1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年二月十四日(金曜日)
午前十一時三十一分開会
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委員氏名
法務委員
委員長 青山 正一君
理事 大川 光三君
理事 一松 定吉君
理事 棚橋 小虎君
理事 宮城タマヨ君
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
井上 知治君
大谷 瑩潤君
小林 英三君
重宗 雄三君
最上 英子君
吉野 信次君
赤松 常子君
亀田 得治君
藤原 道子君
山口 重彦君
後藤 文夫君
辻 武寿君
外務委員
委員長 寺本 広作君
理事 井上 清一君
理事 鶴見 祐輔君
理事 森 元治郎君
理事 石黒 忠篤君
井野 碩哉君
鹿島守之助君
黒川 武雄君
笹森 順造君
杉原 荒太君
苫米地英俊君
永野 護君
野村吉三郎君
阿部 清美君
岡田 宗司君
加藤シヅエ君
佐多 忠隆君
曾祢 益君
羽生 三七君
佐藤 尚武君
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出席者は左の通り。
法務委員
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
一松 定吉君
棚橋 小虎君
宮城タマヨ君
委員
雨森 常夫君
亀田 得治君
藤原 道子君
後藤 文夫君
外務委員
委員長 寺本 広作君
理事
井上 清一君
鶴見 祐輔君
森 元治郎君
石黒 忠篤君
委員
井野 碩哉君
黒川 武雄君
笹森 順造君
杉原 荒太君
苫米地英俊君
野村吉三郎君
岡田 宗司君
佐多 忠隆君
曾祢 益君
羽生 三七君
佐藤 尚武君
国務大臣
法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
政府委員
警察庁警備部長 山口 喜雄君
法務省入国管理
局長 伊関佑二郎君
外務政務次官 松本 瀧藏君
外務省移住局長 内田 藤雄君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 渡邊 信雄君
説明員
法務省入国管理
局登録管理官 豐島 中君
外務省アジア局
第二課長 岡田 晃君
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本日の会議に付した案件
○外国人登録法の一部を改正する法律
案(内閣送付、予備審査)
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〔法務委員長青山正一君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) ただいまから法務、外務委員会連合審査会を開会いたします。
先例によりまして、私が委員長の職務を行います。
これより外国人登録法の一部を改正する法律案につきまして質疑を行います。質疑は外務委員の方を優先して行いたいと存じますので、この点、御了承願いたいと存じます。それでは御質疑の方は御発言下さい。
なお、政府から唐澤法務大臣、伊関入国管理局長、豐島登録管理官、松本外務政務次官、内田移住局長、岡田アジア局第二課長、山口警察庁警備部長が見えておられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/1
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002・岡田宗司
○岡田宗司君 今度の外国人登録法の改正ですね。これに至りました経過でございますが、前に、私どもは、この外人登録法のうちにある指紋をとることが、これが外国との交流の関係においていろいろな障害となっておる。私どもも外国へ行きました際に、こういうことが行われるといたしましたならば、それは非常に快からぬものを感じるのでございますが、そういうようなことで、私どもは指紋をとるということを早くからやめることが日本にとっていいというふうに考えておりました。特に中国との貿易の問題がだんだんに進んで参りまして、そしていつも代表部の設置の問題についてこれがからまっておる。あるいはまた、見本市を開く問題について、向うから来る人のことについてもこれがからまる。こんなことで、これが非常に障害になってきておったのです。そこで、私どもは前からこれを何とかして改正しろ、この指紋をとるのをはずせというふうにたびたび政府に要求して参りましたけれども、政府はいろいろな理由をあげまして、これを改正することをがえんじなかったのであります。ところが、昨年の中ごろになりまして、アメリカでも、いろいろな不便を感じて参りまして、そしてアメリカでも各国との交流の上でこれが非常におもしろくない感情を引き起させるということが問題になりまして、改正するようになった。そういたしますと、直ちに今度は外務省も、法務省もこれを取り上げて改正をなさる。まことにどうも自主性のない話なんです。ばかげた話です。そうしてその上にもってきまして、このために今まで中国との貿易協定が成立するのが大へんおくれて参りまして、どんなに損をしているかわからないのです。これは両国の国民の感情の上からいいましても、また、商機を逸したというような点からいいましても、どれくらい損をしたかわかりません。ようやくにして、まあこれが改正される運びになった。まあいい話でございますけれども、はなはだ自主性がなかったと思うのです。そこで、これは法務大臣にお伺いしたいのですが、法務大臣は、私が今言ったようなことで、アメリカの方で変えたから――アメリカの方ではこの問題について相互主義をとっている、そういうことから変える必要があってお変えになったのか。それともこれを昨年の暮れになって急にお変えになるように閣議がきまり、そうして法務省でもそれをきめたということは、何か別に変えなければならぬという理由があってお変えになったのか、とにかくその辺から伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/2
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003・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この改正案を出すに至りました動機についてのお尋ねでございますが、この指紋制度はお言葉にもありました通り、元来、世界友好の原則から申しますれば、治安の点でさえ心配がなければ、かような制度はない方が理想である。これは今のお話の通りでございまして、私もさように考えます。ただ、この法律ができました当時の国情から見て、どうしても指紋制度が要る。しかもそれは、六十日をこえて日本に滞留する人には必ず指紋をとるというほどにその必要性が感ぜられて、当時この立法ができたと思うのでございます。しかしながら、もし治安の関係から考えまして、これを幾分でも緩和することができるならば、それで治安の関係に支障を持ち来たさないようならば緩和した方がいいじゃないか、かような考えは法務省にもございまして、従来からその点を検討しておったのでございますが、まず六十日を一年くらいに緩和しても今日の治安状況では差しつかえがなかろうという結論に達しましたので、それでこの改正をいたすようになった次第でございます。なお、アメリカの関係とかあるいは日中貿易の関係等もなるほど一つの刺激にはなっていることは事実でございますが、治安の関係の方から見て、必要がなければ、でき得る限り緩和したらいい。しかし、治安関係の点で支障が起るようでは困るから、そのほど合いをとって、六十日を一年間、こういうふうに延長いたすことに決定した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/3
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004・岡田宗司
○岡田宗司君 ただいまのお話ですと、それはアメリカの方で変えたことも、あるいは中国貿易の問題も一つの刺激にはなった、こうおっしゃったのでありますが、しかし、本来は治安関係の問題である。治安の点において、一年くらい滞留する者には指紋をとらないでも差しつかえない、こういうことになったから変えるのだ、こういうお話でありますが、それならば今まで、何ですか、これがあったために治安の上に非常に貢献した、また、今までこれがあったためにいろいろな治安上の問題が起るのが押えられてきたのだが、今後これが一年になっても、あとで前に起ったと同じような問題が起らない、そういう見通しが立ったということですか。前にはこれがなかったならば、どういうようなことが起り、また、これがあったために治安上どういう効果があったかという点についてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/4
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005・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいまのお尋ねにつきましては、この法律は過去において相当の効果をあげておると思いますが、その実績につきましては、局長の方から御説明を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/5
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006・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) 従来、われわれの方といたしましては、この指紋制度をとっております主たる目的は、密入国者の防止という点が主たる目的でございます。警察の方はまた、一般的な犯罪の取締りという観点があると思いますが、入管といたしましては、密入国者を防ぐという点に重点があったわけでございまするが、従来、外国人は全部登録証明書を持っていなければならぬわけでありますが、この登録証明書をなくしたと言って、これの再交付を申請する数字の統計がございますが、たとえば、昭和二十八年には一万八千くらいそういう申し出がございます。昭和二十九年にも一万八千、三十年に指紋を実施いたしましたが、その年に一万四千に減っております。三十一年には九千台、三十二年は六千台に減っております。と申しますことは、ほんとうに登録証明書をなくして再交付を申請する人ももちろんございますが、この登録証明書をなくしたと言って、もらって、それからその古いなくしておらない元の証明書を密入国者にくれてやり、その人だちがこれを偽造する、写真を張りかえるというふうな、変造するというふうなケースが非常に多かったのであります。これが指紋制度を実施いたしまして、こういうふうに減って参りましたということは、密入国者が変造するとか、偽造した証明書を持って国内を歩き回るということが非常に困難になったという意味におきまして、密入国の防止という点について非常に効果があったと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/6
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007・岡田宗司
○岡田宗司君 今あげられた件数は相当多いと思うのでありますが、その国籍はどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/7
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008・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) ほとんど全部朝鮮の関係でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/8
