1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年二月六日(木曜日)
午後一時四十四分開会
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出席者は左の通り。
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
一松 定吉君
棚橋 小虎君
委員
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
大谷 瑩潤君
重宗 雄三君
後藤 文夫君
辻 武壽君
政府委員
法務政務次官 横川 信夫君
法務省入国管理
局長 伊関佑二郎君
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本日の会議に付した案件
○外国人登録法の一部を改正する法律
案(内閣送付、予備審査)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00419580206/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) ただいまから開会いたします。
本日は、外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00419580206/1
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002・横川信夫
○政府委員(横川信夫君) 外国人登録法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明します。
現行外国人登録法は、昭和二十七年四月二十八日対日平和条約の発効と同時に施行され、その後数回にわたる小部分の改正を経て現在に及んでおります。
とりわけ、外国人の指紋押捺の義務を規定した第十四条及びその罰則である第十八条第一項第八号の規定は、他の規定よりおくれて、昭和三十年四月二十七日から施行になったのでありますが、この規定に基く指紋押捺制度は、全般的に申せば、実質的にも形式的にも予期以上の成果をあげていると申すことができると思うのであります。
このたびの改正は、最近の諸情勢と、右指紋押捺制度実施の経験にかんがみ、在留期間が一年に満たないような比較的短期の在留外国人については、一律に指紋の押捺を要しないこととするという趣旨をもちまして、第十四条に所要の改正を加えるとともに、外国人が登録証明書の交付を伴う申請をした後、まだその登録証明書を受領しないうちに、居住地を他の市町村に変更した場合における登録証明書の受領方法について所要の規定を設ける等、従来不備であった一、二の点を改正しようとするものであります。
以下、その大要について御説明申し上げます。
まず第八条の二の新設規定でありますが、これは、外国人が登録証明書の交付を伴う申請をして、まだこれを受け取らないうちに他の市町村に居住地を変更した場合に、旧居住地の市町村長が登録証明書を作成し、新居住地の市町村長を経由して当該外国人に交付することとしたものであります。
次に、第十条の二の新設規定でありますが、現在も外国人について、氏名、生年月日等が事実と相違して登録されている事例が少くなく、その数は約三万にも達していると推定されるのであります。そこで、このような場合には、市町村長は職権をもって事実と合わない登録事項を訂正することができる旨の規定を設けることにいたしたのであります。
次に、第十四条の改正規定についてでありますが、まず改正要点を申し上げますと、従来は、入国または国籍の離脱等によって外国人登録法の適用を受けることとなった外国人については、指紋押捺を伴う申請義務が発生し、ただ六十日未満の在留者についてはこれを免除することになっていたのであります。このたび、外国との貿易、文化の交流を一層促進するため、一年未満の比較的短期の在留者については、登録証明書は従来通りこれを受けなければなりませんが、指紋の押捺は一律にこれを免除するように改めようというのであります。このような短期の在留者は、早晩本邦から退去する人々でありますから、かりにその間指紋をとらなくても、指紋押捺制度全体には、それほど重大な影響はないものと考えられるのであります。
しかし、短期の在留者であっても、その後何らかの理由により在留期間の更新または在留資格の変更を受けて一年またはこれをこえてわが国に滞在したいという者もあるわけでありまして、これらの者は、当初の在留期間の始期から通算すれば、長期滞在者と同様一年以上の期間引き続き本邦に在留することとなり、指紋押捺について、長期滞在者と区別する理由がなくなるわけであります。従いまして、このように当初の在留期間の始期から起算して一年以上本邦に在留することができるようになった後は、原則通り、指紋を押捺すべきことを規定いたしました。
なお、以上に関連いたしまして、他の規定に若干の改正を要する点を生じましたので、それらの点について所要の改正措置をいたしました。
最後に、この改正法律の施行時期についてでありますが、この改正により関係の政令及び省令の一部を改正する必要がありまするのみならず、それらを都道府県及び全国市町村の関係職員に周知徹底させる等の準備期間が必要でありますので、この改正法律公布後三カ月をこえない期間内に政令をもって施行期日を定めることといたしました。
