1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十三年二月十四日(金曜日)
午前十時二十三分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程第七号
昭和三十三年二月十四日
午前十時開議
第一防衛庁設置法の一部を改正
する法律案及び自衛隊法の一部
を改正する法律案(趣旨説明)
第二 捕獲審検所の検定の再審査
に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出)
(委員長報
告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/0
-
001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/1
-
002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。石田国務大臣。
〔国務大臣石田博英君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/2
-
003・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の提案の理由及び内容の概要について御説明申し上げます。
最初に、防衛庁設置法の一部を改正する法律案についで申し上げます。
政府は、現下の情勢に対処し、国力に応じて防衛力を整備する必要があることを認め、防衛庁の職員の定員を一万九千二百十六人増加し、現在の定員二十二万三千五百一人を二十四万二千七百十七人に改めることといたしました。この一万九千二百十六人の増加分のうち、一万七千九百九十七人が自衛官で、残りの千二百十九人が自衛官以外の職員であります。自衛官の増加分は、陸上自衛官にあっては、施設、通信等技術関係部隊及び混成団等の増強または新設に充てる要員であり、海上自衛官にあっては、学校の新設及び後方関係の充実等に充てる要員であり、航空自掛官にあっては、航空集団を航空総隊に改編することに伴う隷下部隊の増加、航空団の増設及び教育部門の拡充に充てる要員であります。
第二に、職員の保健衛生及び医療の充実をはかり、また、病院の運営その他衛生業務について、その円滑な運営及び質的な向上をはかるため、新たに内部部局として衛生局を設置して、従前、人事局の所掌であった保健衛生の基本に関する事務及び装備局の所掌であった衛生資材関係の事務を統一的に処理することといたしました。
第三に、自衛隊の質的増強の一環として、装備品等の研究開発機構の整備をはかるため、技術研究所を技術研究本部に改め、装備品等の研究開発の飛躍的発展をはかることといたしました。
第四に、他省庁の職員等が防衛に関する認識を一そう深めることができるようにするため、防衛研修所において、委託により、防衛庁の職員以外の者の教育を実施し、また、友好諸国との親善関係の増進に寄与するため、防衛大学校において、委託により、外国人の教育訓練を実施することができることといたしました。
次に、自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。
第一に、陸上自衛隊の整備のため、本州、中部に混成団一を新設するとともに、航空自衛隊の防空部隊の指揮系統の整備をはかり、航空集団を改編して、長官直轄部隊である航空総隊及び航空総隊の隷下部隊である航空方面隊を新たに設置し、また、航空警戒管制及び航空保安管制関係の要員を養成するために管制教育団を、並びに航空自衛隊の輸送体制を強化するために輸送航空団を新設することといたしました。
第二に、従前から行なっていた部外技術者に対する教育訓練の受託に加えて、今回、防衛庁の付属機関において部外者の教育訓練を実施することの委託を受けた場合において、相当と認めるときは、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度で教育訓練の委託を受けて、これを実施することができることといたしました。
第三に、現行消防法の規定中、危険物の貯蔵または取扱いの制限に関する規定は、自衛隊の行動に際して、または自衛隊の演習揚において燃料その他の危険物を取り扱う場合については、行動の目的及び緊急性または演習場の特殊性にかんがみ、これを適用しないこととするとともに、他方、防衛庁長官が、そのような場合についても、危害防止と安全確保のため必要な措置を講じなければならないことといたしました。
第四に、自衛隊を視察または見学する者に対し、自衛隊の認識を深める上に適当と認めるときは、適正な対価で食事を支給することができることといたしました。
最後に、今日なお各地で発見されている不発弾等の除去及び処理を自衛隊において行い得ることといたしております。
以上、両法案の提案の理由及びその内容の概要を申し上げました次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/3