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009・岡田宗司
○岡田宗司君 そういたしますと、これによって最近なくしたからというので再交付を請求するものが非常に少くなったということですが、これは指紋をとることによってそういうふうに少くなったという効果なのか。それとも密入国に対する取締りの制度、あるいはまた、それの取締りの実績が上ったためにも密入国者が少くなって、そういうものが少くなったのか、どっちなんです。全部が指紋の問題なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/9
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010・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) 密入国者の数はこれははっきりわかりません。と申しますのは、発見されない者がございますが、われわれが発見しております数字はほとんど例年動いておりません。最近大体同じ数字であります。ですから、潜在密入国者というものが登録証明書を持って発見されずに済むということが、こういうふうに再交付が減るということによって減っていき、結局潜在密入国者という者がおりにくくなるという効果があったと認めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/10
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011・岡田宗司
○岡田宗司君 そういたしますと、今度の改正によりましてこれが緩和された場合に、そういう再登録の交付が、また、請求される件数が多くなるということはないのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/11
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012・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) 一年以上というふうな者のみ指紋を押すことになっておりますので、密入国者で入って参りました者は、ずっと永久におりたいわけでありますから、入りましてすぐ帰るというふうな者には今度の改正も影響いたしまするが、ずっともぐっておる者にはこれは影響ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/12
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013・岡田宗司
○岡田宗司君 今度の改正によりますと、一年未満の人は指紋をとらないということになっております。ところが、こちらにおりまして、たまたまいろいろな理由でもって一年以上になるというような場合には、あらためて指紋をとるということになっておる。これはちゃんと法律のうちにそういう規定があって、例外は設けておらぬようでありますが、この一年以内の人が何らかの理由で日本にさらに滞在を延長する場合には、だれでもこれは無差別に例外なくもう一度指紋をとるというふうにされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/13
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014・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) この外交官、領事官、それから公務員、公務を帯びる外国政府の公務員それから国際機関の公務員以外につきましては一年以上滞在することになりましみら、例外なくとるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/14
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015・岡田宗司
○岡田宗司君 そこで、今度の、例の中国貿易の民間協定との問題になってくるわけでありますが、たとえば、こちらに通商代表部のようなものが設置される。そこに向うから派遣されてくる人が、これはまあ一年以上にわたる場合があるかもしれない。そういう際に、やはり今のこの今度の改正法律が適用されるということになりますと、指紋をあらためてとるという事態が起ってきますが、そういうことになると、また、今までのようなつまらない紛争、あるいは感情のもつれができてくるように考えられますが、その点について法務大臣はどういうふうな措置をとられるか、やはりこの改正法に従って厳格に指紋をとるおつもりなのか、そこをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/15
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016・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 通商代表部の問題について、もし一年以上滞在する者が出た場合にどうするかというお尋ねでございまして、そういう場合も考えられるのでございまして、この場合につきましては、何か行政措置で指紋をとらないで済ませる方法はないだろうかということで、目下外務省と検討中でございまして何とか行政措置で指紋をとらないようにやっていけるのではないかと思っておりますが、まだ確定的の段階にまで至っておりませんが、検討いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/16
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017・岡田宗司
○岡田宗司君 何とか、行政措置ということが問題のようでありますが、問題はこの規定は非常に厳格なわけなんです。ところが、大ていいろいろな法律にはこういう問題は、何かこう緩和するための例外措置を許すような規定がどこかにつけ加えられておることが多いのであります。これにはその点つけ加えられておらない。そういたしますると、行政措置を考えようといっても、これはますますむずかしいと思うのですが、この法律にそういう何かただし書きをつけて、例外措置が開けるような条項をお入れになるつもりはないのかどうか。そうしないと、行政措置をとるといってもむずかしいのじゃないかと思うのです。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/17
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018・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) この法律自体に、そうした裁量規定を置くということは目下のところ考えておりません。結局、行政措置と大臣が申されましたのは、これはまだ最終的な考えとは申し上げかねますが、公務員に準ずるというふうな考え方が前からございまして、まあこの法律にはそういうことは何もございませんが、国際慣行というふうな点から、どこの国でも外交官、領事官、公務員というものには指紋をとっておりません。今度の代表部員もそういうふうに準じて扱い得るのじゃないかどうかという点を考えておるという意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/18
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019・岡田宗司
○岡田宗司君 そういたしますと、この法律の方に例外規定を設けないで、むしろ中国の通商代表部の人を公務員に準ずるというふうな資格を認めてそちらの方で加減していくという方針のようでありますが、この点は外務省の方にお伺いしたいのでありますが、松本さん、そういうふうに今度は通商代表部の人を公務員に準ずるというふうに外務省では認定されるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/19
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020・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 先ほど御答弁にもありましたように、どうしたならばこの指紋免除の措置が講ぜられるか、これにつきましては、大体今のところでは、まあ公務員に準ずるような規定が何とかして設けられないだろうか、行政措置によって設けられないだろうかという観点に立ちまして研究しておりますが、道を何とかして開きたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/20
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021・岡田宗司
○岡田宗司君 従来は公務員だけでありまして公務員に準ずるというような規定がなかったわけですね。実際上、今までたとえば純粋な公務員だけに免除しておって、公務員以外の人には免除してなかったのか、あるいは逆にいえば、公務員以外の人で何らかの形で、これはこういうふうに一般的な形でなく個人々々についてでありますが、この指紋を免除した、そういう例があったかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/21
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022・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 私の知っておる範囲内におきましては、こういう公務員に準ずるというような前例は設けられていないとこう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/22
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023・岡田宗司
○岡田宗司君 新しくそういうふうなものを設けるといたしますというと、その範囲が問題になりますが、お考えになっておるその公務員に準ずる者というものの範囲はどのくらいの、また、こういう種類のものがそれに入るか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/23
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024・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) これは今ワクをきめるとか、範囲をきめるということは非常に困難だと思うのであります。当面の問題といたしまして、この中共との民間ベースにおきまするところのこの取りきめに便法を考えるということでございますので、今後起りましたときにはやはりケース・バイ・ケースで取り扱うことが妥当ではないかと、今のところでは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/24
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025・岡田宗司
○岡田宗司君 そういたしますと、これは非常におかしな話になるのでありますが、法律にもつまり免除するのに根拠がないわけです。それなら、それでは何か行政措置というので、何かそういう方面の規定でも設けて、それである一定の範囲をきめてやるということからの根拠もないということになると、全く法を無視して勝手におやりになる。今度やめるときもそれじゃもう勝手にやめるというようなことで、えらい御都合主義で、ケース・ハイ・ケースでもってどうでもなるというようなことで、かえって運用がまずいことになりゃせぬかということも考えられるのです。一体そういうようなことでよろしいのかどうか。法を破るのにケース・バイ・ケースでいいという一方的な認定だけで政府がやられるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/25
