1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月二十一日(月曜日)午
前十一時三十六分開会
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委員の異動
本日委員山口重彦君、大矢正君及び清
澤俊英君辞任につき、その補欠として
椿繁夫君、大和与一君及び高田なほ子
君を議長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 青山 正一君
理事
大川 光三君
一松 定吉君
棚橋 小虎君
宮城タマヨ君
委員
秋山俊一郎君
雨森 常夫君
大谷 瑩潤君
小林 英三君
前田佳都男君
亀田 得治君
高田なほ子君
椿 繁夫君
大和 与一君
後藤 文夫君
辻 武壽君
国務大臣
法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
政府委員
警察庁長官 石井 榮三君
警察庁刑事局長 中川 董治君
警察庁警備局長 山口 喜雄君
法務政務次官 横川 信夫君
法務省刑事局長 竹内 壽平君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省刑事局公
安課長 川井 英良君
法務省刑事局参
事官 神谷 尚男君
法務省刑事局参
事官 辻 辰三郎君
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本日の会議に付した案件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○証人等の被害についての給付に関す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/0
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001・青山正一
○委員長(青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。
最初に委員の異動について報告いたします。四月二十一日付、山口重彦君辞任、椿繁夫君選任、大矢正君辞任、大和与一君選任、清澤俊英君辞任、高田なほ子君選任、以上であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/1
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002・青山正一
○委員長(青山正一君) 前回に続き、刑法の一部を改正する法律案、刑事訴訟法の一部を改正する法律案、証人等の被害についての給付に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。
暴力取締り関係の質疑を行います。御質疑の方は御発言願います。なお、本日、唐澤法務大臣、横川政務次官、石井警察庁長官、竹内法務省刑事局長、中川刑事局長、山口警備局長、その他法務省から辻参事官、川井公安課長、神谷参事官、以上の方々がお見えになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/2
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003・亀田得治
○亀田得治君 一昨日お願いいたしました資料がここへ出てきておりますが、これについてちょっとお尋ねいたしますが、これは検挙人員となっておりますが、結果的に起訴された者は、これに対してどういう数字になっておるか、お聞きしたいと思います、三十二年だけでいいですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/3
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004・中川董治
○政府委員(中川董治君) 私ども警察では、この犯罪で立件いたしまして検察庁へ送致するわけでありますが、送致した以後は、検察庁において起訴、不起訴を決定になりますので、この検挙と起訴の関係をあわせ調べるということになりますと、相当な時間を要することになりますので、このうちで起訴、不起訴の関係は、この調査では出て参らないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/4
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005・亀田得治
○亀田得治君 この刑事局からいただきました青少年、暴力、汚職、売春関係の統計表ですね。これでは検察庁が扱ったのと、その起訴の数が出ておるから非常に参考になるのですが、大よその数字だけでもわかりませんか。扱ったのは結果的にどういうふうに処理されておるのか。その点が非常に大事なわけですね。三十二年だけについてお答え願っておきます。そのうち、全部についてわからなければ、たとえば暴行、傷害、脅迫、それから暴力行為等処罪ニ関スル法律に規定する罪、こういうところが中心だと思いますが、そのことと、それらが集団的に起されたものと、私はほとんどそうだと思いますが、そうでないものとの、大よその区別、これは、一人の毀棄罪、一人のぐれん隊についての取締りが不便だと、そういう御意向が政府の方から出ているわけですから、私はそういう意味で、これはお聞きしているわけなんです。私の観察では、ほとんどこれはもう集団といったって、二人以上も集団ですからね、ほとんどそういう性格のものであろうと思っておるので、そういう場から、こまかい数字がわからなくてもいいですが、大よその状況を、午後でもいいですから御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/5
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006・中川董治
○政府委員(中川董治君) 御質問の前段の、この数字のうちで起訴、不起訴の関係で、正確なことはわからなくでもやむを得ぬが、大体の趨勢はどうかという御質問でございますが、私どもの犯罪統計をとる場合、いつも念頭に置くのですけれども、起訴と検挙の関係を関連してとった統計表もあり得るのですけれども、そういうことになりますと、相当あとになって、起訴の時期と検挙の時期とがいつも同じ時期ではございませんので、その関係上、とるのに大へん時日を要する関係もございますので、この表につきましては、そういう作業をいたしておりませんので、ちょっと、大よそと申しましても、明確にお答えできないのでございます。
御質問の後段の、単独でやったものと共同でやったものとの関係はどうか、こういう御質問でございますが、これは、大勢について申しますと、ここの表に掲げておりますように、殺人、強盗、窃盗、こういう刑法各条の罪条を掲げておきまして、そのほかに、刑法犯のほかに、暴力行為等処罪ニ関スル法律に規定する罪——暴力行為等処罰ニ関スル法律に規定する罪の方は、御案内のように、あの法律の一条、二条の罪でございますから、ああいった要件が備わっておるものであろう、それに暴力行為等処罰ニ関スル法律をもってしては立件できなかったものが殺人以下の関係でございますので、刑法犯の数字と暴力行為等処罰ニ関スル法律に規定する罪を掲げておきました数字とを一つにらんでいただきまして、大体の大勢をごらんいただくよりほかに方法はないと思うのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/6
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007・亀田得治
○亀田得治君 そんなことになるのでしょうか。上の方は単独犯も共同犯もあるわけですから、下の方と上の方との比率で、そんな推定なんかできるものじゃないのです。
それでは、もう一つお聞きしますが、暴力行為等処罰ニ関スル法律に規定する罪、これが二千八百三十三名である、こうなっておりますが、この中で、暴力行為等処罰ニ関スル法律の第一条の中の毀棄に関する罪、これをやったのは何件ぐらいあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/7
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008・中川董治
○政府委員(中川董治君) 暴力行為等処罰ニ関スル法律に規定する罪の内訳、ことに御質問は、一条の内訳ということに関する御質問でございますが、これは、この特別法違反全体をとらえて私の方で照会いたしましたので、内訳はこの統計表で出て参らないのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/8
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009・亀田得治
○亀田得治君 大体の傾向というものは、扱っている方がわかると思うのですが、二千八百三十三名という数字が出ている以上は、その根拠は。私はやはりこの中で、おそらく二百八条とかそういうものが多いのじゃないかという感じもあるのですが、一応御説明を聞かないとわかりません。暴力行為で毀棄というものがどの程度やられているのか、これがやはり私は一つの刑法の方の毀棄罪の条項を扱う場合の重要な参考になると思います。政府の方としては非親告罪にするという、こちらとしては現状でいくべきである、そこが一つの大きな争点になっているわけです。そういうことについての一つの判断の材料になるような格好で資料というものはそろえてほしいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/9
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010・青山正一
○委員長(青山正一君) ちょっと警察庁長官に申し上げたいと思いますが、そういった資料があるならば、全部ここへ持ってきてほしいのです。もう一つは、係官がおいでになったら、その係官もこちらへおいで願いたいと思います。すぐ呼んでいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/10
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011・中川董治
○政府委員(中川董治君) 私の方でわかっている数字は、私全部心得ておりますが 第一線でやったのを全部統計の形式でとるものをまとめて申し上げますので、私の方の係官何ぼ呼んでみましても、私の答弁以上にはできないのでございますので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/11
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012・青山正一
○委員長(青山正一君) 亀田君の質問は非常に微に入り細に入っているわけですが、そこを心得ておいてやっていただかぬと困るわけです。おとといの経験でその点はよくわかっているはずですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/12
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013・亀田得治
○亀田得治君 今委員長からもお話があったわけですが、それは刑事局長は全部心得ていることになっているでしょうが、それはしかし常識として、統計の基礎になることまで全部あなたが知っている、また、そんなこまかいことまで知っておらなければならない義務も私はないと思います。それはやはり、統計作成の過程の一番下の数字を扱われた人を呼んでおいてもらった方が、私どもも便利なんです。ほんとうに警察が必要があるということを私ども何も反対する理由等は何もないのですから、そうでもないのじゃないか、努力すれば現行法でもいろいろやっていけるのじゃないかという見方も一方にあるから、それでこれは、はなはだこまかいことですけれども、やはり抽象論ではいけない、具体的にお互いに検討しようということになって、こっちも何もとらわれた気持じゃないのですから、それはやはり専門家の、あなたも専門家ですが、その下の専門家をそろえておいてもらった方が、こういうことは便利だ。
昨日池袋で暴力団狩りをやっております。私も、時節柄、警察庁長官なかなかこの間の言明通りやっているというふうに、非常に好感を持って、この新聞を拝見したわけですが、そこで、これを私つぶさに見たわけですが、結局警察でこの問題の処理としては恐喝とか暴行、傷害、あるいは今度の売春禁止法、そういったようなもので大体おやりになっている。それで間に合っているように、私この事件一つを見ても考えるのですが、そうして単独犯か共同犯かという点については、ほとんど共同の、数人の人が共同してやっている。業務妨害の方も、約三十名の人がロケ中の業務を妨害したというようなことになっておりまして、私はやはりこれが普通の形だと実は思っているのですが、そういうことになれば、たとえば毀棄罪の場合でありましても、暴力行為等処罰ニ関スル法律の第一条、とにかく二人以上である以上は、第一条の第一項で処理ができるわけです。それから、しかし、中には一人の場合があるでしょう。チンピラ一人で来ていたずらしていく、しかし、一人の場合であっても、大体これは常習者が多いわけです。けさ新聞で見ても多いのは十犯とか何とか書いておりましたが、逮捕歴十九回とか、そういうのがほとんどなんです。十九回というのは特別でしょうが、二回とか三回とか、そうすると現在の法律の解釈としては、常習性というものはこれは簡単に認定できる場合が多いのです。そういう場合には、一人であっても暴力行為等処罰法第一条第二項、これでチンピラは一人でやってもひっくくれるわけなんですよ。だから私は、そういうふうに見ていくと、刑法の毀棄罪を非親告罪にしなければ困る事態がたくさんある、そんなものはよけいないように思うのです。それで私は、第一この暴力行為等処罰法の三十二年度の統計の二千八百三十三名という中には、毀棄というのは一体どのくらいあるのか。毀棄なんかでやっているのはあまりないのじゃないか。使える法律があるのだけれども、それはあまり使わないで、大体ほかの罪名等でやっている場合が多いのじゃないかという感じを持っているのでお聞きをしているので、これは一つぜひ午後、その点呼んでお答えを願いたいと思います。意味わかりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/13
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014・石井榮三
○政府委員(石井榮三君) 亀田委員の御指摘の点まことにごもっともでございますが、私ども犯罪統計を第一線の各都道府県から徴しておりますが、暴力行為等処罰に関する関係では、この法律違反の件数を一括したものをとっておるのでありまして、そのうちで二百八条違反であるか、二百二十二条該当の行為であるか、あるいは二百六十一条該当の違反であったかというような内訳的なものは、各都道府県ではそれぞれそれは資料を持っておりますが、私どもの手元にはそうしたこまかく区分けしたものをとっておらないものでございますから、今直ちに私どもの中央の係官を呼びまして聞きましても、そこまでは承知をいたしておらないのでございまして、まことに申しわけないところでございますが、そういう点まで微細にわたった統計資料を手元に用意しておくことが望ましいのでございますが、第一線の事務をいたずらに繁雑にしてもいかぬということから、中央としましては、大観できる数字というものを今まで把握する程度にとどめております関係上、ただいまの御要望に直ちに沿いかねますことをはなはだ遺憾に存ずるのでございますが、各都道府県に照会しまして取り寄せますならば、相当の時間を要しますので、きょうの午後直ちにそういう点についてのお答えをすることはちょっと困難かと思うのでございますが、将来の私どもの心がまえといたしましては、今指摘のような点、確かに大事な点でございますので、今後十分統計資料の作成につきましても検討をしてみたい、かように存じております。従いまして、ただいま御指摘の、この表に載っております三十二年の二千八百三十三名のうちに毀棄罪に当るものが何件あったかということは、ちょっと直ちにはわかりかねるのでございますが、できるだけ努力をいたしまして、この内容につきましても詳細お答えできるようにしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/14
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015・亀田得治
○亀田得治君 それは私ちょっとそういう答弁では不満ですね。それじゃ刑罰法規を作るだけの根拠が出てこぬと思うのです。いやしくもこの刑法を改正しようなんでいうことは、これは一たん改正すれば、もう全国民がこれは守らなければならぬ、そういう問題について、過去においてこうこういうふうな数字になっていて、これだけの部分が実は困るからそれでその改正をしてほしいのだとか、刑罰法規を作る以上は、やはりそういう準備がなければいかぬと思うのですよ。従って、当然これは過去において集団的に行われたその毀棄罪、これについては暴力行為処罪法ではどの程度扱われたものか、そういったようなことが資料として出されなければ、これは私ども良心的に考えて、与野党の問題じゃないですよ、こういうことはふに落ちませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/15
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016・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 亀田先生のおっしゃることはごもっともでございます。統計の面から申しますと、私どもの方から差し上げてあります暴力関係罪名別の受理、起訴人員というのを見ますると、これは暴力団だけの問題ではなくて、この罪名に該当するというようなものを全部拾い上げたものでございますが、器物毀棄と損壊がまあ三十一年の例をとってみますると、器物毀棄という罪名のところに掲げてあります受理が七千八百三十九名でございまして、それと、その下の方に特別法犯と暴力行為等処罰ニ関スル法律違反というのが六千百六十九名になっております。この暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条で処断できる、数名が共同してやったという場合には、あるいは常習としてやったという場合には、この暴力行為等処罰ニ関スル法律の適用を受け得るのでございますし、まあ事実問題としてあるいは毀棄の方へ落しておるのもあるかもしれませんが、大体において共同してやったというのはこちらの方へ入れて処断をしておると思います。そうしますと、この七千八百三十九という数字は、大体これは単独犯だというふうに見られるのでございます。それで私どもとしましては、この単独犯の中で親告がありましたために警察で取調べをし、あるいは検察庁に事件が送致になった場合に、それを途中から取り消してきた。なぜ取り消すようになったかという事情をいろいろ聞いてみますると、おどしをかけられたというようないきさつをあちこちで発見しておるのでございます。そういうのに対応しようとするのがこの立法の趣旨でございまして、これはごく最近東京で起った事例でございますが、きわめて少数ではございますけれども、その辺のいわゆるぐれん隊とか、そういうものの生態と申しますか、暴力の状態を示す例としまして、実は私どもその事例を用意いたしておるのでございますが、この資料を私どもの手元で作ったときに、実はなまの名前などが入っておりましたので提出を差し控えておったのでございますが、こういうことで私どもの意のあるところが御理解をいただけますならば、お取扱いを御注意願いまして、一つ資料としてお出ししたいと思いますからごらんを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/16
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017・亀田得治
○亀田得治君 それば一つ私どもも取扱いは十分注意しますから、ぜひ資料として出していただきたいと思います。
そこで、それじゃ法務省からお出しになって、今刑事局長からちょっと触れられたこの資料の三十一年のところについてお聞きしますが、これは受理件数が七千八百三十九、この中でいわゆる暴力団関係のものと、そうでないものとのおよその区別等はわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/17
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018・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この統計からは区別がつかないのでございます。そうしてなお、この中には文書毀棄も入っておりますので、いわゆる器物損壊というだけではないのでございます。統計のとり方が、警察の方も同様でございますが、私の方も罪名別でとるという建前をとっておるものですから、この内容が分析されておりませんけれども、大まかに言って先ほど申しましたように、数人共同でなされる場合と単独犯の場合という大体のめどはこれによってわかると思いますが、暴力団の事犯が幾らかということは私どもの方にはわかっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/18
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019・亀田得治
○亀田得治君 一般人のを聞いておるのではない、暴力団のを聞いておる。暴力団の立法をしようとするので、そこの問題になるところをちゃんと内訳のわかるように資料を作っておいてもらわないとね。じゃこの下の点ですが、暴力行為処罰ニ関スル法律の六千百六十九、これの内訳もちょっとわからないわけですか。つまりこの暴力行為等処罰ニ関スル法律各条いろいろありますが、その中で、共同の毀棄あるいは一人でもよろしい、常習としての単独の毀棄、これはどの程度あるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/19
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020・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点も統計上はわからないのでございます。で私どもは、暴力団を取り締るという趣旨でありますことは毎回申し上げておるところでございますが、この点に関しましては、暴力団というよりもいわゆる町のチンピラでございますね。あるいは暴力団という組織をなしておるものの団体員という意味でなくて、そういう者のくずれて参りました、この中にはときには学生のような者も入るかもしれませんけれども、学生を装うてあるような者も入るかもしれませんが、とにかくそういう軽微なる暴力と申しますか、町の善良な人たちに非常にうっとうしい感じを与えます暴力、こういうものがこの対象に多くなろうかと思うのでございまして、ただ、暴力団というと若干狭過ぎるのじゃないかという感じもいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/20
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021・亀田得治
○亀田得治君 それは、私は一々暴力団、ぐれん隊、チンピラというようないろいろなものを、一々そのつど言うのはめんどくさいから、ただ暴力団と言うておるだけで、せんだって、警察庁長官から、約三千のセンターがある、所属の人は約六万くらいと考えられる、その中にはいわゆる町のチンピラも入っておるというような御説明でありましたので、ただ、私は、全部を含めて暴力団というふうな簡単な言い方で言っておるので、以下そういうつもりで私の言葉も聞いてもらいたいのですが、そういたしますと、従来、私ども暴力団が共同あるいは単独の常習的な毀棄、これは暴力行為等処罰ニ関スル法律で取り締り得るわけですが、それがどの程度実際に警察なり検察庁が扱ったか、これは今の段階では不明ということになるわけですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/21
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022・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) もう一度その点を申し上げますと、現在の刑法のもとにおいては、これは親告罪になっておるところでございますので、ここにあげられております数字は、大体告訴された分だと思います。従って、親告罪で告訴は見合せておる、結局犯罪の捜査にまで至らなかったという、検察庁において受理しなかったという事例も相当たくさんあるのだろうと思いますが、この点は不明でございます。そこで、こういう暴力的なチンピラの行為とは違う、いわゆる労働関係の争議行為から発生する暴力といったようなものが一体どのくらいあるかということを逆に除いてみれば、その他がいわゆる暴力だということになるわけでございますね。そういう意味で御説明を申し上げますと、昭和二十八年から三十二年までの統計をここに持っておりますが、昭和二十八年には、器物損壊で検察庁が受理いたしましたのは一件でございまして、暴力行為等処罰ニ関スル法律で受けたのが二百二件、以下そういうふうな言い方で申し上げますと、二十九年は二十四件、百二十三、三十年が四件、二百四十四、三十一年が十一、百二十三、三十二年が八十二、二百二十九でございます。でこれを以上合計いたしますと、二十八年から三十二年までに器物損壊が百二十二、暴力行為が九百二十一と、こうなっております。それでこの処理でございますが、百二十二のうちで起訴されましたものが三でございます。従って、起訴率からいいますと、二%強と、こういうことになる。それから九百二十一のうちで起訴されましたのは百九十、こういう数字が出ておりますのでございまして、三十一年を例にとって申し上げますと、七千八百三十九のうちには文書毀棄のようなものも入っておりますから、正確には言えないのでございますけれども、七千八百三十九件のうちで、労働関係といいますか、そういうことから発生した器物損壊のような事件は、三十一年は十一件ということになります。ですから七千八百三十九のうちで、労働関係の器物損壊というのは十一だ、こういう大ざっぱに言いますと、もうほとんど労働関係から起ってくる器物損壊というのはまあないと言ってもいいくらいでございますし、三十一年だけを例にとって申し上げますと、十一件のうちで、略式命令が一件で起訴されたのがございます。これだけでございまして、ほかには何もないわけでございます。そういたしますると、ほとんど大部分が労働関係以外の器物損壊であるというふうに申し上げて差しつかえないように思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/22
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023・亀田得治
○亀田得治君 その辺の想像といいますか、推計の数字のようですが、私先ほど一番聞きたがっておるのは、暴力行為等処罰ニ関スル法律、これの内訳の問題です。今だいぶん詳しい御説明があったわけですが、この六千百六十九という中でのこの毀棄の点ですね。これは労働関係と、そうでない関係とおよそわかっているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/23
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024・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 器物毀棄と同じような意味で御説明申し上げますと、労働関係の暴力行為等処罰ニ関スル法律違反が、三十一年におきましては百二十三件、従いまして、この六千百六十九のうちで百二十三が、この労働関係である、こういうことになります。その他は一般の暴力、こういうことに御理解していただいて、そう大して間違いない、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/24
