1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月十五日(火曜日)
午前十時五十四分開議
出席委員
委員長 町村 金五君
理事 高橋 禎一君 理事 林 博君
理事 福井 盛太君 理事 横井 太郎君
理事 青野 武一君
犬養 健君 久野 忠治君
小島 徹三君 小林かなえ君
徳安 實藏君 中村 梅吉君
横川 重次君 猪俣 浩三君
佐竹 晴記君
出席政府委員
法務政務次官 横川 信夫君
検 事
(大臣官房調査
課長) 位野木益雄君
検 事
(民事局長心
得) 平賀 健太君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局総務局
長) 関根 小郷君
専 門 員 小木 貞一君
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四月十二日
委員久野忠治君及び小島徹三君辞任につき、そ
の補欠として松浦東介君及び村松久義君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員松浦東介君及び村松久義君辞任につき、そ
の補欠として久野忠治君及び小島徹三君が議長
の指名で委員に選任された。
同月十五日
委員井手以誠君及び北山愛郎君辞任につき、そ
の補欠として武藤運十郎君及び猪俣浩三君が議
長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
企業担保法案(内閣提出第七〇号)(参議院送
付)
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第一三四号)
(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/0
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001・町村金五
○町村委員長 これより会議を開きます。
まず、参考人招致の件についてお諮りいたします。すなわち、企業損保法案について参考人を招致いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/1
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002・町村金五
○町村委員長 御異議なければ、さよう決定いたしました。
なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/2
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003・町村金五
○町村委員長 次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。提案理由の説明を聴取いたします。横川政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/3
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004・横川信夫
○横川政府委員 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明します。
この法律案は、最近における市町村の廃置分合等に伴い、簡易裁判所の名称及び管轄区域等を変更しようとするものであります。以下簡単に今回の改正の要点を申し上げます。
第一は、簡易裁判所の名称の変更であります。すなわち、島根県出雲市に置かれている簡易裁判所は、これまで、その所在地の旧地名である今市町の名称によって今市簡易裁判所と称していたのでありますが、このたびこの名称を出雲簡易裁判所に変更するとともに、これに伴って、栃木県今市市に置かれている栃木今市簡易裁判所の名称を今市簡易裁判所に変更しようとするものでありまして、いずれも地元の住民の希望を考慮したものであります。
第二は、簡易裁判所の管轄区域の変更であります。裁判所の管轄区域は、行政区画またはこれに準ずべき区域を基準として定められておりますが、町村の廃置分合等に伴い、二つの簡易裁判所の管轄に分属することになった新設町村の区域を一体として、いずれか一方の簡易裁判所の管轄に属させることとする等の必要がありますので、鳥取県八頭郡郡家町の設置に伴い、鳥取簡易裁判所の管轄に属する同県同郡旧中私都村及び上私都村の区域を河原簡易裁判所の管轄区域とするほか、二簡易裁判所の管轄区域を変更し、また土地の状況、交通の利便等にかんがみ、安芸西条簡易裁判所の管轄に属する広島県安芸郡熊野跡村の区域を広島簡易裁判所の管轄区域に変更しようとするものでありまして、これらの管轄区域の変更は、いずれも地元町村、関係官公署、弁護士会等の意見を十分しんしゃくして決定したものであります。
第三は、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表の整理であります。すなわち、市町村の廃置分合、名称変更等に伴い、同法の別表第四表及び第五表について、当然必要とされる整理を行おうとするものであります。
以上がこの法律案の趣旨日でございす。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/4
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005・町村金五
○町村委員長 林博君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/5
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006・林博
○林(博)委員 簡易裁判所の管轄区域の変更によって、簡易裁判所の裁判の事務量が壊滅すると思うのでありますが、それに伴う人員及び予算執行面の準備がどうなっておりますか、この点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/6
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007・位野木益雄
○位野木政府委員 お手元にお配りいたしました参考資料の三のところに、簡易裁判所の管轄区域の変更に関する調査資料という項目がございます。そこに、変更されるべき区域の受理件数が出ておりますが、これをごらんいただきますと件数は非常に僅少でございますけれども、この地域につきまして管轄の変更がございましても、それを受け取る簡易裁判所あるいは送り出す簡易裁判所の方の事務量につきましては大した影響はない、特に人的あるいは予算的に措置しなければならないほどの影響はないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/7
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008・林博