-
004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。藤田進君。
〔藤田進君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/4
-
005・藤田進
○藤田進君 私は、ただいま議題となりました二法案に関連いたしまして、日本社会党を代表して質問をいたすものであります。
防衛問題につきましては、本院並びに衆議院等の本会議、さらには委員会で質疑が繰り返し行われておりますので、私は、これからお伺いする点を、特に重要とするもの、あるいはまた、いまだ触れられていないもの、さらに、疑義を生じているもの、これに限定してお伺いをいたしたいと思うのであります。
防衛責任をすべて、わが国におきましては、憲法上、法律上、総理大臣にその責があるようでありますので、次の十二点について、岸総理から直接お答えをいただきたいと考えます。
まず、第一に、米ソ両陣営が、それぞれ人工衛星の打ち上げに成功し、軍備の質的一大転換を迫られているとき、世界平和に対する情勢の見通しについて、岸総理の所見をただすわけであります。ことに、極東アジア地域におきまして戦争の起る可能性があるというふうに考えているのかどうか。昨年十二月中旬、ハリで開かれたNATO加盟十五カ国の首脳会議や、本年一月下旬、アンカラで開かれたバクダッド条約機構理事会の最終コミュニケ、また、昨年十二月、ソ連政府から国連全加盟国それぞれに対しまして、また、スイス国を加えて送られたいわゆるブルガーニン書簡、また、最近の南北両朝鮮から外国軍隊の撤退を提案しているということなどを通じまして、われわれのうかがい得ることは、ICBMやIRBMのごとき強力な原子兵器の出現、また、人工衛星の打ち上げの可能となった現在、西欧諸国においても、アラブ諸国においても、また、ソ連を初め東欧諸国においても、いかに世界平和の祈願が強いかということであります。太平洋戦争において、広島、長崎、これらに悲惨な体験をなめたわが国としては、この祈願は、世界各国の人後北落ちないものであることを断言し得ると思うのであります。従って、わが国の防衛問題を論ずる場合に、あくまで、この崇高な大理想に沿って行わるべきものであることは申すまでもありません。岸総理は、果して戦争ありという、そういう立場から防衛力を増強せんという、そういう態度であるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
第二点は、ミサイル兵器時代における防衛が、現状の自衛隊ないし今後の既定増強計画で、時代的ズレがあると考えないか。もし、在来兵器で足りるとするならば、その根拠をただしたいのであります。ここで私がちょうちょう申し上げるまでもなく、いかに今日の防衛体制が時代錯誤もはなはだしい、ナンセンスのものであるかは、国民ひとしく痛感するところであります。納得のいく説明を承わりたいと思います。
第三点は、わが国の防衛計画が、アメリカとの安保条約、行政協定に関連して樹立されている事実から見まして、すべての方向は、ソ連、中共などの東の陣営を仮想敵国とみなして準備しつつあると見てよいのかどうか。例外なく言い得ることは、各国とも、防衛計画の樹立の際は、将来、攻撃を受けるであろう敵国を想定して相対的な戦力の優位を競うということになっております。日本のみが仮想敵国のない防衛計画だと、こういう従来の答弁は、だれも了解し得ないところでありまして、仮想国がほんとうにないのか、あるいはあっても、それが言えないのか、この点、明確にしていただきたいと思います。
第四点は、岸総理は、しばしば、核兵器を持たず、かつ、外国からの持ち込みの拒否を言明されておりますが、次のことを明確にしていただきたい。核兵器の国内への持ち込みに関し、鳩山元総理と岸総理との間に、国会答弁の食い違いがあるが、この点、いかがでありましょうか。たとえば、昭和三十年七月三十日の本院委員会において鳩山元総理は、必要な情勢下においては核兵器の持ち込みを許可したい旨、答弁がありました。昭和三十二年八月十六日に、当院内閣委員会において、岸総理は、核兵器を持たないために敗れることがあってもやむを得ない、こういう答弁がありました。鳩山内閣から石橋内閣へ、さらに岸内閣べと政権が移動したわけでありますが、その際、解散をして、民意に問えという世論に対しましては、その必要がないという理由に、後継内閣は、いずれも政策、方針を受け継いでいるので、何ら変更はないのだ、こういう説明がなされておりますが、核兵器の保有あるいは持ち込みに対しまして、かような重大な食い違いを発見するのでありまして、この間の事情を明らかにしていただきたいのであります。
