1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年二月二十五日(火曜日)
午後一時二十二分開会
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委員の異動
本日委員松野鶴平君辞任につき、その
補欠として斎藤昇君を議長において指
名した。
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出席者は左の通り。
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
一松 定吉君
棚橋 小虎君
宮城タマヨ君
委員
雨森 常夫君
大谷 瑩潤君
小林 英三君
斎藤 昇君
赤松 常子君
藤原 道子君
辻 武壽君
国務大臣
法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
政府委員
法務政務次官 横川 信夫君
法務省矯正局長 渡部 善信君
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最高裁判所長官
代理者
(家庭局長) 菰淵 鋭夫君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省刑事局総
務課長 横井 大三君
参考人
売春対策審議会
会長 菅原 通濟君
東京地方検察庁
八王子支部長 金子 滿造君
警視庁浅草警察
署長 齋藤 良治君
青葉女子学園園
長 菊澤 鋭子君
東京都婦人相談
員 西村 好江君
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本日の会議に付した案件
○婦人補導院法案(内閣送付、予備審
査)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
の件
(売春防止法の施行運営に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。
最初に、委員の異動について御報告いたします。二月二十五日付、松野鶴平君が辞任、斎藤昇君が選任、以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/1
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002・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日は、売春防止法の施行運営並びに婦人補導院法案を議題といたします。
初めに両案につきまして、参考人の方々から御意見をお伺いいたしたいと存じます。
申すまでもなく、売春防止法の全面施行に伴いまして、事犯処理、保護更生の措置につきましては、われわれといたしましても留意いたさねばならぬ多くの問題点がございます。今回の一部改正により、規定されようとしております補導処分の運用につきましても、成人に対する保安処分として重要な意義があるばかりでなく、転落婦人の保護と社会復帰への援助を主眼とするものでございますから、売春の実態に即して、この刑事処分に関する法の運用に当って起ります問題点を十分検討いたしたいと考えた次第でございます。
また、婦人補導院法案につきましては、わが国初めての試みでございます。もしこの運営の初めに当りまして誤まりありますならば、第五条関係の法の運用もはなはだしく理想から遠ざかる事態を招くことになると危惧する次第であります。
参考人の皆様は、日ごろ御多忙中のところ、本委員会の意のあるところを了とせられまして、御出席いただきましてありがとうございます。
それでは、これより参考人の方々から御意見を伺いたいと存じますが、お手元に御参考までに、一応御意見聴取事項をお届けしてございますが、これにこだわることなく、御自由に御意見をお述べ下さってもけっこうでございますが、時間の関係にて、お一人約二十分程度にてお願いいたしたいと存じます。また、金子さんには、特に「売春婦と暴力団又はヒモとの結びつき」、麻薬との関係、その情勢、取締り対策等にも触れていただきますよう、特にお願いいたしておきます。また、委員の方に申し上げますが、参考人の方の御意見を全部お伺いしたあとで質疑に入りたいと存じますので、この点御了承いただきたいと存じます。
それでは初めに菅原通濟君からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/2
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003・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) 私が菅原であります。御意見書を拝見いたしましたので、逐条申し上げたいのですが、すわらしていただきまして、第一の点でございますが、「同法の全面施行に伴い、事犯処理、保護更生について留意すべき点」これはもちろん婦人保護更生につきまして、転落した婦女子というものは、貧困が原因でこうなったのが非常に多いのでありますから、これらについての運営についてよほど留意せねばならぬとは思いますが、大体、今まで聞いております範囲内におきましては、国に帰る者が比較的多い。場所によっても違うでしょうが、四〇%ぐらいが東海地区あたりでは国に帰る者があるのだ、二割くらいが嫁になるのだ。その他転落する者もあるようですが、職についた者等もございますが、こういう国に帰った者なんかが、金のある間はどうやら食いつなぎもしておるのでしょうが、これがまた、都会へ舞い戻ってくるということが非常に多いように思われるのです。まだそこまでは来ておりませんが、ぼつぼつそういう事犯が出ておるのではないかということは、こういうことに関しましては、どうか地方の民生委員だとか、また、その他こっちに戻りました者の対策については、十分御留意願いたいと、こう考えております。
それから第二の、「最近における売春勧誘行為の実情、その取締状況及び今後法案第五条の罰の取締上注意すべき点」こういうことは、要するに第五条の唯一の婦人に対する罰則なんでありますが、婦女の保護更生にあることだけは、この法律の目的がそこにあるのでありますから、この取締りに当りまして、警察当局、つまり取締り当局においては、十分その趣意に御留意願いたい、こう考えております。
それから第三点の、「最近における基地売春の実情」等でございますが、これは、きょうお隣に御専門家がおられますから、何でございますが、しかし、いずれにしても、取り締ること自体においては変りないのでありますから、かりに進駐軍がどういう状態にある、船員がどういうあれにあるのだ、あるいは山の中にいる人たちがどういう状態にあるのだということは、いろいろ事情は個々にあると思いますが、売春をしてはならぬことだけは明らかなんですから、取締りに差別のあれはないだろうと私は思うのです。それで、特に進駐軍なんかには何か特別の措置を講じないといかぬというような議論も多いようでありますが、しかし、これは基地、いわゆる基地という言葉があることすら困るのでありまして、同じように取締り、つまり彼女らにはオンリー——、オンリとでも申しますか、こういうものが多いので、最近はなかなか向うさんも金を出さぬので、オンリーであり、かつ、あまりオンリーでもないような、日本人もちょうだいするというような事犯が多い。こういうようなものも当然同じように取締りをしていただかなければならぬと思っておりますが、しかし、表面的に進駐軍の方と話し合いをしてみますと、たとえば、横須賀あたりのタンプソン憲兵司令官ですか、ああいうふうなところとの話し合いなんかを見ましても、厳重に取り締ってくれということを言っておるのですから、この線に沿って十分取り締っていいじゃないか、差別する必要は全然ないのじゃないか、こういうふうに考えております。
第四点の、「売春婦と暴力団」の関係、これは、まあ、一番厄介な点でありまして、取り締る御当局もなかなか大へんなことだろうとは思うのでありますが、しかし、これは、たとえば彼らが強制売春させるとか、管理売春させるとか、こういうようなことになると、白線に流れていく、白線というか、散娼になっていく者についてのいろいろの暴力団との関係が非常に多いだろうと思いますが、これは一つ、少くとも婦女子の血をしぼるような彼らには、彼ら——彼女もあるでしょうが、こういう風上に置けぬやつは断固取り締っていただきたい。むしろ僕は、悪い言葉かもしれませんが、行き過ぎがあってもやらなくちゃならないぐらいに強く考えております。もちろん、行き過ぎということはいけないのですけれども、たとえですが、それぐらいに強く考えております。
第五点の、その他のことでありますが、私は、この転業の実際に行われたり何かすることはもう一にかかって、転業にしても婦女子の更生にしましても、かかって地方長官の熱意があるかないかということが一番最大原因のような気がしてならないのです。地方長官が若干熱意のないところに限ってそれがよく行われてない。たとえばレポートもだめだ、実情もだめだ、非常に困るのです。これをもっと端的に申し上げれば、近畿地方並びに九州が非常に成績が悪い、悪いということは僕は地方長官のあれに当られる方に熱意はあるのでしょうが、右向けならえでまだぐずぐずしておるのじゃないか。名古屋、岐阜とか、あそこら辺、これは非常に熱心に長官がやって下さり、また、業者の方もこれにならってやりましたために非常に成績がよく上っている。一にかかって地方長官のあれじゃないか。私は審議会でも、地方長官会議のときに、ぜひこの旨を話していただきたいということをしばしば要望したのですが、一回もそのことは聞いておりません。残念でありますが、今からでもおそくないのですから、何かの形で、地方長官に成績の上らないところは指摘してでもやっていただきたい、こう考えております。転業あるいはその他に当りまして非常に予算もわずかであり、はなはだ遺憾でありますが、不満ではありますが、私は何と申しますか、商売人ですから、過去を追うことはきらいでありますから、今ある範囲内においても断固やればできないことはない。現にこの転業のごときはいろいろな事情があったが、時の流れでこうなったとは言いながら、とにかくできてきたのですから、行えばできないことはないと考えております。ただ、彼らの転業する者には追い打ちをかけることや何かは慎しむべきことでしょうし、なおかつ、前歴の云々というようなことは言いたくない。親切丁寧に扱ってやらなければならない。今までのことは水に流さなければならぬと思っております。
もう一つ転業で遺憾なのは、中央においてもそうですが、彼らに対する資金の貸付、その他については一向にはかどらない、できかかったものもこわれていくという状態です。いわゆる例の売春汚職問題というものが出てから、急に何と申しますか、引っ込み思案になってしまった。こういうことははなはだ遺憾なことでありまして、それとこれとは別なんですから、できるところは彼らの金融をなるべく他の業態と同じような状態でやっていただきたい。何か貸すと、うしろ暗いがごとときことがあるような卑怯な考えは慎しんでもらいたいと考えております。ただ、業者の転業に当りまして、いろいろ資金問題その他もありましたけれども、案外彼らは、行えばできないことはないのです。ただ、風俗営業でなくてはならない、遊んで寝て食っていた彼らが、力で働くことを考えないからいけない、もう少し違う業態のこともやっていただきたい、かように考えております。
婦女子の更生につきましても、案外意外に思いましたことは、金を比較的持っている者が多いということです。なかなか彼女らはしっかりしておりまして、早くからそういう気持だったのか、相当ためている者も多い。中には樓主に借金して貯金しているぐらいなちゃっかりした者もあるでしょう、比較的彼女らは持っている。持っていないような知能程度の低い連中も相当ありますが、比較的持っているということですが、ここで一つ御留意願いたいのは、この間法務大臣の御答弁について、若干私は疑問を持っている点があるのですが、彼女らが第三者から借りている借金、つまり呉服屋なり何なり第三者から借りている借金、非常に高い物を買わされて、非常に作為的にそういうことを行なった者、こういう者に対しては、僕は借金を払う必要はないだろう、自分の考えはそうです。法律上いろいろ疑点はあるかしれませんが、どうも普通われわれの頭で考えまして、あれを返すにはやはり売春をしなければならぬ、同じことを繰り返さなければならぬ。また、貸す方もかなりひどい高いものを売りつけているやにも聞いている。そういうものは、もっと突っこんだ一つお考えをここで至急立てていただきたい、こう考えております。
最後に、性病対策でありますが、これはもう大問題でありまして、今の性病に関する知識はあまりに国民が少い。国民が少いばかりじゃなく、上層階級の人にも少い。いかに性病がおそろしいかということをもう少し植えつけなければならぬ。これに対しては、厚生省でもやめます者については治療いたしておりますが、全般の者に対してのまだ予算が少いということが一つの理由だけでやっておりますが、予算ばかりでなく、熱意も足りないのじゃないか。一応公費負担で治療するなんということは、俗な言葉で言えば、いいことをして治療してもらっているというようなそんなばかなことはないというお考えが、大蔵省当局にしみこんでいるのじゃないか。しかし、これは伝染病ですからどうしてもなおさなければならぬ。見ようによっては肺病よりこわい。梅毒のごときは非常におそるべき病気だ。今度の厚生省が治療いたしましたものでも梅毒の方が多かったというレポートがあるくらいです。今、表に現われる梅毒は少いが、潜在する梅毒というものは非常に多くある。極端なことを言えば、こうしているわれわれ、というと失礼かもしれないが、私なんかにもあるのじゃないかと思うくらいにおそろしい。表に現われないものが非常に多くなってきているということです。これは次の世代にかかることなんですから、どうしてもこれは大きな問題として対策を講じていただきたい。売春防止よりこの方が私は大切だ、こう考えております。
次に、改正法律案の方ですが、婦人補導院法案関係、第一の「補導処分の要件、対象者、期間、効力等について考慮すべき点」でありますが、これはどうも六カ月だけ拘束してということについては、私は疑点を持っております。これだけではなかなかできないだろうと思います。たとえば、まああまり重からざる梅毒ですから六月近くはかかるのですから、職業問題もありましょうが、六カ月ということは非常な疑点は持っておりますが、しかしながら、やはり自由を尊重せねばならぬ。身柄をいつまでも拘束するということは考えものなんでありましょうから、十分その期間に当っていろいろの工夫をされてやるよりしょうがない。まあやむを得ないのじゃないかという程度です。
二番目の「勧誘等の罰の違反者の取締について、捜査技術、」その他の点、これはどうか取締りに当りまして、罪のない、常習者でない一般婦女子なんかを間違えてあれするようなことは厳に慎しんでいただかなければならぬのですが、さりとて、ゆるがせにすることもできないのでありまして、なかなかむずかしい点であります。要するに、あれといたしましても目星をふだんからつけておいて、そしてそういうものを取り締る。それからまた、国民の協力を得まして、そして周囲からもこういう者を厳重に監視するということによりしようがないと思いますが、まあ何といいますか、日本人の習癖とでもいいますか、あるいは何といいますか、人のことをおせっかいやくのが好きなんです。犬がつるんでいるのを石を投げなければ承知しない国民ですから、そういうものは、投書だとかやれ何だというような、岡焼きがたくさんあるだろうから、そういうのは割合に発見が楽だと思いますが、しかし、中には意識的にそういうことを悪意をもってやる者がおりますから、そういう点は十分御留意を願いたい。
三番目補導処分の適切を期するため、裁判所の職務、これはどうも私はあまりこういうことは詳しくございません。よくわかりませんが、原則としては、家庭裁判所の方がいいのじゃないかというような気がいたしますが、よくわかりませんが、私には刑事裁判所に調査官を置く、これは司法制度とマッチするかどうかということについても疑問を持っておりますが、補助するための調査だから、こういう程度ならいいのじゃないかという程度であります。
四番目の収容状を発行するときに具体的に明記する云々、これは私にはよくこういうことはわかりません。どうかその道の人から聞いていただきたい。
五番目の「生活指導、職業補導、医療施行について考慮すべき点」これは大体においてああいう所に入ってくる者は常習者だろうと思います。それから性病を持っておる者も多い。それからどっちかというと、知能程度の低い者が多いというのですから、こういう者を指導するに当っては、どうか初めて入ったというときが一番大切でしょうから、心機一転して、そうして正常な人間になるのだということを初めから認識づけるようにしてやりたい。それにはぜひりっぱな補導官を置いていただきたいのだ、まあなかなかむずかしいこととは思いますが、十分その点にりっぱな人を得ることに努めていただきたい。
職業の補導の点でありますが、六カ月で職業の補導はなかなか大へんだろうと思います。そういううまいあれがあればいいと思うのですが、編み物だとか、九重織だとか、なるべく比較的賃仕事をして金になるもの、こういうようなものをあれしてやりたい。補導に力を注いでやりたい。
医療の点ですが、これは先ほど性病のところで申し上げました通り、十分御留意を願いたいという考えです。
六の方の補導院の数、収容力等なんでありますが、これはいろいろ予算関係もあって三ヵ所になさったようですが、三ヵ所で足りないのは当然だろうと思います。がしかし、第一どれくらいの人が来るかということはなかなか予想がつかないのじゃないか。これによれば大体百人ぐらいずつの者を収容してやっていこうというような考えなんでありますが、まあこの程度でスタートするよりほかしようがないだろう。ただ、運営に当って、どうか朝起きてすがすがしい気分になるというような気持に彼女らをさせるというようなことだろう。その他教える先生も一人でいろいろのことを教えなくちゃならない、兼職をして教えなくちゃならないでしょうが、人を得ることが大切で、まあ何といいますか、理想的に言えば、スエーデンあたりのように、一人が一人教えるというのが理想なんですが、そういうようなことは、日本ではとうてい行われないでしょうが、先生の数をできるだけなるべくふやして、優秀な人を入れていただくという点をぜひ御留意を願いたい。
七番目の在院者に対する問題、これは刑罰ではないのでありますから、保護処分するためのあれなんですから、自由になるべくさしてやりたいのは当然ではありますが、しかし、先ほどの暴力団の問題に関連する通りこれにいわゆるひもつきというものが非常に多い、それがために、外部との通信その他でせっかくよくなった者をすぐくずすような点がありますから、やむを得ずこれら面会にも立ち会わせなくてはいけませんでしょうし、ことに通信のあれのごときも、憲法に定められたるあれもございますけれども、閲覧するようなことは万やむを得ないことと考えております。
その他のことでありますが、まあ補導院法につきましては、審議会におきましてもいろいろ皆さんの御意見も承わりました結果、完璧とは言えません。また、これに対するいろいろの学者あるいは有識者の御議論も承わりまして、それをあの通り答申いたしました理由は、四月一日に実施にいたしますについては、どうしても並行的にこれを何らかの形において早く御審議願いたい。通過させるように御努力願いたいというのが趣意なんでありますから、どうか望みますところは、それまでにあれができますように御留意を願いたいのでありまして、私に言わせると、完璧なる法律というものは、どうもあるかないかすら危ぶんでいるくらいなんです。しかられるかもしれないのですが、まあいわゆるまた、ざる補導法と言われてもかまいませんから、どうかこれをぜひ通していただきたい。売春防止法の方もざるなんです。これもざるでもいいから、なきにまさるのですから、どうしてもお通し願いたい。こういうふうに考えておりますが、しかし、これは完璧とは言えないようにも思われます。ただ特に審議会長といたしましては、頭を下げてお願い申し上げたい次第でございます。
以上で大体なのでございますが、大体全体論としてちょっと申し上げますと、どうかこういうことは一がいに、速急にやろうたってなかなかできないことなんですから、気長に一つやりたい。それにまた、なかなか割り切ってできるものでない。四を割ると二と二でなくちゃいけないというのじゃなくて、一と三でもいいんだという気持になっていただいて、気長にやるんだということをこの際お願いいたしますことと、それからこれからが非常にむずかしいのでありますから、たとえば、自民党内にできた風紀衛生対策委員会というものは非常にいいことなんで、秘密会にしたりなんか、くだらぬことにしたりするからいけないのであって、そうでなければ非常にいいことなんですから、どうかあれで今後の性教育だとか、あるいは性病の問題、そういうふうなことは非常に御研究願って、審議会その他でも同調してこういうことをやりたいと考えております。一昨日審議会を開きましたときに、何かまた、審議会は三月七日で切れるのをまたもう一期延ばすそうであります、事後処理のため。そうなりますと、ますますそういうところとタイアップしてやっていきたい。そういうことを非常に熱望いたします。なお、性教育に対しての徹底、それから芸者問題ということが当然起きてくるだろうと思います。置屋の問題、待合の問題その他起きてくると思いますが、これもどの道起る問題であり、この際われわれも皆やかましい問題にならぬうちに、業者といろいろと話し合って、何かこの際に一つの革命があっていいんじゃないかというような気がいたしております。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/3
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004・青山正一
○委員長(青山正一君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/4
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005・青山正一
○委員長(青山正一君) 次に金子滿造君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/5
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006・金子滿造
○参考人(金子滿造君) 私、東京地検の八王子支部の金子でございます。時間の関係もありますので、主として基地売春の問題と、それから売春婦と暴力団またはひもとの関係という点に重点を置いて、一応プリントにあります順を追うて意見を述べたいと思います。
最初に、「売春防止法の全面施行に伴い、事犯処理、保護更生について留意すべき点」でありますが、本法の目的が売春婦管理業者を初めといたしまして、売春を助長する行為をした者を処罰するという点にかんがみまして、これらの犯罪に対しましては厳罰方針をもって臨むことが必要であるのではないかと考えます。
次に、売春婦に対しましては、努めて保護更生の措置を講ずる。これによりまして売春の防止をはかる。特にこの売春婦に対しましては更生資金の援助を積極的にやる。婦人団体等においてもこの売春防止法が成立するまでは相当力を入れておったようでありますが、なお一そう、この売春婦自身の保護更生につきましても積極的に援助することが必要じゃないかと考えます。
次に二番の「最近における売春勧誘行為の実情、その取締状況及び今後法案第五条の罰の取締上注意すべき点」でありますが、この点につきまして、最近青線地区の取締りの強化に伴いまして街娼が著しくその数を増加いたしたのであります。特に都内の新橋地区においては、付近の一般住民から所轄署に対しましてこれが取締りを要望するというような投書などが激増しておる実情なのであります。昨年末の新橋地区の街娼数は約百四十名程度でありましたが、本月初め現在では約百九十名前後に増加いたしておるのであります。そして彼女たちの目立った勧誘行為、これは立ちどまって客待ちして、酔客などが近寄ってくるのを忍耐強く待っているというような手段をとりまして、非常に巧妙化しておるのでありまして、現在の都条例では取締り検挙が著しく困難であります。所轄警察におきましても、これが対策に腐心いたしておるのであります。