○林(博)委員 この下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表第四表に掲げられている簡易裁判所の中に、まだ開庁していないものがあると承わっておるのですが、この点はどうでしょうか。また、まだ開庁していないものをどうして別表に掲げておるのか、また、その場合、開庁してない簡易裁判所の事件はどこの裁判所でやっておるのか、また、これらの未開庁の簡易裁判所について今後どのような方針でいくのか、これらの点についてお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/8
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009・位野木益雄
○位野木政府委員 御指摘のように、まだ開庁されてない簡易裁判所が数個所ございます。これは、具体的に土地を申し上げますと、甲府地方裁判所管内の韮崎、大阪地方裁判所管内の西成、東淀川、神戸の灘、奈良の柳生、十津川、それから山口の鹿野、これなんかは初めからまだ開庁されたことはないわけであります。この理由は結局敷地、建物がないという関係で開庁できなかったのであります。その後、ここでもう敷地、建物がないから将来も廃止してしまうかということになりますと、この法律の改正をいたしまして、法律からこれを削らなければいけないのでありますが、まだそういう見通しにはならない。できたら置きたいというつもりで、地元の方からも、照会いたしましても、そういう措置をとらないように希望してくるわけなんです。そういうようなことから、現在までそのままになっておるのであります。しかし、もう相当期間も経過をいたしましたので、今この検討をいたしておりまして、なるべく近い将来にいずれかの見通しをつけまして、廃止るるやつは廃止する、設置るべきものは現実に設置するというふうにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/9
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010・林博
○林(博)委員 簡易裁判所の名称や管轄区域の変更は毎年法律で改正しておるわけなんですが、これを政令か規則でやるというふうなことを考えておられないかどうか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/10
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011・位野木益雄
○位野木政府委員 そういうふうな考え方もできるかと思いますが、御承知のように、裁判所の管轄区域と申しますのは国民の権利義務に非常に影響が大きいということから、裁判所法でも、特に裁判所の管轄区域は法律できめるというふうにきめております。たとえて申し上げますと、とんでもないような管轄区域が定められているということになりますと、とんでもない地方へ呼び出されたり、あるいはとんでもない地方で訴えを起されるということになりまして、非常に迷惑をこうむることも考えられるわけでございますから、そういう点を配慮いたしまして、裁判所の管轄区域というものは、政令できめるということでなくて、やはり、法律できめるということに昔からなっておることでありますし、そういう趣旨はやはり尊重すべきものではないか、こういうふうに考えますので、政令にまかしてしまうということは、今のところは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/11
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012・林博
○林(博)委員 私の質問はこれで終ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/12
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013・町村金五
○町村委員長 次に、企業担保法案を議題といたし、質疑を行います。福井盛太君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/13
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014・福井盛太
○福井(盛)委員 企業担保法案はわが国の民法上物権の構想並びに担保制度に非常な画期的な大変革をもたらすきわめて重大なる法案であると考えるのであります。それにもかかわらず、世論は一般に喚起されていない。また、法制の面からも、法体系という大きな面から見ましても、まことに画期的であるばかりでなく、わが国産業経済に与える影響もきわめて大きなものがあると信ずるのであります。この意味におきまして、慎重審議を重ね、疑義を払拭して、一般国民の理解を得るように努力しなければならないと思うのであります。以下私がこの案につきまして私の考えておる若干の質問を試みんとするのも、この点にあるのであります。
第一に、本法案は英国のいわゆるフローティング・チャージを模範とするものであすかどうかということをまず承わりたいのであります。第二に、本法案はいわば英法を母法とするということでありますが、しからば、この際この種立法をするに当って立法の根本方針についてまず承わりたい。この一点、二点について総論的に御解説を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/14
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015・平賀健太
○平賀政府委員 ただいま御質問の英法のフローティング・チャージを模範にしたものであるかという点でありますが、わが国におきましては、従来、大企業が資本を調達いたします場合には担保として工場抵当その他の財団抵当の制度を利用しておったのでございます。ところが、この財団抵当の制度は、明治三十一年にできたものでありまして、現在におきましては時間と経費を非常に要するのでございます。その点かなり不便を来たしておるのでありまして、これの改善がつとに叫ばれておったのであります。先年工場抵当法の一部を改正いたしたのでありますけれども、それでは今日の事情に合わないというので、会社の総財産を担保にするような制度はないかということで、かねがね研究されておったのであります。イギリスにはただいま御質問のようにフローティング・チャージという制度があるのでございますが、もとよりこのフローティング・チャージにつきましても学ぶところがあったわけでありますけれども、このフローティング・チャージをそのまま取り入れたというよりも、やはり日本の法制、ことに担保物権の制度、現行の制度を基礎にいたしまして、独自の立場からこの企業担保制度というものを立案いたしたのでございまして、フローティング・チャージはただその参考にしたという程度でございます。