第五点は、洋総理は、核兵器の国内持ち込みを米国側に拒否し得る条約上、あるいはまた、その他の法的な根拠はないと、衆議院予算委員会その他で言明されましたが、これが補充といたしまして、相互了解の単なる言葉の上の期待に依存しておられるようであります。それでは国民が安心をいたしません。従って、米英間の条約のごときものを、さらに一歩進めまして、そうして、将来絶対に持ち込まないのだと、そういう趣旨のこの際保障をとる、そういう条約を結ぶべき時期ではないだろうか。総理は、条約改正の必要はないと そういうことはいたさないという答弁がなされておりますが、このような国の存亡にかかわる重大な問題を、単に岸・アイクの精神的な相互了解、こういうことにゆだねておくことは、国際間の問題としては許されないことであります。総理のこれに対する、さらに慎重な御検討の上の御所信を承わりたいのであります。
第六点は、岸総理は、核兵器持ち込みを拒否すると言うが、その範囲が、領土内に持ち込む場合のみを意味するような気が最近いたします。あるいはそうではなくて、領空、領海内に持ち込む場合も、当然含めて拒否をする態度なのか、この点を明確にしていただきたいと思います。さらにつけ加えて、トルーマン、アメリカ前大統領は、広島、長崎の原爆投下を指令いたしました直後、何らの良心的な責苦を感ぜず、今後も万一の場合は水爆を使うと、こういうことを声明いたしました。これは日本国民を冒涜するものと考えないかどうか。(拍手)この点につきましては、昨日、広島市議会は、緊急臨時市会を持ちまして抗議決議をいたしております。日米親善を基調とする岸総理は、これに対して撤回を求めるべきではないか、所信を伺いたいのであります。
昨年、イギリスにおきましては、政府がひた隠しに隠しておりました米軍機が水爆を積んで英国の領空をパトロールしていたことが、野党の追及によって、ついに隠し切れずに、ロイド外相から、事実である旨を答弁いたしたのであります。日本でも同様であろうかという考えを、国民は最近いたしつつあることは否定できないのであります。これらの点について、領空、領海を含む持ち込み拒否について、具体的措置をお伺いいたします。
第七点は、防衛二法案に関する事項といたしましてお伺いいたしますが、現行防衛力整備計画は、立案当時の諸情勢に比べまして人工衛星などの出現によって一大変革を見るが、この際、抜本的再検討の時期ではないか。なしとせば、作戦用兵上の根拠を示されたいのであります。前にも触れましたごとく、再軍備の是非はしばらくおくといたしまして、専門家筋の説明を引用するまでもなく、現に、米ソを初め、陸上兵員の削減、大型艦船を廃止するなどの実行が着々と進められているのであります。わが国は明年以後、ただいま提案の通り二万人近い増員を見ると同時に、相当な防衛に国費を費すわけであります。こういう状態の中で、果してこのナンセンスの防衛というものが意味があるのかどうか、作戦用兵上の見地から必要とするその所信を承わりたいと思います。
第八の点は、前段でも申し上げましたが、最近、この第一次というか、現行の防衛計画は役に立たないということから一第二次の防衛計画も進めているという趣旨が、本年の一月五日の毎日新聞に相当詳しく報道されております。その事実があるのかどうか。もしないのならば、その報道に対して、総理はどういう措置をするのか。毎日新聞は御承知の通り、「防衛力の第二次整備計画、防衛庁で立案進める、核装備も併用、防空誘導弾を本格化、陸・海・空の統合を推進」、この中で最も重要な点は、「普通装備と核装備の両様の構えを進めること、防空体制についてはバッジ方式を完成すること」、これは相当膨大であり、かつ具体的で、単にこれがでたらめの記事とは思えない内容であります。これが果して事実か事実でないか、明確にしていただきたいと思います。
第九点は、政府はアメリカに対して、オネスト・ジョンを含む七種のミサイル兵器の供与を要請しております。その後の折衝の経過がどういうふうになっているのか、この点であります。また、昨日、米太平洋地区総司令官のスタンプ大将は、日本がミサイル兵器の供与を希望するならば、米国は、いつでもこれに応ずる用意があると言明しております。さらに話し合いが停滞しているのは、日本側の機密保護に問題があったからであって、これには機密保護の措置が必要だと言明しております。かかる機密保護法を必要とする事実があるかどうか、この点を明確にしていただきたいと思います。
第十の点は、岸総理の新機密保護法、あるいは別名防諜法と言われておりますが、これについて、その必要性の言明は、前段でも申し上げた通りでありますが、これが要するにスタンプ大将の言うような、アメリカからミサイル兵器を受け入れる、こういうことに関連して必要ということになっているのか、この点、さらにこれが制定をするとするならば、現在どういう実情になっておるのか。検討中だとすれば、その結論がいつごろ出るのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
