1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月六日(木曜日)
午前十時三十三分開議
出席委員
委員長 山下 榮二君
理事 稻葉 修君 理事 高村 坂彦君
理事 坂田 道太君 理事 河野 正君
理事 佐藤觀次郎君
小川 半次君 川崎 秀二君
杉浦 武雄君 田中 久雄君
渡海元三郎君 灘尾 弘吉君
並木 芳雄君 濱野 清吾君
牧野 良三君 山口 好一君
木下 哲君 小牧 次生君
田原 春次君 高津 正道君
野原 覺君 平田 ヒデ君
小林 信一君
出席政府委員
文部事務官
(社会教育局
長) 福田 繁君
委員外の出席者
参 考 人
(全国プロフェ
ショナル野球機
構協約常任起草
委員) 赤嶺 昌志君
参 考 人
(日本社会人野
球協会常任理
事) 小川正太郎君
参 考 人
(スポーツ評論
家) 川本 信正君
参 考 人
(評論家) 中野 好夫君
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三月六日
委員清瀬一郎君、千葉三郎君、北村徳太郎君及
び鈴木義男君辞任につき、その補欠として川崎
秀二君、小川半次君、田中久雄君及び田原春次
君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員田原春次君辞任につき、その補欠として鈴
木義男君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
国立競技場法案(内閣提出第六八号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/0
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001・山下榮二
○山下委員長 これより会議を開きます。
国立競技場法案について審査を進めます。本日は本案について参考人より意見の開陳を求め、その後質疑に入ることにいたします。御出席の参考人はお手元に配付の参考人名簿の通りでございますが、中野参考人は都会により午後一時より御出席になります。
議事の進め方について申し上げます。まず川本参考人、赤嶺参考人、小川参考人の順序で、お一人十分ないしは十五分程度御意見の開陳をいただき、そのあと参考人に対する質疑に入ることにいたします。中野参考人の御意見の開陳は午後一時に行うことといたします。
それではこれより参考人よりの御意見の聴取に入りますが、一言委員長よりごあいさつを申し上げます。参考人各位には御多用中にもかかわりませず御出席をいただき、厚くお礼を申し上げます。本委員会におきまして、目下国立競技場法案を審議いたしておりますが、本法案は体育の普及振興に資するところきわめて大なるものがあると期待されるのでございます。つきましては、本案の審査に資するため、参考人各位にはそれぞれの立場より、国立競技場の運営等につき御意見の開陳をいただき、それに関連して社会教育とスポーツとの関係、ことに近時世上に上っております学生野球と社会人野球、及び職業野球のあり方、その現状等について、それぞれの立場から御忌憚のない御意見の開陳をいただきたいと存じます。
まず川本参考人より国立競技場の運営とそのあり方について御意見の開陳をお願いいたします。川本参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/1
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002・川本信正
○川本参考人 それでは私から国立競技場の運営につきまして、若干の思いつきを申し上げてみたいと思います。
今度できました国立競技場は、私も最近見て参りましたが、非常にりっぱな堂々たる施設でありまして、これは国際的にも第一級の競技場と言うことができるかと思います。ただ問題はその運営でありまして、その運営によろしきを得ますれば、これはもちろん日本のスポーツ振興のモデル・センターになるでありましょうし、またそうしなければいけないのでありますが、もし運営を誤まれば、これは使わない先から名所旧跡と化してしまって、ローマのコロシアムの轍を踏むおそれもなきにしもあらずかと考えます。それで、この国立競技場を活用して参ります基本の問題、つまり基調となりますことは、国民のほんとうの意味でのスポーツ振興をはかることだと思うのでありますが、それについて一つ実例を申し上げて御参考に供したいと思います。
最近、ロスアンゼルスに一九三二年に第十回のオリンピックに使用しました大競技場がありますが、これがプロ野球に身売りをしてしまったという事実があります。そこであの競技場は、ロスアンゼルスで一九三二年にオリンピックを開きましたときに、観衆十万人を入れるという、当時としては空前の大規模な競技場を作ったのでありますが、しかも御承知のように、あのカリフォルニアというところは、アメリカのスポーツのいわば金城湯池ともいうべきところでありまして、陸上競技でもテニスでも水泳でもほとんどあそこから名選手が続出しておるのであります。それにもかかわらず、このアマチュア・スポーツの殿堂ともいうべきオリンピック競技場がついにうまく使いこなせませんで、プロ野球に身売りをしてしまったという事実は、かなりこれは注目を要する問題ではないかと思うのであります。なぜそういうことになったかということは、あそこで陸上競技をたまにやりましても、観衆がりょうりょうとして入って参りません。というのは、そういうシーズンになりますと、ちょうど一方では野球が始まって、青少年も全部家の中にこもってしまってテレビを見ている。また太平洋岸にあります同じプロ野球のマイナ・リーグでさえも、大リーグのテレビのために観衆を奪われてしまって、経営不振に陥るというような状態で、職業野球の大リーグの方のテレビに観衆をとられてしまう。野球シーズンが終りまして、フットボールが始まりますと、この学生フットボールが、ちょうど日本の学生野球と同じようにいろいろ問題があるのであります。それからまたプロのバスケット・ボールがある。そのうちまたイン・ドアのシーズンになると、プロのテニスが回ってくるというようなわけで、多くの人々が自分でスポーツをやるということよりも、見るスポーツに集中してしまいまして、それがために、せっかくのアマチュア・スポーツの競技場ががらんどうの始末になってしまうわけであります。その反面どういう現象が起っていたかと申しますと、これは二年ばかり前のことだと思いますが、アメリカのたしかコロンビア大学の教授だったと思いますが、アメリカの少年について非常に簡単な体力テストを行なってみた。それをヨーロッパのスイスであるとか、オーストリアであるとか、ああいう山岳地帯で、非常に平素運動を活発にやっておるところの少年の体力と比較してみますと、その標準の比率は、ちょっと私申し上げる資料を持ちませんけれども、とにかく非常にアメリカの青少年の体力が劣っているという事実がわかったのであります。それで、これには非常に驚いて、ニクソン副大統領がみずから委員長になりまして、スポーツ審議会というようなものを作って、モナコの王妃になりましたグレース・ケリーのおやじさんの、これも古いスポーツマンでありますが、ジョン・ケリーという人が副委員長格で、アメリカの青少年の体育、フィジカル・フィットネスをいかにして振興するかということに心を砕いているようでありますが、依然としてやはりプロ・スポーツに多くの人気が奪われて、アマチュア・スポーツがだんだん振興しないような状態にあるようであります。日本でも、後ほど本日のメイン・イーヴェントでありましょうプロ野球のお話が出ると思いますが、プロ野球が、おそらく今年あたりはプロ野球の歴史始まって以来の黄金時代を迎えるのではないかと思いますが、プロ・スポーツが盛んになることは非常にけっこうでありまして、国民娯楽の対象としては、非常に健康的でもあり、道徳的でさえもあると思います。これは非常にけっこうなことでありますが、ただそのプロ・スポーツが非常に栄えるという現象だけを見て、それでスポーツが振興しているということにはならないということを御注意願いたいと思います。
それでスポーツの振興にはどうしたらいいかということにつきましては、内閣にスポーツ振興審議会もありますし、文部省に保健体育審査会もありますので、これらの機関を十分に活用されて、適切な方法を講じてもらいたいと思いますが、とにかくそういう国民スポーツの全面的な振興を抜きにしては、国立競技場の今後の運営は考えられないということを痛感いたしております。それで具体的に今度の法案を中心に多少私の考えを申し述べますと、なかなかこれだけの大施設を滞りなく運営していくということは、これはちょっと容易ならざる仕事かと思います。法案で拝見しますと、理事者が、理事長以下理事三名というごく少数の方々によって構成されるようで、むろん有能な方々が当られるでありましょうけれども、いかに有能な方でも、ああいう機構の中に入ってしまうとまた考え方が固定してしまうおそれもありますので、この法案にあります評議員会というものを十分活用されて、この人選に大いに意を用いられて、平素の運営の方法の審議に活発に評議員会を活用してもらえたらいいかと思います。
それから御承知の千駄ヶ谷に都立の体育館がありますが、あの体育館が、体育館とは申しながら、実際これを使っております実情を見ますと、体育の催しに使うよりも、芸能であるとか、その他、最近ではたとえば建国祭の何か集まりであるとか、そういったスポーツに縁のない集会に用いられている度合いの方が多いのでありまして、むしろ体育館よりも、あれは芸能館ではないかというような批評さえも聞かれるのであります。そのおそれはやはりこの国立競技場にもあると思います。せっかくの国立競技場が、国立野外劇場などになってしまっては、はなはだ本旨にもとりますので、スポーツのために大いに活用したいと思いますが、その前提となりますのは、今の都営の体育館の場合でもそうでありますが、使用料の問題があるのであります。御承知のように、アマチュアのスポーツ団体はそれぞれ財政的には非常に貧困でありますので、多額な使用料が支出できません。それがために、使いたくても都営の体育館を敬遠するというような事実もありますので、国立競技場もいずれはしかるべき料金を定められて貸与されると思いますが、その場合には、アマチュア・スポーツに対しては、できるだけ低廉な料金で開放してやるようにしたいと思います。その低廉な料金で貸しておりますと、財政的には非常に国立競技場自体が経営に困ると思いますので、これはどうしてもここ五年、十年、とにかく国立競技場の運営が軌道に乗りますまでは、やはり政府から相当の補助金を出されることが必要ではないかと考えます。それからこの競技場は単にトラック、フィールド、陸上競技、サッカーとか、その他の競技に使われるばかりでなく、この競技場の世界的にも非常に珍しい例といたしまして、いろいろの付属の施設がありますので、この施設を十分に活用されれば、東京都民のレクリエーション・センターにもなりましょうし、いろいろスポーツ関係のモデル・センターにもなり得ると思いますが、たとえばあそこには今度図書室というようなものができるようでありますが、これもあそこにスポーツの博物館を作るくらいの計画をしていただきたいものだと思っております。すでに相撲には相撲博物館がありますし、野球の方でも、プロ野球、学生野球が共同して近く野球記念館というものを作っていろいろ資料を集められるようでありますが、一般のスポーツもこの機会にあそこに一つのミュージアムを作りたい。これは今いろいろ資料を集めませんと、戦災その他の関係で非常に貴重な資料が散逸しておりまして、このままほって置きますと、昔のいろいろ珍しい資料などがどんどんなくなっていくおそれがありますので、そのいろいろな事例は、もし御質問があればあとで申し上げますけれども、この機会にスポーツの博物館的なものを一つ整備してもらいたいと思います。
それからまたこの競技場に、これは前にスポーツ振興審議会の答申にもありましたけれども、今日日本のスポーツに非常に必要なものは、専任のプロ・コーチがどうしても必要な時代になっておりますので、あの競技場に専属の各競技のコーチを配置しておきまして、そうして平素あそこに練習に来る人たちにそのコーチたちが指導をしてもらいたい。そういうような便宜もあそこに与えてもらいたいと思います。昔の神宮競技場も、たしかあの当時二十銭くらいの入場料で練習ができたのでありますけれども、コーチも何もおりませんので、ただ漫然と自分たちだけで練習しているというありさまでありましたが、ここに専任のコーチを置けば、それをまた目当にして多くの入場者も得られるんじゃないかと思います。
それから今日非常に必要を叫ばれておりますのは、体育の指導者が実際数が少いことであります。学校スポーツにいろいろな問題がありますけれども、その一つはやはり体育教官が不足しておりまして、野天の運動場でやるのですから、すし詰め教室とは申せませんけれども、結局すし詰め教室と同じようで、一人の教員が体育を指導する、相手の生徒の数が非常に多くて、十分の指導の手が回りかねるという実情もありますので、この競技場を一つの体育の指導者の再教育の場所というようなことにいたしまして、体育指導者の養成にもこの競技場が利用できるかと思います。
それからもう一つ私などが特に希望したいのは、この国立競技場の中にスポーツ研究所と申しますか、そういうスポーツを科学的に研究調査する機関をこれはぜひ置いていただきたいと思います。かつて戦争前に文部省に体育研究所というものがありましたが、これは微々としてふるわなかったのであります。それでちょうど戦争前で国民の健康の問題であるとか、体力の問題であるとか、ほとんど陸軍の手に握られておりまして、厚生省の医務局長に軍人がなったような時代ですから、どうしても民間がそういう問題にイニシアチーブが取れなかったということもありますが、今日では非常に科学的に研究する部面が多いので、単にスポーツの医学のみならず、スポーツを力学的にもあるいは社会学的にも心理学的にも、いろいろな面からスポーツの科学的な研究をしなければならない状態で、現にソ連のごときはその方面の業績が非常に著しくて、着々効果を現わしていますので、この機会にそういうスポーツの科学的研究の場所をあそこに置いたらいかがかと考えております。大体思いつきはそういうわけでございますが、とにかく適切な企画が立てられまして、あそこを常に若人の歓声をもって満たしめるように文部当局でも一つ御努力を願いたいと考えておる次第であります。
総括的にちょっと申し上げましたが、なおこまかいことは後ほど申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/2
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003・山下榮二
○山下委員長 次に赤嶺参考人より、国立競技場法案に関連し、全国プロフェッショナル野球機構協約常任起草委員としての立場から、プロ球団の経営と規約について御意見の開陳をお願いいたします。赤嶺参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/3
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004・赤嶺昌志
○赤嶺参考人 ただいま委員長さんからお話がありました本論に入る前に、ちょっと触れておきたいと思いますのは、国立競技場法案及び文部当局の御説明の文書を拝見いたしまして一番感じましたことは、国立競技場の付属施設といたしまして、資料の展示室並びにスポーツ記念館を設立するという件でございます。ただいま川本さんからもお触れになりました通り、私どももその記念室、記念館というものの設立を痛感いたしましたので、昨年の八月以来、大学野球連盟、社会人野球連盟、それから私どものプロ野球機構、いわゆるわが国における野球三団体の発起と協力によりまして、東京都内の適当の地に野球博物館を設ける、これは単に野球のみならず、野球を中心とする一般体育、野球体育博物館というものを設立いたしますために約一億円程度の募金をいたしまして、そうしてこれを財団法人とする計画を立てまして着々準備中でありますが、私どもの及ぶ範囲というものはおのずから限界がありまして、野球を中心とする資料及び学術的な系列等を整理いたしまして、一つ世界に誇るべき博物館を作りたいと思いまして募金及び設計等を完了いたしておるのであります。たまたま国立競技場の中にいわゆるオリンピック競技を中心とする博物館的な存在ができ、私どもも野球を中心とする一般博物館の建設を完了することができますれば、両々相待って日本の体育というものに対して、あたかも車の両輪のごとき立場に立つのじゃないかと考えております。
由来野球と申しますのは、どういう関係でございますか、あるいは大正年間に文部省が行いました野球統制令に対する一つのレジスタンスではないかと思いますが、これは野球界の自発的な発意に基くのが、あるいは国家の無関心に基くのか知りませんが、常にベース・ボールというものは野党的な立場に立たされておる。国家の消極的なあるいは積極的な保護を受けてきていない。いわゆる野党的な立場に立っておりますので、われわれ三団体も甘んじてこの野党的な立場を堅持しておる。そういうふうな建前から、国立競技場においては国家の保護になるところの博物館ができ、同時に私どもの方では民間団体としての博物館を完成する、こういうことにいたしたいと考えておりますが、国立競技場におきましても、りっぱな、今川本さんのお話しになりましたような内容、形式を備えたものができるということは、やがては私どもの方の計画をより一そう完成させる材料になると考えます。私どもは、内外の資料を集める、主としてアメリカの資料を集めてこれを展示する。それから野球の理論的研究をして、台湾、フィリッピン、いわゆる東南アジア地方に対する野球の指導的立場をとる。それからただいま川本さんの申しました体育科学研究というものを野球の科学的研究という面に移しまして、現在まだ究明されない野球特有の病気がある、こういうものに対する研究をしていく。さらに野球選手の適性検査、今巨人軍に非常に大きい選手がおりますが、この選手が果してべース・ボールに適するものがどうかというような適性検査というようなものまで広げて、これを一般の高等学校、大学、勤労者等に当てはめまして、そういう科学的な研究をする、こういうふうな構想でありまして、現在アメリカのニューヨークのクーパース・タウンというところにあります野球博物館にもない施設を作りまして、まずベース・ボールを中心としたものとしてはアメリカを凌駕するものを作りたいと考えております。幸いに国立競技場においてそういうものが計画されますれば、私どもに対するいい刺激にもなり、かつまた先ほど申しましたように、車の両輪のごとき建前をとりまして、日本における、そういう角度における体育設備の完成になると考えますので、ぜひとも一日も早く競技場内にかかる施設の実現することを私は望みます。議員の各位におきましても、また文部当局におきましても、ぜひとも早急にこの実現をいたしていただきたいと考えております。
次に私どもプロ野球——ただいま委員長さんは職業野球と言いましたが、今私どもの方では職業野球といっていないのであります。と申しますのは、昭和十一年にプロ野球が始まりましたときには、職業野球連盟といったのであります。もっともアメリカのプロフェッショナルという言葉を翻訳すれば、職業ということに辞書には書いてありますが、これは間違いないのであります。しかし職業という言葉の中には、日本語ではいろいろな広い意味を含んでいる。プロフェッショナルという言葉は、直ちに職業であるか、職業がプロフェッショナルであるかといえば、英学者の中には多少議論があるらしいのでございます。プロフェッショナルという言葉は、皆さんを前に置いて釈迦に説法と思いますが、プロフェス、それからプロフェッサーという言葉に通ずるのでありまして、昔は医学とか神学とかいうような高級な一つの職業に与えられた言葉がプロフェッショナルでありまして、大工さんであるとか、げた屋であるとかいうようなものには、プロフェッションという言葉は使わないのであります。非常な高度の技能とか頭脳とがあるいは技術を要するものでなければプロフェッションという言葉を使わない。これはタースクであるとか、ワークという言葉を使います。アメリカで申しますと、プロフェッショナルというものは、いわゆるげた屋であるとかあるいはパンパンであるとかいうような言葉には、プロフェッションという言葉は使わないのであります。従って私どもも職業という言葉を改めまして、ただいまではプロフェッショナル野球、プロ野球ということを言っております。こういうふうなことを申し上げるのが、一つのプロ野球というものの性格を御説明申し上げる一助になると思いまして、蛇足を加えたわけでありますが、私どもは少くともべース・ボールをするということは、単にげたの歯入れをするような仕事ではなくして、少くとも日本の国家社会に対して何らかの貢献をする必要があるという意味で、プロ・ベース・ボールというものを計画し、運営しておるわけであります。戦争後、日本の国民思想というものを、一つの改造といえばおかしいですが、国家が国民思想の改造なり善導なりに向っていく方向に合わして、私どももできるだけのことをしたい、こう考えて、いろいろな企画を立ててやっておりました。昭和二十六年以来、私どもはいわゆる在来のベース・ボールというものよりも変った方角に持っていくということの努力をいたしております。たとえばその方法といたしましては、今までは戦争前、昭和十一年から昭和二十四年に至るまでのベース・ボールというのは、勝った方がその日の収入の六割をとって、負けた方が四割とる、こういうようなシステムをとって参ったのであります。しかしこれはあまりいい方法ではない。勝った方がたくさんとって、負けた方が少くとるということは、一種の戦争思想である。勝った方がたくさんとるということは、一つの賠償の思想である。こういう思想というものが行われるということは、べース・ボールというものが一つの戦争主義、好戦主義というふうに見られるおそれがあるということも一つの条件でございますが、そういうことも考えまして、現在では勝ち負けにかかわらず分配を考える、こういうようなシステムとっております。プロ野球の方では、フランチャイズという言葉がございます、まあ日本語で申しますと、本拠地制度と申しますが、たとえば東京におけるフランチャイズを持ったチームと申しますと、読売ジャイアンツ、それから大毎オリオンズ、それから国鉄スワローズ、東映フライヤーズ、こういうものが東京に本拠地を持っておりますが、たとえば読売ジャイアンツが大阪タイガースを迎えて後楽園で試合をいたします。昔でありましたら、ジャイアンツが勝ったならば、その日七百万円の収入があれば、ジャイアンツが四百二十万円の収入をとったのであります。そうして大阪タイガースは二百八十万円をとった。こういう組織を改めまして、七百万円入れば、七百万円全部が読売ジャイアンツに入るということなんです。そのかわにり、今度は大阪に参りまして、甲子園で試合をしました場合、甲子園に七万のお客さんが入り、一千万円の収入があれば、一千万円を全部大阪タイガースがとって、読売ジャイアンツは一銭もとらないという方式をとっております。というのは、その試合を見に集まった一般ファンの出した入場料というものは、その都市のチームに与えるのが当りまえである。従って、強いということ以外に、その市民に愛され好かれるチームを作るということが必要である。ただ強いばかりで、もう何ものも寄せつけないという強さだけでなくして、強いことも必要であるが、そのほかに好かれるチームというものを作るためには、そのチームの行動なり選手の日常生活というものが、一つの社会的な道徳と申しますか、われわれの方で申しますと、スポーツマン・シップとかフェアー・プレーというものを加味しなければ、幾ら強くてもお客さんが寄るものではない。そういうふうな精神的の要素も含まれてこそ、初めてその市民から愛されるチームになるのである。こういうふうな建前からチームをそういう方向に持っていく。こういうふうなことも考えておりまして、これは単に、プロ野球というものは強かったらいいじゃないか、強くなるためにはどんな方法をとってもいいじゃないか、こういうふうな思想を打破しまして、そして強いということ以外に、一つの品格のある、国民から敬愛されるチームを作るということの要素を必要とするため、この制度を採用いたしまして、これは現状において着々と成功をおさめておる次第であります。
