1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月十九日(土曜日)
午前十時三十七分開会
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委員氏名
法務委員
委員長 青山 正一君
理事 大川 光三君
理事 一松 定吉君
理事 棚橋 小虎君
理事 宮城タマヨ君
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
大谷 瑩潤君
小幡 治和君
小林 英三君
前田佳都男君
安井 謙君
吉野 信次君
大矢 正君
亀田 得治君
清澤 俊英君
山口 重彦君
後藤 文夫君
辻 武壽君
社会労働委員
委員長 阿具根 登君
理事 勝俣 稔君
理事 木島 虎藏君
理事 山下 義信君
理事 中山 福藏君
有馬 英二君
草葉 隆圓君
斎藤 昇君
寺本 広作君
谷口弥三郎君
西岡 ハル君
西田 信一君
横山 フク君
片岡 文重君
木下 友敬君
藤田藤太郎君
松澤 靖介君
山本 經勝君
田村 文吉君
竹中 恒夫君
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出席者は左の通り。
法務委員
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
一松 定吉君
棚橋 小虎君
宮城タマヨ君
委員
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
前田佳都男君
大矢 正君
亀田 得治君
後藤 文夫君
社会労働委員
委員長 阿具根 登君
理事
勝俣 稔君
山下 義信君
委員
西岡 ハル君
西田 信一君
片岡 文重君
木下 友敬君
藤田藤太郎君
松澤 靖介君
山本 經勝君
竹中 恒夫君
国務大臣
法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
労 働 大 臣 石田 博英君
政府委員
警察庁長官 石井 榮三君
警察庁刑事局長 中川 董治君
警察庁警備局長 山口 喜雄君
法務省刑事局長 竹内 壽平君
労働省労政局長 亀井 光君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
法務省刑事局公
安課長 川井 英良君
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本日の会議に付した案件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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〔法務委員長青山正一君委員長席
に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) ただいまから法務、社会労働委員会連合審査会を開会いたします。
先例により、私が委員長の職務を行います。
これより刑法の一部を改正する法律案並びに刑事訴訟法の一部を改正する法律案について質疑を行います。
質疑は社会労働委員の方を優先して行いたいと存じますので、この点御了承願いたいと存じます。それでは御質疑の方は、順次御発言願います。
なお、委員の皆様に申し上げますが、法務委員会は本日当連合審査会終了後、開会されることになっておりますし、法務委員会におきましては、まだ暴力取締り関係の質疑にも入っておりませんので、連会審査会は午後一時ごろまでに終了いたしたいと存じますので、この点、御了承願いたいと存じます。
なお、本席には、唐澤法務大臣、石田労働大臣、石井警察庁長官、竹内刑事局長、亀井労政局長、中川刑事局長、川井公安課長、こういった方々がお見えになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/1
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002・山本經勝
○山本經勝君 法務大臣にお伺いをいたしたいのですが、このたびの刑法一部改正の中で、非常に重要な問題だと私ども考えておる点は、まず、暴力行為あるいは二百六十三条に規定されております刑事問題に関する刑法の改正点であります。特に従来親告罪であった問題が、いわゆる警察官が現地についてその実情をそのときその場所、こういう限定された状態じゃなくて、そのあとでも認知するというような形になるように承わっておるのでありますが、そうしますと、この種の暴力行為というものを計画的にやるのではなくて、むしろ労働組合等が職場において、あるいは居住区等において集会を開き、あるいは会合を持ち、あるいは陳情、あるいは団体交渉あるいは大衆行動と称して、デモその他の行動を往々にしてやるわけなんですが、これはもう組合運動の常道であって、そういう状態で今まで幾多の問題が発生して、その問題が発生することによってむしろ本論である労使間の調整というものが困難になったような事例もある。今回の改正で、もし従来親告罪であって、使用者である労働関係の当事者が親告することによって、初めて問題を取り上げるというような形がなくなるということになりますというと、いわゆるでっち上げや、あるいはその他正常な形で団交を行なっておる場合にでも、大ぜいでありますから、勢い余って器物を落したり、あるいはそのために損傷を起す、こういうことも必ずしもないということが保証しがたいのでありますが、そういう法改正によってむしろ労使間の諸問題にまでこの暴力行為の取締りや、あるいはその他の犯罪を捜査する必要上という名において、官憲の介入が公然と行われるという心配があるのですが、この点は、法務大臣どうお考えになっているか。まず第一点、伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/2
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003・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) このたびの刑法並びに刑事訴訟法の一部を改正する法律案の趣旨は、本会議でも申し上げました通り、いわゆる暴力団、ぐれん隊というようなちまたの暴力、特に善良なる市民の平和なる生活を脅かすような暴力に対する取締りを目的として立案いたしたものでございまして、労働運動等の過程における行為に対してこの規定を適用するというような意図は全然ないのでございます。お尋ねにありましたように、労働争議の過程におきましては、ややもすれば、あるいは器物を損壊するようなこともある。大ぜいの集まりでありますから、あやまって器物もこわれることもあろうし、あるいは勢いの激するところ、時に器物を故意にこわすということもあろうが、そういう際に、器物損壊あるいは私文書投棄というような罪が非親告罪になったために、相手方の方はこれを親告するつもりがないのに、官憲が、この規定の改正の結果として、これに介入するというようなことがあって、そうして労使の協調をかえって害するというようなことがあるのではないかと、そういう危険がないかというお尋ねでございまして、さようなことはもう全然考えてもおりませんし、また、これを実施いたしましても、そういう結果はなかろうと考えておるのでございます。その器物損壊等の罪を非親告罪といたしました趣旨は、もう私が申し上げるまでもないことと思いますけれども、いわゆるちまたのぐれん隊、チンピラというようなものが料理店その他に暴れ込んだり、そこで乱暴ろうぜきを働いて、そうしてもしこれを親告したならば、あとで礼に来るぞというようなことで、実際その取締りを行うことができないような場合が多いのでございます。労働組合の場合を想像いたしてみますれば、かりにまあ勢いが激してあやまって器物などがこわれたというような過失による器物損壊、これはもちろん犯罪を構成いたしませんから、本条の適用範囲外でございますし、あるいはまあ、ほんとうに感情に走ることもございましょうから、意識的にそういうことをやったにいたしましても、労働組合運動の場合は、必ず複数で大ぜいで集まってやることでございますから、そういう際に、もしこれを警察の手をもって取り締る必要がありますれば、その法律を改正しませんでしても、現行法規でもそれができるのではないか。そういうことをやることがいいかどうかということは、これは検察官や警察官の良識に待って運用しておるわけでございますが、現行法でもそういうような危険があると言えばまああるのでございます。この改正は、もうそういうような点には全然触れずに、ほんとうにちまたのぐれん隊の乱暴を防ぐというような趣旨でできているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/3
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004・山本經勝
○山本經勝君 いわゆるぐれん隊の暴力行為等に対する取締り、これは私どもその点を指摘しているのではなくて、いわゆる大臣の仰せのごとくであれば、大臣のごときお考えを持っておいでになれば、これは私は不都合は起らないだろうと思うのです。ところが、末端に参りますと、そうはいかないのが実態ではないか。ことに警察官等が、今までもしばしばあったことであります。この具体的な例をきょうはあげて、御質問を申し上げたいのですが、この具体的な問題に入る前に、私ども直接に聞き知っている範囲におきましても、現在二十数件の問題が、これはあるいは労働争議に関連をいたしまして、威力業務妨害あるいは暴行器物損壊等の名で、事件になっている。これは法務大臣御承知の通りであり、最高裁あるいは高裁、地裁等を通じて、非常に多数の事件が現在起っているのです。ですから、今大臣の仰せのように、現行法においても、もしこれらの争議に関連して起った事件といえども、事件として取り扱うべきものは取り扱っておいでになる。ところが、先ほど申し上げたような心配は、実はその中にたくさんの、年々歳々起っております、労働争議に関連をして起っている実態であって、もし親告罪という形でなくて、いわゆる警察官等が現場において認知して、警察官の判断で問題を取り上げる、こういうことになってきますというと、今のような状態とは全く変ってくるという心配は、依然として解消されないわけなんです。こういう場合がある。たとえば、威力業務妨害、こういったような顕著な事実は、一応それでも原因、経過の中からいろいろ広い範囲の客観情勢を取り入れて、判断しなければならない、いろいろな労働争議の特質というものを考慮の中に入れなければならぬのにもかかわらず、実際には、そういうことが無視されて、こうした多数の事件が現に高裁その他で係争中である。ところが、そういうものにはならなくて、いわゆる労使間の話し合いで、たとえば先ほど申し上げ、また、大臣もお認めになっているように、器物がこわれたということもある。あるいはとびらがこわれることもあるでしょう。あるいは大ぜいの人が詰め込んできたために、いすやあるいは机が倒れたりするようなこともあるでしょう。こういうような場合では、派生的な、初めから悪意でもってその行為をやっているのではないということが認められれば、それは問題にならないので、労使間の話し合いで、争議の派生問題として労使間の話し合いで処理をする。これはいい労働慣行の方向であると思う。ところが、そういうのを今度は親告罪でなくすることによって、警察官が見、聞き、あるいは事後において、その実態を認めるならば、そこで事件として取り上げることができるような措置が、この法律からは当然行い得るという結論になりそうなんで、私ども非常に懸念をいたしております。そういう意味での質問なんですが、今おっしゃったような事柄が、もし十分取り入れられるなら、この親告罪というものを、非親告に切りかえる必要がないように思う。むしろ非親告罪にすることによってそういうことが非常に小さな、微罪というような形にも該当するような、ささいな問題でも、労使間の問題が、労使が対立してこそ団体交渉になる。あるいは争議になっている状態でありますから、完全にそのときの情勢は、労使の関係が対立関係にある。そこで何とかして労働組合の攻勢に対して使用者は、これを押えたいという考えが、これは共通にあるのです。しかし、問題を将来に残してしかも労使間の円満な、いわゆる関係の確立ということからいうならば、そのときはそのときだけれども、済んだあとには笑って、ともに手を握り合って生産を高め、企業を守るという気持に変っていかなければならない。ところが、悲しいかな、先ほど申したように、重大な問題として最高裁にまで問題が発展して、今日なお、二十数件の問題が高裁、最高裁だけでも審理をされておる状態なのです。ところが、さらに今申し上げたように、これを非親告罪にすることによって、申し上げるような派生事件が一々警察官の手によって取り上げられて、そうしてこれが事件になり、争いになるということになれば、むしろ労使間のいい慣行を作り上げるという、ここにお見えになっている石田労働大臣のお考え方も、むしろ深刻な法廷闘争に尾を引いて、労使間の関係は円滑にいかない、こういうことになりはしないかという心配があるので、もう一度法務大臣から、そこら辺の心配がないという納得のいくような御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/4
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005・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 労使間の協調によって円満に妥結するような場合において、官憲か介入したために、かえって事態を紛糾せしめたり、あるいはあまりおもしろくないあと味を残すというようなことがあってはならぬことは、これはもうお尋ねの通りと考えるのでございます。その点におきまして、もし今度、器物損壊、私文書毀棄というような罪を非親告罪として、資本家側がまだこれを親告する意思のないのに、官憲が介入して、あえてこれを親告して事を起すというような危険があるのではないかというお尋ねでございますが、実は、この労働争議の過程におきまして、ややもすれば、今のような現象が起きますが、そういう現象が起きましたあとの取締り規定というものは、主として、暴力行為等処罰ニ関スル法律がございまして、大体もし介入しようというような悪い意図を持って臨みますれば、暴力行為等処罰ニ関スル法律でできるのでございます。これは、まあ多数者が集まって、そうして器物を損壊したり、いろいろいたしました際には、資本家の方の親告を待たずして、今度の改正もなくて、どんどんと捜査の手を伸べることができるのでございます。それでは今度、なぜこういうような規定を置くかといいますと、たとえば、団体を組むのではなくて、団体行動ではなくて、ちまたのぐれん隊やチンピラが単独で店屋へ入っていって、すご文句を並べて、時にはガラスの一枚も割る、そうしてあとで礼参りにくるというようなことを言い置いて行くと、その被害者は、実際においてこれを親告するだけの勇気を持たないのでございます。これが暴力行為等処罰ニ関スル法律の適用によって捜査ができるかというと、これはできないのでございます。ですから、どうしてもこれを取り締るためには、そういうような単純暴行の場合におきましても、これを非親告罪として、捜査当局の見るところによって、必要と認めた場合においては、これに刑事手続をとることができる、こういうふうにしていきたいと考えておるわけでございます。この労使双方協調の際に、官憲が介入することの可否というような、こういう立法問題につきましては、これは御意見のあるところでございまして、この点につきましては、現行法の適用におきましても、十分それを注意していかなければならないと思います。乱用しようという場合においては、現行法でもその乱用の危険があるのでございます。その間違いがあった場合には、十分戒めていかなければならぬと思うのでありますが、この法律を改正したために、そういう場合が起きる、こういうことはなかろうと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/5
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006・片岡文重