第十一点は、米側より七種類のミサイル兵器の供与を受ける、このほかにエリコンの受け入れのもと、技術研究本部の新設、強化を提案されております。これらの研究開発を進めるということになっておるのでありますが、一方、日本は、これらの兵器を将来使用する考えはないと、しばしば言明しているのであります。何ゆえに使用せざるものを研究開発する必要があるのか、具体的にお答えをいただきたい。伝えられるところによると、国民感情その他国際的関係からひた隠しに隠して、一朝有事の場合には、アメリカから原水爆弾頭を持ち込んで、これを発射するのだということが言われております。
次に第十二点に、現憲法下におきまして、わが国が敵の攻撃をもし受けた場合、そういうことはないと思いますが、総理のおそらく胸のうちには、そういうことを予想されていると思いますから、そういう攻撃を受けたという場合に、必要に応じてわが領海、領空を越えて敵基地をたたき得ると考えているのかどうか、この点をお答え願いたいと思います。
以上をもちまして十二点、岸総理の御答弁を求めます。
次に、大蔵大臣に対しまして三点質問いたします。
その第一点は、ミサイル時代の防衛力増強が、おおむね在来兵器及び隊員の増強に注がれております。国家財政の立場から、時代的なズレを感じないのかどうか。また、来年度以降二万人以上の増員のほか、これに伴う兵器その他の予算増を考えるときに、将来、予算編成上、社会保障制度の強化、拡充、科学技術の振興などに支障を来たすおそれはないかという点であります。
その第二点は、たとえば南極観測船の宗谷が、昨年に次いで本年もかような事態であります。こういうむだな防衛費をこれらに充当した方がむしろ望ましいのではないか、これらについて大蔵大臣としての所信を伺いたいと思います。
その第三点は、例年のごとく巨額の防衛予算を繰り越しております。これについていろいろ調査をいたしましてゆゆしい問題があるように思うのでありますが、これについて、蔵相はどういうお考えなのか、あるいは対策はどうなのか、また、予算上に欠陥はないのか、これらについて御所信を承わりたいと思います。
続きまして法務大臣に二点をお伺いいたします。
その第一点は、ミサイル兵器の受け入れに伴って、先ほども総理に質疑いたしましたように、防諜法あるいは機密保護法、こういうものが要請されつつあることは世上の事実でありますが、この国会提出が一体いつごろになるのか。それらも含めて検討中だとすれば、その内容がどうであるか、保護法の内容はどうであるか、また、時期はいつごろに検討済みになるのかどうかという点であります。
第二点は、かような機密保護法と今言われているようなものは、一体わが国の憲法に照らして違憲ではないか。もし合憲だとすれば、合憲性の根拠を伺いたいと思います。
以上をもちまして一応質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/5
-
006・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 藤田議員の私に対する御質問に対しまして、順次簡潔にお答えを申し上げます。
第一点は、私がすでに施政演説におきましても申し述べましたごとく、世界の情勢は、われわれが恒久的平和を念願しておるにかかわらず、なお東西の緊張は、軍事科学の発達とともに非常に増しておる。その恒久的な安定した平和を念願する、また、実現するように努力するという意味において、あるいは話し合いによってこれを解決するとか、あらゆる努力をしなければならぬということを申し上げております。私は世界の情勢が、そういう科学兵器の発達によりまして破滅的な全面戦争、無制限戦争というものの危険が、一方からは遠のきつつあるという見方も立ちますし、かつまた、東西両陣営の非常な緊張が緩和されない現状におきまして戦争の危険があるということは申しませんけれども、これでもって恒久的平和があって戦争の危険は一切ないと論断することができない情勢にあることは非常に遺憾とするところであります。
第二に、ミサイル時代の防衛計画として日本のとっておる防衛計画は時代的な錯誤ではないかというお話であります。一方、今申し上げましたように、軍事科学の発達によって非常に大量殺戮の兵器が発達いたしておりますために、全面的戦争という危険は、こんなことをやったら人類も破滅するという見地から、遠のきつつあるという見方も、もちろん私は成り立つと思いますが、しかし同時に、世界各国とも、いわゆる普通兵器によるところの防衛というものを全然無意味として、これを廃止するということにはなっておらないのでありまして、各国が普通兵器によるところの防衛についても、その必要性を認め、現実にこれを維持している情勢におきまして、私どもの考えておる防衛計画が、時代ズレした無意味なものだとは思っておりません。
第三の、日本は何か仮想敵国を設けて、これに対して計画を立てているのじゃないかというお話でありますが、私どもは、そういうことではなしに、日本の安全を保障するために、他から不法な侵略を受けないという考えから、これをやっておるわけであります。
第四に、核兵器の問題につきましては、すでにしばしば私が声明しておりますごとく、日本の自衛隊を核兵器をもって装備する意思もありませんし、また、核兵器の持ち入れについては、厳にこれを拒否するということを申しております。
