1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年二月十日(月曜日)
午後一時三十八分開会
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委員の異動
二月七日委員高田なほ子君辞任につ
き、その補欠として山口重彦君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
一松 定吉君
棚橋 小虎君
宮城タマヨ君
委員
雨森 常夫君
重宗 雄三君
吉野 信次君
後藤 文夫君
辻 武寿君
政府委員
警察庁警備部長 山口 喜雄君
法務政務次官 横川 信夫君
法務大臣官房経
理部長 大澤 一郎君
法務省矯正局長 渡部 善信君
法務省保護局長 福原 忠男君
法務省入国管理
局長 伊關佑二郎君
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最高裁判所長官
代理者
(経理局長) 岸上 康夫君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省入国管理
局登録管理官 豊島 中君
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本日の会議に付した案件
○連合審査会開会の件
○外国人登録法の一部を改正する法律
案(内閣送付、予備審査)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
の件
(昭和三十三年度裁判所関係予算に
関する件)
(昭和三十三年度法務省関係予算に
関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。
初めに、連合審査会開会についてお諮りいたします。
ただいま地方行政委員会に付託となっておりますところの銃砲刀剣類等所持取締法案、同じく遺失物法等の一部を改正する法律案、この両案につきましては、いずれも当委員会の所管に密接な関係を有する条項を含んでおりますので、地方行政委員会と連合審査会を開くことにいたしたいと存じますが、さよう取り計らうことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/1
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002・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
委員長は、直ちにこの旨、地方行政委員長に申し入れることにいたしたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/2
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003・青山正一
○委員長(青山正一君) 続いて本日の議題に入りまして、外国人登録法の一部を改正する法律案の質疑を行います。御質疑のある方は御発言願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/3
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004・大川光三
○大川光三君 ただいま議題となりました外国人登録法の一部を改正する法律案についてお伺いいたしますが、この提案の趣旨御説明によりますると、この規定に基く指紋押捺制度は、全般的に申せば、実質的にも形式的にも予期以上の成果をあげておるということでありますが、一体実質的、形式的にも予期以上の成果をあげたということは、具体的にどういうことであるか、まず伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/4
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005・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 実質的な効果と申しますと、登録法を制定いたしまして、指紋を押させますのは、一般的に見まして、外国人の犯罪の防止にも役に立ちますが、主としまして不法入国者、特に密入国者の防止とか、発見とかという点に主眼をおいておりまして、従来不法入国者が日本に入りまして、そして外国人は登録証明書を持っていなければなりませんので、ところが、密入国者はそれがもらえませんために、他人のものをもらいまして、そしてそれを写真を変えるとかというふうな方法でもって登録証明書の偽造をやっておりました。どうやってもらいますかと申しますと、正式に登録証明書を持っております人間が、これをなくしたといって新たにもらいます。そしてその古いやつを密入国者等に渡すというふうなことが多分に行われておったように思われるのであります。これを登録証明書の再交付と申しますが、その再交付の件数が非常に減って参っております。たとえば昭和二十七年度には一万七千八百再交付の申請がございました。二十八年に一万八千、二十九年も一万八千、三十年から指紋の押捺をやっておりますが、一万四千、三十一年にはこれが九千に減っておりますし、三十二年度には六千というふうに減って参っております。でございますので、この不法入国者が登録証明書を偽造してこれを持って歩いておるという件数が減ってきたのじゃないか、これが実質的な一番大きい効果じゃないか、こう考えております。
形式的と申しますのは、非常に反対がございましたが、ほとんど大部分の者が押しております。押さない者が約二百名ぐらいおりましたが、これも病気等の理由で押しません。結局最終的には二十二名ぐらいしか押さない者はございません。この点を形式的にと申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/5
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006・大川光三
○大川光三君 指紋押捺制度で密入国者の数が減少してくるということはわかりますが、実際その他の犯罪検挙にどれほど役立ったということは、数字上わからないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/6
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007・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) 犯罪検挙に役に立った事例があるかという御質問でございますが、外国人関係の犯罪を調べます際に、まずそういう登録をしておるかどうかということを質問いたします。登録しておらなければ、それが一つのやはり犯罪になるわけであります。さらに登録をしております場合に、その登録書を持っております者がその本人であるかどうかを確認する手段といたしましては、その指紋がありますことが一番間違いがない、そういう意味におきましては、他人の手帳を不正入手するというようなことを防止することはできます。要するに、本人であるということを確認する上におきまして、これは非常に効果は持っております。御質問のように、検挙する端緒になし得た事例があるかどうかというような点につきましては、ただいまちょっと資料を持ち合せませんのでお答えいたしかねますが、そういうようなことで、捜査上は非常に私どもといたしましては活用はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/7
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008・大川光三
○大川光三君 ちょっとそれに関連してもう一つ伺いますが、指紋押捺を免除されているいわゆる六十日未満の在留者ですね、そういう中からは今まで犯罪者は出なかったのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/8
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009・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) これはやはり何か犯罪を犯しまして問題になった者もあると思います。そういう者につきましては、いまだ登録前でありますれば実際上本人に聞き、あるいはその他のいろいろな方法で調査をいたしておる以外には、外国人であればパスポートを持っております者についてはそれによって調べる、ほかの方法によって調査をいたしていく以外にはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/9
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010・大川光三
○大川光三君 ところが、いわゆる六十日未満の在留者で事実上犯罪をして検挙されたという例はあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/10
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011・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) これはやはりあり得ると思います。六十日未満でもいろいろな犯罪で検挙された者はあり得ると思います。ただその数字をちょっと持ち合せておりませんので、正確に数をもってお答えはいたしかねます。これはあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/11
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012・大川光三
○大川光三君 ちょっと私そのあり得るということは、これは一つの想像でありますが、現実に数はわからなくても、いわゆる六十日未満の在留者で犯罪者が出たかどうかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/12
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013・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) あり得るとお答えいたしましたのは非常に何でございましたが、そういう者が大体普通の場合には、いろいろな商用その他で入って来ておりますものでございまして、短かいものは旅行者その他でございます。従いまして、そう問題になることはないと思いますが、しかし、やはりそういう短期間の在留者の中にも犯罪関係が全然過去においてなかったとはこれは私申せない、こういうふうに申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/13
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014・大川光三
○大川光三君 そこで、今度の改正案というものは、結局指紋押捺制度を非常に緩和していくということになるのですが、それがために六十日未満でさえ犯罪者があり得る、あるいはあるということでございますれば、かように一年未満という長期の間ですね、現行法に比べては長期の間指紋を免除するということが、今後の不良外人の取締りとか、あるいは犯罪検挙の上に支障を来たさないかどうかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/14
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015・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) 私どもの立場といたしますれば、これは指紋を押捺しないでよろしい期間がなるべく短かい方が警察の立場としてはよろしいことは申し上げるまでもないと思います。ただ、まあ今回のこの改正は、最近のいろいろな情勢にかんがみまして、ある程度緩和されようとしておられるのであります。私どもといたしましては、その改正に対して、そういうことでは警察として非常に困る、だから強くそういう改正には反対であるというようには考えておりません。この点につきましては、私どもといたしましても、この程度の改正につきましては、私どもの活動自体から申しますと若干の問題もあろうかと思いますが、まあしかしながら、この程度の改正でありますならば、指紋押捺制度を採用しました目的に対して著しい障害となるおそれもあるまい、こういうように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/15
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016・大川光三
○大川光三君 そこでこの機会に、最近の外国人犯罪について、その種類及び件数、国籍別によって明細にわかるような数字がございましたらお示しを願いたい。ただいま用意がなければ、あとで資料としてお出しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/16
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017・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) ただいま昭和三十一年中の統計につきましては持っておりますが、その後のまとめたものにつきましては持ち合せておりませんので、なるべく新しい統計の方がおよろしいかと思いますので、後ほど提出をさせていただきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/17
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018・大川光三
