1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月四日(金曜日)
午前十一時四十四分開議
出席委員
委員長 福永 健司君
理事 相川 勝六君 理事 高橋 等君
理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君
理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君
理事 受田 新吉君
大橋 忠一君 大坪 保雄君
大村 清一君 奧村又十郎君
北 れい吉君 小金 義照君
纐纈 彌三君 田村 元君
中馬 辰猪君 辻 政信君
中川 俊思君 永山 忠則君
林 唯義君 船田 中君
眞崎 勝次君 山本 粂吉君
飛鳥田一雄君 淡谷 悠藏君
中村 高一君 西村 力弥君
出席国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
出席政府委員
法制局長官 林 修三君
人事院事務官
(事務総局給与
局長) 瀧本 忠男君
総理府総務長官 今松 治郎君
総理府事務官
(恩給局長) 八巻淳之輔君
厚生事務官
(社会局長) 安田 巖君
厚生事務官
(引揚援護局
長) 河野 鎮雄君
委員外の出席者
厚生事務官
(保険局次長) 小山進次郎君
労働事務官
(職業安定局雇
用安定課長) 竹内 外之君
専 門 員 安倍 三郎君
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四月四日
委員林唯義君、粟山博君、山本粂吉君、川俣清
音君及び横路節雄君辞任につき、その補欠とし
て奧村又十郎君、大橋忠一君、中馬辰猪君、日
野吉夫君及び中村高一君が議長の指名で委員に
選任された。
同日
委員中馬辰猪君及び奧村又十郎君辞任につき、
その補欠として山本粂吉君及び林唯義君が議長
の指名で委員に選任された。
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四月四日
通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内
閣提出第六九号)(参議院送付)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出、第二十六回国会閣法第一五五号)
恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
九四号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/0
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001・福永健司
○福永委員長 これより会議を開きます。
恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/1
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002・受田新吉
○受田委員 私からまだ傷病恩給関係の問題その他取り残されておる質疑がありまするので、これを続行いたします。
傷病恩給という制度が特に軍人の場合重点的に考えられているわけでございますが、この増加恩給、傷病年金という二つに分れている制度が、実際の運営においてこれらの障害者に対して十分徹底しているかというと、なお問題点が残されておると思うのであります。それは今日街頭において、依然として白衣募金にあくせくとしている人々が相当数に上っております。この白衣の募金というような痛ましい姿が今日まだ残っているというそのこと自体に問題があると思うのですが、それは背後にやはり傷病恩給関係の取扱いに不十分な点があるということもいなめない事実ではないかと思います。従って私はこの白衣募金をやらざるを得ない現実の姿というものに対して、恩給局及びその他の政府当局はどう考えておられるか。もちろんこれはいろいろと手続によってこういう姿をなくしようと努力はしておられるようでございますが、現実にこの問題が出ておる。それからもう一つは、その増加恩給、傷病年金の制度に非常な不均衡が残されておるというので、今回もこれが改正措置がされたわけでございまするが、今回の改正措置においても、その不均衡の部分が完全に埋められてないという声が出ているわけです。それをもっと掘り下げてお尋ねをしてみたいと思います。
私はその最も大きな問題は、ごく軽い傷の人であっても、実際はその傷を受けたために就職ができない、こういう問題にぶつかってくると思うのです。たとえば小指がないという程度の軽い、一目症程度のものであっても、それでも五、六万該当者がおるようでございますが、こういう人々であっても、その小指が一つないために就職ができないという姿になっておるわけです。従って小指一本が一目症という考え方の背後に、その小指一本ないために仕事を見つけることができないという現実も考えていただかなければならぬと思う。この二つの問題点について政府の考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/2
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003・八巻淳之輔
○八巻政府委員 傷病恩給、特に傷痍軍人の方々で傷病恩給を受ける方々についての処遇の問題でございますが、今回の措置におきましては、重症者に厚く、こういうことで相当の増額をいたしたわけでございます。すなわち項症の高い方におきましては、八割程度の増額になっている、こういうようなことで、お話の出ました白衣募金をしなければならないというような方々の状態というものは、おそらく三項症、二項症というふうな、片足がないとか、片手がない方、両足のない方というような重症者だろうと思います。そういう方々につきましては、今回は相当大幅な増額をいたしております。そうした傷害年金、増加恩給の面におきまして相当の増額をいたしておりますので、今後におきましては、そういう方々の生活をささえていく上に非常に役立つことになるんじゃなかろうかと思っております。この傷病者に対する対策といたしましては、もちろん退職後における傷病年金だけの問題ばかりではございませんので、その他職業の補導であるとか、あるいは更生医療であるとか、就職のあっせんであるとか、そうしたすべてのものが総合されていかなければならないと思っておる次第でございますので、退職年金、増加恩給あるいは傷病年金というものの改善につきましては、これは恩給局の所管といたしまして今回におきましてもできるだけのことをした、こういうつもり正でいる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/3
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004・受田新吉
○受田委員 厚生省の方もおられるので、あわせてお尋ねしたいのでありまするが、この傷病者の取扱いについて、今恩給局長は重症者に厚くという線で相当な配慮を加えたというお声があったわけですけれども、しかしそれにしても軽傷者の、たとえば今申し上げた一目蒲程度の軽い障害の人に対しても、これは就職の条件に非常に大きな困難があるわけなんです。小指一本の操作が十分でないために正当の業務をとることができないという人々のためにどういう措置をとられつつあるのか。ヨーロッパの進んだ国々の雇用条件の中にそうした障害者に対するある程度の比率を織り込んでいる法律のできている国もありますが、こういう考え方を日本も採用して、その身体障害者の中にある、特に戦争、公務でそういう条件になられた気の毒な人々を優先的に救済するというような手が打たれているのかどうか。これは現実の問題にも関連するのでございますが、ごく軽度の障害者に対する取扱いについてもはなはだなまぬるい現状ではないかと私は考えておるのでございますが、御意見はいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/4
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005・安田巖
○安田(巖)政府委員 労働省の方の所管の御質問がおもでございますけれども、厚生省関係といたしましては身体障害者福祉法というのがございまして、それによって先ほど恩給局長からもお話がありました更生医療でありますとか、それから補装具の給付等をいたしておりますが、そのほかに各府県に身体障害者の保護更生の施設がございます。中央にもあるわけであります。そういうところでいろいろ保護指導をいたしまして、社会に復帰させるような努力をいたしておるわけでありますが、しかしそういうところに参りますのは割に障害の程度の重い者が参っているようでございまして、軽いのは労働省の方の対策の中に大部分入っておるわけでございます。労働省の方のお仕事は、私が承知いたしておりますことを申し上げますと、身体障害者の雇用の促進のために、昭和二十七年以来身体障害者雇用促進協議会というのを設けておりまして、これは中央にもございますし、地方にもあるわけでございます。そうして職業安定所へそういった身体障害者の登録をいたしまして、特にそういった方々の就職のあっせんをいたしておるのでありますが、昭和三十二年八月末現在までの登録者が七万二千百六名、身体障害者就職件数が四万八千五百七十九名でございます。そのほかに身体障害者公共職業補導所が全国に八カ所あるわけでございます。
そういったようなことで身体障害者の方々に対する対策を実施しておるわけであります。
それからお話の雇用割当と申しますか、強制雇用といいますか、一定の規模を持ちました工場、事業場に対して身体障害者を法律でもって一定の割合を雇わせるというようなこと、これも厚生省でも研究をいたしておるのでございますが、これも労働省の方のいわゆる就職関係の所管だと思いますが、労働省でもいろいろ考えておると思います。なおまた労働省とも協議をいたしまして、そういう点につきましてもさらに研究いたして参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/5
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006・受田新吉
○受田委員 厚生省のこれら傷病恩給関係の対象者を含んだ障害者対策というものを伺ったのでございますが、しかしながら今御答弁にもあったように、登録者の中で就職をしている人はその六、七割というところですね。あとの三、四割という人は未就職の人である。こういうことになっておる。また補装具とかその他の更生医療等の便宜を供与しておるとは言いましても、それらについてもとかく手落ちがあることは関係者が強く訴えている現実でもわかることです。こういう問題を何とか法律で手きびしく考えられるような方法で持っていかないと、白衣の募金のような形のものはやっぱり取り残されてくると思うのです。従ってせっかく恩給法によって傷病年金あるいは増加恩給の取り扱いをして差し上げてある方々が、それもまだ不十分であるからといって、もう一歩前進して何とか収入の道を考えたいというところに問題点がひそんでおると思うのであります。従ってその原因をよく突き詰めて十全を期するという努力が必要である。今厚生省は労働省とよく相談して強制雇用割当の法制化というものも考えてみたいという前進した御意見があったわけでありますが、これはとにかくできるだけ強力にやらないと、今申されたように、登録身体障害者数と傷病恩給の対象になる人々を含んだものと、実際の就職との間に非常な開きがあるわけです。これが解決できないと思うのです。身体障害を持っておるがゆえに、たとえば小指一本がないだけでさえも就職の条件が非常に悪いという現実を直視せられまして、単に軽い障害であるからというので、これを軽視するような形のものがあってはならないと思います。総務長官おいでになっておりますので、この恩給法上の救済でなお救われないこれら軽い障害者の現実の生活の問題について、一つ閣議でも特に主張して、これらの人人の生活を守ってあげるために最善を尽すというお約束を願わなければならないと思います。特に今度重症者に重く、また軽症者に軽いという措置がとられたがゆえに、六、七項症とかあるいは款症程度の皆さんにはよほどの不満があるわけです。こういう問題もあわせて御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/6
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007・今松治郎
○今松政府委員 受田委員のただいまの傷病者の方で、項症の比較的低い方、款症の方々に対する職業補導その他の配慮について、政府がいま少し関心を持って進められたらどうかという御質問と思いますが、しごくごもっともな意見と思いますので、関係各省ともよく相談いたしまして、そういうような方向に措置をとっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/7
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008・受田新吉
○受田委員 この傷病恩給関係の年金制度というものは、他の類似の年金制度とも関係があるわけです。たとえば国家公務員の災害補償法あるいは船員保険法とかいうものに類似の制度があるわけです。しかしそれらはそうした補償の仕方、考え方に相違点もあるのでございますが、こうした他の障害も救済している制度との関係において、傷病恩給制度はやや前進していると思います。しかしもう一つは、傷病恩給関係の皆さんは、終戦までの旧軍人の恩給法という非常に古典的な制度で制約を受けておる関係で、その後における情勢の変化に応じた他の法律の動き方とはまた趣きを異にしておる点もありますので、ここでやっぱり特にこれらの方々に対する措置においては、軍人恩給の批判の外のものとして政府は考えていただかなければならぬと思う。もちろん普通恩給の部分を持っている人々――増加恩給をいただいている人は基礎に普通恩給があるわけですが、その普通恩給部分が軍人恩給につながっているので、形の上では軍人恩給の一翼のように見えますけれども、実体は身動きのとれない身体障害者になっているということを考えていかなければならぬと思います。そこで、この間永山委員からちょっとお尋ねがあったかと思いますが、これらの障害者に対して、特に内部疾患の問題が出てきておるわけです。内部疾患については、この間、症状等に関する特別の専門調査会というものを閣議決定して作られたようです。これできめられたその症状に対する決定に対しては、いわゆる別表に規定された内容を改正して、その内部疾患を重視する方向へ持っていくのか、別表はそのままにしておいて何かの行政措置で専門調査会の決定を、症状に対する、内部疾患に対する見方を実施しようとするのか、そうした取扱い方について政府の考えている方向をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/8
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009・八巻淳之輔
○八巻政府委員 今回傷病恩給の等差におきまする主として内部疾患の査定基準につきまして検討を加えますために、閣議決定をもって専門調査会を設けることになったわけでございます。この調査会にお願いする仕事は――主として症状等差例に書いてございますものは、非常に抽象的な表現になっております。すなわち身体的機能あるいは精神的機能を著しく妨げるものとか、あるいは大部を妨げるものとかいうふうな内部疾患に関しましては、かなり抽象的な表現で表わされておる。その他の外形標準できまりますものは、それぞれ具体的に書いてございます。しかしながら内部疾患はどうしても抽象的な表現になっておりますので、その抽象的な表現の解釈と申しましょうか、査定の基準というものを内部的に設けまして、それでやっておるわけでございます。今度専門調査会で御検討を願うということは、そうした今まで用いられておりました内部的な基準が妥当であるかどうかという点を検討していただく、こういうことになるわけでございます。従いまして現在までのやり方に対する検討ということになれば、行政措置上のものさしというものを作っていただく、こういうことになると思うのでありまするが、一歩進んで、そのものさしが現在抽象的であるものをさらに具体的に、もう少し明白に法律の上に規定すべきである、別表の中で規定すべきであるというふうな意見に発展するかもしれません。その辺は今後委員会の意見を交換されていく進行途上において、そういう方向へ発展する可能性もあるわけで、あります。しかしながら大体の目標といたしましては、今申し上げましたような、内部疾患についての査定基準というものについての目安を検討していただくということが主でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/9
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010・受田新吉
○受田委員 内部疾患については、そうした一つの基準を、できれば別表の改正という法律改正、やむなきときは行政的な措置というような考え方があるように伺っておりますが、これはもちろん調査会の答申にどういう方向をとるべきであるかということが示されるかと思いますけれども、しかし政府の考え方としては、その調査会の答申というものは、法律で別表を改めて、その趣旨を取り入れるというような強い意思ぐらい持ってかからないと、そうした抽象的に書いてある内部疾患の規定を、いいかげんに恩給局の方でちょろちょろとやられるということになると、これはまた問題が残ると思います。だから政府としてはやはり別表改正というぐらいの強い意思を、調査会の答申にこたえる意味で考えておらなければいかぬと思うのですが、長官はそのぐらいの意思をお持ちでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/10
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011・今松治郎
○今松政府委員 今回の調査会の答申がどういうことになって出ますかわかりませんが、もしも別表を改正しなくちゃならぬような答申が出ました場合には、もちろんそういうような処置もとる考えで調査をお願いしている次第であります。
なおまた、内部疾患ということを主にして調査をお願いしておるのでありますけれども、しかし実際の調査の結果は、私どもといたしましては、おそらく内部疾患ばかりでなく、その他神経系統の病気とか、生殖器の問題とか、そういうようなものがみな出てくるだろうと思います。そういうものを含めて今度の専門調査会に検討していただくことになると思いますので、その結果によりまして、適正な行政措置で済むものは行政措置でいきますし、またどうしても別表改正に至らなければできないものは、次の機会にそういうような措置もとる考えで今回の調査会を設置したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/11
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012・受田新吉
○受田委員 厚生省当局にただしたいのでありますが、今傷病恩給関係の取扱いについて伺ったのに関連するのでございますが、今回恩給法改正とあわせて援護法の改正が出ているわけです。その中に障害年金制度の改正が出ているわけです。たとえば学徒動員で空襲のために顔をやられたような場合、特に女子学生などが多かったわけですが、女の学生などというものは顔をやられたということは、これはやはり青春を台なしにした犠牲者なんですから、そういう立場の人々には今度の症度の問題などはやはり相当強く考えてやらなければいかぬと思うのです。ただ外形的に現われた皮膚障害というようなことではなくて、その人の生涯において青春を失わしめ、希望を失わしめたという代償として特に考えてやるということが必要だと思います。これに関連する問題として援護法上の障害年金の問題、障害給付金の問題に関連しますが、御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/12
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013・河野鎮雄
○河野政府委員 援護法上の障害者に対する処遇につきましては、恩給における処遇と並行して制度もでき、また運営もされているわけであります。ただいまの御質問の線に沿いまして、恩給法の方がまた改正されるということになりますれば、当然援護法もそれに並行して考えていく必要があるのではないか、かように存じている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/13
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014・受田新吉
○受田委員 これは恩給法の適用を受ける人々と、それから準軍属として恩給法の適用を受けることのできない、こういう方とは立場が違うのです。特に準軍属という立場の人は、いわゆる軍人、軍属として恩給法で救済はされなかったけれども、今度あらためて軍人、軍属等として、軍属のほかに準軍属を含めることが改正案にあるのでありますが、そういうことを考えると、学徒動員というのは女性が特に多く参加したというのは当然であって、一般軍人などには女性というものは看護関係を除いてはあまりないわけです。そういう意味で非常に対象が広いのでありますから、援護法の対象になる問題はこれは援護法の方がむしろそういうものを強く考えていくようにしないと、準軍属なんというのは恩給法では問題にされていない。その不幸な法律の欠陥からきた対象になる人は、むしろ積極的に恩給法でそういうことを改めることではなしに、援護法がまずそういうものを重く見るという格好にしなければならぬと思う。またその年金の交付率も、遺族年金の場合は半分にも足りないというようなことになっているし、傷害年金の率が相違しておるのでございますから、そうした症度を重く見てやるという場合は、特に女子の犠牲者などに対して強く考えてやるということが必要だと思う。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/14
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015・河野鎮雄
○河野政府委員 傷害の度合いをどういうふうに見るかというふうな格づけの点につきましては、やはり恩給法と援護法というものが同じ国の法律でございますので、軌を一にした考え方をとっていかなければならないというふうに考えますので、恩給法と従来通り並行して考えていきたい、かように存じておる次第でございます。ただいま御質問の点につきましても、恩給局と十分打ち合せまして善処いたしたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/15
