1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年二月二十日(木曜日)
午前十時二十八分開議
出席委員
委員長 町村 金五君
理事 高橋 禎一君 理事 林 博君
理事 福井 盛太君 理事 三田村武夫君
理事 横井 太郎君 理事 猪俣 浩三君
理事 菊地養之輔君
犬養 健君 小島 徹三君
小林かなえ君 世耕 弘一君
徳安 實藏君 中村 梅吉君
長井 源君 古島 義英君
横川 重次君 青野 武一君
佐竹 晴記君 田中幾三郎君
吉田 賢一君
出席国務大臣
法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
出席政府委員
警 視 監
(警察庁刑事部
長) 中川 董治君
検 事
(刑事局長) 竹内 壽平君
法務事務官
(矯正局長) 渡部 善信君
文部事務官
(社会教育局
長) 福田 繁君
厚生事務官
(社会局長) 安田 巖君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主計官) 上林 英男君
専 門 員 小木 貞一君
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二月十九日
委員古屋貞雄君及び細田綱吉君辞任につき、そ
の補欠として片山哲君及び武藤運十郎君が議長
の指名で委員に選任された。
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二月十九日
企業担保法案(内閣提出第七〇号)(予)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
売春防止法の一部を改正する法律案(内閣提出
第五〇号)
婦人補導院法案(内閣提出第五一号)法務行政
及び検察行政に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/0
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001・町村金五
○町村委員長 ただいまより会議を開きます。
この際発言を求められておりますから、これを許します。猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/1
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002・猪俣浩三
○猪俣委員 私は、一昨日、刑が確定しておって、しかも執行されておらない、執行停止になっておる者はどのくらいあるか、及びその理由を質問しておったわけですが、それについて、これは事務当局でよろしゅうございますから、御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/2
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003・竹内壽平
○竹内政府委員 猪俣委員からかねて御質問が出ておりました点についてお答え申し上げます。
自由刑が確定いたしておりますにかかわらず執行未済になっております者は、本月十八日、一昨日現在で調査をいたしましたところ、二千九百五十六名ございます。これをもう少し統計的に申し上げますと、昭和二十三年以前の確定者で今もって執心のできておりません者が四百七十名、うち朝鮮人二百六十名、二十四年が百十二名、うち朝鮮人四十九名、二十五年が百三名、うち朝鮮人五十名、二十六年が百十六名、うち朝鮮人五十三名、二十七年が六十一名、うち朝鮮人二十三名、二十八年が三百三十二名、うち朝鮮人百十二名、二十九年が二百三十二名、うち朝鮮人七十名、三十年が二百九十八名、うち朝鮮人百五名、三十一年が三百八十三名、うち朝鮮人百九名、三十二年が六百七十一名、うち朝鮮人百七十名、三十三年が百七十八名、うち朝鮮人二十名、以上の合計が二千九百五十六名、うち朝鮮人一千二十一名、かようになっております。さらに、この内容を調べてみますると、執行延期によるものが三百二十三名でございまして、未執行者の一一%に当るのでございます。それから、執行停止によるものが三百四十四名でございまして、未執行省の一二%に当るのでございます。第三番目に、いわゆる遁刑者、刑を免れて逃亡しておる者でございますが、その数が二千百三十五名でございまして、未執行者の七二%に当るのでございます。もう一つは、ただいま執行の手続中のものでございまして、呼び出しをかけておるものとか、裁判所から判決の謄本を取り寄せ中とか、そういう手続中のものが百五十四名で、未執行者の五%に当るのでございます。
執行延期によるものというのは、自由刑の言い渡しを受けた者が執行延期の申し立てをして参りました場合に、検察官は、その申立書を提出させました上、その理由につきまして調査をし、相当と認めたときは刑の執行延期の決定書によりまして一時刑の執行を延期することができることになっておりますが、その場合は、引き続きその理由を調査いたしまして、延期の理由が消滅いたしますれば、直ちに執行を指揮しなければならない建前でございます。延期の理由としてどういうことが考えられるかと申しますと、本人または家族の病気あるいは幼児その他扶養家族の事後措置につきまして時間的な余裕をほしいというような希望のある場合、事業その他身辺の整理に時間的な余裕をほしいというような場合に通常認められるのでございますが、先ほど申したように、そういう事由で執行延期の承認を受けて延期されております者が三百二十三名でございます。
それから、執行停止によるものは、これは、刑事訴訟法四百八十条の規定すなわち心神喪失の状態にある、または、刑事訴訟法四百八十二条の、婦人につきまして受胎後百五十日たっている者とかあるいは出産後六十日以内の者であるとか、高齢者であるとか保護を要する家族等につきまして規定がございますが、そういうものによって検察官は執行中のものは執行を停止することができますし、執行に着手する以前におきましても同じような理由がありますときには執行停止の決定をすることができる建前になっております。この場合につきましても、引き続き調査をいたしまして、そういう事由がなくなりましたときは直ちに執行指揮をしなければならない建前でございます。その数は先ほど申しました三百四十四名、こうなっております。
問題は遁刑者でございますが、これは刑の執行を免れるために逃亡しておる者でございまして、先ほど申しましたように、その数は二千百三十五名、全未執行者の七二%を占めておる状況でございます。遁刑者の発見につきましては、警察とも密接に連絡し、その所在捜査に努める一方、遁刑者名簿を作成いたしましてその発見に努力しておるのでございますが、遺憾ながらこういう数字が出ておるのでございます。
執行手続中のものにつきましては、先ほど申した通り百五十四名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/3
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004・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると、執行延期と申しますのは一種の行政処分でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/4
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005・竹内壽平
○竹内政府委員 執行延期は行政処分でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/5
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006・猪俣浩三
○猪俣委員 刑事訴訟法に規定がないようでありますが、執行停止の方はあるわけです。そうすると、これはまあ検察庁の行政処分として延期される。この執行延期については、行政処分をする責任者は何人なんですか。検事といえどもいろいろの等級があるのですが、どこが一体責任を持つのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/6
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007・竹内壽平
○竹内政府委員 執行延期は、ただいま申しましたように行政処分でございまして、これは検察官の権限においてなすものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/7
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008・猪俣浩三
○猪俣委員 その検察官と称しますのは、検事一体の原則がありますけれどもたとえば地検ならば、検事正、次席、部長、こういうふうなのがあるのですが、平検察官でもそれを処理することができるかどうか、法制上よりも実際の執務上かような執行を延期するような行政処分を平検事がやれるのですか、上司と相談の上やることになっておるのですか、その辺伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/8
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009・竹内壽平
○竹内政府委員 法律上の権限といたしましては、検察官という資格のある検事、これは平検事でございましょうとも権限を有するのでございますが、事柄の性質上これは上司の指導、監督のもとにこれをするという検察庁の内部の規定によりましてそういう仕組みになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/9
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010・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると、この行政処分がもし間違ったとするならば、最高の責任者は何人になるわけですか。たとえば、延期すべからざるものをある検事が延期したという場合において、その人間の責任はもとよりとして、行政監督上の責任は何人が負うわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/10
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011・竹内壽平
○竹内政府委員 これは、当該延期の決定をいたしました検察官がまずおもなる責任を負うことはもちろんでございますが、それの指揮監督の立場にあります——検察庁によりましていろいろ部局の編成が違っておりますが、部長検事、次席検事、検事正、いずれも責任者として責任を負うことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/11
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012・猪俣浩三
○猪俣委員 次に、今度は、刑事訴訟法の根拠に基いて四百八十条あるいは四百八十二条によって停止をする、とにかく国家の刑罰権を停止する。後に私意見を言いますけれども、裁判も大事でありますが、裁判で確定せられましたものを執行するということが刑の本質でなければならない。これに対してはなはだルーズなやり方を法務当局がやっているのじゃないかと思われるので私はお尋ねするのですが、この刑の停止をする決定は、これは刑事訴訟法上その理由があげられておりますが、これの認定は一体何人がやるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/12
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013・竹内壽平
○竹内政府委員 これも検察官がいたすのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/13
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014・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると、延期の場合と同じでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/14
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015・竹内壽平
○竹内政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/15
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016・猪俣浩三
○猪俣委員 この刑事訴訟法の四百八十二条にいろいろ理由が書いてあって、停止ということができるのですが、そのほかに行政処分として延期をしなければならない理由が何かありましょうか。この四百八十二条や何か見ると、大体あなたが延期の理由としておっしゃったことは含まれていると思うのですが、こういう刑事訴訟法の手続以外に行政処分として延期ということが必要なのであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/16
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017・竹内壽平
○竹内政府委員 この執行延期の行政処分は、この四百八十二条の趣旨を体した裁量行為でございますが、この四百八十二条よりも程度の軽いものであり、かつ一時的なものが主として執行延期の理由になるわけでございます。そうして、この執行延期の処置は、一つの条理にのっとりまして、検察庁としまして長年刑の執行に当ってきました間に、この程度のものをゆとりを見てやるという慣行があるわけでございますが、この慣行を恣意にまかせては工合が悪いので、大臣訓令が悪いので、大臣訓令によりまして執行事務規程というものを作っておりますが、その規定の中に明記して、恣意にわたらないように取り扱っているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/17
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018・猪俣浩三
○猪俣委員 今執行事務規程というものがおありのようでありますが、それを当法務委員会に委員長まで御提出願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/18
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019・竹内壽平
○竹内政府委員 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/19
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020・猪俣浩三
○猪俣委員 本人あるいは家族が病気のために執行延期をやる、私どもそれに無理に反対はしませんが、ここにどうもはなはだ奇怪なことがしばしば耳に入るのです。その病気であるかないかということは何人が鑑定するわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/20
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021・竹内壽平
○竹内政府委員 本人の申し出によりまして、その申し出の際に疎明資料として当然診断書を持ってくるなり、あるいは、その診断書に若干の疑義がございますれば、その医者について聞くなりいたしまして、病気を確かめた上で認定をいたすのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/21
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022・猪俣浩三
○猪俣委員 これは先般私申したのですが、それが何国会であったかも忘れましたけれども、ただ、大臣が牧野法務大臣のときであったと思います。これは法務省でもおわかりだろうと思います。とにかくそれは刑が確定しておったのです。これは一種の暴力団であると思いますが、その人間が収監されずして市中を横行し、そうして仲間同士の何かピストルの撃ち合いで射殺されて、初めてこの人間が刑の執行を免れておって市中を横行しておったことが発覚した事件があります。その名前や何かは私今忘れておりますが、当時の速記録を見ればわかるのですが、その速記録を見るひまがなくて参りました。これはたしかそのときは病気ということで延期か停止になっておったということです。ところが、病気と称して、就役できない人間が町を横行し、ピストル戦を演じておるのです。この件について、今法務大臣も刑事局長も新しい方でありますけれども、何か事務の引き継ぎをなさったようなことがあるか。その当時お調べになったことを再調査なさったことがありますか。これは私自身その名前や何か忘れてしまったのですが、あまり有名でありますから、もし御記憶があったら御答弁願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/22
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023・竹内壽平
○竹内政府委員 前回の委員会で、これはいやなことだからと、というお話があったそうでありまして、検察庁のいたします仕事の中で、いやなことで世間に申せないというようなことがあってはならないと私は信じておりますので、そういうようなお話があったいきさつにつきまして、関係者と話し合って、そういうのはどれに該当するのであろうかということを調査いたしてみたのでございますが、どうもそれに該当するものが見当らなかったのであります。なお引き続きまして調査いたしまして、果してお話のようにいやなことで公開の席で申せないような事柄であるかどうか、そういう点につきましても調査してお答えをいたしたいと思っておりますが、ただいまのところ、調査の結果ではわかっておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/23
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024・猪俣浩三
○猪俣委員 私はきょうは不用意にその人名や期日を速記録で見てくるのを忘れましたので、しいて答弁を求めませんが、牧野大臣がいやなことがあるという発言をなさったことは明らかであり、私はそれでほこをおさめたのですが、佐竹晴記代議士がそれをつかまえて、それは何のことだと言って、ここで大声でやり合ったのでありまして、それは佐竹さんにお聞き下さればはっきりしていることです。法務省でそれが評判になっておらぬとなると、はなはだわれわれの質問というものは貧弱なことになってしまってどうも哀れを感ずるのですが、これは私も速記録を調べますから、もうちょっと調べていただきたい。
そこで、この逃亡というのが二千百三十五名もある。朝鮮人も相当あるのでありますから、これはそう当局の怠慢ばかりを責めるわけにいきませんけれども、とにかく未就役者の七二%も逃亡しておる。これはどういうことになるのでございましょうか。刑は確定していながら、逃亡してしまって刑を受けない者が七二%もあるというのじゃ、どうも刑罰というものがはなはだルーズになるわけですが、この原因やなにか御調査なさったのでしょうか。どこにその原因があるのだろうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/24
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025・竹内壽平
○竹内政府委員 これは主として訴訟構造に原因があると私ども考えておるのでありますが、御承知の通り、一審の裁判におきましては、被告人は必ず判決言い渡しには公判廷に出頭しなければならないのでございます。その判決の際に身柄が拘束されておりますときは、直ちに執行指揮という形をとりますので遁刑ということは起らないのであります。それからまた、保釈をされております被告人でございましても、有罪判決がありますときは、保釈の効力はその有罪判決の言い渡しによって失うのでございますので、直ちに勾留の効果が復活して身柄の拘束を受ける。従って引き続きまして確定しますならばそのまま刑の執行に入るわけでございますが、控訴審に参りました場合あるいは上告審に参りました場合は、ただいまの訴訟構造では、覆審ではなくしていわゆる事後審、そういう関係になっておりますために、控訴審においては、事実審理をしてさらに新たなる判決をいたします場合を除きましては、被告人の出頭は要件になっておらないのでございます。それから、上告審におきましては召喚をすることさえも不要となっておるのでございます。こういう控訴、上告審の手続において被告が裁判の際におりませんことは、もしそれが有罪の判決でございますと、そこで確定をする、もう逃げてしまうということに相なるわけでございます。それならば判決言い渡しには必ず被告人に出頭させるという制度にしてはどうかという御意見もあろうかと思いますが、こうなりますと、今度は裁判が言い渡せないという結果になるのでございまして、裁判の遅延をそこから生じますことは、これまた明らかなことでございまして、執行の面にしわ寄せが来るか、裁判の遅延というところにしわ寄せが来るかという問題があると思います。これが非常に大きな遁刑者を出す訴訟構造上の原因かと思うのでありますが、それはそれといたしまして、執行する検察官としては遁刑者が起らないようにあらゆる努力をしなければならないわけでございます。刑事訴訟法にも、四百八十六条に、発見のできない場合は検事長に収監状の発付を求めることができるということになっておりまして、この検事長の手元で広く管内全般にわたって収監状を出してもらってやるという建前をとっております。それのみでは、とうてい収監状が出ただけでは所在を突きとめることができないのでございます。そこで、それらの点につきまして、あるいは警察との協力のもとに所在発見に努めるのでございますが、さらに、本人の所在発見のために、検察庁自身も、被告の友だち関係とか、あるいは特に刑務所におりましたような場合には、在監者、同房者等の交友関係、そういったようものをたどって所在発見に鋭意努めております。そのほか、先ほども申しましたように、遁刑者名簿というのを作っておりまして、これは大体高等検察庁単位に作っておりますが、それによって他の庁から指紋の照会が来たり、あるいは本籍地の照会が来たりしましたときに、すぐ遁刑者名簿の中にそういう者がないかというところを確かめまして、発見に努めております。それからまた、身柄で毎日警察から送られてくる者の中に、遁刑者名簿の中に入っておる者はないかというような点も必ず確かめてみるというふうにいたしまして、その発見に鋭意努力をいたしておるのでございますが、このように七二%に上るような遁刑者を出しておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/25
