1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月十七日(月曜日)
午後一時四十八分開会
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出席者は左の通り。
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
一松 定吉君
棚橋 小虎君
宮城タマヨ君
委員
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
大谷 瑩潤君
小林 英三君
斎藤 昇君
吉野 信次君
赤松 常子君
藤原 道子君
辻 武寿君
国務大臣
法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
政府委員
警察庁刑事部長 中川 董治君
法務政務次官 横川 信夫君
法務省刑事局長 竹内 壽平君
法務省矯正局長 渡部 善信君
法務省保護局長 福原 忠男君
厚生省社会局長 安田 巌君
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最高裁判所長官
代理者
(事務総長) 五鬼上堅磐君
最高裁判所長官
代理者
(刑事局長) 江里口清雄君
最高裁判所長官
代理者
(家庭局長) 菰淵 鋭夫君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
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本日の会議に付した案件
○売春防止法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○婦人補導院法案(内閣提出、衆議院
送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。
売春防止法の一部を改正する法律案、婦人補導院法案を一括議題といたします。質疑を続行いたします。御質疑の方は御発言下さい。
なお政府から、唐澤法務大臣、渡部矯正局長、竹内刑事局長がお見えになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/1
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002・棚橋小虎
○棚橋小虎君 売春防止法についてちょっと質問いたしたいと思うのでありますが、先ごろの政府委員の御答弁によりますと、補導処分というのは保安処分の一種であって、本人の売春の性癖を矯正して、正常な社会生活に復帰させるということがその目的であるということを言われておるのであります。ところで、この法案によりますというと、補導処分に付することのできるのは、第五条の罪を犯して、そうしてこれに対して懲役刑を課する場合に、執行猶予に付したときに初めて補導処分に付することができるのである、こういうことになっておるのであります。ところが、本人を補導処分に付するには、そうなりますというと、その前にたくさんの段階があるのでありまして、まず、売春をいたしましても、それが検挙されて、一回や、二回は起訴猶予、不起訴処分ということがあるだろうと思うのであります。それからして二回、三回と重ねて参りました場合に、初めて起訴されて、そうしてこれに罰金刑を言い渡す。けれども、罰金につきましても、やはり執行猶予という処分があるのでありまするからして、一回ぐらいは執行猶予になる、さらに罪を犯すことによりまして初めて罰金刑ということになって参る、そうしてさらにまた罪を犯すことによって、今度は体刑ということになって、初めてそこで執行猶予になって、執行猶予を言い渡す場合に補導処分に付するということになるのでありますが、そうなりますというと、補導処分の言い渡しを受けるまでの間にずいぶん長い段階を経ることになるのであります。それならば補導処分の目的が、本人の性癖を矯正して、そうして正常な社会生活に復帰せしめるのが目的であるというならば、なぜそのような深いいわば病膏肓に入った段階に達するまでじっと待っていて、そうして初めて補導処分にするというような手ぬるいやり方をするのか、もっと早い段階においてこれを補導処分に付して、そうして本人の売春の習癖がそこまで高じてこない、病膏肓に入らないうちに早く補導処分に付して、そうして性癖の矯正に当るということが効果の上からいっても一番効果的である、こう考えるのでございます。ところが、今のように考えて参りますというと、ずいぶん長いこといろいろなことをして放任をしたようなことをしておいて、そうして最終の段階になってくるのを、そこまで落ちてくるのを待っておって、そうしてそこへきたときに初めて補導処分にするというのでは、何だかわなをかけて待っておって、そうしてそのわなにかかったときに初めて補導処分をするというように考えられるのでありまして、補導処分の目的を達する上からいっても私は非目的的であると、こういうふうに考えるわけであります。それからなおまた、罰金をその前に課すると申しましても、一体売春婦が罰金を申し渡されてその罰金がただ払えるものではないのでありますからして、やはり売春行為か何かによってその罰金を払わなければならない、そういうような段階を経て、そうしてさんざいろいろな段階を経過してから初めて補導処分にするということが、この法律の上からいっても私は非常に不適当であると考えまするので、なぜ一番初めに起訴されて、そうしてこれに対する罰金刑の言い渡しがまずあるのでありましょうから、そのとき直ちにその者を補導処分に付して、そうしてその本人の性癖の矯正をしないか、こういうふうに私は考えるのでありますが、本案によってその段階を空しく見過して、手をこまねいて見ておって、そうして最終段階になって、ほとんど手がつけられないようになってからようやく補導処分をするというような方法を講じているのは、何か理由があるのでありますか、その点をお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/2
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003・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお尋ねのように、補導処分の言い渡しをいたしまするまでの間に幾段階かの処分のニュアンスがあるわけでございますが、最終の段階になって初めて補導処分の言い渡しをするということは、補導処分を認めようとする法律の趣旨に反しはしないかという御疑念かと存ずるのでございますが、補導処分は仰せのように、保安処分の一種でございます。まあ保安処分と私どもは考えておるのでございますが、しかしながら、保護観察も保安処分でございますが、これは身柄の拘束を伴わないのでございます。しかし、補導処分は六カ月という期間強制力をもちまして、ある一区画に身柄の収容をいたすのでございます。つまり保安処分としましては相当強い処分でございます。そこでこの補導処分を言い渡しますのは、本来ならば実刑を言い渡すべき案件につきまして、刑の言渡し、刑罰を執行するという考え方ではなくして、そのような実刑に値するような行為を犯した売春婦に対しまして保護更生の道を講ずる、そういう趣旨で行おうとするものでございます、従いまして、その処分をいたします状況は、実刑に処せられるような場合ということになりますので、今のニュアンスから申しますと、実刑のすぐ前の段階というふうになるのでございます。ただし、売春防止法第五条の罪は、きわめて軽い罪でございます。申さば軽犯罪法の罪と同視すべきような罪でございまして、そういう罪に対しまして、これは補導処分を認める趣旨は、そういう罪を手がかりとして補導処分の道を講じよう、こういうことでございますので、このような罪を犯した売春婦に対して、仰せのように、その最初におきましては、不起訴という処分になる場合が多いと思います。そのような者に対しまして、野放しになっておるのではなくして、この不起訴はやはり保護更生の措置を担保として、不起訴処分になると思うのでございます。それでそれから先、回を重ねてくる場合、仰せのようなニュアンスがあるのでございますけれども、心持といたしましては、保護更生というところが主眼でございますので、不起訴あるいは起訴をいたします場合には、保護観察つきの執行猶予になるか、次の段階の補導処分つきの執行猶予、この三種類が一応私どものねらいとしては考えられておるのでございまして、もちろんその間のニュアンスがあります以上、裁判所がそのいずれのものを選びますかは、裁判所の判断に待たなければなりませんけれども、立法の趣旨を体しまして、運用の面におきましては、右申しましたように、保護更生の保証つきの起訴猶予、あるいは起訴をいたしました場合には保護観察つきの執行猶予、さらに補導処分つきの執行猶予、できるならば罰金の執行猶予とか、野放しの執行猶予というようなものはなるべく避けた方向でもって運営をいたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/3
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004・棚橋小虎
○棚橋小虎君 どうも御答弁を承わっても私は釈然といたさないのでありますが、補導処分というのは保安処分の一種であって、刑罰とは違うということは再三当局が申されておるのであるが、どうもこの補導処分というものとやはり刑罰というものとが、はっきりこう観念的に本法においては区別されておらぬものではないか、多少その間に混乱があるのじゃないかという気が私はするのであります。刑罰に伴ってこの補導処分というものを言い渡すのであるとするならば、何もいろいろその効果の上らぬような、ほとんど野放しにするような状態にしておいて、後になってからして病があつくなってからして、これに補導処分の手当を加えるというよりも、初めからして効果の一番上るときに、つまりいえば、鉄は一番熱いときに打つべしというのでありますが、その間に早く補導処分に付して完全な手当をするということが私は大事なことじゃないかと、こう考えるわけであります。そこでまた、そういうふうに、これは一つの刑に近い自由を拘束するものであるというふうにお考えになりますそういう考えは、やはりその補導院の収容者に対する取扱い方に対しても私は現われておると思うのでありまして、補導処分が保安処分であって、一つの教育施設というものであるならば、およそ補導院に収容されておるところの婦人などに対する取扱いは、補導院法に規定されておるものよりももっと自由を尊重し、もっと取扱いが人格を尊重するような行き方をすべきものじゃないかと思うのでありますけれども、この補導院法によりますというと、刑務所とほとんど選ぶところがないような、ことに保護具を使って、そうしてある場合には戒めるというようなやり方までしておるのでありまして、こういう点もやはり刑罰と保安処分との混同がここに現われておるのじゃないかと私は考えるのであります。そういう意味におきまして、この初めからして、もっとはっきりと保安処分というものと刑罰というものとを区別して、初めの罰金刑の言い渡しというようなことに、直ちにそれに合わせて補導処分というものを付加するということにし、それからまた、一たび補導院に収容するというような場合においては、補導院の取扱いなども刑務所とはせつ然区別した、もう少し自由、人格を尊重したやり方をしたらいいのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/4
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005・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 補導院の処分の関係につきましては、矯正局長からお答え申し上げる筋合いだと思いますが、これは保安処分と刑とが混同していることによって、補導院の中の処遇が厳格なものになっているというふうには私ども考えておらないのであります。
それからなお、最初に仰せになりました点でございますが、補導処分が保安処分であるということについても、観念的に明確になっていないおそれはないかという点でございますが、これは私どもとしましては、観念的にはっきり区別をいたしておるつもりでございます。ただ、刑にかえて保安処分を言い渡すという法律構成になっておりませんで、刑の言い渡し、つまり刑事手続に載せまして、刑の言い渡しの際に補導処分を言い渡すという構造をとりました関係から、保安処分と刑の言い渡しとの関係におきまして、法案の上においてもその両者の効果のかみ合う関係、その効果の消滅した場合に、双方に影響を及ぼす関係等、複雑な規定をせざるを得なくなったのでございますが、しかしながら、考え方としましては、両者を峻別いたしまして処理しておるつもりでございます。
なお、保安処分というからには、なるほど六カ月というふうに短期間を区切りますことは、事柄の性質上適当でないと思いますし、諸外国の例に見ますると、これらは不定期の期間になっておるのが多いのでございます。そういう点を六カ月と定期的に定めましたのも、もし混同しておるというおしかりがあるかとも思いますけれども、五条違反の刑に六月以下の懲役でございまして、その辺をにらみ合したところ、ここは一種の妥協でございますけれども、そういうようなところに若干刑との影響し合っている——考え方の中にもし影響し合っている面があるとすれば、そういう点かと思いますけれども、考え方としましては、両者を混同してここに規定をしたつもりはないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/5
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006・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 私からも一言御説明申し上げたいと存ずるわけでございますが、この補導処分がはしにも棒にもかからないようになってから、初めて動いていくというお説でございますが、さような場合もあるかと思うのでございます。しかし、やり方によりまして、その点十分一つ気をつけていかなければならないと思うのでございます。この補導処分は、これまでも御説明申し上げましたごとく、どうしても今までの環境から引き離して矯正教育を施していかなければ目的を達することのできないような場合に、これが動いていくわけでございまして、従いまして、本人の家庭に帰しまして側面的に補導することによりまして、指導することによりまして、効果の上るような場合には、これは動かないわけでございます。しかしながら、その裁判の際に、家に帰してもとても目的は達し得ないというような案件もあるかと思うのでございます。さような場合には、この保護観察処分に付せずして、直接この補導処分に付せられる場合も私はあるかとも思うのでございます。かような場合に、まあ試みにだめかもしれぬけれども、一つやってみようということも一つの方法かとも思いますが、今まで少年事件につきましてもさような弊害があったのでございます。これは保護観察処分、それから少年院送致の処分、いろいろこれにも段階があるのでございますが、今までそういう段階を何べんも何べんも経て参りますと、最後の少年院の処分をやろうというときには、もう今おっしゃるように何べんも何べんもそういうふうな段階を経まして、ほんとうに病膏肓に入っているそのときには、いろいろ手を尽してもなかなかあとに戻ってこない。もうちょっと前にやったならばあるいは効果があったのじゃなかろうかというような案件もあるのでございまして、こういうふうな、いかなる処分をするかということにつきましては、裁判の際に十二分にその点を考慮していただかなければならない事柄だと私考えておるのでございます。従いまして、この補導処分を十二分にのみ込んでいただきまして、そうして補導処分によらなければならないものはいきなり補導処分も行いまして、そうして効果のある時分にこの処分をやっていくという方法がとらるべきではなかろうかとも考えておるのでございます。
なお、この補導院が保護具等の措置によりまして、まことに刑務所と同じような拘束力の非常に強いものだというふうのお説でございますが、なるほど保護具というのは拘束をきつくするような感が深いのでございますけれども、この保護具は婦人補導院法にも規定してございますごとく、どうしてもやむを得ないときにこれを使うわけでございます。自殺とかあるいは自傷行為というふうな、どうしても、あるいは押えなければならないようなときにやむを得ず使うわけでございまして、決して朝から晩まで使っているわけでもございません。また、お手元に配りました処遇規則要綱の中にもその趣旨は表わしまして、常にこの行動を観察しまして、そうして不必要になりましたときには直ちにこれを解除するというふうな手続をとりまして、その乱用のないように戒めまして、どこまでもこの補導院を明るく運営していきたいというのがこの補導院のねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/6
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007・青山正一
○委員長(青山正一君) 先ほどの政府委員のほかに、ただいま法務省の横川政務次官、福原保護局長、最高裁から五鬼上事務総長、江里口刑事局長がお見えになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/7
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008・棚橋小虎
○棚橋小虎君 現在、四月から商売ができないということで、今までの売春婦がいろいろ転業をしたり、家に帰ったりいろいろしておるようでありますけれども、実際において、あの売春婦のうちで、どのくらいの者が自分の家へ帰って、そこでもって何とか生活ができるか考えてみますと、これはほとんど実情においては、自分の家に帰るところもない。帰ってみたところで、うちはとても自分を食わして遊ばしておいてくれるようなうちでないというような状態にある者が大部分でございまして、うちに帰ったと表面では言っているけれども、事実はそうでないという者が非常に数の多いということは実情でございます。
ところで、そういった者に対しまして、売春をよんどころなく、またやった者に対して罰金を課する、あるいはそれを保護観察に付する、そういうようなことをやって、それでどれだけ意味があるか、私はほとんどこれは意味がないと思います。そういう者に対しては一日も早くその者が更生することができるように、あるいは職業補導をするとか、あるいはその他の生活の指導をするとかいうふうにして補導院に入れて復活の道を講じなくちゃならぬのに、そういうことをしないで、ただ漫然ある段階にくるまでは黙って見ておる、こういうやり方は私は意味のないやり方であり、そうして売春婦にとっては非常に不親切なやり方であると思うし、また、この法律の立案をされた方々は売春婦の生活の実態というものから考えておらぬ、実情にうといからしてこういったようなことができると思ってやっておられるのじゃないかしらぬと私は考えるのであります。こういう点は、もっと実情に即して、一日ものんびりした生活などをしておれない、売春以外に生活の道がないというような者に対しては、もっと的確な、そうして猶予のない方法を講じてやらなければ、ほんとうに更生の道を達することはできないだろうと私は考えるのでありますが、これは別に御答弁を私は期待するわけではありませんけれども、私のこの法律を見まして感じるところは、そういうことであるということを申し上げて、この政府の、当局の方の運用その他については、もっと実情に即したやり方をしていただかなければならぬということを私は申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/8
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009・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 私は、今日この法案が委員会で可決されるということを伺っておりますので、もう質問する最後のときであると存じますので、一、二点自分の不明なところを当局の方に御説明を願いたいと思うのでございまするが、法律には全くしろうとでございまして、常識論をもって申し上げまするので、その点は一つあしからずお含みおきを願いたいと思います。
私はまず初めに、売春禁止法の法律は当然早く改正されまして、その万全を期していただくということに対しまして、何ら異論はないのでありますが、ただ、この行為というものが、人間の本能の問題であるだけ非常に取り扱いがむずかしいのじゃないかということを考えるのでございます。特に第十七条には、「第五条の罪を犯した満二十歳以上の女子に対して、」云々ということが書いてございまするが、この条項の書き方から申しますると、やはり補導処分であるとは申しながら、罪を犯したという、犯罪という意味がそこに現われておるのでございます。犯罪ということになりますと、まあ常識から考えまして、加害者と被害者というのが考えられるのでありますが、おそらくこの罪を犯すということは、社会悪であるということによってこれを取り締っていくということに決定されてきたものであろうと思うのであります。もちろんこういうことが第三者の利益のために行われるということに対しては、最も厳重なる処分を要するのでありまするが、単独売春というようなものに対しましては、その範囲、その限度というものが非常に不明瞭な点があると思うのであります。
そこで、お伺いいたしたいことは、この犯罪に対しまして、本人を深く責めるという一面において社会の道義的な方面における再教育と申しまするか、その方面の機運を成長していかなければ、とうていこれは根絶することが困難であると思うのです。そこで、大臣にお伺いいたしたいことは、本人を補導するばかりでなく、社会を浄化するという意味において、最近やかましく教育問題で取り上げられておりまする道徳教育というものに対して、大臣はこれを大いに行なって参らなければならぬとお考えになりまするか。道徳教育のあり方というものに対するお考えを承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/9
