1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月二十八日(金曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 中村 寅太君
理事 川村善八郎君 理事 吉川 久衛君
理事 笹山茂太郎君
安藤 覺君 五十嵐吉藏君
石坂 繁君 大石 武一君
大野 市郎君 木村 文男君
小枝 一雄君 鈴木 善幸君
中馬 辰猪君 丹羽 兵助君
松野 頼三君 阿部 五郎君
伊瀬幸太郎君 石田 宥全君
石山 權作君 稲富 稜人君
久保田 豊君 楯 兼次郎君
永井勝次郎君 中村 英男君
細田 綱吉君 山田 長司君
出席政府委員
農林事務官
(畜産局長) 谷垣 專一君
委員外の出席者
農林事務官
(畜産局酪農課
長) 松田 壽郎君
参 考 人
(農林中央金庫
理事) 一楽 照雄君
参 考 人
(全国農業協同
組合中央会会
長) 荷見 安君
参 考 人
(全国酪農協会
副会長) 窪田 喜照君
参 考 人
(日本製酪協同
組合理事長) 諏訪健次郎君
参 考 人
(日本乳製品協
会会長) 植垣弥一郎君
参 考 人
(雪印乳業株式
会社副社長) 瀬尾 俊三君
参 考 人
(森永乳業株式
会社常務取締
役) 大野 勇君
専 門 員 岩隈 博君
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三月二十七日
委員松田竹千代君辞任につき、その補欠として
遠藤三郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員遠藤三郎君辞任につき、その補欠として松
田鐵藏君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十八日
委員阿部五郎君及び日野吉夫君辞任につき、そ
の補欠として山崎始男君及び永井勝次郎君が議
長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
酪農振興基金法案に関し、大蔵委員会と連合審
査会開会に関する件
酪農振興基金法案(内閣提出第一一六号)につ
いて参考人より意見聴取
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/0
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001・中村寅太
○中村委員長 これより会議を開きます。
酪農振興基金法案について審査を進めます。本日は本案について、参考人各位より御意見を聴取いたしたいと存じます。
参考人各位には御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席下さいまして、厚くお礼申し上げます。御承知の通り本案は、乳業者及び生乳の生産者の経営の維持及び安定に要する資金につき、これらの者が金融機関に対して負担する債務を保証する機関として、酪農振興基金を設立せんとするもので、あります。本日御出席の参考人各位は、いずれも本基金の設立に関してきわめて密接なる利害関係を有する方々でありますので、それぞれその専門的立場より御意見をお聞かせ願いたいと存じます。
なお協同乳業株式会社会長の吉田正君は、風邪のため出席できないとのことでありますので、御了承願います。
これより参考人の意見聴取を行いますが、勝手ながら発言の順序は意見参考人及び、楽参考人は所要のためお急ぎとのことでありますので、両参考人の意見聴取及び質疑を最初にいたしたいと存じます。ではまず一楽照雄君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/1
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002・一楽照雄
○一楽参考人 農林中金におります一楽でございます。勝手なご希望をお許しいただきましてありがとうございます。
この法案につきまして、私がこうした方がいいじゃないか、なお御考慮をわずらわす方がよくないかと思います点を申し上げますと、それは第一にこの基金が保証をなさいまする時期を、常時ふだんに発動するという建前にしないで、そして乳業界の不況時において、一定の基準を定めておいたところに従って迅速果敢に発動するというようになさいますことが、一番効果的ではないかと思うわけであります。と申しますのは、乳業者と酪農家との間の生乳の取引関係で、いろいろ世間で問題になりまするのは、乳代が滞って払いにくい、延びるという場合があることと、それから乳価を急激に引き下げられるというようなこと、また非常に極端な場合は乳がもう要らぬといって拒否されるこれは極端な場合でありますが、そういうような場合だと思うのでありますが、こういうような現象が起りまするのは、乳業界が不振なときでございまして、好況なときはそういう問題は起らないのが普通だと思います。従いまして問題に対する措置は、やはり不況時一の対策ということが主要になると思います。乳業者の立場から言いますと、ほかの産業と違いまして、市況が悪いから生産を手控えし、従って原料たる乳の購入を手控えるというようなことがきわめてできにくい産業であって、およそあらゆる企業の申でこういう点において原料の受け入れを自由に多くしたり減らしたりできないという産業はほかにちょっと例がないのではないかと思うわけであります。この企業としての弱点といいますか、やりにくさが、不況時におきましては、酪農家にしわ寄せをされてくるおそれが多分にあるわけでございまするから、この点は一がいに――農家の立場から見て乳業者がけしからぬというような感じを持つものがあるわけでございますけれども、また乳業者の立場を考えてみると、まことにやむを得ない場合が非常に多いと思います。従いましてこれを具体的に打開するためには、不況時において乳製品の消費を資金化する、そういう場合に金融機関が金をどしどし出せばいいわけですけれども、実際問題としますと、金融機関もまた金をかえって引き締めるというようなことがありがちでございますから、そういう乳製品の価値があらかじめ予想しました一定のところまで下ったときには、迅速果敢に消費金融を金融機関にやってもらう、その場合の保証ということにこの施設を用いていただきますると、これは一つの伝家の宝刀となりますので、この施設によって保証する限度が相当ありますると、宝刀を抜かなくても済むという事態が多いと思います。そういうことになりますると、金融機関から見ましても乳業者に対する金融が従来に比べましてはるかに楽にできる。ふだんにおきましてはこの施設によって保証しなくても、この施設があるという、非常時において発動するということによって、ふだんの金融が楽になります。またその事故が万一起ったときには発動すれば滞貨が資金化されまするから、たとえば一ヵ月分の製品の滞貨が資金化されますると、大体において原乳代二ヵ月分を払えまするから、その乳代支払い遅延という事態が起らなくなると思う。従って私はいろいろえさの購入資金だとかあるいは乳代の支払いが遅れた場合にどうするかというようなことを予想して、直接そのことに対する金融というようなことを予想したような条文がこの二十九条にありますけれども、そういう点は御心配なさらなくていいのであって、乳代さえ順調に支払われますると、えさ代の問題は起らないということになりますから、そういうようにしていただくことが一番いいのじゃないか。
もう一つは、せっかくこの基金が相当な金を持っておりますと、それから運用益が出て参りますから、これは積み立てていくということも一つの方法でございますけれども、この基金には直接資金の保証をしてもらう立場でない乳業者の協同組合というようなものも入っておることでもありますし、また現在の乳業における生産と消費との傾向から見ましても、消費の促進ということが、きわめて根本的に大事なことだと思います。各乳業者において非常な広告、宣伝をされておりますけれども、そういうことの経費の一部をさいて共同で乳製品並びに市乳の消費促進をはかるということが、これから業界として大いに考えていただく必要があることだと思うのでありますが、そういうことのきっかけといたしましても、この振興基金で入ってくる利息収入を、この団体が直接あるいは間接にそういう促進の方に向けていくということにして、今後の乳業界全体が消費促進に各業者の力を添えてやっていくということのきっかけにしていただくと非常にけっこうだろうと思います。
以上二点につきまして、私のきわめて不勉強な粗雑な考えでございますけれども、御清聴をわずらわしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/2
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003・中村寅太
○中村委員長 ただいまの一楽君の御意見に質疑がございましたらお許しします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/3
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004・久保田豊
○久保田(豊)委員 一楽さんにお伺いをいたしますが、この法案によりますと、要するに酪農家の加わっておりますいわゆる単独農協と申しますか、単位農協に対して、相当資金が流れ得るようになっておるわけですね。つまり地方でいいますと全酪になりますかね、そういうふうな総合農協と単位農協、こういうものに対して、この線がむしろこの単位農協といいますか、単独農協の機能を非常に強めるような格好になるのです。これは中金の立場からだけは考えられないと思いますけれども、今日のような段階で、実は単位農協と総合農協との関係を具体的にどうするかということは、農政全体について非常に基本的な問題になるわけですね。これらについては、私の見るところでは、農林省の内部の意見も必ずしも統一しておらないようです。総合農協の方では、御承知のように、米と肥料と金融を中心にしたいわゆる整促段階的な指導がかなり強く行われておる。しかし現実の末端においては、そういう形では農民は農協をだんだん利用できなくなっておる。非常に商品化が急速に進み、市場の条件が変ってきておるから、これに対して末端ないしはその他の段階における総合農協が、ある意味においては半身不随みたいな格好になって、必ずしも農民の要望に沿えなくなってきている。そこで自然発生的に、いわゆる単独農協といいますか、任意組合その他の形において、農民の商品化に基く流通過程における立ち向いということがある程度行われている。ところがこれがざっくばらんにいうと、なかなかはっきりしたものになっておらない。特に資金的や組織的な面では非常に多くの欠陥があって、そういうものは多くは大資本の特約組合ないしは下請組合的なものになりがちであります。特に酪農組合はそういう点は非常に強いわけであります。これに対して、この法案によって、今お話のような点は別にしまして、非常に楽になれば、そういうことはありますまいと思いますけれども、えさの資金なりあるいはその他のいろいろの運転資金を常時系統的に流すということになれば、いわゆる全酪系統の単独組合といいますか、こういったものが、総合農協に対抗するものとしてかなり力を持ってくるということが考えられる。これをこのままに置いてもいけないと思いますが、これに対する農林省の見解も実は二途に出ておって統一しておらぬ。単独農協を今後どういうように育てるのか、総合農協とどういう関係を持たせるのか、ここらがはっきりしないのであります。これが末端においては実は非常に混乱を来たしておる。今まで私どもの承知をしておるところでは、中金は大体において総合農協本位です。そう見ていいと思う、そういう点でも、特にこの酪農というのは、今後の日本の農政の、政府の考えによれば骨格をなすようなものについて、そういう単独農協をこの制度によってある意味において強化をする。いろいろの欠陥を持っておる単独農協を強化するということが、日本の農業協同組合体制なり何なりにとってどういう影響を持つか、特にそういうことがいいか悪いか、こういう点をお伺いいたしたいということが一点。
それから、こういう制度で金融をいたします、つまり債務保証をするという場合に、果してこれだけで、たとえばあなたのところでここに金を出すということにしましても、これだけの金がどんどん出せるのかどうか。特に、この点は私もはっきりしないが、おそらくこの資金の債務保証をする場合においても、何らかの債務保証に対する回収の確実さということをしなければならぬ。金融機関もこれだけの債務保証があれば、たとえば製品担保のごときは要らないのかどうか。そういう点の連関をどんなふうにお考えになっておるか、この二点をお伺いいたしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/4
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005・一楽照雄
○一楽参考人 総合農協と単独といいますか、特殊農協の点につきましては、総合農協の方は、最近酪農といいますか、畜産の方に積極的にやらなければならぬという機運が、単なるお題目でなくて、着々と進みつつあります。しかしながら一面特殊農協の存在理由も現在においてあるのが現状であろうと思うのでございますが、しかし将来において畜産がもっと普及しますれば、総合農協の中によりよく吸収されていく問題であろうと考えております。ところが事金融に関しましては、信連なり私の方は、総合農協でなければ加入できない機構では決してないことは御承知の通りであって、みな加入できるわけでございます。従って金融面におきましては、特殊農協も金庫なり信連の施設を十分に利用していただかなければならぬ関係になっておるわけであります。総合農協が古くからあって、特殊農協が新しくできて、そうしておっしゃるような性格の少しどうかと思うのもまれにあるかと思いますので、特殊農協の方から金融の問題が折折問題に出されておりますけれども、実情は特殊農協におきましても、実際に仕事をうまくしていくためには特殊農協自身が金が要るというものは、信連やあるいは金庫から借りるし、あるいはその組合が必要とする金は関係の総合農協から借りるようにさせる。というふうに、要するに信連並びに総合農協との連繋を強化しておるところほど特殊農協も伸びておりますので、総合農協と対立的関係を強化することによって特殊農協は伸びていないし、今後も伸び得ないと私は観測をしておりますし、また考えておるわけであります。従いまして、そういう線に漸次進みつつあるし、またそれが可能であるということが考えられますにかかわりませず、特に特殊農協だけに別の施設を講じて、そうして今まである系統金融の機能を働かせればやっていける可能性が十分あるのに、特殊の施設を講じて、そして系統内の金融に対して別個の保証協会に保証してもらうということは、系統金融に携る者としては忍びない、恥かしいことだと思うわけでございます。また事実保証するものと保証をとって金を貸すという場合の立場を考えますと、保証をする者は金を貸す者よりも債務者の方にふだん近いものでなければならない。また実情もよくわかっておるものでなければならない。ところが東京のまん中に保証協会があって、われわれの方は多少の歴史もありますし、機構もあって、われわれ組合金融の機構の方がかえって相手の実情をよく知っておるのに、よく知っておって、しかも系統組織の陣営の中におる者が、そのほかのもの、事情のわからぬものに保証をしてもらって金を貸すという関係は、あまりにも主客転倒というか、私は立場が逆になっておりはしないかと思います。そういう点から見て、そういう保証の機能をこういう面で働かすのはおかしいと考えております。
それから第二点の、この施設ができれば金は簡単に貸せるのかというお話でございますが、先ほど私が申し上げましたように、不況時において滞貨を資金化するという趣旨の話でありますれば、これは機械的にわかりますから――しかしおそらく担保はいただいた方がいいと思うのです。二重になるといけませんから、製品を代金にするかわりに借りるのですから。その場合はおそらくまる掛あるいはそれにきわめて近いもので保証があるものですから、迅速果敢に融通することが私どものみならず、銀行においても相当可能ではないかと思うのであります。ところがそういう場合の滞貨金融でなくして、ふだんにおいて金が借りにくいところに、この保証協会が保証するから貸すというような関係の場合を想定いたしますと、単に営利だけの、金融的に貸した金がとれればいいという考えになると、これは保証協会の保証があるのだから、貸してとれない場合はそちらからもらった方がいいということも考えます。また少し悪知恵を働かしますと、従来働かしておった金をそっちに乗りかえて、危険を保証協会に転嫁さすという、そう意識的でなくとも、事務当局のいろいろな熱心な考え方、やり万で、結果としてそうなることが、私は金融機関と企業者との間において起り得るのではないかと思うのです。そうしますと、保証があるからといってルーズに貸すことは、結局債務者のためにならない。ある程度良心的にやらなければならぬということになりますと、先ほど私が申し上げましたように、それでは保証協会の判断とふだん取引しているところの金融機関のどちらが債務者の企業体の実情をよく知っているかということになりますと、それは急に保証協会の方がよく知るというようなことは考えられないのではないかと思います。従って御質問に対して、私の意見をふたたび言うようなことになってはなはだ恐縮でございますが、この基金がふだんにおいて保証するというようなことは、金を借りるときだけはえらい楽ないいことのようでございますけれども、あとになってみると、それは決して債務者のためにいい結果にならない場合が多いということが考えられるという考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/5