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016・受田新吉
○受田委員 白衣募金の話を昨日申し上げたのですが、これに対する御答弁がないのでお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/16
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017・安田巖
○安田(巖)政府委員 お話のように終戦後十数年たちまして、まだ白衣募金があるということは、はなはだ悲しむべき状態だと思っております。ただ先ほど恩給局長からお話がありましたように、ほんとうに働けなくてああいうところに立って募金をするという人たちに対しましては、これは傷病の程度も高いわけでございますから、大体傷病年金額がふえたことによって生活はできると私どもは考えておるわけでありますが、なおそれによりまして足らないような場合には、生活保護法ももちろん適用いたすわけでありまして、だんだん御承知のように減少いたしておるわけでありますが、私どもこういう対象に対して特別に相談をし、指導をいたしたこともございます。しかしなかなか収入等の関係で、必ずしもそういう方々の希望するような職のない場合がございます。いろいろ困難な問題がありますが、最低生活ができないから、そういう募金をするということにはならぬのではないかというふうに考えております。なおこういう問題については、今後関係の向きと一そう協力いたしまして指導するようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/17
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018・受田新吉
○受田委員 白衣募金ということは取締りを厳重にされるように通達が出ておるということでありますが、しかしこれは今日まだ列車の中や神社仏閣などで盛んにやっているわけです。一体これはなぜ放置されてあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/18
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019・安田巖
○安田(巖)政府委員 この募金の取締りでございますが、私どもの立場とすれば、取締りを主眼とするようなやり方はしたくないわけでございますけれども、しかし先ほど関係当局と申しましたのは、たとえば国鉄等とも御相談いたしまして、実はそういったようなことを手をつけたことがあるわけでございます。ただ列車の中でやります場合には、これはやってはならないという規則があることは御承知の通りでありますから、鉄道の公安官の方で取締りをいたすわけであります。その取締りの状況につきましては、いろいろお話があると思いますけれども、そういう取締りはできるわけです。
それから一般の街頭募金については、普通の府県条例等による寄付の取締りの条例しかないわけでございまして、あるいは道路交通取締法とかといったような関係以外にないわけでございますので、なかなか無理にやめさせるということのむずかしい点もあるわけでございます。傷痍軍人会等においても非常にその点気にしておりまして、いろいろと指導はいたしておるようでございますけれども、先ほどからお話のように、現在でもなおそういったような者が残っている現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/19
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020・受田新吉
○受田委員 傷病元軍人の問題は歴史的に見ても悲劇を繰り返しておるわけです。私たち幼き日の思い出をたどってみても、例の征露丸を売って歩く身体傷害の元軍人、われわれの各戸をたずねてきて、わずかな収益を得ておったわけです。これらは私たちの思い出の中にも残る悲劇です。それが今街頭募金という新しい姿になって現われておる。国家の補償の程度が高まってきて、だんだんそういう人々が姿を消しつつあるということはうれしいことでありますが、しかしその姿を完全に消すことができないところに問題がある。ああいう街頭で募集をする時間とその能力を、もう少し何かの方へ善用したら、もっと社会が明るくなってまたそういう身体傷害の人々も希望が持てると思う。バイオリンをひき、ギターを鳴らしマンドリンをやっておる人々のあの能力というものを、もっと善用する道はないのでございますか。そういうところに政府の指導に事を欠いておる一つの陥沒点があると思う。これはどなたが責任を持って答弁されるか、一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/20
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021・安田巖
○安田(巖)政府委員 お答え申し上げます。お話の通りでございまして、実は相模ヶ原の病院等では、相当まとまって集団的に出たことがございます。病院からそれぞれ出かけて行ってかせいで帰るということがあったわけであります。そういうところには、民間の方々等にも連絡いたしまして、また病院当局とも連絡して、いろいろ就職等につきましてあっせんをいたしたことがありますが、地元の公共職業安定所、関係官庁の方々とも一緒になってやりましたけれども、なかなか彼らの希望する通りの好職種というものがありません。また思い通りの収入がなかなか得がたいような実情でございまして、無理にそういうところから出しまして、一定の施設に入れるということもできがたいような実情もあったわけであります。しかしそういった指導をいたしましたために、半分くらい減ったというのも事実でございます。これは全般的に見ると相当効果があがっておるわけでありまして、最近でもそういった団体の方々が、そういうことを今後したくないからということで、何らかの方法で指導してもらいたいということの申し入れもありました。何と申しましても、そういう人たちに、自分で立ち上ろうという気持があるということが一番大切なことであります。そういう気持を引き出すように、今後努力して参らなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/21
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022・受田新吉
○受田委員 河野局長さん、これに関連して今の傷の程度の問題ですが、援護法では症状の基準に二款症までしかないわけですね。これは恩給法で認めたよりも、一つ少いわけです。こういうことを考えてみると、援護法の方は先ほど恩給法に準じて取り扱いたいということでございましたが、それを少し重くきびしく取り扱っておるということになる。従って軍人、軍属及び準軍属で、恩給法の適用を受けることのできない人々、援護法の適用を受ける方は、恩給法より差別待遇を受けておるということになると思うのです。こういうところにも問題があると思う。これは援護法の方が少し前進されてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/22
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023・河野鎮雄
○河野政府委員 たしか三款症まで見ておるかと思うのでございますが、さらに程度の軽い人まで援護法の範囲を広げろという御要望もあるわけでございますが、これらの点につきましては、先般の臨時恩給制度調査会等の御答申の趣旨によりまして、現在の程度にとどめるという建前で法案を出しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/23
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024・受田新吉
○受田委員 内地で職務関連で発病をしたような場合の傷病恩給の問題も起ってくるわけですが、しかしここで私はあまりごみごみしたことをお尋ねすることは避けて、大体文官の傷病恩給関係というものは、これは軍人の方に比較して取り残されるおそれはないかということを考える。これは特に今の内地における職務関連の発病者に対する取扱いなどを考えてみても、文官の方の適用というものは、そういう場合に非常に差等を受けることになっておる。こういうことで軍人の場合はそうした職務関連の点などが非常に強く見られて、そういう文武官との比較で文官に対する心づかいをなさる必要はありませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/24
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025・八巻淳之輔
○八巻政府委員 現在の恩給法、特に法律百五十五号以後の恩給法におきまして、軍人に対するいろいろ公務認定の範囲の幅が広くなったというような面では、確かに文官よりも特別の措置が行われておるという点は御指摘の通りです。と申しますことは、やはり戦争中における軍人としての特別な職務あるいは地位と環境というようなものを考えての、それに即応した処遇ということになるわけでございまして、おのずから文官と軍人というものの勤務の態様における処遇の相違に着目したからにほかならぬと思うのです。また制度といたしましても、文官につきましては現在に至る制度にずっと関連して続いてきております。そういう意味で文官において、ある時代における特別な扱いということは、制度の一元的な連係から申しまして、やはり考えられない、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/25
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026・受田新吉
○受田委員 今現在の文官につながる一連の問題ということで、恩給法の取扱いにまた一つの示唆を与えていただいたわけですが、重人の恩給、軍人の公務扶助料、軍人の傷病恩給、こういうものと文官との間には、やはり一つの相違点があるということがはっきりすると思うのです。従って文官は傷病者の場合においては現在の文官のことを考えても、昨日委員会を通った国家公務員の共済組合法案、こういう法律の傷害年金の取扱いなどを見ましても、これは現在恩給法で考えられている傷病軍人関係の取扱いとは別な見方をしているわけなんです。またこの保険システムからいっても、掛金がその傷病部分に及んでいるかいないかという問題も一つあるわけなんです。軍人の場合でしたら掛金がされてなかった。従ってそうした公務傷害になった場合においても、別にそうした掛金をもとにした保険システムというものを、傷病部分についても考えられないということになるので、これは文官の場合の、そうした納金制度からくる場合とは性格が違うと思うのです。そういうことを考えてみると、文官の行き方と旧軍人の行き方にはおのずから相違する面が出てきておる。文官は現在文官でつながっていかなければならぬという問題が、この傷病関係の問題を通じてもはっきりしてきていると思うのです。これは一つ人事院当局にお伺いしたいのでございますが、この文官と武官との相違点というものが、新しい人事院の勧告された勧告案の中にも、旧軍人の恩給の分は除いて考えたいという考え方があると思うのです。すなわち文官は戦後を通じて現職と退職したとを問わず、一つのつながりに考えていきたい、軍人は旧公務員という意味ではなくて、別ワクに考えていきたいという考え方があるわけです。これはもう大勢は自然に文武官を分離するという方向におもむいているのではないでしょうか。恩給法をその二つの線に持っていかなければならぬという線にあるのではないでしょうか。人事院としてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/26
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027・瀧本忠男
○瀧本政府委員 御承知のように、人事院は、昭和二十八年に国家公務員の退職年金制度に関しまして勧告いたしておるのでございます。従いまして人事院といたしましてはその限りについてお話申し上げるのでありますが、人事院が所管しておりますのは一般職の国家公務員でございます。現在すでに恩給をもらっておられる旧軍人という方がおられるわけでございますけれども、これは人事院の所管に入っておりません。現在国家公務員であります者が人事院の所管に入っておるわけでございます。人事院といたしましてはそういう人事院の所管の範囲内について勧告いたしたのでございますが、現在すでに退職されております文官の方々というものと、それから現実に勤務いたしております国家公務員、これはつながりがあるわけでございます。従いまして人事院勧告におきましてはすでに恩給法の受給権が発生いたしまして、恩給をもらっておられる方々につきましては、恩給法は非常に複雑な関係がございますので、さしあたり恩給法を存置いたしまして、そうしてその旧恩給法の規定いたしますところの給付を受けられるということにいたしておるのでございます。ただそう申しましても、そういう受給せられておられる方々が、もし人事院勧告が実施されました暁におきまして、死亡されるというような場合に、いわゆる遺族にどういう給付をするかという問題があるわけでございます。恩給法によりますとこれは扶助ということになるのでございますけれども、すでにその場合に新しい退職年金制度が運営されておるのでありますから、その遺族に対しましては新しい退職年金におきまする遺族年金というものを支給するのが適当であろう、こういう辺でつながりをつけております。しかしこの問題は非常に技術的な問題でございますし、もし退職年金制度がいよいよ実現を見るということになりますと、その所管は総理府側になるのでございます。総理府側でどういうふうにお考えになりますか、われわれといたしましては、人事院勧告をいたしましたときの趣旨を御説明申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/27
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028・受田新吉
○受田委員 人事院の方のお考えはその程度で、伺っておきますが、恩給局として、また厚生省として考えていただきたいことは、この公務障害の場合の国の補償の責任ですけれども、これは保険制度の掛金をもとにした考え方でいくべきか、あるいは公務障害部分は、全部国が考えていく、その部分だけは取り出して国が全額を補償する考えでいくべきかという、二つの考えがあると思います。だから本人の掛金を中心とした制度で考える場合に、この公務障害を受けた人、その人は自分の掛金で公務障害部分にはね返っておるという印象を与えると思うのです。公務障害の部分については、国が全部責任を持つという方法の方が、筋が通るのではないかと思うのです。この考え方に対する後所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/28
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029・八巻淳之輔
○八巻政府委員 公務傷病の場合におきまする補償というものは、これはあくまでそれが公務員でありますならば、使用者としての国が全面的に責任を負うというのが建前でなくちゃならぬ、すなわちその給付内容におきまして、その負担部分が公務員に負担させるというふうな性質のものであるとは私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/29
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030・受田新吉
○受田委員 そういう考え方で公務傷病を考えていかれるならば、これはきわめてはっきりしておるわけです。しかし増加恩給という部分は、その基礎に普通恩給がありますね。普通恩給の部分については、これはそうした掛金の自己負担の部分がはね返っておるわけです。だから傷の部分に増加恩給分と基礎恩給分とのかね合いはどういうふうに考えられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/30
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031・八巻淳之輔
○八巻政府委員 今受田先生の御質問は、将来のつまり保険方式と申しますか、掛金をかけてのそれが保険料としての意味での退職年金制度という場合をお考えになってのことだと思うのでありますが、現在の建前は国庫納金というものを百分の二やっておりますけれども、これは保険料的な意味ではなくて、むしろ国の財政負担を軽くするという意味での醵出金という意味でございまして、それがどういうふうになるかということとは別問題でございます。ただしかし将来の問題として考えました場合に、増加恩給部分というものの上澄み部分だけが純然たるいわゆる公務傷害の補償部分であって、下の根っこになっておる普通恩給部分というものは、いわゆる年功恩給というふうに切り離されて、年功恩給に対するものはこれは掛金に見合うもの、掛金とある程度関連してくるというふうに考えるか、こういう問題でございます。これはなかなかむずかしい問題でございまして、即座に私明快な答弁ができないのでありますが、考え方としてはやはりそうした公務障害部分というものは上澄み部分だ、下の根っこの普通年功恩給部分というものはやはり年功恩給一般問題として考えられていいじゃないか、こう今考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/31
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032・受田新吉
○受田委員 これはまだ今まで論議をした問題でないことだし、恩給調査会でもこの問題は論議しなかった問題ですけれども、しかし今度の共済組合法など出てくることによって、当然これは論議しなければならぬ問題になっておると思うんですけれども、今局長さんの仰せられたこの根っこの部分が上澄みの部分に影響しておりますから、これは密接不離の関係になっておるわけです。この普通恩給を除いて、増加恩給部分があるわけじゃないのですから、従ってその根っこの部分を忘れて上澄み部分を考えるわけにいかない。根っこの部分にはやはり掛金の性格がそれに入っておる、醵出制度のはね返りがそこにいっておるのですから、どうしても傷病因加給という中には、特に増加恩給の中には、自己負担部分が入っておるというわけなんですね。これは、やはり公務傷害の場合には公務傷害に対する補償を全部国が考えていくという考え方に、今後新しい制度として考えていかなければならぬと思う。これは今むずかしい問題だと言われるので、せいぜい御研究願うこととして、私これ以上申し上げませんが、特に恩給局としては局長以下善良な紳士ぞろいの非常な善人ばかりがそろっておられるお役所でありますので、私、これ以上論議を差し控えたいと思うのですけれども、しかし国全体の問題として一つ考えていきたいことは、ただ恩給局が存置するか廃止されるかという問題でなくて、国民の中で全体の奉仕者として苦労した人々に対する、公務員の場合の年金制度というものを、一貫して考えるという考え方に立った機構を持つべきじゃないかと思うのです。従ってもう旧令共済組合の適用を受けるようなものの仕事はあちらの方にある、また援護法の関係のものは厚生省にある、また大蔵省で握っておる部分もある、こういう形でなく、公務員の年金局というような形に恩給局が変っていく、そして公務員の年金関係は、共済組合方式による大蔵省所管の部分も、恩給局が従来持ってきたこの部分も、旧令共済組合も含めて、また援護法の関係部分も含めて一つ公務員の民主化された年金局としてここに新発足するという構想が、ぜひ一つ必要じゃないかと私は思うのです。そういう考え方に立たれる方が、恩給局という古い、古典的な名称に対する国民の批判というものを避けて、われわれ全体の奉仕者の公務員の関係のすべての年金を所管するものだというふうに変っていくべきだと思うのですが、こういう考え方に対する総務長官の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/32
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033・今松治郎
○今松政府委員 今政府等におきまして、これから生まれるべき公務員の退職年金の法律が通過した場合、また今恩給局で所管している恩給の部分、大蔵省で所管しております共済組合の問題、こういうような問題を一つにして年金局を作ったらどうかという受田委員のお話は、非常に傾聴すべきものだと思うのです。私どもの方としても、まだ成案は得ておりませんが、将来そういうものが一つになっていくことが一番望ましいことである。ただいま継続審議をお願いしております人事院の改組の問題につきましても、一応そういう問題は全部人事局で所管することになっているのでありますが、また当時と事情を異にいたしますので、将来この制度がみな成立いたしました場合には、今のようなお説を十分組み入れて、そういう方向にいくのを目途として検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/33
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034・受田新吉
○受田委員 国家公務員法の改正の問題としてつながってくる人事院の廃止に伴う人事局に、私のこの問題をひっかけてくれては困るわけです。これは私の考え方と違うわけなんです。えらいところに御意見が飛んでいるわけなんですが、今さしあたり考えなければならぬことは、恩給問題とかあるいは共済組合法による退職年金問題とかあるいは旧令共済組合の問題とか、いろいろ年金関係の問題がある、今度厚生省に国民年金のための準備室ができておる、こういうのは、これは国民年金は国民年金、公務員の年金は公務員の年金の二つの行き方が私はしばらく続くと思うのです。その段階において、恩給局を一歩前進させる、つまり一歩民主化させるという考え方で、私は申し上げたのです。ここを一つはき違えられないように、ほかの機構とのつながりでそれをおやりになるということになると、私の質問の趣旨と違うわけですから、これは御了解願いたいのです。
それでもう時間も迫っておりますし、永山委員からもお尋ねがあるようですが、厚生省に対する国民年金の問題、生活保護の対象として低額の受恩給者の取扱いをどうするかという問題、特に二万円か二万円かの扶助料をもらっておる受恩給者というものは、生活保護の対象にもならないというような具体的な例もあるわけなんです。こういうような問題についてお尋ねをしたいと思いますが、午後の会議にも差しつかえを生じますので、午前中は傷病恩給関係を中心にしてお尋ねをしたことにとどまり、残余の質疑は後刻重ねて相次いでお尋ねさしてもらうことにいたしまして、私の質疑を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/34
