1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月十三日(木曜日)
午前十時五十三分開議
出席委員
委員長 中村 寅太君
理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君
理事 助川 良平君 理事 原 捨思君
安藤 覺君 石坂 繁君
大石 武一君 大野 市郎君
木村 文男君 清瀬 一郎君
小枝 一雄君 鈴木 善幸君
田口長治郎君 中馬 辰猪君
綱島 正興君 永山 忠則君
丹羽 兵助君 阿部 五郎君
赤路 友藏君 伊瀬幸太郎君
石田 宥全君 石山 權作君
久保田 豊君 楯 兼次郎君
中村 英男君 細田 綱吉君
出席政府委員
農林政務次官 瀬戸山三男君
農林事務官
(農林経済局
長) 渡部 伍良君
委員外の出席者
農林事務官
(農林経済局肥
料課長) 山路 修君
農林事務官
(蚕糸局糸政課
長) 保坂 信男君
専 門 員 岩隈 博君
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本日の会議に付した案件
繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(内閣
提出第九〇号)
臨時肥料需給安定法の一部を改正する法律案(
内閣提出第四四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/0
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001・中村寅太
○中村委員長 これより会議を開きます。
繭糸価格安定法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。
直ちに討論に入ります。討論はありませんか。——なければ、採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/1
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002・中村寅太
○中村委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
なお、本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/2
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003・中村寅太
○中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/3
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004・中村寅太
○中村委員長 臨時肥料需給安定法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。
質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。石田宥全君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/4
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005・石田宥全
○石田(宥)委員 臨時肥料需給安定法による従来の保管の問題でございますが、最近の肥料事情からいたしまして、ここ二、三年の生産の状況、在庫の状況からいたしますれば、一応ここでこれが無用論が出るのは常識上ちょっとわかるのでありますけれども、しかし最近の肥料が特に中共を中心とする輸出がようやく本格的になろうとするときに当たって、これが改正を行うということは当を得ないのではないか、こう考えられるのであります。従来の法律のもとにおきましても、保管の数量については、そのときの在庫の状況に応じてこれを勘案するということは当然行い得るのでありまして、特にここで法律の改正をしなければならないという理由はないのではないかと思うのでありますが、これについて経済局長の所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/5
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006・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 現行法によりますと、第六条で、需給調整をはかるために、その指定する団体に肥料を買い取るべき旨を指示するものとすると第一項でなっておるのであります。そうしまして、第九条におきまして「毎会計年度予算の範囲内において、政令の定めるところにより、その欠損金の額に相当する金額を当該団体に補助し、当該会計の欠損を補てんするものとする。」こういうふうになっておるのでありまして、買取指示をいたしますれば必ず欠損の補てんをしなければならぬ、そのためには必ず予算に計上しなければならぬ、こういうふうになっておるのであります。ところが最近の肥料の生産状況、消費の状況等を見ますと、必ずしも政府が買取指示をいたさない、それに対して政府が予算を計上して欠損を補てんしないといっても、メーカーと配給団体との関係で相当数量を各所に貯蔵いたしまして、その負担はメーカーによって負担せしめる、そうしますれば、国の予算上の負担なくしてもできるような状態になっておるのであります。現に昨年の暮れから全購連におきましては、メーカーに実費を負担させまして約六万数千トンの硫安を貯蔵さしておるのであります。そういうふうなことができますのは、需給状況が非常に緩和してきておりまして、こういう貯蔵をすることが、消費者なりあるいはメーカーに特別過当な負担をさすことではないというふうな状況が現出されておるという前提に立っておるのでありまして、そうでありますれば、さらに需給が逼迫して、どうしても指示して、国が経費を負担しても調整保管を強制しなければならないという事態が発生した場合にはそういうこともできる、そうでない場合はそうしなくてもいい、こういうゆとりのある規定に法律を直した方がいいというのが私どもの考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/6
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007・石田宥全
○石田(宥)委員 お配りになった資料の昭和二十九—三十一肥料年度肥料別仕向地別輸出実績並びに今後の輸出の見通しからいうと、中共方面に相当数量の輸出の契約が締結されておるということでありますが、ほかの方面と違いまして対中共貿易は、今回の第四次協定の妥結に伴いまして相当量輸出の道が開けるのではないかと考えられるのでありまして、そういうふうな事態が起りました際に、急にこれの保管を必要とするというような事態が起る可能性があるのではないかと考えられるのでありますが、そういう事態が起った場合に、政府としては輸出の制限の措置なりあるいは国内の生産面とも勘案して適当な措置をとることができるかどうか、そういう点についての見通しはどういうものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/7
