1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月十八日(金曜日)
午前十時五十八分開会
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委員の異動
本日委員松野鶴平君、井上知治君及び
秋山俊一郎君辞任につき、その補欠と
して小幡治和君、前田佳都男君及び小
山邦太郎君を議長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
一松 定吉君
棚橋 小虎君
宮城タマヨ君
委員
雨森 常夫君
大谷 瑩潤君
小幡 治和君
小林 英三君
小山邦太郎君
前田佳都男君
安井 謙君
吉野 信次君
亀田 得治君
辻 武壽君
国務大臣
法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
政府委員
法務大臣官房調
査課長 位野木益雄君
法務省刑事局長
竹内 壽平君
最高裁判所長官
代理者
(総務局長) 關根 小郷君
最高裁判所長官
代理者
(人事局給与課
長) 西山 要君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
法制局側
法 制 局 長 斎藤 朔郎君
説明員
法務省刑事局参
事官 神谷 尚男君
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本日の会議に付した案件
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○証人等の被害についての給付に関す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。
委員の異動について報告いたします。
四月十八日付秋山俊一郎君辞任、小山邦太郎君選任。井上知治君辞任、前田佳都男君選任。松野鶴平君辞任、小幡治和君選任。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/1
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002・青山正一
○委員長(青山正一君) それでは初めに、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、両案を一括して議題といたします。
御質疑の方はございませんか。——別に御質疑もないようでございますので、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/2
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003・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議ないと認めます。
それではこれより両案を一括して討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/3
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004・大川光三
○大川光三君 ただいま議題となりました裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案は、いずれも他の特別職の職員の給与の改定にかんがみ、高等裁判所長官以上の裁判官の報酬並びに検事長以上の検察官の俸給を改定するものであり、かつ第二十六国会における本委員会の司法官待遇に関する付帯決議の趣旨に沿うゆえんであると存じまするので、私はこれに賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/4
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005・棚橋小虎
○棚橋小虎君 ただいま議題となりました二案に対しまして、私は社会党を代表して賛成であります。この際、これに加えまして要望しておきたいことは、特別職の裁判官並びに検事総長等の給与ばかりではなく、下級裁判所並びに検察庁の職員の給与が一般職の給与に比べまして非常に均衡上劣っておるということ、それから司法部内におきましても、法曹一元化というような目的を達する上から申しましても、現在の下級裁判所の裁判官並びに検察庁職員の報酬が非常に低位にあるということは、この目的を達する上に非常に支障になると考えまするので、できるだけ早くこれらの下級裁判所の職員たちの給与を引き上げるように御配慮下さることを要望いたしまして、賛成いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/5
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006・青山正一
○委員長(青山正一君) ほかに御発言もなければ、討論は終局したものと認め、これより採決を行います。
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を衆議院送付案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/6
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007・青山正一
○委員長(青山正一君) 全会一致でございます。
次に、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を衆議院送付案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/7
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008・青山正一
○委員長(青山正一君) 全会一致でございます。よって両案は、いずれも全会一致をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議における委員長の報告、報告書につきましては、両案いずれも委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/8
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009・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議なしと認めます。
それでは両案を可とされた方はそれぞれ順次御署名を願います。
多数意見者署名
大川 光三 一松 定吉
棚橋 小虎 宮城タマヨ
雨森 常夫 大谷 瑩潤
小幡 治和 小林 英三
小山邦太郎 前田佳都男
安井 謙 吉野 信次
亀田 得治 辻 武壽
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/9
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010・青山正一
○委員長(青山正一君) 次に、刑法の一部を改正する法律案、刑事訴訟法の一部を改正する法律案、証人等の被害についての給付に関する法律案、以上三案を議題といたします。
前回に引き続き、あっせん収賄罪に関する部分の質疑を行います。御質疑のおありの方は御発言願います。
なお、この席上には法務大臣、刑事局長、お二人がお見えになっておられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/10
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011・亀田得治
○亀田得治君 昨日問題になりました点、刑事局長の方で請託の問題について、検察当局の方も大体了承しているというふうな趣旨の御発言があって、ちょっとそれは私としては変だというふうに思っておりまして、実は家に帰りまして、法制審議会の議事録を直接私もう一度拝見をしてみましたが、法制審議会ではやはりこの請託というものは、検察側の立場から見ると非常に問題であるということを、これはもうはっきり明言しておる。昨日の刑事局長の言われたこととまるきりこれは反対です。もう一度見てもらいたい。その点が特に触れておりますのは、十七回の刑事法部会の速記録です。それの二十三ページから四ページにわたって、東京地検の検事正の野村委員がはっきり検察側の考え方を述べておる。それによりますと、自分は「東京地検の部長を集めまして、いろいろと意見を徴したのでございまするが、その結果一応こういう点が問題になるんじゃないかと考えましたので、その意味の意見を述べたいと思います。」云々といって、そうして次のページにいって「第一点の『請託を受け』てということは、捜査をして証拠を集めて、公判においてこれを立証するということはなかなか困難な問題だと思います。しかしながら、困難ではあっても、請託を受けての立証は必ずしもできないことはないと思いますが、そこで問題になるのは、請託の時期と金をもらった時期、つまり収賄をした時期の前後の問題が非常に困難になるんじゃなかろうかと思うのであります。」、これは昨日も問題になったところでありましたが、「つまり請託を受けてから後に金をもらったならばこの条文にぴったりといくのでございまするが、金をもらって、その後に請託があったということになると、この条文にぴったりいくかどうか。むしろそれは消極になるのじゃなかろうか。」、だからそういう場合には、この条文にはひっかからないのだ。ともかく第一段階において、この法律を使おうという検事正がこういう見解なんですから、私は非常にやはりこの点は、法務省がどういうふうにそこをああでもないこうでもないと説明をされましても、この使う本人がこういう見解を持っておるわけですから、はなはだこれは問題だと思うのです。立証が困難だという問題とそれから請託を受けてということによって結局は時間的の前後というものがはっきりさせられておる、これが私は非常な障害になる、こういうふうにあくまでも考えるのです。それから同じく同じ速記録の五十ページをごらんいただきますと、そこの中ごろのところに、検事総長、花井委員が初めの方に非常に重要なことを申しております。それは「先ほど野村委員からお話がありましたように、この原案というものは捜査当局が非常に苦境に陥るものだと思います。それは先ほども御指摘がありましたようにたとえば請託とか不正の行為、こういう構成要件で縛られておる。」云々、そういって、「この請託というのは、「職務上不正の行為をさせ、又は正当の行為をさせない」というこのこととぴったり一致する請託のように解せられるのですが、いかようなものでしょうか。そうであるとすれば、これは捜査上、立証上ますます困難な構成要件になると思うのであります。」、これは検察当局の最高責任者の心配ですね。で、おそらくこういう問題が起れば、被疑者、あるいは被告人側の法律家はやはり法律を適用する以上は、あくまでも厳格に適用してもらいたい、こういう主張をするでしょう。そういう主張がある場合に、法制審議会においても、検事総長あるいは検事正が、今私が読み上げたような見解を述べておる。こういうことになれば、やはりそれは法務当局が昨日説明されているような見解じゃなしに、狭くやはり解釈する、こういうやはり傾向に私は十分なると思うのですね。昨日なぜ刑事局長が、検察当局も大体この点はそんなむずかしいことないだろうというふうに思っているはずだというようなことをおっしゃったのか、私はそのこと自体少し食言的な感じをもって実は速記録を見て感じておるのです。私ども皆さんの御答弁はできるだけ率直に聞くつもりでおりますが、これはあまりにも昨日の御答弁と、この検事正なり、検事総長がこの速記録に言っているのとまるっきり質的に違う。そういうことでは、これは一体何を基準にして私どもがこの重要な法律案を審議していいか、迷うわけですね。一見問題にならぬような解釈の問題であれば、そんなに私は言いません。学者の意見も二つに分れておる。相当有力な学者の意見も……。そうして実際の法律を使う検事総長がこういうことを法制審議会で述べているわけなんです。これで果して実際に問題が起きた場合に、法務当局がおっしゃるような立場で運用ができるかどうか、私は、できないと思う。これは一つ刑事局長の昨日の答弁は取り消してもらいたい。その上でざっくばらんに法制審議会で検事総長や検事正が述べておるこの見解というものに対して一つはっきり答えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/11
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012・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私が昨日お答え申し上げました点が食言ではないかという点でございますが、法制審議会の速記録をありのままに全部差し上げてありますので、食言かどうかということはこれの全体を見ていただければわかるのでございますが、ただいま御指摘のありましたのは、法制審議会の総会に本案がかけられまして、これをさらにこまかく検討するということで部会におりたわけであります。部会の第一回の速記録をただいまおあげになったのでございまして、私どもとしましては、いずれ国会において慎重審議を受けるのでございますので、この部会におきまして、徹底的に御疑念のあるところをさらけ出して、質疑もし、御検討も願いたいという趣旨で、この部会では御審議を願ったわけであります。その一回の部会におきまして、もうすでに当時、「請託ヲ受ケ」ということが、不正の事項までも含むというような意見も新聞に出ておったようでございまして、そういうような点を含みまして、そういうふうに解されるおそれはないかという趣旨から、検事総長がその点を発言されたのでございますし、野村検事正の述べられておりますのは、検察としましては、取り締りいい法規を作りたいというわけでありまして、そういう観点から、これは捜査に非常に困難だというわけではないが、しぼりになるだろう、なければない方がいいというふうな意味においての御発言であったのでありますが、その後回を重ねまして、たしか四回だったと思いますが、回を重ねてだんだん、私ども、その「請託ヲ受ケ」という中には、不正の事項も含まないという意見も当然政府側としては述べましたし、かついろいろな学者も、先ほども申し上げましたように、不正の事項までは含まないということに、だんだん議論がそういう線に落ちついてきたわけでございます。それから、一方そういう点も含まないという解釈であるならば、この「請託ヲ受ケ」ということは、必ずしも捜査にひどい支障になるものではないというようなことも検察当局もだんだん理解されまして、最後の段階におきまして、検察側のまあ代表意見というふうな意味で、花井検事総長が、先ほど述べられました部分におきましては、これに賛成しておられるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/12
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013・亀田得治
○亀田得治君 何ページですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/13
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014・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ちょっと今調べまして後ほどお答えいたしますが、そういうふうな経過になっておりまして、私は法制審議会の全体の結論がそういうところにあるという意味において昨日お答え申し上げたのでありまして、審議の過程においていろいろ反対論もあり、議論がありましたことは、この速記録全体を提出することによって申し上げておる次第でございまして、その点御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/14
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015・亀田得治
○亀田得治君 あなたはそういうふうな説明をされますが、請託というものが不正な行為を含むかどうか、あるいは時間の前後の問題、そういったようなことが部会でほんとうに論議されておるのは、十七回の刑事法部会だけですよ、ずっと通覧してみると。そうして検察当局がほんとうに自分たちの立場を発言しているのはこのときだけですよ。あとはほかの問題に移っておる。そうして法務当局の、不正な行為も、不正でない行為もすべて含むのだという意味の説明はところどころありますが、しかし検察当局が持っておるそういう疑念がもう晴れたとかといったような表現はどこにもないんですよ。疑念を残したままに一応通っておるというのがこの議事録全体を通じての私の感じです。結局それはあとは法の逆用にまかすというふうな態度を全体がとられたのかもしれませんが、私はまあ法制審議会の議事録全部を読みましたがね。こういう重要な問題について、実際参議院の法務委員会で各委員が論議しているほど突っ込んだ論議がなされておらないのですよ、もっとも私不満だと思うのは。そういう状態でこれはきているわけですから、だから論議になって、そうして検察当局のそういう考え方が思い違いだといったようなことで引っ込めているならいいのですが、そうじゃないのですよ、これは。だから従って実際の法の運用の場面になれば、これは当然検察当局が以前からもっておる、そういう考え方が顔を出してくることは当りまえですよ。最終的に第二十一回の総会の議事録で花井検事総長はこの案に賛成していますよ。賛成していますけれども、この賛成というのはともかくまあはなはだ案そのものには不満だとはっきり言うておる、賛成するときに不満だがいろんな現状ということを考えて一応賛成します。こう言うておるのであって、個々の問題になった問題点ですね、そういうことについてすべて了承してよろしゅうございますと、そういうふうなことじゃなかったですよ、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/15
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016・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 今なおこまかく見ておりますが、十七回刑事法部会の、先ほど御指摘になった八十七ページの終りのところに、亀田先生もすでに御存じの通り花井委員の『請託』はない方がいいと思いますけれども、その中へ他の公務員の職務上の不正の行為とか相当の行為、これが含まれないとすれば、別に反対はいたしません。」とこう申しておるのでございますが、これは私どもは検察当局が満足する案を必ずしも作ろうとしておるのではございません。検察当局が満足のいくような案ができればこれに越したことはございませんけれども、これはまあ立法の私どもの、政府の立場といたしますれば、検察当局がやはりいいような法律のみを考えておるのではなくして、まあ検察当局にとってはやりにくい面もありますけれども、乱用にわたらぬようにという考え方も一つあるのでございまして、結局絶対反対だというのを押し切ってこの案を作ったのではございませんので、いろいろ議論しておりますうちに、まあない方がいいけれども、これが含まれないというなら別に反対はいたしませんというこのお言葉がありまして、検察当局も了承しておるというふうに私どもは考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/16
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017・亀田得治
○亀田得治君 それは私の質問を少し誤解しておりますよ。私は何も検察当局がやりたいような案を作りなさい、そんなことで言っているのじゃないので、最初にこの法律を使う立場にある検察当局が疑義を持つような案ではよろしくない、そのしぼり方が強い弱いは別ですよ。疑義を残したままいくようなことはあとに紛争を残すじゃないか、そういうことなんです。そういう意味で申し上げておるので、そこらは誤解のないように。それで今御指摘になった八十七ページの部分ですね。これにしたってそれは何も「職務上の不正の行為とか相当の行為、」不相当の意味でしょう、これが含まれないとすれば別に反対いたしません。これは非常に消極的なことなんですね。最初非常に問題になったのは二十三ページ、二十四ページここで大いに議論をやっておる、こういうことがきちっと解決されてのものじゃないのですよ。こんな程度の表現は、ともかくまあ政府として諮問案が出て、そしてまあ急いで審議しなければならぬ、そういうふうな状況等もあるから、法務当局がそういう説明をされるなら一応了承しておきましょう、そういう程度のことなんです、こんな表現は。それじゃ法務当局に聞くわけですが、法務当局がそういうふうに全部を含む意味だというふうに言われましても、じゃその通り法律が使われるかどうか、これはわからぬでしょう。この法文自体だけからいって立案者はそれを希望しておるかもしれませんが、その通り果していくかどうかは確実な意味じゃそんな保証ができないでしょう。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/17
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018・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 仰せの通り立案者がどのような解釈をいたしましても、立案者のみならず、立法府もその最終の解釈権を持っておりませんので、最後は裁判所の判断に待つほかはないわけでございますが、しかしながら裁判所の判断といえども勝手気ままに解釈ができるのではなくして、やはりここで慎重に御議論を願っておりますこの議論の内容というものは、やはり解釈の資料になるのでございまして、法律が生れれば一人歩きをするといいますが、生む親にやはり似るわけでございます。立法府で慎重審議されましたこの意見というものは、解釈の上にやはり反映してくるというふうに私どもは考えておりますので、ここでの議論におきましても、私どもは慎重な態度をもって場当りな発言はしないように努めておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/18
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019・亀田得治
○亀田得治君 それは国会における論議が後の裁判の解釈上に影響していくことはもちろんあり得ることでしょう。しかしそれは筋が通っていなければいかぬですわね。国会の論議も参考になるかもしれぬが、こういう問題等については、法制審議会における各専門家の出しておる意見なんというものも大いに参考になるのですよ。ところがそれが画然としていないわけですね。それで、私はほかの方がそういう意見を出しているのであれば、そんなにこの点を強くは言いません。検察庁といったらできるだけ法律を使いたい方でしょう。その使う方の人がこれでは請託というものは幅が狭い解釈になるのではないか、こう検事正や検事総長がはっきり法制審議会で言っている。そこに私は、それがむしろ裁判にいく前に検察庁が動くわけですから、その段階で検察庁がそういう考えをとっておったら、あなたが説明されておるようなふうに前へ進まぬじゃないですかね。だからどうしてもあなたのような解釈にしたいということであれば、何とかこの法文の書き方をそんな疑いを残さぬようにやってもらいたい。そこで意見が出てきているわけでしょう。これは法制審議会でも出ております。そういうややこしいこともあるので、たとえば検事正にしても、できたらこれはとってもらいたと、あるいは團藤教授もともかくこれはない方がいい、そういう疑義の問題もあるし、ほかの立場も若干あるでしょうが、ともかくこういうものはない方がいい、それから宮崎委員もこんな請託なんというものはない方がよろしい、これもはっきり意見を出しておる。せんだって私どもが聞いた参考人の中でも、専門家でそういう意見をはっきり出されておる方がいるわけなんです。で、積極的に請託というものがあった方がいいというふうな議論はこの中ではきわめてわずかですよ、法制審議会におけるこの議事録では。ただ原案がそうなっておるものですから、まあそういうふうな御説明ならまあまあと、こういうところです。昨日裁判官のこともあなたおっしゃったけれども、私その点も見てみたんだが、何もそんな積極性は、ちょっと表現があいまいでよくわからないんですけれども、そんなに積極的なものじゃない、全体を通ずるものは、非常に批判的なものである。そして江家さんの説をちょっと見たところでは、あの人はあなたと同じ解釈だが、しかしその江家さんの意見でも、どうも疑義があるようであれば、そういう疑義の起らぬようにしておくべきではないかというやはり意見を議事録の中で漏らしておる。そうでしょう。江家さんがあなたの方に一番近いはずです。その方が、八十五ページのまん中ごろですね、「そういう点に解釈上の疑義が生ずるということになれば、いっそこれを削るとか、あるいは疑義がなくなるようにさらにこれにつけ加えるというような問題が起るかと思います。」、あなたの方の立場に近いその学者がこういうふうなことをおっしゃっておるわけなんです。だから私は、こんなにばらばらの解釈がされるような状態のものなら、いっそのこと、こんなものは削った方がいいと思うんです。私は、これを削ったからといって、その程度のことで、いかに衆議院を通ってきたからといって、これが廃案になることは、私はなかろうと思います。あとの方の「職務上不正ノ行為」云々というようなものを削ってしまう、そういうことになれば、これは非常に大きな変化になりますが、この議事録を、私ゆうべたんねんに見れば見るほど、実はそういう疑問を非常に深くしてきょうは出てきているんですが、法務大臣は議事録をごらんになったでしょうか。一つ率直なお気持を聞かしてもらいたいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/19
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020・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この規定は、非常にむずかしい規定でございまして、私が前々申し上げている通りでございます。従来からだんだん提案されておりまするあっせん収賄罪に関する法律案も、その字句の解釈については、どういう書き方をしても、学者間にはいろいろ解釈上の議論が分かれておるそうでございます。私は、法務省の原案ができて、これを法制審議会にかけまして以来、国会の方に出席する必要上、この席には出ておりません。それから、ただいまこの議事録等につきまして、詳しくは精読はいたしてはおりません。しかしながら結論に達するまでの道程におきましては、学者間にいろいろの議論があったことは承知いたしております。しかしながら立案者の側からだんだんと説明をいたしまして、最後には了承を得ておると解釈をしておるのでございまして、これらすべての学者、専門家、それぞれ自分の名誉にかけて、そうして可否の決をとっておるのでございまするから、私は反対であったけれども、賛成しなければならないような立場だから賛成したというようなことの許される問題ではございません。それで、最後まで反対の方は反対しておられるのでございますから、その問題が、例の第三者供賄に関する問題でございます。この第三者供賄に関しましては、いろいろ異論がありまして、どうしてもこの規定が伴っておらないと、あっせん収賄罪に関する立法が完全でない、こういうような感じの方が多くありまして、この点は強硬に主張される方が多かったのでございますが、さればというて、それではこの原案とともにこれを規定するか、あるいはこの原案だけで実施してみて、その実施の暁で第三者供賄に関する規定も付加した方がいいか、こういうことについて議論が分れまして、そうしてこれはたしか採決に諮ったと思うのでございます。それほど真剣に討議したのでございます。採決の結果は、直ちに提案をするということにはならなかったのでございますが、最後に希望決議として、近い将来において政府でよく考えろ、こういうふうになったのでございます。この会議は、何でもかんでも法務省の言うようにすべて進んできたわけではございません。学者、専門家の間でそれぞれ意見を戦わして、そうして最後まで承服しない問題につきましては、今のように採決にまで参っておるのでございますから、私といたしましては、大体この案で学者、専門家が賛成をしてくれておる、かように考えておるわけでございます。これは正式の会議についてのことでございますが、その他、私は会議外におきまして、いろいろの方と会って、三々五々話をいたしてみますると、なるほどこの規定は世上において、少ししぼり過ぎておる、狭いという意見もあるけれども、初めての試みだから仕方あるまい。それからまた検察庁の立場からすれば、なるべく立証の容易なように、検察のはかどるようにしたいと思うことは、これは人情であるけれども、しかし、そうして、果してまた人権の点から見てよろしいものであるかどうか、こういうことも考えられなければならぬから、まあこの程度でもって、まず初めての試みだから規定するのがどうであろうかと、こういうような意見もしばしば聞いておるのでございます。これは別にその正確なことを私申し上げるのではないのでございますが、法制審議会に関する限りは、その経過におきましていろいろの議論がありましたが、最後にはみんな賛成を得て、そうして賛成を得られなかった部分だけは採決に移して、そうして最後に付帯決議がついたということでございまして、私はそれはその通りに信じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/20