第五に、その持ち込みに関しては、条約上の基礎がないじゃないか、従って、これに対して何か明確な条約を作る考えはないかという御質問でありますが、これも、しばしば私が答弁をいたしておりますように、日本の安全は安保条約によって、これが日本自体の自主的な防衛と、またアメリカのこれに対する安保条約上の協力によりまして、防衛が保たれておる。しこうして、その内容については、昨年の日米会談におきまして、共同宣言に明らかになっておりますように、安保条約から生起するところのあらゆる問題を検討し、協議するための委員会ができております。この中に明らかに、米軍の配備に関することは、これを話し合うということになっておりまして、従って私は、アメリカと日本との根本的の了解及びこの共同宣言のできました趣旨に基いて、十分、日本の意思に反して持ち込まれることのないことを、従来もしばしば申し上げておりますが、今なお、これを繰り返して申し上げておきます。
第六の、私の持ち込みについての考えは、領土だけで、領空、領海は含めないじゃないかということ、この点について明確にしろということであります。私は領土のみならず、日本の領海、領空に対して、これが持ち込まないことに関しては同じような態度で進む考えであります。
第七に、防衛計画につきましては、すでに昨年の春、夏にかけまして、日本の国防の基本計画を定めまして、この国防計画の目標も定めております。これを国力と国情に応じて、漸進的に充実して行くという基本方針を定めております。
第二次防衛計画というようなことが、新聞に出ておるというようなことでありますが、そういう事実はございません。
ミサイル兵器の日本への、アメリカに対してこれの貸与、供与等の折衝につきましては、従来、数種のものに対して、日本の研究開発用として供与方を折衝いたしておりましたが、秘密保護法の関係もあり、われわれの目的が達成されておらなかったことも御承知の通りであります。最近、サイドワインダーの供与が行われておりますが、これは何ら秘密保護法との関係はなしに供与されたことも、この前の国会で御説明申し上げた通りであります。
防諜法の必要性の問題は、今申し上げましたようなことと直接の関連をいたしておるわけではございませんで、私は、一国が独立国とし、その自主独立の立場から、自分の安全並びに独立を保障するためには、国家の重要なる基本的利益や存立に関するような機密事項が、他に諜報として取られるということは、これは望ましくないことであります。これを防ぐということは、いずれの独立国も当然やっておることであります。たとえば外交上の秘密暗号であるとか、あるいは根本的なそういう問題に対する必要があるということは、私も従来とも考えております。しこうして、これらに関する日本の現在の法令というものが、いろいろに分れておりますが、果してこれらの法令で、十分その目的が達成されておるかどうか、あるいは不十分であるとすれば、どういう点をさらに補強すべきであるか、そのために独立の法律を作る方がいいか、現行の法律を改正するのがいいか、そういうことに関して全面的に検討中でありまして、まだその結論を得ておりません。
最後に、この日本が攻撃を受けた場合に、この日本の領空、領海を越えても、これに対して攻撃が憲法上できるかという御質問であります。日本の防衛は、言うまでもなく憲法の自衛権の問題でございまして、あくまでも他から不当に、もしくは不法に侵略された場合において、日本の安全を保障するために防衛するということがその本旨だと思います。こういう意味において、いろいろな仮想をいたしまして、いろいろの仮定のもとに、いろいろな事態が従来論ぜられておりますが、私は、その憲法の自衛権の本質から、すべての問題を解釈すべきであると、かように思っておけます。(拍手)
〔国務大臣一萬田向登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/6
-
007・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) このミサイル時代、核兵器のこういうふうに兵器が高度化しているときに、今、日本のやっているような防衛計画なり、あるいは兵器は、意味がないじゃないか、こういうふうな一つの御質問であります。私の考えでは、この核兵器等を使うような戦争は、これはもう人類の破滅になるおそれが多分にあるのでありまして、従いまして、そういうものを使う戦争というものは、私どもはもう考えない方がいいのじゃないか、こういうことはあり得ない、かように考えているのでありまして、おそらくこういう兵器の出現をもとにして、私は世界が大きく変りりつあるのじゃないか、今、かようにも考えるのであります。しかしながら、今日の国際情勢を見ますと、やはり局部的な紛争というものは、なお免れないのが現状であります。従いまして、各国ともそれに対応する防衛あるいは国防というものを持っているのであります。わが国といたしましても、自分の国を守る最小限度のものは、こういうふうな現状では私はやむを得ない、かように考えているのでありまして、むろん、しかしながら民生の安定のない防衛というようなことは、今日考えられぬことは、だれもが承知いたしているわけであります。従いまして、防衛というものは、私は最小限度に、やはり日本の国にやむを得ない限度にとどめるが、社会保障というようなものは、これから積極的にますますふやして充実しなければならない。そこに私は大きな変化を認めるものであります。従いまして、三十三年度の予算におきましても、防衛庁の費用は五十億ふやしたのでありますが、社会保障については百二億ふやしているというのもその辺であります。
