1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月三十一日(月曜日)
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昭和三十三年三月三十一日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件
裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙
裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)
職業訓練法案(内閣提出)
午後一時三十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/1
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。裁判官弾劾裁判所裁判員山本正一君から裁判員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/2
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003・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) つきましてはこの際裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/4
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005・山中貞則
○山中貞則君 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙については、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/6
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007・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
議長は裁判官弾劾裁判所裁判員に高村坂彦君を指名いたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/7
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 次に、ただいまの選挙の結果、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員が一名欠員となりましたので、この際同予備員の選挙を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/8
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009・山中貞則
○山中貞則君 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙は、その手続を省略して議長において指名せられ、その職務を行う順序は議長において定められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/10
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011・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
議長は裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に山本正一君を指名いたします。
なお、その職務を行う順序は第一順位といたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/11
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012・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、防衛庁設置法の一部を改正する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/12
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013・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
防衛庁設置法の一部を改正する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長福永健司君。
〔福永健司君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/14
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015・福永健司
○福永健司君 ただいま議題となりました両法案について、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、防衛庁設置法の一部を改正する法律案の要点を申し上げますと、第一は、現下の情勢に対応し、国力に応じて防衛力を整備するため、陸上自衛官一万人、海上自衛官千二百九十五人、航空自衛官六千七百人、自衛官以外の職員千二百十九人等、計一万九千三百十六人を増員して、職員の定員を二十四万二千七百十七人に改めることであります。これら自衛官の増員分は陸上にあっては技術関係部隊及び混成団の新設または増強に、海上にあっては学校の新設及び後方関係の充実に、航空にあっては航空団の増設等に、それぞれ充てる要員であります。第二は衛生業務の円滑なる運営と質的向上をはかるため、内部部局として衛生局を新設することであります。第三は、自衛隊の質的増強の一環として、装備品等の研究開発機構の整備をはかるため、技術研究所を技術研究本部に改めることであります。第四は友好諸国との親善関係に寄与するため、防衛大学校において、委託により外国人の教育訓練を実施できるようにすることであります。
次に、自衛隊法の一部を改正する法律案の要点を申し上げますと、第一は陸上自衛隊の整備のため、本州中部に混成団一を新設するとともに、航空自衛隊の航空集団を改編して、航空総隊及び航空方面隊を新設し、また、航空警戒管制及び航空保安管制関係要員を養成するため管成教育団を、並びに、航空輸送体制を強化するため輸送航空団を、それぞれ新設することであります。第二は、防衛庁の付属機関において部外者の教育訓練を実施することの委託を受けた場合には、自衛隊の任務遂行に支障のない限り、これを実施できるようにすることであります。第三は自衛隊の行動の特殊性にかんがみ、消防法の規定中、危険物の貯蔵または取扱いの制限に関する規定の適用を除外することであります。
両法案は、二月六日本委員会に付託され、政府より提案理由の説明を聞いた後、岸首相初め関係閣僚に対し、保科、前田、石橋、受田、辻、飛鳥田、茜ケ久保、淡谷、稻村、西村、木原、赤松、長谷川、阿部の各委員より、延べ十日間にわたって、諸般の角度から質疑がなされたのでありますが、その内容につきましては会議録によって御承知を願います。
本日は午前八時より委員会を開き、審査を進め、質疑を完了いたし、両案を一括して討論に入りましたところ、日本社会党を代表して、淡谷委員より、人工衛星、ICBMの出現した現在、防衛計画に基く自衛隊の増強案はいたずらに国費を浪費するにすぎない旨の反対意見が述べられ、また、自由民主党を代表して、山本正一委員より、国際情勢の現状にかんがみ、わが国の財政力の許す範囲内で防衛力を整備することは国防の万全を期するためきわめて当然のことであり、かつ世界の平和に寄与するゆえんである旨の賛成意見が述べられたのであります。
採決の結果、両案はいずれも多数をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。
淡谷悠藏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/16
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017・淡谷悠藏
○淡谷悠藏君 私はただいま提案されました防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案につき、日本社会党を代表して反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
防衛は国の大事であります。その構想を誤まり、方途を違えた場合、国家を破滅の悲運に導き、国民をあげて惨たんたる境涯にたたき込むことは、遠い例を引くまでもなく、大東亜戦争と称したものの大失敗が今なお国民大衆を苦しめている現実に見て明らかであります。(拍手)わが国の憲法はこの悲痛な体験に基き、民族犠牲の上に立って作り上げた世界に対する平和の宣言であります。「日本国民は恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われわれの安全と生存を保持しようと決意した。」のであります。わが国の防衛は、あくまでこの決意の上に立ったものでなければなりません。しかるに、警察予備隊から保安隊へ、さらに自衛隊へと転落した政府の国防方針は敗戦十年を過ぎて早くもこの決意を忘れ、平和憲法をじゅうりんして、またしても民族自滅の再軍備街道を驀進し始めたのであります。(拍手)陸上自衛隊十八万人、海上十二万四千トン、航空一千三百機、これが昨年六月政府の発表した防衛三カ年計画なるものでありますが、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄」し、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」と憲法に定めてある国の防衛方針とはとうてい思えないのであります。(拍手)
自衛隊違憲の論議はこれまでもしばしば戦わされました。しかし、政府与党が多数の暴力によって押し切るほかに、自衛隊が憲法に違反しないという根拠は何もなかったのであります。(拍手)それなればこそ、一たびは自衛隊増強のために憲法改悪さえ強行されようとしたのでありますが、わが党に結集された国民世論の反撃にあって、その非望が粉砕されると、今度は現在の憲法でも自衛隊の存在は許されるとか、これは戦力なき軍隊であるとか言い出したのであります。三転しては、戦力も自衛のためには許されるとか、海外出兵ではなく、公務員としての海外出張だとか、勝手な解釈をつけ、ずうずうしくのさばり出しているのが、現在の自衛隊であります。(拍手)もはや日陰の軍備などといういじらしいものではなくなっているのであります。少くとも、国家の大本である憲法を都合のよい解釈で勝手にゆがめることは許さるべきではありません。その上に再軍備の既成事実を積み重ねていくことはそれこそ日本の民主主義を武力で踏みにじろうとする国家撹乱の第一歩が見えるのであります。(拍手)これは世界を欺く不信行為であります。しかも、この憲法をじゅうりんし、今年度一千三百億の国民の税金を費して強行せんとする防衛三カ年計画とは今日の世界情勢から見て、まことに愚劣きわまるものであります。
