1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月十八日(金曜日)
午前十一時四十八分開会
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委員の異動
本日委員佐野廣君辞任につき、その補
欠として上原正吉君を議長において指
名した。
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出席者は左の通り。
委員長 藤田 進君
理事
大谷藤之助君
松岡 平市君
永岡 光治君
委員
上原 正吉君
後藤 義隆君
近藤 鶴代君
苫米地義三君
中野 文門君
増原 恵吉君
松村 秀逸君
伊藤 顕道君
田畑 金光君
千葉 信君
森中 守義君
矢嶋 三義君
島村 軍次君
八木 幸吉君
国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
国 務 大 臣 津島 壽一君
政府委員
法制局長官 林 修三君
法制局次長 高辻 正巳君
国防会議事務局
長 廣岡 謙二君
内閣官房内閣調
査室長 古屋 享君
総理府総務長官 今松 治郎君
内閣総理大臣官
房公務員制度調
査室長 増子 正宏君
総理府恩給局長 八巻淳之輔君
行政管理政務次
官 榊原 亨君
行政管理庁行政
管理局長 岡部 史郎君
防衛政務次官 小山 長規君
防衛庁長官官房
長 門叶 宗雄君
防衛庁防衛局長 加藤 陽三君
防衛庁教育局長
心得 小幡 久男君
防衛庁人事局長 山本 幸雄君
防衛庁経理局長 山下 武利君
防衛庁装備局長 小山 雄二君
外務省アメリカ
局長 森 治樹君
外務省条約局長 高橋 通敏君
大蔵省主計局次
長 村上 一君
大蔵省主計局給
与課長 岸本 晋君
事務局側
参 事
(委員部第二課
勤務) 川上 路夫君
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
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本日の会議に付した案件
○内閣法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
○国防会議の構成等に関する法律の一
部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
○行政機関職員定員法の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○一般職の職員の給与に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○特別職の職員の給与に関する法律等
の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
○防衛庁職員給与法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○恩給法等の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○旧令による共済組合等からの年金受
給者のための特別措置法等の規定に
よる年金の額の改定に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○防衛庁設置法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○自衛隊法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/0
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001・藤田進
○委員長(藤田進君) これより内閣委員会を開会いたします。
委員の異動がございましたので、事務局から報告させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/1
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002・川上路夫
○参事(川上路夫君) 御報告いたします。
本日、佐野廣君が辞任され、後任として上原正吉君が選任されました。
以上でございます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/2
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003・藤田進
○委員長(藤田進君) それでは、これより議事に入ります。
昨日、衆議院から送付されました内閣法の一部を改正する法律案外五件の法律案につきまして、さきに提案理由の説明を聴取したのみでありますので、本日は、まずこれら六法案につきまして、順次、内容の説明を聴取いたします。
まず、内閣法の一部を改正する法律案について説明を求めます。古屋室長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/3
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004・矢嶋三義
○矢嶋三義君 プリントがあるのかないのか言うてから、説明して下さいね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/4
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005・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/5
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006・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/6
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007・古屋享
○政府委員(古屋享君) 内閣法の一部改正法律案につきまして、補足説明をさしていただきます。
昨年の夏から、内閣法が成立いたしまして、そのために内閣官房と総理府が分離いたしまして、今回提案しておりまする現在の内閣法による「三十六人」を「五十一人」に増すという法律案は、元来なれば定員法で出すべきでありますが、内閣法の関係で内閣官房が独立いたしましたために、独立の内閣法の一部を改正する法律案として提出した次第でございます。
この増員につきましては、内閣官房におきましては、現在三十六名の定員がございまして、その三十六名は、内閣審議官関係が七名、内閣参事官関係が一名、残りの二十八名が内閣調査室関係でございます。この二十八名を十五名増員をいたしたいというのが、この法律の改正の趣旨でございます。
これは、経済、文化、その他の各方面にわたりまする情報、資料を正確に整理総合いたしまして、内開法にありまする内閣の重要政策に関する情報の収集、調査の完璧を期したい、言葉をかえて申し上げますと、内閣の重要政策の立案ないし運営に資するには、現在の二十八名では実際問題として非常に困難を伴いますのと、関係各省との連絡調整に関する事務を増加しておるのでありまして、さらに、収集されました資料はきわめて膨大な量に上っておりまして、こういう分類整理をしっかりいたしまして、科学的に整備し、いかなる角度からもこれを抽出して利用することができるように充実をはかる必要があるというのが、この増員の理由でございます。
なお、衆議院におきましては、この付則の一部が修正議決になりまして、お手元に配付してありますが、「この法律は、公付の日から施行し、昭和三十三年四月一日から適用する。」というように修正議決になっておる次第であります。
以上、簡単でございますが、補足説明をさしていただきます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/7
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008・藤田進
○委員長(藤田進君) 次に、国防会議の構成等に関する法律の一部を改正する法律案について、説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/8
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009・廣岡謙二
○政府委員(廣岡謙二君) お手元に、昨日衆議院で修正されました修正文を御配付いたしてございます。
ただいま議題となりました国防会議の構成等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由につきまして、補足説明をいたします。
現在、国防会議事務局は、局長一名、参事官二名、その他事務局職員等、計十三名でございますが、事務局の事務を円滑に処理いたしますために、かねて兼任でございました参事官一名をその所属庁定員より削減いたしまして、これを当事務局の定員として増員をいたす必要があるものと認め、これに伴う法律の改正をお願いいたすことにいたしたのでございますが、昨日衆議院におきまして議院修正が行われまして、施行期日を「四月一日」となっておりますのを改めまして、「公布の日」とするということに相なっております。
以上、これをもちまして補足説明といたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/9
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010・藤田進
○委員長(藤田進君) 次に、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案について説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/10
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011・岡部史郎
○政府委員(岡部史郎君) 定員法の一部を改正する法律案につきまして、簡単に補足説明を申し上げます。
このたびの定員法の改正は、現行定員法によりますと、職員総数六十四万三千九百二十五名と相なっておりますが、それを六十六万七千二百六十一名に改正しようとするものであります。すなわち、差引増加は二万三千三百三十六人と相なります。
その内訳を申し上げますと、昭和三十三年度の事業計画に伴いまして、増加を要するものが四千七百九十一人でございます。さらに、事業の縮小整理に伴って減少するものが一千七十人でございます。従いまして、その差引三千七百二十一人が三十三年度の予算の事業計画に伴いまして増加することと相なります。
そのおもなる内訳と申しましては、先般御説明申し上げました通り、ごく簡単に申し上げますと、科学技術庁関係の拡充に伴うものが百四十三人、国立学校の学年進行、各部、学科の増設に伴うものが七百八十四人、郵便取扱い業務量の増加に伴うものが千六十七人、電気通信施設の拡張に伴うものが千七百二十二人、特定郵便局二百カ所の増設に伴うもの四百人等でございます。それで、結局、三千七百二十一人の増加に相なりますが、このたびの改正法の第二の特徴は、従来定員外にありました常勤労務者六万六百十五人及び常動的非常勤職員の中から、その職務内容の重要性、定員構成のバランスというような点を考慮いたしまして、公務員制度の改正を待ちませんで、その手直しといたしまして、本年度定員化をお願いいたすものが一万九千六百十五人でございます。合せまして、先ほど申し上げました通り、二万三千三百二十六人の増加と、こう相なるわけでございます。
簡単に御説明申し上げます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/11
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012・藤田進
○委員長(藤田進君) 次に、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/12
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013・増子正宏
○政府委員(増子正宏君) 資料としては特別にございませんが、法律案でごらんいただきたいと思います。内容を逐条的に簡単に申し上げたいと思います。
まず第一に、給与法の第五条を改正いたしておりますが、この第五条は、御承知のように、俸給の定義でございますが、その一項に「通勤手当」を加えましたのは、今回新設いたします通勤手当も、この項に規定されております他の諸手当と同様、俸給に含まれないものであることを明らかにしたものであります。
次に、第十二条でございますが、この条には、御承知のように、もと勤務地手当に関する規定があったのでありますが、暫定手当に切りかえられました際に削除になったものであります。そこで、今回全文改正の形で、ここに新たに通勤手当に関する規定を設けた次第であります。
まず、この第一項でございますが、これは通勤手当の支給対象に関する規定であります。通勤手当は、この第一号及び第二号に掲げる職員に支給することといたしたのであります。
その第一号でございますが、これは通勤のために交通機関または有料の道路を利用し、かつ、その運賃を負担することを常例とする職員であります。しかしながら、これらの職員のうち、交通機関等を利用しなければ地理的な関係または身体上の条件等で通勤が著しく困難なものは別といたしまして、特に交通機関を利用せず、徒歩で通勤しましても片道二キロ未満の通勤で済む、いわゆる近距離通勤者には支給しないことといたしたのでございます。この程度のものは通常徒歩によるのが相当と考えられ、民間でもこのような例が多いからでございます。
次に、第二号は、通勤のため自転車その他これに類する交通の用具を使用することを常例とする職員でありますが、これも第一号の場合と同様、いわゆる近距離通勤者は除くわけでありますが、そのほか交通機関等と自転車等とを併用する職員につきましては、第二号から除きまして、第一号の職員として取扱うことといたしたわけであります。なお、自転車等の交通用具の範囲は人事院規則で定めることといたしました。
次に、第二項は、第一項第一号に掲げる職員、すなわち、交通機関等の利用者に支給する通勤手当の額を規定したものであります。その額は、その職員の一ヵ月の通勤に要する運賃等に相当する額から百円を控除した額とし、その算出につきましては人事院規則にゆだねることにいたしました。
なお、この際、百円の控除制をとりましたことにつきまして御説明申し上げます。そもそも通勤に要する経費は、生計費を俸給額算定の一部の基礎といたしております現行給与制度の建前及び生計費の実態等から見まして、俸給額の中にある程度それが含まれていると考えるのが相当であります。従いまして、今回俸給のほかに支給しようといたします通勤手当の算定に当りまして、通勤に要する経費として実費相当額の全部を基礎といたしますと、俸給と重複支給の部分が生ずることになるわけでありますので、この点を調整する意味におきまして、実費相当額から一部を控除することといたした次第であります。次に、この控除額につきましては、職員の現に負担している通勤費が町村在勤者でも平均百円程度であること、及び片道二キロ以上の徒歩通勤者に対しては手当を支給しないということとしておりますので、そのこととの均衡等を考慮いたしまて、これを百円といたした次第であります。
次に、通勤手当の月額の最高額は、人事院勧告に従いまして六百円とし、なお、交通機関等と自転車等とを併用する職員につきましては、きわめてまれなケースであろうと思いますが、もしその月額が百円未満となるような場合には百円を支給額とすることにいたしました。
第三項は、第一項第二号に掲げる職員、すなわち自転車等の利用者に対する通勤手当の月額を規定したものでありますが、その額は百円といたしたのであります。これはこの場合の通勤に要する実費相当額といたしまして、自転車の平均的償却費を考慮いたしまして、これを月額二百円と見まして、これに交通機関等の利用者の場合と同様百円の控除を行なった結果の額でございます。
次に、第四項でありますが、通勤の実情の変更に伴う支給額の改訂と通勤手当の支給に関する細目は、人事院規則に委任することにしたわけでございます。
次に、付則について御説明を申し上げますと、第一項はこの法の施行期日でありますが、この点につきましては、昨日、衆議院におきまして、「公布の日から施行し、昭和三十三年四月一日から適用する。」というふうに修正の上可決されましたので、申し添えておきます。
第二項は地方自治法の一部改正でありますが、普通地方公共団体の常勤職員に対しまして支給できる手当の種類を規定しておりますこの条項に、通勤手当を加えまして、国家公務員に準じて地方公務員にもこの通勤手当を支給し得る道を開いたわけでございます。第三項、最後の項は国家公務員災害補償法の一部改正でございますが、災害補償の算定の基礎となる平均給与額に通勤手当を含めようとするものでございます。
以上が関係条文の内容でございますが、なお、この改正法の実施に要します経費は、一般会計として約十八億、この中には義務務育職員の半額国庫負担分五億六千万円を含んでおるわけでありますが、そのほかに特別会計として八億六千万程度、合計しまして、国の経費といたしましては二十六億六千万円程度でございます。さらに、このほかに地方公務員関係で二十五億六千万円ほど要するわけでございまして、この関係におきましては、合計いたしまして、国地方を通じて五十二億円程度の経費を要するということになるわけでございます。以上。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/13
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014・藤田進
○委員長(藤田進君) 次に、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案について説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/14
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015・岸本晋
○政府委員(岸本晋君) 特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の、内容を補足して説明さしていただきます。
今回の改正の要点は大体三つございます。第一点は俸給月額の改定でございます。この俸給月額の改定に当りましては、まず政務次官の現行俸給月額の七万八千円を九万円に、約一五%引き上げることになっておるのであります。これを基進にとっております。これは特別職の俸給月額がきまりましたのは昭和二十七年の十二月でございます。その後、一般職につきまして二回給与改定がございました。その間、一般職の最高の事務次官クラスで一五%の俸給の引き上げに相なっておりますので、これと均衡をとりまして、政務次官の俸給月額も一五%増の九万円ということにさしていただいたわけでございます。政務次官より上位の官職の俸給月額につきましては、まず現行の八万二千円は二〇%増加いたしまして十万円、八万八千円の金額は二五%増加いたしまして十一万円、それから最高の総理大臣の十一万円の金額は三五%増の十五万円、それぞれ上下の格差をある程度広げる意味におきまして、引き上げ率を上の官職になるに従って引き上げております。政務次官以下の官職につきましては、一般職の最高の俸給月額であります七万五千円、これを最底の月額に各種委員等に対する俸給月額に持って参っております。以上が俸給月額の改定の内容であります。
第二点は、この俸給月額の改定に関連いたしまして、従来の官職の順序と申しますか、序列、各俸給月額を受ける官職の配分を若干変更いたしております。たとえば、人事官は従来三人とも国務大臣クラスの俸給月額であり、会計検査官も同様でございましたが、今回、職務の内容その他行政組織内の秩序というものを考えまして、人事院総裁は国務大臣級、会計検査院長も国務大臣並みの俸給月額にいたしますが、その他の人事官、検査官は一段下ということにいたしております。その他各種委員会の委員、あるいは法制局長官、そのほか宮内庁の官職、これは実情に即しまして、行政組織内の秩序と申しますか、そうした面から新たに基準を考えまして、官職の配分を若干変更いたしております。
それから、改正の第三点は、従来委員会、審議会、審査会等の委員長、委員等、これはほかの職務を持っておられる方が多く、ほかの方からの収入をもらっておられる方も多かったのであります。そういう方につきましては、今回の改正を機会といたしまして、他からの収入を主たる所得としておる方方に対してはこの俸給月額を支給しないで、別途手当を支給する。そうしてその出席日数に応じた手当を支給するということにいたしまして、実情に即した給与の支給ができるように改めております。
以上が改正の主要点でございまして、これに伴いまして関係法律の改正を若干いたしております。
なお、この法案が衆議院で修正議決になっております。修正点を申し上げますと、本法案は「四月一日から施行」ということになっております。これが修正案では、「公布の日から施行し」、「四月一日から適用する。」ということに改められております。
以上、簡単でございますが、御説明を終わります。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/15
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016・藤田進
○委員長(藤田進君) 次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/16
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017・山本幸雄
○政府委員(山本幸雄君) 改正案文につきまして、以下、順を追って御説明を申し上げます。
第十四条の改正規定は、参事官等及び自衛官、自事官等に新たに通勤手当を支給することとし、その支給の要件、額、支給の方法その他につきましては、先ほど御説明がありました一般職の例にならうことを規定したものでございます。
十六条の第三項の改正規定は、航空手当等の額の俸給に対する割合の最高限度を改めることを規定したものでございます。航空手当等は、期末勤勉手当等の基礎と従来なっておりましたのを、先ごろの給与改定の折に人事異動を行なった場合の給与上の不公平を除いて異動の円滑化をはかりまするために、期末勤勉手当の計算基礎からはずし、当該期末勤勉手当の相当分だけを航空手当等を増額したのでありますが、昨年末に期末手当がふえましたので、これに対応するところの技術的な改正を行うものでございます。
二十七条の改正規定は、公務災害者に対する補償金額の算定根拠となる平均給与額に関するものでありまして、新たに通勤手当をその基礎に加えまするとともに、航空手当等に含まれる期末勤勉手当相当分を政令で控除することを規定しておるものでございます。
付則の第一項の規定は、この法律の施行期日を規定いたしたもので、通勤手当にかかる改正規定は、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の施行期日と同様に、昭和三十三年四月一日とし、その他の規定はこの法律の公布の日といたしました。なお、この改正のうち、前の方の一部改正法律案の方は「公布の日から施行」し、通勤手当にかかる改正部分につきましては「四月一日から適用する。」というふうに、昨日、衆議院で修正がありました。
付則第二項の規定は、第二十七条の改正に伴いまして、関係規定の整備を行なったものでございます。
以上でございます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/17
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018・藤田進
○委員長(藤田進君) それでは、次に、恩給法等の一部を改正する法律案及び旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案を一括して議題といたします。
前回に引き続き、質疑を行います。御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/18
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019・田畑金光
○田畑金光君 今松長官にお尋ねいたしますが、この間衆議院の内閣委員会で、委員長質疑の形で長官から御答弁になっておられる問題点についてお尋ねをいたすわけでございますが、今回こういう形式をふまれたということは、どういう事情に基いてこういう形になったのか。内閣委員長が質問して、これに長官が答える珍しい形でありますが、このことは付帯決議と同じ趣旨の、あるいは同じ形を持つものと判断してよろしいのかどうか。まず、それを長官からお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/19
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020・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) 衆議院の内閣委員会の際に、委員長からの質疑に対しまして私が御答弁いたしましたことは、付帯決議と同じ効果があるかないかということにつきましては、私もちょっと御答弁申し上げることができませんが、委員長の質疑に対しましては、政府は十分に検討して善処したいと、こういうことを申し上げた点につきましては、付帯決議に対しまして、もし付帯決議が出た場合に、政府の所信を聞かれた場合に御答弁することと同じであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/20
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021・田畑金光
○田畑金光君 これは、そうしますと、率直に申しますならば、付帯決議と同じ内容であり、また政府としてもそういうような趣旨で尊重して、今後の運営に資すると、こういうことに解釈してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/21
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022・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/22