それから宗谷の件について具体的なお話がありましたが、これは私といたしましては、地球観測統合推進本部の御要求に応じまして、その費用は全額私は認めたのであります。従いまして、宗谷の件は、むろん新聞報道等において明らかでありますように、南極の天候の非常に悪条件下であったところに、むしろ原因があるのかもしれないと思うのであります、これはいろいろありましょうが、予算が少いために、宗谷がああいうふうになったというのは、私は当らない、かように考えているのであります。しかし、今後こういう方面には、十分意を用いまして、予算も組むつもりであります。
それから繰り越しにつきましての御質問でありますが、これはほんとうに私も従来心を痛めておりまして、年々二百億以上に及ぶ繰り越しがあります。それで私が三十一年にちょうどアメリカに行きましたときに、当時のウイルソン国防長官と話し合いまして、こういうふうなことは困るじゃないかということを話しまして、先方もこれを認めまして、そして三十二年には、まず繰り越しを執行面で使って、予算をふやさぬでもいいというような形になりまして、三十二年度の予算におきましては特に防衛庁費はふやしておりません。従いましてこの三十二年度の繰り越しは契約未済のものはほぼ三十億円、こういうふうに減っております。三十三年度におきましては一そうこれが減るであろうと期待いたしております。(拍手)
〔国務大臣唐澤俊樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/7
-
008・唐澤俊樹
○国務大臣(唐澤俊樹君) 新しく防諜関係の立法をいたすかどうかの問題につきましては、総理大臣からお答えのありました通りでございまして、この問題は防衛庁あるいは外務省等、広く関係をいたしておりますが、法務省におきましても、従来からこの種の立法が必要であるかどうかということを検討いたしております。しかしまだ結論に達しておりません。具体案も持ち合せておりませんから、それが果して違憲であるかどうか、合憲であるかというような問題もございません。どうぞ御了承願います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/8
-
009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 藤田進君。
〔藤田進君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/9
-
010・藤田進
○藤田進君 ただいまの御答弁を承わっておりますと、相当私が重点を置きまして、岸総理としても答えづらいであろうと思う点が、すべてこれが脱落をいたしまして、御答弁がないのであります。
第一点の戦争があるかないか、それがいつあるか、そういう窮屈な御答弁を伺ってはおりません。一引く一がゼロだというふうに何も内容がなかったように思います。戦争があるとも思わないし、ないとも思わないし、恒久平和であるとも思わないしというようなことでありますから。もう少し、これだけの法案を出されて国費を費消する以上、大きな見通しについては定見を持たれなきゃいかぬと思うのでありますもこの点をさらに加えていただきたい。
時代的ズレがないかというお伺いをいたしましたが、なるほど、ズレがないとのことでありますが、聞く方が悪かったかもわからない。時代曲ズレがあなたにあるから、時代的ズレを感じないのかもしれない。時代的ズレのない者から見ると、時代的ズレがある。この点は、さらにみずからの時代的ズレがあるかないか、一つ反省をしていただきたいと思います。
