1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月九日(水曜日)
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昭和三十三年四月九日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
大蔵大臣一萬田尚登君不信任決議案(淺沼稻次郎君外三名提出)
恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(第二十六回国会内閣提出)
駐留軍関係離職者等臨時措置法案(内閣委員長提出)
日本労働協会法案(内閣提出)
下水道法案(内閣提出)
公衆電気通信法の一部を改正する法律案(内閣提出)
国会議員互助年金法案(議院運営委員長提出)
国会法等の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
午後三時三十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/0
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001・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/1
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002・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、淺沼稻次郎君外三名提出、大蔵大臣一萬田尚登君不信任決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/2
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003・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/3
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004・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。
大蔵大臣一萬田尚登君不信任決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。渡辺惣蔵君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/4
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005・渡辺惣蔵
○渡辺惣蔵君 私は日本社会党を代表して、大蔵大臣一萬田尚登君の不信任案を提出し、その理由を明らかにするものであります。(拍手)
まず、本案の主文並びに理由を朗読いたします。
大蔵大臣一萬田尚登君不信任決議案
主文
本院は大蔵大臣一萬田尚登君を信任せず。
右決議する。
〔拍手〕
理由
一 一萬田大蔵大臣は、岸内閣の閣僚として就任して以来、経済状勢の見透しを誤り、昭和三十三年度の予算を通して、大企業に対しては日銀の追加信用による三千億円の融資を行い、中小企業及び農林漁業に対しては苛烈なる金融引きしめを行い、大企業の過剰生産をますます促進する一方国内需要を減退せしめて現在の深刻なる経済不況を招来した。
二 政府は貧乏追放、中小企業の強化を国民に公約しながら、大法人に有利なる減税を実施して、中小企業者及び低額所得者の過重なる税負担の実状を無視し、国民の税負担の不均衡を更にはげしくした。
三 昭和三十三年度予算編成に当つては、党利党略のためしばしば方針を変更し、国民生活安定の経費を極端に圧縮し、経済基盤の強化に藉口して、中小企業、農林漁業、公営住宅建設に対する投融資を等閑視した。
四 自己の選挙運動のために国会の審議を放棄してその運営を停滞せしめた。
〔拍手〕
不信任決議案提出の理由は以上の通りであります。
この不信任案提出については、たまたま、本国会における重要法案たる恩給法案の本会議上程に際して、大蔵大臣は、その職責を忘れて、自己の選挙運動のために選挙区大分県における植樹祭に出席して、与野党あげてその無責任な態度と国務大臣たる者の不見識を糾弾されるに至ったのであります。(拍手)しかしながら、昨日の国会サボタージュによって暴露された無責任と不見識な態度は、その根底において一萬田財政の朝令暮改のみずてんぶりと全くその軌を一にするものであります。(拍手)
日本社会党が一萬田蔵相不信任の第一の理由とするところは、一萬田蔵相が、財政金融行政を担当する重責にありながら、日本の経済事情に対する正確な判断をことごとに誤まってきたということであります。すなわち、岸内閣の蔵相に就任して以来、前内閣のまいた経済見通しの誤まりを是正すると称して、積極政策とは正反対の、いわゆる金融引き締め政策に没頭したのであります。(拍手)すなわち、金融引き締めの名目をもって、財政投融資の繰り延べと、中小企業に対する苛烈なる金融引き締めを行いながら、他方においては、市中銀行の要請をそのまま受け入れて、今日に至るまでに日銀の追加信用を三千億円以上も増加させ、これらをあげて大企業に対する融資に奉仕させてきたのであります。(拍手)この結果として、すでに一昨年以来表面化してきておる繊維産業関係の過剰投資と、これによって起った過剰生産に相次いで、生産財関係におきましても過剰投資と過剰生産が急速に激しくなってきたことは、天下周知の事実であります。(拍手)
一萬田蔵相は、国際収支が悪化し、外貨保有量が実質的にはまさに底をつくかと見られた昨年九月の初めに、昭和三十三年度予算に関する基本構想を発表して、国際収支改善のためには極力内需を抑制して、三十三年度予算は緊縮方針をとらねばならないと言明いたしたのであります。また、昨年十二月二十日には予算編成方針を公表し、ここでも同じ趣旨のいわゆる金融引き締め方針を再確認いたしております。次いで、本年に入りまして、三十三年度予算の編成に入るや、大蔵省原案は政府与党たる自民党の選挙対策のための手放しの無理難題の予算分取り競争に体一ぱい引きずり回されて、一夜にして一萬田財政方針はくずれ去ってしまいました。(拍手)一萬田蔵相にして、ほんとうに恥を知るならば、真の政治家としての見識と節操と責任感があるならば、今日この議場において退陣を迫られる日を待つまでもなく、本年度の予算案が、閣議決定を見た一月二十日の未明に、即刻大蔵大臣の辞表を提出すべきであったのであります。(拍手)
一萬田蔵相不信任の第二の理由とするところは、岸内閣の閣僚として、貧乏追放や中小企業の強化という公約を天下に発表しながら、三十三年度予算編成に伴う税制改正においては全くこの公約を無視した、政治家としての不徳義は責められなければならないのであります。今回の税制改正では二百六十億円規模の減税を行いながら、そのうち低額所得者に影響があるのは二級酒類の減税五十五億円だけであって、残りの二百五億円は、いずれも大法人並びに高額所得者本位に減税されておるのであります。しかも、その酒税の減税さえも、本院の附帯決議を無視して、減税法の成立と同時に、酒造企業家との密約を果すために、減税分の一部を生産者価格の引き上げに回そうとしたために、院議無視の責任を数日にわたって追及され、やむなく涙をのんであきらめたのであります。(拍手)国民に酒を飲ませるかわりに煮え湯を飲ませようとしたのであります。まことに政治家として断じて許すことのできない、不明朗な、奇怪しごくの行為といわざるを得ません。
本年度は前年度よりも歳入が一千七百七十四億円もふえ、これに減税額の二百六十億円を加えますならば、二千億円の税金取り過ぎの累積があるのでありますが、このうち低額所得者の減税として還付されたのが、わずか五十五億円であります。所得税についても、中小企業法人税においても、あるいは個人事業税においても、国民の租税の過重負担は少しも軽減されずに、逆に大法人の税負担が軽くされ、租税負担の不均衡は、不況に向ってますます拡大されておる状態であります。私どもは、このような課税公平の原則を忘れて大法人や高額所得者よりの正当なる税収確保を故意に怠っている大蔵大臣を、一日たりとも信任しておることはできないのであります。(拍手)
私は、一萬田大蔵大臣不信任の第三の理由といたしまして、本年度予算編成において、経済基盤強化基金として総額四百三十六億円の財源を名目上はたな上げして見せて、これをもって緊縮予算であるかのように見せかけておきながら、社会保障、民生安定関係の予算を過酷にも極端に圧縮して、不況下にあえぐ失業者が激増し、勤労者は実質賃金が減少していく現状を、まことに冷酷にもこれを放置しておるということであります。また、財政投融資額は、名目的にも三千九百九十五億円で、三十二年度の実行計画より四百七十二億円も上回り、これに繰り延べされてきた融資残りや開銀に対する追加融資を合せますならば、実にその規模は四千三百億円に達しております。これに加えて、政府は、電力、鉄鋼、石炭等の大企業に対しまして、アメリカから四百億円近い借款をあっせんしております。先に指摘いたしました四百三十六億円は、その名目こそ中小企業や東南アジア開発等の名前がつけられておりますが、その実体は原資を資金運用部に預託して大企業向けに融資することにありまして、財政投融資はこれによって五千億円をこえておるのであります。このように膨張した資金はとうとうとして大企業に流れ込み、大企業の継続事業や滞貨融資、さらにまた大銀行のオーバー・ローンの減額などに投入せられて、現在のこの不況をよそにいたしまして、ますます大企業のみがりっぱに不況救済対策を立てられておるという現状であります。しかるに、中小企業や勤労者の生活は、昨年六月には平均二百件でありました企業整理が、今や十二月には六百八十四件に上昇し、一月には八百十件に急増し、従業員の整理は昨年九月以来毎月二万人をこえており、十二月には三万人、一月には四万人をこえるに至っておるのであります。労働省すら本年の失業者増加は三十万人をこえると推定しております。しかも、雇用の面では、昨年八月以来、常用雇用は減少の一途をたどっておる現状であります。かかる経済の実態を無視して、中小企業や勤労大衆の犠牲の上に立って大企業、大資本家のみを救済しようとする一萬田財政は、われわれの断じて許すことのできないところであります。(拍手)今や、一萬田財政の存続は、一日延びれば延びるだけ、さらに大衆の窮乏は再生産され、一萬田蔵相がその職にとどまることは、国民大衆をしていよいよ貧困の不幸を加重するものであります。
一萬田大蔵大臣は、昨日、本国会におきまして最も重要法案と称せられる恩給法の審議をみずから放棄して、植樹祭の出席の美名に隠れて、選挙運動のために大分県に帰られました。そのために、昨日の大蔵委員会は、千葉銀行事件で参考人を呼びながら、ついに流会をし、本会議におきましては、与野党一致で恩給法の本会議上程を中止するに至ったのであります。この重大なる責任を大蔵大臣は何と考えておるか。その責任を糾弾せざるを得ないのであります。(拍手)およそ植樹祭は農林大臣の所管事項であります。日ソ交渉に行っておる赤城農林大臣の代理は石井副総理のはずでありますが、一体、一萬田大蔵大臣は、いつから農林大臣代理になられたのか、お伺いしたいと思うのであります。(拍手)所管事項以外のことは、総理及び副総理でもないあなたが責任を負うはずはないのであります。それにもかかわらず、しいて国会審議を放棄して植樹祭にお出かけになるならば、事前に大蔵大臣の辞表を出してからお出かけになるのが至当ではないかと思うのであります。(拍手)一萬田蔵相は、かつては日銀の法王といわれて、戦後日本の金融界に君臨してこられたが、今や、国会においては与党からでさえ引きずり回され、大蔵官僚からは突き上げられておる。野党からは総攻撃されておる。まさに国民怨嗟の声の中におるのであります。この際、往年の日銀法王の盛名を惜しまれるなら、あえて不信任の決議を待つまでもなく、いさぎよく退陣されて、裸一貫になって堂々と選挙区にお帰りになることが、政治家一萬田尚登氏としての態度であることを、あえて苦言を呈しておく次第であります。(拍手)
以上をもって大蔵大臣一萬田尚登君不信任案の提案説明を終ります。何とぞ満場一致をもって御賛同あらんことを要望する次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/5
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006・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。
山手滿男君。
〔山手滿男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/6
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007・山手滿男
○山手滿男君 私は、ただいま上程されました一萬田大蔵大臣不信任案に対しまして、自由民主党を代表して反対の意思を表明せんとするものであります。(拍手)
まず、不信任理由の第一について申し上げます。昨年一萬田大蔵大臣が就任をされました当時以来、世界各国とも、今日まで、いわゆるドル不足に悩んでおります。わが国もまた当時いわゆる外貨危機の状態にございまして、国際収支も毎月一億ドル以上の赤字を示して参りましたが、その後、政府の経済政策、財政政策よろしきを得まして、今日国際収支は漸次改善をいたしまして、十月以来黒字に転じ、昭和三十二年度の赤字は当初約四億数千万ドルと予想されておりましたのが、実際におきましては一億三千万ドル程度にとどまり、引き続き今日改善を示しつつあります。(拍手)その間におきまして、国庫収支の調整等、その施策が緩急よろしきを得ました結果、幾たびか巷間にはいわゆる年末危機とか三月危機とかいったことが流布されましたけれども、これらを順調に切り抜けて経済の調整を実現し、その均衡を回復するに至りましたことは、実に一萬田大蔵大臣の努力の結果でございます。(拍手)特に中小企業に対しまして、財政投融資を通じて、三十二年度当初計画に比しまして、中小企業金融公庫、国民金融公庫に対し百七十億円の財政資金を追加するほか、商工組合中央金庫に対しましても、政府資金による商工債券の引き受けを五十億増額したりしております。また、信用保証協会の保証によりまして中小企業に融資をした金融機関より二百億余の金融債の買い上げを実行して参っております。これらの措置により、特に金融引き緊め下におきまする中小企業金融の円滑化については万全の配慮がとられて参ったのであります。提案理由におきまして、今日国内需要が減退をしておるとか、いろいろな御批判がありまするが、国民経済は国際収支の均衡を前提として初めて健全な発展を期し得るものでございまして、このことを社会党の諸君はよく御承知を願いたいのでございます。今日ようやく経済の調整も仕上げの段階となり、将来におきまして日本経済が堅実な伸張を遂げるための基礎が確立をしつつありますことは、一萬田大蔵大臣の偉大なる功績でありまして、何ら言いがかりをつけられる筋合いのものではないのであります。(拍手)