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035・福永健司
○福永委員長 受田君の発言と関連いたしまして永山忠則君が簡単なる質疑をいたしたいとのことであります。特にこれを許しますから、きわめて簡潔に行われるよう希望いたします。永山君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/35
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036・永山忠則
○永山委員 受田委員の質問で大体了承いたしたわけでございますが、すなわち今度内閣に傷病恩給の調査の委員会を発足をされたわけでございますが、それは内部疾患だけじゃなしに、その他の関係においても不合理性を是正する。従ってその結果として、病状等差並びに病状等差基準の改訂を要するような場合においては、別表の改正も、委員会の審議の状態に応じては考えるというお言葉をいただきましたのでございますが、この点を再確認をいたしたいということと、同時に全面的に検討をする関係におきまして、やはり間差も総合的に御研究にならなければならぬ問題であると考えるのであります。たとえてこれを申しますと、躯幹の運動に高度の障害ある者というような項目で、十一度くらい以上はからだを動かすことができないというような程度のものはこれが三款症になっておるのでありますが、十一度くらい以上からだを動かすことができないという状態の人は、大体においてどこに行っても勤まらないのであります。これらが今度改正法によりましても、月額千四百円でございますし、さらに食事をする場合において普通食はとれない。大体常時おかゆしかとれないというような関係者がやはり第三款症でございまして、改正法におきまして、も月額千四百円でございますので、それらは常時おかゆを食べて、実際上働く能力を持たないのでございます。これらのような諸種の事例がございますし、ことに原爆関係におきまして主として外傷を中心にこれが症状を見ておられますけれども、白血球が非常に少くございまして、事実上において活動するにとのできない情勢等のものもございますし、これらの諸点を総合いたしますときには、もちろん症状等差並びに症状等差基準の改訂を必然的に要し、別表の改正までこなければならぬと同時に、やはり間差の問題についても総合的に触れるということでございませんと、合理性を持つものでないというように考えるのでございますので、内閣に設けられますところの傷病恩給の調査に関する委員会はあらゆる角度で総合的に検討をして、その結果として生ずる症状等差並びに症状等差基準の改訂による別表の改正並びに間差等の問題もこれを是正するというような結論を得るものであるとわれわれは思うのでありますが、そういう場合においては、政府はその答申を中心にこれが善処をするということについての御言明をお願いしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/36
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037・今松治郎
○今松政府委員 第一の御質問につきましては、この問題はかねがね永山委員からも非常に御熱心に御意見を拝聴しておるものであります。先ほど受田委員にお答えいたしましたような考え方で進みたいと思います。今回の調査会の答申は、十分に政府としてはこれを尊重して、もしもそのために別表を改正するような必要がありますれば、こういう処置に進みたい、こういう考えで調査をお願いしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/37
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038・永山忠則
○永山委員 従って間差についても必然的に総合性をもって検討をして、触れねばならぬというような結論を得る場合においても、政府の方はその趣旨を御尊重いただくということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/38
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039・今松治郎
○今松政府委員 さようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/39
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040・福永健司
○福永委員長 永山君、簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/40
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041・永山忠則
○永山委員 重要な点だけで終ります。
それから厚生省の関係にお問いするのでございますが、病気再発の場合でございますね。再発の場合には更生医療もあるし、法外援護もあるしというようなお言葉でございましたけれども、実際上は更生、医療の分は手と耳と足と目しかない一のでありまして、現実に結核等で手術を受けて入院をしておるのを私はもう三人も見舞に行っておるのでありますが、実際恩給を全部出しても、なおこれが足らないというような気の毒な状態におる人を私は見舞に行っておるのであります。三項症の人と六項症の人と四款症の人を見舞に行ったのでございますが、そういうような再発の場合においては、前には陸軍病院で見ておったのですが、今度はそれに対しては何ら見ていないのであります。これは再発の場合においては医療は国家が保障するのだという考え方を絶対にお持ちをいただかなければならぬと思うのでありますが、これに対しての考えを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/41
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042・河野鎮雄
○河野政府委員 ただいまの御質問は現行の御質問でございますか、あるいは留守家族援護法の方の御質問なのか、ちょっとはっきりいたしませんでしたが、なお一つ十分検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/42
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043・永山忠則
○永山委員 傷痍軍人の関係の人でございまして、私見舞に行ったわけでございますが、これは恩給局の方にも話しましたが、これは恩給局に関係はあるけれども、そういう再発の場合は、厚生省の方で考えるべきであろうというような意見でございましたので、この点については恩給局並びに厚生省の方で再発の場合の国家医療保障制度を確立する二とについては十分一つ御検討いただいて、またの機会に御答弁をいただくようにしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/43
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044・福永健司
○福永委員長 本会議散会後再開いたすこととし、暫時休憩いたします。
午後零時五十一分休憩
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午後一二時二十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/44
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045・福永健司
○福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
恩給法等の一部を改正する法律案及び防衛庁設置法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、質疑を続行いたします。受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/45
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046・受田新吉
○受田委員 岸総理に直接お伺いを申し上げたいと思います。先般来恩給法等の一部を改正する法律案につきましては、関係政府当局の皆さんと相当時間をかけて質疑応答をいたしまして、ある程度政府が今回意図しておりまする改正の趣旨を伺うことができました。しかしきょうは総理みずからおいでいただきましたので、行政府の最高責任者として、ことに今国会中における最重要法案の一つとして国民の注視を浴びているこの恩給法の改正骨子について、総理の御意思が那辺に存するかということを明らかにしておきたいと思います。
最初に、いわゆる重人恩給という名目のもとに世の批判が非常にきびしいこの恩給法の改正につきまして、基本適な恩給法の考え方としてお伺いしたいのでありますが、もともと恩給法という法律の出発が、明治初年の旧軍人、旧文官の特権的な立場に対する退職後の処遇であったということを私たちは否定できないと思います。それは長い封建の社会、特に幕府時代における士農工商の区別のきびしかったあとを受けた近代国家として出発した明治政府において、その封建社会の解放の中に生まれた新しい軍人、文官というものが、またそこに新しい階級意識を織り込んだ万両に進んでおったということもこれは否定できないことでありまして、いわば旧士農工商の階級にかわるに新しい文武官の階級というものが生まれたとも言えると思います。ことに軍人の場合は、天皇の軍人といたしまして、同列同級といえども停年に新旧があるというので、序列によってその階級差が明白にされていたというようなことを考えますと、また文官でありまするならば親任、勅任、奏任、判任とまた別に雇用人というようなきびしい階級差があったことを思いますならば、これらの人々に対する恩給法上の待遇にきびしい差等のあったこともこれまた事実です。従って恩給法のおい立ち当時における軍人、文官に対する内心給法上の処遇というものは、要するに天皇の軍人であり、天皇の官吏に対する特別な権利を付与したものであると言うことができると思うのでありますが、当時の情勢ではさよう了解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/46
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047・岸信介
○岸国務大臣 いわゆる旧制度のもとにおける官吏というもの、また新憲法後における公務員のことを考えてみますると、やはりその根本においての考え方については、今受田委員のお話のように、明治初年における社会一般の観念から言い、軍人や官吏の制度の本質から申しまして、今おあげになりましたような点も私はもちろんあろうと思います。ただこの後においても共通するところのものは、やはり国家が永年国家の仕事に従事せしめ、そうしてそれが老齢に達し、もしくは傷病を受けた場合において、そういう特別の使用関係に基く特別の使用者として両者に対する義務を遂行るという考え方も、また一面においてはあったろうと思います。しかしそれのどちらの色彩が強いかということは、やはり時代時代の一般の社会観念なり、そのときにおける制度というものを考えてみなければなりませんが、今お話のように、この恩給制度そのものの発達の最初のなにから申せば、今受田委員の言われるような色彩が強かったということは、いなむことができない、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/47
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048・受田新吉
○受田委員 恩給法のおい立ちはそうしたきびしい階級意識の中に生まれただけに、特権的なにおいが強かったということは、総理も御了解願っておるわけです。従って恩給法というその名に示されるごとき恩恵的、特権的なにおいのものがその後の幾たびかの変遷におきましても、依然としてその根幹を流れるものとしては、変りのない姿で今日に至っておると言うことができると私は思うのです。それは新憲法のもとに切りかえられた公務員制度、往年の天皇陛下及び天皇陛下の政府に対して忠実勤勉を旨とするという官吏服務紀律が、よし国民全体の奉仕者としの公務員の服務規律に変ったといたしましても、恩給法の底を流れるところの特権的な意識というものが、そのままの形で新憲法下の今日にもこれが及んでおるということは私は否定できないと思うのでございます。この点一、二の例をあげて言いますならば、今日は軍人の階級ももちろんなければ、軍人そのものも存在していないのです。そして文官におきましても、親任、奏任、判任という区別もないのです。にもかかわらず、恩給法の底を流れている制度を見ますと、退職時の待遇に応じて恩給が給せられておる関係上、依然としてこの恩給法の中には旧軍人の階級差がはっきり残っておる。また文官におきましても、往年のその待遇差というものがそのままの形でとは申しませんが、大きな形の上においては、依然としてその昔の態様を整えております。ことに古い文官でありますならば、昔の巡査とかあるいは小学校の教員とか、こういう人々の待遇は、昔は官吏俸給令の中にもこれは特別な規定がありまして、小学校教員俸給令あるいは警察官の特別の俸給令というようなものを設けて、あるいは規則を設けて、この幹部職員との間に著しい待遇差があった。そういうものがそのままの姿で今日恩給がつけれておりますから、昔の公務員の今日における恩給金額に非常な差がある、こういうことが言えるわけです。ことに公務扶助料に例をとって言いますならば、文武官の間においても、いかにも軍人の方が下のように見えておるという政府の御見解でございますけれども、文官の中にとんでもない安い扶助料のある者がある。それはたとえば台湾や朝鮮で現地の蕃人征伐などをやって殉職した警察官の中には、二万円そこそこの普通公務の扶助料をもらっている人もあれば、三万円以下の四〇割に計算した特別公務の扶助料をもらっておる者もあるわけです。軍人の一番下の兵が三万二千五百問十五円です。それよりも低い特別公務扶助料や普通公務扶助料をもらっておる文官がおるということは、これはいかに昔の文官の間においても、その待遇に著しい階級差があったかということを私は物語ると思うのです。そういう意味からいったならば、恩給法の底を流れるものは、やはり文官においても武官においても、さびしい待遇差の上に立つものであることは、今日否定できないではありませんか。従って恩給法というその名称の示すごときこの法律が、民主化され、かつ公務員の立場も、国民全体の奉仕者という形になっている今日においても、その取扱いは昔流の文官、武官の差別のきびしい時代のものがそのままの形に残されておるというところに、私は問題あると思う。それを、合同政府も、やはり階級差をそのままの形で残している、金額においては上薄下厚の精神は生きておりますけれども、階級の差別はそのまま残っている。公務扶助料におきましても、兵、伍長、軍曹、曹長、准士官、少尉、中尉というような、ちゃんと階級が残っているのです。ここに一つの問題点がひそんでいると思うのでございますが、総理におかれましては、恩給法を新しい時代のものに切りかえるという努力を積極的になさる必要がなかったのであるか、御答弁を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/48
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049・岸信介
○岸国務大臣 恩給の制度は沿革も相当深いものでありますし、またこの文官もあるいは軍人も、国家に対して特別の勤務の内容を持っておる立場から、これに対してこの恩給の制度ができ、そうして長い沿革を持ってきておるわけであります。その根本には、やはり退職時の待遇を基準として恩給を給するという根本の考え方がありますが、やはり、恩給法に流れておる一つの思想としては、私は先ほど申したように、多年国のためにある特別の勤務をした、その人が老令に達して云々ということに対して、国が使用者として特別にこういう制度を作る、こういう意味から申しますと、やはりやめるときに相当な待遇を受けておったということは、一応の見方として、その人が国に対して、従来の長い勤務から、相当な内容のある勤務をしておった、こういうふうな見方に基いて、その勤務の度合いに応じて恩給を与えるというような考えから、出てきておるものであろうと思うのです。こういう考えに全然変って考えますと、そういう一切の差別待遇はおかしいじゃないか、むしろ差別を置くとするならば、その人の生活上の実際の実情に応じて、非常に生活上に困る人に対しては、これはむしろ多額にし、生活上相当な地位があれば、むしろ社会保障的にやらなくてもいいじゃないのか、こういうふうな考え方も出てこようかと思うのです。いずれにしても、そういうやめたときの待遇を基準にするべきではなしに、やめた後の生活の状態を基準にして給付するのが、むしろ社会保障正で尾の根本に全然切りかえるという問題は非常に大きな問題でありまして、こういう長い歴史を持ち、沿革を持っておるものを急激にそこに持っていくわけには参りません。なかなか適当でないと私は思います。現に軍人恩給というものを復活するときにおける昭和二十八年かのなにを見ましても、もちろん旧軍人恩給の制度をそのままに復活したものではなくして、いろいろ修正が加えられており、新たな出発をしたものといわざるを得ないと思いますけれども、今の点等は、従来あった考え方を引き継いでおる、こういうことから見ましても、その点は、将来にわたってはいろいろ考えなければならぬ、国民年金の制度もありましょうし、あるいは退職年金の制度に切りかえていくという問題もありましょうし、いろいろな点で考えていかなければなりませんけれども、今回のなににおきましては、そういう社会観念をある程度取り入れた意味において、上に薄く下に厚くという考え方を盛る程度の改正が適当であるという結論を得て、こういう案を出しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/49
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050・受田新吉
○受田委員 漸次社会保障に切りかえるという方向に持っていきたいけれども、過渡的措置として上に薄く下に厚いという精神を取り入れたという意味の御答弁のようでございます。そうしますとさらに進んでお尋ねしますが、せっかくそういう御精神をお持ちであるならば、第一に今回の改正の重点であった、これまた世論の最も注目しておる旧軍人の公務扶助料の支給におきまして、次の点に留意すべきではなかったかと思う。それは昭和二十八年に恩給法が法律第百五十五号として新発足し、その後におきましても常に今申されたような精神が流れてきておるのでありますけれども、そこに新しい出発をした、当時の再発足した恩給法の取扱いの中に――兵の階級においては二等兵、一等兵、上等兵、兵長という四階級が昔はあったわけです。その四階級を整理して昔の兵長にあたるところに、兵という形で一つにまとめてしまったわけです。つまり階級差を整理して兵にまとめた努力がされておるわけです。そういう一つの先例があるわけですから、これは応召兵が多かったというような関係もあって、二等兵、一等兵、上等兵というものは兵長にしたらよかろうという精神になったということでもありますが、その先例がある以上は、今度は一つ下士官にもそれが及んで、伍長、軍曹、曹長、准士官というようなものの階級差をなくする努力がこのたびは必要ではなかったでしょうか。扶助料の金額を見ますと兵では五万三千二百円、それから一階級ずつ百円刻みになって、少尉で五万三千五百円、ここに三百円という差がついている。わずかな差であってもこれは階級差ですね。兵は兵の公務扶助料になっているのです、少尉は少尉なりの公務扶助料になっているのです。私は、これは問題があると思うのですせっかくそうしたりっぱな考えを持って御提案なったとするならば、特に英霊の遺族に対して、そういう生前の階級がそのまま残されたような格好の扶助料をおやめになられて、兵、下士官というものを整理して、少くとも五万三千五百円の少尉のところがあれば、そこに一つにまとめてしまうという努力をどうしてされなかったのですか、それを一つ御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/50
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051・岸信介
○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、この恩給制度そのものが、やはり根本におきましては、やめたときの待遇を基準として割り出していくという建前をとっておるわけでございます。今お話の通り上に薄く下に厚くというような意味において、そういう階級差をなくしろというような考え方をある程度は取り入れて、兵についてはこうなっておる。そういうことになりますと、また他のところにおいても整理して一本にしたらどうだ、要するに階級の別をあれだけ多くせずして、少し整理して少くすることがいいじゃないかという御意思見でございます。私は御意見として、一応そういう御意見ももちろん立つと思います。私どもが今回のこの案を立てますにつきましては、主たるなには、文官と武官との間における不均衡というものを是正しなければならぬ。それからなるべく従来問題であった傷病者であると、か、あるいは下の兵の階級におけるところの取扱いについて厚くして、そうして公務扶助料の目的を委したいというところに主眼を置いて考えたわけでありますが、今お話のように、その他の階級を整理する、実は私ども今回の改正においては特に意を用いてそこまでやろうという考えで改正案を審議しなかったのであります。御意見としてはそういう御意見もありましょう脱し、また先ほど私が申しましたように、従来からの慣行をある程度尊重しながら、特に著しいところにおいては、また国民の感情なり、世論というものを取り入れていこうということの妥協でございますので、理論的に申しますと、今受田委員の御批判なり、御意見のようなことも出てくるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/51
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052・受田新吉