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008・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 これは肥料需給安定法に基きまして毎肥料年度の始まる前に肥料の需給計画を立てまして肥料審議会に諮らなければならぬことになっております。その際にまず前年度からの繰り越しがどれくらいあるか、それから翌年の生産がどれくらいあるか、内需についではどれくらいあるか、こういうことを算定いたしまして、さらに次の年度に繰り越しするべき在庫量を最低どれだけ必要とするか、こういうふうに見まして、その差引残りを輸出可能量として規定するわけであります。その輸出可能量の範囲内において、それぞれのメーカーに外国との輸出引き合いに応ぜしめる、こういう建前をとっておるのであります。従いまして総ワクとしましては、今申し上げますようにきめますので、その中でどこの国にどう、どこの国にどうということはやはり価格その他を見合って、それぞれ国別の仕向け地別の数量をきめます。さらにそれを月別に当該月の翌月繰り越し在庫が寡少にならないということをにらみ合せまして、月別の輸出数量をきめることにいたしております。そうしてこれの輸出許可は一荷口ごとに許可をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/8
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009・石田宥全
○石田(宥)委員 輸出許可の問題でありますけれども、全体の情勢が変って参りますると、政府の命令というようなものがどの程度行われるかという点にやはり不安を持たざるを得ないのでありまして、今までダブついておりますから、ダブついておるような状態のときにはそれはそのメーカーの方も忠実に命令を守るかもしれないけれども、少し輸出が盛んになってき、あるいはまた一面においてそこの系列化が行われて、業者間の統制が強化されてくるようになると、必ずしもそういうわけにはいかないのではないかということを考えるのであります。なおこの法律は来年の七月で期限が満了することになっておるわけであります。その後における見通しでありますけれども、農林大臣が参議院の予算委員会において答弁をされたところによると、これは改正をして将来も存続したいという意見を述べられておるようでありますが、やはり政府としては、期限が満了した場合においては、内容を改正して将来存続させるという意向なのであるか、どうですか、その点を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/9
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010・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 まず本法が時限法で来年の七月で切れるということでありますが、第一点で、やはり肥料工業が相当東南アジア向けに輸出市場を持っておるという前提からいいますと、日本の国民経済を発展させるために輸出に向けるためにも、この工業を拡大さすことがいいと考えます。それかといいまして、あくまでも内需優先でありまして、農民の農業生産の安定に資するということが先決でありますから、そういうためにはやはり輸出の許可制度というものをはずすわけにはいかないと思います。そうしますと、その部分についてはこの法律を延長しなければならないと思います。それからさらに現在問題になっております国内価格と国際価格との開きをどう調整するかという問題があります。これは長い目で見ますと、昨年の秋ごろはヨーロッパ側から非常なダンピングで安いものを出しておりますが、暮れになりますとエジプトとかスペイン等は五十数ドルのもので日本から買わなければいけない、もうヨーロッパでは売り余力がなくなっているというような状態を現出しておるのであります。そうでありますから、将来輸出価格と国内価格の開きが逆ざやになるということは必ずしも断定できませんけれども、しかし科学の進歩は絶えずあるのでありますから、国内におきましても、新しい天然ガスでありますとか、重油のガス化というような方法でやれば、四十ドルを割ったコストでできる工場もどしどしできておるのでありますから、昔の石炭法なり電解法の工場で、いわゆる陳腐化した施設を持っておる工場で、そのまま外国との競争に耐えることはできないし、のみならずなぜ日本の農業者がそういう工場を維持せねばいかぬかという問題も出てくるわけであります。従ってこれらを根本的に再編成するということがどうしても必要になってくるわけであります。これらの点につきましては、主管庁である通産省を中心にしまして、農林省などがそれぞれ今いかにすべきかということを検討しております。従ってそれを結論を出しまして、そういうものを織り込みまして、この肥料関係の法律の内容を経済の進展に合った形にして、やはり法律として残す必要があるのじゃないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/10
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011・石田宥全
○石田(宥)委員 お配りになった資料によりますと明らかでありますが、国内の販売価格と輸出価格との間に相当な値開きがありまして、輸出価格よりも国内の小売価格の方が相当に高い。こういう面から一般の農民の肥料行政に対する不信の声が非常に高まっておるのであります。硫安協会等の声明あるいは要請によりますと、相当額の赤字輸出であるということを言っておるのでありますけれども、私どもはどうしてもそういうふうには考えられないのであります。従来肥料審議会等において肥料価格を算定される場合に、一体どういう生産費の把握の仕方をやっておるのか、その点承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/11
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012・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 肥料価格の算定は、法律の規定に基きまして、生産費を基準といたしまして、農産物価格、肥料の国際価格その他の経済事情を参酌して定める、こういうことになっております。この生産費を各社別に見ますと、最優秀なものと施設の悪いものとでは相当な開きがあるわけであります。その中で、その年に国内で消費される数量を先ほど申し上げました需給計画できめますと、生産費の安い工場から順次国内需要を満たすまでの数量を算出しなければいかぬ。工場の原価だけをとりまして、いわゆるバルク・ラインと称するのでありますが、これを加重平均しまして生産費の基準にいたしております。これにその他の事情を参酌してきめるのであります。従いまして、バルク・ラインの外の工場は、初めから原価はこちらできめるものをオーバーしておるような状態になっております。そこで、先ほどの輸出価格が逆ざやになった場合に原価を割っておるか割っていないかという問題でありますか、これは今この低位から高位になっていくうちで、低位の生産費の会社では必ずしも原価を割るということにはなっておりません。しかし、国内価格でもバルク・ライン外の工場はすでに原価を割っているのもあるわけであります。そういった会社、あるいはバルク・ラインの中でも生産費の高い会社は輸出をすれば原価を割るわけであります。従いまして、会社の工場によって生産方式その他が違いますから、何も国内価格あるいは輸出価格だから原価を割る割らぬの問題ではありません。端的に言いますと、安ければそれだけ手取りが減るわけです。期待権がそれだけ減るということになります。しかし明らかにある一部の工場では原価を割りまして、配当もできない、欠損が出ておる。これが今後どう処置していくかという対象になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/12
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013・石田宥全