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006・久保田豊
○久保田(豊)委員 今の大体の御意見だと、少くとも農協あるいは中金、信連というふうな系統金融の立場からいうならば、これがかえってある意味での混乱を起すということに結論はなると思う。今のお答えではそう理解してよいと思うのです。しかもそれは単に金融上の混乱だけではなくて、農協活動全般に対しこのある意味での混乱を起すということにも通ずると思います。そういうふうに理解していいかどうかという点が一点。
もう一点追加いたしますと、こういう制度ができたことによって、これはすぐに全部ができるわけではありませんけれども、たとえば中金の金融が中小の乳業者、大乳業者にどういう連関を今後持っていくべきか、持ち得るかという点ですね。もっとはっきりいえば、こういう制度が、中小の乳業者やあるいは大乳業等に対して、中金の金がむしろそっちに流れる一つの足がかり、よりどころになりはせぬかと、いう点が考えられるのですが、こういう点についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/6
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007・一楽照雄
○一楽参考人 私の方は貸し出しの対象が系統外のものは余裕金があった場合に主務省の認可を得てという、そちらからの制約がありますから、余裕金があるかないかということに関係がありますが、しかし保証があるからどうこうということは直接の影響はちょっと考えられないのでございますが、ただ。私が先ほど申し上げましたように、滞貨の場合その金は結局乳代として回っていくのだという関係になりますと、そういう場合には余裕金のある限りこの趣旨から見て制限をゆるやかに解釈していただいて、迅速果敢に積極的に御融通することができると思います。そうでなくしてただ乳業者の経営が困っているから、弱いから、信用力がないから、補強するから貸してくれというようなことだけでは、積極的な気持になりがたいわけでございますが、さっき申しましたように、不況時において結局農民にしわ寄せがいくおそれがあるから、それを防止するための滞貨金融というのであれば、積極的にこれは非常に貸しやすいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/7
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008・石田宥全
○石田(宥)委員 一楽参考人にお伺いいたしますが、あなたのところで取り扱われております酪農関係の新しい施設に対する融資、協乳あるいは雪印というような農協系統の会社に対する融資がどの程度に行われておるか。それから昨年来の滞貨融資がどの程度に行われておるか。
それからもう一つは、従来はとかく総合農協第一主義に融資が行われており、また総合農協の中に入っておっても、酪農関係に対する融資というものは、どうも中金の方あるいは信連の方は好まないのではないか。そこで特殊農協というものはやむを得ず大資本の方に、生乳の取引関係において会社から融資を受ける。融資なりあるいは購入資金なりの融資を受ける。そうすると、酪農協でありながら、これは任意組合の場合も、あるいは農協法に基く組合もありますが、それが会社のひもつきになってしまう、こういうような点、あなた方の指導方針というか、業務方針というか、そういうことでどうも特殊農協に対して融資することをとかく好まれない、そういう結果が今日のような非常に好ましからざる傾向を生んだのではないかということが考えられるのでありますが、これらの点について御意見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/8
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009・一楽照雄
○一楽参考人 最初の数字の方のお尋ねでございますが、ちょっと準備不足でございますけれども、乳業関係の会社に幾らいっておるかという御質問でございましたですが、それは三十三年二月末で六十七億八千七百万という数字が出ております。それから滞貨金融の、この間やりましたのをちょっと数字を覚えておりませんけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/9
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010・石田宥全
○石田(宥)委員 概算はわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/10
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011・一楽照雄
○一楽参考人 二億六千万円くらいだと思います。
それから特殊農協と総合農協に対する金融の問題でございますが、方針といたしましては、酪農といいますか、畜産を農業協同組合で積極的にやらなければならないということは、もうよく考えております。従って私の方も貸付の機構を最近改革いたしまして、畜産関係と開拓関係をくっつけて、従来貸付が一本になっておりましたのを扱き出しまして、融資第二部というものを作りました。たまたま私が担当いたして、力を入れておりま、いす。ただ過去のことを御批判いただきますと、どうしても農協が米麦農協というきらいがありまして、協同組合自体が進むよりも、農出家の方が先に進みまして、その結果として特殊農協、専門農協といわれるものができております。そういう状態でございますから、やはり最初のうちはこれに対する十分の理解が足らない。方針が悪いのじゃなくて、理解か足りなくて、おっしゃるようなことに追い込まれた傾向は、私どもも若干認めざるを得ないと思います。従いまして、それを認めますがゆえに、これではいかないので、急速に金融面においては、ばらばらでやらなくても、皆それぞれ信連なり中金に加入できるのでありますから、積極的に提携して、金庫の段階、信連の段階、また村の段落においても、畜産関係の金を積極的に出すように、事実そういう方針が逐次実現されつつある。特殊農協側の方のお話を伺いましても、総合農協本位でいかぬじゃないかというおしかりが一時ほどなくなって、最近はよほど緩和してきておるというように観測しております。その点は、むしろ全酪の窪田さんあたりから証明していただいた方が、我田引水でなくていいのじゃないかと思いますが、そういういい傾向が相当強く現われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/11
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012・石田宥全
○石田(宥)委員 もう一点だけ。今回の酪農振興残金法案によりますと、大乳業、それから中小メーカーと農協とが、それぞれ資金を分担して出すような形になるわけでありますが、農林中金の立場から見て、今後の農業金融というもののあり方が、やはり中金というものは、中金、信連で一つの系統金融機関です。これは融資保証でございますから、全然性格が違いますけれども、そういうところに、農協の立場において出資をするということについては、いろいろ異論もあるようでありますが、そういう点については一体どのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/12
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013・一楽照雄
○一楽参考人 私の考えでは、この基金が普通の保証協会として保証だけをするというのであれば、協同組合関係は加入する必要が原則としてないと考えます。私の方は、こういう基金をあてにしなくても、必要な金は出せるように思います。たださっき申し上げましたように、この条文を追加していただいて、この団体が金利収入があるわけでございますから、そういう点で、市乳並びに乳型品の消費促進のために、直接、間接に働くという機能をつけ加えていただきますと、やはり一時払いの会費というような意味で出すことが必要だ。これは進んで出さなければならぬと思うわけであります。私は逆に、この基金のメンバーの中に、おっしゃるような農協なんか入っておりますから、やはり会員の共通の利益になる仕事をやるべきで、共通でないことはやる必要はないと思います。ですから、そういう消費促進の宣伝という点については、生産者たる農民なりその協同組合も、応分の協力はしなければならぬと思いますが、その限りにおいて多少出してもいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/13
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014・石田宥全
○石田(宥)委員 そういたしますと、この問題はいろいろな立場――乳業メーカーにもいわゆる大、中、小があり、それから農民の立場と、全体に共通した利害というものは、今おっしゃる消費の促進以外にはないのです。それからもう一つは滞貨融資の問題ですが、そこで酪農民とすると、もちろんそれも必要だけれども、むしろ乳価の安定ということに主眼を置かなければならぬことになる。乳価の安定ということを中心に考えますと、やはり生産農民と乳業者の間に、必ずしも利害が一致しないということになるのであります。従って、こういう措置を政府がとられるならば、滞貨融資なら滞貨融資だけにしぼって、あるいは酪農民なら酪農民の融資、これをまたはっきり分けてやるようなふうにした方が、むしろすっきりしてよろしいのではないかという考え方もあるわけですが、その点について、農業金融を扱っておられる一楽さんあたりの御見解はいかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/14
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015・一楽照雄
○一楽参考人 一応乳業者の立場と生産農家の立場と、これは違うことはおっしゃる通りでございます。ただ先ほど申し上げましたように、乳の代金の支払いが悪いとか、急激に値段を引き下げられるというのは不況時においてであります。ですから乳業者が談合して勝手なことをするというような非道義的なことは別問題としまして、経済関係としましては、そういう不況時において、乳業者の困難がどうしても生産者にしわ寄せされていかざるを得ないという関係になるわけでございますから、それを保証協会が援助することによって、金融機関の方にしわ寄せるというか、金融機関と保証協会とを引っぱり込むことによって、しわ寄せが農民にいかないようにするというのが滞貨金融だと思いますので、金を借りるのは乳業者でございますけれども、その借りた金で乳代を円滑に払わす。終局的には生産者のところへ乳代が滞りなくいかすような仕組みでございますから、そういう意味において、先ほどの消費促進の宣伝のことと同じように、すべて間接にはなりはすけれども、究極的にやはり酪農安定のために非常に役立つと思いますから、金額的にはわずかでございますが、やはり乳業者の方と一緒に、この原案のように入って、しかし金額はほんのちょっぴりということにしていただきませんと、大きな負担力がありませんから……。そういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/15
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016・永井勝次郎
○永井委員 簡単にお伺いいたします。ただいまの参考人のお話では、この基金の運用を不況時の活用、それから消費促進のPR、こういう二つに限定して、それならばということでお話になったと思いますが、この基金の目的はただそういう狭い限界ではないわけです。そこでそういうふりに極言しますと、はっきりしてくるのですが、そうでなくて、この法案の目的からいえば、あなたはそういう面から見てどの程度の効果が期待できるのかということが一点、もう一つは酪農の現況からいえば、今振興しようというので出発したばかりです。出発したばかりでも、乳価は下る、いろんな問題が起っている。金融の関係からいっても牛を買う基金、あるいは畜舎を作る、あるいはサイロをつくるいう投資は、要するに一升四十円なら四十円という乳価の安定を基礎にして計算して、大体企業をやっておると思うのですが、これが移動してくる、どんどん下ってくるというような条件の申で、こういう基金だけでこの問題が一体解決できるのかどうか、この基金で一体どの程度期待できるのかということ、はかない期待をかけて、結局は農民に何も効果がないのに、こういう基金もあるからというような慰め的なもので引っぱっていって、そして無責任な奨励をして最後にがたがたになってしまう、こういうことでは大へんだと思うので、この基金の出発に当りましては、一体どのくらいの効果が期待できるのか、この資金の性格からいってどの程度の期待ができるかということを明確にする必要があるし、それから根本的にはもっと乳価の安定とか、あるいは長期の資金であるとか、酪農振興の根本に問題があるのではないか、そういうものがそろって、この基金制度ができてくれば、そのうちの一環としてこの基金の効果が期待できる。こういう性質のものではないか、こう思うのですが、この二点について一つ御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/16
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017・一楽照雄
○一楽参考人 ふだんはなはだ不勉強でございますので、少し範囲が広くなりますと、お答えができないわけでございますが、この基金の効果ということになりますと、ちょっと数量的にはお答えができないと思いますが、ただ私は消費の促進をはかるという方の機能をつけ加えていただいて、保証については先ほど申し上げましたように、乳価下落のおそれのあるときに滞貨金融をするという二つの機能にしぼって、そしてその特徴を十分に生かすというように、重点的にこの基金を働かしていただきますと、相当時宜に適した施策であって、そうして基本的な問題についての、一時的ではなくてそういう乳業経営の一極の経営難に基くところの酪農家の不安定、それから消費の促進というようなことについて、非常に適切な従って相当効果のあるものではないかと思うわけでございます。それをそういうように機能をはっきりさせないで、一般の保証協会のようにだらだらとあれもする、これもする、そうしてだらだらとこの限度を使ってしまうというようなことでは、ほとんど効果は期待できないで、いろいろの弊害といいますか、趣旨が実現されないで、むしろ逆効果のような現象も考えられるのではないかというような感じを持つわけでございまして、あくまでもこの基金で酪農政策全部を片づけようなんて考えないで、この基金によっては、これに参加する全体の酪農関係者、農民から大企業従事者まで含めているのでございますから、その関係者の間で相争う部面は大いに争わなければならぬと思いますけれども、この二つの機能に限定して、共同で乳業界の安定、発展をはかるという態勢をここでお作りになって、そうして今後ますます農民から大企業まで共同で困難を打開していく、そういう面も忘れずにやっていくんだということは、ここに形として現われることは非常にけっこうなことではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/17
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018・中村寅太
○中村委員長 荷見参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/18
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019・荷見安