○片岡文重君 今の問題で関連してちょっとお尋ねしますが、改正をしようとされる御趣旨は私どもも賛成です。町のいわゆるチンピラとかダニとか言われる着たちが善良な市民を困らせておる、これを取り締ろうとされることについては賛成ですが、衆議院においても、このような改正が、改正の意図からはずれて、労働問題や政治活動に不当な介入をされる危険が多いという見解に立っての御質疑が相当活発に行われたようであります。ということは、こういう事実が、現行法においてすら乱用されておるから、その上にこういう法律が作られたのでは、一そうその危険が激化してくる、こういうところから議論が多くなってきたと思うのであります。今法務大臣のお話の中に、町のいわゆるチンピラとか不良の者たちが、すごみをきかせ、飲食店等で乱暴する、こういうものが対象だと言われましたが、従って、団体ではないのだ、こういうことであったのですけれども、町の不良やチンピラでも、最近は一人ではなしに、三人、五人と隊を組んであばれ回る者もあるわけです。こういう場合には、これはやっぱり、団体とならぬのかどうか。それから現実に労働運動や政治活動を阻害したり、抑圧したりすることをこの法によってはやらないのだということであるなら、この改正の際に、労働運動に適用していかぬとか、労働争議にこの場合この法を適用してはいかぬのだとか、政治活動にはこの法は適用せぬのだという明らかな一項をどうしてこれにつけ加えられなかったか。私は、そういう項目があるなら、大臣のお説をそのまま拝承してもよろしいと思う。唐澤法務大臣は十分御承知になっておられると思うのですが、あの治安維持法を制定するときにも、これは善良な国民を取り締る意思は毛頭ございません、思想や政治的な考え方の相違によってこれを取り締ることは毛頭ないのだ……。法の上に明らかにしておっても、あの治安維持法によって弾圧を受けた善良な国民がどのくらいあったかということは、法務大臣よく御承知のはずです。だから、立法の精神がどうあろうとも、法改正の御説明がどうあろうとも、現実にこれを使うものは、この法によって動くもの、もしくは法をたてとして動くものは官憲なのですから、その官憲がどう適用しようとしても、どう悪用しようとしても、悪用し得ないようにしておかなければ、私どもは安心をしてこの法改正に賛成するわけにはいかぬのですが、その点についての御所見を一つ関連して伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/6
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007・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 法律は、制定当時の立案者あるいは立法府における考えというものと独立しまして、できました後にはひとり歩きをする、結果において、検察官、最後は裁判官の認定に従うより仕方ない。そこで、いろいろの法律が、制定当時予想しなかったような事象にも適用されることはお説の通りでございます。しかし、この場合におきましては、たとえば、労働争議の過程におきまして器物の損壊というような現象があった、それを、従来はその起訴をしたい、刑事手続をとりたいと考えておったけれども、法律がないからできなかった、ここにあらためてそういう道を開くと、こういうのならば、労働争議には適用いたしませんと言うても、そういう場合があればまた、近い将来適用されるということになるかもしれない。しかしながら、今日まで、そういうわずかな器物損壊ぐらいを荒立てようとすれば、暴力行為等処罰ニ関スル法律でできるのでございます。今日でも。それをする必要があるかどうかという認定に待っておるだけで、今日でも法律の道は開いておるのでございまして、それは適当でないという行政判断によって、そうして自粛しておるこういう場合にその適用がないのでありまして、今度は、ここに親告罪を非親告罪にしたということで一応道を開いたような格好でございますが、これは、主として今のちまたのチンピラを取り締るための規定でございまして、このぐれん隊のごときものが、やはり衆を組んで、そしていたしますれば、これは暴力行為等で処罰もできましょうが、単独にやるような場合においては、あの規定ではできまません。そういうような観点からこれを立案いたしておるのでございますが、なお、正確には、刑事局長からお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/7
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008・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 親告罪を非親告化するということの趣旨につきましては、ただいま御質疑の中ではそれは賛成だというお言葉でございました。しかしながら、これを非親告化しますことによって、労働運動その他大衆運動等に適用される場合があり、かつ、それに乱用されます場合においては、これは非常に危険を感ずるという点でございまして、そういうものに適用する余地がないというならば、その点をはっきりさせろという御趣旨のように伺ったのでございまして、それならば、その方法として御提示になりましたのは、労働組合運動には適用しないという明示をする方法はないかという点を一つ御提案になっておるのでございますが、この点は、私どもは、このような考え方をいたしております。運用の問題と法律制度の問題とは一応区別して考えなければならぬ。運用という点におきまして、お示しのように、健全な労使の関係が作られようとする際に、不当に捜査官憲が介入することによって健全な方向への道を阻害するというようなこと、これがもし法の適用において乱用にわたりますならば、これは慎しまなければならぬことは、ここに多言を要しないところでございます。そこで、先ほど大臣から申しました、暴力行為等処罰ニ関スル法律が、現行法のもとにおきまして非親告化されておるのでございます。しかも、刑も重くなっておるのでございまして、現実の運用の面から申しますと、今二十数件あるというお言葉もありましたが、そういうような事件が、当、不当の適用の問題はしばらくおきまして、かような行為に対しては、現行法の暴力行為等処罰ニ関スル法律が現実には適用されておるのでありまして、かりに告訴がありましても、器物損壊の二百六十一条によって処理された例というのはほとんどないと申してもよいくらいの適用状況になっております。それで、労働組合運動には、二百六十一条は親告罪になっておるから適用がないかというと、そうじゃなくて、多衆の者の間において行われるというこういう構成要件になっておりますために、その構成要件は、暴力行為等処罰ニ関スル法律に該当するわけでございまして、そういう場合には親告罪ではありませんし、そういう場合でも告訴されてくる場合があっても、それは今の暴力処罰法のもとにおいて処理されておるというのが現実の適用状況でございます。それでありますので、二百六十一条の改正と申しますのは、もっぱらそういう多衆によって行われる器物損壊というものではないのでございます。それで、趣旨はわかっておると仰せられましたけれども、最近のチンピラ等の暴力事犯を見ておりますと、被害を受けます二百六十一条の財産というのは比較的軽微な財産でございます。ガラスを割るとか、コップを割るとか、灰皿をこわすとか、机の足を折るとかいったようなことでございまして、料理店、あるいは町の大衆の出入りしますところの酒場といったような所におきましては、そういうものを一々取り上げるということは、非常にお客の出入りの面からいいましても、取り上げたくないのでございますが、ことにそこですごまれまして、そういうものが前の方にいる、こういうことになりますと、ほかのお客が出入りしない。そういう面からいって、非常に迷惑をこうむっておるということは、非常に顕著な事実でございまして、これが親告罪でございますために、告訴するならなお重ねてすごむというようなことからいたしまして、親告罪になっておりますために、かえってそういう面の暴力が助されておるというこの現象に対しまして、対処する方法がないというところからして、やむなくこういう処置に出ようとしておるのでございまして、法律の制度といたしましては、労働組合運動にそれを適用する余地は、そういう意味からいいましてないわけでございます。
それともう一つ、刑法一般は、御承知のように、これは刑法典でございまして、これはひとしくこの法のもとに平等で、この構成要件に該当いたします行為は処罰されるということを示しておる刑罰法令の基本的な法典でございます。従いまして、これはそこに規定してありますことによって、一般他戒と申しますか、一般予防と申しますか、これによってある行為は禁止されるという趣旨のものであり、それを犯せば一定の罰を受けるということを、罪を犯す前に国民一般に知らしておくという効果を持ったものなのでございます。この暴力とか器物損壊といったようなものは、暴力の中でも最も典型的なものでありますが、このようなものは一般的に申しまして、自然犯と申しますか、だれでもが非難すべき行為として理解されている形態の罪でございます。そういうものを刑法の中に規定いたしますことによって、一般の特別法に規定します場合と違って、これは何人にも適用されるのであるという趣旨のことがおのずから示されているのでございます。そういう刑法典の中に、特に労働組合には適用しないというようなことを書きますことは、立法技術上、立法形式におきましても、当を得た措置ではないのでございまして、要は、今申し上げました制度といたしましては、日本の現行制度のもとにおきましては、労働組合に適用のあるような場合というものは、この二百六十一条からは出てこないというふうに私どもは確信いたしておるのでございます。暴力行為等処罰ニ関スル法律を暴力追放の措置としまして、これを拡充強化しよう、むしろその方を拡充強化すべきであるという論も多々あったのでございますが、御指摘の通り、労働組合運動の越軌的な場合に、この暴力行為等処罰ニ関スル法律が現在適用を見つつあるのでございますので、これを拡充強化しますのは、私どもの意図がそういうところにありませんでも、皆様方が乱用の面からして御心配の点も多々あるというふうに考えますので、あえてこの暴力行為等処罰ニ関スル法律には触れないで、刑法の規定を改正することによりまして、その趣旨を明らかにいたしているつもりでございます。現実の適用の問題と、制度の問題とを一つおかみ分け下さいまして、その点の私どもの意のあるところを御理解願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/8
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009・亀田得治
○亀田得治君 関連して一点だけ。私は法務委員ですから、法務委員会のときに十分審議したいと思いますがチンピラを対象として毀棄罪を非親告罪にするという、盛んにそういうふうな御説明がありますが、私は現在のチンピラの大部分は、これは二三人でがたがたとやってきて、いたずらしてどこかへ行っちゃう。あるいは町あたりで会う場合でも、大体二、三人です。そういうことが多いのでありまして、従って、そういうものを取り締るには、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条、これによって大部分そういうものはまかなえるわけなんです。しかし、一人で来た場合と、こうおっしゃる意味のようですがね。だから、その点は、暴力行為等処罰ニ関スル法律ではいけませんが、しかし、それに対しては、やはり被害者がもっと告訴精神を酒養する——こまかい質疑はもっとあとにしますけれども、どうも御説明の重点がちょっとおかしいと思いますのでこれは聞くのです。それは告訴精神でやったらいいのでして、親告罪にはこんな毀棄罪だけではないのですよ。そういう点の矛盾というものは全部にあるのです。しかし、親告制度の法律的な意味というものも、これは世界的に認められておるのです。だからそういうわけでして、ほんとうにこの警察がチンピラなり暴力団というものに対して本気でやるのだという気持でおられるのなら、私はこれほど暴力団、チンピラがばっこしないようにもっと私はできておると思うのです。私は、それはもっと警察と暴力団とのなれ合いとか、結託とか、この点は、私は午後少し質問してみたいと思っているのですが、もっとほかの問題があるのです。それをほったらかしておいて、そして暴力行為処罰法でやれるチンピラのそういう二、三人の行動までも取り締れない。こんなことは私は取締りの方の問題だと思うのです。個人のやつは多少問題があるが、これは告訴精神でいくべきです。その点が私どうしても納得いかない、先ほどの御説明では。大部分は、それは現在の法律でチンピラの取締りはできると考えておる。それが一つと、もう一つは、労働組合は、現在暴力行為等処罰法で扱っておるのですから、労働組合にほんとうに乱用するつもりなら、暴力行為等処罰法でやりますよ、そういう意味のことをおっしゃっておるわけです。ところが、労働組合の行動の場合は、刑法の二百六十一条、これに当らない、こうおっしゃっている。これも私は、刑事局長の説明は間違いだと思うのです。といいますのは、労働組合は、なるほど団体交渉の場合等たくさん集まっております。そして事業主と交渉をやっておる。ところが、この労働組合の場合には、本来交渉を目的でやっているわけです。だから、たとえたくさんの者が集まっておっても、暴力行為等処罰ニ関スル法律ではないのです。たまたまその際に、だれか一人の人が興奮して、がちゃんとやって、コップでも割ったとか、そういうことが起きても、これはその人個人の罪なんですよ、これは、そういうことが非常に多いわけなんです。だから、それは非親告罪にされれば、その分は何も団体行動じゃないのですから、これは刑法二百六十一条の方へまさしく当る問題であります。たくさん寄っておれば、必ず二百六十一条じゃなしに、暴力行為等処罰法の方へ行くのだ、そういうことは言えませんよ、これは絶対に。その点が一つ。これはあなたの見解は私は納得いかない。
それからもう一つは、これは、法務省なり検察当局の私は方針の問題をお聞きするわけですが、暴力行為等処罰法を作るときには、これは暴力団に対するものだ、こういうふうに江木法相がその当時説明し、法律が作られたわけなんです。それからこの法律を私ども拝見しましても、たとえば、この法律の第一条の第二項を見れば、「常習トシテ前項ニ掲クル刑法各条ノ罪ヲ犯シタル者」云々というようなことも書いてある。こういうところを見たって、これは暴力団とかチンピラとか、そういうものに対するものだということは、これはもうはっきりしている。労働組合というものは、交渉の過程において、たまたま起るのですから、常習としてそんなことがあり得るわけはない。目的が全然違うわけですから。だから、そういう法律を、その法律ができた一年後に趣旨説明とは全然違った適用をまず京都の農民組合の事件に適用し、それ以来ずっとそういう癖がついておるわけなんです。私はここが問題だと思う。ほんとうに民主的に法律を運用してもらうのであれば、これは検察当局が裁判所へそういう事件で暴力行為等処罰法でやってくれともっていくから、これは裁判所が裁判するのです。最高裁がそういう判例を出したから、やはりその判例に従ってやっていくのだ。どうもそういう考えのようです。私はそれは改めてもらいたいと思うのです。最高裁がどういう判例を作られましょうとも、行政府の責任者としては、自分たちが国会に提案したときの気持で、この法律というものは運用すべきです。そう思うのです。だから皆さんの方が、暴力行為等処罰法違反だとして労働組合の事件をもっていかないという方針であれば、最高裁で何も裁判のしょうがないのです。事件が来ないわけですから。提案者である政府が、なぜそのような立件の仕方をするかということに私どもは一つ疑問を持っておる。そういうことを改める方針があるのかないのか。判例があるからついていくのだというわけにはいかぬ。皆さんから持っていくから裁判所が裁判をするだけなんです。裁判所として見れば、事件を持ってこられれば、提案説明は別として、法律要件に形式的に該当すれば、せっかく持ってきたものを無罪というわけには理論上しにくくなる。それだけの問題でしょう。それを皆さんが悪用して、今度は一ぺんそういう裁判が出たからということで、もう労働組合の事件も暴力行為等処罰法でいけるのだ、こういう態度を先ほどの説明の中でも維持されておるということは納得いかぬですよ。その三点について、一つ法務大臣、刑事局長の御意見を聞きたいし、私は、ちょうど労働大臣が来ておられますから、お聞きしたいわけですが、そういう一体労働組合等に適用しないという立場で作られた法律が、すぐ手のひらを返すようにして、そういうものを対象に用いられておる。これは用いられてしまったわけですがね。しかし、私はこれは正常に戻すべきだと思う。戻せるわけです。検察当局なり法務当局が、その態度をとりさえすれば、裁判にならぬわけですから。しかし、ほかの刑法各条に当るような罪があれば、これは仕方ありませんよ。それは仕方ありません、やっても。その点について、これは労働大臣としてもおそらくお考えになっておる点だろうと思いますから、率直な御意見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/9