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010・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいまのお尋ね、まことにごもっとも千万と存ずる次第でございまして、この売春非行常習者はあるいは家庭の境遇とか、経済的の事情とか、いろいろその原因はございましょうけれども、さらに大きくつかんで申し上げますれば、やはり何と申しますか、社会的のモラルの低下ということの影響を受けまして、そして婦人としての人格というものについて何ら確固たる観念がない。こういうことから売春のような非行をあえてしても恥ずるところがない。こういうような関係があると考えるのでございまして、どうしてもこの根本は、やはり道徳観念の涵養、婦女子について言えば婦人としての尊厳に目ざめて、自分から恥じてそういうことをしないというような、しっかりした道徳観念を把握するというふうにもっていかなければならぬと考えておりまして、その意味におきまして、今文部大臣がせっかく御心配になっておりまする道徳教育、これはまあ学校教育が中心でございましょうが、それを中心としての社会一般の徳性の涵養ということについてはどうしても国家としても力を入れていかなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/10
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011・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 この売春を現行犯としてこれから先いろいろ取り扱われるのでございましょうが、その現行犯は、売春法の第十一条並びに風俗営業取締法の第六条等を基準にされるのではないかと思いまするが、その単行売春に対する基準はどこにお置きになるのか。それを一つ承わりたいと思います。それを行き過ぎますと人権のじゅうりんということになるのではないかと存じますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/11
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012・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 仰せのように、取締りに当りましては、行き過ぎの起らないように、十分注意して行わなければならないのでございまして、ただいま検察部内はもちろん警察方面とも密接に連絡をいたして、その取扱いに過誤なきを期しておる次第でございます。刑事処分の現定として掲げております第五条以下の罰則でございますが、ことにこの保安処分と関係のあります第五条につきましては、これは申すまでもなく、単純の売春行為を罰するのではございませんで、公衆の目に触れるような方法とか、あるいは道路その他公共の場所で人の身辺に立ちふさがるような行為でありますとか、あるいはまた、公衆の目に触れるような方法で客待ちをしているといったような、人の目に触れるような状況のもとにおいて勧誘等の行為がなされた場合に処罰されるのでございます。そういう状況でありますので、これの検挙取締りにつきましては、さして人権問題を引き起すという事例はこれまでの取締りの経過に徴しましてもないようでございます。現にこの種の勧誘の罪は、これまでは各府県の売春条例等に規定がございますのですが、年間に約一万四、五千人の人が検挙取締りを受けまして、検察庁へ送致をされておるのでございますが、この五条違反につきましては、検挙取締りに行き過ぎを生じた事例は、今まであまり報告を受けておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/12
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013・青山正一
○委員長(青山正一君) ただいま最高裁の菰淵家庭局長並びに警察庁の中川刑事部長がお見えになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/13
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014・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 今度は補導院のことについて伺いたいと思いまするが、第十一条に懲戒の条文がございます。その中の二項に「十日をこえない期間謹慎室で反省させる」ということがございまするが、この補導の中には、生活指導、職業補導、医療補導という三項目を掲げておられまするのに、精神面における指導ということをうたってないばかりでなく、この謹慎室で反省せしめるという、この反省ということが精神面の問題であるだけに、その基準となるものは、今、日本でどういうものを基準とお考えになっておりまするか、それを伺いたいと思うのであります。反省の基準になるものを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/14
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015・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) その前に、この生活指導の点についてちょっと触れて申し上げたいと思うのでございますが、この婦人補導院における補導が三つの大きな項目をあげて補導しておりますることはただいま仰せの通りでございまして、この生活指導の面で、ただいまお話の精神的な指導を取り上げておるのでございます。ただいまお手元に配付いたしましたこの処遇規則の中の補導の点に、その点を申し上げておいたのでございますが、第十八条のところに、生活指導の重点というものを九つ実はあげておるのでございます。この中にただいま仰せの精神的な面、婦人としての徳性を養わしていくということをこの第十八の中の大きな一つの目標として掲げておるわけでございます。この十一条に規定しておりまする懲戒でございますが、これは在院者が、婦人補導院に収容されておる者といたしまして守らなければならないという事柄に違反いたしましたときに、それを反省させるために行う懲戒の処分でございますが、この十日の間、本人たちを謹慎室に収容いたしまして、そうして静かに本人の行動を反省させるのでございますが、それにつきましては、本人をただ入れておくだけではなくして、何がゆえにかような間違いを起したのか、それを本人たちがいかように考えておるのか、また、いかにこれを考えていくべきであるかということにつきまして、この謹慎室に収容いたしておりまするときに、つぶさに教官が当りましてこれを指導いたすのでございます。これはもちろん生活指導に掲げました精神教育の線に沿いまして、本人たちに反省の機会を与え、そしてみずから間違った行動をいたしましたことについてのみずからの反省をさしていくというのが、この規定のねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/15
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016・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 今おっしゃったのに対しまして、私もそうであろうかと思いまするが、ここに出ております説明の中には、学校、病院、事業所、宗教団体、婦人団体または学識経験者というようなものを列挙されておるのでございます。学校というのは、学校へお入れになるかどうか、その手段がわかりません。かつまた病院等は、これは病気いたしておる者がなおしていただくのだろうと思います。事業所、宗教団体、婦人団体は、ここに別にまた現わされておる今までの婦人団体、宗教団体のこれに対しまするいろいろの事業の結果を報告されておりまするから、大ていその趣旨はわかりますけれども、国立の補導院としておやりになる場合に、この反省の指導をする基準がどこに置かれておるかということに対して伺ったのでございます。しかし、まあ大体お考えになっているところは察せられますので、これ以上伺うことは時間の都合上やめたいと思いまするが、ただ、その経費がいただきました資料によりますと非常に少いのであります。映画演劇謝金で七万二千円、医療謝金で五万七千円、宗教謝金で一万九千円、篤志面接謝金で五万四千円、講師謝金が一万一千円、これは三つの国立補導院にこれを割り当てるとすれば、一カ所はまことに経費の少いものとなります。これは六カ月間の費用でありまするか、一年間の費用でありますか。一年間とすれば、なお一そう経費が小さくなるわけなんでありますが、果してこのくらいの予算によって成果があげられるという自信を持っておいでになりますか、いかがか、それを一つ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/16
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017・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 仰せのごとく、この謝金は少いのでございます。われわれといたしましては、もっとこのような謝金をたくさんに予算に組んでいただきたいのでございまするが、これもなかなか全体の関係からいたしまして困難でございまして、ようやくこの程度予算で認められたのでございますが、これは仰せのごとく、やはり一年間の謝金でございます。われわれといたしましては、この謝金を最も有効に使っていただかなければならないのでございまするが、大体これまで刑務所あるいはときにこの少年院関係でのこういう教化活動に準拠いたしまして、この予算の単価のはじきができておるのでございます。従いまして、大体少年院に準じたやり方でこの教化活動をやっていかなければならないのでございますが、もちろん少年と、婦人のおとなとでは趣きを異にいたしておるわけでございまして、そのやり方につきましては、これは十二分に検討を加えながら最も効果的な方法を講じたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/17
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018・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 最後に伺いたいことは、この少年院の処罰規則と、この補導院の処罰の規則との比較を拝見いたしますると、大分差があるように思うのであります。あるいは少年院は手錠をはめたり、その他の懲戒の面からいいますと、非常に重く扱われているように考えられます。ただ、補導院の方は、この手錠のかわりに保護具というもので一時それを鎮静するまで縛っておこうというわけですが、そういう人権を無視したとまでいわれるほどの拘束をせなければならぬような事態を起すような婦人というものがあるのでありましょうか。今日までに例がございましたら承わらせていただきたいと存ずるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/18
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019・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 少年院の規則と比べまして、婦人補導院の方がやや緩和されておると仰せになることはごもっともでございまして、これは少年院の方は御承知のごとく、二十才未満の男女の少年たちでございまして、二十才になんなんとする男の子供になりますと、力の点から申しましても相当強い子供がおるのでございます。こういうふうな子供のあばれましたときの処置といたしましては、どうしてもさようなものを使わなければならないような場合もできますので、実は手錠等の規定を置いたわけでございますが、婦人補導院の場合は、婦人でございまして、成人ではございますが、婦人でありまする関係から、そこまでの必要はなかろうということで、この保護具ということにいたしたのでございます。
なお、何でさようなものを使わねばならないのか、その実情はどうかというお尋ねでございますが、かような保護具を使わなければならないような場合が、現在でもやはり少年院の、女子を収容いたしておりまする少年院においても往々にしてさような場合があるのでございます。先般こちらで公聴会をお開きになりましたときに、菊沢、仙台の青葉の園長がこちらにお伺いいたしまして、そしてその状況をお話しいたしたのでございますが、幸いにいたしまして、青葉の少年院におきましては、この手錠等を使うような事例がなかったのだそうです。これはさような逼迫した事態が起らなかったのはまことに仕合せでございまして、まあ比較的東北の方では、それまでにすれた少年たちがいなかった結果だろうと存ずるわけであります。なるべくかようなものを使わないことに越したことはないと思うのであります。しかしながら、婦人たちの中には定期的に、生理的に精神の高ぶるときが往々にしてあるようでございます。さような場合には、ほんとうに職員たちもそれを押えるのにずいぶん困るという事態が起きておるのでございます。これは栃木の女子の刑務所でございますが、ここでも現在入っておりまする収容者の中にかような収容者がおるのでございます。これはつぶさにその状況を写真までもとりまして報告を受けておるのでございますが、こういうふうな案件が往々にしてあるのでございます。これはここではございませんが、売春対策審議会の席上でも、厚生省関係の保護会を経営しておいでになる御婦人の方から、さような御報告があったのでございます。これもまだそこまでいっていない人たちであり、本人が更生の意気に燃えまして、みずからその更生施設に入ってきた人たちでございますが、それでさえも、がんじがらめにして警察へ電話をかけたというような案件があったのだそうでありますが、かような案件が往々にしてあり得ると存じます。かような場合には、やむを得ずこの保護具を使う、使わぬのに越したことはございませんが、さような場合も予測できまするので、やむを得ずこの規定を置いた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/19
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020・辻武寿
○辻武寿君 私から一、二点質問をいたします。
先ほど大谷委員から二、三出た問題で、関連になりますが、十四条の外部からの援助ですが、「学校、病院、事業所、宗教団体、婦人団体又は学識経験のある者に委嘱して、在院者に対する補導に関する援助を求めることができる。」、この中で、特に宗教団体の援助というものをどういうように考えておられるのか、あらためて大臣の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/20
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021・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) これは御承知のように、自由を拘束する意味におきましては、まあある意味においては刑務を行なっておるところと同じような関係がございまするが、そういうところに収容されておりまする者には精神的のかてが必要でございまして、今日宗教が自由になっておりまするから、刑務所におきましては、非常に自由な考えから、また、宗教関係の人のお話などを聞く機会を作っておるわけでございますが、ここに掲げておりまするのは、特別宗教団体というものを目ざして書いたわけではないのでございまして、本人の今までのいろいろの精神的の関係などにおきまして、自分が宗教の力によって更生をしようというような希望のある場合におきましては、その希望をかなえてやるのがよろしいのではないかという観点から、広く宗教団体その他学識経験のある者、一切の指導者に助力を求め得るように書いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/21
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022・辻武寿
○辻武寿君 そういたしますと、法話でも聞かせて特に信仰をさせようという意味があるのですか、それともないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/22
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023・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) それでは私から御説明を申し上げます。
ただいま大臣からお話のありましたごとく、こういう施設におきましては、精神的な指導、ことに宗教的な指導の必要なことは十分われわれ認めるわけでございまして、これをやらなければならないわけでございますが、しかしながら、国家施設で宗教教育をやるということは憲法によって禁止をされておるのでございます。従いまして、国家の施設として特定の宗教の教育をやるわけではございません。その前段となるべき宗教情操を涵養していくということはこれはどうしても必要なことでございます。これはいわゆる宗教教育というふうには考えられていないのが現在の通説でございます。従いまして、かような宗教情操を涵養していく面からいたしまして、この補導院の職員がやるばかりでなく、広く外部からの援助も求めまして、さような全般的な宗教情操の教養ということも考えていくべきだと思っておるのでございます。なお、特殊な宗教行事の希望がありまする際には、これは本人の希望を阻害してはならないわけでございまして、本人たちの宗教に対する自由を尊重いたしまして、さような法話を聞きたいというふうな願い出がありましたときには、それを聞かしてやろうというのが本条の規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/23
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024・辻武寿
○辻武寿君 全般的な情操教育というふうなお話で、特定な宗教教育はやらせないというお話でありますが、管区長または婦人補導院長の考えによっては、キリスト教ならキリスト教だけを何べんも聞かせるというようなことになってくると、特定な宗教教育という形になってくると思うのです。そういう点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/24
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025・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) この点は、われわれといたしましては、神経過敏過ぎるくらいに実は考えておるわけでございまして、管区長あるいは施設の長のさような宗教的な、たとえ自己の宗教がございましても、それによりまして、その院の活動に影響をもたらすというようなことがありませんように、十二分に指導いたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/25
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026・辻武寿
○辻武寿君 具体的にはっきりお聞きしますが、たとえば管区長または婦人補導院長の考えによって、踊る宗教の話を聞かせる、その先生が来て踊らせるというようなことがあり得るかないか、一つその点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/26
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027・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) これは、たとえ院長がさように思いましても、収容されている者たちがさような宗教を要望しない場合には、さようなことはいたしません。どこまでも収容者の意向をしんしゃくいたしまして、その求めによって満たしてやる、こういう方向に持っていくわけでございまして、管区長とか院長の考え一つによりまして、さような宗教活動を行うということは、絶対に許されないことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/27
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028・辻武寿
○辻武寿君 収容者の希望といいますと、それは過半数とか、あるいは三分の一以上とか、あるいは一人、二人でも希望があればということになってくると思うのですが、その点の限度はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/28
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029・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) はなはだむずかしいことでございまするが、実は、それならば何でもいいかということにもなるわけでございまするが、これは、ただいま仰せのごとく、いつでも、どういうときでも、この宗教活動をやらなきゃならぬということになりますと、この院の運営自体にも影響を持ってくる場合が起り得るのでございまして、さような場合に、どこまでもこの補導院というものの運営に支障が来たさない限度におきまして、本人たちのさような希望を満たしてやりたいというのが、大体の限度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/29
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030・辻武寿
○辻武寿君 まあこの点は一つ研究してもらいたいと思いますが、売春防止法に関することで、公娼はなくなって、赤線は消え去ったけれども、かわりに白線、黒線、緑線、紫線、青線、紺線というような、たくさんの線が出てきているということは、新聞にも出ておるけれども、かえって売春防止法を実施したために、手に負えなくなってくる、悪質な売春並びにあっせんが行われていくというような心配が非常に出てきたのですが、これに対する大丈夫だという確信が政府側にあるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/30
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031・中川董治
○政府委員(中川董治君) この法律で、売春を助長する行為——五条に定める目につくような方法で売春を勧誘する行為、これは処罰いたします。そういう処罰をいたすのでありますが、そういうことを、処罰の強化に伴いまして、いろいろ法網をくぐった形でやると、こういうことも考えられます。ところが、法律は、名称のいかんにかかわらず、この売春防止法の定める犯罪行為をやっておるという点については、取締りをいたしますので、この点については取締りを徹底して参りたいと思うのであります。ところが、この法律に規定してない事項等については、やはり一般の道義の高揚——みなお互いの国民が性生活というものをきれいにしていく、こういう広い角度の御協力ということによって解決すべきである。法律の関与すべきことと、法律以外の道徳その他によって大いに向上すべき点と、両者相待って、この法律の全体の大きい目的を達成すべきである、こういう角度から、取締りの面におきましても、努力をして参りたいと思いますけれども、取締り以外の面の活動と相待ちまして、この法律全体の目標を達成すべきである、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/31