次に移ります。減税についての非難がございます。社会党のただいまの提案説明を聞きまして私は感ずるのでございますが、全く何らの根拠のない言いがかりでございます。(拍手)法人税の減税は三十二年度、大法人に有利といわれておりました特別措置の大幅な整理のあとを受けまして、今年過重な一般税率を引き下げたものであって、まさに税制改正の大道を行こうとしておるものでございます。また、中小企業者及び低額所得者の税負担については、法人税における低減税率適用範囲の拡張、下級酒に対する税率の引き下げ、自転車荷車税の廃止等々、財源の大部分をさいて軽減に努め、国民大衆、庶民の生活の向上をはかろうとしておるものであります。あるいは相続税の改正にいたしましても、中小財産階層の負担の大幅軽減をはかろうとしておるものでございまして、これ全く一萬田大蔵大臣の英断の一つということができましょう。(拍手)
第三に、本年度の予算について申し上げます。三十三年度の予算は、あらかじめ経済の見通しを樹立いたしまして、来年度の経済運営の基本方針を定めまして、これを基礎として編成をいたしたものでございます。すなわち、その編成は、終始、来年度において国民経済が輸出の増大を主軸として国際収支の均衡を維持しつつ堅実に成長することを眼目とする、一貫した方針をもって貫かれたのでありまして、提案理由のごとき非難は全然当らないと私どもは考えております。(拍手)すなわち、国民生活安定の経費については、社会保障費におきまして、前年度当初予算に比し百二億の増額を行なっております。この増額は、三十三年度予算における経済基盤強化資金等のいわゆるたな上げ資金、国債費の増加、あるいは地方交付税の増加等を除く経費の増加が五・五%に相当いたしますのに対しまして、はるかにこれを上回る八・九%に相当するものでございまして、国民生活安定の経費を極端に圧縮しているなどという非難は全然理解に苦しむところでございます。(拍手)
中小企業に対する投融資につきましては、国民金融公庫、中小企業金融公庫、あるいは商工組合中央金庫等を通じまして、前年度に比し約四百三十億円の貸し出し増加をはかることといたしておりまするほか、愛知用水公団、農地開発機械公団あるいは森林開発公団等につきましても、それぞれ事業量の大幅増加をはかっておることは、御承知の通りであります。あるいは公営住宅の建設については、前年度予算においてすでに大幅な増額を見たものでありまするが、本年度においてはさらに一そうの充実をはかっております。このように、いずれも増額をはかっておるのみならず、特に中小企業及び農林漁業については、経済基盤強化資金等といたしまして、中小企業信用保険公庫保険準備基金六十五億円及び農林漁業金融公庫非補助小団地等土地改良事業助成基金約六十五億円等を設けまして、経済基盤の強化の線に沿って長期にわたる施策を講じておるのでありまして、これらの部門に対する投融資については非常に積極的に重点を置いて進めておるのであります。この予算は、私は、十分だとは言えないといたしましても、現状におきましては最上の予算であると申してあやまちでないと思うのであります。(拍手)
次に、不信任理由の第四について申し上げます。諸君御承知のように、一萬田大蔵大臣は、わが国金融の元締めでありまするところの日本銀行に奉職されまして以来、その手腕を遺憾なく発揮されて参りました。特に、終戦後の極端なるわが国経済金融の混乱期におきまして、長くその総裁として活躍し、わが国の復興に限りなき貢献をされましたことは、万人の承認するところであります。(拍手)さらに、政界に入られまして、鳩山内閣の蔵相として、さらにまた今日岸内閣の大蔵大臣として、いかに新事態に対処し良心的な予算を組むか、いかにしてわが国財政の健全化をはかるかに日夜寝食を忘れて努力をされつつある姿は、私たちの深く敬意を表するところであります。(拍手)文字通りわが国財政経済の第一人者であると申しても過言でないと私は思います。すなわち、一萬田大蔵大臣は、昨年十月以来、年末も正月も返上いたしまして今年度の予算と取っ組まれたのでありますが、これらの予算もめでたく年度内に成立を見たのであります。しこうして、いろいろ議論がございましたが、去る八日、一萬田先生の郷里の大分におきまして、国土緑化の国民運動の一環としまして盛大な植樹祭がとり行われたのでありますが、その植樹祭の重要性にかんがみ、本年もまた陛下は特にその式に列席されたのでございまして、この意義深き全国民的な行事に、郷里出身の大蔵大臣が、所定の手続を済まされて、寸暇をさいて列席することは、それほどおとがめになるほどのことでもあるまいと私は思うのであります。(拍手、発言する者あり)
以上要約をいたしますと、本不信任案には、これを是とする実質的な理由は全然ないのであります。このような言いがかりをつけた不信任案を、この段階で社会党が出されることは、それこそ社会党の選挙対策以上の何ものでもないのであります。(拍手、発言する者あり)「国会の審議を放棄してその運営を停滞せしめ」などと言われるのでございますが、こういう意味のない提案を、この段階で社会党がこの議場に出されますことは、社会党こそ、議会の運営を停滞せしめ、国民待望の重要法案の成立をおくらせようとされるものでございます。(拍手、発言する者あり)
以上のような見地に立ちまして、私どもは断固本不信任案に反対の意を表明する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/7
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008・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 石野久男君。
〔石野久男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/8
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009・石野久男
○石野久男君 私は、ただいま上程されている大蔵大臣一萬田尚登君の不信任案に対し、日本社会党を代表して賛成の意見を述べようとするものであります。(拍手)
ただいま、山手議員から、一萬田氏の人物をたたえて、植樹祭に行ったことについての弁護をなさいました。国会の審議を放棄して行かれたことに対する弁解をされたのであります。これは国民がおそらく笑うでありましょう。
一萬田蔵相は岸内閣の貧乏追放政策の具体的な実施者として、中小企業の強化だとか、あるいは減税の実施を国民に公約したけれども、あなたが蔵相就任以来、かつて日銀法王といわれたように、ひたすら大資本擁護の立場に終始し、国民大衆に対しては、いささかも、あたたかみのある施策を行なっていないのであります。(拍手)昨年来あなたのとってきた金融引締めの政策を通じてとられた大資本擁護政策と、勤労大衆の貧困化政策はそれ自体すでに国民の名において大蔵大臣の職を追放さるべきものであります。
本不信任案に賛成する第一の理由は、本年度の予算編成に当って、財政法上の重大な違法行為をあなたが意識してやっているということであります。本年度予算の特徴は、一萬田蔵相が財政演説で述べたように、「異例の多額に上りました昭和三十一年度の剰余金のうち、法定の使途に充てるものを除く四百三十六億円は、これを一般の歳出に充てることなく、将来における経済基盤の育成強化に必要な資金に充てる」ことでありました。すなわち、四百三十六億円のうち二百二十一億三千万円をたな上げして、資金をプールするということであります。これは、税金を、それも国民から取り過ぎている税金をたな上げして景気調節に使うということで、このような財政政策はわが国財政史上異例のことであり、世界にもいまだかつてその例を見ないところであります。一萬田蔵相は、このフィジカル・ポリシーを御自慢にしておられるが、一萬田氏にして、国民経済の何たるかを理解し、国民の生活の実情をつまびらかにするならば、この剰余金はすべからく減税の原資として国民に返還すべきであります。(拍手)しかるに、あなたは、国民経済に対する政治的感覚も、国民生活に対する愛情の片りんだも持ち合せていないのであります。
しかも、この剰余金をたな上げ資金として一般会計に計上する措置は、財政法上見のがすことのできない違法行為であります。すなわち、財政法第四十四条は、特別資金の保有に関して「国は法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」と厳に規定しておるのでありまするから、この四百三十六億円のうち、使途の不分明な二百二十一億のたな上げは、特別の基金として保有せんとする限り、特別会計として保有すべきものであります。これは明らかに違法行為であります。経済基盤強化基金を、一萬田構想のすぐれた施策として、あなたは、宣伝している。しかし、このたな上げ資金は、すでに財政法上の重大な過失と違法行為の上に作り上げられているのでありまして、あなたはこの誤まりを直ちに改むべきであります。あなたはその良識がない。あなたは大蔵大臣の職務遂行の教典である財政法を無視しているのであります。わが党は、あなたが国法を無視している態度をきびしく批判し、あなたの大蔵大臣不適任を強く追及せざるを得ないのであります。(拍手)
不信任案に賛成する第二の理由は財政政策における自主性を欠除しているということであります。あなたは、三十三年度予算編成に関する基本構想においても、また予算編成方針においても、しばしば、三十三年度歳出の実質的増加は厳に抑制して、あくまでも国民経済を刺激しないよう堅実な基調を堅持すると言っていたのであります。しかるに、財政投融資は、三十二年度実行額を三百二十億もオーバーする三千九百九十億円と相なっているのであって、その食言のはなはだしき、国民を愚弄するもはなはだしいのであります。このことは、あなたが財政政策上の自主性を持っていないところに基因しておるのであります。
財政政策上の自主性を持っていないことが、どのように予算編成上悪質な結果をもたらすかは、軍人恩給の増額のことに関してよく現われているのであります。軍人恩給の増額は本年度三十七億円でありまするが、平年度三百億円の増額である事実にかんがみ、あるいはあなたが国民に示した三十三年度予算編成方針に照らしても、この増額案に対しては、一萬田さん、あなたは蔵相の職を賭してでも戦うべきであったのであります。あなたはそれを戦わなかった。あなたは蔵相としての責任感と勇気に欠けていたのであります。軍人恩給増額の財政面に対する圧迫は、三十三年度予算にあるのではなく、三十四年度以降にその重圧と弊害を出してくるところにあるのであります。
あなたは、一月五日突如として行われたソーニクロフト英蔵相の辞任をどのように見られたか。ソーニクロフト蔵相の辞任のさだかな理由はわからないが、新年度予算編成における意見の対立がその主因であったことは間違いありません。彼は、あらゆる犠牲を払って、ポンド防衛のために戦った。彼の政策のよしあしは別として、彼が身を賭して大蔵大臣の職責に信念的であった事実を、私どもは高く評価いたします。彼は英国の財政を背負って立つ気概に燃えていたのであります。一萬田さん、あなたのどこにソーニクロフトの気魄の一片だに見出すことができるでありましょうか。(拍手)私は、あなたの、自主性のない、節操のないよろめきを、邦家のために悲しむものであります。あなたは、すでに、軍人恩給増額決定の閣議で、みずから岸首相のもとに決然として辞表を出すべきであったのです。あなたは絶好のチャンスを逸したのであります。しかしながら、時のいかんを問わず、大蔵大臣の職責の重がつ大なるにかんがみ、みずから省みて自決すべきであります。
第三の賛成理由は、あなたの景気見通しについての誤まりであります。すでに渡邊氏からも鋭く追及したように、大蔵大臣は常に海外の景気動向について正しい判断と洞察力をもって国民経済をリードすべきでありました。米国の経済は七月から立ち直るであろうと国会であなたが答弁したのが二月の末でありました。ところが、三月の初めには、その見通しが誤まっていたことを記者会見で説明したのであります。何という不定見でありましょう。海外の景気動向に対する確信を持たないだけでなく、あなたは日本経済の危機に対する認識においてもはなはだしく浅薄でありました。
昨年以来、一萬田大蔵大臣は、国民経済を把握するに当って、単に国際収支の面だけしかこれをとらえなかったのであって、日本の国民経済に内攻するところの景気動向に対しては、いささかも配慮を払っていなかったのである。すなわち、輸入原材料、原材料並びに生産者製品の在庫指数が国民経済における景気動向とどのように関連し、設備投資と受注残高の見合いが海外景気とどのようにつながっているかという、蔵相としての見通しと定見を全く持っていなかったのであります。あなたの持ち合せた政策は、行き過ぎた輸入を抑制するという政策だけであった。一萬田大蔵大臣のこの政策は、確かに、山手氏の言ったように、国際収支の改善には役立ったけれども、その反面では、大きな犠牲が中小企業者や労働者、農民、市民の間にとめどなく広がり、今日もなおその犠牲はどんどん広まっていっているのであります。(拍手)あなたの政策の結果、経済の不安定化は一そう進み、かつ、多くの中小企業者の破産、倒産、労働者の失業増加の上に、資本の系列整備とその強化が促進されたのであります。あなたの国民経済的立場からする財政に対する見方は全然なっていません。遺憾ながら、あなたの財政政策は、銀行技術屋として中小企業者を足げにしながら、大資本に奉仕する番頭さんとしての域を脱するものではありません。(拍手9