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026・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 先ほど申しましたごとく、これがはっきりきめられるものでしたらよろしゅうございますけれども、目下研究中という言葉を使いましたのは、特にそこに意味があるわけでございまして、従って、どういう形になってこれが現われるかということがはっきりしませんので、今のところでは、やはりケース・バイ・ケースで考えるのが妥当ではないかという工合に、まあかなり抽象的ではございましたが、御回答したのでございますが、何かここにはっきりした一つのワクとか範囲というものが生まれるような行政措置というものが考えられますならば、もちろんこれはケース・バイ・ケースということにはならぬと思うのですが、場合によりましたならば、やはりケース・バイ・ケースで措置していかなければならないような措置になるかもしれないということを申し上げたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/26
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027・岡田宗司
○岡田宗司君 そこで、私は法務大臣にお伺いしたいのですが、私は今度の中共の代表部を早く設置しろという考え方の方ですから、何もケース・バイ・ケースで悪いとは申しませんけれども、しかし、今のようにケース・バイ・ケースでやるということになりますというと、この登録法を改正して、きちっとした法律を作って、政府の方でもって作ったとたんにお破りになるようなことになるので、これは法務大臣としてはまことにおかしなことだと思うのですが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/27
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028・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) これは法律上は研究を要する問題と考えまして、今事務当局においていろいろ調査をいたしておりますが、私はこの法律の拡張解釈としてできると、かように存じているわけでございまして、この法律の表におきましては、御承知のように、外交官といえどもこれを免除するというような規定はございません。これは国際慣例で、外交官とか領事官とかいうような人は指紋をとらない、こういうようなふうになっておるわけでございまして、そこで外務省の扱いにおきまして、この公務員に準ずるような扱いをして、そうして入国して参りますればこの方で受け入れまして、これはこれに準ずる者として指紋をとらないでもよろしいと、こう解釈することができると私は考えておりまするが、しかし、この点につきましては、今両省の間で検討をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/28
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029・岡田宗司
○岡田宗司君 そういたしますと、まあ慣習の方が法律より勝つということになるわけでありますので、これもどうもおかしい話でございますが、それはともかくとしましてこれは松本さんの方にお伺いするのですが、まあ公務員はわかっているのですが、この準公務員ということは、今までにそういうふうにして準公務員と認めて取り扱った例があるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/29
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030・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 先ほどお答え申し上げましたごとく、今まで先例がなかったと、こう心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/30
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031・岡田宗司
○岡田宗司君 今度公務員に準ずるということになりますというと、公務員に準ずる人の性質が問題になってくるわけでありますが、準公務員というのは公務員でないのだが、公務員みたいなものなんですが、それはどういう性質のものを準公務員というふうにお認めになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/31
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032・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 先ほどから申しておりますごとく、公務員に準ずる制度を設けるとか何とかということを前提として話しているのではなくして、今回のこの指紋問題を、今問題になっておりまするところの問題を解決する便法として、あるいは公務員に準ずるような一つの方策が講ぜられるのではないかということを申し上げておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/32
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033・岡田宗司
○岡田宗司君 私、制度の問題を聞いているのではなくて、たとえばまあ今度中共の通商代表が来る。これが準公務員として認められるということになるわけですが、その際に準公務員というのは、まあ向うの通商代表は、これは向うは国営貿易ですから、大体政府のお役人さんであります。しかし、日本ではあれを公務員としては認められない。しかし、向うは政府のお役人さんだからまあまあ準公務員ということにしようというぐらいのことで準公務員と、こういうふうにお考えになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/33
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034・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 準公務員ではなくして、公務員に準ずる何か取扱いがないだろうかという前提でお話をしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/34
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035・岡田宗司
○岡田宗司君 そうすると、そういう意味でまあ向うは公務員だ、しかし、こっちは公務員として取り扱いにくいから、正式の公務員としては取り扱いにくいから、公務員に準ずる者と、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/35
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036・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) そういうのではなくて、もちろん何回も外務委員会でも問題になりましたごとく、今公務員としての取扱いということはもちろんわが国の今の政策としてはできないわけであります。そこで、実際の問題といたしまして、これほど関心を高めて参りましたこの貿易問題を妥結するために、何とかこの指紋問題、一番問題になっておりますこの指紋問題を解決する方法はないだろうかというところから生まれました議論でございますので、将来これがどう展開して行くかということは、今ここで私予測をすることができないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/36
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037・岡田宗司
○岡田宗司君 今私がお伺いしているのは、まあ一つの便法である。そこで、これはまあ向うでは公務員として派遣して来るけれども、こちらではいろいろな国際関係上から公務員として認めがたい。そこでまあ公務員に準ずる者としよう。そういうお取扱いなのかどうかということをお聞きしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/37
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038・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) ちょっと回答にならぬかもしれませんが、くどいようでございますけれども、やはりわれわれは、制度を設けるという前提ではなくして、やはり便法というところから出発しておりますので、これはまあ一応成立を万一いたしましたならば、それによりまして、また、将来いろいろなことが発展するだろうと思いまするが、どういう工合に発展するかということは、今ここで予測できないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/38
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039・岡田宗司
○岡田宗司君 いや、私は制度の問題は先ほどお伺いして、もう制度でないのだということの御回答をいただいたので、それでいいと思うのです。そこで、まあ向うは、国営貿易の代表として来るのだから、向うでは公務員として取り扱っているだろう。しかし、こちら側では諸般の関係から公務員として取り扱えないから、仕方がないから公務員に準ずる者というふうに、ケース・バイ・ケースでおやりになるのだろう、こういうふうに思うのです。そこで、問題は、実体、正味は公務員なんだが、仕方がないから形は公務員に準ずる者としよう、こういうふうにお取り扱いになるのかということをお伺いしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/39
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040・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) これは非常に微妙な点でして、万一、表現のまずい点がありますと、また、将来波紋を描くものでありますから、やはり承認問題とか、いろいろなところにつながりますので、あまりここにはっきりしたことを申し上げられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/40
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041・岡田宗司
○岡田宗司君 どうも今のお答ではわからないのです。私はそこが一番重要な点だと思ってお聞きしているのですが、とにかく準公務員という制度はない。ケース・バイ・ケースでおやりになる。そこで、ケース・バイ・ケースでおやりになるのに、とにかく公務員に準ずる者ということでお扱いになろうとすれば、やはり何か公務員のにおいのするものでなければ、まさか公務員に準ずる者としてお扱いできないんじゃないか。だから、その内容の方は公務員であるけれども、まあいろいろな関係で公務員と今するわけにいかないから、準ずる者とするのかどうかということをお伺いしているので、それはお答えになれないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/41