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032・辻武寿
○辻武寿君 なかなか法網をくぐって——医学が発達すれば、これにも増してばい菌の方がなお先行していくというような現在の状況でもありますので、法律ができると、さらに先をくぐって、悪質な売春に引っかかることを平気でやるような者がたくさん出てくる。予算も足りない、それから取締り方法も、どうせ徹底的に取り締れないのだというような考えを持って取り締ったら、これは、かえって法律が地に落ちるようなことになると思うのです。厳重に一つ考えて、法律が地に落ちないように、いろいろ検討してもらいたい、時間がありませんから、意見を述べて、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/32
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033・藤原道子
○藤原道子君 私は、予算委員会等の関係で、あまり出席がよろしくなかったので、すでに御質問があったかと思いますが、私の納得のいかない点につきまして、二、三御質問をいたしたいと思います。
先ほど来、保護具の問題ですが、栃木の刑務所に行ったときに、その例がある。あるいはまた、更生寮においても、この間、売春審議会でもそういう例の発表があった、こういうことであります。けれども、一面におきまして、私はこの間の女子学園の問題——使っていない、それから和歌山の刑務所でも、あまり使っていないように私、聞いているのです。結局、売春婦の問題は、異常心理のものが多いのでございます。また、今まで性的な行為に終始してきたもので、従いまして、男子を見ると、そういう気持になるという場合がたくさんある。従って、栃木刑務所は、所長さん初め男で、私も栃木の刑務所には行って参りましたが、そういう例でございますからこそ、私どもは、宮城委員からもしばしば申し上げますように、補導院の職員は必ず女にしてもらいたい、ぜひ、そうした病的な発露のないような処遇をすることが大事であるというふうに私、考えますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/33
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034・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 婦人補導院の職員が女子でなければならないのではないか、男の職員では、収容者をかえって刺激して、気持の落ちつくひまがないのじゃないかということでございますが、なるほど、さような面も、あるいはあるかもわかりませんが、ただいま大谷委員の御質問の際に、栃木の収容所のことを申し上げました。これは、栃木の刑務所に行く前に、実は和歌山の刑務所におったのでございます。この和歌山の刑務所でも、同じようにあばれまして、どうにもこうにも始末のつかなかった女でございます。それがやはり栃木に参りまして、初めは非常におとなしく、うまくいっておったのでございますが、最近また、さような傾向が出て参りまして、その点の報告が参っておるのでございます。従いまして、どうも所長さんが女子の方であったから、落ちついておる、男子だからそうじゃないというふうにも、あながち、いかないのではないかというふうに考えられるのでございます。なるほど、婦人の施設といたしまして、御婦人で全部補導していただくということは、まことにけっこうなことでございます。適当なさような御婦人の方々をそろえることができますれば、それに越したことはないと思うのでございますが、しかし、あながち、御婦人ばかりでこれをやっていかなければならないということに相なりますと、いろいろ支障が出てくる面が私はあると思うのでございます。早い話が、ここでも問題になったのでございますけれども、今までの環境と断ち切るということも、一つの大きな補導院の任務、使命でございますが、最近の売春婦たちには、相当暴力組織とのつながりというものが顕著に現われて参っておるのであります。かようなところから、収容いたしまする際、従来のさようなつながりからの補導院へいろいろと伸びてくる手も考えていかなければならないと思うのでございますが、さようなものを排除する面から申しましても、その点をやはり考えていかなければならない面があるのじゃないかと実は考えておるのでございます。いずれにいたしましても、女子の院長のおいでになるところ、もしくは所長のおいでになるところの違反の件数は、男子の院長のおられるところの収容者の違反の状況とを比べてみました際、この男子の施設であるがゆえに特に多いという例は現在までのところないのであります。さようなところから、これは売春婦でございますから、その点は従来の施設そのままと同じ状況になるということは言えないと思いますが、しかしながら、かような施設には相当数売春の経経を持った者がおるのでございます。ほとんど、男性に接した経験ということになりますれば、全部がさような経験を持った者ばかりでございます。従いまして、かような施設の今までの事例というものも、今後の参考にもなるのではないかと存ずるわけでございまして、さような点から考えてみましても、女子でなくてはならないというところは現在のところ、まだ出てないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/34
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035・藤原道子
○藤原道子君 私はふだんの持論としては、婦人だ、婦人だと特に婦人を主張したことはないのです。けれども、この問題の場合に限っては、私はどうしてもそうしてほしいのです。もしも和歌山であばれたのがやはり栃木に来てもあばれた、これはおそらく普通の精神状態じゃないのですか。ということになれば、別個処置すべきものと私は思う。長い間あばれるものをただ保護具でからだを縛っておいて、それでなおるという自信がありますか。私はそういう点で物足りないのです。ほんとうに愛情に徹した補導院であるという口の下から、どうもよろいがちらちら見えるから、世間では何と言っているか、この補導院のことをやはり刑務所だ、やはり刑務所法案だと言っております。
それからいま一つ、宮城委員からも前回言われたと思うのですが、外国に参りました場合、そうした施設に参りますと、ほとんど女でやっているじゃありませんか、ほとんど女でございます。と同時に、私今納得できないのは、ひもつき、暴力団との組織的なものが多い、だからそれが云々という言葉がございましたが、それは別途取り締ったらいいでしょう、じゃないんですか、私はそう思う。こういう点について、私が保護具を使用するということは絶対に反対です。やらずに済むものを、病的なものならば病的な処遇がなされてしかるべし、私はそう思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/35
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036・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 私もこの保護具を使用するということは、決して奨励するものではないのであります。これはほんとうに使わずに済むならば、これは使わずに済ましたいのでございます。ただいま仰せのごとく、精神的に異常なる者に対しまして、これを使うかということでございますが、これは精神治療を要する者につきましてはもちろんさようなことで押えるわけには参りません。これは精神科的な治療をどんどん施していかなければならないのでございます。で、決してこれがあるがゆえに精神的な治療の面がおろそかになるということはあり得ないわけでございます。さような点からいたしまして、保護具というものは、決してさような精神異常者に対しまする処置というのじゃないのであります。治療は治療として、どこまでも精神科の治療は施さなければならないと心得ております。従いまして、もしも使わずに済むものならばこれに越したことはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/36
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037・藤原道子
○藤原道子君 私はこの前、少年院法の改正のときに、参考人としておいでいただいた人が、もっと予算があって、もっと職員が多かったならば、保護具がなくてもやっていけますと、はっきりここで陳述されたことを覚えております。従って、保護具を使わなくとも、ましてや女なのです。従いまして、保護具を使わなくとも適切な手を持てば私はやっていける、どうしてもやれなかった場合は別として、最初の初っぱなの、教育刑であると言いながら、最初にできる法律に保護具を使うことは、私はやめてもらいたい。愛情に欠ける、予算がない、こういうことで楽に行くから保護具を使うというような考え方では、これは教育刑とはなりません。私は絶対に反対でございます。
その次にお伺いいたしたいのは、愛情の欠けている点で私は二、三聞くのですけれども、子供の問題、この補導院にやむを得ない者が子供を連れて入ることができる、こういうことになっている。だけれども、私は子供の将来を考えるときに、子供をそうした環境に置くことは絶対に許せないと思う。どうしても引き取る人がなかったら国家の施設があるでしょう。そのために児童福祉法でも、子供はすべて差別なく国家社会の愛情によってはぐくまれるというりっぱな法律がある。世界にないような児童福祉法があるのです。それならば引き取り手がないということは私は絶対にないと思う。そういう場合にこそ、そういう施設に入れて子供の将来のために愛情のある保育がなされるべきである、私はそう思いますが、お考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/37
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038・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) かような施設で子供を保育するということは決して好ましいことではないのでございまして、この婦人補導院処遇規則、お手元に配りました処遇規則要綱案の五十三条にも書いておりますが、できるだけ適当な保護者に引き取ることを考えておるのでございます。やむを得ないとき、どうしてもさような処置がとれない場合に、補導院での保育を考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/38
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039・藤原道子
○藤原道子君 私はどうしてもとれないということはあり得ないと思う。やろうとしないからやれない。国家の施設があるのでございます。その点はぜひ御研究願いたい。児童福祉法にちゃんとあるんでございますから、これをやればできるはずです。ですから私はこういう法律の中に、まあいろいろ出ておりますけれども、こういうことをする前に、子供のほんとうの幸福ということに立って御処置を願わなければならない問題だと、私はこう考えております。
それから分類処遇でございますが、その前に「在院者の処遇にあたる職員は、なるべく婦人とし、」とあるのですね、あなたの方でも……。その「なるべく」というのはどの程度をなるべくとお考えになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/39
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040・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) これは今後とも十二分に研究いたしまして、この皆様方の御趣旨を体しまして、よい職員を集めたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/40
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041・藤原道子
○藤原道子君 四月一日から発足されるのですね、この法律は……。そうですね。今から考えたらしょうがないじゃないですか、お考えあるでしょう、それを聞かして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/41
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042・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 現在のところは女子の刑務所、それから女子の少年院の婦人の職員の中から適当な者を現在選びまして、研修を施すつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/42
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043・藤原道子
○藤原道子君 もうすでに研修をしていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/43
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044・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 今選考中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/44
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045・藤原道子
○藤原道子君 とにかく四月の一日からすぐにも始まる問題でございますから、これ以上追及してもいたし方ございませんから、可急的すみやかにこれを達成して、刑務所のにおいを即補導院に持ち込まないように再教育していただかなければならない、このことを強く申し入れておきます。
それから分類処遇の問題でございますが、これによりますと、「疾病により療養を要する者」、このきょういただいた要綱ですね、それから「精神薄弱者、性格異常者」、「心身ともにおおむね正常な者」、こうまあ分類されておるわけです。そこでお伺いしたいのは、この補導院法によりますと、六カ月なんです。その間でこれらがどういうふうなお手当ができるのですか。疾病により療養を要する者は、六カ月過ぎても、これはからだがなおるまで見てくれるのでしょうね、それが一つ。
それから、精神薄弱者は死ぬまでほとんどなおらない。六カ月経過いたしましたときに——精神薄弱者なるがゆえにそういうことをしていた、ところが六カ月たった、これは死ぬまでなおらないという場合には、これは社会へ送り出すときのお考えはどうなっておりますか。精神薄弱者の、いわゆる精神衛生法による施設にこれを送り込むことにお考えになっておるのか、まず六カ月済んだから、まあまあと言って、そのまま社会に無責任に送り出すというお考えであるのか、これを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/45
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046・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 仰せのごとく、さような治療を要しまする疾病を持っておる者は、在院期間中は極力これは治療を施すのでございますが、六カ月間たちましても、どうしてもまだなおらない場合には、やむを得ませんから、それは社会のさような専門の病院等に連絡をつけまして、引き続き療養をさしていくような方法を講じたいと思っております。
なお、精神薄弱者の取扱いでございますが、これも、収容が六カ月を過ぎまして、特別な入院治療を要する者につきましては、精神衛生法によりまして、通告をいたしまして、引き続きの収容をやってもらうことになるわけでございます。仰せのごとく、六カ月ではなかなかその目的を達し得ないことが多かろうと存ずるわけでございまするが、さような場合は、厚生省へのさような更生保護の線に乗せまして、引き続き仕上げをしていただくということに相なるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/46
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047・藤原道子
○藤原道子君 厚生省来ておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/47
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048・青山正一
○委員長(青山正一君) 今お見えになっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/48
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049・藤原道子
○藤原道子君 厚生省には、そういう施設がないのですよ。だから聞くのです。せっかく金をかけて六カ月指導に当って、それでまあ社会に送り出す、こういう場合に、そういう施設はどこにもないのですよ。ないから、私は心配をする。従って、この精薄施設——この前も大臣にお伺いしたけれども、こういうところがずいぶん抜けておる。全国の刑務所の受刑者の中にも、精神薄弱者が多いわけです。少年にも多い。売春婦の更生寮へ行ってみますと、まあ七、八〇%までは精薄なんですけれども、それが何ら処置されないで、国家、国民の大事な税金がむだに使われておる。だから、これに対してはどういうお考えをお持ちになるか、私はもう一ぺん聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/49
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050・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 仰せのごとく、精神薄弱者の成人の——おとなの施設はほとんどないと申し上げてもいいくらいでございましょう。ただ、私の方では更生保護会があるのでございまして、厚生保護会では、精神薄弱者を収容しておりまする近くにありまする更生保護会は、かような精神薄弱の対象者を収容することにもなっておるのでございます。これはただ本人からの申し出がないとできないのでございまして、その点、徹底を欠くきらいがあるのでございまするけれども、更生保護会の方では収容が本人から願い出ればできることに相なっておるのでございます。なお、この精神薄弱者の中でも程度の非常に強い者、これは精神病院に強制入院——措置入院でございますが——の手続をとらなければならないと思いますが、かような者につきましては、私らの方から府県知事の方に連絡をつけまして、そうして向うでさらに診察をしてもらいまして、その必要性のある者は、都道府県の方から入院の手続をとってもらうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/50
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051・藤原道子
○藤原道子君 本人から申し出られる能力があればいいのですが、そうじゃないのですよ。だから、はたの者がしてやらなければならぬ。だから精薄というのです。
それからいま一つ、県知事に連絡をとって施設に入れる、強度な者はとおっしゃいますけれども、精薄でそんなに高度な者は、白痴階級は、まさか売春婦はできない。その中間の者がやっている。ここに問題がある。それから、かりに地方の県知事に御連絡なさいましても、百万を突破した精神病患者がいるのに、日本の精神病床というものはあまりにも過少なんです。あばれほうだいあばれる気違いすら入れることができない状態、ここにも政治の面においてぜひ大臣にもお考え願わなければならない欠陥があるのです。こういうことが社会の悲劇を繰り返しているということをこの際強く申し上げまして、正しい政治的な措置が講ぜられることを強く要望いたします。もっとやりとりしたいのですが、時間がないので……。
そこで生活指導でございますが、前回もお伺いしましたが、またこんなに羅列したのです。九つもこんなに羅列している。六カ月でやれるのですか、羊頭を掲げて狗肉を売るようなことをしない方がいい。やれるのですか、やれないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/51
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052・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) これは、なるほど仰せのごとく、九つ掲げているのでございますが、これは全部をやるというのではないのでございまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/52
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053・藤原道子
○藤原道子君 全部やらなきゃだめですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/53
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054・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 在院者は、院長の見るところによりまして、重点的にこれをやることができるわけでございます。この中から必要なものを——「次の各号に掲げる事項のうち、院長が在院者の更生に必要と認めるものを行うものとする」と、必要がないものは行わなくてもよいわけであります。たとえば四の「義務教育課程の教科を授けること。」ということでございますが、すでにその必要がない者は、これはやらなくてもよろしいということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/54