それから、英米法の制度を導入したのであるか、従来の日本の法制と十分によくマッチするかどうか、こういう御趣旨であると考えるのでございますが、これはやはり、日本の民法、従来の担保物権の制度を基礎にいたしまして、それにマッチするようにということで、あくまで日本の在来の法制を基礎にしてこの制度ができたのでございまして、ただいまも申し上げましたように、フローティング・チャージの制度に学ぶところはございましたけれども、英米法系の制度をいきなり移入して新しいものを作ったというわけではないのでございます。やはり、あくまで在来の制度を基礎にしまして、それによくマッチするようにということでこの法律案の全体が立案されておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/15
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016・福井盛太
○福井(盛)委員 私がこの質問をいたしますのは、御承知のように、終戦後日本国憲法を初めといたしまして幾多の法典がすべて英米法を模範として制定されたのであります。しかしながら、その実体法規であるところの民法、刑法、行政法規一般というものは、姿はそのまま依然として大陸的法系に属するものが多々あるのであります。それゆえ、わが国が独立後において諸法案を立法するに当りましては国会も政府もひとしくこの事実を十分に認識いたしまして事に当らなければならないことは申すまでもないことであります。すなわち、言葉をかえて言うならば、立案の方針というものは英米法的なものと大陸法系なものとの調和に向けられなければならないものだと私は思っております。立案時におけるところの国民一部の便宜のために両法系的なものを雑然と立案羅列することだけではいけない。きれいな言葉で言うならば、まことに美しいたくさんの繚乱なる花がそこに咲いているように見えるかもしれませんが、今日におけるわが国の自動車を考えてみますとすぐわかりますように、雑然として日本の諸立法が世界各国色とりどりの、あたかも法の展示会のように見えることがあってはならないと思うのでありますが、立法自体が、法の生命である秩序というものをあまりにも乱しはしないだろうか、また、国民生活に大混乱を起すようなことがあってはならないと思うのでありますが、本法案は果してどうであるか、この点についての御直間をいたしたいのであります。
たとえば、本委員会において最高裁判所機構改正の法案が継続審議されております。しかしながら、民法、刑法、行政法案等の実体法規というものは英米法系に再編成されていないのであります。また、手続法におきましても、民事法、刑事法に陪審制度というものは今は採用されていないのであります。わが国は成文法——法典主義をとっているにもかかわらず、上告制度においては英米流にならいまして判例抵触制を採用しているというような形であります。このように、実体法や重要な手続法において英米法的なものと融合調和するよう改正しなかったならば、法の運営にはきわめて多くの混乱と、それによる弊害が生じはしないかということを私は憂えておるのであります。率直に申すならば、このような実体法や手続法の改正がなされないと、最高裁判所の機構についても同じように最終的な結論はなかなか出てこないのではないかということを心配するものであります。水かけ論的な論議に終始してしまう結果になりはしないかということを私は憂えているものであります。政府は今後この民法、行政法の実体法を再検討いたしまして両法案の調和を目標とするところの一大立法事業を断行する決意があるかないかということも、この点に続いて一つお尋ねしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/16
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017・平賀健太
○平賀政府委員 ただいま御質問の点、まことにごもっともでございまして、在来の日本の法制というものは、ヨーロッパの大陸ことにドイツ法に負うところが非常に多いのでございます。しかるに、終戦後になりまして、日本国憲法を初めその他の新しい法規、制度におきまして英米法的なものを導入いたしたのでございますが、在来の日本の法制の基礎をなしておりますところの大陸法系の制度と十分マッチしない、そのために混乱を生ずるというふうなことがなきにしもあらずと思われる次第でございます。ただいま仰せの点につきましては、基本法の改正につきましては、仰せのような趣旨から、目下法務省におきましては改正を検討中なりでございます。現に、民法、商法、国際私法、強制執行制度、競売制度、民事関係につきましても各種の基本法規につきまして改正の事業を目下進めておる次第でございます。
それから、なお、企業担保制度につきましては、そういう混乱が生じませんように、在来の担保制度との関連なんかにも十分考慮をいたし、また、その手続、企業担保権の実行の手続なんかにつきましても、強制執行あるいは競売の手続を十分参照いたしまして、わが国の在来の機構に十分しっくり当てはまるように、スムーズにいくようにということを留意をいたしまして、立案をいたしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/17
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018・福井盛太
○福井(盛)委員 よくわかりましたが、次に、これに関していま一点お尋ねいたします。
英国のフローティング・チャージは、御承知のように一八七〇年代の判例によって認められたものであると承わっております。このような法律制度を採用するかどうかということは、わが国におきましては、その国の社会基盤、経済基盤を比較考慮をいたしてみなければ、フローティング・チャージが果して日本に該当するかどうかということも大いに考えなければならぬ問題であろうと思われますが、日本の社会基盤ないし経済基盤と申しますか、これらが英国のそれといかなる共通点があるかということを私は承わりたいのであります。これは本法案の出発点であると思いますによりまして、できるだけ詳細に一つ承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/18
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019・平賀健太