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026・猪俣浩三
○猪俣委員 今御説明を聞きまして、もっともな点があるとも思いますが、しかし、一体、検察庁というところでは、犯罪の捜査には非常に興味があり熱心であるが、刑の執行ということに対しては非常にルーズなのじゃなかろうか。一体犯罪の捜査は警察が中心となるべき筋合いである。もちろんこの指揮監督は検察庁からしてもらわなければならぬし、日本の法制も指揮監督はできるようになっております。しかし、昔の刑事訴訟法と違って、犯罪の捜査の中心というものは警察。これはアメリカ流だと思うのですが、ところが、日本の検察庁はどうも犯罪捜査に非常に興味を持ち過ぎて、刑の執行というようなことに対してルーズじゃなかろうかということが世論となっておると思うのです。その一つの現われが、先般大阪の高等検察庁の事件となって起った。新聞の報ずるところによれば、高等検察庁の検察事務官が執行済みのような文書を作って逃がしてしもうた、そうして就役すべき者がそのままどこかへ行ってしまつというような事件が起って、それから事が明るみに出たことですが、刑の執行に対してはなはだやり方が大福帳式なんです。緻密じゃない。投げやりだった。ほんの貧弱な一事務官が生殺与奪の権を持っておるような執行のやり方をやっておるということを私ははしなくも暴露したと思うのです。
そこで、まず大阪の高検における刑の確定者を事務官がわいろをもらって執行済みのような手続にしたということに対して、法務省がお調べなすった状態を御報告願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/26
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027・竹内壽平
○竹内政府委員 大阪高等検察庁の検察事務官柴田幸次郎が、中国人の蔡という者からわいろをもらって、刑の執行をしなかったという点につきまして、新聞の報道はその一部を伝えたものでございまして、まさに報道の通りでございます。その点、私どもといたしましては何ともおわびの申し上げようもない不祥事でございまして、遺憾に存じておるのでございますが、大阪検察庁におきましては、本年一月ただいま申した柴田という執行係検察事務官の行動に不審の点があるという容疑がありましたので、内査をいたしておりまして、二月四日柴田を逮捕いたしました。ただいま身柄を拘束の上で取調べをいたしております。現在までに、この蔡という中国人の事件のみならず、ほかに五件の同種の案件を調査して、すでに明らかになっております。新聞にも報道せられました通り、金をもらって延期してやったという点、ことにそのやり方におきまして——これは執行のやり方の点をちょっと申し上げないとわかりにくいと思いますが、執行を指輝いたします検察官が執行をいたします場合には、執行指揮書というものを出して、それには判決の謄本あるいは抄本をつけて、その執行指揮書は、受刑者の氏名、年令、刑期、刑名、執行の指揮その他所定の事項を記載した文書でございますが、それをつけて監獄に送り届けるわけでございます。監獄におきましては、その指揮書を受け取ると同時に身柄を受け取ったということを明らかにするのでございますが、そういう種類の逓付簿がございます。その逓付簿の、身柄を受け取ったというような虚偽の受取書を作りまして、実際には執行していないにかかわらず執行したかのごとく書面上を整えまして、そのことに関して金をもらった、こういう案件でございまして、いわば刑法の枉法収賄というものに該当する事案であろうというふうに考えておるのでございますが、今の執行事務規程は、さようなことはできないように、いろいろの機関が相互抑制の処置がとれるように仕組んだものでありますけれども、逓付簿の受け取りの判までも偽造されておりましたために発見がおくれました点、幾重にも申しわけないことであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/27
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028・猪俣浩三
○猪俣委員 その執行指揮書なるものは、やはり係の検事が署名して出すのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/28
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029・竹内壽平
○竹内政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/29
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030・猪俣浩三
○猪俣委員 それを刑務所へ持っていって、刑務所の係から身柄を引き取ったという何か証明書をもらってくる、それが偽造であったという意味でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/30
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031・竹内壽平
○竹内政府委員 さようでございます。身柄の受取書ではございませんで、逓付簿に受け取ったという向うの係の判を押して年月日を入れましたものをもらうわけでございます。それが偽造されておったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/31
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032・猪俣浩三
○猪俣委員 あなたの言うのは、指揮書というものじゃなくて、逓付簿ですか、どういう名前なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/32
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033・竹内壽平
○竹内政府委員 指揮書そのものは偽造ではございませんが、その指揮書を持って刑務所へ参ります。そうすると、刑務所ではその指揮書とともに身柄を受け取ったということを向うの監獄の係官が捺印をして返してよこすわけであります。その受け取ったという捺印、それが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/33
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034・猪俣浩三
○猪俣委員 その押すのは、指揮書にですか、何か別なものにですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/34
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035・竹内壽平
○竹内政府委員 別な書類、こちらから持っていきました逓付簿でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/35
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036・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると、指揮書というもののほかに逓付簿というものがあるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/36
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037・竹内壽平
○竹内政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/37
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038・猪俣浩三
○猪俣委員 その逓付簿に刑務所の係官が捺印する。その受け取ったという捺印をする人物は一体どういう階級の人間がやるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/38
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039・竹内壽平
○竹内政府委員 これは、刑務所の、事件を受理いたします担当の刑務官でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/39
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040・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると、刑務官であればだれでも印形を押していいということになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/40
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041・竹内壽平
○竹内政府委員 これは、だれでもとおっしゃる意味がちょっとわかりませんが、刑務所には、窓口の事務と申しますか、身柄を、受け取る係を設けておりまして、刑務官が当っているわけでありますが、その者が受け取ったということになりますならば、検察庁としましては確かに執行指揮をしたということに確認しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/41
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042・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると、その窓口の身柄を受け取る係というものがきまっておって、その人間の印形を偽造した、こういうことになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/42
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043・竹内壽平
○竹内政府委員 その受け取ります係の者、おそらくは刑務所の文書課長、あるいは夜間でございますれば看守長といったような階級の役人だと思いますが、その受け取る職務権限を持った人の受け取ったという受領印を偽造したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/43
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044・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると、そういう印形というものは、たやすく偽造される印形ですか。また、ちゃんとした刑務所の係官の印形というものは、一定のどこかへ届けてあって、ちゃんとだれかが見ればすぐわかるようなものですか。そこらの三文判じゃないですか。私の聞いたところでは三文判だそうだが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/44
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045・竹内壽平
○竹内政府委員 三文判というのはちょっとあれでございますが、職印ではなくして、その担当者の認印で扱われているそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/45
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046・猪俣浩三
○猪俣委員 そういうこことが実にルーズだと私は思うのです。いやしくも執行をそこで検察庁は完了することなんです。その証明なんだ。少くとも刑務所長なり何らかちゃんと一定の職員が押すいうことでなければ、何ぼでもできることだ。それをそんなたやすく偽造できるような判こでやっている。私はそこに非常にルーズな点が一つあると思う。それから、本件のごとき場合は柴田が勝手に印形を作って押したのでございますから、刑務所では知らぬわけでしょう。そうすると、刑務所の収容人員と検察庁から引き渡した人員というものは違っているはずなんだが、それはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/46
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047・竹内壽平
○竹内政府委員 御指摘の通り、収容人員と検察庁の方で渡しておりますものとの間に食い違いが起るわけでございますから、そういう点の監査をいたしますれば、事は明らかになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/47
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048・猪俣浩三
○猪俣委員 やり方が実に大福帳式だと思うのです。そんな、だれでも作れような、三文判といえば法律語じゃないから御答弁できないかもしれぬが、とにかく町で幾らも売っているような判こを押せばそれでいいということで、あと向うとこちらの区原簿の照合もしない。それじゃ、事務官が悪いことをしようと思えば何ぼでもできるわけなんですが、全国的にもっとたくさんあるんじゃないですか。そんな方法でやつているかどうかお調べになったことがありますか。これは希有な例でしょうか。大阪の柴田という人物のやり方は、どこでもどうもやりそうですね。そこらで三文判を買って押してやれば逃がしてやれる。そうして何も刑務所と検察庁とは何人引き渡して何人中へ収容したかなんということを全然調査しない。何ぼでもできるじゃないですか。どうですか、ほかにもやっていると思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/48
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049・竹内壽平
○竹内政府委員 こういう事例がほかにもたくさんあるのではないかという御質問でございますが、もちろんないとは保しがたいのでございまして、かつてそういう事例も、私の知っております限り一件あるわけでございますが、しかしながら、この率例が出たからといって、どこの検察庁でもそういうふうなルーズな扱いになっておるのだろうというふうには考えないのです。もしそうだといたしますれば、こういうことは割合やればわかることであります。現にわかっておるわけでありまして、ないとは言えませんけれども、そうたくさんあるべきものではないというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/49
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050・猪俣浩三
○猪俣委員 それは、天網かいかい疎にして漏らさずということがあるから、この柴田は運が悪くてつかまったんじゃないですか。どういう動機でわかったかわかりませんが、今のあなたの御説明のようなやり方だと、これは何ばでもできるのだ。おそらくそれはわからぬですよ。柴田は何かへまをやってボロが出たわけなんですけれども、どうも国民としては、ほかにもみんなやっているんじゃないかという疑惑を十分持ち得るのです。一体警察や検察庁というものは、自分たちをかたく国民は信じておるものと思い込んでいる。自分たちのやることは絶対に間違っていないんだ、そういう一種の伝統的な信念、——信念はいい信念ですが、その陰に隠れて悪いことをやるのだ。だからほんとうから言えば、そんなルーズなやり方というのはできないはずなんです。国家刑罰権の執行という重大な問題なんだ。それを、ちゃんと責任ある刑務所長の何かきまった職印、だれが見てもすぐそれを見ればわかるような職印でも押すかすればいいものを、簡単に窓口か何かにいる男の認め印か何かで済ましている。大体事務官が持ってきたものを実際問題として検事が調べているのですか。ほんとうにこれは監獄へやってきたのかどうか、ちゃんとその受け取りの判こがあるのかないのかを検事は一体見ているでしょうか。あなたは、見ていますというに違いないから、答弁はいい。われわれはそういう疑いができる。そこで、どうもほかにもあると思われる。ことに、今あなたの御説明によると、この柴田という男は五件やっているのですが、一体いつからやっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/50
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051・竹内壽平
○竹内政府委員 三十年の十月から三十二年の十二月までの事犯は検挙されておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/51
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052・猪俣浩三
○猪俣委員 三十年の十月から三十二年の十二月までの件が5件ある。これは一体どうしたのですか。こういう同じことで刑の執行を免れさせたのは、どういう犯罪者であるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/52
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053・竹内壽平
○竹内政府委員 最初に申しました蔡という国人の事件は、関税法違反の件でございまして、これは昭和二十九年の八月二十六日に神戸地方裁判所で懲役八月、罰金二十万円の判決がございまして、その後控訴し、上告いたしましたが、いずれも棄却になりまして、三十年七月三日確定しているのでございます。その刑の執行が、三回延期申請が出て、これは検事も事情をよく聴取して承知しているのでございますが、四回目はとてもだめだと検事から言い渡されておりましたので、事務官は、その四回目の執行はとても延期はできぬよというところからして、それじゃ執行したことにして延期の実をあげてやろう、こういうふうなところが犯行の動機になっているようでございます。
その次の第二犯は、井上という者の詐欺罪でございますが、これは、二十九年八月五日、やはり神戸地方裁判所で懲役一年六月の言い渡しがありまして、大阪高裁で原審の裁判が破棄されまして懲役十月にかわり、最高裁判所に上告されて、これは棄却になっておりますので、三十年九月二十二日に確定した事件に関する刑の執行でございます。
もう一件は、捜査の結果これはまだはっきりと固まっておりませんので、この部分は省略させていただきますが、一応対象になっておりますのは、白石という者が、これは傷害罪でやはり神戸地裁で二十九年二月十八日に徴役六月に処せられ、大阪高裁で原判決が破棄されまして懲役三月に変ったのでございまして、別途、暴力行為等処罰に関する法律で神戸で同じく一年二月に処せられておりますが、これは大阪高裁で徴役八月に変更されておりますが、この懲役三月と八月の二つの刑につきまして、最高裁判所は上告棄却の判決をしておりまして、これが昨年一月五日に確定を見ております。この執行に関する収賄でございます。
第四件目は、これは朝鮮人で尹という者の贓物故買事件でございますが、これは、二十九年の十二月十六日、大阪地方裁判所で懲役一年、罰金五万円の判決がございました。この判決に対して控訴、上告をいたしておりますが、いずれも棄却になっておりまして、三十年の二月二十一日確定を見ておりますが、この裁判の執行に関するものでございます。
第五件は、李と申します朝鮮人の薬事法、覚醒剤取締法違反の関係で、昭和二十九年九月二十日、大阪地裁におきまして懲役一年、執行猶予三年の判決がございました。大阪高裁におきましては原判決が破棄されて執行猶予がとれ、徴用役一年になりました。最高裁に上、告をしましたが、これは棄却になっておりまして、三十年五月二十六日に確定を見ておりますが、この刑の執行に関する収賄事件でございます。
いずれもまだこれは捜査中でございまして、最終的に御報告申し上げるまでの段階になっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/53
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054・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると、最初の関税法違反、これは何という人物ですか。そうしてどのくらいの金額を収賄した嫌疑になっておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/54
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055・竹内壽平
○竹内政府委員 名前は蔡其明。これは四回にわたりまして今計四万円の収賄をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/55
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056・猪俣浩三
○猪俣委員 それから、井上という男の詐欺罪はどのくらい取っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/56
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057・竹内壽平
○竹内政府委員 井上関関係におきましては一万五千円、白石の関係におきましては五万円、尹の関係におきましては二万円、李の関係におきましては、これはまだ金額の点ははっきりわかっておりませんが、虚偽の記載をしたという点がはっきりいたしておりますので、あるいは金額も出てくるかもしれませんが、大体ただいま容疑として上っておりますのは、五件の関係で約十二万五千円になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/57