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023・田畑金光
○田畑金光君 そこで、これ、いろいろ問題点があろうと思うのですが、これを見ますと、福永委員長の取り上げた問題点を見ますと、臨時恩給等調査会でいろいろな角度から討議、検討を加えられた内容であるわけでありまして、この際それぞれの諸点について、どういう点が問題点として将来に留保されたのか、この内容について、一つ、簡潔でけっこうでありますが、御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/23
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024・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) その点につきましては、他の政府委員から御答弁をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/24
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025・八巻淳之輔
○政府委員(八巻淳之輔君) 先般の衆議院内閣委員会における福永委員長からの質問の内容に盛られておりますもろもろの点につきまして、簡単に、こういうことが問題点として指摘せられているであろうという点を申し上げてみたいと思います。
で、まず第一は、遺家族の公務扶助料の倍率及び支給条件等の是正の問題でありますけれども、この倍率の問題は、御承知の通り、公務扶助料に関する倍率、今まで申し上げた倍率をどうするかということ、それからまた、支給条件の問題、これはおそらくは年令制限とか、あるいは階級制限、そういうふうな状態にならなければ増額分が女給されないというふうな、支給について加えられましたところの諸条件というものをどうするか、こういう問題であろうと思います。
それから傷病恩給の間差、等差及びその他の恩給との不均衡是正、こういう問題でございますが、傷病恩給に関する間差、等差、これは傷病恩給に関する等差と申しますれば、第一項症はどういうふうな症状のもの、第二項症はどういうふうな症状のもの、こういうふうな区別が別表に規定してございます。また、別表には抽象的に規定しておりますけれども、その抽象的に規定していることをどういうふうに現実の問題として基準を立ててやっているか、裁定しているかというような現実の等差の問題、これらについての検討でございます。それから間差と申しますのは、第一項症を一〇〇といたしまして、これに対する基本年額に対して、第四款症は幾ら、第三款症は幾らというふうな、下の各款症の、下のグレードの第一項症に対する割合というものについての問題であろうと思います。
それから、仮定俸給抑制措置の是正、これは今般、おそらく、これを一万二千円ベースから一万五千円ベースに上げた場合に、今回の措置といたしまして高級者におきまするところのベース・アップの抑制措置でございまして、こういうふうな問題についての将来における検討ということであります。
それから、文官恩給に内在するところの不均衡是正、この意味は、おそらくは昭和二十三年六月三十日前に退職した文官につきましては、昭和二十七年の法律第二百四十四号、昭和三十年の法律第百四十九号という二つの法律によって、不均衡是正が行われたのでありますけれども、さらになお不均衡があるというふうな主張に基きまして、それらの不均衡を何らかの形で直さなければならない、こういうことであろうと思います。
その次は、旧軍人等の恩給失権者に対する加算制度の実施でありますが、これは御承知の通り、旧軍人に関する加算制度というものが、すでに裁定を受けた者につきましては認められておりまするけれども、未裁定の者につきましては、加算制度というものが認められておらない。従いまして、これらのすでに裁定を受けた者と、裁定を受けない者、こういう者の間に不均衡がある。従って、後者につきましても、加算制について何らかの措置をすべきではなかろうか、こういう問題であろうと思います。
その次に、旧海軍特務士官の仮定俸給基準の是正、これは海軍の特務士官で、少尉とか、中尉とか、大尉、こういうふうな方々に対する恩給というものは、これは兵学校出の少尉、中尉、大尉と同じ額を受けて、同じ仮定俸給になっているわけなのであります。しかしながら、これらの人々の主張するのは、在職中の給与というものが、海軍特務士官におきましては、兵学校出の人よりも高かった。従って、恩給の額におきましてもその間に差をつけていいのじゃないかという意味におきまして、仮定俸給基準の是正ということの主張であります。
それから、その次は、元満洲国等の外国政府職員の通算の実施という点でありますが、これは、日本政府から満洲国に派遣されまして、そうしてまた、さらに日本国政府に戻ってきた、こういう場合には、その満洲国の在勤中の期間というものを日本政府職員の恩給法上の在職期間として通算されるという措置が講ぜられておったのでございますが、初めから満州国で採用され、しかる後引き揚げて参りまして、日本国政府の職員になった、こういう場合には、満州国の在勤中の年限というものが恩給に加算されておらない。あるいは日本国政府から満州国に派遣されまして、そうして再び日本国政府に復職しなかった、こういうふうな方々につきましての満州国の在勤期間というものが、恩給法上の在職期間とみなされない、こういうふうな問題についての何らかの処遇を講ずべきではなかろうかということが、元満州国等外国政府職員の通算実施という問題であろうと思います。
その次は、旧日本医療団職員の通算実施でございますが、これは、戦時中日本医療団というものが組織されまして、これに府県の医療関係の職員が参りまして、その医療団の職員になりまして、こうしてしかる後、日本医療団が解体いたしまして、ある者は民間に就職し、ある者は国立病院の方に移行した、こういう場合におきまして、日本医療団職員としての在職年限というものを、これをその後の国立病院なら国立病院の医官としての在職年に通算いたしまして、そうして恩給を計算してほしい、こういうことであると思うのです。
その次は、金鵄勲章年金受給旧軍人に対する処遇改善、これは金鵄勲章年金というものはすでに廃止になっておるのでございますが、これをさらに今回復活せいと、こういう要望であろうと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/25
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026・千葉信
○千葉信君 関連。今松さんにお伺いいたします。なぜこの委員会の冒頭に発言を求めて、前回この法案を審議しました委員会で統一見解を述べなければならぬという状態になったその問題について、政府の態度を表明されなかったのか。私は今、田畑君の質問がその問題にも関連するものですから、若干の猶予をいたしましたが、これは実に非良心的な態度だと思う。長官がこの前の委員会で当然釈明をしなければならぬ、もしくは統一見解をそこで述べて了解を得なければならぬ事項があったはずです。その点、一体、長官はどうされるおつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/26
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027・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) ただいま千葉委員の御質問でございますが、実はこの統一見解をこの機会に述ぶべきであったと思いますが、あるいは私から述べずに、官房長官からでも内閣を代表して述べてもらった方がいいと思いまして、控えておりましたが、用意はいたしているわけでございます。従いまして、私の述べましたことも関連しておりますから、ちょっと控えたのでございますが、この機会に御了承を得れば、申し述べておきたいと思います。
この軍人恩給につきましては、総理大臣、大蔵大臣、並びに私その他政府委員から、いろいろ御答弁をいたしておりますが、今回の改正によりまして、一応主要な問題は政府としては解決された、こういうように理解をしております。しかしながら、恩給の処遇上、給与の公平を期するという見地からいたしまして、なお残されておる諸問題について、今後とも十分の検討を加えて参るということは、決してこれをおろそかにすべきものとは考えておりません。これは、総理もこの点について御答弁がありました。衆議院の内閣委員会における委員長の質問に対しまして、私、総務長官から御答弁をいたしました趣旨も、ただいま申し上げましたものと同様であることを御了解願いたい、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/27
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028・千葉信
○千葉信君 私は、その統一見解を了解いたします。しかし、そうなりますと、これは確認ですが、今まで参議院の本会議において、恩給法が提案されましたときに、政府の方から大蔵大臣が、軍人恩給の改定等の問題については今回限りであるという答弁が行われております。それから、この前のこの法案を審議しました当委員会におきまして、大蔵大臣から同様の趣旨が述べられておりまして、具体的にいいますと、軍人恩給の改定等の問題については、政府としては今後国民年金制度を確立するために、早急にその努力をするつもりだから、従って、国民年金制度の一環としてこれを解決するつもりで、だから、軍人恩給の改定等の問題は、政府としてはもう考えておらぬという答弁がありました。これで政府の統一見解が必要となったわけです。
そういうことになりますと、大蔵大臣もしばしば本会議あるいは内閣委員会で行なった答弁は、今回それは全部抹殺されたものと了解して差しつかえありませんか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/28
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029・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) お答えをいたします。私、大蔵大臣が大蔵大臣のお考えとしてお述べになった点ということも、自分の考えとしてはということがあったのじゃないかと思いますが、その点について大蔵大臣にただしておりませんから、私から決定的の何ができませんが、これは、この前のところで大蔵大臣がお答えになりました速記録を読みますというと、「大かたにおいては私は合理的な解決と見ていいと思いますから、これ以上の点については、理論的とか、あるいはまた考え方としては、何とかするべき点があっても、実際上、財政的見地から困難であろう、かように考えております。」と言っておられるようであります。従いまして、私ども、今後先はどの点について検討いたしまして、もちろん財政上の問題は大蔵大臣と相談をする必要がありますので、大蔵大臣といたしましても、この手直しを全部もう全然認めないというお考えではないというように、私は了解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/29
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030・千葉信
○千葉信君 あなたの今読み上げられた速記というのは、あなたの方にとってまことに都合のいい分だけを読み上げられた。全文を読まなければ、大蔵大臣がここで答弁されたもの全文を、読むならば読まなければ、答えにはなりません。なるほど大蔵大臣は、あなたの言われたようなことを言われました。と同時に、私が申し上げておるように、最後の結論としては、この恩給制度あるいは軍人恩給の制度は、近い将来――これは具体的には、一年という質疑応答の中で数字も出ました。近い将来国民年金制度に移行するものとして、今回の問題等については解決をはかるという方針でいくつもりだ。
ところで、大蔵大臣は財政を担当し、国の予算を編成する。その方がそういう見解であるとすると、あなたはその恩給法を担当しておられる。あなたの担当はなるほど恩給法。しかし、審議の過程で、恩給法を担当しているあなたと大蔵大臣の答弁が食い違い、おまけに今読まれた速記録というのは中途半端な、あなたの方にとって都合のいい部分だけを読んでおられる。しかも、あなたの答弁からいきますと、大蔵大臣との了解、大蔵大臣が統一見解を述べるに当っての大蔵大臣の態度というものは別にされて、恩給法を改訂する場合、財源の措置が非常に問題でございます。従って、その意見というものはかなり問題の動向に影響をもたらします。その人がどういう見解なのか、ここではっきり釈明できぬということでは、これは大蔵大臣をここに呼んではっきりとしないと、これ以上進みません。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/30
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031・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) ただいま私が政府の統一見解として申し述べました点は、こういうようなことで将来この恩給問題は政府としては進んで参りたい、こういうことで御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/31
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032・千葉信
○千葉信君 ですから、それは私は冒頭に、統一見解として了解いたしますということを申し上げました。しかし、私は重ねて質問しなければならぬのは、その統一見解が実施をされるという前提として、そういう問題に非常に直接の関係を持っている、たとえば大蔵大臣ならば大蔵大臣の見解というものが、私は今後の動向に影響を持たざるを得ないから、従って、そういう点はどうしても、重視をしなきゃならぬ。あなたのおっしゃる統一見解については、これは了承願いたいというのは、私は初めから了承している。それで政府は進むべきだという私の見解です。私の見解です。しかし、それならばそれで、なおさら、一体この政府の今回、今述べられました統一見解なるものが、果してその通り間違いなく生きていくのかどうか、間違いなく実施をされていくのかどうか、そういう点がやはり明確にならなければ困るし、そのためには、大蔵大臣の見解が果してその見解と同様なのか。遺憾ながら、その筋が通っておらぬ。それでは困るということです。はっきり一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/32
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033・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) 総理大臣が、先はど申し上げましたような、決してこれをおろそかにしているのじゃない、こういうことを言っておられるのでありますから、私は、将来の問題はこれを御信用願いたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/33
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034・田畑金光
○田畑金光君 それで、長官にお尋ねいたしますが、ただいまの統一解釈をまず認めたという前提に立って質問をいたすわけでありますが、そういたしますと、まず私は、いろいろあげられた項目のうち、この旧軍人等恩給失権者に対する加算制度の実施の問題についてお伺いしたいと思うのですが、これは今回の恩給是正措置に関する取り残された問題では非常に大きな一つの問題であるし、この問題は恩給調査会等でもいろいろな角度から議論をしたわけですけれども、問題が非常に広範囲にわたっておるわけで、先ほどの御答弁によりますと、なお問題点は、おろそかにすることなく善処していくという政府の方針であるようでありまするが、この点については、政府はどういう考え方をお持ちなのか。一体、この加算制度によって復活する人がたというのは幾らあり、そしてまた、この人がたに対して予算措置をとるとなれば、どの程度の予算というものが必要になってくるのか。その辺の事情等十分理解の上に、先ほどの御答弁があったものと考えまするが、この点、一つ長官から伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/34
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035・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) この加算問題につきましては、今回この是正の法案を検討いたします際に、非常に問題となりました。大体まだ未裁定の方が、そういうような地位におる方が七十万から七十五万人あると推定されております。そうして、この方に、従来敗戦前に裁定をしておりますような方と同じ恩給を出すといたしますというと、ピーク時において約百億の金が要るわけであります。従いまして、今回の恩給是正につきましては、この加算問題は取り上げないと、こういうことに政府としはきめたわけでございます。
まだ、この問題を将来どういう工合に解決して参るか、こういう点につきましては、十分検討をいたしませんと、ただいまここでお答えができないのでありますが、あるいは何らか一時金を出して処置をつける方法はないものかという議論も出ました。また、まあさしあたり、この方々は、若年停止になる方々でございますから、ここ四年間の三百億の恩給で財政上は今手一ぱいでありまするので、将来財政のゆとりができた場合にあらためて検討しても、おそくはないんじゃないか、こういうような理由もございまして、今回はまあ見送った、こういうようなことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/35
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036・田畑金光
○田畑金光君 今の御答弁によりますと、ピーク時に百億前後というお話でありまするが、これはピーク時にはその額ではとどまらぬと見るわけで、これは恩給局長から御答弁願いたいと思いますが、七十五万に上って、ピーク時には百十六億前後に上るだろうと思うのですが、さらに、今回の恩給増額措置によって、この総額等についてはさらに上回っていくものだと、こう考えるわけで、一体どの程度に上るのか。
さらに、私は長官にお尋ねいたしまするが、今のお話を聞いておりますと、結局、これは政府といたしましては、一時金でできれば処理したいという気持もあるが、とにかく、この問題については何らかの解決をはかろうと、こういう決意であるのかどうか。この点は、お話のように、確かに今は若年停止であり、ほとんど、七十五万中六十五万は、四十五才未満の普通恩給全額停止年令以下でありますけれども、やがてこれは恩給支給年に入ってくるわけで、そういうような将来の、現在すでに千三百億に昭和三十六年にはなるだろうということで、いろいろ国民世論の批判を受けておりますが、政府はやはり、財政が許すならば将来この問題は解決するものだと、こういうかたい御方針であるのかどうか、この点を明確に一つしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/36
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037・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) 先ほど、一時金の問題をお話しいたしましたが、これはいろいろ検討の段階において、そういうような議論もあったということを申し上げたのであります。ですから、その辺は御了承を願いたいと思いますが、この給与の公平を期する、いわゆる均衡の是正ということの点から申しますというと、お説のように、この問題は非常に不均衡の是正の大なるものであると私どもは考えております。しかし、現在のところ、これをどういう工合にして解決するか、こういう点につきましては、現在といたしましては、政府に成案がないわけでありますが、私といたしましては、これはある時期において、財政のゆとりでもできたような場合、その他いろいろな点から考慮をいたしまして、解決すべき問題の最も重要なものの一つであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/37
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038・田畑金光
○田畑金光君 恩給局長の答弁。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/38
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039・八巻淳之輔
○政府委員(八巻淳之輔君) 先ほど、もしもこの加算制度を、昔と同じように、一年行った場合に三年加算する、こういうふうにして計算しました場合には、七十五万人の普通恩給該当者が発生する。これによりまして、将来の財政需要がどのくらいになるかということの見通しでございますが、ピーク時が大体昭和五十一年と押えまして、百十六億。と申しますのは、これは一万二千円ベースでございます。これを一万五千円ベースで計算いたしますというと、百三十一億九千二百万円、約百三十二億でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/39
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040・田畑金光
○田畑金光君 まあ、この加算問題一つを取り上げても、百三十二億にピーク時にはなるわけでありますが、その他のもろもろの取り上げられた諸点を検討してみますと、これは相当な財政負担になると考えておるわけですが、この点は財政の許すという一つの制約があるようではありますが、長官の御答弁を聞きますと、行く行くは、これを政府としては解決をして処理する、こういう御方針のようでありまして、今まで、先ほど来千葉委員からも指摘されましたが、岸総理や一萬田大蔵大臣の、本会議、委員会等における答弁、あるいは新聞を通じ、政府のこの恩給問題に対する処理の態度等から比較いたしますると、相当これは前進しておるように見受けるわけで、もう一度、今の見解が政府の見解で間違いないかどうか、この点はあらためてこれは岸総理の出席を求めて私は念を押したいと思いまするが、もう一度、一つ長官の御答弁を願っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/40
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041・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) 今の加算問題をどういう工合に政府として解決しなくちゃならぬかという問題については、政府としてのまだきまった見解はないのでございますが、恩給を担当しておりまする私といたしましては、何らかの形においてこれは解決すべきものである、こういうように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/41
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042・田畑金光
○田畑金光君 これらの諸点は、先ほど申し上げたように、恩給調査会で論議をして、なお将来に問題を残した点でありますが、今後政府はどういう角度でこの問題を掘り下げていこうとする方針なのか、あるいはまた、同じように調査会等でも設けてやるのか、あるいは政府の恩給局部内で検討して進めようとするのか、今後この問題をどういう工合に処理してやっていこうとする御方針ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/42
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043・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) ただいまのところ、まだどういう機関を作ってこれを検討するか、また恩給局部内でやりますか、その辺はきまっておりませんが、今回の恩給是正によりまして、大蔵省といろいろ政府の方で財政関係の検討をいたしました結果、三百億というものが今後四年間にぎりぎり一ぱいである、こういうことに今はなっておりますので、早急にこれが解決は、私はむずかしいのじゃないかと思っております。しかし、検討といたしましては、まだ恩給局の方でこれから十分に検討いたして、一つの成案を得ていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/43
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044・千葉信
○千葉信君 どうも長官、僕はあまり深追いしたくないと思ってさっきは打ち切ったけれども、あなたの答弁を聞いていると、どうしても聞かなければならぬ格好になってくるのです。あなたは、恩給法の改正によって向う何カ年間に何百億円かかる、これが政府としては財政負担の限度である、こういう御答弁です。そういうことになりますと、この委員会は統一見解で何とかおさめてもらっても、全然政府は実施する腹がなくて、そういう統一見解なるものを、ただ国会の質疑応答に備えるだけに持ってきたということになりますよ。おまけに、大蔵大臣はさっき申し上げたような答弁をしておられる。向う何年間かは何百億円というこれが限度だ、これでどうにもならぬのだ、あなたもこう言って答弁されておる。一方統一見解では、衆議院の内閣委員長に対して答弁したように、軍人恩給法の問題についてはこれを将来国民年金制度の移行の中で考える、そういう答弁を一方ではしておる。一体どっちがほんとうなんですか。検討するということは、単に調べるだけで、それに対する実施をしないということか。初めから、そういうふうに腹をきめていることですか。どっちなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/44
