1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十三年四月十五日(火曜日)
午後一時二十六分開会
—————————————
委員の異動
四月十一日委員岡三郎君辞任につき、
その補欠として秋山長造君を議長にお
いて指名した。
四月十二日委員吉田法晴君辞任につ
き、その補欠として伊藤顕道君を議長
において指名した。
四月十四日委員手島栄君、石原幹市郎
君及び伊藤顕道君辞任につき、その補
欠として吉田萬次君、大谷藤之助君及
び吉田法晴君を議長において指名し
た。
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 湯山 勇君
理事
野本 品吉君
吉江 勝保君
竹中 勝男君
常岡 一郎君
委員
有馬 英二君
川村 松助君
林屋亀次郎君
三浦 義男君
秋山 長造君
高田なほ子君
松永 忠二君
大和 与一君
吉田 法晴君
加賀山之雄君
国務大臣
文 部 大 臣 松永 東君
政府委員
文部大臣官房
総務参事官 斎藤 正君
文部省初等中等
教育局長 内藤譽三郎君
文部省管理局長 小林 行雄君
事務局側
常任委員会専門
員 工楽 英司君
—————————————
本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠互選
○教育、文化及び学術に関する調査の
件
(道徳教育の実施に関する件)
○義務教育諸学校施設費国庫負担法案
(内閣提出、衆議院送付)
○盲学校、ろう学校及び養護学校への
就学奨励に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
○学校教育法等の一部を改正する法律
案(松永忠二君外二名発議)
○公立の高等学校の夜間課程の教職員
に対する夜間勤務手当の支給に関す
る法律案(吉田法晴君外二名発議)
○女子教育職員の産前産後の休暇中に
おける学校教育の正常な実施の確保
に関する法律の一部を改正する法律
案(高田なほ子君外二名発議)
○産業教育振興法の一部を改正する法
律案(竹中勝男君外二名発議)
○派遣委員の報告
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/0
-
001・湯山勇
○委員長(湯山勇君) これより文教委員会を開会いたします。
委員の異動について報告いたします。四月十一日岡三郎君が、また十二日には吉田法晴君が委員を辞任され、補欠として秋山長造君及び伊藤顕道君が選任されました。また、十四日には伊藤顕道君、手島栄君及び石原幹市郎君が辞任され、その補欠として吉田法晴君、吉田萬次君及び大谷藤之助君が選任されました。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/1
-
002・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 本日理事有馬英二君、松永忠二君から、都合により曲事辞任の申し出がありました。これを許可することに御異議ございませんか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/2
-
003・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 御異議ないと認めます。
この際、理事の補欠互選を行います。互選の方法は、先例により、委員長の指名によりたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/3
-
004・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 御異議ないと認めます。
それでは、委員長は、理事に吉江勝保君及び竹中勝男君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/4
-
005・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 先刻開きました委員長及び理事打合会の経過について報告いたします。
まず、懸案になっております教職員の勤務評定に関する参考人につきましては、種々協議いたしました結果、すでに委員会で決定をみております基本線に従って、委員長において再交渉し、できるだけ早く実現をはかることに意見の一致をみました。
次に、本日の日程といたしましては、四月一日の委員会において議題といたしました道徳教育の実施に関する件につき、引き続き質疑を行い、次いで現在本審査になっております法律案、政府提案のもの二件、本院発議の四件について提案理由の説明を求めることにいたしました。そのあとで、先日行われました委員派遣の報告を行い、あわせて義務教育諸学校施設費用庫負担法案の質疑を行うことにいたします。また、時間が許せば著作権法の一部を改正する法律案、その他の審議に入る予定であります。
なお、社会党の理事からなるべく早い機会に文教政策について総理大臣の出席を求めたいとの強い要望がありましたが、本件については決定するに至りませんでした。
以上、報告の通り取り運ぶことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/5
-
006・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 御異議ないと認めます。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/6
-
007・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 速記をつけて。L1発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/7
-
008・湯山勇
○委員長(湯山勇君) まず、道徳教育の実施に関する件を議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/8
-
009・吉田法晴
○吉田法晴君 先般の委員会で、三月三十一日お茶の水女子大学講堂における道徳教育連絡協議会における大臣のあいさつと、それから初中局長の説明をめぐりまして質疑をいたしました。その際に速記録を取り寄せてなお質疑を続ける、こういうことになっておったのであります。その後大臣のあいさつ要旨、それから初中局長の説明要旨をいただきましたが、全部であるかどうかはわかりませんけれども、そのとき言われたおもな点は、この中に入っておるかと思うのでありますが、この両要旨、それから先般の委員会の大臣及び内藤局長に対する質疑を通じても、大臣と内藤局長の意思表示、あるいは答弁の間には、食い違いがあることは明瞭であります。それはたとえば教科書の検定問題、あるいは施行規則の改正、あるいは拘束力があるかないかという点について、二人の御答弁の間には、明瞭な食い違いがございます。これについてこまかい点はあとで伺うといしまして、大臣それから局長から、この食い違いについて遺憾の意を表明せられるかどうか、まずお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/9
-
010・松永東
○国務大臣(松永東君) 御指摘になりました食い違いがあるということですが、どうも読んでみましても、私の頭が悪いのかもしれませんけれども、別段そう食い違いはないと思っておりますが、どういう点が食い違っておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/10
-
011・吉田法晴
○吉田法晴君 一番顕著な例からあげていったのですが、教科書を検定にする云々という点については、大臣はそういうことは考えておらぬ、こういう明確な答弁がこの前ございました。それから内藤局長のお茶の水大学での説明要旨の中には、この措置で十分であると確信しておるが、それでもなお弊害がある場合には、という条件がついてはおりますけれども、将来それを検定にすることも問題になるであろう、こういう言葉が述べられておるし、それからこの前の答弁を見ましても同様な、新聞によってでありますけれども、意見が述べられておる。その点については松永文部大臣は検定制度というものは、私考えておらぬ、検定制度の復活は考えておらぬ、こういうことであります。大臣から一つ御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/11
-
012・松永東
○国務大臣(松永東君) どうも吉田さんのおっしゃるような私たちの食い違いがあるとは思わないのですが、私はもうあのときも、検定とか何とかという問題については、一つも触れておりません。また、これは将来どうなるかわからない問題ですから、触れるはずもございません。ところが、内藤局長のを見てみますというと、将来はそういうことは教育委員会の承認を要することになっておるとか、それをやるというようなことは何も言っておりません。ですからこれは将来のことですから、やるということを断言したわけではないから、別段食い違いがあるとは思えないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/12
-
013・吉田法晴
○吉田法晴君 検定制度を復活する意思はないと全く言い切られる、大臣は。そうすると内藤局長の方は、将来の問題であるけれども、あるいは将来検定にすることもあり得ると、こういうことは言われておるのですから、そこには答弁の食い違いがはっきりあるんじゃないですか。あるいはたとえば指導要領の変更についても、大臣はまだ決定しておるわけではない。こういうお話をされるが、片方は学校教育施行法規則を改正して道徳を教科として実施したい、こういう意向がはっきり述べられておるのでありますから、これは両者の間には答弁の食い違いがあります、あるいは拘束力がないと大臣は本会議で答弁されておる。それからこの前のときもそうであったと思うが、ところが、内藤局長はこれは二ヵ所でありますけれども、拘束力がないということで返上をするというのはおかしい。で最後には、県教育委員会や市町村教育委員会は、指導を徹底して全国津々浦々に行われるよう要望する、こういう強い言葉で言われておって返上はあり得ない、拘束力はないという大臣の答弁を、裏からでありますけれども、否定する発言がなされておることは、これは全部を見れば明らかになっておると思う。それを言わんがために、これは何十分かかったか知らないけれども、初中局長の発言の大半がそれに注がれておる、こう考えてもよかろうと思う。三点について明らかに食い違いがございます。違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/13
-
014・松永東
○国務大臣(松永東君) 私はその当時、私のその当時の気持を率直に申し上げたつもりでおります。しかしてそれは本会議でも、委員会でも終始申し上げておる。さらにまた、内藤局長の答弁もやはり同様で、私とちっとも食い違ってはいないと私は思っております。それは将来のことは、また委員会とか何とかそういう正規の手続を経て、そうして変更する場合もあるでありましょう。しかし、あの当時並びに現在においても、私の意思は変っておりません。ですから私の主張と私の考え方は今申し上げた通りでございますが、内藤局長のその当時答弁いたしました答弁、あるいはそのお茶の水のあそこで申し上げたような趣旨は、内藤局長から直接に御答弁申し上げた方がよろしいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/14
-
015・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 最初に、施行規則の改正の問題が出ましたけれども、この施行規則の改正につきましては、大臣もたびたび申し上げていらっしゃると思うのでありますが、たとえば参議院の予算委員会、これは三月十四日でございます。それからそのほかに、衆議院の予算委員会では二月二十日に門司委員の質問に対して、私からもお答えいたしております。なお、三月二十六日衆議院の文教委員会で野原委員の質問に対し大臣が施行規則の改正については言明していらっしゃいます。なお、二月二十七日の文教委員会が松永委員の質問に答えまして、これは私から施行規則の改正はお話しいたしております。なお、高田委員の質問に対し、文部大臣は同日同じように施行規則の改正及び指導要領の改正について言及していらっしゃるのであります。なお、松永委員の質問に対しても、同様に大臣からこの点はお答えになっております。なお、三月二十八日の参議院本会議におきましても、特に松永委員の質問に答えて文部大臣より将来学校教育法施行規則を改めて道徳の位置づけを明確にいたしたいと、こういうふうに御答弁になっていらっしゃいますが、この施行規則改正云々の問題につきましては、国会における大臣の言明、あるいは私の申し上げた線と、お茶の水の会議は全然食い違ってないと私は考えておるのであります。
なお次に施行通達の法的拘束力の問題でございますが、これは私も大臣も、法的に拘束力のないことは申し上げているのでございます。私どもとしては、指導助言を、できるだけ実施していただきたいということを要望しておるのでありまして、施行規則の改正をして法的に拘束力があるなら、私どもは要望する筋合いでなくて、むしろ当然指示もし、命令すべき立場だと思うのであります。もちろん、この指導通達というものが、将来改正を予想されるところの学習指導要領の骨子をなすものでございますので、この中身は、やはり私どもは、国の基準と考えておるのでございます。こういう点から私どもは施行規則を改正して、学習指導要領という形になれば、それは守る、文部大臣の通達なら、これは守らなくてよろしいのだ、こういう考え方は、形式論ではないかと思うのでございまして、私どもとしてはいかなる通達も、ぜひ守っていただきたいと思う。また、そう熱望するのが、文部当局の立場だと思うのであります。この場合に私どもとしては、できるだけ通達で実施をしていただきたい、こういうふうに申し上げたのであります。
いま一つは、教員組合の諸君、あるいは各学校が、道徳教育返上ということは許されぬと申しましたのは、教育課程の編制権はこれは教育委員会にございますので、教育委員会がやらんということは、これは法的拘束力がないからやらないということもあり得る。しかしながら、教育委員会がやるという意思表示をした場合には、学校では返上は許されない、こういう意味に申し上げたのでございます。
それから最後の副読本の検定についてお尋ねがございましたが、これは目下のところ、私どもも検定を考えております。なぜかと申すなら、私どもは教科書を作ること自体に賛成していないのでございます。教科書になりますと、昔の修身に返るおそれもございますので、できるだけ教育方法については幅を広くしたい。そこで教師の説明なり、あるいは物語なり、あるいは読み物なり、あるいは映画やスライド、テレビ、あるいは放送、あるいは、日常の子供たちの作業、あるいは身近かの生活、こういうものを通じてできるだけ広く子供たちの生活の中から道徳教育を導いていただきたい、かように念願するものでございますから、教科書を使うことは本来の趣旨ではございません。そこで、いろいろ副読本が出て弊害があることも皆さん御承知の通りでございますが、私どもは特にこれを教科書に準じて使わせるような場合には、教育委員会の承認にかかわらしめたい、こういう指導通達をいたしたのでございます。しかしながら、なおそれでも弊害が予想されるならば、今後断たないなら、そういう副読本の検定というようなことも考えられると思うので、そういう問題になるという意味で提起したわけでございまして今現在私どもは検定制度を考えておるわけじゃないのであります。むしろ、この点も私と大臣の間に食い違いがないと、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/15
-
016・松永忠二
○松永忠二君 その点は、私はやはり拘束力の問題については、食い違いがあるのじゃないか。あなたがお茶の水で言われたところに、この通達に準拠していただきたいということを言われておる。この通達は、どういう通達かというと、この前私が指摘をした通りに道徳の時間を特設し、道徳指導の充実をはかることとする。それから小学校及び中学校に準じて実施することとするというふうに通達が出ている。実施することとする、実施するというそのことが、あくまでこの通達に準拠していただきたいということになれば、これはやはり拘束力あるものとして通達をやられておるわけなんです。ところが、大臣は二月二十七日にこういうことを私の質問したのに答えられた。全国に通達はいたしますが、全国の都道府県になるべくこれを一つ賛成してもらって御採用願いたいという希望は、もちろん持っておることだけは御了承願いたい。それから試験的にやってもらって、そして八月に学習指導要領ができますまでの大体の全国の空気、全国の世論等も参考に入れて善処したいと、こういうふうに言われている。そうなってくると、試験的にやってもらって、それで大体の全国の空気や全国の世論等も参考に入れて、そうして学習指導要領ができたらばということだと思うのです。ところが、あなたの言っているのは、あくまでもこの通達に準拠していただきたい。それでその通達は実施するということなんですからね。あくまでこれをやれ、通達通りやるのだというのだから、これはもうだいぶ拘束力あるものとしてあなたは発言をされている。そこが違うと私たち言っているのです。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/16
-
017・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 私どもとしては、文部省から出す通達は、守っていただきたいと思うのでございます。ですからこれは特に学習指導要領の一般編の運用基準について、文部省が示したわけであります。ですからこれはどういう形になるかとおっしゃれば、法形式は指導助言の形式で、施行規則とか、あるいは学習指導要領の形をとっていない。これは明瞭でございます。しかしながら、中身につきましては、私どもはこの道徳の実施要領というのが、これが将来改正を予想される道徳教育に関する指導要領の骨子になるものでございますから、これに準拠していただきたい、もちろんこれに準拠しても相当幅があるわけでございます。あれをやる場合に、どういうふうに区分しておやりになるか、これは教育委員会でおきめになることであり、また学校でいろいろ計画されると思う。非常に幅のある通達でございますから、準拠するということは私一向差しつかえないのではなかろうか。やる以上は、あの方式でお考えをいただきたい、こういう意味に申し上げたのであって、大臣が申し上げた法的拘束力云々の問題とは、私直接関係ないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/17
-
018・松永東
○国務大臣(松永東君) これは先ほどから申し上げる通り、私は今内藤局長の言うことと、私のこの間から申し上げておることとはちっとも違っておらぬ。(「違っておるよ」と呼ぶ者あり)なるほど通達を出すのは、通達に準拠してやる、いういうこと、あるいは通達を順守して(「あくまでもとある」と呼ぶ者あり)それはあなた、いやしくも役所から通達を出すのに、これは準拠せんでもよろしい、どうでも御自由になさいということは言わんで、通達を出す以上は、ぜひ準拠してもらいたい。そうしてこれは守ってもらいたいという気持で通達を出すのですから、それは当然です。しかし、それは法的拘束力はないということは、さっきから申し上げている通りなんです。ですから、これはそうまで私は両者の意見が違っておるとは私はどうしても、私の頭が悪いのかもしれぬけれども、考えられぬのです。まあ、私はそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/18
-
019・松永忠二