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058・猪俣浩三
○猪俣委員 最後に法務大臣に御所見を承わりたいのですが、刑罰権の執行ということは大へん大切なことだと思うのでありまして、どうも、今政府当局の御説明を聞きましても、相当ルーズのようなやり方をやっておると思います。これが確保せられませんと、それは国家の秩序、刑罰請求権なんというものは崩壊するよりしようがないと思いますが、これに対して、これを契機として是正なさる意思があるか。なおまた、これはけしからぬことでありますけれども、今お開きいたしますと、まことにわずかな金を、取って大それたことをやっておるわけですが、ここの柴田という事務官、長い間検察事務官を勤めておったのだけれども、実に薄給だと思うのです。新聞の報ずるところによると、一万四千三百円、いろいろの手当を入れても二万円にならぬ、妻子四人をかかえておるというよ言うな人物で、この金をほとんど遊興費には使っておらないというようなことで、多少同情すべき点もあるわけです。しかし、さればというて、これを放任することはできません。厳罰にしなければならぬと思いますけれども、この検察事務官——相当年数を勤めておる検察事務官の給与というものがあまりに薄過ぎやせぬかとも考えられます。そこで、大臣にお伺いいたしますことは、かような刑の執行を確保する方法いかん、それから、検察事務官等の給与に対して何か改善する意思があるかどうか、この二点をお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/58
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059・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 大塚高検部内におきましてかような不始末をしでかしましたことは、まことに法務当局といたしましては申しわけのしようもない事態と思いまして、これは冒頭に深くおわびをいたす次第でございます。
だんだんと御意見がございまして、まず、検察側においては検察事務に熱心な余り行刑等について不熱心ではないかというようなお疑いもおありのようでございますが、決してさようなわけではございませんので、行刑、また行刑後の保護矯正というようなことにつきましても相当の力を入れておりますし、御承知のように、予算面におきましてはこの法務省の仕事は行刑がその大部分を占めているような次第でございます。裁判において刑が確定したものがその通りに執行できないということでございますれば、神聖な裁判を冒涜することであり、その根拠である法を無視することでありますから、執行の大事なことはこれはもう当然なことでございます。その途上におきましてかような失態を演じましたことは何とも申しわけございません。ただいま非常に御同情のあるお言葉がありまして、本人はほんとうに家が貧しくて妻が病床にあるそうでございまして、また子供も多く、いわば飢えに泣くというような同情すべき状況ではあったそうでございますけれども、いやしくも歳判で刑が確定したものを、もぐりの方法で事実上執行を免れるようにしてやる、ことにその代償としてわいろを取るとかいうこことはもってのほかでございまして、先ほどよそにもあるのではないかというようなお話でございまして、これは、数多くのことでございますから、絶無ということは申し上げられません。これは想像でございますが、私はその方の実務は存じませんが、かような大それた犯罪がそうよそにたくさんあろうとは私は思いません。これは、だんだん聞いてみますと、検察側では刑の執行を指揮するその名簿がちゃんとできておるそうでございます。それから、刑務所の側としては受け取ったその収容者の名簿がございますから、それを突き合せますれば、すぐその間で相違がございますから、わかることでございますので、これはこの事件を契機といたしましてぜひやってみたいと考えております。
そのほかこまかい点についての段々の御注意でございまして、被執行者を受け取ったというその認印等のやり方につきましても御意見のあるところでございますが、これは十分調査をしていきたいと思うのでございます。
なお、法務関係の職員、ことに下級職員の給与のこことにつきましては、決して今日の給与が十分と思っておりませんから、年々大蔵省に向いまして給与改善のことを要求し、希望を述べておるのでございますけれども、御承知のような国費多端の事情でございまして、なかなか法務省だけがその給与改善の実をあげることができないようなわけでございます。これは今後ともこの点からも十分考えて参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/59
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060・三田村武夫
○三田村委員 関連して一、二点お尋ねしたいと思います。
今この猪俣委員の御質問に対する御答弁は、私はちょっとおかしい点があると思います。と申しますのは、実は私も刑務所に出入りした関係がありますが執行指揮書に送逓簿をつけていくのです。いきますが、判こだけ、では受け取らないのです。その係の看守長なり、あるいは文書課長が判こをつきますが、そのついた逓送簿に執行指揮書をつけて、刑務所長なら刑務所長の前に持っていって身柄を受け取らなければ、逓送簿は返さない。それを、そうではなくて、窓口で判こだけつけばそれで身柄を引き取ることになるというのはおかしいですよ。巣鴨の刑務所などはそれを厳重にやっておる。大阪の刑務所はその点少しおかしくないかと思いますが、どうですか。執行指揮書に逓送簿をつけていって、そんな窓口で判こだけで受け取るということはあり得ないですよ。これは、そのわいろを取ってそういうことをやった検察事務官はむろん悪いのですが、その上身柄を受け取って刑を執行しなければならぬ大阪刑務所も少しおかしいと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/60
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061・竹内壽平
○竹内政府委員 そういう御疑念があろうかと思いますが、実際の場合は、今御指摘のように、単に判こだけを押して受け取ったことになるのではないのでありまして、ちゃんと身柄をつけて、そうして今の執行指揮書を持って、逓送簿を持って参りまして、おそらく三田村委員の御指摘のように大阪でも私はやっておると思います。しかし、本件は、そうやったことに偽造しておる、そういう事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/61
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062・三田村武夫
○三田村委員 それはそれで了承いたしましたが、これはいずれ暴力追放に関する刑法改正の法案が出てきてから十分お尋ねをいたしたいと思っているのですが、実は、昨年法務委員会で大阪方面の現地調査に行った際にも伺ったのであります。今猪俣委員のお尋ねになった点についての刑事局長の御答弁を伺いますと、だいぶんたくさんの刑の未執行者があるように承知いたしました。大阪でも、私は数字を覚えておりませんが、たしか八十何件の刑の未執行者がある。その刑執行不能の原因がどこにあるかというと、保釈にあるというのです。検察庁側にある。保釈で出してしまうとどうにもなりません。刑事局長お話しのように、被告人不在延のまま判決の言い渡しをする、だからといっていつまでも延ばずわけにいかないし、判決の言い渡しをするとそのまま確定してしまって、どこかへ行ってしまう。これは保釈していますから身柄がないのです。これは何とかしてもらわなければならぬ。われわれは非難は受けるし、どうにも処置がありません。それで、今刑事局長お話しのように、たまたま発見した場合は、次に犯罪を犯して初めて発見する。これじゃ刑も意味をなさないのです。これはいずれ詳しいことは、その法案が出てきた際に伺いたいと思いますが、ここでお願いをいたしておきます。一つそういう間の事情を詳細にお調べ願って、この次の法案審議の際に十分役に立つように御準備願いたい、こういうようにお願いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/62
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063・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 私も関連して伺いたいのでありますが、今刑事局長のお話では、受け取らないのに担当者が受け取ったように文書を偽造して、何もかにも偽造してやったのだから、やらないのがやったようになっている、そういったことで結局刑の執行を免れておる、こういうお話でございますが、そういうことは刑務所の担当者だけでできることでは絶対にないと思いますが、いかがですか。いま一度承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/63
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064・竹内壽平
○竹内政府委員 これは一人ではできない、共犯者があるんじゃなかろうかということでありますが、先ほど申しましたように、ただいま身柄を拘束して取調べ中でございますので、あるいは取調べの結果によりましてはそういうことも起ってくるかとも思いますが、ただいまの状況としましては先ほど御報告したようなことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/64
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065・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 私は、共犯者があるか、さもなくば検察庁がその職務の執行を怠っておった結果ではないかと思うのです。私は、まず第一にお尋ねいたしたいのは、先ほど逓送簿をもってやる、それから身柄をつけてやらないのにつけてやったような書類ができておるというけれども、しかし、その逓送簿というものは刑務所の帳簿じゃないのでございましょう。検察当局の帳簿でございましょう。検事が指揮書を書いて、検事局で逓送簿を作って、検事局で被告を引き渡して、そうして本人と相違なきやいなかを確かめて、間違いがないというので身柄を受け取るんでございましょう。そういうことは刑務所のお役人だけでできることでございますか、いま二度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/65
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066・竹内壽平
○竹内政府委員 刑務所の方はこの件に関しましてはさしあたり何ら責任はないように思うのです。これはもう主として検察庁の方に落度があるわけで、犯行を犯した者は当然でございますが、これに仕事を手伝わせておりました検察官としまして、執行の場合の確認の方法、それから、執行しましたというのがその逓送簿に判を押している状況でございますが、その逓送簿の検閲の徹底を欠いている点、その他本件を契機といたしまして私ども反省すべき点がいろいろ発見されると思いますが、大臣も先ほど申されましたように、これを単に事件として処理しないで、事件は事件として、これによりまして刑の執行に関する事務全般について直すべき点は直していくというふうに、ただいまこの事件の成り行きをよく見守っている状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/66
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067・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 先ほどの御説明では、刑務所の受付の担当者が身柄を受け取らないのに受け取ったような判を——しかも先ほどの御説明では文書課長かなにか上役の人の認印かどうかわかりませんが、印形をも偽造して、身柄を受け取らないのに受け取ったごとく装ってもって刑の執行を免れしめた、その責任者は刑務所の担当者であるように承わったのでありますが、これは間違いでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/67
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068・竹内壽平
○竹内政府委員 それは、私の申し方が悪かったかもしれませんが、佐竹委員のお考えは違うのでございまして、今の手続としますと、刑務所の文書課長ないし担当の看守長の判をもらって逓送簿は形の上は完成するわけでございますが、そういうものを刑務所とは無関係に柴田の方でそういう認印を偽造して、あたかも受け取ったかのごとくに逓送簿を作った、そうして検閲官、監督官の目をごまかしていた、こういうふうな趣旨で御説明申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/68
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069・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 そうでございますと、全然検察当局の責任であるというお話でございますが、これは官庁と官庁との間の連絡のことでございますので、先ほど法務大臣のお話によれば、検察側の執行書と刑務所の在監者の人数とを突き合せればわかるとおっしゃったのでございますが、突き合わすまでもないと思うのです。突き合せて初めてわかるなんという問題ではなく、一件々々ごとに完全に向うへ引き渡しているかどうかということはその検察当局の側の人が責任を持ってしなければならぬ。事務官一人にまかしておくべき事項ではないと思うのです。執行のことについて、先ほど猪俣委員もしきりにルーズであることを追及しておったのでありますが、ほとんどその事務官、事務官の下っ端にまかせる。従って、貧乏人の執行についてはこれは峻厳をきわめる。先ほど猪俣委員は、非常にルーズだ、緩慢だといったふうなことを言われたけれども、一面実に峻酷です。これは、たとえば父母が瀕死の病人である、一日待って下さいというときでも、なかなか許しません。それから、ほんとうに病気で、診断書を持って行ってお願いをいたしますけれども、もう半日も一日も許しません。私どもの長きにわたっての経験では、もう峻厳に許さぬというのが原則なんです。ところが、他面、何かしらん一部の人に非常に緩慢な点がありまするために問題になるのです。一面、貧乏人に対しては峻酷にやっていく、それから下層階級の人には峻酷にやっておいて、一部の階級の人々、金銭をもってする人とかいったような者については非常にルーズな扱いをいたしまするために世間から非難される。それはだれに扱わせるか、事務官のしかも下っ端の者に扱わせる。それだけが専権を持ってやっている。その執行についても、検事なりあるいは次席検事なり検事正が、そのつど一件心々について御監督をなさいますならば決してこういうことは起らないのです。で、私が一人でできるかと問うておるのはそれなんです。これは一件々々について監督すべきであって、先ほど法務大臣のお答えのように、人数と人数とを突き合せて、こっちへ送った者と向うの在監者との数を突き合せて初めて知るという問題ではなくて、一件一件について、これは峻厳にそのときどき監督なさるべきであって、その監督において欠けるところがありはしないか。それで、担当者の責任についての追及はさることながら、その監督において欠けておるところがありはしないか、これを伺っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/69
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070・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 いかにもごもっともな御意見と思います。私が先ほど申し上げましたのは、いよいよ刑が確定して執行段階に入りましたならば執行書と身柄とを刑務所に引き渡すわけでございまして、その段階におきましては、やはり検察官が厳重にこれを監督して、そうして完全に刑務所に引き渡されて刑の執行を受けるようにいたさなければならぬことは当然でございまして、この事件を契機といたしまして、将来はこの点に十分に注意を払わなければならぬと考えておりますが、私が先ほど二つの名簿の突き合せをすると申しましたのは、他にもかような例がありはしないかという御疑問がありまして、私どももさような疑いを持ちます。でありまするから、過去においてすでに引き渡し済みになっておる者がほんとうに引き渡されておるかどうか、本件のような間違いが一つでもありはしないかということを調べまするのには、過去において送り付けたという名簿と、そして向うで受け取って現に収容して刑の執行をしておるという収容者の名簿とを突き合せれば、そこにもし違いがございますれば、過去においての引き渡しに何かこれに類似した不正がありはしないか、これを調べるために申し上げたのでございまして、これから先、いよいよ刑が確定して、そうして検察官の指揮によって刑の執行をする、それを刑務所に引き渡すという際には、厳重に監督をいたしまして、今度のような間違いのないようにしなければならぬ、これは仰せの通りでございまして、今後十分注意するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/70
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071・猪俣浩三
○猪俣委員 先ほど、私、刑の執行に対する責任者のことをお聞きしたんですが、そうすると、これは検事正、次席その他担当検事、法文では検事となっていますから、何人でもいいのでありましょうけれども、行政官としての責任の立場がある。そこで、今佐竹委員が質問されたように、なるほど検察事務官がさような偽造印をされたのであるから、これは検察官自身が悪意を持ってやったことにはならぬと思いますけれども、しかし、監督上の責任がある。これはやはり刑の執行という重大なことです。そして、一ぺんに何千人というのを一つの検察庁でやる道理はないのだから、一人心々やはり全責任を持って執行を見届けなければならぬと私は思うのです。それを、検察官が下っ端の事務官の偽造で済ます。おそらく検事は押捺印を見ないのではないですか。だから、私は、やり方が非常にルーズだと言うのはその意味なんで、そういうことで引き取ったためにこういうことが起った。これは何としても一人心々執行を見届けるだけの重大問題です。わざわざ国費を使って長い裁判をして、判決が確定して、そうしてそいつが執行のことを見届けないでは、何にもならぬことなんです。それですから、それをせずにやったということは相当の責任があると私は思います。そこで、一体、監督責任者に対してはどういう態度をとるのか。近時官庁の汚職事件というものの原因はいろいろありましょうが、監督責任というものがはっきりしない。下っ端の者だけに責任を負わせて、上の者は涼しい顔をしている。中には栄転するやつがいるという。こういうばかげたことで官庁汚職を根絶することはできません。汚職の根本的の矯正は、責任を明らかにして、——昔のおさむらいなら切腹するのです。切腹せいとは申しませんけれども、その責任観念を明らかにしなければ、汚職問題などというものは跡を断たないことになる。その意味におきまして、この大阪検察庁の責任ある地位にある人は一体どういう責任を負わるるのであるかをお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/71
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072・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 いかにもごもっともなお尋ねと存じます。先ほど佐竹委員からお言葉がありました通り、これはただ品物を検察から刑務所に送るというような簡単なものでございませんから、ちゃんと判決によって刑が確定して、これこれの刑であるからそれを執行するということを刑務所へ命じていきます。そうして犯罪者をつけて逓送するのでございますから、ただ一人の事務で、判を偽造しただけでさようなことができるかどうかというようなことについて、私個人としては佐竹委員と同じように非常な疑いを持っております。しかしながら、これはすべて今裁判にかかっておりまするから、裁判所の方ですっかり調べていただきますれば、事件は明瞭になると思います。しかし、ただ柴旧事務官一人でこういうことができるかどうか、従来どういうふうな監督をしておったか、こういうこことにつきましては、その裁判の確定を待ちまして、十分に調査をいたしまして、責任の所在によりましては適当の処置をとりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/72
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073・町村金五
○町村委員長 高橋禎一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/73
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074・高橋禎一
○高橋(禎)委員 刑の執行に関連して、これは法務大臣に一番関係のあることですから、法務大臣にお尋ねいたしますが、死刑の言い渡しの確定した事件で、しかも刑事訴訟法によりますと、六ヵ月以内に法務大臣は死刑執行の命令を出さなければならぬ、こういう規定がありますが、死刑の裁判の確定した者で、執行しなければならないにもかかわらずまだ執行されないといったようなものがあるのかないのか、まずその数を、もしあれば伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/74
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075・竹内壽平
○竹内政府委員 死刑の確定者で未執行のものの数は、現在六十二名ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/75
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076・高橋禎一
