1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十三年四月八日(火曜日)
午後三時十五分開会
—————————————
委員の異動
四月七日委員江藤智君辞任につき、そ
の補欠として堀木鎌三君を議長におい
て指名した。
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 宮田 重文君
理事
手島 栄君
松平 勇雄君
山田 節男君
長谷部ひろ君
委員
石坂 豊一君
新谷寅三郎君
前田佳都男君
鈴木 強君
光村 甚助君
森中 守義君
横川 正市君
国務大臣
郵 政 大 臣 田中 角榮君
政府委員
郵政政務次官 最上 英子君
郵政大臣官房文
書課長 上原 一郎君
郵政省貯金局長 加藤 桂一君
事務局側
常任委員会専門
員 勝矢 和三君
—————————————
本日の会議に付した案件
○郵便為替法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○郵政事業の運営に関する調査の件
(郵便年金に関する件)
(郵政省職員の労働問題に関する
件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/0
-
001・宮田重文
○委員長(宮田重文君) ただいまより委員会を開会いたします。
まず、委員の変更について御報告いたします。
昨七日江藤智君が委員を辞任され、堀木鎌三君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/1
-
002・宮田重文
○委員長(宮田重文君) それでは郵便為替法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案につきましては、去る三月七日国会法第五十九条の規定により、郵便為替法の一部を改正する法律案中、第三十七条の次に二条を加える改正規定及び付則第二項中、郵政大臣を逓信大臣に改めるとの修正の申し入れがあり、三月十二日の本会議において承諾されております。
本案に対する質疑は、三月六日終局いたしておりますので、理事会申し合せの通り、これより直ちに討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明かにしてお述べを願います。——別に御発言もなければ、討論を終局し、採決に入ります。
本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/2
-
003・宮田重文
○委員長(宮田重文君) 全会一致と認めます。よって本案は、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議における口頭報告の内容及び議長に提出する報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願います。
順次御署名を願います。
多数意見者署名
新谷寅三郎 横川 正市
山田 節男 森中 守義
前田佳都男 長谷部ひろ
松平 勇雄 手島 栄
光村 甚助
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/3
-
004・宮田重文
○委員長(宮田重文君) 次に、郵政事業の運営に関する調査を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/4
-
005・光村甚助
○光村甚助君 私は、戦前に郵政省が契約をされました郵便年金についてお尋ねしたいのですが、その当時やはり老後の生活の安定ということで、郵政省では相当郵便年金の契約をとっておられる。これが戦後、当時の貨幣価値というものが全然無価値にひとしいものになりましたので、現在、当時契約しておった金額でもらっても、全然電車賃にもならないような状態なんです。これを現在の物価にスライドするということができないかどうか、それを一点まずお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/5
-
006・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 戦前の年金につきましては、現在物価にスライドするように相当な請願陳情が参っております。私も就任後、これらの問題に対しまして、非常に慎重に、また事務当局を督励して何らかの結論を出すべく努力いたしております。でありますが、非常に金額的に大きくなる問題でありますので、現在の状態ではなかなか、結論を出さなければならないということを考えつつも、結論には到達いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/6
-
007・光村甚助