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010・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この親告精神を涵養する、そうして法律改正を待たずに、それによって処理していったらどうかということ、これはごもっともと思いますし、それが本筋の考え方と思うのでございます。しかしながら、これがまた、実際その通りなかなか行われないのでございまして、実際問題として親告精神によって、そうして処理していこうとすれば、まずこの問題は私は解決しないと存じます。私は、そう大した経験はございませんけれども、私がかつて警察を扱っておりました、かの二・二六事件の直前、二・二六事件までの二カ年間の経験によりますと、この一種の軍事反乱を取り押えるための、軍部を背景としての右翼の活動、これの活動を徹底的に取り締りたいと思ったのでございますが、これが大きな財閥を脅迫して、そうして軍資金を取っておる。そういうことがはっきりわかっておりましても、大きな財閥の、国の事業を代表するような偉い人であっても、後難をおそれてどうしても話をしてくれないし、また、そういう事件が扱われては困るという心持になるのでございまして、そういうわけでございますから、いわんや、ちまたにおいて小さな店舗を張っておるような者が、自分がどんな後難があろうと、世のために敢然とチンピラと戦って、かりに火をつけられようと、彼らを征伐してやろうという勇敢な精神から親告してもらうことは、理想的でございますけれども、これは、なかなかこれを明待することはむずかしいので、この弊害が目に余りますから、そういうものを取り締りたいということで、親告罪を非親告罪にしたわけでございます。それはその一つでございますが、やはりほかにもこの集団的の性犯罪を非親告罪としようということもやはりそういう点から出てきておるわけでございます。
なお、暴力行為等処罰ニ関スル法律でございます。しばしばその御非難を承わります。これは古い制度の法律でございまして、当時のいきさつは私はつまびらかにいたしておりませんけれども、今日といたしましては、この法律では労働運動関係の事犯には適用せぬと、こういうことを明らかに書いてありません限りは、今日の法律を執行していきます問題になりますと、やはり法律のありのままの解釈によって適用していかなければならないのでございます。行政当局、検察当局がこれを裁判所に送るからいけないのだという仰せでございますけれども、すでにしばしば裁判例もあるのでございまして、法の精神、法の解釈というものの最後決定をするのはこれは裁判所でございます。それで法の精神、法の解釈がきまっておるのに、行政府の解釈で裁判所へ送らない、こういうことはこれはできないと思うのでございます。でありまするから、先ほど私が申し上げました通り、法律はその解釈は最後は裁判官によってきまる。その裁判官はあるいは立案当時の説明、立法府における論議、こういうものは参照されるであろうけれども、しかし、最後は裁判官が決定するので、ひとり歩きをすると申し上げたのはそのことでございます。それで、今この法律を改正いたしまして、ひとり歩きをいたしましても御指摘のような弊害はなかろう、こういうことを申しておるのでございます。なお、詳しいことは、刑事局長からお答えいたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/10
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011・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 亀田委員から仰せになりました問題の第一は、町のぐれん隊のようなものも集団的に三々五々来るのじゃないか、そういう事例がむしろ多いじゃないか、そういう事例も確かに実情におきましては多うございます。そういう種類の暴力につきましては、仰せの通り、暴力行為等処罰ニ関スル法律によって処断できるわけでございます。けれども、そういうものだけかというと、最近の暴力の傾向として、特徴として見られますのは、暴力がだんだん追い詰められまして、町に現われてきたその現われてくる状況が、三々五々のものも多数ありますか、また、単独で行われるものもちまたに多いのでございます。そういう事犯があります以上、私どもとしては国民生活の平穏を保障する、保障してやらなくちゃならない、こう考えるのでございますが、その場合に、亀田委員は親告をするという権利の行使をもっと敢然とやるように助長すべきではないかという御意見で、これは私も全く同感でございます。しかしながら一先ほどもちょっと触れましたように、被害を受けます財産が比較的軽微であるということと、こういう飲食店とか飲み屋とかいうようなものは弱い商売でございます。そういうものが親告をするということは、なかなか思い切れない面があるようでございますが一そういうような商売の弱味につけ込んでのまた暴力ということも、傾向として見られるのでございまして、こういうものに対処するということは、当然私どもとしては考えていかなければならぬことだと思うのでございます。
それから第二点は、私の説明で、二百六十一条は労働組合運動には適用がない、労働組合運動の方は、暴力があるとすれば、それは暴力行為処罰の法律でいくというふうな趣旨で私の申し上げました点についての御疑問でございましたが、これは二百六十一条の場合が、労働組合運動の場合に構成要件上ないというふうに私は申し上げておるのではないのでございますが、運用の実績を見ますると、今、先ほどもお話がありましたように、労使の交渉といったようなものは、一人でやる場合もあるかもしれませんが、大部分は団体交渉でございます。そういうふうな場合に適用を見る場合は、ほとんどこの二百六十一条が使われていないという趣旨から申し上げたのでございまして、まあそのとり方を、私はそういうつもりで申し上げた点をここで重ねて申し上げます。
それから第三点の暴力行為処罰ニ関スル法律は、検事がそういう起訴をするから裁判所がそういうふうにやむを得ず判決するのだ、こういうお言葉でございまして、検事起訴をやめたらどうか、この辺で方向転換をしたらどうかという御意見でございますが、刑罰法令は、申すまでもなく、大正十五年にできましたこの暴力行為等処罰ニ関スル法律も決して労働運動、農民運動といったようなものを押えるという趣旨ではなかったようでございまして、その当時の立法理由等をひもどいてみましても、これもやはりその当時、わが国にびまんしました集団的な暴力、そういうものを防渇しようという趣旨に出たものにほかならないようでございますが、ここに掲げてあります暴力行為等処罰ニ関スル法律におきましても、集団的な常習的な暴行、脅迫、器物損壊といったようなものを取り締る趣旨でございます。こういう趣旨は、やはり国民の意思として断圧しなければならぬ、禁圧しなければならないという趣旨であったのでございます。こういう行為に触れる行為は、暴力団であろうと、いかなる団体であろうと、これは適用を見るというのが刑罰規定の本来の使命であるわけでございます。従って、こういうような行為は反社会性の強いものとして立法化されたのでございまして、当時の労働組合運動あるいは農民運動、そういうものがこういう法律に触れるようなことがあろうはずがないというのが当時の政府の考えであったろうと思いますが、残念なことに、この法律に触れるような結果を生じたということであろうと思います。今日、労働組合の傾向としまして、健全化の一途をたどっておりますことは私どもも認めておるのでございますが、なお、若干の過激行為がありまして、それがこの法律に触れるということははなはだ遺憾でございます。しかし、問題は、法律の適正なる運用、解釈に基いての適用でございまして、法律の方で適用しないというふうに運用せよということよりも、こういう法律に触れないような健全な労働運動をしていただきたいというのが私どもの立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/11
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012・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 暴力行為等処罰ニ関スル法律が、制定当時、この法律自身が労働組合、農民組合運動というものを対象とするものでないという趣旨に基いて立法せられたことは承知しておるわけでありますが、私どもやはり労働組合運動というものが、でき得る限り、良識的に、平静に、反社会的行動のないように行われますことを望みますとともに、労働組合法その他におきまして、労働組合が適法に労働問題について行う行為につきましては、刑法上、民法上の免責規定も設けられておるわけでございます。しかしながら、それだからといって、労働組合運動であるという名のもとにその免責規定を越えて、他の法律の対象とならないというふうには私どもは考えていないのでありまして、願わくば、法規の示す範囲内において行われることを希望するわけでございます。具体的な事例につきましては、これはそれぞれ責任のある人々が処理をしておることでありまして、最終決定は裁判所にまかせるより仕方がないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/12
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013・山本經勝
○山本經勝君 先ほど御質問申し上げた点で、今亀田委員からもお話がありましたように、また、片岡委員からもお話がありましたが、私質問を申し上げております一つの問題点とするところは、なるほど法務大臣あるいは刑事局長等当面の責任のある最高幹部の皆さんの場合には、お考えになっておることすべてが不都合であるというきめつけはいたしておりません。ところが、法律を拡張解釈したり、乱用したりすることがとかく末端で行われておる。これは法務大臣はあるいは御存じがないかもわからぬ。当時、法務大臣でなかったように思うが、刑事局長はおそらく御承知だと思う。昨年の二月の初旬から始まった東京都内での実例がございます。警察官が現行法規上暴力行為等の取締り、あるいはその他の問題に鶏口して、現地で労働組合の活動に積極的に立ち入って妨害をした事実がある。これは御存じのように、栗林写真工業と称する工場における労働争議の際だ。ここでは組合員が、会社の事業所の一部に事務所を設けて、そこに集会をし、あるいはいろいろな組合業務をやっておった。この立ちのきを強行したことがある。しかも、このときの状況は、これは日時もはっきりしておりますが、二月十九日に組合がたまたま大会をやっておった。ところが、その大会の会場に……。労働大臣も聞いておいて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/13
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014・青山正一
○委員長(青山正一君) 労働大臣、一つお聞き願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/14
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015・山本經勝
○山本經勝君 これは今申し上げますように、二月十九日、足立区の栗林写真工業という会社の昨年の二月初旬から始まった労働争議の際、組合が争議の対策を検討するために大会を屋上で開いておった。その会場に、西新井署の警備課長さんがやってきて、会議中であるから入ってもらっては困るという組合員の阻止にもかかわらず会場に割り込んで、そうして、いわゆる会議の進行を妨げただけではない。皆さんはここを立ちのけという強硬な申し入れをしたのですが、これは刑事局長等はどうお考えになるのか。
現行法の中で、労働組合の運動の自由が保障されて、しかも、組合は集合はしておりますけれども、あばれておるのでも何でもない。しかも、その工場の一部を事務所に借りて、従業員の数が少いからそこで会合を開いて、しかも大会です。その大会の会場に、西新井署の警備課長が公然と制服で入り込んで、そうして、立ちのきを要求したのですが、立ちのきを要求するとすれば、労働組合を正当に認めておる限り、組合長に対して正当な手続を経て申し入れをなさるのが至当だと思う。大会の会場に公然と入っていって、そうして立ちのきを要求するということは、これは明らかに組合運動に対する介入であり、支配であると言っても過言ではないと思うのでありますが、こういう実例については、私は今言われた大臣やあるいは局長等の十分思慮ある考え方とはこと変って、末端における警察官の労働運動に対する介入はまことに顕著なものがある。こういうことはそれでよろしいのですか。組合法上許された組合が、成規の手続を経て大会を開いておる会場に、断わりなしに入っていくということは、現行法上私は許されておらないと思う。もし、立ちのきが必要であるならば、立ちのきが必要な旨をしかるべく組合の代表者に伝達をするとか、何らかの方法がある。それもその当日現場におった警察官は、西新井署からはニュース・カーを持ってきて、どなって、そうして、警察の行動隊が約二個中隊ですか、現場の包囲をしている。こういう状況の中でやられておる。これはいわゆる正常な形における話し合いが、労使対等の立場で進められるという状態をはなはだしく阻害している。こういう具体的な事実があればこそ、現行法でも拡張解釈をし、権限の乱用が行われておるにかかわらず、さらに今度の刑法改正でこれが拡張をされて強化される。こういう心配があればこそ、るる申し上げているんですが、今申し上げたような実例について、法務大臣はどうお考えになっておりますか。あるいは刑事局長はどういう解釈をなさるか。このことは、重ねてつけ加えて申し上げておきますが、警視庁に私ども参りまして、警備部長ですか、あるいは課長さんだったかはっきり記憶いたしませんが、こういう事情であるが、すみやかにのけて下さいという申し入れをしましたところが、さっそく翌日はのけてもらったというような事実もあるのですから、そこら辺の状況を大臣並びに局長から一度解明を願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/15
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016・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまの事件は、私も報告を受けて承知いたしておりますが、私の就任以前に起った事件でございまして、当時の状況につきましては、ここに一諸に参っております公安課長から状況を御説明申したいと思います。
なお、この問題につきましては、警察当局からも御意見があろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/16
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017・川井英良
○説明員(川井英良君) ただいま御指摘になりました事件でございますが、組合が、正当な権限に基きまして、会社の建物を利用いたしまして、組合の業務を行なっておったということでございますならば、その場所に警察官が参りまして、そうして解散とか立ちのきとかを理由なく要望するという、さような事実関係でありますれば、私も警察官のさような措置は適当でなかろうと考えます。しかしながら、私どもが警察、検察庁の方面から報告を受けておりますこの栗林写真工業の争議の事件は、必ずしもただいま仰せのような事実関係にはなっていないようでございます。
御承知のように、組合が分裂いたしまして、第一組合と第二組合ができまして、その間にいろいろな争いがあったようでございます。そこであるいは第二組合の就業をめぐりまして、第一組合員のピケによるその阻止行為といいますか、妨害行為というようなものが行われておりまして、相当な長い期間にわたりまして、深刻な争議が続けられてきた事実関係になっておるのでございまして、ただいまお取り上げになりました場面は、その長い一つの深刻な争議の一こまだけを取り上げて、大きくそれを吟味なされたのではないかと考えるわけでございまして、その争議の間に事件として取り上げたものといたしましては、工場二階の製造部の作業場内にたくさんの人たちが、すわり込みを行なって、経営者の意思に反してその場所を占拠しておりますとか、あるいは工場の正門の前の付近におきまして、ピケと作業強行とをめぐりまして暴行が行われたとか、あるいは会社の職員に対しまして、数名の人たちが、会社の付近の路上におきまして暴行を加えたとかいうふうな、報告によりますれば、一応顕著な暴行の事実が現われておりまして、さような事実につきまして警察権が動いたと、こういうふうな関係になっておりますので、私ども報告を受けておりますところの事実関係を前提といたしますれば、さような場合に、警察官が現場に臨みまして、警備ないしは捜査の活動に出るということは、これはまことにやむを得ないことではなかろうか、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/17
