1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月二十八日(金曜日)
午前十一時十四分開議
出席委員
委員長 福永 健司君
理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君
理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君
理事 受田 新吉君
大坪 保雄君 大村 清一君
北 れい吉君 小金 義照君
中馬 辰猪君 辻 政信君
中川 俊思君 永山 忠則君
林 唯義君 船田 中君
眞崎 勝次君 山本 粂吉君
阿部 五郎君 茜ケ久保重光君
飛鳥田一雄君 淡谷 悠藏君
稻村 隆一君 木原津與志君
中村 高一君 西村 力弥君
出席国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
国 務 大 臣 津島 壽一君
出席政府委員
法制局長官 林 修三君
防衛政務次官 小山 長規君
防衛庁参事官
(長官官房長) 門叶 宗雄君
防衛庁参事官
(防衛局長) 加藤 陽三君
防衛庁参事官
(人事局長) 山本 幸雄君
防衛庁参事官
(経理局長) 山下 武利君
防衛庁参事官
(装備局長) 小山 雄二君
委員外の出席者
専 門 員 安倍 三郎君
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三月二十八日
委員山崎始男君辞任につき、その補欠として阿
部五郎君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出、第二十六回国会閣法第一五五号)
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第三二号)
自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三三号)
国防会議の構成等に関する法律の一部を改正す
る法律案(内閣提出第四二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/0
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001・福永健司
○福永委員長 これより会議を開きます。
防衛庁設置法の一部を改正する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律案、国防会議の構成等に関する法律の一部を改正する法律案及び第二十六回国会より継続審査となっております防衛庁設置法の一部を改正する法律案、以上の各案を議題とし、質疑を続行いたします。石橋政嗣君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/1
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002・石橋政嗣
○石橋(政)委員 最初に総理にお尋ねいたしたいと思いますことは、今回の陸上自衛隊の隊員を一万人増強するという問題に関連してお尋ねしたいわけであります。
今回、陸上自衛隊員を一万人増強するという法案をお出しになったわけでございますが、これに対しましては私ども社会党だけではなく、与党の自民党の方々の中でも強い批判を持っておられることは、御承知の通りだろうと思う。それがどこから来ているかと申しますと、昨年の夏以来の急激な国際情勢、軍事情勢の変化、ここからやはり来ておるんじゃないか。御承知の通り、再三言われておりますように、ソ連におけるICBMの完成、これを裏づけるところの人工衛星の打ち上げといったような一連の動きから、もはや世界のいわゆる防衛という問題についての考え方も、質的に大きく変化してくる、これに対応するものがやはり出てこなければうそだ。普通、量よりも質の時代に移ったという言葉で表現されておることが、これを物語っておると思うのでございますが、日本の場合こういった情勢の動きに対応することなく、旧態依然として陸上兵力を増強するという方針を踏襲されようとする、ここに軍事力によって防衛しようという立場をとる人たちの側から見ても、納得のいかない面が出てきておるのは当然だと思う。先回本委員会におきまして辻委員がお尋ねいたしましたときに、総理はすでに国防会議において策定され、決定されたいわゆる防衛三カ年計画、これに基いてやるのであって、国防会議できまったんだからこれを変更する必要を政府は認めないから、この計画に基いて一万人の増強をやるんだと、このようにおっしゃっておるわけでございますけれども、この点でどうしても私は納得がいかないわけであります。なぜかと申しますと、国防の基本方針がきまりましたのは昨年の五月であります。防衛整備目標が決定を見ましたのが昨年の六月であります。しかし今冒頭に申し上げましたように、国際情勢、特に軍事情勢が急激な変化を見たのは八月以降であります。この情勢に即応して、防衛計画というものが当然再検討されなくちゃならぬ。それも政府が再検討するのではなくて、やはりこれを作った国防会議が責任を持って再検討する必要がある。にもかかわらず、総理はこの国防会議において再検討することなく、政府が再検討の必要を認めないからということをもって理由とすることは、納得いかないわけであります。そういうことでありましたならば、国防会議を作りましたときに、私どもが再三主張しておりましたように、国防会議というものが意味がないじゃないか、単なる防衛閣僚懇談会的なものになる、政府の部内の一機関になるだけであって、屋上屋を重ねるようなきらいがあるが、それじゃつまらぬじゃないかといったようなことを裏づけることになる。この点、先日も長官にお尋ねしたのでございますが、国防会議においてこの整備目標を再検討したことはないと言う、なぜなさらないのですか。これじゃ国防会議というものは、私たちが再三指摘したように、政府のと言いながら実際は防衛庁が作ったものをそのままうのみにする、それだけの機関にすぎない、みずからの手によって再検討する能力もない、こういうことになると思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/2
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003・岸信介
○岸国務大臣 私過般この委員会における質疑応答において、今国防会議できまったこの計画について特に変更すべき理由を認めないということを申したことはもちろん事実でございます。しかし同時に、この国防会議の決定をいたしております根本の目標とか、あるいはその精神とかいうものは、私は当分変える必要もないと思いますけれども、われわれ自身がこの防衛力を増強するについては、国力、国情に応じて常に量よりも質に重きを置いて考えて参りたいということも申しておりますし、そういういろいろな意味においてこの内容が国防会議において再検討されることは私は当然のことであると思います。しかし今日まで国防会議においては、本年出しておりますところの案そのものについて別段の違った意見が出ておるわけでもなければ修正をされておるわけでもありません。この国防会議において十分に各般の事情を考えて審議して出しておるものであります。しかし国際情勢も変り、あるいは科学的な進歩も、今日のことでありますから、非常に急激な進歩をするという場合において、一たびきめたことがもう絶対動かすことのできないものであるということは私は考えておりません。それにはそれぞれの機関がありまして、私自身としては政府の立場として国防会議できまったものを尊重する。国防会議において今申しましたような各般の事情を取り入れて再検討もし、修正もされていくということは、私は当然のことであると思います。しかし一万名の陸上の自衛隊を増加するということにつきましては、もちろんいろいろな議論はあると思います。しかし国防会議においてきまり、そうしてその後における事情の変化も、そのものを変更せしめる必要というものは、私自身としても認めておらないということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/3
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004・石橋政嗣
○石橋(政)委員 今度の一万人の陸上自衛隊の増強は、結局国防会議できまった防衛力整備目標に従ったものである。この防衛力整備目標というものが、先ほどから申し上げておりますような急激な国際情勢の変化に従って再検討されたかどうか、こういうお尋ねを私津島長官にしたわけなんです。ところが一万人ふやすということについて国防会議で再三やったけれども、防衛力整備目標自体についてはこれが新事態に即応したものであるかどうかということについて、昨年の夏以来の情勢を見て国防会議みずからの手で再検討はなされておらない、こういうような御答弁をいただいておるので、私疑問を持っておるわけです。一万人増強がこの整備目標に従って行われるものであるならば、その根本の整備目標自体の再検討の必要ありやいなやということについて、当然国防会議で諮らなくちゃならぬ、それが諮られておらないというところにいろいろの疑問が出てくるわけです。総理は否定されますけれども、アメリカとの約束になっておるから、とにもかくにも一万人ふやさなければ義理が済まぬのじゃないか、こういうわれわれの疑問に対して、明確にそうじゃないのだということを言うためにも、それを立証するためにも、国防会議で防衛整備目標自体を検討した結果、変更を認めなかったという裏づけがなければならぬと思うのです。なぜ国防会議で整備目標自体の再検討をなされなかったわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/4
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005・岸信介
○岸国務大臣 私はこの整備目標、陸上自衛隊の増強の目標がきまりました国防会議において、検討されました当時のことを考えてみまして、日本のこの地理的の立場、従来の陸上自衛隊の持っております実力、それからなおその後起ったことでありますけれども、アメリカの陸上部隊が撤退するというようなことを考えてみますと、私はこの一万名の陸上自衛隊の増強というものは、国防会議できめた当時の各種の事情から見まして、そういうようなことも加わってきておって、これを変更し再検討してあらためて考えなければならぬという事態が起きているとは考えておりません。
なお国防会議のああいう目標をきめましたことにつきましても、その趣旨本旨は、もちろん一ぺんきめたらこれを絶対に動かさないというようなことを考えているわけではございませんで、国防会議自体は常にあらゆるデータを集め、あらゆることを検討しておりまして、その結果さきにきめた国防の目標等を変更しなければならぬというような結論が出れば、もちろんこれはそういうことになるだろうと思いますし、また政府みずからがこれを変える必要があると思ってそれを諮問し、それの意見を聞くという場合もございましょうが、国防会議自体としては常にあらゆる方面から、あらゆる事態を十分に研究いたしているわけでございます。その結果として一たびきまったものにつきましても、先ほど申すように情勢が非常に変化をする場合においては再検討され、修正されることがあり得ることは当然であります。しかし政府は、そういう場合において修正され、変更されたならば、その趣旨を十分に尊重して考えていきますが、一応そういうような事情にきまり、またその後の事情も陸上自衛隊の増強の目標を変えなければならぬという事態が起っているとは政府自体は思っておりませんので、これが再検討を命じ、それの変更、修正をいたしておらない、かように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/5
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006・石橋政嗣
○石橋(政)委員 そこで政府と国防会議というものとの関係について、もう少し明確にしていただきたいと思うのです。政府が必要ないと認めれば国防会議に諮る必要もない、こういうことであれば何のための国防会議か、私たちはその点を指摘してきたわけです。それなら防衛閣僚懇談会で済むじゃありませんか、もっともらしく国防会議というものを作る必要はないのじゃありませんか、こういう疑問を再三投げかけてきているのです。しかし政府はこれに対してそんなことはない、もっと権威のあるものだ、最初は民間人までこの構成の中に含めておった。それが内閣がかわることによって民間人は削られておりますけれども、政府機関といったような小さなものじゃないのだということをおっしゃっておられたわけなんです。そこで私たちはそういう意味なら国防会議存在の意義というものもわかるけれども、屋上屋を重ねたような結果になりやしないかということを指摘しておったのです。総理の今のお答えを聞いてみますと、政府が再検討の必要がないときめたからというだけで、国防会議自体が再検討することを避けるということになると、どうも私どもの危惧がそのまま的中するような感が深いのでありますが、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/6
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007・岸信介
○岸国務大臣 ちょっと私の言葉が足りなかったかと思いますが、国防会議自体が常にあらゆる情勢を分析し判断し検討しているということは私先ほども申し上げましたが、積極的にそういう検討の結果意見がある場合においては政府に対して意見を述べることは当然のことだと思います。また政府の諮問として、政府がこう思うがどうだというような政府の側の意見を主題として議論する場合もあろうかと思います。私は政府としては必要を認めておらないという意味において、再検討を国防会議に申し出ておらないということ、それから国防会議としては今言ったようなあらゆる研究はいたしておりますが、その結果としてこの目標を変えなければならぬ、あるいは修正するのが適当だと考えるならば、もちろんそういう意見を政府に持ち出すわけでありますが、そういうことにもなっておらないということであって、一切国防会議というものは、何もしない、政府の諮問だけで動くので、何も研究していないというような意味ではありませんで、あらゆる問題を研究し、そういう意味においては常に検討を加えておる、こう御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/7
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008・石橋政嗣
○石橋(政)委員 少しはっきりしてきました。国防会議は国防に関する重要事項について必要に応じ内閣総理大臣に対し意見を述べることもできるのです。
そこで戻りますが、この整備目標、これに従って地上軍の一万人増員というものを強行されようとしている。この整備目標というものは世界の軍事情勢の急激な変化を見る前に作られたものである。そうすると、この情勢の変化に伴って、国防会議自体で再検討したことがあるのかないのかという問題が出てくるのです。その点、津島長官にお尋ねいたしましたら、それはやっておらぬと言うのです。そこで総理に、おかしいじゃありませんか、政府が再検討の必要がないと認めたら国防会議はそれを受けて全然開かれない、整備目標については検討もしない、こういうことじゃ何のことやらさっぱりわからぬと私が言っているのは、そういう疑問なんです。そこのところわかるように一つ御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/8
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009・岸信介
○岸国務大臣 正式の国防会議、あるいは国防会議の懇談会等も、実際の運営を見ますと、開いております。従って今申しますように、いろいろな科学兵器の進歩発達の状況やあるいは国際情勢の分析等も、国防会議においては従来いたして参っております。この整備目標を作ります場合におきましても、相当長い研究と議論の結果これができたわけであります。陸上部隊をどうしてこういうふうに何するかという問題については、今言っているように、日本の地理的な立場、また現在持っておる陸上部隊の力、それからわれわれとしてはアメリカの軍隊の撤退をまだきまってはおりませんですけれども、これを撤退してもらいたいということは従来からの一貫した考えであり、それを漸次実現していくと、これにかわる陸上の兵力というものを考えていかなければならないというようなことが実際上検討されてきたわけであります。そうして今お話のように、昨年の秋以来人工衛星の打ち上げだとか、ミサイルの非常に驚異的な発達というような事実があったことは、これはお話の通りであります。しかしそれによって現実に、それでは従来の普通兵器による普通兵力なり、あるいは自衛力というようなものについて、諸外国においても実情が変っておるかというと、そうでもありませんし、従いまして私どもは一応このきまった目標に従って予算を編成し、予算を編成する場合におきましては、国防会議の懇談会でありましたか、あるいは正式の国防会議でありましたか、やはり報告をいたして、その了承を得ております。従いましてその際におきましても、国防会議としては、ああいうことをきめたけれども、さらにこれを変更しなければならない、変更すべき事態であるという見解はなかったわけであります。今申しますように、国防会議としてはいろいろその機構内におきまして、あらゆる検討は常時加えておるこう私は了解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/9
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010・石橋政嗣
○石橋(政)委員 この問題はぜひはっきりさしておかなくちゃならぬと思う。総理は内閣総理大臣であり、そして国防会議の議長である。そうしますと、政府において再検計の必要がない、これを修正する必要はないということになりますと、今度は国防会議の議長という立場からその必要ありやなきやということを相談するための国防会議の招集、あるいは議題に供するといったようなこともそのままおざなりにされてしまうのじゃないか、こういう疑問が当然出てくるわけです。そういうことであるならば、何のための国防会議かわからない。軍事偏重ということを避けて非常に広い視野の上に立って、国防の基本方針なり防衛計画なりを立てようという国防会議の意義というものがあるわけですから、かりに内閣総理大臣として必要を認めなくても、国防会議の議長としては、やはり正規の招集をし、議題に供し、十分なる検討を加えなくちゃ国防会議の意義はないと私は思う。その点において若干手抜かりがあるような気がするわけですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/10
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011・岸信介
○岸国務大臣 お話しの通り、私の、内閣総理大臣としての立場と、国防会議の議長としての立場とは、これはおのずからその目的なりあるいは意義なりというものを異にいたしております。従いまして今お話しの通り、国防会議の議長として再検討をする必要ありというようなことなり、あるいはこういうことについて議員の意見を聞く必要ありと思えば、これは当然議長として招集をし、国防会議開催の手続を進めるべきものでありまして、その点は、石橋委員のお話のように同一人が兼ねておりますから、やや実際上明確ならざるところが起るのじゃないかという御疑問も出ようかと思いますが、立場としては今お話しの通り私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/11
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012・石橋政嗣
○石橋(政)委員 国防会議設置法の一部改正法案もやはり今議題になっておりますが、本法律案につきましてはまだ質問の機会もあるようでございますから、本日は時間も制限されておりますので、後日に譲りまして次の質問に移りたいと思います。
それは再三あらゆる機会におきまして問題になっておる、国民にとっても最も重要な関心事でありますところの核兵器の問題でございますが、この核兵器の持ち込みにつきましては、総理はしばしばこれを拒否するということを表明されております。決意のほどは十分にわかります。しかし決意と条約上の問題とはやはり違うと私は思う。一応そういった総理の決意とかあるいは政治的、道徳的な拘束力とかいったようなものはあとで結論的にお答えを願うといたしまして、さしあたって法律論でやってみたいと思うわけでございます。総理は、核兵器というものも当然配備の中に含まれる、そして安保委員会の協議の対象となり得る、だから安保委員会で意見が一致しなければアメリカがこれを勝手に持ち込むようなことはない、こういうふうに答えておるわけです。しかしこれは厳密によく考えてみますと、政治上の問題と法律上の問題とを混淆さしておるのじゃないかという疑問が出て参ります。そこで私はこれをはっきり二つに分けて解明していきたいと思うわけでございますが、アメリカは安保条約によりまして日本に陸海空軍を配備する権利を持っておる。これは条約上の権利です。日本が供与しておるところの権利です。このアメリカの配備に関する権利を規律する条件というものは、安保条約第三条によって両政府間の行政協定による以外はない、こういうことに条約上なっておると思いますが、この点昨日外務大臣もお認めになったわけですが、総理大臣としても十分御承知と思いますけれども、その点念のため確かめたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/12
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013・岸信介
○岸国務大臣 条約の解釈としては石橋君のお話の通りであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/13
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014・石橋政嗣
○石橋(政)委員 そうしますと、アメリカは核兵器による装備というような問題も含めて配備の権利を持っておる。その権利に何らかの規制を法律上加えようと思えば、行政協定を締結するか、現行行政協定を改訂する以外に道はない、こういうことになるわけですが、これが今度の岸。アイク共同声明によりまして、安保委員会の協議の対象になりました。しかしここに一つの関所がございます。どういう関所かと言えば、実行可能な限り協議するという関所がございます。字句だけでいきますと、必ずしも協議しなくちゃならぬということにはならないこれは明らかに関所です。しかし総理は心配要らない、それは必ず協議の対象になるんだ、こうおっしゃるから、それじゃその第一の関所は総理の発言を信用いたしまして、通過するごとにいたします。
ところが第二の関所がございます。それは何かと申しますと、協議をしたけれども、両国政府の意見が一致を見ないという場合、こうなりますと方法ないわけですから、総理は直ちにそれをもって拒否できるとおっしゃいますが、それは道義的な問題にすぎない。法律的には依然としてアメリカは協議をして話し合いがつかなかったんだから、法律上の権利を行使することができるわけです。これが第二の関所です。
第三の関所、それは協議が成立したといたします。持ち込み困る、それじゃ持っていかぬ、こういう協議が成立したといたします。ところが安保委員会では、協議決定いたしましても、両国を拘束する力を持ちません。その後正規の手続によらなくちゃならぬ。その正規の手続ということになりますと、またここに戻って参りまして、行政協定を締結するか、あるいは現行行政協定を改訂するしかない、こういうことになって参ります。これが三番目の関所です。