○平賀政府委員 私どもの承知しております限りにおきましては、イギリスにはわが国の財団抵当制度のようなものがないのでございます。しかし、近代におきまするところの大企業の勃興に伴いまして、その大企業が資本を調達する場合に何を担保にするかということになりますと、どうしても個々の動産とか不動産、質権を設定するとか抵当権を設定するということでは間に合わないことは当然なのでございます。わが国はヨーロッパ大陸の制度を導入いたしまして工場抵当制度を取り入れたわけでございます。それから、イギリスでは、やはり大企業の資本調達の必要から、会社の総財産、企業全体を担保にするという制度がまず実務の上で行われ、それが判例で認められたということになると思うのでございます。わが国では、明治三十年代におきましては、企業と申しましても、国家の庇護のもとに企業が発展の糸口を踏み出したわけでございまして、規模も小さくあった関係で、この工場抵当制度で当時は十分に間に合ったと思われるのであります。しかし、これが大企業になりますと、個々の財産を特定いたしまして、これで工場財団を組成するというやり方では、とうてい間に合わない。ことに、企業の合理化の必要から、工場の設備、企業の施設というものはひんぱんに入れかえを行う。そうなりますと、財産の内容が常に変わっていくわけであります。そのつど変更の手続するということは、非常に大へんな仕事なのでありまして、とうてい間に合わないというようなことになってくるのは当然なのでございます。そういうわけで、要するに、イギリスの社会と、日本の社会との共通点——イギリスにはフローティング・チャージが生まれ、わが国では企業担保制度というような新しい担保制度を創設する必要が生じました。その共通点は何かと申しますと、要するに、現在の企業は一般的な傾向として非常に膨大なものとなったこと、それから、企業を組成しておりますところの物的な施設がひんぱんに変動するということ、そういうことが、フローティング・チャージを生み出し、さらに、工場抵当制度では不十分、不完全である、新たな担保制度、この変動常ない企業の物的施設を全体として損保に供する、そういう制度が生まれなければならない根本の理由でありまして、両者の共通点はそこにあると考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/19
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020・福井盛太
○福井(盛)委員 ただいまの御説明によりますと、やはりこの企業損保法は大企業を保護するということに重点を置いておるかのごとく思われます。これと中小企業の保護との関係につきましては後にお聞きすることにしまして、その次の質問に移ります。
ただいまの問題に関連しまして、英国のいわゆるコモン・ロー、普通法及びエクイティ、衡平法というものがありますが、あのエクイティなりコモン・ロー上のモーゲージと、フローティング・チャージとは、いかなる関係にあるかということも、この際あわせてお聞きしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/20
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021・平賀健太
○平賀政府委員 私、英法の詳細については不案内なのでございますが、在来のエクイティの制度として発達しましたモーゲージというのは、日本の在来の抵当権に類似する制度ではないか。それから、企業担保も、これもいわばそのモーゲージの思想に立脚してできておるものと思うのでございますけれども、これはわが国の工場抵当制度にも比すべきものではないか、そういうふうに私了解いたしております。なお、もし詳細の説明が御必要でございましたならば、なお調査いたしまして、その関係を明らかにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/21
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022・福井盛太
○福井(盛)委員 ただいまの質問の点についてはとくと了承いたしました。
次に移りますが、私どもの考えでは、担保制度の革命に等しいような法案の必要性について、一般国民が納得のいくような説明を実は希望しておるのでありますが、この点についてのお考えを伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/22
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023・平賀健太
○平賀政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、従来、大きな企業が資本を調達します場合の担保には、個々の質権とか抵当権では間に合いませんので、工場抵当その他の財団抵当制度を利用しておったわけでございます。ところが、この財団抵当制度は、それを利用できる企業が限定されておりまして、すべての企業が財団抵当制度を利用し得るとは限らないのであります。それから、財団の組成物件の範囲がまた限定されておりまして、すべての財産が担保の対象になるというわけではないのであります。それから、第三に、在来の財団抵当制度は手続が非常に煩雑であり、多額の費用がかかるわけであります。こういう関係でもって、従来の財団抵当制度については根本的な改革の必要が叫ばれておったのでありまして、この財団抵当制度の不備を改めるために、こういう企業担保制度という新しい制度ができたのであります。これは決して——大企業を保護するというよりも、非常にむだな金のかかる、複雑な手続をしておった、それをもっと簡素化しよう、こういうことにあるのでありまして、いわば日本の産業全体の合理化の一つの手段であると考えてよいのではないかと存じております。決して仰せの大企業だけを保護助成するというような趣旨でこの制度が立案されたのではないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/23
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024・福井盛太
○福井(盛)委員 私も、各種の財団抵当法の規定、また実際の運営から見ましても、きわめて過去において欠陥があると思っておったのであります。従いまして、この欠陥を改正することによって実効を期することができるのではないかと思ってわったのでありまするが、ただいまの御説明によりまして、これらの欠陥を補正するために今回のこの法案が立案されたということを承わって、その点については了承いたします。
次にお尋ねいたしたいのは、本法案は岸内閣でも重要施策策となっているのではないかと存じまするが、この点に対する一つの解明をいただきたい。今国会におきまして必ず成立を必要とする理由はどこにあるか、すなわち、本法案の緊急性についてまず承わりたい。それから、本法案が参議院から当院に回付されたのは三月二十四日であります。これだけの大法案であるから、一般国民にも周知徹底せしむる必要があるということは、先ほど申し上げた通りであります。この必要のある関係から、あるいは公聴会を開き、公述人の意見を聞くなり、あるいは参考人の意見を求めなければならないというようなことが起るかもしれぬと思います。相当の審議期間を要するのではないかということを考えられるのでありますけれども、御承知のような衆議院の情勢下におきまして、総理、法務大臣の法案通過に対する御決意をあわせで、承わり、そうして審議の資料にしたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/24