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055・藤原道子
○藤原道子君 何だか納得できないのです。
それから、さらに続いてお伺いしたいことは、先ほど道徳教育のことが問題になりましたが、大臣に道徳教育についての御構想を伺いたい、適切な。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/55
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056・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) どういうお尋ねでございますか、ちょっと私も当惑をいたす次第でございますけれども、道徳教育について、今文部大臣の提唱によって世上いろいろ批評があります。この問題についてのことでありましょうか、あるいはまた、この売春防止法の改正案に関係して、補導院関係における道徳教育ということでございましょうか、どういうような観点からお答え申し上げたらよろしいのでありましょうか、ちょっとお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/56
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057・藤原道子
○藤原道子君 売春婦の保護更生にはやはり道徳教育が必要だと、だからそれはどういうふうなものが必要ですかと聞くのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/57
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058・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) よくわかりましてございます。それは、先ほど大谷さんからのお尋ねにもあったようでございまして、今のような売春非行のある者が、もし精神薄弱という欠陥のためにそういう非行に陥っておるというようなことでございますれば、なかなかこれに道徳教育を施すということは非常にむずかしかろうと思うのでございますけれども、必ずしもそういう人ばかりでないと考えまするから、一応普通の人を標準として考えますれば、この婦人の尊厳——人間としての尊厳ということの自覚がはっきりして参りますれば、他のことはおのずから解決していくのではないかと、これが基本観念であろうかと考えるのでございます。今九つも個条を並べてあるといっておしかりを受けました、その冒頭にも、「性道徳の自覚その他婦人としての徳性を養わせる」というので、これができますれば、ほかのことなどはもう書き上げなくてもよかろうと思うくらいでございます。これをやることは大へんでございまして、ことにだんだんおしかりのありまする六カ月や一年でそんなことができるかと、これはまあ仰せの通りと思います。しかし、さればというて、この道徳の涵養ということは、これは忘れてはならないまず第一歩であろうと考えまして、ここに掲げてあるわけでございます。この婦人の尊厳に目ざめるということによって救われる婦人もまた少くないであろうと思うわけでありますが、またしばしば御指摘になりまするような精神的の欠陥からそういう非行に陥っているというような気の毒な婦女に対しましては、やはりまた、個別的の分類によりまして、医学上の見地その他から適切な指導をしなければいかぬと思いますが、一応この性道徳というものがまずわれわれが補導する際にまっ先に考えなければならぬものである、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/58
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059・藤原道子
○藤原道子君 大臣のお考えはわかりました。そこで私は、最近予算委員会でも問題になりましたが、不良青少年がふえてきている、これは頭の痛いことなんです。売春問題に対してもお互いこれからが大へんだと私ども頭が痛い問題でございます。ところが、こうした法律を作る国会議員が、三悪追放を叫んでおる時の政府の要人たちがみずから芸者を買ったり、みずからめかけを持ったり、てんとして恥じない状態で正しい道徳教育ができるでしょうか。売春防止法でいう売春とは、これは売春婦——赤線、青線の売春婦だけの問題にしているのではない。そうですね、中川さん。従いまして、芸者であろうとも売春行為をした場合には罰せられなきゃならない。ところが、時の権力者が行なっている場合にはこれは何ら手入れができないのです。それで一方においては、青少年あるいはこうした売春婦にやかましいことを言ってみたって効果はないと思う。大臣はこの道徳教育等において、みずからお互いが自粛するように大いに提唱される勇気がおありになるかどうか。大臣はやってないことは知っているんですよ。(笑声)法務大臣は大丈夫なんです。だけど、ほかの閣僚、その他ことに危険千万な人が多いのでございます。こういう点、大臣ちょっとお考えをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/59
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060・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この点は、過般当院の予算委員会等におきましても御指摘のあったところでございまして、この売春防止法の全面施行が四月一日に迫っておりますが、この問題は、私は実になまやさしい問題ではないと考えております。これが簡単にできるようならば政治は実に易々たるものでございまして、何百年にもわたったこの慣習は、いい悪いは別といたしまして、世の中で大目に見ておられたことを、一挙に四月に入るときから改めるのでございますから、これはほんとうにわが国の社会史上に一大革命であろうと思うのでございます。しかもそれは簡単な動機からそういう現象が起きているのではございません。いろいろの原因から、そういうような慣行になっておったのを一挙に改めるということでございますから、これはもう実にわれわれ担当しておりまする仕事の面から見ましても重大なことだと思っております。これは単に、あるいは警察とかあるいは検察とかいうような政治組織の一部がこれをしょったからといってこれは絶対にできません。これはわれわれの警察や検察は末梢でございまして、事が間違って起きたときに、そのあと掃除をするというだけでございまして、その根源を断たなければ、これは永久に清潔にならぬと思うのでございます。その根源を断つものは他の各省で担当しておりまするあるいは教育とかあるいは厚生行政というようなもにかかってくるだろうと思うのでございますが、それにいたしましても、ただ政府だけの力ではとうていこれを円満に乗り切ることは私はできないと思います。社会全般の人の御協力を仰がなければ、この新しい法律が円満に施行されることはむずかしかろうと私は心配いたしておるわけでございまして、そういう意味におきましても、皆様の御共鳴を得、御援助を仰がなければならぬという観点から、まずこの仕事に携わっておりまする私どもは大いに身を慎しんでいかなければならぬ、これは常々考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/60
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061・藤原道子
○藤原道子君 なぜこんなことを申し上げたかというと、最近地方へ参りますと、与党の議員諸君が——諸君といったって全部じゃないですよ、婦人議員がこんなものを作っちゃって、婦人会がこんなものを作っちゃったから、あんた方良家の子女が危なくなるのだというようなことをしきりに宣伝される。一体国会議員が、国会でできた法律を婦人議員が作ったからどうだこうだと、私たち非常に身辺の危険を感じるような状態なんです。こういう不まじめなことが方々で行われておりますから、私はそういう点も厳にお慎しみになっていただきたいし、そういうものに対しては、どうか十分な御注意がなされてしかるべきだと思うのです。さらにこの間、売春婦と会いましたときに、こういう不平を言っておりました。私たちは警察へ引っぱられる、これからまた、補導院という監獄へ入れられることになるかもしれない。今郷里へ帰る帰郷者が多いというのも、政府はそのままにとっているらしいけれども、郷里にいられないから都会へ出てきている。それで今日、郷里へ帰ったっていられるはずがない、ここが一番の問題だろうと思う。これらを集めてひそかに売春をやらせるもぐり業者がたくさんある。ところが、従来この業者の違反事項に対しては検挙はされるけれども、刑罰が軽過ぎる。だから一体女だけをやって、こういう女の生き血を吸う者が刑罰が非常に軽いというのでは何だか私は納得できないのですよ、こういう話が女の子から出たのです。私も最近いろいろ調べてみたのですけれども、つい一昨年でしたか、静岡県の沼津市におきまして、千草会というもぐりの売春があった、会員組織になっておって、そこでコール・ガールのように電話で方々へ派遣しておった。手入れになって検挙されたけれども、やはり執行猶予にした。児童福祉法違反をして十六歳の女の子たちにそういうことを強制したけれども、結果におきましては大騒ぎしたのですけれども、三年の執行猶予になった。一体やる気があるのかないのか、女の子を責める前に、私たち女の子はぜひ更生の方へ持っていっていただきたいと思う。母性に立ち返らさせたいというのが私たちの念願で、私たちは女を搾取したり、あるいは麻薬中毒にして、これを通して麻薬を販売させたり、脅迫して売春させたり、それから搾取している人を私たちは憎むのです。ところが、それらの人は検挙はされるけれども、結果において判決は全く無罪にひとしい、一体これに対しては、大臣はどうお考えでございましょうか。あわせまして最近の判決の何といいますか、あれがあったらここでお示しを願いたい。実刑になるようなことはほとんど少いように聞いておりますので、その点を私は御決意のほどを伺いたい。そういうことが女の更生をはばむ原因の一つにもなっているので、こういうことをあわせて申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/61
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062・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 裁判の方の関係のことは今こちらの方からお答えをいただいた方がよろしいかと思いますが、従来は必ずしもこれは許されている行為ではなくて、御承知のようにに勅令九号もあれば、また、各府県の条例もありまして、一応処罰されることになっておりましたけれども、これが伝統の久しき、必ずしもこれを罰するというような観念が確立されておらなかった。事実そうだった、さればこそ、売春防止法というものを新たに規定する必要があるわけでございまして、それでこの処罰の関係、あるいは裁判の関係等も四月一日を契機といたしまして非常に様相が私は変ってくるのではなかろうかと、かように考えるのでございます。私どもの計画といたしましては、五条違反の婦人につきましては、しごく同情の心をもってこれを処置しなければならぬと考えますと同時に、これを助長をしたり、これを困惑させたり、強制するようないわゆる業者というものは、もう四月一日から容赦するところなく検察をいたしていきたいと考えるわけでございます。それが裁判となりましてどういう判決が下りますか、これは私どもの自由にはならないところでございますけれども、私どもの考え方といたしましては、同じ犯罪でありましても、五条違反の婦女に関する場合と、それを保護助長させたり、困惑させる、強制させるような業者の側とは全然区別をして考えていきたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/62
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063・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 裁判の結果がどういうふうになっているかという点でございますが、ちょっと統計を持っておりませんので、お示し申し上げることができないのでございますが、ただ考え方を申し上げますと、御指摘のように、この種の犯罪があまり重く処罰されていないのではないかということにつきましては、私も同感に存じておるのでございます。この原因につきましては、これはまあ結局、処罰を求めます検察官の側の責任が大部分であろうと思いますが、従来のその考え方をちょっと申し上げますと、赤線は、現行法のもとにおきましても罰せられる建前になっておりますことは御承知の通りでございますが、それがいわゆる、何と申しますか、よく世間で申します次官通達といったようなものもありまして、その取扱いにつきましては若干考慮されておった面があるのでございます。それは赤線に対する考慮でございますけれども、そのことがひいて青線にも影響してくる。まあいろいろな線があるようでございますが、そのいろいろな線に影響いたしまして、全体としてゆるんでおるということは、これはいなみがたい事実でございます。この売春防止法の完全実施ということは、そういったような従来の行きがかりが一掃されますところに非常な意味があるのでございまして、今後は、大臣も申されました通り、画期的な取締り態勢もここへ整備するわけでございまして、刑の適切なる実現ということにつきましては、一そう検事側にも注意を喚起いたしまして、万遺憾なきを期して参りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/63
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064・藤原道子
○藤原道子君 いろいろ伺いたい点がたくさんあるのでございますが、時間も、他の方の御質問もございますので、私はこの程度に質問をとどめたいと思いますが、どうも今まで片手落ちだという女の子たちの言い方が多分にあるということ、それからひもが、女の子がやめようと思ってもひもが離れないで、この脅迫によって売春行為を継続させる、こういう例がたくさんあるようでございますので、このひもに対しても取締りを十分厳重にやっていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/64
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065・一松定吉
○一松定吉君 時間もありませんし、もうこれは四月一日に実施しなきゃならぬという法律でありまするし、これから衆議院の審議を減なきゃならぬというので、とても一問一答で片づけるということはとうていできないと思いまするので、私は概括的にあなた方に御注意をしていただく点を御参考のために申し上げまして、それについて御答弁していただく方は御答弁していただくし、御答弁していただかなくても、運用の面においてそういうことに将来注意をするということであれば、答弁しなくてもよろしいですが、私の考えておることだけを申し上げますから、それについて一々立ってお答えをしていただかなくても、もう目睫の間に迫っておるときに、一問一答で時間を費やすということは非常に私は惜しんでおりますからこそ、ただ私の考えだけを申し上げておきます。
この売春防止法なり、婦人補導院法案に対する穴だらけであるということは、これはもうわれわれ審議に当った者はだれ一人感じないものはございません。これを完全にしようとすれば、なかなか今、一月、二月ではいけません。でございまするから、先刻来、棚橋君、辻君、大谷君、藤原君などが質問いたしましたことは、これは当然です。私も全くこれらの諸君と同感ですが、今さらそれをかれこれ言うて、これを修正などしておれば、もう四月に間に合いませんわね。それやこれやで審議未了に終るか、しからざれば四月一日実施をまた延ばさなきゃならぬということになります。そういう点については十分御参考になったことと思いまするから、実施後におきましても、それらの点について御注意の上、これを後日是正をするような手続をとるということを私は希望しておきます。いずれこのことは、この法案を審議するときに付帯決議とか何とかいうことで現われましょうが、それらの点は十分に一つ御考慮に入れていただきたい。
その意味において、私は自分の考えておることを、しかも皆様の将来運用の上において御注意しなきゃならぬことを三つ、四つあげて御参考に供してみたいのですが、まず第一、この補導院は、この売春防止法によったところの被告人はみんな女です。しかもその女が淫を売って生活をし、そうして今日まで長い間慣習づけられた女ですから、その女に対する補導ということは異性の男をもってすることは、これは不適当だ。これはもう私は説明しません。異性に向って長い間接しておいて、異性に向って彼らは生活費を取り、異性に向って今日まで日を送っておったその女に、また異性の補導員を持ってきたって、それは意味をなさぬ。やはりこれはこの処遇要綱の第三に規定してありまするように、「なるべく婦人とし」ということを、なるべくということでなくて、これはほんとうに婦人をもって充てるということにしなきゃ、これは結局だめです。男の補導員でしたら、これは今まで淫売ばかりして、男を見れば色目を使っておったような人に、男がそこに行って何が補導できますか。できやしません。かえってそれはよくない。だからして、これは将来一つ婦人をもってその補導員に充てるというようにしなければならぬ。これは藤原君の今質問しておったようなことや、婦人議員の皆さんの考えていることでありまするから、これは一つそういうようにしていただきたい。
それからこの前も私は申し上げたのですが、身体検査ということが、補導院法の第七条に健康診断を行うということがあるが、これは私この前申し上げましたように、血液と尿の検査とによって、その目的を達するのだということを私は聞いておりまするから、こういう点については一つ関係者の方で、医学上御研究になってみて、そうして尿と血液とだけで目的を達するならば、局部の検査なんかということは一つしないようにするということに一つやってもらいたい。ここで私が質問するならば——こういうことについて医者に研究してみましたか、どうですかといってあなた方を追及する、そんなことはしませんから、一つこれを御研究なさって、尿と血液の検査だけで目的が達せられるということであれば、なるべく身体検査ということについても、そういうような方針でやっていただきたいということ特に申し上げておきます。その点は、この要綱案の第七条にもそのことがちゃんと書いてある。「身体、衣類及び所持品を検査しなければならない。」とあるが、そのいわゆる身体検査ということは、尿の検査と、もしくは血液の検査ということは言いませんが、これは婦人の面目を棄損せざるような方法において、身体検査をするということに御注意になる、これだけのことを私は申し上げておきます。そうしてしかもそういうことをするのには、いわゆる婦人補導員に限ってやらせるということはこの規定に書いてありますが、これはいいことでありますが、この第七条と、それから同じ三十一条第二項の健康診断というところに、法務大臣の定めるところによるとあるが、法務大臣の定めるところというのは、やはり今私が申しましたような婦人の面目を害しないような方法において、身体検査をしなければならぬということを、法務大臣の、いわゆる法務省令に定めて、そういうことを用いておく必要があると思いまするから、これも御参考のために申しておきます。
それから保護具を用いることにつきまして、これは一つ御注意ですが、第五十四条をごらんになると、これはきょうお話し下さったこの規定の中ですがね、この保護具は法務省令の定めるところによって云々ということが補導院法の第十五条にある。法務省令で定める、このいわゆる処遇規則というのは法務省令のことですか。その辺をよく法務省令なら法務省令であるとか、この点を明らかにしておかないと、法務省令というものがなくて規則要綱というものが、つまりそれが法務省令のことであればそれでよろしいが、その点も御注意に相なるということと、同時に、第五十四条の一は、院長が補導院の医師の意見を聞いて保護具を用いるか、用いぬかということを許可するということ、これはよくわかります。その二です。「保護具の使用について、院長の許可を受けるいとまのなかったときは、使用後ただちに院長に報告して、その承認を得なければならない。」これもよくわかる。そのときに承認を与えるにはやはり五十四の一項のような婦人補導院の医師の意見を院長が聞いて与えるのだということを明確にしておかないと、一項のところでは、院長が婦人補導院の医師の意見を聞いて定めるというが、二項のところでは、院長の意見を聞かないで勝手にしたときには、院長の承認を得ればそれでいいということになってもいかぬから、やはりこれは院長の承認を受けるには、婦人補導院の医師の意見を聞いて院長が承認するかせぬかを聞いてきめるということを一つ明確にしなければならないと思いますから、それを申し上げておきます。
それからその次に、御注意申し上げておきたいことは、婦人が外部に出るというようなときに、これを補導院の職員が同行するという規定があります。この第二十六で、「院長は、院外の職業の補導により在院者を単独で院外に出す場合には、職員に随時視察をさせる等適当な監督の方法を講じなければならないこと。」それから第三十七に「在院者の臨時外出にあたっては、職員をこれに同伴させなければならない。」ということがあるが、その職員が同伴するというようなときに、職員が婦人補導院のものであるという一定のような服装にしておると、その一定の服装をしておる者が婦人を連れておると、あれは保護院に行っておる女だということになりますから、職員がもし補導院という一定の服を着ることになるならば、そういうときには、補導院という一定の服を着ないで、普通の婦人服を着て一緒に出すということで、なるたけ婦人の面目を維持してやろうというようなことに一つ御注意願って、職員の服装問題、外部に出るというときの問題においてもやはり深甚の注意を払っておくというようなことが必要だと思います。こういうようなことは小さいことですけれども、私どもも婦人は、これは刑務所に入れるのではないのだ。ほんとうに教育して、これをほんとうのりっぱな婦人として世の中に送り出すのだ。そういう意味で補導するということであれば、ほんとうは、拘置所と同じように拘束してみたり、自由をはばんでみたり、他に出るときに職員が同行してみたり、保護具を使ってみたり、謹慎室に入れたりというようなことはよくないけれども、しかし、それを今われわれが修正すれば、もう間に合わないから、私個人は今日は、この程度にしておいて、一応これを認めて、そうしてこれを運用する上において、あなた方が御注意に相なって、この点がいけない、あの点がいけない、この点は何々委員の質問した通りで、なかなか弊害があるというようなことをお認めになることが必ずありましょうから、そういうときにはこれを是正して、それらの法案を適当な時期に国会に御提出に相なるというようなことで、一つ御留意を願っておきたいというようなことで、私は一問一答の質問はいたしませんから、私の意見だけ述べておきまするから、これに対してお答えしていただくことがあればお答え願ってよろしいし、お答え下さらぬで、お前の言うことを参考にして、将来運用に支障なきを期するということならば、それだけでもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/65