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045・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) ただいま御説明申し上げましたもろもろの問題点につきましては、一応全部の検討をいたして、どれくらいの――あるいは費用の非常にかかるものもあるかもしれません。あるいはまた、少額で済むものもあるかもしれません。そういうものもまだ検討しておりませんので、いつからこれが実施できるかということは申し上げられないのでございますが、大筋といたしましては、先はど申しましたように、今回三百億の是正が現在のところでは財政のせい一ぱいである、こういうことに政府はなっておる。また、今後の検討によりまして、比較的小額の費用で実施に移せるものがありますれば、私の考えとしては、できるものからやっていくよりほかしょうがないのじゃないか、こういうように考えて、恩給局はもちろん、私といたしましても、誠意を持って検討していきたい、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/45
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046・千葉信
○千葉信君 それでは、ただいまの答弁からいいますとこういうふうに了解していいのですね。あなたのさっきの御答弁とは食い違ってきております。食い違いの点についてはこの際一応敬遠するとして、さっきあなたは、ぎりぎり三百億が限度額で、これ以上はどうにもならぬという答弁があったから、私は聞かざるを得ないのです。今のあなたの少し変った答弁からいたしますと、次のように確認して差しつかえございませんか。
財政負担の限度額としては、今のところ三百億だ。向う三ヵ年間三百億だ。しかし、少くとも福永内閣委員長に対して答弁をされたように、そうしてまた、ただいまここでお読みになりました統一見解のように、政府としてはこれに対して検討を加え、その検討の結果に基いて措置をする――検討するという言葉は、これは当然その結論に基いて何らかの措置を必要とするはずですから、従って、その検討の結果得た結論によって、その措置は政府としては必ずする。必ずするということは、今は財源の問題云々で今回はこの程度にとめたけれども、そういう結論が出た場合には政府としてあくまでもそれを実施する方針だ。そうしてその実施する方針は、国民年金制度にぴしゃっと持っていって、そっちで総ぐるみで解決するということではなくて、その前に一応のこれに対する措置を行うという方針であると、こう了解して差しつかえないかどうか、はっきりしてもらいたい。どうもあなたの答弁はあいまいだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/46
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047・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) 千葉さんからおしかりを受けましたが、われわれは検討するということを非常に誠意を持ってやる。そうして、そこで成案を得ましたならば、これは政府としてこれを実行に移すということについて、むろん私どもとしては誠意を持って努力いたします。そういうことを申し上げたのでありまして、それ以上のことはちょっと、私をお責めになっても言いにくいのでありますが、御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/47
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048・千葉信
○千葉信君 そうしますと、ただいまの答弁からいいますと、恩給法を担当している総務長官としては、今お述べになりました統一見解のように、あるいはまた衆議院における答弁のように、取り計らう。何らかの措置はする。少くとも早急にその検討だけはやらなければならぬことになるだろうと思いますが、そう了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/48
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049・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) そうしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/49
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050・矢嶋三義
○矢嶋三義君 私はちょっと述べて、資料を要求します。それは、まことに失礼ですけれども、私個人としてあなたの発言を幾ら承わっておりましても、信頼性がなくなっちゃった。おそらく今度総選挙があって、内閣が新たに組閣されると、あるいはあなたは現職から去られるかもしれません。それから田畑委員から指摘されておりますように、衆議院の段階における答弁、それから、この前大蔵大臣に承わって、大蔵大臣の発言の一部を私はほめまでしておいたのですが、それがくるくる回って、千葉委員が聞いた場合、田畑委員が聞いた場合、あるいは私が聞いた場合、衆議院で聞いた場合、そのときどきで言葉が違う。これは、私ども立法府におりますが、われわれ現在においては国家、国民に対して責任を持つと同時に、われわれの今の言動、政治というものは、将来においても国家並びに国民に対して責任を負わなければならぬ。幾ら選挙を前にいたしましても、こういう問題については確たるものがなければならぬ。
それで、ただいま私もアンバランスのところを直すように大臣に質疑応答したわけですが、そのアンバランスを直すといっても一元的なものではだめです。二元、三元の立場から、バランスということを考えなければならぬ。そういう考え方が全然、あなた方にない。政治をやる場合に、感情のみでやってはならない。理論と計算尺を持って、確たるものを持ってやらなければならぬ。そういう立場であなた方は委員会に臨まなければ、何の審議ができますか。全くこれは審議できない。
それで、私の要求、お願いすることは、いずれこの恩給法の審議をするときに、他日総理は必ずお見えになる、田畑委員も要求されているから。そのときには、岸総理大臣の名前において文書ではっきりと出して下さい。それ次第によっては、他の委員並びに私から追及がありましょう。ともかく現在においても将来においても十分責任が持てるところのものを、明確に文書によって、総理をして他日本委員会で答えるように、あなたから取り計らっていただきたい。私は、おそらく隣りの恩給局長や、向うにおられる村上主計局次長等、政府委員の間では、衆参通じての大臣、長官の政治的発言は困ったものだ、われわれは一体どうしたらいいかという感じでおられると思う。私はあえてその感慨は聞きません。まことに不見識な答弁をなされておると思うんです。従って、要求することは、先ほど申し上げましたように、田畑委員も出席を要求されておるわけですから、いずれおいでになるでしょうから、そのときにはっきりわかりますように、最高責任者の岸総理大臣の名前において、文書によってお出し下さい。よろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/50
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051・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) 今お尋ねの点は、どの点でございましょうか。今の統一見解の点でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/51
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052・矢嶋三義
○矢嶋三義君 恩給問題についてすべての問題ですね。統一見解だけでもよろしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/52
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053・今松治郎
○政府委員(今松治郎君) わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/53
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054・田畑金光
○田畑金光君 私は、これから具体的な問題について質問に入りたいと思いますが、午後の日程の関係もありますので、本日はこの程度で私の質問を終りますが、ただ、最後に、特に私は今松長官にお願いしておきたいことは、先ほどの長官の発言は、今後のこの恩給問題に対し政府はどういう態度をとるのか、また、この恩給と国民の一番念願しておる国民年金制度の問題との関係において、政府の今後施策の発展はどう進むであろうか、これは当然、先ほどもありましたが、この総選挙等を通じて、国民の一番知りたい問題であるわけです。しかしながら、先ほど来の答弁を承わっておりますと、今までの岸総理の答えられたことと相当隔ってきておるようでありますので、私はやはりすみやかな機会に、岸総理並びに一萬田大蔵大臣、あるいはまた同時に、私は厚生大臣にも御出席を願って、この根本的な問題についての政府の明確な見解を承わりたいと考えておりますので、一つそのような便宜をはかっていただきいと、希望申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/54
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055・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/55
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056・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記をつけて下さい。
暫時休憩をいたします。
午後一時四分休憩
―――――・―――――
午後二時十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/56
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057・藤田進
○委員長(藤田進君) 休憩前に引き続き、委員会を開きます。
防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。
岸総理が御出席になられましたので、これより総理に対する質疑を行います。質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/57
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058・千葉信
○千葉信君 きょうは一つ、最初に岸総理にお願いしておきたいことがある。勇敢にそつのある答弁を、きょうは一つしてもらいたいと、お願いしておきます。
今、日本の国民がひとしく持っている不安と危惧の念がどこにあるかというと、当面問題になっております核兵器の持ち込みの問題、それからもう一つは、従来しばしば国会でも問題になっております海外派兵、海外出動という問題だろうと思います。
まず、核武装の問題について、当委員会における首相の御答弁等からいたしましても、日本の自衛隊は絶対核武装はしない、核兵器は持たない。私は、これは了承できます。特に、その首相が、たとえその核兵器を持たないために日本が戦争に敗れるようなことがあっても、自分は核兵器は持たぬという決意をしているという御答弁をいただいた。ですから、私はこの際は一応その問題は敬遠しまして、日本に来ているアメリカの軍隊が核兵器を日本に持ち込む場合、これに対しては首相は、同様に、核兵器の持ち込みに対しては自分はあくまでも反対するという態度を、従来も表明されておられます。私は首相のその決意は了承いたします。ただ、私の心配していることは、たとえばNATOをめぐる諸国がどうもミサイルの訓練が要請される。いろいろな新聞報道等を見ましても、だれでもわかるように、大体、たとえばイギリスであるとか、フランスであるとか、あるいはトルコであるとか、西独はもちろんのこと、核武装の段階に至る至らないは別として、一たん事ある場合には、非常に危険な核兵器を使用することができる準備体制が今日現実の問題となっております。私ども、首相が駐留軍が日本に核兵器を持ち込むことについて反対するという意向は了としますが、一体その問題については、首相は従来具体的にどういう措置を今日までとってこられたか。単にそういう意見の表明であり、信念だけであっては私は何にもならぬ。ですから、従来具体的にどういう措置をおとりになったか。まず、その点を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/58
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059・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 核兵器の問題に関しましては、しばしば私が私の所信を明らかにいたしまして、千葉委員もその点に関しましてはある点まで御了承いただいておる。今御質問の、核兵器の駐留軍によっての持ち込みに対して、私が拒否するということを声明しておるけれども、それだけでは足りないじゃないか。どういう具体的の措置をとっておるかという御質問と思います。
私が昨年アメリカに参りました際に、要するに、安保条約から生ずるところのあらゆる問題を日米の最高レベルにおいて話し合って、そうしてこれが運営の万全を期し、なお、これが両国民の納得のいくように運営され、もしくは、将来修正の問題等があればそういうような方向において研究するという意味におきまして、あの委員会が設けられたのであります。その際に、最近のアメリカのいろいろな戦略上あるいは戦術上の話もございましたし、われわれが核兵器の、核爆発の実験禁止の問題に触れて、原爆、水爆等に対する日本人の持っておる国民感情、及びこれに対する強い私どもが人道的な立場から考えておるということを、十分に当時申し述べて、従って、この武装の関係においても、われわれの考え方はその考えに立脚しているのだ。決して一部の人々があるいは考えたり、あるいは宣伝したりするような、これによってある思想的もしくは政治的意図から出ているものでは全然ないのだ。これは保守党であるところの私がこれを主張しているということは、全日本国民の一致した要望であるというような事柄を、十分に当時話し合っておるのであります。
その後におきましても、私は、国会における論議を通じて、この問題に関する限りにおきましては、先ほどお話がありましたが、そつがあるかないか知りませんが、私は最も明白に、常に私の所信を明らかにして、政府の名において明らかにしてきておる、ということにおいて、今まで持ち込んだ形跡もございませんし、私は今日のところ、そういう危険を実は感じておりません。われわれの意思を無視してこれが持ち込まれるということはない、という考え方に私は立っております。そういう意味において、私の考え方そのものは、十分にアメリカに徹底するように、私は努力をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/59
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060・千葉信
○千葉信君 私は、おそらく、それは首相の言われる通り、昨年の渡米の際においてそういう点についていろいろ話し合いをされたということは、私も信じます。しかし、遺憾ながら、ただいまの御答弁を聞きましても、話し合いをしたということだけで、それ以上に具体的に突っ込んだ、向うの返事についての御答弁は今もなかった。国会においては、しばしば首相はそのことについて、何度も言明しておられる。私の聞いているのは、今までのことは、大体首相が言われた程度のことは、私も了解していますが、聞いているのは、もっと突っ込んだ、核兵器の持ち込みの問題についてその話し合いをしたときに、それじゃ持ち込まぬということをはっきりしたのか。したならば、その証拠になるものでも残っているのかどうか。もしくは、また、国会でいろいろ首相は言明されておられるけれども、同時に、今話のあった安保委員会等で、この問題を具体的に話し合いをされて、何らかの結論がはっきり出ているのかどうか。この点を、重ねて御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/60
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061・岸信介
○国務大臣(岸信介君) この点に関しましては、従来日本政府と何の間におきましては、重光・アリソンの会談がございます。また、昨年のちょうど国会の開会当時でありましたか、新聞記事等に対して、アメリカ側がはっきり、日本の意思を無視して一方的に持ち込むことはしない、という言明をした事実もございます。
また、私がそういうことを話したことによって、それじゃ私も、それに対する向う側のはっきりしたそのときに申し合せをするとか、あるいはそこにおいてはっきりした何か文書にするとかいうものを作るという、私は実は意図がなかったのです。今のアメリカのそういう考え方を、従来表明をしておりますし、また私自身がこの問題に関しての今の強い所信を述べて、アメリカ側がこれを了承しておるということでございまして、これに対して、よろしい、私の方じゃ持ち込まない。それについてのこういう文書なり、あるいは将来に対する保証ということにはなっておりません。しかし、私は、今申しましたような経過から見まして、決してアメリカが一方的にこれを持ち込むということはないということを断言することは、決して私の一人よがりでなしに、十分に私は自信を持っておる、こういうことを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/61
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062・千葉信
○千葉信君 今の御答弁だけでは、国民の不安と危惧の念は解消しません。私も、三十年の五月三十一日に行われた重光・アリソン会談の経過を知っております。その具体的な内容は、持ち込むときには日本政府に話をしてからにするということなんです。その後の新聞記事がどういうふうに報道されたかについても、アメリカの意向がどういうふうに報道されたかについても、私は知っております。首相の決意も了承するけれども、それだけでは不十分です。先ほどの首相の御答弁でも、今のところ、そういうものは持ち込んでおらないと、こういう御答弁です。将来もおそらく持ち込まぬだろうというその御答弁に連なっておる、首相の御答弁だろうと思います。しかし、それは、平時の場合には、私は、首相のおっしゃる通りになると思う、こちらがそれほど強い意思表示をすれば。しかし、一たん事ある場合に、侵略という事実が発生した場合、そういう場合には、岸さんのこの間言われた通り、日本とアメリカの条約によると、条約上は持ち込む権利があります。首相もそれをはっきり認めておる。そのときに、岸さんは、核兵器で日本が武装するくらいなら、日本がむしろ滅びた方がましだ、その場合でも日本に核兵器は持ち込まぬというその決意はなるほど了承するけれども、アメリカが一体それと同じ意向なのか。日本を共同防衛する場合に、侵略が起った場合に、共同防衛の立場をとるアメリカが、日本を防衛するためにやっているというよりも、極論すれば、アメリカ自身の防衛の手段として日本を防衛しているアメリカです。その日本に侵略が起って、岸さんの言うように、あるいは敗れるかもしれぬ、そういう段階でも、岸さんの言うように、確信を持ってアメリカは核兵器を持ち込まぬということが断言できますか。あなたの強い意見や意思表示だけでは、私は全然信用できない。その点、重ねて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/62
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063・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 防衛の、そういう侵略が起こった場合において完全に防衛をするという、日米共同防衛の安保条約の精神から申しましても、言うまでもなく、私は日米が一体になってこそ初めて、それは分担はありましょうけれども、防衛ができるのであります。国民感情を無視した、アメリカの一方的軍事的措置によって、日本が防衛されるものでもなければ、防衛の目的というものは私は達せられるものではないと思います。この意味において、アメリカの方にいたしましても、日本の意思を無視してやらない、日本にも相談をして、一方的にはやらないということが言明されており、日本は、少くとも私の内閣が続く限りにおいては、これを認めないということの強い決意をしておるのでありますから、日本のわれわれに相談なしに一方的に持ち込まれるということがありとするならば、それは意思に反するというようなことになるかもしれませんが、それが行われないという前提から申しますというと、私がこれを認めない、あくまでも拒否するという強い決意をしておるわけでありますから、国民の意思に反して行われることはない。アメリカといえども、日本国民の意思を無視してそういう防衛の実が完遂できないということは、十分に了承をしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/63
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064・千葉信
○千葉信君 私は、そういう首相のかたい信念、かたい意思表示、それでもいかぬ。それから、日本は核武装はしない。従って、アメリカも核兵器を日本に持ってきてはならぬという、かりに決議が行われた場合、国論としてはっきりその意見が統一した場合でも、アメリカが核兵器を持ってくるというこの権利を完全に放棄するだろうという見通しは立たぬという点に、私は問題があると思うのです。
たとえば、一番最初に申し上げましたように、今一番国民の持っている不安、持っている危惧の念の対象となっている、核兵器を日本に持ってくるか持ってこないかという問題に関連し、もう一つ海外派兵、海外出動というものが、一たん侵略が行われた場合に、侵略という事実が起った場合に、これを防衛するための手段として、行政協定第二十四条によって日本とアメリカとの共同行動がとられる。その場合に、日本は憲法があるから、憲法第九条があるから、ここから外には出られませんといって、日本の地域、海域以外のところに出ていくことを、日本は一体拒否できるか。できません。たとい日本に憲法第九条があっても、できません。どうしてかというと、アメリカは、そういう場合には、日本の軍隊をしょっぴいていく権利を持っているのですから、国際司法裁判所の判例を見ましても、いかなる国といえども自分の国の国内法――憲法であろうと決議であろうと、どんな国内法であろうと、国際条約に対抗できない。――知らないという私語があるようですから、読み上げましょうか。
常設国際司法裁判所の判決です。「国家は、現行の国際法または条約によって課せられた義務を回避する目的をもって、他国に対してその憲法を援用し得ない。また、条約の締結国たる国家相互の間において、国内法の規定は条約規定に優先し得ないというのが、一般に承認された国際法の原則である。」、こうなっているのです。これは少くとも、岸さんにしても、そこにおられる防衛庁長官にしても、林法制局長官にしても、常識としてこんなことは知っているはずなんです。
そういうことになると、岸さんはこの間、衆議院の内閣委員会登の席上で、核兵器をアメリカが日本に持ってくる権利は条約上あるということを、はっきり認めておられる。そういうことになりますと、岸さんのかたい決意をほんとうに実行するために、そうして国民がほんとうにこれならば大丈夫だという見通しをはっきりと持つことができるためには、私はもっと具体的な措置がとられなければいかぬ。つまり、条約を改訂する行動を岸さんとしてはとられなければならぬということになると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/64
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065・岸信介
○国務大臣(岸信介君) ただいま国際条約と憲法、国内法との関係のお話がございましたが先ほどの御議論で、行政協定の二十四条においては、アメリカは必要があれば、日本の自衛隊をしょっぴいて海外へ出て、やるということができるというふうなことを前提として、今千葉委員がお話しになりましたけれども、私は、それに、そういう、二十四条の規定はそういうものじゃないと思います。日本の憲法及び自衛隊法の、日本の持っておる自衛隊というものの本質から見まして、海外において戦闘行為をやるために海外へ出ていくということは、これは決して行政協定のアメリカが一方的に日本をそう引っぱっていくというようなことはあり得ないという解釈をとっておりますし、また、それが正しいと思います。
今のお話の、この行政協定の、将来これの改訂問題に関しましては、十分これを考えていかなければならぬ――今の行政協定じゃない。安保条約というものが万全であり、これでいいのだということは、私も決してそう思っておりません。まず運営というものを、ある程度この両国の国民感情に合わすように、これをスムーズにやるように、委員会を作りましたけれども、これもおのずから限界があることであって、さらに、それができたから、一切もう将来にわたって安保条約の改訂をしなくていいのだということは、私は考えておりません。従いまして、将来の問題として、安保条約の不備であり、もしくは日本の国民の感情に合わないこと、あるいは不平等的な立場にこれが作られておる、その当時の事情と今日の日本の防衛に、自衛に対する事情というものが、根本的に変っておるというような点から、これが再検討されなければならぬということは、私も同様に考えております。
しかし、今直ちにそれを改訂するかどうかという問題に関しましては、実は改訂問題を、この前アメリカに行ったときには、私は一応私の意見として、また国民の要望として、アメリカ側に述べたのでありますけれども、まずそれに対しては、今委員会を作ってできるだけのことをやって、また必要があるとするならば、どういう点をどういうふうにするかというようなことも、将来にわたって、一つ話し合いをしようじゃないかということで、ああいう委員会ができたいきさつから見ましても、今すぐそれじゃ改正できるかというと、その段階ではまだないと。しかし、望みを捨て、またその希望を捨て、その努力を、将来において私が捨てるものじゃないということだけは、御承知おき願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/65