○荷見参考人 この基金の問題につきましては、きょう私の意見を申し上げるようにということでございます。内容の詳細にわたっては十分研究がないのでありますが、大体の傾向等につきまして申し上げてみたいと存じます。日本の農業は従来のように米麦を中心としました農業からその範囲を拡大いたしまして、他の商品的な生産農業にも及ぼし、経済ベースに乗りました合理的な日本農業を樹立することは非常に必要なことでございまして、日本の農業を発展いたさせますためには、その重要な酪農を中心といたしました畜産振興政策が強力に推進され、その一つの部門といたしましての酪農振興基金法案が成立いたしますことは、もちろんそれのみで満足な結果を得るものとは考えないのでありますが、少くともこれまでほとんど見るべきもののなかった畜産振興政策につきまして、一つの前進であると考えられますので、この法案に対しましては、私は非常にけっこうなことと思っておる次第であります。酪農振興に関する問題としては、生産、流通、消費の合理化等の措置につきまして、基本的な施策が実施されることが望ましいのでありますけれども、それはただいま申し上げましたように、この基金のほかにお考えを願うことだと考えられますので、本日は現在御審議になっております基金のことについて、私の考えを申し上げたいと存じます。この基金は乳業が非常に打撃を受け、悪影響を受けますような場合に、乳製品の需給を調整し、価格の非常な大幅変動を防止するために、必要の資金につきまして債務の保証を行う等によって、価格の下落を防止しようということでありまして、私はそれによって乳業全体の経営の安定をはかることをおもな目的としておるものであると考えます。しかしながらこの基金の規模について見ますと、基金総額は十億円ということでありまして、決して大規模なものとは考えられないのでありまして、ただいま申し上げましたような価格調整上の必要な資金の円滑なる流通をはかるという目的のためにはこの基金のいたします業務というものはあまり広範囲に及びますとかえっておもなる目的を達することが弱くなるという結果になるかと考えられますので、その運用につきましては行政面等におきましても、業務をできるだけ重点的に施行することにいたしまして、その効果を十分ならしめることが望ましいと考えます。また農業協同組合関係について申し上げますと、農業協同組合は御承知の通り一つの経済運動でもありまして、系統運動を強化いたしますことによってその能力を高めることができるものでございますので、その点についても一応考えておかなければならないと存じます。しかしその実行方法等については避けます。
それでこの基金の運用につきましては、組合の運動の趣旨から見まして、できるだけその運動を発達助長するような方向に配慮を願いたいと考えておるのであります。申すまでもないことでございますが、酪農振興の基本的な問題の一つといたしましては、適切なる乳価安定制度を確立することはぜひ必要だと考えます。このためにはまず生産と消費、需要と供給というもののバランスをとるための施策が必要でございまして、昨年秋以降の酪農不況の原因は、金融の引き締め等によって起った面もあるかとは考えられまするが、生産の増加、これは前年に比べましておよそ二五%の増加でございますが、消費増進の速度は前年に比べまして市乳で一二%というように、これにマッチしておりません。このことが乳製品の滞貨をもたらし、市場を圧迫いたしまして乳業不況の原因となったことは申し上げるまでもないのでございまして、この対策といたしましては、農林省においては非常な御努力をなさいまして、滞貨練乳のたな上げの措置等によりまして最近では若干好転しつつあるようにも見受けられますが、今後の生産の予想を見ますと、年間およそ百万石以上の増産が見込まれまして、昭和三十七年度におきましては現在の生産量の倍近くになるものと考えられるのでありまして、牛乳、乳製品の需要増進対策は積極的に講ずる必要があると考えます。政府は生乳及び乳製品の学校給食等を実施いたしまして、消費の拡大に努められておるのでありますが、今後はさらにこれらの対象を拡大されまして、需要増進に対する積極的な措置を講ずる必要があると考えられます。元来本案のような基金の運用益というものは、危険負担に備えまして、できれば積み立てをいたしておくというようなことが大切ではあると考えられるのでございますけれども、牛乳、乳製品の需要増進が、ただいま申し上げましたような酪農振興上きわめて大切な役割を果すものであることに考えますと、基金の運用益の一部等は消費増進対策に使用することもできるように措置いたしますことは、現状から見まして望ましいことであろうかと考える次第でございます。
大体私の申し上げたいと考えますことは、現在まで畜産、ことに酪農対策につきましては非常に立ちおくれておるように考えられるのでございまして、これが恒久的な施策が一歩でも前進いたしますことは、やがて他の必要な施策の整備をするきっかけともなると考えられますので、かような施策ができますことはまことにけっこうであるということを申し上げたいのであります。ただその運用につきましては、これを散発的に実行されますと、かえって調節の力が弱くなるのではないかと考えられますので、できるだけそのおもなる目的に集中的に運用するような政府のお心組みが必要であり、また国会等におきましてもさような方面にお取扱いを願えれば仕合せでないかと考えるのございまして、はなはだ大綱だけ申し上げた次第でございますが、私の説明はこの程度にとどめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/19
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020・中村寅太
○中村委員長 荷見参考人に対しての質疑をこの際ごく簡単に許します。久保田豊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/20
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021・久保田豊
○久保田(豊)委員 二点だけ荷見さんに御質問申し上げます。ただいまもいろいろお話がありましたが、酪農振興政策としてまだ不十分だ、しかし本制度ができたことは一歩前進だから基本的に賛成だ、こういうお話です。そこで一点お伺いしたいのは、今酪農振興政策という点も、特に農民の立場から見た場合いろいろ必要な施策があるわけですね。生産面についてもあるいは導入資金面についても、あるいは飼料面についても流通面についても価格面についても消費面についてもいろいろあるわけです。
〔委員長退席、吉川(久)委員長代理着席〕
しかしどうですか、酪農農民の立場から見まして、当面荷見さんは、一番この要点と思われる点はどこにあるかということを、どんなふうにお考えになっているのか。これはあげてくればたくさんありますよ、全部ですね。しかし少くとも当面これから酪農振興を政府のいうように、日本の農業の性格ないし骨格を変えようというところまで積極的に踏み切ってやる、こういう大きな目標ですね。しかも今日のその出発点の時点において、どういう施策が一番重要な点であるかという点、そういう点とこの本法案と、あるいはこの基金制度、これとの連関がどうかという点をもう少しはっきり言っていただきたいのです。あちこち御遠慮になりながらうまいことを言ったじゃ、農協の親方としては工合が悪い。この点をもう少しはっきり言ってもらいたい、この点が第一点。
それから今のお話の中にも、本制度を農協を通ずる酪農振興運動、こういうものに一つ役立てるようにやってもらいたいというような御要望があった。実際にこの本制度が、いわゆる農協を通ずる経済運動としての酪農振興運動と具体的にどういう連関があるとお考えになっているのか。さっきの一楽さんの話では農協系統金融という観念から見るならば、むしろ本制度は系統金融というものを混乱させるものだ。農協の全体の今後の組織なり新たな何なりというものを、この点についてもむしろ混乱させるものだという明確な割り切りがあったわけです。あなたは農協全体を指導される中央会の親方です。金融面から見る人は、本制度はむしろ農協を通ずる酪農運動を、あるいは金融政策というものを混乱させる、こう言っておられる。ところがあなたは非常に前進だからいい。ただしどうも農協を通ずる酪農運動というものを一つじゃましないようにやってもらいたいというふうな表現です。あなたのお立場から見まして、本制度が農協全体、特に農協を通ずる酪農運動を健全に育てていくという観点から、これをどう評価されるかという点を意見をお聞きしたい。今のお話の中では乳業者についてはこの制度は相当いいだろうというようなことが暗々裡に述べられておる。きょうここへおいでをいただいて、われわれが特にあなたに御意見を聞きたいのは、農民の立場、特に酪農民の立場を、農協運動の立場からこれをどう評価され、どう運用したらいいかということをあなたにはっきり聞きたいのです。この二点について私ははっきり一つ御意見を承わたりたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/21
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022・荷見安
○荷見参考人 前段の問題につきまして、私の考え方を御参考に申し上げますと、大体酪農振興の要諦というものは価格が安定いたしまして、生産の増加に対応した需要ができ、経営を計画的にいたせるようにするということが最も重点的だと考えます。それで従来しばしば酪農振興のためで家畜の増加をされたのでありますが、これは一つの特徴がございまして、他の農作物でございますと、土地改良その他品種改良等、少くも数年かからなければできないのでありますが、この畜産につきましては、いわゆる秋腹を利用して子を産ませて増加いたしますと、一年程度でたくさんの増加をするのでありますから、その間に需要増進に対する十分な準備がございませんで、生産だけ増加いたしますと、えらい景気で高く買った牛を、生産物が下って手放さなければいかぬ、借金が残るというようなことも起って参りますので、私はこの酪農振興の要点というものは、生産物の価格の調整ということが十分になければいけないということで――いや、ほかにいろいろございますが、簡単にというお話でございますからごく簡単に申し上げます。従いまして私はこの価格の急騰急落を調整いたしますための金融措置等の制度は、政府の財政の少くも負担によって行われるということになりますことが、従来の酪農振興政策をとられたときに比べまして一段の進歩である、かように考えまして私はけっこうであるとかように申し上げたわけであります。
後段のお話につきましては、私はこの金額程度の保証で農協の系統運動がとやこう言われるよりは、いま少し日本の農協は発達いたしていると思います。私どもも欲を言いますと、何ほどでも一層の農協の発達を念願いたしまして努力いたしておりますが、現在の農協は相当に力がついておりまして、単協預金も四、五千億になるというようなことでございまから――決してこれは多いのではございません、私どもは十分増加に努めますけれども、この程度のもので系統金融が云々というようなことまでには至らないのではないか、というふうに大づかみの話でございますが考えております。もっともこれは金融は全般的に見ればさようでございますけれども、各地域あるいは名経済事情の異なった場所、農民の状況によりましては相当ひびくところもないわけではないと思いますから、これは十分行政的にも金融機関あるいはわれわれといたしましても、注意いたさなければならぬことであると、かように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/22
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023・久保田豊
○久保田(豊)委員 今の点、連関いたしまして。今の酪農振興政策の一番要諦は、要するに引き合う価格の安定ということである。これを保証することが一番大事だ。この点はわれわれと全く同意見だ。私もその通りだと思う。問題はこの制度の基本は要するにこの基金を一つの足がかりにしまして、大小の乳業者にいわゆる金融力をある程度強めて、それによっていわゆる乳業者の自主調整によって乳製品なり何なりの需給調整なり価格調整をやろう、それによって乳価の安定をはかろうということになろうと思います。そういうことで実際の今の農家あるいは農協それから大小の各乳業者のいろいろの複雑な経済関係の中で、実際に価格の安定というものができるかどうか。この基金によって乳業者に対して保証をしてやる、それによって乳業者の方はいわゆる自主調整をやる、そうしてその結果は少くとも酪農家にとっては乳価の安定をするようにしよう。意図はいいのですが、それが果してできるかどうか、この点の判断だと思うのですが、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/23
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024・荷見安
○荷見参考人 昨年の秋の乳製品の下落の当時におきましては、私どもも農林当局にも話し合いをし、中金等にも話し合をいたしまして、少くも金融措置等によって、市場に供給される過剰分をこめまして、幾らか価格の安定をはかりたいということを申したのでありますが、ずいぶん努力をいたして参りましたが、当時は制度は整っておりませんので話をつけるのにかなり長時間かかったと思うのであります。最も適切に早くやれば効果がよほどあると思うものも、くずれかかってからやりましたのでは、なかなか十分に価格安定ははかれません。そこでこういう制度ができまして、それで機敏な活動が重点的にできますれば、かなり効果があると考えておるのであります。
〔吉川(久)委員長代理退席、委員長着席〕
もっともいろいろな農産物の調節につきまして、私どもの過去の経験では、やればやったでまた不備ができる、そこを補ってまたいくということでありまして、私はこれで万全とは考えておりません。実行の過程におきまして、一歩々々進んで完璧なものにいたしたいという念願でございますので、これを一歩前進であるというような言葉で申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/24
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025・稲富稜人
○稲富委員 今回の酪農振興基金法の提案に当りましては、これは荷見参考人も御承知だと思いますが、酪農振興法に対するいろいろな不備の点がありますので、酪農振興法の改正というものが両々相待って目的を速成できるものと期待を持っておったのであります。ところが政府は今回酪農振興法についての改正を出さないということがはっきりしているようでありますが、私たち基金法を審議する上においても、実は遺憾に思って審議しなければいけないと思うのでありますが、あなたは常にこの点に携っておる立場からどうお考えになるか、率直にあなたの御意見をお述べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/25
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026・荷見安
○荷見参考人 私どもも、農業団体といたしましては酪農振興法の不備を補いまして、一そう適切な運営がいたされますように法律の改正を熱心に希望いたしておる次第であります。ただその具体的な問題につきましては、なかなか関係方面にも意見が調整されて、ないようでございまして、私どもといたしましては、すみやかにその実現を希望いたして、意見も決定いたしておりますけれども、今後も引き続いての問題は緊急にやっていただきたいかように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/26
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027・稲富稜人
○稲富委員 ただいま荷見参考人の御説明によりますと、この酪農振興基金法の運営に当っては、事業の重点的な施行が必要であるということは、先刻非常に力説なさったところですこの点で私承わりたいと思いますのは、この法案の第四章、二十九条に業務というものをはっきりうたっておりますが、この内容をもっと縮小させるということでございますか、その点をはっきり承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/27
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028・荷見安
○荷見参考人 私はその内容を縮小せいとまでは申しませんけれども、この内容は時に従ってあるいは運用してよろしいようなものもあるのだと思いますが、最初のスタートでございまして、基金の主たる目的が価格の安定ということを念願いたしますのです、その運用については重点的に心がけてやっていただきたいということをお願いしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/28
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029・細田綱吉