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025・亀田得治
○亀田得治君 まあだいぶわかってきましたが、この罪名の区別はちょっとわかりにくいというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/25
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026・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) 暴力行為等処罰ニ関スル法律、この第一条の中の刑法第二百六十一条に該当するもの、その内訳は私どもの方でも統計的にとっておりませんので、詳細不明でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/26
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027・亀田得治
○亀田得治君 警察にも検察庁にも聞きたいのはそこなんですがね。実際今毀棄罪が問題になっているのですから、わからぬものを幾ら言っても、これは仕方ないですが、この暴力行為の場合の六千百六十九、これに対して起訴されたものが千六百八十、こういう数字が出ておる。労働関係はそのうち百二十三ですから、大部分が暴力関係、こういう御説明だったが、これは、どうして、こういう起訴率が低いのか。あるいは上の方の刑法犯の毀棄罪の場合でも、起訴率が低いわけですね。ほかの傷害、暴行とか、こういうものの起訴率なんか、非常に高い。こういう暴力団のやつだけが、何でこんな起訴率が低いのか。だから、皆さんは暴力団をもっとやりたいのだと言いながら、結局は、手をつけてみるのだが、そのときだけは新聞に出されたり、いろいろしますけれども、いつの間にか、うやむやになってしまっているのじゃないか。これだったら、私は、こんなくらいだったら、法律なんか改正せぬだって、現在の法律でやれるだけでも、きっちりやってもらったら、現在の私は、倍か三倍くらいになると思う。何で一体こんなに起訴率が低いのか、その理由を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/27
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028・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その理由は、明快に御納得のいくような御説明はできませんが、全体的に見ますると、刑法犯、私は暴力行為等処罰ニ関スル法律も特別法にはなっておりますが、罪質としては、刑法的な自然犯的なものだという考え方をしているわけでございますが、そういう見方で参りますと、この起訴率は、大体そうひどく低いものではないというふうに見ておるわけでございます。刑法犯につきましては、大体二割から三割程度が起訴率になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/28
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029・亀田得治
○亀田得治君 刑法犯は、それは一般の人の犯罪ですからね、主として。だから、これは諸般の事情等を考えて、適当に不起訴にしたり、起訴猶予等にする、これは了解します。だけれども、暴力団取締りだといって特に作った暴力行為等処罰ニ関スル法律の運用が、こんな起訴率では、私は、ずいぶん実際つかまえておりながら逃しておる、そんな必要があるのかという感じなんですがね。そんな、一方では法律を強化したいと、こう言っているのでしょう。そして、先ほどから何回聞いたって、一人の常習的な毀棄なり、あるいは二人以上の常習的でない一回の毀棄でもいいのだ、二人以上であれば、そんなものは現行法でやれるのに、それが一体実際はどうなっているのか、明らかになっていない。そして暴力関係のそういう事件が、起訴率が、こんなわずかである。これは社会の世論の要求にも私はマッチしないと思うし、ちょっと納得できませんがな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/29
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030・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ごもっともでございますが、このいわゆる暴力という中には、少年に属するものが相当多いのでございます。一般の成年の犯罪は大体横ばい状態を示しておりますが、少年の方はかなり増加しております。この少年につきましては、ことに暴力をやりますのは、年長少年で、十八才から二十才に満たない、あの辺のところが多いのでございますが、これは、すべて御承知のように、家裁に送られまして、大部分が少年院に入れられるというような形で処理されておりますので、これは刑事事件になった分でございますので、その点が少し、ほかのも一生懸命やっておりますが、起訴率が低く見えますのは、そういう関係も加味されておると思いますから、その点をお含みいただいて書類をごらん願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/30
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031・亀田得治
○亀田得治君 それでは家裁の関係がどうだとかというような点を数字的にこれは出してもらいませんと、暴力団狩りだけはやっておいて、あとはずっと世間が忘れたころに出してしまっておるようなのでは、これは、はなはだ心もとないわけです。
それから告訴の問題がありますが、たとえば後難をおそれて、告訴してくるとか、こぬとか、こういう問題があることは、私も知っております。しかし、そういう点は、数字的にどういうふうになっておるか。私は、告訴という問題も、実は暴力団をやはりなくするというのは、社会全体の、やはり努力ですからね。告訴なんかはやはり十分してもらう、悪質な者があった場合に。そういうふうに警察も努力すべきだし、それからまた、そのために迷惑を受けるような者があれば、警察がちゃんとそれを取り締っていく、そういう点に非常に欠けておるものがあるのじゃないかと思います。告訴しても、日本の警察は厳として、そのためにあとで迷惑をかけるようなことがない、こういう安心感を与えておいたら、あまりいたずらが過ぎれば、告訴してきますよ。ところが、世間がうるさくなってくると、暴力団狩りをやるが、あとは放置してしまう、そういうことをやっておるから、そういうことなら、告訴なんかしたら、ばかを見るかもしれない、そういう関係が多分に私はあると思います。だから、そういう点を私は、ほんとうにもう少し検討してもらいませんと、現行法でも相当まかなえるような体裁にもなっておるのに、一方では、暴力団をどんどん放しておって、さらに非親告罪にしてくれと言ったって、だから、その辺を心配するのはもっともなんですよ。そういう暴力団にきちっとした態度をとれないような警察は、やはり民主的でないのですから、これは労働組合にかかってくるかもしれない。こういうことでもめておるのですからね。その辺のことがもう少し私は、きょうはわかるようにしていただいておるのだと思って御質問したのですが、はなはだ残念ですが、刑事局長に法律解釈だけ聞いておきます。これは、わかりきったことですが、私どもの最終的なやはり結論を出すのに、非常に大事な問題ですが、いわゆる暴力団——チンピラが二人以上で器物毀棄をやった場合には、暴力行為等処罰法第一条の第一項で処罰できる、親告を持たないで。それから第二点は、チンピラの中の一人がやった場合であっても、それが常習的にやっておるチンピラであれば、この暴力行為等処罰法第一条の第二項で、それは親告を待たないで処罰できる。この点は、法律を見ねば当りまえのことですが、その通りですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/31
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032・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまの御解釈は、まさにその通り同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/32
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033・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、抜けておるのは、結局は一人のチンピラがたまたまやった、これだけなんだ。これに対しては、ちょっと扱いにくいというだけなんであって、そういうきわどいところまで要求しようというなら、もっと資料等をきちっとしてもらって、過去の実績はこうだ、いろいろやってもらわなければ、簡単に私は、刑法の改正なんて、とんでもないと思うのですよ。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/33
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034・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 亀田委員の御懸念の点はわからぬわけではございませんが、親告罪に関する犯罪は大体被害者から親告がありまして、そうして捜査に着手するのでございますが、その前に、もう親告、告訴も何もしないということになりますと、従って、そこにどういう犯罪があったかも警察も知らぬでいるという場合が多かろうと思います。これは重大犯罪でございますと、そんなことはございませんが、これは財産的に軽微な犯罪でございますので、親告があって初めて動き出すということが多いと思うのです。従って、親告がない犯罪というのはなかなか私どもとしてはつかみにくいのでございます。で、親告があった犯罪がすでにこの七千という数字が出ておるのですが、あったものが捜査の中途において取り消したりいろいろするわけです。それらの事情をなぜ取り消すのかということで、若干ながら調べた資料を今お配りしようとしておるわけですが、それを見ますと、それは亀田先生のおっしゃるように、権利の上に眠ってはいかぬのでございますけれども、事柄が、財産が経微なものであるということにも一つの事情があると思いますが、商売かわいさ、いろいろな点からつい取り消すといったようなことの実情になっておりますこともこれまた否定しがたい現実の事実でございます。そうだといたしますと、もちろん強姦の場合も同様でございますが、親告罪でございますから、その被害者の意思を無視して捜査すべきものじゃない、これはもう現在の親告罪でない犯罪につきましても、被害者がもう許容しておるような場合には、それが一つの起訴猶予にもなっておるわけであります。いわんや親告罪として今まであった犯罪が、被害者の意思が尊重されますように運用されますことは当然なことでありますが、しかし、処罰してもらいたいと思いながらも、お礼参りその他がこわさに取り消していくと、こういうような実情を親告罪の名において、またこれを放置しておくということもこれまたよくないことなので、そこはわれわれとしましては、この親告罪が非親告化された場合の運用につきましては、十分考慮しなければならぬ点でございますけれども、七千のうちほとんど労働組合に関係のない規定でございます。この規定のものの中にそういうことが親告罪になっておりますために、この種の犯罪が助長されておるというふうに見られるといたしますならば、これは何とかして法律上手当をしていかなければならない。大体この暴力立法は、もっとやろう、もっとやろうのために立法しておるのではないのであります。この委員会でも趣旨を御説明申し上げましたように、過去数年間にわたって暴力追放のためのきびしい取締りを励行してきて、そして裁判並びに取締り上、法の欠陥がありますために最終の目的を果しがたいと、こう思われる部分についての最小限度の改正として出しておるのでございまして、その点一つどうか誤解のないよう御理解を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/34
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035・亀田得治
○亀田得治君 あなたのおっしゃる点は、その立場に立っての考え方は一応は了解できる点もあるのですが、ただ、一方では、警察としての十分な努力を尽しておらぬ面が確かにあるのです。それをほっておいて、その刑罰法規の整備だけを求める、それがほかに関係のないことならいいのですが、ほかにも関係のある刑罰法規の強化を求める、それだけでは納得できぬじゃないか、告訴なんかの問題は、これは確かに告訴の取り消しなんかの問題は、これは今度は何でしょう、お礼参り等があれば、これを処罰する規定がほかの条文にさらに出ておるわけですね、百五条の改正として。ところが、そういうものが出ておるんですからね、お礼参りとなればそれでびしっとやったらいい、しかし、そのためには警察が暴力団そのものに対して厳然たる態度がとれなければだめなんですよ、だから今度はそういう法律もできるんだから告訴なでは安心してしなさいとか、こういうふうに一度やってみてもおそくはないわけでしょう。それを一方では刑罰法規を出しながら、何といいますか、その刑罰法規があまりきき目がないような立場での改正を一方でまた求めるというような意味にもなるわけなんですよ、だからそういう意味で、私どもも絶対にいつまでも反対しておるとか何とかいう意味じゃなしに、もう少しこれは検討の余地があるんじゃないか、そう思っておるんです。でこの点は、もう少し一つあとからお聞きしますが、次に労働組合の関係について若干……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/35
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036・高田なほ子
○高田なほ子君 関連して。今亀田委員が御質問しているところは大へん大切なところでございますが、この警察とそれから暴力団との結びつき、これについてはいろいろ批判もあるようですが、どうしてこの警察と暴力団が結びつかなければならないかということについて、私は、非常に疑問を持っています。それはやくざとか暴力団を利用しなければならないというような立場に今警察は置かれているんですが、たとえば、星が見つからなかった場合に、その星を早く見つけなければ工合が悪いというようなときに手っとり早くこの暴力団あるいはやくざのようなものを利用して、そうしてその星をつかむというようなことから、警察はどうしてもこういうやくざに世話になるという形になっているから、今のような亀田さんからの御質問が出るんだろうと思うんです。犯人検挙に当ってどういうふうにこういうものを利用しておるんですか、今の状態をお話し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/36
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037・石井榮三
○政府委員(石井榮三君) 警察がいわゆる暴力団等とくされ縁があるのではないか、かようなことをときどき批判をいただくのでございます。確かに過去におきまして遺憾ながらそういったことが単なるうわさでなしに若干事実としてあった点もうかがえるのでございます。その点はまことに遺憾に思っております。本来、警察はそうしたものといわゆるくされ縁なく、きぜんたる態度をもって職責の遂行に当らなければならぬものである、かように私は考えておるのでございまして、昭和三十一年以来私は暴力取締りということにつきましては、特に警察の仕事の大事な重点の一つとして取り上げまして、しかもこれは単に一時的な線香花火式な取締りであっては決して目的を達するものではない、と申しますのは、いわゆる暴力団の過去の実態から見ましてきわめて根強い力を持っておる、警察が一時強い態度でこれに臨みましても、手を引きますと、また、直ちに頭をもたげてくるというのが過去の実例でございますので、長期、継続的にこれと取っ組んでいかなければならないということで、三十一年以来継続的に暴力の取締りということにはかなり力をいたしておるのでございます。しかしながら、警察の力にも限界があるのでございまして、必ずしも私が期待するような十分な実績はまだ上げていない点はまことに遺憾でございますけれども、しかし、年々かなりな成果を上げて参っておると思っておるのでございます。今後さらに一そうそういう態度を堅持して努力を続けて参りたい、かように考えておりまして、従いまして、暴力団と警察とくされ縁があってはならない、そうした暴力取締りを厳正にやるためには、まず過去において言われたような警察と暴力団ととかくのくされ縁があって、そのために取締りが十分できないんじゃないかという批判があってはならないということで、暴力団とのいわゆるくされ縁というような非難を受けないように、警察官は日常の言動においても十分に注意をするように私は第一線の方方に希望をいたしておるわけでございます。そうした点は漸次改善をされつつあるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/37
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038・高田なほ子
○高田なほ子君 今あれですか、退官した警察官ですね、これらの方々の中で大きなやくざの組、といってもばく然としたやくざの組、そういうような組の顧問をしておるような人があると聞いておりますが、これはもちろん現職警官でありませんけれども、これはやはり相当大きな問題じゃないかと思いますが、実情はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/38
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039・中川董治
○政府委員(中川董治君) この警察官をやめて暴力団の顧問になったという人間はちょっと私頭に浮ばないんですが、警察官がたくさんございますので、それで懲戒免職でやめた、そういった人間もございます。犯罪を犯して検挙した事例もあるようでございますが、相当名の通った警察官で、やめて顧問になっておるという点は、私は聞かないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/39
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040・高田なほ子
○高田なほ子君 全国に三千六百の組があるといわれておりますが、この下には三十万のチンピラを擁しているというようなことであります。伝え聞くころによると、退官された警察官がかなりこういう組合の顧問のような形、あるいは非公式の顧問のような形になっておるということを聞いております。今の御説明では、こういう点について十分な御調査がないのではないかというふうに受け取れますが、何かお調べになったことがございますか、こういう点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/40
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041・中川董治
○政府委員(中川董治君) 国民の方の中で暴力刑罰法規に触れるものがございますので、もちろん警察が検挙するわけでございますが、とりわけ大体組織を持って、暴力というものを大体生活の資料にするようなことの傾向があるという組織は私の方で究明しております。究明して、いろいろ各方面の資料に基きましてその究明した結果は、こっそり警察署の取締り上の資料とするために名簿等も作っておるわけでございますが、そういう努力は過去も行いましたし、今後も大いに努力いたして参りたと思っておるのでございますが、そういうことで、たとえば懲戒免職を受けた巡査が暴力に触れる行為があって検挙された、こういう事例はあり得るのでございますが、顧問とか、そういった点について元警官という名前が出て参らないのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/41
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042・高田なほ子
○高田なほ子君 いわゆるぐれん隊の顔役と警察は相当顔見知りになっているという現状のようですが、今日、顔見知りというのは、なぜそんな顔見知りになっておるのか。今後その顔見知りに対してどういうふうな措置をおとりになっていこうとするのか。これは週刊雑誌に出ておるんですが、二十数年間も勤めている東京の警部さんです、S署のH警部さん、なかなか腕前のよい警部さんだと聞いておりますけれども、この方の引っ越しのときには、土地のある組のトラックが運搬をしたり、家屋の修理をしたり、それから自分の組の配下にある大工をよこしたりして、なかなか日常警部さんに好意をもってやっておるというようなこと、こういうことであっては、とうてい暴力団あるいはやくざ、ぐれん隊、こういうようなものを取り締ることができないというふうに考えるわけですが、現在こういうような点についてどんなふうな御指導をされているわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/42
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043・中川董治
○政府委員(中川董治君) 警察官の規律の保持につきましては、ただいま長官からも厳重にお話がございましたように、警察規律の確立のためにおきましても厳重な監察をやっております。それで、警察官の中には不幸にしていろいろ勤務規律上の違反行為をやる者がありまして、懲罰等の場合もございますが、そのふだんの行為その他についてどうも警察官として好ましくないと、こういうような行為等をやっておる者につきましてはどしどし懲戒処分もいたしまして、そういう面から完全に断ち切りまして、私ども警察に課せられた犯罪捜査という使命を十分に果し得るように、部内体制の確立には最大の努力をいたしております。懲戒権の発動と指導の徹底等によりまして、その点につきましては、過去におきましても実績をもって努力しておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/43
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044・高田なほ子
○高田なほ子君 犯人の検挙には点数制度がとられているように聞いておりますが、やくざの検挙は非常に点数が悪いと聞いております。要するに点数制度、成績について勤務評定をやられる場合には、こんなつまらぬものの検挙というものに手を抜くのは当りまえだと思うのです。点数制度とやくざの検挙というのはどういう関係にあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/44
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045・中川董治
○政府委員(中川董治君) これはいわゆる過去の警察におきまして、その犯罪検挙をした件数の表面の数字だけをもって、警察官が優秀であるか優秀でないか、こういうことを言う傾向があったことは事実でございます。その弊害が、点数ということのみによってやりますと、弊害が非常に出て参りますので、私ども警察の運営といたしましては、すべての犯罪はもちろん検挙すべきなんですけれども、とりわけ国民の要望するような、国民が被害を受けるという犯罪に重点を置いてその取締りをやっていくと、こういう角度から、警察官を全人格的に把握して参って、表面出て参りますところの数字というものみにこだわらない、こういう運営をやっておりまして、過去にやりました点数制度によるところの弊害を芟除すると、こういう点につきましては大へん努力しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/45
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046・高田なほ子
○高田なほ子君 そうすると、今度は暴力取締りには相当その点数制度もよくするというわけですか。今までは大へん安かったそうじゃありませんか。だからこういうものの取り締り、こういうものの検挙、これには手を抜いて、むしろこれを警察が利用した——警察力の手薄なのを、犯人を検挙するのにもっと点数の多いものをかせぐためにこれらを利用した、こういうようなことでありますが、今度はだいぶ違ったのですか、今のお話によると。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/46
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047・中川董治
○政府委員(中川董治君) 表面に出ますところの数字だけで、そのある警察官の勤務評定をやっておりますと、問題が起ることは何度も申した通りでございますので、私どもといたしましては、ほんとうに大へんな苦心をいたしまして、暴力団を検挙して、そういったことによって国民を犯罪から守る、こういう警察官の使命を果したという者につきましては、いろいろ警察部内の表彰その他につきましても十分考えて、ほんとうに国民が警察に要望をする仕事、これを責任をもって、ことに大へん苦心をしてやったという点につきましては、いろいろ警察官の広い意味の人事管理といいますか、いろいろな表彰制度を含めてのそういった点につきましては非常に気を配りまして、究極におきましては国民を犯罪から守ると、こういった点につきまして警察の使命を果すべきものである、こういう意味合いで懲罰もやりますし、表彰もする、こういうふうにしてやって参りたいと思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/47
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048・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと休憩前に……。休憩中にでもできたらお調べ願いたいのですが、三十一年の七千八百三十九、これが結局告訴の破り下げ等があったために起訴が非常に少いのか。その辺のことが、おわかりでありましたら今お答え願いたいし、告訴の取り下げ等との関係はどうなっておるか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/48
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049・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 七千八百三十九の中で、告訴の取り消しにより不起訴になりましたものは三千六百十一でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/49
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050・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、あと結局約二千ほどというもののが、告訴の取り下げはないけれどもまあ放置した、はなはだ暴力団に対しては恩情のある扱いを大体おやりになっている、数字的にもそういうことになる。それは中にはもちろん微罪で、そんなことは告訴を取り下げなくても、処理する必要もないというものもあることは私も想像しますけれども、これだけ暴力団の問題をやかましく言っているくらいなら、その辺の、あなた、もっとできる権限を私は使ってもらいたいと思うのだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/50