○石田(宥)委員 各会社別に見れば、系列化しておって、優秀な工場もあり、老朽施設を持っておる工場もありで、その社全体で見ればバランスがとれるということでありましょう。しかし、工場別でこれを厳密に見ていって、老朽施設やコストのはなはだしく高いものについては政府でこれを整備して、国内のものも輸出するものもコストを引き下げると国際競争に耐え得るし、また農家経済にも裨益し得るのであるけれども、その点についの政府の方針が明確を欠いておる。それがために、かりにバルク・ラインをどこにとるかによって落ちるか落ちないかの線があるわけですけれども、そういう点徹底を欠いておるのではないか。政府としては、やはりもう少し思い切って強い線を出して、ある一定の線以上コストのかかるものはこれを整備することにならないと、肥料行政はいつまでたってもすっきりした姿にならないと思うのですが、そういう基本的な考えをお持ちになって行政をやっておられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/13
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014・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 この需給安定法と同時に出ました硫安の合理化臨時措置法、これもやはり五ヵ年計画でやっておるのであります。この法律に基きまして合理化が非常に進んだ会社と進んでいない会社があるわけであります。合理化の進んだ会社はお話のように自力で陳腐施設を更改する、こういうふうなこと、それからまた硫安工業とそれに関連する化学工業を経営することも、たとえばそういう大きい合理化の進んだ工場では、全体の売り上げのうち肥料の売り上げ分の占める割合が二〇%とか三〇%までか行っているところもあるわけであります。そういうところはコストも従って非常に安くなっている。企業の立地条件とかあるいは原料とか資金関係等合理化ができていない工場では、依然として非常に高コストになっておるわけであります。従いまして、それらをいつまでもそのまま存置して、生産量が需要量に対して不足でありますれば、そういうものも抱えて一トンでも肥料を多く戦争前のように作ってもらう、こういう建前にならざるを得ないのでありますが、そうでなくして、硫安について申しますれば、国内需要を満たして百数十万トンの輸出が可能になっておるのでありますから、そういう陳腐化した工場をいつまでも保持することはもうだめである、ここで企業整備を勇敢にやるべきではないか、こういう見地から、第二の先ほど申しました法律をどうするかということに関連し、相当思い切った考え方で今検討をしておるのであります。今までは量産あるいは原料をよくすることによっての合理化でありましたが、今度はさらに老朽施設をどう措置するか、こういう第二段の合理化に進まなければならぬということで検討を加えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/14
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015・石田宥全
○石田(宥)委員 老朽施設の問題ですが、やはり立法によって設備の整理をするということも一つの方法だと思うのです。しかし資本家の立場からすれば価格が問題なのであって、老朽施設を抱えておったんでは価格が引き合わないのだということにならなければなかなか整備をやるはずがないのです。従来はそれをも十分及ばせるような価格政策がとられておった、こういうふうに聞いておるわけです。ですから、そういう点から考えると、今輸出価格は赤字輸出だということを言われておるけれども、それはほんの一部分の工場はあるいは赤字であるかもしれないが、その系列から会社別に見た場合、これは絶対に赤字輸出などとは言えない実情にあると考える。今肥料メーカーが言っておるところの、赤字輸出であるという——しかも数字などを発表しておるようでありますが、工場別に見て、今の輸出価格が赤字が出ると思われるような、また数字も出ておると思うのですが、数字を当てはめて、この程度ならばこの工場は赤字輸出になるのであろうと言われるような工場が幾つくらいあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/15
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016・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 これは赤字の観念の仕方でありまして、コストに比べて赤字になる、あるいは国内の公定価格に比べて安いからその部分が赤字だ、この二つの観念があるわけです。今のお尋ねの赤字になる工場といいますと、大体十八工場あるわけです。その中でバルク・ラインに入るのが十工場しかないわけです。その中で現在の輸出価格——これは中共の価格とかあるいはエジプトの価格、そういうものを平均して考えますれば、有力工場では、コストに比較しては、コストを割らずに済むと思います。しかしこれはむずかしい問題でありまして、考え方によると、輸出に引き合う会社だけは輸出に回したらいいじゃないか、そして高いところは国内に売ったらいいじゃないかということも一応考え方としてはあるのでありますが、それでは農家も困るし、メーカー自身も困るわけであります。そこで結局輸出はある会社だけが集中的にやるということでなくして、ほかの会社も、コストを割っても出さなければいかぬ工場ができてくるわけです。それはなぜかと申しますと、たとえば東北なら東北の工場、こういう工場は単作地帯でありますから、冬場は相当かかえなければならぬわけです。かかえるコストと、輸出して、少々損でも早く荷をさばいた方がいいか、こういった問題で金繰りの関係が当然出てくるわけであります。どうしてもある社だけが輸出というわけにいかぬようであります。これは完全な統制をして、ある会社で全体をプールして、そして会社のコスト別に代金を支払っていく、コストに利潤を加えたやつで工場別の価格で統制会社から払っていく、こういうふうになればうまくいくのでありますが、そういう状態でなくして、今のような個々の企業の資金繰りなり商品販売という建前になっておりますから、どうしてもそういうものが出てくるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/16
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017・石田宥全
○石田(宥)委員 輸出の平均価格で見ていっても、コスト価格でいけばそこからはずれるものはきわめてわずかなものだというお話ですが、そういう詳細な資料のないところで議論をするのもおかしいのでありますけれども、コスト価格でいって輸出価格で見合って、そのバルク・ラインからはずれる工場というのは、そうするときわめてわずかになると思うのですが、ほとんどないのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/17
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018・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 ほとんどないというわけじゃありませんので、私の説明があるいは悪かったのかもしれませんが、有力工場は今の平均輸出価格に比べれば必ずしもコストを割るというわけじゃありません。しかし先ほど申し上げましたように、バルク・ラインに入る工場が二十工場のうち十工場でありますから、半分しか入らないわけです。バルク・ラインに入らぬ工場はこれは国内価格でももうすでに赤字を出す工場も出てきておるわけです。赤字を出さなくても、配当に回す金はないという工場が半分はあるわけであります。そこで一本価格をきめることによって自分自身の工場の施設を合理化し、経営を合理化して、価格に合わすような努力はいやでもやらされておるわけです。しかし化学工業の特殊性として固定設備が相当要りますから、資金の関係とか技術者の関係で——会社の名前をあげてあるいは差しさわりがあるかもしれませんが、日水の小名浜、東北肥料の秋田の工場等で言いますと、合理化をやろうと思ってもなかなかいかないわけです、こういうところはまっ先に参りまして、もうすでに配当をやめております。従って、それをいつまででも現状のままで保持するのか、どこかと合併してもう少し総合的な化学工業経営にするだけの資金を持っていくか。先ほど申したように、取りつぶして、国全体の総量としては一時は減るかもしれませんけれども、ほかのもっと立地のよいあるいは原料等の天然ガス等の利用できるところでやる、こういうことも考えなければいけない、そういうことを考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/18