○細田委員 ちょっと伺いたいのですが、あなたは農協の一番トップに立たれておる方なので、御相談かたがたお聞きしたい。農家はいろいろましょくに合う仕事ならば、資金なんかはもちろん措置もしなければなりませんが、いろいろ工面してやるわけです。ところが日本の農業はあまりにも素材生産と申しますか、第一次の生産とでも申しますか、そのままであるものだから、牛を一生懸命で飼って、乳をうんとしぼったところが、乳価が下ってしまってましょくに合わない。先ほどどなたかが言っておったように、これではどうも借金してまで牛を買うのじゃなかった、こういうことになる。極端な例はことしの野菜なんかのように、白菜を市場に持っていったら、トラック代の方が高くついてしまった。これでは何のために増産するのかさっぱりわからない。極端にいえば、どうも森永の方もいらっしゃって大へん恐縮でございますが、これは森永の金もうけのために一生懸命でやったような結果になっておる。どうにもしようがない。そこで考えるわけですが、農協で第一次加工まで終る、その設備を持ち、貯蔵の設備を持ち、牛乳をなまのままでなくて、どういう方法かで第一次加工まで移って、それをしまっておかれるようなことをしないと、あなたがしきりに価格調整と言われても、これはちょっと方法がないのですよ。明治、森永にあげてその運命を託することになると、製品はさっぱり下らない。菓子にしたって、駅頭で飲む牛乳にしたって水のような牛乳をわれわれ高く買っておって、さっぱり安くならぬ。ところが農村ではむちゃくちゃに安い。今四円くらいの割りです。これではいくら資金の操作をして心配してやっても、せっかく資金を借りて買ったところが、計算に合わないというのでは、これは農家の救済にならない。そこで中央会なんかが音頭をとって、一つ第一次加工と貯蔵の方法も考えていただくならば、これはあるいは明治、森永の方で反対があるかもしれませんが、少し思い切って――あなたも少し年をとり過ぎて右顧左眄されておるようだが、全国農民の立場に立って、そこの設備を、あなたのところで、農林省の後援でやる御意思がないか、それでないと資金の心配をしてやって買ったら、さらに下って、明治、森永の方はほくほくであろうけれども、お百姓はほくはくというわけにいきませんよ。そこの考えをあなた一つお持ちになりませんか。その点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/29
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030・荷見安
○荷見参考人 基金運用のこととはあるいは直接の関係はないかと思いますが、これは先ほど私が御説明いたした通りであります。生産者において加工の方まで進出したらどうかということは、これは農協の力の問題でございまして、そういうことをしておる農協もあると思いますが、それはごく一部分でありまして、まだ十分にはわたっておらないと考えます。その点につきましては、中央会としましては畜産の対策室を設けまして、至急に具体案を立てて、ことしは畜産事業の振興を目標にやっていきたいというような、年はとりましたが配意をいたしておるわけでございまして、熱心だけはかなりあるのでございます。それを実行いたしたいという欲望もございます。そのことを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/30
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031・久保田豊
○久保田(豊)委員 欲望だけでなくて、そこを一つ、農協の力というのは、農林省がうしろだてなんだ、言いかえれば国がうしろだてなんだから、あなたが決心して農林省へ持ち込めば、あなたが政治生命をかけてやるならば、これは荷見さんならできないことはないのです。やらないからできない。それというのは、業界から牽制でもあって、右を見たり左を見たりしているからできない。これはやろうと思えばできる。これをしなかったら、価格調整なんていったってできっこない。それからあなたがしきりに酪農振興、振興といったって、ただ増産だけを振興したら、それ以上に値下りをして、ほんとうに何にもならない。これはことしも御承知のように畑作でもうはっきりしている。ただ増産が振興だと思ったら大きな間違いで、これは農家にとってはきわめて不振興なんだ。だから一つ農家の神様になるように、荷見さんが一つ断固一歩進めていただきたい。これは注文ですが、もう一つ、法文を見てみますと、農林省の方も資金が出る、農家の方も資金が出る、業界の方でもまた資金が出る。こうなりますと、その機関の人事の権は、業界に握られはしませんか。こうなると対等の発言権ということだったら、農林省は国の金だからどうでもいいということになる、農民の方はばらばらだからなかなか意見が一致しないとなると、少数の業界に人事の権を握られる。そうすると、何のことはない、これはまことに参考人においでを願って申しわけないが、森永、明治の関係事業の資金に投入されるというようなことになったら、これはとてもかなわぬ。ここでこの金融機関の人事をどうするか、だれがはっきり握っておるかということは重大な問題なのですが、あなたのお考えはどうなのですか。また見通しも一つ伺わしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/31
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032・荷見安
○荷見参考人 できる限り正当な運用ができますように、私どもも努めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/32
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033・中村寅太
○中村委員長 ちょっとお諮りいたしますが、荷見参考人は、別に用事があるのを、非常に無理して来ていただいておりまして、非常に急がれるようでございますから、大体酪農振興基金法案に一つ質問の焦点をしぼっていただいて、ごく簡単にお願いいたしたいと思います。伊瀬幸太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/33
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034・伊瀬幸太郎
○伊瀬委員 ちょっと荷見参考人にお伺いしたいのですが、今の農協は五千億の資金を持っている、こういうような先ほど御発言がございましたが、そのような莫大な資金を持っておって、私は細田委員がおっしゃったような第一次加工くらいは、農協がみずからの手で生産したものをみずから加工するというようなことは、当然できると思うのですが、そういうようなことに対しまして、ただ単に畜産振興というようなことでお茶をにごしているのではなくして、ほんとうに農民のために、乳価の安定ということをこいねがうならば、そこまでいかなければ、絶対私は不可能であると思う。同時に、この基金法にいたしましても、私どもの杞憂するところは、これが大資本家なりあるいは乳業者のための基金になって、ほんとうに農民の乳価安定の基金にはならない。というのはたった千億くらいの金で、そんなことはなりっこないと思う。ことに理事、役員というものは農林大臣が任命する、こういうことであるならば、大臣のお気に入りの、いわゆる大メーカーである明治とか森永とか、その他の少数の人でこれを握られるということになれば、ほんとうに農民の利益代表機関であるところの農協の中央会の親方が、それをどういうふうにお考えになっているか、この点だけ一つ率直にお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/34
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035・荷見安
○荷見参考人 こういう、社会でも最も注意いたしております問題について、業界なり政府なりが不当なことはなし得ないだろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/35
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036・中村寅太
○中村委員長 次に窪田参考人から御意見を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/36
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037・窪田喜照
○窪田参考人 私は全国酪農協会の副会長窪田でございます。
本件につきましては、去る二月七日付で全国酪農協会の立場からいたしまして、すでに主要な点について要請いたしておるのでありますが、その線に沿うて私は卑見を申し上げたいと存ずる次第であります。
御案内の通り本制度案は、昨年九月開催されました酪農審議会における決議、答申に基いて立案されたものでありまして、その内容につきましては、原則的に申し上げますと、なお不備不満足な点はあるのでございますが、しかし諸般の情勢からいたしまして、少くとも現段階における、とりあえずの基礎的な足がかりといたしまして適当と思っておりますので、われわれ生産側としては、これが成立を強く熱望する次第であります。
なお昭和二十九年酪農振興法の成立当時における本委員会の附帯決議が、見ておりますと、だんだん具体化しつつあると思うのでありますが、特に第七項に明確にされております線に沿うて、今回生乳の集団飲用を奨励促進する意味合いで、学校給食に対する牛乳供給の助成の道を新たに開かれるということは、われわれ多年の要望がやっと何年目にか実現されたのでありまして、非常におそまきながら喜んでいる次第でありますが、これが一時的な措置として終ることに相なりますと、さらに従来以上の失望を繰り返さなければならぬというふうに考えております。従ってこれを恒久化するよう制度の確立をはかるなど、速急になお幾多の手を打っていただかなくてはならぬ諸問題が山積しておるのでありますが、これらは今後の問題といたしまして、現に当面している本基金制度が、一部に偏した言動によってその成立が妨げられるようなことにでも相なりますと、現実に砂糖戻税廃止によって乳価の引き下げを受けている生産側にとっては、泣いても泣かれない状態に追い込まれる結果になることを私は深く憂えるものでであります。
以上の点を前提といたしまして、以下具体的に主要な点について若干卑見をつけ加えたいと存する次第でありますが、第一点といたしましては、これは基本的なことになりますが、やはり本制度の目的が乳業者と生産者との生乳取引関係の改善に資することに相なっておりますが、これとうらはらの措置として、酪農振興法一部改正をわれわれ生産側としてはきわめて必要のことであると思っておるのであります。しかしその改正内容につきましては、いろいろの及ぼす影響も各立場において違うわけでありまして、なお慎重考究する必要があろうと思うのであります。従って今直ちにというところまでは至っていないかもしれませんが、おそくとも次期国会には提案、成立がなされるよう、本制度のいわゆる画竜点睛をするという意味合いでぜひ実行していただきたいということを私は切望するものであります。
第二点といたしましては、本制度には生乳生産者団体を参加せしむるとともに、その年産者の経営合理化に必要とする資金の債務保証業務を実施するよう措置していただきたいのであります。と申しますのは、本制度は生産者乳価の安定を目途として、牛乳、乳製品の需給調整に資するということになっております。特にその基金の半分の五億円を政府が出資する、いわゆる国の酪農政策である点から、酪農をささえる生産者、乳業者が同等の発言力を持って、適正に運営すべきであることは当然であります。さらに生産者がみずからの出資金を効率的に利用するという観点、及び生産者が現実的に乳価安、飼料高に悩んでおるということ、また団体によりましては、生産合理化のためかような制度を望んでいる実情からいたしますれば、乳業安定のための資金同様に、生産者の生産合理化のための資金であるという見地に立って、直接生産者のための債務保証業務を実施する必要があると思うのであります。この点はすでに酪農審議会の答申において明確にされていることでありますし、国会に提案されました政府案も、われわれの要望をいれている点等からいたしましても、この際われわれは強く政府案を支持する次第であります。
第三点といたしましては、本制度を砂糖戻税廃止による最大の被害者であり、経済力のきわめて弱い中小乳業者及び生乳生産者団体に対して優先的に取り扱わせるよう業務方針を明確にしていただきたい。同時に政府出資額を酪農審議会の答申通り、総額の三分の二程度にしていただきたいのであります。要は本制度の立案の経過などから見ましても、あまり民間出資にこだわることはやめていただきたいのであります。しかしわれわれ生産側としては、応分の出資に応ずることは当然なことと思っております。
以上主たる要望の点を申し上げましたが、ともあれわれわれ生産酪農民といたしましては、従来本委員会が酪農振興のために積極的に諸対策を講ぜられていることに対し、この際深甚の敬意と感謝の意を表すると同時に、本基金制度の実現に対してもさらに一段の御高配をいただき、すみやかに成立が期せられるようお願いを申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/37
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038・中村寅太
○中村委員長 諏訪参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/38
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039・諏訪健次郎
○諏訪参考人 ただいま御指名にあずかりました日本製酪協同組合員の理事長の諏訪であります。場所なれいたしませんので、発言についてそそうがありましたら、御容赦願います。
趣旨につきましては、窪田さんと同様、砂糖消費税がとられて一番被害の大きいわれわれでありますので、この基金法の成立に対しては賛成で、ぜひとも成立をさせていただきたいと存じております。
その要点の中の第一点といたしましては、基金ができましても、私の考えとしては金融だけでは完全ではない。金を幾ら借りられても需給調整がなければ完全ではない、こう考えております。これはなぜかと申し上げますと、昨年末の緊急措置によって私どもは大カン練乳を農中に保管いたしまして、農中から金を借りたという苦い経験を持っておるわけであります。その当時大カンに対して牛乳と砂糖代だけをお貸し願えれば、私どもは操業が続けられるし、乳価等に対しても何とかこの際切り抜けができるということを農林中金に申し上げたのでありましたが、農林中金といたしますると、米麦、澱粉等と異なって、価格やあるいは需給調整というものがないので、値段が幾ら下るかわからないから、担保になりにくく、非常に疑念を持つから簡単には引き受けられないので、他の金融機関やまたほかの保証等の信用の強化がなくては貸せないということになったわけでございます。そこで私どもは農林省の御努力によって最終段階においては二千八百円程度のものを農中から貸していただいたのでありますが、牛乳と砂糖代で三千五百円かかりますので、操業を続けることができないので、市場に放出いたしました。その価格は三千四百円程度で、四千三百円のものを欠損して放出した現状で、その放出がただいまも続いているということで、私どもその当時をつらつら回願いたしますと、需給調整というものが付随しなければ、われわれは金を借りただけでは救われない。従ってわれわれは基金法をほんとうに渇望しておりますが、これと同時にどうしても需給調整ということを次期国会に提出していただきたいのであります。しかし需給調整ということは非常に広範囲なものでございまして、生産から加工、消費、流通部面にわたって多岐多様なものでございますから、簡単には参らないと思いますが、基金の金を借りただけでは私どもは完成いたしませんので、需給調整とあわせて行なっていただきたい、こう考えるのでございます。
それから次の二点といたしまして、この需給調整が完成いたしますと、現在の国民食糧として必要な市乳並びに育児粉等の価格を下げることができまして、現在のごとく牛乳が過剰になった場合には、製菓材料用乳製品を原価割れで売る必要がないのではないだろうか、こういう観点からも需給調整というものがさらに必要だということを付言いたすわけでございます。
それから次に基金というものは、国が金融ベースに乗らないものを政策金融として行うものであって、金融ベースに乗っているものに対して政策金融の必要はないと私は思うのでございます。政策金融の必要のないものが出資をすることは不合理であるし、もし出資をしたしとするならば、その基金の管理または運営上について発言を行うのは当然なことだと思います。その運用がそういう状態であるならば、果して完全にいくであろうかということを危惧いたします。ゆえに私ども組合といたしましては、年間二千万円程度の負担は可能でございまするので、払い込み年限を延長していただきまして、もし十三年とすれば出資額は二億六千万円となりますが、この金額で過半数の額になるように民間出資額を御限定願いますれば、その程度はわれわれとて容易に負担できると考えますので、何とかこの辺の御考慮を願って、この基金を私どもの基金として運用をし、必要なものに金が借りられて、本基金の目的を達成せられるよう何とか御改正を願いたいと念願するものでございます。