人工衛星の打ち上げが成功し、ICBM、IRBMが実用化される段階に達している現在であります。地上機械化部隊の平均戦闘力は一時間五キロ、原水爆攻撃隊を搭載する機動艦隊が攻撃発進点に到達するための戦闘速力は五十キロ、そして、ジェット機爆撃隊は一千キロの進攻速度、ICBMのスピードは地上機械化部隊の四千倍、海上機動艦隊の四百倍、ジェット爆撃隊の二十倍以上のスピードという時代になっております。これに対するわが国防の布陣たるや、自衛隊は青竹で訓練され、げんこつで愛撫されて死の行軍を続けたり、時に、旭川冬の河畔、こつ然となぞの失踪をしたりする十七万であります。それを訓練する幹部を養成する国防大学の学生はステーション・ホテルに美女を擁してダンスに巧みなる諸君であります。海上にはアメリカのお古のフリゲート艦を初め、国産「いかづち」「いなづま」と、名前はいかにもいかめしいが、どうやら汚職のにおいの立つものを含んで十二万四千トン、航空部隊はMDAP、すなわち日米相互防衛援助計画によりアメリカから供与されたものを主とし、F86F型ジェット戦闘機、T33A型ジェット戦闘機などを加えて一千機、ときどき墜落することをもって特色とするものではあるが、とうてい今日の防衛の世界的水準にはまともに立ち向えるものではありません。
岸総理大臣も、わが国今日の実力をもってしては、とうていアメリカ、ソ連の防衛力とは肩を並ぶべくもないことを自認しておられる。いわば、日本の防衛構想は、現在、何ら防衛の実力とはならないものであります。新しい科学的兵器を使用しておる国でも従来の兵器を使用しているから、わが国でも持ったっていいではないかと総理は言うが、イギリスはすでに現在の常備兵力を一九六二年までに半分にしようとしておりますし、アメリカも防衛態勢を大きく転換しようとしておる。わが国ひとりこの新しい態勢に処する何の構想も持っていないのであります。ソ連が人工衛星の打ち上げに成功したのは昨年の十月四日である。政府の防衛三カ年計画は同年六月二十一日、岸総理大臣とアイゼンハワー大統領との共同声明を受けて強行しようとするもので、新しい情勢に応じる何らの構想を持たない惰性軍備であります。惰性軍備に巨大な国費を費すことは、国民にとって最も耐えがたい苦痛とするところであります。
政府がこの時局に処して新しい構想を持つことができないというのは、国の防衛に関して、わが国独自の根本的理念を初めから持っていなかったからであります。平和憲法のもとに新しい国家理想を実現しようとしたわが国が、アメリカとの共同防衛であるからとか、他の国もやっているからとかいう考えで、武力をもって国の防衛をしようとしていることが、初めから誤まりだったのであります。軍国日本以来変らざる一つの迷信が自衛力増強の波にさまよい出たのが、わが国の防衛方針である。大東亜戦争の敗衂によって打ち敗られた武力をもう一度盛り立てようとする臥薪嘗胆的戦力増強を考えるならば、これほどばかばかしい、悲惨な喜劇はないのであります。科学の世界はもっと冷厳であり、もっと的確であります。
一九四五年夏の原子爆弾誕生以来、軍事技術、軍事科学は急速に発達して、今では旧軍人的頭脳ではとうてい扱いかねる段階に飛躍してしまっておる。その矛盾は、今、日本の至るところに露呈し出しているのであります。わが国の防衛はわが国だけでできるものではなく、安全保障の条約に基くアメリカとの共同防衛に待つべきものであるというが、その結果、日本にはアメリカの空軍、海軍の永久基地が至るところに残されて、原水爆基地に使用される不安を与えております。
先日、内閣委員会で、わが党の石橋委員が、岸総理に対し、アメリカがある他の国と戦争を始めて、この基地から原爆機を飛び立たせ、そのためにわが国がその相手国から報復爆撃を受けた場合、これらを他国の侵略と考え、自衛隊は出撃するのかという問いに答えまして、岸総理は出撃できると答えております。アメリカ軍隊の爆撃基地がなかったなら、だれが、何を目的に、この敗残の、しかも戦争放棄を世界に宣言した小国日本に爆撃を加える必要がありましょうか。日本の安全保障をするはずの米軍の基地があるために、こうした報復爆撃の危険にさらされ、アメリカの戦略目的のまま、竹やり軍備の自衛隊で、その自衛戦争とやらに巻き込まれなければならないし、また、岸総理は核兵器の持ち込みはしないと言っておるが、しかし、核兵器で武装しているアメリカとの共同防衛をやるのでは、これもずるずるに核兵器の持ち込みになってしまう可能性を多分に含んでいるのであります。安全保障とはまことに迷惑千万な保障であります。アメリカが真にわが国の安全を考えるならば、一日も早くその基地を撤退することであります。それのみが正しい意味の安全保障であります。