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019・石田宥全
○石田(宥)委員 ここで念のために硫安と石窒の最高と最低のコストをちょっとお示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/19
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020・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 硫安の価格だけしか現在法律によってきめられておりませんから、硫安だけ申し上げます。これは三十二肥料年度の価格をきめる際に調べましたコストでありますが、トン当り最低が一万八千七百円、最高は二万七千三百円、こういうふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/20
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021・石田宥全
○石田(宥)委員 これだけの開きがあるということになると、むしろ業界からすれば老朽施設のコストの高い工場をかかえることによって、全体のトータルにおいて非常な利益を得ることができる、こういう結果になりはしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/21
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022・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 そこでこの前の価格をきめましたときのバルク・ラインの中の最高は幾らになるかと言いますと、二万一千五百円です。そうしてそのバルク・ラインの中の平均が約二万五百円です。従いまして、バルク・ラインで平均したのは二万五百円でありますから、バルク・ラインの中でもバルク・ラインの最低の二万一千五百円というものはそれだけマイナスになっているわけです。ましていわんや二万七千三百円ということになれば、マイナスになっておるわけでございます。これをこのまま放置すればジリ貧になるわけでありますから、これは今必死になってやっております。それが独自の力でその合理化が成功するかしないか、だんだんこれは独自の力ではいけない、こういう空気が出てきつつあるのであります。そこでどうしても政府も、これに対してどうすべきかということを処置しなければならない段階に追い込められておるのが実情だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/22
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023・石田宥全
○石田(宥)委員 そういう実情で、さっき私が申し上げたように、価格の面において政府が保護するような政策をとっておるから、いつまでたっても合理化ができないのです。これくらいの幅があるのに、相当な程度の価格を政府が保証してやる、そしてコストの高い工場を一部分かかえることによって、莫大な利益を得ることのできるような価格政策を政府がやっておる。そうしておいて、輸出は赤字輸出だからといって、国内の農民には非常に高い肥料を使わせる。これは農林省の立場からは、われわれ常識上判断ができない。通産省がその業者を擁護するというなら話はわかるけれども、農民の立場に立つ農林省が、肥料行政の面において、今御説明を伺ったような政策をとっておるということは全くさか立ちしておる。農民の利益に反する行政をやっていると言われても、弁明の余地はないでしょう。これを一つはっきりしないと、いつまでたってもこの問題はらちがあかない。しかも一面においては、そういう複雑な情勢の中において、いわゆる系列化がどんどん進行しておる。かつて日本の資本主義の発展段階において、企業のカルテル化というものが肥料資本の中に起った。そして肥料資本が一つの独占資本となって、農民を収奪してきたことは周知の事実なんです。今またそれをやっておる。そして農林省がこれを保護するようなこの態度というものは、許されないと思うのです。私どもは従来の肥料価格というものは納得がいかない。思い切って老朽施設を切り捨てて、資本家の立場においてこれを整備せざるを得ないように仕向けなければ、いつまでたっても老朽施設の合理化は行われるはずがないのです。これは農林大臣に来てもらって、はっきりしなければならぬ問題であるけれども、勇断をもって肥料行政をやってもらわなければならない。私どもは米価の問題で、よく米価を上げろと言うけれども、実は米の値段は、農民の立場から見ても安いほどいいのです。ただ物材費を下げて、そして引き合う米価にさえすれば、米価は安いほどいいのです。ところが政府で統制しておる肥料においてすら、このような状況なんです。農器具にしても、農薬にしても野放しにしておいて、資本家のもうけるがままに放任しておいて、そうしてまた米も押えようということは、農林省としての立場からとるべき施策ではないのです。もう少しこの点は根本的に対策を立てられなければならないと思うのでありますが、そういう点の抜本的な対策について、局長として一体心がまえはあるのかないのか、一つ承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/23
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024・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 資料をお配りしおりますが、その三ページをごらん願いたいと思います。最近の肥料事情についての表でありまして、そこの(ロ)の硫安、三十二年度の計画で見ますと、硫安の生産を二百四十七万五千トン、こう見まして、それに対して国内需要を百七十三万五千トン、こう見ているのであります。この数量を満たすまでの工場を、順次低コストの工場から拾っていきまして、そこにバルク・ラインを引いているわけであります。そのバルク・ラインの中にある工場の平均コストが、先ほど申し上げました二万五百円になるわけであります。そのバルク・ラインの一番下の、一番コストの高い工場のコストは、二万一千五百円であります。ですから、すでにバルク・ラインの中の工場でも、こういう価格の算定では赤字が出る工場が出ているわけであります。ましていわんやバルク・ラインの外にある硫安工場は、先ほど申し上げましたように、最高は二万七千三百円のコストを持っているのでありますから、これはいやおうなしに、自分が企業合理化をしなければ自滅を待つほかない、こういう状態になっているのであります。従いまして、これらの高いコストの工場を、全都価格の中に織り込んで、私の方では価格をきめているわけでありませんから、石田先生のおっしゃる、農林省が老朽工場をかかえてそれを保護している、こういうことではないので、この点は誤解を改めていただきたいのであります。むしろ、バルク・ラインを引くことによって突っ放しておく、それで国民経済が済むのか、こういう議論が出てくるわけです。しかし私ども農林省の立場としては、輸出ということより、あくまで内需優先で、内需を確保すればいいのだから、極端に言いますと、内需を満たせる工場さえあればいい、そういう議論までしているわけでありますが、一方輸出産業とすれば、ほとんど一〇〇%近くは国内原料で、輸入品を使うものは機械の一部でありますから、輸出品としては非常にドル取得率の高いものでありますから、輸出産業として育成することはけっこうでありますけれども、それによって逆ざやになったものを、国内価格にはね返されることは絶対お断わりだ、これはこれで、メーカー自身が長期になすならなすということで、その分については、コストに織り込まないでやる、こういうことで、やっておるのであります。