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018・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) 栗林工場の問題につきましては、ただいま法務省の方からお答えがございましたのでございます。組合の事務所として、従来から正当に認められております場所につきましては、争議等の場合に、経営者側から、そこから退去を要求するというようなことは、これはやはり問題かあろうと思います。ところが、そうでなくして、組合の事務所として従来から正当に認められておるところ以外の工場の一部等におきまして、いろいろとすわり込みその他の行為が行われる。経営者側からそこからの退去を要求せられる。それが数回にわたって行われてもなお退去せられないというような場合におきまして、そういう場合には、警察が組合側に対して退去を勧告をするということはあり得ると思うのであります。このただいまお取り上げになりましたような場合も、そういうような場合であったと私は記憶をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/18
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019・山本經勝
○山本經勝君 今のお話は、一応当時の状況が、総合的にあの長い期間の、争議の期間の集約された形でお話になったのですが、私の申し上げたことを、長い争議の一こまを取り上げて、いわゆる拡大鏡にかけて、拡大をして言っておるかのような表現をなさったのですが、これは私、むろんこの争議について、ついておったということではありません。最も重大な時期に三日間ばかり現地におって実情を見ている。で、いろいろ調べたのですが、この具体的な問題で私は明らかにしてもらいたい、その点は、組合の大会の会議場に、組合の大会を支配する責任のある議長が許可をせぬのに、警官であるがゆえに入り込んで、強引にそこで演説をぶつというようなやり方は、これは妥当だということになるのですか。これは法務大臣に私は伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/19
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020・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この具体的な事実につきましては、私は一向に存じないのでございまして、それに対して私の考えを申し上げることは差し控えたいと思いますが、仮説の場合で申し上げると、まあいろいろほかにも条件がございますから、あるいは誤解を生ずるようなおそれがあるかと思いますが、先ほど山口政府委員からお答えのありました通り、従来から当然組合がそこを相談の場所として使い得るというように予定されておるような場所で、そうした正当なる争議行為として相談をしておる場所に警察官が介入をするというようなことがございますれば、それはいかがかと思われるのでございますけれども、しかし、そうでない場所でまあすわり込みをやる。そうして会社側としては仕事を取り運んでいかなければならないのに、そこにおられては仕事が運ばないというようなことがありますれば、それは果して正当なる労働争議の行為であるかどうかと、こういうようなことにまた疑問を持つような場合があるのでございまして、仮定の場合につきましてお答え申し上げますことは、これは非常に誤解を生じまするから差し控えたいと思いまするが、抽象論としては、両方の場合があるように考えられるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/20
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021・山本經勝
○山本經勝君 これは当時の事件として具体的に申し上げても、法務大臣は御承知がないということは私もわかりますが、いやしくも組合が当面する紛争をどう処理するかということ、あるいはどう戦うかということを中心にして、対策を検討する大会の席上に、組合員が自主的に選任をした議長が管理をすることになっておる。これは当然なことなんですが、議長が許可しなければ、会場に警察官といえども割って入るということはできないはずだ。で、当時西新井署に私ども参りまして、署長に面会をし、こういうことは不都合ではないかというお話をいたしましたら、それはまことに申し訳ない、遺憾であるということであったのですが、これは事後に属するのですから、どのようにもしようがないのですが、そういうようなやり方が、警察官によって、できた法律をたてにとってやっていかれるというのが実態なんですね。
それで、これは労働大臣に私は一点伺っておきたいのですが、今申し上げるように、組合は自主的な組合員の総意によって、その代表する機関が大会を招集して、そうして大会が開かれますと、決議機関ですから、これにはその集まった代議員の中から、あるいは組合員の中から、議長を選任するのが常識である。そうしますと、この会場に入ることを許される者は、議長の許可が必要である、こういうことになっている、国会と同じなんです。一つの民主的な会合のルールなんですが、そういう場合に、警察官がもし必要があって、入らなければならないとするならば、まず、議長に許可を受けるべきだ、そういうことはしない。組合員が、警察官が制服で入ってくるからそれをとめようとしたら、警察の者だ、何のじゃまをするかというので、強引に入ってその演壇を占拠した——占拠したという言葉は不都合かもわかりませんが、演壇に立って、いわゆる組合員に対して、争議によって、二階の、工場の一部に泊り込んで寝起きをしておる組合員の立ちのきを要求する演説をぶったというようなことは、これは明らかに私は行き過ぎだと思う、あるいは違法だと思うのですが、労働大臣は、所管の大臣としてどうお考えになるか、これを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/21
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022・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 私は、警察官といえども、法によらずして他人の占有する住居、居室に入っていくという権利はないと思います。また、ただいまおっしゃったような関係の範囲内では、私は、そういう警察官の行為は適当でないと思いますが、しかし、他の要件、たとえば、その会場の占有が適法に行われておったかどうか、あるいはそのほかの要件について、私は事実関係を承知いたしておりませんから、それについて私がどういう判断をするというわけにも参りません。ただ、今・おっしゃるような状態で、その会場を適法に借りておるというような状態、そのほかの要件もすべて適法であるという状態のもとにおいては、穏当な行為であるとは思いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/22
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023・山本經勝
○山本經勝君 もう一点は、続いてお伺いしておきたいのですが、その人の名前もわかっている、西新井署の菅野という警備課長です。その人に聞いていただけばよくわかる、私どもはその本人にも会ったし、署長にも会見して、こういうことは困るではないかということを実は申し上げたのです。そうしたら、この大会の会場であることを知らずして入ったので、まことにそれは残念であったと、こういうような表現をなさっておる、署長も、これは非常に手落ちであったということでありました。ところがです、そのとき、その場所においてやっておる組合の大衆行動に対して、その警察官の介入が、どういう影響をもたらしたかということは、先ほど刑事局長の方からお話になっておったように、事件全体の中で非常に重大な時点であった。そのために争議は非常に苦境に立ち、しかも最終的には組合の分裂を来たして困難に陥ったというような実情なんです。ですから、これはむしろ、私どもは当時警視庁にも行き、あるいは警察庁長官にもお目にかかったと記憶いたしておりますが、こういうことでは困るではないかということを抗議を申し上げた。ところが、こういうふうにして、警察官の介入は、現行法でも公然と行われておる。しかもその裏を申し上げるというと、結局この西新井署長の桜井さんであったと記憶をいたしておりますが、これはあるいは間違いであったら訂正をいたします。そこで、この人の娘が、栗林工業の社長さんのむすこの嫁に当る、非常に近い親戚関係に当る、こういう事実も明らかになった。そこで、争議に関して、警察に対して、西新井署に対して協力の要請がなされておるという事実さえもわかってきた、こういう形であります。ところが、これは特殊ないわゆる親戚関係の例でしょうが、一般に私ども経験している、日常起っている中小企業の中における労働争議には、この種の類型が非常に多い、そうして警察官が直接、現行法のもとで、今、労働大臣かちょっとにおわされたような、いわゆる労働組合なら労働組合の業務を正当にやっておるのではない、あるいは場所等について、不法に会社の施設あるいは土地等を利用しているのではないかということをにおわされたのですが、そういうふうな名において介入する、これは公然とやっておるのが事実なんです。ですから、もし今、問題になっている法改正で、この親告罪がなくなって、そうして非親告ということになりますというと、こういうことが起りはぜぬかという心配があるのでお伺いしておきたい。警察官はいわゆる警察官職務執行法の規定に基いて義務づけられた仕事はやはり人の生命、財産の保護ということを中心にして、その他法令が定めておる事項について広範な責任を負わされておる。そうしますと、警察官は、今までは親告であったから被害者の親告を待つということで、もう一応責任が済んで参りますが、今度はそうでなく、警察官は一々争議があれば行って見ておかなければならない、こういうような状態になってきかねない。あるいは、先ほど申し上げたように、労使間の対立がほごせぬために、いわゆる話し合いで解決がつかないために争議行為となっておる状態、そうしますと、その争議行為になった状態の中では激しく、鋭く対立しておると考えなければならぬ。そうすると、あらかじめ組合がそのときに職場集会とかいろいろの会合を開きます、そうした場合に、あらかじめ会社は警察に対して、こう何月何日どこそこの場所で会合があるようだから一つ見ておってくれというように言えば、警察官は当然来なければならない、来て見ておかなければならない。そうすると、こうした集会にも公然と警察官が介入をしてくる、そうしたらほんとうの自主的な労使の関係の対等な立場を保持することは困難になって、経営者が一方的に強くなる、こういう結果が生まれてくると思う。ですから、こういうふうな状態が予想される法の改正が意図されて、そうしてそれを今までの法規の実際の運用を見ても、申し上げるように、幾多の行き過ぎた取締り、介入が見のがせない。ましてや、こういう法律ができれば、当然の責任義務として警察官は、こうした労働者の集会あるいは労働争議、大衆行動、こういったもの、あるいは団体交渉の席上までいわゆる制服を着てがんばる、こういうことになってくると思う。そうすると、言葉のやりとりといえどもゆるがせにならない、そうして明らかに労働運動に対する弾圧の意図が含まれておると解せざるを得ないと思うのですが、法務大臣は、この点どうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/23
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024・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 御設例の場合の事実関係は、私つまびらかにいたしておりませんからお答えいたしかねる次第でございまするが、先ほど申し上げました通り、正当なる争議行為に対して検察官、警察官が不当に介入するということは許されるべきことではないことは当然でございます。憲法上認められておりまするところの正当なる組合運動に対して、理由なくして権力を行使するということは、これはもう絶対にあってはならないことでございますが、それと同時に、争議行為、組合運動といえども法の範囲内における正当なる争議行為、組合運動であってほしいのでありまするし、もし、その法の一線を踏み越えますときには、やはり検察官、警察官といたしましては、法を守っておりまする立場からこれに介入するような場合があり得るのでございまして、要は、適法かどうかということで、どちらの場合にも想像できると思うのでございます。正当なる労働争議行為に対して、警察官があやまって不当に介入する場合もございましょうし、あるいはまた、争議行為の勢いの激するところ、法の一線を越えて、そうして警察官がこれに立ち入っても仕方がない、適法というような場合もございます。これはすべて事実問題によって決していくより仕方がないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/24
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025・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 非親告化によりまして、捜査官憲が、労使の健全な関係に発展していくのに介入するような糸口を作りはせぬかという御心配でございますが、先ほど来申し上げますように、私は、この二百六十一条の非親告化というこの点だけによって、そういうような糸口が開かれていくというふうには私は考えないのでございます。問題は、現行法のもとにおいても同じような問題があるわけでございまして、要は私は、捜査官憲が労働法の真の立法趣旨というものをよく理解しまして運用を誤まらぬことが大事なことであって、この精神の上において二百六十一条を非親告化することによって、そういう糸口が開けていくのだというふうな見方はいたしておらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/25
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026・山本經勝
○山本經勝君 いわゆる刑事局長がそのような意図をもって法改正をやろうと言われるならば、これは大問題であります。これはそういうふうには言われぬと思う。われわれの心配をしておるのは、現行法の実績を見ましても、申し上げるように、当然やってはならないはずの事柄が公然とやられた事例を私は申し上げたのです。そうであってみれば、すでに過去に経験済みなんです。ところが、今後さらにこういうような幅の広い法改正が行われるというと、それに関連をして、警察官職務執行法等の規定も一応目を通していきますというと、なかなか厳重な任務の責任づけをされて、そうしますと、警察官はみずからの責任において、職務上の任務として公然とそこに立ち入らなければならぬ、あるいは不当に組合の集会等に入っていかなければならぬ。困るから入ってくれるなと言っても入ってくる、こういうような状態になってくる。また、入らなかった警察官は手落ちになる、こういうことになってくると思う。そうすると、公然と組合の集会あるいは大衆行動あるいは団体交渉の席上にまで警察官が入り込んでくる、こういうことになりますと、先ほども申し上げたように、なかなか労使間の関係というものの、いわゆる対等の立場というもののバランスは失われてしまうことが往々にしてある。従って、私ども極端な言葉で言えば、このような法の改正趣旨の裏には、結局組合に対する弾圧を含んでいるものだと解せざるを得ない。不当ということを申し上げたいのですが、それであなたがあるいは法務大臣が、あるいは労働大臣にしても同様ですが、この最高のいわゆる良識をもってこの法改正を目論んでおられるその心持はわかっても、せっかくの親の心子知らずで、実は末端におけるところの法の執行をする役割を持った警察官等に至っては、そうは解釈しない場合がある。自分の責任の上に点数をかぜがなければならぬから、いやでも強引に入っていくというようなことが公然行われはしないかという心配を皆持っている。これは私どもだけではない、すでに新聞で述べられているように、東北大学の某教授などもそのことを強力に指摘しておる。あるいは学会でも専門の知識を持った人々はひとしくそれを憂えている。先ほど片岡君が申しましたように、治安維持法あるいは昔の治安警察みたいなものを再び復活する意図があるのではないかというような極端な意見さえも飛び出すほどのものです。ですから、そういうようなものにしなくても、もっぱら今の法規のもとでも行き過ぎがあるのだから、そのぐらいにしておいて、組合は組合として良識をもって、労使間の関係を保持しようと努力しておる段階です。これは局長さんも先ほどお述べになっている。あるいは法務大臣にしても、労働組合の良識の一大前進的な伸張の状況を喜んでおられる。そうしますと、こういう疑いが持たれるような法改正をしいてしなければならぬという根底がわからない。