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021・亀田得治
○亀田得治君 大臣の主としてお答えになっておることは、このあっせん収賄罪の規定をこのまま認めるかどうか、あるいは第三者供賄という制度を入れるか入れないか、そういうことについてのそれは説明です。それはなるほどあなたがおっしゃったようなことに落ちついております。そうして第三者供賄の場合には、これは採決もしておることもその通りです。だけれども、この中の解釈の問題については、それじゃこのあっせん、請託という問題について論議になったところについては、こうこうこういう解釈で意思統一しておるということが、この議事録の最後にでもちゃんと載っておれば、それは疑義がないんですよ。そうはできておらないわけです。それから採決といっても、何もそういうことについての採決じゃないので、結局こういう制度を置くか置かないかということなんです。だからちょっとそれは関連はありますよ、解釈と関連はありますけれども、その最終的に法制審議会でそれを認めておるから、法務省の解釈自体も全部認めているんだ、そういうふうな解釈は、ちょっと飛躍している点が私はあろうと思います。ほんとにそういうことを言えるためには、問題になったところについては、最終的に、座長の方はともかく、裁判所ではどういうふうに解釈されようとも、われわれとしてはこういうことで意思統一していこう、こういうことがあればいいんですが、これは速記録を全部見ても、その点がばらばらです。全くばらばらです。そうして国会にかかって、いろいろ私ども意見を聞いてみても、はなはだばらばらなんです。そうして法務省の御説明自体も、私ども必ずしもこれは納得いかない。ただそういう気持だ気持だということを言われるだけであって、その気持が、果して客観的に通るものかどうか、それで法制局長が来られましたから、ちょっと参考に聞いてみたいと思うんですが、今問題になっておるのは、請託ということが例の職務上不正の行為云々、この下の方からはね返ってくる意味で解釈すべきかどうかという点です。これは御承知のように提案者の方では一定の行為を頼むという意味であって、下の方からはね返りを特に意味するものではない、そうなっているのですが、その説明自体に文章だけを見ても納得がいかないのと、それから昨日もこれは大いに議論して、その後私どもも法制審議会でどういう議論があったのかということで議事録を全部拝見してみたわけです。ところがまずこの法律を使う立場の検事正なり、検事総長はやはり職務的な不正の行為、悪いことをやってくれというのじゃないだろうが、そういう関係の事実をやはり指摘して頼む、何かそういうふうなことに解釈されるように思うような見解をやはり出しておるわけです。最終的には政府側の説明がありますけれども、全くその通りだ、了解しますというふうな言い方で終止符が打たれているわけでもないわけです。これはだれかほかの学者なり、法律専門家がそういう意見を出しているというのなら別ですが、この法律ができれば裁判所へいく前にまずタッチしなければならない重要な立場にある人がそういうふうな疑義を持っていれば、立法の過程がどうありましょうとも、結局はやはり検察庁としてもこういう問題については大事をとりますから、そうして問題が起きればやはりよしあしは別として、なかなかそうそうたる在野法曹の方が一方の力につくでしょう。そうしてこういう議事録をつきつけられて、君らが大体こういう見解を持っているじゃないか、初めから、こういうふうなことになれば結局私はそこに押し込められてしまうと思います。そのよしあしは別として、こういう請託ということが解釈上政府当局が説明するようなことで一見疑義がない、こういうことならそんなことにはならぬでしょうが、その点についても学者間でいろいろな批判がある。検察当局以外でもこの法制審議会でやはり相当疑義を述べている人もあるわけです。だからこういう状態で立法するということははなはば無責任なんです。だからそういうことならいっそのことこういう請託なんというものはとってしまったらどうか。ちょうどまあ世論としてももう少しいいものをほしいという世論もある。しかし職務上不正の行為云々というようなところまで削るようなことでは、これは実際上一足飛びという感じがあるかもしれません。しかし請託を削るくらいのことは私は疑義を残さないし、同時に現在の世論というものにも若干こたえるんじゃないかというような立場もありますので、特にこの点を問題にしているわけですが、そこでいろいろ専門家の御意見は聞いておるのですが、法制局長の一つざっくばらんなお気持ですね、これを置くか、置かないか、そういう政策上の問題は別にお答えにならぬでもいいです、解釈そのものとして純粋に第三者から見ての専門的な解釈を若干お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/21
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022・斎藤朔郎
○法制局長(斎藤朔郎君) ただいまお尋ねの百九十七条ノ四の「公務員請託ヲ受ケ他ノ公務員ヲシテ其職務上不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク斡旋ヲ為スコト」云云、この条文の「請託ヲ受ケ」という言葉の解釈についてどういう考えを持っておるかということでございますが、率直に申しまして、私はこの条文を拝見しました当初から「請託ヲ受ケ」ということは、この文章全体を読みますと、下の方の「職務上不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク斡旋ヲ為ス」という思想が、やはり請託の中に含んでおるのだ、そう読まざるを得ないように考えたのでございます。その後いろいろの機会にこの「請託ヲ受ケ」という言葉の解釈が学者その他からも述べられておるのを聞いたのでございますが、「請託ヲ受ケ」という文字自体には不正とも正とも書いてないのですから、だからこれは両方含むのじゃないかという議論が相当強いように思います。また現在の刑法の中にある「請託ヲ受ケ」というものには両方含んでおる。ただし不正、正両方の具体的な依頼を含めていいのだというように判例はなっているようでございますが、現在の刑法の条文そのものが、請託を受けて職務上わいろをもらったというような趣旨に書いてありまして、下に締めくくりになるようなものがくっついておりませんから、また現在の刑法の多くのものは不正、正両方を含めたものだと思いますが、この条文と現在の刑法の多くの場合の請託のある条文との立て方が私は違うのじゃないかと思いますので、必ずしも現在の刑法に関する判例がそうなっておるからということが、そう強い根拠にはならぬと私は考えます。
それから、この点はまだよく自信はないのでございますけれども、贈賄側の、百九十七条の、「第百九十八条に次の一項を加える。」として「第百九十七条ノ四二規定スル賄賂ヲ供与シ」云云の贈賄者側を処罰する規定がございますけれども、この規定との関係がどうなるか疑問があるのじゃないかと思うのでございます。贈賄者側が頼む場合に、そういう、机上の空論かもしれませんけれども、贈賄者側が頼むときには不正な請託はしていないのだ、不正なことをやられては困る、正しい範囲でやってくれという趣旨、不正な請託は含んでおらぬ場合に、頼みを受けた人が不正な行為または相当の行為をなさざらしむべくあっせんをした場合には、これは贈賄者側としてはわからぬことなのです。贈賄者側は、そういう不正な請託をしておらぬという場合でも、それが結果的には頼まれた人がそういうあっせんをすれば、百九十七条ノ四のわいろということになるとすれば、その贈賄者としては百九十七条ノ四の規定するわいろを供与したということで贈賄罪が成立するという解釈になるということが、私は不穏当じゃないかと思います。要するに今までの判例が正、不正両方含んでおるということがすぐにこの条文の解釈の有力な資料には必ずしもならんということ。それから、百九十七条の四の条文の文理、これは読み方がいろいろその人の立場でありましょうけれども、私は、百九十七条の四の文理からいって、「請託ヲ受ケ」ということは、下の方にある制約がやっぱり含まれるように読まざるを得ないということ。それから、贈賄者側との関係で、「請託ヲ受ケ」というものは、不正の請託という趣旨を含んだものと解釈すべきだ、というように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/22
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023・亀田得治
○亀田得治君 法制局長の御意見、一応わかりましたが、そうしますと、ともかく意見が非常に違うわけなんですよ、ここで出ておる意見がね。まあ、ここだけであまりひっかかっててもほかへ進みませんからね、これはもう少し、私、休憩のときにでも、少し、何か解決の方法があるのかないのか。ただこういう疑問のまんまでこういうものを通すというのもおかしい。まあ削除してもらえば一番いいんですよ、この問題は吹っ飛んじゃうから。そういうこともいかないというんなら、どうするのか、この点。だから、若干その点は委員長の方でも取扱いなどを考えてもらいたいと思います。
で、次に進みますが、これも昨日、例の「公務員」というところが問題になりました。そうして、今までの説明では、大体提案者の方では、「公務員」というのは、私——公務員以外の立場での行動なんというものは含まれないんだと、公務員であっても。そういうふうな初めから一人の人の行動について二つこう分れておるような御説明が大体強かったと思うんです。ところが、昨日は、いや、公務員であっても、公務員であればあらゆる行動が一応この法律の対象になってくる、ただし、そのうち、たとえば弁護士とか会計士とか、そういったような業務を持っておる者は、刑法三十五条によって除かれていく、こういうふうな説明に若干変ってきた。で、それがどちらの考え方でいくのかということが、たとえば、そういう弁護士といったような業務のある場合にはどちらの考えでいっても大差はありません。ところが、純然たる親戚とか友人とか、公務員という立場を離れて、そういう立場でやったんだ、刑法三十五条のいわゆる正当業務とかそういうことにぴったりいかないような立場でやった場合にはどうなるかということは、その最初の出だしをどっちから出ていくかによってこれは違ってくるんですよ、現実に。それで、私、その点はなはだ提案者の説明があいまいですから、この点も、実は昨晩おそくまでかかって全部法制審議会の議論を拝見しました。拝見しましたが、この点もそんなにはっきりお互いに突っ込んだ検討がなされておらないんですね、法制審議会自体としては。されておりませんよ。ことに、刑事局長が昨日御説明になったように、全部一応公務員の行動というものをこの法律の対象にして、そうして刑法三十五条で特殊なものは除いていくんだ、そういうふうな説明は、政府もしておらんし、それから法制審議会の委員のだれもそんな意見は出しておりません。そうしてやはり出発点をどこから出発するのかということについての意見が委員によって非常に違っておる。どちらからいっても、弁護士とかそういう場合はいいです。じゃ友人、親戚そのほかの特殊関係、こういうことで世話した場合、骨折った場合、こういう場合はどうなるんだろうかという疑問はこの法制審議会でも出ております。しかし、確然とした意思統一というものは何も出ておりませんよ。だから、こういう状態でいけば、この問題だってやはり私ははなはだ疑義を残す問題だと思っておるんですがね。この点も、法制局長、もし御検討になっておるようでしたら、どういうふうにこれは解釈するのか、まあまあというところなのか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/23
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024・斎藤朔郎
○法制局長(斎藤朔郎君) 非常にデリケートな問題でありまして、うまい説明を私はできる自信ございませんが、請託を受けた公務員が他の公務員にあっせんをする場合にその両公務員の関係がたとえば親戚関係であるというような場合にどうなるかというような問題でございますが、結局、この条文の文句には現れておりませんけれども、あっせん収賄罪の本質と申しますか、あっせん収賄罪の一つの特徴としてわれわれが頭に描きますものは、公務員がその地位を利用してということがこの中核になってくるわけなんで、結局、具体的の場合に、公務員がその地位を利用したのか、あるいはそうじゃなくて、そういう地位よりむしろ姻戚関係とか特殊な商取引の関係とか——まあ商取引ということはありませんが。姻戚関係とかその他の友人関係とかによってやったものか、地位を利用したのか、そういう特殊の関係をもとにしてやったことなのかというウエイトがどっちに多くかかっているかという事実問題で判断するより仕方がないので、結局、どっちかわからんということであれば、これは証拠不十分でこの条文では処罰できんということにならざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/24
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025・亀田得治
○亀田得治君 そうすれば、そういう御見解でいくと、公務員以外の立場にはっきりウエイトがかかってやられておることであれば、たとえば、それが親戚、友人の関係であっても除外される、そういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/25
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026・斎藤朔郎
○法制局長(斎藤朔郎君) 公務員の地位を利用した方にウエイトがかかっておるということが立証できれば、この条文でたとえ両者の間に親戚関係があっても親戚関係がものを言ったのじゃなくて、あっせんをする公務員の地位がものを言っているんだという認定ができる。そういう認定が積極的にできる場合、犯罪は成立すると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/26
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027・亀田得治
○亀田得治君 だから、私のお聞きするのは、反対の場合ですね。これは当然なことかもしれませんが、反対に、それじゃ親戚関係、友人関係、そういう面でそれは一生懸命やったのだと、そういうようなことがはっきりしてきた場合には、これは除かれるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/27
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028・斎藤朔郎
○法制局長(斎藤朔郎君) 理屈としてはさようになると思います。要するにこの条文を適用するのには、公務員の地位を利用して、こういうことをやったのだということが積極的に立証できる場合、どっちかわからぬ場合、この公務員の地位を利用したのか、姻戚関係その他の特殊の関係かわからぬ、五分五分だというのなら、証明の原則からいって、構成要件に該当する事実が疑いないまでに立証できないのですから、無罪ということにならざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/28
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029・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、昨日の刑事局長の、何回もこれは大川委員が御質問されたところですが、一応公務員の行為が全面的に法文にひっかかる、ひっかかるのだが、刑法三十五条によってそれは免責される、いろいろ弁護士とか、そういうものについては。従って親戚、友人などは特殊な規定がないからということで、どうもその点は消極に、免責されないというような感じを私は昨日は持っていたんですがね、その点が結果においては非常に大きな違いが出てくるわけですが、まあ、それで私は、たとえば「公務員の地位を利用し」というようなことまで入れますと、しぼりがかかっておる上にさらに大きなしぼりになるから、「公務員として」というふうな字句でも入れておけば、この問題がはっきりするのじゃないか、こう実は感じておるのですがね。そうすれば弁護士、会社重役、そういうものはもちろん、親戚、友人の関係もこれははっきりはずれていきます。それを全部処罰しようという考えならばまた別ですが、その辺を多少法文上この「公務員として」というようなことは、私は大したしぼりにはならないと思うのですがね。「公務員の地位を利用し」というようなしぼり方は、はなはだわれわれの意にも結果的には沿わないものになると思いますから、そこまでは考えないのですが、これは文意自体は明らかにしておかなければならない、そのためには公務員としてというようなことを入れた方が、この問題にもはっきり終止符が打たれると私は思っているのですが、法制局長、そういうものを入れること自体について、それがはなはだしく大きな障害にまたなるようじゃいけませんが、どういうふうにお考えになるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/29
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030・斎藤朔郎
○法制局長(斎藤朔郎君) 「公務員として」ということを入れるということは、実は今初めて承わりまして、まだ十分考えておりませんから、いいか悪いかここで断定的に申すことは差し控えておきますが、私は「として」というなら、この原案でもそういう趣旨に読まざるを得ないのじゃないかというように考えております。だからこれは決して断定的には申しませんけれども、ただいまの直感的な判断では「として」ということだけなら、さして入れる必要もないのじゃないかというふうに一応は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/30
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031・亀田得治
○亀田得治君 まあ、あなたの立場であれば、それは入れても入れぬでも同じことになる。それで刑事局長の立場であると、それが入っておりませんと、友人なり親戚関係でやったやつはこれはひっかかるおそれがあるわけです。そういう点についての法制審議会の過程における議論も深くは掘り下げていない、こういう現状。どっちでもいいんですよ、それは。もうひっかける、それまでもひっかける方針なら、このままでもいいんです。ところが必ずしも突き詰めていくと、そうでもないような節にもとれるところがあるんですかね。審議会あたりでどうなんですか。昨日、あなた、はっきり大川委員にもおっしゃっておる……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/31
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032・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいま斎藤局長の御説明を伺っておりまして、一つのりっぱな見解として伺ったわけでございます。團藤局長と同じような意見を斎藤教授も先般参考人として述べられたのでございますが、私ども立案者の考え方は、昨日来申し上げておりますように、この罪は身分犯でございますので、そういう公務員であります以上は、不正な行為をするようなあっせんと、そういう形態をとらえまして、そういうあっせんの仕方をするということがきわめて違法である、違法性はそこに発見できるという考え方からしまして、ひとしく構成要件に該当するというふうに、私人としてやりましても、友人としてやりましても、それは本条に該当するという考え方に立っておるのでございます。ただしかしながら、ある業務がありまして、その業務行為としてやったというふうに認められます場合には、刑法三十五条の規定がかぶって参りますので、その関係において罪にならない、こういう解釈をいたしておるのでございます。この解釈は、まあわいろ罪という罪の性質からして、團藤教授は御承知のようにわいろというところから、反射的に、公務員としてとか、あるいは公務員の地位を利用してというようなことがおのずから反射的に出てくるのであって、従って私人であるとか、親戚の者として働きかけたという場合は含まないという解釈に立ち至っておるのでございます。しかし構成要件としてその点を、地位を利用あるいは公務員としてという構成要件に定めておりません以上は、公務員、いやしくも公務員が不正な手段を弄するようなあっせんの仕方、不正な行為をさせるようなあっせんの仕方、こういうやり方はあくまであっせん行為ということで限定をいたしました関係上、親戚、知人、あるいは友人といったような関係によってやったというような場合でありましても本条に該当するという、まあ政府側の解釈を立てておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/32
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033・亀田得治
○亀田得治君 昨日もそういうふうにお聞きして、実ははなはだ疑問を持っておるわけですが、まあ法律を作るのはこれは国会がやるわけですから、じゃあ国会自体はこれをどう解釈するのか、法制審議会でも何だかうやむやでいる、委員会自体も何かうやむやでいく、それじゃ大へん私はまずいと思うんですね。法文を直さないのであれば、これは一つ委員会自体としてはこういう解釈でいこうじゃないかとか何とか、収拾の方法を委員長として、理事の皆さんにもお諮り願って、これは最も重要な問題ですから、明確にやっぱりしていってもらいたいと思うんですね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/33
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034・青山正一
○委員長(青山正一君) 一時まで休憩いたします。
午後零時九分休憩
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午後一時五十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/34
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035・青山正一
○委員長(青山正一君) 休憩前に引き続きこれより会議を開きます。
あっせん収賄罪に関する部分について御質疑の方は御発言下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/35
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036・亀田得治
○亀田得治君 法務当局では地位の利用というのをあっせん収賄罪の際に用いますと、非常に言葉が不明確でよろしくない、そういうふうなことをずいぶん言われておるわけですが、これはまあ戦時刑事特別法でも同じような形で立法か一度されたわけですが、その戦時刑事特別法の運用の経験上、相当そういうむずかしい事態にぶつかったことがあるのかどうか、そこの実際の事再を知りたいと思うのです。といいますのは、昭和十六年の帝国議会で地位を利用しという一点だけにあっせん収賄罪をしぼったときに、なるほど帝国議会における議論がありました。地位の利用というのは不明確じゃないのかという議論がありましたが、しかしその当時には、ともかく公務員という中に国会議員もこれは入っているから、だから何とかこの法案はつぶしたい、こういう考え方で、しかしそういうことは表面から言えないから、で、地位の利用というのが乱用のおそれがあるのかないのか、そういう議論に集中してきたと思うのです。私はその速記録も拝見しました。実際の気持はやっぱりそういうところ、だからそういう議論があったからといって、直ちにその議論をすぐ政府が是認するというのも私はおかしい。だからそんなことは議論であって、そこで実際上昭和十八年からしばらくありました。戦時刑事特別法があった。その際に地位の利用というような表現のために検察官なり裁判所が非常に困った。こういう事態が相当あったのかどうか、その点の具体的な御説明をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/36
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037・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 戦時刑事特別法の地位の利用というあの官公署の職員に関するあっせん収賄罪でございますが、これは施行期間が短かった点もありまして、今日その運用状況を調べる手がかりもないほど適用された実例がないようでございます。あるいは地方には若干あったかもしれませんが、今日私どもの手元に調査をいたしましたところでは一件も適用状況を裏書きする事実がないわけでございます。おそらく想像いたしまするのに、この法律は結局実際の問題には適用を見ていないのではないか、こういうふうに考えるのでございます。従ってその実績からいたしまして、地位の利用が適当であるか不適当であるかという判断をいたしたわけではございません。