現在パシフィック・リーグとセントラル・リーグに分れておりますが、両方のチームとも六チーム、六チームでございまして、日本の現状から申しますれば、もうこれ以上のチームを持つということは無理である。リーグの結成の理論から申しますと、八、八というのが理想的でございますが、日本の都市の分布等を考えますれば、六、六というのが日本においては理想ではないかと思います。そして現状は、今年から六、六になりまして、パシフィック・リーグとセントラル・リーグが存在する。そのほかに私どものおりまするコミッショナー事務局というのがございます。コミッショナー事務局と申しますのは、それらの両リーグの運営、組織等に関する指導をする一つの管理機関でございまして、コミッショナー事務局におきましては、コミッショナーという人を指導者といたしまして、絶えず管理、組織に関する研究調査をいたしまして、これを立案いたしまして一つの規則にする。私どもはその規則を協約と言っておりますが、その協約を作る。もし協約に違反があった場合には、コミッショナーの裁決によって、処罰すべきものは処罰するというような管理方法をとっております。コミッショナーと申しますのにもいろいろあって、一体コミッションとは何だというような質問もたびたびありますし、新聞社等にもそういう問い合せがありますが、コミッショナーはコミッショナーでございまして、これはアメリカの進駐軍が日本に参っておりました当時はコミッショナーを準公職と解釈いたしまして、その当時、追放をされておる人がコミッショナーに就任するということは、準公職という理由でこれを拒否されたという事実があります。アメリカでは明らかにこれを準公職として扱っております。日本ではまだそういうふうに認められておりませんが、これはゆくゆく準公職というような形で、コミッショナーというものの制度を名実ともに確立する必要があるように考えます。
それから一言触れておきたいと思いますのは、選手の給与制度でございますが、野球選手に対しては契約金というものがある。それから毎年々々の給料というものがある。これはシーズン給と申しまして、一年十二カ月のうち十カ月間に与える給料でございます。それから選手が年を取って、五十才になってから与えられる養老年金制度というものがございます。この三つからなっておるものでありますが、本来ならば選手の給料というものは能率給一本やりでございまして、退職金もなければ家族手当もない、時間外勤務もない、こういうふうな特殊なものでありまして、その選手の持つ能率に対して与えるものでありますので、給料そのものは社会保障的なセンスはいささかも加味してありません。そのかわりに選手がやめた後、老後五十才以上になりました場合には、毎月一万二千円ないし二万円程度の年金がおりることになっております。まずこの金額は将来とも増さなければなりませんけれども、現状の規約としてはそういうことになっておりますので、まず一般の恩給制度に比べて遜色はないものと考えております。また選手の受ける給料と申しますのは、昭和十一年ごろは大体普通の人の三倍を目標として出したものであります。その当時中学校を出まして鉄道等におりまして日給一円三十銭、四十円の月収のあるような選手には百二十円の給料を出しておる。これは一種の身分保証のようなものでありまして野球選手の寿命が七年であるとするならば、三倍の給料を出せば二十一年間の給料を出したという形になります。ただ日本の選手はまだ生活訓練ができておりませんから、取った金は全部使ってしまっておりますけれども、将来は取った金でもって老後の生活設計をするというところに指導を持っていきまして、野球をやめた後も生活に困難しないような生活指導をいたしたいと考えましていろいろな制度も考えておりますけれども、何しろまだプロ野球が始まって二十年そこそこでございますので、過渡時代に属しますので、いろいろ御批判の点もあると思いますけれども、私の方としては十分各角度から考えまして、遺漏ないようにいたしたいと鋭意調査研究をいたしておる次第でございます。
大体のことを申し上げましたが、後刻御質問がございましたら、できる限りお答えいたして、御了解を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/4
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005・山下榮二
○山下委員長 次に小川参考人より日本社会人野球協会常任理事としての立場から、国立競技場法案に関連し、社会人の野球のあり方、特に先般新聞紙上等で論議された桜井選手問題の経過について御意見の開陳をお願いいたしたいと存じます。なお小川参考人に少し申し上げますけれども、相当時間もたっておりますので、できるだけ簡潔にお順いを申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/5
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006・小川正太郎
○小川参考人 大昭和の桜井君に差し上げた二百万円の件につきまして、皆様を大へんお騒がせいたしまして、社会人野球協会の役員といたしましてまことに相済みませんと、冒頭に深くおわびを申し上げます。しかし社会人野球協会の会員は現在約一万人ございますが、そのうちの一人であるということをはっきり私が申し上げます。その他にはございません。それを冒頭に申し上げて、一応桜井君の件につきまして経過を御説明いたしたいと思います。ただし社会人野球協会といたしましは、桜井君に対する罰則は何もございません。これは当然の成り行きでございます。従って桜井君云々ということは言えないのでありますが、大昭和製紙野球部に対して罰則を与えまして、それに付随して桜井君のことが出たわけでございます。一応事情を御説明いたします。
早稲田の桜井投手は昨年初めに東洋レーヨンに入社内定いたしました。しかし桜井投手は今期受験をしても卒業する見込みを持たないということが自分でわかりました。従って何とかして本年度に全部受験をして卒業をしようということを桜井君自身が決定したそうであります。従ってそのおじさんに当る市川毛織の飯田常務さん、この方と大昭和製紙が昔からの取引関係で非常に懇意にしておるということで、おじさんが大昭和製紙にお願いして、何とかして桜井を大昭和製紙にお願いしたい。桜井の意向は、自分はことし卒業できないけれども、本年度までにはどうしても全単位をとってりっぱに卒業したいから何とかしていただきたいということを大昭和製紙に申し入れたそうでございます。それで大昭和の方もこれは願ったりかなったりの話でございます。有名なピッチャーでございますから、さっそく大昭和製紙の話がまとまりまして、十一月に入社を決定いたしました。それは昨年十一月でございます。ところがそれより先にいろいろ桜井君の家庭の事情を大昭和製紙の方で調べたそうでございます。家へ行ってみますと、こういうことを申し上げてはちょっと差しさわりがあるかもわかりませんが、あまり内容はよくないらしい、というようなことで、桜井君の方から二百万円くれとは決して言っていないそうでございますが、大昭和製紙の方で好意的に二百万円貸し与えた。その金の出どころは大昭和製紙の後援会でございます。大昭和製紙を取り巻いております関係者に非常に有力者がございまして、後援会の会長が静岡県の斎藤知事でございます。その副会長をやっている中井剛会長が二百万円持って参りまして、それを東京の浅井常務に二百万円渡し、浅井常務から桜井君の方に渡されたようなわけであります。これは私どもからいたしますと、たとい貸したにせよ、やったにせよ同じことです。明らかに契約金と認めまして大昭和製紙に罰則を食わせざるを得ません。契約金の寡多と申しますと、社会人野球協会の規約になっておりますのは、契約金と名のつくものは千円でも二千円でも、それが契約に見合った場合は罰則を与える。しかし仕度金はよろしい。たとえば今度北海道へ就職が決定した、それについて向うまで行く旅費、荷造り料、運賃、その他常識で考えられる金額ならよろしい。しかしたとい一銭でも二銭でも契約金と名のつくものであれば、これは全部ひっかかるという規定のもとに、大昭和が桜井君に与えた金は明らかに契約金であるということが、この規約に書いております通り、金銭の受理を目的として野球をした者はわれわれの会員の資格を剥奪するという項なんでございます。その項にひっかかるのでございます。
なお、これよりさき、早稲田の森監督が、早稲田の監督をやめまして大洋球団の社長に就任いたしました。それにからんで親会社から、ぜひとも桜井君をとれという命が森監督に行ったと思います。それで森さんの方で桜井君に交渉した。桜井君の方は、自分が森監督に親しく、四年間手塩にかけられておりますから、恩人であります。恩人の願いを断り切れない。じゃあ大洋に参ります、ということになりました。ところが、大昭和の石井藤吉郎監督、早稲田の石井連蔵監督、いずれも母校を同じくする水戸一高でございまして、早稲田の石井監督に言われますと、じゃあ大昭和に残ります、森さんに言われますと、それじゃ大洋に行くというようなことを三、四回繰り返し、まして、桜井君自身も非常に迷ったようでございます。これはやむを得ないことだと思います。しかし結果といたしまして、桜井君は、やはり自分がプロで働けるのならばプロへ行こう、すべてのことをなげうってプロへ行こうということを決心いたしまして、そのことを森社長に申し出たわけでございます。それにはまず、おじさんの飯田常務と大昭和製紙の方をよろしく願う、こういう話らしかったのです。それで森さんは大昭和に当ったのでありますが、大昭和製紙の方はがんとして受けつけない、何とかしてことし優勝してアメリカに行かにゃならぬもんだから、どうしても桜井はやれない、こう断わってきたわけでございます。常識から考えましても、会社としては一応そう言うだろうと思います。ところが規約によりまして、社会人野球協会。とプロのコミッショナーで暫定借地を作っております。社会人野球協会の規約で申しますと、プロからわれわれの会員になるのには、原則として一カ年たってから審査をして会員になることになっております。しかし暫定措置と申し上げるのは、六カ月でわれわれの全員になる件でございます。
その件についてちょっと御説明いたしますと、昨年十一月末日までにやめた者は、本年の二月二十八日までに登録すれば、われわれの会員として認める。ただし四月一日からは非公式試合、オープン・ゲームに出られる。六月一日からは公式試合、いわゆる支部大会、連盟の大会、各種大会に出られるという規則で、六カ月という線をはっきり打ち立てて参りました。その暫定借地というのは、過去三回ほどやっていまして、これは毎年とりきめるわけでございます。その趣旨は、プロ野球の方から帰ってくる人が、毎年大体平均しますと百名ちょっとになります。ことしは百名をこしてちょっと多い、去年も多うございました。そういう人をわれわれの規約で縛りまして、プロから帰ってきたものは四年、五年にする。といいますと四年、五年のうちには、これは五百人にも六百人にも七百人にもなります。ところが帰ってくる人はいずれも若い学徒、すなわち高等学校を出た学徒でございます。そういう人が社会人にまた帰ってきた。それは自分の技量がないのにプロに行った。直言すれば、お前見込みがないから帰れ、一年で首になって帰ってきた。ところがその人は野球が好きであります。何とかして野球をやりたい、趣味として野球をやりたいという希望を持っております。それで若い人の希望をとるのはまことに惜しい、われわれ社会人野球の手によって、何とかしてその若い学徒を救ってやろうじゃないかというところから、われわれが引き受ける、持ってきなさい、そのかわりその精神は、われわれの会員に迎えて悪い面がたくさん出た場合は、暫定措置を全部取り上げる、なおかつプロ野球の一年のやつを二年にするか、三年にするかわかりません、しかしわれわれの方に帰っていただいてまじめに働く、かつ野球をやってくれるならば、いっそ引受けましょう、それが社会を明るくして非常にいいじゃないか、放任するときは社会問題になるおそれがあるという見地から暫定措置を講じたようなわけであります。
従ってまたもとに返りますが、桜井君の件についても、二月二十八日までプロにひっこ抜かれても仕方がないのでございます。また桜井君はそのときは、実際は登録してありましたが、協会の方に登録がきておりませんでした。桜井君の発表は十三日となっております。ところが確聞するところによりますと、桜井君は六日に調印をしておる。そうして七日には早稲田の石井監督を通じて大昭和の石井監督へ、試験が十二日に済むから十四日には沼津の練習に参加する、こういう申し入れを大昭和製紙の方にして参りました。大昭和製紙としては安心していたと思います。そうしてもう一つございますことは、この春——ことしも始まりますが、毎年春の選抜大会を東京でやっております。今回もこの八日から全国から二十二チームを集めてやります。そのメンバーの締め切りが二月十五日でございます。従って大昭和製紙の出してきたのが新聞発表のあったあくる日協会へ登録が到着いたしました。ただし支部の登録が十日でございます。静岡支部には十日に登録されておるのでございます。そうして中部連盟には十二日登録されてございます。その後協会へ参りました。しかしいろいろ調べた結果、六日に調印しているということでありますので、十日の支部登録はできない結果になって、私ども桜井君の登録も認めないということにしたのでございます。それで結局われわれの規則によりまして、会社に対する罰則は何もございません。全部野球チームに責任がございます。会社の不始末は野球チームが責任を持つということになっておりますので、この二十四日に常原会長の立ち会いのもとに、審査委員各位が寄りまして、大昭和製紙の処置についていろいろ懇談いたしました。その席上でも大昭和製紙の除名論も出て参りました。ああいうことがあっては社会人野球協会のつらよごしだ、今まで一回もこういうことはないじゃないか、除名しろ、こういう声も出ました。しかし大昭和製紙の斎藤専務、この人は中部連盟の会長でございます。なお大昭和製紙の社員の久保田君、この人は中部連盟の理事長でございます。昔中部連盟が非常に悪かった。悪かったときに協会からわざわざ行って、専務に何とかして中部連盟をよくしていただきたいということをお願いいたして、会長になり理事長になっていただいた。その功績たるや非常に顕著なものがあります。従って一等減じまして、当分の間出場停止ということになったわけでございます。当分の間出場停止という意味は大へん広うござまして、原則は一カ年でございます。しかし謹慎の情がないときは審査、いたしません。従ってそれが一年でも、二年でも、三年でも、四年でも、五年でもなるというケースであります。ただし謹慎の情が明らかなる場合であり、かつ役員の口添えがあれば、期間を短縮できることになっております。従って現在まで四つ、五つの罰則がありましたが、いずれも謹慎の情が非常に見えまして、社会人野球協会の規約を尊重する、二度とこういうことをしないという取りきめのもとに短縮して参った事実はございます。
そういうことが今回の問題のあらましでございますが、なお大昭和製紙の責任者浅井野球部長には譴責処分、また大昭和にはOBクラブもございます。これは大昭和製紙じゃなくて、大昭和OBクラブといっております。それには何も罰則がないのでありますが、同じ社員であり、また大昭和製紙の野球部を指導する立場にあるというとこうから、やはり次期出場を辞退したいということを申し出て参りましたので、それを受理いたしました。なお中部連盟、それから静岡支部その他には、以後二度とこういうことのないようにという注意書きを送りました。もちろん中部連盟の会長には戒告処分、しかりおくという軽い処分で済んだようなわけであります。
さような経過報告でございますが、もう少ししゃべらしていただきたいのですが、社会人野球協会が昭和二十四年に発足いたしまして、いまだかつて世上に社会人野球協会のこことを発表したことがございません。と申しますのは、わかってくれる人はわかってくれるだろう。われわれの熱意が足りないから、世間から大へん変な誤解を受けておるのだ。いわば社会人野球協会を食わずぎらいの人が大へん多い。かみしめていただくと非常に味なこところがあるから、食いついてくれるまで待っていようという気持で現在まで参りました。その間内部を整備しておったような次第でございます。ところが最近になりまして大きな会社が非常に野球を取り上げてくれるようになりました。その理由といたしまして、大きな会社は、社員の要求がございます。レクリエーションのためにやると非常にいい。組合もそれを承認した。そうすると、会社がそのことによって非常に明るくなる。会社が明るくなると、自然に仕事の能率も上る。こんないいことはない。それじゃ野球をやらしたらいいじゃないかということで、多少時間をさいてもその練習の方に振り向ける、それが事実でございます。しかし野球選手もやはり社員でございます。同じ同僚に、おい、一時間ばかり頼むよ。二時間ばかり頼む。よしよし、お前の仕事はおれがやってやる。そのかわり、練習のないとき、試合のないときは人一倍働くという目的のもとで、相互に会社の中でうまくやってくれております。そういう報告が相当参っております。われわれはそれについて非常に感激しております。従って、口はばったいことを申すようでございますが、われわれ野球人といたしまして、国民体育の面はもちろんのこと、社会体育の面はもちろんのこと、社会教育の一翼をになってわれわれは動いていくということを自負しておるような次第でございます。
なお、応援団のこと、その他のことにつきまして、非常に誤解が飛んでおります。それは後ほど御質問がありましたら詳しく申し上げることにしまして、社会人野球協会のあり方というものを一つこちらから申し上げますと同時に、もし悪い点がございましたら、そちらからも徹底的に御批判をいただきまして、今後社会人野球協会が明るくなると同時に、全国民が明るくなるような野球をしたい、こう考えておりますから、どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/6
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007・山下榮二
○山下委員長 以上をもちまして参考人の御意見の開陳が終りました。
これより参考人に対する質疑に入ります。質疑の通告がございますからこれを許します。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/7
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008・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 小川参考人にお尋ねしたいのですが、実は日本の野球は、アメリカを除いては世界で一番普及されていると思う。特に今高等学校の野球、それから都市対抗、その他非常にアマ・スポーツが普及しておりますが、先ほど赤嶺さんが言われたように職業野球も非常に発達して、戦後これほど日本に普及されたことはないと思うのです。そこでお尋ねするのですが、桜井君の問題を中心にしてアマチュア・スポーツ、いわゆる学生野球の中にも引き抜きがあるんじゃないか。それは高等学校にすでに野球部があって、中学校のいい選手をとる、またリーグなんかの大学ではやはり高等学校からも引き抜くじゃないか、こういう考え方があるわけです。実は私の愛知県に中京商業という強いのがあるのですが、昨年私どもの方の津島商工という、全く名もない学校が東海で優勝した。そこで選手を見ても、中京商業の選手と、われわれの津島商工のような小さい学校とは、体格的にも片方は相当な職業的なような感じがするし、片方は非常に学生らしいスポーツで、非常に技量は悪くて甲子園で敗れましたけれども、非常にいい感じを持たれたわけです。そういう点で、中学校から高等学校、高等学校から大学、そういうようなコースでもやはり引き抜きをやっているんじゃないかと思われるが、そういう点について知った事情、あなたは早稲田の野球部におられたから知っておられると思いますが、そういうふうな弊害があるのかないのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/8