○光村甚助君 当時の人は、不動産の投資でもしておれば、現在でも相当不動産は物価にスライドして上っておりますからいいわけですが、郵便年金というのは全然、さっき言ったように無価値なんです。そういうことになりますと、今後、そういう変動があった場合には再びやはりこういう問題が起りますので、政府のやっている郵便年金事業というものは、私は、相当信用を失うということを私自身も心配しているわけです。それで現在考えてみますと、かりに一年に百円もらう契約をしておった人ですと、これは年に四回分けてもらうと一回が二十五円、電車賃でとんとんなんです。自分が一日つぶして郵便局に行って二十五円もらう。電車賃が二十五円かかればとんとんである。百円以下八十円とか六十円とかいう人だと、一回もらう金が二十円あるいは十五円、十円となるわけです。そういうのを二十五円電車賃出してもらいに行くということは、契約者にとって、迷惑な話です。とういろ点について、どういうふうにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/7
-
008・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 先ほども申し上げましたように、中には戦前の金で十万円も年金に入っている方がございます。それを現在の価額でもって給付を受けては全く問題にならない、それなら不動産にかえておくべきであった、しかし、その後恩給その他がスライドされているのであるし、なぜ一体これだけがスライドされないのかという、しごく理論的にも筋の通る陳情がございます。私は就任後、郵便貯金の切り捨て分も復活したいということで、一億三千五百万ばかりでございますが、こういう問題の復活、それから簡易生命保険の問題もあわせてこの国会で片づけたいといろ考えで立法を進めて参りましたが、いろいろな金融機関、特に相互銀行等の別勘定の問題等もございまして、この国会では間に合わないということでございましたが、来国会には、どうしてもこの郵便貯金や簡易生命保険の問題も片づけなければならないという状態であります。なお、大蔵当局もこれらの問題に対しては片づけようという約束をして、この国会には御提案を見合せておるという状態でございますから、こういうものとあわせて年金の問題もやはり政府が信用を失墜することのないように、また誠意をもって解決をするという方向で進めなければいかぬと思います。でありますが、実際問題からいいますと、かなり大きな金額になりますし、理想的なものにしなくても何らかの方法で納得するようなものにしなければいかぬだろうという考えは今、省でも持っておりまして、検討を進めているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/8
-
009・光村甚助
○光村甚助君 先ほども言いましたように、電車賃にもならないという人からの陳情ですが、非常に困っている。それで、こういうことはできないのですか。たとえば人間の生命を、これはお前幾つぐらいで死ぬということをきめることはできないのですが、百円のたとえ年金をもらう人でも、これを五年分とか、あるいは十年分、この人は五年か十年しか生きないと仮定して、一ぺんにたとえば千円やるとか、あるいは五百円やるとかいうことにすれば、電車賃二十五円使って二十円もらってくるというよろなことをしなくても私は済むと思うのですが、そういう措置は考えられていないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/9
-
010・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) これも金額の問題は、スライドの問題は先ほど申し上げました通りでありますが、これを電車賃をかけてもらいに来てもらうというようなことは親切を欠いている、こういうものは現金を送達するか、もしくは一括して払らか、まあある年令に達しておる者に対しては打ち切りということで、一括して払えるような、少し色をつけて払えるようなことをすることもあわせて考えているわけです。これは当然法律改正を必要とするものでありますので、できるだけ早くやらないと、私も自分の代にこういう問題を全部片づけて、もう少し、郵便貯金及び簡易生命保険というものが、国家原資として非常に大きな役割を占めておるものであるし、最も国民の協力を得なければならないものであるから、こういうものに対しては、ほんとうに大へんだからという感覚だけで片づけないというようなことではなく、ある意味からいったら、少し無理をしても筋を通さなければいかぬ、こういうことを考え、まあ省議でも何回も発言をしておりますから、この問題は近く一つ何らか結論を得るように考えてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/10
-
011・光村甚助
○光村甚助君 契約者全部が満足するような方法はないかもしれませんが、なるべく大臣の言われたような方法で、一日も早く契約者が少しでも滞足するような法案を出されるように切に努力をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/11
-
012・森中守義
○森中守義君 この前の委員会のときに資料の提出を求めておきましたが、きょう出ていないようですが、いつごろになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/12