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051・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ごもっともでございますが、七千八百のうちで三千六百はこれはもう当然仕方がない。あと残りますのは四千二百、その中から少年でありますために家裁送致になるものがある、そういうものを引きますと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/51
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052・亀田得治
○亀田得治君 それは幾らある……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/52
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053・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これはちょっと数字が出ておりませんが、暴力事犯が年少少年に多いことは別の統計からもわかりますので、あるいははっきりわかるかもしれませんが、そういたしますと、大体半分——五、六割ぐらいの起訴率になってしまうのじゃないのでございましょうか。そうなりますと、これは非常に高い起訴率だと思います。私はむしろ二、三割というのが刑法犯、一般の起訴率でございます。厳重にやるといたしましても、おのずからそういうものには限度がありますが、まあ今の起訴、告訴取り消しの分を除きますと、相当高い起訴率だと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/53
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054・亀田得治
○亀田得治君 これはまた前の話にちょっと戻るが、そういうことなら、じゃあ暴力行為等処罰ニ関スル法律の起訴率が何でこんなに低いのですか。これは告訴の取り消しとかそういうことに関係ないんですからね、そうでしょう。そんなにしっかりやっているとおっしゃるなら、何であとの方はこんなに低いのです。その数字が大体低いなら私どもも了承しますが、だから何といってもその点の欠陥があるんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/54
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055・神谷尚男
○説明員(神谷尚男君) ただいまここでちょっと統計表で調べてございますが、暴力行為等処罰法の二十一年の受理が六千百六十九でございまして、そのうち起訴が千六百八十でありますことはお手元の資料でおわかりのことと存じますが、その他の関係をちょっと調べますと、起訴が千六百八十でありまして、検察庁で不起訴の処分にしたものが千六百五十一でございまして、起訴と不起訴を足したもので起訴になったものを割った数といいますと、大体半分になるわけでございます。そのほか家裁あるいは他の検察庁等へ送致した数が二千七百七、こういう数になっております。従いまして、起訴率としましては、不起訴になったものとほぼ同様の数である。従いまして、起訴率というものを、起訴と不起訴を足したもので起訴したものを割った数としますならば、約五〇%ということになるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/55
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056・亀田得治
○亀田得治君 この受理件数は警察の受付の数字とは大体同じなんですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/56
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057・神谷尚男
○説明員(神谷尚男君) この受理の件数は、その大半が警察からの送致の数だと思います。しかし、そのほかにも特別司法警察官からの送致もあろうかと思います。また、検察庁で立件したものも若干あろうかと思います。しかし、大半は警察だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/57
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058・亀田得治
○亀田得治君 これは警察段階の数字は先ほど拝見したわけですが、この昭和三十二年の検察庁の方の数字がこれには載ってないんですが、これはどうなんでしょうか。受理件数と起訴件数、検察庁の方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/58
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059・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 検察庁の方はまだ出ておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/59
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060・亀田得治
○亀田得治君 出てないですか。しかし、大体同じぐらいの数字だろうと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/60
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061・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 大体これで御推察願えれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/61
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062・亀田得治
○亀田得治君 前年度も同じような数字ですから大体同じと思いますが、ところが、そうすると、警察の方の数字は暴力行為に関する数字が二千八百三十三人、これは人の数ですね。この点は非常に少いわけですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/62
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063・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、警察の方の統計はいわゆる暴力団の犯罪検挙人員となっておりまして、暴力団というのは、かなり一昨日おあげになりましたようないろいろの種類のをあげられたのでありますが、それに属するものとしてここに書き上げられたと思いますが、私の方の検察庁の受理の統計は、この犯罪に該当するもので暴力団とは言えないものも入るわけであります。そういう点から数字に差異があると思いますが、私の方の数字にも人員で表わしております。件数ではございません、人員で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/63
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064・中川董治
○政府委員(中川董治君) ただいまの竹内政府委員と同様なんですが、何が暴力団なりやという問題は大へんむずかしい問題でありまして、われわれは、暴力をやる行為はすべてこれ暴力団ということも一つは成り立ち得るのですけれども、比較的多く暴力行為をやる人間を集中して視察するということが効率的でございますので、そういう意味合いでしぼって暴力団の名簿を作ったわけであります。そういう人間がやりました数字が三千幾らという数字でございますので、これ以外に暴力団は全然ないと、こういうふうには理解できないのであります。これ以外にもセミいわゆる暴力団というものがあろうかと思いますが、そういうわれわれはセミいわゆる暴力団の方も問題にしなければなりませんけれども、日常非常に暴力行為をやるような組織を集中的に調べるということが警察としては効率的でありますので、その意味においてしぼった数字が、ただいま申し上げましたように二千幾らでございますので、竹内政府委員の問題と全く同じように理解しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/64
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065・亀田得治
○亀田得治君 それはちょっとその説明は納得いかないのですが、というのは、先ほど刑事局長は六千百六十九というのは、うち労働関係が百二十三、従って、大部分がいわゆる暴力団、そういうふうに御説明になったわけです。それがあまりにもあなたの方の数字と違いすぎるわけですね、だからこういう統計を作られる感じから言いますと、どうも警察の方では、暴力団というものをしぼって考える概念です。従って、あなたはセミとか三分の一とか言いましたけれども、そういう程度のものはみんな暴力団の中に入れておらぬような感じがするのですが、この統計のとり方をみると、検察当局の方はこれは大部分が暴力だ、あなたの方の言う暴力団の人数として出しておるのに、あなたの方が三分の一だ、半分だ、労働組合を抜くから半分です。こんな数字の出方はともかく、警察と検察は、暴力団取締りを一体でやらなければならないのに、はなはだ統一がないように思いますが、数字だけの点では。私のお聞きしたいと思ったのは、実際は検察庁に行かないで、そうして警察だけで適当に処理してしまっているものが相当あるのじゃないか、手入れするというようなことはちょいちょいあるのだが、実際にきちっと書類送検というようなことになるのはわずかじゃないかと思っているのです。それならば、警察の数字は検察庁よりも倍ぐらいあると、これなら私は納得いくのです。逆ですからね、それで納得いかない。お聞きしますが、警察が手をつけたのは全部検察の方へ出しているのですか、取捨選択は検察にまかすという態度で強くやっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/65
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066・中川董治
○政府委員(中川董治君) 警察で捜査いたしました事件は、根こそぎ検察庁に送致いたしております。たとえば、ここに書いておりますところの殺人につきましても、昭和三十二年におきましては、二千六百五十二人を送致いたしておるのであります、殺人について。それから強盗につきましても、五千五百十人を送致いたしておるのであります。五千五百十人の窃盗の罪をやったものを暴力団と理解すれば、五千五百十人になるわけでございますが、私ども日常視察活動として最も中心的に暴力をやりそうな人間をしぼって視察内偵をして、それを登載されたものが、強盗について申せば五千五百十人のうち、千四百六十五人ということでありますから、その暴力団の概念をもう少し広く概念すれば、当然そう理解するならば、警察と検察と一体でございますので、その意味においては、全く同じ考え方を持っておるのでございます。ところが、もっと大きく広い意味で名簿を作ったらいいじゃないかという考え方もごもっともでございますので、われわれといたしましては、そういう暴力をやる人間の組織を解明いたしまして、それにつながりのある人間を視察内偵を徹底しておりますので、そういう実際暴力団が視察内偵の徹底によって、その暴力団の名簿が多くなるということはありましょうが、ここに書いているのは、比較的常習的に暴力行為をやる人間のうちから送致した者はこれだけである、それ以外については送致しないわけではありませんが、例示すると、強盗については、昭和三十二年、五千五百十人送致いたしているのであります。その点を一つ御了解いただけばいいのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/66
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067・亀田得治
○亀田得治君 それは強盗とか殺人とか強姦とか、そういうことをやったのはもちろんこれは放置できるものでもないし、そうでしょうが、そうでなく、毀棄とか暴行とかそんな程度のものですと、結局警察段階で相当処理されてきておる、これは法規の建前は全部検察庁に送ることになっておるから、局長としてはそういうふうにおっしゃるでしょうが、この数字が逆に違うところから、むしろ私はそういうふうに逆な感じを持つのですよ。ともかくね、はなはだ数字が粗雑な点があるのですが、暴力団の関係は現行法でも相当やれますが、十分尽されていないという感じを私ども十分持っておるのです。一応あの毀棄罪と暴力団との関係はこの程度にしておきますが、あと労働組合との関係は、別途午後お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/67
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068・青山正一
○委員長(青山正一君) 午後一時四十分まで休憩いたします。
午後零時五十三分休憩
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午後二時十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/68
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069・青山正一
○委員長(青山正一君) 休憩前に引き続き、これより委員会を再開いたします。
質疑を続けます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/69
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070・大川光三
○大川光三君 先日来ただいま議題となっておりまする三法案につきまして、亀田委員からきわめて熱心なる質疑が続けられておりまして、
〔委員長退席、理事一松定吉君着席〕
全く私どもは亀田委員の熱心なる御審議に対して敬意を表しつつ、その御論旨を拝聴して参ったのでございますが、この機会に時間を割愛していただきまして、私は証人等の被害についての給付に関する法律に対する質疑をいたしたいと存じます。
まず第一点は、本法案の第一条において、本法の目的として、刑事事件の証人もしくは参考人等に一定の給付をすることによって、証人等の供述、出頭を確保し、刑罰法令の適正迅速な適用実現に寄与するとするにあるようでございまするが、同じく本法案第三条の給付の要件を見てみますると、身体または生命に害を加えられた場合に限定して、証人らが精神的に受けた打撃による損害は含まれていないようでございますが、果してかようなことで本法制定の目的を達し得ることができるかどうかということに関して、まず当局の御所信を伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/70
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071・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお尋ねの点でございますが、生命、身体に対する現実の被害についてのみ給付という形によって保護しようという法案でございます。精神的な面に与えられた苦痛、そういうものに対する補償あるいは給付ということは、一応この法案からは除外されておるのでございますが、この点につきまして、保護がこれでは足りないんではないかという御疑念であろうかと存じます。今回の暴力立法−刑法の一部改正並びに刑事訴訟法の一部改正並びにこの法案を通じまして、被害者その他証人等を保護するということが、最も現行法のもとにおける盲点と申しますか、そういう面が欠除しておるのでございまして、その点を補正するのがこの法案の大きな目的でございます。この被害者その他の証人につきましては、いろいろな角度から被害をこうむった場合における保護という点は考えなければならないのでございますが、お礼参りというようなものにつきましては、百五条ノ二という規定を設けることによりましてその保護を考えたのでございます。で、警察の犯罪捜査に協力をいたしました者がこうむった生命、身体に対する被害に対しては、これと同趣旨の給付規定がございます。で、これに準じまして、この法案を作ったのでございまして、一応、この生命、身体に対する被害は、これによって、さしあたりこの問題は解決するんではなかろうかというふうに考えた次第でございますが、もとよりそういう精神上こうむった被害につきましての被害者の請求権と申しますか、そういうものは、また、別途別の法律でできるんでございまして、さしあたり、直ちにこの法律によって給付を全うして、少しでも保護に遺憾なきを期していきたいという考え方でございまして、仰せのように、徹底したものではございませんが、さればといって、これによってかなり保護に厚くなるものというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/71
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072・大川光三
○大川光三君 ただいま、精神的方面の被害については別途に考慮できるということでございますが、具体的に申しますとどういうことでございましょうか。法律によるのか、あるいは省令等でそういうことが補強できるということになるんでございましょうか。その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/72
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073・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは省令によって補強するという意味ではございませんで、民法の規定によりまする保護でございます。これはまあだれにも与えられておるのでございまして、まあ一応その関係は民法の規定の方にまかしておると、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/73
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074・大川光三
○大川光三君 民法の規定と申しますと、結局損害賠償の問題になると思いますが、そういうことをいたしましても、結局立証責任が請求者に転嫁されまして有名無実になるというきらいがあると思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/74
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075・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) ただいま精神的損害に対する補償といいますか、給付の点でございますが、これは現行の、国がこういう場合に補償といいますか、給付といいますか、そういうものをいたします法制が一応療養給付であるとか、障害給付でございますとか、第五条に規定いたしておりまする給付という形で給付を行う、これが先ほど局長が申し述べました警察官の場合であるとか、消防の場合であるとか、こういう形式が一応きまっておるわけでございまして、それにならいました点と、それから精神的な損害につきましては、その把握が非常に困難であるという技術的な面もございまして、両々相待ちまして、この法案におきましては、一応生命、身体に対する給付というふうに限定した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/75
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076・大川光三
○大川光三君 次に、本法案の第六条によりますと、警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律にならっているようでございますが、両者の補償は本質的に同じものであるかどうかという疑問がございます。証人らのごときは、法律上、憲法第三十七条の刑事被告人の権利の裏づけとして司法への協力を義務づけられておる。ところが、警察官への協力者は、かような義務がなくして、積極的に協力するものでございまして、言葉は当らぬかもしれませんが、事務管理的な立場におると思うのでありますが、果してこの両者は全く異なる地位にあって、しかも両者の補償の本質を異にいたしておるのかどうかという点に関する明確なる御所見を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/76
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077・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 証人は、仰せの通り、国民の義務として規定されたものでございます。その意味におきましては、警察の捜査に協力をいたします場合の国民の態度というものとはいささか異なるものがあろうかと存じますが、本法案におきましても、単に公判係属しております事件のいわゆる裁判所における召喚に基く証人だけを対象といたしておるのではなくしで、警察並びに検察における捜査段階における参考人をも含むことになっております。そういう意味におきまして、本質的にはやはりこの警察の捜査に協力します者もひいて刑事司法の実現に協力するというものでございまして、その観点から申しますならば、憲法上義務づけられておる、いないという点の差異がございますけれども、特に捜査の段階における本法案の場合を考えますると、両者の間にさしたる本質上の差はない。そうしてこれを全体としてながめてみまするときに、本質から申しますならば、作用の面から見て参りますと、両者は何ら差異はないのじゃないかというふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/77
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078・大川光三
○大川光三君 ただいまの警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律について特に伺いたいと存ずるのでありますが、この法律の第二条によりますると、職務執行中の警察官に協力援助したため災害を受けた場合に限って給付がされるということになっておりますが、それがために、警察官のいない場所において犯人を逮捕しようとして受けた災害に対して給付が受けられないというように解釈されます。私はいわゆる民間警察の実をあげまするためには、たとえ警察官がその現場におらなくとも、犯人逮捕等をなすということは、国家の警察官に協力援助するゆえんでございまするので、これはぜひ改めてもらわねばならぬということを常々考えておるのでございまして、今その一例を申し上げますると、これは昭和三十二年九月のことでございまするが、北海道新聞の九月三日の記事によりますと、「人助けが身のアダ」という大きな見出しで、「暴漢捕え重傷負った日向寺さん」「補償なく生活にも困る」という見出しで、その内容を申し上げますと、「七月の二十七日夜のこと、札幌郡豊平町平岸一区印材店勤務日向寺忠二さんが、自宅近くの草むらで男に押えつけられ、もがいている少女を見つけた。元札幌市警察巡査部長だった日向寺さんは向いの高橋春吉さんに連絡するとともに現場に引返してきたところ、男は突然逃げ出し、日向寺さんは約五十メートル追いかけて男を取押えようとした。ところが賊はナイフを振回し、日向寺さんはひん死の重傷を負い、血まみれになりながらも高橋さんと二人で賊を捕え警察に引渡した。日向寺さんはすぐ入院したが、肩、顔、腹部などに七カ所も深い刺し傷を負う重傷だった。ようやく一命はとりとめたが、健康保険に入っておらず日に二千円以上の入院、治療費を支払っていた。これを伝え聞いた地元の人たちが七万円にのぼる見舞金を贈ったほか、札幌東署のお巡りさんたちも一万円余を病床に届けた。しかしこれも費い果して八月中旬経済的な理由から退院してしまったが、まだ傷口もふさがらず、ここ当分は勤めはおろか通院もやっとという有様だ。暴漢はその後の取調べで幼女や少女を専門に襲う変態男で、これまでもたくさん余罪があることがわかり、地元の人たちが「道や警察でなんの補償もしないのはおかしい」と関係方面に運動しているが、まだ決っていない。「警察官に協力援助したものの災害給付に関する」法律や道の施行条例があるにはあるが、これは「職務執行中の警察官が、その職務執行上の必要により援助を求めた場合、その他これに協力援助することが相当と認められる場合」だけで、警察官が現場にいないときはビタ一文も補償はされないというわけだ。」かような記事が出ておるのでございますが、これはひとり北海道だけでなしに、全国至るところにたくさんの事例があると考えるのでありますが、昨年の九月三日以降に何らかこれに対する法的な処置が講じられておるかどうか。もし法的な処置が講ぜられていないといたしますならば、この際、警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律を改める御意思があるかどうか伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/78
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079・石井榮三
○政府委員(石井榮三君) ただいま御例示になりました点、私はなはだ申しわけございませんが、そういう事実を聞いておりませんので、そのこと自体については、おそらく、新聞をお読み上げいただいたのですからその通りのことがあったものと想像するのであります。警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律は確かに相当のしぼりを入れておりますので、今御例示になりましたようなものは、現行法におきましては直ちにはこれに該当しないという点が確かにあるのでございますが、しかし、今お話しになりました通り、非常に警察の仕事に御理解をいただき、身を挺して協力援助して被害者を救い、犯人を、逮捕するというりっぱな行動をとられたために、自分自身は非常にお気の毒な結果になっておるという点は、法の上の措置は不可能であるといたしましても、警察側といたしましては、これに対して十分お見舞と申しますか、医療その他の必要な措置のために最善のお手伝いをしてしかるべきものと、かように考えますので、現行法の規定を越え、そうした点につきましては、私ども警察部内におります者といたしましては、十分に考え、かつ、最善の努力を現実に払うべきものと、かように考えますので、現地の北海道警察本部に対しましては、私からこの点につきましては、さっそくよく実情照会かたがたこれに対する最善の措置を、今からでもおそくない、とるように注意を喚起したい、かように考えております。全国的にそうした事例が他に幾つかありますかどうか、そういう点もよく検討いたしまして、他の府県に対しましても、北海道にこういう事例があったということを紹介かたがだこうした問題に対しての善処方を促すようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/79