かつて、あなたは小笠原蔵相が二十八年のインフレの激化に対処するに当って、日銀に金融引き締めを強く要望した際、あなたは、日銀総裁として、財政のしわ寄せを金融が受けることをきらって、これに協力しなかったのである。その後、世界銀行調査団のドール団長から、り二十八年のインフレは金融に責任があると指摘されて、面目を失したのであります。あなたのお得意の金融政策においてすら、ドール氏からかくのごとく国民経済的視野に欠けておることを指摘されておるのである。あなたの、経済に対する洞察力に欠け、自主性を持たず、定見なく、浮草のごとく無節操であり、風のまにまによろめいておるその政策に対して、われわれは日本の健全財政を期待することができないのであります。
私は、予算編成上の不手ぎわについて、特にインドネシアの焦げつき債権の棒引きの処理に当って、あなたの焦げつき債権に対する考え方が国民に対してきわめて不親切であるということを指摘しなければいけない。この債権がすでに広義の賠償であるということは、前尾通産大臣が私たちの質問に対して答えておるところであります。あなたは一国の台所を頂かる責任において、なぜそのように理解し、それを国民に知らしめないのであるか。あなたは、その焦げつき債権を棒引きすることによって、一部の商社を潤し、国民に大きな負担をかけておるのであります。
あなたの、その大蔵大臣の職責に対する無責任さは、もって職を辞するに値するものであります。私どもは、あなたが大蔵省内におけるところのその下部官僚に対して統轄カが欠けておることについて、特に大臣としての資格のないことを、ここに指摘しなければならない。本年度予算におけるところのミスプリントの問題や、ヴェトナム賠償等々におけるところの不手ぎわはあなたの下部官僚に対する連携の十分で、ないというところからきておるのでありますが、あなたは、大蔵官僚との間におけるところのそうした離間の策に対して、何ら統御する力を持っておりません。大蔵官僚との離間は池田前蔵相につながる人間関係から発生しているとも聞いておりますけれども、いずれにしても、部下に対する統轄力を欠いておることは、岸内閣における藤山外相の外務官僚に対すると同様で、大臣としての資格を欠いていると思われるのであります。すでに省内においてかくのごとくであるあなたが、いかにして国政担当の任務を全うすることができましょう。私たちは一日も早くその職を去るべきであるということを要求せざるを得ないのであります。(拍手)
最後に、私は、あなたが、祖国の真の独立と平和のための戦いを行なっておる国民に対して、意識的な弾圧を行なっているということを指摘しなければいけない。平和を愛好し、独立を願望する日本社会党は、全国民とともに、あなたが一日も早く大蔵大臣から引き下るように要求せざるを得ないのであります。それは過日沖縄に帰ろうとする宮良氏に対する、あなたの部下である税務官吏のとった不届きしごくな野蛮行為であります。それを指揮したあなたの責任についてであります。あなたの、このような指導は、沖縄でアメリカの支配と半永久的な隷属化から祖国を取り戻そうとして戦っておる愛国者たちに対して、アメリカの支配を強要するにひとしいからであります。私どもは、断じてその行為を許すことができないのであります。一萬田さん、あなたは、あなたの部下のとったこうした行為に対して、日本人としての自責の念からも、あなたの職を去るべきであります。
私は、一萬田大蔵大臣が今日の日本の経済に対して昨年来とってきたその金融引き締めの政策は、今日、中小企業者を苦しめ、労働者を失業のちまたに追いやり、そうして農民に対しては、その生産費を償わない価格において生活のめどを失わしめておるという事実に考えても、あなたのとっておる財政政策を糾弾しなければなりません。あなたは、植樹祭に名をかりて国政を放棄し、そして、昨日は、その一日の政務を怠ったのであります。
私は、ただいま申し上げたような理由によって、あなたが一日も早く大蔵大臣の職責を去ることが、日本の経済の再建と、そうして国民の利益になると信じます。
一萬田大蔵大臣を信任しない決議案に対し、日本社会党を代表して賛成の討論をいたすものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/9
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010・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
氏名点呼を命じます。
〔参事氏名を点呼〕
〔各員投票〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/10
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011・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。
投票を計算いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/11
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012・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 投票の結果を事務総長こむ報告いたさせます。
投票総数 三百三十五
可とする者(白票) 百十六
〔拍手〕
否とする者(青票) 二百十九
〔拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/12
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013・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 右の結果、大蔵大臣一萬田尚登君不信任決議案は否決されました。(拍手)
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淺沼稻次郎君外三名提出大蔵大臣一萬田尚登君不信任決議案を可とする議員の氏名
阿部 五郎君 青野 武一君
赤路 友藏君 赤松 勇君
茜ケ久保重光君 淺沼稻次郎君
足鹿 覺君 飛鳥田一雄君
有馬 輝武君 淡谷 悠藏君
井岡 大治君 井谷 正吉君
井手 以誠君 井上 良二君
井堀 繁雄君 伊瀬幸太郎君
伊藤卯四郎君 猪俣 浩三君
池田 禎治君 石野 久男君
石橋 政嗣君 石村 英雄君
稲富 稜人君 稻村 隆一君
今澄 勇君 受田 新吉君
小川 豊明君 大矢 省三君
岡本 隆一君 加藤 清二君
春日 一幸君 片山 哲君
勝間田清一君 上林與市郎君
神近 市子君 神田 大作君
川俣 清音君 川村 継義君
河上丈太郎君 菊地養之輔君
北山 愛郎君 久保田鶴松君
久保田 豊君 栗原 俊夫君
小牧 次生君 小松信太郎君
小山 亮君 五島 虎雄君
河野 密君 佐々木更三君
佐竹 新市君 佐竹 晴記君
佐藤觀次郎君 坂本 泰良君
志村 茂治君 島上善五郎君
下平 正一君 鈴木 義男君
田中幾三郎君 田中織之進君
田中 武夫君 田中 利勝君
田中 稔男君 田原 春次君
多賀谷真稔君 高津 正道君
滝井 義高君 竹谷源太郎君
楯 兼次郎君 中居英太郎君
中島 巖君 中原 健次君
中村 高一君 成田 知巳君
西村 榮一君 西村 力弥君
野原 覺君 原 彪君
日野 吉夫君 平岡忠次郎君
福田 昌子君 古屋 貞雄君
帆足 計君 細迫 兼光君
細田 綱吉君 前田榮之助君
正木 清君 松井 政吉君
松尾トシ子君 松岡 駒吉君
松平 忠久君 松原喜之次君
松本 七郎君 三鍋 義三君
三宅 正一君 武藤運十郎君
門司 亮君 森 三樹二君
森島 守人君 森本 靖君
八百板 正君 八木 一男君
八木 昇君 山口シヅエ君
山口丈太郎君 山下 榮二君
山田 長司君 山花 秀雄君
山本 幸一君 横錢 重吉君
横路 節雄君 横山 利秋君
吉川 兼光君 吉田 賢一君
和田 博雄君 渡辺 惣蔵君否とする議員の氏名
阿左美廣治君 逢澤 寛君
愛知 揆一君 青木 正君
赤澤 正道君 秋田 大助君
淺香 忠雄君 荒舩清十郎君
有田 喜一君 安藤 覺君
井原 岸高君 伊東 隆治君
池田 勇人君 池田正之輔君
石井光次郎君 石坂 繁君
石田 博英君 稻葉 修君
犬養 健君 今井 耕君
今松 治郎君 宇都宮徳馬君
植木庚子郎君 植原悦二郎君
植村 武一君 臼井 莊一君
内田 常雄君 内海 安吉君
江崎 真澄君 遠藤 三郎君
小笠 公韶君 小笠原三九郎君
小川 半次君 小澤佐重喜君
大石 武一君 大久保留次郎君
大倉 三郎君 大島 秀一君
大高 康君 大坪 保雄君
大野 市郎君 大野 伴睦君
大橋 忠一君 大平 正芳君
大森 玉木君 太田 正孝君
岡崎 英城君 荻野 豊平君
奧村又十郎君 加藤 精三君
加藤鐐五郎君 神田 博君
亀山 孝一君 唐澤 俊樹君
川崎末五郎君 川崎 秀二君
川島正次郎君 川村善八郎君
菅野和太郎君 木崎 茂男君
木村 文男君 菊池 義郎君
岸 信介君 北 れい吉君
北澤 直吉君 北村徳太郎君
清瀬 一郎君 久野 忠治君
楠美 省吾君 倉石 忠雄君
小泉 純也君 小枝 一雄君
小金 義照君 小坂善太郎君
小島 徹三君 小平 久雄君
小林かなえ君 河野 一郎君
河本 敏夫君 高村 坂彦君
佐々木秀世君 佐藤 榮作君
齋藤 憲三君 坂田 道太君
櫻内 義雄君 笹本 一雄君
笹山茂太郎君 薩摩 雄次君
志賀健次郎君 椎熊 三郎君
椎名 隆君 重政 誠之君
篠田 弘作君 島村 一郎君
首藤 新八君 正力松太郎君
白浜 仁吉君 周東 英雄君
須磨彌吉郎君 杉浦 武雄君
助川 良平君 鈴木 善幸君
世耕 弘一君 關谷 勝利君
園田 直君 田子 一民君
田中伊三次君 田中 角榮君
田中 彰治君 田中 龍夫君
田中 正巳君 田村 元君
高岡 大輔君 高瀬 傳君
高橋 禎一君 高橋 等君
高見 三郎君 竹内 俊吉君
竹山祐太郎君 千葉 三郎君
中馬 辰猪君 塚田十一郎君
塚原 俊郎君 辻 政信君
綱島 正興君 渡海元三郎君
徳田與吉郎君 徳安 實藏君
床次 徳二君 内藤 友明君
中川 俊思君 中島 茂喜君
中曽根康弘君 中村 梅吉君
中村三之丞君 中村 寅太君
中村庸一郎君 中山 マサ君
永田 亮一君 永山 忠則君
長井 源君 灘尾 弘吉君
楢橋 渡君 南條 徳男君
二階堂 進君 丹羽 兵助君
西村 直己君 根本龍太郎君
野澤 清人君 野田 卯一君
野田 武夫君 馬場 元治君
橋本登美三郎君 橋本 龍伍君
長谷川四郎君 畠山 鶴吉君
八田 貞義君 花村 四郎君
濱野 清吾君 林 讓治君
林 唯義君 林 博君
原 健三郎君 原 捨思君
平野 三郎君 福井 順一君
福井 盛太君 福田 赳夫君
福田 篤泰君 福永 一臣君
福永 健司君 藤枝 泉介君
船田 中君 古井 喜實君
古川 丈吉君 古島 義英君
保利 茂君 保科善四郎君
坊 秀男君 堀内 一雄君
本名 武君 眞崎 勝次君
前尾繁三郎君 前田房之助君
前田 正男君 町村 金五君
松浦周太郎君 松浦 東介君
松田竹千代君 松田 鐵藏君
松永 東君 松村 謙三君
松本 俊一君 松本 瀧藏君
三木 武夫君 三田村武夫君
水田三喜男君 南 好雄君
宮澤 胤勇君 粟山 博君
森 清君 森下 國雄君
森山 欽司君 八木 一郎君
山口 好一君 山崎 巖君
山手 滿男君 山中 貞則君
山村新治郎君 山本 勝市君
山本 粂吉君 山本 正一君
山本 友一君 横川 重次君
米田 吉盛君 早稻田柳右エ門君
渡邊 良夫君 亘 四郎君
眞鍋 儀十君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/13
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014・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、恩給法等の一部を改正する法律案及び第二十六回国会内閣提出、防衛庁設置法の一部を改正する法律案の両案とともに、内閣委員長提出、駐留軍関係離職者等臨時措置法案を委員会の審査を省略して一括議題となし、委員長の報告及び趣旨弁明を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/14
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015・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/15
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016・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。
恩給法等の一部を改正する法律案、防衛庁設置法の一部を改正する法律案、駐留軍関係離職者等臨時措置法案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告及び趣旨弁明を求めます。内閣委員長福永健司君。
…………………………………発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/16
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017・福永健司
○福永健司君 ただいま議題となりました三法案のうち、まず恩給法等の一部を改正する法律案及び防衛庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
恩給法等の一部を改正する法律案は、昨年十一月十五日政府に報告された臨時恩給等調査会の答申をもととし、戦没軍人遺族並びに戦傷病者の処遇の改善と、老齢退職公務員の処遇の向上に重点を置いて、恩給法上の諸問題の総合的解決をはかることとし、その実施については、国家財政等の事情を勘案し、四カ年にまたがる計画のもとにこれを行おうとするものであります。