○大川光三君 ただいま警察関係の御意見はわかったのでありますが、一体在留期間を延長するということについては、いろいろ情勢上そうしなけりゃならぬと思いますが、この在留期間を延長することの利益ですね、それはあるいは貿易の上にとか、あるいは文化交流の上にどういう効果があるかということを伺いたい。また端的に申しますと、犯罪検挙の上ではこれは決して好ましきことではないと思うのですが、その被害よりも、貿易または文化交流の上にもたらす利益の方が、在留期間を延長したらば大きいんだということについての理由を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/18
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019・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 一番皆様が御承知の例は、中共が日本で見本市を開くという問題がございまして、昨年は秋から名古屋、福岡でやりたいとこう申しておりましたが、どういたしましてもこの二カ所でやりますと、六十日をこえますので、結局これができませんでしたような例もございますが、まあこの法案の改正を見込みまして、ただいま広東、広州でもって日本側もやっております。おそらくこの法案が通りますとすぐ、中共の見本市というものが日本で開かれるのじゃないかとこういうふうに思っております。これなどは端的な例でございますが、このほかにもやはり一般的に申しまして、外国人は指紋を押すということは好みませんので、やはり短期商用、大体まあ六十日をちょっとこしまして半年以内くらいで来ます。それがたくさんあるのでございますが、こういう人たちも日本へ来やすくなる、いい感じを持って来るということになろうかと思います。その他、文化交流の面でも日本に見える方たちが気持よく来られるという面は大いにあるのじゃないかと考えております。また、アメリカの方も昨年の暮れから、従来はこのアメリカに外国人が参ります場合、たとえば日本人が参ります場合には、ここの東京における米国大使館で指紋を押さなければ査証がもらえませんでした。これを一年に改めますと、アメリカも一年以内は押さんでもいいというように改めておりますが、これがやはり相互主義になっておりますので、日本が六十日であればアメリカも六十日、日本が一年になりますと向うも一年、こうしますと、日本の方もずいぶんアメリカに行かれるのでありますが、そういう場合でも一年以内だと指紋を押さなくても済む、そういう点もございます。まあいろいろと具体的にはまだそれほど事例は出ておりませんが、一般的に申しまして、感じの上から、その他将来いろいろな面で効果があるのじゃないか、こう期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/19
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020・青山正一
○委員長(青山正一君) それに関連して、ちょっとお聞きしたいと思いますが、ただいま述べられた名古屋、福岡に、最近日本側の方において大体見本市をやるというような計画があるわけであります。その政令によりますと三カ月以内と、こういうふうにまあきめられておるわけなのですが、たとえば中国側の要員がこの見本市を作るために日本に来ようとする場合において、どうでしょうか、なかなかこの政令が三カ月までというようなことになっておりまするからして、今急に来ようとしてもこれはなかなか来れないような状態になるわけなんですが、そういう場合には、何か便法でも講じていただくわけなんでしょうか。どうなんでしょう。その点についてちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/20
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021・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 昨年の夏もその問題がございまして、六、七月でございましたか、やはり名古屋、福岡の準備のために二、三名来たいということがございまして、準備期間がやはり六十日をこえるということで、結局その準備に来れなかったというあれがございますが、この法案が通りましてまあなるべく早く施行いたしたいと思っておりますが、まあ三カ月以内ということになっております。また、二カ月くらいはかかるのじゃないかと思っておりますので、今すぐ準備委員が入って来るということになりますと、法案成立後さらに二カ月あるいは二カ月以上の準備期間がかかるといたしますと、やはりそこに六十日を超過する部面が出て参りますが、法案が成立いたしましてからでございましたら、まあ大体六十日という期間で間に合うんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/21
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022・大川光三
○大川光三君 条文のことで伺いたいんですが、この外国人登録法を見ますると、一定の申請をした者に対しては、市町村長が登録証明書を交付しなければならぬという一つの義務が付せられておるんでありますが、もし外国人が指紋押捺義務というものを拒否したような場合にでも、なおかつ、その市町村長は登録証明書を交付する義務があるかどうかという点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/22
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023・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 法令の上では指紋押捺いたしませんでも登録証明書は渡すことになっております。で指紋を押さないということにつきましては、別に十八条に罰則がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/23
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024・大川光三
○大川光三君 そこで、指紋を押さなくても登録証明書は交付するということになりますと、結局犯罪捜査の面にも支障がございまするし、なるほど罰則規定で罰するということはよろしいけれども、むしろあるいは証明書を交付するという際に指紋を押さなければ証明書は発行しないんだ。あるいは引きかえ交付とか再交付とかいう場合でも、指紋の押捺がなければ証明書を渡さないということにはできないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/24
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025・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 大体の例におきましては、本人が指紋を押しまして登録証明書をもらうんでありますが、本人が病気のため六十日、従来でございますと六十日までに登録をしなければならないわけですから、その際に本人が病気でどうしても出て来れない、これは本人が押すわけでございますから、そのときは代理で申請いたしまして、本人としては病気がなおるまではどうしても出て来られないということがございます。これは医者の証明書を取りまして確認いたします。また、本人が出て参りましても押す指をけがをしておるというまれな例もございますので、きわめてこれは例外だと思いますが、そういうような不能な場合もございますので、規定の上からは必ずしも一緒でなければならぬというふうにはなっておらないのでございますが、大多数の例ではこれが同時に行われるものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/25
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026・大川光三
○大川光三君 いま一つ、十四才未満の少年に対する指紋押捺の問題でありますが、条文を見ますと、十四才未満の者は次の証明書の書きかえのときです、約三年経過したときまでは押捺義務がないのだというように解釈されるんですが、まあ少年犯罪防止ないしは少年犯罪の検挙という面から見て、やはり十四才をこえた者は遅滞なく指紋を押捺せしめるという義務を課することはできないのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/26
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027・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 仰せの通りでありまして、その方がいいんじゃないかと考えますが、現実の問題といたしましては、一人々々が十四才の誕生日を迎えるその前日とか、あるいは直ちに出てこいというふうに申しましても、忘れる者もございましょうし、また、実際の運用面で非常に違反がふえるのじゃないかという点を考えまして、理想的に申せばおっしゃる通りでございますが、実際的な面では違反があまりにもふえるのじゃないか、というふうな点を考慮いたしまして、まあ不満足ながら現状のような制度をとっているという次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/27
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028・大川光三
○大川光三君 満十四才に達したら直ちにということでなしに、私の方は遅滞なくということを申しているのですが、少くとも一年なら一年の猶予をおいて、満十五才になるときには必ず指紋をとるのだということは考えられぬのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/28
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029・豊島中
○説明員(豊島中君) 非常に煩瑣だということでございますが、実際の面としましては、その間三年ぎりぎりに、押さないで免除される人間は非常にまれでありまして、一年半とかあるいは半年とかいうことになるのですが、これは事実上今申し上げましたようなことにしますと、市町村の窓口は非常に煩瑣になると思います。予算の関係もございましょうし、いろいろな面から実務上不可能ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/29
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030・大川光三
○大川光三君 この点を警察の面からどうごらんになっているかという問題でございます。少年犯罪防止という点から言っても、十四才をこせば遅滞なく指紋を押捺せしめるという義務を課すべしという私の意見なんですが、警察当局の意見を伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/30
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031・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) ただいま入国管理局の方からお答えになりましたような大体考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/31
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032・大川光三
○大川光三君 入国管理局の方は、よかろうけれども、事務的に煩瑣だという御意見なんです。警察は事務的に煩瑣だからけっこうですというわけにはいかぬと思いますが、いかがですか。警察の立場から必要性があるかどうかを伺いたい。少年犯罪防止、検挙という点から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/32
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033・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) 純粋に警察の立場から申し上げますれば、十四才になりました者は直ちに登録をし、指紋も押すということが必要だと思います。ただしかしながら、登録事務というものは非常に事務の分量が多うございます。市町村が現にやっておられるので、警察の立場からの必要性のみを、私の方でそれのみを強調するということもいかがと思いまして、先ほど入国管理局の方からお答えありましたと同様でございますと、かように申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/33
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034・大川光三
○大川光三君 最後に一つ伺いますが、先ほどもお話がございましたように、指紋押捺義務を厳格に励行するということになりますと、結局市町村の事務が非常に過重されるということになると思いますが、今度の改正案で、特に地方自治体に対して予算措置を講じておられるかどうかという点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/34
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035・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 予算措置は講じておりません。まあむしろこういう改正によりまして、市町村の窓口が多少なりとも楽になるという期待を持っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/35
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036・大川光三
○大川光三君 六十日未満を一年未満に延長するのでありますから、その面からは、事務はむしろ簡素になるということは考えられるのですが、一面証明書の交付について、新たに改正を加えられようとしておられるのでありますが、その点は市町村の事務にはどういう影響があるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/36