次に、「最近における基地売春の実情及びその対策について考慮すべき点」でありますが、私ども八王子支部管内におきましては、いわゆる赤線区域を除きまして、大部分は駐留軍将兵を対象といたしておりまするいわゆる基地売春でありまして、これは大体三通りに区別することができると思います。まず、純然たる街娼、それからオンリー、三番目は正業を持つ街娼、オンリーというような三種類に区別することができると思います。純然たる街娼は昨年末で約千三百名でありました。これらは立川とか昭島周辺を中心といたしまして、普通の住宅とかホテルとかに間借生活をいたしておりまして、街頭で駐留軍将兵をキャッチしましてそして間借先に連れて帰る、それで売春を常習としてやるという者でありまして、そのかせぎ高はショート・タイムで三百円から七百円ぐらい、時間遊びで平均五百円程度、泊りで千円から二千円、月平均二万円から七、八万円ぐらいの収入があるのであります。これらは軍の移動と密接な関係がありまして、一般的に彼女たちの生活は不安定でありまして、常に住居を転々といたしておって、性病の罹病率もいわゆる赤線区域の接客婦とか、あるいはオンリーという者に比較いたしまして高いのであります。そして注目すべきことは、これらの街娼の大体八〇%は麻薬の中毒者であるという点であります。
次に、オンリーでありまするが、これは昨年末で八王子管内で約千名でありまして、普通住宅とかアパートなどに居住いたしまして、部隊の移動と一緒に移動する。その期間も一カ月ぐらいから長いのは三年ぐらいに及んでおるというような状態でありまして、これらのオンリーのうちには麻薬の中毒者はないのであります。
三番目に正業を持つ街娼またはオンリーというのは約四百名ぐらいおりまして、一定の正業を持って生活には何ら支障ないのでありますが、街娼、オンリーとして生活いたしておるのでありまして、女給とかメイド、基地従業員などであります。これがいわゆる基地の特異性を現わしているのではないかと思います。
以上が大体八王子管内における基地売春の実態でありますが、特徴は大体概して期間が長い。そうしてその収入によりましてみずから生活をするばかりでなく、大部分の者は郷里などの家族に送金いたしておるというような状態であります。
これに対しまして、駐留軍側はどういうような態度になっておるかと申しますと、立川基地におきましては、午後十二時を限りまして外出を禁止いたしておるのであります。また、横田基地におきましては、未成年者がキャバレーなどで飲酒するということをやはり禁止いたして、これらによる売春の行為に出るというようなことを協力して防止をはかっておるのであります。そうして警察から売春事犯を送りますと、その相手になりました将兵に対しましてはMPに通告いたしまして、MPの方では階級章を取り上げてしまうというように、あちら側でもこの売春事犯に対しましては非常に協力いたしておるのでありますが、何分にも彼らは実際は偽名を用いておる場合が多いのでありまして、つかまるとMPが調べてみると、そういう者はいないというのが大部分なんであります。
それから最近横田基地におきましては、カフェー、バーなどが約八十軒あまり、それから旅館が二十軒あまりありまして、従業婦の数は約四百名でありますが、取締りがきびしいので、自動車内で売春をやるというような事犯が多くなってきておるのであります。
そこで、最も心配になりますのは、こういう基地周辺の風紀の問題でありまして、青少年に及ぼす影響というものは注目すべきものがあるのであります。これにつきましても、婦人団体とかあるいはPTA等の協力を得まして、基地周辺の風紀の維持をはからなければならないと考えております。
次に、売春婦と暴力団またはひもとの結びつきの問題でありますが、私どもの管内におきまして、赤線業者と暴力団というものの具体的結びつきは、今までのところ認められないのでありますが、いわゆる青線業者と愚連隊との結びつきはこれはあるのでありまして、なお、売春婦と暴力団の者とが同棲しており、そうして売春婦のかせぎをこの暴力団が搾取してしまうというようなことはあるのであります。なお、麻薬の密売を行なっておる暴力団が、麻薬を種に売春婦を集めまして、そのかせぎを吸い上げてしまうというような事件が相当あります。本庁管内におきましても、新宿の和田組のものの中には、麻薬の中毒者が相当おる、そうして売春婦に麻薬を売りつけまして、売春婦から利益をとっておるというようなこともあるようであります。
それから売春防止法の施行運営についての参考となるというような点でありますが、先ほど菅原参考人の方からも申し上げました性病の問題であります。これは非常に重要な問題ではないかと考えますが、この性病蔓延に対する対策でありますが、これにつきましても、やはり売春行為は社会悪であるという線を強く打ち出しまして、全国民に売春防止法の施行につきまして協力を得るという態勢を作ることが、第一ではないかと考えます。ことに、青少年というものに対しましては、純潔教育というようなことから、青少年みずからがこの性病に対しまして自衛手段を講ずる、そうして健全な娯楽とか、あるいはスポーツというものを奨励いたしまして、この売春というような社会悪には立ち入らないという強い運動を、この性病予防の一つのPR活動といたしまして進めていくということが、この際最も必要なことではないかと考えております。
なお、先ほども申しました風紀との関係でありますが、この点につきましても、ただいま申し上げましたPR活動によって風紀問題も、これも何とか打開できるのではないかと考えております。
それから私どもの管内に婦人相談員が七名おるのでありますが、ここにおいでの委員の方を初めといたしまして、非常に熱意を持ってこの春売防止法の完全な施行という面に協力いたしておるのでありますが、何分にもその手当が十分でないようであります。旅費にいたしましても、一月八百五円というような少いことでは、十分な活動ができないのではないかと思いますので、どうかこの点につきまして、十二分な活動ができるように、予算的措置をお願いいたす次第であります。
それから改正法律案と婦人補導院法案との関係でありますが、この点につきましては、まだ実は十分な研究をいたしておらないのでありますが、二、三気のつきました点のみを申し上げて、責めを果させていただきたいと思います。この二番目の問題でありますが、「勧誘等の罰の違反者の取締について、捜査技術、人権尊重の見地から特に留意すべき点」という点でありますが、この点につきましては、新しい法律の五条では、従来、東京都条例などと比べまして、売春勧誘準備行為というものまでも処罰しておるのであります。従って、この五条を適用する場合に、最も捜査官として注意しなければならないのは、良家の婦女が巻き添えを食ってしまうというようなことがあってはならないのでありまして、私ども検察官といたしましても、この点は十分注意いたすつもりであります。さようにいたしまして、五条の円滑な運用と同時に、人権尊重を十分果すという考えでおります。
それから三番目の「補導処分の適正を期するため、裁判所の職務管轄、調査機能について考慮すべき点」でありますが、この点は、実は東京地検の更生相談室というのは、非常に早くから完備して、所員の人も熱を持ってやっておられるのでありますが、このたび、相当予算が削られてしまったのでありますが、この婦人補導院というのは、これはどちらかと申しますと、よくよくのことで、婦人補導院へ入れるという者は、数からいいましても、ごくわずかなんであります。また、そうでなければ、実際三ヵ所しかやらないのでありますから、やっていけないのじゃないかと思います。そういう点からいって、九〇何%というものは起訴猶予になるわけでありますから、従って、東京地検を初めといたしまして、大きい地検などでやっております婦人相談室、これには相当お医者さんなんかも来ておりますし、また、婦人相談員の方も来ておりまして、非常に力を入れておるわけなんでありますから、単に起訴するわずかの婦人補導院に向けるものばかりでなく、むしろこの起訴猶予にする大部分についての婦人相談室の拡充強化ということを、この際、検察官といたしまして特にお願いいたすわけであります。もちろん、これは私の方でも、八王子支部でも、東京地検の婦人相談室の分室があるわけなんでありまして、絶えず本庁の方と連絡のもとにやっておるのでありますが、実際、設備その他につきましても不十分なんであります。どうか、そういう意味におきましても、これを拡充強化していただきたいということをまあお願いするわけであります。
次に、七番目の「在院者面会、通信の制限について考慮すべき点」でありますが、この点につきましては、先ほど菅原参考人の方からも申し上げました通り、あまり窮屈な制限をいたすということはどうか、これは、この処分が大体保安処分であるという本質からいいましても、考えなければならぬと思います。しかしながら、暴力団のものと連絡があって、それが絶えず面会に来て連れ出すというような事情でもありますれば、これはもちろん制限しなければならぬと考えるわけであります。
以上、はなはだ飛び飛びで申しわけございませんが、これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/6
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007・青山正一
○委員長(青山正一君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/7
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008・青山正一
○委員長(青山正一君) 次に、齋藤良治君、願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/8
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009・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) 私は、警視庁浅草警察署長の齋藤良治であります。意見を求めるという御趣旨でありますので、私の方に関連するところの事項につきまして、御意見を申し上げたいと、こういうふうに思います。
「売春防止法の施行運営状況について」その中の一つ、「同法の全面施行に伴い、事犯処理、保護更生について留意すべき点」、それから二が「最近における売春勧誘行為の実情、その取締状況及び今後法案第五条の罰の取締上注意すべき点」三は除かしていただきます。四の「売春婦と暴力団又はヒモとの結びつき傾向に関する情勢及びその取締上留意すべき点」五「その他同法の施行運営について参考となるべき点」さらに改正法律案の第二の「勧誘等の罰の違反者の取締について、捜査技術、人権尊重の見地から特に留意すべき点」以上の項目について、主として私は浅草地区の関係について申し上げまして、皆さんの御参考に供したい、こういうふうに思っております。
売春防止法の全面施行に伴い、事犯処理ということについては、その経過として、吉原の赤線地区の状態を最初に申し上げます。これらの動きについて、皆さんに報告したいと思います。
吉原は、現在百十六軒の業者と三百九十五名の従業婦がただいま働いております。これはすでに二月の十五日に廃業届を出しておりますので、二月末日をもって廃業を完了するということで、業者もそれを納得しまして廃業することになっております。この段階を申し上げますと、昨年の四月一日当時は特飲、まる特業者、これは二百九十九名ありました。従業婦は千三百八名というふうな状況であります。それで、その後、一月三十一日に法人組織の業者が百三十二名廃業いたしまして、従業婦も六百数十名の従業婦がここに廃業を見たのであります。これにつきましては、業者に対しては勧奨をし、自粛転廃業するようにということを要望しましたところ、現在のところ、廃業について、擬装転業とかその他の点は見られないのです。自粛して廃業しているという姿が私たちの方では感ぜられます。従業婦の方々は、千三百八名のうち、九百三十三名という方々が、現在までのところ、業者の廃業に伴ってそれぞれ離職したことになりますのです。離職というよりも、離れたことになるのです。これらの人たちの状況については、台東福祉事務所それから東京都婦人相談所、あるいは東京都の民生局児童部、こういう方々と皆打合せをしまして、従業婦の健全転業、保護更生について勧奨をして参っておりますが、なかなか思うように成果を見られないということは非常に遺憾とするところであります。
これら九百三十三名の方々の大まかな数字を申し上げますと、国へ帰ったという人が二百七十七名、結婚すると称して転出した方が二百六十七名、飲食店の女中となっている人が八十九名、それからよくわからないけれどもという、先を言わないで、自分でもって自活すると言って転出した人が百七十名、それから女中さんになると言ってそれぞれ転職された方が四十八名、キャバレーの女給というふうに言って出られた方が二十七名、店員になると言って出られた人が六名、女工さんというのが九名、無断で何らだれにも言わないで転出した人が二十二名、それからいわゆる二号さんになられた方が十二名、事務員になった方が一名、それから学生という人が一名、死亡者一名というふうな状況で九百三十三名の内訳が私たちの方の調査では出ております。これらの国へ帰った、結婚という関係が、先ほど菅原先生からもお話がありましたのですけれども、この数字が非常にむずかしいのでありまして、われわれの方では、こういう人たちが先行き転落しないよう期待してやまないところでありますが、なかなか国へ帰ってもうまく郷里の人たちと融和できないいろいろの話をよく聞くので、これは非常に私たちとしても同情にたえないところであります。結婚というのは、これは中にはひもというような人たちとの結びつきをみな結婚と称しておりますので、これらの人たちの動きに対しては、相当われわれの方としても関心を持って善導してやらなくちゃいかぬ、こういうように思っております。大体赤線業者の方々の動きとしては、これは婦人相談所婦人相談員の人たちと常に心配してやっておるのですけれども、やはりあまり役所の厄介にならないで、自分で道を開くというふうな気持が非常に強いようでありまして、婦人相談員の方々と相談する数がわれわれが期待したほどあまりないというふうな点で、非常に考えさせられるのです。また一面、これら従業婦の方々は、従来のあまり働かないで金が入る、からだを働かせないでしかも相当の食事をとり、相当の衣服をつけていられるというような関係で、ここに新しく自分の労働によっていわゆる勤労意欲というのですか、これを盛り上らしてやるという踏み切りがなかなかつかないのじゃないかという点が、私たちの方では非常に懸念しておるところでありまして、この点、われわれの方も盛んにこれらの従業婦の人たちに対しては呼びかけておりますけれども、関係御当局の方々もこの点については、いろいろの、今度の補導処分等もそういうような意味から行うと思いますけれども、一つ御支援、御協力をいただいて、これら従業婦の今後の転落防止に皆が力を合わして進んでいきたいと、こういうように私たちも考えておるものであります。
それから次に、赤線の廃止と白線との関係という点が常に話題になっておりますので、これはわれわれの方としても常にこの点については注意してやっております。それで白線というのは、浅草では大体吉原の周辺の千束町というところでありまして、これは昔から十二階下とかいうふうに言われておりますので、よく千束町と言うとそういう点がうわさに出るのです。これらの地域に白線というものが、大体これは確実な数字は、いろいろ移動しますから多少違いがあると思いますけれども、大体、前は六十軒くらいありました。これを取締りの強化によって現在三十軒くらいに減少を見ております。それで、これらの関係にわれわれの方で心配されるのは、これら赤線の従業婦が転落するということを非常に心配いたしまして、白線の取締りに対しては厳重な取締りをいたして参っております。それともう一つは、よく山谷のドヤ街——ドヤというのは簡易宿泊所のことですが、よく山谷のドヤ街とこういうふうに言われておる。これがいわゆる白線のつながりを持ちますのでこれに対しても注意をいたして参っております。山谷のいわゆる簡易旅館というのは、百五十五軒ありまして、そのうちそこには一万人の労働者が宿泊しております。それでわれわれの方では、これらの宿泊しておるところの中にどのくらい売春婦が泊っているか、ひもがどのくらい泊っているかという点を調査したのです。これはなかなかほんとうの数字は出ません。大体表面的な数字は、調べたところでは、二百五十四名の売春婦が泊っておる。これはおぞらく二倍の数字になると思います。五百人くらい。ひもが百三十三人、これも同じく三、四百人のひもがついておる。大体われわれの方でいろいろ調査しますと、売春婦から、あなたにはひもがあるかという点を調べさしております。そうすると、検挙された人の四三%がひもつきであるというふうな状況でありますけれども、実際には自分は色男を持っていないということを標榜して、検察庁まで全部通すというような人が相当多いのであります。八割が大体ひもつきであるというふうに私たちは推定するわけです。これらの人たちが——先ほど来ひもとの関係もありますので、あまりいろいろ項目にとらわれないで話をしろということでありますので、関連したところを申し述べてみますと、これらのひもというのは寄生虫的存在でありまして、女を働かしてその上りでもって食っていくという寄生虫でありまして、これらの者の中には運転手の免許を持っている者もあり、いろいろ前職がある。しかし、女に働かして食っていく、これは一番楽なことでありますので、女にどんどん働かせるということでありまして、これらのいわゆる売春婦には八割というものがついております。これらのいわゆるひもというものの今後の動きについては相当注意を要しますけれども、山谷のひもというのはいわゆる徒党を組んだところのひもでなくて、個々にそれぞれ女を食いものにするところのひもでありますので、徒党を組んで暴力売春という行為に移るにはいろいろそこに経緯がなければ結ばれない。従って、われわれの方では、こういうものが徒党を組んで暴力売春に移るということに対しては重大な関心を払って現在検挙し、見守っておる状況であります。そういうような関係でありまして、次に先ほど申し上げた千束周辺の白線の関係でありますが、これらのものは吉原の女がどんなふうに転落していっているかという点を先日三日間にわたりまして、山谷に立っているところのいわゆる街娼ですね、これを一々職務質問させました。それで実態調査を現実にやってみた。その結果、三日間に吉原から転落して出たというところの女は七名ということであります。これはおそらくその倍以上の数字があるだろう。これらは警察官の職務質問をやると、みんなそういうところに載せられるということをきらいまして、逃げてしまうというようなところからほんとうの姿は出てこない。ですから、おそらくその二倍くらいの数字が転落して、いわゆる吉原から廃業したその者が今度はすぐ近くの山谷に出て、町に立って売春を呼びかけておるというふうな状況であります。これらの人たちに対しては、よくわれわれの方も注意して保護更生に力を入れておる次第でございます。
なお、ひもの関係に結びつきまして、いろいろ暴力団の関係を申し上げなければなりませんが、これはあとでまた項目を別にして申し上げたいと思います。
最後に、第一号の、「同法の全面施行に伴い、事犯処理、保護更生について留意すべき点」というような点は、先ほど来、菅原先生、金子検事の方からいろいろお話があった通り、警察として売春防止法の全面施行については、いろいろこの間に幾多の移り変りがあると思いますので、これらの動向をよく注意して、事犯処理に当ってはよく基本的人権の確保という本法の趣旨に従いまして、適時捜査を推進し、人権を尊重して処理する。この線をわれわれはよく反省しまして、部下にもその点を強調して、今後も、これまでやって参りました通りやっていきたいと思います。
なお、婦女の検挙に当っては、法の趣旨が、売春婦の保護更生に重点が注がれておるという点を念頭に置きまして、これら売春婦の保護更生を念とし、いわゆる売春環境を粛正して、女性売春の転落を防止いたしまして、その背後にあるところのいわゆる売春を助長するところの悪質な行為、いわゆる管理売春、これらのものに対して徹底的に取締りを加えて、社会の善良なる風俗を維持するということをわれわれは念頭に置いて、今後もこれらの取締りに当っていきたいと、こういうふうに思っております。
次に、「最近における売春勧誘行為の実情、その取締状況及び今後法案第五条の罰の取締上注意すべき点」であります。これは警察に課せられたいろいろの課題であろうというふうに私たちは思いますので、その点を詳細に申し上げたいと、こういうふうに思います。この売春の勧誘行為というのは、なかなか善良なる社会秩序、これを乱すことが非常に大きいのですね。それで、外を散歩している、あるいは盛り場等を見物している、いなかから上京した人が東京見物に来ている、そういうところのちまたに立ち現われて、それで、最初からいかがですか、どこかで遊びませんかというふうにやるのは、これは正直なやり方である。お茶を飲みましょうとか、あるいは散歩しましょうとか、あるいは映画を見ましょうとか等、いろいろ呼びかけておって、話が相当進むと、今度は少し話を切りかえて、どこかで遊びましょう。遊ぶということは、どこかで同きんするということを意味するわけです。遊びましょうということですね。それで、歩いている最中に、もし聞かれたときには、半年ぐらい前から同棲しているというふうに話してくれというふうな、いろいろ事前工作をとって、それで宿屋なら宿屋へ行くということになります。それからまた、喫茶店等において待っておりまして、それでこのポン引きというのがおりまして、ポン引きが介在して、これは客引きというのを表でいろいろやると、外形的にすぐわかりますから、それを防ぐためにやらないで、喫茶店等でもって客待ちをやるのですね。客待ちをやる。そうしてポン引きというのがおりまして、これがいろいろ興業街あるいは盛り場等を歩いている者にバンをかけて、いかがでしょうかと、こういうふうに呼びかけて、これをいわゆる売春宿に連れていくと検挙されますから、それで、これらの者が、今言った喫茶店等に行く、そこでお茶を飲みましょうというようなことでやっている。そこで、話がまとまって歩いて行くと今度は検挙されるから、すぐタクシー等を拾って、山谷とかその他宿屋ですね、木賃宿、その程度によって、旅館その他へ行くというふうなケースがある。それからまた、パチンコ屋等に入っておって、パチンコをやっている隣の人たちにちょうどいい手ごろだという人があると、そこでもっていかがでしょうかというような方法をやる。それからこれは女の売春には必ずポン引きというのが介在しますので、ポン引きの者が輪タク屋をやっていて、一回り社会探訪いかがでしょうかというふうにして、そこでもって車に乗るとか、だんないかがでしょうかということによって、そうしてお客を引っぱり込む。これが勧誘行為のケースでありますね。いろいろまだそのほかにあると思いますが、気がついた点を申し上げます。
