次に田中さんにお聞きします。日本の国は憲法を基本法として立っている立憲国だということでありますが、その次に天皇は象徴だという工合になっており、一方では人民主権だとなっております。ところで立憲君主国あるいは立憲共和国という分け方をした場合、現在の憲法からくる日本の国柄というのはどちらになるでありましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/168
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169・田中龍夫
○田中政府委員 非常にむずかしい問題であろうと存じますが、天皇は国家の象徴でございまして、別に大統領があるわけでございませんから、共和国ではないと存じます。日本の国柄は立憲民主政体として運営せられておると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/169
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170・西村力弥
○西村(力)委員 その点が日本の憲法の明確でない点でありますので、そういう点から天皇の地位が旧に戻る危険性をこの憲法調査会設定によって国民が感じる。また事実そのような改正案が自民党の手によって作られておる。こういうことから非常に不安を持っておる。あなたの答弁を聞きましてもやはり立憲民主国だということです。そういう論議は学術的な論議になるでしょうが、私たちの立場の政治的論議になりますと、そういう点を明確にしておかないから憲法調査会の行く先に非常な不安を感じることにもなるのじゃないかと思う。
その次に問題にしたいのは、この前吉田元総理が憲法は改正することを要しないと発表いたしましたが、あのことについて政府としてはどう考えておるか。これは政府というよりも自民党自体の統制の問題にもなるように思われる。ですから、自民党総裁の岸総理にぜひ来ていただきたいと思うのです。ああいうように元総理の意見として出るということは、私たち非常に歓迎すべきことだと思っておるのですが、その点について憲法調査会もしくは政府の立場としてどういう工合に考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/170
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171・田中龍夫
○田中政府委員 憲法調査会といたしましては、あくまでも純粋にあくまでも皆様方の自由な御意見をお聞きする、同時にまた国民多数の非常な関心事でございますので、憲法調査会の審議の過程におきましてもこれを公表して参ったのでございます。ただいまの吉田元総理の御発言でございますが、そういう御意見をお持ちの方もございましょう、またもちろんそれについては時期の問題もございまするし、さような意味で、ぜひとも社会党の皆様方に御参加をすいただきまして自由な御意見を述べていただくことが絶対に必要じゃないかと思うのでございます。ただいまの憲法調査会といたしましては、さような特別の意図のもとに計画的にどうこうということは毛頭ございませんで、皆様方の御意見なりまた御主張を、ああいう機関を通じまして営々と国民の前に展開する、そうして全国民の憲法に対する関心を高めて参る、これが憲法調査会の存在理由でございますので、その点調査会といたしましては、ただいま申し上げたような所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/171
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172・西村力弥
○西村(力)委員 これで一応終りますが、委員長、理事会で話し合いになっているかと思うのですが、私たちの淺沼稻次郎外何名かで憲法調査会廃止の法律案を継続審議にいたしておるわけですから、この際ぜひそちらの方とも協定して提案者代表も加えまして、この次の委員会において審議を進めていただきたいと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/172
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173・福永健司
○福永委員長 よく相談して——理事会できまったとまではいきませんが、話が出ておりましたのは事実でございます。御意見をできるだけ尊重するように考慮いたしたいと思います。なお御協議を申し上げるごとにいたします。
本日はこの程度にとどめまして、次会は公報をもってお知らせいたします。
これにて散会いたします。
午後三時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X00819580304/173
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