こういうふうに考えていきますと、安保委員会で協議するんだ、決定しなかったら持ち込まれないんだ、こういうふうに一がいにそれだけで安心しておれるだろうかという疑問がどうしても出てくるわけです。どんなに話し合いがなされても、結局のところは行政協定に戻ってくるということになりますと、今行政協定の改訂なり、新しい協定の締結はできないけれども、将来ならばできるという何らかの見通しなり保障なりがなければ、これは安心ならぬ。そこで、今条約、協定の改訂は不加能だけれども、将来にわたっては可能なんだという国民の納得のいくような何か立証をしていただかぬことには、今むずかしいものがなぜ将来簡単になるのだろうか。このアメリカの核兵器重点政策というものは、今後どんどん前進の方向に進んでいくと私は思う。そういうときに、将来の方がより困難性を増していくんではないか、こう考えるのが普通一般の考え方だと私は思う。それは今はできぬけれども、将来ならばできるというのは一体いかなる根拠によるものだろうか。今申し上げましたような私のこの関所の問題なり、あるいはその証拠なりといったようなことについて、一つ詳しく御説明を願いたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/14
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015・岸信介
○岸国務大臣 共同防衛といいますか、安全保障条約のこの問題は、何といってもその基礎におきまして、日米両国の間に相互の信頼と十分の理解がなければ、その目的を達しないものであることは、私が言うを待たぬと思います。ただ条約上の権利であるからといって、日本国民の多数の意思に反したことをして、果して日本の安全保障ができるか、あるいは極東における平和がそれで維持されるかということを考えてみますと、そういう性質のものではないと思う。しかし今お話のように、安保条約の条文の規定だけから見ると、ずいぶん疑問も起りますので、これが改訂というようなことが当然論議される問題であると私は思うのです。ところがその点に関しまして、昨年アメリカに参りましていろいろ話し合いをした結果、とにかく安保条約のこの問題、これの実行に当っては、両国の国民の利益と国民の感情にマッチするようにこなければ、その目的を達するものではない、そうしてそれは相互の理解と友好関係の上に立って初めてできるものである、従ってそれを実現するために、安保条約から提起されるところの諸種の問題を協議するために、今の委員会を作ろうというのがアイクと私との共同声明の精神であり、それが表現されております。従って私はこの安保委員会の運営の上におきまして、この核兵器の持ち込みというような重大な問題、特に責任ある政府がこれをはっきり拒否するということを名言もいたしており、また日本国民こぞってそれを拒否するという政府の言い方を支持し、またそれを政府をして拒否させなければいかぬというこの国民的の要望のある問題については、今申しましたような日米の十分な話し合いと理解と相互信頼の上にできているところのそういう安保委員会というものができました以上、ここで協議される。理屈からいって協議がととのわなければどうするのだ。私は協議がととのわなくて一方的に持ち込むということは、このアイクと私との話し合いの精神からいって、安保条約の本来の精神からいって、そういうことが強行されることは絶対にない、こう確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/15
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016・石橋政嗣
○石橋(政)委員 ところが残念ながらそういうふうに断定できないのです。一つの問題は、先ほど申し上げましたように、安保委員会というのは協議的性格のものである。委員会審議の結果何らかの措置をとることとなった場合は、両国はそれぞれ通常の手続によりこれを行うこととする。結局この行政協定による以外にないということなんです。核兵器はお断わり、承知した、ということになったら、正規に行政協定を結ばなくてはいけない。さきにサイドワインダーの受け入れというような問題についても、安保委員会で協議した。あげよう、もらおうという話がついても、それだけでは拘束力がない。やはりその後の措置が必要になってくる。これはもう実際に過去においても私たちそういうものを見てきているわけです。しかもここで驚くべきことは、この安保委員会の結果、サイドワインダーの供与が決定した、この共同発表を行なっております。この共同発表によりますと、サイドワインダーというのは、米国政府は日本政府の要請に応じて供与するのだということになっている。ところが津島長官や藤山外務大臣に聞いてみましたら、これは日本政府の要請があればということなんだと簡単におっしゃいますけれども、要請に応じと要請があればということでは、非常な違いですよ。表現がまずうございましたでは済む問題ではない。日本政府からサイドワインダーを下さいといって、承知しました、はいあげましょうというのがこの共同発表なんです。しかし内容を具体的に私がお尋ねしていったらそうじゃないのだ。日本政府が御希望ならば、要請があれば、お渡ししましょうということだ。それが表現としては近いというのだ。外務省がやった国民に対する共同発表という名のもとに、こういうごまかしまで行われておるのですよ。総理が幾ら考えても、実際に仕事をしている人たちは、そういうへまをやっている。核兵器とはまた違うとおっしゃるかもしれませんけれども、私たちは、サイドワィンダーの受け入れというようなことも、質的な変化という意味でエポックを画するものだというふうに考えておる。こんなことがおめおめと行われるようなことになれば、一体何がこの先も行われるかわからぬ。向うがあげましょうかと言わんばかりにきたものをこっちがもらおうといったものを、日本政府が下さい、下さいといってもらったかのような発表をしてみたり、この点だけでもおかしいと思いませんか。こういう問題がある。
それからもう一つ。両国民の願望ということを盛んにおっしゃいます。しかしこれはあくまでも両国民の願望なんだ。日本国民の願望だけではないのです。アメリカは、ソ連がICBMを完成して以後、これはアメリカ国民の支配的な見解だと思うのですけれども、これに対抗するためにはしようがない。大統領がいうがごとく、この第一線基地にIRBMを配置して、あるいは水素爆弾や原子爆弾を積んだ飛行機を、四六時中飛ぶ体制において対抗しようという気持になっている。それ以外に対抗の方法がないわけですから、アメリカの国民としては、アメリカから見た場合に日本も含む第一線基地、ここにどうしても中距離誘導弾を持っていきたい。あるいは水素爆弾や原子爆弾を積んだ飛行機を四六時中飛ばしておきたいという願望を持っているのだろうと思う。だからこそ、イギリスの国内であれほど騒いでおりながら、イギリスと協定を結んでおります。イギリスの基地にIRBMの基地を設ける。核弾頭はアメリカが持っておくけれども、やはり貯蔵はイギリスの国内にする。西ドイツでも今問題になっております。われわれの周辺を見た場合には、韓国にも、台湾にも、沖縄にも原子兵器が現にやってきている。これはアメリカ国民の支持を得て、アメリカ政府がやむにやまれずにソ連と対抗するためにとっておる措置だと思う。そうしますと、日本国民は、いやだ、いやだというけれども、アメリカの国民は、守るためにはやむを得ぬというのが願望であろうかと思う。これは願望と願望のはち合せです。そうしますと、日本の国民の願望、それを受けた岸内閣の願望というものだけで問題は処理されなくなる。だからこそ協議の必要があるのでございましょうが、そうしますと、願望だけでアメリカを説得することができるということはいえないじゃないかという気がする。西ドイツでも、イギリスでも、あれほど国民が一生懸命騒いで、困る、もう核兵器による戦争に巻き込まれることはいやだ。だからお断わりといいながら、アメリカの意見に押されて、やむなく核兵器を持つような体制を着々と整備していっている。イギリス国民なり西ドイツ国民なりの願望が負けているのです。アメリカ国民の願望に押されているのです。私は総理の信念を疑うものではございません。しかし何としても国民が安心のいくように、この際、法律的なアメリカの権利に法律的な制約を加える措置をぴしゃとしておく。ここまで努力してもらわなければいかぬと思う。それは道徳的な、政治的な拘束力というものもありましょう。しかし、これもアイゼンハワー大統領と岸総理大臣が現存する限りにおいてあるという面もあるのです。これは内閣がかわったら、いろいろ政策も変り、考え方も変ってきているのですから、単なる二人の話し合いでしたら、道徳的な拘束力というものは百パーセント信頼しても、その一代限りという場合を想像しなくちゃならない。アイクは三選することはできません。総理も、あなたは死ぬまでやるつもりかもしれませんが、それはちょっとむずかしい。そうなってきますと、幾ら道徳的な拘束力があるからといって、百パーセントの信頼は寄せられません。やはり国民のこの願望をほんとうに受け入れ、真剣に取り込むということになりますと、歴代の内閣も相手のアメリカも拘束を受けるような、いわゆる法律的な制約をはっきり加えておくという、この一点に向って努力をする必要があると思うのでございます。この点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/16
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017・岸信介
○岸国務大臣 いろいろ御意見のうちに外国の例、アメリカが核兵器を持ち込み、もしくは核兵器の装備をその国をしてやらしているところの例等のお話がありましたが、これらの国においても、私が申し上げるまでもなく、いずれもその国の承諾なくして一方的にやっておるところはないのであります。いわんやこれらの国の多くは民主主義国でありまして、その時の政府がそれに従うということは、国民の中には反対の議論もありましょうけれども、やはり政府を支持しておる勢力がそういうことをさしておると思う。私はこれらの国における核兵器に対する考え方と、日本国民の核兵器に対する考え方は違っておると思う。これはずいぶんいろいろな議論があって、世界がこれだけいろいろな科学兵器が進んできて、核兵器というものがこれほど有効なものであるのに、それをあくまでも拒否するということは一体非常識じゃないかという議論を私にされる人があります。しかし核兵器に対する普通の国における国民の感情と、日本国民の気持というものは違っておると、実は自分でそうはっきりと認識しておるのです。従ってそういう一部の人々の議論に対しましても、私は従来の所信をまげないということを強く言明をいたしてきておるゆえんでありまして、今いろいろな設例はありましたが、私はアメリカが日本の意思に反して、私どものこの国民的の強い考え方に反して一方的に持ってくるということは、アメリカと日本との信頼関係を基礎に置いておる友好関係がこわれ、アメリカが日本を侵略しようとかいうような一つの違ったステータスができれは別として、それでない限り絶対ないと確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/17
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018・石橋政嗣
○石橋(政)委員 たとえばイギリスにおいても勝手に持ち込んでおらぬじゃないかとおっしゃいますが、イギリスはアメリカに対して、日米安保条約のように全く一方的に権利をゆだねておりますか。日本の場合は核装備というような問題を含めて、配備に関しては法律上すべての権利をアメリカにやってしまっているのです。この違いがございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/18
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019・岸信介
○岸国務大臣 だからこそ私とアイクとの声明によって、それから生ずるところのあらゆる問題を、両国の理解と信頼の基礎において協議しようという委員会を作ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/19
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020・石橋政嗣
○石橋(政)委員 しかしその最終的な決定は、やはり行政協定ということになるというのです。現行行政協定を改訂するか、あるいは新しい協定によって規制を加えなければ、このアメリカの配備に関する権利を規制することはできないという、こういう特殊の条件に日本はあると思う。この点は他国といささか違うじゃないかという感じを私どもは持つわけなんです。
それじゃもう一つ御質問いたしてみましょう。総理は前に本委員会におきまして、核装備を自衛隊がしないことによって、防衛の全きを期せられなくてもやむを得ぬということをおっしゃいました。核装備を持ってまで……というところはなかなか踏み切れないという決意のほどを、あのときお示しになったんだろうと思う。そういう意味で私は了承いたしました。それじゃ、アメリカが安保条約によって日本防衛の一端をになう、しかしながら自分たちは核兵器を使わずして日本の防衛を保障し得ない、こう迫ってきたときにも、そこまでしていただいて守ってもらわなくてもけっこうです、こう言い切るだけの度胸がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/20
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021・岸信介
○岸国務大臣 私は根本的に核兵器の製造使用ということを禁止し、原子力を人間が破壊力に用いるような兵器にするということには、従来とも、また将来とも絶対に反対しているところであります。その意味からいって、私どもはこの民族祖国の防衛のためには、あらゆる手段を講じても、いかなる場合においても、侵略を防ぎこれを防衛したいということは、これまた強い念願でありますが、しかし私は、私のこの信念から申しまして、核兵器でもって防衛をし、それでもって全きを期するという考えは持たないということを従来も言っておりますし、それは従来の自衛隊に対して自主的に私が考えるだけではなしに、アメリカがそういう場合におきましても、私としては同じ信念を貫いていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/21
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022・石橋政嗣
○石橋(政)委員 非常に重大な決意を述べていただいたわけですが、もう一つ難関があります。それは何かと申しますと、この日米安保条約というものでは、在日米軍というものは日本防衛の任務に当るだけではなしに、極東における国際平和と安全に寄与する、こういうもう一つの目的を持っておるわけです。これも日本政府としては認めておるわけです。かりにこれが国連のワクの中であろうとなかろうと、とにかく極東における国際の平和と安全に寄与するというもう一つの任務を米軍は持っておる。日本を守るためにはそれじゃ核兵器を使わなくとも、もう一つのこの任務を果すために必要だというような場合にも、やはり断固として今の決意でお臨みになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/22
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023・岸信介
○岸国務大臣 私の申しておることは、日本の領土内にこれを持ち込ませないという意思を申しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/23
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024・石橋政嗣
○石橋(政)委員 そうしますと、かりに今私が申し上げている極東における国際の平和と安全に寄与するために、在日米軍が核兵器を持つことが必要だといってきても、お断わりだというふうになると思いますが、間違いございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/24
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025・岸信介
○岸国務大臣 さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/25
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026・石橋政嗣
○石橋(政)委員 そこまで重大な決意をされるならば、岸内閣の存続する限りは一応信頼せざるを得ないだろう、こういうふうに考えます。
だんだん与えられた時間が迫ってきておりますので、あとは簡潔にお尋ねをいたしたいと思うわけでありますが、日本は国連に加盟いたしまして、そうしてまた安保理事会の非常任理事国にも当選いたしておりまして、重大な役割を持っておるわけでございます。こういった一応情勢が変ってきておる中で、日本の自他隊が国連のワクの中でどの程度動くことを現憲法は許しておるのであろうか、こういう新しい疑問が今出始めておる。たとえば国連警察軍というような形で組織されて、どこかにおもむくときに、日本の自衛隊は現憲法のもとにおいてこれに参加することができるか。あるいは朝鮮動乱の跡始末その他紛争が起きましたときの跡始末に、よく休戦監視委員会というようなものができますが、こういう任務を果たすために自衛隊が参加することは、現憲法のもとで許されるかどうか、こういう新しい疑問が出始めているとけですが、この点憲法のワクの中でどういうものか、一つお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/26
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027・林修三
○林(修)政府委員 憲法解釈の問題となりますので私からお答えしておきます。実はこの問題につきましては、学者の間にもいろいろ議論がありまして、私どもとしても従来から研究はいたしております。まだ最終的な結論に達していない面もございますから、その意味で御了承願いたいと思いますが、要するに問題は、憲法第九条の趣旨といわゆる国際警察軍との関係ということになって参ると思います。一口に国際警察軍といわれますものは、今まではあるいは国連軍と言ったかもしれませんが、例といたしましては、対中共の問題で韓国に出たのと、それからエジプトにおけるスエズ運河の紛争に関して出た、二つの例があるわけであります。これから予想されますものとしては、ただいまも仰せがありましたが、たとえばインドとパキスタンとの間のカシミールの紛争について選挙の監視にそういうものを派遣するというようなこともございます。今後いろいろな形のものが実は出てくる可能性があると思います。その任務から申しましても、いわゆる国連加盟国が、たとえば中共の場合のように国連に加盟しない国に対して侵略行動であるとして、いわゆる一つの制裁戦争——相手からいえば制裁戦争とは言えないと思いますが、そういうものをやっておるというような形もあります。これは国連加盟国対非加盟国の問題になるわけであります。それからエジプトのような場合には国連加盟国内部の問題であります。しかもあの任務というものは、英仏軍と戦うという目的ではなくて、スエズ運河の警備をすることが目的であります。それから、こういう例が出てくるかどうかわかりませんが、ある地区の住民の投票を監視するに当って、当事国の警察権にゆだねておっては問題があるというので国連が警察的な任務を持った者を派遣して、そこで選挙の執行をするに当っての必要な治安の維持に当る、初めから武力の行使という目的を持っておらない性質のものがあると思います。
ただいまのは機能的な問題から申した次第でございますが、組織の面から申しましても、いわゆる国連の安保理事会の決議あるいはそれにかわるべき総会の決議、そういうものによって各国が共同して派遣する場合もございます。これはたしか中共に関するものはそうであります。それから国連が自分の固有の軍隊として各国から兵力の提供を受けて一つの軍隊を組織して派遣するという場合もありましょう。いろいろな場合があると思います。一口に国連警察軍という名称でこれらを包括して、憲法九条について唯一の結論しか出せないというものじゃないと思います。憲法九条では自衛権は認める、日本に外部からの侵略あるいは間接侵略があった場合にこれを防ぐということを認めておるわけでありまして、それ以外について日本が主権国家として武力を行使する、戦争することは認めておりません。従いまして警察軍という名前をとるといたしましても、ただいま申しましたような憲法の趣旨に反するものは私どもとしては参加できないと思います。しかしたとえば、これは理論的な問題でありますが、全く武力の行使と関係のない警察行動的のものがあり得た場合に、それは憲法九条と直接関連しない面があるのじゃないか、こういうことも理論的には考えられます。そういう点についてはなお研究を要すると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/27
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028・石橋政嗣
○石橋(政)委員 国連に加盟してからもう相当になるわけであります。あらゆる場合を想定して法律的に検討も加えておかなければならないと思いますが、まだ自信のある御回答が担当者の方からもないようであります。総理は、この点についてなるべく早く政府の統一見解を述べることを一つここでお約束願いたいと思います。そうしてあとは後日に譲りましてきょうの質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/28
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029・岸信介
○岸国務大臣 研究は十分にしなければならない問題でありますし、今も法制局長官の方で研究いたしておるわけであります。実際の問題として考えると、何か具体的の事例が出てそれがどうなるかというのでないと、あるかないかわからないことを各種の場合を想定して理論的にだけ政府がきめるということは、なかなかむずかしいものですから、研究は十分にいたしますけれども、必ずいつまでにそれのなにを出すというお約束はむずかしかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/29
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030・石橋政嗣
○石橋(政)委員 そういうことになりますと、私どもの方でもいろいろな場合を想定して、こういう場合はどうだ、こういう場合はどうだということになるわけなのです。そうすると、それじゃ仮定の問題にはなどということはおっしゃいませんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/30
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031・岸信介
○岸国務大臣 いろいろ具体的に各種の場合について研究する必要があると思います。全然普通の常識で考えられないような仮定を述べることはどうかと思いますけれども、われわれが常識的に考えられるいろいろな——今の事例からいうと、実例はたった二回しかないということであります。あとは仮定の問題だと思いますが、仮定の問題につきましても、起り得るような仮定の問題については十分一つ法律的に見解を明らかにするように研究をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/31
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032・福永健司
○福永委員長 林法制局長官から、答弁漏れの点があるので補充をさせていただきたいということでございますから、発言を許します。簡潔に御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/32