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080・大川光三
○大川光三君 長官からそのお立場においてのきわめて率直な御意見を伺いましたが、そこで、法務大臣に伺いますが、ただいま申しておりまする警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律というものを、たとえ警察官がその現場におらなくても、犯人逮捕等に協力した者に対しては同じ給付をするということに法律を改めるということに関する大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/80
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081・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいまの御意見は、まことにごもっともと思いますし、私ども検察、警察の立場に立っておる者といたしましては、まことにありがたい御意見でございまして、これは国家財政との関係もございますので、今日の警察官援助に関する現行法、また、今度御審議願っておりまするこの法律、これらも私どもといたしましては、いま少し行き届いた法律ができればいいと思っておりますけれども、この程度で踏みとどまっておるわけでございますが、将来といたしましては、もう少しく手厚い補償のできるような道を講ずる方向に向って研究をいたして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/81
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082・大川光三
○大川光三君 次に、本法案第三条の給付要件の立証責任は一体どこにあるかという点についてのお伺いをいたします。一体、この条文によって給付を受けようとする者において、みずからその損害を証明する責任を負うのか、あるいは国において、その損費を職権によって調査決定するのであるか、その点明瞭でございませんので、あえてこのことをお尋ねするのであります。たとえば、加害者の故意の供述と、加害との因果関係と申しますか、関連性等の主観的要素の存在について、証明の責任を被害者側に負担させるというようなことでございますれば、これは難きをしいる結果ともなりますし、ひいては立法の趣旨を没却するおそれがある。私は先般も国家賠償法のことに関して、特に無過失責任を認めなければ、国家賠償法の本来の目的は達せられないのだということを法務大臣にも申し上げ、これが私の多年の主張でもあるのでございますが、本法におきまする立証の責任の有無、範囲について、明らかなる御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/82
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083・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) この法律によりまして給付を受ける権利を得たかどうか、この権利の発生の構成要件に該当する事実があるかどうかという点につきましては、一般の権利の場合と同じように、権利を主張いたします証人、参考人の方が一応立証するという考え方をとっております。で、この点は、この法律の第九条の一項でございますが、「この法律による給付を受ける権利は、これを受けようとする者の請求に基いて、法務大臣が裁定する。」といたしております。で、この規定に基きまして、一応はこの給付を受けようといたしまする者が請求するわけでございますが、請求に際しましては、要件に該当しておるかどうかということの立証をするわけでございますが、その資料に基きまして、法務大臣が確認するという建前になっておりますので、おのずから一般の、この民事訴訟におきまして、原告が被告に対して権利を請求するという場合とは、ニュアンスが違った場合があろうかと存ずるのでありますが、一応は、法務大臣に対しまして請求をする者が立証するという建前をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/83
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084・大川光三
○大川光三君 そこが私の実は問いたいところでございまして、たとえば、弁護人が国選弁護料の請求をするというようなときには、きわめて事務的に請求の要旨をしたためればそれで事は足りる、それと同じように、本件のような場合においても、主観的な、あるいは因果関係というようなことまでも請求者に立証責任を負荷するということでは、この法律の目的が十分に達せられないといううらみが私はあると思いますので、いわゆる請求ということについては、きわめて寛大なおおらかな、そうして擁護的な立場から扱われなければならないということを私は希望をいたしておきます。
それから次に、この条文を見ますると、「証人若しくは参考人又はその近親者が」云々ということを述べておりますが、一体近親者というのはどの範囲のことをいうのか、承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/84
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085・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) 第三条に、その近親者の内容が規定してございまして、「証人又は参考人が刑事事件に関し裁判所、裁判官又は捜査機関に対し供述をし、又は供述の目的で出頭し、若しくは出頭しようとしたことにより、当該証人若しくは参考人又はこれらの者の配偶者」と、この配偶者には、いわゆる事実上の婚姻関係におる者も含むという趣旨を明らかにいたしまして、その配偶者と、それから「直系血族」、それから直系血族でなくても「同居の親族」と、かような者が、他人からその生命、身体に危害を加えられました場合に、国において給付をいたそうという考えでございまして、一応近親者の範囲はこの三条に掲げてある者に限っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/85
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086・大川光三
○大川光三君 そこで「直系血族」、これはよくわかりますが、「若しくは同居の親族」という、この「親族」ということは、民法の定めに従うことになりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/86
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087・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) 仰せの通り、民法の定めに従うことにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/87
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088・大川光三
○大川光三君 そこで、この本法によって請求をいたす者には、身分関係を証明する必要が多々起ろうと存ずるのであります。警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律の第十三条には、給付を受けようとする者に対し、戸籍に関する無料証明の請求権を与えておりますが、本法にはかような規定を欠いておる、しかし、同法よりも本法案の場合の方が、戸籍に関する証明を必要とすることが多いということにかんがみまして、戸籍に関する無料証明ということを規定しておかないのはどういうわけであるか。あるいは援用されまする警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律の中にあるのかもしれませんが、一応この点に関する御見解を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/88
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089・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) ただいま御指摘のように、警察官の給付の場合につきましては戸籍に関する無料証明の規定がございますのに対しまして、この法案におきましてはかような規定を欠いておる次第でございます。この点につきましては、関係機関とも十分に相談をしたのでございますが、一応この法案の場合には、住民登録法に基きます関係機関の報告という手続を利用してまかなっていきたいというふうに考えておりまして、必ずしも厳格な無料証明という規定がなくても、事実上住民登録の手続によってその親族関係が明らかにできるんじゃなかろうか、かような趣旨から、この規定を落した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/89
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090・大川光三
○大川光三君 そこで、念を押しておきますが、先ほどの立証責任の場合で、身分証明については、あえて戸籍謄本を要せずして住民登録による証明でも可なりということに解釈してよろしゅうございましょうか。もし、それであるならば、そのことを今後これを取り扱われまする職員に周知徹底していただきたいと存じますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/90
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091・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいま辻参事官からお答えしたような趣旨で立案をいたしましたが、裁定機関は法務大臣でございますし、また、その下部の職員にその権利を委任するということになっております。もしその裁定に当りまして、そういう点に疑義がありまするならば、もうこれは当然裁定側でそういう資料をそろえることになろうかと思いますので、その点を通牒によって明らかにいたしまして、なるべく請求者にはあまり負担をかけないような方向でと、その趣旨のもとにそういう規定をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/91
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092・大川光三
○大川光三君 ただいま裁定者という言葉が出ましたので、それに関連してお伺いをいたしますが、補償裁定権限の受任者というものを、法案によって見ますると、法案の第十二条によりまして、法務大臣は補償裁定の権限を所部の職員に委任することができるというようになっておりますが、ここにいわれる「職員」とはどの範囲の人たちをさすのであるか、その点をまず伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/92
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093・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいま御審議の御参考に供しまするために、証人等の被害についての給付に関する法律施行令要綱を御配付申し上げるように手配をいたしました。で、その第二に、実施機関といたしまして、それをどうするかという点でございますが、実はこの点がただ一つ未決定の事項になっております。法務当局といたしましては、加害行為地を管轄する地方裁判所に対応する検察庁の検事正とするのが一番適当であろうかというふうに考えておるのでございますが、これに対しまして、裁判所側からは、事、公判廷で行われたものにつきましては、裁判所がするというのがいいのではないかという御意見がございます。その点につきまして、なかなか強硬な意見を持っておられましたが、この法案を提出するまでの間に意見調整をいたしまして、とにかく法務大臣が所部の機関に委任してやるというところまでは裁判所も了解をしたのでございますが、さてその所部の機関を検事正にするかどうかという点につきましては、まだ今後協議してきめるということになっておるのでございます。それで、裁判所側はもし検事正については、公判廷以外のものについてはもう検事正でけっこうなんだけれども、公判廷のものについては法務局長、つまり人権擁護部を受け持っておりまする法務局長、あるいは地方法務局長にするのがいいのではないかというような意見も述べられておりまして、今慎重に協議中でございますが、検事正、あるいは法務局長、または地方法務局長がその所部の機関として指定されることになろうかと考えております。
〔理事一松定吉君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/93
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094・大川光三
○大川光三君 この裁判所の方のことに関してお話がございましたが、所部の職員といいますと、これは裁判所は含まないことになるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/94
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095・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 裁判所は含まないのでございます。その点は、先ほど申し上げましたように、裁判所が含まぬということまでは了解を取りつけまして、この法案を出しました。ただ所部の機関に、検事正にするか、法務局長にするかという点が未定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/95
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096・大川光三
○大川光三君 そこで、その点がまだ未定であるということでございますので、私は希望といたして、少くとも証人については、その権限を検察官に委任するというようなことがございますると、結局、供述の真実を確保いたしまする上において、刑事訴訟の運用に暗影を投ずるおそれなしとしないと思います。従いまして、この場合は、先ほどお言葉がございましたように、できれば検察官以外の職員に委任することが適正妥当であると考えるのでございまして、これはひとり裁判所側の意見でなく、弁護人の衝に当る在野法曹の立場から見ましても、かくあるべしだと存ずるのでございますから、これは希望として申し述べておきます。
最後に、条文に関連いたしまして、第四条の三号によりますると、証人が加害行為の原因となった供述において、重要事項について虚偽の陳述をしたときは給付はされないのだ、給付の全部または一部はされないのだということに定められております。しかしながら、果して虚偽の陳述に当るかどうかは、的確に申せば偽証罪が確定しなければ判明しないのでありまするから、もしその以前に給付を行い、後日虚偽の陳述であることが判明したときには、きわめて煩瑣な問題を生ずるばかりではなく、供述の真偽を調査するため、あるいは公判記録の内容を調査するとか、その他の、場合によっては証人等を調べなければならぬということで、これは裁判所にとってもすこぶる迷惑なことであると思います。しかも、証人が虚偽の陳述をしたために害を受けた場合には、第四条二号の「証人等が加害行為を誘発したとき、」ということに該当すると思われるのでございまして、従いまして、この四条二号、三号の関係におきましては、むろん三号のような規定は削除してしまった方が問題点を残さずにすっぱりしていいのではなかろうか、かように考えますが、その点に関する御所見を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/96
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097・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) ただいま御指摘の点でございますが、第四条第三号が設けられております趣旨は、この法案第一条にございますように、証人または参考人をして安んじて証言または供述をしていただきまして、そうして刑罰法令の適正かつ迅速な適用実現に寄与しようというのがこの法律の目的でございまして、この目的からいたしまして、重要な事項について虚偽の陳述をしておるというようなことが明らかな場合にも、なお、国が被害についての給付をするということは、理論上どうも首尾一貫しないというところから、この四条三号の規定が設けられた次第でございます。それでは、四条三号の場合には、その認定についていろんな煩瑣な手続も考えられて、二号で全部まかなえられないかという御指摘でございますが、この点につきましてはまかなえる面もあるのでございますが、たとえば、かりに、事例で申し上げますと、証人、参考人が被告人側の者から頼まれまして、被告人が大へん悪い者であるということを証言いたします場合に、悪い男であると言う場合に、そう、さほど悪くは言わなかった、頼まれましたのであまりひどくは言わなかったけれでも、若干法廷ではひどいことを言ったというような場合には、この三号でやはり重要な事項について虚偽の陳述をしたということには当る場合があり得ると考えられるのでございます。しかしながら、そのような場合には、第二号の証人の方が加害行為を誘発したというような条項には当らないというようなことが考えられますので、二号がありましても、なお三号が必要がある、かような考えで設けられた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/97
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098・大川光三
○大川光三君 最後に、もう一つ伺いたいんですが、この給付の時期ですね、それについての制約は、この法案にあるのでございましょうか、私詳しくまだ検討しておらぬのでございますが。先ほど申しますように、虚偽の陳述をした者には給付をしないのだというようなことになりますと、その虚偽の陳述に対する認定というものは、偽証罪の判決の確定を待つのか、それ以前に一応給付はするんだ、そうすると、給付はするというその給付の時期は、証人等が日当をもらう場合ならば、その日もらえましょう。しかし、こういう被害をこうむったという場合においてはやはり迅速にこの給付が行われなければ、身体、生命——まあ身体の場合にさっそく病院とか、薬代の間にも合わないんだというような懸念もあるのでありますが、一体、その給付の時期は、原則としていつであるかということを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/98
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099・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) この法律案によりまする給付は、この法律案に規定いたしておりますこの給付の原因が発生いたしましたならば、すみやかに給付をするという建前でございまして、確定判決を待つとか、さような関係は考えておりません。ただ御指摘のように、大へん問題になるというような例外的な場合には、若干この認定まで待つというようなことも考えられますけれども、通常の場合には直ちに支給するという建前をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/99
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100・一松定吉
○一松定吉君 ちょっと関連して。こういう場合に、法務大臣が、第九条の規定によって、法務大臣が裁定することになっておるが、その裁定が不公平であると認められるよらな場合の救済方法はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/100
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101・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) この第九条第一項によります法務大臣の裁定は、行政事件訴訟特別法に規定いたしております行政処分である、かように考えておりますので、この法務大臣の裁定に不服があります場合には、行政事件訴訟特例法によりまして一般裁判所に対して処分の取り消し、変更を求め得る、かような考えをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/101
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102・一松定吉
○一松定吉君 行政裁判によるんだね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/102
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103・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/103
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104・一松定吉
○一松定吉君 この法文のどこかに、この裁定の不服のある者は行政裁判の手続によるとかいうような規定を書いた方がいいように思うんだが、それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/104
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105・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) 御指摘の通りでございますが、他の類似の法律におきまして、当然かような主務大臣の裁定の場合に、何ら規定がなくても、行政事件の対象になるという考え方をとっておりますものでございますから、本法案におきましても、その点特に規定をしなかった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/105
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106・亀田得治
○亀田得治君 では、午前に引き続いて毀棄罪の点について、さらに若干御質問いたします。労働組合については暴力行為等処罰法で扱う問題についてのよしあしについては、昨日いろいろ議論したことですから、それは一応別といたしまして、ただいま現行法、現在の方針としては、集団的に労働組合がそういう事件を起した場合には、暴力行為等処罰法で扱うということになっておるから、従って、毀棄罪を非親告罪にしても労働組合の方々にはあまり御心配をかけないはずだ、こういう趣旨の御説明が、総理初め今まであったわけです。私、ここで若干問題を明らかにしたいのは、これは抽象的に議論をしておりますと果てしがありませんので、こういう場合がよくあるわけです。団体交渉を会社側と労働組合の方、たとえば役員だけでも十二、三名おる、そうしてやっておる。問題によっては非常にお互いに空気が対立して議論をする。すると、まあお茶でも出しておる場合、コップでも持ちながら議論しておると、うっかり落した拍子に割れる場合があるわけですよ。本来は過失なんですが、しかし、それは主観的な問題であって、現われた形態というものは、ともかく器物をこわした、あるいは文書などを、組合の幹部と会社側の代表者がやり取りしておるときに、そんな文書は間違っておるとかといったようなことをやって、引っぱった拍子に破れたとか、こういうことがやはりそういう交渉の場では起りがちなんです。こういう場合には、労働組合自体としては、これはもう団体交渉が目的なんですから、そういうことがあっても、これは、そういうことをした個人の責任なんです。だから従って、そういう場合には、たとえ団体的に、団体としてそこに多数の者がいても、本来の正しい法律の適用からいったら、これは個人の毀棄罪として処理さるべきものなのであって、従って、私は、そういう場合には親告を待たないで、これを非親告罪にすれば、会社側の親告を待たないで警察官が介入できる。まあそういうちょっとしたことを理由に介入することがいい悪いは別として、介入し得る、個人の問題として。私はそういう場合は個人の問題だと思う。それをもし暴力行為であるというのは、これはこじつけなんでね。そういうふうに私は思うので、労働組合の場合には、適用がないような御説明が一昨日の連合審査のときもちょっとありましたので、私はこれは非常に大きな法律問題だと思いまして、場所ではないけれども、実は一昨日もちょっとその点については少しおかしいじゃないかということでお尋ねしたわけですが、そういうふうに私は考えておるのです。その考え方に間違いがあるかないか、一つその点だけをまず先に、刑事局長の御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/106
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107・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 団体交渉の場合に、まあ話が激してコップが割れるような場合をおあげになりました。具体的な事情をまあつぶさに見ませんと、判断がしかねるわけでございますけれども、ただいまお示しのような事例でございますと、それを団体行為であるというふうに認めることは困難であろうと思います。従いまして、亀田委員のお説に私は賛成の意を表したいと思うのでございます。
そういう場合におきましては、それならば、官憲が介入する余地があるのではないかという後段の部分につきましては、私いささか意見があるのでございまして、まあ団体交渉、団体的な行動でないような場合に、取り上げた事例が何かありますならば、お示し願いたいと、むしろ私の方で思うのでございます。今までそういう個人的な行為としてやられたのについて告訴ざたがあって、それを取り調べたという事例を私は承知いたしておらないのでございます。まあこれは運用の問題といえばそれまででございますが、団体的にやられたような場合におきましては、先ほど申し上げましたような取扱い処理の問題になっております。いわんや個人的にまあ感情でやったというような場合は、今亀田委員も仰せのように、むしろ過失犯的な物事が多かろうと思いますし、そういうものを一々相手方から取り上げて云々というのは、親告罪の時代におきまして、告訴があればこちらがやれるといえばやれるわけでございますが、そういう告訴を受けたという事例も聞きませんし、そういうふうに処分された例がありましたならばお示しを願いたいとむしろ思うくらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/107
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108・亀田得治