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037・豊島中
○説明員(豊島中君) 九条の記載事項の変更のときに指紋を押すわけでありますが、それにしましても一年以上になったときに押すということになりますので、一年未満が減るだけの量は事務量が減ることになります。むしろそれが、もしこの改正がなかりせば、その前にすでに押しているわけでありますから、事務量としては一年未満が減るだけ事務量が減るという結果になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/37
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038・大川光三
○大川光三君 ちょっと私のお尋ねしたいのは、その点だけじゃなしに、登録申請をしたあとで住居が変った場合には、旧住所の市町村長は新市町村長を経由して証明書を交付する、こういうふうに改正されるわけですが、その点は事務の上にはそう大した支障はないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/38
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039・豊島中
○説明員(豊島中君) これはやはり従来とも法律的に実はこういうふうに改正しましたが、実務上ではこういう措置をとっておりますのでございます。事務の増減にはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/39
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040・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 ちょっとお伺いいたします。少し重なる点があるかとも思いますけれども、この本改正案によりまして指紋をとりますことが緩和されることになりますと、犯罪防止の点からいかがですか、少し御心配になる点はございませんでしょうか。当局からお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/40
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041・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) これは先ほど申し上げましたように、本人を確認するという上におきまして、犯罪の捜査という面から見ますと、この期間を延長して、ある期間は指紋を押捺しなくてよろしいということになりますと、これはやはり支障があると申し上げざるを得ないと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、最近のいろいろな情勢にかんがみまして、一年未満の者については指紋を押さないようにするという改正が考えられておるのでございます。これはまあ、指紋を押捺するという制度の趣旨からいきまして、著しく障害を及ぼすほどのことでもあるまいということで警察の意見を先ほど申し上げたのでございます。実際に警察の犯罪捜査の面から申しまして支障があるかというお話でございますれば、ございますとお答えをいたさなければなるまいと思います。しかしながら、また一方におきまして、いろいろな事情も考えて参らなければなるまい。その点犯罪捜査上の見地から、その程度ならば何とかがまんしてやっていけるということであれば、やはりまたそういう面のことも考えていかなければならない、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/41
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042・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 まあこの程度のことであるならば、捜査の面でがまんできるとも思えるというような意味でしたが、どうでしょうか、忌憚なく、非常に支障があるというような点はございませんですか。それを心配しているのですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/42
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043・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) 当初一年未満の期間をきめられて入ってきます者は、観光客、あるいは通過するお客、商用、その他大体普通常識上考えまして犯罪とはそう深い関係を持っておるものとも思えないわけであります。そういう意味におきまして、これが二カ月が一年になりましても、非常に警察の立場といたしましても因る事態が出るので、どうしても、どこまでも反対を申し上げなければならないというほどには考えておりません。こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/43
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044・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それじゃ重要性はないというように解釈してよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/44
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045・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) 私どもはこの改正に大きな関心を持っております。重要性がないというように解釈してよろしいかという御趣旨、ちょっと了解いたしかねましたが、正直に申せばやむを得ない、こういう気持でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/45
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046・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 やむを得ないと、わかりました。
それではいま一つ、この改正によりまして、指紋の免除を受けます外国人の数は、一体、全国的にどのくらいございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/46
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047・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 従来の数字から判断いたしまして、大体一万七千ぐらいの者が、従来ならば指紋を受けるはずであった者が、年間に受けなくて済む、指紋を押すべきであった者が押さなくて済む、一万七千くらいの者が免除される、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/47
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048・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この制度の緩和されましたことは、この指紋制度の上から見まして、これは後退したというようにお思いになりませんか。どうでしょう。忌憚ないお気持を一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/48
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049・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) まあ、指紋を押す人間が多い方がいいという点、今の警察の方の立場等から見ますと、後退ということも申せますけれども、また、これが障害を与えた面を除去するという面から見ますと、効果があるわけでございます。ただ、指紋押捺だけを考えますと、ある意味では後退というようなことになるかと存じますが、しかし、非常に評判の悪かった制度でもございますし、いろいろな積極的な効果もございますので、私は考えまして、政治的に考えれば一歩進歩するということでないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/49
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050・大川光三
○大川光三君 先ほど伺いましたうちで、一点質問漏れがあったのでありますが、昨日でしたか、大村収容所を釈放された韓国人が、間もなく犯罪を犯して、警察で自殺をしたという記事を新聞で見たのでございますが、それに関連して、昨年の十二月末に成立しました日韓抑留者相互釈放によって、国内釈放をされた韓国人に対しての登録関係は、一体どうなるのだろうかという疑問があるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/50
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051・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) けさの新聞に出ておりました警察で自殺をしたという朝鮮人は、今度のこの日韓協定によって釈放された者ではございませんでして、その以前に釈放した者でございます。それから今回の協定によりまして釈放いたしました者につきましては、登録証明書を交付することにいたしております。これを持ちませんと、失業手帳をもらうとか、あるいは食糧の配給を受けるという点に不便がございますので、そういう点はないようにしてやろうという考えで、登録証明書を持たすことにいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/51
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052・大川光三
○大川光三君 そうしますと、今回の協定によって釈放する者には登録証を交付する。もちろん指紋は押捺せしめるんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/52
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053・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 押捺いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/53
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054・辻武寿
○辻武寿君 私から一つ、二つお願いします。先ほどの宮城さんのお答えに対するあれですが、必ずしも犯罪防止というものは、あまり重視していないような感じにとられたんだけれども、本来の指紋押捺制度の存在理由、目的はどういうふうになっておりますか。それをはっきりしてもらいたい。もう一つは、昭和三十年四月二十七日以前は、指紋制度はどんなふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/54
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055・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 指紋押捺制度は、一般的に見まして、外国人の犯罪防止に役に立っておると思っておりますが、本来のこの指紋押捺制度をやっております一番主要の目的は、やはり不法入国者の防止、あるいはこれの発見という点にあるわけであります。それから昭和二十七年、講和発効とともにできましたが、三十年四月二十七日まではこの施行を延期いたしておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/55
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056・辻武寿
○辻武寿君 不法入国者の件についてちょっとお伺いしますが、具体的な例を一つ申し上げます。それは戦時中に韓国に疎開しておりまして、主人なんか日本におる。で、向うで食べられないので、こちらへ密入国して来て大村収容所につかまった、それが釈放されて向うへ帰されるんだけれども、病気で帰れない。それで毎月々々、今一カ月ごとに登録の改正をしておる。そういう者に対して、向うへ帰ってもあてがないという場合には、管理局長はどういう態度をとるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/56
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057・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 不法入国者は非常にたくさんおるのでありまして、中には人道的な観点から、非常に気の毒なケースもございます。そういう場合には、特別に日本に在留することを認めるという制度をとっております。しかし、非常に戦時中は二百四十万かおったのが、今六、七十万まで減っておるのであります。不法入国者を見ておりますと、大体何らかの縁故をたどって参っております。全然日本に親類がいないなどというのは非常に珍らしいケースでありまして、皆親をたずねて来るとか、兄弟をたずねて来るというのが大部分でございます。しかも戦時中に日本に住んでおったというふうなのが大部分なんであります。人道的な点から特別に在留を許可するというのは、非常にしぼりまして、例外的な措置としてやっておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/57