-
013・宮田重文
○委員長(宮田重文君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/13
-
014・宮田重文
○委員長(宮田重文君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/14
-
015・森中守義
○森中守義君 資料が出てから、またこの問題についてはいろいろと論議の必要を痛切に感じておりますが、昨今二、三回にわたって郵政省あるいは郵政大臣が新聞に春闘の処分の問題で発表になっておりますから、その経緯について二、三質問をいたしたいと思います。
社会党の主としてわれわれ関係の議員十二名が大臣に警告書を渡しましたね。たしかその晩のNHKの七時のニュースで、郵政大臣は岸総理と会見をした、それで春闘の処分問題についていろいろと相談をした結果、岸総理は郵政大臣に一任をする、こういったようなニュースを私は聞きました。果してそれは間違いないものかどうか、それが第一点。
それと先般の委員会で、検察当局あたりとも十二分に七十九条の問題等を中心にして協議をしていきたいというような答弁が行われておりますが、その問題についてはその後どういう経過になっておるのか。
それからけさの新聞によりますと、大体中旬ごろに処分の発表をする、こういうものが出ていたようでありますが、これに間違いはないのか。あるいはまたけさの新聞に、具体的ではなかったようですが、若干当初の郵政大臣の構想よりも後退をしておるように、私の印象としては受け取っておりますが、そういう内容を発表できる範囲でけっこうですから、三つのことについて伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/15
-
016・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 総理大臣と私が会ったというようなことをニュースで言ったそうですが、私は聞いておりません。総理大臣が私に一任をするというようなことも言っておりませんし、私もそういう新聞記者会見等で発表をいたしておりません。でありますが、この問題に対しては、これはもう郵政省の問題でありますから、郵政大臣が全責任を負ってやるのだという原則は、総理大臣と話をしたわけではありませんが、私は自分の権限で、自今の立場で行うとすればやるべきだということを考えております。
第二点は、七十九条の問題に対して、検察当局と郵政監察局と協議の問題でありますが、これは御承知の通り、あなたのこの前の質問にもありましたが、郵政監察局と警察と検察庁と一体どっちが先だったということでありますが、これはよく調べてみましたが、どっちが先ということはないようであります。これは捜査の問題ですから、つまびらかには申し上げられないことではありますが、御承知の通り、昭和三十二年の九月に政府が統一解釈を行なっておりますので、こういう事項にはこういうふうな法規の適用があるのだということを明確に法解釈を行なっております。これに関しては、検察、警察及び監察等の法解釈を基礎にして政府が統一解釈を労働大臣名で行なっております。でありますので、そういう事態が起きた場合には、当然政府全般の責任として捜査が行われる、こういうことであるようであります。
七十九条に対して検察及び監察が協議を行なっておるというのは、これは去年の八月ごろからいろいろな問題に対して協議をしておるということでありまして、その後、何月何日にどういう会議を行なったかということは、これは捜査の問題でありますから申し上げられません。
それから第三点は、けさの新聞ということでありますがどういうことが出ておったか、けさは私あまり気にしなかったのですが、中旬ごろ処分をするというふうなお話でございましたが、現在は処分の問題に対しては慎重に考えておるのでありますので、中旬ごろその処分を行うということは明確申し上げられない段階であります。ただ、端的に申し上げますとすれば、私は正すべきものは正さなければいかぬという考えでありますが、いずれにしても労働組合運動の歴史はまだ浅いのでありますし、しかも、浅い過程においていろいろな違法行為も起るということは歴史的にも考えられますし、私自身が健全なまた合法的な組合運動の発達というものをこいねがうという個人的な立場や見解をとっておりますし、特にこれらの不幸な状態を起したことに対しては、私にも一半の責任は十分に感じられるわけでありますし、特に私がかねて苦慮いたしておりますのは、これは人のことではなくて、自分の事業の、自分の監督しなければならない傘下の中のかわいい郵政従業員を対象にしての話でありますから、非常に深刻にまた慎重に対処しなければならない、こういう状態を堅持いたしておるのであって、中旬ごろ処分するとか、そういうことに対して全然まだ発表する段階に至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/16
-
017・森中守義