それからまた第七十六帝国議会で地位の利用が問題になりましたことは亀田委員のおっしゃる通りでございますが、それは私も亀田委員と同じようにこの法案が国会としては好ましくない法案であるということからまあ言いがかりと申しては悪いのですが、議論のあるところでは議論が認められたということであって、その地位の利用そのものが真剣に討議されたかどうかということは、これまた真意としては疑問でございましょう。私どももそういうふうには見ておりますが、しかしながら帝国議会の議事録の中に各委員の述べられております議論は現に私どもも目を通しておりまして、それ自体その議論のありましたことは、私ども事実として認めなくちゃならないのでございます。しかしそういう議論を見まして、なかなか帝国議会で議論がありましたことですから、いわんやその当時の国会とは違って主権在民の今日の国会においては、さらに一そう強い意味においてそういう議論が展開されるであろうということは、これは想像にかたくなかったのでございますが、私どもは真にこの地位を利用しという条文を避けましたものは、そういう議論がありましたがためではなくして、実際にこの地位の利用という言葉は従来のわいろ罪の概念を若干幅の広いものにもっていく手がかりになる用語といたしまして、これは学者のひとしく認めるところでございますが、わが国の刑法にはその今の戦時刑事特別法以外には地位を利用し、という用語は存在いたしておりませんし、その戦時刑事特別法もその適用の状況を知るよすがもない今日におきましては、やはり私どもが理屈の上でいろいろ考え、議論をしてみた結果、やはりこの地位の利用という用語は解釈、運用上疑義を存する部分がたくさんある。法律上の用語としてわいろ罪への幅を持たせる足がかりとしての理論的根拠にはなるのでございますけれども、運用解釈において疑義が残るということになりますと、今回の立法の趣旨から遠ざかって参りますので、その用語を使わなかったのでございます。その理由は、地位の利用ということになりますと、あっせんする公務員とあっせんを受ける公務員と両者の利用関係——この地位の利用という意味はいろいろに解釈されると思いますが、地位の乱用というふうに解釈する場合もありましょうし、あるいは地位の利用という内面的なものとしてあっせんする公務員があっせんを受ける公務員に対し威力を発揮するとか、あるいは威圧を加えるとか、そういったような関係が内在的にあると思うのでございますが、それでは具体的に申しまして、国会議員はすべて職務権限を持っております。行政官庁の職員に対して常に地位を利用し得る立場にあるかどうかという点になって参りますと、具体的にはかなり疑問でございます。法務委員会の諸公が私どもに対して威力を持たれることは私ども戦々きょうきょうとしておる状況から見まして(笑声)十分わかるわけでございますが、しかしながら大蔵委員会の委員が法務省の人事に関して何事か言おうとして果して人事課長が威力を感じますかどうか。これも疑問でございます、さらにまた法務委員がかりに威力を持つといたしましても、話し合いをするときだけちょっと差しかえというようなことで法務委員を去って、そうして話が終ってからまた法務委員になるというようなことをされれば、まあそういうようなことなら地位の利用じゃなくなってしまう。しかしながら現実の威力というものはあの方が長年法務委員であられたということはもう私どもには、よくわかっているわけでございまして、そういう意味からいうと地位の威力は残るのですが、地位がなかったというようなことにもなろうかと思います。そういったような点をいろいろ考えますと、国会議員と政府職員だけではなくて、同じ今度は官僚同士の、役人同士の場合を考えましても、他省の局長が他の省の局長に対してどれだけの威力を持ち得るものであるか。同じ省の局長が先任者と後任者とがどれだけの威力関係を持ち得るかということを考えて見ますと、これはもう抽象的な理論として考えますと、きわめてわかった概念のようでございますけれども、現実の具体的な例をこういろいろと考えて見ますと、非常に疑問が起ってくる。これではとうてい解釈、運用上適正を期するということは困難ではないかということからいたしまして、この地位の利用という概念を避けまして、そのかわりあっせんする公務員が職務権限を有する公務員に対して不正の行為をきせるようなという、いやしくも公務員としてあるまじき行為をするようなあっせんの仕方、そのあっせんの仕方の態様に着目をいたしまして、それでなおわいろ罪として理解し得るという、この学者の意見なども参酌いたして、この地位の利用を割愛して、かわりに不正の行為をさせるようにあっせんするというしぼり方でこの問題を解決したのでございます。私どもは地位の利用ということにつきまして、法律概念としては理解し得るのでございますが、今回の立法は明確に既成の法律用語を使ったということを第一義として考えまして立案いたしました結果、こういうふうにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/37
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038・亀田得治
○亀田得治君 まあ世の中は進歩をしていくわけですからね。そんなに既成の法律概念ばかり使う必要はないと思います。新しい社会的な現象が社会的に注目されてきた場合には、新しい法律用語を発見していっていいわけです。だから既成の概念をお使いになったことを非常に強調されますけれども、ある意味じゃはなはだ和洋折衷でおかしな建物を作っているような感じもないではない。そういうことはあまり既成の概念にとらわれることによって事態に対するこの規制があまり適正でなかったら、かえってそれがまずいのですね。だからそこでまあ既成の概念の問題は別として、私は地位の利用ということは、この言葉の概念としては、これははっきりするんですね。具体的な事案についての判断はいろいろ判断しにくい点が相当あるいと思います。しかしそういうものこそ私は例の判例が具体的にいろいろ積み上げていくべき仕事だと思っているんです。そういうことの現象自体がさまざまなんですからね、だからそれは仕方がないのです。で、また午前中の議論は一応私はまあたな上げにして進んでいるから、まあこれにはまた逆戻りするつもりはないが、ああいう請託の中にこの部分が入るのか入らないのか、こういうことと全然違うのだね、問題は。地位の利用の場合は、皆さんも私どもも利用という概念自身ははっきりしておる、だからそういう問題ですから、運用上、さほど私は困るものでもないと思っているのですが、まあそれはまたお互いに理屈になりますが、ただ戦時刑事特別法で一応そういう法律を作ったことがあるので、何かそういう経験等があれば、それに基いて少し教えてもらいたいと思ったのですけれどもね。事件がこれは一つもなかったわけですか、あるいはあるかもしれぬが、一般の贈収賄と一緒に統計上なっていて、整理がついておらぬというわけでしょうか、どっちなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/38
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039・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは統計の取り方が悪いために整理されていないという意味ではございませんで、これはまあ非常に調査をいたしてみました、調査をいたしてみましたが、この関係の部分の公訴を提起した事実もうかがえませんし、いわんや判決があったという事実がうかがえないのでございますが、あるいは地方に全然なかったというふうには私も断言できないのでございますけれども、空襲等によりまして、書類もかなり焼けておりますし、今、今日になってはさぐり出すことができなかったのでございまして、これは統計上の問題ではなくて、事実そのものが発見できないのでございます。おそらく私どもは適用を見た実例がなかったのではないかというふうに今日では考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/39
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040・亀田得治
○亀田得治君 あの当時はまあ戦争に関連していろいろな統制法規がたくさんできて、そして当然この官公吏のあっせん行為とかそういうことが問題になって作られたものだと思うのですが、一件もないというのは、これはちょっと妙ですね、そういう点からいって法律を作った瞬間に綱紀がぴちっと粛正されたとまでは私は考えられぬと思うのですが、それは実情はどうなんでしょうか。もう少し……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/40
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041・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) あの法律ができましたのは、今仰せの通り当時のいわゆる新官僚とか言われておる——ことに統制経済を担当しておりました官吏の中にあっせん収賄行為が非常に盛んに行われておったというこの弊害を除去するために立案されたものであるということは、これは今日単なる想像でなくて、統制経済の発展過程を見まして推認できるわけでございますが、立案までの間にはそういう議論はずいぶん盛んに行われたと思いますけれども、昭和十八年から、実際に適用を見ることになりましたのは、十八年の十月でございましたか、それから以後の国内の状況は統制経済をする物資もだんだんなくなってきておりますし、あるいは現実の問題として、そういう問題はなかったのではないかとも思いますが、私もどうも一末の疑いなきを得ないので、全然適用を見なかったのは、どういう事情であろうかと今でも疑っている実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/41
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042・亀田得治
○亀田得治君 それほどききめのあるものなら、私は同じようなききめのあるものをこの際ぽんと出したらしゃんと引き締まるというのなら、これはきわめていいことですから、検察庁自体があまり使わなかったのか、一ぺん調べて見て下さい、もう少し実情を。
それから次に、法令により公務員とみなされる人たち、あるいは罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす、こういう事例についての表をいただいているわけですが、この事例の中の一つ二つについて具体的な例を申し上げて、一つ御回答を得ておきたいと思います。
たとえば大蔵大臣が日銀の役員に、AならAに対する金融をあっせんしてくれと頼み金をもらう、これはもう明確にあっせん収賄罪の型ですね、これは間違いない。ところが日銀の役員が開発銀行の役員にAの金融をあっせんとして金を取る、こういう場合はどういうことになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/42
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043・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) もし本法案が刑法の規定として成立をいたしまする場合には、この規定が全面的に日本銀行法の十九条によりましてかぶってくるわけでございまするし、また日本開発銀行法十七条によりましてかぶって参りますので、今のあっせん収賄行為も処罰されることになるのでございますが、今の金融についてのあっせんが職務に違反する行為に該当するかどうかということを、その事実認定の問題にからんでくるのでございます。そのあっせんの働きかけの方法が、相手方日本銀行の役職員をして、銀行業務に関してその職務違反の行為をするというようなあっせんでありますと、これは本条によって処分されるということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/43
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044・亀田得治
○亀田得治君 私、あっせんの内容が職務上不正であるかないか、その点は今除外祝して——以下もお聞きしているわけでありますが、型を聞いているわけです、当事者の関係を。それで開発銀行の方は十七条によりまして「罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす」、このことの意味は、あっせん収賄罪の規定のないといいますか、普通考えられることは、開発銀行の役員なら役員がわいろを取って貸すべき人でない人に銀行の金を貸した場合はですね、自分が刑罰の対象になるときのことを指しているわけじゃありませんか。「罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす」ということは、開発銀行の役員自体が不正行為、収賄行為をやる、それはもう法令により公務に従事する者とみなして罰則を適用する、こういくのであって、この場合には、私が今申し上げたのは、開発銀行の人は収賄をするわけじゃない、その人に金を出さすわけです、だからこれは罰則の対象になりません。私の今の説例は日銀の人が引っかかるわけです。だからそういう場合にあっせん収賄罪——普通であれば公務員が公務員に対してあっせんすると、こうでしょう。だからこの場合に開発銀行の働きかけられた人を公務員として扱うのは、「罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす」と、この法律の趣旨とちょっと違うのじゃないかと思うのですがね。これはその人自体が贈収賄をやった場合にこれに引っかかると、こういうことなんで、その場合には公務員にならぬような感じもするのですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/44
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045・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 「法令により公務に従事する職員とみなす」という書き方と、「罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす」と、この「罰則の適用に関しては」という、特にそういう文字をつけたことについて、解釈運用上差異があるかどうかという点でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/45
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046・亀田得治
○亀田得治君 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/46
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047・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この点は法制局の見解といたしましては、今日では両者の間に差異はない、という見解に立っておるようでございます。それでは両者の間に差異のないものを何で区別をしておるかという点でございますけれども、これは行政法の罰則はただいま私どもの方でもこの改廃整備を試みようとしておるのでございますが、非常にまちまち、アンバラスになっております。単に刑の面においてアンバランスになっておるだけじゃなくて、こういう表現等につきましても非常にアンバランスになっておる。それがまあ、前に同種のものがそういう取扱いをしておるので、それと同種の法律の際には同じような取扱いをしているといったようなふうで今日に至っております。そういう関係でまあこういったような二つの系列の罰則の書き方、公務員とみなす場合にこういったような二つの書き方がここに行われておるのでございますが、法制局の行政解釈としましては、この両者の間に今日では区別をつけて考えていないということでございまして、私どもも若干のニュアンスはありそうな気もしますが、事、刑罰に関する問題につきましては両者とも同じように解釈して差しつかえないという結論になって、まあそういう趣旨で申し上げておりますので、今の場合は日本銀行法十九条によって公務員となりますし、それからまた開発銀行の方も公務員でございますので、日本銀行の職員が開発銀行に働きかけをいたします場合は本条にやはり該当するというように解釈されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/47
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048・亀田得治
○亀田得治君 今の御見解は、たとえば判例等で確認されておる御見解ですか、両者同一制度だということは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/48
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049・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この点につきましては、判例ではっきりした見解は示された例を存じておりません。そういう事例はないことはないと思うのですが、まだ判例で示された例は私ども存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/49
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050・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、これはなかなか私は問題があるように思いますね。ともかく法令により公務に従事する職員とみなすと、専売公社、国有鉄道、日本銀行、こういったようなところは、これはもう公務員と同じだということですね、全部の行動について。ところがほかのところ、これはたくさん書いてあります、開発銀行、輸出入銀行、それから小さいのは中小企業金融公庫あるいは日本育英会、たくさんいろんなものがありますが、こういうところは公務員ではこれはないのだ。公務員ではない、そうですな、この書き方からいけば。ただお前は収賄などをすると役人と同じように見て、収賄罪としてくくる、平たく言えばそういう意味です、これは。だから全然意味が違う。一方は全部公務員としている。そう見て、法律の内容を見ると、なるほどそういうふうな感じがするのですがね。そうなりますと、お前も悪いことをしてはいかぬ、あとの方は、お前がそういう悪いことをしたらくくられるぞ、こういう意味であって、これがあっせん収賄罪の対象、本人は何も悪いことをしていない、あっせん収賄罪が起るときに、自分もついでに分け前をもらえばもちろんこれはあっせん収賄罪ですが、本人は何も悪いことをしていない。ただ頼まれてある行為をはからってやった。もちろんそれはあっせん収賄罪。今度は不正な行為をさせるのですから、そういうことをやれば、職務規律違反等の内部的なものでやられるかもしらぬが、これは私は刑罰の対象にならない、その場合に、その人は……。そういう場合にはこの人はこれは公務員じゃないわけですよ。刑罰の対象にならないわけですから公務員じゃない。だからそこへの働きかけの場合はどうもあっせん収賄罪というような形態が出てこないように思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/50
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051・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは、日本銀行等は「法令により公務に従事する職員とみなす」というので、公務員ではないが、みなす公務員であるという趣旨でございますし、またあとの公庫形態のものその他開発銀行もそうでございますが、これはやはり「法令により公務に従事するものとみなす」ということで、これもみなす公務員でございます。ただ違うのはあとの方が「罰則の適用に関しては」と頭に加わっておる点でございます。私は、先ほど取扱いとして全者全く同じだという法制局の解釈でございますが、若干のニュアンスはあるんじゃなかろうかと私が申し上げましたのは、初めの方はやはり亀田委員のおっしゃるように非常に公務性の強いものでございます。そこでこれはもしこういう職員に対しまして、何らかの暴行、恐迫を加えて、その職務の執行を妨げるような行為があるとすれば、これは公務執行妨害罪のようなものがその相手方の方に起ってくるというような場合が考えられるのでございますが、あとの場合につきましては、自分が罰を受けるという場合については公務員と同じような取扱いを受けるというような意味、そういったようなニュアンスがあるんじゃなかろうかと実は思ったのでございますが、そういうような解釈もあるんじゃなかろうかと思ったのでございますが、おそらくできるときはそんなような考え方もあったんじゃないかと思いますが、しかし「罰則の適用に関しては」というものの読み方でございますが、これは何も当該公務員にだけ罰則の適用があるという意味ではなくして、ひとしく何人も「罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす」と、こういっておるものであれば、やはりこの場合にも公務執行妨害罪によって保護されるということが考えられるのでありまして、結局これはすべて両者とも同じだという法制局の解釈もごもっともであるというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/51
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052・亀田得治
○亀田得治君 この刑法の通常の収賄罪に関するあっせん収賄の規定ですね、これができる以前に、「罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす」と、こういう規定があったわけでしょう、その点の前後はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/52
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053・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この点につきましては、この刑法のあっせん収賄罪の規定が新たに設けられますと、その施行の日以後におきましては、当然私はその部分もかぶってくるというように解釈されるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/53
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054・亀田得治
○亀田得治君 しかし刑法のあっせん収賄罪の規定ができる前に、こういう一つの型ができたわけですね、どの法律で最初の型ができたかは別として。できたものですから、だからこの型ができるときには、お前はそういう収賄をしてはいかぬぞ、役人と同じように処罰するぞと、そういう気持であったには違いないわけです、おそらく。またそれで事足りたわけです。ところが、あっせん収賄の規定ができてきたから、お前は悪いことをせぬでもほかの人の事件が問題になった場合には、公務員と同じように取り扱われるぞ、こういうふうに解釈すべきだというのですが、その辺ですな。そういうことは判例等はないようですが、何らか問題になったようなことはないわけでしょうか。これがどっちに解釈されるかによってずいぶんたくさんありますね、これらの対象が非常に違ってくるわけですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/54
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055・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点従来刑罰法令の取扱いとしましては疑義を存したことはないと思うのでございます。この日本銀行法の十九条は、「日本銀行ノ職員ハ之ヲ法令二依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス前項ノ職員ノ範囲ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」、こうなっております。要するにワクをここに定めておるわけでありまして、その実体的の内容は、法令の改廃に従ってその施行期日とともにこれにスライディング式にはまってくるという、これは通常の法律解釈上そういうふうに解釈されると、こう考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/55
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056・亀田得治
○亀田得治君 これはちょっと裁判所でまだ判断を受けていないというなら、裁判所でやられた場合ちょっとわかりませんな、どういう結論になるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/56
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057・神谷尚男
○説明員(神谷尚男君) 刑法その他の罰則の適用については公務員とみなすというものにつきまして、そういうものに対する公務執行妨害罪が成立するかどうかというような事案において、下級審の判例ではそういうものについて公務執行妨害罪の成立を認められたものはありますし、現に実務はそういうふうにしてまかなわれております。ただ、最高裁の判例とか大審院の判例とかいうようなものは今までのところ確かにちょっと見受けなかったかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/57
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058・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、ここに書かれておるたくさんのものを全部公務員としてみなすことになりますね、公務執行妨害罪が成立するということなら。それはどこの下級審の判例か知らぬが、それは妥当ですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/58
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059・神谷尚男
○説明員(神谷尚男君) 本人が処罰されるという場合のみならず、本人を罰則で保護するという面につきましても罰則の適用がある、こういうふうに実務では取り扱われておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/59
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060・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、この第一の場合も第二の場合も、罰則関係では同じ、罰則以外の点だけで普通の人とみなしていく、こういう解釈になるのだがどうでしょうかね。そうなるのでしょうか。そこに何か矛盾があるのじゃないかと思うのですが、公務執行妨害という以上は全部を官公吏として扱かっておるからこそ、公務執行妨害の対象になる、そうでしょう。それが罰則の点だけにしぼられて公務員とみなすというのは何だか私は割り切れないのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/60
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061・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは罰則の適用という解釈は、自分が何らかの刑法に触れて、罰則に触れるような行為をした場合にその罰則を受ける、これは当然でございますが、その受ける場合が公務員としての罰を受ける。つまり例を言えば、収賄罪になりますということだけを意味するんではなくして、その公務員とみなされておる人の行為が他から攻撃を受けた場合に、公務員としての扱いで、その行為はもしその職務の執行が暴行脅迫によって防げられたというような事態があれば、公務員と同じように公務執行妨害という罪で他の攻撃を加えたものを罰することによって、そのみなされた職員の職務執行をも保護する。要するにそれも罰則の適用という意味だという解釈を法制局はいたしておるのでございます。下級審の判例にもそういうのがあるそうでございますが、そういうふうに見てみれば、一も二も同じことだということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/61