内容のおもなる点について申し上げますと、第一は、上に薄く下に厚くするという方針のもとに、仮定俸給年額の引き上げにつきましては、将官級においては全く増額を行わず、佐官級ないし尉官級においては相当の抑制を加え、旧軍人関係の公務扶助料の倍率につきましては准士官以下の者についてのみ増率を行い、傷病恩給の増額につきましては階級差を撤廃していること等であります。
第二は、処遇改善の対象を、六十才以上の老齢者、未亡人、遺児、傷病者といたしたことであります。
第三は、その実施の時期につきましては、公務扶助料、増加恩給並びに六十五才以上の高年令者の普通恩給、普通扶助料を先にいたしたことであります。
本法案は、去る二月二十八日まず本会議において審査が行われた後、本委員会に付託されたのでありますが、委員会は、三月四日政府の説明を聞き、自来、高橋、保科、受田、中川、眞崎、永山、大橋、淡谷、稻村、西村の各委員より、岸内閣総理大臣を初めとし、関係各政府委員に対し、諸般の角度から質疑が行われたのでありますが、その詳細は何とぞ会議録によって御承知願います。
四月四日質疑を終了するに当り、委員長より、特に、関係者を公平に取り扱う見地より、なお解決を要する数項目の問題について政府の見解を求めたところ、いずれも重要問題であるから十分検討の上善処したい旨の答弁がなされました。
かくて、四月八日討論に入りましたところ、日本社会党を代表して、淡谷委員より、旧軍人の恩給権はその法的根拠を失っており、戦争の被害は一般国民にも及んでいる実情にかんがみ、無原則な恩給増額は取りやめて、広く国民年金制度の立場からこれらの処遇を考慮することが国民にこたえる道であるとする趣旨の反対意見が述べられ、自由民主党を代表して、保科委員より、恩給制度に内在する諸問題でなお解決を見ざる幾多の事項があるが、今回の改正措置は、従来文官に比してはなはだ不公平な取扱いを受けたる戦没軍人遺族と戦傷病者の処遇改善並びに老齢退職公務員の処遇の向上に重点を置いているのみならず、社会保障的な考慮が多分に払われており、現下財政の許す最大限のものであるとする趣旨の賛成意見が述べられ、採決の結果、多数をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、防衛庁設置法の一部を改正する法律案は、わが国の防衛に関する行政事務の一体的かつ能率的運営をはかるため、調達庁を防衛庁の機関としてその所轄に移すこととし、関係法律に所要の改正を加えようとするものであります。しかし、自衛隊の任務にかんがみ、調達庁は自衛隊の範囲外として、その組織、権限等については調達庁設置法で定め、調達庁長官の任命は防衛庁長官がこれを行うが、その他の職員の任命は従前通り調達庁長官がこれを行うことといたしております。
本案は、第二十六国会以来継続審査となっておりましたが、去る二月二十日あらためて政府の説明を聞き、質疑を行い、四月八日、前田委員より施行期日等に関する修正案が提出され、採決の結果、多数をもって修正案の通り修正議決すべきものと決定いたしました。
次に、駐留軍関係離職者等臨時措置法案につきまして、内閣委員会を代表いたしまして御説明申し上げます。
御承知のごとく、駐留軍関係労務者中の大部分の者が、長期にわたり、言語、風俗、習慣等の異なる特殊な環境の中で、連合国または米国等に対するわが国の義務履行に協力して参っているのでありますが、昨年、岸総理が渡米の際、国策として米駐留軍の早期撤退を申し入れ、日米双方が合意したいわゆる岸・アイゼンハワー共同声明以来、多数の関係労務者が、特定の地域において、自己の意思によらないで突発的に離職を余儀なくされている一方、その転職が非常に困難である国内情勢等にかんがみまして、これらの者の生活の安定に資するため特別の措置を講じようとするのが、本案の趣旨であります。
その要旨を御説明申し上げますと、第一に、駐留軍関係離職者等の対策について連絡調整をはかるため、総理府に中央駐留軍関係離職者等対策協議会を設置することであります。
第二に、都道府県が都道府県駐留軍関係離職者等対策協議会を設置したときは、政令の定めるところにより、経費の一部を国が補助することができるといたすことであります。
第三に、関係離職者等の職業訓練のため、必要に応じ職業訓練所の設置、教科の追加、夜間職業訓練等の特別の措置が講ぜられるものとし、また、在職者に対しても必要な知識技能を授けるための特別措置を講ずることができるといたすことであります。
第四に、国は、返還国有財産のうち、関係離職者の住宅に供することを適当と認めるもの及びその他の国有財産で住宅の用に供されていたものは、必要がある場合には、関係離職者の就職を容易にするため、その住宅の用に供するよう配慮することといたすことであります。
第五に、関係離職者が所有する株式または出資金額の合計額がその資本または出資総額の二分の一以上の法人等に対しましては、米駐留軍から返還された国有の財産を通常の条件よりも有利な条件で、譲渡または貸付をすることができるといたすことであります。
第六に、関係離職者の自立をはかるため、それらの者が経営する事業等に対し、関係行政機関は必要な事業資金のあっせんに努めなければならないといたすことであります。
第七に、昭和三十二年六月二十二日において政府雇用の関係労務者であった者が、同日以後において、米駐留軍の撤退等によって離職を余儀なくされ、または業務上死亡した場合には、政令の定めるところにより、離職者または遺族に対して特別給付金を支給することができるといたすことであります。
その他、本法は公布の日から施行し、満五年をもって失効するといたしているほか、関係法律に所要の改正を加えております。
なお、本案施行に要する経費は本年度予算に織り込み済みでありまして、内閣の意見を求めましたところ、賛成の旨の発言がありました。
本案は、内閣委員会におきまして検討の結果、全会一致をもって成案を得たものであります。何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/17
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018・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。
淡谷悠藏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/18
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019・淡谷悠藏
○淡谷悠藏君 私は、ただいま提案されました恩給法等の一部を改正する法律案につき、日本社会党を代表して反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
反対の第一の理由は、この法律案は、提案理由の説明にいうごとき上に薄く下に厚くする精神に立脚したものではなく、戦没軍人遺族、重傷病者、高年令者の処遇の向上に重点を置くという看板は掲げておりながら、実質においては上級職業軍人の戦時中の財産権の温存にねらいを持ったものであるという点においてであります。(拍手)なるほど、将官の現行の通り据え置き、大佐は二割、少佐は五割、大尉は七割、中尉は八割、少尉は九割というベース・アップをしたとはいえ、仮定俸給表につき考えてみますと、現実に現われた姿は非常に違ったものであります。大将は七十二万六千円、大佐は三十七万五千百円、大尉は二十三万六千三百円と、職業軍人の間にも著しく階級差を設け、さらに準士官十三万九千二百円、曹長または上等兵曹十一万一千六百円、軍曹または一等兵曹十万四千四百円、伍長または二等兵曹十万八千円と応召兵を格段に下げ、兵に至っては九万円というはなはだしい差別待遇をそのままに残しておるのであります。どこに一体上に薄く下に厚くしたという実績が現われておるでしょうか。ここには、軍人を職業とし、戦争の指揮に当った者の遺族に比べ、赤紙で徴集された一般兵士の遺族には依然として犠牲をしい続ける戦争中の階級観念が強く残っておるのであります。(拍手)東条未亡人が年額五十三万八千円、兵の遺族は三万五千二百円という、かつての上官という戦争責任者の遺族が多くの利益を得ている現実をそのままにして、多少の増加率をもって上に薄く下に厚くしたというならば、これは、国民をごまかし、兵の遺族を愚弄する、選挙目当ての悪質な人気取り政策にすぎないのであります。しかも、階級差をなくしたという傷病恩給は、その額が低過ぎて、傷病恩給関係者に不平を抱かせ、下級軍人に対する加算制を認めないで、生きている兵隊七十五万の不満を買っていることは、軍人恩給という立場から見ては、まさに、羊頭を掲げて狗肉を売るどころか、軍旗を掲げて骸骨を売るにひとしいものであります。(拍手)このままで進んだならば、おそらくまた恩給はふくれ上りまして、恩給亡国そのままになってくるということは、これまた必至であります。
仮定俸給表を、恩給法をむしろ根本的に是正して、中尉相当額以下のものはすべて中尉相当額に引き上げ、国民年金の立場から不均衡を是正することをわれわれは主張して参りました。これに対して、生きている将軍たちは、既得権の侵害だとか、財産権の収奪だとか、さかしらに憲法違反論を振り回しておりますが、あなた方一連の旧軍隊の指揮者たちは、かつて財産奉還論を唱えたことを、もうお忘れになりましたか。(拍手)財産奉還というどころではございません。兵にびんたを食らわして、生命奉還の訓示さえ与えたではありませんか。せめては高額恩給の取得権を奉還して、表看板はどうあろうと、実質的に兵の遺族や傷病者のために厚く報いる勇気さえ、敗戦とともに、もう失ってしまったのでございますか。
当時の戦争は、政府や軍部みずからが言っておるように、総力戦であり、軍人たると、一般市民たると、戦争遂行の任務と生命の危険についてほとんど差のない段階にまで戦争の様体が変っていたのであります。現実に、一般市民は家を焼かれ、一家の柱を失って生活を破壊された人々は、何十万、何百万人といます。これらの人々は、今、一体何の救済を受けているでしょうか。そうした一般市民の犠牲と軍人恩給とは性格が違うのであるという。性格が違えばこそ、明治十年西南戦役によって始まった軍人恩給は、太平洋戦争敗戦という事実によって、昭和二十一年一月廃止され、消滅したのであります。その後、旧軍人の圧力により、昭和二十八年八月新設されたわけではありまするが、この支持者は、残存権利の復活であると主張いたします。しかし、法律的に見れば、あくまでも一度権利は消滅したのであり、新憲法下では、軍人恩給の権利の発生する根拠は全くないのであります。従って、法律の形態としては恩給法一本にまとめられ、法文上は公務員という概念で表現され、附則で旧軍人という扱いを受けているのであります。理論的にも、また戦争責任という意味においても、旧職業軍人並びに戦争犯罪人は論外であり、その他の軍人でも、赤紙一枚で天皇のため云々という全くの旧軍国主義の思想を引く観念論ないしは感情論で扇動されて、軍人恩給は権利であり、社会保障などという恩恵を受けるのではないと言うようになっては、明らかに軍国主義思想復活の温床ともなるべきものである。これがわれわれの反対する第二の理由であります。(拍手)
しかも、今度の予算編成が大詰めに近づいたころ、旧軍隊の組織をまねて編成された恩給団体は、東京九段に本部を設け、全国から集まった約二千人の旧軍人や遺族に作戦命令を下し、デモ隊が自民党本部を埋め尽し、進軍ラッパを吹き、軍旗を押し立てて、首相官邸に押しかけたというのであります。そんな圧力に屈して、将軍金を愛すというそしりを受けたならば、生きている将軍死せる兵に何のかんばせあって相まみえるでありましょうか。
文官並みにするという理由はさかしらに掲げても、文官恩給は百八十億円、軍人恩給は八百五十四億円、総額において財政をはなはだしく圧迫するのは軍人恩給であります。国民がひとしく受けた戦争犠牲の救済を要求せずに、軍人の決死報国の精神をあおり、日本国憲法に定められた国民の新しい権利の主張を、何か施しを受けるがごとき観念を持たせるということは、これこそ、明治憲法の観念に支配された時代錯誤もはなはだしきものであり、また、国を誤まらしめた軍閥等旧職業軍人の悪宣伝に踊る軍国思想復活論にすぎないのであります。新憲法下の生活保障は、旧軍人としての権利としてではなく、新しい国民のそれでなければなりません。この立場に立って、一般の国民とひとしく生活を保障され、健康を保障され、さらに子女の教育を保障されたならば、既得権の上にあぐらをかこうとする特殊な人たちはともかくも、国民とともに苦しみ、ともに喜ぶ立場に、旧軍人の遺族の方々も賛成することを、かたく信ずるものであります。(拍手)文官恩給との不均衡を言う前に、社会保障制度から取り残されておる膨大な戦争犠牲者、低所得者階層との不均衡を取り上げねばならない。従って、無原則な軍人恩給の増額よりも、国民年金制度の実現に一歩踏み出すことこそ急務であって、恩給費の扱いは国民年金制度に移行するための過渡的性格のものとして処理されねばならないのであります。
すでに政府においても国民年金制度の研究に取りかかっているということでありますが、もし軍人恩給の財政圧迫が国民年金制度の実現を妨げるようになれば、旧軍人と国民との間に相剋の起ることなきも保しがたい。不均衡是正、上に薄く下に厚くすることにうそがないならば、恩給法改正に当って、あくまで全国民的立場においてその精神が貫かれねばならないのであります。これを、ことさらに旧軍人的恩給観念を取り上げ、遺家族と傷病者の陰に隠れて、軍人恩給の増額にのみ強い要求を押し切ろうとするならば、これは、決して戦争処理に値するものではなく、一歩誤まれば新しい戦争準備ともなりかねないものであります。大将に比べては厚くされたといっても、何ほどにもならない恩給を、実額的に上回る国民年金に変ることに、おそらくは多くの旧兵士諸君の遺族は不満は感じないだろうし、軍人恩給の観念に執着して戦争の亡霊をおびき寄せることは、断じて英霊に報いるゆえんでもございません。(拍手)