さらに第二段といたしましては、しからばそういう老朽工場をいつまでほっておいたのでは、それが外国に売れるならばいいけれども、売れなければ、当然企業整備すべきではないか。まさにその通りでありまして、現在は、もう好むと好まざるにかかわらずその問題を片づけなければならない。その片づけ方はいろいろあると思います。その方法については、今後各方面の御注意をいただいて——これはどうしても来年度の予算に関連しますし、それから、来年四月にはどうしてもこの法律が切れるから、放置するのか、内容を入れかえても新しく法制を出すのかこういう問題で、ことしの幕までには結論を出さなければいけない羽目になっておるのでありますから、私の方でも腹を据えて目下材料を整備し、各方面と意見を交換しつつあるのが現状であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/24
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025・赤路友藏
○赤路委員 ちょっと関連して。全局長は、バルク・ラインの中でも赤字の工場があるのだという説明だったが、各工場別の原価計算等の資料を持っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/25
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026・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 これは、この前肥料審議会に配った資料で説明しておるのでありますが、一応朗読してみましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/26
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027・赤路友藏
○赤路委員 いや、朗読せずに、あとでいいから資料を出してもらえばいい。資料なしにこんなことを言うてもらっては困る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/27
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028・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 それでは名前を出すと怒られますから、A、B、C、Dの記号で差し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/28
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029・石田宥全
○石田(宥)委員 各肥料年度末になりますると、輸出関係では二十数億の赤字になるのだということを肥料協会の方では公表しております。これは私どもはちょっと信用できないのですが、肥料行政を担当しておられる局長としては、この数字についてどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/29
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030・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 その計算の基礎は、現在の公定価格に比べて、輸出価格をFOB価格で比較いたしまして、その差額を輸出数量にかけるとそれだけの金額になる、こういうことでありまして、それが今度各社に分配されるわけであります。各社の負担能力はまた違うわけです。先ほどから御説明申し上げますように、コストの非常に低い会社では、その会社としてはもうけが少くなりますけれども、赤字にはならない、バルク・ラインの外の会社はそれだけ赤字がふえるようになるわけです。もうけが減るだけでなしに、マイナスに切り込む要因になる。これに今の十何社がみな出しておりますから、それを硫安会社でまとめて、それらを計算するとそういう数字になる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/30
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031・石田宥全
○石田(宥)委員 公定価格に比較しての赤字ということになると、ほんとうの会社の経理についての赤字とは考え方が違うわけなので、そうすると、各社ごとにいろいろな関係があるわけで、各社の実情からいうと、赤字が出るということは考えられないのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/31
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032・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 これは赤字が二つの意味になるわけです。一つは硫安輸出会社の赤字です。それから今度は硫安輸出会社が公定価格で、買いまして、それで輸出するとき、その差額が出てくる、その差額は今度は生産者に払えないわけですから、生産者側はこれを未収で立てて借入金でまかなっていくが、現実に入らないのですから、それだけ安く売っているわけで、それをすぐ期末に未収を回収不能として落せばそれだけ利益が減るわけです。その決算の際に、硫安会社には高いので売っているのですから、将来も未収として立てなければいけない会社も出てくるでしょう。その場合には、その分に相当するものは翌朝の原価計算には硫安輸出会社に対する未収、これは赤で、それだけの借入金増になっておりますから、おそらく借入金増の利子分はコストに入れないということによって国内価格に輸出の赤をしわ寄せするということは一応断ち切れるわけです。それから今のように、いい会社では、すぐそれを期末に、その会社の決算期に落すことができるわけです。そうすると、その会社では配当可能の利益はそれだけ落ちるわけです。ところで、先ほどから申しますように、極端な、最下段の二万七千三百円というような会社では、バルク・ラインの中で計算されたのは約二万五百円でありますから、七千円がらみの赤字になっているわけです。その上にさらに二万五百円よりも輸出価格がもっと下回るのですから、それにプラス赤字がふえる、こういうことになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/32
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033・石田宥全
○石田(宥)委員 次に肥料の取締りの関係でちょっと伺いたいのですが、最近有機質肥料が相当出回って参りまして、また配合肥料等がかなり出回っているわけでして、地方に参りますと、公表した成分にかなり欠けるような悪質なものが多く出回っておるようでありますが、検査の実績と申しますか、状況を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/33