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058・辻武寿
○辻武寿君 そうしますと、戦前からずっと長い間日本に住んでおって、何かの関係でちょっと韓国へ帰った。で、今度は入って来るのになかなか入れない、実際は家族がこっちにいるというような場合に、保証人がしっかりしておれば認めてあげるわけですね。証明書を上げるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/58
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059・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 現在韓国から正式に旅券を持ちまして日本にずっと永住するというために来ることは、韓国の方の制度としてできない。一時的な旅行者は韓国も認めておりますが、そういうふうに日本に住むために正式に来るということは、韓国の制度としてこれを認めておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/59
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060・辻武寿
○辻武寿君 正式に韓国で認めてないからこちらへ不法入国して来るわけでしょう。それで主人または奥さんがこっちにいるというような場合は、もともと家族である場合にはどうするんですか。認めてあげないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/60
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061・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) 先ほども申し上げましたように、非常にたくさんの人間、二百四十万おったうち、今七十万残っておりますとしますと、百七十万というものは帰っておるわけでありますが、これが戦時中あるいは戦後帰ったというものが非常に多いのでありまして、これを親がおるからとか、夫がおるからという理由で全部認めますと、ここに百万近い人間が、現在の韓国のような状態でありますと、どれだけの数が入って来るか、また、日本の人口問題としても大へんな問題でありますので、まあ国交正常化いたしますれば、これまた別途考えなければならぬかもしれませんが、現在のところは、きわめて制限したいという方針でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/61
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062・辻武寿
○辻武寿君 そうしますと、夫婦であった場合も、夫婦別れして朝鮮へ帰っておれ、日本に入れないというようなことになる場合が出てくるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/62
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063・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) そういうケースがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/63
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064・辻武寿
○辻武寿君 それはやむを得ないという態度をとるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/64
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065・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) まあ個々のケースに当りましていろいろと見ておりまして、これはかわいそうだというものは、かなり許可したものもございますが、原則としまして、夫を妻がたずねて来れば、皆許すという次第ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/65
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066・辻武寿
○辻武寿君 そういたしますと、例外的な措置は講じていると先ほど言われましたけれども、どういう場合が例外的か、今言ったような例は例外に入らないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/66
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067・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) ただ妻が夫をたずねて来たというだけでは例外に入れておりません。こちらに来まして、われわれの目にわからぬままに五、六年、また子供もできたというふうな場合とか、向うに帰って、向うでその生活ができない。主として私たちが考えますのは、非常な年寄り、六十才以上とか七十才になるおじいさん、おばあさんが、長男が、むすこがこちらにおりまして、これをたよってきた。そうして向うに送り帰しても身寄りがないとかいうふうな者とか、それから奥さんが小さい子供を連れてきた場合とかというふうな点を考慮しておりまして、向うに送り帰しましても、向うで生活ができるという場合には原則として送り帰す方針でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/67
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068・辻武寿
○辻武寿君 もう一つ……。実際に主人とか子供がこちらにおって、奥さんだけ一人向うに帰さなければならぬという場合には、例外として認めて登録いたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/68
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069・伊關佑二郎
○政府委員(伊關佑二郎君) これは、やはり抽象的にはちょっとお答えいたしかねるので、現実にどこのだれだれという人間が、どういうふうな環境にあるか、それから夫なるものが今日本でちゃんとした生活をしているとか、子供の年令にもよりますし、またその細君の向うの身寄りとか——これは具体的なケースでないとちょっとお答えいたしかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/69
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070・青山正一
○委員長(青山正一君) よろしゅうございますか。ほかに御質問ありませんか——本件についての本日の質疑はこの程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/70
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071・青山正一
○委員長(青山正一君) 次に、昭和三十三年度裁判所関係予算、同じく法務省関係予算について調査を行います。
これにつきまして去る一月、大川、棚橋両君がそれぞれ大阪地区、長野地区の関係施設営繕につきまして熱心に視察を行なっておられますので、これにつきましてもお気づきの点、両君からお伺いすることにいたしたいと思います。
なお、宮城委員から、保護司実費弁償金の問題、あるいは婦人相談員予算の問題について御質疑があるはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/71
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072・大川光三
○大川光三君 私は昭和三十三年度裁判所並びに法務省関係の予算に関連いたしまして、主として営繕関係についてお伺いをいたしたいと存じます。
ただいま委員長から御報告がございました通りに、本年の一月十四日、私は亀田委員とともに大阪方面の法務関係施設を視察いたしまして、法務関係の施設が他の行政官庁の施設に比較してきわめて劣勢であり、司法の重要性にかんがみてとうてい等閑に付することができないということを両委員とも痛感いたしましたので、あえてこの質問をいたす次第であります。なお、時間の関係もございまするので、一問一答の形式を避けまして、私のお尋ねしたい事項を全部先に申し上げることにいたします。
まず、私どもは、最初に入国管理事務所の大阪港出張所を見たのでありますが、現在ここの出張所は借家住いをいたしておる、おまけに付近が地盤沈下のために道路が地上げをされました関係で、一階は道路よりうんと下にある、のみならず、ひんぴんとして水浸しになっておるという状況でございまして、いやしくもわが国の入国管理所の玄関口にありまするこの港出張所としてお粗末きわまるものであるという感を深くいたしました。のみならず、御承知の通りに、入国管理所は現在大阪の区検察庁に同居いたしておるもの、あるいは大阪調達局の一部を間借りいたしておるものというように三カ所に分れておるのでございますが、なるべくこれを統一する必要があろうかと考えましたが、一体入国管理事務所に対しての新営計画というものはどうなっておるかということをまず伺いたいのであります。
次に、私どもは大阪の家庭裁判所を視察したのでございますが、これも御承知の通りに、大阪家庭裁判所はすでに今から約七、八年前に、どちらかといえば遠大な構想と申しますか、理想的な構想のもとに、いわゆる地下一階、地上六階の建築に着手されましたが、その後工事が着々として進捗しておらない、ようやく三階の一部がこの春に完成するという状況でございまして、今なお裁判廷、調停室等の不足が事務の上に非常な支障に相なっておるのであります。特にこの建物において見のがすことのできないのは、せっかく地下に暖房装置の一部設備をしながら実際にこれが完成しておらぬ、それがために事件の関係人及び職員はすべて木炭によって手火鉢を使用しておる、それがために炭の中毒患者が続出いたしまして、事いやしくも人命に関するというまでに憂慮されておるのででありまして、今一例を申し上げますると、調停中に婦人が卒倒いたした、また、そのまま病院に運び込まれたという事例も少くないのでございまして、統計の示すところによりますると、被害状況は昭和三十年の冬五十八人、三十一年の冬に三十二名という患者を出しておる。その他、昭和三十年八月以来、勤労者や主婦のために夜間調停が実施されました結果、冬季に利用者の多いにもかかわらず、暖房設備が不十分であるということを考えますると、ますます暖房装置を至急に完成する必要を感ずるのでございますが、この点に関する対策はどうなっておるかということをお伺いいたします。
次に、大阪高等裁判所、地方裁判所ないし検察庁にも関連する問題でありますが、一体大阪の拘置所は都島の方に移転されるということにきまったようでございますが、その拘置所の跡の敷地をいかに利用せられる考えであるのか。聞くところによりますと、都島の工事は約十年かかる。初年度の予算が一億数千万円計上されておりますが、いやしくも、拘置所移転に関連して十数億の費用が要るというこの大きな工事に対しまして、初年度がその一割程度しか計上されておらぬ、これから考えましても、約十年の歳月を要さなければ完全に移転ができない。しかるにその敷地を利用しようという裁判所ないしは検察庁から考えますれば、その十年がとうてい待ち切れるものではない。すみやかに拘置所を都島に移して、一日も早くその敷地を活用するということが裁判所並びに検察庁にも大きな利害関係があるのでありますが、一体この拘置所移転問題に対しての見通しはどうなっておるのかということを伺いたいのであります。
次に、私どもは堺の裁判所支部並びに検察庁を視察したのでございますが、御承知の通りに、堺の裁判所支部の方は法務関係としてはむしろ誇るに足るほどのりっぱな庁舎ができております。しかるにこれに対するに、検察庁は今なお非常にみじめなところで執務いたしておる。それは検察官の士気にも関することでございますので、一体堺の検察庁の改築に対する予算的な措置はどうなっておるかということを伺いたいのでございます。
さらに進んで、私どもは大阪刑務所を視察いたしたのでございますが、ここでは御承知の通りに、飲料水が非常に悪い、それがためにかつて集団赤痢の発生を見て大へんな問題になったのでございますが、この水に対する予算措置はどうなっておるのでありましょうか。また、同刑務所の便所はいわゆる置き便所でありまして、旧態依然として庁舎に入れば臭気ふんぷんたるような感じがするのでありますが、この便所改修についていかなるお考えと、どういう措置をとられんとしておるのでございましょうか、伺いたいのであります。
次に、私どもは大阪法務局管内の出張所を一つ見たのでございますが、これは一を見て全般を推測される程度でございまして、いずれを見ましても旧態依然たる建物、そうして登記申請人が小さい部屋と窓口に殺到いたしておるというような状況でございますが、大阪法務局管内の出張所についての改築対策はどうなっておるか、伺いたいのでございます。
その他、大阪の実情から見まして、全国的に法務関係の施設というものは不十分なものが多かろうと存じますが、一体司法当局とされては、この行政官庁に比べて劣勢な施設関係について、将来どういう対策を講じようとせられるのか、あわせお伺いをいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/72
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073・大澤一郎