恩給増額に名をかりての軍国思想のきざしは明らかであります。旧軍人等の恩給復活は、すでに消滅した旧陸海軍の制度の部分的復活であり、再軍備政策の一環としての性格を強く持って、これをますます増強しようとすることは、将来またして気の毒な多数の遺家族を作り出すおそれがあるのであります。むしろ、戦争処理とともに、旧軍人恩給の問題も急速に処理して、広い社会保障制度を確立することこそ緊急の課題であり、真に遺族、傷病者に報いるゆえんでもございます。二百億の恩給増加の決定については、恩給審議会でさえ百億ないし二百億と決定したものを、自由民主党の内部の意見調整もできずに、二百五十億、三百億と予算のつかみ取りをした事情を見ても、この軍人恩給増加の突破口から恩給亡国の洪水が引き起されるおそれが十分であります。慎重にしてがんこな一萬田大蔵大臣も、おそらくこれをおそれて、昨日大分県の選挙区に木を植えに帰って一日上程を延ばし、与党の諸君に考慮を促したものと思います。
どうぞ、皆さんも、きのうまでの迷論を捨てまして、恩給制度一般の再検討が広く国民を対象とした国民年金制度との関連のもとになされるべきものとなっておることを十分に御考慮下さいまして、私ども同様、反対をお願いいたしたい。私は、あくまでも、これは一部の旧軍人の旧権利復活としてではなく、新しい日本国民の国民年金制度に切りかえるようになすべきが本筋であるということを述べ、今回の無定見にして危険きわまる政府提案に反対して討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/19
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020・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山本正一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/20
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021・山本正一
○山本正一君 私は自由民主党を代表して、ただいま議題の恩給法等の一部を改正する法律案に対して賛成の意見を申し上げます。
この法律の目標とするところは、恩給を受けておる人んの間にありまする不合理や不均衡の部分を是正いたしまして、適正公平な処置をはかろうとするものであります。しかるに、世論の一部には、恩給はすべて特権的なものであるから、これを廃止して国民年金に切りかえるべきであるという意見がございます。元来、恩給の制度は、恩給という言葉の響きは別といたしまして、その実質は退職年金の分割払いとも申すべきものであります。(拍手)すなわち、公務員が長年忠実に勤務して老齢となり、あるいは公務のために傷病や死亡の場合に、それぞれの条件に応じて、公務員本人またはその遺族に対して適当にして必要な保護を与えるものであり、つまり使用主たる国家の責任においてする国家保障でありまして、このことは英、米、仏、西ドイツ等の先進国においても行われておりますことは御承知の通りでございます。近ごろ、わが国の民間企業におきまして、退職手当を退職年金に切りかえをいたし、漸次これが発達をしております事実は、この年金制度の本質が近代的適応性を持っておるということを物語っておるものであろうと思います。要するに、国の恩給も、民間企業の年金も、ともに、使用主がその責任において被用者の老齢を保障するものでありますから、何らの雇用関係もない一般の社会保障と厳格に区別すべきものでございまして、この全く性質を異にする両者を国民年金に統合しようという御意見は、まことに危険な玉石混淆の論であります。
さらに、反対の論者は、恩給総額が膨張いたしまして、国の財政が危なくなるのではないかという御意見であります。しかし、これもまた、数字の実態を理解しないのか、あるいは何らかを錯覚、誤解をしておられる意見であろうと思うのであります。すなわち、この法律案は、恩給費を平年度において三百億円増額はいたしますけれども、その反面におきまして、失格による自然の減耗が生じて参りますから、この増額と減耗とを差引いたしました結果の数字は、決して財政を危うくするようなものではございません。現に、昭和三十六年におきましては、五十億円の増額に対しまして百二億円の自然減耗がありますから、差引いたしますと五十二億円は減少になるというのが実情でございます。さらに、この法律案は、財政の健全を期するために、この増額の支出を四カ年の計画で漸進的に行うことといたし、緩急の順序につきましても、戦没軍人の遺族、傷痍軍人、老齢者等を優先にいたし、上薄下厚の精神で、特に下級者の処遇改善に重点を置き、仮定俸給の引き上げに強い制限を加えまして、上級者の引上率は極度に押える等の配慮を加えました、まことに条理を尽した法律案でございます。
さらに、反対の論者は、戦争の犠牲者の旧軍人のほかにたくさんおるから、この際これも同時に解決すべきものであると申されるのでございます。言うまでもなく、戦争の犠牲者は、ひとり旧軍人の関係だけでなく、原爆の被害者を初め、戦災によって家財や肉親を失った多くの人々がおります、国家は、これらの人々に対しましても、従来の処遇をさらに改善する必要があり、わが党は、そのためには社会保障の急速なる拡充に努力をいたし、特に国民年金制度の実現を促進することに努めつつある次第でございます。
最後に、反対の議論は、この法律案は、旧軍人を優遇するものであり、ひいては再軍備に通ずるものであるという、まことにおそれ入った御意見でございます。この場合の旧軍人とは果して何をさすものであるか。すなわち、恩給法の意味においては、百六十二万人の戦没者の遺族を初め、十一万六千人の傷痍軍人や、二十二万九千人の普通軍人をも含めて申しておるのでございます。もし旧軍人をいわゆる職業軍人と解するならば、その数は九万人であり、わすかに二十二億五千万円の経費でありまして、しかも、これらの諸君は、ほとんど今回の増額を受けておらず、優遇にあらずして、むしろ冷遇であります。(拍手)また、旧軍人を広く傷痍軍人や遺家族をも含むものといたします場合、果してこれを優遇と言い得るでありましょうか。たとえば、兵長の階級における遺族の扶助料は、月額二千九百三十円でございましたが、現に、東京都における生活保護費は、標準の世帯、すなわち母と二人の子供に対しまして、月額七千八百三十円でございます。この両者を比べて、扶助料があまりにも低過ぎるので、これを増額して月額四千四百三十円にいたそうというのが、この法案でございます。(拍手)絶対に避けることのできない赤紙の応召で一命を国家にささげた者の遺族扶助料が、単に生活に困る者に与える生活保護費の半額程度で、果してこれが優遇でありましょうか。またこれらの処置がやがて再軍備に通ずるという常識は、果してどこの国の常識でありましょうか。(拍手)私はまことに遺憾に存ずるのでございます。
われわれは、この法律案をもって必ずしも最善至上のものとは思いません。内閣委員会における政府の答弁にも示されましたように、将来十分の検討を加え、この制度に内在する諸般の問題点に対しまして、より合理的なる改善を行い、受給の適正と均衡を徹底するとともに、現在や将来の公務員が、国民全体の奉仕者として、老後を心配することなく、その職務に誠実に専念できるようにいたしたいと考えておるのでございます。(拍手)
この希望を考慮に加えて本案を検討いたしますると、多年の懸案であった恩給法上の重要課題は、大体において処理されるものと信じ、また、大多数の国民もこれを切望しておるものと確信いたしますので、私は本案に賛成をいたすのでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/21
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022・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
まず、恩給法等の一部を改正する法律案及び防衛庁設置法の一部を改正する法律案の両案を一括して採決いたします。恩給法等の一部を改正する法律案の委員長の報告は可決、防衛庁設置法の一部を改正する法律案の委員長の報告は修正であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/22
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023・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り決しました。(拍手)
次に、駐留軍関係離職者等臨時措置法案につき採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/23
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024・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/24
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025・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、日本労働協会法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/25
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026・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/26
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027・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。
日本労働協会法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長森山欽司君。
…………………………………
…………………………………発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/27
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028・森山欽司
○森山欽司君 ただいま議題となりました日本労働協会法案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
戦後、わが国の労働運動は飛躍的な発展を遂げ、今や六百万をこえる労働者が労働組合に組織されておりますが、その労使関係は、戦後幾多の混乱と曲折を経て、なおその安定のためには幾多の反省と改善の余地のある状況にあります。このような状況下におきまして、近代的な労使関係の確立を促進するためには、労使はもとより、国民一般の労働問題に関する理解と良識をつちかうことが不可欠の前提条件であり、そのための専門団体設立の必要性が痛感されているのであります。これが、今回日本労働協会を設立することとして、この法案が提出された理由でありますが、以下、その内容について簡単に御説明申し上げます。
第一に、協会は法人とし、これに十五億円の基金を設け、政府が全額出資することによってその事業の継続性を確保いたすことであります。
第二に、協会の役員として会長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置くこととし、労働問題について公正な判断をすることができ、かつ深い学識経験を有する者のうちから任命することであります。さらに、協会は理事会及び評議員会を設け、その運営の適正を期することといたしております。
第三に、協会の事務は、労働問題に関する研究、資料の整備、出版、放送、講座の開設、その他労働組合、使用者団体の行う労働教育活動に対する援助を行うこと等であります。
第四に、その他財務、会計及び監督等につきまして所要の規定を設けておりますが、そのうち、労働大臣の命令については、協会の運営の自主性に不当に干渉することのないよう、特に明文をもって規定がなされておるのであります。
本案は、去る二月十一日本委員会に付託せられ、同十八日労働大臣より提案理由の説明を聴取した後、主として日本社会党側委員より、本協会の目的、性格、役員の構成、業務の運営及び監督等の諸問題及びその背景となっておる労使関係について質疑が行われ、きわめて慎重な審査を遅々として続けて参ったのでありますが、本案の重要性にかんがみ、昨八日井上縫三郎氏外三名の参考人を招致してその意見を聴取し、また、本日は特に岸内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行なったのであります。それらの質疑応答の詳細については会議録によって御承知願いたいと存じます。
本案は、本日の委員会において質疑を打ち切り、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して田中委員より賛成、日本社会党を代表して多賀谷委員より反対の意見が述べられたのであります。
かくて、討論を終了し、採決に入りましたところ、本案は多数をもって原案の通り可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/28
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029・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。
山花秀雄君。
〔山花秀雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/29
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030・山花秀雄
○山花秀雄君 ただいま提案されました日本労働協会法案に対し、私は日本社会党を代表して反対の討論をいたすものであります。(拍手)
同法案は、社会労働委員会にて、わが社会党側より、質疑の過程において、たびたび指摘せるごとく、羊頭を掲げて狗肉を売るの例に漏れずに、全く反動的意図を内包せる労働運動弾圧の一翼をになうものであります。
以下、四、五点、その反対の理由を明りかにいたし、各位の御賛同を得て、同法案が否決に至るよう願うものであります。
