1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月十八日(火曜日)
午後一時三十五分開会
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出席者は左の通り。
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
棚橋 小虎君
委員
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
大谷 瑩潤君
斎藤 昇君
赤松 常子君
藤原 道子君
辻 武壽君
政府委員
法務政務次官 横川 信夫君
法務大臣官房経
理部調査課長 位野木益雄君
法務省民事局長
心得 平賀 健太君
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最高裁判所長官
代理者
(総務局長) 關根 小郷君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
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本日の会議に付した案件
○下級裁判所の設立及び管轄区域に関
する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○企業担保法案(内閣提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。
初めに、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/1
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002・横川信夫
○政府委員(横川信夫君) 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、最近における市町村の廃置分合等に伴い、簡易裁判所の名称及び管轄区域等を変更しようとするものであります。以下簡単に今回の改正の要点を申し上げます。
第一は簡易裁判所の名称の変更であります。すなわち、島根県出雲市に置かれている簡易裁判所は、これまで、その所在地の旧地名である今市町の名称によって今市簡易裁判所と称していたのでありますが、このたびこの名称を出雲簡易裁判所に変更するとともに、これに伴って、栃木県今市市に置かれている栃木今市簡易裁判所の名称を今市簡易裁判所に変更しようとするものでありまして、いずれも地元の住民の希望を考慮したものであります。
第二は簡易裁判所の管轄区域の変更であります。裁判所の管轄区域は、行政区画またはこれに準ずべき区域を基準として定められておりますが、町村の廃置分合等に伴い、二つの簡易裁判所の管轄に分属することになった新設町村の区域を一体として、いずれか一方の簡易裁判所の管轄に属させることとする等の必要がありますので、鳥取県八頭郡郡家町の設置に伴い、鳥取簡易裁判所の管轄に属する同県同郡旧中私都村及び上私都村の区域を河原簡易裁判所の管轄区域とするほか、二簡易裁判所の管轄区域を変更し、また、土地の状況、交通の利便等にかんがみ、安芸西条簡易裁判所の管轄に属する広島県安芸郡熊野跡村の区域を広島簡易裁判所の管轄区域に変更しようとするものでありまして、これらの管轄区域の変更は、いずれも、地元町村、関係官公署、弁護士会等の意見を十分しんしゃくして決定したものであります。
第三は下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表の整理であります。すなわち、市町村の廃置分合、名称変更等に伴い、同法の別表第四表及び第五表について当然必要とされる整理を行おうとするものであります。
以上がこの法律案の趣旨でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/2
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003・青山正一
○委員長(青山正一君) 本件についての本日の審査は、この程度にとどめまして、質疑は、次回に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/3
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004・青山正一
○委員長(青山正一君) 次に、企業担保法案を議題といたします。
前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は御発言を願いたいと思います。なお、本日は、横川政務次官のほかに平賀民事局長、香川民事局第三課長、位野木調査課長がお見えになっておられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/4
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005・大川光三
○大川光三君 私は前回に引き続きまして、本日はまず、企業担保権の成立要件並びに効力発生要件について数個の質問をいたしたいと存じます。
法案の第三条において「企業担保権の設定又は変更を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。」かように規定されておりますが、これは強行規定であるのか、任意規定であるのか、もし強行規定であるといたしまするならば、私署証書によって企業担保権の設定または変更に関する契約をいたした場合に、その契約は法律上いかなる運命におかれるかという点をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/5
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006・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 第三条は強行規定と解すべきものと思います。従いまして、私署証書をもちまして企業担保権の設定契約をいたしました場合には、それは無効と解すべきものと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/6
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007・大川光三
○大川光三君 申すまでもなく、すべて契約は当事者の合意によつて成立することが原則であります。しかるに企業担保権に関する契約に限ってこれの例外を設けて、たとえ私署証書でそういう契約をしてもそれは無効だといわれるまでに、それほどこの例外を設ける理由というものがはっきりしないのでありますが、その例外を設ける理由を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/7
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008・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 本来、契約法の一般原則としましては形式を要求しないというのがまあ従来の建前なのでございます。しかしながら、特別のものにつきましては書面によることを要求する、あるいはその書面が私署証書ではなくて公正証書であることを要求するということもあり得るのでございまして、現に担保附社債の発行の場合には、担保附社債信託法におきまして社債発行会社と受託会社との間の信託契約は信託証書によってしなければならない書面主義を要求しておりまして、すでに一般の契約法の例外を作っておるわけであります。この企業担保法におきましては、そのほかに、さらにこの信託証書を公正証書によって作ることを第三条は要求しておるわけでございますが、それはこの担保権の成立と内容をあくまで明確にしたい、さらに特に企業担保権の実行の際に紛争を未然に防止しまして、実行が円滑にいくようにということを期しておるわけでございまして、従来の担保権の実行の際には、ややともすれば担保権の成立なんかにつきまして争いがあり、そのために担保権の実行が非常に遅滞をするというおそれがあったのでございます。従いまして、そういうことを未然に防止するために第三条の規定を置いたのでございます。本来からいいますと、担保附社債信託法におきまして、信託証書は公正証書によって作れということが本来はあってもしかるべきではないかとも考えられるのでございますが、その点はなお、担保附社債信託法全般の改正の問題として検討いたしたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/8
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009・大川光三
○大川光三君 本法案の提案理由の御説明では、現行財団抵当がその手続等において多大の時間と費用を要するから、その不便を除くことを主眼としてこの企業担保権というものを新たに設けたのだ、こういう理由で、提案理由としては多大の時間と費用との節約ということをおっしゃっておるのでありますが、ここで、私署証書を排撃して公正証書を契約の成立要件とするということになりますと、結局時間と費用との浪費でありまして、提案理由と矛盾しないだろうか、かように思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/9