自衛隊を漸増せねばならぬ理由として、岸総理は、好んで直接間接の侵略に備えるためだと言います。国際共産主義の脅威に対して国を守るのだと言っております。しかし、ソ連とはますます親交を続けるつもりだと言うし、中国とも貿易だけはやるつもりだと言うのであります。一個の怪物欧州を徘回す、共産主義これなり、とは百余年前カール・マルクスが共産主義の亡霊にとりつかれた人々を皮肉っている言葉でありますが、百年後の今日、どうやら、わが岸総理大臣を初め与党の諸君の頭の中にも、この怪物がとりついたようであります。岸総理は、ソ連をも中国をも仮想敵国とせず、国際共産主義の脅威に向って、自衛隊の榴弾砲を向けたり、ジェット機を飛び向わせたりするために、せっせと、狭い日本の国土で、農民の田や畑をつぶし、家を取りのけ、漁場を荒して、演習地を広げておる。しかし、共産主義の脅威が榴弾砲やジェット機でなくなるものではないことは、大てい常識のある者は知っているはずであります。
撤退するアメリカ地上軍にかわって岡山県日本原の演習地を取りにかかっている自衛隊は、射程一万一千メートルの榴弾砲を、土地が狭いので、四千メートルの射程で演習をしようというのでありますが、演習をするにも土地が狭過ぎる日本の内地に、満州事変当時の兵員にひとしい十七万の自衛隊をかかえ込んで、国の自衛のため海外出兵もせずに砲丸を撃ち合ったら、国は
一体どうなりますか。アメリカが始めるか。ソ連が始めるか。おそらくはそのどっちも、今になっては始めるほどにばかではないと思いますが、万一戦争を始めて、ICBMが日本の空に現われたら、どんなことになるでしょうか。
太平洋戦争中、アメリカB29爆撃隊の日本攻撃のデータによりますと、日本防空戦闘機隊が最大の戦果を上げた一九四四年八月の撃墜率は一・七五%にすぎません。ドイツの本土防空も七%が最大であったし、一九五一年から五六年までのアメリカ本土防衛空軍の演習結果によりますと、撃墜率は最大三〇から三五%であります。これは飛行機同士でありますが、ロケットになると、V2号のロンドン攻撃のように、防御率ゼロの記録があり、迎撃ミサイルがICBMに命中する確率は最大十数パーセントといわれております。
これら数々の矛盾を矛盾とも思わないでいるところに、政府の防衛方針の大きな矛盾が発足し、発展している。今さら自衛隊漸増を強行しても、まじめに国の自衛のためだなどと考えるものは、だれもないのであります。自衛とは国を焦土にすることでありません。国民の惨たんたる窮乏の上にミサイルを飛ばすことでもありません。自衛隊の漸増が、よしんば旧大日本帝国陸海空三軍の大威容を再現し得たとしても、それが一九四五年なぜあのように跡形もなくついえ去ったかを思い起すならば、国の防衛は武力をもってしてはなし遂げ得るものでないことに思い至って、国民の悲願が結集した平和憲法の持つ重大な意義を感じないではおれないのであります。
ただ一つ、わが国の乏しい財力の中にあって、その当時の軍隊並みに回復し得たものがあります。防衛調達にまつわる汚職であります。ボロぐりを食い、中古エンジンをかじり、油をなめ、今ではついに軍艦までかじる始末になり始めたようであります。これだけは、自衛力をはるかにしのぐ、漸増どころか急増であります。どっちから考えても、自衛隊に巣食うこれらの死の商人たちは、国民の窮乏をよそに、演習の弾丸の飛ぶたび、飛行機が落ちて青年たちが生命を失うたび、防衛予算が通って艦艇建造費が増されるたび、ひそかにほくそえんでいるはずであります。あやまって戦争が起ったら、さらに愉快がるでしょう。国民の血の味に舌なめずりするでありましょう。
国の防衛は確かに大切であります。しかし、防衛に名をかりて、こんな状態を続けるならば、防衛ほど危険なものはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 淡谷君、申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/18
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019・淡谷悠藏
○淡谷悠藏君(続) 世界の防衛態勢が大きく変ろうとしている今日、わが国の防衛構想の根本的な立て直しが大切であります。
かって、東洋平和のためと称して、大軍を他国にかり出したわが国は、今、世界平和を口にして、ひそかに再軍備の芽を育てている。武装平和の時代は過ぎました。科学兵器の極度の発達は戦争を事実上できなくしています。そうした大勢に逆行して、意味もない自衛隊漸増方針をずるずると続けていこうとすることは、かつての失敗を繰り返すだけにすぎないことは明白であり、何ら防衛の名に値するものではありません。
自民党の諸君の中にも、この無意味に国費を浪費する自衛隊の増強には強く反対している人がいるはずであります。陸上自衛隊を、ことし十六万を十七万にふやし、これを将来もう一万ふやして十八万にすることをやめないならば、残念ながら、与党の一員でございますが、本案に反対の意思を政治生命をかけて申し上げますと内閣委員会で言ったのは、防衛問題ではくろうとの旧参謀辻政信君であります。
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」この日本国憲法の前文を、あらためて私は諸君に訴えます。今からでもおそくはないとは、かつて日本陸軍崩壊を招いた二・二六事件の蹶起部隊に訴えた言葉でありますが、私は平和日本を破滅に導こうとしている与党の再軍備強行の蹶起部隊に訴えます。今からでもおそくはない。新しい平和国防の構想の発足のために、敢然と本法案に反対の票をわれわれとともに投ぜられんことを心から希望いたしまして、反対の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの淡谷君の発言中、もし不穏当な言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。山本正一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/20