○受田委員 文官との比較から軍人の扶助料を引き上げたのだという改正の要旨があるのでございますが、これについて続けてお尋ねしますが、今文官並に武官を引き上げたいというお言葉があり、また総理はしばしばそれを申しておられるのでありますが、いろいろな恩給法上の旧制度の欠陥から、古い文官の中には、任免制度や給与制度上、今さっき例をあげたような特別措置がされていたので、非常に陥没した待遇を受けていた人があるのです。そういう人々は文官であっても公務扶助料が低いのです。特別公務は終戦当時の四十割といわれている。その倍率が適用されている文官でさえも二万円台の人があるわけです。従ってこういう人々を今回どう措置されているかと拝見してみますと、この方々は三五・五の倍率でなくて、九万円の仮定俸給に引き直した上に、それに対して三分の一の普通恩給、その二分の一の普通扶助料、その二六・五倍という、昭和二十八年の恩給法の改正後における文官の倍率を用いて計算される結果、こういう古い台湾や朝鮮の戦乱で殉職された文官の場合の公務扶助料は三万九千七百五十円という数字が出るわけです。兵の場合は五万三千二百円、兵と同列同級の文官と目せらるべきこれらの警察官は三万九千七百五十円、今回の改正措置で、明らかにここに文官の方が下に立ったのです。文官並みといわれているから、文官の方が高い地位にあるはずのところ、そうした制度上の血管に基く人々の場合は、文官の方が低いのです。これは非常に重大な問題で、軍人の場合は五万三千二百円、警察官は三万九千七百五十円、今そこで声があって文官々々といわれておったのですけれども、文官の方が実は低いのができたわけです。これは大きな問題だと思うわけですが、文官並みということをせっかくいわれているならば、文官においても、五万三千二百円の兵の公務扶助料を持つべきではない。少なくとも軍人の公務扶助料が五万三千二百円までは文官もみな引き上げなければならぬと思うのですが、これは多少制度上の差があったにしても、民主化された今日、旧軍人公務扶助料は五万三千二百円に食いとまっているということは、問題がある。倍率も文官は二六・五、武官は三五・五という差が作られておる。これは伺うところによると、政府の御意見では、これは今の自衛官が二等陸海空士が日額二百五円、それを月割にして六千円をこえる、さらに一等陸海空士は二百二十五円、それを月割にして、これを年額に直すと、八万一銭円になる。そうすると、九万円に近いのであるから、自衛官の一番下の者が殉職した場合には、一階級ないし二階級上るから、結局現在の文官の一番下にある自衛官が公務死をした場合の例をとられて、これに二六・五倍をかけると――その線よりは上にいかすべきではない、二六・五をかけると、やはり三万九千七百五十円になるわけです。結局現在の自衛官の例をとって、昔の文官はこの線で食いとめなければならぬといわれている。軍人の方は五万三千二百円になっているのですから、軍人と文官の方は今日の文官と比較して、もとの文官を例にしておられるのでありますが、この取扱いは文官並みということが、今日逆の現象を持った部面があることをわれわれは指摘しなければならぬ。総理大臣、こういう不均衡な措置が新たに発生したことに対して、これをこのまま黙認されてよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/52
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053・岸信介
○岸国務大臣 過去の官吏または官吏に準ずべき者の待遇、すなわち俸給その他につきまして、ずいぶん制度が複雑であったことはいろいろな発達の沿革からそういうことになっておるのであります。従いまして、先ほど申しましたような、現職をやめたときの待遇を基礎にいろいろなことを考えていくということにいたしますと、もと自体が今から見るならば非常に不均衡であるというふうなものが非常に複雑な制度のうちにもあったと思うのであります。その結果、今申されたような事例もありますし、また戦後において新しく出発をしておる公務員の制度、それは今は軍人というものはございませんが、やはりそういう警備の任に当る警察官やあるいは自衛官というようなものも出てきておるわけであります。それらのものとの権衡という問題もやはり頭に置いて考えなければならぬ。こういういろいろ複雑な制度におけることから生ずる均衡問題というのは戦後におきましていろいろと論ぜられ、一方を立てると、一方に何か穴が出るというようなことが、従来もずっと生じてきて、戦後今日まで恩給やこういうふうな手当等の問題につきましてはございまして、政府としてはそういう不均衡、理屈の立たないようなことのなるべくないように、調整に心がけて国政としてはいくべきであるということはもちろんであります。今の問題に関します政府の最後のそういうふうな決定になりましたいきさつなり、あるいは事務的の理由というようなものにつきましては、当局からお答えをさせますが、今お話のような不均衡が生じた原因はそういうところにあるわけであります。これを一時にすべて調整するというようなことも、いろいろな関係があって、なかなかむずかしい点もあると思います。そういう点は十分検討していかなければならぬことは言うを待ちませんけれども、一応こういう案にしましたことについては、やはり事務的の考えもあるわけでありますから、それをお答えさせることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/53
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054・八巻淳之輔
○八巻政府委員 受田先生から、台湾の巡査等で非常に低い俸給の方々につきまして、今回の処遇についてのいろいろの御質問がございました。この方方の俸給というものは大体無常に低1い公務扶助料を受けておるのです。そうした警察官の退職時、死亡時の俸給というものは、二十円とか二十五円とか非常に低い俸給でございます。これは初任早々そうした事故にあわれたというような事情もございましょう。そして、またそのことを考えてみますと、二等兵の三十七円五十銭という仮定俸給からは相当下回っておるわけでございます。従いまして同じ倍率が適用されたといたしましても、相当公務扶助料の額におきましては下回っておるわけでございます。今回これらの方々の公務扶助料を是正するにつきまして考えましたことは、文官に関する制度というものは、現在でもずっと引き続いて生きておるわけでございます。これは現在の警察官、自衛官につきましても、同じ制度でもってずっと引き続いてきておるわけであります。現在の自衛官なり警察官なりに対する公務扶助料の倍率というのは、低い方のクラスにつきましては、二六・五という倍率が適用されておるわけであります。従
いましてこれらにつきましては、一万五千円ベースに引き上げる。すなわち二方二千円時代の三三割をもらっておった人につきましては、一万五千円ベースに引き上げるが、しかしその倍率の適用につきましては、現在の文官について行われておるところの二六・五割というものを適用する。こういうことによって、と同時にその人の仮定俸給というものは、兵の二等兵の退職時の仮定無給よりもかなり低まっているというのを、二等兵の階級のところまで引き上げる。すなわち九万円のところまで引き上げるということによりまして、先ほど御指摘もございましたように、三万九千七百円というところの公務扶助料になるわけでございます。その程度に引き上げるということによって、文官における縦の均衡を重視するという点に留意したわけでございます発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/54
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055・受田新吉
○受田委員 総理、今お聞きになられたように、事務当局が考えておられる問題は、文官と武官の関係のみならず、文官の縦の流れもいろいろあるということであります。ところがこれは、一つ考えていただかなければならぬのですが、兵というもの、今二等兵を例にあげて、三十七円五十銭という仮定俸給をお話しになったのですが、兵は、一等兵、二等兵は、戦前において大体多少の変更はありましたけれども、昭和十七年ごろにおいては五円五十銭です。一等兵も二等兵も五円五十銭、五円五十銭という実際の給与しかもらっていなかった。それを三十七円五十銭という仮定俸給にくっつけている。警察官が二十円か二十五円の給料だといっても、これはほんとうの本俸です。兵の本法は五円五十銭、一等兵二等兵は、それを仮定俸給でぐっと引き上げたものがつけてある。軍人というものは大体そういうふうに仮定俸給が、実際にもらった俸給よりも一割前後高いところへ持っていかれたのがこれは普通なのです。少尉のごときは当時月給七十五円でございまするから、結局八百五十円ばかりのところの給与しかない。それが九百円くらいのところの、年額八百五十円という給与になっている。それが千円をこえるのです。仮定俸給をくっつけられておるというところで、実際にもらった給与と、それから仮定俸給というものが違っておったのです。従って文官と武官の恩給法上の待遇というものは、そういうところに差があるとともに、もう一つ、軍人は恩給納金をしてなかったのですね。支那事変からさかのぼって満洲事変のころまで、ちょっと納金をしたことはありますが、軍人には納金制度がなかった。もう一つは公務死の問題でございまするが、いつも私ここで例を引いたのでございまするが、公務死亡の範囲は非常に拡大されておる。責任自殺から、あるいは戦犯の処遇を受けて処刑された人に至るまで、あるいは戦地で戦病死された人にまで、内地における職務関連死の人にまで、この公務死の範囲が広げられておるのです。文官の場合は武官でいういわゆる殊勲甲に当る人が特別公務であり、殊勲乙に当る人が普通公務である。だから、きわめてまれな場合に、文官の四〇割あるいは三三割の倍率が適用されておったのです。そういう意味におきまして、公務扶助料の倍率を今回三五・五におしになられたのでございまするが、文官は四〇割という倍率が、ベース・アップをしないことになりまするから、これは三五・五に下ってしまう。両方同じになったのです。こういう意味においては倍率という問題は、これははっきりした線のあるものではなくして、時の流れでしばしば変遷をしておる。従ってこの倍率にあまりとらわれ過ぎてこういう扶助料の金額をきめるということは問題があると思うのですが、倍率にことさらにとらわれた理由はどこにあるのか、総理の御指名で総理が任命された臨時恩給等調査会、この調査会は半年の久しきにわたって総理の答申の趣旨に沿うて恩給法、援護法その他の関連の事項について報告を申し上げましたが、その報告の中に掲げられてあるものは公務扶助料の取扱いにおいては十個の意見が述べられております。その十個の中で一つの意見が公務扶助料の倍率を四〇割にせよという意見、あとはさまざまの意見が出ておる、これは不均衡化の除去というところに結論を出しておるわけですが、御遺族の処遇についてわれわれがここでその苦しい生活を守ってあげたいという気持においては、われわれは決して人後に落ちるものではないのでございますが、倍率の問題についてことさらにとらわれたことは私には納得できないのでございます。総理は三五・五割という倍率と、そうしてベース・アップ等をあわせ考える混合方式を、総理裁定によっておきめになられたという最高の責任者でいらっしゃいます。総理が裁定をされたのでこれはこうきまったのでございます。総理は三五・五割というこの倍率、答申案の中に三五・五割というものは十分の一の意見であります。四〇割ということをあげられた、その一番強いところを特に取り上げられた理由は、答申の趣旨と違うものではないかと思うのでございますが総理御みずから裁定された責任者として御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/55
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056・岸信介
○岸国務大臣 答申は相当の幅と弾力性を持って答申されておるわけでございます。私は政府のこの成案を得ますにつきまして、この答申の大筋はこれを尊重し、それに従っておると考えます。問題はこれは多年の国会における論議もそうでありましたし、また国民の間におきましても従来の文官と武官の倍率が違っておる、また倍率だけでなしにほぼ同じような立場にある文官と武官とが現実にもらう金において相違がある。文官は五万三千二百円でございましたか、に対して武官の方が三万五千数百円というような程度であり、ここに不均衡がある。これを是正しなければならぬ。一方この恩給、公務扶助料の増額の問題につきましては国家財政の全般を考えなければなりません。われわれとしてはそういうお気の毒な人に対して十分な扶助料を国として出すべきであると同時に、全体の政財計画というものを考えなければならぬ、こういうことをすべて勘案いたしまして、実額としては五万三千二百円現在もらっておる文官の人もそれは動かさない。しかし武官の同様の立場にある人に対してベース・アップをしてその五万三千二百円というものと実額を同じにするには、倍率として三五・幾らの率になる。これを文官も武官も同様にいたしますならば、従来ありました不均衡感というものを是正される。実額として五万三千二百円を給することによりまして、公務扶助料として、これらの犠牲を払われた人々に対して一応の国としての扶助料の責任も果せる。しかもこれが平年度化した場合三百億というものであるならば、国家財政の全体の規模からいっても、大体その程度であれば、国家財政に対して非常な重圧を加えて、そして国家財政の危機を招くということもなかろうという判断のもとに立って、そういう決定をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/56
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057・受田新吉
○受田委員 私のお尋ねしているのは、倍率にとらわれ過ぎているということを申し上げたのであって、五万三千二百円の金額をかれこれ言っておるのではありません。むしろ私たちとしては、そうした低い処遇を受けている遺家族に対して、すでに五万四千円の程度のものを支給してもよいという党の案も一応用意したくらいのことでございますから、金額の問題を申し上げているのではありません。倍率にとらわれているというところに問題がある。倍率というものは、その時その時の流れによって相違がある。そうして今申したような、兵を伍長、軍曹、曹長と上に整理することによって、倍率もだんだんもっと軽くなる。そういうような階級差を整理するというようなこと、また軍人の差別観念をまた今日も残しているものをだんだん改善していくというところに、総理としては手をつけられなければならなかったと思う。そういう努力を怠っておって、倍率問題にとらわれ過ぎている。特に御遺族の団体である遺族会などの要望で、倍率に関してとらわれ過ぎた。そういうところが、圧力団体による圧力を受けられたというような批判も受けると思うのです。遺族、大衆一般の生活に困っている階級の低い人々、そういう人々のことを考えたら、むしろ倍率よりも実際の金額を相当のところへ持っていって、倍率論の論争を避けるような努力をされた方が、私はよかったと思いますが、総理は判断をお誤まりになったのではないかと私は心配するのです。私の申し上げていることは、一つの意見としてお聞きするにとどまることでございましょうか、考え直すべき問題ではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/57
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058・岸信介
○岸国務大臣 従来議論として、軍人は二六・五でしたか、文官については四〇という倍率の差があり、これが非常に不均衡であるという不均衡感を生じしめている大きな原因であったと思います。私はそれよりもむしろ――今の実額の五万三千二百円が低過ぎて、もう少し高い方がいいじゃないかという御議論もありますが、財政の見通しは五万三千二百円に合わすというところに主眼を置いて、その結果として、そうすればこの倍率がちょうど三五・幾らというところで、文官も武官も同じ倍率という結果になるということで、この論議の的となっておりました、倍率が相違しておるあるいは不均衡だという議論が、それによって解消される。要は文官と武官が現実にもらっておる五万三千二百円のところまで引き上げていくというところに――これは不均衡だからといったって、現にもらっておる人の実額を下げるわけにはいきません。実額を上げて是正しなければならない。実額を上げる場合において、今言っているように、四〇割という議論があるのだから、倍率をもし四〇にしてなにすればいいじゃないか、しかしこれは非常に大きな額になりますから、相当財政上の負担も困る。そこでその実額を合わして、その結果としてちょうど文官もべース・アップする結果としまして、三五・幾らという倍率が計算上出てくるわけであります。私は倍率自身にとらわれたというよりも、実額を今もらっている文官の五万三千二百円というところへ、軍人のうち兵の階級の人を合せる。そうすれば結局四〇割の倍率を主張しておる方からいえば、四〇割になっていないか――依然としてそういう議論があるかもしれませんが、しかしそれはその倍率というところに非常に重点があるのじゃなしに、もらっておる実額においてそういう差があることが望ましくないということで、それを合せた結果として、三五・幾らになっておるというふうに御解釈を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/58
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059・受田新吉
○受田委員 もうこの論争を続ける必要もないかと思いますが、倍率にとらわれた結果になっていることは、結果的に見たらそうなっている。そうして旧文官は信奉をやはり三五・五に引き下げられて、同じになっておる。そうしたところに、文武宙の不均衡を是正しようとせられる総理の御意思にかかわらず、逆に文武官の間に新しい不均衡が生まれてきておる。それは先ほど来何べんも申し上げた通り、仮定俸給のきめ方が文官と武官と違う。納金制度があるのとないのと違う。公務死の範囲が違う。いろいろなところでこれを一つに考えることがむずかしいのです。また特別公務と普通公務を考えてみると、特別公務の方にこれを考えられるというところに無理がある。従ってこの比較論はむずかしいのであって、解決は容易でない。従って倍率にあまりとらわれ過ぎないで、遺家族の処遇を考えるほかの方法を考えた方がよかったのではないかと私は今お尋ねしておる。
なお、この問題はさておきまして、今お答えをいただいたことで新しい問題を提供したいのでございます。恩給法の建前から言うならば、旧軍人と旧文官は恩給受給権の上において根本的なものは同じにいたしましても、その取扱いに今申し上げたような例で差かある。従って文官の場合は、今の文官に合せて扶助料をきめるという措置を、今回の改正もちゃんとしておられる。従って文官の場合は、現在の公務員と過去の公務員には一貫した一つの流れがあると政府自身も認めておられるのじゃないかと思う。軍人の場合には、扶助料において現在の自衛官と比較はできない。比較すれば、三万九千七百五十円以上に上げるわけにはいかない。それを五万三千二百円にしておられるということを見ると、これは明らかに文官と武官を差別待遇をされる考え方が、今回の改正措置においてもされておることはおわかりだろうと思う。もう一つは、恩給納金の上から言いましても、現在の恩給法できめられておる恩給納金制度は、皆の人にもそのまま適用されておったのでありますから、お互いの恩給を将来いただくための掛金を保険システムでやっておるという前提が一つある。そういう意味から言ったならば、旧軍人と旧文官の恩給法上の取扱いは、ここで分離して考えなければならぬ。ことに今回国家公務員退職年金制度について、総理は先般も、これから後こうした制度を国家管掌にするか、組合管掌にするかということについても、ずいぶん御苦労しておられるようでございますが、人事院が勧告しておる国家公務員退職年金制度、今総理府が企画しておられる退職年金制度の骨子は、恩給法から退職年金法へ移行しようという考え方であって、旧文官も新文官も一部これに入れようとしておる。特に遺族になったような人には、新しい退職年金制度を適用させようとしておる。そういう意味からいったならば、旧文官は、現職公務員の退職年金制度とつながりを持たせるような方向へ持っていくべきではないかと、かように考えるのでございますが、総理いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/59
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060・岸信介
○岸国務大臣 公務員の従来ある恩給制度というものを、退職年金制度に変えていくということについては、政府も大体方向としてさように考えて検討いたしております。ただそれを組合管掌にするか、あるいは国家管掌にするかという問題に関しましても、いろいろと議論がございますので、十分に検討を加えて参りたいと思います。そこで従来の恩給制度というものを、そういう退職年金制度ができた場合に、どういうふうに吸収し、どういうふうに調整するかという問題につきましては、御承知の通り、人事院の勧告におきましても、今おあげになりましたような方法によって吸収していく建前をとっております。これらの点につきましては、今政府としては十分検討中でございまして、結論は得ておりませんけれども、やはり私は退職年金という制度が適当な方法で立てられて、そうして従来の恩給制度もこれになるべく吸収していくというふうな方向で一つ成案を得たいとかように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/60
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061・受田新吉
○受田委員 新しい退職年金制度へ古い文官を吸収していく方向に持っていきたいということでございます。これには新しい退職年金制度というものが、人事院の勧告に従えば、これは国家管掌になるわけです。また大蔵省が考えており、きのうも衆議院で通った国家公務員共済組合法は管理方式では民主的な組合がやるということになっているわけです。そうした組合員の積立金を組合員みずからが福祉厚生のために使おうという考え方が、これが共済組合方式であり、またその管理を国自体がやろうとするのが、これが国家管理方式だと思うのでございますが、この二つのあり方について政府がいずれかの態度をきめておかれないと、いつまでたっても解決しない問題だ。人事院はすでに五年前に勧告しておるのです。その勧告を今日までなぜ実施しなかったかという問題、それからきのうはこの国家公務員共済組合法が衆議院を通っておるというこの現実等を十分総理は認識しなければならぬと思う。総理は、あなたのお考えとしては、公務員の退職年金制度というものは少くとも国が管理すべき性格のものと思われるか、あるいは共済組合法式というものに対して一つの魅力を感じておられるか、これだけは、あなたの大きな考え方くらいはお持ちになっておられないと、これらの運営にお困りが生ずると思うのです。大きなところを一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/61
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062・岸信介