○松永忠二君 そういうふうにあなたがおっしゃるならば、一体なぜこれはここにも言われているように、今回の通達は、文部大臣の教育委員会に対する指導助言の権能を行使したものであると、こういうふうにいわれておるのですね。そういう指導助言だと、こうおっしゃるなら、なぜこの通達を、道徳の時間を特設して道徳教育の実施をはかるよう希望するとか、あるいは小学校及び中学校に準じて実施せられたいとか、そういうことをなぜお書きにならないのですか。通達に実施するとか、指導助言だというなら、その通達は指導助言という形をとるべきでありませんか。法的に拘束力があるがごとき通達を出しておいて、その通達は、あくまでこれに準拠せよと、そういう強引さというものが、やはりこの通達にも出ているじゃありませんか。通達を指導助言だと言いながら、指導助言の形をとっておらないじゃないですか。これは大臣、どういうわけです場か。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/19
-
020・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/20
-
021・松永忠二
○松永忠二君 いやいや、あなたに聞いているのじゃないですよ。指導助言だとおっしゃるなら、なぜ指導助言だということのわかる通達をお出しにならないのか。どなたにお聞かせいたしても、指導助言であるならば、文書を変えたらどうですか。道徳の時間を特設して道徳教育の実施をはかるよう希望するという、あるいは小学校、中学校に準じて実施せられたいと、実施せられたい、実施すると、こうなっている。「することとする。」と書いてある。そういう通達を出しておいてこの通達にあくまで準拠せられたい。それは通達だから、私はむだなものを出したのじゃないでしょうから、おそらくそういうことを、通達が守られることは当然です。私たちは通達というものは、やはり規則に合ったものを出すべきであって、指導助言といいながら、指導助言でないような通達を出されて、しかも、それをあくまで準拠せよというのでは、大臣が意図されているところとはだいぶ違うことが、現実に言われているじゃありませんか。そういうことは率直におっしゃって下さい。別に何も一々同じように口を合わさぬでも、違うところは違うと、言い足らないところは足らないと、いつでも言うのですからね。誤解を受けたかもしれないけれども、趣旨はこうだと、そういうふうにはっきりおっしゃって下さいませんと、こちらでもこだわりますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/21
-
022・松永東
○国務大臣(松永東君) それは今、松水委員の仰せになるところも無理からぬところもありますが、表現上の多少の、それはあなたのおっしゃる通り、あくまでもというような表現をしたかもしれない。しかし、いやしくも通達を出す以上は、文部省としては、あくまでも一つこの通達を守ってもらいたいという気持で出したことは間違いない。しかし、おのずからそれは守らぬでもいい、法的拘束力がないということは、都道府県の委員会がみんな百も御承知であります。でありますから、その表現の仕方が、少しあなたが言われた通り、あくまでも守ってくれと言わぬでも、向うが守らぬでもいいということは、ちゃんと知っているのですから、そういう拘束力がないということは知っているのですから、そこまでこまかくつけ加えて出さぬでも、向うが知っているのですから、指導助言をするのだということは、知っておるのですから、ですから、これに反するというと禁固三ヵ月に処するとか何とかやってみたってそんなことは何にもならない。ですから、それは多少言葉の表現の仕方が悪かった点もあるかもしれませんけれども、決してそれは私の意向と内藤局長の意向が、そう大して違ったもんじゃないということを特に御了承願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/22
-
023・大和与一
○大和与一君 関連。大臣にお尋ねしますが、この前内閣と連合委員会をやりましたね。そのとき私がやはりこの通達について質問しているのです。それに対して大臣が今おっしゃったように、文字通り助言、指導だから拘束力もないし、実行しなくたっていいのだ、こういうふうにちゃんとはっきり、お説の通りだというように書いてあるのですね。それだったら、内藤局長はこんなところで通達のことについて、ことざらに言わなくたっていいのですよ、何も。これを言っているところに、自分の考えているところをぜひとも押しつけたいと、こういう野望が出ているから、けしからぬと言っているのです。そうじゃないですか。あなたの方でそんなことは言わなくたって百も承知なんです。今あなたのおっしゃった通り、通達を守るのが当りまえだと、そうすればことさら、助言指導であるのだったら、上からまたこれにおっかぶせるようなことを敷衍したり、あるいは誇張したりする必要はないじゃないか。それだったらなぜしたのか。局長からそんなことで通達について触れられたのは、要らぬことを言ったのだと、こういうことをお認めになるのだったら、大臣からその点おっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/23
-
024・松永東
○国務大臣(松永東君) 私は要らぬこととは思わぬのですがね。やはりあなた、いやしくも役所から出す以上は、真剣になって出しているのですから、その出した通達を受け取った方は、ぜひ一つこれをやってもらいたいという熱意を示さぬければ、その通達を受け取った人に、ああ、やってもよければ、やらぬでもいいのだなというような気持を持たすような通達じゃ三文の値打もないから、通達を出す以上は、その通達にけんけん服=とまではいかぬでも、とにかくまあ通達を守ってくれるくらいな熱意を持ってくれるように出したものじゃと思うのです。ですから、やはり私がもう繰り返し申し上げておる通り、拘束力はない。従って都道府県の委員会のお方々でよろしいように一つ善処してもらいたいと、こういう意味合いなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/24
-
025・大和与一
○大和与一君 たとえばこの、日教組では通達に法的拘束力はないということをたてにとって通達を返上するという動きがあると、きまってもないのに……。これはまさに挑戦ですよ。こういう言葉を使わぬでもいいじゃないか。それから具体的に言うと、この前の勤務評定のときに、やはり内藤局長は通達を出したわけですね。それは団体交渉の対象でないということが書いてあるのです。これはだれが見てもそういうものだということである場合は別として、相当これは法的にも疑義があるわけですよ。それを一応団体交渉なり何なり、勝手にきめてばあっと流してしまう、それを一生懸命いいこととして守ろうとしている。それがために、現在全国各都道府県においてどんな混乱が起っているか。ハン・ストをやろうとしている、大集団の陳情をやるというような、とんでもない混乱が起っているのですよ。それをすましておいて、そういうことは当然やらなければいかぬと、こういうことは私が言うのじゃなくて、この前の週刊新潮だかに書いてあるのですよ。内藤さんはどんなえらい人か知らないけれども、大臣も政務次官もへのカッパだと、もうまさに文教政策を壟断しているという、こういうようなおそるべきジャーナリストのやや正確な記事が出ていますよ。私はその意図があっちゃ困るということを、あわせて心配しますから、やはり大臣もよほど局長にもいい意味の御指導をなされぬと、やはり言葉になって出てきていますよ。だからそういう点を、あなたのおっしゃることはわかるのだけれども、こんなものを、ことさらにこれに触れなくてもいいので、そのために混乱が起っていますよ。ずいぶんあちこちに起っている。御承知だとは思うけれども。そのことについてははっきり自分の方できめなかったから、あとはもう下の方でやるのだと、こう言って責任のがれをしている。実際は下の方へは強力にやっておきながら、実際は情勢は全部知っておりながら、それは向うにまかしておるのだと、こう言って、こんなところの講演に行くと、あくまでこれはやらなければいかぬと、こういうところに、やはり政治……、おたくの方の指導に対して、下部にいたずらに混乱を起すというおそれがある。それは世論的にも、あるいは対象となる相手方からも相当強い批判もあるし、反対意見もあるのだから、それを十分聞いてやってくれということを、僕らはお願いしているつもりなんですが、それがないのだったら別だけれども、はっきりと百人の者、一万人の者、十万人の者が集まった場合に、半分以上も対象となる人が、これは困るということを言っているのだから、これは十分慎重に話し合いをしてからやろうじゃないかと、こういうこれくらいの気持になれば、通達に対していたずらにこれを上からぐんぐん押えるような言い方をせぬでもいいし、また、ことさらに敷衍をして言ったり、あっちこっちでほらを吹かぬでもいいと思う。そこら辺におせっかいが多過ぎる。それはおせっかいだけではなくて、意図するところが、どうも少し強気に上から、どうしてもやってもらわなくちゃ困ると、こういうふうなやり方が出ているからけしからぬと、こういう気持を持っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/25
-
026・松永東
○国務大臣(松永東君) 大和さん初め皆さんの御主張、まことによくわかりました。今後、省から出します通達については、私も相当注意いたします。特に、その表現の方法等についても留意をいたしましてかくのごとき誤解の起らんようなことに努めたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/26
-
027・吉田法晴
○吉田法晴君 ちょっと関連して。通達について云々ということですが、これは、内藤局長があなたが帰られたあとで説明をしたのかもしれませんが、その説明の内容が問題になっているわけですが、内藤局長その他文部省の責任者が、大臣の答弁なり、あるいは発言と違ったような発言をすることについては、これは今後そういうことがないようにいたしたい、こういう意味でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/27
-
028・松永東
○国務大臣(松永東君) もちろん、その通りでございます。そうぜんというと、あなた、二途に出るというと、適従するところがわからなくなりますから、ですから、それはいやしくも今後はそういうことのないように、表現の方法についても留意したいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/28
-
029・吉田法晴
○吉田法晴君 それでは、先ほどから問題にしましたような点について、大臣は、局長の発言が大臣の答弁と違ったと思われるような発言があったと、こういう点もお認めになるわけですね。(「今後のことだよ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/29
-
030・松永東
○国務大臣(松永東君) これは、私はそうは考えないんですけれどもね。見る人の考え方で、そういうふうに誤解を受けるようなことがあったことは、まことに遺憾だから、これから先、そういう表現の方法がないように留意すると、こういうことを申し上げてきたわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/30
-
031・吉田法晴
○吉田法晴君 大和君から週刊誌を引いての御質問もございましたが、私どもも、これは私が直接聞いたことではございませんが、内藤局長が、私にではございますけれども、大臣はめくら判のほうがよろしい、大臣は自分たちのやりっぱなしでやるようなのをお認め願うのがよろしいと、まあこういう趣旨の発言等があったやに聞くのであります。で、このお茶の水の会合の際における発言についても、私は、そういう精神が内藤局長の腹の中にあると思う。そういう点は、これは過去の分までも含んで許されることではないと、こういう工合にお考えになりますかどうか、重ねて質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/31
-
032・松永東
○国務大臣(松永東君) これは、何ですよ、少し出過ぎた言い方をするこれも表現の方法が悪いかもしれませんけれども、けれどもね、内藤局長ももちろんですが、文部省の連中は、そう私をばかにしちやいませんよ。(笑声)相当私の言うことも聞いてくれております。ですから、今あなたの御説のように、そんな、どうも、つんぼさじきにおきゃいいとか何とかいう考えを持ってくれておらんと思う。ただしかし、その表現の方法が、誤解を招くようなおそれがあったようなことがあるとすれば、これは今後私は大いに留意しようというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/32
-
033・高田なほ子
○高田なほ子君 重ねてお尋ねしますが、今、文部省は、各市町村の、各県単位ですか、教育委員会に対しての指導助言をかなり厳密にやっていらっしゃるのでしょうか。その指導助言は、法的拘束力がないと表現しているんですけれども、かなり拘束力を持った指導助言がされているように思いますが、法的拘束力がないということに対して、行政的にこれを強制するという方法は、私間違っているんじゃないかと思うんです。どういうような考え方で、県の教育委員会に、法的拘束力のないものを行政権として拘束をさせているのか、今どんなふうにおやりになっていらっしゃるのか、説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/33
-
034・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 法的拘束力の問題ですが、私どもは、教育行政上正しいと思うこと、あるいは適切であるということについては、いろいろと教育委員会に指導助言いたします。それは、もちろん、法律上許されておる範囲でございます。従って、法律に反するような指導助言は、もちろんいたしません。従って、私どもは、できるだけ指導助言で事が済むことを希望しております。しかしながら、場合によっては、法律を制定して強制しなきゃならん場合もあるかと思います。私どもは、法律ではっきりいたしますれば、これは明瞭に措置要求なり、あるいはその他の強力な手段に訴えてその実現をはからなきやならんと思っております。しかしながら、法的拘束力のないような場合の指導助言につきましては、おのずからそこに限度があると思う。私どもは、もちろん教育行政が正しい姿において実施せられることを希望し念願いたしております。ですから、できるだけ指導助言でその目的を達するようにしたい。しかしながら、そこに一つの限界がある。あくまでもこれを強制させるというところまでは、指導助言では参らんと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/34
-
035・高田なほ子
○高田なほ子君 いや、今の精神はわかるんですが、そんなら、あくまでも各県並びに市町村教育委員会の自主的な判断というものをもとにしての指導助言だというふうに、今私承わるわけなんですが、そうなって参りますと、文部省の行政権の行使という点については、事教育委員会に関する限り、なかんずく今回の道徳教育に関する限りは、県並びに市町村の教育委員会の自主的な判断というものが中心になる、従って、文部省の言う指導助言というものは、拘束力をやはり持たない、自主的な判断に基いて行われるものである、こういうふうに私考える。こういう考え方を前提にして、今文部省としては県あるいは市町村の教育委員会に対して具体的にどういうような指導をしているか、これを聞いているわけです。私が聞く意味は、東京都の例ですけれども、東京都あたりでは、手引書というものを、もうどんどんこしらえて、そうしてそれを各学校あたりにおろされる段階じゃないか。おろされたものは、これはむしろ現場の教師は強制的にそれを守るように措置されてきているように私思う。ですから、筋としては、文部省は法的拘束力はない、市町村教育委員会の自主的な判断にゆだねると言うけれども、現場の先生は、文部省の考えた通りに強制的な拘束力を今持ってきている。だから、教育委員会に対して、どういうような具体的な指導をしているのかですね、それを少し詳しくお話しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/35
-
036・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 道徳教育につきましては、私ども、先般三月の二十二日に、実施の通達を都道府県教育委員会に流しました。さらに、都道府県教育委員会から管下の市町村教育委員会に適切な指導をしていただくようにお願いしております。なお、三月の三十一日に、都道府県の指導部課長及び学校長等、道徳教育に関する指導的な地位にある人をお集まりをいただきましてこの際、先ほど申しました、大臣からも、私からも、あるいは担当の視学官からも、詳細に文部省の意のあるところを申し上げたのであります。私どもは、やはり教育課程の基準に関するものは、これは学習指導要領という形で出る、教育委員会といえども、やはり基準は守っていただきたいと思っております。そこで、私どもは、指導要領が間に合いませんので、実は道徳教育に関しては指導通達を出したわけです。ですから、この指導通達が今後の道徳教育の指導要領の骨子になるんだ。そこで、その骨子の御説明をしたわけでございます。具体的には各県の教育委員会がこれをどう処理されるかは、各県の教育委員会の御判断だと思う。しかし、教育課程に関する基準をきめる権限は、これは文部大臣にございますので、これを私どもは府県に要望しているわけです。そこで、都道府県の教育委員会で適切な方策を考えられて、特に東京都では、最近道徳教育という手引書をお作りになりました。これを各学校に配付されて、その実施を促進していらっしゃる。こういうふうに都道府県教育委員会なり、市町村の教育委員会が道徳教育の教育課程をこの方針でやる、こういうことに決定された場合は、私は現場の先生方はそれに協力される義務があると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/36
-
037・高田なほ子
○高田なほ子君 指導要綱の骨子の処理については、今の御説明ですと、やはり教育委員会の自主的な処理に待つ、こういうふうに言っておられますが、それでは文部省は現場の学校長を直接呼んで指導をするということは、教育委員会のなすべき仕事を文部省自体がぶんどって直接指導するということはこれは越権行為じゃないか。教育委員会の自主性に待つと言いながら、その拘束力を現場の教師までに直接及ぼすということは、私はこれは行き過ぎじゃないかと思うのですが、この点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/37
-
038・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) これは文部省は教育委員会を主として対象といたしますけれども、現場の先生方のお集まりを願うことも私は差しつかえないと思っております。特にその現場の先生方、指導的な地位にある方々のお集まりを願いまして御協力を仰ぐことは、これは教育行政を末端まで浸透させる上に必要な場合が多くあると思います。特に教職員の研究集会、あるいは講習会等たくさんございます。本年も新教育課程の趣旨徹底の講習会もいたしますし、なお科学技術教育の振興という点から、理科の教員の講習会も、これも大体予算でお認めいただいておりますように、八百八十万円でことしの七月、八月を中心にやる予定であります。なお、九月、十月には道徳教育に関する趣旨徹底の講習会をいたしたいと考えております。もちろん私どもが計画しておりますのは、都道府県の教育委員会に御協力を仰いで、必要のある場合には趣旨徹底をする義務があると私は考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/38
-
039・高田なほ子