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009・小川正太郎
○小川参考人 私の知っている範囲のことでお答えいたします。ただし、中等学校から大学と申しますと、これは私の分野でございませんので非常に困るのでありますが、拝聞するところによりますと、早稲田でも慶応でも、学科試験を通らないと、どんな選手でもとらないということになっております。学科試験を通ると、体格がいいのであるから何とかして入れてやろう、それでもなかなかむずかしいという線でございます。学校のことはちょっと私には困りますので、学校を卒業して社会人になったとき、また社会人になってから、そういうことで話題を取り上げますと、実際こういうことを申し上げましたら、プロ関係の方に非常に失礼にあたるのですが、現在のプロ野球と社会人野球があまり差がないということで、世間の誤解を招いていることだろうと思います。たとえばわれわれの会員の中にも、現在でも、やれ一千万円契約金を出すから来い、五百万円契約金を出すから来いという選手がいまだ相当ございます。それは実際の問題です。昨年なども引き抜きでとどまった選手もございます。そうすると、そういうことがうわさが立ちます。どこそこの球団からあの選手を引き抜きに来た、何百万円出すといっている。そういたしますと一般の人が、プロで何百万円出すと言っている選手だのに行かないから、会社で何か特定の金をやっているのではないかという憶測をする人が多うございます。それが非常に私どもでは迷惑をこうむっているわけでございます。なおまた学校を卒業して入社試験に際していろいろ御意見がございます。普通一般の学生は日夜苦心をして入社試験に没頭しているのに、野球をやっている者はスッスッといくじゃないか。それはものの見方によって私は変ってくると思います。たとえばスポーツマン、いわゆる中等学校、大学を通じて、野球とは限りません、スポーツをやった者は、何かというものを持って社会に出ております。それは事実でございます。従ってその選手をとったからといって、入社試験に入った者と比較していただいたらすぐわかります。どちらが会社のために働くか、この実際を検討していただいたら、すぐ明瞭になると思います。従って、絶えず新聞記者なりまたは方々から僕に意見を求めてきますが、それをよくしてくれ、僕に聞くより会社に行って実際を見ていただきたい、その方がよくわかる。たとえば会社で仕事をして、野球をして、もう野球ができなくなった者、そういう人がだんだん上に昇給しているじゃないか。野球ができなくなったからポイと首になってよそにおっぽり出されたような人が、たくさんの会員ですからたまにはおりますが、東京中心、神奈川中心に見て参りますと、みんな徐々に上に上っていくではないか。それは一般社員として優秀だがらこそ会社がその選手をとったのであります。それだけ会社にプラスしておりますから、何らその点は私は会社に対して不正がございませんとはっきり申し上げたいのでございます。
なお、練習するについても、先ほど申し上げましたように、大会前になりますと会社で多少の時間をさいてくれます。それは職場によって時間をさける人とさけない人があります。さけない人は参加しません。さける人、朝仕事をやって昼から休んでも何にも差しつがえない人がおります。八時間労働だから八時間社の中にいなければならないという規則はございません。八時間机の前でたばこを吹かしている、雑誌を読んでいる、こういう人と、よそへ出て野球をやっている人と何が違うか。会社が許可すればいいではないか。会社がいかぬというのを無理にそういうことをするのではいけない。従業員組合が許可すればいいじゃないか、問題は、従業員組合が野球ばかりやっている、仕事をしない、それではだめだ、首にせよという結果が出てきます。私は仕事をしない者はやめていただきたい、会員として受け入れないということを申し出ております。過日、これは名前をあげると語弊がありますが、後楽園で大活躍をやりまして、最高殊勲選手に選ぼうとした人があります。非常に活躍して、野球の技術は満点でございます。ところが、会社の出勤率が悪いといううわさを聞いたので、さっそくその会社の者を呼びまして、それは実際か、もし会社に行っておらない事実があったら、残念ながら最高殊勲選手をやることができない、われわれの規約だ、もしも会社に行っている事実がある、今後も会社でまじめに働くということをあなたが保証するならば、本人に最高殊勲選手を与えようと言ったことがございます。それで会社の人が、いや実際は行っている、今後も行かなければわしが引っぱっていってでもちゃんとするからということで、最高殊勲選手を与えました。そのように社会人野球協会は、仕事、そして余暇に野球をするというように徹しておるというこことを私は断言したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/9
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010・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう一点、小川さんにお伺いしたいと思いますが、社会人野球協会も引き抜きということについては、ある点までは認めておられますか。学生スポーツの、六大学リーグの有名な人を抜く、ほっておってはいけませんから、やはり会社あたりが引き抜きをやるような方法をとらざるを得ないと思いますが、そういう点についてどういうお考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/10
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011・小川正太郎
○小川参考人 今の、六大学の選手を会社がとるという問題でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/11
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012・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/12
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013・小川正太郎
○小川参考人 お答えいたします。有能な人ならどしどし採用すればいいと私個人では考えております。と申しますのは、現在、勉強のよくできる者は無試験で上の学校へ入れます。そして非常に勉強のよくできる人は無試験で会社へ入社できます。その事実もあろうと思います。ところが野球にも天才がございます。野球の天才すなわちスポーツの天才に対して一体どうお考えになっておるのですかということを、こっちがらお尋ねしたいようなわけでございますが、今質問されたのでございますからお答えいたしますが、私はスポーツの天才については会社が取り上げてもいいと考えております。その人が会社へ入って一般社員を指導する。そうすると、さいぜん申し上げましたように、会社全体が明るくなる。そしてその人が、もし社会人野球協会の規約通り徹底した場合、必ずや会社にプラスになる。会社にプラスになるならばとってもいいのじゃないか。ただしとる場合には、この規約によって金銭の授受だとか、あまり選手を優遇してはいけませんという一項がございます。それを守れば、普通の一般社員としてとるならけっこうです。また野球の選手でなくても、現在縁故関係で会社へ入っている事実が多いのでございます。それと私たちの会員になりました人とを比べまして、どちらが有能な人であるかと申しますと——私たちの行き方は、どこへ行ってもいいからエキスパートになれということを目標にしております。従ってそういう人は会社へ行ってもエキスパートになる。そういう指導者を会社がとるということに対して、私個人としては賛成申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/13
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014・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 今度はプロフェッショナルの赤嶺参考人にお伺いをするのですが、実は昨日も文部大臣に私、質問したのですが、どうも大学を出るときの契約金を某選手が一千万円とか二千万円もらったといううわさがたくさんありますが、そういう問題とからんでいろいろ世間では誤解があるわけです。一般に大学を出て一万円ぐらいをとるのに今就職難で大へんでございます。ところが野球の選手であると、プロの野球でも強くなければ収入がないわけですから、有名な選手をとるためにスカウトを置いて、そして非常に莫大な金を渡す。そういうことで一般的に非常にプロ野球に対していろいろ疑問を持っておると思うのです。こういう点でチームとチームの間にあまり莫大な契約金を出さないようにある程度の統制をして、世間の誤解を解くようにする方法はないのか、アメリカだけはそういうことをやっておりますが、日本はプロ野球といっても、二十五、六年になりますけれども、むしろ戦後から非常に発達したものでありますが、そういう点の弊害を除くようなことをお考えになっているかどうか、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/14
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015・赤嶺昌志
○赤嶺参考人 お答えいたしますが、この巨額の契約金と申しますか、私どもは契約金という言葉は実にあいまいなので、契約金という言葉は用いておりませんで、ボーナスという言葉を用いております。この巨額な支払いをとするということがいいか悪いかという問題を超越して、私ども並びに経営者はもちろん金を少く出したいのはやまやまなのでございますので、あらゆる角度からこれを制限する方法を非常に熱心に考えております。これは、一軒の家でもってなるたけ支出を少くすることに一家の者が頭を悩ましておると同様に、私どもも日夜それを考えておりますが、なかなかいい方法がないのでございます。
大体三つこれを制限する方法があるのでございますが、第一は、個人に与える金額のマキシマムを押えるという方法でございます。個人制限の方法と申しましょうが、それは今回の選手に対しては二百四十万円以上払ってはいけない、もし払った場合には処罰する、その選手の契約を解除するという方法が一つあるわけなんです。これは二、三年前に一度やってみたのでございますけれども、なかなかそれがうまくいかない。一升酒を飲む人に対して、お前はからだに悪いから五合でがまんしろ、マージャンの好きな人にマージャンで夜ふかしてはいがぬから、お前は半チャンでやめろと言ってもなかなかやめられないものです。これは一種の人間の本能を押えることで、なかなかむずがしいのでございます。また先ほど申しましたように、コミッショナーというものに警察権があるとか、あるいは一つの公職扱いにするということになりましたら、徹底的に調べることができると思いますが、いかにせんそういう機関でありませんの、なかなか——各球団の帳簿を調べる、これはできるのでございます。ところが球団のうしろに親と称する団体があります。これは組織のほかにあるものでございますから、個々のある電鉄会社なら電鉄会社の経理部に乗り込んで帳簿を調べるということは、税務署以外できないことであります。そういうことでみごと失敗に終ったのであります。
それからその次の方法としては、一チームに払われる人件費は一年に五千万円なら五千万円以上払ってはいけないという総体制限法という方法があるわけであります。そうするとある選手には高く出すが、ある選手には低く出すというような経営者の手腕の妙味によって選手の給料をやるから、比較的違反が少いということで、これもいい方法だと思います。これはアメリカのマイナー・リーグで現在行われている方法でうまくいっているそうでありますが、日本の方ではやはりコミッショナーが会社の帳簿を調べる権限がない、手段がないのでこれも採用ができない。
そこで現在行われておりますボーナス選手制度というのがございます。払うなら幾らでも払いなさい。その選手がいいとあるならば、一千万でも二千万でもお払いなさい。あなたの会社の経済の続く限りお払いなさい。しかし一たん払った以上は払った方にも一つの義務を課せる、もらった方にも一つの義務を課せる、こういう方法でございます。その義務というのはどうかと申しますと、試合をする場合に、試合をする選手は二十五人に限定をするわけです。そのたくさん払った——今では給料とボーナスを合せて年に四百万円まではよろしい。そのかわりに四百一万円払った選手に対しては、一定の義務を課せる。その義務は何ぞやと申しますと、その選手が下手でも上手でも、使えても使えなくても、必ず二十五名の定員の中に入れておかなければならぬ、こういうことなんです。そうするとその選手は毎日ベンチに行ってすわるばかりで、一年百三十試合というものすわっておるのも非常に苦痛であるし、お互い同僚の目から見れば、何だお前は四百一万円もらっていて、何もせず、ベンチに来て水ばかり飲んでいるじゃないかというようなことで、精神的の苦痛を与える。それから払った方のクラブ側はどうかと申しますと、せっかく払った選手が使えない。しかも二十五名の定員の中にその一名がおるために、実際の試合は二十四人でしなければならぬ、こんな窮屈な思いをさせられるわけです。それもまだ一人ならいいけれども、一年に三人あるとすれば二十二人でしなければならぬ、こういうことなんです。しかも使えないからといってよその球団にその選手を譲り渡して、今まで払った費用を向うの球団から払ってもらう、いわゆるトレードの自由というものを二年間禁止してある。そういうものが一年間に三人ずつあったら二年間で六人になるから、二十五人のうちの十九人で試合をしなければならぬということになって、どんな強いチームでも役に立たぬ者が六人もおると勝てるものではないから、こんな窮屈なことはやめようじゃないかということでその数を減らす。そういういわゆる間接調整の方法をとっておりまして、これが一番いい方法であります。まだ詳しい統計は見ませんし、資料もありませんが、個人に払う金額は非常に高額に上っていると思いますけれども、ネコもしゃくしでもやったところの在来の悪習というものが矯正されまして、一人のピークは高くなっているが、やる範囲が少くなっている、こういう状態になっていると思います。
それから、その高額のものを払うのがいいか悪いかという問題については、多少議論があるかと思いますが、これは野球選手のみに限らず、現在の芸能界で、まだ二十才にもならないおとめが、金殿玉楼に住んでいることを考えれば、この社会でそういうことがあるとしても、あえて私はこの社会ばかりが非難される問題ではないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/15
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016・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 契約問題は非常にむずかしいことも知っておりますが、一つぜひ世間の誤解を受けないようにお願いしたいと思います。
もう一点赤嶺さんにお伺いしたいのですが、私どもは実は野球が好きでよく見に行くのですが、審判に不服でファンがグランドに流れ込むということがよくあるわけです。おそらくことしも暴動に近いことが起きるのではないかということを心配するのですが、そういうものに対してどういうお考えを持っておられるか、この点の解決策を一つ率直にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/16
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017・赤嶺昌志
○赤嶺参考人 お答えいたします。上野の勅物園でも、猛獣でもトラでもオオカミでも、おりの中に入れておけば、前で嬢ちゃん坊ちゃんが遊んでおりましても、これは絶対安全であります。いわんや人間でございますので、おりの中に入れておけば決して審判にかみついたり、他のお客さんにかみついたりするおそれはないのでありますが、いかにせん日本の球場そのものはおりになっていないのであります。飛びおりようと思ったらすぐ飛びおりれる状態になっているのであります。球場の設備が悪いという一語に尽きるわけでございますので、これはコミッショナーの方にも非常に注意いたしまして、おりといえばファンの方に失礼でございますが、なるたけ厳重にファンが飛びおりれないように球場の設備をするように勤めております。現在広島とかあるいは福岡等は非常にファンがやかましいところでございますが、球場の建設についてはファンが直ちに球場におり立たないような方法を立てるように勧告いたしております。なかなか思うように参りませんが、ファンが熱狂するということは私どもとしては歓迎すべきことでありますから、一定のおりの中で興奮していただくように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/17
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018・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 川本さんに最後に一つお伺いするのですが、先ほど小川さんが言われましたように、アマチュアとプロという問題はむずかしい問題だと思います。しかしどっかに線を引いて筋を通さないと、いろいろ問題が起きると思いますが、そういうことについてあなたはいろいろ議論を持っておいでのようですが、何かいい、こういう方法でやったらいいのではないかという御意見がありましたらお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/18
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019・川本信正
○川本参考人 私は、スポーツというものは青少年の教育に非常に重要な関係がありますので、スポーツ界では秩序をはっきり立てていかなければならないと思っております。その秩序というのは、つまりアマチュアとプロフェッショナルの限界をはっきりすることです。よくセミ・プロというようなことを申しますが、セミ・プロのあるのはアメリカの野球の一部だけでありまして、ほかの国にはセミ・プロというものはあまりないのであります。そういう灰色的なものがあれば、それがアマチュアの方からそっちへぶらぶらする。セミ・プロの方からプロの方へぶらぶらするというわけでそういうセミ・プロというわけのわからないものではなくして、はっきりアマチュアがプロかに分ける。しかしながら、では何がアマで何がプロであるかというような判定になりますと、これはアマチュア規則というようなものもありますけれども、その個々の場合で非常に判定のむずかしい場合があるわけです。ですから、それはその場合々々できめていかなければなりませんけれども、やはりプロフェッシナルの関係者とアマチュアの方の関係者との間に、協定とはいかないまでも、しばしば話し合いの場を作りまして、そうしてお互いに協調していくという以外に、目下のところ方法はないのじゃないかと思います。ただ大切なことは、繰り返しますけれども、アマチュアとプロフェッショナルの限界だけははっきりこれは分けておくことが必要だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/19
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020・木下哲
○木下委員 関連して、小川さんに一つだけお尋ねするのでありますが、劈頭、あなたから桜井君の事件について遺憾に思うという意思の表明がございました。私も社会人野球協会の県の役員の一人として全く同感でありまして、よくこそあれだけ罰を大昭和製紙に対してやられたものである。その点は愉快に考えておる次第であります。その後のあなたのお話を伺っておりますと、佐藤委員からの質問に対して、アマチュア野球として、引き抜きということについてどういうふうに考えておるかという質問に対しましてのあなたのお答えの中に、組合もよろしい、また本人が実に優秀な選手である、そういう場合には、どしどし引き抜きをやっていいと思う、個人としては……というようなお話がございましたが、私は個人も公けもあなたお一人の人でありますから、そう区別して承わりたくないのでありますが、どこまでも、ただ規則があるから、その規則の一項によって罰をやる、実際はそう莫大な金を費やすことはどうかと思いますが、ある程度のことはやることが組合員も会社も、また本人は優秀で、どこに一つもマイナスの点がない場合には、大いにやってよいという御意見のように私聞こえたのでありますが、その点いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/20
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021・小川正太郎