これらの勧誘行為によって、それでは都民はどんなふうに迷惑しているかという点を申し上げてみたいと思います。大体この売春婦の人あるいはポン引き等が立ちふさがっておりますと、そこの付近の人たちは異様な雰囲気から非常に秩序や風俗が乱れたという感じを感じさせられて、非常に健全なるこの環境を害しまして、それで土地の空気が悪くなる。一つの例としては、卑猥な言葉でもってふざけ合う。近所に子供等を持っている人たちは、子供の教育上看過できないという点がいろいろある。それからまた、夜は売春婦で教養のない人たちは、夜おそくまでいろいろ話し合いをする。従って、近所の人が安眠妨害で寝られない。非常に困る。深夜ですから相当響く。また、ちり紙その他たばこ等をそこらでやたらに捨てる。非常に町の衛生上よくないということから非常に迷惑をする。また、健全なる喫茶店だとか、あるいは映画館等に影響している。そこのところの看板をのぞき込む人をつかまえて、いかがでしょうかというようなことをやると、お客をとられてしまうというようなわけで、そこで非常に迷惑をするというようなことから、警察にこれらの厳重な取締りが常に要望されております。これらの人たちがそういうふうにしてやっているので、町の人たちは反対の立場においてこれらを非常に唾棄しておるというふうな状況であります。これらを警察としてはよく動きに注意して取締りをやっておるわけであります。しかしながら、これらの従業婦を検挙したときの状況を見ますと、中にはほんとうの転落したばかりの人もおります。また、常習として木賃宿等に住居してやっておる者もあります。これらを同一には扱えません。よくそういう点、われわれの方はこれらの保護更生については常にそういうふうに注意してやっておりますので、これらの従業婦がそういうところに転落していくということについては、警察の方としても一生懸命やっておりますけれども、どうぞ一つこういうふうなところに落ち込む人たちの保護更生についても、関係機関の御協力を切望してやまない次第であります。
次に、売春婦と暴力団またはひもとの結びつきの関係、これは非常に重大なことであります。警察庁からも各県本部、各警察末端までこれらの指令が出まして、暴力売春、これらに対しては徹底的に検挙しろという点が指示されております。われわれもそういうような吉原並びに周辺の山谷、これらのいわゆる赤線、白線等を持っておりますので、これらの動きについては詳細なる調査をしまして、常にこれら暴力団等の動きについては注意し、少しでもそれの気配があったものは迅速果敢にこれを検挙するということに力を注いでやって参っております。そこで、最近の動きを見ますと、まだ暴力団として大がかりな管理売春をやっておるというものはまだ今のところありません。ちっぽけな組織で、吉原から転落した者を二、三名、いろいろ管理売春の域に入ってくる、あるいはよその地域から連れてきて、これらの女を、先ほど言った通り、喫茶店等を介在してやるとか、そういうようなものがちょいちょいこちらの目に入りますので、こういうものは検挙しておりますし、また、今盛んに検挙の内偵を続けたりしておりますので、今後これら暴力売春については徹底的にやらなくちゃいかぬ、こういうふうに思っております。これは吉原というものがなくなって、それと入れかわりに暴力団が婦女を管理してやるということになると、非常に暴力団の被害をこうむるところは甚大でありますので、こういう点については、われわれはあらゆる動向、組織等を解明してやっておりますので、その点を御報告しておきます。それでこれら愚連隊の取締りについては、よく組織を解明して、潜行するところの売春、これとの結びつき、これらについては不断に取締りをすることが肝要であります。浅草警察署としても、これらの取締りについてはいろいろな係りを糾合しまして、対策するところの本部というものを設けまして、そうしてこれらの取締りに当っておるのであります。その点を御報告しておきます。
それから最後に、「勧誘等の罰の違反者の取締について、捜査技術、人権尊重の見地から特に留意すべき点」これは今度の売春防止法第五条に新しく作られた項目、公衆の目に触れるような方法で客待ちをするという点が新しく法が作られた。今まで東京都条例による内容には、客待ちをしたのに対して処分をするというのは今まで規定がなかった、今度の売春防止法には、売春をする目的をもって客待ちをした者は、それぞれ第五条違反になるという点がうたわれております。これは非常に今までと違ったケースでありまして、今までは街頭に立っておっても立っておるだけだったならば、これは交通妨害になれば違反ということになるので処罰されるとか、いろいろなりますけれども、交通妨害にもならぬ、軒下にたたずんでおる、また、勧誘もやらない、ただ立っておる者に対しては適条がなかったのであります。ところが、今度売春防止法第五条において、売春の目的をもって客待ちをするという者に対しては、これが処罰の対象になっているわけであります。これをよほど注意してやらぬと、先ほど金子検事殿からもお話がありました通り、非常に人権問題が発生しますので、われわれの方としては、よくこれを善良なる婦女であるか、それとも売春婦であるかという点を詳細に内偵調査させまして、慎重にこれを扱い、これら善良なる婦女が売春婦と誤まり取締りを受けることのないように、慎重なる処置をするということを御報告しておきたいと思います。
以上大体時間がたっておりますので、報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/9
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010・青山正一
○委員長(青山正一君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/10
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011・青山正一
○委員長(青山正一君) 次に、菊澤鋭子さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/11
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012・菊澤鋭子
○参考人(菊澤鋭子君) 私は青葉女子学園と申します東北の女子の少年院を預かっております者でございますが、当学園に収容されております娘たちの大部分は処女でございませんで、また、売春と名のつく遊びをいたしておりました者が二〇%ぐらいもおりますので、この娘たちから推しはかりまして、やがて設けられますはずの婦人補導院の運営に当りまして、主として二の五の項目の問題になりますが、この生活指導の難点と存ぜられます点を申し述べさしていただきまして、どうかこのおきてを国をあげてお育て下さいますように、そうしてすみやかにこれを実施にお移し下さいますようにお願いいたしたいと思います。
まず、生活指導の期間、全体の期間でございますが、六ヵ月という収容期間は一応いたし方がないかも存じませんけれども、私はこれはとうていむずかしいことであって、短か過ぎやしないかと存じます。すなわち、この六ヵ月間に盛られました彼女たちへの教育の内容を見てみますると、生活指導それから職業補導、そうして医療措置というようなことになっておりますが、まず、生活指導について考えてみますると、これは人を作ることでございまして、彼女たちにとりましては、まず従来の放縦な、ほんとに気随気ままな生活からのがれるためには、考え方からして改めてかからねばならないことでございまして、人としての自尊心を呼びさまさせ、規律のある生活に親しませると、こう口で申しますれば、ほんとに一息で尽きることでございますけれども、決してこれはなまやさしいことではないと思います。彼女たちにとりましては、二十幾年住みなれたふるさと、しかもそれが貞操観念ということを抜きにいたしますれば、最もたやすい生活の道であり、また、楽しい生活でもありますことを思い合せますときに、なおさら私は自信が持てないのでございます。青葉では生活指導の第一段階といたしまして、はいということをすなおに言える、すなわち、この返事がすなおにできる子になれというようなところから始めておりますが、これがまたなかなかむずかしいことでございます。生まれてからとは申しませんけれども、はいという言葉をすなおに使ったことのない境遇に置かれました子供たち、そんな子たちが集まっております場でございますから、なかなかなまやさしいことではございません。また、職業補導と申しましても、私ども少年院に収容されております娘たちから推しはかりまして考えてみますると、決して職業補導の程度までいっていないのでございます。補導以前のもの、たとえばお裁縫にいたしましても、針の持ち方さえ知らない、針を持ったことのない子がほとんどでございます。針の持ち方から教えて始めましたお裁縫が、六ヵ月では決して実を結ぶものでもございませんし、それで渡世できるなんということはとても考えられないことでございます。その上に、この娘たちは、お金さえあればそんなものはどうでもなるのだという気持が十分でございまして、お裁縫を習うなんということはばからしいことだ、私たちがかせいだお金で幾らでも縫ってもらえる、こしらえてもらえるというようなことを申します。先ほどからお話もございましたように、これも一応子供たちの考えといたしましてはほんとうにもつともかも存じません。私の方におりました子供で、つい先だって退院いたしまして、もう間もなく売春の道に入りましたのでございましたが、私が上京いたします数日前に、駅前の交番に保護されまして、どうしても口を割らないというので、私が出て参りまして聞きましたときにも、一晩に五千円くらいになる。引き取られておりますはずの兄の家に連れ帰ろうとしましたが、どうしても帰らない。こんないい仕事はやめられないと申しました。こんなふうな子供でございますから、こういったような女子の教育には私はコツが必要だと存じております。私は三十数年女子教育に携わって参りましたが、ここ、まる六年になります少年院教育で初めて教えられた気がしております。教育はただ習い覚えた方法だけでなく、コツが必要だというようなことを考えました。これは一つの例でございますけれども、お裁縫を習いましょうと申しますことも、お裁縫を習わなければ女として云々なんということを申しても役に立ちません。ですが、あんたが着物の縫い方でも知っていれば格好よく縫ってもらえるじゃないか、服をこしらえてもらったときに、ここをこうしてと言うためには知らなければならないじゃないか、というように持って出ますと、まあ一部分の子供は、なるほどなというような気がするようでございます。
このようなわけで、私は六ヵ月の期間に、それもせっせと習い覚えたことで一生食べていけるような職業は、女の場合はまず家政婦以外にはそうたくさんないのではあるまいかと考えております。こんな意味から、補導院での職業補導はどうかこの線でやっていただきたいと存じております。すなわち、一応それぞれに必要な学科の指導に合せまして、家庭婦人として彼女たちに必要なわざを身につけさせる身近なもの、すなわち、私は普通のおかみさんを仕込むのだというようなところに目標を置かれまして、その線で裁ち縫いのわざあるいは御飯たきのわざというような程度でいきますならば、この六ヵ月でも何とか形ができるのではあるまいか、そんなことも考えております。女子の職業補導と申しますと、少年院なんかにおきましても、編みものとか、洋裁とか、和裁のほかに、手芸とかいうことが出て参りますのでございますが、手芸などに至りましては、IQの割合に低い、ことに私どもの地方はいなかでございますからでしょうが、年々月々、もう一日々々とその姿が進歩発展して参ります工芸品のたぐいではこれは何ともならないことではあるまいか、そんなように考えさせられます。で、家政婦として役立ちます婦人に養成いたしますれば、やがてよい主婦となることもできますわけで、これこそ女子として真の更生の道ではございませんでしょうか。まあこんなふうに考えております。
少年院のことばかり申しまして、恐縮でございますが、私のところでは、そういう意味で家政婦科というのを置きまして、一応洋裁、和裁、編物、孔版とかいうように分かれて修業いたしました子供たち、仮退院まぎわになりました者を家政婦科に編入いたしまして、朝、きょうのようにお天気がようございますと、まず洗たくをしてほしておいて、家の中に入ってまた家の中のつづくりものとか、あるいはお昼前になりますれば御飯の用意とか、そういうことをさせまして、そのうち、日がかげらない先に取り入れていらっしゃいというような意味で洗たく物を取り入れて始末させましたりいたします。これを大ぜいの者で修業いたしましたあとでは、この子供たちが家政婦として一番大事な一つの条件である一人を慎しむという、正直になるということを教え、また、これをためすという言葉はいけないかも存じませんが、ためしますために、一人でお炊事をさせる場もこしらえてございます。ただいまも一人の子が仕出しをしておりますが、仕出しも普通のところじゃございませんで、幸い管区が近くにございまして、矯正管区の研修員のまかないをさせてもらっております。一人で、ただいまの分は二十八名ほど、大体三十名近いのをいたしておりますが、これならば何とかいくのではあるまいかというように考えております。
なお、私はこうした収容された娘たちに社会性を持たせるという意味で、園外に働きに出すということ、これも売春婦なんかにも非常に必要なことではございますまいかと存じております。すなわち、働く意欲をつけるということともに、社会復帰への自信をつける。私たちはどうせ社会に入れてもらえないのだという気持を乗り越えて、私たちでも働けば入れてもらえる、働くことは楽しいことだという線まで持っていきたいと存じております。
補導院は、まあここに収容されました婦人を幸福への道に運び込むための施設でなければならないと存じますが、そのためには期日が短かいということだけがこの娘たちにとりまして最大幸福であるという考え方ではなくて、ほんとうに許される範囲、しっかりとこの娘たちがりっぱに更生できるような方策を講じていただきますことが最も大切なことだと存じております。
その理由といたしまして、彼女たちがこうした道に踏み間違え、陥ってしまいました原因を調べてみますと、その大部分は非常に貧困家庭に生まれております。ことにその最も親しかるべき親に売られたもの、こういうことを考えますときに、社会の、そしてまた、家庭の被害者はこの娘たちだ、私はこのように考えております。また、個人的に本人を調べてみますと精薄が非常に多うございます。生まれたくて生まれた精薄ではございませんが、これを利用すると申しますか、だましにかかる、この人をだます社会の人、これの多いこと、ここにも私たちおとなが反省しなければならないところがあるのではございますまいか、こんなふうに考えております。
で、前に申しましたように、売春と名のつくものは、私のところでは全体の約二〇%くらいになっておりまして、この中でIQ七〇以下がほとんどでございまして、それ以上はたった一人でございます。以上の事実からいたしまして、売春を防止する方策とか、方法といたしまして最も効果的と存ぜられますこと、その一つは、私は業者に対する処置を強化していただきたいということでございます。少年院に送られてくる子供を対象として考えましても、業者の中には非常に悪らつなのがおりまして、少年院の子供の場合は年令を偽わらせておりますが、その方法も非常になかなか巧妙で、雇い主自身が申しませんで、連れの者に申させているというような例もたくさんございます。また、売春宿を教えたら承知しないと申されますので、先ほど申しました駅前交番につかまりました娘も、どうしてもそれを申しません。私が割合に町を知っておりましたものでございますから、どことどことの間を入った所かというようなことから突き詰めたような次第でございます。こんな意味からもこれを利用しようとする方——利用されるよりも利用しようとする方に重点を置いていただきたいような気がいたします。
その二番目といたしまして、施設、今度作られますべき補導院でございますが、この施設の運営者に人を得ること、これがまた大切なことだと存じます。これはいずれの世界にも同じことではございますが、とりわけ人間教育の道には最も大切なことでありまして、また、その中でも矯正教育には細心の注意を払わなければなりません。この意味で、ほんとうに真心をもってこれに当るというような実力と熱意のある者でなければ、とうてい所期の目的を達することはできないのではあるまいかと考えております。
もう一つ、御男子の方の多くいらっしゃいます席で恐縮でございますが、このような施設のの中で直接娘に関係いたしますのには、私は女性、その中でも母でなければうまくいかないというような例も持っております。少年院の子でございますけれども、パンパンをいたしておりましたような子が来ております。たとえば一つの例をあげて見ますと、とげが立った、私のところでは女の職員が十八人おりますが、その中の勤務者が取ってあげようと言ったら痛い痛いと言ってどうしても手を触れさせなかった、そして男の教官を待っておりまして、今度はあっちをほじくれ、こっちをほじくれと言って長いこと男の教官にまつわりついていたというような例がございます。そればかりでなく、男の教官の見た娘と、女の教官の見た娘との間に非常な違いがございまして、これは見解の相違と申しますよりも、子供の方から男の教官に対する対し方と女子の教官に対する対し方が違っておりますので、見た両方が食い違って参りまして、これが教育方針の上に非常にそごを来たして困ることもございます。が、そう申しましても、八千万同胞の半分余りは男の世界なのでございまして、お笑いになるかもしれませんけれども、ふだん必要なものでも重病のとき、病のときにはそこから隔離しなければならないと、まさに売春婦はこれに当るのではあるまいかというようなことも感じさせられております。
それからその防止の方策の第三番目といたしまして、先ほど申しましたように、六ヵ月という期間、これが何ともなりませんものならば、なおさらのこと保護更生の方策が強化されなければならないと存じます。先ほどから申し述べましたように、この道はまことに険しく、それにつけましても退院後の更生への助力、助言というものが大いに必要になって参りましょうと存じます。どうかいたしますと、もとに戻りたいという気持、これはほんとうに半年やそこらではなかなか絶えてしまわないものだと存じますので、そこのところに突っかい棒になってやるもの、ややもするとくずおれようとする心にしっかりとしたものを与えてやる助言者、これが非常に大切ではございませんでしょうか。こんな意味で、今後は、いわゆるアフター・ケアと申しますか、この保護更生の方の問題にいたしましても——私は少年院の場合も同じことを考えておりますが、社会復帰への漸移地帯がほしゆうてたまりませんです。少年院でせっかく教育いたしました子供たちも、これがないために、また、もとの道に戻る子が多いということを考えますときに、どうかこの点一つ国でお考えいただきたいと存じます。
それから終りに施設の数というようなのがここにございました。それから収容力とかいうような項目、六項にございますが、これにちょっと触れてみたいと存じます。すべての事情が許しますならば私はこういう施設は小さいほどけっこうだと存じます。もっと極端に申しますと、どなたかお金のおありの方が一人ずつこの娘たちをお預かり下さってしていただけましたならばまことにありがたいと、こんなふうに考えております。そこまではなかなかいかないかも存じませんけれども、何とかして個人指導という点に重点を置いて、この子供たちをりっぱに育て直していただきたいという願いでございます。失礼いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/12
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013・青山正一
○委員長(青山正一君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/13
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014・青山正一
○委員長(青山正一君) 次に、最後に西村好江さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/14
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015・西村好江
○参考人(西村好江君) 私は東京都の婦人相談員の西村好江と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
実はきょう伺います正式の参考人が昨日突然熱が出まして、私が午後東京都に呼び出されまして、こちらに伺うようにというような指令がございましたために、こんなにいい機会をお与えいただきながら、全体の婦人相談員を集めて一度意見を聞くという機会が持てなかったということは、大へん残念でございますし、さらに、たくさんいただきました書類の中で、補導院の問題につきましても、何しろきのうの午後でございましたので、十分な検討もしてございません。そんなわけで、御参考になることを申し上げるというよりも、教えていただく方が多くなるのではないかという懸念もございます。が、ちょうど一年間この保護更生の面で働いて参りましたので、その面からと申しますか、婦人相談員として日々当っております苦労とか、これに対してはこういうふうな御援助をいただいたら、さらにやりよいのだがというようなことを、一般論として申し上げさしていただきたいと思います。
東京都の婦人相談員は、ただいま四十三名でございます。このうち、立川市が一名、大島、三宅、八丈に各一名。この四十三名は、昨年の一月に任命されまして、二十三区の福祉事務所及び三多摩の地方事務所に一名ないし三名という数で、重点配属になっております。身分は非常勤特別職、週四日というふうに規定されておりますが、御承知のように、都内並びに都下は大体この二月十五日から月末までに転廃業をいたしつつありますので、赤線や青線、いわゆる集娼地区というものを持たない地区の婦人相談員は、ほとんど全部この赤線、青線の方に動員されまして、ただいまのところ、新宿その他を応援いたしておりますので、ほとんど休日返上というありさまで、更生婦人の相談に当っておる次第でございます。
現在におきますところの仕事の運行状況と申しますのは、業者の転廃業によって置屋へ出張相談をするわけでございます。やめるという置屋がありますと、そこへ相談員が出かけていきまして、相談をする。それから東京及び八王子の地方検察庁の更生相談室から差し回しになるケース、これが一つ、それと民生委員その他協力機関よりの連絡によるケース、これに本人が自主的に申し出たケースというようなもので、ただいま取り扱っておりますケースの比重と申しますか、その数の割合を申しますと、ただいまは業者の転廃業に伴うケースが大多数であります。その次は、地検の相談室扱いによるものでございます。協力機関と自主的に申し出るケースというのは今一番少いのでございますが、今後は後者が多数を占めるのではないかと想像されます。
と申しますのは、この売春防止法を立法せられましたところの先生方には、もうすでに早くから、こんなことはもうとっくの昔にわかっていたとおっしゃることでございましょうが、私ども婦人相談員が自分ながらびっくりしちゃっておりますのは、ふたをあけてみますと、帰郷する、帰郷するというのが多い。先ほど浅草の署長さんからも御発言があったわけでございますが、それから結婚の数、これが非常に高率を占めておるのであります。疑問に思いまして、これを分析してみますと、置屋へ行きまして出張相談いたしますときに、置屋が、まあ何でもいいから帰るというようなことを言っておけばいいのだということもありましょうし、それとまあ、その日一日ちょっと会った婦人相談員よりも、今まで長い間一緒に生活してきましたママさん——ママさんというのですが、この人たちの方が親しみもありましょうが、それでなかなか目がさめないで、そっちへ相談するというような気持もございましょう。それと、管理下にある従業婦の人たちは、とにかく多少でも金を持っている。そこで、規律ある生活を好まないし、ことに役所なんかあまり好きじゃないというようなことがあげられる。そうして、大して当てもなく、ともかく帰郷するといって、事実家へ帰っているのもございますし、武蔵野の場合は、武蔵野市の中に帰郷しちゃっておるというような者もあるわけでございますが、まあ何と申しましても、売春をしておる人は、りっぱで裕福な家庭というものはほとんどあり得ません。必ず何らかの、たとえば貧困とか、家庭不和とか、いろいろな問題を持ったものが多いわけでございます。これは、先ほど菅原先生からお話がありましたように、こういう所へ帰りましても、お金を持っている間は、一週間や十日はいい顔をしてくれましょうけれども、長くなれば、何かおもしろくないようなきっかけがあれば、飛び出してしまうとか、家庭の調整ができていないところに帰っても、落ちつかない。それともう一つは、金を目当てにだます人がずいぶん出てきている。お金のある人と結婚をしたいと、結婚を世話してくれという人が出てきておるわけであります。こうして裸になってしまう。それから、なかなか役所へ行かないで、シナそば屋へ行ってみたり、食堂の女中をしてみたり、もともと意識の低い人たちでありますから、正当な生活はできませんで、いよいよ困り果てて、そのときこそ好むといなとにかかわらず、相談に来るというようなことになるのではないかと思うのであります。