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033・林修三
○林(修)政府委員 先ほど実は憲法との関係だけ申しましたが、これは御承知の通り、自衛隊法から見れば、自衛隊は現在外部からの直接侵略、間接侵略について日本の平和と安全を守るという使命しか持っておりませんから、いかなる意味におきましても国連警察軍に参加をすることは現行法ではできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/33
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034・石橋政嗣
○石橋(政)委員 その点で、だから私は憲法と申し上げたのです。それじゃ一つだけお尋ねして私の質問を終りたいと思います。というのは、在日米軍がちょうど朝鮮動乱のときのように日本の基地から発動する。飛行機も飛んでいく。これは国連警察軍の一環としての動きであろうとなかろうとかまわぬと思いますが、とにかく日本の基地から飛行機も飛び立っていく、軍艦も出ていく、また地上兵も日本におるやつが出ていく、そうしたときに、この間の朝鮮動乱の際には幸いにそういうことはなかったのでございますが、日本を基地として出てくるのですから、その基地をたたけというわけで、敵国が日本の基地をたたいてきた場合に、これはどういうことになるのですか、侵略ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/34
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035・岸信介
○岸国務大臣 やはり日本の本土をそういうふうに攻撃し、破壊を行うということになれば、侵略だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/35
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036・石橋政嗣
○石橋(政)委員 日本は何も関係のない問題ですよ。朝鮮の紛争であり、アメリカの行動である。日本が基地を貸しておるからやむなく向うにたたかれるということになるわけですが、それをも侵略だということになると、日本を戦争に巻き込もうと思えばわけないということになってしまうじゃありませんか。そういうことをはっきり断言されて差しつかえないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/36
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037・岸信介
○岸国務大臣 われわれは一番平和を念願し、戦争は一切やらないといい、こういうことを決意しておるのですから、日本に関連のないそういうことが行われることこそ、われわれとしては最も緊急不正の侵略だとして、日本が何らそれについて責任のないことに対してもそういう現実の事態が起ってくれば、その理由いかんを問わず私はこれは侵略だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/37
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038・石橋政嗣
○石橋(政)委員 これは非常に重要だと思う。日本が外国に基地を提供していなければそういうことは絶対にあり得ない。基地を提供しておるばかりに、その基地をたたく目的で敵が攻撃を加えてきた、それをも侵略として自衛隊は直ちに行動を開始するということになりますと、これは国民感情としてなかなか侵略とばかり言い切れない問題が出てきはしないか。アメリカの基地をやられる。基地を提供しておらなければ避けられる問題を、提供しておるばかりにやられた、それも侵略で、国をあげて反撃を加えなくちゃならぬということになると、私は重大な問題だと思います。委員長、これは私としましても了解できません、しばらく休憩して検討さしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/38
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039・福永健司
○福永委員長 いや、それは今質疑ですから、政府側から答弁がございましょうから……。岸総理大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/39
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040・岸信介
○岸国務大臣 米軍のそういうような行動というものが前提としては、これは常識的にお考え下すってもわかるように、国連の決議なりあるいは国連の指示に従って動く、また動かなければならぬことは言うをまたないのでありますが、そういう場合において、日本の領土がいやしくもあるいは攻撃を受けるという場合においては、それは日本の領土の保全と民族の安全を念願しておる防衛の趣旨から申しますると当然侵略である、この点については私は疑いはなかろうと思います。決してこれをもって疑問のある問題だとは私考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/40
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041・石橋政嗣
○石橋(政)委員 私はちょっと検討する時間を与えてもらいたいと思いますので、一応質問はこれで終りまして、あとでまたやらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/41
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042・福永健司
○福永委員長 茜ケ久保重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/42
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043・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 私は岸総理にこの際政治的な御答弁を願いたいと思うのであります。と申しますのは、だいぶ防衛論争が長い間続いて参っておりますが、しかも日本社会党が全面的に反対して参っておりまする中で、警察予備隊ができまして以来今日まで相当大きな増強がなされまして、やや当初の五カ年計画も終末に近づいておるわけであります。私ども終始一貫自衛隊の増強に反対して参ってきておりますにかかわらず、政府の一方的なこういう増強がなされておるのでありますから、従って今私どもが考えますと、もちろん岸内閣もどこまで続きますかわかりませんけれども、社会党の内閣ができるという時期も私は決してそう遠い将来ではないと思います。そういったことを考えますと、私は非常に日本の悲劇的な現実を考えざるを得ないのであります。と申しますのは、二大政党対立の今日、いろいろ具体的な政策で対立する面もあることはこれは当然でありますけれども、自衛隊と申しますか国防と申しますか、防衛というようなことで、二大政党の中にこれほどはっきりした、しかも本質的な差のあるということは、これは私は政治の運営上まことに重大であると思うのです。保守党の政権が永久に続くならばあるいはまだそれは了とする面もありますけれども、岸総理がいかようにお考えになろうとも、あるいは現在の自民党の諸君がいかようにお考えになっていらっしゃろうとも、私どもは日本においてほんとうに近い将来に社会党の政権の確立はもう当然くると思う。そういった場合に、今社会党が根本的に反対をしておるこのいわゆる自衛力増強というものが、このような姿で、いわゆる無批判的に増強されて参りますことは、ただ単に、社会党が近く政権をとった場にこの処置に対して社会党の立場がいろいろの面が出てくることも当然でありますけれども、そうした場合に私は国民にとって非常に不幸なことが起り得る可能性を考えるのであります。従いまして以下二、三お尋ねしますが、質問の冒頭に、このように重大な問題について二大政党の中に本質的な異なったものがある場合に、岸総理はいわゆる保守党の総裁として、また政権担当者として、反対党である日本社会党の首脳部と、こういった本質的な点について、ざっくばらんな話し合いをされる、しかもこれは自民党の立場とか社会党の立場とかといったものを離れて、日本の国民の将来に対して大きな問題を含んでおるこういう重大な問題について、私は今日二大政党の、思い切った、いわゆる腹を割った、両政党の首脳部間における話し合いの場というものがあっていいのじゃないかと思います。そういったことで、日本のこの重大な根本的な政策については、たとい反対であり、賛成であっても、そういった中から話し合いの場というものがあってしかるべきではないかと私は思うのでありますが、これは、私は社会党の首脳部でありませんから、もし岸総理がそういった考え方を持たれる場合に、社会党が党としてどういう立場をとるかは別といたしましても、私は、少くとも一国の総理として、政党の首脳として、こういった政治的な立場を鮮明にして話し合う機会というものがあってもいいのじゃないかというふうに思うのでありますが、こういう点に対して岸総理はどのような見解を持っていらっしゃるか、聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/43
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044・岸信介
○岸国務大臣 同じような御趣旨の御質問が、いわゆる超党派外交という問題に触れて、あったのであります。私はその際に、ただ外交の問題だけではなくして、国内の内政の問題も、この二大政党というものによって民主的に政治が運営されていく上からいうと、両党において根本的に考えを異にし、何といいますか、立場の全然違った正反対の意見やあるいは考え方というものがあることは、国会運営、民主政治運営の上からいって望ましくない事態であり、従ってそういうことについて共同の話し合いの場を持つということは望ましいことである。しかし現在の自民党と日本社会党との考え方については、十分これは国会において論議されておる場面にも出るように、根本的に、ある意味からいうたら世界観を異にし、全然立場を、何を異にしておる考え方があることは、非常に遺憾であります。従って、そういうことについて両党ともやはり十分に反省もし、そうして相手方の主張なり立場なり、あるいは持論なりというものに対して、謙虚な何でもって反省をしていく必要があるだろうということを申したのであります。その方法の一つとして、あるいは両党首なり両首脳部の、そういうことについてのざっくばらんの話し合いをしてみたらどうか、そういう機会を考えてみたらという茜ケ久保君の御質問でありますけれども、私は根本の考えとしては、今言ったような考えを持っておりますから、話し合いをするということについては、そういう方向は私は賛成でございます。ただ現在までの状況からいって、そういう話し合いをしていい結果ができるかどうかということについては、私自身まだ自信を持たないのであります。そうして具体的にそういう話し合いの機会を持つことをしておらないのは、実はそれについての自信がまだないのであります。というのは、あまりにもわれわれの考え方と社会党の考え方が根本的に違っておるし、私の言葉をもってすれば、世界観が違っておるのじゃないかというようなことがあって、ざっくばらんに話して、果して何らかの何ができるかどうかということについては、私自信を持たないから、方向としては、私はそういう考え方は賛成でございますけれども、具体的にはまだ進める意思はないということだけをお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/44
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045・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 私はざっくばらんに申し上げまして、現在の日本の二大政党対立という姿が、今総理もおっしゃるように、世界観の違いとか、あるいはまた根本的な違いということが現実でありますから、そこで私はこういった質問をするのは、自民党ないし政府自身も、やはり何と申しますか、絶対に日本の現実は自衛力を増強しなければならぬという固定観念に立脚しておれば、これは私はやはり総理のおっしゃるように、どうにもならぬものがあると思う。
そこで私がお聞きしたいのは、そういった岸総理並びに保守政権が、政党の諸君が、絶対に今のまま日本の自衛権を増強しなければならぬという、一つの基本に対する私は考え方だと思う。と申しますのは、自衛力を社会党が否定するのと、自民党が自衛力を増強するというこの根底には、アメリカとの関係もありましょうけれども、やはり今国民が疑問を持っております外敵の侵略並びに国内における暴動、こういった考え方が基礎であります。もちろんこの中には、アメリカと日本の、いわゆる私どもの知らないうちに作られた共同防衛というような、何か国民の中にも、日本を守るための共同防衛でなくて、アメリカを守るための共同防衛であるという非常に強い印象を持っておるこの共同防衛、これも私は大きな原因であろうと思います。しかし一応皆さん方がいわゆる防衛力の増強ということをおっしゃる中には一番大きな主眼点は外敵の侵略そうして国内の暴動であります。この外敵の侵略、国内の暴動の起るという可能性について、私はこういった点についてもっと基本的な点で話し合う機会があると思う。この点で私は話し合いがついて、話し合いができますならば私は自然に防衛力の問題も解決すると思う。私どもはソ連、中共その他の共産圏の実態を見、また世界の情勢を判断しまして、どうしても中共あるいはソ連が日本に、そういった勢力が日本を攻めるということはあらゆる観点からないと判断をしておる。またそのソ連、中共を中心とした共産勢力が日本に対して侵略しないという現実が出てきますならば、その他の今のいわゆる自由圏というものはだれが考えても日本を侵略しないと考える、そうしますと外敵というものに対する考え方というものが——国民も心配をしておる、国民も、どこから侵略するのだ、政府は侵略するとおっしゃるけれども、どこにも侵略する意図もなければ侵略する事態でもない、そう思っておる。さらに国内の暴動とおっしゃるが、日本の現在に対してどこに暴動の起る素因があるか。私どもは現在の日本の実態というものは、決して共産主義的な暴動が起る素因もなければ、そういった具体的な事実もないと思う。これがもしあるとしたならばこれは政治の貧困であります。もし山岸総理が日本の国内に暴動の起る可能性があるとおっしゃるならば、これは岸総理の政治の貧困であります。岸総理の責任であります。私は政治経済の運営が常道で参りますならば、日本に将来暴動が起る可能性はないと思う。もし先ほどおっしゃったように、総理が世界観の相違で、日本社会党と実際にそういった意味で話し合い——その話の中で日本社会党が自民党に妥協しようとは考えておりません。考えておりませんけれどもそういったいろいろな問題を検討する過程はあると思う。そこでここでぜひ一つ岸総理に今やはり国民が非常に心配をしておる外敵というものはどういうところに、どういう実態から生まれる可能性があるか、さらに日本の国内の暴動というものは、どういう素因からどういうふうに起ってくる可能性があるのか、この点についての明確な御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/45
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046・岸信介
○岸国務大臣 私はこの問題は要するに国際情勢の分析なり、国際情勢の判断というものに関して根本的に考えが違うことから来ておると思います。現在のわれわれは永久の平和を念願し、どんなことがあっても侵略をされず、平和な福祉国家として繁栄していきたいというこの国民の念願をかなえるように政治をしていくのが、民主政治のわれわれの目的だと思います。しかしそれが実際外国から絶対に侵略されない——私はこういう席上において具体的に、どこの国がどういうなにをしているかということを申し上げることを差し控えますけれども、今の国際情勢、また日本を取り巻いておるところのいろいろな現実をごらん下されば日本が何らの防衛力を持たず、自衛力を持たずして安全であるということをいうこと自体が非常に間違っている。また国内におけるところの国際情勢の分析につながると思いますが、私がアイゼンハウアーとの共同宣言におきまして、いわゆる国際共産主義の脅威はなお現存しておるということを言っておりますが、国際共産党の動きというものを分析してみると、日本が治安的においても安全であって、何も要らないというふうな結論には決してならぬと私は思うのであります。従ってお話の点の具体的にどういうなにがあるか言えというような事柄は私はこういう席上で申し上げることは差し控えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/46
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047・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 今のそういう答弁には私はまことに不満であります。こういう場所では、どこどこにどういう具体的な問題があるかということを答弁できないとおっしゃるが、日本の国民が総理にその答弁を非常に期待しているのです。日本の国民にあなた方は外敵の侵略の可能性があるから自衛隊を作るのだ、国内に暴動が起る危険があるからとおっしゃっておる。そうおっしゃるならば、あなたはここで言葉を濁して、具体的に国の名前を出すということをしちやいかぬというのは、私は納得できない。そういう具体的なものがあるならば、当然それをはっきり国民の前に明示して、こういう具体的な事実があるから、われわれは防衛するのだ。しかもあなたは二千億近い国費を毎年使っておる。これは国民にとっては重大な問題であります。それをただ単に抽象的に、どこかからか侵略されるかもしれぬとか、国内に暴動が起るかもしれぬといったことで、国民の血税を毎年々々千数百億浪費するということは許されぬと思う。特に先ほど石橋君も言ったように、昨年の夏から秋にかけて世界的に情勢が非常に変化してきている。そういった中でなおさら国民は疑問を持っている。こういう情勢下にこんな自衛隊をこのような姿で増強して果して何になるか。この際日本は思い切った処置をすることの方が、日本の自衛のためにはいいのではないかという疑問を持ってきている。前の選挙が行われたいわゆる三年前の情勢と今日は非常に変っている。少くとも日本社会党に投票した千数百万の選挙民は、少くとも日本社会党のこの自衛隊の廃止、いわゆる武力を持たない但久平和への期待を持っておるその数がだんだんふえている。おそらくこの際選挙しますれば、その数は飛躍的な増加を示してくると思う。院内においては三百対百五十の代議士の数でありますけれども、国民のこの支持と期待というものは私はそう差はないと思う。ほとんど最近は国民の絶対多数に近い者がそういった期待を持っている。そうなりますと、総理はやはり日本の政治の責任者として、今言ったように、私はこんな席では具体的な名前は出せませんとか、具体的な事実は発表できないということで、この問題を濁してはいかぬと思う。やはりはっきりと国民の前にこういう国がある、こういう実態がある、現実的にはこういうものがあるということを御明示なさる責任があると思うのだが、一つぜひこの際思い切って、そういった点を国民の前にはっきり言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/47
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048・岸信介
○岸国務大臣 少くとも国民の大多数は今の国際情勢の上からいって、全然自衛力を持たずして安全なりと考えているというようなものは、少くとも国民の大多数の人はそう思っておらないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/48
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049・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 あなた方はそんな簡単なことでこの問題を片づけては無責任だと思う。かつて三年前の選挙に、自民党に投票したその国民の中にも今非常にその疑問を持っている者が出てきておる。私は簡単に自衛力を持たなければいかぬという考え方があるということだけでは納得できません。それもあなた方自民党さんだけで防衛費を分担なさるのならそれはかまいませんけれども、(笑声)全国民が負担しておる。しかも先ほど来問題になっておるように、今ここへきて一万人の陸上部隊をふやそうとしていらっしゃる。現在の世界情勢下において一万人の陸上自衛隊をふやして、どれだけ防衛力が増強できるか、国民にそのために安心を与えるかということになると、非常に疑問がある。この疑問は、これは日本社会党がいわゆる防衛力を否定するからというだけではなしに、国民全体が納得していない。岸総理が全国を遊説されてどのように国民の意思をくみ取られたかわかりませんが、私がずっと回った過程においては非常に不満が大きい。おそらく私はこれは今度の選挙に出ると思う。それで先ほどあなたはアイゼンハウアーとの共同声明では、国際共産主義の防衛ということをおっしゃったから、おそらくあなたが名前を指すのを差し控えるのは、端的に申し上げてソ連、中共だと思う。世界情勢の分析からソ連、中共の国内的な情勢、いろいろな面を分析されまして、アイゼンハウアーとしてはあれだけ膨大な軍備を持ち、また軍需産業を持っておりますから、アイゼンハウアーが、中共、ソ連がアメリカに対して敵対行為をするであろうと言うことは、これは当然であります。しかしアメリカとソ連の関係がそのまま日本に当てはまるとは考えられない。ここのところの分析が私は非常に大きな問題であろうと思います。そういう意味で、防衛力をなくす、なくさぬという前に、そういった情勢の分析があまりに違い過ぎる。私たち日本社会党もこの分析に対しては——これは間違いないけれども、あなた方の分析とやはり話し合って、新しいほんとうに国民の期待するものを進めなければならぬ。政治は国民のためのものです。私はこういった発言すると、社会党に帰って怒られるかもしれない。(笑声)しかし怒られても私はやむを得ないと思う。やはり社会党も国民的な立場で政治をしなければならぬ。やがて政権をとる。(笑声)具体的に自衛隊という膨大な組織を抱えて、社会党はその政治的な解決に当面して——社会党が因る、困らぬではない。困るのは国民である。当然国民が困るというのがわかっておって、一方的にこうして進められることは非常に迷惑だとう。これは私政治的にも経済的にも日本の国民の当面した悲劇の一つの現われであると思う。これ以上私は申しません。また別の機会にいろいろ申しますが、やはり岸総理としては、今までのような事務的な答弁ではなしに、やはりアイゼンハウアーとさしでお話になる岸さんですから、何もあなたはソ連や中共に気がねをする必要はない。はっきりしたところをお示し願いたい。重ねて聞きますが、国民にこういう次第で防衛力が必要であるということを、あなたの立場からやはり御明示願う必要があると思う。もう一ぺんお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/49
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050・岸信介
○岸国務大臣 私は日本の現実においては、自衛隊なり防衛力を使用してやるという考えを持たないことは言うを待ちませんけれども、しかし国民が、今の国際情勢からあるいは日本の自衛力というものもまだ非常に不足であり、弱いという点について、ある種の不安を持っている人もあろうかと思いますが、しかし今の国際情勢に対して、全然自衛力を持たず、無防備でもって、そうしてそれが安全の道である、こういう社会党の主張に対しては少くとも国民は、今度の、いつ行われるかは知りませんけれども、次の総選挙においてはっきりと判断を与えるであろうと私は確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/50