○高橋(禎)委員 死刑の裁判が確定した者でまだ執行されていないのが六十二名あるというお話でありますが、それは一体どういう理由で執行されないであるのか、それの御説明を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/76
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077・竹内壽平
○竹内政府委員 精神病になっておりますために執行のできない者もありますが、大部分の案件は、いわゆる再審の申し立てをいたしております。それが却下になりますと、また重ねて申し立てるというので、次から次へとそういう再審の申し立てがございますが、その審理に手間取っておるのでございます。それで六十二名が現在執行延期になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/77
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078・高橋禎一
○高橋(禎)委員 刑事訴訟法の四百七十五条の第二項によって六ヵ月以内に原則としては執行しなければならないけれども、ただし書きに規定してあるものは、その六カ月の期間に算入しない、こういうふうになっておりますから、執行をしなくてもいいという関係になるわけでありますが、このただし書きに該当しないもので死刑の執行がされておらないというものは一件もありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/78
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079・竹内壽平
○竹内政府委員 先ほど申しました精神分裂症の者につきましてはそういうのがありますが、それを除きましては全部今再審関係のためにおくれておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/79
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080・高橋禎一
○高橋(禎)委員 そういたしますと、再審の請求をしてそれが却下される、また請求をする、それをいつまでも繰り返してやればやれるという建前になっておるわけですか。もしそういうことであれば、それをそのままにしておいていいものかどうか、何かこれについて法的な改正なりその他をしなければならぬ必要があるようにお考えになるかどうか、その点を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/80
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081・竹内壽平
○竹内政府委員 法律的には再審を受理しないというわけには参らぬのでありますが、同一事実について同じような判断を何回も何回も裁判所で受けるということになりますと、おのずからそこに本人もやむを得ないという気持にもなってくるわけなんで、そういう時期がやはり自然に出てくるわけでございます。しかし、法律の建前としましては、再審してくるものを裁判所に取り次がぬわけにはいかぬ状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/81
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082・高橋禎一
○高橋(禎)委員 そうすると、結局再審をしなくなるまでじっと待って、何回も何回もやらして却下しておる、本人が悟ってあきらめて、これではもう執行しなければならぬというところに行くまで待つ、こういうふうなことになるわけですが、それでいいとお思いになるのですかどうなんです。そこのところは実際にその仕事をやっていらっしゃる方としてはどういう考えなのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/82
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083・竹内壽平
○竹内政府委員 御承知のように、判決が確定いたしましても、執行は法務大臣の命令によるということになっておりまして、法務大臣が執行の命令を出されます前に、記録全体について——これはもちろん、裁判の当否を検討するわけではございませんが、いささかも事実に疑いがないかどうかという点を慎重に検討をいたしまして、その上で命令を出すわけでございますので、命令に値するものにつきましては間違いの執行ということはないという自信を持って検討いたしておるのでございます。しかしながら、当人にしてみますと、何とか助かりたいというような気持から、法律の許します限りいろいろな手段で、特に再審の申し立てをするわけでございます。しかし、これをむげに抑えてしまうということももちろん適当ではございませんので押えることはいたしませんが、その間に、行刑当局としましては、再審の事由、そして却下になりました理由等を一緒に相談に乗ってやりまして、そこにおのずから自分の判断に役立つようにアドバイスをするというようなこともいたしまして、すみやかなる執行に持っていくように行政的に指導をいたしておりますことはもちろんやっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/83
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084・高橋禎一
○高橋(禎)委員 最後に法務大臣にお尋ねをいたしますが、御存じのように、すでに国会においても死刑廃止の問題が論議されておるわけであります。それから外国なんかでも死刑廃止論が相当強く台頭しておるというような情勢でありますし、また、アメリカなんかの場合を聞きますと、裁判は死刑の裁判が確定しても、日本で言う恩赦というような行政権の発動によってその執行をしないということにするような例が相当あるようでありますが、今刑事局長の御説明になったような、本人があきらめていよいよ執行を受けようというようなところまでいくのを待ってというのも一つの方法でしょう。けれども、そういう場合には、得て、気の弱いような人、案外あきらめる人だけが執行を受けることになって、そうでない者は、一生死刑の裁判が確定して執行されるかもしれないという不安の状態において生活をしなければならないといったような見方からすると、実に残酷な措置のように考えられるわけなんです。ですから、死刑の制度を廃止するとか、あるいはまた、死刑の裁判は確定したけれども、こういうふうな条件が備わったときにはそれはもう恩赦によって死刑の執行はしないという措置をとるとか、あるいはまた、はっきりしたけじめのつくような制度というものが必要だというふうな考え方もあり得ると思うのですが、その点について法務省においては御検討になっておるのかどうか、やはり今のままでいくのが正しいという御見解であるか、それを一つお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/84
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085・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 ただいまの諸点でありますが、これは、法務省におきましては、御承知のように、法制審議会、また、その準備のための刑法改正準備会という常設の機関がございまして、これらで刑法全般の改正について研究をいたしております。その一環として、今お示しのような問題も研究をいたしておりまするけれども、今のところではまだ確定した結論を得ておりません。当分今の制度のままを続けて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/85
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086・町村金五
○町村委員長 古島義英君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/86
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087・古島義英
○古島委員 私も、それとやや関連しておる事件でありますが、判決が確定して今日まで刑の執行をしないものが、執行停止、執行延期、逃走、これらを合せて二千九百五十六名ということでございますが、この中には先ほどの死刑囚も入っておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/87
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088・竹内壽平
○竹内政府委員 先ほど申しました数字は、自由刑についての未執行の数字を申し上げたのでございまして、死刑囚は自由刑の受刑者ではございませんので入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/88
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089・古島義英
○古島委員 自由刑のうちで、執行停止もしくは執行の延期をする、逃走、こういうものがあるようでありますが、これ以外に執行しないようなものはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/89
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090・竹内壽平
○竹内政府委員 先ほど申しました四種類でございまして、それ以外にはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/90
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091・古島義英
○古島委員 私はその例を一つ知っておるのですが、これはごの前に法務大臣にお聞きいたしたいのですが、御存じがなかった。堀江壮一という人ですね。これは日本共産党の関西地方委員で有力な党員であります。昭和二十五年に大阪曽根崎の桜橋書店、大阪の出版販売会社、この会社の争議に関連をして、桜橋書店の帳簿を持ち出し、もしくは大阪出版販売会社の書籍を持って出たので、これが強盗という容疑で検挙されたのであります。その結果大阪の地方裁判所では懲役二年六カ月の判決を言い渡したのですが、自来控訴をいたし、上告して、結局三十八年の三月判決が確定したはずであります。しかもこれが執行されずにおったのは、執行停止であるとか、執行延期であるとか、逃走者であるとか、このうちのどれに入るのですか。これ以外にあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/91
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092・竹内壽平
○竹内政府委員 ただいまお尋ねの堀江壮一氏にかかる事件、これは、先ほど申しました遁刑者、逃亡して刑の執行を免れていたという範疇に入る案件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/92
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093・古島義英
○古島委員 逃走者というのは行方がわからなくなったのでありますが、逃走をしたというこの既決囚に対して尾行をつけておるようであります。尾行をつけておれば、その所在もわかり、その挙動が一切わかるわけであります。尾行をつけておって逃走者の範疇に入るというのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/93
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094・竹内壽平
○竹内政府委員 尾行をつけておったというお話でございますが、そのような事実があったかどうか私はつまびらかにいたしませんが、とにかく堀江壮一氏が昭和二十五年八月に先ほど御指摘のような桜橋書店その他に多勢の者とともに押しかけまして、書籍、現金、帳簿その他を強奪したという事件につきまして、大阪の地方裁判所が判決をいたしまして、それが二十八年三月五日に確定をいたしましたが、その確定後刑の執行ができないでおりましたことは事実でございます。そのできなかった理由は、堀江氏が日本共産党員でございまして、まあもぐっておったと申しますか、その所在の追及ができなかったということによるものでございます。しかるところ、昨年の十二月二十日その所在を突きとめましたので、収監状によって収監をいたして執行に移ったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/94
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095・古島義英
○古島委員 私の質問はそこではないのです。警察が尾行をつけたのでありましょうが。尾行をつけておいて所在が不明だとはどういうことかと開いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/95
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096・竹内壽平
○竹内政府委員 尾行の点は、どういうわけで尾行をつけましたかは私の方でつまびらかにいたしませんが、未執行者であるというので尾行をつけたという仰せのようでございますか、あるいは別の理由によりまして尾行というような事実があったかどうか、そこはつまびらかにいたしませんが、刑の執行という面から申しますと、堀江氏は十二月二十日収監状を出すに至るまでは所在がわからなかったというのが事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/96
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097・古島義英
○古島委員 検察庁や警察は何をやっておるか一向わからぬのでありますが、この堀江氏は、判決が確定したその後、東京へ来て、日本橋の兜町の興信所に勤めておって、しかも興信所の調査員である。各官庁に出入りをいたし、そして十分調査の事務を取り扱っておったのであります。それもわからなかったわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/97
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098・竹内壽平
○竹内政府委員 堀江氏が偽名をいたしまして、ただいま御指摘のようなところで働いていたということがわかりました結果収監状が出るようになったのでございまして、そういう人物が興信所にいたということはあるいは警察当局にはわかっておったかもしれませんが、それが確定囚である堀江壮一であるということは、収監状が出されますまではわからなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/98
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099・古島義英
○古島委員 全く間の抜けた話であります。実際、何も偽名ではありません。公々然と堀江壮一そのままで興信所に勤めておった。しかもそれはあとでわかったから収監したのではなくて、あなたの方では、判決が確定すれば五年以内にこれを収監せねばならぬというので、わずか一ヵ月を余す前に、これを執行しなくんばならなくなったので、この二十日に逮捕いたした。決してそれまでわからなかったのじゃない。わかっておるけれども、とにかく執行を五年以内にせねばならぬというところから、初めてあなた方が執行するに至ったのじゃないか、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/99
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100・竹内壽平
○竹内政府委員 執行すべき立場にあることを知っておりながら、堀江氏であるために、共産党員の方であるために、執行を控えておって、一カ月に迫ったので大急ぎで執行したのではないかという御質問でございますが、さようなことは絶対にございまいません。堀江氏は山下と称して東京で党活動をやっておったようでございますが、一般の人でさえもなかなか発見ができないのでございますが、党員の方は地下活動その他いろいろ隠れた活動をしておりまして、その発見が困難であったというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/100
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101・古島義英
○古島委員 あなた方は逃げられたというので言いのがれるつもりでおるのですが、農林省に出入りをしておった、大蔵省に出入りしておった、防衛庁に出入りしておったということは御承知でしょう。知りませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/101
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102・竹内壽平
○竹内政府委員 ただいま、この点は、新聞でも報道されましたように、先般収監状が出て収容されたのでございますが、堀江氏は鎌倉の潮見某方に寄遇しておりまして、警察における捜査の結果によりますと、官庁関係の書類がそれらのところからたくさん出てきたということで、国家公務員法百条の秘密漏洩の条文に該当するような容疑があるのではないかというところからいたしまして、昨年十二月二十七日でございましたか、一部の官庁に対して家宅捜索を行ったようでございます。それらはすべてただいま警同案当局が捜査をしておるのでございまして、まだ検察庁の方へは事件も参っておりませんので、詳しい内容は私は承知しておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/102
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103・古島義英
○古島委員 昨年の十二月二十七日に家宅捜索をして、農林省の農林経済局農業協同組合部検査課員というのですか、この早野正夫、それから農林省の統計調査部管理課総括係長馬場道夫、経済企画庁の総合計画局計画課化学工業担当係長矢島不二男、大蔵省管財局管理課小林昭治、この四名のテーブルや家宅捜索をいたしたというのですが、この家宅捜索をやるに当って、どういうふうな自白をしておったからやるようになったのですか。四人のテーブルや家宅を捜査いたしたということは聞いております。堀江がどういうことを自白したか、捜査するに至ったのか、その点伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/103
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104・竹内壽平
○竹内政府委員 先ほども申しましたように、この捜査は警察当局がいたしておるのでございまして、正式な報告を受けておりませんので、いかなる容疑に基いて、どのような理由によってなしましたか、その点をここで申し上げるまでに至っていないのでございますが、今御指摘のようなことは、新聞記事にも出ておりましたし承知しておりますが、私の承知しておりますことは、先ほど申しましたように、その住居におきまして多数の官庁の秘密文書があり、また官庁にも出入りしておったということからして、そういう容疑が発生し、その容疑に基いて今のような家宅捜索が行われたものというふうに承知しておるのでございまして、私の承知しておることはその限度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/104
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105・古島義英
○古島委員 この捜査令状はどこから出されておりますか。どういうふうな容疑で捜査するに至りましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/105
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106・竹内壽平
○竹内政府委員 捜索令状は裁判所から出されておるのでございますが、もし、たって詳細をお聞きを御希望になりますならば、警察当局をお呼び出しになりましてお聞きを願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/106
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107・古島義英
○古島委員 かような既決、判決の確定した者が逮捕されずにおって、逮捕されないのが約五年間。この五年間のうちにこういうふうなスパイ行為か何かの犯罪を重ね重ねやっておるのでありますが、このことについて何ら検察当局の方では御承知がないというのであればいたし方ありませんが、少くとも捜査する、——どういうふうに犯罪人が逃送しておるか。逃送しておるのが偽名であるからわからないというようなことではいけないのでございます。しかも判決の確定した者は、それを執行するというあなた方の方は当然の責任がある。その責任を全うするためには、その所在等も、偽名であるからわからない、あるいは本名を使ってくれないからわからないと言うが、一定の興信所や何かにおって、しかも各官庁に出入りをいたしてこういうスパイ行為をやっておるのでありますから、それがわからないということはまことに情ない話でありますが、それらに対してだれか責任を帯びる者があるのですか、ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/107
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108・中川董治
○中川政府委員 実は、私、刑事部長たる中川政府委員ですけれども、御質問にかかる事案は国家公務員法違反の関係の事件のように拝聴するのですが、このことにつきまして、私の同僚ですけれども、山口政府委員と申しまして警備部長たる政府委員が主管しておりますので、その者によく出るように言いまして、それからまた詳しく説明するようにいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/108