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062・亀田得治
○亀田得治君 そういう今設例の場合に、これは私は暴行脅迫でそういう職員の人を保護してあげる、あるいは傷をつけたら傷害罪で加害者を処罰する、そうあるべきなんで、そうでなしに公務執行妨害でやるということであれば、これはもうそんな「罰則の適用に関しては」、というようなこと、これこそ全然書く必要はない、公務員ですよ、これは全部が公務員になっちまう。ところが現実に現在でもこういう言葉を使った法律が、最近で言えばたとえば日本原子力研究所法、こういう法律ができていくわけですね。同じ同じ言ったって、一方は「公務に従事する職員とみなす」、これはもう全般的ですよ、きちんと書いてある。一方の方は「罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす」、分けて書いてあるのですからね。新しく法律ができる場合にもやっぱりこの形をやっておる、法制局が一緒だと言うなら、早くこれは一緒にすればいいので、言葉を別にしておいて一緒だ、一緒だと言っても、ちょっと割り切れないし、実態から見ても少し変じゃありませんか。たとえばここに日本学校給食会法という法律がある、これにもやはり適用があるのですね。あるいはもう少し民間らしいもの何かあるでしょう、私立学校振興会法、こういうところの人も暴行脅迫を受けたら、これは普通の私人が暴行脅迫を受けたのと同じことになるように思うのですけれどもね、その下級審の判例というのはどこの判例ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/62
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063・神谷尚男
○説明員(神谷尚男君) ちょっとどこであるか記憶しておりませんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/63
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064・亀田得治
○亀田得治君 その点が、もしこれが違うのだということになると、たとえば営団、公団、それから公社がここに書いてある。いろいろな設例の職員の方が、今度は上の方に自分の立場を利用して不正なあっせんを第三者に対してなした場合には、それは自分がやるやつですからこれは入るでしょう。しかし自分がその対象としてなされた場合にはどうもその辺が抜けるように思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/64
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065・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは私どもは抜けないという、両方とも公務員として扱って差しつかえないという解釈でございます。いろいろ御議論がありまして、私もその点につい罰則がアンバランスになっておるといいますか、規定の仕方がまちまちであるという点についての御批判は、これは最近参議院の商工委員会でも立法しました罰則につきまして、そういったようなアンバランスがある点を御指摘になって、以後注意せよという言葉もあったわけでございますが、この点につきましては、いろいろ私どもとしてはこれを整備して、改廃して、そして行政罰則は行政罰則なりに系統的な刑罰法規とし構成要件を均衡のとれたものにしていきたいという努力を今いたしております。
それでなお、わいろ罪だけについて申しますと、この間資料を差し上げました特別わいろ罪に関する規定の方をごらんいただきますとわかりますが、これはわいろ罪だけを特に取り上げているので、その他の点については公務員の扱いはしないということになるわけでございますが、この関係法律の中でニュアンスがあるわけで、単純収賄と贈賄だけを処罰すれば事足りるという考え方を持っておるのと在法収賄の規定までも設けるという広げたのと種種雑多でございます。しかしこの雑多なのがすべてシステマチックに、合理的に整備されているかというと、これは必ずしもそうではない、同種のものがそういうふうに当初規定されたので、それと同じ系統の法律を作るなら、同様な罰則をおいておこうといったようなふうにして長年やってきておるのでございまして、この点は確かに改正しなければなりません。私ども法務省が所管ではございませんけれども、少くとも罰則という観点からいたしまして、法務省は重大関心を持っておりますので、ただいま特別顧問とともに行政罰則の整備の作業を先般来着手して、きょうもその委員会を省内で開いておりますが、そういう仕事もいたしておるのでございます。しかし法令の解釈としましては、法令により公務員とみなすというものは、本来は公務員ではないけれども、みなす公務員として公務員の取扱いを受ける。それから前の特別わいろ罪に関する規定の方は、もともと公務員ではないのだけれども、わいろについては職務の公正廉潔を担保するためにわいろ罪の規定をおいて、そしてそれを保護しよう、その保護の仕方も法律によって若干のニュアンスがある、強弱いろいろある、こういう実情になっておることを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/65
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066・亀田得治
○亀田得治君 それはぜひ御意見のよに、特別わいろ罪の関係なんかは非常にでこぼこがありますから、こういう点の調整等は至急やはりやるべきだと思います。それと同時に、先ほどから問題になっておる点等はやはり統一するようにしてもらいたいと思うのですが、ただ私の思うのでは、どちらに統一するかという点、日本銀行方式に統一するか、あるいは開発銀行方式に統一するか、どちらにするかということは、やはり相当そういう企業体それ自身の性格に影響してくるように思うのですが、日本銀行方式でいきますれば、それはやはり何といってもほかのものを全部官庁公務員、こういうことにはっきりもっていく考え方です。そういうことがいいのか、あるいは罰則の関係だけ公務員として扱っていく、「罰則の適用に関しては」という字句には先ほど言ったような疑義はありますけれども、「罰則の適用に関しては」、そういうふうにしぼって公務員扱いをするというのであればこれはなるべく民間的な企業組織、そういう考え方がその基礎になっておるということになるのであって、これは二つに分れておるからめんどうくさいから、どっちかにしてしまえというふうには簡単にいかぬ問題だと思う。そこで今の経済制度のもとで日本銀行方式に全部右へならえして果して適当かどうか、非常にやはり疑問を持つのだ。ですからそういうふうに疑問を持って考えると、なおさら「罰則の適用に関しては」というそのしぼりの意味が、先ほどいったような、これはやはり非常に限定して考えるべき意味じゃないか、下級審の判例の引用がちょっとありましたけれども、やはりそう思うのですがね。だからその点もよく検討されて、一つ整備等をされるようにしてほしいと思いますね。幸い最高裁等の判例もないから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/66
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067・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) いろいろ御疑念の点はごもっともでございます。私どもも一律に一本にまとめてしまおうというような考えはありません。この点は学者の意見も聞かなければなりませんし、十分内容を検討いたしまして整備を進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/67
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068・亀田得治
○亀田得治君 それから次に、現在の刑法第百九十七条ノ三の枉法収賄の規定ですね。これはどうなんでしょうか。実情は単純収賄との関係をお聞きするわけですが、大体収賄をして相当職務上なしてならぬことをやっているということがあっても、大事をとってやはり単純収賄で処理をしていくと想像されるわけですが、その辺の実情はどんな程度になっているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/68
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069・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 枉法収賄に当るものを単統収賄で取り扱う場合がこれは絶無とはむろん申せませんし、ある場合には事実の認定を枉法でなく認めて、単純収賄に持っていく場合もあろうかと思います。それは証拠がめんどうだからとかということが主たる理由ではなくして、下級公務員でありまして犯罪を犯した原因となります点にその人の責任として非難をするにはあまりに気の毒な事情があるといった場合に、刑の量定の方の面から見まして、枉法収賄でございますと御承知のように一年以上になっております。単純収賄でいけば三年間の懲役、その辺の量刑の観点等を見まして単純収賄で持っていくというような場合があろうかと思いますが、枉法の事実を認定しておきながら、単純収賄の刑を適用するというようなことはこれはないわけでございます。その辺は多少のゆとりのある取扱いをしておるのが実情であろうかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/69
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070・亀田得治
○亀田得治君 わいろをもらって、もらっただけなら、それで単純収賄、よって不正な行為をして結局枉法収賄になる。しかしわいろをもらう以上は大体それに応じた不正なことをやっている場合が多いわけですげところがあなたの方からもらった資料を拝見しましても、どんな比率になっておりますかな。年度によってこれは違いますが、非常に少いのですね。枉法収賄で処理されているものが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/70
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071・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そういうような、先ほど申しましたような若干のゆとりのある取扱いをしていることは事実だと思いますが、統計によりますと、非常に少いとは必ずしもいえないのではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/71
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072・亀田得治
○亀田得治君 最近三年間のやつをちょっとおっしゃってみて下さい、非常に少いでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/72
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073・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 昭和三十一年までの統計が出ておりますが、昭和二十九年が収賄の総受理——検察庁の受理人員でございますが、千二百七十四人、枉法収賄が二十九人、三十年が千六十二人に対して枉法収賄が十三人、三十一年が九百四十六人に対して枉法収賄が三十六人となっております。さらに起訴の方を見て参りますと、二十九年は収賄総数が五百五人でございまして枉法収賄が十五人、三十年が三百二十七名に対して枉法が七名、三十一年は収賄総数が三百七十八名に対して枉法収賄の起訴が三十二名、こういうふうになっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/73
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074・亀田得治
○亀田得治君 そこで統計ではやはりこれははっきりしていますね。私はこの今おあげになった最初の数字ですね、これは大部分の人がやはり金をもらった以上は、職務違反のことをやっておると思うのですよ。ところがその中でそういう職務違反をやったからというので、刑を加重される。枉法収賄の規定で扱われておるものはこれは全く微々たる数字ですね、一割——一割にならぬでしょう。だからこれは何を物語るかといえば、やはりよって不正なことをした、こういうことはなかなか立証がつかないという証拠なんですよ。実際はやっておる、そんなものはただ金を取って何もせぬということはありやせぬ。そういうのもありますよ、そういうのでも収賄罪になり得るようになっておるけれども、そこなんですよ、そこをどう考えますか、あまりにもこれは違いますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/74
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075・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいま御指摘のような面も私は決して否定をいたすものではございませんが、まあ金をもらったという段階で発覚いたしましたために既遂になってしまって、まだ職務の執行のところを、その成果を得るというところまでいってない状態で発覚する場合もございますし、それからまたそれは少なかろうと思います。しかし先ほど申したように、刑の量定の上でまかなえるということからして、単純収賄に持っていっている場合もあろうかと思います。そういう点を彼此考えてみますと、これが枉法収賄の実態が現わしておる数字だとは私も決して思いませんが、そういうふうにまかない得るのにもかかわらず、なお、これだけの数字が残っておるというところに、私どもは今回このあっせん収賄に不正ということでしぼりましても、なおかつ悪質なものは処罰できる場合もあるのじゃないかというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/75
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076・亀田得治
○亀田得治君 それは、結論の方は私はちょっと納得いかないのですね。こういう数字であるから、今度のようなしぼりは私はきつ過ぎるというのです。結局枉法的なあっせんじゃなければ、今度のあっせん収賄にかからないわけですからね。過去の統計——この統計の読み方はいろいろあるでしょうが、ともかく出ておる数字というものは、枉法的な要件がなければ相当数に上るものが、その数字の上ではともかく十分の一以下である。それから、よほどうまくいった年でも十人に一人ですね、三十年なんかの場合あなた十人に一人どころじゃないのですね、うんと率が低いのです。だからこういう状態では大部分が逃げてしまいます。昨日は私はまあ昭電事件の一例だけちょっとお聞きしたわけですが、結局このあっせん収賄罪ができても、せんだっての第二審判決で確定した昭電事件というものは、やはりこの法律であれば処理できないと思いますね。ともかく国務大臣である人が第三者に対して政府の支払いと、そうしてそれに対する金融のあっせんを大蔵大臣等に頼んだ、それだけのことですね、頼んだ。それでしかし政府の支払い自身はこれは払うべき金だと、早く払ってやれというだけのことですね。それから大蔵大臣に金融のことを頼んだ、大蔵大臣からまたどっか関係の金融機関にさらに連絡つけるとか、そういうことをやったって、金を貸すこと自体はこれは合法的なんですから、だからそういう関係……、ところが世間ではそういうものでも、いやしくも政治家が政治力を利用してあちこちものを頼むことはいい。依頼者——選挙民のために努力するということは、これはいい。だけれども、そのためにどうも莫大な金をとる、それはやはり政治を腐敗させるもとになるのじゃないか、それに対する答えには一つもこれはならぬ。で、この昭電事件についちゃ、あなた昨日そうおっしゃったからはっきりしているわけですが、あなたの方からもらった「斡旋収賄罪の規定がないため処分しえなかった事例」、こういうのがありますね。これの一番初めに書いてある復金事件のやつですね。これもまあ事案の概要と判決要旨だけではわかりませんが、しかしこれも結局は復興金融金庫からある人に対して金を貸すようにあっせんしてやったということですからね、これもはずれますね。この最初の復金事件についちゃどういう御見解ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/76
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077・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) お答えを申し上げる前に、この「斡旋収賄罪の規定がないため処分しえなかった事例」というものを出しました理由をちょっと申し上げておかなければならぬと思うのでございますが、「斡旋収賄罪の規定がないために処分しえなかった」というふうに、はっきりは実は具体的事例としては言えないのでございまして、そういう法律がありますれば、捜査におきましても、その点の調べをして、これは犯罪になるとかならぬとかいう、起訴はいたしませぬまでも、そういう処理をするわけでございますが、そういう規定がありません状況下におきましては、事柄があっせんであるという、職務権限がないと、金は取っておるけれども、職務権限はないということがもう見通しされます場合には、それ以上突き進んで犯罪にならないものを取り調べるというわけにはいきませんので、おのずから手を控えてしまっておるのでございますから、今日振り返ってみて、あの事件はどうだったろう この事件はどうだったろうといってみても、だからきめ手になるような資料をここでぴしゃりと申し上げることはできないのでございます。まあそういう意味におきましては、この表題に書いてありますのはいささか羊頭狗肉のきらいがあるわけでございますが、いずれにしても、そういったような事例として世間で論じられたようなもの、その他私どもの部内でこういうのも一つの参考になるのじゃなかろうかというな意味でこれは集めた資料でございまして、そういう意味でお取りを願いたいのでございますが、今お尋ねの第一の事件は、これは私どもも疑問がある事件で、これが直ちに本法案が成立した場合に、この法案にぴしゃりと当てはまる事案であるとは必ずしも思っておりませんが、ここに掲げましたのは「法曹時報」の九巻六号に最高裁の調査官がこの法律を紹介しておりまして、その意見によりますと、本判決はこの事案をあっせん収賄のような場合と見たんであろうかといったような意見をつけて紹介しております。それからまた「自由と正義」のあの弁護士会で発行しております機関雑誌の八巻十二号、これは昨年の十二月号でございますが、やはりある弁護士があっせん収賄になるような場合であろうということで、この判決を取り上げておりますので、まあ一つの事例として掲げたのでございます。ただこの判決は判例集を見ますと、非常に膨大な判例でございます。ここの事案の概要というところの「H君を紹介申上候よろしく願上候」と記載してサインをした、甲名義の紹介名刺一枚を交付したと、こう認定しておりますが、判決の判例集にのっております事実をしさいに読んでいきますと、そこには名刺一枚の交付だけじゃなくて、その前に電話をかけたり、いろいろな働きかけがあることが事実からうかがわれるのでございます。そういうような点をあっせんとこう見たのであろうかと思うのでありますがもとより(一)の復金事件が直ちに本法案のあっせん収賄に該当するというふうには私は考えておりません。もっと捜査したならばそうなるかどうか、これももとより不明のことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/77
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078・亀田得治
○亀田得治君 そういう立法に関連して資料を出される普通の意味は、なぜ立法が必要か、この立法がないためにこういう事件ではうまくいかなかったんだ、これはだれでもそう解釈しますよ。おそらくあなたの方でこういうものを企画されたときにもやっぱりそういう気持だったと思うのです。これは当然ですがね。立法は具体的に必要に応じてやるべきなんだから。だからそういうものですから、私はともかくこれは今の御説明ですと法律時報等に書かれていたほかの専門家のものをそのまま引用されたようにも受け取れるわけですが、しかしまあそのことが正しいと思ってここへ出されたとしか取りようがないわけであります。そうすればなぜこのあっせん収賄罪を作るのかということにこれは当然結びついておるわけですよ、こちらからすれば。それを、ところがそのものを取り締れぬような法律を作ったって何にもならぬ、それならば初めからこんな材料を出さなければいい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/78
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079・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは私どもとしてはあまり出したくなかったのでございますが、衆議院の法務委員会からこういったような資料が手元にあるのならばぴしゃりと当らない事例であっても、ぜひ出してほしいという御要望に基きまして出したものでございまして、衆議院に出しましたので同時にこちらへもお出しいたした、こういう関係になっております。先ほど申したような趣旨でできておりますので、亀田委員のおっしゃるような、そんなら出さんでもいいじゃないかということにもなるわけでございますが、
〔委員長退席、理事大川光三君着席〕趣旨はそういう意味でございます。もとより立法に当りましては、こういう困った事例があればこそ、立法に着手するわけでございます。暴力立法の方におきましても、別府事件などがありまして、二百八条の二というようなものを考えたわけでございますが、このあっせん収賄につきましては、提案理由の際に大臣からも趣旨説明をいたしましたが、きのうやきょうの問題ではなくして、長い間の懸案の学者の間で議論されておるのでございますし、事案としましては、具体的にどれどれとこうおっしゃられると、出す事案がないわけでございますけれども、もう私ども実務家といたしましては、多年要望されておるのでございます。そういう意味に御理解を願いたいのでございますが、今資料の点でもう少し付加して申しますと、(一)の事件は検討を要するので、いずれとも判定しがたい事例だと思いますが、(二)の、乙農林事務官関係というのは、これはもう私ははっきりと消極意見でございます。それから(三)の、丙京都府主事関係、これは私は積極に解してよろしいのではないか、本法案によっても適用を見る事案ではなかろうかと思います。それからまたその次の(四)の、T大蔵事務官に関する贈賄事件、これは検討を要する事案ではなかろうか、一がいに消極にも解し得ないと思います。それからまた次の(五)の、大蔵事務官戌に対する贈賄幇助事件でございますが、これも検討を要する事案である、(六)の甲前国会議員をめぐる事件、これも検討を要する事件、(七)は、Q県秘書課長をめぐる事件、これは消極の意見でございます。しかし(八)の、収税官吏丙大蔵事務官をめぐる事件、これは積極に解して差しつかえなかろう、(九)の、B県会議員をめぐる事件、これも積極意見を持っております。こういうふうにこれの断定はできないのでございますが、ここに示しました事案の中でも若干の事例はすでに拾い得るのではないかというふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/79
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080・亀田得治
○亀田得治君 今積極に解されるのが三つありましたが、大体これは小者ですね、京都府主事とか、大蔵事務官とか、議員クラスでは県会議員とか、その上のクラスの方はみんな消極あるいは検討を要するというようなことであってはなはだ提出された資料とこの法案というのはマッチしていない。ということは、法案自体がそこに穴があるという具体的な証明になると思う、間に合わないのですからそうでしょう、三つしか間に合わない。それがみんな小者ですから、これはおそらくお認めになるでしょう、そういうことは。第一、やはりあっせん収賄罪の形というものは、これは政治家でもやはり大物の方が形が多いのじゃないかと思うのですがね、ここの資料は別として、常識的に大まかに考えてみた場合。普通の小さな単純収賄ですと、これは直接官公吏が自分の職務に関して、こそこそと何か裏でものをもらう、こんなようなのがやはり多いと思うのです、下へいけばいくほど。あっせん収賄というのは、やはり何といっても顔のきく人でなければ駄目なんですから、やはり大物ということになってくるのです。だからそうなると、こういうやり方は下につらく上に非常に寛大である、こういう印象を官公吏自身に対しても与えて、はなはだ私おもしろくないと思うのですよ。せんだって総理大臣もこういう汚職の追放には、官庁全体の規律の問題とか、そういうことをおっしゃっておりましたが、私はその通りだと思う。しかし、そうするためにはやはり処罰される方は上の方がのがれやすくて、下の方がのがれにくい、結果的に見て。こういう印象を与えるような措置ははなはだまずいと思うのですがね。これはまあちょっとあなたの立場では言いにくいだろうが、実際中堅どころの人はどういうふうにこれは見ておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/80
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081・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私から決して言いにくいことはないのでございまして、はっきりと申し上げ得ることは、ひとりあっせん収賄に限りませず、涜職罪が上の者が適用を免れる場合が多くて、下の者が適用をみる場合が多くなることは、これは統計もはっきりしておるのでございますが、それはなぜかといいますと、上の者に対しては、地位の商い者に対しましては圧力がかかるために、捜査官憲がそれに屈するといったようなふうに誤解される向きもあるのでございますけれども、実はそうではなくして、下級公務員につきましては、その職務権限がはっきり下へくるほど細分化されて、はっきりとしてしまうのでございますけれども、高級公務員になりますと、その幅が広くなってくる。ことに公選による公務員、国会議員というような方々になりますと、政治活動というような広い面があるわけでございます。そうなって参りますと、その職務権限というものは、ある特定な職務権限のみで金が授受されるということは必ずしも言えない。いろいろな場面が錯綜してある金銭の授受があるという場合が往々にしてあるわけでございます。そういう場合に、法律上で「職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ」、というこの「職務ニ関シ」という点を明確に裁判上明らかにするということが非常に困難になってくるために、事件が中途で無罪になるという例もあるのでございまして、これは職務の範囲が上級、下級によって違ってくるということと、それからまた幅が非常な違いがあるというようなことで、同じ公務員として涜職罪を規定しておりますけれども、公務員が下級の公務員と上級の公務員、特に公選による公務員等の場合には非常にそこに本質的な違いともいうほどの幅がありますので、そういう点が結果におてい違った判決を見るということになろうかと思うのでございます。今回のあっせん収賄罪につきましても、取締りを余さず漏さずという点から申しますと、確かに狭い。この点は私ども決して否定をするものではございませんが、そういうふうに余さず漏さずやることがいいかどうかということにつきましては、亀田委員と私ども多少考えが違っておるかと思いますが、私どもはこの段階におきましては、この法案程度が最も適した案ではなかろうかというふうに真実考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/81