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051・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 けさの新聞を総理はお読みと思いますが、ソ連が核兵器の実験の全面禁止を提唱して参りましたが、これはやはり新しい事実だと私は思う。ソ連が核兵器の全面的な実験禁止を主唱した以上は、ソ連と対抗しておるアメリカも、これに直ちに呼応したならば、これは私ども日本民族の悲願であります地球上における核兵器の実験禁止の達成のときと思います。これに対して岸総理は、国会でもたびたび決議をしておりますこの核兵器実験禁止に対して、幸いソ連が全面禁止を提唱しました時期に際して、この際またアメリカその他の国に対して、これに呼応して核兵器の全面禁止の思い切った処置をなさる絶好のときと思いますが、これに対する御所信を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/51
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052・岸信介
○岸国務大臣 新聞を私も読みましたが、新聞の記事だけでは、その真意を把握することができないのであります。従来これは代表的に申しまして、アメリカとソ連とがこの核兵器を持ち、最も大規模な実験をやっております。御承知の通りソ連では無警告で、ことに最近はずいぶん続いてやられておるような事実もあります。こういうなにを持っておって、そうして従来やっておった。そうしてそれが国際的な世界的なわれわれの主張である、正しい、これまでやめろというこの声が世界的世論になりまして、この両国ともそのことに真正面から反対せずして、提案をいたしておりますが、それにはいろいろな含みが従来は、御承知の通り、あるのです。すなわちこれらの国の代表的の立場にある者は、これを禁止することの提案が、自分たちの核兵器における優位性を失わないということを絶対の条件として——われわれはとにかくこれを禁止させるということは、実験を禁止しただけでなくて、使用も製造も禁止し、これを兵器に用いることをなくしろというこの念願の上に立ってやっておるのですが、不幸にして今日までの両大国の主張なり、そういう提案を見ますと、そういう世界的の世論はこれを無視することはできない。しかしながら核兵器における優位というものはそれによって失うまいという意図のもとに、いろいろな提案がされてきたのが今日までの国際情勢でございます。従いまして私はあくまでも、従来も主張してきておるし、今も申しましたような究極の目的を持ってこれを一日も早く禁止したいという念願をいたしておりまして、この考えが世界的にいいますと、よほど以前よりも強くなってきておる。ソ連もそういう提案をするし、新聞等に見ますと、アメリカもそういうような意向があるように伝えられておる、こういう際でありますから、とにかく今言った純粋な意味においてこれが禁止をされるように、この上とも努力したい。そういう機運が盛り上ってきておることは大へんけっこうである、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/52
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053・福永健司
○福永委員長 石橋政嗣君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/53
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054・石橋政嗣
○石橋(政)委員 先ほど私の質問に対しまして、非常に重要な発言がなされております。しかもこの発言は鳩山内閣の公式の見解と明確に食い違っております。私、昭和三十一年二月二十九日に、当時の鳩山総理大臣から文書によって回答をいただきました。この内容と明確に違ってきているのです。この質問は、行政協定の二十四条の解釈の問題から発したのでございますが、委員会混乱いたしまして、首相の出席を求めましたところ、出席はできないけれどもということで、総理大臣の見解として文書で持って参りましたのを、当時の船田防衛庁長官が代読いたしました。参考のためにそれをお読みいたしますと、「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、」ここです、ポイントは。「誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。昨年私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合言を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲に入らないだろうという趣旨で申したのであります。」このように答弁しております。私はこれに対していろいろな質問をし、先ほど申し上げましたような例もあげてお尋ねをいたしました。そうしましたところ、船田長官は先ほど申し上げたように、在日米軍が敵基地を攻撃する、それに対して、敵が日本の基地に攻撃を加えてきたといったようなときに、侵略とみなして自衛隊は立ち上るのかと言ったら、いやそれは他に適当な手段があるのだ、その他に適当な手段というのは何だと言ったら、米軍が分担してやるのだと明確に言っております。そこのところだけ読み上げましょう。私の質問から読みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/54
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055・石橋政嗣
○石橋(政)委員 他の手段がない場合というと、この場合は他の手段がある、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/55
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056・船田中
○船田国務大臣 他に防衛の手段がある場合に敵基地をたたくということはないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/56
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057・石橋政嗣
○石橋(政)委員 そこで私申し上げておるように、今朝鮮で再び動乱が起きたとする、その場合にアメリカがこの問題に介入してきた、そうして日本の基地から朝鮮に対して爆撃をやった、向うが報復爆撃を日本の国土内にやった、そういうときに、あなたは答弁をそらしておるのでございますが、こういう場合に、それじゃ報復爆撃をしないのですか、するのですか。実際にやるやらぬは別として、理論的にやれるのですか、やれないのですか、明確に一つお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/57
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058・船田中
○船田国務大臣 他に方法がある場合に、敵基地をたたくということはあり得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/58
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059・石橋政嗣
○石橋(政)委員 それじゃ今私が申し上げている例の場合には、他に方法があるというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/59
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060・船田中
○船田国務大臣 そのときの実情によります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/60
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061・石橋政嗣
○石橋(政)委員 そのときの実情によりますといって、他にどういう方法があるのですか、御教示願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/61
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062・船田中
○船田国務大臣 日本とアメリカとの間におきましては、国土の防衛につきまして安保条約のあることは御承知の通りであります。ただいま御質問のような場合は、おそらく行政協定第二十四条の発動によりまして、共同作戦をしなければならぬというような場合になるかと存じます。従いまして、そういう場合において大作戦をするということはわが国の自衛隊の力ではできませんし、また自衛の範囲内という問題から、これは問題が起ると思います。さような場合においては、おそらく米国の空軍の活動あるいは艦船の活動ということがあると思いますので、大体においてさような場合においては、いわゆる他に方法があるということになるかと存じます。
こう答えております。これは明確に食い違ってきております。総理は、侵略とみなして自衛隊は立ち上るとおっしゃった。鳩山内閣においては、そういう場合はアメリカが分担するのであって、日本の自衛隊はやらないと言っているのです。明確に食い違っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/62
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063・岸信介
○岸国務大臣 問題は先ほどの御質問は、日本の領土をアメリカの基地があるという意味でもって攻撃してきた場合には、これは侵略であるかどうかという御質問であった。私は侵略であるということを明確に申し上げたのであります。ちっとも今の質疑応答とは関係のないことです。その場合に、やってきたところの基地を日本の自衛隊が行って攻撃するかしないかという問題が、今の石橋さんのお読みになった議事録の論議の中心であろうと思う。その問題には先ほどの問題は何ら触れておりません。御質問になったことは、日本の領土内にアメリカの基地を持っておる、そしてここからアメリカの軍隊が出て行ったという理由をもって、日本の領土であるこれを攻撃してきたならば、それが侵略と見られるかどうかということに対しては、私は明らかに侵略である、こう答えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/63
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064・石橋政嗣
○石橋(政)委員 侵略であれば自衛隊は行動できるじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/64
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065・岸信介
○岸国務大臣 当然できます。できるということは、国内において行動ができるということであって、直ちにそれが飛んできたところの日本の領土外の基地に自衛隊が飛んで行くという問題ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/65
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066・石橋政嗣
○石橋(政)委員 私は非常に詭弁だと思うのです。それでは国内だけという限界は、何によってそういう限界が出てくるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/66
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067・岸信介
○岸国務大臣 それは自衛隊の任務だと思います。今の設例をかえまして、どういう形で日本が侵略されましても、侵略の事実がありましても、自衛隊がそれでは日本の領土外に出ていって基地を攻撃することができるかどうかという問題は、あなたの今の質疑応答に現われておるようであります。私はこれは侵略であるから、自衛隊がそれに対して防衛をするということは当然だと思います。しかしその活動の範囲は自衛隊法でもって国内に限られておる、よそへは行かないというのが私は原則であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/67
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068・石橋政嗣
○石橋(政)委員 しからば、自衛隊法によって明確になっております直接侵略及び間接侵略に対して、わが国を防衛することを主たる任務とするということは、この侵略を受けたときに、自衛隊は絶対に日本の領域内からはどこにも出ていかぬ、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/68
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069・岸信介
○岸国務大臣 その点こそ、今の、鳩山内閣時代にあなたと当時の防衛庁長官あるいは総理大臣と質疑応答されたことでありまして、私は座して日本の滅亡を待つかいなかという事態に置かれたときに、そして他にこれにかわる方法がない、座して滅亡を待たなければならぬという場合においてどういう手段をとるかということが、あなたの質疑応答に出ておるそこの問題になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/69
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070・石橋政嗣
○石橋(政)委員 鳩山総理のこの答弁の中には、日米安保条約というものがある、そして在日米軍が日本におる、だからよそに行くやつは米軍が受け持つ、日本は国内だけ、こう言っておるわけなのだ。そこで私は岸内閣の見解をお伺いしている。今も条件は変りないわけです。依然として在日米軍はおるのです。そうしますと、日本の自衛隊のいわゆる防衛の地域的範囲というものはあくまでも日本国内だけだ、絶対よそには出ていかぬ。敵の基地に対しても、こちらが爆撃しに行くとか、誘導弾をふつ飛ばして対抗するというようなことは、絶対にないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/70
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071・岸信介
○岸国務大臣 これは自衛隊法の趣旨及び自衛隊の任務からいいまして、私は日本の自衛隊が外国の領土に行って、そこで戦闘行為をするということはその本旨でないと思います。従って、それで一体日本の防衛が安全でありかどうかという問題が当然提起されると思いますが、共同防衛で、日本のできないことはアメリカの軍隊によって日本の安全を保障するというのが、安全保障条約の趣旨であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/71
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072・石橋政嗣
○石橋(政)委員 では結論だけお答え願いたい。日本の自衛隊は日本の領土内——これは領海を含めてもいいでしょうが、そこから一歩もよそには出ない。かりに飛行機による敵地の爆撃も、領域外にわたるならばやらぬ、誘導弾をもって敵基地をたたくというようなこともやらぬ、こういうように認識してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/72
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073・岸信介
○岸国務大臣 私が申しておるのはたとえば艦船のコンボイをする場合においては、公海上はそれはできないか、領水に限るかといったら、それは私は当然日本の週辺のことは考えなければならぬと思う。それが非常に遠くのインド洋に出かけていってどうするということになれば、これは問題になると思いますが、日本周辺の問題はこれは考えなければならぬ。ところが私の言っているのは、外国の領土に出撃するということは考えないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/73
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074・石橋政嗣
○石橋(政)委員 出兵の問題を尋ねているわけじゃありません。敵の基地から爆撃を受ける、その敵の基地を日本の自衛隊の飛行機が飛んでいって報復爆撃するとか、あるいは誘導弾の基地に対して爆撃を加えたり、こちらから誘導弾を飛ばして向うの誘導弾の基地をたたくというようなことは、やれるのですか、やれないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/74
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075・岸信介
○岸国務大臣 それは今お読みになりましたことで答弁しているように、他に絶対に方法がないという場合においては、これは座して日本を滅亡せしめることはできないと思います。しかし今日米安全保障条約がある限りにおきましては、アメリカの軍隊でもってそういう場合における日本の安全の保障のために協力をしてもらうということがその趣旨である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/75
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076・石橋政嗣
○石橋(政)委員 それでは私が今例をあげたような場合には、自衛隊の兵力あるいは装備によってやるのじゃなしに、アメリカがやるのであって、自衛隊はそういうことまでやらないというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/76
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077・岸信介
○岸国務大臣 共同防衛のことは、そういう場合には共同作戦といいますか、そういうことになると思いますが、それに応ずる種々の方法としては、今お話の通りに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/77
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078・石橋政嗣
○石橋(政)委員 はっきり言っていただきたいのですよ。鳩山内閣は、そういうことは他に手段がある、すなわちアメリカ軍が日本におる、だからアメリカ軍がやることなんだ、自衛隊がやることじゃないとはっきり言っているのです。このときと条件は少しも変っておりません。安保条約は現存し、在日米軍はおるわけなんだ。そうしますと、核兵器あるいは誘導兵器によって敵基地を報復攻撃するとか、飛行機によって敵基地を爆撃するとか、とにかく敵の基地に兵隊をやるだけでなしに攻撃を加えていく、そういうことは全部アメリカ側の分担であって、日本の自衛隊はやらぬのだ——鳩山内閣の見解はそうなのだが、その通りですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/78
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079・岸信介
○岸国務大臣 私は、大体の趣旨はそういうものだ、こういうことを申しております。それが不明確だというお話があるのは、結局鳩山内閣のときにお答えしているように、他に方法がない場合にはこれをやらざるを得ない。たとえば一つの設例として言えば、アメリカの空軍でもって爆撃をしてもらいますけれども、アメリカの空軍が撃墜されて一つもおらなくなって、それを補うのには相当の時日がかかるというような場合に、その間は自衛隊の空軍がおるという場合において、日本の安全を保障するのにどうするかという事態を考えてみますときに、方向としては今石橋委員のお話の通り、また鳩山内閣当時お答えしている通りであります。他に方法のないときにはやむを得ない、他に方法のある限りにおいてはそれでやる。その他の方法としては、日米安全保障条約の趣旨によってアメリカにこれを分担してもらうというのが私は大筋だ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/79
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080・石橋政嗣
○石橋(政)委員 鳩山内閣は、安保条約が現存し在日米軍がおる限り、他に適当な手段があるといっておるのです。しかも船田長官は、そういうことをやれば、「自衛の範囲内という問題から、これは問題が起ると思います。」といっておるのです。総理の今の答弁なら、アメリカの飛行機が一つもおらなくなったらやれそうなことをいっておるのです。船出長官は、現行憲法なり、自衛隊法から問題があるといっておるのです。法律的に憲法上できないといっておるのです。総理の今の答弁とは違いますよ。鳩山内閣はできないといっておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/80
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081・岸信介
○岸国務大臣 私は先ほどお読みになった、私の聞き違いかもしれませんけれども、そういうことは私が今申しておることとちっとも違っておらないと思うのです。原則として国内にとどまるべきことは、自衛の本旨からいって当然であって、しかしそれじゃ一切この周辺から出られないからといって、それでそのために座して滅亡をするかというたら、そうはいかない。その場合において、他に適当な方法がないという場合においてはやはりやっていく。これをたたくということはやむを得ないということを明らかにしております。私はその趣旨とちっとも変らないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/81
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082・石橋政嗣
○石橋(政)委員 これはあとで速記録もよく調べたいと思いますし、党の方で話し合いもしたいと思いますが船田長官は明確に言っております。もう一つ、ほかのときに答えたのを読みましょう。「さような場合においては、おそらく日米共同作戦ということになると存じます。そういうような場合におきましては、おそらくアメリカ軍がその任に当るのでありまして、わが方としては敵地を攻撃するというようなことは考えておりません。」はっきり言っております。このように、鳩山内閣が明示しました自衛の範囲というものと、岸内閣の考えております自衛の範囲というものには、いささか食い違いが出てきているように私どもは理解いたしますので、よく速記録も調べ、われわれの方で協議もいたしまして、また態度を決したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/82
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083・福永健司
○福永委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。
午後一時二分休憩