従いまして、私ども最近外へ出ますと、ことしが売春防止法のピークの年だなんということを聞かれるのでありますけれども、確かに全面実施という意味ではピークでもございましょうし、赤線がなくなったということでも一つのピークであろうかと思いますが、更生相談の面では、初め予定いたしておりましたものよりも、だいぶ先に延びてしまったと申しましょうか、二年、三年先に更生相談が軌道に乗って、どうやら目安がつくのは十年くらい先になるのではないか。これは、私、一度菅原先生と話し合ったことがあるのでありますが、菅原先生が十年かかりますよというようなことをおっしゃったので、その根拠はというふうに愚問を発しましたときに、まあ大して根拠もないけれども、そんなふうに思うというふうにおっしゃったのでありますが、それが最近の動き方によって、身をもって、なるほど十年くらいかかるのではないかというような気が実はいたして参ったのであります。従いまして、この方策をお立て下さいますときに、昨年の予算が残ったというようなことのために今年の予算を削るというようなことでなく、まだまだ問題は今後に残されておるというような考えの上に立って先生方に御努力いただけましたら、どんなに助かることかというように実は考えております。
さて、次は、更生状況及び指導の方法について申し上げますと、ほんとうに完全更生だと私どもが太鼓判を押せます更生と申しますのは、大体二割くらいの見当なんです。これはお恥かしい話なんですけれども、特別な権利も持ちませんし、あまり人のいやがることを侵害することもできませんので、二割、これはほんとうのかたい数字でございまして、もっと時をかけ、そうしてお金を使って、ほんとうによく指導してやりましたなら、七、八割が更生するのではないかと、こう思われるのであります。もっともこの二割の中には、これは先ほど申しましたように、太鼓判を押せるところの更生、そのほかに長期指導と申しまして、たとえば吉原なり武蔵野八丁をやめますと、私どもの手で更生させる、これはこの数字に入っておりませんが、手を尽しひまをかけましてやりましたら、完全に七、八割は更生できるという自信を持っております。
それから指導方法について申しますと、これはとにかくきわめて複雑なものを持っておるわけでございます。従いましていわゆる生活保護法によりますところの対象のものの考え方と申しますか、その出発点に根本的な違いがあります。これに相談員が非常な苦心を払うわけであります。そこで、単身者の場合には婦人寮に入寮させる、母子の場合には母子寮、家族持ちの場合には低家賃の住宅に入れるとか、そうして就職のあっせん、生活保護をかけ、さらに医療扶助の適用などによって経済的な問題を少しずつ解決させておりますけれども、何と申しましても、一番苦心を要しますのは、家の問題でございます。
これは最近取り扱ったケースでございますけれども、武蔵野八丁の青線で、二十七才になる醜業婦がおりますが、夫が悪くて離婚をし、年をとった母親と子供二人を養うのには、どうしても普通の女の収入ではやっていけない。それで売春婦になって、八丁に身を沈め、毎月一万円なり一万五千円を子供と母親に仕送りをしておりましたが、これは郵便局の受け取りを見ましたけれども、親孝行だろうと思った。まあ親孝行には違いないのですけれども、親孝行を一生懸命にしていたわけでございますけれども、法の完全実施を目前に控えまして、警察の方の手入れもなかなかやかましくなり、ついにつかまりまして、八王子の検察庁から私どもの方へ回ってきた。ここで、この更生の方法をどうしたらいいかということを、私は本人にも相談いたしましたときに、とにかく老母と下に二人の子供とがいる。いなかの家は生活保護をかけよう、そしてあなたは寮に入って単身で働いたらどうか、こういうことも話しました。ところが、先生、それはとんでもない話だ。私のいなかには、私は大へん出世して、東京へ出てきて会社員になってしまったと言っている。だから、そんなところへ保護をかけられたら、いなかに帰ることもできないから、どうかやめていただきたい、こういうことなんです。それでは仕方がない。そこで、それなら第二段階としてどうしようかということになりまして、それじゃ仕方がないから、お母さんと子供を引き取る。ところが、七十幾つにもなる母親だから、いなかを離れるのはつまらないし、お隣へ行ってお茶を飲むのもつまらないから、東京へ出るのはどうでしょうということでしたので、何とかそこを引き払って、東京へ十二月に引き取った。そして本人に就職させるように説得をいたしました。そうなりますと、今度は住む家がない。お金がたくさんあって、権利金をたくさん払い、礼金をたくさん出し、月五千円も六千円もの家賃を払いますならば、それは今のことですからございましょうけれども、軽く五万円かせいでいた人でも、更生しますと、七千円、六千円というようなことになります。これではとても家賃が払えるものではございませんので、ほんとうに東奔西走いたしまして、まあなかなかないのです、それでも。で、何とかしてアフター・ケアもしてやりたいけれども、行くのにはおみやげを持っていかなきゃならないし、長くほうっておけば、あっさりあきらめてしまうだろうし、それでどこへ行ったらいいのだろうというようなことで、道のまん中に立ちつくしたというようなことも、私自身ございます。これが全国の婦人相談員の姿ではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。
さらに、山谷とか南千住のドヤ街、これは詳しく先ほど浅草の署長さんがお話しございましたが、こういうところに住んでおります人は、一日一人の宿泊料が百円から百五十円。ところが、日銭で払っております。そうしますと、家族三人といいますと月九千円、三十一日の場合には九千三百円。こういう場合に、夫が日雇いのような正業がございましても、正業の場合は一万円から一万二千円。ところが、これはほとんど家賃に取られてしまう。とてもしようがないからというので、妻は売春をしているというようなことがあります。申し上げるまでもないのでございますけれども、家を与えさえすれば何とか更正できるというケースがありながら、家がないために、婦人相談員はとまどっておるというのが、一番つらい私どもの問題でございます。そのほかにもございますけれども、とにかくこういうことが言われるわけでございます。
しかし、家の問題は大体都に属することだと思うわけでございますが、国におきまして何らかの方策をお立て下さいまして、お金と申しますか、物質で人間が救われるということでございましたら、政治の力において何とかやっていただけたら、ほかの面との振り合いもございましょうけれども、お考えいただきたいというふうに考えるわけでございます。
次に、基地の状況でございますが、先ほど金子検事から基地売春のお話がございましたけれども、私は北多摩の地方事務所に所属いたしまして、八王子検察庁の窓口で基地売春の相談にあずかっております。そこで、まあ僅々一年でございますが、こちらにすわっていらっしゃる方々のようにベテランではございませんけれども、この一年間の間にまあ考えたところの基地の特異性と申しますのは、非常に流動性を持っているということでございます。同じことを申し上げるわけでございますが、この点、たとえば軍隊の移動によって流れて行ったり、流れて来たり、兵隊にくっついて行ってみたり、くっついて来てみたり、従って、実態がとてもつかみにくいということでございます。それともう一つは、外人、ことに白人を相手にしている婦人たちは、大へん妙な優越感を持っているわけでございます。ことにオンリーが本職で、キャバレーが内職で、そこでまた売春のアルバイトをやっているというようなケースは、ダブルベッド、コーヒー、トースターというようなものに対するちゃちな文化生活の魅力がありまして、とてもやめられないというようなむずかしさ、これは封建的な様相の非常に濃い赤線の婦人たちと、根本的に性格の相違があるわけでございます。その上、基地売春というのは国際的な関係もありまして、なかなかむずかしい問題もあるかのように考えられます。それと、さらに基地の女の人たちといいますのは、非常に任意性が強いこと、これはいわゆる赤線の人たちの飼いならされたものと違いまして、初めから大へん勇敢だというわけです。非常に勇敢で、特別な庇護を嫌いまして、生活保護をかけられるよりも売春をしていた方が恥ではない、こういったような考えを持っていることもあげられるのでございます。そこで、この人たちをある意味の監視のもとに置くということは、なかなか困難であるというようなことが考えられます。かといって、補導院でもないし、しかも自活する道は十分あるといたしますと、できれば部屋代の安い女子のアパートのようなものを建てていただいたら、これの方が効果があるのじゃないかというようなふうに考えております。また、婦人施設におりました単身者も、施設におります間は食べていかれますが、多少こづかいもできるのでございますが、退寮して今度は部屋を借りました場合は、七千円、八千円じゃやはり生活困難で、また再び売春をするかもしれぬというふうにも考えられますので、この場合も、安いアパートがあれば一段と更生するのに力になるのではないかというふうにも考えられるわけでございます。
なお、これはちょっと朗報でございますけれども、最近部屋貸しをしておる人たちの間で起っていることでございますけれども、ざる法、ざる法とずいぶん言われます。われわれのように直接ぶつかっている者は、法の悪口ばかりずいぶん聞いているわけでございますが、このざる法も、これはあってよかったなあという感じがいたします。と申しますのは、立川周辺で部屋借りしまして、立川の基地へ通っている売春婦があります。この人たちは非常に高い家賃、非常に高い部屋代を出して、部屋を借りている。二人か三人置けば、十分食べていかれる。そうすると、ここに部屋貸しをしておった人たちは、何だか知らないけれども、四月から三万円罰金を取られる。こまかいことはちっとも知らないのですけれども、売春の人たちに部屋を貸すと、三万円取られてしまう。ほかのことは何にも考えないで、三万円の方が頭に来てしまって、それまでねえちゃん、ねえちゃんといって、一生懸命大事にしておった、おかみさんたちが、ねえちゃん、正業についてくれないか。食堂の女中でもいいし、そば屋の手伝いでもいいから、何でもいいから正業についてくれ。たまに夜出ることはいいから——そこには弾力性がついているわけでございます。たまに夜出るのはいいけれども、正業についてほしい。部屋を貸しているおかみさんが婦人相談員の変型みたいなことを始めてくれましたので、これは直接醜業婦にもつながることでもございましょうし、さぞ効果のあることでございましょうし、またひいては、これらの女の人たちに部屋を貸す人たちが、だんだん減ってくるのではないかというような傾向が、だんだん見られて参ります。これは私たちにとって非常にありがたいわけでございます。
次に、ひもの問題でございますが、ひもにもずいぶんむずかしいひももあるようでございますけれども、私どもはひもを二色に分けております。おっかないひも、もう一つは家族のひも、親とか子供とか夫とか、こんなひももあるわけでございますが、婦人相談員の方で扱っておりますのは、大体家族ぐるみのひもの方が多い。従って、とても苦労が多いわけですけれども、先ほどから出ておりますひもは家族のひもではなさそうです。このひもの問題で最近ございましたので、夫がありまして、子供二人ある。で、検挙されまして、売春から足を洗っておでん屋を始めようというので、屋台のおでん屋を始めた。それについて、おでんを作ることも練習しなくちゃならぬということから、あるおでん屋に見習いに行った。二、三日勤めてみたら——おでんを作ることを教えてもらいに行ったわけです。そうしましたら、そこの主人から強く誘われちゃった。言うことをきかなければ、店を出させない。出せば、ひもになる。こういった町のヨタモノが更生を阻害している例がたくさんありました。このケースに関しましては、相談員の熱意で、小学校のそばに文房具店を開かせたりしましたので、これがかえって逆効果になったというようなことも実はあるわけでございます。
最後に、婦人補導院の法案についてでございますが、先ほど申し上げましたように、何しろきのうのお昼にあずかりましたので、ゆっくり目を通していることもできません。従いまして、折がありましたら、婦人相談員全部が集まりまして、婦人相談員としての一つの意見をもし反映さしていただけますならば、そういう機会を作っていただきたいと思いますけれども、さっと私が拝見いたしまして考えますのに、私ども大体この一年間で、私だけで百人扱ってきております。まあ十四回も検挙されてきている、頭はまっかっかに染めて、指はまっかにして、口は今ほんとうに人を食ってきたかと思うような様子をした女の人たちがいるわけです。こういった人たちは、外部から強く圧力が加わらないと、なかなか更生できない。そんな意味から、絶対にこの補導院は作っていただきたい。この原則には賛成でございますし、賛成どころか、ぜひお願いしたいわけでございますが、ここでほんとうのたった一年間の、しろうとと申しますか、その経験で感じたことを申し上げますと、悪いところを突っつき回すよりも、どんな人たちでも、とにかくどこかに良心が隠されているということなんでございます。どうか、そのたくさん良心を持っているところの、悪いものをはいでいただいて、そうしていいものを見つけ出して、その芽を育ててやっていただくというようなことに重点を置いていただきたい、実に抽象的なことでございますが、こんなことを考えております。
この点で、法第六条の給養というところがございますが、第一項の、一定の服装をさせるということが、そういう言葉ではございませんが、被服を貸与するということがございますが、これ、どうかと思うのでございます。これは、ずいぶんりっぱな法律家の先生方や、長年たくさんの経験をお持ちになった方のお作りになったことでございますから、ただしろうとの考えで、気持だということで聞いていただけばけっこうでございますけれども、ちょっと私ども疑問に思うわけでございます。と申しますのは、ここに収容されてくる人たちは、将来のあり方としまして、先ほど申し上げました任意性の強い基地の売春婦が多くなるだろうということでございますね。これは残された問題でございますから……。それで、この人たちに一貫して見られます傾向は、非常なコンプレックスを持っている。そのコンプレックスを虚勢によってカムフラージュしているということが言える。それで、ちょっと制服というとだいぶいいようでございますけれども、何か罪人のような感じを与えるのじゃないか、かえって反撥する気持を起させるのじゃないかと、こういうような気がしますね。ことに女の人たちは、ちょっとした胸飾りをつけましても、ちょっとした何かをからだにつけましても、気持がやわらかくなりますし、女性特有のデリケートな気持を生かす方が、そうじゃない方よりも有効じゃないかというふうにも思われるわけでございます。
次に、第十一条の懲戒のところの二でございますが、「十日をこえない期間謹慎室で反省させること。」ということがあるわけでございます。そこで、私どもが思いますことは、おどしや何かではとても彼女たちを改められないということでございますが、たとえば手錠をかけられまして婦人相談室に入って参りましたときに、怒ったりなんかしたのではだめなんでございます。非常に硬化しておりますし、向うを向いてぷかぷかたばこをふかしている。なかなか相談に応じないといいますか、気持が落ちつかない。そういう場合に、私はしばらくほうっておきます。ほうって、しばらくして気持の落ちついたときに、あなたのお母さん、あるだろうか。お母さん、ある。あなたのその姿を見たら泣くだろうね。かわいそうだね。もしあなたの姿をお母さん見たら、私たちと同じことを言うのじゃないかということを申しますと、どんながんこな、虚勢を張っている女の子たちも、そっと下を向いて、そうして涙を流し始める。流し始めたらこっちのものですから、それからつかまえて二、三時間説き伏せて、相談して、足を洗わせるというようなことをしております。婦人相談員はだれを借りるかと申しますと、お母さんの力を借りる。お父さんは十万円お取りになっても、あまり役に立たないので、お母さんを借りてきて仕事をしております。これは、虚勢を張っている者はもろいと申しますか、一面非常なもろさを持っております。もろさを持っていることのこれは査証ではないかといえるのです。従って、独房に入れることよりも、やさしいお母さんの愛情を持った人がふところに入れてやるということの方が、さらに有効である。
保護具の問題も、性質は違いますが、これについても御考慮をお願いしたい。とにかく長年おやりになった方々のお作りになったことでございますけれども、私どもは直接毎日々々、ともに泣き、ともに歩き、ともに苦んでおります立場から、どうしても愛情というものは絶対必要であって、婦人相談員の仕事の一面は、愛情によって補われていると申しますか、そういうような考えを持つのであります。従いまして、この補導官になる人をお選びになりますときには、先ほども御発言がありましたように、お母さんの愛情を持った人、気持のやさしい人をお選び願いたいということを、切にお願い申し上げまして、非常にまとまりのつかないことでございますが、これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/15
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016・青山正一
○委員長(青山正一君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/16
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017・青山正一
○委員長(青山正一君) これにて参考人の方の御意見は、一応全部お伺いいたしました。
それでは、御質疑のおありの方はどうぞ御発言願いたいと存じます。
なお、御参考までに、当委員会に出席の政府関係係官の名前を申し上げますと、法務省から唐澤法務大臣、横川政務次官、渡部矯正局長、勝尾経理部主計課長、それから最高裁の菰淵家庭局長、それに横井刑事局総務課長、厚生省から加藤生活課長、そういった方々がおいでになっております。なお、最高裁の家庭局長は用務のため時間がないそうでございますから、家庭局長への御質疑を一つ先にお済ませ願いたいと思います。
それでは、御質疑を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/17
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018・大川光三
○大川光三君 私は、最初に菅原さんにお伺いをいたしたいのであります。それは、このたびの売春防止法の一部を改正する法律案の中心となりますものは、御承知の通り、補導処分を設けるということでございます。そこでこの補導処分の目的といいますのには、あるいは生活指導をやり、職業補導をやり、医療等を施して、売春の習性を矯正し、社会復帰をはかるというような趣旨でありまして、これはまことにけっこうであります。しかしながら、その目的を達成する手段といたしまして、補導処分の言い渡しを受けた者を、一律に補導院に収容して自由を拘束するという点でありますが、一体この補導処分を受けます者は、裁判の方では執行猶予の言い渡しを受けるのであります。すなわち、懲役または禁固の体刑を猶予するということが判決の骨子であります。しかるに、その執行猶予された者に対して、補導処分という名によって自由を拘束するということが、いかに更生の目的であっても、それは多少行き過ぎではなかろうかという点でございますが、この点について売春対策審議会でもいろいろ御論議があったことだろうと思うのですが、そのような点をまず伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/18
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019・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) これにつきましては、いろいろ今のお説のごとく議論もございまして、なおかつ法律問題といたしましては、私はしろうとでありますからよくその点はわかりませんが、大体論といたしましては、この補導院に参ります者が、大体もう、はしにも棒にもいかないような人たち、一番最後に来る人たちであります。若干疑点もありましょうが、こういうものがなければ、どうしてもできないのじゃないか。その内容については、先ほども申し上げた通り、いろいろ議論がございます。それからまた法律問題に疑点もあり、幾多の議論は繰り返したのでありますが、どうかそういう大目的のために、多少の欠陥がありましても、何とかしてこれをお通し願いたいような気が一ぱいであります。ことに四月一日を控えておりますので、必ずしも正確を期するような答案は望めませんでしたが、なかなか議会やその他では、いろいろ順序や何かがございましょうから、四月一日までに何かするには、しさいのところまで正確を期することは一つお許し願いたいということで、先ほども申しました通り、おじぎをしてもお願いをしたいと、こういう次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/19
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020・大川光三
○大川光三君 売春防止法の生みの親だといわれております菅原さんが、ただいまお言葉の通りに、何とかして四月一日に間に合わしたいという、そのお気持はよく了承いたしております。ただ、私のさらにこの点でいま一点伺いたいと思いますことは、補導処分のその目的やよし、しかしその手段において自由を拘束することは、多少行き過ぎだという一つの考え方と、いま一つは、もしそうして補導処分によって自由の拘束をするのだということであれば、この法律はいわゆる刑の執行にかえて補導処分をやるよりも、むしろ刑そのものにかえて補導処分をやる。いわゆるこの補導処分を受けたことは何らの前科にもならないのだということで、いわゆる刑にかえて補導処分をやるのがいいのではなかろうかという考え方があるのですが、その点について、もう一ぺん御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/20
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021・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) その点は、十分私も両者から論議を尽して承わったのでございます。当時審議会として通しますときにも、一松先生からも、だいぶその点について詳しくお話もございまして、いろいろの議論の点は、私はことでもってそれのよしあしについて申し上げるほどの確信はございませんけれども、先ほど申し上げた、この法律をよく読みますと、かなり親切なことが盛られているのじゃないか。むしろ、私どもが見ると、お客様でも扱っておるような気持がするくらいで、なかなか親切にやっておるのですから、今の御意見ごもっともだと思いますが、どうかその点は一つ専門家の方にお聞き願いたいのであります。私といたしましては、切にお通しを願いたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/21
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022・大川光三