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025・横川信夫
○横川政府委員 大臣が他の委員会に出ておりますので、私かわりまして御答弁申し上げます。
お話のように、この法律案は、今国会に提出いたしました法案のうち、特に法務省にとりましても政府にとりましても重要な法案の一つでございます。ぜひ今国会におきまして成立さしていただきたいということを念願しておる次第でございます。先に提案いたしました参議院におきましても、二回にわたりまして参考人の方々の御意見を聴取いたして、相当慎重に各般にわたって御審議をいただいて、当院に御送付願ったような次第でございます。重要な法案でございますので、慎重御審議をお願いすることが最も望ましいのでございますが、法案のうちにも含まれておりまするように、世銀との関係がございまして、ぜひ今国会に成立を期しておるのでございます。詳細につきましては平賀政府委員から申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/25
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026・平賀健太
○平賀政府委員 ただいま政務次官からお答えの通りでございまして、実は、こういう新しい担保制度に対する要望が具体的になって現われましたのは、昭和二十四年、日本経済団体連合会から、財団抵当制度の根本的な改革の要望が出たのでございます。法務省におきましてはそれ以来ずっと研究をいたして参りまして、昭和二十九年でありますか、法務省の事務当局で一応の試案を作りまして、世間にも公表いたしまして、こういう新しい制度についての周知徹底をはかると同時に、各方面の意見をもこの制度について徴したのでございます。産業界、金融界はもとより、学界に対しましても、この試案をお送りいたしまして意見を聞いたのでございます。これによって相当この制度については各方面に周知徹底が行われたと思うのでございます。昨年法制審議会の財産法部会、民法部会で要綱案を審議していただき、本年一月に法制審議会で要綱が確定いたしたのでございます。この制度につきましては、そういうわけで、日本産業界につとに要望されておるのでありまして、一日も早くこの制度が現行法となりまして、会社が社債を募集いたします場合の担保として利用できるということになることは、日本の産業界全体のために非常に大事なことではないかと思うのでございます。そういうわけで、一般的に、この法律案が早く法律になって、現在会社が社債を募集いたします場合になお非常な手数と費用のかかる財団を利用しなければならぬということは非常な損失でありますので、一日も早くこの制度が現実化するということが望ましいと思うのであります。
なお、特殊の事情といたしまして、世界銀行から日本の企業が借款をいたします場合に、世界銀行としては確実な担保を要求するわけでございます。その担保といたしましては、現在ではやはり財団抵当制度を利用するほかはない。それではしかし世界銀行から借款するような大企業にとりましては非常に大きな損失になるのでありまして、世界銀行といたしまして、この企業担保制度ができたならばこれで十分満足するということが予想されますので、そういう世界銀行との関係におきましても、この企業担保制度は
一日も早く現行の制度になることが望ましいと考えられる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/26
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027・福井盛太
○福井(盛)委員 よくわかりました。
少し内容について二、三御質問したいのでありますが、この企業担保法実施の曉におきまして、先ほども質問を留保いたしましたのですが、中小企業との関係はどうなるかということであります。中小企業は日本経済におけるところの一つの支柱であることは申すまでもございません。この中小企業は、現段階におきましては、本法案のねらいであるところの長期資金調達の便益を受けることができるのであるかということであります。これは、単に理論上の問題としてばかりでなく、金融、経済の実際問題としても重要な問題でありますので、その点を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/27
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028・平賀健太
○平賀政府委員 本法律案におきましては、会社が社債を発行する場合の担保は、会社の総財産を客体といたしまして、企業担保権を設定できるということになっておりまして、株式会社であれば、いかなる会社でもこの企業担保権の設定ができるわけであります。でありますから、法律的には、中小企業でありましても、それが株式会社であります場合には、社債発行のためにこの企業担保権を設定することができるようになっておりまして、必ずしも大企業には限っていないのであります。しかし、これは理論上の問題でございまして、実際問題といたしましては、どうしても社債発行の場合の受託会社の立場から見て、あの会社の企業ならば大丈夫という相当信用のある会社でなければ、実際問題としてはこの企業担保権というものは利用できないことになりますので、勢い、実際の運用におきましては、この企業担保権を利用し得る株式会社というものは大企業になると予想されるのでございます。しかしながら、企業担保法は、先ほど申し上げましたように、決して大企業だけを優遇してこれに保護助成を加えるという趣旨ではないのでありまして、今までむだなことをやっているのを省く、それだけのことなんであります。中小企業につきましては、どうもやはりその総財産というのが必ずしも確実な担保にならない場合もあり得る。しかし、場合によりましては、小さい会社でありましても、しっかりした基礎があれば、これは利用できないことはないわけでありますが、どうしてもやはりその企業の物的施設の内容が十分でありませんために、勢い企業担保権の利用ということは困難になるかと思うのでございますが、こういう中小企業につきましては、やはり在来の担保制度、抵当権、あるいはある程度の規模になりますと工場財団のような制度を利用するというようなことでやっていくよりほかはないのであります。しかし、そういう小さい企業におきましては、財団を設定するにつきましても、それほど大した手続を要しないし、経費もそんなにかかるわけではないのであります。中小企業にとっては必ずしもこれは利用しにくい——十分に利用できることにはならぬと思いますけれども、中小企業の保護助成の必要が叫ばれております今日、中小企業に対してはまた別途の観点からその助成策を講ずることが必要ではなかろうか。企業担保権は、今も申しましたように、大企業の保護助成の制度ではなく、単に財団制度の不備を改めて、手続を簡易化するという趣旨のものでございまして、中小企業の保護助成とは直接の関係がないように、私どもとしては理解しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/28