以上が外国人登録法の一部を改正する法律案の趣旨であります。何とぞ御審議の上、御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00419580206/2
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003・青山正一
○委員長(青山正一君) 次に、逐条説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00419580206/3
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004・伊関佑二郎
○政府委員(伊関佑二郎君) 逐条につきまして、御説明申し上げます。
第八条の二につきまして。外国人が登録証明書の交付を受けることとなる申請、これは、第三条は新規登録であります。第六条は引きかえ交付で、登録証明書が棄損したり汚損した場合に、新しいものと引きかえる。第七条は再交付、なくしました場合にもらうのであります。及び第十一条の申請、これは三年に一度ずつ全員切りかえるわけであります。それをしまして、その登録証明書を受け取る前に他の市町村に居住地を移転した場合は、新旧居住地のいずれにおいてその登録証明書の交付を受けるべきかという点について、従来、明文がないために疑いが生ずるおそれがありました。そこで、このような場合は新居住地の市町村長から交付を受けることに明定しようというのが、本条の趣旨でございます。
本条に「前条第一項の申請をしたときは、」とありますのは、外国人は、事実上居住地を移転して第八条第一項の申請をしたとき以後、新居住地の市町村長から、居住地を移転する前に旧居住地の市町村長に対して行なった申請に基く登録証明書の交付を受けることとなるのであります。
また、その次に「同条の規定によるほか」としましたのは、たとえば第八条第一項の申請があった場合には、新居住地の市町村長は、旧居住地の市町村長に対して、当該外国人の登録原票の送付を請求する等の手続は、当然第八条の規定するところによるという意味でありまして、そのほかの点についてだけ本条第一号から第三号までの想定するところによることとなるわけであります。
次に、各号について説明いたしますと、第一号は、外国人が、登録証明書の交付を伴う申請をしました後、居住地を他の市町村に移転した後においても、旧居住地の市町村長は、その発行権限に基き、新居住地の市町村長を経由して登録証明書を交付するという考えを明らかにしたものであります。つまり、その登録証明書の発行名義人は旧居住地の市町村長であります。
第二号は、第三号の規定により旧居住地の市町村長から送付される登録証明書が送達される見込みの日までに、旧居住地の市町村長が指定した登録証明書の交付予定期間が到来してしまうようなときは、新居住地の市町村長は旧居住地の市町村長が指定しました交付予定期間を延長することができるようにしようというのであります。なお、本項による交付予定期間の変更の手続等は、省令をもって規定することとなっております。
第三号の規定は、第八条第四項の規定により、他の市町村に居住地を移転した外国人の登録原票の送付請求を受けた旧居住地の市町村長は、その登録原票を新居住地の市町村長に送付する際に、転出した当該外国人に交付すべき登録証明書が未交付になっているときは、それをすみやかに送付しなければならないとの注意でございます。
次に、第十条の二につきまして。昭和二十二年から同二十五、六年ごろまでに登録をしました外国人は、その団体の代表者等により一括して申請をしたような経緯もございまして、氏名、生年月日その他の記載が事実と合っていないものが少くございません。そこで、このような事案について、登録原票及び登録証明書の記載を訂正する手続規定を新たに設けまして、登録の正確を期することといたした次第でございます。
その内容は、第一項において、市町村長が、外国人の申し立てその他検察庁等の関係機関等からの通報により、登録原票の記載が事実と合っていないことを知った場合は、職権によりその記載を訂正できるようにいたしたのであります。この場合、訂正の対象となりますのは、誤まって申請した結果現在の記載が事実に一致しない場合に限るのであり、居住地の変更とか資格の変更等は除かれるのであります。
第二項におきましては、登録証明書の記載は、その原本に相当する登録原票の記載と常に一致しているべきでありますから、前項の規定により登録原票の記載を訂正した場合は、当然登録証明書の当該記載事項も書きかえる必要があり、外国人がみずから申し立てた場合は、当然登録証明書を提出してその一記載の訂正を受けるであろうが、登録原票の記載についての虚偽申請罪の確定判決があった場合、その他関係機関の調査により登録原票に虚偽の記載があることが判明した場合等は、市長村長が独自に登録原票の当該記載を訂正した後、その外国人に対しその登録証明書の提出を命じて訂正できる方法を設ける必要があるので、そのことを規定したものであります。