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109・古島義英
○古島委員 国家公務員法の百条によれば、職員が職務上取った秘密、これを漏洩するとかあるいは退職後これを漏洩したというのは犯罪になるが、堀江がやったところで国家公務員法の百条には触れないのです。これは何らの職員じゃありません。そうすると、堀江の方をどういうふうな罪で逮捕いたしましたか。この刑の執行のための逮捕じゃなく、堀江がこれを持ち出したということならば、堀江はこれの容疑も帯びておるわけです。国家公務員法の百条を適用してやることは困難だと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/109
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110・中川董治
○中川政府委員 その者にかかる一切の関係事件は他の政府委員が主管しておりますので、その者によく聞きましてお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/110
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111・古島義英
○古島委員 そういたしますと、きょうは御答弁できないから後日調べて答弁するというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/111
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112・中川董治
○中川政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/112
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113・古島義英
○古島委員 それでは私はやめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/113
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114・町村金五
○町村委員長 売春防止法の一部を改正する法律案及び婦人補導院法案を一括議題といたします。
質疑の通告がありますから、これを許します。三田村武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/114
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115・三田村武夫
○三田村委員 御承知のように、売春防止法は四月一日から完全実施されることになりました。そのために必要な法案が本国会に提出され、当委員会で審議されるのでございますが、前回の委員会で趣旨内容の説明を伺いまして、大体は了承いたしたのでございますが、売春防止法の完全実施は、わが国の社会史上あるいはまた風俗文化史上に画期的なできごとでありまして、世上これをざる法と言い、骨抜き法と言いあるいは業者擁護法などの悪口や非難がありましたが、とにかく、日本の長い歴史の上に、社会史の上に、あるいは風俗史の上に、数百年来公然と存在して参りましたいわゆる売春業者というものが四月一日から一切全部なくなるのでございます。これは法律上社会的存在を許されないことになるのでありまして、風俗文化史の上から言うならば一種の革命的なできごととも言えると思います。いわば文化革命の一歩前進でありまして、非常に大きな意味があるのでございます。
そこで、まじめに客観的に十分検討を加えたい問題は、法律上形式的に売春という業態がなくなるということと、現実に売春業者あるいは売春行為がなくなるかあるいはなくし得るかという問題であります。これは、現実の社会構造の面から見て、あるいは現代の文化的人間生活の面から見て、言葉の上のきれいごとでは済まされない深刻な問題であります。これを政治問題として論議し検討しようとする場合、私たちが感じましたことは、どうかすると、この問題にあまり深入りしたくない、問題を深く掘り下げて論議することを避けようとする傾向が一部にあるのであります。これは私ははなはだ遺憾なことだと思います。のみならず、また別な面から考えてみますと、何か上っつらだけ手探りでものを見て、問題の本質を十分に掘り下げようとしない、こういうことが考えられるのでございます。ここに、私は資料をごく一部でありますが持って参りました。きょうは時間がありませんから一々申しませんが、これは、単なる形式上の、あるいは法律上の措置だけでなくて、われわれの人間生活の上に、社会生活の上に好ましくない存在であるならば、どのようにこの好ましくない存在をなくするかということに、ほんとうの論議の中心が置かれなければいけない、こういうことを私は考えるのでございます。私は、この売春防止法の前身である社会党提案の売春等処罰法案、これが二十二国会に提案されたとき以来この問題に真剣に取り組んできた一員でありますが、こういう観点から、私は、この機会に、この問題の本質をできるだけ掘り下げて、売春防止法完全実施に伴う諸問題について、政府関係当局の見解あるいは方針を伺い、当委員会の責任において完全実施に伴う諸般の方策について検討を加えてみたいと思うのであります。なお、この問題はひとり売春防止法実施の面から検討することのみでは足りないのでありまして、法務大臣いろいろ御苦心になっております、やがて当委員会に提案されるであろう暴力排除のための刑法改正、それらの問題とも関連して、つまり一連の社会悪として、これは縦横相関連して問題を掘り下げる必要があると思います。いわばその犯罪的性格から言えば不可分の存在でありまして、こういう点も一つ十分法案の内容を並べて実質的に検討していただきたい。実は、私、先般当委員会で、これらに関連して一連の資料の提出を御要求申し上げたのでございます。一部は本日いただきましたが、まだ全部の資料が出そろっておりません。従いまして、きょうは法案そのものに直接関連する具体的な実質的審査と申しますか、そういう細部の質疑については後日に譲ること、他の機会に譲ることを委員長に御了承願って、総括的な問題について少しばかりお尋ねいたしたいと思います。
まず最初に、これも資料としていただいておりますが、これは審査の必要上この委員会の速記録にも載せておきたいと思いますから、売春防止法完全実施に伴う予算関係であります。これは、法務省、警察庁、厚生省、労働省、おのおのこれに所管事項を持っておられまする関係当局があるのでありますが、このおのおのの関係所管庁において、三十三年度でどれだけの予算が計上されておるか、それから、ただ三十三年度予算として決定された予算面における予算の計数だけでなくて、政府が売春防止法完全実施に伴う必要な経費として、その必要性を確認され、施策の裏づけとして一応予定された予算、すなわち、言いかえますと、当初に要求された予算額と、現に決定された本国会に提案されております予算との比較、これを法務省、警察庁、厚生省、労働省、御出席になっていない省は他日伺いますが、まずこの点をお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/115
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116・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 ただいまお尋ねの予算でございますが、当初法務省関係といたしまして売春防止法実施に伴って計上しておりました予算は、最後査定におきまして相当額減額されておることは事実でございます。いずれ政府委員の方から正確な数字を申し上げます。
この関係は大よそ二つに分れるかと思うのでございますが、今御審査を願っておりまするいわゆる補導処分、これに伴いまして補導院を新設いたしたいと考えておるわけでございますが、当初の予定におきましては七カ所を予定しておったのでございます。しかも全部建物は新設というような内容の要求でございましたが、これが、いろいろ折衝いたしました結果、個所数は三カ所ということになりまして、その三カ所のうちでも一ヵ所は新設を認められましたが、他の二カ所は、既存の固有建物があるから、これを転用したらばよかろう、そういうころ合いの建物が見つかりましたので、転用ということになりました、その関係におきましても減額を受けております。それから、違反者の検察関係の費用でございますが、これは、御承知のように、従来から法務省で標準的に検察の費用をとっておりますが、たまたま年によりましては非常に犯罪が累積することがございまして、従って、検察の費用が標準予算ではまかない切れないような場合が生ずるのでございますが、これは、多くの場合におきまして、従来からの慣例で、検察費の不足分は、いわゆる補充使途的の意味におきまして、その年度の予備費から大蔵省から支出をしてもらっておるような慣例でございまして、このたびの売春防止法実施に伴う検察費も、もしこれが不十分でございますれば、この予備費の支出をみたい、かように考えておる次第でございます。正確なる数字につきましては、あるいは資料として差し上げた方がよろしゅうございますが、今法務省だけのことを申し上げてよければ政府委員の方から数字を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/116
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117・三田村武夫
○三田村委員 まず法務省の予算計数的に、簡潔でよろしいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/117
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118・竹内壽平
○竹内政府委員 法務省関係の予算は三十三年度予算として査定を受けました金額は一億二千四百六十八万三千円でございます。この内訳は、検察庁関係におきまして約六百万、矯正局の関係、つまり補導院並びに女子少年院の新設並びに運営に関する経費を含めまして一億一千三百万、人権擁護局の関係におきまして六十一万九千円、保護観察所の関係におきまして五百十万五千円、こうなって、合計が一億二千四百六十八万三千円でございます。これを計画といたしましては約十億六千二百九十四万四千円の要求をいたしたのでございますが、査定結果は右申しましたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/118
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119・三田村武夫
○三田村委員 警察庁、これは中川刑事部長御主管ですね。中川刑事部長から聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/119
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120・中川董治
○中川政府委員 警察関係は御案内のように犯罪捜査に要する経費だけでございますが、三十三年度予算でただいま当国会で御審議中の予算では七千九百五十四万三千円、これがただいま御審議中の予算に入っております。昨年は五千五百七十七万四千円、こういう費用をいただいておったのですけれども、明年四月一日から全面的に施行される、こういうことに関連をいたしまして、二千万円強を増額していただいたような次第でございます。内訳は、御案内のように、警察関係予算は、他の都道府県に関係して当該公共団体が無理だという費用は国で負担するのですけれども、当該公共団体内の費用につきましては都道府県警察として府県が負担する。府県が負担する関係では補助金ということになるわけでございますが、補助金と国庫負担分を合せて、ただいま申し上げたような数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/120
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121・三田村武夫
○三田村委員 一々お伺いいたしておりますと時間の不経済になりますから、また必要なときにお伺いいたすことにして、一体この予算でどういうことをおやりになるのか。全体の資料をいただきましたが、今法務省と警察庁関係は数字をお述べになったのでございますが、三十二年度の予算総額が四億三千五百八十三万九千円、今年度の予算が五億一千二百二十二万三千円、三十三年度要求額は二十一億二千五百十九万六千円。今法務省、警察庁の御説明を伺っても、大体要求額の十分の一くらいしか認められていない。売春法はことしの四月一日から完全実施されるのです。実際業者がなくなるのです。これはなかなか事容易でない問題でありまして、私は必要とあらば大蔵大臣に出ていただいて十分認識していただきたいと思うのでありますが、これだけの予算でどういうことをおやりになるのか。四月一日から好むと好まざるとにかかわらず法律上業者はなくなってしまう。どういうことをおやりになるのか。安田社会局長もおいでになっておりますが、厚生省あたりもだいぶひどい削減のされ方です。業者は消えてなくなる。しかし、実際にあの赤線、青線の中に働いておった婦女子というものは地球上から消えてなくなるのではないのです。これをどうして、補導し、矯正し、是正していくか、これは重大な問題でありまして、法務省、警察庁、厚生省がこれだけの予算でどういうことをお考えになっているのか、まずそれを簡単でよろしいからお尋ねいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/121
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122・安田巖
○安田(巖)政府委員 厚生省関係は、三十三年度の要求が二億九千九百十二カ七千円でございます。このうちで二億三千三百万円が大体婦人保護、残りが性病予防費になっております。当初要求いたしました額は約八億でございます。昨年より減りましたことについてちょっと御説明申し上げたいのでありますけれども、三十二年度におきましては、御承知のように、婦人相談所を各都道府県に一カ所ずつ、それから婦人保護施設を三十九カ所置きまして、すでにあります十六カ所と加えてとにかく各府県に一カ所ずつの婦人保護施設を設けよう、こういう予算がありました。本年度はそういった臨時的な予算が少うございまして、保護施設といたしましては十二カ所の予算が入っておるだけでございます。そういう点で今年度と来年度の予算で大きな差が出てきたわけであります。やりますことは、三十二年度の予算に掲げたことと大体同じでございますけれども、ただ、婦人の保護更生資金、それから医療費と被服費を交付する、ごくわずかでございますけれどもそれが入っておりますのが目新しい項目でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/122
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123・三田村武夫
○三田村委員 時間の関係がありますから、あまりこまかい具体的な話は後日に譲りまして、全体の問題の性格を明らかにするために、もう少し基本的な点を伺っておきたいと思います。
これは、法律上なくなるということと、実際上なくなるということとは意味が違うのです。われわれは、法律上なくなるということよりも、実際上なくなることを好ましいと思いますし、そうあらねばならぬと思います。そこで、業者と従業婦の現在の状態です。これは資料として要求してあったのですが、まだいただいておりません。業者については、この四月一日から刑事規定発効と同時に対象になるものはいわゆる赤線地帯と青線地帯であります。赤線、青線の業者は一体どうなってるのか、現在どれだけの数があるのか。これは四月一日から完全になくなる業者でございますが、四月一日からなくなることを前提として、この適用を受ける業者はどれだけおるのかということです。それから、その赤線、青線の業者のところに働いておる女子、従業婦とでも言いますか、これはなかなかつかめないのであります。しかし、今年はいよいよ完全実施でありますから、厚生省においても、警察庁においても、それぞれ十分な調査が進んでおるはずと思います。この法案をここで審議する際のばく然とした業態の握り方でなくして、あるいは従業婦人の握り方でなくして、相当的確な数を抑えておると思いますが、大体対象となる者はどのくらいあるのか、これをまずお伺いしたい。
ついでに、どうせ一緒に御説明があると思いますが、転廃業の実情です。どういうふうに変りつつあるのかということについて御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/123
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124・安田巖
○安田(巖)政府委員 業者の数でありますとか、それから売春婦の数につきましては、私ども、三十一年九月に主として保健所系統から調べた数字がございます。また、警察の方でお調べになった数字もあるかと思うのであります。そのときは、大体赤線が一万五千の業者、それに対しまして、従業婦が五万四千五百人ばかり。その他青線でありますとか街娼というようなものは、なかなかこれははっきりいたしませんが、一口に青線が四万人くらい、その他のものを入れましても十五万くらいだろうというのがその当時の資料でございます。そこで、現在の状況でございますが、実は、私どもの方の系統の行政機関で調べますと、手間がかかりまして、はっきりいたさないのでありますけれども、三十一年の、今申し上げました数字と一月末の数字と比較いたしまして、報告のない府県等の推計を入れますと、大体一月末で業者が三一%、従業婦が三七%くらい減っておるという数字が出るわけでございます。
そこで、業者の転廃業でございますけれども、これは、御承知のように、昨年から猶予期間がありましたが、なかなか進展をいたさなかったのが、十月ころから急に進んで参りまして、御承知のように愛知県の全業者約七百、従業婦が三千二百五十人ばかりでございますけれども、それは十二月三十一日限りで全部廃業届を出しまして、これは一応そういうものがなくなったわけでございます。それから、岐阜県におきましても大部分の者が十二月三十一日に廃業いたしたのであります。それから、東京都におきましても、これにはむしろ警察庁の方からお話になる方が適当かと思いますが、二月中には一応個人営業を含めまして全部廃業届を出す、こういったような状況にまで進んでおります。
それから、転廃業の実情でございます。どういうところにたくさん行っているだろうかということでございますが、これはたびたびお話がありましたようになかなかむずかしいことでございまして、これは愛知県が一番早くやめました関係でわかっておりますのを見ますと、一番多いのが旅館でございます。それから料理店、その次が割烹、飲食店、それから芸妓置屋のがその次にあります。そのほか完全に廃業したというのがあります。そんな状況でございますが、大体におきましてやはり水商売の方に転業をいたした者が比較的多いということだけは言えるのであります。今のところ愛知等の例でございますけれども、そういうふうにして転業いたしまして、必ずしもうまくいっておるということはあるいは言えないかもしれませんけれども、いろいろ擬装転業とか騒がれるような実例は私ども聞いていないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/124
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125・三田村武夫
○三田村委員 安田さん、せっかくの御説明でしたが私は政府当局の怠慢を責めたいのです。と申し上げることは、今の御説明は三十一年の資料なのですよ。今年は四月一日から完全実施ですから、少くともこの法案を出されてここで審議をされる場合は、三十一年の資料でなくて三十三年の一月の資料をいただきたい。そうでないとほんとうの事態把握はできないのです。私はそのために前回の委員会で要求しておいたのですが、ぜひともできる限りの資料を一つ御調製願いたい。これはあらためて御要求申し上げておきます。
警察庁に伺いますが、これは今安田局長御説明のように確かに廃業いたします。転業いたします。東京都管内においても今年の二月の終りまでに一応業者はなくなりましょう。しかし、これは形の上だけでしょう。実態がどうなるかということが問題なのです。実は私たちはそれを心配するのであります。私も昨年一年だいぶ方々調べて歩きました。法務委員会として出かけたこともありますし、調査員の人に御同道願って警視庁管下の警察署に行って担当の第一線の巡査部長、警部補、そういう人に集まっていただいて事情を聞いて参りました。これはなかなか実態把握がむずかしいのですよ。たとえば、今の業者は形の上ではやめます。しかし、働いている女の子がどこに行くかということが問題なのです。ここにたくさん資料を持ってきましたが、きょうは一々それを引用することをやめますけれども、あるいは白線といい、あるいは黒線といい、いろいろ形を変えた業者が、もぐり売春といいますか、一ぱい出てきている。これでは何のことかわからぬのです。一応それは、長い歴史の伝統の上からいけば、風俗史、文化史の上からいけば、法律上、社会上存在を許されないということは一歩の前進でありましょう。けれども、立法の趣旨は、目的は売春業者及びそういったいまわしい売春行為ということをなくすることが目的でありますから、どうしたらこれがなくなるかというところに、われわれはいま少し重点を置いて、まじめに検討しなければならぬと思うのであります。私の調べたところによりますと、業者は廃業してしまいますと言う。そこに働いておった女子は、その三分の一はうちに帰ると言います。自分の実家に帰るか、あるいはそれぞれ縁故、知人をたよってそれぞれ帰る。三分の一はどっかに職を求めてかわっていくと言うのです。そのどっかに求めていく職が白線か黒線かわかりませんが、求めていく。残りの三分の一は行くところがない。借金はなくなる。これは働くところもなくなります。食う道がない。どこも行くところがない。われわれは再びこういういまわしい売春行為をやろうとは思いませんが、どこに行って何をやったらいいか。そこで、これは今の法務省の婦人補導院の問題にも移ってくるのであります。これは具体的な問題は後日ゆっくり伺いますが、大体赤線、青線合せて、三十一年の調査によると十五万です。間違っていたら訂正していただきます。われわれが売春防止法ないしは売春禁止法を審議する際になかなかつかめなかったのです。ある人は十五万と言い、ある人は十二万と言い、ある人は五十万、六十万と言った。今でもわかりませんよ。これは少くとも青線、赤線だけは四月一日からなくなるのですから、なくなる業者のところに働いておった女だけはっかまなければならぬし、つかみ得ると思うのです。そして、それが矯正保護の対象になるのでありますから、これはあとから具体的な数字にわたっての御処置は伺いますが、警察庁の中川刑事部長にお伺いしたい点は、実際転廃業の仕事を警察庁がおやりになるのではないが、どう動いていくかということを一番よく見ておるのは警察なんですから、どういうふうに見ておられますか。今、岐阜にしろ名古屋にしろ、あるいは静岡にしろ三重にしろ、やめたところがあります。東京でもやめたところがあります。やめたあと、そこに働いておる女子はどういうふうに動いておるかということは見ておられると思います。これはその動き方が一番問題なんでお尋ねするのです。もしおわかりになったら、おわかりになっておる程度でけっこうですから御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/125