○小川参考人 お答えいたします。さいぜんの私の御説明が悪かったら訂正いたします。引き抜きに対する防御、引き抜きはしてもいいという意味で私がしゃべったのじゃございません。有能な士であれば、会社が採用してもいいじゃないかという意味でございます。皆さんと同様に試験をし、そしてそれが有能な士であると見れば、優先的にその人を採用していいじゃないか。スポーツの人しかり、またよくできる人しかり、同様に取り扱っていただきたいということを申し上げたのでございますが、それでいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/21
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022・木下哲
○木下委員 まだあまりすっきりとしませんのですが、その点有能であれば採用していいということは大体わかりますが、今度の桜井君の事件にしても、新聞で読みますと、見出しに、貧乏くじを引いた大昭和製紙というようなことが出ておることから察しますと、ここではっきり、こういうことは一万人おる中で一つの事件であるとおっしゃいましたが、あなたはほんとうに心から、繰り返すことは失礼でありますが、全く一つの事件であった、しかも有能であり、会社のプラスになるならば、ある程度のものを行なってやることはほかにもあるだろう、というふうにお考えになっておらないとするならば、実際はやってもかまわないが、規約があるということだけにこだわられておるのか、やはり契約金ということなら、たとい千円でも言語道断であるというふうにお考えになっておるのかを明瞭にお聞きしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/22
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023・小川正太郎
○小川参考人 それは私が言明できるのは、過去の実績でございます。社会人野球協会へ入っている会員の過去の実績がそれを雄弁に物語っておると思います。それは事実でございます。従って、社会人野球協会に入ったいわゆる有名選手——といっては非常に語弊がありますが、有能な士は、必ず会社の有能な社員として待遇されており、また有能な社員でございます。その実績から申し上げましたときに、私は会社に対して、組合の承認したような者をお前とってはいけないということを私の口から申し上げることは、会社に対して非常に僣越であろうと存じまして、社会人野球協会の役員、私は事務を担当しておりますが、いろいろ社会人野球協会の会員からも御相談に参りますし、また会社からも御相談に参ります。その場合に、とってはいけないということは私の口から申し上げられません。本人さえしっかりしておれば、必ず会社としてりっぱな成績が上げられる。過去九年間にわたって社会人野球の歩んだ道、その過去の実績をもって私は語っておるのであって、なお今後桜井君のような問題が一人でも二人でも起きた場合は、同じような気分にあるということをはっきり申しておきます。その事実といたしまして、過去にも一回、日本ビールが伊勢神宮の大会へ参りまして、日本ビールのあちらの支店の人が現金一千円也のホームラン賞を出した。それは松下電器の選手から協会に対して忠告があったのでございます。従って、調べました結果、事実千円という金をホームラン賞に出しておる。これは明らかにわれわれの規約違反だということで、日本ビールに罰則を食わせました。従って昨年の春の大会には日本ビールは出られなかったという事実がございます。またそのときの役員も罰則を食わしたという事実がございます。
なおちょっと、さいぜん重大なことを申し落して相すみませんが、桜井選手は十七日に二百万円の金を大昭和へ返しております。さいぜんちょっと申し落しまして、まことに申しわけありません。
以上で、まだ御不審な点がございましたら、私は何も強がりを言っているわけではございません。過去の実績がそう雄弁に物語っておるということを申し上げている程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/23
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024・山下榮二
○山下委員長 川崎秀二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/24
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025・川崎秀二
○川崎(秀)委員 きょうは大へんお忙しい中をおいでいただいて、ことに国立競技場の問題が主点なのでありますから、プロ野球の問題で御質問いたすのは、本来ならば、委員会としてもかなり幅を広げた形になったわけでございまして、その意味でまず川本さんに少しく競技場法案に関連の問題を一、二点伺っておきたいと思うのであります。
神宮の陸上競技場は、前には非常に低廉な額でアマチュア団体に貸しておった。今度は国立競技場になりますと、収容人員が七万という大観衆でありますから、なかなかこれを借り手がないだろう。その意味で低廉な料金で貸すということは当然考えられることと思うのですけれども、その場合に、従来のように文化服装学院だとかファッション・ショーだとかいうものが借りにきた場合には、今後どうすることが望ましいか。借りるとすれば、やはりアマチュア競技団体に貸す費用とは違った角度でながめなければならぬ。それからプロ野球とかプロ・レスリングとかいうものを国立競技場でやるわけはないのですから、この方は安心だと思うんですが、しかしプロ野球の団体があすこで懇親会みたいなものをやろうとか、あるいはそれに類似するようなことをやろうというような場合に、競技場を貸与することに許可を与えるかどうか、これらの問題について端的に御意見を承わっておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/25
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026・川本信正
○川本参考人 私の考えはむろん競技場でありますから、あすこでできる陸上競技であるとかフットボールであるとか、あるいはスタンドの下にできる二十五メートルのプールを使うとか、体育館を使うとか、それが本筋だと思いますが、先ほども申し上げたように、ちょうど都の体育館が、芸能館という異名をとっておるがごとく、スポーツ以外の芸能的な催しが、あすこで行われる催しの大半を占めるようになることははなはだ好ましくないと思います。しかしながら広い意味でのレクリエーションの催しがあすこで行われます分には、たとえばフォーク・ダンスをやるとかあるいは民謡の大会をやるとか、そういう広い意味でのレクリエーションの大会をあすこでやることは一向に差しつかえはないし、むしろ歓迎してもいいと思います。それから今お話のプロ野球はむろんあすこの競技場では性質としてはできないわけですが、プロ・レス、プロ・ボクシングはどうかというお話でしたが、これは何もあすこをアマチュアの殿堂として、何が神聖犯すべからざるような場所にすることはないと思うのです。それで貸し得るものならば、むしろアマチュアに数倍する高い料金を取ってプロ・レスなりプロ・ボクシングなりに貸されても一向に差しつがえないと思います。ただ今も申した通り、低廉な料金でやるんですから、あすこの経営はなかなかむずかしいと思います。そこで当分の間は政府が相当の補金を出して、あすこをスポーツ振興のセンターにしてもらいたいと、こう思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/26
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027・川崎秀二
○川崎(秀)委員 わが国の東京オリンピック大会招致に関する運動というものはだんだん現実性を帯びてきて、政府を中心に国会、東京都あるいは体育協会というものの代表の組織ができ上ったことは御同慶の至りですが、東京オリンピック招致の可能性が非常に強い。というのは昨年もヨーロッパを歩きまして、これは東会長の委嘱もあったのですが、フランスの陸連の会長だとかあるいはIOC委員、帰りにはイラン、パキスタンあるいはインドのオリンピック委員等にも会いまして、いろいろ事情を申し述べたところ、アジア競技大会に参加しておるIOCの委員というのは、一九六四年はもう間違いなく東京に投票する、こういうことを言っております。北欧フィンランドあるいはスエーデンも日本に投票する可能性がある。しかし中欧からイギリスヘかけての巨大な勢力、これはオリンピック委員会あるいは国際連合でもそうですが、大体マジョリティを持っておるのはイギリス関係の国々です。去年のメルボルンのオリンピック大会に参加したときに、非常に遠距離で、そのために選手が疲れた、将来オリンピックというのはヨーロッパで二回、アメリカ一回、その他の地域一回というふうにしてもらいたいというのがオリンピック委員会の大勢を占めているように思えるのです。一九六四年のオリンピック大会はソビエトとアメリカの正面対立ですが、どうも私の見るところでは、ブランデージ氏等は日本に対して相当好意的のようにも思われるので、東京大会が強力に打ち出されると、ソ連と対立するということになれば、最後にアメリカがどういう態度に出るかということは大体推測ができるのですが、しかしヨーロッパ各国が動かなければ結局六四年には来ないのではないか。そこへ突然名乗りを上げたのがオーストリアのウイーンです。これは八万以上の収容スタジアムも持っておるし、何といったって音楽の都であるし、ローマに続いて今度はウイーンへ引っぱろうという意気込みが相当強くなってきやしないかということを私は直観的にこの間感じたのです。川本氏はこれらについてむしろ非常に客観的な批判を下し得る人であり、東会長に言わせれば大丈夫だと言うけれども、そうは行かぬと私は見ておる。それについて御意見を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/27
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028・川本信正
○川本参考人 オリンピックの問題は私よりもむしろ川崎先生の方がお詳しいことなんですが、私自身の考えを率直に申しますと、かねてから私はオリンピック東京招致は尚早だという意見を持っておりました。ということは、いわゆる独立後間もないし、東京という都が何か国籍不明のような、非常にごみごみした都です。オリンピックというものは環境的にも清潔で、静かでスポーツ的な雰囲気を必要とする、そういうところでオリンピックというものは開かれてきたし、また開かれなければならないと私自身は思うのです。もう一つは御承知のように戦後日本の陸上競技なり水泳が、かつてのロスアンゼルス、ベルリン当時に比べて非常に力が弱くなっておりますから、せっかく東京ヘオリンピックを持ってきても、国民の面前でどれもこれもばたばた負けていくというようなことでは、かえって選手の士気にも影響するし、スポーツの振興に水をかける結果になるのではないか。そういう先走った心配もありまして尚早論者であったのですが、その後いろいろな情勢を見ておりますと、たとえばことしはIOC、国際オリンピック委員会の総会を東京でやるようになりましたし、客観的な情勢が東京に有利になってきた。どうも好むと好まざるとにかかわらずオリンピックが来そうな形勢になって参りました。東京都なり政府なりは、別の観点からぜひオリンピックを招致しようという気がまえを持っておられるが、せっかく来るものならば、この機会に日本のスポーツも強くするし、東京という都も清潔にするし、オリンピックを迎えるにふさわしい態勢を整えなければいけない、そういうふうに思っておりますが、今おっしゃいましたウィーンの立候補というのは、なるほどそう言われてみますと、東京のためには非常な強敵だと思います。こういうのが出てくると、招致運動の一つの条件として、たとえばヨーロッパあたりから来る選手の旅費をある程度こちらが負担しなければならぬ。今度スコーバレーで冬季のオリンピックがこの次開かれますが、このスコーバレーでもオリンピックの参加国を多くするために、たとえばアジア地域ならば東京へ集結さして、東京からカリフォルニアまで飛行機でただで運ぶというような
ことをやっております。現にこの前も東京ヘオリンピックが来るときまったときにも、日本郵船の船で船賃を半額にして、ヨーロッパの選手を連れてくるというよう騒ぎだった。ですから今度ウィーンなんかが立候補してきますと、それに対抗するためには、そういったような旅費の補助といいますか、旅費をこちらがある程度負担するとか、そういうような措置も講じなければならないし、招致運動はなかなか簡単にはいかないと思います。しかしおそらくこの五月のIOC総会で、IOCの連中の腹の底はきまるのではないかと思いますけれども、これはふたをあけてみなければわからないことで、何とも予測は立ちません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/28
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029・川崎秀二
○川崎(秀)委員 それではきょうは野球の問題でいろいろと聞いてみたいと思うのでございます。
小川さん、短かく御答弁いただきたい。大昭和製紙は当分の間出場禁止、こういうことですが、それはどういうことですか。一年間禁止ですか、それともしばらく模様を見て、すぐまた返すというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/29
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030・小川正太郎
○小川参考人 さいぜん申し上げましたように、一年間というのは原則としては一カ年であります。しかしそのチームが謹慎の意を表し、なおかつ役員が、大昭和製紙が謹慎している、何とかしてくれないかという大方の御賛同がございましたら、多少期間が短縮される。もし謹慎の意を表わさない場合は一年になるか二年になるか三年になるかわかりません。それも厳重なる審査をするわけです。全部審査委員会によってそれをやるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/30
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031・川崎秀二
○川崎(秀)委員 ただいまのお言葉だと、大体私もその期間は推察するのですが、実際は大昭和製紙でもどこのチームでも、夏の都市対抗野球ということが一つの山だと思うのです。それが目標なんです。それまでに多少形式的でも謹慎の意を表したら解除されるということならば、何にも意味ないわけですね。大体夏の大会には出場は禁止されるものと常識的に考えてもよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/31
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032・小川正太郎
○小川参考人 その件につきましては、私は審査委員でありませんからはっきり申し上げられないのです。そういう点は全部審査委員会におまかせしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/32
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033・川崎秀二
○川崎(秀)委員 小川さん、私は、今度のことではあれだけきぜんたる態度を社会人野球協会がとったことに対しては敬意を表しますし、すでに個人的にもあなたに対して私は非常に敬意を表したわけでございますが、そのことと、冒頭に申された社会人野球は今日までプロまがいの行為はしておらぬということとは、少しく違うように私思うのです。桜井問題のことは既往に属することでありますから、私はあえてとがめません。しかし今日の社会人野球なるものは、私どもの考え方からすると、どうしてもこれは純粋のアマチュア競技とは認めがたい。たとえばあなたの先ほどの御論旨の中にも、どっちが会社側のためになるか、普通の頭脳、たとえば学校を出て法律だとかあるいは技術だとかあるいは科学だとかいうものの知識を基礎にして入社をした者よりも、野球の選手の方が役に立つ場合もある、こう言われた。ということはつまりやはり会社の広告あるいは会社のPRに供されておる、こう見られない節がないでもないわけなんです。そこで問題はむしろ社会人野球協会というものがこういう傾向をたどっていくと、完全なるプロフェッショナルではなくても、アマチュアなものであるかどうかということについては非常に疑いがあるわけですね。それを私はずっと規約の上で調べてみますと、両方とも純粋なアマチュア団体ですが、日本体育協会のアマチュア規程の第十一条には、「自分の意思によってプロフェッショナルとなった者は、再びアマチュアに復帰することはできない。」これは私は国際通念だと思うのです。これは国際的なアマチュアの解釈なんです。一ぺん自分の意思で金銭あるいは報酬を自分の生活の目標として、そして自分の競技の実力を売った者は、再びプロフェッショナルからアマチュアには帰れないというのが考え方だと思う。ところがあなたの主宰しておる社会人野球協会では、おかしいことには、一たびプロフェッショナルになっても、職業野球人としての判定を受けてから一カ年を経過して、それから再び職業野球人としての判定を受けるような行為をしないということを誓約した者は、ノンプロ野球をやれるということが、今日まで公然と行われてきた。こういうことがやはりアマチュア競技としての純粋性を害しているのじゃないかというふうに私は考えるのです。どうでしょうか。将来この野球規約というものを改められる意思はないか。それとも純粋のアマチュアだとあなたは思われますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/33
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034・小川正太郎
○小川参考人 お答えいたします。その件については、私は軟式野球連盟の常任理事をやっております。軟式野球連盟のアマチュア委員でございます。資格委員でもあります。軟式野球は、プロフェッショナルから帰ってくる者は二年たってから受け入れております。軟式野球は体育協会に所属しておるのでございます。そういたしますと、体育協会でも、各団体によって規約をきめたらいいという規約じゃないかと私たちは拝聞いたしまして、体育協会でめいめい各団体ごとにきめていいんではないか、われわれはわれわれ独自できめたところで何も差しつかえなかろうという意味のもとにきめたもので、この規約も体育協会の規約を大体とってまねておるようなわけです。軟式野球がそうやっている以上は、体育協会としてもそれを認めているという結果になりますから、私たちもそれをまねておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/34
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035・川崎秀二
○川崎(秀)委員 川本さんに伺いますが、ただいま非常にいい一つの示唆を受けたんですけれども、つまり軟式野球は二年以上経過すればいいのだ、こういうあれをして、それが体協に加盟しておる。川本さんはアマチュアからプロ両域にかけての客観的な立場にあるわけですから、お伺いしたいのですが、体協の規程を見てみますと、「本会加盟団体が加盟する国際連盟の定めるアマチュア規程が、本規程と相反するときは、その競技の国内競技会にかぎり本会加盟団体の定めるものによる。」ということだけが規定してあって、各国内団体との関係はどういうことになっておるのでしょうか。その点について今私が申し上げたようなことは、どちらが本義的なものであるか。つまりプロフェッショナルになった者は再びアマチュアに復帰することはできないという考え方を今後は今全般的に押し広げていくことの方が正しいのじゃないが、そういうお考えはないかということを承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/35
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036・川本信正
○川本参考人 私の意見はちょっと別としまして、今のアマチュア規程によりますと、今あなたがお読みになったそのあとがあるのです。つまり「事情を知らないで、本規程に違反した者はプロフェッショナル競技者と判定される。この判定を受けた者は、ある条件の下では再びアマチュア競技者に復帰するここともあり得る。」そうしてその条件のうちにはプロフェッショナル競技者としての判定を受けてから満二カ年以上を経て、再びプロフェッショナル競技者としての判定を受けるような行為をなさぬことを誓わなければならぬということが書いてあるわけです。つまりここでいわゆる救済規定があるわけなんですが、これは今小川さんがおっしゃったように、体協の加盟団体の中では、私の知るものでは、軟式野球とそれから相撲がそうだと思います。十両以下でしたが、何がそういう規程が相撲連盟にあるのです。しかしながらオリンピック関係では今おっしゃいましたように、確かに一たびプロになった者は再び復帰できないということは、もう国際的な厳然たる通念です。それで私の意見を申し上げれば、さっきも申し上げたようにスポーツ界の秩序をはっきりするためには、一たびプロになった者が再び復帰することは望ましくないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/36
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037・川崎秀二