まず第一に指摘しておきたいことは、この法案の目的として、労働問題について研究を行うとともに、広く労働者及び使用者並びに国民の労働問題に関する理解と良識をつちかうことを目的とするということであります。なお、協会設立の基金として、政府は、全額出資十五億円とし、その利子をもって運営を期することを約束しておるのであります。私は、労働問題の研究や、労使及び国民の各層にわたって労働問題について理解と良識をつちかうことを否定するものではありません。しかし、政府が資金の全額を出資し、その責任者を政府機関が任命し、いわゆる形式的には政府機関と別個のものと称しておりますが、金を出し、責任者の任免権を政府が握っておる限り、この労働協会なるものは、全く政府の出店機関、端的にいうならば御用機関であります。かかる官僚的支配を受けた御用機関では、どうしても今日の時代における労働問題の良識的解決や労働組合運動の民主的向上等は、望み得ないことは、火を見るよりも明らかなことであります。岸総理大臣も、石田労働大臣も、この種の仕事は、政府がやったのでは成果が上らない、(拍手)むしろ中立的立場でやるべきであると、たびたび言明をいたしまして、政府機関と別個のものを作るのだと、一応別個的機関と形式を整えることにきゅうきゅうとしておられますが、先ほど申し述べましたごとく、金は全部出し、責任者の任免権を握り、どうしてこれが別個の中立的機関と言えましょうか。もし、ほんとうに中立を守り、民主的機関として設立をするならば、政府機関は、設立には努力するけれども、でき上った労働協会からは手を引くことであります。それなくしては、先ほど申し上げましたように、羊頭を掲げて狗肉を売る、そういうそしりを当然政府自体が甘受すべきであると私は思うのであります。(拍手)
第二に申し上げたいことは、日本経済繁栄のために、生産性向上に反対する労働者は、特別の政治的意図を持つもの以外には一人もおりません。それがどうして多くの労働者や労働組合が日経連や政府がやっきになって行うところの生産性向上運動に反対しているかという、この事実をよく見きわめるべきであります。労働協会を設立して、労働問題の良識的理解を普及することを考えたり、労働者や使用者に教育啓蒙を行うことを考えたりするよりも、労働省設置法第三条の精神を労働省として行政面にどれほど努力されているかどうかということを、深く労使や国民の前に反省すべきであります。(拍手)ここに労働協会にうたっている大半の仕事は、労働省設置法第三条の項目を労働大臣初め労働省の担当官がよく理解し努力すれば、屋上屋を重ねる愚を行わなくても済むのであります。
以上申し述べましたように、今日の段階においては、急いで労働協会を設置する必要を認めません。むしろ、十五億の政府出資は、政府の経済政策の失敗から大きな社会問題化してきた失業問題解決の一助に使用された方が有効適切であると、われわれは考えておるものであります。(拍手)
かつて大正七年全国に波及したいわゆる米騒動は自然発生的な暴動であったことは、各位の知られるところであります。しかし、その発生した原因は悪徳資本家の私利追求に反抗した大衆の反抗運動であったことは否定することができません。この暴動事件は政府の権力の前に屈しましたが、その底に流れておる反資本主義的勢力の台頭におそれをなした当時の財界の一人たる渋沢栄一氏が、三井、三菱、安田、住友等々の財閥をたずねて多額の金円を醵出せしめ、政府もこれに出資し、労資協調機関として協調会なるものを設立いたしました。この組織は民間人の発意で出発したものであります。しかし、実際は支配権力と財閥の合議による労働者の圧迫機関であったことは、周知の事実であります。協調会はその発足において民間人の発起により設立されたものでありますが、この協調会が戦前いかなることをやったか。その歴史を顧みますると、半官半民的な性格を持ち、内務官僚が天下り的に役員になり、表看板は労資協調、実際的には権力支配を行い、わが国の労働運動の健全なる発達を阻害し、最後には産業報国会の結成の主導的役割を演じ、わが国の労働者も資本家も、すべての国民全体に及ぼす日本国敗戦の悲劇を与えたという、憎みても余りある結果を生ぜしめたことは、各位の十分熟知せられるところであります。(拍手)すなわち、出発は労資協調、紛争緩和であっても、その結果は国を滅ぼすことに相なったことは、厳然たる歴史の示すところであります。
第三に申し上げたいことは、岸内閣成立以来の労働政策を顧みるとき、何一つ民主的にして進歩的と思われる業績を残していないのであります。世上伝えるところを二、三あげてみましても、反動の権化とさえいわれることは当然と思われるような節々を見出すことができるのであります。文教関係の労働政策においても、世論ごうごうたる反対を押し切り、勤務評定を強行し、民主教育制度に一つの汚点を加え、昨年の公企労法下の労働者の生活権擁護の戦いに、ひたむきに弾圧政策で臨み、現に、私鉄関係労働者の争議に、せっかく労使間において解決を見ようとする際、また二、三の好条件にて労使双方が妥結したる事業体に対して政治的圧力をかけたるがごときは、労働省設置法の精神を全くわきまえざる、労働行政に対する頭脳はゼロか白痴と評する以外処置なしの感覚ではありませんか。(拍手)かかる感覚の持主ゆえ、国際労働機構における決議である、すなわち労働問題のうちでも最も初歩的問題である団結結社の自由権、最低賃金法の批准がいまだに実行できないとは、実は憲法第二十八条の精神が宙に浮いてしまい、アジア諸国間における工業先進国として自負しておるわが国民が、国際関係においてもアジア諸国間においても恥かしい思いをしておることを十分了承のはずであります。しかるに、これをわれ意に介せずとばかりに、そっぽを向いておられる。若さと健康を誇りつつ東奔西走御活躍なされておる岸内閣の国民間における人気が、かつての鳩山、石橋内閣ほど上らないのは、諸政一般の失政もあることながら、その重大な原因は労働政策に対する失政の累積があずかっているのであります。民間人の発起で発足いたしました協調会が失敗した例に漏れず、最初から政府全額出資、責任者の労働大臣のいわゆる任免権というように、その出発から大きく官僚的支配がものをいっている労働協会なるものが発達すればするほど、おそるべき資本陣営擁護のたてになろうということは、想像されるところであります。(拍手)
第四に申し上げたいことは、労働協会は、労使及び国民に、労働問題の正しい理解と、また労使相互間における教育啓蒙、なお労働問題の統計資料の収集を目的としているというのでありますが、その中軸は、何といっても使用者並びに労働者が一番大きな対象にならなくてはなりません。その対象となるべき労働組合陣営が、声を大にして、旧協調会の復活であるとか、将来の発展は産報化であるとか、資本陣営が狂奔しておる生産性向上運動の側面的援助機関だとか、とにかく評判の悪いこと近ごろ珍しい。労働政策のうちでも、これくらい評判の悪い政策はないのであります。対象となるべき労働団体から総スカンを食っているこの労働協会法は、この際構想を新しくして出直す方が、岸内閣の労働政策の上にもかえっていいのではないかと、御注意申し上げたいところであります。
この際石田労働大臣に一言いたしたいことは、あなたは、本国会劈頭の社会労働委員会において、労働行政一般について見解を表明されました。私はその際あなたに一言いたしたのであります。お忘れでないと思いますが、この際はっきり繰り返して申し上げておきたいと思うのであります。
あなたは、今後とも、各方面の御意見に十分耳を傾けつつ、政策の推進に当って参る覚悟でございますと、いみじくも表明されたのであります。私は、その際、とかく労働大臣は自信過剰というあだ名がつけられておりまするゆえ、そのようなことのないよう、謙虚なる気持で、反対派、野党の意見であっても耳を傾けるという一つの謙虚さをもって、これらの諸問題に取っ組んでもらいたいと、御注意を申し上げたのであります。しかるに、その後の委員会においても、院外においても、あなたの言動は全くその反対の道を猪突驀進しているというのであります。そのことは世論があなたを評価することでありましょう。この労働協会法の審議の過程において、野党の意見に一顧だに与えることなく、なおかつ重大なことは、労働協会の中立性を機会あるごとに言明しながら、学識経験者の参考人の意見にも一顧だに与えていないということであります。(拍手)
以上私が申し上げました諸点で、労働協会法の表面に現われたる中立的色彩の陰におそるべき反動的要素が充満していることは一目瞭然であります。よって、わが日本社会党は、かかる反動的意図のもとに提出されました労働協会法案には断固反対をいたすものであります。
私の反対討論はこれで終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/30
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031・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 大坪保雄君。
〔大坪保雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/31
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032・大坪保雄
○大坪保雄君 私は、ただいま議題となりました日本労働協会法案に対し、自由民主党を代表して賛成の意見を申し述べます。
わが国の労働運動は戦後飛躍的な発展を遂げ、労使関係も次第に改善されてきてはおるのでありますが、しかしながら、経営者の一部には、なお労働運動に対する理解に欠け、はなはだしきに至っては頭からこれを否定する者もあって、その結果がかえって不必要な争議を誘発したり、いろいろ法律の禁ずる不当労働行為をなさしめたりしており、また、その反面、労働組合側においても行き過ぎの行為なしとしない、いな、近来は行き過ぎのはなはだしきものがあって、ようやく世の指弾をこうむっておるものもあります。しこうして、国民一般も、労働問題に対して、十分なる理解と、従って正しい批判力を持たず、真相に触れ得ないままに、ただ、ときどきの現実を追って、あるときは同情し、あるときは非難するという事態が少くないようであります。このことは、何といっても、わが国労働運動の歴史の浅さを示すものでありましょう。歴史が浅いだけであれば、時日をかせば、やがて正しく成長するでありましょうけれども、最近の労働運動の実情は、むしろ不健全なものが少くない。ことに、総評及びこれを中心とする組合の政治的偏向、実力至上主義は労働運動をはなはだしくゆがめており、ひいてはその正しい発展を阻害するものといわざるを得ません。(拍手)
少しくこの点に触れてみますると、総評は今年も年中行事の春季闘争を敢行しました。全く、春になれば花が咲く、いな、春になれば毛虫が出るごとく、総評の春闘は始まりました。もともと、労働争議は経済闘争であるべきです。労働者諸君が、その経済的地位の向上、労働条件の改善のために、その切実なる要求をひっさげて闘争に立ち上るのであれば、そして、その闘争の方法も、世人の納得のいくものであり、企業の社会性をわきまえているものであれば、問題はないのであります。ところが、総評の指導する争議は全く趣きを異にしております。彼らは、外においては自由諸国を戦争勢力とし、共産陣営を平和勢力として、反米親ソ一辺倒の態度をとり、内においては階級主義に立って、政府及び使用者側を敵として、これと対決するという容共的観点に立って、政治闘争に主力を注いでおるのであります。また、このような政治的観点から、政治目的たると経済目的たるとを問わず、法の禁ずるといなとにかかわらず、実力行使をあえてするのであります。その結果が一般国民にいかなる迷惑を及ぼそうとおかまいなしである。
このことは、総評の一九五七年度運動方針に明らかに掲げておるところであります。すなわち、「われわれは」「内外独占資本の野望を粉砕し、平和と独立の闘いを発展させる為に、政治活動をいよいよ強化しなければならない」といい、また「国鉄の労働者が公労法をのりこえて、合法性の拡大をはかるために闘った経験を尊重し」「公労協の各組合が、実力行使によって、奪われた争議権を事実上奪還したように、力量の高まりが権利を守る闘いの基本である」とか、また「国家公務員法、地方公務員法、公労法、スト規制法は団交権、スト権、政治活動の自由を禁止する違憲立法である」「之等の自由を奪還する為の闘いを組織する」「如何に犠牲者が出ても、之をかかえ、スト権を奪還するまで闘う」といい、さらに「統一闘争は、炭労、国鉄など基幹産業労働者が軸となり」「独占資本に重大な打撃をあたえるよう配量する」などともいっております。ことしの春闘も、この運動方針から、はずれてはおりません。
組合の実力行使によってその政治主張を貫徹しようとすることは、サンジカリズム的傾向にほかなりません。日本国憲法の基本的建前である民主制、議会政治に対して重大なる危険を包蔵するものといわねばなりません。このことは、現在の憲法の存する限り、許されないことであり、また、国民一般のよく知っておかねばならぬ事柄であります。しかるに、今日、世論を指導すべき言論界、学界においても、かような組合や勢力に対して迎合的な風潮もあり、労働問題については社会良識は残念ながらまだ未成熟であります。
かくて、健全にして良識ある近代的労使関係を確立するためには、積極的な教育活動の必要性が痛感されます。すなわち、真に自由にして民主的国家にふさわしい労働組合運動のあり方を国民一般に十分に知らしめるための何らかの仕組みが必要であるのであります。たとえば、自分で申請した調停のさなかにストをやったり、デモをかけたりして、調停者に圧力を加えるようなことや、統一交渉の途中で、自分の会社の都合だけで独走解決をして同業者間に混乱をもたらすなどは、正常な労働争議の運び方ではないことを、労働者にも、使用者にも、また一般国民にも知らせる必要があるのであります。ただ、労働教育のことは、使用者または労働組合の自主にまかせておけばよろしいので、政府や第三者がかれこれ関与しないがよいという議論があります。しかし、実際は、当事者が行う場合には、それぞれの立場にとらわれて片寄りがちである。労使問題自体について中正公平であることは、事柄の性質上、期待しがたい。しからばといって、政府の行う教育にも限界がある。結局、政府以外の団体の挺進的活動に特に待たざるを得ないと思うのであります。法案の第二十五条は協会の行う業務の範囲を規定しておりますが、これらの事柄を取り扱っている信頼すべき団体は、まだわが国には存在せず、それだけに、この協会が一般に大きく期待されておるところであり、ことに外国における労働運動の実情を知らしめることなどは、わが国労働運動の健全な発達を期待する上にきわめて有益と思われる。問題は、この協会が中立性を保ち得るかという点にあると思うのであります。私どもも、中立性の確保ということは、中正であるということは深く強く望みます。私どもは、この協会にわが党の主張を多く取り上げてもらいたいなどというけちな考えは毛頭持っておらないのであります。