○亀田得治君 それはね、お示ししてくれといえば、またよく、これは私の方にもそういうものばかり集めておるのがありますから、お示してもいいんですが、つまりそういう事態はたくさんあるんです。そういう現象自体は……。ただ、それが親告罪になっておるからいいわけなんですね。親告罪になっておらなければ、まあ争議といってもいろいろな形態があります。争議が長引いておって、警察自体がどちらかというと感情的になってしまっているというような状態になっておりますと、これが非親告罪になっておると、それが警察の一つの争議に干渉する糸口にされる。こういうことがもう十分予想できるわけです。これはあなたせんだってもお話申し上げたように、現職の警官がおる前で暴力団の諸君が組合員をなぐっておる。ともかくあとから組合の要求によって事件にされたにしても、とにかくそういう状態がしばらくでも続く。それはだれが見たって、どちらかというと経営者と労働組合と両方、二つ並べた場合には、警察が公平だ、公平だと言っても、現在の感覚では、せっぱ詰まってくると、やはり会社側は七、三くらいの程度の態度ですね、それは場所によって違いますよ。非常に公平にやっているところもたくさんあります。だからそこで、そうしてまた実際はそういうコップが割れたとか、いやちょっと紙がちぎれた、そんなことを会社側は告訴はしないんです。こんなものはストが片づいてしまえば、またみんな同じ職場で働くのですから、こんなことは第一したがらないのです。したがらないのにこれをはずす。はずされた状態で警察が自由に介入される、こういうことでやはり非常な危惧を与えることは、これはまあ事実なんです。刑事局長が、そういうことで事件になったことがあるなら出してもらいたい、こういうことをおっしゃったわけですけれども、それはつまり親告罪になっているから発展しない面が一つあるわけなんです。そうでしょう、会社側もあとのことを考えて遠慮している。だからそれは、そういう例は出せぬからいいわけなんです。だから、そういうことが今後起らぬようにするために、もう少しこの点は一つ慎重にやってもらいたいと、こういうことなんです。一体警察がそんなことをすると見るのがおかしいじゃないか、ここの点ですけれども、これは刑事局長はどういうふうにお考えか知りませんが、やはりなかなか、いろいろやりますよ。たとえば、毀棄罪が非親告罪になりますと、警察としては、いつでも手をつけられるわけですから、争議行為が切迫してきますと、何が起るかわからぬ、犯罪が起るかもしれぬと思われる場合に、警察は出てくる権利があるのだといったようなことを言う、言って出てこられる場所もあるのですよ。そうすると、毀棄罪なんかが親告からはずれておりますと、毀棄罪自身だってこれはもう警察が自分で自主的に介入できる権限があるのだというようなことを言うて、やはり出てくるわけですね。だから、こういう点は十分一つ御検討願ってやってもらいませんと、立案者の方じゃもちろんそんなことをお考えになってやった問題じゃないでしょう、ないでしょうが、組合員の諸君から言いますと、まあちょっとしたことがいろいろな口実にされまして、そうして気の毒な立場に置かれたりした人たちがたくさんあるわけなんです。これはまあ事件が済んでしまうと労使双方とも全く、もちろん何であんなことをしたかというようなことになることが多いのですけれども、どうもせっぱ詰まっているときには、ちょっとしたことでも理由にしたいんですね、そういうものなんですよ。だから私は、この点は、一つ非常に慎重にやってもらいたいという気持をもっているのです。いろいろ御理解等も私はまあ若干得ていると思うから、それ以上のことは言いたくありませんがね。ともかくまあ毀棄というようなものは、ガラス一つ割れたって毀棄でしょう、極端に言えば……。まあ相当古びたいすなんかがある。団体交渉なんかで力を入れたり、どすんとすわるとすると、こわれるのがあるんですよ。あるいは団体交渉が済んでから、みんな帰っちゃった。帰ったあと、まあ交渉はうまくいかぬし、この辺で一つちょっと押したら何とかなるのじゃないかというようなことを会社の人が考えますと、あとからでもこわすかもしれぬ、で警察と連絡する。組合員にしたってそんなものがこわれているかどうか、はっきりも知らないで、どうせほかのことが頭に一ぱいですから、帰ったあとですから。ところが、実はこわれておったというようなことを言われ出したら、これは切りがないわけです。だからそういう意味で、まあ皆さんが想像以上に労働組合の人としては実はこの問題を気にしているのです。二百五条とか、二百八条の問題も、これはありますが、毀棄の問題だけは、日常茶飯の問題であるだけに乱用をされ出したら全くかなわない、これは一つそういう点で私希望を申し上げたいと思います。なお、これが非親告罪になると、刑の関係からいって緊急逮捕の対象になるでしょう、その点の見解はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/108
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109・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それは緊急逮捕の対象にならないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/109
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110・亀田得治
○亀田得治君 違うでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/110
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111・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 二百六十一条の器物損壊の方は私の考え違いをしておりましたが、緊急逮捕の対象になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/111
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112・亀田得治
○亀田得治君 従って、二百五十九条の方も当然緊急逮捕の対象になるでしょう。紙切れ引っぱってちぎれたというようなこと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/112
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113・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 仰せの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/113
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114・亀田得治
○亀田得治君 そうなりますと、全く正しい労働運動をやっている人でも、こういう毀棄なんていうことは、しばしばあっていいことじゃないでしょうが、起りそうなことなんです。それは緊急逮捕の対象までにされたら、まあそこで労使の問題が片づいちゃうのだ、幹部の一人か二人ぱっと引っぱってしまったら、それはあとから警察や検察庁だって、それはちょっと不当逮捕じゃないかとか、裁判で、ごちゃごちゃやった場合、無罪になることはあるかもしれませんが、しかし、そのときはあとの祭でね、そのときの場所というものは、結局どうもこれは警察があっちの味方し過ぎるじゃないか、こういう悪い印象を与えるようなことは、私はやっぱりない方がいいと思う。現状ではやっぱりその点が相当憂慮されますので、一つ十分御検討をしてもらいたいと思っているのです。私どももそんなことも何も起すつもりでこれは言っているのじゃないのです。
それから次に、今申し上げた労働組合の立場からの問題ですが、もう一つは、毀棄罪の一般的な考察をしてもらいたいと思うのです。それで皆さんの方では、暴力団の問題から出発してこの問題を検討されたわけでしょうが、私たちの方では、第一には暴力団の問題、第二には、労働組合の問題、第三には、暴力団にも労働組合にも関係のない問題がこれまたたくさんあるわけなんです。その点の考察というものが私はいやしくも刑法に手をつけられる以上は慎重に検討してもらいたいと思うのです。ともかく家の中でも、職場でもあるいは街頭でも、山でも、まあ人間生活はある面からいうてみれば、物理的に物の形状をこわして、新しい物を作っていくことが、これが進歩になるかもしれない、一つのものにじっとしておったら、そんなものは進歩も何もない。だから、そういうものなのですから、毀棄なんというものはざらにある。そういうようなことで、これは親告罪、ともかくこわされたから一つ何とかしてくれと言うて、結局親告罪になっているわけで、これをはずしたら、警察は人員とか、予算の面でどうなさるつもりなのか、ともかくだれかが張ったビラを引きはがしたとか、あるいは山に行って花などをちぎっていく、みなよくないことです。しかし、そういうことは道徳的に反省すべき問題で、これを警察、検察がやろうと思ったら大へんなことになります。家の中で夫婦げんかをして物をこわすとか、そんなところまでまさか介入してこぬだろうが、極端にいえば、そんなことはどこにでもあるわけです。こわされた本人が黙っているのに、文句を言う必要はない。私は警察に聞きますけれども、この社会にある毀棄現象、これを警察の今の陣容と予算で一切犯罪ありと思量して全部取り調べられるのかどうか、長官に一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/114
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115・石井榮三
○政府委員(石井榮三君) 警察力にはおのずから限界がございますので、ありとあらゆる事犯をすべて漏れなく取締りをするということは、私は困難であろうと思っております。結局、事犯の性質にかんがみまして、緩急軽重の度合いを考えまして、警察力の許す限り法の秩序のため最善を尽すのが、現在の立場としてとるべき方策ではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/115
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116・亀田得治
○亀田得治君 しかし、ほかの犯罪では、そんなことはおっしゃいませんね。大体親告罪のものは別として、どろぼうをしているのを知っているのに、軽重を考えてほって置くのだ、そんなことは建前としても言えないでしょう。私はその辺に、やはりこの毀棄罪というものの扱いは慎重を要するものがあると思うのです。そうでなければ、今長官がおっしゃったように、結局はこれを非親告罪にすれば、あるものだけをねらってやっていく、こういうことになる。警察はそのねらいには、常習的なものでない、単独のチンピラだけをねらうのだ、こうおっしゃるでしょうが、結局より出していくわけですから、労働組合の方もより出される。ねらい撃ちしかこれは使えないことになるのですね。この条文は。私はこれが二年も三年もお互いに研究して、やっとそうしようとすることになる場合なら、私もそれに同意しますよ。もう少しお互いにこれは研究の時間を与えてほしいと思う、そういう意味で。
それから毀棄罪の問題については、外国法との比較の問題とか、いろいろこれはありますが、少し時間を節約したいと思いますので、一応この程度にこれをとめておきます。
次に、二百八条ノ二の持凶器集合罪についてお尋ねしてみたいと思います。
まず第一に、刑事局長にお尋ねしますが、ここに書いてある「財産」の意味はどういうふうに御理解しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/116
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117・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点は先日も御質疑がありましてお答えを申し上げたと思いますが、建造物の損壊とか、器物損壊あるいは文書の毀棄といったようなものでございまして、要するに、なぜそういうふうに制限されてくるかと申しますと、「兇器ヲ準備シ」と、こういうことになりますので、その凶器との照り返しと申しますか、そういう関係から、おのずからこの財産の範囲が限定されてくるのでございます。そういうふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/117
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118・亀田得治
○亀田得治君 法律上は財産といいますと、たとえば憲法の二十九条では財産権という言葉を使っておりますが、この財産という意味は非常に広範な意味であるというのが一般の憲法上の解釈ですね。公法上、私法上あるいは一般法、特別法あるいは物権的、債権的あらゆる権利、それから無体財産のようなものまで入るという解釈が一般的です。で財産といえば、私はやはり法律上はそういう意味になるのじゃないかと考えるのです。それで刑事局長のおっしゃるような意味で用いられた例はないのじゃないかと思うのですが、もしそういうことなら、他人の物とかあるいは財物とか、そういう表現を使いませんと、おっしゃったようなその限定的な意味になってこないのじゃないか。で物をといえばこれは民法の規定でちゃんと有体物、形のあるもの、こういうふうにちゃんと規定しておるからこれははっきりしておる。それから財物というのは、釈迦に説法のようなことになるのですが、刑法の二百三十五条等では財物という文字を使っているわけですね。で、財産という場合には範囲が広いと思うのですが、そしてしかも物とか財物という場合であっても、たとえば電気とか、物理的に管理の可能なものまで含めているわけですね。財物自体が相当観念が広まっているわけです。だから刑事局長のように、建造物あるいは器物といったようなものを意味しておるのであれば、私は財産ではとてもそんな意味にならないのみならず、財物であっても私はまだそんな意味にならないと思う。あなたのような意味なら、具体的にやはり生命、身体または建造物とかいうふうに書いてもらいませんと、あとに明らかな疑義が生ずると思うのですが、この三つの関係はどうでしょうか。言葉の使用の問題ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/118
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119・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 仰せの通り、財産というふうに申します場合には、非常に広いものでございます。しかし、ここでそのような限定を受けるということは、加罰行為とされた集合罪の構成要件が先ほど申したように、凶器が使われるということが前提となった財産の損害でございますので、無体財産権のようなものは入らないことは、これはもう明確だと思いますが、それにいたしましても財産上の利益というような意味のもの、あるいは債権、物権といったような、そういう権利の侵害を意味するものでもないこともこれはまた明白であろうと思います。で、結局、私が申しましたような範囲に限定されて参るのでございますが、その用語例はすでに現行法のもとにおきましてもあるのでございまして、それを踏襲したといえば踏襲したということなのでございまして、そういう意味から申しますと、私の解釈はあながち恣意的な解釈ではないというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/119
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120・亀田得治
○亀田得治君 その財産というのをそういう限定した意味で使っている例は私は知らないのですが、どこにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/120
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121・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) 第二百八条ノ二でいっております財産でございますが、この財産はいわゆる財産から刑法上でいいます財産上の利益というものを除外したものというふうに理解いたしておるのでございまして、そういたしますと、結論的には刑法の面におきましては、財物というものとほとんど一致してくる、だろうと思うのでございます。ただ、その場合に、財物といたしました場合には、窃盗とか、強盗の対象にならない、盗犯の対象にならないという疑いもございますので、財物と書くことも若干疑義がある、こういうような意味から財産という言葉を使ったわけでございますが、先ほども局長が申しておりますように、本条におきましては、凶器を持って害を加えるというところから、おのずからこの財産の対象が限定されてくる、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/121
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122・亀田得治
○亀田得治君 それはともかく財産というものが法律上はっきり姿を現わしておるのは憲法の二十九条、これに対する解釈はもうほとんど憲法学者が一致しておる、非常に広い。その同じ言葉が出ておるのですから、やはりそのように、解釈をしなければならないと私は思うのです。そこでちょっと聞きますが、憲法上の財産権の中には、憲法二十九条でいう財産という中には、営業権、これは入るでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/122
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123・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) 広く財産と申しました場合には、御指摘のように、一定の目的のもとに、または一定の主体のもとに結合されました財産権の総体をいうというふうに理解すべきものであるというふうに、考えております。かような意味におきまして、憲法とか、一般の私法の方は使われておるのだろうと思われるのでございますが、刑法の面におきましては、先ほどから申し上げておりますような、特に本条との関係におきましては、財産の範囲がおのずから限局されてくるわけだろうと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/123
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124・亀田得治
○亀田得治君 だから、あなたの方は、限定する意味で書いておるという、その考え方は私はいいと思う。もしそれであれば、たとえば普通財産といえば営業権も入ってくる。これはつまり労働組合との関係が出てくるわけです。労働組合は形の上でこれと同じ集合をやったことがあるとしても、そんな何も生命や身体をねらってやるわけがない、こんなことは。しかし、相手は営業をしておる人ですから、だからそこに何かつながりが出やすいわけです、こういう財産というような不明確なものがあると。だから、大体別府事件のような問題等を考えても、私は生命と身体だけでいいんじゃないかという感じがしておるのですよ。それでまかなえないのかね。それでもし、まかなえないとするならば、いや建物も保護したいのだとかいうならば建造物と書くとかね。そうしてもらわないと、財産と書くだけでは当然営業権のようなものも含まれてきますよ。その点を私ども心配しているわけです。それから先ほど「財産」というものが限定された意味で使われておった何か例等があるようなことをおっしゃったのですが、あればその点一つ御参考にお聞かせ願いたいのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/124
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125・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 刑法の二百二十二条の脅迫罪でございますね。「生命、身体、自由、名誉又ハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコト」こう書いてありまして、まあ「自由、名誉」というようなものが凶器を準備してまあ凶器を使用するような場合が考えられますので、そういうものが入らないという趣旨からいたしまして、一般的に脅迫の対象になりますのは、まあ生命、身体あるいは財産という意味からいたしまして、まあこれを三つ並べておる例から考えましても、これを除外するということはおかしいのであるし、といってその範囲はおのずから限定されておるという意味でただいまおっしゃった営業権といったようなものはもちろん入らないという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/125
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126・亀田得治
○亀田得治君 いや、それは刑法二百二十三条はその営業権などは入らないという意味での「財産」ということはどうして言えるのですか。「財産」と書いてある以上はいわゆる「財産」であって、営業権なども全部入るでしょう。お前の営業をつぶしてやるぞという脅迫をしても、これに該当しないのですか。するでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/126
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127・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 百八条ノ二の「財産」はもちろん広うございますが、ここに、集合罪にいう「財産」が今言った凶器を使って害を加うるような対象になる財産ということになりますので、おのずから今申しましたような範囲に限定されるというふうに解釈いたすのでございます。ただ、その「生命」「身体」と並べて「財産」を保護の中に入れるということの意味は、二百二十二条にもそういう前提がありますということを申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/127
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128・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと無理じゃないですかな。ともかく「財産」という言葉の意味は、憲法解釈としてもはっきりしておるし、それから刑法のほかの条文でもそういう広い意味で使っておるのに、この際だけ別な意味で解釈せいといっても、それこそ昨日法務大臣が法律がよくひとり歩きするようなことを言っておるわけですがね。ほかの意味と同じようにこれは解釈される方が可能性が強いのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/128
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129・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) もちろん法律の解釈は裁判所の最終的に示すところでございますが、条文の構成要件の置きどころによりまして、先ほど来繰り返し申しますように、凶器を使って害が起ってくるような財産、こういうことはこれはまあ幾らひとり歩きをいたしましてもその解釈は裁判所がまた示されるであろうということはわれわれ今まで法律を扱ってきました者の常識といたしまして、この部分が天馬室を行くように違った解釈が出てくるということは私も考えられないのでございまして、それは「財産」とそれをしぼった「財産」の中の、しぼりはかけておりませんが、害を加うべき「財産」、それは凶器を使用して、こういうことでございますから、そこにおのずから無形の物に凶器を持ってやるなんということになりますと、これはまあ少し現実離れをしておることになるわけで、やはりこの凶器を使って害を加うべき対象となる「財産」ということになりますと、憲法でもって認めております「財産」の中で、それになじむと申しますか、ふさわしい対象、そういう「財産」こういうことになります。そうなってくると、自然にその範囲が限定される。そういうふうに解せられるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/129
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130・亀田得治
○亀田得治君 大体凶器というものは、この生命、身体に対するものですからね。裏面、逆の面から言ったらこんな「財産」なんということは要らぬじゃないですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/130
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131・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 仰せの通り、そういう考え方も成り立つわけでございますが、凶器を示してというのは、暴力行為処罰の法律にもございます。二百六十一条の罪を犯したということで、この場合には凶器を示して二百六十一条の器物損壊をするというまあ書き方なんでございまして、これは凶器でもってこうやるという意味ばかりではなくて、それが凶器を示しながら二百六十一条の罪を犯すというところに、違法性があるというふうに考えたわけで、同じような考え方なんでございます。しかしながら、凶器ということでこの手段が示されておりますために、自然財産の範囲も同時にしぼられてくる。こういうふうにまあ解せられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/131
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132・大川光三
○大川光三君 ちょっと今の「財産」の問題ですが、まあ簡単に割り切って有体財産ですね。こういうことには言えませんか。ここの「財産」というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/132
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133・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) 大体仰せの通り、有体物ということになるわけでございますが、不動産をも含むという趣旨を明らかにいたしたいために、財物というその点まぎらわしい言葉を避けたという含みもあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/133
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134・大川光三
○大川光三君 ちょっと例をあげて申しますというと、工場の中に引き込められておる電力線を切ってしまう。こういうときにはどういう罪になりますか。やっぱし営業権の妨害といいますか、営業妨害ということで、亀田君の言うように、営業権というものも「財産」のうちに入っておらぬと。電力線を切ってしまう、工場の機械の運転をとめてしまうというような具体的な場合にはどうなるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/134
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135・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) ただいまお示しのような事例の場合、本条に該当するというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/135
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136・大川光三