○森中守義君 私の第一問に対する答えですね、つまり新聞あるいはラジオの報道、こういうことに対して、先般の予算委員会でもすべて大臣は否定しましたね、あなたは否定された。桜の花の散るころに、という浪花節もじりのそういうことを言った覚えはない、新聞はみんなその郵政大臣の談話ということであれは出ているのですよ。それすらも否定をしておる。ああいう席上のことだから新聞記者諸君がどう受け取ったのかしりませんが、そとまで僕は追及しなかったが、放送あるいは新聞の報道というのは、すべて否定されておるが、それはほんとうですか。もしもそうだとすれば問題ですよ。ことに私はNHKの七時のニュースを聞いたのか聞かないのかということを聞いているのじゃない。岸総理と会見をして、郵政大臣にまかせるということをニュースでは言ったが、どうかというのが私の質問の焦点なんですよ。(国「務大臣田中角榮君「委員長」と述ぶ)ちょっとお待ち下さい。ところが、あなたはニュースは聞かなかったというような答弁だが、それは答弁になりませんよ。それでもしもそういうニュースを聞いていない、事実がないとすれば、NHKはあなたの所管なんだから、放送法の中に明記されてありますよ、あったことをないように言ったり、ないことをあるように言ってはいかぬ、そういうことが放送法には明記されてある。おそらくAKにはその日の七時のニュースの原稿はとってあるはずです。もしも日本放送協会が、あなたが総理に会っていない、あるいは総理が郵政大臣にまかせると言っていないというようなことを、かりにNHKが勝手な架空のもとにしたというならば、これは一大事ですよ。第一、あなたがいつも言う、日本放送協会は公共事業であるから常に真実を伝えなければならぬ、言葉は悪いけれども、監督の責任にある郵政大臣が自分のことをうそを言われて黙っておりますか。これは一つ私は真実を確かめてもらいたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/17
-
018・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 私は見かけにようず非常に慎重なんです。でありますから、閣議でもって話したことでも話してならないことはしゃべりません。総理大臣と二、三回会っておりますが、会っておりますが、その後の記者会見で、総理大臣と会ってこういうことを議題とし、こういうことの結論を得たなんていうことは一ぺんも言っておりません。これだけは私は明確に言っておきます。私はそういうことに対しては非常に口がたいのであります。これは私の信条であり、一つの欠点であります。でありますが、私はそういうことで、過去も田中は十年間人事に関係しておっても、人事に関することは一つもしゃべらないというぐらいに、私はマスコミに対して強い態度をとっておりますから、うそは申しておりません。先はどのあなたの御質問に対して、ラジオを聞いておりませんということを申し上げております。あなたがお聞きになって、ラジオでそういうことを言ったということであればということを前提にして、総理大臣には会いました。会いましたが、総理大臣が特に私に一任するとか、私が一任を受けたとかいうことは発表しておりません、こう言っておりますから、これは真実でございます。発表いたしておりません。あとからNHKが、という問題でありますが、NHKがどういうふうに看取したかは、これは私の関知するところではありません。私はきっとこういうことを言ったのだろうと思います。まあ御承知の通り、総理大臣と会いましたあとで、新聞記者会見で、何を話したのだろう、処分の問題はどうなんです、あなたに一任されたのですかと、こういうことですから、私はそういうことに対して答えなかった。答えなかったが、これは郵政大臣が、郵政省所管の問題に対しては私がやるのが当りまえなんです、こういうことを言っておるかもわかりません。でありますから、そういうことを総合すると、一つの目標を持って質問をしているジャーナリストが、総理大臣と会ったという一つの前提でもってものを考え、書いたり、報道したりする場合には、私がやるのだということでありますから、総理大臣と会い、郵政大臣が一任を受けた、こういうふうに報道したのじゃないかと私はこう思います。NHKが一体虚偽の報道をしている、こういうふうにあなたは今言われまして、しかも、虚偽の報道をやっているなら、郵政大臣が一つ直させればいいじゃないか……。直させる意思はありません。これは私が直させなければならぬという立場ではないからであります。しかも私は、私がしゃべっておらないにしても、いずれにしても、いろいろな総理大臣との問題はあるのでありますから、ただ、私がしゃべらないということだけで、NHKの報道に対して虚偽の報道をしてこれを直させると、こういうことは私が関知しないことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/18
-
019・森中守義
○森中守義君 非常にいろいろ誤解を受けて困ります。私はNHKが虚偽の放送をしたとは言っていない、そういうことを速記録に残されたらたまりませんよ。むしろ私は、日本放送協会は放送法に基いて、あったことをないように言ったり、なかったことをあるようには言わないだろうからだから、あなたがしゃべったことを言っておるのだろうから、それを確めよ、こう言っているのです。そういう私は、NHKが虚偽の報道をしたとだれも言っていませんよ。ただ、あなたが言っていないのに、言ったとするならば大へんだから、それを調べてみたらどうか、こういうことなんです。