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029・福井盛太
○福井(盛)委員 中小企業に対しても本法案が実施されることがあり得るということでありますが、それにつきましては、いかなる金融対策、あるいは融資の円滑化をはかるための担保制度とか、あるいは金融制度が実施されることに相なっておりまするか。その予算額について、わかっておりましたならば、お聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/29
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030・平賀健太
○平賀政府委員 中小企業の資金調達のための担保制度の合理化と申しますか、改善ということは法務省としては現在のところやはり在来の制度を利用するほかはないのではないかということで、別段中小企業のための資金調達の便宜促進ということのために予算を取って特別にこれという措置は、法務省としては現在のところいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/30
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031・福井盛太
○福井(盛)委員 次は、単なる名称の問題でありまするけれども、本法案の名称は企業担保法ということに相なっておりますが、その名のごとく企業が担保となっているか、名が実を表わしていないのではないかというふうに考えられます。英国の法制はどうなっているか、企業を担保の対象にしなかったその理由についても一つ承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/31
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032・平賀健太
○平賀政府委員 この名称を企業担保法といたしましたのは、実は、呼びやすい、通りがいいということで、こういう名前を選んだのでございますが、実質は、会社の総財産、企業の物的構成要素であります物的施設、そういうものが担保になるわけであります。従って、企業担保権、企業そのものが担保になるのではないので、名前が一致しないという御批判はごもっともでございます。しかし、イギリスにおきましても、フローティング・チャージという担保制度のもとにおきましても、アンダーテーキング——企業が担保になるということを言っておるのであります。しかし、イギリスにおきましても、動的な、動いておるところのアンダーテーキングそれ自体がやはり担保になるのではないのでありまして、そのアンダーテーキングの構成要素であるところの財産が集まって、これがやはり担保になっておるのだと考えられるのであります。そういうわけで、イギリスにおきましても、名前と実は必ずしも一致しておりません。この法案におきましても、実質と名前がぴたりと一致しておりません。アンダーテーキングを担保にする、非常に通俗的ではありますけれども、この新しい担保権の名前としては比較的実際に即した名前ではなかろうかというところで、企業担保権という名称を選んだ次第でございます。一ころは一般担保権というふうな名前も使ってみたことがあるのでありますが、どうもぴんとこないというので、結局企業担保権という名称に落ちつきまして、法制審議会におきましても、この名前でよかろうということになった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/32
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033・福井盛太
○福井(盛)委員 ただいまの点につきまして関連してなお伺いたいのは、のれんというものが何々権と言うことはもちろんできないと存じますけれども、法的に何か保護を受ける利益であるかどうか、承わりたいという点と、それから、企業を全体として担保の対象とすれば、のれんや商号、得意先等もまたその対象となり、評価、換価、売却されることとなるのであります。また、それでよいではなかろうかと思われるのでありますが、のれんが企業担保の対象となること、そのような英法的な新しい立法に踏み切ることはできなかったであろうかどうかという点について、一つ承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/33
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034・平賀健太
○平賀政府委員 わが国でも、のれんということが言われるのでございますが、必ずしも、のれんというものを法律的に分析しました場合に、それが何かということは明確でないのでありまして、ただ、考えられますことは、営業譲渡なんかの場合に、ある企業ののれん、そういうものが評価の中に加えられるということは考えられるのであります。それからまた、不法行為法などでは、不正競争なんかによりましてそののれんを侵害する、たとえば類似商号を使うというふうなことでもって、のれんの侵害ということが考えられる。そういう場合に、のれんというものも法律的にある程度意味があると思うのでございますが、しかし、企業担保権におきましては、会社の総財産が担保となるので、総財産というのは、民法の一般の先取得権におけるところのあの総財産と同じ考えを持ってきたわけでありまして、要するに、一般の先取得権というのは、債務者の総財産でありますけれども、その総財産の中にはのれんというようなものは含まない、すべて強制執行の対象となるもの、財産権として強制執行の対象となるものが考えられておるわけであります。企業担保権におきましても、一般の先取得権における総財産の観念をそっくりそのまま持ってきたのであります。これは、なぜかと申しますと、のれんというものは独立して評価ができない、そこに問題があると思うのであります。大体、企業担保権が実行されるようになりますと、会社の企業が落ち目になっている場合が大部分なのであります。のれんなどといっても、ほとんど価値がない、ほんとうに物的な財産権だけの価値ということに限られるのではないか、のれんの評価というものは非常に困難であるのみならず、もうゼロ、無価値にひとしい場合が多いのではなかろうか、こういうふうに考えられるのであります。
それから、イギリスのフローティング・チャージでは、のれん——グッドウイルは総財産の中に含まれているというようなことが解説書などには書いてあるのでございますけれども、これも非常に実体がはっきりしない。ことに、企業担保権実行の段階に至ってこれがどうなるかということは、すこぶるはっきりしないのであります。このグッド・ウイルを売却するということが実際問題として非常にむずかしい、困難なのでありまして、イギリスにおいてもこれの実体がどういうものかということは必ずしもはっきりしていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/34