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042・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) ただ、表現のまずさによってまた問題を起しますと、工合が悪いので、非常に私、控え目にしておるのでありますが、もちろん先方のこちらに参ります者は、本国におきましては公務員であることには間違いないのでございます。しかし、日本に参りまして、これを公務員として扱うことは、もちろん、何回も説明のございましたように、諸般の事情で工合が悪いのでありまするが、そこで、向うは公務員であるから公務員に準ずる取扱いをするとかいう、そういうことでなくして、まあ指紋を免除する便法といたしまして、公務員に準ずるという工合にわれわれは解釈しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/42
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043・岡田宗司
○岡田宗司君 今のお話ですと、とにかく中国では、これは公務員であるという資格の人をこちらへよこすということは、あなたもお認めになった。こちらではそれは公務員じゃない。しかしながら、公務員に準ずる者、こういうお話なんで、まあわかったようなわからないような話なんですが、向うさんは来る場合にどういう旅券を持ってきましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/43
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044・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) それはよくわかりませんが、多分公務員としての旅券かとも思いまするが、それは一応日本に入りますときに、渡航証明書というものを香港でもらうことになりますので、そのときに日本側で与える資格を公務員に準ずる資格にして指紋免除の便法が考えられようかということを今研究しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/44
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045・岡田宗司
○岡田宗司君 そして向うがこの旅券を持ってくる。それで香港でそういうふうに公務員に準ずる者とするということになりますというと、その取扱い方は全部公務員と同じことをやることになるのですか。公務員に対するのと同じ取扱い方をすることになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/45
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046・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) それはちょっと違いますので、国内に参りまして、公務員と同じような待遇を与えるということになりますると、これまた問題が起るわけでございます。従って、われわれの考えておりまするこの取扱いというものは、国内法を守ってくれるその範囲内におきまして、われわれは指紋免除という程度の便法という工合に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/46
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047・岡田宗司
○岡田宗司君 大へんどうもややこしい話で、こんなややこしいことをするより、この法律へただし書きを一つくっつけて、政府の方でもって何とか認めたものは延ばす、延びた人にも指紋を取らないでもいいとかなんとかというふうにしておけば、簡単に片づく問題じゃないか。そうすれば、そういうややこしい答弁をしないで、国際的に微妙な関係を与えるとかなんとかいうことなしに片づくのじゃないかと思うのですが、これになお、ただし書きをつける意思がないかどうか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/47
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048・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) ただし書きをつけますと、皆さんが、そのただし書きを適用してくれと言われることになりましてまたこれ、われわれの方としましては、どの範囲でそのただし書きを適用するかと、非常にむずかしい問題が出てくるわけでありまして、今のところは、そういうものをつけたくないと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/48
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049・岡田宗司
○岡田宗司君 今の松本さんのお話ですと、こちらに公務員として派遣された者を、こちらでは公務員として認めない。ただ・指紋の点だけはこれを公務員に準ずるものとするのだというお話ですね。他の点において公務員と認めないということになりますというと、これは一般の商用の旅行者と同じ取扱いをするわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/49
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050・一松定吉
○一松定吉君 牽連質問ですが、簡単に両君の、質問を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/50
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051・青山正一
○委員長(青山正一君) 岡田さんが今やっておりますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/51
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052・一松定吉
○一松定吉君 ごく簡単に、いけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/52
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053・青山正一
○委員長(青山正一君) 今、岡田さんの質問が続いておりますから。答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/53
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054・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 建前として、そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/54
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055・一松定吉
○一松定吉君 私は準公務員という名称の解釈が、松本政務次官のはよほど不明瞭であると思うのです。公務員といえば公務員、準公務員といえば、公務員ではないけれども、公務員に準ずる者が準公務員、たとえば日本であると、今までのような高等官とか判任官とか、そういうものは公務員、雇というものは公務員じゃない、準公務員、ですからして、中国で公務員といわれておるものは、日本に来ても公務員、中国でも、雇といわれて、公務員でなくて公務員に準ずるというような制度があれば、それは日本に来ても準公務員、中国における公務員が日本に来て、準公務員になる、そんなばかなことはない。それはあなた方の解釈が間違っておる。やはり中国で公務員は、日本に来ても公務員、中国で公務員でなくて中国で準公務員である者は、日本に来ても準公務員、こういうふうに解釈しなければ、今の岡田君のような疑問が出る。日本の公務員が外国へ行った場合は公務員、日本で公務員でない準公務員である者が、外国へ行った場合は準公務員、こういうふうに解釈すれば、よくわかるのですが、そういうような意味ではないのですか。そうしないと、中国で公務員といわれたものが、日本へ来て、公務員でないけれども、準公務員にするのですかというような岡田さんの質問が出る。中国で公務員である者は、日本に来ても公務員、中国で公務員でないけれども、準公務員の取扱いを受けておる者は、日本へ来ても準公務員、そのいわゆる中国において準公務員として取り扱われた者が日本に来た時分には、公務員と同じように、一年なら一年間は指紋を取らぬでもよろしい、こういうことなら解釈ができる、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/55
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056・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) その点が実は一松先生、非常に微妙な外交問題にからんでくるのでありまして、私どもは決して準公務員制度を設けようということを言っておるのじゃなくて、公務員に準ずるような取扱いによって便法を講じよう、こういうことを言っておるのでございます。従って、準公務員の制度とか、新しい慣例を設けようということは、ちっとも申していないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/56
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057・岡田宗司
○岡田宗司君 まあ今の話は、だいぶ御答弁にも困るようなことなんで、これ以上追及いたしません。そこで、今度こちらに設置されました代表部についてどのくらいの権限を認められ、その活動を許されるかということについては、これはまあきょう直接ここではお伺いいたしませんが、私が次に松本さんにお伺いしたいのは、この代表部ができて何人か来られることになりますが、全部の人に対して公務員に準ずる者としての扱いで指紋をとらないというやり方をおとりになるのか、そのうちのある資格の人々に限ってそういうふうにされるのか、その点はどういうふうなお取扱いをされるつもりでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/57
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058・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 実は岡田先生、今の問題ですが、向うからどういう人をよこすかということがまだはっきりしておりませんので、かりにきめられた、合意しました人数の中に、料理人であるとかあるいは運転手みたいなものが入っておる場合には、これは果して公務員に準ずる取扱いをしていいかどうかということはやはり疑問だと思うのであります。従って、向うから参りまする人物によってそれは決定さるべきではないかという工合に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/58
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059・岡田宗司
○岡田宗司君 そういたしますと、運転手とかそういうような種類の人たちは除く、向うでも純然たる公務員として認めておる者についてだけこちらでは指紋をとらない、こういうことになるわけですね、逆に言うと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/59