第三項においては、前項の命令により提出された登録証明書の提出があったときは、その登録証明書の誤まっている記載を事実の通り、つまり、さきに訂正した登録原票の記載の通りに訂正して、当該外国人に返還されるべき旨を規定したのであります。
次に、第十四条の改正につきまして。本条の重要な改正点は、出入国管理令の規定により一年に満たない在留期間を決定されて、本邦に在留する外国人については、登録の申請をしても、その際指紋を押すことを要しないとした点でございます。一年未満の短期滞在者は、本法第三条第一項の新規登録の申請をした後、さらに第六条第一項または第七条第一項の申請をすることは、むしろまれであり、またこれら短期在留者には、登録法上の不正をする者はないようでありますので、その短期間の本邦在留に際し指紋の押捺を要しないこととしても、本法上指紋押捺制度を採用した目的に対して大きな障害となるおそれはないと考えられるからでございます。しかし、一年に満たない在留期間を決定された者でも、その後在留期間の更新許可または在留資格の変更許可を受けまして、当初から通算して一年をこえて本邦に在留することができる者がありますので、これらの者については、最初から一年以上の在留期間をもって本邦に在留する者と同様に、本条第一項所定の申請をした場合には、そのつど指紋の押捺を必要とするわけでございます。
第一項の改正点は、現行法第四項における十四才未満の外国人に対する第一項からの除外規定を、第一項の冒頭に移しただけでありまして、何ら実質的な改正ではない。本項が指紋押捺に関する原則的規定でございます。
改正後の第二項本文は、出入国管理令の規定により一年未満の在留期間を決定され、その期間内にある外国人には、第一項の規定を適用しないこと、つまり、第一項の規定に対する除外例を規定したものであります。この除外例に該当するのは、第一項所定の申請をした日において、出入国管理令により一年未満の在留期間の決定を受け、かつ、その期間内にある者に限ります。
第二項ただし書きは、最初に決定を受けた在留期間が一年未満の者であっても、在留期間の更新許可または在留資格の変更許可により新たな在留期間を決定され、当初の在留期間と通算して一年以上在留できることとなったときは、その新たな在留期間の決定を受けた日以後、本項本文を適用せずに、第一項の原則的規定の適用を受ける。つまり、最初から一年以上の在留期間の決定を受けた者と同様、第三条第一項の申請をする場合には、第一項所定の指紋の押捺義務が発生するという意味でございます。
第三項前段の規定は、前項ただし書きに該当することとなった外国人について、第一項の一般原則による指紋押捺義務のほかに、それまで指紋を押していない登録証明書等に指紋を押す義務が発生することを規定しております。それは、前項ただし書きに規定する在留期間の更新または在留資格の変更を原因とする第九条第一項の申請、すなわち、記載事項の変更登録の申請をしたときに発生いたします。
第三項後段は、第一項後段を設けたのと同様な理由でありまして、第九条第一項の申請を第十五条第二項所定の代理人が申請をした場合は、みずから申請することができなかった本人に指紋押捺義務が発生するという趣旨の注意的規定であります。
第四項は、第一項の原則的規定によれば、第三条第一項、第六条第一項または第七条第一項の申請時に十四才以上である者に指紋押なつ義務が発生いたします。しかるに、前項の規定による第九条第一項申請事由が生じたときには十四才以上となっていましても、それ以前の第三条第一項、第六条第一項または第七条第一項の申請時に十四才未満であった者には、指紋押捺義務を免除するという規定でございます。
第五項は、指紋を押す時期に関する規定であり、第六項においてその押捺の方法その他必要な事項は政令で定める旨規定いたしました。
第十八条の改正につきまして。新設条文たる第十条の二第二項に関する罰則の追加だけでございます。
第十九条の改正について。本条は、代理義務違反に関する罰則でありますが、新設条文たる第十条の二第二項並びに現行法に脱落した第六条第五項に関するものを、追加補充いたしました。他は用語上の問題で、「又は」を「若しくは」に改めただけでございます。
最後に、付則につきまして。この法律が公布された後、都道府県及び市町村の職員に対し、この法律による改正後の事務取扱いを徹底させるほか、外国人登録法の指紋に関する政令及び外国人登録法施行規則の一部を改正する等の諸準備のため、三カ月以内の猶予期間が必要でありますから、この法律の施行期日は公布の日から三カ月をこえない範囲で政令で定めることといたしたわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00419580206/4
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005・青山正一
○委員長(青山正一君) 本件についての質疑は他日に譲ることにいたしまして、本日は、この程度にて散会いたしたいと存じます。
次回は、十日午後一時から、ただいまの外国人登録法の一部を改正する法律案の質疑、及び大川、棚橋両委員より申し出もありますので、三十三年度予算につきまして、審議することにいたしたいと存じます。
午後二時四分散会
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