○高田なほ子君 私は、そういう説明がありましたけれども、やはり教育行政の円滑な運営ということの面から言えば、教育委員会の自主的な権限というものに君臨するという文部省の権限は私は行き過ぎじゃないかと思う。どういう法律に基いて現場の教育を直接指導なさるのか、法律的根拠も伺っておきたいと思う。今後現場の教師を常に文部省が呼び寄せて、文部省の意図するところを、指導助言の場違いで強制的にこれに訓辞を与えるなんということは、私は越権行為ではないかと思うのですが、この点の御見解を承わりたい。
それからもう一点伺いたいことは、内藤さんのごあいさつの中に、日教組では、通達が法律的拘束力がないことをたてにとって「道徳」を返上する空気がある、こういう表現があります。私は別に自分が日教組出身だから言うわけではありませぬが、日教組ではその道徳を返上するというようなことを今まで言ったこともなければ、私もそういうことは承知したことがないのです。むしろ現場の先生方は、現在までの社会科、あるいは全教科を通して道徳教育というものに対しては、非常に真剣に取り組んでおられる。どこをもって道徳を返上する空気があるとおっしゃったのですか。私はこういうことはあなたの捏造じゃないかと思う。昨日たまたまラジオを聞きましたところが、松永文部大臣がどこかの学校の道徳教育を視察された模様が録音放送になって出ております。非常に御満悦の御様子だった。そうして最後に、これはなかなかよくやっておるわい、内藤君、日教組、日教組とそう言わなくてもよいじゃないかというようなのが放送に出ておる。つまり現場の先生方は道徳なんかは何も返上していない。道徳なんか返上しておりませんよ。一生懸命今日までおやりになっておる。そのことは予算委員会でも、大臣は、現場の先生方は今まで道徳教育を非常によくやっておられるということを言っておられるのですけれども、あなただけが日教組が道徳を返上する空気があるということを言っておられる。こういう挑戦的なことをおっしゃるものではない。実情は、道徳をどこに返上しておったのですか。天下りの道徳に対して私どもは反対です。おそらくこの文教委員会の籍におられる先生方は、天下りの道徳教育ということについては、みんな批判を持っていらっしゃると思う。そのことに対して反対をしない方はないと思う。この民主主義の時代に……。あなたの言う、この日教組に対する道徳を返上する空気というものはむしろ誹謗に値する。なぜこういう誹謗したことを言うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/39
-
040・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 最初のお尋ねのは、文部省設置法の第八条十三号に「左のような方法によって、学校管理、教育課程、学習指導法、生徒指導その他初等中等教育のあらゆる面について、教育職員その他の関係者に対し、専門的、技術的な指導と助言を与えること。」、こういうふうに書いてありますので、私どもは現場の先生方に専門的、技術的指導、助言を与える義務があると、かように考えているのであります。
それから、次のお尋ねでございますが、日教組が道徳教育返上の指令を出しましたのは、たしか三月十三日ですか、私正確な日は覚えておりませんが、中央執行委員会で、道徳教育と勤務評定についての反対の指令を出しておりますことは、先生方御存じだと思うのであります。それで私どもは、別に東京都が、都の指令で都教育委員会の立場から、この道徳教育を推進してらっしゃるが、その他の県で道徳教育の返上の空気のあることはおそらく先生方も御存じだと思うのであります。私どもはもちろん全教科でやるという建前はくずしてないのです。全教科で道徳教育を指導するにしても、やはり指導理念なり、指導目標というものがはっきりしてなければならぬと思うのです。その全教科でやっているものを補充し、あるいは深く掘り下げ、あるいは断片的なものを統合するというような意味で、時間の特設を主張し、またそれがあらゆる道徳教育を集約し、さらに展開するというような形において、よりよき道徳教育の充実をはかりたい、かような考え方から、道徳教育を推進しているのであります。これに対して日教組の方々は、時間特設に反対だというお考えなんです。そこで、この指導通達返上というようなことが所々に起きているのは、これは事実でございます。すでに和歌山県、あるいはその他数県にそういう事態が起きていますので、私どもとしては、できるだけ私どもの考え方をお示ししてこの通達が守られるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/40
-
041・高田なほ子
○高田なほ子君 これは道徳を返上するのじゃないんですよ。天下り道徳については話が違うんです。ここにあなたの書いてらっしゃるのは、道徳を返上する、少くとも現場の教育を守るべき立場にある教師が、道徳を返上するなどということはゆゆしい問題です。ここは当然時間の特設、あるいは天下り道徳という立場に立っての反対でありますから、こういう誤解をわざわざ招くような表現というものは、当然慎んでいただかなければならない。時間の特設の問題については、これは単に日教組だけの問題ではないと思うのです。いろいろ文化人、それからいろいろな評論家、そういったような方々も、現在の、この時間の特設という方法については、いろいろな議論のあるところなんです。そうだとするならば、日教組だけここに取り出さないで、やはり諸般の批判があり、諸般の議論があるということも、当然この中に私は含まれるべき性格のものだと思う。私がこういうことを申し上げているのは、どうもわざわざ日教組と対決するような空気を作るということは大へんよくないことで、むしろ文部省あたりが中心になってそういう空気というものをお互いに話し合いながら緩和して、教育の自主的な推進を向上していくという、言うところの友愛精神、あなたの好きな友愛精神というものをとられなければならない。わざわざ冒頭にこういうことをお書きになるということはよくない。従って、この道徳返上というところはこれは取り消していただかなければなりませぬ。
それからもう一つは、この技術的あるいは専門的な指導をする権限があると、こう言っておられますが、やはりこれも文部省直接におやりになるのではなくて、当然やはりこの教育委員会というものの計画、そういうものが中心になって行われるべき筋合いのものじゃないかと私は思う。そしてまた、あなたの御説明によると、特別に道徳の教師を養成することや、またそのための教員免許状を設けることは考えていない、それは学級担任の教師が自分の受け持つ子供たちを最もよく知っているからである、要するに道徳教育は人間を作る教育であるから教育者たる者すべてができなければならないものですと、こう書いてあるわけです。従って、専門的な技術的な指導ということよりは、その受持の担任の教師自体を信頼されて、そしてこれから十分に研究してやっていくという趣旨であるように私はあなたのごあいさつを解釈しております。ところが今の説明によると、この現場の先生方を集めて講習をするということ、校長さんを集めて手引書の説明とか何とかということはこれは専門的、技術的指導だというふうに言っておられますけれども、私はこれも若干研究する余地があるのではないか、やはりあくまで教育委員会の自主的な御判断にまかせるべきである。文部省自体が音頭を取ってあなた自体が直接現場の方々を指導なさるというのは行き過ぎではないか、こういう見解を持っているのですが、この二点についてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/41
-
042・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 文部省がきめました指導要領なり、あるいは指導通達なり、これは文部省自体の責任だと思うのです。私どもが直接趣旨を徹底することは、これは行政当局といたしまして当然のことだと思うのであります。道徳につきましては、これはミス・プリントでございます。道徳の一時間の特設という意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/42
-
043・高田なほ子
○高田なほ子君 ちょっと確認しておきたいのですが、そうすると、もちろん私は文部省が出された指導通達というものは文部省自体が十分下の人にわかってもらうように説明することはこれはいいと思うのです。その説明を守るか守らないかということは、守らせるか守らせないかということなんです。私はこの指導通達というものは、やはり前に文部大臣がこの問題で国会で御答弁になったときも下から世論が盛り上ったときに十分に固定したものに考えていきたいという趣旨の説明があったように思います。やはり今その研究期間だろうと思うのですね。文部省の方でもやがては法律を作ってもと、こういうふうに言っておるわけでありますから、そういう研究期間なんですから、そういう研究期間は文部省が指導通達をした、その指導通達を守らないものに対してはけしからぬという結論は出すべきじゃないと思うのです。やはり研究は、研究期間として今日までのおやりになってきた道徳教育の実績というものの上に積み重ねていくのが妥当なのじゃないか、強制すべきものではないのじゃないかというふうに考えますが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/43
-
044・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) お説のように積み重ねたと思っております。昨日文部大臣も参観いたしました牛込の仲之小学校でも、あるいは四谷第一中学校でもすでにやっていらっしゃるので、別に文部省の指導通達が出たからといって特に非常に変らなければならないこともない、従来やってきたことの積み重ねでさらにみがきをかけるのだという言葉で校長さんが表現していらっしゃつた、これは非常に適切な御表現ではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/44
-
045・高田なほ子
○高田なほ子君 だから、みがきをかけることは、現場の先生が自主的にみがきを今かけつつあるので、何も文部省がみがきをかけろと命令をしなくてもかけるのですから、拘束する必要はないでしょうと私は質問している。積み重ねに対して拘束をしてはいけないのじゃないか、こういうふうに質問している。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/45
-
046・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 教育課程の編成権というのは教育委員会にあるのでございますから、教育委員会がどういう考えかということはこれは問題になると思います。しかし、教育委員会がこういう方法でやれという命令をされた場合には、これは学校はこれに協力していただかなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/46
-
047・松永忠二
○松永忠二君 その点が私はちょっとおかしいと思うのですが、あなたは教育課程の基準としての学習指導要領を作る権利は文部大臣にある、だからそれを教育委員会が守ってもらわなければ困るとおっしゃっているのです。その基準になる拘束力のあるものがまだできていないのに、教育委員会が拘束力のあるように現場を拘束することをやったってこれは規則違反ですよ。法律違反ですよ。そこをあなたはどういうふうに解釈されているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/47
-
048・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 具体的の教育課程の編成権は各教育委員会が持っておるわけです。しかし、教育課程の編成の基準になるのは、これは指導要領できめるわけで、いわゆる文部大臣の、文部省の行政権の範囲に属すると思います。そういう基準に基いて具体的にどういうカリキュラムを編成するかということは、これは教育委員会の責任です。そこで、その教育委員会として、教科外活動の中、あるいは特別教育活動の中から一時間を割いて道徳の時間を特設するようにという、教育委員会が決定された場合には、これは現場の先生はそれに従っていただかなければならない、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/48
-
049・松永忠二
○松永忠二君 つまり、その特設の時間の中に道徳の時間を入れるということ、そういう学習指導要領というのはまだできていないじゃないですか。その学習指導要領ができて初めてそれに基いて地方教育委員会が教育課程の編成をしてその場合にその基準が出ておるので、それに拘束力があるとあなた方は言っておられる。私どもは拘束力は基準としての拘束力であるという程度は認めておりますけれども、それなら全然矛盾しておるんじゃないか。あなたが拘束力があると言う、基準もまだできていないのに、できているかのごとく、その基準に基いて教育課程を作る編成権を持っておる教育委員会がその基準が出ないときに、基準にのっとって拘束するということになったらおかしいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/49
-
050・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) ちょっと、法理論の問題で二つに分けていただきたいと思います。法理論の上から申しますと、これは法的拘束力がないから教育委員会はこれに従わなくてもいいわけです。ところが、教育委員会が何らかの決定をした場合には、これは現場の学校長は従わなければならない義務が生じてくると思う。そこが違うと思う。で、施行規則で明瞭にいたしまして、学習指導要領のできたときには、これは教育委員会に従わなければならない義務が生じてくるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/50
-
051・松永忠二
○松永忠二君 そこが違うじゃないですか。拘束力があるという、教育委員会に教育課程の編成権があると、それはその通り、それはどういうものに基いて編成するのかというと、それはあなたがおっしゃっておるように、学習指導要領に基いて教育課程の編成をするのだということを再三あなた方は言っておるじゃないですか。そうなつてくると、学習指導要領がまだできていないのにできているかのごとく、教育委員会の決定をしてそれを拘束していくというのは、教育委員会自身の実は規約違反である。教育委員会がきめれば何でも地方の教師、学校や教育は自由にできるわけではないでしょう。あなた方おっしゃるように、ちゃんと法律できめてあることについては、幾ら教育委員会といえども、自主的な権利を持っていない場合がある。この場合には、あなた方が言われる学習指導要領というものができなければ、それに基く教育課程の編成権は地方教育委員会にはないわけです。それをあるかのごとく決定をして地方教育委員会を拘束する、今、高田さんに言ったように拘束までしていくというのは、これは地方教育委員会の規則違反になる。従って、現状では文部省も拘束力はないし、もちろん地方教育委員会においても拘束力はない。道徳時間の特設ということについては、とにかく学習指導要領の基準を変えなければだめだと、あなた方は言っておるじゃないですか。そうでなければ、拘束力がないと言っておるのにかかわらず、その拘束力を地方教育委員会が作るというところに問題がある、これも問題がある。それを今、高田さんが言われている。われわれもそうだと思う。だから、どこまでも下までずっとこれは要するに一つの拘束力なき問題であるというふうに考える。それをあなた方は、地方の教育委員会がきめれば、いや、もう学校に対して拘束力を持つのだ、そういう拘束力を持たせる決定を地方教育委員会がしたとすれば、あなた方が今まで主張している、要するに文部省が基準を出して、それに基いて編成するんだと言われたそれが違ってくるじゃないですか。そこが矛盾しているとお思いにならないかと私は言いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/51
-
052・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) この指導要領には、一般編と特別編があるわけです。その一般編の中で、現在は教科活動と教科以外の活動、中学校の場合には、特別教育活動と、こう申しております。その教科以外の活動あるいは特別教育活動が、大体三時間くらい現行あるんですが、その中で一時間を割くようにという指示をしておる。これはこの解釈として、一般編の解釈、運用基準を示したわけでございます。それから具体的に道徳教育は、どういう内容のものをどういう方法でやるかということが、今度は道徳の指導要領になって現われるわけであります。その指導要領の骨子になるものが、先般通達いたしました指導通達でございます。ですから、この指導通達に準拠して一つやっていただきたいという文部省は要望をいたしたわけであります。で、この場合に、教育委員会としては、できるだけ文部省の意図のあるところをくんで御了承になって 一つ御協力いただきたいと私どもは願っておるし、またそうしていただけると思っておりますが、あるいはこの場合に、いや、従来の生活指導でいいんだというお考えのところもあるかもしれませぬ。ですから、これは法的には教育委員会を拘束するわけではない。しかし私どもは、行政上は、この施行通達はぜひ守っていただきたいという強い願望を持っておるわけであります。そこで教育委員会が、具体的に教育課程の編成権を持っておりますので、その編成権を行使する場合に、道徳教育の時間を一時間特設する、こういう決定をして学校に御通達になった場合は、これは学校は拘束される、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/52
-
053・松永忠二
○松永忠二君 そういうことはできないように、学習指導要領にはそういうことをちゃんと書いてあるじゃないですか。この一般編に、そうでないようにやれということが書いてある。それだから、あなた方がこの学習指導要領では困るから、これを変えようとしているんでしょう。まだこういうものは出ておらないんですよ。これを変えなければできないから、これをあなた方がお変えになるんでしょう。今出ているこのものが、地方教育委員会の教育課程編成の基準になっておるわけです。これが変ってこない以上、地方教育委員会といえども、その特別教育の時間の内容をいろいろ指導することはできるとしても、全然道徳の時間という、特別な一時間を設けてどうするというようなことは、あなた方できないと今まで説明してきているじゃないですか。そういうことを私は言っているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/53
-
054・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 私どもが申し上げたのは、具体的に指導要領は、今道徳教育の趣旨なり目標なり指導方法というようなものをそろえた指導要領が間に合わない、こういう意味で申し上げた。で、御説の通り、指導要領の一般編は改訂いたしておりません。だけれども、一般編においてはどうなっておるかと申しますと、小学校の場合、教科活動と教科以外の活動になっておる。中学校の場合は、特別教科活動、この中で、従来生活指導あるいはホーム・ルームの時間として時間が特設されておる。その時間を道徳の時間に充てるんだという私どもは指示をしたわけでございます。これは私ども解釈とし七可能なわけでございます。ですから一般編を改正しなくても、教科以外の活動あるいは特別教育活動に、従来やっておった生活指導なり、あるいはホーム・ルーム、こういう時間を道徳に充ててくれ、こういう指示をしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/54
-
055・松永忠二
○松永忠二君 それは詭弁ですよ。あなた方は道徳の時間を特設するということのためにも、これはそういうことは、そういう道徳的な取扱いをしないようにということが書いてある。そういうことをしないようにという、そういうふうな内容を持って、そういう項目が出ておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/55