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082・亀田得治
○亀田得治君 上級の公務員になればなるほど職務権限の幅が広い。従って普通の単純収賄の場合でも職務権限等の問題がぼやけることは事実です。従って、そういう面で、すでにのがれやすくなっているわけだ。ところが幅が広いということは、結局第三者に対しては、また影響力が大きいという面も伴なっているわけですね。だから、下級の公務員のように、かちっと一つのからの中に入ったような人から見ると、高級公務員の職務権限というものは、職務権限と言っちゃいけない、活動範囲ですね。活動範囲というものは本来の職務権限と、それから影響力を与える、やっぱりこういうところ全体を見るわけですね。ところがその中の初めの職務権限の方はぼかされる。それからあとの影響力の方については非常に強いしぼり、おれたちの方だけともかく正、不正を問わず、全部ひっくくられやすい、こういう状態では私はやはり下にだけつらく当り上の方は非常に勝手に自分たちだけかからぬようにやっている。これではもう官庁の規律というものはぴりっとならぬ。これは一つ法務大臣どうお考えになりますか。大事なことだと思うのですがね。綱紀粛正という、私はこれは根本の一つの問題だと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/82
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083・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいま私は衆議院の本会議で、企業担保法案が上程されましたので、あちらの力へ行っておりまして、中座をいたしましたために、前からの御質疑の趣旨をよくお開きせなかったのでごごいますが、先ほども刑事局長からお話のありました通り、処罰規定がいろいろの点で差別的にあってはならぬということは、これは当然のことでございますが、よく呑舟の魚をのがすとか、力のあるものは力によって法を免れるというようなことが言われておりますけれども、それは先ほど刑事局長から申し上げました通りのことのように私も存じておるのでございまして、この間に、たとえば上級の公務員と下級の公務員との間に制度上差別があってはならぬことは当然でございまして、私はさようなことはないと、かように確信をいたしておりますが、もし私のお答えいたしましたことが、お尋ねの趣旨と食い違っておりましたならば、また重ねてお尋ねをいただきましてお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/83
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084・亀田得治
○亀田得治君 制度上は同じことになっているのです。単純収賄罪にしても、これは上級公務員であろうが下級公務員であろうが同じことです、法律の建前では。それから、今度のあっせん収賄罪ができたって同じことなんですね、結局。ただ実際上、高級公務員というのは、やっぱりあっせんという関係が多いわけです。これは下級公務員がそんなことをしたって大したことはない。大体下級公務員というものは、自分の権限内のことでこそこそちょっと物をもらう、そういうことです、ざっくばらんに言って。その高級公務員が非常に対象にされそうなところを、普通の単純収賄以上にしぼっている。こういうことを下級の公務員が見た場合に、非常に上下の差別を実際しているじゃないか、法樹上、こういうふうに感じないかということを言っているわけですがね。法律の文面じゃない、実際の適用の面から。
〔理事大川光三君退席、委員長着
席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/84
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085・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 一般の収賄罪については、高級、下級を問わず規定がある、それから今度あっせん収賄舞というものが新しく制定されることに今なりつつあるところでございますが、このあっせんということは、今のお言葉によりますと、高級の公務員に多いのではないか、そういう高級の公務員が触れやすいような収賄罪に関する規定は、非常にしぼっておる。この点において高級、下級の間に差別的ではないかというお尋ねと了解いたしますると、これはやはり根本にさかのぼりまして、今日までこのあっせん収賄罪というものは何にも規定がなかった。そういう意味におきましては、高級の公務員が触れやすい犯罪については何にも規定がなかったというわけで、野放しになっておったわけでございますが、それに対して、非常に立法上むずかしい法律ではございますけれども、このたび新機軸を開いて、そうしてこのあっせん収賄罪というものを新たに刑法の中に加えよう、これはお言葉のありましたように、おそらくは高級公務員に適用される場合が多いだろう、しかしどうしてもこの社会悪だけは、そのうちの最も悪質なものは処罰の対象にしたいということで発足したわけでございまして、この案の幅が狭いという御非難はこれは毎々あるところでございまして、私どもは初めての試みであるから、この辺でまず新しく制定して、その成果を見るということが最も適宜の措置と考えたわけでございますが、これではあまりにしぼり過ぎて狭きに失するではないかという御批評は毎々から承わっておるところであります。ただそこの辺に至りますと、亀田委員とはちょっと意見が違ってくると、こういうことになろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/85
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086・亀田得治
○亀田得治君 私のお聞きしておるのは、つまりしぼり過ぎとかしぼり過ぎでないとか、そういう立場での見解を聞いておるのじゃないので、綱紀粛正という立場からみて、下級公務員がどう見るか、こういういき方を現在までも——先ほども刑事局長からも若干御説明があったわけですが、単純収賄罪、これで高級公務員が引っ張られる、そうすると、職務権限は実際はっきりしない、高級になるほど。従って御承知のような無罪事件が相当出ておるわけですね、その点ですでにもう大きな差が実際ついておる。下級の方はきちっと職務がはっきりしていますからね、あまりそういう疑いの問題が起って、そういう状態でハンディキャップが、差がついておるのに、今度三悪追放だといって出てきて、そうして高級公務員たちがおもにやるようなこと、それが非常にきついしぼりがかかっている。先ほど大臣が見えるまでに、単純収賄の事例ですが、その中における枉法収賄の比率ですね、これをまあ過去三カ年間の分を聞いたわけですが、十分の一以下なんですよ、十分の一以下ということを枉法の事実がないのじゃなしに、大体わいろをもらっておればやっぱり枉法的なことをやっておりますよ、ただなかなかそれがあげられない、枉法という形ではあげられないということは、今度のあっせん収賄罪のような枉法的な内容を持ったしぼり方であってはなかなかあげにくいということです。それでは多少その役所の規律なんかを厳格に考える下級公務員はこれはやはり不公平だと、やはりこういう感じを持ちます。こういう行き方についてそこを聞いておる。こういうしぼり方がいい悪いじゃなしに、綱記粛正という立場から見て、下級公務員の方がこういういき方を上の方がして納得するかということを聞いておるのです。一体どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/86
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087・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) あるいはまたお尋ねの趣旨を私が誤解しておるかもしれませんが、まず第一段の現行法の贈収賄罪の適用におきまして、下級公務員がその職務が明確であるために法律に触れて罪せられる、上級公務員においてはややもすればのがれるというような点でございますが、よく世上呑舟の魚がのがれるということを言いますけれども、私はどうも実際を見て、そうではないように思うのでございます。下級公務員におきましても、ずいぶんいろいろ容疑がありますけれども、容疑の濃厚でないものはこれを不起訴にいたしておりますけれども、それは新聞などには出ません。しかし高級公務員になってやや有名な人になればその人が果して起訴されるかどうかということが注目の的になるものですから、これが検察当局において証拠が不充分で不起訴になれば非常に目立って、いかにも呑舟の魚を逃がした、あるいはときによっては政治的な工作によって逃がしたんではないかというような批評まで出るのでございますが、私がこの一年間法務に当りまして、検察当局の仕事を実地に見ておったところでは、検察当局といたしましては、検察当局の常識と良心によってやっておるのでございまして、そういうことはないのでございます。それと反対にある意味におきましては上級公務員についての贈収賄罪の起訴が、結果において無罪になったんではないか、検事の責任をどうするかというような非難すら相当あるくらいでございまして、検察当局といたしまして呑舟の魚を逃がすというようなことは絶対にないのでございますが、ただ法の適用上一方はその権限が非常に広い、その意味においては漠然としておるところがある、下級公務員におきましては容疑があれば権限などははっきりきまっておりますから、ぴったりと法の適用を受けるというようなこの制度上の関係はありまするけれども、いわゆる世上で評判されるようなことは私はないと考えるのであります。さて、この現行法に対してあっせん収賄罪を新たに追加して制定する必要があるというので、今度これの規定を立案いたしたわけでございまして、これは先ほどお言葉のありましたように、やはり高級公務員に適用される場合が多かろうと、私もさように存ずるのでございまして、これを大きくいえば、政界の浄化というようなことまでうたわれるわけでございますから、これを制定するということは今まで全然なかったものを作るというのでございますから、下級公務員においても当然だと感じる。ただ亀田委員の仰せのように、せっかく作るならば今少し幅広く処罰の対象にしたらいいではないかという、こういう御意見もあろうかと思うのでございますが、ここは結局意見の相違になろうかと、これは毎々申し上げておる通りでございますので省略いたしますが、その点につきましては、多少意見の相違ということに帰着するのではないか、こう思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/87
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088・亀田得治
○亀田得治君 これはあなたは長く官界におられた方ですが、私どもはよく官公労の下の方の御意見等はときどき聞く機会があるんですが、ともかく上の方はうまくやっているというふうな感じは相当一般的に持っておる、それを全然ひが目だけだというふうな断定で見ることは私はやはり間違いだと思うんですね、だからそういう意味でせっかく汚職防止ということ、そうしてそのためには官庁全体の規律がしっかりしなきゃいけない、こういうふうに総理がおっしゃる以上は、そういう点もやはり考慮して立法すべきじゃないかというふうな気持で言っておるわけですが、多少その辺の見方が違うようですが、まあ現実は私が言っている方が近いようにこれは思うんですよ。
それから次に、刑期のことについて若干お聞きします。今度の法案では三年以下でしたか、そういうふうに刑期が規定されておりますが、これもなぜもう少し高い刑期をつげなかったかという点について私納得いかないのです。で、単純収賄における枉法収賄は百九十七条ノ三によって一年以上の有期懲役ですね、そうすると、これは非常に悪質なものについては懲役十五年まで課せれるわけです。だから言うてみれば懲役十五年以下の懲役に処す、こういうことに法文上は解釈できるわけですね、で、もちろんそれは枉法的な行為を実際やった場合ですね、この百九十七条ノ三に書いてあるのは、実際にそういう結果ができておる。しかし、まあこのあっせん収賄罪の場合には結果そのものが出ておるかどうかは法文上はどっちでもいいことでありまして、そういう点の違いはあるかもしれませんが。犯罪の構成要件の主体そのものが枉法的なものである以上は、三年以下の刑期というようなことでは既存の刑法の枉法収賄との関係から見ると、はなはだしくこれは軽過ぎると思うのですね。その点はどういう御検討をされて、こういう結論をお出しになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/88
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089・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいま御指摘のような御疑念、一応ごもっともだと私も考えます。私ども立案に当りまして、十分その点も論議を戦わしたのでございますが、御指摘のようにこの百九十七条ノ三の枉法収賄は結果として法を曲げる行為をしておる、つまり職務が歪曲されたというその現実の結果の発生しておる場合でございますが、今回のはそういうふうに働きかけることなんでございまして、その結果法が曲げられるような行為になるかならぬかは別のことでございます。そういうような働きかけの手段が、悪質だというだけであって、現実に職務が曲げられるということまでは必ずしも期待されてない、そういう危険な状態に置くという趣旨になるのでございます。まあその点が一点と、もう一つは、わいろ罪、本来から言えば職務に関して金を取るというのがわいろ罪の本質でございますが、本件は罰せられるものは職務権限を有する公務員ではなくて、ただあっせんをする、仲介をする、その人の処罰でございます。従いまして、このわいろ罪の刑そのものをそのまま、不正の行為をさせるという用語を使ったからといって、直ちに百九十七条ノ三の刑を見習うというわけには参らないというふうに考えたのででございます。しかも、今まで放任されておりました行為を新たに加罰行為として取り入れようとするのでございますので、今言ったような諸点を考えまして、まず単純収賄の程度で相当ではなかろうかという考えを持ったのでございます。そのものはただ単にそういうふうに簡単に盛ったのではなくて、改正刑法仮案のあっせん収賄の規定も三年になっておりますので、まあそういった過去の学者、実務家が議論をし、その後の昭和十六年の政府案、その後の社会党案、あるいは弁護士連合会から勧告されております案等、すべてまあ懲役三年ということになっておりますので、その辺がやはり世論の存するところであろうというふうに考えて、そういうふうに決定をした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/89
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090・亀田得治
○亀田得治君 まあ前の刑法仮案にしても、以前に提案された法案等にしても、刑期は割合軽くなっておる、それは仏も存じておりますが、しかし前にどんな法案があったにしろ、それが筋が通らなければ、そんな前例に従う必要はない。で、どうしても理解できないのは、このあっせん収賄罪の規定の中では、曲った行為をさせる、そういうものに対する報酬をもらった場合も入っているわけでしょう、この条文の中には。現実にこの被害、そういう行政上の不正行為が行わさせられたという場合もこれは入っているわけですからね、原動力というものはこのあっせん者です。大体あっせん者と働きかけを受ける人とそんな区別するのは、それはあなたが説明を都合よくしようと思って言っているだけなんで、本来は被害の方、まあ被害動機というものがありますね。その立場から見たらこれは共犯者ですよ。あるいは場合によってはむしろあっせんを受けた方は単なる道具かもしれない。そういう場合もあり得るでしょう、非常にあっせん者が高い地位にある場合に、単なる道具であるかもしれない場合もあるでしょう。で、少くとも共犯者ですよ。だから刑法の理論からいけば、共犯というのはこれは甲乙平等です、実際に自分が実行行為をやろうがやるまいが。だからその立場からいきますと、これは何と言ったって筋が通っておりませんよ。実際に行政上の不正行為があった場合もこの中に含まれているわけですから。しかしまあそういう不正行為までいかないものも含まれるけれども、その場合には私のような理論でいくと、少し過酷になるかもしれないというふうな批判も成り立つと思いますけれど、そこは裁判にまかせたらいいのです。裁判にまかせたら。だから刑期の幅を広くしておいたらいいわけでしょう。ともかく単純収賄で柱法的なことをやれば懲役十五年以上から懲役一年と、こう幅広くなっているのだから、だから懲役十五年以下と、こう書いておけばいい、そうすれば一年以下——非常に軽い、またそういう枉法的な結果のない者は五カ月とか六カ月とか軽くやれるわけですから、十五年以下と書いておけばいい。そうすれば事案に応じてすべて適当に裁判所が処理できる。ところがこんな三年以下と書いておけば、普通の場合にそういうわいろをもらって不正行為をやった場合には十五年までいくのに、この場合には三年以下、どんなに悪質なことをやっても三年以下、これではあなた筋が通りませんよ、通りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/90
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091・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 御議論のあるところはよくわかりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/91
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092・亀田得治
○亀田得治君 わかったら、そういうふうに直してもらわなければならない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/92
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093・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これはお言葉を返すようでございますけれども、単純収賄の場合でも、不正な行為をやりましても、金を取らなければ処罰のしようがないことは当然なことであります。あとは懲戒を受けるということになるだけだと思います。本件の場合はあっせんをするのでございます。その手段がなるほど非常に悪質な手段のみを罰するということになっておりますが、どういう刑をおくかということは、その手段その他ももちろん刑をきめる上において重要な要素でございますが、単純収賄とあっせん収賄とどちらが重い罪かということも考えてみなければならない。これは何といってもわいろ罪の最も昔から今日に至るまで、今日といえども、なおわいろ罪とは職務に関する犯罪だということでございます。そういうふうな観点からいたしますというと、単純収賄が三年以下の懲役と定められております現行法のもとで、それと間接的になりますようなあっせん収賄罪、これがお説のように十五年以下というような刑に——そこまでおっしゃられぬにしても、手段が悪いですから、もう少し高い刑を盛るということは、何か現行法の汚職罪の一つの体系的な考え方から申しますと、適当でもないように思います。まずはこの辺が相当ではなかろうかというふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/93
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094・亀田得治
○亀田得治君 そこの最後のところがちょっとぼけておりますね。体系的な立場から見て、重くするのは適当でないように思う、まずはこのくらい……。体系的というのは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/94
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095・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは単純収賄とあっせん収賄とを、手段方法をしばらくおきまして、どちらが重いかということを比較考量しました場合に、これは何と言っても、単純収賄の方が職務に関する……、単純収賄とはあえて申しませんが、職務に関する涜職罪の方が重い、あっせん収賄の方は、それに準じた扱いでいいのだということが言えると思います。単純収賄あるいは職務に関する犯罪の中におきましても、現実に職務を歪曲してしまったという結果が発生した場合に、特に加重して一年以上ということになっておるわけでございますが、そういう職務歪曲行為が現実に発生していない場合におきましては、三年以下ということに現行法はきめられております。そこで、このあっせん収賄を翻って見ました場合に、罪質としては本来の収賄行為よりも軽い罪である。なるほど手段はしぼって、悪質なもののみに限定をいたしましたけれども、罪そのものとしては本来の収賄罪よりも軽かるべきがこの体系的の位置としては相当なものであろう、こういう趣旨で申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/95
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096・亀田得治
○亀田得治君 既存の概念にとらわれ過ぎているのですね。単純収賄罪という型が従来長くあったから、何かそれが本家本元のようなことを言われますけれども、そういう犯罪によって何が侵されるのか、これはあなたの方でも説明をされておるように、公務員の廉潔性と職務の公正ということが侵されるのです。そのことは、単純収賄罪であっても、あっせん収賄罪であっても同じことですよ。これは国民の側から見たら。国民は、だれだって公務員の廉潔性と、そうして職務の執行の公正、こういうことを望んでいるのですよ。そんなことは、多少回り道しようがしまいが、そんなことは大して問題でないですよ。現実に一つ一つの事案を検討して見た場合に、実際問題としても、単純に役人が自分のことについてわいろを取る場合よりも自分の今までの勢力関係、そういうものを悪用して、そうして自分の部下なり、ほかの方に連絡をとって、そこに、場合によっちゃ、いやがる者に対してでもいろんなことをさせて金を取る、これの方がよほど国民全体の政治に対する関心の面から見たら重い面がたくさんあるのです。だから、単純収賄は今まで長い間刑法の歴史を持ついてるのだから、それが本家で、これは新しいやつだからというようなわけにはいかぬです。実質的に見れば、これは同じことですよ。だから私は、たとえば単純収賄の場合には、職務に関して金をもらった場合には三年以下、よってその職務行為を曲げる、こういうことになった場合には懲役十五年から一年の間、こうなっていますね。二つに分けてあります。私は、あっせん収賄の場合だって、もしほんとうに法務当局が、そうだ、本質的には国民感情から見たらこれは同じことだという考えをお持ちになるのなら、条文を二つに適当に分けて、よってそういう不正なことをやったことに対して報酬をとった、そのような不正なあっせんをして一つの結果を出してそしてわいろをとる、こういうあっせん収賄に対しては、単純収賄の刑の加重と同じようにやることが私は正しいと思います。これを二つ一緒に規定してあるから、はなはだそれだけでいくと、何か何もしいな場合にちょっと過酷に感ずる点もあるかもしれませんよ、それは。しかし、その場合でも、どうしても法文を一つにしておきたいというのであれば、だから私先ほど申し上げたように、懲役十五年以下と、こうやっておけば、非常に軽いものは三年以内でやればいいのですから、これは裁判所の判断にまかしたらいい、個々の事案の判断は。それをなぜ、こういう枉法的な犯罪構成要件を書きながら、三年以下というような軽いものにしてしまっておるか。どうですか。私のどの点が間違っているのです。あなたの議論を言わずに、私の議論の間違いを指摘していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/96
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097・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 亀田先生の意見の間違いを御指摘するなんて、とんでもないことでございます。先生の御意見も確かに理論の通った御議論でありまして、このあっせん収賄の構成要件に、さらに別途よって不正の行為を現実にさしたという場合に重くするという考え方があるわけでございますが、本法案におきましては、そこまではやらなかったというのが実情でございます。
それからなお、刑罰の刑期の問題でございますが、もちろん本法案によるあっせん収賄行為につきましても、単純収賄の比ではない。情状の悪い、国民の目から見まして容赦できぬというような悪質なものもあろうかと思います。これは具体的事案によってそれぞれニュアンスがあるわけでございますが、ここで私が体系的とか何とかいう言葉を申しましたのは、そういう個々の事案についてのいろいろな場合はしばらくおきまして、罪質としてどういう位置を占めるかということから、この三年という刑を相当だと考えたという理由を申し上げたのでございます。個々の事案につきましては、あるいはその社会に及ぼした影響、公務員の廉潔をそこなった点、信用を落した点、そういったような個々の情状を拾い上げて参りますならば、一年以上十五年以下ときめております「百九十七条ノ三」の枉法収賄にもまさる影響力を持ったあっせん収賄行為というものが具体的には発生するかもしれないのでございます。しかしながら、罪質と、汚職法におけるあっせん収賄の地位といったようなものを体系的に考えて参りますると、本来の収賄罪よりは軽い地位に置かれておるという意味において申し上げたのでございます。それとまあ諸案を参考といたしまして三年という刑を出したのであります。なお、あっせん、不正行為をさせる、正当な行為をさせないという手段をしぼりといたしまして、このあっせん収賄を書いておりますが、この規定自身は、「百九十七条ノ三」の意味におけるあっせん収賄という意味ではないのでございます。その点もあわせて御理解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/97
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098・亀田得治