○川崎(秀)委員 川本さんの御意見はわかったのでありますが、その日本体育協会の救済規定をさらに延長して作ったのが社会人野球協会の規則だ。そういう点に非常にあいまいなものがだんだん広がってくる基礎があると思うのです。私もこの点ばかり追及をしておりますと時間がかかりますので、今後よくお考えを願いたいということでとどめますけれども、そこで私は伺いたいのは、今度は常識です。今まではあなたの方の協会の規約に従って御質問を申し上げたのですが、常識として、近ごろ社会人野球協会で各地域から出てきておる優勝のチームですね。つまり十六団体とか三十団体とがチームがありますが、これは大体そこの選手というものは、午前一時間が二時間ぐらい会社に勤めて、そうして名目上は厚生部とか総務部とか、それから庶務部とかいうようなものに勤務しておるわけです。朝判こを押していったあとは十一時ごろから野球をやっておる。まあ十一時じゃなくても一時からやっておる。ところがこの中に——まあ私は八幡製鉄の回し者でも何でもないのですが、非常に守っておるところもあるのです。八幡製鉄は一時優勝したけれども、あそこではスポーツを社内全般に行き渡らせたい、それから労働組合も非常に強力な発言権を持っておりますから、なかなか簡単にいかないと思う。そこで午後三時あるいは四時に勤務が終ったあとで運動しておる。そのためにだんだんチーム力が低下してきて弱くなってきたというのが一つあるわけですね。しかしこれは有名なチームで弱くなった原因がそこにあったということは、むしろアマチュアの精神を非常に高く彼らは考えてやっておることだし、指導者も正しいから、従って今日の社会人野球というものは、全般的に見て、今のような八幡製鉄のチームのようなものを除いては、大体セミ・プロと呼ばれるのではないかというふうに言われたのです。今日御出席いただく評論家の中野さんもその点を非常に強く言われて、セミ・プロならセミ・プロ、もっとも川本さんに言わせると、セミ・プロというのはおかしいからプロの二流にしたらよかろう、メージャー・リーグとマイナー・リグーと分けたらいいだろう、その以外に社会人野球というものを別に組織して、それは会社とか何とかいわず、横浜チームとかあるいは東京チームとかいうクラブを作って、そうして一般社会人の野球を発達さしていくことの方が本筋だという議論が今出ておるのですが、それらについての御意見を承わっておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/37
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038・小川正太郎
○小川参考人 ただいまの問題は、私たちの方でも大へん各チームに注意しているわけでございます。たとえば遠征するについて、一週間以上の遠征は全部許可制になっておるのでございます。二週間以上の遠征は許可いたしません。同様に練習に際しても、キャンプへ行くという場合も、一週間限度という、ゲーム数も、非常にあのチームはゲーム数が多いという場合には、協会から注意を促しまして、これ以上ゲームをやってはいかぬということを申し出ております。従って練習しに行くについても、あまり早くやっているチームはこっちから申し出ております。実際今川崎さんからお話があったようなチームはそう多くはないと思います。ありましたらこちらからどしどし御忠告申し上げるし、もしもお聞きの点は私たち役員をおしかり願いますと、こちらからどしどし通達が参るように、そうなっております。現に協会に呼ばれた各チームの関係者も相当ございます。あのチームは少しも仕事をしないで朝から練習をやっているじゃないかといいますと、私どもすぐに当該責任者を呼びます。呼んで事情をただします。その事情が許せばそのままにしておきますが、許さない場合は罰するなり、今後そういう行動をとってはいかぬということをはっきり申し上げているような次第でございます。今言われたように、一時間、二時間勤務して、すぐに野球の練習に取りかかっているというようなチームは私はない、こう見ております。ただし大会前はやむを得ない。野球の練習で申しますと、社会人野球は二時間、三時間でたくさんである、それ以上の必要はないわけでございます。そう五時間も六時間も練習をやっているところはございません。それから申し上げますと、大会前ならば若干そういう例外があるかもしれませんが、しょっちゅうそうやっているところはございませんという己とを申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/38
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039・川崎秀二
○川崎(秀)委員 私桜井問題よりもむしろ今日一つの問題なのは、長嶋選手の契約金、これをめぐって起った社会問題というのはかなり大きな問題だと思うのです。長嶋というのは、まあ六大学かつてない大選手で、そして走力も攻撃力も守備力も三条件そろった選手だといわれて、そうして読売巨人軍はそれがために巨額の金を使ったわけですけれども、むしろジャーナリズムにも非常な、長嶋を前代未聞のヒーローのようにせり上げてきた。そのためにかなり多くの問題点を残しておると思うのです。私は、今一九五八年の三月で、もう長嶋問題というものは過去の問題ですから、そんな問題を追いかける必要はない、今後のプロ野球の正しいあり方ということに対して非常な波紋があると見ておるのです、この問題を契機にして。というのは、御存じのように長嶋君は二千五百万円あるいは二千万円の契約金らしいですね。何ぼ出したって、それはプロは自由でしょう。自由だけれども、二千五百万円という金は、考えてみると、この間も計算してみた。大学を卒業して五万円の月給をとるやつはなかなかないでしょう。ところが、かりに一カ月五万円とっても、四十年かからなければ二千五百万円という数年に達しない。一生かかっても、普通のサラリーマンはとれない数字です。それだけじゃない。これはまあわれわれ貧乏代議士みたいなものが発言して何だけれども、選挙もなかなか金がかかるけれども、尾崎行雄先生みたいに理想選挙をやると、まあ今の選挙で六、七十万円で済むでしょう。これは二十五回から四十回くらい選挙ができます。そういうばかばかしいものを一人の選手に出す。それはプロ野球であるからかまわないけれども、これがつり上っていくと、そのために非常な犠牲者が出る。私は南村、平井という者以下十二名の選手が、小さな企業体の中で、五十人か六十人の中で、十二人も首を切られることは大問題だと思うのです。本来なら読売の労働組合から非常な抗議があってしかるべき重大な問題じゃないかとさえ思うけれども、これは企業のためならやむを得ないでしょう。やむを得ないでしょうが、長嶋問題というものは、これからいろいろ論及しますが、ずいぶんいろいろな議論をアマチュアリズムにも投げておる。これはむしろ川本さんとか鈴木良徳君とか、アマチュアスポーツの番人をもって見る者がみな見のがしているものがある、それは長嶋というものは去年の春からいろいろなものに引っぱり出されてすでにアマチュア選手としての行為を非常に没却しておる行動をなしておることは事実なんです。それは昨年の春映画女優の何とかいう、覚えておりますがあまりそんな名前を言ったってつまらないから言わないだけだ。その女優とある座談会へ出ておる。これは明らかにアマチュア規定に抵触しておるわけですね。「新聞、雑誌、競技会プログラム等をとわず、氏名を記載して、営利的に宣伝に利用され、あるいは宣伝と見做される」態度をとった者はアマチュアではない、ことにかりに月丘夢路にしても何たま三千代という女にしても、明らかにそのことによって報酬を得ておる、それと同席をしておることをアマチュアの大本山である日本体育協会というものが見のがしておるところに、非常に大きな問題があるのじゃないか。六大学野球は日本体育協会の加盟団体でないから、立教大学野球部に対して勧告はできなかった、これは非常に重大な問題が生じてくる、そればかりかと思ったら先般NHKの「私の秘密」というのに長嶋選手の兄貴というのが出てきた、そうして長嶋がその前日ぐらいに巨人軍と契約をしておる、しかるに立教の野球部の内部の対抗試合やほかの野球に自分がアマチュアとして残り少い期間で、あるけれども、いろいろな対抗野球に出ておる、これは完全にアマチュア規定に違反しておる。このときにもし大学野球の国際試合でも行われたら大問題を起すことであったのだが、世人はこれを見のがした。そこで私は思うのだが、こういうような場合にもっとも峻厳にアマチュア規定というものを発動する機関というものがないのか、日本体育協会というものは六大学野球にこういうような問題について勧告をする根拠はないのだろうかということを伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/39
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040・川本信正
○川本参考人 今この体協のアマチュア規定を体協に加盟していない大学野球連盟にそのまま適用するということはできないと思いますけれども、今のその長嶋選手と女優との対談なんというものは、やはりこれは普通の常識からいって非常におかしなことなんです。しかしながら今の「私の秘密」というのはどういう形で出たのか私は知りませんが、これはおそらくプロと契約したあとじゃないかと思いますし、かりにアマチュアの場合でもそれは差しつかえないと思います。テレビにそういう形で出るこことは。そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/40
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041・川崎秀二
○川崎(秀)委員 その場合の報酬をもらったらどうなりますか。差しつえありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/41
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042・川本信正
○川本参考人 テレビ及びラジオに出演した場合の報酬は、今の体協の解釈では、車代ということで許しておるようです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/42
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043・川崎秀二
○川崎(秀)委員 今申し上げたことは、結局長嶋君がプロ入りした後であるから差しつかえない、ところがその後といえども、対抗試合に出ておる。それから対内試合に出ておる。それはやはりアマチュアとしての本義にもとるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/43
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044・川本信正
○川本参考人 今の「私の秘密」は差しつかえないと思いますが、前の何が女優との座談会というのが事実あるとすれば、それは実際常識的にいっておかしなことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/44
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045・川崎秀二
○川崎(秀)委員 わかりました。そういうことは見のがしておったというこで、今後そういう選手が出ないようにしなければならぬという点を指摘するだけにとどめます。
ここで一つ赤嶺さんにお尋ねしたいことは、今一番少年の夢を破っておる。全国の少年というものは、野球の選手のグラウンドにおける美技、あるいは態度、成績というものに非常なあこがれを持っている。川上君に対するあこがれと、去年の長嶋選手に対するあこがれは、同じなんです。同じだが、それがずっと続いていけばいいのですけれども、ストーブ・リーグであるとか、あるいは大学を卒業するまぎわになって、巨大な金額で買収をされて、そのために多くの選手——これは小さなあこがれでありましょうが、南村とが平井などが犠牲になったというので、非常に今までの夢を破られたような気持をしている。これは野球を通じての一つの社会問題ではないかと、私は感ずるのです。優勝劣敗でありますから、いい選手を引き抜くのは当然ですが、ここで一つ問題にしたいのは、大学にしても、高等学校にしても、最後のシーズンが終るまでに、プロ球団側から引き抜きが行われる、贈与がある、あるいは供応がある、これが野球界を混乱させておるところの一つの基礎ではないかというふうに、私は考えるわけであります。選挙にも事前運動というものに対する取締りがあると同じように、こういう世界にもある種の基準というものがあって、それまではアマチュア選手に手を出さないということが、当然行われていいのじゃないか。現にそういう申し合せをお互いにしようというところまでいっておって、それがうまくいかなかった、ような経過も私どもは聞いております。できればプロ野球と社会人野球、大学野球の間に、協定ないしは申し合せというものを作って、そうして最後のシーズンまでは供応、買収をしてはならぬということの一つの基準をきめて、それを厳格にお互いに守り合うような一つのしきたりを作ったらどうかということが、質問をかねての私の提案であるわけなんです。
一昨年、早稲田の野球部のエースである木村投手が、早慶戦を前にして毎日毎日、巨人軍や南海のスカウトと飲んで歩き、そのために早稲田の士気が非常に衰えて、当然優勝すべきチームだと思われたのが第四位、第五位になったということを私は聞いた。これは早稲田の野球部の諸君から聞いたので、間違いのない話だと思うのですが、こういうことに対して赤嶺さん、小川さん、それから川本さんは、いずれも関係者でしょう。つまり大学野球の立場から見たもの、社会人野球の立場から見たもの、それからプロ野球の方では、これをどういうふうに自粛するかということで、まず赤嶺さんからお答えを願いたい。私はこれが問題の中心点であると思っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/45
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046・赤嶺昌志
○赤嶺参考人 大へんけっこうな御意見を承わりまして、ありがたいと思います。まず、結論に入る前に申し上げたいと思いますが、プロ野球が高額なボーナスを出しておる、これは先ほどから申しましたように、出したくて出しておるのではなくて、現在の過程として、やむを得ざる現象であるということを、まず御理解願いたいと思います。先ほど小川さんから御指摘がありましたように、プロ野球とアマチュア野球との差が非常に低い。これは絶対におかしい問題で、プロ野球関係者としては一日も早く、月とスッポンほどの差をつけたいと努力いたしております。その手始めとして、よい選手をかき集めるということが大事でありますので、各球団は競って大選手、名選手に集中しておるという関係から、高額の金がやむを得ず出ておるわけであります。これはある程度の期間が過ぎますれば、プロ野球というものに非常にたくさんのいい選手が集まって参ります。そうすると、アマチュアとプロとの関係が非常にはっきりして参りますので、そのときになりますれば、高額の金を出すという時代が過ぎてしまうと思います。それが三年かかるか、五年かかるかわかりませんが、なるたけ早くくるように努力しなければなりません。現に西鉄というチームがございます。この西鉄は、試合をしてみなければわかりませんが、ここ二、三年以来日本にできた初めての大チームであろうと思います。西鉄は現在は高い選手を求める必要はなくなっております。ことしの長嶋選手に対するスカウトも、西鉄だけはその長嶋のところに行かなかった。要するに高額のボーナス競争に参加しなかったということは、あれだけのチームができれば、もう高い金を出す必要はなくなるという状態なので出さなかったのであります。すべてのチームがあのレベルとまではいかなくても、あれに近づいたレベルになりますれば、高額のボーナス競争というものはなくなると思いますが、しばらくの間目をつぶっていただきたい。それと同時に、まずプロ野球が高額の金を出し得るということは、うしろに親会社と称する団体があるからであります。その団体の覊絆を脱するということになりますれば、出したくても出せない。ないそでは振れないということになりますので、本来のプロ野球ということになりますと、そういうような親会社に依存しないで、独立採算制が必要であります。われわれとしても独立採算制をとることが野球界を粛正する方法だと考えて、なるたけその方に進みたいと思います。先ほど川崎先生は、プロ野球に対して委員会がタッチするということはちょっとおかしいとおっしゃったけれども、おかしいおかしくないの問題じゃないと思うんです。果してそれが好影響があり、悪影響があるとするならば、やはり国会並びに政府はタッチすべきじゃないかと思います。相撲は文部省がタッチする。これは社団法人だからタッチするとおっしゃいますけれども、相撲は一シーズンに三十万、年におそらく百八十万のお客を集めておる。相撲のお客はおおむね成人ですが、野球に集まる八百万ないし千万の人々は、青少年であります。年取って三十、四十になると思想も固まっておりますけれども、思想も固まらない、これからの日本を背負う青少年の八百万というものは、大へんな問題であります。これが問題であるとするならば、何かの形において、プロ野球に対してある指導、消極的な保護政策なり、積極的な保護政策をとられることは当然であって、私どもそれを望むものでありますので、どうかそんな水くさいことをおっしゃらないで、どんどんタッチして、ただいま申しますような高額ボーナス競争等のやまるような日の一日も早くくるために、プロ野球に対して、純粋なプロフェッショナルになるように国家的に指導をお願いしたいと思います。
それから結論でございますが、私どもは社会人野球とは、ある程度完全な協約を結んでおります。これで近年スムーズにいっております。学生野球連盟に対しては再三私どもは、辞を低くしてという言葉を用いる程度に、協約を結んでもらうことをお願いしたのであります。私はそのためにわざわざ再三文案を作りまして、協約を作ることを願いましたけれども、どうも学生野球連盟の方はこれを相手にしてくれない。プロと手を握れば手が腐るように考えておられるのは、もってのほかだと考えております。どうしても承知してくれませんので、私どもは自粛規程を作りまして、今川崎先生の御指摘にもなりましたように高等学校の夏の甲子園大会が済んだ後でなければ契約をしちゃいかぬ、同時に契約の勧誘も大会の期日前からこれを中止しなければいかぬというような自粛規程を作っておりますが、自粛規程ではなかなかうまくいかない点がございますので、一日も早く学生野球協会、六大学野球連盟との間にそういう種類の協約ができるように一つ国会の有志の方々から御勧告下されば私ども非常に助かるわけであります。どうか一つその点御了承願いまして、私どもの熱意のあるところ、ではない、善意のあるところを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/46
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047・川本信正
○川本参考人 たとえばある大学の野球部の監督が一夜にしてプロ野球団の社長になるとか、あるいは同じ大学野球の監督が平素プロ野球のスカウトと飲んで歩いているとか、そういう事実は確かにあるのです。ところがその監督の人たちはどうかといえば、その大学の助教授であるとか講師であるとかいう教職の肩書を持っているのです。これじゃ一体その人たちは教育者としてどれだけの資格があるのかということを私どもは疑いたくなってくるのでございます。それで、先ほども小川さんが社会人野球協会の運営にほんとうに苦心しておられる様子がよくわかりましたけれども、それほど小川さんあたりが苦心をされてもなおかつ社会人野球協会の中が乱れてくる、どうしてそんなふうに秩序が乱れてくるか、つまりスポーツ界の秩序を乱すものがおおむね三つあると思うのです。第一は、スポーツを宣伝の具にする会社の経営者、第二は、たとえば入学案内に本校にはこういう名選手がいるとか、出たとかいうようなことを書く心ない学校の経営者及びそれと結託するところのいわゆる先輩団とか応援団とかいう連中です。それからもう一つは、一体スポーツのマネジャーだか学校の先生だかわからないような大学や高等学校の先生たち、こういう人たちによって日本のスポーツの秩序は非常に乱されていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/47
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048・川崎秀二
○川崎(秀)委員 赤嶺さんの答弁によりまして、プロ野球と社会人野球との間には大体の申し合せができているが、大学野球あるいは高校野球との間には全然できておらぬ、これは何とかお互いに申し合せができるようにすべきだと思うのですが、その場合に本委員会の議論などは相当に影響力を私は持ってくると思うから、国会での論議というものはかなりそのことに影響すると確信しています。しかしこれがやはり決定的なものになるのには文部省とか、あるいは現在内閣にできておるスポーツ振興審議会というようなものが大学野球とか高等学校野球当局に勧告をして、プロ野球との間に申し合せ、協定を作れということを言わなければ実らないと思う。せっかくここで議論をしてもそのことの結実はないわけですから、きょうは文部省の役人に聞く会とは違いますので、残念ですが、川本さんに伺うのですが、そういう方法をとれば可能と思いますか。たとえば文部当局ないしはスポーツ振興審議会が大学野球、高等学校野球に勧告をして、選手のゴボウ抜きということに対して両者の間に申し合せないしは協定を作れといえば、これは非常に力があると思うのですが、そういうことは可能ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/48