○岸国務大臣 この制度は実は私、国家管掌にすべきか組合管掌にすべきかということが、今回提案をいたしました公社と関係の深い、公企業関係の郵政職員のなにをやったわけでありますが、これは公社との関係もすでにございますので、組合管掌の方式でやりました。人事院の勧告というものの趣旨をよく検討してみますると、それにも相当な理由があるわけです。と申しまするのは、公務員に対して、国は使用主として特別のいろいろなむずかしい内容を持った勤務を要求しているわけです。それを十分忠実に果された場合において、それに対する年金というものについて、国自身が第一線の責任を持って、国がその責任を負うのだというのがその一つの筋じゃないか。組合はなるほど民主的でございますけれども、それは入っておる組合員同士がお互いに共済する性質のものであり、国というものの責任は、もちろん国も全然責任を負わないわけじゃありませんが、第二次的な立場に立ってくる。それが国家管掌であれば、一切の責任を国が負担しているということで、ございまして、各国の制度も、いろいろと立法例等を見ましても、なかなか国家管掌の例がたくさんあるのであります。従ってこの問題につきましては、私は実を申しますと、今どっちがいいかと言われると、組合方式にもいいところがございますし、国家管掌いう方式にも、決して従来の特権的階級の考えを存しておるとかいうことでなしに、やはり国家における公務員というものの本質から申しまして、検討してみる価値のある問題でありまして、十分一つこの点は検討いたしまして、次の国会までにはその結論を出していかなければならぬというような考えのもとに鋭意研究をいたしております。今お尋ねではありますが、私の考えとして、どちらをということを申し上げるまでに、私の研究の段階がまだいっておらないということを御返事申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/62
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063・受田新吉
○受田委員 岸さんも、両岸外交といわれるあだ名を持っておられるわけでございますが、あなたが総理になられて一年以上たっておるが、人事院勧告は昭和二十八年に出されておる長い間の懸案です。あなたのような青年総理を迎えたこの機会にこういう問題を早く解決すべきだと思う。すでに今日総理となられて一年有余に及びながら、なおいずれかというので、今もるる御説明になりましたけれども、いずれ何か決断が出るかと思ったら、結局まだ検討中ということになったわけです。きのうは、衆議院の大蔵委員会で、この共済組合法案の通過の際に、大蔵委員会は自民党、社会党あげて一般職の公務員つまり非現業の雇用人でない一般公務員に対してもこの共済組合方式を採用すべきであるという付帯条件をつけておる、この現実を総理どうお考えになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/63
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064・岸信介
○岸国務大臣 私は決して組合方式がいかぬと今申し上げておるわけじゃございません。そういう有力な意見もありますし、一方人事院が勧告いたしましたことにも相当な論拠があり、考えなければならぬ問題があるから、私としてはいろいろ彼此研究をいたしておる段階でございます。必要な時期におきましては必ず決定をいたすべき問題であります。必要なときにもしもきまらなければ、これは両岸でありますけれども、(笑声)ちょっとその点はもう少し検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/64
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065・受田新吉
○受田委員 私は岸さんの青年的な若さというものに常に期待している一人です。あなたに対する国民の期待もまたそこにある。あなたのその若さとその明るさというものでこういう問題に早く解決をつけないから、至るところに問題が発生しておるのです。早く手をつけるべきだったのです。もう三月の初めころから総理府と大蔵省の間に見解の相違がある。ずいぶん外部の新聞にもたたかれておる。総理がどちらにいくかというのでみな注目しておるのです。そして公務員も迷っておる。ここで早く政府が方向をはっきりしなければならないときがきているのです。従って十分検討をされる期間が長過ぎることによって、公務員に不安を与え、国民にも疑惑を与えることにもなるのであるから、少くとも大蔵委員会からこうした付帯決議が出るような段階になるまでに、何らかの形で政府が意思表示をすべきであった。人事院勧告とは逆の方向の意見が一つ出ておることは御承知にならなければならぬと思います。それから今まで私たちがお伺いしておるところの総理の見解におきましても、公務員の、管理方式といたしまして、国の雇用している公務に対する考え方には相当国の責任を感ぜられるようなこともいたしておるのでございますが、そういうものがどっちにいっておるかということに、われわれは今疑義を持たざるを得ません。
もう一つ、ここで問題にされるのは、文官と武官の比較へちょっとあと戻りをしますが、あなたは昨年のあの調査会の答申の中に二つの大きな流れが示されておったのを御存じだろうと思います。すなわち、ベース・アップ方式と公務扶助料をどうするかというこの二つの問題、これが文官の場合と武官の場合にはこの考え方が変ってくると思うのです。これは先ほど申し上げた文、武官の相違点ということを考えるときに、一律に考えるということに問題があると思うのでございますが、何はともあれベース・アップ方式というものを、総理は今後現職の公務員の生活様式、物価水準というようなものの変遷に伴って給与が変っていく際には、やめた公務員も当然これに準ずる方式をとるのが適切であると思われるかどうか。これを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/65
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066・岸信介
○岸国務大臣 主義としては、方向としては、やはりそれは均衡をとっていかなければならぬと思います。こまかい問題はいろいろ何はありましょうけれども、大筋としては、私はそのように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/66
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067・受田新吉
○受田委員 ベース・アップ方式は原則としてはこれを認めなければならない、認むべきであると思う、こういうことであります。また現在の公務員の給与改善とあわせて、古い公務員にも、そのときとどきにの経済情勢に即応させるような改善方式をとるべきであるというのは、国家公務員法第百七条、第百八条の新しい恩給制度に対する考え方の上にも、これが示されていると思います。従ってあの答申の中にも、このベース・アップについては政策的見地からこれを考えてもよろしいという声が出されているわけです。私たちは文官と武官の分離を一応考えなければならぬという立場から、いま一つ御所見を伺いたいのでございますが、今回のこの法案を拝見しまするとベース・アップの方は相当きびしい年令制限がしてあるわけです。これは現在の文官にもつながる問題でございまするが、これは、総理が初め裁定を下された当時の考え方は、そうした制限があったのか、あるいは前の二年とうしろの二年とを分けるというような考え方があったのかどうか。初めは、ベース・アップと扶助料を混合方式でやるという率直な形で出されたものが、途中で変更されたとも聞いているのでありますが、この点裁定の責任者である総理みずからの声を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/67
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068・岸信介
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、今度の裁定につきましては、恩給制度そのものの内容ももちろん大事なことでありますが、総理大臣としては、予算の規模といいますか、三百億という一つのワクを考えることも、これは非常に大きな責任であると思います。あるいは私ども恩給そのものだけを切り離して考えますと、いろいろお気の毒な方等に対してこうもしたい、ああもしたいという気持が起ることは当然であろうと思います。しかしやはり国家財政の全体というものを見てやらなければなりませんので、この三百億という一つの大きな平年度におけるワクを考えました結果としましては、今お話のような混合方式でいくほかはないという、一応の考え方をいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/68
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069・受田新吉
○受田委員 最初お考えになられた、裁定された当時のお考えと、それから結果的に現われた法案とは、姿が相当変ったものとなったことを、総理御自覚ではありませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/69
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070・岸信介
○岸国務大臣 もちろん私が裁定をいたしましたということは、細目にわたってまでいたしたわけではございませんで、いろいろこれを今申しました幾つかの柱の範囲内におきましてきめた範囲内において、事務的に検討いたしまして成案を得たわけでありまして、成案通りのことを私が細目にわたってまでその通りに裁定したというわけではございませんで、この問題に関する従来のいろいろ意見の違う大筋について私の意見で決定し、そのワク内において、さらうに当局において検討して成案を得た、細目についてはそういう経過を経ているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/70
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071・受田新吉
○受田委員 私はもう一つ。調査全長の答申とあの裁定、もう一つは社会保障制度審議会の意見というものを、あわせてお尋ねしたいと思います。臨時恩給等調査会はあなたの諮問に応じてお答えした。その後に社会保障制度審議会が意見書を出したわけです。つまり調査会の答申に関しての意見書でございまするが、予算上の措置として、この恩給費があまり増額することは好ましくないという意味の意見書が出ているわけです。あなたは、諮問をされた調査会というものと、社会保障制度審議会と両方をはかりにかけて裁定されたのでございましょうが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/71
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072・岸信介
○岸国務大臣 別にはかりにかけてどうしたということじゃございませんで、私先ほど申したように、従来からの論議があり、特にこの恩給制度に関する御審議を願った調査会の答申というもの、それから総理大臣として国家財政の規模であるとか、将来の見通しというものについての考えというものからいたしたわけでございまして、今の社会保障制度審議会の、予算上これが大きくなるにとは望ましくないという趣旨も、もちろんそういう意見書が出ておりませんでも、総理大臣としては当然考えなきゃならない問題でございまして、特に両方の答申なりあるいは意見書をてんびんにかけて云々というような意味ではございませんで、趣旨としてはむしろ恩給等調査会の答申を尊重して、その線において、しかも国家財政の何を見てやる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/72
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073・受田新吉
○受田委員 あなたの御苦労のほどは十分わかりますが、しかし結果として現われているものは、これが予算総額の上に相当の比重を占めるというので批判を受けられたわけです。従ってここで批判を受けられるに至ったいろいろのいきさつもありますが、世論の中にもまた旧軍人などに対する感情的な考え方から、きびしい考え方が出まして、たとえば、年に六十万円も七十万円も恩給をもらうような、大将とか元帥もおるというくらいに、きびしい行き過ぎの意見も出ているわけです。けれども公平な見方から言いますならば、やはり軍人恩給というものに対する考え方の中には、遺族の家庭に対する処理というものに対して、そう厳格な批判があるとは思っていない。しかもその遺族の中で、その夫を失ったり、子供を失ったために生活に困っておる家庭に対する同情というものにやぶさかではありません。そこで恩給費の七、八割を占める、本年度でも六百八十億にも及ぶといわれる公務扶助料の分は、これは恩給の性格からはずして、これは遺族の特別の処遇を考える意味から遺家族援護費という形のものにして、そっと軍人恩給からはずしてやるという考え方はあなたは適当と思うかどうか、あなた個人の御見解もあろうと思うのでございまするが、そういう方向に遺家族の公務扶助料の性格は内容的には持っていくべきものではないかと思います。軍人恩給の批判の中にそっと一緒に入っておるということにも問題があると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/73
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074・岸信介
○岸国務大臣 今回の恩給法の改正が、最初ずいぶんきびしい批判がありましたことは受田委員のお話の通りであります。しかしよく内容が検討され、理解されるにつれて、最初の非難なり、きびしい批判というものは、よほど形が変ってきていると私は思います。それは今度の改正の主要部分が、なくなった方の遺族扶助料を中心とするものである、及び傷病者に対するものが主たるものである、生きておる軍人の扱いに対するなには、ごく軽微なものであるというような、内容がはっきりわかってそうなったわけであります。しかし今受田委員のお話のように、これを一つにしているから、そういう批判なり誤解なりなにが出て、かえって国民の多数の人が考えておる気の毒な遺族の方に対する扶助料まで道連れにしたということは、はなはだ心外なひことであるというふうな、この考え方から、これは分けたらいいじゃないかというお考えも一つの考え方であると思います。ただ従来の恩給法の建前は、私がここで申し上げるまでもなく、生きている人における場合だけじゃなしに、死んだ場合における遺族に対する手当まで含めて、恩給という制度の中に持っておるという行き方に従来はずっとなっております。今の二つに分けろということにつきましては、一つのお考えでございますから、われわれとしても研究はいたしてみたいと思いますが、これこそ今の恩給法の根本に触れる問題でございますので、十分検討をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/74
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075・受田新吉
○受田委員 あなたは昨年本会議でも、恩給法というものは、特に軍人の恩給というものは、戦争の処理をする問題の一つでもあったということを、二十八年の改正のときの状況から言っておられるのです。そういう意味から言ったならば、恩給法をいつまでも従来の形に残そうという努力はあまりされなくても、もう時代は変っているのですから、一つこの際敢然と恩給法の分断、文官は新公務員の方へくっつけ、また生存軍人と遺家族の問題と傷病者の問題等を分離して考える。特に公務扶助料の対象になる人、あるいは傷病者は生きて苦労されておるのでございますから、よけいわれわれは考えてあげなければならぬ問題があるわけでございます。そうしたもの等をはっきり区別して考える考え方にいくならば、これは国民感情も十分緩和する道が開けると思うのです。そういう方向を私はとるべきではないかと思うのです。いかがでございましょうか。考え方の一つとして認める程度でございますか。もう少し進んだお考えがありますか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/75
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076・岸信介
○岸国務大臣 受田委員は非常に強くその御意見を主張なさっておるようであります。私もちろんこれは有力な御意見と考えております。しかしまだ恩給の根本をそういうふうに変えるのにふさわしい時期であるかどうかにつきましては、なお検討を要する点がありはしないかと思うのです。というのは、遺族の方々の気持から言うと、もちろん受ける金額の多寡ということも重要でございましょうが、あの戦争に召集され――それは今の時代とは違う時代のもとにおいて、ああいう陛下の軍人という意味において召集されて行った。それに対して国がそのまま――先ほど来お話のように、恩給制度というものが一つの特権的な発達の意義を持っておるじゃないかという意味から、恩給法においてなにされるということにも、やはり国民感情の一部はことに遺族の一部はそういうことに対する感じも残っておると思う。現在それが全部割り切られて生活に困らなければいいんだ、生活に困れば社会保障制度でもらうのだ、他の一般の社会生活上の困窮者と同じく、社会保障でもらうのだということでは、やはり国民感情で割り切れない、満足できない感じが私はまだ残っているだろうと思う。そういう際でありますから、受田委員のお考えも有力な一つのお考えだとは思いますけれども、政府としてはまだそこまで踏み切るだけの決意もございませんし、十分一つ世の推移とともに検討したい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/76
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077・受田新吉
○受田委員 私は最初に申し上げた恩給法の特権的な考え方を総理がまだ何かの形で残したいというお気持を持っておられることを御忠告申し上げておきたいのですが、今仰せられた社会保障との関係などにおいても一つ問題がある。たとえば非常に低額な恩給をもらっておる人がある。一万円とか二万円、こういう人々は、昔の古い制度でもらっておりますから、いつまでもこれに尾を引いて、恩給法上の扶助料をもらっておる者は、生活保護の対象にもならないわけです。生活保護の対象からはずされておるのです。このわずかな恩給をもらっておる、扶助料をもらっておる人は、生活の補助を受けるべきではないという取扱いがされておるというところにまた新しい問題が発生するのです。従って最低保障金額というものも、いずれ国民年金の四万二千円案が来年から実施されようとしておるわけですが、そういうものを考えた場合に、最低保障というものもすでに順序として考えてていくべきではないか。総理は社会保障制度審議会の国民年金委員会の試案などに対する意見として、大内さんに対するお話の際かに、来年度からこの国民年金制は実施したいというお話があったと聞いておりますが、社会保障制度審議会が構想を持っておるものについて、できれば来年度からこれを考えたいというお気持があるかどうか。そして今の低額所得というものは、そういう場合には現在の法律の上でまずそれを直してあげる用意が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/77
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078・岸信介
○岸国務大臣 国民年金につきましては、せんだっても大内委員長と会いまして、考え方が審議会においても二つある、すなわちいわゆる国民年金として完璧もしくは完璧に近い理想案を一つ立てまして答申すべきだという考え方、しかしそれは日本の財政負担その他から見て、そういう理想案は望ましい案であるけれども、なかなか急には実現できぬだろう、相当な年限と準備を必要とする、しかし国民年金案としては理想に近い案を作るべきであるという考えと、あるいはその理想から相当隔たっておるかもしれないが、財政の見地その他実現の見地を考えて、まず最初に出発するときは完璧ではないが、早くこれを実現するという意味からいうと、その理想案から相当遠ざかってもやむを得ないと思うが、一体総理としては考えとしてどっちをとるのか、私は一日も早くこれを実現したい、なかなか国家財政の点もあって、最初には理想的な案にはならないかもしれないが、しかし私はできれば三十四年度から実施したいと思うから、むしろ今の二つの案においては後者の、理想案には相当の開きがあっても実現性のある案を私としては答申されることを希望するということを申したのでございます。もちろん専門家のそれぞれの権威の人の御研究ですから、大内委員と私と話したときの具体的な内容を明らかにしておるわけではございませんから、どういう答申になるかは、審議会の審議の結果を待たなければわかりませんが、いずれにしましても、私としてはそういうふうにできるだけ三十四年度からこれを実現したいという熱意を持っております。
それから、先ほど低額の恩給を受けておるために、生活保護を受けることができないというようなお話でありましたが、今事務当局から聞きますと、そういう場合には恩給をもらえないのではなしに、恩給額を差し引くというような扱いになっておるということであります。いずれにしましても、非常に低額な恩給、そのためにかえって迷惑されるというような事態が起らないように、これは制度の運営としては考えていかなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/78
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079・受田新吉
○受田委員 低額所得者に対しては私たちの方でも三万六千円以下の者は、国民年金移行の過渡的措置としても、三万六千円まで引き上げてやろうという措置も考えているわけであります。そうした心づかいが、生活苦にあえぐ大衆の上に与えられなければならない。今生活保護費の中から差し引くと言われておるが、その適用を受けておる人はきわめてまれなんであって、現実には、恩給をもらっている者は、たった一万もらっても恩給受給者としてやられているのです。ここを一つ考えていただきたい。もう一つは、恩給外所得、この方は手きびしくやらなければいけないと思う。これを放任しておいてはいけない。今回改正措置で増額分を五割に押えておりますが、これはもっともっと高い率で押えて、他に恩給以外の所得か少くとも百万円もあるような人は恩給は御遠慮していただくくらいの、そういう法的措置をおとりになるくらいの方が、政府としては賢明ではないかと思うのです。いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/79