社会労働委員会では、昨日四人の学識経験者から参考人としての意見を聞きましたが、四人の参考人とも、基本的にはこの法案に賛成をされました。中には、積極的にその活動を期待される向きもありましたことは、むべなりと意を強うした次第であります。このような団体は英米等の諸外国にもあるのでありますが、労使関係に良識ある慣行の成熟すること、労働運動の健全なる発達を遂げることをこいねがうのは、単に労使の関係者のみにとどまらず、国民一般の強い熱望でもあります。それにもかかわらず、社会党がこれに反対されるのは、何としても私ども了解に苦しみます。ただいま山花君がいろいろと反対の理由を述べられましたが、それらについては、一々ここで反駁はいたしません。ただ、国費を支出し、政府が責任者を任命すれば、どうしてそれが御用団体になるんです。そういうことを考えることは、おのれの心をもって他を推すものといわざるを得ないと思うのであります。理由として述べられる事項は、私どもからすれば、ことごとく、理由のない、こじつけにすぎないか、または単なる疑心暗鬼にすぎません。
最近の総評の政治的偏向と、争議行為の行き過ぎは、前にも申し述べましたように、国民大衆に大きな迷惑をかけて、そのきびしい批判を受けておる。この総評ファッショは国民大衆のために、社会党こそが強くたしなめてくれるものと大方は期待しておった。しかるに、たしなめるどころか、総評の言いなりになっておられるごとき印象を与えておるのは、やはり、労働組合の要求に対しては、社会党は風にそよぐアシにすぎないのかと悲観せざるを得ません。(拍手)
昨日の委員会に、多賀谷君は、「フグは食いたし命は惜しし」と言われて、この法案に多分に魅力と食欲を感ぜられたようでありましたが、この法案には、フグのような毒はございません。どうか御安心下さって、社会党の皆さんも全員この際欣然と賛成せられんことをこいねがって、私の討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/32
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033・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/33
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034・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/34
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035・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、下水道法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/35
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036・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/36
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037・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。
下水道法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員長西村直己君。
…………………………………発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/37
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038・西村直己
○西村直己君 ただいま議題となりました下水道法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
現行下水道法は明治三十三年に制定されたものであり、下水道の設置及び管理の基準、下水設備の責任、使用料の負担、下水道の管理を妨げる行為の制限、国の助成措置等に関する規定が整備されておらないのであります。ただいま道路の整備が急速に進められている状況にかんがみまして、これらの不備を是正するため、現行下水道法を全面的に改正して必要な規定を整備しようとするのが、本法律案の提案された理由であります。
そのおもなる内容は、概要次の通りであります。すなわち、その第一は、下水道を公共下水道と都市下水路とに分け、前者は主として暗渠式のものであり、後者は、従来水路あるいは溝渠等と称されておりましたもののうち、一定規模以上のものを地方公共団体が指定したものであり、ともに、原則として市町村が管理するものといたしまして、下水道の整備促進の対象を明確に定めようとするものであります。
第二は、下水道の設置について、その施設の規模及び構造に関してその基準を定め、また、下水道の管理については、その公共性にかんがみ、下水道の使用の義務を定め、下水道の施設を保全するについての監督を明確にし、放流水による公共水の汚濁を防止する措置を行うなど、必要な規定を整備しようとするものであります。
第三は、下水道の設置に対する国の補助、資金の融通、国有地の貸付、使用料の徴収、原因者負担金その他の負担金等の規定を設け、財源の確保につき必要な規定を整備しようとするものであります。
本法律案は、去る三月二十四日本委員会に付託されて以来、地方行政委員会との連合審査会を行うなど慎重に審査いたしましたが、質疑の内容は速記録に譲ります。
なお、本法律案に対しましては、日本社会党を代表し、前田榮之助君より、下水道の災害復旧を公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の対象とすることなどについて、また、自由民主党を代表して薩摩雄次君より、下水道の災害復旧事業を行う地方公共団体に対して国が補助することができることなどについて、それぞれ修正案が提出されました。
かくて、討論を行なった後採決に入り、両修正案には共通部分がありますので、まずその部分について採決し、これを可決、次に、共通部分を除く前田榮之助君提出の修正案を賛成少数で否決、続いて、共通部分を除く薩摩雄次君提出の修正案を賛成多数で可決、さらに修正すべきものと決した部分を除く原案について採決いたしました結果、全会一致をもって修正可決すべきものと決定いたしました。
続いて、中島巖君より次のような附帯決議案が提出され、採決の結果、全会一致をもって本法律案の附帯決議とすべきものと決定した次第であります。
附帯決議の内容は次の通りであります。
附帯決議
政府は、下水道の災害復旧に関しては、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の適用を受けることができるようすみやかに財政上必要な措置を講ずること。
以上、御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/38
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039・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/39
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040・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/40
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041・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、公衆電気通信法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/41
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042・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/42
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043・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。
公衆電気通信法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。逓信委員会理事森本靖君。
…………………………………
…………………………………発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/43
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044・森本靖
○森本靖君 ただいま議題となりました公衆電気通信法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、去る二月四日内閣から提出されたものでありまして、その目的とするところは、現在試行的に実施している日本電信電話公社の地域団体加入電話並びに同公社及び国際電信電話株式会社の加入電信について、その役務提供条件等を法定して本格的業務とするほか、これに関連する若干の改正を行おうとするものであります。
本案の内容の概略を申し上げれば、まず、地域団体加入電話とは農山漁村等における部落内電話交換の一形態でありますが、この法案によれば、その加入者は組合契約によって設立した組合に限り、設置区域は、その居住者が社会的、経済的に相互に比較的緊密な関係を有し、かつ電話による連絡が不便な地域であって、公社が逓信大臣の認可を受けて定める基準に適合するものに限ることとしております。また、電話の交換設備、電話機等については、構内交換電話の場合と同様、一定の技術基準を設けて、その加入者たる組合が自営することも認め、料金については市外通話料のほかは認可料金とし、その他の役務提供条件については、おおむね一般の加入電話に準じて取り扱うことにしております。
次に、加入電信とは、加入者の宅内にテレ・プリンターを置き、加入者が直接相手方を呼び出して通信文を送受信することができるものでありまして、国内通信を主とするものは電電公社が取り扱い、もっぱら国際通信を得うものは国際電電公社が取り扱うことになっております。その役務提供条件については料金を認可料金としたこと、及び、設備の他人使用及び端末設備の加入者による設置について制限を付してこれを認めたほかは、おおむね加入電話の場合に準じて取り扱うことにしております。
なお、以上に関連する改正といたしましては、公衆電気通信役務の試行について新たに規定を設けたこと、法律で定めた公衆電気通信役務の提供条件以外のもりであって、逓信省令で定める重要な事項を内容とする契約約款を定めようとするときは、逓信大臣の認可を要すること、及び、有線電気通信法の一部に所要の改正を行なったことなどであります。
逓信委員会におきましては、去る二月四日本案の付託を受けまして以来、数次にわたり会議を開き、まず政府より提案理由の説明を聴取し、政府及び日本電信電話公社当局との間に質疑応答を重ねて、慎重審議を進めたのでありますが、その詳細は会議録に譲ります。
かくして、委員会は四月八日質疑を終了し、四月九日、理事竹内俊吉君より、郵政省設置法の一部を改正する法律案の審議状況にかんがみ、郵政省の省名が逓信省に改められるまでの間、この法律による改正後の公衆電気通信法各条の規定中「逓信大臣」とあるのは「郵政大臣」と、「逓信省令」とあるのは「郵政省令」とする旨の規定を本案の附則に加える旨の修正案が提出され、次いで討論を省略して採決を行いましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決、ここに本案の修正議決を見た次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/44
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045・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/45
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046・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
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国会議員互助年金法案(議院運営、委員長提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/46
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047・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、議院運営委員長提出、国会議員互助年金法案は、委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/47