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049・川本信正
○川本参考人 今のお話ですが、文部省が直接大学野球とか、プロ野球の当事者に呼びかけて、そういう申し合せを作れというようなことをやり出しますと、また文部省に体育局もできることですから、またも文部省がスポーツ統制をやる、スポーツの官僚統制をやるというようなことになってきますし、それがまた無用な反発を招くとも思われますので、これはやはり今お話のありましたように、文部省の体育当局者が直接呼びかけるということより、保健体育審議会というか、あるいは内閣のスポーツ振興審議会でこの問題を取り上げて、その勧告をするとか、あるいはそこに当事者を呼んで何か方針をきめるとか、そういう方法の方がよろしいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/49
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050・山下榮二
○山下委員長 それじゃ、ただいま中野参考人がお見えになりましたから、この機会に中野参考人より国立競技場法案に関し、御意見を開陳していただきたいと存じます。続きまして、各参考人の方々にそれぞれ質疑を続行していきたい、かように存じますので、そのおつもりで各委員はお願いいたします。
中野参考人には、御多用のところを本委員会のためにわざわざ御出席をいただきまして、まことに感謝にたえません。最近スポーツにおけるプロとノンプロとの関係、プロ野球のあり方が問題になっておりますが、これらの点について目下本委員会で審査をいたしております国立競技場法案との関連において、評論家として御忌憚のない御意見の開陳をお願いいたしたいと存じます。時間は約十分ほどと予定いたしております。何とぞよろしくお願いを申し上げます。中野参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/50
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051・中野好夫
○中野参考人 国立競技場法案との関連とおっしゃいましたのですが、この話を事務当局からうちへ電話がありまして、この法案について参考人に出ろというお話であったのですが、実は私は国立競技場法案というものが出ておることもうかつで知りませんで、それでは資料を送りますからということでありまして、資料を送っていただきましたが、そのときのお話のアマとプロということは、一読いたしましたが、別に直接関係がないように思うのですが、御質問の要旨というのは、私に述べろとおっしゃいますのはどちらなんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/51
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052・山下榮二
○山下委員長 ただいま申し上げましたように、国立競技場法案を中心といたしまして、今世上いろいろ問題になっておりますアマとプロとの関係等もスポーツ界では相当いろいろ物議をかもしていると思うのであります。評論家としての中野さんに、これらの関係について御意見を伺わせていただきますならば、まことに本委員会としては幸いであると考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/52
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053・中野好夫
○中野参考人 そのアマとプロということですが、私は大体学生のときからスポーツは好きですが、主としてグラウンドでスポーツをやっておりましたが、もう今はやりません。見る方が楽しみで、その中の組織とか経営とか内情ということには、元来関係が少しもないので、それがよく知るほどでありましたら、私は第三者でなくなってしまうわけです。それですから、ただ十分でとても述べ尽せないだろうと思いますが、大体スポーツというものは、プロならプロと筋が通って徹底すればけっこうだと思う。そういう意味で私はプロ・スポーツを戦前から相当に見て現在までも好きであります。それからまたアマといえば、これはアマに徹底すれば、下手ということもあるかもしれませんが、それは非常に好きであります。それはたとえば日本のラグビーの行き方というようなもの、これはやはりりっぱでありますし、野球にしても六大学で私の出ました東大はまことに弱いチームでありますけれども、しかしこれは、私は東大にもいましたが、そのアマという点では非常にすっきりしておって、それが不思議な妙な人気であろうと思います。それから夏の高等学校の野球、春、秋の野球なども、このごろ高等学校の野球も多少人気が出てきまして、聞きたくないうわさも聞きますけれども、しかしやはり高校野球なんというものが非常に人気を集めるのもアマとして徹底しているからであろうと思います。それから私は別にプロ・スポーツというものに金が動くから——ここに限度があるのは当然ですが、だからプロ・スポーツはいけないということは考えないのでありますが、ただ問題は、どうも日本で近ごろこの問題が取り上げられるきっかけになったのは、アマという名で実際はセミ・プロ、これが一番問題が大きく起ってくるものだろうと思うのです。実は私はこのアマという名のセミ・プロというものは、一番すっきりしない青線区域が白線区域みたいな存在のような気がいたまして、あまりすっきりいたしませんので、よく知りませんし見にも行っておりません。そういうわけで、ましてこの法案の内容も存じません。ただいろいろなうわさを聞きますし、今度の大昭和の場合などが表向きに出て参ったのですが、これはただ非常に運が悪かった、たまたま昔巡査が入り込んでくる、あれにぶつかったようなものだろうと思います。
それで私あとでいずれ御質問がありましたときにもし考えがあれば申し上げるつもりですが、ただこういうふうに政治問題に取り上げます場合に、私特に御希望申し上げておきたいと思いますのは、アマにしろプロにしろ社会通念としてスポーツというものが非常にすっきりすることが望ましいと思います。プロ・スポーツなどというのは、小学校へ行っております私の子供などもそうですが、一つの夢なのです。フロ・スポーツに子供がそういう夢を持つことは非常にいいのですが、それだけにすっきりしてもらいたい。少くとも社会通念としてプロ・スポーツが忌まわしい面をあまり暴露してほしくないということから考えまして、政治問題にお取り上げになる場合でも、ただ注意していただきたいのは、私も実はプロ・スポーツの内容など知らなかったのですが、内情といいますか組織といいますか、これは近ごろやむを得ず勉強させられまして初めて知ったのですが、それでも私は実際にまだよくわからぬところがあります。いろいろ人に聞いたり書いたものを読んだりしても、まだ私の書いたものに大したとはいいませんが間違いをやっているくらいで、よくわからないのです。それで今までのいろいろな因習というものが積み重なってきておるのでありますから、もしこれを社会通念の正しい線に持っていくという意味で政治問題としてお取り上げ下さる上は、やはりもう少しプロ・スポーツ——アマもですが、非常に複雑な、決して単純でない内情をよくお調べいただいて、もう少し内側にお入りいただいて、初めてやっていただきたいと思うのです。一例を申しますと、たとえば私はプロ・スポーツの選手の契約金が非常に高いということを今までもしゃくにさわりまして、社会時評などに書いて大いにやったのでありますが、実は内情を調べてみますと、そうむきになってただその高いという点だけを取り上げることは、もちろん普通の大学を出た青年の就職などと比べますと非常に不当のように思いますし、それもある程度の金額をこえますと問題になってきますが、そうでない場合は一がいに法外といえない特殊の事情がその組織そのものの中にあるということが初めてわかって、私も多少考えを変えなければならぬのではないかと思ったりしておるくいでありますから、ただちょっと表面に現われる現象だけをつかまえてではなくて、もっとやはり内情はどういう組織で、しかもそういう中には改めなければならぬ組織もあり、それがどういうふうに昔からの因縁でできているかということも考えていただいて、なるべく正しいすっきりする方向へ持っていくように取り上げていただきたい。そうしませんとせっかく社会の中でそれが正しい位置に置かれるように持っていこうという意思も、かえって実現されない結果になるおそれがあるのではないかと思います。大体最初それだけ申し上げまして、もし何か私でお答えできるようなことがありましたら、追ってまた申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/53
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054・川崎秀二
○川崎(秀)委員 中野先生とは二、三日前にもお会いしましたので、いろいろな基本的な問題はお互いにお話し合いをしたこともございますので、そういう点を基礎にしまして、むしろ新しい問題を出してみたいと思うのであります。
今ちょうどこういうことが問題になっております。中野先生が入られるときに私から申し上げましたのは、現在プロ野球と大学野球なしいは高等学校の野球の間で問題になっておるのは、やはり選手の引き抜きに対して事前にいろいろな運動が行われておる。それは事前に行われることは差しつかえないが、最後の六大学なら六大学の秋のシーズンが終って後の工作あるいは触手ということについては原則として当然であるけれども、それ以前のことはお互いに自粛の協定でも結んだらどうか。これは間々守り切れないこととは思いますけれども、その影響力は相当に私はあると思うのです。お互いがそういう協定を結べば、こういうことは非常に大きな影響力だけは与えるというふうに思いまするし、発見した場合にはやはり罰則の適用というものもプロフェッショナルの球団に対してあるわけです。それが一つの基準ではないかということが第一の質問であります。
それと付加いたしましてお尋ねをしたいのは、ああいう莫大なものが投下されて選手の引き抜きが行われる原因は、すぐに役に立つ選手があるからで、たとえば長嶋君にしてもその他の選手にしてもそうである。これもやはりプロ野球は入社後六カ月ないし一年は出場を制限するというような規定を設ければ、それについての若干の緩和が出てくるのではないかというふうにも考えられるのですが、そういう諸
点についてどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/54
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055・中野好夫
○中野参考人 引き抜きといいますか、プロ野球への誘いの手が学生に非常に早くかかってくるということ、これはおそらく大学へ入る前からかかっておるのではないか、大学の学生中を通じてこれというように目ぼしい人にはかかっておるのではないかと思うのです。これはせめて最終のシーズンが済んでからというのはその通りで、理想的なんですけれども、たとえば目をつけることはいけないということはほとんど不可能でしょうが、せめて金とかそういうものが動くということは、シーズンの終ったあとからというのが適当に違いないのですが、これはやはり自粛していただきたい。それくらいの統制はとっていただきたいと思いますが、実際はほとんど不可能だろう。ただこれは少しでもそれに近づけていくには、やはりこういうふうにプロ野球というものは国民に非常に普及してきて、もし国民として社会的な批判がこれではいけないという声、これではおかしいではないかという声が非常に高まってくれば、少しずつはそっちへ動いていくことがあるかもしれないが、実際は行えないのではないかと思います。これはきょう赤嶺さんがいらっしゃいますから、むしろ赤嶺さんがよく御存じだろうと思います。たとえば引き抜きにしても契約金にしても、たしか一昨年のときに大学野球が二百七十万でしたか、高等学校以上は百六十万とかなんとか、一応最高額をきめましたが、たしかそれは実際行えないとすぐわかって、ことしはボーナス選手という制度の方に切りかえられたんじゃないか、私は外から見ておりますと、そんなふうに見えるのですが、そういうふうに、これはいい選手があると思えば、ほとんど自粛ということだけですぐは実現を見ることはできないだろうと思うのです。それからノン・プロにしてもそうだ。大学そのものも、今度は高等学校に対してある程度——このごろはずっと減ったでしょうが、そうだろう。昔の六大学の一番盛んなときなどは、もちろんそういうことは平常行われていた。しかしそれは、この間川崎さんと初めてお目にかかったときも申し上げたのですが、これはスポーツ界だけ酷に責めることはできないと思うのです。私は、大学で教えてましたが、人が要るということになってきますと、とりたい会社の方では競争で——学校とか文部省としてはずいぶん選考試験をもう少し、十月からあととか、待ってくれということは協定はできますけれども、実際上はそれは平気で破られていく。ですから今大学は四年制で、たった四年で教育は十分に行われないにかかわらず、最終年なんというのは、大学生は浮き足立っておるのであります。実際学業なんというものはほとんど身についていない、足が地についていないような状態、これなども何も運動界、スポーツの世界でなくてもそういうことは平気で行われ、自粛なんて幾ら協定しても踏みにじられてしまって、昔、私たち非常にしゃくにさわったのですが、スポーツの世界だけに酷に言うことはできないと思いますが、理想としてはこれは何といってもある程度以上、つまり社会通念に反する、おかしいなと思わせるようなことは、少くとも最後のシーズンが済むくらいまでは自粛してもらいたいというのが理想で、それに進んでいく方法としては、罰則を設けるとか、いろいろそういうこともやってみてもいいでしょうが、実際はなかなかできっこないので、それよりもこういうのはおかしいという世論というものが起ってくれば——神風タクシーでさえこのごろはどうやら業者が自粛しかけているような機運があるようですから、そういうふうな持っていき方、委員会で取り上げたということがそういう世論の起るきっかけになれば、それで私は効果があるんじゃないかと思う。それ以上に罰則とか法規とかいうことはほとんどできっこありませんでしょうが、あまり感心したことじゃないように思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/55
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056・川崎秀二
○川崎(秀)委員 先ほど赤嶺参考人からも意見が出ておったのですが、日本のプロ野球というものは電鉄会社あるいは新聞社、そういう他の事業を企業にしている大企業組織の看板あるいは広告ということが中心で行われておると思う。これは本来ならば、プロフェッショナルの野球といえば日本とアメリカしかないわけですが、アメリカ的にいくことがかりに理想とすれば、これはやはり純粋の野球企業組織というものの中で行われていくことがいいんじゃないか。日本の社会通念に比して非常に多額な金が契約金として出される余裕があるのも、読売なら読売、南海なら南海というものの親会社の非常な資本力というものが動いているから、そういうべらぼうなこともできるんだということも議論の対象になっておるわけです。将来はやはりプロ野球というものはだんだん親会社の羈絆から脱して、独立採算的なものに移行していく方が理想的ではないか。現に独立採算ができ得る態勢に入りつつあるわけでありますから、そういう方向にプロ野球というものはあった方がいいのではないかということが一つの中野先生に伺いたい点であります。
それと関連をいたしましてもう一つの質問は、実は日本のノン・プロ野球というものは大昭和製紙にしても鐘紡にしても、これは資本力からいえば優に現在のプロ野球と対抗するだけの資本力を背後に持っている。その会社の宣伝のために野球の選手をかかえておくということのために問題が起ってきているのではないか。これは中野先生もそういう御意見のように伺いますが、ノン・プロ野球のうちで大きな球団というものは実質上はセミ・プロに移行しているのではないかというふうに私は感ずるんです。それならばこれはプロとアマとの区別を明らかにしろということが中野先生の御議論であるならば、今日の社会人野球協会のうち有力な球団というものはむしろプロ球界——プロもいろいろ技術差によって分れるのでしょうが、これだけのプロ野球というものの存在性が高くなってきたならば、メジャー・リーグとマイナー・リーグとに分けて、大昭和製紙とか鐘紡というものは勇敢にプロを名乗ったらどうかというふうに私は思うのですが、それらを中心に御意見を承わりたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/56
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057・中野好夫
○中野参考人 私はついこの間書いてしまったんですが、日本のプロ野球が、つまり電鉄の会社であるとか、新聞社とかそういうもので育ってきた。これは私はプロ野球を今日まで育ててきたそういう会社の功績というものは無視できないと思うのです。おそらくそういうものがなければ突然ひょこっと独立採算でいけるようなプロ野球は生まれるはずはなかったので、今までずいぶん犠牲を払ってこられたその功績というものは、非常に認めなくてはならない。しかし年に一千万近いお客を動員できる——オープン戦などを入れるともっとふえるでしょうが、そういうところまできたからには、これは私の意見ですが、そろそろその独立、つまりそういう事業会社のある意味ではPRを兼ねているような、今まで育ってきたような形式からそろそろ抜けていくような準備時期に入っていくときではないかと思うのです。私はうすうす知っておりましたが、今度はっきりわかったんですが、広島のようなそういう事業会社の背景でなしにやっているところでも、やり方次第では——ことしは広島が非常に金を使って充実したようです。私はことしはおもしろくなると思うのですが、そういう道もないではない。とすればそちらに動いていく時期ではないかと私は考えているのであります。この点はむしろ赤嶺さんなどから、そういうものは違っておるとか、そういう行き方をしなければならぬとか、どちらの意見が出るか、私は赤嶺さんからその点お伺いしたいんです。
それからノン・プロの方は、先ほど申しまして繰り返すようになりますが、実際会社によって相当違うようであります。私のところへ野球評論家の二、三の人が電話をかけてくれまして、ノン・プロと一言で言いますが、非常にセミ・プロ的色彩の多い——名前を言ったのでありますが、名前は控えた方が——言えとおっしゃれば言ってもよろしゅうございますが、こうこうこういう会社はセミ・プロ級だ、こうこうこういう会社は勤務時間をちゃんと勤めて、あとでしかやっていない。しかし大体近ごろ全国で優勝するようなものはセミ・プロ系の方がだんだん強くなったと思っているが、そういう会社の名前を申し上げませんのは、実は二、三の人に聞きますと、中には一致しないところもありますから、私は自分の目で見たり自分で調べたわけではありませんから、名前を控えるんですが、とにかく大体一致して、この会社は大体セミ・プロだという会社は何社あるかと思うと、この会社はとにかく一応ちゃんと勤務して、そして余暇でやっておる。選手を取ることについても、それほどあこぎなことはしていない会社だということがはっきり名前の出てくるところも数社ある。その間に意見の違う会社もありますから、はっきりは申し上げませんが、とにかく二つのグループがあることは事実なんです。ほんとうにひどいセミ・プロの形態をとっている会社の選手たちあるいはそこの従業員の人と、比較的ノン・プロの——アマといいますか、ノン・プロの線を守っている会社の選手なり従業員というものは、そういうことについてどう考えているか。もしその考えがはっきりすれば、セミ・プロということをはっきり名のったものと、それから、それよりあるいは技量が劣るかもしれません、どうせ引っこ抜かれましょうから、それでも社会人としてはっきりノン・プロあるいはアマチュアとしての筋を立てた二つの社会人野球というものが出ていいのではないかと私は思うのでありますが、これは小川さんがいらっしゃいますから、小川さんにお伺いした方がいいと思いますので、私はここで打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/57
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058・川崎秀二
○川崎(秀)委員 私はもう一問質問しまして終りますが、先ほど中野参考人からもお話がありましたように、プロ選手の契約金が非常に高いにもかかわらず、プロ球団の経営の状態であるとか選手の行く末の問題も考えると、非常に気の毒な場合が多い。これは相撲の場合でもそうだったのでありますが、野球の選手は、大学を卒業して二十四、五才でプロ球団に入れば、その後の野球の寿命というものはピッチャーにして十年足らずであろうと思うし、外野手にしても二十年をこえるという人はないのじゃないが。川上君のように非常に堅実な力を持って長く鍛錬したりっぱな人でも十七年、十八年の選手であるということを考えると、競技者自身が行く末に非常に不安を感じる。ところが退職金制度というものもほとんど完備しておらぬ球団も多いように聞いておりまするし、そうなると競技者としては不安な状態に陥らざるを得ない。一説には、今の契約金がべらぼうに高いのは、退職金の前金保険料だというような説さえあるわけなんです。そういう意味で、現在の力量を買われて、退職してもなお相当にカバーできる、四十才以上になってやめても差しつかえないような意味での退職金にかわるものが先に渡されるというようなことも聞くのです。しかし私は、これはやはり行き方としては間違いであって、契約金は契約金、それから退職金に対してもプロ球団を通じての当然の措置というものが考えられていかなければならぬ時代になったのではないかというふうに感ずるのです。選手の中には心がけのいいのがあって、喫茶店をやったり、中にはタクシー会社の社長なんかを、選手をやりながら兼ねておった者もあったように聞いておりまするが、それも行き方としては、自分の本技に尽すという意味では邪道なのであって、やはり球団あるいはプロフェッショナルのセントラル・リーグあるいは。パシフィック・リーグ当局が考えなければならぬ問題じゃないかというふうに感ずるのですが、これらの問題について、実情は一つ赤嶺さんから伺いたいし、それに対する批判は中野先生から一つお伺いをして、私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/58