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060・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 大体原則としてはそういうことになるのじゃないかと思いまするが、まだはっきりした人数、あるいは向うの資格者、人物ということについてはわれわれまだ承知しておりませんので、はっきりしたここに回答はできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/60
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061・岡田宗司
○岡田宗司君 そういたしますと、指紋の問題については、結局とらないのは、まあこちらでは公務員に準じてとらないということだけれども、実際は向うで公務員である人について、これを公務員だからということにはできないが、そういう資格の人もとらないと、こういうふうに解釈していいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/61
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062・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) これは実際問題としまして、日本に一年以上どうしてもいなくちゃいけない、ちょっとでも日本から海外に出る余裕がないとかいろいろなことがあると思います。しかし、中には指紋をもし免除してもらいたかったならば香港にちょっと行って帰って来れば、もちろんこれでまた任期が新しくなりますので、そういうようなことを勘案いたしまして、現実的にやはり解決すべき問題じゃないか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/62
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063・岡田宗司
○岡田宗司君 まあその問題はこれだけにいたしまして、次に松本さんにお伺いしたいのは、今度の第四次貿易協定は、これは民間の協定という形になっておるわけであります。これが実に変なわけなんでありますが、しかし、そういうことで結ばれることになり、そこで向うから通商代表部がこちらへやって来るわけです。この人達は来まして、こちらで単にこちら側のメーカーとかあるいは商社とかいうものと接触して取引をもちろんするでありましょうが、そのほかにあるいは通産省と何か話をするというようなことも起ってくる。あるいはまた、外務省の方で何かその人達と話をしなければならぬことも起ってくるだろうと思うのです。そういうときに、通商代表部の方の人を、政府の方では外務省なり、通産省なりあるいは他の省でもいいのですが、どういうふうにお取扱いになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/63
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064・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) それが非常にむずかしいのですが、承認になるというようなまぎらわしいような折衝はできないと思うのですが、しかし、貿易を促進さす、便宜をはかるということについては、陰に陽にわれわれ協力したいという気持ちはございますが、しかし、この代表部の日本に参りましての任務、まあ機能と申しますか、ファンクションと申しましょうかということは、大体規定されております。私全部こまかいことを今記憶しておりませんが、必要ございましたら政府委員あるいは説明員にこれを説明さしてよろしいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/64
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065・岡田晃
○説明員(岡田晃君) 本協定は、政府関係筋の協定ではございませんので、はっきりしたことは、責任を持ったことは申し上げられませんが、外務省が承知いたしております協定の、いわゆる民間協定の第十一条の第三項におきまして、一、二、三、四、五、六と規定がございまして、第一において「協定実行中において発生した各種の事項を連絡し処理すること。」「二、各自国の市場情況を紹介すること。」「三、駐在国における貿易と市場に関する情況を調査し蒐集すること。」「四、両国の商工業者の取引活動と貿易上の往来に協力すること。」 「五、両国間の技術交流を連絡し促進すること。」「六各自の派遣機関より委託されたその他の貿易関係の事項を取扱うこと。」これがいわゆる民間通商代表部の業務であるという工合に承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/65
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066・岡田宗司
○岡田宗司君 まあそういうふうに規定されておる活動を実際にやっておると、向うの人もこちらの政府機関と接触するようなことも起ってくるということは予想されるのですが、先ほどの松本さんのお話ですと、そのときに政府の方で会わない、いやもうおれの方では、これが会うと、承認になるからというようなことで、全然会うことも拒否するというようなことはないわけですね。そして陰に陽に貿易を促進するという態度をおとりになると言われたのですが、そう解してよろしいわけですね発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/66
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067・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 絶対に会わぬという線を引く必要はないと思うのですが、先ほど申しましたような範囲内におきまして、われわれはできる限り協力したいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/67
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068・岡田宗司
○岡田宗司君 まあ今度向うから向うの公務員の人がこちらへ来るわけであります。そして今言ったように、通商の範囲内で政府の人と接触をするということがあるわけです。それはもちろん私どもも直ちに承認とは思っておりません。しかし、従来の例を見ておりますと、国交を回復しておらない国の人も日本に来て公的資格で活動をしておる場合が非常に多いのです。総領事館を設けられておるものもあるし、あるいはミッションという名前で堂々と活動をしておる人もあるのです。だから向うから民間の通商代表部という形で来まして、向うの公務員がこちらで活動しても私は何もこちらでむやみに神経質になって、その人の活動がどうだから承認するのだとか、あるいはまた、その人が政府と接触したからそれで承認をするような疑いを持たれちゃ困るというのはあまりに神経質過ぎるのじゃないか、こんなことはよその国に気がねなしにやったってかまわないことだと思うのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/68
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069・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) これはやはりいつも言うきわどい議論なのですが、もちろん他の国に気がねする必要はありませんが、先ほど岡田先生から引用されました、たとえばミッションの例とか、これは御承知の通り、まだ正式の外交関係はここに確立しておりませんが、近い将来においてとにかくまあ正常化し、外交関係を樹立したいという前提でいろいろ努力している国なのであります。しかし、中共は、御承知のごとく、今これを承認したり、外交関係を確立したりというような前提では仕事ができない関係にありますので、そこにおのずから区別ができると思うのでございます。しかしながら、神経質になってもう絶対に会う必要はないというほどはっきりした線を引く必要は私はないだろうと、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/69
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070・岡田宗司
○岡田宗司君 そういたしますと、今度民間通商代表部がそういう形でできる。さらにその後、文化交流とか、あるいはその他のいろいろな関係で向うからその政府代表――政府の人ですね、そういう人が来るというときにも、やはりこれはまあ期間が短かい人はもちろん問題はないわけでありますけれども、そういうような人がだんだんに往復をしているうちに、あるいは一年以上滞留するような人も出てくるかもしれない。そういうときにはやはり公務員に準ずる者としてお取扱いになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/70
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071・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 先ほど申しましたごとく、今公務員に準ずる便法が何かの行政措置によって講ぜられるのではないだろうか 従って、研究しているということを申し上げている次第でございまするが、ここにはっきりした何かその措置というものが一つのワクを決定することになれば、これは簡単だと思います。しかし、そういうはっきりしたワクができないというようなもし行政措置であったならば、どうしてもケース・バイ・ケースにこれを考えなくてはいかぬという議論が出てくるわけでございまして、従って、今文化民間使節等あたりが日本に参りましたときに、これも公務員に準ずる取扱いができるかどうかということは、今ここで即答することはちょっと困難かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/71
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072・岡田宗司
○岡田宗司君 中国との関係全体の問題につきましては、いずれ岸総理、あるいは藤山外務大臣にお伺いしなければならぬと思うのでありますが、私は、岸総理も貿易をふやしていかなければならないとこう言っておられるし、藤山外務大臣も同じように言っておられる。ところが、大体今の民間の貿易協定というようなことは限度にきているのじゃないかと思うのです。今後はやはり政府機関なり何なりが、何らかの形で接触しなければならぬという事態が、私は事実上起ってくる。今度は形は民間の通商代表部というようなことで、こちらに向うの公務員が駐留することになりますけれども、おそらく向うとすれば、これは政府の人なんでありますから、実質的には政府間のあるいは接触というものがそこらから始まってくるんじゃないかというふうに考えるのであります。一体、中国との貿易関係が、民間の形で、今のような形でなおスムースに行われると思うか、あるいは第四次協定の後においてはさらに新しい形を必要とするようなことが生まれてくると思われることになるか。その点松本さんの御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/72