○大川光三君 そうしますとですね、電力線を切るということが本条に該当するということになれば、その侵害されるものは何なんですか。やはり営業権ではないですか。営業そのものじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/136
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137・辻辰三郎
○説明員(辻辰三郎君) その点とにかくこの電線という器物が毀棄される。電線に対して害を加えるという点で、本条に該当するのじゃないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/137
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138・大川光三
○大川光三君 おかしいですよ。そんな電力線などは目的じゃないのです。電力線を切ることによって工場の機械の運転をとめようという、機械の運転をとめるという目的のために、手段として電線を切るのですね。ただ、電線を切っただけで財産侵害だというだけではわれわれはちょっと満足できないですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/138
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139・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいま辻参事官がお答えしましたように、本条はまあ暴力を処罰する規定の次に置いた規定でございまして、刑法の置かれております位置から申しますと、個人の財産権を侵害する、あるいは個人の犯罪と申しますか、そういうところに置かれている位置から申しまして、今お答え申し上げたように、物そのものに対する考え方、つまりその電線を切ることによりまして、背後にありますところのその電線が引かれている工場の持つ営業権、その工場を持っております者の営業権というものにも侵害が影響してくるかもしれませんけれども、さしあたり二百八条の考えておりますのは、物自体を目ざしている、そう重い罪ではないわけなんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/139
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140・亀田得治
○亀田得治君 そういう意味ならともかく、この財産は、今までのほかの法律とは違った意味で書かれていることになりますから、もう少し明確にやはりしてもらいたいと思いますね。このままでは営業権等も含む意味にどうしたってなってきますよ。ならぬといっても、財産という言葉の意味自体が刑法のほかの条文でもそういうふうに使われているのだから、ほかで使われていないのなら別ですけれどもね。それで電線を切ったような場合のことは、単なる器物としての扱いという意味なら、建造物と器物とここに二つ入れてもらえば、あるいは大川委員のおっしゃったようなふうな表現でもいいわけですけれども、有体物でもいいわけです。これは不動産も入りますよ、有体物に。これは民法の解釈上不動産も含めた意味です。そういうことの方が私は正確だと思いますので、これは一つ研究してもらいたい。
それから次に凶器でありますが、これも昨日たびたび御質問等もありましたがこれは古い判例だと思いますが、旧法時代の人を傷つけたりする危険性があれば棒ぎれ一つでも凶器とみなすという判例があったと思うのですが、その点どうでしょうか、そういう判例があったように私どもは聞いているのですが、お調べでしたらお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/140
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141・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 棒ぎれが凶器であるという趣旨の判示をした判例は私存じませんが、凶器を説明したものの中には、かなり広い意味ではなってないかと思われるような趣旨の判示したものが、これは非常に古い明治三十九年の四月十二日の判決にかなり広く認められております。要旨を読んでみますと、これは旧刑法でございます。「刑法第三百七十条ニ所謂兇器ハ人ノ身体二危害ヲ加フヘキ器具ヲ意味シ人ノ身体ヲ殺傷スヘキ特性ヲ有スル一切ノ器具を包含スルヲ以テ或器具カ刑法第三百七十条ノ意義ニ於テ兇器タルヤ否ヤハ器具其物ノ構造カ人ノ身体ヲ殺傷スルニ適スルヤ否ヤニ依リテ定マルヘキモノニシテ其器具カ特ニ人ヲ殺傷スルノ用ニ供セラルルモノナルト其他ノ用ニ供セラルモノナルトハ之ヲ問フコトヲ要セス」、こういうふうに判示いたしております。これは性質上の凶器ばかりでなくて、用法上の凶器も含むのだという趣旨の判例だと思いますが、用語だけをすらっと読みますとかなり広いようになっておりますが、その後にこれに関する判例が相次いで出ておりますが、今の判例で用語はそうなっておりますが、それじゃそのときの凶器とは何を議論しておったのかと申しますと、これは、なたでございます。なたが凶器だといっておる判例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/141
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142・亀田得治
○亀田得治君 あなたは当然用法上の凶器になるからいいでしょうが、ただいまお読みになった判例の説明自体からいきますと、ともかく殺傷する能力のあるものは、使う場所によって凶器と認められる危険性が相当あるわけですね。殺の方はあまりないかもしらぬが、殺傷となっているのですから、傷の方になると大がいのものはこれを凶器、人間のつめまでこれはそうです。これはみんな持っている。傷になればみんな入ってくる。だから非常にその辺の範囲がばく然としている。この明治三十九年四月十二日以降の判例では、相当しぼった表現等を用いてきているのかどうか、その点はどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/142
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143・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは明治四十年には新刑法に変っておりますので、持凶器窃盗の持凶器の凶器という判決はその後にはあまり見当らないのでございますが、きのう申し上げた古い判決、明治三十六年の三月六日の判決が一つあるのでございますが、さらに三十三年九月四日の判決が一つあります。この三十九年九月四日の判決は、出刃ぼうちょうと大型のやすりを凶器だとした判例でございます。で、判例は、明治四十年、三十九年あたりが最後になっておるわけでございますけれども、その今言ったような性質上の凶器、用法上の凶器と、そしてそれらを一切含むのだということを申しておりながら、認めておりますのは、なたと大型やすり、あるいは出刃ぼうちょう、こういったようなものであります。ところが、凶器という言葉を特別法では使っておりませんので——使っておらないんじゃありません、使っておる場所もありますが、いつも問題になります選挙法の中に凶器に相当する用語が使ってあるわけでございます。それによりますと、人をして直ちに危険の感を抱かしめるような、視覚上危険の感を抱かしめるようなものでなければならぬということになっております。その後の判例といたしましては、今の性質上の凶器、使用上の凶器のほかに、さらに視覚上人をして直ちに危険の感を抱かしめるようなものというしぼりがかかってきていると思うのでございます。これは、そういう点は社会通念上きめるべきことでございましょう。しかし、きのうも申し上げましたように、凶という語感からくる感じ、これを無視するわけにはいかないのでございまして、過去の判例それから選挙法で定めております凶器に相当する危険なる器具の判例等から見まして、私どもの法務省がずっと長い間とって参りました行政解釈、特に破防法にあります凶器という意味等につきましても、今の性質上の凶器、用法上の凶器であり、かつ、社会通念から見て、視覚上、人をして直ちに危険の感を抱かせるような器具、こういうふうに私どもは定義をいたしまして、そういう趣旨で運用を誤まらぬようにいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/143
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144・亀田得治
○亀田得治君 大へんその辺は微妙な点がありますが、これは一つ記録の上に明らかにしておきたいと思いますから、具体的にお聞きするわけですが、通常のナイフですね、まあ私たちが鉛筆などを削ったりするとき使う小さなナイフ、それから旗ざお、それから旗ざおの先の金具ですね、金具がついているのもあります。それからプラカード、つえ、それから大きな石は別として、小さな石、こんなものは、まあこんなものを使っていいという意味じゃないですが、こういうものは、先ほどの定義からいうと、直ちに人をして危険を感ぜしめるものではないから、これはここでいう凶器ではないというふうに理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/144
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145・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお話の各器具は、仰せのような趣旨のもとに、私どももここにいう、いわゆる凶器には当らないというふうに解釈をいたしております。まあ竹ざおは、山崎の芝居にもありますように、先をとがらせました竹やり、こういうふうに、やりの形を作ってしまっておるようなものにつきましては、これは凶器というふうにいわれる場合があるかと思いますが、通常の形における竹ざお、旗ざお……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/145
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146・亀田得治
○亀田得治君 旗がついているもの。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/146
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147・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そういうものや、プラカードの棒であるとか、そういうふうなものは凶器になろうはずがない。一見、社会通念上、危険の感を抱かせるものではございませんので、そういうものは凶器に当らない、かように解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/147
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148・亀田得治
○亀田得治君 一応それで安心できるわけですが、そこでこの凶器を、やはり私は財産と同じように、これも疑いを残さないように、銃砲とか、刀剣とか、まあ暴力団がなぐり合いをやるというときに使うものは、大体わかるわけですから、そういうものを具体的に書くわけにいかないんでしょうか、凶器という文字のかわりに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/148
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149・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点も、立法当時に、大いに私ども部内で議論をいたしたのでございます。できるならば、ただいまの最近の法律は、すべて凶器というような言葉をあまり使っておりませんので、そういうふうな凶器という文字のかわりに、少し長くなっても、ここへ書き込むことはできぬだろうかという点で研究をいたしたのでございますが、何と申しましても、刑法ではあまり長々しい定義めいたものを書かないのでございます。しかしながら、さればといって、概念が明確でなくてはいけないのでございますが、長い間の旧刑法の持凶器ということで、判例も若干出ておりますし、この解釈につきましても、ほぼ確立しておるように思われますので、立法技術上の見地から、凶器で大体理解し、解釈運用に誤まりがなかろうというような考え方になりまして、法制審議会の御審議も得たわけでございますが、法制審議会でも、若干の議論が出ましたことは速記録でおわかりと思いますが、まあまあこの辺でよかろうじゃないかというのが結論であったように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/149
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150・亀田得治
○亀田得治君 たとえば、この軽犯罪法の第一条の二号ですね、これなんか割合はっきり書いてあるんですね。「刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」、こういうふうに書いてある。これだけでも、説明を待たないで割合はっきりするわけですね。こういうふうな表現でもいいわけでしょうが、まあ刑法は、なるべく簡単に書くという建前かもしれませんが、まあ別にそういう建前が法律の中にきまっておるわけでもないんですから、大いに新しくできるものは、新しく疑問のないように書いていく、そういう表現は弊害がありますかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/150
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151・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 「兇器」という文字のかわり、今軽犯罪法の第一条の二号に書いてあります文字を置きかえて、この集合罪の規定を読みかえて見ますと、おそろしく重複して、わけのわからないような規定になるように思うのでございまして、ですから、まあ刑法の規定といたしましては、簡潔に書くということで、私どもの舌足らずのようなところも、今の法律的な考え方からしますと、もう少し詳しく書きたいというような点も、割愛せざるを得ないという関係になるわけでございますが、大体この軽犯罪法の一条二号の規定は、「隠して携帯」ということで、特にこういうふうに強く出ておりますが、考え方からしますと、この凶器というふうに書いた方が範囲は狭いんじゃないだろうかという感じもいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/151
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152・亀田得治
○亀田得治君 範囲は、あなたはそう解釈しているから狭いかもしれぬが、たとえば、この軽犯罪法の条文を利用するとすれば、上の方はよろしい、あまり長たらしいから。それで下の方だけでも利用して、通常人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具、こういうふうにでもやれば大体はっきりしてくるわけです。まあこれは一つこの点で、次に移ります。
「準備」という文字がありますが、これはなかなかまたちょっとはっきりしない。で、いつでも使用できるような状態に置くこと、こういうふうな御説明のようです。だけれども、私はそういうことは、この文字そのものからは簡単に出てこぬのじゃないか。で、たとえば一カ所に凶器を集めた、しかし、そのままでは使えない、多少手入れしなければならぬ、こういう場合には、あなたの説明だと、準備したことになるのかならぬのか、はなはだ疑わしいわけです。しかし、社会的な概念としては、準備というのは、いろいろのことがずっと重なっていくわけですから、準備段階というものはいろいろあるわけなんです。言葉でも、第一次準備とか第二次準備とか、その第一の準備、第二といったような程度のものは入らない意味なのかどうか。ただ準備自体といって、これは全部入るように私は思うんですが、それはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/152
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153・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは、ここではその第一、第二、第三というふうに、準備行為に幾つかの段階があるといたしますれば、最終段階の準備をさすものだと解釈されるのでございます。たとえばピストルを準備したとしても、これはみんなさびておって、油をつけたり何かしなければたまが出ないというような、旧軍時代に地下に埋めたピストルを掘り出して、そこへ集めた、それが準備だというふうには、私どもは解釈いたさないのであります。ここにいう「準備」というのは、一定行為に使用し得る状態で準備されるわけでございますから、使用しても、使用できないわけですね、今のような場合には。そういうのは、広い意味の第一段階の準備には当るかもしれませんが、ここにいわゆる「準備」と申しますのは、直接携帯するとか、運搬をするとかというものよりは、みずから身につけていなくても——事情を知らない第三者に、トランクの中に入れさせて、持っている人は何を持っているのかわからない、ただ持たせている。しかし、持たしている人は、その中には日本刀が入っているとか、あるいはピストルが入っているとかということを知っておれば、まあそういう状態があれば「準備」だと、こういうふうに理解をしているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/153
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154・亀田得治
○亀田得治君 このまあ犯罪がですよ、今からすぐ殺傷を始めると、そういうことを前提にしての条文であれば、今の御説明のようなことも成り立つと思うのです。しかし、必ずしもそういう切迫した段階をこれは考えておらぬと思うのです。そんな切迫した段階であれば、私はもっと刑法の重い条文の共犯等でやれる段階がたくさんあると思うのです。そうじゃなしに、そういう切迫せぬ状態であっても、もっと手前の方でこの問題を押えよう、こういうところにあるわけですから、そういう趣旨から考えると、もうすぐ利用できるような状態でなければこの「準備」じゃないというのは、若干おかしいと思うのですね。多少油を引いたり、みがいたり、ちょっとすればいけるものが一カ所に相当数集めてあるということは、私は「準備」だと思うのですよ、この法案がねらう意味の。そうならぬでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/154
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155・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは「集合」と「準備」との関係を見ていただきたいのでございますが、なるほどその所期したなぐり合い、あるいは出入りという、そういったような行為からは若干時期的に、時間的に離れて、少し前の段階、いわばそういうものの予備として、これは罰しようとする規定でございますから、前の段階でありますことは申すまでもありませんが、集合が、ただ集まっただけで違法だというのじゃなくて、集まる人たちが、先ほど来申し上げます、人の生命、身体、財産に対して害を加うべき目的を持った集まりでなければならぬと同時に、その集まる際に、凶器が準備された、こういう状態が違法だと、こういうのでございますから、集合体ができました際に、その準備されておるという条件、これはそんなに時間的に離れたものであってはいけないのであって、やはりこの集合と準備とが接着しておる。これはどうしても考えなきゃならぬ。しかし、その先にありますところの目的に当っておる出入り行為、いわゆるけんか、なぐり込みといったようなものは、それはもとより時間的に先であっても差しつかえない、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/155
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156・亀田得治
○亀田得治君 いや、私もそれはこの集合、準備、目的、これは皆区別して考えておるのですがね。けれども、こういう趣旨の犯罪を取り締ろうというのに、凶器を準備した状況が、直ちに使い得るような状況でなければ準備にならないというのがおかしいのです、その点が。目的がはっきりし、そして凶器が相当どこかの場所に集められている、で、それは若干手入れをしなきゃならない、ならないけれども、もう危険性は同じことだし、しかも普通の意味でいう準備の概念にそれは入っているわけですね、そういう行為が。だからあなたの言うような意味なら、凶器をいつでも使用し得るように準備をし、またはその準備あることを知ってと、こうしておけばいいです。ただ準備といえば、これは広い概念です、普通は。そしてその広い概念を用いたからといって、広い概念で解釈したからといって、不都合なことは私はないと思うのです、この場合に。これは法制審議会等では、そういう点の疑問等はなかったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/156
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157・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点の疑念がございまして、速記録にも出ておるはずでございますが、この「準備」というのは、初め用意という言葉をしきりに言ったわけでございます。で、用意というのは、まあ競走のときも、レディーという言葉を使うわけであって、まあスタート寸前の用意なんでありますが、あれと同じような意味で、そんな言葉の意味からして、離れたものを考えてもいいじゃないかという議論ではなくて、ほんとうを言えば、刀を準備しておるところへ、つまりその刀の存在しておる場所に集まる——まあ逆な言い方をすれば、そういったような場合が典型的なこの集合罪で、それでは狭過ぎるから、いつ何どきでもすぐ手当をすれば持ってこれるような手近なところにそういう刀が準備されているということでもいいじゃないかということで、まあ一番狭い議論をされる方は、刀のある場所に集まる、そういう場合がここにいわゆる集合罪だという議論をされておるのでございます。しかし、そこまで狭く解釈する必要はないが、さればといって、集まった場所からあまり手の届かないような遠いところに刀が準備されておっても、それはここにいわゆる集合罪の場合の「凶器ヲ準備シ」という中には入らないという議論でございました。結局私が、今申し上げておるようなところに落ちついたということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/157
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158・青山正一
○委員長(青山正一君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/158
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159・青山正一
○委員長(青山正一君) 速記をつけて。
四時四十五分まで休憩いたします。
午後四時十九分休憩
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午後五時十四分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/159
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160・青山正一
○委員長(青山正一君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/160
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161・亀田得治
○亀田得治君 二百八条ノ二の集合罪の刑罰の点ですが、第一項が二年、それから第二項の方が三年、こういうふうに規定されておるわけですが、まあ犯罪の性格からいって、第二項の方が軽過ぎるのではないかという感じがするのですが、おそらくはかの刑法の刑期などからきているのだと思いますが、第一項と第二項の比較自体から考えますと、その点だけを考えてみると、こういう犯罪というものは、やはり中心になってあやつっておるまあその親分というか、こういう計画を推進しておる中心人物、やはりそれが一番問題ではないか、そういう観点から第二項というものが設けられたと思いますが、そうであれば、刑期の決定もそれにふさわしいように、もっと差をつけるべきではないかという感じがするのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/161
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162・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) まことにごもっともな御質問でございます。部内でもいろいろ立案に際しまして討議をした問題の一つでございます。大体こういうふうに落ちつきましたのは、第二項は、いわば第一項の教唆犯のある者を取り上げたのでございます。で、御承知のように、共犯の方から参りますと、教唆罪は正犯に準ずるということになっております。まあ正犯と大体同じ刑を課するのが建前になっておりますが、今仰せのような趣旨を考えまして、重く処罰することにいたしたのでございますが、権衡の点につきましては、一項の集合罪を二年ということにいたしますると、これを五年に引き上げるというのも少し高過ぎます。といって四年という法定刑というのも、これもとらわれるといえば、とらわれる議論でございますけれども、ないのでございます。結局三年ということに落ちついたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/162
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163・亀田得治
○亀田得治君 この第一項は、いわば親分の命令で集まってくる場合が多いわけです。そういう社会における実情を考えると、どこそこへ集まれ、こういう指令が出る、まあ半ばこれは強制的だと思うんですね、ある意味では。だから厳密に言えば、いわゆる期待可能性等を欠く場合もあろうと思う、実際は。その厳密な意味の期待可能性ということじゃなしに。そういうことすら言えるやはり状況です。しぶしぶでも集まって行かないと、あと仲間から、はずれなければならぬ。そういう者すらもやっぱり第一項であるわけですね。第二項は、この人がやはり準備をし、計画しているわけなんです。非常な差があるんですね、質的に私は違うと思います。で、たとえば刑法の騒擾罪の百六条、百七条等を拝見いたしましても、中心人物の首魁というものと、そうでなく、ぞろぞろついて行くものと、非常な区別をしているんですな、扱い方に。私はそこまでの区別をつけていいかどうかは別として、やはりこういう集団的な犯罪では、その点を截然とやはり区別して行くべきじゃないか、そういうふうに思うんです。あまりにも近過ぎておる。で、騒擾罪の規定等に比較して、その点がはなはだしく、私ちょっと不つり合いだと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/163