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080・岸信介
○岸国務大臣 方向として、考え方としては私も受田委員のお考えと同感であります。ただすでに得ておる者の既得権というようないろいろな法律的の解釈もございますので、いろいろな問題があるようでございますけれども、方向としては私は全然同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/80
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081・受田新吉
○受田委員 そういうお考えがすべての施策の上に現われると、まことにめでたしめでたしになるのです。つまり、それもやはり一つの社会保障制度の前進、下の方を優遇し、上の方を押えていくという考え方になると思うのです。恩給法の中にそのことの規定があるわけです。恩給以外の所得を防止するということ。だから、五割以上にもっと大きく押えるということをおやりになる必要があると思います。方向に対して御共鳴いただいておるので、これの具体化をさらにお願いしたいと思います。
もう一つは、あなたにこの前お伺いしたことでもあるのですけれども、今度の恩給法上の取扱いの中にきわめて例外な規定が一つあることは、未帰還公務員です。まだソ連、中共から帰らない公務員、これは恩給法では若年停止で今実際は支給を受けていないことになっているのですが、恩給法上の特権もない。留守家族手当の上でも、これは生計の主体者だけが留守家族手当をもらっている。次男、三男はもらっていない。だから、未帰還者の中で、長男であるとか生計主体者であるという者を除いて、あるいは両親が六十才以上の者を除いて、そのほかの者は留任家族手当もない。未帰還者に対する今度の改正措置にも書いてあるのでございますが、これらの人々に対する恩給もない。一文もなくしてソ連、中共の空で御苦労していただいている方が、約二万人ばかりある。未帰還者の中で四割近くもある。びた一文国からもらわないでおる人々がある。これは私は問題だということで、かねてからこれを政府に要望しておるのでございますが、政府はまだ何ら具体的な処置をしておられません。法理的に見て国家公務員であり、現に国家に有形無形の奉仕をしておると見られる者に対して、給与を出さないということが許されるかどうか。同時に、政府はこれに対してどういう措置をとろうとせられているのかというお考え等を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/81
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082・岸信介
○岸国務大臣 私まだその事実について具体的の取扱い等のことを承知いたしておりませんから、便宜恩給局長から一応お答えをさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/82
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083・八巻淳之輔
○八巻政府委員 未帰還者の留守家族で、すなわちソ連、中共に抑留されている方々の留守家族で、留守家族手当を受けられないという方々があるわけです。また恩給法上の公務員が未帰還者である場合におきましては、その方が四十五才未満であるというので、普通恩給の年限に達しましても、留守家族で普通恩給を受けられないという方があるという点の問題でございます。しかしながらこれは留守家族一般の問題でございまして、公務員のみならず、一般邦人の留守家族についての共通の問題になるわけでございます。従いまして次、三男の方々が向うへ行っているために、その人によって扶養を受けられなかった留守家族の者が、受けられなかったというために、留守家族手当が支給されないという建前に現在留守家族援護法ではなっているわけですが、留守家族援護法でそうした人にも何らか精神的な慰謝と申しますか、そういう意味で留守家族手当の支給の範囲を拡大できないか、こういう問題が一つ。
せめてそれができないにしましても、公務員で向うへ行っている限りにおいては、そのかわりに普通恩給の若年停止を排除できないかという問題が第二段階であろうと思うのであります。私ども恩給法の立場から申しますと、そうした社会政策的なと申しますか、留守家族援護対策の問題を、単に公務員の未帰還者留守家族に対してだけ恩給法で解決するということはいかがであろうか。恩給法上の若年停止という一般原則に対する例外をそのために作ることになる。こういうような見地からいたしまして、若年停止の排除ということについては相当検討を要する、こう申し上げておったわけであります。また過般の臨時恩給等調査会の答申におきましても、そういうような見解が現われているわけでございますが、この問題は厚生省の方の問題も一方におきまして十分検討されていることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/83
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084・岸信介
○岸国務大臣 ただいまお答え申し上げましたような扱いになっているのでありますが、実は未帰還者の問題につきましては常に心を痛めている問題でございます。戦後すでに十数年を経て今なお帰ってこられない、しかもそれが行方不明であって、生死不明の状況にあるというのが大部分でございまして、そういうことを何とかして早く調査し、帰れる者は一日も早く祖国に迎えるようにしなければならない、これは留守家族の人々の強い要望であり、また国民の胸を打つ要望であると思っております。この問題を何とか早く促進し、解決するような努力は一方いたしております。しかし時日が相当たっておりますことと、まだ国交も回復しておらない国もありますし、いろいろ治安情勢も不明のところもございますし、これを突き詰めることは非常にむずかしいことであります。と同時に、留守家族の人々に対する援護ということが、あれはたしか来年の七月に終ることになっております。そうした後においてこれらに対して国としてどういう処置をすべきかという問題は、実はいろいろと各方面からの意見も聞き、研究をいたしておって頭を悩ましている問題でございます。今おあげになりましたような事例に対しましては、今恩給局長が申し述べましたような扱い、これもやむを得ないことかと存じますが、一般未帰還者の問題については今私が申し上げましたように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/84
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085・受田新吉
○受田委員 総理大臣は、戦争の処理をなさる衝に当られるきわめて責任の重いことを自覚し、十分謙虚に努力しておられると思うのですが、この未帰還者の存在もやはり戦争の大きな犠牲です。まだ大陸の荒野にさまようておられるか、あるいはしかばねをさらしておられるかわからないが、そういう人々が五万人近い数いるわけです。これも現実の問題です。家族の人にしてみればまだ待ちわびているので、そういう人々のことを思うと、同じく戦争責任を問われたけれども、今日その疑いが晴れて祖国の政治の衝に当っておられる総理並びにまた相次いで政界にも復帰されようとする多くの方々のことを思うと、この方々は総理を含めて、まさにわが世の春をうたっておられる。今、全山春景色です。ところが今朔北の地に、あるいは果てしない大平原にかばねをさらしておるか、どこをさまようておるかわからぬというような人が五万近くおるということを思うと、わが世の春をうたっておられる総理といたしても、これは一つ十分考えて、その苦痛をどうはらしてあげるかという努力を思い切ってされなければならぬ。この間ここで厚生大臣が、中共の引き揚げについても厚生大臣の責任でやるのだというようなお話もあったし、また何かの形でこれらの問題を処理する機関を作りたいというお話もあったのですが、現実にさっぱり進行していない。これは法制局長官の答弁でもいいのでございますが、国家の公務に従事しておる未帰還公務員は、これは国家公務員法上の公務員には間違いない。ただそれが未帰還者であるというだけなのです。従って国家公務員であって、留守家族の手当ももらわない、また別に給与法の手当も受けない、国家から何らの手当を受けないで、ただ奉公をしている人々が二十八年八月一日からできたのです。私はこれは問題だと思うのです。国家に有形無形の奉仕をしておる公務員に対して、給与を与えないということが許されるかどうか、これは一つ考えられてこの問題の解決をはかっていただきたい。もとは未帰還者に対しては未復員者給与法というものがあった。これが廃されて一本になって、みんな援護の形に持っていってしまった。給与を支給しない職種があるということは、これは法律的に見て許されることかどうかということを、あわせて御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/85
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086・林修三
○林(修)政府委員 今の問題、私も伺っておりまして、確かに、ちょっとおかしな点だと思うわけでございまして、この留守家族援護手当を作ります以前には、いわゆる公務員につきましては、非常に低いものでございましたが、公務員である限りには俸給は出ていたわけでございます。それが人事院規則等で、それを場合によってはベース・アップをしてやってきたわけでございます。その点を、留守家族手当に統合いたします際に、その手当をどうしたかという問題でございます。これはちょっと私、関係当局の実際にやっておることを確かめてみませんと確たる御返事はできないのでございますが、この未帰還留守家族等援護法の附則の第九項の特別手当はそういう人々に出せるのじゃないかと、実は私は法文から見ますと、思うのであります。実際はどういうふうに扱っておるか、この点は確かめてみませんと確たる御返事はできませんけれども、法律を見ますと、「現に旧法又は従前の公務員給与法附則第三項の規定により俸給の支払を受けている者が、この法律による留守家族手当の支給を受けることができない場合には、その者及び従前の例によりその者と同順位にある者に対して、昭和二十八年八月以降、毎月、その俸給の額に相当する額の特別手当を支給する。」と書いてあります。これは本人にいくことになっております。本人にいく関係で、実は留守家族にいっていないのではないかと私は思うわけでございます。あるいはその点が実際に渡っておらないのじゃないかと思いますが、御本人に対しては、この法文から見ますと、私はこういうものは出せるのじゃないかと思います。これは実務の方をよく確かめてみませんと確たる御返事は申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/86
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087・受田新吉
○受田委員 これは給与上の問題として一つお答えを願いたいと思うのですが、本人には出せる――現実には本人にも留守家族手当として出す以外には出せません。これは本人がもらうならば問題ないのです。本人がもらうものを留守家族が代行すればいいのです。そういうことを考えたならば、少くとも総理としては、国家公務員で国から給与を受けない人がおる、しかもそれが国の責任で不遇な地位に置かれて外国に取り残された人であるとすれば、一切のものを犠牲にしても救い出さなければならぬと思う。これは大事なことです。だから留守家族にしても早く扶助料をもらいたいという人もあるので、そこで死亡推定法案というものが出る動きもあったわけであります。この点は、早く金がほしい人はそういう何かの扶助料でももらって生活を守りたいと思うし、また生存を信じておる人は、絶対にそれをいただきたくないというので、紛争が起っておる。こういうところを考えられて公務扶助料に準じた金額を留守家族である人にでも、また未帰還者の人にでも別の給与の形式か何かでもって支給されるならば問題は解決されると思うのです。この点を一つ戦争の犠牲者の最も悲惨なものとして、総理は今あなたの置かれておる立場を最高度に活用されてこの人々を守って上げませんか。これはあなたの長い巣鴨生活における御苦労を思い出されて、一つこの人々を守ってやろうというところにあなたの政治の重点を置かれることを私は希望するのです。これは厚生大臣もここで何とかする、総理とも話してやるということを言われたが、さっぱり手が打たれていないのです。これは法制局長官も今疑義を持っておられるのですから、政治の欠陥です。今恩給法の一部改正が出ておるのですから、そこを恩給法の問題としても、または給与上の問題としても、あるいは援護上の問題としても、何かの方法をもって、国から一文の給与を受けていないこれら二万有余の人々の家族、あるいは本人を救って上げるということをお考えにならなければならぬと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/87
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088・岸信介
○岸国務大臣 私の承知しておるところによりますと、今来帰還者はいわゆる消息不明であって、その人が生きておられるかどうか、またほんとうに死亡されたのかどうか、こういうことが不明な方であって、これがわかっており、消息のはっきりしておる者につきましては、本人が祖国に帰られるような措置もとられてきておりますし、また現に帰ってきておられるわけでありますが、あるいはまた本人の希望でもう祖国に帰らない、そこに居ついておるということが本人の意思で明瞭になっており、その国もそれを受け入れておるという人は、これまたはっきりしておるわけであります。今問題の点は、いわゆる消息不明であって生死不明である、所在が一切わからない、その消息を早く明らかにして、生きており、帰る意思を持っておる人は一日も早く帰らせよう。また、どうしてもその消息が不明であったが、調べてみたら残念ながら死亡がはっきりしておるというようなこともわかる。それぞれ、それを明らかにして留守家族に対する援護なりいろいろの措置を講ずる。その消息不明者の消息を明らかにするということは、政府が従来もいろいろな手でやっておるわけでありますけれども、一向それが進まないじゃないかというのが今の悩みの一つだと思います。ソ連との間におきましては、そのために大使館にその方の係の人を出しております。そうしてソ連政府と友好関係ができましたから、いろいろの方法によって調査もいたしておるわけであります。何分にも時日がたっておることと、広い国のことでありますために、なかなかその結果がつかめない。ところが中共の場面におきましては、それがまだ国交を回復いたしておりませんので、いろいろと努力はしておるけれどもできない。しかしこれをできないということでただあきらめておるわけにはいかないじゃないか、私もそう思います。これを何とか打開する方法はないかと考えております。いろいろな御意見もあるでありましょうが、やはりこの問題に関していろいろ従来からも御苦労をされており、ああもしたら、こうもしたらという留守家族のお心持も考慮してここまで手を尽したけれどもわからない、年月もたったことだからあきらめなければならないというところに持っていく以外に方法はないのではないか。従来これについての連絡委員会みたいなものが厚生省にあります。しかしそうでなしに、もう少し有力な良識ある留守家族の人々も、その人々の知恵をしぼり頭を悩まし、政府もその案を実行したけれどもできなかったというような、政府としてはあらん限りの力を尽して、この消息不明の人々の消息を、まず明らかにするということに全力をあげて参りたい。こういう不確定な状態にありますために遺族の何から言えば、お話の通り――これはだれもそうでしょうが、肉親から言えば、どうも自分のうちの人だけは生きておられるように思うのは当然だろうと思うのです。これは今言ったような方法を尽してその消息を明らかにすることと、また年限もたってきておりますから、いつまでも不確定な状態に置くことがいろいろな法律関係においても迷惑なことがありますし、あるいはいろいろな議論も出てくるわけでありますから、その後の処置につきましても政府としては考えていきたい、そうして今の公務員で何がある。これは消息がわかっておればそれぞれの手続によって処置を講じておると思いますけれども、今申しましたような事情のためにできない。しかも留守家族の人との関係においても次男、三男というような扶養義務だとか、あるいは若年停止だとかいうような法律の規定が適用されておるのでありましょうが、一番本体は、今申しましたこれらの人々の消息を早く明らかにする。そうしてこれに対するそれぞれの措置を講じて、生きておられる方は一日も早く祖国に迎え、死亡が確定しておる人に対してはその遺骨の収拾なりあるいは送還なり、さらにこれに対する国家の施策を講ずるというふうに、そのもとに対して私は真剣に考えて処したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/88
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089・受田新吉
○受田委員 質問もだんだん終りに近づいたわけですが、総理、こういうことを一つ考えてみて下さいませんか。今私がお尋ねしていることは消息不明者だけでなしに、生存が確認されている人の中にも、生計主体者ではない二男、三男は給与をもらっていないのです。留守家族手当をもらっていないのです。これは生死不明であろうと生存であろうと同じことなんです。そういう問題もありますので何かの方法で一つこの人々に対する国の――給与の形式かあるいは手当の形式かで処遇をしてあげることを検討して、恩給法で救われないとなれば、今度はその方でやらなければならない。一つ総理大臣は何かの方法で手を打つということを御検討願いたい。
もう一つ、今あなたからお聞きして思うのでございますが、中共の地区の残留者については、昨年有田氏も行って努力されたようでございます。国会からの代表者も送るということだったところが、あなたが台湾で蒋介石と何か大陸反抗作戦に関する御会談の際に誤解を受けられたと思うのでございますけれども、中共政府からそれに関連して代表団も来る必要がないというような意味の手紙が来てしまっておる。こういう意味でその後において残留者実態調査とかあるいは親善をはかるために何かの形で親善施設のようなものを派遣してはどうかと申し上げたところ、藤山外務大臣が、昨年の九月でございましたが、それはけっこうなことだ、ぜひ考えたいというようなことを言われておるのですが、何らかの形で具体的にこの消息不明者の調査をはかるように、あるいはこちらとの親善を考えながらやるという形をとられないと、これは解決がむずかしいと思うのでございまするけれども、総理としては懸命にこの問題の解決に乗り出されたらいかがですか。親善使節、国民使節の派遣などの方法で、懸案を解決する努力をしていただけないでしょうか。一つ御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/89
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090・岸信介
○岸国務大臣 今どういう方法をとるということは申し上げませんが、しかし私がただ抽象的に申し上げておるだけでなく、具体化する方法を必ず責任を持って実現いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/90
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091・受田新吉
○受田委員 さらに総理のお考えできまる問題がいま一つあると思うのです。それは事務的に今まで質疑応答を通じて事務局も努力しておられることを認めたのでございまするが、なお不十分な問題としては、傷病元軍人の人人の指が一本ない。この指が一本ないくらいの人でももう就職ができないの
でございますから、こういう意味で手当、恩給を少し上げるというような問題でなくして、実際にその人々に仕事を与えてあげるという意味で、雇用関係の改善をはかられる努力をせられたらどうかということを申し上げたわけでありまするが、政府のご見解によるならば、現在のところこの身体障害者は職安で登録している人が七万二千人、ところが就職したのは四万八千人しかおらぬということで、あとの三、四割というものは未就職です。こういうところを一つ考えられて、傷病軍人を中心とした身体障害の皆さんに対して、適職を差し上げて、その老後を保障してあげる、生活を守ってあげる、こういうところに先進国がやっておるような強制的な雇用法律のようなものを作る、雇用割当のような制度を作るとかいうことで、日本も岸総理が在任しておられる間に、そうした傷病者に対する強制就職、雇用割当というようなものを、法制化するか何かをもって解決をしていただくような方法はないか。これは傷病年金の少額の引き上げよりももっと大きな生活の問題で、これによって傷病軍人が大きな希望を持たれると思うのでありますが、一つ勇敢に措置をされる御用意があるかどうか御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/91
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092・岸信介
○岸国務大臣 御趣旨のように、そういう方に適職を与えて就職の場所を見つけるということは、非常に必要なことであります。関係各省に対しまして今研究を命じておりますから、研究をして成案を得たい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/92
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093・受田新吉
○受田委員 私はそのほかの個々の問題はきょうはお尋ねしません。きょうは総括的な重要問題だけをお尋ねしたのでございますが、連日総理は早朝から夕刻まで御精励しておる姿に対しては非常に敬意を表します。あなたの精勤ぶりに非常に敬意を表し、歴代総理中における勤務評定は甲であるということを私は断言します。その意味ではあなたの御努力は高く買うものでありますが、しかしながら一方において恩給法のこの問題についてもでございますが、ある程度世論に耳を傾けることと司時に、ただ単に金銭の問題でなくして、就職の問題、雇用の問題、その地先ほど申し上げたような俸給をもらっていない人々に対して、それが漏れるところはないかというような心を配る、こういうところが大政治家が同時に人道主義者である政治家であるといわれるゆえんであると思うのです。そういうところに心を配っていただいて、戦後の最年少総理として御敢闘いただく岸信介さんに対して、一そうのそうした意味のそういう面でのお心使いを要望します。いずれ私のあとにも質問がありますから、私の質問はこれで終りますが、最後に、総理は恩給法に対しては、これを今国会中における重要法案であるということをしばしば言われておる。この今国会中の重要法案が今衆議院で総理を招いて質疑が行われておるのでございます。その戦争処理の重大な法案であると総理みずからが指摘せられておるこの重要法案が、国会を通るまでは解散がないということになりますかどうか、最後に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/93