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034・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 ただいま資料を持ってきておりませんから、あとで資料で差し上げます。ただ最近では化学肥料が非常に多くなりまして、有機肥料の方は減ってきております。そのかわりにいわゆる微量要素等を含んだマンガンとか、あるいは植物成長ホルモンとかいうようなものの含まれたものなどがいろいろ中には出ておるようです。それから化成肥料、これも化学肥料でありますから、化学肥料の方には成分の問題は比較的少い——ほとんどないといっていいわけです。今御指摘の有機質肥料あるいは配合肥料等に特別にその点がありましたら、念入りに調べてきますから、お教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/34
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035・石田宥全
○石田(宥)委員 聞くところによりますと、大メーカーの製品にも多少その問題があるということでありますが、そういうことはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/35
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036・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 これは数年前に、たとえば東北肥料なら東北肥料で化成肥料を始めたときに最初の製品にふぞろいが出まして、それを何千トンといって押えて、成分を均一にさしたという例があります。しかし現在はそういう問題は化学肥料についてはなくなっておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/36
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037・石田宥全
○石田(宥)委員 私の質問は大体この程度で終りますが、さっき申し上げましたように、日本の農政の上において肥料行政というものは非常に大きな影響を及ぼすものでありますので、農林省はやはり農民の立場において農業生産というものを保護し、守る立場において、もっと根本的に検討していただきたい。ことに最近顕著になって参りました系列化の問題、カルテルの問題は独禁法との関係もございますが、やはり独占企業による農民の収奪というものは、単なる農林行政の面においてこれを押えるというようなことは非常に困難でありましょうけれども、そういう点も留意されまして、肥料行政の誤まりなきを期せられるよう要望申し上げまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/37
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038・赤路友藏
○赤路委員 ちょっと資料要求です。農林省の方で肥料工場の合理化を過去においていろいろ推進してきたんじゃないかと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/38
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039・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 それは通産省です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/39
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040・赤路友藏
○赤路委員 それじゃ通産省からもらって下さい。過去において合理化を推進してきたと思うが、その現在までの進捗状況はどういうふうになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/40
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041・中村寅太
○中村委員長 石山權作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/41
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042・石山權作
○石山委員 私たち地方へ帰りますと、米の値段と肥料の値段を比べてみると、どうも肥料の値段が高い、これは農民の方々に会うたびごとの言葉でございます。私は資本主義がいいとか社会主義がいいとかというそういう話でなく、現実の経済の運行の中において、合理化なら合理化、あるいはコストの引き下げなり流通過程の問題なりはいい方向へ行われる要素があるものだ、こういうような観点のもとに質問をしたいのでございますが、たとえば肥料の原価計算ということになりますと、それからお米の原価計算というふうになりますと、お米の原価計算は私は非常にやさしいと見る。これは普遍的なものなんです。たとえば国民の中に四割なら四割という農家の経営者がおるのだから、これはだれが見てもある程度の原価計算というものはごまかしのきかない立場で論ずることができる。しかし工業になりますとこれはいろいろの特殊性がございます。特にその特殊性の中に、硫安などは化けもの化学でございましょう。その化けもの化学の原価計算などというものは簡単にうのみにはできない要素があると思うのです。私は民間の会社に勤めていて、それぞれの経理を見て知っているのですが、その化けもの化学になればなるほど逃げ道は幾らでもできる、これが化けもの化学の原価計算でございます。これはどうも農民の方が米価の計算なんかのときに非常に厳格に行われて、そうして工業の肥料の方の原価計算の場合は、わからないものだから厳格に行おうとしてもなかなか行えないのではないか、そういう心配は感じておられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/42
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043・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 原価計算はなかなかむずかしいのは御指摘の通りであります。私の方のやり方は、定期に報告をとりまして、これに基きまして、現実に現場に行きましてその報告と原簿とを照らし合せまして詳細に調査いたしまして、大体原価の要素、原材料費、これはそれぞれの相場があります。その仕入れ方にもリベートの問題があって、あるいは特約があって、そこをめつけるのが一つの原価算定のあれになるわけです。それから労務費等についても、これもいろいろな給与の形で出ているものがあります。それの算定とさらに今度は利潤なら利潤をどういう基準できめたらいいか、こういう問題等非常にむずかしい問題があります。これは数字は米の生産費を調べるよりもはっきりつかめるのであります。しかしその中にある程度の幅を持たしておる。これはいい会社ならいい会社ほどそういう余裕が方々に盛り込んでありますからむずかしいわけであります。しかしそれは今申し上げましたように、報告と原簿との調査でそれを分解してつかんでおります。それともう一つは、結局先ほど来説明しておりますように、二百五十万トンがらみのものから百七十万トンのものを生産するのに必要な工場のやつをとっておりますから、その関係で、その中へ入らぬ、マル公に入らない工場は大へんなことになっているわけであります。従って全体としての会社の相当長い期間の決算の状況を見ますれば、原価で正しかったか正しくなかったかということは判定ができるのであります。ただ最近の状況で非常に困難を来たしておりましたのは、合理化々々々といい、合理化が進んでおりますけれども、石炭、電気、現在の労賃みんな上りファクターでありましたので、その上りのファクターを引けば、これは十八ページの表で見ていただきますと、国内価格十貫当りずっと二十九年から下ってきておるわけであります。一方原材料費とかその他は上ってきておるわけでありますから、それを差し引くと実質的にはもっと下っておるわけであります。お話のように原価計算は非常にむずかしいのでありますが、そういう結果、各社総まとめで相当長い毎期の決算を見ておりますと、工場の数が比較的少いものですから、私どもの原価方式が相当精査がきいておるのじゃないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/43