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164・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまのお考えのような考え方も、確かにそういう面もあろうかと思います。しかしながら、この二百八条の第一項に、命令によって子分どもが集まった場合ももちろん入りますが、そうでなくて、全く命令に基かずしてお互いに集まったと、そういうふうにして集合したという場合も入るわけでございます。それで、あとの、つまり偶然というか、命令に基かずして集まった場合の処罰規定を二年と考えますと、命令によって集まったような場合は、なるほど中には集まりたくなくても集まったという者もあろうかと、そういう意味において、期待可能性もない者もあるのじゃなかろうかという御懸念でございますけれども、この組織的な暴力団というのが主としてこれに当るわけでございますが、そういうものの中には、はね返りもいるわけでして、命令の出ることが、いかにもおそかったと言うようなやからも少くないと思いますし、そういうのは、親分の命令を受けて出たからといって、犯情が必ずしも軽いとは言えないのじゃなかろうかという点も考えられます。そういう点を、偶然集まった者と命令によって集まった者とを考えてみまして、しかも目的を持って集まりましても、それ自体では集合罪にならない。目的を持って集まった者の中で、凶器を準備しておる者、あるいは準備しておることを知っておる者、この者だけが処罰されるのでございますので、そういう点を考えますと、まあ二年が相当であるかどうかということは、これはその他の殺人予備罪等の刑の権衡を考えて、こうしたわけでございますが、まあ並行的に、並列的に集まった者、命令によって集まった者、この両者を区別するだけの違いはなかろうというふうに考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/164
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165・亀田得治
○亀田得治君 実際問題としては、命令なり指図を受けて集まってくる、こういうことが多いのではないかと考えるのですが、その点どういうふうに理解していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/165
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166・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ちょっと御質疑の意味が……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/166
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167・亀田得治
○亀田得治君 二百八条ノ二の第一項には、命令によって集まった場合、あるいは命令がないのに自主的に集まってきた、両方が予想されるという御説明ですが、実際問題としては、親分からの指図のないのに自然に集まってくる、そんなことはあまり予想されないので、やはり命令なり指図と言いますか、つまり集合せしめるという行いがあることが多いのじゃないかと思うのですが、その点どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/167
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168・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それは仰せのように命令によって集まる場合が多かろうと思います。しかし、何々一家の若い者と、また別の一家の若い者とが会って話し合う、別に親分の命によったのではないのであるけれども、一緒になるというふうに見られる事例も、実際問題としてこれまた少くないようでございます。そういう意味で、並列的なものと命令によって集まる者と、両方を罰することにした方がいいということになったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/168
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169・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、この命令によって集まった者については、取扱いはどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。まあ自主的に集まった者は、これは、多少重く扱われるのは当然ですが、ただ、命令によってぞろぞろ集まってくるような者と、第二項の集めた者との関係は、この法律に表われた点からいくと、同じような扱いをされるような感じもしたわけですが、そういうことでは、はなはだつり合いが取れない。そういう場合には、やはり中心の人物をしっかり押える、こういうことが私は重大だと思うのですね。その辺はどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/169
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170・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 今お尋ねの趣旨は、命令をした者がみずからもこの集合体に参加するという場合でございましょうか、それとも……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/170
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171・亀田得治
○亀田得治君 いや、する場合もあるし、せぬ場合もある。命令だけしっぱなしの場合もある。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/171
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172・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 命令をしっぱなしの場合におきましては、この凶器を準備し、あるいは準備あることを知っている場合には、これはもう単純な一項の教唆犯ということになるわけでございます。それで、そういう教唆犯の中で準備し、準備あることを知って集合さした場合には、これが二項になる、こういうことになるわけで、もちろん二項の方が犯情は重いわけでございます。まあこういう集団犯罪と言いますか、この種の組織的な犯罪におきましては、もちろん主になってやりました者が重く罰せられるのでございまして、一項に該当するからといって、みな二年になるわけではむろんないわけで、犯情によって、ある者は起訴猶予になる者もありましょうが、まあ処罰されるといたしましても、量刑そのものが低いのでございますから、大したことはないが、二項の方になりますれば、その集めた人数その他によりまして、犯情もおのずから違ってくると思いますけれども、こちらが重く処罰されることは当然でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/172
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173・亀田得治
○亀田得治君 それにしても、法定刑が三年ということで、もう上の方がこれできまっているわけですから、相当悪質な集合行為の命令をやった者でもはなはだ軽い、これは。で、私はもう少し重くあるべきだと思う騒擾罪の百六条では三つに区分して、首魁は一年から十年、不解散罪の百七条にしても、首魁が、中心人物が三年以下の懲役で、そのほかの者は罰金だけです。非常に中心人物というものをねらっておる。私はこのねらいは正しいと思うのです。だからそういうふうにしてもらった方が、私は暴力団対策としては適切だと思っているわけです。
それから関連してお聞きしておきますが、こういう集団的な犯罪ですね、まあこの問題に限らず、いろいろあるわけですが、そういう場合のこの扱い方ですね、一般に起訴の仕方とか、たとえば起訴の範囲とか、こういう点についての法務当局の考え方ですね、私どもときどき疑問を持つ場合があるのです。どういう点かと言いますと、まあ中心人物をつかまえて、これに対して相当強い態度に出る、これはよろしいのです。ところがその関係のある者を洗いざらい被告人にしたりする場合があるのですね。ところがよく調べてみると、その人はたとえ有罪になったとしても、起訴された通りであれば罰金刑にすぎない。そういう方が、そういう集団犯罪なものですから、それだけを裁判するわけにいかないということで五年も六年もその裁判で引っかかっておる。そうすると、そういう人はもう若い人が多いですからね、そうすると、もう結婚にしても就職にしても、みんな差しつかえるわけですね。ずいぶんそういうことで苦しんでおる人を私聞きましたが、これは、そこまで行くと、もうその人が有罪になって安い罰金ぐらいということは、もう法律できまっているんですから、それ以上のことはできないんですからね。そんな人に何年間もそういうことをするということは、はなはだ矛盾があると思うんです、これは。しかし、法律はそうなっているから仕方がないんだとおっしゃるかもしれんが、そこに私はこういう集団犯罪の扱い方の基礎方針というものが、やっぱり一定の常識的な限界があるんじゃないかと思っておるんです。その限界というのは、中心に向っては強くいって、あとは、結局はその中心があるから起きておる問題なんですから、そんなに神経質にならないで処理して行くというのが私は当然だと思う。そういう考え方をはっきり持っておられるんなら、ここの二百八条ノ二の点が、もう少し処理の仕方があると思いますが、一般的に、そういう集団犯罪についてはどういう御見解でおやりになっているか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/173
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174・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 集団犯罪の処理の方針につきましては、亀田委員のおっしゃる通り、洗いざらい取り込むというようなものが、刑事政策的に見ましても、また、一般他戒の効果を発揮する意味におきましても、また現実の裁判の運営の問題からいたしましても、いかなる点から見ても適当でないことは、私ども重々承知いたしております。かの日露戦争後の日比谷の焼き討ち事件として、まあ私ども当時の事情は知りませんが、書いたものによりまして見ましても、相当大へんな事態であったように思われます。その当時起訴された者は、たしか七、八名か十名前後であったと思います。そのように、主犯と申しますか、その主導的な立場の者だけを訴追することによってその効果をあげて、また、それによって刑事目的を果しておるように思うのでございます。それに反しまして、決起行為に出ましたいわゆるメーデー事件のようなものを見ますると、まあ多数の百何十名という被告が出てくる。こういったような事態で、それは、何でも法に触れる者は引っくくるんだというような趣旨から出たものではございませんで、これはまあ時代も違うかもしれませんが、ただいまではもう黙秘権を使いまして、名前も申しませんし、自分の行動もみずからは主張しませんし、もうすべて黙っておる、こういうことでございますので、まあ裁判の結果を見て、その人の行動の情状を判断するほかないというのが今日の実情のようでございます。その点、非常に私どもも遺憾に存じております。その他の平事件といいその他の事件におきましても、大体そういうような最近の事件は、そういう状況でございます。こういう点は、もちろん被告人は黙秘権を持っておるのでございますから、その黙秘権を行使することについて、いなやのあろうはずはございませんけれども、もう少しこの事情が、起訴する側にはっきりいたしますならば、選択をいたしまして、少数の人を処理するということで、その目的を果すというふうに持って行くのが、刑事政策上、策の得たものだというふうに考えております。検察の運営も、その点につきましては少しも変っておらないのでございまして、やむなくそういうような処置になっておるように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/174
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175・亀田得治
○亀田得治君 それは、捜査段階ではそういうこともあるでしょうが、公判の進行の過程において、だんだんそういうことが判明してくるわけですね。判明してくると、何だ、この人のやつはこんな程度のものだといったようなものが、これはわかってくるわけです。それでも、ともかく係属された公判にずうっと引っ張られて行くわけですがね。非常に本人としても反省している人等がある。あるが、どうにもならないわけですね。身分は隠して就職したりするが、何かの拍子にばれてくる。初めは、裁判所へ行く場合でも、どこかに用事があるような格好で行くわけでしょうが、何かの拍子にやっぱりばれる。すると、首になっちゃう。こういうことば、私は一つの制裁としてもう過ぎておると思うのですね。だから、そういう者については、たとえば刑事訴訟法で公訴の取り消し制度がありますから、そういうものなどを活用できないものか。制度上活用できるのは、それしかないですね。あれは起訴自体が非常な間違った場合にしかおやりにならないのでしょうが、そういう点の活用等は、これは検討の余地はないものでしょうか。まだ四、五年続くかもわからぬというようなことで全く困っている、もう本人も困っているし、両親も非常に困っている者がたくさんある。大阪にもこれはある。法務大臣なんか、どういうふうなことを、こういう問題についてはお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/175
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176・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 私は、御承知の通り、こういう法廷の方の状況については全く門外のしろうとでございまして、亀田委員のお尋ねに対して、ほんとうに根拠のある刑事訴訟法上のお答えはできないかと思うのでございますが、常識判断といたしまして、悪いことをすれば罰を受けると国家がきめておる、それは懲役とか、禁錮とか、罰金とかいうことで制裁しておるわけでございますが、それ以外において、事実上精神的に財産的に非常な苦痛を受けるものであろうと思うのでございます。国家の制裁は最後に裁判できまるわけでございますけれども、その道程におきまして、今お話のありましたような、あるいは国家の課した刑罰以上の苦しみを受けるような場合もあろうかと思いまして、こういうことは非常に気の毒だというような感じを持っております。だんだんと例をあげてお話しのような場合もあることであろうと、しろうと考えながら想像ができるのでございます。さればというて、これを刑訴その他の法律手続において救済する適当な方法があるかどうかということになりますと、私ども門外の者でわかりませんけれども、その亀田委員の御指摘になったお心持だけは、私も十分くみ取れるような感じがするのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/176
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177・亀田得治
○亀田得治君 まあこういう問題が現実に起きておりますので、集団犯罪の扱い方に関連して、一つよく御検討のほどを私お願いしたいと思っております。今後、二百八条ノ二をお使いになる場合でも、やはりそういう点の考慮が非常に必要なんじゃないか。中心人物をそのかわりしっかり逃がさないようにやっていくという点ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/177
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178・大川光三
○大川光三君 刑法の第二百八条ノ二に関連いたしまして、わが国の刑法百七条の多数不解散罪というものとの関係においてどうなるかということを伺いたいのであります。果して持凶器集合でも多数不解散罪としての適用があるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/178
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179・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この百七条と二百八条ノ二とは、まあ罪質が異なるのでございますが、同時に集合罪でもあり、その際、再三の解散命令を受けても解散しないということもあり得るわけで、そういう場合には法律上の取扱いといたしましては、一個の行為で数個の罪名に触れる、一所為数法として処断されると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/179
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180・亀田得治
○亀田得治君 百五条ノ二はお礼参りの規定ということでありますが、いろいろお聞きしたい点もありますが、一点だけお尋ねすることにします。
労働組合などの場合には、よく事件が起きますと、どうしても組合の幹部というものは責任上その真相を直ちにつかんでおる必要がある。これは団体交渉を進める上においても真相をつかんでおるということはやはり必要なことです。たとえば団体交渉をやっておる途中に何か一つの事件が起きた、団体交渉はまだ終ってないのですから、翌日、まあ翌日はなかなかできないでしょうが、遠からず交渉をもって片づけなければならぬことです。そういう場合がよくあるわけなんですが、そういう場合に団体交渉を開けば、当然先だって起きた事件というものはやはり問題になるわけですね、一応。だから、こちらとしても問題になっておるような人に会って真相を確かめておく、こういうことは当然必要になってくるわけです。だから事件直後、幹部がいろいろな関係者に会う、あるいは場合によっては被害者である会社側の人に会うとか、こういうこともあるでしょう。そういうことも、当然、それは事件になれば被害者なんか一番証人としても重要な立場の人ですね。条文の上では当然そういうところにも何かこう波及してくるんじゃないか、労働組合のそういう行いについても、暴行脅迫に至らない程度の面会の強請ということですから、まあちょっとの手かげんになるわけですね。そういう事件が起きておるときですから、そのこと自体をまた理由にされて逮捕とかいったようなことが起きたのでは、はなはだ事態をさらに紛糾させるだけで、そういう点の懸念等を私たちはしているわけですが、立案者の方はどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/180
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181・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そういう御懸念があるということでございますが、私どもの方といたしましては、表面に大きく掲げておりますように、被害者に面会をして強談、強請する、あるいは強談威迫の行為をするという場合を処罰しようとしますのは、それによってこの証拠隠滅の章に掲げております点から、将来の刑事司法証人として出頭をし、その公正なる証言が裁判所に反映するというところがねらいでございますので、それに該当するような行為は、すべてこれに当るわけではございますが、しかし今の組合の幹部の方が、こういう方に争議の問題に関連していろいろ調査をしておく必要があり、また組合の幹部としましては当然のことだと思います。そういうような場合には、先般申し上げましたように、一つの正当業務として、そのような行為は違法性を欠くというふうに認められる場合が多かろうと思います。また「故ナク」という文字を使ってございますが、この「故ナク」という文字も、そういうすれすれのような問題の場合に不当に取締りが行われないように、やはり正当業務行為で阻却はされますが、なお「故ナク」というところがあるんだぞというところを、この条文に明らかにいたしまして、たとえば新聞記者が面会をするとか、弁護士が面会するとか、あるいは組合幹部の人が、お礼参りに行くのじゃなくて、全く組合の事態を明らかにする資料を取るために行くといったような場合には、「ゆえ」があるわけであります、さらにまた正当業務行為として阻却される場合が多かろうと思います。しかし私どもは、そういうふうに規定を解釈いたしておりますので、御懸念のようなことばないというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/181
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182・亀田得治
○亀田得治君 百八十条の方について若干お聞きしておきますが、これは特殊な形態の輪姦事件について非親告罪にするわけですが、まあいろいろな点を考えますと、一応これでいいと思いますが、特に被害者の方から、これは表ざたにしてもらっては困る、特別なそういう意思表示があった場合には親告罪と同じ扱いにする、ちょうど非親告罪と親告罪の中間のようなものですがね、どうもそれだけの考慮が必要なように思うのですが、なかなかこういう事件について、今の現状で、ともかく事件が起きたらもう娘さんの意思を無視して、片っぱしからどんどんやっていいのだというふうには私ちょっといかないんじゃないか、今の制度から言うと、親告罪か非親告罪か、どちらかということでありますが、その中間のまあ一応非親告罪にするが、しかし娘さんの方から、特にこれは一つ表ざたにしてもらっては困るという積極的な申し出があった場合には、これは親告罪と同じ扱いにする、何かそういう制度は考えられないものかという気持がしておるのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/182
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183・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 制度といたしまして、全然考えられないというふうには申し上げかねるのでございますが、親告罪にしておいて、このような犯罪がもし助長されるというようなことになりますと、これは取扱い上非常に考えなければならないのでございますが、親告罪でなくいたしておきまして、真に被害者が、今仰せのような意味において処罰を希望しないということであり、捜査官憲が調べても、それは威圧によってそうなったのじゃない、真実そういうものであることがわかりましたならば、何と申しますか、弁償その他補いの道などが講ぜられていることを条件といたしまして、これを処罰しないで済ませるというようなことも、運用の面において私は十分考慮する余地がある。むしろ、そういうふうに考慮すべきものであろうというように考えておるのでございまして、非親告化したからといって、被害者の意思を無視して処分すべきものでないということは、これは親告罪に限らず、ことに個人的な名誉、個人的な財産に対する犯罪といったようなものにつきましては、被害者の意思というものを十分尊重して、運用の上に出して行くということが検察運用の妙であるというふうに、こういうふうに思うのでございまして、特に本条の運用につきましては、今御指摘のような点も十分考慮して運用すべきものと考えるのでございます。実際の運用もさようになって行くものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/183
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184・亀田得治
○亀田得治君 そういうような運用が正しいとすれば、私は制度としても、ちゃんとそういうふうにしておいた方がいいんじゃないかという感じもするのですが、そういうような親告罪と非親告罪との中間的な制度を設けているような立法例等はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/184
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185・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点は部内でも議論したことがありますが、立法例としましては、どうも見当らないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/185
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186・亀田得治
○亀田得治君 大体、暴力関係の規定は、私としては一応——あと大和君が何かちよっとあるようですが、この程度にしたいと思うのですが、ただ、最終的には例の「請託」の問題、それから「公務員」の解釈の点、それから二百八条ノ二の「財産」というところの問題、こういう点については、できましたならば理事会等で御検討を願いまして、本案を上げる最終のその質疑のときに、何か統一したような扱いができるようにしていただいたら、けっこうだと思うのですが、まあその際にも関連をして若干お尋ねしなければならぬかと思いますが、一応、私の暴力関係の刑法の規定に対する質疑は、この程度にいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/186
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187・大川光三
○大川光三君 亀田委員だいぶお疲れのようでございますから、少し応援の意味で質問させていただきます。
この刑法の百五条ノ二について竹内刑事局長に伺いますが、この刑法の一部を改正する法律案の提案理由の御説明によりますと、暴力取締りに関する部分として、百五条ノ二をお取り上げになって、その理由として、近時、各地に多数発生を見たいわゆる暴力団、愚連隊等による殺傷暴力事犯の実情にかんがみて、これが取締り処理の適正を期するため、所要の改正を加えんとするものである、かように言われております。私どももまた暴力追放の一環と申しますか、暴力取締りのために本法案の新設を見たものと深く信じておるのであります。しかるに、この条項は、わが刑法第七章「犯人蔵匿及ヒ証憑湮滅ノ罪」の一部として追加が挿入されんといたしております。これは一体どういうわけでございましょうか。なるほど刑事被告事件の証人なりに対して、いわゆるお礼参り等のいやがらせをやるということは、ひいては証人らがありのままの供述ができなくなり、直接間接に証拠隠滅を助長して、刑事私法の適正な運営を阻害することにはなりまするけれども、おもな本法案のねらいは、あくまでも威圧行為の取締りにあると私は信じます。従って本法案のごときはむしろ第三十二章「脅迫ノ罪」の章において整理すべきであると考えるのでございますが、この点に関する御見解をお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/187