○政府委員(大澤一郎君) 当委員会におかれましては、非常に御多忙な中をおきき下さいまして、法務省所管並びに裁判所所管の法務諸施設を御視察を願いましてまことにありがたく存ずる次第でございます。つぶさに御視察を願いましてまことに適切な御指示を賜わりまして、われわれかねがね気になっているところのみでございます。また、その上将来につきましても御好意ある御勧告をいただきましてまことにありがたく存ずる次第でございます。
ただいま御質問のございました各項につきまして順を追ってわれわれの考えを申し上げまして、今後の御援助、御鞭撻をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。
まず、大阪の入管事務所並びに港出張所については、大阪入管事務所の方は現在二カ所に分れまして、一カ所は大阪区検に一部が同居いたしまして、一部は借家いたしまして、分れて執務をしているのであります。法務省といたしましても、昨年度におきましてこれが新営の計画を立てまして、総工費三千七百万円の予定で、三十二年度におきまして千百万余りの予算を得まして、鉄筋コンクリート三階建ての建築をいたす予定にいたしたのでございます。ところが、工事に着手いたします予定のところを予算繰り延べによりまして、単に敷地の地質調査のみを実施したのみにとどまったのでございます。そうして本年、三十三年度におきまして、六百五十万の予算要求が認められましたので、前年度と合せまして第一期工事に着手すべく現在その準備をいたしている次第でございます。これによりまして、大体五五%の完工の見込みでございます。引き続きまして、三十四年度以降におきまして予算要求をいたしましてその竣工をみたい、かように考えている次第でございます。
次に、同大阪入管の港出張所の庁舎でございますが、同庁舎は現在非常な多額の借料を払いまして、民間施設を借り上げ使用をしている次第でございますが、地盤が沈下いたしまして、道路がだんだん積み重ねられるというような結果で、一階が地下室のような状態になりまして、ために大雨でもございますと浸水するというような状況にございます。三十三年度におきまして、港湾の関係の合同庁舎の一部として新営を要求をいたしたのでございますが、大阪では他の方の関係もございまして、港湾合同庁舎の計画が本年度はできないということで、三十三年度には新営することができない羽目に陥りました。そこで、三十四年度におきまして計画を変更いたしまして、単独庁舎として要求する予定でございます。敷地は近くの市有地を借り上げ、鉄筋コンクリートで建築をいたしたい、かような計画でございます。何とぞ御了承の上、御援助をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。
次に、大阪の拘置所の移転に関する問題でございますが、大阪拘置所は、現在の建物ではとうてい必要な被疑者、被告人の収容はできないのでございます。現在大阪拘置所と、付近にございます四条分禁所の両所に分けまして拘禁しているような次第でございます。かような関係で非常に裁判並びに拘禁上不便を感じておりますので、新営計画を立てて、目下御視察願いましたような状況で新営を始めたわけでございます。当初の移転、改築は御指摘のございましたように、十カ年継続工事ということで、第一段階といたしまして、若松町の本所は、三十六年度に移転、昭和四十年度には全施設の移転完了という予定で進めておるわけでございますが、本来ならば当所の移転計画は、できますならば三年ないし四年で完了移転いたしたいというのがわれわれの念願であり、また、そうすべきでございますが、刑務所収容施設の全般から考えまして、現在それが不可能な状態に相なっておるのでございます。刑務所の施設につきましては、すでに各所御視察を願って御了承を願っておるところと存じますが、明治年間の建築で、老朽、腐蝕がはなはだしいものが各所にございます。そのうち特にひどいところの長野県の須坂刑務所あるいは大分、札幌、宮城、小倉というような各所の刑務所を現在継続工事で新営すべく着手しつつあるのでございます。そのほか、また、現在着手していない所で、前橋、山口、松江、滋賀、かような刑務所も早急に着手して新しく順次改築する必要のあるものがございますので、これらのものを総合的に考えますと、いずれも必要度の高いものばかりであります。一カ所のみを二、三年で上げてしまうということをいたしますと、他の方がなお数年おくれるというような状況もございますので、われわれとしましては、元来ならば二、三年で仕上げたいという考えでございますが、今のように現在方々でやっております、また、やらなければならない所も数カ所かかえておりますので、やむを得ず十年計画というような、考えようによりますと、お話にならぬような長い計画の施工方法を取らざるを得ないような状況で着手し、やっと二年目を迎えたわけなんであります。われわれといたしましては、工事の方法を直営工事ということで予算の節約をはかりまして、なるべく少い金額で大きな工事をやりたいという方法をとりまして、できるだけ早急に工事を完了したいという念願で努力いたしておる次第でございます。で、この今新築の都島の拘置所ができ上りますと、現在の拘置所の場所があくわけでございます。これにつきましては、現在の大阪高等検察庁、地方検察庁が裁判所に同居して間借りしておるわけでございます。これらの庁舎の新営が迫られるわけであります。大阪の高等並びに地方検察庁が他の場所へ参りますと、今後の執務上きわめて不便と相なりますので、やはり大阪の高等裁判所、地方裁判所に隣接もしくは非常に近い所に置きたいと思います。あの場所柄がとうてい他に代替地を求めることができないような場所でございますので、やむを得ず現拘置所の移転しました跡の敷地を、高等検察庁並びに地方検察庁の敷地といたしまして、そこで大阪の裁判所と、大阪の裁判所の調停会館というのが別に少し離れてございますが、この一郭を一つ今後の裁判所並びに検察庁等の法務のセンターというような考え方から、この中にうまく裁判所の拡張敷地等も取りまして、総合的な建築計画を立てたいと、かように考えておる次第であります。昨年来大阪の高等裁判所長官あるいは大阪の弁護士会の会長さん等とも寄り寄り協議いたしまして、その跡をどういうふうに利用して総合的な法務センターにするかということを目下研究、討議中でございます。その方針によりまして、その跡の敷地を活用いたしたい、かように思っておる次第でございます。この現拘置所は、三十四年度にあくことになりますので、ただいま急いでその計画を立てつつある次第でございます。
次に、大阪地方検察庁の堺支部の建物でございますが、この堺支部は、元来大阪地方裁判所堺支部の、いわゆる裁判所の庁舎の中に間借りしておったのでございますが、この法律の改正によりまして分離独立する必要に迫られまして昭和二十四年に敷地約二千坪を買収しまして、同年現在の庁舎延坪三百六十九坪を新営いたした次第でございます。ところが、たまたま当時は資材統制下でございまして、また、裁判所から早く独立して明け渡さなければならないというような事情でございましたので、応急的な建物とならざるを得なかった。そのために新営後まだ九年しかたっておらないのでございますが、すでに各所に相当な損傷の場所も出まして、早晩改築に迫られておる。当省におきましても、改築の必要は認めておるのでございますが、しかしながら、法務省所管の諸施設といたしましては、いまだ裁判所に同居しておるというような所もございますし、また、戦争前の古い庁舎にいまだに入っておるところもたくさんございますので、さような、この堺支部よりもその条件が悪いもの、あるいはその条件を同じくするものが多数ございますので、なおもっとひどい所の新営なり、改築ということの営繕に追われまして、かような終戦後に建築せられました庁舎の改築なり新営の計画というものは立てておりますが、全般的施設の整備計画からいいますと、昭和四十一年以降でないと手がつけられないというような状況に相なっておる次第でございます。従いまして、われわれとしましては、堺支部の老朽のひどい面ということも十分承知はいたしておるのでございますが、なおまた、ひどい所もございますので、順次かようなものを計画的に順を迫って整備していきたい、かように考えておる次第でございます。
次に、大阪刑務所の給水設備についてでありますが、この大阪刑務所の給水施設の非常に悪いために病人が出たというようなことで御勧告を受けました。さっそく当所の給水設備の改善整備をはかりまして、昭和三十二年度から予算千百五十万円をもちまして、さく泉、浄水設備、居房地区の給排水設備等の整備にかかりました次第でございます。引き続きまして昭和三十三年度におきましても、約千五百万円の予算が計上せられましたので、構内の配管設備あるいは高架水槽、居房の給排水並びに水洗便所等の設備も整備に着手する予定で、これによりまして、三十三年度中にぜひ予定しております全設備の半分が完成し得る計画でございます。引き続きまして、三十四年度におきまして、残工事につきましての予算要求をいたしまして、三十四年度で全部完成いたしたい、かような計画で進めておる次第でございます。
次に、大阪法務局管内の出張所でございますが、大阪法務局管内には、総数二十七庁の出張所があるわけでございます。そのうち市町村等から借り上げの庁舎が十五庁、国有が十二庁という内訳になっております。この両者を含めまして終戦後に新営になりましたものが八庁、うち国有が二庁、借り上げ庁舎六庁ということになっておる次第でございます。この二十七庁のうち、八庁を除きました二十庁弱というものが、いずれも御視察を賜わりました際に御指摘を受けましたように、非常に古い建物、四十年以上経過したものが六庁、三十五年以上経過いたしましたものが十一庁、ほとんどその新営以外のものは三十五年以上経過した、耐用年限を経過したものばかりと申しても過言でないような状況でございます。最も古い枚方出張所は明治二十五年の建築、そういうような状況でございまして、われわれといたしましては、早急にすべてが改築、あるいは新営の対象とならざるを得ない庁舎なんでございます。そこで、昭和三十三年度の予算では、全国的に見ましてかような状況が、ただいま刑務所のところで申し上げましたと同じように、すべてがこういうような急を要するものばかりでございます。大阪法務局管内は庁舎があるだけいいんだというような状況もございますので、このうち立ちのき要求を受けておりました中野出張所の新営の要求をいたしましたが、この要求は遺憾ながら実現しなかったわけでございます。しかし、別に老朽庁舎の中から富田林と茨木の二つの出張所につきましては、特別修繕費の要求をいたしまして、その実施につきましては、建設省予算に計上せられておりますので、同省とこれから折衝いたしまして、来たる五月ごろには決定する見込み、かような状況で、大阪法務局管内のみならず全国の法務局につきましても、老朽して改築しなければならないものが非常に多いのでございます。それで、長期営繕計画を立てまして、緊急度に応じて逐次新改築をしていきたいという所存でおる次第でございます。
三十三年度におきまして、全国的に見まして、法務局の出張所で新営の認められましたのが十庁、出張所で認められましたものが十庁、約二十庁の新営が認められましたので、この長期営繕計画に基きまして順次緊急度の高いもの、必要度の緊迫しておるものを順次に改築していきたい、かように考えております。今後とも、幸い本年度は当法務委員会の御決議の趣旨によりまして、法務局関係で二十庁の予算が認められました。ひとえに御協力のたまものと感謝いたしますと同時に、今後この計画を円滑に進められますように十分の御叱正、御援助をお願いいたしたい、かように存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/73
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074・岸上康夫
○最高裁判所長官代理者(岸上康夫君) 裁判所といたしましても、当委員会におきまして裁判所関係の予算、ことに営繕予算につきまして非常な御関心をいただきまして、いろいろ御注意、御指示を受けて、かつ具体的な予算折衝面におきましてもいろいろ強力な援助をいただきましたことを厚くお礼を申し上げたいと存じます。
ただいまお話がございました第一点の大阪家庭裁判所関係でございますが、これはお話の通りの経過でございまして、もともと相当理想的な計画で始めた関係上、現在の建物は使用効率の点においていささか遺憾な点がございます。で、現在は三階までやっておりまして、これが三十二年度で完成いたします。そういたしますと、全体で約二千二百三十八坪ということになりまして、職員一人当りにいたしますと十・六坪ということになります。決してこれで十分ではございませんが、最小限度しばらくしんぼうをしてもらおうということで、建築計画は一応この程度で打ち切りたいというふうに考えております。ただ、暖房設備でございますが、これは当初の建築を始めました当時、予算が、暖房の点までの予算がつかず、かつ二回目の工事のときには増築ということでこれも予算がつかない関係上、いまだに暖房設備がございません。従って御指摘のような炭火による中毒というふうな問題がございまして、現地の方からはしばしば苦情を聞いておるのでございます。そこで、これは何とかいたさなければならないというふうに考えておりまして、三十三年度でも特別に暖房設備の予算を要求いたしたのでありますが、残念ながら特別の予算が認められませんでした。ただ全国的な整備費として二千五百万という金が要っておりまして、その範囲内でいたすかどうか、目下検討中でございます。大体概算でございますが、約二千万ほど暖房にかかります関係上、やるにしましても一カ年で果してできるかどうか、また、ほかの方との関係もございますので、目下研究をいたしておるところでございます。しかし、いずれにしても、できるだけ早くこれは整備したいというふうに考えております。
次は、大阪の高裁、地裁の問題でございますが、これはただいま大澤部長からお話がありました通りのことで現在の裁判所、検察庁のおります建物の裏の拘置所があきますときには、そのあき地を利用して裁判所、検察庁というものの建築計画をしなければならないということで、大阪及び東京におきましても寄り寄り相談中でございます。何と申しましても御承知の通り、大阪の高等裁判所、地方裁判所は非常に手狭でございます。おそらく狭いという点におきましては東京、大阪というのはもう全国随一だというふうに考えておりますので、そういう拘置所の機会には、ぜひ最も合理的に計画を立てまして整備するようにいたしたいというふうに考えております。