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044・石山權作
○石山委員 農林省の方がそういう機関をもって現場をよくお調べになっているか知りません。ただこういうことは言えると思います。その会社の利潤に対しては、税務署みたいに有能な、長い間の経験を持った方々は、二重帳簿を作ろうが何しようがなかなかうまくつかむわけです。しかしコストというものは、ある点からいえば全く商行為に属する問題なのです。法律的な問題じゃないのです。ここに逃げ道が出てくるのです。ごまかしがきく、うそが言える、うそをつこうとする、ごまかしたいという本能が各経営者の中に当然生れてくるものなのです。それがわれわれ側の、たとえば農民の場合、野菜なら野菜をたくさん作って、これはうんと欠損になっていくわけですね。それの償却の仕方なんか実にちゃんとつかむことはつかまれているし、もうけもそのかわりちゃんとつかまれているかもしれません。しかし損したのは、今こまでの農家の所得なんかを調べてみますと、野菜とかそういうものはおおむね欠損の部分は把握されていない、取り上げてもらえていないというのが事実なのです。片一方は非常に厳格に査定をされるわけでしょう。これが米価をきめる場合に米価にはね返ってくるわけです。しかし各工場の生産費というのは、利潤その他は割合に把握できるけれども、コストというものは商行為の中に行われて、その会社の経営上のテクニックによって生れてくる。それから税金の対象と資産表の利潤を見てもわかるわけなのですが、税金の対象になるものと資産表に現われてくる利潤というものはおのずから別個な考え方で見られていてもいいわけです。そういうことを考えますと、この硫安などのコストは調べ方がいろいろあるだろう、かなりりっぱにつかんでいられるだろうと思うけれども、そういう困難があるということをわれわれは大きな原則の前に見ているわけなのです。それに対してどういうふうなつかみ方をやっておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/44
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045・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 これは法律の十五条によりまして報告を徴し検査をすると同時に、法律十五条の第四項で「立入検査をする職員は、その身分を証する証票を携帯し、」ていく。ですからこれは原簿を見る、伝票まで見るわけです。たとえば石炭なら石炭の購入費、コークスならコークスの購入費というものはそこでわかるわけです。しかしその取引の中に歩戻しとかなんとか表面に出ないこまかいいろいろな条件があります。しかしそれはほかの社と比べてみますとおのずから見当がつくわけであります。もしそういう歩戻しがあれば高く買っているわけですから、そこで査定する、こういうふうにして相当こまかくやっている。これは御承知のように戦争前、昭和十一年から重要肥料統制法というのでずっとやってきておりますから、会社の方のそういう帳簿組織の整備もできておりますし、われわれの方にもベテランの検査官がおりますから、割によく見ているのじゃないかと思います。しかしながらなかなかむずかしい問題であります。ですから場合によると、頭から査定して相当トラブルも起る、こういう問題も起こってきております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/45
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046・石山權作
○石山委員 それからコストと合理化というものは当然並行されていくわけですが、今われわれ合理化した結果というのは、おおむね合理化でなかったと思うのですよ。つまり増設というふうな経営方針の方が今までの産業界にはぴったりしていると思う。もちろん合理化をする意味でいろいろな新しい機械を入れましたけれども、なぜ増設の形になっているかというと、前の古いのがそのまま稼動しているわけです。それがなぜかというと作れば売れるということなんですね。安い高いは別にして、作れば売れるということでそういう現象が起きてきた。だから生産能力がたとえばドイツよりも上回って、一五%も最近ふえたとかいうのも私はそういう現象からきておると思う。真の意味のコスト引き下げの合理化は産業界で行われていないだろう。これは肥料の中にも私はあると思うのです。私のそばにも硫安工場がありますので、私行ってみるのですが、これはやっぱりそうなんです。こういう点はほんとうにもう少し切り下げて、米価に見合う肥料の値段ということをお考えになるとすれば、やはり増設というような考え方は一ぺん捨ててもらって、老朽はあまり動かさないというところまで推し進めるという考え方で行政措置がとられなければ、コストは一般的に高いということにならざるを得ないのであります。しかも最近なまける現象ができているということは、今そこの工場へ行くと何もありません。どんどんふえていくというのですよ。せんだってまでは荷もたれで少しうまくなかったのですが、今度はどんどんふえていく。今こまで鉱山からの買付を控えておったのですが、今度はどんどんハッパをかけて硫化鉱を購入している。しかしコストはおそらくあまり下らぬじゃないかというのが私らの観測なんです。ですからコストをお考えになるならば、これはむごいことですよ。切り捨て処分、整理をしなさい、それは行政措置でやるというのですからむごいようにも聞えますけれども、今この経済機構の中ではそういうふうな措置もとられなければ、なかなか米価に見合う肥料のコストが生まれてこないのではないか。こう私は思っておりますが、そういう行政的な運用は現機構の中では可能なのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/46
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047・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 お説のように今までは作れば売れた。作れば共通費が減りますからコストが安くなる、つまりせんだって当委員会で川俣委員の質問があったときにお答えいたしましたが、量産によるコストの低下とそれから技術的の合理化によるコストの低下の二つがあるわけです。確かに今までの合理化と称される部分には、量産による合理化の部分が相当大きなウエートを占めておりました。それは御指摘のように、今までは売れたからそれで済んだ。今はもう売ろうとすればそれだけ見送らなければいかぬ、こういうことになっておりますから、いやおうなしにどうしても老朽施設を処置しなければいかぬ、こういう段階に来ているのであります。これはやはり行政措置だけでは十分でない面があると思います。今いろいろなケースを調べておりますが、あるいは立法措置が必要になってくるのではないか、まだ結論が出ておりませんけれども、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/47
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048・石山權作