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073・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) 国交が正常化いたしまして、外交関係も確立いたしまして、ここに通商協定等あたり、あるいは互恵条約等あたりが締結できますような状態ということになれば、もちろんこれは民間ベースの貿易よりももっと伸びるだろうということは、これは論を待ちません。しかしながら、先ほどからたびたび申し上げておりますごとく、ここにはもちろん特殊のやはり外交関係がございますので、これがいいのとか、悪いのとかというのでなくしてもちろん民間ベースということは、政府と政府間の協定よりも不便であるというようなことは事実でありまして、しかし、不便であるから、さてそれでは政府との協定に入るかということになりますると、これはまた別問題になりますので、これ以上のことはちょっと申し上げることは差し控えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/73
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074・岡田宗司
○岡田宗司君 もう一点だけ。しかし、向うから来られる方が実際に公務員である、しかも向うは互恵貿易である。こういうことになれば、しかもこちらとしていろいろな貿易上の便宜も政府の方で与え、また、こちらの役所の人もその際に接触をするということになるというと、これは今までと違った関係が事実上発生することになると私は思うのですが、そういう関係が発生するということはお認めになるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/74
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075・松本瀧藏
○政府委員(松本瀧藏君) その点につきましては、先ほどから何回となく、かなりそれは抽象的な論議であったかもしれませんが、御推測の上、一つ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/75
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076・岡田宗司
○岡田宗司君 それではもうこれで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/76
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077・曾禰益
○曾祢益君 この外国人登録法の一部改正法律案の提案理由説明書に書いてありますが、指紋を押す義務を規定した第十四条と、罰則の第十八条第一項第八号の規定は、他の規定よりもおくれて、三十年四月二十七日から施行した、こういうふうになっているんですが、その理由を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/77
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078・豐島中
○説明員(豐島中君) これは指紋の十四条の実施がおくれましたので、従って、罰則もおくれた次第でございます。実施がおくれました理由は、初め最初から一年以内にこれは実施する。理由としましては、この業務は諸般の準備の都合がありますし、周知徹底ませる都合があるということで、一年以内に政令できめまして実施することになっております。その次に一年さらに延期されました理由は、やはり周知徹底がまだ足らない。あるいは日韓会談が当時行われておりますというようないろいろな事情がございまして、一年おくれたのでございますが、さらに一年延期しましたのは、予算の都合で新規事項はまかりならぬというようなふうな理由で延期されたということに私は聞いております。それで、三年後の昭和三十年の四月二十八日から実施されまして、従って十八条の罰則もそのときに実施されたということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/78
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079・曾禰益
○曾祢益君 いろいろ理由があげられたわけですが、実際問題としては、この法律の指紋の点を強く要求した根本的な理由は、何といっても、日本における朝鮮人、しかもこの密入国者の取締りを厳重にしようということが、実は外国人登録法の中に指紋をとることを強く打ち出したおもな理由だと思うのですね。ところが、法律はできたけれども、実際はそのおもなるねらいはいろいろな事情があったにせよ、三年間も実施ができなかった。それは日韓会談等の外交上の理由もあったろうけれども、また、今あげられたような予算が足りないから実施ができなかったなんとかいうことは、これはまあ当時の政府の責任の問題かもしれませんけれども、法律の建前上あり得べからざることなんですね。だから、私の特に心配して言いたい点は、法律は作ったけれども、実は空文に終っているということが最もよくない。これを作った以上は、これを実行するに当っていろいろな障害面があることはわかりますけれども、それをほんとうに実施を励行したい熱意と努力をなされたならば、施行後三年間も延びるということはなかったのじゃないか。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/79
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080・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) その点におきましては、あるいは努力が欠けた点があったかも存じませんが、三年延ばしまして実施いたしました結果としましては、今のところ、指紋を押すことを拒否する人間はわずか二十三名か、四名、しかもこれが皆行方不明というふうな連中でありまして指紋を押させるという制度は完全に成功いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/80
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081・曾禰益
○曾祢益君 まあ過去のことを言ってもしようがありませんが、今の法務省の説明だと、まあ延びたけれども、その間の説得等もあって、今じゃ完全に実施されたというふうに伺ったのですが、同時にまた、先ほどの御説明にもあったように、また、この説明書にもあるように、どうも三万人も実際は虚偽の登録証を持っている。すなわち、指紋の実施がうまくいっていないという例があるのじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/81
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082・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) その三万人と申しますのは、登録を始めましたときに、昭和二十二、三年ごろから二、三年のうちに、朝鮮人の団体、総連というようなものが代理して一括申請をしましたために、氏名とか、生年月日等に誤まりがあるわけでありまして、その押捺に大きな関係はございません。二、三万という数字は、そういうような登録原票、登録証明書に書いてあります生年月日とか、本籍に誤まりがあるという数字であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/82
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083・曾禰益
○曾祢益君 そうするとどうなるんですか、完全にもぐっちゃってつかまえられない者は別として、一応指紋は押さした、しかし、押した指紋と写真、人名とが違っておると、こういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/83
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084・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) 人名が違っておるというふうではありませんで、生年月日を自分も忘れたとか、頼んでやってもらったので本籍の場所が違っておるというふうなのでして、これは逐次訂正さしておりますが、今度は職権をもって訂正できるように十条の規定を入れたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/84
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085・曾禰益
○曾祢益君 そのケースとは別に、先ほどの法務省の説明にあったように、氏名偽称で登録証を交付してもらっているのもずいぶんあるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/85
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086・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) それが過去において非常に多かったのでありますが、それがだんだん減ってきておるということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/86
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087・曾禰益
○曾祢益君 それを直すのに職権で直すという方法でできるのか、それとも他の方法があるのか、そういう点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/87
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088・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) この職権で直すと申します方は、むしろ善意の過失といいますか、そういう点の方を言っておるわけでありまして、それから指紋制度を採用しまして、そういう偽造、変造が減りましたと申しますのは、写真だけではごまかせるけれども、指紋だとごまかせないという点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/88
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089・曾禰益
○曾祢益君 そこでまあ政府のお考えによると、いろいろ過去三年間も施行ができなかったが、今日においては指紋法を、簡単に言えば指紋法ですが、指紋押捺の制度がようやく実って、そうして密入国の管理についてはかなり効果を上げているから、従って、今日外国人登録法を改正するが、そうして一カ年に満たないものは原則として指紋の押捺を免除してやるけれども、指紋押捺制度はやはり残しておく必要がある、こういうお考えのようですが、その通りかどうか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/89
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090・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) 現在のような情勢のもとでは残しておきたいという考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/90
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091・曾禰益