それから同様の庁舎の整備の不十分なものが全国的にたくさんあるのじゃないかというお話でございますが、お説の通りでございます。これは御承知のように、裁判所、検察庁がおりました戦争前の建物は明治時代にできましたのが多くございまして、その後改築が大してできていない。かつそれの維持も管理にも不十分な点が多かった。そこへ戦争を迎えまして、戦災を受けたのが全国の約四分の一が戦災を受けたというふうな関係でございます。それからまた、終戦後新しい制度といたしまして家庭裁判所あるいは簡易裁判所というものが制度上できたのでございますが、これの庁舎という点においては全く整備されないままに出発いたしました。その後、逐次予算を得まして、そういう新しい家庭裁判所、簡易裁判所を整備し、また、戦災を受けた庁舎の整備、それから老朽庁舎の整備ということをやっておりますが、何分非常に数が多いのでございますので、一度になかなか手が回りません。まあ少しずつ最も程度の高いところからやっておるというのが現状でございます。今後ともこの点につきましてはさらに一そうの御後援——御後援と申しますか、御協力をお願いいたし、私どももできるだけの努力をして予算を獲得し、かつこれを最も合理的に実施して整備に努めたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/74
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075・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 矯正局関係の大阪拘置所の問題、大阪刑務所の水の問題、これはただいま経理部長より詳細に御説明を申し上げましたので、私から重ねて申し上げることもなかろうと思います。ただ一言、大阪の刑務所の水の問題につきまして、大量の赤痢患者を出しましたもとが水の問題でございまして、われわれといたしまして一日も早くこの水の問題の整備をいたしたいと思っておる次第でございます。幸い本年度予算をいただきまして、約六百尺掘りまして水は出て参りました。それで、ただ水の質が悪いものでございますから、それを濾過いたしまして、給水に充てたいと思っております。水量は十二分にございますので、今後濾過の設備をいたしまして、各舎房への配管をいたしますれば、まず多年の懸案でございました大阪の水の問題も解決いたすことと、喜んでおる次第でございます。
なお、ただいまお話のございました便所の問題でございますが、これは、私も実は刑務所内のあの臭気が一番鼻につきまして、何とかこれを一掃したいものだと思っておるわけでございます。この大阪の刑務所も、水の問題が解決つかなかったために、この水洗便所もできなかったのでございますが、今度この水の見通しがつきましたので、水洗便所もりっぱに働くことができると存じております。明年度で約千五百万円入りましたので、約半数ができますので、残りの完成を明後年に完成いたすように、今後とも努力いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/75
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076・横川信夫
○政府委員(横川信夫君) 大澤部長からも先ほど申し述べましたように、当委員会におかれましては、きわめてお忙しい中を貴重な時間をおさき下さいまして、各地の法務官署施設を御視察願いまして、きわめて適切な御示唆をいただき、かつ、三十三年度予算編成に当りましては、強力な御支援、御鞭撻をいただきまして、まことに感謝にたえないことでございます。
御認識をいただいておりますように、法務官署の特に施設はきわめて老朽のものばかりでございまして、三千四百に及ぶ各庁のうち、早急に改築を要するものが多数あるのでございます。長期計画を立てまして、これの改善をはかっておるのでありまするが、二十カ年計画を立ててみましても、一年に二十三億ほどの予算が要るというような状態なのでございます。法務省におきましても、本年度の予算編成の重点を、営繕の改善、施設の改善という点に指向いたしまして、努力をいたしまして、かたがた当委員会の御鞭撻もございまして、昨年度に比較いたしまして一億一千ほどの予算の増加を見ておるのでございます。しかしながら、ただいま大川委員の御質問にもございましたように、なお改善すべき点が非常に多いのでございまして、法務省は引き続きこの営繕費の合理的な使用、その増加に向って努力をして参りたいと考えておりますが、今後とも引き続きまして御鞭撻をお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/76
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077・大川光三
○大川光三君 ただいま関係当局からそれぞれ詳細な御答弁をいただきまして、本委員としては満足するものでございますが、今御答弁の中にありました御計画につきましては、あくまでも熱意を持ってこれが実現に、この上とも努力されるように希望いたす次第であります。
ただ一点、大阪高等裁判所並びに検察庁にも関連がございますので、特に申し上げたいと存じますことは、大阪拘置所のいわゆる移転問題でございまして、これは結局、先決問題として拘置所を早く移転しなければ、その後に起ってくる裁判所の増築問題、検察庁の増築問題も、結局順におくれてくるということになりますので、先決問題として拘置所の移転を急がれたい、そしてもしその移転跡が一部利用できる時期になりますれば、順次その移転跡について施設を設けていくという計画を立てられたいことと、いま一つ、先ほどお話のございました家庭裁判所の庁舎とただいまの裁判所の敷地との間に民家がございますが、できればあの民家も全部買収してしまい、そこに一大司法センターを作ることが理想ではないか、かように考えております。しかも、民家買収移転のことにつきましては、当局でも立ちのき等について御懸念があるようでございますが、幸いに大阪弁護士会は一切無料で引き受けるというような熱意を示しておりますので、これもなるべく早い機会に民家買収の挙に出られることがよかろうと考えます。ただいまでは地主、家主は一人だというように聞いておりますが、これがまた数人にわたりますと、事がめんどうでございますので、そういう民家買収の計画も今より御考慮を願っておきたいという希望を申し述べまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/77
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078・一松定吉
○一松定吉君 大川委員の質問に牽連して、少しばかりお尋ねしておきますが、都島に移転することについて、都島区民の要望によって法務省では約束しておるのですが、少年鑑別所ですか、あれはもう撤回する準備ができたでしょうかということが一つ。それから四条畷のあの拘置所の出張所は、都島に併合することはできるのですかできぬのですかということが一つ。それから上本町の簡易裁判所も、今大川委員の言うように、司法センターというて、あそこの今の裁判所を、検察庁と分れるということになると、持ってくることができるのですか、できないのですかということが一つ。それから東京の地方裁判所の三階であったのを、四階か五階かにしましたね。大阪の赤れんがの建物は、今の三階が四階にはならないかどうか、それを研究したことがあるかどうか。そういうことになれば、検察庁と裁判所が分れて、現在の拘置所の跡に検察庁を建てるということになると、検察庁は非常にりっぱな相当広いものができるから、窮屈でなくなる。そういう点については法務省の方ではずっとお考えになっておるのですか、どうですか。その辺を一つ、きまっておるのならば承わって、将来の参考にしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/78
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079・大澤一郎
○政府委員(大澤一郎君) ただいま、拘置所が都島に移ることにつきまして、現在のあの付近にございます少年鑑別所が他に移転するという約束につきましては、これは特に一松先生に、この拘置所移転問題につきまして非常な御協力、御援助を得まして、あれが実現いたしました関係上、われわれといたしましても早急に移転いたしたいという考えのもとに、本年度少年鑑別所の予算要求をいたしたのでございます。ただいま申しましたように、法務省所管で営繕費が伸びたものの、なすべきことがたくさんございます。ようやく、少年鑑別所の一応の予定地といたしまして、現在矯正管区がございますあたりを予定いたしました。そこの調査費をようやく八十万円の要求が認められまして、今年度はそれによりまして技術調査その他の調査を進め、明年度の予算に本格的な営繕新築費を要求いたしたい、かような計画で進んでおります。非常におくれて参りましたが、ようやく緒につきましたので、その程度で一つわれわれの努力のあとを御了承願いたい、かように存ずる次第でございます。
なお、都島に今新築しております拘置所が完成いたしますと、定員が二千三百五十二名ということの計画で進んでおりますので、現在の四条の方におりますのが、収容者が約千二百名、大阪の本所におりますのが約四百五十名、これを十分一カ所に収容できることになるわけで、従いまして、四条の現在の分禁所は、分禁所としては廃止になりまして、都島に統一されることになると予定いたしております。
それから大阪の高等裁判所並びに検察庁の新営の問題でございますが、私、昨年現地に参りまして、現地の弁護士会の方々及び裁判所並びに検察庁のそれぞれの責任者から、将来の計画というものの御意見を伺って参ったのでございます。現在のあの裁判所を四階建に変えるということは、技術的には相当——精密に調査したわけではございませんが、法務本省がれんが作りでございまして、あれも終戦後は改築しておるわけでございますが、技術的に相当困難ではないか、かように考えられるのであります。従いまして、あの拘置所のあきます地所と、現在官舎地帯がございますが、大川先生からお話のございました民家のありますあの一帯、あれにつきまして、弁護士会のお力添えを得まして、あそこをうまく裁判所、検察庁、法務センターとして、どういうふうにおさめたらいいかということを、現地の御意見を聞きまして、現在立案中でございます。そのきまりました上は、またいろいろ御援助を仰がなければならないこともあるかと思います。また、あの中に大阪の天満警察署がございますので、警察署をどこに持っていくか、それも大阪の警視庁とも連絡をいたしておりますが、近いうちに一つの計画を立てまして、今の拘置所が都島に三十六年度に移転できますので、早急に引き続いてその実行に移りたいという目標で努力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/79
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080・岸上康夫
○最高裁判所長官代理者(岸上康夫君) ただいまの大澤経理部長のお話と関連いたしまして、現在、法円坂町と申しますか、上本町にございます大阪簡易裁判所も、拘置所跡を利用して、裁判所、検察庁の建物を整備する際には、もちろん現在の大阪簡易裁判所を堂島の所に持ってきて、あそこを高等、地方、簡易というものの合同庁舎として使用したいという方針で、進んでおります。
それから、ただいまお話でございましたが、現在の高裁、地裁の建物の四階増築ということは、精密に検査したわけではございませんが、昔のれんが建でございますので、まあ私どもの方の技術者は、おそらく増築、もう一階建て増すということは技術的に困難だということで、今のところはそういう計画はいたしていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/80
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081・青山正一
○委員長(青山正一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/81
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082・青山正一
○委員長(青山正一君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/82
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083・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私は、売春防止法について、ことに婦人補導院について数点お伺いしたいと思います。
第一には、矯正局長にちょっとお伺いいたしますが、今度の予算を見ますと、その予算はまことに貧弱なもので、これで法務当局が立案していらっしゃいます婦人補導院並びにその職員、つまり施設と職員について、ほんとうに……。大体の御構想を説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/83
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084・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 今度四月一日から、売春防止法の全面施行に当りまして、婦人補導院の発足ということが予定されているわけでございます。早急にこの法案を提出いたしまして、対策を立てていくことになるわけでございますが、明年度の予算に婦人補導院の新設に伴う予算を要求いたしたのでございます。
ただいま宮城委員から御指摘の通り、われわれの要求いたしました額とは相当隔たりがある、少いものに相なったわけでございますが、明年度におきましては、婦人補導院は全国で三カ所作ることに相なったわけでございます。一つは東京、これは百人定員のものを新営いたすことに相なっております。次は大阪でございましてこれは九十人収容定員のものを改築によりまして設置することに相なっております。それから、もう一つは福岡に、これも九十人の収容定員でございますが、同じく改築によって設置することに予算が計上せられている次第でございます。