○大川光三君 もう一つ関連して伺いたいと存じまするのは、今度の売春防止法並びにその一部を改正するという法律案に関連いたしまして、ごらんの通りに、補導処分というものは、裁判所が判決を言い渡しますときに、同時に補導処分を言い渡す。ところが、今日の御承知の裁判というものは、いわゆる公判中心主義と申しますか、ただ法廷でその犯罪の事実の認否をやって、そうして果してその被告人が補導処分をなす適格を有しているかどうかということは、裁判所だけの判断では相当むずかしいという問題だと考えるのであります。そこで、御承知の家庭裁判所の中には、少年をよく調査いたしまして、あるいは保護鑑別所に入れて、その少年の性格あるいは生い立ち、精神状態とかいうものを、よく調査することになっておりますが、それと同じように、この補導処分を言い渡しまする前に、裁判所において、いわゆる裁判所の調査官というものを置きまして、それぞれ専門的な立場で調査をして、その調査官の報告に基いて、裁判所が最後に判決の言い渡しをするというために、そういう裁判所調査官を置く必要がなかろうかというように考えられまするが、その点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/22
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023・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) この点は、先ほども申し上げたように、私は、むしろ家庭裁判所でやっていただく方がいいのじゃないかというような、これも漫然たるゆえんでございますけれども、その審議会においてもそういうふうな意見がたびたび出ました。自然そういうふうな点から見ましても、家庭裁判所に調査官云々ということが果してどうかということも考えられるのですが、しかし、ここでやる以上、何か補助のために調査官を置くことにせざるを得ないようになるのじゃないか。もっと端的に申し上げれば、家庭裁判所でやっていただきたかったのですが、何だか家庭裁判所の方で少しきらったのじゃないかという気もするのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/23
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024・大川光三
○大川光三君 ただ、菅原さんの御意思は、家庭裁判所でやってもらうという意味は、今度は裁判所にも家庭裁判所と同じような調査官を置くということには御異存はないわけでございますね。もし家庭裁判所が扱えない場合、裁判所独自の調査官制度というものをこしらえて、そうして判決を言い渡すときの一つの補助とするということに、御異存ないわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/24
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025・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) それはどうも、よく……。私の返事はわからないことばかりで申しわけないのですが、あそこの知識がございませんからですが、どうもそのとき承わっていて、皆さんの御意見によると、どうもマッチしないのじゃないか。しかしながら、やる以上やむを得ないのだから、補助する意味において置くよりまあまあしようがないのじゃないかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/25
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026・大川光三
○大川光三君 次に、東京地方検察庁八王子支部長の金子さんに伺いますが、先ほどのお説の中に、街娼の八〇%は麻薬中毒者である、しかもその麻薬というものは暴力団が密売をいたしておるということで、結局暴力団の麻薬密売と、麻薬中毒と、そうして売春という、この三つのものの因果関係が結はれておるように私ども感じたのでありますが、そこで売春を根絶するという、そんな大きな理想じゃなくても、売春を防止するという建前で、まず先決問題としては、暴力団の麻薬密売をまず取り締るべきか、あるいは麻薬密売、麻薬中毒、売春が因果関係にございますので、この三者の関係について、どこに重点を置いて取り締るべきかということが疑問になるのでありますが、その点に対する御意見をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/26
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027・金子滿造
○参考人(金子滿造君) 先ほども申し上げましたが、街娼といいましても、これは八王子支部管内の基地売春の街娼なんでして、その街娼の大体まあ八〇%は麻薬中毒者だと、こういうふうに申し上げたわけですが、そうしてそういったものとそれから暴力団との関係なんでありますが、麻薬を密売しておるもの全部が暴力団の手によっておるかというと、そういうわけではないのであります。まあ大体麻薬密売をやっておる暴力団ないしは暴力団の手下といいますか、まあ小愚連隊というような連中が相当おるということを申し上げたわけなんですが、少し足りない点がございましたかもわかりません。
そこで、大体愚連隊なんかは、売春婦にまず麻薬を注射しまして、そして一種の中毒者にしてしまう。それで、その結果まあ売春婦がどうしても麻薬がないと生活していけないというので、麻薬をせびる。そこをまた暴力団の連中がいいことにして、その麻薬を売りつけるというような関係になっておりまして、これはどうしても今後こういったようなケースが相当ふえるのじゃないかと考えておるのですが、昨年あたりなんかも非常に、私の方の管内でも麻薬の事犯が多かったわけであります。それらをこう探っていくと、大体、全部ではございませんが、相当売春婦と関係があり、それからまた暴力団と関係がある。売春婦の中には、売春婦のところへ愚連隊の手先が持って来て売る場合もありますし、それからまた売春婦自体が進んで横浜の方へ行って麻薬を手に入れるとか、あるいは新宿の方へ行って麻薬を手に入れるとかいうような形で、麻薬を手に入れる場合もあるのです。従って、どうしても売春を徹底的にやるというには、これと並行してやはり麻薬事犯をやる。さらに、うしろにひそんでおる暴力団体、愚連隊をやらなければ、結局完全にこの種事犯が撲滅できないじゃないかというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/27
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028・大川光三
○大川光三君 先ほど金子さんのお言葉の中に、基地売春で自動車内の売春が行われるというお話がございましたが、これは一体どうして取り締ることになるのでしょうか。この条文から申しますと、木かげとか、あるいは人目につかない所で、自動車の中で売春行為をやっておるということを見つけても、現行犯を見つけても、処罰できないというところに、この法のざる法であるゆえんがあると思うのです。もちろん自動車の中でも、道のまん中でやらぬでしょうから、人目につかぬ暗がりで自動車内の売春の現行犯があったときに、どの法律で取り締ることになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/28
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029・金子滿造
○参考人(金子滿造君) この自動車内の事犯ですが、これは最近非常に福生警察の管内になっておる横田基地の事件なんですが、警察の方でカフェだとかキャバレー、それから旅館なんかの検索を盛んにやるものですから、そこで一つの窮余の策と申しましょうか、それからまた大体不良運転手ですが、これらがかせぎがないというので、立川あたりから参りまして、そしてそこにまあやはり助手ですか、助手がくっついておって、そして売春婦を乗せて、そして駐留軍の兵隊を誘って、自動車を大体まあ道路のわきの空地とか、そういった所へとめて、運転手が要領よく立小便をしている。その間に売春をやるというようなことを、警らしている警察官が、自動車がとまっているがどうだというので、発見するわけなんです。で、まあやってるものですから、それでまあその売春婦が、大体平素やっておる連中なものですから、まあこれを検挙してくるというようなことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/29
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030・大川光三
○大川光三君 現在、たとえば勅令第九号でいけますが、新法になって勅令九号が廃止になるということになりますと、単純売春は処罰できなくなりますから、あるいは運転手とか助手は勧誘罪、周旋罪でいかれるかもしれませんが、しかし当事者御両人は処罰できぬということになるのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/30
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031・横井大三
○説明員(横井大三君) 今のお話の当事者同士の問題でございますが、これは確かに、新しい法律ができまして、これではそのままの形では何ともいかないと思います。運転手が周旋になりますとか、場所提供になりますとか、そういう面では問題になるが、売春行為自体を処罰する規定はございませんから、それ自体を対象とすることはできない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/31
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032・大川光三
○大川光三君 それから、再び金子さんにもう一つだけ伺いますが、これも、先ほどお話の中に、更生保護室を大いに活用せよという御議論のその理由としまして、現在のこの法案にいわれておる補導院では収容人員におのずから制限があるんだから、どんどん補導処分に付することもできない。言いかえれば、補導院の収容能力に応じていわゆる補導処分に付する言い渡しを制約されるというような、ちょっとお言葉を拝したんですが、これは補導院がわずかに二百八十人しか収容できないから、補導処分の言い渡しにさじかげんをするんだというのでは、私は補導処分の目的は達せられないと思う。そこで、補導処分の必要性あるいはその有資格者があれば、検事局なり裁判所としてはどんどんやはり補導処分を言い渡すべきがほんとうであって、収容人員に制約されて違反をさじかげんする、あるいは検挙をさじかげんするということはできないと思いますが、その点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/32
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033・金子滿造
○参考人(金子滿造君) この補導院との関係ですが、これはもちろん第五条が、これはもうよくよくの場合でして、大部分は起訴猶予その他の処分をいたしまして、いわゆる公判請求あるいは略式請求というような起訴処分をするということは、売春につきましては例外なんでございますが、その結果、結局補導院へ持っていくというのはごく少いということにもなるわけなんでして、先ほど私が補導院の方の数が少いから片っ方を少くするというのではないので、根本はもちろんこの五条の精神によって、売春に対しましては根本的に保護更生で、処罰ということはもちろん考えるべきではないわけなんですが、しかし、その現状からいいますというと、補導院の数も、できればこれはたくさんあるほどもちろんよろしいです。東京と、それから大阪、福岡では、遠くの北海道とかあるいは東北の者を連れてきても、これは非常に不便で、できれば数が多いほどよろしいのでありますが、なお私の極力申し上げたかったことは、現在東京地検を初めとし、多くの大きな地検においては、いわゆる更生保護室というものをやっておりまして、これで相当起訴猶予その他の処分をいたしておるのであります。これにつきましては、できますれば一そう拡充強化していただきますれば、補導院へ行く前に、医者その他の調査機関において十分その適否をきめることができるじゃないかと、かような意味で申し上げたわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/33
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034・大川光三
○大川光三君 菊澤さんに一点だけ伺いたいのであります。先ほどあなたの御意見を拝聴いたしまして、さすが多年この道に携わっておられる女性の立場から、そうしてまた園長としての非常な親心から、切々胸を打つようなお言葉を私は拝したのでありますが、ただ最後におっしゃっているいわゆる退院後の保護、助言、助力というものに力を入れよというととは、全くごもっともかと存ずるのでありますが、それに関連して、個人補導ということに言及される前に、時間が足りなくて十分その意を尽しておられぬと思いますので、個人補導についてのあなたの御意見をいま少しく詳しく伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/34
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035・菊澤鋭子
○参考人(菊澤鋭子君) 理想的なことになるかも存じませんけれども、私は、こうした矯正教育だけではございませんけれども、矯正教育の場合には、特にその娘たちの個性に応じ、また実情に応じまして、教育をしなければならないと存じておりますので、個人補導と申しましても、特別なことをいたしませんで、ほんとうにうちの娘として預かって、そして先ほど申しましたような線で、朝から晩まで娘の修業に従事させるというような、ほんとうにやさしい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/35
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036・大川光三
○大川光三君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/36
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037・一松定吉
○一松定吉君 ちょっと菅原君に一つ。あなたは専門家でないのだから、専門家でないあなたを法律の専門家である僕がいじめる意味ではありませんから、これは一つ悪しからず御理解の上で、あなたのほんとうの正しい御意見を承わって、この法案の審議の参考にしたいのですが、私どもは、この売春防止法について、売春行為をする婦女の将来改過遷善の実を上げて、再びこういうことをしないようにこれを指導誘掖していくことが、売春法の終局の目的でなければならぬ。そういうことで、売春をやった婦女が起訴されて、裁判を言い渡されるときに、刑法二十五条によって、情状によって執行猶予の言い渡しをする。執行猶予の言い渡しをするのは、将来再犯のおそれがなく、これは必ず改悛するだろうというようなことを前提として、裁判所が執行猶予の言い渡しをするのですから、これは非常にその将来を裁判官が洞察して、この婦人ならば再犯はしないだろということで執行猶予の言い渡しをするのであります。だから、非常に情状のいい者なのであります。そうすると、情状のいい者を執行猶予の言い渡しをして、そうして今度の一部改正法律案の十七条で、いわゆる情状によってその者に対して補導処分を言い渡すことができると。こういうと、あなたの先刻の言葉のうちに、補導処分を言い渡すような者はもう煮ても焼いても食えぬような者だから、補導処分ということで、これを自由を拘束して云々ということがあったが、それでは委員長として大へん補導処分の趣旨が違っていやしないかと。実は私もあなたと一緒にこの法案の審議に当った一人だが、そうでなくて、ほんとうに、執行猶予の言い渡しをして補導処分も何もしなくても、これは改悛の情が、必ず法律できめられた判決を言い渡した一年か二年の間には改悛するのだということで、補導処分を言い渡さぬで、判決を言い渡す。その人間は、言い渡されたその期間が経過すれば、当然何事もなくて済むわけです。ところが、あるいはこれは再犯するかもしらぬからという者に対して、補導処分が必要なのだ。煮ても焼いても食えぬようなやつじゃない、やはり情状酌量すべき余地がある。しかし、これはこのままに、もう補導処分も何にもせぬでは将来案ぜられるから、補導処分に付せよと、こういうことなんだ。
その補導処分に付するについては、今大川君の言われたように、裁判所だけではわからないから、それを補導処分に付する必要があるかどうかということを調査する調査機関を設けて、調査した上で、それを参考資料として、裁判官が執行猶予の言い渡しをするときに、補導処分に付するか付せぬかという参考資料を提供せしむるということは、これはまあいいことだ。これは、そういうことは法案のうちにないから、これはわれわれ法案を審議する立場から考えなきゃならぬが、私の心配しておるのは、この補導処分によって身体を拘束するということ、自由を拘束するということがある。この点について、私は、菊澤さんの、身体の拘束とかというようなことはなくて、そうして個人指導ということを受けるような方法を講ぜられれば一番いいという菊澤さんの御意見は、さすが大川君がおほめになったように、あなたが多年そういう保護事業に従事せられておった経験から割り出したお言葉であって、私も感心している。だから、その補導院というようなものを設けて、その補導院の中に入れて、社会と交通を遮断して、そうしてこれをりっぱに指導誘掖しようなんということは、これは行われませんよ。また、かりに六ヵ月入れておったからといって、そういう一つの悪い習癖を慣習づけられた婦人が、六ヵ月でもうそれを出てしまえば売淫はしないのだということの保証は、これはできません。だから、私は、補導院ということを一つの外部との交通を遮断するような、ちょうど刑務所に入れるようなことでなくて、何かこう、からだを自由にしておいて、そうして保護司というものがその人の一挙一動について指導誘掖し、職業とかあるいは素行とかというようなものをこれに身につけさして、そうして再び犯罪を犯さないような方法が一番いいと私は思うので、で、補導ということは必要なんだ。ただ私は、その補導院というものを設けて、そこに収容して自由を拘束するということが、私どもは、もう犯罪人としてこれを実刑を課するのでないということで執行猶予を言い渡した婦人だから、その自由を拘束するということは、これはよくない。ことにそういうものが何らかの方法によって、見ると、これに令状を発して、警察官や検事が令状を執行してやるとか、あるいは捕繩をかけるというようなことだとすると、これは刑務所に入れると同じようなことだから、そういうようなことをせぬで、ほんとうに改過遷善の実を上げるような補導方法ということを考えることが、私は政治家の義務だと、こう思うのですが、この点について委員長であらせられたあなたの腹蔵なき御意見を一つ、われわれの参考のために御発表を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/37
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038・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) 一松先生から大へん御同情ある前置きがございましたので、まあこれ以上申し上げることはないのですが、先生のお話を承わっておると、まことにもっともで、私もしかくありたいと、こう思いますが、さて実際となると、そういくのかどうか、あのときも数回——何回もこれ繰り返しました問題で、再び申し上げませんが、どうしてもこういう制度は、いろいろの欠点も多少ありますが、またいいところもかなりあるのじゃないかという点においては、ちっとも変らないのでありまして、先ほど私があるいは煮ても焼いてもやれないやつばかりをという、言葉が悪ければ取り消してもよろしいのでありますが、まあ大体においてひどいのが来るのじゃないか。これをどうも、あれとしては取り消しておわびしておいて、腹の中ではそうでもないと。どうも何かこういう形のものがございませんと、やっていけぬのじゃないか。また見ようによって、自由拘束、あるいはここに収容所ですか、いろいろの中では手錠をはめるのもあるようです。手錠というのですか、何というのだか、あるようです。だから、非常にやかましく考えるが、また一方から考えると、かなり親切な方法じゃないかという点も考え得られるのです。内容を一々検討しますと、相当、いかにも遠慮しいしいやっているような傾きが、むしろあり過ぎるのじゃないかと考えてはおるのですが、これもいけませんでしたら……。ただ、その法律問題に対しての議論は私には力がございませんので、先ほど申し上げた通り、大いにおじぎをしてお通し願いたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/38
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039・藤原道子
○藤原道子君 関連して。私はやはり、一松さんと同じように、審議会の審議委員の一人といたしまして、会長にだけお気の毒な目にあわせるのは耐えられないわけです。これは審議会から答申した中には、保護具はなかった。これは法務省の原案として出てきたのじゃないのかというように私は理解しているのですが、それと同時に、これは売春婦といえども刑務所へ入れるのは気の毒だ、罪にしたくないというような気持から、ほんとうは刑にかえて保護処分に付するというのが、私たちの真意だった。けれども、いろいろな手続の関係上、これを家庭裁判所にお受けいただけないような点もございまして、それでこういう結果になったのであって、これは私は非常に残念だと思うけれども、これ以外に方法がなかったということになると、従って、保護具であるとか令状の問題等について、当委員会において今後ただしていきたいと。これは会長の御意見ではないかということを、審議会の意見ではないということを、私は申し添えておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/39
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040・一松定吉
○一松定吉君 今のあなたの御答弁について、これ以上追及しません。あなたは法律家じゃないのだからあなたがどうかして改過遷善の実を上げさせたいという、その御趣旨のあるところを私は了といたしますから、これ以上のことは私は申し上げません。
そこで、菊澤さん、あなたに一つもう一ぺん伺いたいが、あなたの、そういう拘束なんかせぬで、一つ個人に預けて、そうして自分の子女を指導誘掖するような方法があればけっこうだというような御意見、私は非常に賛成するのだが、それをもう少し具体的に、たとえば、こういう売春婦で裁判を受ける人間が千人ある。保護司が千人あれば、千人に一人ずつ預ければ、これは非常にいいわけだが、費用も要るわけだから、何かこういうふうにしたら自由は拘束せぬ、そうしてこれらの人を改過遷善せしめる有効適切な効果を上げることができるという方法を、お考えがあるならば、それをお話ししていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/40
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041・菊澤鋭子