○亀田得治君 罪質としてどちらが重いかどうか、これはまあ理論ですね、そういうことは、私どもは何も理論によってそんな刑罰法規を作ったり、また、刑期というものをきめることの先に、理論を無視するわけじゃありませんが、理論というと、とかくやっぱり自分の立場の都合のいいような理論になりやすいような場合がある。それからまた、そういうことじゃなしに、ほんとうに見方が違って、なかなか意見が合わぬという場合もある。しかし、それは第二として、今あなたもおっしゃるように、そういうあっせん収賄の中で、単純収賄よりもさらにより一そう悪質なものがあるかもしれない。私は、確かにそれはあると思うのです。大物がやるのですから。だからそういう事実を私は予想される以上は、その事実が大事なんです。どういう形が適正かということは、そういう事実が予想される以上、当然刑期というものを上下に幅広くしておく。そうしなければ、裁判官が、これ、ちょっとしゃくにさわるからもう少し重くしてやろうと思ったってできやしないのです。これは私は大事なところだと思いますがね。そういう事実を予想しないなら別です。今、あなたの答弁ではやはり予想できるわけです。そんなことは社会的にも常識です。これは大きな立場で法務大臣はどういうふうにお考えですか。予想できる以上幅広くしておいたらいいじゃないですか。判断は裁判所にまかせる。それが当りまえです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/98
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099・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 私は、この点は全く立法技術上の問題で、学者、専門家の意見を聴取したわけでございますが、冒頭にも刑事局長から申し上げました通り、従来のあっせん収賄罪に関する諸案、そのうちには亀田さんの所属しておられます社会党から出しておられますあっせん収賄罪に関する審議継続中の案もございます。これらの諸案を参考といたしまして、まずこの辺が適当であろうという判定をいたしたのでございます。これは純法律的の立場というよりは、常識的に見てここら辺がほど合いであろう。結局刑の量定でございましょうから、ほど合いということに重きを置きまして立案いたしたわけでございます。これはだんだんと、立法技術の上におきましては、刑事局長などから御説明申し上げた通りでございます。
なお、この刑期のことにつきましては、多くの学者、専門家がこれを見てくれたのでございまするが、大体適当であるということでこれについては別に論議はなかったように承わっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/99
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100・亀田得治
○亀田得治君 私はこの刑期の点についての法制審議会における行先生方の意見も拝見しました。拝見しましたが、どうも納得いかない。ともかくこの人たちは、ただ今までの条文とのつり合いだとか、そういう技術的なことばかり考えていて、実態そのものをにらんで、そうして適正な刑がどこにあるかというふうな点の考慮がはなはだ少いのですよ。そんな実態を予想されないなら私は何も言いません。なるほど、法務大臣もちょいちょい社会党の案もこうだ、こうだと言われる社会党の案もそうなっておる。それは私はよく検討したのですが、やはりこれは再検討すべきだと私自身も思っているのです、社会党案についてその点。だからそういう意味なんで、どうも法制審議会でも技術的なことにとらわれ過ぎて、こういう結論を出しているように思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/100
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101・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 法制審議会は学者、実務家の委員が多いのでございまして、その点亀田委員の目からごらんになりますと、やや理屈にとらわれたという感がないでもないかと思いますが、私はそういう点は確かにあろうかとは思いますけれども、やはり刑法典の一部改正になっておりますので、各国とも刑法典を作るということになりますと、やはり法典としての体系、法典の各罪についての位置、その持つ意味といったようなものは、特別法の場合と違いまして、やはり学問的な要素があるわけでございます。そういったような学者、実務家の行き方について、一がいにこれを否定し去るわけにはいかないと思います。
なお、情状の問題につきましては、たとえば、窃盗というような罪につきましても、これはあるわけなので、同じ一冊の本を盗んだといいましても、盗んだ人の、犯人の地位、自分、その他によりましては、非常に社会的に重大な影響を持つ場合もありましょう。たとえば、判事なり、あるいは検事といったような者が盗んだということになりますと、被害はわずかなものでありましても、社会に及ぼす影響、これはもう大へんなものでございますが、だからといって刑を幅を広くして、そういう場合に適応するような幅をつけておくというようなことは、これはまあ刑法典という立場から申しますと、必ずしも適切ではないのじゃないか。もちろん窃盗罪につきましては非常に幅は広いのでございますけれども、そういうような考え方があろうかと思いますので、その点を申し上げておきます。
それから先ほどお答えを留保しておきました、法令により公務員とみなすという判例がわかりましたので、御報告申し上げます。「罰則の適用に関しては、法令により公務に従事するものとみなす」という例で、第三の公社形態のものに属する日本電信電話公社法の十八条に関する判例でございます。判例の要旨を申し上げますと、日本電信電話公社法第十八条及び第三十五条により、罰則の適用に関しては公務員とみなされる電信電話公社職員の作成した文書について、これを公文書とする、という判断をした最高裁の判例がございます。これは昭和三十二年六月二十七日、最高裁第一小法廷の決定でございます。この判例によりますと、「罰則の適用に関しては、」というのがない場合と同じ扱いをしておるという趣旨の判例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/101
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102・亀田得治
○亀田得治君 それから刑罰の点で、たとえば今までの単純収賄ですと、百九十七条第一項の後段ですね。前段は、単純収賄について三年以下の懲役に処す。ところが請託を受けてやった場合には五年以下の懲役に処す。請託という条件が一つつくだけでも二年上っているわけですね。はなはだ細かいことを言うようですがね。請託ということだけで二年上っております。そうすると、このあっせん収賄の場合は、請託はくっついておるわ、枉法はくっついておるわ、あらゆるもの全部くっついてしぼっておって、そうして刑は一番軽いところにおく。これはもう全然つり合いがとれていませんよ。私は従来のこの刑法典の立場にだけ立って考えても、つり合いがとれない。二つこぶがついているんですからね。従来の刑法典からいえば、こぶがつくたびに刑を重くして、こっちの方は二つもこぶをつけて相変らず三年間なんて、こんなことはないですよ。少くとも十五年というのが長ければ、たとえば十年以下の懲役というところまで考えるとか何とかしなければ、このあっせん収賄というものに対して政府なり立案者、提案者が真剣に考えているということにならぬですよ。非常に軽く考えているという意味ですよ。国会自身がこれは直したっていいことだが、提案者の方がうんと言わぬとなかなか直すわけにもいかぬだろうし、実際こう思うのですよ。あなたの説明なんかちょっと納得いかないのだ。請託だけで二年違う。これはどうなんです。既存の法律がこれは間違いなんですが、請託だけで二年も上げるのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/102
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103・竹内壽平
○政府委員(竹内壽中君) この百九十七条一項後段でございますが、これは請託を受けたる場合、これは加重要件になっておるわけでございます。これは請託もなしに、ただ職務権限を持っておる公務員について、何事も万事よろしくという趣旨で頼むということは、職務の歪曲という、公正という点からいきますと、非常に歪曲が行われるというか、不正なことが行われるか、まあそういうことはわからない、非蓋然性を持つ頼み方でございますが、そういう場合を前段の処罰にしておることは、もう申すまでもありません。で、ある事項を特に頼むということになってきますと、その頼み方のうちに、特殊な限定した意味がここへ含まれてきまして、加重要件として刑を重くしておるというのでございますが、これは職務権限を持っておる公務員の場合につきましては、一応うなずけることだと思うのでございますが、あっせん収賄罪——本法案のあっせん収賄罪は、まあこういう請託を受けるとか不正の行為とかいう概念を、用語を用いておりまするが、これはいずれも、その加重要件にしておるのではなくて、一つの制約として構成要件には書いておりまするが、加重要件という見方をしておらないのでございます。つまり、あっせん収賄のうちの悪質なものをしぼり上げていくとどういうのになるかと、その悪質なものを限定する意味においてのしぼりでございまして、はっきり百九十七条一項後段の加重要件という見方をしておらないので、そういう用語を使いましたけれども、だからといって、やはりその刑を引き上げるという理論にはならないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/103
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104・亀田得治
○亀田得治君 大体あなたの方じゃあ、もとが無理なんですよ、こういう刑期のつけ方は。だから、いろいろ説明されているけれども、そんな説明は、幾らでもこれは反駁できる説明ですよ。たとえば、加重要件にしておらぬからといったって、あっせん収賄の場合には、しぼり過ぎておるものだから加重要件にならないだけの話で、一つの非常に応報的な条件とかそういうもののないあっせん収賄というものをきめて、で、さらに、請託のあった場合なり、あるいは応報的な行為のあった場合なり、そういうものをさらに加重していくというふうにきめるならば、それは加重要件になるわけだ。ところが、初めから軽い方をこのあっせん収賄罪は取ってしまっているから、だから重いやつだけがぼっと出ておるから、形式の上じゃ加重要件にならぬだけのことで、そんなことはちっともその説明にはなっておらんですよ。少くとも、今の刑法では、そういう請託ということだけで二年も高めておるのに、そうでしょう、重要視している証拠でしょう。今、あっせん収賄の場合、そういうことはあまり重要視しておらぬようにおっしゃったけれども、とにかく、こんなものは取ってしまえば問題はない。午前の理論に戻りますが、こんなものは刑の点からいったってそうですよ、取りゃあ問題ない。くっつけておく以上は、それが一つの今の刑法の体系では、普通よりも悪質だとそういうものは見ておるから、二年間高いのですからね。だから少くとも取ってしまいなさいよ。取ってしまうなら多少——まあそれだけで満足というわけじゃありませんが、多少いいわけですね、刑の問題は。そうなりませんか。現行法の請託が二年間重くした立法理由というものを無視したような答弁でしたね、今のは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/104
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105・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 何回も御説明申し上げたと思いますが、あっせんという行為には、請託というものは通常伴う要素であるというふうに考えておるのでございまして、特にこの加重要件というふうに考える性質の行為ではないというふうに思うのでございます。そういう意味におきまして、これを取れば刑の均衡がとれるというふうな考え方は、いたしておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/105
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106・亀田得治
○亀田得治君 あなたの方では三年というものを上げようとしないから、上げないのならば、いっそのこと、それを取ってしまいなさい、そうしたら多少公平になる刑の刑期が。そういう意味で申し上げておるのです。そうすると、午前中のああいう疑義も解消するし、一石二鳥ということになる。だから、とにかく法律の審議というものは、お互いに知恵を働かしてやるわけですから、審議の過程において、なるほどその疑問があったりいろいろすれば、これは提案者の方だっても、そういうことを少しざっくばらんに再検討していくような気持でやらなければ、こんな審議なんてむだになるのですよ。私どもも、提案をされて審議に応ずる以上は、やはりもう東京にいる間は、ほんとうにそれと取っ組んで、あとから笑われるような審議をしたくないと思ってやっているんですから、ただ幾らやったってああでもないこうでもない、それだけじゃ何もならぬと思うのですね。だから刑の点では、私はたとい二年でも三年でもいいんだ、やっぱりこれだけ厳重にしぼられた悪質なものだけを対象にするというものであれば、もっと上げなければこれは不公平ですよ。そういうことが実際にあまり問題にならないから、あまり議題にならなかったかもしれませんが、真正面からその問題をお互いにこうして出して議論してみれば、私は上げてもらわなければ、これはつり合いがとれぬと思うのです。ちっとくらい考慮する余地はないですか、これは何も構成要件を変えたり、そんな大きな問題じゃないです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/106
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107・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 午前にも申し上げましたように、法律解釈のこの審議の模様というものは、法律解釈、今後の解釈、裁判所の解釈に重要な資料を提供するものでございまして、十分御審議を願いますことは、私どもの願うところでございます。しかしながら、この案を決して固執するものではございません。御審議の結果に待たなければならないのでございますが、私ども原案を作成しました者といたしましては、この案を、申さば私どもなりに責任を持って提出いたしておるのでございまして、ただいま言い逃れをするのでは決してございませんが、さように信じますがゆえにお答えを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/107
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108・亀田得治
○亀田得治君 まあそれは責任を持って、もちろん最善のものとして出されるのでしょうが、それでも修正等の問題が起れば、まあそうしましょうというようなことはたびたびあるので、そうなってしまうと、あれだけじゃあ自信を持ってやっておったものを、なんで修正に応じたかということにもなるのですよ。だから、そういう出した以上は変るまではそういう立場でものを言っていくのだ、そういうことじゃなしに、もうそんなこまかい専門的な法律論はやめましょうよ。この刑期なんという問題は、社会的に公平にしてもらえばいいんですから、だから、せめて五年くらいに私はしてもらいませんと、もうどうもこういう点ははなはだ不満ですね。
まあ刑期の問題はその程度にしておきましょう。あとあっせ収賄罪の規定に関して若干ありますんが、ちょっと十五分ほど休憩させてくれませんか。ほかの方にありましたらやっていただきたい。あと続いてやりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/108
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109・青山正一
○委員長(青山正一君) 速記をとめて。
午後四時九分速記中止
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午後四時二十一分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/109
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110・青山正一
○委員長(青山正一君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/110
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111・大川光三
○大川光三君 幸い法務大臣が見えておりまするので、この機会に一つお尋ねをいたしたいことがございます。先般来千葉銀行の問題が起りまして、たまたま法務大臣は三月十八日の夜、料亭に行かれたというように誤まり伝えられているようでございますが、一体十八日の夜、法務大臣はどういう行動をとられたかを伺いたいのであります。実は私はその翌日の三月十九日に本会議において刑法の一部改正法律策に対する、自民党を代表して質問を仰せつかりましたためにまだ初舞台でもございまするので、三月十八日の日は夕刻早く宿舎に帰りまして、徹夜して実は本会議の質問演説の原稿をまとめたのでございまして、多年弁護士をいたしておりまする私とても、いざとなれば徹夜をして準備をしたと、こういう状況でございまするが、果して法務大臣は、このわれわれの徹夜して準備する質問演説に対して、前夜いかなる準備をなされておったか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/111
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112・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この問題につきましては、だんだんと御心配をいただきまして恐縮に存じておるのでございますが、私といたしまして、ほんとうに覚えのないこと、火のないところに煙立たずといいますが、全く火のないところにこういう言いがかりを言われまして、迷惑千万に存じておるわけでございます。ただいまお尋ねがございましたので、この席上におきましても事実に基いて御説明し、御了解をいただきたいと思うのでございますが、森脇証人が、過般衆議院の大蔵委員会におきまして証言いたしておりまする中には、三月十八日に私が正力国務相その他二、三の者と日本橋の料亭で会食をしたということがございます。もっともこの証言は、初めその事実を言いながらだんだんと問い詰められて、しまいには龍頭蛇尾になってはっきりは言っておらないのでございますが、一応そういうようなことを申しておるのでございます。そこで、私は昨日この委員会からちょっとおひまをいただきまして、大蔵委員会に出席いたしまして、詳細に当日の私の行動を申し上げまして、皆さんの御了解を得たと思うのでございますが、当日は先ほどお言葉にもありました通り、あっせん収賄罪並びに暴力取締りに関する刑法並びに刑事訴訟法の改正案が、十九日の午前に参議院の本会議において私が趣旨を説明するという、その日を控えたその前晩でございまして、その晩は六時過ぎに私は国会から法務省に帰ったのでございますが、ちょうどそのころただいま御発言になりました大川先生、並びにやはり御列席の亀田先生、この両先生から本会議において御質問があるということで、また御質疑の要旨も拝承いたしましたので、次官以下の省内の幹部を集めまして、そしてこれに対する答弁の要旨を協議をいたして、九時過ぎまで法務省におったのでございます。これは会議でございますから、次官以下多くの人が同座しておりますから、証人は数多くあるわけでございます。そして九時過ぎに私は自宅へ向って出発したのでございます。これは念のために申し添えておきたいと思いますが、法務省におきましては、自動車の運転手はその日に動いた自動車の行き先と時間とを、一定の様式に従いまして毎日記載することになっておりまして、従いまして、私が動いた時間は何時何分まではっきりわかっておるのでございます。その晩、たとえば法務省へ国会から帰りましたのは午後の六時四十五分、それからして法務省をたちましたのが九時十五分、自宅に着きましたのが九時五十五分と、こういうふうにはっきり運転手が帳簿に記載してあるのでございます。これは事実はきわめて明確でございます。ただああいうふうに言いっぱなされますと、一応は世上の疑惑をかもしまするので、非常に迷惑をいたしております。私まことに不徳の者でございますけれども、法務省に職を奉じました際、私としてはまず厳正公平ということ、また身を持すること清潔にしなければならない、この二つのことをモットーとして今日まで仕事をしてきたのでございます。ただいま三月十八日のことを反証をあげて立証されたのでございますが、それ以前におきましても、それ以後におきましても、さような種類の会合に出たことは絶対にございません。しかるに、はしなくもさような放言にあいまして、実に心外千万であり、かつ、かようなこの無責任な放言において、もし万一検察部内において私の行動に対する一点の疑いでも持つような人があれば、これはまことにゆゆしき大事と思いますし、それがひいて国民が検察権のあり方についてまた疑惑を持つようでありましたら、まことに私としては残念千万に存ずるわけでございます。この事実だけを明瞭にいたしまして、せっかくこの法案の御審議をいただいております皆さんの御了解を得たいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/112
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113・大川光三
○大川光三君 午前中から問題になっておりまするあっせん収賄罪のうちで、請託に関することで当局の意見を重ねて伺っておきたいと存ずるのであります。この問題の請託のことにつきましては、請託の内容が不正な事項であることは必要としないという答弁を当初からいただいております。しかるに、これに関しまして、先般の團藤参考人並びに本日の斎藤法制局長からは、本法案の請託には、後段の、「其職務上不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム」ということがはね返ってくるように解されるという旨の説明がございましたが、私は、この両者の意見には、にわかに賛成することができないのであります。世上、ともいたしますれば、この請託、すなわち、特定の事項に関する依頼のことをいうという、この請託を構成要件としたことは、あまりにも間口をしぼり過ぎるとの非難さえあるのであります。しかるに、この請託が、團藤参考人または斎藤法制局長の解されまするように、不正行為をなさしめる依頼を内容とすると解するに至りましては、狭い間口がますます狭められまして、汚職を追放しようとする本法案新設の趣旨にももとる結果となると考えまするが、私は、やはり当局が終始一貫、請託には不正な事項であることは必要でないという御説明が適切かつ妥当と考えておりますが、この点に関しまして、重ねて法務大臣からその御見解を伺っておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/113
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114・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) この点につきましては、法制審議会で審査されました当時におきましても、だんだんと議論があったように承わっておりまするけれども、やはり私どもといたしましては、当初刑事局長からも御説明いたしました通り、請託は特定の事項であるということだけでけっこうであると、かように解釈をしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/114
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115・大川光三
○大川光三君 これもやはり午前中から議論のあったところでございまするが、いっそ請託という構成要件をはずしてしまえという論議に関してでございますが、先ほど亀田委員から、刑の問題に関連して、きわめて法律的には適切な御質問がございまして、私もこれに耳を強く傾けた一人でございます、しかし、私はこの請託という要件は、ぜひ残してもらわなければならぬという考えを持つものでございまして、今ここで討論をするのでございませんけれども、質問の前提としてこのことを申し上げたい。と申しまするのは、なるほど、人に頼まれずして他にあっせん行為をするようなことは、あまりないではないかという常識論もございます。しかしながら、そうは簡単に片づけられないのでございまして、ことに、われわれ議員といたしましては、時には、何ら人から依頼を受けなくても、政治的信念に基きまして政治行動をする場合が多いのでございまして、しかも、その政治行動に感激した利害関係人は、後に政治献金等の形で感謝の意を自発的に表わしてくる場合がある。そういう場合に、もし、請託という条件をはずされておりまするならば、われわれ議員が政治的信念に基いてなし、しかも、関係人が感謝のあまり、かりに儀礼的な金品を贈ってきたという場合においても、請託ということがなかったならば、一応その条文の対象として調べられなければならぬ、これは非常に明白なことでございまして、現にそういう事例か、私たまたま直面いたしております。
御承知の通りに、昨年来大阪府におきまして、浴場疑獄事件というものがございまして、これは自由民主党も社会党も、ともどもに十数人の議員が検挙されて、公判に付されております。内容は、要するに浴場の距離を短縮するという条例改正にかかっているのであります。ところが、その被告人のうちには、請託ということには全然関係なしに、やはり浴場はそうみだりに距離を狭めてはならないという強い政治的信念に基いて行動をした。ところが、たまたま、お前は請託を受けただろうということに浴びせかけられまして、今事件になって争っている者があるのであります。これは多少話は違いますが、私は、この浴場疑獄事件におきましても、請託の有無が被告人の運命を左右する、こう考えているのでございまして、もし請託ということが要件でない場合には、政治的信念で行動した者が、もろくもこの法律にひっかかってくる。言いかえれば、われわれの政治的活動に対してきわめて消極的に陥れるという危険があろうかと存ずるのでありまして、こういう意味からいって、本法案が請託を構成要件とされましたためには、ただいま申しますような、議員の政治的信念に基く活動というものも考慮に入れての立案であるかどうかを伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/115