この東京に新営いたしますものは、百名ということになっていて、新営でございますから、これは予算といたしまして約三千万円計上せられております。実は、われわれの考えでは、いろいろ刑務所で営繕を直営でいたす工事が相当あるのでございます。そこで、婦人補導院は早く設置をいたさなければなりませんので、請負の予算で実は要求いたしたのでございますが、予算の関係で、やはり直営の予算で組まれたわけでございます。そこで、予算の面から申しますと、非常に、格段に削られたことに相なるわけでございますが、さような関係から直営になりましたので、やむを得ずこの予算の範囲内で新営をいたすことにいたしたわけでございますが、予算三千万円で、大体百名の収容定員のものを、ブロック建で直営で建築いたす予定でございます。なお、この収容いたしまする寮舎は百名を目途といたしておりまするが、その他の講堂とか、あるいは食堂とか、炊事場というようなところは、大体百五十名までの収容可能な設備をもって設計をいたしているのでございます。直営で三千万円で建てることが、可能なことと私は考えております。
なお、大阪の方は、これは改築でございますが、現在われわれの考えておりますのは、大阪の堺の市内でございますが、ここに元海軍の衛戌刑務所の跡があるのでございます。そこをほとんど衛戌刑務所として使わない先に終戦になりまして割合しっかりとした施設でございます。これを、現在では刑務所の職員の宿舎がありませんので、これを宿舎に改造いたしましてそれに充てているわけでございますが、今度予算をもらいまして、これらの職員の宿舎を建てまして、そこに移しまして、この刑務所を補導院に改築いたす考えでございます。これが約千五百万円ありますので、これでこの大阪の補導院は改築できる考えでございます。
それから福岡でございますが、福岡の方は、これは財務部の方と交渉いたしまして、もとの陸軍の倉庫でございますが、その建物をもらい受けまして、この材料でもって補導院を作る計画を立てております。目下財務部の方と折衝中でございますが、大体これはうまくいく見込みでございます。
かようなわけでございまして、百名、九十名、九十名、合計二百八十名の収容定員のものを、三カ所作ることにいたします。この数は全体から考えますと少いように思われます。しかしながら、この補導院に補導処分に付せられる者が実際どのくらいになりますか、ちょっと見当がつきかねるような面もあるわけでありまして、まずこれで出発をいたしまして、もしも不足するような場合には、さらに予備金ででも対策を講ずるという約束のもとに、とりあえずのところで、これで、出発するということで、この準備を進めておるわけでございます。
なお、これに従事いたしまする職員でございますが、各施設とも二十五名の定員を認められておるわけでございます。この補導院の施設は初めてのところでございまして、われわれといたしましても、この運営というものにつきましては非常に頭を悩まし、この施設がほんとうにうまく運べるかどうかは、かかって人にあるものと私は考えております。従いまして、りっぱな人をここに得まして補導院としてのりっぱな任務をさせたいと考えて、よい人を得るようにと実は頭を悩ましておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/84
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085・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今の御説明につきまして、少し詳しく伺いたのでございますが、この収容人員を、東京を百とし、あとの所を九十人として、これでは足らぬかもしれないというようなお話もございましたが、この百人、九十、九十という、何か基準があるのでございますか。ただ大ざっぱに、百人と九十人とおきめになったのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/85
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086・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) これは基準がございます。詳しいことを申し上げますと、これは現在の売春婦の大体の概数でございます。それを基礎といたしまして、それに検挙されるもの、また本年の三月末日までに転業いたしますもの等を考慮いたしまして、三十三年度四月一日に罰則の適用になりますときの検挙対象者がどのくらいになるかということの予測を立てたわけでございますが、それが大体十万という数に押えたわけでございます。これもなかなかどこで押えるかむずかしいのでございますが、一応十万と押えました。現在の数が十五万ないし十七万と押えております。そのうちで転業いたします者を見まして、約二割ないし三割の者が転業すると見まして、約十万が検挙の対象になるのじゃなかろうかというふうに押えたわけでございます。そのうち検挙せられますものを一体どの程度に押えていくかというわけでございますが、
〔委員長退席、理事一松定吉君着席〕
これもこの数のまあ半分、まあよくいけば半分まで参るかもわかりませんが、大体二割五分から五割程度のものじゃなかろうか。二割五分と見ますると、十万のうちで婦人相談所その他保護施設に参ります者等を差し引きますと、大体八万と押えまして、その四分の一で約二万がこの五条違反の対象になるのではないか。この二万が検挙せられることになるわけでございますが、この二万のうち成人と少年とがあります。それを大体成人が一万六千、それから少年を四千、これで大体二万ということになるわけでございますが、このうち、成人のうちで検挙されます一万六千のうち、約二割五分が起訴されるのじゃなかろうか。これが大体四千人という数字になるわけでございます。そのうち、四千人のうち自由刑に処せられるものがどのくらいかというわけでございますが、これは大体四割と押えまして千六百、その千六百名のうち執行猶予、単純な執行猶予になりますものと、執行猶予をつけられまして保護観察処分に付せられるものと、もう一つは補導処分になりますもの、それから、もう一つ起訴されて実刑に処せられるものとがあるわけでございます。そのうちで、まず三割程度ということで、四百五十名ないし五百名という数字が実は出ておるのでございます。
まあ、これはわれわれとしましては非常に少いわけで、まあまあかようなことになるかもわかりませんが、われわれ、もう少したくさんの数を見たわけでございますが、査定の際に見られました数が、大体こういう数で、五百名ということになるわけでございます。そこで、これを各地域に分布いたしますと、大体東京、大阪、福岡、この三カ所に一応収容所を設けまして、これで出発していこうということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/86
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087・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この三カ所というのは、三カ所の管轄をきめて、つまり日本全体を三つのブロックにしようというお考えなんですか、この三カ所というこれは。そこはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/87
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088・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) これは、東京の補導院が何県と何県と何県というふうに、管轄区域をかっちりきめたわけじゃございませんが、大体東京から東の方、東北、北海道は大体東京、それから中部の近畿及び名古屋関係、それから四国、中国の一部というものは大阪、それから九州と中国の西の方は福岡、大体この三カ所に収容する予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/88
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089・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 これは人数の査定ということについても、まあいろいろの考え方があると思っておりますけれども、まあ今のところで、この予算とにらみ合さなければならないことなんで、三カ所というものもやむを得なかろうかと思っておりますが、今伺った東京が三千万円ですか、それから大阪が千五百万というような、これは非常なちゃちなもので、ちゃちなものきりできないだろうと思いますが、それよりも私が問題にしたいのは、一体このこういう婦人たちをもしも社会からほんとうに隔離するという意味合いを非常に多く考えられまするならば、そうして法務省もそう考えていらっしゃると思います、当局も。だが、私はこれを、この考え方について、もういっそのこと、刑務所の方にやったららちがあく。刑務所にやらないということは、これを日本の婦人として、将来は日本の母親としてこれを教育していくということは、今までの非常にふしだらな生活から正しい日本の婦人の生活、母親の生活に引き返そうという、その教育をするという観点に、私はどうしても当局に立っていただきたいと思います。もしも、これを犯罪者と同じように考えるのだったら、私、こんなものを作らないで、どんどん刑務所に入れればいい。だが、刑務所に入れちゃ母ができないのですから、その点で、ただ、今までの建築をするような、建築屋にまかせておいたという建物では、私は新しく建てる意味がないと思うのですが、いかがでしょうか。その点、私、矯正局長の考えを聞きたい。
私は、こういう婦人に精神指導といいますか、考え方の指導をするということ、それが大きいことで、一方には生活指導。生活指導は自然に、職業補導しなくちゃならない。そういうような意味合いにおきまして、その生活指導というても、社会人としての生活指導も必要ですが、さしあたっては、彼女らをして家庭婦人として家庭の生活指導をするということは、私は女の一番の根本問題になるだろうと思う。
そういうところに立ちますと、ただあんな者をわいわいと入れまして、そうしてやっぱり、距離的には過去の道から隔離されておりましても、その気持は過去の生活を追っているということであったら、私はこれは結果としてはつまらないことで、どうしても完全に足を洗わして、しかも日本の婦人として生活をしっかり確保させなきゃならぬということになりますと、どうしても家庭生活を基準にするという、家庭生活の指導ということが、私は生活指導の一番根本にならなければならないものだ、そういうふうに考えております。
そこで、大きい共同生活というようなものを夢見て、大きな食堂でだれかまかないがいて、食べさしてやろうというようなことでは、生活指導にならぬと思う。身をもって体験させる指導、それには、私は、こんな共同生活で大きい台所で炊事さして、上げぜん、据えぜんで御飯を食べさせるということは、とんでもないことだと思います。その点で一つ、特別な金を使っていただいて、なに、おります所は粗末でもいい、大ていなところはしんぼうしてもらっていいのです。それがまた薬になるのです。けれども、女の生活の台所生活をさせるということは、一体法務省はどういうふうに考えていらっしゃいますか。おそらく私は、そういうことを、失礼ですが、男子の方ですから、きっと大きい炊事場で上げぜん、据えぜんで食べさしてやろうという考えだろうと思って、私、大へん心配しているのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/89
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090・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 個々の補導院を今後いかに運営していくかということは、実は私非常に考えを練っておるわけでございます。いずれ婦人補導院法案を御審議願います際に、十二分に御意見も承わらしていただきたいと思っているわけでございますが、今度の婦人補導院法にも、この補導の大体中心を打ち出しておるのでございます。ただいま宮城委員の仰せのごとく、売春婦の人たちのふしだらな生活を直し、ほんとうに家庭人としての婦人を育てていくということは、非常にむずかしい仕事でございます。
最初、われわれといたしましては、これには職業補導を中心にしていかなきゃならぬのじゃないかということで、実は案を立てたのでございます。ところが、この婦人補導院で職業補導を中心に今後運営していこうということになりますと、
〔理事一松定吉君退席、委員長着席〕
どうしても在院期間を一年は持たさなければ、なかなかむずかしいのでございます。当初、われわれといたしましては、少くとも在院期間は一年というふうに持たせたいと思ったのでございますが、ただ、この婦人補導院の刑罰規定が六カ月というところから、どうしてもこの線が押し通せなくて、ついに六カ月という期間に後退せざるを得なかったのでございます。そこで、この六カ月の期間ということとにらみ合せますと、当初の職業補導に徹するという方針がどうしても貫き得ないことになりまして、そこで、この補導の中心を職業補導から生活指導の面に移さざるを得なかったのでございます。従って、今度の婦人補導院法案では、この補導の中心が生活指導ということに相なっております。
この生活指導は、ただいま御指摘のごとく、家庭婦人としての教養を授けるということを、われわれとしても考えておるわけでございまして、まず規律のある生活になじませる。夜中にならないと目がさめてこない、というようなことではだめなんです。朝早くから起きて、普通の家庭生活にいそしめるような、規律のある生活をまず打ち立てまして、このところで本来の婦人としての基礎的な教養も持たせていきたい。家事その他基礎的な教養を教えまして、婦人としての情操を養っていこうということを考えております。さようなことから、順次その他の事柄も全部、在院者の手をもってまかなっていきたいというふうに考えておるのでございます。