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午後三時三十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/83
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084・山本正一
○山本(正)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。飛鳥田一雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/84
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085・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 昨日旭川の事件について御調査の上御報告をいただけるということでありましたが、一つその御報告をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/85
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086・津島壽一
○津島国務大臣 人事局長から御報告を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/86
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087・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 昨日お約束いたしましたところに従いまして、昨夜来、北海道に、もっぱら電話によりまして、事態の内容等につきまして照会いたしました結果を、以下申し上げます。
まず朝の、板東一士の作業をしていた当時の状況を申し上げます。昨日も申し上げましたように、十二月の十七日の朝、板東一士は大隊車両軍内の控室でストーブ台のまきの始末をしておった。それからあと、このところで整備作業員が休憩をした。控室には何人がおったかという事柄なのでありますが、この控室には、昨日申し上げましたこの板東一士の属しまする重火器中隊の整備班のほかにも、作業員が控室に十三人入っておった、こういうことに相なっております。それは板東一士の班の中の三野士長、白川士長、川村士長それから石原一士、これだけ四人が入っておった。そのほか、大隊本部中隊の車両幹部の池上三尉、それから板東一士の所属大隊の作業員が、池上三尉のほか十三人入っておりました。これだけが休憩室におったということに相なるわけであります。そこでこのうち板東一士を見たという者は、ストーブ台のまきの始末をしておるのを見たというのが三野士長と白川士長の両名、それから板東一士がすわっておるのを見たというのが川村士長であります。その他の者につきましてはさだかでありません。なお同じ班の中でも、脇士長のごときは控室に入らずに整備を続けていた、こういう状況に相なっております。なお重火器中隊以外の作業員で控室にいました隊員は、本部中隊が西山士長以下三名、それから第一中隊が丹谷三曹以下二名、竹村士長以下三名、それから第三中隊が岩脇士長、合計九名であります。このほか車両幹部の池上三尉が控室におったのでありますけれども、たくさん隊員がおりましたし、この三尉は大隊の車両幹部でありまして、面識が浅かったせいか、板東一士を見た点については記憶はなかった、こういうことになっております。割合に板東一士は地味なまじめな人であったようでありまして、あまり友だちと話をしなかった、そういう性格の人で目立たない存在であったようであります。
なおつけ加えて申し上げますが、第一重火器中隊は、昨日申し上げましたが峯三曹というのが指揮をとっておりますが、この作業員は臨時にこの車両整備のために編成されたものでありまして、平素から同じ小隊でおりました者は三野のみでありまして、他は同じ小隊の者ではなく、この整備のために特にそういう編成に相なって作業に従事いたしておった。
なお大隊車両庫の状況でありますが、この作業をしておりました大隊車両庫は駐屯地の南側にありまして、鉄筋の格納庫式の器材庫であります。その器材庫の右半分を問題の第一大隊が使用し、左半分を総幹部付の中隊が使用をしております。この広さは十二間に十二間という相当広いものでありまして、まん中で半分に仕切ってあった。従いましてそのまん中の仕切りから右半分を第一大隊が常時使用しておった、こういうわけであります。この器材庫におきまして板東一士所属の重火器中隊のほかに、先ほど控室におったと申しましたその中隊の整備員も整備作業をやっておった。これは本部中隊の第一中隊、第二中隊、第三中隊とそれぞれ士長あるいは曹が指揮者となりまして、十六人がその作業に従事いたしております。従ってこの十六人と板東一士の組でありますところの峯三曹以下八名、合計二十四名がその器材庫の中で各自それぞれの車両に取りつきまして、当時総計二十八台の車両を並べて、それらの整備に従事しておったという状況であります。そういたしまして、それらの車両の間隔は前後二メートル、左右の間隔は一メートルという間隔で従事しておった。
昨日阿部委員からお尋ねのありました、まず行方不明ということがわかったのが大へんおそいうらみがあることは、昨日大へん遺憾であるということは申し上げた通りでありますが、さてその行方不明がわかりました事後、直ちにこの第一大隊の当直幹部の渋谷二尉は、大隊員約二百五十人でありますが起床させ、また他の中隊にも連絡して捜索を行わんとしております。まず捜索に先立っては、隊員に、だれか板東一士が食党とか便所とかPXとかに行ったのを見かけた者はないかと聞いておりますけれども、判然しなかった。そこで自分の大隊二百五十、その他四百五十合計七百余をもちまして、午後の十一時から翌朝の一時までの間、配車倉庫、車両庫、外回りの外さくといった付近の捜索をやっておりますが、発見するに至らなかったということになっております。
続いて翌朝手帳とたき火あとを発見したという経緯でございますが、これは十八日の十時三十分ごろ、第一大隊の重火器中隊の折村二尉ほか二人の隊員が捜索中に発見したのです。まずたき火跡を折村二尉が発見し、続いてその付近において手帳の切れ端を馬詰士長が発見をいたしております。
この日の状況は、石狩川の堤防を川上に向って捜索をしながら進んで行きますと、堤防のところに黒いたき火の跡をまず折村二尉が発見をいたしております。これは川面から約一メートルくらいのところであって、ちり紙様のもので火をつけて、ちり紙が少し燃えておる。しかしたき火は十分に燃えていないといったような状況で、たき火の大きさは一尺五寸四方くらいのものである。それから約一メートルくらいのところに手足を伸ばしたような痕跡があるのを馬詰士長が発見し、その付近で自衛官手帳の氏名を書いた紙を見つけております。同時に付近にいこいの吸いがらといこいの灰が落ちておるのであります。
ちなみに申し上げますが、板東一士がいこいをのんでおったということは、分隊長の馬詰士長の語るところであります。手帳の紙は水気がやはり若干ありまして、馬詰士長は手袋を脱いで、広げてそれを拾っております。そして手帳の間にはさんで持って帰った。この手帳は朝雲新聞社という防衛庁関係の新聞社の発売にかかる手帳でありまして、名前の書いてありましたのは見返しでありまして、これはやや厚いものであり、いわゆる帳簿紙と称するものであります。本文の方は上質の紙であります。
文字のにじんでいなかったという点につきましては、これは当時の状況からいろいろ考えられますが、あるいはインキの質、紙の質、あるいは雪の質、あるいはその紙のまるめ方、そういったものにもいろいろ関係があるかと思いますが、文字の状況は写真でごらんの通りであります。紙に書いてありました文字は、墨汁か黒インクで書いたといいますけれども、ペンで書いたことは間違いがなかった。なお十七日から十八日にかけての雪の状況でございますが、これを旭川の測候所に聞いて調べてみますと、十七日の積雪量は十七センチ、これは雪の積った量であります。十八日は十四センチに減っております。それからなお十七日及び十八日はずっと曇っておりますが、しかし降雪はなかったというのが測候所の報告であります。風速は、十七日最大一・三メートル、十八日最大四・四メートル。
次に板東一士行方不明後におきます、家族との電報連絡状況でございます。十八日中隊長から家族あてに「令息行方不明、原因不明・捜索中」という第一電を打っております。自後、お父さんと中隊長との間に電報のやりとりが、中隊長側から電報六通、速達一通、父親の方から八通の電報の往復を重ねております。この隊側から打ちました六通の電報はそれぞれ旭川郵便局について調査しますと、それぞれ日はわかっておりますし、また隊側におきましていつだれが打電したかわかり、またその電報代もだれが支弁したかも判明をいたしました。十二月十八日の最初の方は山崎中隊長が打電、これは中隊長の支弁、それから十九日は折村二尉の打電、同人支弁、二十日は古江三尉の打電、同人支弁、二十一日は田中一曹打電、中隊長支弁、二十一日、これは打電者がわからないのでございますが、これ一本は不明であります。それから二十三日は山下二曹打電、中隊長支弁。合計電報代ではこれは郵便局の調査では六百二十円ということになっておりまして、これは一応それぞれで支弁したということになっております。
きのう御質問がございました、この電報代を請求したか、これにつきましては私どもの方も慎重に慎重を期しまして、相当徹底をして調べたのでございますけれども、遺憾ながらこれらの電報料について請求をしたという事実を発見するに至っておらず、ただいま申し上げましたように、それぞれの支弁であることはこれらの打電をした人たちの言うところであります。
なおこの電報でもって、徳島の方から行きたいという電報を打ったけれども、来るに及ばぬと打ってきたというお話がございます。これは少し長うございますけれども、その電文を読ましていただきますと、十八日に中隊長から父あて「令息行方不明、原因不明、捜索中」、お父さんの方から「電見た、よろしく頼む、板東」、続いてお父さんの方から「その後しさい頼む、返待つ」、それから中隊長から父親あてに「御心配かけて済まぬ、全力尽すもいまだ不明、山崎」、それからお父さんの方から「金、幾ら持ち出たか、死す憂いなきや、返頼む」、中隊長から「金八百、動機不明のため生死の判断つかぬ、極力捜査中」、さらに中隊長から「十七日、十八自の夜、部隊付近にいたことが判明」、それから二十日「心配せり、父行く、返」、続いて「御尽力感謝す、安否心配、父行きたし、至急返」、ここなんでございますが、中隊長はこれに対して「捜査機関には十七日より手配済み、いさい文、安否判明まで来る必要ないと思う」、ここできのう私が申し上げましたような心境でもって、できるだけ早く見つけたい、いさいは文であるといって速達を出したわけであります。そこでお父さんの方から「電見た、いさい承知、文待つ、心配にたえぬも行くのを見合す、よろしく」、さらにお父さんの方から「御労苦深謝にたえず、心配、なおよろしく頼む」、中隊長から「なお続けて捜査しておる」、お父さんから「文受けた、なおよろしく頼む」、こういうことになりまして、三十日の日に、これは徳島の地連部長から、兄さんが出発されるという電報連絡を受けて、兄さんの到着を待った。
そこで兄さんが到着されましたのは十二月三十日、これを山下二曹が駅に出迎えまして、その夜は旭川の旭川共済組合クラブにお泊めしておりますが、三十一日、元日は宿屋にお泊り願っております。その際三十一日には中隊長、小隊長、内務班長、車両班長、こういうものと会っておられます。
板東一士とともに車両整備をしておった隊員に会わせなかった、こういうお話でございますが、この班の者のうち、峯三曹と三野士長は中隊で実兄と話をした。それから川村士長と清水一士と石原一士の三名は休暇中である。これは大へん時期が十二月ぎりぎりで、部隊としてもやや手薄の感がするのでありますが、この三人分同僚がたまたま休暇中であった。それから白川士長は、三十一日はドライバーとして巡察に外に出ておる、脇士長は三十一日は当直士長として勤務しておるということで、お会いすることができなかった。幹部として、これらの者を集めるというところまで至らなかった、そこで会われなかったということでありまして、積極的に面会を阻止したというふうには見受けられないのであります。こういうように思うのであります。
なおここで徳島の状況についてでございますが、二月十四日善通寺の警務分遣隊が徳島県警本部から電話連絡を受けまして、板東らしい自殺体があるという連絡を受けております。そこで直ちにこの状況を第三管区の警務隊長にも報告し、全国の警務隊に調査依頼を行なっております。
しかしこの死体の状況から見まして、第三管区警務隊におきましても、これが板東一士であるという点はあまり考えなかった。それは死体検案書ではすでに十カ月であるということでもございますし、手帳の日付などもございますし、はなはだこれは薄いと考えておったようであります。しかし場所的に徳島でもありますし、念のためということで遺書の筆跡鑑定を香川県警に依頼したそうです。その筆跡鑑定の結果が二月二十四日に出たわけですが、この筆跡鑑定は同一人である、こういうことであったわけであります。そこで念のためということで善通寺分遣隊から人を派しまして、板東一士の家にも御連絡をして、板東一士の兄さんと親族の方が出てこられまして現場で落ち合った。この場合には池田警察署の巡査二名と役場の支所長さんと福祉係の方が立ち会って話をいたしております。この際に三管警務隊の杉山二尉が現場に行っておりますが、やはりこれは先ほど申しましたように、板東一士であるという点は薄い、しかし一応筆跡鑑定が一致したということを考えて、念のために見てもらおう、こういう気持で現場に行ったようでありまして、きのうお話がございましたようにこれを板東一士であるというように押しつけがましいことを言うたということは出てこないのでございます。念のため、この当時立ち合った支所長さんの元木という人の談を聞いてみたのでありますが、先ほど来申しましたような九人がこのとき集まった。そのとき杉山二尉も筆跡鑑定が一致しておるので、どうもおかしいと思う、違うと思うけれども、念のために見てほしいということを述べたようであります。支所長も変死体は仮埋葬してあるので掘ってみてはどうでしょうかということを言うた。白浦という巡査が立ち会っておりますが、その方が、御遺族といっては語弊がありますが、御家族の方も御得心がいくでしょうということで、その仮埋葬した死体を見た。しかし兄さんは、これは歯が全く違うと言われ、警務隊の方もそれでは大へん御若労さまでした、また何かあったらお知らせいたしますということで別れたということでありまして、何らかの意図を持って——これが板東一士であるということを考えるのには、少しく諸般の状況から見て薄いので、そういう人たちと立ち会いの上でもありますし、警務隊としてこれは板東一士であるというふうに押しつけがましい態度に出るということはわれわれとしても考えられない、こう思うのでございます。
なおつけ加えて申し上げますと、この死体は、死体検案書その他から見まして目下三管警務隊を中心としまして捜索中でありますが、遺留品その他をいろいろとたどって詰めてみますと、遺留品に、半長靴それから自衛官手帳、万年筆、その万年筆の中に、文字は消されておりますが、「特車一中渡辺」という字が見える。そういうのをたよりにいたしましていろいろこれを詰めてみますと、自衛隊にかつて在籍をした者あるいは何らか自衛隊に関係のある者、こういうように考えられる。特に北海道の上富良野の駐屯地の特車隊に関連があるようにだんだん範囲は狭まれてきておりまして、この調査は逐次その網をしぼって、身元も不日判明するのではなかろうか、こう考えております。なお板東一士と符節するという点はほとんどないといってよろしいので、第一に歯の状態が一致しない。板東一士の歯は、隊に身体検査のときの状況も残っておりますけれども、虫歯であったり欠損などありますが、変死者の方は歯が完全である。あるいは時計も、番号を自衛官手帳に控えておりますけれども、その時計の番号あるいは時計の種類が違う。これはほとんど板東一士でないことは確かである、かように見ております。
以上概略御説明いたしました。
〔辻委員「こんな事件が他にもあるのか」と呼ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/87
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088・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 こういう行方不明になったというケースは全く初めてであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/88
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089・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 今のお話を聞いておりまして、ますます私たちとしては疑問を深めざるを得ないわけです。と申しますのは、まず第一の、失踪をいたしました最後の場所、すなわち車両庫内の控室、この付近におりました者は、今の御説明でも二十名をこえるわけです。ところがこの二十名をこえた人々の目の前から、何の理由もなしにこつ然と消えうせてしまったと言うよりほかに仕方がないのです。こういう状況です。しかもそのこつ然と消えうせてしまうそのときの態度に、いつもと少しも変るものがないということは、数多く立証されておるように思います。たとえば隊の方から家族に送ってくれました、いろいろな人の文章を見ましても、たとえば車両係の峰正夫さんも、私は八時三十分ごろ板東君が作業を実施している状況を見ましたが、何ら平常と変ったところがなく、また叱責されたり、同僚と口論をしているような状況は全然見受けられませんでした。こう述べておりますし、今あなたが名前をあげられた中に出てくる陸士長の白川秀則さんも、私は八時二十分ごろまでストーブにあたりましたが、日ごろの状態と何ら変るととろなく、また叱責されたり同僚と口論をしているような状況も全然見受けませんでした。こう述べております。さらに脇操縦手も、私は八時十分ごろ整備に行きましたが、板東君のいるのを見ただけで、一言も話さず、また板東君も何ら変るところは見受けられませんでした。こう述べております。さらに整備員の川村さん、この人も、私は八時二十分板東君と作業を実施しておりましたが、平日に何も変りなく作業をしておりました。作業中は別に話もすることなく作業に従事しておりました。平日から板東君は作業中にはあまり話もせず作業するので、別に当日特別変ったことは見受けられませんでした、こう述べております。また長田実さんという人は、私は朝九時ごろ板東君と共同でジープのストのプライトを取り扱いました。そのときは平日と何ら変るところなく作業をしていました、板東君は平素から無口で、あまり自分から進んで話しかけるようなこともなく、あとから板東君がいないということを聞きびっくりした次第です。まだそのほかにもありますが、こういうふうに述べておられる。すなわちその場におったすべての人は、板東君の挙措動作の中に何ら平常との違いを発見していないわけです。そうした何ら平常と変ることのない板東君が、こつ然として九時五十分から十時二十分あるいは三十分くらいの間に二十人の眼の前から消えうせてしまった、こういうことにならざるを得ないわけです。もしそうだとすれば、これは非常に奇々怪々な事件なんです、こう言わざるを得ないでありましょう。この点について先般阿部委員からも御指摘がありましたように、部隊内の捜索というものは一体どの程度にせられたのか、ここにまず第一の疑問を発せざるを得ないのであります。なるほどこういった程度の感想文はとりました、供述はとりました。だがしかし、この供述あるいは感想文というものはこの程度のものしかない。しかもこの感想文を全部見ますと、大体型にはまったような文句が書かれている。これは明らかに隊の側から指導して、ひな型を与えて書かせたものとしか思えないわけです。私たちはむしろここでは、日ごろの板東君とそれらの隊内の人々との交友関係その他について徹底的な捜索をすべきではなかろうかと思うわけです。ところが隊内の人々に対する徹底的な捜査というものは一つもやっていないじゃないか、こう私は思うわけです。この点に捜査を向けてみる以外にこの二十人の眼の前からこつ然と消えてしまったなぞを解く道はないだろう、こう私は思いますが、一体おのおのの交友関係あるいはその他の深い、根ざした生活環境についての調査をせられたことがあるのかないのか、この点をもう一度伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/89
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090・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 ただいまお話がありましたように、本人はやや内向的な性格で、あまり人としゃべらないという性格のようでありまして、非常にまじめな仕事に熱心な隊員であったということは言えるようであります。非常に親しい語り合う友だちというものについては十分に調査もできておりませんけれども、あまりなかったのではないか、こういうふうに考えております。
なお隊内は、先ほど申しましたように、夜中ではありますけれども、七百人を動員いたしまして各所を調査し、同時に隊内のみならず引き続き隊の外も捜索をし、自衛官手帳の端くれが落ちておりましたから、その関係で外部も相当調べた、こういう状況だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/90
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091・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 私の申し上げるのは、隊内の倉庫を探してみたとか、便所を探してみたとか、居室を探してみたとか、そういう捜索ではないのであります。私の申し上げるのは、ともかく全然変らない人がこつ然と消えうせるという限りは、何かそこに原因がなければならない。本人が気が狂ったのか、あるいは本人と隊外との関係において事件があったのか、あるいは隊内それ自身の中で事件があったのか、こういう三つの場合を想定するより仕方がないわけです。気が狂って出ていったのなら一人です。もし外からおびき出されたというようなことでありますならば、隊内と隊外との関係です。隊内において事件が起ったとすれば、これは起り得る可能性もあるし、その道を追及してみなければならぬわけです。私はそういうものについて十分の捜査をなさったかどうかということを伺っておるわけです。場所的なものではありません。この場合に犯罪なしと断定すべき根拠は一つもありません。むしろ私は非常に巧妙な犯罪がひそんでいるのではないかとさえ疑わなければならないと思います。そういうものについての捜査をなさったかどうか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/91
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092・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 もちろんそういう問題は早晩考えなければならない問題になるかもしれませんが、一応これは一つの組織を持った隊内で行方不明になったということでありますし、まず隊内の普通の行方不明という形で探すというのが常識であり、また隊の外についてもさような考え方でまずやるというのが常識で、今日の段階では、そういう段階でやっておった、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/92