その次に、私どもは基金に総会を持ち、総会によって役員を選挙することを具申いたしておりましたが、その後いろいろ研究いたしまして、評議員だけを、民間から出資者によって、そのうち十名程度を推薦し、五名程度は農林大臣の御任命に願う。同時にその理事については、評言議員推薦した者の中から、その比については学識経験者あるいは常勤の方を五名といたしまして、いろいろ数字については打ち合せをいたしまして、その方々が推薦をいたした者から農林大臣が任命することが妥当であると私どもは考えております。
その次に設備転換資金の問題でございまするが、大カン練乳の設備転換がありました当時から、また砂糖消費税の撤廃当時から、私どもは設備転換をしなければならないというので、大蔵省及び農林省にるる説明をいたしまして、お願いをいたして参ったものでございまするが、私どもといたしましては、組合として六億円、共同的な転換資金として二億円、計八億円は必要でありまして、大蔵省議あるいは酪農審議会等の答申にもございまするが、当初この金が要りまするので、格段の御配慮を願いたいのでございます。
その次に基金は単なる保証の問題でございまするから、資金源の確保がないと金は借りられない、こういうことでございまするから、ぜひ資金源の御措置を願いたいと思います。
その次に、ただいま学校給食の問題で、窪田さんからお話がありましたから省略をいたしまするが、ぜひ一つ制度化していただきたい。いま一つ窪田さんと建った観点でありまするが、本年一月から三月まで学校給食がやられて非常な好評を得たのでございまするが、学校給食をやって牛乳が少くなり、乳製品が足りなくなって市価を維持される、こういうことでございます。私ども十月一日から欠損をし、今日まで欠損を続けて参っておりまするが、乳製品の市価が維持されるまでに関われわれとしては経営の困難なものが現われて参りますので、ぜひ牛乳及び乳製品の助成を受けまするところの配分については、時宜に即した制度を立案をしていただきたいと思います。
それから、この基金とは離れておりまするのではなはだ失礼ではございまするが、免税措置が撤廃された十月以降、私どもとしては乳価の維持に努力して参っておりまするが、何分それがために欠損を招来して倒産のやむなきに至る一歩手前までいっているものが二社ございます。かようにまで努力いたしておりまするので、砂糖の実需者割当を何とか御配慮願えますればその一助となると考えますので、本席申し上げますることははなはだ失礼ではございまするが、本委員会におきましてお認め願い、何とかこれのできまするよう御援助を賜わりたいと思うのでございます。
以上簡単に私ども中小企業の考えておることを申し上げまして御明察の上、特段の御配慮を賜わり、要望を達成し得るよう組合員一同にかわりましてお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/39
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040・中村寅太
○中村委員長 植垣参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/40
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041・植垣弥一郎
○植垣参考人 植垣であります。お手元の印刷の通りのものであります。きょうは酪農振興基金法案について意見を述べるようにということでありましたが、それを申し述べます前にお礼を申し上げねばなりません。
御承知の砂糖消費税の問題で昨年の秋三ヵ月間の延期が、実行されました。続いてストック資金に対する金利の是正、保管料の負担等について政府の御厄介になりました。また続いて給食のことを実行にお移しになりまして、三月末までには乳製品に換算して十万石に相当するものが出ることになりました。かたがたもちまして、そういう需給調整の一部を御推進になりましたので、乳製品の価格も思ったほどは下らないでおる次第であります。政府におきまして、国会の皆様方におきまして、そのような御配慮を受けましたことを厚く御礼申し上げます。
この酪振基法の法案の最後のものを拝見させていただきまして、三月の十四日付で私どもの意見として農林大臣に申し入れまして、同時に当委員会の方々にお願いをしておきました、その要点井がありますので、その申し入れの説明をさせていただきます。これがこの基金法案に対する私どもの意見でございます。一つは目的なんでありますが、これは先ほどからお話がありましたが、一番重点とする需給の調整という事柄を目的の主たるものにして参りまして、ここにあります取引関係の改善だとか、乳質の改善だとか、飼養管理についての改善だとか、飼料獲得についての改善だとか、いろいろな改善を要することがありますが、それはほかの措置によって実行していただいて、ほんとうの目的とする需給の調整という事柄を目的の中にはっきりと文句の上に現わしてもらいたい。この目的が基本になって運営がそれぞれ行われ、基金の業務方法書の内容等もそれに沿うて作られるものだと思いますので、第一条の目的の中に、取引の関係は別途に処置してもらいたい。需給の調節という事柄を肝心かなめの問題として掲げてもらいたいというのがその第一であります。
次に先ほど来いろいろ御質問がおありでありましたが、それを伺っておりますと、どうも国会の全部とわれわれ業者の全部との酪農振興に関する考え方が一致していないような気がするのです。それははなはだ遺憾です。私どもが常に考えておりますのはこうなんですが、それでよろしいかをお伺いをいたしたいのであります。農家の方々は合理的に牛乳を生産するという方を受け持ってもらって、それによって農業経営と申しますか、経済面の好転に資してもらいたいということを考えております。それから私どもの役目といたしましては、牛乳の加工と消滅の役目を負うほかに、年々増産する牛乳、五年ごとに倍増するところの牛乳を処理するだけの設備をわれわれの自力で完全にしなければならぬ。そういう役目を自覚して実行をすること、もって乳業者も生産者もそれによって経営の維持ができるというところへ持っていかなければならぬ、これが酪農振興の基本的な考え方だと思いまして、それを中心にしてやっておるわけなのであります。ところでこの第一条の中に「乳業者及び生乳の生産者の経営の維持」ということがありまするが、まさにこの通りでありまして、これが第一条の目的の中に入っておるという事柄ははなはだけっこうなことであります。この経営の維持をいたしますには、何と申しても原料乳価が妥当なところで安定しておるということ、また製品の価格が妥当なところで安定しておるというところへ持っていかなければ、この両者の経営の維持ということは困難です。そこで両方の価格の維持安定をはかりますためにはどうしても調節をしなければいかぬ。ところがその調整の必要があるのでありますが、御承知の通りに、冬場になりますと、必ず大きな需給のアンバランスがある。この大きな需給のアンバランスをバランスせしめなければ両方の価格は安定しません。ところが、バランスしようといたしましても、今日のところでははなはだむずかしい現状にあるわけであります。それで需給のバランスという事柄が第一でありますので、繰り返して申し上げますが、この第一の目的に乗っけてもらいたい、もろもろの改善関係はほかの方法でなさってはどうですかということのこれが意見であります。
私どもの考えておりますところは、この基金が先ほど申し上げましたいろいろの改善に手をつけるという事柄は、どうも使命に反するようなことになりはしないか、混雑しやしないか、重点的に走っていくことが、やりにくいのじゃないかということを考えてるのです。またそういうようないろいろな改善は、これは私どもの考えが間違っておるかもしれませんが、畜産局にはたくさんの役人がいる、地方に行くと農林部畜産会に人がたくさんおる、その人たちが改善を指導すればいい、基金はそういう他の係りのやることまでやらぬでもいいし、またやらせるべきものではない、そういう考え方であります。
その次に意見を申し上げましたのは、こういうことを委員長に申し上げております。今月十日、日本製酪協同組合の決議の趣旨を尊重し、その実現方を検討されたい、これは先ほど諏訪参考人から申し上げました事柄であります。これは中小企業者の方々の決議の御説明だったわけでありまするが、これはできるだけ尊重してもらいたい。中小企業者の方々のためにこの基金が大いに力を入れられるならば、他のものは引っ込んで一向異存はないのだということなのであります。
それから剰余金の処分についてですが、この剰余金の処分についてはこれは最初に一楽さんが消費の拡大の方の共同宣伝なり何なりに使った方がよくはないかというお話がありましたが、それと同じことなんですが、剰余金を繰り越し繰り越しということをしないで、剰余金ができた場合には消費拡大に利用するということを原則とする法案にしてもらいたい、こういう希望であります。
それからその次に申し上げました事柄は、本法の最終案において著しく民間出資者の自主性を抹殺し、官僚統制的内容を強化したことは了解に苦しむところであります、基金の自主性を認めるよう是正方考慮されたい、こういうのですが、ここに官僚統制といったような感じの悪い文字が入っておりますが、これはごめん下さいませ、そういう意味ではございません。これはつまり、官吏の方々が必要以上に民間産業の内容に干渉するようなことがあってはならぬという意味であったために、官吏の方々というところを官僚と書いたのであります。これは誤まりであります。この法案を見ますると、必要があるときにはいつでも農林大臣が命令できる、何を命令するかわからない。それから業務方法書の内容を見ますと、帳簿、書類を出せ、見る、立ち入ることに対しては文句を言うな、こういうような意味合いのものが入っているわけなんですが、そんなことをなさらぬでも、基金が保証する以上は、保証されるものの経理、資産を調べることはもっともだからどんな材料でも出すが、それ以上に犯罪捜査のような態度で出てこられるといったような事柄ははなはだ遺憾じゃないか、もう少し民主的にやってもらえないだろうか、そういったような意見の一致が、今の官僚統制的な内容を強化したというような少し過激なことで書いておりますが、ごめん下さいませ。
それから条文の第四十四条には、解散時の残余財産のことがあるわけなんですが、残余財産があったときには、これは解散するときには出資額に応じて分ける、それはいいのですけれども、二項に、民間の出資に対しては出資額を限度とするということがあるのです。だからわれわれが出資をしてその利息なり何なりが残った場合には政府に取り上げられるということになる。もっとも別の項目で、「解散については、別に法律で定める。」ということがありますけれども、すっと見て参りますと、どうしても剰余金は政府が取り上げるのだということの意思がはっきりしている、これはいかぬということなんです。解散するときには、剰余金があったならば、かりに出資以上にあっても出資に応じて分つということにしてもらえないだろうかということの意味なんです。わずかな金でこういうことを申しますのははなはだ相済まぬわけなんですけれども、五億円という基金は、御承知の通りに、年に十四、五億円の砂糖消費税を政府が取り上げるについては五億円くらいは基金として出してやろうじゃないかということできまったものと解しているのです。それで、大蔵省はすでにこの三月までに五億円くらいの税金を取っている。ところが業者はその税金に相当するだけの価格が上りませんために、おそらく五、六億円の損をしているでしょう。ですから、本来ならばこの基金の五億円はそういう損を埋めるためにみな業者に上げていいのだといって初めてわかった国会でもあり、初めてわかった官吏でも政府でもあるが、それをやらない。それでどうかというと、二言目には、お役所の方や国会の諸君のうちには、政府は五億円をぽんと投げ出したじゃないか、こう言う。なぜお前たちはぐずぐず言うかと言う。なるほどぽんと投げ出した。けれども投げ出した五億円はまだ握っている。解散するときまで握っていて、解散するときには出資額以上には剰余金があってもあげないぞといったような、ぽんと出したが永久に握っているという考え方、こういう出し方は男らしくない。日本の国会はこういう態度をどう見るかといったような部面がこの意見の中には出ております。
それから附則の七条に六億を下ってはこの基金が発足しないのだということになっております。一億はわれわれが出すということになっている。ところがその後いろいろわれわれの方の金繰り上の都合があります。また中小企業者の人たちは別の案も考えておられます。それから今その目的が需給の調節ではなくて、いろいろなものの改善といったようなこんがらかった目的等から考えて、われわれのメンバーのうちには非常に関心の薄くなったものがあるのです。昨年の九月には一億円出しますと言ったけれども、現状では一億円そろわぬかもわからぬ。そんなわけですから、六億ということを限定しないで、政府の出資の五億とそれから業者、生産者の出資した合計額で出発するということにお改めになってはいかがですかという意味なんです。そういうわけでございますので、われわれの意見を適当に生かしてもらうことができれば仕合せだと思います。
行き届かない意見の述べ方でありましたがかんべんしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/41
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042・中村寅太
○中村委員長 瀬尾参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/42
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043・瀬尾俊三
○瀬尾参考人 雪印乳業の瀬尾であります。私いろいろと意見を申し述べる用意をして参りましたが、先にお立ちになりました参考人の方々がほとんど言い尽しておりますので、重なることを避けたいと存じまして、二、三の点で付随しまして申し述べたいと思います。
それは、この基金の目的は、要するに取引の安定、乳価の安定ということが非常に大きいと思います。今日までの実際の面を見ますると、乳価の決定に当りましては、生乳生産者の方は生産費からという割り出しをいたします。乳業者の方は製品の市価がこうだからということでありまするが、これは基本的にも標準に何もなっておらないのであります。諸外国の先進酪農国を見ましても、りっぱにこれは一つの方式が立っておるのであります。これから三十七年になりますると、千三百万石もふえようという時代に、さらにまた需給が不安定だと言っているときに、乳価を算定する基礎が整っておらない。そうした指導方針が農林省にとられておらないということが、つまり今日いろいろ問題になっておりまする乳価交渉ということの原因になっておると思いまするので、この乳価の決定に当りまする一つの基準というものを農林当局においても打ち立てていただきたい、これが一つの念願であります。
それから次に金融の面でありまするが、これは本基金によりましてある程度の資金は業者に流れることになります。なりますが、先ほど申したように、これから非常に大きく増産されまする全体の金額に対しましては、まだ私は不足だと思います。単に一時的な不況に対する手当としての効力は多少あるにいたしましても、どんどん伸びまする酪農界におきまして、平常のときですら設備資金並びに運転資金については各業者とも非常に苦んでおるところであります。今日においてはある程度まかなってはいるのでありますけれども、これから伸びますることに対して非常に不安に思っておる次第であります。ところが先年から行われました金融引き締めにおきまして、如実にこれが反映されておるのでありまして、国家が酪農政策を農業政策の重大問題として取り上げ、さらに食糧政策の一環としてかように大きな問題になっているのであるならば、日本の基本産業としての大きなウェートを持つものとして、平常時代におきましても増産される牛乳を完全に処理されるような設備資金の裏づけをいたしていただきたい。さらにまた平常の時代におきましても、相当のランニング・ストックというものがあるはずでありますから、これに対する金融の裏づけを行なっていただきたい。それをあわせて本基金を運営するならば、まことに好ましい形になるのではなかろうかと考えるのであります。
これだけを申し上げまして、その他につきましては、今までの参考人の方々からるる申し述べておりますので、省略いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/43
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044・中村寅太
○中村委員長 大野参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/44
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045・大野勇