で、日米の核兵器持ち込みに関連する問題は、安全保障条約に関連する安保委員会、これで話し合いをするんだ、装備について話し合いをするんだ、これは配備の中に装備が含まれるんだというような論争が、この間も行われたようでありますが、しかし、この問題は、非常に今日の重大なポイントになっているのであります。イギリスにおいても、たったこの間、問題になって、ついにロイド外相もマクミランも、これに対しては窮地に立ったのであります。条約があって共同決定をするということになっていてさえ、かような実情なんでありまして、わが国のように、あなたとアイゼンハワーの間に、相互信頼——安保委員会のような——ただ言ってみるだけの話で、あの委員会というものは何の権限もない。そういうところに、君の方の艦船には核兵器を積んでいるか、どういう性能のものか、飛行機はどうか、そんなことが一々ここで検察できるような、そういう委員会ではないんであります。このことは、国民がよく知っている。であるから、従来他の国に例のない相互信頼に、これを全部委任しないで、直接両国の利害として条約を結ぶ、あなたの考え方をそのまま信ずれば、持ち込みを拒否するんですかち、そのことをやはりアメリカに了解させなければならぬと思います。了解をほんとうにしているならば、条約を結ぶことは、これは決して無理のないも立ちどころに結べなければならぬはずです、なぜそれをあなたが結ぼうとしないか、ここが重大な国民の疑点なんであります。これは一つ、この際明確にしていただきたい。
それからトルーマン前大統領の発言が、一市民だと考えれば、それまででありましょう。しかし当時の戦争責任者であり、今日、一方のやはり旗頭であります、これが長崎、広島に原爆の投下をして何らの責苦を感じなかった、のみならず、今後万一の場合には水爆を使うのだ、今日原爆のために——十三年になるがきょうかあすかと、命を日本人は捨てているのです。それに対して私が質疑をし、広島市会においては、昨日緊急臨時市議会を開いて抗議をし、これの撤回を求めているのであります。これに対する、長崎を含む全国に原爆被害者のあるこういう状態の中に、日米親善を謳歌されるそのあなたが、この撤回を求める質問その他のことについて御答弁がないということは、まことに遺憾であります。さらに御答弁をいただきたいと思うのであります。
全領土に、領空、領海を含めて原水爆持ち込みの拒否をされているということでありますが、しかし港には潜水艦といわず、巡洋艦といわず、それぞれ艦船に最近では原水爆核兵器を持ち込んでいると伝えられております。これは明らかに領海でありましょう。またわが国の上空を通って朝鮮に原水爆兵器が送られ、また日本を通過して沖繩に運ばれる、これは常識であります。しかも最近は核兵器を積んだ飛行機が、昨日の新聞にも報じているように、アメリカでも一機落ちております。極東でも落ちていると伝えられております。そういう危険なものを領空、領海を含めて持ち込みを拒否するというのであれば、ますます具体的にアメリカとの取りきめが必要ではないか、向うに納得させることが必要ではないか、これに対してさらにお答えをお願い申し上げたいと思います。
ミサイル兵器の研究訓練に対しては何ら触れられておじません。これが重大なやはりポイントであります。さらにこの毎日新聞の大見出しで出ている報道に何ら触れられておりませんが、これには、国民感情がかような状態であるから、七種類のミサイル兵器を研究し、そして研究水都を強化拡充して、やがて問題が起きたときには、アメリカから核弾頭を持ち込んで、これに装填して、日本人がどんどん、最後に答弁された——いわゆる敵基地をたたく、こういう筋書きが書かれているのです。これに対して、あなたが一言も触れないということは、これが果してでたらめなものであるならば、でたらめだと言えば、国民も、そうかと思うでしよう。あまりにも具体的に出ているのであります。国内に反響をもたらしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/10
-
011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 時間です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/11
-
012・藤田進
○藤田進君(続) この点については、明確にお答えをいただきたいと思います。何しろこういう重大な問題が、わずか二十分でありますので遺憾であります。お答えの方で十分なる一つお答えをいただきたい。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/12
-
013・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 戦争の危険の有無の問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、私はしばしば、これも国会で申し上げておる通り、国際的の情勢は、大きく見れば雪解けの方向に向っておる。しかしそういう場合には、全然なだれの危険はなしと言うことは、これはいけないということを申しておるのであります。われわれが一国の安全を保障して防衛を完備しようという場合におきましては、必ず危険があるからだ、あるいはどういう危険があるんだということでなければ防衛が成り立たぬというものではなしに、全体的の今言ったような国際情勢から判断して、いかなることがあっても、日本は他から不法不当な侵略を受けないのだ、国民は安心してよろしいという観念を持つということが必要であろうと思います。