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093・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 その場にいないからといって大騒ぎして隊内の倉庫を探したり、居室を探したり、あるいは便所を、探したりして、いないから外を探した、これはけっこうです。確かに行方行明だということがわかったその晩くらいは当然気も動転しているでありましょうから、そういう捜査もあり得ると思います。しかし日を経るに従って、一日たち二日たち全然本人の所在もわからない、死体も出てこない、こうなれば私が申し上げたようなことを想定いたしますのは当然であります。考えて捜査をしなければならないことは当然であります。今人事局長も早晩その必要がある、こういうふうにお話になりました。しかし一体もしそれが犯罪であるような場合には、早晩などと言っておったら証拠は隠滅されてしまいますよ。そして犯人は場合によればどんどん自衛の措置を固めていってしまうかもしれない。そうなればもうこれを発見することは非常に困難になります。時間がたてばたつほど困難になるということは警察なりその他捜査に従事したことのある人ならばもう言わずして明らかだと思います。この問題について、板東君の死体も出てこない、所在もわからないという以上は、隊は当然失跡後数日を出ずして、これを犯罪の嫌疑がある場合として捜査をしてみる義務が私はあると思う。そういうことをおやりになっておるのかなっていないのか、今伺いますと、おやりになっておられないように聞えますが、あなたは今後そうした捜査を指示なさるつもりですか、なさらないつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/93
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094・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 一つの秩序あるべき組織体の中から消えていった、そういうことでありますから、先ほど申しましたような常識的な線に沿って、安全な身柄を発見するというのがまず第一にやらなければならない当然の責務であると思います。その責務を懸命にやっているという事柄であります。ただいまいろいろな考えられる場合をお話になりましたが、そのうちでもし本人の意思で不幸な場合に陥っておったということを考えてみますれば、北海道はまだ雪も深く、あるいは川の氷も十分に解けておらないという状況でありまして、その時期にまた相当の捜索もしなければならない——何せ御承知のように作業服を着て出たままでありまして、しかもこれは整備に従事しておったわけですから、あまりきれいな作業服ではなかった。従ってそういう方面の雪解けにおける捜索というものにも相当の望みをかけていいではないか、しかる後においてただいまお話のようなことを考えても、決して今日の捜査のやり方としましてはおそくはない、かようにも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/94
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095・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 雪解けを待って、雪の中から死骸が出てくるか出てこないかを確めてみて、それから犯罪捜査をする、そんなことを言ったら逃げてしまいますよ。当然それは双方並行されなければならない問題でしょう。そんなばかなことをおっしゃると、もうわれわれあとの御質問を申し上げる勇気がなくなります。当然双方並行しておやりにならなければならないはずです。しかも雪に隠れておるとおっしゃったけれども、さっきの御報告では、積雪たしか十三センチあるいは十七センチというお話でした。当時十三センチあるいは十七センチという積雪で死骸を埋め尽してしまって、全然われわれが発見することのできないような状況になるものでしょうか。一つこれから伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/95
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096・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 当時は御承知の通り割合に暖かい冬でありまして、北海道としては珍しく雪の浅い冬であった、こういうことを述べております。今日どれくらい積っておるか、それはわかっておりませんが、しかし先ほど来申し上げまするように、そういう形でまずやっても、今日の捜査は全く科学的な捜査でありまして、証拠で固めていかなければならぬ捜査でありまして、若干の期間を経ましても、捜査としてはさほどの支障はなかろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/96
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097・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 今のお話であなたの気持はわかりましたが、そういった捜査をおやりになるつもりか、ならないつもりか、今からでもおそくはないです。きょうこれからそういう指令をなさってよろしいわけです。そのためにしかも警務隊というのがあるはずです。そういう指令をなさるかどうか。これは当然やられなければならぬはずです。今のお話で、ことしは特に暖かい年で、積雪も浅かった、こういうことですから、当然死体が隠れているなどというはずはないのです。十三センチでもって隠れてしまうような薄っぺらな体格を持っている人を自衛隊が雇い入れられるはずはないと私は思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/97
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098・津島壽一
○津島国務大臣 ただいまの御質問に対してお答えするわけですが、ちょっと私からも一言、本件について申し述べたいと思います。
実ははなはだ遺憾なことでありまするが、長官としてこの事件に対する報告を受けておらなかったわけです。これは私は実に内部の手続において欠けるところがあると思います。こういうような非常に重大な事件は、さっそく長官なりに報告をして、そして適当な措置を指揮する、指定するというのが、私は当然だったと思います。その点において欠けておったことは、やり方において非常に欠けるところがあったと思って、まことに自分としても遺憾に存じております。なおそういった意味において、ただいまも報告申し上げたことが十分御了解でき、また納得のいくようなこととも、私は今聞きながらそういう感じを持ちました。つきましては、はなはだ時期がおくれて、これはいかにも残念なことでございまするが、至急徹底的に本件を捜査なり、あらゆる手だてを講ずるということを、現地部隊に対し、また関係方面に御協力を仰ぐということにいたしたいと思います。なお防衛本庁からは至急人を派しまして、ただいまの御報告のような程度では、まだ満足のいかぬ点が多いと思いすので、北海道はもとより四国の方においても、現地に中央からの人を派し、地方と密接なる連絡をとり、また関係方面の御協力をお願いして、でき得る限りすみやかに本件の真相を明らかにしたいと思います。
なおこの機会に申し上げておきまするが、まだこの御本人、板東一士の御両親にもお目にかかっておりません。私は御家族を初め御心情を察して、まことに御同情のほかはないと思っております。いずれお目にかかる機会もあると思いますが、非常に御心配になり、また自衛隊の担当者において取り扱ったことに御不満の点もあるかと察します。これはまことに私としても申しわけないことでございます。これらの善後措置その他について遺憾のないような措置を私としては講ずる次第でございます。なおあらゆる面において一つ御期待に沿うように、これはどの程度の結果を生ずるかということは断言できぬ事柄のように拝察するのでございますが、全力をあげましてこの問題をはっきりとさして、またそこに何らか責任といったものがあれば適当にこれを措置していく、こういうことにいたしたいと思います。今人事局長の御報告は一種の急場の暫定的の報告であって、これも今日までの事情いたし方なかったわけでございますから、そういった意味において御了解をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/98
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099・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 長官のお話はよくわかります。今後ぜひそのように最善の御努力をいただきたいと思います。ただ御努力をいただきます際に、いろいろ私たちの意見も申し上げておいた方がよろしいと存じますので、幾つかなお質問をさしていただきますが、それでは二十数人の眼の前からこつ然と消えうせた、すなわち隊外に出ていったということであります。隊内に死体なり何なりが見つからないから隊外に出ていったのだろう、こういうことでありますが、一体どこを通って出ていったのか、これについてお調べでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/99
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100・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 その晩に隊員に、みな見かけなかったかということを聞いておるわけであります。はっきり見かけたというものがなかったわけであります。そこで外さくを調べてみました際に、外さくのところに外に出たという気配のところを実は発見しておるわけであります。しかしこれは果して板東一士が出たものであるかどうかという認定はもちろんできない、しかしそういう跡があったということは発見者もわかっておりますけれども発見はしておる。しかしそれが板東一士が出たものであるという何らの証拠もございませんから、先ほどの報告の中にはわざと省いて、この点遺憾でありますけれども、どこから出ていったということを見かけたものはなかった、こういうことでございます。
〔「犬を使ったか犬を……。」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/100
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101・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 やはり板東君が隊内でそのまま蒸発してしまったのか。外へ出て行ったのかということはかなり捜査としては重要な点だろうと思います。そうなりますと今辻委員も言っておられましたように、警察犬を使ってみるといったような方法も当然考えていいはずだ。特に雪の中でありますので、においは正確に残っておるものであります。そういう手続もおやりになったのかどうか。
それからもう一つ、ぼくはしろうとですからよくわかりませんが、大体警衛というような言葉がさっきから出ておりますが、警衛というのは昔の歩哨のようなものだと思いますが、隊内は、隊から正門を通らずにさくを乗り越えたり何かして出て行くことがそんなに可能なものなのですか。何のために衛視が立っておったり、あるいは警衛歩兵が立っておったりするのか、私もわからなくなってしまうのですが、もしもこれが板東のものであるかどうかは断定できない、これはなるべく科学的にお答えになろうとしてでしょうが、ほかにも脱さくして焼きイモを買いに行くようなやつが一ぱいいるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/101
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102・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 もちろん普通の状態であれば、正門から出入りする。しかし何らかの特別の意図を持ってさくを出入りしようと思えば、それはできないほどの高いさくではないことはもちろんであろうと思います。ただ正門のほかに歩哨が、動く歩哨としまして動哨ということをやっておりまして、さくのある一定の距離をきめまして、それらを常に動哨して歩哨をしておるということは、やっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/102
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103・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 犬はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/103
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104・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 犬の点は、使っておらぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/104
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105・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 もしそのときに、すぐ専門の方に連絡して御相談になれば、犬を使ってみようというようなことは、すぐ出てくるだろうと思うのですが、それを何か、事が重大であるにもかかわらず、隊内だけで処理してしまって、外へ自分の恥を出したくないという気持もおありだったろうと思うのですが、何か隊内だけで問題を処理していこうというような態度がおありになったために、重要な捜査の手段を一つ逸してしまった、こう言えるわけです。この点、私たちとしては非常に残念に思います。もしそのときに、あとから警察犬なり何なりを使って、どんどん追い詰めていけば、あるいは板東一士の生命は救えたかもしれない。私は、こう考えますと、そうした過失というものがいかに高価なものであるかを、しみじみと痛感するわけです。今後こういう過失をあまり繰り返してほしくないと思います。
そこで、私たちの第二の疑問になりますことは、昨日もちょっと申し上げておきましたが、たき火の跡を発見した、こうおっしゃるわけです。折村二尉がたき火、馬詰士長が手帳の一部、それは川面から約一メートルくらいの所、ちり紙様のもので火をつけたがよく燃えていない、そうしていこいの袋と吸いがらがあった、こう言われるのであります。この点について、実は見て参りました者が非常な疑問を持っております。これは板東の実兄の定雄という人が旭川へ向いましたときに、このたき火跡を見せてもらいました。そのまま現場が保存してあったらしく拝見をいたしました。そのときを見ました実兄の話によりますと、なるほどいこいがあり、吸いがらがあった、そうしてちり紙で火をつけてあるということも、その通りであります。だがしかし、ほとんど火はついていない。これも今の御報告の通りであります。しかしもっと重要なことが一つありました。それは、そのたき火に使ったものは付近の柳の枝だ、柳のなま木であるということであります。そしてしかもその柳のなま木が、かなり太いのがちぎった形で、一かかえもそばに置いてあったということであります。御存じのように柳というのは、柳の枝に雪折れなしというくらいに、なかり弾力性もあり、われわれが自分たちの腕で折ろうといたしましても、なかなか折れないものです。ナイフか何か持っておりますれば別でありますが、折り取ろうといたしますと、非常に手間のかかるものです。それが一かかえも置いてあったということであります。わずかの時間に柳の枝を一かかえも折って、しかも火をつけてみたら非常につきにくい。ちょっと紙を燃した程度に終っている。こういうことを考えますと、果してこれがほんとうのたき火の跡かどうか疑問だという印象を、実兄の定雄君は持って帰って来たようであります。私たちも同様に感ずるのであります。何のために板東は一かかえも柳の枝を折らなければならなかったか。しかも板東は旭川に赴任をいたしまして九カ月もたっております。もしそうだとすれば、柳の小枝が燃えるものであるか燃えないものであるかくらいは、ほぼ知っていなければならない。夜暗かったから柳の小枝かどうかわからなかっただろうと言われれば、そういう場合もあり得ると思いますが、しかし何のために一かかえも折る必要があるのか。おそらく一かかえ折りますためには、二時間ないし三時間かかるだろうという話であります。実兄の話であります。どうしてもこういう点を考えて参りますと、付近を徘回しておったという形跡を作っておこう、こういう意図のもとに、たき火跡を偽造した形跡としか思えないわけです。しかもそのたき火の跡を偽造いたします場合に、兵隊を数名連れていって偽造いたしましたために、おい、そこに柳の枝を折っておけ、はっというので四、五人の若い人たちが一生懸命やったから、そんなにできてしまった。こういうふうにしか想像できない。柳の枝を一かかえもあったこと自身が、このたき火の真実性を疑うに値するものではないだろうかというのが、これが実兄の印象であります。こういう点などについても、何らかの御調査をなすっていらっしゃるかどうか。もちろん人事局長の方ではこれを疑うお立場ではありませんので、実際調査をしていらっしゃるかどうか私もわかりませんが、この点についての御意見を伺わしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/105
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106・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 先ほど来申し上げておりまするように、この問題はまず調査ということから始まって、板東一士の身柄を早く発見したい、こういう観点でやってきておる。ただいまお話のございましたのは、いわゆる犯罪ありと思料をして、そういう頭にすっかり切りかえて、そうして捜査をする、こういう段階でお話があったように私は思います。先ほど申し上げましたように、私はただ今日のところは、何とか早く板東一士の身柄を発見するという観点でやっておるのでございまして、先ほど長官からもお話しがございましたが、今後はそういう点も含めての、いわゆる徹底的な調査、捜査というものをやらなければならぬといたしまするならば、ただいまのお話のような点につきましても、徹底的に糾明してみたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/106
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107・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 行方不明になってもう数カ月たっているのに、二カ月も三カ月もたっているのに、まだ出てくることを望んで捜査をしておるというようなことは、ナンセンスです。むしろ一つ切りかえて、一刻も早くそういう捜査をなさるべきであろうと私は思います。
それではもう一つお伺いをいたしますが、生きたままで早く発見をしたい、こうおっしゃるならば、少くとも利用できるあらゆるものを利用して板一東君のあとを追跡するということは当然だろうと思います。あらゆる手がかりを利用するということは当然だろうと思います。今のお話によりますと、馬詰士長が手帳の切れ端を発見した、こうおっしゃるわけです。その手帳の写しをいただいておりますが、この手帳の裏を見ていただきますと、こういうことが書いてあります。住所録のところに——氏名、住所、氏名、住所と普通手帳に書いてあるわけですが、そこに、氏名でもなければ住所でもない数字が並んでおります。六四五組、そしてその次の行に七七五四六六、六八二組、八七〇一九〇、七四二四一九、七四二四〇八、こういう数字が書いてあるのです。これはきっと宝くじの番号じゃないかと私は思いますけれども、しかしこれさえも何らかの糸口になりはしないだろうかということで、これが宝くじの番号であるかどうか、あるいは板東君と外部の人との間の何かの暗号であるかどうか、こういう点についても御調査になっておるかどうか。せっかく発見した手帳をそのままありがたやということで神だなに上げておいたのでは、捜査は進展いたしません。こういう点についてどの程度の調査をなすっていらっしゃるのか、これを一つ伺いたいと思います。もしほんとに本人を生かして発見したい、一刻も早く発見したいということでありますならば、目の前にあるあらゆるものについて捜査をなさる、調査をするということは当然だろうと思いますので、きっとこれはやっていらっしゃるに違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/107
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108・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 一応これは保護をするという建前で、警務隊にもあるいは全国の警察にも累次手配をして、なるべくすみやかに身柄を発見したいということでそれをやっておるわけでありまして、ただいまのお話の点では、これは宝くじの番号ではなかろうかというお話ですが、そういう点につきましては、先ほど来申し述べまするように、そういう段階を離れていわゆる捜査の段階にすっかり切りかえるということになれば、これは相当有力な資料であろうとは思いますが、そういう身柄を早く発見するという点につきましてどの程度の資料になり得るか、はなはだ疑問ではなかろうか、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/108
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109・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 とんでもない。たとえばこれがもし宝くじの番号であったとかりにいたしましょう。もしそういたしますならば、これが当っているくじであるか当っていないくじであるかをまず調べてみなければならない。もし当っているくじであって、百万円当っているとすれば、隊から飛び出してどこかへ行ってすぐ受け取りにくるかもしれないじゃないですか。そういうふうに宝くじの受け取り先に、これがもし当っているものだとすれば手配をしなければならぬ。八百五十円しかお金を持って出ないのですから、そこへ立ち回るかもしれないという予想はつくはずです。従ってこれが宝くじの番号であるとかりに断定をいたしましても、さらにもう一歩前に進んだ調査をしなければずさんじゃないでしょうか。別に犯罪捜査云々ということで僕は申し上げていないのです。そういう調査を当然なさるべきです。もしこれが当りくじであったら金を受け取ってどこかへ行ってしまったのかもしれない、わからぬでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/109
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110・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 これが果して宝くじの番号であるかどうかもわからぬと思いますが、もしおっしゃるように宝くじの番号であるということがわかれば、あるいはただいま御指摘のように、受け取るときに名前がはっきりする、住所がはっきりするといたしましても、あるいは来た場合に果してほんとうの名前を使うかどうか、その辺のところもわからない。いろいろ考えて参りますると、果してこれがそういう点に役に立つかどうかは私としては疑わしい、こう考えますが、しかしただいまも長官からお話がございましたように、今後はいろいろな、従来と観点を変えた調査、捜査をして参りたい、かように考えますので、これらの点につきましても調査をしていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/110