これは法務大臣に伺っておきたいのですが、労働組合もともに暴力団と同じような取扱いになるのかどうか、そうでなければ、はっきりとこれを除外すべきだというさっきの片岡君の意見と同感なんですが、その点どうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/26
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027・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 労働組合を暴力団と同一に考えるなんということは、もうあってはならないことでございまして、絶対にそんな考えは持っておりません。今度の暴力取締りに関する法律案の立案にしましても、一切大衆運動、労働運動というものには関係のないように作っていこうということで立案いたしておるわけでございまして、労働運動の健全なる発達を念願いたしておりますることは人後に落ちない次第でございます。ただいま仰せになりました通り、われわれがさように考えておったっても、できてしまえば法律はひとり歩きするからして、どういうような危険があるかもしれないじゃないかという仰せでございまして、これはごもっともと思いますが、私どもは、この法律の文面と、それから過去における暴力行為等処罰ニ関スル法律その他の実施の状況を見まして、ただいま御心配になるようなことはない。もし警察官等があるいは功を急ぐために不当に労働争議に介入するというような場合がありとしますれば、すでに暴力行為等処罰ニ関スル法律その他の法律がございまして、そういうような危険性は現行法でもあるという意見はあるのでございまして、そこへその二つの罪を非親告罪に、いたしましたからというて、そのために、そういうような弊害を助長するとは考えられない。そういうことがあるならば、もうすでにあっておるはずであるし、あるいはまた、あやまってそういったことがあったかもしれないが、それは現行法でもそういうことがあり得るので、こういうように法律を改正したから、そういうことを刺激することはない。そこに非親告罪としてそうして取締りたいと考えておるのは、ちまたのチンピラは、これは従来この改正がなければ取り締れなかったのであるから、この改正によって取り締る、こういうような趣旨に解しております。法律がひとり歩きをするようになりましても、今のお尋ねのような危険はないと、かように了解をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/27
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028・石井榮三
○政府委員(石井榮三君) 私ども警察といたしましては、およそ労働運動に対しましては、労使いずれにも偏せず、中立の立場を堅持すべきものであることは申すまでもないところでございまして、正常なる労働運動に対しましては何ら介入せず、干渉しないというのがわれわれのとるべき態度である、かように考えておるのでございまして、第一線の警察官諸君にも私は常にそういうふうに申しておるのでございます。しかしながら、労働運動は、不幸にして勢いのおもむくところ合法のワクを逸脱するということになりまして、いわゆる不法な状態を発生するようなことになりますならば、これは公秩序を守る責任を持つ警察といたしましては、これに対処してしかるべき措置をとらざるを得ない、かようになろうかと思うのでございまして、従来労働運動に対処する警察の態度といたしましては、絶えず今申します通り、一党一派に偏せず、労使いずれにも偏せず、中立の立場を堅持しつつ労働運動の現実の姿をながめておりまして、それが合法のワク内において行われる限りにおいては、何ら干渉しない。不幸にして行き過ぎて合法のワクを逸脱する場合には、その不法状態の排除というふうなことが警察の職務上当然許されることであり、また、やらなければならぬことである、かように考えて、この職権の行使をしなければならぬ、こういうふうに思っておるのでございます。
ただいま御審議をいただいております改正案につきましては、その改正の意図するところは、法務省当局から繰り返しお答えになっておる通りであるのでございますが、私どももそういうふうに承知をいたしております。
また、いろいろ各先生方から貴重な御意見を拝聴いたしております。まことにごもっともでございます。もしこの法案が成立の暁におきましては、その立法の精神を十分に体しまして、また、御審議の過程においていろいろ御懸念になっておりますような点も、十分私どもは注意をいたしまして、第一線の警察官諸君の指導と教養に最善を尽しまして、法の適正なる運用をはかっていくように心がけたいと、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/28
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029・片岡文重
○片岡文重君 私は今の山本君の御質問に関連をして、一、二点お聞きをしたいと思います。
それから改正案の二百八条ノ二について二、三お尋ねしたいのですが、先ほど来、山本君の御質疑申し上げておる点に対してのお答えを聞いておりますると、第一に、私たちの考えておるのは、現行法においてすらすでに正常な労働争議行為に対する不当な干渉が行われておる事例が多いと考える。しかし、法務大臣その他の諸君は、そういうことはないと考えておられるようである。ここに重大な認識の相違がある。これがこの法案の審議の上に非常に重要なことだと思いまするので、私は重ねて申し上げるのですが、私もまた、しばしば争議行為の中に入ってみて——入ってみるといいますか、関係してみて、当然警察官というものは、国民の、善良な大衆を擁護すべき立場にあるにかかわらず、現行法を曲解し、あるいは不当に拡大解釈をして、あるいは企業者が不利益をこうむるからといって、こういうことを公然と言って、その労働組合法上もしくは労調法上認められた正当な争議行為が妨害される例が、しばしば体験をしております。それで、今後もそういうことはなかなかなくならないだろうと思う。従って、この法改正によって、善良な市民が困っておるところの町のチンピラとか不良とかいうものが一掃されるように御苦心下さることについては敬意を表しますが、これをその正常な争議行為に拡大解釈をされたり、曲解をして悪用されるようなことがあっては相ならぬということから、もし真にこの町の不良の対策のためにこの法改正がなされるとするならば、少くともさしあたって、私たちがちょっと考えただけでも、暴力行為等処罰ニ関スル法律が集団行為の処罰だけを対象にするというのならば、この法律の方を改正することによって、この町のチンピラの一人の暴行や脅迫や器物損壊等の単独行為を処罰することも、この法の中に、むしろこっちを改正したらいいと思うのですよ。そうすれば、これは親告罪ではないようですから、こちらの改正によって、当然この政府の意図されるところは達せられるのじゃないか。この暴力行為等処罰二関スル法律においても、すでに争議行為でこれによっていろいろと労働組合が妨害を受ける、あるいは損害を受けておる例もなしとしませんが、しかし、今政府が企図されるような考え方の上に立ってこの法を改正しようとするならば、私はむしろこの刑法典であって、基本法であるからという刑事局長のお話をそのまま了承するとしても、了承するとすればなおさらでしょう、この基本法を直さぬとも、この特別法の方を直したらいいではないか、こういったこと、従って、これに対する大臣並びに局長の御意見を伺っておきたい。
それからいま一点は、石田労働大臣に伺います。この法律の改正によって、それからの労働争議が再び新たな不安を増すわけですが、もしこの改正が、労働争議に全然適用せぬのじゃということであるならば、しかも、これは基本法であるから、この法律の上に、刑法の上に、これは労働争議には適用しないとか何とかいう制限を加えることはできぬという法務大臣並びに刑事局長の御意見のようです。であるならば、労働大臣としては、労働法なりあるいは労調法の上に、この二百六十四条ですか、これをこの法律は適用せぬということを明らかにすべきではないか。この労組法や労調法の成文の上に、民法やその他の法律の制限なり、適用なりということはうたってあることなんですから、もしこの基本法でできないというならば、特別法の上でその点を明瞭にしたらよいではないかということが私には考えられる。これに対する労働大臣の御所見を承わりたい。それで特に私は念のために申し上げておきますが、私たちは、決して労働争議によるいろいろな労働組合の行為というものが、決して現行法律のワクを越えて、労働組合だからこの法律のワクを越えて不当に自己の権益を主張してもよろしいのだと、労働組合なるがゆえに現行法規をじゅうりんしても差しつかえないのだというようなことは、毛頭考えてはおらぬのですよ。やはりむしろ私たちとしては、悪法もまた法なりという考えの上に立って、現行、定められておる法規のワク内において、できる限りの正当防衛をしていきたいと考えておるのが今日の労働組合であります。従って、こういう合法のワク内において、しかも最大限の正当防衛をしていこうとする労働組合でありますから、これに対する政府の保護といいますか、立場というものは、できる限り厳正であってしかるべきであると思う。しかし、つい最近、私は中山競馬場における馬丁労働組合の争議にも行ってみましたけれども、実にひどいのです。全然争議行為が行われないように、しかも、政府が先頭に立って妨害行為をしておる。たとえば、今まで全然、その一週間前に行ったときには、へいもない、障害も何にもなかった所に、次の日曜にストライキをやると言ったところが、住んでおる厩舎を——御承知でしょうが、競馬場の厩舎というのは、馬丁と馬丁の家族と、その隣に、壁一重で馬が住んでおる。同居しているわけです。この厩舎を全部新しいトタンのナマコ板で囲ってしまった。この厩舎内に住んでいる家族は、ために、厩舎というのは全部外便所ですから、便所へ行くことができない。住んでいる家族から、これでは困るじゃないかということで苦情が出て、あわててお昼ごろになってパラックの便所を野天に作った。こういうことであって、明らかに、そうして囲まれてしまえば、これは労働組合がそこに立ち入ることができない。まさにこれは、三者だ三者だと言っておるけれども、農林省が監督しておる競馬会の、不当な争議行為の妨害です。これは、こういうことがしばしば行われておるわけですから、こういう実態等もやはり法務省としてはつぶさに調査をされて、私どもは、決して法を越えてまでやろうということもなければ、不当に、組合なるがゆえに現行法規をじゅうりんして差しつかえないのだというようなことは、毛頭考えておらない。そういうことは、やはり十分お考えになって法改正をなさるなり、また、適用において指導せらるべきだと思うのですが、先ほどの二点について、それぞれの立場から御所見を伺っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/29
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030・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいまの御説、まことにごもっともと存ずるのでございます。労働争議——組合運動といえども、法の範囲を逸脱してはならぬということは、当然さようなことを主張しておるのではないというお言葉で、もう私ども、その通りに了承いたしておるわけでございます。また、警察官の側におきましても、多人数のことでございまするから、正当なる争議行為に不当に介入する場合絶無ということも申し上げられません。過去においても、さようの実例があったことと思います。こういうような場合におきましては、厳重にそれを処置して、そして将来を戒しめていかなければならぬ。相互に法律を適正に守って、そうして健全なる労働慣行を築き上げるということが重点であろうと思うのでございまするけれども、でありまするから、私ども、法を解釈するに当りましても、また、今度のような改正を立案するに当りましても、この争議行為というものに対しては、ただいま申し上げたような観念から常に出発しておるのでございまして、たびたび申し上げましたけれども、今度の暴力行為取締りのこの法律案を立案いたしました動機、心持というものは、全くこの争議行為とは無縁の法律であると考えて作っておる次第でございまして、条文の書き方等につきましてのお尋ねにつきましては、また、刑事局長からお答えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/30
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031・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお尋ねのように、この暴力立法を、特別法において、現在あります集団暴力を取り締る、暴力行為等処罰ニ関スル法律を、まあ拡充強化と申しますか、そういう規定も入れまして、そうして暴力立法として打ち出すのがいいのではないかという御議論は、私どもの部内にも、また、法制審議会にこの問題を討議してもらいましたが、その席におきましても、学者、実務家の中からそういう意見もあったのでございます。しかしながら、私どもが、なぜそれを避けて刑法の中に取り入れたかということにつきましては、先ほどもちょっと触れたのでございますが、単にそれだけの理由ではなくして、大体、この暴力に関する罪は、諸外国の立法例等も調査してみますると、外国の立法例の中には親告罪のままにしてある国もあるのでございますが、しかし、一部はこれは除外いたしまして、非親告化してあるのでございます。それと新しい傾向といたしましては、やはりこの非親告化の方向に向っておるようでございます。非親告罪といたしております国を見ますると、フランス刑法、チェコスロバキア共和国刑法、インド刑法、アメリカのカリホルニア州刑法、ロシアのソビエト共和国刑法いずれも非親告罪といたしております。それのみならず、日本が昭和十五年に発表いたしております改正刑法仮案におきましても、器物損壊を非親告罪として案を作っておるのでございます。で、その考え方と申しますのは、こういうような自然犯的な犯罪につきましては、これを特別法で規定しないで、できるだけ一般法である刑法典の中に書き込んでいくというような傾向にあるのでございます。そういうような点も考えまして、私どもとしては、いろいろ議論のありますところのこの暴力行為等処罰ニ関スル法律は、将来、刑法典が改正されます場合には、刑法典の中に書き入れ得るものは書き入れるということにいたしまして、むしろこれはそういう方向に改正をすべきものではないか、それを今この段階で暴力行為等処罰ニ関スル法律を拡充強化するということは、ただいま私どもの手元で、刑法全般に関する改正事業を推進しておりますが、そういう考え方と背馳いたしますので、そういうことをしなかったのでございます。で、なお、先ほども申しましたように、暴力行為等処罰ニ関スル法律は、現に運用の面におきまして、労働組合運動等の法律違反にも適用されておるのでございます。そういうところへ持ち込まないで、やはり刑法の規定の中に置くということが、そういう点からも、私どもの意のあるところが国民一般にもわかるのじゃなかろうかというような考えから、この一般法に取り入れられたわけであります。一般法にいたしますると、労働運動には適用しないといったような条件をつけますことは、刑法の体裁から申しましても適当でない、技術的に不可能であるというようなまあ考え方に立っておるのでございます。さようなわけでこういうふうにいたしましたが、仰せのように、法律は乱用いたしますれば、これは大へんなことになるわけでございます。ことに刑罰法規につきましては、よく、たとえ言葉として、両刃の剣ということを言われておるのでございます。一方において、保護しようとする法益に傾きますときには、他面においてまた弊害を伴うということでありまして、要は、中庸を得た良識のある運用ということが特に切望されるわけで、先生からのお示しのような運用につきましての注意は、われわれとしましては、けんけん服膺してその運用を誤まらぬようにしなければならぬと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/31
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032・石田博英