○大野参考人 森永乳業の大野であります。今植垣参考人、瀬尾参考人からお話がありました通り、別に私としてつけ加えることはありませんが、先ほど来いろいろな方々の言っておること、ことに一楽さん、荷見さん別に私どもの意見と相違があるわけではないのでありまして、この基金が五億くらいの金でスタートするならば目標をはっきりしろ、なるべく目標の重点を狭くしろ、こういうのが私の考えでありまして、根本は酪農業を安定させることにある。酪農業を安定させるのには乳製品の需給調節をして、価格の安定なくして酪農業は絶対安定しないのだ、従って基金の重点はそこに置くべきだ、こういうのが私どもの考えであります。またメーカー側におきましても利害同一ではありません。一つは有利で一つは無利です。利のないものであるが協調の歩調をとっているのは戻税廃止によって中小企業が非常な苦境に陥る。従って大企業というものはこの基金を利用しないのかもわからぬ、これは先ほど委員の方々からいろいろお話がありましたが、少しわれわれを誤解なさっているのではないかと思いますが、しかしわれわれがこれに加わらなければ基金ができない、そういうことのため中小企業の方に非常な迷惑をかけては困る、こういう大乗的見地に立ってわれわれはこれに最初から賛成したのです。従って明治、森永を持っていって横暴を働くとかなんとかいうことは一切ないつもりであります。しかしながら国家予算としては五億は少いかもわかりませんが、個人企業としては五億という金は小さな金でない。しかも最近のような金融の詰まっているときに、金利のついた金を借りてきて、それを無利子で出資して、その使途がどういうふうに使われて、欠損になるかならぬかというような無責任な運営はまかせられない。従ってわれわれは当然われわれの代表が理事としてこれに参画するということは何ら差しつかえない、かように考えて理事者も相当なものを入れてもらいたい。こういうことは出資金の監視役です。これは株式会社を経営しておりまして相当な負債をするというような企業者の立場からいえば、当然要求して差しつかえないことだ、かように考えております。従ってこの剰余金の問題は、先ほど申し上げました通り、本来ならば利息に相当するくらいなものは返してもらいたいですが、これが共通の利益のために消費宣伝に使われるというならば、われわれは甘んじてその利益を公共のために提供しよう、こういうわけで、この宣伝費に使ってもらう。全部政府がリザーブして取り上げるというようなことは、業者の態度に比べて非常に狭量じゃないか、かように考えて、これを要求申し上げたわけであります。
あとは大体前の参考人が申し上げておりますので、長くなりますから、一応私の話はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/45
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046・中村寅太
○中村委員長 これにて参考人の意見聴取を終りました。
次に参考人に対する質疑を行います。吉川君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/46
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047・吉川久衛
○吉川(久)委員 日本乳製品協会の植垣会長さんに一つお伺いいたしますが、この酪振基金は大きな業者にも中小業者にも共通の利益があると私どもは考えるのでございますが、昭和三十二年九月二十五日付で、農林大臣に対して出資の引き受けをなさっておいでになる。それを今御説明のありましたように、三月の十四日になって撤回をなさっておいでになる。なおそれについてただいま御説明のような要望をなさっておいでになります。この要望の六項目は、完全にどの事項も御主張通りにいれられないとするならば、この撤回は撤回できないというお考えでございますか。それともそのうちの若干がいれられるならば、十四日付の撤回を撤回なさるおつもりでございますか。そしてこれに協力できないのですか。しないのですか。その辺の御見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/47
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048・植垣弥一郎
○植垣参考人 いろいろお話がありましたが、ごらんの通りに年寄りで聞いたあとから忘れてしまう。要点が三つばかりあったようですが、相済みませんが一つずつ簡単にやってもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/48
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049・吉川久衛
○吉川(久)委員 それでは、初め農林大臣に対して出資の引き受けをなさったですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/49
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050・植垣弥一郎
○植垣参考人 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/50
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051・吉川久衛
○吉川(久)委員 それからあとで話が違うからといって撤回をなさいましたね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/51
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052・植垣弥一郎
○植垣参考人 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/52
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053・吉川久衛
○吉川(久)委員 その撤回を、ただいまは撤回なさる御意思はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/53
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054・植垣弥一郎
○植垣参考人 話が違うということで一応撤回したわけでありますが、話が違わないで、最初からの説明通りに基金ができるならば、三月十四日の撤回を撤回することにやぶさかでないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/54
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055・吉川久衛
○吉川(久)委員 念のためにお伺いいたしますが、その撤回の際の要望事項が、先ほど御説明がありましたが、一から六までございます。その六項目のうちのどれもが完全にいれられなければ、撤回を撤回するわけにいかないのか。あるいは一部分でもいれられるならば、協力できるとおっしゃるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/55
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056・植垣弥一郎
○植垣参考人 全部が完全にいれられて、この法案に付帯する業務方法書その他のものも、その修正に応じた修正ができるならば、全部を撤回いたします。それから、御都合で一部の修正でありましても、全部御修正なさらないでも、私どもは参加する事柄は参加いたします。参加いたしますが、昨年の九月に申し上げました一億円の出資はそろえかねますから、それはお互いのふところ工合で都合のできる程度でしんぼうしてもらいたい。従って附則の何条かの六億円の限定を削除してもらいたいということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/56
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057・石山權作
○石山委員 私大野さんに理事の点についてお伺いいたします。もちろん御出資の金は、利子をかけた大へん大切なお金だから、それを管理するために理事を置く。そこで出資高からすれば、政府は五億という金を出資するわけです。そうすると、ある意味でいえば、国会の意見を背景にした、いわゆる農林省の御意見にまかせても、出資金の比率からいえばいいような格好になるのではございませんか。その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/57
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058・大野勇
○大野参考人 われわれの考えでは全部理事をというのではなく、少くとも出資額に応じたことにはしていただきたい、こういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/58
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059・石山權作
○石山委員 というと、各業者一名という気持ですか。これで見ますと、一口二千万円くらいで九千五百万円くらい出すという予定になっているが、そのうち一口一名の理事を出すということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/59
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060・大野勇
○大野参考人 それは一口一名とは申し上げない。とにかく五億と五億なら二分の一ずつ、こういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/60
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061・細田綱吉
○細田委員 あなたの方の大口メーカーから、人事の方は過半数一つわれわれの方にまかせてくれないか、そうしたら積極的に協力しようという申し入れを、農林省の方にしたということですが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/61
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062・植垣弥一郎
○植垣参考人 そういう申し入れをいたしました。いたしましたが、別段お返事はいただいておりません。おそらくそれは必要があって申し込んだわけであります。基金の運営上そういうことが適当だというふうに、政府が考え、国会の諸君も考える、そう思いましたから、申し入れだけはしておきましたけれども、回答はもらっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/62
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063・細田綱吉
○細田委員 先ほど大野さんもおっしゃったが、営利会社で監視するのは当りまえで、これはわかる。その通りだと思う。けれども、これを過半数あなたの方にとってしまって――半々にしても、農林省の方は、国民の金で自分のふところが痛まないから、いいかげんのものです。半々にしても、これは業者の方の熱心な力によって、ほとんどそれらが指導するということになる。従って、半数以上の執行機関が出るとすると、大口メーカー関係業者の方へ原料を出してやる農家の方へ、どうしてもよけいに回ることになる。これは人情でそうなると思う。そうすると、全国の農民というものは、どこまでもやはり大口メーカーの独裁下に置かれるということになると思うのですが、この点の御意見はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/63
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064・植垣弥一郎
○植垣参考人 それは大いなる心配のし過ぎです。われわれの業者から半数以上の理事が出よしても、日常の事務を運営していきます専務理事は、われわれの方と利害関係のない人が当ることになっております。またわれわれもそうしてもらいたいのですから、そういったようなおそれはないと思います。けれども、基本的な運営の仕方について、先ほどもわれわれを誤解され、非難されているような、われわれに対してまだ安心が抱かれていないようなお言葉がありました。たしかあなたからあったと思う。そういうふうですから半数以上に押えておかなければ、あなたと同じようなお仲間がどういう運営を実行するかわからない。それでは酪農のほんとうの発達ができぬ、私はそう思っている。ことに憂えますのは、とにかくお承知の通りにさしあたり五億の金、われわれから一億の金、六億からくる利息だけでも相当なものだ。また怒られるかもしれませんけれども、官吏の古手が専務理事者になって、農林省と連絡をとって勝手な経営をするとなると、被害者はわれわれ出資者になってくる。だからどうしてもわれわれは資金一億を監視するはかに、政府の五億円も監視しなければならぬ。それで信用あるわれわれを半数以上出す、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/64
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065・細田綱吉
○細田委員 先ほどメーカーと生産者である農民との利害の一致のもとに、何か見方が違うというふうにおっしゃておられた。しかしメーカーはたとえば、名前をあげて大へんきょうしゅくでございますが、森永にしても、明治にしても、材料が安いほどいいのです。私が社長になり、専務取締役になっても同じです。明治、森永の社長、専務になれば、安いほどいいのです。ところが農民の方は高いほどいいのです。そうでしょう。だからそこをどういうふうにしてあなたは調整、一致をはかられるか、たとえばこの酪農振興基金法案の機関を業者にまかして、そうして価格安定をどういうふうにしてはかったらいいのか、いわばメーカーの方からいえば、安いほどいいのは当りまえです。だから相剋が起る。今申し上げたように私が社長、専務になったって同じです。そうすると農民との間の価格調整、意見の一致がはかられない。どうしたって機関にものを言わせて安い方へ、安い方へと押しつけるのは当然です。そこでどういうふうにしたならば、価格調整、意見の一致を見ることができるか、この点を一つあなたの御経験から意見を聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/65
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066・植垣弥一郎
○植垣参考人 この基金は乳価をきめるところじゃないわけです。乳価の安定をはかりますが、乳価の安定をねらって業者の融資金の借り入れ保証をするということですから、そういった問題はこの基金の理事会では考えられないとわれわれは思っています。
それからもう一つ、あなたが社長の場合にはせいぜい安く買う方がいいのだというお話がありましたが、それは非常に古い経済思想なのです。われわれが十数年来やっておりますのはいかにして原料、材料を高く買うか、いかにして製品を安く売るかということです。昔の経済の原則と逆のことをやっています。それには結局いかにして合理化するか。そうして安いほど得じゃないかといったようなお考え方は承服できません。その証拠はついでですから一つ言わせてもらいたいと思います。私どもは明治の経営の関係者ですが、大野君は森永です。明治、森永は創業以来四十年になりまして、業界におきまして、自分たちがそういうことを言っては悪いが、有数メーカーの中に入っておる。それでいて満足な利益率というものは上っていないのです。食品業界の事業はたくさんありますが、株の相場でもわかる通りに、われわれの方は額面を上下しておる。ほかの古い食品業者というものは、ごらんの通り同じ食品でも砂糖業者の収益率というものはわれわれ業者の収益率の十倍以上になっておる。四十年間私たちは何をしておったか、今の新しい経済原則による方法をまじめにやっておったわけです。それですから、あなた方はまだお若いからわからぬでしょうが、産業組合法があった時分には全国にとてもたくさんの産業組合があったわけです。これが市乳の経営、乳製品の経営をやっておりましたが、例外なく行き詰まった、その行き詰った産業組合がかれこれ五十あります。それをわれわれが抱いた、やり切れないから明治の方でかかえてくれ、しかし条件は、自分たち農家が出資した出資金だけは出してくれ、よろしい、よろしいでみな抱いたものです。そういうふうにしたのが数十ありますでしょう。そういうふうに、今日ずっと酪農の発達に努力して、協力して参りまして、ちょうどあなたのように、明治、森永けしからぬといったような考え方の人がまだたくさんある、こういう人たちを征伐しなければ酪農のほんとうの発達はない。(「委員長注意しろ、なまいきじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)言い過ぎまして相済みません。そういう人たちの理解を求めなければ発達は困難だと思っておるのです。そういうわけですから、どうぞ御心配なさらぬでよろしいと思います。御注意を受けるまでもなくほんとうに相済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/66