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111・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 これは役に立つか立たぬかということよりも、やってみることだと私は思います。一つの事例として、ここの東京ですわっておって、あなたよりもずっと少い資料を持っている私たちですらこういうことに気がつくくらいなのですから、これは当然やってみていただいてよろしいんじゃないか。もしほんとうに本人を生かして発見したいというその通りの情熱があれば、おやりになるべき筋合いのものであったと思います。それではもう一つ伺いますが、今のあなたの御報告の中には、他官庁の捜査の報告というものが全然ないわけです。旭川の警察署へも当然御報告になっているはずですし、また他官庁にも援助要請をなさっていらっしゃるはずです。たとえば鉄道、鉄道公安官、こういうところに御連絡になっているはずです。一体旭川の駅に板東一士とおぼしき者がその当時出入した形跡ありやなしや、あるいは料亭、その他いろいろな、行くとおぼしき場所に、立ち回り先に出たような形跡ありやなしや、こういうことに対する警察その他の官庁の報告はどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/111
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112・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 これはもちろんやっておるわけでございますが、十八日の日に、直ちに朝旭川の警察署には連絡をいたし、旭川の鉄道公安官にも連絡を直ちにいたし、さらに郵便貯金の関係の調査あるいは質屋等の調査、さらに安定所の調査、あるいは全国の警務隊あるいは全国の警察に調査、捜査を依頼をしております。もちろん写真は全国の依頼先の各機関には全部配付はしてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/112
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113・阿部五郎
○阿部委員 関連して。どうしても疑問に思えて仕方のない点を二、三点お伺いしたいのでありますが、まず第一に、十七日の八時半ころまでは数人の人が本人を見ております。あなたが今まで御説明になりました。その次に、九時五十分ころには、三野、白川、川村、そういう人たちが本人を見ております。さきに八時半ころに見ておるというのは、それは作業場であります。車庫内の車庫の整備をやっておる仕事をしておるところを見ておるのであって、その次に一時間余りたって九時五十分に見ておるというのは、その車庫内の操縦士控室において見ておるのであります。そしてさらに、越えて十時三十分になった場合に、本人がおらないということを発見しております。しかしおらないけれども、それは警衛に上番しておるのであろうということでそれを怪しまなかったために、同日の午後の九時半までそれを不問に付して何らの捜査をしなかった、こういうことになっております。そこで疑問なのは、警衛に上番するということは、これは何日の何時にはだれが、何時から何時までにはだれが、こういうことがあらかじめきまっておるものであるかどうか、そしてそれをどこがきめて、どういう工合にそれを本人に発表するのであるか。さらにともに働いておる同隊の君たちにとっては今はだれが上番に当っておる、こういうようなことがわからないものであるかどうか。もしこんなことがわかっておるのでありましたならば、こういう事態が起らないのでありますが、はなはだ私は疑問に思うのであります。この点いかがでありましょうか。上番というのですから、これは昔の歩哨とか衛兵とかいうものの当番であろうと思いますから、これはあらかじめきちっときまって、きょうの何時から何時まではだれ、何時から何時まではだれ、そしてそれは当人が知っておるのみならず、その同隊の者も知っておるはずであると思うのであります。私は軍隊の経験はありませんけれども、昔の軍隊であればそうであったように聞いております。現在いかがになっておりますか、その点御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/113
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114・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 駐屯地司令が当日の警衛当番の中隊を指定いたしまして、中隊では中隊長が当日の警衛当番を指名する。その指名は建前としましては、朝、日朝点呼と称する点呼がございますが、その点呼のときに発表をする、あるいは掲示板で掲示することもございます。そういうことによりまして、だれが警衛当番で上番しなければならないものであるかということがきまる。ただお話しのごとく、この日の問題は先ほども御報告いたしましたように、常時部下としていつも一緒におるという、同じ小隊なり班の者が一緒に自動車整備はしていなかった。たまたま当日の自動車整備のために、各小隊からピック・アップされまして、それらの者でこの整備の班を編成しておった、ただそのためにそういう点についてのやや感じが薄かったのではなかろうか。もちろんそういう警衛当番について、だれが当っておるかということにつきましては、自動車整備中の指揮者である者が掌握していなければならぬことは当然でありまして、その点についての欠点は免れておらず、従って当日の指揮者峯三曹につきましては処分がされた、かようなことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/114
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115・阿部五郎
○阿部委員 それでは具体的に伺いますが、その日の当番を発表したのはいつ、どういう方法でなさったか、おわかりになっておりますか。あなたのお話しでありますと、一つの方法は掲示するという方法であります。また一つの方法は、朝の点呼のときに口頭で言うということであります。そのとき一緒に働いた人々の言うておるところによると、朝の八時あるいは八時十分であったか、私はちょっと今記憶があいまいでありますが、そのころに、一緒に八名働いておりますが、この八名が一緒に点呼を受けて、そして車庫に仕事に行った、こう言うておる。お聞きなさい。聞いておりますか。そう言うておるのですよ。それでもしあなたのおっしゃるように、点呼のときにだれそれが当番ということを言うたのでありましたならば、それは本人のみならず、ほかの者もみんな知っておるはずであります。また掲示したのでありましたならば、だれが当番かということは掲示を見たらすぐわかるのであります。板東一士であるか、その他の者であるかということはすぐわかるはずであります。そして板東一士が当番であろうというので、この事件の発生を見のがしております。しかもそれが十何時間も見のがしております。そして真実は、きのうあなたがおっしゃったように、板東一士は当番ではなかったわけであります。まことに不思議なことであります。これはどういう工合になっておるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/115
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116・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 お話のごとく、全く警衛当番に上番しておるのではないかという、その言葉をそのままに信用し過ぎてしまったということは、これは隊の中の勤務の状況からいたしましてもほとんど考えられないことではなかろか。そういう事態が不幸にして起きたわけでございまして、それがこの事件としましては大へん遺憾な点であります。先ほども申しましたように、そのためにもこの責任者というものを処分をしておるわけでございます。
なおこの当日の当番の告知方法をどうしたかということでございますが、先ほど私が申し上げましたのは一般的な方法でありまして、この日にどういう方法で告知をしておったかということは、おそらく今のような方法が一応定められておりますから、その方法によったもの、点呼のときに言い、あるいは掲示もしたもの、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/116
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117・阿部五郎
○阿部委員 ますます疑問であります。具体的にあなたは、その日は板東一士は当番ではなかったとお答えになりました。なかったということが、それではどういうふうにわかりましょうか。どういう方法でそのときには当番を指定したということがはっきりしなければ、だれが当番であって、板東一士が当番でなかったということがわからないはずであります。それなのに今のあなたのお答えははなはだあいまいであって、当日どういう方法で当番をきめて発表したのか、一向はっきりいたしません。どうですか、一体。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/117
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118・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 その点については調査が実はできておらぬのでございますが、たびたび申しまするように、それは一応規則で定められておりますので、さような方法でやったと思います。
なお当番でなかったという点を発見いたしましたのは、結局夜になりまして戻っていないということから、当番でなかったということが判明したようなわけでございまして、さようなことは、先ほどから申しますように、はなはだ遺憾に存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/118
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119・阿部五郎
○阿部委員 ちょっと今のはわかりませんでしたが、何時になって帰ってこなかったからわかったというような話をおっしゃいましたが、もう一ぺんそれをはっきりおっしゃって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/119
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120・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 夜間の整備を実施いたしまして、それを終って帰って参りました。そのときに帰ってきましたけれども、板束一士がいない。そこで警衛当番について、警衛ではなかったかということを問い合したところが、板東一士は警衛当番でなかったということが、当直陸曹に会い、それによって峯三曹が、板東一士は当番ではなかったことを初めて知った、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/120
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121・阿部五郎
○阿部委員 それは実に驚き入ったことでございまして、あなた自身がおっしゃるように、自衛隊がまことになっておらない、まことに遺憾であります。ところがもっと遺憾なことがございます。ここに大隊長の山崎亨という方から遺族に対してあてたところの手紙がございますが、それには、読むと長くなりますから、このところだけを申し上げますが、「十時三十分ごろに板東君が見当らなくなったのですが、当日ちょうど警衛上番になっておりましたので、平素まじめな板東君ですので、何の疑いもなく、同僚全員が警衛に上書したものと思っておりました。」こう書いてあります。これは一体あなたのおっしゃった事実とは全然違うものなのであります。これはどう解釈したらよろしいでございましょうか。大隊長は遺族にうそを言ってだましたと解釈すべきでありましょうか。あるいは事件が起って数日もたって、十分調査をした結果この手紙を書いておるにもかかわらず、これらの点についてさえまだ調査ができておらない、何にも調べておらないということはすなわち怠慢であると解釈したらよろしいのでしょうか。一体どう解釈したらよろしいのか、私たちはまことに判断に苦しみますのでお教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/121
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122・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 ただいまの山崎というのは中隊長かと思いますが、その中隊長の手紙もただいま私どもの手元には出ておらぬのでございます。何せさような警衛当番でない者を全く過信した点につきましては、繰り返し申し上げますように自衛隊といたしましても全く珍しい事柄でございまして、申しわけなく思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/122
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123・阿部五郎
○阿部委員 そんなことでないんですよ。その場において誤認したというのは何べんも承わりました。しかしこの手紙を書いておる日付は十二月二十一日であります。事件のあったのが十七日、発見したのが十七日の夜の十時半。それから何日たっていますか。その間十分調査した上でのお手紙でありますから、それをどう解釈したらよいかと私はお尋ねしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/123
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124・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 どういうつもりで書いたかはなはだ了解に苦しみますので、その点につきましてはなおよく調査してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/124
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125・阿部五郎
○阿部委員 おらなくなったのは九時五十分から十時三十分の間であって、十時三十分には一応おらなくなったことがわかっております。その時分に適当な処置がとられたならばおそらく発見ができたであろうということは推定がつくだろうと思います。これが怠慢であったとすれば、まことに重大なる結果を来たしたる怠慢といわなければならぬと思います。私は別に済んだことをとがめるのではありませんが、はなはだ残念に思います。
さて問題は、九時五十分から十時三十分までの間におらなくなったのであって、最後におった場所はすでにはっきりわかっております。すなわち車庫内の操縦士控室におったのであって、わずか四十分のうちにそこからおらなくなっておるのであります。それを探すということになりましたならば、探す方法は、捜査の常道をたどって、きのうあなたがおっしゃったようになすべきでありましょう。ところがきのうの話では、最後に本人を見た者がだれであるかすらわかっておりませんでした。先ほどあなたは、捜査は科学的に行うべきであるとおっしゃいましたが、おっしゃることと実際に行われたこととの開きがあまりに大きいのに驚くのであります。実際おらなくなった場所すなわち操縦士の控室、そして最後に本人を見た者、それらについては詳細な調査をおそらくしておるのではなかろうかと思いますが、もししておるのでありましたならばその詳細をお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/125
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126・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 先ほども申し上げましたように、その場所で最後に見かけた者は三人おるわけでありまして、これらについては言うておることはそれぞれ供述書で一応はっきりいたしております。それからその他の隊員につきましても、昨日来申し上げておりますように、そうした記録として当時は残っておりませんが、口頭では少くともだれかそこで見かけた者がなかったか、隊の状況についてもちろん聞きただしてはやっておるわけであります。遺憾ながら板東一士を見かけた者がなかったということがこの事件が非常にいろいろな問題を生み、いろいろな考え方のできることになってくる分れ目だと思います。はなはだ遺憾ながらそのときにおった者が自動車整備にそれぞれ、先ほど申しましたように二十八台の自動車がずらり並んでおるところに、二十余人の者が懸命に整備作業をしておったという状況の中で、そうした状態をはっきりつかんでおる者がなかった。この事態は大へんに遺憾であったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/126
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127・阿部五郎
○阿部委員 調べたけれども記録も残っておらないだろうというのでございましたならば、はなはだ非科学的な捜査であると言わざるを得ぬと思います。しかしそれはもう済んだことでありますからあえて追及はいたしませんが、さてそういうふうに一応内部のお調べをなさって、本人は内部におらないということになってこれは外部へ逃げ出したものだ、こういう御判断をなさったようであります。ところが、これはあとからの判断かもしれませんけれども、私たちがこの事件を全体としてながめました場合に、本人側に逃走する原因が何ら発見されないばかりでなく、逃走しないであろうという判断をすべき資料が山のようにあるのであります。あなたがお認めになっておる通りに、二日前にほしがっておった写真機を一万二千円も出して買うて非常に喜んでおったとか、あるいは逃げるとすれば先だつものは金でありますが、金も貯金は五万円もあるにもかかわらず八百円ぐらいしか持って出ていない、寒いところに逃げ出すのに単に作業着のままであってオーバーすら着ていない、いろいろ逃げて外には出ていないであろうという推定資料は十分にあり過ぎるほどあるのでありますが、外に出たであろうと信ずべき資料は、先ほど飛鳥田委員がるる検討しましたごとくに、わずかにたき火のあとがあったとか、手帳の切れ端が残っておったとか、全部はなはだ信じがたいものであります。ほかに外へ出たと信ずるに足るような資料はないように思います。自衛隊におかれてはこれを外へ出たものとしてあくまでお信じになっておるようでありますが、そういうようにお信じになるゆえんをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/127
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128・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 この事件はたびたび申しますように、ぴしゃっとしたきめ手というものはあまりないと思います。従って中であるのかあるいは外であるのかということが、これは現在の段階でははっきり言い切るということはおそらくできない、何人もこれはできないと思います。しかし捜索といたしましては、これは外もやはりやらなければならぬ、これは当然でございまして、内部は自分たちの住んでおるところでありますし、相当捜索をした。外部に向っては市内あるいは市外一円にかけまして各方向を平行してやったと考えるのでございまして、これは外に出てしまったものだという断定をはっきり下した上で、かようにやったものではなかろうと考えております。これはおそらくいろいろな蓋然性も考えて、あちらもやり、こちらもやるというのが、こういういなくなった人の捜索をする場合の一応普通のやり方であろうと思います。そういうやり方でもって、外に向っても、相当の重点を置いてはやったことであろうけれども、そういう捜索をやったものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/128
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129・阿部五郎
○阿部委員 まことに不得要領なお話でありますが、要するにただいまの御答弁の趣旨は、外へ出たものか内におるものか、あるいはこれは逃走したのか、あるいは犯罪であるか、とにかく今の段階でははっきりしたことは何もわからない、こういうお答えと承わってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/129
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130・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 いろいろ考え合せましても、先ほど来おっしゃいますように、全く常識では少し考えられないという点も確かにこれはある事案でありまして、普通の状態でいろいろの推察、推測ができるという面が非常に少いところの事案であるようにわれわれには考えられます。従いまして先ほど長官のおっしゃいますように、今後一そう徹底的な捜索をいたしまして、これらの点について善処いたしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/130
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131・阿部五郎
○阿部委員 今そういうことをあなたはおっしゃいますけれども、先ほど来あなたがおっしゃっておったことは、この事件は本人を生きたままで発見するということが重点であるから、本人の行方を探すのが捜査の重点であった。これ警察的捜査に移すという考えはなかったのであるが、これからようやくそれを始めようと思う、こういうお話でありました。私は本人を発見するための捜査、警察的捜査、その間に一体どんな区別があるのであろうかと思うのであります。最初から警察的捜査、科学的捜査に入ってこそ本人も発見できるのであって、おそらくそうすればすでに発見できておったかもしれないと私は思います。その点どうお考えになっておるのでございますか。一体自衛隊というところは捜査の方法に熟練なさっておるところでありましょうか。科学的捜査とおっしゃいますが、科学的捜査は警察であればその専門家でありますから、その捜査能力は一応信じなければなりません。あなた方の方で自衛隊というのは科学的捜査に自信を持っておられるのでありますか、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/131
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132・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 隊で行方を直ちに探そうとしたのは、これは要するに保護捜査の段階であります。さらに捜査ということになれば、これは犯罪があるという前提で捜査をしなければならない。もちろん自衛隊の中でも何がしかの犯罪は発生する。それらにつきましては自衛隊の中に警務隊というのがあるのでありまして、これが犯罪ありと思料しますれば捜査する。これらの中には捜査術を身につけた者がおりまして、警察と同じような司法警察官としての職務を行うことに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/132
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133・阿部五郎