○国務大臣(石田博英君) ただいまの御審議を願っております法改正は、私は、今まで法務省その他からの御説明でおわかりのように、労働組合運動とは全く関係のないもの、今片岡さんの御意見では、法規で脅威を与える危険があるというお考えのようでありますが、私どもは、そういう危険がないものと確信を持っておる次第でございます。従って、労働組合法、その他に、特にこの法改正に伴う措置をただいまのところは考えていないのでありまし七、労働組合法の第一条の中にあります刑法の三十五条の規定は、労働組合にも適用されるということをもって十分であろうと思っておるわけであります。
それから、今の御指摘の農林省関係の競馬場の事件でございますが、私は、事件の詳細は知りませんが、私の報告を受けた範囲におきましては、この雇用関係がきわめて不明確でありまするし、それから、その労使の間の関係というものは、労働基準法その他に照らし合せましても適法なものとも考えておりませんので、先般幸いに中労委のあっぜんで一応の妥結点は見たけれども、さらに近代的改善に向って努力をしなければならないと考えております。しかし、ただいまお話の争議直前に政府が——政府ではない競馬会だというお話でございますが、もし、そういうような行為の内容は私はよくわかりませんが、争議行為を封ずる目的、あるいはそれを牽制する目的をもって家族の生活にまで脅威を与えるような行為をすることは、これはきわめて不当なことであると考えておりまして、事実を調査いたしました上で、適切な措置をとりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/32
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033・片岡文重
○片岡文重君 今の問題については、なお意見もありますが、時間もありませんし、議論になっても本意でありませんからその程度にしまして、次に二百八条ノ二の点で少しお尋ねしたいのですが、このいわゆる持凶器集合罪というようなものを新たに設けられるわけですが、こういう法律の内容を拝見すると、私どもは同じようなことを述べることになりますけれども、全く新しい不安というものがわいてくるような気がいたします。特にたとえば、この条文の中で「二人以上ノ者他人ノ生命、身体又ハ財産に対シ共同シテ害を加フル目的ヲ以テ集合シタル場合」こうなっておりますが、まず、財産というのは、一体どの程度の財産をさしておられるのか。それから目的というのは一体どこでだれが判定をするのかということです。特に目的をもっておったかいなかというようなこと、あるいは凶器がどういうものをさしておるのかというようなこと、これも第一、認定は言うまでもなく、警察が行うのでありましょうが、大体出先の警察官というのは、政府でももちろん力を入れて適正な法運用のために指導はしておられるでしょうけれども、出先の警察官というのは全部が全部ではないにしても、むしろ私どもから見れば、正当に公平な行為をとっておられる者ははなはだまれであって、非常に法を狭く解釈し、あるいは故意にこじつけておるのではないかと思われるようなやり方が多い。しかも一たん警察で検挙すると、あるいは検束すると、以後は警察なり検察庁の面子にかけて、その事柄をどうしても有罪にもっていかなければ承知しないというようなやり方が見られる。何カ月前になりますか、四、五カ月になるかと思いますが、私が傍聴しておった法廷では、現に真犯人の傍聴している前で、身がわりの検挙された者が有罪の判決を受けておる。こういう裁判が現実に行われておるのです。昨年ですか、映画になりました「真昼の暗黒」という映画のようなことは、小説や劇ではなくて、現実に行われておることは絶無とは言えない。こういう状態の中で、こういう法律の改正を行うときにぶつかると、私どもは非常な不安がわいてくるわけです。
まず、財産というのは一財産上の利益まで含んでおるのかどうか、なるべく具体的に、この財産という意義の内容を明確にしていただきたい。
それからその次に、目的を持っておったかどうかということをどういうふうにして判定をされるのか、この点も伺いたい。
なお、続いて、この条文の内容についてお伺いするのですが、まず、この二点についてお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/33
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034・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) まず財産とは何かということでございますが、「兇器ヲ準備シ又ハ其準備アルコトヲ知テ」という後段の客観的な条件がついております。凶器を持って財産に損害を加えるということになりますので、おのずから財産の範囲は限定されるわけでありまして、私どもとしましては、建造物の損壊、器物の損壊といったようなものが、対象になります財産というふうに考えるのでございます。従って、利益のようなものは考えられぬというふうに考えるのでございます。
それから目的ということはどうかという点でございます。刑法には、そのほかにも目的罪——「行使ノ目的ヲ以テ」というふうに公文書偽造罪などにも、目的がなければいけないということになっております。本罪につきましても、他人の生命、身体または財産に対して共同して害を加えるという目的を持った場合でなければいけないということにいたしております。そこで、その目的というのは、どうやって推認するのかという点でございますが、これはやはりこの行為に出る者の主観的なことではありますが、しかし、やはり行為でございます。刑法におきましては行為を罰するのでありまして、内心の意思を罰せられることはないのであります。そこで、主観的なことでありますが、それが目的を、外部の者から行為として見得る状況にならなければ、ただ目的のもとにある行為に出たというふうには認定できないのでありまして、単にそういうような趣旨を認識して集まるというだけでは足りないのでありまして、その趣旨を認容して、認め、かつ、自分もそういう気になるということがここにいう目的でございます。そこで、そういう気持が外に現われたということが認められないときは、この目的を推認するわけにいかないというふうに考えるわけであります。そういう目的はどうやって外部から推認できるかということになりますと、外部に現われておりますところの、たとえば別府事件でございますと、別府で何組と何組が対立しておって、その着たちがそれぞれ凶器を持って集まっていて、いつ何時けんかが始まるかわからぬといったような雰囲気がそこにある。そういう雰囲気からしてそれに参加しようということが外部から客観的にある程度判断できるという状況が出てきますと、そこに集まってくる者がそういうものをやる目的があって集まったというように認定さるるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/34
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035・片岡文重
○片岡文重君 目的の推認ということについての今の御説明では、はなはだ抽象的で、具体的な御回答にはならぬと思うのですが、また、この法律は、労働争議には適用しないと明らかにおっしゃっておられるのですが、労働組合の団体交渉等に例をとって申し上げるのはあるいは例にはならぬとおっしゃるかもしれませんが、たとえば、労働争議などの場合に団体交渉で出かける。その場合に、議論が激して、テーブルをこわし、あるいは、こわれかかったいすの足が取れたというような場合に、今までは親告罪で、これは使用者の方で黙っておればそれでよかった。今度は親告罪でなくなっているようで、そういうことは全部警察が、これに該当するということになれば検挙するでしょう。その場合に、幸いにその組合員が何にも持っておらなかったときはいいでしょう。何か器物を持っておる、ほかの用件で持っておるというような場合に、たまたまテーブルなり、いすなりを損壊した場合に、最初からこの者はその器物をもって威嚇的に、体に傷をつけないで、器物を損壊して威圧を加えると、こういう目的でこの中に参加しておったのではないかと見られても、これは見られないことはないでしょう。大体こういう見方で警察というものは、ものを見ている例が多いわけです。本人は全然そういうことじゃない、けれども、証拠はこういう器物があるじゃないかということで……。数年前の例の宮城前のいわゆるメーデー事件のときにも、プラカードのこわれたのが武器であるといって検事はきめつけておる。ですから、こういう目的の推認に当って、たまたま何か器物を持っておったということで、この目的が最初からあったかのごとくに推認をされる場合はなしとしない。そういう場合に、いや、私はこれは最初から目的があって来たんじゃありませんと、幾ら言ってみたところで、証拠の裏づけがあるじゃないかと言われたら、これは抗弁の余地はなくなってくると思うんですね。そういう場合に、なおかつ、これは目的を持って最初から来ておったんじゃないんだと、こういうことを本人が主張した場合に、その主張がたやすく容認できるかどうか。こういうような場合に、どういうふうにしてこの目的がなかったということを推認できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/35
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036・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお示しのような例は、きわめて明白に推認できると思います。と申しますのは、労働組合の交渉に当りまして、共同して他人の生命、身体、財産に害を加えるというような目的は、私どもとしては推定できないわけであります。で、そういう場合に、たまたま器物損壊がありましたとしても、先ほども申し上げましたように、それは器物損壊という罪が、暴力行為処罰に関する法律に触れる場合は格別でございますが、この二百八条ノ二に申しますところの、たまたまその人がナイフを持って、あいくちを持っておったというようなことがございましても、その前段の、「共同シテ」今申しました他人の生命、身体、財産に害を加える目的というふうなものは、労働運動において推定することは、これは非常な無理なことでありまして、そんなことは、労働運動と名は言っておるけれども、実は暴動であるというようなことの場合でない限りは、そんなことは外部的に推定することは不可能でありまして、そういう意味におきまして、この条文がそういうものに適用を見る場合はなかろう、そういうふうに私は思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/36
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037・片岡文重
○片岡文重君 今の御答弁は、将来の法運用の上において、私は重要な点になろうと思いますから、その速記は大切にして保存しておきたいと思うんだが。しからば、「共同シテ」ということは、たとえば、ここに五人なり十人なり集まってきたという場合に、その中の一人、もしくは二人がたまたまこの、財産、あるいは身体に害を加える目的を持っておった、一人か二人です。まあ、二人ということになると共同ということになるかもしれませんが、たとえば、十人なら十人集まってきた中に、一人だけ持っておって、あとの九人は全然そういうことは知らないで集まってきておった、こういう場合には、これは「共同シテ害ヲ加フル目的」ということには私はならぬのじゃないかと思うんですが、そういう場合にはどういうことになるんですか、これは「共同シテ」やはり「害ヲ加フル目的」ということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/37
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038・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) お説の通り、そういう場合には該当いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/38
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039・片岡文重
○片岡文重君 凶器という言葉がここに出ておるんですが、一体凶器とはどの程度のものを凶器とされるのか。たとえば、先ほど申しましたように、メーデー事件のときには、プラカードのこわれたやつを持ってきて、これも武器ですと言って検事はきめつけておるわけです。そういうように、プラカードの足も、あるいは、地図をもって現場説明をするときに、その地図をさすためにむちを持ってきておる、そのむちも棒ですね、これは。これもやはりこの場合の凶器に入る。これは、目的に使われるものでなければ、もちろんそれは凶器とは言えぬのだろうと私は思いますが、しかし、この場合に、持っておった者がそういう形態を備えておったという場合には、これは凶器にならぬとは言えぬと思う、諸般の情勢によることでしょうけれども。この凶器の範囲というものを、これもできるだけ一つ明確に御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/39
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040・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 凶器というのは、非常に範囲が広いようにお考えの方がありまして、そういう御質疑が出ると思うのでございますが、「凶器」という言葉は「凶」という字がついておりますように、これは凶行とかいう、「凶」というその語感からくるものも、この刑法におきましては非常に意味を持っておるのでございまして、私どもは、この凶器という言葉は勝手に解釈できる筋合いのものではないと思いますが、判例も古くからございます。そういう判例によりまして定義をいたしておるのでございます。で、今詳しく私申し上げますが、銃砲とか、刀剣のように、本来、性質上、人を殺傷するために作られた器具、これは性質上の凶器と申しておりますが、そういうものはむろんこの凶器に入るわけでございます。しかしながら、そうではないが、鉄棒とか、こん棒といったような、本来の用途においては人を殺傷するべきものではないのでありますけれども、殺傷のために使えば使い得る器具がございます。こういうのは用法上の凶器というのでございます。まあ、そういうものは一応含まれます。けれども、それだけではない、これには頭にかぶっておりまして、ただし、今申しました「凶」という意味からくるのでございますが、殺傷のために使えば使い得る器具でありましても、社会の通念から見て、人をして直ちに危険の感じを抱かせるに至らないと認められるものは凶器ではない、そういう意味から言いますと、ステッキだとか、先ほどの地図をかけるときに示す棒であるとか、なわであるとか、手ぬぐいであるとか、そういったようなものは凶器から除かれますことは、きわめて明白でございます。かようにまあ考えるのでありまして、判例が今の性質上の凶器、あるいは用法上の凶器といって、これはもう古い、明治三十六年あるいは三十九年あたりから、すでに凶器に関する判例は出ておりますが、あるいはなたを凶器であるというふうに示しておりますし、あるいは出刃ぼうちょう、それから大型のやすりでございますね、そういうものを凶器だと、こういうふうに示しておって、それは理屈を申しますと、今私が申したようなことになるのでございますが、なお選挙法等にも凶器という文字は使っておりませんが、それによく似た表現がございます。やはり危険——一見して危険だという感じを与えるようなものでないといけな、これは私どもが終始、法務省といたしましては、行政解釈としてとってきておるところでございまして、この考えは今後も変らないのでございます。そういう意味において、この凶器という意味は、割合に明確になっておると私は考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/40
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041・片岡文重