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021・山本正一
○山本正一君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題になっておる防衛二法案に対して、簡潔に賛成の意思を表明するものであります。(拍手)
世界に戦争の発生を否定して平和の確立をこいねがうことは人類の理想であることは申すまでもございません。しかし、現実の世界の平和は力のバランスによって維持されておりまして、一たびこのバランスが破れました場合はそこに戦争の危機をおそれますがゆえに、各国は現に軍備の充実を進めており、今年度の防衛年鑑は、この世界各国における軍備充実の実情を明らかに伝えておるのでございます。
まず、自由諸国の中心たるアメリカにおいては、国民所得の十数パーセントを国防費に充てて、百二十五万の地上軍、千三十二隻の艦艇、四万二千の航空機を保有し、社会主義の祖国といわれておるソ連は国民所得の約三〇%、実に世界最高の軍事費を投じて、約二百三十万の地上軍、七百二十一隻の艦艇、約四万の航空機を擁して、互いに軍備の充実に寧日ないありさまであります。また、中立を標榜するスイスにおいてえさも、国民所得の約三・七%に相当する防衛費を充てまして、五万の地上軍、約五百の航空機を保有し、さらに、無抵抗の平和国を標榜するインドにおいてさえも、国民所得の約二%余りの防衛費を充てて、五十五万の地上軍、五百の航空機を持って、他国の侵略に備えておるのでございます。わが国に隣接する中共は、国民所得の約七%の国防費を持ち、約二百四十五万の地上軍、四十五隻の艦艇、三千の航空機を持ち、あの狭い台湾においてさえも、約四十三万の地上軍、二十隻の艦艇、六百の航空機を保有し、北鮮における四十万の地上軍と七百の航空機、韓国における約六万の地上軍と六百の航空機を保有するなど、すべて世界情勢のきびしい現実に備えておる実情でございます。
およそ、祖国をみずからの手によって守ることは独立国民の崇高なる義務であり、国民の生命財産に不安なからしむることは政府の最高の責務であると信ずるのでございます。(拍手)今、政府は、国民所得のわずかに二%にも足りない費用を充てて、必要にして最小限度の自衛に備えんとするものであります。自衛の必要を軽視し、あるいはそれを否定する議論は、座して祖国の滅亡を待つの論に堕するものでございまして、(拍手)しょせんは、われわれと人生観を異にするか、あるいは世界観の相違によるものでございまして、いずれにいたしましても、国家将来のためにまことに遺憾のきわみでございます。(拍手)
わが国はすでに国連に加盟し、逐次国力に応じた防衛力を整え、集団安全保障機構の一員として、世界平和の維持に直接貢献するとともに、日米安全保障体制の強化によって、わが国の防衛に遺憾なきを期しておることは、御承知の通りでございます。もちろん、国の防衛について他国に依存をしなければならないということは、独立国としてまことに遺憾なことでありまして、国民のこいねがうところは、すみやかに外国の軍隊の撤退をして、自主的な防衛体制が確立されることであろうと信ずるのであります。しかしながら、国際共産主義の国家が、その目的のためには手段を選ばない策謀をあえてする現実に思いをいたしますならば、防衛体制を整備することなく、単に外国軍隊の撤退のみを求めるようなことは国家としてきわめて軽率な、また、きわめて危険な措置であると申さねばなりません。(拍手)もしわが国の防衛力の真空状態が生じましたときに、その間隙を襲うものは侵略と混乱であることは、まことに明瞭なものであろうと存じます。(拍手)外国軍隊の早急なる撤退を叫びながら、他面において自衛力の増強に反対するとい態度は国際情勢の現実を正視しないのであるか、あるいは、ことさらにその認識を避けようとするものと判断せざるを得ません。(拍手)少くとも、国家国民の将来を思う人々の態度とは思われません。
昨年、ソ連は人工衛星やICBMの実験に成功したので、世界の戦略体制は急変しておるから、日本が今陸上自衛隊を一万名増員することは意味が乏しい、という意見もあります。しかしながら、空極兵器といわれるICBMは未完成のものであります。他方、アメリカにおけるその対抗兵器の実験に成功した事実、あるいは現に圧倒的に優勢な戦略空軍の確保等を考えまする場合、むしち自由諸国側の戦略的地位がすぐれておると考えられるのであります。かような国際的軍事情勢におきまして、世界の戦略情勢が急変したと即断することは、自由諸国の結束をくずさんとするソ連の心理作戦にみずから乗るものであり、まことに危険な判断であると思うのであります。
要するに、この二法案は、国家財政の許す範囲において必要の自衛力を漸増し、国土の防衛に備えるとともに、世界の平和に寄与せんとするものでありまして、明らかにこれ国民の負託に沿うゆえんであると信じ、ここに賛成の意を表明するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/21
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022・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/22