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116・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお話のございましたように、請託を受けてという概念につきましては、斎藤局長、さきには植松一橋大学教授の私どもと違った、不正の事項までも含むという解釈の御意見があったのでございますが、理解いたしておりますところによりますと、このお二方の御意見は、むしろ学界におきましては、少数意見でございまして、法制審議会に参加しておりました学者の委員の方々は、政府の説明を了とされているのが実情でございます。のみならず、検察側の実務家の意見も、立証上若干の困難は伴うのであろうけれども、だからといって、非常に困難を伴うというのではないという意味におきまして、この存続を了承しておるのでございます。さらに問題は、裁判所側はこの「請託ヲ受ケテ」という規定をどう見るかという点でございますが、午前もちょっと触れたかと思いますが、ここに重ねてただいま大川委員のおっしゃる点に触れた御意見でありますので、申し述べさしていただきますが、法制審議会刑事法部会第二十回会議議事速記録の一ページの終りから二行目のところから一ページばかりの間にその点が現われておりますが、申しますと、新聞委員は「この法律案に対する私の意見の第一は、「請託を受けて」、という字句を挿入するかどうか、こういう問題についてでございまするが、私は立案者側の説明によって、この字句を挿入しなくても実情は大した差異はないという御説明をある程度了承するものではございますが、公判審理の実際になりますというと、「請託を受けて」、という字句があるとないとでは大へんな差異が生ずるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。それで本来「請託を受けて」、ということは依頼があって、その依頼を承諾してある行動に出るということが予定されるわけでございますが、この法案のねらっている対象というものは比較的従来好ましくない行為であるとせられながらも、放置されておりましたところの、比較的ばく然とした行為が対象になるのではないか、こういうふうに考えますときに、やはり「請託を受けて」、という字句を挿入いたしまして、その行為をある程度限定するのが正しいのではないか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。と申しますのは、そういうふうな比較的ばく然とした、好ましくない行為、ということになりますというと、その事柄の性質上、特に政治家がある行為をするという場合を考えてみますというと、みずからは請託を受けなくても、みずからの利益、みずからの思惑などで、他の公務員に斡旋をするというような場合だって考えられるわけで、請託の時期が前後したり、あるいは依頼はあってもみずからは承諾をしなくてもいいという場合だってあり得るわけでございますので、私はそういうのをできるだけばく然とした行為を処罰するということを避けるという意味合いにおいても、「請託を受けて」、という、字句を挿入した方がいいのではないかとこういうふうに常織的に考えるわけでございます。現行刑法の加重収賄、あるいは第三者供賄、あるいは事後収賄というような、一連の規定の中に請託の字句が使われておりますが、それと比較いたしましても、本法案が「請託を受けて」、という字句を挿入するのがやはり妥当ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。もう一つは私はこの不正行為というものが、主として裁量行為であるところの行政行為が対象となりますために、これが不正であるかどうかということを判定する場合に、「請託を受けて」ということと、報酬を取っているということ、この二点が不正であるかどうかの行為の判定上間接的ではありますけれども、大きな足がかりとなるのではないか、こういうふうにも考えるわけでございます。その意味におきまして、原案通り「請託を受けて」、の字句を挿入するのがいいのであろうというふうに私は考えるのであります。」こういうふうに申しておりまして、私どももこの意見も非常に参考になる意見であるということで、この原案の立案の考えは、やはり自信を持ってここで御説明に当ることができるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/116
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117・亀田得治
○亀田得治君 あと二、三点に一つしぼってお尋ねいたします。
このあっせん行為の概念といいますか、この点が相当従来からも問題になるわけですが、たとえば先ほど問題になったあの昭電事件でも、第二審判決であっせん行為でなく、ちょっと紹介した程度だ、こういうふうなことが出てきて、それが問題を第二審では決定的にしているようです。そこで立案者にお尋ねしたいのは、このあっせんということの一応の定義等は出ておりますが、単なる紹介ということとあっせんということの区別ですね、これをどこに基準を置いておるか、できるだけ具体的に詳細にお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/117
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118・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) あっせんという意味につきましては、若干の判例もございます。職業安定法第五条の第一項にいわゆるあっせんという意味につきまして、これは雇用関係の成立をあっせんするという場合でございますが、「求人及び求職の申込みを受けて求人者と求職者との間に介在し、両者間における雇用関係成立のための便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為を一般に指称し、必ずしも雇用関係成立の現場にあって、直接これに関与介入するの要はなきものと解するを相当とする。」これは昭和二十九年三月十八日の福岡高等裁判所第三刑事部の判決でございまして、高裁の判例集七巻二号百九十二ページに登載されております。これは職業安定法第五条に関するあっせんという意味、内容を判断したものでございますが、昭電事件につきまして、名刺を書いて渡した行為があっせんになるかどうかという点につきまして、これは事実認定の問題でございますが、東京高裁は、このような名刺を書いて渡す行為は、あっせんではなくて単なる紹介である、まあ紹介の糸口を与える行為であるというふうに認定をいたしております。
そこで、単なる紹介とあっせんとはどう違うかというお尋ねと思うのでございますが、結局働きかけというふうな行為がそれにプラスされなければ、あっせんというふうにはならないというふうになるわけでございます。なお法制局で編さんしております法令用語辞典というのがございますが、それには、「あっせんとは、ある人とその相手方との間の交渉が円滑に行われるように第三者が世話することをいう」、というような字句を使っております。わが国の立法例の中には、このあっせんという字を使った、そういう用語の使ってあります法令はたくさんございますが、ただいま判例として申し上げました職業安定法の場合はもちろんのこと、その他いろいろな立法例に現われておりますあっせんという字句、内容も、大体私が抽象的ながら申し上げましたこの単なる紹介プラス働きかけということが内容になっているというふうに考えているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/118
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119・亀田得治
○亀田得治君 この紹介という形式ですね、たとえば今例に出された名刺によろしく頼むと書かれて、これはそういう形だけである程度判断ができるというふうに考えておるのか、あるいは形ではなく個々の事件についてのその取られた形が及ぼした効果というふうな面からこの判断をするのか、判断の重点、その点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/119
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120・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そのあっせんの効果という面は、その行為があっせんであるか、紹介にとどまったかということの判断の材料にはなると思いますが、効果だけから見るべきものでないと同じように、形だけからも見るべきではないと思うのでございます。外形上は名刺を書いてやるだけの行為でありましても、それと同時にまた働きかけの電話を別にかけておるとかいうようなことで、両者が相待って名刺の紹介のほかにそれを推進する働きかけという行為があります場合には、その結果効果がどういう効果があったかはしばらく別としまして、そういう行為をあっせん行為、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/120
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121・亀田得治
○亀田得治君 たとえば名刺だけの場合でも非常に効果のある場合がある。ところが大いにその電話をかけたりしているのだけれども、一向効果の上らぬ場合がある。まあどちらか一つだけではいけないようなこともおっしゃるわけですが、その名刺だけの場合で非常に効果があるという場合には、すでに名刺だけで一つの働きかけになる場合が相当あるんじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/121
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122・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 名刺によろしく頼むという言葉を書いて、紹介文言をつけて名刺を出した。その名刺が非常に効果がある場合が、まあ議員の名刺のような場合にはあろうかと思いますが、しかしそれだけではあっせんとはいえないので、これは先ほど申した高裁の判例に示しておりますように、これは紹介の糸口をつけると申しますか、陳情の糸口をつけるための紹介であるというにすぎないのでありまして、あっせんという行為とは見ないという解釈でございまして、その解釈を私も正しいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/122
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123・亀田得治
○亀田得治君 陳情の糸口ですか、紹介の糸口ですか、どっちなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/123
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124・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 陳情の糸口と判例にはあったかと思いますが、要するに陳情するきっかけをつけてやるというだけのもので、これがまあ紹介ということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/124
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125・亀田得治
○亀田得治君 それは形式的にそういうふうになかなか断定はできないのじゃないのですかね。その名刺でよろしく頼むということ以上に電話をしたり、あるいは直接自分が出かけて行って一緒に会うという場合でも陳情の糸口か、あるいは陳情か、そういう程度に判断すべきものもたくさんあるだろうし、ところが、相当有力な人等であれば、よろしく頼むという名刺だけで陳情あるいは陳情の糸口よりももっと先へいっているというふうに認定しなければならないという場合があるのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/125
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126・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 電話をかけたり、あるいはみずから行った場合に、すぐそれはあっせんであって、名刺だけは陳情の糸口というふうには解せられないと思います。やはりおっしゃる通り、みずから行っても単なる陳情のきっかけをつけてやったにすぎない場合もありましょうし、電話をかけても名刺と同じ意味しか持たない場合もあろうかと思います。その名刺なり、行ってやったことなり、あるいは電話をかけたことが結局紹介といいますか、紹介にすぎない何事かを陳情する機会を作ってやったにすぎないというふうに認められます場合には、これは名刺に限らずいまだもってあっせんとは言い切れないわけでございます。しかし、それでは名刺だけでもあっせんになる場合があるかという点でございますが、名刺だけではこれは働きかけといいますか、名刺を持って行く人が第三者でございますので、その名刺を持って行って話をする機会が作られるというだけでございますから、名刺をもってよろしく頼むというようなことでは、それ自体あっせんということにはならないように考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/126
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127・亀田得治
○亀田得治君 紹介と陳情とあっせんという言葉が三つ並んでいるわけですが、一つ一つの——あっせんについては先ほどいろいろな事例をあげての御説明があった。まあ全部をお聞きしていると大体の概念はつかめるのです。それと同じような立場で、陳情と紹介、これはどういうふうに概念的に説明すればなるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/127
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128・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) だんだんこまかい御質問でございまして、まあ陳情というのは自分の希望あるいはしてほしい事項を申し出て、考慮してもらうということだろうと思います。それからそういう希望を持っている人に関係の人を引き合してやるということが紹介であろうかと思います。まあそういう点はどう見るかということは、これは事実認定の問題になろうかと思いますが、少くとも高裁の判決をちょっと見ますと、やはり、「単なる紹介行為は、第三者的立場において被紹介者たる特定業者に相手方たる担当行政機関に面接する機会を与えるためになされるものであって、右特定業者に右担当行政機関に陳情する糸口を得させるにとどまるものであり」と、こういうふうに言っております。そり辺で一つその三者の相互の関係を御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/128
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129・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、紹介というものはAとBを会せるだけだ。その場合にそれでは一緒に行く場合がありますね。AとBを会せるために一緒に行く。Aは陳情したいことがあるわけだ。Aは自分はこうこうこういうことだという要件をしゃべる。ついて行った人もそのことを同じように言うか言わぬかは別として、こういう場合どうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/129
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130・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど来申し上げますように、ここにあっせんと申しますのは、今のついて行って、言う言わぬは別として、そこに一緒にいてやるというこの事実をもって、単なる紹介とみるか、あっせんとみるかという事実問題になろうかと思うのでございますが、いやしくもあっせんというからには、一緒に行きました者の利益となる事項の実現を期すると、そういうまあつもりでなくちゃいかぬと思います。そういう実現を期して相手方の間に仲介の労をとる。そのやり方は黙っている場合もそういうふうに見られることもありましょうし、しかし、いろいろと助言をすることもそういうふうに見られる場合がありましょうが、その方法についてはあっせんという行為を解釈する上において何らの制限はないと思いますが、要するにあっせん者があっせんと言われるためには、ある人の利益になる一定の事項の実現を期する意味で仲介の労をとる、そして相手方に働きかけるというそういうような関係がそこに認められない場合には、これは単なる紹介行為であって、あっせん行為とは言えないというふうに思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/130
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131・亀田得治
○亀田得治君 じゃ、たとえば陳情者と一緒に役所にいく、そうしてこの陳情者はこういうことで来ているのだと、で、あとは本人とよく話し合って下さい、それ以上のことは何も言わない、こういう場合はどういう解釈になるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/131
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132・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そうすると、何にも言わない人がその陳情の事項の実現を期しているのかどうなのか、それだけではわからないのでございます。そういう外形的な事実で、何も言わない、また事実実現も期しておらず、そういうことを考えてもおらないということになりますと、それは単なる紹介行為であって、面接の機会を与えるだけ、作ってやったという行為であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/132
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133・亀田得治
○亀田得治君 しかし、それは紹介するという行為の中には、潜在的に実現を期するというものが入っておりますね。だから私が今申し上げたようなことだけで帰ったとしても、それがもう紹介だけにとどまるというふうに必ずしも解釈されないのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/133
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134・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 潜在的にそういう考え方があるのだというお説でございますが、私は必ずしもそう思わないので、両方あると思うのです。国会議員のような場合には、腹の中では困ったことだと思いながらも、いやな顔もできないから一緒について行ってやるという場合もあるのであって、そういう場合には潜在的にあっせんの意思ありというふうに推定するのは少し酷ではないかというふうに思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/134
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135・亀田得治
○亀田得治君 そういう場合はよくあります。ところがそうでない場合もたくさんあるのですね。だからなかなかこの問題は、昭電の場合には名刺のことが問題になっているが、そういう外形的なことだけでなかなか区別はしにくいのじゃないか、非常に簡単な外形的なことであっても、やはりあっせんととられる場合もあるし、相当複雑な、何べんも会ったりしておっても、それは何も実現に努力しておるのじゃないので、ただ何といいますか、その一歩手前の状態で引き合わしたりあるいは事情を説明しているだけだ、実際にそういうこともあるでしょう、私はまあそういうふうにこれは解釈しているのですがね。せんだってから、名刺によろしく頼むという程度のものはいいのだといったようにおっしゃっているようですが、そうはいかないんじゃないか。たとえば大蔵大臣あたりが自分の監督下にある金融機関等に対してそういうものを書いたような場合、まあそのときの事案にもよるでしょうがね、たとえばその関係機関に何か基金でも回す、そういう時期等であれば、これはもうその名刺一枚でずいぶんきき目はあるわけですな、だからそういうことを、名刺だけであればいいんだというふうな断定ですね、これは私はちょっとできないと思っております。そのかわりもっと複雑な行動であっても、そのことだけでこれはもう紹介じゃないというふうなことも言えない、そういうふうに思うのですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/135
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136・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) このあっせん行為であるかどうかということは、本罪の成否に関する重要な問題でございまするので、これは事実証拠をもって明かにしなければならない事項でございます。仰せの通り名刺だけですぐあっせんでないとかどうとかいうことはもとより断定はできないことでございますが、紹介文言を書いた名刺を交付したというようなことが、あっせん行為には常識的に言ってもならないのじゃないかというふうに思いますので、名刺に紹介文言を書いたものをもって直ちにあっせんであるという解釈はとうてい引き出すことができないと思うのでございます。しかし、ずいぶん深入りしたような陳情者とともに何事かを陳情し、あるいは場合によっては威圧を加えるような言葉がそこにあったとしても、それをもって直ちにあっせんと言えるかどうかは、これはもう実質的に理解しなければならない。相手がそれをあっせんと受け取っておるか、また、いや実はもうやむを得ずああ言っておるけれども、しかるべくというふうにお帰りにはおっしゃって帰って行く公務員の方もいらっしゃいますので、そこら辺は諸般の事情を総合して、証拠をもって立証して、あっせんであるかどうかということを確定していかなければならぬ事項でございます。しかしまあ例として申し上げれば、紹介文言を書いた名刺を交付する行為があっせんに当らないことは、これはもう明白なことであろうというふうに思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/136
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137・亀田得治
○亀田得治君 紹介文言ということはいろいろ書き方があるのですよ。だれそれを紹介いたします、これならもう全く紹介文言だ、だけれども、そこへいろいろなことが付け加わってくれば、幾ら名刺であったって意味か違ってくる場合が相当あるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/137
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138・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) まあ仰せのようにいろいろなニュアンスもありましょうと思いますが、受け取った方が、代議士さんであればそういう名刺をお書きになるのはやむを得ないことなのでしょう、相手方によってやむを得ずお書きになっているのでしょうというふうにとれるような事情があるかもしれません。ですから、一がいには仰せの通り判断をすることは軽率でございます。けれどもまあ名刺を交付する程度のことをもってあっせんであるというふうに見ることは、常識的に妥当ではなかろうというふうに思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/138
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139・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、その点ははっきりしますね、行為の結果などはこれは一つの判断の資料になるかもしれないが、主たる問題ではない、効果の有無の問題とかそういう結果の問題ですね。本人自体の主観的な立場における行動ですね、その点がまあ中心になって判断される、こういうふうに理解できるようです、あなたの話を聞いておると。それは間違いないですね、その点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/139
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140・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/140
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141・亀田得治
○亀田得治君 その本人のまあ行動それ自体をつかまえるわけですが、その際に、本人はあっせんするつもりで行動をしていても、客観的に見てそういう程度の型では、これはあっせんの部類には入らない、本人はそのつもりでやっている。ところが客観的にはそんな程度のものは入らない、こういう場合はどうなのですか。そういうふうに思われるような程度の形式であれば、しかし本人はあっせんするつもりでやっていた、そういう場合にはどっちを標準にして解釈すべきですか。たとえばさっきも例が出ているように、名刺でもいいです、本人はこれによって大いにあっせんするつもりだ、しかしどうも書かれた書き方というものが、一般的に見た場合にはどうもあっせんではない、単なる紹介的なものだ、こういう場合にはこの法律の適用面ではどういうように解釈されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/141
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142・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど来御説明しますように、あっせんというのは、あっせんする本人の主観というようなものが中心になって判断されるのでございますけれども、あっせんも一つの行為でございます、行為として考えられます。その本人の考え方というものは、外部に行為として現われた場合にそれと判断されるわけでございますから、その意味におきましては、やはりある程度の客観性を持つわけでございます。客観性がなければ相手にそれとは通じないわけでございますから、本人の意図、そういうものを中心に判断しなければなりませんけれども、行為である以上は、ある程度のまた客観性を持って、その意図がその意図と受け取れるような行為となって現われてこなければいけないわけでございます。従って、あっせんする意思があるということは、かりに主観的にそうだというふうに主張いたしたといたしましても、それが行為になって現われた、名刺を交付するとか、本人が行くとか、陳情する行為とか、そういったようなものが、それととるに足りないものでありますれば、これは否定せざるを得ないということになるのであります。その辺は事実認定の問題であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/142
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143・亀田得治