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066・千葉信
○千葉信君 その答弁がそつのない答弁。私は、そんなそつのない答弁じゃなく、もっとまともに、正直に答えてもらいたい。たとえば、私の申し上げておる最も重大なポイントは、あなたのおっしゃる通り、なるはど日本の自衛隊は、日本の国内法に関する限りは、あなたのおっしゃる通り。そして日本の憲法に関する限りは、当然日本の地域、海域以外に出ていけない。しかしですよ、その自衛隊の任務が、この国際条約ではどうなっておるかというと、第一条にはっきりあるように、日本を防衛するための手段として、アメリカの軍隊の行動する地域については、制限がありません。極東地域の平和を守るためのアメリカの軍隊の行動です。そしてまた、同時に、日本の国を守るという第一条の行動範囲。ところが、行政協定の二十四条によりますと、その今申し上げた第一条の目的を達成するための共同措置がとられる。そして一方に、国内法は、いかなる国際法にも優先できないという、国際法の通念がある以上、岸さんのおっしゃるように、日本の自衛隊は、日本の法律、憲法では、あなたのおっしゃる通りだけれども、この国際条約では、それ以上の義務が日本の自衛隊に課せられ、自衛隊の任務が出てくるのです。
ですから、なるはど岸さんは、アメリカから帰られてから……。そこ、うるさく耳打ちしないで、岸さんによく聞いてもらいたい。こういう問題が、同時に、アメリカの軍隊が、日本に侵略のおそれある場合――、侵略された場合は別です。侵略のおそれある場合等については、アメリカの軍隊は独自の判断で行動できるというところに心配があって、それであなたは、昨年の秋に日米共同声明を出されて、アメリカの軍隊の行動を決するものは国連憲章第五十一条である、それによってやるのだと、こういうことに、あのときは、もう一歩進んた行動をとられた、私は、これは了承します。
しかし、問題は、これよりももっと根本的な、国民が一番重大な関心を持っておるところの海外派兵ということを、日本がはっきり断われるためには、あるいは核兵器の持ち込みが条約上可能だという、その可能な条約を、はっきり直すという措置をとることがどうしても私は先決条件だと思う。ところが、その問題について、あなたの先ほどの答弁は、すこぶる明確を欠いておる。何とかしなきゃならぬという御意向を持っておることはわかります、答弁から。しかし、その意向は、ほんとうに生きた政治となるためには、まあダレスさんの言明によると、日米安保委員会は条約の改訂を相談するものじゃないと言っていますが、しかし、あなたはそこで何らかの相談ができるというのですから、そこでどんどん相談を進めなければならぬのです。あなたは、昨年の二十六国会の予算委員会の席上で、条約の改訂を自分は必要とする段階に来たと、あなたは言っておられる。アメリカへ行って帰ってこられてから、いつの間にか忘れられたような顔をしておる。三悪追放をいつの間にか忘れたと同じように、この条約を改訂するのだということをいつの間にか忘れておる。それではいかぬ。この国民の持っている不安を解消するためには、どうしても条約の改訂が必要である、日本国憲法では対抗できないのですから。ですから、もっと具体的に、どういう方法をもって、安保委員会で不十分ならば、直接の折衝をするとか、何らかの方法を通じて、今までほとんどサボっているのですから、はっきり首相の方から、この点についての方針を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/66
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067・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 御意見でありましたが、安保条約の第一条と行政協定第二十四条の解釈、これは英文もありますが、今安保条約で二つの目的が駐留米軍にあるのでありますが、二十四条の場合に、日本が共同措置をとるものは、日本国内における敵対行為。いわゆる極東の安全のために行動するということは、日本に駐留しているアメリカ軍隊の行動だけであって、この問題は二十四条にはこれは含まないということは、私はまず明確にしておきたいと思います。(千葉信君「そんなばかなことがあるものか、冗談じゃない」と述ぶ)
それから、今お話しの安保条約及び行政協定等の改訂の問題に関しましては、私、昨年も申し上げましたように、また先ほども申し上げましたように、これが締結された当時と今日の事情においては、いろいろな点において変っているからして、これを再検討すべき時期に来ているということを申し上げました。その再検討するということは、改訂を目標として再検討さるべき時期であるということは、そういう考え方でありました。そうして、それは先ほども申し上げましたように、私が渡米した際に、その意見なり、それに対する考え方を述べたのでございますが、それに対して、まず安保委員会を作って通常の円滑を期し、将来にわたってそういうことを再検討するということでやろうじゃないかということで、一段の進歩を見たわけでありまして、決してこれが最終的なもの、安保条約ができたからこれでいいのだということを、私は申し上げているわけじゃないのであります。私が昨年申し上げましたように、改訂を目的とした再検討をすべき時期に達しているという考え方は、私も現在も持っております。従いまして、これに対しての将来のわれわれの努力していくべきことにつきましては、あなたのいろいろの御意見もございますが、私は私なりに、これに対して十分努力をしていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/67
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068・千葉信
○千葉信君 今、岸さんの御答弁の中にありました、安保条約ができたから大丈夫ということは、これはおそらく安保委員会ができたから大丈夫だと、こういう意味ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/68
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069・岸信介
○国務大臣(岸信介君) ああ、そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/69
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070・千葉信
○千葉信君 私は、先刻来申し上げているように、もっと具体的に、去年から言われていることですから、そうして一年間サボってこられているのですから、もうここらではっきり、どういう方法を通じてやるかということの御答弁があってしかるべき時期に来ている。
それから、第一条と第二十四条の関連についての首相の御答弁は、間違いであります。私は、しかし持ち時間がありませんから、この問題については、また日をあらためて、首相に対して納得できるまで私は質問をさしていただくことにして、ここで一応私は終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/70
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071・永岡光治
○永岡光治君 この際、岸総理にお尋ねいたしますが、御承知の通り、当内閣委員会は、重要案件をたくさん持っているわけであります。会期もだんだん切迫して参っておりますが、実は新聞紙上等でも、いろいろ憶測が行われているわけでありますが、いつ解散をするかということが、やはり審議をする上において、私たちの非常に大きなあれになるわけでありますが、もうこの段階においては、一体いつ解散するかという目算があってしかるべきだと思うのでありますが、岸総理として今日どのような考えでいるのか、明確にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/71
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072・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 解散の問題に関しましては、しばしば、私、あらゆる会合で所信を明らかにいたして参ったのでありますが、ただ、その際にも申し上げましたように、この問題についてのいよいよ最後の決意をする場合においては、民意に十分聞かなければならないということを申し上げて、また最近においては、早期のもしくは四月中の解散ということに関する民意が、以前と違って非常に高まってきている、強まってきているという事実は、私も十分認識しておりますということを申し上げているわけであります。私は、本日実はこの問題に関しまして、社会党の委員長との会談を考えております。先刻私の方の幹事長と淺沼書記長と会見をいたしまして、私と鈴木委員長と会談をする機会を至急に持つように、ただいま手配をいたしております。委員長と十分隔意なきお話をして、国会の議事の運営の進行と解散に関する、私並びに委員長のお考え等を隔意なく交換して、事態をより一そう明確にいたしたい、かように考えております。今ここで何日にどうするということを申し上げる段階にはないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/72
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073・永岡光治
○永岡光治君 そういたしますと、本日両党首会談を行なって、解散の時期を話し合って、そこで決定をしたい、こういう考えであるというように解釈してよろしいのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/73
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074・岸信介
○国務大臣(岸信介君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/74
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075・永岡光治
○永岡光治君 それでは、その問題はいずれ本日中にはあるいは明確なものが出るかと思いますから、その上でまた私たちもお考えを伺わなければならないと思っておりますが、それはそれといたしまして、次に、ただいま議題となっております自衛隊法の改正案について、兵力の増強を中心にいたしまして、若干の質問をいたしたいと思うのであります。
御承知の通り、もう軍事評論家の一致した意見は、大体今日のアメリカの状態は、SEATOあるいはNATOなり、あるいは日米安保条約等、こういうものによって一つの防衛の保障を求めようといたしておるわけでございます。一方、ソ連あるいはまた中国あたりでは、大陸でありますので、相当深い面積というものを持っておるということで、そういう点についてはかなりの、これは比較論でありますけれども、若干の他のたとえば日本とか西ヨーロッパとは少し違った感じを持っておるやの見解が表明されております。そこで、一たび戦争が始まるということになれば、一番深さの浅い日本あるいはまた西ヨーロッパ、こういうところにそれぞれのミサイル兵器等の攻撃を集中さしておいて、その間にアメリカの本土における防衛体制を固めていきたい。従って、言うなれば、日本はアメリカの全くの前線基地に、しかもミサイルの激しい攻撃の基地にされつつあるというのが、大体一致した意見のように私たちは考えるのであります。
そういうおそるべき時代において、今度二万名の大体自衛隊の増強がされようとしておりますが、一体こういう時代に増強する意義がどこにあるのか。特に、昨日も当委員会におきましては三名の参考人の出席をいただきまして、それぞれの立場から、この自衛隊の隊員の増強の問題と関連いたしましてお話を承わったわけでありますが、その中でも、一たび戦争が始まればもうおしまいだという意見が、どなたも大体一致しておる意見のようであります。そういう時代に、こういうわずか二万名程度の陸上自衛隊なり海上自衛隊なり航空自衛隊、こういうものをふやして、一体何になるのか、こういうように私たちは痛切に感ずるのでありますが、こういう時代における、ミサイル時代における、しかも、日本が今置かれているこの戦略的地位におけるアメリカの前線基地としての日本の状態を考慮して、一体どういう意義があるのか。その点をまず、岸総理の見解を承わりたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/75
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076・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 将来どういう形において戦争が起るかということに関しましては、いろいろな最近の兵器の発達等から、いろいろな意見があります。また、東西両陣営の対立、それの先端に立っておるアメリカ及びソ連の戦略なり、あるいは防衛に関するところの根本的の考え等につきましても、いろいろな意見がありますが、もちろん、日本としても世界の平和を念願し、そういう戦争のないことを念願しておる立場から、また日本が日本の立場として外交上その他におきまして行動をいたしておるわけであります。しかし、今のこのICBM等のいわゆるミサイル兵器といわれるもののいわゆるほんとうにねらっておるところはどこであるかといえば、これは戦争の、そういう世界的な二大陣営が正面から衝突した場合においての何は、両方ともその本拠に対して直ちに制圧的な効果を上げるような方法をお互いに考えておると見なければならぬと思います。
しかし、われわれは世界のあらゆる部面において平和を望み、また日本の祖国の安全を考えるという意味から申しますというと、日本がどういう形において、不法な侵略を受けないように防衛をしなければならぬかということを考えてみまするというと、今言った世界の大きな戦争という場合における日本としての立場というものも、もちろん考えなければならぬ。また同時に、この東亜におけるところの情勢であるとか、あるいは日本自体の当然自主独立国として持っておるところの権利なり、利益なり、あるいは当然の自主独立というものが、いろいろな形において侵害されるという場合における防衛ということも考えて、その自主独立を、自国の万全を期さなければならぬ。あらゆる様相に対処するように考えていかなければなりませんが、しかし、日本の憲法の上から申しまして、日本の防衛というものはこの自衛のための最小限度のものを持ち、これによって自国の安全をはかっていくこと、他から不法な侵略を受けないようにしていくということが、根本の考え方でなければならぬことは言うを待ちません。そこにおいて、先ほど来議論がありますように、核兵器は最も進歩した何でありますから、これでもって防衛するかどうかという問題が出るのでありますが、その点については、はっきりとしたその点に関する所信を、先ほど来申し上げておる次第であります。
従って、それならば全然意味をなさないじゃないか、そういう最も進んだ、最も大量殺戮のできるような、破壊力の大きなものの対象となった場合において、日本の航空機も、あるいは陸上部隊、あるいは海上の何も意味をなさないじゃないかというような議論に私は飛躍することは、あらゆる場合において自国の安全を保持し自由を全うしなければならないという、またそれによって国民が安心感を持つというこの見地から申しますというと、そう飛躍することは適当でない。そうして世界各国の情勢から見ましても、それなら、そういう新しい兵器が発達したから、従来のいわゆる通常兵器によるところのいろいろな陸上、海上及び航空面におけるところの防衛手段なりあるいは方法というものが根本的にやめられて、そうしてこれに変っておるかというと、決してそうではないのでありまして、やはり通常兵器によるところの通常の防衛というものにつきましても、これはどの国もこれを捨てておらない。また一方、今進んだ大国の数カ国は非常な破壊力の大きいところの原爆その他を所有し、あるいは長距離誘導兵器も持っておりますけれども、しかし、大部分の国というものは、今言った通常兵器のみによるところの防衛をし、そういう防衛力によって自分の国の安全と独立を保っておるというこの状態に処しましては、われわれが自衛上必要最小限度と認めるところのこの自衛力を持つということは、これは当然やっていかなければならぬ。
それじゃ、そのどれだけが最小限の限度であるかということにつきましては、国防会議等におきまして十分あらゆる面を検討して、一つの計画を立てて、その計画の一端を今度の予算もしくは法律において実現しよう、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/76
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077・藤田進
○委員長(藤田進君) ただいま永岡君の質疑に答弁がありました解散に関する御発言は、おそらく国会における初めての公式な御発言であろうと私は推察するわけであります。それによりますと、野党第一党の鈴木社会党委員長との会談を持って、隔意なき意見の交換をするとのことでありますが、当委員会は、衆議院を議決せられて送られたものが十五件、予備審査のものが十三件、合せて二十八件あります。いずれも重要な法案ですが、ことに恩給法案並びに防衛二法案は、客観的にも重要法案だと言われ、与党としてもさように考えられているように思うわけであります。
そこで、私、この際これに関連して、二点お答えをいただきたいのでありますが、その第一点は、しからば、今の会見は、こまかい内容はよろしゅうございますが、大筋として審議の促進をはかる、議会の審議の促進をはかるということと、さらにもう一点は、いわば予告解散の性格を持つ内容をお持ちになって、その腹案で会見をなさるということなのか。第二点は、かように十数件の審議をいろいろ尽していますが、いまだ議了しないままでありますが、ことに恩給ないし防衛二法案、その他続く重要法案について、必ずしも今予想される、われわれの予想する解散の以内において議了できるかどうか、あるいはその予想が間違っているか、全然これまた雲をつかむようなものであるので、もし今の恩給ないし防衛その他の案件が議了しないならば、その議了を待っておやりになる気持なのか、あるいはまた、議了をしなくても、成立しないままにも解散は予定として断行せられるのか。この二点は、私ども内閣委員長として重要な責任がありますから、一つの審議のめどをきめるもうすでに段階にあります。お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/77
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078・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 委員長の御質問のように、私が従来、解散問題に関しまして、まだ考えておらないということを答弁して一貫して参ったのでありますが、今日の私のここの発言は、公けに、これより進んだものであることは間違いないことであります。委員長との会談によりまして、幸いに両者の意見が一致するならば、ある期間を置いて解散するということになるわけでありますから、その意味において、予告解散と申しますか、そういう事態になると思います。
また、各議案等についての審議の促進について御協力を求めることにつきましては、なお具体的に、各種の法案等についてのいろいろな両党の意見なり政府の意見等もございますので、そういうものについては、さらに幹事長なり書記長なりあるいは国会対策委員長なり、それぞれの機関において具体的にお話し合いをいたしまして、できるだけ、客観的に考えても重要法案であり、また御審議も相当程度まで進んでおるというようなものにつきまして、これが成立について一段と御協力を願うようになると思います。
しかし、両者の会見によってきまる時日いかんによりましては、われわれとしては、政府としては、提案している法律が一つ残らず成立することを私は心から望んでおるわけでありますけれども、そういう欲ばったことの言えない、御審議の状況から見ましてもそういうことの言えないものがありましょうから、そこにおのずから、ある種の、どうしても審議未了に遺憾ながらなるものが相当できることも、これはやむを得ないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/78
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079・千葉信
○千葉信君 関連して。私は、この解散の問題に関連して今首相がとられようとしている態度は、民主国家の新しい政治形態として非常に歓迎いたします。しかし、野党はもう三年も前から解散を要求している。社会党は解散を要求しております。今日でも、今直ちに解散することを社会党は要求しているわけです。そういう段階に、首相の方からいつ幾日と予告して、解散を通告するということは、私はこの今回だけならば了承できる。しかし、それ以外の議案をどうするとか、法律案をどうするとか、議了してもらいたいとか、もしそういう点まで首相が手を伸ばして話をされるということになると、これは解散を要求してきた従来の社会党の態度から見ても、私は、首相はその会談で解散の期日を予告する以外の内容等について話し合いをされるということは、自民党を代表する首相が社会党の軍門に下ったという印象を与えることになると思うのですが、その点についての御見解はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/79
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080・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 千葉委員のお話で、私も実は解散の問題に関しましては、従来社会党の御議論、ことに私が内閣を組織いたしましてから、常に、内閣がかわれば一つこれは解散して民意に問えという御主張に対しましても、これをある程度その理論に対しましては理論として私は尊重をする。しかし、現実の政治としては、なお経済的その他の各種の問題を考えて、どちらを先にするかということを考えなきゃならぬ。ただ、そういう形式的公式論だけでこの解散の問題を扱うことはできない。これは社会党の皆さんの意見と私の意見とが違っているのでありますけれども、私はそういう主張をして参ったわけであります。いずれ社会党におきましても、これもそう言われておりますし、また責任ある社会党の方も不信任案を出すのだということも言われております。私は、これまた野党として、相当な時期にそういう方法をとられることも、これも当然のことであろうと。また、それに対して十分に一つおのおのの所信を明らかにする機会を持って、そして国民に信を問うということも、私は望ましいことであると考えておるのであります。
こういうことがお互いに、ごくくだけたことを申しますというと、いつ解散するかという日にち、いつ不信任案を出すかということが、単なる国会対策上のかけ引きのごとく見られることは、この段階になって私は望ましいことではないということで、両党首の間において一つ隔意なく話をして、そういう社会党が提案をされることも、われわれもそれを受けて堂々と論じて、そして解散をする。それには社会党の御都合もありましょうし、いろいろ忌憚なく話をしようじゃないかというふうなつもりで、実は先ほど申しましたようなことを決したわけであります。私は、こういうことに関して、どっちが属したとか、どっちが指導力をとるとか、そんなことを実は毛頭考えておらない。できれば、こういうことが一つの将来の民主主義運営の一つのルールとしても確立されることが望ましいという点からだけで、私は考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/80
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081・矢嶋三義
○矢嶋三義君 関連。ただいまの答弁を承わっておりますと、かように私は了承して差しつかえないのじゃないかと思うので、念のため伺います。四月二日の私の質疑に対しまして、あなたは、審議の結果のみならず経過が大切であり、「その審議を中途半端にして、強行してその結論を得ようなんていうことを考えておるわけではござしません。」ということを答弁されております。この心境は変っていないと思うのです。従って、先ほど委員長の質疑に対するあなたの御答弁から推察できることは、両党首の間で話し合って、そして審議の相当進捗している法案は、話し合いの上にあげて、そして審議の不十分なものは未了になることもいたし方ない、すべては両党首の話し合いと、各委員会でどの程度審議されたかという、その内容によって、本会議にかけるか、あるいは審議未了にするか、法案を色分けするのはやむを得ないと、そういうふうにお考えになっておるというように了承して相違ございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/81
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082・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 大体の筋道としては、さようにお考えになっていいと思います。具体的に、それでは、どれがどうなっているのだというような問題に関しましては、幹事長なり、書記長なり、国会対策委員長その他の機関において、また関係の委員長等の御意見も聞いて、きめていったらいいと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/82
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083・永岡光治