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035・福井盛太
○福井(盛)委員 本法案の目的がどこにあるかということについて少し承わってみたいと思います。これはきわめて重大な問題でありまして、本法案の根本的な考え方の問題であると信ずるのであります。
もちろん、法の目的というものはいろいろな多目的を包含しております。あるいは社会、経済、政治、倫理、宗教等、あらゆる人間生活各般にわたりまして、各領域からの諸目的が法のうちに内在しているということはもちろんであります。本法案の経済目的は、長期資金調達の円滑化と、これにより日本経済の興隆に寄与するということであると思うのであります。経済の立場かするならば、企業を生かして融資を回収するということが目的であって、企業なり総財産に対し物権としての担保権を実行するということは第二義的なものであって、企業を殺すものである、本来の目的ではないと思いまするが、この点に関しまして政府の所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/35
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036・平賀健太
○平賀政府委員 本法案の目的は、ただいま仰せの通りでございまして、資金調達の簡易化、円滑化をはかって日本の産業の維持合理化をはかるというところにこの法案の主眼があるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/36
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037・福井盛太
○福井(盛)委員 果してしかりとするならば、この優先弁済を受ける権利を物権とる必要があるかどうかという点であります。現在、あるいは電力とかあるいは鉄鋼等のような大企業、会社におきましては、これらはいわば債権的なものでありまするが、しこうしてこれらの企業会社は高度の信用を保有しているのであります。従って、もし一般担保で不十分ならば、特別担保を取ればよいのではなかろうかと考えられます。先ほど財団抵当制の欠陥の説明も承わったのでありまするが、ゼネラル・モーゲージと重要財産に対する特別担保で十分ではなかろうか、あわせて、優先弁済権を物権化したその理由もこの際付加して御説明を求めたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/37
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038・平賀健太
○平賀政府委員 日本の法制におきましては、ある財産を換価いたしまして、それから優先的に債権の弁済を受ける権利、これは債権の効力と言えば債権的なものとも言えますけれども、日本の法制ではこれをすべて物権というふうに構成してきている次第でございます。なるほど、企業担保権におきましては、個々の財産が常に変動しておる、財産の客体、担保権の客体、内容が常に変っておるのでございますけれども、これが実行の段階に参りますと、その財産が固定いたしまして、それが換価されて優先弁済を受けるということになるわけでありますので、やはり在来の担保物権と性格を共通にしておるのでございます。そういう観点から、日本の従来の法制に合わせるために、これをやはり物権として構成したわけでございます。
それから、ゼネラル・モーゲージ、一般担保権のお話が出たのでありますが、ゼネラル・モーゲージがつきますのは電力会社のような特殊会社に限られておるのでありまして、この企業全体を担保にすることができるようにして在来の財団抵当制度の不備を改める必要があるのは、ひとり電力会社のみに限らないのでございます。すべての企業が新しい制度を利用することができるようにすることが必要なのでございまして、いわゆるゼネモ以外に、どうしても法律上はすべての株式会社が利用し得るものとしてこういう新しい制度を創設する必要があったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/38
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039・福井盛太
○福井(盛)委員 次にお尋ねしたいのは、この強制管理の制度を本法案において何ゆえに認めなかったかという点であります。これは重要なる問題であると存じますが、担保権を実行されてしまうとその企業は全くの最後に相なることと存じます。日本経済の現状におきまして、先ほど述べたような大企業会社が企業担保権の実行を受けることになった暁には、経済界が大混乱を巻き起すことになることは明瞭であろうと存じますが、全く、担保権の実行ということは、これが最後的の大行事と言わなければならないと存じます。強制管理の階段であってしかるべきではないかということを考えられるのでありますが、担保権を認めるといたしましても、この強制管理の制度を認めることが一つの方法ではないかと思いますが、認めなかったその理由について御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/39
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040・平賀健太
○平賀政府委員 この強制管理ということも、この法案の立案の際には実は考えたのでございます。ところが、現在、不動産に対する強制執行といたしましては、強制管理と強制競売と二つの制度があるわけでございますが、御承知の通り、この強制管理の制度はほとんど利用されないのでございます。ほとんどすべてが強制競売の方法のみによっておるのでありまして、手続が必ずしも簡明でないために強制管理の制度が実際には用いられないのでございます。個々の不動産の強制管理についてさえそうなのでございまして、一つの企業を強制的に管理いたしまして、その上った収益から債務の弁済に充てるということになりますと、その手続はさらに一そう複雑になるわけでありまして、実際、この強制管理の制度を設けたといたしましても、行われることはないのではあるまいか。ことに、個々の不動産とは違いまして、管財人というものが選任されまして、この管財人が企業を経営していくことになるわけでございますが、企業の経営によって得ました収益を優先的に債務の弁済に充てていくということは、しかく簡単に行われ得るものかどうか。他の債権者のこと等も考えなければなりません。ことに、企業担保権者に優先する債権者があるわけでありまして、そういう債権者のことも考えなければならない。さらに、対労働者との関係も考えなくてはならない。管財人が企業の経営の責任を負わされるということになりますと、単に企業担保権者の利益のためだけを考えて、企業担保権者が弁済を得ればいいという見地からだけ企業を経営するということは、とうてい不可能でありまして、どうも実際的でないのではないか。この制度の試案を発表いたしました際には、強制管理の制度も中に入れておったのでございますけれども、それは、産業界、金融界におきましても、強制管理の制度は採用しないがよろしいという強い意思がございまして、最後の確定案におきましては強制管理の制度はやめまして、強制執行を認めますならば強制競売に当りますところの売却、総財産を売却するという手続だけの一本にしぼった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/40