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059・赤嶺昌志
○赤嶺参考人 どうも社会保障の専門家の川崎先生に太刀打ちするということはむずかしい問題でございますが、プロ野球の給料の立て方と申しますのが、大体自分の力で取ったもので自分をささえていくという立て方をするということで、退職金制度というのは、昔はあったのでございますけれども、そういうふうな給料の立て方をする関係で、なくしたのです。従って、先ほど申し上げましたように、大体の給料というのが、全球団を通じまして平均七万円から八万円のところだろうと思います。そうして年令から申しますと、二十五才から二十六才というのが平均の年令になっております。従って、二十六才の者が月給八万円取るというような統計になりますので、おそらく普通の社会における二倍半ないし三倍くらいあるいはもう少し上の給料になっておると思います。それですから、普通の人よりも大体三倍の給料をとっておるのであるから、在職中にその二倍の蓄積を行なって、あとの余生をいろいろな事業でまかなっていくという方法をとらせることが、プロ野球の選手を技術的に向上させる方法である。変な考え方がもしれませんが。それで選手のおしりをひっぱたいて、そうして選手に十五万円なり三十万円なり四十万円の給料を得しめる、一年間に五百万円の給料を得しめるという一つのレールを敷いておるわけです。これがいいかどうかわかりませんが、私どもはいいと思いまして、アメリカの制度にならってそういうふうな考え方をしておる。その前提として、一年に十二ヵ月のんべんだらりと給料をやっては、選手の生活の設計が立たない。でき得るならば、シーズン中の十ヵ月間に給料を払ってしまって、あとの二ヵ月はブランクにして、そのブランクの期間を一年間の余裕の金で生活する練習をさせる。今度は、野球を十五年して、あとの三十年のブランクをかつて得た給料の蓄積でもって生活する訓練をさせるというような目的で、選手のシーズン給というものを定めて、その方向に指導させておりますが、まだ年浅くして十分その効果が上げられませんけれども、給料はそういうふうな立て方をしなければ、退職金に甘んじて、そして退職金待ちで漫然として老後を待つというような形をとったのでは、こういう激しい競技の上伸のスピードをおくらすものであるというような考えから、この制度をとっております。
それから退職金のないかわりに、おのおの養老基金を持っております。毎年オール・スターというゲームをやりまして、そのオール・スターの収入金の大部分を選手の養老基金に蓄積しておりまして、現在では両リーグで約三千万円の基金を持っております。これは一切使わないで利息をふやしております。両方の持ち分が一億円くらいになるのを待って給付を開始する予定であります。それはおおむね五十一才になりますれば毎月一万二千円から二万円程度の年金が出ることになっておりますので、退職金制度ではありませんが、この制度をもって私どもは選手に対して、十分とは言えませんが、老後を養うのにまず社会通念からはずれていない制度であると考えてやっております。給料制度につきましてはそういうことを申し上げて御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/59
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060・中野好夫
○中野参考人 プロ野球の給与形態というものがほかの社会と非常に違っているということ、これは実は私もうすうすは知っておりましたがよくは知らなかったものでありますから、契約金というものが社会的に非常にショックを与えて、毎年問題になっていることについて、私もそれに賛成して大いに腹を立てておったのであります。ただしかし、今赤嶺さんが言われたような、つまり自分の技量だけで、腕だけで、だからこれは一種のスペキュレーションだと思うのですが、本人がもうすでに入るときに、そういう形態というものは、相撲とか、そのほか職業的なスポーツというようなものになっては免れませんので、先ほど実は考えを変えなくちゃならぬように思ったというのはその点なんです。そうしますと、確かに今の給与形態の立て方というのも、一がいに無理とは言えないんじゃないか。結局それではどこからが法外か。法外ということはどういうことかと申しますと、非常に法外な契約金について、プロ野球で私が知っております相当ヴェテランの選手の中からも、これは戦前と戦後とを比べたりしてもあることかもしれませんが、かなり不満の点を指摘していた。ここが不満だという不満の点を言っていた人もあったりしまして、つまり球団内部でも、プロ野球界内部でも、そこにずいぶん不公正が行われておる。ある場合は、ある人は、あんな大へんな契約金で入ってくるのは、われわれ十何年か働いて不満だけれども目をつぶる、つまりチームの強化の上で目をつぶってのむというような言葉を使った人もありましたが、野球界内部にもそれがある。それが一つですね。
それから日本は、一般社会の若い人の就職というものが非常に困難で、ある場合にはずいぶん低い。つまり最低生活ができないかもしれないような俸給で就職せざるを得ないように追い詰められている事情というのは、日本の場合に非常に強くありますと、それとのアンバランスというようなことで、これはやはり法外という印象を受けることも免れないと思うのです。私たち内部の者でない第三者とすると、この問題は、野球界の事情は、腕というもの一つで生きる人間だから、そういうやり方でもいいということは、無条件にいいとも言いかねるのであります。しかし一方にも理屈はある。結局それにしてもどこからが法外かということが、私は実際問題としては非常に起ってくるだろうと思うのです。まあ、野球選手、これおしなべて実際働けるのはほぼ十年——前に十年選手というのがありましたが、これはうまく十年というのを考えられたと思うのですが、十年以上使える人は、よほど精進がよくて、よほど才能に恵まれている人です。ほぼ十年すると絶頂は過ぎて、もう下り坂になってくると思うのです。そうしますと、ほんとうに使えるのが十年ということに考えますと、契約金というような形を十年で割ってみて、何百万円までがそれかということになると非常にむずかしくなりますが、少くとも何百万円級ならば、ほかの社会の人にとっては非常にショックでしょうが、野球というもの、スポーツというものを認めるとすれば、これはとにかくよほど特殊の才能に恵まれている人なんで、私はその才能が認められるというのは当然だと思うのです。たとえば生まれつき非常に演技の能力を持っている映画俳優というようなものが、ある程度のああいう——これも問題になりますが、報酬を受けているというのも、一がいに悪いとばかり言えないだろうと思うのです。これはたとえば社会主義国だつて、非常に特殊な芸術家が非常にいい待遇を受けているということは明らかなことです。しかしただそれが、これははっきりしませんが、千六百万とか二千万とか二千五百万とか、いろいろな数がありますが、そういう金になってくると、何といっても法外と言わざるを得ないので、これは私は社会問題として取り上げられるのも当然でありましょうし、こう野放しにされておるということは、今後ともされていくとすれば、これは好ましくないと思うのですが、まあたとえば十年で割って、何百万円級というのならば、とにかく今のプロ野球の一線級になれる才能を持っておるとすれば、一がいに私は悪いと言えないと思います。
その何千万級が出ることですが、大体私はこんなふうに考えておるのです。今プロ野球を私たち第三者で見ておりますと、大体古くからやっていた人が一応年をとって新しい人に入れかわる一つの脱皮期にあるようなんであります。脱皮期にありますから、一つのポジションをはっきり持っていた人が今衰えて、その次の人をそこへ充てる場合に、今適当な人がない。とにかくプロ野球とすれば、経営者としては、これは勝たなくちゃならぬのでしょうから、そこに適当な、この男というようなのが、たとえばノン・プロあるいは学生におりますと、これはとにかく強化したいというときに、今非常にああいう——去年は南海の穴吹で問題が起りましたし、今度は長嶋が焦点に立ったわけですが、そういうときに、これは少々金が要っても、背に腹は変えられぬというので、こういう社会問題になるような高額の契約金が出るのだろうと私は思うのです。
ところがこれは、実は去年スカウトの人たちとの座談会のときに、南海の山本監督が来ておって、去年穴吹問題で山本監督が焦点に立ったのですが、山本監督が言ったことから私はヒントを得てきたのですが、そのとき山本監督が、五、六年もたてばこんなばかばかしい金を払うということは球団もしなくなりますよ、なぜかといいますと、脱皮期で一応各チームにそれぞれのポジションを確保した第一線の選手ができて、それでそう年をとっていない、それで何千万円も払って選手をとる必要もないということになってくれば、そんなばか金を使わなくなるだろう、だからたとえば、ことし長嶋がおりましたけれども、西鉄のようにサードに中西というような人がおれば、それほど手を出さなかったようですが、そういうふうに一応そろえば、どれほど学生ですぐれた選手であっても、まず一年、二軍でなくても控えくらいになるようになれば、そういうばかばかしい金も使わなくなってくるのじゃないか。それでそのときに山本監督は、五、六年持って下さいよというようなことを言いましたが、五、六年ということになりますか、一応脱皮が済んで、それぞれのポジションに分れて、第一線級の者ができるようになれば、自然に、だれも金が使いたいのじゃない正でしょうから、それはおさまってくるのじゃないか。そういうふうに、一方ではそういうあまり法外な金の動きに対する世論もあるし、一方脱皮期が一応終ってしまえば、私はかなりおさまるのじゃないかと一楽観はしております。これがいつまでも続くということは考えられない。投手などの特にいいのがあれば、これはピッチャーは幾らでもほしいから起るでしょうが、そのほかのポジションなんかはよほど変ってくる、おさまってくるのではないかと私は楽観しておるわけです。まあその点についてはそれくらいにとどめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/60
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061・山下榮二
○山下委員長 田原春次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/61
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062・田原春次
○田原委員 私は日本社会党の田原春次と申しまして、やはり古いスポーツ・マンの一人であります。現在はアマチュアの方の東京重量挙協会、全日本学生重量挙協会の会長をやっております。アマチュアの方は相当知っているわけです。特に野球の方は社会人野球、学生野球、プロ野球を見ております。きょうは前の同僚議員が言われました以外の問題、並びにそのお答えになりましたものについて、再質問を申し上げたいと思います。
第一は、川本さんにお尋ねしたいと思います。ノン・プロとセミ・プロの差いかん。それからセミ・プロとプロの差いかんということであります。これは大体今お聞きになったように、小川さんは非常にやかましくそのこことを言われておりましたけれども、どこに差をつけますか。たとえば今の桜井君の例でも、大昭和製紙にいけばノン・プロであるし、それから大洋にいけばプロということで、同じピッチャーとしての技能は変らないと思うのです。これは中野先生が——中野先生は大宅汁一君とユーゴスラビヤやブラジルにも一緒に行ったのですが、東大の教授で評論を書きますとノン・プロみたいなものでありますね。それから大学をやめて評論家になるとプロみたいなことになる。経験はむしろやめたあとの方がよけい持っておるのですから、従って区別をどこにおくか。これは規則はあると思いますが、一般に疑いを持ちますから、あなたのお立場からお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/62
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063・川本信正
○川本参考人 事が野球に関しますので、実は私より赤嶺さんの方がいいのではないかと思いますが、私の理解しておる範囲では、ノン・プロという言葉は野球に限ってのみ使われておるようです。これは今社会人野球協会ではみずからノン・プロとはどこにも言っておりませんけれども、これはたしか占領時代経済科学局長をやっておりましたマーケットという野球好きの将校がおりましたが、あれの置きみやげだと私は記憶しております。しかしノン・プロということは川崎先生なんかのお書きになったものなんかを見ると、すぐにアマチュアと同様のものにとっておられるようだけれども、アマチュア必ずしも同意語ではなくて、むしろセミ・プロに近いものではないかと思います。なぜノン・プロと申しますかというと、アメリカのプロフェッショナル・ベースボールという機構がありますが、そのプロフェッショナル・ベースボールのオーガニゼーションに入っていない野球チームの中で、セミ・プロなどを含めてこれを一がいにノン・プロといっておるようです。そこでチームによって金を取るとか取らないということも非常に支離滅裂でありまして、たとえば今いわゆるノン・プロ野球の世界選手権ということをやっておりますが、これは日本社会人野球協会が代表を選んで行っておる。これは一般にはアマチュアというふうに考えられておりますけれども、アメリカの代表になるチームはナショナル・ベースボール・コングレス、NBCというところで選んでくるのですが、これはたしか一万ドルの賞金を出しております。ですから、これは厳密な意味でアマチュアとはいえない。だからノン・プロというよりもセミ・プロという言葉を使った方が事柄がはっきりしてくると思う。しかし私が再三さっきから申し上げたように、日本の野球をよくするためには、相なるべくはそういう灰色的なものはやめて、アマがプロかまっ二つにした方がいいと思う。それで今小川さんのお話でびっくりしたのですが、一万人に一人だとすれば、これはアマチュア団体と認めざを得ませんけれども、世上うわさされるようないわゆるノン・プロのチームがたくさんあるならば、これはむしろプロ野球の機構の中に包含して、ちょうどアメリカの方はマイナー・リーグは、両方十六チームですが、そのほかにマイナー・リーグといえばピンからキリまでABCとあって、全国にまたがっておる、そういう格好にしてしまえば、事柄は非常にはっきりするのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/63
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064・田原春次
○田原委員 この点について今度は小川さんに御説明をいただきたいと思うのでありますが、その前に小川さんに一つお尋ねしたいのは、今度の問題を起しました大昭和製紙が、謹慎すればあるいは解除になる可能性があるというのですが、野球チームの謹慎というのはどういうことですか。全然野球をしないということですか、あるいはじっとすわっておるというのですか、その謹慎の標準を伺いたい。従来の例もありましようから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/64
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065・小川正太郎
○小川参考人 謹慎という言葉はとりもなおさず、仕事を一生懸命にやるということ以外にはございません。練習は許しております。練習は続けて行います。しかし本業である仕事を一生懸命にやって謹慎してくれ、仕事オンリーで謹慎してくれ、それ以外の何ものでもありません。そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/65
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066・田原春次
○田原委員 もう一つお尋ねいたします。社会人野球協会加盟の各会社で働いておる選手、これは他の社員とむろん同格だと思いますので、半期々々にボーナスをもらっているのでしょうが、そのボーナスは野球の功労顕著につき何カ月分やるということになるのですかどうか、それを御存じでしたら発表してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/66
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067・小川正太郎
○小川参考人 その問題とその前に質問された問題とをあわせてお答えいたします。現在の社会人野球協会へ報告されておるボーナスについては社員同様でございます。全社員同様、ただし若干もらっておるところは、会社で技術者同様に認めておるところがございます。いわゆる技術者、一般の理工系統の人、そういうように若干つくということを言っております。それ以外に多額にもらっているという実例はございません。
なお、さいぜんノン・プロ、セミ・プロということに触れましたが、あれはマーカットが来たときに、日本のことをノン・プロと言いました。アメリカではノン・プロと申しますと、学生と社会人、それとセミ・プロ、この三つを持っていて、ノン・プロと言っています。プロでないものは全部ノン・プロだ、こういう解釈でございます。世界選手権をやるについても、あれは確かにノン・プロ大会だと思いますが、しかしわが国へ言ってくる場合は、各国ともノン・プロであればどういう形態をとってもよろしい、アマチュアでもよろしい、学生の代表でもよろしい、セミ・プロでもよろしい、各コミッショナー、日本では露原会長でございますが、そのコミッショナーが認定した適宜の代表を送れ、こういう規定になっております。従ってわが国においては社会人野球、アマチュアをもって行っております。ですからあちらで賞金が出るといっても、その賞金は現金としては受け取って参りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/67
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068・田原春次
○田原委員 私は過去三、四年間いろいろな他の用件で中国、ソビエト、朝鮮、ポーランド、チェコスロバキア、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーとったのですが、しかしながら仕事のほかに同時にいろいろなスポーツも見ておりますし、いろいろなゲームも見たのですけれども、それらの国々ではいわゆるセミ・プロ、ノン・プロ、それから純粋なプロという区別はないのです。しかしながら選手はおります。それから一定の給料をもらって、たとえば郵便局チームであるとか機関事チームであるとかいうふうにしてスポーツをやっておるわけです。従って新しい時代には、今あなたがしばしば厳格な罰則を何度もお述べになったわけですけれども、そんなに無理にやかましく、何々すべからず、これ以上は罰則を課するということまでして規制をやらなければならないか、これは一種のファッショ政治の傾向になると思うのです。やはりわれわれは楽しみを持つのです。われわれは大昭和の試合を見ましてもまたセントラルの試合を見ましても、金を払って楽しんでくるのですから、従ってその会社が採用して月給を払い、これは仕事を半分やっているかいないかは別といたしまして、もうこの辺で中国やソビエトのようにプロ、ノン・プロの区別をなくし——軟球はどうしてもアマチュアだと思うのです。軟球と、それから社員を採用するときに野球に長じた者を採用したのではなく、社内で給仕さんあたりが、だんだんやっているもの、これは社会人野球といってもいいですけれども、少くとも高等学校や大学の選手を採用して、ことにチームを持っているというなら、先ほど川崎委員が言われたように、それらの会社が今十二チームであれば、これはAクラスとしていいと思いますけれども、むしろ地域的に、社会人野球協会あたりが協力されて、たとえば四国、北海道あるいは九州というふうにBクラスのチームをこの会社が持って、それを一種のファーム・チームにして、そこからならばスカートが行っても問題はない。これはいいからセントラルなり。パシフィックにいかせようじゃないかということになりますから、これはあとで赤嶺さんに聞こうと思っておりますが、二軍を膨大な金を使ってやりますよりも二軍チームは地域的チームじゃないのです。むしろ社会人野球が脱却されて、軟球とそれから学生野球とこの三つだけにして、あとは一切プロのBクラスにした方がむしろ堂々としてよくはないか。見る方のわれわれからいえば、大昭和で桜井が投げるのもプロで桜井が投げるのも、試合があれば見たいんですから、そんなにむずかしい規則を立てるのもどうかと思いますが、どうでしょう、あなたのお考えは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/68