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066・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 一々ごもっともの御意見と存じております。これらの点につきましては、だんだんお答え申し上げてある点もございまするし、また、新しい問題の点もいかにもごもっともな御意見と考えまするので、十分御意見のあるところを参酌いたして、法の運用に資したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/66
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067・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) いろいろと細部にわたって留意すべき点を御指摘いただきました。今後十二分に御趣旨の点を体しまして、運用に万全を期したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/67
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068・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私は数点につきまして、大臣初め各関係官にお伺いしたいと思っております。
まず、法務大臣にお伺いしたいことは、今度できまする婦人補導院でございますが、この婦人補導院の諸点について、これはまだ新しくできるので、あまり突っ込んだ点はいかがかと思っておりますが、大体少年法によれば、少年院、あるいは少年院法による少年院のあの実際の建物、あるいは運営等につきましては、すでに四十年近い歴史を持っておりますから、それを参酌して、一つ大臣のお考えを伺いたいと思います。
それは少年院でございましたら、あの通りの少年を保護教育しようというあの施設なのでございますが、現在のあのままについて、一体あれでいいのか。また、こういうあり方でいかなければならないのかという、その二点につきまして、どちらでもよろしゅうございますが、もしあのままが理想でないというお考えがございましたらお聞かせ願いたい。それはかかって今度の婦人補導院に連関する問題でございますから、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/68
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069・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 現存しております少年院につきましても、また、今度できまする補導院につきましても、欲を申し上げますれば、私どもとしていろいろあれもこれもと希望することがあるのでございます。しかし、御承知のように、国費多端でございますので、なかなか私どもの希望通りには予算を回してもらうというわけに参りません。そこで、そのことはまことに遺憾に存ずる次第でございますが、補導院につきましても、これは初めての試みでございますから、その点で大蔵省もややちゅうちょいたしておるような点も見受けられるのでございますが、いよいよ四月一日から全面施行に入りまして、その結果によりましては大蔵省へ交渉いたしまして、でき得る限り、理想的な設備にして参りたい、かように考えておる次第でございます。なお、詳細につきましては、矯正局長からお答えすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/69
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070・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) ただいま大臣から御説明のありましたごとく、少年院の現状は決して十分ではございません。御承知のごとく、少年院法の改正によりまして、少年の適用年令が二十才に広がりましたので、急激にその収容者を収容しなければならないという要請から、従来その、言うてみれば入れものを今までどうして獲得するかということに専念いたして参ったのでございます。これからはこの収容施設を整備していく段階だと思っておるのでございまして、今後とも、少年院の整備には一段の努力をささげたいと存じておるのでございます。なお、補導院の状態でございますが、これもわれわれの要求しておりまする七カ所が三カ所に削られたのでございまして、さような面から、予算的には非常に縮小されたのでございますが、三カ所に充てられました予算の範囲内におきまして、目下設計を急いでおるのでございますが、大体われわれの考えておりますところを十二分に盛りまして、よきものを作りたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/70
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071・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私が最初に申しましたのは、あまりばくとして広いことを申しましたけれども、今矯正局長のお答えになりましたその点につきまして、もう一点お伺いしたい。
私は初めから、これはこの間も局長が答弁なさいましたように、この補導院というのは教育の場だとおっしゃった。刑の場ではない、教育の場だとおっしゃって下すったので、私は大へんありがとうございました。ところが、その教育の場というものは、教育をするような場に作らなければ、私はそれは言葉だけに終るのではないかというように思っております。そこで、私はいろいろ刷りものを拝見いたしますというと、やはり現に少年院で一番盲点とされておりますような、つまりその点を繰り返すようなことにならないかと心配するような方向に行っているように思いますので、私は心配しております。で、私はどうかこの少年院にしましても、ああいう種類のものを一緒に集めるということは子供のためにならない。できるならば私は分散したい。もっと極端に言えば、一軒の家庭がそれぞれ私はあの子供たちを受け取って、一生懸命にわが子のかわりに教育してくれるんだったら、あんな国家の施設をたくさんな金を使って作らなくたっていい。その方が子供のためにもなる。そうして前科がつかないというような、まあ少年院法によりましては刑にかわっているのですから、前科はつかないのですけれども、今度の売春婦になりますと、これは刑にかえてじゃないのです。ですから、どうしてもこれは前科がつきます。そういったようなものを今法務省で案を作っていらっしゃるようなものに入れて、彼女らの、ほんとうに私どもが心配しておりますけんか——もう嫉妬のためのけんかといったら大ていすばらしいものです。男子の方も御想像がつくと思っておりますが。そうして、ことに男子の院長以下いい人であるなら男子でもいいだろうというような職員の問題なんかもございますですが、そういったいろいろな面からいいまして、ことに職員のことはあとで伺いますけれども、作り方なんかも私はやっぱり——これはだれが一体立案したんでしょうか。やっぱり男子の方だな。そうして、売春婦を知らない人の立案じゃないかというように私思っておりますが、矯正局長いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/71
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072・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 実は今補導院の設計をいろいろと考えておるのでございます。仰せのごとく、少年院のいろいろ今までのやって参りました事柄も十二分にくみまして、分類処遇がうまくいきまするように考えまして、いろいろ設計をいたしておるのでございます。宮城委員の仰せのごとく、行き届いた処遇をいたしまするには、一人に一人がつくということがほんとうの理想でございましょうけれども、なかなかそれはむずかしいことでございますし、細分しまして処遇をいたすにしましても、やはり職員との関係、その他との関係がいろいろありますので、最も効果的にしかも予算の範囲内でという制約も受けて参るのでございまして、その辺のかね合いが非常にわれわれの苦心いたしておるところでございます。
今度の処遇規則の中にも、いろいろの点で分類処遇ができまするようにかように規定いたしておるのでございますが、さような面も十二分に考慮いたしまして、宮城委員の御心配になっておることもよく一つ織り込みましてよきものを作りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/72
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073・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 たびたび私がここで申しますように、この売春婦はそれこそ将来の日本の母として、どうしてもこれは立ち直ってもらわなければならない日本の婦人なんです。だからこれを、悪いくせのある者ばかりを一緒に集めて、一体そこで、教育の場とするとおっしゃるけれども、どういう教育をなさるのかと思って、提出されましたものをいろいろ見ますというと、私にわからない。一昨日、昨日私はぶっ続けにそれこそ精進して法案をよく読んでみ、いろいろな書類をよく読んでみましたら、やっぱりこれは刑務所の出直しじゃないかと思う。決してこれは教育の場じゃないと思う。どういうことになるかと私はほんとうに心配してここに参っておる次第でございます。
そこで、今予算云々がございました。もちろん予算面は非常に貧弱のもので、これで何ができるかと思いますけれども、しかし、私は初めから主張しております、婦人のための家庭システムは小屋でいいと思います。そういう堂々たる家を建てていただかないでも、それよりもほんとうに、分類処遇とおっしゃるけれども、それについても私はあとで御質問いたしまするけれども、そう科学的に、心理学的に、医学的に分類処遇するなんと言っているうちに、もう六カ月過ぎてしまいます。一体そうなったらどうなります。だからまず大ざっぱに、この人は裁縫が好き、この人は家事をすることが好き、この人はミシンを踏むことが好きというようなことで、大体は私、小屋でも何でもいいから、家庭システムに分類して、そうしてそこで、ほんとうに家庭の婦人として朝起きるから寝るまでの仕事をそこで処理させます。同時にちょうど家庭の婦人でも同じ、朝食べることが済みましたら、あと片づけをしたら、それはそれぞれの仕事をすればよい。私はあんまり家庭とかけ離れたような、これは施設でございといったような中で施設の教育をするという考えで建てられたこの補導院なんかもどうかというような、私は非常に心配いたしております。その点、法務大臣どうお考えでございましょうか。お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/73
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074・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 宮城委員のお考えはかねがね承わっておりまして、まことに理想的だと思っております。先ほども話のありましたように、収容する者一人に職員一人をつけるというところまでいけばけっこうでございます。さらに進んで、家庭で引き取ってくれると、こういうようなことになればまことに理想的であり、また、そうでなければあるいは実が上らないかもしれぬと思うくらいでございます。しかしながら、今日さような行き届いた施設というものもほかの行政にもございません。でありまするから、どうしてもまず普通一般の施設ということになりまするから、やはり大ぜいを一緒に収容する、そうして、これは保安処分ではございまするけれども、やはりある期間だけは自由を拘束してそこにいてもらわなきゃならぬということで自由拘束ということにもなります。これも予算さえ潤沢でございますれば、必ずしもその設備において自由を拘束するような設備——塀を高くする必要もございません。職員数も大ぜいありますれば、見張っておりまして、眺めさえすれば、やはり自由を拘束せずして外に出て行く人はなくなるようにもなりましょう。さらに物的設備、あるいは人的の機構におきまして、いわゆるスイート・ホームみたいな空気ができますれば、塀をめぐらさなくても出て行く人はいない。出て行ってもそこが恋しくて帰って来る、こういうならば理想的でございましょうけれども、なかなかそれだけの、施設をするだけの財政という余裕もないものですから、あの点この点に御不満が現われてくるわけでございます。ただ、同じ予算、同じ人手でやるにいたしましても、その指導方針のいかんによりましては非常に結果が違ってくると思うのでございまして、今宮城先生のだんだん仰せになりました諸点は十分注意をいたしまして、そうしてこの法の運用に当っていきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/74
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075・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私の言葉がはなはだ不行き届きでございましたが、今お言葉の中にございました、一人に一人の職員をつけるという意味ではございませんで、私は願われれば、売春婦が今日五十万あるいは七十万というように、ある時期に私ども数えたことがございます。そうすると、五十万ございますというと、日本中の五十万の家庭が、五十万のお母さんが一つ一はだ脱いで、私のところに一人引き受けようと言ってくれる人が五十万出れば私は問題ないと思う。ということは、私は根本において、この五条違反で罰しますけれども、けれども私は、犯罪者として取り扱う前に、私はしなきゃならぬ仕事があるということが私の根本の考え方なんです。だから私も一人を引き受けますよと思っておりますけれども、私のような一体男のいない家庭が世の中に五十万もあるかないか。ありましても経済状態もございましょうし、それは私の夢でございますけれども、そういうことを根本にして私は施設を考えます場合に、小屋でもいいから小さい家庭を作って、つまりコテッジを作って、そうしてその中でほんとうに女の生活を指導しよう。また、お母さんのあり方について、いろいろ先ほどからも出ました宗教教育の問題なんかということは非常に大事なことで、それを一堂に集めて説教するというようなことでなくて、ほんとうに拝みながら、反省しながら生活をするお母さんを作りたいのです。そういう意味合いでさっきから申したのでございますけれども、その点どうぞ大臣も、一人に一人の職員をつけるというようなことを私は申しておるのではありません。家庭システムで一つやったらどうだろうかということを私は初めから言っておったのでございます。
それから、その次に大臣に伺いたいと思っておりますことは、今度は刑にかえてというような処遇にできないことはここに明らかになりました。だが、これは刑にかえて、そうして処遇すべきじゃないかということを強く私は願っておりますのでございますが、この点について、大臣の御所見を伺わせて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/75
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076・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この点は、今お目にかけておりまする法案も中途半端でございまして、これは日本の法律全体といたしまして保安処分に関する制度がまだはっきり樹立されておりません。事、保安処分に関しては、従来から私は専門家にお願いして根本的な調査をいたしております。その結果がどうなるか、これは私の予断を許すことでございませんけれども、私ども個人の考えを申し上げますれば、今お話のありましたように、こういうような婦人に対しては、刑にかえて保安処分を言い渡すというふうにしていきたいものと考えておりますが、これらにつきましては、今、法務省で、朝野の権威者を集めて研究をいたしております。その結果いずれかにきまるだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/76
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077・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 先ほどから問題になりました補導院の職員の問題でございますが、これは私の願いは院長以下、まあ外回りを警戒する人は、それはもう男子でいいのでございますけれども、中で少くもあの婦人たちに接する人たちは、私は女子の職員でありたいという強い念願を持っております。ということは、この前の政府の答弁では、りっぱな人なら男でもいいでしょうというお話がございましたが、その男性がりっぱであるか、りっぱでないかということよりももっと前に、彼女らの要求することは違っております。だから、私も女子少年院の職員あるいは刑務所で婦人を扱っておる方々にお目にかかって、いろいろ意見を聞いてみますというと、どうしても少年院なんかで売春婦という目をもって入れられておるのじゃございませんけれども、そういう婦人、子供、女の子たちでも、それは一つけがをして、こうやくを張ってもらうのでも、女の先生より男の先生の方が好きだ。何とかかとかいって男の先生にまつわりつく。それは売春婦ともなれば、そこに男子の人を、りっぱな男子でも入れますということは彼女らの心を乱しますから、私はむしろかわいそうだと思う。彼女らを精進させる意味合いにおきまして、どうか男子の院長にかわり、あるいはその他の職員にかわるのに婦人をもってしていただきたい。そうして、先ほどからちょっと伺ったところでは、矯正関係の中から職員をお選びになるようだし、また、実際も何人か出してこいというようなおふれがあるかに伺っておりますけれども、今度は教育の場だとおっしゃっておられる。局長もこの間、補導院は教育の場だとおっしゃった。その教育の場に今まで矯正教育あるいは女子刑務所に勤めたような人を連れてきて、そうして、その人たちに、もう身についているくさみをもって、新しい女の人たちを教育せよということは可能ではございましょうけれども、それよりも、やはり私の願うところは、第一番はわが子を持って、子供で悩んだこともあり、喜んだこともあるというお母さんで、そうして、なろうことなら教育家で、人の子を指導したことがあるという教育家で、そうして最後の御奉公に、今度のはむずかしい仕事だが、やって見ようというようなお母さん級の人があれば、私はそれをぜひ院長に、その他の職員に採っていただきたいというように願っております。もちろん矯正関係の職員をお採りになることも、これはもうある意味では、私は何といっても補導院は残念ながら刑務所の生れかわりみたいなものですから、それを実際に押えて行こうというのには、やはり刑務官の経験のある人を置くということも、やむを得ぬかもしれませんけれども、大体の骨子としては、ここは教育の場とおっしゃって下さるのですから、教育をするための適任者を一つ選んでいただくというように、お考えを持って行っていただきたいと思います。唐澤大臣、その婦人職員の点について、どうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/77
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078・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 私は正直に告白をいたしまして、そういう種類の行政についての経験のないものでございますから、今、省内でいろいろとみんなの意見を徴しておるわけでございまして、婦人議員の方々からの強い要望を、よく省内のものが了解いたしまして、でき得る限り婦人の補導員というふうに傾いておるようでございます。ただ、婦人に限るというところまでは踏み切ってはおりません。しかし私は、あるいはおしかりを受けるかもしれないのですけれども、ただ省内の人が婦人の方がいいと考えているほどには私は考えておらないので、そう端的に申すとおしかりを受けるかもしれませんけれども、しかし、私はしろうとでございますから、自分の意見で省内の考えを指導するつもりはございません。適当な人であるかどうかということ以前に、男性であるということが不適格であるというお話、何ゆえであるかと言えば、やはり男性によって心が乱れるのであるからして、ほんとうに心持ちを落ちつけることができないと、こういうお説で、これはごもっともと思いますが、私はまた反対に、取り越し苦労をいたしまして、男性というものには接しない社会に六カ月おって、そうして道心堅固であり、そうして更生しようと思って社会に出たとたんに、男性を見て、そうしてその道心がくずれてはいけないじゃないかという、これは私のしろうとの心配でございます。やはり男性にも接して、接するけれども、やはり道心はくずれないところにいって、世の中に出ても、やはり補導院の中で暮しておったと同じことであるということも考えなければならぬと思うものですから、婦人の議員の言うことばかりどうかなということを省内で言っておったところが、今日は御婦人ばかりでなくて、一松先生からも強い御意見がありましたから、私も反省をいたしておるのですが、やはり私はその疑点がまだ解けないのでございます。補導院の中では非常にりっぱになった。出た瞬間に男を見て、そうしてふらふらとなってくずれてはいけない。こういうような懸念がするものですから、私は必ずしも、正直に申しまして確信を持っておりませんけれども、しかし省内で今仕事をいたしておりまする局長以下、やはり御意見に影響されまして、でき得る限り婦人でやっていって見ようという考えでやっております。ただ、絶対的に婦人に限るというところまで踏み切っておりませんが、大体おぼしめしに沿って行けるのではないか。ただし私は、事務でございまするから、指図はいたしませんけれども、多少の疑念を今のような観点で持っておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/78