-
056・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) しないんじゃないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/56
-
057・松永忠二
○松永忠二君 いやいや、「学校教育の前面において、道徳的態度を形成するための指導を行う」とか、ほかにはどこにも一時間まとめて道徳の時間を置けというようなことは一つも書いてない。そういうことも、全然この中にはないんですよ。それだからこの学習指導要領に基いて行うとすれば、現在のこの通達の項目はできないので、そこであなた方おっしゃる通り、これを変えてからやっていこう、拘束力を持たしていこうというんでしょう。私は、文部省が、これを変えて、拘束力を持たしていったときに、これに基いて地方教育委員会が、拘束力を持つ現場のことをやるというならば、これは確かに一貫性を持っているものだと思うんです。あなた方は、今とにかくこれは地方教育委員会にしても、教育課程を編成する基準だということを法的にちゃんと位置づけて、これが変らないで、この内容にないものを、教育委員会が勝手にきめられていくということになれば、これは教育委員会の権限の逸脱だと私たちは思うんですよ。だからそういう点は明確になっていると私は思う。今まであなた方はそういう主張をされてきているのじゃないですか。学習指導要領の基準は、あくまでも守ってもらわなければできない、それに基いて地方の教育委員会にやってもらわなければできない、だからそれに基いて委員会が決定した場合に、学校なり教職員は、それを返上するというようなことはできない、確かにそうなんです。しかし、どこまでも学習指導要領が変らない以上、その拘束力を持つような、これと違ったものを教育委員会が決定して実施していこうとしたならば、これこそ違っているんだからという指導、助言をあなた方はすべきである。それを違ったことをやれというような、拘束をするような教育課程を編成していけなどというようなあなた方は指導、助言はできないはずである。私はそういう意味であなたに申したので、施行規則なら守れ、通達なら守らなくてよいという論は、あまりにも形式論に過ぎる。そうじゃなくて、施行規則に基いて出される通達なら守らなければならない。施行規則に基かない通達なら守る必要がないというのがあなた方、法律を守って実施をしていく行政の立場に立つ人の話です。形式論なんて、そんな通達では守らないし、規則なら守るといっても、通達が、規則と合致した通達をされたときには、確かにそれはその通り。しかし規則にない通達を出しておきながら、それを守らないから、これはどうせ規則に基くものができるんだから、それを返上するなんという形式論なんというものは、それこそ大へんな誤まりだと私は思うんです。とにかくあなた方がおっしゃっておることは支離滅裂だというか、無理がある。大へんな無理を持っておることをわかっていながら、そういうことを強引に行政指導をやられておる。実際には、法律に基いて私どもはやっております、規則に基いてやっておりますとはおっしゃるけれども、その規則を的確に守る教育委員会ならば、現場を拘束する新しい道徳時間の特設はすべきではないと私は思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/57
-
058・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) 今のお話は、私こういうふうに思うんです。学習指導要領の一般編ではどういう扱いをするかということが規定されておる。そこで施行規則にある教科と、そうでない教科以外の活動があるわけです。教科と教科以外の活動を含めて教育課程ができておるわけです。その教科以外の活動についての運用基準を示したわけであります。これは従来も生活指導という形で行われておったと思います。その生活指導というもので文部省は指導しておった。それを今度は道徳というものに切りかえる、こういう指導をしておるわけです。これは別に施行規則に違反しておるとは思っておりませんし、学習指導要領の運用基準を示した、こういうふうに御理解いただけばいいんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/58
-
059・松永忠二
○松永忠二君 こう書いてありますよ。「教科以外の活動としては、どのようなものを選び、どのくらいの時間をそれにあてるかは、学校長や教師や児童がその必要に応じて定めるべきことである。」と書いてあるじゃないですか。こんなことが書いてある。これが基準であるならば、一時間設けるという指導をするのは、これと全然違っているじゃありませぬか。ここにちやんと書いてありますよ。教科以外の活動へあなた入れるなどとおっしゃっているが、「教科以外の活動としては、どのようなものを選び、どのくらいの時間をそれにあてるかは、学校長や教師や児童がその必要に応じて定めるべきことである。」と書いてある。これではできないから、あなた方はこれを変えようとしているんじゃないですか。ところが、その拘束力は現に持っている、地方教育委員会が。現に拘束している。それがありながら、なおかつ、地方教委がきめれば学校で文句を言うなんていうのはおかしい、というような言い方をしている。そのことこそ、事実上は大へんな規約の違反だと思う。あなたの言うようなことはここに書いありませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/59
-
060・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) それは、教育委員会が教育課程編成権を持っておりますので、教育委員会で、道徳の時間を特設した方がいいという結論に到達されたなら、そこは、私、当然優先すると思う、学校の決定より。(「強弁じゃないか」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/60
-
061・秋山長造
○秋山長造君 その点は非常に疑義があると思うんです。疑義がある。まあ、どんなに譲歩をしたところで疑義がある。われわれは法律違反だと思うけれども、まあ若干譲歩をしても、疑義があることは確実です、現に、二月の二十日の衆議院の予算委員会で、門司委員の質問に対して、松永文部大臣は、こういう答弁をしておられます。「今仰せになりました教育課程の内容等につきましては、文部大臣の職責でありますから、やはり文部大臣の通牒においてやることができるというふうに考えております。ただしかし」、ここからが大事なんです。「ただしかしこの問題については、多少の疑問もありますのであらためて法律を改正してもらうというふうに、今準備を進めておる」。だから、大臣自身がこれは疑義を認めておられる、その点についての疑義を。こういう大臣自身がはっきり疑義を認めるようなことを、あんた、局長が幾ら強弁されても、それは無理ですよ。一年延ばしたらどうですか、この道徳を。それで、松永委員がおっしゃるように、きちっと学習指導要領ができてからの話にされたらどうですか。これは、大臣自身が疑義があるということをはっきり告白されているんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/61
-
062・内藤譽三郎
○政府委員(内藤譽三郎君) ちょっと、今の点だけ御説明さしていただきますが、この教育課程の編成権は、これは教育委員会にあるんですから、教育委員会は、もちろん……(「無条件じゃあるまいが」「それじゃ調べてみよう、前の発言したところを」と呼ぶ者あり)学校教育法施行規則なり委員会の規則なりに従わなきゃならぬと思う。委員会の決定に従って、その上に、もちろん学校の個々の事情で許される範囲は、私はあると思う。そういう意味に御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/62
-
063・湯山勇
○委員長(湯山勇君) ちょっと待って下さい。
ちょっと速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/63
-
064・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/64
-
065・松永東
○国務大臣(松永東君) なるほど、疑義があるということは私申しました。それは疑義がある、議論を戦わしたことがある。それは、一つの説は、都道府県の教育委員会が学習編成はそれはやれるんだ。であるかち、都道府県がその権限に基いて、どの時間にどういうやつをやる。たとえば、ホーム・ルームの時間を一時間さいてこういうふうにするんだということを決定すれば、それが効力を発生するんだと、こういうことの議論もあるんです。しかし、そうすれば、それがもし効力を発生していくならば、学習指導要領を、私も繰り返し答弁いたしております通り、八月ころまで編成してやるという必要はない。しかし、多少の疑義があるから、そこであらためて八月ころまでのうちに学習指導要領そうして施行規則も改めてそうして何らの疑義のないようにしよう、従って、それまでは拘束力を持たないと、こういうふうに私どもは結論に達したというふうに信じておる。ですから、私の言った疑義のあるというのは、そういう意味なんです。それでなけりゃ、拘束力を持ちますよ。けれども、拘束力のないというのは、すなわち、四月からその学習指導要領があらためてできるまで拘束力はありませんということは、要するに、そう正した疑義もあるから、そこで学習指導要領と、それからその施行規則を是正してそうしてやっていこう、そうなるというと、それはもう拘束力を持つと、こういうことになるわけで、私はそういうふうに考えておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/65
-
066・松永忠二
○松永忠二君 多少疑義があるどころじゃなく、はっきり疑義があるんですよ。そこで、今文部大臣の言われたことは、要するに、この通達が地方教育委員会を拘束する力もないし、そうしてまた、教育委員会が現場を拘束するというようなことについてもないんだと。要するに、そういう拘束力はこの指導要領を改めてからの話だと、そういうふうならよくわかるんですよ。それでいいですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/66
-
067・松永東
○国務大臣(松永東君) それは、教育委員会はやはり現場に君臨——という言葉は、これまた表現の基礎の問題になってくるが、(笑声)とにかく現場の教職員を指導していく立場にある。従って都道府県の教育委員会が決定すれば、そうすればおのずから拘束力を持つ、こういうふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/67
-
068・松永忠二
○松永忠二君 まだあとで論議をするというので、私はあとに延ばしますが、今文部大臣が言われたのは、地方の教育委員会が決定すれば拘束力があるようになるのは、結局、法律にきめられた範囲で決定をすれば拘束力がある。(「その通り」と呼ぶ者あり)ところが法律できめられた範囲で拘束力を発効できない状態に今まである。そういうふうに内藤局長も説明してきた。要するに、学習指導要領は教育課程の編成の基準だから、これは最低だから、これを守ってもらわなきゃ困るというようなことまで言われた。そうなってくると、こういう拘束力に基いて教育課程というものは地方で作られるものだと、こう言った以上、拘束力を持つものができない以上は、やはり地方教育委員会は拘束力を持つことはできないというのは当りまえだ。それはあなたおわかりだと思う。だから、そういうふうなことであるのです。そこで、それについては、一つ十分研究されて、間違っているとすれば、通達も全部お改めになったらどうですか。それでまた、通達についての語句が不備なんだということは、あなたおっしゃった通り。ところが、通達は権威を持っているとあなたおっしゃる。これはあくまで準拠してもらうなどということは当りまえのことだというくらいおっしゃっておったのだから、それくらい権威のあるものなら、通達も適切なものに改めてそうして趣旨がよくわかるように通達を出し直すということが私は必要だと思う。研究をして一つまた後刻御答弁をいただきたいと私は思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/68
-
069・吉田法晴
○吉田法晴君 今の文部大臣の答弁に関連をして、これだけは明らかにしておきたいと思うんですが、文部大臣は、教育委員会が教育課程の編成権を持っておると言われた。しかし、その教育課程の編成権は、学校教育法施行規則に基かなければできんことでしょう。そうじゃありませぬか。それから、指導要領と、それから今問題になっておる道徳教育を特設をして教科としてやりたい、これは矛盾をしておりやしませぬか。道徳を特殊な教科として位置づけをはっきりさせたい、こう書いてありますが、特設をして教科としてやりたい。それは、指導要領、施行規則の改正によってそうなるんだけれども、現在はまだなっておらぬ。それから指導要領と、それから特別の時間をとって道徳教育をやる、特設をしたと同じような効果を発揮することはこれは矛盾する、これはお認めになりますか。矛盾をするから施行規則を改正したい、あるいは指導要領の変更をやりたい、こういうことじゃありませぬか。ですから、現状においては、拘束力の点もありますが、拘束力は施行規則なり、あるいは指導要領、それから通達の中に入っておる道徳時間の特設という問題とは現状においては矛盾する、こういうことはお認めになっておるのじゃありませぬか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/69
-
070・松永東
○国務大臣(松永東君) 吉田さんの言われる、その矛盾するというふうには私は考えておらぬ、矛盾はしておらないと思う。それはしかし、今の特別の教科として、特別の教科としていくのには、やはり学習指導要領を改正して、そうして施行規則を改めて明確にしたい、こういう気持なんです。けれども、今の都道府県の委員会で、その許された範囲内でホーム・ルームとか、あるいは科外教育のうちで一時間特設をしていくということについては何も矛盾はしておらぬ、そうして権限もないことでもないというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/70
-
071・吉田法晴
○吉田法晴君 今の指導要領によると、さっきから局長が教科以外の活動、あるいは特別教育活動、それから教科による教育と三つあげましたが、その中で教科によらないで生活指導なり、ホーム・ルームなり、それから総合的にやる、こういうことになっておる。それを時間を、特別教育活動の中の時間も特別に取りて、そうして特設時間を特設していく、こういうことを言うておる。そうしてその中身は学校教育法施行規則の改正、あるいは指導要領の改正がもう見込まれているから、それと同じようなやり方をせい、こういうことを言っているのですから、明らかに今の指導要領と、それから時間の特設をするということはこれは矛盾がある。あるいは今のお話で言うと、疑義があるということだけは言えるんじゃないですか、疑義があるという点だけは言えるでしょう。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/71
-
072・松永東
○国務大臣(松永東君) それは議論があるから、議論のないようにしようという表現の仕方で私は申し上げた、この場合は。しかし、それは吉田さんの仰せられる通りに、その学習指導要領ができれば、できれば特別の学科として、教科としてやっていく。ところが今では、その学習指導要領ができるまでは特別科としてはやっていかぬ、ただ時間だけは特設をして、そうして子供たちに教えていく、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/72
-
073・吉田法晴
○吉田法晴君 特別の教科と読むかどうかという点は、これは施行規則の改正をしなければならぬという、その呼び方についてはあれでしょう。しかし中身は特設をしたと同じことをやれと、こう言っておられるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/73
-
074・松永東
○国務大臣(松永東君) 御説の通りです。中身はそうなりますけれども、しかしながら教科書を使いません。教科書を使いませんで、それで特別の教科とせずにやっていきます。ですから、そこに違いがある。学習指導要領ができ上って、施行規則ができてそうしてその規則に基いてやっていくなら、これは特別の教科としてそうしてやっていくのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/74
-
075・吉田法晴
○吉田法晴君 特別の時間を取るということも、現在の指導要領の解釈から出てきますか。出てこない、あるいは少くとも疑義があると、こういうことは認められるというのじゃないですか、だから指導要領の改正なりあるいは施行規則の改正が必要だ、こう言われるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/75
-
076・松永東
○国務大臣(松永東君) それは都道府県の委員会で決定してやれば、その内容の時間を特設したり何なりすることはできる、しかしそれは指導要領を編成して、施行規則も改めて、そうして特別の学科として入れたい、そうするのには、やはり今申し上げた指導要領とか、施行規則とかいうことができ上らんければいかぬから、そのでき上るまでは今の時間だけを特設して、そうして子供たちに教えていこう、こういうわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/76
-
077・吉田法晴
○吉田法晴君 この特設をすることについては疑義がある、私どもは矛盾があると言うのですが、先ほど、施行規則なりあるいは指導要領の改正がなければ特設ができない、委員会には教育課程の編成権があると言われますが、その委員会は施行規則並びに指導要領に基かなければ編成ができないのではないか。その施行規則なりあるいは指導要領に基かなければ教育課程の編成ができない矛盾、教育課程の編成権がないところにこの文部省が行政権だというて押しつけてくるところに問題がある、いや押しつけじゃない、拘束力がない、こう言われるのなら、教育委員会が施行規則なりあるいは指導要領に反して編成権がない、あるいはその通達というものに拘束力がなければ、その編成権に基いて現場の教育をやらなければならぬ教職員についても、学校についても、拘束力はないとか、こういうことになるのでありませぬか、そうじやありませぬか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/77
-
078・松永東
○国務大臣(松永東君) これは、その学習指導要領には反しないのです。反しないのであるが、しかし拘束力を持たない。拘束力を持つようにするのには、学習指導要領がちゃんと改まって、そうして施行規則ができ上って、それから拘束力があるわけなんです。でありますけれども、今日でもその課程の内容の編成というものはそれぞれの都道府県の委員会でできる。従って一時間の時間を特設するということもできる。しかし、できはするのであるけれども、それは文部省の方から通達を出しても拘束力がない、従って都道府県の委員会がそんなことはおれの方じゃやらぬ、こう言われればどうにも手がつけられない。そこで、それじゃ学習指導要領を改正してそうして施行規則を改正してそれからいよいよ拘束力のある教科にしたい、こういうのがわれわれの希望なんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/78
-
079・湯山勇