○永岡光治君 さらに質問を続けて参りますが、ただいまの御答弁によりますれば、ミサイル時代であっても、自衛隊を増強することは必要なんだと、こういう御見解でありますが、むしろ、私たちの考えは、そういう時代に、今日は局地戦争であっても、それは世界戦争に発展する非常に大きな危険を持っておる。で、核兵器はどんどん使われる、こういうおそるべき時代になるということを、昨日の軍事評論家の皆さんも言っておるわけでありますが、そういう意味からするならば、私はやはり、今日の段階では、戦争を刺激するような一切の行動というものは、全部これをやめて、むしろ、これは政府がどう言うとか、あるいは国会の議員がどう言うとかいうことでなしに、全国民、全世界の個々人すべてこぞって平和を願うという、その方向にあらゆる力を結集していくのが、一番平和を達成する方法ではないかと、こう考えておるわけでありますが、しかし、それについて岸総理はどう考えておるか、お尋ねいたします。
それと、今お話にありました、にもかかわらず、ある程度と申しましょうか、最小限度という表現が適当かと思いますが、岸総理の答弁では、若干の増強をしたいと、こういう話であります。しからば、私はお尋ねしたいのでありますが、整備計画と自衛隊では発表いたしておりますが、その増強計画のよってきたる根拠ですね、どうして二万名という数字が出たのか。そういうことをもう少し突き進んで申し上げますならば、今の第一次防衛計画が達成された暁において、これと関連して参りますが、暁において、これだけの力を持っておれば、外敵と申しましょうか、侵入してくる兵力が、どういう程度のものであれば防ぎ得る、しかも、それは相手の規模、それから耐え得る期間ですね、そういうものを、どういうように算定して、こういう計画を立てておるのか、その点をお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/83
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084・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 実は、この日本の自衛上、最小限の目標をどこに置くかという点に関しましては、これは今、永岡委員のお話のようなことも、一つの考えの標準に置かなきゃならぬ問題だと思いますが、あらゆる点を想像して、先ほど申すように、世界の一流といいますか、最強の国を目標として、それに劣らぬものを作ろうというようなことを考えることは、これはできないことは言うを待たない。そんなことは考えられないことであります。同時に、これは、どういう侵略に対して、どういうふうに防衛していくかというようなことに関しましては、もちろん専門的には、それぞれ、あらゆる場合であるとか、あるいは国際情勢の分析、その他あらゆる面から、防衛庁におきましては研究をいたしておりますが、そういうものをみんな持ち出してきて、そうして国防会議におきまして、これを、日本の財政面も考え、いろいろな政治的の観点から、これを考えて、その結果として、いわゆる防衛計画の長期計画、五カ年計画を立てまして、その目標というものを、陸上において十八万、海上においては十二万五千、また飛行機については千三百機というふうな目標、これを年次的に割り当てて、こういうふうに増強していくという年次計画を定めたのであります。その年次計画の一部がここに現われておるということでありまして、もちろん専門的な研究というものも、いずれありますし、また政治的の考慮もありますし、あるいは財政上の見地からの検討も必要であります。そういうものを織り込んで、国防会議でこういう計画を立てたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/84
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085・永岡光治
○永岡光治君 政治的あるいは財政的ということを言われておりますが、さらば、私はお尋ねいたしますが、今出ておりまする二万名の増員の計画で、これが三十三年度に完成した暁において、外敵のどの程度の規模が攻めてきた場合には、何ヵ月持てる、そういう計画がなくてはならぬと思いますが、そういう計画があるはずだと思います。それは、おそらく、今、岸総理がいろいろの会議の中で検討されたというのでありますが、その会議の内容も、この際、国民にもやはり知っていただく必要があると思うのですから、専門的な立場でけっこうでありますから、どういう状態になっておるかその耐え得る規模、相手がどういう程度で来たならば、どれくらい持てるかという、耐え得る、相手側の力に対するこちらの力、それを明確に一つ示してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/85
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086・津島壽一
○国務大臣(津島壽一君) 防衛の整備目標は、ただいま総理からお答えいたしましたように、陸が十八万、三十五年度まで。なお、海につきましては十二万四千、これは船艦の完成は三十七印度に完成する予定であります。なお、航空機については千三百余機でございますが、これまた最終年度、完成を見るのは昭和三十七年度。これだけで一応わが防衛の根幹というものができる、こういうのが、国防会議で種々検討した結果の結論でございます。三十三年度におきまして、本案においては陸一万、その他、空六千七百、また海においては二千人程度のものが、人的には増員になっております。陸につきましては、十八万の構想は、大体六管区四混成団、すなわち十単位でございます。そういった意味において、日本の防衛というものは可能であろう、また空についても相手方の跳梁を許さない、こういったような一定の作戦計画というものによってやったものでございます。
しかしながら、戦争の様相というものは、非常に変化があるものでございます。これが日本としては最小限度の必要なる防衛の体制である。足らざるところは安全保障の体制でやるこういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/86
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087・永岡光治
○永岡光治君 その足らざるところは安全保障でありますが、私がお尋ねしたいのは、それでは了解ができないのであります。でき得る勢力の、わが日本の完成した兵力が、相手側の兵力に対しては耐え得るというのでありましたら、その相手側の兵力はどういうものかということです、私の聞きたいのは。どの程度の侵入兵力ならは耐え得るというのか、それを明確にしてもらいたい。わからなければ、専門家でもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/87
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088・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 永岡委員のお尋ねにまっ正面からのお答えにならぬかと思いますが、(永岡光治君「まっ正面から答ええて下さい」と述ぶ)これはなかなかむずかしいと思うのです。そういう数字的に何ぼならこれで守れる、どれだけの侵入に対してこれだけを考えておるんだというような、機械的にはこれはちょっと説明できないと思うんですよ。ただ、われわれの考えからいえば、これはどういう侵略が来るかもしらぬが、われわれのこの何でもって一応の自衛というものの何はやるが、しかし、われわれの力をこえたところのものは安全保障の力によって、米軍、駐留軍の何によってやる。われわれの力は、最小限度としてこの程度。それは一応、今世界的な大戦争であるとか何とかいうようなものを目標としては、これは立ち得ないけれども、少くとも局地的な何に対しては一応の自衛の目的が達せられると、こういう意図のもとに作られておりまして、なかなか機械的に、向うが何機来た場合にはこれでいいんだとか、何名の上陸に対してはこれで耐えられるんだというふうには、ちょっとお答えのできない問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/88
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089・永岡光治
○永岡光治君 総理はそうおっしゃいますが、一応の相手側を考えなくては、これでいいとか悪いとか言えないと思うのです。一万なら耐えられるのか、十万なら耐えられぬのか、あるいはこれは二十万人、これじゃだめなのか、何かそこに目標がなければ、二万の増員していいのか、十万を増員していいのかということもきめられないわけです。これは岸総理がもし専門家でないという前提に立つならば、これは専門家もいるはずだと思う。そういうことなしに、ただ二万にするとか三万にするとかいう数字は出てこないと思う。だから、その点を一つ、すぐ答えられるならば答えてもらいたいし、もしこの席上で答えられぬとするならば、資料を一つ提出していただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/89
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090・津島壽一
○国務大臣(津島壽一君) ただいまのは非常に専門的なことでございます。時間の関係もありますから、別途説明の資料を差し上げるということにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/90
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091・藤田進
○委員長(藤田進君) ちょっと、念のために申し上げますが、今の質問の趣旨は、十八万なり、千三百機なり、その他兵器並びに兵員の増強等については、いかなる目標、作戦をもってかようなものを必要とするのかということなのでありますから、この点は十分一つ腹に入れて資料をお作りになりませんと、お答えにならないと思います。よろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/91
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092・永岡光治
○永岡光治君 一昨日の質問だったかと記憶しておりますが、わが国に外国の飛行機が侵入して、それの退去命令をこちらの方で連絡する。しかし、なおかつそれは退去せずに、飛行機から鉄砲のたまをどんどん撃ち出してきた。それに対しては、こちらからもそれに応じて、それを撃退するために飛行機を飛ばし、あるいは地上からいろいろな兵器を飛ばして、これを退散させるとか、それは防衛庁長官の答弁によりますと、刑法上のいうところの自己防衛である、正当防衛だからそれは差しつかえないんだ、こういうような刑法上の問題だという見解を表明されましたが、岸総理はこれは刑法上のいうところの正当防衛と考えるのか、あるいは国際法上の紛争と考えるのか、どちらでありますか。明確にしてもらいたいと思います。これは重要でありますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/92
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093・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 今のお尋ねの説明でありますが、領空に対してわれわれが排他的の主権を持つことは、これは国際法上当然でございます。故意または過失でそれを侵犯するという事態があるというと、まず侵犯した所へ行って何をするとか、いろいろな方法を講ずるが、それに対してもしも応じないと、さらに発砲してこららへ何するとかいうような事態であるとするならば、それに対応して当然日本自身が自分の主権を守る行為に出るということは、多くの場合、いわゆる刑法上の正当防衛に当る場合が多いだろうと思います。そういう場合においては、国際法上においても当然それに対する措置が講ぜられるという正当防衛の措置が講ぜられるということは認められておると、かように答えたのであろうと思います。私は、それをもって直ちに国際紛争だとは考えておりませんが、要するに自衛権の性質の範囲の問題である、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/93
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094・永岡光治
○永岡光治君 それは、津島防衛庁長官は、刑法上の正当防衛だ、こう答弁されておる。果してそうであるかどうか、一つ明確にしてもらいたいと思います。岸総理の見解を一つ述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/94
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095・津島壽一
○国務大臣(津島壽一君) 私がお答えした点でもし足らなければ……。ただいまの質問に関連してお答えいたします。侵犯機に対する措置については、着陸または退去せしむるような措置を講じると。その場合に、相手方の侵犯機が実力を行使して発砲する等の事態があった場合は、これはどういう措置をとるかということをきめなければならぬ。その場合に、前回もお答えしたのでありまするが、刑法の三十六条等に示す正当防衛といったようなものに該当する場合は、その措置をとっていく。ただし、相手国との関係においては、国際法の上からいっても、そういった措置は今日各国とも是認しておる措置でございます。従って、この措置によって、何らこの際国際紛争が起らざるのみならず、これは自衛隊としても任務の遂行上必要な措置である、こういう見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/95
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096・永岡光治
○永岡光治君 私は、津島長官が一昨日そういう答弁をしたので、岸総理にお尋ねしたいのでありますが、そういうケースは、それは刑法上の正当防衛になるのか、国際法上の正当防衛になるのか、どっちになるのか。津島長官は刑法上の正当防衛だという答弁でありますから、そうだとするならば……。今あなたはどうも否定しておるようでありますが、それは意見の食い違いです。もし岸総理が刑法上の正当防衛でないとするならば、これは閣内不統一ですよ、まさに。それを明確にして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/96
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097・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私、昨日のその質疑応答は、そのときにおりませんから、承知いたしておりませんが、今津島防衛庁長官がお答えを申し上げたのは、そういう場合でいわゆる刑法上の正当防衛に該当するような場合については、国際法上これは当然そういう措置がとれるというように説明をしておるのであります。その場合当然の措置をとったとして、それが刑法上の正当防衛になるのか、あるいは国際法上の正当防衛になるのかといえば、国際法上の一つの正当防衛であると、こう解釈すべきものであろうと思います。それは、私と、津島長官のただいまの説明を聞いておりますというと、何も食い違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/97
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098・藤田進
○委員長(藤田進君) それは要するに、自衛権の発動だと総理は考えられるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/98
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099・岸信介
○国務大臣(岸信介君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/99
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100・藤田進
○委員長(藤田進君) そうしますと、国内法上の処理はどうされますか。自衛権の発動で発砲されるわけですか、あるいは陸上、海上、あるいは航空自衛隊が自衛権の発動として、出先で攻撃されるということになれば、国内法上どういう根拠で処理されるか、総理の御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/100
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101・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 広義の意味においては自衛権ということが言えると思いますが、その個々の個人といいますか、自衛隊に属する人がそういう事態に会って、今言うようにこれに対して当然対処すべき方途をとるということは、私は自衛隊の隊員の任務遂行であると、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/101
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102・永岡光治
○永岡光治君 まだ質問すべき幾多の問題が残っておりますし、重要案件になっておりますが、これは同僚議員もあとに控えておりますから、いずれ同僚議員が終ったあとから、この問題について、さらにまた残された問題について、質問を続行いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/102
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103・田畑金光
○田畑金光君 岸総理に二、三お尋ねいたしますが、答弁は一つ簡潔にお願いしたいと思うのです。聞いておりますと、答弁の方が実は長いので、限られた制限時間でありますので。
これは、すでに国会でたびたび総理の御答弁を承わっておりますが、確認の意味におきまして……。今の日米安保条約、行政協定のもとにある日本といたしましては、アメリカの所望するもの、あるいはアメリカの所望するところは、すべて基地として提供しなければならぬ、そういう地位に置かれておるわけで、ある人はこれを基地国家と呼んでおるわけであります。でありますがゆえに、アメリカの飛行機あるいは艦船というものが、沖縄からであれ、小笠原からであれ、その他いかなる地域からであれ、自由に日本の領空、領海、基地や港を利用することができるというのが、今の条約の建前であると考えておりますが、それで差しつかえないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/103
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104・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 行政協定の各条文の解釈になりますので、法制局長官からお答えした方が、誤まりがなくて正当だと思いますから、御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/104
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105・田畑金光
○田畑金光君 今の答弁が、岸総理できないはずはないのです。しばしばこれは、内閣委員会や本会議等で、総理みずから答えておられるわけです。私は、今の日米安保条約、行政協定のもとにおいては、アメリカの飛行機、あるいは艦船というものは、沖縄であろうと小笠原であろうと、自由に日本の領空に、領海に立ち入ることができるというのが、今の条約建前であると考えまするが、しかも、そのような御答弁をしはしば総理はやっておられますが、それで差しつかえないかどうか、これを伺っておるわけであります、確認の意味において。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/105
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106・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 日米行政協定第五条の規定によって、そういう場合においてはアメリカは何ができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/106
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107・田畑金光
○田畑金光君 すでにそのような答弁をなされておるわけです。そこで、たとえば、朝鮮には原子砲を中心とする核兵器が持ち込まれ、台湾にもマクドールが配備を終り、沖縄にソアとかジュピターという原子兵器が持ち込まれておることは、周知の事実であります。極東にある第七艦隊が、地中海にある第六艦隊とともに、核装備を持った最精鋭の艦隊であるということは世界周知の事実で、第七艦隊所属の艦船にはレギュラスが装備されており、同艦の所属の航空部隊には原水爆を装備しておる。こうしてみますと、原水爆を塔載した飛行機、あるいは原水爆を積載した軍艦が、理論上はわが国に来ることがあり得るのだということは、今の答弁を裏づけることでありますが、条約上はそういうような場合があり得るのだ、これはお認めになると思いますが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/107
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108・岸信介
○国務大臣(岸信介君) いわゆる日本に駐留する米国軍隊が、核装備をしてここに駐とんすることは、私は、持ち込みになるから、認めないと申しております。しかし、一時そういうのが通過するとかいうことになり、今御説明のようなことなりが、行政協定五条においてそういうことが理論上あり得るということは、私も認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/108
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109・田畑金光
○田畑金光君 飛行機が塔載して日本の領空を飛んできて、日本の基地に着陸をした。軍艦というものは、日本の領海を、ただ通ってどこかの其地に行くのではなくて、日本の港に入る。それは相当期間滞在することになりましょう。そうなりますと、当然、核兵器を武装したアメリカの飛行機が、あるいは軍艦が、日本の基地の港に入ることがあり得るのだ、こういうことになるわけですが、今の御答弁もそういうことになるわけですが、それについてはどう処理をなされようとするのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/109
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110・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 一つの艦隊が、日本の基地その他に相当長く滞在するといったような事態は、私は、これは今お答え申し上げた事態とは違うと思うのでありまして、実際領海を通過するとか、あるいは何か給水その他の何でもって一時入ってくるとかいうような場合を申しているのでありまして、そういうような場合には、これを認めない措置が当然とられなければならぬ、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/110
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111・田畑金光
○田畑金光君 理論的にもあり得ることだし、条約の建前からいってもあり得るということは、総理みずから今認められたわけです。ところが、その事実関係として、あるのかないのか、この問題になってくると、総理の答弁は、そういうようなことはあり得ないだろうという願望によって、事を処理されているわけです。そういうようなことはあり得ないのだということを、何らかの機関で確認をされたことがあるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/111
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112・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私は今まで、飛行機やあるいは艦船が、核兵器を精載して日本に立ち寄ったという実例は、全然聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/112
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113・田畑金光
○田畑金光君 総理の御答弁は、いっ聞いてみましても、聞いていないのだと、アメリカを信用する、理解をするそれ以外はないのだということに結局なるわけで、昨年の六月、岸総理がアメリカに出発されるその際にもわれわれは本内閣委員会において、日米行政協定、安保条約から来る諸般の問題の解決について、総理の見解をただした。そのとき総理は、この条約改訂についてはできるだけ努力をしてくる、こう御答弁になっているのです。沖縄の施政権返還の問題についても、少くとも教育権くらいは努力して実現をしてくるのだ、こうして国民的輿望をになっていかれたのです。ところが、帰ってこられたならば、何のおみやげもなかった。結局、それをごまかすために、日米安保委員会というものを作ったわけです。
私は、先ほど千葉委員の質問に対しまして、条約改訂の努力をされるということを言われましたが、私はそれを信ずることはできないのです。総理はときには、民族主義者のごとく、国民の先頭に立って日本民族の完全独立のために戦うがごとく答弁され、そぶりをされるが、一たびアメリカに向うと、媚態外交に終始している。私は、条約改訂というものは岸内閣の今の外交施策においてはできないと思うが、せめて、日米安保委員会くらいでは明確に、核兵器は持ち込まない、第七艦隊が核武装して日本の港に来ることは許さぬ、あるいは台湾から、朝鮮から、アメリカのB―47が原水爆を積んで飛んでくるというようなことは許さぬ、これくらいの確認は、一つ総理として安保委員会においてやっていただきたいと思うのだが、それだけの話をする用意があり、決意があるかどうか、これを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/113