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041・福井盛太
○福井(盛)委員 私は、この強制管理というものは実務家の方から反対もあったというふうに承わっておりますが、実際はこの方法をほんとうに有効適切に利用したならば、担保権実行などということもなくて済むような、きわめていい方法ではないかということを考え、また実際においてそれが行われておるところもあるのでありますから、この制度を設けるということがいいではなかろうかと信じましたので、今お尋ねした次第であります。
次に、最後でありまするが、企業損保権によりまして担保をせられるところの被担保債権の範囲でございます。この点について一つお尋ねするのであります。すなわち、附則の第二項についてでありまするが、この附則の第二項の一号にありまする世銀借款の特殊性とは何を意味するものであるかということを具体的に御説述を願いたいのでございます。担保権についての契約条項はどうなっているかというような点も承わりたい。
それから、第二号をついでにお尋ねをいたしておきますが、第二号におきまして、本法案は被担保債権を根本的に原則として社債に限っているのに、世銀借款を受けている会社に対する日本開発銀行の普通貸付金等につきましてその例外を認めた理由はどこにあるのか、その根拠を示してもらいたいのであります。被担保債権を社債に限定すべきか、あるいは設備資金のような長期金融にも及ぼすべきかという点は大きな問題でありまするが、その点についてお尋ねをしたいと存じます。
ついでに第三号の貸付金についても一つ御説明を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/41
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042・平賀健太
○平賀政府委員 世銀から借款をいたします場合には、御承知の通り、直接借りるわけじゃございませんで、日本開発銀行を通して借りるわけでございます。世銀から借り受けます場合には、世銀としては、たとい基礎の確実なしっかりした日本の会社でありましても、必ず担保を要求するのでございます。無担保の貸付ということは行われないのでございます。どうしても担保を設定するということになりますと、従来でありますと財団抵当制度を利用する以外にない。これでは非常に不便である。先ほど申し上げましたように、不便であります関係で、日本開発銀行を経由しまして世銀から借款する場合には、例外的に貸付金についてもこの企業担保権を設定できることにしようというのが、附則の二項の一号でございます。
それから、この附則の二項の一号、すなわち世銀借款を受けておりますところの会社が、世銀からではなしに日本開発銀行から本来の貸付を受けることがそのほかにあり得るわけであります。その場合に、日本開発銀行本来の貸付金についでは企業担保権を利用できないということになると、その際に先ほど申し上げました財団抵当制度を利用しなければならぬということになりますと、せっかく世銀からの借款の場合には企業担保権でいいのに、開発銀行から借り受ける場合には財団抵当でなくちゃならぬということになりますと、ここで多額の経費を要するということになり、きわめて不便であるわけであります。でありますから、世銀からの借款を受けて企業担保権を設定しているような会社だったら、日本開発銀行からその会社が貸付を受ける場合には、また例外的に企業担保権を設定できるというふうにしておくことが便利であるわけであります。
それから、三号は、電力会社なんかのように、現行法上開発銀行からの貸付金につきまして一般担保権、ゼネラル・モーゲージと称しているものが法律上当然につくことになっているのでございます。このゼネモというのは、会社の総財産について優先弁済を日本開発銀行が受け得るということになっているのでございますけれども、必ずしもその効力がはっきりしない点がありますので、このゼネモにかわりまして、その先取企業担保権ということになりますと、法律的にも内容が明確になっており、実行の手続なども明確に定めておりますので、このゼネモにかわってこういう新しい制度を利用することができるようにすることがより合理的ではないかというので、第二項第三号の規定ができたのであります。
なお、この法案におきましては、原則は被担保債権は社債に限っているのでございますが、これは、一般の株式会社におきましては長期資金の調達の方法は社債であるということが一つ。それから、この法案におきましては株式会社でありさえすれば企業担保権を設定することができるということにしておりまして、その株式会社の規模なんかについては全然制限を設けていないのであります。もし貸付金についても企業担保権を設定できるということになりますと、弱小のと申しますか、中小の、規模の小さい株式会社なんかが、金融機関の要求によって総財産に企業担保権を設定するということになりますと、その企業自体をその金融機関に支配されてしまうというような結果になりまして、かえってそういう規模の小さい株式会社にとっては金融機関による圧迫の手段にこの企業担保権が利用されるというような結果になる危険が多分にあるわけであります。そういう危険を防止しますために、一般の株式会社におき、まして長期資金の調達をやる方法として社債だけにこの企業担保権を限定して、そこから出発することが一番いいのではなかろうかということで、本法の第一条で、被担保債権を一般に株式会社については社債にだけ限定した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/42
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043・福井盛太
○福井(盛)委員 本日は私の質疑はこれをもって打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/43
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044・町村金五
○町村委員長 本日はこれにて散会いたします。
午後零時十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X02519580415/44
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