それから、いわゆる時代ズレというお話でありますが、問題は、責任を持って政治に当る以上は、現実ということを無視してはいかぬということであります。いかなる場合におきましても、ただ一つの新しい傾向であるとか、非常に遠くの一つの理想であるというものにとらわれて、現実を忘れるということは、私は責任ある政治家のとるべきことではないと思います。従いまして、私は先ほど来申しているように、世界の現実が、普通兵器によるところの防衛というものを無意味ならしめているかというと、そうでないという、この現実をわれわれは忘れてはいかぬということを申し上げたのであります。
条約問題に関しましては、私は、要はこれは日米両国の間の真の理解と信頼の問題であると思います。私はその点において十分の確信を持ちますがゆえに、条約を今直ちに作る必要はないということを申し上げておるのであります。
トルーマンの言動についてのお話がありましたが、私はトルーマン前大統領の言動の内容を正確につかんでおりませんから申し上げられませんけれども、しかし内容としては、今、藤田議員がおあげになったような意味であるならば、これは大へん遺憾なことであると思います。
領海、領空の問題に関しましては、いろいろな論議が行われておりますが、私どもの承知いたしております限りにおきまして、そういう核装備をしておる飛行機や、あるいは艦艇が日本の領空、領海を通過したり、そこに入ってきておるという事実は、私どもは認めておりません。ただこれを、それではどうなるかという問題に関しましては、これについては、言うまでもなく国際的の一般の条約の精神によりまして、その国の承認を得なければ、無断で通ることができないことになっておることは御承知の通りであります。
それからミサイルの研究につきましては、これはかねてわれわれは、日本の防衛力強化については、質の向上ということについて十分に意を用いて行くべきだ、従って、科学の発達ということに対しても、十分な研究はして行く、しかし、私はいかなる場合におきましても、日本で、私が申し上げているように、原水爆を用いるとか、あるいは核弾頭を用いてのことをやるということは、絶対にこれを排除する意味においてわれわれは研究をいたしておることも、従来御承知の通りであります。最近のサイドワインダーは、これは広い意味におけるミサイルの一つでありますけれども、これは核弾頭を用いるものではありませんし、これを用いることのできないものであることも、この前の国会でお答え申し上げておる通りであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/13
-
014・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/14
-
015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第二、捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長天田勝正君。
〔天田勝正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/15
-
016・天田勝正
○天田勝正君 ただいま議題となりました捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
現行法は、日本国との平和条約第十七条に規定する義務を履行するため、旧捕獲審検所が検定いたしました事件に対して、連合国から要請がありました場合に、国際法に従って再審査することを目的とするものであります。この法律の存続期間は、当初三年と定められておりましたが、その後三回、すなわち第二十二回特別国会、第二十四回国会、第二十六回国会において、それぞれ一年延期することの改正が行われ、本年四月二十七日限りで失効することとなっております。
さて、本法案は、再審査の要請に関する連合国の状況にかんがみまして、今後もなお再審査の要請があるものと予想されますので、その要請に対する受け入れ態勢を継続するために、本法の存続期間をさらに一年延長しようとするものであります。
本委員会におきましては、質疑、討論を省略いたし、直ちに採決に入りましたところ、本法案は、原案通り可決すべきものと全会一致をもって決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/16
-
017・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/17
-
018・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時十七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102815254X00819580214/18
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。