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114・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 安保委員会におきましては、いろんな問題をすべて、安保条約に関連しての必要があると認めますれば、何でも話し合いのできるところでございます。今日まで核兵器の問題につきましては、一部においていろいろな――私どもは、事実は、そういう事実を全然承知いたしておりませんし、従って、これをないと言わざるを得ないと思いますが、そういうことに関していろいろな場合を想像し、想定して、いろいろな疑問なりあるいは疑惑を持たれるようでありますけれども、そういうことを一々取り上げてするということも、私は安保委員会の性質からいって適当でなかろう。ただ、現実の問題もしくは現実に近い必要を生ずる場合におきまして、何事もこれの議題として話し合うことは差しつかえないのでありまして、一般に核兵器の問題の国会の論議、また政府の所信等につきましても、当然私は安保委員会にはある程度の話し合いがこれはされることであると、かように思っております。今直ちに、今の情勢において、そういうものを持ち込まないということをあらたまって言う、ここの課題にする必要があるかどうかは、私は実はそういう必要はないと思いますけれども、十分将来の問題としては考慮していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/114
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115・田畑金光
○田畑金光君 安保委員会の話し合いの筋ではないとお話しになりますが、安保委員会のできたところの趣旨から見ましても、そうしてこの日米安保委員会で取り上げる問題は三つありますが、その三つの第三の問題は、日米両国間の、両国民の必要及び願望に適合するように話をしていくのだ。これはアメリカの願望でなくして日本の願望であることは、言うまでもないわけです。してみまするならば、日本国民がそのような願望を持っておるとするならば、なぜ日米安保委員会ぐらいで話し合いをして、きちんと折り目を正しておかれないのか、この点です。
それから、昨年の十二月十九日、第四回の日米安保委員会で、御承知のごとく、サイドワインダーを受け入れておるわけです。これは通常兵器だと、こう政府は言われておりますが、アメリカの軍隊の使用とか配備について話をする、日本国民の願望に基いて話し合いをする、これがあなたがアメリカへ行かれてせっかく持って帰られたおみやげなんです。ところが、向うの話ではなくて、わが日本の自衛隊の話、しかもサイドワインダー、これが丘器の発達はやがて核弾頭も装備するようになるでしょう。私は安保委員会の逸脱たと考えるのですが、逸脱だとお考えにならないかどうか。同時に、私は先ほど申し上げたように、この日米安保委員会で核兵器を持ち込んではならぬ、これくらいの話の折り目は正していただきたいというのが国民の願望でありますが、やる決意があるかどうか、明確に承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/115
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116・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私は安保委員会の議題にならないということを申し上げたわけではありません。そういう問題に対して、これを取り上げて安保委員会で話し合うというのには、私は適当な時期を考えるべきであって、今そういうことは考えておらないということを申し上げただけであります。
サイドワインダーの問題に対しましては、これはしばしば詳細な説明を申し上げておりますように、これは核弾頭を持ち得ないものである。一つの誘導兵器ではございますけれども、核弾頭を持ら得ないものであり、そういう構造であり、またそういう用途にこれは使われるものでありますから、これをもって核兵器の、核武装をする一つの窓口があいたと、こうお考えになることは私は行き過ぎた御心配である、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/116
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117・田畑金光
○田畑金光君 岸総理は頭がいいので、世上いわゆる答弁にそつがない。これは岸総理の偉大さであるが、反面、岸総理の弱点でもあるわけです。しんがないといわれると、そうだと思うのです。どういう決意で、どういう一つ目標の方向に日本の国民を、民族を引いていくのか、明確な所信というものの持ち合せがないのです。
先ほど来御答弁を承わっておりますと、結局、アメリカの信頼と理解に期待するだけがあなたの核装備に対する唯一の態度でありまするが、この国会に両党が核実験禁止の決議案を両院で出すわけです。これは世界の情勢から、アジアの情勢から見て、最も望ましいことだと、こう思うのです。ところが、社会党が日本の核非武装決議案を上程するに当って、自民党はこれに同調していないのです。むしろ、私は、今の世界の情勢からしますならば、核実験の禁止決議案とともに、日本の非核武装宣言を発すること、しかも国会の意思として世界に明らかにすることは、私は、日本の政治外交の基本的なあり方を示すものとして、大いにこれは与党も政府も歓迎すべき提案だろうと考えますが、どうしてあなたはこういうふうな問題について協力できないのです。ほんとうに総理のお話のように、日本を核武装をしない、持ち込まないというその決意がありますならば、これぐらいは一つ同調されても、あなたの言葉の裏づけからいっても、岸内閣の外交、防衛方針、政治方針を明らかにするためにも、大きなこれは援助になると思いますが、どうして協力できないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/117
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118・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私、議案の取扱いにつきましては、どういうふうになっておりますか承知いたしませんが、私、しばしば核武装の問題については私の強い信念を申し述べてきており、これはただ単に国会でそう言っておるというだけではございませんで、その国会を通じて国民に、また国際的に、私の所信として明らかにいたしておるわけでございます。従って、その方針に対していろいろな御疑念や御質問もあるようでございますけれども、私は一貫してその考え方を貫いておる。ただ、決議案等につきましてどういう取扱いになっておりますか、これは両党のそれぞれの党の機関においてお話し合いをしておることでございまして、私の考えはちっとも、今申し上げておるところに変りはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/118
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119・田畑金光
○田畑金光君 総理はこの決議案に御賛成なのかどうか、それを明確に承わりたい。党の取扱いは問題ではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/119
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120・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私は、先ほど申しておりますように、はっきりいたしております。その決議案としての内容を見なければ、賛成かどうかということは申し上げかねますけれども、しかし、今の御趣旨のように、日本が私の言っておるように核武装しない、また核兵器の持ち込みをしないという意味のことであるならば、その内容については私は異存がないのであります。ただ、それを決議案にしてどうするかというような問題になりますと、これはいろんな国会上の取扱いの問題になりますから、私は今申しましたように、それは党と党との話し合いによってきめらるべきものだろうということを申し上げておりまして、内容自身として私の申し上げておることに一致しておるものは、もちろん賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/120
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121・田畑金光
○田畑金光君 取扱いの問題でなくして、私は内容の問題だと思うのです。内容について総理が御賛成であるならば、しかも、あなたの方針と一致するのであるならば、総裁として岸総理が与党で話をして、両党が権威ある国会の決議案として、日本の非核武装宣言を世界に発するくらいの一つ政治的な手は、すみやかに打ってもらいたいと考えるわけで、問題は言葉でなくして実行にあろうと考えます。
次に、私は、今、日韓全面会談が開かれておりますが、これによって両国の諸懸案を解決し国交の正常化をはかることは、非常に望ましいことであり、国民的な希望だと考えます。ただ、ここで心配されることは、この両国の正常化が、政治、外交の提携面から、さらに発展して軍事面まで行きはせぬかという心配を持っておるわけです。第四次日中貿易協定が今日不幸な結果になって、たな上げになっておるのは、言うまでもなく、岸政権の台湾政権に対する必要以上の譲歩がこういう結果になっているわけです。いわば、アメリカに気がねをした媚態外交の結果です。こういう動きを考えたとき、やがて日本はNEATO、こういう軍事同盟に発展しはせぬか。ことにICBM、人工衛星の競争に立ちおくれたアメリカの今日のあせりは、極東にそういう軍事同盟というものを作る方向に私は動いておると見ておりまするが、この日韓会談を通じ、日韓両国の親善関係からさらに発展して、今言ったような方向に、軍事的な面に進みはせぬか、またNEATOの方向に行きはせぬかと、こう考えておりますが、総理の方針を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/121
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122・岸信介
○国務大臣(岸信介君) NEATO等の問題に関しましても、従来御質問がありまして、私は、そういうものに加入することは、日本の自衛権の本旨からいって、それは認めておらないし、私はそれには反対であるということをはっきり申しております。
韓国との間に正式会談を開いて、これとの間に友好関係の復活に努力をいたしておりますが、もちろん、これが政治、経済、あるいは文化、あらゆる面において友好関係を持たれるわけでありますけれども、軍事同盟であるとか、あるいは今言ったような極東における数カ国の軍事同盟に、それをきっかけに加入するという意図は、毛頭持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/122
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123・千葉信
○千葉信君 関連。去年岸さんがアメリカにおいでになったときに、会談の終了後、ダレス談話と、それから石田当時の官房長官の談論が発表されました。その談話によりますと、今回の会談の最も大きな成果は、共同声明に盛られた事項の以外のところにある。しかも、そのことは両国の国民が将来手をあげて賛成する、歓迎する内容のものである。日本の憲法がああいう憲法であるために、発表すると困るので、そういう表現の仕方をされたと私は判断しておりますが、それが今問題になっておる、今質問されたNEATOではありませんか。朝鮮、日本、台湾、フィリピンを含む東南アジア防衛機構についてのおみやげじゃなかったのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/123
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124・岸信介
○国務大臣(岸信介君) あの当時の話に、そういう問題が会談の中に出たことすらございません。従って、そういうことについて何らか別に話し合いがあり、協定ができたというようなことは、絶対にございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/124
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125・千葉信
○千葉信君 あの発表の仕方は、その内容からいって、表面に出たものはあまり成果はなかったけれども、ここにかなりのおみやげがあると国民は期待したわけですが、今日まで全然それは表面に現われておりません。それは一体何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/125
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126・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私、当時のことは、官房長官がどういう発表をいたしましたか、記憶はございませんけれども、あの当時話がありまして、あの共同声明に盛られておらなかったものの一、二の問題は、一つは、戦犯者の取扱いの問題に関する話し合いがございました。それから、私どもの希望はまだ実現を見ておりませんけれども、将来沖縄及び小笠原の問題については、従来の主張にとらわれずに、いろいろの方面をアメリカとしてもさらに考究し、研究してみよう、こういう話は出ておりました。今度の場合において、われわれは、施政権の返還であるとか、あるいは小笠原の帰島問題等について、強い要望を出しておるけれども、それは今度は聞かれないけれども、将来にわたってそういうものを、アメリカとしても十分一ついろいろの方面の意見を聞き、また事情も調査してみようというような話し合いはございましたが、そのほかにおいて何か密約的なもの、もしくは今お話しのような点というようなことは、これは話にも出ておりませんし、いわんや話し合いがあったわけでもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/126
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127・田畑金光
○田畑金光君 NEATOについては全然考えていない、反対だと仰せになりましたが、それはよくわかります。ところが、私はこういう考え方を持っております。一九五四年十二月に、御承知のごとく、米加総合防衛援助条約が結ばれております。これは翌五五年発効して、米加軍事同盟が今あることは御承知の通りです。台湾が米極東戦の重要な拠点になっておる。また、韓国は、米国との間に一九五三年八月に米韓相互防衛条約が結ばれて、これまた軍事同盟の関係にあるわけです。
そこで、私は、日本を見ましても、朝鮮を見ましても、台湾を見ましても、個別的にではあるが、アメリカと軍事同盟の中に置かれておる。アメリカの圧倒的な優勢な軍事的支配のもとに置かれている。こういうことを考えたときに、ことに昨年の七月、米国は戦略転換をやって、アジア全地域をハワイにある太平洋軍司令部の統括のもとに置いているわけです。アメリカというものを考えたときに、アメリカを中心として日本、朝鮮、台湾あるいはフィリピンは、極東戦略の全部一環をなして、そうして網の目のごとくお互い結び合っているわけです。こういうことを見たとき、これは日本と台湾、日本と朝鮮の間には別段問題ないにしても、アメリカを中心として動いている。この意味においては、実質的にはNEATO、こういう関係に置かれておることは、これはもう否定できない事実だと、こう考えるわけで、この事実関係を総理はどのように判断しておられるか。われわれは、やがてこれが名実ともにNEATOというものが表面に出てくる、その時期が来やせぬかと考えておるが、この点について総理はどういうふうにお考えになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/127
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128・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 韓国と米国の関係や、あるいは台湾とアメリカの関係につきましては、田畑委員のお説のような関係があると思います。しかし、日本の関係は、これは日米安保条約及びこれに基くところの行政協定等によりまして明確なごとく、日本がアメリカと共同して防衛するところのものは日本の安全であり、従って、われわれは憲法の認めている自衛権に基くところの最小限度の力を持っておるという、実力を備えていこうということでありまして、今御心配になるようかNEATOというような、いわゆる一つの集団的防衛機構がアジアの数ヵ国の間に結ばれて、日本がその中に加盟するというような事態が当然起ってくると私は考えません。しかし、また、そういうようなことがかりにありましても、先ほど申しましたように、日本としては加盟すべきものじゃないし、私は断然これを拒否すると、こう申しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/128
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129・田畑金光
○田畑金光君 総理の決意のほどはしばしばお聞きいたしておりますが、要は、その決意を具体的に実行してもらうことだと、こう考えるわけで、将来の事態の発展をわれわれは静かに見守りたいと、こう思うわけです。
今回の防衛二法案を見ますならば、自衛隊の強化というものをいろいろな面ではかっているわけです。たとえば、防衛庁に他官庁の公務員を入れて再教育をとするということも考えておられる。やろうとしておる。それからまた、東南アジアの国々から日本の防衛大学校に学生を迎えて、これを教育するということも考えておるのです。これを、両国の親善関係を増進するという、こういう名のもとに、かつての国防国家、軍事国家という方向にひたすら進んでいるというのが、今の日本の自衛隊の実情であると考えますが、私はこの巨頭会談開催の時期はすでに近きにある。いろいろな曲折は経るだろうが、巨頭会談をやがて持たれるだろう。ソ連の核実験禁止の一方的な宣言等もあって、世界が今新しい状況に動いておるときですよ。日本の自衛隊の強化というものは、昔の国防国家の方向にだんだん向っていっている。私は、これは逆コースであり、少し時代の発展にずれておると考えますが、再検討をする余裕はないのかどうか。
ことに、私が残念に思うことは、防衛庁長官はこの間私の質問に対して、来年度の一万名増員はまだきまっていない、こう言っていたのです。先ほどの答弁を見ますと、昭和三十四年までには十八万名を持つのだということを明確に言っておる。私はこういうことを考えたとき、岸政権の今とっておる道は、あらゆる面において逆コースの方向に行っておる。
ことに、この国会で問題になりました防衛秘密保護法、軍事機密保護法、たとえばアメリカからナイキとか七種の誘導兵器を持ってこようとしたが、日本には兵器の秘密保護法がないというので、実はアメリカはやらないのです。今のこの岸内閣のとっておる自衛隊強化の方向は、やがてそういう面からも軍機保護法のようなものをやがて持つようになると考えるわけですが、こういうような情勢に処して、岸総理は新しい角度に立って、今の日本の防衞のあり方ついて再検討する気持はないのかどうか。最後にこれを承わっておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/129
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130・岸信介
○国務大臣(岸信介君) もちろん、防衛の問題は、日本を取り巻くところの諸種の事情や、あるいは国際情勢の変化、また兵器の発達のこと等をいろいろと参考として、あらゆる検討を加えていかなければならぬことは言うを待ちません。一ぺんきめたら、それがどうしても動かせない性質のものであるというわけでないことは言うを待ちません。先ほど申しました十八万とか千三百機とかということは、一つの長期計画としての目標を示したものでありまして、現実にこの十八万の目標を達するというために、来年一万名をふやすということをすでにきめておるかといえば、それはきめていないということを、防衛庁長官が申したので、一つの目標として御説明申したので、常に検討を加えていかなければならないと思います。
また、今度のこの関係庁の職員等の職務上必要な知識を与えるというような意味の改正や、あるいは外国の人を防衛大学に入れて、日本の自衛隊の教育に差しつかえない範囲内においてこれを受け入れて教育するというようなことが、かつての国防国家というようなことを夢見て、その方向に向って進んでおるというような考え方は、毛頭持っておりません。また、これをするからといって、あるいはSEATOやNEATOの結成なり、あるいはこれに加盟していくという考え方は、毛頭持っておらないのであります。その点だけを明確にしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/130
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131・伊藤顕道
○伊藤顕道君 防衛の基本方針である憲法第九条の解釈を中心にして、二、三、総理にお伺いしたいと思います。
鳩山元首相は、たしか三十年の七月二十五日であったと思いますが、当時の参議院の内閣委員会で、自衛のためならば必要にして最小限度の防衛力を持ってもいい、こういうふうに答弁しておられるわけです。このことに関して岸総理は、昨年の五月七日の当参議院内閣委員会で、自衞のためならば必要にして最小限度の戦力を持ってもいい、こういう意味の答弁をなさっておるわけです。そこで、このことに関する限り、憲法第九条の解釈は両者同じであると考えられますが、この点、どのような見解を持っておられますか、まずもってお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/131
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132・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします、同じ考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/132
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133・伊藤顕道
○伊藤顕道君 今、同じであるとお答えになったわけでありますが、もし同じであるとすると、総理の自衛力というのは実は戦力であると解釈してよろしいか、この点間違いがないか、大事なことであるのでお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/133
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134・岸信介
○国務大臣(岸信介君) いわゆる普通に戦力というものは何かということにつきましては、いろいろな解釈もありましょうが、一体、それよりも、憲法で禁止しておる戦力というものをどう解釈するかということを、法律解釈としては考えなければならぬかと思いますが、私としては、今申しましたような自衛に必要な最小限度の実力と申しますか、一つの力というものは、憲法に禁止しておる戦力ではない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/134
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135・伊藤顕道
○伊藤顕道君 昭和二十七年の十一月二十五日、内閣法制局で戦力に関しての解釈がなされておるわけです。これを閣議に報告せられておるわけです。政府ではこれを基準にして、自後答弁なさっておると思うわけですが、この解釈については自後変りはないかどうか、その点を明確にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/135
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136・岸信介
○国務大臣(岸信介君) この問題は、閣議決定の当時からこれに関係をいたしております林法制局長官から、明瞭にお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/136
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137・林修三
○政府委員(林修三君) これはたしか当時閣議決定と思いますが、あるいは閣議了解であったか、はっきり覚えておりませんが、どちらかと思いますが、これは結局、戦力という言葉の使い方の問題になると思うのです。これは私、鳩山内閣の当時からお答えしておるところでありますが、戦力という言葉を、一定限度以上の実力を意味するものと考えるか、あるいはごく率直にいえば、いわゆるすべての実力、戦い得る力というものを戦力という言葉を使うか、こういうことも問題になると思うのでありまして、昭和二十七年の吉田内閣の当時のものは、定限度以上の実力というものが戦力であるという解釈だと思うわけです。これは言葉の使い方になるわけでありまして、結局、警察というようなものは、それが戦い得る力に使い得る面においてはこれは戦力ともいえる、こういうことを申したわけであります。それで、鳩山内閣以来申し上げておりますことは、結局、憲法第九条で禁止しておるいわゆる戦力というものは、自衛のため必要最少限度のものであれば、ここには含まれない、さように言っておるわけでありまして、これは本質的にいえば、私は言い回しの違いであって、程度としてはそれほど大きな差はないものと、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/137
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138・伊藤顕道