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048・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/48
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049・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。
国会議員互助年金法案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。議院運営委員長山村新治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/49
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050・山村新治郎
○山村新治郎君 ただいま議題となりました国会議員互助年金法案の提案の理由を御説明申し上げます。
国会議員の年金制度をいかに合理的に定めるかは憲法において、国会議員は国庫から相当の歳費を受けると定めてあることにも対応する問題でありますので、国会法制定以来の懸案として、議院運営委員会におきましては、かねてから、新憲法実施後のわが国の諸種の事情にもかんがみ、慎重の上にも慎重にその研究を重ねて参ったのであります。
思えば、民主的国家にあっては、議会こそその一大支柱でありまして、わが憲法もまた、国会は国権の最高機関であることを定めております。されば、わが国の将来は実に議会制度の確立と議会政治の発展にかかっておると申しても決して過言ではないのでございます。国会法第三十六条に「議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる。」と規定されておりますのも、ひっきょうするにこの趣旨であり、また、欧米各国の議会においても退職金制度が実施されている実情にも徴し、今回退職金に関する法律を制定することが適当であると認めた次第でございます。
しかして、本法案の作成に当っては、議員相互の互助の精神をその根本といたしたのでございます。すなわち、本制度は、年金の全部を国庫の負担とする建前をとらないで、醵出制によって、議員の受ける退職年金は議員が納付する掛金をもってまかない得るようにいたしたのであります。(拍手)
まず、退職金は年金のみといたしまして、一時金は支給しないことといたし、その種類は普通退職年金、公務傷病年金及び遺族扶助年金の三種類といたしております。ことに、国民の選良として生涯を議会政治にささげた政治家の遺族の方々に対しては、われわれは当然に公務員の遺族と同様の待遇をなすべきであると考え、これに年金を支給することといたしたのであります。(拍手)また、帝国議会の議員の在職期間を通算するかどうかという問題につきましては、本法案は公選された議員を対象とした結果、衆議院議員としての在職期間はこれを通算し、貴族院議員としての在職期間は通算しないことといたしてあります。また、国会になってからのいわゆる前議員及びその遺族に対しましても本法を適用することにいたしてございます。
次に、議員が、恩給法上の公務員、たとえば大臣、政務次官等を兼職する場合には、恩給法の規定にかかわらず、これを議員の在職期間のみに算入することにいたしてあります。ただし、本法施行の際すでに恩給を受けている者については、本法施行前における兼職期間は公務員としての恩給の基礎となっておるのでございますから、議員の在職期間には算入しないことにいたしてあります。
掛金は、毎月歳費の百分の三を国庫に納付することにいたしてあります。しかし、今まで国庫に納付していなかった掛金をどうするかという問題でありますが、これは、現行歳費の百分の二の金額に遡及する在職期間をかけました納付金相当額を、分割するかまたは本人の申し出で、一時に納付することにいたしてございます。この過去の納付金相当額は公務傷病年金及び遺族扶助年金については控除しないことにいたしてございます。
次に、公務員の恩給につきましては、四十五才から一部停止の上支給されることになっておりますが、本法においては、五十五才まで全額支給を停止することにいたしてございます。
その他、在職期間の計算方法、退職金の裁定、失権等につきましては、ほぼ恩給法の規定に準じて規定いたしました。
本制度の施行期日の問題でございますが、これは、この法律が公布された後最初に行われる衆議院議員の総選挙の期日から施行することにいたしてございます。
思うに、古来政治家の末路は井戸へいといわれております。議会政治始まって以来ここに約七十年、その間多くの政治家が父祖伝来の家産を傾け、一身をなげうって政治に尽した結果が、残るものは逆境であり困窮であったのであります。ことに、政治家の遺族の方々がきのうに変る悲境に苦しまれることは、われわれの深く胸打たれるところでございます。現に、元議員またはその遺族の方々にして、生活保護法の適用を受け、辛うじて生活を維持されておられる方が相当数あると聞いております。現在の議会政治の実情においては、議員は常時そのすべての力をあげて国政の審議に従事している現状でございます。昔日のごとき名誉職ではないのでございます。政治家が、後顧の憂いなく、国家のために国政に参与できてこそ、真の議会政治の発展があると申さねばなりません。(拍手)
われわれの幾多の先輩が、なさんとしてなし得なかったものが本法案であることを思うとき、私は、今回本法案が成立することによりまして、先輩並びに遺族の方々に、いささか報ゆるところがありますことを思いますときに、まことに感慨の深きものがあるとともに、われらも、また、この際思いを新たにいたしまして、民主主義政治の発展のために、さらに一段の力をいたさんとするものでございます。
何とぞ、御審議の上満場一致御賛同あらんことを希望いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/50
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051・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/51
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052・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/52
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053・山中貞則
○山中貞則君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、議院運営委員長提出、国会法等の一部を改正する法律案は委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/53
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054・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と叫ぶあり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/54
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055・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。
国会法等の一部を改正する法律案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。議院運営委員会理事佐々木秀世君。
…………………………………発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/55
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056・佐々木秀世
○佐々木秀世君 ただいま議題となりました国会法等の一部を改正する法律案について、提案の理由を御説明申し上げます。
御承知のごとく、国会法については、去る第二十一回国会におきまして、過去の実情にかんがみ、各般にわたり重要な改正を行なったのであります。その際、懲罰に関する規定につきましては後日さらに研究することとし、必要最小限の改正を加えるにとどめたのでありまして、議院運営委員会におきましては、第二十三回国会以来、国会法改正に関する小委員会を設けて、国会法の検討を続けて参ったのであります。その後、第二十五回国会に至り、自民、社会両党の首脳部の間において、二大政党下の国会運営につき、その能率的正常化をはかるため、一、議長の権威を高めるための措置、二、懲罰事犯取扱いの措置、三、両党対立紛争の場合の措置、四、会期延長案の取扱いの措置、五、国会運営の能率化のため議院運営委員会のあり方についての再検討等の諸点について、国会法の改正その他所要の措置を講ずることを申し合せたのであります。よって、本申し合せの趣旨に沿い、これに含まれている諸点について引き続き鋭意研究を重ねて参りました結果、このたびようやく衆参両院の協議がまとまりまして成案を得るに至りました次第であります。
本法案は国会法の一部を改正する規定と、外務公務員法の一部を改正する規定とからなっております。
国会法の改正規定について申し上げますと、今般改正いたそうとする点は、会期延長の制限、議事協議会に関する規定の新設、懲罰に関する規定の整備その他でありまして、以下、順次御説明申し上げます。
第一に、会期延長の制限に関してでありますが、従来往々にして四回あるいは五回にわたり会期が延長され、このため行政府において国務の渋滞を来たしたことなしとしなかったのであります。よって、今回、会期延長の回数を、常会にあっては一回、特別会及び臨時会にあっては二回までに制限し、ますます審議の能率の増進をはかろうとするものであります。
第二に、議事協議会に関する規定について申し上げます。現行法におきましては、議長は議院運営小委員と協議することができることになっておりますが、従来の運営の実情に照らし、審議の能率化をはかるため、この制度を改め、新たに議事協議会を設けようとするものであります。すなわち、議長は、議事の順序その他必要と認める事項につき、議院運営委員長及び議事協議員と協議することができるものとし、その意見が一致しないときは議長において裁定できることにいたしてあります。しかして、議長は、協議会の主宰を議院運営委員長に一任できること、及び、会期中たると閉会中たるとを問わず、いつでも本協議会を開き得ることを規定してあります。
第三に、懲罰に関する規定の改正について申し上げます。議院の懲罰権は、議院の秩序を保持するために、院内の秩序を乱した議員を処罰する重要な権能であります。しかし、懲罰に関する規定が不備であるため、会期末に起った懲罰事犯については何ら処理する方法がなく、これがために、会期末に当り時として議事の混乱が生じ、議院の秩序を維持する上に欠くるところがあった点は、まことに遺憾なことであります。今後かかる事態を未然に防止するために、会期末において生じた懲罰事犯について厳正にこれを処理することが必要であると考え、改正規定を立案した次第であります。すなわち、会期の終了日またはその前日に生じた懲罰事犯については次の国会で取り上げ得るの道を開くとともに、懲罰事犯は院議によって閉会中審査に付することができることといたしたのであります。また、閉会中において懲罰事犯が生じた場合も次の国会で取り上げ得ることにいたしてあります。
その他の国会法の改正点は、衆議院議員の任期満了による総選挙または参議院議員の通常選挙の後臨時会を召集すべき規定を新たに設けたこと、会期前に逮捕された議員の勾留期間が会期中に延長された場合に内閣に通知義務を負わせたこと、議長が秩序保持権に基いて発言を禁止し、議員を議場外に退去さすのを、当日の会議のみならず、議事が翌日に継続した場合には、その議事を終了するまでに及ぼしたこと、議員以外の者が院内の秩序を乱した場合に、議長がこれに対し処置をとり得ることとしたこと等であります。
次に、外務公務員法の一部を改正する規定について申し上げます。従来、閉会中は、国会議員を特派大使、政府代表等に任命することができなかったのでありますが、これを改め、今後、議員は、会期中であると閉会中であるとを問わず、これらの外務公務員に任命されることができることとしたものであります。
なお、本案の施行につきましては、国会法の改正規定は次の国会の召集の日から、外務公務員法の改正規定は公布の日から施行することといたしてあります。
本案は、本日の議院運営委員会において全会一致をもって成案を決定したものであります。何とぞ諸君の御賛同を切にお願いする次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/56
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057・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/57
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058・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/58
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059・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。
午後六時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805254X02719580409/59
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