○片岡文重君 問題は性質上の凶器はそう大して起らないと思う。問題は用法上の凶器が、その場合、その場合によって広く解釈をされる、また、悪く曲解をされると問題になってくると思うのです。性質上の凶器と言っても、たとえば銃砲持ち歩きの場合には、すなわち届出をしなければ持ち歩きできませんから、そういう場合には届け出したものが証拠になって、たまたまその現場に銃砲器を持っておっても、その届出の証拠なり何なりがあって、移動するものであれば問題が起らぬと思いますが、その届出書類を紛失したとか、寄り道をしたとかいう場合に、その鉄砲なり、あるいは空気銃なりを持っておって、その現場に居合わした、これは持っている器具がそもそも性質上の凶器ですから、当然、事態によっては問題になり得るわけですから、法務省としては、きのう、きょうの問題ではなくて、これはもう刑法発足以来の問題であるから、幾多の判例もあるし、問題はないのだとおっしゃるけれども、大体、集団行動のときには、平素問題にならないようなものが問題になってくるところに、取り締られる方も、取り締る方も、これを裁く方もいろいろ困難が生じてくると思う。従って、いずれにも問題は起ってくると思うので、でき得る限り、この点は明確にして、類推の余地がないようにしておいていただきたいと思うのです。
もう一つ、この凶器の点について、なお一点申し上げておきたいのですが、たとえば、ここに東北大学の木村亀二教授が、これは新聞に出ておる意見ですからごらんになっておると思うのですが、「たとえば軽犯罪法第一条第二号にいうところの「人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」という程度の制限をつけたほうがよいのではないか」、こういうことを言っておられるのです。私もこれは賛成です。こういう点はなるべく明確にしておく必要があるので、せめてこの程度のことは、この法律の上には文章が長たらしくて書けない、あるいは体裁上、立法措置としては困難であるとするならば、何かそれに次ぐ、たとえば政令なり省令なり、何かの方法でこの凶器に対するワクというものをはっきりと、私はこの際、はめておくべきではないかということであります。この点も御意見を伺いたいと思います。
続いてもう一点伺います。「兇器ヲ準備シ又ハ其準備アルコトヲ知テ」となっておりますが、この準備するということは、携行するということとは違うようです。持って行くということではないようですね。ですから持って行くということが当然含まれるのか、また、その器物を持って行かなくても、たとえば労働組合員の諸君が出かけるときに、組合事務所にそういうものを置いてある、あるいは労働組合は使わないとおっしゃるならば、先ほど言った別府事件ですか、たとえば博徒のけんかのときに、銃器なり、あるいはステッキなんというものをその家に置いてある、取りに帰ればすぐ持ってこられるというような場合はもちろん、相当距離が離れておっても、とにかくいつかは使うであろうと、こう予想されるような場合、これはやはり準備してあると思うのですね。こういうものまでも含むのかどうか、つまり広く解釈すると、所持することも準備ということに入ってしまうと思うのです。そういうところまで含んでおるのかどうか。「準備シ」ということは、どの程度の範囲までお考えになっておられるのか、この点も明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/41
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042・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 凶器をある程度定義したような規定を設けるということも、きわめて適切な処置だと思いますが、これを特別法に規定いたします場合には、凶器という言葉は少し古くさい文字でありますので、古くさいと申しますのは、持凶器窃盗と申しまして、旧刑法の時代からあるのでございます。そういう言葉でありますので、選挙法等に書き込みます場合には、これも凶器のつもりで書いておるわけでありますが、凶器という文字を避けて、今おっしゃったような、木村教授の示唆しておるような内容そのものを明示するというやり方を立法上といっております。ところが刑法におきましては、ほかの条文をごらんいただいてもわかりますが、定義を掲げるというようなことはやっておらないわけでございまして、その点は、従ってあまりなまな用語を刑法に持ってくることは適当ではございませんが、凶器というのは、持凶器窃盗以来のあまりいい言葉ではないかもしれませんが、とにかく今日もまだ現行法の中にあるわけでございまして、そういうのでありますので、一応ここは凶器ということで、すでに明確になった概念として私どもは使っておるのでございますが、木村教授の指摘しております——私は新聞について見ているだけでございますが、「人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」、こういうふうに書いてございますが、これは木村教授の個人的な意見でございますけれども、この規定だけをちょっと見ますと、私どもの考えている字句よりも、場合によっては範囲が広いこともあるのじゃなかろうか、むしろこういう書き方は、こういうふうに明確にしようという御意図はわかりますが、こういうふうに書きかえますと、現在よりも広く考える場合があるのではなかろうかという、若干の疑念を持っておるのでございます。そういうわけで、その凶器というのを、必ずしも適切ではありませんけれども、ここに使ったというふうに御理解願いたいのでございます。それから「準備シ又ハ其準備アルコトヲ知テ」という文字でございますが、それは刑法の百五十三条に通貨偽造罪というのがございます。そこに「準備」という言葉がございます。この「準備」という意味でございますが、二百八条ノ二に掲げました「準備」ということになりますと、凶器を直接携帯して行く場合、これはむろん「準備」の中に入ります。それから、しかし携帯して行かないが、情を知らない人のトランクの中に入れて、それに持たせて行く、これも「準備」だと思います。問題は、現に自分自身持って行かなくとも、どこそこに置いてあるということがあれば、そういうような処置をとれば、準備をしたということになりますし、だれかがそういう処置をとっておるということを知っている場合には、「準備アルコトヲ知テ」ということになるわけでございますが、要するに、集合というものの行為、罪でございますが、その集合に当って準備し、準備することを知って集合し、こういうことになりますので、集合したその犯罪の場所、集合した場所そのものでなくてもよろしいのですけれども、その集合した場所からあまり遠くない所に、つまりその凶器が何どきでも使用できるような状態になって置かれておる、これが準備、用意をするということになるというふうに解釈いたしておるのであります。かりに親分の家に刀が幾振りかありましても、それが使えないような状態になっておるものでありますれば、刀があるということだけであって、いまだ集合罪の準備があったとは言えないのでございます。そういうふうに、準備という意味は携帯、運搬といったようなことよりは広うございますけれども、その集合した場所と接近しており、かつその集合者が何どきでも使用し得る状況に置かれておる、こういう状態を指すというふうに解釈しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/42
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043・片岡文重
○片岡文重君 大体準備の概念はわかりましたが、少しこまかいことを聞いて恐縮ですが、集合した場所でなくともよいということはわかりました。しからば集合した場所でない所というその所は、近くのという抽象的な表現ですけれども、もちろんそれは何と言いますか、交通上の近くという意味であって、距離的でないと私は考えるのですがね。たとえ離れておっても、そこに自動車があり、あるいは汽車の便があるという場合は、相当離れておっても、これはその近いというところに入るでしょうし、自動車も通れない、人間の足でかけて行くのだということになれば、相当近くとも、自動車なんかの交通のできるところよりは遠くなってくる。そういう点で、集合した場所以外にあるときには、どの程度のことを考えておられるのか、もう一ぺんはっきりおっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/43
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044・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それがどの程度の距離にある場合がいいかということは、これは社会通念によってきめなきゃならないと思います。仰せの通り、自動車があるような場合には、かなり離れておってもいいじゃないかという議論もありますし、山の中でしたら、つい隣でも、なかなか困難だという場合もあるかもしれません。その辺は、結局は社会通念によってきめるほかないと思いますが、一番狭く解釈すれば、集合の場所にそういう状態がなければいかぬという場合もあろうかと思います。しかしこれは、集合の場所そのものに置いてもいいか、とにかく準備という事柄からしますと、何どきでも使用し得る状態に置かれておるということでありますので、おのずからそこに限界があって、何時間もかからなければ持ってこられないというところであれば、違法性は、そう強くないということからいたしまして、そこは健全な社会通念によって、その場所がおのずからきまってくるというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/44
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045・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、同僚議員が相当いろいろなことを質疑されましたから、できるだけ重複しない角度から、二、三聞いてみたいと思います。
今問題になっておりまする二百八条ノ二の問題は、これは労働運動に適用はしないのだと、こういうことを明確におっしゃったと思う。ただ、われわれが心配するのは、暴力行為取締法のとき、大正十五年のときにもそういうことが言われておりながら、現実の問題としては、その暴力行為取締法によって、大衆運動というものが対象として置かれておるところに、われわれの心配が一つここに出てくる。そういう角度から、今、片岡委員が相当質疑をされましたから、そのところをもう一、二点聞いておきたいのですが、「前項ノ場合」から始まる二項ですね、二項の指令者とか、まあ現地指揮というような関係は、どういう工合に解釈しておりますか、この面からいくと、どういう工合な関係になるか、それを先に聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/45
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046・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 前項の場合において、「兇器ヲ準備シ又ハ其準備アルコトヲ知テ人ヲ集合セシメタル者ハ」という、この点でございますが、これは第一項の集合をする罪は、偶然出会って集合した場合も入りますし、だれかの命令によってそういう形ができた場合と、両方入るわけでございます。それで、その命令によって集まったという関係になる場合、その命令したものについては、さらに犯情が重いという考え方からいたしまして、この命令者は、法律上から申しますと、教唆犯になるわけでございますが、その教唆犯の特定の場合、つまり「兇器ヲ準備シ又ハ其準備アルコトヲ知テ人ヲ集合セシメタル者」という特定の教唆犯については、むしろ本犯と言いますか、集合した者よりも重く処罰する、こういう趣旨の規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/46
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047・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで、その今のような者と、現地で指揮をとった者との関係はどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/47
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048・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 現地で指揮をとったという場合は、この目的のつまりなぐり合い、出入りが始まった場合の現地の指揮でございましょうか。集合の場合の集合の指揮と、中間的な指揮者、あるいはさらに一番上の親分、その下の四天王といったようなのを言うのでございましょうか、そこのところをお示し願いまして、お答えをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/48
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049・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 その今おっしゃったことを、順番に上の方からおっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/49
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050・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 親分がまあ四天王を集めまして、いよいよ別府へ乗り込む、ついてはお前の子分をお前は七、八名、お前は十名というふうに集めて、別府の何とかの場所に集まれと、こういうような命令をしたといたします。そうして四天王が戻って来て、自分の子分に、お前はおれと一緒に行くのだから、どこへ集まれということを言いまして、そうしてこう三々五々集まって、結局大親分の指定した場所に全員、百名なら百名が集合した。こういったような事例を考えてみますと、親分は第二項で処断されますことは、これはもう明白でございますが、四天王も集合せしめた者になるわけでございます。そうして最後には百名集まったところへ、みずからも集合しているのでございますが、そういう場合には、集合せしめた第二項の方で処罰される、こういうふうに考えられるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/50
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051・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 この第百五条ノ二というところですね。これを見てみますと、「刑事被告事件ノ捜査若クハ審判二必要ナル知識ヲ有スト認メラルル者又ハ其親族ニ対シ」云々と、こうあるわけです。それで、その刑事被告事件というのと、この説明書きを見ますと、「捜査中のものを含む。」、こう書いてある。そうすると、明確に刑事事件という形で出てきたものか、そこに行くまでの捜査中という関係、ここらあたりのけじめはどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/51
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052・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この、ここにいわゆる刑事被告事件と申しますのは、判例によりますと、訴訟法上の起訴を受けまして、公判に係属、判決が確定しますまでの間を、訴訟法上はこれを刑事被告事件と申しておりますが、刑法に刑事被告事件と申しておりますのは、そういう技術的なものからは少し違っておりまして、刑事被告事件となり得るものも含める、つまり事件となり得るものも含めるという解釈が判例の一貫した態度でございます。そこで刑法の規定として、これを百四条に並べまして、百五条を書きますと、この被告事件は百四条と同じような解釈になりますので、訴訟法上の公判に係属して確定を見るまでの間の事件だけでなくて、捜査中の事件も含める、これは判例の解釈からそうなっております。従って、ほかでございますと、被疑事件を含むと、こういうふうに書くところでございますが、刑法の規定としましては、そういうふうな解釈が一定しておりますので、被疑事件を含むというふうには規定しないで、単に「刑事被告事件」と書いただけで、被疑事件も含むという解釈になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/52