○伊藤顕道君 自衛権はあるのだから、そのため戦力は認められるのだ、そういうことになると、憲法上許される戦力と許されない戦力、こういうふうに戦力に関する二つの概念が出てくるわけです。一体、この基準は何を根拠にしておるのか、これを明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/138
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139・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 憲法で自衛権が認められており、自衞権というのは、ただ観念だけでなしに、それを裏づける一つの実力を伴うものであろうと思います。しかし、その実力には、自衛のために必要な場合には一つの限度があるということは、他を脅威する、攻撃的なものでないことは、自衛の本質から申しまして当然なことであります。そういうような意味において、他に侵略の脅威を与えるようなものが、その限度をこえておる。そうでなしに、単に自衛のために必要最小限度だと認められる程度であれば、これに入らない。こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/139
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140・伊藤顕道
○伊藤顕道君 憲法第九条にいうておる「その他の戦力」とは、低い戦力をさしておると思います。そこで憲法上、今申し上げたように、許される戦力と許されぬ戦力、こういうことはあり得ないと思うわけです。そこで、この点を納得いくように明確に御説明いただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/140
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141・林修三
○政府委員(林修三君) 結局、憲法九条第二項でいっております「陸海空軍その他の戦力」という場合に、「その他」の意味でございますが、これは結局、憲法は、陸海空軍という正式の名称を持ち、正式の編成を持つもの以外でも、それに準ずるようなものはやはりいけないという趣旨だと思います。そこで、結局、九条二項で禁止しておる戦力は何かということになりますと、先ほどから総理がお答えいたしました通りに、自衛のため必要最小限度の戦力は、ここで禁止されておるものではない。それ以上のものであれば、それが陸海空軍という名前を持つ持たないにかかわらず、禁止されておると、こういう意味だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/141
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142・伊藤顕道
○伊藤顕道君 いかなる国でも、軍隊というものは自衛のためにあるわけです。で、本来、軍隊は戦力でなければならぬわけです。軍隊は戦力である。それを戦力でないとか、あるいは自衛のため必要にして最少限度の自衛力だということは、私は非常に間違いであると思う。これは非常に大事な点でありますので、総理の御見解を明確に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/142
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143・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 法律の解釈としては、先ほど法制局長官から申し上げましたが、さらに、私は、最初から申し上げておるように、憲法で認められておる自衛権、それを裏づけるに必要な最小限度の実力というものは、これは憲法九条二項によって禁止されておる戦力には入らない。ここで禁止しておる戦力というのは、そういう自衛のために必要最小限度のものをこえた一つの実力を戦力と、こういうふうに解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/143
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144・伊藤顕道
○伊藤顕道君 総理は、日本にアメリカの基地があることによって他国が報復するようなことがあれば、これは侵略とみなすと、そういう意味のことを言われておるわけです。ところが、こちらから見て侵略であっても、他国にすればそれは自衛であるわけです。こちらから見れば侵略と解するにしても、他国から見れば自衛なんだということになるわけなんです。一体、自衛と侵略、この点を総理はどのように分けておられるのか、これを明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/144
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145・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 日本に対して急迫不正の侵害が行われた場合に、われわれが祖国を守るのが自衛の私は意味であり、それをこえるものはこの自衛の範囲に入らない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/145
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146・伊藤顕道
○伊藤顕道君 そこで、自衛の範囲と侵略の範囲というものは、非常に不明確であろうと思う。そういうことになると、憲法の意味も全くなくなってしまうわけです。このことについては、総理自体も非常に矛盾を心の中では感じておろうと思うわけですが、この点を、一つ率直に所見をお述べいただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/146
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147・岸信介
○国務大臣(岸信介君) どういう意味で、私が矛盾を感じておるだろうということを伊藤委員は御推察になるか、ちょっと私も判断に苦しむのでありますが、私自身が、今申し上げたように、憲法上、われわれが独立国とし、われわれ自身の国が他から侵略される場合に、それを防ぐということは、独立国である以上は当然許されている国の基本権であって、憲法九条はそれを禁止しておるものではない。従って、それを裏づけるに必要な最小限度の実力を持つことは、これは当然で、われわれはこれによって、他からの急迫不正の侵略が行われた場合には、その場合には実力を行使してでも、その他からの急迫不正の侵略を排除する、これは当然自衛の作用としてやられることであり、またやらなければならぬことである、かように考えて、少しも矛盾を感じておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/147
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148・千葉信
○千葉信君 関連。今の質疑応答で明確にならないという点がありますから、一つ。
伊藤君の言っているように、侵略と自衛という問題は、これは非常に限界が明らかでない場合がしょっ中あると思うのです。たとえば、これは古傷に触るのは少し申しわけありませんが、昔、日本は満洲事変を起した当時、これは自衛のための事変だ、自衛のための行動である。シナ事変のときもそうだ。御署名された太平洋戦争の際にも、これは経済圏を封鎖するという、それに対抗するための自衛の手段だ。そういうことになりますと、あの当時の日本の軍隊といいますか、当時の日本の戦力というものも、これは自衛のワク内だということになっていくのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/148
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149・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 自衛権は、先ほど来申し上げますように、急迫不正の侵害に会った場合に対し、他の手段でもってこれを排除することができないときに、これを排除するために必要な実力を行使をするというのがその内容でありまして、自衛隊法のこれは「防衛出動」、七十六条でありますかの規定にもそれがはっきりされておりまして、「外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認を得て、」云々という何があります。
この私が申し上げる憲法九条の自衛圏の範囲というものは、昔の一般に自衛戦争であるとか、自衛のための何であるかというような、過去における旧憲法時代の考え方とは、私、非常に狭い考え方になった。それはいろいろな今の関係法律なり憲法の立法の趣旨から見ましても、それは明確である、私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/149
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150・伊藤顕道
○伊藤顕道君 総理があくまで、戦力でない、自衛力である、そういうふうに言われると、自衛のためには必要にして最少限度の自衛力を持てるということになるわけです。そういうことになると、これは大へんなことになろうと思うわけです。と申しますのは、総理はしばしば、学問とかあるいは技術の発達によって内容的に変ってくるという意味のことを言われているわけです。そうなりますと、自衛力はだんだん高度に進んでいって、ついには原水爆も持てると、そういうように変ってくるわけです。この点は非常に重大な問題であるので、一つ明確にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/150
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151・岸信介
○国務大臣(岸信介君) お言葉でありますが、原水爆と称せられておりますところのものは、これは今までのわれわれの観念から申しまするというと、他をもっぱら攻撃破壊するところの性格を持っているので、防衛的な自衛の内容をなさないものであります。ただ、技術がいろいろ発達してきますというと、兵器は防衛的な兵器でありましても、いろいろなもの、かりに核兵器というようなものがどういうふうに発達するかという将来のことを見ますというと、なかなかまだわれわれで十分想像もできないと思います。原水爆というようなものが、今言ったような性格のものでありまするがゆえに、こういうものをどんなことがあっても憲法上は持てない、禁止されているものであるということは、これは言うを待たない。しかし、いつかこの国会におきましても、憲法法上核兵器というものが持てるのか持てないのかいう議論があったことがあります。私は、核兵器の発達いかんによっては、今言うように防御的な性格を持っておるような兵器であるならば、これを憲法上禁止しておるとは私は解釈はしない。しかし、政策としていかなる核兵器も持たないということは、私は明瞭に申し上げる。たとえこれが防衛的兵器であっても核兵器は持たない、装備しないということは、明瞭に申し上げているところであります。そういう意味におきまして、自衛権でありますがゆえに、その持ち得る範囲というものはおのずから限度があるのであって、今お話しのような原水爆のような、もっぱら他を攻撃してそして破壊することを目的としておるような兵器が、この自衛権の内容として必要最小限度のものにはならぬと思う。そうかといって、必要最小限度のものというのは、いつまでも竹やりや日本刀や村田銃で防衛しておるということではないのでありまして、その意味におきまして、科学技術の発達に伴ってのいろいろな研究もし開発も自衛隊においてするということは、これは当然のことであろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/151
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152・伊藤顕道
○伊藤顕道君 最後にお伺いしますが、総理は将来憲法を改正するお考えがあるかどうか。もしありとするならば、どのような情勢になったときに改正するのか、そしてまた改正しようとする問題点はどこにあるのか、その点を明確にお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/152
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153・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 憲法改正の問題につきましては、その改正の要否、もしくはこれを改正をするとするならば、どういう点をいかに改正するのが適当であるかということにわたっての、あらゆる問題を研究するために憲法調査会が設けられております。私は個人的には、従来憲法についていろいろな意見も持っております。しかし、総理大臣としてこの私がどういう考えを持つということは、これは非常な重大な意義を持つものでありまして、私は、調査会で各方面の権威者によって今慎重に検討されておりますから、その結論を待って善処したいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/153
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154・伊藤顕道
○伊藤顕道君 総理は憲法調査会の意思を尊重してと言っておられるわけですが、もし、かりに憲法を改正するとすれば、一体、自衛のために必要な最小限度の自衛力だけを持つと重ねて言っておられるので、もし改正するとなると、自衛以上のものを持とうとするのか、この点が問題になると思うわけです。その点を明確にしておきたいと思います。
〔委員長退席、理事永岡光治君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/154
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155・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 今申し上げましたように、憲法のこの各条章を果して改正する必要があるか、改正をしてはならぬという一方にも議論があるわけでありますから、そういう際には各方面の意見を十分一つ尽して、これはことに国家の基本法でありますから、国民に、そのおのおのの主張なりおのおのの考え方というものを、十分に国民の前に明らかにして、国民の判断を待つという処置に出たいと考えて、実は調査会というものを作って、反対の御意見を持たれております社会党にも入っていただきたいと思いまして、いろいろとお願いをしたのですけれども、これは不幸にして今日まで実現をいたしておりませんけれども、私は、将来なるべく早い機会に、この憲法を改正してはならぬという強い主張を持っておられる方も入っていただいて、そういう主張をこのものを通じて国民の前に明らかにしてもらいたいと思います。従いまして、今私は、どの条項をどうするとかいうような意図を持っておるとか持っておらないとかいうことを申し上げることは、差し控えたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/155
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156・森中守義
○森中守義君 この際、岸総理に防衛関係について少しくお尋ねをいたします。私は質問に入る前に、特に答弁に対して要請しておきますが、今国民は政府の防衛政策に対して非常に大きな疑問を持っておる。これは現在の防衛力に対して賛成をする者、あるいは反対をする者、おのおのの立場の者が関心を持ち、しかも、その関心が高まるにつれて、ますます疑問を生じ、しかも、その疑惑を持つ一つの要因をなしておるものは、国会における総理の答弁が一番肝心なところで大胆率直に言明することを怠っておるところにあると思うのであります。ですから、そういう意味で、私はできるならば、いろいろな関係もありましょうが、国民の聞きたがっておるところを私は二、三伺いたいと思いますので、大胆率直に意見の開陳を求めたいと思います。
そこで、質問の第一の問題は、先刻永岡委員からも、世界の軍事評論家ないしは外交評論家がいろいろと世界の趨勢に対して定義づけを行なっておる、こういう意見が行われております。私は、その中で特に、岸総理はアメリカの政府当局と絶えず連携をおとりになっておると思うし、またアメリカの政界の実情というものもだれよりも御承知であろうと思う。こういう角度から、世界の外交評論家、あるいは軍事評論家、または世界の世論がいちずに、アメリカは今日いわゆる軍国主義的な色彩をきわめて濃厚にしておるということが言われております。こういうことを私ども、いろいろな具体的なアメリカの外交あるいは軍事政策の面に、如実にそのことを事実として知ることができますので、総理としては、今日アメリカに対してどういう見解をお持ちであるか、つまり軍事国家と見るかあるいは民主主義国家と見るか、その点の見解を、まず第一番にお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/156
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157・岸信介
○国務大臣(岸信介君) アメリカにおける、持っておる軍備力というものが非常に大きいことは、私も認めております。しかし、国自体の性格をどう見ておるかということになりますれば、私はアメリカは民主主義の国である、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/157
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158・森中守義
○森中守義君 そうしますと、私どもが一番問題になるのは、今日わが国と締結をしておるこの安全保障条約であります。この安全保障条約は四条の中に、言葉として正確でありませんが、ニュアンスとしては明らかに暫定的なものである、こういう表現がうたわれておる。集団的にまたは個別的に日本の安全が保障される状態をアメリカは希望する、そういう場合にはいつでも両国はこの安全保障条約を廃棄する、こういうことが言われております。しかるに、今日の趨勢は必ずしもそう行っていない。そこで、私は岸総理はこの日米が取りきめておる安全保障条約は、現状において、現下の趨勢においては永久条約だという判断をお持ちであるか、あるいはまた、この文字の、あるいは意味のなす通りに、日本の防衛体制がいつどういう状態で確立されるかは今後の問題でありますが、この廃棄の意思があるかどうか、その点を明確にお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/158
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159・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 安保条約は、第四条に規定してありますように、効力終了に関しての規定がございまして、決してこれは恒久的なものでないことは言うを待たない。また、独立国たる日本のこの立場から申しましても、外国軍体の駐とんという事態は、私どもの民族的な意識から申しましても、そういうことのなくて日本の安全が確保される事実を早く作り上げるということは、非常に望ましいことである。その意味において、この安保条約というものがなくとも日本の安全が保障されて、安心感に、不安を感じないという事態を早く作っていかなければならないと、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/159
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160・森中守義
○森中守義君 ただいまの答弁である限りは、了承できます。しかし、これが一種の暫定的な条約であるという性格が、先般総理が訪米をされ、そうしてそこで発表された共同声明、及びそれに関連して設置された安保委員会、これは明らかに日米間の長い将来にわたって永久性を持つ一種の共同防衛体制という新しい用語が生まれました。そういうように考えていけば、私は、やはり基本が安全保障条約であるとするならば、やはりこれは永久条約的な意味合いのものではないか、こういう工合に考えるのですが、その点についてはどういうようにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/160
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161・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 森中委員の御意見でありますが、私は先ほど申し上げましたように、また安保条約の規定の上にも明瞭に書いてありますように、これが永久的なものであると決して思っておりません。また、これを永久的ならしめるような意図は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/161
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162・森中守義
○森中守義君 安保委員会あるいは安全保障条約、日米行政協定、こういう一連の日米間の取りきめによってわが国の防衛体制は進んでおるということは、何人も異存がないと思うのです。先般この委員会に国防会議の議事録が提示されました。しかし、それは単なる何月何日にどういう案件を審議したということであって、審議の内容は明らかにされていない。その審議の内容というものは、いわゆる日米の共同防衛体制を確立していくためのわが国の防衛が論議されておる、こういうように私は理解をいたします。そうしますと、先刻の伊藤委員の憲法の問題を中心にした自衛あるいは防衛、こういう概念は、いわば共同防衛という建前からするならば、幾ら日本だけが自衛あるいは防衛という見解に立って事を進めていっても、そのことでは終始をしない。なるほど憲法の中では交戦権もない、あるいは完全なる武力もない、こううことをうたっておりますが、日米の連帯責任的な意味合いで日本の防衛体制が進んでいくならば、自動的に自衛、防衛という概念は、実際問題としてもそういうものはぬぐい去られておりますが、理論的にもそういうことが成り立つと思うのです。その点についてはどういうようにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/162
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163・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 今御質問の点は、私二つあるように思うのですが、一つは、日本が持つところの自衛権という、また自衛隊の本質に関する問題でありまして、これはあくまでも、先ほど来論議をいたしておりますように、限度があるものである。そうして日本の安全を完全に保障し、安全を維持するのに、それではそういうふうな限度のある一つの力だけであらゆる何に対処できるかどうかという問題に関しましては、先はど永岡委員もいろいろと御質問されましたが、
〔理事永岡光治君退席、委員長着席〕
どういう侵略が行われ、どういう形態において日本の安全が脅かされるかというようなことは、いろいろな面から検討しなければならぬ。それのいかなる場合においても自衛隊だけで対処できるということは、これはだれも言い切れないと思うのであります。
そういう意味において、しかし、日本が独立国であり、日本の安全を保障してもらって、国民が平和的に生活を営み、文化の向上や世界の平和に貢献できるという事態を作るのには、いかなる形においても他からの不法不当なる侵略が行われないようにするためには、日本の自衛力だけではこれは十分でなくて、今の安全条約というものができて、日米共同の力によって日本の安全が保障されるという建前になっておると思うのであります。
そこで、現に陸上部隊におきましても、日本の陸上の自衛隊の増強に伴って、アメリカの陸上の戦力部隊が撤退をいたしておる実例から見ましても、先ほど私が申し上げるように、やはり日本の祖国の防衛については、他から不当に侵略されないということについては、第一段としてはわれわれの力によってこの自衛をしていくということを整備をして、そして大きな侵略というものは、これは私が申し上げるまでもなく、一国だけでとうていできるものじゃない。これはそこに国連のいろいろな活動もあり、国連に対する要望もあり、将来の国連の発達の動向も考えなければならぬのでありますが、どうしてもそういうふうな集団的なもとにおいて保障されてくるということに、私はなってくるのであろうと思います。
こういう意味におきまして、われわれとしては、われわれの力でできるだけの必要最少限度のものは、自衛権の何として防衛力を持つし、また、その足らざるところについては、日米安全条約の力によって何していくか、さらに大きな、一国の安全をはかるというのは、単に、私が申し上げるまでもなく、いわゆる軍備といいますか、そういう実力を備えることだけで安全じゃないので、外交の面において大いに、世界に戦争の起らないような、侵略の起らないような事態を作っていくことが、根本でなければならぬ。そういう意味において、われわれも、あるいは世界の軍縮の問題や、あるいは核兵器の使用禁止の問題等についても、十分な努力をして、世界のそういう侵略の起らないようにいたしたいということとあわせてこれはいかないと、日本の安全というものはなかなか確保されない、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/163
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164・森中守義
○森中守義君 今総理がお答えになったように、総合的に経済や外交や、そういう面からの安全保障ということは、これはあなたよりもむしろ私どもが望んでいる。それで、今質問の焦点は防衛の問題なんです。