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126・中川董治
○中川政府委員 本日当委員会でこの問題が審議されることをよく存じておりましたので、昨日資料を作りましてお手元に差し上げるべくいたしたのですが、行っておりましょうか。表題は「犯罪統計資料」、昭和三十三年二月、警察庁刑事部と題する資料でございます。今の御質問に関する問題は、数枚めくっていただきまして、しまいの方に近いのですけれども、売春防止法施行に関する資料、こういう表題になっておりますが、その第一は、ただいま安田政府委員からお述べになりましたことと符合するのですけれども、まず一番上の欄の(A)欄に掲げてあります数字が、昨年の四月一日の現在いわゆる赤線、青線、その他白線と称せられるものであっても業者と認められるものを、私ども承知できる程度において計算しましたものですが、三万一千強でございます。それが、その次の段に記するような状態で転廃業が行われまして、本年一月末現在の業者二万二千強、こういう状況に把握しております。それから、女子従業婦の数は、一月末現在は目下集計中でありますので、昨年の十二月末現在では、これはいろいろ数字については問題もあるのでございますが、私どものところにおいて一応売春婦と認められるものを計算いたしますと、八万八千、——だんだん減ってきた結果でございますが、九万弱というふうに推定いたしておるのであります。ただし、この数は、三田村委員御指摘のごとく、大へんつかみにくい数でありますので、十五万とおっしゃる方もございますし、十三万とおっしゃる方もあるのでございます。それもそれぞれ理由があるのですけれども、われわれといたしましては、警察官がだんだん調べて売春婦と認められるものを積算して参りますと、こういう数字に相なるのでございます。
それで、御質問の事項のお答えに移るわけでございますが、いろいろおっしゃいますように、法律で禁止するだけでは意味がないのであって、実際上ああいう忌まわしい職業の人たちがだんだん更生されて、ない状態が望ましいのではないか、そういうことについてどういうふうに見ておるかという御質問でございますが、お説の通り、法律を厳正に施行することはわれわれ公務員の当然の使命でございますけれども、その実態が法律に即応するように動いていくことを希望するものであります。それで、いろいろ各省とともに協力して努力しておるのでございますが、何といいましても法律が出ましたので、国民の順法精神にまず期待いたすわけでございますが、それに期待して、関係の婦女子がまず、みずから更生する、こういう自覚に立っていただくように努力して、厚生省を中心にして御指導をやっていただいておるのであります。各地の婦女子の動きについて、全国的にいろいろ厚生省でも御努力願っておりますが、私どもの方で若干わかった面についてその次の表で拾い出して見たのですけれども、たとえば新吉原はどうであるとか、新小岩はどうであるとかいうように見ると、比較的帰郷という欄に属するものが多いのであります。厚生省の御指導その他によって、こうい仕事をやめようということで帰郷をなさる方が割方多い。それ以外に、この欄に出ておりますように、結婚というのも割方あるのであります。それから、他に工員に転出するとか、女給に転出する、また、きめかねておって未定、こういうものももちろんありますが、そういう婦女子の方々が、三田村委員御心配のように、またどこかへ行って売春をやるのじゃなかろうかという点は、非常に本人の不幸を誘発いたしますので、お互いがみな協力いたしまして、正しい道に更生してもらいたいと希望するのであります。この点は、いろいろ厚生省の方で婦人相談所の職員を動員されて相談に応じられたりして御努力願っておりまして、だんだんそういった更生の方向も比較的うまく行っているように私たち承知いたしておるのであります。
それで、一つ三田村委員に御相談なのですけれども、私ども警察としてこの厚生省の施策その他に大へん協力することについてやぶさかではないのでありますけれども、その婦女子をあまり警察が尾行、張り込みみたいなことをやっていくことをしたりしますと、さなきだに、ああしたところにあの人は一ぺんおったことがあるのだということで、雇い主もない。これではかえって更生を妨げるごとになりますので、警察としては犯罪の捜査ということには相当力を用いなければならぬことは当然でございますけれども、更生していこうという婦女子をあまり警察がつけねらっていきますと、りっぱな人が雇ってやろうと思いましても、ああいうところにおった人かというて就職口をかえってふさぐ、こういう点もありますので、そういうことも考えながら、婦人福祉に関する機関の御活動を中心にして、できるだけ警察としてはこれに協力してやっていくということが問題の解明にいいのではなかろうか、こういうふうに考えて努力しているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/126
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127・三田村武夫
○三田村委員 私は、中川さんの御意見の通りで、警察が尾行をつけたり、どこに行って何をやっているか、そういうことを調べて歩いてくれというのではないのです。それは一番にいけないことで、御相談を受けるまでもなく私は反対なんです。ただ、それだからといって、もぐってしまってまた売春をやる、これもよくないことですから、私は、これはひとり警察だけではなくて——警察は第一線の仕事を御担当になっておりますから、どういうふうに動いているかということは警察が一番よく御存じのはずなんだ。これは、厚生省にいたしましても、労働省の婦人少年局にいたしましても、あるいは法務省の矯正局にいたしましても、だんだんそうやって行くところがなくなって集まるのは、今度は厚生省の機関と、それから、この法案の中にあるように、保安処分を受けた者については、これを引き取るのは法務省です。そういう点を考えてみると、これは実は大へんなことで、頭が痛くなるのです。ここでも八万八千という数字が出てくる。これは法案の審議に入りますから後日に譲りますが、婦人補導院に収容し得る者は幾らですか、東京が百名、大阪が九十名、福岡が九十名で、三百人足らずです。他の委託する者がありますけれども……。これは一番どうにもならない者だけ引き取るというのでしょう。けれども、これくらいのことで間に合うものじゃないのですよ。もっとほかに厚生省あたりで手厚い保護とかあるいは手当とかいうものが行き届いておれば別ですけれども、そうでない。法があるという建前からいたしまして、売春防止法五条のこの罰則を適用しなければならない事案が、私はこれだけでは済まぬと思うのです。そうすると、また世の非難は政府の怠慢を責め、政府の怠慢を責めるだけではなくて、私たちが国民の代表として憲法に定められた国政最高の機関としてこの法案を審議し対策を審議する法務委員会の権威にもかかわる。だから、これはいずれゆっくり伺いますが、どうぞこの点は十分御検討願いたいと思うのです。一番これから問題になりますのはひもなんです。業者がなくなってしまうとひもがつく。これは、私が淀橋の警察で聞いたときにも、大がい一人に一人はひもがついおるこれはだれか調べてきたのがおるのでありましょうが、この資料によりますと、ウ匠がウを操るようにひもが操っている。それも、操っているウ匠は一対一じゃなくて、一対三、一対四だというのです。そして、「女たちの首に巻きつけたひもをしっかり握って離さず、色と欲との二道かけて生きるやくざたちがいる」というのです。私はこれはあまり大げさな記事じゃないと思う。私自身が調べてきたんだから。それで、このひもになるやつは、いわゆる町の暴力団、グレン隊です。これはあとから別の問題になって参りますが、グレン隊を検挙して手帳を見ると、「十二月二十四日、テ百、ネ三百、へ五百」と書いてある。このテとかネとかへとかいうのは女の符牒なんです。ついたひもがテから百円、ネから三百円、へから五百円巻き上げているわけなんです。こうなると、これは警察の仕事です。最も悪質な社会悪ですよ。こういうものの対策も十分に考えていただきませんと、せっかく売春業者をなくしたのは社会史上、風俗史上画期的な一つの出来事であるけれども、変なところでひもをつけられて、より悪質な業者が出てくる。これでは全く困るのです。こういう点はまたゆっくり他の機会に伺いますが、きょうは時間の関係であとの問題に移りま関す。
昨年の九月の十八日に、売春対策審議会会長管原通済氏から総理大臣岸信介氏あてに、売春防止法の全面施行に備えての必要措置についてという意見書が出ております。一から二、三とあります。一は保安処分に関する立法措置であります。二以下更生対策。これは内容が非常に具体的で範囲が広いものでありますから、一々伺いませんが、たとえば婦人相談所の未設置とか、あるいは婦人保護施設の手当とか、これはおのおの政府から地方庁に通牒が出ておると思います。これは厚生省の所管ですか、売春対策審議会会長の総理大臣あて意見書に基いた措置はどの程度実行されておりますか。簡単でけっこうですが、御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/127
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128・安田巖
○安田(巖)政府委員 婦人相談所の未設置のところがあるので、直ちにその開設を促せということでございますが、これは大体昨年の暮れまでに全部の県に設置済みでございます。それから、婦人相談員の設置が定数に達しないということでございます。これは、四百六十八の定員に対しまして、現在六十一人の欠員がございます。これは、主として、県でなくて市に定数を配置しました場合に、その市に対する規定が義務設置になっていないために、そういったようなところがあるわけでございますけれども、これは、私どもの方で、置かないところは引き揚げて必要なところに回す措置をせっかく講じているところであります。それから、婦人保護施設の設置、これは非常におくれまして、そのために、この意見具申によりましても、あるいは都道府県の義務設置とするよう法律の改正をしたらどうかということが書いてあるのでありますが、これも、昨年の十月ごろまでいろいろ転廃業が進まなかったために、現実にそういった収容するような婦女子が出てこなかったということも一つの原因かと思いますが、いずれにしても非常におくれました。最近、一月になりまして、大体全府県がこれを置くことの目鼻がつきましたので、一応そういった義務設置の法律の改正をする必要がなくなったような状況でございます。それから、各都道府県、五大市に売春対策本部を置くというようなことも、県自体で、従来のやり方でやるとか、いろいろ工夫があるようでございますが、必ずしも画一的に参りませんので、現在では四十一府県に売春対策本部を設置いたしまして、売春対策全般についての推進の中心になっておるような次第でございます。全般的に見まして非常におくれましたけれども、昨年の十一月ごろから急速にそういった措置がとられて参りました。あとわずかの期間でございますが、全国的に進むように指導いたして参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/128
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129・三田村武夫
○三田村委員 時間もなくなりましたから、総括的に、最後にまとめて法務大臣に御所見を伺っておきたいと思います。
先ほど冒頭に申しましたように、委員長に御了承願っておきますが、具体的な事実問題に対する質疑は後日に留保いたしておきます。
法務大臣に、根本対策についてお伺いいたしたいと思うのでございます。先ほど来申し上げておりますように、売春というような忌まわしい、いやな行為がわれわれの社会からなくなったらいい、なくしたいということについては、何人も異論がないと思います。なくしなければなりません。文化的な民主社会の恥ずべき社会悪であることは言うまでもありませんが、果してなくなるだろうか、どうしたらなくすることができるか、ここに根本の問題があり、根本対策の研究工夫というものが必要になってくるんだと私は思います。原因はもとよりいろいろありますが、一体何だ。これは、一つは経済的貧困から来るものであります。つまり貧乏です。その貧乏と、長い人間生活の中にいつの間にか根をおろしてしまった社会的風習、この二つは、売春の業というものを社会の一部に存在せしめ、売春行為というものを存在せしめる原因になっておると思う。つまり、人間の本能的欲望と享楽を対象に生まれてきた社会構造の一部分であります。従いまして、売春行為、売春業者のあり方は、その時代の時代的環境あるいは経済的、社会的条件によって常に変ってきております。いつの時代でも、その時代の人間社会に好ましい存在でないことは言うまでもありませんが、それはそれなりに存在理由はどこかにあったというところにわれわれは目を向けなければいけないと思います。映画や小説に出て参ります室町時代の白拍子とか、あるいは江戸時代の吉原、鳥原、明治時代に入って今までありますあのいわゆる遊廓、こういったものは、それは封建的な権力社会に芽生え、育ってきた一種の社会悪でありましょう。けれどもが、それはそれなりにその時代のどこかに存在理由があったと思われる。今日以後はなくしなければならぬ。人間社会が今日のごとく科学と知性によって構成され、前進し、進歩していく世の中になったのでありますから、売春問題についてもこのような観点から私はその対策を検討していく必要があると思います。いずれここで論議されると思いますが、たとえば常習売春といいますか、防止法の第五条の対象になるような者でも、これを従来の刑法概念で律することは無理だ、間違いだ。一体こういったものがどこから出てくるのだということにわれわれは深く思いをいたして、その社会的、経済的条件というものを掘り下げて、これをなくしていくということが政治でなければいけないのだ、同時に民主国家の行政的任務でなければいけないのだということであります。従って、第一に社会環境を変えていくことなのだ。どうして変えていくか。これは教育もあります。あるいはまたその集団の社会的秩序といいますか、そういうものを確立していくことも必要であろうと思います。すなわち、経済的原因——貧乏なるがゆえに食うために売春をやるような社会的、経済的欠陥をなくする。岸総理の言う貧乏追放と非常に重要な関係があるのであります。根本はそこまでいかなければならぬと思う。つまり、これは社会保障の大きな一環でありますが、同時に、単なる社会保障でなくて、人間社会の環境、社会的構造というものにわれわれは目を向けて、もっと前進せる一つの新しい構造を持っていかなければいけないのだ。それは、古い封建的文化認識あるいは科学認識ではなくて、今日は宇宙時代とまで言われ、科学と知性というものが人間社会の基本的条件であるならば、その科学と知性によって裏づけられた社会構造というものをみんなで作り上げる、教育者もあるいは文化人もすべての者が協力して作り上げるということが私はどうしても必要だと思うのであります。いろいろなこの問題についての見方はありましょう。しかしながら、知性と愛情を基盤とした新しい社会的規範というものが生まれてくる、言いかえますならば、売春行為そのものが恥ずべき行為だ、隠れてやろうと公然とやろうと、他人に恥かしいというのではなくて自分の心に恥しかいのだ、こういう環境を作らなければ、これはなくなるものじゃない。そこまで法律は踏み込んでいけません。せいぜい法律の踏み込んでいけるものは、憲法の条章にある公共の福祉に反しない限度において社会的悪を除いていく、立法的処置で除いていくか行政的処置で除いていくか、そのいずれか二つしかないのであります。それだけでなくて、環境を変えていくのだというところに大きな使命がなければいけないと思います。これは人員が幾人だから幾らの予算ということではいけないと思う。大蔵省の主計官も来ておられるようでありますから、私は切実に申し上げておきたい。そういう簡単なことじゃないのです。これは全体に関連する大きな社会的病根でありまして、ひとり青少年犯罪の問題を取り上げてみても、年々ふえていく青少年の犯罪、ここに社会人が、新聞人がレポートした事実がたくさんありますが、そういったものがどんどん伸びていく姿をそのまま放任しておいて、ただ法律の処置だけやっても、なくなるものじゃない。それなら、単純売春を刑罰の対象にして、売春行為そのものを罰するか。これはもう大へんなことで、こういうことになれば、私はもっと大きな人権問題が起き、社会問題が起きると思うのです。そして、自然法の建前をとっておる今日、刑法的に見たって、単純売春そのものを刑罰の対象とすることは、法体系の上から見ても非常に疑義が多いし、現在の訴訟法の関係からいけば不可能であります。いわんや、あそこにも臨検が始まった、ここにも臨検が始まった、若い夫婦が土曜、日曜一日を楽しもうと思っても警察の対象になるのだということになったら、人間生活というものは味もそっけもなくなってしまう。そうでなく、一つの社会的環境を作っていかなければならぬのなら、法務大臣に大いに勇気をふるっていただいて、今年度は間に合わぬかもしれませんが、少くとも画期的な、むしろ革命的とも言われる売春防止法完全実施を契機として、この好ましくない社会悪を除いていく努力が私は必要であると思います。これは私の意見の一端でありますが、一つ、根本問題にどのようにメスを入れていくか、根本対策の基底となるものをどこに置いていくかということについて法務大臣の御所見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/129
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130・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 売春防止の基本的の考え方についてのお尋ねでございまして、この問題のいかにむずかしいかということについてのだんだんの御意見、なおその他の御意見については、私も大体同感でございます。ただいまお言葉にもありました通り、これは長い期間社会的に大目に見ておったことを一挙に改めようということでございますから、わが国の社会史、風俗史、文化史等においては全く画期的のことでございます。今日といえども法律の表ではこれを禁止しておりますけれども、実際においては大体野放しになっておったわけでございます。それというのも、ただ法を軽視するというのではなく、いかにこの問題の法律によって禁止することの困難であるかという根本問題がそこに現われてきておったわけであろうと思うのでございます。そういうようなわけで、一片の法律でこれを清掃することができないということで長い間大目に見られておられたわけでございます。しかしながら、この売春行為というものが社会悪であることには変りはないのでございますから、売春防止法というものが社会の要求としてできてきたことは当りまえであると考えております。いよいよ四月一日から刑罰規定の実行にも入るわけでございますが、この問題の根本は、だんだんと御意見のありましたように、まず経済の面に相当根深い原因があると見なければなりません。お言葉にもありましたように、端的に言えば貧乏の追放、この問題が政府の施策によりまして解決いたしますならば、この問題もおのずから流れてしまうようにも思います。それからまた、もう一つには、健全なる道徳観念の養成、健全なる社会風俗の確立、こういうふうな面からも考えていかなければならぬと思うのでございまして、これらの点こそほんとうに売春を世の中から追放する根本の施策と考えておるのでございます。その意味から申しますれば、法律や処罰をもってこれに臨んで、そして売春を絶滅するというようなことは、極端な言葉で言えば末のことであるように私は思うのでございます。しかしながら、あらゆる政策をこれに集中いたしましてこの社会悪を清掃しなければならぬ。その意味におきましては、われわれ法務担当の者といたしましては、まずこれを犯罪として——今日まで法の規定はありますけれども、それが完全に実施できておらなかった。このたびは新たに売春防止法を制定してこれからはこれを法律をもっても取り締る、こういう建前になったのでございますから、私どもの立場といたしましては、法による矯正という部門を担当いたしておるわけでございます。しかしながら、この犯罪につきましては、先ほどもお話のありましたように、普通の犯罪とこれを同一視して検察の仕事をするということは、これはどうかと考えるわけでございまして、もちろん、業者であるとかあるいはひもつきというような者につきましては、これは仮借するところなく検察をいたしていきたいと思っておりますけれども、婦女子につきましては、いわゆる罪を憎んで人を憎まずという昔からの言葉があるように、そういうような考え方をもってこれに臨みまして、そして、刑罰をもって処罰するということよりは、これを補導し善導して、健全なる国民、健全なる市民として戻ってくるように、こういうことに主眼を置きまして検察の仕事もやっていきたいと考えるわけでございます。これにつきましては、だんだんと厚生省の方であらかじめの転廃業についての十分な施策をやっていただきたいと思います。また、文部関係におきましては、健全なる道徳観念、健全なる社会慣習の確立という方に力を注いでいただきたいと思いますが、それでもなお一朝にしてこの違反者をなくすということはできなかろうと思いますから、不幸にして法に触れる者ができてくるというようなときには、刑事政策としては、先ほど申し上げましたような心持をもってこれに臨みまして、そして、この補導院法でごらんの通り、刑罰というよりは保安処分でこれを善導し更生保護するという建前をもちましてこの補導院に収容して参りたい。これも人数等は必ずしもこれで十分とは考えておりませんけれども、とにかく初めての試みでございまして、できるならば転廃業が円満に参りまして、そして補導院に連れてこなければならないというような悪質の違反者がなるべく少いことを希望しておるわけでございます。