○曾祢益君 そうすると、おもなるねらいは、やはり特に朝鮮人に多いところの密入国を押えるのがあれであって、先ほど法務大臣の岡田委員に対する御答弁にあったように、本来こういうものはない方がいい、しかし、日本と朝鮮との地理的な接近状態、あるいは朝鮮人が日本に流れてくるという傾向をいろいろの方面で押えきれないので、まあ異例であるけれども、指紋押捺制度を残しておかなければならぬ。当面、おもなるねらいはやっぱり朝鮮人を対象としておるのだということが実情であるかどうか、これは法務大臣からお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/91
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092・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この指紋制度が密入国者の発見等に非常に役立っておることは、事務当局から御説明いたした通りでございます。しかしながら、この制度そのものは単にそれだけの目的ではございませんで、すべての外国人に対して、一応一年以上滞留すれば指紋をとっておく必要があると、こういう見地からできているのでありまして、なるほど効用は、今の密入国者に、朝鮮人関係の密入国者に多かったという数字を示しておりますけれども、しかし、それだけではない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/92
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093・曾禰益
○曾祢益君 私は必ずしも朝鮮人関係だけだとは申しませんが、先ほど法務大臣も言われたように、対外関係からいっても指紋制度なんかというものはなければない方がいい、これが原則だと思うんです。で諸外国の例、これはあとで伺いまするが、特別に外国人が潜入してくるおそれのある、たとえばアメリカにおいては移民の密入国が多いからというのがおもなる理由じゃないかと思うのですが、指紋制度をとっている国がある、しかし、これは各国の例として、国内における外国人から指紋までとらなければならないというのは、これは国際的の通例ではなくて、むしろ異例だと思う。だから異例だとするならば、しかもこれが異例であることは法務大臣も原則としては認められておる。なぜ日本でこれをやらなければならないかというと、主なる理由は朝鮮人問題だからというのだから、原則としては指紋をとらせるなんということはやめる方がほんとうじゃないかという議論に落ちつくのじゃないかと思うから、質問するのですが、もう一ぺん御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/93
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094・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 先ほども申し上げました通り、世界が完全に平和になりまして、そうして密入国というようなことも絶無になって参りますれば、かような制度がないことが理想でありますことは、これは申し上げまるでもございません。ただ、現状におきましては、この制度を残して行きたいと考えておりますそのおもなる理由といたしましては、たとえば数字的に見ますれば、密入国者の取締り、ことに一衣帯水の朝鮮その他からする密入国者の取締りということが数字の上では一番効果を上げておるわけでございまするけれども、その他の点につきましても、やはり一年以上日本に滞留する外国人に対しては指紋をとっておくだけの必要がある、日本の治安の関係から必要がある、かように考えておるわけでございまして、分量の点におきましてはいろいろと御議論があるかもしれませんが、その関係はすべての外国人に対しても必要である、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/94
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095・曾禰益
○曾祢益君 私はその点がどうもわからないんですが、もちろん第二次世界大戦後の今の事情とその前の事情とが違う点があろうと思いまするが、単に朝鮮人関係、量的に多い朝鮮人関係を除いて、日本におる外国人で指紋をとっておかなければ治安上ゆるがせにできないということが果して言えるのか、それよりもこういう制度は占領のどさくさとか、また、アメリカの制度をまねするとか、いろいろな関係から指紋制度が生まれたのであって、必ずしも日本――前の古い日本ですら必ずしもやっておらなかった制度ではないか、また、世界でもこういう制度がそう原則毒してあちらこちらにあるのではなくて先ほども申しましたように、アメリカがあまりいわば豊かだから移民が流れてくるというようなことから、アメリカで非常に移民を、クォータ制度をとっておる関係から指紋がとられているのであって、こういうようなものは通例じゃないんじゃないか。従って、日本でこれをやらなければ、指紋をとらなければ治安上ゆるがせにできないからという議論は少しおかしいんじゃ、ないかと思いますが、警察の方はどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/95
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096・青山正一
○委員長(青山正一君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/96
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097・青山正一
○委員長(青山正一君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/97
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098・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 同じことを繰り返して申すようなわけでございまするけれども、この指紋の制度は、ただ朝鮮人関係の密入国を防ぐ、あるいは探し出すというだけのことではございませんでして、その他の日本におりまする外国人につきましてもいろいろの問題がございまして、いわゆる不良外人と申しますか、これらの人たちの引き起します問題につきまして世上ではいろいろ批評をいたしておるわけでございまして、今日の状況におきましては、まだやはりすべての外国人に対してこの制度を維持して行きたいと考えております。ただ、従来は外国人であれば一律一体に六十日をこえれば指紋をとるということになっておりましたけれども、今日はそれまでの必要はなかろうということで、これを一年にいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/98
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099・曾禰益
○曾祢益君 そこで、外務省でも法務省でも、どちらでもけっこうですが、諸外国の例、指紋をとっておる国、とっておらない国の概要について御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/99
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100・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) 完全に指紋をとっております国は二十一カ国でございます。それから自分で所定の国語による署名ができない場合に、指紋をとらせるというのが九カ国ございます。主として曾祢議員がおっしゃいましたように、アメリカ、中南米、移民関係の多い東南アジアの国等は指紋をとっております。欧州ではポルトガルとスペインだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/100
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101・曾禰益
○曾祢益君 これから先は意見の相違ということになるでしょうが、どうも私の考えでは、朝鮮関係があるので、やむを得ず今直ちに指紋を免除できない、しかし、方向として各国の例から見ても、特に日本が、こちらは移民したい国なのであって、実は朝鮮から流れてくるので困るのですけれども、本来治安関係ということでいつまでも外国人から指紋をとるのだという、こういう理屈は私はおかしいのじゃないか。その点はお考えを直していただきたいと思います。
第二の点について、これは岡田君と当局との間にいろいろ応酬があったわけですが、私の基本的な考えは、先ほど申し上げましたように、法律をとにかく作った以上は法律は守られなければいけない。しかもそれを何らか裁量の余地を残しておいてやって行くというようなことはよくないのじゃないか。従って、この法律の御説明を願いたいのですが、外交官、領事官あるいは外国の公務員等については指紋をとらなくてもいいのだというのは、はっきり法律がそういう条項を設けて授権するとか、あるいはアメリカのマッカラン法等が変って、どういうふうに変ったかよく知りませんが、また、そのことをすぐにまねろというわけではありませんが、そういうことはたとえば、国務省が認定によって免除して行くというような規定によって国務省が免除する、何らかのはっきりした法律ないしは政令等の根拠があってやるというのでないと、これはやはり先ほどの指紋法を政府は作ったけれども、朝鮮人関係が厄介で実際できないから、三年もほうっておいたという、政府みずからが法軽視のやっぱり姿があったと思う。もう一つの法軽視の姿がここに現われるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、指紋免除の具体的根拠はどこに置いてあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/101
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102・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) 各国とも外交官、領事官、公務員につきましては、実際問題としては指紋を免除しております。あるいは登録を免除しております。それに対しまして、明文をもって免除しておる国と、明文を持たない国というふうにございます。アメリカは明文をもって免除しております。ブラジルもそうであります。ペルーもそうであります。コロンビアもそうなっております。ところが、キューバ、ベネズエラ連合王国、フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、スエーデン等は明文をもっておりません。しかし、実際はそうやっております。そこで、そのほかにも明文がなくして登録の免除をやっておる国の方が多いようです。まあ確立された国際慣行ということができるかどうかは疑問でございますが、数から申しましても、明文なしに実際上はどこの国もやっておる、やっておる国の方が多いような現状でございますから、日本もそれに従っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/102
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103・曾禰益