それで、もう一つ伺いますが、やはり政府の方で、わが国の防衛力をどの程度まで持っていっていいかという検討をされる場合には、こういう平時の場合の法律がどうであるとか、安全保障条約がどうであるとかいう、そういう問題ではないと思う。どこにどういう兵力がある、どういう兵器をもって襲ってくる、そういう何かの目標を前に置いて、つまり非常事態というのか、そういう瞬間的な事態を想像して、私は、究極的に兵員が幾ら、兵器はどういうものというようなことが考えられていくのが、大体筋道のように思うのです。
それで、今の現行の自衛隊法の八十七条ですか、これによりますと、いわゆる武力の制限をしていない。幾らでもやっていい、この解釈からいけば。自衛隊がその任務を遂行するに必要な兵力を持ち得る、武力を持ち得るというこういうことであります。おそらく、防衛庁当局や岸さんの方では、こういうことを中心にしていろいろと防衛計画をお立てになると思っております。それで、われわれとしては、無制限にいつまでこういう状態が続いていくのか、ここに大きな国民の疑問があると思うのです。昨年も、国会で一万何千名自衛隊がふえております。予算は幸いにして一応頭打ちの状態ではありますが、しかし、その半面、兵器あたりは新兵器がどんどん入ってきている。だから、結論的には、無制限に現在の政府の方ではわが国の防衛力を拡大している。そこにすでに自衛の概念、防衛の概念はなくなりつつあるということを私は指摘したい。それですから、どういうような状態をわが国の防衛の完璧なものだと思っておいでになるのか、それはまたいつごろ完成するのか、そういうことをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/164
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165・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 防衛の完璧ということは、これはなかなか観念から申してもむずかしいのみならず、いわんや、それを実現することはとうてい不可能なことだと思います。特に防衛というものは相対的なものでありまして、いろいろな客観情勢の変化とともに自衛のために必要な最小限度というものも変っていかなければならぬということは、先ほど来、そういう意味において国防計画というものは、防衛計画というものは常に検討し、再検討していかなければならない、適当な修正を加えていかなければならないということを申し上げているのであります。
それで、一体どういうふうな目標かということにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、国防会議で一応われわれは、陸上十八万、さらに、海上及び航空機の何につきましても、それぞれの目標を定めて、それを一応の年次はきめておるけれども、さらに、年次計画を実現する上においては、予算の編成や、さらにそのときの情勢を見て、適当な目標は一応国民には明らかにしておる。しかし、その内容については年次的にさらに再検討して、これを予算的にもいろいろな面から検討を加えていかなければならぬ、かように思っておるわけであります。
そして、これをきめた何に対しては、どういう侵略に対してこういうものを考えているのかという相対的な問題については、当然考えなければならぬじゃないかということについては、先ほど永岡委員の御質問にお答えを申し上げましたように、抽象的にはいろいろな場合をわれわれは想定しておるのでありますが、そのいかなる場合においてもこれに応じ得るということは、これはとうてい考えられない。ここにまあ一つの限界を置いて、自衛のための必要な限度、それの具体的なものにつきましてはさらに専門的に調べて、考え方を資料として差し上げる、こういうことにいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/165
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166・森中守義
○森中守義君 ちょうど質問時間が参りましたので、これ一問で終りますが、最後に一つだけ承わっておきたいのは、極東においてアメリカを中心に戦争が起きた、こういうことが仮定される場合に、日本も一緒に入ってこい、つまり核兵器を日本が持て、あるいは海外に、戦争に参加をせよ、そういう場合に、総理はどうしても現在の憲法上そういうことはできないということで断る。それでアメリカの方では、一流のどうかつ外交で、言うことを聞かなければ経済封鎖をするというような、きわめて強烈などうかつをされた場合にも、なおかつ、きん然と憲法を守る意思がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/166
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167・岸信介
○国務大臣(岸信介君) もちろん、私はそういう場合におきましても、そういう場合においてはますます強い決意でもって、憲法を守るつもりでおります。(「議事進行」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/167
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168・藤田進
○委員長(藤田進君) 議事は進行しております。
この際お尋ねをいたしますが、岸総理は五時までに官邸に帰れるようにとの申し出であります。それで、あと十六分あまりありますが、まだ御質疑がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/168
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169・矢嶋三義
○矢嶋三義君 私は質疑があるわけですが、これは総理にも通告してあります。それから委員長にも通告してあるわけですが、先ほど来与野党の理事の話し合いで、きょうどうも工合が悪いからということでありますから、そして次回にその機会を持っていただけるということでありますから、次回に短時間でも総理に質疑を受けていただける、また委員長がそういうふうに取り運ぶということであれば、私は本日の質疑を保留いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/169
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170・藤田進
○委員長(藤田進君) この際、総理にお伺いいたしますが、私はまだ総理から確答を得てはおりません。実は先ほど言明されたように、解散の問題も少くとも本月中ということでありますし、諸案件も当委員会にありまして、恩給に関しても委員の多数から総理の出席を要求されて、委員長の手元に参っております。なお、お聞きの通り、本件につきましても、なおお尋ねの向きがあるように思われますが、来週月曜、二十一日以後要求があれば、繰り合せて御出席なさることができるかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/170
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171・岸信介
○国務大臣(岸信介君) この今内閣委員会において御審議中のもの、特に防衛庁に関するものや、あるいは恩給等に関するものは、重要中の重要な法案だと私ども考えております。従いまして、御審議の必要上、私がまかり出て質疑に答えることが御審議の進行を助けるということでありますれば、万障繰り合せて出席をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/171
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172・藤田進
○委員長(藤田進君) ちょっと、速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/172
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173・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/173
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174・八木幸吉
○八木幸吉君 私は、まず自衛隊と憲法第九条の関係について、お尋ねをいたしたいと思います。
憲法第九条の解釈につきましては、昭和二十一年の憲法制定当時では、吉田首相は、正当防衛権を認めることは戦争を誘発するから、有害無益とまでおっしゃいました。その後第六国会では、武力のない自衛権はある、これは外交その他の手段である、こういう説明が行われたのでありますが、その後警察予備隊が創設され、保安隊ができ、さらに自衛隊に成長するに及びまして、在野時代に自衛隊違憲論を唱えておりました鳩山首相のごときも、自衛隊による日本の防衛は国民の常識となったから、現行憲法のままでも自衛隊は持てる、また、自衛隊は違憲の疑いがあるけれども、国会が認めたのだから、憲法の解釈を変えてもよい、こういう答弁が出るに至りました。これを要するに、国防体制の増強の事実の前に、憲法の解釈を変えていったという実情にあるわけであります。
そこで、岸内閣として、総理のこの問題に対する明確な御所見を承わりたいと思うのでありますが、第一に伺いたいのは、憲法第九条の解釈として、岸総理は、国際紛争を解決する手段としてのいわゆる侵略戦争はこの九条で否定しておる、自衛戦争は差しつかえない、こういうふうなお考えのように察するのでありますが、さようでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/174
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175・岸信介
○国務大臣(岸信介君) いわゆるこの侵略戦争とか、あるいは自衛戦争という言葉には、それ自体に相当なあいまいな文句がございまして、先ほどもお答えを申し上げましたのでございますが、私は、この独立国としての自衛権、また、他からその意味において急迫不正の侵害を受けた場合に、それを他の手段で排除することができない場合に実力をもって排除するということは、これは憲法九条が禁止しているものではない、憲法九条においてもそれは認めているものである、かように解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/175
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176・八木幸吉
○八木幸吉君 憲法九条一項も二項も同じような考えで貫かれておる、こういうお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/176
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177・岸信介
○国務大臣(岸信介君) その通りだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/177
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178・八木幸吉
○八木幸吉君 そういたしますと、憲法九条第二項の、「前項の目的を達するため、」ということは、芦田理論や溝瀬理論のように、やはり「国際紛争を解決する手段としては、」、これにかかっている。従って、戦力は、自衛戦力は持てる、こういう解釈になると思いますが、さようでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/178
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179・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 第一項全体を受けて第二項が私はできていると思います。従って、今私が申し上げているような、この自衛権の範囲に属する実力を持つことは、これは二項が禁止しておる戦力には当らない。戦力の中にはそういうものは含まない。すなわち、二項においてそういう実力を持ち、それをかりに戦力という俗称をもってすれば、戦力かもしれませんが、そういう一つの力を持つことは、いわゆる二項の禁止している戦力には入らない、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/179
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180・八木幸吉
○八木幸吉君 ただいま総理は、「前項の目的を達する」という意味は第九条の第一項全体を受ける、こういうお話でありましたが、第一項全体を受けるという解釈では、国際紛争というものは、自衛戦争でもやはり国際紛争の一種である、こういう美濃部博士のような見解をとりますと、自衛戦争も、また侵略戦争も、ともに第一項は禁止している、こういうふうな解釈になるので、第一項全体を受けるということになりますと、必ずしも第二項の戦力が侵略戦力のみではない、こういう解釈にもなるわけでありますから、岸内閣の見解としては、「国際紛争を解決する手段としては、」、これにかかる方がより明白であると思いますが、その点は一つ法制局長官と打ち合せの上で、御返事いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/180
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181・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私は、さっき申し上げましたように、やはり第一項全体を受けていると解釈をいたして差しつかえないと思います。先ほど申しましたような意味におきまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/181
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182・八木幸吉
○八木幸吉君 それではさように承わっておきまして、しからば、第二項は、自衛戦争は差しつかえない、何ら禁止しておらぬというのであれば、国の交戦権も同様ということに解釈せねばならぬと思いますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/182
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183・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 交戦権ということについては、その内容が必ずしも学説上一定していないように思われますが、私どもはこれを、戦争状態に基き交戦国の持つ国際法上の一種の権利というように考えておるのでありまして、たとえば、そのうちには占領地行政の権利というようなものも含まっておる、交戦権の中には当然含まっておると思うのでありますが、自衛隊が持っておる権利の中には、そういうものを含んでおらない、すなわち、そういう意味において、国際法上いっておる交戦権というものは持たない、こう私は解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/183
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184・八木幸吉
○八木幸吉君 ちょっと言葉がはっきりしませんが、国の交戦権は自衛のための交戦権であれば、第九条第二項は禁止しておらぬと、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/184
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185・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 交戦権は認めていない。交戦権というものはどういうことかというと、今の国際法上一つの交戦権という観念がありまして、それは持っておらない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/185
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186・八木幸吉
○八木幸吉君 戦力と交戦権は表裏一体をなすものである、戦力は戦う実力であり、交戦権はこれを行使するための法律的の規制である、こういう意味からいえば、九条の第一項の前段が、自衛戦争の、自衛のための戦力を持つことを許す、こういうのであれば当然、後段の国の交戦権も、自衛のための交戦権は禁止の範疇に入らないというのが、私、理論上当然であると思うのであります。たとえば二十一年の七月の八日に、林平馬議員に対して吉田総理が御答弁になったところでは、自衛権による交戦権、侵略をする交戦権、この二つを分けることは、多くの場合において戦争を誘発するものであるがゆえに、分けることは有害だ、つまり交戦権は分けられぬ、こういうことを言っておられます。また佐藤長官も、表裏一体という意見を述べられております。これは第十九国会で、私の交戦権の内容に対する答弁でありますが、今の九条の二項の前段と後段を分けて、交戦権はすべて自衛のためであっても持たない、こういうことになれば、戦争は事実によって不可能だ、こういうことになると思うので、どうも理論の一貫性がないように思うのですが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/186
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187・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私どもは、いわゆる交戦権というものと、自衛のために行動する、いわば自衛行動権と申しますか、自衛のために行動するところの権利というものは、これは違う。いわゆる国際法上の交戦権はこれを持たないが、自衛のための行動はできる。すなわち、不正急迫の侵害に対して、これを排除するために実力を行使するということは、これは交戦権という観念ではない、こういう解釈に立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/187
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188・八木幸吉
○八木幸吉君 これは十九国会における内閣法制局長官の答弁でありますが、交戦権は具体的にいえば、敵国領域で戦争する権利、敵船または中立国の船舶を臨検し拿捕する権利、侵入した外国人を殺傷することのできる権利なのである、こういう答弁がございます。これと同意味の答弁を、佐藤法制局長官はなされたことがあります。敵国の人が日本に入ってきた場合に、これを殺傷することができないというような憲法の規定を是認されましたならば、一体、どうして国の防衛を全うすることができますか。この交戦権の禁止規定があるがために、たとい、九条の第一項が侵略戦争のみを禁止しておっても、二項後段の交戦権禁止の規定によって、第九条全体が、自衛、侵路、両方の戦争を禁止しておるのだというのが、これが多数学者の説であります。でありますから、交戦権は全面的にこれは二項で認めていないものだという解釈をおとりになれば、自衛戦争もできないということにならざるを得ないと思うのでありますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/188
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189・林修三
○政府委員(林修三君) ただいまの点でございますが、これは従来からの私たちの答弁いたしておるところでございます。交戦権というのは、先ほど総理からお答えいたしました通りに、戦時に際して交戦国が持つ権利。その内容といたしましては、たとえば占領地行政、あるいは中立国船舶あるいは敵国船舶の拿捕、それから、あるいは武力を――人を殺傷するというようなことも、まあ交戦権という観念には入ると思います。しかし、いわゆる自衛行動権というものは、これとまた別な観念でございまして、自衛権に基いて急迫不正の侵害を排除する。この内容には、当然武力の行使というものは含まれるわけでありまして、いわゆる交戦権――国際法上にいわれる交戦権がなくても、自衛権、自衛行動権という内容で、国内に侵略者として入ってきた場合の侵略者の兵力に対して抵抗する、あるいはこれに対して武力行動をとるということは、自衛のための必要な措置として当然認められる。交戦権がないからそういう自衛行動権は認められないというものではないと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/189
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190・八木幸吉
○八木幸吉君 今の法制局長官のお話ですと、そうすると、佐藤長官とは意見が違うのだ、こういう意味でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/190
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191・林修三
○政府委員(林修三君) 全然同じでございます発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/191
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192・八木幸吉
○八木幸吉君 私は、全然同じだということで、今の説明だけでは納得ができないのであります。たとえば、今引用いたしましたように、外国人を国内において殺傷する権利がない、軍が殺傷する権利がないということを、速記ではっきりおおっしゃっておる。それと、今の自衛行動権として殺したってかまわないということは、私は違っておると思うのですが、それが同じだというのは、一体どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/192
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193・林修三
○政府委員(林修三君) 交戦権という概念の範囲には、そういうものを入り得るということを申したと思います。しかし、自衛権というものの範囲は、また別の面からの観点でございまして、他から侵略を受けた場合に、これを排除するために必要と認められる措置をとる、その内容として武力行使ができる、実力の行使ができる、これはいわば国家の基本権としての自衛権が認められている以上、当然にその権利は認められておる。これはいわゆる交戦権というものがないということとは別の問題です。この点は従来から同じ観点に基いて御答弁しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/193
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194・八木幸吉
○八木幸吉君 交戦権の概念の中には、外国人を殺傷するということも入る。その交戦権が禁止されておるのに、自衛権の行動の範囲内ならば殺してもかまわない、しかも、その二つの概念が矛盾しないということは、私は常識からいって納得できないのですが、(「その通り」と呼ぶ者あり)おそらく、ここにおられる方は大部分が納得できないと思うのです。いかがでございます、もう少し巧妙なエクスキュースというものはないでしょうか。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/194
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195・林修三
○政府委員(林修三君) これは、自衛のための自衛権というものは、国家の基本権として認められているわけでありますが、その自衛のために必要な措置というもの、いわゆる自衛行動権、これは国家の基本的な権利として憲法は否定しておらない、かように私は考えているのでございます。従いまして、いわゆる交戦権という面とダブる面が、その自衛の行動権の範囲内にはいわゆる形式の面から見れば、あるかもしれません。しかし、自衛行動権によってカバーされる範囲のものは当然認められるものだ、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/195
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196・藤田進
○委員長(藤田進君) なお、ふに落ちない点もあろうかと思いますが、本日のところは、先ほどお聞きの通りの事情もありますから、来週総理が出るというここに言明があるわけでございますから、その際またお尋ねいただくことにして、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/196
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197・八木幸吉
○八木幸吉君 まだたくさん残っているのですが、五時になりましたので、ほかにお出ましになるようですから、解散になる前にぜひ一つおいでいただきたいと思います。(笑声)去年九月以来の懸案でありますから、どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/197
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198・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/198
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199・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記をつけて下さい。
それでは、両案につきましては、本日はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
午後五時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814889X03019580418/199
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