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188・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいま大川委員の仰せのような意味におきましても、もしこれが暴力立法であるならば、脅迫の章に置くべきではないかという議論もあるわけでございます。現に学者の中にそういう議論をなさる方もあるのでございます。私どもといたしましても、この規定を暴力立法と銘を打って御説明を申し上げておるわけでございまして、この種の暴力、お礼参り行為を処罰しようという考えにほかならないのでございますが、このお礼参り行為というのは、一体、終局的には何を保護せんがためにそういうことを処罰するのかということになりますと、まあ被害法益と申しますか、保護すべき法益は何れかということになりますと、私は二つあると思うのでございます。一つは、申すまでもなく、刑事被告事件の被害者等の証人の個人的な平穏を保護しようという点でございまするが、同時に、これはただいまの刑事裁判におきましては、証人の証言なくしては裁判は固まらないのでございます。さればこそ、憲法も証人に証言の義務を課しておるのでございますが、そういうような大事な証人でありますので、これに威圧を加えて事件をうやむやにしてしまうというような暴力が、ここに行われておるのでございます。そこで、そういう観点から見ますと、刑事私法の適正な運営を確保するということも、また保護法益になっておると言わなければならないのでございます。それで、二つの保護すべき法益があるといたしまして、それではこの条文を刑法の章条において、どこへはめ込むのが一番適切であるかということをいろいろ考えたのでございますが、やはり国権の作用である刑事私法の適正な運用という点に、その地位を与えるのが最も適切であろうということからして、百五条ノ二といたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/188
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189・大川光三
○大川光三君 他に大和さんの御質問もあるようでございますから、いま一点だけお伺いいたしたいと思います。
文章の解釈でございますが、第百五条ノ二の「強談威迫」ということは、これは一つであるか、二つであるかという実は問題なんであります。逐条説明では、「強談」とは、「他人に対し言語をもってしいて自己の要永に応ずべきことを迫る」ことをさすとおっしゃった。「威迫」とは、「他人に対し、言語、挙動をもって気勢を示し、不安困惑の念を生ぜしめる行為」を言うと、かように二つに分析しての御説明でございますが、条文そのものを見ますると、「強談威迫ノ行為ヲ為シタル者ハ」ということになっておりまするので、強談、威迫という二つの要素が備わったときに初めて処罰の対象になるのかどうか、そのいずれかでも処罰の対象になり得るのだというのか、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/189
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190・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 強談威迫の行為をなしたと、こうありますので、この強談威迫を一つの概念というふうに見るか、区別して、つまり強談であっても犯罪になり、威迫であっても犯罪になるというふうに見るかという点につきましては、私どもは別々に考えておるのでございまして、強談もしくは威迫の行為があったというふうに解釈をいたすべきものと考えております。この点につきましては、学説も大体そういうふうになっておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/190
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191・大和与一
○大和与一君 警察庁長官にお尋ねいたしますが、最近、警察庁で集団的違法行為に対する予防措置の強化ということをねらって、警察官職務執行法を改正して、基本的人権の行き過ぎを改めたい、こういうふうなうわさか何かあるというのですが、これはいつごろおやりになるおつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/191
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192・石井榮三
○政府委員(石井榮三君) 私ども、常に警察の職務執行に関連がありまする各法令につきましては、絶えず第一線の実際取扱いの実績に徴しまして、中央においては研究はいたしております。そういう意味におきまして、警察官職務執行法も、われわれの日ごろの研究の対象であることは事実でございまして、今日までいろいろ係において研究は続けております。しかしながら、御承知のように、これはきわめて国民の権利、自由に関連を持つ大事な根拠法規と申しますか、われわれの職務執行の上におきまして基本をなす法律でございますので、事柄はきわめて慎重を要すると考えておりまして、今後ともさらに研究を続けて参る所存でございます。今これが近い将来どういうふうになりますかということは、現在の段階におきましては、申し上げるだけの結論に到達しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/192
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193・大和与一
○大和与一君 今度は労働運動との関係で、ちょっとお尋ねしたいのですけれども、暴力について、一般暴力と労働組合の暴力と言いますか、言葉はちょっと適当でないけれども、差異、違いがある。一つは、いわゆる暴力はとめどがない、労働運動でいう、もし暴力という言葉を使うならば、これは限度があって、労働運動のワクの中でやるから。それからもう一つの場合は、いわゆる暴力、報復をするということがあるのですね。組合の方では絶対にない。この差異はお認めになられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/193
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194・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) お尋ねのような、労働運動から派生いたします法益行為としての暴力というものは、今おっしゃる通り、ある時期がくれば、すぐ解消してしまって、笑ってつき合えるような関係のものと理解いたしておりますので、その取扱い、その他につきましては、おのずから異なったものがあるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/194
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195・大和与一
○大和与一君 そうしますと、刑法を見ますと、暴力という言葉は一カ所も使っていない気がするのです。ただ、この暴力行為取締法という法律上の名前があるだけで、ほかにはないと思います。そうしますと、暴力は、あなたの方では何の基準で、暴力はこんなものだという解釈か何かおありになるのじゃないかと思いますが、それはどういうところにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/195
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196・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) きまった法務省の行政解釈としての暴力というようなことは、統一的に申したことはないのでございますが、私どもが、ここで御説明に際して暴力々々と申し上げておりますのは、過去数年来、いわゆる暴力団、やくざ、ヤシ、テキ屋といったような昔からあります暴力団、あるいは愚連隊、あるいはだんだん落ちぶれて町の小さなチンピラと申しますか、そういったようなたぐいの暴力的ないろいろな犯罪、これをまあ町の暴力、こういう意味におきまして、そのような暴力に対して、現行法のもとにおいて、今まで数年来熱心にこれが除去に努めて参ったのでございます。今回の立法も、そのような実績に徴しまして、法の不備と思われる点、そのきわめて若干の部分でございますが、本法案のような盲点の部分を改正いたしまして、さらに暴力絶滅のために手をつけて行くということを考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/196
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197・大和与一
○大和与一君 それでは、ちょっと私の勉強と局長の勉強とどっちが足りぬか知りませんが、ちゃんとこういうふうになっているんですよ。昭和二十四年の四月十三日に現行労働組合法ができたとき、当時の法務部検務局長の通牒が出ていますが、それは御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/197
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198・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) たくさん通牒出ていますが、お示しをいただきますれば……、どういう通牒でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/198
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199・大和与一
○大和与一君 その中に、暴力とは暴行を手段とした犯罪、暴行、傷害、強盗、殺人、一切入るのだ。もう一つは、人の体の自由あるいは財産に対する侵害、たとえば逮捕、監禁、放火、器物損壊なども全部暴力だと言っておるのであります。もう一つ問題になるのは、行為の性質上、当然このような結果を伴う侵害、たとえば溢水罪というのを例にあげて書いてあるのがこの通牒のようです。それはよろしゆうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/199
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200・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお示しの労働組合法に関する解釈通牒でございますか、そういうのがあるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/200
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201・大和与一
○大和与一君 そこで今お尋ねしました労働運動と一般の暴力との差異ですね、それを頭に入れて置いていただいて、もう一つは、憲法二十八条による労働権、その中味も頭に入れて置いてもらって、そうして今の通牒をちよっと拝見しますと、どうも法律が具体的な解釈ではないような言葉を、しかも、それが全部含まれておるような広い意味で使っておる、こういうふうに考えられるわけです。これは非常に危険ではないかと思うのです。たとえば暴行傷害とかいうやつは全部別個の罪だから、それぞれみなできているわけですね。ちゃんとそれを全部包括的に、これは全部暴力だ、こういうふうに言っているのは、扱い方としては非常に危険を伴うのじゃないかと思うのです。私はこう考えるのですが、それでいいだろうかというのです。暴力の行使ということは、労働運動との関係において漠然とした意味に広く使われるのじゃなくて、原則的には労働運動の正当な行為であるのだけれども、例外的に他人のからだの自由とか、生命とか、財産とか、そういうものに危険を及ぼすということは、労働条件の維持改善、あるいは地位の向上という本来の目的とは、これは無関係のものだ、こういうふうに見て私どもは載せるのだというふうにだけ考えていいと思うのですが、その点はよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/201
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202・川井英良
○説明員(川井英良君) 労働組合法一条二項のただし書きに、暴力の行使は云々という規定がございまして、刑罰法令、おそらく民事法令にはないと思いますが、日本の法律の面で暴力という言葉が条文の中にあるのは、労働組合法一条二項のただし書きだけだと私考えております。それから御承知の暴力行為等処罰ニ関スル法律には、その法律の名前に暴力という言葉は出て参りますけれども、一条から三条までの間に、その条文の中には暴力という言葉が、御承知の通りないわけでございます。それから、ただいま御審議をいただいておりますところの、いわゆる暴力立法と称せられるものの中にも、俗に暴力という言葉は用いておりますけれども、条文そのものの中には、暴行、脅迫とか、あるいは器物毀棄とかいうような概念をもって表示されておりまして、暴力という言葉は、御承知の通り出てこないわけでございます。従いまして、私ども、ただいま御指摘を受けましたように、法律用語といたしまして、暴力とは一体いかなる概念だ、こういうことになりますというと、非常に暴力という言葉の定義と言いますか、その概念の限界をきめることが非常に困難でございます。そこで問題を元へ戻しまして、しからば、労組法一条二項のただし書きにある暴力とは何かということになりますというと、その条文ができました際に、今までにない概念でございますので、一応、法務省の行政解釈といたしまして、最初に御指摘いただきましたような昭和二十四年の一応通牒を出しまして、有権解釈の意のあるところを一応示したわけでございます。そこで御質問にお答えをすることになるわけでございますが、私どもは、この労組法一条二項ただし書きは、労働組合の行動といたしまして、団体行動といたしまして、暴力というものは一応抽象的に一般的には許されるのだ、しかし、この一条二項があって、特殊な場合においてはその暴力の違法性が阻却されるのだ、こういうふうにこの条文が組み立てられているのじゃないか、こういうふうな御趣旨の御質問だと私は理解したわけでございますが、私どもはそういうふうには解釈しませんで、労働組合の団体行動といえども、やはり刑罰法令に触れるような暴力的な行為があった場合においては、それはやはり組合活動といえども許されないのだ、こういうふうな趣旨を宣明したものが、この労組法一条二項のただし書きの趣旨だと、かように理解しておるわけでございます。従いまして、労働組合の団体行動といえども、それに関連いたしまして、この有権解釈に示してありますような、いわゆる暴力的な行為がありますれば、これはやはりそれに該当するところの刑罰法令の規制を受けることも、まことにやむを得ないことである、かように私は理解をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/202
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203・大和与一
○大和与一君 行為の前の考え方としてお尋ねしているんですけれども、労働法的な観点と市民法的な観点が一応あると思うのです。そうすると、労働運動における争議行為というものは憲法二十八条が軸になっているんだから、それはことさらに甲乙は言わないでも、しかし明らかに憲法二十八条の団結権、団体行動権、この機軸によって労働法的な立場に立って考えなくちゃならぬ、これはあくまで優先と言いますか、そういうことはお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/203
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204・川井英良
○説明員(川井英良君) ただいまの御趣旨、まことにその通りだと私も考えます。しかし問題を今のように具体的な問題に移して考えてみますというと、それは労組法一条二項ただし書きに、いわゆる暴力の範囲というものをいろいろきめる場合に、やはり憲法二十八条に規定されておりますような、いわゆる労働三権の精神というふうなものを基盤に置きまして、その暴力の限界を考えるということになろうかと存ずるわけでございまして、私どもこの通牒を出すにつきましても、ただいま御指摘のような憲法二十八条の精神を十分かみ分けまして、その上でこの通牒を書いたと、こういうふうに申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/204
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205・大和与一
○大和与一君 そこで労働関係法のこれは保護立法と言われているわけですね。これは日本の民主主義が全体的に進んでいないから、そういうことにもなっている。現実にもそういう状態だ。それで今度争議行為と団体交渉という形が、これは別個なものじゃなくて、やはり労働運動の一つの形の中にしっかり入っているわけだから、争議行為と団体交渉は一つにあるという立場にあると認めていいと思うのです。そうなると、先ほど亀田委員からもお話があったようにたとえば団体交渉の途中で問題が起きた場合には、そういう場合にはやはり会社側あるいは理事者側が感情に走って、これはけしからぬと思っても、それからあとから、まとまってしまえば何でもないのですね。全部円満に納まったことになる、こういうことがやはりあちこちに少しあると思うのです。経験もあるのだけれども、そういう場合に、あなたの方は会社、理事者が言ったから、すぐ引っくくっちゃって、それから納まったからといって話を持って行けば、それは円満に済んだからよろしい、こういうふうに具体的に処理を大ていされておりますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/205
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206・川井英良
○説明員(川井英良君) 大体いわゆる私どもの方で違法の争議行為と称しておる範疇の犯罪があるわけでございますが、その場合に、たとえば器物損壊なんかを内容とするような暴力行為事件というものは、先ほど亀田委員から午前中に御質疑がございまして、三十一年度における争議関係として発生いたしました暴力行為の件数を刑事局長から申し上げたわけでありますが、百二十三名でございまして、先ほど休憩時間に帰りまして、さっそく手を回して調べてみましたところ、百二十三名の中から、暴力行為の二条または三条に該当するものを差し引きまして、一条は該当するものが百十二名でございます。百十二名の中の内訳の中で、刑法二百六十一条の器物損壊を内容とするところの暴力行為は五十一名でございました。で、五十一名の中で起訴しているのが一名でございます。あとの五十名は不起訴というような状況になっております。このことがすぐに、ただいまの御質問のお答えとはならないかと存じますけれども、一応私どものこの種事件に対する取扱いの態度というものを、数字の面から御理解願える一つの資料ではないかと考えるわけでございますが、かような犯罪におきましても、直ちに現場でこれを検挙いたしまして、そうして当事者間の争議の行方、運命というようなものを少しも考慮せずに、直ちに起訴というようなふうに持って参るような実情はしておらないわけでございます。これは大和委員もよく御存じのことだと存じますが、暴力行為なんかに該当するような犯罪では一応その取締りをいたしまして、大体その争議の解決と申しまするか、その見通しをつけた上で処理をして行くと、こういうふうなのがこの種事件に対する私どもの取扱いの大体の状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/206
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207・大和与一
○大和与一君 争議行為は団体交渉の一つの種類と言いますか、その形態に入っているんだ、こういう御理解をいただいたことにして、具体的な一つ質問をしますけれども、この前、岡山県で、国鉄の組合ですが、すわり込みがあった、そのときに、おまわりさんが行ってパクっちゃった。ところが局長がそういうことを頼んでいないものだから、あとから、全く申しわけなかったと言って組合にあやまった。だいぶけがとか、そういうことがありましたが、理事者、会社から言われなくても、皆さんの方ではパクっちまおう、こういうことがあるのか、あるいはそういうことはよくないのじゃないか、そこに、さっき刑事局長が盛んにこっくりされて安心したのだけれども、労働法と市民法的なものとは、やはり労働運動に対しては、そこに優劣というか、差があるのだ、これはやはり憲法二十八条によってあるのだ、こういうふうにいろいろ何べんもうなずいてくれたことと、そこら辺と違うように思うのですが、この辺のお考え方を岡山の問題についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/207
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208・山口喜雄
○政府委員(山口喜雄君) 岡山の鉄道管理局の屋上に多数の組合員が集まって、朝八時ごろだったと思いますが、そうして警察官が実力行使をして排除しましたのは四時近かったと思います。四時ごろだと思います。その間、いろいろ鉄道管理局側から、施設の管理権に基きまして退去するように申し入れたのでありますが、屋上に至る出入り口を閉ざされまして、どうしても開けないという状況でございます。そこでラウド・スピカーなどで、下におりてくるようにいろいろと勧告をいたしたのでありますが、これを聞き入れないというので、警察には十二時ちょっと過ぎに出動の要請がありました。警察官が実際に実力行使をいたしましたのは、先ほど申し上げましたように午後四時ごろでございます。で、問題の岡山の鉄道管理局長が警察官にそういう実力行使を頼んだ、頼まないという問題につきましては、実力行使を依頼されたから警察で実力行使をするという筋合いのものではございませんが、ただ、当日、局長自身も警察側の幹部と話し合いをされまして、こういう事情であるから、やむを得ない、屋上から排除してもらいたいという意思は明確に表示をされておるのであります。その問題が終りまして、組合側の、組合の役員の御要望に従いまして、局長が、管理局の前に集まっておる組合員に対して、局長自身の意思は、どうも私ども聞いておりますところでは、今後こういうようなことのないようにと注意をされるつもりで、職員に対して注意をされるつもりで行かれましたのが、多数の前に出ていろいろと攻撃を受けまして、手違いがあって、まことに申しわけがないというような発言をされたというのが実情でございまして、あのとき局長自身は、明確に警察力による実力行使を求められておったと、私どもはさように報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/208
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209・大和与一
○大和与一君 これは局長との取引は正確には私わかりませんから別として、これからも労働組合のときに、ほんとう言えば、頼まれないのにやって行かれるということはないでしょう。そういう理屈はないけれども、それが労働運動が生きものだということだし、それから、さっきから言った警備局長が何か盛んにうなづいたのは、労働運動は、労働法と市民法の一般的な違う形の中で、しかも団体交渉をやっておる中では組合の統制の中に入っているから、ことさらに警察の方で、事を荒立てるということのないように、この点は十分一つ御注意をいただきたいと思います。
最後に、法務大臣にお尋ねしたいのですが、労働問題はなかなか、戦後特に明確に出てきましたから、もちろん一般的な常識は皆さんお持ちだと思います。その点否定せぬけれども、なかなか労働問題は裁判所でもどこでも、その担当の方がよほどよくこれをこなしておらぬと、現実の問題として、もちろん組合も完全ではありませんよ。ありませんからあれだけれども、こちらの方も、どうも私は皆さんが同じように勉強しているというふうに、なかなか行っていないのじゃないか、それがだんだん整備されたと思うけれども、現実は、大臣のお考えとしては、全国的に労働問題については、どこの地区に行っても、どこの県に行っても、十分それを理解し、そしゃくをすることになっておる、こういうことが一体言い切れるのか、あるいはむしろ率直に、なかなかそこまで行かぬならいかぬと、そうだったら、もっと勉強していただきたいと思いますが、その点の御見解を一つお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/209
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210・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいまの御発言、まことにごもっともでありまして、また重大な事項でありまして、労働運動の過程におきましても、実際の問題といたしましては、ときに一揆の行為があり得ることでありまして、そうなりますると、やはり検察権の発動ということになる場合があるわけでございますけれども、これはお言葉にありました通りに、単純な一揆行為とは違うのでありまして、よくその本質を理解して参らなければならぬ、かように考えておりまするので、私ども担当の検察関係におきましても、十分なる理解のある方をもって、これに当らせなければならないと考えておりまするし、また、今日は最善の努力を尽して教養をいたしておりますが、なお今後におきましても、十分こういう方の検察事務については研さんを重ねて行かなければならないと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/210
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211・大和与一
○大和与一君 今、大臣は、組合の方だけの一揆行為について、ちよっとおつしやいましたが、私のお願いしたのは、むしろそちらの方で、やはり公正な判断処理ができない、そういう場合もあり得るし、過去にはあったのですが、だから、その点を十分に一つ注意していただきたいということの要望も含めて質問したのですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/211
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212・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 言葉が足りませんで、さらに補足いたしたいと思いますが、仰せの通りでございまして、労働争議に関連して、一切の場合の一揆行為について、十分に素養のあり、経験のある関係者をもって取調べするようにいたしたいと思いますし、また、将来も十分この方面に向っての研さんをさせるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/212
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213・青山正一
○委員長(青山正一君) 別に御発言もなければ、暴力取締り関係の法規は一応終了することとし、明日、二十二日午前十時より、三案全部について、審査中保留された事項の質疑並びに総括質疑に移りたいと思いますが、さよう取り扱うことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/213
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214・青山正一
○委員長(青山正一君) 御異議ないと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後六時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815206X03219580421/214
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