○委員長(湯山勇君) ちょっと申し上げます。今までの質疑応答の経過から見ますと、やはり同じところを行ったり帰ったりしているように考えられます。従って政府の方では、関係法、関係規則、それから指導要領、それらの中から、ただいまのような内容及び時間の特設、それがどういう根拠でなされるかという資料をお出し願ってそれを材料にして論議しないと、これは行ったり戻ったりばかりになって、ここまでは権限、強制力がない、そこからできる、今度ないと言えばここまであると、こういうことになって、結局こっち押えればそっちがふくらむ、そっち押えればこっちがふくらむで、これは果しがないと思いますので、一つ次回までに綿密な正確な資料をお出し願って、それを材料にして御討議願いたいと思いますが、いかがでしょう。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/79
-
080・湯山勇
○委員長(湯山勇君) それでは、そのように願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/80
-
081・松永忠二
○松永忠二君 一緒に一つ出していただきたいのは、特殊の教科というようなものをいうわけで施行規則を変えれば特殊な教科というものができる、特殊な教科ということと答申とどういう関係があるのか、そういう点を一つ明確にして根拠を明らかにして出していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/81
-
082・湯山勇
○委員長(湯山勇君) よろしゅうございますね。
それでは本件の質疑は次回に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/82
-
083・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 次に、義務教育諸学校施設費国庫負担法案を議題といたします。
まず、文部大臣から提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/83
-
084・松永東
○国務大臣(松永東君) 今回政府から提案いたしました義務教育諸学校施設費国庫負担法案について、提案の理由と内容の概要を御説明いたします。
およそ、義務教育については、国民のすべてに対して、その妥当な規模と内容とを保障し教育の機会均等とその水準の維持向上をはかるために国が重要な責任を有するものであることは、言うを待たないところと存じます。この目的を達成するために、義務教育諸学校の教職員の給与費及び義務教育の教材に要する経費については、つとに義務教育費国庫負担法が制定され、これらの経費に対する国庫負担の制度が確立されていたのでございますが、教職員給与費及び教材費と並んで義務教育費の基本的要素をなす施設費については、いまだそのような国庫による財政負担の制度の確立を見ていなかったのであります。公立学校の施設に要する経費につきましては、戦前は、設置者負担の原則がとられており、きわめて例外的な特別な場合にのみ国庫の援助が行われたにすぎませんが、戦災復旧災害復旧及び六三制の実施に伴う急激な学校建築の必要性に応じて、戦後はじめて国庫負担の制度が創設され、続いて戦中戦後の資金資材の統制、軍用施設への転用等のため改築のできなかった危険校舎の改築を促進するために、危険校舎改築促進臨時措置法が制定され、また小学校における二部授業等の不正常授業の解消のために公立小学校不正常授業解消促進臨時措置法が制定され、漸次公立学校の施設整備費について国庫がその一部を援助する体制が整ってきたのであります。しかしながら、この体制は戦災復旧あるいは義務教育年限の延長に伴う施設の整備費について国庫負担をするという建前上、限時的性格のものであり、また、その根拠法規の名称が示す通りの危険校舎の改築費に関する、あるいは公立小学校の不正常授業解消のための校舎整備費に関する臨時的な国庫補助制度でありますので、最近この体制の存続について少からず不安を持つ地方公共団体が生じ、公立学校施設の整備について安定した計画の樹立に困難を感ずるという実情があったのであります。
このような事情を反映して、さきの第二十六国会におきましては衆参両院は、義務教育の重要性と地方財政の実情とにかんがみ、公立義務教育諸学校の施設等について、政府がすみやかに必要な措置を講ずべきことを、付帯決議として議決されたのであります。
政府としましては、以上のような沿革と実情を深く考慮し、わが国の義務教育諸学校における教育の円滑な運営に資するため、今回義務教育諸学校の施設に関する従来の法律を統合し、公立義務教育諸学校の施設の整備に要する経費について国がその一部を負担する制度を確立したいと考えるのでございます。これがこの法律案を提案する理由でございます。
次に、この法律案の内容の概略を申し上げますと、まず第一に、さきに提案の理由において述べました通り、公立の義務教育諸学校の施設の整備を促進するため、これらの学校の施設の建設に要する経費について国がその一部を負担することを定め、これにより、義務教育諸学校における教育の円滑な実施を確保することを企図しております。
第二に、国庫負担の対象とこれに対する国の負担率を定めました。すなわち、公立の小学校及び中学校の不正常授業を解消するための校舎の整備費、中学校屋内運動場の整備費、盲学校及びろう学校の小学部及び中学部の校舎、屋内運動場、寄宿舎の整備費、学校規模を適正化するために公立の小、中学校を統合したことに伴う校舎の整備費、義務教育諸学校の危険建物の改築費についてそれぞれ国が二分の一または三分の一の負担割合をもって、建築費の一部を負担することを定めております。以上が、この法律案の骨子でございますが、その他国の負担すべき経費の種目、経費の算定基準、都道府県への事務費の交付、この法律の実施に伴う関係法の改廃等について規定しております。
なお、この法律の適用は、本年四月一日からといたしております。
以上が、この法律案の提案の理由と、その内容の概要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/84
-
085・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 続いて小林管理局長から補足説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/85
-
086・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) ただいま文部大臣から御説明申し上げました義務教育諸学校施設費国庫負担法案について補足説明をいたします。
この法律案は、本則十一条及び付則八項からなっております。
まず、第一条には、この法律の目的を規定いたしております。
すなわち、この法律は、公立の義務教育諸学校の施設の整備を促進するため、これらの学校の施設の建設に要する経費について国がその一部を負担することを定め、もって義務教育諸学校における教育の円滑な実施をはかることを目的とするものであることを明らかにしております。
第二条では、用語の定義を規定しております。
第三条では、国が負担する経費の種類とこれに対する国庫負担の割合を列記しております。
同条第一項第一号は、小学校における不正常授業を解消するための校舎の新築または増築に要する経費の三分の一を国が負担することを規定したものであります。これは従来の公立小学校不正常授業解消促進臨時措置法に規定されていたものを、恒久的な制度として新法律案に取り入れたものであります。
第二号は、中学校における不正常授業を解消するための校舎の新築または増築に要する経費の二分の一を国が負担することを規定したものであります。これは公立学校施設費国庫負担法に規定されていた義務教育年限の延長に伴う中学校校舎の整備費に対する国庫負担制度を継受したものであります。従来は国庫負担の対象となる中学校の校舎の新築または増築については、その建築の理由が義務教育年限の延長に基因するものに限られていたのでありますが、今回は、小学校の校舎整備と同様に不正常授業の解消のための新築または増築に要する経費を国庫負担の対象とすることとしたのであります。
第三号は、中学校の屋内運動場の新築または増築に要する経費の二分の一を国が負担することを規定したものであります。これは従来法律には根拠がなく、単に予算補助として行われていたものでありますが、今回法的根拠を与えたものであります。
第四号は、盲学校及びろう学校の小学部及び中学部の建物の新築または増築に要する経費の二分の一を国が負担することを規定したものであります。これは義務教育年限の延長に伴う施設の建築費に対する国庫負担制度として公立学校施設費国庫負担法に規定されていたのを継受したものであります。
第五号は、公立の小学校または中学校を適正な規模にするため統合したことに伴って必要となった校舎の新築または増築に要する経費の二分の一を国が負担することを規定したものであります。これは、町村合併に伴う学校の統合のみならず、教育の必要性から学校規模を適正化するために学校を統合することに伴って必要となった校舎の新築または増築を国庫負担の対象とするものであります。
第六号は、構造上危険な状態にある義務教育諸学校の建物の改築に要する経費の三分の一を負担することを規定したものであります。これは、従来危険校舎改築促進臨時措置法に規定されていたのを今回恒久的な負担制度として新法律案に移したものであります。なお、本条第二項においては、本条第一項に規定する負担の対象を明確にするため必要な事項として「不正常授業の範囲」「適正な規模の条件」及び「構造上危険な状態にある建物の範囲の決定に関し必要な危険度の判定基準その他の事項」を政令で規定することとしてあります。
第四条では、国が負担する経費の種目は、本工事費及び付帯工事費並びに事務費であることを規定したものであります。これは、従来の施設費に関する負担法または補助法におけるこれと同種の規定をそのまま踏襲したものであります。
第五条は、工事費の算定方法を規定したものであります。これも従来の同種の法律の規定と同様の規定を設けたものでありまして、新築、増築の場合は、児童、生徒一人当りの基準坪数に児童または生徒の数を乗じて必要坪数を算出し、それから保有坪数を差し引いて国庫負担の対象となる坪数を算出する方式を採用しており、危険建物の改築の場合は右の必要坪数と保有坪数のうち、いずれか少い方から危険でない坪数を差し引いて資格坪数を算出する方式を採用しております。そして、これらの資格坪数を、一坪当りの建築単価に乗じて経費を算定することとしております。
第六条は、前条の規定により工事費を算定する場合の児童、生徒一人当りの基準坪数の定め方について規定しております。すなわち、基準坪数はすべて政令で定めることとしていますが、その定め方は、学校の種類別及び建物の区分別にそれぞれ、まず、標準的な坪数を定め、これに、当該学校の児童、生徒数、一学級平均収容児童生徒数及び所在地の積雪寒冷度に応じ補正を加えることとしております。
第七条は、第五条の規定により工事費を算定する場合の一坪当りの建築単価の定め方を規定したものであります。この建築単価は、建物の構造別に、建築費の時価を参酌して文部大臣が大蔵大臣と協議して定めることとしております。
第八条は、第五条の規定により工事費を算定する場合の特例を規定したものであります。当該学校の校舎の保有坪数のうち、教室に使用することのできる部分がきわめて少いこと等の特別の事由があるため、通常の算定方式で算出した坪数に基いて新築、増築または改築を行なったのでは、教育上著しく不適当であると認められるときには、政令の定めるところにより、特例を認めることとしたものであります。また、鉄筋コンクリート作りの建物の場合、同一空間を作るためには木造の建物に比し、若干多くの建坪を必要とするので、坪数の計算を行う場合、政令の定めるところにより、一定の比率で換算して計算することを定めております。
第九条は、事務費の算定方法を規定したものであります。事務費は、工事費に政令で定める割合を乗じて算定することとしております。
第十条は、都道府県の教育委員会への事務費の交付について規定したものであります。都道府県の教育委員会は国庫負担金の交付、返還等に関する事務について国から機関委任された事務を行うものでありますから、この事務を行うのに必要な経費を都道府県に交付することを定めたものであります。
第十一条は、この法律における本校及び分校の取扱いについて規定したものであります。この法律では、本校及び分校は、それぞれ一つの学校とみなして取り扱うこととしております。
なお、新法律案は、従来の公立学校施設費国庫負担法等に比し、相当に大幅に条文の整理をした形になっておりますが、これは補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律が昭和三十年九月二十六日から施行され、負担金の交付の申請、決定、取消、停止及び報告等に関する事項その他手続的事項は、あげて同法の系列による規定の運用にゆだねられることとなったからであります。
付則第一項は、この法律の施行期日を定めたものであります。公布の日から施行し、本年四月一日から適用することとしております。
付則第三項においては、本法の成立により公立小学校不正常授業解消促進臨時措置法の廃止を規定し、付則第四項は公立学校施設費国庫負担法中、災害復旧に対する国庫負担の規定を残したものであります。従いまして題名を公立学校施設災害復旧費国庫負担法と改めたわけでございます。
付則第五項は、危険校舎改築促進臨時措置法中、高等学校に関する部分を残し、その他の部分を削除したものであります。従って題名を公立高等学校危険建物改築促進臨時措置法と改めるものであります。
付則第六項は、この法律案の実施に伴う地方財政法の一部改正について付則第八項は、新市町村建設促進法の一部改正について規定したものであります。
以上この法律案の概要について御説明申し上げました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/86
-
087・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 次に、盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。文部大臣から提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/87
-
088・松永東
○国務大臣(松永東君) 今回政府から提出いたしました盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申し上げます。
昨年五月、第二十六国会におきまして、盲学校、聾学校及び養護学校の幼稚部及び高等部における学校給食に関する法律が制定され、いわゆる非義務学年における学校給食の制度が確立されましたが、この制度の実施に伴い、盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正して、これらの学校の高等部に対する学校給食費を新たに就学奨励費の対象といたしましたのが改正の第一点であります。
次に、現行法におきましては、盲学校、ろう学校及び養護学校に就学する児童生徒の就学奨励費は、児童生徒の住所地の都道府県が支弁すべきこととなっておりまして、同一学校に就学する児童生徒について住所地である都道府県の異なることにより経費の支給期日の不統一、支給の遅延等の生ずるきらいがあり、かねてから関係者の間におきまして、教育上、事務上の見地から、この支弁方法の改善が強く要望されておりました。よって、今回、就学奨励費は学校所在地の都道府県が支弁すべきことと改めますとともに、他の都道府県に住所の存する者について支弁した経費は、事後において当該他の都道府県に、求償できることといたしたのであります。
以上、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概略を御説明申し上げました。何とぞ十分御審議の上すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/88
-
089・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 次に、学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。発議者から、提案理由の御説明を求めます。松永君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/89
-
090・松永忠二
○松永忠二君 学校教育法等の一部を改正する法律案の提案理由を申し上げます。
ただいま議題になりました学校教育法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由と内容の概要を御説明申し上げます。
学校教育におきまして寮母、養護助教諭、実習助手並びに大学の助手等は、それぞれ特殊な、かつ、重要な職責を持っております。それゆえ、それぞれの学校にこれ等の職に携わる人々を置くことができることを明確にしますとともに、その身分を確立いたします規定を設け、法の整備をはかることによりまして、学校教育の運営を一そう円滑にするため本法律案を提出いたす次第でございます。
まず寮母について申し上げます。
近時、特殊教育に対する関心が深まり、特殊教育を促進させる見地から盲・ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の制定を見ておりますが、これらの学校におきましては、寄宿舎に置かれている寮母の果します役割と、その教育的効果はきわめて大きいのでございます。
従来寮母は学校教育法施行規則によりまして、盲、ろう学校のみに置くよう規定されておりましたが、昨年十二月の改正により養護学校にも置くことに改められました。また従来寮母の資格については何ら規定がなくその身分につきましては、教育公務員特例法施行令により特例法の準用が規定されていたのでありますが、今回、学校教育法において盲、ろう学校、養護学校には寮母を置くことを規定し、その資格規定を定めるとともに教育公務員特例法において身分を明確にいたそうとするものでございます。
次に養護助教諭と実習助手について申し上げます。従来、養護助教諭はその資格に関しましては教育職員免許法に規定がございます。実習助手につきましては、国立学校設置法施行規則並びに高等学校設置基準におきましてこれを置く規定がございます。また両者ともに教育公務員特例法の準用を受けることは寮母と同様、施行令により定めめられておりますが、特例法に規定する教育公務員には含まれていないのであります。
なお従来両者の職務につきまして学校教育法施行規則には何ら規定がなかったのでありますが、去る昭和三十二年十二月四日制定の文部省令による学校教育法施行規則の改正によりまして、養護助教諭及び実習助手の職務規定を追加いたしておりますが、法律による定めはないのであります。
これらの養護助教諭や実習助手がそれぞれの学校におきまして果しております職務が、それらの学校の教育に欠くことのできない重要件を持っておりますことはここにあらためて申すまでもございませんが、特に近時、科学技術教育の推進が叫ばれております実情におきましては、理科教育、産業教育の振興のために、実習助手の必要性が痛感されているのであります。従いまして、さきに述べました寮母と同様に、養護助教諭と実習助手の設置とその身分関係についても学校教育法及び教育公務員特例法に、それぞれ明確な規定を設けようとするものでございます。
最後に大学の助手について申し上げます。
現在、学校教育法には大学に助手を置く規定がございますが、その身分に関しましては、教育公務員特例法施行令で特例法を準用することになっておりますので、これを改めまして特例法上の教育公務員にしようとするものでございます。
以上が本法律案の提案理由とその内容の概要でございます。何とぞ十分御審議の上御賛成下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/90
-