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079・青山正一
○委員長(青山正一君) 予算委員会から法務大臣の出席要求があるのです。赤松さんも何か御質問があろうと思いますが、一応、法務大臣に対する質問は先にしていただきたいと思います。宮城さん、法務大臣の質問を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/79
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080・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それじゃどうぞ赤松さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/80
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081・赤松常子
○赤松常子君 法務大臣にちょっとお伺いいたします。
先ほど保護観察の制度がまだ十分でないから、これから非常に研究して進めたいとおっしゃっていらっしゃいます。私、非常にその言葉を聞きまして、この婦人補導院ができますのをチャンスとして、十分御研究願いたいと思うのです。それが婦人補導院に収容されております期間がたった六カ月、非常に中途半端でございます。その六カ月の間に非常に改心して、よき社会人に成長されて、そうして出所されれば非常にいいことでございますけれども、また、中途半端で六カ月たったから出さなければならない、ところが、あと引き受ける場所がないということは、せっかく費用を使い、いろいろ心を砕いても何にもならないと思うのであります。刑を終えて出られた人は、あの保護会などで、そのあとはいろいろ面倒を見ていらっしゃいますが、私も保護会を二、三拝見いたしましたけれども、非常に建物も貧弱だし、予算もございませんし、寒々とした所でございます。かてて加えて、昨年は岐阜県では保護会の人が、こういう所から出た女の人を妙な所に周旋したというようなこともありまして、およそアフター・ケアの施設というものが非常に不足しておる。こういうことでは、私ほんとうに遺憾でございますが、この婦人補導院ができたのを機会といたしまして、その一貫した施設あるいは制度というものを十分お考え願いたいと思うのでございますが、この点について御決意をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/81
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082・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) その点につきましては、先ほども藤原さんからもお尋ねがございまして、ほんとうにその点は不完全であると私は考えております。これはただ、補導院ばかりではございません。一般の行刑者につきましても、刑期が済んだあとの引き取り方によって、この刑務所の目的が達せられたり、こわされてしまったりすると思うのでございます。これは遺憾ながら、法務省といたしましては、保護観察その他刑務所から出て参ります者の受け入れ態勢の整備については努力いたしておりますけれども、これがなかなか国費だけでは完全には参りません。民間有志の力を借りてやっておるわけでございます。これは主として厚生省に関係することもございますが、この補導院から出てこられる人々の受け取り方につきましては、十分注意しないと、たった六カ月で道心堅固の更生ということもなかなか無理でございましょうし、それでまた出てきて、そうして世の中は依然として冷たい目で見ておるということでございましたら、とうてい更生ということはできなかろうと思うので、そういう意味におきまして、果して刑罰でこれに臨んで、あるいは補導処分で臨んで、そうして法律措置だけで、これが成就できるということは考えておりません。その後の高い社会的の補導、あたたかい社会的の補導がなければ、とうていこの問題を根本的に解決することはできないと考えております。私どもの所管ではありますし、また、内閣全体として、この点については十分努力をしなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/82
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083・藤原道子
○藤原道子君 ただいま赤松委員の御質問と関連いたしまして、六カ月ではとても目的が達せられない点が多いと思う、そういうときに、まだ今後の補導が必要だという場合に、従来のなわ張り根性を捨てて、厚生省所管の婦人寮、これと連絡をとって、補導院で足らざる自後の補導は、こちらと十分連絡をとってやるというお考えがおありになるかどうか、私はそうして欲しいのです。
それから起訴前と言いましょうか、そのすれすれのがございますね、そうした女性に対しての補導、こういうことに対してのお考えがございますれば、ちょっと大臣からお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/83
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084・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいま補導前の処置、また補導後の処置につきまして、厚生省の施設との連絡についてのお尋ねでございました。これはもう当然のことでございまして、十分やるつもりでございます。もちろんこの点については、何と言いますか、権限争いがあると、ただいま申されましたが、そういうことは全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/84
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085・藤原道子
○藤原道子君 あるのよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/85
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086・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) いや、ありません。それは必ずできると思います。これを奪い合うということ、そういう例がございましたら、それはいけません。しかし、何分にも厚生省といたしましても施設が不十分でございまするから、御満足を得るような前後の処置ができるかどうかは非常に心配をいたしますけれども、これは厚生大臣とよく連絡をとりまして、できる限りこの連絡は密にして行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/86
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087・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 大臣にもう一点伺います。この間からいろいろ問題になっておりました刑にかえて保安処分をする、そのことは、法律のことは私あまりよくわからないものでございますから、それも伺うのでございますが、少年裁判所に送らなければ、この刑にかえて行くということはできないと思っておりましたが、だんだん教えていただくところによりまするというと、今の刑事裁判においても刑にかえて保護処分をするという、いわゆる少年法の線によってやられるという方法があるようでございますが、その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/87
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088・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この点はなかなかむずかしい議論になるようでございます。詳しくは刑事局長が申し上げますが、非常に研究をいたしましたのですが、結局こういうような、ごらんの通りの条文になったようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/88
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089・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 刑事裁判所におきましては、現在、刑事訴訟法に基いて手続を進める建前になっておりまして、現行法のもとにおきましては、保安処分を刑にかえて言い渡すということはできない建前でございます。しかしながら、考え方としましては、保安処分と刑事裁判所が取り扱うことができるといわゆる二本建の制度を作りますならば、ただいまおっしゃるようなことも可能になってくるわけでございまして、その点を大臣が今申しましたのは、そういう点の研究をいたしたいと、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/89
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090・青山正一
○委員長(青山正一君) それでは大臣、どうぞ。すぐお戻り願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/90
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091・赤松常子
○赤松常子君 矯正局長に。こういうアフター・ケアに関する問題で、今までは民間の有志の寄付などで経営していましたと思うのでありますが、特にこの保護会に対する厚生省の来年度の予算などに御考慮ございましたでしょうか、従来通りでございましょうか、その改善に少し予算措置をなさったでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/91
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092・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 保導院と退所後の処置でございますが、これは大臣も今申されたことで、非常に大切ではないかと思うのでございます。この六ヵ月の期間内に全部目的を達するということは、ほとんど不可能であると私は思うのであります。どうしても、あとからの処置を考えて行かなければならないのでございます。そのために、ただいまお手元に配りました処遇規則要綱の中に、篤志面接指導の委嘱の点を第二十のところに載せておるのでございますが、この篤志家の中に、厚生省関係の婦人指導員の方なんかも委嘱を申し上げて、また、ただいまお話の保護観察の面でやっております保護司の方なんかも、ここへ入っていただきまして、在院中も出てから後のことも、ずっと軌道に乗せて行くような方向に、この篤志面接員の制度を運用して行きたいと思っております。そのように厚生省の方にもお話を申し上げ、御連絡を申し上げておる次第でございます。なお、厚生省の方におきましても、この更生保護の面につきましては、いろいろ考慮を払われまして、婦人更生寮の拡充強化というものにはいろいろ御配慮になっているようでございます。
なお、法務省所管の更生保護会のことにつきましては、保護局長の方から詳細御答弁申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/92
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093・福原忠男
○政府委員(福原忠男君) 今、渡部矯正局長から、御質問に対するお答えがありましたので、大体それで尽きておると思いますが、実は保護会の関係は、私の方の保護局でやっております。厚生省の方で、今お話のありました母子保護の施設その他、それから売春防止法の施行後、いろいろとこれはやはり社会問題となって、ある程度の進捗を見ております。私たちも、それと全く歩調を合せていろいろやっております。ことに、保護会なども、売春防止法の対象となる婦人を対象とした保護会を、特に数県で作っておるというようなこともあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/93
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094・赤松常子
○赤松常子君 その予算的な措置が、少しは充実するようになっているかどうかということを聞きたいのです。従来通りかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/94
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095・福原忠男
○政府委員(福原忠男君) 的確に昨年度からことしにかけてふえたという点はございませんが、保護会全般が実は、皆様御存じのように、非常に困っておりまするので、ことしは、今までにない、保護会の事務費を国で委託費として出せるという、画期的な予算措置を講じていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/95
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096・赤松常子
○赤松常子君 ちょっと私、関連して。どうぞ将来とも、そういう面に目をずっと届かしていただきたいと強くお願い申し上げる次第でございます。
それから、今ちょっと保護局長のお言葉の中に、将来篤志面接指導の委嘱、これは非常に私けっこうだと思いますが、厚生省の婦人相談員のみならず、売春防止法の婦人相談員もこれに最初から関係していらっしゃることですから、どうぞずっと続けて御相談あるいは指導に当っていただけるように、広くお考えいただきたいと思っております。
その次に、もう私も要領よくお尋ねいたしますから、簡潔にお答えいただいてけっこうでございます。この婦人補導院の中で、非常に本人の人格を認めるということを、私、根本に置いていただきたいのでございますが、罪人扱いにしてほしくないのであります。ところが、この「面会及び通信」の欄を見ますと、更生の妨げとなりあるいは保安上の支障となる個所を削除することができる——通信の場合ですね。これは、本人に相談して削除するのでしょうか。こういうことが、非常に本人の自尊心を傷つける大きな点だと思うのでございます。信書の秘密は憲法でも保障されているのでございますから、こういう重大な扱いは、どういうふうにするつもりでございましょうか。本人をそこに置いて、よく納得させて、そうしてこういうことを扱うのでございましょうか。削除したものを渡して、おしまいになるのでございましょうか。非常に大事なところでございますので、ちょっと、簡単でようございますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/96
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097・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 仰せのごとく、本人にようく納得をさせまして、みずから削除を申し出るようにしむけていきたいと思っております。現在でも、そういうふうに各矯正施設とも指導をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/97
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098・赤松常子
○赤松常子君 第二十条に「法務大臣は、少くとも一年に一回、その職員を指定して、婦人補導院の実地監査を行わせなければならない。」、これは私、一回ではいかがと思うことは、すでに女子刑務所あたりで、法務省で意図しておいでになることが末端の刑務所では行われていない。私、まだもう一面大事なことは、ここに働いておられる職員の待遇なんです。職員の処遇なんです。これが非常に大事だと思うのでございますが、この前の委員会でも質問申し上げましたように、職員自体に休暇がない。職員自体に休暇もなくて、非常に過労である、そういうことが私に投書で参りまして、あなたに一ぺんお聞きしたと思うのでございますが、そういう職員がほんとうに心身明朗で、いつも心豊かに、そうしてこういう人々に接するという態度が大事でございますにかかわらず、そういう点に手ぬかりがあると、かえってマイナスになる点を私憂えるのでございます。ですから、一年一回だけ監査するということだけでは、私はどうかと思うのでございますが、そういう点に対して非常に心配でございますから、ちょっとお伺いする次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/98
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099・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 二十条に規定しておりまする一年に一回監査をしなければならないというのは、少くとも一年に一回くらいはどうしてもやらなければならないという義務づけでございまして、このほかに管区の方からも検査もいたしますし、また、必要があれば随時こちらからも検査にも参るのでございまするが、一年に少くとも一回はやらなければならないというこれは義務の規定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/99
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100・赤松常子
○赤松常子君 私も急いで申し上げます。職業に関する一般知識を与える、この職業の内容でございますけれども、もちろん、いろいろ、それぞれ好き好みもあり、趣味もございますから、それを分類していただくことは大事だと思うのでございまするが、さて、いろいろ申し出まして、これも習いたいあれも習いたいと言ったときに、それに対応して果してよき教師、よき施設が得られるかどうか。私の心配は、そういうことが十分万全の設備をしてもらいたいのですけれども、貧弱な予算でございますから、それもできないだろうと思うので、ほんとうはしてもらいたいのでございますが、この既設の国立あるいは公立のいろいろな職業補導所がございますが、それを適宜利用する、あるいは連絡をして習わせてもらうというようなことまで、幅広くお考えでいらっしゃいますでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/100
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101・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 仰せのごとく、院だけで全部のものをやるということは非常に私むずかしいと思うのでございます。従いまして、この院法の第十四条に外部からの援助の規定を置いてございます。これで外部から大いに援助していただきたい、かように思っております。なお、篤志面接員の制度等もこの中にからめまして、外部から来ていただいて御指導をしていただくということも可能じゃなかろうかと思っております。そういう面、あらゆる面から、所内だけでの不十分なところを補っていただくというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/101
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102・赤松常子
○赤松常子君 この点は厚生省とも非常に関連がございますが、厚生省でもそういう点、どうぞ連絡をよく密になさいまして、職業補導の充実をお願いしたいと思っております。
それからもう一点、局長さんにお尋ねしますが、婦人職員にほんとうにいい人を採用していただきたいということを、私は心からお願いする次第でございます。この職員の服装なりそういうものは、どういうふうにお考えでしょうか。教育のスタイルでございますならば、女子刑務所のような婦人職員の服装では少しかたいし、さびしいし、冷たい感じがするのでございますが、ほんとうに自然な社会のそういう服装、そういうスタイルということが望ましいと思うのでございますが、この点はどういうふうに今なっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/102
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103・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 刑務所の女子職員の服装を考えてはおりません。女子の少年院の職員の服装を大体考えておりますが、なお、もう少し研究いたしまして、よりよきものを考えたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/103
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104・赤松常子
○赤松常子君 どうぞその点も、くれぐれもお願い申し上げます。
それから最後に、いろいろ女子刑務所を拝見いたしまして、私気のついたことを二、三御要望申し上げて、私の意見をおしまいにいたしたいと思います。こまかいことでございますけれども、読み物ですね、図書、これを拝見いたしておりますと、何かかた苦しい宗教書、それから非常に古い図書、そういうものに限られて、非常に幅が狭いと思うのでございます。もちろん、あまり刺激的なものも、これも考えなくてはなりませんけれども、図書の施設、これをもっと幅を広く、最近のものもどんどん備えていただくようにお願いしたい。
それから、ふとんでございますけれども、よく見ますと、えりのカバーだけはついているけれども、シーツが全然上敷にも下敷にもございません。女子刑務所の場合、こういう保健衛生の面もこまかく御注意下さいまして、清潔なシーツなんかも十分につけていただきたい。
それから、女子でございますから、特別な消耗品ですね、これも十分に考えて、女子の特別の生理の場合もございますから、そういう点、心こまやかに品物を十分に備えてあげていただきたい。これは私、女子刑務所の経験から、そういう点が非常に不備でございますので、申し上げる次第でございます。