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053・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで問題は、心配が出てくるわけです。これは労働運動には適用しないと言っても、このあとの方に出てくる「故ナク面会ヲ強請シ」という字句が出て参りますね。今の労働争議の問題というものを見てみますと、労組法の六条によって、団体交渉権が認められ、その「(不当労働行為)」として、七条の二項で違反行為に対する保護処置がある。ところが実際問題として、正常な形で起きてこない労働争議というものは、団体交渉権というものが法律で明確にあるにもかかわらず、これを拒否をする、団体交渉に応じないというところから、私は大ていの争議はこじれる一歩を踏み出すのじゃないか、これがまあ実例なんです。いろいろな実例を言えとおっしゃいますれば、私はいろいろの実例を申し上げてみたいと思います。しかし、そういうところからくると、たとえば、ものすごい利潤を上げて労働者の生活を奴隷のようにしている、こういう場合が、多々問題のこじれる争議の中心をなしておる。で、そういう場合に、この「故ナク面会ヲ強請シ」……、心配のあるのは捜査権も含むということになります。捜査、まだ被告事件になっていないものまで含むということになってくると、私は非常に問題が出てきやせぬか、こう思うのです。だからその点を一つ解明をして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/53
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054・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは証拠隠滅という章に入っておるのでございまして、証拠隠滅ということから申しますと、事件が公判に係属しておる間だけが証拠隠滅ではなくて、捜査の段階における証拠隠滅、こういうものも含ませないと、証拠を保護するという刑事裁判の目的を果すために、もの足りないわけなんであります。そういう面からいたしまして捜査事件も含む、審判に将来付せられるであろうという事件の証拠についても隠滅を処罰するという、こういうふうに、まあ判例は解釈をしてきていると思います。しかし今お尋ねのような労働運動について団体交渉などをする場合、こういったような懸念はないか、「故ナク」ということが書いてあるから、そういう場合には「ゆえ」があるのであって、「故ナク」ではないじゃないかという御見解だと思いますが、私も全くその点は同感でございまして、労組法一条で、先ほども労働大臣からお示しがありましたように、刑法三十五条の適用を受けるわけであります。正当な業務行為でございますれば犯罪にならない、これはもう刑法の大原則でございます。それでそれがありますから、当然この「故ナク」がありませんでも、そういう解釈になるのでございますが、まあ労働運動等において、そういうような問題があり得るのでございますから、特に「故ナク」という言葉を使いまして、刑法三十五条の適用があって当然阻却されるのでありますけれども、なお「故ナク」ということで、適用、運用において誤まりなきを期するという配慮が、ここに示されておるわけでございます。大体こういう刑罰に触れそうな場合につきましては、刑法においても、この刑法の規定だけでなくて、ほかにも配慮した痕跡があるのでございます。たとえば住居侵入のような罪につきましては「故ナク」と、こう書いてございまして、住居を訪問し入ることは、いろいろなことから起るのでございますが、そういう場合に「故ナク」ということがなくても、不法に入った場合だけであって、正当に入った場合は入らないのでありますけれど、特に法文の上に構成要件として「故ナク」という文字をつけることによって乱用を防ぐという、この刑法の考え方がここに現われたというふうに私は理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/54
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055・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 その意味はよくわかりましたけれども、出発点が、私が申し上げたような出発点で、労使の関係というものがこじれて、争議の出発点であって、そうしてこじれてくると相手に面会をしない、団体交渉はやらない、そういうことでこじれてくると、もうたまらなくなってきて、集団の陳情とか、抗議というものが行われる、そこに警察が介入する、そういう例が、ほとんどこじれておる争議の実態だと私は思うのです。だから、そこでこの刑事事件と明確になった問題についていろいろありますから、これも問題ですけれども、捜査中の問題まで、ただ証拠隠滅だというだけに明確にここで限ってならともかくとして、どうもそこのところあたりは、親族にものを言う必要は、労働争議というものはないと思いますけれども、そういう非常に広めた範囲の中で「故ナク」ということの解釈を、今、局長はおっしゃいましたけれども、そういうものが発展して団体交渉に持っていく、ところがその団体交渉拒否の違反行為というものは裁判まで行かなければいかぬ、だから現実の問題で、現地でごたごたすると警察が介入する、こういう形のものがこじれた争議の私は実態だと思うのです。だから私は、この点は特に明確にしておいてもらわないと、これはほんとうに困ると思う。まあ労働運動には適用しないのだとおっしゃいますけれども、もしもこれが適用されるとなってきたら、もうその使用者側の方が勝手放題に労組法の法律を踏みにじって、何をやっていても団体交渉もできなければ、面会もできないということになってしまうと、これは労働運動については大へんな問題が起きる。そこのところの配慮というものが、私はどうも今の説明のところは幾らかわかったような気がするのだが、その点がこの法文に明確になっていないということは、これは重大な問題じゃないかと思うのだがな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/55
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056・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これはまあ、私どもはいわゆるお礼参り行為を、これによって処罰しようという趣旨でございますので、まあ「親族ニ対シ」というようなことまで入っておるわけでございますが、明白であると申しますのは、この「当該事件ニ関シ」ということがありまして、捜査中の事件のようなものは、とにかく事件に関してそういうことをやらなければいけないのであって、今団体交渉で、何か事件があるのやら、ないのやらわからぬようなときに、そういうふうなというような御懸念でございますが、「事件ニ関シ」という認識がないわけでございます、そういうときはですね。だからその点は認識の問題からは、ずれてくるのじゃないかというふうに私は思っておりますが、これはまあ将来の解釈に待たなければなりませんが、構成要件としましては、「当該事件ニ関シ故ナク面会ヲ強請シ」と、こういうことで、「事件ニ関シ」というところを一つよく読んでいただけると、そこはわかるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/56
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057・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 もう一つその点で聞いてみたい。たとえば一つの例を申し上げますと、団体交渉が行われない、そうしてまあすわり込みとか、陳情が行われる、そうすると、要するに暴力団か、そういうものを雇ってきて、そこで衝突が行われる。衝突が行われると、警察は参考人か何かにして引っ張っていく、これは事件になるかならぬか、はっきりしませんけれども、たとえば捜査中という概念に入りますね、その中で問題の具体的な労働問題を解決するために交渉しよう、交渉は拒否をする、面会はやらない、そういうことで、団体交渉ができなければ面会をぜいと迫るということになるのですね。具体的な労働関係の問題はそうなるわけです。そういう問題のとき、これはお礼参りだということで明確になれば、これはもうそれでいいでしょうけれども、しかし、そういう懸念がここにある。それは今おっしゃった「当該事件ニ関シ」と言われることを、それを解釈したらわかるとおっしゃいますけれども、しかし、そこのところあたりはどうですかね、もう少し説明をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/57
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058・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) なお第百五条ノ二が、第七章の中に書いてあるという点を重ねて申し上げたいのでございます。これは証悪酒滅、犯人蔵匿と、これはどこまでも、刑事裁判は御承知のように証拠によって進めて行く裁判手続でございます。その証拠が暴力によってうまく出てこないということを防ごうとする趣旨でございます。そこで、この証拠になる証拠が、それから広い意味においてつぶされて行くということを防ごうという趣旨でございます。今のお尋ねのような場合に、あるいは将来すわり込みというようなこと、あるいはせり合ったことが暴力行為処罰に関する法律等で処分を受けることがあるかもしれませんが、それの証拠になることを、被害者としての証人になることを妨げてやろうと、そういう意味で一種のお礼参りでございますか、すごんでみるというのが、この百五条ノ二でございますが、今の、将来、事件になるかもしれないということまではわかったとしましても、そういう意味で面会をしておるのではなくて、今の団体交渉として当該あるものを排除しようと、はかっての事柄でありますれば、「故ナク」というわけにはいかない。それからまた「当該事件ニ関シ」というわけにはいかない。そういう意味からしまして、私は適用を見るというふうに私は考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/58
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059・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 その点はなお研究をしてみたいと思います。それで時間がありませんので、もう一つだけ伺っておきたいのですが、「第二百六十三条に次の一項を加え、第二百六十四条を削る。」というところの問題なのですが、器物損壊、私文書損壊の問題は先ほどから相当質疑が行われて参りました。たとえば私もこの問題をめぐっていろいろと争議の実例を調べて見ました。ところが、たとえば団体交渉に入っていく、そうすると、使用者側の人が、たとえばガラスを割ったとか、またはそこで気分を悪くしたとかいうことで引き下ってくると、もう医者が診断したときには何でもないけれども、帰ってみたらものすごい診断書が出てくる。その器物も集団行為によって破壊されたのだというような格好で、この問題の処理が次への発展への道を開いて行くという危険があるのです。これも労働運動には、先ほどの説明で、そういう非常に軽微なものだから問題にならない。事犯の中でもそういうことは取り上げることはないとおっしゃいますけれども、それでは百パーセント危険なしかというと、そうとも言い切れない問題がある。だから、そういう形でこれが非親告罪になるのですね。親告罪が非親告で、勝手にその現地の警察その他が判断して、それを検束したり何かの手を打つことができるということになってくると、この心配は先ほどからの御説明ではなかなか解けないわけです、これはもう私たちとしては。だから、こういうところにおいては、先ほども意見が出ていましたが、労働運動には、大衆運動のそういう今の正常な形で守られている運動には適用しないのだというようなことは、ここへ明確に書くということができないのですかね、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/59
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060・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) だんだんと労働運動に適用されるおそれについてのお尋ねでございますが、もう概括的に申し上げまして、暴力取締りに関するこのたびの立法は、全然そういう意思はございません。意思がないのみならず、私どもといたしまして、そういうような将来の法律の解釈上危険が生じてはいけないということで、ずいぶん注意して条文を実は書いてきたつもりでございます。ことに二百八条ノ二、いわゆる持兇器集合罪等につきましては、学者専門の方の意見を重々聞きまして、そうして文字を慎んで、文字の解釈として、そういうことがないようにということをば注意深くいたして立案してきた次第でございます。今のお尋ねのように、そんなに心配しないでも、これは労働運動の過程において、こういった事象には適用しないと書いてしまえば簡単ではないかと、こういうようなことでございまするけれども、そういう種類の立法は、私もあまり詳しくはございませんけれども、ない。つまり法律の前には万人は平等である、これが法の大原則でございまするから、そういうような観点から、条文の表で労働運動の過程において現われるような事象には適用しないようなふうに文章の上で表わしておいて、明らかに労働運動には適用はない、そういうようなふうには書かないというのが立法例であろうと思うので、それに従ってやったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/60
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061・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 先ほどの話に戻りますけれども、今の大臣のお言葉はわかりました。戻りますけれども、結局、大正十五年に出た暴力取締りの法規で、労働運動——当時の農民運動その他の運動には適用しないということを、時の法務大臣が明確に言っておられる。ところが、そういう格好で適用の問題が出てくるところにわれわれが心配するのですね。だから、やはり国会において立法するためには、そういう危険のないような処置をとっておくというのが、私はやはり立法府の役目ではないか。そういう建前から、一貫してこの問題は労働運動に関係はないのだ。法務大臣はこの三つの問題点について大きな……まだあると思いますけれども、私が出した三つの問題について、他の同僚委員からもあげましたけれども、大体三つの問題について、労働運動にはこれは適用はないのだと、こうおっしゃるだけで、はい、よろしいということを言い切れない面が歴史上生まれてきておるというところに私たちの心配があるわけです。だから、ここで質疑で明確にしておいて、悪いところは直してもらうということに私はなる。直してもらうというか、われわれの中で直して、そうして危険のないように、万全を期して立法をするというところに私は国会の一つの問題があると思う。そういう建前で発言をしておるわけです。今、大臣がおっしゃいましたけれども、この問題は非常に重要な問題ですから、これは時間がありませんから、これは法務委員会に移りますけれども、私たちもこの問題をさらに研究をいたしまして、法務委員会で、われわれの心配のないように立法化をしてもらうように努力をしてもらいたいと思います。
では、これで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/61
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062・青山正一
○委員長(青山正一君) ほかに御質疑もないようでございますから、これをもちまして法務・社会労働連合審査会は終了することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/62
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063・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議ないと認めます。
それでは、これにて散会いたします。
午後一時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815196X00119580419/63
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