091・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 次に、公立の高等学校の夜間課程の教職員に対する夜間勤務手当の支給に関する法律案を議題といたし、発議者から提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/91
-
092・吉田法晴
○吉田法晴君 ただいま議題となりました公立の高等学校の夜間課程の教職員に対する夜間勤務手当の支給に関する法律案につきまして提案者を代表し、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。
近時、定時制及び通信教育に対する社会一般の理解は産業教育や科学技術教育の一環として次第に深められてき、また、関係機関においても勤労青年教育が重視され、定時制及び通信教育についての施設、設備の充実が各方面で論議されるに至ったことは、まことに喜ばしいことであります。しかしながら、夜間の定時制高等学校に勤務する教職員がきわめて劣悪な条件のもとで教育活動を行なっていることについての当局や世上の関心ははなはだ薄い現状にあります。
ここで、夜間定時制教育に従う教職員がどんなに苦しい勤務を続けているかという例の一端を申し上げますと、第一には家庭生活上の問題があります。すなわち、夜間勤務する教員はほとんど家庭的な雰囲気や団らんに浸ることはできないのであります。いずれの家庭においても夕飯の一時というものは、一日の労をいやし明日へのエネルギーを養うため、必要欠くことのできない時間でありますが、夜間勤務の教職員には、これは望むべくもないのであります。また、子女の学習指導やしつけについても学齢期以後は、ほとんど放置せざるを得ないのであります。
第二には、健康上の困難があります。不規則な食事や過労から胃腸障害が多く、別紙資料に見られる通り四〇%以上が慢性の胃腸病にかかっているし、それ以上の家族が同様に苦しんでいるのであります。また、冬季間に感冒の罹病率が非常に高いのもこういう特残の勤務状態による栄養不良や体力の脆弱化に基因していると考えられるのであります。また勤務を終了して帰宅就寝するのはどうしても十二時から一時になるため、睡眠不足や、過労がつもり視力の減退が著しいのであります。こういう各種の困難が夜間定時制学校の教職員の健康を虫ばんでいるのであります。
第三には、また、経済的な損失も決して少くないのであります。たとえば、食事を家族と別に行なったり、あるいは外食、間食を余儀なくせられるため食費がかさみ暖房費や光熱費も余分に必要とするのであります。また、生徒会指導、クラブ活動による時間外指導等の関係で帰宅が深夜に及んだり、また、タクシーを利用せねばならなくなったり、他に宿泊せざるを得なくなったりしていろいろと費用がかさむことになるのであります。
さらにさきに述べましたごとく、健康上の障害のため、本人や家族の医療費も約百円に及ぶことが統計上明らかになっています。こうした経済上の不利益についても何らの考慮も払われていないのが現状であります。
このように夜間定時制高校に勤務する教員は昼間の正常勤務に比し物心両面で大きな苦痛に耐えねばならないのであります。そのため、これら経済的失費を補うため昼間無理なアルバイトを行わねばならぬものも生じ、そのため一層健康を害し、再び医療費の支出の増大を来たし、みずからの命を削りとるというみじめな人も出てきております。
このような状態ではとうてい定時制教育の振興は望むべくして望み得ないことは明らかであります。このような状態をすみやかに改善しなければ、夜間定時制教育を真に充実することはできないのでありますが、これらの悪条件の中には、夜間勤務の特殊性に基因するものや定員予算の関係で早急に解決できない問題もあります。しかし、とりあえず昼間勤務に比べて夜間勤務のゆえに負わされている経済的な失費については、これを補償し、少しでもその苦痛を減少していくことは、夜間における定時制教育振興上緊急の要務であると存ずるのであります。かような観点から、実はすでに北海道のほか十四府県において夜間定時制高等学校の教職員に夜間勤務手当が支給されているのであります。
私どもは、かような措置が全国的に同じ程度において、かつ、恒久的になされることがきわめて必要であると存じ、ここに本法律案を提出いたした次第であります。
次に、本法律案の内容の要点を申し上げますと、都道府県は、夜間の公立定時制高等学校の教職員に対して条例の定めるところに従い夜間勤務手当を支給しなければならないこととし、その支給額は三千円を基準として定めることといたしました。
なお、施行期日につきましては、本年四月一日からとし、これに要する経費は本年は既定経費の節約によってまかなうこととし、来年度以降は別に提案いたしました高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案で規定いたしました、国庫が公立の定時制高等学校の教職員給与費の四割を負担する制度により、夜間勤務手当の四割に当る約二億円を負担するという構想でございます。
以上でございますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますよう御願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/92
-
093・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 次に、女子教職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
発議者から、提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/93
-
094・高田なほ子
○高田なほ子君 女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
ただいま議題となりました女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表して、提案の理由並びに内容の概略を御説明申し上げます。
去る昭和三十年の第二十二回国会におきまする女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律の成立以来、その施行によって、補助教員の配置件数は漸次増加し、昭和三十一年度におきましては、休暇教員数の平均八〇%に対する補助教員の配置を見るに至りました。
しかしながら、補助教員の配置件数の増加にもかかわらず、地方財政窮乏のために、この法律の趣旨、すなわち労働基準法に規定するところの十二週間を最低として休暇をとらせ、その期間を補助教員配置の期間とするという精神は、いまだに徹底を欠き、補助教員を完全に配置しておりまするところはわずかに三県を出でず、その他の府県におきましてはいずれも八週間ないし六週間にとどまっている現状でありまして、これを全国平均いたしますれば一・五ヵ月という実情にあります。
従いまして女子教職員が、その担当学童に対する教育的良心から、産前の休暇はほとんどとられていないという実態は、法の施行前と大差なく、過労による異常産はきわめて高い比率を示しております。
このように、補助教員が無配置であったり、配置期間が打ち切られておりますために、学校長や教頭あるいは手あきの教員が学級の処理に当るとか、学級を合併することによって、辛うじて教育を維持いたしておりますが、このことが教育上多大の支障をもたらし、学校教育の正常な実施を阻害する原因となっておりますことは申すまでもありません。
本改正案は、右に述べました理由によりまして、第四条中の、「その休暇の期間の範囲内において学校教育の正常な実施が困難と認める期間を任用の期間として」となっておりますのを「その休暇の期間を任用の期間として」と改め、従来、学校教育の正常な実施の困難性の認定については、任命権者の裁定にゆだねられておりましたために、地方財政上の理由等により補助教員の配置期間が短縮されるおそれがありましたのを、女子教育職員が産前産後の休暇をとる場合においては、その休暇の全期間を通じて教育職員を臨時的に任用しなければならないことを明瞭に義務づけることとし、労働基準法に定められた期間がすなわち配置の期間であると解すべき法の趣旨を十分に表現いたしました。
従いまして、国及び地方公共団体の任務として必要な財政措置を講ずべき旨を規定した第三条は、これを削除することといたしました。
次に、現在の補助教員の配置が、臨時的任用によるものと、一般教員と同様に任用の上補助教員としてプールし、配置がえを行なっているものとの二様の方法によって補充されておりますことにかんがみまして、第二条に新たに第三項として「併任」の定義を規定いたしますとともに、第四条にただし書きを加えまして、二様の配置方法を実施し得るように措置いたしましたほか、第四条中の若干の字句について改正をいたしております。
なお、この法律は公布の日から施行することといたしてあります。
以上が本改正案の提案の趣旨並びに改正の主要点でございます。何とぞ慎重に審議の上すみやかに御賛同下さいますようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/94
-
095・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 次に、産業教育振興法の一部を改正する法律案を議題といたします。
発議者から提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/95
-
096・竹中勝男
○竹中勝男君 ただいま議題となりました産業教育振興法の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表し、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。わが国の産業教育の飛躍的振興を目ざして、産業教育振興法が制定公布されましたのは、去る昭和二十六年でございましたが、以来、今日まで、短かい年月の間ではございましたが、関係者の御努力によりまして、その成果は着々と上り、産業教育関係の施設設備が面目を一新したことは、科学技術教育、産業教育の振興が強調されている現状からまことに喜ばしい限りであります。
すなわちこの間の産業教育振興のための国庫負担金は、約四十七億円に達し、約九十二億円の設備と、六万坪に及ぶ施設が充実されましたことによっても、その進展の度合いがうかがわれるのであります。しかしながら、一面において、また、本法が決して完全であり、理想的であるとは言えない点もあるのでございまして、今日まで、多数の関係者から強く改正を要望されているのであります。
その第一は、国の負担率の問題でありますが、法律上は「経費の全部又は一部を負担する」となっておりますが、本法の施行令においては、負担割合を定めており、そのほとんどが三分の一負担になっている点であります。かように三分の一の国庫負担率では地方負担が三分の二となり、従って勢い国の負担金は豊かな地方公共団体にしか流れていかないこととなりまして現に、負担金が地方から返還されてきたという年もあるのでございます。これでは最も国の財政的援助を渇望している貧乏な地方公共団体の設立する学校は少しもよくならないわけで悪循環ということになるわけであります。
従いまして、主要項目についてはぜひとも国庫負担率を二分の一に引き上げることを法律に明示することが本法律の目的にかなった措置であると思うのであります。
第二の点は、本法によって充実されました施設設備も、第一には日進月歩の科学技術の進展に即応したものでなければ教育の実効が上らないということ、第二には当然の破損、磨滅ということから耐用年数がそれぞれ定められ、更新されねば教育は遂行されないということから、一定の基準によって更新が円滑に行われてこそ、わが国の産業経済の発展と国民生活の向上の基礎となる産業教育が発展するのでありまして、これらの更新費についても国庫負担の道が明確に開かれることはきわめて重要なことであると思うものであります。
以上、二点につきましての改正を行わんがために第十五条の一部を改めることといたしました。
すなわち第十五条第一項に掲げる施設設備費はすべて二分の一国庫負担とするとともに、これによって整備された施設、設備の更新についても、同様の国庫負担を行うことといたした次第であります。
何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/96
-
097・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 次に、義務教育諸学校施設費国庫負担法案を議題といたします。
この際、本案に関し行なった派遣議員の報告を求めることといたします。有馬君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/97
-
098・有馬英二
○有馬英二君 調査報告、第一班。第一班の御報告をいたします。
第一班は、有馬、高田の両委員並びに委員部から秋山君が随行いたしましたが、調査の御報告をいたします前に、一言お断わりしておきたいのは、出発前にも委員長からお話のありましように、茨城県高萩市学校統合に関する紛争は、去る四月六日に横川小学校だけを独立校とすることで解決したのでございますが、大規模の学校統合のテスト・ケースという理由もありまして、どういう方法で解決されたかという点に重点を置いて現地の模様を見て参りました。
まず、私どもは、県教育委員会、高萩市教育委員会の方々及び高萩市の当局の方々、学校代表の方々と懇談を行い、実情を聴取するとともに、種々意見の交換を行なったのでありますが、それによりますと、次のような状況であったと考えられます。
まず、最初に問題となった新設校東小学校に統合される予定の諸学校の距離を申し上げますと、バス道路の距離にして、東小学校から中戸川小学校まで十二キロ、大能小学校まで十四キロ、若栗小学校まで十二キロ、横川小学校まで十六キロで、いずれも山間部にあり、児童の分割統合が行われた高萩小学校と松岡小学校は、東小学校からは比較的近い距離にございます。
次に、新設校東小学校の統合計画に基く各校の統合児童数は、若栗小学校五十五人、中戸川小学校七十六人、大能小学校七十六人、横川小学校百二十七人、高萩小学校千九百八十六人のうち六百七十人、松岡小学校千一人のうち百三十八人、計一千百四十二人であります。
統合実施後の東小学校の児童数は、独立した横川小学校を除いて総数一千百三十三人で、その内訳は、本校四百三十一人、高萩小教場四百八十五人、中戸川教場七十八人、大能教場八十四人、若栗教場五十五人であります。
高萩小教場外三教場は、東小学校が第一期の工事で十教室の完成を見ましたが、全児童を収容できないので、完成までそれぞれ教場として残り、当該児童の教育に当ることになっております。従って、現在収容されている児童数は、本校の四百三十一人であります。
次に、懇談の模様を申し上げたいと思います。まず、今回高萩市教育長から経過の大要を聴取したのでありますが、それによりますと、小中学校統合を必要とする理由としては、
1 復式授業のため完全な直接指導ができず、教育能率が上らない。
2 設備が不十分で教育効果が上らない。
3 職員が手不足で教科の指導が十分にできない。
4 学童数が少くて切瑳ができず、意気が上らない。
5 素質はあっても刺激が少くて適当に伸ばされない
6 市民の融和上、統合は意義が大きい。
7 統合は二、三男対策上、自己の進路、適正の発見にきわめて重要である。
8 民主社会における民主的生活を体得するためには、多人数の学校における特別教育活動を体験することがきわめて大切である。
9 多人数の学校においては、指導者も物も場所も十分で、指導が適切に行われる。等があげられ、小規模小中学校を統合して義務教育水準の向上をはかるためということでありました。最初に申し上げました東小学校の統合計画案は、途中で変更され、横川小学校を独立校として存置することに決定を見たわけでありますが、横川小学校が独立校として存置されることによって解決の運びとなるまでに、次のような点が問題であったとして述べられました。部落根性が災いしていること、すなわち横川地区の地元の人々の反対によるものであって、市教委としては、この学校を分校として存置するよう説得に努めたのであるが、地元の人々の賛同を得られなかったこと。市議会文教委員長もやむを得ない措置として分校として残すように説得した。その後市教委は、情勢の判断から独立校として存置する以外に方法がないので、県に答申したこともある。これは県の議決に抵触するのではなかろうかという疑問もあり、また、四月八日には横川小学校が盟休に入るのではないかの懸念もありましたが、これも県の議決に抵触するということで免れ、結局、四月六日に市議会で独立校として存置することに決定いたしたのでございます。なお、本決定を見るまでに、市の代表、教育委員の代表による合同対策委員会の方々の尽力のあったことを申し添えておきます。以上が、本問題についての今回高萩市教育長からの大体の報告でございました。
次いで私どもは、関係者と種々意見を交換したのでありますが、その様子を申し上げますと、
一、市議会での横川小学校存置の決定は、全会一致であったこと。
一、最後の決定は、市議会議長に一任していたこと。
一、通学距離の限界については、長野県等の実情をも十分調査検討した上で、横川地区から東小学校までの二十三キロの通学距離も、スクール・バスの運行により通学に支障はないではなかろうかと考えたこと。
一、スクール・バスでの児童、生徒の疲労度は、調査の結果、現在ではさほど悪影響はないこと、また児童、生徒の融和については、友愛の精神をもって努力すること。
一、健康管理については、月例検査の完全実施を行いたいこと。またこれは中学生の例であるがと前置きをして、最近のデータによれば、統合前より統合後が健康がすぐれていること。
一、スクール・バスは定員を保持すること。等の説得があったようであります。しかし、結局横川小学校については統合できなかったのでありますが、市当局は、横川小学校に対しては、独立校となっても当初の統合計画のワクにも入っていたくらいであるから、今後まま子扱いをせず、あらゆる援助を惜しまないと申しておりました。ここに私どもが特に強調しておきたいのは、スクール・バス使用の定期券を市負担により児童に利用させるという点であります。すなわち横川小学校の場合、年間一人当り一万円、計年間五十万円を必要としますが、この予算措置については永久化するという市の言明であります。もう一点は、現在の東小学校は、第一期工事計画で十教室の完成を見ましたが、昭和三十三年度計画において六百五十坪、今後三ヵ計画で完成させる方針で、それができれば、現在の十教室と合せて二十四教室となり、全児童を収容できるという実情であり、この実現については、非常に強い要望がありました。なお、国においても、学校保健の実施、養護教諭の確保、スクール・バスに対する国庫補助等の措置をせられたい旨要望がありました。また、先ほど述べましたバス道路は、国道に指定されたいという要望もございました。
以上、簡単ではありますが、懇談の模様の報告をいたしました。
私どもは、独立校として決定になった横川小学校の紛争が、単に部落根性が災いしているという市当局の考え方に対しては、反対の確たる理由として受け取るのに、いささか割り切れないものがあるように思われました。実情は、地理的に不利な条件が横川地区にあるのであろうと考えられるのであります。一応円満に解決された現在のところ、この決定は適当であろうと判断をいたします。今後のしこりの点につきましても、絶対にないという市当局の言明を一応了として、統合実施後の種々の困難をみごとに乗り切られ、真に正常な教育の実施が行われることを強く希望して、視察を終ったわけであります。
最後に、県、水戸市各当局、各市町村の代表の方々から、ただいま提案中の義務教育諸学校施設費国庫負担法案の促進方について陳情を受けましたことも申し添えておきます。
なお、われわれの一人高田委員からちょっと申し添えたいということでありますから、その点を付加いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/98
-