それから最後に、大事な宗教教育の問題でございます。私も一言申し上げたいのでございますが、非常に心身ともに荒れている方でございますから、こういう宗教を上手に、と言っては語弊がございますけれども、宗教のいい面をこの中に入れて、ほんとうに精神的な反省、あるいは社会的な秩序、そういうようなことが心からわかっていただくようにしたいのでございますが、ただ、その上にいらっしゃる方の趣味で、片寄った宗教がどうも入り込み過ぎていると思うのです。刑務所でいえば教誨師だとか、あるいは所長さんの趣味によりまして、持ち込まれる宗教が片寄り過ぎている。これは申すまでもございませんが、その中のグループ、グループでもお作りになって、そのグループの要求に応じていろいろな多面的な宗教が入っていいと私は思うのでございます。もちろん、これにもある限度もございましょうが、こういう宗教活動というのがもっと自由に、もっと在院者の意思によって選ばれるように、こういうことを十分お考えいただきたい。特に婦人補導院の場合、そういう教化活動をやっていただきたい。それだけ私、要望申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/104
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105・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 刑事局長にちょっと伺います。先ほどもちょっと申しましたが、プロベーション、今は家庭裁判所についております調査官、それからこのアフター・ケアの場合には法務省の保護司、この問題についてでございますけれども、先ほどもちょっと伺いましたが、調査官の裁判の前の調査ということは非常に私は大事だと思います。ことに、この種の婦人に対しましての今までのいろいろな生活状態、それからことに環境の調査といったようなものは、これは検事や弁護士の資料とはまた違った角度から見ていく、私はそのところに調査官の非常に大事なところがあると思っております。それで、先ほども伺いまして、なかなか法律的には容易ならぬような問題らしく伺いましたのでございますけれども、ついせんだって私はニューヨークから東大の教授としていらっしゃった、やはり法律の方の関係の方に親しくお目にかかりまして、偶然この方はプロベーシヨンの問題で非常にりっぱな著書をしていらっしゃる。それでアメリカのプロベーションをいろいろ伺いましたところが、もう全体の刑事裁判にプロベーションがついているのだそうでございます、ということを知りまして、驚いたのでございます。それで、日本もおくればせながら、多分今度の刑法改正におきましてはこういうシステムが入ると思っておりますけれども、それを待つということでは今の間に合いませんから、一つお願い申し上げたいことは、法務省でこの点を十分に、それこそ大急ぎで研究して下さいまして、こういう婦人たちが裁判にかかる前も大へん大事だと思いまして、それをこれから刑事局長に伺いますけれども、このプロベーションの問題は十分に刑事局で一つ御研究いただきたいということをお願い申し上げたい。
それから保護局長に伺います。私、この前もちょっと申したと思っておりますけれども、これはほんとうにこういう婦人に刑を着せたくない、そしてどうかして日本の婦人として、おっかさんとして早く歩いてほしいというのが、これはもう政府も願い全国民も願っていることだと思っております。それには、私は第一段の関所ですね、検察庁におきまして、これは起訴になる場合はやむを得ませんが、不起訴、それから起訴猶予といったような方々に対しまして、私は保護司活動というものは非常に効果的であって、最も、私はこのケースの最後までを考えますと、第一段階が一番大事だということを思っているのです。そこで、保護司活動については、この前も私は伺っておりますけれども、きょうで最後でございますから、もう一度政府の施策として、保護司活動をどういうふうになさいますか。全国の五万に近い保護司にこれは活動してもらうよりほかに、今の段階ではどうもしょうがないと私は思っております。どうぞお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/105
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106・福原忠男
○政府委員(福原忠男君) 御質問の要点を簡単に申し上げますが、売春防止法ができました関係で、実は私たちの更生保護の面でも非常に世論の支持を得まして、実は検察庁あたりの相談室で、検事が対象者を起訴猶予にした場合、あるいは刑務所を出ました後の対象者をいかように処置するかという問題で、保護会というものを非常に認めていただきまして、実は先ほどもちょっと申し上げましたように、相当女子を収容する保護会というものが、これはもっぱら民間の方の篤志家の寄付の結果できたものですが、数県できております。それから今お話しの保護司活動は、これはやはり五万人ほどの保護司の方の力で、こういう人たちの就職関係とかその他の身の振り方ということをもっぱらお世話願う趣旨で、全国にこの人たちの中のまた特別の方二十八人を置くことの予算的措置が認められまして、これが各検察庁でこのような対象者を扱い、あるいは検察庁へこれを振り向けることを考えております。しかし、そういう場合でもやはり身の振り方のつかない場合に、保護会が要りますものですから、一昨年以来、この売春防止法の問題が起りましてから後、保護会の方へ私たちの方では相当力を入れている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/106
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107・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今東京に売春婦を入れます保護会が幾つございますか。それからその二十八人の配置されている所は、確かに保護会のある所だと思いますが、その状態はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/107
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108・福原忠男
○政府委員(福原忠男君) 東京におきますこの種保護会は、今のところ一つでございます。この保護会を拡充するために、やはり今いろいろと措置をとっている次第でございます。なお、二十八人の特別の保護司を置きます場所は、いろいろと今研究中でございますが、大体において、大都市の大部分の検察庁に置けるように考えております。そうしてその場所でそのような対象者を入れるところの保護会があるかと申しますと、必ずしも十分ではございません。ことに大きな東京とか大阪とかという所は、先ほども赤松先生のお話しになりました通り、厚生省の関係の施設が相当行き届いておりますので、よろしゅうございますが、それ以外の所ではかなり困ります。具体的には、名古屋の一宮とか、あるいは福岡にも、それぞれ保護会を昨年から官民で作りまして、ほぼ完成しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/108
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109・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 もう一つ、中川さんに伺います。五条違反をいたしまして、女はああいうふうに縛られますが、そのときに一緒にいた男はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/109
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110・中川董治
○政府委員(中川董治君) 男の人は五条違反の参考人ということになりまして、いろいろ事情を聞くということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/110
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111・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 参考人で取り調べるときは、参考人で取り調べられても仕方ありませんが、それがいよいよ参考人でなくてほんとうの相手だったというときは、どうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/111
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112・中川董治
○政府委員(中川董治君) 売春の相手方というだけでは、参考人になるのでございます。その参考人——たとえば売春を周旋した者であるとか、あるいはひもなるがごとく売春の支配的地位に立っておる者、こういう場合におきましては、刑罰法令の違反者として処分をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/112
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113・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それでは、その売春行為を、つまりそれは女の方から多分誘うでしょうけれども、それに応じて、そうしてつまりそこに実行に移ったという場合はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/113
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114・中川董治
○政府委員(中川董治君) 今の御質問は、従来いわゆる単純売春という概念で御議論になった事項かと思うのでございますが、この法律は、公けに公衆の目に触れるような方法で、相手方になるように勧誘するとか、公けの場所で身辺に立ちふさがるとか、それから公衆の目に触れるような方法で客待ちする、こういう行為を五条で禁止しておりますので、その行為に当るものを警察としては捜査いたしまして処分して参りたい。その行為を証明するに足る人について事情を聞く、こういうふうにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/114
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115・赤松常子
○赤松常子君 ちょっと関連して中川部長にお尋ねしたいのでございますが、私は昨晩実は三宮におりまして、晩に汽車に乗る時間に、少し早く参りまして三宮付近を見ておりましたのですが、男娼が非常にばっこしておるのです。一見それとわかるような服装はしておりますけれども、じっと見ておりますと、それは男娼なんですが、こういう売春防止法一部改正ができましたから、これは婦人を対象としての法律です。その盲点を縫うというのですか、夕べ私の見ましただけでもそうです。八人それとおぼしい人の中で、五人までは男娼でございまして、非常に逆な現象が現われている。女の人も七、八人すみに立っておりました。これはエプロンをかけまして、普通の家庭婦人の様相で立っておるのでございました。それで、一昨日をもって神戸の福原遊廓は一応廃業届を全部出したという、その翌晩のことであったのでございます。すでにこういうふうに、法の盲点を縫って男娼の横行、及び婦人も家庭婦人を装うてそういう辻々に立っておるというような状態でございまして、私ども非常に憂慮してもおるわけでございますが、この男娼の場合はどういうふうに取り締るおつもりでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/115
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116・中川董治
○政府委員(中川董治君) ただいまのお話の男娼につきましては、この法律を立案する際に各方面で大へん研究されたのです。たとえば内閣にありますところの売春対策審議会でも、この問題について慎重に御検討になったのでございますが、何と申しましても刑罰法令でございますので、概念をはっきりいたしたい。概念をはっきりするためには、この売春防止法では、二条でこういう売春を定義いたしましたので、御指摘の男娼につきましては、二条にいうところの売春でなくなる。私どもは売春——性交類似行為だと思うのですが、性交類似行為は性交ではないと、こう理解されるのであります。それで、この法律の対象には一応ならない。
ところが、それは結局不道徳な行為でございますので、この法律の対象にはならぬけれども、他の刑罰法令に触れる場合が比較的多いのでございます。たとえば軽犯罪法で、やたらに人の交通を妨げる、進んでふさがる、こういう場合は軽犯罪法の違反になります。特に交通を妨げる程度になりますと、道路交通取締法の規定の対象になる。他の法令によってできる限度においてやっていこう。この売春防止法の中に入れることも一案だと当時は考えられましたけれども、何と申しましても刑罰法規でありますので、概念をはっきりいたしたい、こういう建前で、売春防止法の対象ではない、他の法令の活用によるということと、一面先ほど申しましたように、売春防止法のこの規定の刑罰法令を適正にやるということも重要でございますが、それ以外に、国民各方面の御協力と御理解と、またいろいろな社会教育といいますか、一般の道義がよくなるという活動によって解決すべき問題である、こういうふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/116
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117・赤松常子
○赤松常子君 そういう男娼は、軽犯罪法のみですか。もっとほかにございましたら、ちょっと教えてほしいと思うのです。私の言いたいのは、こういう盲点を縫って、そういう現象が今現われているということを特に御注意いただいて、そういうことも取締りを強く、厳重にしてもらいたい、こういう意味でお尋ねする次第ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/117
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118・中川董治
○政府委員(中川董治君) 売春防止法はこの問題を対象にしておりませんが、軽犯罪法、道路交通取締り法、態様によりましては刑法の公然わいせつの対象になるかと思います。そういう態様によって一がいにいえませんが、以上申したようなことが関係法令だと思います。男娼そのもの自体を規制する法規は、ただいま申しましたように、ないわけでございますので、一般の関係の皆さんの御理解と、それから関係法令の活用等によって、だんだん制圧して参りたい。
実をいいますと、売春防止法立法に当りまして、赤松委員御指摘の事項も十分検討したのですけれども、当時は比較的男娼と思われる者が大体少いことでございますので、大きい社会問題として理解されなかったものですから、そういう方法で対処するのが相当だろう、こういう結論に到達したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/118
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119・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 先ほどの続きの質問を中川さんにいたします。五条違反をつかまえるということは非常にむずかしいというふうに思っておりますが、何か警視庁の方では、専門家を養成するというのですか、とにかく間違いなくにらむというような修養をさせるというようなこと、ございませんですか。私、これやりそこなったら、大へん人権じゅうりんになると思っておりますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/119
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120・中川董治
○政府委員(中川董治君) 売春防止法に規定する犯罪としては、五条に定むる犯罪の捜査は、御指摘のように、非常に国民生活の私生活といいますか、プライベシーに大へん関係の多い犯罪でございますので、捜査のやり方があやまちますならば、人権に対して非常な侵害を加える、こういう性格のものだと理解いたします。それで、売春防止法の五条の犯罪等につきましては、このやり方を非常に合理的にやって参りませんと、御指摘のように失敗が起りますので、警察といたしましては、部内で関係専務員を作りまして、専務員の教養等を行いまして、こういう捜査について間違いを来たさないように十分教養をいたしたいと思うのです。
ところが、警察といたしましては、専務員を置きまして専門的にやらして参りますけれども、ずっとこう専務員となりますと、どういたしましても人数が限られますので、だんだんあの辺に五条違反の罪があると、こういうことがわかりましてからやろうと、こういうことになろうと思います。その触角の役割、すなわちあの辺に五条違反がありそうだという触角の役割は、全警察官が協力して、すべての警察官にやらしたい。それから専門的な事柄は専務員にやらしたい、こう二段に考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/120
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121・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 これは一つ警察の方で全国的に、いわば特別な警察官の指導をするというような研修所みたいなものを作って、全国から集めて研修させるというようなことをお考えになっていないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/121
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122・中川董治
○政府委員(中川董治君) 考えておりまして、すでに実行もいたしております。私どもの方の警察官の教養につきましては、中央には警察大学校というのがありまして、それから地方にそれぞれ管区警察学校、都道府県警察学校がございますので、その警察学校の機能を活用いたしまして、この防犯専科、こういうような専科を設けまして、本件の問題を教養いたしております。過去もいたしましたし、今後もまた大いにやりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/122
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123・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この面に当る警察官は特別に、相当の年をとった人であると私は思うのですが、教養も割に深いような、言いますというと、彼女らのとりこにならないような男の人を配置してほしいということなんです。
それから、五条違反ですけれども、男の人で女を待っているというような、そういう問題は起らないでしょうか。その点について何かお考えになったことはあるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/123
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124・中川董治
○政府委員(中川董治君) 御質問の最後の点は、いわゆる別な意味の男娼の問題でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/124
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125・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 男娼ではない。男の人が女を勧誘するという場合です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/125
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126・中川董治
○政府委員(中川董治君) わかりました。世間で使っておる言葉に男娼という言葉があるのですが、二様にございまして、ただいま赤松先生にお答えいたしました男娼がおおむね一般に使われている言葉ですが、全く別の意味の男娼は、男子が不特定の女子を相手方として性交することを目的として勧誘する、こういう態様が法律上考えられるわけであります。その場合におきましては、そういう意味の男娼につきましては、この法律の保護更生に関する規定、今回改正の補導処分に関する規定は適用いたしませんが、他の規定は適用がございます。それで、男子が女を客として不特定の相手方を待っている、こういう態様がございますれば、五条違反ということになるのでございます。うわさではちょいちょい聞くことはあるのでございますけれども、実際問題としてそういう態様を私どもつかみ得ておりませんので、そういう事項がございましたら、五条違反でやるということにならざるを得ないだろうと思うのでありますが、ときどきうわさとして聞くことはあるのですけれども、そういう態様の五条違反の行為ということを、事実をもって証明し得たことが今までございませんが、今後またこういうことが出て参りましたら、五条違反で取り締る、こういうことになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/126
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127・藤原道子
○藤原道子君 私は、その点でもっと伺いたい。五条違反の中にはいろいろ書いてあるわけですね。だけれども、女が売春の相手を誘惑するだけでなくて、男が、だんないい女がありますぜ、どうですかというようなことで、無理に連れていく場合がたくさんあるのです。こういう場合には、六条の「周旋」ということになるのですか。私は、必ずしも女だけが相手を誘っちゃいないと思う。それが一つ。
それからいま一つは、困惑をさせて云々ということがあるのですが、ひもつきが、女がいやだというのに、ずいぶん麻薬等を使ったり強制したりして、やらしている例があるのですが、そういう場合に、今まであがった例があるかどうか。もしあがったとしたら、どういう措置を今やっているか、また今後もするか、この点をちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/127