○石山委員 先ほど石田委員からも指摘されておりましたが、赤字出血という問題とそれからコストによるところの問題と、価格の維持という問題に対しては、ともすれば非常に資本の強い、合理化の進んだ会社だけが——これはわずかの差異であるかもしれませんが、非常にそのことによって莫大な利潤を得るという、この会社にとっては妙味もあるわけです。その特定の会社だけをもうけさせるための一つの行政措置とか約束事とか調整機関というものは、ある点から見れば消費者に対して、農民に対して不まじめだということにもなるようでございます。これから特に合理化は進むわけでございましょうから、そういう点は私は十分に注意をしていただけば、その弊害はとれるだろうと思います。しかしこれは何と申しましても、そういうやり方は資本主義のワク内の一つの計画経済みたいなものですから、いろいろな矛盾が生まれてくるのは私はやむを得ないと思うのですが、そこの矛盾を防ぐというのもわれわれの研究なのでございますから、努めて矛盾をなくして、一般的な消費者に影響をと与えぬ方策をこの際大いにわれわれ研究する必要があるのじゃないか。
もう一つ企業の合理化の進行の中に、たとえばガスを持ってくる、これも新しい方法なんです。それからいやおうなしに系列化が進むわけですね。新しい機械をどうしても入れるとなれば、何といっても金融引き締めでございますからどうしても引き締めます。系列化の中にこういう現象がきている。私のそばの会社には、技術と資本というものがかち合っているわけなんです。たとえば名前を言うと三菱と住友、これは一つの会社の中に競合しているわけなんです。片一方だけに力が強くてうまく進めばいいけれども、技術はこっちだ、資本はこっちだ、そういう形で土着資本が既往の資本に系列化されていくわけです。その系列化の中に相剋するわけでしょう、資本が違うし人的配置が違うのだから。その相剋がやはり経営に響いてくるし、労働組合に対しても二元的な発言がなされているわけです。ましてや経営にもそういうことがないとは言いきれません。こういういわゆる合理化の方向というものは、これは農林省の仕事でないでございましょう、おそらくこれは通産省の方がほんとうの任務であろうと思うけれども、ただそういう工場は、私は小さい弱小工場、会社、そういうところにたくさんあるのじゃないかと思います。それがあればやはり一本化されないものですから、どうしてもコストなんかでも——それはそうでしょう、労働組合にも二元的な発言をするのですから日々の営業にも操作にもいろいろうまくいかない点があろうと思う。そういうようなサボタージュみたいな、ブレーキをかけたような格好で、そうでなくても弱小会社のコストが高いところに低迷している一つの要素があるのじゃないか。こういう点は行政指導の中身かどうか、私は判定に苦しみます。が、そういうふうにして弱小の会社は今非常に因っているということですね。せっかくコストを切り下げたいけれども、一つの経営方針が一貫しないために——こういうものも何かの形で、たとえば融資する場合の一つの発言があるでしょう、開発銀行から融資する場合の一つの発言もあるでしょうし、あるいは外国に輸出する場合の認可の中における話し合いによっても十分われわれ側が言い得る機会があるのではないか。そうでないと非常に困難が起きてくるということが予想されます。これはあなたから御説明を願っても私もぴんと受け取れない説明になると思いますので、ただ私のそばの上着資本として優秀であった一つの会社が、合理化の進むにつれて系列化の方向に向った、しかしその中では矛盾した二つの姿が現われてきて、労働行政上から見てもあるいはコストの問題から見ても困難が起きつつある。これは私のそばの一つの会社だけでなく、他の弱小会社にもそれぞれあるのではないか。こういうふうなことを念頭に置きまして、来年度なりの構想を立てていただかないと、机上のプランだけではコスト引き下げの問題、合理化の問題は進まないのではないか、私はこういう意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/48
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049・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 御指摘のように膨大な施設とか、非常に精密な技術を要するわけでございますから、資金と技術がそろわなければ合理化ができません。御指摘の工場では、過去おそらく工場創立以来取り組んでやってきて、ようやく軌道に乗りかかっておる状態でありまして、これを一日も早くやらなければ、それだけ赤が多くなるからおくれてくる、こういうことになるわけであります。そういうわけでありますから、どうしてもこれは政府だけでもいかないわけです。技術を交流するといいましても、これは競争的立場になれば、技術の援助というものはなかなか本気になってやりません。戦争の始まる前には非常に秘密の工場でございましたが、戦争中には資材の交換から技術の交換全部をやったのです。そういう関係で硫安工場では、比較的ほかの工場に比ベて交流がいいのでありますが、やはり何といっても自分の本体のところに優秀なのを置いて、第二陣をそういう援助に出しますから、いいかげんな提携では、弱小会社の合理化を他人の助力に仰いで目的を達することはできないのであります。そういう意味からいいまして、やはり政府と硫安業界全体が、これをどうするかということに真剣に取り組まなければいけない。そしてそういう空気はもう醸成されておりますから、この一年間の課題ということになってくるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/49
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050・石山權作
○石山委員 もう一つだけ伺いますが、この工業は非常に電力をたくさん食う仕事であります。電力問題が——たとえば東北電力、北陸電力のつまり料金値上げという問題が出てきて、これはまだ未決定でありますが、そういう方向をとっておる。コスト引き下げの前に立ちふさがっておるのは、たとえば私のそばの工場などは、電力問題が相当大きく影響するのではないか。今度の場合は、東北でも北陸でも、小口が影響を受けるよりも、大口の使用者が値上げに非常に大きく影響される段階をとっておるようであります。そうしますとこれまた非常な苦境に追い込まれていくのではないか。特に関西とかこっちのように非常に合理化の進んでいる土地と違いまして、北陸、東北の工場はどうしても弱小工場、弱小会社と呼ばれると思いますが、そこにまた電力値上げがあれば、当然これは悪い条件が生まれてくると思います。そういう点も一つ十分に考慮しながら、一般の肥料というものも考える必要があるのではないか、こう思っておりますが、農林省ではこの電力問題に対して何かお話し合われていた経緯がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/50
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051・渡部伍良
○渡部(伍)政府委員 御指摘の通り硫安、石灰肥料は電力問題が非常に重要でありまして、これは肥料という特殊性にかんがみて値上げは絶対反対、こういうので交渉しておるのであります。ただ何といいますか、動力用の電気だけであればよいのですが、電解になればこれは非常に陳腐な施設の標本でありますから、こういうところがやはり企業合理化のねらいどころになるわけでありますので、そういう点はそういう点で別途合理化の線を進めたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X01419580313/51
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052・笹山茂太郎
○笹山委員長代理 午前中の質疑はこの程度にとどめます。
この際暫時休憩いたします。
午後零時十五分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
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