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067・細田綱吉
○細田委員 あなたは今経済学の一ページとして、私に原料は高く、製品は安く、こういう原則の上に立って、お前の見方はもう古いんだ、なるほどそうかもしれないが、資本主義の原則は製品は安くということは考えられるが、しかし原料を高く――極端に言えば原料を百万円で買って製品を五十方円で売ったら立っていけますか、これは資本主義の原則ですよしそれは今までのようなめちゃくちゃな暴利はむさぼらないということはあるいは考慮に入っているかもしれませんけれども、無制限にとはあなたもおっしゃらなかったけれども、ただ無条件に製品は安く、原料は高く買い入れるんだ、また資本主義のもとで経営上あなたの方で御損をなさっても国がその補償をするわけではない、そうしてまた株主に対する配当は少しでも多ければあなたたちの業績は上るんだから、そんなばかな公共機関のようなあほうなことを言ってもわれわれは信用しない。あなたが征伐されるというなら征伐されたってよいけれども、現にわれわれが明治のことで経験したことですが、茨城県の猿島郡というところで、あなたのところに牛乳を入れておる、ところが対岸の橋一つ先の野田世で当時牛乳が五円で買われておる、ところが利根川の橋一つこっちは石岡まで集荷するために、それを四円五十銭でというようなことで、これじゃどうも気の毒だからというので私はあなたの方へ相談に行ったら、あれはけしからぬというので四円に下げてしまった、お願いに行ったところが四円に下げられてしまった。そういう独占的な経営が行われて農民を収奪されておる。あなたがいかに原料を高く、製品に安くといったって、資本主義の原則はくつがえされぬ。そんなあほうなことを言いなさんな。従ってそれを納得いくような説明ができない限りは、要するに生産者とメーカーとの間に一致した見解をなんということはわれわれ相反している立場に立っている、こういう前提のもとにものを見ている。あなたはそうじゃない、同一方向にあるのだというなら、もう一度説明していただかないと私はわからない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/67
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068・植垣弥一郎
○植垣参考人 いろいろ言い過ぎがありましたようでありまして、その点はおわびを申し上げます。経営の指導方針としましてはそういうふうに言っているわけです。牛乳の相場がかりに五十円であるときは五十円五十銭くらいまで出すくらいな努力をしなければ原料乳は集まらないのだぞ、それから製品の相場が百円のときには九十九円くらいで売るような用意と努力をしなければ拡張できない、そういうことを言っているのです。それでそういうことをやるには経営を合理化しなければできないのだから、経営の合理化をやれということが至上方針であるという意味のことで、誤まった御説明の仕方であったと思いますが、そういう意味でございます。どうぞ御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/68
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069・久保田豊
○久保田(豊)委員 ただいまいろいろ参考人の皆さんの御意見を承わりますと、特に大メーカーの皆さんの、この基金はいいが、目的を要する、大体においていわゆる需給調整ということに限定しろという御意見ですあとは役員の構成、運用益の使い方やその他いろいろのことはありますけれども、一番大きな目標は大体において需給の調整に限定しろということです。要するにあなた方五大メーカーが、日本の大体七割五分を占める牛乳を扱っておられるそういう方が、この法案の目的を需給調整に限れということでありますが、これは私は二つの意味を持っておると思うのです。一つはあなた方とすれば、こういうような法案なんか作らぬでもいい、自分でやれるのだ、だからこういう基金は本質的には要らないのだというお考え、つまり生産者と皆さんの関係はいわゆる大乳業と生産者団体、しかもこれは非常に弱い生産者団体、個個ばらばらの力のないものです。これと従来通りの関係を根本にしろというお考えが、この中にはっきり現われていると思う。そういうことに対して、価格の問題のごときはもちろん国家その他が介入してはまかりならぬ、この問題は全然触れるな、需給調整だけやれ、しかもその主導権は、皆さんが役員の構成に入ってやるということであって、少くとも日本の七割五分の牛乳生産、しかも相当大きな資本を持っているいわば独占的な――皆さん五社の間にはそれぞれ熾烈な競争があるが、全体として見ると依然として非常に大きな独占的な力を持っておられる皆さんとして、こういう制度は本来要らないのだという考え、少くとも何らかの形において国家なり何なりがこの価格形成の中に介入してくることについては反対だというお考えが、この裏には私はあると思う。そういうことが皆さんの今日の利益でなくて、日本の農業の体質改善の大きなテコとしてやっていこうとするこの酪農振興という政策について、それじゃあなた方はどういう方策でもって対処していくか。さっきのお話のように、生産だけは百姓と国家なり何なりが一生懸命やって、なるべく安く作れ――あなた方が合理化しろということは安く作れということです。あとは流通なり消費なり、それはおれたちがやる。それには施設を改善しなければならぬから、それはもうけてそこから出してやる、はっきり言えばそういうことでしょう。その方は国家がぶうぶう言うなというのが、さっきの植垣さんのお話の根本です。従来酪農が立っていかないような危機が何度か来た。しかもこれに対して少くとも農林省はあなた方の意を受けていいかげんなひょろひょろな態度をもってきたから、今日酪農というものは何らかの方策をやらなければならないような実情になっている。もちろんこの基金だけでは完全でないことは明らかだ。しかもこの基金の中でも、あなた方の言うようだと、価格決定の指導は全部いわゆる五大メーカーにまかせろということになる。こういうことが需給調整に限れということの裏にはっきりあると思う。これは私どもは今までの関係、今日の関係から見て、いかに乳業といえどもこの点はもう少し日本の農業全体、酪農民全体の上に立った、はっきりした、もっと進歩的な考え方を持って対処することが必要ではないかというふうに思うのです。
それからもう一つの点は、このことの裏には要するにこんな基金のお世話にならぬでもおれたちはもっと安く金が使えるという考えがあると思います。これで見ますと、保証料その他を入ると金利が大体日歩三銭くらいになる。その日歩三銭の金をネタにして、皆さんが調整資金の調達なんかしなくても、五大乳業、特に明治、森永さん等においてはこういうことのお世話にならぬでも、もっと安い金が使えるから、こんなめんどくさいものでもって特に役人の古手のごときがわかりもしないくせにあれこれ言ってくることは困るのだ、こういうお考えがあると思うのです。その点から見て、こんなことは今の段階においてやらない方がいいのだ、やるならおれたちの思う通りにしろというのが、私は皆さんの態度の基本になっていると思うが、この点についてはどうですか。これは一つ森永の大野さんに特にお考えをお聞きしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/69
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070・大野勇
○大野参考人 酪農業を安定させて振興するということにおいては、一つも皆さんと意見が違ってないのですが、その方法はやはり需給調節をして価格を安定しないとどうしても結果的に乳価が安定しないのだ、ですから限られた金でやる場合にはそこに重点を向けるべきじゃないか、こういうわれわれの解釈なんです。またそれを逆に、農家の牛乳取引だけ団結を強めて、これによって乳価を安定するというお考えもありますが、実際上売れない、あるいは値段が下るというようなことになりますと、普通の会社の状態でありますればいつまでもその状態を続けていくことができない。ですから最初これだけの金でスタートするならば、はなはだ身勝手なように聞えるかもわかりませんが、製品の需給調整と価格を安定することが酪農の安定になる、こういう解釈をしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/70
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071・細田綱吉
○細田委員 先ほど植垣さんのおっしゃる一面もわかる。ものは高く買ってやって、おれたちの作るものは安くしてやるのだ、このお気持だけはわかる。ところがそういうふうにやっておると思うが、現状はあなたたちの売っているものはちっとも下っていませんよ。それで百姓のものはどんどん下っている。これは逆なんですよ。資本主義としては、私の会社は少しでもよけい利益を上げよう、そして株主の要求にこたえようという気持からすれば、これは当りまえだと思うが、しかしこういうような現象が今の植垣さんの説明と逆にいっているのです。どれが下っているかというと下っているものはありはしない。それで百姓の方はどんどん下っている。こういうことでこれからどんどん百姓に高い利息で資金を貸してやって、どんどん作らして、三割増産したら五割も値段が下ってしまったというのでは、百姓はきわめて迷惑な話で、これでは利息のために破算するでしょう。こういう点はおれたちがついている限りは、なるべく材料を高く買ってやるのだとおっしゃるが、現実は製品はちっとも下っていない、これをどういうふうに見てもらわれるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/71
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072・大野勇
○大野参考人 牛乳はイギリスのような特別の国を除きまして、大体なまで使うのはどこの国でも五割です。あとの五割というものが製品に加工されるわけです。それでこの説明が非常にむずかしいのですが、下ってないとおっしゃるならば、ほんとうにさっき諏訪参考人の言ったようなつぶれる会社はないのですが、おそらく非常に破算状態に瀕する会社ができるというのは、五割の品物がいろいろな加工原料になって非常な大暴落を来たしている。しかしながら大暴落を来たしているその品物は、皆さんが直接お買いにならぬものだからこれがわからないのです。外国の場合ですとなまの牛乳を飲んで、チーズを食べて、バターを食べる。一ヵ月に払う乳製品に支出される金は、乳価が下れば必ず下るのです。ところが日本の場合はバターだけが最近非常に値下りになりまして、百二十円でも、極端なやつは百円でもあって、なるほど下った。そのほかのものはパンの原料とかなんとかになって、その原料の中にまぜ合わされちゃってるから、それでこれが皆様方あるいはその他操觚界の方々になかなか御理解が願えないことなのです。会社の一石当りの売り上げというものは乳価の下るに従ってだんだん下っているのです。それで非常に皆さんが苦境に立っている、こういうのが現状なんです。それじゃキャラメルが大きくなったか、パンが大きくなったかといわれても、これはわれわれの世界は別な世界でありまして、これを具体的にお知らせすることはできないのです。これははなはだ残念ですが、この辺は御信用を願ってそして御納得願うよりしょうがないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/72
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073・久保田豊
○久保田(豊)委員 ちょっと大野さんにお尋ねをいたしますが、大体今同僚の細田君からも質問のありました通り、たとえばことしあたり牛乳製品は二回も暴落している。しかし市乳の価格はほとんど下っておらぬのです。あなたのおっしゃる通り、乳製品、特にバターが下った、こういうわけです。そこで大体その半々ということですが、今度のこの基金ができますと、これを十分に活用すれば全体でもって約五十億、しかし総ワクがあって二十五億ということになりますか、その程度のもので、いわゆる今度いろいろ事態が変ってきましょうけれども、かりに来年あたりの各場になって乳製品のストックをするというときにはあなた方の場合では自主調整はこの基金を利用しなくともできるのではないかというふうに考えるわけです。基金を利用すれば、法律的には価格問題については、国家の干渉というかそういうものはないわけですけれども、間接的にはある程度あるわけです。ところがこのお世話にならなければ、あなた方は価格については何らの調整を受けないということになる。この点があなた方にとっては非常に大きな問題になるのではないかと思う。しかもこれは金利は三銭くらいです。皆さんが金融を受けられる場合の金利より高くなると思う。そういう観点から見て、この程度のものなら基金は要らないというのがどうもあなた方の腹ではないか。その一方があなた方としては商売がやりいい。もっとはっきり言えばそういう基金のお世話になったりすると、法律的にどうであれ、金利的に制約をこうむるという点が腹にあるように思います。実際にあなた方はこの基金を必要とするのですか。あなたのお考えのように需給調整だけならばあった方がいいと考えておるか、ない方がいいと考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/73
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074・大野勇
○大野参考人 六億出して、六十億の金で価格の安定が果して可能なりやいなや、これは不可能ですね。六十億というのは乳製品二ヵ月分です。これは不可能です。つまりかりに生産過剰が続くとして、とうとうとして下っていくその大勢をこれによって食いとめることは、不可能です。しかしながらきょう生産が過剰になってあした値段を下げなければならぬというような非常に急激な変化は、二ヵ月ありますれば、生産の大勢なり農家に納得させるなり、われわれの方で二ヵ月の間の安全弁になる。こういうのでこれは弾力性を持たせるものでありまして、無限に政府が特定の値段で全部を買い上げない限りは、これはいかなるものといえども価格を不動にするということは不可能です。ただ弾力性を持たせて幾らかずつ、どうしても下るものならやわらかく下げるのです。
それからお前は使うか使わぬかといえば、加入すれば使います。しかし先ほども申し上げたのですが、御了解願っておかなければならぬ点は、商売をやっている方はおわかりになりますが、だれか一人が投げ売りをする。それが多少量は少くても物の下るというときに一人の投げる石は全部に及ぶのです。従ってこれは中小メーカーが救われるということは大メーカーが救われるということである。われわれはよそから借りるからいいというような考えなら、初めからいろいろな注文をつけるまでもなくこれに超然としているわけですが、そういうわけで業界全部がこれを利用して、かりに非常に困った人があったとしても、これで一応息を抜いて、下るものなら下げるような形に、上るものなら上げるような形にやっていく。こういうことは業界全部のマイナスでないと考えております。非常に注文をつけておりますのは、何とか実現したいという何がありますから非常な注文をつけておる。そうでなければこれは任意加入ですから、だれでも自由に入ったらいいと思います。こう言っておりますれば話は済んでしまう。どうぞそういうつもりで御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/74
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075・久保田豊
○久保田(豊)委員 諏訪さんに中小メーカーの立場でお聞きいたします。今いろいろ大野さんからの御注文というか、出たわけですが、中小メーカーの立場は、どうもお話を聞くと、むしろ大メーカーの金融ベースに乗ったものは要らぬではないか、金融ベースに乗ってない中小メーカーだけ何とか使うようにしてくれ、こういうことですね。大メーカーは要らないのだ、こういう御主張は、今の立場からいえばごもっともだと思います。そこでお聞きしたいのは、このいわゆる運転資金という形で出てきまするものが単なる運転資金では、これは実は乳価維持とかなんとかいうことは意味がないわけです。やはりこれは乳価安定ということにならなければならないし、つまり過剰生産が出た場合に、これがストックのたな上げなり滞貨のたな上げに実際に使われなければ、実際に意味がない。ただ単なる運転資金では意味がない。こういうわけでこの資金を少くとも二億五千万円にして、そうしてそれによって運転資金あるいは滞貨資金として出た場合に、中小メーカーその他いろいろな、不利な条件が――特に大企業との競争ということになると、あなた方はあらゆる面において不利になるというのは明らかです。その場合に果してこれで滞貨金融なり滞貨のたな上げができるのですかどうですか、この点です。しかも日歩三銭の金を、これもさっきお話のあったように、これだけではなかなか銀行で金を貸してくれそうもないから、どこか資金源を別に確保してくれなければどうにもならぬというお話があった。そういう制約のもとで、この資金だけのいわゆる債務保証、そういうことでもって実際に滞貨が出てきた場合に、過剰生産になっておる場合に、あなた方の経営の安定ということがはかられるのかどうかという点が一点。