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094・岸信介
○岸国務大臣 解散の問題がいろいろと論議がございます。私もそれに対して所信を明らかにしてきておるのでございますが、私はこの案の成立を心から望んでおりまして、ぜひともこれを今国会を通じて成立させたいという熱意を持っておることを御了承願いたいと思います。
国会の解散の時期等につきましてはいろいろな世論がございますけれども、私が今心組みとして何らこれについて決定をしておるわけでございませんことを、あわせて申し添えておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/94
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095・受田新吉
○受田委員 私はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/95
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096・福永健司
○福永委員長 西村力弥君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/96
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097・西村力弥
○西村(力)委員 今回恩給増額の問題が出て参りまして、最後は総理が三百億という工合に裁定せられて、一応こういう法案が出ておるわけでございますが、この問題に対する世論は、圧力団体が強く動いて、それに議員もいわゆる俗称恩給議員というような人々が動き回って、そういう姿が非常に醜態であるというような点が一点と、それから文官と武官との均衡ということを言うが、そういう均衡をやれば、またその他の戦争犠牲者、そういう人々あるいは生活困窮者というものとの新しい不均衡が生ずる、これを一体どうするのだというような問題。それから現在われわれが希望し、また総理も信念を持って言われておる福祉国家の前進の問題、それに非常に支障を来たすのではないか。こういうような点から批判が強いのでございますが、その第一点の問題につきましては、総理が三百億と裁定したということに対して、もっとはっきりした確信ある態度を示すことが必要ではないか、こういうことを私は感ずるわけなんでございます。いろいろ文官との均衡をはかるのだ、しかしながら上に薄く下に厚いという方向をとらないと、世論というものもあるんだということ、あるいは財政上のいろいろな制約も考えられるのだというようなこと、そういう点から妥協点としてこういう工合になったのだということになりますが、ただその妥協点としてそうしたということだけでなく、国民が非常に注目し、あるいは相当多くの国民がこれに対して反感的な不満を持っておる場合において、総理はもっと信念を持って、かくかくの理由に基いて、あるいはよりどころに基いてこうしたのだということをはっきり示していくことが必要であると思うのです。国民の少くとも政治に対する信頼ということがなければ、いかにあなたががんばっても、またいかにわれわれがここで論議を尽しても、われわれの愛する国はよくならないはずであります。そういう点からいいまして、もっとはっきりとしていただきたい。一体総理がそうされたのは、旧軍人に対する政府の義務という立場、あるいは逆にいえばこれを要求する遺家族あるいは軍人の各位はそれを権利として要求する、こういう関係において今回はなったのか、そういう点についてはっきりしてもらいたいわけなんでございますが、その基本のよりどころをどこに置かれたのか。まずその点を明確にしていただきたい、こう思うわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/97
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098・岸信介
○岸国務大臣 私はこの問題の扱いにつきましては、いろいろな世評もあることはよく承知いたしております。私が一番この問題を解決しようとする真の意図は、言うまでもなくこの戦争によって最も大きな犠牲を払われた旧軍人の遺家族のこの状態を見ますと、これに対する国家の扶助料の程度が、私としてはいろいろな社会情勢から見て適当でない。これを適当なものに是正したい。適当なものに是正するという考え方は、適当とは何ぞやという一つの標準があるかということになります。私はそれについては、少くとも文官において五万三千二百円という、これまで受けておるそれと同額のものを、同じような状態にあった兵の人の遺家族に支給するようにしたい。そうすればどういうことになるかといえば、予算の範囲内におきましても、年額三百億円程度の平年における額が支給になる。またこれを四年間に分割して貸すということをやるならば、日本のわれわれが企図しておる経済五カ年計画による産業経済の発展というようなものとにらみ合せてみて、全体として財政に極度の圧迫を加えるほどでもないという結論を得まして、実はこの案の決定をいたしたわけであります。これを具体化す上におきましては、いろいろと先ほど来質疑応答がありましたけれども、技術的に研究しなければならない。また恩給法上の扱いとしていろいろな点における均衡をとらなければならぬという問題もございます。それらのものを勘案してでき上りましたのがこの案で、根本の考えとして三百億というものをはじき出した何か明確な標準があるかということになりますれば、これは私が今申し上げましたような点を考慮して、総理が全責任を持ってそういう額がきまったのだ、こういうふうに御理解願いたい。こういう問題でありますから、ただ単にいろいろな説を加えて二で割るとか、あるいは妥協を見出すとかいうような性質のものでないということも言うを待ちませんし、将来の産業の発達、財政規模というようなものとにらみ合せての、こういう点まではいいだろうというような私のこの結論というものが、何か明確な、たとえば国民の総所得の何パーセントまでならいいのだ、あるいは全予算の何パーセントまでなら、こういう恩給というものはいいのだというふうな、はっきりした何十何パーセントというものははじき出せませんけれども、私は大体の見通しとしてこの程度のものが適当であろう、こういう結論を得たわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/98
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099・西村力弥
○西村(力)委員 ただいまのお話によりますと、文官との不均衡を是正するということが中心であった、こうお聞きしたわけなのでありますが、そうしますと、先ほど受田委員が質問に申されたような工合に、兵と同等であると思われる文官が逆に低いという現象が起きてくる。そのことに対してはあなたは、いろいろ手直しをすれば、あちこちでこぼこが出て完璧にはいかないのだ、こういう工合に笑っておられましたが、そういうでこぼこが出てきておるということ、あるいはまた文官の場合における公務扶助料の支給は非常に厳格であったということは、総理自身も十分おわかりだろうと思うわけなんです。そうしますと文官と同一に取り扱うという前提ならば、そういう適用範囲をきめる場合においても、文官には相当厳格に適用になっているその筋を、今回においても適用するのが当然ではなかったかと思われるわけなんです。そういう点に対して野放図というか、包括的に全部制限なく行われて、ただ額において同一になるという、そういう点だけを合せたのでは、やはり国民全般の立場から言いました場合においては一方的であり、総理自身がこの問題については国政を担当する人としてのはっきりした立場というものがよろめいたのだ、こういう工合に批判するということは当然のことになってくるのではないだろうかと思うのです。そのような点については、文官と同一にするというお言葉の一面だけをやられたのであって、半面はおろそかにされたということに対して、総理は一体どういう工合にお考えになっていらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/99
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100・岸信介
○岸国務大臣 先ほど来お答えを申し上げましたように、この文官、軍人を通じての恩給制度というもの、またこの軍人の恩給が昭和二十八年に新しく出発したこのものにおきまして、やはり複雑な関係がございますので、こまかく言いますといろいろなところに不均衡があり、そのことから総じて国民が十分理解がいき、納得のいかない問題も私は起ってきていると思います。この均衡は、あるいは縦に、あるいは横にいろいろ複雑な関係がありますから、それぞれとっていかなければならぬと思います。制度として立てた上に今度この取扱いの実際の運営の上においてこれの均衡をとり、同様な一つの取扱いをしていって、そこに不公平であるとか、不均衡を生ぜないように努めなければならぬというこの制度の問題、その制度においては縦と横との関係はございます。また運営の問題におきましても今度は考えなければならぬ問題がございます。これらの点を一つ十分勘案調整して、そうして国民に不均衡感といいますか、そういうものを起さなないようにやっていくことから、こういう制度を立て、また制度を運営していく上から必要である。こういう複雑な問題でありますからいろいろな点からの御意見もあると思う。従ってこの改正をするにつきましても、御承知のような恩給制度審議会というようなものを置いて、そこにおける論議なり、そこにおける答申の精神なりというようなものを組み入れまして、実は本案を制定いたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/100
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101・西村力弥
○西村(力)委員 今後の運営の問題にその発生した不合理の解決をゆだねられる、こういうことになりますると、先ほど受田委員が言われた文官との取扱いにおいて旧軍人の処遇が優位に立ってしまったということ、これを引き下げることはできないとするならば、文官においても公務死の場合においてはすべて三五・五にする、こういうような工合の方法をとられるのかどうか、あるいはまた縦の関係におきましても、私たちの手元に現在の御苦心なさった恩給の増額案に対しても、まだまだ不満がたくさん出ておるのです。そういう問題もこの問題解決のために、やはり将来運営上の問題で考慮する、運営上の問題で処置できない場合においては法的措置も講ずる、こういうような工合に現在お考えになっていらっしゃるのかどうか。そういう総理のお考えとするならば運営上に期待し、それでできないときは法改正にその人たちは強く要求を出してくるに違いない、こう考えられる。端的に言いまして今回の恩給の是正を最終として軍人恩給にはピリオドを打つ、こういうような工合に言われるのかどうか、こういう点お尋ねをいたしたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/101
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102・岸信介
○岸国務大臣 政府としてはこの案を御審議願いますにつきましては、大体軍人の恩給については、今の時代のなにとしてはこれで一応主要な問題は片づけたつもりであり、片づいたものと私どもは理解しております。もちろんいろいろ時勢も変って参りますし、また運営をしてみて、いろいろな点を是正しなければならぬというようなことに対して、一切やらないという意味じゃありませんが、大筋についてはこれでもう解決したものと私どもは理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/102
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103・西村力弥
○西村(力)委員 そうあなたはおっしゃるけれども、やはりはっきり絶対にやらない、こういうわけではないのでありまして、そうすれば、臨時恩給制度調査会なんかにおいても、それは妥当であるというような工合に考えておる。たとえば加算制の問題とかそういうようなものは直ちに現われてくる問題ではないかというようなこと、あるいは傷痍軍人が自分たちの力が弱小であるために、不遇な処置に押し込められてしまう、これは今後解決しなければならぬという工合考えていらっしゃる。そうしてまた倍率の問題にしましても、三五・五という工合にしましても、文官との均衛といっても、四十割の主張は今後もやはり主張されるであろうと私たちは予測する。しかもその四十割の主張が強く打ち出されて、そしてそういう工合にいったならば、これは莫大なる経費を要することになる。ですからそういう今後の問題が直ちに現われるということに対して、ただいまのところこうであるといういつものような総理の御答弁では、なかなかもって問題のはっきりした解決というか、そういう工合にはならないのではないか、こう私たちは懸念をするわけなんです。もちろんほんとうの、不合理そのものであるというような問題が発生しないとだれもまだ言い切ることはできないだろうと思うのですが、はっきりした立場をとっていかないとするならば、またぞろ類は類を呼んでずっと引き続いていくのではないかと思われる。そういう点に対する総理の御所信はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/103
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104・岸信介
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、私はいわゆる倍率についての不均衡という主張が従来あったことは承知いたしております。しかしその倍率云々にとらわれてやったわけではございませんで、実際の給与の均衡ということにおいて、いわゆる倍率問題に関する議論に対しては、政府としては少くとも終止符を打った考えでございます。私は大筋において解決した、合理化したということを申し上げているのでございまして、その他の点につきましても一切――いろいろ研究してみ、実施してみると不均衡が生じ、また不当なことができた場合におきましても、もう恩給法のことは一切触れないのだというようなことを申しているわけではないのでありまして、そういうことについては十分やはり検討を加えていかなければならぬけれども、軍人恩給について将来非常な大きな額の変更を生ずるようなことは、政府としても考えておらない、またただいま御指摘になりました倍率問題についてはこれで終止符をはっきりと打ったものだ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/104
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105・西村力弥
○西村(力)委員 それでは話は次に移りますが、戦争犠牲者は軍人だけではないのだ、こういう主張、旧軍人の方方、遺族の方々に対しては私たちも心から同情し、私たち毎日靖国神社の前を通りますが、心の中で敬虔な気持を持ってそこを通っているのです。ですからそういう方々の御心中あるいはその他十分察するのでございますが、また一面戦争犠牲者の他の部面の人々、こういう人々の存すること、その人々がこの問題に対して相当冷たい目をもって見ているということも、私たちは承知していなければならないし、承知しているわけなんですが、そういう人々に対して、やはり戦争犠牲者を救済するというような立場から、今後何らかの措置をなされようとする意思があるかどうか。さまざまなそういう犠牲になった人々が多いわけでございますが、ひどいのになりますと、戦争中の食糧難そのほかから栄養不良になって、大事な子供がそれが原因で発育不良になった、あるいは知能程度の発育ができなかった、これは親が悪いのではなくて、戦争中のそういう極端なる非人間的な生活がそうせしめたのだ。こういう原因から来る親も子も不幸な状態に置かれている問題もあるわけなのだ。直接的には、戦災を受けたり、あるいは学徒動員とか、あるいは外地を引き揚げたとかさまざまで、これは私が申し上げるまでもなく十分おわかりかと思うのですが、そういう戦争犠牲者一般に対する今後の対策、処置というものを、いかように考え、また構想を持っていらっしゃるか、そういうこともはっきり明示せられることが、今国内にあるこういう問題に対して、政治の要諦を示してはっきり民心をつかむということになるのではないか、こう思うのです。こういう点に対する総理の所信をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/105
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106・岸信介
○岸国務大臣 過般の戦争がきわめて広範囲にその犠牲が及び、またいろいろな方面にいろいろな関係を持っての犠牲が出てきておることは、今西村委員の御意見の通りであります。政府はもちろんこれらの犠牲に対しましては、適当な措置を講じていかなければならぬことは、言うを待たないのでございますが、非常に複雑でもございますし、年代も相当過ぎておる今日におきましては、やはりこれらのことは、社会保障的な考えで、その諸政策でもって、これに救済を与えるということが一番いいのではないかと思っております。特に明瞭なもので、いろいろな事態に適応する適当な措置が考えられるものは別といたしまして、私はやはり社会保障を拡充し、特に国民年金というような制度を、先ほども申し上げましたように、できるだけ早く実現して、これらによってそれらの犠牲者に対して相当な救済を与える、こういうことにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/106
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107・西村力弥
○西村(力)委員 年代も過ぎたし、把握も相当困難であるから、社会保障一本でそういう人々の処置を考えたい、こういうことでございますが、それならば、軍人関係のそれもそういう立場で処理できなかったのかと、私たちは反問したいわけなのです。一方においてはそういう立場でこの処置をするというなにがあり、一方においては旧権の復活というような立場をとられるのでは、国内全体の政治をやる場合においてあまりにも一方的に過ぎるという声が、そういう工合にあなたから置き去りにされようとしている人々からは強く出てくるわけなのであります。そういう工合にせらるべきことが当然ではなかったかと私は反問がしたいわけなのだが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/107
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108・岸信介
○岸国務大臣 これは御承知の通り、先ほど来申し上げておりますように、文官の恩給制度というものがずっと続いておりますし、また軍人につきましても、二十八年に新たに出発した軍人恩給の制度ができておる。しこうしてこれに対する実際の面におけるところの不均衡等が、従来国民の間に相当な世論を起しておりました。これを是正するということが一つの国民的要望であると認めて、政府は臨時恩給制度調査会というようなものを設けて、そして各方面の有識者の意見を聞いてきたわけであります。その大体の結論の方向も、やはり軍人特に遺家族等については、その扶助料を是正することによって処置することが適当であるというものであり、その見解のもとにわれわれはこれを立案し、御審議を願っておるわけでございます。そのほかにもたくさんございましょうし、いろいろな事態もございましょう。従ってそれらのものに対する今後の考え方としては、何か法律制度がすでにできておって、それの修正とかそれの改正とかいう問題でなしに、新たに制度を立てるというようなものについては、私は今申したような考えで進んでいきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/108
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109・福永健司
○福永委員長 西村君、簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/109
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110・西村力弥
○西村(力)委員 社会保障によってそういうことを解決したい、あるいは現在あなたが貧乏を追放すると言われましても、厚生白書に示されるように、生活困窮者が非常に多い。こういう人人も当然救済されなければならぬわけなんですが、その社会保障については、来年度から年金制度を設けたい、あるいは国民健康保険を全面実施したい、こういうことをおっしゃっておられる。大へんけっこうでございますが、しかし一体年金制度をどういう範囲に、あるいは金額においてはどの程度にやるという大体の考え方を持っていらっしゃるか。ただ年金制度をやりたいというだけのことでは――これからのことではありますけれども、そんなことでは、その他の戦争犠牲者を社会保障政策によって不満なからしめるようにするのだというような気持、あるいはぜひ三十四年度から実施したいというような熱意、そういうものがわれわれには、決して本物というか、充実したものとして受け取れないわけなんです。それでは、選挙も近いのだし、盛んにそういうラッパを吹くんだという工合に言われてもやむを得ないことになってしまうのじゃないか。一体どの範囲に、どの程度にやろうとしていらっしゃるか。あるいは国民健康保険を完全実施すれば、大体二百十何億の金が要ると私は計算しているのですが、今半分くらいしか実施されていないのですから、それをやられるとすれば二百十何億円くらいの金が要るのです。それに加えて国民年金制度をどういう範囲にどの程度やろうか、こういうことも金額とにらみ合せて相当のめどを総理自身は持っていらっしゃらなければならぬのじゃないか。そういう裏づけを持った発言でなければ、単に総理のその場まかせの言葉であるという工合にしか認めないわけなんです。ですから私はその点についてお聞きするわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/110
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111・岸信介
○岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、目下この案につきましては、社会保障制度審議会において研究をしてもらっております。その中間的の考え方のなにについて、委員長やあるいはその他の委員の方々が私に面会を求めて述べておりますが、私の考え方の方向については、先ほどお答え申し上げた通りであります。まだ何歳からやる、あるいは一人当り幾ら出すというふうな具体的な問題につきましては、これも社会保障制度審議会の答申も、近く一、二カ月の間には――少くとも五月中にはもう答申されるような進行度合いでありますから、今申し上げることはできませんけれども、決して私はこれに対して熱意がないとか、あるいは誠意がないとかいうような問題じゃなしに、ほんとうに熱意を持ち誠意を持って実現したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/111
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112・西村力弥
○西村(力)委員 そういうことでは言葉だけの熱意であると、私はやはり強く声を大にして言わざるを得ないようになってしまうのではないか。国民もそういう工合に受け取るのではないかと思うのです。総理は今後この経済の伸びも考えまして、国民皆保険に二百億支出する。それにプラスして、年金に一体何億くらい出せるという工合に大体踏んでいらっしゃのですか。(「まだ先だよ」と呼ぶ者あり)先だというような発言がありますが、私どもはそういうふうなことで将来に移しても、ほんとうにその描いている絵はすばらしいけれども、それが単なる絵に描いたものであったというようなことになったのではこれは決して国民は喜びはしないと考えられるために、そういうことをはっきり大体のめどをつけていらっしゃるはずであるし、それはおっしゃるべきではないか、こう思うのです。いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/112
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113・岸信介
○岸国務大臣 すでに国民皆保険の問題につきましては、政府は初年度、三十四年までに完成するという計画のもとに進んできていることは、御承知の通りであります。国民年金の問題はまだその程度には至っておらないことも、これも御承知の通りであります。私は先ほど来申し上げておるように、ぜひとも三十四年度からは、たとい一部であってもこれを実施することに踏み出していきたいということを申し上げておるわけでありまして、またその規模であるとかその内容であるとかいう具体的なものにつきましては、ここで申し上げるだけのところまでいっておらないということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/113
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114・西村力弥
○西村(力)委員 それではそのように受け取っておきましょう。少なくとも経済の伸びを考え、あるいは拡張を考え、そして五カ年計画なり何かなりを確定しておられる政府が、明年から実施しようというそういう大事な仕事に、どれだけの金をさけるかということも全然答弁されないような状態であったのでは、私ははっきり、総理の熱意は熱意として受け取っても、それは熱意以外のものでは何もないのだ、こういう工合に受け取らざるを得ない、かように申し上げておきたい、こう思うわけなのであります。
次にちょっとこれは個々その問題になりますが、総理も公職追放になられたと思うのですが、その後それが解除せられまして、恩給取得権は復活しておるはずだろうと思うわけなんです。高額所得やなんかの制限で現在そのまま金をもらっておるか、あるいはそんな金なんか歯牙にかけるほどのものでないと個人的には総理はお思いでしようけれども、しかしその権利だけは復活しておるだろうと思うのです。ところで戦前、時の警察国家の手によって刑に服せられたり、あるいは強制的に懲戒処分に付せられた人々はそのままになっておるわけなんです。そういう人人は当時は非国民ということでありましたけれども、現実に私たち敗戦という痛手を受けて反省する場合におきましては、決してそうではなかった、こういうことになっておるわけなんでございますが、そういう人々は恩給に関して復権ということはできていない。こういう問題に対して総理は公職追放の解除とともに恩給受給権が復活したと同じような工合に処置していく。これは戦争に移行した際の誤まった政策に基く犠牲である、こういうような立場から、そういうような処置をする御意思がないかどうか、その点について総理にお考えがあったら一つお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/114
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115・岸信介
○岸国務大臣 国内法上国内について刑罰を受けたものについては、これは停止されておると思います。ただ公職追放の場合におきましては、これがけしからぬとか、これが不当であるとかいうようなそのものを私は批判するのではございませんけれども、措置として公職追放の解除されると同時に、恩給権についても復活するようなはっきりした定めになっておりますので、その措置はおのずから取扱いが異っておりますが、私は現在の国内刑法において処罰された人々が停止されておるのを復活するように、法律を改正する考えは現在のところ持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/115
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116・西村力弥
○西村(力)委員 その点はそういうことでしょうけれども、国内刑法といえども当時の治安維持法のそういった類のもので、警察の手で、あるいは憲兵の手で不当なる処遇を受けた人々に対しては、敗戦と同時にその罪悪、罪状というか、そういうものは解消したということになっておるはずだろうと思うのです。普通の破廉恥罪云々の問題ならばいざ知らず、時の政策によってむりに治安維持法なんというああいう極端なる方法でもって政治的に処分された人々に対しては、考え方はいささか変えなければならないのではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。もう一度普通の刑法で処置されたものでない、政治的に処置されたものに対する恩給上の問題について――恩給上に限らず考え方全体ですが、それがひいては恩給にも影響するわけですが、その点について再度の御答弁はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/116
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117・岸信介
○岸国務大臣 戦時中、戦前のいわゆる政治犯と広くいわれるものに対する刑罰につきましては、戦後たしか大赦かなんか行われているのではないかと思います。しかしその扱いにつきましては、法制局長官から正確に御答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/117
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118・林修三
○林(修)政府委員 今までの取り扱いは、御承知の通り恩給法につきましては、一定以上の刑を受けたものは恩給受給権が失格するわけです。その刑が後に大赦あるいは減刑あるいは刑の免除というようなことによってなくなったというような場合には、過去のいわゆる既得の権利に影響を及ぼすということで、実は復活した例は今までないわけです。もちろんこれは法律を作ってやるということになれば、それはできないことではございませんけれども、ただいままでの例では今までの大赦によって刑が免除された、赦免されたという場合も恩給権の復活をやった例はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/118
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119・西村力弥
○西村(力)委員 私は法制局長官に、それはこうなっておる、あるいは政令はどうだ、こういうことを聞いておるのではない。そういうような政治的犯罪として不当に処置された人々は、やはり公職追放が解除したと同時に、恩給受給権が復活したと同じような処置が法律的に講ぜられるのが当然ではないかと思うのです。その点についてはどうでしょう。総理の政治的な、あるいは長官のそういう政治的な立場からの御答弁を願っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/119
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120・岸信介
○岸国務大臣 取り扱い方につきましては、今法制局長官がお答えしました通り、これは十分研究に値するものだと思います。一つ検討をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/120
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121・西村力弥
○西村(力)委員 以上で終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/121
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122・福永健司
○福永委員長 淡谷悠藏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/122
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123・淡谷悠藏
○淡谷委員 大へん時間が迫っておりますし、委員長からも強く時間の制限がございますから、簡単に一問だけ総理にお願いいたします。傷病恩給について取扱上の問題でございます。実は先般来いろいろ当委員会で質問しておりましたが、終戦の混乱の際に、受給者がその事実を証明する書類を作るのに、非常に苦労しておる。またこの審査が、大体書面による審査のために、実情に合わないという例がたくさんあるようであります。実情に合わない決定をされまして、何とかこれを訂正するためには、具申と訴願しかないのであります。具申に対して決定を与えるのが恩給局長、訴願は総理大臣がされておる。実はこの実例につきまして、ある人が非常に苦労をしたことが書かれておりますが、これによってみましても、最後の望みである総理大臣への訴願が、そのまま恩給審査会に差し戻されまして、訴願の対象である恩給局長が入っておるこの恩給審査会で、あっさりそれがまた一蹴されるというような例がある。事実に違った決定をされて、大へん困っておる人が、訴願までいくということはよくよくのことなんですが、このたった一つの最後の道が、総理大臣の決定という名において、恩給審査会であっさりやられておりますということですと、これは浮ばれないだろうと思うのです。何らかこの審査の形を、この恩給法改正を契機に、事実審理をもっと的確にやるような道が開けないものかどうか。たった一ぺん本人の出頭を求めるということがございますけれども、先般来の局長の答弁では、どうもそういう例はない、こういうのです。そうしますと、一生懸命の思いで、訴願まで持ってきましたこの犠牲者たちは、生涯全く浮ばれない、葬り去られる形になっておりますが、何か一つ道を開くお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/123
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124・八巻淳之輔
○八巻政府委員 傷病恩給の問題につきましては、まず本人から現在の症状、状態について証明しますところの……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/124
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125・淡谷悠藏
○淡谷委員 答弁の途中ですが、私はこまかいことは要らぬのです。ただ総理大臣への訴願、総理大臣の決定ということが、ただ事務的にこれを恩給審査会に差し戻されたのでは、本来の趣旨に沿わぬと思うのです。そこまでいった問題ですから、幾らも例がないと思いますから、何らかそこに大臣が事実的にこれに参加するような道をお開き願いたいということなんです。形式は総理大臣の決定ですけれども、実際においては恩給審査会、つまり恩給局長は自分が訴願の対象でありながら、自分が裁決するというような結果を招く形ですから、ここの点だけをお聞きすれば、あとはこまかいことはまた伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/125
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126・岸信介
○岸国務大臣 今御質問のように、制度としてはお話の通りになっておるようでありますが、きわめてそれは事務的なことに堕するおそれがあり、訴願をほんとうに総理大臣が裁定するということから申しましても、今いった審査会――もちろん審査会は御承知の通り恩給局長だけじゃございません。いろいろな専門家や何が入っておりますけれども、何かそれの審査を一そう慎重にし、また今も恩給局長に扱いを聞いておるわけですが、本人に出頭させて本人の陳述を聞くというふうな道を開いて、これを補完したらいいじゃないか、今までは書面審査だけでございましたが、そういう道を考えてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/126
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127・福永健司
○福永委員長 この際委員長において、ただしておきたいと思いますが、このたびの恩給法等の一部を改正する法律案においても、関係者を公平に取扱う見地よりして、なお解決を要する問題があるように考えられます。すなわち、遺家族公務扶助料の倍率及び支給条件等の是正、傷病恩給の間差、等差及び他の恩給との不均衡是正、仮定俸給抑制措置の是正、文官恩給に内在する不均衡是正、旧軍人等恩給失権者に対する加算制度の実施、旧海軍特務士官の仮定俸給基準の是正、元満州国等外国政府職員の通算実施、旧日本医療団職員の通算実施、金鵄勲章年金受給旧軍人に対する処遇改善等については、政府はすみやかに熱意を持って検討し、適切なる処遇を講ずべきであると思いますが、この点について明確なる御答弁を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/127
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128・今松治郎
○今松政府委員 ただいま委員長からお尋ねのありました各項は、いずれも重要な問題でございます。恩給や扶助料の取扱いの一番配慮しなければならないことは、関係者にすべて公平に施策が講ぜられて、均衡を確保するということであると思います。御指摘の諸点につきましては、いずれも検討すべき問題が包蔵されておるのでありまして、政府といたしましては十分検討の上、善処いたす所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/128
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129・福永健司
○福永委員長 これをもって恩給法等の一部を改正する法律案についての質疑は終了いたしました。本案についての討論採決は次会にこれを行います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/129
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130・福永健司
○福永委員長 次に防衛庁設置法の一部を改正する法律案についての質疑を続行いたします。石橋政嗣君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/130
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131・石橋政嗣
○石橋(政)委員 簡単に御質問いたし、ますので、総理の方におきましても簡単に要領よく御答弁を願いたい。と申しますのは、ただいま議題になりました防衛庁設置法の一部改正案が通過成立いたしますと、調達庁が防衛庁の所管になる。ところがこれに関連いたしまして、非常に不安を持っておる者がたくさんおる。どういうことかと申しますと、もともと調達庁をかかえ込むということにつきましては、防衛庁があまり喜んでおらない。その理由といたしましては、大体アメリカの接収事務といったようなものを中心に、アメリカのために働いておるような印象を受けておるこの調達庁というものを、防衛庁がかかえ込むことによって、傭兵的な性格を自衛隊が持っておるという批判を、何か裏づけることになりはしないかというような不安、それから調達庁にはたくさんの駐留軍労務者というものを長官が雇用いたしておるわけですが、こういう人たちが現在の団結権、団体交渉権、団体罷業権といったものを確保したままくると、自衛隊の規律といったようなものに影響を与えやしないか、こういう不安も持っておったようです。こういう不安から、調達庁を防衛庁の外局にすることに反対しておったということを、私ども聞いておるわけですが、そういう不安を防衛庁が持っておることが、裏返しの形で、駐留軍労務者にとりましては、防衛庁に移管されると自分たちの身分なり、その他に何らかの変更が行われるのじゃないかという危惧につながってきているわけです。この点、二十六国会に本法案が提案されましたときにも、大久保当時の担当大臣に、私お尋ねいたしましたところ、そういうことはないということでございましたが、この際、はっきりと総理の口からお答えを願っておきたいと思うわけです。結局、調達庁を防衛庁の所管とする、外局とするようなことになっても、現在の駐留軍労務者の身分、あるいは労働条件といったようなものを変更する意思は絶対にないかどうかということを、まず第一にお尋ねいたしたい。それから先ほどもちょっと触れましたが、駐留軍労務者は団結権、団体交渉権、罷業権というものを現在確保しておるわけでございます。こういうものについても何らの規制を加える意図はない、そういう点について明確にお答えを願っておきますと、非常に不安が解消することになりますので、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/131
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132・岸信介
○岸国務大臣 今回の改正案によりまして、調達庁を防衛庁の外局といたしましても、今御質問になりましたような駐留軍労務者の地位であるとか権利であるとか、その取扱いにつきましては、従前通りでありまして、少しの変更もないということを明確に申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/132
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133・石橋政嗣
○石橋(政)委員 それではもう一つお尋ねいたしたいと思うのですが、総理が昨年渡米いたして以来、日米関係が非常に改善されて、新しい時代がここにできたんだとまでおっしゃっておるのでございますが、最近労働争議に関連いたしまして、不当に米軍が干渉するような事件が実は起きておるわけです。これはまことにけしからぬと思うのでございますが、大体の内容は、この事件が起きましたのは、長崎県の佐世保市でございます。三月の二十四日、港湾関係の組合が二十四時間ストに入ったわけでございますが、その際、実はピケ・ラインを張っておった。ところが米軍が中型トラックで武装兵を連れてきまして、そうしてピケ隊を追っぱらってしまった。そのために完全に――結果論といたしまして、会社側に味方したような形になって、組合が実は敗北したというような結果を招いておるわけです。当時の写真も私持ってきているわけですが、銃を持って突きつけている。こういうことでは、依然として米軍が特権的な意識をもって日本に対し、日本国民に対してふるまっておるのじゃないかという懸念も、多分に出てきているわけです。新聞の所見を読んでみましても、「米軍も警察も争議に介入する意思は毛頭なかったといっているが、この争議は米軍のサクを張った基地内に労組が侵入する意思は全然なかったのだし、丸腰の労組員にたいし武装米兵が出動することは米軍のこれまでの好意とはチグハグな感じだ。そして米軍の命令は会社側にストの軍配をあげさせて客観的な争議行為介入になったため、米軍側も弁明するように「日米親善」上残念だ。」という論調で結んでおるわけでありますが、これはゆゆしき大問題で、こういうことは絶対に許されないことだと思うのでございますが、私も早急にきょう戻りまして、実情を調査いたしたいと思いますけれども、総理におきましても、関係省にまず詳細に調査をさせまして、その結果が明らかになりましたら、米側に対して厳重なる抗議をしていただきたい。このように考えますので、その点についての御所見をこの際承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/133
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134・岸信介
○岸国務大臣 その事実につきましては、具体的に承知いたしませんから、さっそく労働省その他関係省に命じまして、事実をまずはっきりいたしたい。もしそこに掲げられているような事態であるといたしましたら、石橋委員と同じように、私もはなはだ遺憾の事態であると思いますから、米国側に十分に抗議して、将来こういうことが起らないように善処する考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/134
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135・福永健司
○福永委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後六時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02719580404/135
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