○阿部委員 それでは私はまずその警務隊というものの法的性質を伺いたいのであります。これは犯罪を捜査して、これを検察庁に告発する任務を持っておるのでありますかどうでありましょうか。また自衛隊内につきましては、警察は捜査権を持っておるのでありますか。あるいは自衛隊内部については一応警務隊のみが捜査権を持っておるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/133
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134・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 自衛隊法の九十六条に部内の秩序維持に専従するものの権限ということで、刑事訴訟法の規定によりますところの司法警察職員としての職務を行うことのできる旨の規定がございまして、この規定では自衛官あるいは自衛官以外の隊員の犯した犯罪あるいは自衛隊の使用する船舶、庁舎、営舎内、施設内における犯罪、それから自衛隊の施設あるいは物に対する犯罪、こういうものにつきましては警務隊が捜査ができるように相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/134
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135・阿部五郎
○阿部委員 今のお答えは私のお尋ねに対する半分だけのお答えでありまして、一方の警察の方は自衛隊内部に対して警察権を行使し、犯罪の捜査をし、その他のすべての警察権を持つのでありますか、持たないのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/135
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136・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 ただいまの規定によりまして、警務隊は自衛隊に対する犯罪に関する捜査をいたします。一方警察も自衛隊に関する犯罪の捜査はできます。しかしこれは相互の協定がありまして、まず一次的には自衛隊の警務隊が活動する、こういう協定に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/136
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137・阿部五郎
○阿部委員 これは大臣にお尋ねしたいのですが、自衛隊の方に聞けば、それは自分の方の警務隊も犯罪捜査には熟練しておるとおっしゃるでしょうが、われわれ一般人から考えますと、どうしても犯罪とか人の行方不明とか、物の紛失とか、そういうものを捜査し、発見するという能力についての熟練者、くろうとというものは、やはり警察に一応うちわを上げざるを得ないのであります。今承わるところによりますと、自衛隊内部についても、外部についてもそうでありますが、警察に捜査権があるということであります。そうして大臣は本人発見のためにも、またもし犯罪があるとすればそれを発見するためにも、今後は大いに捜査しましょう、こうおっしゃったのですが、われわれしろうとから考えまして、こういうことをするのは一次的には協定があって、なるほど警務隊かもしれませんが、事ここに至ってはまず発見することが大事であります。そうすれば科学的捜査に熟練だと思われる警察にこの捜査を依頼なさるお考えはないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/137
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138・津島壽一
○津島国務大臣 先ほど私から一言申し上げたと思いますが、本件については今後徹底的に捜査をするという意味を含めて調査をやりたい。その方法は完全を期するようなことを考えよう。同時にその際関係方面との協力も仰ごう。こういう趣旨は、これは警察関係においても協力を得る面があれば協力を願うのが捜査の目的、調査の目的を達する次第でありまして、先ほどのお答えの中にそういった趣旨も含めて申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/138
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139・阿部五郎
○阿部委員 私がお尋ねしたいのはその捜査主体であります。こういうのは一つの命令系統があって、一つの秩序のある捜査をしなければならぬのでありますが、捜査の主体はどうなさるお考えでありましょうか。私たちしろうとから考えますると、やはり科学的捜査の本職は警察ではなかろうか、従ってこういう問題は警察に御依頼なさるのが適当ではなかろうかと思いますが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/139
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140・津島壽一
○津島国務大臣 そういった具体的のことにつきましては、十分研究いたしまして、目的を達するに必要な措置を講じたい、こう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/140
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141・阿部五郎
○阿部委員 それから少しあとへ話が戻りますけれども、まことに疑問にたえないのは、手帳の切れ端が雪の中から発見されたということであります。手帳のうちでわずか一枚だけちぎって捨ててある、雪の中に突っ込んであるものが発見されたというのでありますが、その手帳の一片の中に本人の氏名が明記されておる。そういうものがわざわざ置いてあったという。その他の手帳の部分は一体どこにあったものでありましょうか。また、これは雪の中に突っ込んであったとしたならば、本人が突っ込んだと見なければなるまいと思います。だれもそんなことをすることはできる者はないのでありますから。そこで、逃亡する本人が自分の手帳のうちから自分の氏名、住所を書いてある部分だけを選んで、それをちぎって雪の中に突っ込んでおいた、こういうことになるのでありますが、まことに不思議なことだと思います。逃げる者でありましたならば、自分の行方がわからないようにするのであれば、一応受け取れるのでありますが、わざわざ自分がここを通ったぞ、ここにおったぞと、自分の名前の書いてある一葉をちぎって置いてあった、これはどう解釈したらよいのでありましょうか、御見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/141
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142・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 そういう、手帳を破いて、自分の名前を捨ててしまうという心理はどういう心理であるか、これはいろいろのケースがあるだろうと思いますが、私どもとしても大へんお話のように理解しがたい点もあるように思います。いろいろの考え方で、自分の名前を隠したいという気持が起るだろうと思いますが、それらの点につきましてはなお将来の調査に待ちたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/142
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143・西村力弥
○西村(力)委員 関連して……。今の手帳の問題ですが、自動車整備をやるときでには、ほんとうの作業服なわけでしょうが、そういう場合に、手帳はやはり制服から移して、作業衣に持っておるということですか、それはそういうきまりになって、常に携行されておるものかどうかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/143
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144・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 この手帳は警察官手帳のように常時携帯しなければならぬという性質のものではございません。ただ、身分証所書を持っておりまして、その身分証明書はこの手帳と関連があるという関係から、常時持つようにしつけておるということでありまして、さようなことに義務づけておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/144
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145・西村力弥
○西村(力)委員 そういう指導を常にやっていらっしゃるなれば、そういうことも考えられますが、私たちの前の体験からいきますと、営内におけるそういう作業服着用の簡単な場合にはわざわざ移すようなことはなかったように思っているのですが、その点は非常に疑問なんです。
それから先ほど当日の気象状況の報告がありましたが、気温はその夜中あるいは明け方何度くらいであったか、雪質は粉雪であったか、しめり気の多い雪であったかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/145
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146・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 気温は十七日が零下十三度三分、さらに十八日は二分ほど下っております。十九日はさらに二度ほど上っておる。雪の質につきましては、そのことについてちょっと測候所の調べはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/146
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147・西村力弥
○西村(力)委員 写真を見ますると、先ほどの報告ですと、雪積量は十七センチくらいだったと聞きますが、手帳を置いた場所の、それも写真に隊員二人のなにが載っておりまするが、その写真を見ますると、ひざを没して、ひざの上まで雪がかぶっている。ひざの上までというと、十七センチくらいではない。そういうのはどういうことかというと、そこは風が吹けばよけい雪が集まるということなんです。吹きだまりだということなんです。ですから零下十何度の寒さで、雪質は北海道のことですから相当粉雪だろうと思うんですよ。そのときに四メートル以上の風が吹いて、場所がたまたま吹きだまりだということになれば、十八日の気温と風との関係からいうて、そういう工合に手帳が雪の中に突っ込んであるのが見つかるようにはなっていなくて、そこには相当その日に四メートル幾らかの風で雪が飛んでかぶさってきておっただろう、こういう工合に想像されるのですよ。そういう点も今後御調査になるときには十分に検討されるべきことである、こう思うわけなんです。
それから山崎隊長ですか、そういう人から来た電報によりますと、二十日の電報には、十七、十八両日部隊付近におったことがわかった、心配なし、こう言っておるのですが、そのことは一体どういうことだろうということ、十八日には柳の枝を燃やしておることと、手帳を捨ててあるということで、大体石狩川のところに入水したではないだろうかということを中心として捜査を始めておるときなんです。ところがその二日後の二十日に、郷里の方に対しては、十七日、十八日、部隊付近におったから心配ないという電報を打っておる。そういうところに非常に矛盾したところがある。こういうことを考えられるのです。その二十日に打った電報がそういうことを示しておる。そういうことを言うておるということと、石狩川に入水したではないだろうかという想定を立ってやっておることは非常に矛盾しているように私は考えるのだが、あなたはどう考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/147
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148・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 風速四・四メートルと申しましたのは、十八日でありまして、これを発見しているのは十八日の朝であります。十七日は一・三メートルの風が吹いておった、こういうわけでございます。それから二十日の電報につきましては、これはたびたび問題になりますところのたき火の跡あるいは手帳の切れ端というものの発見によって部隊付近におったものと考えまして、かような電報を打ったものだろうと想定されるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/148
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149・西村力弥
○西村(力)委員 もちろん十八日の四メートル以上ということは、これは最大風連だと思うのですが、しかし朝それだけの風が吹かなかったということは何もないわけでしょう。十八日の記録で、その日の最大風速だろうと思うのです。ですからそういう点はもっと克明に調べらるべきだ、こう言うのです。
それから長官にちょっとお尋ねしたいのですが、長官は非常に御心配になって徹底的な捜査をなさろう、こういうことをお話になりました。私たちもそれを持ちたい、こう思うわけです。ただそのとき、今までるる飛鳥田委員、阿部委員から話がありましたが、私考えましても一体朝の作業に八時からかかるなら八時からかかって、十時ごろ警衛の当番に行くんだというようなことは常識では考えられないことなんです。それはあなた方も認めておられる通り。しかもその常識で考えられないことを平気で受け入れられて、しかも夜まで延ばしておったなんということを考えてみますと、やはりこの問題には単なる失跡というのではなくて、犯罪的な要素もあるんだ、あるかもしれないという想定を立ててこれからの御調査をなさる、こういう工合に私たちはやってもらわなければならぬ、こう思うのですが、長官、いやなことですけれども一応その通りの想定を立ててなさるのかどうか、それを明確にしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/149
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150・津島壽一
○津島国務大臣 捜査、調査を徹底的にやるという場合には、あらゆる角度からこの問題を観察し検討して、それに対応する措置をとる、こういう次第でございます。今までおっしゃった点も十分考慮に入れるべき点だと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/150
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151・阿部五郎
○阿部委員 時間もたちましたから簡単にしたいのでありますが、もう二点ばかり疑問が残りますので、できるだけ明確にしておきたいと思います。
この事件は夜の九時半の点呼まで発見ができなかった、ここに問題があるようでありますから、その夜の点呼まで発見ができなかったという理由の一つに、当日は夜業をして、夕飯のときにもみんなが一緒にならなかったというようなことをおっしゃっております。一体だれだれが夜業をしたのでありますか。この板東一士を入れて八人が一緒に仕事をしておったと聞いておるのですが、そのうち全員が夜業をしたのでありますか、あるいはそのうちの一部でありますか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/151
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152・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 夜間警備をいたしました孝は三名でございます。峯三曹と川村士長と脇士長の三名であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/152
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153・阿部五郎
○阿部委員 そうすると夜業をしない者は自分の居室に帰ってきたはずでありますが、その時分に板東一士は帰っておらない。おそらく依然として警衛上番でおる、こう思うておったものと思われますが、警衛上番というものは何時から何時までやるものでありましょうか。ああいうものは交代があって、そう長い時間ではないと聞いておりますが、一体どうなんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/153
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154・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 このときの警衛上番は夜中の二時まで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/154
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155・阿部五郎
○阿部委員 何時からですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/155
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156・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 午後二時から翌日の午後二時まで、こう言っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/156
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157・阿部五郎
○阿部委員 二十四時間ぶっ続けの警衛勤務である、こういうお答えでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/157
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158・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 二十四時間でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/158
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159・阿部五郎
○阿部委員 それからもう一つ承わっておきますが、板東一士の兄が十二月の末に旭川へ行っていろいろ説明を承わって帰って参りました。それから間もなく本人を免官するという通知が来たそうであります。これも家族をはなはだ怒らしておるのであります。もちろん規則によって免官をするのならいたし方ないことでありますが、それならそれで懇篤なる手紙でもついて来たならば、それほどでもなかったでありましょうが、一片の紙きれで免官通知、こういうのが来たそうであります。しかしそれを私はとがめるのではありませんが、その免官というのはどういう法規のどういう規定によって行われたものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/159
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160・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 自衛隊法のたしか四十二条であったかと思いますが、職務を離れたということによる不適格ということで免官になっておるはずであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/160
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161・阿部五郎
○阿部委員 先ほどのお話によると、本人は一体どうしてどうなったかという真相はまだわからない、こういうお話でありましたが、本人が任務を離れて、それによって自衛隊の一等陸士としては不適格である、こういうことで免官になったそうでありますが、もしこれが本人の責めに帰すべからざる理由をもって任務を離れるのやむを得ざるに至ったものであったということが、後に判明した場合——これも考えられないことではないと思いますが、そういう場合にはこういう処分はどうなるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/161
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162・山本幸雄
○山本(幸)政府委員 さような事態が後になりまして判然いたしました場合には、その処分を取り消しまして、しかるべき適切なる処置に切りかえるということになると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/162
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163・阿部五郎
○阿部委員 私の質問は一応これで打ち切っておきます。
委員長にお願い申し上げますが、お聞きの通りにこの事件ははなはだ奇怪でありまして、御答弁もはなはだあいまいもこたるものであります。そこで自衛隊としては、これから十分御捜査をなさるではありましょうが、当委員会としても今までの自衛隊の捜査の状況から判断しまして、それに一任して安んずるということは事の重大さからどうかと思われるのであります。そこでこの際この委員会に参考人を召喚して質問いたしたいと思います。それでそのためにはまず、最後に本人を見た人、そのうちで特にその日に同じ仕事をしておった者、三名か四名あるようであります。それから責任者である峯三曹という人、さらに中隊長の責任を持っておった人、これらの人を当委員会に参考人として御召喚願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/163
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164・福永健司
○福永委員長 阿部君のただいまの御要望につきましては、理事会等において協議の上善処いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/164
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165・阿部五郎
○阿部委員 私の質問はこれで打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/165
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166・福永健司
○福永委員長 次会は三十一日午前八時。念のためもう一度申し上げます。三十日月曜日の朝八時に開会することといたします。異例の早朝開会で御苦労様でございますが、委員各位の御協力をお願いいたします。なお政府側においては岸総理及び津島防衛庁長官等、同時刻に本委員会に出席されるよう、前もってこれまた念のために申し上げておきます。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02219580328/166
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