○参考人(菊澤鋭子君) ほんとうにむずかしいことでございまして、仰せのことにすぐ答えるのもむずかしいのでございますけれども、一つこんな例がございます。私の所に二度来た子でございますけれども、一度目に、ある岩手県のいなか町の理髪店におりまして、そこで放浪癖と書いてございますけれども、売春を強いられたようなことから、家を飛び出して参りまして、そうして私の所に保護されました。一年四ヵ月くらいだったと存じますが、おりまして、仮退院を許しましたところが、家に帰りましたとたんに、母に預けたはずのその母が、十四日目に姿を消してしまった。これはまた、母は母なりに男の人と出たのでございますが、それで舞い戻って参りまして、戻し収容の形で、せんだって、今度は一年八ヵ月でございましたが、私の所に収容いたしまして、出した子がございます。
ところが、この子の場合も、母のそばえは帰せない。帰したら、また舞い戻るだろうと存じまして、私たちで職場開拓ということを、その前におりました所に向けまして、事情をよくご存じのおうちなものでございますから、その後のことを話しましたところが、放浪癖さえ直れば、腕があるから、一つまたとってやろうと申されまして、下着から全部ととのえて、嫁にやる気持でそこにやりましてございます。
こんなことから考えまして、私は、今年こそはこの少年院の社会性ということに努力したいと存じております。と申しますのは、こういったかかわりのあるおうちでございませんと、一向少年院とか、ことにこの補導院のことはこれからでございますから、さようでございましょうけれども、ご存じないのでございます。認識していられないのでございます。そんなわけで、せっせと社会との交渉を持ちまして、そうしてこんな子がおります、こんな娘がおりますということで、何とか開拓していけたら、全部とはいかないまでも、そのうちの何%か何十%かは、何とか救われるのがあるのじゃないかというように考えております。
私が個人指導ということを考えたのは、少年院におきましても、売春の者が二人寄りますと、なかなかむずかしいのでございます。一人でございますと、思い出しもそう新たにはならないと存じますけれども、二人でございますと、昔語りをいたします。そうすると、またそれに誘われて、おもしろおかしく話に乗るのがございますので、そういう意味から、離したいということは痛感しております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/41
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042・一松定吉
○一松定吉君 大へんよいお話を承わりまして、けっこうですが、それを実施するのにはなかなか費用も要るし、いろいろな人もたくさん要るだろうから、実施上いろいろ困るだろうと存じますが、ただし、参考にはなります。
この婦人補導院法の第七条に、一ヵ月に一回在院者の健康診断を行うとある。その二項に、健康診断について必要な場合においては採血その他の医学的処置をとることができるとある。これは私は、自分が厚生大臣をしておったときに、芸者の健康診断をするとか、淫売婦の健康診断をするとかいうて、局部を見るとかいうことは、これは婦人に対する侮辱だ。だから、そういうようなことをせぬで、いわゆる採血検査、尿の検査によって、その健康診断をする方法があるのじゃないか。そういうことによって局部の検査ということはやめたらよかろうということを私は考えまして、それを実施すべくやってみようとしたところが、なかなか費用が要るし、医者がたくさん要るから、それができなくて非常に困って、そのままにまあなっておるわけだが、おそらくこの婦人補導院法案の第七条のいわゆる健康診断というのは、これはまあ、提案者に質問せぬとわかりませんが、同じくこれは局部をやはり見るのだと思うのです。そういうことは、婦人の立場上、あなた方はどうお考えになりますか。それを一つあなたなり西村さんなりの御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/42
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043・西村好江
○参考人(西村好江君) あまりよく伺っていなかったのですけれども、実は、これはなかなか考え方がいろいろございましょうけれども、私ども婦人相談員といたしまして相談にあずかりますときに、性病のことを、あなた、性病を持っているのじゃないかということを聞く場合がございます。そうすると、大体、性病は持っていないと言うのです。そこで、われわれも、ないと言われれば、どうもこれ仕方がないものですから、何とかしてこれがわかるような方法はないものだろうかと思いまして、婦人相談所にその方の専門のお医者さんがいるものですから、その先生から講習を受けたのです。そうしましたら、まずい話になるのですけれども、足を広げて歩くような女の人とか、腰を曲げるとか、そういったような外部的にわかるようなものもある。その辺で一つ見当をつけたらよかろうというようなことを言われたのですが、まあそれもなかなかむずかしいことで、ただ、今、先生の御質問の、局部を見られることに対してどう思うか。これはだれだっていやでございます。それは、喜ぶ人はありませんけれども、ただ、街娼なんかの場合は、普通の人が考えるほど……。われわれは、私ども売春をしろと言われたら死んでしまいますけれども、それとまたちょっと違った考え方を持っていて、まずいことなんですけれども、それほど、われわれが舌をかんで死ななければならないというような観念までは持っていないというふうに、私どもは考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/43
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044・一松定吉
○一松定吉君 私の言うのは、局部を見なくても、血液検査、尿の検査で発見ができるということを前提とするのです。そうすると、局部を見なくても、血液の検査、尿の検査で、そういう梅毒が淋病があるとかないとかということがわかるならば、そういうことを明らかに、婦人補導官の第七条のこれを、われわれ立法者の立場では考慮して、この案をやはり修正しなければならぬ。そういうことであなた方に今聞いておるのだが、あなたは、淫売婦をしておった人間は、われわれの考えと違うからということだけでは、今、私のお尋ねのお答えにならぬが、あなたはそれとして、一つ菊澤先生に聞いてみましょう。私の言うようなことの方が、よくはないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/44
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045・菊澤鋭子
○参考人(菊澤鋭子君) 私もそういうことは詳しく調べて参りませんでしたけれども、私の所では、ただいままでは支障を来たしておりませんでございます。と申しますのは、血液検査をいたしまして、それは保健所の方に頼んでおります。それから、その中でこれとこれとがマイナスだとかプラスだとか、いろいろ書いてくれるのでございます。それによりまして必要な処置をいたしますが、やはり女でございます、おばあさん、女医のうちでももう六十なんでございますが、それがいたしておりますと、そういうことはあまり感じないで今まで済んでおったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/45
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046・一松定吉
○一松定吉君 この十一条の「婦人補導院の長は、在院者が婦人補導院において遵守すべき事項に違反したときは、次の各号に掲げる懲戒を行うことができる。」とありますね。ごらん下さい。その懲戒には、厳重な訓戒をするということ、それと、十日をこえない期間謹慎室で反省せしむるということ、これはまるで監獄ですね。こういうようなことはどうでしょうか。これはあなた方御婦人の立場で、こういうような、厳重な訓戒をするということはこれは別として、十日間謹慎室に入れるということになると、結局外部と遮断して謹慎させられて、全く自由を拘束されてしまうのだが、こういうことは淫売婦を更生せしむる処置として適当な処置とお考えですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/46
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047・菊澤鋭子
○参考人(菊澤鋭子君) 少年院の場合には、二十日をこえない程度にということになって、やはり謹慎のあれがございます。これは全部が全部と申すのではございませんし、どんなことをしたらだれでも謹慎させるというのではございませんで、いわゆるあばれて何ともなりません者は、やはりおりますのでございます。で、そういう者には、監獄のようだと仰せになりましたが、謹慎室にも度合いがございまして、そうして私の所も、その程度で入れる部屋が違っているのでございますけれども、あばれてあばれて何ともなりませんときには、やはりそこに入れて、静かにさせなければおさまらないことがございます。そういうときに使っておりますのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/47
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048・一松定吉
○一松定吉君 そうすると、あなたは、この法文は、これは修正する必要はないのだと、こういうお考えですね。これは刑務所に入れるんじゃないのですよ。これは補導するための処置なんだから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/48
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049・菊澤鋭子
○参考人(菊澤鋭子君) 私は一地方だけしか歩いておりませんので、先ほどから東京都のことを伺いまして、だいぶん様子が違うなということも感じたようなわけでございまして、その地方地方で実情が違いましょうし、また子供によって違いますので、修正ということは今考えておりませんが、やっぱりこれを運営していく者の考えで、いかようにもなるのじゃないかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/49
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050・一松定吉
○一松定吉君 あなたといつまで押し問答していても仕方がないから、西村さんに一つ今のところをお尋ねすると同時に、この十五条をごらん下されば、「暴行又は自殺をするおそれがある場合において、これを防止するためやむを得ないときは、法務省令を定めるところにより、保護具を使用することができる。」、そうしてその保護具というものは、被使用者の両手を腰部に、腰のところに縛りつけて、身動きのできぬようにするのだと。こういうようなことが補導処分として適法だろうかどうだろうか、あなたはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/50
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051・西村好江
○参考人(西村好江君) 私、少年院とか、そういう所に自分は勤めたこともございませんし、深い経験がないものですから、結論的なことは申し上げられないのでございます。ただ、感情といたしまして、気の毒だと、何かほかに、うまい、いい方法があればいいなと。しかし、実情におきましては、そういうものを使わなければならないときもあるだろう。あるのなら、やむを得ないから使ってよろしい。しかし、使ったときに、運用上にどうぞ御留意を願いたいということを、先ほども申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/51
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052・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 きょうは、各参考人の方から大へんいい参考の資料をいただきまして、ありがとうございました。一、二点ずつ各参考人に伺いたいと思っておりますが、まず、菅原参考人と私どもは、長い間売春対策の審議会ですったもんだをやってきたのでございますが、その間に一ぺんもあの問題に触れなかったと思って、きょうあらためて伺うわけでございます。それは、補導官に大へんりっぱな人を擁しなければならないということを、先ほどから再三おっしゃったのでございますが、それは、御意見としては、やはり院長以下女の人をというようにお考えでしょうか。りっぱな補導官であれば、男でも女でもいいというお考えでございましょうか。その点一つ、お伺い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/52
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053・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) 私はこだわらぬでいいだろうと思います。どちらでも、りっぱな方なら、ちっとも変らないと、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/53
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054・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 ああいう女に、ばかでもちょんでも男でありさえすればいいといったようなあの婦人たちに、男の顔を見せるということは残酷じゃないかと私は思って、私は、願えれば院長以下全部職員も女にして、女の人に当っていただきたいという意見を持っておりますが、そんなことまで審議会で触れる時間がございませんでしたので、きょうあらためて、伺ったわけでございますが、その点はわかりました。
それから今度は、金子参考人に伺いますが、地検に参りました者は起訴猶予になるのでございますね、その起訴猶予いたしましたあとの手当というものは、東京初め全国の地検において、どういうことをしておりますでしょうか。おわかりでしたら、簡単におっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/54
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055・金子滿造
○参考人(金子滿造君) 大体、私、八王子の方でも、本庁と同じようにいたしておるのですが、起訴猶予にいたしました者を婦人相談員に引き渡しまして、婦人相談員が本人を呼んで、そうしていろいろ事情を聞いて、それぞれその更生の方途を講ずるということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/55
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056・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それじゃ、婦人相談員に万事をおまかせになるわけでございますね、地検では。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/56
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057・金子滿造
○参考人(金子滿造君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/57
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058・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それはわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/58
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059・金子滿造
○参考人(金子滿造君) もっとも、これは相談員にまかせるのではないという者は、もちろんまかせませんが、現在大体相談員の人にまかして、そうしてやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/59
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060・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 起訴猶予になりました者だけはね。それはわかりましてございます。
その次に、町の女がだんだん増加してくるというさっきのお話でございましたね。この町の女というのは、その女の、格というか何か、いろいろございますでしょう。いい格を持っておる女もおりますでしょうし、まことに変な女もおりますが、そういう女たちの商売をする、つまり客引きをする場所が大体きまっておりますか、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/60
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061・金子滿造
○参考人(金子滿造君) これは八王子の場合だけで、私も本庁その他のことはあまりよく直接知りませんですから……。八王子のような場合ですと、大体、街娼の方は街頭に出まして、そうして駐留軍の将兵などをキャッチしまして、そうして自分の泊っている所へ連れてきて売春をするというのが実情でありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/61
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062・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私の伺いたいのは、その女になわ張りというのはないのでございますね。勝手々々に、好き好きにどこへでも現われてくるというのですか。また、外国のように、その何ブロックかは自分の受け持ちになっておって、毎晩そこへ出てくる。そして高級な女が高級な場所を占領して、それぞれなわ張りを作るというような、まあ外国の、フランスのようなものじゃございませんでしょうが、そういったような意味はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/62
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063・金子滿造
○参考人(金子滿造君) 大体、街娼の場合は部隊と一緒に移動するようなんですね。最近なんかでも、横田あたりに来ておるのは、板付とか、その他の部隊がこっちに来ますと同時に来るのもあるのです。それからまた、立川におる連中なんかで、立川がやかましくなりますと、近辺の調布あるいは府中へ出かけていってやるというのもあるのですね、非常に移動性が激しいものですから、どこのなわ張りといって大体はきまっておるようですが、お客がなくなると、最近なんかも、外人がいなくなると、今度は日本人を引っぱるというようなのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/63
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064・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 ありがとうございました。
その次に、齋藤署長に伺いたいのでございますが、宿屋や、その他の所に踏み込む警官が、踏み込む場合には、これは何でございますか、やっぱり令状を持って踏み込むようになっておりますか、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/64
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065・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) 宿屋等に踏み込む場合は、大体事前に、そこに出入りするところのいろいろ売春婦、そういう人たちの動きをとりまして、いわゆるわれわれの仲間で言うと足という、それをとりまして、そこで令状を請求しまして、踏み込むのが原則としてやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/65
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066・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 先ほどからお話が出ましたけれども、そういう場合に単純売春——この部屋は令状を持って行っておる。その隣の部屋は、単純売春と銘を打ってやっておれば、どうにもすることができないのでございますか、その点いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/66
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067・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) 今、御質問の点は、新法実施後のことでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/67
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068・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/68
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069・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) これは、今までのとちょっとケースが違いまして、単純売春の検挙については、原則として検挙される場合に、いろいろ管理売春その他のことがなければ手をつけられませんから、そういうような点がなければ、先ほど横井総務課長から答弁があったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/69
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070・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 わかりました。
それから私心配して伺いたいのは、警察の方からごらんになる女たちは、今度の立法の五条違反でつかまることについて非常にきらっておりましょうね。もちろんそれだけでなくて、この売春防止法について、やむを得ずというところで閉口しているのでございましょうか。非常にこれは困るというように思いながら服しているのでございましょうか、その辺いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/70