まだ申し足りないこともございますけれども、だんだんお尋ねによって申し上げたいと思います。私のこの問題に対する根本的の考えは以上申し上げた通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/130
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131・町村金五
○町村委員長 吉田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/131
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132・吉田賢一
○吉田(賢)委員 本日は時間がありませんのでごく簡単に二、三の点を伺うことにとどめて、残余は一切保留したいと思います。
きょう議題になっておりまする婦人補導院設置についての法律案並びにこの売春防止法の一部改正の法律案は、法律案は簡単でありますけれども、きわめて重大な社会的背景と根底を持っておるものと思っております。ことに昨年は御承知の通り国会におきまして数名の同僚がその犠牲者になったというような不祥な事件まで巻き起ったのでございます。あるいはまた、問題それ自身は、きょうの資料によれば、八万八千という従業婦人の更生の対策もあり、あるいは業者の転廃業の問題もあり、風紀衛生に対する各般の問題もあり、政府のなすべき行政的、立法的あるいは犯罪取締り的な問題もあるし、その他綱紀粛正等に関しまして各般の問題を持っておりますので、法律案それ自体は簡単なようでありますけれども、このような広範な背景と根底をなすこの立法につきましては、各方面から検討をする必要があるのではないか、こういうふうに考えておるのであります。従って、たとえば総理にも聞き、あるいは予算を要求された各省庁、最高裁判所等の一切の御出席を願って承わらなくちゃならぬと思うのでありますが、先ほど申し述べましたように、きょうは二、三の点にとどめておきます。
まず第一点は、法務大臣に伺いたいのであります。三田村委員の当初の質疑に予算の問題を触れておりました。これは非常に重大なことでありまして、予算のワク自体を伺いたいのでありまするけれども、やはり予算の要求、予算査定という問題をめぐりまして社会的に大きな波紋を画いたことは御承知の通りであります。これは、一方におきましては、一体政府は四月から完全実施と言うておるけれども、予算査定の実績から見るならばほんとうはやる気はないんだ、そうして昨年来の延期の運動あるいは膨大なる転廃業融資の獲得運動、国家補償の運動、こういうようなものを現実的に合理化するような一つの手段に使うんじゃないかという憶測まで実は立てられておるので、これがあなた方の耳に入ってくることは実に遺憾だと思うのです。そこで、私の聞きたい点は、たとえば法務省の三十二年度の予算を見ると、予算要求が二億七千万円に対して最終査定がただの三百万円なんです。二億七千万円予算を要求して、大蔵省の査定が三百万円、私は、大蔵委員会に入りまして、ときの池田大蔵大臣や主計局長に来てもらって、一体この査定は何ですか、同じ政府の内部においてこんな大きな見解の違いがあることは、この問題に対する認識、理解の食い違いから来るんじゃないかということまで実は伺った次第であります。そこで、本年の実績に徴してみますると、本年は法務省関係としましては十億六千余万円を要求されて一億二千余万円ということになっております。要求に対して一割二分しか大蔵省は査定をされておらない。こういうふうなことになりますると、やはり閣僚の内部におきまして、あるいは政府の内部におきまして、この法律の完全実施ということを強く妨害するような力が働いておるのではないだろうか、そうなら大へんであります。ほんとうに大へんであります。そこで、閣僚といたしましての法務大臣は、政府の内部におきまして、この問題に対する見解、認識が一致しておるならば、法務省初め各省が二十一億円も要求いたしまして、ことしのごときはわずかに五億一千二百万円というのでありまするから、全く面目まるつぶれというか、これは、その施設要求の理由、必要、こういうものに対する考え方が根本的に違うのではないかとさえ考えるのであります。一体そんなに考え方が違っておったのか、それとも、要求した各省庁が、施策要求の根拠を誤まっておったのか、これらの点についてはどうなっておりましたか、一つ御答弁願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/132
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133・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 政府におきまして、売春防止法の実行につきましては、これは四月一日から刑罰規定をもあわせまして完全に実施するということについて何ら意見の相違はございません。政府全体といたしまして、この法律の精神を体して十分にこの法律の趣旨が達せられるようにしなければならぬという決意を持っております。半年ばかり前まではあるいは四月一日の刑罰規定の実施が延期されるのではないかというようなあだな望みを持っていろいろと風評を立てておった者もございますが、その当時私どもがしぱしば言明いたしました通り、四月一日からの実施は絶対に延期はいたさんという決意を表明いたして参ったのでございますが、その通りその決意をもって進んできておるわけでございます。でありまするから、いよいよ四月一日になりましてからの刑罰規定の実施等につきましては、従来から申し上げましたような決意をもってこれに臨むつもりでございます。
ただいま予算の点につきまして二十億前後の要求額が五億前後になった、四分の一ぐらいに査定で削減されたではないかというお話もございました。これはその開きが多過ぎるではないかというおとがめでございますけれども、予算の要求と査定はいつも相当額は開きます。ただ、この場合において普通の平均の開きよりも多いんじゃないかという御疑念のように存じますが、私どもの方の法務省関係におきましても相当の開きがございます。これは、先ほどもちょっと申し上げました通り、初め、転廃業が果して円滑にいくかどうか、転廃業が円滑にいかないと四月一日に入って違反者がどんと出やしないかという心配もございましたが、その後は、厚生省また警察方面などの尽力によりまして、まずまず順調に参っておるのではないか、予算要求の当時予想したよりは順調に参っておるのではないかと考えられます。それから、私どもの方の関係におきまして、補導院の金が要求額の相当多くの部分を占めておるのでございますが、これはその当時は新設予定でございましたが、その後大蔵省とだんだん相談をいたし、探してみましたところが、既存の国有建物が転用できるということになりましたために、それらでも削減ができたのでございます。それから、検察費等におきましても、まずおおよそこのくらいを計上しておいて、そして足りない場合にはまた補充使途的に予備費から出す、これは従来の慣例がそうなっておりますので、その意味の査定も受けております。しかし、端的に私が正直に申し上げますると、何分にもこれは初めての試みでございまして、画期的のことでございまして、転廃業が完全に参り、世の中もこの法の実施に協力していただければ違反者が出ないようになりはしないかというふうにも考えられます。それから、転廃業をしても、経済的な理由があるからなかなかそう簡単にいかない、相当の違反者が出るだろうという見込みも立つわけでございまして、それでは過去においてこういう場合の参考となる数字があるかといえば、これは初めての試みでございますから、数字的に証明するような基礎資料もないのでございます。はなはだ不謹慎な言い方かもしれませんけれども、やはりこういう新しいことをする際には見込みということで参るより仕方がないと思うのであります。従来の計数で利用できるものはどこまでも利用していかなければなりませんけれども、何分にもこういうことをしたことがないので、どういうふうに見込みを立てるかということが一つの問題になるのでございます。そこで、大蔵省とも予算の折衝をいたしまして、私どもの方としては相番の違反者が出やしないかという見込みで相当額を要求したのですけれども、大蔵省をして承服せしめるだけの基礎資料というものもございません。そこで、まずとりあえずこれだけの経費で実施してみる、どうしてもこれではまかない切れないで金の関係から法の施行に支障を来たすというようなことがあれば、その際においては、補導院のごときものも、他にまた今日の国有建物で転用できるものもあろうし、予備費をもって何分かの修復を加えて転用するというようなことを相談いたしまして、とりあえずはこの三カ所で出発してみるということで、この予算はもとより不十分とは考えましたけれども、一応決定いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/133
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134・吉田賢一
○吉田(賢)委員 さる有名な政界の幹部の方の話として伝わるところによると、四月からは売春法がなくなるから売春予算というものはほとんど要らないのじゃないかというこを、冗談かしらぬが言ったというこであります。そういう認識の足りないところもあるのじゃないかとさえ思うのであります。私の申し上げるのは、きょうは多くは触れませんけれども、たとえば、女子少年院の整備経費が一億三千九百万円請求されている。これは例になっております。去年もそうです。女子少年院の整備というのは、おそらくはこの新しい婦人補導院の法律に漏れる少年を収容する目的であろうと思うのです。これは今の建物の問題とは根本的に違うのであります。でありますから、こういう問題について大蔵省を説得するだけの基礎資料がなかったということでは、全く政府の不統一を暴露している以外の何ものでもないのであります。予算は大蔵省がきめるのでも何でもないはずであります。あなたは閣僚の一人として一つの基本方針を持って臨んでおられるのだから、こういう重要なものが消えてしまってはこの法律が半身不随になると思います。婦人補導院法が半身不随になるのではないかとさえ考えます。しかし、これはあとのことにしまして、きょうは少し基礎的な問題を二、三伺うにとどめておきたいと思います。
一つは、この婦人補導院法なるものは、第一条と第二条が基本的な規定であろうと考えるのです。そこで、この第一条を受けまする売春防止法の一部改正法律案の第十七条によりまして、「第五条の罪を犯した満二十歳以上の女子に対して、同条の罪又は同条の罪と他の罪とに係る懲役又は禁錮につきその執行を猶予するときは、その者を補導処分に付することができる。」、防止法の五条の罪を犯した者で執行猶予を受けた者が補導処分の対象になっておるようであります。そういたしますと、こういう点はどういうことになるのでありましょうか。私も深い研究はいたしておりませんので、そのおつもりで御答弁も願いたいと思うのでありまするが、大体、執行猶予の制度というものは、情状等によりまして実刑を科する必要がないという者に自由を与えることによって刑の目的を達しようというのが根本の趣旨ではないかと思うのであります。そういたしますと、この五条の罪を犯した売春婦に限って執行猶予になった場合にさらに補導院に強制収容せられる。補導院が任意に出入りができる場所なら別でありますけれども、強制収容されるということになりますると、実刑を科されて刑務所につながれるというのが自由を与えられて執行猶予の恩典に浴す、これがまたこの罪を犯した者に限って補導院に強制収容せられて補導の対象になっていく、こういうことは、結局執行猶予によって与えた自由を束縛する、その恩典を剥奪することになるのではないだろうか。五条の罪を犯した成人である女子だけがこのように執行猶予の恩典に浴しないということ、これは憲法の基本的人権にも影響すべき問題が内在しておるのではないだろうか、こういうふうに思うのでありまするが、この点に対する御見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/134
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135・竹内壽平
○竹内政府委員 十七条の補導処分に関しまして、「執行を猶予するときは」という書き方からして、ただいま御質疑のような御疑念が起ると思うのでございますが、これは、実際の意味が、執行猶予にするときに補導処分をさらにつけ加えてするというふうな、そういう内容のものではございませんで、実刑に処すべきような場合に補導処分に付することができるのであります。その場合には、刑事手続に乗せます関係上、その自由刑につきまして執行を猶予するという裁判をしなければならぬというふうに書いたのと同じような意味におとりを願いたいのでございます。ただいまの点につきましては、売春対策審議会でも討議されましたし、本法案のような補導処分は実刑と保護観察による執行猶予とのいわば中間的なものと考えられたものでございまして、売春婦の更生のために必要な措置であるというふうに考えておるのでございます。執行猶予というのは、申すまでもなく刑の執行を猶予するというのでごごいまして、その間に補導処分に付することを許さないという本質的なものではないというふうに今考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/135
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136・吉田賢一
○吉田(賢)委員 一体、補導処分というのは、刑罰的な意味を持つものであるのですか、あるいは、いわゆる保安処分の一種というふうに解すべきものなのですか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/136
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137・竹内壽平
○竹内政府委員 補導処分は保安処分の一種であるというふうに考えておりまして、その内容は、処分に付せられる者の主として保護更生を内容とするものである、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/137
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138・吉田賢一
○吉田(賢)委員 保護更生という目的は持っておる、それはわかるのです。そうではなしに、補導処分に付せられましたならば、一部改正法律案の十七条の第三項によりまして、婦人補導院に収容する、こういうことになっておりますが、この収容というのはやはり強制収容でございましょうし、強制収容であれば、やはりこれは自由を剥奪するということにおいて変りはない。収容の暁、補導し、保護し、更生に導くというような各般の行政的措置があることは、これはもちろんでありますけれども、強制収容するという点におきましては、やはり一種の刑罰的な意味があるのではないかと思うのですが、重ねて一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/138
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139・竹内壽平
○竹内政府委員 御指摘のように、婦人補導院に収容しますのは強制収容でございますので、いかにも強制力が加わる関係から刑罰のようにお考えになる向きもあろうかとは存じますが、一体この保養処分と申しますのは刑罰ではないのでございまして、御案内のこととは存じますが、刑法の改正仮案というのが昭和十五年に発表されております。その中にも保養処分というものが一応考えられておりまして、日本の刑法は、もし仮案の通りにできますならば、刑罰と保安処分との二本立によって臨んでいこうという態度を示しておるのでございます。その刑法改正仮案の規定しております保安処分というのは四種類掲げてございますが、この補導処分は保安処分だと私ども申しておるわけなんでして、それでは、その刑法仮案の保安処分との関係においてはどういうふうに理解したらいいかということを申し上げることによって、これが刑罰でないということに御理解がいただけると思うので、申し上げたいと思います。
仮案では、矯正処分と労作処分——そのほか監護処分などがございますが、仮案で申しますとこの二つの性質を帯びたものが今回の補導処分であるというふうに私ども考えておるのでございます。この矯正処分と申しますのは、仮案の規定からいきますと、酒を飲んだ、あるいは麻薬を使ったという習癖がある者に対して、めいていだとかあるいは麻酔の状態で罪を犯した、そういう習癖を矯正する必要がある場合に言い渡されるというような規定の仕方になっております。習癖の矯正という点におきまして補導処分とよく似ておるわけでございます。また、他方、労作処分と申しますのは、浮浪者だとかあるいは労働嫌忌の常習として罪を犯した、そういう者に対して言い渡すということになっておりますが、この補導院に入れますことは、やはり規律ある習慣をここで打ち立てようということをねらっておるものでございまして、この労作処分にも一部似ておるのでございます。いわば、この補導処分と申しますのは、仮案の方から申しますと、矯正処分あるいは労作処分といったようなものの考え方を取り入れてあるものであります。なお、保安処分の目的となっておりますものは、本人の保護ということでございまして、この保安処分には本人の保護を目的とする保安処分と、社会を犯罪から守るというためにと言い渡す場合と二つございますが、この補導処分は、本人の保護を目的とした、いわば少年法と同じ考え方に立ったものでございまして、これが、売春対策審議会で保安処分として何らかの立法を考えろ、こう御答申になっております趣旨をできるだけくみ取りまして考えたことでございまして、これをもって刑罰であるというふうには考えておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/139
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140・吉田賢一
○吉田(賢)委員 成人に対する保安処分であって刑罰ではない、少年法と同じような保護を目的にするような御趣旨であるということでありますけれども、やはり、少年と違って成人でございますから、おそらくは子供があり、夫を持っている人が相当数あるだろうと思いますので、単なる保護ということよりも、むしろ新しい人生の荒波になるべく早い機会に復帰するということへの各般の努力が目的にならなくちゃならぬかと思いますので、そういう観点からいたしますと、やはり全体としてこれは法務省で扱うということの方が、何か実質と趣旨、目的にぴったりくるように思うのでありまして、これはやはり補導院の目的達成のためにそうあるべきでないかというように思うのですが、この点に対する大臣のお考えはいかがでありましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/140
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141・渡部善信
○渡部(善)政府委員 私からお答え申し上げます。
ただいま仰せのごとく、婦人補導院は法務省関係の施設として設けるのでございますが、これはここに収容せられます婦人たちの更生をはかっていくためでございます。しかしながら、この婦人たちは、ただいま刑事局長より御説明申し上げましたごとく、本来ならば刑罰に処せらるるような婦人たちなんでございます。それを、こういうふうな保護の観点から本人たちの更生をはかっていこうという趣旨にほかならないわけでございます。こういうふうな婦人は相当売春の習癖等も進んだものと考えざるを得ないのであります。本人たちの任意でこれを更生していくということのできないような婦人たちを対象としておるのでございます。従いまして、さような任意に更生したいというような意欲のあります者は、おそらく厚生省関係で保護指導をしていただくことに相なるわけでございますが、さような線に乗らない婦人たちを婦人補導院に入れて将来の道を立てさせてやろうということなんでございます。従いまして、ただいま吉田委員の仰せのごとく、自由を拘束してやらざるを得ない場面もあるわけでございます。従って、かような自由を拘束するような処分では、やはり厚生省の所管にあらずして、裁判の執行としてやる役所として法務省所管とすべきものだというふうに、私考えておるのでございます。
そこで、ただいま刑罰と補導処分との関係について御質問がありましたので、私ちょっとその点について一言触れさせていただきたいと思うのでございます。この身柄を拘束するということは、なるほど、仰せのごとく刑罰に類似したものではございますが、一番類似したものは、少年法に基く少年院送致の手続が最も酷似した手続だと私は思っております。これは、しかし、御承知のごとく、刑罰にあらずして保安処分として現在執行いたしておるのでございます。その点、最も明らかにわかるものは、少年たちは無犯者に対しましてもこの処分ができるということであります。刑罰でありますならば、法に触れた者でなければ私はできないことだと思うのでございますが、この少年院送致は、法に触れざる者に対しましても行うことができるわけでございます。決してそれは刑罰のものではないということを私は言うて差しつかえないと思うのでありますが、さような趣旨から、身柄を拘束するものはすべて刑罰類似と言うことは私はできないと思うわけでございます。目的が那辺にあるかということにあるのではなかろうかと私考えるのでございます。従いまして、婦人補導院の補導処分というものは、なるほど判決によりまして刑事の手続をとって進行していくものではございますが、その本質におきましては、少年法における少年院送致のこの手続、処分と同様に保安処分、本人の保護更生というものを主眼点といたしました保護の処分であるというふうに私考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/141
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142・吉田賢一
○吉田(賢)委員 この二章五条違反者を婦人補導院に入れる、そして生活の指導なりあるいは職業補導を行う、こういう趣旨のようでありますが、どうも目的がはっきりしないように思われるのであります。といいますのが、これによりますと、成年以上の者である、それから、罰金以下の者はこの中に入っておりません。懲役、禁錮等についての執行猶予という者でありますから、そうしますと、心身の状態を改善しまして、家庭とか社会に復帰するというためには、むしろ罰金以下の者の方が可能性が多いのではなかろうか、またその必要性も大なるものではないであろうか、そしてまたその数も多いのではないだろうか。これに反して、この十七条によって処分を受けます者は、しばしばこれを犯して常習者となって、そして年令もたけて、言いかえるとどうにもこうにもならぬ人を入れるということになるのではないか。目的が常に家庭、社会にほんとうに復帰を望むために補導するということであれば、罰金以下の人をどうして漏らしてしまうのであるか、この点大きな矛盾ではないか。要するに、これは根本的に補導院施設の目的が明瞭でないということに原因するのではないかとも考えるのですが、これらの点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/142