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069・小川正太郎
○小川参考人 これは非常にむずかしい問題であって、社会人野球協会は目下仕事を主にやるということに徹しております。ことに社会人野球はプロと学生との中間になっておりまして、プロがかったところもあるし学生がかったところもあるというあいまいに見られがちで、それは紙一重というようなところでございます。それを何とかしてわれわれの方でうまく育成していくというのが根本でございます。今社会人野球はセミ・プロになったらどうかとか、プロのファーム・チームになったらどうかという御意見でございますが、私たちといたしましてはそういう考え方は一向にしておりません。あくまでも会社チームの野球でいきたい。と申しますのは、セミ・プロ的存在になりますと、野球によって報酬を得るわけです。たとえば大会で純益があったら野球選手にそれを分けるわけです。そして会社に行っているということになると、そう会社も休めないということになると思うのです。そういうことはあり得べからざることだと思います。会社の社員としては。そうなって参りますと非常に困る問題であるし、ひいては野球をやれば方々に行ってこづかいがかせげるという印象が日本の青少年に悪い影響を及ぼすだろうということをおもんぱかって、私たちはこの制度を守っているのであります。
さいぜんから大へんきびしい御質問でありますが、私はここでもう一度社会人野球協会のあり方について御説明いたします。それは夏の都心対抗野球大会でございます。これは非常に盛会でありまして、運日満員でございます。従ってプロ野球さえもねたみに思っているだろうと思います。あんなに入ると……。そういうこともございます。しかし見に来ていただいた人で、あの大会が会社の宣伝の大会であるという人が何人くらいございましょうか。私は確信を持って、あれは会社の宣伝の野球でないとはっきり申し上げたいと思います。その理由をここで述べさせていただきます。たとえば応援をするには、事前に応援の内容を全部出します。その審査を通ったものだけが応援することになっております。フレー、フレー鐘紡、フレー、フレー大昭和と言って応援している姿に、会社の宣伝になるとだれが発言できましょうか。また、たとえ大昭和の社員のお嬢さんがチャッキリ節を歌って声援しても、それが大昭和の宣伝にどうしてなるだろうか、私はそう思うのであります。従って夏の都市対抗は非常に盛んであるというので、新聞紙上はニュースとしてこれを取り上げております。そのニュースが非常に大きく取り扱われております。その結果が会社の宣伝になる。宣伝の目的をもって野球をやっているのではございませんが、結果として宣伝になっておる。それで宣伝が悪いと申されながら、その利害の力によって、新聞社の方でそれはいけないといって書がないと、宣伝にならない。書いてから会社の宣伝になるといってしかられるとわれわれは非常に困るのであります。あの大会場の雰囲気を見て、社会体育に貢献している事実を見ていただいたらはっきりするだろうと思います。一つよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/69
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070・田原春次
○田原委員 私は小川さんがピッチャーをやっていたころよく見に行ったのですが、これほど演説がうまいとは思わなかったのです。何とぞ近いうちに選挙があるので、われわれの党にも応援に出ていただきたいと思います。ノン・プロとプロはあまり違わないというのですが、社会人というのはソシアリストですから社会党野球、プロはプロレタリア野球で、大体似ていると思うのです。
今度は赤嶺さんにお尋ねしたいことが三点ありますが、時間がありませんから簡単にお答え願いたい。現在セントラルとパシフィックで東京にフランチャイズを持っておるのが四つありますが、これはフランチャイズの本旨に反すると思います。東京にはパで一つ、セで一つでよいと思います。そうしますと、埼玉県の大宮とか神奈川県の横浜なり川崎になりますが、一市一地区がフランチャイズの本旨、そういう方面に漸次進めて行かれたらどうでしょうか。希望的質問ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/70
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071・赤嶺昌志
○赤嶺参考人 田原さんの御意見ごもっともでございまして、私どもといたしましても、一行政都市に対してチームは一つでなければならないと思っております。フランチャイズというものは、よそのビルに自分の会社の名前を掲げるようなものでなくして、自分のビルに自分の会社の名前を掲げるのがほんとうでありまして、現在の東京なり大阪のフランチャイズは、何のことはないよその家に自分の会社の看板をかけているようなものであります。ほんとうのことを言えば、市民及び市当局の有形無形の承認を得てそういう特権を与えられるものでありますが、現状においては東映なり、読売なり、大毎なり、国鉄が勝手によそのビルに自分の看板をかけたものであって、フランチャイズとは言い得ないのであります。これを整理することが目下の急務となっておりまして、ここにあります野球協約の中にも、草案としてその原稿が出ております。しかし、これは歴史の流れに従って整理すべきものであって、これを無理にお前はどこに行け、お前はここに行けというように企業整備みたことをすれば、東条政治を再現するものでありますから、そういうことはいたさない。ただ、歴史の流れと、そうしなければならぬような制度に持っていって、自然に流していく方針をとっております。先年大洋ホエールズが大阪におりまして、大阪に五つのチームがあった。これは大へんだというので一度この整理にかかったのでございますけれども、そういうふうな観点でそのまま放置しておいたところが、大洋ホエールズは川崎に変った。こういうふうな自然の事実をうまくリードしていって、フランチャイズというものをきめたい、そう思って、あせらずゆっくり指導して、レールだけ敷くということを考えております。これは十年かかるやら二十年かかるやらわかりませんが、アメリカの野球もフランチャイズの制度が始まって以来——八七五年のナショナル・リーグ以来もうそろそろ八十年に及びますが、日本はフランチャイズ制を施行されてからまだわずかに十年しか閲しませんので、この七十年の開きを最も短かい期間で縮めるのはレールを敷くことだと思います。そのレールを敷くべく今一生懸命やっておりますが、親会社というものがあって、親会社の地元でなければならないというフランチャイズの本体を妨げる、要件がありますので、この点親会社の覊絆を断って、ニューヨークで採算がとれなければ直ちにロスアンゼルスに飛ぶ、あるいはサンフランシスコに飛ぶというようなアメリカ的な企業形態に改めていくために、一日も早く親会社の覊絆を脱して独立採算制を確立することも一つの方法だと考えて、せっかくそれをやっているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/71
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072・田原春次
○田原委員 赤嶺さんにまた御質問なんですが、外国人選手をプロ野球で今なお採用している理由いかん。この方が引き合うというわけですか。当初はなるほどいろいろなテクニックその他を見習うにはよかったかもしれない、あるいは珍しいからということもあったでしょうが、最近では関西方面に入っておりますいろいろな選手がおりますけれども、全体としてそのチームが優勝したことはないのです。ですからもうこの辺で純然たる日本人のプロ野球にしたらどうかと思うのですが、これは命令でいくわけにはいきませんけれども、自然そういう風習を作るように内部的にやったらどうかと思うのですが。あとでまとめて中野先生、質問いたしますから、覚えていて下さいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/72
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073・赤嶺昌志
○赤嶺参考人 外国人選手は、今まで三名まで認めておりますが、外国人選手を入れるのは必ずしも技術がうまいから、あるいはその珍しさの人寄せの策だというのではないのです。これはあの程度の選手を雇うのは、日本人の選手を雇うよりも外国人の選手を雇う方が安いのです。安いので、あの選手を雇えばそれが結果として日本人の選手に対して給料を引き下げる一つの材料になるだろう、そういうふうな意味で選手の採用を行なっておるわけなんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/73
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074・田原春次
○田原委員 それではやはり名前にこだわるようですけれども、日本シリーズというときは、外国人入り日本シリーズとでもいわなければおかしいと思うのです。日本人だけのシリーズでなければなりません。これは私の意見を申し上げておきます。
次の御質問は、そういう外人選手を雇ったり、あるいはまた——ことしも来るようでありますけれども、ナショナルやアメリカンのいわゆるメージャー・リーグの大選手を連れてくるか——これはうわさですけれども、大きなニューヨークのジャイアンツや何かは、ほんとうに日本の選手と試合をするならば、五十点以上のハンデキャップをつけなければいやだと言っている。ショーあるいは出張教授の意味では意味があると思うのです。しかし実際に実力をもってお互いに試合をするというならば、この際、ときどき新聞にも出ますが、太平洋リーグといいますかね、かりにアメリカではパシフィック・コースト・リーグですね、あれは2Aでしたかね、あれの勝者とそれからハワイの勝者と、それからフィリピンの勝者と、日本の日本シリーズの勝者くらいで交代で出張して、太平洋沿岸のチームが試合をやるということは、採算の上では問題があるだろうと思うのですけれども、将来そういうふうな御計画はないか。われわれとしてはその意味でほぼ日本の選手と同じような力の外人選手を入れるというなら、実力で勝っていると思いますけれども、あの有名なニューヨークの大選手が奥さんを連れて買物に来てやって見せるなら、それはなかなか上手ですから勉強になりますけれども、ほんとうの意味にはならぬと思う。従ってあるときのごときは、学生のピック・アップ・チームがぎりぎりまで、同点までいって、はらはらさせて、最後へきて勝っている。ああいうひやかされているようなのではだめだと思う。ですから企業としてそういうのは採算的に見込みがあるかどうか、あなたの意見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/74
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075・赤嶺昌志
○赤嶺参考人 外人入り日本選手権試合というのは、大へん痛いところを申されまして恐縮いたしますが、漸次そういうふうになるようにする方が、人気の上からいっても、また実際日本人の待遇の向上からいっても、そういう方向になると思いますので、そういう方向に進めていく方に私どもも及ばずながら努力したいと思います。
それから大リーグのチームが参りますのも、ただいまでは二年に一回ということになっております。今年は毎日新聞の主催で来ることになっておりますし、その翌々年は読売新聞ということになっておりますが、これも回数が多いので、理想的に言いますと四年に一回くらいがいいのじゃないかと思っております。やはり大リーグもたまには見なければ刺激になりませんから、四年に一ぺんくらいの機会が適当だろうと思っておりますが、在来のいきさつからいって、すぐ四年に一ぺんということには当分参らぬかと思いますけれども、私どもの願っているところは四年に一ぺんないし五年に一ぺんくらいだと思っております。
太平洋選手権の問題は、去年調印第一歩のところまでいったのでございます。あれはオープン・クラシフィケーションと申しまして、3Aと大リーグの間にあるクラスでありますので、まあ試合を七回すれば二回くらいは勝つだろうという程度の実力でございますが、これと契約を結ぶべく、契約の直前までいったのでございますが、たまたまロスアンゼルスにドジャースが出てくる、サンフランシスコにジャイアンツが出てくるというようなアメリカ野球の異変がございまして、そうなりますとせっかく今までオープン・クラスとかいう高いクラスにおった太平洋沿岸のリーグが転落して——というのは大リーグが来ればその近所の小リーグというのは暁の星みたようなもので、全然高いクラスを保持することができなくなるわけであります。そういうような向うの方に異変がありましたので、さたやみになったわけでございますが、これは御説の通り社会人野球がアメリカに行く、大学野球も向うの大学と試合契約を結ぶということの可能性は十分にある。われわれのみがいつも国内に閉じこもって外部からの試合を受けるというだけでは選手の励みにならぬだろうから、機会を持ってアメリカの試合をする、そのためには3Aクラスが適当だから、どっか適当な3Aクラスの相手を求めて選手権試合をするということは計画として考えております。ただ問題はドルの問題でございます。どうかドルの問題につきまして難関に逢着いたしましたら一つ国会の御援助を得たいと思いますから、どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/75
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076・田原春次
○田原委員 社会党が政権を得ましたらその問題を解決いたします。
さて次は中野先生に簡単に御答弁だけ願います。今まで申し上げました中で、アマチュア、ノン・プロ、セミ・プロとプロの区別を——先生の御意見もかなりあると私は見ているのですが、硬式ボールと軟式ボールぐらいに分けるかどうかという御意見を一つ……。あとは簡単に二つ聞きたいと思いますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/76
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077・中野好夫
○中野参考人 今田原さんから御質問がありましたが、その前に先ほど日本の野球に外人が入っちゃいかぬということですが、これは初めは制限なかったんでしょうが、今は、赤嶺さん、三人でしたね、三人まで制限ができたということだけでも私は意味があると思うのですが、実際これは三人といいながら、あるチームは実際上三人以上妙な特例ができているということがむしろ私は問題だろうと思う。それが半分近いとか何とかいうところまで外人が入ってくれば、これはちょっと問題でしょうが、私は日本のプロ野球に外人を絶対締め出さなければならぬとは思っていないんです。アメリカの大リーグにもキューバ出身やメキシコ人もいるくらいで、それをそういう田原さんから日本人でなくちゃいかぬというような、ちょっと国粋主義を承わるのは何かちょっと戦争前に返ったような気がするんですが、私はつまり外人に特にそれこそ法外な契約金でも入れて入れるというなら問題でしょうが、二人や三人くらい、現にそれも平均はしてないでしょうから、今の三人が守られて、三人あるから必ず三人とらなくちゃならぬというお考えさえなければ、そう外人締め出しとまでは私は考えたくないと思う。それから外国チームをよく呼ぶということですが、これは私はスポーツだけでなくて——実際これも不思議なんです、そのほか芸能関係、美術関係、芸術関係すべてそうですが、日本が負けて私たちが外国へ行くなんといってもドルを下さらないような時代に、私たちは戦前日本が一等国であったときも来られなかったような音楽とかスポーツとか芸術とかいうものが日本にいながらにして毎年見られるというのは不思議なんで、それがいささか度を過ごして、戦後一年に二チーム来るというようなおかしなことがあったのですが、これはやはり社会の批判を受けて今のところ自粛に傾いているようでありますが、今二年に一回かあるいは赤嶺さんから言われたように四年に一回ぐらいなら、私は別に教わっても——おもしろいという点だけでもいいと思う、その上に教わるというようなことがあればなおいいんで、これもやはりあまり度を越せばそれだけちゃんと社会的批判に会って自粛の程度に至っているので、私はこれはかまわないと思う。
それから社会人野球のことが先ほど出ましたが、これはちょっと小川さんの意見と違うのですが、これは確かにPRのためにやっているのじゃない。結果としてPRになっているとおっしゃいましたが、確かにまじめに働いて余暇スポーツをやって、それが成績がよければ新聞に書き立てる、結果としてPRになる。これは少しも異存はないんですが、しかしやはり問題になっている。ことに戦後ふえたようですが、いわゆる社会人、会社その他が持っている社会人野球はPRのためにしておるということは、これは小川さんのお立場としては、ちょっとそうおっしゃるのはむずかしいでしょうが、私のような関係のない者から見れば、これは明らかにPRとしてやっているのだと思う。たとえば今度の二百万円事件——済んだことを蒸し返すのは気の毒ですが、その人の野球の技術なしに二百万円出すというようなことはあり得ないことなので、これはたまたま、先ほど言ったように、臨検にあったようなもので、不幸にしてひっかかりましたが、ほかのチームにおいても、金の程度はわかりませんが、そういうことが行われていることは事実と見ていいでしょうし、社会人野球としても大昭和にああいう制裁をお出しになったということは、単に業務として受け取る以上の金であるということを認めておる、そういう金が動いて人を雇ったということは、PR以外に企業界がそんな金を払うはずがないのでありますから、これはやっぱりPRを目的にやっていると思うのです。私は社会人野球に、セミ・プロというか、それとももっとはっきり、これは何という名前をつけたらいいのですか、会社がちゃんとその人の勤務の評価で入れて、余暇としてやったスポーツが宣伝になるという意味でお使いになる、それを社会人野球の建前とされるのか、セミ・プロ的なものを社会人野球の建前とされるのか、それをやっぱりはっきりさせることが必要じゃないかと思う。どちらにおとりになるか、それはどちらにもおとりになる自由はあると思う。こうでなくちゃいかぬとは申しません。というのは、資本主義社会の世の中である限り、PRというのは非常に大きなもので、これは企業者がどういう工合に金を使うかということは、資本主義社会の建前を認める限り、干渉はできない。いろいろな事業が金を使ってPRをやるのでありますから、それの一つとして野球をやっているというのと同じだ。たとえば女子プロ野球というのがありますが、それは半日ぐらい仕事をして、あとはPRのためにやっておるようです。しかしもし今度の大昭和のようなことを行う会社の数がふえてくれば、女子プロ野球と今のノン・プロの——悪いと言うと変ですが、もっぱらセミ・プロ的な形態をとっておるものとの差は紙一重じゃないかと思う。現に今日社会人野球のいろいろな催しが年中ありますが、これは試合当日だけ出るのではなくて、相当前から各地へ遠征してやっておるようです。そうしますと、果して一年に普通の勤務者としての勤務はどこまでできるかということになると、非常に疑問です。そうすると、やはり女子プロ野球のPRとはあまり差はないのじゃないかと私は外から見ていて思います。それならPRのためのセミ・プロ野球ということをお出しになったって、今日の社会態勢の中でいけないとは申されないので、ああいう問題がたまたま出ただけに、どちらかにきめられることはやはり必要な段階にそろそろきておるのじゃないかと私は思う。ただしかし、先ほど田原さんは、それをプロ野球のファーム・チームにすると言われましたが、私はそれはおかしいので、やはりセミ・プロならセミ・プロとしてやる、たまたまそこからプロ野球が引き抜くのは仕方がありませんが、それはプロ野球とは独立に、その会社の使命のために別に動かされるということが好ましいと申すわけではない、私はそういうことを好きじゃありませんけれども、しかしそういうことをしてはいけないということを言われることは、今の態勢のもとではできないというよりほかしようがないと思います。
それからお尋ねになりましたのは、軟球と硬球に分けろというのはちょっと思いつきかもしれませんが、私はあまり関心もありませんから、お答えするまでにいきません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/77
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078・田原春次
○田原委員 中野先生が詳細にお答えになりましたから、あとの質問はやめまして、終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/78
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079・山下榮二
○山下委員長 それでは以上をもちまして国立競技場法案に関する参考人の意見の開陳及びこれに対する質疑は終了いたしまた。
参考人各位には長時間にわたりそれぞれの立場から貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。私より厚く御礼を申し上げす。
本日はこれにて散会をいたします。
午後二時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805077X00719580306/79
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