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071・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) なかなかむずかしい御質問でありまして、新法の五条違反が売春婦の人に喜ばしいかどうかというのですけれども、これはあまり喜ばしくないだろうと思います。(笑声)こういう点を私たちは心配しておるのです。単純売春ということがあまりよくわからないというふうな人が相当多いと思います。これらの事情をよく知っておる人は、単純売春というものは処罰されないのだ。だからいわゆる業者と売春婦との話し合いで、これは単純売春だ、単純売春だと言って、昔のケースを繰り返すおそれが非常にあるのじゃないかという点をおそれております。そういう点、単純売春の処罰がないということについて、いろいろ口にしておる人がおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/71
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072・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 はい、わかりました。
もう一つ、浅草警察署には、婦人警官がおりますか。お茶くみ警官の若いのでなくて、ちっとお母さんらしい働きのできる婦人警官をお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/72
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073・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) 盛り場には、警視庁の婦人警察官を配置いたしまして、街頭に進出して、少年の補導その他家出人の相談等にあずかっております。浅草警察署にも七名の婦人警官がおりましてそれぞれ青少年の保護育成その他家出人等のめんどうを見てそういうような点でいろいろ仕事をやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/73
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074・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今度の売春立法の実施に伴って、ちっと役に立つような婦人警察官でございますか、どうでしょう。それについてあなたの御意見をおっしゃって下さい。もっと年の多い、お母さん警察官を置きたいとか、いや男でけっこうという、どっちでもようございますから、御意見をおっしゃって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/74
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075・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) これは非常に、われわれもこの委員会に出る前からその点に強く関心を持っておったのです。婦人の問題については、やはり婦人によくめんどうを見てもらうという点をわれわれとしても望むわけです。警視庁でもそういうような意味から、盛り場にも婦人警察官を配置したのだというふうに考えております。そういう工合に上から指示しておりますから活用しております。婦人警官の年令層、みんなそれぞれ、もう二十才前後の人はおりません。みんな三十才、三十数才の人で、よくそういう点相談に乗れる人で適格性のものがあると私たちは思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/75
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076・藤原道子
○藤原道子君 大へん時間もおそうございますので、簡潔に御質問いたしますから、簡潔にお答えをお願いいたします。
先ほど来のお話し伺っていて、自動車の中で売淫行為が行われていても、単純売春であればどうすることもできない。野放しにしなければならない。これは非常に困った問題だと思うのです。従って、これは会長と取締りの方と両方に伺いたい。やはり作るときには、仕方がないじゃないかといって作ったのでございますけれども、会長、やっぱりこれは買う人があるから売る人があるのだ、売る人があるから買う人があるのだ、これは水かけ論であると思う。従って私は両罰である。さらに、単純売春をも処罰の対象にしなければ売春を根絶することはできない、こういうふうに考えておりますが、それに対してのお二人の御意見を伺いたいと思います。まず会長からお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/76
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077・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) 今の自動車の場合ですが、必ずしもお金の受授があったかどうか。それからそうでなく、このごろはそうでない人がずいぶん多いのですね、えらい方。これは若い学生層その他、免状もらってだいぶ覚えましたから、あそこに行って仲よくなるのがだいぶ多いのです。それが目にあまるようなことが非常に多いのです。ですから今の、かりにそういうのを発見した場合には、何も、必ずしもこの問題にかけないでも、ほかの方法で、風俗上のいろいろな罰則が僕はたくさんある。今、横井さんに承わりたいと思っておったところです。当然これは何かのあれで解決しなければならない。外国ではみんなかけております。細君と一緒でも。それですから、当然これは書くべきことであって、早くこれは何かの形で表わす方がいいじゃないかと、こう考えております。
それから、両罰といっても、今、男の方もあれのときには両罰でしよう。今、街頭において風俗を壊乱した場合にはやりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/77
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078・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) ただいま道路においていろいろというのが自動車の中、その他に関係する、これはそのときの状況によって、それが公然性があれば、公然わいせつ罪その他の関係がありますし、ですから状況によって判断される。すべて自動車内のものが検挙できないというわけじゃないと思います。
それからもう一つの、売春の、単純売春を処罰することについての意見であります。これはわれわれは、今後の法の推移を見守って意見を申し上げなければ、軽率には私は言えないと思いますが、ただわれわれの推測するところでは、単純売春というものが処罰されないというような関係から、脱法的の各種の行為が行われて、そこに風俗を紊乱し、付近の、近隣の良家の子女に悪い影響を与えるのではないかということをおそれるものです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/78
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079・藤原道子
○藤原道子君 先ほど、あちらでは自動車の中の売春は現行ではどうにもいたし方がございませんという御答弁だったと思うのです。それで私重ねて今聞いたのでございますが、その他の法律で罰せられると、いかがなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/79
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080・横井大三
○説明員(横井大三君) 今浅草署長が言われましたように、公然やれば当然刑法の規定に触れるのでございますが、先ほどお尋ねになりましたのは、自動車の中の人目につかないようなもし売春であれば、これは自動車の運転手なり、助手なりが勧誘とかあるいは周旋とかそういうことでひっかかれば別問題で、人目につかない自動車の中で、たとえば自分の所有の自動車の中へ女を引っぱり込んでやったということになりますと、どうも今のところ、なかなかつかまえる法律を発見するに苦しむのでございますが、しかし、具体的事情によりましては、何かひっかかるものがあるかもしれませんが、抽象的にそういう御質問でございますと、ただいまのようなお答えになるわけでありまして、ただ公然やればなるという署長さんの御意見は確かにその通りで、そういう場合にはやれると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/80
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081・藤原道子
○藤原道子君 これはもう私はっきり申し上げておきたいのですが、最近そういう方向へ売春の形態が移りつつあるという現実があるから伺っておるのです。だれだってまっ昼間やりませんよ。人目につかないところでやるのです。当りまえだと思うのです。だけれども、最近そういう形態が多くなっているということを考えの上で一つ御考慮を願いたい。時間がございませんので押し問答やめます。
それから婦人相談員の方がいろいろお仕事をなさいます上に、外部借金の問題、これが大きな問題になってきておるように私聞いておるのです。これに対して、金子さんとそれからこの相談員の方にお伺いしたいのですが、これはこの外部借金という名に隠れて、最近巧みにこれをカモフラージュして二重、三重の搾取が行われている。従って、これもやはり前借に準ずるものというふうに考えて、これは無効にしなければ売春婦がかわいそうだ。それからこれがあるために払えということになれば、結局また売春しなければならないということになるので、これはまあ大きな問題だと思うのです。これらに対してどういうお扱いをしておいでになるか。さらに今後どういうお考え、どういうふうにしたらいいかというようなお考えございましたら、伺わしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/81
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082・西村好江
○参考人(西村好江君) その外借金でございますね。外借金の問題で方々にいろいろな問題が起っておりますが、しかし、ただいまのところ、まあ一応いろいろな形で品物を一部返すとかあるいは何といいますか、全部ではございませんが、お金の一部分を払って片づけているというようなこともあるのでございますけれども、実は新宿あたりでございますが、やめようということを業者が声明いたしましてどっと外部の借金取りが押しかけてきて、そうして従業婦たちが脅迫をされてこわくて仕方がないというような事例がたくさんございます。そこで御承知かもしれませんが、例の田邊さんなんかやっていらっしゃる婦人人権の方やなんかを私ども集めまして、これをどうしたらいいかというような相談をしたことがございます。とにかく例の前借の問題はこれを棒引きにするという最高裁の判決が一昨年と昨年と二度も出ておりますが、こういったような判例が出ておればやりいいし、それとまた、これによってやはり更生する人がたくさん出るであろうというので、一ぺんわれわれにいいケースを出してくれ、実例に従ってこれを裁判まで持っていって新しい判例を開くというようなところまで持っていってやれれば一番いいからと、今われわれがいろいろ資料を集めておるという段階でございますので、できればはっきりした線を見せていただきたい。そうでないと、こわくてかせぐ、もう一つは変な人情で、世話になったのだから、借りた金を返さなきゃならぬなどとつまらない人情を考えておって、そのままになったのもございますので、そんな方向へ一つ持っていっていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/82
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083・金子滿造
○参考人(金子滿造君) 前借金の問題ですが、これはただいま西村参考人の言われた通り、最高裁の判例もありまして、棒引きだということになっておりますが、個々のケースによってかなりむずかしい問題も出てくるので、一がいにちょっとこう申し上げられませんですが、要は売春婦の更生ということをよく考えて、単に前借詐欺の問題ばかりでなく、月賦でいろいろなものを買っておる事例があるのです。こういった問題につきましても、よく考えてやらなきゃいかぬ。それにはやはり更生資金というものが売春婦に直接渡らないのですね。そこでそれを早く何とかしなきゃいかぬのじゃないかと考えられるわけなんですが、政府その他でもなかなかそう簡単にはいかぬでしょうが、婦人団体等でもこの問題について積極的に一つ協力してやっていただきたいということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/83
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084・藤原道子
○藤原道子君 私は、見も知らないものに商人が貸せるはずがないのです。売春の宿にいる女であるということを知って、それで貸しているのですね、外部借金の問題は。それで業者はそれを二重、三重に暴利をむさぼっておるわけです。その中から搾取しているわけです。だから一つ前借の変形のようなものであると同時に、商人の側を言うならば、一つは売春の助長行為になると思うのです。こういう点もお考えになって、はっきりした線を出してほしい。そうしなければ、判例を出すことはけっこうですけれども、その間にひまもかかりましょう。この売春転業は今が山でございますから、裸になってから判例が出ても追っつかないのです。そういう意味で、これは法務省の方でもお考えを願いますと同時に、皆さんの御協力をいただきたいと思うのでございます。
それから、いま一つお伺いいたしたいことは、会長とお取締りの警視庁でございます。これはとかく赤線、青線だけが対象だという感じを与えておる。ところが、なかなかどうして芸者も相当数は売春している。この芸者置屋、芸者の実態、こういうものについてどういうお取締りをなされ、さらにどういうお考えに立っておられるか、取締りの立場においてのお考え、それから菅原会長に伺いたいのは、私ども女で芸者買いに行ったことがないのでわからないのですけれども、どういう実態でしょうか、一つ聞かせてほしいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/84
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085・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) これは先ほどの一松先生の方と違いまして、私の専門の方ですから、(笑声)一時間でも何でもしゃべりますが、時間がございませんでしょうから、実際これはどういうものですかということは言えませんが、そう悪いものじゃない、こういうわけです。いいものだとも言えないかもしらぬが、そう悪くはないと思います。ただ、今ちょうど幸いにこういう問題が世の中に出てきましたから、芸者屋、置屋並びに待合、料理屋その他がみんな火の粉をかぶるだろうと思うのです。そうして彼らが非常に対立的意識になって、そうして、やはりいじめるというようなことでなく、あの赤線の轍を踏まずに、赤線も御承知のごとく初めはかわいがってやった。特に僕なんか非常に転業については骨を折ってやった。それがああいうふうに反抗意識になったと同じように、この芸者その他がなると、またこれは厄介な問題になると思います。それですから、幸いにして数日来前から全国の芸者組合なんかが来まして、話をしてくれの、やれどうのと数回やっております。遺憾なことは、新橋、赤坂、柳橋のようなのが、これに参加していない。また、彼らの間も対抗意識があって、おれの方は一流だ、そんなものと一緒になれぬというような気もあるのですが、そうでなく、一律のものにして、そうして全国的に何か考えて方針を定めなくちゃいけないときにきたのだろうと思う。これを親切に今いたしませんと、今言う芸者もみずてんは売春じゃないか。なるほどみずてんすれば売春でしょうが、芸者は国宝——国宝というとしかられるかもしれませんが、と言う人たちがあるのですから、ですから芸をみがくことはけっこうなんです。これについてもいろんなあり方、たとえば通し花はいかぬ、泊るのは、必ず全国的に十一時まででなきゃいけないとか、何時とか、第一芸者の性格というものが明らかでないのです。こういうものをちゃんとつかんで、そうして気持のいい娯楽でなきゃいかぬ。このごろは御婦人方もかなりああいうところへいらっしゃいます。一度藤原先生ともお伺いいたしますが、どうかいい方の面を見ていただきたいと思います。
それからちょっとさっきのことではなはだ恐縮ですが、自動車の問題、非常に私気にやんで考えておるのですが、これはどうか今いろいろ横井さんの説明どうもちょっと納得いきかねるので、諸外国のあれではいけませんでしょうか。屋外のは全部いけませんですな。自分のうちの、極端に言えば庭でもいけないぐらいに、屋内以外のものは全部取り締られる。ただ、向うのおまわりさんがなかなか利口ですから、にやにや笑うのもありますけれども、そうでない、目に余ったものは、かなりひどいこともやる。初めはライトで照らして、改めないのは、行って、あれはと言うこともある。どうもあれは罰せられないということは納得いかないのですが、お教え願いたいと思うし、また、どうか取り締る方へ結論を持っていっていただきたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/85
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086・青山正一
○委員長(青山正一君) 横井さん、特別をもってお許しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/86
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087・横井大三
○説明員(横井大三君) われわれも何とかして取り締りたいという考えを持っております。今おっしゃいますように、屋内以外は全部やれるというような解釈が立ちますかどうか、これは検討してみたいと思いますが、要するに、日本の刑法で申しますれば公然性の問題になる。具体的にその場所に人がおりませんでも、人が来るかもしれないというような場所であれば、あるいはどこかから見られているかもしれないという場所であれば、あるいは公然という解釈がつき得ると、こういうふうに考えられます。従いまして、今のお話のところでは、私がここで考えましたところでは、公然性の問題である程度解決がつくのではないかと考えております。すべてのものが、自動車の中であります場合には取り締れないと申し上げたのではなくて、むしろ現実には、具体的事情に応じて取り締り得る場合がかなりあるのではないかと、こう考えておる次第でございます。なおしかし、今の菅原先生のお考えに従いましていろいろ研究してみたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/87
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088・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) 芸妓の関係についてお話があったのですが、これは芸妓も芸妓組合その他も非常に今慎重な態度で、そういうようなことで、いろいろ疑惑を受けては困るというようなことで自粛しておりまして、われわれの方でもよくその点強調してやっておりますから、おそらくそういう点の心配はそう大きなものじゃないというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/88
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089・藤原道子
○藤原道子君 甘いと思います。ことに三流、四流はやっている。赤坂だとかあるいは新橋だとかいうような所は、おえら方が行くものだから、若干御遠慮の向きがあるのじゃないかと思いますから、そういうことのないようにお願いしたいと思います。
それからさっきの自動車の問題ですが、これはぜひとも真剣に考えて、のがれ道ばかり御研究なさらないで、日本の画期的な法律を行なっていこうとするときでありますから、相当思い切った解釈を下していただけばけっこうだと私は思うのです。ことに外国に行ってみますと、日本の男の性道徳のひどいことは非常にひんしゅくを買っていると思います。こういうこともあわせて御研究を願いたいと思います。
それから、時間もありませんので一つにとどめます。これは青葉女子学園ですか、お伺いいたします。先ほどの御陳述の中で聞き漏らしたのですが、精神薄弱の問題、この問題は大きく犯罪にもつながっておりますし、いろいろな問題がございますので、私、少しこのごろ勉強しているのでございます。青葉荘にどのくらい知能指数七十ぐらい以上の者が……一人とかとさっきおっしゃっていられたのは、どういうことなのでしょうか。どのくらい精薄がいるか、知能指数を幾つ以下にしてお扱いになっていらっしゃるかということを一つお伺いしたい。
いま一つは、私はどうしても保護具に反対なんです。外国へ行って、たしかロスアンゼルスだったと思うのですが、少年院へ行って見ましたら、頭をぶつけても、どんなにぶつかってもこわれないガラスがございますし、それから傷つかないような部屋がございまして、従いまして保護具というようなものは一切使わないでやっている。それで大きな額へ、祖先に誇りの持てない者は未来に誇りを持てというようなことで、子供たちの将来に誇りを持たせるような指導がなされているのを見てきたのでありますが、保護具というのは絶対必要でありましょうか。女子学園としてお使いになっているかどうかという点と、二つ伺わせてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/89
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090・菊澤鋭子
○参考人(菊澤鋭子君) お答えいたします。
先ほど申しましたのがはっきりいたしませんですか存じませんが、精薄のパーセンテージでございますが、六十九以下の者が私の所には四〇%ほどございます。これは全体のことでございます。それから、売春と名のつきます行為をいたしておりました者の内情を調べて参りましたですが、売春と名のつきます行為をいたしておりました者が全体の大体二〇%になっておりますでございます。その中で、よく調べてみますと、IQ八十一の者が一人だけでございます。八十以上の者は一人でございます。あとは全部それ以下でございます。でございますが、また、おもしろいと——普通かも存じませんけれども、あまりIQの低いのがありませんで、五十から六十の間が一番多うございます。
それから個室の問題をお答えいたします。私の所の施設をごらんいただきますとおわかりいただけると存じますでございますが、むねはずっと続きのむねに四種全部おります。つまり、初等、中等、特別少年、それから医療とおりますでございます。たとえば医療の子なんかは中等の子たちがばかにするのでございます。そういうことから、荒びたりいたします者は個室処遇と申しておりますが、静かな所に入れてほしいというのがございます。それから先ほど申しましたのは、また逆に荒びておりますね、この中に置いておきますと、なおさら大ぜいの中で虚勢を張っておるというのがございますが、むね続きではございますけれども、区切っております部屋に移しております。そこで静かに本を読んだりいたしておりましたり、それからどうしても個室処遇をしなければむずかしいと申しますのは、逃走者、お恥かしい話でございますけれども、逃がしまして、帰りまして、それが大へんIQも高く、自治当番と申しておりますが、そういった多少指導的な位置におりますような子が帰って参りましたときに、どうしてもみんなの部屋に入れない、入りたくないという子がおります。そんなのは、割合長い間個室処遇と申しまして、一人、御隠居さんという格好でございますけれども、そこでいろいろ編みものをいたしましたり、そこから学校と申しておりますが、教室、これもむね続きでございますけれども、そこに通いまして、そしてだんだんそういう気持も解け、ほかの者にも融和するようになりますと部屋に移してというような、そういう意味で使うのには、かえって私はこれはいい使い方じゃないかと存じておりますでございます。