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143・竹内壽平
○竹内政府委員 御指摘のように、補導処分を受ける者よりも、あるいは罰金等の軽い処分を受ける者の中に要更生保護と申しますか、そういう処置を、あたたかい手を伸べてやらなければならぬ部類の人が多いのではないかという点でございますが、これはまさしくその通りでございまして、その方面につきましても、あるいは検察庁において起訴猶予の制度を活用いたします際に、今回の売春予算でも認められておりますが、更生保護のための婦人相談所というようなもので、保護観察官を中心としたそういったような更生保護の手当をしながら起訴猶予にするというような処置を一面において講じておるのでございまして、それはそれをいたしまして、この保安処分は、実刑に処せなければならない、もしこの保安処分がございませんければ当然刑務所に入れなければならない、こういう種類の婦人たちに対して、刑務所に入れるということでは目的を果たしにくいのではないか、もっと言葉を変えて申しますならば、売春婦たちには悪いことをするという違法な考え方はありましょうけれども、責任性と申しますかそういう面から申しますと、ある意味で責任を追及し得ないような社会構造のもとにおいてこういう事犯は発生するのだというふうな考え方をいたしますと、まさしく法律的な意味から申せば責任限定者と申しますか、そういうようなたぐいの人たちでございますし、それからまた、勧誘という罪はいわば軽い罪でございます。警察犯のような罪でございます。そういう人たちを、前科も重なってくればどうしても実刑にやらなければならぬ、こういうような事態になるわけでございますが、そういう場合に、そういう人たちを実刑にやるかわり補導院に入れて補導処分で更生の道を開いていこう、こういうのがこの改正法の主要な点でございまして、前におっしゃった、罰金等で軽く扱うべき人たちを放任しておいてやるというのではございません。法律はなるほど実刑にやるような者についてのみ規定をしておりますが、その前提としまして、軽い者についても手を伸べるということは当然だという前提に立っての処置でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/143
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144・吉田賢一
○吉田(賢)委員 どうもはっきりいたしません。それはなるほど罰金以下の者は婦人相談所その他で何とか救済の道を講じていくということの前提もお持ちになっているかもしれませんが、要は、画期的なこれは制度であるし、八一万数千を一応対象としていろいろな施設を行わなければならぬときであるのでありますから、やはりこれは成年者及び懲役以上の者を対象にするということはあまりに狭きに失して、これらの罰金以下の者を現在の施設で救っていくということはあまりにも無謀ではないだろうか。これはやはり、この法律は法律として、ないよりもましですから、私どもは終局において通したいのですけれども、こういう矛盾とか欠陥は一応は今後の問題として一々取り上げていかなければなるまいと思われるのであります。だから、これらの点につきましても再検対せられて、そうしてさらに補充するという機会をお持ちになることが必要ではないか。必ずしも補導院とは限りません。この点について一つ大臣に御用意を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/144
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145・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 罰金以下の者の方が保護更生もしやすいし、導く対象として最も適当しておるのではないかというお考えはその通りと思います。しかし、これをまた補導院へ入れるということになりますと、これは一つの問題になりはしないか。一番初めに吉田委員からお話のありました通りに、一度執行猶予にした者をさらにこの補導処分で自由を制限するということは何か人権じゅうりんみたいではないかというお心持だと思いますが、それと同じような心持で、罰金刑の方が軽いわけですから、懲役というように自由を拘束しない、その程度に至らない、罰金だけを科したという者に補導処分となりますと、刑罰ではございませんけれども、やはり自由を拘束するということで、ある意味においては重くするようなふうにも思われるものですから、ほかの方法でこれを考えなければならぬということ、こういう考え方が出発点でございます。しかしながら、こういう売春の常習に染まりかかっているというような人はどうしても救わなければならないのですし、それを救うことがまた本人のためでもありますから、私もこの保安処分については専門の知識はございませんけれども、この保安処分というものを生かして、そうして徹底的に保安処分の制度を日本に移入すれば、やはり吉田委員のお考えになったような方法が一つ成り立つのではないか。私のしろうとして知っておるところだけでも、たとえば麻薬の常習者、これは別に犯罪ではないけれども、本人のために不幸であるし、また社会もそのために迷惑をする。犯罪ではないけれども、そういうような人を保安処分で一定期間自由を拘束する。自由拘束の点においては人権じゅうりんのごとく見えるけれども、結局においてその本人の更生のためだから、保安処分を広く立てて、そしてこれを保護するという意味で自由を拘束する。これは自由を拘束して矯正しなければ直らないのですから。あるいはまた泥酔者、酔っぱらいなんかを保護する。これは犯罪ではないけれども、やはり本人がどういう間違いを起すかもしれぬ、また周囲も迷惑するというようなことで、罪ではないけれども自由を拘束する。こういうようないろいろな観点から保安処分というものを活用しなければならぬという意見があるそうでございます。そういう意味から申しますれば、罰金以下の刑の者もお指図のように保安処分的のことでこれを保護矯正する、これは一つのりっぱな意見になると思いますが、今日までわが国の刑事政策としては保安処分を思い切って取り入れるというところまでは行っておりません。改正刑法仮案などでも、研究は積んで一応の案はできておりますが、今学者、専門家の間でそれを非常に熱心に論議してもらっておる段階でございます。これは将来の重要な研究課題となると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/145
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146・吉田賢一
○吉田(賢)委員 私の一応の御質疑をお取り上げになったので、これはまた逆にお返しておかなければならぬのですが、法務省の刑事局長の御答弁は、保養処分は刑罰にあらず、そして保護を目的とする、こういう趣旨でありますから、その趣旨、精神を一貫して参りますならば、やはり罰金刑につきましても適切なる補導処分はあり得るというふうな観察もでき得るのであります。そういう趣旨におきまして、ずっと広げる必要が確かにあると思うので御質疑したわけです。それから、この補導院の内部の指導の問題は相当問題がたくさんありますが、これは後日に譲ります。
それから、もう一つ伺っておきたいのは、一体この種の犯罪、この五条違反という犯罪、これは法務省も、大臣、局長も一致せられておるごとくに、やはり普通の刑事事件とは違いまして、社会的な原因もあり、あるいは心身の故障等もあり、貧困等もあり、そして非常に軽い犯罪である。こういうような場合に、これを裁判するのに、普通の刑事裁判所がこれを扱うのは一体どういうわけか。刑事局長は保護の問題について少年法を引用しておられました。少年法、児童福祉法等のいろいろ近代的な考え方になり施設なりがこの種の法律に多分に取り入れられていることは当然のことでございますが、それならば、やはりこの場合におきましても、現に家庭裁判所というものがあるのであります。家庭裁判所が、家庭のいざこざその他少年保護事件等々を取り扱いまして、売春事件とは若干違った雰囲気をかもすことは、これは事実でございましょう。けれども、家庭裁判所の方が、司法裁判所、普通の刑事裁判所に比較いたしまして、保護とか、指導とか、あるいは本人のみずからの原因ではなくして社会的貧困等の原因から犯した微罪、こういうものを扱うのは、やはり家庭裁判所を作った目的にむしろぴったり合うのではないだろうか。どうしてこれを家庭裁判所の所管と明らかにしなかったのか、この点が実に私には不思議にたえぬのでありますが、これは基本的な問題でございますので、一つ大臣御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/146
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147・竹内壽平
○竹内政府委員 私から御説明をさせていただきたいと思います。
この点につきましては、売春問題対策協議会でも、また売春対策審議会等におきましても、いろいろと御議論のあったところでございますが、対策協議会におきましては、家庭裁判所で扱うべきではないかという案さえも用意されたもでございます。私どもも、やはり保養処分でございますので、しかもその保安処分の内容が少年の保護措置と実質的に同じでございますので、家庭裁判所の方でこの事件を取り扱ってもらうようにした方がいいのではないかということで、事務的に折術いたしましたところが、裁判所側の見解としましては、現在の家庭裁判所の機構、人員等から申しまして、補導処分の決定機関になることになった場合に、とてもやり切れない、事実上不可能だというような御意見がありました。しかしながら、これが事実上不可能というのはしばらく問題にならないといたしまして、もう一つ重要なことは、そのような決定機関となる場合に、家庭裁判所としては、現在軌道に乗っておりますところの少年保健処分の機能をこのために阻害する危険があるという意見がございました。御承知のように、家庭裁判所の事件は少年事件でございまして、その取扱い方の考え方が縦割りじゃなくて横割りで、つまり二十才というところを境にいたしまして、二十才以上の者と二十才以下の者とにつきましては、取扱いその他すべてがはっきりと分けられたことになっております。それで、その下の方の部分を一生懸命やっておる家庭裁判所としては、今その処分が似ておるからといって二十才以上の者を導入して参りますことは、運用上非常に支障を生ずるし、また阻害する危険もあるというので、こればかりはお断わり申し上げたいというのが裁判所側の意見でございます。その意見を私どもの方でしさいに検討いたしましたところ、それもまことに無理からぬというふうに考えまして、家庭裁判所にこの判断を求めるという対策協議会等の御意見に従って立案することをやめた次第でございまして、ただいまの案のように作ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/147
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148・吉田賢一
○吉田(賢)委員 この種の問題は、現在の家庭裁判所の裁判官その他担当者の意見にかかわりませず、国の裁判権の行使の建前から、あるいはまたこの種の特殊なあらゆる要素を持った事件を扱う裁判所として家庭裁判所が適当であろうということは多く議論がないだろうと実は思うのであります。試みに、刑事裁判所におきまして、執行猶予を言い渡しをする、そうして補導処分の決定をするといたしましても、やはりこの種の婦人はおそらく何回も何回も繰り返す常習者でございますから、常習行は、私ども医学的な判断はできませんけれども、やはり心身ともに通常でないというふうな観察すらできるそうでありますので、そういうような場合には家庭裁判所でそういった入念な一つの場所、雰囲気、方法を講じて扱っていくということが裁判に対する信頼を増すのじゃないだろうか。そのことは、保安処分というものが開放的でなく暗い印象を与える刑罰的な印象、監獄的な印象を与えるというようなこと、一方、厚生省所管の各般の保護更生の施設が今のように全国的に低調をきわめておるときに、これへ進んで飛び込んでいって人生の救いを求めようというような感激も何もわいてこない。従って、私どもがあちこち歩いて聞くところによりますと、門前雀羅と言ったら悪いですけれども、店を開けども客は来ない、こういうようなことを聞くようになってきますと、この法律の実施によって、これらの従業婦人の行方というものは、ただオオカミのような暴力と利益によって食いものにしていく者の手に落ちていく以外に何もないのじゃないか。こういうことは実に見るに忍びないというほどに私どもは考えるのであります。そういうときには、せめて裁判をする裁判所は、自己の現在の都合のようなことにとらわれることなくして、大所高所からこの重大な問題に取り組んでいただいて、家庭裁判所こそあなた方を裁判する一番適当な場所であるというふうに受けてもらうべきだと私は思う。これを受けることができないようなこと正では、まさに憲法の三十二条ですか、裁判を受ける権利を奪われることになります。少し極論かもしれませんけれども、私はそうあるべきでないと思うのです。これは、常識で考えましても、この点についてはわれわれも相当議論もし合ったことがあるのですが、家庭裁判所正で扱うことは当然です。今いろいろと刑事局長はお述べになっておりましたけれども、これは少し弁解がましいと私ども思われるのであります。でありますので、これもやはり重大な案件として再考されるべき課題と私は思います。
これと同時に伺っておかなければならぬことは、この婦人補導院に入れて補導なさる問題は、おそらくは生活指導だと思う。生活指導というものは何をさすのか知りませんけれども、それは家庭生活の慣習、あるいは個人としての何か社会へ復帰するためのいろいろな教養、そういうこともあろうし、職業の補導、これも何をなさるか知りませんけれども、いずれにしても、このような一種の弱者と言いますか、社会のもてあそびの対象になっておるような、性欲過剰で心身どうにもならぬというような人でありますので、普通の裁判官だけの手ではどうにもならぬし、また検察官だけの手でもどうにもならぬと思う。やはりこれは少年の場合と同様に調査官の制度を必ず付置して、弁護人といえどもつき添い人制度を必ず付置して、そして本人の心身、社会的、経済的、あらゆる条件に適切な指導と援助と協力とをしながら、最も適切妥当な処分としていろいろな材料を提供していく、こういうことが私は絶対に必要だと思うのです。一体どうして調査官の制度を置かなかったのだろうか。調掛官もなしに普通の刑事裁判所で扱われていくというのでは、裁判官も神ならぬ身の実はお困りだろうと思うのです。こういう点につきましても、実は私は、この法律はまた新しい一種のざる法になるというそしりを免れないと思うのですが、これはいかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/148
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149・竹内壽平
○竹内政府委員 調査官の点も確かに問題の一つであります。もしもこれが家庭裁判所でさばきをするということになりますと、これは御承知のように家庭裁判所には調査官がございますので、その調査官制度を活用するということも考えられるわけでございますが、これを一般の裁判所でやることになりますと、一般裁判所には調査官制度というものは現在ございません。しかのみならず、調査官制度はアメリカでは発達しておりますが、日本の訴訟構造におきましては、刑の量定その他に関するものを、これを証拠に供することなくして裁判官だけできめるということは、ちょっとまだ日本の訴訟構造においてはそこまで割り切れていないのが現状でございまして、それやこれやを考えまして、調査官の制度ももう少し様子を見ようということに実はなったのでございます。この案そのものが決してざる法だとは私は思いませんが、もちろん刑にかえてというようなお考えもありましょうし、あるいは今の調査官の問題もございましょうし、その他いろいろと補正すべき問題が内在しておると思います。これは決して私どももこれをきめたから動かさぬというのではございませんし、他面において今の刑法の改正事業等も進んで参りますならば、それらの考え方も入れまして、他日を期して完璧なものにしたい、これは初めからそういう考えを持っております。しかしながら、現在司法裁判手続に乗せて、しかも保安処分を取り入れてという、この二つの要望に沿う案といたしましては、まずこれをもって最良の案ではなかろうかというふうに思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/149
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150・吉田賢一
○吉田(賢)委員 これはいずれ附帯決議を付しますか修正をするか、何か与野党ともに御相談をすべきことであろうと思いますが、やはり、この法律ができたら、補導員三百名というのじゃなしに五百名になる、建物は足らぬ、人間も足らぬというふうに、まことに正不幸なことですが、対象があることですから繁昌しなければならぬと思うのです。しかしながら、このような冷たい印象を与える、そういうところで、ただ罪となるべき証拠があるからぴしゃっと裁判をする、そういうところへ巻き込まれていくということになったら、あらゆる手段を講じてこれを免れることになるおそれがありますので、これはやはり法の実効をおさめないで死法になる危険があると私は思います。いずれ、その他のこともありますので、質疑は後日にしておきたいと思います。
最後に、この機会に大臣についでに伺っておきたいのであります。例の政界、官界等の汚職防止の方法としてのあっせん贈収賄罪処罰の法律案ですね。これはいつぞやの当委員会においても私もお尋ねしたのでございますが、かねて私どもは非常な注目をしてこの成り行きいかんと見ておるのであります。すでにここ数日しますれば二月も終って三月に入るのであります。三月に入りましてからこのあっせん贈収賄罪処罰の法律案が出る、しかも三月もずっと後になるということであれば、もう本国会では私ども成立の見込みなしと認めるのであります。いわんや、また反面におきまして、そんな法律は作ってはいかぬという意見が相当あるのであります。これは利害関係からくる個人的意見にすぎないのであります。こういうようなことは妨害も抵抗もあろうと思いますので、お出しになるならば、やはりこれこそ不完全であろうと法務大臣としての唐澤さんの一つの重大な御使命だろうと私は思います。これを立法するかいなやということは日本の政界の将来にきわめて重大な影響を与えるべき法律であろうと思いますので、これは何とか結末を早くおつけになって、法制審議会で御審議になっておるかどうか存じませんが、どうぞすみやかにお出し願いたいと思うのであります。これはどういう手順にただいま運んでおりましょうか、一つ御答弁願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/150
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151・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、私といたしましても、なるべく早い機会に当国会に成案を得て提出いたしたいと考えておりまして、法務当局を督励いたしまして、従来からこの立案を急いでおったのでございますが、ようやく今月の初めに事務当局としての一応の成案を得たものですから、たしか四日かと記憶いたしておりますが、法制審議会に法務大臣としてその諮問に付議したわけでございます。目下研究をしていただいております。何分にも、条文の分量は少うございますが、このあっせん収賄罪とあわせて暴力取締り、この二点からの刑法改正、また暴力関係における刑事訴訟法の改正、これらを諮問いたしたのでございまするが、刑法法典の改正になるものでございますから、学者にも非常に慎重に審議してもらっております。しかし、ただいまのお示しのような関係もございますので、従来の法制審議会の審議とはまた別に、特に急いでもらいまして、しばしば小委員を作って刑事部会で審議を重ねてもらっております。いずれ法制審議会として遠からず答申ができることと思いますから、なるべくお心持に沿うように、私といたしましても急いでそれぞれの手続をとりまして提案をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/151
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152・吉田賢一
○吉田(賢)委員 今月中にでもできませんでしょうか。やはり、来月ということになりましたら、おそらく実質上両院の通過が困難ではないかと、ほんとうに案じておるのですが、まあなるべく早い機会にとおっしゃいましても、そう長くはかからないでもしかるべき結論が得られると思いますが、月内にでもあなたの方としてお出しになるように運べませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/152
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153・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 なるべく御希望に沿うように、私といたしましては勉強いたすつもりでございますが、何分にも重要な法案であり、私一個の考えだけでは、また政府部内としてもきめかねるものですから、私といたしましては、でき得る限り御趣旨に沿うように急ぎたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/153
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154・町村金五
○町村委員長 本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後二時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00619580220/154
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