それともう一つ、私は今まで七十九条の問題その他でいろいろ言ってきましたが、こういうことは別に大臣の明瞭な見解をただしておきたいと思うのですが、一つは、先刻の答弁の中に、労働運動も日が浅い、誤まりもあるだろう、こういうような言葉がありました。しかし、相手の組合に言わせれば、二千四百円の要求あるいは特定局の制度撤廃の問題、いずれも労働組合は労働組合として自分たちがやっている行為あるいは目的に対しては、正しいと信じ切っておりますよ。それを一方的に、誤まりもあるというような表現は、必ずしも穏当ではありません。そこで問題になってくるの、そういう目的を正しいものと信じて、行為を正しいと信じ切って、やったこに対して、もし処分をやったその結果どうなるかということについてあなたはお考えになったことがありますか。おそらく国鉄の前例が示すように、どういう形の処分であろうとも、正当な行為に対して不法に曲げられた、こういったように労働組合の諸君が判断をして抵抗することが当然起ってくると思います。だから、私は今、郵政省の中に、全部じゃないけれども、一部の官僚諸君が強く処分の決行を主張しておるということを聞いておる。まさか、そういう一部の強硬な官僚の意向をそのまま田中郵政大臣が採用しようということはお考えになっていないと思うけれども、それぞれの立場にある官僚は官僚なりに、一つの点を見詰めて私はそういう強硬な意見もあろうと思うし、あるいはまた、あってはならないことであるが、何か労働組合に対する一つの感情的なものも持っている役人もいるかもしれない。あるいは、はなはだ勘違いをして、政府あるいは与党の官僚である、そういう不心得な役人もいるかもしれない。そういう一つの点だけを見詰めて、強硬に処分を決行しようという意思をあなたの手元に反映しておるという話も聞いておりますが、その結果生ずるものがどういうものであるか、処分が行われた、これに対する反対闘争が激化した、時あたかも選挙のまつ最中で、郵便も電信も電話も混乱をする、そしてまた労働組合は、全体の連帯責任のもとに、春闘というものが行われたとすれば、鉄道も電気も、いろいろなところに波及をしてみずから目的の正しさと行為の正しさを貫こうとする一大反撃が展開をされた場合に、郵政大臣としてはどういったような措置をとろうとするのか、その点を一つ明確に答えてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/19
-
020・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) お答えを申し上げます。第一は、組合員が、労働組合運動であり、労働争議である、しかも、それが正しいという考えでやったのだから、法の適用を受けず、処分を免れるという考えでありますが、そういうことは現在の状態では考えられないのであります。組合員に対しては再三警告を発しておるし、組合員も子供じゃないのでありますから、自分のやっておる行為が違法かどうかはわかっております。ただ、組合運動の過程において、違法行為であっても、あえて組合の団結のためにはやらなければならないというような考えを持っているかもわかりませんが、いずれにしても、自分の行為が正しいのだ、職場内に、二時間も食い込んで、これは違法じゃないと考えておるなら、これはナンセンスであります。これは間違った組合運動である。それほど日本人のレベルが低いものだとは思いません。であるから、私も正しい状態で考えて正しいと信じて行なったものであっても、法律で明確に阻却をされるところの意思なき行為ではないのでありますから、法の適用を受けず、処分の対象にならないということはありません。ただ、この法の適用処分については、情状や、またいろいろな歴史的事実や、将来のものも勘案してより摩擦の少い、また法を曲げない運用をしなければならないことは論を待たないと思います。
それから処分に対しては、毎度いじめられておるから感情が先に立つだろうということでありますが、少くともこの重大な時期に対し、て私は、私の行う処分のやり方によっては、ある意味においては、人は泥沼だということを言いますが、泥沼も私は一向おそれない。泥沼じゃない、ようやく戦後十二年間の歴史を経てここまで積み上げてきた労働運動そのものが逆転をして大へんな歴史を汚すおそれがあるとさえ、私は深刻に考えております。でありますから、処分に対しては、私は非常に慎重を期しておるのであります。いやしくも、いささかも感情を前提にするようなことは断じてありませんから、これは一つ御了解を願いたいと思います。
それから郵政省の官吏の中で、強硬論者があるということでありますが、これは、ざっくばらんに申し上げると、郵政省はいつでもアベック闘争じゃないかとさえ言われてきておるのでありますし、私も、あなたとでありましたか——、鈴木さんの御質問に対して参議院の予算委員会でもって御答弁を申し上げたときに、これもアベック答弁かと言われておるくらいに、労使の間は比較的円満にいっておるのでありますから、一部の強硬な管理者諸君の、強硬に、感情をまじえて、ここで一つやってしまおうというようなことは全然考えておりません。私の耳にもそういうことは入っていませんから、それは誤解であろうと思いますので、一つ御了解をいただきたいと思います。