○曾祢益君 これは各国の事例の数ばかりで考えるわけにもいかないと思うのですね。ことに、まあそう言っちゃ言い過ぎかもしれないけれども、中南米の国々のケースまで数において勘定するのはちょっとどうかと思う。むしろ日本の憲法と日本の民主主義制度の建前からいえば、やはり明文に設けて、そうして免除ができるという方が当然正しいのじゃないか。これは議論の余地ないと思う。かりに明文がなくても、これは国際通念として外交官等に免除するという取扱いが慣例上あるということだけのことであってこれは岡田委員からも指摘されたところに関連するのです。まあ過去の法律は、率直に言って日本の平和条約発効のときのものであるから、必ずしも完備してなかったかもしれない。しかし、今や法律を改正されるという段階において、またそれに、関連して先ほど公務員並みの扱いをするというような、さらに法的にはあいまいな政治的取扱いをしなければならないような段階において今改正案を出されるときに、そういう点をケース・バイ・ケースでやるとか、何か行政措置はありはせぬかという態度がおかしい。立法行為の際においてそういうあいまいなことをすべきじゃないということが当然原則でなければならぬ。少くとも包括的授権を法律に書いておくとか、あるいは出入国管理令というものとこの法律との関係がどうなるか私よく知りませんが、あるいは場合によっては政令に譲るということもあり得るのですが、当然に立法の法律尊重からいって、慣例でやるからいいじゃないかという便宜的態度は、これは原則として私は間違いだろうと思う。その点はあまり外交的関係を考えずに、すなおに、日本の法のまあ番犬とも言うべき法務大臣はどう考えるか、御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/103
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104・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 先ほどの紋制度の根本問題に関する御意見、また、今国際慣例にのっとって法律ができている、それに関する明文がない、これをあらためてはっきり明文で書いたらどうだという御意見、これは二つとも私どもといたしましては御意見としてよく承わっておきまして、将来の検討の資にいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/104
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105・曾禰益
○曾祢益君 単なる法律論の意見の開陳ではなくて、本来ならばわれわれ立法府の方が法を出すのがほんとうかもしれませんが、政府提案でもけっこうですが、そういう点をお直しになって、はっきりと責任を明らかにする方が民主主義の原則に照らして正しいのではないか。むしろこの法律を作つて、原則はまあ当分指紋が要る、しかし、一年間に満たない者は免除する、さらにしかし、そのほかに特に免除する者があるということを明記して、はっきり法律から授権されて、しかし、その認定については行政府である政府がある程度の認定権を持つというのが、これはむしろ立法の建前からいって当然じゃないか。従って、そういう単なる意見でなくて、そういうふうに法を改正される御意見があるかないかということを、最終的にはこれは議会がきめることであるけれども、政府のお考えはもう一ぺんそういう点を訂正するお考えないかどうかを伺っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/105
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106・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この点は先ほど局長からも申し上げた通りでございまして、例外規定をおきますれば、それによってまたやはりその適用範囲がふえてくるわけでございます。ことに行政府の処置によりましてそれができるということになりますれば、また新しく問題を引き起すわけでございまするから、今のところではさような例外規定を明文におかず、今日のこの法律でまかない得る限度においてまかなっていきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/106
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107・曾禰益
○曾祢益君 私はそれがやっぱり法律軽視になるんじゃないかと思うのです。なるほど例外規定を設けるというと政治的に厄介な、何か突破口を開いたようにお考えになるかもしれないけれども、同時に法律の明文に書いておいてもそいつは別の例外をちゃんと認めておるんです、問題は。ですから外交官に準ずる待遇を与えるという点において非常に政治的に厄介な問題があるということは確かに認めます。しかし、少くとも国際法で確立している――慣例上も確立しているし、あなた方も現に実施されている外交官、領事官、外国の公務員等についてはこれは免除しているんでしょう、するつもりなんでしょう。それならばそういうことを書いて、さらにそれから先が、法律の事実でもあるし、政治的な問題ででもあるから、その他これに準ずる者と書くのか、あるいはその他特に必要なる者については免除できるという規定を書くかどうかということについてだけはこれは問題ありましょう。しかし、それはどうもこう規定を書くと、そうすると非常に乱用になりやしないかというのは、政府の態度としては非常におかしいと思うのです、自信がなさ過ぎる。しかもそういうことは法律規定、明文にかかわらず、ある種の基準によって外交官等はもうはっきり免除している、そのことはやはり法律軽視じゃないんですか。ですからはっきりとこの際免除すべきものの明確な範囲を出す、あわせて裁量の余地を残しておいた方がいいというなら裁量の余地を残す、それがほんとうじゃないかと思うのですが、どうもこれは意見の相違かもしれぬけれども、その方が私は正しいと思う。
そこで、先ほどの話になるわけですが、今のところでは、きょうの御意見を伺っていると、まあ大体において中国の民間代表部の人は公務員に準じた待遇と、これは言いかえるならば、一年以上でも指紋はとらないというふうに大体考えている、しかし、その具体的の方法等についてはまだきまってない、こういうことになるのかどうかをもう一ぺんはっきり伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/107
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108・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) お言葉の通り、なるべく指紋をとらないで済むようなことにいたしたいと、こういう希望をもって今両省の間で協議中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/108
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109・曾禰益
○曾祢益君 それで、具体的にはそうするとどういうふうになるんですか。話がきまって人が来るというときには、先ほど岡田君との質疑応答の中にあったように、香港での取扱いできまるんですか、それとも行政的な方法というのはどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/109
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110・内田藤雄
○政府委員(内田藤雄君) 私きょうアジア局長の代理で参りまして、はなはだ未熟な御答弁を申し上げるかもしれませんが、私の了解しております限りでは、先ほどお話が出ましたように、中共側ではあるいは外交旅券を持ってくるか、公用旅券を持ってくるか、それは向うのことでございますから存じません。いずれにいたしましても、その旅券は一たん香港で切れるわけでございます。こちらの方で渡航証明書を出します際に、そのときに与えます資格によってただいまのようなことがきまると思うのでございますが、おそらくこれは最終的にはきまっておらないようでございますが、大体私の今までの知識で申し上げますと、その際に四・一・二というのを、これは入管令の第四条第一項第二号ということでございますが、その資格を正確に与えてしまいますと、これは承認した政府の職員というふうに法律できめておりますから、それはできないと思いますが、その四・一・二に準ずる資格というようなことになるのではないかと・こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/110
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111・曾禰益
○曾祢益君 四・一・二に準ずる待遇をするものとすというような証明書を出すというわけですか、その場合には。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/111
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112・内田藤雄
○政府委員(内田藤雄君) その書き方は私は存じませんが、たとえば四・一・二の上にまるかなんかに準という字でも書けばそういうことになるのではないかと思いますが、これはしかしまだきまったわけではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/112
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113・曾禰益
○曾祢益君 最後に……。大体そうい術的の問題は残っておるけれども、それから、出す範囲、これも先ほど議論があった運転手とかコックは別は別として。それからどうも政府の方じゃ一年経過しそうになったら香港に帰ることを期待しておるようですけれども、そこは民間の代表等の話し合いによっておのずと妥当な数字がきまってくると思うのです。従って、大体まあ公務員クラスの人については便法を講じてやると、そして指紋はとらない、一年間云々と、この法律の以外に、さらに民間通商代表部の関係の人は指紋はとらない、こういう方針で、民間代表部の人がこれから向うに折衝に行かれて差しつかえない、こう考えてよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/113
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114・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この点はまだ最終的には決定いたしておりませんが、先ほど来だんだん申し上げました通り、私どもといたしましては、でき得る限り努力いたしまして、そういう扱いをするように持っていきたいと今検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/114
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115・青山正一
○委員長(青山正一君) ほかに御質疑もないようでありますから、これをもちまして、法務、外務委員会連合審査会は終了することにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/115
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116・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議はないと認めます。
それではこれにて散会いたします。
午後零時五十七分散会
――――・――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815194X00119580214/116
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