それで保護具のことをお答えいたします。少年院法では保護具ということが許されておりますけれども、私の所では、それほど狂暴性というのがただいまのところありませんので、このごろは忘れられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/90
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091・赤松常子
○赤松常子君 きょうは、大へん皆さんのなまなましい御経験を拝聴いたしましてずいぶん勉強いたしました。私、二、三簡単にちょっとお尋ねいたしたいと思います。
まず、菅原先生にお尋ねいたしますが、先ほどからいろいろお話が出まして、今度、売春対策審議会も、もう一期延長されたようでございまして、私、大へんいいことだと思うのですが、いろいろ将来ですね、気長にこの問題は考えていかなくてはいけないことだと思うのでございますが、名前はなんと変えられるか、それは適当に変えていくべきだと思いますが、もうどのくらいこういう対策審議会が持続されるのがいいか、おおよその見通しを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/91
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092・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) おととい突然延期のことを言われたので、まだ実は深く考えておらぬのです。任期がちょうど三月七日で、急にお話があったものですから、延ばすということだけで、そこまではっきりしていません。
それから当然名前は変えた方がいいのじゃないか、延ばすのなら。
それからその期間がどれくらいというのは、何か法律規定で二ヵ年となっておりましたね。ですからそれは二年として、終れば早くさっさとやめるというので、二年は仕方がないのじゃないかと思います。それでこの間御返事申し上げておいたのは、ほとんどおでましにならないような方や、それからずいぶん議員の方にも御欠員があるものですから、そういう跡始末と申しますか、いろいろなことに対して御協議といっては何ですが、御熱心な方がいいのじゃないかということだけお答えしておきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/92
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093・赤松常子
○赤松常子君 私むしろ跡始末というよりも内容及びタイトルを変えましてこの問題を見守っていく。また、いろいろな問題が副次的に起ると思うのでありますが、それに対処するそういう期間というものが必要だと思うのでございますが、それに対して簡単にあなたのお考えをちょっと伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/93
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094・菅原通濟
○参考人(菅原通濟君) まだその点あれしておりませんが、たとえば先ほど申し上げたような経過でありますから、芸者、待合、料理屋に対する問題、風紀営業者に対する問題、最も大きい問題は性病に関する問題なんかに対しては、どうしてもこれはやらねばならぬ。いわゆる風紀衛生対策委員会というものの形になるのじゃないか、それがいいのじゃないか。ですから万般のことについて御相談にあずかれるような、また、答申できるようなものにしていきたい。こう考えております。
たとえば私だけのことをいえば性病問題を解決したい。こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/94
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095・赤松常子
○赤松常子君 齋藤さんに伺いたいのですが、ほんとうに御苦労だと思うのでございますが、よく吉原をここまで御指導下さいました。こういう問題を取り扱っていらっしゃる間に、業者の人々は、もう法律ができているから観念していると思うのですが、その周囲の中小商店、そういう地域の人々の御意見も、先に大へんいい面は伺ったのでございます。けれども、この法律ができます前に、ほとんど日本の全国からと言ってもいいくらい、この赤線地帯をなくさないでくれという陳情が赤線地帯を取り巻く中小商店から、たとえば土地の商工会とかというところからたくさんにきているのでございます。そういう所がさびれるという懸念から、この赤線地帯が少しでも減るということに対して非常に消極的なのでございますが、吉原地区ではそういう周囲の声というものがいろいろあったと思うのであります。それに対して取締りのあなた方の側から何か指導なさったのでしょうか。そういう方との懇談をなさったでございましょうか。そういう人々の理解の程度をちょっと伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/95
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096・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) ただいまお尋ねの赤線の周辺の業者ですね。こういう方々がさびれるであろうということは最初からみなそれぞれ思っておりました。直接には警察としては呼びかけてどうこうというようなことは警察側としてはしませんが、区役所とそれから町会、こういうような面の人たちがそういう点について非常に真剣に話し合いをし、そういう関係によっていろいろな催しが行われました。それから現在もなお、そういうような業者の、今後どんなふうにしていくかという点を区当局がいろいろ心配しております。大体の今の状態では、あの周辺の業者がほとんど売り上げが半減しているということを聞いております。これらに対して区役所当局が非常に心配して、区会議員その他と有力者の人たちと話し合いまして、いろいろ相談をしておる現状であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/96
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097・赤松常子
○赤松常子君 もう一、二点ちょっと伺います。
いつも業者の人々が申されるには、転業資金の不足を言っておられます。ところが、あなたさんの御意見の中では、割に転業がスムースにいったのはあまり金に困っていないというような御意見がございます。これは菅原先生からもお話があったようでございますが、吉原の場合、一流どころが、大どころが転廃業なすったですね。で残っておるのはその転業資金に困っている方でようが、いかがでしょうか。私、地方に参りましていつもぶっつけられる質問は、金がないということを業者が言われますが、あなた方の御経験からその転業資金の問題など楽観的でしょうか、どういうふうにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/97
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098・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) ただいまの御質疑については、私の方で転廃業はずっと前から勧奨して参った。それで一月三十一日に法人組織の人たちが廃業する前に関係者を呼びまして、東京都民生局の首脳部の人にも来ていただきまして、そしていろいろ廃業について声を聞き、それでこれを育成するということをやった。その際、転業資金を政府はなぜ考えてくれないかということを業者は盛んに東京都の当局に強く要望しておりました。しかし、そういうことはないということなんですね。業者の方もあきらめて転業へと踏み切ったというのが現状だと思います。従って、内容が楽であるとか何とかということでなくて、いずれもが、そういう法律が施行になるという以上は、その法律の線に従わなければいかぬという点を業者が自覚しまして、それでそれぞれ一月三十一日に法人組織を廃業した。あと残ったのは個人組織の所、法人組織の所も残っておりますが、法人組織というのはいわゆるいろいろ違反があった人たちの関係でありまして、これらが一月三十一日にやめたのです。今残っておるのは主として個人組織、その人たちが多いのです。これらの人たちもやはり同様でありまして、二月末日をもって廃業するという線に従って今警察との話し合いで、別にその間トラブルなく、交渉の推移を見ておるという状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/98
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099・赤松常子
○赤松常子君 それでは別にトラブルなく、何か警察の方で資金のあっせんでもしてお上げになる口をおききになった方は一人もありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/99
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100・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) 長期の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/100
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101・赤松常子
○赤松常子君 転廃業の資金に対して、警察の方から何か資金のめんどうを見てあげるとか、あるいは中小企業金融公庫に口をかけてあげるということでなく、自主的にそういうことは自分で始末して、転廃業していらっしゃいますのですか、今までの例は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/101
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102・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) これは警察の方でもいろいろそういう点めんどうを見てあげたいのですが、警察の方ではそういういわゆる更生資金の問題は、東京都の対策本部でもってこれは責任をもってやってもらっております。そういう方面に来てもらって、その方のあっせんをしたわけであります。従って、業者の方の関係は、どうにも転業資金がないから、東京都の方としても相談に乗れなかった。しかし、今御質問の中の従業婦の関係、これについては、東京都の方が何でも承わると、一千万円の更生資金というものを出しておられる。それを希望者には貸し付けるというような点で、これが従業婦の人たちの非常な関心の中心になりまして、いろいろ話がそういう点でもって検討されました。そういうようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/102
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103・赤松常子
○赤松常子君 簡単に伺います。最近の新聞によりますと、大へん憂慮すべき事態が起っておる。新宿かいわいが恐怖の町になったという記事なんであります。この売春防止法ができるということに対する第一の反対論はこういうところにあったわけです。非常に町がいろいろな愚連隊だとかというものが横行して社会の秩序を乱すということが反対論の理由だったんでございますが、そういう傾向が二、三日前の新聞に、新宿を中心にして起っている、ある所は安心して歩けない町も、新宿のある町にはできてきているという新聞の報道があったのであります。これに対して、取締りの立場にいらっしゃいます方が、これをどういうふうにして防いだらいいのか、どういうふうに対策をしておいでになるのか、これは警視庁にもお聞きせんならぬことでございますが、警察庁にもお聞きせんならぬことでございますが、起るであろう被害、恐怖というものを未然に防ぐ手段をとっていただいてもいいはずだと思うのでございますが、あなた様のその地区ではどうしていらっしゃいましょうか、これをどうすれば未然に防げるでございましょうか。あるいは人員の増加であるとか、いろいろなことが考えられると思うのでございます、その辺のことをちょっとお聞かせ下さいませ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/103
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104・齋藤良治
○参考人(齋藤良治君) これは、新宿の関係は私の所管外でありますから、これはただ浅草の署長としてのことでありますから、その点誤解ないように一つお願いいたしたいと思います。
大体愚連隊というものは非常に根強いものでありまして、取締りに対して潜行するということが非常に強いですね。ですから取締りが少しでもゆるめば、そこにまたすぐ盛り上る。従って、不断のこれらに対しての検挙、取締りというものが行われなければ、ちょっと気をゆるめれば、すぐそこから盛り上ってくるというふうな状況です。それから、これらの暴力団の動向については、やはり先ほど私が報告で申し上げた通り、これらの組織というものをよく解明して、浅草なら浅草にはどういう暴力団が昔からあるか、新興暴力団はどういうものであるかという、組織をよく解明して、そしてこれに対しては常に情報というものを取りまして、その動きについて抜かりのない、間隙のない手を打っていく、適時適切な処置をとっていくということでないと、手おくれになるということがよくあるのです。そういうような意味でもって常にやる、視察を密にして情報を取る。
それからもう一つの関係は、被害者に協力していただくということですね。これは、暴力団の関係において一番困るのは、被害者はおどかされることの後難をおそれて、警察その他の関係のところに申告するということをちゅうちょする、これが非常にわれわれの方で心配し、もう少し連絡をよくとってもらいたい。後難ということに、あまりそういうふうないわゆるお礼参りだとか、そういうことが強く宣伝されておりますから、そういうことにまどわされないように、警察の方によく申告してもらいたいという点を、われわれが要望しております。これをよくやっていただかぬと、結局、町にいろんなそういうバチルスというのですか、そういうものがいろいろ横行しておって、社会にあまり報道されてない、知らない、知ってるのは当事者だけだということになると、そこにだんだんと方々に根を張っていく、それが一つの既存の事実となって、このぐらいならやっても大丈夫だという、いわゆる法律無視の関係が生まれてくる。こういう点を断固われわれの方としてはやらなくちゃならない。それにはよく都民に協力していただいて、申告していただいて、また、警察は、そういう人たちに対してはあくまでも保護するという点を、熱心に見守っていくというふうでなくちゃいかぬ、そういうふうに思っています。そういうふうにして、一朝一夕ですぐ暴力団の取締りが成功をおさめるというわけにいきません。不断に努力することですね。そこに社会不安というのはだんだんとなくなり、明るい町が維持されるのだと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/104
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105・赤松常子
○赤松常子君 そういうことはしばしば言われておりますが、それを実現化するために具体的にもっと警察費の予算がほしいとか、人手が足りないとかということをほんとうはお聞きしたかったのでございますが、それはもっとあれでございますね。私どものお願いしたいことは、ほんとうに四月を迎えまして、三月一ぱいに、そういう未然に犯罪を防ぐべき万全の処置をとっていただきたい。でないと、売春防止法が空文化される、軽べつ化される、こういうことにならないようにお願いしたい。そういう要望をしたいから、そういうことをちょっと伺いたかったのでございます。
もう一点、西村参考人にお伺いいたしますが、ほんとうに御苦労様でございますが、いろいろ伺いました予算の不足ということは、しばしば婦人相談員の予算の不足——お手当が足りない、これはほんとうに私は重大だと思うんです。それで一年間あなた様がずいぶん御活躍下さいまして、その御経験からほんとうに、もうどのくらいほしいと、交通費とかいうものをはっきりと具体的にいつかお示し願いたい。ただ、これでは足りない、足りないということでなく、交通費にこのくらい、何にこのくらいということを、一年間の御経験から生み出した、そういう予算の不足額をいつか、この国会中にお申し出をを願いたい。これをまた私ども基礎にいたしまして、予算の増額に発言さしていただきたい、こう思うのでございます。足りないことはほんとうによくわかっておるのでございますが、これについて一言ちょっとおっしゃって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/105
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106・西村好江
○参考人(西村好江君) 手当は月九千円でございます。それに打ち切り旅費と申しまして、あと、とにかく月八百五円いただきます。これに対して、よけい動いても、遠くに行っても八百五円、実際問題として絶対足りませんし、また、対象者を連れて歩くときに、自分だけ御飯を食べてその人に食べさせないということはできないという、いろいろ不自由がございますので、少くとも旅費は三千円くらい——これはこまかいデータを出しますが、それから手当の問題を、もう少しふやしていただけば私はいいと思いますが、一応こまかいものを、データを持って上るようにいたしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/106
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107・赤松常子
○赤松常子君 お願いいたします。
菊澤先生にちょっとお尋ねしたいんです。
今度、補導院のこの規則の中に、制服を一定に着せたい、こういうことがございます。ところが、西村参考人のお話では、制服にちょっと反対のような御意見がございまして、やはりアクセサリーでもつけた普通の着物がいいんじゃないか、ドレスがいいんじゃないかという御意見でございましたが、長い御経験からごらんになって、この制服の問題はどういうふうに御判断いただいているでしょうか。ちょっとおっしゃって下さいませ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/107
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108・菊澤鋭子
○参考人(菊澤鋭子君) 売春婦の場合と、私のただいまの少年院の場合と、ちょっと違うと思うのでございますが、少年院の場合を先に申し上げまして、実情を申し上げます。一応よく刑務所と同じだということを申されておりまして、なるほど、はげちょろけて参りますと、変な格好をいたしておったのでありますが、一昨年でございましたか、局の方で濃紺の染めのいいのをいただきましたのでございます。と申しますのは、そのときもだいぶ問題が出ましたのでございますが、いろいろのものを着せると申しましても、さあ具体的にとなりますと、この子もあの子も同じでは、どうも工合が悪いというようなお考えもだいぶ出ましたんでございますので、女学生という気持で、紺ならば、色が黒くても太っちょでも、何でもいいんじゃないかというようなことで、紺の高等学校、中学校の生徒並みの形にいたしましたのでございます。ところが、やはり質の問題になりまして、やっぱり見劣りいたしましたので、去年は、質のもう少しいいのをいただきたいということをお願いしておる次第でございますが、うちの中におりますれば、そういうわけで、あまり刑務所色にならないので、このごろはやっと安心いたしておるのでございます。
また、それにつけましても、生活指導になりますけれども、ほし方も気をつけまして、裏からほせ、ズボンなんかも裏返してほせというようなこまかい注意をいたしませんと、あれはやはり哀れっぽい色になって参りますので、この点で、少年院のただいまの場合は、ふだんのは質をお考えいただきたいと思いますし、ところが、私のところのように院外に出しておる子供には、娘並みのものを着せたいというのが願いでございます。冬中は黒のオーバーをいただいておりますので、カモフラージュして出ておりますが、夏はブラウスを、それぞれしまのとか、模様のとか、赤とか無地のとかというものをとしらえまして、それを着せてやっております。それで大へん喜んでおりますのでございます。私、この服装の問題につきましても考えましたのでございますけれども、売春婦の場合には、これは大へんむずかしいのじゃないかということを考えておりまして、その制服の一色では工合が悪いのじゃないだろうかということを考えております。それで、これでお許しいただけますならば、せめて外に出ますことを許されまして出ますときのは、やはりその娘々に合ったようなのを着せながら、やはり色彩の教育もしていかなければならないのじゃないだろうかというようなことも考えております。ただ一つ、勝手気ままに、質も何もかも形も許すとなりますと、ここにまた隣りの子とのせり合いができやしないかというような懸念もいたすのでございますけれども、二十才過ぎました娘に制服ということは、どうも工合悪いのではないかということを考えておりますのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/108
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109・赤松常子
○赤松常子君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/109
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110・青山正一
○委員長(青山正一君) どうもありがとうございました。
ほかに御発言もないようでございますから、これで終了いたすことにいたしたいと思います。
参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。本日は長時間にわたりまして、売春防止法の施行運用に努力しておられます貴重な御経験なり、あるいは御抱負をお聞かせ下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
それでは、これで散会いたします。
午後五時十二分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X00919580225/110
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