099・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 御苦労でございました。それでは高田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/99
-
100・高田なほ子
○高田なほ子君 学校統合問題について有馬委員のお力添えで、ただいま御報告になった所を視察して来ました帰途、同じ県内の千代田村に起りました学校統合問題について視察の機会を得ましたので、時間が短こうございましたが、問題となった点の二、三をあげますと、今の高萩市と同じような部落根性というものがかなり災いしている点もあるのではないかと思いますが、これにつきましては、この統合に際して、子供の教育のためどうするかというような議論が十分になされない結果として現在統合された学校に通学する子供たちは、二里あるいは一里半という道を歩いて通学しなければなりません。この場合、スクール・バス等のようなものは用いられないために、最近通学途上において二、三の不祥事件が起っていることを伺っているわけであります。部落の方々の強い希望として、統合に際しては、できるだけ通学に便利なように、たとえば夕やみ時に帰校する子供たちのため、道路に電燈をつけるとか、願わくばスクール・バスなどが通り得るように、ぜひとも中央において御配慮願いたい、こういうような御要望が強くございました。
以上、千代田村視察の問題点についてのみ御報告申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/100
-
101・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 次に、第二班の御報告を願います。三浦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/101
-
102・三浦義男
○三浦義男君 調査報告書、第二班。
第二班の調査の概要について御報告いたします。
当班は、大和委員と私のほかに、吉田調査員が加わりまして、群馬県下におきましての町村合併に伴う分村地区の一部に起りましたところの児童、生徒の通学区域に関する問題について、二つのケースを調査いたしました。
その一つは、前橋市の東南に位する城南村の下大島地区の父兄が、その児童を昨年度に引き続き新学年度においても、前橋市の永明小学校に通学させることを熱望し、本年三月中二回にわたって児童の集団欠席を行わせ、さらに四月八日の入学式には、父兄同伴で永明小学校に強引に入学した問題であります。
まず、この地区におきましての町村合併の経緯について申し上げます。
昭和三十年四月一日に、旧木瀬村の八つの大字のうち六大字が前橋市に編入し、下大島と下長磯の二部落が木瀬村に残りました。その後、昭和三十二年一月二十日に、荒砥村と木瀬村が合併して城南村となり、さらに同年七月七日に下大島、下長磯、小島田、笠井の四つの大字が、境界線変更のために住民投票を行い、その結果、下長磯と小島田が前橋市に編入し、下大島と笠井が城南村に残ることとなりました。そこで、同年十月十日に境界線を確立し、下大島地区の児童の教育委託は、昭和三十三年三月三十一日限りとする協議が成立したのであります。元来、下大島地区の住民は、前橋市に編入を希望する者と、城南村に編入することを希望する者との二流に分れて紛争を続け、長期にわたって強力な運動が行われてきた地域でありますが、昭和三十二年七月七日の住民投票の結果は、三分の二に三名不足のために、前橋市編入の希望が達せられずに、城南村に属することとなり、町村合併の協議書において、児童については下大島地区の百七名を従前通り昭和三十三年三月三十一日まで、前橋市立永明小学校において教育する旨、両市村において受委託関係が成立し、城南村は、三十三年四月一日以降城南村立笠井小学校に下大島地区の児童を収容して教育に当る準備を整え、教育可能の見通しを持っていたのであります。ところが、下大島の住民は、永明小学校は旧木瀬村時代において、子供たちの兄や姉はもとより、親たちも学んだなつかしい学校であり、受委託関係が三月三十一日で打ち切られることをがえんじないで、集団欠席の非常手段に出たものと考えられるのであります。第一回の集団欠席は、三月一日から八日まででありまして、一年生から六年生までの児童七十八名が下大島地区の来迎寺というお寺に集まってグループごとに自習を行い、その間、一日十名くらいの保護者が、当番によって児童の世話をしたということであります。第二回は、三月二十日から二十九日までの十日間、六年生を除く七十一名が同様の状態で欠席したのであります。
この集団欠席に対し、群馬県教育委員会は、前橋市教育委員会及び前橋地方教育事務所の連絡に基き、児童の出席督促及び保護者の説得、指導について校長と緊密な連絡をとり、手落ちのないよう指示するとともに、城南村教育長に対しても、原因が町村合併にあるので、これが解決について村当局の善処をはかるよう指示し、一方、県知事部局に対しても、町村合併のもつれを教育が受けている旨を伝え、その善処方を要望したということであります。
また、前橋市教育委員会においては、市教育長と学校教育課長が永明小学校に出向いて、集団欠席児童の父兄代表と面談して説得に努め、永明小学校自体においては、校長及び教頭が、毎日欠席児童及び保護者が集まっている来迎寺に出向いて、非常手段のあやまちを説得し、出席の督促に努め、放課後は、各学級担任教師がそれぞれ家庭訪問を行なって、出席の督促、保護者の説得に努力したということであります。
かくて、四月八日入学式当日は、前橋市編入希望派の児童、新入生五名を含めて七十八名が、父兄同伴で永明小学校に登校しましたので、学校側では事態をこれ以上混乱させることが、児童に与える教育上の悪影響を考慮し、校長の責任において市と村の間において正式の話し合いがつくまで、一時授業を受けさせることになりました。
以上が、事件の内容の概要でありますが、この事態に対処するため、県教育委員会においては、四月九日教育長名をもって前橋市長並びに城南村長あてこの問題の解決について特別な配慮を依頼するとともに、前橋市教育長並びに城南村教育長に対して通達を発しております。
この通達の内容は、四月一日以降における教育事務委託関係について配意し、鋭意研究努力を重ねてきたのであるが、複雑な地域事情のため、その実現も困難な事情にあるので、このままでいくならば教育上憂慮される事態の発生も危惧されるから、やむを得ぬ現状打開の暫定措置として当分の間、学校教育法施行令第九条の規定による措置が考慮される、この点について、今日までのいきさつを参酌の上、両市村教育委員会において特別な配慮をもって解決されるようにお願いするという意味のものであります。
学校教育法施行令第九条の規定をこの場合に当てはめて考えますならば、下大島地区の保護者のうち永明小学校へ児童を通学させたい者は、前橋市教育委員会の承諾書を添えて、その旨を城南村教育委員会に届け出なければならないこととなり、前橋市教育委員会が承諾を与えようとする場合は、あらかじめ城南村教育委員会と協議を必要とすることになるのであります。
私どもは、群馬県教育委員会におきまして、県の教育委員長、教育長、県知事部局、前橋市助役、教育委員長、教育長、それから城南村長、教育委員長、教育長等のほか、下大島地区の父兄代表者の参集を求め、さきに述べましたような、現在までのいきさつについて報告を聴取いたしますとともに、これらの代表者から、それぞれの立場からの率直な意見を求めたのでありますが、その大要は次の通りでございます。
一、前橋市としては、四月十四日の県教育委員会のあっせんに従いたいと思う。ただし、学校外における児童の生活ということを考えると、合併問題の早期解決の必要が痛感される。住民投票については三分の二以上と規定されているけれども、合併問題に関する限り、二分の一以上とすることが合理的である。
二、前橋市教育委員会としては、子供に迷惑を及ぼさないことを望んでいたから、受委託関係の継続を希望したが、城南村民の父兄間の事情がそれを許さなかった。
三、城南村としては、長い対立が続き、努力の結果辛うじて三月末までの委託が村議会において全会一致で決定した過去の事情もあるので、村議会としてはもはやいかんともいたしがたい現状にある。施設の点から言えば必ずしも永明小学校がよいというわけではなく、筒井小学校には一教室余っている。通学距離についても、下大島地区の南東部はむしろ笂井小学校の方が近い。しかし、現在の状況は、永明小学校を希望する者の数が四分の三に達し、住民投票の場合と全く似ているのである。
四、下大島地区父兄代表としては、通いなれた学校を下りたくないという気持、特に母親の感情が非常に強く、単なる法律問題としてこれを取り扱うならば、たとい笂井小学校に収容したとしても、字の自治が完全にこわされている現在、健全なPTAの結成はとうてい不可能であるから、永明小学校に通わせるよりほかに解決策はない。町村合併等の立法に際しては、部落の末端における事情や実態を見きわめてからにしてもらいたい、等の意見が開陳されたのでありますが、私どもと県及び市当局との懇談において、これらを総合して考慮いたしました結果、県教育委員会が示唆した学校教育法施行令第九条の規定による措置は、元来少数の区域外通学者に対する特別措置であって、このような集団的区域外通学はこの規定の趣旨に該当するものではないであろうが、町村合併に伴って発生した特別の事態であるから、やむを得ない暫定措置として当分の間この方法により、住民の感情の冷静化と事態の安定を待ち、あらためて恒久措置を講ずることが望ましいという結論を得たのであります。
前橋市としては、その間に生ずる教育費の損失等についても寛容な態度を持する用意があるように見受けられました。要するに、この下大島地区の問題は、暫定的ではありますけれども、一応落着の見通しがついたものと考えて差しつかえないものと思われます。
次に、境町平塚地区の児童、生徒の集団越境入学の問題について報告いたします。平塚地区はもと新田郡世良田村の一部でありまして、戸数百八十六戸のうち、その大部分の百三十二月が現在所属している佐波郡境町から新田郡尾島町へ分町合併を希望しておりましたが、四月八日の入学式当日世良田小学校へ百十七人、世良田中学校へ五十人の児童、生徒をそれぞれ越境入学させたのであります。
これについて、境町、尾島町双方の町長並びに教育から意見を聴取いたしましたが、その大要を次に申し上げます。
まず、境町について申しますと、平塚地区の尾島町へ合併希望の問題は過去数年にわたって紛争が続けられており、平塚地区住民の六割が税金滞納等の非協力的いやがらせによって境町から追い出されることを望んでいるような一般情勢である。教育問題については、小学校の新校舎を平塚に近い地域に建築することとなっており、学校竣工までの間は、東武バスを利用して平塚地区の児童を通学させる予定であり、中学校も将来三校にしたいと思っているので、尾島町教育委員会ともあらかじめ連絡をとって四月以降の児童、生徒の就学に関する了承を得たつもりであったが、尾島町の議員のうちに平塚地区から尾島町の学校へ通学するように勧誘している者もあって、このような事態を惹起し、自治体の今後の運営に大きな問題が残されている、というような意見がありました。
尾島町側としては、世良田の小、中学校を組合立にすることや、事務委託等の話も出たが、結局学校の管理権についての意見の一致を見ず、本年四月一日からは世良田小学校と中学校を境町と尾島町の両方へ財産分配を行なって、それぞれの地区に移築することとなり、すでにその工事が開始されている。教員については、派閥的に見られるおそれもあることゆえ、この問題については一切触れさせないようにしているし、平塚地区の父兄に対しては、境町の学校に通学すべきであると説得しているが、長い間の紛争の感情が残っているから、越境入学した児童生徒を直ちに追い出すわけにもいかぬ次第である、ということでありました。なお、平塚地区の父兄代表は、現在移築のため取りこわし中の世良田小学校と中学校の処分について非常に感情が先鋭化しており、境町に合併以来の区長の更迭問題、消防分団役員の罷免問題、農地問題、旧平塚地区議員の除名問題等も介在し、すみやかな解決は至難であるから、児童、生徒の尾島町通学は許容されるべきであるという口吻でありました。この事態に対する群馬県教育委員会の処理方針をただしましたところ、境、尾島の両町から詳細な実情を聞き、それに基く統合判断により、適正な措置を講ずべき段階にきていると思量する。居住区域の学校に通学すべき旨の啓発宣伝を行うとともに、教育関係者が父兄を戸別に説得する方法もとるべきである、という意見が述べられました。
以上が私どもの今回の調査内容の概要でありますが、町村が町村合併によりその組織及び運営を合理的かつ能率的にし、住民の福祉を増進するように規模の適正化をはかる目的をもって実施された町村合併促進法ではありますが、地方自治体の末端においては種々の困難や紛争が惹起し、その結果は教育問題にまで影響を及ぼし、しかもそのおもむくところはついに児童、生徒の勉学学習に至大の関係を持つ結果となっております現状は、まことに遺憾なことでありまして、特にこれらの紛糾が主として町村合併の結果分村措置を受けた地域に最も多く発生している事実にかんがみ、国の関係諸機関が緊密な連絡のもとに、地方自治体へのさらに適切な指導を行うことにより、円満かつ急速な妥結の道が講ぜられることを切望する次第であります。
なお、今回の調査に当り群馬県下の各市町村代表者及び市町村教育委員会代表者から、目下政府から提案中の義務教育諸学校施設費国庫負担法案のすみやかな成立により、教育施設費の確保を期し得るよう、文教委員会に対して切にお願いするという趣旨の陳情があり、また群馬県教職員組合の代表者から勤務評定実施に対する反対の旨の陳情がありました。
以上、第二班の報告を終ります。
なお、この問題につきまして大和委員からちょっとつけ加えることがあるそうでありますから、大和委員からの発言をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/102
-
103・大和与一
○大和与一君 文教委員会としては、子供たちが安心して学校に通っておるかどうかということだけを焦点にして調査をして参りました。今の報告は二つありますが、前の方の城南村に関しては、私たちが帰ってきのう前橋市議会で文教・総務連合委員会を開きました。そこで県教育委員会が一応考えておる……父兄から寄留といいますか、その地に通わしてくれ、こういうことを前橋市の市教育委員会に話をしておさめるということもやむを得ないだろう、これは財政負担を伴うのですが、それでよかろうというので、大体きのうきめだ。そうして残った問題は、前橋市の教育委員会でそれを決定すれば城南村の村長あるいは城南村の教育委員会とこういう連絡をして、その措置が手続上なされる、現状においては校長の適切な処置によって子供たちを安心して通学をさせている、こういう状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/103
-
104・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 御苦労様でした。
次に、第三班の御報告を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/104
-
105・野本品吉
○野本品吉君 第三班、新潟県の調査報告を申し上げます。
湯山委員長と私のほか生田調査主事が随行いたしまして、他の班と同様な調査事項について調査いたして参りました。
本県におきまして、現在町村合併に伴う問題としては、大別して学校統合にかかるもの二件、境界変更によるものが五件もありますが、特にこのうち西蒲原郡吉田町の中学校の統合に関する紛争について調査いたして参りました。
なお、他の場所における問題についても陳情がありましたので、あわせて簡単に御報告いたします。
まず、吉田町の統合問題の経過を申し上げます。昭和二十九年十一月に吉田町、米納注村、粟生津村が合併し吉田町となり、当初吉田小学校と中学校を併置、粟生津小学校と中学校を併置し、米納津小学校と中学校は独立校舎で運営されてきたのであります。その後、町教育委員会は昭和三十一年五月に吉田中学校と米納津中学の統合のため、新校舎の新築を決定し、昭和三十一年度事業として十一教室を、昭和三十二年度事業として十一教室の建築工事をそれぞれ年度内に完了しました。
この間に、昭和三十二年六月、会計検査院の実地検査があり、旧吉田中学校の一年四学級だけ収容していた新校舎について、補助金の効率的使用がなされていない、と指摘されたのでありますが、米納津中学校の統合は昭和三十二年度工事完了まで延期してほしい旨の釈明書が提出され、また昭和三十二年九月に米納津連絡事務所において中学校統合についての報告等が地区民に対して町長からなされたのでありますが、この時期から米納津地区民の統合反対運動が起り、県教育委員会、町当局と、米納津地区民代表との間に陳情や話し合い等が数次にわたってなされたのであります。
本年三月三十一日付で、米納津中学校の廃校が実施されましたが、地区民は、この校舎で四月一日入学式を行い、教員を雇い、授業を始めたので、吉田町教育委員会は校舎の不法占拠として二日の夜、校舎入口の一部を閉鎖すると同時に、地区民との摩擦を避けるため、予防警戒を依頼し、警察官の出動があったのであります。しかしながら地区民は、警察官の出動を察知し、三日朝、事前に校舎を占拠しましたが、話し合いをするという了解が一応つきましたので、警察官は退去いたしました。その後、両者が会談を行いましたが、不調に終り現在に至っております。
以上が経過の概要でありまして、私どもは県の教育委員会において、これらの経過と現在までの指導について説明を聴取いたしました。その際、町当局からは、正規の手続を行なって学校統合を実施しようとしたのであったが、地区民に対する了解の不十分なことが原因となり、紛糾を起しているとの説明がありました。県教育委員会では、教育委員長以下関係係官が現地にも行き、また地区民の陳情等の際に円満に解決すべく努力したが、容易に解決を見ず、本日に至っていると申しておりました。
次に、吉田町では、町長、町会議長、教育委員長以下関係者と懇談いたしましたが、その際説明のありましたおもな事項は、第一に、町村合併前に吉田町と米納津村との間に組合立の中学校を作る、学校設置の位置については、吉田町に一任するとの話があり、ほとんどまとまりかかったとき、吉田町側に支障があって取りやめとなったこと。
第二に、昭和三十年中ごろから米納津中学校屋内体操場の建築についてしばしば町当局に対し要求、陳情があり、中学校統合の場合には、中学校校舎を小学校が使用することを条件とし、将来の問題になることを考慮して、町長、教育委員、米納津地区代表の三者会談を行なって、小学校屋内体操場を作ったこと。
第三に、昭和三十一年一月に町教育施設の整備を期するため、教育施設研究会を作った。この会には、旧米納津村出身者は七名いたこと。中学校は一町一校とすることに原則的に全員賛成で決定、ただし、粟生津中学校の統合は他との関連で現段階では一町二校としたこと。
第四に、通学の便をはかるため、通学定期バス利用者には町が半額負担を行うこととし、現在バス会社にダイヤの改正を請願中であって運行時間の変更になるまで無料バスを運行していること。また、冬期間の寄宿舎を設置すること。などでありました。
また、米納津地区民代表者との懇談には、元吉田町助役、町議会副議長、PTAその他十四名が出席し、次のような説明がありました。
第一に、町村合併前に吉田町と米納津村との間に組合立の中学校を作る話はあったということ。
第二に、町村合併の条件として、イ、中学校の位置及び呼称は従来通りとすること。ロ、米納津中学校に屋内運動場を新築することを掲げてありますが、屋内運動場は当然中学校の屋内運動場として作られるものであり、地区民は中学校の統合についても知らないので、新設された屋内運動場が小学校の屋内運動場として作られたことは知らなかったというのであります。
第三に、教育施設研究会での中学校一町一校は、理想論としては賛成であったが、当時は吉田中学校の二部授業の解消を避けるという意味で、旧吉田町だけの問題として賛成したし、学校の位置についても、旧吉田町町会議員でさえ、現在の位置を知らなかった。昭和三十二年九月に町長から中学校の統合について初めて聞いた。しかも、その統合は、設備が完備し、統合に支障のない時期に行う予定であるという話であった。