処分をした場合、結果を想定したことがあるかということでありますが、これは結果を考えないでやってはおりません。私は正すべきは正すということを言っておっても、ものには限度があるのでありまして、正すことによって国の産業も、一切の事業さえ麻痺させていいとは考えておりません。でありますから、法の運用、処分の実施ということに対しては、非常に大きな幅をもってものを考え、より高い視野からものを見て、しかも、私が先ほど申し上げたように、組合運動の浅い歴史の過程において起った事件でありますから、少くともこの事件を契機にしてよりいい意味の発展をしてもらわなければならぬ礎石にしよう、またしなければならぬという立場でものを考えておりますから、混乱はできるだけ避けたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/20
-
021・森中守義
○森中守義君 後半の答弁については肯定します。しかしどうも正すべきは正すという表現が出てみたり、今までの七十九条の解釈をめぐった論争の過程を顧みて、どうしても労働問題については、一つないしは幾つかの法律を中心に、ものの判断を、政府あるいは郵政大臣としては、そのことのみにたよっているような気がして仕方がないのです。これは先般も予算委員会で解散の問題、憲法七条の問題でいろいろと論議がかわされて、岸総理はドイツ憲法の亡霊ではないか、こういう意見が出ておりましたが、私もこの労働問題についてただ法律が存在をする、その法律のみにたよって事を処理しつつあるのではなかろうか、こういう感じがするのです。しかし、いろいろな労働評論家あるいは政治評論家の言葉を借りるまでもなく、労働運動は生きものだだから、法律だけを中心にして律すべきものではないという意見が、現在の社会の通念として労働問題に対する評価なんです。だとするならば、私は、ここで郵政大臣が労働政策にとうんとする行為は、法律以上のものでなければならぬ、こういうことだと思うのです。特に処分のあとに想像されるできごとというものは、何といっても私は大臣の責任であろうと思う。また大臣の裁量いかんによってそのことが激化もするし、しずまりもするだろう、こういう判断に立てば、何も公労法の十七条あるいは郵便法の七十九条という法律の解釈をめぐる論争以外のものでなければならない、こういう工合に考える。だとするならば、郵政大臣はどういうことで最終的にこの判断をつけようとするのか、もう少し明瞭に私は聞いておきたいと思う。私はそういうことの法律の専門家ではないし、いわんや行政をあずかるんでないけれども、やはり政治家なんだから、そこのところのかね合せをもう少し明瞭に答えてほしいと思う。私どもはそういうことを、前後のこれを勘案して郵政大臣を信頼できるのか、あるいは信頼できぬのか、もし信頼できなければできないで、信頼できないとする意思の表明もしなければなりません。そういうこともわれわれ考えておる。もう少し慎重に、そういう法律のみによって労働問題を処そうとするのか、あるいは本来の郵政大臣の政治家としての信義に基いて問題の処理に当ろうとするのか、そのどっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/21
-
022・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) まず原則的には、私に満幅の信頼を寄せていただきたい。また寄せる価値はあるということを率直に申し上げます。これは私の八カ月の実績がものを言っておるということをはっきり申し上げておきます。
それから第二の問題でありますが、法律以上のものを考えなければならない、これは私は十分慎重に、そういう考えです。だから、この処分に対しては、私は日夜おうのうしておるということを申し上げておりますが、私は、一部においては、田中というのは非常に見つけば悪いけれども、内心は弱い人間だから、処分も何もできなくてあとへ申し送ってしまうのではないかという議論さえされておるのでありますが、私は、自分の正しい国民の一人としての良心に誓って恥じないという態度でこの問題を処していかなければならぬということを考えております。私は少くとも郵政大臣として短かい時間ではありますが、職を奉じてこの処分の問題は、私の一生を通じての一つの大きな問題であろうとさえ深刻にものを考えておるのですから、政党的な立場で政治的な色彩を強く出して乗っかっていこうというような気持はないことは、これは一つ認めてもらわなければならぬと思います。ただ私が申し上げたいのは、ここいうで一つ労働組合運動に対しても、お互いが、よく国民自体が考えなければならぬのは、組合運動も必要でありますし、労働争議の正当化もこれは当然お互いが考えなければならぬのでありますが、やはり組合員である前に日本人であるということを考えなければいけません。同時にまた、万民は法のもとに平等であるということを、原則をこわすわけにはいかぬのであります。