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023・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り可決いたしまた。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/23
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024・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、職業訓練法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
職業訓練法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員会理事大坪保雄君。
〔大坪保雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/26
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027・大坪保雄
○大坪保雄君 ただいま議題となりました職業訓練法案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
最近、産業界において技能労働者の確保が強く要請されておるのでありますが、労働市場の現状では、多くの不完全就業者をかかえている反面、技能労働者は著しく不足し、雇用と生産の両面における隘路をなしている実情にあります。また、労働者の技能水準の向上は、職業の安定、労働者の地位の向上とともに、産業振興の基盤をなすのでありますが、このために必要な職業訓練の諸制度は必ずしも十分とは言いがたく、特に中小企業においてはきわめて低調に終始している現状にあり、これを欧米諸国に比較しても著しく立ちおくれているといわざるを得ないのであります。このような実情にかんがみまして、従来行われて参った職業安定法による職業補導と、労働基準法による技能者養成等の諸制度に再検討を加え、職業訓練を一そう充実させるとともに、さらに技能検定制度を設け、生産現場における技能水準の向上と技能労働者の確保に資するがため総合的職業訓練制度を確立しようとするのが、本法案提出の理由であります。
以下、その内容を簡単に御説明申し上げますと、第一に、公共職業訓練と事業内職業訓練とが系統的に実施されること、及び職業訓練と学校教育等との密接な連係をはかることを職業訓練の原則とし、労働大臣は適切な職業訓練計画を定めることといたしております。
第二に、公共職業訓練は、現下の雇用失業情勢に対処して無技能労働者に対する訓練を行い、その就職の促進をはかるとともに、事業内職業訓練に対する援助を積極的に行うこととし、所要の規定を設けたことであります。
第三に、事業内職業訓練については国及び都道府県が必要な援助を行うよう努めることとし、職業訓練に関する基準を定め、認定制度を設けること及び中小企業に対する共同職業訓練方式を認めることにより、その積極的な助成をはかることといたしております。
第四に、職業訓練指導員の免許及び試験制度を定め、その資質の向上をはかるとともに、労働者の技能を高め、わが国産業における技能水準の向上をはかるため、諸外国の例にならって技能検定制度を創設することとし、所要の規定を設けたことであります。
第五に、その他労働省及び都道府県に職業訓練審議会を設置する等総合的な職業訓練行政を推進するため所要の規定を整備いたしたこと等であります。
本案は、去る二月二十一日本委員会に付託せられ、同二十八日労働大臣より提案理由の説明を聴取した後、慎重なる審査を続けたのでありますが、特に本案と学校教育との関係を考慮し、三月二十五日には文教委員会との連合審査会をも行なった次第でありますが、その質疑応答の詳細は会議録において御了承願いたいと存じます。
本委員会は、二十八日質疑を終了いたし、本三十一日自由民主党及び日本社会党の共同提案による修正案が提出せられ、井堀委員よりその趣旨の説明がありました。その要旨は第一に、国及び都道府県は、身体障害者職業訓練所において職業訓練を受ける求職者のみならず、公共職業訓練を受ける求職者にも手当を支給することができることとすること、第二に、市町村、公益法人、法人たる労働組合等が行う職業訓練は公共職業訓練とみなすこととすること、第三に、中央職業訓練審議会の委員は関係労使代表各同数及び学識経験者をもって構成することとし、別に関係行政機関の職員のうちから任命する特別委員を置くことができることとすること等であります。
次いで、討論を省略して、修正案並びに修正部分を除く原案について順次採決に入りましたところ、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/28
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029・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/29
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030・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。
午後二時十九分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02319580331/30
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