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010・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 契約自由の一般原則というのも、これはやはり当事者の便宜のために設けられた原則だと思うのでございます。ところが、この従来の担保権の実行の例に徴しますと、担保権の成立について争いが生じまして、実行手続の過程において異議の申し立てなんかが頻発いたしまして、非常に手続が遅滞する例があるのでございます。そういう場合には、やはりむしろこの契約の成立を公けの書面によって明確に立証できるようにしておくことが後日の紛争を防ぎ、後日この実行手続の遅滞を生ずる原因を未然に除去しておくということになるわけでありまして、契約の当事者、ことに企業担保権者の利益に合致するんではないか、そういう見地から第三条の規定を設けた次第でございます。でありますから、第三条の趣旨は、やはりこれによって手続を複雑化し、時間、費用をかけるというよりも、むしろ企業担保権者の利益のために、将来の紛争を未然に防止して、実行手続を円滑に、すみやかに完了させよう、そういう趣旨に基いておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/10
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011・大川光三
○大川光三君 公正証書を契約の成立要件としたということについて、債権者の保護という面から見ますと、ただいまのお説はごもっともであると存ずるのであります。しかし一面、企業担保権を設定して金を借りようという債務者の側に立って考えてみますと、公正証書の作成ということにはこれは多大の費用がかかると思うのでございます。前回、参考人にお尋ねしたのに関連をしまして、私この公証役場の手数料のことに言及いたしまして御意見を伺ったのでありますが、その当時お話がございました公証人の手数料及び日当及び旅費に関する規定は、政令にこれを一任しておる、そこで政令を変更することによって、手数料の低下ということも考えられるんだという御意見であったやに存じますが、その点、もう少し明確に御説明をこの際いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/11
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012・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 債権者の方はそれで計らえるが、債務者にとっては必ずしも利益とは言いがたいという御意見でございますが、債務者にとりましてもやはり不当な契約の成立を防ぐことができるわけでございまして、その点、債務者にとってもまた利益になる面があろうかと思うのでございます。
それからなお、こういう工合に法律の規定をもちまして公正証書の作成を義務づけております場合には、手数料につきましては、一般の公正証書の場合と違いまして、証書の内容をなしておりますところの法律行為の目的の価額によらないで、一件幾らというふうに手数料を定めるべきものであろうと思うのでございます。すでに現行の公証人手数料規則におきましても、商法の規定でもちまして、株式会社の定款には公証人の認証が必要とされております関係で、一件六百円ということになっておるのでございます。それに準じまして信託証書を公正証書で作成いたします場合も、やはり一件幾らというふうにきめていくべきものと考えております。さように公証人手数料規則の改正をいたしたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/12
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013・大川光三
○大川光三君 ただいまお話の公証人の手数料の改正というのは、この企業担保法の実施とこらみ合せて改正をせられる御意思かどうか、念のために伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/13
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014・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) その計画でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/14
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015・大川光三
○大川光三君 やはり費用に関する問題でございますが、附則の9によりますと、登録税のことについて規定されております。企業担保権取得行為の登録税は工場財団抵当の場合と同じく、債権者の債権額の千分の一・五と定められております。しかし、前回から各委員からいろいろ御質疑がありましたように、この企業担保権はきわめて弱い性格を持っておるにもかかわらず、工場財団抵当の場合と同じに債権額の千分の一・五という登録税をかけるのは多少酷ではないか、不当ではないかと考えるのでありますが、その点に関する御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/15
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016・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) この登録税の件でございますが、これは登録税法によりまして、工場財団につきましては抵当権の取得が債権額の千分の一・五になっておるわけでございまして、企業担保権であるからといって、ことさらにこれを差別し、安くするということは妥当ではあるまいという見地から、工場財団の抵当権を取得します場合と同じに考えまして、債権金額の千分の一・五といたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/16
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017・大川光三
○大川光三君 これも前回いろいろ議論があった点でございますが、企業担保権が一般担保権に別の方に置かれるという関係で、債権者の方では企業担保権と並行して財団抵当を要求する場合がこれは予想されるのであります。そうされます場合には、企業担保権設定についての登録税、そのほかに財団抵当に対する登録税に対する負担がおそらく債務者に転嫁されてくるということになりますと、債務者の側からいたしますと、二重、三重の負担になる。それではこの法律が費用と手数の節約にはならないのではないかというように考えるのでございますが、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/17
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018・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) ただいま仰せの特別担保権とそれから企業担保権、両方を設定いたしました場合には、どちらか一方で債権金額の千分の一・五を納めますと、それだけでよろしい、二重に千分の一・五の登録税を納める必要はないことになっておりますので、その点の心配は要らないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/18
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019・大川光三
○大川光三君 ただ最後に希望を申し述べておきたいと存じますが、企業担保権がここにできまして、多数産業界の方ではこれを利用するについてのやはり費用ということに相当頭を悩ましておるように伺うのであります。そういう意味で、先ほどお話の公証人の手数料にいたしましても、その他登録税等につきましても考慮する余地がありまするならば、なるべく債務者側の負担軽減という線に沿ってお進めをいただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/19
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020・青山正一
○委員長(青山正一君) ほかに御質疑のお方はございませんか。
本日の審査はこの程度にとどめまして、次回は三月二十日、木曜日、午前十時、企業担保法案残余の質疑、討論、採決を行います。
これにて本日は散会いたします。
午後一時五十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X01819580318/20
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