でありますから、私は今行政上の処分、公労法十七条、十八条による処分は、私の責任でやれるのでありますが、七十九条のものに対しては、政府自体が最終的には態度をきめなければならぬという問題であります。特に捜査は警察が当っておりますが、書類送検後の法律的処分というものは、これは検察庁が行うのであります。でありますから、私はこの検察庁や警察に対してどういうふうに対処しなければならぬか、私たちや労働組合も国民の支持を受けつつ、お互いが正すべきは正して明るい将来を築くために最もいい道はどうしなければならぬかということを今深刻に考えておるのです。でありますから、あなたが今御心配になるように、気負い立ってあとは野となれ山となれ、正すべきものは正しさえすればいいのだという考えではないことは、これは一つ十分お考えになっていただきたいと思うのです。私はこういう基本的なものの考え方でやっておるのでありますから、まあ私が最終的な処分を行う場合には、私が少くとも良心に対して恥じない、また良心の許す範囲でということでありますので、まあやむを得ないであろうという工合に御納得願えると思いますし、また、ぜひ一つ納得してもらわなければならぬと、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/22
-
023・森中守義
○森中守義君 納得できるかできないかは、時間の経過の中にあなたのやること自体が明瞭に証明するだろうから、そのときにまたやりましょう。ただ私は、いただきかねるのは、満幅の信頼を寄せろということである、功績があったということを認めろということ、そういう功績の押し売りと善人の押し売りはしてもらいたくない。その評価は私どもがする。ただまあ少くとも意識過剰になってもらっては困る。あなたが功績があったかどうかは、あなた自身は功績があったと思っているかわからぬが、客観性を持たなきゃこれは話になりませんよ。ただあなたが功績の押し売りをしてみたり、満幅の信頼をしてくれと言う、そういう強心臓である人だということだけは認めましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/23
-
024・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 私も一言申し上げましょう。どらもあなたにばかり言いっぱなしにされちゃたまらぬから申し上げます。私はそういうことを言っているのじゃないのです。あなたが私に対して、これから一体どういう気持を持ってやるのか、こら言うから、これは、私が今、一方で捜査中であり、一方で慎重に事務当局が検討を進めておるのでありまして、私のところまでまだ出てきておらぬのです。そういう状況でありますから、私が将来のことを申し上げるとすれば、私は見つけば悪いけれども、とにかく弱過ぎるとさえ言われておる状態できたのであって、私は功績があるとか、功績の押し売りはしておりませんから、これは一つ議員としてはっきり申し上げておきます。私はそれほど厚顔無恥のものじゃないのです。そうじゃなくて、私は今までずっと私が郵政大臣に就任をして、まあ組合としても非常に組合のことをよくわかってくれて、一切のととはとにかく、長い間三年も四年もかかっておったものを年末には全部片づけてくれるし、労使はお互いに、あんたのいるうちにお互いが一つやろうじゃないかどきえ言われてきたようなやり方をしておりますから、私自身が政治的な、また政治家としてのニュアンスだけでもって、そのあとのととル考えないでずらっとやるような人間でないことは、私の少くとも八カ月の姿を見てもらえばおわかりになっていただけると思うのです。こういう状態で私ほこれから将来も対処して参ります。ここでもって政党人に返って思い切ってやるなんていうことは万々考えられませんから御了承願いますと、こう言っているのですから、私は表現が悪いかもしらぬですけれども、森中さんも一つすなおにとっていただきたい。そうすれば私の真意も十分おわかりになっていただけると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/24
-
025・森中守義
○森中守義君 私も非常にすなおなんですから、決して人の言っていることを曲げてとるということはありませんよ。しかし、あなたが功績の押し売りと満幅の信頼を寄せる価値があるということは、明瞭に会議録に載っておる。これはあんた、だれだって、功績の押し売りをしたり、満幅の信頼を寄せる価値があるという自己賞賛をしたり、あんた、会議録に載っているのだから、その通りとるのが当りまえですよ。それだけ私も言い返しておく。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/25
-
026・宮田重文
○委員長(宮田重文君) 本日は、これをもって散会いたします。
午後三時五十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814816X01719580408/26
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。