この婦人補導院を、仰せのごとく、拘禁を強くしたいわゆる閉鎖式のものにするというようなことは、われわれとしては考えていないのでございます。なるべくこれは開放的なものにしたいと思うのでございますが、しかしながら、対象の婦人たちは非常に放縦な生活をいたしております。かような者を、ただいま申しますような規律のある生活になじましたいということになりますと、どうしても落ちつきができません。従って、これを野放図な開放施設に入れましても、とうていその目的が達せられません。従って、これらの婦人も、初期におきましては、やはり自由を束縛せざるを得ないと私は考えます。その意味で、初期の段階におきましては、閉鎖式の形態をとらざるを得ないと私は考えております。従って、規律に落ちつかせまして、一応の落ちついた暁には、私は開放的な処遇をいたしていきたい。従って、この施設は閉鎖的な組織と同時に開放的な組織、両方面を持った、非常に運営がむずかしいのでございますが、両面を備えた組織として今後運営したいと思っております。従いまして、落ちついて参りましたならば、外部への通勤の制度も考えておりますし、また臨時外出等の制度も取り入れていきたいと思っております。なるべくそういう段階になりましたならば、仰せのごとく、開放的なものに今後持っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/90
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091・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この職員は二十五人大体平均とおっしゃったんでございますね。これは職員が一番問題で、ことに院長ほか幹部の人たちは、これは婦人の方をお考えになっておりますか。院長は男を連れてくるというようなお考えはあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/91
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092・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) これは非常にむずかしいところでございますが、婦人の収容施設でございますので、御婦人のりっぱな、院長としていい方がございますならば、もちろん御婦人の方を充てたいと思っております。しかしながら、これは御婦人でなくちゃならぬというわけのものでもないんじゃないかと私は考えております。男子でも、りっぱな方がおりましたらば、院長として迎えて差しつかえないのじゃないかと考えております。どうしても婦人でなくちゃ院長はできないというふうにも、実は踏み切れないのでございます。男子でも、女子でも、ほんとうに婦人の更生のために熱意のあるりっぱな方であったならば、あまり拘泥しなくてもいいんじゃないかというふうに考えております。まあ、いずれにいたしましても、りっぱな方を迎えて運営したいと思っております。
もちろん、直接この在院者に当ります職員は、女子でなくちゃならないと思っております。ただ、庶務関係の仕事は、これはまあ男子がやはりいないと、できないと思います。材料その他の調達等につきましては、やはり男子がいないと、十分にいかないと思っております。しかし、直接在院者に当るものは、女子をもって充てたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/92
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093・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 矯正局長は外国をごらんになったかどうか知りませんが、これは私の経験をいたしたところですけれども、私は三カ月間アメリカ一の、まあ婦人ですか、少年院に行きまして、三カ月間そこに入って、実際見たのですけれども、そこに、売春婦ではない、犯罪少年、少女だけですが、そこの院長がこういうことを言った。絶対に、男の人をここに入れたら、子供たちは落ちつけない。ただ一つ、農場の牛を御する者だけが男子だったのです。ところが、それがじゃまになって仕方がない。ぜひ女にかえたいと言っていた。それはもう大きな、職員だけで何百人というものがいたのですけれども、それで私は、アメリカの犯罪少年院というのは、何というすばらしいものだなあと思っておりましたが、そうしたら、一昨年ロンドンに行って、これは売春婦の調査で行ったんですが、ロンドンに参りましたら、ロンドンにやはり売春婦の施設があったのです。ところが、表面、政府に行って聞いてみても、英国ではすでに売春婦は一人もいないといって説明をしております。事実はいて、そういう手当をしている。そうして、それは大きな婦人の収容所ですけれども、ここでもかかって生活指導と、職業補導をやっておりましたが、そこに男の人一人も入れることができない。それは、このように男が一人いると、どうしても女は落ちつかない。私はそういう経験を持っておりますから……。
これは、ことにもう売春婦でいて、どうにもこうにもならぬという一番最後の線に上ってきた者を入れるという、それの施設において、男のりっぱな人があったら置くというようなことは、私は甘いと思う。これは絶対に女ばかり入れていただかないとならぬと私は思いますが、しかし、もう少し、法務省としたら、いろいろな方面から研究してごらんになって、職員の構成ということは、私は一番骨が折れると思う。そうかといって石部金吉のような人を連れてきても、これはおさまらないと思う。ですから、これは適当なやり方をしなければなりませんが、それにはやはり、今の女子少年院の院長、婦人の院長あたり一つ招集なさって、もうとっくりと、そして急いで一つ経験をお聞きになって下さい。まだ売春施設のものはできませんけれども、少年院でけっこう参考になる資料が私はあると思う。一つ、これはここに男を入れたらおさまらぬと思う。(笑声)ほんとうでございますよ。女の立場でそういうようなことを言うのははなはだ遺憾だけれども、それほどもう手に余る者だけを入れるという施設ですから……。私は、それほど人数が多くないと思う。そうしていよいよいけないものは、もう刑務所に入れるという建前をとっても、これはやむを得ません。だが、私はできるだけ日本の母さんを、一ペんでも刑務所に入れて、その経験をさせるということは、残念ですから、そうはしたくないと思いますがね。だが、ここは大へん大事のところで、しかも、これは四月一日の実施に建物は間に合わない。これはどうなさるのかと心配をしておりますが、それよりも、建物よりも、職員の構成ということが一番これは大事なんです。この点を私は十分注意していただきますように。
まだ質問がたくさんありますけれども、今日はこの程度にしまして、保護局長がおいでになっていらっしゃいますから、保護局長にお尋ねしたいと思いますが、よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/93
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094・青山正一
○委員長(青山正一君) どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/94
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095・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 保護局長に伺いますが、今、保護司は定員に達しておりませんでしょう。全国で五万二千でしたね。今は四万何千人ですか、まだどのくらい余っておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/95
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096・福原忠男
○政府委員(福原忠男君) 定員は五万二千五百人でございますが、実際の数は四万八千人ちょっと出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/96
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097・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうしますと、今度売春立法が成立、完全実施になりましたら、保護司の全員、五万二千五百人を採用なさるおつもりなんでしょうか。またその必要をお認めになるでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/97
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098・福原忠男
○政府委員(福原忠男君) 保護司の充員ということは、従来からも非常に問題になるのでございますが、なかなか、仕事の性質上、いい方を見つけ得ないものでございますから、実情としては五万人にならないのは、大へん遺憾でございます。売春対策の一環としての保護司の充員ということも、もし適当な方があれば充員したいと思いますが、今残念ながら具体的にその計画はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/98
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099・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 不適当な方を大至急にという意味じゃございませんけれども、実際問題として、もっと保護司を採用なさらないと、現在でも保護司の手が一ぱいでございましょう、そこへ売春婦の問題が出てきたら、これはどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/99
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100・福原忠男
○政府委員(福原忠男君) あれこれ、売春婦対策につきましては、考えているのでございますが、現実にいかような形をとるかということについては、必ずしもはっきりした見通しがつかないものですから、大へん申しわけありませんが、保護司の充員ということも、これはそれぞれの方面にお願いしまして、適当な方を得て、対策を講ずることにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/100
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101・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 施設を作ってそこへ入れるというふうな者は、これはよくよくの者でなくちゃ入れられないと思うのです。また入れる必要もないと思いますけれども、ほんとうは保護司活動というものがこの仕事の中心になるのじゃないかと、私は思うのです。それにはどうしても保護司の定員をもっとふやすということをしなければならぬと思いますが、まだそこに余裕があるというのだったら、今度は私は、大至急に保護司を、一つ定員だけでも採用なさって、準備をなさらないと、もうお考えにならないと、二月ですよ。あともう一月きりしかございません。保護司の定員というもの、私はそこまで研究しておりませんでしたが、たとえば東京とか、大都会に定員をふやして、そうして地方は地方に割り振ってあるのでございましょうね、各県に割り振ってあるのだから。そういうものを重点的に任命するというようなこともできるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/101
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102・福原忠男
○政府委員(福原忠男君) 実はさっき、説明が足らなかったかと思いますが、従来保護司の欠員がございます。それで五万二千五百人以内ということになっておりますが、それを充員しておりません。昨年、やはりかようなことを考えました。従来から割り当てている数が四万九千人で、全国に割り当てておりました。多少東京に残りを予備に置いたわけでございますが、それを五万二千五百人全員を、全国の昭和二十七年以後の事件数その他と比べまして、配付いたしました。そうしてその充員方を保護観察所その他関係官省にお願いしているわけでございますが、なかなかにいい方がありませんので、その後少しずつ増員しておりますが、充員していない。全員充員するに至らないという段階になっておりますので、さらに充員方につきましていろいろ考えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/102
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103・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 これまでの保護司の任命の主眼として考えるところと、少しく今度方角が変ってもいいと思うのです。だから、今までもうほとんどそろってといいますか、出そろって採用されているから、なかなかむずかしいというように考えないで、今度少し観点を変えて、大至急にそれを定員だけでも、五万二千五百人ですか、それだけでも、そしてそれを都市中心というようなことにでもしなかったら、今三カ所収容所を作れば、自然にそこに重点的になるのではないかと、私はおそれております。これは日本全国の問題ですから、一つ保護司活動について特別に、私は保護局長にお考え願いたいと思っております。いろいろございますけれども、私はきょうはこれだけにしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/103
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104・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日は、この程度で散会いたします。
午後三時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00519580210/104
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