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128・中川董治
○政府委員(中川董治君) 藤原委員御指摘の事案は、六条違反になります。ひもつきと称せられる関係被疑者は、六条違反としておおむね取り締っておるのでございます。六条違反の範囲をこえて、もっと七条以下になる場合もあると思いますけれども、多くの場合は六条違反になる、こういうことを考えておるのであります。
それから第二の御質問の、そういうひもの類であって麻薬関係を用いる、こういう例もございます。これは六条違反の、この法律施行後は六条違反の罪、麻薬取締法の違反の罪と、両方が適用になる、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/128
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129・藤原道子
○藤原道子君 時間がないそうですから、ごく簡単にお伺いします。厚生省の安田さんに。私も先ほど御質問申し上げましたが、厚生省関係として特にお伺いしておきたいのは、最近女性——女が資金を借りたい、更生資金を借りたい。貸せることになっておりますが、さて保証人ということになると、保証人がなければ借りられない。売春婦であった人に、今後どうなるかわからない人に、何万という金の保証人になる人は、むずかしいのです。このために、この間関西方面に行きましたら、非常に困った問題だというので頭を痛めておりました。東京都では都知事が保証人に当るというようなことも、ちょっと漏れ聞いたのですけれども、保証人に対してはどういう考えを持っていらっしゃるのか。どの程度の人が保証人になったら、お貸しになるのか。もし女が行方不明等になったら、やはり保証人から無理やりにその金を取らなければならない性質のものであるかどうか、これに対する対策をお伺いしたいと思います。
それから、女がやめましたために、夫が結核で困っている。その治療費を出していた。ところが、やめたとたんに収入がないので、福祉事務所にお願いに行ったけれども、何やかやということで、生活保護法の適用が受けられない。非常に困って、泣き込んでいた例がございます。それに対しては、婦人会でお金をお互いに出し合って郷里へ帰る準備をして差し上げたということを耳にいたしましたが、こういうのでは、せっかく更生しようとして決意した女に対しても、やはり赤貧洗うがごとき状態にならなければ生活の保護の手は差しのべていただけないものであるかどうか。画期的なこの法の適用に当りましては、少しそこに涙があっていいのではないかと考えますが、それに対しての社会局長としての御見解をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/129
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130・安田巌
○政府委員(安田巌君) 売春婦に更生資金を貸し付ける場合に、これはやはり貸付の資金でございますので、一応償還ということを考えておるわけでございます。従いまして、従来の世帯更生資金と同じような扱いで保証人を立てることになると思っておりますが、しかし、お話のように、普通の場合と今度の売春婦の更生のための更生資金の貸付とは、だいぶ事情が違うということも十分予想できるわけであります。保証人につきましては、東京都の例を聞いてみますと、やはり何とか保証人を見つけて、それで貸付をいたしておるように私どもは聞いておるのでございますが、そういった点につきましては、従来の更生資金の貸付とは私はよほど変った気持で貸し付ける必要があるのではないかと思っております。
それから、第二の生活保護法の問題でございますが、これは本人にいたしましても、あるいは家族にいたしましても、これは生活できないということが、現在の生活保護法の原則なりあるいは運用によりましてはっきりいたしますならば、当然これは生活保護法を適用すべきでありまして、そういった例もたくさんあります。お話のような場合に、ことに夫が病気である、病気を治療するために従来売春行為をしておったということがあれば、ばかげたことでございまして、そういうようなことは相談所等に相談を願いますならば、福祉事務所もございまして、当然医療保護を受けるべきである。これは藤原委員もよく御承知の通りでありますけれども、生活保護は最低生活の保障の意味でありますとか、あるいはその他の自分の財産なり能力なりというものを使ったあとで生活保護を受けるという原則がございます。しかし、お示しのような場合には、そういったようなことはもちろん適用されるような状況の人だと思いますから、そういう点については問題はないと思います。また、具体的なことがわかりましたならば、私どもこの点さっそく調査いたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/130
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131・藤原道子
○藤原道子君 そこで、安田さんに私はお願いしたいと同時に、お考えを願いたい。各県によってまちまちなんです。従いまして、この更生資金の性質を全国的に一つ御通達を願いまして、へんぱな扱いにならないように、ひとしくこのあたたかい更生資金の適用が受けられるような御配慮を通達をしてもらいたい。
それから、福祉事務所へ参りましても非常に官僚的だという声が、非常に高うございます。何だ売春婦だ、何だ淫売していたのかというようなことを、露骨に言った人がある。それでは更生しろと言ったって、そこの門を再びたたけないのです。私は、この法が生きるか死ぬかの分岐点は、社会全般があたたかい気持で接しますと同時に、これを取り扱う衝に当る人たちが、心からそういう人間的なあたたかみを持たなければ、とうてい成功はできないということをしみじみ考えております。従いまして、そういう点はぜひあなたの関係へ十分御通達願いまして、人の心を傷つけるような態度でないように、あまり冷たい事務的な方法でないように御処理を願いたいということを、特にお願いいたします。
それと同時に、安田さんが今、夫が病気のために売春婦になっているなんということはばかげたことだ。私もそう思うのです。ところが、現実は、それがそうでないというところに問題がある。私は、病気になれば医療保護がある、生活に困れば生活扶助がある、あるいは生業資金がある。りっぱな法律はあるけれども、これが適用されていないで、こういう社会の悲劇が生まれるというところに、原因がどこにあるかということを一つお考えになっていただきたい。毎日の新聞で親子心中だ、やあ自殺だという原因だっても、今ある法律が適用されましたならば、こういうことはない。相当救われと思うのです。広報活動においても、お考えを願わなければならぬということを強く要望いたします。
それから、さらにお伺いいたしたいと思いますのは、先ほど法務省の方へお伺いしたのですが、今度補導院法が発足いたしますと、中に分類処遇というところがあって、精薄とか精神異常者というふうに分けられている。ところが、六カ月の補導で、一生かかったってなおらない、精薄は精薄なんです。これは出ていくときに、受け入れる所がないわけなんです。これは大きな問題だと思う。私がいつも言うことでございますが、精薄問題が片づけば売春問題の大半は片づく。六カ月でこれまた社会へ出す。また巧みな悪い人たちにあやつられて、また再び転落して、そういうことを繰り返すと思う。せっかく六カ月補導いたしましたこれらの者が出て参りました場合、これに対する厚生省としての受け入れといいましょうか、そうしたかわいそうな精薄の人たちに対する待遇を、どうされるつもりか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/131
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132・安田巌
○政府委員(安田巌君) 最初の売春婦の更生についての取扱いでございますが、これは私ももう藤原委員のおっしゃるのと全く同じ気持でございまして、世間の方々にも御協力を得なければならぬのでございますし、そういった責任を持っているところの機関の職員というものがもっと親切にやらなければいかぬということは、私ども重々痛感をいたしておりまして、機会のあるごとにそういうことを申している次第でございます。生活保護の問題にいたしましても、あるいは更生資金の問題にいたしましても、私ども婦人相談所長を集めました機会に、また主管課長を集めました機会、また民生部長を集めました機会には、今お話しのようなことは口頭で十分お話をいたしているところでございますけれども、まだ不十分な点等につきましては、今後気をつけて参りたいと思います。
それから、補導処分を受けて補導院を出た者のうちで、精神薄弱者が多いのじゃないか。私もその点は非常に心配いたしております。これは、東京都の相談所に昨年の七月から十二月までの収容者の中で、これは売春婦もおりますし、要保護者もいるわけでございますが、たしか二百名近くの者について、やはり知能指数の検査をいたしたことがあるのであります。そういたしますと、大体知能指数八〇以下というのが半数をややこえるというような状況であることがわかったのであります。もちろん、当時婦人相談所へ来るという者は、少し頭がよくて元気で、何でもできるというような人はあまり来ないという点もあったかもしれませんけれども、とにかく精神薄弱者が相当部分占めているであろうということは、うかがえるわけでございます。将来そういう専門の施設を作るかどうかということは別とたいしまして、とりあえず補導処分を、補導院を出てきて、もしそういう者があって行く所がないということでありますならば、これは精神薄弱者に限らず、やはり現在の私どもの婦人保護の更生施設でお引き受けいたさなければならぬと思っております。もちろん、先ほど保護局長からお話もございましたように、保護局でもそういった場合に婦人の保護会というものを持っておられますから、そちらへおいでになる場合もございましょうし、またそちらで足りない場合には、あるいは適当でない場合には、私どもの方でお引き受けしなければならぬということがあると思います。また、明年度十二カ所の新しい施設を設ける予算があるのでございますが、そういったような場合にも、そういった施設の種類等につきましても、あるいは考慮する必要があるのではないか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/132
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133・藤原道子
○藤原道子君 最後に、資料を一つお願いしたいと思います。精神衛生法による対象者が今どのくらいあるかということと、それから精神病院の病床がどのくらいあるかということを一つお調べになって、それを一ついただきたい。
それからいま一つ、これは警察庁ですか法務省ですか、いわゆる売春に対しての違反、今までは勅令第九号違反とか何とかでやっておりました。これらに対して業者、あるいは周旋人、これらの検挙数と、判決の不起訴になったとか実刑になったとか罰金にしたとか、こういう処理をした状況についての資料をちょうだいしたいと思います。
聞きたいことはたくさんございますが、時間がございませんから、この程度にいたしますが、どうか当局の方たちは誠心誠意、この問題の運営に当っていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/133
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134・青山正一
○委員長(青山正一君) 安田局長、刑事局長に申し上げます。ただいま藤原委員よりお申し出の資料は一つととのえて、委員長まで御提出願いたいと思います。
ほかに御発言もないようでございますが、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/134
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135・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議ないと認めます。
議事の都合により、これより懇談に入ります。
速記をとめて。
午後四時五十六分懇談会に移る
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午後五時四十九分懇談会を終る発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/135
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136・青山正一
○委員長(青山正一君) 速記を始めて。
それでは、両案を一括して、これより討論に入ります。
御意見のおありのお方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/136
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137・大川光三
○大川光三君 私は、ただいま議題となりました売春防止法の一部を改正する法律案並びに婦人補導院法案に対し、自由民主党を代表いたしまして、賛意を表するものであります。
両法案は、本委員会が一昨年売春防止法を可決する際に付加した付帯決議の線に沿い、本法の趣旨、目的を一そう徹底する方向にその基本的態度をとっております。しかしながら、両法案の構想の核心をなしておる補導処分は、成人婦女子の身体を拘束する保安処分として画期的な制度でありますだけに、その法案におけるあり方については、必ずしも問題がないわけではありません。特に裁判所の調査官制度並びに保安処分の本質論から来たる補導処分の形態について、運用の衝に当るべき法務省と裁判所との間に、事前の十分な打ち合せと了解がついていなかったことは遺憾とするものであります。これらの点については、今後政府においてよく検討を加えるべきことはもちろん、さしあたって法の運用に臨んでは、諸般の事情に留意し、万全を期すべきことを希望いたします。いよいよ売春防止法の刑罰規定の実施を目前に控えた今日におきましては、とりあえず、この程度の内容をもって可とするほかはないと考え、両法案に賛成をいたすものであります。
なお、私は、この両法案には多くの疑問と満たされないものがあると存じますので、ここに両法案に対し、それぞれ付帯決議を付することの動議を提出いたします。
その動議の提出理由、内容にかえまして、その付帯決議案をここに朗続いたします。
以上。
次に、婦人補導院法案に対する付帯決議案を朗読いたします。
以上、何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/137
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138・棚橋小虎
○棚橋小虎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、売春防止法並びに婦人補導院法の両案に賛成いたします。
なお、その各法案につけられました付帯決議についても賛成いたすものであります。
売春防止法につきましては、本案による裁判をするためには、調査官による調査に基く必要があるということは、十分に了解をするのでありますが、しかし、この四月にその実施を控えておりまして、調査官の設置につきましては、刑事訴訟法その他に関係する面が非常に多いのでありまして、今、急にその調整ができないという法務省の言い分も、十分にわかるところであります。でありますからして、この際、一応本法案を成立させておきまして、あらためて、この付帯決議を待って、できるだけすみやかに調査官制度の採用をなす必要があると考えるのでありまして、この意味で、この付帯決議には賛成をいたす次第であります。
なお、婦人補導院法につきましては、この婦人の補導は保安処分であって刑罰ではない、つまり売春をする婦人の更生をはかるところの教育をすることが第一番の目的であるという保安処分の目的をどこまでも考えまして、刑罰とははっきり区別しなければならぬのでありまするからして、この法案の運用に当りましては、十分その点を考慮して、婦人の自由と権利を尊重するように、運用上十分の御留意を願いたいと思うのであります。この付帯決議によりましても、その点、はっきりと当局者に希望をいたしておる次第であります。
なお、この婦人補導院法は、いろいろな点で婦人の処遇その他については満足できない点がたくさんあるのでありますからして、こういう点につきましては、将来できるだけ早く、この法案全体に対して十分に検討を加えられて、適当に改正案を提出されることを切望いたしまして、賛成の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/138
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139・青山正一
○委員長(青山正一君) ほかに御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/139
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140・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
売春防止法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/140
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141・青山正一
○委員長(青山正一君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、討論中に述べられました大川君提出の付帯決議案を議題といたします。本付帯決議案を、売春防止法の一部を改正する法律案について、本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/141
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142・青山正一
○委員長(青山正一君) 全会一致でございます。よって大川君提出の付帯決議案は、売春防止法の一部を改正する法律案について、本委員会の決議とすることに決定いたしました。
次に、婦人補導院法案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/142
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143・青山正一
○委員長(青山正一君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたました。
次に、討論中に述べられました大川君提出の付帯決議案を議題といたします。本付帯決議案を、婦人補導院法案について、本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/143
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144・青山正一
○委員長(青山正一君) 全会一致でございます。よって、大川君提出の付帯決議案は、全会一致をもって、婦人補導院法案について、本委員会の決議とすることに決定いたしました。
なお、委員長の口頭報告の内容、報告書につきましては、両案について、いずれも委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/144
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145・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議ないと認めます。
それでは、例により、順次御署名を願います。
多数意見者署名
秋山俊一郎 大川 光三
一松 定吉 棚橋 小虎
宮城タマヨ 雨森 常夫
大谷 瑩潤 小林 英三
吉野 信次 赤松 常子
藤原 道子 辻 武壽
斎藤 昇発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/145
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146・青山正一
○委員長(青山正一君) ただいま本委員会におきましては、売春防止法の一部を改正する法律案、婦人補導院法案について、それぞれ付帯決議を決定いたしました。本付帯決議につきまして、法務大臣から所信をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/146
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147・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 両法案とも御決議いただきまして、まことにありがたく感謝をいたします。付帯決議につきまして一言政府の考えを述べたいと存じます。
付帯決議中、補導処分に関する付帯決議の前段と、それから婦人補導院法案に対する付帯決議、この二つは、過般来当委員会におきましてだんだんと御質疑もあり、御意見も拝聴いたしておった点でございまして、政府におきましても御意見の通りと考えておるのでございまして、御趣旨に沿いまして、運用の誤まりなきを期したいと考えております。
なお、付帯決議の補導処分に関する分の後段、すなわち調査官制度に関する部分でございますが、これは過般来だんだんと政府の事情も申し上げました通り、今日の刑事訴訟法の手続の根本構造に関する問題でございまするために、今にわかにこれを採用することができなかったのでございますが、この付帯決議の御趣旨に沿いまして、十分検討いたして、御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/147
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148・青山正一
○委員長(青山正一君) 別に御発言もなければ、次回は明十八日、火曜日、午後一時、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、企業担保法案を議題とすることにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後六時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01719580317/148
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