それからもう一点は、さっきもお話がありましたように、大体において四十二くらいの大カン練乳を中心とする設備改善資金、これも八億くらい。これを何とか心配してくれなければどうにもならぬというお話です。この八億の融資、これもなかなか実は困難だろうと思うのです。この計画ではなかなか簡単にはできませんね。そういう点でこの八億の施設改善資金によって、一体具体的にどういう方向で施設を改善していくのか。大カン練乳を今度は市乳の販売の施設に切りかえていくのかどうか。あるいは具体的にどういうふうな方向へ切りかえていけば、中小メーカーとしてはいわゆる一面においては乳価の維持に現実に役立つ、加工処理の実効を持ち得るようなものができ得るのかどうか。こういうような点についてどうもまだはっきりしない。ただ大カン練乳を市乳販売の施設に切りかえるだけだというのでは、これはやってみたところで、どうも大乳業に今の中小企業が太刀打ちはできまいと思う。できなければその面から今言ったように変ってくることは明らかです。大体この二点について、中小企業の代表たるあなたは、具体的にどう考えているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/75
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076・諏訪健次郎
○諏訪参考人 だいぶむずかしい話ですが、求めてお話したいところでございました。
あとの方から出てきました設備改善をいかにするか。もちろん日本の牛乳というものが市乳にだんだん変りつつある。中小都市に散布しておりますところのわが組合員は、まず市乳に転換できるところは市乳に転換をする。砂糖の免税が撤廃されましたものですから、練乳というものを作っても、価格の面から魅力がないので売れなくなることは明らかです。そういう意味合いで私どもは、練乳を作るということはもう市場性が薄くなっている。そこで粉乳に切りかえるとか、あるいはその他の方式に切りかえるとか、あるいはほかの製品に切りかえるとかいう方向に行かなければならないのですが、少くとも今後需給調整をするということが当然必要であるならば、需給調整になる製品は何であろうかということになると、脱脂粉乳が一番保存がきく。もちろんほかの製品でもききまするが、脱脂粉乳なら一年や、もう長くいって二年くらいきくが、練乳のようなものだと最高三ヵ月が一番よくて、それからあとは悪くなる。こういう観点から需給調整の対象物資にまず切りかえさせておこうというので、私は粉乳に設備を転換せい、こういうことを話し合っているわけです。市乳に第一に転換できるところは市乳に転換せしめて市乳を売れる。市乳につきましては非常な資金が要る。というのは少くともわれわれが売る場合に、品質の点で相当難点がございまするが、幸いにして超高温殺菌と申しまするか、殺菌機の非常に優秀なものが輸入されて、これが内地にも作られるということになりますれば、その機械の力によって無菌な状態で行われると、企業設備の大小とか、いろいろなワクということもなくなるような現象が現われてきておりますので、相なるべくはそれを全部のものに使わせて市乳に転換させたい、こういうことを考えております。
それから粉乳につきましては、脱粉して学校給食という道も開かれておりますし、それからパンの方にも切りかえられますから、脱粉にして貯蔵ができる。残りますオイルはどうかといいますと、バター・オイルにしていこうじゃないか。ところがバター・オイルの工場を各工場に新設することは非常に困難だから、バター・オイルのようなものは中央の工場においてやろう。そうして脱粉のようなものはさらに加工して、インスタント・ミルク、かようなものにする。そういうことは中央の工場でやろうじゃないか。またバターの品質が非常に劣っているというので、これは農林省のお指図によって来月は外国からの技師というかベテランを呼んで、バターの向上をはかると同時に、バターの中央工場を設置し、また共同でプリントする工場を設置していくような方法で、中央でまとまったような転換をし、設備をまとまったむだのない方法で中央区工場に二億をかけていく。そうして個人がかけられないようなもので、個人の必要としない共同でできるものは中央でやる。個人がおのおのやれるところは市乳と粉乳の機械に転換していきたいと同時に、老朽な機械を切りかえていく、こういうのが企業設備の転換の大体の考え方でございます。
それからいま一つ設備のことで、遅れましたが、市乳でありますならば、一定の経営単位がありますると、大企業に対抗していくことができるので、私どもの組合の中に岡田さんという方がございますが、岡田牛乳は少くとも資本的には対抗ができる。われわれも規模が小さいながら、あまり大規模でない限りは百石以下であるならば、資本的にも対抗ができるという確信と事例がございますので、市乳方面においてはここで設備の基準ができますれば圧迫を受けることもなく、数社はそのまま伸びると思います。もしこの際資金というものがなくてこのまま置くならこれがつぶれてしまう。転換ができなくてつぶれてしまう。こういう結果になることは火を見るよりも明らかだ。どうしてもこの設備改善の金については、何とか御配慮を願いたいと、これは責任者といたしまして重ねてでございまするがお願いする次第で、この設備の方法、事業計画その他詳細につきましては、私どもも準備はございますが、ただいま持って参っておりません。さらにそれに準備を加えて皆様の御納得のいく改善の方法、収支、営業の方法等を差し上げまして御了解を得たいと思います。
それから次に、中小の金融べースに乗っている乗っていないというので、これは私ども中小企業としては非常に――もちろん大企業として金融ベースに乗っているものはよろしい、農協系統から金を借りていくことはまことにけっこうだが、私の組合員は全部これは線からはずれているもので金融べースには乗らない。金融の体系から全部離れて、みなし子の状態にいる。そこでこの基金にはかぶりつく、俗に言って。かぶりつくというのは、これをもってでなければ生きられない。そこで私は何としてでもこの基金の成立を望む。望むがゆえに過半数を得たいのだ。過半数を得たいというのは、大企業を除外するというのではなくして、わが基金にしたいがために過半数を要求するというのが組合の全般の考えであります。そこで滞貨の問題についてでございますが、これだけの金はこれはおぼつかない。そこで需給調整ということを願う。需給調整をするのには、大企業の方々もまたこの問願につきましては、先ほどもお話がありましたが、非常な広範囲で流通過程、販売過程までいかなければなりませんので、きょうの滞貨資金、この基金に入れて審議願ってもこれはもうできないので、じっくりと腰をすえて需給調整ということをやっていただかなければならぬ。そうしていかなければこの基金はともに生きないのだ。従って滞貨がこの基金で生き得るかといわれれば生きられない。そういうわけでございますから、需給調整の方法をあわせて行なっていただきたい、こういうことでございます。
それから運転資金につきましては、実は運転資金はのどから手が出るほど借りたい。なぜならばというと、われわれの販売は非常に弱いがために共同の共販の態勢に持っていきたい。ところが基金の性質から、常時使ってはいけないというので、最初は農林省当局には強大な要求をして参りましたが、皆さんの意見に押されまして、やむを得ず共販資金は泣く泣く引っ込んだという状況なんです。しかし共販の資金だけ貸していただけますならば、われわれ中小企業の基礎の確立は疑いないのでございます。これにつきましても相当な資料を集めて研究をし、実行計画が立っておりますので、差し上げまして御納得を得たいと考えております。
以上で意は尽せませんが、かような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/76
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077・久保田豊
○久保田(豊)委員 全酪の窪田さんに一、二点お伺いをいたします。この基金によりまして、いわゆる全酪系統で、具体的に今お話のようになると、飼料資金等はこれをもって共同で借りて、ささらに末端に流す、これもいいと思います。が、これは全酪自体としてはいいにしても、総合農協でも大体においてできることなんです。また金融関係から見ても、皆さんの方が組織ががっちりしてくれば――大体末端の酪農組合ないしは畜産組合というのは、多くは酪農家個々が組合員になっているというよりは、酪農家を含む農協とそれから小さな中小メーカーあたりがやっているというような場合が多いわけです。そういうところで特に、たとえば今問題になっておりますような飼料資金を借りて流さなければ酪農全体が、あるいは農協と結びついた酪農全体がうまくいかないという点はどういうところにあるのですか。今の総合農協の運営というものはそういう点においては大きな欠陥を持っている、どうしても全酪系統でそういうことをやらなければうまくいかないという原因がどこにあるかという点を一点お伺いしたい。
もう一つはそのほかのいわゆる酪農家としての生産合理化資金あるいは合理化施設というものを作れ、その資金はこれから出せというさっきの御意見は具体的にはどういうことか。一面共同集荷態勢なり共同販売態勢なり、そういうものを作るための資金を全酪系統へ出せというのか、あるいは総合農協なり何なりと協力してそういう態勢を作って、いわゆる生産家の立場から流通過程を逐次合理化していくという意図のもとにやっておられるのか、そこらがどうもはっきりしないわけです。生産合理化の資金といってもどうもはっきりしない。それをまた全酪なり何なりの皆さんの系統でこの基金と結びついてやらねばうまくいかないのか、そうでなくて総合農協の系統でやっても、これは、今の総合農協は農林省の御指導もあずかりまして――実は中央がそういう点についてはふらふらしている。流通機構について特にそういうようななまものに手を出すと必ずやけどをするということで、御承知のように全販もだらだらしておって、あっちへちょっと手を出してみたり、農林省では業者の顔色を見い見いやっておる。まるで腰がすわってないことは事実でる。しかし全酪としては、そういうことだからあなた方がやらなければだめなんだ、この機をのがさずしてやらなければだめなんだ。さっきも一楽さんの中金等もこの点については一つ態度を改めて、総合農協のみならず皆さんの単独農協に対しましても今後は積極的な政策をとっていく、こう言っておられるが、これらの連関がどうもはっきりしない。この点についての御意見を二点だけお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/77
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078・窪田喜照
○窪田参考人 第一点につきましては、実は中金の首脳部あたりともいろ、いろ従来も意見を交換しておるわけでありますが、この問題については結論的に申し上げますと、将来はなるべく系統金融というものをみながたよって、うまく円滑に仕事がしていけるようにというふうに指導方針をとっていかなければならぬ、こう考えております。そういう意味合いでわれわれの話し合いも最近そういうところで一致しておるわけであります。ただ実情といたしまして、御案内の通り特殊農協というものが全国に六、七百もあるのでございます。その一割見当はほんとうにある程度の経済行為もやっておるわけでありして、そういうようなものの上に立って主として酪農協会は指導の立場にあるわけであります。しかし酪農協会としましては、必ずしも特殊農協だけを考えておるのでなくて、一般的にやはり酪農に関する限りではいろいろな面で連絡をとるとか指導をするとかいうふうに考えておるわけであります。そういうわけでありますから、ただ現実問題として最近私の方で若干のアンケートをとってみたのでありますが、その答えを見ましても、世間にやかましく言われておるほど特殊農協が中金や信連方面から阻害されておるという点は比較的少いようでございます。しかし少いけれども、ただ一面その中間のものがあるわけであります。つまりそういう方面、信連方面に加入するとか預貯金するとか利用するとかいう方面が非常にはっきりしない。ただ何とかその日暮しをしておるというものが相当多数あるわけであります。そういうものが実際金融面でも、いざという場面には系統金融が信用しいで間に合わないということで困っておる面があるわけであります。その困っておる面と、いうのはどういうふうにやっておるかということになると、私の想像でありますが、この系統関係のえさばかりではなく、多くの飼料業者かあるいは関係取引会社がえさの問題もやっておりますから、そういう面にたよっておりますので、すぐ金融面にも困らない、こういう状態にあるのではないかと思っております。しかし、これは現在はそうでありますが、私は積極的に考えまして、そういう面も若干の金融的措置が講ぜられますならば、自分のところから安いえさが買えて、この難局を切り抜けることもできる場合が相当あるのではないか。そういうことがひいては地方的にも特殊農協を金融面から阻害しておるとかいうような声があるのではないかと私は考えております。だから不明な点も、われわれから考えれば困っておる面だというふうに見まして、こういう面はともかく何とか一時的でも救済していくには、かような金融措置の制度があればいいのであって、そういう面に特別な金融措置を講ずれば、系統合金融の方に向いてこないからどうだというような、あまりけちっぽいことは考えなくてもいいと思う。ほんとうにある期間、もちろんこれは系統金融の方に今全部指導してもらわなければならぬが、若干の期間はそういう連中を救っていく。ことに酪農問題は現実非常に困っておるのでありますから、現実問題にこれをからませて私はこの制度が必要だと思っておるわけであります。
第二点としましては、やはり生産合理化の問題で、いわゆる集乳とか共同販売、いろいろな面で私の方には特殊農協も総合農協も実は加入しておりまして、そういう面でいろいろ仕事を自主的にやりたいと思っても、金融面でどうも思うようにいかないという場合もあるわけであります。そういうようなものは、なるべく今後は組織的に特殊農協としましても、これを県一円のものにまとめていくとか、あるいは特殊農協で工合が悪ければ、総合農協の方面でこれをまとめて一つ強化していくとかいうようないろいろな組織上の手は打たなければならぬと思うのであります。しかしそういう場合でも、仕事をやるということになると、この金融面というものがはっきり一体できるものかどうかということが先に立つわけでございまして、そういう面を一つ強化していく面からいいましても、やはりかような制度を置いて当分めんどうを見てやらなくちゃならぬじゃないか、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/78
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079・中村寅太
○中村委員長 これにて質疑を終ります。
参考人各位には御多用中にもかかわらず本委員会に御出席下され、種々貴重な御意見をお聞かせいただきまして、あつくお礼を申し上げます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/79
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080・中村寅太
○中村委員長 この際連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。ただいま審査中の酪農復興基金方案について大蔵委員会より連合審査会開会の申し入れがありましたので、この際大蔵委員会と連合審査会を開会いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/80
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081・中村寅太
○中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
なお連合審査会開会の日時につきましては、両委員長協議の上追って公報をもってお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805007X02019580328/81
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