○亀田得治君 まだあっせんを実際にはしない、あっせんをなすことの報酬として金を受け取る場合もここには規定してあります。その場合には、行為には現われていませんからね。ですから、おれは普通の紹介状を書いてやれば、おれとしてはあっせんになるつもりでおるのだというふうなつもりであった場合には、そうしてそういう段階で金を受け取った場合には、それはやはりこれには該当せぬということになりますか。行為に現われておらぬ段階でつかまえる場合には、本人の主観的な意思というものが非常に重きをなすのじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/143
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144・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点は仰せの通りあっせんをしなくても、あっせんをするということでその報酬として、あっせんの報酬じゃありませんが、不正な行為をさせるという、あっせんをするということで、報酬として金を受け取った場合には本罪が成立するわけでございます。しかしあっせんをするというのも、本人の意図がただ名刺をやるだけのつもりであったというのでは、これはあっせんをするというふうには言えないわけでございまして、やはり先ほど来申しておりますようなあっせん行為をするということで金をもらった場合に、そのあっせんが不正行為にわたるような、不正の行為をさせるようなあっせん行為をするということで金をもらった場合に、初めて犯罪が成立すると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/144
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145・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、金をもらったけれども、実際は不正行為まではしなかった、詐欺みたいなことにもなるが、詐欺罪の問題は別として、その場合にはあっせん行為という客観的な行為がないわけですから、従って金をもらった人が、実はおれはちょっと名刺を書いてやるだけのつもりでいたのだと、事実行為がないわけですからね、そう主観的に言えばみんなのがれてしまうわけですな。私はやはりその点はもう少し行為者の主観に重きをおいて考えるものじゃないといかぬのじゃないか。ことにそのあっせんをしない段階で金を取る場合のやつは、そういうことでなければこれはみんな逃げてしまいますよ、行為がないのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/145
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146・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 非常に痛いところをおつきになったように思うのでございますが、あっせんをするということで、まあ報酬としてもらったけれども、実際あっせんをしてない場合におきましては、これは証拠をもってあっせん行為をするということの証明をしますことは、なかなかむずかしいと思います。理論としてはそういうことになります。そういう意味において、亀田委員のおっしゃるように、抜ける場合があると思います。しかし実際問題として考えてみますと、何と申しますか、あっせんをしないうちに多額の報酬を持っていくというようなことはないので、いわば手付みたいなもので、ほんとうはそれからあとに出てくるのじゃないかというふうに思うのでございます。その辺はどういう形で犯罪が現われて参りますか、これは実際の運用を見ませんと何とも言えないわけでございますが、理論といたしましては、立証がつかない限りそういう場合は処罰できない場合が多かろうというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/146
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147・亀田得治
○亀田得治君 それはあなた、事前の運動費なんというものはみんなこれに該当するわけです。事前運動、まだ全然行為に移っておらぬときは……。その段階で金が動く、それは予想されますよ。しかしこれは私一応皆さんの見解を確かめただけですが、そういたしますと、なかなかこれは何ですな、金だけもらって実際に動かないでじいっとしておったらつかまえられませんな、ちょっと。そう思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/147
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148・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 仰せの通り、金だけもらって動かないという場合は、なかなかつかまりにくいと思いますが、今までの涜職罪の実際の事件を見ておりますと、なかなか贈賄者の方も計算をしておりまして、動かないような人にはなかなか金を持っていかない、もし持っていけばそれは別の意味だというふうに見られる場合が多いようでございまして、その辺は実際の運用を見てみませんと、はっきりしたことを申し上げかねるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/148
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149・亀田得治
○亀田得治君 一応そういう見解をある程度明らかにしてもらえたのでけっこうです。
最後に、この第三者供賄の関係、これもいろいろ御質問があったと思いますが、あるいは重複するかもしれませんが、ぜひ解釈上と言いますか、理論的に確かめておきたい点が二、三ありますので、お聞きしますが、第三者供賄の規定がないから、いわゆる後援会名義で報酬をとらす、こういう場合でもその後援会と本人がつうつうの状態にある、こういう場合には第三者供賄じゃなしに、今度できるあっせん収賄罪そのものということでやり得る場合があるようにも私思うのですが、共犯としてね。その辺の考え方ですね、やり得る場合とやり得ない場合もあるというふうにお考えかどうか、両方あるというならその辺の区別、標準ですね、どういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/149
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150・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これはやり得る場合があると思います。それじゃやり得ない場合はどういうのかという点でございまして、この点は衆議院の御審議の際にもはっきりとその点を述べろということでございまして、まあ統一解釈を出せということでございまして、私どもも研究いたしました結果、考えておるところを申し述べたことがございます。その点をここで重ねて述べさしていただきます。
この政府案によるあっせん収賄罪は、第三者供賄を処罰することにいたしておりませんために、あっせんする公務員みずからが収賄をせず、第三者に供賄させる場合は、たとえその第三者があっせん公務員の後援会、その他これと密接な関係があるものといたしましても、それだけでは犯罪にならないというふうに解するのでございます。これらの場合には、あっせんする公務員が実質的な利益を受けることが多いと思いますけれども、それは後援会というような、特殊な関係にある第三者が利益を受けることの反射的な効果にすぎないのでありまして、これを公務員みずからの収賄と同視することはできないと思うのでございます。しかし、わいろの収受ということは、供与されるわいろに対して事実上の支配力を取得することでありまして、たとえ外形上は公務員以外の第三者が利益を受け取ったと認められるような場合でありましても、公務員がそのわいろを処分することができるような状態に置かれたのであれば、みずから収賄をしたのと同じように見ることができるのであります。その第三者があっせん公務員の後援会である場合におきましても理論は同じであります。抽象的に申しますならば、あっせん公務員自身の収賄になるか、第三者供賄になるかは、外形上これらの後援会に渡される利益があっせん公務員の事実上の支配下に置かれたかどうかによって判断するほかはないと思うのでございます。従ってもしその後援会が事務の運営、特に会計上についてあっせん公務員から直接の指図を受けず、その利益のためにみずからの判断で独自に活動しておるような場合には、純然たる第三者と見るほかはないのでありまして、これに反してその後援会がトンネル機関になっているにすぎないもので、直ちにそのわいろが公務員自身に渡されるような場合はもとよりのこと、その後援会が名前だけは後援会といっていながら、実際には公務員自身の指図のままに動いておるような、従属的性質のものであります場合には、後援会がわいろを受け取る行為を直ちに公務員自身の収賄行為と見ることができる、これを要するに、後援会が第三者と認められるかどうかは事実問題でありまして、後援会の実体いかんにかかるものであるという解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/150
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151・亀田得治
○亀田得治君 大体の見当はそれでつきますが、その後援会と本人との形式的な関係ですね。たとえば、その後援会といいながら、本人も加盟しておるような場合がある。後援会に加盟しておるというのもおかしいが、とにかく本人も加盟したような格好でそういうものを作っておる場合がありますね。そういう場合などは、はなはだしく実質的に本人の支配下にあるというふうな関係が出ると思うのですが、そうでないような場合には、実質的な支配関係があっても一応別個な名前を持って、その責任者、会計などがちゃんとある、そういったようなことになると、事実問題としてはなかなか同一物と見にくいのではないかと思うのですが、その本人が——これはきわめて形式的な問題かもしれぬが、本人自身がそういうものに加盟して、それが責任者になっていればもちろんですが、そういうこともないでしょうが、その辺の点が相当判断の一つの基準になるように思うのですがどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/151
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152・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお示しのような場合が、判断の基準になることはもう事実でございますが、今私が書いたものに基きまして述べましたのは、しさいに御検討いただきますとわかりますが、要するに後援会という場合には、しょせんはある公務員の後援会でございますから、公務員の利益になるようにいろいろなことが行われるのでございます。その実体的な姿をとらえて、後援会と公務員とが同一人物であるというふうに見ることは、これはやはり行き過ぎなんで、むしろ先ほど申しましたように、それは反射的効果なんであります。しかしその後援会が本人以外の第三者であるということは何で見分けるかといいますと、ただいまお示しのようなことも一つの標準でございます。私どもはその場合に、その受け取った金が全く公務員の指図のままに右から左に自由に使われるような状況にある後援会でありますれば、これはまあ名前は名義人が別に作ってありましても、いろいろな関係を調べましても、形の上からはとにかく第三者のように見えましても、実質は本人と同視すべきものであるというふうに思うのでございますが、とにかくしょせんは、ある公務員の利益にその金が使われるといたしましても、とにかく金は一応会計に入って、その後援会の会長の承認がなければ支出はできないという関係になっておるというふうな後援会でございますならば、これはまあ第三者と見なければならぬ。なぜかと申しますと、やはり収受という概念からそういうふうに解釈せざるを得ないというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/152
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153・亀田得治
○亀田得治君 それから、これは法務大臣にお尋ねいたしますが、第三者供賄の場合に、主として後援会が問題になるわけですが、そうでなく、いろいろなほかに社会的に有益な団体があります。公共団体、学校、いろいろな社会事業をやっておる、そういうものに寄付させるという問題ですね。これはまあ後援会とは質的に非常に違いますから、これは第三者供賄の規定が設けられるときでなければ問題にならないわけですが、そういう考え方ですね。そういうことはいいことか悪いことか、そういう社会的に有益な団体を発達させることはいいことだという面だけをとって考えると、大いにいいじゃないかというふうな考えも一部にあるわけであります。あるわけだが、さらに、果して法律で禁止しておるようなあっせん収賄行為の対価をそういうところへ持ち出すということはどうか。その面から見ると、やはり同じような批判が出てくるわけですね。それで、寄付の効果というものは、その本人に直接間接やはり出てくるわけですから、だからそういう面からそういうことが社会的に相当論議の対象になっておるわけですが、法務大臣としてはその辺の価値判断をどういうふうに持っておられるか、お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/153
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154・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) これは、第三者供賄に関する規定を立案するかしないかという、当時やはり一番問題になった点と思うのでございます。また、実例もやはりあったようでございます。第三者供賄の規定がなければそこに大きな穴があくではないかという議論もあるけれども、また第三者供賄ことごとく処罰するということになると、今のような慈善団体、教育機関というようなものに対する寄付なんかも、やはりそちらへ寄付してくれということを約束して、その通りやったならば、やはりその法律でひっかかるではないか、だから第三者供賄というても、第三者の種類は非常に幅が広いから、まあ一広将来の研究に残そうではないかと、こういうような判断も一つの材料になったようでございます。しかし、今お言葉にもありました通り、慈善団体とか、教育団体とか、形の上で言いましても、結局そのあっせんをする人が、自分がそれを世話をしていかなければならない団体である、それに寄付してもらう、明らかにその人の好意によって寄付がそこへいったと、そうすればその人に非常に礼を感ずるから、いろいろの物質的、精神的の利益があるということも、これは事実ですから、一がいに教育団体、慈善団体だからというて、それは処罰の対象としてはいけないとも言えないわけでございまして、これはほんとうにこの第三者供賄の規定を書くときには、非常にむずかしい問題ではないかという議論があったようでございます。これは本会議におきましても、両先生から御意見も、お尋ねもあったような点でございまして、また法制審議会においても、これが一番大きな問題であったのでございますから、われわれ当局におきましては、十分この第三者供賄に関する規定を立案するかどうか、また立案するに当りまして、これらの点をどういうふうに書き分けていくかということをこれから鋭意研究して参りたいと、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/154
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155・亀田得治
○亀田得治君 まあ法制審議会でも、第三者供賄については将来考えると、また衆議院の付帯決議等においても同趣旨のものがついておる。その前提となっておる考え方の中には、そういう不当なあっせんをして、そういうところから出てきた金を、たとえ社会的に有益と認められる団体であっても、そういう金をそういうところに回すことはいけない、この点の割り切りができていなければ私は立法できないと思うのです。だから、付帯決議なり付帯要望等がついておる前提からいえば、当然その点は割り切っておるのだろうというふうに想像しているのですがね。果してそういう割り切りができているのかどうか、そこをお聞きしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/155
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156・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 大体において御意見の通り、そういうふうに割り切って考えておることと思います。あっせんそのものは、世話をすることですから、別に悪いことではないのですが、あっせんをして、不正な作為、不作為をやったというところから生まれてくる金品でございますから、たとえ行き先がどんな団体であっても、それはよろしくないと、こういうふうに割り切っての考えではないかと、かように推察いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/156
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157・亀田得治
○亀田得治君 法制審議会でも、それは将来の問題だということで、あまり深く検討されなかったのかもしれませんが 大体今法務大臣がお答えになったようなことだろうと思います。そうすれば、まあその問題は大体解決する。そうすると、第三者供賄罪が作られなかった、そこまで進めなかった最大の理由というものは、やはり後援会の方に実質的にあったんですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/157
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158・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 第三者供賄に関する規定を並べて立案いたしませんでした理由というのは、これは前から私正直に申し上げておりまする通り、このあっせん収賄罪に関する規定が初めての試みであるから、まずこれを規定していくと、それからわいろ罪に関する刑法の規定の沿革を見ましても、第三者収賄に関する規定はあとからできておるというようなことや、それから従来から提示されておりまするいろいろの案を見ましても、一応第三者供賄に関する規定を伴っておらないというようなことなどを参考といたしまして、常識的に、とりあえずはこのあっせん収賄罪に関する直接の規定だけで、そうしてその実績を見てやると、こういうことがこの第三者供賄に関する規定を一緒に並べなかったほんとうの理由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/158
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159・亀田得治
○亀田得治君 それはまあ、こういうふうな結論で法案が出されておるわけですから、今の段階の説明としては、そうおっしゃらないとつじつまが合わなくなるでしょうが、まあ審議会の記録でも、たとえば真野委員ですかね、非常に強くその点を実例をあげて主張されていたと思うのです。その主張自体はおそらくそんなに反対は私はないんじゃないかと思うのですが、そうすると、実際上はそれが後援会にどうも適用されてくることになる。これははなはだその及ぼすところの影響が大きい。これはまあ法制審議会の案は、第三者供賄罪がないわけですから、そういう意味では本格的な論議にはならない——多少議論はあるが、ならないかもしれませんが、だから、法制審議会に出るもう一つ前の政府原案ですね、これは法務大臣が法制審議会に直接の責任者として諮問しておるわけですから、法制審議会に行くまでの段階においては、結局その後援会がうっかりするとやられる、そういう点の考慮があって政府案というものがそういうことになったのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/159
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160・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) それは、正直に申し上げまして、そういうことではなかったのであります。実はこのわいろ罪に関する過去の沿革を見ましても、明治四十年に刑法ができて、それから昭和十六年でありますか、第三者供賄に関する規定のできまするその長い間、直接自分が収賄せずに、第三者供賄は罰せられないのだから、自分がわいろを取らずに、親か兄弟か自分の秘書かだれかにやっておきさえすれば罪にならないものを、そういうふうにしておらないものですから、その間第三者供賄というものは規定がなくて済んでおった。ところが、たまたま具体的に一、二の事件があって、そうしてこれは処罰できないと、どうしても第三者供賄の規定を置かなければいけないというような事件が少しあったらしゅうございます。そういうようなことから、必要があるというので、あとからできた。それから、できてみたけれども、今度は実際それに触れた者がどのくらいあるかというと、まあわずか四件くらいしかないのだから、それだからして、これはすぐに書かなくも、それほどこの道でのがれることはないだろうというような見通しと、それから先ほど申し上げました、とりあえずこれは新しい規定であるし、それから従来から各有力な方面から提示されておる諸案を見ても、まずそれははずしてあるから、とりあえずははずしておこうと、こういうことでございまして、これを書けば、第三者供賄に関する規定を書けば後援会まで罰するから、それを罰しては大へんだというようなつもりでは実はなかったのでございます。これはもう正直に私どもが今まで審議した経過において、正直にその通りでございます。そして実は私の心持だけから申しますと、それが法制審議会におきまして、真野判事が先頭でございましたが、非常に問題になったということで、実は私は意外だったのでございます。実務家が言われるのですから相当の根拠があるだろうと思うけれども、どうも常識判断で、それほど大切な規定を忘れておったのかなあと、こういうことで実は意外に思ったくらいでございます。正直に申し上げまして、以上の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/160
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161・亀田得治
○亀田得治君 それは現行法でも第三者供賄がある。しかしそれがあまり使われなかった。これは法律があるから使われないのですよ。そういうふうにも解釈できるのですよ。自分がもらっても罪になり、第三者に渡しておいても罪になる。こういうことなら、そんな不正な金を、暴露されやすい第三者に手渡すようなことをしないで、こっそりおれがもらっておこう。第三者供賄を禁止する、現在のわいろ罪でも禁止する規定があるから、それがそっちにいかないで本人たちの間にとどまっているケースが多いのです。(笑声)それはそうですよ。だから、使われないからというような理論は、これはとても筋が通らぬし、それからもう一つは、これも新しい型だ型だと言いますが、しかし従来の経験に基いて一つの型をもうすでに作ってしまったわけでしょう。第三者供賄も罰するという型を日本は作ってしまっているのです。だから、それから見ればこれは何も今新しい型をここで作るわけじゃない。だから、その新型という点からいったって、そんなことは私は理由にならないと思うのです。どっちの面からいったって、これは理由にならないので、だから結局そんな後援会のことも心配は別にしたわけでもない。それから先ほどお聞きしたように、ともかくそういう不正な金はどういう団体に渡してもらってもいけないという意思統一が大体できておる、こういうことなら、そうして法制審議会でもあれだけの要望が出ておる。これは当然、だからそういうことなら、この際あっさり作ってもらって、幾らかでもいいものを作っておいてもらう。これがなければやはりそっちの方へいく現象が出てきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/161
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162・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 昭和十六年に第三者供賄の規定ができてから、わずか四件きり適用の事犯がなかった。それはそういう規定があるのだから無理にそっちへ逃げなくても自分で取るのだから……。これはもっとものことで、私もそう考えますが、ただその以前に申し上げましたように、第三者供賄の規定がなかったときに、明治四十年から昭和十六年までの間にいろいろな事犯を扱ってみて、そうして、これは明らかに悪質な犯罪であるけれども、自分が取ってないものだから第三者の方へ金が行っているから、これは処罰できないのだ。それだからして、どうしても第三者供賄に関する規定が要るという声が起きて、そうして早く規定ができそうなもののようにも思うのでございます。そのときにどんどん第三者の方に流れていきそうに思うのが、明治四十年から昭和十六年までの間、気楽といえば気楽ですけれども、それほどの弊害がなかったものですから、それまで第三者供賄の規定がなくてまかなってきたわけだろうと思うのでございます。ところが、戦後いろいろの事犯があって、これはやはり第三者供賄の規定を置かなければいけないというような事犯があったらしいのでございまして、そこで出てきたものですから、その規定がなければ、みなそっちへ流れる、これは理屈はそうかもしれませんけれども、それほど理屈の通りには実際はいかない面もあるのじゃないか、かように考えておるわけでございます。それでとりあえず私が新しい型と申しましたのは、第三者供賄のことではございません。私が申し上げましたのは、あっせん収賄罪というのを新しく今度は作るわけですから、それで新しい規定を作るについては、まずこの規定だけにして、第三者供賄のことは実績を見てからと、こういうふうに考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/162
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163・青山正一
○委員長(青山正一君) ほかに御質疑もなければ、あっせん収賄罪に関する部分の質疑は一応終了したものと認めて御異議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/163
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164・亀田得治
○亀田得治君 一応それでいいですが、例の午前中の請託の点ですね、この点は一つ委員長の方で善処を願うことにして、そういう意味で若干あるいは補充的な質疑が必要になるかもしれぬので、その点で御了承を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03019580418/164
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165・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日の審査はこの程度にとどめます。次回は十九日午前十時法務、社労連合審査会、刑法、刑事訴訟法改正案について連合審査。連合審査会散会後、法務委員会を刑法三案について。
それでは、これにて散会いたします。
午後五時四十六分散会
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