以上が両者の主張でありますが、この懇談後、県教育委員会の係官の意見も聞きましたところ、本問題の内容の輻湊のため双方の主張に誤解があることが判明したので、われわれとしては、過去の行きがかりを捨てて事態解決のため冷静に話し合うよう、県教育委員会、町村当局その他の関係者に対し強く希望しておきました。次いで、旧米納津中学校に参りまして、生徒、母親等から学校の存続についての陳情を受けました。
以上で吉田中学校の統合に関する問題を終ります。
次に、今般の調査の折に受けました陳情について申し上げます。
県教育委員会におきまして新潟県・市当局、議会、教育委員会、県町村長会、県PTA連絡協議会その他の代表の方々から、当委員会に付託されている義務教育諸学校施設費国庫負担法案が、今国会において成立を期するよう何分の努力をされたい、との熱心な要望がありました。
次に、北蒲原郡紫雲寺町の紫雲寺中学校と藤塚中学校の統合にかかる問題であります。藤塚中学校のありました旧松塚村が二分して、紫雲寺、築地の両町村に合併されましたが、その際、合併条件として、藤塚中学校は存置する約束があったはずのところ、町教育委員会、町議会が一方的に廃校を決定した。農村と漁村の違い、通学距離の遠いこと、風紀が悪いこと等の理由で統合に反対し、藤塚部落では教師は有資格者を雇い、この四月の新学期に自主開校をして現在授業を行なっており、町当局は、議会の決定として校具の引き揚げを行おうとして、地区民と対立している現況であります。陳情の内容としましては、前に述べました反対理由その他があげられました。
また、西蒲原郡分水町の同一地境の三部落が近接の吉田町に合併を希望し、住民投票を行なったところ、三部落は編入にきまり、佐善部落だけが、わずか数票の差で三分の二を獲得することができず、残留となったが、せめて、通学距離その他の理由により、吉田町の粟生津小、中学校に地域外通学をしたいという運動を起し、現在なお児童、生徒は就学をしておらず、ぜひ地域外通学ができるように解決をしてもらいたい、とのことでありました。
以上をもって、御報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/105
-
106・湯山勇
○委員長(湯山勇君) ちょっと速記とめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/106
-
107・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 速記つけて。
それでは、質疑のある方は、順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/107
-
108・松永忠二
○松永忠二君 今の御報告に基いて少しあれするんですが、文部省には、統合の基準というか、文部省が出しておる、統合する場合においてはこういう点標準であるべきだと、そういうものがあるんですか。そういう点を一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/108
-
109・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 義務教育学校の統合問題につきましては、これは御承知のように、町村合併または新市町村建設促進ということが国の大きな方針として取り上げられましてから、各地でしばしば問題になっておるところでございます。このことにつきましては、いろいろ、地方の実情ばかりでなく、教育的な配慮ということがきわめて大事でございますので、文部省といたしましても、中央教育審議会に諮問をいたしまして御意見を伺ったのでございますが、その答申によりますと、大体通学距離といたしましては、小学校においては四キロ程度、これは徒歩での通学距離でございます。小学校においては四キロ程度、中学校においては六キロ程度が適当であろう、それから学校の規模につきましては、小学校においては、十八学級程度、中学校においては十二学級程度のものが適当であろうというような御答申をいただきましたので、それを文部省としても了承いたしまして、各府県に通牒を流しておるわけでございます。私どもは、大体において無理のない統合が行われるのはこの程度のものでなかろうかと思っております。ただ、地方の実情といたしまして、たとえば、平地であって自転車通学ができるとか、あるいは交通も比較的便利であって四キロないし六キロをこえるというものも相当ございます。ございますが、私どもといたしましては、先ほどお答え申し上げましたように、中央教育審議会が答申してくれた線が最も妥当の線ではなかろうかというふうに一応考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/109
-
110・松永忠二
○松永忠二君 そうすると、その統合の基準が明確に地方にはわかっていて、そうして統合に伴う補助の申請に当っては、そういうふうな点は十分検討されて地方から出され、また、文部省でも補助金を与える場合にはそういう点が検討されているのですか。今御報告を聞くと、だいぶそういう点が違っている点が非常に多いので、そういう点がどういうふうになっているのか。一応ただ四キロ六キロ、十八学級十二学級ということだけであるのか、それとももう少しやはり統合の補助申請に当ってはこういう点に留意をされたいというようなものが周知徹底されているものなのか、それからまた、申請に当ってはそういう点が十分に判明できるような措置が講ぜられているのかどうか、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/110
-
111・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 学校統合の建築費に対する補助金の関係でございますが、これは御承知のように、一昨年から国の補助金が出たわけでございます。この補助金を得る資格といたしまして、私どもは、一応とにかく地元の町村内で円満な協力の得られるものを優先的にとる、それからまた、大体町村合併に伴う学校統合というものを優先的にとる、という二つの方針で従来やってきておりまして、もちろん通学距離等も一つの条件にはいたしておりましたけれども、その点特に文部省の方で審査の非常に大きな要素としたわけでは実はございませんので、その点からただいま御報告のありましたようないろいろなケースが出たものと思います。文部省としても、こうした事情が各地に起って参りますので、三十三年度以降は、そういった通学距離の点、あるいはその他の児童に及ぼす教育上の影響という点を特に取り上げて厳重に今後は審査をして参りたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/111
-
112・松永忠二
○松永忠二君 もう一つ、統合の文部省が考えている予定校というのは、今のお話では調査ができておるんですか、それとも大体どの程度に統合されていくというような見通しを持っておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/112
-
113・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) これは、私どもが昨年の五月一日現在で調べたものでございますが、大体小学校では、町村合併に伴うものが、これは現在統合前の数を申し上げますが、三百七十校程度、それからその他のものが二百六十一校、合せて六百三十一校程度のものがすでに市町村の議決を経ておるものでございます。それから中学校につきましては、町村合併に伴うものが千十二校、それからその他のものが三百三十一校、こういうような実は数字になっております。この小学校の三百七十校が合併後には二百四校になり、それから町村合併以外のもの二百六十一校が合併後には百四十校程度になる、こういうような数字を持っております。従いまして、小学校、中学校、義務制全体合せますと、町村合併に伴うものが千三百八十二校のものが六百八十七校程度になり、それからその他のものが五百九十二校のものが二百九十七校程度になる、こういうような一応の調査の数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/113
-
114・松永忠二
○松永忠二君 法案の方を一、二お聞きをしたいと思うのでありますが、第三条の「公立の中学校の屋内運動場の新築又は増築に要する経費」というのは「二分の一」というふうに出ておるのですが、これは相当今後基本になる法案だと考えてみると、小学校の屋内運動場に対しては政令で限度が定めてあるので、やはり小学校についても入れておく方が妥当ではないかという気持を持つのですが、どういうふうな理由から小学校については除外をしたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/114
-
115・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 小学校、中学校とも義務制でございますので、中学校だけに国の補助金を与えて小学校の屋内運動場の整備に補助金を与えないのは、ただいまお尋ねでございましたようにアンバランスであると思います。ただ、御承知のように、中学校の屋内運動場・は新しい教育制度が発足いたしまして、それに伴って中学校の校舎と同時に屋内運動場というものが起って参りまして中学校の校舎整備の一環として、中学校の屋内運動場というものを取り上げたわけでございます。小学校は新学制以前から、旧学制の時代から屋内運動場をある程度持っておったという関係で、従来も中学校にだけ国の補助金がついておったというような状況でございます。現在の小、中学校の屋内運動場を持っておる状況を申し上げますと、大体小学校は半分以上、五二%が屋内運動場を持っておる。中学校は三六%、三六%の学校が持っておるにすぎない、こういう状況でございます。理論的には確かにお尋ねのようなことになるかと思いますが、ただいま申しましたような義務年限の延長によって特別に中学校が必要になったということと、またこれは小学校の教科、中学校の教科を比較いたしました場合に、中学校の教科の方が、体育の場合におきましても、より屋内運動場が必要であろうということが考えられますので、一応現状ではかようにいたしておりますが、将来できれば、私どもといたしましても、小学校の屋内運動場の整備に国の負担金が出るようにいたしたいというふうに考えております。なお、小学校の屋内運動場につきましては、御承知のように、戦災復旧、あるいは災害復旧の場合ばかbでなく、危険校舎の改築をする場合には、これは従来小学校で屋内運動場を持っておった場合に、危険校舎の改築の負担金の対象になり、また僻地の場合には、小学校の僻地の集会室、これは屋内運動場兼大教室になるようなものでございますが、そういうようなものは小学校の場合でも現在対象にいたすことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/115
-
116・松永忠二
○松永忠二君 まあ、相当これから基本になる法律であるので、まあ、初めに政令というふうなところではっきり限度がきめてあるのは中へ入れておいていただけば財政の非常に困難な地方もあるので、やはり非常によかったという感じを持っておるわけであります。こういう点については、今後も考えていくとかいうことも必要だと思うのでありますが、これと似たようなもので従前特殊学級について千八十万という施設整備費というものが出ておるわけであります。今度の法律によると、これは第三条の四という中に盲学校、ろう学校の問題が出ておるのでありますが、基準定数の定数の方でも特殊学級について定数が出ているので、やはり従前やっていた特殊学級の施設整備費、現に出しているものについては、これに入れておく方がいいのではないか、入れておかないと、まあ、今後これを増加していくとか、あるいは明確にしていくということは非常に困難になるのじゃないかと思うのですが、こういう点はどういうふうにお考えになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/116
-
117・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) お答え申し上げます。予算的には従来盲、ろう学校の経費の中から一部を回して特殊学級関係に充てておったのでありますが、本年度からは新しい項目として特殊学級のものを特に、小さい柱でございますが、立てたというようなことで、その点は予等的には、金額は不十分でございますが、前進していると思います。
なお、なぜこの新法案に入れないかというお尋ねかと思いますが、これは御承知のように、この新法案は義務教育関係の施設だけを特に取り上げて対象にいたしておりまして、御承知のように、特殊教育の関係は盲ろうを除いて現在まだ義務制になっておりませんので、残念ながらこれに入れることができなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/117
-
118・松永忠二
○松永忠二君 そうすると、この法律ができても従前通りの措置は引き続いて行われていくものだ、そういうふうに判断していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/118
-
119・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 予算が取れておりますので、従来通り、法の規定はございませんけれども、予算補助をして参るつもりでございますd発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/119
-
120・高田なほ子
○高田なほ子君 ちょっと二点ばかり聞きたいのですが、学校統合問題で私は通学区域の問題で、小学校は先に四キロ、中学校は六キロ、審議会の答申がなされておる。まあ、答申は答申としていいと思いますが、小学校がかりに六キロ通学しなければ通学できないというような場合は、実際私千代田村のずいぶん山道のひどいところで、とても小学校の一年生の子供がこの山道を雨の日も風の日もどういうふうにして行くのかということについて非常に心を痛めてきたわけですが、もし通学、はなはだしく登校が困難であるというような場合に、何らかの方法を講じられるような用意があるものか、これが一つです。
それから同時に、中学校の場合の六キロは、これは六キロをオーバーしているところがずいぶんあると思うのですが、なるほど中学生は自転車に乗るからいいという考え方も一部あるようですが、さて自転車がない子供もまたかなりあるように思うのです。こういう場合にどんなふうな方法がとられるものか、とった方がいいのか、文部省としてどういう措置をこれにしているかということなんです。
それから二点は、先ほどどなたでしたか 三浦委員の報告の中にもあったようですが、暫定的に通学区域を越境入学させなければならぬというようなところがあるわけですね。茨城県の千代田村も、やはり統合した学校よりは隣の石岡の中学校に行った方がはるかに近いというようなところから、石岡中学校に通う子供があるようですが、その場合に確かに越境入学というのは法的にむずかしいことではあるかと思いますが、さっき申し上げましたような、通学区域等との関連で無理な統合がされた場合に、暫定的にこういうことは認めていくというような方法も考えなくちゃならないのじゃないかというふうに思いますが、これについてどんなふうな御指導がされるのですか。
それからもう一つは、スクール・バスの負担について高萩市の場合は市が負担しているわけでありますが、この負担もなかなか容易ならざる負担であろうと思いますが、将来国としてスクールバスの負担等については何らか研究なされておるのですか。同時に、スクール・バスを使う場合に、先ほど申し上げた統合による部落根性からおれの部落の方には通すことができないから、スクール・バスを自分の部落の方に入れないでくれという、子供の便利とか、通学に大へん都合がいいなどということは全然考えないで、おれの部落は通さないでくれというような、そんなひどいやり方等についても当然これは指導されなくちゃならないのじゃないかと思いますが、こういった苦情処理機関や、御指導の方針などいろいろその場、その場で違うかもわかりませぬが、どんなふうに、これら統合から起った諸問題について解決していこうとされるか、いろいろお聞かせ願っておけば、大ヘん仕合せだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/120
-
121・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 最初の通学区域の問題でございますが、小学校は先ほどお答え申し上げましたように、徒歩通学で四キロ、中学校は六キロ程度まではよかろうということで、これを私ども一応の目安にしております。ただ、小学校の四キロが距離が長くなって六キロになります場合と、中学校が六キロが八キロになる場合とでは、やや私は困難度が違うのではないか、小学校の方は中学校の方に比べて通学能力と申しますか、それは低いわけでございますので、小学校の方はあまり無理な統合はしない方がいいのではないか。子供の教育上から、そういうふうに考えているわけでございます。中学校の方は体力的にも通学能力がかなりございますので、場合によっては、六キロが八キロになるというようなことがありましても、それはあながち直ちに無理になるというふうに考えないわけでございます。小学校の特に低学年の場合は、できるだけ現在出ております一応基準の四キロというものを守るようにしてもらいたいと思います。
なお二番目に、学校の統合が無理なために、場合によっては暫定的によその町村の学校に行く、越境して入学するというお話もございます。先ほどの御報告にもございましたが、やはり私どもといたしましては、区域内の通学が原則であり、これが一番いいと思っております。できるだけ私どもといたしましては、そういった暫定的にしろ越境入学というようなことが起らないような統合を進めていきたい。また、国が補助金を出す学校統合については、そういった事態の起らないよう、今後特に厳重に補助金の審査を行なっていきたいと思っている次第でございます。
なお、スクール・バス等交通費の負担の問題でございますが、これは確かに起ると思います。ただこの点につきましては、自治庁ともいろいろ話し合いまして、自治庁も将来できるだけ交付税の算定の基礎に入れたいというお話もございますので、そういったことが、できるだけ早く実現するように持っていきたい。またお話の中にございました自分の部落にスクール・バスを入れないでくれというような部落的の一つの考え、それが子供の通学に非常に不便であるというようなことでありますならば、当然これは子供の立場に立って、バスの路線等も考うべきものと思っております。
また、苦情処理機関についてお尋ねでございますが、これについて直接ただいま考えてはおりませぬけれども、できるだけ住民の方の御希望なり、御意見がこの学校統合をする場合には、反映するように私ども指導して参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/121
-
122・高田なほ子
○高田なほ子君 委員長、ちょっと速記をとめて話したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/122
-
123・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/123
-
124・湯山勇
○委員長(湯山勇君) 速記をつけて。
残余の質問は、次回に譲ることにいたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後四時五十一分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815077X01719580415/124
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。